1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年七月十八日(火曜日)
午前十一時二十二分開会
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委員の異動
七月十五日
辞任 補欠選任
和泉 覚君 二宮 文造君
七月十七日
辞任 補欠選任
成瀬 幡治君 戸田 菊雄君
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出席者は左のとおり。
委員長 竹中 恒夫君
理 事
青柳 秀夫君
藤田 正明君
柴谷 要君
中尾 辰義君
委 員
青木 一男君
大谷 贇雄君
小林 章君
西郷吉之助君
徳永 正利君
西田 信一君
林屋亀次郎君
日高 広為君
木村禧八郎君
田中寿美子君
戸田 菊雄君
野上 元君
野溝 勝君
二宮 文造君
瓜生 清君
須藤 五郎君
国務大臣
大 蔵 大 臣 水田三喜男君
国 務 大 臣 塚原 俊郎君
政府委員
内閣総理大臣官
房臨時在外財産
問題調査室長 栗山 廉平君
大蔵政務次官 米田 正文君
大蔵省証券局長 加治木俊道君
事務局側
常任委員会専門
員 坂入長太郎君
説明員
外務省北米局外
務参事官 中島 信之君
大蔵省国際金融
局外資課長 吉田冨士雄君
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本日の会議に付した案件
○引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
○証券投資信託法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/0
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001・竹中恒夫
○委員長(竹中恒夫君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律案を議題といたします。
まず、政府から提案理由と補足説明を順次聴取いたします。塚原総理府総務長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/1
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002・塚原俊郎
○国務大臣(塚原俊郎君) ただいま議題となりました引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
過般の大戦の終結に伴い、海外にあったきわめて多数の同胞が本邦への引き揚げを余儀なくされることとなり、政府はこれらの方々に対して種々の援護更生施策を講じてまいったのでありますが、これらの引き揚げ者は海外において有していた財産をそのまま放置し、ほとんど無一物となって引き揚げざるを得なかったことなどから、これらいわゆる在外財産に関する処理の問題は多年論議の対象とされてきたところであります。この間政府は、昭和二十九年に設置された在外財産問題審議会の意見等を考慮し、昭和三十二年に引き揚げ者給付金支給等の措置を講じたのでありますが、この給付金支給等の措置は、引き揚げ者がその全生活の基盤を失ったという特殊事情に着目しつつ、主としてそれら引き揚げ者の国内における社会復帰に資するために講じられた措置であるということから、世上においては在外財産そのものについての論議がいわゆる補償要求等の形においてその後もなお続けられてきたのであります。このような実情に顧み、政府は、この問題の最終的解決をはかるため、あらためて昭和三十九年に在外財産問題審議会を設置し、同年十二月内閣総理大臣から、在外財産問題に対しなお措置すべき方策の要否及びこれを要するとすればその処理方針はいかにあるべきかについて諮問がなされたのでありますが、その後同審議会においては、きわめて慎重、かつ熱心に問題の究明を行なっていたところ、昨年十一月、ようやく答申の提出を見るに至ったのであります。
右の答申は、まず、在外財産に対し国に法律上の補償の義務はないとして、いわゆる補償問題に明確な結論を与える一方、引き揚げ者は、終戦に伴い、長年住みなれた社会の中で居住すること自体が許されなくなったことにより、通常の財物としての財産のほかに、それらのものの上に成り立ち、また、それらのものがそこから生まれ出る資本でもあったところの人間関係、生活利益等、生活を営む上で最も基本となるささえまでも一切失ったという点において他と異なる特異な実情にあることに顧み、このような単なる財産ではなく特別な意味と価値とを持った財産の喪失に対し、国が特別の政策的措置として引き揚げ者に交付金を支給しこれに報いることこそは、在外財産問題の中に残された最後の課題を解決するゆえんであるといたしているのであります。政府といたしましては、この答申の趣旨にのっとり、在外財産問題の最終的解決をはかるため、引き揚げ者に対する特別の措置として交付金支給の措置を講ずることが適切であると考え、その具体的内容について種々検討をいたしました結果、ここにこの法律案を提案することとした次第であります。
以下この法律案の概要について御説明いたします。
まず、第一に、特別交付金の支給を受けることができる者は、引き揚げ者、死亡した引き揚げ者の遺族及び引き揚げ前死亡者の遺族でありますが、ここで引き揚げ者と申しますのは、外地に終戦時まで一年以上引き続き生活の本拠を有しており、終戦に伴うやむを得ない理由により引き揚げた者などをいい、引き揚げ前死亡者とは、右と同様の事情において引き揚げる前に外地において死亡した者をいうことといたしております。
また、特別交付金の支給を受ける遺族の範囲は、死亡した引き揚げ者または引き揚げ前死亡者と物心両面において最も密接な関係にあったと考えられるこれらの者の配偶者、子、父母及び孫としており、これらの者の間の順位はそれぞれこの順序によることといたしております。
第二に、特別交付金の額についてでございますが、引き揚げ者に対するものにつきましては、終戦時等における年齢の区分により五十才以上の者に十六万円、三十五才以上五十才未満の者に十万円、二十五才以上三十五才未満の者に五万円、二十才以上二十五才未満の者に三万円、二十才未満の者に二万円とし、さらに、外地に終戦時等まで引き続き八年以上生活の本拠を有していた者については、これらの額に一万円を加算した額といたしております。また、遺族に対する特別交付金につきましては、同じく死亡した者の終戦時等における年齢区分によりそれぞれ引き揚げ者に対する特別交付金の額の七割の額とし、加算額は七千円といたしております。
第三に、特別交付金の支給は、これを受けようとする者の請求に基づいて行なうこととしておりますが、この請求は、昭和四十五年三月三十一日までにしていただき、この期間に請求のない場合には、特別交付金は支給しないこととしております。
第四に、特別交付金は、十年の間に償還する無利子の記名国債をもって支給することとしております。
以上のほか、特別交付金を受ける権利及び国債についての譲渡等の制限、特別交付金に関する処分についての不服申し立て期間の特例、特別交付金及びそれに関する書類についての非課税、不正手段により特別交付金を受給した者に対する措置、特別交付金支給の実施機関等所要の事項を規定いたしております。
以上がこの法律案を提出いたしました理由と法律案の概要であります。何とぞ慎重審議の上、すみやかに可決されますよう御願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/2
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003・竹中恒夫
○委員長(竹中恒夫君) 補足説明、栗山臨時在外財産問題調査室長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/3
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004・栗山廉平
○政府委員(栗山廉平君) ただいま総務長官から御説明申し上げました点の補足を説明させていただきます。法案の提出までに至りました趣旨並びに経過は、ただいま大臣の申されたとおりでございます。私は、この法案につきまして、少し補足をさせていただきます。
法案の第一条は、これは先ほど大臣から申し上げましたように、引き揚げ者と、それからなくなられた引き揚げ者の遺族、それから引き揚げる前に、つまり内地の土を見る前になくなってしまわれた方の遺族、この三者に交付金を支給しますという趣旨が一条に盛ってございます。
第二条は定義でございまして、この二条の第一項が引き揚げ者の定義でございます。第一項の第一号、これが中心でございまして、本邦以外の地域に終戦日まで引き続き一年以上生活の本拠を有していた者で、終戦に伴って発生した事態に基づく外国官憲の命令、生活手段の喪失等のやむを得ない理由により終戦日以後本邦に引き揚げた者、これが引き揚げ者の定義の中心でございます。それで、それに引き続きまして二、三、四、五とございまするが、これは終戦前に引き揚げた方につきまして例外的に引き揚げ者の定義の中に入れるという趣旨のものでございまして、たとえばこの第二番目は、ソビエトの参戦に伴いまして終戦前に内地に引き揚げた方がおられる。その方たちも同様に見ていったらいいではないかという趣旨で入っております。もちろん、ソビエトとの関係で終戦後に引き揚げられた方は、この最初の第一のほうに入るわけでございます。三番目は、たまたま内地に出張等の目的で来ておられて、外地に帰ることができなくなったという方も引き揚げとみなすという意味でございます。それから四番目のほうは、もとの委任統治領であった南洋群島でございまするが、これは戦局が激しくなりましたときに、日本政府の要請等で終戦前に引き揚げたというケースがございます。それも引き揚げ者の中に入れようという趣旨でございます。五番目は、ここに書いてございまするように、開戦後交換船等で引き揚げてこられた方は、それからまた南方のたとえば昔の蘭領インドシナ、いまのインドネシアでございまするが、そういうところで、戦争前でございまするが、時局が逼迫したような状態になりまして、やはり領事館等の要請で引き揚げてこられたという方がございます。そういう開戦の前後の関係で引き揚げ者と同じように考えていったらよろしいではないかというのがこの五番目でございます。
それから、第二条の第二項におきましては、引き揚げ前死亡者の定義がございまするが、これはただいま申しました引き揚げ者とほとんど同じ規定でございまして、ただ引き揚げる前に途中で死んでしまったという方の定義が書いてあるわけでございます。
それから、第二条の第三項でございまするが、第三項におきましては、生活の本拠が一年未満であっても例外的に引き揚げ者の中に入れたいというのがここで書いてございまする問題でございます。それは何かと申し上げますると、ここに書いてございまするように、満州開拓民と、それから戦時中に工場などが外地に疎開させられた例がございます。ごくまれな例でございまするが、終戦のわりあい間近に疎開させられて、それについて行きました技術者あるいは技能者がおられるわけでございます。こういう方も、満一年未満でありましても、国の要請で行ったということで、やはり一年と同じ扱いにいたすという点でございます。
それから、第四項は、本邦引き揚げ者とか本邦に引き揚げるという、全部「本邦に引き揚げたもの」ということが書いてございまするが、その「本邦」の中には、この法律におきましては、歯舞、色丹は入れない、つまり歯舞、色丹から帰ってこられたお方には、引き揚げ者ということでこの法律の適用をしていきたい。「及び総理府令で定めるその他の島」と申しまするのは、国後、択捉を考えておるわけでございます。
以上が一番大事な定義の問題でございまして、あと簡単に申し上げます。
第二章が「特別交付金の支給」でございます。
三条には、ここに書いてございますように、引き揚げ者、それから死んだ引き揚げ者の遺族、それから引き揚げ前死亡者の遺族、この方たちで日本の国籍を有する方には交付金を差し上げますということが第三条に書いてあるわけでございます。それから、第三条の第三項には、先ほど提案理由の説明でございましたように、昭和四十五年の三月三十一日までに申請をしていただかなければいけない。それを過ぎますると、交付金の支給は行ないませんと、こういう規定でございます。約二年八カ月ほどの余裕があるわけでございます。
それから、第四条は、遺族の範囲が書いてございまして、遺族の範囲といたしましては、配偶者、それから子供、父母、孫と、こういう遺族の範囲でございます。
第五条は、遺族順位が書いてございまして、ただいま申し上げました配偶者、子、父母、孫の順で遺族としては交付金の支給を受けるということが書いてあるわけでございます。
それから、六条におきましては、交付金の額が書いてございまして、この表にございまするように、五段階に分けまして、最低二万円、最高十六万円の支給をいたしますということが書いてあるわけでございます。それからなお、第六条の第二項には、外地に引き続き八年以上生活本拠を有していた者には一万円の加算をするということが書いてございます。三項以後の条文は、遺族に対する金額でございまして、いずれもただいま申しました引き揚げ者の額の七割に相当する額が規定してございます。
それから、第七条は、国債のことが規定してございまして、十年以内に償還すべき記名国債、それから無利子ということが書いてございます。第四項には、この国債につきましては、「政令で定める場合を除くほか、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。」という規定がございまして、これは前の引き揚げ者の給付金あるいは地主に対することで出しました国債等と同じような規定でございます。
それから、第八条は、権利を持っておられた方がなくなられた場合に相続すると。その承継と申しますのは相続のことでございます。
それから、第三章におきましては、いろいろの雑則が書いてございまして、第九条には、異議申し立ての期間が、普通の行政不服審査法で申しますと六十日となっておりまするけれども、今回のこのものにおきましては一年という期間で不服の申し立てをしていただくというふうに期間を延ばしてございます。
なお、十条には、交付金を受ける権利そのもの、基本の権利でございまするが、この権利は譲渡したりあるいは担保に供することができないということにしてございまして、ただし書きで、その同じ引き揚げ者で同じ家族の間では譲渡はできますと、ただし書きで例外が書いてございます。これは一括して申請するような便宜のためもございまして、この前の引き揚げ者給付金にもこういうことは書いてございます。
そのあとは差し押えとか非課税といった問題がずっと書いてございまして、十四条へ行きまして、特別交付金の返還ということがございまして、これは不正の手段により国債の交付を受けあるいは償還金を受領したという者がある場合には、「内閣総理大臣は、その者に対して償還金の全部又は一部に相当する金額の返還を命ずることができる。」、これはこの前の農地の場合と同じ規定でございます。
あとは十五条におきまして、総理大臣に属する権限を地方公共団体の長に委任することができる。府県、市町村でございまするが、これもこの前の引き揚げ者の給付金と同じような内容でございます。
あとは附則に参りまして、附則の第二項に「国債発行の日は、昭和四十二年八月十六日とする。」、こういう規定があるわけでございます。
なお、お手元に、法律案参考資料というものが総理府から差し上げてございまするが、この一番最後のほうに表が入っております。表が二つほど一番最後に参考資料として入ってございまするが、その一のほうに千九百二十五億円全部の内訳が書いてございます。引き揚げ者の総数、それからそのうちの生存者あるいは死亡者、いずれも見込みでございますが、その数が書いてございまして、それにおのおの先ほど申し上げました単価をかけまして、それから在外居住年数一年未満の者を除いたというようなもの、それから八年以上の者に加算をするというようなことを全部やりまして、千九百二十五億になるという表が最初についてございます。それから、第二番目の表は、特別交付金の事務の流れが表として書いてございまして、これをごらん願いますると、申請者からどういうふうに流れが行きまして国債になっていくかということが書いてございます。参考までにごらんを願いとうございます。
以上をもちまして補足説明を終わらしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/4
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005・竹中恒夫
○委員長(竹中恒夫君) 以上で説明を終わりました。
これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/5
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006・青木一男
○青木一男君 私は、在外財産審議会委員の一人でありましたが、審議会で二カ年にわたって慎重審議を重ねました。最も多くの時間をさいたのは、国に法律上の補償義務があるかどうかという点であったのであります。委員の意見はこの点で分かれたのでありますが、結局、審議会といたしましては、国に法律上補償義務なしという結論に到達いたしましたが、それと同時に、政府は政策的措置を講ずべしという答申を行なっておるのであります。法案の提案理由を拝見しますと、「この答申の趣旨にのっとり」とありますから、政府も法律上補償義務なしという見解の上にこの法律案を提案されたものと思います。この点は本法案の前提をなす要点でありますと同時に、現に係属中の訴訟、将来起こるかもしれない訴訟に与える影響もありますので、あらためてこの点についての政府の見解を本委員会を通して表明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/6
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007・塚原俊郎
○国務大臣(塚原俊郎君) 青木先生、審議会においてだいぶ御苦労されたことと私も承っておりまするが、答申そのものが、全部を拝読いたしますると、やはり抽象的に流れている傾向があるのではないか。したがって、この答申を尊重しながら立法の措置をとるに際しましても、非常な苦労もあったわけでありまするが、いま御質問の点は、これははっきりうたっております。政府といたしましては、法律上補償の義務はないという解釈をとっております。また、今後もその考えで進みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/7
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008・青木一男
○青木一男君 次に、特別交付金の総額は幾らでございますか。これは引き揚げ者の数とその単価を計算してできた数字であるようにも見えますが、決定の経過から見ると、総額がまずきまったようにもうかがえるのでございますが、この総額の決定の根拠を一応伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/8
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009・塚原俊郎
○国務大臣(塚原俊郎君) 引き揚げ者の世帯九十五万四千世帯という数字は出ておりますが、これはあくまでも推定であります。この数字を、総数並びに世帯数をキャッチするのに非常に苦労もいたしました。総理府の統計局を中心といたしまして、今日までの引き揚げ状況、さらに外地における調査等を基本として、推定として出てきたものが九十五万四千世帯であります。答申によれば、世帯を中心として支給云々という条項もございまするが、そうであることが一番われわれとしても仕事の上からやりやすいことは、これは当然でありまするが、あくまでも推定のもとに立ったこの九十五万四千世帯というものであります。まあこれは言うなれば、名前をお借りしてたいへん失礼でありまするが、塚原あるいは青木というような世帯主というものがはっきり現存しているということをキャッチすることはできないわけであります。したがって、世帯というものを単位として支給すべしという趣旨に沿いながらも、やはり個人というものを対象としなければならなかったということも御理解いただけると思うのでありまするが、その総額については、今日までの戦後のこういった問題についての額、そういうものももちろん参考にいたしましたし、それからこれから御審議願うたとえば中年層以上高年者に対しては優遇の措置をとり、これを幾らにするか、最高十六万円でありますが、そういうものの積み重ね方式というものをミックスしてでき上がったのが千九百二十五億という額でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/9
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010・青木一男
○青木一男君 この法案の末尾に付記してある理由によりますると、「在外財産問題の最終的解決を図るため」とあります。この点は審議会におきましても特に重きを置いた点でありまして、今回の措置をもってこの問題の打ち切りとしたいということは審議会委員全員の希望でありました。しかるに、法案を見ると、この趣旨がどこにも出ておらないのであります。最終解決の意味が示されていないばかりでなく、在外財産に関係あることすらも法文には出ていないのであります。理由書というものは法典には載らないのであります。
私は、今回の法案第一条「この法律の趣旨」とあるのを、一般の法律と同じように、「この法律の目的」と改めて、第一条中に「在外財産問題の最終的解決を図るため」と、こういう字句を加えておれば、前回の法律と異なる特色もはっきりし、審議会や政府の考え方も法文の上に明確となったのではないかと思うのでありますが、何ゆえそういう立法形式をとらなかったのか、その点を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/10
