1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年五月十一日(木曜日)
午前十時三十五分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 大谷藤之助君
理 事
楠 正俊君
中野 文門君
秋山 長造君
鈴木 力君
委 員
近藤 鶴代君
内藤誉三郎君
二木 謙吾君
小野 明君
林 塩君
国務大臣
文 部 大 臣 剱木 亭弘君
政府委員
文部政務次官 谷川 和穂君
文部大臣官房長 岩間英太郎君
文部省文化局長 蒲生 芳郎君
事務局側
常任委員会専門
員 渡辺 猛君
説明員
文部省文化局審
議官 安達 健二君
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本日の会議に付した案件
○著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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001・大谷藤之助
○委員長(大谷藤之助君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案につきましては、すでに提案理由の説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
なお、政府側より剱木文部大臣、蒲生文化局長、佐野著作権課長が出席いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/1
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002・楠正俊
○楠正俊君 著作権法の一部を改正する法律案におきまして、著作権の保護期間の再々延長を必要とするということでございますが、その理由について説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/2
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003・蒲生芳郎
○政府委員(蒲生芳郎君) 御承知のとおり、文部省といたしましては、現行の暫定延長、つまり前々回、それから前回におきまして二度にわたりまして保護期間の暫定延長をいたしております。現在は保護期間が三十五年ということになっておりますが、その期間内に著作権制度の全面的な改正を行なうために、昨年の四月に著作権制度審議会の答申を受けまして法律の改正作業に入りました。さらに、昨年十月には文部省試案を公表いたしまして関係団体の意見を徴し、あわせて、内閣法制局の審議を受けて今国会に提出するという目途をもちまして準備作業を進めてまいりましたが、しかしながら、この著作権の事柄の性質上、著作権制度の全面的な改正に関します関係団体などの間におきましても利害の調整にはなお相当の時日を要する面が残っております。さらに、内容的にも検討してみる事項がまだございますので、現在の暫定延長の措置期間内、すなわち本年一ぱいに法案の成立を期するということが非常に困難な事態に立ち至ったのでございます。さらに、来月から七月にかけまして、日本が加盟しております著作権の国際的保護を定めるベルヌ条約の改正のための国際会議がストックホルムで開催されることになっておりまして、日本からもこの会議に参加することになっておりますが、その結果をまちまして、さらに最も新しい国際情勢に即応した著作権制度の改正を行なうことが適当と考えるのでございます。以上のようなことからいたしまして、著作権制度の全面的改正作業期間中に、この著作権の保護期間が満了することとなります著作権者に対する救済をはかることを目的といたしました当初の暫定延長措置の趣旨にかんがみまして、三度目の暫定延長の措置を講ずる必要があるということになった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/3
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004・楠正俊
○楠正俊君 ただいまの御説明によりますと、暫定延長の期間は二年ということでございますが、一年でも足りるように考えられますが、その点どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/4
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005・蒲生芳郎
○政府委員(蒲生芳郎君) ただいま御説明申し上げましたように、すでに改正草案も準備いたしておりますし、次期通常国会への提出を目途に準備を続けておるのでございますから、一年延長ということももちろん考えられるのでございますけれども、国会での審議に要しまする期間や、それから改正法案の成立いたしました後におきます新しい制度への移行準備期間などを考えまして、必要にして十分な期間をとるという見地より二年ということにしたのでございます。もちろん、二年と申しますのは、著作権制度の全面的改正を昭和四十四年の末までは行なわないということでございますので、それまでの間におきます早期成立を期していることはもちろんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/5
