1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十三年三月六日(水曜日)
午後三時十六分開議
出席委員
委員長 秋田 大助君
理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君
理事 田中 榮一君 理事 野田 武夫君
理事 福家 俊一君 理事 戸叶 里子君
理事 穗積 七郎君 理事 曽祢 益君
青木 正久君 橋本登美三郎君
毛利 松平君 山口 敏夫君
山田 久就君 石野 久男君
木原津與志君 黒田 寿男君
伊藤惣助丸君 斎藤 寿夫君
出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
外 務 大 臣 三木 武夫君
出席政府委員
内閣法制局長官 高辻 正巳君
外務政務次官 藏内 修治君
外務大臣官房長 齋藤 鎭男君
外務省アジア局
長 小川平四郎君
外務省北米局長 東郷 文彦君
外務省経済局長 鶴見 清彦君
外務省条約局長 佐藤 正二君
外務省国際連合
局長 重光 晶君
委員外の出席者
専 門 員 吉田 賢吉君
—————————————
三月五日
委員青木正久君辞任につき、その補欠として綱
島正興君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員綱島正興君辞任につき、その補欠として青
木正久君が議長の指名で委員に選任された。
同月六日
委員渡部一郎君辞任につき、その補欠として伊
藤惣助丸君が議長の指名で委員に選任された。
—————————————
二月二十九日
日本国とシンガポール共和国との間の千九百六
十七年九月二十一日の協定の締結について承認
を求めるの件(条約第一号)
日本国とマレイシアとの間の千九百六十七年九
月二十一日の協定の締結について承認を求める
の件(条約第二号)
三月四日
日本万国博覧会政府代表の設置に関する臨時措
置法案(内閣提出第五九号)
同月一日
在日朝鮮人の帰国に関する請願(板川正吾君紹
介)(第二〇三六号)
同外一件(神門至馬夫君紹介)(第二〇三七
号)
同外四件(武部文君紹介)(第二〇三八号)
同(長谷川正三君紹介)(第二〇三九号)
同(山花秀雄君紹介)(第二〇四〇号)
同(山本政弘君紹介)(第二〇四一号)
は本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
公海に関する条約の締結について承認を求める
の件(条約第六号)
領海及び接続水域に関する条約の締結について
承認を求めるの件(条約第七号)
日本万国博覧会政府代表の設置に関する臨時措
置法案(内閣提出第五九号)
国際情勢に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/0
-
001・秋田大助
○秋田委員長 これより会議を開きます。
公海に関する条約の締結について承認を求めるの件、領海及び接続水域に関する条約の締結について承認を求めるの件、日本万国博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法案の以上三件を一括議題といたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/1
-
002・秋田大助
○秋田委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/2
-
003・三木武夫
○三木国務大臣 ただいま議題となりました公海に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
公海に関する条約は、国際連合による国際法法典化の事業の一環として、国際連合の主催のもとに一九五八年二月二十四日から同年四月二十七日までジュネーブにおいて行なわれた海洋法に関する国際会議において採択せられたものであります。この条約は、従来国際慣行によって規律されてきた公海の制度に関する基準等に成文の根拠を与えるものでありまして、そのおもな内容としては、公海の自由、船舶とその旗国との関係、沿岸国の追跡権、海賊の取り締まり等に関する規定が含まれております。多くの国がこの条約の当事国になることは海洋における諸国間の関係を円滑ならしめ、国際社会全体の利益に資するものと期待され、わが国としても、この条約の当事国となることによりまして、国際法法典化の事業に寄与することとなるとともに、公海の制度等に関してわが国と諸外国との関係が一そう明確な基準にのっとって円滑に処理されることとなり、これがひいては世界の主要な漁業国及び海運国たる地位を占めているわが国の利益に資することにもなると認められます。
よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
次に、領海及び接続水域に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
領海及び接続水域に関する条約は、国際連合による国際法法典化の事業の一環として、国際連合の主催のもとに一九五八年二月二十四日から同年四月二十七日までジュネーブにおいて行なわれた海洋法に関する国際会議において採択されたものであります。この条約は、従来国際慣行によって規律されてきた領海及び接続水域の制度に関する基準等に成文の根拠を与えるものでありまして、そのおもな内容につきまして、領海の幅については、会議参加国間の合意が成立しなかったため規定が設けられておりませんが、領海測定のための基線、無害通航権及び接続水域に関する規定が含まれております。多くの国がこの条約の当事国になることは海洋における諸国間の関係を円滑ならしめ、国際社会全体の利益に資するものと期待され、わが国としても、この条約の当事国となることによりまして、国際法法典化の事業に寄与することとなるとともに、領海及び接続水域の制度等に関してわが国と諸外国との関係が一そう明確な基準にのっとって円滑に処理されることとなり、これがひいては世界の主要な漁業国及び海運国たる地位を占めているわが国の利益に資することにもなると認められます。よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。続きまして、日本万国博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法案の提案の理由を御説明いたします。
昭和四十五年に大阪で開催される予定の日本万国博覧会につきましては、国際博覧会に関する条約第十五条の規定により、開催国は、政府を代表する政府代表または政府委員一人を指名することとなっておりますので、その任務の重要性にかんがみまして、今回提案の法律案のごとく、外務省に、特別職の国家公務員たる日本万国博覧会政府代表一人を置くこととした次第であります。もっとも、すでに早くから前述の条約上の政府代表の任務の一部を行なわしめる必要が生じましたので、とりあえず昭和四十一年九月に外務公務員法に規定する政府代表を発令して暫定的にその任務の一部を処理せしめてまいりましたが、これは非常勤かつ無給でありました。
最近ようやく、日本万国博覧会開催の時期が近づくにつれまして政府代表の任務が次第に増大するに至りまして、条約上の政府代表として全面的な活動を行なわなければならない事態に立ち至りましたので、提案の法律案のごとく政府代表の職を設けることとした次第であります。
今回新たに設置する日本万国博覧会政府代表の任務といたしましては、条約及び条約第八条の規定に基づく一般規則の定めるところにより、昭和四十五年の日本万国博覧会に関して日本国政府を代表し、かつ、その約束の履行を保障することであります。この政府代表の任務に関し必要な国内的措置につきましては、わが国内法令並びに国内行政組織の事務分担管理のたてまえ上、それぞれの関係各省庁の長がこれを処理することが適当でありますので、法案中にその旨を規定することとした次第であります。
また、政府代表の俸給月額を定めるとともに、代表の任免につきましては、外務大臣の申し出により、内閣が行なうことといたしております。さらに代表の職は、昭和四十五年の日本万国博覧会のために臨時に設けられるものでありますから、本法律案は、博覧会が終了した後、政府代表が事後の事務処理に必要と予想される一年の期間を経過しますと失効することとしております。
以上がこの法律案の提出理由及びその概要であります。
以上、条約二件、法案一件につきまして、御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/3
-
004・秋田大助
○秋田委員長 三件に対する質疑は後日に譲ることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/4
-
005・秋田大助
○秋田委員長 次に、国際情勢に関する件について調査に入ります。
質疑の通告がありますので、順次これを許します。小泉純也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/5
-
006・小泉純也
○小泉委員 私は、佐藤内閣総理大臣に対しまして、安全保障並びに日本の防衛という問題にしぼって御所見を伺っておきたいと思うのでございます。
かつて日本の戦時中において、平和ということばがタブー視されたのであります。戦後におきましては、愛国心とか防衛とか国防ということばがタブー視されて今日に至りました。これは民主政治のためにきわめて遺憾なことであったと存ずるのであります。また、国会の論議を顧みましても、防衛の問題を前面に押し出して論議をすることが故意に避けられたような風潮の時代が相当長く続いたと私は記憶いたしております。
最近において、佐藤内閣総理大臣が、国会の論壇の上はもちろんのこと、あらゆる機会において国民に民族意識を説かれ、防衛、国防の意識の高揚を説かれておりますることは、日本の平和、安全を念願をする上においてきわめて前進であり、いままでの歴代内閣総理大臣としては最も勇気と決断に富んだ発言であると私は敬意を表しておるのであります。また、心ある全国民の中には、佐藤総理の最近における国防問題、防衛問題等に対する発言に対しましては、これをきわめて歓迎をいたしておるとまた確信をいたすものであります。
そこで、佐藤内閣総理大臣が自主防衛というような問題に言及をされておるのでございますが、もちろん、日本国民はみずからの国を日本国民の手によって守らなければならない、平和と安全を願うならば、当然防衛という問題が論議せられなければならないわけでございます。こういう面において、精神的に国民の自覚を促すという面においての御発言であると私は考えておるのでございますが、自主防衛というようなことばの示す総理のお心持ちをこの席でお伺いをいたしておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/6
-
007・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 お答えいたしますが、小泉君はわが党の方ですから、まさか誤解はないだろうと思います。私、戦後の日本のあり方がどこかもう一つ、独立というか、そういうものが完成されていない、そこにみんな一つの不満を持っているんじゃないだろうか、かように思います。私は、自民党だけが愛国心あるいは国防を売りものにしておるとは思いません。社会党の方も民社の方も同様だろう、かように思いますが、これはやはりその前提になるものに、独立というか、完全独立というか、そういうものが一つないと、話が十分できないんじゃないかと思うのです。口に独立を申しましても、いままでのような依存体制、そういう意味ではどうもうまくいかない。それかと申しまして、私が独立、完全独立を言うからといって、自分だけの力で国防、安全を保障する、確保する、こういう大それた考え方は私はしておりません。独立は必要だ、しかし、今日の国際情勢のもとにおいては、一国だけでその国の安全を確保する、こういうことはできないことはもう百も承知でありますから、その前提に立ってものごとを考えてもらいたい。でありますから、私は福澤先生のことを引き合いに出して、独立の気慨なき者は、決意なき者は、国を思うこと深切ならず、こういうことを実は引き合いに出したのであります。福澤先生は、私が言うまでもなく、独立自尊を説かれた方で、この中にはたくさん慶応義塾で学ばれた方もいらっしゃるだろうと思います。あの明治の初年に、ようやく開国したばかりの日本で独立自尊を説き、独立を主張した。こういうところには、現在のような議論はおそらくなかったんじゃないかと思うのですね。だから、私は、皆さんがみんな同じように、ほんとうに民族が国をつくるんだ、幸いにして日本民族は単一民族だといわれておる、そういうもとにおいて一国を形成する、そしてその国を愛し、自国に尽くしていく、そういうことになるのが望ましい姿だと思うのです。私は、そのためには、いま独立という、そういうことを考えなければならないんじゃないか。私は、そういう意味で、一部あるいは反米だと言われる諸君のうちにも、何かいくじがないじゃないか、どうしてまだ独立ができないんだ、こういうような気持ちが働いているんじゃないかと思う。ただ、右寄りだとか左寄りだとかいうような議論が出てくると、一体祖国を思うこと深切なのかどうなのか、実は疑問を持たざるを得ないのですけれども、私が申し上げたいことは、まず独立、その観点に立ってものごとを考えていこうとすると、自然にみずからの国を思い、みずからの国に尽くす、そういう議論に出ていくだろう。そうしてまた、国防にいたしましても、国力、国情に応じてみずからがその国を守るということにもなるだろう。また、私は、一国だけで国を守ることができないのがいまの世界の情勢でありますから、別に不完全独立だ、かようには私思いません。したがって、これは同じような主張をする連中と提携して、そしてこの国の安全を確保していこう、それでいいんだ、かように私は思っております。大事なことは、独立ということについての考え方を持つことだ、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/7
-
008・小泉純也
○小泉委員 精神面について総理が国民の独立心を説くというお心がまえにつきましては、私ども十分に了解をするわけでございます。
そこで、最近、国防論議というものが国民の間に盛んになりまして、同時に、日本の自主防衛というものの具体的な内容について、これまた相当の論議が戦わされつつあるのでございます。先ほど総理が申されましたような、日本一国で防衛を全うしようとは思わない。申すまでもなく、世界の情勢が集団安全保障体制でありまして、わが国もその趣旨に沿って日米安保体制の中にある。しかも、佐藤内閣はこの日米安保体制を将来とも堅持するのであるということは、たびたび声明しておられるとおりでございます。
そこで、世の中には一部意識的な誤解もあるかとも存じまするが、自主防衛を唱えておるが、その将来にわたっては、一国だけでは防衛ができないというような集団安全保障体制という現実を踏まえずに、将来は核を持って日本独自の防衛を志しておるのではないかというような疑惑の存在をしておることは、これは否定できないのでございます。もちろん、完全な自主防衛と申しますると、今日の世界が核兵器の開発に依然としてものすごい競争をしておる。最近は、米ソの間においても、ICBMの数においてソ連が米国に追いついたとか、あるいは米国はまだまだソ連よりも優勢であるとかいうようなことをしばしば外国電報が報じておるとおりでございまして、この核兵器の競争というものはますます熾烈さを加えつつある。いわゆる核を持たなければ完全なる防衛ができないということが世界の常識であるわけでございます。しかしながら、日本においてはおのずから自主防衛ということばには限界がなければならない。佐藤総理が常に声明をいたしておられまするいわゆる核に対する四つの柱がございます。また、非核三原則というものもたびたび強調をせられておるのでございまして、国民の間にはこれが徹底をしておる。そういたしますならば、日本の自主防衛にはおのずから限界があるということでなければならぬと存じます。国民が今日聞かんとするところは、日本の自主防衛の具体的な内容をあなたに聞きたがっておる。また、これを示すことが、今日の情勢においては内閣として一番大事なことではないか。ことに愛国心、防衛という問題を勇敢に打ち出された佐藤総理といたしましては、この段階において、日本の自主防衛の明らかな限界と、そして大筋でいいのでありまするが、自主防衛の具体的な内容を示されることがきわめて適切ではないか。また私も、この席であらためて佐藤総理の自主防衛の限界並びにその具体的内容を承っておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/8
