1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十三年三月二十六日(火曜日)
午後零時五十五分開議
出席委員
委員長 床次 徳二君
理事 臼井 莊一君 理事 鯨岡 兵輔君
理事 本名 武君 理事 美濃 政市君
上林山榮吉君 北澤 直吉君
古屋 亨君 箕輪 登君
中谷 鉄也君 帆足 計君
穗積 七郎君 吉田 泰造君
斎藤 実君
出席政府委員
総理府総務副長
官 八木 徹雄君
総理府特別地域
連絡局長 山野 幸吉君
外務政務次官 藏内 修治君
外務省北米局長 東郷 文彦君
外務省欧亜局長 北原 秀雄君
郵政政務次官 高橋清一郎君
委員外の出席者
郵政省電波監理
局放送部長 左藤 恵君
—————————————
三月二十六日
委員伊藤惣助丸君辞任につき、その補欠として
斎藤実君が議長の指名で委員に選任された。
—————————————
三月二十二日
沖繩島、宮古島及び石垣島相互の間における極
超短波回線による電気通信に必要な電気通信設
備の譲与に関する法律案(内閣提出第八二号)
(予)
同日
沖繩の祖国復帰促進に関する請願(大村襄治君
紹介)(第六八一号)
は本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
沖繩におけるテレビジョン放送に必要な設備の
日本放送協会による設置及び無償貸付けに関す
る法律案(内閣提出第七七号)
沖繩及び北方問題並びにその他の固有領土に関
する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/0
-
001・床次徳二
○床次委員長 これより会議を開きます。
沖繩及び北方問題並びにその他の固有領土に関する件について調査を進めます。
まず、総理府所管事項について説明を求めます。八木総務副長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/1
-
002・八木徹雄
○八木政府委員 沖繩の施策につきまして、総務長官の所信表明をいたさなければならぬわけでございますが、総務長官のお気持ちを体して、私のほうから申し上げたいと思います。
私は、この際政府として沖繩、小笠原等に対してとってまいりました施策の大要について御説明申し上げますとともに、沖繩問題等についての私の所信の一端を述べさせていただきたいと存じます。
まず、沖繩に対する政府の施策の基本方針につきましては、昨年十一月の佐藤総理、ジョンソン大統領の共同声明において述べられているところでありまして、同共同声明は、「日米両国政府が、沖繩の施政権を日本に返還するとの方針の下に、かつ、沖繩問題に関する両首脳の討議を考慮しつつ、沖繩の地位について共同かつ継続的な検討を行なうこと」に両首脳が合意したことを明らかにしております。
申すまでもなく、沖繩の祖国復帰は百万沖繩住民はもとより、一億日本国民の強い念願であります。そして、佐藤総理大臣が施政方針演説において明らかにいたしましたとおり、政府は、沖繩の施政権返還の問題について、両三年内に返還の時期についてめどをつけるため、日米間の外交折衝を進め、まず返還を実現することに全力を傾ける決意であることは言うまでもありませんが、当面、沖繩の施政権が日本に返還される際の摩擦を最小限にするため、沖繩の住民とその制度の本土との一体化を進め、沖繩住民の経済的、社会的福祉を増進するための措置を強く推進していく所存であります。
これまで政府は、本土と沖繩の一体化をはかるための措置として、沖繩援助費を逐年増大してまいっており、特に明年度におきましては、一部昭和四十四年度計上予定のものを含め、百五十三億円余と前年度の百三億円余に比べ、大幅増額を予定いたしております。これらの概要等につきましては、先般当委員会において政府委員から御説明いたしたと存じますが、このほか、沖繩籍船舶の日の丸相当旗の併揚、沖繩住民の本土及び海外渡航の際の渡航文書を日本政府が発給することとされたこと、海外における沖繩住民の保護及び海外移住の事務の責任を日本政府が第一義的に行なうこととされたこと、沖繩及び本土間の渡航手続の簡素化、輸出入手続の改善、失業保険金の相互給付等々の施策をとってまいりました。特に、前に述べましたごとく、日米首脳会談を契機として、沖繩をめぐっての日米の協力体制が新段階に入った現段階におきましては、沖繩の施政権返還に備え、本土と沖繩との間に横たわる諸種の障壁を着実に取り除くためのきめのこまかい財政上、制度上の施策を実行に移しつつ、沖繩の住民とその制度の日本本土との一体化を進め、沖繩住民の教育、社会福祉、経済、文化等各分野における格差解消のための施策を講じていく所存であります。私は、これら施策の推進にあたり、昨年十一月の佐藤総理とジョンソン大統領との合意に基づき設置されました琉球列島高等弁務官に対する日米琉諮問委員会の活動に大きな期待を寄せているものであります。