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006・楠正俊
○楠正俊君 写真につきまして暫定延長——ほかの著作物と違って、写真につきましては暫定延長の措置からはずれて、いわばまま子扱いのようになっておりますが、その点についての理由はどういう理由からでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/6
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007・蒲生芳郎
○政府委員(蒲生芳郎君) このたびの保護期間の暫定延長の措置は、先ほど申し上げました前々回及び前回の暫定延長によりまして保護期間が延長されました著作物につきまして、引き続き同じ趣旨の保護をはかろうとするものでございまして、前々回並びに前回の暫定延長措置を受けなかった写真その他につきましては、今回も特段の措置を講じないことにいたしております。写真につきましては、このベルヌ条約上もその保護期間は国内立法の定めにゆだねられておるところでございまして、現行法におきますその権利の内容とか、あるいはその他につきましてもなお検討を要する点が多くありまして、これらの問題点をそのままにしておいて保護期間の延長策をとることは適当ではないというふうに考えております。なお、かりに写真につきまして暫定延長の措置を講ずるということにいたしますと、そのほかのたとえば団体名義の著作物、その他前回までの暫定延長措置から除外されておりますものについての取り扱いをどうするかという問題が派生いたすのでございまして、当初の暫定延長の趣旨にかんがみますれば、団体名義の著作物などと同様に、この際、特に暫定延長措置の対象としなければならないという積極的な理由が少ないというふうに考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/7
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008・楠正俊
○楠正俊君 団体名義の著作物その他写真同様、今回の暫定延長のワクからはずされたものに関して、写真だけでなく、団体名義の著作物等もともに暫定延長のワクに入れるということはできないか、その点ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/8
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009・安達健二
○説明員(安達健二君) ただいま局長から説明ございましたように、写真については、現在、発行後十年ということになっておるわけでございまして、団体名義は発行後三十年ということになっておるわけでございます。で、この暫定延長は先ほど局長から御説明ありましたように、昭和三十七年に、衆議院におきまして議員提案によって成立したものでございます。その際に、いわゆる一般的な著作権の保護期間の原則期間が、当時、著作者の死後三十年ということになっておったわけでございます。そこで、同時に著作権法を再検討するための著作権制度審議会をつくるために、文部省設置法を改正するということと両方からみ合って、一方では、同時に社会党の議員のほうから、この際、保護期間を五十年に延長すると、こういうような提案もあったわけでございます。そこでいろいろお話し合いがございまして、そこで、いわゆる一般的に保護期間が国際的に認められておるところのものだけについては、一応そういうことを前提としつつ、その著作権制度の審議の過程において、それらの権利がなくなる人を救済するということで、原則的な保護期間のものの三十年を三十三年という延長をされたわけでございます。で、その際に写真とか、団体名義のものについては触れられなかったのでございます。なぜ触れられなかったという理由でございますが、たとえば写真につきましては、先ほどお話ありましたように、ベルヌ条約上も加盟国の国内法令によって適宜定めてよろしいというようになっておる。ところが、いわゆる一般の原則的な保護期間については五十年が各国の義務であると、こういうことになっております。世界各国も五十年というのが標準的な期間になっておるのでございます。ところが写真でございますると、十年のところあり、二十五年のところあり、いろいろ区々でございます。そこで、その際の御検討のときには、やはりそういうような問題はさらに保護の内容との関連も非常に深いので、それはまあ著作権制度全体のときにまかすべきである。ところが一般の保護期間五十年というのは、一応、世界相場であるから、それを前提として、その当時切れるところの著作権者の保護のために暫定的に延ばす、こういう経過でございます。それが、四十年のときにさらに二年延長されて現在に至っておるわけでございます。そういうような経過から言いまして、このたびの改正はもっぱら従来の改正の趣旨を踏まえてそれを継続するということになるということでございます。
