1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年五月十七日(水曜日)
午前十時十分開議
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○議事日程第八号
昭和四十二年五月十七日
午前十時開議
第一 国務大臣の報告に関する件(昭和四十年
度決算の概要について)
第二 国務大臣の報告に関する件(農業基本法
に基づく昭和四十一年度年次報告及び昭和四
十二年度農業施策について)
第三 国際電気通信条約及び関係議定書の締結
について承認を求めるの件
第四 所得に対する租税に関する二重課税の回
避のための日本国とブラジル合衆国との間の
条約の締結について承認を求めるの件
第五 所得に対する租税に関する二重課税の回
避及び脱税の防止のための日本国とニュー・
ジーランドとの間の条約を改正する議定書の
締結について承認を求めるの件
第六 所得に対する租税に関する二重課税の回
避のための日本国とブラジル合衆国との間の
条約の実施に伴う所得税法及び法人税法の特
例等に関する法律案(内閣提出)
第七 宅地建物取引業法の一部を改正する法律
案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
一、新議員の紹介
一、請暇の件
一、故議員西川甚五郎君に対する追悼の辞
一、故議員西川甚五郎君に対し弔詞贈呈の件
以下 議事日程のとおり
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/0
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001・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/1
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002・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。
議席第五十二番、地方選出議員、福岡県選出、鬼丸勝之君。
〔鬼丸勝之君起立、拍手〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/2
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003・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 議長は、本院規則第三十条により、鬼丸勝之君を外務委員に指名いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/3
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004・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) この際、おはかりいたします。
和泉覚君、柏原ヤス君、北條浩君、山田徹一君から、いずれも海外旅行のため十一日間、それぞれ請暇の申し出がございました。
いずれも許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/4
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005・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/5
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006・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 議員西川甚五郎君は、昨十六日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
竹中恒夫君から発言を求められております。この際、発言を許します。竹中恒夫君。
〔竹中恒夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/6
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007・竹中恒夫
○竹中恒夫君 本院議員西川甚五郎君は、昨十六日、不幸病魔のため、こつ然として幽明境を異にせられました。君の計報は、まさに青天のへきれきでありまして、まことに哀惜のきわみでございます。ここに議員一同を代表して、つつしんで哀悼のことばを申し述べたいと存じます。
君は、明治三十五年滋賀県に生まれ、長じて滋賀県立八幡商業学校から早稲田大学に学ばれ、さらにアメリカ合衆国に留学、コーネル大学並びにニューヨーク大学において経済学を修められたのであります。
帰朝後、伝統ある家業に従事され、近江蚊帳製造株式会社社長、西川産業株式会社社長、滋賀銀行取締役等、数多くの要職につかれるとともに、日本蚊帳工業組合連合会理事長、日本蚊帳統制組合理事長等として、常に業界の指導的な立場に立って、その発展に貢献してこられたのであります。
また、君は、日華事変並びに太平洋戦争に再三召集され、陸軍主計大尉として軍務に精励、よくその重任を果たされたのであります。
昭和二十二年、初めて本院議員としてその議席を得られて以来、過去四回にわたって当選の栄に輝き、実に二十年の長きにわたって在職され、この間、立法、行政両府にわたり、数々の要職につかれて、ひたすら国政に尽力されたのであります。
すなわち、参議院においては、決算委員長、大蔵委員会理事等を歴任され、なかんずく大蔵委員会とのつながりはきわめて深く、終始大蔵委員として、財政、金融等の国政審議に深いうんちくを傾けられ、誠心誠意尽瘁せられたのでありまして、その豊富な知識と卓越せる識見に加えて、温厚篤実な御人格には、私ども同僚議員の常に敬服おくあたわざるものがございました。
また、行政府にあっても、国務大臣、北海道開発庁長官、大蔵政務次官と、枢要の地位を占められ、りっぱな業績を残されたのであります。
このたび病床にあっても、常に委員会の運営に心を砕かれ、種々御連絡や御教示をいただいたことは一度や二度ではございませんで、その強い責任感に深い感銘を受けたのであります。私どもは一日も早い御快癒を待ち望んでいたのでありますが、思いもかけぬ御急逝にあい、再び相まみえることもかなわず、寂寡の感ひとしおでございます。
西川君のごとき人格識見ともに高邁な政治家の活躍が切望されるとき、同君を失ったことは、ひとり本院のみならず、国家のためまことに重大な損失であり、痛恨のきわみでございます。
ここにつつしんでありし日の西川君の温顔をしのび、数々の御功績をたたえつつ、心から御冥福を祈って、追悼のことばといたします。(拍手)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/7
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008・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) おはかりいたします。
西川甚五郎君に対し、院議をもって弔詞を贈呈することとし、その弔詞は議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/8
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009・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
議長において起草いたしました弔詞を朗読いたします。
〔総員起立〕
参議院は議員従三位勲一等西川甚五郎君の長逝に対しましてつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます
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弔詞の贈呈方は、議長において取り計らいます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/9
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010・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第一、国務大臣の報告に関する件(昭和四十年度決算の概要について)。
大蔵大臣から発言を求められております。発言を許します。水田大蔵大臣。
〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/10
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011・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) さきの第五十四回国会に提出いたしました昭和四十年度の一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受け払い計算書及び政府関係機関決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。
昭和四十年度予算は、昭和四十年三月三十一日に成立いたしました本予算と、昭和四十年八月十一日、昭和四十年十二月二十七日及び昭和四十一年二月二十三日に成立いたしました補正予算とからなるものであります。
昭和四十年度本予算は、農林漁業及び中小企業の近代化高度化の推進、社会保障関係諸施策の充実、住宅及び生活環境施設の建設の促進、文教の刷新充実及び科学技術の振興、社会資本の計画的整備、輸出の振興と対外経済協力の推進、雇用対策の強化等の重要施策を推進するとともに、国民の租税負担の軽減合理化並びに企業の体質改善及び国際競争力の強化のための減税を行なうこととして、編成されたものであります。
なお、本予算成立後、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への追加出資、給与改善、災害復旧、食糧管理特別会計への繰り入れ、道路整備特別会計への繰り入れ等に必要な経費の追加、租税及び印紙収入の減収見込み額を補てんするための公債発行等に関し、所要の予算補正を行なったのであります。
昭和四十年度におけるわが国の経済を顧みますと、昭和三十九年末以来の金融緩和策の実施にもかかわらず、停滞状態を続けたのでありますが、政府の財政金融両面からの積極的な景気対策の実施と、生産調整等民間産業界の自主的な不況対応策が進められた結果、停滞状態も次第に底をつき、昭和四十一年度予算における本格的な公債発行による財政支出の積極的拡大と大幅減税の実施が明らかにされたこともあって、昭和四十一年に入るとともに景気は回復過程に移行したのであります。
このような経済の推移の結果、昭和四十年度の国民総生産は、三十一兆三千四百四十八億円となり、前年度に対し、一〇・三%、実質四・七%の増加となったのであります。
また、鉱工業生産は、前年度に比し三・六%の増加となり、国際収支は、輸出の顕著な伸びがあり、さらには輸入が国内景気の停滞を反映して落ちついた推移を示したこと等により、年度間の総合収支で四億二千八百万ドルの黒字となったのであります。
以下、決算の内容を数字をあげて、御説明申し上げます。
まず、一般会計におきまして、歳入の決算額は三兆七千七百三十億円余、歳出の決算額は三兆七千二百三十億円余でありまして、差し引き五百億円余の剰余を生じました。この剰余金は、財政法第四十一条の規定によりまして、翌年度、すなわち昭和四十一年度の歳入に繰り入れ済みであります。なお、この剰余金のうち、昭和四十年度に新たに生じた純剰余金は二十一億円余であります。
以上の決算額を予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額三兆七千四百四十七億円余に比べて二百八十三億円余の増加となるのでありますが、このうちには、昭和三十九年度の剰余金の受け入れが、予算額に比べて四百七十四億円余増加したものを含んでおりますので、これを差し引きますと、昭和四十年度の歳入の減少額は百九十億円余となるのであります。これは租税及び印紙収入、雑収入、専売納付金等において四百四十億円余を増加いたしましたが、公債金等において六百三十一億円余を減少いたしましたためであります。
一方、歳出につきましては、予算額三兆七千四百四十七億円余に昭和三十九年度からの繰り越し額四百二十一億円余を加えました予算現額三兆七千八百六十八億円余から、支出済み額三兆七千二百三十億円余を差し引きますと、その差額は六百三十八億円余でありまして、そのうち、昭和四十一年度に繰り越しました額は、四百二十六億円余であり、不用額は二百十二億円余となっております。
なお、昭和四十一年度への繰り越し額の内訳を申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定により、あらかじめ国会の議決を経て繰り越しましたもの四百七億円余、財政法第四十二条ただし書きの規定により避けがたい事故のため繰り越しましたもの十一億円余、財政法第四十三条の二第一項の規定により継続費の年割り額を繰り越しましたもの七億円余であります。
次に、予備費でありますが、昭和四十年度一般会計における予備費の予算額は四百五十億円でありまして、その使用総額は四百四十九億円余であります。
次に、一般会計の国庫債務負担行為について申し上げます。
財政法第十五条第一項の規定に基づく国庫債務負担行為の権能額は千七十九億円余でありますが、このうち実際に負担いたしました債務額は千四十七億円余でありますので、これに既往年度からの繰り越し債務額七百八十四億円余を加え、昭和四十年度中に支出その他の理由によって債務が消滅いたしました額六百三十七億円余を差し引きました金額千百九十四億円余が、翌年度以降に繰り越された債務額になります。
財政法第十五条第二項の規定に基づく国庫債務負担行為の権能額は三十億円でありますが、実際に負担いたしました債務額はございません。
なお、既往年度からの繰り越し債務額は、昭和四十年度中に支出その他の理由によって全額が消滅いたしました。
次に、昭和四十年度特別会計の決算でありますが、同年度における特別会計の数は四十三でありまして、これらの特別会計の歳入歳出決算額の合計額は、歳入決算において七兆二千百六十億円余、歳出決算において六兆四千六十三億円余であります。
次に、昭和四十年度における国税収納金整理資金の受け入れ及び支払いでありますが、資金への収納済み額は三兆千九十八億円余でありまして、この資金からの支払命令済み額及び歳入への組み入れ額は三兆千八億円余でありますので、八十九億円余が昭和四十年度末の資金残額となるのであります。
次に、昭和四十年度政府関係機関の決算でありますが、その内容につきましては、それぞれの決算書を御参照願いたいと存じます。
以上、昭和四十年度の一般会計、特別会計、国税収納金整理資金及び政府関係機関の決算等につきまして、その概略を御説明申し上げた次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/11
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012・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。竹田現照君。