-
009・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 自主防衛、この中身について、これはいま日本の国内で対立するもの、ただいまの自主防衛についての考え方にも相違がございます。これはやはり平和憲法のもとにおいて自衛権を認める、おそらくこれはどの政党も認めるだろうと思いますが、自衛力を認める、同時に、その自衛力に基づいてわれわれがこの国の安全を確保しようとする場合に、日米安全保障条約、このもとで安全を確保しようという自民党、これを否定するところ、また、これを承認するにいたしましても、やや自民党と考え方の相違しておるところ、ここらに一つの日本の悩みがあるのじゃないかと思います。自主防衛だというその立場から見ると、みずからたいへんな核兵器でも持つかのような表現が自主防衛というようなことばのようですが、私どももちゃんと平和憲法、そのもとにおいて、憲法第九条の第一項、これはどこまでも守り抜くつもりでございます。
そうすると、自主防衛だといいながらも、ドゴール大統領のような考えにはなかなかなれない。これはちょっと余談のようで、あるいは脱線するようですが、ちょうどドゴール大統領が核兵器の開発に乗り出したとき、ドゴールさんに私はお目にかかりました。そしてドゴールさんは、おれはだれよりもフランスを愛するのだ、だれよりも愛するがゆえに、フランスの安全が他国の大統領のポケットにあるキーで確保される、そんなことには耐えられないのだ、こう言って、胸を張ってそういう話をされた。私はそのことがいまだに頭に残っております。
いまちょうどフランスの議員団の諸君が訪問されております。私、せんだってお目にかかった。議員団の諸君と全部一堂に会して、そして、いまわが国では国会で核兵器のことが非常な問題になっている、もちろん、いま日本で核兵器を持つというような者はどこにもいないのだが、持つ心配があるのじゃないかといってたいへんな議論なんです、フランスの皆さん方はもうすでにその点では御卒業なすったようだが、何か感ぜられることはございませんか、こういう話をいたしました。そうしたら、団長さんの言われるのに、実はきょうは各党の者がここに集まっている、ただいまフランスで核という問題はもう片づいたと言われるけれども、片づいておりません、したがって、その話はしばらく返事をひとつあずからしてくれ、こういうことです。私は、これはやはりフランスにおいても、ドゴールさんのような考え方もあるが、ただいまそういうことが議論になっておる、かように思います。
このことを、いま私が脱線するといってしかられるようですけれども、これは大事なことですから一応お聞き取りいただいて——とにかくいま私が申し上げているのは、これは世界をあげての一つの大事な問題だろうと思います。しかし、私どもはいまはっきりした平和憲法のもとにおいて自主防衛、われわれが守るべき防衛力、自衛力、これを国力、国情に応じて整備する、具体的にはただいま第三次防計画を持っておる、かように御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/9
-
010・小泉純也
○小泉委員 もちろん、平和憲法が存在するし、自衛隊法によって自衛隊が育成されつつありまするが、先ほども申しましたように、自主防衛ということは、将来意識的に核兵器まで持つ意図があるのではないかというような宣伝が行なわれておることも、これは否定できない事実であるのでございます。そこで、私は、明らかにこれを国民大衆にわかるように、日本のいわゆる自主防衛というものにはこういう限界がある、内容というものはこういうものであるということをお示しをいただきたいとお願いをしたわけでございまするが、いま総理の言われたように、日本はあくまでも漸次国力、国情に相応したところの自衛力の漸増をはかっていき、いわゆる安保体制によってアメリカの核の抑止力に期待をする、そこにいわゆる日本の自衛力の限界がある、いわゆる自主防衛体制の限界は、核は絶対持たないで安保体制による核の抑止力にたよる、その核を持たないところの日本の国内における侵略その他に対処して日本の安全と平和を確保するには、現在の自衛隊を漸次国力、国情に応じて増強をしていく、それがいわゆる自主防衛の具体的な内容であると考えてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/10
-
011・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 ただいま結論を申し上げましたように、私はどこまでも平和憲法、その第九条第一項、これを守る、そのもとにおいて許された自衛隊を持つ、自衛力を持つ、そしてその自衛力が国力、国情に応じたものを持つ、これははっきり制限されております。御了承いただきます。それだけで足らないから、日米安全保障条約でそれを補強しておる、かように御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/11
-
012・秋田大助
○秋田委員長 穗積七郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/12
-
013・穗積七郎
○穗積委員 佐藤総理にお願いしておきます。
実は、昨年来特にアジアを中心とする国際情勢並びに国際経済が非常な激動期に入りました。それを背景として、昨年十一月十五日にあなたはジョンソンとの間に重大な共同声明を発表なさいました。そこでわれわれとしては、この激動期に入って佐藤内閣の特に外交路線が危険な方向へ向かいつつあるのではないかという不安を持っておるわけです。そういうことについて実はゆっくりとあなたの所信を伺い、われわれの考えも聞いていただいて、お答えをいただきたいと思っていたのですが、きょうはあなたの御都合で時間が非常に制限されておりまして、しかも往復で二十分ということでございます。これではお互いにしようとしておる政策論争がほとんどできないわけです。先ほど理事会におきまして、そういうことを与野党一致して認めて、きょうはプロローグにすぎない、続いて本論は次の機会に十分にということです。したがって、後の論争のために、私は、最近の政府の統一見解についてこの際整理しておきたいと思いますから、一問一答で簡潔にお尋ねしますから、あなたも簡潔に明確に御返答をいただきたい。あなたの答弁の時間も私の質問時間を食っておるわけになりますから、いまのような御意見も、これは自由で、大いにやっていただくのはけっこうでございますけれども、われわれの発言の時間を制限されつつやるわけですから、その点あらかじめお願いをしておきます。
共同声明は、言うまでもなく、冒頭に中国の脅威をうたって、そしてこれに対するアジアの、日本の防衛並びにアジアの政策、戦略、こういうものが規定されておるわけです。したがって、反中国軍事同盟の宣言と見なければならない。ですから、中国問題に対する認識と今後の展望について、実は冒頭にゆっくり話をすべきですけれども、それは次に譲りまして、以下一問一答でお尋ねしますから、お答えをいただきたい。
第一、非核三原則は、この前わが党の同僚議員も尋ねておりますけれども、これは憲法の禁止によるものであるのか、そうではなくて、政策上非核三原則というものを支持しておるのか、その両方であるのか、いずれであるかをこの際明確にしておいていただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/13
-
014・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 当時もお答えいたしたのですが、憲法上はいろいろな議論があると思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/14
-
015・穗積七郎
○穗積委員 政府の有権解釈を聞いておけばいいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/15
-
016・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 政府の有権解釈です。政府としては、政策としてこれをやらない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/16
-
017・穗積七郎
○穗積委員 憲法上は制約はないということですね。すなわち無制限である。核をつくり、核を持ち、持ち込みを禁止してはいない。しかも、それは無制限である、こういう御解釈でございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/17
-
018・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 そういう意見ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/18
-
019・穗積七郎
○穗積委員 どういうことでしょう。これは明確になさいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/19
-
020・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 これは政府としてはっきり申しましたのは、この第一条の平和主義、これを貫く。それに反するものは私どもは認めない。はっきりしておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/20
-
021・穗積七郎
○穗積委員 第一条というのは何の第一条ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/21
-
022・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 失礼。第九条第一項……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/22
-
023・穗積七郎
○穗積委員 いやいや、そうではなくて、そのことを聞いておるのではなくて、憲法の第九条の精神並びに前文の精神から見て、つくらない、持たない、持ち込まないというのは、禁止していないのですか。禁止されておるから、こういうことになっておるのか。政策上好ましくないから、非核三原則というものを政府は支持しておるのか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/23
-
024・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 自衛の範囲を越したものは持たない、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/24
-
025・穗積七郎
○穗積委員 自衛の範囲のものなら持ってもよろしい、つくってもよろしい、持ち込んでもよろしい、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/25
-
026・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 これは理論上の問題ですが、しかし、核については、私どもは政策的に、これが唯一の被爆国でもあるし、またいろいろの誤解を受ける、こういう意味でこれは持たない、かように言っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/26
-
027・穗積七郎
○穗積委員 感情論や政策論を聞いておるのではないのだ。憲法上は法理的に、核については、防衛または自衛のためであるならば無制限につくったり、持ったり、持ち込んだりすることはできるという憲法の解釈が政府の有権解釈と同一解釈である、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/27
-
028・高辻正巳
○高辻政府委員 簡単にお答えさせていただきます。
核兵器と憲法の関係の問題につきましては、実はいままでも何回か議論が出て、政府も何回か御答弁申し上げておりますが、要するに、憲法の解釈といたしまして、例の憲法第九条の関係から、自衛の正当な目的と限度にとどまるものであれば、これは核兵器でお、ろうと通常兵器であろうと、それは理論上は同じことである。それを越えるものはこれはもう明確に憲法違反であるけれども、もしそれを越えないものが考えられるとすれば、また現にあるとすれば、それは憲法上の問題にはならぬだろう。しかし、いまも総理が言われましたような政策上の問題それから法律上の問題としては例の原子力基本法というのがありまして、平和の目的に限るということになっておりますから、結論としては、政策上も法律上も核兵器を持つことは現在においてはいたさない、できないという結論になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/28
-
029・穗積七郎
○穗積委員 私の聞いておるのは、——高辻さん余分なことを言わぬほうがいいです。憲法について聞いておるのです。基本法というのはすぐ変えられるのよ。自衛隊法でもそうです。そういうことで、憲法について法理的にどう考えておるかということを聞いているのだ。それによると、防御的なものあるいは戦術的なものと、戦略的または攻撃的なものとの区別、これは実はそういうことをお尋ねするために、敬意を表して増田さんにお尋ねして、それから総理にお尋ねしようと思ったら、来られないから、しかも時間がありませんので、その問題はあとにいたしましょう。すなわち、防御的なものであるならば、つくることも、持つことも、持ち込むことも憲法は禁止していない、それをやるかやらぬかはこれは別の問題だ、感情論もあるし、政策論もある、こういうことでいいわけですね。
そこで、続いてお尋ねします。
そうであるが、総理、あなたは、沖繩返還に関して、核基地についてはいまからきめない、持ち込まないとはきめない、つまり、核基地つきということを禁止するということはきめないで、その場になって検討する、こういうことになっておりますが、そうなりますと、本土についても絶対に持ち込まないということではない、これもまた白紙である、論理的には当然そうなりますが、そのとおりでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/29
-
030・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 ちょっといまのお尋ねを私つかみかねたのですが、沖繩は、ただいま施政権はアメリカが持っておりますから、これについては私どもとやかく言えない、かように御了承いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/30
-
031・穗積七郎
○穗積委員 返還に際して。だからあなた、よく聞いておって答えてくれないと困る。あなたが答えそこなったやつは時間外にしてもらえればいいけれども、それでよろしいですか。そうじゃないのだ。あなたは、あれが日本領土になるときに核基地を認めるか認めないかは、いずれともいまからきめないで、白紙で臨むと言っている。今度は本土についてはどうですかと言えば、本土についても、将来、国際情勢、科学技術の進歩の状態、それから国民世論の動向等を見て、これもまた、絶対につくらない、持ち込まない、あるいは持たないということは白紙にして将来検討する、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/31
-
