1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年五月十四日(火曜日)
午前十時四十分開議
出席委員
委員長 床次 徳二君
理事 上村千一郎君 理事 臼井 莊一君
理事 小渕 恵三君 理事 本名 武君
理事 川崎 寛治君 理事 美濃 政市君
大村 襄治君 上林山榮吉君
北澤 直吉君 小坂善太郎君
箕輪 登君 山田 久就君
中谷 鉄也君 西風 勲君
依田 圭五君 吉田 泰造君
斎藤 実君
出席国務大臣
国 務 大 臣
(総理府総務長
官) 田中 龍夫君
出席政府委員
総理府特別地域
連絡局参事官 加藤 泰守君
法務省民事局長 新谷 正夫君
厚生省国立公園
局長 網野 智君
労働省職業安定
局長 有馬 元治君
委員外の出席者
総理府特別地域
連絡局監理渡航
課長 守谷 道夫君
防衛庁防衛局第
一課長 今泉 正隆君
法務省民事局第
三課長 住吉 君彦君
文部省初等中等
教育局審議官 佐藤 薫君
農林省農地局管
理部農地課長 小山 義夫君
水産庁漁政部長 岩本 道夫君
労働省労働基準
局労災管理課長 桑原 敬一君
労働省職業安定
局失業保険課長 増田 一郎君
自治省行政局行
政課長 林 忠雄君
自治省行政局振
興課長 遠藤 文夫君
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本日の会議に付した案件
小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置
等に関する法律案(内閣提出第一〇四号)
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001・床次徳二
○床次委員長 これより会議を開きます。
小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案を議題とし、審査を進めます。
資料の要求に関する発言を求められておりますので、この際、これを許します。斎藤実君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/1
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002・斎藤実
○斎藤(実)委員 今回の小笠原諸島復帰に伴う暫定措置法案の中で、政令で特別の措置を講ずるものとするという項目が非常に多いわけです。この復帰に伴ってこまかい政令が相当あると私は思うのですけれども、政令のどんな項目があるのか、こまかいことは別として、政令の項目だけでも資料として出していただかないと、これはちょっと審議できないと私は思うのです。そういう点で、細目の政令は、別として、政令の項目だけでも資料として提出をしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/2
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003・田中龍夫
○田中国務大臣 ただいまの資料の御要求に対しましては、できる限り努力いたしまして、御期待に沿うように精励いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/3
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004・斎藤実
○斎藤(実)委員 それはいつ出しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/4
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005・田中龍夫
○田中国務大臣 きょうじゅうに出します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/5
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006・斎藤実
○斎藤(実)委員 委員長、私の質問の前にひとつ出していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/6
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007・床次徳二
○床次委員長 前回に引き続き質疑を行ないます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。美濃政市君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/7
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008・美濃政市
○美濃委員 前回、七条と十二条関係の質問をして保留になっておるわけです。問題点は前回申し上げておいたわけでありますが、この暫定法の法律をつくるにあたって、第七条はどういう理由によってこういうふうにしたのか、まずこの法律立案の趣旨の説明を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/8
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009・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
この点につきましては、この前も御説明をしたと思いますけれども、小笠原の農地であったところは昭和十九年から放置されておりました関係で、現状は農地でなくなっております。したがって、現在農地法はもちろんそのまま適用がないという解釈になるわけでございますが、ただ、帰島に際しまして開墾すればすぐに農地法が適用されていくというようなことになりますと、多少何といいますか、実際にほんとうの意味で帰島の意思があるのかないのか、そういうわからない状態で開墾が行なわれるようなことも考えられるわけでございます。私ども、そういうことがないように、帰島の意思がはっきりする段階でひとつ耕作権の問題は調整していきたいというふうに考えまして、農地法は一応ばずして、そのかわりにこの法律で新たな観点からその賃借権の設定を認め、それを保護する形で、まあ島ごとに違うかと思いますけれども、農地と認め得る——普通開墾等の場合には七、八年くらいの余裕を見て農地法の適用があるわけでございますが、そういうような農地法の未墾地の買収の場合の手続とのかね合いも考えまして、大体その間は農地法の三条とか四条、五条、あるいは六条、七条あたりの既墾地の適用関係にあるところは一応はずすという意味で農地法の適用をはずしているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/9
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010・美濃政市
○美濃委員 そうすると、この法律で「政令の定める日」というのは、七、八年と解釈して間違いないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/10
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011・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたます。
この点につきましては、先ほど申し上げましたように、農地法の未墾地の扱いと大体同じようにしたいと考えておりますので、北海道では七年のようでございますが、大体五年ないし七年ぐらいを一応予想しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/11
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012・美濃政市
○美濃委員 いまの説明の中で未墾地と同じような取り扱いをするということはどういう方法か、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/12
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013・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 私、ちょっとことばが足りなかったかもしれませんけれども、未墾地の場合に農地法が完全に適用されるのは七、八年ということでございます。先ほど申しましたように、旧耕作権、昭和十九年にございました耕作権をどう保護するかという問題を考えたときに、本来ならば農地でございますので、農地法の適用がないようなそういう状態なんだけれども、何らかの形で保護していきたい。しかも極端なことを申し上げれば農地法の適用はない、したがって、もし現在存在しているとしても、民法だけの規定に基づいて規律が行なわれるということになりますと、極端なことを申し上げますと、施行と同時に解約の申し入れというようなこともありますと、昔といいますか、昭和十九年にあった耕作権の保護にやはり欠けることになりますので、そういうことを考えますと、現在の時点、農地でない、したがって農地の保護が受けられない、そういうことを念頭に置いて何らかの形で保護したい。そうした場合に、既墾地のような保護ができない、したがって結果としては未墾地のような、七、八年たって既墾地のほうになり得るような、そういうようなことを一応念頭に置きまして、そしてその間は農地法の適用をしない。そのかわりこの法律によって保護していくということで、現在農地でないそういう現状、そのためには農地法の保護を受けられないという事実、そういうことを勘案して特別の保護を与えるための、逆に言えば農地法の適用がないということは、この法律で特別の保護を与えるということから、その必要がないということに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/13
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014・美濃政市
○美濃委員 この規定でいきますと、たとえば耕作権のある者が全部帰島するとは言えないわけです。農地法というのは、もちろん現況はすぐ五条関係というものは出てこないと思いますけれども、私の言っているのは、いわゆる民法的に十三条でこういう方法で農業開発を進めるということに非常に問題がある。やはり農地法というのは全条文でありますから、農地法を適用して未墾地買収をする。未墾地はもちろん認定買収でありますから、帰って来たときに未墾地として適用ができるのであります、認定買収ですから。現況農地だから、買収するのだから。そして農地法を適用して、そして未墾地で買収して、もちろん所有権限があって復島して自作農をするという者のところは買収する必要はないのです。農業しない者は買収して、新たなこの局の農業計画を立てるべきだ。そうしないと、十三条の規定で、旧権利の存在しておるものをこういう方法で開墾するということは、いわゆるこの条文で規制する範囲というものは、私は知れておると思うのです。ほとんど民法の解釈になりまして、全く農地法の及ばない、農地法からいうと治外法権地域ができる。しかもその年限は七、八年というと、これは農業振興上かなり問題がある。また農地法というのは農業の位置づけをする、いわゆる自立経営の位置づけをするきわめて大切な法律基準でありまして、この法律の適用なしに農業を振興するということは、いまの日本の情勢、また本土との農業振興上の格差、当該農民に及ぼす影響から、この十三条の規定の範囲というものは、民法を拘束するに足るものじゃないと思うのです。そういう関係からと、もう一つは、調査もしておるわけですから、この暫定措置法の中で、小笠原の農業は、アウトラインとして大体どういう規模でどういう方向で農業開発が行なわれるべきであろうと想定しておるか、それをお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/14
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015・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 この十三条と七条の農地法との関係についてお答えいたしますと、確かに先生のおっしゃるように、農地法そのものは自作農創設そして安定という政策的に非常に強い線を持った法律であると思います。したがって、それ自体小笠原においても近い将来適用されて、それで農業経営の安定をはかっていくというのは当然のことであるわけでございますが、ただ、この暫定法において取り上げるべきものと、それから、私の立場から申し上げますれば、復興計画として取り上げていくものとは一応区別して考えていきたいというふうに思うわけです。したがって、先生のおっしゃる点は私もよくわかるわけでございますが、今後農業開発というような形でどういう構想を持っていくかという問題につきましては、むしろ復興法に基づく復興計画の問題として将来これは考えていくべきものだというふうに思うわけです。したがって、十三条でこういう形で耕作権の保護をはかろうといたしますのは、もちろんそれは復興につながる問題だとは思いますけれども、十九年時点にあった耕作権を一応保護するということは旧島民の帰島促進にもなるという観点から、農業をやっておられた方々が小笠原に帰って農業をやるという権利を少なくともそういう形で確保しておくことが帰島促進にもなり、あわせて小笠原の農業開発にも資するというふうに考えて、こういう措置をとったわけでございます。
全体の農業開発というものをどういうふうに持っていくかということは、復興法の問題として、十分先生のおっしゃるようなことを加味しまして検討したいというふうに思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/15
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016・美濃政市
○美濃委員 しかし、そのことは、農業振興計画と農地法というのは相関関係を持つわけですね。それで、具体的に作物をどうする、こうするということをいま質問しておるわけではないので、農業を振興する意思があるのかどうか、この点です。あるいはこの法律から見ると、こういう小さい島だから、農業振興は放棄しておるのではないかと思うのです、こういうふうに出てくるということは。小笠原なんか返ってきても、そこで農業をすることがいいのかどうか、その法律をつくるときに迷ったのではないですか。具体的な作物やなんかはこれからの問題です。ですから、ここではおおよそもう農業の必要はないんじゃないか。そのめどづけが、法律をつくるときの島の開発について、大体もとの農業はあの程度あるわけですし、これは御存じですね、いま時間の関係で言わなくても。しかし、私の想定では、それはもちろん小さい島ですから、生産量は別として、あの島は島なりにかなりの農業はやれると私は見ておるのです。また島の開発をするには、農業はやはりやらさなければならぬと思うのです。その判断がこういう法律にしたということは、いまの情勢で、この程度の島で農業はもういいんではないか、この法律立案者にどこかそういう意識が働いておるように考えるのです。その点がどうかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/16
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017・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
小笠原の農業がどうあるべきかというところまで実は十分に、特に病虫害の問題とかあるいは本土の農業との関係等非常にむずかしい問題がありますので、私自身、いまの段階でちょっと判断できないところもございますけれども、しかし小笠原の産業が農業と水産業が重点であるということは、もうはっきり認識しているわけでございます。この第十三条のこういう形は、これは先生のお立場からは批判がおありかと思いますけれども、私なりに申し上げますれば、やはり耕作権を何らかの形で確保してやる、これが少なくとも農業を振興する第一歩であるというふうに考えておるわけでございます。第十三条はそういう意味で御解釈願いたいと思うわけです。
われわれ関係者といたしましては、小笠原の農業の振興につきましては、復興計画の段階で十分先生の御趣旨に沿うように努力をしたい、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/17
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018・美濃政市
○美濃委員 いま御答弁を承りますと、農業と水産業だ、こういうのですが、そうすると、この法律で、たとえば農業を振興するという場合に、まず第一点として考えられることは、いわゆる委任統治領前の農業の体系ではだめだ。あれと同じ農業を、たとえば作物を見ても、昭和十四年の統計ではカボチャが千三百何十ヘクタールという、カボチャを千四百ヘクタールも千五百ヘクタールもつくっても、これは商品価値はございません。カボチャなんかはいま食べておりません。ですから、農業は変わるわけです。そうすると、農業の経営規模について、もとの農業者にそっくりそのままいわゆる耕作権で返して、そしてこういう方法で七年か八年この法律で賃借権を一応保護して開墾をやらすんだ、こういう幼稚な農業の進め方というのはいまの時代に合わないということを私は申し上げておる。それが第一点。
それから第二点は、たとえば賃借権のある者が帰れば十三条で開墾に着手ができるでしょう。土地所有者の本人がみずから農業をやらない、者も帰島しない、こうなった場合、民法上の権限からいきますと、土地所有者はそのまま、開墾しようとしまいと、土地所有者の権限そのままで放置されるということになるのじゃないか。未墾地買収の法律上の規定があるところに、開墾しなければ買収されるというところに、開発に応ずるものがある。全く利権的に旧土地所有者の民法上の権利そのままで、法律上たとえばいまの農地法は、転用許可なしに、りっぱな農地に植樹をした場合、そういう土地所有者の農業振興上の弊害となる行為は法律で禁止して、きびしく拘束をしておるでしょう。この拘束が反面そういう農業振興以外に土地を使おうとする土地所有者の意思に合わなくて、農地法というものを非難しておる面が出てくるわけです。これは自分の意思に合わぬから法律を非難する。真の農業振興から見れば、いまの農地法というものは大切なわけです。そうすると、島の開発が農業と漁業だといいながら、この十三条だけでは相当部分が土地所有者の任意になる、開墾しようとしまいと。これでは開発は進まないと思うのです。きちっとした秩序ある島の開発というものは進んでいかない、この十三条では民法的に土地所有者の任意になりますから。その点どうですか。農林省の見解もあわせて承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/18
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019・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 土地所有者も旧島民も帰島しない場合のお話がございましたが、確かにこの法律案は、特にこの第十三条におきましては旧島民の帰島促進のための一つの手段として昔あった耕作権を保護してやろう、そして帰島した場合に、少なくも生活をどういう方向でやっていくかという一つのめどにするための権利を何らかの形で保護していきたいというふうに考えて第十三条という特別の規定を設けたわけでございます。したがって所有者も旧島民も両方とも帰島しないという場合には、もちろんこの第十三条の働く余地はないわけでございます。したがって、その場合にどういうふうに土地を開発していくかという問題は、確かに先生のおっしゃるような問題はあると思います。しかし、この点は、私がいまの時点におきまして申し上げられるのは、それは小笠原の復興計画の問題としてどういうふうに持っていくかという問題であると考えているわけでございまして、先生のおっしゃる点はよく私は理解できるわけでございますので、その点につきましては復興法の段階で十分検討してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/19
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020・小山義夫
○小山説明員 十三条の規定についてでございまが、かつて耕作目的の賃借権を有しておりました者は優先的に土地所有者に対して賃借権をこの時点において設定をするための申し出ができるというふうに一項で規定をされておりますが、さらにそういう申し出があったときに、第四項の規定で、特別の理由がなければ土地所有者はその申し出を拒絶することができないという規定がございます。これで「政令で定める特別の理由がある場合でなければ、」ということで政令に譲っておりますが、ただいまのところ、私ども考えておりますのは、旧耕作権者が今日までの間に自分のほうから権利を放棄したりあるいは譲渡、転貸をしたり、あるいは賃借人側のほうから契約を解除したりといったような場合を限定をして政令を定めるつもりでおります。したがいまして、土地所有者に対して申し出をすれば、まず普通の場合であれば、原則としてそれは地主は承諾をしなければならない、そういう仕組みにしてございますので、ほんとうに島へ帰って熱心に農業をやろう、こういう旧耕作権者は十分その権利が保護される、優先的に賃借権が設定されるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/20
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021・美濃政市
○美濃委員 いま、帰るのでありますから、その土地台帳も明確だ、こういうのでありますから、その賃借権というのはいまから二十年前の賃借権を生かすということでしょう。それ以外の新しい賃借権をこの法律ではいってないと私は思うのです。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/21
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022・小山義夫
○小山説明員 おっしゃるとおり、この法律の規定は、昭和十九年三月末現在にありました耕作権が、その後期問の満了とかいろいろな事情で切れておりますときに、復活をさせる規定でございます。当時は、多くはその期間の定めのない賃貸借であったと思うのです。内地もそうでございましたから、おそらくこの島もそうであったと思うのですが、そういうものは大体現在もそのまま、特別のこの法律の規定に待つまでもなく、有効に存続をしておると思いますので、それは今日においても自由に島に帰って、その耕作権に基づいて耕作をやることはできるわけであります。さらに新しく、いままで全く賃借関係がなかった者について、地主が全く新規の事業にその土地を貸す、農地を貸す、農耕の目的で賃貸借を結ぶということはもちろん可能なわけでございます。それについては別にこの法律は特に禁止も何もいたしてございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/22
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023・美濃政市
○美濃委員 私の問いたいのは、賃借をするという意思に基づいて新しく賃借するのでなくて、地主は耕作権の所在がなければ拘束されない。たとえば開墾することもしない。何の拘束もないのじゃないですか、土地所有には。あとは民法上の任意になるのでないですか。たまたま耕作権のあった者が復権要求をしてきた場合、それはこの法律で貸借権を生かすということになっておるけれども、その賃借権の復権を放棄した場合、耕作者がもう帰らないと言って——帰れば要求しますが、帰らないと言って放棄したもの、あるいはみずからが自作農をしていて、今度はもうあの島に帰らぬで利権的に持っておるというか、これは開墾するしない、どういうふうに使おうということは、全く民法的な土地所有者の自由である、こう解釈して私はこの法律ではあやまちがないと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/23
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024・小山義夫
○小山説明員 おっしゃるとおり、前から自作地であった土地、それから、小作地であったけれども、その耕作者が島に帰らない、あるいは農業をやるつもりがないというふうな場合には、当該地主がみずから農業をやるかどうかは全く御本人の自由でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/24
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025・美濃政市
○美濃委員 私は法律というものは国民平等の適用でなければならぬと思うが、その点が大きく変わってくると思います。本土の土地所有者は、未墾地買収の規定もございます。あるいは五条関係、これは特にいますぐ、島の農地が宅地化するなどということは想定に入っておりません。たとえば、植樹をするにしても、土地所有者は法律上の拘束を受けておるわけですね。返ってきたこの島だけが治外法権になる。土地所有者は全く民法上で農地法の拘束は受けない。島の開発が進もうと進むまいと、もとりっぱな農地であっても、ジャングルにしてそのまま三年なり四年なり所有権の復活で放置しても、法律上どうすることもできない。本土にはそういうことはない。そういう状態が起きようとするときには、未墾地買収なりその他で拘束を受けることになる。また、その前の自作農特別措置法。この前も申し上げましたが、ここには自作農特別措置法は適用されておりません。終戦後の自作農特別措置法においてはきびしい拘束を受けておるわけですね、本土の土地所有者は。そうしたら、ここの土地所有者は、そういうふうに農地法の適用を受けないで、全く利権的に民法の土地所有権で自由にできるということになれば、あるいは考えようによっては、経済的には委任統治領になっておったほうがよかったという問題が出てくる。こういう矛盾は私は許されぬと思うのです。こういう重要な所有権の法律ですよ。全然本土の実情と変わる法律の拘束の適用地域ができるということは、これはやはりただ権利を認めればいいではないかなどという問題でなくて、根本的な日本の問題、これは農地に限りません。憲法なんかどうなるんですか。憲法あたりでも、たとえば例をとると、刑法上の犯罪を犯しても、その拘束力が違うというのと同じことでないですか。農地法の適用がそういうふうになっていくということは、本土の土地所有者が受ける拘束と、返ってきた島の土地所有者が受ける拘束とが違うということは、重大な問題だと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/25
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026・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
その暫定法というものの性格が、先生のおっしゃる点にからんでいるわけだと思います。もちろん、もともと本土におきましての法令の適用関係が全部一律であるべきだということは、一つの当然のことと言えるわけでございますが、ただ、法律によりましては、いろいろ特殊な事情のために適用されない場合もあるわけでございます。
昔のことを申し上げまして恐縮ですが、たとえば借地法なんかも、いまは全面的に適用されておりますけれども、戦前においては適用されなかったという事実もあるわけでございまして、法律が全面的に適用されることは当然望ましいことだと思いますが、ただ、具体的にこの地域についてそのまま適用されない場合もあろうかと思います。特に小笠原の問題につきましては、何しろ二十年間アメリカの施政下にあったということから来ますいろいろな問題があるわけでございます。そういう意味で、この法律は暫定的にいろんな特別の規定を設けようというふうにいたしておるわけでございますので、治外法権というお話につきましては、いま申し上げましたようなことで、各法律についての特別規定を設けざるを得ない、また設けるのが適当だというふうな判断でこの法律ができておるということで、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/26
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027・美濃政市
○美濃委員 長官にこの問題でお尋ねいたしますが、いまのような答弁でよろしいのですか、法律の適用というものは。私はいまのような答弁で了解することはできないのです。日本の国内法の適用というものが、地域によって全く違う。たとえば基本法とその法律の性格が大きく違った暫定法で社会地域を形成していくなどということは、私は大きな問題だと思うのですよ。基本法で拘束しておるものが暫定法では拘束されない、こういうものではないと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/27
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028・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 申しわけございませんが、ちょっと補足さしていただきます。
いま私の申し上げましたのは、もちろん基本的な法律ができるだけ早く適用されるということは望ましいわけですが、短期的にはそういう状態があってもやむを得ないというふうな意味で申し上げたわけでございまして、農地に関します限りにおきましては、私が先ほど申し上げましたように、現時点においては農地でないという事情を考えながら、また戦前からここ二十年間も法律的には中断しておったというような事情のあることも考えながら、こういう措置をとったわけでございますが、しかし、おっしゃるように、農地法というものが農地に関しての基本的な考え方をあらわしておるものであるということは、私もよく理解しておるわけでございます。したがって、この農地法ができるだけ早く全面的に施行されるのは望ましいことであるわけでございます。したがって、先ほど七、八年というふうに申し上げたわけでございますが、七、八年後にはもちろん農地法が全面的に適用されていく、こういうことになるわけでございます。その間につきまして——これは私、農林省と十分打ち合わしているわけではないので、やや個人的な見解になるかもしれませんけれども、やはり復興法の段階で、小笠原の復興はどうあるべきかということは十分検討されていくわけでございます。したがって、そういう問題も、必要な限りにおきましては、復興法の問題として十分検討に値するというふうに私は申し上げたいわけでございます。先生の御指摘のような農地法の精神につきましての問題は、そういうようなことで解決していきたいというふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/28
