1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年五月十六日(火曜日)
午前十時四十分開会
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委員の異動
五月十一日
辞任 補欠選任
山崎 昇君 鶴園 哲夫君
五月十六日
辞任 補欠選任
北條 浩君 北條 雋八君
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出席者は左のとおり。
委員長 大谷藤之助君
理 事
楠 正俊君
中野 文門君
秋山 長造君
鈴木 力君
委 員
北畠 教真君
近藤 鶴代君
内藤誉三郎君
二木 謙吾君
吉江 勝保君
小野 明君
北條 雋八君
林 塩君
国務大臣
文 部 大 臣 剱木 亨弘君
政府委員
文部大臣官房長 岩間英太郎君
文部省初等中等
教育局長 斎藤 正君
文部省文化局長 蒲生 芳郎君
文部省管理局長 宮地 茂君
事務局側
常任委員会専門
員 渡辺 猛君
説明員
文部省文化局審
議官 安達 健二君
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本日の会議に付した案件
○著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○教育、文化及び学術に関する調査
(昭和四十二年度文部省の施策及び予算に関す
る件)
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001・大谷藤之助
○委員長(大谷藤之助君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
委員の異動について報告いたします。去る五月十一日、山崎昇君が委員を辞任され、その補欠として鶴園哲夫君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/1
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002・大谷藤之助
○委員長(大谷藤之助君) 著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
前回に引き続きこれより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
なお、政府側より剱木文部大臣、蒲生文化局長、安達文化局審議官、佐野文化局著作権課長が出席いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/2
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003・秋山長造
○秋山長造君 著作権法の一部改正法律案について若干お尋ねをしたいと思います。
著作権法は明治三十二年にできたままで、ほとんど手つかずでずっと今日まできているわけですが、大体こういう法律は珍しいのではないかと思うのです。日露戦争の前ごろにできた法律がそのまま戦後までずっとほとんど手つかずで適用されてきているという例は珍しいのではないかと思うのですが、これはどういう事情でそういうことになっておったのか。また、この間、著作権法の根本的な改正というようなことについての要望といいますか、世論といいますか、そういうものはなかったのかどうか、そういう、この法律が明治三十二年にできて以来今日までの経緯というものを、一々詳しくはけっこうですから、さらっとでいいですけれども、大体この法律をめぐる今日までの経緯というものをちょっと教えていただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/3
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004・安達健二
○説明員(安達健二君) 著作権法という法律は、御案内のとおり著作権という無体財産権、使用財産権に対する法律でございまして、形式的には民法に対する特例法、特別法になるようなものでございます。したがいまして、民法は親族相続編につきましては別としまして、まだ全般的な改正が行なわれてないような状況とも若干の関係がございます。それと同時に、戦後、日本が占領されまして、連合軍のほうで著作権制度について改正をしたらどうかというような提案がございましたけれども、当時は占領下においてこういう基本的な財産権に関する法律について変更を加えるということは特策でない、こういう観点で平和条約に至るまでいろいろな研究は重ねておられましたけれども、なお根本的な作業は行なわれていなかったわけでございます。ただ、平和条約に関連いたしまして、この連合国の著作権につきまして、戦時中、連合国人の著作権が十分に行使できなかったというようなことからいたしまして、平和条約に基づきまして、戦時中の保護を受けられなかった期間を本来の保護期間に加算するという意味においての連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律というのができたわけでございます。同時に、日米著作権条約が、占領下を経まして新しくこれをどうするかということに関連しまして万国著作権条約ができ上がりまして、それとの関連において万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律というように、いわばその必要に応じた若干の特例法が形成されたわけでございますけれども、そういうようなことで、やはりそれと同時に、いまお話のように、こういう法律についても基本的な検討を加えるということで委員会等をつくって行なわれておったわけでございますけれども、なかなか利害が錯綜いたしまして成案を得るに至らず、昭和三十七年に至りまして著作権制度審議会を設けまして、この根本的な改正作業を行なってまいっておると、こういうような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/4
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005・秋山長造
○秋山長造君 これはやはり著作権という基本的な財産権をめぐる問題ですから、しかも保護を受くべき当事者と、それからまたその著作を利用する使用者側との意見が、まずこれが利害が相対立する問題でもあるし、問題が非常に複雑な困難な問題を含んでおるということはよくわかります。三十七年以来、審議会でずいぶん審議検討が行なわれたようですが、三十七年から始まりまして去年の四月に答申が出て、そしてその答申の線に沿うて文部省当局で成案を急がれて、十月に草案を発表された、こういう順序だろうと思うのです。この審議会はもう解散したのですか、答申を出すと同時に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/5
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006・蒲生芳郎
○政府委員(蒲生芳郎君) 審議会は、一応答申は出ましたけれども、今後さらに、たとえば国際条約の関係とか、あるいはその他のいろいろ著作権に関する問題もなおございますので、これは継続いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/6
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007・秋山長造
○秋山長造君 その審議会の審議の途中、また、まとめられた答申に対してずいぶん各方面からいろんな意見、批判が出たと思うんですけれども、そういうものをも考慮に入れて、それで十月に発表された草案というものはまとめられたわけなんですか。もう審議会の答申をそのまま取り入れて成文化されたんですか。そこらの経緯をありのままちょっと教えていただきたいと思うんですがね。ずいぶんいろんな著作権に関する団体、各方面から答申に対してもいろんな批判を聞くし、また、去年の十月に発表された草案に対してもいろんな不満というようなものを、いまあらためてまたずいぶん聞くわけですけれども、そこらの事情をありのまま述べていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/7
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008・蒲生芳郎
○政府委員(蒲生芳郎君) 三十七年に制度審議会が設けられまして以来、この審議会の構成メンバーとしましては、著作権者側、それから利用者側、なお学識経験者を交えまして構成しておるわけでございますが、それで審議会自体におきましても、いまおっしゃいましたように、いろいろ議論が分かれた点も多々ございます。そこでさらに関係団体と申しますか、著作権に関する各関係者からそれぞれ意見を求めましたり、あるいは参考人として審議会に出ていただきまして、それぞれの立場の意見を聴取し、そうして数百回にわたる審議を経て今日までまいりましたが、なかなか利害関係がはっきりいたしておりますので、全会一致でもって全く矛盾なくまとめるということは非常に困難でございます。しかしながら、大体、委員の間でも、何と申しますか、最大公約数的なところをとりまして、そうして答申と相なったわけでございますので、その点はこの著作権制度審議会の性格として当然と申しますか、そういうことになるのがあたりまえと申しては何ですけれども、利害関係につきましてはそういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/8
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009・安達健二
○説明員(安達健二君) ちょっと補足させていただきますが、先ほど審議会の答申と文部省で発表いたしました文化局の試案との間に違いがあるかというお尋ねがございましたので、多少技術的にわたりますけれども申し上げますと、第一番目に、人格権につきまして、答申は、著作権の生存中とそれから財産権としての著作権の存続中に限り人格権を認める、こういうような考え方でございましたけれども、文芸家協会その他の著作者から強い御意見がございまして、そういう人格権については財産権が消滅した後においてもこれを保護する、刑罰法規等を中心といたしまして保護するというようにいたした点が第一の違いでございます。
それから写真につきまして、未公表の写真についてはその作品により公に展示する権利というような権利を新しく認めたわけでございます。そのほかそれらの問題についての複製について、審議会の答申には直接ございませんでしたが、これは明らかに非営利の目的で利用する場合は別として、営利目的で利用する場合にはこれは有償であるというような点を明らかにしたというような点がございますが、その他技術的にはいろいろ、つまり答申では十分明らかでない点が、法律に至りますときには、当然これはどちらかに振らなければならないというような点がいろいろできてきたわけでございます。
それからもう一つ、申しおくれましたが、映画の著作物の人格権としての公表権を映画の監督に与えるというような形の点を明らかにしたというような点がございます。それから、写真は未公表と申しましたが、未発行ということにしていただきます。未発行の写真の著作について、それを公に展示する権利というようなものを草案で認めたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/9
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010・秋山長造
○秋山長造君 保護期間については、これは著作物も写真も、いずれも答申でも文部省の草案でも五十年ということになっているんですね。その点は答申と変わりないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/10
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011・安達健二
○説明員(安達健二君) 保護期間については変わりません。もちろん保護期間は物によって違いますが、原則としては著作権者の死後五十年、ほかの映画とか写真とか、そういう著作物の保護期間は別ですが、しかし答申とは同じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/11
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012・秋山長造
○秋山長造君 写真は発行後五十年でしたね、文部省の草案では。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/12
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013・安達健二
○説明員(安達健二君) はい、発行後五十年でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/13
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014・秋山長造
○秋山長造君 それから一般著作物は、著作者の死後五十年ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/14
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015・安達健二
○説明員(安達健二君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/15
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016・秋山長造
○秋山長造君 そこが違うんですね、発行後五十年と死後五十年と。
そこで、前二回暫定延長をやっているわけですがね、前二回の暫定延長というのは三十七年に審議会ができて、その審議会の結論を待ってということで暫定延長されたと思うんです。そうですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/16
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017・安達健二
○説明員(安達健二君) その最初の三十七年の暫定延長は、当時、社会党のほうから、著作権保護期間だけを五十年にするという改正が出ておりました。一方政府提案は、著作権制度審議会を設けて、この問題の根本的検討を行なう、こういうように出ておりましたときに、その著作権の審議会の審議期間中に、新しい著作権法ができるまでに著作権が切れてしまう著作者の遺族を特に保護するという見地で、ある意味におきまして保護期間が延びるということを前提にし、当時、死後五十年が世界的な標準であるということを考慮し、そこで、とりあえず暫定的にその切れんとする著作権者の遺族保護ということで、暫定的に延長する、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/17
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018・秋山長造
○秋山長造君 したがって、三十七年の第一回の暫定延長をやったときには三年でしたね。三年以内には新しい著作権法ができるという見通しだったわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/18
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019・安達健二
○説明員(安達健二君) 一応、三年ということをめどとするけれども、当時の速記録を見ますると、なおこれで法案ができなければ、さらにこの期間は延長することがあるというような意味の御説明がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/19
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020・秋山長造
○秋山長造君 そういう説明は含まれたにしても、一応表面的には三年以内にはできるというめどを立ててやった。それがさらにおくれた。したがって、また二回目の暫定延長をやった、こういうことになっていると思う。そこで、過去二回の暫定延長はそれで一応わかります。一応、審議会というものまで設けたんですからね。ですから、それの結論が出るまでは、文部省としても根本的な法律改正ということは実際問題としてやりにくいということはわかる。それはわかるんですが、今度の三回目の暫定延長というのは、ちょっと事情が、いままで過去の二回の暫定延長の理由になったものは消滅しておるわけですね。今度は審議会の答申を待つという理由はなくなったわけです。今度のこの暫定延長の理由は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/20
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021・安達健二
○説明員(安達健二君) この三年という場合に、審議会の審議と、それから法案の作成と国会への提出、国会での審議、成立という期間を一応三年というように当時は考えられたわけです。したがいまして、ただいま三回目は前の理由とは違うんじゃないかというお話でございますけれども、国会への提出、成立、実施までを考えれば、前と同じ理由である、こういうように考えられると思います。つまり三年にしても五年にしても七年にいたしましても、審議会の答申は、これで法案を作成し、国会に提出して、御審議を得て、法案が成立するというまでの暫定期間である、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/21
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022・秋山長造
○秋山長造君 それを言えば、いかなる場合も全部理由は同じになるのですけれどもね。しかし、それは当然のことで、国会に出ても、いずれにしても成立しなきゃ、これは法律とならぬわけですね。ですから、国会での問題は別として、法案そのものについては、やっぱりそうだと思うのですよ。審議会をせっかくつくったのだから、その答申が出るまでは暫定延長して、そうしてそれが出たときに発動をやる、こういうことできたわけですが、そうしますと、その今度の暫定延長については、やはり、去年の十月に草案を発表された、草案ができたけれども、どうも国会にそのまま出して通過される見込みがないと判断されたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/22
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023・蒲生芳郎
○政府委員(蒲生芳郎君) おっしゃいますように、もうすでに著作権制度審議会の答申は出ておりますし、また、それを参考にいたしまして文部省試案というものも公表したわけでございますが、この文部省の試案に対するまた意見がその後も寄せられております。で、制度審議会の答申をつくるまでも、先ほど申し上げますように、いろいろ意見も徴してまいっておりますが、さらに、今度は政府の、文部省の案というものが発表され、それに対するいろいろと意見もまたさらに出ております。そこで、この前の、前回の暫定延長の法律が成立します場合の付帯決議で、十分慎重にやれということも言われておりますし、また、法制局の審議にただいま入っておりますが、法制局も、これが全面的な大改正でございますので、非常に慎重に取り扱っておりまして、現行法とそれから今度の改正案というものとの比較検討、それから諸外国との関係その他について、基本的な問題から研究作業を進めておりますので、そういう法制局の審議の状況から考えましても、今国会には間に合わなかったというのが真相でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/23