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011・栗山廉平
○政府委員(栗山廉平君) ただいまの青木先生の御質問でございまするが、先ほどからお話がございましたように、在外財産に関しまして国に法律上の補償義務があるかどうか、この点につきましては、先ほどのお話もございましたように、その補償義務はないということが政府の見解でございます。また、答申にもはっきりその点はうたってあるところでございます。そこで、今回の措置が、先ほどもお話がございましたように、そういう法律上の補償義務に基づいて補償として行なうという措置でないことはこれも明らかでございまして、政策的に、引き揚げ者の置かれた特別な事情に目をつけまして措置をするという趣旨に沿いましてできましたのが今回の法案でございます。したがいまして、補償ではございませんので、しかも、在外財産そのものの補償ではございませんので、個々の財産にどうこうという問題ではないわけでございます。したがいまして、そういう在外財産ということばを出すことはどうも適当ではないのではないかということによりまして、こういうふうになった次第でございます。
なお、在外財産問題のうち残された問題の最終解決というような、そういう点がやはりあらわれていないのではないかとおっしゃいます点でございまするが、答申におきましても、これは青木先生よくご存じでいらっしゃいますが、在外財産問題のうちに残された問題がある、その残された問題の最終的解決をはかるために引き揚げ者に対して特別な交付金を支給する必要がある、こういうことを答申はうたっておるわけでございまするが、その答申の趣旨に沿いまして、在外財産問題のうちの残された問題の最終解決をはかるというその趣旨に沿いましてできましたものが今回の法案でございまして、政府といたしましては、この法案を提出さしていただくことをもって在外財産問題の最終的解決に資するものであるという見解を持っておるわけでございまして、その旨は先ほど読まれました提案理由の中にはっきりとうたってございまするので、ひとつ御承知おきを願いとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/11
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012・青木一男
○青木一男君 審議会の答申のとおり今回は所得制限を付さないことにしたのは、三十二年の法律と異なる点でありまして、財産対策の色彩がおぼろげながら出ておると思います。しかし、審議会は、財産形成が世帯単位で行なわれている点に着眼し、交付金の支給は世帯単位とすることが合理的であるという答申を出しております。しかるに、今回の法律案では個人単位となっておりますが、その理由はどこにありますか。また、若年者を除外すべしという答申に対して二歳未満にも支給することとなっておりますが、その理由もあわせて伺いたいと思います。先ほど総務長官から一応の御説明がありましたが、これが審議会の答申と一番違う点でありますので、もう一度伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/12
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013・栗山廉平
○政府委員(栗山廉平君) お答え申し上げます。
答申には、ただいまおっしゃいましたとおり、財産の形成が主として世帯を単位としてなされているというのが実情である、そういう点からして世帯単位に支給額算定を考えることがいいのではないか、できるだけこの点は配慮すべきだという点までうたってございます。それは答申にあるとおり、それが非常に合理的であると政府におきましても存ずるわけでございますが、何しろ終戦からもうすでに二十年以上がたっているわけでございまして、二十数年前の世帯、しかもそれが国内ではございませんで、外地または外国における世帯という点が非常な問題になることでございます。そういう二十数年前の、しかも外地あるいは外国における世帯を把握するというのが非常に困難をきわめるわけでございまして、かりにこれが何とか努力をしまして把握できたといたしましても、具体的に今度交付金をその世帯にたとえば支給するというようなことを考えてみますると、二十数年の間でございまするので、たとえばともに引き揚げてきた夫婦が離婚しておるというような事態もなきにしもあらず、まあ多い中にはあるわけでございます。そうなりますると、世帯主に交付金をやりっぱなしになりまして、別れておった奥さん、あるいはだんなさんも入るかもしれませんが、どちらかのほうが受け取ってしまって均てんしないということも考えられるわけでございます。そこで、今回は、世帯にやるのが理想的であるというふうには考えまするけれども、現実の問題としては、それをつかむことが困難であり、かつつかむことがたとえできたとしても、具体的には不合理な点も出てくるのではないかということから、個人単位に支給さしていただくということに書いたわけでございます。なお、この世帯の考えはできるだけ生かす意味におきまして、年齢層等に分けて、答申の趣旨にもございまするが、中年以上を重んじたり、いろいろな点を行なっておるわけでございます。
それから、もう一点は、幼少の者にも支給するのはいかがかと、こういう御質問でございまするが、答申の一番最後のところには、引き揚げ者の「国外における財産形成や生活利益の状況を考慮すべきことは当然であり、」という文句から始まりまして、一定の年齢に達していなかった者は除外するようにと、こういう文句がうたってあるわけでございます。財産形成を非常に重く見ますると、そういう若年者あるいは幼少者にはなるほど問題が非常に多いことと存じまするが、他面また、ここに書いてございますように、生活利益といったような状況を重く考慮いたしますと、幼少者にも何らかのことをやはりやっていいのではないか。また、先ほどお話がありましたように、世帯単位にやるのが非常に合理的であるという考えからいたしますると、やはり幼少者も世帯の一員を構成しておったというような点からいたしまして、ごく少ない額ではございまするが、この答申の上にさらにその幼少者にも少額を交付するというふうに政府は考えまして、それがいいのではないかと考えまして、このような法案を提出さしていただいたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/13
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014・青木一男
○青木一男君 私は審議会の答申と異なる点についてその理由を一応伺ったのでございますが、私は審議会においても、法律上の義務はないにしても、政策的の措置を必要とすることを主張した一員でございます。その意味におきまして、この法案が提案されたのでございますから、この法律の一日もすみやかに円滑に執行されることを希望するものであります。
次に、私は、形の上では一種の引き揚げ者でございますけれども、引き揚げの時期その他の条件の理由で今回の法案にはおそらく適用せられない人が多いと思う阿波丸事件の犠牲者について質問いたしたいと思います。私は外務当局の出席を要求しておったのでございますが、まだ見えておりませんから、総務長官が内閣を代表する意味においてお聞きいただき、御答弁できる点においては御答弁いただきたいと思います。
まず、事件の概要でございますが、戦争中、米国政府から、わが権力下にある連合国の俘虜、抑留者に対し救恤品を送りたいから実行の手続をしてもらいたいという依頼があったのでございます。政府はこれを応諾し、昭和十九年十一月、二千余トンの救恤品をソ連を通じて受け取り、そのうち南方地域の分を輸送するために阿波丸を使用したのであります。阿波丸に対しては、米国は安導券を出し、襲撃、臨検その他一切の障害を与えないことを確約し、その安全航海を保障したのであります。これに対して日本からは、阿波丸の通過日程及び航路を通告し、夜間も点灯し、緑十字旗のもとに公然と航海をしたのであります。阿波丸は二十年二月十七日門司を出発し、南方各地域を巡航して任務を果たし、三月二十八日シンガポールを出発して帰途についたのであります。しかるに、同船は四月一日以降消息を絶ったので、政府は四月十日米国政府に対し消息通報を要求しましたところ、米国政府は一潜水艦が四月一日夜台湾海峡で阿波丸らしき船を撃沈をしたと公表し、相次いで、ただ一人の生存者によって阿波丸であることが確認された旨回答がありました。
そこで、日本政府は五月十六日、米国政府の陳謝、責任者の処罰、乗船者並びに船舶に対する賠償を要求したのであります。これに対して米国政府は、多数の人命を喪失したことについてはすでに二回にわたり米国政府の深甚なる遺憾の意を表明してきた、阿波丸は安導券に関する取りきめを順守したのであるから、全責任は潜水艦長にある、当該潜水艦長は懲戒処分に付する手続中である、賠償問題はその複雑性にかんがみ戦争中は満足な解決が困難であるから、その商議は戦後に延期したい、公平な態度をもってそのときの政治情勢に関係なく処理することを日本政府に確言すると回答したのであります。これに対して日本政府は、八月十日、米国政府に対し、本件惨事による人的物的損害に対し、戦争中といえどもすみやかに賠償を実行することは、単に日本政府に対する米国の責務であるばかりでなく、本件犠牲者に対する米国政府の人道的責務であると申し込んだのでございますが、その直後に終戦となりました。
本件の犠牲となった乗員の総数は、戦後政府の調査により、二千四十四人であることが判明しました。
事件の経過は以上のとおりであると思いますが、外務当局がおられましたならば、その確認を得たいと思いますが、これは後に譲ります。
次に、終戦後の処理経過についてであります。
昭和二十四年四月七日の衆議院本会議に、与党議員から阿波丸事件に基づく日本国の請求権放棄に関する決議案が提案されました。その内容は、「わが国は連合国の同情ある理解により今や戦争の荒廃から脱却して、平和と自由及び民主主義の高遠な原則の具現を目指して再建の歩を進めつつある。米国は主たる占領国として占領政策の設定と実施にあたって主導的な立場にあり、しかも米国政府及び同国民がわが国の復興と再建のために与えられた援助に対しては、わが国民は感謝おく能わざるところである。われわれはこの感謝の念を具現する一方法として次のことを政府に要望する。(1)わが国は昭和二十年四月一日発生した米国艦艇による阿波丸撃沈事件に基づくすべての請求権を自発的にかつ無条件に放棄すること。(2)政府は速かに連合国最高司令官斡旋の下に米国政府と審議を開始し、前記請求権の放棄を基礎として本事件を友好的に解決すること。(3)政府は国内措置として本事件の犠牲者を慰藉するため適当な手段を講ずること。」というのでありました。
こういう決議案に対し野党はあげて反対し、日本社会党を代表する委員は、その反対討論の中で、米国に対する感謝と国民の有する権利の放棄とは厳に区別しなければならない、道義と条理に従わずして日本国民の権利を放棄するという卑屈な態度は後世の批判を免れないと述べております。しかしながら、この決議案は多数をもって可決されたのであります。
日本政府はこの決議に基づき、昭和二十四年四月十四日米国政府との間に請求権放棄に関する協定を結びました。そして翌昭和二十五年春の国会に阿波丸の見舞い金に関する法案を提出し、国会を通過したのであります。
この法律によりまして、阿波丸事件で死亡した者の遺族に対し、死亡者一人につき七万円の見舞い金を支給することとなり、阿波丸の所有者日本郵船会社に対しては千七百八十四万三千円の見舞い金を支給することとなりました。
本件については、その後何らの新しい措置がとられることなくして今日に至っております。
私は、以下本件につき数点の質問を行なうものであります。
実はこの阿波丸事件は、見方によれば非常に大きな問題でありますが、見方によれば小さな事務的な残務処理とも言える問題であります。私は、この問題を小さな問題として、政府の当然の事務処理として片づけていただきたいと思いまして、今日まで、私は与党議員でおりますので、政府の善処をしばしばお願いしましたけれども、今日までその目的を達することができません。今回の引き揚げ者の交付金の問題をもって、これらの戦後処理の終わりとしたいということがしばしば伝えられておりますので、そういう網にひっかかってこの問題が葬り去られることは本意でありませんので、あえてこの質問をこの機会にいたす次第であります。
まず、政府当局の御理解をいただきたい点は、当時は、戦死した軍人及びその遺家族をはじめ海外からの引き揚げ者等戦争犠牲者に対しては、支給金等一切の国の救恤的措置を占領軍から厳禁されていたのでありますから、本件の見舞い金の支給は唯一の異例の措置であったことは明白であります。これは米国が阿波丸の撃沈をもって戦争行為と見ず、不法行為としてその責任を認め、事実上の戦勝国が事実上の戦敗国に賠償の支払いを約束するという、こういう異例の措置に照応するものでありまして、阿波丸の被害者は一般の戦争犠牲者としてでなく、不法行為の犠牲者として特に重く扱われたことを意味するものであると思います。この点は政府においてもおそらく御異論のないところと思います。
それでは、この賠償請求権の本体は何かという点であります。前述の国会の決議にも、すべての賠償請求権を放棄するとあります。日米協定にもすべての請求権を完全かつ最終的に打ち切るとあります。私は放棄された請求権の本体は被害者たる国民の米国に対する不法行為を原因とする損害賠償請求権であると解しますが、それは五月十六日の日米政府の対米要求にも乗船者並びに船舶に対する賠償とあります。米国がこの要求を応諾した経緯からも明白であります。ただ、国民の権利は国の外交保護権の作用をまたなければ遂行することができません。この意味で国も国民保護の見地から米国に対し賠償請求権があるわけであります。すべての賠償請求権というのは、この両者を包含すると思いますが、権利の本体はあくまでも被害者たる国民の賠償請求権であると考えます。この点について政府の見解を伺っておきたいと思います。外務当局がおいでになったようでございますから、この点を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/14
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015・竹中恒夫
○委員長(竹中恒夫君) 外務省の北米局外務参事官に申し上げますが、青木委員から、あなたがおいでになる前に、この阿波丸事件の実態等について質疑がありまして、その確認といいますか、それを求める質問があったのですけれども、あなたがおられませんし、お聞きになっておられませんので、この「質問要旨」に書いてございますから、いまお読みになって、適当な時期にこの質問に対する御答弁を願いたいと思います。
それから、いまの御質問に対する答弁は直ちにしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/15
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016・中島信之
○説明員(中島信之君) ただいまの御質問の要点は、阿波丸事件がアメリカ側の戦時国際法のもとにおける一種の違法行為によって行なわれた行為であって、その行為に対する賠償請求権というものは日本側にあるのであるが、その賠償請求権というものはその不法行為によって被害を受けた個人が本来有すべきものであるという御質問であったかと承知いたします。確かに被害を受けた主体と申しますか、被害者と申しますものはその国民であり、あるいは船舶の所有会社であるという形になるわけでございますが、国際法上、ことに戦時国際法上の違法行為に対します賠償請求という問題は、国家がそれを相手国国家に対して行なうということによって初めて行なわれるということになるわけでございまして、私人の受けましたその際の被害額あるいは被害の内容というものは、国家が行ないます賠償請求の算定の基礎になるということはあると思いますけれども、両方の国家の間で行なわれます賠償請求行為というものはあくまでも日本の国家が、この場合におきましてはアメリカという国家を相手どって行なう国家間の行為であり、日本政府の請求ということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/16
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017・青木一男
○青木一男君 私も、国民の賠償請求権は国の外交保護権の作用をまたなければ実行されないということは、先ほど申したとおりなんです。しかしながら、その賠償請求の本体はあくまで被害者たる国民の損害に対するものでなくてはならない。
ここで端的に私はお伺いいたします。もしアメリカが約束のとおり被害者に対して何万ドルかの支払いをした場合に、その金は国庫の収入にしますか、それとも被害者に分けてやりますか、その点を外務省に伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/17
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018・中島信之
○説明員(中島信之君) いまの御質問でございますが、結局、賠償をするその賠償の本体という御質問でございますけれども、まあ本体と申しますか、賠償の内容を規定するものというものが私人あるいは私会社、私企業、そういうものが受けたこの場合には被害というものになるということは、いま仰せられますとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/18
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019・青木一男
○青木一男君 私が最後に質問したのは、アメリカが賠償を払った場合に、それを国庫の歳入にしますか、被害者に分けてあげるかということを伺ったのです。その点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/19
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020・中島信之
○説明員(中島信之君) これは会計法上どういう形になるか知れませんけれども、一般的に申しまして、私人のこうむりました損害あるいは要求というものに応じてさらに私人のもとに還元されるという形で処理されるのではないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/20
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021・青木一男
○青木一男君 国民の賠償権の放棄とその代償の問題についてであります。
外交保護権は国の固有の権利でありますから、国策上の見地から放棄することは、正常妥当かどうかという点は別として、法的には可能であります。問題は、国民の有する米国に対する賠償請求権を本人の同意なくして放棄した点にあるわけです。政府の米国との協定は広義の条約でありますから、その効力は国民に及び、その有する権利は協定によって消滅したことは明らかであります。国民の権利をその同意なしに国がかわって放棄するということは、国内法上にも国際法上にも例のなき事件であります。わが国においても、各国の法制におきましても、債権の取り立てと債務の弁済については代位の観念が認められております。しかしながら、債権の放棄について代位の観念を認めている法制はどの国にもございません。人権の尊重される今日では想像すらもできないことでありますが、占領下で憲法も有効に実施されていないときでありますから許されたものと解するほかはありません。政策上の批判の余地はありますが、当時国会の決議に基づいて実行したものでありますから、私もその放棄自体について批判を加える考えはありません。しかし、放棄そのものは是認するといたしましても、国は国民の権利をその同意なしに放棄したのでありますから、国家はアメリカにかわってその国民に対し賠償を実行するのが正義と公平に立脚する法理の当然の帰結であると考えます。
憲法第二十九条の「財産権は、これを侵してはならない。私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」という規定があります。実はこの規定が在外財産問題審議会でも繰り返し論議されたのでございまして、法律上補償義務があるという論者は、講和条約によって外国政府が日本の財産を処分した代償はこの二十九条の規定に当たる、公のために用いたものに該当するではないか、これがつまり法律上の責任ありという議論の骨子だったわけであります。ところが、審議会が結論として、法律上の補償義務なしときめたのは、その場合の日本人の財産が消滅したのは日本政府の行為によるのじゃないのだ、消滅した行為自体は、外国政府のやった行為あるいは戦争行為、略奪、そういう外国のやった行為であって、日本政府のやった行為じゃない、ただ、日本政府がその場合外交保護権を使わないということを講和条約で約束しただけだから、これで憲法二十九条を適用するのは無理じゃないか、これは義務なしという議論の一番大きな骨子だったと考えます。私はその議論から考えましても、この阿波丸事件はアメリカが賠償を払うと言ったのだから、そのすでに成立しておる賠償請求権を積極的に日本政府が放棄したのですから、これは日本政府の行為によってなくなったことは明白なんでございます。