〔竹田現照君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/12
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013・竹田現照
○竹田現照君 私は、ただいま御報告のありました昭和四十年度歳入歳出決算外三件につきまして、日本社会党を代表し、総理並びに関係国務大臣に対し質問をいたします。
まず、決算に対する政府の態度についてお尋ねをいたします。
昨年からの前例にならい、昭和四十年度決算について政府の報告がただいま行なわれましたが、これは国の財政の締めくくりを国会を通じて国民に報告するという点で、まことに意義深いものがあると存じます。しかしながら、政府の決算に対する態度は、これを予算の場合に比較して、いまだになまぬるいものを感ずるのは、はなはだ遺憾なことであります。特に昨年以来、国民の決算に寄せる注目は、きわめて大きなものとなってまいりました。とりわけ、共和製糖事件におけるにせ領収証など、先年の東京都知事選挙のにせ証紙事件をはじめ、森脇事件での有名なにせの黒金念書事件など、目的のために手段を選ばぬものがうようよしております。これは、判さえついていれば、それがにせであれ本物であれ、万事オーケーという、わが国の判こ行政といわれるシステムに問題があります。この仕組み自体に盲点があるから、にせの判で金を引き出したり、利権をあさったりするのが当然だという風潮が生まれ、そうして、これが暴露されても、政府は、必死になってひた隠しに隠そうとします。これは、本院決算委員会における昨年来の経過を見ても明らかであり、くさいものにはふたで押し通そうとする、このような態度は、国民にますます不信の念を抱かせるだけであります。予算の執行に対し国民の持っている疑念を晴らすためにも、今日なお、明治憲法時代の方法に従っている決算の取り扱いについて、抜本的な方策を立てるべき時期にきていると考えるのであります。現行の取り扱いにしても、第七回国会及び第三十四回国会においては、各方面の参考人の意見を聞き、根本的な再検討への志向を示し、決して、安定的慣行とはされていないことを忘れてはなりません。憲法が「国会に提出」を明記している以上、むしろ「国会の議決」とすべきであろうと考えますが、重ねて政府の所信をただしたいのであります。
第二に、昭和四十年度予算の執行にあたっては、財政支出の積極的な促進がなされたわけでありますが、そのかいもなく、国内の経済活動は、おおむね停滞のうちに推移したため、税収は伸び悩みを続け、年末には二千五百九十億円の税収不足が見込まれるに至ったのであります。そこで政府は、「昭和四十年度における財政処理の特別措置に関する法律」によって、これが補てんのため、国債二千六百二十七億円の発行を決定したわけであります。しかし、租税以外の科目での収入増もあって、国債の発行は当初の予定額を下回り、二千億円が発行されたにとどまりましたが、決算において、租税及び印紙税収入の当初予算に対する不足は、二千三百八十二億円となっております。
これに関連して、次の諸点を質問いたします。
まず、昭和四十年度国民総支出の実績は三十一兆三千四百四十八億円、その伸び率は、名目一〇・三、実質四・七でありましたが、これは、近年においては相当の低落を示したもので、景気の立ち直りのおそかったことをあらわしておりますが、景気の回復がおくれたのは、いかなる事由によるものとお考えでありましょうか。
また、四十年度予算の規模は、一般会計についていえば、経済成長率の鈍化に伴う税収の伸び悩み、減税の要請、前年度剰余金受け入れの減少など、均衡財政を維持していく上での歳入面からの抑制要因もあって、相当圧縮につとめたことが認められるのでありますが、それにもかかわらず、実績においては、さらに租税の収入減を来たしております。ことに、法人税、酒税、物品税が当初の見込みを下回っており、この三税については、前年度決算額よりも下回っております。これらの現象はいかなる事由によるものとお考えか、御説明願いたいのであります。
次に、政府は、四十年六月の初め、支出の一割留保を決定いたしましたが、六月中旬には、この方針とはうらはらに、公共事業費及び財政投融資の繰り上げを決定し、さらに七月下旬に至ると、さきの支出一割留保を解除して、むしろ支出促進に向かい、国庫債務負担行為も一千億円を追加する等の決定を行なっておりますが、わずか二カ月足らずの間に、このような方針の大変更を来たしました事由は何であったか。また、このような方針決定のぐらつきは、経済動向に混乱を与え、景気回復をおくらせる要因ともなったのではないか。あわせて御説明をいただきたいと存じます。
第三は、昭和四十年以来、本院決算委員会において、国有財産の管理処分問題が大きく取り上げられてまいりましたが、ここに、そのおもなるものをあげてみますならば、旧虎の門公園跡地の件、碑文谷マンションに関する件、旧陸軍経理学校跡地の件、飼料会館に関する件、多摩川河川敷に関する件、手賀沼公用水面埋め立て地に関する件、伊豆山所在国有林貸し付けの件、那須所在国有林交換の件、高槻市及び西宮所在国有林交換の件などであります。しかして、以上の諸事案に関連して取り上げられました問題点は、払い下げ財産の用途指定違反、国有地交換、払い下げの際の評価、河川敷の公共利用、公用水面埋め立て地の目的外使用等であり、これらの問題点については、その後、政府において管理方式の上で幾つかの改正措置がなされたのであります。すなわち、評価方法の改正、用途指定に関する改正、契約方式及びその取り扱いの改正、河川敷公用許可方針の明確化、公用水面埋め立て免許規制の厳格化、国有地交換制度の改正、国有林の交換、払い下げ方法の改正等がこれであります。以上の改正措置がとられましたことは、本院決算委員会における財政統制の成果だと私は見ております。
つきましては、政府といたしまして、以上の改正諸措置をもって国有財産の管理処分に万全を期せられるとお考えかどうか、御見解をただしたいのであります。
第四は、社会保障関係費全体といたしましては、一般会計歳出額の伸び率を大きく上回っておりますが、これはもっぱら医療経費の著しい増大によるものであって、国民の期待する老人、身体障害者対策、年金給付費等をまかなうべきその他の社会保障費の伸びは、一般会計歳出額の伸びに比べて、四十年度以降では下回っているのであります。このような傾向は、これら社会福祉施策が著しい立ちおくれを見せている実情からして、社会保障財政のいびつな姿を露呈していると言えるのであります。これは、長期、具体的な社会保障計画が策定されていないことに基づくものであり、しかして、その原因の一つは、医療保険制度の不安定に求めることができると考えるのでありますが、これに関し、政府の御見解を伺いたいのであります。
また、医療費の著しい増大が、投薬、注射による薬剤費の増大によることは、すでに国民一般の知るところであります。今日、この薬剤費の占める割合は、医療費全体の四〇%をこえるといわれております。医療費の伸び方の激しい点は、西欧先進諸国においても同様でありますが、これらの国において薬剤費の医療費全体に占める割合は一〇%から一八%といわれております。つきましては、わが国と比べ、このような開きがあるのはなぜか、御見解を承りたいと存じます。
医療費の増大が医療保険財政に行き詰まりを来たしていることは周知のとおりであります。この点、支払い側といたしましては、医療費はふえるべくしてふえたとは考えておりません。その原因は、薬にからむ払い過ぎや、むだの増大と考えているのであります。ところが、政府は、このむだを看過し、ふえた医療費の財源は、保険料等支払い側の負担増で埋めてきております。他面、診療側に目を向けて見ますと、診療側としては、低い技術評価を補うため、このむだとみなされる部分を、いわゆる潜在収入として技術報酬に振り向けているのであります。しかるに、政府は、この潜在収入の増大は黙認の形で、技術評価については手をこまねいているありさまであります。昭和四十一年度の予算編成にあたり、関係当局の間では、四十二年度からは、報酬体系の改定等、いわゆる抜本的対策を円滑に実施すべきものと取りきめておきながら、政府はいまだに医療保険財政につきましては、くさいものにはふたをした形のままで、その赤字の補てんを、保険料率の引き上げ、患者負担の増額等により糊塗しているのであります。これではとうてい医療保険の明朗化は期せられません。政府は、近く医療保険の抜本対策に乗り出さざるを得ないでありましょうが、支払い側と診療側の対立の激化の続く限り、また、政府が双方からの信用を回復できない限り、抜本策の実施はむずかしいものと考えますが、支払い側、診療側双方を説得する自信があるのかどうか、御所信を伺いたいのであります。
第五に、農業基本法関連の重要施策である農業構造改善事業につきましては、四十年度決算検査報告において、国庫補助金の経理当を得ないものが例年どおり指摘されているほか、補助事業により取得した施設等の管理について留意を要すると認められると掲記されております。その内容を要約いたしますと、農業構造改善補助事業の実施にあたり、事前の調査及び事後の管理が十分でないため、施設及び機械の遊休化、非能率使用等の事態が見られるが、取得施設及び機械の効率的使用についてはもとより、将来の事業の採択にあたっては、実施後の利用運営の見辻みについて十分配慮の要ありとするものであります。
この農業構造改善事業につきましては、さきに、行政管理庁が、三十九年五月、農業構造改善事業運営に関する行政監察の結果の勧告において、実情と遊離した計画を策定し事業実施が危ぶまれているものや、導入された施設が遊休化するおそれが見られると指摘したのに対し、農林省は、四十年二月、国及び都道府県の推進体制は、地方農政局の発足、都道府県における機構整備等により、その後著しく改善をみているが、三十八年八月設立の全国農業構造改善協会の計画樹立のコンサルタント活動の充実等により一そうつとめていきたいと回答しているのであります。しかるに、右の会計検査院の留意事項から判断いたしますと、農林省の計画実施後の監督はもとより、事業計画決定の際の事前審査はいまだに不十分な点があると解されるのでありますが、このことに関し、政府の御見解を伺いたいと存じます。
最後に、公社、公団、事業団等についてであります。政府は、今日まで、しばしば、公社、公団等はもうつくらない、整理統合に踏み出すべきだと言明されてまいりましたが、現実は、これとは全く逆に、政治的圧力により、ますます新増設が行なわれようとしております。このことに対し、世論はきわめてきびしい批判を加えているのでありますが、一体、政府はほんとうに勇断をもってこれらの問題に取り組もうとしているのか、総理並びに行政管理庁長官の明確なる御見解と決意のほどをお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/13
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014・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 竹田君にお答えいたします。
決算は、御指摘のように、これはまことに重大なものでございます。これをないがしろにするようなことがあってはならない、これは申すまでもございません。しかし、決算は、すでに予算執行後のいわゆる計数的な記録であったり、あるいは報告であったりするのであります。したがいまして、憲法は、決算は国会に提出をすると、かように申しております。この提出という結果から、報告事項ということになるのでございます。しかしながら、両院の決算に対する意思表示、これは過去の予算執行の不当あるいは不適当、そういうものについての御批判でありますし、これは予算執行責任者に対しての警告でもあります。また、国民に対しまして予算執行の経緯を明らかにするものでありまして、私は、その意味において、意義、目的があり、同時に、これが将来の予算編成に役立つものと、かように実は思っておるのであります。最近の決算委員会における活発な論議は、ただいま申し上げるような決算の目的を十分果たしておると、かように私は確信し、また、皆さま方にお礼を申し上げる次第でございます。
第二の点で、公社、公団等の整理についてのお話であります。私も、昨年は、一切、公社、公団、特殊法人をつくらないということを決意いたしまして、そのとおりいたしましたが、しかし、時代の要請はなかなか激しいものがございます。時代の要請にこたえて、公社、公団、法人をつくる、その場合には過去のものを整理して、できるだけ新しいものをつくらないと、こういう処置をとったのであります。しかし、ただいま臨時行政調査会の答申の線に沿いまして、いわゆる十八特殊法人をも含めて行政管理庁でいろいろ検討をいたしておりますから、今後の整理統合等につきましては、その結果を待って処置をいたしたい、かように思います。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/14
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015・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。
昭和四十年度の国民総支出の伸びが非常に低かった原因は何かという御質問でございますが、御承知のように、国際収支の不均衡是正ということを目的として、昭和三十八年の暮れから金融引き締め政策をとったのでございますが、このために三十九年度の後半から四十年度を通じて、日本経済に非常な停滞が超こったということは、御承知のとおりだと思います。この引き締め政策によりまして、成長期において拡大された設備投資の累積があり、供給力が十分増強されておるにもかかわらず、経済全体の有効需要の増加がこれに追いつかないという現象が起こったのが、昭和四十年度のいわゆる不況であると私どもは考えております。で、このために、その次の御質問にございました税収の、法人税、物品税、酒税の見込みが非常に減ったというのもこの関係からでございまして、法人税で申し上げますと、企業収益の低下を反映して、補正予算において最初の見込み額を千三百九十五億円も減額しましたが、決算ではこの減額が少し多過ぎたためにわずかの増収となりましたが、しかし、全体としては非常に見込み違いの減収でございました。物品税は、やはり景気不振に加えて耐久消費財の需要が激減したという影響もあって、課税物品であるテレビ、小型テレビ、小型乗用車等の課税数量が当初の見込みを特に下回ったという関係からの減収でございます。酒税もやはり、個人消費の停滞というようなことから、清酒、ビールの課税数量が予定数量を下回ったという関係でございまして、それぞれの見積もりが大幅に減収となった次第でございます。それともう一つは、技術的な問題ですが、三十九年度において、国税収納金整理資金に関する法律施行令というものが改正されまして、翌年度の四月分税収の一部を当年度税収に区分するというようなことになったことの影響も若干あるというふうに考えております。それから四十年度、最初予算を組んで、予算が成立してから経済動向を見まして、これは税収がなかなか上がらない、確保することがむずかしい。同時に、歳出は補正要因までも非常に含まれるという情勢が出てきましたので、最初この予算執行において一割を留保するということを考えましたが、少したって経済の状態がそういう事態ではない、簡単に景気は回復しない。むしろ政府が予算の繰り上げ執行をする必要があるんじゃないかというふうに政府の考え方が変わりまして、その次には、これを解除したばかりじゃなくて、御承知のような積極的な需要喚起策を講ずるという財政政策をとったわけでございますが、急に変わったじゃないかということは、結局、当時において、やはり情勢に対する若干の見そこないがあったんだというふうに私どもは考えております。
