1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年三月十五日(金曜日)
午前十時三十五分開議
出席委員
委員長 秋田 大助君
理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君
理事 田中 榮一君 理事 野田 武夫君
理事 福家 俊一君 理事 戸叶 里子君
理事 穗積 七郎君 理事 曽祢 益君
青木 正久君 池田正之輔君
橋本登美三郎君 毛利 松平君
山田 久就君 黒田 寿男君
高田 富之君 帆足 計君
松本 七郎君 伊藤惣助丸君
川上 貫一君 斎藤 寿夫君
出席国務大臣
外 務 大 臣 三木 武夫君
出席政府委員
外務政務次官 藏内 修治君
外務省北米局長 東郷 文彦君
外務省経済局長 鶴見 清彦君
外務省条約局長 佐藤 正二君
委員以の出席者
外務大臣官房外
務参事官 内田 宏君
外務省条約局外
務参事官 高島 益郎君
通商産業省企業
局参事官 橋本 徳男君
専 門 員 吉田 賢吉君
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三月十四日
関税及び貿易に関する一般協定のジュネーブ議
定書(千九百六十七年)及び関係交換公文の締
結について承認を求めるの件(条約第三号)
関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に
関する協定の締結について承認を求めるの件
(条約第四号)
千九百六十七年の国際穀物協定の締結について
承認を求めるの件(条約第五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
日本国とシンガポール共和国との間の千九百六
十七年九月二十一日の協定の締結について承認
を求めるの件(条約第一号)
日本国とマレイシアとの間の千九百六十七年九
月二十一日の協定の締結について承認を求める
の件(条約第二号)
関税及び貿易に関する一般協定のジュネーヴ議
定書(千九百六十七年)及び関係交換公文の締
結について承認を求めるの件(条約第三号)
関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に
関する協定の締結について承認を求めるの件
(条約第四号)
千九百六十七年の国際穀物協定の締結について
承認を求めるの件(条約第五号)
日本万国博覧会政府代表の設置に関する臨時措
置法案(内閣提出第五九号)
公海に関する条約の締結について承認を求める
の件(条約第六号)
領海及び接続水域に関する条約の締結について
承認を求めるの件(条約第七号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/0
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001・秋田大助
○秋田委員長 これより会議を開きます。
日本国とシンガポール共和国との間の千九百六十七年九月二十一日の協定の締結について承認を求めるの件、日本国とマレイシアとの間の千九百六十七年九月二十一日の協定の締結について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定のジュネーヴ議定書(千九百六十七年)及び関係交換公文の締結について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定の締結について承認を求めるの件、千九百六十七年の国際穀物協定の締結について承認を求めるの件の五件を一括議題といたします。
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日本国とシンガポール共和国との間の千九百六十七年九月二十一日の協定の締結について承認を求めるの件
日本国とマレイシアとの間の千九百六十七年九月二十一日の協定の締結について承認を求めるの件 関税及び貿易に関する一般協定のジュネーヴ議定書(千九百六十七年)及び関係交換公文の締結について承認を求めるの件
関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定の締結について承認を求めるの件
千九百六十七年の国際穀物協定の締結について承認を求めるの件
〔本号(その二)に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/1
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002・秋田大助
○秋田委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。三木外務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/2
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003・三木武夫
○三木国務大臣 ただいま議題となりました日本国とシンガポール共和国との間の千九百六十七年九月二十一日の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
政府は、第二次世界大戦の間の日本軍のシンガポール地域占領中に生じた不幸な事件に由来する問題が、昭和三十七年ごろからシンガポールにおいて提起されて以来、この問題の解決のため交渉を行なってまいりましたが、昭和四十一年十月に椎名前外務大臣がシンガポールを訪問した際、ラジャラトナム同国外務大臣との会談において、シンガポールの経済開発のために、わが国より有償、無償合わせて五千万シンガポールドル相当の生産物及び役務を供与することにつき原則的な意見の一致を見るに至りました。その後、政府は、シンガポール共和国政府との間に無償二千五百万シンガポールドル相当の日本の役務及び生産物の供与についての協定作成の交渉を進めました結果、その成案を得るに至りましたので、昭和四十二年九月二十一日に、シンガポールにおいてわがほう、上田大使とシンガポール側ウーン外務次官との間で、この協定に署名を行なった次第であります。
この協定は、本文三カ条からなっており、その内容は、シンガポール共和国の経済開発に資するため、わが国より同国に対し、二千五百万シンガポールドルに相当する二十九億四千万三千円の価値を有する日本国の生産物及び日本人の役務を原則として三年間にわたって無償で供与することを定めるとともに、第二次世界大戦に起因するすべての問題が完全かつ最終的に解決されたことを明らかにしております。
この協定の締結は、わが国とシンガポールとの間の多年の懸案であったシンガポールの対日要求の問題に決着をつけるものであり、両国間の経済協力の増進を含む全般的な友好関係の促進に多大の貢献をなすものと考える次第であります。
よって、ここにこの協定の締結について御承認を求める次第であります。
次に、日本国とマレイシアとの間の千九百六十七年九月二十一日の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。政府は、第二次大戦の間の日本軍のマレーシア地域占領中に生じた不幸な事件に由来する問題が、昭和三十七年ごろからマレーシアにおいて提起されて以来、この問題の解決のため交渉を行なってまいりましたが、昭和四十二年五月にラーマン・マレーシア首相が来日した際に、両国間の経済協力を促進する目的で、わが国より外航用貨物船二隻を含む二千五百万マレーシアドル相当の生産物及び役務を供与し、もって問題の解決をはかることについて原則的な意見の一致を見るに至りました。その後、政府は、マレーシア政府との間に協定作成の交渉を進めました結果、その成案を得るに至りましたので、昭和四十二年九月二十一日に、クアラ・ランプールにおいてわがほう小島大使とマレーシア側ラーマン首相兼外相との間でこの協定に署名を行なった次第であります。
この協定は、本文三カ条からなっており、その内容は、マレーシアとの間の経済協力を促進するために、わが国より同国に対し、外航用貨物船二隻を主体とする二千五百万マレーシアドルに相当する二十九億四千万三千円の価値を有する日本国の生産物及び日本人の役務を原則として三年間にわたり無償で供与することを定めるとともに、両国間の良好な関係に影響を及ぼす第二次大戦の間の不幸な事件から生ずるすべての問題が完全かつ最終的に解決されたことを明らかにしております。