そのときの議論をむし返す必要はございませんが、この問題には憲法二十九条が適用されるのではないかという疑いが一般の財産問題よりもはるかに大きいことだけを私は申し上げておきたい。したがって、憲法二十九条適用ありということはこの際申し上げませんが、しかしながら、この私有財産は尊重しなくちゃいかぬ。もし公の目的に使うならば正当な補償をせよという規定は、これは日本の憲法どころではない、自由主義国のすべての国の憲法なり、その他の国の法制の基本原則になっておるのです。この点が、共産主義国と資本主義国とのこういう財産についての規定の分かれる点なんです。これは自由主義国共通の原則でありますから、政府もその点は軽くお考えにならないようにお願いいたします。
前述のとおり、無数の戦争犠牲者に対し、一切の救恤的措置を禁じたときにおいて、ひとり阿波丸の犠牲者に対してのみ見舞い金を支給したのは、米国の責任の肩がわりという観念をおいては説明のしょうがないと思います。国会の決議にも、賠償請求権の放棄と並んで国内措置として本事件の犠牲者を慰謝するため適当な手段を講ずることが要請されておるのも、両者の不可分関係、すなわち代償の観念を意味したものと私は解します。
日米間の協定におきましても、日本政府が対米請求権を放棄するという条項と並んで、日本政府が被害者に見舞い金を支給するということを規定しております。見舞い金を支給するということは日本政府の一方的行為でありますのに、なぜそういう協定の一条項としたのでありましょうか。思うに、米国が戦争中異例の賠償を公約したのは、被害者に対する深甚なる同情と、その不法行為に対する責任感の表明でありまして、大国の襟度を示したものと思います。米国としては、わずかばかりの賠償権を放棄してもらってもたいした関心がなかったでありましょう。あるいは迷惑に感じたかもしれません。ただ、放棄決議の前提になっておる感謝の表明は、占領行政の成功を物語るものとして、内外に与えたその効果からこれを歓迎したものと想像されるのであります。犠牲者に対する賠償については、日本国政府が代償の措置を約束したので、米国側もその責任感から解放されたわけであり、日本政府の責任転嫁を引き受けるという約束がなければ、公約であった賠償の不実行という不名誉をアメリカが甘受するはずはなかったと私は想像します。この点からも、日本政府は代償の責任を負ったものと私は解するのであります。
この点は、国会の審議でもしばしば論議され、昭和二十五年四月二十六日の衆議院外務委員会におきましても、委員から、米国に対する国民の権利を放棄するということは、米国の義務を日本政府が代行するという覚悟がなければできないことではないかという見解が強く述べられております。この米国に対する国民の権利の放棄と日本政府の責任について、あらためて私は政府当局のお考えを伺っておきたいと思います。外務当局の御答弁をわずらわしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/21
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022・中島信之
○説明員(中島信之君) 阿波丸の請求権に関します日米間の取りきめの一条の表現でございますが、「生じた米国政府又は米国民に対するいかなる種類の請求権をも、日本国政府自身及び一切の関係日本国民のために、すべて放棄する。」、これがこの阿波丸請求権に関する取りきめの実体をなすものてございますが、これとほとんど同じ表現が平和条約十九条においてとられておりまして、「日本国は、戦争から生じ、又は戦争状態が存在したためにとられた行動から生じた連合国及びその国民に対する日本国及びその国民のすべての請求権を放棄し、」という表現がございます。それで、結局阿波丸に関します取りきめは、平和条約発効以前に行なわれたものでございますが、平和条約十九条におきまして、あらゆるそういう戦争行為によって生じた相手国に対する請求権の放棄というものが十九条で取りきめられておりまして、阿波丸問題を含み、政府としてはそういう請求権を相手国政府に対して放棄するという態度をここで確認いたしておりまして、阿波丸問題だけについて特別な措置をしておるということにはならないかと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/22
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023・青木一男
○青木一男君 この阿波丸事件の処理は、講和条約数年前のことですから、あとの事件が例になるはずはないのです。それよりも政府委員は、私の先ほどの説明をよくごらんになっておられないから、そういう簡単な答弁をされますが、講和条約において権利を放棄したのは、外交保護権の放棄であるのです。これはしばしばあるのです。ところが、阿波丸事件は、国民の持っておる賠償請求権をも放棄した。こういう例はほかにありっこない。私はゆっくりひとつこの点は外務当局の御研究をわずらわすことにして、質問を継続します。
七万円の見舞い金の性格についてであります。
見舞い金というのは通例、義務なき場合の恩恵的支払いに用いることばであります。阿波丸犠牲者の遺族らは、金額も七万円という少額でありますので、文字どおり見舞い金と解したことは、これは当然であろうと思います。
国会審議における政府の説明によりますと、船舶に対する見舞い金と船に乗っておった犠牲者に対する見舞い金との間に、見舞い金の性格についてどうも著しく相違があるように思われてなりません。これは質問の一つの骨子なんです。衆議院外務委員会における政府の説明によりますれば、郵船会社に対する見舞い金千七百八十四万円の計算の根拠は、阿波丸沈没当時の保険の船価千三百九十八万円に年五分の複利計算による五カ年間の利子を加えたものであります。それだけでは阿波丸にかわる新船を建造するには不足するので、その不足分は見返り資金等政府資金を有利な条件で融資する方針であることが答弁されております。この答弁をしたのは、いまの大蔵大臣が政務次官として答弁されておる。この新船建造は、占領軍の方針で拒否されましたので実現しなかったのでありますが、もし占領軍の許可があれば、その方針どおり低利長期の資金が融通されたことは明らかであります。これによって見ると、郵船会社に対しては単なる名目上の見舞い金でなく、不法行為に対する賠償の肩がわりという思想とその実質を持っておることは、これはもう疑いなきところであります。普通損害賠償を談判しても、これ以上の要求はおそらくできないでしょう。
しかるに、遺族に対する七万円の見舞い金につきましては、政府委員は この政府委員というのは外務省の政府委員です。これは見舞い金であって賠償ではないと、何度質問されても同じ答弁を繰り返しておる。委員から、文字どおりの見舞い金であるならば、損害賠償の問題は未解決として残るのではないかという質問に対し、政府委員は、米国の責任は請求権放棄によって消滅した、船の撃沈行為は日本政府の行為でないから責任がない、肩がわりの責任も政府にはない、七万円はあくまでも見舞い金であって、賠償でもなく、被害者たる国民の権利でもないと、こういう強弁を最後まで通しておるのでございます。また、見舞い金の額につきましても、船舶関係では委員が納得したものと見えまして反対の意味の質問は出なかったのに反し、乗員については七万円は人命喪失に対する措置としてあまりにも少額に過ぎるではないかという意見は、与野党を通じて多かったと思うのであります。中には、七万円というような金は数カ月の生活費にすぎないではないかと極言する者もあったようであります。要するに、船舶の見舞い金については賠償肩がわりの思想と実体を持っておったのに、人命の犠牲については賠償の肩がわりの思想も実体もともにないのでありまして、見舞い金の性格について根本的の差異があると私は認めざるを得ませんが、この点について政府はどういう見解を持っておられますか、伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/23
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024・中島信之
○説明員(中島信之君) いま御引用のございました当時の委員会審議の過程におきまして、政府側から申し述べました見解を今日も変えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/24
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025・青木一男
○青木一男君 まあいまの政府委員にこの点を答弁しろといっても、あるいは無理かもしれませんから、これは御研究を願えばけっこうでございます。
人命の犠牲について、七万円の見舞い金は低きに過ぎるというのが与野党を通じての委員の見方であったにもかかわらず、最後までこの点が追及できなかったのは、法案審査のときには見舞い金七万円を含んだ予算案がすでに両院を通過したあとであったからであります。そういう政府委員の答弁を聞いて、委員もやむを得ずほこをおさめたという状況であります。予算案修正の方法がないので、法案について各委員は納得のできないままにこれを承認することになったものと思われます。したがって、後日の手直しということは、もう当時から予想されていたものと私は考えるのであります。
さて、次に、七万円の算出の根拠であります。
七万円の根拠について、政府は、八高線の鉄道事故の先例にならってホフマン方式によって計算したと答弁しております。ただし、賠償でなく見舞い金であるから、被害者に均分する方式をとったと説明しております。ホフマン方式によったと説明をされたので、聞く人によっては科学的、合理的な方法であると、こういうふうに感じた人があったかもしれません。しかし、いわゆるホフマン方式というのは、被害者の残存生命の期間中の所得を計算し、それから被害者本人の生活費を控除して算出するのでありますから、被害者一人一人について調査するほかはありません。しかし、二千有余の被害者について個別の調査をした形跡がありませんから、どうもホフマン方式というのは、ただ名前を使っただけではないかと私はいまでは想像しております。
八高線事件においては、死亡者百八十八人に対し、香典のほか一人平均七万四千二百六十七円の慰謝金が支払われております。政府委員が、本件見舞い金はホフマン方式により算出したというのは、八高線事件がホフマン方式によって計算され、それが七万四千円であるから、それに近い本件見舞い金の七万円もホフマン方式によったものと誤って説明したものではないかと思います。
しかし、八高線事件というのは、昭和二十二年二月二十五日朝七時過ぎに八高線東飯能、高麗川駅間で列車の脱線転覆した事件でありまして、通勤者や通学生その他を中心とする地方民が主たる被害者でありまして、阿波丸事件の被害者は外国にまで出かけて働いた有能な働き盛りの人々であります。所得において格段の差があるのに同一標準で算出したということは、ホフマン方式の本質に反するものであります。
阿波丸事件は、被害者に何らの過失なく、みな安全航海の米国の約束を信じ切っていたときに撃沈という不幸に見舞われたのであります。不法行為の全責任は加害者側にあることは問題ない事件であります。その賠償請求権放棄の代償として支給する見舞い金の標準に、過失に基づく八高線事件の先例を採用すること自体が不合理であると私は考えます。
人命の喪失に対する金銭賠償の標準についてでありますが、故意過失によって人命を喪失させた場合の金銭賠償の標準は、時と国によって著しく異なり、わが国より欧米諸国は著しく高く評価され、また近年はどこの国でも著しく高くなる傾向を示しております。たとえば、自動車事故の責任保険金額は、日本では百五十万円、これが近く三百万円になろうとしております。アメリカその他の諸外国ではこれよりはるかに高いのであります。飛行機事故の損害賠償の有限責任額は、日本では三百万円でありますが、国際航空運送のワルソー条約では六百万円となっております。いまアメリカに乗り入れる航空機には二千七百万円の責任保険が全部つけられておるのであります。しかし、個々の場合の現実に支払われる賠償額は、日本でも外国でもこの金額よりはるかに高いのであります。富士山麓で昨年墜落しましたBOAC機のあの事件の解決を見ますと、日本人は六百六十万円で示談にしておりますが、アメリカ人十五人については、最近シカゴの裁判所で八万五千ドルから六十三万ドルの間で示談になったということが報道されております。その正確なことは私も確かめておりません。東京や大阪の地方裁判所で、主として交通事故でございますが、人命を喪失した場合の賠償金額は大体二百万円から三百万円の間であります。
この自動車や飛行機の例は、本件見舞い金の起こった当時とはあまりに年代が離れておりますので、これがこの標準になるとはもちろん考えません。ただ、この見舞い金の法案が国会で審議された前後の事件と比べてみても、この七万円というのはあまりにも低過ぎたのではないかということを私は主張したいのであります。
まず、昭和二十三年十月京都のジフテリア予防接種禍事件というのがあります。六十八人の幼児が死亡した事件であります。このときは二歳の幼児一人に十万円ずつを支払って解決しております。幼児に対して十万円でありますから、働き盛りの人でありますればその何倍という賠償が支払われておったことは容易に想像できます。また、東京地方裁判所の昭和二十五年(ワ)第六八三号事件というのがあります。これはいまのようにまだ自動車事故がない時代でありますが、電車で七歳の子供をひいたという事件でありまして、このときは親に対して十七万七千円の金を払っておるのであります。それから、昭和二十六年四月の横浜桜木町国鉄事件のときは、死者百三名に対し最高百五十万円、平均五十五万円、乳児に対しても十八万七千円が支払われております。昭和二十九年九月の洞爺丸事件では、千五十二名の死者に対して、最高六百万円、最低七十万円、平均百六万円が支払われております。
こういうふうに、法案の審議された前後あるいはその後数年間に起きた事故に対しての生命に対する金銭賠償のこの数字から見まして、当時七万円という数字がいかに非常識であったかということを私は考えて主張したいと思います。
これで、私はこれから結論に入るのでありますが、要するに問題点は二つあります。一つは、政府が外交上の必要から犠牲者の遺族の米国に対する賠償請求権を放棄した以上、政府が当該国民に対し代償の措置をとることが法の観念として当然ではないかという点であります。他の一つは、一人七万円の見舞い金というのは、もし代償の意味を含むものとすれば、あまりにも少額に失するではないかという点であります。私は、政府がこの二点について再検討される考えがあるかどうかを伺っておきたいと思います。
私のいままで接触したところによりますと、この再検討には若干の抵抗があるようであります。それはまず、すでに異例の措置として解決した問題を蒸し返すのは他に波及するから困るという話であります。私も、政府が今日まで戦争犠牲者に対する救恤その他の措置についてすべて一事不再理の原則を貫いてきておるならば、阿波丸事件だけ再審理の要請ということはあるいは無理かとも思います。しかし、今日まで政府はいろいろの措置について手直しを行なっております。一例をあげますれば、軍人恩給や遺族扶助料等については、二十八年の法制定以来五回にわたって手直しを実行しております。今回の改正によりまして、遺族は、一番年とった人は中将級で三十七万八千円、中佐級で二十五万四千円、兵でも十二万円の公務扶助料を毎年支給されるのであります。阿波丸事件の見舞い金は一時金であったことをお考えいただきたいのであります。さらに最近国会で扱った問題でも、農地報償の問題があります。また、今回の引き揚げ者に対する再度の特別交付金の支給があります。阿波丸事件だけどうして再検討することができないのか、私は理解することができません。
幾多の救恤的措置の手直しをしてきたのは、わが国の財政力の増大とその背景たる経済の繁栄によるものでありまして、その意味においては私は喜ぶべきことではないかと思います。わが国の今日の経済の繁栄は、米国との親善、特に両国間の貿易の拡大、米国技術の導入に負うところが多いと思います。賠償権放棄により対米親善の捨て石となった阿波丸の遺族に対し、不十分きわまる当時の処遇をそのままに放置しておくことは国家として義理を欠くのではないかと、こういうふうに私は言わざるを得ません。また、阿波丸事件は、戦争犠牲者の救恤の問題ではなく、不法行為に対する賠償の問題でありますから、他に類似の事件があるはずはございません。したがって、波及のおそれもないのであります。
また、阿波丸犠牲者の遺族の多くが七万円のほかに国の救恤を受けていることを理由として、本件の再審にちゅうちょするものがあるようであります。犠牲者のうち最も多いのは軍の要員として南方経済開発等に関与した民間人であります。それらの人々は軍属として公務扶助料等を支給されているものが多いのであります。しかし、他の資格において国から救恤金を受けておるからといって、不法行為に基づく賠償権を否定する理由にはならないのであります。たとえば、今日人命喪失の不法行為の賠償金を計算する場合、生命保険金を差し引くということはない。それと同様であります。いわんや七万円のほか何らの救恤も援護も受けていない人もあります。これらの人に対し、おまえらの仲間の大部分が他に救恤金を受けているからおまえもがまんせよと、こういうわけには私はいくまいと思います。
遺族の代表は今日まで、外務、厚生両大臣更迭のたびごとに陳情を継続しております。また、毎年衆参両院に請願をして採択されておるのであります。しかし、阿波丸の遺族は二千人にすぎません。政府に政治的圧力をかける力はありません。しかし、少数者の願いも理のあるものは取り上げるのが明朗にして公正な政治であり、正義の政治であると考えます。阿波丸事件は近年になりまして、単行本として、あるいは新聞、雑誌に、国際的に先例なき悲劇として取り上げられ、国民の関心を呼んでおる事件でありまして、政府がいかに善処するかを注目しておるのでございます。
戦争継続中に事実上の戦勝国が降伏一歩手前の敗戦国に陳謝し、賠償を約束したのは、背信的不法行為の責任を感じた結果でありまして、さすがに大国であると私はその態度を高く評価するものであります。日本が占領中の米国及び米国民の好意に感謝するため賠償請求権を放棄したのも、外交史上の美談と称し得るかもしれません。しかしながら、被害者たる日本国民に対する処遇そのところを得ず、結局弱者である被害者の犠牲において美談のあと始末をしたということでは、せっかくのりっぱな態度も美談も画竜点睛を欠き、有終の美をそこなうものでありまして、私は両国の名誉のために惜しまざるを得ないところであります。
私はこの際、政府に対して阿波丸事件の再検討を強く要望します。再検討の結果、遺族や私の主張に理ありという結論に達したならば、次期国会に適当なる措置を提案していただきたい。もしわれわれの主張に理由なく、再度の措置をとることができない場合には、遺族や私ども国会人、国民一般の納得のいくような理由を明らかにしていただきたい。今日の場合、そのどちらの結論になるかということを私はあえて質問いたしません。しかしながら、この問題を再検討する考えがあるかどうかということを、ひとつその一点だけを伺いまして、私の質問を終わります。これは一番の責任は外務省ですから、外務当局から再検討の考えがあるかどうかを伺って、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/25
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026・中島信之
○説明員(中島信之君) 外務当局といたしましては、阿波丸事件の処理のしかた、平和条約十九条に基づきます一般的な戦争行為に基づきます請求権の処理のしかた、ともに同じような処理をいたしてまいっております。その中で阿波丸事件に関しましては、特に、取りきめの翌年法律によりまして見舞い金の支出というようなことが、いま青木委員から仰せがございましたとおり行なわれております。金額その他の算定につきましては、今日から振り返りまして種々御意見があるということは伺っておりますけれども、私どもといたしましては、本件については根本的に再検討するような方針の指示は受けておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/26
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027・青木一男
○青木一男君 三木外務大臣は、遺族代表と私に対してよく検討をすると答えられたのです。大臣が答えられたのに、どうして事務当局は違った答弁をされるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/27
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028・中島信之
○説明員(中島信之君) 大臣の御答弁は、私その席にいなかったのでございますけれども、おそらく本件について一般的に検討を約されたものだと思いますが、私がただいま申し上げましたのは、政府の方針として外務当局に、本件の再審査といいますか、その措置を修正するような方向での検討ということの指示はまだないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/28
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029・柴谷要
○柴谷要君 関連して。外務省の答弁は奇々怪々だ。何も、君が大臣から下命を受けて審査に入っておるかどうかということを聞いておるんじゃない。青木委員は、阿波丸事件についてはかくかくの理由が存在をするので再検討をする用意があるかどうかということを聞いている。君は説明員として来ているわけです。だから、下命があるとかないとかというんじゃなしに、委員の御発言については、いまのところ外務省としては検討はしておりませんが、帰って上司にこれを報告いたします、御趣旨を徹底させます、こういう答弁がなぜできないんですか。そういう答弁があってしかるべきだ。われわれの要求はそういう答弁を望んでいる。君に即決しろったって、参事官で即決できるはずがない。下命がないからと、そういう木で鼻をくくった答弁なら、出席してもらわなくてもいいんだよ。青木委員がるる、老齢にもかかわらずほんとうに誠意を込めて言われていることは、われわれの言わんとしていることをきょうは代弁していただいたわけだ。それに対して君が率直に、本委員会のお説は上司にお伝えして再検討をできるように努力してみたいというぐらいのことを言ったって、国民の一人として悪くない。もう少し考えた答弁をしろ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/29
