1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年四月十九日(金曜日)
午後五時五十四分開議
出席委員
委員長 床次 徳二君
理事 臼井 莊一君 理事 小渕 恵三君
理事 鯨岡 兵輔君 理事 本名 武君
理事 川崎 寛治君 理事 美濃 政市君
理事 永末 英一君
大村 襄治君 菅波 茂君
田中 榮一君 竹下 登君
箕輪 登君 粟山 秀君
山口 敏夫君 山田 久就君
伊藤惣助丸君
出席国務大臣
外 務 大 臣 三木 武夫君
国 務 大 臣
(総理府総務長
官) 田中 龍夫君
出席政府委員
総理府特別地域
連絡局長 山野 幸吉君
総理府特別地域
連絡局参事官 加藤 泰守君
外務政務次官 藏内 修治君
外務省北米局長 東郷 文彦君
外務省条約局長 佐藤 正二君
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四月十九日
委員上林山榮吉君、小坂善太郎君、福田篤泰君、
古屋亨君及び斎藤実君辞任につき、その補欠と
して山口敏夫君、粟山秀君、菅波茂君、田中榮
一君及び伊藤惣助丸君が議長の指名で委員に選
任された。
同日
委員菅波茂君、田中榮一君、粟山秀君及び山口
敏夫君辞任につき、その補欠として福田篤泰
君、古屋亨君、小坂善太郎君及び上林山榮吉君
が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
沖繩島那覇に駐在する諮問委員会の委員となる
日本国政府代表の設置に関する暫定措置法案
(内閣提出第七五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/0
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001・床次徳二
○床次委員長 これより会議を開きます。
沖繩島那覇に駐在する諮問委員会の委員となる日本国政府代表の設置に関する暫定措置法を案議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。川崎寛治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/1
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002・川崎寛治
○川崎(寛)委員 沖繩に関しましては、外務大臣の沖繩との関係というのは、従来に増して制度的には関係が深くなってまいるわけです。南連の所長に対する指揮監督、さらには諮問委員は総理大臣並びに外務大臣の指揮監督、こういうふうになってまいるわけであります。そこで、日米首脳会談の共同声明を受けて交換公文が取りかわされ、諮問委員の設置、こういうことになってまいっております。
この沖繩問題の、特に本土との一体化を政府側が打ち出してまいっておりますけれども、この背景は決して単純なものではなくて、沖繩社会の不安定というものをいかに安定化していくか、さらには差別をなくしていくかということにかかわってまいるわけであります。そこで沖繩の不安定というものが一にかかってアメリカの極東戦略にあるという点について、外務大臣はどのようにお考えになられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/2
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003・三木武夫
○三木国務大臣 沖繩の不安定がアメリカの極東戦略にある、そういうふうには——この沖繩の施政権返還がなった場合は、これはやはり沖繩の現在の基地のあり方等も日米で検討を加えて、ある合意に達するわけでありますから、またその場合に、各個人個人にはやはり経済上の問題もありましょうし、あるいはまた、財政、法律、裁判、いろいろな問題があって、アメリカの極東戦略で沖繩が不安になっているという、それはやはり独断に過ぎると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/3
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004・川崎寛治
○川崎(寛)委員 これは時間をかけて——沖繩の基地の役割りというものの変化とも関連をいたしてまいるわけでありますから、これを議論をすれば時間がかかります。ですから、結論的に言いますならば、たとえばただいま現地で問題になっておりますB52の問題にいたしましても、朝鮮半島の緊迫あるいはテト攻勢、こうしたものにからんでまいるわけであります。沖繩の社会の不安定というもの、さらには経済的な面についても、基地の恒久的な建設を急ぐ、そうすればそこに景気がわいてくる、そうしたアメリカの戦略の進め方いかんによって、不安定といいますか、非常に動く要素というのが常に出てまいっておるわけであります。これは戦後をとってみても、朝鮮戦争にいたしましても、あるいは今回のベトナム戦争にいたしましても、そういう要素によって非常に動いてきておるわけですね。あるいは基地の町等にいたしましても、戦争が激化をする、どんどん出ていく、そうすれば基地の町はさびれていく。ですから常にアメリカの極東戦略の進め方いかんによって、沖繩の社会、経済というものは動いておるわけです。ですから、それが独断だと言うこと自体が、沖繩の経済の安定なり社会の安定なりを考える場合に、そこにあえて目をつぶろうとする、そのこと自体が独断であって、問題の本質をそらせるし、沖繩問題の解決をおくらせる、こういうことになろうと思うのです。重ねてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/4
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005・三木武夫
○三木国務大臣 いま御指摘になっておることは、全部施政権が日本にない、アメリカの施政権のもとに置かれておるということから、いろいろな問題、不安定な原因も私は出てくると思うが、施政権の返還というものが行なわれて、日本の国土に復帰するならば——いろいろな問題がそこにおいて日本政府とアメリカとの間に合意ができなければ行なわれないわけですから、当然沖繩住民の生活、人権、いろいろな問題が考えられるわけで、不安定の原因というのは施政権がアメリカにあるということから来るんじゃないでしょうか。ほかにそうなってきたときに、川崎君は安保条約破棄という立場でありますから、極東戦略ということになってくると、安保条約に対する評価が、私どもと違ってこれは平行線でしょう。何日かけて議論しても、そのことがあるためにかえって不安定になるし、戦争の危機が増大するんだという立場と、そうではないのだ、日本の安全確保に非常に役立つのだというこの評価の違いは、日にちをかけることによって解消はできない。現在不安にしているのは何だ。施政権が他国の手にあるこのことが不安定な原因だと私は思っている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/5
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006・川崎寛治
○川崎(寛)委員 まさにそのとおりでありまして、施政権を取られておるがゆえに不安定である。そうして、それなるがゆえに共同声明でも、社会、経済の残存する障壁、あるいは交換公文の中において認めておる格差、こういうものもすべて施政権を取られておるところにあるわけです。そうして、施政権を取られておるがゆえに、アメリカの戦略の動きの間に間に沖繩百万県民がほんろうされている。その点をいまお認めになられたと思うのです。
そこで、一体化政策というものを考えていく、あるいは返還をされたときに摩擦のない状態をつくっていく、こういうふうに言われますが、しょせん施政権が返らなければ、そうした点については根本的な解決はできないということをはっきりお認めになられたと思うのです。いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/6
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007・三木武夫
○三木国務大臣 あなたの形容詞には気に入らぬ形容詞が一ぱいあって、アメリカの極東戦略の間に間に何かその犠牲を負うておるというような形容詞を除けば、施政権が他国の手にあるということはいろんな面において不安定の原因であることは、私はそのとおりだと思います。しかし、形容詞はちょっと不適当な形容詞が多いということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/7
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008・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それでは次にお尋ねをしますが、ジョンソン声明でベトナム和平という方向に動いております。これは外務委員会あるいは参議院の予算委員会等でも議論をされてまいったのでありますが、このジョンソン声明に基づいたベトナム和平の方向というものを本物だとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/8
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009・三木武夫