この協定の締結は、わが国とマレーシアとの間の多年の懸案であったマレーシアの対日要求の問題に決着をつけるものであり、両国間の経済協力の増進を含む全般的な友好関係の促進に多大の貢献をなすものと考える次第であります。
よって、ここにこの協定の締結について御承認を求める次第であります。
次に、関税及び貿易に関する一般協定のジュネーブ議定書(千九百六十七年)及び関係交換公文の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
一九六四年から昨年六月三十日まで、ジュネ—ブでガット締約国団主催のもとに、世界貿易の一そうの発展をはかることを目的としていわゆるケネディラウンド貿易交渉が行なわれ、わが国をはじめ、米国、英国など五十四カ国及び欧州経済共同体が参加いたしました。この会議は、ガット主催のもとに行なわれた一般的貿易交渉として第六回目のものでありますが、その規模は従来の交渉と比較にならないほど大きなものであり、この会議における関税の相互引下げの交渉の結果がこの議定書に附属書として収録されております。また、わが国は同時に、欧州経済共同体との間に、乗用自動車に関するイタリア政府の対日自由化措置を条件とするわが国の乗用自動車に関する譲許の修正について交渉を行ないましたが、その結果がこの交換公文に収録されており、その内容は、議定書に定める特定の乗用自動車に対する関税譲許について特例を定めたものでありますので、議定書とあわせて一件としてここに提出しております。
この議定書に付属している譲許表は、わが国をはじめとし、米国、英国、欧州経済共同体等三十三の譲許表からなり、収録されている関税譲許は税目数で三万を数えております。参加各国は、この議定書を受諾することにより、譲許を約束した品目につき、一九七二年一月一日までに関税を段階的に引き下げることとなり、その結果、世界貿易は一そう拡大されるものと予想されております。したがいまして、貿易に依存している度合いが高いわが国としましては、この議定書を受諾することは、わが国の貿易の一そうの発展という見地からきわめて望ましいものと考えられますところ、すでに米国、カナダ、オーストラリア、スイス等はこの議定書を受諾し、本年一月一日よりその関税引下げを開始しております。わが国といたしましては、関税交渉が相互引下げの原則に基づいて行なわれたことにかんがみまして、すみやかにこの議定書及び関係交換公文を締結することが望ましいと存ずる次第であります。
よって、ここにこれらの議定書及び交換公文の締結について御承認を求める次第であります。
次に、関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
一九六四年五月四日から昨年六月三十日まで、ジュネーブにおいてガット締約国団主催のもとに行なわれたいわゆるケネディラウンド貿易交渉では、世界貿易の拡大のために、関税の大幅引き下げとともに、これら関税引き下げの効果を減殺するおそれのある非関税障害についてもできるだけ軽減撤廃につとめるための交渉を行ないましたところ、その成果の一つとして、この関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定が作成されました。この協定は、ガット第六条が規定しているダンピング防止税を国際的に統一された基準のもとで適用することを目的として作成されたものでありまして、この協定を多くの国が受諾することは、これまで各国がそれぞれ異なった解釈と手続により運用していたダンピング防止制度に一そうの調和と改善がもたらされ、その結果、貿易の安定的発展がよりよく確保されることが期待されており、また、わが国としてもこの協定の成立を交渉当初より積極的に推進してきた経緯にもかんがみ、本件協定を受諾することは望ましいと考えます。
よって、ここにこの協定の締結について御承認を求める次第であります。
最後に、千九百六十七年の国際穀物協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を説明いたします。
わが国も締約国である千九百六十二年の国際小麦協定は本年七月末で失効することになっておりますが、一九六四年から六七年にかけて行なわれたガットのいわゆるケネディラウンド交渉において、わが国、米、英、EEC等の主要国は、小麦貿易及び食糧援助に関する規定を含む穀物協定を早急に締結するよう努力することについて合意しました。この国際穀物協定は、このような事情のもとにおきまして、このガットの場で合意された事項を含み、かつ、千九百六十二年の国際小麦協定にかわるものとして作成されたものであります。
この協定は、小麦貿易規約と食糧援助規約との二部からなっておりまして、小麦貿易規約の方は、価格に関する規定に改正を加えたほかは大体小麦協定の規定を踏襲しており、小麦の価格安定、需給調整の規定を掲げております。また一方、食糧援助規約は、従来の小麦協定にはなかった規定でありまして、開発途上にある国に対する食糧援助についての規定を掲げております。
わが国は、この協定の当事国となることによりまして、安定した価格で小麦の輸入必要量を確保することができるとともに小麦の国際貿易の拡大等にも寄与し得ることになる次第であります。
なお、わが国といたしましては、開発途上にある国に対する援助の必要性は認めていますが、食糧援助を義務づけている食糧援助規約第二条の規定につきましては、このような規定を穀物協定中に置くことは妥当でないと考えておりますので、同条の規定の受諾を留保することといたします。
よって、ここにこの協定の締結について御承認を求める次第であります。
以上五件につきまして、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/3
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004・秋田大助
○秋田委員長 以上で各件に対する提案理由の説明は終わりました。
ただいま説明を聴取いたしました各件に対する質疑は後日に譲ることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/4
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005・秋田大助
○秋田委員長 次に、日本万国博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法案を議題とし、質疑に入ります。
質疑の通告がありますので、これを許します。戸叶里子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/5
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006・戸叶里子
○戸叶委員 きょうは大臣がお急ぎのようでございますし、私ども、このあとで領海及び接続水域に関する条約の締結についての質問もございますので、万博について簡単に御質問を申し上げたいと思います。
一九七〇年、つまり、昭和四十五年に大阪で万博が開催されることに対して、私どもも期待をしているわけではございますけれども、あちこちで心配をされておりますことは、何かもたもたしていて、少しも準備が整っておらないじゃないか、一体これで十分な効果をおさめることができるんだろうかというような声をよく聞くのでございます。また一方におきましては、何かたいへんセクショナリズムが強くて、外務省も困っているんじゃないかというようなことも聞くわけでございます。
この万博全体の問題といたしましては、通産の委員会なり商工の委員会なりにおきまして、いろいろとその該当者の方々が質問をされたり、またいろいろされていると思いますので、その点については、私はきょうは質問をいたしませんけれども、ただ、もたもたしている理由は一体どこにあるのかということをまず第一に伺いたい。そうして、時間を省きます意味からも、一体、日本はこれまでどんな仕事をしてきているのか、こういう点についてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/6