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030・中島信之
○説明員(中島信之君) 私の答弁のことばの足りなかったことをおわび申し上げます。ただ、青木委員の本日のるる意を尽くされました御質問は、確かにいま御注意がございましたとおり、上司にもちろん報告いたしますが、私どもといたしましては、現在のところ太問題について新しい方向で検討をするという状態には承知していないということだけを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/30
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031・竹中恒夫
○委員長(竹中恒夫君) 本案に対する質疑はこの程度にとどめ、午後は二時より再開いたします。
それでは、休憩いたします。
午後零時四十八分休憩
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午後二時二十分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/31
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032・竹中恒夫
○委員長(竹中恒夫君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。
証券投資信託法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/32
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033・中尾辰義
○中尾辰義君 先般、投資信託の協会長を呼んでいろいろと参考意見を聞いたわけでございますけれども、あらためてきょうは政府当局にお伺いをしたいと思います。
まず、この証券投資信託が二十六年ごろ発足当時非常に順調に伸びておりましたけれども、その後経済界の変動がありまして、多少上下はありましたけれども、最近は非常に基準価格が下がって元本割れもしておる、大衆投資家のこの投資信託に対する信用は非常に離反している、こういうような不況の状況におちいっておるわけでありますが、なぜこのようになったのか、その間の運用の面においてどういう点がまずかったか、またその間大蔵省はどのように監督官庁として指導監督してきたか、その辺のところをまず最初にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/33
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034・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 確かに御指摘のような状況に今日至っておるわけでございます。この原因はいろいろ考えられます。まず一つは、株式市況及びその背景となる経済情勢の変化、まあ経済情勢の変化以上に株式市況に大きな波が打ったわけでございますが、いずれにしましても、そういう背景と分離して問題を考えることはできないと思うのでありますが、しかし、投資信託の歴史の上で当初一時つまずいたことがありますが、三十三年、四年ごろからかなり急速に伸び、これは元本が伸びるだけでなく、基準価格も非常に大きく躍進したのであります。その過程で投資家に対して、投資信託というものは何か特別に大きな利益の得られるものだというような感じで受け取られるような、そういう情勢を生んだ。したがって、いかなる時期においてもそれが期待できるものだという、そういうイメージを抱かしたわけでありますが、投資信託の性格からいうならば、これは株式にかわる性質のものでございます。もちろん専門家の運用ということでございますから、しろうとの運用の場合よりも一般的にはよりよい結果が得られることは期待されますけれども、しかし、中身が株式である以上は、ときには元本割れというような状況もあり得るという、そういう性質のものでありますけれども、歴史的にそういう過程を経ましたがために、投資家には非常に大きな期待を抱かしたという、それが反動が来たときに裏目が出て、大きく投資信託に対する信用——かつてのイメージというものが全く違っておったということにより、必要以上に大きく投資信託に対する信用を害したということになるわけであります。
そういう歴史的な事情もございますが、しかし、そういう客観的な経済界の不況、あるいは投資信託そのものがかつて投資家に与えたイメージというものは必ずしも正しいイメージじゃなかったという、そういう歴史的な事情だけが今日の投資信託の現状を説明し得るものかというと、必ずしもそうでない。これは専門家として、機関投資家として全知全能を傾けて、良心の示すままにほんとうに投資家のために運用しておったとしても、なおかつ避けがたかった今日の結果であるならば、これは制度そのものがそういう性格のものでありますからやむを得ないとせざるを得ないのですけれども、必ずしもそう青い切れないところに問題があると思うのであります。当然株式にかわるものでありますから、先ほど申し上げましたとおりで、元本を保証する性質のものじゃない。まあ一時元本が当然保証されるようなイメージを抱かしたこと自体が誤りでありますけれども、事柄の性質からいうと、そういう性質のものじゃないのですが、しかし、少なくとも専門家として、一般のしろうとの投資家よりはいろんなデータをそろえて、客観情勢の変化というものは当然自分の運用の際に十分織り込んで、もちろん、それでもくろうとなら必ずもうけるという性質のものじゃございませんから、それでもなおかつ損が出るわけでございますけれども、それにしても今日の現状というものは、必ずしもそういう投資信託委託会社の真に投資家の利益のみを考慮した運用の結果、やむを得ざるものと言い切れない。
先般、参考人の投信協会長も触れましたように、これはまず委託会社が本業と兼営の形で分離せられないままで歴史的に発足してきた。それから、日本の証券市場というものは、株式市場というものが未熟なために、未熟であればあるほど証券会社に左右される部分が非常に大きいわけであります。そういう観点から、何となく証券会社がまあブローカー業務もやり、ディーラー業務もやり、あるいはアンダーライター業務もやる、同時に投資信託業務をやる。こういういろんな業務を、必ずしも利害の一致しない業務というものを、一つの主体のもとに運営した。それがときに利害混淆されて、必ずしも投資信託の利益とならないような結果を生むような運用があったということも、これは事実であります。
たとえば、アンダーライターということでありますと、発行会社に対して、まあできるだけ発行会社の利益となるような市場活動をやるわけであります。そうすると、その発行会社の発行する株式についても、客観的に判断するならば必ずしも有利でないというものでも、投資信託、相当の財産をいわば証券会社に一任されておるわけですから、その一任された財産の範囲の中で、そういった株を組み入れる、あるいはその組み入れた株について、ある程度発行会社の意向が明示される場合もありましょうし、あるいは証券会社サイドでそんたくしながら、状況によって売ったほうがいいと思うときでも、必ずしも売りに出さない。運用がそういう意味で拘束されておる。
それから、はなはだしいときには、証券会社が自分で持っておる株について、客観的に判断した場合には投資家のために必ずしも有利でないと思う場合でも、証券会社のディーラーサイドの利害のためにその株を組み入れる、あるいは逆の場合に、非常に有利だと思われるもの、もう少し投資信託で持っておったほうが有利だと思うものでも、証券会社のブローカーサイドの利益のためにそれを証券会社に売らして、そいつをブローカーサイドではねる、こういったこともあり得たわけですし、絶無であったとは実は言えない。
そのほかに、この間も問題になりましたコロガシ。コロガシというのは、投資信託のファンド問の売買でございますが、これは売買する証券会社に注文を発注して、手数料を払って行なうわけです。したがって、手数料の割引はもちろんありますけれども、コロガシをひんぱんに行なえば、証券会社のブローカーサイドの手数料をそれによって上げることができる、こういうような面があるわけであります。
こういったことについて、世間的にもいろいろ批判されておりますし、われわれもこれがかつて絶無であったということは残念ながら言い切れません。しいて弁護するならば、当時資本市場が非常に未熟でありましたがために、証券会社は利害の相対立するようないろいろな業務を総合的に運営して、全体として証券市場に対していい機能を果たす、こういう感じがおそらくあったと思うのであります。証券会社といえどもお客を相手にする商売でございますから、常にお客の利益に反するような行動をとっては、証券会社の業務が繁栄することはございません。それを全体として適当に混淆させながら運営することによって、全体としての証券市場の発展をはかった。これではそれぞれの利害というものは対立するわけでございます。それぞれの対立する利害というものを混淆すること自体が、これは決していいことじゃない。そのこと自体がまた市場に対する信用を害する結果ともなっているわけであります。その辺に証券会社の考え方の誤りがあったと言わざるを得ないと思うのであります。
その意味で、客観的な事情、歴史的な事情のほかに、運用面において必ずしも十分でない点があった。これが今回改正案を出しました非常に重要な点でございますが、投資信託委託会社は受益者に対して忠実の義務を負うのだ、受益者の利益のみを考えて運用しなければならないのだということを法律で明示したのであります。これは経済的な実体からいくと、あの受益証券を買う人の気持ちというものは、当然そういうことであったわけであります。委託会社を信用して自分の利益のために十全の努力を払ってくれるということを期待して受益証券を買っているわけですから、当然そうでなければならなかったはずですけれども、法律形式は委託会社と受託銀行との間が信託契約となって、受益投資家と運用の全権を持っております委託会社との間の信託関係が法律上なかったわけであります。これを経済的の実体に即応して委託会社が良識をもって運用されるならば、そういうことが当然期待されるのでありますけれども、過去のそういった実績にかんがみ、この際法律上もはっきり原則を打ち出す、こういうことにしましたのは、そういう点を考慮したためでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/34
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035・中尾辰義
○中尾辰義君 質問に対して答弁は焦点をしぼってひとつ答えてください。そうでないと、聞いている者がわからなくなっちゃう。
それで、私が聞きたいことは、ただいまの答弁の中にもありましたけれども、投資信託の運営の面において必ずしも投資家の利益にならないような運営もやってきた。この辺のところが非常に問題なわけです。その点を、抽象論でなしに、もう少し具体例をもってわかるようにひとつ説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/35
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036・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 運営の面で不十分であったという点は、先ほど申し上げましたように、証券会社がいろんな業務をやっております。ブローカー業務も、ディーラー業務もやっている。それから、アンダーライター業務もやっている。それから、いまは投資信託会社と分離してやっておりますけれども兼営という形で発足して、しかも分離したあとでも本業のほうが若干影響力を持っている。そのそれぞれが利益が本来対立するはずでございます。投資信託のファンドの利益をはかるということとアンダーライターの利益をはかるということは、必ずしも利害が一致するとは限らない。それを混淆して、たとえばブローカーサイドの利益、あるいは自分の会社自身のディーラーサイドの利益、あるいはアンダーライターサイドの利益をはかるために投資信託のファンドを利用するということがあったのでは、投資信託の受益者に決して利益にならない。片方の株式の利益になれば、片方には利益にならない。そういう対立関係が当然出るわけであります。そういう混淆したあり方として、先ほど申し上げましたように、たとえばアンダーライターサイドの問題でいえば、発行会社との関係で、発行会社の便宜のために、必ずしもその株は客観的に見て将来有望でないと思われるときでも、投資信託に持たせる。あるいはある時期に来れば、初めは有利であっても、これはもうこのときは売りどきだというようなときには、当然市場に放出すべきであります。ところが、放出すればその株の値段は下がるわけであります。発行会社サイド、アンダーライトのサイド、あるいは、法人部門と言っておりますが、証券会社の法人担当部門の立場からいえば、持っていてもらいたい。また、投資信託会社サイドからいえば、当然売ってしまったほうがいいというときに、それを売らずに、発行会社の委託を受けたり、あるいは発行会社の意向を尊重する。運用に対して相当拘束を加える。それから、自分のディーラーサイド——ディーラーというのは自分で売買して利益をあげるわけですけれども、自分の持っておる株で将来必ずしも有利でない、いまのうち処分したほうがいいというときに、それを投資信託に持たせるというようなこともあり得たわけであります。逆の場合は、投資信託が市場で売りたいけれども市場で売れない場合に、証券会社に委託するということになる。証券会社がいやがる。そういう場合、投資信託として持っていることが不利であるときには、いかなる事情があろうとも、当然売るべきであります。ところが、ブローカーサイドでどうも売る見込みがないというときに、それをディーラーサイドでかかえざるを得ない証券であるとすれば、当然自分のほうへ損が来るということで少し待ってくれというようなことになる。証券会社は当初、投信兼営で発足いたしましたために、いろいろな業務があって、それぞれ利害が対立し、投資信託はもっぱら投資信託の投資者だけの利益のために運用すべきものを、利害の混淆から投資信託の運用が拘束されておる。あるいはコロガシのように、証券会社のブローカーサイドの利益をあげるために、ファンド間の売買をする。これは一定率の割引率にはなっておりますけれども、売買は証券会社に発注する。そうしますと、同じファンド間で盛んに何べんも同じ株を売ったり買ったりするので、内容的に全然変わらないのに、売った回数だけ手数料を払わなければならぬということが当然あり得るわけであります。そういうことがいままで問題となった争点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/36
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037・中尾辰義
○中尾辰義君 それで、そういうまずい点がありまして、今度改正法を出されたと思うのでありますけれども、その第十七条に委託会社のやってはならない禁止行為として何項目かあげてありますが、これについて説明をするとともに、なぜこういうような規定をしなければならなかったのか、その点についてあわせて伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/37
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038・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) まず、十七条の一項で原則を打ち出しておるわけでありまして、投資家の利益のために、受益者のために忠実に信託財産の運用を行なわなければならない。この原則を、第二項で一、二、三、四と掲げておりますが、大体ダブっている面もありますし、若干完全にはダブらない面もありますが、受益者の利益ということであれば、この原則を打ち立てて置けばあるいは十分であるかもしれませんけれども、明らかに投資家の利益を害すると思われるものは法律でもって禁止しよう、こういうことで、二項の規定が設けられております。しかし、中には必ずしも第一項の原則だけからは導き出せない、その他の理由から投資家の利益を守るために法律でもって思わしくない行為を明らかに禁止しよう、こういう趣旨で第二項ができております。
第一号は、委託会社自身の特定の関係者、主要株主とか役員、そういった者と信託財産との間の取引を禁止いたしておるわけであります。これは前からありました規定をそのまま整備してここに置いております。これは全然新しい規定ではございません、若干規定を整備させた点はありますけれども。これは利害が対立するわけでございますね。利害が対立するような立場に置かせるということは適当でない。そういう意味で、「自己又はその取締役若しくは主要株主」……。「自己」というのは委託会社自身であります。その委託会社自身の固有の財産と信託勘定を分別して管理することになっております。委託会社も自分の固有の財産を持っております。その自分の固有の財産で株式を持っておるということはもちろんあり得るわけであります。それから、その取締役もしくは主要株主との間の取引、これを禁止いたしておることはそういうことでございます。
第二号は、これがいわゆるコロガシでございますが、信託財産相互間の売買というものを原則として禁止したのであります。信託財産はそれぞれ独立いたしておるわけであります。この信託財産の受益者は必ずしも同一人ではないわけであります。したがって、それぞれ異なった利害の主体でございます。したがって、片一方から片一方に売るということは、たとえばこっちのファンドの利益になるということであれば、必ずこっちのファンドの損失になるわけであります。利害が当然対立するわけであります。いま高いからこっちに売るんだ、それをこっちに買わせるということは、高いものを買わせるということでありますから、これもやはり信託財産相互間に利害の対立があり得るわけであります。したがって、信託財産相互間の売買を認めるということは原理的に正しくないということで、これを禁止いたしたのであります。ただし、「大蔵省令で定める」という、省令によって若干の緩和ができるようになっておりますのは、株価の判断あるいは市況の判断からではなく、信託財産の資金事情によってやむを得ず売らなければならない場合があるわけであります。たとえば解約が非常に殺到する、あるいは償還期が来るということでありますれば、解約金あるいは償還金は現金で返さなければなりませんから、中に組み入れてある株というものを市場へ出して売らなければなりません。この株はもう見切りをつけようと思って売るわけじゃありません。資金をつくるためにやむを得ず売る。そうすると、このファンドから見て将来相当有望な株であっても、資金事情によって売るというようなことであれば、これは利害の対立という問題がございませんので、そういう特定の場合には認めてもいいんじゃないか、そういう意味で原則的には禁止でございますけれども、大蔵省令によって緩和する余地を残しておりますのはそういう趣旨でございます。
それから、第三号は、これは同一法人の発行する同一銘柄の有価証券、たとえば株式なら株式について、総信託財産でもって取得し得る総量というものを一定の割合以上に出ないようにしよう。これは危険分散の規定でございます。AならAという会社が一億株発行しておる。そのうち一千万株以上は総信託財産をもって取得できない。したがって、それだけ取得する銘柄が分散することになるわけでございますが、これは危険分散の規定でございます。万が一それを発行しておる法人に大きな問題が発生すると、全信託財産にそのリスクがかぶってくるということになりますので、これは各国とも大体一定割合以上は取得できないように危険分散の趣旨から規定がなされております。その割合は大蔵省令で定めることになっておりますけれども、大体、現在の予定としては、通常の株式の場合には十分の一ということを考えております。しかし、これを法律できめなかったのは、たとえば国債のような場合もあり得るわけですね。国債を対象とするファンド、こういうことになりますと、しいて危険分散の規定の必要もございませんので、内容によっては若干緩和し得る余地も考えざるを得ないと。したがって、機械的に法律でもって一定の割合を規定するのはいかがかということで、割合は省令できめることになっておりますが、現在のところ通常の株式に関する限り十分の一を予定いたしておりますが、これは危険分散の趣旨でございます。
それから、第四号は、大体そういうふうにして一応明らかに投資家の利益を守るために必要だと思われることについて、それに反するような行為を法律でもって禁止いたしておりますけれども、なお、将来の状況によっては、いろいろな状況が予定されるわけであります。それに応じて大蔵省令で必要なものはこれを規制できるような権限を大蔵大臣に与えてもらっておる。一応どういうことを予定しているかというと、不公正な値段による信託財産による株式の取得、あるいは先ほど申し上げましたように、明らかに運用について発行会社なり証券会社から拘束を受けるようなそういった行為、あるいは第三者の利益をはかるための取引、まあこういったことを禁止する予定でございますけれども、これはせっかく今度の法律でもって信託協会を自主的な規制機関として強化することにいたしておりますので、できる限り協会の自主規制にゆだねたいというつもりでおります。その自主規制の状況を見ながら必要に応じて大蔵省令でもって定めていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/38