それから、国有財産についての御質問がございましたが、もう国有財産は申すまでもなく国民の財産でございますので、その管理、処分については公正を期さなきゃならないと私どもは考えまして、いろいろな御指摘がありましたことを機会に、先般、国有財産の管理については非常な改善を加えました。まず、相手方の選定を公正にするというために、従来はもっぱら随意契約によっておりましたのを改めて、公共的用途に優先的に供することを主眼として運用して、できるだけ競争的方法を導入するということを、ただいまいたしております。また、処分にあたって用途指定の実効を確保する方法について改善を加えました。で、いろいろ問題が起こりまして、国が用途を指定しても、転売制限等について、これが登記にない場合は、善意の第三者を拘束することはできませんので、これを登記によって第三者に明示するという方法も講ずることにいたしました。また、処分価格の適正評価のために、従来の鑑定評価を一そう活用するということをいたしまして、財産の売り払い価格の適正化を期するという指貫も講じております。
それから、交換の問題でございますが、従来いろいろ疑惑を起こしておりますので、国有財産の交換を行なう場合を、相手方が公益法人等であって、交換渡し財産を、公共性、公益性の強い用途に直接供する場合等というふうに、一定範囲に限定するという方法に改善いたしましたが、こういうような一連の措置によって、国有財産の公正な管理、処分を私どもは徹底させたいというふうに考えております。(拍手)
〔国務大臣坊秀男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/15
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016・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) お答えいたします。
まず、社会保障関係費から申し上げます。昭和四十年度の実績によりますと、社会保障関係費の対前年度伸び率は、一般会計歳出の伸び率をはるかに大きく上回っておりますけれども、医療費を除いた社会保障関係費の伸び率は、この中には伸びたものもありますし、伸び悩んだものもございまして、結局、総合いたしますと、一般会計歳出の伸び率を上回らなかったということでございます。政府といたしましては、今後とも社会保障全般の総合的、体系的な整備とその水準の引き上げをはかっていきたいと考えております。そういうことをやっていくために、所得保障部門につきましては、年金制度の改善、新たに児童手当制度の創設の促進等による大幅な進展を期し、また、老人福祉、児童福祉、心身障害者福祉や生活保護の分野につきましても、社会経済の発展に即応して、立ちおくれることのないように手厚い施策を講じてまいりたいと考えております。
次に、医療費と薬剤費との関係について申し上げます。近年、保険医療費におきまして、薬剤費の比率が年々増大しておることは事実でございます。政府管掌健康保険についてこれを見てみますと、三十六年においては二五・一%であったのが、逐年増大いたしまして、四十年においては三八・二%となっておるのでございまするが、このような傾向は、主として医学や薬学の進歩等に伴いまして、高価な薬剤が使用されるということであると考えますけれども、そのほかに、薬価基準の価格と実勢価格との差が大きい場合には、収益を大きくするために、高価な薬剤を使用する傾向が生じやすく、また技術料が十分でない場合にも、そういう傾向が生じやすいと思います。したがいまして、厚生省といたしましては、今後定期的に実勢価格に応じて薬価基準価格を改定する所存でございます。診療報酬体系の適正化、薬価基準の適正化等につきましては、現在、中医協で審議中でございますので、その結論を待って対処してまいる所存でございます。
いずれにいたしましても、医療保険の抜本的な改正をやらなければならないということに迫られてまいっておりまして、政府といたしましても、これはぜひとも実現したいと、かように思っておりますが、抜本対策は、診療側だけではなくて、被保険者、事業主など、広く一般国民の利害に関係する問題でございますので、これが円滑な実施をはかるためには、広く関係者の御理解を得るということが必要なことでございます。厚生省は、これらの関係者から広く御意見を承りまして、そうして皆様方に御納得のいくような抜本的改正を実施いたしたいと、かように考えておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣倉石忠雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/16
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017・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 農業構造改善事業によって、導入いたしました施設等の一部が、一部の地域で御指摘のように遊休化を招いておりますことのありますことは、まことに遺憾に存じます。事業計画の承認にあたりましては、従来から地域の圃場条件や営農条件などについて、十分検討を加えるとともに、その効率化に努力をいたすよう指導してまいったのでございますが、今後はさらに事業計画を十分審査いたしまして、その見通しを精査の上に認定するように指導する方針でございます。また、すでに導入されました施設につきまして、効率的な利用が期待し得ない施設につきましては、地域の実態に応じた有効な施設との交換をはかるように指導いたしまして、このようなことについて全力をあげてこの御指摘に対する措置を講じて、現にまいっておる次第であります。(拍手)
〔国務大臣松平勇雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/17
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018・松平勇雄
○国務大臣(松平勇雄君) 公社、公団、事業団につきまして、これらの整理統合についての御質問に対しましてお答えを申し上げます。
行管といたしましては、先般の三月七日の閣議の申し合わせに基づきまして、特殊法人等につきまして、その整理簡素化に鋭意努力をいたしておる次第でございますが、現在、事務当局に命じ、現存の百八の特殊法人に対しまして、実態調査を行なわせております。
この調査の基本的な方針といたしましては、第一に、法人設立の目的が果たされたかどうか、第二には、性格が類似しておりますものは互いに統合しても支障がないかどうか、第三は、当該事業特別会計で行なうか、あるいはまた、地方団体もしくは民間団体に委譲して実施させることが適当ではないか、第四は、その他、行政の実績等から見まして、特殊法人としての存在の意義があるかどうか、そういった四つの観点から検討をいたしたいと思っております。
この調査の結果は、行政改革本部及び行政監理委員会等にはかりまして、十分検討した上、処置いたしたいものと考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/18
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019・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 黒柳明君。
〔黒柳明君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/19
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020・黒柳明
○黒柳明君 私は、ただいま議題になりました昭和四十年度決算につきまして、公明党を代表して、総理及び関係大臣に質問いたしたいと思います。
先ほども若干質疑がございましたが、決算の重要性及びそれに関する問題について初めお尋ねをしたいと思います。先ほど総理からもささやかなる御答弁がございましたが、具体的に誠意ある御答弁をお願いしたいと思います。
昨年以来、国の決算が国会に提出されるにあたり、まず、衆参両院の本会議で政府の説明を聞き、各党の代表が質疑をするという先例が打ち立てられております。これは決算の扱い上、一つの発展を国会史上に刻むものでありますが、この際、次のことについて総理の答弁を求めるものであります。
ただいまの大蔵大臣の四十年度決算の説明のうち最後の部分で、「何とぞ御審議のほどお願いいたします。」と述べているのでありますが、審議をしてくれというだけでは、何のために国会の審議を求められているのか、国会のどのような意思の表示を求めているのか、不明確なのであります。これが慣例とはいえ、私どもは非常に不本意なものが残るのであります。総理大臣は、去る衆院決算委員会において、決算の取り扱いに関して、「外国等のいろいろのやり方もあるが、わが国のあり方については、国会自体がりっぱなものをつくり上げていくように」との注目すべき発言をしているのであります。総理は、将来決算の提出にあたって、内閣の提出の意思を何らかの形でもっと明確にし、わが国の決算の取り扱いを近代化する上に、さらに一歩大きな前進をはかる意思はないか、お聞きしたいのであります。
次に、国家財政の経理と、国家財産の管理など、政治姿勢の問題についてお尋ねいたします。
共和製糖事件は、本院の決算委員会の審議によって、政府の特別調査報告が行なわれたり、検察庁、国税庁等の権限の発動を促し、国有林野の管理処分の再検討を促す等、その効果は大きなものがあったのでありますが、いまだ改善されているのかどうか、一つの疑問が残っているように思われるのであります。
それは政治家の姿勢の問題であります。国民は、共和製糖事件に政治家がどのように関係したか、それはいいことであったか、悪いことであったか、うやむやになっているのであります。この際、総理は、共和製糖事件では起訴された政治家だけが悪かったのか、ほかにも政治姿勢のよろしくない政治家がいたのか、そういう政治家が何人くらいいたのか、まず明らかにされて、さらにその原因をも明らかにし、どう改めるか、所信を表明していただきたいと思います。
また、共和問題の経験にかんがみて、国家資金の融資を受け、あるいは国有財産の交換、払い下げを受けた私法人について、他方で多額の政治献金が合法的に行なわれていることは、このまま放任していていいものか、何らかの規制措置を考慮すべきではないかと思いますが、総理の考えをお尋ねしたいと思います。
このような政治家が介入して、国家財政の経理と国有財産の管理を紊乱させている事例は、いままでも幾多国民の前に明らかにされてきたのでありますが、国会みずからが積極的に事態を明らかにして、総理も口ではしばしば述べられておるとおり、正すべきを正さねばならないのであって、その場所は衆参両院の決算委員会であり、その審議はますます充実されねばならないし、その調査に対し、政府も資料の提出等、協力を惜しむべきではないと思うのでありますが、この点、各省庁の協力を、十分協力さしていただくことを約束していただきたいと思います。
次に、農政の方向、姿勢について、総理及び農林大臣にお尋ねいたします。
いま農民の中には、農林省の指導どおりにやったらひどい目にあうぞというような風潮があります。たとえば東北のてん菜糖問題もそうです。牛乳等、畜産問題もそうです。また、農業基盤整備の土地改良事業をやったあとに工場を許可したり、牧野改良事業だといって施設をつくったあとには、観光ホテルを許可したりというありさまで、農業投資をわが国農業振興のために役立てていくには、農政のあり方を改めねばならないと思うのであります。それは一言にしていえば、実地に立った責任ある計画性の確立ということであります。この点について、総理及び農林大臣の考えをお聞きしたいのであります。
次に、公共投資の問題について、総理及び建設大臣にお尋ねします。
政府は四十年度より公債発行に踏み切り、公共投資の拡大をはかってまいったわけでありますが、幾ら投資額をふやしても、公共施設の建設の基盤である土地の値上がりにそれが吸い込まれていったのでは、施設の拡充は額の増大と相伴わなくなるのでありまして、専門家の調査によると、建設費に占める用地取得費の比率は、三十五年度以降、ウナギ登りに上がって、いまや、公共事業費の二割程度は用地費に食われているだろうと言われているのであります。これでは、借金政策で今後も拡大されていく公共投資の効率のあり方として、大きな問題が残ると思うのであります。また、この地価の高騰は、大衆の住宅問題あるいは公共料金、諸物価の値上がりにまで、その影響するところは甚大であります。政府はこの問題にどう対処しようとするのか。従来、宅地制度審議会の答申などもあったが、いまだに何ら有効な施策は打ち出されていないのであります。政府はこれを政府全体の問題として、本格的に取り組むべきだと思うが、総理と建設大臣の所信をお伺いしたいと思います。
私の持ち時間はまだ相当残っておりますが、大臣の答弁で有効にお使いになっていただきたいと思うのであります。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/20
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021・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
先ほども竹田君にお答えしたのでありますが、この決算の取り扱い方、これはもう憲法で規定しておるように、ただいま「提出」ということでございますから、幾ら決算が大事だと申しましても、これは報告事項であることには間違いございません。そこで、両院の意思表示というもの、いわゆる論議がかわされたとか、いろいろ検討されたその結果は、どういうことになるのか、こういうことを申しますと、先ほどお答えいたしましたとおり、予算執行者に対して、これは時に警告である、あるいはまた、予算の経緯を国民に対して明確にする、そうして将来の予算編成に役立たしていく、こういうことになるのでございます。ただいま行なわれております決算委員会の論議は、そういう意味で十分その目的を達しておると、私は、さように確信をしておりますし、同時にまた、諸君の論議について私の率直な意見を申しまして、たいへん感謝しておるということを一言申したのでございます。
そこで、本会議に決算が出てきたということは、これは先例になるので、たいへん一つの進歩だと、かように御指摘になりました。私もさように思います。また、そういう意味で取り扱ったのでございます。さらに、その決算の審議におきましても、もっと近代化するくふうをしろ、こういうお話であります。これは皆さんの御意見も十分伺いまして、さらに検討したらいいことだと、かように思っております。
次に、共和製糖の問題について、政治家の姿勢についてお話がございました。何人関係しているかというお話でございますが、私は、この問題が起きました際に、いわゆる政界を浄化するということ、これは、政府ももちろんでございますが、政治家たるものすべてが、それに協力してほしい。でございますから、ただいま政府だけの責任と、こういうことで片づくものではございません。しかし、私ども自身、政府自身が率先して姿勢を正す、これはもう当然でございますが、各政治家の御協力を心から願っておる次第でございます。この点では、私は、政府の機関あるいは検察当局というものがございますから、そういうものに一切干渉せずに、そういうところで堂々と処理してもろう、いわゆる正すべきものは正す、きわむべきものはきわむ、こういう態度で終始したいと思っております。その場合が決算委員会の場であったり、また特殊な機関であったりすることは、これは当然でございます。
