1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年七月十三日(木曜日)
午前十時五十七分開会
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委員の異動
七月十二日
辞任 補欠選任
二木 謙吾君 久保 勘一君
山田 徹一君 北條 雋八君
七月十三日
辞任 補欠選任
北條 雋八君 山田 徹一君
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出席者は左のとおり。
理 事
後藤 義隆君
田村 賢作君
久保 等君
委 員
梶原 茂嘉君
木島 義夫君
久保 勘一君
鈴木 万平君
中山 福藏君
亀田 得治君
野坂 参三君
衆議院議員
修正案提出者 大竹 太郎君
国務大臣
法 務 大 臣 田中伊三次君
政府委員
法務省民事局長 新谷 正夫君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
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本日の会議に付した案件
○会社更生法等の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
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〔理事田村賢作君委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/0
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001・田村賢作
○理事(田村賢作君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
昨十二日、二木謙吾君が委員を辞任され、その補欠として久保勘一君が委員に選任をされました。
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002・田村賢作
○理事(田村賢作君) 会社更生法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。田中法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/2
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003・田中伊三次
○国務大臣(田中伊三次君) 会社更生法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を説明いたします。
この法律案は、会社更生法の運用の実績にかんがみ、中小企業者の債権の優遇その他各種の権利者の利害の調整を行ない、保全処分制度の改善その他の方法による更生手続の乱用防止の対策を講じ、調査委員の制度を拡充する等、更生手続の円滑化及び合理化をはかるため早急に改正を必要とする事項について、会社更生法等の一部を改正しようとするものであります。
次に、この法律案の要点を申し上げます。
第一に、中小企業者の債権の弁済許可の制度を創設いたしました。すなわち、中小企業者の更生会社に対する債権については、管財人の申し出に基づく裁判所の許可により、更生手続中随時に弁済することができるようにして、更生手続の開始に伴う関連中小企業者の連鎖倒産を防止し得るようにいたしました。
第二に、更生計画の認可前に退職する使用人の退職手当の請求権については、現行法上は共益債権とならないものをも含めて、退職前六カ月間の給料相当額またはその退職手当の三分の一に相当する額のうち、いずれか多い額を限度として、共益債権とすることといたしました。
第三に、使用人の社内預金については、更生手続開始前六カ月間の給料相当額または社内預金の三分の一に相当する額のうち、いずれか多い額を限度として共益債権とし、その他の部分を優先的更生債権として、会社更生法上の社内預金の地位を明確にするとともに、破産法においては、右の共益債権と同じ範囲のものを優先的破産債権に格上げいたしまして、これを現行法におけるよりも保護することといたしました。
第四に、更生会社を破綻に導いた不適任の役員が、更生手続開始の申し立て後も、そのまま会社事業の経営に当たる弊害を防止するため、保全処分により、保全管理人による会社事業の経営または監督員による取締役の行為の監督を命じ得ることに改めて、更生手続の乱用防止の対策を講ずることといたしました。なお、保全処分発令後は、更生手続開始の申し立ての取り下げを制限することとして、その対策の一助としております。
第五に、利用範囲の狭い現行法の調査委員制度を拡充しまして、更生手続の開始の前後を問わず、いつでも調査委員を選任することができ、かつ、裁判所の必要と認める一切の事項について調査をさせることができることとし、これによって、裁判所の補助機関を強化することといたしました。
第六に、関係人集会において更生担保権の減免等の定めをする更生計画案を可決する際の可決の要件については、更生担保権者全員の同意が必要であると現在されておりますのを、五分の四の多数決によるものと改めまして、更生手続の円滑かつ適正な進行をはかることといたしました。
以上のほか、電気・ガス等の継続的供給契約に関して生ずる債権関係の明確化、更生手続開始前の事業経営に不可欠な借入金の返還請求権等の共益債権化、租税等の請求権の取り扱いの緩和、財産評価の基準の確立、更生計画認可後における管財人と新取締役との権限の明確化、更生手続の廃止の容易化等をはかることといたしました。
以上がこの法律案の要点であります。何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/3
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004・田村賢作
○理事(田村賢作君) この際、本案に対する衆議院における修正点について、修正案提出者衆議院議員大竹太郎君より説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/4
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005・大竹太郎
○衆議院議員(大竹太郎君) 会社更生法等の一部を改正する法律案に対する修正理由の説明を申し上げます。
昭和三十九年経済界が深刻な不況に襲われましたのを契機としまして、更生手続開始を申し立てる会社の数は急激に増大し、その規模も大型化しまして、これに関連する中小企業者やその他の債権者の範囲も拡大してまいったのであります。更生会社に対する債権をたな上げされたため連鎖倒産の危険にさらされる関連中小企業者が続出する傾向にありまして、これを救済するため適切な施策を講ずることが緊急の要事として各方面から要望されていることは、御承知のとおりであります。
今回、更生会社に対する中小企業者の債権を保護することを一つの大きな柱として、内閣より改正法案が提出されましたことは、まことに時宜を得た措置と存ずるのでありますが、なお一歩を進めて中小企業者の債権の保護を厚くすることをはかる必要があると考えるのであります。
すなわち、改正法第百十二条の二第一項において、裁判所は、管財人の申し立てによって、中小企業者の債権の弁済を許可することができることとしておりますが、各委員の質疑や参考人の意見にも見られまするように、裁判所は、管財人が申し立てをした債権のみについて弁済の許可を与えることができるのみでありまして、管財人が申し立てをしない債権についての救済規定は設けられていないのであります。
業界においても、この点について多くの危惧の念を抱いているようであります。したがって、この点について適切な対策を講ずる必要があると考えまして、「裁判所は、その職権によって、会社に対する中小企業者の債権の弁済を許可することができること」としたのであります。
次に、改正法の施行期日は、昭和四十二年十一月一日となっておりますが、現在更生手続の進行中の会社についてもできるだけ多くのものに対して改正法を適用し得るようにするため、その施行日を繰り上げ、昭和四十二年九月二十日に改めたのであります。
以上が本修正の理由であります。
何とぞ、御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/5
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006・田村賢作
○理事(田村賢作君) それでは、これより本案に対する質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
速記とめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/6
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007・田村賢作