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039・中尾辰義
○中尾辰義君 それでは、ちょっと具体的な例でひとつお伺いしてみたいと思います。
まず、株式市場の東証第一部二百二十五種修正平均株価、ダウ平均の上がりとユニット投信の上がりですね、これをちょっと比較してみたのですが、ダウ平均では四十年七月十日現在で千二十四円三十一銭、四十二年の七月七日現在で千四百七十七円十六銭、伸び率が四四・二%になっております。ところが、ユニットの投信基準価格は、設定年月四十年七月、これは五千円、それから四十二年七月七日現在、これは野村の投信で五千五百六十六円、一一・三%の伸び、山一で五千六百三十円、一二・六%、日興証券の投資信託五千百七十九円、これが伸びが非常に悪く三・六%、大和が五千二百五十九円、五・一%、こういうような投信の伸びは、株式ダウ平均がかなり伸びておるにもかかわらず投信の伸びが非常に悪いですな。ところが、投資家が期待しているのは、先ほどあなたがおっしゃったように、専門家が専門の知識によって株を運営をしておるわけですから、当然これはダウ平均が伸びるのならばこっちも伸びなければならぬじゃないか、まあこういうような考えを持つわけですね。その辺のところをひとつ、なぜこういうふうに伸びが悪いのか説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/39
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040・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) これは基準価格、結果でございますから、最善の運用をやってもまあ当たらない場合もあるということで、間々そういった事態もあり得るわけでございますが、確かにおっしゃるとおり、たとえば四十年設定のものを、いま特定のユニットだけについて御質問がありましたけれども、私のほうでとりました四社の四十年中に設定されたユニットの全部の加重平均とダウの比較をしてみますと、ダウのほうは、これは四十二年六月末と四十年の平均とをとっておりますから、四十年中のダウの平均は千二百三円でございます。ところが、四十二年六月末ですと千四百九十四円でございますので、これは二四・二%、平均でございますね。四十年中の平均と四十二年六月末です。二四・二%の上がりでございますが、いまの四社全部の四十年中に設定された全ユニットの基準価格の加重平均をとりますと、五千円のものが五千四百八十一円、九・六%と、こういうことになっております。したがって、たまたまある社のあるファンドだけがいま御指摘のような結果になったということでなく、四社の加重平均をとりましても、四十年中に設定いたしたものはダウに比べますと成績が悪くなっております。この辺は確かに、運用面でさっき申し上げましたような投資家の利益に反するような行動をあえてとったということは、この辺からかなり指導も強化いたしておりますし、投信協会のほうも自主規制を強化いたしておりますので、そういうことはなかったと思うのでありますけれども、結果的には不成績に終わっております。
ただ、これはああいう状況、四十年中にダウがかなり大きく、千円まで一応下がって、それから財政政策の変更によってぐっと上がり始めたわけですけれども、委託会社が市況に対して非常に憶病といいますか、総弱気であったような状況でございます。したがって、安くてもなかなかうっかり手が出せないというようなことで、四十年中に設定されましたものの四十年中の株式を買いました比率、これを組み入れ比率と言っておりますけれども、組み入れ比率を見ますと、四十年の組み入れ率は三一・六%になっているわけです。要するに、まだ下がるかもしれないという不安がありますと、思い切って株を買えなかった。そのときに相当買っておけば、結果的には少なくともダウ並みには上がったはずでありますが、非常に憶病になっておりましたがために、三一・六%程度しか株式の組み入れを行なわなかった。したがって、残りの約七〇%というものはコールとか社債という値下がりの影響を受けないもので資産を運用いたしておった。こういう点で、四十一年になりますと六三・七%まで組み入れ率を上げております。これはまあ若干の自信がついてきたということでございますが、そういったような点も影響いたしておったかと思うのであります。
念のために、今度は四十一年に設定されましたものをいまと同じようなやり方で比較してみますと、四十一年中の平均のダウは千四百七十九円でございます。それで、四十二年六月末が千四百九十四円でございますから、これはわずかに一%の上がりでございます、ダウのほうは。ところが、四十一年中に設定されましたユニット、これは当時は五千円でなくて一万円で募集を始めておりましたけれども、当時一万円であったわけでありますが、四十二年六月末で前の四社の加重平均をとりますと一万五百九十六円、約六%上がっております。これは四十一年中の組み入れ比率は四四・六%、四十二年に入ってからの組み入れ率は六二・六%と、必ずしも組み入れ比率は高くはございませんけれども、平均のダウよりは、若干でございますけれども、結果としてはいい成績をいまのところは残しております。
この辺はその市況に対する見通しがいたずらに憶病であったということも言えますが、しかし、投信を運用するにあたっての科学的な運用のデータをそろえるというようなそういう態勢が私はまだ必ずしも十分備わっているとは思いません。そういった意味で、運用にあたっての合理的な運用のやり方というものは、これは経営責任の問題ではございますけれども、まだ努力すれば努力する余地は多分にあると思うのであります。そういう意味で、必ずしも結果が組み入れ率だけで説明できるとは思いませんけれども、まあ二年前のああいう状況を思えばこの点もしんしゃくしなければならないのじゃなかろうかと、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/40
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041・中尾辰義
○中尾辰義君 まあ、事情を聞きましたが、先ほど申し上げましたように、日興証券の信託を見ましても、わずか四年間で三・六%ぐらいしか上がっていないですね。五千円の基準価格が五千百七十九円、四年間でですよ。片方には株式のダウ平均は四四・二%も上がっておる。こういうのを見ると、日興証券といえばかなり信用のある会社である、非常に大衆投資家が不信を抱くとするならば、やはりこういうところにおかしなコロガシを、悪いコロガシをやったのじゃないか、そういうような勘ぐりをされるわけで私は聞いたわけです。ですから、そういう点はあなたのいまの答弁では、まあ運営の面にまずい点がなかった、こういうようなことに聞こえたのですが、いかがですか。四年間でわずか百七十九円しか上がっていない。これならば銀行に入れたらずいぶん得だ。こんなことでは、投資信託に対して大衆投資家はますます離れる一方なんです。いかがですか。あなたのほうで、大蔵省で、これは監督しなければならない。言うならば、四年間何をやってきたのだ、こうなるのですが、そこまでは私は言いたくありませんけれども、それで聞いておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/41
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042・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) この四、五年は、過去の、先ほど申し上げましたような利害の混淆する問題を投資家の不利益に処理するというようなことは、投資信託に関する限りはほとんど影をひそめたといっても過言でないと思うのであります。しかし、絶無であったということは、必ずしも言い切れないのでありますが、いま日興証券の例を特に出されておりますけれども、これは日興証券にもいろいろございますけれども、おそらくそういうファンドもあると思うのであります。あの三十八年の夏から三十九年、四十年にかけての、まあ一種の異常な雰囲気であったわけであります、この株式市況というものが。したがって、たとえば千円という、結果的にいえばあれが底であったわけでありますけれども、千円のときに、これが底であるという確信はだれも持ってなかった。くろうとたる者がそのくらいのことが見抜けないでどうするかという問題はもちろんありますけれども、一方でどんどん元本は減少していくという状況であり、なかなか、過去の失敗がかなり大きかったために非常に市況に対する自信が持てなかったという点は、これは私はある程度理解できるような気がする。しかし、先ほど申し上げましたように、組み入れ率だけでもって、したがって、組み入れ率が——非常にファンドを集めましても、ほとんどコールや社債で持って、なかなか株を買わない。相当下がってきておるにもかかわらず株を買わないでおる。解約がすぐあるかもしれない、解約がすぐあったら現金のままにしておけば問題はない、うっかり株を買うとまた下がって、また評判を悪くしてはならないというような、そういう不安を持ってもふしぎでないような、過去の二、三年のあの市況の当時はそういう状況であったということも考えてやらなくちゃならないと思うのでありますが、しかし、まあ専門家の運用として、それじゃそういったことだけで十分なる経営責任が果たせたと言い切れるかどうかということは、おっしゃるとおり、必ずしも私はそれは言い切れない面はもちろんあると思います。
しかし、逆に、コロガシその他によって投資家の利益を必要以上にいためて悪くしたという点は、絶無とは私は申し上げませんけれども、かなり協会あるいは大蔵省の指導、個別的なファンドの動きについてまで審査をいたしておったような状況でございます。そういう目が届かなかった点はもちろんございますけれども、その結果によりますと、絶無とは申し上げませんが、若干の事例はございましたけれども、かなり、かつて言われておった積極的な、投資家の利益に反するような行動をとっていためたということは、そんなに顕著な原因になっているとは私は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/42
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043・中尾辰義
○中尾辰義君 これはこれ以上は聞きませんが、あなたが説明をされても、要するに結果的にはこうなっているのだから、よほど運営がよろしくないのだ。大和の例をとりましても、五千二百五十九円、五・一%。ずっとこれは信託銀行にでも定期預金しておったほうがましです。
それで、次にお伺いしたいのは、いま株式の組み入れの比率はどういうふうになっているのか、それが一点。それを最初に聞きましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/43
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044・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 時価で申し上げますと、株式の組み入れ率は、六月末現在で、ユニット及びオープン全部を平均いたしまして六二・三%、こういうふうになっております。内容を申し上げますと、オープンのほうは七〇・九%、それからユニットのほうは五九・〇%。いま申し上げましたパーセントはすべて加重平均でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/44
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045・中尾辰義
○中尾辰義君 あと、株式以外のものはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/45
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046・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 株式以外のものは、これはちょっと資料が不つき合いになりますが、今度簿価のほうでいきますと、要するに六二・三%以外のものがコールあるいは公社債、それから一部金銭信託みたいなものがございますが、そういったものになっておりますが、簿価で申し上げますと、株式投信総計でいいますと、コールが二〇・二%、これが大部分を占めております。それから公社債が一七・六%、その他は現金とか金銭信託、預金、そういった面が若干ございます。薄価でいいますと、株式の組み入れ比率は六〇・五%になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/46
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047・中尾辰義
○中尾辰義君 それで、次にユニットの設定回数の問題ですがね、毎月毎月投信のユニットの設定をやっているわけですが、非常に最近は数も多くなったし、ですから、毎月毎月こういったような不調のときにやらなくてもどうなんだろうか、三カ月に一ぺんとかまとめてやったらどうだろう、こういう意見もあるんですけれども、これに対してはどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/47
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048・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) これは全くおっしゃるとおりでございます。日本だけでございます、毎月投資信託を設定するのは。外国の投資信託の関係者が来ますと、よくそれで当たるもんだ、毎月やってそれが当たるもんなら、だれが株を買っても損するはずがないじゃないか、どうして日本だけ毎月やっているんだという質問をよく受けるんでありますが、もちろん毎月やっても銘柄の選択によってはもうかるものももちろんあるわけでございますが、市況が大きく下がっていく過程では、当然設定時期としては必ずしも適当でない時期があるわけであります。
したがって、これははたしていまのユニットというシステムがいいかどうかというのは、投信の体質改善の際にも十分議論したわけでありますけれども、投資信託は、直接株を買う、そういう投資家に比べますと、まあ何といいますか、預貯金をする層にかなり近い層だと思われるのであります。それだけ大衆性が強いということになるんでありますけれども、こういう人たちは月々の所得の中から蓄積を行なっていくという、どうも日本的な貯蓄のしかたというのは、月々何らかの形で金融資産を、預金にするなりなんなり、こういう形でもって蓄積を行なっていく。したがって、それを三カ月に一ぺんあるいは六カ月に一ぺんというようなことにしますと、六カ月間金をためておいて、六カ月目に行くときは毎月集めるよりはちょうど六倍だけ、じゃこれは投資信託にひとついたしましょうというふうになるか。毎月やるよりは六カ月に一ぺんやったほうが手数も省けていいわけでありますけれども、なかなかそうはまいらぬ。六カ月目に一ぺん行くと、結局一カ月分の資金しか募集できない。そういうことでこれはまあ設定が月々になっておりますけれども、募集サイドから来る日本的な特殊性だと思うのであります。それ相応の資金が株式市場にも流入するためには、やはり月々募集しなければならない。
それじゃ房集は月々でもいいけれども、毎月どうして設定しなければならないのかという問題があるわけでありますけれども、これは月々募集したものを、その月市況が悪いと思えば、全額現金なりコールローンにしておいたままで、市況を見て、買い得と思えば買うというような運用のやり方によって十分対処し得るはずだ、こういうことで、月々募集のメリットがございますので、一応ユニットというシステムを認めざるを得ないのじゃないかということで、現在のところこの制度をやめるということは考えておりませんが、しかし、ファンドの数が非常に多いという点については別個に対策を講じたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/48
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049・中尾辰義
○中尾辰義君 それで、まあ今度の改正案にもありますが、いわゆるファミリー・ファンドというのですか、またファンドができて、そしてファミリー・ファンドでこれから運営をすると、こういうことですが、これをもう少し具体的に説明してください。どういうような運営になるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/49
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050・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 現在のままですと、毎月集めたもので毎月ファンドを設定いたしまして、そのファンドをそれぞれ株式その他に運用するわけでございます。このファミリー・ファンドという方式は、株式の運用に関する限りそれぞれのユニット、これをまあベビーと言っておるわけですけれども、ベビー・ファンドで運用することをやめて、統一的にマザー・ファンドで運用すると。現金はそれぞれユニットで持っていてもけっこうである、コールローンその他は。しかし、株式に関する限りは三本なりあるいは六本なり、場合によれば十二本でもいいのですけれども、まとめて運用する。こういうシステムがファミリー・ファンドでございます。したがいまして、このマザー・ファンドは受益証券を発行するわけであります。ファミリー・ファンドに対してベビー・ファンドは、マザー・ファンドの発行する受益証券を組み入れる。それで株式の運用はマザー・ファンドで一括して、状況に応じて運用する、こういう仕組みでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/50
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051・中尾辰義
○中尾辰義君 それでは、アメリカなんかに会社型の投資信託というのがありますね。これとはどういうふうに違うのか、それが一つと、それといままでの契約型の投信というのですか、それとの違い。今度ファミリー・ファンドを設定することになって、それがどのような前進をするのか、その点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/51
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052・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 毎月設定するという点に必ずしも合理的でない面もありますし、またファンドの数がむやみにふくらむためにファンドの管理が徹底しないという面もございます。この点を改善する方法として、月々募集はやむを得ないとして、ファンド数を減らすやり方としての一つの方法がファミリー・ファンドでありますが、これは必げしもファミリー・ファンド方式をとらなくてはならないということを強制するつもりはございません。あるいは場合によれば三カ月日に一ぺんということでやってもよろしいし、あるいは三カ月分はあとで合併させるというようなことを考えてもよろしいわけであります。一つの方法としてはファミリー・ファンドという方式が考えられるので、これは法律上手当てしないと、マザー・ファンドの投資信託が現行法の解釈では投資信託の扱いを受けなくなることになりますので、これはやはり投資信託と同じ扱いを受けて法律上の規制を受けなければなりませんので、その意味でみなす投資信託として手当ていたしたいのであります。
会社型投信の場合は一つの会社になるわけでありますから、ファンドの数はその会社一つになるわけです。この会社型がオープン型の場合とクローズ型の場合がございます。いまはオープン型のほうが多いわけでありますが、オープン型というのは日本のオープンと同じでございまして、追加というのは、会社ですから一種の増資、日本の商法の、かりにあれでそのまま適用されるとすれば、増減資という形でもって減らすこともできるわけですね、元本を。増資も減資も自由というのがオープンです。クローズのほうは、一ぺん設定しますと、もう解約に応じないわけです。応じないで、受益証券、いわば会社型ですから株式ですね、その会社型投信の株式をただ市場で売買する。お客さんは売りたいと思えば市場で売買する。会社に行って解約して金を引き出すということはできない。クローズ型と、オープン型と両方ございます。しかし、いずれにしましても、その会社が一つである限りは一本しかないわけです、ファンドは。
日本の場合は契約型ですから、運用する主体は委託会社として、たとえば山一なら山一が一社でございますけれども、毎月設定するユニットは全く別個の信託財産としてファンドが独立してくる。したがって、五年ですと六十本、七年ですと八十四本設定される可能性があるわけであります。そのファンド数を減らして管理にできるだけ目を行き届かせよう。これ一つ一つで六十本とか百本近くなる、そのほかにオープンもありますから。これを実際問題として、管理はそれぞれのファンドの利害の立場だけを考慮して運用しなくちゃならないわけですね。こんなもの、こっちとこっちと一緒に運用することはできないわけです、先ほど申し上げましたとおり。そういうことが実際問題としてなかなか徹底し切れない。