なお、この諮問委員会の日本国政府代表の任務、給与等を規定する沖繩島那覇に駐在する諮問委員会の委員となる日本国政府代表の設置に関する暫定措置法案を国会に提案いたしておりますので、御審議をお願いすることにいたしたいと思います。また、政府といたしましては、さしあたり、以上申し述べてまいりました本土と沖繩の一体化施策を進めるにあたって、できるだけ早い機会に政府内各省職員をもって構成する調査団を派遣することといたし、その調査結果をもとに総合的計画的な一体化施策の策定を行なってまいる所存であります。
次に、小笠原問題について申し上げます。政府といたしましては、小笠原の復帰を円滑に行なうため、目下外務省を通じ、小笠原の返還協定の作成を取り進めておりますが、本年一月十八日から十日間、政府調査団を現地に派遣いたしまして、総合的な調査を行ない、返還に支障のないよう万全の準備を進める一方、二月二十三日に、小笠原諸島の復帰に伴う同諸島の行政区域の所属等について、閣議決定をもって、一、小笠原諸島の行政区域の所属は東京都とすること、二、小笠原諸島の復帰に伴い、同島住民及び同地域について国内法令の適用に関する暫定措置を講ずること、三、小笠原諸島の復興に関する事務または事業につき、国がとるべき必要な措置については、同地域の特殊事情を十分考慮し、今後の専門的技術的調査に基づき関係各省が協議、決定すること、四、小笠原諸島の復興事業の所管は、自治省とし、総合調整を要する場合は総理府が当たることをきめました。これがため、所要の立法準備を進めておりますが、成案を得次第、国会の御審議を仰ぎたいと思っております。
また、北方問題につきましては、わが国の国家利益の立場から、領土問題の解決のため、引き続き忍耐強く努力する所存であります。
以上沖繩問題を中心に政府の諸施策について申し述べましたが、当特別委員会が設置されましたのを機会に、当特別委員会を通じて各位の御意見を承り、これを政府の施策の上に反映してまいりたいと存じますので、各位の御協力をお願いいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/2
-
003・床次徳二
○床次委員長 これにて総理府所管の説明は終わりました。
次に、外務省の所管事項について説明を求めます。藏内外務政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/3
-
004・藏内修治
○藏内政府委員 外務政務次官の藏内でございます。
私から、外務省の所管事項につきまして、その概略を御説明を申し上げたいと思います。
昨年の佐藤・ジョンソン会談の際の共同コミュニケに基づきまして、日米両国政府の沖繩の施政権を日本に返還するという基本方針が認められ、そうしてこの討議を考慮しつつ、沖繩の地位について共同かつ継続的な検討を今後行なうということになったことは御高承のとおりでございます。したがいまして、この方針のもとに、施政権が日本に返還される際に最も摩擦を少なくし、円滑にこれが行なわれるという目的のために、本年一月十九日に、日米琉三政府によりまする諮問委員会が設立をされる交換公文を取りかわしまして、三月一日に諮問委員会が発足をいたしたことも、これも御承知のとおりだろうと思います。それによりまして、この諮問委員会は、日本政府代表といたしまして高瀬代表が目下赴任をいたしておるわけでございますが、この高瀬代表と、米、琉、三政府代表の協議のもとに、まず日琉一体化と申しまするか、住民の経済的あるいは社会的福祉の増進、格差の是正という点について、地道な検討を開始いたしておる段階にあることは、これも御承知のとおりであろうかと思っております。そういう状態でございまするが、沖繩には別に極東の安全保障という非常に高度の政治的配慮を要する問題がございますので、これらを含めまして、今後慎重なる検討を重ねてまいりたいと思っておるわけでございます。
小笠原諸島に関しましては、これは今日まで日米両国政府のもとに返還の協定の交渉が進んでまいりました。これがほぼ合意に達しまして、近く署名の段階にまで到達しておる。署名の完了を待ちまして、本国会に御審議を願うことに相なっておることも、御承知のとおりでございます。