032・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 沖繩についてはただいまのように白紙。これはなぜ白紙かというと、これは少し時間をとるようだが、三十秒ですからお聞き取りいただきます。ただいまアメリカが施政権を持っておる。そこでどんな装備をしているか、そんなことも私ども十分よく相談しなければわかりません。また、これからアメリカはどういうようにしようとするのか、それも話し合ってみなければならない。だから、そういうことがあるからただいまは白紙ということを申しております。しかし、日本本土については、これはもうはっきりした政策を述べております。これはことしの施政演説で堂々と述べておりますから、そのとおり御了承いただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/32
-
033・穗積七郎
○穗積委員 それらについては異論がありますけれども、先ほど言ったようなわけで先を急ぎますから申しますが、先週の土曜日にあなたは予算委員会で重要な発言をされておる。それは何かというと、いままで、非核三原則を中心にした非核決議を国会でしようではないか、内外に宣明しようではないかと言ったのに対して、当時、池田内閣までは、それはもうきまっておるのだ、方針として不動の方針だ、屋上屋を重ねるから、余分なことだからやらないのだと言っておった。あなたになると、今度は四原則を持ち出した。さらにこの間の土曜日には、実は非核三原則をこの際決議することは、安保のアメリカの防衛力に非常な制限を加えることになる、すなわち、アメリカの抑止力を押えるということは、安保第一主義のわれわれの立場から見れば抵触しておもしろくない、これは不利であるから、国益に反するので、この決議はやらないという、飛躍的な重大な発言をされておる。そこで、私はお尋ねをいたしますが、非核三原則のどの部分が安保体制に抵触し、障害になりますか、それを具体的にお示しいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/33
-
034・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 これは、皆さん方が、安保体制で核の抑止力、これにたよるということは、非核原則と矛盾するとしばしば言われる。その点を私は気にしているのです。これは矛盾しないとおっしゃるならまた何をか申しません。しかし、日本がこういう一つの非核三原則というものをもってこれからの一つの目標にしていこうとしている。しかし、同時に現実の問題は、核兵器は現にあるのです。そういう場合に、日本がその現実にある問題とどういうふうに取り組むか、これはどこまでもアメリカの抑止力にたよる、こういうことであります。抑止力は、これはもう私が申し上げるまでもなく、そのものがあることによって戦争がないのだ、これが核の抑止力であります。私は、アメリカの核の力というものは、これを真正面を切って戦争をしかけるようなことはないのだ、かように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/34
-
035・穗積七郎
○穗積委員 そうすると、当面は日本の領土内に持ち込ませないということが、アメリカの抑止力を制約するものであるから、好ましくない、こういうのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/35
-
036・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 そうではございません。日本の本土、これは日本の本土で、また日本政府がこれをきめることであります。しかし、アメリカの核の抑止力、これはどういう形で日本を防護してくれるか、これはまた十分日米間で相談しなければならない問題であります。しかし、そういう場合に、本土へこういうものを導入する、こういう考えはございませんけれども、私は、おそらく、アメリカのポラリスにいたしましても、あるいはアメリカ本土だけで活動することなしに、もっと近海にも出てくるのではないかと思います。そういうことまで制限する心配が出てくるのじゃないか、かように私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/36
-
037・穗積七郎
○穗積委員 その点、もう少し、お尋ねしたいのですけれども、先ほど言ったように時間がありませんので、たいへん残念ですが、あとで……。実は、きょうの理事会で三木外務大臣に質問の分は残しておいて、それで後に外務大臣からということですから、留保しておいて、あとでお尋ねいたしますが、沖繩についてあなたが白紙だと言ったということは、すなわち、核兵器基地を認めることを意味しておるわけですね。そういう場合もあり得ることである。その場合に、攻撃性の核、核兵器を置く基地は認められない、これは憲法上許すわけにはいかないという条件がついておるということは当然でございますが、念のために伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/37
-
038・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 これはお話にもあるように、日本の施政権下にある場合においては、日本政府が第一主義的にものごとをきめる、アメリカの施政権下にあればアメリカがきめる、かように御理解をいただきたい。ただいまアメリカが沖繩については施政権を持っておる。私どもは、沖繩がとにかく一日も早く日本に返ってくること、これはもう一番のもののように実は考えております。そういう意味でいろいろ交渉も持つわけであります。しかし、私どもが納得のできないような場合もあるだろう、かように考えますので、ただいまは白紙の状態で、アメリカと基地のあり方については白紙の状態だと、かように実は申しております。いまお尋ねになるものが、いかにもアメリカの施政権下にあるものと、日本の施政権下にあるものとがやや重なり、混同するような心配がありますから、ここで私ははっきり申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/38
-
039・穗積七郎
○穗積委員 それで、返った以後、B52、ポラリス潜水艦の立ち寄り、または寄港は禁止でございますね。当然でございますな。特例はあり得ませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/39
-
040・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 そういうあらゆる場合を考えて、白紙だと、ただいま申したのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/40
-
041・穗積七郎
○穗積委員 それまで白紙ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/41
-
042・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/42
-
043・穗積七郎
○穗積委員 非常に危険なものでございますね。
それでは、この特例の問題については、これは対外的対抗力の問題、国際条約上の問題がありますから、これは後に外務大臣並びに条約局長にお尋ねすることにして、前へ進んでおきたいと思うのです。
こうなりますと、日本の安保条約について、核の脅威、危険から日本をその中に巻き込ましめない、極東、アジアの戦争に日本を巻き込ましめない安全弁は事前協議だと言った。事前協議は、そういう意味で非常に日本の安全弁である。当時の国民の心配をすべてこれで解消しておるのであるということを言ったけれども、最近になりまして、事前協議に対して、はなはだしく違った説を持ち出しておるわけですね。
ここで総理にちょっと念のために申し上げておきますが、いままで私が調べたところでも、三十六年四月の外務委員会、三十八年六月三日の予算委員会、それから三十九年二月十八日の予算委員会等々において、事前協議の提案権は当然相互にあるんだ、日本側にもあるんだ、対象になるのはアメリカの核装備、配置並びに戦闘行為であるけれども、提案権は平等であり、当然こちら側にあるんだということを四条の随時協議と区別して、はっきり答えておる政府が、それをこのごろになって、外務省は、提案権はアメリカにのみあるんだという、実に驚くべき売国的な発言をしておる、解釈をしておる。これは誤りでありますから、総理、これを取り消しておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/43
-
044・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 最近の外務省が言っているのは、非常に論理的で正しいと思います。私は、第四条、第六条、こういうものをやはり区別して考えるべきだ。日米間においては常時随時協議ができるのです。その協議が第六条の協議だ、第四条の協議だ、かように分ける筋のものでないこと、これは密接なんです。いま外務省が言っている事前協議、相手方が行動を起こすのだから、その行動を起こすものが協議をする、行動を起こさないものが協議をするという、そんな筋のものじゃない、かように考えます。だから、それはいまの外務省の解釈のほうがよほど論理的じゃございませんか。それで……(穗積委員「それは大違いです」と呼ぶ)それを取り消せと言われても、ちょっと困りますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/44
-
045・穗積七郎
○穗積委員 事前協議と四条の随時協議とは、これは従来から、締結当時から、審議の当時から区別して、ちゃんと聞くほうも答えるほうも区別して答えておりますよ。それが正しいのです。事前協議の場合は、さっきも言ったように三つに限られておる。装備、配置変更並びに作戦行動、これに列挙的にきまっておるわけです。それに対しては、みずからの意思によって、お互いのあるいは了解によって一方の意思または両方相互の了解によって、これをやめるわけにはいかない義務規定でございます。そういうことをはっきり言ったのです。高辻さん、あなたは法制局次長として、当時はずっとやったじゃありませんか。それで、さっき言ったように、政府の答弁は、私の見たところでも、明確にその点は区別してそのつど答えておる。事前協議について私は聞いておるのです。誤りとおっしゃい。誤りですよ、これは。——高辻さんはすぐ総理と一緒に帰るのですか。残って、あなたちょっとそれを答弁してください。
その次にお尋ねいたしますが、沖繩の返還の場合に、基地の自由使用の問題が出ておる。これは事前協議の免除であります。そのことは、言うまでもなく、主権の重大な部分である作戦並びに戦闘並びに外交権をアメリカへ白紙委任をすることである。さきのドゴールの言うとおりだ。そういうことになるので、この自由使用については、事前協議と関連をして絶対にあり得べからざることであるとわれわれは信じます。この際、いろいろ動揺し、イレギュラーな発言の多い最近でありますから、これも念のために佐藤総理自身から聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/45
-
046・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 私は、白紙でございますから、ただいまの穗積君の御意見、よく記憶にとどめることにいたします。お話を伺っておきます。まだ白紙でございますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/46
-
047・穗積七郎
○穗積委員 そんなばかなことがありますか。あなたは売国者です。あなた、佐藤さん、こっち向きなさい。それはおかしいですよ。(「売国者とは何だ、取り消せ」と呼び、その他発言する者多し)そんなことは、あなた、防衛、外交権をいまアメリカに一方的に白紙委任をして、それでそのときに、やがてこれがエスカレートしたら、それはもう明らかに第五条の発動になるじゃありませんか。第五条の発動になりますよ。そのときには、日本の政府、国会の意思に反して、日本の自衛隊は共同作戦の中に入らなければならないんだ。そうなるじゃないか。
〔「何の根拠で売国者と言うんだ、取り消せ」と呼び、その他発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/47
-
048・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 売国者だとか言われることは、ちょっと困りますがね。それはそういうことではございません。(穗積委員「取り消せばいいんですよ」と呼ぶ)私は、取り消しません。私は、いまからアメリカと交渉するのです。交渉するのが白紙だという立場で交渉している。それだから、右からとか左からだとか、そんなことを言わないと言っている。これが私の態度なんだ。(発言する者多し)それで売国奴ですか、そんなことで……。何を言われる。失礼じゃないか。(穗積委員「失礼なものか」と呼ぶ)私自身が白紙の状態だと言っている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/48
-
049・秋田大助
○秋田委員長 穗積君、一々発言を求めて発言をしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/49
-
050・穗積七郎
○穗積委員 その話はまたあらためてやりましょう。あなたが愛国者であるか、売国者であるか、具体的な事実の中で証明しましょう、それをもう打ち切って……。
最後に、事前協議に関してお尋ねするが、朝鮮の問題が最近また非常に心配な情勢になってきた。そこで、われわれ特に現実的な問題としてお尋ねしておきたいのは、日本におる国連軍ですね。日本におる国連軍の行動に対する事前協議の内容についてお尋ねしておきたい。これは当然国連軍の名によっておりまして、しかも、国連軍との協定ができておりますから、日本に義務を負うておる。ところが、この在日国連軍の行動についても、先ほど言いましたように、装備、配置並びに作戦行動については事前協議の義務規定があるということは当然だ。そこで、私お尋ねしたいのは、もしそれを主張するときにはどこを相手にして交渉するのか。この間三木さんは、四条の規定は外交ルートを通じてやる、交換公文の事前協議交渉は政府間でやる、こういうことを言われたが、そのときに国連軍の事前協議は一体どこを通じてやるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/50
-
051・秋田大助
○秋田委員長 ただいまの穗積委員の発言中、不穏当な言辞がありましたならば、速記録を取り調べの上、委員長において善処いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/51
-
052・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 これは、御承知のように、安全保障条約の事前協議と全く同一ですから、ただいまの場合は米軍だ、かように私は考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/52
-
053・穗積七郎
○穗積委員 米軍ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/53
-
054・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 と思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/54
-
055・穗積七郎
○穗積委員 それでは国連軍はノータッチですか。国連はノータッチですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/55
-
056・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 ちょっと待ってください……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/56