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007・鶴見清彦
○鶴見政府委員 ただいま戸叶先生の御指摘になりました、もたもたしてきたのではないかという点でございますが、その点につきましては、何ぶんアジアにおきましての最初の万国博覧会ということでもありますし、規模におきましても、期間の長さにおきましても、オリンピック等に比べましてはるかに規模の大きいものでございますので、その準備等につきまして若干支障があったということは、御指摘のとおりだと思います。その間におきまして、若干セクショナリズム的なことも全くなかったわけではございませんけれども、その点につきましては、できるだけそういう面を克服するために、関係省の間でいろいろ協力してまいったつもりでございます。しかしながら、まだ十分でない点もございますので、その点につきましては、今後とも改めてまいりたい。また、先生御存じのとおり、政府におきましてもいよいよ推進本部というものも決定いたしまして、ちょうど本日から二年後の万博開催に万遺憾なきを期するという動きをしていることは、御存じのとおりでございます。また、外務省に限りました場合には、一昨年九月でございましたか、閣議の決定に基づきまして、関係百二十八カ国に招請状を出しておりますし、また、国のほかに二十三国際機関にも招請状を出しておりまして、最近に至りまして、EECも日本の万国博に参加することにかなり関心を示してまいりましたこともありまするので、EECに対しましても招請状を発しておるという段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/7
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008・戸叶里子
○戸叶委員 外務省としてもなかなか準備がうまくはかどらなかったということをお認めになったわけでございまして、これから一生懸命おやりになるようでございますけれども、そこで、今後においても何か障害があるのではないかと思われる面もございますが、一体、どういうところが今日まで準備がはかどらなかったか、また、今後において障害がないかどうか、この点も伺いたいし、もう一つは、いまあちこちに招請求をお出しになりましたが、それに対する返事はどのくらい来ているか、これを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/8
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009・鶴見清彦
○鶴見政府委員 これは申し上げましたとおり、若干の滞り等もあったことは事実でございます。しかし、関係省の間で、通産省もその他の省も、国内的な準備の方向ではいろいろ進めておりますし、むしろ、対外面に限りましての招請の面で、あるいはその努力が必ずしも十分ではなかったという点もあり得るかと存じます。ただいま御質問の、ただいままでの正式受諾国の数でございますが、ただいままで二十八カ国及び一政庁、これは香港でございます。そのほか、企業といたしまして参加することを明らかにいたしておりますのが、アメリカの三企業と、それからあと、地方の州として参加を表明いたしておりますのが、カナダの二州ということに現在のところなっております。そのほか、正式に参加を通告しておりませんけれども、大体参加することにほとんど内定しているという国が数カ国、七、八カ国ございます。そういうことでございますので、その招請の面につきましては、先年のモントリオール博覧会の場合、開催前二ヵ年の段階におきまして招請の受諾を御表明になった数に比べまして、若干下回っておりますけれども、今後ともさらにこの招請努力を続けてまいる。また、最近に至りましても、かねて奥村政府代表も十分三十何カ国を回っておられますし、そのほか、万博協会の会長、副会長、最近におきましては、いろいろ万博担当大臣特使という形で、四人の方にあちこちと回っていただきまして、努力を続けております。また、財外公館の使臣に対しましても、かねてこの努力を継続するようにということで訓令を出しておりましてて、最近に至りまして、その実りもだんだんに出始めている状況でございます。ただ、具体的にいよいよ各国が参加することをきめる段階になりますと、一つは、やはり資金の問題がございます。また、あともう一つは、いろいろなものを持ってきた場合、一体それが関税上どういうふうな扱いになるかということも、必ずしも昨年の半ばごろまでは明らかでなかったという点もございます。そういうことも、若干招請に対する参加決定をおくらせていた原因ではないか。私どもは通産省と協力いたしまして、万博協会のほうを督励をして、そういう面の具体的な考え方というものを明らかにしていきたい。それをまた海外に流しまして、こういうことであるから、ぜひひとつ安心して参加してもらいたいというふうに説得につとめてきている状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/9
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010・戸叶里子
○戸叶委員 いまいろいろと外務省のほうから御苦心のほどは申し述べられたわけでございますけれども、四十五年といえばもう間近でございます。それなのに、二十八カ国が正式にここへ来るというような、そういう返事があった。それではあまりにもさびし過ぎるんじゃないか。いま二年先のことを考えてみますと、こんな状態で、一体、日本が初め意図したような内容のある万博というものが行なえるかどうかということに疑問さえ抱かざるを得ないと思うのです。一体、今後において国内で各セクショナリズムというものが廃止されて、そしてうまく一致協力して、四十五年には盛大にやれるという自信がおありになるのでしょうか。おありになるのでしょうかと言えば、ありますとしかお答えにならないと思いますけれども、今日までのこの歩みを見ておりますと、私どもはたいへんに不安にたえないわけでございます。したがって、いま私がそういうことを質問するのはどうかと思いますけれども、こうであるから自信を持ってやれるのだというようなことを簡単にお答え願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/10
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011・鶴見清彦
○鶴見政府委員 ただいま先生の御質問について、私からお答えするよりも、むしろ大臣のお答えかと存じますが、政府は、そういう点につきまして十分配慮するために、御存じのとおり、推進本部というものを設けまして万全を期するということになってまいったわけでございます。この点で、ひとつ推進の状況を今後とも御鞭撻、御指導のほどをお願いしたいと存ずる次第でございます。
また、外務省に限りまして、招請の面につきましては、先ほどちょっと触れましたごとく、特に中近東、アフリカあるいはアジア、若干の中南米の国、こういうところになりますると、どうしても財政的に余裕がない。現在そういうこともございますので、ここ数カ月来いわゆる国際館あるいは共同館という考えを打ち出しておりまして、それでもってある程度共同で参加する、そうしますと、一カ国の経済負担がかなり減るわけでございます。そういうことによって参加の招請の努力をさらに倍加いたしておる状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/11
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012・戸叶里子
○戸叶委員 私はこれ以上質問は申し上げませんけれども、ただ、一つの要望としては、アジアで行なわれる万博でございますから、アジアの国々が喜んで参加できるようなそういう体制も、何かお考えになっていられるかどうか、これが一つ。