そこで、政府の予算を使う、あるいは補助を受ける、こういう団体が政治資金を出すのはどうか、こういうお尋ねであります。これにつきましては、選挙制度審議会、これもやはりその点を指摘しております。ただいま、くふうし、ぜひ皆さんの御審議を得ようとしておる、いわゆる政治資金規正法なるものが、やはりそういう点にも触れるつもりでございます。この点では、答申を十分尊重いたしまして、そうして過誤なきを期したいと、かように思っておりますが、しかし、今日、あらゆるものが何らかの形で政府の援助を受けておるというのが実情でございますので、たいへんこのきめ方はむずかしいのではないかと、かように私はおそれております。
そして、先ほどの、決算の御審議に十分協力するその協力態勢を各省において積極的にとってほしい、こういうことでございますが、これは、私自身、総理といたしまして、十分注意いたしまして、各省の協力を積極的に命ずるつもりでございます。
次に、農林関係の問題で、どうも東北のてん菜糖はうまくいかなくなるし、あるいは牛乳等においても、酪農業もいろいろ迷っておるようだ、どうも政策が一貫しない、こういうところに問題があるのではないかという御指摘でございます。この点につきましては、新しい政策を樹立いたします際に、調査をさらに厳重にするということ、これは望ましいことでございます。てん菜糖の場合にいたしましても、寒冷地のてん菜糖は、ともかく何らか進んでおりますが、暖地てん菜糖は、これはもうやめた。ただいまたいへん気の毒な状態になっておりますのが、御指摘になりました東北地方であります。これについては、農林省でも特にくふうをして、農民の方々が非常な損害をこうむらないように、いろいろ指導したい、かように思っております。詳しくは農林大臣からお聞き取り願いたいと思います。
次に、公共事業に関連いたしましての地価対策、これは御指摘のとおり、まことに重大な問題でございます。政府は、建設大臣を中心にいたしまして、地価対策をただいま立てておる次第でございます。同時に、この地価対策の解決に役立つと、こういう意味におきまして、土地収用法の改正もお願いしております。これらのものが今後御審議の過程におきまして明らかになるだろうと思いますが、十分ひとつ御意見を聞かしていただきたい。今日、本格的にこの問題を解決しなければならぬと、黒柳君のお気持ち、同時にその考え方には、私、全面的に賛成でございます。(拍手)
〔国務大臣倉石忠雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/21
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022・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 農業政策について、多くの国民が恨んでおるというようなおことばでございましたけれども、昭和四十二年度予算で決定いたしました農林省の方針が、ぼつぼつ予算の個所づけをいたす時期に入っておりますが、ただいま私のところへ、与野党を問わず、多くの国会議員諸君から、たとえば、農免道路あるいは開拓パイロット、その他の多くの施策に競争的に、地方の農村の人々の御依頼によって、御申し込みが殺到しているような次第でありまして、私は全部が全部農林政策に批判的であるとは考えておりません。しかしながら、いまお話のありましたような、たとえば、東北のてん菜糖のこと、あの当時、農林省が甘味資源の自給度を高めようということでやりました方針は誤りではないと思っておりますが、黒柳さんも御承知のように、ああいう作物は加工作物でありますので、結局、これは砂糖に製造されて、初めて所期の目的が達せられるわけでありますから、時代の変化に従って、その対象としておる工場が閉鎖されたということによっては、まことに困ったことでございました。そこで、政府は、すでに作付が済んでおるのでありますから、本年度におけるビートの作付農民に対しては、迷惑をかけないという方針を樹立いたしまして、関係の府県知事と協議をいたしておる最中であります。いずれにいたしましても、多少でも農林政策に対して国民の一部に不満があるようなことではいけませんので、われわれは謙虚にそういうことに耳を傾けて、万全の策を講じてまいりたいと思っております。(拍手)
〔国務大臣西村英一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/22
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023・西村英一
○国務大臣(西村英一君) お答えいたします。
公共事業の場合に、私たちといたしましては、国費を適正にかつ効率的に使用ができるというふうにつとめてまいらなければならぬと思っております。しかし、ただいま御指摘がありましたように、公共事業の中で用地費が非常に高い割合につくから、それには根本的な本格的な土地対策が欠けておるのではないかという御指摘でございます。私は、土地対策といたしましては、大局的にはやはり国土があまねく均衡のある発展をしなければならぬということであろうと思います。しかしながら、現在は、ややともすると、産業及び人口がある部分に集中いたしておるのでございまするから、その点につきましては、やはりいろいろな対策をもちまして、この土地の価格の安定をはかりたい、かように思います。
まず、その方法としても、一つや二つの方法ではできないので、総合的なやはり対策を講じなければならぬと思ってます。たとえば、既成の市街地では、やはり土地をなるべく有効に高度的に利用するように、また、開発された開発利益を、やはりこれを適正に按分するようにという、いろいろな手があると思います。
先般、実は宅地審議会から第六次の答申をいただきましたが、やはり、いろいろ考えてみても、この大都市の土地の安定をはかるのには、しょせん、土地の利用計画を根本的に立てなければならぬのじゃないかという意見でございます。私もそれには同感でございます。したがいまして、特別に地価の上昇を来たすような点につきましては、現在の都市計画法では対処ができませんので、都市計画法の改正をただいま検討いたしておるのでございます。要するに、あらゆる方法をもちまして、この用地費の暴騰を防ぎたい、もって公共事業が適正に行なわれるように検討したいと、かように考えておる次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/23
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024・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/24
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025・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第二、国務大臣の報告に関する件(農業基本法に基づく昭和四十一年度年次報告及び昭和四十二年度農業施策について)。
農林大臣から発言を求められております。発言を許します。倉石農林大臣。
〔国務大臣倉石忠雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/25
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026・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 先般、国会に提出いたしました昭和四十一年度農業の動向に関する年次報告及び昭和四十二年度において講じようとする農業施策につきまして、その概要を御説明申し上げます。
申すまでもなく、これらの報告及び文書は、農業基本法に基づいて、政府が国会に提出いたすものであります。
まず、昭和四十一年度農業の動向に関する年次報告について申し上げます。
この年次報告は、「第一部農業の動向」と「第二部農業に関して講じた施策」に分かれております。
「第一部農業の動向」におきましては、農業基本法の趣旨に沿い、他産業と比較した農業の生産性及び他産業従事者と比較した農業従事者の生活水準の動向に焦点を置き、これに関連する農業の動向を、四十年度を中心として、できる限り最近に及んで明らかにしようとするものであります。
〔議長退席、副議長着席〕
その概要を申し上げます。四十年度から四十一年度にかけてのわが国経済は、三十九年来の不況及びそれからの回復、さらには上昇という変動の過程をたどったのでありますが、このような景気の変動にもかかわらず、新規学卒者を中心とする農家労働力の流出と、内容の変化を伴う食料需要の旺盛な伸びという従来からの傾向には、基本的な変化は見られなかったのであります。
このような状況のもとで、四十年度における農業の生産性及び農業従事者の生活水準は、前年度に引き続き上昇を見、他産業との格差も縮小を見たのであります。まず、就業者一人当たり実質国民所得をもって農業と他産業との生産性を比較いたしますと、農業は製造業の三一%、非農業の二九%で、前年度のそれぞれ二七%、二六%に比べて、格差はともに縮小を示しております。しかし、これが直ちにそれぞれの産業の就業者に分配された所得の格差を示すものではありません。農業は家族経営が支配的であるために、農業所得は、そのまま就業者に帰属するものと見てよいのでありますが、他産業では、法人の留保分や株主配当になる分も含まれておりますので、就業者の所得に回る部分はかなり少ないものとなっております。試みに、就業者に分配される所得を比較いたしますと、その格差は生産性の格差に比べ、かなり小さく、一日当たりで見ると、四十年度の農業所得は、製造業常用労働者の賃金の七八%という水準にあるわけであります。
次に、世帯員一人当たりの家計費をもって農家と勤労者世帯の生活水準を比較いたしますと、農家は、全国勤労者世帯の八三%で、前年度の七九%に比べ、この格差も引き続き縮小いたしております。
しかしながら、このように生産性の格差が縮小した要因としては、不況の進行に伴い他産業における生産活動が著しく低調であったことや、農産物価格が大幅に上昇したことに負う面が大きく、基調としてこれが本格的に是正される方向にあるとは言いがたいのでありまして、なお農業の生産性の向上が強く要請される状況であります。
また、農家の生活水準の向上にいたしましても、兼業化の進展に伴う農外所得の増加に負う部分が大きく、住宅その他生活環境施設の整備とあわせ、農民の福祉向上に資する諸施策の一そうの強化の必要性が痛感されるのであります。
農業生産は、食料消費の高度化、多様化の傾向に応じつつ、選択的拡大の基調を持続いたしておりますものの、農業労働力の急速な流出、兼業化の進展、冬作不作付地の増加等に伴い、一部に停滞のきざしも見られるのであります。四十一年におきましては、気象条件にも恵まれて、米の生産は四年ぶりに増加に転じましたが、これも農業生産全体としての停滞傾向に基本的な変化を生じたと言い得る状況にはないのであります。この結果、内容の変化を伴いながら増大する食料需要に、農産物の生産が必ずしも十分に対応し得ず、このため、飼料を含めた食料農産物の輸入が増加し、食料自給率が低下する一方、流通機構の不備等もあって、農産物価格は大幅な上昇を見ているわけでありまして、今後、農業の生産性の一そうの向上をはかりつつ、需要の動向に即応した生産の振興をはかることが必要と考えられる次第であります。
次に、農業経営の動向について見ますと、農業就業人口は、四十年度には、前年度より三・五%減少して、千百八万人となり、農家戸数も四十年十二月現在で五百五十八万戸に減少いたしました。このような傾向の中で、一・五ヘクタール以上層の農家数は増加し、一・五ヘクタール未満層の農家数は減少を示す一方、兼業化はさらに広範化し、農家数全体の七一%に達しております。他方、農業に専念し、農業所得だけで勤労者並みの生活水源を享受している農家も一部に育ちつつありますが、農地価格の高騰等により経営規模の拡大への道はけわしく、このような農家がその数を増し、農産物の供給に占める割合を高めていくという動きは現在のところなお微弱であり、構造政策の推進の急務であることを痛感する次第であります。
以上のような農業の動向にかんがみますとき、食料の効率的な供給をはかりながら、同時に、その生産を担当する農家が社会的に均衡した生産水準を確保し得るよう、需要の動向に即応して生産の振興をはかること、農業構造の改善を促進すること、価格政策の円滑な運用をはかること等に配慮し、これらを有機的な関連のもとに総合的に推進することが、これまで以上に強く要請されていると考えるのであります。とりわけ、高い生産性と所得水準を実現する経営体を数多く育成し、その手によって農業生産の主要部分が担当されるよう、農業構造の近代化をはかることが肝要であり、このためには、農地の流動化と地価の安定、さらには他産業における雇用条件の改善、社会保障の充実、その他農業構造の改善を進めるための外部条件を整備する等、国民経済的視野に立った諸施策が総合的に進められる必要がますます強まりつつあると考えられるのであります。
以上が第一部の概要であります。
次に、「第二部農業に関して講じた施策」について申し上げます。これは第一部と同様、四十年度を中心としてできる限り最近に及んで、政府が農業に関して講じた施策を、農業基本法第二条に掲げる施策の全般にわたり、農業の動向との関連及び施策の実績等にも言及して記述したものであります。
—————————————
最後に、「昭和四十二年度において講じようとする農業施策」につきまして、その概要を申し上げます。
この文書は、年次報告にかかる農業の動向を考慮して四十二年度において政府が講じようとする農業施策を明らかにしたものであります。
政府は、さきに申し述べました農業の動向にかんがみ、農業の近代化を一そう促進することが、わが国経済の均衡のとれた発展をはかり、効率のよい経済を実現する上できわめて重要であることにかんがみ、農業基本法の定めるところにより、農業の生産性及び農業従事者の生活水準の向上をはかるため、同法の定める施策を着実に具体化することを基本的態度として農業施策を講ずることといたしております。
四十二年度において講じようとする農業施策の第一は、農業生産基盤の整備と農業技術の開発及び普及により、農業の生産性の向上と総生産の維持増大をはかることであります。
農業生産基盤の整備につきましては、土地改良長期計画に基づき、農業の生産性の向上、農業生産の選択的拡大、農業構造の改善等の方向に即して土地改良事業の計画的かつ強力な推進をはかるため、圃場条件の整備とその前提となる基幹かんがい排水施設の体系的な整備、基幹農道の整備、農地及び草地の造成等を拡充実施することといたしております。特に農道の整備につきましては、農林漁業用揮発油税財源身がわりの事業として一段とその拡充をはかっております。また、農業技術の開発をはかるため、試験研究の拡充強化につとめるとともに、新技術の普及を促進するため、普及組織の整備と普及活動の効率化をはかることといたしております。
第二は、最近における農産物需給の動向にかんがみ、農業生産の積極的振興をはかることであります。
まず、畜産につきましては、既耕地に対する飼料作物の積極的導入を含めて飼料自給基盤の確立をはかるとともに、生産性の高い畜産経営を育成して畜産物の安定的供給をはかるため、引き続き酪農振興のための諸施策を推進いたしますほか、家畜導入制度の拡充強化と家畜衛生対策の充実を期することといたしております。次に、野菜につきましては、引き続き指定産地制度の育成を促進するとともに、果実につきましては、広域的、集団的な産地の形成と果樹園の計画的造成をはかり、供給の安定的増大に資することといたしております。このほか、米、麦、繭、その他の主要農産物につきましては、集団栽培方式の普及、高性能機械の導入等により、経営の近代化と生産性の向上をはかることといたしております。