さらにもう一つ、北方領土の問題につきましては、これも、コスイギン首相の発言以来、いわゆる中間交渉なるものが浮かび上がってまいっておるわけでございまして一この中間交渉につきましても非常に微妙なる関係を含んでおりまして、後に正確なる御説明を政府委員よりいたさせることにいたしますが、これにつきましても目下慎重な配慮のもとに検討を進めておる、これが大体の概況でございます。
本委員会におきましても、これらの重要問題、特に日本の国民にとりましては一日も忘れることのできないこの三つの地域の問題につきまして御検討願うわけでございまして、どうかひとつよろしくお願いを申し上げたいと存じます。
ごく概略を御説明いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/4
-
005・床次徳二
○床次委員長 次に、東郷北米局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/5
-
006・東郷文彦
○東郷政府委員 ただいま藏内政務次官からお話のございました点、若干補足させていただきます。
政務次官の申されましたように、現在われわれのやっておりますことは、昨年十一月の佐藤・ジョンソン共同声明にありますことのいわば実施ということでございますが、その中で、沖繩を日本に返還する目的のもとに両政府は今後共同かつ継続的に検討を進めていくということがまずございます。これにつきましては、単に沖繩にあります軍事施設の問題のみならず、政治、経済各般にわたって非常に複雑な問題でありますので、今後大臣の指示を得まして、逐次進めていきたいと考えております。
次に、施政権返還実現に至るまでの一体化、民生福祉の向上、こういう観点から諮問委員会をつくることになったわけでございます。この諮問委員会は、日米琉三政府が代表を任命いたしまして、そこで協議した結果は高等弁務官に勧告されて、それが実施に移されるという仕組みでございますが、それぞれの代表はそれぞれの政府から訓令を受けてその審議に臨むわけでありますので、ここで合意されたことは必ずや高等弁務官によって実施されるというふうに考えております。先ほど政務次官の申されましたように、一月十九日に、ワシントンの話し合いを実施するために日米両政府間に諮問委員会設置の交換公文をかわしたわけでございます。その交換公文は五項目ほど書いてございますが、第一項目はその構成を定め、第二項目は任務、第三項目は諮問委員会の活動に関してそれぞれの政府が役務及び便宜を供与する、第四項目は経費の問題、第五項目は東京にございます日米協議委員会に諮問委員会の進行状況を報告する、こういう規定でございます。特にその中で任務として書いてございますことは、これは共同声明を具体化したものでございますが、ちょっと御参考までに読ましていただきますが、「諮問委員会の目的は、琉球諸島の施政権が日本国に返還される時に同諸島の経済社会構造が日本本土におけるものと円滑に統合されるように準備を行なうため、ならびに琉球諸島の住民の経済的な安定、保健、教育および福祉を増進するため、高等弁務官の権限内にある経済的および社会的事項ならびに関連事項について、高等弁務官に対し、助言しおよび委員間で合意された勧告を行なうこととする。」こういうことになっております。その後、この委員会は三月一日に那覇で第一回の会合を開きました。自後、すでに数回会合を重ねておるわけでございますが、いわゆるその勧告の中で、最初に行なわれました勧告は、三月十一日に出されましたが、沖繩の本土との一体化を進めるために日本政府から大規模な調査団を出すという目的のために、その準備を進めるために、日本からまず計画立案のために代表を派遣してもらいたい、高等弁務官が日本政府に対してそういう招請を出してもらいたい、こういう勧告がすでに出ております。
その他、この委員会に対しては、日本代表のみならず、沖繩代表からも、たとえば開発金融公社の琉球政府移管とか、いま申し上げました調査団の派遣、それからいろいろな資格、免許の統一の問題あるいは日琉両政府間の人事の交流、こういう問題についてもさっそくやろうということで、琉球政府のほうからも意見も出まして、活発に動いておる次第でございます。この委員会につきましては、先ほど申し上げましたように、沖繩の米国の施政に対して日本政府の意思が反映されて、それが実施されるという仕組みになっておりますので、今後とも大いにこの委員会を日本政府としても支援して成果をあげたいと考えております。