そういう意味で、少なくとも株式の運用に関する限りは、ある程度集約してファンドの管理を徹底させよう、こういう趣旨で、まあファミリー・ファンド方式というものが考えられまして、これを法律上手当てしましたのが今度の規定でございます。
ただし、そういうファミリー・ファンド方式をとるということは、これはユニットで募集する際にもちろん明らかにしなければなりません。それで、その基準価格は、それぞれのユニットの基準価格と、ベビー・ファンドの基準価格と、それからマザー・ファンドの基準価格が同時に発表されることになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/52
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053・中尾辰義
○中尾辰義君 まだこまかいのありますけれどもね、これは投信はこれで終わりまして、関連で一つお伺いしますけれども、七月一日から資本の自由化に伴って、いわゆる外人の株式買い占めという問題について、非常にクローズアップしてきているわけですが、あなたのほうでこれはまあいろいろ検討されておるでしょうが、七月一日から外人の株式取得制限がどのように変わったのか、この点、まあ最初にお伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/53
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054・吉田冨士雄
○説明員(吉田冨士雄君) 七月一日から御承知のとおり自由化、対内直接投資という経営参加としての株式取得の場合の自由化と、それから証券投資としての自由化と、二つございますのですが、それぞれにつきまして自由化措置を実施いたしました。
最初のほうの経営参加としての自由化措置といたしましては、大きく分けまして、既存の場合と、それから新しく会社をつくる、合弁会社あるいは子会社新設の場合と二つに分けまして、既存の場合はほとんど従来と同じように個別認可でございますが、新設の場合には、これをさらに三つのグループに分けまして、一〇〇%まで自由化できるのと、つまりたとえばビールであるとか、鉄であるとか、一貫メーカーでございます。こういった場合には完全に自動認可の制度でやる。それから、そこまでとてもいかなくて、まだ競争力が必らずしも十分でないけれども、ある程度やれるというのは五〇%まで自由化するというやり方でやっております。いずれも子会社または合弁会社の株式の取得ということで、株の取得の関係になってくるわけでございます。
それから、もう一つは、そういう経営参加の目的ではなくて、あくまでも証券投資といたしまして、主として市場においていろいろ売買する。市場において外国投資家が株を買うといった場合、これは従来からもある程度認めておりまして、従来は日銀の段階で一人当たりでは五%まで、それから会社全体で見ますと、通常の場合は一五%まで。ところが、まあ制限業種というのがございまして、たとえば銀行であるとか、電力であるとか、これは日米の通商条約のほうである程度制限してもかまわないという業種がございますが、制限業種につきましては一〇%まで、従来からも日銀の段階で自動認可をやってたわけです。それをこえた場合には大蔵省のほうに参りまして、個別認可ということで従来も運営しておったのでございますが、これについても、対内直接投資の自由化と関連いたしまして、ある程度率を引き上げるということにいたしまして、一人当たり五%でございましたのを七%まで、それから制限業種につきましては一〇%を一五%、それから非制限業種につきましては一五%を二〇%まで、それぞれ日銀の限度を上げまして、その段階までは日銀でやって、それをこえた場合には大蔵省のほうで個別認可をするということにいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/54
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055・中尾辰義
○中尾辰義君 それで、問題は、既存会社に対して外人の会社乗っ取りというようなことが考えられる。そして株式を取得するのにいろいろな方法を講じておるわけですが、ただいま仰せられた話で、はたしてそれだけの制限でもってやれるかどうか。それから、いま問題になっておるのは、外人同士で株のやりとりをする、そういうことをどうして防ぐことができるのか、こういうことが出ておりますが、それで株式の市場集中制ですか、株式市場を通して売買をする、それが一点。それから株式の譲渡制限の問題ですね、こういう問題が出ておりますが、当局はどういうふうな見解を持っていらっしゃるのか、それについてひとつお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/55
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056・吉田冨士雄
○説明員(吉田冨士雄君) 最初のほうだけ私お答えいたしまして、あとのほうは証券局長からお願いしたいと思いますが、最初の、はたして七月一日の措置でいわゆる乗っ取りの問題、一番産業界でもみな心配しておるわけですが、これを防ぎ得るかどうかという問題でございますが、実はこれにつきましては、むしろ乗っ取りの問題はこわいもんですから、先ほど申しましたとおり、既存と新設と分けまして今度実施いたしました。いままでも、議論といたしましては、はたして既存と新設を分けることがいいのかどうか、実は日本だけが新設と既存と分ける新しいアイデアを出しまして、各国ともむしろ新設、既存を区別しないでやっているわけでございますが、そういう乗っ取りの問題がこわいもんですから、日本も今後の問題として勉強しなければならぬ問題が残っておる。したがいまして、その問題を解決しないままに新設と既存と同じようにして、先ほど申しましたように自由化業種、非自由化業種と両種に分けますと、自由化業種に入ります既存の場合に非常に問題が起こるのじゃないかということで、実は世界で初めてでございますが、そういう既存と新設という新しいアイデア、考え方を入れました。
既存と新設と分けたために、新設という形式で実質的に既存であるというのがもぐり込む場合がいろいろあることは考えられることでございます。たとえば、形式上は新設の会社をつくりますけれども、実際はある既存の会社の現物出資をさせる、あるいは一たん新設してからそれを合併するというような場合には、新設と既存と分けたために、形式は新設を使いまして、実質は既存の乗っ取りの効果を狙うという場合も考えられますので、これは神経質に一々自動認可の際に要件とか条件にみな今度は制限をいたします。これはOECDで非常に問題になりまして、非常に芸がこまかくてきついじゃないかという議論もございましたのですが、われわれとしては、できるだけ新設については、既存のほうまで新設という形式でやられるのでは困る、既存としてはいろいろ問題が残っているので、これについて勉強しなければならぬので、その点は慎重の上にも慎重にやりたいということであります。
いま言うように、現在の既存につきましていろいろ問題が残っているわけでございまして、あとで証券局長のお話しになります譲渡制限問題、あるいは市場集中制の問題、そこまでいかなくても、たとえば外国人に役員になれないように制限することができるかどうか、あるいは従業員に安定株主として株を持たせて、しかもそれをほかに売らないようにできるかどうか、いろいろ解決する問題がございまして、実は外資審議会でも鈴木武雄先生を専門委員長にいたしましていろいろその点の議論もいたしました。また、これからも、秋以降もいろいろやっていかなければならぬと思います。
その一つの問題として、いま先生のおっしゃいましたように、現在外国人同士で株を売買することは一応外資法の対象外になっておりまして、これは外国で行なわれる場合に、どうしても法の執行地域外でございまして、なかなか追いかけられない。したがって、現在では外国投資家の売買は自由になっておりまして、ただ、そうしますと、元本の送金保証というのはつかなくなってしまいます。現在外資法で認可した場合には、それを今度売って外国へ持っていく場合には、送金保証ができる。かってに外国人同士で外国で売買した場合には、最初に認可を受けた株で送金保証があっても、売買しちゃいますとその効果は消えてしまいます。したがいまして、その場合には、送金保証の効果を得たいという場合には、売買しました外国人からやはり認可とちょうど同じように指定ということの申請をいたしまして、売買後三カ月以内に指定を受ければ送金保証の効果を継続するというぐあいになっておりますが、もしそういう送金の効果は希望しないということになりますと、現在フリーになっております。したがいまして、その点もいろいろ問題がございまして、全般的に乗っ取りの問題は非常に大きな問題でございますので、この秋以降いろいろ外資審議会におきましても研究しなければならないという大きな宿題になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/56
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057・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 市場集中と譲渡制限の上場との関係だと思うのでありますが、この二つの問題が、その他にもいろいろございますけれども、提起されております。はっきり申し上げまして、まだ結論は出ておりませんけれども、まず市場集中の問題は、考え方は、市場で取引させれば、要するに取引の状況は明らかになるわけですね。そうすると、発行会社のほうで状況に応じて手が打てるということで、市場に集中をして、そこでチェックするということではございません。チェックするのはこちらのほうでございまして、取引所のほうでチェックすることはできない。ただ、取引の経路が明らかになり、それに応じて会社方に十分対策を講ずるだけの時間的余裕が与えられ、データが与えられるというだけのことでございます。しかし、いまのところは制限業種が一五%、その他の一般業種が二〇%までしか総体として認めておりませんので、まだその問題は本格的に検討する段階じゃないと思います。これが三〇%、五〇%とだんだん上がっていく段階では、これは考えていかなければならないと思いますが、まあフランスでその先例があるのでありますけれども、対外的な感触等を、はたしてこれを証券取引といういわば証取法的な立場で市場集中というものを義務づける、そのほうが市場政策としていいのだというそういう結論が出ますとやりやすいのですけれども、もっぱらこっちは、一〇〇%までかりに自由化したというときに、そいつをチェックするためにやるのだというような大義名分はなかなか立てにくいので、その辺をどう調整するかということがそういうときに問題になるのであります。
それから、譲渡制限の上場の問題でございますが、現在譲渡制限のある株式については上場を認めておりません。あるいは途中で譲渡制限を受けるような場合には、法律でもって、たとえば日航その他特別の場合は別として、一般的に定款でもって譲渡制限する場合、途中で譲渡制限する場合、上場を廃止する。譲渡制限のついた株式は上場を認めないという原則になっております。譲渡制限するくらいですから上場になじまないということでございますが、しかし、一方で資本の自由化に伴って乗っ取りに対するいろいろな問題がある。したがって、われわれのほうでも、取引所取引というものは機械的に清算されて決済するような仕組みになっているわけですね。お客さんがいても、それぞれ証券会社を通じて取引所でもって決済される場合には、だれの分かわからないわけです。その決済が機械的な特別な仕組みになっておりますので、かりに私が売った、たまたま買い手が外国人であった場合に、私の分だけがあとでキャンセルされるということでは、私の責任では本来ないわけです。たまたま買った相手が外国人であったがためにそうなる。そうすると、私の分だけを全体の決済のうちから引っこ抜いて整理するということができないのですね。したがって、そういう問題をはらんでいる場合には、およそ取引所取引の対象にすることは必ずしも適当でないということで、上場を認めていないわけであります。かりに、法律の解釈、あるいは定款のきめ方によっては、そういっに場合にはトラブルが場内には持ち込まれない。すべて買い受け人である外国人の法律上または経済的なリスクだけで事が処理されるような、そういうことが法律の解釈なり運用なり、あるいは定款のきめ方によって可能であれば、このトラブルは場内に持ち込まれませんから、場内の決済はそのまま済んで、外国人は取ったけれども会社から承認得られなかった、自分がどっかでさばいてしまうよりしようがない。百円で買ったものが五十円になろうが七十円になろうが、もっぱらリスクは外国人だということで、場内に持ち込まれないという仕組みがもし可能であるならば、これは必ずしもなじまないものではないと考えております。その辺ははたして可能であるかどうか、法律解釈としても予定できるかどうか、この辺をもう少し検討さしていただきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/57
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058・柴谷要
○柴谷要君 すわったまま質問しますから、すわったままで答弁してください。
証券投資信託法は、本院で元大蔵委員であった山本米治君が第十回国会において発言して成立したと思うのです。その意味で、本委員会とはきわめて関係の深い法案である。そこで、まず、その制度がどのような背景のもとにどのような目的を持って提案をされていたのかという点ですね、聞くところによると、GHQの干渉によって政府提出が困難でどうしても議員立法にしなければいかぬと、こういうことで余儀なく議員立法にされたという話を聞いているのです。そういうなぜ議員立法にしなければならなかったかという事情、さらに、現在の時点から見て、その当初の目的はどのような形で達成されているのか、この二点についてまず最初にお尋ねをしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/58
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059・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) それでは、失礼でございますが、すわったまま答弁さしていただきます。
GHQとの当時の交渉の経緯というものは記録として残っておりませんで、われわれもはっきりしたことを申し上げかねるのでございますけれども、最終的にGHQと政府あるいは証券業界との間に問題となりましたのは、証券会社が投資信託業務を兼営する、こういう点がどうもひっかかったようであります。これはいまから考えますと、現在の時点で考えますと、ある意味ではGHQの反対したと思われるその理由は適切な理由を持っておったと思うのでありますが、ただ、日本側としましては、当時、財閥持ち株、大財閥解体に伴う放出株というものを大量に処理しなければならないということが、一つの証券政策としても、証券民主化のためにこれをプッシュしよう。そのやり方として、必ずしも直接株主、投資になじまない大衆層にこういったものを持たせる方式として、投資信託というワンクッションを入れた大衆消化のしかたというものが有効ではないか。それから、証券業界がまだ育っていないので、いま投資信託という別会社にしてもなかなか有能なスタッフも集まらない。当時証券取引というのはきわめて微々たる状態でございまして、今日から比べますと昔日の感があるわけでありますが、証券会社のスケールが非常に小さかった。したがって、拙速ではあっても、やはり証券会社に兼営させるほうが出発させるにあたっては有効だと、やがて分離しなければならぬということはよくわかるけれども。ということで、政府としてはGHQの了解が得られなかったので、議員提案という形で、これは最終的には、経済科学局が反対しておりましたのですが、政治局の承認を得て法律として議員提案の形で国会に提案になったというように聞いております。
当初、投資信託が発足しました当時といたしましては、やはりさしあたりの問題として財閥持ち株の放出に伴う株式の処理、SCLCが持っていたのでありますが、それと証券民主化と、この形によってプッシュしょうということがねらいであったと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/59
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060・柴谷要
○柴谷要君 現時点から見て、目的は十分達成されているように思っているのかいないのか、その点はお答えがなかったように思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/60
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061・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) SCLCの問題はある意味で解決されたわけでございますけれども、現時点で考えて、投資信託が本来の機関投資家としての役割りを果たしたかどうか。それから、証券民主化ということでその一翼をになって発足したわけでありますが、それならば株式に対する大衆の信頼というものを十分かちとらない限り、これは証券民主化といっても、とうてい達成できる筋合いのものじゃございません。ところが、実は投資信託も、不幸にして十分大衆の信頼が得られるような結果を現在持ち来たしていない。むしろ、いまだに投資信託に対して大衆の不信感が必ずしも払拭されていない、こういう結果になっている現状を考えますときに、これはいままでの制度をそのまま是認するということには必ずしもならないと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/61
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062・柴谷要
○柴谷要君 投信が始まってから今日までに、二度ばかり元本割れを来たしたことがあります。特に三十七、八年以降というのは、非常に下降をたどり、しかも、その線が深く、かっ長い。しかるに、政府当局は一時的な糊塗策は講じているけれども、抜本策については今日まで放置してきておる。証券取引のほうは、二年前に証券取引法を改正しているけれども、投信法のほうはいまやっと改正処置を講じてきたと、こういう実情にあるわけです。この点、おそくとも証券取引法の改正にあわせて同時に実施すべきであったと思うんですが、今日まで放置してきた理由というのは一体どういうわけですか、これをひとつつまびらかにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/62
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063・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) おっしゃるとおりでございます。われわれもできるだけ早く投資信託というものに手をつけたかったわけでございますが、手のつけ方というものが、過去の反動として投資信託が縮小過程に入ったわけであります。しかし、その反動を起こす前は、逆に上昇スパイラルに入ったわけですね。投信を設定する、その資金で株を買う、株を買うと基準価格が上がる、基準価格が上がると投信の募集がふえる、募集がふえると資金がふえる、資金がふえるとまた株が上がる、したがってその反動を押えるためには、こっちのほうをまず押えなきゃならない。したがって、できるだけ募集のしかたをモデレートにして、それから組み入れ率を下げる。早期解約をした場合にはペナルティーを取る、こういった措置。それから、現在言っているような措置を当然とらなきゃならないわけでございます。というのは、当時の状況において、投資信託がも元本がどんどん割れていくような、元本がどんどん減っていくような状況で、形としては、いかにも投資信託を抑制するような、募集の目的まで抑制する、あるいは募集された資金によって株式を買うことをできるだけ抑制するという、そういう措置にならざるを得ないので、急カーブを切ってあの状況のもとで、そういう体質改善措置を具体化することはちょっとできなかったと、こういうことでございます。当然これは三十五、六年のあの峠を迎える以前にやっぱりやっておくべきだったと思いますが、一たん下降過程に入ったからには、同じ措置をその過程で同じスピードでやるということはちょっと無理だったということで、今日まで延び延びになったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/63
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064・柴谷要
○柴谷要君 第十七条第二項第四号ですね、「受益者の保護に欠け、又は信託財産の運用の適正を害するものとして大蔵省令で定める行為」、こう書かれている規定は、不当な拘束、ひもつき売買等を禁止する規定であると言われているけれども、具体的にはどのようなことを想定しているのか、この点を明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/64
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065・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 第四号できめるのは、主として第一項の忠実義務ということを具体的に明確にする必要のあるものについて規定をいたしたいと。で、いま考えておりますのは、不公正な値段によって信託財産に株式を取得させる、あるいは信託財産の株式を売らせる、あるいは不当な第三者の拘束を受ける——第三者というのは、本業証券会社あるいは発行会社で、主として拘束を受けるとすればそういうところが考えられるわけでありますが、そういう不当な拘束を受けるような行為、あるいは特定の第三者あるいは特定のファンドのみの利益を考慮して、その他のファンドあるいは第三者以外の要するに投信全体の利益に反する、そういったような行為、こういったことを一応考えております。