○三木国務大臣 私は本物だと見ているのです。それはなぜかといえば、アメリカにしても軍事的に問題を解決できないということは、もうはっきりしてきた。ハノイもまた軍事的にこの問題を解決できないということはよくわかってきた。初めのうちは両方とも軍事的な評価についていろんな幻想があったでしょう。しかし、いまはもうどちらも軍事的に問題を解決することはできない。政治的に解決しようという決意がジョンソン提案であるし、それを受けて、本格的な交渉でないまでも、予備的な話し合いをしようという、ハノイがこれに応じた理由だと思う。そこで両方が、やはり話し合いをしてみようということは、これはゼスチュアだと思わない。ここで必要なことは、世界の世論は、こういうせっかく向こうが話し合いをしようという一つの端緒が開かれたんですから、これでもうあとへ戻してはいけない。やはりこのきっかけを実らさなければいかぬという世界の世論、アメリカもハノイも、この機会をとらえてベトナム和平に持っていけという強い世界の世論というものは必要だと思う。だからこれをあまり疑って、ゼスチュアだとかなんとか言って、水をさす必要はない、けっこうなことではないか。これを機会に和平を達成せよという圧力を戦争当事者にかけることが今日必要だと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/9
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010・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それでは米軍のベトナムからの撤退ということも、時間の問題として考えられるわけですね。そうしますと、このことはアメリカの極東戦略に変化が起こるとお考えになりますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/10
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011・三木武夫
○三木国務大臣 この撤兵というのは、川崎さんも御承知のように、アメリカはしばしば声明しておるのです。アメリカは永久に南ベトナムに駐兵する意思はない。また永久の基地も求めない。これは私は額面どおりにとっておる。この点は、アメリカでの私の演説でもいつもこれを引用、メンションしているのであります。したがって、アメリカがいままで言っておったことと違うことをするならば、これはアメリカの大きな戦略転換と言えるでしょうが、しかしアメリカは従来言っておるように、力によって押しつけるのではなくして、みなが自由に民族自決できるような環境をつくることができるならば、アメリカはもう軍隊を置くような必要もなければ、基地を置く必要もない。いつでも撤退すると言っておるのですから、大きなアメリカの戦略転換というふうに私はとってないのです。そういうふうにはとっていない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/11
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012・川崎寛治
○川崎(寛)委員 沖繩とベトナム戦争というのは密接不可分の強い関係でまいっておるわけであります。そこで戦略的には変化はない、こういうふうにいま外務大臣は言われたわけでありますね。
そこで、このことがアジアの緊急緩和に結んでいくのか、あるいは参議院でも述べておられるのでありますが、一九五四年のドミノ理論というのは誤りだ、そういう点には外務大臣は触れられておるわけであります。でありますから、そういたしますと、このベトナム和平の方向というものが、アジアの緊張緩和に大きく前進をしていくのか、あるいは戦略的に変わらないということの中に別の要素、つまり米中関係というものについて変わらないという判断をお持ちでそう言われるのかどうか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/12
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013・三木武夫
○三木国務大臣 問題点は、どのような形でベトナム戦争が収拾されるだろうか。その収拾のしかたというものが、やはり将来のアジアに対して尾を引くと思いますね。だからいまベトナム戦後というものに対してのアジアの情勢というものを的確にここで判断することは、収拾のしかたによるから、むずかしいと思う。しかし、全体として言えることは、ベトナム戦争がとにかく話し合いによって解決されるということは、極東の情勢、極東の緊張と情勢に大きな、やはりその緊張をやわらげる効果であることは、これはもう間違う余地はない。そういう極東情勢の変化が、国際関係の環境に必ずよい結果をもたらすに違いない。中共にしても、やはりあの戦争の拡大というものに対する中共の恐怖心というものが、これはいままであったと思いますよ。戦争が、北爆が北のほうに拡大していくと、そのことがやはり中共自身にしても、戦争拡大による脅威も非常にあったと私は思う。そういう緊張感が薄らいできて、中共自身が国内の建設に中共の勢力というものをもっと使われるような状態になれば、やはり中共の対外政策の中にも変化がくるのではないか。全体としてベトナムが平和的に解決されるということは、各国に対して大きな影響力を与える。そうすると、アメリカもまた中共に対するいままでの態度というものに対して、これは変化が来ないとは限らないし、アジアに来るその変化は、いずれも好ましい変化である。そういうことで、これはどうしてもこの機会にベトナムの戦争の和平、この解決、これは促進することがアジアの安定と平和に対しても大きな貢献をする。しかし見通し、どういうふうに収拾されるかということによっては、その安定の度合いというものの評価は違ってくる。しかし大きな方向としては、これはもうアジアの平和安定に対して大きな前進であることは間違いないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/13
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014・川崎寛治
○川崎(寛)委員 ベトナムで軍事力で解決がつかない、できない。といたしますと、撤退をいたしますにしても、アメリカが期待をするような形で南ベトナムに軍事基地を確保して撤退ということになるかどうか、それはこれからの解決の方向によって違いますね。そういたしますと、タイなり韓国なり台湾なりフィリピンなり、こうしたラインについてのアメリカの態度というものはより強まってくるのではないか。なかんずく、現在自由に使える、つまり先ほども言われましたように、施政権を持っておる、オールマイティを持っておることによって自由自在に使えるし、これに協力するいまの日本政府の姿勢からいたしますならば、そうした基地の保持というものに安心感を持っておるアメリカとしては、この沖繩の基地を保持していく態度というものについて、今後どのように変わっていくか、変え得るか、たいへん大きな問題になってくると思うのです。
そこで、先ほど来の極東情勢の分析の上に立ちますならば、沖繩の基地は強化される方向に行くと判断されますか、縮小される方向に行くと判断されますか、お尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/14
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015・三木武夫
○三木国務大臣 これはベトナム戦争というものがどういうふうに収拾なって、それが長続きのする平和というものがアジアに確立されるかどうかということにも影響すると思いますが、私は、アジア情勢というものを、さらに沖繩の基地が今日よりも強化される方向であるとは見ていないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/15
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016・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうしますと、縮小の方向にもない、こういうふうにごらんになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/16
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017・三木武夫
○三木国務大臣 これはやはりいま施政権返還の話し合いをするのですから、その合意によって基地のあり方というものがきまるわけでありますから、その基地がどういうふうに日米間できまるかによって——さらに沖繩の基地を強化するというようなきめ方になるとは思わない。どの程度の基地になるかということは、今後の日米間の継続的な協議の結果にもよると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/17
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018・川崎寛治