次に、小笠原協定のほうでございますが、これは大体米国の持っている施政権を日本のために米国が放棄する。日本政府がそれを引き受ける、こういう奄美協定の骨子と同じ形をとっておるわけでございます。協定自体としては、奄美と同じく比較的簡単な協定でございまして、基本的にまずそういうことで日本政府が施政権を引き継ぐ。気象その他のものはこれは日本政府が引き継ぐ。米軍の施設については、これは地位協定の規定に従って残すものは残す。小笠原に関しましては住民も少なかったことでございますし、請求権というような問題はほとんどないのでございますが、しかし、この問題は、万一の場合に備えて手当てをしておく、こういったごく簡単な協定でございますが、しかしようやく話もまとまりまして最終段階に近づきまして、近く署名できると考えております。今国会にぜひ御審議を願う、こういうことで準備を進めておる次第でございます。
以上簡単でございますが、政務次官の御説明に補足いたしまして御説明申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/6
-
007・穗積七郎
○穗積委員 議事進行について。簡単ですから……。ただいま総理府並びに外務省から重要な報告をいただいて、拝聴いたしました。総理府のほうは、このように文書をもってわれわれに事前に配付をして報告なさいました。外務省のほうはどういう理由で一体文書を配付をなさらないのか。ただいま伺いますと、諮問委員会並びに小笠原交渉等について相当重要な内容の報告がある。それにもかかわらず、しかもアメリカとの間に成文すらできておるのに、いまだに文書をもってわれわれに報告しない。口頭で簡単にされる。これはわが委員会、国会を軽視をするものだと思うのです。したがって、私はその不満を申し述べるとともに、いま次官並びに局長から御報告のありましたものはもとより、それに関連いたしました一切の合意に達しましたものは、文書をもって当委員会に報告をしていただくことを強く要望いたしますから、委員長において政府のほうへそのようにお取り計らいをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/7
-
008・床次徳二
○床次委員長 あとで理事と相談いたしまして、善処いたしたいと思います。
次に、北原欧亜局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/8
-
009・北原秀雄
○北原政府委員 外務政務次官から言及されました日ソの北方領土問題に関連いたしまして、例の中間交渉について経過を御報告申し上げます。
昨年の中間交渉の経緯はすでに幾多の機会に外務大臣より御説明がありました。先方の趣旨は、平和条約に至らざる形において何らかの中間的文書をつくってはどうかということでございました。これに対しましてわがほうの立場は、日ソ共同宣言よりすでに十年余を経まして、世界情勢も日ソ関係も幾多の変遷を経たわけでありますが、そういう情勢のもとにおいて、この日ソ関係を現状から見直してこれを進展せしめ、さらにまた長期に安定せしめるという趣旨からして、領土問題をも含むあらゆる問題、あらゆる日ソ間の懸案を総ざらいしようという立場から、この交渉に応じた次第でございます。昨年末より数回にわたりまして、ソ連の担当者と中川大使との間に交渉を続けてまいりました。もとよりわがほうの立場は、領土問題を含むあらゆる懸案ということでございます。現状のところ、ソ連の従来領土問題についてとってまいりました日ソ間の領土問題は、戦争中及び戦後の一連の国際協定により解決済みであるという立場は、依然として先方は維持しております。わがほうは、従来一貫した日本政府の立場、すなわち国後、択捉、歯舞、色丹というものは、固有の日本の領土であり、戦争中及び戦後のあらゆる協定から見て、当然これは日本に返還さるべきものであるという立場から交渉を行なっております。本件領土問題の交渉は、これはあくまでも忍耐強く時間をかけて、あくまでも初志貫徹をはかるということで、今後とも続けてまいるつもりでございます。いずれにせよ、ソ連の歴史から見まして、ソ連が一度獲得しました領土をそのまま返還したということは、いまだに歴史上遺憾ながらない次第でございまして、この点、私ども非常に覚悟を要するわけでございますが、しかし、いずれにせよ、領土問題のごとき問題の解決には、やはり国民の世論をバックとして、これを行なうよりいたし方ないのでございます。今般、本委員会において、北方領土ということを特定していただきまして、こういう趣旨をも十分心得まして、あくまでも初志貫徹をはかりたいと考えております。