それから最後に、外務大臣にお伺いしたいのは、やはり万博というものに対して世界じゅうがいろんな目をもって見ている中において、成功しないということは、日本の国の政府のやはり失敗であると思います。そういう意味におきまして、多くの目の中で、今日この段階においてもまだまだその準備が十分できていないということに対しても、やはり政府が責任を感じなければならないと思うのです。そういう意味で、一体この万博というものをどういうふうに実のあるものに成功せしむるかという、その自信のほどをやはりここで伺っておかなければ、私どもは心配でたまりませんので、大臣から所信を表明していただきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/12
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013・三木武夫
○三木国務大臣 アジアで初めて開かれる万博だから、できるだけ多数のアジアの諸国が参加できるようなくふうをすべきだ、私もそういうように考えます。これは、アジアでは日本以外に万博を引き受ける国は、遠い将来はともかく、近いうちにはなかなか考えられませんから、そういうことで、アジアの各国は、いま鶴見局長の言ったような共同館というようなことも考えられるでしょう。できるだけ多数の人々が参加してもらうようなそういうことを考えたいと思っております。
また、万博の最終の責任は、やはり諸外国に対しては政府にあるのではないかという点は、そうだと思います。その場合は、まあ万博協会が実施の責任を持っておりますけれども、諸外国に対しては、政府の責任という形で映ることは当然だと思います。ただ、万博、こういうふうな事業というものは、何もないところからできるわけですから、いままで何かあったのではなく、急に万博をやるということでできますから、初めは、戸叶さん外からごらんになっても、もたもたしておるという感じをお受けになることはあり得ると思うのですが、いまは政府自体としても、これはどうしても成功させなければならぬという決意のもとに、いまのところ、私は一九七〇年の万博に不安を持ってないのです。りっぱに開かれるに違いない。また、参加国も、共同館などの施設を整えますれば、モントリオールに劣らない国が参加するであろうということを、私はある程度の自信を持って答えることができると思います。だから、今後とも、もういよいよ切迫していきますと、そういうときに日本人は能力を発揮する民族です。いよいよということになってくると、なかなか非常な力を発揮するのですから、これは政府としても今後できるだけ万全を期すように努力はいたしますが、これはもう社会党のほうでもどの党派でも、万博の成功というものは国民一致の目標になっておりますから、今後とも御協力を賜わりたい、皆が寄って万博を成功したものにしたいと願う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/13
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014・戸叶里子
○戸叶委員 万博に対する質問はこれで終わります。ただ、外務大臣がたいへんに自信ありげに、モントリオールの万博に劣らないものをやってみせるという、その御決意のほどを披瀝されましたので、外務大臣のおっしゃることにたよるよりしようがないと思いますけれども、これはやはり世界的な問題でございますから、失敗しないように十分にいまから気をつけて、いままでのような、非常に遅々として進まなかったものを挽回するには、相当の努力が必要であるということを私は申し上げまして、この万博に対する質問をこれで打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/14
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015・秋田大助
○秋田委員長 穗積七郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/15
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016・穗積七郎
○穗積委員 実は、きょうは万博の条約の法律をやるつもりでなかったものですから、資料を十分持ってまいりませんで、とっさの場合ですから、ひとつ説明を伺いながら審議を進めたいと思います。
最初に伺いますが、この法律案の基礎は、万博の条約に基礎を置いておるわけですね。万博の条約の締約国並びに批准国は何カ国でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/16
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017・内田宏
○内田説明員 正式批准国三十二カ国と存じますが、もう少し正確に、もしこれに誤りがございましたら、後刻訂正さしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/17
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018・穗積七郎
○穗積委員 私は、実は先ほど言いましたように、きょうはこの質問をするつもりでなかったので、資料を持ってきませんでしたが、私の記憶では、もう少し多いように思いましたが、間違いございませんですか。三十二カ国ばかりでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/18
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019・内田宏
○内田説明員 正確に調べました上で、後刻御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/19
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020・穗積七郎
○穗積委員 私も何カ国ということをそれほどやかましく言うわけではないが、締約国と締約していない非締約国との間に、参加する場合に、差別調整から始まる差別があるのかないのか、聞いておるわけです。つまり、締約国であるということは、主催をする可能性の権利は確保されているということだけでございますか。それ以外には何ら締約国であるとあらざるとによる差別はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/20
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021・鶴見清彦
○鶴見政府委員 ただいま先生御指摘の、締約国であるかないかによって調整を受ける面におきましては、差別というものはないというふうに私は了解いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/21
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022・穗積七郎
○穗積委員 そうすると、締約国になるということは、主催国になり得るという権利留保のためのみでございますね、国際関係上の特権といえば。それ以外に何かありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/22
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023・鶴見清彦
○鶴見政府委員 私もそういうふうに了解いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/23
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024・穗積七郎