○川崎(寛)議員 つまり基地のあり方を日米間で話し合うということ以上に、いま施政権を持っておるアメリカからしてみれば、アメリカ側の態度というものは、アメリカの極東戦略の方向にかかわるわけですね。その際に問題になりますのは米中の関係、アメリカの沖繩基地というものが対中国基地としてこれまでずっと機能してきているわけですね。その過程におけるベトナム戦争、こういう中で考えますならば、根本的に極東の緊張を緩和するその日本の役割りというもの、——基地のあり方、基地の態様というものを日米間で話し合いを詰めていく、そのことも当然外交折衝の過程として大事でありましょう。しかし、より根本的には、極東の緊張を緩和させる日本の役割りというものが問題ではないかと思うのです。そういたしますと、そのときに一つの一番大きなファクターは、私は日中の国交回復だと思います。その点についてどうお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/18
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019・三木武夫
○三木国務大臣 日中間の国交回復というものには、台湾問題というなかなか複雑な問題があります。そういうことで、台湾問題の解決がそんなに簡単にできるとは、中共側自身も考えていないでしょう。また日本も、これは簡単なものではない。しかし、日本がどうしようというわけではない。一つの中国とか二つの中国とかいっても、これは日本は関知せざるところである。もしその責任があるとしたらその事実だけが責任なんで、日本が何も一つとか二つとかいってやったわけではないのです。だから、そういう情勢の変化が来れば別ですよ。来れば、これはきわめて簡単ですが、それが来ないということになってくると、その解決というものに時間がかかると、日中間の国交回復というものの非常に大きな障害になる。だから、いま必要なことは——できることとできないこととがあるわけです。いますぐ国交回復といっても、台湾問題もあってできない。できないことをできるような幻想を抱いてやることは、外交として慎まなければならぬ。できる範囲内のことで、できる限り日中関係を改善していこうという努力は私は必要だと思う。軍事的といっても、緊張の種をまいておって軍事的に強化するという行き方は間違っている。むしろ緊張緩和という努力を伴って、軍事的な依存度というものをできるだけ低めていくのが方向としては正しい方向でしょう。そういう点で日本としても、一方においてやはり防衛力は持たなければならぬ、一方においては、外交を通じて日本周辺諸国との関係、そういう緊張を緩和していくための努力をすることは、川崎さんの言われるとおり、そうだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/19
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020・川崎寛治
○川崎(寛)委員 日中国交回復の問題はたいへん大きい問題でありますので、実はこの法案審議の過程として私はお尋ねをしておるわけでありますから、本格的な議論は別に譲らざるを得ないと思うのです。
ただ一つお尋ねをいたしておきたいことは、いま、いろいろとファクターがある、こういうふうに言われました。しかし、日中国交回復ということについて、これはアメリカの——こういう言い方は気に食わぬと言われるかもしれませんけれども、アメリカの了解なしに、あるいはもっと端的に言えば、日本の自主性をもって日中の国交回復を——長期的に見てもですよ、そういう方向に進め得るというものであるか、日中国交回復を進めるにあたっては、アメリカとの関係というものを非常に大きなファクターとせざるを得ないか、お尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/20
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021・三木武夫
○三木国務大臣 日中国交回復してもいいんだという条件さえ整えれば、アメリカの意をうかがってという必要はない。自主的に日本が判断をすることが当然であります。アメリカもまたアメリカの自主的に——みなその国の国益というものを踏まえて自主的に判断しておるのが外交ですから、そういう点では何も相談しなければできぬということではない。問題は、そういうふうな国交回復をできる条件が一体整うかどうかということであって、整うたならば、よその国に相談する必要はない。自主的に判断をすべきものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/21
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022・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そこでお尋ねいたします。
昨年の十一月、日米共同声明を、これは外務大臣も参加して出されたわけです。この日米共同声明で中国の脅威を強調する、さらにはベトナム政策への支持というものを表明いたしておるわけであります。そうした日米共同声明でうたった、つまりその中にあらわれておる情勢というものが、いま外務大臣が言われたベトナム和平の方向あるいは極東緊張緩和への自主的な日本政府の態度、そういうものとの関連の中から、日米共同声明の際の把握をした情勢というものには変化があらわれたのか、変化してきている、こういうふうに見るべきであるか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/22
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023・三木武夫
○三木国務大臣 共同声明を引用されていろいろ言われたですけれども、あの共同声明の中に、中共の脅威というのは、中共が核開発をしたり、いろいろ中共の周辺諸国がそのことによって脅威を与えられないようなしっかりした体質をつくるというところに、その声明のアクセントがあるのです。ことばは忘れましたけれども、しっかりした国内体制をつくるというところにアクセントがある。そういうことで、私はいまでもそのとおりに考えております。共産主義といったところで、しっかりしておるのならば、何も共産化するようなことはないのですから、何もそれだけ国内に誘い入れる勢力がないのに、いきなり共産化するということはないのですから、いつも低いほうに共産主義の水は流れていくのです。歴史は教えているのです。だから、しっかりした体制を持って——本人が好まないのに共産主義が入ってくるということは困りますから、自主的に国の運命をみずから判断できるような、それだけのしっかりした体制をつくるということが一番必要なことであります。そういう一つのしっかりした国内体制をつくる、そのために日本は軍事的にどうこうはできませんから、経済的に協力していこう、できるだけのことをしようということが、いま言った共同声明の中にある精神であります。中共の脅威、軍事的にどうこうしよう、そういうことではないので、むしろそういうことを通じて、日本が極東の平和、安定のために経済協力とか技術協力、こういうものを通じてしっかりした体制をつくり得るために協力していこう、こういうことで、アメリカはまたそういう日本の努力というものに対して高く評価するというようなことがいわれておるのが、その共同声明の精神であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/23
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024・川崎寛治
○川崎(寛)委員 ドミノ理論が誤りだ、ところが現に沖繩はその核抑止あるいは柔軟反応戦略の墓地として保持をされてきたわけでありますね。そしてベトナム戦争というものも結局軍事力で勝てない。むしろ今日国際的にはベトナム戦争は間違っていた、誤りだったということの評価がはっきりいたしてまいっておりますね。そのことは、日本の保守党の諸君のそれよりも、むしろアメリカの国内でそのことの可否がまっこうから議論をされておる。こういたしますと、沖繩をアメリカがこれまで支配をしてきたということについては、施政権を平和条約第三条で渡しているからしかたがないのだ、条約的にしかたがないのだということで一貫をしてきておるわけでありますけれども、アメリカの沖繩支配、つまり今日アメリカの国内で黒人問題が爆発をいたしておりますが、まさに沖繩問題というのは黒人問題と同質的なものを持っておるわけです。そういたしますと、アメリカの沖繩支配というのは、道義的にも、そして法律的にも——法律の面はまっこうから政府と私たちとは対立をいたしております、解釈は対立をいたしておりますが、道義的にも、それから法律的にもアメリカの沖繩支配というのは誤っていた、こういうふうに思うわけであります。でありますから、議論をすればこれもまたたいへん長い議論になりますから、私はこのこと自体をここで外務大臣と論ずる時間的な余裕がありませんから、それはさておきますけれども、そういう中で、おそらく外務大臣としてはたいへん良心的に今日の沖繩の置かれている問題というものを把握をする姿勢はあると信じたいのです。