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029・美濃政市
○美濃委員 長官はどうですか、法律の点では。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/29
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030・田中龍夫
○田中国務大臣 こういうふうな非常にむずかしい問題は、法務省の見解を求めなければならぬかもわかりませんが、日本憲法のできますにあたりまして、やはりそこの地域社会に対する一つの前提の条件というものがあっての憲法になっておると思うのでありますが、今日まで施政権がなく、法域を異にし、また客観的条件もほとんど無人島に近いような状態下におきまして、それをいま日本の国土の中に編入されようとする場合に、そこに私は何か常識的に言いましても、それを受け入れる態勢において断層ができておるような気がするのです。だから、おっしゃるとおり、理論的にはまさにそのとおりだと思いますけれども、では、本土に復帰したその瞬間から現行憲法がすべて適用されるかというようなことになりますと、たとえて申すならば、日本国憲法の場合には地方自治体とかなんとかいうふうなもののことも規定されておりますけれども、現に小笠原の場合には、本土に復帰した後におきましても、まだ自治体も形成されておらないような状態で、新しく村をつくらなくてはならぬとかなんとかというふうなことに相なる。理論的にはそんなことはあり得ないと言われるかもわかりませんが、現実にはそこにまだ日本の法域に対する前提条件の欠如があるように思います。この点は法務省の見解を聞かなければなりませんが、常識的にどうも美濃先生のお話が当該農地法の場合もそれと同じような関係で、これはあくまでも暫定法でありますから、現行日本国憲法が施行される一つの前提を形成するためのどうも特殊法のような気がするわけでございます。その点は、法解釈を権威ある筋から一ぺんやっていただきたいと思いますが、率直に言って、私にはどうも御質問もぴんとこないし、答弁もぴんとこないのです。どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/30
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031・美濃政市
○美濃委員 どうも長官の考えは困ったもので、私の言っているのは、たとえば、もちろん答弁で七、八年と言われました。そういう長い間この土地所有権者の民法上の企く任意なる土地がかなりできてきて、ジャングルで放置してあっても、農業を形成する中で、農業をつくっていこうとする中で、七年も八年もジャングルそのままで、おれは興さないんだと言ったら、それをどうすることもできない。これはたいへんです。そういうことであれば、村をつくるとかなんとかいう問題もありますけれども、これは当然これでいいと私は考えておるわけです。いま人がいない。ただ、私の言っていることは、非常に問題がある。それなら七条と十三条を削っておけばいいわけです、まず村をつくって受け入れ態勢をつくる。そして七条、十三条という問題は、七年も八年もそういう状態で、本土の土地所有者と企然安定度の格差のある状態で放置される面が出る。こういう法律の適用はあり得ないということを言っておるのだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/31
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032・田中龍夫
○田中国務大臣 これは前回美濃先生の御質疑に対しまして私がお答えしたと同じことになると思うのでありますが、これは暫定法を御提案いたしまして、こういうものの考え方ですべて参るということにいたしますが、いまのお話しの所有権の主張の期間を七年間とか何年間とかいうようにする。はたしてこれがあれなのかということになりますと、なかなかむずかしい問題があると思いますが、これはこの暫定法において一応のめどを立てて、それから日ならずして今度はどうせ復興法を出さなくてはならないわけでございます。その復興法の際までの間に、私はただいまお話が出ましたような農地法の問題についていかに適用するか、まだ農地法が適用されていないわけでありますし、旧地主の買い上げも行なわれていないというような状態でありまするし、その間、先般申し上げたように、やはりある程度、国が眠っております権利を買い取って、そして計画的な土地形成をしなければならないというような問題もありましょうし、そういう場合にただいまの権利の問題等ももう一ぺんあらためて考え直していかなければならぬのじゃないか。ただいまは、担当官が申し上げましたように、むしろ十三条なんというのは、現在おる人とそれから旧島民で本土におられる方に対する帰島促進の一つの希望といいますか、を与えるというような意図の含まれた条文じゃないかと私は思うのであります。
お話しのような、今後これが基本になりまして農業関係の開発が行なわれるとかなんとかという場合におきましては、やはりもっともっと計画性のあるしっかりとした考え方でいかなければならぬ。そういう点は復興法に譲って解決すべきもののではないかというふうな気持ちでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/32
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033・美濃政市
○美濃委員 時間がないようですが、そうすると、この復興法という法律をつくるのは目安としてはいつごろですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/33
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034・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
実はこの法律案をつくる段階におきましては、御承知のように、第一回目の政府の総合的な調査団が行った直後、それによって明らかになった事実をもとにしてつくっておりますので、小笠原の開発をどういうふうに持っていくかというところまでの専門的な調査が十分できていなかったわけでございます。したがって、いま次々と出しております専門的な調査、それからさらに返還後に早急にそういう専門的な調査を加えまして、復興計画につきましては来年度の予算の関係もございますので、その予算編成の時期には十分その計画が予算に盛り込めるように配慮していきたい、こういうふうに考えますし、もちろん法律そのものがその段階でできておらなければならぬという問題でもないわけでありますので、できるだけそういう復興計画の促進といいますか、それにつきましては来年度予算においてそれが盛り込めるように努力したい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/34
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035・美濃政市
○美濃委員 この島が返ってきますと、農地関係の所管は農林大臣になると思うので、そうなりますとこの法律がいまの答弁と違っていくと思います。第七条は、「これを耕作の目的に供することができることとなるまでに要する通常の期間を考慮して」政令を定める、こうあって、その答弁は七、八年と言っておる。ところが復興法は、予算の関係があって、まず来年度予算にも編成しなければならぬから、早くつくりたい、期日は明確ではない、七、八年後の問題ではないわけだと答弁をしております。そうするとこの法律の七条の二項と答弁とが喰い違う。これが返ってきますと、これを管理する所管は農林大臣になりますから、長官の答弁を全然信用しないということではございませんけれども、農林大臣にこの考え方をきちっと整理しておいてもらわなければならぬ。それからまた長官の言われるように、非常に不十分な点もありますから、復興法をつくるときにきちっと整理する、一年くらいはそう進まないと思いますから、一年くらいの期間の暫定措置である、この間はこういう措置で帰島の意思や何かを確認しながら、復興法をつくるときにはきちっと本土と格差のないように農地法関係は整理する、こういうのならまた話は違ってくるわけです。七年も八年もの期間ではないわけです。質問をしてくると答弁が違ってくるわけですね。ひとつ農林大臣にこの関係を、やはり所管になりますから、一回確認をしておきたいと思いますので、本日は保留して、農林大臣の出席を要請いたしまして、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/35
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036・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 矛盾があるというお話でございますので、弁解になるかもしれませんが、ちょっと御説明いたしたいと思います。
さっき七、八年と申し上げましたが、この七条二項できめます。八年という意味は、たとえば、島別にきめることになるのではないかというふうに私は予想しておるわけです。したがって、先ほど申し上げました、翌年の予算に盛り込むように努力するということは、盛り込んだからといってすぐに農地法が適用されるという段階に来年なるとはちょっと考えられないわけでございます。したがって、七、八年と申し上げましたのは、あるいは誤解されたかもしれませんが、先ほど私は未墾地の場合もそうでございますのでと申し上げたわけでございますが、大体がそういうことで、確かに既墾地として取り扱ってもいいというような状態になった場合には、本土におきましても、農地法の本来の既墾地としての扱いをするということがありますので、そういう意味で申し上げているわけで、開発そのものの、来年度の開発との関係においてそこに矛盾があるというふうにおとりになったとすれば、私の説明が不足しておったと思います。そういう意味で少し補足させていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/36
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037・床次徳二
○床次委員長 川崎寛治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/37
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038・川崎寛治
○川崎(寛)委員 ただいま美濃委員から質問いたしました点に関連をして進めてまいりたいと思いますけれども、いま美濃委員が疑問を持たれたように、暫定措置法と復興法というものは、現在の審議の中で十分つながっておらぬわけですね。そうしてそれは、二十数年間放置されておって実態調査ができないので、たいへん初歩的な調査を終わった段階だからできないのだ、こういうことでありますけれども、しかし実際には、協定が承認になり、さらに措置法が成立をすれば、具体的に動いていくわけですね。そこでまず、いつから帰島あるいは移住というものが始まるのかをお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/38
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039・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
もちろん復興事業の進捗にからんでまいると思いますし、また復興事業そのものに旧島民の方に参画していただけるだろうというふうに期待しております。したがって、帰島そのものは、実はいつからというふうに申し上げるよりも、復興事業を遂行していくその段階において必要に応じて帰島していただく、そして帰島された旧島民の方々に参画をしていただいた上で復興事業を遂行していく、こういうことに考えておりますので、できるだけその復興事業の段階で可能な限り帰島していただくというふうに申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/39
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040・川崎寛治
○川崎(寛)委員 この協定と措置法が承認、成立ということになれば、直ちに行けるのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/40
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041・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 渡航といいますか、渡ること自体はもちろんできるわけです。何らの制限はございません。ただ、何と申しましても、帰島するということは、向こうで生計を立てていくということが前提であるはずでございます。したがって、その前提として一体何をやるか、あるいは住まいはとうなのか——住まいといっても、ただ単に家があるというだけではないわけで、水道はどうかとかあるいは電気はどうかというようなことが当然からまってまいるわけでございます。そういうことを考えますと、ある程度復興事業も進んでいかないと、ほんとうの意味で、われわれが責任をもって、どうぞお帰りくださいと言う時点にはならないのじゃないかというように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/41
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042・川崎寛治
○川崎(寛)委員 この間の前回の本委員会においても、依田君が父島を拠点にしてという考え方について、全面的な開発というか、そのめどを立てるべきだという点でしきりに質問しておったわけですけれども、それに対しても総務長官のほうはなかなか明確な方向というのは出せないということで、とりあえず父島ということだったわけですね。しかし実際には渡れる。渡れるということであれば——観光資本その他の問題等は後ほどお尋ねしますけれども、実際には復興計画あるいはその前の移住計画といいますか、そういうものよりも具体的な渡るということのほうが先行して、それをあとで追っかけていくという形に、おそらくいまのテンポですと、なりかねないと思うのです。というのは、予算的にも四十四年度で復興計画を、こういうことでありますから、その点はよほど明確な方向というものを急いで出さなければ、この点はあとでどうにもならない事態というもののほうが先行する、こういうふうに思うわけです。
そこでお尋ねしますけれども、総理府から自治省に所管が移るのはいつですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/42
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043・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 総理府の所管というのは、結局平和条約三条地域ということで所管しておるわけでございます。したがって、三条地域でなくなれば移るということになるわけでございます。ただ、何といいましても、この小笠原復興につきましては、小笠原が返ってくるまでのいろいろな準備を総理府でやっております。したがって、返還協定が発効した時点において移るといいましても、総理府も依然として御協力をしなければならぬわけでございます。特に各省との調整という問題になりますれば、総理府の総合調整の機能としての立場からも十分御協力するということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/43
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044・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうすると、法制的にいえば、国会で協定が承認をされ、この暫定措置法が成立をした段階で、法制的には自治省に移る、そしてあと具体的な移住なり、さらには復興というもののめどが立つまでの間調整機関は総理府だ、こういうふうに見てよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/44
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045・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 総理府から自治省に移るというふうに申し上げるよりも、総理府の従来の平和条約三条の特別地域という範疇からなくなる、したがって、普通のいまの本土と同じような地域になるという意味で、総理府のやっている従来のような形でなくなるということを申し上げるわけでございます。したがって、もちろん各省の関係の仕事も当然出てまいるわけでございまして、われわれといたしましては、将来復興法をつくる段階で復興計画を総括的にどこがめんどうを見ていくかということにつきましては、内々では自治省にお願いしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。したがって、復興法をつくる段階におきましては自治省が中心になってやっていかれるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/45
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046・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうすると、復興法は次の通常国会に出されるというふうに先ほどの美濃君に対する御答弁でもうかがえるわけですけれども、そのときには自治省が中心的に復興法を扱っていくということになりますね。そうしますと、この復興計画は、当然協定なり法案が成立した段階で都に所属が移るわけですから、次の復興計画というものをつくり、また進めていかなければなりませんね。そうすると、復興計画というのは、都がつくって、そして国が承認をする。つまり奄美大島が返還されましたときには、鹿児島県に所属が返った。そして鹿児島県が計画を立てて、これを国が承認をするという形がとられましたですね。ですから、当然に東京都に帰属するのでありますから、都が主体的に復興計画を立てて、国がそれを承認をし、援助をしていくという形になるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/46
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047・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
奄美の場合におきましては、御承知のように、奄美のあの諸島におきましての社会的な秩序は、そのまま戦前から戦中、戦後にかけて、そして復帰までの段階、ずっと続いておりまして、そこに全然中断されたようなあれがないわけでございますが、小笠原におきましては、御承知のように、何しろ二十数年間も放置された。しかも現在あそこに住んでおる現島民は二百名そこそこ、ほかの方々は十九年に本土に引き揚げた。しかも全部で七千七百名という方々が引き揚げられているわけで、その意味で小笠原における社会秩序というものが完全に崩壊されているわけでございます。そういうことを考えますと、やはり国が責任を持って復興事業を進めていかなければならないというふうに、私は考えるわけでございます。そういうことでございますので、奄美方式そのものをとるかどうかは、これは復興法の段階で十分明らかになると思いますけれども、いまの段階では、私としてはやはり奄美よりももっと国が積極的に力を入れていかなければ、復興はできないのじゃなかろうかというふうに考えておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/47
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048・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それでは、復興に入る前に具体的に動き出したら、帰るというか、向こうに渡ることは自由ですね。そうすると、どんどん動き出しますね。そうしますと、先ほど言いましたように、復興法ができ、そして復興計画が具体的に動き出すというのは、早くとも四十四年の四月、こういうことになりますね。復興法に基づいて復興計画が立てられ、それに予算の裏づけができ、それが動くというのは四十四年の四月から、こういうふうに見ていいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/48
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049・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
法律が通常国会になるのかどうか、実は私、はっきり申し上げるあれがないわけでございます。したがって、法律をいつ制定していただけるのかという点につきましては、ちょっと保留さしていただきたいわけでございます。しかし、予算の面におきまして、復興事業に相当の経費がかかる、こういうふうに考えた場合には、予算としては本年度の予算でかりにある程度見ていただくといたしましても、予備費で見ていただくよりほかはないわけでございますので、大きな意味で計画そのものが実施の段階になっていくというのは、やはり四十四年度になってからだろうというふうに思うわけです。しかし、それまでにわれわれが何もしないということではございません。やはりできるだけ早く復興事業には、できるものは着手していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/49
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050・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それでは、具体的にきちんと国会で承認を得る予算は、いまの答弁のようにあいまいながらも一応認めますと、それまでの間は予備費だということですが、どこの予備費で使うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/50
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051・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 ちょっと先ほどの御説明で不足していたと思いますのは、既定経費でまかなえるものはもちろん既定経費でまかなっていきたい、そういう点について十分各省の御協力があろうかというふうに思っておるわけです。既定経費でまかなえない部分につきまして予備費をお願いしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/51
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052・川崎寛治
○川崎(寛)委員 復興計画についてもう少しありますので、労働省が見えておられるので、これをまず先にお尋ねしておきたいと思います。
五条で労災と失保法が特例の扱いを受けることになるわけですけれども、この適用人員はどれだけあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/52
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053・有馬元治
○有馬政府委員 五十七名を予定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/53
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054・川崎寛治
○川崎(寛)委員 両方ともですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/54
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055・桑原敬一
○桑原説明員 労災の適用を受けます対象につきましては、いま詳細調査中でございますけれども、第一次の調査団の参りましたときに把握いたしました段階では、傷病を受けられている対象は二名程度ということでございます。なお詳細は、近くまた第二次の調査団が参りますので、そこで詳細把握をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/55
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056・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それでは労災が二名、失保法が五十七名ですか。失保法のほうは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/56
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057・有馬元治
○有馬政府委員 失業保険は離職して失業という事態にならないと給付いたしませんので、被保険者として現在推定される人員は五十七名です。これが復帰後どういう状態になるか、おそらく大多数の人が失業の状態になると思いますので、それは一応見込んでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/57
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058・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それでは、つまりその資格はないわけですね。本来、本土の法律でいくならば受給資格はないけれども、この際特別に労災なり失保法なり、特に労災の場合はもっと明らかで、現在傷病で治療を受けておるのが二名、こういうことですが、そういたしますと、その二名はいまアメリカが見ておるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/58
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059・桑原敬一
○桑原説明員 ただいま米軍の病院で療養を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/59
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060・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうしますと、疾病の原因が何であるかは明らかでありませんけれども、米軍の病院で見ておる。復帰をしたときに日本の労災がそれを引き受ける。こういうことになるわけだけれども一、本来はこれは認められないことですね。つまり、本土に復帰をしたときには、本来労災の適用を受ける資格はないわけですね。それをここで特例で見る。その特例で見るという理由は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/60
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061・桑原敬一
○桑原説明員 復帰する場合につきましては、御指摘のように、保険でございますので、保険事故にならないのがたてまえでございますが、本来ならば本土に属しておりますれば当然に加入しているであろうということが想定できるわけでございます。現実にまたそういう傷病を受けて療養されておりますし、そういう事実が復帰後も続きますれば、本土並みにこれを補償していくというのが必要ではないか、こういう考え方から今回特例を設けたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/61
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062・川崎寛治
○川崎(寛)委員 これは、返還協定の第五条に請求権の問題がありますね。これとはどういう関係になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/62
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063・桑原敬一
○桑原説明員 一般的な請求権の問題につきましては外務省を通じていろいろ折衝いたしたわけでございますが、その点は現実の問題として処理をしなければならぬ。外務省を通じましていろいろやりましたわけですが、その辺が労災の面だけではなく、一般的に明確でございませんので、われわれの法律のほうにおいて処理をした、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/63
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064・川崎寛治
○川崎(寛)委員 はっきり言ってください。どうもわからぬ。聞こえない。非常に不明確だ、そこは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/64
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065・桑原敬一
○桑原説明員 労災保険に加入しておりませんので、加入前の事故につきましては、当該傷病を受けた方は請求権は当然ないわけでございます。したがって、この条に基づきます請求の問題は起こりませんけれども、具体的に傷病を受けられた方について本土並みの補償をする、請求権はないけれども、本土並みの処理をする、こういうたてまえから今回の措置法に入れたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/65
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066・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そこが問題なわけです。請求権はないわけです。本来は本土の労災が見るべきではないのです。しかし、その関係は外務省を通じてやってみたけれども不明確だ、こういうわけでしょう。なぜアメリカにやらさぬのですか。なおるまではアメリカが見るべきなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/66