○穗積委員 締約国になっておることによって、主催の権利を留保することによって、経済的な負担は年間どのくらいになっておるでありましょうか。——資料をまだまだお調べになるようですから、それはあとでまた御回答ください。つまり、主催国になり得るという権利を留保するためにのみ締約国となって、年間どのくらいの経済的負担や義務負担をしておるのか、それに伴う返りですね。そういうことを念のために伺いたいわけです。後ほどでけっこうです、何も妨害のために聞いておるのではありません。しかし、大事なことで、私はなぜこういうことを聞くかというと、万博の考え方というものは、だんだん最近の国際経済の関係からいきますと、やや時代おくれではないかという感じを持つのですよ。なるほど非常なメリットのある一面もないわけではありません。私どももたまたま外へ出たときに、開かれておる国際博覧会あるいは経済的な展示会というものを見て、それが効果がないとは言わないけれども、あれにたより過ぎるという感覚というものは、時代おくれの感覚ではないか。特に今度アジアへ呼んだということで、初めてアジアで有色国民が世界を相手にして万博を開くことができたというようなことで、あまりむだな金を使ったり、それからあとの経済効果も考えないで張り切るのは、いささか幼稚な感を私は一面持たざるを得ない。その点を伺うためにいま言ったことを伺うわけです。
それで、続いてお尋ねいたしますが、そうしますと、私もきょう用意してこなくて、私の調べもありましたが、今度の万博を開くことに関して国家が負担をする予算総額はどのくらいになっておりましたか、継続費で。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/24
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025・内田宏
○内田説明員 国家予算のほうは、通産省の橋本参事官から御答弁があると存じますが、ただいま最初の御質問の分担金でございますが、国際博覧会事務局に出す分担金が年間百万円でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/25
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026・穗積七郎
○穗積委員 さっきの私の質問に対するお答えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/26
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027・内田宏
○内田説明員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/27
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028・穗積七郎
○穗積委員 百万円だけですか。そのほかに義務負担はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/28
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029・内田宏
○内田説明員 そんなことはありません。これだけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/29
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030・穗積七郎
○穗積委員 それは万博事務局へ納めるだけで済むわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/30
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031・内田宏
○内田説明員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/31
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032・穗積七郎
○穗積委員 それは百万円ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/32
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033・内田宏
○内田説明員 はい。これはフラン計算になっておりまして……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/33
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034・穗積七郎
○穗積委員 フラン換算でやるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/34
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035・内田宏
○内田説明員 フランでいきますと、一万三千七百二十五フランで、邦貨換算いたしまして約百万円近く、こういうふうに存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/35
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036・穗積七郎
○穗積委員 そうすると、ノーマルなレートが換算するわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/36
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037・内田宏
○内田説明員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/37
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038・橋本徳男
○橋本説明員 ただいまの質問で、万博に関しまする国の負担でございますが、会場の建設費並びに政府が建てまする政府館、それから政府の建設いたしまする日本庭園、これを全部合わせまして、国の負担分として三百三十二億でございます。
それから、これ以外に、関連公共事業といたしまして、道路、港湾、こういったようなものの整備がございます。これは総額で、四十五年までの計画が六千三百億ということにきまっておりまして、それの大体三分の二が国の負担で約四千億、こういうことになろうかと思います。したがって、両方合わせまして、国の負担としては約四千三百億ぐらいということになるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/38
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039・穗積七郎
○穗積委員 それは最終確定額でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/39
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040・橋本徳男
○橋本説明員 関連公共事業は一応のワクということで、事業の進展に伴いましてごく若干の変更はあるかと思いますが、一応閣僚協議会で六千三百億ぐらいの事業をやるという決定でございますす。それから、会場並びに政府館、日本庭園は、これは最終的に話し合いがついた数字でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/40
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041・穗積七郎
○穗積委員 きょう問題になっておる政府代表をはじめとする多数の事務局員の人件費並びに事務費が要ると思いますが、それはこの中に入っておりますか、入っておりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/41
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042・橋本徳男
○橋本説明員 これは入っておらないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/42
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043・穗積七郎
○穗積委員 その予算はどのくらいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/43
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044・橋本徳男