ところで、直接御質問にございました写真を延ばしたらどうなるかということでございます。ということになりますると、実は全然いままで考えられなかった新しい権利を認めるというような結果になる。ちょうどいままでの保護期間を守っておりましたのは、従来の延長のものをただつないでおったということでございますが、今度は写真について新しく認めるとなると、そういうものについての保護を、十年過ぎんとするものについて保護を与えるという新しい事態になるということでございますので、これはやはり著作権法の全体の内容にかかわるという、そういう点がございます。それから映画につきまして、現在ニュース映画等につきましては、写真に準じて十年というようになっておるわけでございます。そうしますと、映画は同時に団体名義のものもございますので、どうしてもその団体名義にも触れざるを得ない。団体名義に触れると、またやはり著作権法全体のたてまえに触れてくるというようなことでございますので、いずれまあ早急に新しい法案を御審議いただくという時期でございますので、いましばらくごしんぼう願う、こういうような意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/9
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010・楠正俊
○楠正俊君 この著作権制度審議会の答申が、すでにこれは出ているんですね、その答申の中にこの写真の取り扱い等はどういうように答申されておるか、それをちょっとお聞きしたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/10
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011・安達健二
○説明員(安達健二君) 写真につきましては発行後五十年というようになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/11
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012・楠正俊
○楠正俊君 この著作権制度審議会の答申が出て、もうすでに一年間経過しておりますが、著作権制度の全面改正の作業は現段階でどういうようになっておるか、御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/12
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013・蒲生芳郎
○政府委員(蒲生芳郎君) 先ほど申し述べましたように、昨年の十月に改正草案を作成しましてこれを一般に公表いたしまして、広く関係者の意見を求めまして、その提出のありました意見を参考としながら、現在までに内閣法制局等と審議を進めてまいっております。で、この法制局におきましては、国際条約との関係とか、あるいは著作権制度の沿革などの予備的審査を行ないました上、現在は現行法におきます問題点と、それから改正草案との関係につきまして審議中でございまして、成案を得ますまでには、なお、ある程度の日時を要するというふうに考えております。また一方、法制局におきます審議と並行いたしまして、関係省庁及び関係者との間の話し合いを現在なお進めておりますが、そういうぐあいでございまして、作業は決して休んでおりませんで着々と進めておりますが、いま申しましたような関係で時間がなおかかるという状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/13
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014・楠正俊
○楠正俊君 この委員会におきまして、前回、暫定延長措置を講ずる際に、附帯決議として、著作権法の全面改正作業については、広く世論をも徴し、慎重な手続を経て成案を得るようという附帯決議を行なったのでありますが、政府としてどのような措置を講じているか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/14
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015・蒲生芳郎
○政府委員(蒲生芳郎君) 先ほどから申し上げますように、この全面改正の点につきまして、文部省としても十分慎重を期しまして、各方面の意見を聴取しておるということは御承知のとおりでございますが、まず著作権制度審議会におきましては、昭和三十七年以来、この著作権制度の全面改正につきまして審議を行なってきたことは御承知のとおりでございますが、審議の段階におきまして、その各段階において関係者の意見の提出を求める。さらに提出のありました意見を参考としつつ審議を進め、今日に至っております。なお、応用美術とか、あるいは映画、あるいは隣接権制度、あるいはレコードの二次使用、こういう著作権制度改正の主要な問題点に関しましては、数度にわたりまして関係者を参考人として招いて意見を聞いております。
それから、事務当局におきましては、昭和四十年の五月、著作権制度審議会の第一小委員会から第五小委員会までのこの各小委員会審議結果が公表されました段階におきまして、東京、大阪において小委員会報告に関する説明会を開催しております。また昨年の四月、審議会の答申のありましたときの段階におきまして、東京と大阪、福岡の三地域におきまして答申の説明会を開催し、また関係者の理解を深めるように進めてまいりました。