-
057・佐藤正二
○佐藤(正二)政府委員 御承知のとおり、国連の安保理事会の決議によりまして、国連の統一司令部というものができまして、そこのもとに各国が軍隊を供出しているわけでございます。しかし、統一司令部と申しますのは米国政府でございますから、したがって、実態的には米国と話をするということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/57
-
058・穗積七郎
○穗積委員 それは違いますよ。国連に加盟をし、国連を尊重するという国連外交は、与党内閣の外交原則の中における第一の原則じゃありませんか。そのときに、国連が何ら関係しない、何の関係も、発言も、責任も持たない、そんなばかなことがありますか。あの国連の決議は、あのときに統一司令部を認めたわけです。ところが、責任は国連の安保理事会にあるのですよ。そういう国連の権威、国連に対する正当な発言権を、日本の自主権を尊重すべきものをみずから放棄するような解釈というものは、われわれはこれまた売国的と言わなければならない。どうですか。主権放棄です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/58
-
059・佐藤正二
○佐藤(正二)政府委員 安保理事会の決議で国連の統一司令部というものをつくりまして、全部そこに国連軍の指揮をまかしたわけでございますから、したがって、具体的にどういうケースをお考えになっているか、私ちょっとわかりませんが、たとえば、こちらの、日本の中での軍隊の行動だとかなんとかいうような話になりますれば、当然統一司令部との話になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/59
-
060・穗積七郎
○穗積委員 外務大臣並びに外務省に対する質問は留保いたしまして、総理大臣に対する質問は遺憾ながらしり切れとんぼですけれども、またの機会にいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/60
-
061・秋田大助
○秋田委員長 戸叶里子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/61
-
062・戸叶里子
○戸叶委員 時間がありませんので、私は、単刀直入に質問をしたいと思います。
いま、穗積委員から、非核三原則と安保条約の問題等についてちょっと触れられましたけれども、私もちょっと理解に苦しむところがありますので、この点について、もう一度伺ってみたいと思います。
非核三原則というのは、製造しない、持たない、持ち込ませないというのですから、国民から見ると、やはりそれだけの決議ぐらい、総理が言っていることばなんだからいいじゃないかという素朴な考えがあると思うのです。そこで、政府は新しく核四原則というものを出してこられましたけれども、その一つである核の平和利用、それからまた核軍縮、これはもちろん非核三原則と一致すると思います。それで、もう一つの問題点は、この間の予算委員会で、政府が、総理大臣みずからが、非核三原則というものは安保条約を拘束するものだ、拘束を加えるものだ、こういうふうな答弁をされておりますけれども、私は、どういう面で一体拘束を加えるのかなあということで、どうしても了解に苦しむわけです。たとえば、条約上だとか法律上は拘束を加えるものじゃない。しかし、政治的にそういうことをおっしゃったのかどうか、この点をはっきりさしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/62
-
063・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 まさしく、いまお述べになりました政治的なものです。それより以上には何もございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/63
-
064・戸叶里子
○戸叶委員 そうしますと、核政策の四原則の中で、安保条約のもとにおけるところのアメリカの核の抑止力、こういうものによるのだということを言っておられます。そこで、私どもは反対でございますけれども、いまの政府の立場に立ってお考えになったときに、海の向こうにはおそらく核兵器だってあると思います。そういうふうな形で、核抑止力というものがあるわけなんです。それを、そういうふうな状態にあるにもかかわらず、持ち込ませないという原則があるにもかかわらず、その抑止力にたよるのだから、だから非核三原則はだめなんだとおっしゃるのは、それじゃ一体核基地を持たれるということかというふうにしか考えられないわけです。この点はどういうふうにお考えになられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/64
-
065・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 私は、アメリカの核の抑止力は、日本の安全を確保する保障の一つの方法と考えております。そうすると、アメリカ自身はいま強大なる核の力を持っております。これにたよるということは、これにたよっておれば戦争がないということなんです。だから、アメリカ自身は自由な立場でそれを使いたいだろうと思います。これが一つですね。しかし、日米安保条約では、日本の政府の意思に反してアメリカが使うはずはないのであります。この点は、何度もはっきり私どもと約束をしてくれている。でありますから、いわゆる法律的な問題としてはございませんけれども、ただいまの核の三原則、核をつくらないということ、持たないということ、使用しないということ、これは先ほど来議論もありますが、日本が世界で唯一の被爆国だという感情も非常に強く出ておりますね。だから、その意味においての核兵器を憎む、きらうという気持ちも、これは尊重する。そこらに一つの問題があるわけですね。だから、社会党の場合のように、安保条約がかえってじゃまだ、それこそ核兵器の攻撃を受ける心配があるんだというふうに割り切っておられるほうから見ると、これは非核三原則どおりでけっこうでしょう。しかし、私どもはやはり、アメリカの核の抑止力、これは必要なんだ、かように考えておりますから、アメリカ自身の考え方もひとつ考えなければならない、かように思うのであります。しかし、それかといって、ただいま申し上げるように、アメリカが日本政府の意思に反して基地を設ける、こういうようなことはございません。これははっきり申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/65
-
066・戸叶里子
○戸叶委員 それでは、いま総理自身が、安保条約の事前協議によって核を持ち込ませないとはっきり言っておられるわけでございますから、安保条約に関しての拘束は、しかも政治的なものだけである。ただ、核の抑止力ということを考えたときに、アメリカにいろいろ考えがあるだろうから、やはりそういうことを勘案して非核三原則というものは決議できないんだ、こういうふうに言われますと、現段階ではとてもそういうことはできないと言われる理由が私はわからない。いまの段階では当然できるんじゃないか。ただ、将来に向かってどうということはわかりませんけれども、現段階で何も非核三原則を決議しても差しつかえないじゃありませんか。どこに一体差しつかえがあるんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/66
-
067・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 いまの状態、これは政府自身が一つの方針をきめておるから、これはもう政府はけっこうです。しかし、同時に、国権の最高機関の国会というものがある。これはここで決議なされ、そうして満場一致可決すれば、政府ばかりでない、どこのどの政党がつくりましても全部を拘束する、そして、それほどの意義のある、価値のある、権威のあるものだ。私は、今日自民党がただいま政局を担当しておるという立場からだけ、このわが党の態度をはっきりさしておりますけれども、さようなことを国会自身が未来永劫にわたって国民を縛るという、そういうことは、ちょっと私は心配に思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/67
-
068・戸叶里子
○戸叶委員 どうも私は総理の言われていることがはっきりいたしません。理論上現在は反対するものはないと思うのですけれども、ただ、将来ということを考えて、政治的な配慮から、総理は、それをいまやるべきでない、こういうふうに結論づけられるわけですが、そうなってくると、結局、私どもは、核持ち込みに対する不安というものは消え去りません。あるいはまた、沖繩の基地に対するいろいろこれまでの総理の答弁等を総合してみますと、白紙であるという裏に、白紙でない何ものかがあるような気がしてならないわけです。非常に不満でございますけれども、私たちは、素朴な意味において、非核三原則というものを現段階で決議案として出しても差しつかえないんじゃないかという強い意思を持っていることを言っておきたいと思います。
そこで、第二の事前協議の問題でございますが、今後におきましても、おそらくエンタープライズなり何なりが入ってくると思いますので、ここではっきりさせておいていただきたいと思います。
先ごろエンタープライズが入港いたしましたときには、たくさんの問題を残して帰りました。その一つは、このエンタープライズが佐世保を出まして朝鮮水域に向かって、また、明らかにベトナムの戦争に参加することもあり得るわけでございます。これは日本の基地から戦闘作戦行動に参加することであって、安保条約の六条による事前協議の対象になると私は思うわけでございますが、政府はこれに対して、日本から戦闘作戦行動に参加していても、その実際の行動地点が日本の領海外ならば事前協議の対象にならないと考える、こういうことを参議院の本会議で答えておられるわけでございます。これは航空母艦のときに、飛行機が日本の基地から直接飛び立たないで、領海外へ行って飛び立ったときにはいいんだ、こういうふうに言われますけれども、たとえ領海内から飛び立たなくても、領海外から飛び立っていった場合も、報復攻撃を受けるというその危険率というものは同じだと私は思うのです。そういう意味から申し上げましても、この基地がたたかれるということは同じ率だけ多いわけでございまして、領海内から飛び立ったからとか領海外から飛び立ったからというふうに区別をすべきではないと思います。事前協議の対象に当然すべきだと思いますが、この点はいかがお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/68
-
069・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 こういう事柄は、過去においても議論されたことだと思います。したがって、領海内で作戦行動、作戦命令を受けなかった、こういうことはもうはっきりしていますから、作戦命令を受けておれば、それはいまの事前協議の対象になる、かように私は考えます。しかし、プエブロのときは、出てからしばらくたってあの船が拿捕されたのではないか、時間的にもそういう違いがありはしないか、かように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/69
-
070・戸叶里子
○戸叶委員 ちょっといま大事なことをおっしゃったのですが、参議院では、航空母艦の場合には、領海外で飛び立ったときには事前協議の対象にならない、領海内で飛び立ったときだけだという答弁をされておるわけです。私は、たいへんそれは疑問に思うわけです。やはり作戦命令というものが下っておる場合には、領海内であろうが領海外であろうが、これは区別すべきではない、こう考えますけれども、この点はどうでございますかといって伺っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/70
-
071・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 作戦行動、そういう命令を領海内で受けたときだけ問題になるのだ、私どもはかように思っております。領海外に出ていって、そこでその命令を受ければ、私どもの関与するところではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/71
-
072・戸叶里子
○戸叶委員 ちょっとそこら辺がおかしいのですが、私は参議院の答弁を新聞で見たので申し上げますが、参議院ではこう言っていらっしゃるのです。領海外から飛行機が飛び立った場合には事前協議の対象になりません、こういうことをはっきり言っていらっしゃるわけですから、私はこの点を疑問に思ったのが一つと、それから、おそらくエンタープライズなり何なりは、領海内におるときには、作戦行動の指令を受けていますなんていうことは言わないと思うのですよ。出ていってからぱっと飛び出していくのではないかと思うのです。だから、そういう点は、やはりエンタープライズが入港するような場合には当然事前協議の対象になるべきではないでしょうか。これは作戦行動に出ていくのですから、そういうことを私は言っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/72
-
073・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 いままでは、ただ作戦行動か補給行動かということで議論されていた。航空母艦でもその他の第七艦隊等が日本に立ち寄るのは、補給というか、そういう補給あるいは乗り組み員の休養、いわゆる作戦行動そのものではないということでございます。私どももさように考えておりますから、その点は政府部内で統一見解になっておる、かように思います。ただ、先ほど議論になっておりますのは、領海内で作戦命令を受けたという場合には事前協議の対象になる。そうして、領海外において飛行機が飛び立とうが飛び立つまいが、とにかく領海内で作戦命令を受ければ事前協議の対象になる、かように御理解をいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/73
-
074・戸叶里子
○戸叶委員 その辺の答弁は、おそらく参議院の本会議ではそう答えていらっしゃらないと思います。日本の沿岸水域におけるものを除いて、行動が領海外で行なわれるときは、米軍の意図にまかせるような発言をされております。そういうふうに答弁をされておりますので、非常に私は納得がいかないので、いま伺ったわけです。航空母艦などの場合には非常にわかりにくいのではないかと私は思います。向こうへ飛んでいってしまってから、作戦行動であったとかなかったとかいうことになって、非常にわからないと思いますけれども、ただ、いろいろとこの面について質疑を繰り返しておりますと時間がなくなりますので、ここでこの問題は打ち切りますけれども、私どもがこの安保条約を審議いたしました当時のことを思い起こしますと、非常に事前協議というものに対しては日本の有利であるかのような発言をしておられました。私どもは、事前協議というものがこの条約の唯一の双務的なものである、ミューチュアルなものであるということを聞かされまして、いろいろな角度からいろいろと質問をしたわけです。そこで、たとえばこの空艇部隊に対しましても、自民党の古井氏の質問に当時の総理の岸さんは答えて、日本が一般的の給油基地として使われるということは事前協議の対象にならないと思う。しかし、戦闘作戦行動と密接不可分の補給行動は対象になることについては日米間に意見が一致している、こういうことを言われているわけです。だから、たとえ補給の場合でも、戦闘作戦行動の命を受けているならば、これは事前協議の対象になるというふうな答弁をされているのですが、これはお認めになるでしょうね。今後においても問題になってくると思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/74
-
075・高辻正巳