○橋本説明員 これは毎年千三百万円ぐらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/44
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045・穗積七郎
○穗積委員 それは人件費並びに事務費一切を含みますね。千三百万、年間ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/45
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046・橋本徳男
○橋本説明員 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/46
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047・穗積七郎
○穗積委員 続いてお尋ねいたしますが、この予算の管理は各省へ分かれますか。たとえば公共事業、会場あるいは会館建設は建設省がやるとか、庭園はどこがやるとか、厚生省がやるとか。それから、人件費はどこの所管になるのか。それから、この事務諸費の中に宣伝その他の費用というものは全部入っておりますか。当然入っておりますね。この役所の所管が聞きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/47
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048・橋本徳男
○橋本説明員 所管別に申しますと、事務関係の費用の千三百万は通産省の会計で処理しております。それからあと、会場関係と政府出展の政府館と庭園でございますが、この二つも通産省の予算でやっております。ただ、日本庭園につきましては、通産省から建設省へ移しがえをやって実施しております。関連公共事業につきましては、道路は建設省、河川も建設省、公園は建設省、それから厚生省、鉄軌道関係は運輸省ということで、それぞれの所管官庁に分かれてやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/48
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049・穗積七郎
○穗積委員 外務省にお尋ねいたしますが、外務省関連の予算はないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/49
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050・内田宏
○内田説明員 外務省関連といたしましては、万博関係におきましては、国連館の建設のために新年度予算において三千万円計上されております。これは国連協会に対する補助金という形で計上されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/50
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051・穗積七郎
○穗積委員 これはさっき橋本さんの御説明くださいました予算のワク外でございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/51
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052・橋本徳男
○橋本説明員 そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/52
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053・穗積七郎
○穗積委員 直接の費用でなくて、いま外務省の予算を伺いますと、補助金のワクの中に入っておる。そうすると、いまの直接の各省で管理をしておる万博に対する国家予算のほかに、各省の間で、特に通産、建設省が多いかと思いますが、補助金の形式で出されている金はどのくらいありましょうか。あるかないか、あるとすればどのくらいか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/53
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054・橋本徳男
○橋本説明員 この補助金の形態で出ておりまするのは、三百三十二億の先ほどの会場並びに政府出展関係のうちで、二百五十億が博覧会協会に対します補助金でございまして、それ以外の八十二億、これは政府が直接に支出する金でございます。それから、六千三百億の関連公共事業でございますが、この六千三百億の中で、国道につきましては、これは国の直轄というふうな形でやっておりますし、府県道につきましては、三分の二国が補助するというふうな形で出ておりますし、鉄軌道関係につきましては、この中に補助金ではなくて開銀による融資というものも全部含めましての数字でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/54
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055・穗積七郎
○穗積委員 それから、いままで説明資料として事務局から取り寄せたのですけれども、政府関係の参加招請、それから奥村政府代表の行なった参加招請、それから万博協会役員による参加招請、閣僚及び国会議員による参加招請活動、これらは予算はどこから出ておりますか。さっきの千三百万の予算の中からこれはみんな出されているわけでしょうか。通産から出ているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/55
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056・橋本徳男
○橋本説明員 この中で、政府代表の分につきましては、この千三百万円の中から出ております。それから協会役員の分につきましては、博覧会協会の運営費の中から出ております。それからあとは、大臣の行かれたものは、それぞれの所管の省から出ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/56
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057・穗積七郎
○穗積委員 そうすると、予算の施行がいろいろな機関にばらばらになっているわけですね。その総括的な管理監督はどこがなさいますか。各省がなさるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/57
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058・橋本徳男
○橋本説明員 こまかい事務費等につきましての統一的な総括は、これはなかなか困難かと思っておりますが、全体の事業費につきましての進捗状況なり、あるいはそれについてのいろいろの調整なりということは、いままで万博担当大臣が各省大臣に御相談し、一応万博担当大臣ということになっております。それから、推進本部というようなものもできましたので、そういったところで、いろいろな公共事業その他会場施設の予算の執行状況あるいはそれからくるいろいろな問題というものも、そこで総合調整して推進していくというような考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/58
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059・穗積七郎
○穗積委員 続いてお尋ねいたしますが、こういう状態で二つのことをお尋ねしたいのです。ここで法律案として審議されておる、特別職の国家公務員として万博の政府代表を任命する法律案ですね、その政府代表は外務省から出ますか、どうですか。外務省にきまったことはないが、事実を聞いているんですね、予定を。いままでは奥村さんがそれを代行しておったわけですね。この奥村さんの地位はどういう地位であったのでしょうか。この法律ができる前に仮称でございますね。どういうことだったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/59