そこで、外務大臣がこれまで以上に諮問委員あるいは南連の事務所長に対する指揮監督の権限を持ってきた、このことは日米間で外交の折衝をこれから進めていくにあたって、外務大臣の責任というものは沖繩問題についてはきわめて大きくなった、こう思います。そこで、今後沖繩問題に取り組む外務大臣としての基本的な態度、つまり沖繩は施政権をアメリカに取られているからしかたがないのだという、そういう条約上の立場を貫くのか、沖繩の県民と本土の国民を差別をしない、そういう立場で自主的な方向というものをより強く——場合によってはアメリカ側とぶつかる。沖繩県民の利益を守り、権益を守り、生命、財産を守るという立場に立てば、自由に使ってきておるアメリカの立場とはまっこうからぶつかるのは当然だと思うのです。しかし、これまでの政府の態度には、場合によってはぶつかってもやるという姿勢は、残念ながら見られなかったと思うのです。このことが沖繩の現地の諸君のたいへんな不満であるわけでありますけれども、今後、制度的にも外務大臣の沖繩に対する責任が強まりました今日、どういう態度で処理をしていくのか、対処していくのか、その基本的な態度について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/24
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025・三木武夫
○三木国務大臣 沖繩の問題は平和条約によって日本が同意したわけでありますから、その事実というものの上に立って考えなければいけない。そこで、大いにぶつかれ、ぶつかれという川崎さんのお話でありますが、日米間、これは必要な場合はぶつかってもいいわけですよ。しかし、そういつも大衆運動で問題を解決しようという考え方では、われわれないわけであります。やはり日米間には友好信頼関係というものは根本に置いてあるわけですから、したがって、お互いに話し合いを通じて問題の解決をしていこう。大衆運動を通じて日本の目的を達成しようという、そういう基本的なやり方、基本的な立場で問題を解決しようとはしてない。これは川崎さんと意見の多少食い違う点ですよ。大衆運動のほうが勇ましいかもしれませんが、しかし、目的を達成するためには、そういうことよりも、話し合って解決することのほうが案外有効なのではないかということであります。われわれもまた、他民族の支配で二十何年もの間そういうことにあることは不自然なことである、やはり施政権の返還というものはすみやかにされなければならぬ、この感じはあなたと違いないですよ。やり方については、あなたは大衆運動方式、私は話し合いによる方式、こういうやり方が違うわけであります。
そこで、これからの問題でありますが、高瀬君も明日赴任することになっております。私も長時間話をしました。あの諮問委員会はできるだけ活用したらいい、そうして共同声明なんかにもいわれておるような社会、経済上の諸問題ということが主としてとなりましょうが、議題になってくるいろいろな問題——沖繩におるのですから、しかも高瀬君というのは優秀な外交官でもあるし、アンガー高等弁務官との間に、こういう諮問委員会の議題とかなんとかいうのでなくして、沖繩、日本の一体化というために緊密な連絡をとってもらいたいということを言ってあるわけであります。諮問委員会においては、共同声明から来ておるのですから、それの一つの制約のもとにあるでしょうし、できるだけあの諮問委員会というものを、諮問委員会の設置された理由のもとで基本的に活用していきたい。南連事務所もまたいままでと違った機能が与えられたわけですから、これも活用するし、きょうは小笠原の施政権返還に関する協定が国会の御審議を願うような段取りになりましたから、いままでは小笠原問題というのにわれわれとしてもかかっておったわけであります。来月あたりから沖繩の施政権返還に対する外交交渉を始めたい。いろいろな方法を通じて、国民の悲願である沖繩の施政権返還について、できるだけの努力をしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/25
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026・川崎寛治
○川崎(寛)委員 来月からということで、だいぶ延びたわけでありますけれども、従来の予定よりも延びて交渉に入るわけですね。このことについてはあえてそう追及はいたしません。
そこで、お尋ねしたいのは、沖繩の交換公文にあります長期経済計画の勧告、これについては軍事基地をどう見るかということによってその長期経済計画のあり方がたいへん違うという点については、昨日も政府委員のほうから答弁があったわけです。私はそのことをお尋ねするのじゃないのです。沖繩基地問題研究会という久住氏が座長をしております研究会がございます。これには政府が金を出しておるということですね。それは政府の一つの私的な機関だと思いますが、官房長官が随時これに出席いたしておる。それから外務大臣は外交折衝をこれからやるわけですね。官房長官が随時出てやっております基地問題研究会のその検討というものが政府の考え方の基礎になり、外務大臣の日米間の交渉の基礎になるのかどうか、そういう性格をこの基地問題研究会は持つのか、あるいは単なるPRの機関であるのか、このことについてお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/26
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027・三木武夫
○三木国務大臣 これは非常に拘束するような一つの委員会ではないです。しかし、あの顔ぶれから見れば、なかなか各方面のすぐれた方々がお集まりになって、沖繩の施政権返還についていろいろ論議をされておるわけでありますから、その結論というものは非常に参考になるとは思っておりますが、そのものが即外交交渉の基礎であるとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/27
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028・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうしますと、それは官房長官の私的な諮問機関でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/28
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029・山野幸吉
○山野政府委員 この基地問題研究会でございますが、これは大浜先生が中心になられまして、関係者を集めてときどき会合をなさっておられると聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/29
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030・川崎寛治
○川崎(寛)委員 少し時間がございませんから急ぎます。
きのうも布令百十六号についてたいへん議論しましたが、アンガー高等弁務官に佐藤総理も陳情されたようであります。たいへんさびしい現状でありますけれども、布令百十六号の問題はいま非常に緊迫しておるのです。というのは、すでに全軍労の諸君はストライキの体制に入ろうとしております。これはピケットを張れば六カ月の懲役、ストライキに入れば二年間の懲役、いま世界のどこにもこういう強制労働なんてないのです。施政権を渡しておるからということで、沖繩の軍労働者はこうした強制労働をしいられておる。こういうことは絶対に近代国家の中においては許されない。しかも四月の十四日は、昨年、全軍労の指導者の諸君がビラまきをしたがゆえに逮捕されたのですね、ビラまきをしたがゆえに逮捕された一周年、その一年を迎えております。いまビラまきをやる、さらには職場内でもはち巻きをやっております。高等弁務官は十五日の日に全軍労の委員長の上原君と会っております。その際に、高等弁務官は、きのう総理も言われましたように、四週間ほど前にアメリカに行ったときに、ワシントンで、現在沖繩の軍労働者の賃金はワシントンできめられる、そのことがたいへん困るということで、交渉の権限を与えてくれという意見上申をいたしてまいっておるわけであります。でありますから、この点については、こうしたまさに血の雨が降りそうな情勢にあるわけでありますが、二十日までにアメリカ側から回答がなければ、高等弁務官のほうから回答がなければ、これは不測の事態におちいると思います。日本の国民である労働者がこういう権利を奪われた状態にあるわけでありますから、施政権を取られておる、しかたがないということではなくて、この問題については当然勇気を持って外務大臣としては外交交渉を行なって、この問題を前進させるということをこの際具体的にやってくれなければ——昨日も総務長官は、諮問委員会に入れて云々と言っておるけれども、諮問委員会に入れる前に総合労働布令を相手側は出そうとしておる。まさに諮問委員会というのが役に立たない標本をいま示しつつあるわけであります。でありますから、この問題について具体的にどのように交渉されるか、ひとつはっきりした外務大臣のお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/30
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031・三木武夫
○三木国務大臣 従来の布令百十六号、これに対しては重大な関心を持っております。われわれも外交のルートを通じてこの問題の成り行きには関心を持っておりますので、日米間で話し合いを今後とも続けていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/31
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032・川崎寛治