それからさらに、昨年の十月には、いま申しましたように、審議会の答申に基づいて作成しました草案を公表いたしました。その説明会を開催いたしますとともに、関係者の意見の提出を求めまして、現在は各関係団体から提出のありました参考意見を参考にしながら、内閣法制局の審議を進めておるような状況でございます。また、関係者との間におきましては、研究会を持ちまして、さらに突っ込んだ研究討論を進めてまいっております。なお、いま申しましたような草案についての意見聴取とか、あるいは研究討議と並行いたしまして、改正法案が成立しました場合の具体的な問題、たとえばレコードの二次使用権が認められた場合に、放送局はどういうふうな方法で、どのような金額をこの著作権者に支払うかといったような問題につきまして、文部省と関係者との合同の会議をもって検討を進めてまいっております。
以上述べましたように、問題の重要性にかんがみまして、審議会の審議の段階におきましても、法案作成の段階におきましても、関係者の意見を十分に、慎重な検討を重ねてまいっておりますが、今後ともその関係者の意見を十分に聞きまして、慎重の上に事を運びたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/15
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016・楠正俊
○楠正俊君 来月十一日と思いましたが、スウェーデンのストックホルムでベルヌ条約改正の国際会議が開かれますが、その会議に文部省からも行くんですね。それの中心議題が何であるか、御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/16
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017・安達健二
○説明員(安達健二君) ベルヌ条約は大体二十年に一回くらいに会議を開きまして、その時代に応じた著作権保護の基準、国際的な保護の基準を策定するようになっておりまして、いまお話のございましたように、この六月の十一日から七月の十四日までの三十五日間にわたりまして、スウェーデンのストックホルムで会議があることになっております。この会議におきましては、著作権に関するベルヌ条約の改正と、それから工業所有権の保護に関するところのパリ条約、その他の条約の管理事項を定めるというような、そういう条約の創設というもの等が審議されることになっておるわけでございますが、そのうち著作権の保護に関しまする主要な問題点としては次のとおりでございます。
第一番目は、映画の権利関係について国際的な基準を設けること、最近におきまして、映画の国際流通あるいはテレビジョン番組の交換というようなことが出てまいりましたので、したがいまして、映画のいわゆる著作者といわれる、たとえば監督と制作者との関係が複雑になってまいりますので、したがいまして、そういう映画を外国に出す場合には、著作者のほうでは、そういう特段の定めがない限りはこれに反対できないというような規定を設けて、映画の国際的流通を円滑にする、こういうような内容のものがございます。
それから第二番目に、著作権の基本的な内容としまして、複製権、たとえば自分の原稿を本にするという有形複製権についての規定がないわけでございまして、これはいままで当然のこととして規定されなかったのでございますが、それを新しく入れる。それに伴いまして、当然、複製権に対する制限といたしまして、たとえば立法、司法、行政上の目的のために制限できるとか、あるいは私的使用のためにできるとか、あるいは著作権者の通常の利益と衝突しないような使用についても制限できる。こういうような点の規定を設ける、これが第二点でございます。第三項といたしましては、保護の基準として国籍主義、住所地主義を導入するという点でございまして、ちょっとやっかいでございますが、現在はベルヌ条約上で保護すべき著作物は同盟国人の未発行の著作物と、それから同盟国人が発行したものについては発行地が同盟国でなければならない。こういうことになっておるわけでございます。したがって、発行地が同盟国でない。たとえば日本人がソ連で発行いたしましたものについては、イギリスは同盟国であるけれども、これを保護する義務がないということになっておりますのを改めまして、およそ同盟国人のものであれば発行地のいかんを問わず保護する、こういうような国籍によって保護をきめる。こういうような主義を導入するということになっているわけでございます。
第三番目に、新興国のための特別な扱いを認める規定、すなわち新興国が著作権保護をはかる点におきまして、ベルヌ条約の定めます制限基準はたいへん高い。したがいまして、新興国がそれについていけない、新興国がやはり著作権法制をつくりやすくするためには、新興国のためには特別に軽い基準を設けるという、たとえば保護期間を半分にするとか、あるいは翻訳についての特別な規定を入れる、そういうような新興国のための特別の議定書を設ける、こういうようなおよそ大きい点は三つの点が議題になるわけでございますが、そのほかに、現在の条約の規定について各国が問題としているいろいろの規定についての改正案等が議せられる、こういうようになっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/17
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018・楠正俊