しかし、これは先ほども申し上げましたように、できるだけこういう規定は具体的に明確にしたほうがいいと思うのであります。そうすると、この具体的な明確な規定というものは、できるならば自主規制によって規制したほうがやりやすいのではないか。その規制の状況を見て不十分だと思われるときには、省令で規制いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/65
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066・柴谷要
○柴谷要君 社団法人の性格を持ったまま、証券法に基づく証券投資信託協会としたのは、どういうわけですか。このような類似例は他にあるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/66
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067・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) これは実質的には特殊法人になるのであります。しかし、特殊法人の目的を達成するためには、組織そのものをいわば特殊法人として法律でもって規定しなくちゃならないわけでありますが、社団法人といっても、いわば公益的な性格を半分持っておりますし、その業務の目的、業務内容というものを法律でもって明らかに公益的な目的のための業務をやらなければならないというふうに規定すれば、通常の場合、特殊法人によってこういった債主規制ということは十分行なわれているわけでありますが、そういった役割りを果たし得るんじゃないか。とすれば、いままで実際上自主規制的な機能を果たしてきておるのでありますけれども、社団法人としての投資信託協会がある以上は、組織としてはそれをそのまま拝借して、その業務内容なり業務目的というものをこの際法律でもって規定すれば、それでいいのじゃないか。一たん解散さして、新たにもう一ぺん組織させるというむだを省くことも必要なんではないか。それは若干便宜論でありますが……。
例としましては、モーターボート競走会、日本船舶振興会、それから輸出検査法による指定検査機関、こういったものがございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/67
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068・柴谷要
○柴谷要君 投信協会による自主規制の強化をはかるために、協会の組織、それから機構を改善することが予定されているようであるけれども、理事会の構成、評議員の選出について、一体どんな構想を持っているのか。それから、投信の適正な運営の実効をあげるためには、公益代表の役員を多くしなければこの法律の精神が生かされないのではないか、こう思うのですが、これらの点について明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/68
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069・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) おっしゃる点よくわかるのでございますけれども、自主規制機関でございますので、公益委員を入れるとしても、全然会員を排除するというわけにもまいらないということで、一応現在考えておりますのは、理事の総数を十二名ぐらいにして、その三分の一を中立理事にする。それから、残りの三分の二のうち、これは会員理事になるわけでございますけれども、証券会社の理事と、投資信託委託会社の理事の比率を、投資信託委託会社の理事を証券会社の理事よりも多くする、こういうことも現在考えております。すでにこの具体的な数は定款で明らかになっておりますが、中立理事が四名、委託会社の理事が五名、証券会社の理事が三名、こういうふうになっております。
それから、業務運営の重要事項について、理事会でなく、新たに評議員会という制度を設けまして、このメンバーは主として学識経験者ということになるわけでありますが、ただし、学識経験者という資格で証券界から入る人もいると思うのでありますが、証券会社以外の学識経験者にウエートを置いたそういう評議員会というものを設けることにいたしております。これも定款改正済みであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/69
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070・柴谷要
○柴谷要君 ぼくの言う公益代表と称する者は、あんたが言われた中の中立委員と見ていいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/70
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071・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 中立委員というのは、協会関係者でない公益委員でございます。公益理事でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/71
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072・柴谷要
○柴谷要君 公益委員が十二名中四名というと、三分の一だ。この人数を増すことのほうがぼくはやはり利益代表者としていいんじゃないかと思うのだけれども、その役員の割り振りをきめられた根拠、これを少し詳しく言ってもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/72
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073・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) おっしゃるとおりのことは十分考えられたわけでありますけれども、投資信託の仕組みというものがかなり技術的な体系をなしておるということと、したがって、投資信託そのものについて実際に業務をやっている人の知識を注入しなければ、有効な自主規制もできない面があるということ、それから自主規制機関でありますから、やはりできるだけ業界自身が納得して、しかもその規制が徹底できるようにするためには、会員理事に重点を置いたほうがいいんではないか。それやこれや考えまして、せめて半分くらいに公益委員をしようかと思ったのでありますが、業界といろいろ話し合った結果、この程度になったわけであります。おそらくこの程度でもって十分目的は達成できると思います。これは状況を見て、公益理事が少ないがために自主規制機関としての十分な役割りを果たせないというようなことがあれば、これは将来の問題として考えてみたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/73
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074・柴谷要
○柴谷要君 いまの局長の説明でわからぬでもないわけだ。自主規制をやらせるために会員代表の数をふやした、これはわからぬでも一ない。ところが、自主規制をすればするほど、公益的代表の意見を十分聞いてやるのが自主規制だと思う。自分が意見を述べて自分が実施するのは、自主規制ではないと思う。だから、やっぱり公益代表者というものの数が多いほうがより有効的ではないか、こう思うのだが、意見は別だ。
次のことを聞くけれども、協会の業務規程に違反したような場合には、一体どのような罰則が適用されるのか、その点をお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/74
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075・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) これは自主規制でございますので、法律上の罰則はございません。業務規程上の罰則になるわけでございますが、一つは、協会の役員がその協会の業務規程に違反した場合には、これは職務上の義務違反でございますから、大蔵大臣はその解任を命ずることができることにいたしております。そのほかに、いまお話はむしろこういうことじゃなくて、協会員が自主規制に服さなかった場合でありますけれども、協会員が自主規制に服さない場合には、罰金じゃございませんけれども、過怠金を取る。あるいは募集停止の勧告をする。今月はやめて、あるいは二カ月間は募集停止を命ずる——命ずることはできませんが、勧告以上のことは自主規制としてはできないと思うのでございますけれども、そういったことを考えております。あるいは責任者の処分を勧告する。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/75
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076・柴谷要
○柴谷要君 それでは、証券一般問題について少しお聞きします。本年九月末の免許申請を間近に控えて、証券業者の体質改善の状況は一体どういう状況になっているか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/76
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077・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) これは大まかにいいますと、免許制は三年がかりで実はやったのであります。したがって、この三年間の間に作業はほぼ八、九割完了したと思うのであります。その間に当然体質改善についての指導により、体質改善に十分自信のないものは脱落していったものもございます。これは指導による以前に自然淘汰的に脱落していったものももちろんございます。かつて約六百社あった証券会社の数が、現在三百九十社ばかりになっていますけれども、大部分が経営上の基礎が薄弱なために、大蔵省の行政措置が中に介入した場合もありますけれども、実質的には自然淘汰的な経過をたどったと考えてもよろしいかと思うのでありますが、したがって、残りのものについて絶対だいじょうぶ、全部体質改善が完了したというふうにはもちろん考えておりませんが、残りのごくわずかなものが、なおわれわれの指導上問題として残ったものが若干ある、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/77
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078・柴谷要
○柴谷要君 証券取引所の公益的運営を確保するために、政府は一体どのような構想を持っているか、その実施時期は大体いつごろかという点について伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/78
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079・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 一つは理事長の選任方式でございます。現在、理事長は会員理事——ここにも取引所の会員理事と公益理事とがあるわけでございますが、現在理事長は会員理事だけで選出して総会の承認を得る、同意を取りつけるということになっておりますが、今後は、公益理事まで含め、公益理事と会員理事とでもって理事長を選出する。理事長の選出に公益代表が加わったという点が、これが第一点でございます。
それから、理事会の構成でございますが、現在公益理事の数は、公益理事の制限がありますけれども、会員理事に比べて非常に少ない。これを公益理事の会員理事に対する比重を現在以上に引き上げるということが第二点であります。
それから、これは取引所によっていろいろ事情がございますけれども、たとえば東京取引所の例、大阪もそうでございますが、それを例にとりますと、委員会制度というものがございまして、委員会は理事会の諮問機関になっておるわけであります。しかも、委員会はすべて業界出身の委員だけでもって委員会が組織されておる。しかも、委員会できまったことは大体理事会を通る、こういう仕組みになっておりますので、理事会には会員外の中立理事あるいは公益理事がいても、実権はすべて委員会が握っておる。これをすべてあらためまして、理事長が必要な事項について諮問したいと思うときには、理事長の諮問機関として委員会を置くことができる。で、その委員会の必要があると思う場合には委員に公益代表者を入れる、こういうふうに改めまして、したがって、実質的には発議の権限が理事長に移った。しかも、理事長の諮問機関として委員会が公益代表者を含めて組織される、こういうふうになりました点が第三点でございます。
公益性担保の主たる内容は、組織の面ではそういったところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/79
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080・柴谷要
○柴谷要君 それでは、話題は変わりますけれども、一昨年六、七月に実施した旧山一、大井両証券会社に対する日銀の特別融資の返済状況は一体どうなっておるか。それから、償還も償還期限を短縮することができるのか、できないのか、こういう問題について聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/80
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081・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 数字から申し上げますと、これは五月末の数字でございますが、それ現在で、山一は特融の総額が二百八十二億でございますが、これに対して返済しました実績が二十六億五千五百万円。それから大井でございますが、特融総額が五十三億に対しまして、返済しました元本の総額が二億四千六百万円。これはいずれも予定額以上の数字でございます。たとえば山一でいいますと、二十六億五千五百万円でございますが、このうち約二十億ぐらいは予定の数字外のものであります。それから、大井は二億四千六百万円ですが、このうち一億三千八百万円、約半分はやはり予定外の償還でございます。これは返済期限はございません。一時二十年もかかるじゃないかということが新聞等で言われておりましたけれども、あれはいずれも山一、大井が旧山一あるいは旧大井から営業用の不動産を借りまして、その賃貸料として払うものが月々あるわけであります。その賃貸料だけでもって完済する期限を計算してみると、二十年とか十八年とかなるということでございますが、ところが、旧山一、旧大井、これが特融の債務者になっておるわけでございます。旧山一、旧大井は、新山一、新大井からの賃貸料以外に固有の資産を相当持っておるわけであります。その資産をどんどん処分していけば、その処分額だけでも相当の返済ができる。したがって、いま予定外と申し上げましたのは、主として不動産の処分あるいは貸し金の取り立て、そういったもので臨時に入ってきたものを、これはすべて優先して日銀の特融の返済に充てると、こういうことになっております。
それじゃ一体いつごろ償還できるかということでございますが、当初言われた十八年、二十年ということはわれわれは考えておりません。当初からも考えておりませんが、おそらく、一般に予想されたよりもかなり速いスピードでもって特融の金額が返せるのじゃないか。おそらく十年以内には片がつくという予想を立てても決して無理ではないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/81
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082・柴谷要
○柴谷要君 わかりました。
それじゃ、次にバイカイ制度、運用預かり制度の規制状況と廃止時期。簡単でいいですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/82
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083・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) バイカイはことしの十月一日から全廃いたします。それから、運用預かりは来年の四月一日に既存の登録制が全部免許制に切りかわるわけでありますが、免許制実施後は新規の運用預かりは一切認めない。しかし、それまでの間にできるだけ圧縮したい。今日一応基準は四十年五月末で二千七百六十五億、これが基準になっておりますけれども、この免許制発足時点では大体その半分以下になる程度に一応計画いたしておりますが、しかし、これはまあ個々の証券業者の担保繰り、資金繰りの問題がありますので、必ずしも機械的にいきませんが、たぶんそれは達成可能なのではないかと、かように考えております。しかし、その後は新規の運用預かりは認めない。ただし、継続業務として、同一人に対して同一残高の範囲内では継続業務を認めざるを得ないのではないかと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/83
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084・柴谷要
○柴谷要君 最後に、信用取引制度をどのように改善するつもりか、これをひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/84
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085・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 端的に申しますと、従来三カ月という期限を六カ月に延ばした。ここに最大の重点があるわけでありますが、ほんとうは無期限にしたがったわけであります。無期限というとおかしいのですが、いつまでも延ばせる、そして状況を見て、それで意見具申を行なうというふうに……。非常に短期の投機——投機と言っては何ですが、信用取引ですから、投機取引と考えてよろしいと思うのですが、非常に短期の投機取引からむしろ株価の長期的な判断に基づく投機取引、比較的合理的な投機取引を期待するために期間を延ばしたということと、いままでどうしても短期に回しておりましたのを、継続すると毎一カ月日ごとに継続料というものを取られておった。したがって、長く延ばせば延ばすほど継続料としてお客が取られる。これを全廃した。したがって、お客の負担も、長く延ばすことによって特別な負担がかからないようにした。この二点が最大のポイントであります。その他こまかい点はありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/85
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086・柴谷要
○柴谷要君 最後の一点ですが、さきに証券投資信託協会の代表者を招いて、参考人として意見を聞いた。そのときに、本法律案には賛成、こういうことであったけれども、実をいえば、自主規制その他をしいられる法律案であるが、関係の業界すべてが国民から信頼をされるよう信用回復という面からも大いに努力していきたいというようなことで、本法律案に賛成というようなことを言っております。まだまだもっと規制をしてもいいというくらいにぼくらは考えておりますが、協会の圧力もかかってくると思うが、証券局長はそのようなことに動ずることなく、やっぱり投資家の保護という立場に立って、徹底的にこの法律案成立の上は十分な監視をする、こういうようなことにひとつ決意を新たにしてやってもらいたいということを要望して、あなたの決意を聞いて質問を終わりたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/86
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087・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) ありがとうございました。私はそのつもりです。監視ということばで表現するのは必ずしも妥当とは思いませんが、できるだけ業界を指導して、投資家の利益になるように、投信の信用を回復するように、われわれも最善の努力を尽くしたいと、さように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/87
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088・中尾辰義