○高辻政府委員 一応お答え申し上げます。
事前協議の問題で、先ほどからございました前の参議院の答弁をよく調べますけれども、飛行機が発進をしたのでなければ事前協議の対象にならない、もしそれが領海内で発進するのであれば話は別だがということは、これはおそらく正確なお答えではなかったと思います。要するに、戦闘作戦行動として出ていくということであれば、出て行く際において事前協議が必要である。ただし、その出て行くときに、戦闘作戦行動ではなしに出てまいりまして、それからその飛行機が発進するというようなことになりますと、いまの場合に該当いたしませんから、これは事前協議の対象にならないというふうに考えておりますが、先ほど御指摘になりました答弁もよく調べまして、もし必要があればさらにあらためて御答弁申し上げることをお許し願いたいと思います。
それからもう一つ、補給活動の関連で御質疑がございましたが、補給活動は、要するに戦闘作戦行動と区別して、わざわざ補給活動というようなものでありまして、こう戦闘作戦行動と密着するような補給活動、たとえば戦闘下にあるところに落下傘か何かで行ってやるということになりますと、これはおそらく戦闘作戦行動そのものと見ざるを得ないだろうというので、いま御指摘のような答弁がされましたが、しかし、単なる油を積むとか、そういうようなことだけでは戦闘作戦行動とは言えないだろう、こういうことを御答弁申し上げたのだろうと思います。その点に関する限り間違いはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/75
-
076・戸叶里子
○戸叶委員 ですから、私もはっきりしていることは、単なる油を積むだけならば、これは事前協議の対象にならないことはわかっています。しかし、戦闘作戦行動に出る前に日本へ寄って、そして給油なり何なりしていけば、これは当然事前協議の対象になりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/76
-
077・高辻正巳
○高辻政府委員 それは、先ほど申し上げました戦闘作戦行動そのもの、むしろそれがなければ現実に戦闘ができない、戦闘している際において、それはなるほどパチパチをしているのとは違うけれども、不可分一体であるという関係で、これは戦闘作戦行動と見なければいかぬだろうということになると思いますが、ただいまのように、戦闘作戦行動の命令も何も受けているわけではなくて、何か石油を補給をするというだけのことになりますと、それだけでは戦闘作戦行動というわけにはいかぬだろう、こういう考えでございますが、それについての御疑問のようでございますけれども、そこは、やはり単なる補給というものと、現に戦闘における補給というものは、区別して考えるべきだろうというのがわれわれの考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/77
-
078・戸叶里子
○戸叶委員 いまのいろいろな答弁を伺いましても、それから先ほど来穗積議員が指摘されました、かつて私どもが安保条約を審議した当時の事前協議の解釈にいたしましても、日本に提案権があるということは、たびたび大平外務大臣も中川さんもお答えになりました。そしてしかも、これはアメリカとの間で話し合っておりますとさえ言われたわけです。ところが、今回三木外務大臣が、この事前協議のイニシアチブはアメリカ側にあるんだ、こういうふうなことをはっきり言われるわけでございますし、内閣委員会におきましては、東郷さんなどはこれは当然アメリカ側にだけあるんですということを強調して、二度くらい繰り返して言われているわけです。そうなってまいりますと、私どもが安保条約を審議したときと、今日と、事前協議の内容というものが非常に違ってくるわけでございまして、今後においても私は非常に大きな問題を残すと思いますので、はっきり統一した見解をここでお示し願いたい、こういうふうに考えます。——外務大臣にはあとで伺いますから、総理に伺いたい。外務大臣はあとから伺いますから、けっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/78
-
079・三木武夫
○三木国務大臣 いや、そんなに忌避されなくても……。これは私よく読んだのです。藤山さんの場合には、非常に明白に第四条と六条とを区別して、そして第六条で、事前協議はアメリカが言い出すということをはっきり言っている。ただ、私は、法律解釈のために、第六条でアメリカがイニシアチブをとるのだと言っておるので、実際は四条という規定があるのですから、こちらのほうからもやろうじゃないかということが言えるのですから、実際問題としては、戸叶さんの御心配になっているような、何もアメリカが一方的にイニシアチブをとって、日本が何も言えないのじゃないかということにはならないのです、実際に。ただ、法律の条約上の解釈としてはっきりしておいたほうがいいということで私は申し上げておるので、実際の運用の面については、あなたの御心配になっておるようなことは起こらない。こちらからいつでも、事前協議をやろうじゃないかということは言えるのですから、そういうことにはならぬです。しかし、条約のたてまえだけははっきりしておいたらいいというだけのことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/79
-
080・戸叶里子
○戸叶委員 法律のたてまえからだけはこうだ、ああだとおっしゃいますけれども、この前ははっきりと、イニシアチブはアメリカにあります、日本には提案権はないというふうにおっしゃっていたわけなんです。だから、いまは両方あるということですね。日本にもあるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/80
-
081・三木武夫
○三木国務大臣 六条ではないのです。これはアメリカがイニシアチブをとるわけです。ところが、四条によって、いつでも日本から協議を申し出ることができるので、日本がその四条によっていつでも協議しようじゃないかと言えるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/81
-
082・戸叶里子
○戸叶委員 ちょっと待ってください。そうおっしゃられると、私は言わざるを得ないのです。横路さんと大平さんとの質疑応答の中で、事前協議の申し出は当方からもできると承知をいたしておりますと答えておられます。それから三十六年の四月に、中川局長が、事前協議の問題ですが、これはもちろん双方からできることです、これは条約の審議のときにおっしゃったのですよ。それをいまになって、英文でも変わっていればあれですけれども、比べてみれば英文は変わっていないのですよね。それで、三木さんの代になってこうですというふうに変わられると、私は当時の条約を審議した者として、何かばかにされたようで非常にもの悲しさを感じますし、国民に対しても申しわけないなということを感じるわけなんです。あの当時は、事前協議があるんだ、これで日本が戦争に巻き込まれないための歯どめになるのだ、こういうふうに言っている。だから、私は、今回のエンタープライズが入港するなどというときには、これはどうも核装備をしているらしいというふうなうわさが一ぱい飛んでいるのですから、当然そのときには日本政府が申し入れができるのだ、そういう解釈のもとにあの事前協議というものを理解していたわけです。ところが、今日になってそうでないと言われると、私はちょっと戸惑うわけです。この点を総理大臣、はっきり統一解釈をしておいていただかないと困るわけです。——私、総理大臣に伺っていますから、総理大臣にまず伺って、あとから三木さんに伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/82
-
083・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 さっき実は穗積君にはっきりと答えたのでございますから、この答弁で一応御了承いただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/83
-
084・戸叶里子
○戸叶委員 それでは最後に、一言総理大臣に申し上げますが、交換公文というものは、お互いに内容を理解し合って、それで解釈も一致点に達して、そうして交換公文というものは取りかわされるものだと思います。当時の交換公文が取りかわされるときには、両方に発議権があるのだということで取りかわされたと思うのです。ところが、いまになってこんなふうに変わってくるというのは、交換公文というものがそんなに権威のないものでいいのかどうかということを私は疑わざるを得ない。政府自身が解釈が変わってきたらしかたがない。情勢の変化で変わってきたなら、変わってきたということをおっしゃればいいと思うのですよ。それを既成事実をつくっておいて、そうしてあとからついてこい、信じろというから、不信感を国民は持つのだろうと思うのです。私自身でさえも非常に不信感を持つわけですよ、安保条約を審議した当時から見ますと。ですから、こういう点をはっきりしておいていただかないと困ると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/84
-
085・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 交換公文は、ただいま言われるような性質のものでございます。ただいま当時の状況を詳しく知っている条約局長から説明させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/85
-
086・佐藤正二
○佐藤(正二)政府委員 どちらからイニシアチブをとるかという問題は、私、全然解釈は変わっていないと思うのでございますが、三十五年のあの安保のときでございますが、このときに、藤山大臣から、アメリカからだけしか言わないのだ——もちろん、その内容について日本側からやろうじゃないかということを言うことは言えるわけでございます。しかし、それは別に六条の事前協議とは解釈しないわけでございます。その趣旨のことを藤山大臣はお答えになっておられます。それから、ちょっと違った感じでお答えになっているのは、その後三十九年でございますが、大平大臣からお話がありましたときには、先生がいまおっしゃったような感じの、両方からできるんだという感じの答弁をしておられますが、おそらく私がいま御説明いたしました四条で、その内容のことをこちらから申し出ることができるという意味でお話しになったのじゃないかと思います。それからその後に、私の前任の藤崎からも、三十九年でございますか、やはりアメリカからだけしか言えないんだという趣旨の答弁をいたしております。したがって、政府の解釈としては変わってないと私は了解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/86
-
087・戸叶里子
○戸叶委員 そう言われると、私も言わざるを得ない。私は当時審議をした一人なんです。そして納得させられた一人なんです。事前協議というものは、あの角度、この角度から一生懸命になって質問をした一人なんですよ。その当時そうおっしゃっておらないのです。中川さんもはっきりと、事前協議の問題ですが、これはもちろん双方でできるものです、こう言っておるわけです。総理大臣、私は別にあげ足をとるつもりはないのですよ。あげ足をとるつもりはないのですけれども、こういうふうに解釈が変わって、しかも、あとから何か押しつけみたいに納得させられるのでは、当時審議をした者としては非常に良心の苛責にたえないのですよ、ほんとうのことを言いまして。それで、イニシアチブがアメリカ側にあるということだけになると、双方にあるときよりどうしても弱くなるわけです。日本にイニシアチブがなくて、アメリカだけにイニシアチブがあれば、協議にしてもどうしても弱くなります。それから、エンタープライズの場合だとか、今後エンタープライズが年じゅう寄港するかもしれません。そういうような場合に、イニシアチブがアメリカにあるということになると、事後協議にならざるを得ないのです。日本からの事前協議という提案権があればそういうことはないにしても、事後協議になる可能性が非常に多いわけです。だから、私はそれを心配して言うわけでございますから、いままで私が申し上げたことは、総理大臣よくおわかりだと思いますので、速記をごらんになってもはっきりわかりますから、この点をはっきりさせて、統一した見解を出しておいていただきたい。次の機会までに私はぜひ出していただきたい、これを要望いたします。出してくださいますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/87
-
088・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 よく研究しましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/88
-
089・戸叶里子
○戸叶委員 それでは外務大臣に一点だけ伺います。
いまの問題ですけれども、その前に申し上げますが、いまここに、私の手元に藤山大臣の御答弁が来ております。それは確かにアメリカにイニシアチブがあるように答弁されております。ところが、中川さんなり大平さんはそうじゃなくしておるわけです。そういうふうにアメリカ側だけにイニシアチブがあるんだと言わない方のは抹殺されたのですか。それともどういうふうなピックアップのしかたですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/89
-
090・三木武夫
○三木国務大臣 私は、おそらく大平君も中川条約局長でも、この六条、四条というものを分けて考えないで、いつでもこちらのほうから協議をやりましょうということを申し込めるんだから、アメリカだけが常に一方的にイニシアチブをとっているわけではないのです。いつでも日本のほうから協議をしようじゃないかという申し出ができるんだということで、この六条と四条と一緒にしてお答えになっておると思いますよ。その大平君の答弁の中にも、六条の解釈はこうだと言ってないですからね。そういうことで、私は両方一緒にしたと思いますし、戸叶さんの御心配になっておるような、アメリカの核兵器を持ち込むとか、あるいはアメリカの作戦行動に日本の基地を使うとかいうのは、アメリカの軍事行動が起こるということが前提になって、日本政府の同意を求めるのですからね。そのイニシアチブをアメリカがとるということになるでしょう。それは、こちらのほうがこうやってやりませんかといってアメリカに持ち込むことはないですからね。ただしかし、そのことが、あまりこれをやかましく言ったことによって事前協議というものを空文化させるとして、あなたが心配して質問をされるならば、その意図は私は持っていない。この四条というものをほんとうに活用したいのだ。エンタープライズのときだって私はやったですよ。この随時協議、四条による協議はやった。そういうことですから、やはりこの四条を活用して、常にこちらのほうからやはりイニシアチブをとってやることによって、安保条約の事前協議というものをこれをほんとうに空文化するということはしない。ただ、条約のたてまえとしては、こういう解釈をせざるを得ないということで、これを強調することによって、事前協議というものを無意味なものにしようとしておるのではないかというお疑いがあるとすれば、これは私の本意ではない、これを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/90
-
091・戸叶里子
○戸叶委員 三木外務大臣、私もたいへんふつつかではございますが、長い間外務委員会におります。まさか随時協議と事前協議を取り違えて、大平外務大臣なり中川条約局長が御答弁になったとするならば、そのときに私は追及していたつもりでございます。ところが、当時、事前協議はということばを使っていられるわけです。ですから、随時協議はとかあるいは協議はとおっしゃるならば、私どもも四条と六条とはどこが違いますかということでいろいろ審議をしたと思いますけれども、事前協議はということで、はっきりまくらことばをつけておっしゃっていますから、私は非常に了解に苦しんできたわけです。どうかその点をお調べになっておいていただきたい。そして、さっき申し上げたように、はっきり、その当時のものがもし間違っておるならば間違っておる、今日変わってきたならば変わってきた、そういうことをはっきりさせていただきたい、これが一つでございます。