第三は、農産物の価格安定、流通改善及び農業所得の確保をはかるための施策を充実することであります。
米、麦、その他の重要農産物につきましては、引き続き食糧管理制度等の適切な運用につとめますほか、畜産振興事業団による畜産物の売買操作と調整保管、原料乳の不足払い制度の円滑な実施、野菜生産出荷安定法に基づく野菜価格安定のための諸施策の充実等により生鮮食料品価格の安定をはかることといたしております。また、引き続き中央卸売市場の整備を推進いたしますとともに、新たに公設小売市場及び集配センターの設置につき助成することとし、低温流通、大規模精米等、食料品の貯蔵、輸送技術の開発、流通情報の提供事業の充実と合わせ、流通過程の改善合理化を促進することといたしております。
第四は、農業構造の改善を積極的に推進し、自立経営農家の育成につとめるとともに、協業の助長を促進することであります。
農業構造の改善をはかるため、農業構造改善事業促進対策が地域の実情に即して円滑に実施され、事業の成果が確保されるよう措置いたしますとともに、最近における農業をめぐる諸情勢の激しい変化に即応し、わが国農業の体質に最も適応した方法を見出して、わが国農業の特徴である零細経営を早急に克服するため、農地の流動化を一そう促進する方途、農地の権利移動を経営規模の拡大に資するよう方向づける方途、協業の助長を積極的に促進する方途、農業自営者の老後の生活の安定や経営の移譲を促進するための方途等について、総合的な視野から検討を行なうことといたしております。このほか、次代の農業をになう優秀な後継者の育成確保をはかるため、中央青年研修施設の建設を促進する等、農村青少年の研修の充実、農業後継者育成資金の大幅な拡充等の施策を講ずることといたしております。
第五は、農業金融を拡充改善するとともに、農業改良資金の拡充をはかることであります。農業経営の規模拡大と近代化に必要な長期低利資金の円滑かつ十分な供給を確保するため、農林漁業金融公庫資金及び農業近代化資金の融資ワクを拡大するとともに、農林漁業金融公庫資金につきましては、基盤整備に必要な資金を重点として貸し付け金利の引き下げを行なうことといたしております。また、無利子の農業改良資金につきましても、旺盛な資金需要にこたえるため貸し付けワクをさらに拡大することといたしております。
第六は、農業従事者の福祉の向上と豊かな住みよい農村の実現を目標として、農村対策の充実をはかることであります。農村における生活環境や社会環境の整備改善をはかるため、農家生活の近代化の促進、農村住宅の改善、社会教育施設、保健福祉施設の整備、国民健康保険、国民年金等、社会保障の充実等の施設を推進するとともに、山村振興法に基づき、山村における農林漁業等の産業基盤及び生活環境の整備をはかることといたしております。
なお、この文書におきましては、以上の基本方針のもとに、四十二年度において講じようとする農業施策について、農林省所管事項にとどまらず、各省所管事項を含めて記述いたしております。
以上、農業の動向に関する年次報告及び四十二年度農業施策につき、その概要を御説明申し上げた次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/26
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027・河野謙三
○副議長(河野謙三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。渡辺勘吉君。
〔渡辺勘吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/27
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028・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となりましたいわゆる農業白書について、政府に若干の質問をいたします。
わが国の資本主義が、農業、中小企業等を踏み台にして成長を続け、今日においても、政府の独占資本に奉仕する政策によって、低生産性部門の著しい立ちおくれや物価の上昇を招くなど、構造的矛盾が拡大する一方であります。農業白書に示された農業の動向は、このことを如実に反映して、暗い面ばかりがいやおうなしに国民に映し出されます。所得格差是正、生産性向上という農業基本法の目標は、比較生産性で見ましても、また一人当たり家計費で見ても、ほとんど改善されておりません。年率二・五%で伸びている農業生産も、その中身を検討いたしますと、畜産物の伸びであり、しかも、畜産そのものは最近急速に頭打ちの傾向を強めております。しかも、麦の減反を中心とする裏作放棄が蔓延化し、深刻な社会問題をはらむ出かせぎをはじめ、兼業化はますます上層農をおかしている実態であります。資本の生産性も年率五%で低下し、機械化のメリットはほとんどないのであります。一方、増大する需要に生産が追いつかないために、輸入が急増をいたしまして、食糧農産物の自給率は、最近五カ年間に実に一一%も低下して、七六%に落ち込んでいることを、白書は報告をいたしております。こうしたわが国の農業の荒廃化の徴候は、長年にわたる独占資本優先の農政の責任であります。さらに、東京都知事選挙に敗れた与党は、都市対策強化、この必要性をあらためて知らされたといわれております。かかる一連の傾向は、わが国農業をますますきびしい階層分解と貧農切り捨ての波にぶち込むことは必至でありましょう。
かかる農業及びこれを取り巻く情勢を顧みますならば、政府は、転落する農民の人間尊重に徹し、独占資本から農民を防衛する姿勢を農政に強く反映さすべきであります。(拍手)
政府は、花は咲けども実らざるヤマブキ法と一般に言われている農業基本法農政の不始末を、どう反省し、農民のための農政をどう立て面すかについて、総括的に総理からまずその所信を伺います。
次に、具体的な問題について数点を伺います。
まず、政府がいたずらに傍観している食糧自給度の問題についてであります。わが党は、かねてから食糧自給度の向上を重要視いたしまして、これなくしては真の農政はあり得ないことを主張し続けてまいりました。世界における食糧事情が、長期的展望に立ったならば、きわめて憂慮すべき方向にあることは、FAOの指摘を待つまでもなく、すでにこれは常識であります。また、食糧の輸入依存度を高めることは、それだけ国際収支に大きな悪影響を及ぼすこと、もとよりでありましょう。この機会にひとつ小麦に具体的に焦点をしぼってみますならば、需要の増大に反比例して小麦の生産は年々顕著に減少し、その自給率は、三十年の四〇%から四十年は二七%に自給率が落ち込んで、最近の輸入量は年間実に四百万トンをこえ、世界最大の輸入国になりつつある実情にわが国が置かれているのであります。このため、今回のケネディ・ラウンドにおける穀物協定交渉の経過を見ましても、わが国は孤立化を余儀なくされ、国際的にもきわめて不利な立場に追い込まれたのであります。しかも、麦をはじめとする冬作の耕作放棄をしている面積は年々拡大をして、四十一年には実に百二十七万ヘクタールの広大な面積に蔓延化している実態であります。農業白書は、外国ではグリーン・レポートと呼んでおりますが、わが国ではまさにこれはダーク。レポートであると言わざるを得ない実態であります(拍手)食糧自給度の向上を農政の最も重要な札とし、これを具体的に実現することについて、農林大臣の明確なる答弁を求めます。
私は毎年の農業白書を通読して、そのつど奇異に感じますことは、農民の出かせぎということについてほとんど触れていないという、ただいまの大臣の報告にも一言もない、この政府の、出かせぎ問題に対する基本的姿勢についてであります。農民出かせぎの実態については、各省間その掌握がばらばらで、統一的把握がまずなされておらないのであります。出かせぎをしなくても食える農業をという声は、いまや多くの農民のこれは悲痛なる叫びとなっております。出かせぎ農民の数は実に百万人をこえるといわれ、彼らの家族を含めましたならば、数百万人の農村人口が、人間でありたい叫びをかみしめながら、毎日の生活にあえいでいる実態であります。農民をして出かせぎに追い込んだ原因は、はたしてどこにあるかということを、農林大臣は科学的に分析されていると思うのでありますが、その点を、大臣から詳細に御答弁をいただきたい。私は、これは、資本主義農政の落とし子であり、わが国民経済構造上の矛盾の所産であると考えます。
具体的に実例を申し上げますと、岩手県に久慈という市があります。ここの農業委員会の調査では、四十一年度一年間に一・二戸の農家から一人の割合で、農民が、北海道あるいは京浜、中京方面へ長期の出かせぎに行っている実態報告があります。長い間、妻や子と生き別れをしてかせがなければ生きていけないというこの姿を、人間尊重ということを大きな佐藤内閣のキャッチフレーズにしている総理は、一体どう理解されているかを伺います。しかも政府は、この出かせぎ農民の大部分が対象になっている失業保険法の一部改正を、今国会に提案し、改正に藉口しながら、その実、改悪をもくろんでいるということは、第五十一国会決議をじゅうりんするこれは暴挙であると断ぜざるを得ない。われわれの断じて納得しあたわざる政府の態度であります。人間尊重とは全く相反する、人間疎外の、この現実を克服することなくして、総理の言う風格ある社会の建設は断じてあり得ないと思うのでありますが、総理の所見を伺います。
次に、経済社会発展計画と白書との関係についてお伺いいたします。
ただいま述べましたように、農業白書における現状分析は、ほとんど暗い面が浮き彫りにされております。ところが、この農業白書とほぼ前後して決定されました経済社会発展計画は、今後わずか五カ年の計画でありながら、まことに前途洋々たる明るい展望に満ちあふれているかのごとき表現をいたしております。しかしながら、少しくこの計画を検討いたしますと、五年後の農業のビジョンについては美しい文章が並べられておりますけれども、たとえば所得倍増計画で取り上げたような、経営規模二・五ヘクタール、三人の労働力を投下して、年間に農業粗収入を百万円上げるというような、具体的指標は、この際は何ら示されていない。文字どおり、バラ色の幻想としか言いようのない表現に終始しているのであります。政府は、農業の置かれているきびしいこの現状から、わずか今後五年間に、どのようなプロセスを経て、どのような水準まで農業を引き上げようとするか、まことに国民としては、その内容を理解するに困難を感じます。
また、経済社会発展計画は、農産物価格の上昇を輸入によって調整する方針ということを各所で触れております。しかし、農業構造改善を計画どおりこれを進めるということは、従来の経過からいたしましても非常な困難が伴うと考えられるのでありまして、すぐにでも実行できる価格の調整のための輸入だけがむしろ独断先行するおそれがきわめて強いのであります。さらに一そう重要なことは、経済社会発展計画における総農産物輸入の伸び率は年率二%、農産物の輸入の伸びもおおむねこの一一%と想定されていることであります。しかしながら、過去五年にわたる食用農産物の輸入の実態を見ますと、金額で年率一九%、農産物の数量で見まして年率一六%の輸入の伸び率の実態でありますから、これは国内生産の振興を非常に大きく期待していると言わざるを得ない内容であります。これらを考えますときに、この経済社会発展計画は、農業白書の現状分析と引き比べてみて、あまりにも乖離がはなはだしいものがあると指摘せざるを得ないのでありますが、経済企画庁長官の、この農業の現状と発展計画におけるはなはだしい乖離との相関関係を、国民の納得のいく内容に触れた御答弁を求めます。
次に、大蔵大臣にお伺いいたします。
最近、財界を中心に、農業における価格政策費を削減せよということや、特に米価シーズンを迎えてその声しきりでありますが、なお、輸入による農産物価格調整の主張がきわめて熾烈であります。しかしながら、こうした主張は農業を衰亡の方向へ押しやることであり、農民を農村から大量にいぶり出す暴論であって、農業が先進国においても常に重大な国内問題となっているような事実をすら、これは見る目をふさいでいる態度であると言わざるを得ません。農民のための農政を真に進める決意が政府におありならば、農業が衰退化の方向をたどっている今日、政府は、いまこそ重要農産物の価格政策費に対する一般会計の予算等を増強しつつ、これとあわせて、農業基盤整備なり、あるいは農業機械化なり、それらに要する経費を全額これは国庫で計画的に負担する内容で計上をして、すみやかに農業の近代化というものを達成するよう実行する義務があると思うのであります。しかるに、農林予算は、四十二年度の内容を見ますると、昨年度よりも総予算に占める割合が低下をしてきております。また、財政投融資計画を見ましても、その毎年の財政投融資総額の中から農林漁業に投下しているその比率というものが、毎年毎年非常な割合でその比率が低下をしてきている。四十年度は全体の七%、四十一年度は六・六%、四十二年度は五・一%、逐年縮小の一途をたどっているのであります。大蔵大臣は、農業基本法第四条によって、財政上のあらゆる必要な措置をとる義務があるのでありますが、その具体的な所信のほどをお伺いいたします。
最後に、外務大臣にお伺いをいたします。
ケネディ・ラウンドが実質上妥結し、これに伴う国内農業との関連がきわめて注目されております。また、わが国は、現在、多くの曲折を経ながら資本自由化を進めようとしております。現在までも、食品加工をはじめとする各部門に海外資本が着々と進出して、国内市場でシェアを伸ばし、農業を傘下に組み入れようとしております。さらに、昨年のアジア開発銀行の設立、東南アジア農業開発会議の開催等、東南アジアの農業開発が現実の日程にのぼり、国民は今後の動向に多大の関心を寄せ、注目しているのであります。このような国際的な一連の動きを見ますときに、わが国農業及び農政の著しい立ちおくれを痛感するにつけ、外交の衝に当たる外務大臣は、わが国農業をどう理解し、これらの経済外交をどう進める方針であるか。以上、三つの点にしぼって、その所信を具体的に伺いたいのであります。
いまや、わが国には、農政なくして、あるものは惰性のみと評価されているこの際であります。国民を納得せしめるに値する答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/28
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029・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 渡辺君にお答えいたします。
私に対するお尋ねは二つございますが、まず第一に、農政の今後のあり方についてお答えをいたします。