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060・内田宏
○内田説明員 お答え申し上げます。
この法律ができます前に、現在までは奥村勝蔵氏に対しまして、外務公務員法第二条によります政府代表というのがございまして、この政府代表という名称を与えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/60
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061・穗積七郎
○穗積委員 そうしますと、日本の国内における、つまり、政府機関内部における処置として取り扱っているのであって、奥村さんの対外的な権利義務関係というものは、まだ発生しておりませんね、万博については。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/61
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062・内田宏
○内田説明員 外務公務員法第二条による政府代表は国際的な地位でございまして、政府代表として正式にパリにあります万博事務局に通報してございまして、国際的な権利義務を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/62
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063・穗積七郎
○穗積委員 そうすると、これは大臣にお尋ねしたほうがいいか知らぬが、大体われわれのきょうの理事会の話し合いでは、事情が急いでおられるようですから、きょうの審議が支障なく予定どおり終わったら、きょう採決をして、参議院に送りたいということで急いでおられるようです。そうなりました後の状態について、大体の腹づもりがありましたら伺いたいが、外務省関係の範囲から人選をなさるつもりでしょうか、いまの奥村さんをそのまま続いて正式に任命されるつもりであるか、あるいはかえるつもりであるか、かえるとすれば、いかなる——行政府の役人ではないが、行政府関係の出身者から選ぶか。おそらくは私の推測では、やはり外務省のOBの方が、対外的な折衝があるから、そこから選ばられるつもりではないかと推測しますけれども、奥村さんを続いて任命されるおつもりであるのか、あるいは何か奥村さんは辞意を表明しておられるということもわれわれうわさに伺っておるわけですが、もしそうなれば、どういうふうにされるつもりであるか、この際、ちょっと伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/63
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064・三木武夫
○三木国務大臣 いま御指摘のように、奥村君が健康を理由にして、ちょうど政府代表の新しい立法も行なわれるのだから、いままで一生懸命やったのだけれどもひとつ健康上の理由もあるので、これを区切りにしてやめさせてもらいたいという辞意の表明がございます。非常に一生懸命やられましたから、こちらは慰留しておりますけれども、なかなか辞意はかたいので、この法案が国会を通過したその時点において、この人選は考えたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/64
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065・穗積七郎
○穗積委員 それから、機構上の問題についてお尋ねいたします。
この政府代表の権限は、ここに書いてありますように、国際博覧会条約の締約国として負わされておる対外的な約束の履行を保障することだけが任務でございますか。そして、日本万博のこれからの施行に関してすべてを総括する権限を持っておるのか、持っていないのか、これはどうなりましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/65
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066・橋本徳男
○橋本説明員 政府代表の職務といたしましては、条約並びにその条約の施行細則と考えられます一般規則、この二つによりまして具体的に規定されておりますので、読み上げてまいりますと、性格から見まして、国際的な業務と思われるものに、「外国の参加者に対する約束の履行を保障する」これが十五条でございます。それ以外に、外国の参加者がわが国の地理的名称を使用する場合にその承認を与えるという規定がございます。それから、外国の参加者がわが国の原産物を展示する場合、それに承認を与える。それから、外国の政府代表者の会議を招集する。それから、BIEに対する諸般の情勢の報告をする。こういった業務がございます。これ以外に、ややささいな業務になるかと思いますが、国内的な業務といたしまして、条約で、展示物品の損害に対する保護のために必要な措置をとるというふうな規定もございます。十五条でございます。それからあと、一般規則で、一般分類表の解釈の権限を持っておる。それから、会期中の展示物品の搬出入についての許可を与える。あるいは食堂設置の許可を与える。それから、催しものの開催に関する異議申し立ての処理をやる。それから、特別規則が十ばかりございますが、こういったものの承認をする。あるいはいろんな万博に関しまする解釈の最終的な決定をする。それから、諸規則の違反者に対しまする制裁を加える。そういったようなのが、条約並びに一般規則に基づく職務でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/66
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067・穗積七郎
○穗積委員 そういたしますと、これは外務大臣というよりは、むしろ政府を代表するような意味で、賢明な三木さんにお尋ねしたいのですが、政府代表というのは、おもに、いまの御説明でも、対外関係の事務を処理するだけですね。そういたしますと、万博の工事をはじめとするいろいろな準備、あるいは全体の総合的なアイデアをどういうふうに具体化していくかというような問題については、一体どこが責任を持ってやられるのですか。そこのところがよくわからない。
それからもう一つは、これは役所の方に対して私は皮肉を言うわけではありませんが、私どもは、国民の側に立って見ますと、このことに限らず、予算を握っておる役所がいろいろ機関が分かれておりますと、一つの統一された事業をやろうとするのに、各省それぞれ予算を背景にして、悪く言えばセクショナリズムというのですか、よく言えば不統一、そういう食い違いが出まして、統一して、そして調和の中で事業を的確に、かつ支障なく進めようとするためには、多くの障害にわれわれぶつかることがございます。会を一つとりましてもそうであります。そういうわけで、この臨時にできる政府代表並びに、これはあとで伺いますけれども、万博協会というものがあるわけでしょう、それは一体どこでだれが責任を持ってやるのか。名目はそうであるが、実際は通産省が中心になってやるのか、外務省が中心になってやるのか、建設あるいは厚生、どこが一体イニシアをとってやるのか。みんな発言はするけれども、全体の成功に対して責任は持たないというような、表面に出て国民に見えておる、きょう承認を求められる政府代表をはじめとするすべての事務局と政府機関との間、また政府機関間の不統一あるいは意見の食い違い、そういうようなことで、せっかくの予算が死に金になるという場合がある。そして対外的には恥をかく。こういう結果になりやすい経験を持っておる。しかも、先ほど鶴見さんが御説明になりましたように、この事業は、世間で心配しておるように、政府から見ても、確かに少し手おくれである、不十分であるという多少のあせりもあるわけですね。それを進めるために、政府代表と実際その事務の表面の責任者である万博協会との関係、イニシアは一体どこが握っているのか。そして、大事な予算については各省ばらばらだから、一体、それはどこがイニシアを握っているのか。表面は外務省、実際は通産あるいは建設厚生が加わってきて、非常なぶざまなことになる。お互いがブレーキになり合う。そういうことを実は私は善意をもって懸念をするわけです。そこで、大臣にお尋ねするわけです。一体、全体の総合的なゼネラルディレクターというものは、だれが握っておるのかということを実は率直に聞きたいわけですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/67