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067・桑原敬一
○桑原説明員 なおるまでは現実にいまやっておるわけでございますが、引き継ぎました段階において具体的な問題として残りますので、私どもとしては問題が残らないように措置をした、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/67
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068・川崎寛治
○川崎(寛)委員 問題が残らないじゃない、問題が残るわけです。たとえば西ドイツの炭鉱労働者が向こうで疾病をやるという場合には、西ドイツから七万円送ってきていますね。今度の場合も米軍関係のところに働いているときに労災——労災になっているかどうか、そういう治療を受けるわけでしょう。布令に基づいてだと思いますけれども、受けておる。そうすると、それは終わるまでアメリカが責任を持って支払うべきだ、こう思うのですが、その権利義務の関係は外務省を通じて明確に詰められたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/68
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069・桑原敬一
○桑原説明員 私どもその点についていろいろ外務省を通じて折衝をやったわけでございますが、明確でございませんので、その措置を明確にするためにこの法律によって処理をする、こういう態度で来ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/69
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070・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それはたいへんですよ。だから、さっき公明党の斎藤さんからも政令の中身を出しなさい、こういうことを言ったのですが、この点は後ほど追及いたしますけれども、明確でないものを受け取るときに、わけがわからぬから政令にぶち込む、こういうやり方をこれはしておるのですよ。たとえ二名であろうとも、そういう関係を不明確にして残しておくことが問題なんです。特に対アメリカとの関係においてそういうあいまいな残し方をする、これが日本の外務省の悪い点ですよ。ぼくはその点はもう少し詰まっておると思いましたから外務省は呼ばなかったのですけれども、しかしそれは不明確なんでしょう。不明確なものを日本の労災保険の中にぶち込んでしまう。そうすると、日本の労災の資金を出しておる諸君の保険——本来なら資格を持っていない者を、日米間で詰められなかったものをその保険の中にぶち込んで処理をしよう、こういうあいまいなことをやっているわけですよ。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/70
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071・桑原敬一
○桑原説明員 先ほど申し上げましたように、確かにその点不明確でございますが、現実に私どもとしては、傷病を受けられた方について措置をしたいということで今回の特例を設けたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/71
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072・川崎寛治
○川崎(寛)委員 労災課長を責めるのは酷だと思いますから、総務長官どうですか。あなたが所管している、責任を持っているこの法案の中にいま明確になってきたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/72
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073・田中龍夫
○田中国務大臣 ただいま川崎さんは西独の炭鉱の例もおあげになってお話しになりました。この点ひとつ米国に対する交渉をどういうふうにしたか、外務省のほうにも問い合わせましてお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/73
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074・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それではこれはあとで外務省から答弁をいただくことにしたいと思います。これは残して、後ほど外務省を要求したいと思います。
そうしますと、小笠原の島民は日本人である。日本国憲法に返るのではなくて、日本国憲法は適用されているけれども、平和条約三条でその実施がはばまれていた。そのためにこういう事態が生まれている。返還をすることによって憲法が直ちに生き返るわけですね。そして憲法が具体的に実施される、こういうことになるわけです。ですから、その点は先ほどの美濃君の質問に対する総務長官の答弁も、憲法との関係はたいへん不明確だと思いますけれども、そういうふうに憲法との関係は考えるべきだ。そこを、日本国民であるのに、外務省の交渉の過程でそういう点をきちんとせぬで、権利関係を明確にせぬで、結局この法律の中にぶち込んでしまったわけですから、こういう不明確になっている。
それならば、さらにお尋ねしたいのですが、沖縄の労働者は日本国民です。しかし、これもいま平和条約三条ではばまれておるわけです。これは拡張解釈して、いま沖縄に適用——適用と言うとあれですが、逃げるでしょうから、適用じゃなくて、その点を沖縄にも具体的にやれますか、やりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/74
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075・田中龍夫
○田中国務大臣 憲法が小笠原の本土復帰に伴ってここに当然自動的に適用されなければならぬというお話、これは私もその点については当然そう考えます。ただ現実の問題との調整において、先ほど美濃さんにお話ししたようなことを申し上げたのです。いまの労災の問題についても、米軍関係の労務者で現在疾病中の者は、小笠原の復帰にあたって、その者が全快するまでの間は当然アメリカの責任において処理すべきものだという川崎さんの御主張があります。それから、いまの労働省のほうのお話は、ある一つの時点を区切って権限を残さないで、あとはこちらのほうの責任でやっていこうという方法もあるわけです。これは私は、それこそ復帰に伴います外交折衝のやり方の問題であって、いずれにしましても、両国の間に話がどういうふうにつくか、日本のほうは、この二名の者が全快するまでおまえのほうで負担しろということも言えましょうし、また債権債務の関係は、ある一つの時点でもって、一方は日本が引き受け、一方は向こうが引き受けるとかなんとか、いろんなきめ方があると思うのです。いま私が、外務省はどういうふうな折衝をしたか聞いてお答えしょうと言うたのは、その点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/75
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076・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それじゃ、復帰をしたらその時点で、そういうわけでしょう。しかし、それを労災の保険やあるいは失保の会計で見るということ自体は責任転嫁なんですよ。そうでしょう。国の責任でやっているんじゃないんですよ。失業保険もみんな払っているんですよ。労働者が納めているんですよ。その会計で見ようというのです。労災は資本家が入れているんですよ。そのあれで見ようというわけでしょう。国の責任でやっていないんです。おかしくないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/76
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077・田中龍夫
○田中国務大臣 おっしゃるとおり労災保険といい失業保険といい、当然そういうふうな掛け金や何かの負担はございます。そういうふうに債権債務がふくそうしておる際において、あるケース・バイ・ケース、原権にさかのぼって処理がされるまで保留していくやり方もありましょうし、ただいま申し上げたようにある一定の時点を限ってこちらの責任でまかなうんだ、それ以前のものは全部向こうの責任にするとかなんとかいった交渉の取りきめ方の問題であって、そういうふうな場合には、いま御提案申し上げておるようないわゆる暫定措置法によって特例を設けなければその解決ができないということになるわけでございます。でございますから、これは外交の交渉のまとめ方の問題から波及してくるいろいろな問題でございますので、そういう点は暫定法というものの経過処置としての内容を持っておることからいって当然でございましょうが、本件に関しましてはただいま申し上げたような経過を外務省に聞いてお答えいたしましょうと申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/77
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078・川崎寛治
○川崎(寛)委員 長官と質疑をしておっても解明されないと思いますので、職安局長にお尋ねしたいんですけれども、失保のほう、おそらく五十七名被保険者がおるけれども、失業するだろう、こういうことになりますね。そうしますと、本来なら資格はないけれども見なくちゃならない、こういうことになるわけですね。それは本来なら、いま失業保険特別会計においても赤字が多い、いろいろ短期循環労務者の問題というのがいろいろ出ているわけですねそうしますと、これは少なくとも小笠原のこの分については、時間の都合もありますので、早く議論を進めるために私のほうから具体的にお尋ねしたいんですが、それは失保の会計や労災の会計で見るんじゃなくて、国が一般会計でその分は補てんをするということが本来ではないか、こういうふうに思うのですが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/78
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079・有馬元治
○有馬政府委員 先ほどから議論になっておりまする請求権との問題ですが、これは私ども小笠原現地調査報告書という政府の報告書をたよりに考えているわけですが、これによりますと、米軍労務者につきましては、年金、失業保険その他の社会保障制度はない、こう言い切っているわけです。したがいまして、向こう側の制度によるそういう社会保障的なものはないという前提のもとに復帰後の臨時措置を講じたわけですね。そこで、これをどういう考え方で法令の適用をするか、御指摘のように一般会計で特別のこの際措置をするというのも一つの考え方だと思うのです。私ども内部で検討した中にもそういう意見ももちろんあったことはありますけれども、私ども最終的にこの法案のような考え方にしたのは、もしこの米軍の労務者が本土におったというならば、当然本土の米軍労務者と同じように失業保険その他の社会保険が適用になっているわけですね、そういう状態でございますので、今度の措置につきましても適用はなかったのでございますが、適用があったとみなして、それぞれの保険で措置をしよう、こういうことに相なったわけであります。そこのところの考え方はいろいろあろうかと思いますが、こういう措置をすることが一番今回の復帰に伴う臨時措置としては適切ではないか、こういう判断で措置をいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/79
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080・川崎寛治
○川崎(寛)委員 だから結局本来ならばアメリカが見るべきだ、しかしそれがないのですね。そして特に労災についていえばその債権債務の関係というのは不明確だ。そこで結局保険で見るということになると、国はそういう何らか見なくちゃならないということについては認めているのですよ。当然のことなんですよ。しかしその見方が問題だ。だからこれはアメリカが見るべきだし、アメリカが見れないとするなら、これは国がその点については当然見るべきだ。どうですか、その点。これは将来また沖縄返還の際にも大きな問題が出てくるわけですよ。ですから、この点はそこを明確にしておかないといけない。二十三年間アメリカの支配下にあったというのは、その労働者の責任じゃないのですよ。国の責任なんですよ。ところが国は責任を回避しているわけです。ですからやはり国が見るべきだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/80
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081・有馬元治
○有馬政府委員 この労災の問題は先ほど管理課長からもお答えしたとおりでございますが、先ほども申しましたように、現地調査報告によりますと、現地住民たる米軍労務者には社会保障の制度が適用になっていないということでございますので、労災の二人の補償につきましてどういう関係がそこに成り立っておるのか明確でない。復帰後はとにかく労災でみなして補償しよう、こういう措置を講じているわけでございますが、復帰前の損害賠償の請求の問題というものがあるいは残るのかもしれませんが、その辺はもう少し十分検討して実情を調査した上で措置すべき問題で、復帰に伴うとにかくこの二人の労災の補償につきましては、本土並みの補償をしようということに一応踏み切っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/81
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082・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それじゃいま沖縄に労災を拡張して適用できますね。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/82
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083・有馬元治
○有馬政府委員 これは労災だろうが失業保険だろうが、法域が違いますから、現在のところはできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/83
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084・川崎寛治
○川崎(寛)委員 だから、失保の場合は相互主義で去年結びましたね。しかし労災の場合だって、日本人だという扱いでいくならば、ストレートに労災法が適用されるとは言いませんが、しかしこれは拡張して及ぼすことは不可能ではない、こういうふうに思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/84
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085・桑原敬一
○桑原説明員 沖縄につきましては、御承知のように法域が違いますから、直ちに日本法令が適用されるというわけにはまいらないと思います。ただ小笠原と違いまして、将来の問題でございますけれども、沖縄には日本と同じような労災補償という制度がございますので、その辺はまた扱いは違ってくると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/85
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086・川崎寛治
○川崎(寛)委員 労働省はいいです。
それじゃ復興の問題にまた入りたいと思うのですが、その復興法ができて、復興計画に入るまでの間の予算はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/86
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087・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
これは先ほどもちょっと申し上げたように記憶しておりますけれども、既定経費でできるものは既定経費でまかなう、しかし、どうしてもそれがまかなえない場合は予備費でお願いしたい、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/87
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088・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それでは行き当たりばったりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/88
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089・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 行き当たりばったりというお話はちょっと私ぴんとこないわけでございます。と申しますのは、やはり復興計画そのものの一つの準備段階でございますので、ある程度といいますか、いままで調査した結果に基づきまして十分検討した上で、計画性を持たしていくべきであろうと考えておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/89
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090・川崎寛治
○川崎(寛)委員 小笠原総合事務所をつくる、これはいつつくりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/90
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091・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 復帰と同時につくりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/91
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092・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それでは小笠原総合事務所をつくらなくちゃならぬ、当然人員の配置がある、さらには具体的復興計画ができる前に動き出す、帰る、いろいろ具体的な問題にぶつかっていく、こうなりますね。そうしますと、復興計画につなぐまでの間のおおよその資金計画というか、そういう財政見通しというのは当然持っておらなければいかぬと思うのです。それなしで、ただ出てくる具体的な現象に対応していく、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/92
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093・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 ただ具体的な現象に対応するということだけでなくて、先ほど申し上げましたような意味で、計画性を持った準備措置をとらなければならないわけでございます。ただ、いまの段階でどの程度のということを申し上げるだけの検討がまだ進んでおりませんので、その点は、いま申し上げたような抽象的なお答えであるいは御不満かもしれませんけれども、その程度でひとつごかんべん願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/93
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094・川崎寛治
○川崎(寛)委員 復興計画も都が本来やるべきだ。しかしそれは全く二十数年間放置されておったんだから、国が見なくちゃいかぬ、こういうふうなお答えでしたけれども、そうしますと、財源については国が全額見る、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/94
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095・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 先ほど申し上げました、国が責任を持ってやらなければいけないという意味は、国が責任を持って復興計画の基本的な考え方を立てて、それに基づいて相当責任を持った形でやっていくべきだということを申し上げたわけでございます。したがって、国と都とがどういう形で復興事業を分担していくかという問題は、今後都との間で十分協議した上できめていくべき問題だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/95
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096・川崎寛治
○川崎(寛)委員 小笠原総合事務所は東京都に帰属する、そうして国が小笠原総合事務所を置くわけですね。都のほうはどういう組織を置くという話し合いになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/96
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097・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 まだ都のほうから具体的にこうだということを私聞いておりませんけれども、地方自治法に基づきまして、都が従来もございましたような小笠原支庁というようなものを置いていかれるのではないかというふうに推測しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/97
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098・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうしますと、これはまだ復興計画の段階でないのだ、こう言われるかもしれませんけれども、実際初歩的な調査しかしていないんだから、当然いま予算関係も不明確ですし、どういうふうにすべっていくかも不明確だ。しかしこれはやはりやっかいなものが返ってきた、なるべく安上がりにしたい、こういう考え方がありありとあるわけですね。もっと計画があり、それに基づいて復帰と同時に直ちにすべり出していくというものでなくちゃならぬわけですね。しかしどうも先般来の質疑を通じて感じられることは、そういう受け入れのかまえではない、こう思うのです。総務長官、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/98
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099・田中龍夫
○田中国務大臣 ただいまお話しのような考え方は、私ども少なくとも持っていないのです。安上がりでいこうとか安直にやろうというのではなくて、ほんとうに誠心誠意新しい小笠原の建設を目ざして、実は情熱を燃やしておるようなわけでございます。ただお話しの中で、国がやらなければならないケースのものと、自治体がやるべきケースのものと、これはもう当初御説明申し上げたときから、いろいろ分類の対象項目はお出ししてあると思います。しかし何といいましても、各省の担当者が先般初めて行って、帰ってきてから鋭意努力をしておるというような状態で、いままで未知の世界でございますから、それを新しくこなしていこうというときに、(川崎委員「未知の世界じゃない」と呼ぶ)未知というのは、二十何年間放置されて、ジャングル化しているような父島以外のまだ各地があるわけです。そういう点に対しては、今後いかなる先行投資をしなければならぬ、いかなることをしなければならぬというようなことを、ほんとうにみんなが一生懸命考えながらも、なかなか思い至らない点が多々あるわけです。お話しのように、来年度の予算の要求は、もうこの八月には概算要求を出さなければならぬといったような状態でございますから、暫定法が成立するとすぐに、今度は来年度の予算要求や何やかやということも当然考えなければならぬし、その間におきまする経費の支出は、ただいま担当官から申し上げたような状態でございます。復興のめどを一日も早く立てて、そうしてまた計画的な来年度の経費の要求もいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/99
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100・川崎寛治
○川崎(寛)委員 この総合事務所の所長というのは、奄美大島の場合には、鹿児島県の職員を自治省の職員に任命がえしてやったわけですよ。だから小笠原の場合も、当然東京都に所属するわけですから、東京都からこの所長が出され、国家公務員の資格を持つ、こういうふうにすべきだと思うのですよ。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/100
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101・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
奄美の場合には、鹿児島県の支庁だったわけです。したがって、奄美の場合は、鹿児島県の支庁を国の公務員をもって充てたわけです。ところが今度の場合は国の総合事務所として小笠原総合事務所というものが設けられるわけでございますので、県の支庁をどうするかという問題とはちょっと違うだろうと思うわけです。ただ何といいまし七も、この狭い土地に役所がたくさんできるというのもいかがかと考えておるわけでございます。その点につきましては、東京都あるいは村の組織もございますので、この三者がうまく総合的に仕事ができるように、緊密な連絡がとれるように、何らかの形で組織的な面におきましても十分協調できるように措置をとりたいというふうには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/101
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102・川崎寛治
○川崎(寛)委員 総務長官にお尋ねしますが、この所長はいつ任命しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/102
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103・田中龍夫
○田中国務大臣 協定が成立しまして一カ月後に効力を発します。そのときまでに、同時に執務ができるようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/103
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104・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それは先ほどの参事官の答弁では、進める上において東京都その他との関係がある、だからその場合には当然東京都とも任命自体は政府にあっても、そういうことについては十分に話し合う。で、村長職務執行者というのはどこから選ぶのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/104
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105・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 私が先ほど申し上げましたことは、あまり役所がたくさんあって、何か狭いところでごたごたするようなことがないように配慮したい、こういうふうに申し上げたわけでございまして、任地そのものにつきましてどうこうするというつもりで申し上げたわけではないのでございますが、いずれにいたしましても、東京都が設けるであろうと予測される支庁と小笠原総合事務所との関係につきましては、十分その仕事の上におきましてむだのないようにいたしたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
村の場合、村長の職務執行につきましては、この法案におきまして、二十一条で東京都知事が自治大臣の同意を得て任命した者を充てる、こういうふうになっておりますので、その点については、この法案におきましては、特にどこのものをどうするということはあらわれておりません。そういうことは当然東京都との間で十分話し合いが行なわれるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/105
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106・川崎寛治
○川崎(寛)委員 東京都との間において話し合われるというよりも、東京都知事が自治大臣の同意を得て任命するわけですね。たいへん説明のしかたが、国の立場からすると自治権侵害にひとしい答弁だ。いまのは訂正しておいてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/106
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107・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 まことに申しわけございません。東京都の知事が自治大臣と十分協議されてきめられるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/107