それから、この領土問題以外のすべての日ソ間の懸案、すなわちコスイギンの申します中間的な措置ということでございますが、これは御存じのとおり、領土問題をめぐる問題もありますし、それ以外のいろいろな懸案もある次第でございます。領土問題をめぐるその周辺の問題といたしましては、われわれはあくまでも国益をはかるため、特に北海道地方の住民の利益ということを念頭に置いて交渉してまいりたいと考えております。
それ以外の諸種の点につきましては、並行していろいろな交渉を行なっております。ある部面においては、ある程度の進展を見たものもございます。この交渉の最終的にまとまりますまで、個々の進捗状況については、双方とも発表しないでおこうという約束でやっておりますので、いましばらく発表をすることはひとつ御寛容願いたいと存じます。
以上、簡単ではございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/9
-
010・床次徳二
○床次委員長 これにて外務省所管の説明は終わりました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/10
-
011・床次徳二
○床次委員長 次に、沖繩におけるテレビジョン放送に必要な設備の日本放送協会による設置及び無償貸付けに関する法律案を議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。箕輪登君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/11
-
012・箕輪登
○箕輪委員 沖繩放送協会に対する放送設備の貸与関係につきまして、若干質問をいたしたいと思います。
今回の沖繩放送協会に対する施設貸与がきまるまでの経過を、沖繩側の事情を含めまして、簡単に御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/12
-
013・高橋清一郎
○高橋(清)政府委員 御存じのように、沖繩放送協会は昨年の十月に設立されました。もちろんこれは公共放送機関としてでございます。先島地区につきましては、昨年の秋でございますが、日本から琉球政府に譲渡した放送設備も政府から出資として受けて、すでに昨年の末から放送開始をしておる事情については御存じのとおりであります。
続いては、沖繩本島に関したことでございますが、これは明年初めから放送を始めるためにいろいろな設備をことしの末までに設置しなければならないというたてまえで、目下鋭意努力いたしておる最中でございます。これがために、最近琉球政府及び沖繩放送協会から、那覇のテレビジョン放送局の建設につきましてNHKから援助を仰ぎたいという旨の要請が出てまいりました。その内容は建物とアンテナを除きました部分でございますけれども、放送用の設備約三億五千万であります。この三億五千万で放送用の設備を建設してほしいというものでございます。日本放送協会は、従来から沖繩の放送に対しましては、番組の提供であるとか、技術の協力を行なってきておるのでありますが、先ほど申しました沖繩の要請につきましても、これを受け入れまして、援助を行なうことによって、沖繩におきます放送の普及をはかり、ひいては沖繩の文化の向上さらには本土、沖繩の一体化の一環といたしまして、これが促進に寄与しよう、こういうたてまえのものでございます。政府といたしましても、本土と沖繩との格差是正ということに思いをいたし、沖繩におきます放送の普及の必要性及び沖繩側の資金の事情等もございますから、十分これらの点を考慮いたしました場合、やはりNHKがその援助を行なうことが適当だという考察のもとにスタートいたしたものでございます。この場合におきましても、NHKがこのような援助を行なうことが現行放送法上可能かどうかという問題に逢着いたしまして、いろいろ苦心したのでありまするけれども、まず、それにつきましては、NHKがこの援助を行なうがためには、いろいろ考えました末に、放送法上の根拠がどうしても必要であるということになりました。でありまするが、NHKの業務の範囲内におきましては、どうしてもこの九条しかございません。九条には、委託による放送設備の設計などの技術援助ができるという程度の規定しかございません。したがいまして、沖繩に放送設備を設置いたしまして、これを沖繩放送協会に貸与するがためには、どうしてもいま申し上げましたような新しい法律の規定を必要とするというものであります。