農業基本法、これはただいまヤマブキ法というずいぶん皮肉な表現で批判されましたが、しかし、たいへんきれいなものであることは御承認のようであります。私は、この農業基本法ができまして以来、いわゆる生産政策、あるいは価格政策、構造政策、これは基本法の趣旨によりまして農業と取り組んでまいりました。一日も早く農業が産業としてその地位を確立することができるように、こういうことで指導してまいったのであります。したがいまして、一面弊害を生じておりますが、すでに、機械化が進むとか、そうして労働生産性が上がる、あるいはまた耕地規模も拡大される、あるいは資本の協同化等によりましてだんだん集中集約される、こういうようなことで、りっぱに農業としてその地位を確立したものもあるわけであります。いわゆる専業農家の育成に役立ったものもございます。しかしながら、御指摘になりましたように、いままで経済の発展が非常にすばらしい、そういう観点から、労働の急激な流出が行なわれて、あるいはまた、兼業農家——専業農家じゃなくて兼業農家もずいぶんふえた。あるいはまた、御指摘になりましたように麦を中心にしての冬作の減反、なかなか思うように冬作ができておらない。あるいはまた、国内におきましての食糧の自給度が低下する、こういうような状態を現出しておることも事実でございます。もともと、農政の基本といたしましては、これは申すまでもなく、農業基本法のねらっておりますところのものは、りっぱな産業としての農業をつくるということ、そういう意味で生産性を高めること、さらにまた、農業従事者の生活の向上をはかること、さらにまた、食糧の安定的供給をすること、これがねらいでございます。そういう意味で、今後とも努力してまいるつもりであります。その場合に、ヤマブキ法と言われるこの農業基本法ですが、これの趣旨を尊重してまいるつもりであります。問題は、そういう場合に、施策をいかに充実していくかという点に政府の努力を集中するつもりでございます。そうして一日も早く、りっぱな産業としての農業、これを育成強化していきたいということでございます。
次に、この出かせぎ問題について御意見を述べられました。これはただいま私も心配しておりますが、すでに社会問題を各地において引き起こしておると、こういう状態であります。人間尊重の観点から、こういう事態が起こらないように、社会問題に発展しないように、一そう努力するつもりであります。この出かぜぎ問題は、どういうところから起きたかといえば、これは農閑期の労力を利用するというのも一つあったろうと思いますし、また現地において——地元において、その労力を活用するような就業の機会に恵まれておらない、こういうこともあると思います。その態様は一様ではないと思います。そこで、政府がかねてから申しておりますように、地域開発ということを積極的にやらなきゃならない。どんな地域におろうと、また、どんな職業に従事しようと、そういうことで格差があってはならない、これが政府の基本的な考え方であります。産業開発あるいは地域開発、これらと積極的に取り組みまして、ただいまのような問題について対処するつもりであります。また、個々の具体的な問題につきましては、労働省等におきましても、積極的にこの問題と取り組んでおるというのが現状でございます。(拍手)
〔国務大臣倉石忠雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/29
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030・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 今後の食糧の需要は、引き続いて内容の変化を伴いながら増大するものと思われるのでありますが、特に畜産物の需要の増大等から見まして、飼料を含めた食用農産物の自給度を維持いたしますのは、いろいろ困難な事情のあることは承知いたしておりますが、基盤整備の計画的推進をはじめ、必要な生産対策を強めることとともに、この食糧自給度を可能な限り高い水準に維持いたしたいということで、全力をあげてまいるつもりであります。渡辺さん、専門家でいらっしゃいますから、ことに、事例をあげてというお話でございますので、米について私ども考えていることを申し上げます。
米につきましては、今後需要はなお微増すると思われますけれども、土地改良長期計画に基づく生産基盤整備の計画的推進、水管理の合理化、地力の保全等、生産対策の推進によりまして、十年後には必要量を国内生産でまかなうことは可能であると私どもは考えて、その方針に向かって努力を続けてまいります。
麦につきましては、御承知のようにその収益性が低いこと等によりまして、農業労働力の減少に伴いまして近年減退いたしておることは御指摘のとおりでありますが、今後この傾向の基調は持続するものではないかと私どもは見ております。そこで、これに対しまして、御承知のように飼料用の麦類及び食料用小麦を中心に、需要は全体として増加することが見込まれるのでありますが、したがって、相当量の不足を生ずることをわれわれは予想しなければならないわけでありますが、食料用大裸麦は、今後も自給が可能であることと考えております。御存じのとおりであります。ビール麦も自給度を可及的に向上するように努力を続けてまいります。なお、麦の生産対策といたしましては、特に麦の表裏作を通じた体系的機械化作業の導入等によりまして、生産性の向上をはかりながら主産地の育成につとめることに重点を置くことは、従来どおりでございます。このため、生産組織の育成、土地利用のくふう等につきまして特段の配慮をいたしつつ、機械の利用を基軸とする高度集団栽培等の諸施策を強化して、作業体系の合理化をはかることといたしております。また、優良種子の導入、乾燥施設、精選施設による品質の向上等を積極的にはかってまいる考えでございます。
次に、野菜でございますが、野菜や果実につきましては、国内生産が困難な特殊なものを除きましては、集団産地の育成、生産基盤の整備等の施策の強化によりまして、今後できるだけ自給につとめる考えでございますが、この自給度は安定いたしておることは、渡辺さんよく御承知のとおりでございます。
畜産物、特に牛乳、乳製品につきましては、需要は引き続き相当増加するものと見込まれるのでございまして、生産はこれまでのような急速な伸びを続けることは、酪農をめぐる諸情勢から見まして、当面必ずしも容易でないことを私どもは承知いたしておりますが、既定の方針に従って着実に施策を推進してまいることにより、生産の拡大をはかることは相当程度可能でありますことも、専門家でいらっしゃる渡辺さんよく御存じのとおりでございます。
肉類につきましても、需要の増大が大きいものと見込まれます。これに対して、生産は、豚肉、鶏肉については、引き続き順調に推移するものと考えられておりますが、牛肉につきましては、牛の増殖、それから生理的な制約がございまして、牛の増加の速度はきわめておそいのでありまして、将来の肉用牛生産確保をはかる観点から、特に施策の充実を一段と強化いたしてまいりたいと思っております。そのためには、繁殖育成センターの設置をはじめ、国有林野における肉用牛生産育成実験牧場の設置、肉用子牛の価格安定のための措置などを、四十二年度予算で御審議をわずらわしておるような次第でございます。
出かせぎのことについてお話がございました。総理大臣のお話にもございましたように、出かせぎというものの態様は千差万別でございまして、私はいわゆる出かせぎというものが必ずしも悲惨なるものばかりであるとは思っておりません。農家世帯員の出かせぎは、基本的には、営農形態、農作業の省力化等の事情によりまして、農業で労働力を十分に活用することのできないことが一つ、他産業における雇用需要が増大いたしたことが一つ、また、地元に適当な就業機会のないこと等によって、農家所得の増大をはかるために出かせぎに出るというものでありますが、その態様は、いま申し上げましたようにいろいろでございます。また、地域によりましても様相が著しく異なっているのでありまして、すなわち、農業の季節性による農閑期の出かせぎ等とか、あるいは農業のみで世帯員の労働力の十分な活用ができないため、他産業への就業を求めようとかがあります。また、出かせぎへの依存度も、農業への就業との関連でいろいろの程度があるようでございますが、このように出かせぎの原因なり態様なりはいろいろあるのでございます。したがって、一がいにどうということで、これを律するわけにはまいらないのでありますけれども、さしあたり、出かせぎから生じてまいります種々の問題は、これはなるべくなくするようにつとめなければなりません。したがって、農林省、労働省等、関係筋とも協力をいたしまして、就業の正常化、出かせぎその他留守家庭との連絡、留守家庭の営農と生活面の指導援助等につき、所要の施策を講じてまいっておることは御承知のとおりでございます。それとともに、基本的には、農業経営の零細性、季節性等にかかわる問題でございますし、さらに全体としての産業、雇用問題、特に地域的な配置に関連することが多いわけでございますから、これらの全般にわたって基本的に検討することが必要でございます。出かせぎに依存しないで済むようにするために、長期的観点に立って、その方向で私どもは施策を続けてまいりたいと思っておるわけでございます。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/30
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031・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。
農産物の価格安定は、農業の安定的な発展の基礎でございますし、また、国民生活の安定向上に密接な関係を持つものでございますので、従来から農産物については、相当広い範囲で——米麦、畜産、野菜、繭糸、砂糖、大豆、なたねというふうに、広範な範囲で、保護政策といいますか、価格安定政策をとっておりますが、四十二年度におきましても、予算においてこの方向をさらに推進し、強化しておる次第でございますが、しかし何といっても農業の発展の基礎は、やはり農業基盤の整備であると私どもは考えます。農業構造改善とかそのほかのものが、やはり価格安定政策の基礎にならなければならないというふうに考えておりますが、先ほど農林大臣が説明されましたように、そういう意味の農業予算というものは相当強化されておりまして、全体では五千億円に及んでおりますが、そのうちで特に農業の生産性と関係のある予算は一八%以上の伸びになっております。特に農業基盤の整備費は千三百億円以上で、昨年よりも二百億円以上予算が強化されておって、この比率は一般会計に占める公共事業の伸び率とほとんど同じ比率で計上されておるということで、この点は非常に私どもは重視して予算の強化をはかっておるのでございますが、御質問は、この部分だけ全額国費で引き受けたらどうかということでございました。で、土地の改良事業というようなものは、原則として、農村の利益になるものでございますので、受益者負担も若干入るのがやはり原則であって、全額国庫負担というのは適当ではないと考えておりますが、しかし現行の補助率体系から見ましても、もう国営かんがい事業というようなものは八〇%が補助ということになっておりますので、受益者側の負担もせいぜい二割という程度になっておりますが、この程度がやはり妥当ではないか、こういう形でさらに一そうの推進をはかっていくことがいいのではないかというふうに考えております。
それからもう一つ、農業白書と経済計画の食い違いというようなお話でございましたが、農業の現状認識とかあるいは施策の方向というものについては、経済発展計画と農業年次報告というものは、基本的な食い違いはないと私は考えております。もちろん、農業の特殊な事情もございますので、施策の十分な効果を短期間に期待することは困難でございますが、計画の方向に即して関連する諸施策を着実に実行していったら、この計画でいっているような農業の将来は、必ず期待できるというふうに私どもは出与えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/31
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032・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 渡辺君に申し上げます。外務大臣の答弁は後刻に留保されました。御了承願います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/32
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033・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 北條 雋八君。
〔北條雋八君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/33
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034・北條雋八
○北條雋八君 私は、公明党を代表しまして、ただいま報告のありました農業白書に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
今年の農業白書も、数字が変わっただけで、真に実情を国民に理解させるには誠意に欠けていることを、まことに遺憾に思います。第一部の「農業の動向」に照らし、第二部の「すでに講じた施策」がいかなる役目を果たしたのか。また、何ゆえに別冊の「講じようとする施策」をとったかについての分析が、全くないのであります。この点につきまして、まず農林大臣の所見を伺います。
次に、内容について伺います。さきに決定されました経済社会発展計画を見ますと、農業は明るい努力目標を掲げております。そこで総理大臣にお尋ねいたしますが、同じ政府が発表いたしました計画や白書が、一方はきわめて明るく、一方はきわめて暗いということは、どういうことなのか、発展計画は単に机上で考えたものであるのかということでございます。発展計画には、食糧の自給度も、自立農家の具体的な内容も、何ら示していないのでありまして、政府全体の農政に対する姿勢が那辺にあるのか、疑問を禁じ得ないのでございます。この点につきまして御所見を伺います。
次に、農林大臣に伺います。その第一は、農業基本法が制定されてすでに六年を経過いたしました。しかし、兼業化の傾向がますます深まり、規模拡大どころか、零細化と、農業・非農業間、上層農・下層農間の格差はますます開いてまいりました。また、耕種部門の生産が停滞していく現状であることは、基本法農政の失敗であり、政府の責任はまことに重大であると思うのでございます。私は、基盤整備や構造改善に即効的な施策を望めないといたしましても、さっそく効果が期待できる肥培管理、土壌改良等の施策を拡充しまして、たとえば水稲における佐賀方式や、最近民間で多収穫の実績をあげております微量要素、ミネラルの補給等に対しまして、もっと政府は組織的かつ広範な指導助成を行なうべきであると深く感じます。過去六年の基本法農政をどう反省し、土地の生産力を維持増大するのにどんな具体策を持っておられるか、お示し願いたいのであります。
また、第二は、ごく最近まで選択的拡大の花形でありました酪農の斜陽化についてであります。多頭化が漸次進み、製乳工場の大型化、大量生産が行なわれているにもかかわらず、そのメリットが価格に全く反映されないことは、大メーカーが流通部門を支配しまして、利潤を独占している結果と思うのであります。また、畜産物の生産費の大半は、えさ代でありまして、その一つの大きいかぎは飼料政策にあるのであります。そこで、牛乳の流通と飼料対策について農林大臣の御所見を伺います。
その第三は、経営規模拡大を促進するにはどうするかということであります。昨年の農地管理事業団法案に対しましては、わが公明党は、離農対策のない、貧農切り捨て政策であるとして反対いたしましたが、現状のように、公庫融資だけを取り上げて、この問題を放置しておくということは、あまりにも怠慢であると思うのであります。離農対策や農地法改正を含めた積極的な規模拡大のための法案は、一体いつごろ国会に提案される方針でありますか、明らかに示されたいのであります。
次に、労働、厚生両大臣に伺います。