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024・秋山長造
○秋山長造君 そうすると、最大の理由は、法制局の了承がまだ得られないというところにあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/24
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025・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) いま局長からお話ししたとおりでございますが、法制局の作業も相当進捗しつつございます。できたらこの国会に提出したいという準備を進めてまいったのでございますが、法制局のほうの関係も多少おくれておる。それからもう一つは、この七月にストックホルムでベルヌ条約の改定の国際会議がございます。この国際会議の結果によりまして、また新たなる、何か条約上のものが出てくる可能性もあるのでありまして、この会議の結果を見る必要がある。この二つの理由がおもな理由でございます。でございますが、あまりに遷延いたしますことは、いままでずいぶん長く遷延いたしてまいったのでございますから、これを一年に限りまして、来年は必ずやるというふうにしたほうがいいんじゃないかという意見も相当ございましたが、やはり国会の審議を終了いたしますことを考えますと、どうしても大事をとりまして二年ということにいたしたのでございますが、できるだけ、これは二年に延長はいたしましたけれども、今度はまた四たび延ばすということのないように、全力を注いで準備を進めてまいりたい、こういうつもりでいま進行をはかっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/25
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026・秋山長造
○秋山長造君 法制局で引っかかっているというのは、どういう点が問題になっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/26
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027・安達健二
○説明員(安達健二君) 法制局のお考えでは、やはり民法の特別法にあたるような個人の権利義務に関する、あるいはまた一国の文化の興廃にも関連する重要な問題であるからして、これは特に慎重な審議を要する。特に著作権につきましては、国際条約下におけるところの、国際条約によるところの制約もございますし、権利者、使用者相互の利害の調整というようなことにつきましても、法律的に相当慎重にしなければならないというようなことで、先ほど局長からお話がございましたように、条約との関係、あるいは従来の法令の沿革、それから現行法の解釈、現行法の解釈と草案との関連、こういうように非常に基本的なことの御審議をやる必要がある、こういうことでございますので、なかなかその本文にまで入らない、実情はそういうことでございます。特に特定の問題があって、それで引っかかっているということではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/27
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028・秋山長造
○秋山長造君 そうしますと、新法をつくるについてのその前提になる法律論で引っかかっているということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/28
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029・安達健二
○説明員(安達健二君) 法律論と申しますか、十分その辺を現行法との対比において考えませんと、経過措置やその他の問題もございますからして、とにかく基本的な点を十分固めてから、草案自体の、法案自体の審議に入りたい、こういうことが法制局の基本的な考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/29
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030・秋山長造
○秋山長造君 そうすると、まだ草案そのものについての審議には法制局のほうでは入るところまでにいっていない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/30
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031・安達健二
○説明員(安達健二君) 逐条にわたりまして一条からというようなふうの法案の審議はまだ行なわれておりませんが、現行法との対比においてこれをどういうふうに改めておるかという点で法案を見ていただいておるわけでございます。したがって、いわば事前の審議と申しますか、そういうようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/31
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032・秋山長造
○秋山長造君 いずれにしても、新時代に即応した著作権法をつくるべきだという要望は、もうこれは各方面全部一致していると思うのです、内容はともかくとして。しかも、文部省でその草案をつくられるまでの過程で、これはどうせ文部省はあなた方、文化局の局長なり審議官なりという一部の人だけで書き上げられたものじゃないと思うので、やはりこれだけの大きな法律案をつくるのですから、つくる過程でも法制局その他政府部内でもいろいろな意思統一といいますか、協議検討ということは行なわれた上で法律草案というものがつくられて、それが発表されたという順序になるのじゃないかと私は思いますけれども、そこらはいささか政府部内の事務的な面に立ち入ることになるのですけれども、法律案というものをつくる場合は、一応、担当の役所で勝手につくって、つくったものを初めて法制局に持っていって、法制局の立場から引っかかることはないかどうかということを見てもらうという順序になるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/32
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033・蒲生芳郎
○政府委員(蒲生芳郎君) 著作権法に関して申し上げますと、外務省あるいは法務省等とも非常に関係が多うございますので、それらの関係省の意見を聞きながら、もちろんつくるわけでございます。文部省だけでこの草案を考えたわけではございません。ただ法制局につきましては、この草案をつくるまでにおきまして、いろいろ基本的なと申しますか、著作権法の性格からして、基本的な方向についてはそのつど連絡はとっておりますが、一つ一つの条文をつくるについて、一々いまの法制局と相談をして一条ずつつくっていくということはいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/33
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034・秋山長造
○秋山長造君 いや、それはよくわかりますけれども、いまもおっしゃるように、文部省の草案ができた段階でも、やはりこの草案そのものの中身よりも、この草案の立っている前提になるいろいろな問題について、根本的な要するに意思統一ができてないというのですね。法制局もまだ了承しているところまでいってないということなんですが、大体これだけの——これだけじゃなくても、軽微な法律にしても同じことだと思うのですけれども、特にこの著作権法のような大きな法律案ですからなおさらのこと、まず法律の各条文を書き上げる前に、そこまでいく前に大体今度の法律案についてはこういう考え方でこういう骨組みでやるんだ、やりたいんだ、どうだということがまずきまった上でなければ、この大きな法律の各条文を書きおろすということにならぬのじゃないかと私は思うのですけれどもね、これはどうですかね。でき上がった法律案の個々の条文について、技術的に法制局で手直しをしたり何か手を入れるということはわかるけれども、この新しい法律案のよって立つものの考え方なり何なりを、そういう根本的な基本的な問題について、どうも法制局がいまだに了承するところまでいってないというのはちょっと本末転倒で、順序が逆になっているのじゃないかという気がするのですけれどもね。これは政府部内でどういうようにして法律案をつくり上げられるのか私知らぬけれども、ちょっといまの話を聞きますとね、話が逆じゃないかという感じがするので、むしろでき上がったものを、技術的に、あっちが、ここはいい、ここはちょっと書き直したらとかいうような手を若干加えるということで手間どっているというなら話がわかるけれども、そのよって立つ根本の点について、法制局がいまだに了承するところまでいってないというのじゃ、これは話にならぬのじゃないかと思う。相当大きな、何百条あるか知らぬけれども、相当あれは大きな法律ですね。だから、そんなことではこれからベルヌ条約は、これはじきに済むでしょうけれども、なかなかいま大臣がおっしゃったように、二年延ばすと言うてごらんなさい。再来年からもうこれは適用されるわけでしょう。そうすると、来年の通常国会ででもおそくもやらなければ、それはとても間に合わぬということになるが、そうすると、もう一年あるかないかということになる。そんな短期間にこれはできますか。根本的なものの考え方について、まだ法制局が了承するところまでいってないということ。それで、これからさらにそれが了承がついたとして、それから今度は各条文についてずっとやる。さらにベルヌ条約で何か新しいものができればそれも取り入れなければならない。こうなると、また第五回目の暫定延長をやらざるを得ぬということに事実上なるんじゃないですか。まあ、事がそれほど複雑でむずかしいからそうなっているので、何もあなた方の怠慢だとか何とかいうことを私言うているのじゃないんです。そんなことは言うているのではありません。それはあなた方の非常に苦労されていることには十分敬意を表しますが、しかし、それにしてもこの法律の扱い方としてね、あまりにもさらに第五回目の暫定延長をまた事実上やらなければならぬということになったのでは、これはあまりにも不見識なことになるのじゃないかと思うから、いまの点をもう一ぺん重ねてお尋ねするわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/34
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035・安達健二
○説明員(安達健二君) 最初にこの文化局試案として発表いたしました法律草案の性格について、若干補足さしていただきますと、一般に法律案につきましては、各省で原案をつくって、法制局の審議を仰いで、それから閣議決定をし、国会に提出すると、こういうことでございまして、一般に公表いたしますのは、法制局の審議が済んでからというのが原則でございます。ところがこの著作権に関しましては、著作権制度審議会の答申がございましたときに、特に各方面から、これについては十分民間でも研究する時間をおいてもらいたい、したがって、文部省の草案の過程でぜひ発表してもらいたいと、こういうような要望がございました。したがいまして、一般の法令作成の原則ではなしに、一応例外といたしまして、文部省の文化局試案というような形で発表さしていただいた、こういう点がまず第一に違うわけでございます。したがいまして、この草案はあくまでも文部省の文化局の責任において公表いたしたものでございます。
それから内容につきましては、先ほど申し上げました点についての若干のズレがございますけれども、基本的には審議会の答申をそのまま法制化するということにつとめているわけでございます。そうしてその審議会の中には、法制局の第三部長とか、あるいは法務省の民事局長とか、あるいは外務省の条約局長なども入っておられるわけでございまして、したがいまして、答申の段階におきまして、そういう関係方面の意見は、ある程度といいますか、基本的な点はもう十分入れられているわけでございます。したがいまして、現在、法制局で審議されている場合において、基本的な方針を了承しないとか、そういうことではなくて、慎重に審議をするために、条約関係とか現行法との関連を特に審議をすると、こういうようなことでございまして、特に引っかかっているとか、そういう表現とは違った意味での慎重審議をしていただいているということでございます。
それから法制局での審議期間につきましては、従来から最低六カ月というようなことは、前から言っておられたわけでございます。したがいましてい昨年の十二月からやっているわけでございますので、先ほど大臣のお話しになりましたように、私といたしましてぜひ今度の国会にと思っておったわけでございますけれども、法制局のそういう慎重な態度から若干のおくれを見せたと、こういうことでございまして、われわれといたしましては次の通常国会に提出すべく事務的に法制局との折衝を終わるようにいたしたい、もういうように努力いたす所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/35
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036・秋山長造
○秋山長造君 いまの審議官の御答弁は、前の御答弁と多少、少し重点が変わってきたように思うのです。さっきの話ではね、私はこう思っていたのです。率直に言いますとね、これはもう政府部内ではきちっと意思統一ができて、そうしていつでも国会にかけられる状態であったのだが、たまたまベルヌ条約ということが一つあるのと、それからもう一つは、これのほうが主ですけれども、一般関係者の意見が、ずいぶんまちまちの意見が出てきたために、できるだけ民主的に、事の性質上広く関係者の意見をできるだけ取り入れたがいいのじゃないかという配慮で延びているのだと、こう思い込んでいたわけですよね。ところが、そのほうのことは、これはもう全然二の次三の次でね。とにかく政府部内、特に法制局で基本的な考え方についていろいろ問題があって、その結果、おそく、延び延びになって、まだ法律案そのものの内容にまで入る段階まで来ていないから暫定延長ということになると、こういうようにおっしゃるものですから、それはちょっとおかしいなと思ったのですけれども、これはいまあとからおっしゃったように、この審議会の委員には、法制局の人も、法務省の人も、外務省の人も、みなそれぞれ入っているわけですから、だから、そういうものの考え方は、答申を出す過程でも一番議論が戦わされてしかるべきだったろうと思うのですけれどもね。そうすると、まあ、あとでおっしゃったことが一番ほんとうだと了承しておきますが、この延びている一番の理由は何ですか。やはり法制局とのいろいろ法律技術的な問題について、まだきちっとした調整がつかないために延びている、それともここに書いているように、関係者の意見をできるだけ取り入れる必要があるので延びておる、ベルヌ条約で延びておる、これはその理由はどういうことになるか、また幾つかあるとすればどういう理由が、順序をつけるとどういう順序になるでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/36
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037・安達健二
○説明員(安達健二君) 関係者の意見を入れるという点につきましては、先ほど局長から説明ございましたように、審議会の答申の段階において、それから答申を出したあとの段階において、それぞれの関係者の意見を聞いておるわけでございますが、さらに草案についての意見を聞きまして、それを法制局の審議の中である程度生かしていくというような点も考慮をいたしておるわけでございます。そういうような関係者の意見も入れ、法制的にも十分満足できるようなものにする、そういうようなことで慎重審議を願っておる、もう一つ加えればそういうことでございます。したがいまして、具体的にいま三つの点、一つは関係者の利害の調整、それから法制局審議、それからベルヌ条約、こういうような三つのことがあげられるわけでございますけれども、ごく事務的に申し上げれば、順序をかりにつけるとすれば、一番大きいとは申しませんけれども、法制局の審議、それから条約、それから関係団体ということでございましょうか。これは同時に相互にからみ合っておりますから、どれが一番大きくてというわけではございませんが、そういうように感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/37
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038・秋山長造
○秋山長造君 関係者の意見調整ということ、これは審議会の答申が出るまでにもずいぶんいろいろあったんだろうと思います。それからまた中にはこういう問題について審議をする審議会のたてまえから言いますと、審議会の委員の顔ぶれというものがあまりにも片寄っているというような意見もずいぶん出たと思うのですがね。しかし、それはもういまから言うてもしようがないが、答申を出すまで、さらに答申が出てから草案を練り上げるまで、さらに草案を発表してから今日まで、ずいぶん関係者からいろんな意見あるいは要望が出てきたと思うのですが、そういう意見を徴する必要もあるのでということが一つの延びておる理由になっておるのですが、大体大まかに言いまして、どういうことが問題になっておるのですか、関係者から。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/38
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039・安達健二
○説明員(安達健二君) 関係者の意見の調整というもので二つの点があるわけでございます。一つは審議会の段階において意見が出た、その意見について、まあそれでいいと思っておった。ところが、法文になってみると若干違うのではないかというような、要するに関係者の意見が法文という形にあらわれたものに対してはより正確なものができてくる、こういうような点がございまして、法文について非常に綿密に研究した意見が相当程度出ておるわけでございます。
それからもう一つは、法案がかりに成立いたしました場合において、どういうような結果になるかというようなことについて、関係者の間である程度の話し合いをしておくというようなことも必要ではないかということでございます。いま特に関係者の間に問題になっておる一番大きい点はレコードの二次使用という点でございます。現行法では、レコードによって音楽を演奏する場合におきましては、出所を明示すれば許可を得なくても無償でできる、こういうことになっておりますのに対しまして、レコードの演奏はなまと同じ効果を伴うものであるから、なまの演奏について著作権が働くならば、レコードによる音楽の演奏についても権利が働くべきである、こういう主張で、この審議会の答申は世界の態勢に従いましてそういうレコードの二次使用権を著作権者に認めるということになっておるわけでございます。これに対しまして、放送側は使用者でございます。それから喫茶店とかパチンコ屋、その他いろいろたくさんレコードによって、録音物によって音楽を使用しているところがございます。そういうところはもちろんこれに対して反対である、そういうような意見があるわけでございますが、たとえば、そういうような点につきまして、現在、文部省が中に入りまして、著作権者側とそれから放送側とに集まってもらいまして、そこで、かりに二次使用権が認められた場合にはどういうふうにして金を払うか、技術的な点と、また、大体どれくらいの見当にするかというような点についての話し合いなども進めているわけでございます。そういうような意味におきまして関係者の意見の調整ということを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/39