それから、時間がありませんから多く聞きませんが、ただ一点だけ伺いたいと思います。いま外務大臣はたいへん繰り返して言われました、安保条約にいう四条の随時協議、それから六条による事前協議、これはもちろん内容は違っています。その内容のことを伺っておるのじゃないのですよ。その協議をする委員会というものは、日米安全保障協議委員会、この委員会ですか。両方ともこの委員会ですか。この委員会であるがごとく、ないがごとくの答弁をされておるのですが、この点をはっきりさせていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/91
-
092・三木武夫
○三木国務大臣 二つの場合があると思います。外交機関でやる場合と、この安保協議委員会でやる場合と、二つの場合があるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/92
-
093・戸叶里子
○戸叶委員 それは四条でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/93
-
094・三木武夫
○三木国務大臣 四条も六条も……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/94
-
095・戸叶里子
○戸叶委員 そうすると、四条も外交機関でやるし、それからまた六条の事前協議も同じ外交機関でやるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/95
-
096・三木武夫
○三木国務大臣 安保協議委員会でも四条の協議も六条の協議もできるし、外交機関でもできる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/96
-
097・戸叶里子
○戸叶委員 そうしますと、外務大臣がこの前の予算委員会でお答えになった、四条は外交ルートでやる、六条には協議機関はない、政府対政府でやります、こういうふうにおっしゃったのとどういう関係がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/97
-
098・三木武夫
○三木国務大臣 私、あとでこれを補足してそのときに答弁したように思うのです。それは予算委員会の応答だと思うのですが、それは協議委員会でもやれますということを補足の答弁をしたと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/98
-
099・戸叶里子
○戸叶委員 もうちょっとはっきりさせていただきたい。そうすると……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/99
-
100・三木武夫
○三木国務大臣 そばで聞いておった北米局長が、何か政府間と外交ルートと分けて予算委員会で言ったようなんで、それで誤解が生じたのではないか。それは、政府間あるいは外交ルートというものは同じもので、それは一緒のものでございます。用語上が不適当である。しかし、四条も六条も、両方の協議は、安保協議委員会でもできるし、外交機関でもできる。これがもし不明確な印象を戸叶さんに与えたとしたならば、これがわれわれのはっきりした考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/100
-
101・戸叶里子
○戸叶委員 そうだといたしますと、たとえば——もう一点だけしか伺わない。たとえば沖繩のB52の問題なども、この前の予算委員会では、あれは随時協議の対象になるのだとおっしゃったですね。随時協議の対象になるのならば、何も日本がおそるおそるアメリカに対してこの撤去のことを言う必要はない。お互いにもっと協議をしていいのではないか、こういうふうに私は考えたものですから、この辺のところと四条と六条の関係というものがはっきりしないので、きょうは確かめたかったわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/101
-
102・三木武夫
○三木国務大臣 私は、B52のアメリカとの話し合いが安保条約の第四条の規定によるというふうに申し上げたようには記憶してないのです。私調べてみます。それは私が申し上げたのは、B52は幾つかの側面を持っている。条約上の側面、軍事上の側面、もう一つは政治上の側面。やはり条約上はアメリカが沖繩で自由使用できるわけですからね。軍事上は、沖繩の果たしておる軍事的役割りというものをわれわれ評価しておるわけです。問題なのは政治的な側面であって、それは人心が非常に不安である、この事態としては日本としても注目せざるを得ないから、アメリカとの間に外交機関を通じてアメリカの善処を要望いたしました、今後もこれは話をするつもりでありますと、こう答えたので、条約の条文によって、第四条によってやるとかなんとかというふうに私申し上げたような記憶がないんですが、速記録を調べてみることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/102
-
103・戸叶里子
○戸叶委員 この問題についてまだあるわけですけれども、同僚の議員が質問をしますので、この辺で打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/103
-
104・穗積七郎
○穗積委員 関連して。私、外務大臣、外務省、それからあれにお尋ねしたいのですけれども、さっきの話で曽祢さんがなんですから、先に関連で一問だけ、事前協議の点ですが、四条の随時協議、これは、事前協議の責任は明らかになってませんよ。協議は協議ですけれども、協議の効力については、事前協議でも、それから随時協議でも同じです、合意に達したことについての効力は。ところが、事前協議の場合は、事前に日本の承認を求めなければならないということが明確になっておる。だから、四条の場合は、同じ協議であっても、向こうの判断あるいはこちらのミスで、事後において報告を受けて了解しても、それで違法にはならないわけです。非常な軽重があるわけです。四条の随時協議の場合と事前協議の場合とは非常な軽重があるわけだ。特に六条交換公文に規定されました三つの列挙された具体的な行動というものは、事後では、対外的には取り返しのつかない責任を一方的にアメリカの意思と行動によってのみ日本が全部かぶらざるを得ないという深刻な問題なんです。だから、事前協議と、それから四条の随時協議というものは、これは政治的効果から見まして厳密に区別すべきことなんです。ですから、先ほど言いましたこの解釈が私どもは正しいと思うのです。
たとえば、さきに言いましたが、これは戸叶さんお読みにならなかったので、私はちょっとそこの部分だけ読みましょう。中川局長が——これは条約解釈についてはベテランをもって任じて、これは有権解釈だとして承認したものです。「事前協議の問題でございますが、これはもちろん双方からできるわけでございます。」とはっきり言い切って、いいですか。そうしておいて、「なお、この事前協議の対象にはなりませんけれども、日本の何と申しますか、平和と申しますか、これと密接な関係のあるような事態が起きました際には、第四条におきまして協議をすることは、これは当然できるわけでございます。それ以外には外交上の協議を国際問題につきましては常時行なうこと、これも当然できるわけでございます。」こうなっている。外務省、大臣並びに局長、よくお聞きください。これは質問者もはっきり区別して質問しておる。それから、答弁者もはっきりそれを理解した上で、ここに明確に区別をして答弁をしておるわけです。
続いて、三十八年の六月三日、和歌山のわが党の辻原君の質問に対しまして、志賀防衛庁長官は——特に作戦行動、装備、配置等については、外務大臣と同様に責任のある人です。質問者が「一体、事前協議というのは、アメリカが一方的にしてくるものですか。日本側からはできないものですか。これはどうなんですか、防衛庁長官。」こう言ったのに対して、「これは、」——すなわち事前協議のことです。「双方で、両国で協議することでございまするから、」こっちから「相談ができるのであります。」そういうふうに言っておる。
それから、さらに加えて、三十九年の二月十八日の予算におきまして、大平国務大臣、これもはっきり——もうこの当時、大平さんは、すでに条約問題については非常ないろいろな審議をされたあとで、十分な理解を持って、「事前協議の申し出は、」と、ここではっきり言っているのです。それは、四条の随時協議の場合の協議と、六条交換公文の事前協議との軽重というものを、重要性の相違というものを、そして義務規定が事前であるか事後であるかということをはっきり理解した上で、「事前協議の申し出は、当方からもできると承知いたしております。」こうはっきり言っているのです。
これを四条との関連において答弁をごまかされるということは、私は非常な重大な問題だと思うのです。ですから、政策が変わったからといってあれではなくて、法律の解釈の問題ですから、条約解釈上の問題ですから、しかも、事前協議については、先ほどから私も申し上げましたように、日本の安全と平和にとりまして唯一の歯どめなんです。重要なものですよ。それを四条の随時協議と混同されて、そこでできるではないか、日本の自主性あるいはイニシアは保存されておるんだという御説明は、これは政策問題じゃない、法理上の問題、条約の問題ですから、これは三木さん、厳密にしてもらわなければならない。それで、あなたの御所感と、それから高辻法制局長の法理上の御解釈についてはっきりしておいてもらいたい。これは答弁があったから言うのではないですよ。高辻さん、法律上協議事項があって、しかもそれは事前だということになっている。事態は列挙されている。その約束に対して、相手が懈怠する場合もありますね。善意なる懈怠もあるし、悪意の懈怠もあるだろう。そのときに、対等である条約の締約者である当事国が、それに対して提案権がないということは、これは全く条約というものが跛行的といいますか、追随的というか、日本の側から見れば底抜けの条約である、規定である。これは法理上から見ましても当然だと思うのです、双方からできるということは。対象は、ただアメリカ側の三つの行動についてが対象に列挙されておるということですよ。日本の行動を事前に協議することはありません。だから、そういう点を含めて、過去の記録で言うんじゃありませんから、法理上、国際条約の解釈上、あなたの公正、正確な御答弁をこの際伺っておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/104
-
105・三木武夫
○三木国務大臣 この法理解釈は法制局長官にいたしてもらうことにいたします。
批准国会は藤山さんのときですが、藤山さんのときは、これはそういうふうなことをアメリカ側がやる、軍事行動でありますから、アメリカ側ができるんだという、これは批准国会のときの外務大臣、そういうふうにお答えになっておりますし、私もそういうふうに思うのでございます。ただ、いま片務的であるとか追随的であるというふうにおっしゃいますけれども、私はそうは思わない。これは日本が拒否権を持っておるわけですから、だから、事後であることは許されませんよ。事前協議が事後の報告であることは許されませんよ。それならば拒否権というものは持つことはないのですから、したがって、これは事前でなくてはならない。だから、この事前協議は、アメリカの軍事行動に対して重大な制約を加えておるのです。アメリカとすれば、日本との防衛条約を結んだから、できたら何でもできるようにしてもらいたいと思うでしょうね。それに対してこういう重大な制約を加えたのが事前協議の条項でありますから、アメリカからいえば、これは向こうは片務的と言うかもしれない。そういうことで、この条約というものが、ただ事前協議の話し合いを持ち出すことがアメリカであって、それを日本がやらぬかということはいつでも言えるのである。ただ、アメリカの軍事の移動であるとか装備の変更であるとか作戦行動とか、アメリカ自身の軍事行動に関係をしておるから、言い出すのは向こうだけれども、こちらからはいつでもやろうではないかという申し出をすることはできるんだ。しかも、アメリカの軍事行動に対して重大な制約を加えておるこの事前協議の条項が、いま言われるように非常に片務的で非常に追随的だとは私は思わない。これはアメリカに対しても重大な制約を加えておる。日本が拒否権を持っている。日本が認めないということをアメリカがすることは許されない。こういうのでありますから、これはそう片務的あるいは追随的だと評価するあなたの評価と私は非常に異なっておる。この事前協議の条項はあまり意味がないとみなが言わないで、これはやはり大事に守っていかなければならぬ条項だと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/105
-
106・高辻正巳
○高辻政府委員 穗積先生の四条と六条に関する重要な点の相違といいますか、特に六条の実施に関する事前協議の重要性、これはむろん同感でございます。この点について、事前協議というものが日本側からも申し入れができるのかというのが問題の焦点でございますが、それにつきましては、たしか安保条約審議の際に、藤山大臣も、事柄の性質上、それはアメリカから事前協議そのものとしては申し出てくるのが筋であるということをおっしゃったように私思うのでありますが、しかし、その後に御指摘のような答弁がありますことも、私も長く関係しておりますのでよく承知しております。それで、答弁はむろん同じでなければおかしいというのは言うまでもないのでございますが、私どもが最初から考えておりましたのは、いま間違いがあったら恐縮でございますけれども、私の知る限りでは、藤山さんの安保条約審議の際の御答弁に確かにあったと思いますが、それがやはり正しいと私は思うのです。
その理由は何かと申しますと、端的には交換公文に出ておりますように、「日本国政府との事前の協議の主題とする。」「コンサルテーション ウイズ ザ ガバメント オブ ジャパン」というように、明文上はそれがあるからと決して申すわけではございませんが、事柄の性格といたしまして、配置の重要な変更とか装備、における重要な変更、とかいうことをしますのは、心がけるというか、意図しますのは、これはアメリカそのものでありまして、やはり事前協議の場に入ってくるのは、アメリカが事前協議、そのものの制度の中での協議、と申しますか、それはアメリカが申し出るのが筋ではなかろうか。それが交換公文の中では、いま申したように、「日本国政府との事前協議の主題とする。」というふうな言い方になっておるのだろうと私は思います。しかし、御指摘のように、そうでないととられるような答弁があったことも、私も大体この目にさわります点においては同じように気になります点でございますが、大平さんの御答弁等についてよく見ますと、御質問のほうで実はどうも少し怪しいのじゃないかと思うので、ひとつ事前協議をやろうじゃないかということを申し出ることができるかという質問が現になされておりまして、それに対して、事前協議の申し出はすることができると思うという趣旨の御答弁がございました。私どもがそれを見ますと、多少いま申し上げた基本の考えがあるから、便宜的に高辻はそうとるのじゃないかという御指摘があるかもしれませんが、やはり私どもから見ますと、事前協議の運用について、どうも怪しいから、ひとつ事前協議に入ったらどうだといういまの申し出と申しますか、それはむろんできる、これは外務大臣もそう申されておりますと思います。それからまた、先ほど増田さんの御答弁を御引用になりましたが、(「志賀さんだ」と呼ぶ者あり)それじゃいまの点はやめにいたします。