○理事(田村賢作君) 速記つけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/7
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008・後藤義隆
○後藤義隆君 裁判所の一般的な諮問機関として、経済人あるいは学識経験者等で構成する委員会を常設して、更生事件について意見を聞くというふうなことはどう思っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/8
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009・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 会社更生手続におきまして、裁判所の一般的な諮問機関を置いて、その意見を参考として裁判所が手続を進行していったらどうか、またその必要があるのではないかということが言われておるのでございます。確かに、この会社更生法の関係におきまして、そのような諮問機関も必要であろうかと考えられるのでございますが、それはただひとり更生事件についてのみでなく、裁判所といたしましては、ほかの一般の商事事件全般通ずるに問題でございまして、そういった観点からさらに広くこの種の諮問機関について検討したいということでございます。私どもも一応この際一般的な諮問機関を設けてはということも検討してまいったのでございますが、そのような事情もございましたので、さらに裁判所側とも相談をいたさなければなりませんし、また裁判所としましても、何らかの方法でこれを実現するという方向でただいま努力されておるのでございます。そこで、会社更生法自体の中にそのような一般的諮問機関を置くことは今回は見送ったのでありますけれども、それにかえまして、できるだけ裁判所に経済的な知識の補助もする必要があるということから、現在の調査委員制度を拡充いたしまして、それにかわる機能を果たしていただくようにということをお願いしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/9
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010・後藤義隆
○後藤義隆君 この会社更生破産の申し立て事件の概要についてお聞きしたいのですが、まず開始決定後廃止になった事件及びその原因についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/10
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011・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 更生手続の開始決定がございまして後に廃止になった事件について申し上げますと、昭和三十五年から三十九年までの状況について申し上げます。
更生手続が開始されまして更生計画が認可になります前に廃止決定になりましたものといたしまして、会社更生法の二百七十三条の規定によりまして計画を一定の時期までに提出しないため廃止になりましたもの、言いかえますと、更生計画は全く立たないという状況で廃止になりましたものが、昭和三十五年におきまして一件、三十六年に五件、三十七年に一件、三十八年に五件、三十九年に四件となっております。さらに、更生計画の認可決定前に申し立てによりまして会社更生法第二百七十四条の規定による廃止決定のありましたもの、これは会社側で支払いが可能になったということから事情が好転いたしまして手続の廃止になったものでございます。それが昭和三十五年におきまして一件、三十六年に一件、三十七年に一件、三十八年、三十九年はゼロとなっております。それから更生計画の認可後に廃止になりましたもの、これは更生の見込みがないということで廃止になるわけでございますが、これが昭和三十五年におきまして一件、三十六年に五件、三十七年に三件、三十八年に六件、三十九年に十件、このようになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/11
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012・後藤義隆
○後藤義隆君 いま廃止になった件数をおあげになったわけですが、会社更生手続から破産に移行したものはどんな状態でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/12
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013・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 更生法が施行されまして以来、約十六件くらいと聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/13
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014・後藤義隆
○後藤義隆君 会社更生と破産とは債務の弁済についてどのように違いましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/14
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015・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 破産の場合におきまする弁済の割合と——これは破産債権の総額に対する弁済の割合でございます、それと更生手続におきまする更生債権あるいは更生担保権に対する弁済の割合を相対的に比較いたしてみますと、昭和三十七年におきましては破産手続における弁済の割合が一一・一%でございます。これに対しまして、更生手続における弁済割合が六三・四%でございます。三十八年におきましては、破産におきましては七・九%でございますが、更生手続におきましては六二・七%、三十九年におきましては、破産におきましては一五・八%でございますが、更生手続におきましては六九・一%の割合となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/15
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016・後藤義隆
○後藤義隆君 規模のきわめて小さい会社に対しては簡易の手続によって更生手続の制度を設けるというふうなことは、どんなふうに思っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/16
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017・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 現在の会社更生法が株式会社全般に適用されるわけでございまして、株式会社にも規模のきわめて大きなもの、小さなものもございます。一律に大小を問わずこの手続を適用することはいかがなものであろうかというような問題があるわけでございます。このことは更生手続のみの問題にとどまりませず、さらにさかのぼりますと株式会社法の問題とも関連してまいるわけでありまして、先年商法の改正の御審議を願いましたときにも、株式会社法の今後の問題として御論議の出たところであります。私どもも、株式会社法そのものの問題として、一応大会社、小会社の問題についても検討しなければならぬと思っているのでありますが、会社更生におきましても小更生手続というようなものも設ける必要があるのじゃないかということを一応考えております。ただ、今回の改正は、何ぶんにもこういった現下の情勢に早急に対応するために、とりあえず緊急に改正を要する問題につきまして改正をお願いいたしているわけでございまして、根本的な問題でございますので、さらに今後の課題といたしまして検討させていただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/17
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018・後藤義隆
○後藤義隆君 会社更生法の改正の問題について、従来から譲渡担保に関する規定の改正が要望されてきておったのでありますが、今回の改正はこれを見送られておりますが、どういう事情でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/18