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040・秋山長造
○秋山長造君 草案では、写真の著作権の保護期間が発表後五十年、こうなっておる。一般著作物については著作権者の死亡後五十年、こうなっている。そこの食い違いですね、それについて写真の関係者からずいぶん批判、不満が出ておる。これはあなたのほうは一番それを受ける立場ですからよく耳に入っていると思うのですが、その点については改められる意思があるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/40
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041・安達健二
○説明員(安達健二君) 現行の著作権法によりますると、写真の著作権は、写真が発行された後十年間保護すると、こういうことで発行時を起算にいたしておるわけでございます。草案もそれと同じような考え方で公表後というようにいたしておるわけでございます。一般に写真につきましては、各国ともその著作権の保護期間につきましては一般の保護期間とは別にしておるのが大部分でございます。一般の原則と同じように著作者の死亡時に起算をいたしておる国としては、たとえばフランスなどがございますけれども、そのほかの国、イギリス、イタリア、ドイツ、オーストリア、スイス、そういうような国はやはり発行時、あるいは公表時というものを起算時にいたしておるわけでございます。したがいまして、条約関係で見ますると、ベルヌ条約では、写真の保護期間は各国の自由とする、一般の著作物については死亡後五十年ということでございまして、写真については各国適当に定めてよい、こういうようになっておりまするし、それから万国著作権条約では、十年より短くてはならないというような点しかきめられておらないわけでございます。そういうように、写真につきましては一般の保護期間よりは短くしておるのがほとんどの例でございます。しかも、大部分は、発行時と申しますか、公表時起算にいたしておるわけでございます。写真の著作者から、これを一般の著作物と同様に死亡時の起算にしてもらいたいという要求はございますけれども、審議会でもその点はいろいろ御審議がございましたが、やはり各国の例、あるいは写真の著作物の特性からいたしまして、公表時から起算すべきである、そして現在は公表時から十年であるけれども、これは短きに過ぎるので、これを五十年にすべきだ、こういう答申が出ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/41
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042・秋山長造
○秋山長造君 十年の保護期間を五十年にしたということだけについては、これはもう関係者もおそらく異議の言いようがない。それは満足しておられるかどうか知らぬけれども、十年よりいずれにしても五倍になるんですからね。だからその点は異論はないと思うんですが、死亡時からというのと、それから発行時からというのと、その間のズレを、まあ差別というようなことばが適当かどうかわかりませんが、その写真の関係者からのことばをもってすれば、そういう差別的な扱いをされる根拠は何だ、どこにそういう根拠があるんだ、こういうような、写真といいましても、著作権法ができた日露戦争の前ごろと今日とでは写真というものの質も全然違うし、また写真というものの社会の見方もすっかり変わってきているし、何ら一般著作物等と差別される理由はない。あるいはむしろ極端なことを言えば、百万語費した著作物よりも一枚の写真のほうがはるかに迫真力があり、はるかに端的にいろいろな意味をあらわしている場合も多いんじゃないか。だから、なぜそういう差別的な扱いをするのか。こういう保護年限が長いとか短いとかということより前の問題として、基本的にそういう差別をされることが了承できない、こういうことをずいぶん言っておられる。ここに写真著作権を守る全国集会の文書をもらっているのを見ると、まああなたもそれでは一席やっておられるのですがね。ここらでも口々にそれは言っていますわね、皆さん。あなたは直接聞かれたと思うのですけれども、それはどういう理由なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/42
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043・安達健二
○説明員(安達健二君) 一般に著作権の保護期間を考える場合に、その事柄の本質ということと、それから各国とのいわゆる世界的な評価と申しますか、そういうものの二つの点を考慮する必要があろうかと思うのでございます。一般に写真について短くいたしております理由といたしましては、写真がいわばシャッターを押すという一種の機械的操作をもって行なわれるというような点、あるいは偶然的に、BOACの飛行機が落ちると、そのときにさっととったという偶然的な要素とか、そういうような点、つまり機械的と科学的な作用によってできると、こういうようなことが一般の著作物に比して精神的な創作性の程度が低いのだというような、写真家から言えばもちろん反対の議論のあるところでございますが、そういう観念がやはりある程度一般的にあるということが一つでございます。それからまた、写真については基礎的な性質がわりあいに多いということで、これをなるべく早く社会に公表して利用できるようにすべきである、こういうような観点がございます。そして写真の著作物については各国ともこれが問題でございまして、たとえばドイツのごときは、写真に二つの種類を考えて、つまり精神的な創作性のある写真とない写真と申しますか、そういうものを区別いたしまして、精神的な創作性のあるものは著作権として保護する、そうでないものは隣接権で保護する、こういうように区別しながら、保護の期間とか保護の態様は同じである、こういうふうに形は違うけれども、内容は同じだというように、写真というものが精神的な創作性について非常に幅がある、そういうところに問題があって、そうして一般に世界的に見て、写真についてはそういう機械的な操作によってできるというような観点が一般の常識と思いますけれども、そういうものがあって一般の著作物よりは、写真家に言わせれば低い待遇を与えられている、こういうのが事実だろうと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/43
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044・秋山長造
○秋山長造君 そうすると、そこらがずいぶんこれは主観のまじる問題だし、特に精神的創作性があるかないかというようなことになると、これは人が何と言っても、自分自身はこれはもう精神的創作性の最高度のものだと、こう主張する場合も極端なことを言えばあるでしょう。だから、それを客観的にどう評価するかということになると、なかなかこれは神様でもむずかしい分野だと思いますが、そうすると、こういうふうに受け取ったらいいですか。結局そういう点もあるので、一般著作物とは若干差別といいますか、区別して考えざるを得ない分野が、どこからどこまでということはわからぬけれども、あることは事実。そういう何となくこう違う点があるということは、これは認めざるを得ないということで、いまの死亡時というのと、それから発行時というのとのズレというものをそこに求めた。しかし、それではあまり気の毒な場合も出てくるというので、そのかわり保護期間は同じように五十年と、こう延ばしたのだ、だから、まあここらでひとつ了承してもらえぬかと、こういう妥協線といいますかね、そういうこととしてああいう草案が出てきたというように受け取ったらいいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/44
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045・蒲生芳郎
○政府委員(蒲生芳郎君) 大体いま先生おっしゃったことであろうと私ども考えております。ただ写真につきましては、審議会の中でも、また、たとえば利用者側であります出版界、出版関係のほう等からでは、保護期間は写真について二十年ぐらいでいいじゃないかという意見もございます。それからいま一つの一般の著作物との何と申しますか、内容で多少違いますのは、写真についてはそのネガを持っておる。その著作権者が写真のネガを持っておるということは、やはりそれだけ非常に著作権者の強みでございまして、そういう点も多少一般著作物との取り扱い上違ってくるのじゃないかという気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/45
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046・安達健二
○説明員(安達健二君) ちょっと補足いたしますと、発行時に起算をいたしまする原則は、フランスを除いては大体の国がそういう発行時といいますか、公表時といいますか、そういうのを起算にいたしておりますが、写真においては、一般に発行なり公表しません場合は、表示を欠いている場合——表示といいますか、名前を書いていない。そういうようなことから、そういうときを起算にするというのが、まあどうしてもそういうふうにならざるを得ない。だから著作物の性質から死亡時でなくて発行時ということももちろんでありますけれども、それだけではないということが一つございます。
それから従来十年であったものを審議会としては大いにがんばって五倍にしたと、こういうお感じでございまして、それに対していま局長からお話ございましたように、出版業界のほうでは一挙に五倍にするのは長過ぎるのだ、こういう御意見が出るところでございますけれども、一般の延長に伴って写真のほうは従来発行時の十年というのが現在の写真というものに即応してあまりにも短きに過ぎるのじゃないかということで五十年という線が出たおけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/46
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047・鈴木力
○鈴木力君 関連。いまの点だけもう少し伺いたいのですが、これは議論はいろいろあると思いますが、写真とその他の著作権の差をつける、まあ大部分がそういう傾向になっておる、だからということなわけですけれども、これについての議論は相当あろうと思いますが、これはまあ私はいま申し上げません。ただ問題は、差をつけるために発行時といいますか、公表時を起点とするということと、死亡時を起点とするという、この起点の違いをいまの写真と他の著作物との差をつけるということだけでは、ちょっと説明がつかないと思うのですね。差をつけるべきだというなら、同じ起点であって年数によって差をつけるつけ方もありましょう。たとえば天才がありまして、十五才ぐらいでものすごくりっぱな、それこそ精神的な創作をつくった。五十年間でその生存中にもう著作権が切れてしまうのです。そういうことになりますと、一方は死亡時を起点にしておりますから、五十年にしたから差は少ないというような言い方は成り立たないのです。だから、やはりもしかりに差をつけるということが、これが正しいとしても、起算点を公表時と死亡時とに分けるという理屈がどうも私にはよくわからぬので、その辺を詳しく説明していただきたい。
なおもう一つ、関連ですから、何べんもしゃべらないために申し上げておくのですが、フランスではどうだという傾向、そういうことも一つ御説明の中にありますから、それも承りたいのですが、日本の責任者である文部省としての態度、意見、これもはっきりお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/47
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048・安達健二
○説明員(安達健二君) 写真について、死亡時ではなくて公表時にするというのが、いわゆる保護期間としては非常に差があるわけでございます。その点はお説のとおりでございます。ただ、先ほど来お話しがありますように、二つの点、一つは写真の著作物については、著作物の性質からしてそんなに長く保護する必要はないというような、一般よりは少なくていいということは、著作物の性質、すなわち精神的創作性についてないものが相当あるというような意味合いから、そういうふうになっているということが一つでございます。それからもう一つは、写真の著作物については、たとえば本に写真を載せるとか、あるいは写真の展覧会で発表するとか、そういうときには当然その著作者の名前がはっきりいたします。ところが、そうでない写真というものは、著作者の表示がない場合が非常に多いわけでございます。したがって、その写真はいつごろから一応著作権の保護期間が進行しているかということ、だれのものであるかということがわからない。それで死亡時というものを基準にとりがたいわけでございます。したがって、写真はいつどこの雑誌で発表された、あるいはどの展覧会に出たというようなことを起点として保護期間を始めるということは、写真の実態からして便利である。こういうような観点から、つまり基本的にはやはり写真の著作物性の問題、それから写真の記録的性質が多いわけでございますから、これを社会公共のために早く自由に使えるようにすべきだという、こういう点が基本的でございますけれども、技術的に申しますと、いま申し上げますような表示がない場合が多いということからして、著作者がわからない、その写真自体ではわからないということからして、公表時起算になっているのが世界の例でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/48
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049・鈴木力
○鈴木力君 いまの話しでどうも私はしろうとでよくわからないのですが、公表しなければ、文芸作品だって、公表されるまではだれのものかわからないわけでしょう。かりにだれか文豪の文芸作品がありますね。著書にもしないし雑誌にも書かない、著者が自分の文庫にしまっておったら、おそらくそれはだれのものかわからないわけでしょう。写真を公表しなければだれのものかわからぬというけれども、だれのものかわからぬという意味ではこれは公表しなければすべてのものがわからない。写真だけがわからぬという言い方が私にはわからない。そのことが一つ。それからもう一つは、一般に他の著作物と違うから性格上写真は短くすべきだ。それはさっきから何回も伺っておることなのです、これは。それに対する意見は私としては別に持っておりますけれども、それは別として、短くすべきであるから公表の時を起算点とするというこのことが私にはわからない。つまり文芸作品とか、他のものは生存中から著作権というものが与えられている。そうして死亡時から五十年というものがまた与えられております。そういうことがある。そうすると、写真だって公表したもの——公表しないもの、だれのものかわからないものは別として、公表したものはやはり同じ取り扱いにして、そうして死亡時から何年という、そのどれだけ差をつけるかということが、もし客観的に議論が成り立つならば、起算点を同じにして差をつけるというならば話しはわかるのだが、一方は公表時、一方は死亡時だ、この点がどうしても私にはいまの説明では納得がいかないのですが、もう少し詳しく説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/49
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050・秋山長造
○秋山長造君 ちょっと御答弁の前にこれに答えてもらいたい。
いまの鈴木委員の御疑問の点は全く私も同じ疑問を持つのですが、同時にいま審議官のお話で、写真は著作者の表示のない場合が多いということをしきりにおっしゃるわけです。そうすると、その反面の解釈として、写真の著作者の表示さえはっきりしておれば、それはもう一般文芸作品等と同じに死後何年という、死後起算ということになるのですか、ならぬのですか、それもあわせて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/50
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051・安達健二
○説明員(安達健二君) 現在無名、変名の著作物、すなわちだれのものかわからない、あるいはほかのペンネームで、しかも一般に知られざるペンネームで書いたものにつきましては、これは公表後、発行後起算になっているわけでございます。それから映画、それから団体の著作物も公表時から起算すると、こういうようになっているわけでございまして、いわば写真について無名または変名の著作物と同じような考え方に立っておるということだろうと思うのでございます。それから写真について一般より短い。その短くする場合、そういう写真の一般的な利用形態ということと、やはり写真を一般の著作物よりも短くして、社会公共の用に使うというような意味で、公表時のほうが当然短いわけでございますから、そういう両方の観点から、公表時から起算時になっておるというのが世界的な傾向でございますから、それに従ったものであるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/51
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052・秋山長造
○秋山長造君 著作者の表示のある場合はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/52
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053・安達健二
○説明員(安達健二君) 写真の場合、表示があるとないとを問わず、やはり公表時から、発行時からでございます。ですから、一般的にそういうものが多いということ、それからなるべく早く社会に使わせるということ、そういうような点から、たとえば公表のものであれば、大体その事件というものが出ていれば、そのときのものの公表であるということが推測できるわけでございます。そういう写真そのものから保護期間がわかるようにする、こういう観点に立っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/53
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054・秋山長造
○秋山長造君 さっきの御説明で、著作者の表示があるとかないとかいうことが、だいぶこれを区別している、差別している相当重要な要素になっているように聞いておったのですがね。写真の場合は表示のない場合が多いから、もうあってもないものと同じように扱う、こういうことですか。そこらはやはり写真と一般文芸作品とを差別するぐらいなら、同時にもう一歩立ち入って、たとえば差別するならするにしても、著作者の表示のないものと、それから著作者の表示のある場合もまた使い分けていくというぐらいの配慮が私は必要なんじゃないかと思うのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/54