○川崎(寛)委員 今後とも交渉を続けていきたいと言っても、いまではもうせっぱ詰まっておるのですね。せっぱ詰まっておる今日、具体的に行動を起こすことをなし得ないのかどうか、このことをお尋ねしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/32
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033・山野幸吉
○山野政府委員 この布令百十六号の問題は、米側におきまして過去一年間検討してきております。(川崎(寛)委員「布令の問題じゃない。賃金そのものの問題ですよ、いまぶつかっているのだから」と呼ぶ)いや、問題は、総合布令の問題にちょっと関連しますので……。
その総合布令は近く出るという話もございますけれども、おそらく三カ月後か六カ月後か、まだはっきりきまっておりません。したがいまして、その間に、いま外務大臣からお話がございましたように、日本側としての要請は続ける、こういうことでございます。
それからいわゆる賃金交渉の問題でございますが、これは全軍労の立場からは、川崎先生も御案内のように、十八日のストのときには参加をいたしませんでした。それから二十二、三日に予定されるストにつきましても、まだ流動的でございまして、全軍労が参加するとはっきりきまったわけでもないのでございますが、私どもは何らかその間に円満に話し合いがつくことを強く期待しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/33
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034・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それでは、時間が非常にせかれておりますから、外務大臣にはあと一、二点で終わって、政府委員にまた少しお尋ねしたいと思います。
高瀬氏は外務大臣の指揮監督のもとにあるわけですね。高瀬氏をなぜアメリカにやったのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/34
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035・三木武夫
○三木国務大臣 高瀬大使は外地に多くおって、そして沖繩のああいう地位につくということは、本人は寝耳に水であったのです。前から予定されておったような人事でないわけです。したがって、これはみなワシントンとの間に、アンガー高等弁務官もそれはまたワシントン政府とも連絡をするわけでありますから、ちょうど諮問委員会のバーンズ・アメリカ代表も何か旅行があって、諮問委員会が当分開かれないという時間的余裕もできてきたので、その機会に、この問題はワシントン政府と非常に関連がある問題でありますので、その時間を利用して、沖繩に関連するアメリカ政府部内の連中との間に話し合いをしておくことが、今後の政府代表としての職責を果たす上において非常にに役立つという判断で行ってくるという希望があったので、私は許したのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/35
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036・川崎寛治
○川崎(寛)委員 まあたいへん自主性がない、残念なことであります。そのことはもう問いません。
最後に、外務大臣に、本土との一体化、こう言う。それは、ほんとうに一体化ということは施政権の点で最初に外務大臣が言われたとおりであると思います。そこで、現地の百万の県民からしてみれば、沖繩と本土とほんとうに一本化していくということのためには、沖繩県民の代表がこの国政の場に参加をして、そしてわれわれとともに沖繩現地の気持ちというものを率直に述べ、また主張もし、やっていくことが何よりも根本だと思います。こそくなことをやっていくことよりも、このことが大事ではないかと思います。この国政参加の問題は、これは外交交渉の面になるわけでありますけれども、沖繩県民が本土の国民と同様に、沖繩県民代表を直接選挙によって選んで、国会に出し得るということを私はむしろこの際積極的にやるべきだろう、こう思いますが、外務大臣のこの点についての見解をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/36
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037・三木武夫
○三木国務大臣 これは国会法のたてまえなどもあって、いろいろそういう点の検討も要るのですが、しかし形は別として、沖繩の代表が国政に、どういう形になりますか、参加するということに対しましては私も賛成です。これが国会のほうで一つの検討が終われば、外交交渉でこれを推進をしようという自分も覚悟でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/37
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038・川崎寛治
○川崎(寛)委員 大臣に対する質問は終わりまして、東郷北米局長にお尋ねしたいと思います。
日米琉三政府の代表が諮問委員として出ますね。そのためにはただいま論議しておるこの法案に基づきます——琉球政府もこれはいずれそういう形をとると思うのですが、その点がどうかというのが一つ。いいですね。何に基づいて琉球政府は出していくかということが一つ。それからアメリカは、これは法的な根拠なしに、大統領の任命でやられると思います。その三者のそれぞれの代表の出方が違うわけですね。この点についてひとつ明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/38
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039・東郷文彦
○東郷政府委員 琉球政府においては、琉球政府代表のための立法を進められるというふうに聞いております。アメリカ政府に関しましては、諮問委員会の米国政府代表に関する国内法的の規則といたしましては、今回の諮問委員会設置に関する日米間の交換公文、これ以外に特に立法というようなものはないと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/39
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040・川崎寛治
○川崎(寛)委員 日米琉の諮問委員会は、高等弁務官と対等の関係にあるのですかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/40
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041・東郷文彦
○東郷政府委員 諮問委員会の代表は、それぞれこの三つの政府からの指示に基づいて、その訓令を受けて活動する独立の機関でございます。その意味におきまして、高等弁務官とは対等と申しますか、高等弁務官の下に立つという関係ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/41
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042・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それは、私がこれまでも繰り返しお尋ねをしてきております大統領行政命令の十一節との関連においては、その点はそう言い得ないのです。決して対等の立場ではないと思います。さらには交換公文でも明らかなように、高等弁務官の権限内における問題ですね。この点について、しかも経済、社会、そういう限られた範囲の諮問しかできない、そういたしますならば、高等弁務官と対等であるというのはどこから出てまいりますか。行政命令の十一節あるいはこの交換公文の、いま私が申し上げましたそういった点から、どこから対等だというのが出てまいりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/42
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043・東郷文彦
○東郷政府委員 行政命令の第十一節は、これはいわば高等弁務官の非常大権というようなものを規定してあるわけでございますが、その中に公務員の罷免というようなこともあったかと記憶します。そういう対象には、これは諮問委員会の代表というものはむろんはいれないわけでございます。そもそも諮問委員会で勧告いたしますことは、経済、社会及びこれに関連する事項で、その勧告されるに至るまでには米国政府を含む三つの政府の意思が入っておるものでございますが、ここで勧告がなされれば、これは高等弁務官が実施するということに必ず動くものであると考えております。したがいまして、そういう点から、高等弁務官と上下の関係が出てくるというふうには考えられないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/43
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044・川崎寛治