そんなわけで、今後も法制上の見地はどうかということを、事前協議そのものの協議の申し入れといいますか、主題とすることについてだけといいますれば、それは事柄の性格上やはりその意図を持つアメリカ政府ではないかというふうに考えるわけでございます。しかし、そのことは、事前協議の申し出、事前協議の中身を運用といいますか、どうもそれは少し怪しいからそういうことをやることをひとつ運用を考えたらどうかというような種類のことは、むろんできると思います。これは四条を引用してもよろしゅうございますし、四条でなければできないというようなしろものでもないと思いますが、むろん四条と申し上げて差しつかえないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/106
-
107・穗積七郎
○穗積委員 ちょっとそれについて高辻さん、時間があまりありませんが、私も多少法律のことを学んでおりますから、一言だけ答えてもらいたい。一つは、こういう条約の解釈について、これは政府を代表する有権解釈です。この解釈が先のものとあとのものと違ったときには、これは法律一般から見まして、あとのものが権威ある有権解釈である、こう理解すべきだと思うのです。同じ事項について先に法律が出ておって、政令が出ておって、あと法律または政令が出たときは、あとのものが有効になりますね。これは条約はそのもので変わっていない。それで、当事者の最高の責任者である政府が有権解釈をした場合に、あとのものが正確である、あとのものに国民は依拠すべきである、こう解釈するのが法理上正しいと私は思うのだ、二つの場合は。それで、もしそれがいけないなら、あとのほうは何らかの方法で取り消さなければいけませんよ。あなたはどう思いますか。
それからもう一つは、百歩譲って、あなたの解釈は、藤山解釈とは近いわな。そのときに、四条の随時協議条項かあるいは他の一般的な外交ルートを通じて、この問題については事前協議に付すべきだという提案もこっちができるとあなたは言っておる。そのときに、相手は拒否する権限があるかどうか、その事前協議を。それは、事前協議条項について、こちらから提案権があるという解釈でなければ拒否はできますよ。それは必要がないんだといえば事前協議の対象にはなりません。ところが、義務規定として事前協議が規定され、それに対して日本側が提案権がある、日本側もあるということが認められておれば、これは拒否できませんよ。ところが、随時協議またはその他の外交ルートで、一般的に仲がいい間柄だから話し合おうじゃないかといったときに、相手が拒否したときには、それは拒否権が相手にはありますよ。義務規定がないのですから、協議に必ずしも応じなければならぬという義務はないのです。それは非常な違いですね。結果は同じだからいいではないかと言うが、結果は大違いだ。その二点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/107
-
108・高辻正巳
○高辻政府委員 簡単に申し上げさせていただきますが、いわゆる後法優先、後法は前法を破るという原則、これは御指摘のように法令の段階、世界では普通の原則とされております。これはもうおっしゃるとおりだと思います。そこで、政府の答弁についてもそうではないかということでございますが、政府の答弁というのは、元来が……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/108
-
109・穗積七郎
○穗積委員 答弁じゃない、有権解釈ですよ、その場合、当時者の。そんなあいまいなことばを使っちゃだめだ、あなたのような法律家が。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/109
-
110・高辻正巳
○高辻政府委員 有権解釈というものについても、この場合の有権解釈を政府の答弁についておっしゃっているのかと誤解いたしましたが、解釈でございますから、法令の上で文字そのものについて実は出ているところと多少同列には断じられない。解釈についても、合理性のある解釈、それが間違っている場合に、それを訂正するという場合には、むろん訂正されたところに従うわけでございますが、そのいまの事前協議の問題に関しては、実は誤解を生ずるような答弁がときどき御指摘のように出ておりますが、同時に、これは一方的にと申しますと語弊がございますが、事柄の性格上、アメリカ側の意図するところが出すのであるというような答弁は、実は最近の機会においても申しておりますので、実際問題としては、いまの御質問に対して正確なお答えにはなっておらないかもしれませんが、特に申し上げるまでもないのではないかというふうに考えます。
もう一つの、事前協議であればいわゆる拒否権がある、そうでない四条の協議ならそうはいかないだろうということは、おっしゃるとおりでございますけれども、四条で、どうもおまえのところはくさいぞというわけで、ひとつ事前協議の運営をはかることにしたらどうかという場合に、アメリカ側が、実はそういう事実がないのだから、何とも協議したくても協議のしようがないということになれば、これはどうも拒否できるかできないかという問題以前に、そういう関係に入り得ないという問題があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/110
-
111・穗積七郎
○穗積委員 事実があった場合、事実があってしない場合。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/111
-
112・高辻正巳
○高辻政府委員 事実があって、しかもやらないというのは、これは明白に条約違反でございます。そういう場合を予想することは、理論的にと申しますか、条約の上に立って事を処理する当局としては考えられないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/112
-
113・秋田大助
○秋田委員長 曾祢益君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/113
-
114・曾禰益
○曽祢委員 二月六日の予算委員会において特に総理に対して質問した種々の外交問題について、ごく重要な点だけ限って外務大臣の御意見を伺いたい。
第一には、ベトナム戦争並びに逆にいえば和平の見込みについてであります。いまのベトナムの軍事情勢を見ると、非常に軍事的な面がはなばなしくなっております。そのいずれが勝ちつつあるのやら等についてはいろいろ見方があろうと思いますけれども、少なくとも一年前のあの当時と比べるならば、とても和平に対しては逆なような方向に動いているやに見えます。しかし、同時に、私は、そう簡単にばかり言えないのではないか。
〔委員長退席、小泉委員長代理着席〕
軍事行動が七分で、政治解決が三分なのか、あるいは軍事行動が三分で、ねらいはかえって政治的解決にあるのやら、双方側にいろいろな思惑もあると思います。軍事行動がはなやかだから、和平への努力は怠っていい、あるいは絶望である、こう断定すべきではないのではないか。今日直ちに実ることはないにいたしましても、いろいろウ・タント事務総長等を中心とする熾烈な和平への模索が行なわれていると思うのです。外務大臣は、施政方針演説の中で、いろいろベトナムに関して、従来の佐藤内閣の消極的態度より、少なくとも積極的な姿勢をとられ、特に相互保障方式といいますか、北ベトナム側に近い国々は、北ベトナム側に対してアメリカが究極的に撤兵するということの約束を与え、それと引きかえ的に、アメリカに近い国々においては、アメリカにまず北爆停止等から和平のチャンスをつくるように、そういったような相互保障方式を唱えておられるわけだけれども、それらの最近の情勢に対して、和平の見込み並びにこれに関連して和平への努力についてどうお考えであるか。
なお、これに関連してもう一つ伺いたいのは、御承知の二月二十九日ですか、アメリカの下院の外交委員会におきまして、ライシャワー教授、元大使が、非常に正しいと思われるベトナム問題の将来のあり方についての重要な意見を述べておると思うのであります。私どもも非常にりっぱな意見ではないか。つまり、共産主義の侵透なりあるいは転覆等に対して、ただ軍事的の面からささえるというアメリカのやり方、軍事的な勝利というものは、ベトナムではあり得ないというりっぱな考え方、こういう点を踏まえて、外務大臣のベトナム和平に関する見方、心がまえ等をお話し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/114
-
115・三木武夫
○三木国務大臣 曾祢君の御指摘のように、最近のベトナム、これは非常に旧正月の攻勢に始まって、一斉にベトコンの攻撃が熾烈に展開されておる。その軍事的な面においては、ケサンを除いてはだいぶ平静化しておる傾向にあることは御承知のとおりでございます。しかし、いつ何どきまたベトコンの攻撃が始まらないとも限らないという不安な状態であります。しかし、こういうことを考えてみると、なかなか和平の機会は遠のいたのではないかという印象を与えますが、曽祢君と私も同じように考えておるのです。こういうはなばなしき軍事的な行動の中にあることが、また一面から見れば、これは軍事的にベトナム問題を解決することは容易でない、こういうことをハノイにも、あるいはまたアメリカにも与えたことは間違いがない。そうなってくると、やはりああいう激烈な軍事行動からしても和平は遠のいてしまったと、ベトナム情勢をあきらめるべきではない。ことにこういう激烈な軍事行動の中に、ハノイとアメリカ側との現在の言い分を考えてみますると、非常にこれが克服できない立場であるとも私は思わない。たとえば北爆停止にしても、あるいは普通のノーマルな状態で北が南に対しての軍需品とか何かの補給に対しては言わないのだ。休戦の機会に、テーク・アドバンテージということばを使って非常に大きな戦力の増強をすることは差し控えることでなければならぬ。しかも、それが北爆を停止すれば、大体の話し合いのできる日にちを明らかにされなければならない、こういうことであって、アメリカはこういうことを言っておる。そうしたら、北のほうは、それは条件をつけることではないか、無条件ではないではないか、だから、それはもう一切無条件でなければ話し合いに応じないということで、この二つの距離というものを考えたならば、この不幸な戦争をいつまでも続けていかなければならぬほど大きな距離があるであろうかということに対して、私は疑問に思うのであります。やはりここで両方がお互いに信用しないのでありますから、克服できそうな事柄も何か非常に大きな距離を与えておるので、これは当事者だけでなくして、第三国が和平の機会を促進するために何か働けないかという一案がいわゆる共同保障方式であります。こういう問題についても、各国にもこれを呼びかけて、なかなかむずかしいのではないか、しかし、興味のある案であるということで、世界の関心は必ずしも全部が全部これでやろうというのではないが、非常に関心を持っておる国もあることは事実であります。私も、最近の旅行では、ソ連、東欧諸国あるいは西ヨーロッパ諸国の外相との定期協議あるいはアメリカの大統領、ラスク長官などと訪米の際の会見、日本へいろいろ各国の政府首脳部が来ますが、そういうときに一番大きな時間をとっておるのはベトナム問題であります。これは何としてもベトナムという問題が世界のすべてのものに関連をしておる。日本の外交の上においても、ベトナム戦争がいつまでも続いていくことが、日本の外交を推進していく上の障害になっておるということは、これはくろうとの曾祢さんよく御承知のとおりであります。これはいろいろな点で日本外交の障害になっていくわけです。そういう意味から、いまここに何かの手がかりがあるかと聞かれれば、私はこういう手がかりがあるということは申し上げられませんが、しかし、これはああいう軍事行動が非常に熾烈になりつつある、やはりこういう中にもまた和平の機会があるのだという確信のもとに、今後全力を傾けてまいりたい。必ずしも二つの陣営が妥協できないような、絶対に妥協できないというわけのことでもないところへきておるのですから、今後とも全力を傾けてまいりたいと考えております。
それから、ライシャワー氏の発言については、下院の外交委員会ですか、これで発言した。これは新聞で読んで、まだ詳細なテキストは参っておりません。しかし、いわゆるアジアといいますか、ことによく日本を知っておるライシャワー大使の発言としては、きわめて注目すべき発言だと思っております。ただしかし、これがワシントン政府の意図と必ずしも私は合致しておるとも思いません。しかし、われわれとしては、この発言はきわめて注目すべき発言であるというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/115
-
116・曾禰益
○曽祢委員 外務大臣がやや私と似たような——軍事はなやかなる裏面においては、和平の条件は存外かなり整いつつある。たとえば去年のテト休戦中におけるウィルソン・コスイギン会談の際には、これは表面的には非常に和平会談へ近づいたと思うけれども、実際上は、いま外務大臣が言われた、北爆停止期間におけるいわゆる北から南への補給の問題で完全にデッドロックに入り、さびついてしまった。しかし、今度は確かにアメリカ側からも、通常の軍事輸送ならかまわない、特別に逆手にとったような、悪用したような軍事輸送の拡大はいかぬというふうに、そこまで少なくともことばの上において折れた。しかも、ウ・タント事務総長等のあっせん等もありまして、また、和平会談のほうも決して長くせずに、北爆その他北に対する軍事行動の停止、それからきわめて短期間に和平会談に臨んでいいということまで北側も言い出した。問題は、そのいわゆる北爆停止に実際上見合う北側の措置が、アメリカからの条件でない形において何らか保障されるということと、アメリカが真にそこまで折れて、そして大統領選挙前に和平会談に臨む決意ありやいなや、このことにかかっているように思うわけです。見方によっては非常に困難である。ことに北側が軍事的に相当勢いづいているとするならば、やはり大統領選挙においてもっと譲りそうな大統領が出やせぬかということの欲を当然持つでございましょうし、ここらはなかなか微妙であるけれども、少なくともわが国の立場でいえば、現在日本の安全を最大に脅かすものは何であるか、ベトナム戦争ですね。プエブロ事件も、三十八度線におけるがたがたも、これはいうならば第二戦線的な一つのあらわれとすら言える。ベトナム戦争という戦争がなかったならばとうてい考えられないくらいの事態である。こういう点から、私はこの前も総理にも申し上げたのですけれども、やはりアメリカに対してはっきりものを言う。相互保障方式、多角的外交けっこうです。しかし、アメリカに対して友人として苦い薬を飲ませる。たとえばライシャワーさんが言っているような軍事解決方式のむなしい点、そしてアメリカのほうから一手譲るぐらいの気持ちで和平にこぎつけることが、日本としてもこれはほんとうの国民の総意であるというようなことを強く言って、そして、北側からの何らかのアメリカにも譲りやすいようないろいろな事情を確かめて、アメリカにもどうしてもこの北爆停止に踏み切らせる努力がなければならぬ。基本においては、やはりアメリカにものを申すという姿勢が根本ではないかと思うのです。その点を含めて、今後とも積極的な和平への多角的な外交をやっていただきたいということを申し上げ、続いて、もう一ぺんライシャワーさんの証言に入りたいのですけれども、これが沖繩返還に関連して、むろん、これがいまのアメリカの政府の意見であろうなんとは毛頭考えてないけれども、私は、むしろ日本政府が、アメリカの識者の言としてある意味ではみずからえりを正すぐらいの気持ちで、このライシャワーさんのりっぱな——沖繩の基地のあり方、また、沖繩をすみやかに返還することの日米両国の永続的な友好関係上いかに重要であるかということをまことにりっぱに述べておられる。私は、この前も予算委員会でも総理にも申し上げ、外務大臣もお聞きだったと思いますけれども、交渉者の立場からいえば、沖繩の即時返還あるいは早期返還をねらえばねらうほど、返還の際におけるいろいろな情勢を見きわめてから、その上で、帰ってくる沖繩の基地のあり方について、自由使用とかあるいは核基地つきという問題も含めて、全部白紙にしておくほうが、交渉者としては安全だという立場はわからぬわけではないけれども、しかし、そういうふうに日本の基本方針がやや弾力的過ぎて、言うならばぐらついているという感じを与えることが、むしろ国論を分断しているという面を重視しなければならないし、確かにこれは軍事的のことはお互いにくろうとをもって自認はできないけれども、ライシャワーさんも言っているように、アメリカの核の抑止力に日本の自衛の足らざるところを補ってもらうという基本的姿勢については、私どもはこれを肯定する立場ですけれども、そのことは、日本地域に、日本領土内に、返ってくる沖繩を含めて、必ず核兵器を持ち込まなければ有効なあれでないというふうにきわめて限定的に解釈する必要はないんではないか。