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055・安達健二
○説明員(安達健二君) その点につきまして、実は日本が入っておりますベルヌ条約の関係では、その著作物の保護について特に様式を要しない。名前が書いてなければ保護しないとか、そういうことをしてはいけないというようなことになっているわけでございます。したがって、氏名が表示してあるからそれをよけい保護するというようなことは、それは特に保護しないわけだからいいとは思いますけれども、やはり特に名前がある場合に限って保護期間を死亡時起算にするということは、写真の著作物が同じであるのに非常な差になるわけでございますから、それはちょっと認めがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/55
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056・蒲生芳郎
○政府委員(蒲生芳郎君) ただいまの写真の起算時、起算点につきまして、いろいろ国際条約の関係とか、外国の例とか、あるいは専門技術的な立場を審議官から御説明いたしましたが、もちろんそうでございます。ただ、もう一つは、これはそういう技術的な観点を離れまして、最初に私が申し上げましたように、写真に限らず、著作権問題につきましては非常に利用者側と著作権者側との利害の対立がこれははっきりしている。そこでまあ最大公約数というふうな、私、表現を使いましたけれども、やはりそこに何らかの調整をしなくてはまとまらないというものがこの性格でございます。そこで、まあ現行法に見ましても、死亡時と公表時に分かれております。それがいいか悪いかということは一応別にしまして、現行法でもそうなっておるということと、それからさらに十年を一挙に五十年にするという大幅な期間延長をしなければならない、そういう双方の利害関係を十分にらみ合わせまして、そうしてどちらもがまあまあ納得するという線は、こういうことではなかろうかというのが著作権審議会の答申になってあらわれ、また、文部省においてもそういう取り扱いにしておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/56
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057・秋山長造
○秋山長造君 その局長のおっしゃるまあまあというところが実は一番不満の出ておるところだろうと思うのですよ。私どもの気持ちをもってすれば、外国がどうだとかこうだとかいうようなことだけでは、やはりほんとうに文部省がこれだけの膨大な新法を打ち出される根拠として、どうもちょっとあやふやなというか、自信がないというか、確信がないというか、そういう感じを受けるのですが、まあ審議官の、ローマは一日にしてならずというごあいさつにも、著作権法はまず何よりも著作者を保護するということが第一でございます、趣旨は。第二として、同時に、しかし死亡者の立場、さらにまた公共の立場、こういうようなものも無視するわけにいかぬ。こういうものも加味して考えなければいかぬということで、双方の妥協の線として、いまの局長のおっしゃられることばで言えば、最大公約数みたいなもので、まあまあここらが妥協点じゃないかということが発行時と死亡時起算とのズレになって出るのだろうと思うのです。思うのですが、ただ、これだけの説明では、いまおっしゃるようになかなかわれわれもどうも納得し切れぬし、いわんや関係者は、これはとても納得しないだろうし、また、納得せぬところから、やはり今度は文部省は使用者の立場、業者の立場をあまり気にし過ぎるのじゃないかという不満、誤解かもしれぬ——あなた方からいえば誤解かもしれぬが、そういう非常な不満が出てきているゆえんでもあるのじゃないかと思う。私ども簡単に考えるのだけれども、五十年同じように延ばすのだったら、さらに竿頭一歩を進めて、起算時も同じにするくらいの思い切った手を打たれるべきじゃないか、そのほうがかえって写真そのものの著作物としての質的な向上をはかっていくことにもなるのじゃないかというように思うのです。これはまあ写真というと、一口に言いましてもピンからキリまでありますわね。しかし、それは写真に限らぬので、一般文芸作品でも何でもピンからキリまであるのですね。しかし、歴史何代の後までも残るりっぱな作品もあれば、駅でちょっと買って読んですぐ捨てていくような作品もある。それを別に区別しているわけじゃない。結局、何ですか、私どうも写真の関係者が言っておられるように、どうもやっぱりいろいろ議論はしてみても、せんじ詰めていくと、結局気持ちの底に写真というものはたいしたものじゃない、写真なんかだれでもとれる、やれるのだ、ところが書いたものはなかなかだれでもはできぬ、だから程度が高いものである、写真はそれだけ程度が低い、社会的地位が低い、そういう先入観がやっぱりあって、こういう差別をしているのじゃないかということに、せんじ詰めていくとなってくるのじゃないかと思う。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/57
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058・安達健二
○説明員(安達健二君) あらゆる著作物と同様に、写真についても非常にいいものから悪いもの——悪いものというか、低いものがある。これは同じでございますけれども、写真の場合には機械的な操作というものの占める位置が一般的に多いというところが、やはり一番写真について一般のものとは違った待遇をする基本的な考え方だと思います。それについてはいいもの悪いもの一緒にある場合に、その場合の基準をどこにとるか。いいものを基準にして考えるのか、あるいは一番低いものを考えるかということで、中間をある程度とるといたしますると、一般の著作物であれば平均的に言って——もちろん中には高いものもありますけれども、平均的に言って、やはり写真に対する著作物性の評価が低いということは、これはやはりあえて日本のみならず、世界各国ともそういう悩みを持っておるということだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/58
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059・秋山長造
○秋山長造君 その点についての議論は一応ここでやめておきますがね。またもう少し私のほうも研究した上で、もう一度質問したいと思います。
どうも、いまおっしゃるところでは、専門家はもちろんでしょうけれども、私らもどうももうぴったり納得いくところまできません。これはもう考える余地はありませんか。いまおっしゃる議論でもうとことんまで突っぱねられるつもりですか。各方面の関係者その他の意見を聴取するために延びている、それが一つの理由になっているんですけれども、これは関係者の意見の中でもこれは一番大きな意見の一つじゃないかと思うんですけれども、いまの点はそういう御意思ありませんか、もう少し考え直してみようという。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/59
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060・安達健二
○説明員(安達健二君) 保護期間につきましては、審議会でもってさんざんもんだわけでございます。最初のとき発行後二十五年にして文部省に登録して、芸術的価値の高いものはさらに二十五年延ばすという案があったわけでございますが、そういうようなことを区別することは不可能であるということで、まあ公表後五十年という線が、審議会でさんざん審議された結果、そういうふうになったわけでございます。したがいまして、こういう技術的な点は別といたしまして、基本的な保護期間の点につきましては、やはり審議会の答申を尊重するというのがたてまえというようなことで、現段階においてはやはりなおそういう従来の審議会の線を尊重していくべきではないか、現段階においてはそう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/60
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061・秋山長造
○秋山長造君 まあ、さっきも申しましたように、この点についてはまたもう少し私のほうも十分研究した上で、もう一度質問をしてみたいと思います。
次に移りますがね、まあいずれにしても写真は起算時については問題が依然として残っておるとして、保護期間についてはこれは非常に大幅な改正だと思う。で、これは今後、これが成案になった場合、もう動かぬと思いますが、そのとおりですね。五十年というのは動きませんね、今後。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/61
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062・安達健二
○説明員(安達健二君) 最終案といいますか、それは法制局の審議を経て、閣議を経てきめられるわけでありますから、ここで私がどうこう申し上げることはできないと思いますが、一応、事務的にはそういう案で進んでいくだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/62
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063・秋山長造
○秋山長造君 大臣、その点、動かぬでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/63
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064・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) 実は私も著作権法につきましては改正をしなきゃならぬというのはずいぶん前から聞いておったのでございますが、私どもが体験を通しまして一番むずかしい法律の一つだと思うのです。それはいま申しましたように、個々の著作権者の保護という問題から立脚いたしておりますが、個々の著作権者の保護につきまして保護期間を定めますことについては、これは科学的に的確な一つの数学とかといったようなもので割り切れるような問題でなしに、非常に議論の分かれる問題が相当著作権法にはあるのでございまして、そういう意味から申しますと、非常に保護期間一つだけをとりましても、これをどのようにするかということは困難な法律でございます。これが今日まで長く著作権法の改正ということが要望されながら手をつけられなかった一番大きな原因ではないかと思います。そこで、文部省としましては、この要望にこたえるためにどうしても全面的改正をしなければならぬというので、著作権制度審議会を開きまして、著作権制度審議会におきましても、いま申されましたように、たとえば写真の問題一つとりましても、ずいぶんこれは論議を重ねられてまいったのでございます。なお、著作権の保護という問題と同時に、使用者側のほうの利益も非常に錯綜いたしておりまして、一つの事柄でも、決定することにつきましてはいかに決定するかということが非常にむずかしい問題でございます。そういう意味合いにおきまして、この著作権法の改正は非常に困難な問題でございますが、しかし、これはやはり法律改正といたしましては、ある程度におきまして一応衆知を集め、まずこの点においてこうきめなければという結論を得なければならぬと思います。そういう意味において著作権の審議会にこれを諮問いたしまして、私どもといたしましては審議機関で、通常、審議の答申を得ますれば、その答申をできるだけ尊重して、いろいろ議論はありましょうけれども、その線に応じてきめるというのが通常の例でございます。ただ、この問題は、実は秋山委員のおっしゃいますように、一番論議の中心になっている問題でございますので、今後、法制局との法案の審議の過程におきまして十分なお論議をいたしまして、適当な線にきめてまいりたい。ただ、結論といたしましては、やはり文部省の立場としまして、できるだけ本筋としましては審議会の答申を尊重するという線にございますので、十分いまの御意見等も参酌いたしまして研究をいたしてまいりますけれども、まあ審議会の意見、答申を尊重するという大きな線がございますものですから、それを極端に死亡時にということに変え得るかどうか、この点についてはいまはっきりと明言はできないと思います。なお、また一つは、著作権の保護は国際的なものでございまして、その著作権改正の一つの大きな理由も、世界の情勢に即応して国内の著作権の問題を解決するという点がございます。したがいまして、いろいろ論議の問題はございましても、やはり世界の趨勢と申しますか、これにはある程度歩調を合わしていかなければならぬという点もございまして、おそらく審議会におきましてはそういう点も十分考慮いたしまして答申をなされたことと思うのでございます。でございますから、非常に理論的にはむずかしい点がございますけれども、なおまた、必ずこれを御意見のとおりに変更するということはいま私は断言はできませんけれども、十分御意見の点を考慮いたしまして、審議の際には慎重にこれらを取り扱ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/64
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065・秋山長造
○秋山長造君 いまの点は大臣が十分さらに御研究になるということですから、ぜひそうしていただきたいという強い要望を申し上げて、さっきの本質的な問題につきましては、また機会がありましたらあらためてお伺いすることにして、一応その点の御質問は打ち切りにします。
それからベルヌ条約ですが、ベルヌ条約で、この間、楠委員の御質問に対して、局長でしたか、審議官でしたか、お答えになったわけですが、大体、問題になる項目、この間おあげになった問題点ですね、ああいうものがそのまま通るとした場合に、いまの文部省の草案というものは相当やはり手直ししなければならぬことになるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/65
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066・安達健二
○説明員(安達健二君) 審議会の段階、あるいは草案の作成の段階におきまして、ストックホルムでの動静などもある程度は考慮いたしておったわけでございまして、したがって、ストックホルムのベルヌ条約の改正があったからといって、現在の草案に根本的な変更を加える必要はまず起こることはないと思います。ただ、中で規定されてある事項、いま草案に規定されてある事項が、現行のベルヌ条約、ブラッセル規定等を考慮して書いてございますが、その規定がかりに世界的に削除されますると、草案において書いておったものについて再検討を加えて、やはり世界の情勢に合わしていくというような意味で削らざるを得ないというようなところも出てくるだろうと思います。たとえば、現在、新聞の社説でございますが、社説は他の新聞、雑誌に掲載するにつきましては、これは自由であるというような規定がございますけれども、これが条約上、そういう規定があることに基づいて現行法は定め、そして草案もそういう規定をいたしておりますが、この条約の規定の削除が提案されておりまして、これに対して反対している国が日本と、あとポルトガル程度でございます。したがって、この日本の反対はあるいはこの条約会議で通らないというようなことになりますると条約から落ちる、そういうようなことになりますと、草案の中からも落とすことの検討をしなければならぬというようなところが出てまいるわけでございます。そのほか翻訳権の留保につきましては、この前も御説明申し上げましたけれども、現行の条約ではそういう留保ができる。その留保に基づいて、十年間翻訳物が発行されなければ、以後は自由であるというその規定の根拠を失うわけでございますので、これは草案ではすでに廃止のようになっておるわけでございますけれども、そういう点にも影響があるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/66
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067・秋山長造
○秋山長造君 ベルヌ条約の問題は、ストックホルムの会議が済まなければいよいよ確定的なことは言いようがないと思います。これはもうそれでおきますが、そこで、今度の改正に直接触れるわけですが、今度の暫定延長について、いままで主として写真のことについて議論してきたわけですけれども、それほど写真の問題はやっぱり一つの大きいひっかかりになっている。そういう事情を一切無視して、ただ事務的に二年再延長ということにして、写真なるものは一切除いてしまうということは、どうもいままでのここでの議論の過程から考えても、また事実、著作権の審議会ができ、そうして審議会でいろいろ議論をしてき、さらに昨年の春答申が出、さらにそれに基づいて文部省が確信を持った法律草案というものを発表され、そうしてさらに世論の批判を十分聞き入れていくと、こういうずっと経過から見ますと、ここで二年の再延長をやるについて、これだけ、写真は一切除くというのはどうも不自然だと思うんですがね。だから、二年延長するのは正式の法律案にこそなって国会に出てきてはないけれども、文部省がそれだけの確信を持ってとにかくこの法律草案というものを発表されているわけです。いろいろな考慮はあるにしても発表されているわけですから、だから、その中にも写真については、現行法よりはうんと進んだ内容を示されている。その趣旨からいいますと、今回の再延長の場合には、当然写真も含めて二年ということにされてしかるべきではないかという気が強くするわけですがね。せんだって来の御説明では、そういうこともあるにしても、とにかくここでは前二回とも写真を含めないで事務的にただ延長してきたので、またそのやり方でもう二年事務的にそっと延長するだけだから問題ないじゃないか、こういうもうあっさりしたお気持ちのように受け取れたのですけれども、そうあっさり扱えぬ問題じゃないかという気がするのですが、その点いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/67
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068・蒲生芳郎
○政府委員(蒲生芳郎君) いまおっしゃいましたように、前回の委員会でもお答えしましたわけでございますが、この写真をやはり今回の暫定延長に入れるべきだという意見もございます。しかしながら、先ほど秋山委員がおっしゃいましたように、当初の三年暫定延長の際もそうなっておりますし、そのほか団体名義のものについてもこれは延長されておりませんので、前々回、前回の趣旨どおりに現在延長しているものだけを延長する。そうして将来近い機会に全面的改正をいたしまして、写真も長期の保護期間にいたすということでありまして、ただいま文部省といたしましても、すでに審議会の答申も得て提出しておりますので、原案を認めていただきたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/68
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069・秋山長造