零細なわが農業の規模を拡大するには、これと並行しまして、離農促進と、農民年金による老齢者の世代交代の促進が必要であると思います。労働大臣は、雇用政策の貧困を幾ぶんでも補っております失業保険制度さえ、一方的に改悪しようとしているのは、まことに不可解であります。純粋の労働者である炭鉱労働者には手厚い離職者対策を進め、零細農民に対しましては、若干の所得を農業で得られるという理由で放置するといった、片手落ちな態度は、もはや許されない段階であります。労働大臣はこの点をどう考え、どう対処する方針なのか、伺います。また、国民年金制度を所管する厚生大臣は、農民年金をどう理解し、どう協力されるか、はっきりお答え願いたいのであります。
次に、養蚕と生糸輸入について伺います。白書によりますと、三十五年当時、生糸が農産物輸出額の三割を占めていたのに、四十年には一割に急減いたしました。このことは、わが国にとりまして重大な問題でありまして、農政の失敗と言わざるを得ません。私はこの際、生糸の加工段階及び輸出入政策を含めまして、蚕糸業の将来について、根本的に構想を練り直し、蚕糸行政のあり方をすみやかに確立すべきであると思います。これらの点に関し、農林大臣の所信を伺います。
最後に、農業協同組合について伺います。本年の白書には、農業協同組合の資金の運用について何の分析もしておりません。しかしながら、国会でも論議されておる農林中金の共和製糖などへの不正融資、千葉共済農協連で起こりました役員の不法行為のごとき、目に余るものがあります。私は、いまにして農協の経営体制を刷新しなければ、農協はますます農民から遊離してしまい、農協本来の使命が失われることを非常におそれるのであります。そこで、制度問題を含めて、農業近代化に即応できる農協の体制整備につきまして、総理大臣並びに農林大臣の御所見を伺いたいと思います。
わが国農業を取り巻く内外の環境はいよいよきびしさを加えまして、危機的な様相を深めつつあります。政府は、過去六年間の基本法農政の無為無策を心から反省し、えりを正して誠意ある答弁をされるよう希望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/34
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035・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 北條君にお考えいたします。
農業白書と経済社会発展計画に書いてある農業の動向なり将来についての見通しが、片一方は暗く、片一方は明るい。何だか違っておるじゃないか、こういうような御意見でございますが、先ほど水田大蔵大臣がお答えいたしましたように、これは実は別々なものではございません。御承知のように、農業白書は、今日の動向、それからこれまでの施策の結果を報告し、今後とるべき施策について触れておるわけであります。その状態を踏んまえて経済社会発展計画を立てておるのでありますから、今後五年間の見通しとして明るいものを見立てる、別にこれは相違するわけではございません。
次に、今後の農政全般のあり方についてのお尋ねでありますが、先ほども渡辺君にお答えしたばかりでありますが、御承知のように、農業基本法のこの趣旨を守って、また、その指向する方向で私は農政と取り組んでまいるつもりであります。農業基本法は、申すまでもなく、生産政策やあるいは価格政策、構造政策等と取り組んだものでございます。その方向で総合的に施策を実施し、同時に施策を充実してまいる、こういうことで、農業の独立的な産業としての地位を固め、同時にまた、農業従事者の生活の向上、福祉の向上をはかる、そうして国内食糧の安定度を維持する、こういうことにいたしたいと、かように考えております。
次に、農協のあり方について御意見をまじえてのお尋ねでございますが、私は、今日、農業協同組合は、これは農民の共同の組織として、また、農業の発展並びに農業従事者の経済的、社会的地位の向上に努力をしている、このこと、そのためにつくられた農業協同組合は、りっぱに目的を果たしつつあると思います。しかし、部分的に、ただいま御指摘になりましたような管理体制に、まだ不十分なものがあるようにも考えられますので、こういうことは、内部管理体制を整備すること、同時に、行政庁が指導監督に遺漏なきを期する、こういうことでありたいと思います。もちろん、御指摘になりましたように、農協自体の組織あるいはそのあり方等を絶えず研究をしなければなりませんが、ただいまの状態で直ちにこれを改善するとかというところまでは行っていないように私は考えております。(拍手)
〔国務大臣倉石忠雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/35
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036・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 白書と発展計画のことについて、ただいま総理大臣も申し上げましたが、私どもも御指摘のような点について逐次検討を加えまして、さらに充実いたしたものに作成するように、これからなお努力を続けてまいるつもりでございます。
それから微量要素の投入のことにつきましてお話がございました。土壌はもちろん農業生産の母体でございますので、従来から地力の培養につとめておるわけでありますが、そのためには、やはり地力保全のための調査及び診断事業、耕土培養事業等に鋭意努力を続けてまいった次第でありますが、最近の労働力不足等によりまして、素欠乏その他、地力の低下を来たしておる例も見受けられますので、この点につきまして研究所等を督励いたしまして、このような地力減退については、さらに努力を続けてまいるつもりでございます。
酪農が斜陽のようであるというお話でございました。私は必ずしもそうとは思いませんが、また、そのような見方をされるような状態に酪農事業を貫いてはならないわけでありまして、すでにわが国の国民の食糧に対する需給状況等を見ましても、酪農は農業政策の中で大きな重要部分を占めておるわけであります。したがって、土地改良その他、あらゆる事業において、この酪農に合うような、たとえば、草地の造成等について努力をいたし、自給飼料をまかなうことに全力をあげて、酪農というものについては、農業の中で占めるその部分の役割りを十分に果たし得るように努力を続けてまいりたいと思っております。
それから、牛乳の流通につきましてお話がございました。このことにつきましては、御承知のように、牛乳の流通の合理化については、従来からいろいろな施策を講じてまいったところでございますが、国民食糧生活に占める牛乳の重要性にかんがみまして、今後とも一段とその努力を続けてまいりたいと思います。なお、四十二年度の予算におきまして、生乳について都道府県ごとの指定生乳生産者団体に引き続いて一元化と共同集荷販売を行なわせることによりまして、生乳流通の合理化を促進することといたしまして、このためには新たに指定生乳生産者団体の設置をする、たとえば、クーラー・ステレーションであるとか、ミルク・タンクローリーというような集送配施設について助成をいたす等のことをいたしまして、この流通機構をできるだけ整備して、生産を助けると同時に、消費者に対して安定的な価格で供給のできるようにつとめてまいるつもりでございます。
それから農地の問題についてお話がございました。なるほど御指摘のように、私ども経営規模の拡大を考えましても、農地の問題等が非常にネックになっておりますことは、御指摘のとおりでありますが、このことは、白書でも経済発展計画でも申しておりますように、私どもは、かつて経営規模を拡大することを一つの目的として、農地管理事業団法を国会に提出いたしたわけでありますが、それが二回にわたって審議未了になっております。そこで、農林省といたしましては、その所期の目的を達成し得る構造改善等について、これからどのような態度をとるべきであるかということは、検討中でございますが、農地の流動性を強化し、そうして所期の、農業基本法に申しておりますような経営規模の拡大をして、先ほど総理大臣が申し上げましたように、生産対策、価格対策、構造政策が着々実行のできるような方向に、農地について考えてまいりたいと思っております。
それから生糸のことについてお話をいただきました。最近における生糸の輸出につきましては、御承知のように、国内向けの内需が急増いたしてまいったものでございますから、非常に需給の状況がアンバランスになっておることは、御指摘のとおりでありますけれども、今日、化学繊維がいかに発達したとは申しながら、やはり天然絹糸に対する魅力というものは逐年増強されてきておりまして、いまや、わが国の農業の中で、やはり生糸の占める部分というものは、相当重要になってまいっておるわけでありますから、私どもは、日本蚕糸事業団等に四十二年度予算において十億円の資金を追加いたして、御審議を願っておる次第でありますが、やはり、なるべく内需等についても、国内生産をもってまかない得るように、そうしてまた、さらに輸出を増進して、この産業を助けてまいることが必要である、こういう考えに立って蚕糸業政策を進めてまいるつもりでございます。
それから、農協の資金運営についてお話がございました。総理大臣からもお話がございましたように、農協というのは、単協に参加いたしております農業経営者の資金の集まったものが、それぞれ県の中央に吸い上げられ、さらにそれが中央に集まっておるという特殊なものでございますので、私は、市中一般の金融に携わる人たちよりも、さらに一そう、そういう自分の特殊性、それから任務の重大性を自覚することによって、農業資金を貸し付ける場合には、より慎重にやってもらわなければならないと思います。ときたま、御指摘のように、地方に若干の不正事件が起きておりますことは、政府といたしましても、まことに遺憾千万でございますので、そういうことを根絶いたしますために、監査その他をさらに督励をいたしまして、農民多数の委託にそむかないようにするように、指導を強めてまいるつもりでございます。(拍手)
〔国務大臣早川崇君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/36
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037・早川崇
○国務大臣(早川崇君) 第一点の御質問は、失業保険法の改正は改悪ではないかという御質問でございます。これはそうではないのでございまして、今回の提案いたしておりまする失業保険法の改正は、五人未満の零細企業につとめておる勤労者に対して、いままで適用されておりませんでした失業保険並びに労災保険を全面適用しよう、こういうことが改正の主体でございます。ただ問題は、これと同時に、現在積雪寒冷地帯から出ておる短期出かせぎ労働者、特に農業関係の労働者に対して、これを打ち切るのではないか、こういう御心配でございまするが、そうではないのでありまして、五十八万という循環的な季節労務というものは——本来は保険というものは、予期せざる事態に対する保険ですけれども、これは必ず毎年毎年繰り返して保険金をもらっているわけでございます。わずか八億円の保険料を納めて三百億円の保険金を毎年もらっておるわけです。ですから、その意味では本来保険ではないのですけれども、われわれはこの改正にあたりまして、しかし農村の実情を考慮いたしまして、現にもらっておる五十八万人の方々には、従来どおりそういった保険給付をいたしていこうと考えております。新たにそういう循環労務に入られる方に対しましても、三十五歳以上、いわゆる中高年の人たちに対しましては、従来どおり、やはりこういう、何と申しますか、どちらかといえば不均衡な保険でありますけれども、これを続けてまいりたい。従来どおり、三十五歳以下の人でも世帯を持っておる人、こういう人に対しましても保険金を差し上げていくという配慮をいたしておるのでございます。ただ、三十五歳以下のいわゆる青年層の人に対しましては、独身の場合は三回目からは給付金を二分の一に削減いたしますけれども、それでも保険料の十数倍毎年もらうわけであります。現在の雇用情勢からいって、そういう人たちに対しましてはどんどん就職の機会があるわけでありますから、通年雇用、そういう方法も何ぼでもあるわけでありますから、この程度の配慮をすることをいたしましたならば、積雪寒冷地帯の東北、北海道にも影響はほとんどない、かように考えておる次第でございます。
二番目の、炭鉱離職者に対する特別の施策と同じように、いわゆる離農者にも考えたらどうか、こういう御質問でございます。しかし、国の政策として強制的にこの農地を合併さす、ちょうど炭鉱のように、大量に国策として失業者が出る、こういう事態が農村におきまして国の国策としてとられるならば、これはそういったことも今後の問題としての課題かと思いますが、現在は労働省といたしましては、離農者に対しましては、農業委員会その他の農業管理機関と職業安定所が密接に連絡をとりまして、職業相談、職業紹介、また技能を身につけなければならない人に対しては、職業訓練というものを行なっておりまして、円滑な転職が行なわれておるわけであります。しかし、特に中高年の方々に対しましては、これはなかなか転職というものがそう青壮年のようにまいらぬ面がございますので、労働省といたしましては、中高年の方々に対しましては、職業転換給付金制度——職業訓練をしておる間一万八千円差し上げるとか、あるいは中庸年を雇う事業主に対しては、住宅奨励金一年間月四千円差し上げるとか、あるいは移転宿舎を提供するとか、諸般の施策を講じまして、中高年の方々の離農者に対しましても、他産業へ円滑に就職ができるように最善の措置をとっておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣坊秀男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/37
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038・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 農民年金問題につきましては、先般の融議院予算委員会におきまして総理から答弁がございました。これによりまして、国民年金審議会の審議を通じて前向きに検討を進めていくということが明らかにされたところでございます。そこで、国民年金審議会におきましては、総理の答弁の趣旨に沿った検討を行なうために、すでに二回にわたって総括的審議を行なってまいりました。近く農政関係の学識経験者を含めた農民年金問題専門部会を設置いたしまして、農林省はじめ広く農政関係者の意見も徴しながら検討を進めてまいる所存でございます。(拍手)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/38
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039・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 外務大臣から、先刻の渡辺勘吉君の質疑に対する答弁のため発言を求められております。これを許可いたします。三木外務大臣。
〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/39
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040・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 渡辺議員から四点、私に質問がございましたので、ここでお答えをいたします。