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019・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 譲渡担保につきましてもいろいろな形態がございますし、それを会社更正法のほうでどう扱うべきかということが一つの議論の対象になっていることは、御指摘のとおりであります。ただ、四十一年四月二十八日に最高裁判所の判決がございまして、譲渡担保権者は更正担保権者に準じて更生手続上の届け出をし、それによって権利を行使すべきものである、こういう最高裁判所の判決がございまして、一応現在のところはこれに従いまして譲渡担保の扱いをしているということになろうかと思うのであります。譲渡担保の問題は、会社更生法の問題であると同時に、また民法その他の実体法の問題でありますし、また強制執行その他の手続法の関係でこれをどうするかという問題もあるわけでありまして、私どものほうでただいま民法、強制執行の改正につきまして検討を進めておりますが、そういった問題とも関連させまして、これも今回の改正とは一応切り離しまして、今後の課題といたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/19
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020・後藤義隆
○後藤義隆君 今度の会社更生法の改正案では、更生手続開始前の債権、すなわち退職手当請求権、使用人の預かり金返還請求権、資金借り入れ金による請求権及び継続的給付を目的とする双務契約の相手方の給付にかかる請求権は共益債権としているが、更生手続から破産に移行するような場合には共益債権はいずれも当然に財団債権にされることになりますかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/20
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021・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 御指摘のそれぞれの共益債権につきましては、更生手続が破産に移行いたしました場合に、会社更生法の第二十四条から二十六条の規定によりまして、これらの共益債権が破産法上の財団債権になるというふうに解釈されるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/21
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022・後藤義隆
○後藤義隆君 この調査委員制度の拡充についてお伺いしますが、現行調査委員制度の活用の状況はどんな模様でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/22
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023・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 各裁判所におきまして、更生事件の申し立てがございますと、その状況に応じまして適当な方を調査委員にお願いをして、その調査にまつところが多いようでございます。昭和三十三年から三十八年までの会社更生事件についてどのような方が調査委員になって活動をしておられるかということを申し上げますと、弁護士の方が一番多うございまして、これが三十人、公認会計士の方が十一人、その他実業界の方等が合計いたしまして十三人、そういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/23
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024・後藤義隆
○後藤義隆君 調査委員の地位、性格、選任、解任の時期、そういうものについてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/24
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025・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 調査委員は、裁判所が必要があると認めます場合に、手続上の判断の資料を得ますために、調査委員の調査した結果、その報告あるいは意見に基づきまして裁判所が適正な判断を下していくということであります。したがいまして、調査委員そのものは、裁判所の命令によりましていろいろの調査をし、自己の意見を裁判所に提出いたしまして、あとは裁判所の判断におまかせするということになるわけであります。
なお、この調査委員の手当と申しますか、報酬につきましては、国費ではございません、予納金の中から支払われるわけであります。そのような点を考えますと、調査委員そのものは、これは公務員というふうには考えられないわけでありまして、またそのやっております仕事そのものも公務とは言えないであろうと、このように考えております。
なお、選任の時期あるいは解任のときでございますが、これは裁判所が、それぞれの手続の状況に応じまして、申し立てがございましてすぐ選任することもできますし、また具体的に更生計画の認可の決定をやろうというふうな段階において必要があればそれに適した調査委員を選任することもできる、言いかえれば、随時裁判所が必要と思われるときに選任することができるわけであります。また、この解任の時期でございますが、これも裁判所はいつでも必要がないと認められますれば調査委員の解任をすることができるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/25
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026・後藤義隆
○後藤義隆君 この調査委員は、必ず選任せなければならないというふうに規定すると、どんな弊害がありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/26
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027・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 必ずしもすべての場合に調査委員が要るというわけのものでもないと思うのでございます。たとえば、明らかにこの手続を乱用する趣旨で申し立てをしたということが裁判所自体で明白であります場合には、申し立てを棄却することは当然であります。そのような場合に、一々調査委員の調査を待つまでもなく、裁判所で十分そういう事実が確認できる。したがいまして、各手続におきまして、必ずすべて調査委員を選任するということにいたします必要はないわけであります。しかし、最初に御説明いたしましたように、経済界の一般的な状況あるいは当該会社のいろいろな事情等も調べまして十分な経済知識を持って裁判所が手続を進める必要がございますので、そういう意味におきましては、できるだけこの調査委員制度というものが活用されることは望ましいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/27
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028・後藤義隆
○後藤義隆君 保全管理人及び監督員の選任についてお聞きいたしますが、現行法による保全処分の運用状況はどうなっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/28
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029・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 現行法によりまして保全処分の行なわれました件数を申し上げますが、これはその年度における新受件数、申し立て件数との比較において申し上げるほうがいいと思うのでございますが、しかし、必ずしも当該年度中のものがそのままその年度の保全処分の行なわれた件数と結びついてまいりませんので、若干の誤差は当然出てくると思いますが、そのことを頭に置いてお聞き取りいただきたいと思います。昭和三十五年から申し上げますと、新しく申し立てしました事件が五十二件ございまして、その中の二十件が保全処分が行なわれております。三十六年におきましては、新受件数五十三件でありますが、二十五件保全処分がございます。三十七年におきましては、新受件数八十六件でありまして、保全処分の件数は四十一件でございます。三十八年におきましては、六十五件の新受件数に対しまして、保全処分の件数が三十一件。三十九年におきましては、申し立て件数がこの年は非常に多くなりまして百七十二件となっております。これに対しまして、保全処分の件数は四十六件であります。そこで保全処分の中身でございますが、これは主として会社の財産の処分の禁止、さらに弁済の禁止、あるいは借り入れ金の禁止、そういったことが内容となっております。なお、処分によりましては、裁判所の許可を得てそれらの処分を解除するような処分の内容になっておるものも相当数ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/29