○秋山長造君 いや、それは局長としてはそのほうが都合がいいんでしょうけれども、だけれども、いまの客観情勢というものがだいぶ変わってきたと思うのですよ、この著作権の改正の問題をめぐる。まだ第一回、第二回のときには、いよいよ審議会が一体写真についてどういう具体的な結論を出すやもわからぬ。それからまた、それに基づいて文部省がどういう腹をきめられるかわからぬ段階ですからね。ですから、まあ非常に事務的にすっとこうやられたような面があるし、それからまた関係者にしても、あとで聞いてびっくりしたようなことだったかもしれぬ。しかし、もうこれだけの具体的な内容を持ったものを天下に発表しておられるわけですし、また、それによって文部省の根本方針というものも明らかになっておるわけですね。まあ二年以内には少なくとも写真についてはいままでの十年が五十年になるということも、これは九分九厘間違いないでしょう。そういう段階で暫定延長をやるわけですからね。だから、前二回にわたってやったときとはだいぶ違うと思うのですよ、事情が。だから、この新しい情勢の中で、やむを得ず暫定延長を二年やるわけですからね、だから必ずしも前二回のとおりをやらなければならぬという理由はないし、それからまた、やらなくとも別に不都合だということはないのですね、そのときの新しい情勢に即した処置をしたらいいわけですから。だから、これはやはり二年間ついでにと言うてははなはだ語弊があるのですけれども、私は二年間暫定延長をやるなら、どうせもう二年たって新しい著作権法ができたら、今度五十年と、こうなるのでしょう。だから、そこの切れ目のところだからなおさら問題が重大だと思うのですよ、延長がね。だから、写真を含めたらどうですか、含めるべきじゃないかと思うのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/69
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070・安達健二
○説明員(安達健二君) 多少、事務的に説明をさしていただきたいと思います。最初のこの暫定延長は、衆議院でございましたが、議員提案で成立いたしたわけでございます。そうしてその際に、暫定延長をする著作物の範囲につきまして、演奏個所と録音物、レコード、それから団体名義、それから写真と、この四つの著作物についてはこれは手をつけないと、こういう考えであったわけでございますが、その考え方がどういうところであるかと申しますると、当時ベルヌ条約でも一般の著作物については死後五十年を各国の義務とするというような規定があるのに対しまして、写真については各国の国内法で適当にきめてよろしいというようなことで、世界的に見ても国際的に見ても、そういう一定の線が出ていない。したがって、それは審議会において十分審議をし、そうして新しい法案の中で考えるべきである。特に写真については他にいろいろ問題もある。たとえば嘱託写真と申しまして、人に頼んだ写真については頼んだ人に著作権があると、こういうような点についても問題がある。その他写真が非常に多様に使われる点からいたしまして、これがだれが著作者かわからないというような点を何とかしないとできないとか、いろいろ使用者のほうからの意見もございます。そういうような点からして、写真については基本的な制度とあわせて、そのときに初めてその点に手を加えるべきであると、まあこういうようなことで、写真と録音物と演奏個所は保護期間をそのまま延ばさずにきておるわけでございます。したがいまして、このたびの段階において、いまおっしゃいましたように、この際写真も考えたらどうかということも、もちろん考えられるところでございますが、いうなれば、いままでの暫定延長を二回、今回を含めまして二回でございますが、バスを走らせて途中で給油をしているようなかっこうでございます。もし写真を新しく手をつけるとすれば、新しいバスをもう一台出すということになるわけでございまして、それは結局新しく著作権制度の内容に入るということになりかねない。そういう面からしますと、最初の議員提案の御趣旨に従って、これをいままで出たバスに給油をしていく、そうしてできるだけ早く新しい法案を提出して御審議を願う、そういうのが事務的にいって一応筋の通ったものではないか、こういうことで、この写真を今回除いた、従来どおり除いたと、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/70
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071・秋山長造
○秋山長造君 パスの話なんか持ち出されても、それはちょっとこれには当たらぬと思うのです、そんなことは。私はそもそも初めから乗せなんだのが悪いので、漏らして出発してしまっておるのだからね。最初乗せずに、積み残してほうっておいて、それでもう最初に乗せなんだからここでも乗せぬというようなことで、それはバスの議論というのはどっちでも立ちますよ。そういうのは水かけ論ということになる。だから、新しいバスを出すことに私はならぬと思うのですがね、本来乗せるべきものを乗せずに積み残しているのだからね。それをいま気がついたわけだ。前二回はすっとそのまま惰性的にやってきて、いま重そうだから今度も乗せぬのだというのは親切じゃないんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/71
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072・安達健二
○説明員(安達健二君) ちょっとたとえが悪いのでございますけれども、三十七年のときに暫定延長いたしましたときは、そのときに保護期間が切れる著作権者の遺族を保護すると、こういうことでございまして、そのときに切れんとしておる著作権者の遺族が、いわばバスに乗っておるわけでございます。ところが、今度の場合は、今度切れんとする、発行後十年になんなんとするものを延ばすということでございますから、やはりその利益を受ける人は、現在この法案でさらに二年延長いたしますることによって利益を受けるのは三十七年に延長を受けた人の権利だけでございます。ところが、これに対しまして、この写真について、かりに二年を考えた場合には、現在、ことし四十二年度の終わりに発行後十年が切れるものをさらに延長するということでございます。したがって、言うなれば同じバスには乗れないというかっこうになるわけで、新しく写真が、この発行後十年になんなんとするものをどうするかという問題でございますから、前の一般の著作物の場合とは違うものが、保護を受ける客体といいますか、権利を受けるものが違うというわけでございます。そういう意味で私は申し上げたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/72
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073・秋山長造
○秋山長造君 違うといえばそれは違うかも知れぬ、それは写真と一般文芸作品とは違うのですからね。違うのだけれども、しかし、片一方は三十年で現行でいけば切れておる。それをさらに暫定延長三回やって七年延ばすというわけですからね。だから、それも性質が同じだといえば同じだけれども、違うといえば違うので、新しく七年保護期間をプラスするわけですからね。ですから、写真のほうは当然新しい法律ができれば、いままでの十年が五十年になる、これは一つの期待権ですわ。ですから、それを直前にして暫定延長をやるんだから、しかも、それが本来なら文部省が最初審議会をつくられて、最初の見積りでは、もはやとっくに何年も前に新しい法律案ができて当然保護のワクに入れておくべきものなんだ。それは文部省の間違いだとは申しませんけれども、まあ、いずれにしてもいろいろな事情で延び延びになっているわけですからね。それだけ当然もっと早くから五十年のワクに入れて、そして保護さるべかりしものが保護のらち外に置かれるわけですからね。だから、今度の改正について、その中の一部でも、二年だけでも救済するということは、これは別に、そう新しい問題だから全然問題にならぬという性質のものじゃないんじゃないかと思うのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/73
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074・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) この写真の延長の問題は、法案作成のときに実は省内におきましてもいろいろ論議をいたしまして、それで結局、過去二回延長いたしましたとおり、それだけを延長するという形をとったのでございます。この写真の問題は、一応この写真だけ取り残すのはおかしいということも言えるのでございますが、いま安達審議官から申しましたように、この著作権、普通の著作権のほうは死後五十年ということは、これはベルヌ条約で各国が義務的にこれを規定しなければならぬということになっておりますが、写真のほうはその国内において国内法でそれを規定するという関係になっておるわけでございます。したがいまして、法案が、著作権法を改正するまではやはりこれは、もちろん普通の著作権もそうでございますけれども、写真の場合は一応答申で五十年ということになっておりますけれども、現行法を改正するまでは現行法によってこれは左右されると、これはもちろん両方とも現行法によって左右されることは同じでございますけれども、期待感においては多少そこに違いがあるということが一つ。それからもう一つは、いまもし写真だけを延長するといたしますと、過去二回延長したのでございますが、過去二回のときにちょうど切れている、写真だけ延長しなかったことによって切れたのが、いわば失権した権利がございます。ここで、ことし今度の法案が成立のときにこの写真だけを今度期限がちょうど十年になって切れるものだけを救済いたしますと、過去にまあバスに乗りおくれたものを拾い上げてやらないと非常な不公平な問題が起こってまいると思います。そこで、乗りおくれました、過去の二回の延長の際乗りおくれたものをこの際この法律でこれをどう助けていくか、これはもうすでに失権したものをまた復活するというふうなことはほとんど不可能だと思います。そこに非常に不公平な問題が起こりますので、写真についてははなはだ気の毒だと思います、実際問題としては。しかし、これは、これを救済するためにはどうしても早くこれを、法案を成立させるということよりほかには方法がないのではないか、しかも、私どもは非常にいろいろ論議をいたしましたけれども、その過去に乗りおくれたものの不公平、これを救済する方法が事実上ないのでございますから、やむを得ずこれは現行法できめるということになっておりますので、非常に気の毒ではありますけれども、この際はいままでのとおりの過去において延長いたしましたもののみを一応この際再延長いたしまして、写真についてはできるだけ早く法案を成立の運びに至ってこの不公平を救済すると、これよりほかにないと、実はいろいろ論議したんでございます、この問題は。しかし、最終段階におきまして、私も実は写真だけ残すのはおかしいじゃないかということを相当省内におきましても論議いたしましたけれども、そういう点を考慮いたしまして、やむを得ないので、まあ写真のほうについてはひとつ、こう申しましても、二年延長いたしましたけれども、できるだけ一年以内ぐらいにこの法案を成立するようにいたしまして、できるだけ早くこれを救済しようと、こういう気持ちでいまやっておるのでございまして、この点は確かにこの写真だけについては気の毒に思いますけれども、そういったような事情でひとつこの点をお許しを願いたいと思っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/74
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075・秋山長造
○秋山長造君 乗りおくれたとか、不公平とかいうこともそれは考えようだと思うのですよ。それはその部面だけとっていえば、みんな乗りたいというのを、その中に乗せぬものと、それから新しく乗すものとができるのですから、それは一種の不公平かもしれぬけれども、そういうことは問題にしておらぬのです、いまの関係じゃ。そういうことを言っていないでしょう、その最初の第一回の暫定延長のときまでさかのぼって救済せよということはちっとも言っていない。これから乗せようと思えば乗せ得るというところでこの議論をしているわけですからね。そうして、過去へさかのぼろうというのではないのです。しかも済んだことをまたさかのぼれといっても実際問題として無理でしょう。だから不可能なことを言っているのじゃない。いまの、今回の延長について、この写真を入れるということは、入れる意思さえあればやり得るのですから、だから前二回の分はこれはやる意思があってもやれぬですよね。実際問題としてもうすでに消えているのですからね。だから、ないのですから、それは不公平といっても非常に不公平ようが違うと思うのですが、それより写真と一般著作物の不公平のほうが大きいし、それを問題にしているのです。せめてここで写真でも入れればまあまあ、大きな不公平があった、全部は過去にさかのぼって救済できないにしても、一部でも救済できるじゃないか、まあ十分でないとしても次善の策としてその程度でも、やらぬよりはやったほうがはるかにいいじゃないかというほうにぼくは重点があるので、写真の関係者だけの過去と現在とのことを比べて不公平があるということは、一見親切のようでまことに不親切なこれは考え方じゃないかと思うのですがね、どうでしょう。ここで写真を入れても別にそれは問題はないのじゃないですかね、その関係者からの問題は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/75
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076・安達健二
○説明員(安達健二君) ただいま大臣の申し上げましたことのほかに、私が先ほど申し上げたことでございますけれども、特に使用者のほうといたしましては、一つは保護期間について五十年は長きに過ぎる、二十年にすべきだという意見が一つ出ております。これは別といたしまして、その写真の権利の保護期間を延ばすならば、その権利の制限と申しますか、あるいは使用しやすいようにする、使用の円滑化、こういうような点のものも含めてやってもらいたい。すなわち権利の保護の延長と同時に、それの権利の制限、内容についても整備した上でやってもらいたいというのが使用者側の意見もあるわけでございます。これは権利者を保護すると同時に使用者の立場もこれはやはり考えなければならない、こういうことで、そういう問題になりますると、これはやはり結局、本法の問題になるわけでございますから、したがって、その問題は本法までしばらく御猶予を願う、こういうこともまたあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/76
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077・秋山長造
○秋山長造君 この件についてはとれは改めてもう少し議論をしたいと思いますが、ほかの委員からもこの点について焦点を合わせて私は質問があると思いますから、きょうの私の質問はこれで一応ケリにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/77
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078・鈴木力
○鈴木力君 関連。いまでなくてもいいのですけれども、いまの御答弁のうち、これからの審議に必要となりますのでお願いしたいのですが、この不公平になるということですね、不公平があるといういま大臣の御説明があったのですが、写真はとっておきまして、いわゆる二カ年を延長するこの法律を適用する種類の著作権の乗りおくれたものがあった、その場合に乗りおくれないで、ずっといったものと乗りおくれたものがあるのかないのか、——よろしゅうございますか、たとえば、文芸作品なら文芸作品に限って、この延長の法律もずっといままで延長してまいりまして今後延長するわけでしょう。そのときに、不公平論、公平論から言いますと、同じ文芸作品で何か一つがかりに切れたものがあるとすれば全部切らなければ不公平なわけですね、そういう扱いがどうなっているのか、具体的に切れたものがどの程度あって、切れないで進んだものがどの程度あるのか、この辺はこの次までに資料をひとつお出しいただきたいと思います。
それから、第二点につきましては、著作権法の改正について使用者側からの意見がある、そのことは何べんも答弁をされました。しかし、この著作権法の目的は、第一が何であるかということはもう明らかにされておりますね。著作権の所有者を保護するということが第一だ。いま写真の議論を言いますと、使用者の側からいっても二十年という意見が出ておる。是非は別といたしましても、二十年以下に詰めろという意見は一つもない。そのときに、いまこの十年とある、十年のために切れているものもあるのでしょう、写真でも。それからことしじゅうに切れるものもある、来年じゅうに切れるものもあるでしょう。ところが、実際は少なくとも二十年にすべきだというのが、最短の延長をすべきだという意見があるわけです。使用者側の意見をとってもですね。最長は五十年ですよ、少なくとも文部省がこの法案の提出者として、かりに使用者側の意見を全面的に取り入れたとしても、二十年よりも短い著作権保護期間というのはないわけです。そのときに、十年で切れるのをこの際あと二年一緒に他のものと延長をして、延期することが法案の基本的な審議にじゃまになるという理由は私にはどうしてもわからぬけれども、その点について具体的にこの次まででよろしゅうございますから、理論的な根拠、説明、そういうものをひとつできれば文書で資料として私のほうにお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/78
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079・安達健二
○説明員(安達健二君) ちょっと資料につきまして、この前の三十七年の延長措置で著作権が延長されて現在にまで及んでいる。で、それが五十年にまで延びる可能性があるものといたしましては、たとえば梶井基次郎とか、宮澤賢治、小林多喜二、巌谷小波、新渡戸稲造、あるいは「牧場の朝」を作曲した船橋榮吉、そういう方がございます。もちろんその前に切れた、たとえば夏目漱石というようなものは、もう当時三十年を経過しておりますから、この延長措置には乗っかってとないわけであります。ただ、著作物は非常に無限にございますから、ごく代表的なものだけでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/79
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080・鈴木力
○鈴木力君 問題は、たとえば夏目漱石が切れた。そうすると、大臣の公平論から言えば、同じ種類のものは一わたりは切らないと公平にならぬわけだ。それが公平になっているのか、不公平になっているのか、資料を出してほしい、そういうことです。
それから、写真に限っては、さっき言った、あとに言ったことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/80
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081・大谷藤之助
○委員長(大谷藤之助君) 資料は後ほど提出していただきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/81
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082・大谷藤之助
○委員長(大谷藤之助君) この際、委員の異動について報告いたします。