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108・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そこで、復興計画は総理府の段階でないということで、具体的には出ないかもわかりませんが、しかし、先ほどから言うように、これが効力を発生する、そして動き出す、次に復興計画というまでの間に一番問題があると思うのです。その点がいささか不明確なので、やはりこれについては復興計画に入るまでの間の小笠原の復興についての補正予算というものを明確に組んで、この暫定措置法とあわせて国会の審議にかけるべきだ、こう思うのです。その辺が全くわからぬわけです。必要に応じて既定経費の中から見ますということなんだけれども、どういう形でどういうふうに見ていこうとするのか、それが実ははっきりしておらぬわけです。だから当然復興計画に至るまでの間の補正予算というものを組むべきだと思います。どうですか、総務長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/108
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109・田中龍夫
○田中国務大臣 これは既定経費として処理できるだろうと存じます。もしこの経費がなかなか大きくて既定経費として見られない、各省の間において見られないというような場合におきましては、予備費というものもございます。予見し得ざるものを対象にいたしまして予備費というものは置いてあるわけでございますから、そういうふうな姿になります。
それから、先ほど申し上げたように、もう来年度の概算要求というものがこの八月三十日ですかで出さなければならぬといったような時期にもなります。そうしますと、発効からその間におきまする期間もごくわずかでございます。そういう点もどうぞお考えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/109
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110・川崎寛治
○川崎(寛)委員 ごくわずかでないですよ。六月からすれば十カ月ありますよ。しかも各省にわたるわけでしょう。各省にわたるものがどういうふうに組まれてどういうふうに運営されていくかというのがかいもくわからないわけです、この暫定措置法だけでは。ですから、当然復帰に伴う暫定措置と、少なくとも具体的な復興計画の初年度が始まるまでの間の資金計画というものについては、大まかにしろやはり出すべきだと思う。臨時国会に出せますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/110
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111・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
先生も御承知のように、何しろ第一回目の調査というのが総合的な調査であったわけでございまして、専門的な調査というのは第一回目のときにはできなかったわけであります。したがって、本年度において本予算にそういう小笠原の少なくとも復興事業を促進するための経費というものが盛り込めなかったのは当然であったわけでございますが、その後徐々に専門的、技術的な調査もやっておりますし、復帰の時点におきましてそれが完全にすべてできるということにはちょっとならぬかもしれませんけれども、いずれにいたしましても、少しずつそういう点は始めておるわけでございまして、いま長官が触れられたように、八月には翌年度の予算の準備もするというわけでございますので、だんだんといまおっしゃったような点は確実になっていくわけでございますが、さしあたりまして来年の三月までの段階におきましてどういうことをやらなければならぬかということになりますと、何しろ御承知のような状態でございますので、港湾の整備とか通信の確保とか、その他限られたものになっていくのではないか、そういうふうに考えるわけでございます。そういうふうな点につきましては既定経費でまかなえる部分はまかない、足らないところは予備費、こういうことで処理してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。それ以外の経費としては、調査費がやはりある程度必要だろうと考えるわけで、来年度の予算におきましては相当考えなければならぬわけでございますが、三月までのものといたしましては何とかやっていけるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/111
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112・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そういう各省にまたがるものをどこの機関が調整していくのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/112
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113・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 先ほど申し上げましたように、復興事業は自治省でやっていただく予定にしておりますので、復興法のできるまでにおきましてももちろん自治省が中心になってやっていただきたいというふうに考えております。ただ復興法ができるまでは、総理府もいままでのいきさつもございますので、自治省と協力してまとめていきたいというふうに考えるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/113
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114・川崎寛治
○川崎(寛)委員 復興計画は自治省が中心的な所管官庁になるようですけれども、それまでの間、総理府がある程度取りまとめをやるわけですね。そうしますと、次に復興法と並行して復興計画というものが立てられて、そのためには当然審議会か何かが設置をされて、つまり官製の、国がまさに直轄で上からやっていくような感じ、これは法案自体が政令にいろいろなものをまかせて、たいへん非民主的な点があるわけですけれども、その復興の審議会、そういうものの機構、この暫定措置法が成立すると同時に、当然早急にそういうものができなければならないと思うのです。国に復興計画ができたから、さあ皆さん来て審議してくれ、こういうことではいけないと思うのです。やはりこの際、現地の代表なり帰島者の代表なり、あるいは学識経験者なり国の機関なりあるいは都、これらが当然入ってやるべきだと思うのですが、そういうものの組織あるいは構成の考え方をお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/114
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115・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
小笠原が返還されるということがきまってから、総理府といたしましては直ちに対策本部をつくりまして、そこでいろいろ協議して、返還に伴いますいろいろなことをやってきたわけでございます。その対策本部にも東京都あるいは小笠原協会、その他旧島民の関係者にも参加していただきまして、そのお知恵を拝借してきているわけでございます。返還になりまして、いまの復興法が制定されますまでにおきましては、もちろん法令に基づく審議会のようなものはちょっと設けられないわけでございますので、さしあたっては、いままでのような形のものを活用していくよりしようがないだろうというふうに考えます。ただ、もちろんそういう場合におきましても、東京都あるいは旧島民の代表的な立場にある小笠原協会等の御意見は十分聞く機会を持ってやっていかなければならぬと考えるわけでございますが、復興法におきまして、復興計画を立てる段階では、いま御指摘のような点も十分考えて、先生のおっしゃるように、民主的な組織が当然考えられてしかるべきだろうというふうに私としては考えるわけですが、これは奄美の場合にも、たしか審議会というような形で設けられていたように記憶しております。そういう先例もございますので、そういうことを十分考えて、基本的な計画そのものが徹底的に決定される段階におきましては、いま御指摘のような方々の御意見が十分反映するように配慮していきたい、そういうふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/115
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116・川崎寛治
○川崎(寛)委員 総務長官、重ねてくどいようですが、いま参事官がお答えになったように、復興法をつくる、復興計画をつくるということに具体的にすぐ入らなければならぬわけですけれども、そのために従来の対策本部というものだけをころがしていくという考え方なのか。あるいは奄美の場合にも審議会をつくってやられたわけですけれども、総務長官の下に、審議会をつくるのが好きなんですから、こういう私的な、法令に基づかないにしても審議会をつくって、政党関係やあるいは各学識経験者のそういう意見というものを反映させる。全く新しい村づくりですから、それに二十数年間放置されておったという実態にもかんがみて、当然そういう衆知を集めるという形で民主的にやってもらいたいと思うのですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/116
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117・田中龍夫
○田中国務大臣 先般、美濃部さんに会いました際にも、特に都知事のほうから注意がありまして、あまりあわてて無計画にやらないようにというふうなお話がございました。まことにそのとおりだと存じます。そこで、私どもの考え方からしますと、これは暫定法を一応つくりまして、それからいよいよ復興法ということに相なります過程におきましては、皆さん方の衆知を集めて、そうして民主的な方法によって小笠原の開発を考えていかなければならぬ、こういうふうにも考えているわけでございます。それは暫定法の段階ではなくて、復興法の段階においてそういうことになるのだろうと存じます。暫定法の場合は、とりあえずいろいろなことをやらなければならぬ。しかしこれはあくまでも暫定処置でございます。そうしてその暫定処置を行ないます時間的なものもできるだけ短かく、軌道に乗っかって復興法がすみやかにできて、またその処理も具体的に着々となされていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/117
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118・川崎寛治
○川崎(寛)委員 第三条に選挙の関係が書いてあるわけですが、参議院選挙はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/118
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119・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 ちょっとお答えしにくい点でございます。と申しますのは、第一、この法律がいつ施行されるかということがわからぬ状態でございますので、非常にむずかしいわけでございますが、いずれにいたしましても、選挙し得る期間が、十分準備ができる期間があれば選挙はやれるのだろうと思うわけですが、いまの状態でございますと、六月の末ごろでないとこの協定が発効しないということになります。そうなりますと、あと十日か一週間という間に——七月七日が選挙日だといたしますと、そういうことになるわけで、それで一体選挙の準備ができるのかどうか、私としては判断できかねるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/119
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120・川崎寛治
○川崎(寛)委員 先ほど憲法論もあったわけですけれども、復帰をすれば憲法が直ちに小笠原に具体的に実施されるわけですが、その中で一番基本の権利というものがあいまいにされるということは許せないと思うのです。しかもそれが政令でそういう一番基本的な権利のものを規定する、このことはたいへん問題だと思うのです。総務長官、どうですか。一番基本の問題ですから、総務長官にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/120
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121・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 申しわけございませんが、私から申し上げさせていただきますと、確かに基本的な問題でございますので、その選挙に関しては慎重でなければならぬわけでございます。ただ、これは例として申し上げたいわけでございますが、公職選挙法の附則の三項か四項に、離島その他特殊な場合には選挙を執行しないでもよろしい、これはやはり政令で定めるわけでございますが、そういう規定も現にあるわけでございます。私の考えでも、できるだけそういう選挙しないという事態のないことが望ましいことだと思うわけです。小笠原の場合におきましても、そういう意味で、これは自治省でお考えになることでございますが、選挙のできる準備ができるならば、もちろんけっこうなことだというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/121
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122・川崎寛治
○川崎(寛)委員 その離島でやっていないところはどこがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/122
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123・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 いま私が申し上げましたのは、公職選挙法の附則にそういう規定もございますということを申し上げたわけで、実際に選挙されていないところがあるかどうかは、私ちょっとはっきり……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/123
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124・川崎寛治
○川崎(寛)委員 この法案全体を通じて、もう全条にわたって政令委任がなされているわけですね。大体命令には委任命今というのと執行命令がございますね。憲法との関係においても、法律で委任されたらいいんだ、こういう考え方がありありとあるわけです。しかしこれは憲法との関係からいって、なるほど内閣法の十一条で「政令には、法律の委任がなければ、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。」とあって、法律で規定しているからいいんだ、こういう考え方だと思うのですが、しかし、これはかつてない政令委任の法案ですよ。これだけ政令に委任をしている法案というものは例がないのです。ですからこういう権利関係まで政令に委任をするということは許されないと思うのです。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/124
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125・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
かつてないことだ、こういう御指摘でございますが、奄美のときは、法律そのものをごらんになればおわかりのように、実体規定がほとんどなくて、むしろ委任根拠規定だけだった、こう言っていいくらいでございます。もちろんそういう状態、政令で何でもかんでも定めるということはできるだけ避けるべきだというふうに私ども考えるわけでございます。ただ、何しろ返還に伴う暫定措置として考えたことでございますので、そのまま法律を施行したのでは、いろいろ差しつかえがあるという場合に暫定的に認めよう、こういう趣旨の委任でございますので、先生の御指摘のような点は十分私ども理解できるわけでございますが、暫定的にはやむを得ないものがあるというふうに考えるわけでございます。しかし、これは先ほど長官も触れられましたように、暫定法そのものの性格といたしまして、できるだけ早く暫定的な措置の状態から離れるということがもちろん望ましいわけでございますので、必要最小限度の形でこの特例は認めていきたい。そしてできるだけ早く正常に復帰したい、そういうふうにわれわれも考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/125
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126・川崎寛治
○川崎(寛)委員 これは、だから官房長官の出席を要求しておったわけなんですけれども、憲法のたてまえからすれば、国民主権、だから議会主義なんですよ。それで、複雑だ、非常に多岐にわたっておる、しかも返還という特殊な事態で早急にやらなければならない、暫定なんだ、だからそういう権利関係も政令でやむを得ないという。これはやはり立法過程としては非常に問題が残るわけです。こういう形で広範な一般的委任まで政令でやるということは、憲法のたてまえからすれば望ましくないわけです。これは何というか。大多数の憲法学者の固まった意見だ、こういうふうに思います。そういう面から見ますと、たとえば労災の問題をとってみても、非常に不明確なやつがそのままぶち込まれておるわけです。そのほか選挙の問題にしても、こういうやつを公職選挙法の適用についての暫定措置法とかあるいはもう少しこの条文をきちんとするとか、そういうことがあってしかるべきだと思うのです。ですから、こういうふうに政令に委任をしていくという形のものは、行政機関としては一つ一つ国会を通すのはめんどうくさいから政令に委任をしてここで処理をしていきたい、こういう考え方だと思うのですけれども、今日の憲法のたてまえや国民主権の立場からするとたいへん好ましくない。私は、政令にこういう委任のしかたをすること、これが問題だし、また政令委任のそういうことについてきびしい考え方があるなら、なぜわれわれが審議をする際に、けさほど斎藤委員から要求があって初めて、政令案の内容を出しましょう、こういうことだけれども、これはこの審議のためには、当然最初から政令案の内容というのは参考資料としてでも出してやるべきだと思うのです。総務長官、この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/126
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127・田中龍夫
○田中国務大臣 基本的な権利に属しますこういうふうな諸問題につきましては、ただいまお話しのとおりでございます。われわれはそういうことができるように早くいたさなくちゃならぬというために、経過措置としての暫定法をお願いしておるわけなんでございまして、復興法における段階におきましては、十分そういうことを配慮いたしたいと存じますが、何はともあれ、この復帰にあたりまして暫定的にでも軌道に乗っけていかなくちゃならない、そういう点からいたしますと、原則に対しましていろいろな例外も出ざるを得ないようなことはどうぞ御了承いただきとうございます。そして一日も早くこれが軌道に乗りまして、お話しのような日本憲法としての基本的な諸権利が十分に亭受できるような条件を形成してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/127
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128・川崎寛治
○川崎(寛)委員 よければいい、いいことならかまわぬのだというわけにはいかぬのですよ。立法府ですから、その点は立法過程の問題として、とにかく何しろ緊急のことなんだから、そして暫定なんだから、こういうことで政令にそういう権利関係も委任をしていくという立法形式がいけないというのですよ。しかもその上に、最初から政令案の内容でも参考資料として出して、そして審議してください、こういう姿勢ならいいのです。ところがそうじゃない。これはいまの政府が法律を提案する形の中でこういう政令に委任をする形が非常にふえてきているのです。だから私は、本来なら政令についてはもっと国会でろ過をする機関を置かなければならぬ、こういうことを主張しているのです。政令にこういう委任のしかたをするというのが本来はいけないのだということについて、総務長官はさっきはお認めになったわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/128
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129・田中龍夫
○田中国務大臣 政令事項につきまして、別に隠蔽したり隠したりするわけじゃないのでして、ですから御要望に従いまして……。(川崎(寛)委員「いや、要望があれば出すという姿勢がいかぬ」と呼ぶ)それはそのほうがよかったかもしれませんが、まことに気のつかなかった点は申しわけないのであります。(川崎(寛)委員「姿勢が悪い」と呼ぶ)姿勢が悪いとおっしゃる、これはお許しを願いたいと存じます。しかし、いまのところ御要求がございました。喜んで政令に関しまするあれは整えまして、できるだけ早くお出しいたします。
なお、その原則がよくないという原則論に対しまして、私もできればそうあるべきだと存じまするが、それが何ぶんにも、当初、こんなに早く返ってくるというような予測がなくて、(川崎(寛)委員「去年の十一月話してきたんじゃないか」と呼ぶ)いや、それは日米会談はそうでございましたが、いつ返るかというめどにつきましては、もう少しおそいのじゃないかというふうな予測があったところが、急に外交折衝が進みまして、それで返ったような次第でございます。さような関係から、何は申しましても、いろいろと不備な点が多いのでございます。調査も、ほんとうにまだ各省調査を一回か二回いたしただけでございます。そういうふうな関係で、暫定措置といたしましてこの法案を御審議いただいておるような次第でございますから、原則論は確かにそのとおりでございますが、ひとつその点はどうぞ現実の事態を御了承いただきまして、よろしく御協力をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/129
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130・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それでは最後に、これはまた別の機会にいたしたいと思いますけれども、いずれにしても、こういう政令委任の形はたいへん好ましくないということだけをさらに念を押しておきたいと思います。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/130
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131・床次徳二
○床次委員長 中谷鉄也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/131
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132・中谷鉄也
○中谷委員 権利関係の調整、法案の第三章の各条文の問題を中心にお尋ねをいたしたいと思います。
質問の基本になりますのは、政府においてもこの点とのかかわり合いを御検討になっておられるわけでありまするけれども、要は、権利の調整の中で、一番基本の権利であるところの所有権、その所有権が、憲法二十九条の「財産権は、これを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」などというこれらの規定と、この九条以下の各条文がどのようなかかわり合いを持つのかということが、本日お尋ねをいたしたい要点であります。特に私が本日中心的にお尋ねをいたしたいのは、法の第十二条であります。法の第十二条は、御承知のとおり、公用または公共の用に供するものとして、アメリカ合衆国軍隊が使用していた区域を含むところの施設または工作物について使用権の設定をいたしているわけであります。したがいまして、施政権という、司法、立法、行政の諸権利を含むところのおもしがとれた際に、所有権という権利がどのような運命をたどっていくのか、ことに、この問題は、小笠原の問題であると同時に、現在施政権の返還のために努力している、そうして膨大な基地を持っている沖縄の問題に大きなかかわり合いがあるであろう。こういうことを考えますので、実態と法律解釈との間に、若干の食い違いがあるかもしれません。いわゆる実態の面においては、ほとんどこの法律の条文は適用される対象はないのだというふうなものがあるかもしれませんけれども、ひとつこの点については、法律解釈として、できるだけ、ことに第十二条については詳しくお尋ねをいたしたい、こういうふうに考えております。
そこで、まず最初に第九条ですが、次のようなことからお尋ねをしておきたいと思います。「所有する目的で他人の土地を引き続き六月以上使用している者」という規定があります。その者がいわゆる法定賃借権の保護を受けるわけですけれども、その「所有する目的で他人の土地を引き続き六月以上使用している者」の使用するに至ったところの理由、原因は問わないと見るべきなのかどうか、この点についてはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/132
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133・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
この権利調整の章の規定は、従前所有権があって、それが施政権がアメリカに移っている間に別の秩序がつくられた、そのつくられた秩序と従前からある所有権との関係を調整したい、こういうことでございますので、ここで「他人の土地を引き続き六月以上使用している」といいますのは、アメリカの施政下におきまして合法的に使用しているという状態を把握したつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/133
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134・中谷鉄也
○中谷委員 民事局長に私のほうからお尋ねをいたしたいと思います。
参事官の御答弁は、いま御答弁がありましたとおり、それを私なりに説明をし直しますと、要するに土地の所有者は小笠原諸島には住んでいない。それと、その建物その他の工作物を所有する目的で引き続き使用している者というのは、施政権下にあったところの土地を施政権者のいわゆる許可あるいは許容など、そういう正当と思われる権限に基づいて使用した者との関係なんだ。その者と所有者との間に法定賃借権を認めたのだということなんですが、少なくともこの第九条からはそのような解釈は出てくるのだろうか、こういう点について私は疑問を持つわけなんです。事実上こういう問題はあり得ないとは思いますけれども、たとえば日米共同声明が発せられた、ちょうど、ほぼ六ヵ月前です。そういうふうな共同声明が発せられたので、こういう第九条のような条文を予想しまして、そうして建物を建ててまわった。その使用というのも、常時使用か一時使用かというふうな問題もあると思うのです。さて、その一時使用か常時使用かというような問題を除いたとしますと、そういうふうなものもこれは排除できるか、そういうものは排除するのだという法律解釈をとることは私は困難だろうと思う。
要するに、整理をしてさらに申し上げますと、使用するに至ったところの原因というのは、いわゆる正当な原因あるいは本土法でいうところの不法占拠に当たるようなものもこれは含むのではないか。所有者との約束がないのですから、全部不法占拠だと思いますけれども、少なくとも第三者、施政権者のだれかが、その使用がオーケーだと言った者に限定するのだというふうに解釈するのは困難だと思うのですが、この点は、民事局長さん、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/134
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135・新谷正夫
○新谷政府委員 これは小笠原の施政権が復帰いたしました時点における法律関係の一種の調整でございます。御承知のように、米軍が小笠原諸島を占領いたしまして以来今日までに、あの地域における法秩序というものが再三変遷いたしております。具体的にはちょっと、どういうものがあるかということは申し上げられませんけれども、いろいろの契機によりまして、現地の法秩序が動いておるわけであります。ことに平和条約によりまして、合衆国軍政府におきまして現地の財産権について処分をいたしました場合に、これを日本国は承認するという前提がございます。したがいまして、施政権がアメリカにあります間に。アメリカ側の措置によって向こうの法秩序がつくられ、その法秩序のもとにおいて、一定の処分が行なわれました場合には、これは日本政府としては承認せざるを得ないわけであります。