いままで申し上げましたことが、本法案を提出するに至りました経緯、過程でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/13
-
014・箕輪登
○箕輪委員 時間がございませんし、大体のことはわかっておるのですから、あまり詳しく御答弁されなくてもいいのです。
いまの御説明で大体尽きるかもわかりませんが、先ほど答弁の中でお話しのございました、先年行なった先島方面の施設のときにも、国が行なったわけであります。今度の援助はNHKが行なう、こういうわけでありますが、NHKがその使命から考えて当然行なうべき業務であるかどうか、これを疑問に思いますので、ひとつ簡単にお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/14
-
015・左藤恵
○左藤説明員 NHKはあまねく日本全国において受信できるように放送を行なうとともに、海外放送によって海外の同胞に対しても適当な慰安を与えるというようなことが義務づけられておるわけでございます。沖繩住民はすべて同胞でございまして、わが国の放送の受信について強い要望を持っておるわけでございます。本土と沖繩の一体化の一環といたしまして、NHKの放送が沖繩において十分受信できるようにするということはより意義が深いことだと考えるわけでございます。
今回の援助は、那覇のテレビジョンの放送局の建設でございまして、それによりましてNHKの放送の一そうの普及をはかるというものでございますが、沖繩放送協会はNHKと同じに公共放送を行なうことを目的として設置された法人でございますので、沖繩放送協会の自主性を十分尊重しなければならないわけでございます。一方、琉球政府及び沖繩放送協会から、ただいま政務次官が御答弁になりましたような要望が出されてまいったわけでございますので、これは政府が行なうよりもNHKをして行なわせることが最善の道と考えたわけでございます。
いまお話しのございました先島地区に対します援助につきましては、それらの地区が沖繩島における民間のテレビジョン放送も受信し得ないような、いわゆる難視聴区域でございます、と申しますよりも、視聴不可能の地区でございますので、離島に対します文化振興の見地から政府の援助を要請してきた。それにこたえまして、日本政府としてこれらの地区にテレビジョン放送局を建設して、これを琉球政府に贈与したということによりまして、ともかくテレビジョン放送が受信できない地区を解消しようとしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/15
-
016・箕輪登
○箕輪委員 よくわかりました。もともと私どもも沖繩におけるテレビの普及が、いかなる形にせよ、本土の援助によって普及されていくことを心から念願いたしておりますので、ただいまの答弁でよく了解することができました。
次にお尋ねいたしたいと思いますが、NHKが貸与する施設の保全はどういたすつもりでおりますか。また減価償却費の積み立ては行なうのかどうか、これについて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/16
-
017・左藤恵
○左藤説明員 今回NHKが貸し付けいたします設備は、NHKの資産でございますので、NHKが沖繩放送協会との貸し付け契約を締結いたします場合におきまして、その設備の保全につきましては、NHKの財産の管理というたてまえで行なうべきものと考えております。したがいまして、その会計上の処理につきましても、NHKの一般の資産の管理と同様に行なうことが当然であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/17
-
018・箕輪登
○箕輪委員 沖繩におけるテレビの普及状況は、現在どの程度でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/18
-
019・左藤恵
○左藤説明員 テレビ受信機の普及状況につきましては、昨年末現在におきまして、沖繩本島におきましては十五万二千台、世帯数にいたしまして十八万六千の世帯のうち八二%に達しております。先島地区におきましては、世帯数二万五千のうちの約四〇%、すなわち約一万台の普及を現在見ておる状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/19
-