本日、北條浩君が委員を辞任され、その補欠として北條雋八君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/82
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083・大谷藤之助
○委員長(大谷藤之助君) 教育、文化及び学術に関する調査中、昭和四十二年度文部省の施策及び予算に関する件を議題といたします。
質疑のある方は順次御発言願います。
なお、政府側より剱木文部大臣、斎藤初中局長、西田審議官が出席いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/83
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084・秋山長造
○秋山長造君 この際、いつかのこの委員会で剱木文部大臣が文教行政についての所信の表明をおやりになった、あの御所信に関連をして、剱木文政の基本的な問題について何点かお考えを伺っておきたいと思うのです。
本論に入る前に、この委員会でも再々議論になってきたことですが、例の日教組との、会うとか会わぬとかいう問題です。これについて、私、突き詰めた議論をするつもりはありません、きょうは。ただ、私ごく常識的といいますか、常識的な立場から常識的な御質問を若干申し上げたい。
このILOの問題だとか、あるいはその他それに関連したような理詰めの問題じゃなしに、きわめて常識的なお尋ねをざっくばらんに申し上げてみたいと、私はこういうような感じを持っているんですよ。先般来、この委員会でも、衆議院の委員会でも若干論議があったようですけれども、この問題になるとどうも大臣もそうだし、文部省全体としてもそういう感じを受けるんですが、非常に肩張った議論にこうなってくるんですね。一語一語、お互いにゆるがせにうっかりしたことをしゃべってはしっぽをつかまれるというような感じですね。何か非常に問題が肩張ってくるんです、日教組の問題になるととたんに。私はそれはいままで長い間のいろんな経緯がありますからね。だから一度にざっくばらんに丸裸で議論せいと言っても、なかなかこういう公開の席でもあるし、しにくい点があることは若干私はわかりますけれども、それにしても、そういう点を十分理解したとしてみても、やっぱり不必要に、どう言いますかね、力み合うとか、肩張り合うというような感じを非常に受けるんですよ。日教組のこの倫理綱領がどうだとか、実力行使がどうだとか、いや一札書いて持ってこいとか、持ってこぬから会うとか会わぬとかいうようなことに、こう議論がいってしまうのですが、私はまあそれも一つの議論のしかたかもしらぬけれども、そういうことばかりに、いつまでもやっぱり一国の文教行政を背負うて立っている文部大臣がこだわっておっていただきたくないんですがね。おそらくこれは私の個人的な考えでなしに一般の世間の第三者といいますかね、大多数の人もやっぱり似たような感じを持って見ておるんじゃないかと思うんです。まあ一口に言えば、そうあんまりかみしもを着合わずに、ざっくばらんに、ときには会って話をしちゃったらどうだと、何も会って話をしたからといって何も一々拘泥しなきゃならぬとか、それぞれの立場があり、それぞれの意見があるわけですから、会って話をする以上は、相手の言うことを全部聞かなきゃならぬということはないんで、気にいらなければ、全部、け飛ばしてもかまわぬ場合もあると思うんですよ、ほんとのことを言えばね。現に国鉄にしても、あるいは全逓にしても、あるいはその他自治労の関係にしても、それぞれの担当大臣というか、関係大臣とそういうこだわりなしに、意見は衝突する場合もある、けんか別れする場合もあるけれども、そういうことのいかんにかかわらず会ってやっておるわけですよ、実際問題。それから総理大臣にしても、文部大臣は日教組の宮之原委員長とは絶対に会わぬと、こう言って力まれるけれども、案外池田さんにしても、佐藤さんにしても、何言うことなしにあっさり会って話をしたりなんかしている場合も、しばしば今日まであるわけなんです。それがなぜ文部大臣と日教組の幹部とだけの場合には絶対に会わぬというような、相会わぬというようなことになってしまっているのか。これはいずれがいいとか、いずれが悪いとかいうこととは別な問題として、どうも側から見ておって、何かたまには会って話をしてもいいじゃないか。文部大臣は一国の文教行政の最高責任者である、片一方は——好ききらいは別ですよ、好ききらいの感情は別として、片一方はとにかく事実上やっぱり日本における教職員の団体としては一番大きい団体であることは間違いないんでね。いずれにしても教育の前進、教育の発展、教育の振興ということをこいねがっているわけなんですね。それがなぜそういうようにこだわらなければならぬのかということが、どうも私はおそらく一般社会の第三者の大多数の人もふに落ちぬ、了解いかぬという感じを持っているのじゃないかと思うんです。また、そういうことはこの目先の当事者同士の、あいつが悪い、これが悪い、この点けしからぬ、その点けしからぬという議論とは別に、やっぱり日本の国全体として考えた場合、日本の教育の全体として考えた場合好ましくない。やっぱりたまには会ってざっくばらんに話をし合ってもらいたいという感じのほうが先に立つという気がしてならぬわけで、それぞれお家の事情もあったり、口に出せぬいろいろな表面に出ない事情があるから、だから、なおさらこれが常識どおりにいかぬようになっている点もあるかとも思うのですけれども、しかし、それにしてもいつまでもそればっかりにこだわって終始しておったのではつまらぬのではないかという気がする。だから、その点やっぱり大臣も、私どもの最も尊敬する政治家の一人ですからね、だから政治家剱木という立場で、形はどうあろうとも、やっぱりそういうきっかけをつかんでいく、一ぺんよりは二へん、二へんよりは三べんというように積み上げてやっていかれることが私は必要なんじゃないか、また、ぜひそうしていただきたいという気持ちを私は常識的に非常に深く持っておるんですがね、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/84
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085・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) 秋山さんから日教組との問題につきまして打ち割ったお話がございました。率直に申しまして、私は文部省の役人をいたしておりました時代、日教組とは非常に関係が深うございまして、ただいまの委員長、書記長とも個人的にも十分存じ上げておるわけでございます。そういう意味におきまして私の立場として一日も早くざっくばらんに会って、打ち解けて話をしたいという気持ちで一ぱいでございます。ただ、私の、やっぱりいまもおっしゃいましたが、お家の事情ということを言われましたが、歴代の文部大臣がずっと今日まで日教組とのこの関係においてとってまいりました態度、それから私どもの、党人でございますので、党に置かれておる私の立場、これらのことを考えますと、自分の私情だけでは動けない現状でございます。まあ、私は率直に申しまして、一日も早く胸襟を開いて話し合う事態がくればということを心の中ではこれは率直に待望いたしておるのでございますが、私のいま置かれておる立場といたしまして、直ちにそれでは会おうということを言えない立場にあるということを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/85
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086・秋山長造
○秋山長造君 大臣がそういうように考えておられるんですから、私それに対していい悪いという御批判をすることは慎しみますけれども、遠慮しますが、ただ私情、大臣一個の私情で行動することはできぬということをおっしゃいますけれども、これは私は私情じゃないと思うのです。私情でなしに、やっぱり私はそれは客観情勢が熟して——ということは、俗なことばで言えば、据えぜんに気持ちよくすわれるような情勢になればということだと思うのです、俗に言えば。だけれども、やっぱりその点は、大臣も申すまでもなくこれは有力な政治家の一人ですから、政治家としてやっぱり政治的な御判断をなさり、そうしてただ据えぜんへすわる、その整うのを待つというような受け身の消極的な態度でなしに、やっぱり私は私情でなしに信念だと思うのです、大臣の一つの。文部大臣としての政治家としての御信念だと思うのです。私情じゃ決してない。やっぱりこれは条件が整うのを待つのは、条件を整わすのはやっぱり大臣の御自身の信念の問題だと思うのですね。それは総合的なものです。条件が整うということ、整わせるということについても、それは総合的なものでありますけれども、しかし、何といっても、やっぱりこれは世間の見るところ、また私どもの見るところ、いずれにしてもこれは総合的なものであるけれども、やっぱりその局に当たられる文部大臣という人が、積極的な意欲を持たれるか、所信を貫いていかれるかどうかということの、いわゆる心がまえといいますか、態度といいますか、それにかかっている面が非常に大きいと思うのですがね。それは党内情勢その他お互い党人であることも間違いありません。しかし、党議とか、党人とか、党内事情といったところで、これはやっぱりその党内事情を変える、いろいろなこの内部に条件を変えていくということは、やっぱりお互いの努力だと思うのです。特に一国の文部大臣ですから、党人であると同時に、また党人でない面も大いにあるわけですからね。ですから、何かいいことばでずばり言いあらわせませんけれども、気持ちはわかっていただけると思うのです、私の申し上げんとしておる気持ちは。どうもからに閉じこもるのも、それが一番無難な、安易なといいますか、平穏な道かもしれませんけれども、それだけでは私はどうもこれだけ問題の多い日本の教育というものを、どこかで血路を切り開いて、一歩前に押し進めていく、一歩前進をしていくということにならぬのじゃないか。そのきっかけの一つとして、この問題をもう一度ひとつ大臣十分考えていただけぬものかという気持ちを非常に強く持っておるのですが、この問題について重ねて——この問題ばかり議論するつもりはございませんけれども、そういう気持ちでおりますので、その点についてもう一度ひとつ重ねて大臣の御所見を承って次の本論に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/86
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087・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) これは、日教組の方も、私に会いたいという意思を表示されておるようでございますが、お互い同士、これは私、教育者の団体でございますれば、いかなる人が来ても会っているわけでございますから、こういう状態に置かれないように、やはり相互に努力をしていただきたい、私も努力しますが、ただ、現段階におきましては、私は直接にはお会いいたしませんけれども、あらゆる御希望なり御意見は、私どものほうの次官なり局長なり、いつでもお目にかかりまして御意見を十分拝聴し、その御要望について、われわれがこれを国政の上に実施に移してまいらなければならぬと思いますことは、積極的にどしどし私は要望に沿った施策をやってまいりたい、そういたすことが、現実には会っておりませんでも、何と申しますか、お互いに意思が相通じておる、こういうふうに考えて現在やっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/87
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088・秋山長造
○秋山長造君 そのおっしゃる意味はわからぬことはありません。それはそれなりに了承しますから、そういう事務当局とのいろいろな話合いなり要望なり何なりということは、一そう積極的にやっていただきたいと思いますが、ただ、私どもこうやって委員会で御質問するのでも、やはりそれは局長、政府委員に対して質問すれば、それでも大体のことはわかることも多いが、しかし、同時にやはり大臣の一言の御答弁ということであっても、その一言でもやはり大臣に対して御質問しなければどうしても済まぬという場合もあるわけなんですね。だから、事務当局と必要があれば話をすればこれでいいというわけにもいかぬ。また、それは向き向きですから、また、大臣とひざを突き合わせて、そうして大きな日本の教育全体についてどうだ、ああだというこの話し合いの機会ということもぼくは非常に必要だと思う。その点についてはいま直ちに——いままでこういうように言ってこられたいきさつもありますから、だから、私がちょっと常識的に持ちかけたからといって、よろしい、それはそうしましょうということは、これは大臣もおっしゃらぬと思うし、また、それを言えといってもそれは無理ですけれども、ただ、私の申し上げる趣旨はよく御理解をしていただけるものと私は思うのですけれども、何とかして、とにかくもう一歩積極的な努力を大臣におかれましてもひとつしていただきたい。ぜひそういう機会を早くつくるように心がけていただきたいということを重ねて強く要望しておきます。
それから引き続きまして本題に入りますが、御承知だと思うのですけれども、前々大臣の中村さんは、去年の夏やめられる直前だったと思うのですけれども、戦後二十年たった、二十年と言えば常識的に一区切りつくところもあるし、まあいろいろ二十年やってみて、六三制の教育制度というものについて一つの再検討の時期がきたという趣旨から、まず義務教育の就学年齢を一年引き下げたらどうかという発言をされて、それが相当新聞なんかに大きく報道されたことがあります。たまたまこれは教育の制度の再検討ということが、そういう義務教育就学年齢の一年繰り上げという発言になったのだと思う。だから、その後すぐやめられましたけれども、あとの有田さんも文部大臣に就任早々、やはり六三制の教育制度の再検討の時期がきたと思うという意味の発言があった、この委員会でもそのことに関連して若干の質疑応答があったのです。これは大臣も御存じだと思います。それから大臣、今度、去年の暮れに御就任になりましても、おそらく記者会見なんかで一番に聞かれたことは、そのことじゃないかと思うのです。この六三制の問題については、大臣のこの委員会で行なわれました所信表明の中にも、一番冒頭にそのことに抽象的ではありますけれども触れておられるのですが、この戦後二十年の歴史を持つこの六三制の現行の教育制度というものについて、大臣はどのようにお考えになっておるのか、それから、また今後そのお考えに基づいて、どういうようにしていこうとされておるのかという、ごく基本的な問題について御所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/88
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089・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) 私は、終戦後、日本が六三制を採用いたしたのでございますが、あの当時、非常な敗戦後の苦しい中におきまして、義務教育を九年に延長いたしましたことについては、おそらくこれは日本が敗戦後におきまして、文化国家、平和国家、民主国家として立ち上がろうといたします全国民の要望に基づいて、あの困難な事業を採用したと思います。その結論といたしまして、今日、戦後二十年、わが国の教育は相当の世界的にも高く評価されるくらいまでに発展いたしてまいりましたし、日本の戦後の民主主義国家の建設について、この学制改革が相当の大きな力となってきたということは、これは率直に全国民にお認めいただけるところだと思います。ただ、戦後二十年になりまして、世界的にもほとんど想像できないような日本の国力の回復と申しますか、この経済社会の進展がまいりまして、国民の文化水準も相当高まってきた、こういうふうに考えられましたときにおきまして、また六三制そのものにつきましても、いろいろ数的には世界に誇る就学率を来たしておりますが、内容面につきましても、いろいろな問題について検討を要するような問題も起こってまいっておるのでございます。そこで、私としましては、前中村大臣及び有田文部大臣も主張されたのでございますが、昭和四十二年度の予算におきまして、このことを予想いたしまして、予算的措置も多少しておるのでございまして、予算が通過をいたしましたならば、新しいスタートを切りまして、いまの学制について、長期的な視野で、将来、日本の教育はいかにあるべきかという問題について検討を実際において開始をいたしたいと思っております。ただ、先ほどちょっとお話がございましたが、中村文部大臣のときに、幼稚園にまで就学年齢を一年低下するというようなことを申されたことも承知いたしておりますが、これを私は否定するわけではありません。やはり幼稚園にまで低下するか、あるいは義務教育年限を欧米のように十二年まで延長するか、しかし、延長する場合において、高等学校の程度までこれを持っていくか、あるいは就学年齢を幼稚園まで一年低下させるか、これらの問題は、学制全般の問題といたしまして重要な問題でございますから、これらを含めまして、長期的な視野において、現在の六三制の位置づけと申しますか、現状をしっかりと把握しつつ、将来、日本の相当長期の見通しにおきまして全面的にこれの検討に入ってまいりたい。ただ、その結論は、私は学制改革というものは一朝一夕にできませんのみならず、一ぺん改革いたしますれば、そうたびたびこれを変更するわけにはまいりませんので、結局、相当慎重な研究を進めた上で、全国民の納得するような線におきまして、その結論を得るように持っていきたい。これが現段階におきまする私の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/89
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090・秋山長造
○秋山長造君 ただこの場合も、なかなか現在の学制を長期的な視野で調査研究するといいましても、多少同じ言い方でも、ニュアンスの違いが非常にあると思うんですね。というのは、つまり義務教育の年限を縮めるとか、広げるとか、あるいは就学年齢を繰り上げるとか、繰り上げぬとかというような問題、あるいは大学の制度をどうするか、いつか東大の法学部から出された、四年という大学の修学年限をもう一年延ばして五年にするとか、そういうことも六三制の再検討である。ただ、そういうことになるというと、これはある程度検討すると言いましても、検討というよりも再検討——検討も再検討も同じといえば同じようなものですけれども、やはり突き詰めて考えると、若干ニュアンスが違うと思う。いま大臣のおっしゃるように、ただ検討するとか、調査するという場合と、六三制を再検討するということになると、ある程度現在の六三制度はだめだ、だからこれを手直しをするのだという意味が、そういう余韻が含まれてくると思う、再検討ということばは。たしかに前の有田文相なり中村文相のおっしゃった六三制の再検討ということばには、いまの六三制ではだめなんだ、だから、これを何らかの形でやりかえなければいかぬのだという意味が含まれていたと思う。今度の剱木文相の長期的視野に立って検討するとおっしゃられるのは、六三制というものを否定ということもないのでしょう、でしょうけれども、しかし、ある意味では否定するといいますか、いまの六三制ではどうもだめなんだ、どうにもならぬのだ、だから、何らかの形でこれをやりかえなければいかぬのだという、そういう意味で再検討されるということなんですか、それとも、そうでなしに、ただ、長期的視野に立って慎重に調査する、検討するとおっしゃるのは、これは別にいまに始まったことじゃないので、文部大臣おそらくいつもそれはそういう気持ちで、いかなる場合にもやっておられると思うので、何にもせぬということにもそれは通ずることばだと思う。そこらのニュアンスというものは、なかなかこれは結果的には相当幅が開いてくると思う。その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/90