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030・後藤義隆
○後藤義隆君 保全管理人または監督員は、だれがそういうものになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/30
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031・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) これも今後の問題でございますが、大体管財人と同じようなことになろうかと思います。具体的に申しますと、弁護士の方、あるいは実業界の方とか、あるいは公認会計士、経理士、そういった方が多くなるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/31
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032・後藤義隆
○後藤義隆君 監督員の監督が必要とされる場合はどういうふうな場合であるか、また監督員の権限はどういう権限を持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/32
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033・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) これは保全管理人との関連において申し上げるほうがいいかと思いますが、会社の事業経営に不適任な理事者が、たとえば乱用のような趣旨で会社の更生手続を申し立てしているというふうな場合、そういう疑いがございます場合に、一応その理事者を排除いたしまして、適正な会社の事業の運営管理をやれる人を保全管理人として暫定的に選任して、会社の経営を正常に遂行できるようにしようというのがその趣旨でございます。ただ、すべての場合に保全管理人を置く必要がない場合もございます。そこまで行かない場合には、裁判所が特に指定した行為をする場合に、会社の理事者が監督員の同意を得てそれらの行為をするということにすることによって十分目的を達成できる場合もあるわけでありまして、保全管理人を置くまでもないけれども、しかしある程度裁判所が必要と認める事項については、監督員の監督と申しますか、その同意に基づいて会社の理事者が行動をするという必要がある場合に置くわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/33
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034・後藤義隆
○後藤義隆君 保全管理人または監督員の権限とそれから取締役との権限の関係はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/34
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035・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 保全管理人が選任されますと、会社の事業の経営権あるいは会社の財産の管理処分権は一切保全管理人に帰するわけであります。したがいまして、会社の理事者は一応事業の経営の面からは後退するわけであります。これもしかし、更生手続の申し立てから開始決定までの暫定的な処分でございます。一応その間理事者の業務遂行をストップしておくということになるのでございます。監督員の場合におきましては、従前どおり会社の理事者がその事業経営なり、財産の管理処分を続けていくということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/35
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036・後藤義隆
○後藤義隆君 更生手続開始申し立ての取り下げの制限についてお伺いいたしますが、保全処分発令後更生手続開始申し立ての取り下げを制限してありますが、その理由はどういうために制限するのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/36
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037・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 今回の改正によりまして、更生手続の開始の申し立てを取り下げることを裁判所の許可にかけましてその制限をいたそうとしておるのでありますが、これは手続の乱用を防止するということからこのような仕組みにいたしたわけであります。往々にして、まじめにこの更生手続に従って会社の更生をはかろうということではなしに、たとえば単なる保全処分を得たい、あるいは一定の期間更生手続の開始決定によりまして債務の弁済を停止させるということだけで一応の目的を達成できるという場合もあり得るわけであります。しかし、それは本来の会社更生法の趣旨とするところではございません。そのような乱用的な申し立てにつきましては、厳重にこれは規制する必要があるわけであります。ことに、申し立てがございますと、多くの利害関係人も出てまいります。更生手続の遂行されることを期待される向きもたくさんあるわけであります。そういった乱用を防止するために、この取り下げの制限をしようとしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/37
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038・後藤義隆
○後藤義隆君 そうすると、裁判所の許可を得れば申し立ての取り下げができることになっておるわけですが、裁判所は許可をする基準を何によってきめるわけでしょうか、許可するかしないかの基準は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/38
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039・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) ただいま申し上げましたように、乱用防止の一環としてこの規定を置くことにいたしたのであります。したがいまして、更生手続を乱用するという趣旨がない限りは、裁判所は取り下げを認めるのが当然であろうと思います。特別に明白な基準というものはございませんけれども、この新設の四十四条の規定を置きました趣旨は先ほど申し上げるところにございますので、乱用にわたらない、そういう趣旨でなかったということが明らかになりますれば、裁判所は当然これは取り下げを許可すべきであろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/39
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040・後藤義隆
○後藤義隆君 更生債権等の弁済の許可についてお尋ねいたしますが、更生手続申し立てから開始までの間においても弁済許可の制度を設けてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/40
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041・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 申し立てから開始決定までの間におきましては、会社の債務の弁済はまだ停止されておりません。したがいまして、一般的に申し上げますと、この弁済許可の問題を取り入れる必要はないことになるのでございます。ただ、その間におきまして保全処分により債務の弁済を禁止されることがございます。そういう場合に、この保全処分を解除するという意味においての弁済の許可を認めていくということが、もちろんこれは可能でございます。しかし、それは新設の第百十二条の二の趣旨における弁済の許可ではないわけであります。先ほど申し上げましたように、開始決定までの間におきましてはこの百十二条のこの規定は必要がないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/41
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042・後藤義隆