○中尾辰義君 大蔵大臣がお見えになりましたので、さっき質問を残したのですが、日本共同証券と日本証券保有組合の、現在まだ三千四百億円ばかり凍結したものがあると聞いておるのですが、それに対する国民の関心も非常に深いわけで、今後政府はどのようにこれを処理するのか、これが一つと、日本証券と共同証券の合併構想ということが伝わっているのですが、政府はこれをどのように考えているか、二点だけ大臣のほうから伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/88
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089・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) いまの問題は、実は衆議院の大蔵委員会で社会党の堀さんからも問題が出されて、保有組合と投信の問題とからんで解決する方法を政府は考えないかという質問がございまして、投信の制度とこの保有組合とを関連させるということはどうかという問題はございますが、そういう問題ともからんで一括私のほうではこの十二月までに検討して結論を出しましょうという答弁を実は私がしておるわけでございまして、それとからんで、組合の問題を市場に混乱を起こさないようにどう処理するかというようなことは、今後私どもとしては十分じっくりこれは検討したいと思っております。
それから、合併の話は聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/89
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090・木村禧八郎
○木村禧八郎君 ぼくはいま質問しようと思ったのですが、前からの関連がありまして。共同証券の問題ですね、これは日銀が融資をしているのですね。それで、株価維持のためにつくったわけです。それから、いまの株式保有組合もそうである。それがいまどういう収支の決算状況になっているか。これは相当株価値上がりによってもうけているはずです。その利益は、特に共同証券の場合は、これはもうかったからといって、その出資した銀行とかその他にただ分配してしまったのでは、これは国民に対して相済まぬわけです。これは前の証券局長は、松井氏ですか、これはやはり公のために使わなければいけない、こういうことでありました。あるいは証券業界の振興のために使うというようなことを言われましたが、先ほど来伺っておりますと、投資信託は額面割れして、損をしている人がたくさんいるのです。個々にそういう人を救済するということは非常に困難かもしれませんが、しかし、あの日銀の融資によって、そうして株価を維持していま株価をつり上げたわけです。あれは厳密にいえば証券業法違反ではないかと思うのですが、個々の銘柄について個個の会社が操作したならば、これは証券業法違反ですよ。ところが、共同してあれして、株価を維持してつり上げた場合には、証券業法違反でないというような答弁でありました。政策的な一つの操作であったと言われているのですが、少なくともそういうあれで日銀融資等によって株価操作によってつり上げて、そうしてもうけた利益は私的にただ分配してしまってはいけない。少なくとも、全部じゃなくても、かりに半分くらいは、これは国民に納得するように処分しなければいけないんじゃないか。松井君も前にその点は頭を悩ましておったようであります。
その点と、さっきの株式保有組合、これもやはり同様の性格で、多少買い上げる株式が違うのですけれども、第二部上場、そういうもののほうが株式保有組合には多いんじゃないですか。とにかくこの二つが株価操作の一つの機関であるわけです。つり上げる。それで、証券恐慌をあれで食いとめたわけですよ。そのあとの始末ですね、これは私はうやむやに済まされない問題だと思います。国民に納得いくような形でこれは私は処理しなければいけないと思います。それをはっきりしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/90
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091・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 評価額だけでいいますと、両方合わせますと八百億近い状態でございますが……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/91
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092・木村禧八郎
○木村禧八郎君 両方別々に言ってください。共同証券はどのくらいの利益ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/92
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093・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 六月末で、評価益だけ申し上げますと、三百七十五億。それから保有組合でございますが、保有組合は四百八十七億でございます。しかし、これは経費を差し引いておりません。株式の運用利回りは五分くらいしか回っておりませんが、借り入れ金利は八分ですから、そういうのを引くと全部があれになりませんが、いずれにしましても、評価益だけ全部見ますと、これだけ利益が現実にあったかどうか別として、いずれにしましても、あの当時に比べれば、相当の利益がそういったものを差し引いても出るであろうことは、現状では十分予想できることであります。
この利益は、保有組合の場合は、現在残っておりますものは投資信託から引き継いだものばかりでございます。したがって、これは二部株はございません。その投資信託から引き継いだものを最終的に、かりに損が出たならばどうするかということを考えたわけです。それが損が出たら、投資信託にかぶせることはできません、日銀に返すのですから。損が出たら、本業が負担する。日銀に全部返す。千億借りたといって、たとえ九百億しか売れなくても、必ず千億日銀に返す。利益が出た場合は、半分は株式市場振興のために提供する、半分はそれぞれ本業が取得する、こういう約束になっております。保有組合は任意組合ですが、契約でそういうふうになっております。
それから、共同証券でございますが、共同証券は、これは会社組織として民間の有志がこしらえたそういう株式会社になっております。しかし、有志がこしらえたとはいいながら、これは明らかに財界、金融界をあげてのいわば政策的な機関でございます。したがって、日銀も資金供給については特別な配慮を払ったわけであります。したがって、問題は、金利、出資金相応のものは——六分か何分か知りませんが、これは主として金融機関でございますが、どうしてももらいたいということであります。それ以上の利益が出た場合にはどうするか、はっきりいたしておりませんが、関係者の間ではそれを普通の株式会社と必ずしも同じようには考えておりません。
それから、もう一つ、そういう形で通常の方法で処理した結果、最終的に利益が出たとすれば、そういう問題になるわけでありますが、ところが、放出の過程で国民——これは主として投資信託関係が多いのでありますが、投資信託のそのときの受益者に返す方法はありませんけれども、新しい投資信託の投資者に少し安く分けてやるというやり方でのそういう放出のしかた、これはある意味で利益が出るのを圧縮する、それだけ国民に利益を与えるわけでありますが、そういうことを考えたらどうかと、一部にそういう意見がございました。ただしかし、いずれにしても、タイミングとして必ずしも適切な——一方でかつての本体でありました投資信託が、相変わらず元本減少の状況を続けておりますので、どういう形にせよなかなか放出のタイミングをつかみにくい状況であります。そういう一部の意見等は十分に検討に値すると思いますが、そのやり方、タイミングその他は、先ほど大臣も申しましたように、慎重にこれから各方面の意見を聞きながら考えていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/93
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094・木村禧八郎
○木村禧八郎君 ちょっと、いまの質問だけでは足りませんから。もうそんなに時間を費やしませんよ。
いまの話で明らかになりましたが、とにかく株式保有組合は投信のほうの株を引き受けて、それで株価の操作によって利益を生じた四百八十七億の評価益であります。金利を引いても、相当の利益でありましょう。その半分は証券業界の振興に充てる。半分充てるといっても、たいへんな額ですよ。一体何に使うのですか。それからさらに、半分は証券会社がもうけちゃうのでしょう。ところが、片方では額面割れで損をした人があるのです。そういう点が非常に割り切れないのです。その点、もっとこれは国民に納得のいくような形での処理のしかたをいたしませんと、これは将来非常に大きな問題になると思います。
それから、もう一つ、共同証券のほうも三百七十五億の評価益、これは金利その他を引くといいますが、これは銀行が多いのです。株価操作によってこれだけもうけたのです。その利益の処分については、これはそんなあいまいなことじゃいけないと思います。
大蔵大臣に最後に伺っておきますが、将来どういうふうに処理するのですか。この前、松井前の証券局長に伺ったときに、損をしたときよりももうけたときのほうが心配であるということを言っておりました。もうかることはあたりまえじゃないか、これだけの塩漬けをして株価操作をするのですから、当然株価操作で上がることは予想されておった。だから、損をしたときよりももうかったときにどうするか、それについてはあいまいでいまだにはっきりしていない。これはもっと政府ははっきりさせるべきだと思うのでございます。この点について、大蔵大臣、この際はっきり、いわゆる公の形でこれを処理するということをここではっきりと言うべきじゃないかと思うのです。わかっていたんですよ、当初からもうかることは。そうでしょう。あれだけの株価操作をしたのだから、あれだけの塩漬けをしたものを。これはしろうとにもわかる。これは証券界と財界と一緒になって、日銀から金を借りて株価操作をやって、もうけた。その点についてもっとはっきりした政府の今後の処分の方法についての方針を伺わなければならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/94
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095・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) いずれにしろ、おっしゃられるとおり、うやむやにするということはいたしません。十分検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/95
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096・木村禧八郎
○木村禧八郎君 ただそれだけじゃ済まぬ。どういう方針か、それを伺っているんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/96
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097・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) そういうものを含めて、またいまの株式をどういうふうに放出するかということも全部からんでいる問題でございますので、先ほどから申しましたように、今後十分慎重な検討をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/97
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098・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それなら、いつごろまでにそういう結論を出すのですか。うやむやにしないということは、大体いつごろまでに結論を出すかということを言わなければ承知できませんよ。ずいぶん前から問題になっているのに、ちっとも結論を明らかにしていないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/98
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099・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) それは問題の性質上、木村さんも御承知のように、これは放出のしかた、いろいろございますので、いついつまでということをはっきりすることは無理だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/99
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100・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それじゃ、明らかにしないと同じことじゃありませんか。いついつまでにできないというようなそんな無責任な方法はない。この実態は大蔵大臣も十分おわかりでしょう。ですから、それだけに国民が非常に重大な関心を持っているのですから、この成り行きいかんでは——これは株価操作によって浮いたあぶく銭的もうけですよ。大体いままで方針を明らかにしていないということは無責任きわまるものですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/100
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101・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 保有組合と共同証券は性格が違うわけでございまして、保有組合は、要するに証券会社ですね、証券業者で、ある意味ではリスクを負ったわけです。おっしゃる意味から申しまして、そんなリスクありっこないということでございますが、当時の状況は千五百円から千二百円に下がり、九百円まで下がるかわからない状況で、いつまでそれが持ちこたえられるかわからなかった。金利差は明らかに負担をこうむるわけです。五分利回りのものを八分の金利でやるわけですから、長びけば長びくほど金利だけで食われてしまう、そういうリスクがあったわけです。それをあの当時規約をこしらえる際、リスクがあったらまるまる負担をする、そのかわり利益の出た場合には、まるまるリスクを負担するという観点からいえば、まるまる利益が出れば証券会社にということにしてもよろしいのですけれども、半分は一般の証券市場振興のために、証券会社のふところに入れないでこれを提供する、こういう規約でもって発足いたしましたので、この規約を変えない限り、われわれのほうから一方的に、これは全部はき出せとかなんとかいうことはちょっと言いかねると思うのでございます。
共同証券のほうは株式会社でございますので、これは関係者の良識にまたざるを得ません。しかし、この利益が実際どの程度出るか、金利差が相当なものでございます。したがって、タイミングがだんだんずれればずれるほど、一方で株価が上がればいいのですけれども、現在のような状況のままで長く続いて、しかもなかなか放出のタイミングがないということになりますと、そう大きな利益もあげられませんし、出資額は約三百億近い、三百億前後も共同証券に対する出資があるわけですが、一銭の配当もいままでしないできておるわけであります。それで利益があがれば当然課税も受けるわけでございます、会社ですから。ですから、この辺は本質論と程度問題と別に考えてもよろしいのですけれども、まあ状況に応じて関係者の良識ある措置を期待するという以上に、われわれの立場で一方的にこれを押しつけるということはなかなかむずかしいと思いますが、しかし、公共的な政策機関であるということを関係者全員よく納得いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/101
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102・木村禧八郎
○木村禧八郎君 共同証券はなるほど制度的には株式会社ですけれども、しかし、あれをつくって、予算委員会でも十分に論議をしたわけでして、公の公共的性質を持っているということはあんなに言明しているのですよ。そうでしょう。そうして形は商法からいえば株式会社でありますけれども、あのときの経過からいって、これは公の機関であるということになっているのですからね。株式会社だから、生じた利益は処分していい、政府が何ともこれ言うことはできない、そんな法はありませんよ。あのとき日銀が融資するにあたりまして、予算委員会で問題になったのです。そのときに公共的ということをあんなに強調したのじゃありませんか。そうでしょう。いまになって、三百代言みたいですよ。ですから、この利益については、やはり公共的立場から処分させるべきですよ。大蔵省はそういう行政指導をしなければならない責任がありますよ、あの経過からいきまして。いかがですか、その点は。当時の経過をよくごらんになって……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/102
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103・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 御意見のとおりに私も考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/103
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104・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それで、どうされるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/104
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105・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) 処分の具体的な方法までいまきめておりませんけれども、公共的な立場から、その利益を通常の株式会社と同じように考えるべきじゃない。したがって、どういうふうにすべきか、この点は課税後の利益になりますけれども、具体的な方法等については関係当局とも十分相談の上で善処したい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/105
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106・木村禧八郎
○木村禧八郎君 これで終わりますが、それでは確認しておきますが、単に株式会社であるということによって普通の株式会社の利益処分みたいなことはさせない、やはり公の立場に立った利益の処分をさせるように行政指導をする、そういうふうに受け取っていいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/106
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107・加治木俊道
○政府委員(加治木俊道君) そういう方向で関係者に十分納得してもらうつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/107
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108・竹中恒夫
○委員長(竹中恒夫君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/108
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109・竹中恒夫
○委員長(竹中恒夫君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようですから、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/109
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110・竹中恒夫
○委員長(竹中恒夫君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより採決に入ります。証券投資信託法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/110
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111・竹中恒夫
○委員長(竹中恒夫君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/111
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112・竹中恒夫
○委員長(竹中恒夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
それでは、本日はこれにて散会いたします。
午後四時十七分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514629X02919670718/112
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