そこで、米国の施政権下においてどのようなことが行なわれたかということが問題でございます。具体的にどういう法律が施行されておったかということは別といたしまして、あの地域における住民の人たち、小笠原に特に復帰を許された人たちが、アメリカ合衆国側の施政権下においてその規律を守りながら生活することを許されたという一般的な前提がございます。その中で特に軍の関係等もございますために、向こうに復帰しても、ある特定の地域に居住することは許す、あるいは特にこの地域に居住しなければならないというふうな指示とかあるいは承認、そういった措置によって現在の居住関係が許されておる、こういうことになっておるようであります。そういたしますと、これは向こうの施政権下における法秩序のもとにおいて施政権者がその措置を認めておる。こう見ませんと、現在の居住者の現実の居住関係が不安定になりますし、これはどうしてもそこにはっきりした使用権限が認められておる、こういうふうに観念せざるを得ないと思うわけでございます。しかし、これはアメリカの施政権下における問題でございます。われわれのほうの側からながめました場合に、所有者はこれは全然関知しないことでございます。したがいまして、施政権が復帰いたしました時点において考えますと、こちらにおられます所有権者との間では何らの法律関係も伴っていない、いわば一種の不法占有になるわけでございます。そういう事態が起きますことは、施政権の復帰に伴って避けるべきであるし、また現在居住しておる人たちの居住権を確保するということが現地の公共の福祉にもかなうゆえんであろうと考えまして、この第九条の規定を設けた次第でございます。したがいまして、米国の施政権下において居住しておるということが、それ自体において不法な処置である、あるいは居住しておる人たちが所有者に対して不法な行為をしておるというふうにアメリカの施政権下においては考えられていないというふうに見ざるを得ないと思うわけであります。これが復帰いたしました瞬間には、確かに仰せのように不法占有というような問題が起きるわけでございますが、現状においてはそれがアメリカの施政権下において許されておる、こういうふうに見るべきものと考えるわけであります。それと復帰したときとの法律関係の調整ということが必要になりますので、この第九条の法定賃借権の規定を置きたい、かように考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/135
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136・中谷鉄也
○中谷委員 施政権下においてその施政権が形づくっているところの法秩庁そのものに従っている、あるいは法秩庁の許容のもとに生活をしているというふうに見ることが正当であり、かように観念せざるを得ない、こういうお話でございましたが、そういうことと、そうすると、具体的に、その施政権下において、引き続き六カ月以上使用しておった人は、たとえば具体的な施政権者の許可を得てこの建物を建てたのだとか、あるいは建築についての承認を得たのだとかいうふうなことの証明は必要とするのでしょうか。それとも一般的に所有の目的とそこに六カ月以上引き続き使用されておるという事実がある、その事実は施政権という法秩庁のもとにおいて許容されてそこに建物が建ち、使用されておったのだというふうに観念をするのだというふうにおっしゃるのでしょうか、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/136
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137・新谷正夫
○新谷政府委員 六カ月以上引き続いて使用しておったという単純なる事実だけを考えているわけではございません。また、われわれとしてそういうふうに観念する、私、ちょっと先ほど観念するということばを用いましたけれども、主観的にわれわれがそう考えておるだけだという意味ではございませんで、アメリカの施政権下においてそれなりの法秩序がございますので、その秩序のもとにおいて現地島民の人たちが居住権を与えられ、そこで平和な生活を送っておるということであれば、これは向こうの法秩序のもとにおいて許されるというふうに考えるわけであります。
それでは一体いかなる個々の措置によってそういうことが行なわれたかということでございますが、先般の調査団の調査したところによりますと、アメリカ側も特にこの地域に住めというふうに指示したものもあるし、またこの範囲なら差しつかえないというふうに大きく承認した場合もあるということでございます。したがいまして、個別的に一々それを証明する、この法定賃借権の設定を受けるために一々本人がそれを証明しなければならないという窮屈な考え方を持っているわけではございません。現地の島民の方々に聞いたところ、あるいはアメリカ側にただしたところによりましても、わずか四十数戸の建物でございます。一々具体的にアメリカ側も把握しております。これが不法なものであるかどうかということは当然判明するのであります。調査団が参りましたときにも、大体居住そのものについては不法あるいは違法と認められるようなものはないように承知いたしている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/137
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138・中谷鉄也
○中谷委員 そこで所有権が、施政権が返還されたときに第九条特に第十二条の中においてどのような運命をたどるであろうかということでお尋ねをするわけですけれども、第九条の関係においては、少なくとも現に使用している人との関係においては所有者は関知しなかったことだ、第九条の規定が設定されない限りは所有者と賃借権者との関係は賃貸借契約はないわけなのだから、所有者と賃借権者の関係は不法占拠だということに相なるわけなのか、要するに当然法定賃借権というふうなものが設定されるべきはずのものではないか。第九条というものによって初めてそういうものができるのであって、第九条というようなものが設定されない限りは、所有権に基づいて、自分の土地の上に建物を建てている人に対する関係においては不法占拠だ、自分の土地の上に建物を建てられるいわれはないということを主張できるというわけでございますね。そうだとすると、この第九条によりまして賃借権が設定されるということは、所有権の制限ということになってくるわけでございます。そういう場合に、法定賃借権が設定されることによる所有権の制限についての補償、この補償の問題についてはどの条文で補償をしていくということになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/138
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139・新谷正夫
○新谷政府委員 これは土地の所有権に対する一種の制限であることはお説のとおりでございます。ただ、この場合は、先ほども申し上げましたように、現状のままで施政権が戻りまして直ちに日本の法律が適用になりますと、所有権者との関係において不法占有である、そうなりますと、現地居住の島民の方々に対して所有権者から建物の収去、土地明け渡しというふうな請求権が行使されることになるわけでありまして、現在平和に暮らしておる島民の方々の居住関係を保障する根拠がなくなってしまう、このことはせっかく施政権が復帰するにかかわらず、現地の人たちの生活を一挙に破壊してしまうということになりますので、これを防ぎますためには、どうしても何らかの措置が必要である。言いかえますならば、公共の福祉を守るために適当な措置をとるべきであるということになるわけであります。そうなりますと、憲法第二十九条の第三項の問題ではございませんで、第二項の問題といたしまして所有権の内容を法律によって定めるということになるわけでございます。公用のために収用するのではございません。したがいまして、第九条の法定賃借権につきましては補償の問題は起きないというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/139
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140・中谷鉄也
○中谷委員 第二十九条の第二項は、民事局長が御答弁になりましたとおりに、公共の福祉に適合するようにその内容を定めることができるということで、第三項の補償の規定とは違うわけです。そういたしますと、違うわけではありまするけれども、所有権がたとえばこの第九条の規定などによって法定賃借権の設定をされるというふうにみなされるという類似の規定というのは、たとえば従前の法律の中にはどのようなものがあったかをこの機会にひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/140
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141・新谷正夫
○新谷政府委員 このとおりの表現を使ったものがあるかどうか、私ただいまつまびらかにいたしませんが、たとえば罹災都市借地借家臨時処理法におきましては、罹災を受けました当時の借家人の権利を保護いたしますために、土地の所有者との関係において借地権を設定するというふうなことがあの法律の中に認められてございます。これもいわば一種の擬制的な措置でございますけれども、災害によって復興しようという地域における現居住者を保護いたしますためにはこれはやむを得ない、これが公共の福祉に合うゆえんであるということからそういう措置がとられたのでありまして、表現は若干違いますけれども、趣旨においては大体同じようなものであると考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/141
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142・中谷鉄也
○中谷委員 そこで第九条の第二項でございますが、この第二項によりますと、ただし書きで「同条の規定にかかわらず、その合意により別段の定めをすることを妨げない。」すなわち存続期間十年について合意による特約を認めている規定だと思いますが、この点についての合意というのは、十年を下回る合意ではあり得るのかどうか、この点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/142
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143・新谷正夫
○新谷政府委員 第九条第二項のただし書きの規定が働きますのは、原則的な十年の期間より長くてもよろしゅうございますし、短くても差しつかえない、こういう趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/143
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144・中谷鉄也
○中谷委員 この法定賃借権というのは借地法第二条第一項本文の規定を排除しているというふうに思われますが、借地法そのものの適用についてはどのように相なるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/144
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145・新谷正夫
○新谷政府委員 施政権が復帰いたしますと、借地法は当然に適用になるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/145
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146・中谷鉄也
○中谷委員 そうすると、もう一度お尋ねいたしますけれども、借地法第二条第一項本文の規定を除いて借地法の適用があるというふうに理解をすればよろしいわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/146
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147・新谷正夫
○新谷政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/147
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148・中谷鉄也
○中谷委員 その次に第九条の第三項でございますけれども、「あっせん」ということばが出てまいります。「賃貸借の借賃その他の条件について当事者間に協議がととのわないときは、」「あっせんを求めることができる。」このあっせんの法律的な性格はどういうふうなものなんでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/148
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149・新谷正夫
○新谷政府委員 ここにあっせんと申しておりますのは、当事者の話し合いがつきません場合に、小笠原総合事務所の長が中に立ちまして話し合いの糸口をつけ、当事者双方の間に協議がととのうように仲介の労をとる、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/149
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150・中谷鉄也
○中谷委員 時間がないようですから、第十条について一点だけお尋ねをいたします。
第十条の第四項について、実務上の問題点はほとんど少ないのではないかと思いまするけれども、即時抗告の規定がございまして、その期間が二週間だというところの定めがあるようでございます。この点については、民事訴訟法等の規定があったと私思いまするけれども、船便が年に四回ないし六回というふうな状態だとすると、即時抗告の法定期間が二週間ということは、最初から守れないじゃないかというふうな感じがいたすわけなんです。この点は、民事訴訟法の規定等の中でどのように理解すればよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/150
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151・新谷正夫
○新谷政府委員 この法定賃借権にかかる裁判につきましては、非訟事件手続法の規定によって裁判することになっております。非訟事件手続法が準用いたしております民事訴訟法の規定がございます。それによりますと、ただいまお話しのような場合には、裁判所はこれに附加期間を付することによって期間を事実上延長することができますし、また当事者の責めに帰すべからざる事由によりまして期間を順守することができないときには、その事由がやみました後に、そのことを証明して手続の追完をすることもできることになっておりますが、訴訟法の規定で申せば、第百五十八条、第百五十九条だと思いますが、それらの規定によって処理が十分にできるものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/151
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152・中谷鉄也
○中谷委員 次に第十二条の問題についてお尋ねをいたしたいたいと思います。
「小笠原諸島に存する施設又は工作物(アメリカ合衆国軍隊が使用していた区域を含む。)のうち、公用(条約に基づく提供の用を含む。次条第二項において同じ。)又は公共の用に供するものとして国又は地方公共団体が決定したものが、他人の所有する土地にあるときは、国又は地方公共団体は、次項から第四項までの規定に従って当該土地を使用することができる。」とあるわけですが、ここでまず国または地方公共団体が決定をした。そうしてその決定に基づいて、第二項によって、使用の方法及び期間をその所有者に通知しなければならない。通知がある。そうすると第三項によって、五年をこえない範囲内、逆にいうと、五年間はそれを使うことができるという規定だと私は理解をいたします。そうすると、公用または公共の用に共するものとして国または地方公共団体の決定と、その決定に基づくところの区域、使用の方法及び期間の所有者に対する通知、それだけで施政権のもとにあって使用の状態にあったところの個人A、Bの土地が引き続いて使用されることになる。この国または地方公共団体の決定について、個人A、Bとしてはどのような不服申し立ての方法があるのでしょうか。この点については、局長、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/152
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153・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
この決定というのは、いわゆる処分というものに当たるというふうに考えられるわけであります。したがって、行政不服審査法及び行政事件訴訟法の対象となるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/153
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154・中谷鉄也
○中谷委員 そうすると、この法律、暫定措置法あるいは返還協定が成立をして効力が発する、そうして地方公共団体あるいは国のほうの決定が行なわれる。本法案が成立をした、協定が成立をしたというその時期と公共団体の決定が行なわれたその間に、期間のズレ、時間のズレがあった場合の期間は一体どういうことに相なるでしょうか。使用している権限は何に基づくのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/154
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155・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
この国または地方公共団体が決定するというのは、もちろんこの法律施行前にもいろいろ調査もしておりますし、したがってアメリカ軍が使っていた施設あるいは工作物は十分わかっておりますし、またそれ以外の公用、公共用といいますか、そういうものになるであろうというふうに予測されるものも一応わかっているわけであります。したがって、この法律施行後すみやかにこれは決定されるものというふうに期待しております。そういうことで時間的には多少のあれがあるかもしれませんけれども、すみやかに決定されるものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/155
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156・中谷鉄也
○中谷委員 すみやかに決定されるものだと思いますし、またそのことが実務上それほど重大な内容を持つということで申し上げているんではない。ただ問題は、常に小笠原の問題というのは、施政権が将来返還されるであろう沖縄の問題の一つの先例になるという前提で私はいろいろな問題を質問しているのです。
そうすると、膨大な基地を持っておるところの沖縄の基地が、国と国との関係においては、核つき返還だ、いや本土並みだ、あるいは撤廃だということを言っておるけれども、施政権がなくなって、要するに返還をされて浮かび上がってきた個人の所有権との関係においては、一体どうなるんだろうかという問題が一つの問題点で、従来あまり議論されてなかったと私は思うのです。そういう点でお尋ねをするのですが、そうすると、観念的にそういうことはないかもしれないけれども、あるかもしれない。すみやかに決定をするということは時間的なズレがあるかもしれない。法律施行の後に決定があり得るということなんだ。しかし観念的にはその時間のズレがあるということ。そうすると法律が制定された、逆に言うと施政権のおもしがとれてしまって、そうして日本の憲法が適用されて、国または地方公共団体が使用すると決定をしないその時間の間は使用権限はあるわけですか、ないわけですか。ないとしか観念できないけれども、これは一体どうなのかという質問です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/156
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157・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
この第十二条は「この法律施行の際小笠原諸島に存する施設又は工作物」こういうことになっておりまして、その施設及び工作物というのは現時点におきましてはアメリカ軍がつくったものと、それ以外には、現島民の使っておるもの以外にはないわけでございます。したがって、現島民が使っているものにつきましては第九条で先ほど申し上げましたような形で処理されておりますので、ここで考えられるのはアメリカ軍がつくっているもの以外は、施設または工作物には入ってこないわけでございます。したがって、そういう意味で非常に特定された施設、工作物でございます。そういうことで、この特定された施設、工作物につきまして決定が、先生がおっしゃられるように時間的に多少ずれるということがありましても、実はそれはそういう条件づきの状態である、こういうふうに考えたらいいんじゃないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/157
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158・中谷鉄也
○中谷委員 考えたらいいのじゃないかと言ったって、そういうふうには考えないのですよ。考えたらいいのじゃないかというのは、お上のほうでそう考えたら御都合がいい。一種の政令委任主義なんですね。そういう考え方が困る。要するに基地を撤廃してくれという一つの立場の人、あるいは沖縄の場合で言えば、そういうことで自分の生活を強制と思われるようなかっこうで撤収されたといった人が、一体返還されたときにどういう観念をし、どういうふうに意識し、どういう感覚を持つだろうかということでお尋ねをしているわけなんです。だからいまのお答えは、お答えとして御自分でも答えになっていないと思われているのではないかとぼくは思うのです。率直に言って、アメリカ合衆国がつくったところの建物であり施設だ。それは特定しているということはよくわかりました。しかし、それは施政権に基づいてそういう建物がつくられ、工作物がつくられて、それで施政権のもとにおいて正当な権限を持っておった。施政権のおもしが取れてしまった。そうしてかりにおもしが取れてしまって、日本国憲法に基づく第十二条の諸手続との間に時間的なズレがあったとすれば、いま参事官がおっしゃった建物が特定しているとかアメリカがつくったとかいうことは全然関係のないことになってくるわけでしょう。あくまでもその関係は、先ほど民事局長が答弁されたように、すでに施政権者じゃないわけなんだから、個人対個人の関係になってくるはずなんです。そうすると自分の土地の上にアメリカ軍の施設があったとしても、それは不法占拠ではないか。少なくともこの第十二条の問題が、どういうふうな内容を持っていて、観念的だということの説明を私はあとで伺いたいと思うけれども、少なくとも時間のズレがあったその期間においては、個人対個人の状態であって、不法占拠ではないか。逆に言って、自分の土地を守るために、基地の中に入っていってもいいではないか。アメリカの基地を、自力救済で、こわしてもいいのだろうかという疑問さえ出てくる。そういう時間のズレがあったときに占拠できる権限、使用できる権限というのは、合理的に説明がつかないのではないだろうか。つくのだろうか。つかないと思うけれどもという質問なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/158
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159・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 先ほど申し上げましたように、施設は特定しておりますし、その使用につきましても一応はいままでアメリカ軍が使っていたということでございますので、その目的そのものが公用あるいは公共用という範疇に近いものとして使われている関係でございますので、そういう点につきましては先生の御指摘のような時間的ズレというものがそう大きくないような形で処理されることが十分考えられるわけでございます。これが特定していなかったりあるいは公用、公共用というような一般的にそれに類するものとして考えられないようなものでございますれば問題が生ずかもしれませんし、またこの施設、工作物が存しております土地の所有者が本土のほううにおります関係で、実際問題といたしまして所有者に通知するという場合に、所有者の住所その他もいろいろ調査しなければならないことも当然出てまいるわけでございますので、そういう第二項のほうの通知の問題ともからみまして、特に通知につきましては多少のズレが考えられるかもしれないわけですが、しかし第一項の決定につきましては、さっき申し上げましたようなことでございますので、その時間的ズレがないように、十分早く措置されることと私は考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/159
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160・中谷鉄也
○中谷委員 質問を終わります。——終わりますというのは、休憩に入りますので中断をいたしますが、おっしゃっていることは、時間的ズレがないようにするんだ、するんだとおっしゃるけれども、時間的に一秒でも一分でも、その法律的な説明はどうなるんですかと聞いているんですから、それを説明してくださいというのは、実務的、行政的に措置しますというんじゃなくて、一体法律的な問題はどうなるのですか、憲法上の問題はどうなるのですかと聞いているのですから、ひとつ再開後はその点にまつ正面から御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/160
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161・床次徳二
○床次委員長 残余の質疑は再開後行なうこととし、午後三時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。
午後一時三十一分休憩
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午後三時四十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/161
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162・床次徳二
○床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
中谷鉄也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/162
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163・中谷鉄也
○中谷委員 第十二条の問題についてお尋ねを、休憩前に引き続いて続けます。三項ですが、「使用の期間は、この法律の施行の日から五年をこえない範囲内」ということでございますね。そこで五年たった場合に、この問題の所有地は一体どのようになるのか。かりに引き続いて使用するという場合には、どのような手続を必要とするのか。この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/163
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164・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
この法律で、「施行の日から五年をこえない範囲内」といたしておりますが、これば施設、工作物の種類とか、そのある場所等によりまして年数をきめたいというふうに考えておりますけれども、もちろんこの期間が経過いたしますれば、必要ならば土地収用法によって、あるいはその他収用関係の法律によりまして、必要な手続、成規の手続をとって使用する、必要でないものはもちろん所有者に返すということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/164
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165・中谷鉄也
○中谷委員 そうすると、「五年をこえない範囲内」ということで、定められた期間が到来するまでに土地収用法に基づく諸手続が完了していなければならないという前提があるわけでございますね。五年たってから、土地収用委員会等の審査をするための、土地収用法の適用のための諸手続をとるというのではなしに、五年以内に土地収用法その他の手続を行なう、期間の到来までにはその土地収用法の結論を求めておる、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/165
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166・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 御説のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/166
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167・中谷鉄也
○中谷委員 そこで大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、午前中、民事局長にお尋ねをいたしましたが、この第十二条は憲法第二十九条の第二項ではなく、まさに第二十九条の第三項の解釈にかかわる問題であるということであります。ただ、この暫定法第十二条の第四項で、通常受ける損失補償の取りきめがありますが、第十二条の第一項、第二項以下の規定によりまして、現に使用しておる土地が、このような法の規定によって使用することができるという法根拠は一体何か、第十二条によってできるんだというのではなしに、このような条文を設け得る合理的な根拠は何か、憲法はこのようなことを予想しておったのだろうか。別の立場からお尋ねをいたしますならば、少なくとも使用については、使用するにあたっての手続を必要とするのではないか、そういう手続を省略したこのような使用が許されていいのかどうか、憲法上の問題としてお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/167
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168・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 非常に技術的なことでございますので、私から答弁さしていただきたいと思うのです。
先ほど民事局長が、第十二条につきまして、憲法第二十九条の第三項の問題についてお答えになったかどうかは私記憶しておりませんけれども、むしろ私の理解するところでは、この第九条及び第十二条は、同じような意味合いで考えておられるのではないかというふうに思うわけでございます。したがって、憲法第二十九条の第二項の問題として考えるほうが、この立案の趣旨には合っておるというふうに私は解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/168
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169・中谷鉄也
○中谷委員 法務省にお尋ねをいたします。