何といってもアメリカの核の抑止力というものは、いろいろな形といろいろな態様を持っている。本土内におけるいわゆる大陸間弾道弾がある。さらには七つの海の底にもぐっている、あるいは航行しているポラリス潜水艦から発射するポラリスがある。その他必要があればB52による反撃もあろうし、そういうものを考えたときに、沖繩というところがいかに中継ぎ的な重要な基地、あるいは前進基地として重要であろうとも、必ず沖繩に核基地がなければ日本を守るほうの立場に立たされたアメリカとしてまことに困る、絶対に困るというほどのものであろうとは必ずしも断定できない。少なくともそういう軍事的の必要は否定しないにしても、これによって失うところの日米間の政治的な、両国民間の信頼関係に大きくマイナスであるというほうが、どのくらい大きなマイナスファクターであるかということを、われわれは当然に考えていくべきではないか。その意味において、日本の良識を言うならばライシャワーさんに代表してもらっているような感じがするんです。まあ、勝間田委員長がその点を取り違えたらしく、私は正確なことはよくわかりませんが、新聞によると、何か日本をポラリス基地にするのはけしからぬ、そういう意味で言っているのじゃないと思うのです。返ってくる沖繩という日本の領土に必ずしも、そのときにメースがあるか、そのほかの核兵器か知りませんけれども、なくてもいいんじゃないか、ほかにもっと有力な核抑止力があるから、必ずしも沖繩の核基地の必要はないということを言うのがライシャワー氏のポイントだと思うのです。私どもも全くそう思う。こういう点についてどうかひとつ、これは外務大臣としてはここで言明しろといったって言いにくいことかもしれないけれども、私は、ただ白紙委任してくれ、白紙だ白紙だと言っていくよりも、ほんとうに日本の原案として交渉に臨む、日本の国民の総意に立った政府の立場としては、沖繩が返ってくる以上は、これは核基地はない、自由使用はないんだという、いわゆる本土並みという基本線をもっと真剣に考えて、それによって世論を引っぱっていくぐらいの態度があってしかるべきじゃないか、私はこういう期待を持って三木さんに意見を伺いたいのですけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/116
-
117・三木武夫
○三木国務大臣 これは、日本の政府の態度も初めから割り切って何か結論を持っていくというならば、極東情勢とか軍事科学とか人心の動向とか、いつも総理が言っているようなことは、私は言うまいと思う。しかし、この問題は重大な問題であるから、そういういま申したような情勢の変化も頭に入れながら、やはり沖繩の施政権返還は国民的合意の達成できる形が望ましいことは、だれが言っても明らかであります。したがって、極東情勢、軍事科学、人心の動向、こういうことを政府が十分に見きわめて、そして対米交渉をする。まだ現在の段階で、こうだ、これでひとつ国民は納得してもらいたい、そういうことを日本の態度をきめて交渉に当たるのは、私は時期は適当でない、したがって、いま申したようなことを頭に入れながら、これはきわめて慎重な対米交渉をしなければならぬ問題である、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/117
-
118・曾禰益
○曽祢委員 これはいま即座に答弁を求めるのは困難かと思いますけれども、私は別に将来に向かっておどしで言うわけではありませんけれども、日本のナショナルコンセンサス、国民の合意が核基地つきでもいいのだという方向に変わってくるかもしれないということを、総理の言われる三つの要素の中の国民の世論の動向ということで考えておられるとすれば、それは大きな間違いじゃないか。ナショナルコンセンサスが得られるのは、やはり本土並みという線がコンセンサスの当然の帰結であろう、この点を私は強く主張して、なるべくすみやかにそういう決意をされることを期待して、これは結局それから先は論争になりますから、次に移ります。
あと二点だけ伺いたいのですが、その第一は、言うまでもなく、アメリカの輸入課徴金の問題であります。外務大臣も、この間から新聞の伝うるところによれば、下田大使にも訓令を出して、二月二十四日には口上書を国務省に提出して、そして、かかる措置を思いとどまるように強く申し入れておるようでありますし、外相みずからジョンソン大使に対して、三月四日ですか、特にその点を強く申し入れられたと思うのです。いずれにしましても、われわれはどう考えても、ケネディラウンドを言い出して、そして少なくとも自分のほうからいうと貿易収支においては完全な黒字のアメリカが、どんなことがあってもガットに完全に反する輸入課徴金の問題を強行するということは、非常な間違いだ、かように考えます。したがって、むろん日本の貿易に対する非常に大きな——かりに五%ときまったとしても、これは繊維業を中心としておそらく三億五千万ドル以上の大きな輸出のカットバックがあろうと思いますし、そういうことばかりでなくて、たてまえとしてこれは断じて承服できない、こういうふうに考えるわけであります。したがって、この問題については、西ドイツのシラー経済相あたりでも、アメリカに公の立場から公の方法で警告を発していますが、外務大臣は、この問題について、この機会にはっきりとした日本の強い姿勢を表明していただけるものと期待するものですが、御答弁をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/118
-
119・三木武夫
○三木国務大臣 いま曾祢君の御指摘のように、こういう伝えられるような輸入課徴金は、アメリカの従来の主張とも矛盾をいたします。やはり自由貿易の立場に立って、ケネディラウンドの妥結に対して非常な努力をして、世界貿易の拡大のためにイニシアチブをとったアメリカが、みずから国際収支を理由にして、このような連鎖反応を起こし、世界貿易の縮小をもたらしかねないような輸入課徴金の制度を採用することは、世界貿易拡大のためにも、アメリカの従来の主張に照らしても、まことに遺憾なことだと思います。したがって、われわれとしては、外交機関を通じて日本政府の意思を強くアメリカに申し出ましたが、今後もあらゆる努力をするつもりであります。ただ口上書を申し入れたというばかりではない、あらゆる努力をして、アメリカ自身に対しても反省を求めたいと思っております。また、日本自身としても、これに対して、もしもアメリカがそういうことを強行する場合には、対抗的な処置を講ぜざるを得ない。これに対しての処置も今日各省間において検討を加えておるわけであります。一番好ましいことは、アメリカが国際収支の改善に他の方法をとられて、世界貿易の縮小を招くような、またケネディラウンドの精神にも反するような、またガットの精神にも反するような、こういう輸入課徴金制度をひとつ思いとどまることが、一番私は好ましいことだと思います。しかし、もしこれが不幸にして実現をすれば、日本は対抗的な処置をとらざるを得ない、こういうことで、今後アメリカに対してあらゆる方法を通じて働きかけたい。また、世界各国の動向なども注意深くわれわれとしては見守っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/119
-
120・曾禰益
○曽祢委員 どうか、これは単なるおどしとかなんとかということでなしに、非常にきつい態度で、場合によったらいわゆる報復的な、あるいは自衛的な手段を講ずる、あるいはむろんアメリカと対等の一対一の交渉もするし、あるいはその他の国々と一緒になってガットの場でレジスタンスをやるとか、あらゆる方法を講じてこれに対する対抗策、できるならばこれを取りやめるように御努力を願いたいと思うのです。
最後に、おそらく三月の十五日ごろになったならば外務大臣のほうから議会を通じ、あるいは各政党に対して御相談等があろうかと思いますけれども、私は核防条約の問題が非常に重大な段階にきていると思うのです。これは一月前に予算委員会でも質問をしたのですけれども、いよいよもって煮詰まってきたような感がします。そこで、ごく簡単に重要なポイントをあげて、これらの問題についてどう処理するつもりであるか、日本側の最終的訓令とでも申しましょうか、最終といっても、まだ実は日本が現実に交渉者じゃないので、日本はむしろ国連総会に移ってからが出番かと思いますけれども、しかし、いま非常に重大な軍縮委員会の段階ですから、その意味で、一つのめどとして、やや原案に対しては最終的な希望を申し、最終的な努力をする段階だと思うので、伺いたいと思うのです。
第一は核兵器保有国による軍縮義務の問題です。これは第六条の書き方では不十分だ。むろん、これで一〇〇%非保有国日本の意見を取り入れたような、明確で、一点の疑いもないような核軍縮の義務づけは相当困難だと思います。それにしても、いまの六条程度では不満である。少なくとも、たとえば前文の中で、この条約そのものが、かつての部分的核停条約と同じように、これは全面的な核実験の禁止あるいは核兵器廃棄への一里づかであるというような点をはっきり書く、また、第六条における軍縮交渉の義務については、保有国にもう少し明確な義務づけをやらせるということが当然に必要な第一点だと思います。
第二点は、言うまでもなく、核を持たざる国に対する核兵器の使用もしくは核兵器を使用するというおどしからどう安全を守ってやるか、これはだれが考えても、条約の中ではっきりした義務をきめることは、これは米ソともにとうてい議会が許さない、承知しない。したがって、問題は、従来から言っているように、国連の安全保障理事会等に一つの場を預けて、そこにおける保障というような形が考えられるわけです。これはわが国のようにアメリカの核抑止力に依存するという立場をとっている国でも、複数の核保障があったほうがより安全であることは間違いない。特に非同盟諸国を考えたならば、どうしても核兵器非保有国に対する複数の保障、米、ソ、英等の複数の保障を、国連の決議等を通じてでもいいから、なるべく明確にとってくるということは、当然に日本の利益にも大きくつながる問題だと思うので、この点をどう処理されるお考えであるか。
次に、第三条のいわゆる平和利用についてでございますけれども、これはもう言うまでもなく、保有国と非保有国との間の差別待遇をなくせ。これは残念ながら、条約上においてはどうしてもソ連が言うことを聞かない。したがって、条約外においてアメリカなりイギリスが、平和施設に関しては同じような国際原子力機関の査察に服しますという宣言によって、ある程度の平等性に近いものを発揮しようとしております。しかし、そればかりでなくて、問題は、いわゆるユーラトム、EEC諸国と他の日本等との間にも、へたをすれば差別待遇が起こるかもしれない。これは日本の今後の平和利用の立場からいうと、断じて受け入れることのできない重大な制約だと思います。したがって、非保有国と保有国との間の平等待遇をでき得る限りがんばる。同時に、非保有国の間に、EEC六カ国と日本等との間の差別待遇を絶対につくらないためには、条約上その他どういうきめこまかい保障を取りつけるか、これがその次の点だと思います。
最後に、政府の努力がやや実ってきたようで、この条約の期限と再検討の問題については、最近の動きから見ると、多数国がこれを支持するならば五年ごとの検討ということが通るやに伝えられておりますが、それはそれでけっこうであるけれども、少なくとも、再検討というものは非常に重大な意味を持つので、もし国際的な核軍縮が進まないというようなことがあったならば、これはほとんど御破算に近いぐらいの強い意味の再検討でなければならぬと思うのです。
以上、ほかにも重要な点もあろうと思いますけれども、一番骨のある重要な点にわたっての最終的の政府の態度、これをお聞かせ願い、いま私の申し上げたような点について十分に意向が取り入れられるように御努力を願いたいと思うのですが、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/120
-
121・三木武夫
○三木国務大臣 この核拡散防止条約については、曾祢君も御理解を願っていると思いますが、日本の外交としてはかなり全力を傾けたと考えております。ソ連に対しても、アメリカに対しても、しばしば日本の意図は伝えるし、そういうことで、それ以外の重要な軍縮委員会のメンバーには、これはもうほとんどどの国との間にも緊密な連絡をとってまいったのであります。そういう結果ばかりではございませんが、各国の考えることも、大体日本の考えておるようなこととは一致することが多くて、たとえば軍縮の義務についても、前文から本文に移されて、字句の点についてはもう少し曾祢君の言われるように、できるだけ明確にすることが好ましいと思いますが、原案に比べたならば、今度十八カ国軍縮委員会に提案された米ソの妥協案といいますか、これはやはり相当な改善が見られます。
それから第二点の、非同盟諸国の安全保障については、これはかねがね曾祢君の御指摘のように、安保理事会の議題にしようということで、草案も話し合いが進められておるわけであります。これはそういう安保理事会の場において、非同盟国に対する核攻撃に対しての何らかの保障というものが決議の形において考えられると思います。
第三の平和利用についても、これもまた原案に比べると、米ソ妥協案というものは、平和利用の面については相当周到な改善が加えられておると思います。ただしかし、残念ながら査察の面については、これは日本もソ連に対して相当強く働きかけた。ところが、断じてソ連はこれに応じられないということで、この点は、平和利用の面については核保有国も非保有国も一様な国際査察を受けるべしということは実現いたしておりません。しかし、アメリカとイギリスはこれを受ける、こう言っているわけです。ソ連もそれに加わらないことは残念でありますが、なかなかこれはむずかしいという見通しであります。それから、ユーラトムとの関係は、これは条約というよりかは、実際問題として、日本がIAEAの査察とユーラトムの査察との間に、将来原子力産業の発展ともにらみ合わせて差が非常につくようなことであってはなりませんので、これは今後ともユーラトムの査察とIAEAの査察との間に差がつくことのないように十分注意してまいりたいと思っております。日本が力を入れました五年ごとのレビューの問題については、だいぶ共鳴者がふえておることは御承知のとおりであります。だから、字句の点について、もう少し日本の意図が鮮明になるような努力は、十八カ国軍縮委員会、国連の場においてもいたしますが、今後日本が主として力を入れていこうというのは、五年ごとのレビューの条項であります。これはやはり、こういうふうな科学技術の進歩のはなはだしいときに、しかもまた、軍縮の義務等もこの核拡散防止条約の中に課しておるのでありますから、期限はついたといっても、その間何も検討をする機会がないということは実情に沿わない場合も起こってきますので、ぜひとも五年ごとのレビューの条項はこれは条約の中に実現さしたい。これは今後とも努力をいたしてみたいと思っております。
総じて、なかなか野党の方はおほめになりませんから、政府のほうはあまりよくやったとは言わないのですけれども、この核拡散防止条約については、相当日本の主張は取り入れられて……(曾祢委員「他国にやってもらったのと違うか」と呼ぶ)これは日本ばかりとは申しません。しかし、日本の力もその中には入っておるということは、これは御認識を願いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/121
-
122・小泉純也
○小泉委員長代理 次回は、明後八日午前十時から理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、これにて散会いたします。
午後五時五十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00219680306/122
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。