○楠正俊君 このベルヌ条約加盟国というのはほとんどの先進国がそれに加盟しているのか、それをちょっと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/18
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019・安達健二
○説明員(安達健二君) 現在ベルヌ条約に加盟しております国は五十五カ国ございます。ただし、アメリカ合衆国とか、中南米諸国はこれに加入しておりません。で、ヨーロッパのおもな先進国であるイギリス、フランス、ドイツ、イタリア等はもちろんこのベルヌ条約国でございます。東洋では、タイとか、インド、セイロン等がこれに加入いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/19
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020・楠正俊
○楠正俊君 今回の会議で決定されたことが、わが国の著作権の今度の全面改正にどういう影響を及ぼすか、その点についてお聞かせ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/20
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021・安達健二
○説明員(安達健二君) まず一番の大きな問題といたしましては、翻訳権に関する問題がございます。翻訳権と申しますのは、原著作権者が翻訳を許可する権利、そういう意味での翻訳権であります。そういう翻訳権について現行法は十年以内にこれを日本語に翻訳して発行するについては、原著作者の許可を得て金を払ってしなければならないけれども、十年たてばそれはやらなくてもよろしい、自由に使えるという、そういう日本は独得の制度をとっておるわけであります。これは一八八六年のパリ条約というものに基づいて、それを日本がずっと留保をしてきてやっておるような内容のものでございまして、そのような規定につきまして、今度ストックホルム規定ではそういう留保はできない、したがって、日本がもしというような提案がなされておるわけであります。すなわちストックホルム規定ではそういう特権を維持できない、こういうような規定が出ておりますので、その点が当然草案のほうに影響してくるというのが第一点でございます。
それから、たとえば第二点といたしまして、現在、新聞紙または雑誌に掲載したところの論説でございますが、これについては出所を明示すれば他の新聞、雑誌に掲載できるという規定がございます。これはベルヌ条約に基づいておりますが、これを削除するという提案がなされております。そのほか放送の一時的固定と申しまして、著作者が放送に自分の作品を出すという場合におきましては、それは著作者に断わりなくても、一時的にテープをとるとか、ビデオにとるということはできることになっておりますが、そういうのが現在のベルヌ条約のブラッセル規定にございます。そういうものについての改正などの点もございます。そのほかいろいろ技術的にも新しいような内容を盛られておる点がございまして、先ほど申し上げました複製権に対する制限などにつきましては、当然、草案の法律案におけるところの表現字句等についても当然影響があるだろう、こういうふうに考えられるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/21
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022・楠正俊
○楠正俊君 今回の全面改正作業につきまして、先ほどの写真等の暫定延長措置から漏れておりまする著作物等の問題がございますので、慎重にその点、改正作業に当たっていただきたいということを要望しまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/22
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023・大谷藤之助
○委員長(大谷藤之助君) ちょっと関連して。
いまの楠君の質問に関連するわけですが、この延長に漏れておる写真だとか、それから団体の持っておるような著作権、例としては先ほど話が出ましたけれども、これが当初三年延ばし、一般のほう。そして今度二年延ばし、またこれで二年延ばすわけですね、初め延長のときには、三年すれば基本的な問題が解決できるからというので、漏れた側においてもそう大した異議がなかったかもしれぬと思うのですが、この漏れておる写真とか、あるいは団体とか、関係のもので、ぜひ、こういうふうに延長がたび重なるのであったら、やはり中に取り込んでもらわなければ困るというような事態がそれぞれあるのではなかろうかと思うのですが、その中身については、要望の程度については多少相違はあるだろうと思うのですが、あなたのほうで写真その他で一般に漏れておるものについて一体要望の大小というか、強弱というか、そういうものに対する受けとめ方はどういうふうに受けとめておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/23
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024・安達健二