020・箕輪登
○箕輪委員 そうしますと、さきに先島地区に設けられた設備と今度貸与する設備と合わせまして、テレビは沖繩の全域をカバーすることができますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/20
-
021・左藤恵
○左藤説明員 昨年本土政府の手によって置局が完了しました先島地区におきましては、五局を合わせまして約二万世帯の地域がカバーされております。西表島の西北部の一部、約百世帯だけが難視聴地域として残されております。それからこのたび沖繩放送局の建設が予定されております沖繩群島におきましては、この局によりまして約十六万世帯の地域がカバーされることになります。なお、本島北部及びその周辺の諸島、それから久米島、大東島などを合わせまして約二万世帯の地域が難視聴地域として残されることに在りますが、これらの難視聴地域につきましても、現在沖繩放送協会におきましてはサテライト局あるいは共聴施設というものを建設いたしまして、その解消を早急にはかりたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/21
-
022・箕輪登
○箕輪委員 OHKはラジオの放送もあわせて行なうことになっているはずでございますが、ラジオの設備については援助の申し出がございませんか。もしもこれから申し出があるとするならば、今回同様の措置をとられるつもりかどうか、御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/22
-
023・左藤恵
○左藤説明員 沖繩放送協会におきましては、将来ラジオ放送を行ないたいという意向は持っているように聞いておりますが、現在のところまずテレビジョン放送局を建設して全域をカバーしたいということでございまして、ラジオの建設につきましての援助とか協力の申し出はございません。かりにお話しのように、今後沖繩側より援助協力の要請がございました場合には、その時点におきまして要請の内容と援助の必要性というものを十分に検討いたしまして、適切な判断を行ないたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/23
-
024・箕輪登
○箕輪委員 さらにOHKは来年の一月一日から先島地区も含めて受信料を徴収することになっておりますが、大体その額はどのくらいになりますか。また受信料の総収入はどのくらいに見積もられておるか。それと関連いたしまして、OHKは受信料収入だけで経営が成り立つのかどうか、このOHKの財源関係についてお聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/24
-
025・左藤恵
○左藤説明員 受信料の額につきましては、OHKの一九六九年度、ことしの七月から明年の六月まででございますが、この一九六九年度の予算が成立いたしますことによりまして、受信料の額が決定されることになるわけでございますが、当初の予定といたしましては一応一カ月八十セント、これは二百八十八円に相当しますが、その程度を考えているように聞いております。
それから、月八十セントといたしました場合の受信料収入を計算いたしてみますと、当初一年間におきましては百六十万八千ドル、五億八千万円程度になろうかと考えます。
次に、OHKは受信料収入だけで経営が成り立つものかという御質問でございますか、沖繩放送協会は、設立の段階におきましては全額政府出資で設置されました特殊法人でございまして、これからは協会の財政的基礎はもっぱら受信料にたよることになっております。したがいまして、収入の多寡は、受信者の普及状況や受信料の額のきめ方等にかかってくるわけでございますが、今後の経営につきましては、一応の目標を立てて、経営の安定を考慮した上で事業の運営をはかっていくことに石ろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/25
-
026・箕輪登
○箕輪委員 沖繩にすでにあります民放三社に対しまして、NHKはその番組を提供いたしております。またOHKが発足いたしますと、これに対してもNHKは番組を提供すると思います。しかし、いままで提供しておった民放三社に対しまして今後は番組を提供しない、こういうばかなことはないと考えるわけでありますが、その点についての御見解と、OHKが発足することによっていままである民放三社の経営が何かむずかしくなるというようなことは考えられないかどうか、この二点についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/26