○後藤義隆君 中小企業者、下請企業者の債権、すべてこれを共益債権にすべきではなかったのですか、その点についてどう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/42
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043・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 更生会社に関連いたしまする下請その他の中小企業者の債権をすべて共益債権ということにいたしますと、実際上の問題といたしまして更生会社の資産がなくなってしまいます。更生の見込がなくなってしまうという結果におちいる可能性が非常に強いのでございます。これまでの更生会社につきまして調べたところによりますと、債権額の二五%あるいはそれ以上のものが中小企業者の債権となっております。下請業者の債権も大体それに近いぐらいのパーセンテージを占めておるようであります。そうなりますと、これをすべて共益債権として自由に弁済できるということになりますと、更生手続そのものを遂行不可能にする危険性がございます。やはり会社更生法の目的は、その更生会社の更生をはかるということが目的でありまして、そのためにこれに関連する債権者の協力を得まして、できるだけその協力のもとに更生をはかるということでございます。ある程度の債権者に犠牲をしているということは、これはやむを得ないことでございます。そういった意味で、すべて共益債権として弁済するということは実際問題としても不可能でございますし、またこの会社更生法の趣旨から申しましてもそのようにするのは適当であるまいというふうに考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/43
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044・後藤義隆
○後藤義隆君 この中小企業者から裁判所に対して弁済の許可の申し立てを直接できるように規定を設けるべきではなかったですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/44
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045・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) この点は非常に衆議院の段階におきましても議論のあったところでございまして、先ほど大竹委員から御説明のございました第百十二条の二の第一項に修正を加えましたのも、その問題と関連いたすわけであります。債権者が直接弁済許可の申し立てをいたしますことにしますと、おそらく手続の段階におきまして非常に多くの債権者から裁判所にそういう印し出が出るだろうと思います。それを一々裁判所側で審査してその処理をいたしますと、木筋の更生手続そのものの遂行がかなり支障を生ずるということにもなりましょうし、また、債権者の関係、あるいは更生会社の経済事情、こういったものは管財人が一番よく知っておりますので、一応管財人を通じてその許可の申し立てをするのが適当であろうと考えまして、原案のようにいたしたのでございます。ただ、そう申しましても、債権者はただ管財人に申し出をし、管財人が裁判所にそれを受けて申し立てをするという仕組みになっておりますので、債権者としましては自分の申し出がはたしてどのように処理されるかということについて不安がないではないと考えます。そこで、この改正案の百十二条の二の第三項におきまして、管財人が債権者からその弁済許可をしてもらいたいという申し出を受けましたときには、管財人の立場でそれを審査して許可の申し立てを裁判所にするわけでありますけれども、その裁判所に対する申し立てをするしないにかかわらず、とりあえず債権者からそういう申し出があったということをすべて裁判所に報告させることにいたしまして、そして必要があると認めるものにつきましては管財人側から弁済許可の申し立てをすることにしたのであります。そうしますと、弁済許可の申し立てをしないものもあるわけであります。しないということがはっきりいたしましたものにつきましては、管財人からその事情を裁判所に遅滞なく報告することによりまして、裁判所はなぜこの債権者の債権の弁済についての許可を申し立てをしなかったかということがわかるようにいたしたのであります。その結果、裁判所の監督権に基づきまして、これが必要であると思われれば、管財人に指示いたしまして、弁済許可の求められるように道を講じていたことも可能でございます。そういう配慮をいたしまして第三項の規定を置いたのでございますけれども、これだけでは必ずしも債権者は十分安心できないであろうという御意見がございまして、先ほど御説明がありましたように、「管財人の申し立てにより、」ということばの下に「又は職権で」ということばを入れまして、裁判所が職権でいろいろ調査して弁済を許すこともできるようにしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/45
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046・後藤義隆
○後藤義隆君 この百十二条の二の第一項の「主要な取引先」というのがありますが、主要な取引先というのは、どの程度のものを主要な取引先というのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/46
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047・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 更生会社の取引先であります中小企業者の中にも、ただ一回限りの取引先もございましょうし、相当長期間にわたって、あるいは全面的に更生会社に依存しているという会社もあるのでございます。この百十二条の二の規定の趣旨は、更生会社に依存度の高い中小企業者を保護していこうという趣旨でございます。それを「主要な取引先」とするという表現であらわしたのでございます。この「主要な取引先」ということばが必ずしも明白でないということでございますが、この基準を一律に設けますこともまた運用上非常に窮屈なことになろうかと思うのであります。それは、更生会社に対する依存度の高いことを示す趣旨でこのことばを使ったのでございますので、たとえば更生会社の取引先である中小企業者の事業の半数以上のものがその更生会社に依存しているという場合には、これは依存度が高いと見てよろしいわけであります。そうかといって、一〇%くらいの取引高の場合にどうかという問題でございますが、これとても一がいに依存度が低いとは言い切れない場合がございます。一〇%につきましてはその更生会社に依存しているが、他の九〇%は非常に多くの会社に分散して注文を取っているというような場合を考えますと、やはり一〇%といえどもその中小企業者にとっては依存度が高い、こう言わざるを得ないと思います。その辺は裁判所の判断におまかせせざるを得ないと思うのであります。これを一律に何%以上と規定することは、かえって運用上無理が起きるのではあるまいかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/47
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048・後藤義隆
○後藤義隆君 この百十二条の二の一項のいまお答えのあったその次の「事業の継続に著しい支障をきたす虞れがあるとき」とこうありますが、継続に著しいというのは非常に抽象的ですが、どの程度のことをさしておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/48
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049・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 具体的には、その中小企業者の債権の満足を得られませんために当該の中小企業者が倒産におちいるおそれがあるというふうな場合を考えておるのであります。ことばをかえて申しますれば、そのために支払い不能になるとか、あるいは債務超過になるというふうなおそれがある場合を、このことばで表現したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/49
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050・後藤義隆
○後藤義隆君 使用人の退職手当請求についてお聞きいたしますが、退職手当請求権について現行法の解釈及び運用の実情について説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/50