○川崎(寛)委員 たいへん不満な答弁でありますが、これをやっておりますと与党の委員の皆さん方が減ってしまいそうでありますので、たいへん残念なことだと思います。そういうメモが回ってまいりましたから、ほんとうに遺憾なことだと思います。
そこで、いまの東郷北米局長の答弁はこれは不明確なんですよ。罷免権がある、その罷免権というのを発動すれば沖繩の主席は罷免できるわけですね。事実上ないのだといっても、罷免できるわけです。その罷免できる主席が任命をするわけです。
それじゃ次に、その点、北米局長の答弁については納得できませんが、さらにお尋ねします。琉球政府代表というのは、御承知のように、琉球政府は立法、司法、行政、三者が構成されて琉球政府、こういうことになっております。そういたしますと、琉球政府代表の瀬長氏は、これは琉球立法院の代表でもあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/44
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045・東郷文彦
○東郷政府委員 琉球政府全体の代表として出てくるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/45
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046・川崎寛治
○川崎(寛)委員 ですから、そうしますと、要するに立法府もそれから司法も全部を代表して出ておる、こういうふうに理解すべきですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/46
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047・山野幸吉
○山野政府委員 御案内のように、琉球政府は法的には米国政府の機関的なものですが、ある程度の自治を、その内政についての自治を与えている。沖繩住民の自治を拡充し、これを強化していくための一つの機関として認められておりますから、そういう沖繩住民の内政に関する自治の政府としての代表でございまして、これが立法院の代表であるのか司法の代表であるのか、そういういわゆるあそこに出ております琉球政府をさらに三権に分離した代表という意味ではなく、むしろ沖繩の自治体としての政府の代表であるというぐあいに観念すべきではないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/47
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048・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そういうふうに解釈してくれ、こういうことだと思います。そのことは、今日の琉球政府の行政組織上の矛盾があるわけですね。これは主席と立法院との関係にも矛盾があるわけです。そうした点は昨日も触れた点でありますけれども、改められなければ、本土との制度上の一体化を進めていく上においても、これはたいへん障害になるわけです。この点について、外務省として、これらの点はアメリカ側が措置をすることを待つだけなのか、あるいはこうした点についてはより明確に行政組織の改編というものを本土との一体化のために要求をするのかどうか、お尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/48
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049・東郷文彦
○東郷政府委員 ただいまの御指摘の問題を具体的にどうということはちょっといま私も明確でございませんが、いずれにしましても、共同声明にも制度の一体化ということもございますし、制度上おかしいというような問題は、これは諮問委員会の問題になる、ならぬは別といたしまして、われわれも、制度の面からも一体化が実現していくように努力したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/49
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050・川崎寛治
○川崎(寛)委員 最後に、総務長官にひとつお尋ねしたいと思います。
四・二八というのは屈辱の日として、先ほどは外務大臣は大衆運動はとらぬ、こう言われたけれども、しかし大衆運動、国民運動が燃え上がらなければ、政府が進めていく場合においても、むしろ問題の前進にはならぬわけなんです。私は、だから大衆運動が燃え上がることが、沖繩問題を解決していくためには、こういう状態になればなるほどなお一そう大事だと思います。その四月二十八日に那覇では二十万の県民大会が復帰に向けて開かれます。本土側からもたくさんの者がこれに参加をしようと思って手続をとっておりますけれども、さっぱり出ないのです。渡航が緩和をされたという中で、先般の井岡社会党の国民運動局長に対する許可のしかた等から見ても、あるいはいま若い活動家諸君が行こうとする、あるいは社会党員が行こうとする、労働組合員が行こうとする、農民運動の運動家が行こうとすることに対して、阻害をしておるわけです。たいへん時間が迫っておりますが、この問題について、そういうことのないように積極的に出させることをアメリカ側と交渉をされるかどうか、明確にお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/50
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051・田中龍夫
○田中国務大臣 お話の件でございますが、私ども総理府といたしまして、渡航管理業務をいたしておる限りにおきましては、日本からの渡航の申請に対してできる限りの御協力をいたしております。しかし、施政権を先方が持っておる関係から、出入国管理業務というものは施政権に伴います基本的な権利でございますので、われわれはそれを要望はいたしておりますけれども、なお遺憾な点が多いことを残念に思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/51
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052・川崎寛治
○川崎(寛)委員 ここ数代の総務長官の中であなたが一番腰が弱いですよ、残念ながら。もう少ししゃんとしてください。もう少しこういう問題についてはひとつ積極的にぶつかるという意思表明をいただきたいと思います。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/52
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053・田中龍夫
○田中国務大臣 先ほど外務大臣が申しましたように、私どもは日米信頼の基本に立ってこの話を進めてまいりたい。大衆活動による交渉というものとは立場を異にいたしております。佐藤内閣の外務大臣も、総理府の総務長官も、同じ考え方でこの問題に処してまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/53
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054・川崎寛治
○川崎(寛)委員 納得をしないことをもって終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/54
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055・床次徳二
○床次委員長 これにて質疑は終局にいたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/55
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056・床次徳二
○床次委員長 小渕恵三君外三名より、本案に対する修正案が提出されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/56
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057・床次徳二
○床次委員長 提出者から趣旨の説明を求めます。小渕恵三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/57
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058・小渕恵三
○小渕委員 自由民主党の提案者を代表して、修正案の趣旨を御説明いたします。
お手元に配付いたさせております案文のとおり、附則中法律の施行日がすでに経過いたしておりますので、それを公布の日に改めようとするものであります。
以上でありますので、御賛同のほどをよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/58
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059・床次徳二
○床次委員長 これにて趣旨説明は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/59
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060・床次徳二