-
027・左藤恵
○左藤説明員 NHKは従来沖繩の民放三社に対しましてラジオあるいはテレビの番組を提供してまいりました。昨年秋の沖繩放送協会の発足後、その先島地区のテレビジョンの放送局に対しましても番組を提供いたしておるわけでございますが、NHKは、沖繩放送協会の那覇テレビジョン放送局の開設後におきまして、当分の間従来どおり沖繩の民放に対しまして番組を提供することにいたしております。それと同時に、もちろん沖繩放送協会に対しまして積極的に番組を提供する意向を有しておるわけでございますが、その場合、沖繩本島におきましてNHKのテレビ番組が重複して放送されるということにもなりかねないわけでございますので、近い将来におきまして当事者間で十分調整する必要があろうと考えております。
それから沖繩の民放は、NHKがOHKばかりに番組を提供するようになった場合には経営が困難になるのではないかという御質問でございますが、現在はマイクロ回線の下り一回線だけが用意されておりますが、ただいま電電公社と沖繩の琉球政府との間で話が進められて準備に取りかかっておりますマイクロ回線、奄美大島の名瀬から沖繩の那覇に至ります回線がもう一回線増設されました場合には、内地の民放の番組がそこに提供されることになろうかと考えております。したがいまして、経営上非常に困難になるというようには考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/27
-
028・箕輪登
○箕輪委員 沖繩の返還が実現いたしました暁には、このOHKの事業が全部当然NHKに承継されるものと私は考えているのですが、そのとおりでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/28
-
029・左藤恵
○左藤説明員 沖繩返還の際におきますNHKと
○HKの関係につきましては、当然調整しなければならないと考えるわけでございます。その場合、沖繩におきます放送体制のあり方というものをどういうふうに考えるかということは、当然われわれとしては考えなければならない問題だと思っております。この問題は、さきに設置されました、ただいまお話もございました日米琉諮問委員会におきまして、本土と沖繩の一体化の施策の問題として当然検討していただく問題であろうと考えております。
それから、ただいまお話しのございました点は一般的な問題でありますが、今回援助をいたそうと考えております設備につきましてはNHKの資産である設備を貸与するわけでございますので、沖繩復帰の際の処理につきましては、OHKとの貸与の条件によりまして処理されるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/29
-
030・箕輪登
○箕輪委員 もう大体所定の時間になりましたので、質問を終わりたいと思いますが、やはり沖繩にいる約百万の同胞のことを考えますと、本土との一体化というものは大いにこれからも進めていかなければならないと考えます。そういう意味で、NHKが今回こうした貸与という形で援助をされることについて、満腔の私どもは敬意を表するものでございますが、番組提供その他において、あまり高い料金でその提供をいたしますと、やはり経営がむずかしくなってくるのではないかという心配を持つわけであります。どうか、そういう意味で監督官庁である郵政省はNHKとよく相談されまして、なるべく安い料金で御提供されるように心がけてくださることを最後に申し上げて質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/30
-
031・高橋清一郎
○高橋(清)政府委員 意のあるところ十分承知をいたしました。NHKとの問題等はよく相談いたしまして、善処いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/31
-
032・床次徳二
○床次委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後一時四十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00319680326/32
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。