憲法第二十九条の第三項は、「私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」という規定であることはすでに論をまちません。この第十二条は、公用または公共の用に供するものについての使用に関する規定と補償に関する規定を含むものとして理解をいたしておりますが、まず、この第十二条について考えられる憲法上の条文は第二十九条であろうと思いますが、第二十九条の何項でしょうか。そうして、その点についてお答えをいただきましたあと、それが憲法の考え、憲法の精神と合理的に結合しておるかどうかというようなことについての御見解を承りたいと思いますが、最初にこの点についてお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/169
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170・住吉君彦
○住吉説明員 お答えいたします。
午前中の質疑の際に、民事局長がどのようにお答えいたしましたか、はっきり存じておりませんでしたけれども、おそらく民事局長は、例の現住島民の土地使用権、これにつきまして、この法律で法定賃借権というふうにきめたことは憲法に違反しない、その根拠は、第二十九条の第二項の問題である、こういうふうにお答えしておるのではないかと思いますが、ただいま御指摘のこの第十二条の公用のための使用権の設定の根拠も、また同一であると私は思います。
法定賃借権につきまして賃料というようなものをこまかい規定を設けておりますが、その賃料に見合うものが、ただいま先生の御指摘の第四項の通常受ける損失の補償ということになろうかと思います。したがいまして、やはり根拠は、ともに憲法第二十九条第二項の問題である、このように理解をいたしておりまます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/170
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171・中谷鉄也
○中谷委員 この点については、すでに国会の中でかなりいろんな委員会で、従前、ここ十四、五年の間に論議されておるところでございます。
しからば、念のためにお尋ねをしておきますが、憲法第二十九条の第二項だというお答えは、まさにそういう有権解釈として、従来の御答弁に従うものだとして、一言だけお答えをいただきたいと思いますが、アメリカ合衆国軍隊が使用していた区域をこの第十二条は含んでおりますか。それらのものがどのような意味合いで、「公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」という財産権内容制限の第二項とかかわり合いを持つのか。この点については、論議されているところではありますが、いま一度第十二条の問題としてお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/171
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172・住吉君彦
○住吉説明員 たとえば日米協定におきまして、本土内におきましても、米軍施設用地として若干の土地を提供するとか、また事例としては、土地収用というような、いわば伝家の宝刀を抜くという形ではなしに、土地所有者との話し合いで、通常私法上の賃貸借契約ということになっておろうかと思いますけれども、御案内のように、返還協定におきまして、そのような一応基本的な思想が盛り込まれておろうと思います。たとえばそういう土地の共同使用というような点も考えられるのではないかと思いますが、そういう意味合いにおきまして、やはり公共の福祉というものを離れて、この法律の根拠は考えられない、あるいは説明の順序が逆になったかもしれませんが、そのように理解をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/172
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173・中谷鉄也
○中谷委員 そのような国会論議になっていないようでございますね。たとえば「公共のために用ひる」という意義については、昭和二十二年の佐藤達夫さんの国会答弁、それから同じく昭和二十八年の内灘村の問題についての猪俣委員の質問に対する佐藤達夫政府委員の答弁などが有名な答弁としてあるわけですけれども、課長さんがおいでいただいておりますので、この問題はこの程度にしておきます。
その次にお尋ねをいたしたいと思いますのは、この第三項の中で規定されている「施設又は工作物の種類及び設置場所等を考慮して必要と認められる期間として政令で定める」とありますが、この場合の政令を定める考え方は、どういうふうな考え方で政令をお定めになったのか、これはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/173
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174・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
この「工作物の種類及び設置場所等を考慮して」というふうになっておりまするのは、工作物自体の耐用年数とかそういうものも関係してきますし、また現実にそのある場所が具体的に——私、主として考えましたのは、いま申し上げましたような意味で施設とか工作物の耐用年数等というような点を考えまして、何らかの形でその年数を考えるべきであろうというふうに考えましてあれしたわけでございますが、「設置場所等」という、やや広く期間を定める条件として掲げましたのは、やはり島々の事情によって多少は差があってしかるべきであろうというように考えられますので、そういうようなことを総合的に判断して、五年以内の必要と認められる適当な期間を定めたい、そういうふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/174
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175・中谷鉄也
○中谷委員 もう一度参事官にお尋ねをいたしますが、憲法第二十九条の第二項に基づくものであるということでございますが、第二十九条の第二項に基づくということ、そしてさらに第三項との関連の中で、この第十二条のような形で使用権の設定をすることが所有権制限の方法として許されるとする法律的な根拠、憲法上の根拠は一体何か。このような形で許されるわけは一体どういうことにその合理的な根拠を持つのか。本来、本土であるならば、当然土地収用法等の手続が最低限あるべきである。この点について、このような形が許されるとする合理的根拠というのはこの機会に明確にされなければならないと思いますが、ひとつ参事官のほうからお答えをいただきたい。同時に法務省のほうからも御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/175
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176・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 御案内のように、小笠原諸島は、けさほども申し上げましたように、二十数年間日本の施政から離れて、一つの秩序が形成されていたということを考えまして、本土におきまする土地収用等による使用権設定とは違う規定が設けられるということにつきましては、いま申し上げましたような特殊な事情ということが当然前提となっているわけでございまして、やはり小笠原諸島の返還という非常に特殊な事情ということに根拠を求め、そこはおける権利の調整ということに公共の福祉としての意味合いが出てまいるというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/176
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177・住吉君彦
○住吉説明員 返還前にすでにアメリカ軍政下と申しますか、アメリカの施政権下において、現にこのような土地、建物、工作物が使用されているということ。その使用自体については平和条約上その根拠があるということ。返還後、確かに、先生のおっしゃるように、国内法規に照らして土地所有者の承諾をまず得、もしそれが得られなければ、最悪の場合には土地収用法の手続にのっかるということが至当であろうかと思いますが、これは物理的に——と言いますと的確な表現でございませんが、返還後そういう手続がとられるまでは不法占有であるという状態を放置するということは問題があろうかと思います。すなわち、返還時点を目安にただいまから土地収用の手続を開くということは、これは法理的な要件を欠きますし、また返還後土地収用法に準ずる手続をとるにいたしましても、それはいま申しますような物理的といいますか、客観的に不可能な状態にある。そういう意味で、この法律にその根拠を求める、このように理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/177
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178・中谷鉄也
○中谷委員 参事官にお尋ねいたしますが、ただいまの法務省の御見解と、先ほどの参事官の御答弁とは、同趣旨と伺ってよろしいとするならば、物理的、客観的に見て土地収用法の適用等ということは不可能ではないか。したがって、かりに施政権のおもしが取れたという場合に、所有権者の場合から不法占拠だというような状態であることはかえって好ましくないのだ、こういうふうに私はいまの御答弁を理解をしたわけですが、そうだとするならば、結局期間の問題は、かりに十年というふうな期間を定めてあったとするならば、それば憲法のどこかの条文に触れる、少なくともそのような使用権の設定は許されないということになるだろうということなのか。この場合は五年ですね。客観的、物理的に、土地収用法の適用をして、そこの可否を判断するいとまがないということならば、逆にいうならば、土地収用法の適用に必要な期間が使用権の期間として相当ではないか、五年は長過ぎるじゃないかという議論が成り立つと思うわけなんです。五年とされた根拠は、ごろがいいから五年にしたというわけではないわけでしょう。そうすると、客観的、物理的に土地収用法の適用をするために必要な最小限の期間が五年だということで五年ときめたのか。それとも、この期間五年ということには、その余のファクター、その余の要件、要素、条件が相まじわって期間が五年ということになったのか。五年ときめた根拠は一体何なのか、主たる理由は何か。これは参事官のほうからお答えいただいて、法務省のほうから、五年ということが先ほどの御答弁との関係においてどういうふうな意味合いを持つかを御答弁いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/178
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179・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
法務省の課長さんから物理的云々という御説明がありましたけれども、もちろんそういうことであることば間違いないわけでございますが、私その物理的という表現の中にある理由ということを申し上げますと、これは私が先ほど申し上げましたような意味でやはりいままで合法的に使われていた、一応そういう形でアメリカの施政権下において使われていた、そうして、今度返ってくるについてやはりそこに所有権者との調整が必要だという意味、そういう意味が基礎にあるわけでございまして、そういう一応合法的に使われていた、それを調整する必要がある、しかし土地収用法の手続をとるには何といってもむずかしい、すぐに収用法の手続をとるわけにいかないという意味において物理的に不可能だというふうに説明されたものと私は解釈しているわけでございます。いずれにいたしましても、この第三項におきまする使用期間というものはできるだけ短い期間の間に収用法の手続がとれることが望ましいというふうに私は思うわけです。これは第九条におきまして十年というふうにいたしましたのとは必ずしも先生のおっしゃるようにごろがいいからというわけではなくて、やはり第九条の場合には何しろ民法的な関係だけでございます。しかし、こういう公共用ということになりますと、少なくも収用法その他の手続があるわけでございます。そういう意味で収用法その他の手続によってできるだけ早く本土のといいますが、いまの本土で適用されている法律関係で規律されるのが、できるだけ早くそういう状態になるのが望ましいということは当然言えるわけでございます。第十二条第三項におきまして「五年をこえない範囲内において」というふうにいっておりますのも、先ほど申し上げましたような意味で、工作物の種類により、あるいは島々の事情によってその期間は差があるかもしれませんけれども、できるだけ短い期間内であるようにという含みは当然持っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/179
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180・住吉君彦
○住吉説明員 先ほど第十二条の憲法論について、憲法上、第十二条の立法の理由は憲法に抵触しないか、こういうような趣旨の御質問がございまして、第十二条自体は憲法第二十九条第二項を根拠にしてその合法性といいますか、憲法上の問題はないと、このようにお答えいたしました。私は第十二条自体はそのように解釈いたしますので、五年とあるのを十年とした場合にどうかという場合に、その十年と期間を長くすれば憲法違反のにおいが濃くなるといいますか、そういうようなことはもちろん考えておりません。したがいまして、五年が十年であっても、これは憲法上の根拠といいますか、憲法違反という問題のといいますか、理論的な根拠は、先ほどお答え申し上げたとおりでございます。いま総理府の参事官のほうからお答えございましたように、ただ十年、二十年というような規定のしかたよりも、この案にございますように、施設、工作物の種類とか、あるいはその設置の場所という具体的なものをとらえまして、そうして公用使用するということでございますので、五年というか、返還になりますればできるだけ国内の法規に照らして規制していくのが望ましいことでございますので、五年をこえない範囲でしかも政令で定める期間、五年未満の期間でできるだけ早く、こういう趣旨に読み取れると思います。そのほうが妥当であるということは異論がないのじゃないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/180
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181・中谷鉄也
○中谷委員 いまの法務省の御答弁は、私は一つ危険なものがあるのではないかと思います。そうすると、九十九年という定めがあった場合は一体どうですか。私が申し上げたいのは、国民の財産をそういう手続によらないで収用するということ、これは不当だと思うのです。この場合でも、五年たてば引き続いて使う場合には土地収用法の適用をせざるを得ない。土地収用法というのは、収用される人間にとっては非常に権利の制限になる法律であるけれども、土地収用法があることがまた収用される土地の所有者にとってはただむやみやたらに持っていかれる立場からいうと、保護規定であるわけですね。そういう保護規定である土地収用法という法律を九十九年も——あなたのお話では、期間の定めは全然関係ないのだ、憲法上の問題は生じないというのだから、九十九年も適用しなくてこの暫定法において使用できるのだという規定も憲法違反になりませんか。少なくとも乱暴な話ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/181
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182・住吉君彦
○住吉説明員 先生のほうでの御質問が、五年を十年とした場合にどうか、こうおっしゃいましたので十年と答えましたけれども、九十九年というのは、従前九十九年というようなものを私も学生時代に、それはもう永久的な、永代使用権といいますか、そういうふうなものになってしまうというふうに昔よく法学上九十九年という期間はそのように聞かされておりました。それはおっしゃいますように具体的な妥当性を欠いておると思います。ただ、現実の工作物、それから施設というようなものを見まして、それを九十九年も縛りつけて国のほうで使うのだ、あるいは公共団体で使うのだ、こういうようなことはこれは妥当性を欠く、憲法違反の疑いがきわめて濃厚な考え方であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/182
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183・中谷鉄也
○中谷委員 そこて私がお尋ねをしたのは、要するにすみやかに本土法を適用するという考え方からいうならば、この場合の本土法というのは土地収用法なんだ、土地収用法が物理的に客観的に適用できる状態がないから第十二条の規定を設けざるを得なかったのだとこういうようにおっしゃる。そうすると、土地収用法が適用できる期間というのは一体具体的に見て何年か。五年というのは、私はそんなにかからないと見る。だから、そんなにかからなくて、しかもそういうふうなものを十年にもするというふうなことは、これはきわめて安易に土地を使用することになるじゃないか、憲法違反の問題だって起こってくるぞとぼくは申し上げた。しかし問題は十年とは書いてないで、五年と書いてあるから、五年の中で議論するのです。
じゃ、ひとつお尋ねしますけれども、工作物の種類、設置場所を考慮して必要とされる期間と、こうあるが、工作物の種類はどんなかっこうでその期間に影響を及ぼすのですか。堅固な建物とか普通の建物とかあるいはまた工作物の使用目的とかが、どれがどういうふうに期間の長短に影響しますか。設置場所はどのようなかっこうで期間の長短に影響しますか。そういうふうなことは土地収用法を適用し得るかいなかという問題とは別個の特殊具体的の事情になりまするが、この点についての基準はお持ちなんでしょうか。法務省。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/183
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184・住吉君彦
○住吉説明員 私のほうでは、現実の施設、工作物の種類、それからその場所、これについての理解がございませんので、その基準、どういう工作物についてはたとえば政令で定める期間一ぱい、どういうものについてはそれ以下というような基準があるのかという御質問でございますけれども、その基準については実情を十分理解しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/184
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185・中谷鉄也
○中谷委員 参事官にお尋ねしますが、いわゆるその実情はわからなくても、そういう基準の立て方の一つのルールというものは私はあってしかるべきだと思うのです。そうすると、一体、工作物の種類、設置場所等がどのように長短に影響するか、設置場所がどのような場所の場合には五年の短いほうになり、こういう設置場所の場合には十年の長いほうになるという一体その判断基準、政令基準は何ですか。設置場所でひとつお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/185
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186・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
設置場所を中心にというお話でございますので、たとえば硫黄島を例にとってみますと、硫黄島の場合は非常に激戦地でございまして、ほかの島々の場合ですと、まだ多少の境界その他はある程度わかるわけでございますが、硫黄島の場合には激戦地であったということから、そういう土地の区画関係が完全に破壊されまして、非常にその認定がむずかしい状態にあるのじゃないかと思います。そういう状態を考えますと、やはりその使用関係のあれにつきまして、正規の土地収用法の手続をとり得るような状態にいろいろな資料を整理するのに、相当の時間がかかるということが当然考えられるわけでございまして、そういう意味から申しますれば、やはり先生の御指摘のように、確かに工作物の種類とかあるいはその島がどこにあるかということだけで考えますれば、それほど問題はないわけでございますが、いま申し上げましたような事情を考えますと、やはり土地収用法によって手続がとり得るような状態が一体いつ来るかということに関係してくるのではないかというふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/186
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187・中谷鉄也
○中谷委員 第十三条から第十五条までの質問がすっかり残ってしまいましたが、第十二条も問題点を整理してあとであらためてお尋ねいたします。
農林省からせっかくおいでいただいたので、一点だけひとつお尋ねしておきますが、第十三条第四項の「政令で定める特別の理由がある場合でなければ、同項の申出を拒絶することができない。」となっていますね。この政令で定める「特別の理由」とはどんな場合がありますかというのが質問の第一点。
第二点は、第十三条以下の条文を拝見いたしまして一つ疑問に思いましたのは、賃借りの申し出をしたところが、あなたには借しておりませんという場合には、これは一体どの条文でその場合には調整をするのか。この点、非常に私素朴な疑問を感じました。あるいはまた賃借りの範囲についての争いがある場合、これは一体どうなるのじゃというようなことについて疑問を感じた。これは一体どうなりますか。農林省のほうからお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/187
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188・小山義夫
○小山説明員 初めの第十三条の第四項の「政令で定める特別の理由」というのは非常に限定するつもりでおりますが、たとえば、規定をする予定にしておりますのは、賃借人のほうから権利を放棄した場合あるいは賃借権を譲渡、転貸をした場合、あるいは賃借人の側から一方的に解除をした場合、解除権を行使した場合というふうな場合等をいま考えております。いずれにしても、非常に特殊な場合、賃借権自身のほうから放棄したような場合に限定をいたすつもりでおります。
それから二番目の御質問の、かつて基準日現在において賃貸借関係があったかどうかということについて争いがありましたときには、これはやはり訴訟で最終的には解決をはかる以外にはないというふうに考えております。もちろんその過程においていろいろ行政庁が間に入ったりとかなんとかという事実行為は指導でいたしますけれども、法律的に最後の決着をつけるのは訴訟以外にはないのじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/188
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189・中谷鉄也
○中谷委員 そうすると、まずそもそも問題になるのは、百十番地を私は借りておったという申し出をした場合に、あなたには百十番地を貸してない、百十一番地だという場合にはまず争いになる。百十番地のうちABCDで結んだ範囲内を借りておったというふうに申し出をしたところが、ABCと三角形の部分だ、あとの部分は貸してないということだけでもこれはまた争いになる。ジャングル化しておるところでそういうことが争いになるとすれば、一坪違っただけでも争いになってしまう。申し出があっても拒絶事由というものが生じてくるのだろうが、その部分についてだけだといっても、何か非常に問題が出てくると思うのです。そうすると、こんなことを訴訟で解決せざるを得ないのじゃないか。私も条文を読んだけれども、そんな争いが一番予想できると私は思う。一々訴訟でやっておったら、これは話にならない。逆に地主のほうから申しますと、賃借人に対して、私はあなたに貸してないとか、貸している部分が違うということを言っただけでこの第十三条以下の特別賃借権の規定を事実上かなり空洞化することができるのじゃないか。そういうようなものについて行政庁の努力ということですが、東京都知事のあっせんという規定が第十三条の第七項にございますね。この第七項のあっせんは「賃貸借の借賃その他の条件について当事者間に協議がととのわない」となっておる。本件の場合はそもそも賃貸借の成否そのものについて争いがある場合だとは思いますが、この第七項のあっせんはそういう場合も予想しておるとはお答えいただけませんか。そういうふうな法律解釈はしておられないのですか。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/189
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190・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 ただいまの御意見のとおり私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/190
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191・中谷鉄也
○中谷委員 農地課長さん、御答弁をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/191
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192・小山義夫
○小山説明員 同じ意見でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/192
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193・中谷鉄也
○中谷委員 第七項の規定は、法律的にと申しますか、条文どおりに読めばそれは何か入り込まないとも読めますね。「賃貸借の借賃その他の条件」だから、そもそも賃貸借があることが前提になっておるようなことだと思いますけれども、私はそういう読み方はやはりこの機会にすべきではないと思う。第七項はいま私が指摘し、参事官が答えられたように、賃貸借の成否、賃貸借の物件の範囲、存在等について争いがある、あるいは話がまとまらない、協議がととのわない場合もあっせんの対象になるのだ、これは解釈として何かちょっと幅が広いと思うけれども、事実上東京都知事にそのようなことがあるという有権解釈というか、これはひとつ確認をしておいていただくことが今後の小笠原復興のために私はいい解釈だと思うので、この点は念のためにお願いをしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/193
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194・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
この法律は、第二条におきまして帰島の促進、それから帰島された方々の生活の再建等について十分国それから関係都道府県の、あるいは市町村も含みますが、責務としてそういうものを規定しております。そういうことから考えましても、先生御指摘のように、あるいはこの条文は読みづらい点があるのかもしれませんけれども、立案者といたしましては、やはり先生の御指摘のようなことも考えているわけでございまして、行政庁として、そういう争いが少しでも少なくなるように努力するのはあたりまえのことだというように考えますので、十分この規定を活用してまいりたいと思っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/194
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195・中谷鉄也
○中谷委員 最後に一点だけお尋ねして、私の質問を終わりたいと思います。
これは長官にお尋ねをいたしたいと思います。あと第十三条あるいは第十二条の残った部分についての質問は、別に機会を与えられたらお尋ねをいたしますが、本日長官からお答えをいただきたいのは次の事項です。あと農地課長にもこの点について一点だけお答えいただきたいと思うのですけれども、硫黄島の戦没者の数というのが陸軍が一万二千七百二十三名、海軍が七千四百六名、合わせて二万百二十九名という陸海軍の軍人が玉砕をいたしました。戦闘経過等は当時の戦史によって明らかであります。そこで、何はさておいても、返還されたこの時点において必要なことは遺骨の収拾であるということは、これは長官もお認めいただけるだろうと思います。これはもう私は端的に申しまして、党派をこえたところの国民の悲願であろうと思います。ことに遺族にとりましては、自分の父や自分の兄を失った人間にとりましては、あるいは夫を失った人にとっては、これは最大の希望であろうと思います。
そこで、われわれはいまこの暫定措置法を審議しておるわけでありまするけれども、遺骨収拾ということについて政府はどのように考えているか。まず私が確認的にお答えをいただきたいと思って申し上げるのは、まずこれはあらゆることに優先したところの仕事であろうと思うがどうかという点をひとつお答えをいただきたい。
第二点としては、はたしてしからば予算的な措置は一体どうなっておるか。いつから着手するか。これは本来厚生省援護局のお仕事であろうということでありますが、これはやはり私は国をあげての事業だと思うのです。こういう点で、私はひとつこの問題にお取り組みになっておられる長官の決意を承りたい。同時に、私はこういうことは起こることではないと思うけれども、一つだけ、私自身この法案を調べていった中で生じました一つの疑問を提起して、これは農林省のほうからもお答えをいただきたいと思うのですが、感想的にひとつ長官の御答弁をいただきたいとも思います。かつて硫黄島には農事試験場があったらしい。そうして薬草栽培をしておったという。そういうふうな復興計画だ。復興だということで薬草栽培をしておった方が、だれが行くかわからないが行って、硫黄島と薬草と何か関係があったと思うのですが、もしかりに、父島以外にはとても行けない状態で事実問題としてそういうことはないだろうと私は思うけれども、もしそういうことで栽培に着手したということになると、遺骨収拾よりも栽培が先に行ったということになると、これは私は遺骨の収拾にかなり支障を来たすと思う。しかし暫定措置法のどこを見ても、自分の土地で耕しちゃいかぬというふうなことは書いてない。しかしもしかりにそのようなことが行なわれるとするならば、そういうふうな土地の所有者に対しては、ひとつ国民としてそういうことについては協力をしてもらいたい、了承をしてもらいたいということで、何らかの了解をとるようなことをしても——これは私は先ほどから憲法第二十九条の財産権の制限について、所有権というものが個人の一つの大きな基本的人権であって、みだりに制限すべきではないということを主張してきたけれどもそういうことをお願いすることは、私は決して国民全体の気持ち、それこそ公共の福祉に反するものではないだろうと思うのです。この点についてひとつどうですか。