○説明員(安達健二君) 写真家のほうでそういう要望をされ、またそういう強い期待を持っておられることも、権利者という立場から見ましてまことにごもっともだというふうに思われるところもあるわけでございます。ただ、写真につきましては、保護期間について、答申は公表後五十年という線が出ておりますけれども、出版会社というか、使用者側としては強く反対をしておるわけでございます。権利者という立場だけ見ればまことにごもっともでございますが、同時に使用者の立場から見ますと、保護期間を延ばすならば、それに応じて必要な制限をして写真を使いやすくしてくれとか、いろんな要望が同時にあるわけです。そこでこの今度の、先ほど申し上げましたように、法案の趣旨が、要するに従来のもののつなぎをするということに重点がございますものですから、そういうような新しい制度を設ければ、当然、使用者側のほうの意見もやはり考えなければいけないわけです。使用者側は、第一、暫定延長自体について反対をしておりまして、それについていろいろ陳情などもあるわけでございます。したがって、どうしてもそういう新しく写真の権利を延ばすということが内容になるものですから、それについてもやはり全体的に考えなければならない、そういうことで、われわれの事務的な感覚としては、やはり最初の議員提案の趣旨を、継承して、とにかく早く法案を国会に提出して御審議いただいてということで重点を置くべきではないかということで、この写真、団体名義は、この法案からは従来どおりないと、こういうような考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/24
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025・大谷藤之助
○委員長(大谷藤之助君) 使用者側のそういう要望、これはわかりますが、しかし、まあ反対を考えると、それが強ければ強いほど妥当な著作権者の保護をやらなければならないということも考えられると思うのですよ、いまの、先ほどの楠君の質問で、写真とか団体のそういう特定のものを、たとえ審議会の答申が出ておろうと、基本的にその問題をどうこうするということではなくて、延長の範囲の中に、当初の予定しておった考え方と違って、七年に三度もやって延長されておるということならば、当初は必要は認めなかったとしても、いまの段階になってみると、いま一つ踏み越えて取り込んでおく、すべてを取り込むかは別として、そのうちの要望なり、妥当性の強いものは、三回も延長しておるから、基本的なワクを何十年にするということではなくて、二年の延長の間には、写真なり、あるいは特に保護して、暫定的には二年間だけはやっておかないと、その間に、七年間の間には相当これはやはり保護してもらいたいというものが、数多く脱落していくものもあるのではないかと思うのですが、現にそういう声も私ども聞くわけですが、そういう基本的な改正ではなくて、ワクの中に、今日の段階だから、三十年延長するから、写真なんか取り込んだほうがいいのではないかという考え方もされると思うのですが、その点についてどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/25
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026・安達健二
○説明員(安達健二君) 暫定延長と申しまして、内容といたしましては、現在、発行後十年になんなんとしておるものがここで救われるということになります。救われますと、今度新法ができて保護期間が一応延長されるといたしますと、そのものは新しい法案によって設定された期間全部保護されるということになるわけです。写真の場合はわりあい数が多いわけでございまして、使用者としては、使用者の面からいいますと、いまここで処置されますと、十年に切れるやつが全部ずっと将来長く、かりにたとえば法案でいけば、今後五十年でございますから、保護されるということになるのですから、使用者としては強く反対する、権利者としては、ほかに比べて非常に不利になっておるから何とかしてくれと、こういうのはあるわけです。ただ、いままで切れたもの、すでに十年を経過したものについては、かりに延長いたしましても、それは復活しないわけでございますから、十年、ちょうどいま四十二年末で十年になるものだけが特に問題になる、そういうことでございます。両方の利害がございますものですから、いままでの方針を変えるということにちょっとなるものですから、そこでわれわれとしては慎重を期しておると、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/26
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027・大谷藤之助
○委員長(大谷藤之助君) 私の質問しておる意味も、そのつなぎの、これからの二年の期間に脱落するものがかなりあるということで、使用者なり、著作権者のほうから問題があるように思われるんですが、そういう点、ひとつまた再検討して、考慮しておいてもらう必要があろうかと思うんです。以上です。
他に御発言がなければ、本法案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00419670511/27
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