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051・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 使用人の退職手当の会社更生法上の取り扱いでございますが、これにつきましては、現行法上、特別に共益債権にするとか、更生債権であるとかいうふうな規定はございません。解釈で運営されておるわけであります。現在の解釈あるいは取り扱いを申し上げますと、更生手続の開始決定を一つの境にいたしまして、更生手続が始まります前に会社を退職しました者、これは自分の都合によって任意退職しました者も、あるいは会社の都合によりましてたとえば勧奨を受けて退職したような場合でも、いずれを問わず、すべて優先的更生債権となっております。この優先的更生債権となります理由は、雇用関係に基づきまして生じた債権につきましては、商法の規定によりまして一般の先取り特権がございます。その関係で、会社更生法でそれを受けまして、優先的更生債権ということにされるわけでございます。しかし、今回の改正案によりますと、退職の時期を問いません。その開始決定の前でありますとあとでありますとを問いませんで、すべてこの新しい規定によって共益債権となる。百十九条の二の規定しておりますところに従って、これは共益債権になるわけであります。そうなりますと、「退職前六月間の給料の総額に相当する額又はその退職手当の額の三分の一に相当する額」、その限りにおきましては、これは時期を問わず、また退職の理由を問わず、すべて共益債権としまして、その残りの部分を優先的更生債権とすることにしました。したがいまして、共益債権となります部分だけは現行法の取り扱いより有利になるわけであります。それから更生手続開始決定後に退職いたします場合、これは任意退職の場合におきましては、やはり優先的更生債権となるのでございます。会社の都合によってやめます場合には、会社更生法の二百八条の規定によりまして共益債権となりまして、随時弁済できるのでありますけれども、任意退職の場合ではそうではございません。しかし、この改正案によりますと、先ほどの場合と同様に、退職前六カ月間の給与の総額に相当する額か退職手当の三分の一のいずれか多い額を共益債権とするということになりますので、この点も現行法の取り扱いより有利になるのでございます。さらにまた、更生手続開始決定後に退職いたします場合、たとえば会社の今後の事業経営のためにやめてもらわなければならないというふうな事情に基づいて退職いたします場合には、これはすべて二百八条の規定によりまして全額が共益債権となるのであります。したがいまして、現行法の取り扱いによりますよりは相当有利な結果になるのが今回の改正案でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/51
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052・後藤義隆
○後藤義隆君 この退職の原因が、任意に退職した場合、あるいは会社の都合によって退職した場合と区別をせずに、退職手当請求権は全額これを共益債権とするわけにはいかないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/52
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053・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 現行法によりますと、使用人の給料債権につきましては、六カ月間の給料だけが共益債権とされまして、その残りがやはり先ほど申し上げましたような理由によりまして優先的更生債権とされております。給料がそういう事情でございますので、使用人の退職金につきましてもやはり同様の考え方に立つべきであろうということから、六カ月間の給料の総額かあるいは退職手当の総額の三分の一に相当する額というふうにいたしたのでございます。ただ、この場合、給料の場合は単純に六カ月間ということで切ってございます。退職手当の場合におきましては、長期間在職した人につきましては退職手当の金額もかなり大きくなってまいります。それを一律に六カ月間の給料総額を基準にして共益債権といたしますと、長期在職者に非常に不利益になる危険性がございます。そこで、そういった場合を考えまして、退職手当の総額の三分の一か、あるいは六カ月間の給料総額に相当する額か、どちらか多いほうをとれるようにいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/53
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054・後藤義隆
○後藤義隆君 この退職手当の支給に関して、一時金と年金との併給が考えられるが、この場合においてこの改正案ではどの規定によることになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/54
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055・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 一時金につきましては、百十九条の二の第一項の規定がそのまま適用されます。また定期金債権のようになっております年金につきましては、これはその総額が必ずしも明確でございません。そこで、特に第二項を設けまして、年金の場合には各期における定期金につきましてその額の三分の一に相当する額を共益債権とすると、こういうふうにいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/55
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056・後藤義隆
○後藤義隆君 この破産手続における退職手当請求権の取り扱いはどんなふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/56
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057・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 破産手続上におきましては、優先的破産債権ということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/57
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058・後藤義隆
○後藤義隆君 次に、この使用人の預かり金の返還請求権のことに関してお聞きいたしますが、預かり金の意味、範囲等について具体的に承りたいのでございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/58
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059・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 会社更生法が制定されました当時におきましては、現在行なわれておりますような社内預金制度というものはなかったようでございます。当時考えられました預かり金と申しますのは、たとえば従業員が給料をもらいまして、それを郵便局とか銀行に持っていって預けるのは時間もないし、一時会社で預かってもらうという趣旨でそのまま給料を預けております場合とか、あるいは出張いたしましてその旅費を自分で立てかえた場合の立てかえ金の返還請求権、こういったものを預かり金として考えたもののようでございます。その後、社内預金がだんだん行なわれるようになりまして、現在約総額で八千五百億円ぐらいに達しておるそうでございますが、こうなってまいりますと、この社内預金が従来の意味での預かり金の中に入るか入らないかという解釈論が一つの問題になったのであります。しかし、形式的にこの文理解釈の面から申しますと、現在の社内預金もやはり預かり金という観念の中に入ると見ざるを得ないだろうというふうに考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/59
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060・後藤義隆
○後藤義隆君 この使用人兼取締役の社内預金についても、やはり共益債権として同一の取り扱いを受けることになりますかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/60