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091・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) 具体的に申しますと、私はいま、機関として中教審がございますが、中教審に対しまして、ただいま諮問の形を考究中でございます。そういう意味で、いかなる形式でこれを諮問するかということについて非常にいま研究をいたしておるわけでございますが、それの諮問のしかたいかんによりましては、いま申されましたように、現在の学制はネグレクトいたしまして、そしてこれを再検討して新しくやり直すんだ、こういうようなニュアンスと申しますか、これが出てこないような形においてやりたい、こういう意図をもちましていま研究をいたしておるわけでございます。もちろん私は現在の学制は、先ほど申しましたように、日本の今日までの民主主義国家としてのその意味において大きな貢献をしたと思いますし、現段階におきましても、やはり相当私どもとしては尊重さるべき制度だと思います。ただ、現在の学制そのものの中で、いろいろな問題の批判を受けておりますけれども、これは一面、いまの学制のままにおきまして、その内容面においてこれをある程度変えていく、これは常に私ども義務教育の内容におきましても、あるいは後期中等教育の問題におきましても、大学のあり方の問題におきましても、現在の学制のままで改善し得るものは現在においてもどしどし改善していくべき筋だと思いますが、ただ私は将来、日本、これは世界的にそうだと思いますが、だんだんと教育水準は上がっていくと、それから人類の知識は相当高度のものが要求されてくる、そういたしますと、やはりこの教育のもう少し高度の教育に移行するときが必ずくるんではなかろうか、そういう意味におきまして、これが世界の趨勢におくれず、日本もまたいまから本格的にその準備と申しますか、研究を進めておかなければいけないんだ、そういう意味におきまして現在の学制を否定するということでなしに、将来への発展と申しますか、これを見て、そしていまからそういう問題について真剣に調査、検討いたしますということは必要でございます。それには現在まで中教審に対しまして、単に中教審に対して諮問をするという形だけでなしに、同時に、並行いたしまして私のほうもあらゆる面から、省内におきましても、それらにおきます資料なり、研究をずっと並行的に進めてまいりまして、これに対して中教審に対して十分資料を提供し得るように組織を持って、そしてそういう一時的なものに対する諮問ということでなしに、相当じっくり考えた検討を行使していきたい、とう私いま考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/91
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092・秋山長造
○秋山長造君 大臣のただいまの御答弁で、ある程度、大臣の考えておられる長期的視野に立っての調査、検討という意味が片りんがわかるような気もするんですが、そうすると、大臣は何ですね、いままでよく歴代の大臣が、おそらく私はそれほど考えて使われたことばじゃないと思うんですけれども、ばく然とした意味で言われたかと思いますけれども、再検討、再検討という、検討の上に再の字がついてきているものですから、いま学制を論ずる場合に、再検討、再検討ということになると、やはり微妙な、これは受け取り方にもよりますけれども、いまの戦後の六三制はだめだ、これじゃとてもやりかえなければいかぬ、あれは連合国から押しつけられたようなものだというような意味をも込めて再検討ということばが使われていると思うんですが、剱木文相は、そうでなしに、やはり六三制の果たしてきた役割りというようなものはそう簡単にそれをとやかく言うわけにいかぬ、こういう慎重なお立場、お考えのようです。そこで、それを現行の六三制というものを是認しながら、さらによりよくしていこうということのように私は受け取ったんですがね。そういうように受け取っておけばよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/92
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093・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/93
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094・秋山長造
○秋山長造君 そこでね、中教審にいずれ諮問されるということですが、いま大臣のおことばにもあったように、中教審への諮問のしかたということが非常に私はやはり重大な意味を持ってくると思うんです。それについていま研究中だとおっしゃるんですがね。との諮問のしかた、諮問の内容ということは、いまどの程度固まっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/94
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095・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) これは事実の問題でございますが、先般、中教審の会長及びおもだった方と私よく懇談をいたしまして、私の意のあるところを個々の点についていろいろ懇談を申し上げまして、その結果、私の意見に御賛成をいただいたように考えます。そこで、いかなる形式で諮問をいたしますかということについては、もうしばらく私に検討さしてくださいということを申し上げておりますが、いま申し上げましたような趣旨において、大体諮問いたすという方向につきましては、一部の人でございますけれども、おもだった方の意見が一致しております。その時期その他につきましては、いまここで的確に申し上げるというところまで熟しておりませんので、もうしばらくお許しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/95
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096・秋山長造
○秋山長造君 大体それはいつごろになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/96
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097・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) 実は中教審の委員の方が大体任期が終わる、そういう方がおられますし、それから新たに予算でこの専門委員とか、そういったような増員の分が認められております。でございますので、予算が通過いたしましたら直ちにそういう中教審自体の整備と申しますか、それをまずやりまして、それは六月中ぐらいになるかと思いますが、諮問いたしますのは七月の上旬ごろぐらいまでにはやっていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/97
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098・秋山長造
○秋山長造君 中教審というものですね。中教審という制度は、これは終期はないんですか。大体私らが覚えて以来、いつも中教審というのはあるんですがね。ずいぶん重大な役割りを果たしておられる審議会のようですけれども、これは中教審というもののたてまえはどういうことになっているんですかということと、それから中教審のメンバー等について、始終いろいろ批判があることは御承知のとおりだと思う。たとえば「期待される人間像」が発表されたときには、あの人間像の内容についてもずいぶん議論があったが、同時に、「期待される人間像」を出された中教審の委員の先生方が、あまりにもお年を召した方ばかりで、それではやはりこういうように激しく世の中が動いている、進んでいる時代に即応した人間像、切れば血が出るというような生き生きとした人間像というものがなかなか打ち出しにくいのじゃないか。やはり依然として固定的な、何か明治時代の感覚のようなものにつきまとわれるのじゃないかというような角度からの批判がずいぶんあったわけです。私らも、どうもそれはある程度うなずけるわけですよ。まあそれは国鉄の石田総裁がおっしゃるように、八十過ぎても私は三十代の思想を持っていると言って、自分ではみなお年寄りはおっしゃるけれども、やはりそれは年齢というものの限界というものは、これはなかなか個人の心がけぐらいのことで踏み越えられぬ一面があるのじゃないかという気もいたします。そういう点。
それからもう一つは、これは中教審に限らず、政府関係のいろいろな審議会すべてに言えることですが、いわゆる財界人が非常に多いですね、圧倒的に、いわゆる財界人が。それは、財界人の豊かな経験あるいは識見というものを汲み上げるということもそれは無意味じゃないと思いますが、しかし、それにしても財界人というものが多過ぎるという感じを受ける。まあ中教審というような、一国の文教問題、教育問題の大本を審議するというような趣旨からいいますと、もう少しここらで——少しマンネリ化しているのじゃないかという気がするのです、委員の選び方が。少し新機軸を出して「何でもかんでもやたらに財界人、財界の老体ばかりを網羅するというようなやり方でなしに、もう少し新生面を打ち出される一つのチャンスじゃないかという感じを持つのですがね。その年齢の点と、それから、そういう選ばれる委員の職業といいますか、立場といいますか、そういう点について何かお考えになるべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/98
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099・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) 中教審のほうは、御高齢の方が多いというのは、事実そうだと思います。ただ、中教審の各委員の方につきましては、それぞれ任期がございますので、一ぺんにどうというわけにはまいりませんけれども、今後新たにお願いをする場合は、できるだけ私としましてはそういうおことばのような点を考慮していきたいと思います。ただ、今度諮問につきまして、中教審には専門委員の方を相当数委嘱することができますし、また、この問題につきまして専門調査員のようなものを相当数文部省のほうの側におきましてお願いをすることができるようになっておりますので、これらの方々をお願いいたしますときには、私は相当そういったようなものを考慮いたしまして、まあ、こう言っては悪いのですが、現役の若いところの方を相当数お願いしようと、私としてはいま心組みをいたして、人選まではまだいっておりませんけれども、大体はそういう方針を立ててずっとこの人選をしてまいろう、いままでのような姿ではないように持っていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/99
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100・秋山長造
○秋山長造君 財界人……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/100
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101・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) それから財界人もある程度入っておりますが、今度、専門委員とか、そういうものでふやします場合はどんどん専門的な方々をいたしますし、それから財界人のほうも、これは任期がございますので、一ぺんにどうということはできませんが、御趣旨に沿うようにできるだけいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/101
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102・秋山長造
○秋山長造君 斎藤局長、隣におられるから、ちょっとお尋ねしておきたいのですが、中教審というもののたてまえはどうなっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/102
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103・斎藤正
○政府委員(斎藤正君) 中央教育審議会につきましては、文部省設置法第二十六条に規定がございまして、基本的な任務としては、「教育、学術又は文化に関する基本的な重要施策について調査審議し、」あるいは「建議する。」ということになっております。それから委員につきましては、他の審議会の委員と違いまして、「文部大臣が内閣の承認を経て任命する」ということでございまして、他の審議会ではここまでいろいろなことを法律自体で書かないで、所掌事務だけを書いて、あとは政令に譲るのでございますが、中教審だけは、ていさいとして別格に、委員の構成等に関しましても法律自体に載せているという点で、まあ他の審議会に比べて文部省にとっては重要な審議会というふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/103
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104・秋山長造
○秋山長造君 新しく任期の切れる人を補充して……、ほとんど任期が切れるのでしょう、おそらくほとんど切れるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/104
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105・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) 四名を除いて、あと全部切れるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/105
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106・秋山長造
○秋山長造君 この機会に、いま大臣のおっしゃったような趣旨が貫かれるように、私はぜひ考えていただきたい。やはり教育関係は、とにかく青少年を相手ですからね、ちょっとやはり魅力のある顔ぶれをそろえにゃだめですわ。感じとしてそういう感じを強く持っている。ぜひひとつこの機会に実行していただきたい。
それから長期的視野に立ってとおっしゃるのですが、大体諮問を七月にされるとして、いつまでということがやはり伴うのでしょうけれども、大体何年くらいを考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/106
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107・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) 中教審に私このごろ申しましたのは、相当長期にわたって審議を続けていただくということで、何年の問に必ず答申を出してほしいという注文はつけないということを申しているわけでございますが、その審議をしている途中におきまして、また別個に必要が起こりますれば、必要な問題については随時諮問することがあるかもしれません。しかし、この問題は、私の心組みといたしましては、相当基本的に現代の学制なり世界の事情なり、それを相当調査いたすことが必要である。現在を把握するということが基礎になると思いますし、これが相当のやはり期間を要しますと思います。それに並行していろいろな問題を取り上げて研究してまいりますので、そういま五年とか六年とか、この年限を限るわけにはまいらないのじゃないか。ただ、そう続けておりますことによって、社会的情勢におきまして、ある変革をする実際の情勢ができれば、いつまでもそれに即応し得るような態勢だけはとっておきたいと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/107
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108・秋山長造
○秋山長造君 いま大臣のおっしゃったおことばの中にもありましたので、大体わかるのですが、もう一ぺん念を押しますが、やはり大臣のおっしゃるとおり、教育制度なんかというものは、そう機構いじりみたいにしょっちゅうつつき回すべきものじゃないと思うのです。やっぱり一つの制度というものをつくれば、それを相当長期間やっぱりじっくり育てていくというかまえが基本的になければいかぬと私は思うのです。で、六三制を論ずる論者も、えてして、もう戦後のこれはいかぬ、アメリカの押しつけだというような角度からばかり簡単にこう批評しますわね。やっぱり私はそれはいかぬと思うのです、教育制度を論ずる場合。大臣はいまおっしゃるように、きわめてそこら慎重にやられるということですからわかるのですが、私はまあ念を押す意味で特に大臣に申し上げたいのは、六三制をこれは必ず金科玉条で守れということを私は言っておるわけでも何でもない。それは必要があればどんどん変えていくということもこれは必要なことですけれども、ただその前に、戦後の六三制の二十年間果たしてきた役割りとか、六三制の果たしてきた意義、そういう功罪といいますかね、六三制の功罪といいますか、そういうものがまだどこの場面でも徹底的にこれを論議していないのじゃないかと思うのですね、たいして。六三制そのものの二十年の実態というものをそれほど深く把握しないで、簡単にこう、二十年と区切りがついたから、やはり変えなければならぬというようにすぐ飛躍してしまっているような議論が多いのじゃないかと思うのです。私はやっぱり大臣がそこまで腰を据えて、五、六年でも結論が出るかどうかというくらいな文字どおり長期の視野でじっくり取り組もうということならなおさらのこと、やっぱりこの二十年来の六三制の果たしてきた役割り、功罪というものを徹底的に私は論議していただきたい、検討されるべきじゃないかと思うのです。しかる上で、しからばどうするかという順序になってこぬと、私はやっぱりその教育——これだけの大きな教育制度を扱う大臣としては、これは私は軽率の非難を受けるのではないかという気がするのです。その点についてもう一度念を押しておきますから、大臣の御所見を重ねて伺って次に移りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/108