それからひとつ大臣の個人的な御見解を承りたいと思うけれども、遺族の人あるいは自分の戦友がとにかくこの硫黄島で戦死をした、そういう生き残った戦友、こういう人が、しかも作業的な能力を持っておる人、遺骨収集の技術者でもある人が、ひとつ自分がそういうところに行って遺骨を収集したい、父親の遺骨を自分たちが作業の中で集めたい、戦友の遺骨を集めたいという人がおった場合には、これは災害についての、いろいろな危険な問題についての保障をどうするかというような問題があります。しかしそういう技術者であったというような場合には、優先的にそういう人を採用して行かすとか、あるいはもしかりに奇特な人があって奉仕しましょうという人があった場合には、そういう人の奉仕を受けるということもあってもいいのではないか。やはり何としても、当時私たちは戦場には立たなかったけれども、もうほんとうに自分たちの先輩がここで戦死をした、こういうように一つの歴史的な経験というか、人間としてこのことについて大臣の御答弁をいたきだたい、こういうことで最後にお尋ねをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/195
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196・田中龍夫
○田中国務大臣 ただいま御質問の御趣旨は全く同感でございまして、あらゆる問題に優先いたしまして、この御遺骨の収集なりお祭りということを考えなくちゃならない、かように考えております。
なお、この件につきましては、先般も五月の四日、五日にかけまして、厚生省の援護局の大野次長、ここにおりまする守谷君や関係者、陸幕の次長でございますか、それから外務省関係者が、いまの硫黄島の御遺骨の収集について何とかしなければならぬというので、現地に参りましていろいろ調査をいたして帰ったのでございます。
今日までの経過でございますが、もうすでに中谷先生御承知と存じますが、二十七年、八年に和智大佐が参りまして、そのときに九十一体を収容してまいりましたが、その後は硫黄島におられました方々が墓参りにおいでになるだけで、遺骨収集という行為はなされなかった。先般の調査の結果、約三十体ばかりの御遺骨を発見いたして帰っております。
ただいまのお話しの薬草栽培、これは硫黄島産業とかなんとかいう薬草会社がもとあったそうでございますが、これらはただいまのお話しのとおり、何しろ硫黄島の場合には不発弾の処理やら、それからまた御遺骨の収集やら、ことにこれは八十カ所ばかりの坑道があったそうでございますが、非常に地面も荒れておりまして、ほとんどもうわからないような状態でございます。ようやく二十カ所ばかりの入口は現在発見されております。
何をおきましてもこの御遺骨の収集、並びにこれに対しまする御遺族なりあるいはそういうふうな方々に対しましての問題をまず解決したい、これはもうわれわれのほんとうの念願でございます。
硫黄島の関係は、ただいまお話しのように二万人余の戦死がございましたけれども、その中でたまたま負傷して終戦になられて帰られた生き残りの方、それから捕虜になられた方、こういうふうな方々が約千名ばかりおられまして、硫黄島協会というのをつくっておられます。先般もその世話人会がございましたので、私どものほうもぜひひとつそういうふうな生き残りの方々が戦友の御遺骨の収集でありますとか、あるいはまたなくなった御遺族に対しましてのいろいろな計画をどうかわれわれと一緒にやっていただきたいというお願いをいたしたような次第でございます。この問題はほんとうにお話しのとおり、硫黄島に関しましてはまずもって解決しなければならぬ最も焦眉の問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/196
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197・床次徳二
○床次委員長 吉田泰造君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/197
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198・吉田泰造
○吉田(泰)委員 小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案につきまして質問をいたします。
まず冒頭に、この法案の趣旨の一つの大きな眼目でありますところの、旧島民の帰島及び生活の再建に配慮するということがございますけれども、冒頭に質問いたします。旧島民の現状ですね、それからもちろんこれについてはあとの質問で触れますけれども、復興計画とかそういうことがないと、なかなか帰島の意思の決定ということも現状ではむずかしかろうという、正確なものはつかみにくいかどうかわかりませんけれども、大体旧島民の帰島する意思といいますか、どの程度どういうようになっておるか、まずお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/198
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199・田中龍夫
○田中国務大臣 旧島民の方々がただいま三千九百五世帯ほどわかっておりまして、総理府のほうではこれくらいの方々に対しまして、帰島の意思の有無でありますとか、いろいろな意識調査をいたしてまいったのでございますが、この三千九百五世帯の中で、返事が参りましたのが千八百七十一件でございます。それで、なおこの意識調査のこまかい内容等々は担当官から申し上げますけれども、大体におきまして、ぜひ帰りたいという希望を述べました方々が、世帯別に見ますると四〇%、人員別に見ますると二七%に相なります。それから、いまはまだ帰るとも帰らないとも考えられないというような方が、世帯別では一三%、人員別では二五%。それから大体帰ると思うというような方々が世帯別では一四%、人員別では一三%、こういうような状態でございまして、これを小計いたしますると六七%の世帯別、それから六五%の人員別の方々に相なります。それからもう一つ、別に帰るつもりはないというような返事が、世帯別では三二%、人員別でも三二%でございます。また大体帰らないと思うというのが、世帯別に一%、人員別では三%、これを小計いたしますと三三%の世帯別、三五%の人員別の意識調査の結果になっております。しかしながら、こういう問題は先ほど来いろいろとお話も出ました、いわゆる国なりあるいは東京都なり、こういうところの先行役資がはたして一体どの程度なされるか、まあ、帰りたいという方々も、ロビンソン・クルーソーみたいなことで、ジャングルの中へ一人で飛び込んでいってというようなことではないのでございますから、やはり国のこういういろいろな措置やあるいはまた先行投資がどうするかということと非常に相関性を持っておる。でございますから相対的に変動性がある、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/199
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200・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 少し補足させていただきます。
いま長官から言われましたように、三千九百五件調査をしたわけでございますが、ただ、住所が不明だとかあるいは重復していたとか、あるいは相手が死亡していたというようなことで六百四件ばかり返ってきておりますので、まず対象として考えられますのは、いまの三千九百五件から六百四件を引いたものが対象ということになります。そして長官の言われましたように、そのうちの千八百七十一件が返ってきた、これは五七%ということになります。郵送で調査をしたものでございますので、一般的に郵送による調査というのは、六〇%といえば非常に大成功だ、こういうふうにいわれるわけでございますので、五七%ではまだもちろん少ないわけでございますが、大体郵送としてはあるいはこの程度でしょうがないかもしれないというふうに思っております。ただ、何しろ今後の帰島の準備、私らが帰島を援護するについての必要な意識調査でございますので、まだ出してない方についてはさらに督促をするなり何なりして、その意識をはっきりつかみたいというふうに考えているわけでございますが、いま申し上げましたようなことで、五七%の回収の中で、いま長官の言われましたように、大体帰りそうだという者は人員で六五%程度だということになります。かりにまだ回収してない方々はまず帰る意思がないというふうに判定をいたしますと、まあ四〇%ぐらいになってしまうだろうと思います。そういうことでございますと、まあ七千七百あるいは九千人というようなことを考えた場合には、三千から四千ぐらいに、いまのように帰りたい、大体帰ると思う、あるいはまだちょっとあれだけれども帰る可能性があるという方々は、その程度になるのではないか、これは私の推定でございますが、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/200
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201・吉田泰造
○吉田(泰)委員 いまの長官と参事官の御答弁で、大体旧島民の帰島の意思、そういうことはよく了解できたのでございますが、国なりあるいは都なりの先行投資あるいは復興計画、そういうことを期待しない意思なのか、期待して帰島しようとする意思なのか。私がこれを前段で御質問申し上げますのは、実はこれからのいろいろな法案の暫定措置でございますけれども、せんじ詰めたらいろいろ問題点はあろうかと思うのです。ところが、大体現状のままの姿で帰島するということになってくると、いまデータがなかったような、先行投資をあまり期待しないで、要するに生まれ故郷に帰りたいんだということになると、それはたいへんなことになるんだと思うのです。幾らの人口になるか、その人口をささえていく、もちろん交通機関やいろいろなものも必要でございましょうが、そういうことは当然国なり都なりで何とか手を打ってくれるだろうという期待感、あるいはそういう国の政策におぶさった上の期待ですね、そういうようなことがある以上、帰ったままでほうっておくということは、これはできない。国としても都としてもどんどん投資をやっていかなければならぬだろう。私がここで申し上げたいのは、この暫定法案をつくるについて、むしろ復興計画といいますか、あとで二、三御質問申し上げたいのですが、そういう青写真を早く出して、こういうふうにして小笠原をこういうように利用したいんだ、その他の問題でも、あとで御質問いたしますけれども、こういう考え方の上でやっていかないと、島民よりか帰島する人のほうが人口比率がうんと大きくなる。大体どういうような人口になるだろう。現状のままの認識でどのくらい小笠原諸島に住もうとしておるのか、いま本土におる人がですね。現地に住んでいる現島民の数と将来予想される人口、そのアンケートのままの人口だと幾らぐらいの人口になるのですか、大体の予想だと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/201
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202・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
ただいま長官が述べられましたように、ぞひ帰りたい、これが人員で二七%というふうになっております。大体帰ると思うというのが一三%でありますが、合計いたしますと四〇%ということになります。そのほかのもう一つのあれといたしましては、まだ帰るとも帰らぬともきまっていないが、帰る方向だ。そういうところは、先生御指摘のように国なり都なりの投資によって意思がはっきりするというものではないかというふうに考えられますが、これが二五%ということで、先ほどの四〇%と二五%を比較いたしました場合には、もちろんいまの二五%というのは少ないのでございますが、しかし全体といたしまして相当なウエートを占めておることは間違いないわけでございます。そういう意味で、この帰りたい、帰る意思のある、少なくともある条件がそろえば帰る意思があるという方にはぞひ帰っていただきたいというのがわれわれ関係者の気持ちでございます。したがいまして、その点につきましては十分小笠原の開発につきまして、できるだけ早く帰島者の意思が確定するように配慮をしなければならない。これはおそくなるということはやはり帰島者の立場からいいましても非常に不安がいつまでも続くということでもございますので、そういうことを考えれば、できるだけ早く御指摘のようなその点について、国あるいは都の間で十分配慮しなければならない、そういうふうに思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/202
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203・吉田泰造
○吉田(泰)委員 旧町民のことについてはあとでまた質問いたします。もう一つの柱が、現島民の生活の安定という二つの柱があると私は思うのです。その現島民の生活の安定は、ほとんどがアメリカ軍の基地勤務という現状だそうでございますが、これは返還になると、生活に対する不安とかいろいろなことがあると思うのです。
そこで、まず冒頭に現島民の生活の安定ということでお伺いいたしたいのですが、残った基地がこれは自衛隊に引き継がれるという話を聞いておりますけれども、それはどういう根拠で引き継がれるのか。どういう条約によって、どういう形で米軍の基地を自衛隊に引き継がれるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/203
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204・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
これは昨年十一月の日米共同声明によりまして、小笠原の防衛につきましては、漸次、日本政府のほうで引き継いでいくというくだりがございますが、そういう意味で共同声明によってそこの防衛につきましての責任を引き継いでいるわけでございます。したがいまして、法律的にどの規定に基づいているというようなことではもちろんございませんが、この暫定法によって必要な施設等は、先ほどの中谷先生からいろいろ御質問がありましたような第十二条の規定等によりまして施設等は一応の使用権等を認められておりますので、そういう形で引き継いでいくわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/204
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205・吉田泰造
○吉田(泰)委員 いまの法律的な根拠ということについては、別の機会にまた御質問を申し上げることにいたします。
防衛庁にお伺いいたしますが、いま小笠原に残されております米軍の基地ですね。これが防衛庁において引き継ぐ計画がございますかどうかということですね。どういう形で引き継ぐか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/205
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206・今泉正隆
○今泉説明員 お答えいたします。
現在米軍が所在しております部隊及び施設は、父島には海軍の部隊及び施設がございます。硫黄島には空軍の部隊及び施設、また沿岸警備隊及びその施設がございます。南鳥島に沿岸警備隊の部隊及び施設がございます。このうち協定によりまして硫黄島と南鳥島の沿岸警備隊が使用しておりますロランステーションは、これは引き続き米軍が維持するということになっておりますので、原則といたしましては、自衛隊は、ロランステーションを除く米海軍あるいは米空軍が使用しております施設を引き継ぐ計画を持っておりますが、その中には返還後、小笠原の開発のために、民生安定上また必要な部分もございます。その部分まで自衛隊で引き継ぐという考えは持っておりません。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/206
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207・吉田泰造
○吉田(泰)委員 これは参事官にお伺いいたしますが、いまの防衛局の第一課長の御答弁で、基地の現状、残された米軍の一部の基地と、現在の島民の離職者対策といいますか、その点について、これは具体的な質問なんですが、小笠原の復興のためにも、いま現在の米軍の基地そのままを防衛庁が引き受けるのではない。大部分を引き受けるのだろうと思うのです。そうした場合、現在米軍によって生活を維持している島民の数、そのくらいの数は実際は離職をしても、防衛庁が引き受けたら吸収できる能力があるのか。これはほんとうに具体的な質問なんですが、そのくらいのことは吸収できるのか、あるいは離職者対策ということを言っていますが、これは何ぼ離職するという前提でこの暫定措置をつくられたのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/207
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208・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
現在米軍に雇われております人員は五十七名でございます。ただこの中には、かたわら漁業をやりながらつとめているという方もいるわけでございまして、フルタイムで働いている方は大体三十名くらいだろうというふうに調査ではなっております。したがいまして、さしあたってもちろん五十七名全体が一応離職するわけでございますが、漁業をやっている方にはひとつ漁業に専業してもらうということも、今後の漁業の振興のあれによりまして十分考えられるわけでございますし、あとほかに漁業兼業という形でなくて米軍にずっとフルタイムでつとめていた三十名の方々につきましては、この法案におきましても国の機関あるいは都の機関等で、それ以外にも公共的な施設、機関におきましてはぜひ島民を採用してほしい、こういう趣旨の規定も設けているくらいでございまして、この三十名の方々についての離職対策という点につきましては、国の機関、特に防衛庁においてどの程度引き受けていただけるかということは、いま私から申し上げられないわけでございますが、しかし、旧島民が心配されておるのはもちろんよくわかるわけでございますが、われわれとしてはその点十分配慮いたしまして、現実には心配がないようにいたしたいというふうに考えておるわけでございます。ただ、さしあたっていろいろ防衛庁とかあるいはその他の機関で採用していただくにつきましても、現島民の方々の技術的なといいますか、いろんな就職上の能力の問題もあるかと思います。そういうようなことで、数だけで合わせるわけにもまいらぬと思います。いろいろ就業指導ということも必要になってくるわけでございますし、その点につきましては、この法案におきましても第六条でひとつ十分指導して、空白があまり長くならぬように配慮した上で就業させたい、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/208
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209・吉田泰造
○吉田(泰)委員 きょうは防衛局長に来ていただいて聞きたかったのですが、これは防衛局の第一課長さんにお伺いいたしますが、その協定によって引き継いだ施設ですね。防衛庁が小笠原に占める——将来防衛庁は戦略的にとういうふうに考えて、どういうふうに対処しようとしているか、そうすると、われわれ国民は小笠原に対する基地の変わったものとしてどういうものが生まれるだろうかということも考えておると思うのですが、将来戦略的にどういうふうに防衛庁はあの小笠原を利用しようとしておるか、これについて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/209
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210・今泉正隆
○今泉説明員 お答えいたします。
小笠原につきましては、現在の戦略上の地位といいますか、価値としましては、まず平時訓練、特に海上自衛隊の訓練を行ないます場合に有力な訓練上の基地になり得ると考えております。また有事の際には、一つば対潜——潜水艦に対する哨戒を護衛艦が行ないます上での有力なる基地になり得ると申し上げられると思います。さらにまた、この地域はいわゆる南東航路上の主要な中間地域に当たりますので、これもまた有事の際でありますが、たとえば船団護衛等の海上交通を確保してまいります上にも重要な地位を占めるものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/210
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211・吉田泰造
○吉田(泰)委員 大体現在の島民がそういう形で、あるいは離職者対策の一環になるということは、側面的に憶測はできたのでございますが、先ほども中谷委員からいろいろ詳しい法律的な質疑がございましたので、専門的なことは私よくわかりませんが、土地のことにつきまして、土地のいわゆる登記簿が焼失しておる、家屋台帳だけであるというようなことでございますが、実際それで現島民と比べて帰島したいというその数のほうがうんと多い。その間に非常にトラブルが起こるであろうと思うのです。大体現在の政府の考え方で公平ないわゆる正しい所有権の確認が、私は資料を見ていないからわかりませんが、でき得るという状況ですか。東京都にある現在のいわゆる家屋台帳あるいは土地台帳、それによってその信憑性というか、そのこと自身が正しい所有権の確認ができるかどうかということが第一点。
もう一つは、現在使っておる現島民と帰島した人とのトラブルということで、建物なんかは自分の力で建てたらしいという状況報告を読みましたけれども、土地なんかの場合、各人の意思によって適当に使っているというような現状らしいですね。そういう場合に画一的にそのことが賃借権を認めて坪数とかいろいろな点で公平にできるかどうか、そういう点でそういう見通しがあるのかないのか、この点についてはどうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/211
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212・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 土地の境界の確認等の問題につきましては、いま先生のお話にございました、先ほどもなにしております土地台帳及びその付属図面でございますが、それが書類的には唯一の資料ということになります。したがって、これを十分活用し、また現地におけるいろいろな目安になるものをこれで調査いたしまして、また一方測量をやりまして、その問題につきましては、問題は非常にむずかしい問題だと思いますけれども、やはりわれわれ関係者といたしましては、その問題をできるだけ争いが起きないように努力するのはあたりまえのことでございますので、十分その点配慮をしていきたいというふうに考えているわけでございます。
第二点につきましては、現在現島民が使っております土地の広さは大体が五百平方メートルないしは千平方メートルということで、平均して六百五十平方メートルということでございます。東京あたりの宅地と比較しますればもちろん相当広いわけでございますが、しかしその点につきましては、建物の利用上、合理的な面積のものは当然に賃借権設定のあれとして認めていくわけでございますので、この点もちろん問題が、争いがありますれば、小笠原総合事務所長のあっせんということで行政的には十分な指導して、争いが生じないようにしていきたいというふうに考えおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/212
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213・吉田泰造
○吉田(泰)委員 これは大臣にお伺いいたしますが、小笠原開発の問題についていま冒頭に二、三の現島民の問題について、あるいは帰島島民の問題、それについて御質問申し上げましたけれども、こういうことを考えてみると、相当な小笠原帰島の意思を持った人もおる。と同時に、現島民の生活を確保しなければいけない、そういうことで、漁業あるいはその他の企業で小笠原を政府はどういうふうな開発計画の展望、プログラムを持っておられるか。それがないと、私はいわゆる暫定措置法をつくってみても、仏つくって魂入れずで、ほんとうの意味の帰島島民あるいは現島民の生活の安定はないと思うのです。政府並びに都は、たとえば輸送問題一つにしてもどういうふうにしてやるのか、それによって先行投資によって、また帰島する、郷里へ帰りたいという人も出てくるだろうし、そういう青写真はどういうふうに持っておられるか、あるいは特殊な産業あるいは観光事業を産業的な開発の一つとして入れられるのか、あるいは帰る人に対しては極力奨励するのか、あるいは帰りたい気持ちの人だけ帰して奨励するような措置はとらないのか。これらは政府の態度、協力、そういうことに一にかかっておると思うのです。政府としては小笠原返還を機会にどういうような開発計画を持っておられるか、その展望あるいは長官の御意思ですね、どういうふうに持っていきたいということを聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/213
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214・田中龍夫
○田中国務大臣 まず現島民の方々の生活の安定という問題が当然考えられますが、今度は従来小笠原に住まれた方々の帰島の意思いかんということが大きな問題でございます。それには先ほど申しますような旧島民の方々の権利をいかにして守って差し上げるかということと、それから政府等の先行投資という問題が出てくるわけであります。旧島民の方々の帰島という問題の際に、やはり従前なりわいとされました漁業の関係あるいは農業の関係、こういうものを帰ってやりたいというような御希望が相当ございます。でありますが、これらが戦後二十四年間を経過いたしました現時点におきまして、かつてのような姿になるかならないか。これは先般来の当委員会の御質問でもいろいろと議論の分かれるところでございます。私どもは、まず暫定法によりまして、希望の各位に対しましては帰っていただけるような素地をつくり、他面また先行投資もいたし、そうして、その間において、小笠原を将来どのように考えるかという青写真をつくっていかなくてはならない。その場合に、一つ非常に心配になりますことは、いわゆる一旗組といったような、花火線香的な考え方を持った方々とか、あるいはそれこそ詐欺行為ではありませんが、旧権利の転売をいたしましたり、あるいは投機をいたしましたり、そういうことが起こらないように、また今後の開発につきましては、やはり現在住者と帰島者との間の権利の調整と同時に、ある一定の青写真のもとに、少しことばのあやが過ぎるかもわかりませんが、そういう気持ちで考えれば、一糸乱れない計画的な開発と帰島とをできるだけお願いしたい、こういうふうに考えるわけでございます。その間にいろいろ、観光だとか、あるいは何とかいうふうな、従来なかったもので、しかもいろいろな企業的な考え方を持った方がおられるかも存じませんが、こういうふうな計画につきましても、政府といたしましてはよくお話を聞いて、そうして、一つの軌道に乗っかった姿の上に、逐次計画性を持ってやりたい、こういうふうな希望を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/214
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215・吉田泰造
○吉田(泰)委員 いまの復興計画は、この暫定措置法が通った以後に、できるだけすみやかにそのプログラムを作成していただきたい。これは政府に特に要望をしておきます。
もう一つ、それに非常に大切な密接な関係を持ってまいるのですが、小笠原と本土との、いわゆる交通機関について、政府はどうお考えになっておられるかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/215
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216・田中龍夫
○田中国務大臣 交通の問題は、運輸省においていろいろ検討をされておりますが、何しろ復帰後は、現在の住民の方々の生活を維持するために、いろいろな物資の輸送をいたさなくてはなりません。こういうようなものは、ほんとうに国が負担をしてやらなければ、民間等の会社がコマーシャルベースに立ってやれるものではありません。それから、将来定期航路ができるといたしましても、これがペイするとか、コマーシャルベースでやれるというものではないのではないか、こういうふうにも考えます。この点は、小笠原の問題にあたりまして、常々運輸大臣が非常に心配をいたしておるところであります。もう一つ運輸省の関係では、御質問にございませんが、通信の問題電波の問題があります。郵政省と一緒でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/216
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217・吉田泰造
○吉田(泰)委員 交通の問題も、いま大臣の御答弁がございましたように、なかなか一般企業でコマーシャルベースに乗せてペイできるというような現状ではなかろう、そういう展望であるだけに、いま、調査一つ行くにも自衛隊のごやっかいになったり、いろいろなことをしているようでございますが、そういう意味で、交通機関、輸送という問題が一番大切になってまいると思いますので、これまた私の要望として申し上げておきます。