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061・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) たとえば会社の営業部長が同時に取締役であるというふうな場合を考えますと、その給料は会社の従業員としての営業部長としての給料を受けておるという場合には、当然これは会社の従業員として扱うべきでありまして、その中から社内預金をいたしておりますと、この使用人の預かり金としての保護を受けるべきものと考えます。ただ、会社の形態によりましていろいろの違いがございましょうと思います。兼務の場合におきましても、取締役としての報酬を得ている場合もあると思いますが、その場合にはこの中には入らないと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/61
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062・後藤義隆
○後藤義隆君 この継続的給付を目的とする双務契約に関してお聞きいたしますが、改正案で双務契約における同時履行の抗弁権を制限しなければならない理由はどこにあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/62
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063・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) これは主として双務契約の中で電力の供給契約が会社更生法の運用上の問題として大きく取り上げられたのでございまして、それについて具体的に御説明申し上げるのがよかろうかと思います。たとえば更生手続開始の申し立てをいたします前に電力を供給しております場合、それに対する料金を支払っていない更生会社のほうで電力料金の支払いについて履行遅滞の事実があったという場合にどうなるかということでございます。これは継続的供給契約の場合におきまして、一方の当事者の給付に対して相手方が反対給付を履行しない場合には、一方の給付者はその後の継続給付をしない、言いかえれば相手方の弁済がなければ自分のほうの給付を行なわないという同時履行の抗弁権が働くのでございます。電力料金の場合におきましても、電力を供給したけれどもそれに対する代金が支払われないという場合には、自後の電力の供給をストップすることが理論上可能なわけであります。しかし、せっかく会社更生の手続に入っております会社に対して、電力の供給をストップするということは、これは致命的な打撃を受けるわけでありまして、これは何とかして電力の供給を受けられるようにする必要があろうと思うのでございます。もちろんその間に法律の規定に従いまして債務不履行を理由として契約を解除することもできるのでございますけれども、さらに電力供給の申し出があれば電力会社としてはそれに応じなければならないという現在の法制にもなっております。一方では債権の弁済を受けられない一面、他方におきましては電力はまた別の意味で供給しなければならないというふうな状況下にございますので、いろいろこういうことをめぐりまして問題があったわけであります。そこで、申し立て前に給付した電力に対する代金の支払いがないということで自後の電力の供給をストップすることはできないようにしたのがこの規定の趣旨であります。法律的に申しますと、申し立て前の給付にかかる債権の弁済がないことを理由にして自後の給付についての同時履行の抗弁権を行使できないようにしたのでございます。そういたしますと、電力会社は給付のしっぱなしというふうな不利益な結果にもなろうかと思います。第二項に規定を置きまして、更生手続開始の申し立て後開始決定前に給付したもの、いまの同時履行の抗弁権によって遮断することができなくなった給付にかかる債権につきましては、これを共益債権として保護することにより、電力会社と更生会社の利害の調整をはかったのでございます。これは電力会社について例をあげましたけれども、継続的給付の義務を負う双務契約に広めまして、たとえばガス、水道等においても同様であると考えまして、こういう表現にいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/63
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064・後藤義隆
○後藤義隆君 租税等の請求権について伺いたいのでありますが、改正法の百二十二条の点は主としてどういうことを改正されておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/64
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065・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 百二十二条の規定は、更生計画をつくります場合に、租税につきまして納税の猶予あるいは滞納処分による財産の換価の猶予をしてもらいたい、そういう定めをいたします場合に、その猶予の期間が現行法では二年以下の場合には徴収権限を有する者の意見を聞かなければならない、また二年をこえる場合には徴収権限を有する者の同意を得なければならないということになっております。二年を境にいたしまして、意見を聞くかあるいは同意を求めるかという扱いになるわけであります。しかし、実際の例を考えてみますと、租税の場合におきましては二年以上の猶予を得ております例が一九%程度ございます。これに対しまして、一般債権の場合におきましては八〇%以上のものが二年以上の弁済の猶予を得ておるという結果になっております。したがいまして、租税とその他の債権との間の不均衡な結果が出ておりますので、これを若干とも均衡をはかる必要があろうと考えまして、この二年以下というのを三年以下といたしまして、一年その幅を広げることにいたしたのでございます。
そのほかに、租税の関係といたしましては、二百六十九条にも会社更生法の関係で改正をいたしております。たとえば登録免許税を免除するとか、ある一定の場合、たとえば新株発行による資本の増加とかあるいは合併による資本の増加の場合におきまして登録免許税の額を減額する、あるいは新会社を設立いたしまして不動産をそちらに移転する場合に登録免許税の額を減免する、こういう優遇措置を講じたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/65
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066・後藤義隆
○後藤義隆君 商法による留置権の消滅の請求権の件についてお伺いいたしますが、商法による留置権の消滅請求権の規定を設けた趣旨はどういうわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/66
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067・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 更生手続が開始されますと、たとえば輸送中の商品とか、あるいは倉庫に保管されております商品が、更生会社の意にかかわらずそのまま商法の規定による留置権として留置されてしまうことになるわけであります。実際問題といたしましても、この事例がかなり多いのでございまして、わずかな債権のために多額の金額に相当する商品を留置されるということになりまして、更生会社が動きがとれなくなるという事態に追い込まれるのでございます。商法の留置権は、もちろんこれは必要でございますけれども、特に更生手続の段階におきましてそのような事態が起きることをできるだけ避け、かつまた債権者にも不利益にならないようにいたしますためには、何らかの措置が必要であろうというふうに考えられるのであります。そこで、管財人が商事の留置権者に対しまして既担保債権の額を供託いたしまして、その留置権の消滅を請求し、また留置物の返還もそれによって求めることができるというふうにいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/67
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068・後藤義隆
○後藤義隆君 財産の評価に関連してお伺いいたしますが、開始決定時の財産の価額の評定はどんな基準によって評定されることになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/68