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109・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) 六三制そのものにつきましていろいろ私ども批判の声を聞きますけれども、それでは具体的にどこが悪いのかと聞きますと、たとえば一例としまして、六三制は上級学校の入学準備学校じゃないか、その入学準備体系に堕しているというような批判を受けることがございます。しかし、それは入学試験そのもののやり方の改善を講ずべき問題でございまして、そのことが直ちに六三制が悪いというわけにはいかぬのじゃないか、そういったような批判が非常に多いのでございまして、六三制自体において直ちにこれは変革しなければならぬというような基本的な議論というものは、まだそう私は多く聞いていないのでございます。秋山委員のおっしゃいますように、私はこの長期的な検討を始めますためには、どうしてもこの現在の六三制を十分把握していく、これを、実態を十分把握いたしました上にこの研究を進めなければならぬと、かように思っておるのでございまして、この現在の六三制が終戦後——まあこれはまた私は意見がございますが、終戦後に六三制をとりましたのは、アメリカから押しつけられたと申しますけれども、私どもは、これを日本国民自体が日本を民主主義国家として再建するためにぜひ必要だ、これは国民的熱意をもってこの六三制は採用したのでございまして、決して私はこの制度をアメリカから押しつけられたとは考えていないのでございます。でございますから、みずからが、これを選んでこれをとった、ゆえにこれをよそからの借りものだからというような批判はこれは絶対当たらないと思いますし、これを現在悪いから変えていくということでなしに、もっともっと日本の社会情勢が進展する上において、もっとこの教育を充実し、高めていくという必要があり得ると思いますので、それに対応する意味においていまから研究を始めておくと、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/109
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110・秋山長造
○秋山長造君 次の問題に移りますが、私学の振興の問題です。
今度の予算を拝見いたしますと、私学に対する予算、これは融資の面からいいましても補助金の面からいいましても相当前進をはかっておられることは、これはよく了承いたします。ですが、ただ、十分だとは申しませんけれども、従来から比べると相当、新大臣がんばられたということ、御努力のあとはよくわかるんですが、いま行なわれておる臨時私学振興方策調査会、あの山田さんのやっておられる調査会での議論を見ておりますと、やっぱり融資だとか、あるいは理科系の研究施設に対するいろんな補助金をふやすとかいう程度のことでは、とてもいまの私学の直面している危機を乗り切れぬという議論が圧倒的に強いようですね。まあ結論的にはこれはいつも問題になってきたことですけれども、設備費だけでなしに、この私学の経常費というものに対する国の補助ということに踏み切らなければ、これはどうにもならぬ。授業料の値上げ問題その他を中心としてあちこちで紛争が起こっておりますが、こういうことはいつまでたってもやまぬというわけです。この経常費に対する補助、これを恒常的に補助していくということができなければ、何年間か期限を切って、三年間とか五年間とか期限を切って、私学の大体経営が軌道に乗るまでの間でも暫定的に経常費に対して補助に踏み切るべきじゃないか、こういう強い要望が出て、それが今度大勢を占めるようなことになっておるそうですが、これについては、大臣も私学に関係しておられるそうですし、非常に熱をもって取り組んでおられるように聞いておるんですが、どうされるおつもりなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/110
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111・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) この調査会の結論は六月一ぱい——末日までをもちまして最終答申を得る予定になっておるのでございますが、ただいままで論議をされております内容を私直接にはまだ聞いておりませんけれども、私の聞き及んだところによりますと、ただいま秋山委員のおっしゃいましたようなことが相当論議されておるようでございます。ただ、この六月末日までに私どもは抜本的な私学に対する永久対策と申しますか、これをできたら御答申をいただきたいと思っておりますけれども、現段階におきまするその各問題点が非常にむずかしい問題があるようでございまして、場合によれば、あるいはいま申されましたように暫定的にここ数年間どうするとか、そういったような基本的な問題もありましょうけれども、全部最終的な抜本策というわけにはいかないかもしれぬということを考えております。特にこのいわゆる経常費の補助の問題でございますが、経常費の補助については補助しなければならぬということには、大体、委員のほうの意向も相当傾いておるようでございますが、しからば、どういう形でどういう面における経常費を援助するかという問題につきましては、まだ最終的な結論は出ていないようでございます。ここは非常にむずかしいところでございますので、どういう答申になってまいりますか、私どもはまあずっと見守っておるわけでございますが、ただ、その答申が出ました場合におきましては、できるだけこの答申の線に沿いまして尊重いたしまして、四十三年度の予算には相当程度の予算の計上をぜひ努力してまいりたい。そして現在おちいっております私学のいろいろな難問題につきましては、ある程度の解決ができるように努力をしてまいりたい、それが抜本的だと私は言い切るまでにはいかないかもしれませんけれども、相当の程度において私学の今後のあり方について援助をすることができればといま考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/111
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112・秋山長造
○秋山長造君 端的にお伺いしますが、いまの情勢でいくと、経常費の補助ということが出てくるのじゃないかと思います。出てくれば、やっぱりこれはもうそれをそのまま取り上げてこれを実行に移す、こういう腹がまえでおられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/112
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113・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) これはいまの授業料の問題等考えますと、ある程度の経常費の補助ということを考えなければ私は解決できないのじゃないか。そうしますと、これはもちろん、それが答申が出ればそれを実際に施策にあらわしていくようにやるという覚悟をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/113
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114・秋山長造
○秋山長造君 もちろんこれは経費の問題、予算の問題になりますが、ここまでくると、やはり単なる予算措置ということだけではやっぱり不徹底といいますか、どうも文部行政のやり方として弱いような気がするのですね。やっぱり何か基本法といいますか、その根拠になる法律を制定をして、そうしてそれに基づいて積極的に施策をやっていくということにならなければ、なかなかこれは軌道に乗ってこぬのじゃないかという気がします。大臣はその点については、そういう法律をつくりたいという気持ちをどっかで表明されたことがあるということを私聞いたんですが、そういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/114
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115・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) この私学の援助に対しまする法律について、私がそういう法律も必要であろうということを答弁いたしたことはございますが、その際に、一面、私学援助の基本法とか、そういったようなものを予想された向きもございまして、そういったものをつくるかという話もございました。ただ、これは今度の答申の出方でございまして、抜本的に、いわゆる基本法を制定するに相当するような抜本的な答申が出ますれば、これは当然そこまでいくと思いますが、今度の答申がはたしてそこまで期待できるかどうか、ただそういったような場合におきましても、たとえば経常費の補助とか、そういうようなものを含んでまいりますれば、やはり何とか法律的根拠は必要ではなかろうか。その出方によりまして、法律を基本法というようなものにいたすか、あるいは私学の単なる援助の根拠法規にいたしますか、そういう点については、この調査会の答申の出方によって考えていきたいと思いますが、早晩やはり何らかの法律は要るのではなかろうかと私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/115
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116・秋山長造
○秋山長造君 これはもう時間が経過しましたから次の問題に移りますが、これは年来の懸案になっております教職員の超過勤務手当の問題、それから学校警備員、日宿直を廃していく、この学校警備員の設置の問題ですが、これは現段階でどういうことに扱いはなっているのですか、去年一年、教育現場の実態調査をやられるということになっていたんですが、いまどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/116
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117・斎藤正
○政府委員(斎藤正君) お答えいたします。この勤務時間に関する調査につきましては、御承知のように年間調査でございまして、本年度末までの時点の実態をつかまえる、したがいまして、その報告が上がってまいりますのは、四月になってきてしまっております。で、それをさらに今度は大量の事務でございますから、集計をし、そうしてカードに載せていくということでございまして、現在その集計の事務ということを継続中の段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/117
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118・秋山長造
○秋山長造君 これはしからば、去年一年やられたといっても、これは率直に言いますと、何をいまさら実態調査という感じを持ったんです。しかし、とにかく役所のこの予算を獲得するところまでこぎつける順序としては、やはり一応調査費を組んで実態調査をやって、そうしてその結果に基づいて予算要求をしていくというような順序を踏んでいかなければならないものらしいので、一応一年間じっと見守っておったわけですが、当然もう早々と実態調査なんかというものは、いまさら調査せぬでも大体わかっておることであろうと思っておりますから、今度の新年度予算あたりで何か頭をのぞけてくるんじゃないかくらいに考えて期待をしておったわけですけれども、いまの段階でもまだ集計中というお話で、これは非常に期待はずれの感じを持たざるを得ないわけでございますが、その集計はいつ済むのですか、一体。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/118
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119・斎藤正
○政府委員(斎藤正君) これは今度の調査担当の局でいたしておりますが、大体六月は過ぎるのではないかというふうに、いまの間、急いでもそういうように予測しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/119
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120・秋山長造
○秋山長造君 聞くところによりますと、文部当局の意向も実態調査の集計が進むにつれてという点もあるでしょう。いずれにしても超勤手当をつけるという意向を固めておられるというように聞くのですが、人事院その他もやっぱりそれに大体同調されているというように聞くのですが、その点はどうですか、見込みは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/120
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121・斎藤正
○政府委員(斎藤正君) 現在の段階ではこれは公立学校の教員の勤務につきまして相当重要な課題でございますから、現在の段階では私どもその調査結果を待って、そうして部内において慎重に検討いたしたいと思っておりまして、いろいろなことをどういうふうに予測するかというようなことは、現在の段階ではまだ申し述べる時期には達していない、真剣に検討してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/121
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122・秋山長造
○秋山長造君 大臣にお尋ねいたしますが、斎藤局長のおっしゃるような御答弁をされざるを得ないでしょうが、事務当局の方としては。だけれども、大臣どうですか、これは長年の問題ですが、新聞なんかも、各新聞は社説で書いたりなんかしているような問題でもあるわけですが、この教職員の超勤手当、こまかい事務的な配慮は抜きにして、ずばり言って、超勤手当つけるべきだと、ぜひつけてやりたいというようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/122
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123・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) 率直に申しまして、私は実は終戦直後、教員のこういう勤務の態様をどう考えるかという問題のときに、教員の俸給、給与をきめますときに、超勤というものを考えないで、他の一般の公務員よりも二号俸くらい高目に決定をいたしまして、そうして超勤を考えないと、こういうような態度をとったことがございます。その後、給与改訂が行なわれまして、だんだんと二号俸上げたという事実が薄らいでしまいまして、現在の段階においては多少有利性はあると思いますけれども、ほとんど一般公務員との給与の差というものがはっきりした、歴然としたことになっていなくなりました。それで、こういう状態におきまして教員の勤務の態様というのは非常に把握するのにはむずかしい態様でございますけれども、しかし、やはり勤務時間というものをきめます限りにおきましては、これは私もその点はよくわかりませんが、特別の何か一定の勤務態様というものが考えられるかもしれませんが、しかし、その考えられました勤務時間を超過して勤務をするということを命ぜられました場合においては、現在の給与体系におきましては、やはりこの問題は考えなければいけないのじゃないか、超過勤務手当でございますね。これは局長は非常に慎重な態度で、そう言うほかないと思いますが、私も、まあ公式にはそう申し上げるほかないのでございますけれども、心持ちとしましては、いまの勤務の俸給が昔の考えと違ってまいっておりますから、そうすると、勤務時間というものは、やはり各府県における条例で決定しておりますので、その時間というものが決定しておる以上は、これは当然にやはりそういう問題は考えなければならぬと思いますし、この調査の結果がどう出ますか、出ましたならば、もしそういう必要があるならば、四十三年度の予算からこれは考慮していかなければなるまいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/123
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124・秋山長造
○秋山長造君 続きましてもう一つ、学校警備員の問題はどういうことになりますか、大臣の見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/124
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125・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) これは宿日直を廃止するかどうかという基本問題がございますが、この点につきましては、私まだ的確に廃止すべきかどうかというようにまでは、これは勤務態様もございますが、まだ実は決意をいたしておりません。ただ、警備員の問題につきましては、警備員をなぜ置くか、置かなければならぬかという問題とも考慮しまして、たとえば警備員を置きますのは、大体において火災予防が一番大きな問題じゃないか、それから盗難でございますとか、こういうのは実は宿日直を置きましても、防げる場合と防げない場合とございますし、また警備員を置く場合は、必ずしも小学校や中学校だけでなくて、他の建物の市町村の管理する建物と共通の問題がございます。でございますから、これを小学校、中学校に警備員を付置するということになるのかどうかという問題につきましては、相当問題点があると思いますので、警備員の問題につきましては、もっとひとつ研究をさしていただきたいと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/125
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126・秋山長造
○秋山長造君 大臣にもう一つお尋ねしますが、これはまあ相当な費用がかかることもあるから、財政的な考慮ということも相当あるのじゃないかと思うのですが、しかし、たてまえとして、日宿直ということがずっと行なわれてきているのですけれども、一体これは教員の本務でも何でもないわけですね、申すまでもなく。ただ便宜的といいますか、惰性的といいますか、何か慣習的にそういうことになってしまっている、その点はどうですか、大臣。こまかい考慮はよろしい、それは法的にどうとか、事務的にどうとかということはいいですが、一国の文部大臣として、教職員の日宿直ということを教職員にしいるということが、一体適当かどうかということを、常識的な御所見でいいてす。ちょっと聞かしておいてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/126
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127・剱木亨弘
○国務大臣(剱木亨弘君) 実はこれは宿日直を必ず置くようにいたしました歴史的な事実は、おそらく終戦以前におきまして、各学校におきまして一番大事なものとして御真影を守るとか、そういったような意味から宿日直を置いたという歴史的な事実だと思います。それが伝統的に今日まで残ってきておる。ですから宿日直を置くというのは、何がゆえにいま置くかと申しますと、先ほど申しますように、火災予防だとか、あるいはまた盗難防止だとかということでございますが、これがそれじゃ宿日直によって防備できるのかどうか、これは相当、今日においては再検討しなければならぬときがきておりますので、ぜひひとつこの問題は解決をしたいと、私としては考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515077X00519670516/127
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128・大谷藤之助
○委員長(大谷藤之助君) 他に御発言がなければ、本件に対する本日の質疑はこの程度にいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時五十八分散会
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