○床次委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。
討論の申し出がありますので、これを許します。本名武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/60
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061・本名武
○本名委員 ただいま議題となりました沖繩島那覇に駐在する諮問委員会の委員となる日本国政府代表の設置に関する暫定措置法案につきまして、私は自由民主党を代表して、ただいま提案されました修正案並びに修正部分を除く原案に賛成の意見を述べようとするものであります。
御承知のとおり、昨年十一月に行なわれた佐藤内閣総理大臣とジョンソン米国大統領との会談におきまして、日米両国政府が沖繩の施政権を返還するとの方針のもとに、沖繩の地位について共同かつ継続的な検討を行なうことを合意するとともに、さらに沖繩の施政権がわが国に返還されるときに起こる摩擦を最小限にし、沖繩の住民とその制度の日本本土との一体化を進め、沖繩住民の経済的、社会的福祉を増進するための措置を講ずるために高等弁務官に対する諮問委員会を設置することに意見の一致を見まして、沖繩の祖国復帰は一段と具体化されたのであります。
さらに、その諮問委員会の組織及び任務につきましては、本年の一月十九日に日米両政府の交換公文によって合意されるところとなり、すでに同委員会はその目的達成のため一歩を踏み出したのでありまして、本法案は、その諮問委員会の日本政府代表が十分な活動と円滑なる職務執行ができるように、その任務、任免、服務規律等を明確にしようとするものであります。
もちろん、この諮問委員会によって今日の沖繩の諸問題がすべて解決されるものではなく、日米協議委員会を含む幅広い外交交渉が必要であることは、さきに述べたように、日米共同声明の中からも十分理解されるところであります。
しかしながら、敗戦という現実によって二十有余年、立法、行政、司法のいわゆる施政権をアメリカにゆだねてきた沖繩において、施政権者たる高等弁務官の施政について影響を与え得る国際的機関たる諮問委員会に、日本政府の任命による政府代表が参加することは、本土と沖繩の一体化のために非常に画期的なことであると信ずるものであります。
はたせるかな、この諮問委員会は、まず本土政府の調査団を沖繩に招くことを勧告し、日本政府は、行財政、産業経済、社会保障制度など本土と沖繩との一体化に伴う政策の問題点を調査するため、調査団を編成、派遣することを決定しましたし、また、琉球大学に本土大学の教授を派遣する問題、琉球政府立病院等に本土の医師を迎え入れる問題、また琉球開発公社の民間移管問題等についても諮問委員会は勧告を行ない、本土との一体化政策は、具体的に一つ一つ積み重ねられようとしているのであります。
したがいまして、交換公文において、勧告の際、日米琉三政府委員の合意が必要とするとしたことを、世上、アメリカの代表の拒否権によって、何ら勧告はできないのではないかなどの議論もあるようでありますが、これは全く杞憂にすぎないことは、以上述べました点からも明らかであります。
今後、この諮問委員会は、さらに沖繩の長期経済計画を樹立し、これを高等弁務官に勧告することになりましょうし、民族的悲願である沖繩の祖国復帰の際に備えて、同諸島の経済、社会的構造が、日本本土におけるものと円滑に統合されるための諸政策に取り組むでありましょう。そして、国際的機関たるこの諮問委員会においては、日本政府代表は総理大臣と外務大臣の指揮に従い、渉外的事務を含めてますます成果をあげ、その機能の推進に重要な役割りを果たすであろうことを私は信じて疑わないのであります。
私は、同時に、政府が沖繩の祖国復帰のため日米の共同かつ継続的な検討をさらに進め、両三年内に一日も早くその祖国復帰を明確にすることを強く要望いたしまして、賛成の討論を終わりたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/61
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062・床次徳二
○床次委員長 川崎寛治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/62
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063・川崎寛治
○川崎(寛)委員 昨年十一月、日米首脳会談が行なわれ、共同声明が出されました。軍事基地の重要性というものが強化をされ、県民の生活安定あるいは権利の回復というのはそのあと回しにされて確認をされてまいったわけであります。この共同声明以後の佐藤・ジョンソン路線に対する沖繩現地の県民をあげての強い反対というのは、具体的に運動としてあらわれてまいっておるとおりであります。
沖繩とベトナムとの関係というものは切っても切れない関係にあります。まさにベトナム戦争の根拠地として、沖繩県民は戦争の不安の中におののいてまいりました。しかし、今回のジョンソン声明に明らかなとおり、アメリカのベトナム政策というのは失敗をいたしました。佐藤総理が国会においてもたびたび言明をいたしましたように、アメリカの核抑止力に依存をする、そうした核抑止、柔軟反応戦略というものは、ベトナムにおいては明らかに失敗をいたしたわけであります。
沖繩の不安定というのは、申すまでもなく、アメリカの戦略にほんろうされておるところに不安定があり、外務大臣も認めているとおり、施政権をアメリカに握られておる限り、沖繩の根本的な問題の解決はないわけであります。アメリカの沖繩支配、これは、これまでのベトナム戦争におけるアメリカの誤りというものが明らかにされたとおり、その根拠地として、その軍事基地として保持をされてきたアメリカの沖繩支配というものは、道義的にも、また法律的にも誤りであります。法律的にも誤りであること、これは沖繩の現地の立法院が、全会一致をもってこの点についてはこれまで幾たびか決議をいたした点について明らかであります。
共同声明で軍事基地の重要性というものを最優先的に確認をし、そのために現地の住民の不安を少しでもやわらげる、そういう立場から一体化政策が打ち出されてまいりました。その一体化政策を推進していく機関だ、こういうことでこの諮問委員会が設置をされることになったのでありますが、これまでありました日米協議委員会あるいは日米琉球技術委員会、こういうものの上に中二階をつくったにすぎないのでありまして、沖繩の問題解決については、むしろ行政の停滞あるいは混乱というものを招く機関となることは言うまでもないと思います。
しかも、この諮問委員会がアメリカの出先の司令官のもとに置かれるということは、国際的機関であると何ぼ強弁をいたしましても、その本質をおおうことはできません。でありますから、この諮問委員会というのが、軍事基地の優先、アメリカの軍事基地保持の優先策を確認をした上に立ってまいりますし、占領が続けられておるアメリカの占領下における司令官のもとの機関でございますから、いわばこの諮問委員会は沖繩の軍事基地の下請的な共同管理というものを合理化をしていく機関と言わざるを得ないのであります。
今日、沖繩の住民にとって必要なことは、本土の国民と差別をしない、憲法を適用していく、本土とほんとうに一本化するということでなければなりません。それゆえ、わが日本社会党がこれまで国会に出し、継続審議になっております沖繩の財政並びに経済援助に関する特別措置法案あるいはすでに発表いたしております沖繩の市町村財政強化についての強化案、地方交付税の適用の方式、さらには社会保障政策大綱に明らかでありますように、本土の国民が受けておりますその権利というものを十分に守り、制度化していくということがとられなければならないことを、われわれはこれまでも主張いたしましたし、またこれからもその推進を要求をいたしてまいりたいと思います。それゆえ、この諮問委員会が、先ほど言いましたように、沖繩基地の下請的な共同管理を合理化する機関であることに対し、強い反対の意思を表明をし、なお具体的にやるべき方向については、いま申し述べた方向で進めるべきことを主張をいたしまして、討論を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/63
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064・床次徳二
○床次委員長 永末英一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/64
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065・永末英一
○永末委員 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま上程されております暫定措置法案に対しまして、反対の意向を申し上げたいと存じます。
昨年十一月の佐藤総理とジョンソン大統領の声明において、あたかも両三年のうちに沖繩の祖国復帰がめどがつくような表現がとられておりました。しかし、アメリカ側がはたして同様の認識を持っているかどうか。私はきわめてこの点について疑問に思いましたので、最近アメリカに参りまして、二週目にわたって沖繩問題に関するそれぞれの担当者あるいは関係者に、この辺の調査をいたしてまいりました。残念ながら、その結論は、わが日本国内においていわれているように、はっきりと目標の期日を設定して、沖繩返還がアメリカにおいて考えられているようには思えません。しかも、そういう前提のもとにこの諮問委員会がつくられようとしたのであります。