第一は、関税の一括引き下げが日本の農業に対して悪い影響を与えるのではないかという御懸念であります。御承知のように、いわゆるケネディ・ラウンドといわれる関税交渉が妥結を見たのでありますが、このケネディ・ラウンドの交渉を通じて、日本の農業に悪い影響を与えないようにという配慮を絶えず続けてまいったわけでございます。非常に基盤の弱い日本の農業が、このことによって悪影響を受けるということはよろしくないわけでありますので、日本の農業の基本政策との調和をはかるということを心がけてまいったのでございますので、ケネディ・ラウンドの交渉の妥結が非常に悪い影響を日本の農業に与えるということはないと考えております。
第二の点は、東南アジア等の低開発国に対する農業問題、これに対する経済外交というものはどう考えるのかという御質問でありますが、御承知のように、東南アジア、これは農業国でありますが、大部分の国が食糧を輸入しておるという現状であります。農業国であって多量に食糧を輸入しなければならぬということでは、経済安定の基盤を欠いておるということになるわけでありますから、日本は、東南アジアの安定のためにも食糧の増産というものに協力しよう、食糧の増産ばかりでなしに、第一次産品——農作物、これに対しても、できるだけ輸入できるものは輸入をして市場性を確保していこう、外貨を獲得するこれは大きな手段でありますから、そういう点で、先般の東南アジアの開発閣僚会議においても、農業開発基金、漁業開発センターなど、これをつくるということの合意に達したのであります。東南アジア諸国には農業というものを重視して、こういう農業というような、国の経済発展の基礎からつちかいたいという、じみちな機運が生まれておりますので、これに対して日本が協力していこうというのが経済外交の中心でございます。
第三点は、資本の自由化が国内の農業に対して非常に大きな影響を与えるのではないかという御質問でございますが、経済が全面的に国際化の傾向を持ってきておる、したがって、日本経済が一そうの発展をはかるためには、どうしてもやはり資本取引というものも漸進的に自由化していかなければならぬと考えております。しかし、このことによって日本の産業が非常な大きな打撃を受けるということは、これはもう慎重に考えざるを得ないわけでありますから、やはり段階的に自由化を行なっていくよりほかにはない。農業のほうにおいて心配なのは、食品の加工部門であります。これは非常に零細な企業が多く、資本力も弱いし、設備も近代的な設備にも欠けておりますし、生産性も低い。こういう点の企業の体質を改善しながら資本自由化の国際的要請と調和をはかっていきたいと考えております。
最後の御質問は、外務大臣は国民所得の一%を低開発国の援助に与えると言うが、その前に日本でやらなければならぬこと、ことに農業政策などたくさん問題があるのではないかという御指摘であります。全くそのとおりであって、日本の国内にも、農業問題ばかりでなしに、国内投資を必要とする問題をたくさんかかえておるわけでありますが、しかし、一方において、低開発国諸国に対する援助というものも、国内に問題をかかえておるからごめんこうむるということはできなくなってきておる。私が言うのは、国内か、あるいは低開発国援助かという、二者択一的に考えておるのではないのであります。国内のこともやりながら、なおかつ低開発国に対する援助も拡充していかなければならぬというように、両方並立して考えておるので、これをとったら、もうこれはやめよう、こういうふうには考えていない。ことに人道的な見地から言っても、低開発諸国があしたの食糧にもこと欠いておるという状態を、先進工業国の一国である日本が、これを黙って良心を痛めないで見過ごすというわけにもいきますまい。また、世界の平和とか繁栄という面からも、こういういつまでも貧困な状態が改善されぬということでは、世界の平和もこの面からくずれてくるし、世界全体の経済的発展も達成できない、こういう点で、回り回って、低開発国に対する援助は、明日の日本の安全、日本の繁栄というものと関係を持っておりますから、やはり国内のこともやりながら、今後とも低開発国に対する援助も拡充してまいりたいと考えておる次第でございます。
以上、お答えをいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/40
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041・河野謙三
○副議長(河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/41
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042・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第三、国際電気通信条約及び関係議定書の締結について承認を求めるの件。
日程第四、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とブラジル合衆国との間の条約の締結について承認を求めるの件。
日程第五、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とニュー・ジーランドとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件。以上三件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/42
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043・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。外務委員長赤間文三君。
〔赤間文三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/43
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044・赤間文三
○赤間文三君 ただいま議題となりました条約三件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を一括して御報告申し上げます。
まず、国際電気通信条約及び関係議定書について申し上げます。
この条約は、一昨年、スイスのモントルーで開催せられました国際電気通信連合の会議において、現行条約にかわる国際電気通信連合の基本文書として作成をせられたものでありまして、連合の組織及び国際電気通信業務の運用に関する統一規定等につきまして、現状に即した改正を加えたものでございます。また、この会議において、連合員間の紛争の解決を円滑にするため、関係議定書として、紛争の義務的解決に関する選択追加議定書が作成せられたのでございます。
次に、二重課税の回避のためのブラジルとの条約は、従来わが国が締結しておりますこの種の租税条約とほぼ同様の内容のものでございまして、海外支店等がある場合の相手国の課税の原則、船舶、航空機の運用利得に対する相手国の課税免除、一定の配当、利子及び使用料に対する課税軽減等を定めるとともに、二重課税を回避するために、それぞれの国内税法に基づき、相手国で納付される税額を控除することを定めたものでございます。
最後に、二重課税の回避及び脱税の防止のためのニュー・ジーランドとの条約の改正議定書は、現行条約において、航空機の運用利得については相手国で免税とし、船舶については税額の五〇%を軽減することとなっておるのを改めまして、航空機のみならず船舶についても、その運用利得に対しまして相手国で全額免税とすることを定めたものでございます。
委員会は、慎重審議の後、五月十六日、討論、採決の結果、三件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと決定をいたしました。
以上御報告を申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/44
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045・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
まず、国際電気通信条約及び関係議定書の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/45
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046・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/46
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047・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とブラジル合衆国との間の条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/47
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048・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本件は承認することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/48
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049・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とニュー・ジーランドとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/49
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050・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本件は承認することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/50
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051・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第六、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とブラジル合衆国との間の条約の実施に伴う所得税法及び法人税法の特例等に関する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長竹中恒夫君。
〔竹中恒夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/51
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052・竹中恒夫
○竹中恒夫君 ただいま議題となりました「所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とブラジル合衆国との間の条約の実施に伴う所得税法及び法人税法の特例等に関する法律案」につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
わが国とブラジル合衆国との間の所得に対する租税に関する二布課税の回避のための条約は、ただいま承認されましたが、本案は、この条約に規定されている事項のうち、特に法律の規定を要するものについて、所要の立法措置を講じようとするものであります。すなわち、非居住者または外国法人の取得する配当、利子及び使用料等の所得につきまして、わが国所得税法は、二〇%の税率により源泉徴収することになっておりまするが、今回の租税条約の規定を受けて、条約上の最高限度である一〇%と定めることとするほか、条約を実施するための所要の規定を設けようとするものであります。
委員会の審議の詳細は、会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終了し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/52
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053・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/53
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054・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/54
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055・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第七、宅地建物取引業法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。建設委員会理事大河原一次君。
〔大河原一次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/55
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056・大河原一次
○大河原一次君 ただいま議題となりました宅地建物取引業法の一部を改正する法律案について、建設委員会の審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、近年の宅地建物の取引の実態にかんがみ、業者の誇大広告の禁止、取引態様の明示、重要事項の事前説明の義務づけ等を規定し、取引の公正を確保しようとするものであります。
本委員会における質疑のおもなものは、改正の直接の原因、業態と監督処分状況、営業保証金と業界の育成等についてでありますが、詳細は会議録に譲りたいと存じます。
質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して田中委員から、本案は業者の取り締まり強化をはかったもので、酷な面もあるが、未登録営業の多いことを考え、政府は、責任をもって、これらの実情を調査し、行政指導を強化すべきである旨の発言があって、賛成。また、日本共産党を代表して春日委員から、現状では規制の強化もやむを得ないとして、賛成の発言がございました。
採決の結果、本法律案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/56
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057・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/57
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058・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決せられました。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X00819670517/58
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