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069・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 更生手続が開始いたしますと、管財人は遅滞なく会社に属する一切の財産につきまして手続開始のときにおける時価を評定することになっております。現在の会社更生法によりますと、商法の株式会社法によります財産の評価の規定の適用を排除いたしておりますので、一般の株式会社のような評価はできないのでございます。そういたしますと、商法の総則の原則に戻るわけでありまして、この財産の評価が時価以下主義ということに理論上はなりそうに思うのでございます。しかしながら、この会社更生手続というものの性格から考えますと、時価以下に評価されることは適当でないというふうに考えられます。会社はあくまでもその事業を継続してまいるのであります。したがいまして、これが時価以下に評価される、あるいはまた処分価額で評価されてしまうということになりますと、今後継続していくべき会社の財産状況が的確に把握されるということにならないのでございます。そこで、評価する際には、会社の事業を継続するものとしてこれを評価するというふうに第百七十七条の二項の規定を置いた次第でございます。これによりまして、会社の事業を継続するという前提に立っての再取得価額と申しますか、そういった価額が付せられることになるわけでございます。処分価額のようなものを付してはならないという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/69
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070・後藤義隆
○後藤義隆君 更生計画認可後の管財人及び取締役の権限はどんなになりましょうか。最もこれ問題が多いと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/70
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071・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 現行法によりますと、更生計画の認可になりまして、計画を遂行する権限と責任は管財人にあるわけであります。ところが、会社の更生についての計画が定められ、また新会社が設立されるというふうな事態にまで進んでまいります段階において、管財人が終始事業の経営をやり、理事者がなおかつ後退していなければならない理由はあるだろうかということが一つの問題点でございます。裁判所の扱いといたしましてもこの点がまちまちになっておりまして、認可の決定がありました後は会社の理事者のほうにその権限が戻るという解釈をとる向きもありますし、そうではなくて依然として管財人がその責任と権限を持っておるというふうに取り扱う向きもあるわけであります。そういった二様の解釈も出てまいりますので、今回その点を明確にいたしますために、原則的には認可決定後も管財人の権限は残すことといたしました。必要に応じまして、更生計画により、あるいは裁判所の決定によりまして管財人の権限を会社の理事者に移すことができるようにいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/71
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072・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 ちょっと、後藤さんの質問に関連して、一点だけお伺いしたいのであります。それは、社会預金の問題ですね、社内預金について、これは労働基準法の関係であるかと思いますけれども、労働省のほうで、社内預金の総額の半分ですか、二分の一程度は第三の金融機関その他の機関に保証に付さなくちゃいけないということになって、いまそれぞれ企業体でそういう準備なりそういう方向に進みつつあるように聞いておるわけであります。相当の機関で保証するんですから、保証自体にはその心配がなかろうと思いますけれども、その制度と、今度の何ですね、こちらのほうでは六カ月なり三分の一なんかで一応線を引いて区別をしているわけですね。その関係はどういうふうに理解すればいいでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/72
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073・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 社内預金につきましては、労働基準法の規定に基づきまして、労働協約に基づくものとして現在行なわれておるということでございます。労働基準法に基づく社内預金の取り扱いにつきまして、先年労働省におきましてその一種の規制の措置が講ぜられました。これはまあ審議会の結論を、答申を受けましてそうされたのでございますが、これによりますと、先ほどお話のように、金融機関による保証を講ずるということが一つの柱になっておる。この規則措置の趣旨は、預金者の範囲を特定すること、あるいはその金額の最高限を規定すること、あるいは利率を適正に定めること、あるいはまた先ほどの弁済を確保する道を講ずるということが、いろいろその内容になっております。その一つとして、金融機関による保証ということが打ち出されておるのであります。現在労働省におきまして、その方向に向かって指導をされておるようであります。会社更生法の関係は、あくまでも労働者と会社との間の債権債務の関係でございます。したがいまして、使用人が会社に対して社内預金の返還を求めるという場合に、どの限度のものを共益債権とするかどうかというのが、こちらの会社更生法の問題でございます。しかし、労働基準法の規定に基づきまして、これからの運用として行なわれます金融機関による保証が一面できますと、万一会社から支払われないというような場合には、金融機関が保証人の立場に立ちますので、労働者としましては金融機関から直接その保証金額の支払いを受け取るということになるのであります。したがいまして、その限りにおきましては、会社更生法とは関係なしに、金融機関の責任において使用人に弁済が行なわれるということになるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/73
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074・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 そうしますと、保証したほうの求償権といいますか、その関係はどういうふうになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/74
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075・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 金融機関が保証人としてこれを払いますと、更生会社に対して求償権を行使することになります。この場合には、更生手続に従って、求償権についての弁済を受けるということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/75
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076・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 そうしますると、今度の改正案によりまして、まあ六カ月とそれと総額の三分の一ですか、これで一つ線が引かれるわけですね。しかし、総額の半分については保証に入っている以上は、直接保証機関が支払いをするということになりますと、実態的にはだいぶ変わるわけですね、この制度と。この制度のあらわれているところと実態とは、少なくとも半分は保証機関からダイレクトに支払いが行なわれる。そうすると、残った半額についての問題で、半額の中のまあ三分の一の場合は、これは共益債権であって、その半分と三分の一の間が更生債権になる、こういうふうに見ていいわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/76
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077・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 御意見のとおりになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/77
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078・田村賢作
○理事(田村賢作君) ほかに御発言もなければ、本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時十五分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515206X01419670713/78
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