最初、共同声明によれば、この諮問委員会は何か高等弁務官と対等の、また独立の機関であって、高等弁務官に対して沖繩問題のすべてに対して発言をし得る機関であるかのような説明がなされたことがあったと思います。ところが、いよいよふたをあけてみますと、何のことはない、高等弁務官の権限内の事項を取り扱うにすぎず、しかも高等弁務官の最も大きな、アメリカ政府内における職務である軍事問題、政治問題については発言を許さない、こういう性格のものになってしまいました。これは事の起こりが佐藤・ジョンソン共同声明に発しておることからいえば、当然のことであったかもしれません。しかも、この諮問委員会の法律的性格を考えてみましても、一体独立主権国の日本国政府の代表が、アメリカの政府機関の、言うならば下級機関である高等弁務官に対する諮問委員を派遣する、こういうことが一体独立主権国としてすなおに認められるものでありましょうか。私はそうとは思いません。これが発表せられました直後、ある政府の役職にある者に、一体こんな形が日本国政府が始まってからあるかどうかということをただしましたところ、かつて日本がアメリカに占領されておったときにGHQに対して似たようなものがあった、こういうような説明がありました。はしなくもこの諮問委員会の性格を、私はこのことばによってはっきりと申し述べたものであると存じます。まさしくいまわれわれが独立国日本だと考えておるにかかわらず、沖繩を手がかりとして、アメリカの軍事的な一つのしかけの中にいわば従属しておる、こういう形がこの諮問委員会によってはっきりと出ているのでありまして、私は独立主権国日本の立法機関の一員として、断じてこのような法的性格のあいまいなものに対して委員を派遣したりすることを認めるわけにはまいりません。もしこの諮問委員会で議論することが、現在の沖繩における内政問題であるとするならば、それはストレートに琉球政府の見解を取り上げればよろしい。なぜここに日本国政府の代表が参加しなければならないか。日本政府はすでにアメリカ国との間に正規の外交交渉において沖繩問題を解決するルートがあり、さらに技術的には日米協議委員会の設置を見、日米琉協議委員会の設置も見ておるのである。ここで沖繩問題に対してはアメリカと対等の立場で要求をし、発言をし、解決を求める。このことを進めていくことが、沖繩の祖国復帰に一番近い道であります。しかるにかかわらず、この道を選ばずして、わけのわからぬ、ぬえ的なこのような機関の設置に同意し、そうしてまた、これを推進しようということであるならば、はたして、佐藤政府が国民に説明しているように、ほんとうに沖繩の返還を急速に進めようとしておるのかどうか、その意図さえ疑わしいと私どもには思えます。
高等弁務官の一番大きな役割りは、先ほど申し上げましたように、その軍事的性格にあるのであって、もし沖繩の返還が日米両国政府で既定の事実として了解されているとするならば、共同声明以後、なぜB52の常駐めいた形が沖繩でとられたかということは、理解することはできません。アメリカは、B52の沖繩の基地使用については、ベトナムだけが目的ではないんだ、これは北のほうも向いておる。すなわち、沖繩の軍事基地の使用については、そこに基地が存する限り自由に使用したいのだと、こういう見解を私に申しました。まさしくそうでありましょう。そうであるとするならば、たとえば本土と沖繩の政治の一体化というようなことを共同声明では申しましたけれども、政治の一体化ということばはいろいろに理解されましょうが、本土と沖繩の一体化は占領をやめることである。その占領をやめるための機関なら私は賛成いたします。その最も重要な点について、翼をもがれたような形の諮問委員会、これでは、私どもは賛成するわけにまいりません。
要するに、日本国は、独立主権国としてアメリカに真のパートナーシップを主張するならば、もっと対等な立場で沖繩の返還を求めるべきであり、そのための準備を日本独自でやっていく。その独自の考え方の実現のためにアメリカ政府と交渉せられるのが当然であります。しかしながら、高等弁務官に対する諮問委員会というような形でこれが実現できると政府が主張せられるとするならば、これはごまかし以外の何ものでもない。このような機関を運営することによって、これで本土との格差が大体なくなったら沖繩返還はできるだろうということは、いたずらに時日を遷延し、実体には沖繩の返還をおくらすものであるとわれわれは考えます。このような見地から、この法案に民社党は反対をいたすものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/65
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066・床次徳二
○床次委員長 伊藤惣助丸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/66
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067・伊藤惣助丸
○伊藤(惣)委員 私は、本法律案に対して、公明党を代表いたしまして、反対の意思を表明いたします。
昨年十一月、佐藤・ジョンソン共同声明によって諮問委員会の設置が合意されたことに対して、政府・与党は、あたかもこれが画期的なできごとのように礼賛し、主席公選、国政参加はもとより、祖国復帰のような高度の政治的問題をもこの諮問委員会で討議されるような期待を抱かせたのであります。しかし、実際には、諮問委員会の任務は経済的及び社会福祉問題に限って、高等弁務官に助言し、勧告するにとどまっております。これは早期祖国復帰を願う国民の期待を裏切るものであると言わざるを得ません。
さらに、この助言と勧告は、高等弁務官に対し何ら拘束力を持たないのであります。また、高等弁務官もこれを履行する義務がないのであります。その上、この勧告は、日米琉三委員の一致の合意が必要とされ、各代表は拒否権を持つことになっておりますので、アメリカ側の都合のよいこと以外は、いかなる助言も勧告をもできないのは明白であります。このようでは、諮問委員会に対して実体的な効果を期待することはできないのであります。
政府の沖繩に対する無気力と不手ぎわを取りつくろうため、また、全国民の沖繩復帰の情熱をはぐらかすようなこの無意味な諮問委員会の設置や、何ら確固たる根拠もない両三年という年月を待つことなく、直ちに沖繩返還に関する交渉を目的とする機関を設置することこそ、国民の期待にこたえるものであると確信するものであります。
また、沖繩同胞の基本的人権を大きく侵害しておる大統領行政命令そのものを撤回させるために交渉を開始することこそが、今日の急務であろうかと思うのであります。
最後に、われわれは百万の同胞を、そしてわが国の固有の領土の一部である沖繩を無期限にアメリカの世界政策と極東戦略の犠牲のもとに置くことは、もうこれ以上がまんできないという国民の切実な叫びを表明して、この法律案に反対の意を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/67
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068・床次徳二
○床次委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより採決いたします。
まず、小渕恵三君外三名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/68
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069・床次徳二
○床次委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。
次に、ただいま可決しました修正部分を除く原案について採決いたします。
賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/69
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070・床次徳二
○床次委員長 起立多数。よって、修正部分を除いて原案のとおり決しました。
これにて、沖繩島那覇に駐在する諮問委員会の委員となる日本国政府代表の設置に関する暫定措置法案は修正議決すべきものと決しました。
なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/70
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071・床次徳二
○床次委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/71
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072・床次徳二
○床次委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後七時十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X00919680419/72
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