もう一点だけお伺いしたいのですが、先ほど防衛局にお伺いいたしまして、日本の自衛隊の、基地のあとの状況、戦略的な構想、これは承りましたけれども、防衛庁そのものに返還協定が終わりまして具体的に計画があるかどうかということです。非常に課長としては御答弁しにくいかどうか知りませんが、具体的な陸海空の小笠原諸島における配置とか、いろいろな点でそういう計画があるかどうか。もしあるとすれば、いまの戦略的な関係で、先ほどの御答弁によればどのくらいの陣容で常駐するような形になるのか。これは復興計画で基地ということはやはり大切になってまいると思うので、どのくらいの規模でどういうふうに防衛庁としてはお考えになっておるか、この点ちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/217
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218・今泉正隆
○今泉説明員 お答えいたします。
返還されましたあとの現時点では当面平時的な感覚で部隊を配置しようと考えております。父島、硫黄島、南鳥島にそれぞれ海上自衛隊の基地部隊を配置する考えございます。もう少し具体的に申しますと、父島には横須賀地方隊の出先機関といたしまして、海上自衛隊の基地分遣隊を編成いたしまして、返還直後の定員は大体四十名程度を考えております。硫黄島、南鳥島には、それぞれ航空基地の管理部隊として、硫黄島については航空基地分遣隊、南鳥島については航空基地派遣隊というような名前のものを置こうかと思っておりますが、それぞれ海上自衛隊の部隊を置こうと考えております。現在返還直後の規模として考えておりますものは、硫黄島の部隊については五十名程度、南鳥島の部隊については十名程度を考えております。将来二百名程度まで増強してまいりたい。もっともこれはこの地域でどの程度の訓練を行なうかということも関連してまいりますが、大体そういった考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/218
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219・吉田泰造
○吉田(泰)委員 具体的な質問をもう一点だけさせていただきます。これは参事官にお願いいたします。
いま米軍の持っておりますもの、ないし気象観測は、日本に接収になった以降これらがどういうようなウエートを持っておるかということですね。気象観測設備なんかは、何らかの意味であの付近に出すのかどうか、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/219
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220・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。
もちろん小笠原あるいは南鳥島の気象観測上における位置というのは、非常に重要なものだと思うわけでございます。したがいまして、今度返還になりますにおきましては、南鳥島の観測所は気象庁が引き継ぐ予定でございます。また父島におきます観測も気象庁が引き継いでいく予定でございます。気象庁としてはこの二つの観測所を、いままで米軍がやっていましたよりも、もっと重点的に観測を実施したいという希望を持っているようでございます。これはやはりこの両観測所が、わが本土における気象観測の上に非常に重要な位置にある、こういうことにくるのであると私ば思っております。非常に重要なものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/220
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221・吉田泰造
○吉田(泰)委員 時間がありませんので、質問ではございませんが、最後に締めくくりの意味で大臣に要望をして質問をやめたいと思います。
御答弁の中で大体意は尽くされたと思いますし、また非常に酷な質問ばかり申し上げましたけれども、要は現島民、あるいは帰島島民との権利関係を特にはっきりしていただいて、トラブルを起こさないように厳重な監督をしていただきたいということがまず第一点でございます。
それと同時に、将来についての復興計画を早く政府が出されて、無益なトラブルを起こさないように、そういう配慮を特に政府に要求を申し上げまして、時間がございませんので、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/221
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222・床次徳二
○床次委員長 斎藤実君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/222
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223・斎藤実
○斎藤(実)委員 私は委員会開会当時に資料要求いたしましたけれども、一体どうなっているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/223
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224・床次徳二
○床次委員長 いま政府委員室に届いているようですから、いまお配りします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/224
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225・斎藤実
○斎藤(実)委員 少なくともこの法案についてはいろいろ問題もある。政令委任事項が非常に多い法案であるので、私は総務長官もいらっしゃっている席上で資料要求して、私の質問までに提出してもらいたいということで了承したわけですが、こういうことでは私は困ると思うのですがね。少なくとも国会議員が法案を審議する場合に要求した資料を、責任を持って出してもらいたいと思う。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/225
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226・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 手違いでまことに申しわけございませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/226
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227・斎藤実
○斎藤(実)委員 私はこの法案を審議する以上は、これは小笠原の復帰に伴う法案であるから慎重に審議しようという立場で申し上げているわけですから、ひとつ早急に出していただきたいと思います。——いまいただきましたけれども、これはどのくらい数があるのですか。調べられないのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/227
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228・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 ちょっと件数は数えてみなかったのでございますが、五、六十はあるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/228
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229・斎藤実
○斎藤(実)委員 質疑の途中でいろいろまた御質問します。
総務長官にお尋ねしますが、今回の小笠原諸島の復帰に伴う暫定法律案は非常に政令委任事項が多い。具体的な内容、たとえば期間だとか年数だとかいうような細目にわたっての政令で委任の内容なんですね。それで非常に内容がわからないわけです。これはいまいただきましたけれども、少なくとも審議する以上は、政令の仮案でもよいから、法案と同時にこれは委員会に提出して、国会の審議を経るのが私は正常なやり方ではないかと思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/229
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230・田中龍夫
○田中国務大臣 お話しのとおりでございまして、私どももそういたさなくては相ならぬのでございますが、事務的に各省協議いたし、なおまたいろいろなそういうような法制化の問題で非常に忙殺されておりましたために、はなはだ御期待に沿い得なかったことを深くおわびを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/230
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231・斎藤実
○斎藤(実)委員 これは今後のこともありますし、また各委員も非常に不満なわけですね。少なくとも五、六十という政令がある。その政令もあわせてこの法案を審議するのがほんとうの立場だ、こういうように考えるわけです。
次に、復興法の問題ですが、この条文の中に復興法は別に定めるというふうになっておりますが、先ほどの答弁ではまだ白紙であるというような答弁でありましたけれども、少なくとも小笠原の復興については、たとえばこれとこれをやるんだ、国立公園にするとかあるいは今度はそんなことはないと思いますけれども、軍事基地にするとか何かの幾つかの基本的な柱というものを当然これはもう根本から考えなくてはいかぬ問題である、こういうふうに考えるのですが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/231
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232・田中龍夫
○田中国務大臣 はっきりと申し上げまして、まだそこまで思い至っておりません。しかしながら、何と申しましても、島民の方々が生活をお続けになり、また帰島せられるにあたりましても、まずもっていたさなくてはならないのは、いわゆる港湾施設、道路、交通、電気、こういうふうな定着されまする方々の生活を当面維持するだけのいろいろな交通通信、運輸、諸般の問題をまずもって行ないたい、先行投資をいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/232
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233・斎藤実
○斎藤(実)委員 なるほどとりあえずの水道あるいは電気、港湾等、これは当然でございましょう。けれども、やはり国の方針は大まかでもこういう方針なんだ、こうならなければ、いま帰る人たちも本気になって乗り出していけないのではないか、帰れないのではないか。ですから、とにかく帰るだけ島へ帰りなさいと言うだけでは、ほんとうの小笠原の復興ということは名実ともにならないのではないかというふうに考えるのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/233
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234・田中龍夫
○田中国務大臣 まず、新しいいろいろな計画、企業の進出というようなことの以前に、ただいま申し上げたような、原住民並びに帰島希望者の方々か少なくとも生活されることができるようなものと考えますると、従来島におられた方々のやっておられたのは、農業経営あるいは漁業の問題、こりいうふうなことでございます。それ以外に、たとえば、先ほども申しましたような、観光会社が島を買ってやりたいとか、あるいはまたボーイスカウトや青年の諸君が青年の島としてユースホステルをつくりたいとか、それからまた、国立公園に指定してどうこうというようなことがございますけれども、現時点におきましてはそういうところまでまいっておらない現状でございまして、農業経営をされる方あるいは漁業の経営をされる方、それさえ一体市場経営として成り立ち得るのかどうか、また、現地の生産に対する需給関係がどの程度まで最低まかない得るかというふうな、ほんとうに暫定のまた暫定といったような段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/234
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235・斎藤実
○斎藤(実)委員 それでは、いろいろな調査その他の準備期間が必要だという先ほどの答弁でございますけれども、細目は別としまして、復興法の柱といいますか、大まかな基本方針が政府としてきまるのは大体いつごろでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/235
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236・田中龍夫
○田中国務大臣 これはわれわれの推定でございますけれども、来年度の通常予算の際には少なくとも復興法の案は出したい、かように考えておりますけれども、現実の問題を考え合わせてみますると、なかなかそれさえもむずかしいような気がいたすのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/236
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237・斎藤実
○斎藤(実)委員 その問題はそれくらいにして、先ほど同僚委員のほうから総務長官に対して、一体小笠原の復興は国が責任を持ってやるのかどうかという質問がございました。そのときに、国が東京都と相談をして考えるというような御発言がございましたけれども、私は、当然これは復興計画その他は国の責任でやるべきではないかというふうに考えるのですが、再再度総務長官の答弁を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/237
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238・田中龍夫
○田中国務大臣 当面の問題といたしましては、ほとんど大部分が国の責任においてやらなければ、現実に軌道に乗らないという感じがいたします。しかし、そのことは、決して自治体たる東京都の権限を侵して国がやるのだという意味ではないことはどうぞ十分お考え願いとうございます。
それから凡百の仕事を対象別、所管別に分けますと、当然最終まで国がやらなければならない業務、たとえば通信業務でございますとか、気象業務でございますとか、そういうような業態のものと、それから小笠原村というものなり東京都なりの自治体の本来の業務であって、しかし、それが形成されるまでの間にどうしても国が一応やらなければならぬ、やって差し上げなければならぬというような業務と、こういうふうなものに分類できると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/238
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239・斎藤実
○斎藤(実)委員 この間、東京都の美濃部知事が小笠原に視察に行って帰ってきたときに、小笠原は国立公園にしたいという発言があったように承っておりますか、この点について、総務長官どうお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/239
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240・田中龍夫
○田中国務大臣 これは前から厚生大臣が、新聞等にも、国立公園に指定したいという御意見がありましたが、というて、小笠原が全部国立公園にしてしまうということは一体いいか悪いかでございます。そういう国立公園になるところもございましょうし、なお十分調査し検討いたさなくては相ならぬ、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/240
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241・斎藤実
○斎藤(実)委員 この暫定措置法案の第五条——先ほど川崎委員が質問いたしましたが、公務災害補償法は現地にはないのだというような答弁がありましたけれども、これはどうですか、そのとおりで間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/241
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242・桑原敬一
○桑原説明員 現地には労災保険法と称するものはございません。ただ軍の内部指示によって、具体的な傷病がございましたときには、軍の病院で治療する、こういう実際の取り扱いが行なわれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/242
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243・斎藤実
○斎藤(実)委員 そうしますと、労災保険というものは、アメリカに一体あるのですか、ないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/243
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244・桑原敬一
○桑原説明員 アメリカにおきましては、各州ごとに労災保険法がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/244
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245・斎藤実
○斎藤(実)委員 そうしますと、先ほど労働省の方から答弁がありましたように、公務災害で現在二名がグアム島に入院しているという答弁でございました。今回、今度の特例で日本が補償するのだという考え方ですが、これは間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/245
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246・桑原敬一
○桑原説明員 午前中申し上げましたのは、二名の方が業務上で災害を受けられたということを申し上げたのでございます。したがって、それに対しましては、労災保険というものは、加入しておりませんとほんとうは補償ができないのですけれども、今回特例を設けまして、その方たちに対して、引き続きそういう療養中でございますれば補償する、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/246
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247・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 いまの二人の方は、グアムではなくて、島におられるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/247
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248・斎藤実
○斎藤(実)委員 それは米軍の仕事をしておって、公務災害で入院しているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/248
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249・桑原敬一
○桑原説明員 入院というふうなことまで私ども情報を得ておりませんけれども、米軍の基地において公務のために災害を受けたというふうに情報を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/249
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250・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 ただいまの二人は、足をけがされた方と目をけがされた方で、入院はしていないわけでありまして、一応はなおっているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/250
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251・斎藤実
○斎藤(実)委員 そうしますと、雇用契約を結んでいるアメリカが当然その費用を負担をするのがたてまえではないかと思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/251
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252・桑原敬一
○桑原説明員 現地の実情を私ども十分につまびらかにいたしておりませんけれども、私どもが得ました情報では、軍の内部指示というようなことばを私ども聞いておりますが、内部指示によってけがをされた方には米軍の病院で療養、治療をさせておる。したがって、その根拠が法令その他があるということも十分はっきりいたしておらないわけでございます。ただ一般的に、そういう傷病が今後起こりますれば、そこが当然責務を持つというのが一般上の、民法上の原則であると思うのでありますが、そこの軍における根拠法規というものがはっきりいたしておりません。ないのではないかというのが私どもの推察でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/252
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253・斎藤実
○斎藤(実)委員 日本国とアメリカ合衆国との間の協定の第五条に「アメリカ合衆国の法令又はこれらの諸島の現地法令により特に認められる日本国民の請求権の放棄を含まない。」こういうようにはっきりと規定されておるわけです。これはアメリカが責任を持つ、こういうふうに解釈できると思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/253
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254・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 その点につきましては、午前中に川崎先生でございましたか、御質問があったように思いますが、外務省のほうに聞いてみましたところ、アメリカのほうで適用されます法律は外国人賠償法になると思います。したがって、アメリカのほうでは、返還するまでに外国人賠償法に基づく限りにおいては一応の処理をしていくつもりだということを明らかにしているという話を聞いております。したがいまして、賠償法による関係上、これはいま先生が御指摘のように、ただし書きのほうの請求権は放棄しないというその法のあれとして考えますれば、現実に外国人賠償法でもしまだ請求権が残っておるとすれば、ただし書きの規定が働くであろうというふうに思います。しかし、いま申し上げますように、アメリカとしては返還までにはそれを処理していくつもりだということを向こうが言っていることでございますから、その点につきましては、一応返還の時点においては処理されるということをわれわれとしては十分期待しておるわけでございます。
ただ、私がお答えしていいかどうか、むしろ労働省の方のほうが適当かもしれませんが、五条との関係におきましては、そういう損害賠償請求権的なものの問題ではなくて、それ以外の一種の社会保障的なといいますか、そういうような問題の処理として第五条が特別の規定として設けられたというふうに実はとっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/254
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255・斎藤実
○斎藤(実)委員 労働省、間違いありませんか。どうですか、その点は。はっきりしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/255
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256・桑原敬一
○桑原説明員 ただいまの損害賠償法というものにつきましては、私ども十分まだ内容をつまびらかにいたしておりませんけれども、おそらく米軍と使用されました労働者との間の損害賠償の問題が中心になると思います。労災保険のほうは、損害賠償という観点からややはずれまして、それよりもやや広い意味で、たとえばけがをし、あるいはまた不幸にしてなくなられた場合には、一般的な損害賠償では一時金で処理されるということになりますけれども、わが国の労災保険法で申し上げますと、社会保障的な色彩がございまして、なくなった方に対しては年金を出すとか、障害補償については重い方に対しましては年金で処理していくということもございまして、やはり本土並みに手厚い保護をするという必要が当然あろうかと思います。そういう意味で今回特例を設ける必要がございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/256
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257・斎藤実
○斎藤(実)委員 私の申し上げておるのは、この五条の「アメリカ合衆国の法令又はこれらの諸島の現地法令により特に認められる日本国民の請求権の放棄を含まない。」というようになっておるわけですね。ですから、アメリカと島民がどういう契約を結んで、あるいは損害賠償も含むかもしれませんし、あるいは治療費の問題もあるでしょう。ここで返還になって日本の施政下に入るわけです。その時点でまだ治療費が必要であるとかあるいは損害賠償という問題があった場合に、これは当然アメリカに支払いの義務があるんだ、アメリカに請求する権利があるのではないか、こういうふうに私は質問しておるのです。そうであれば、この条文はおかしいのではないか、こういうことを聞いておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/257
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258・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、現地における法令によって請求権を与えられておるものについては含まれていない——含まれていないというのは放棄しないということですが、その趣旨を実は申し上げたつもりでございます。外国人損害賠償法というのは、アメリカ合衆国の法律でございますが、それはアメリカ軍が海外で損害を起こしたときに、損害を、いわゆる権利としてということではこの法律ではございませんけれども、そういう損害が生じたときには補償してやるという法律でございます。したがいまして、先ほど労働省の方が触れられましたように、小笠原諸島におきましては、ほかに適用される法律としては、特に労災法的なものはないわけです。結局アメリカにおきましては、各州でそれぞれつくっておるということでございますので、また小笠原そのものをアメリカは異法地域として考えて処理していたのでございますので、そういう意味におきまして外国人損害賠償法そのものは小笠原であろうと沖縄であろうとやはり適用される余地を持っておるわけでございます。そういう外国人損害賠償法、この法律による請求権というものがもし残っておるとすれば、ただし書きで、放棄しない、こういうことであるわけでございますが、私、さっき申し上げましたように、アメリカ側の意思として、現実に、現在も請求権が残っておるかどうか、ちょっとつまびらかでございませんが、アメリカの意思としてもし残っておるとすれば、返還までに処理していきますという言明をしておるということを外務省から聞いております。したがいまして、ただし書きの問題といたしましては、少なくもいまの外国人損害賠償法に関係したものとして、もし労災関係の請求権があるといたしましても、返還までに処理されるであろうというふうに私は考えておるわけでございます。したがって、先ほどの二人の方につきましての適用関係におきましては、むしろ社会保障的な面において特例を設ける必要があるという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/258
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259・斎藤実
○斎藤(実)委員 私は、小笠原の二名の方だけではなくして、今度は沖縄が返還される場合に、当然この問題もまた起きてくると思うのです。ですから、いまの参事官の答弁ではどうもあいまいなんで、正式な外務省の見解を私は承りたいと思うのですが、どなたか来ておりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/259
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260・加藤泰守
○加藤(泰)政府委員 来ておりませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/260
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261・斎藤実
○斎藤(実)委員 あと続けましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/261
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262・床次徳二
○床次委員長 あと五分ばかりですが、なるべくきょうやっていただきたいのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/262
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263・斎藤実
○斎藤(実)委員 まだだいぶありますがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/263
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264・床次徳二
○床次委員長 それでは、本日はこれにて散会いたします。
午後五時五十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803904X01519680514/264
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