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068・三木武夫
○三木国務大臣 これは、昭和四十一年四月十二日の閣議決定、それと、国際博覧会条約による日本万国博覧会一般規則、こういうものによって通産大臣がやはり総括の責任者です。それを実施するものは万博協会がやります。責任は通産大臣である。万博担当大臣ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/68
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069・穗積七郎
○穗積委員 そうすると、それをいまから伺おうと思っておった問題が出ましたから、伺いますが、万博協会の責任者はだれでございますか。しかもどういう人でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/69
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070・三木武夫
○三木国務大臣 石坂泰三氏が万博協会の会長でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/70
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071・穗積七郎
○穗積委員 万博協会の石坂会長と、それから政府代表の現在は奥村氏、これとの関係はどういうふうになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/71
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072・三木武夫
○三木国務大臣 政府代表は、日本を代表して国際的にいろんな責任を負うわけでありますから、少し仕事の内容は違いますけれども、緊密な連絡を必要とする。したがって、会長と政府代表との間にはきわめて緊密な連絡をとらなければ目的は達成できぬが、おのずから政府代表の役割りと万博の会長の役割りというものには異なったものがある。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/72
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073・穗積七郎
○穗積委員 そういたしますと、計画から実施、すべて大体の総括責任者は万博協会ということでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/73
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074・三木武夫
○三木国務大臣 そういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/74
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075・穗積七郎
○穗積委員 そういたしますと、特に通産省の橋本参事官にお伺いいたしますが、先ほどのお話のように、会場並びに会館の建設、それから関連公共事業の工事、これらは直接のものと万博協会を通じてやらせる場合とありますが、そこで、お尋ねいたしますが、その総合的な計画は万博協会が責任を持ってつくる。それをいまのお話だと通産大臣が大体関与して、イニシアは万博協会にある。それに通産大臣が承認を与えるというか、そういう形で行なう。これは計画ですが、そういうふうになっているのか。それを行なう場合に、その計画をされた事業を施行させるのに、政府が直接工事責任者というか、発注の責任者になってやられる場合と、万博協会を通じてやられる場合とあるのではないかと思うのです。それはいま申しましたとおりに、この計画が円満に調和を持って施行されるためにという角度から心配して伺っているのが一つと、それからもう一つは、場所が開西のことでありますし、しかも直接われわれは関係がないものですから、ついこまかいことはつまびらかにいたしておりませんが、関西の私鉄会社等を中心にして、万博の計画施行にあたっていろいろな黒いうわさが流れておるわけです。それは協会との間で行なわれているのか、あるいは施行予算を握ってイニシアを持っておる役所との間で行なわれているのか、あるいは協会を通じて行なわれているのか、いろいろあろうと思いますけれども、実は関西へ参りますと、直接関係のない一般の庶民の諸君が、こういうことをやって国の予算を食って、そして地元の独占資本あるいは事業に関連をする独占企業が、一部の役員と結んでこれを食っておる、ばかを見ているのはわれわれ国民だけではないかといううわさをわれわれは非常に耳にするわけです。このことは外国まですでに流れているかどうか知りませんが、いまりっぱな名目を立ててやろうとしておる万博が——オリンピックの場合にはそういうことをあまり耳にしなかった。万博は工事がおくれているという心配だけではなくて、おくれている工事の中でそういう黒い霧のうわさが随所に流れ出ているわけですね。私は、そういうことを一々ここで摘発をして、その関係役所なり協会に対してけちをつけようという考えではない。ないけれども、これを成功させるという立場から見るならば、これは軽視することのできない問題である。のみならず、これから最後の追い込みをやるということになりますと、いま申しましたような計画並びに施行の責任は一体どこにあるか。その裏づけは各省が分担して予算を握っておるわけだから、その施行の請負を協会を通じてやっておるものと、役所が直接やっておるものとあろうと思う。それらの取り扱いは一体どういうふうになっているかという、その二点の角度からお答えをいただきたい。再質問をなるべくしないように進めたいと思いますから、私の質問の趣旨の角度というか、ポイントをよく理解されまして、賢明な回答をして国民を安心さしてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/75
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076・橋本徳男
○橋本説明員 まず、予算の施行でございますが、会場関係の予算につきましては、通産省が予算折衝で予算をとりまして、協会へ渡し、協会がその施行をやっております。それから関連公共事業につきましては、道路のように直轄でやるものと、府県で地方道のように補助金という形でやるものとございまして、直轄でやるものは、それぞれ従来の例によりまして、運輸省なり建設省なりが直轄でやっておりますし、補助金の形で出ておるものは、それぞれ府県庁に補助金を出してやらせております。
それからもう一つ、黒い霧の話でございますが、こういった事業にはそういうことが従来から間々考えられますので、特にこの点には配慮をいたしまして、協会に特別な組織、いわゆる監察部門を特別の形で設けまして、そういうことの万々ないように十分やっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/76
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077・穗積七郎
○穗積委員 協会内に特別の査察管理のセクションをつくらしてやっておるということでございますけれども、これはあなたも私に同感だと思うのですが、日本では、こういう臨時の機関というものは、しかも金の出どころが民間の営利資本でないということになりますと、非常にルーズ、無責任になるのですよ、ただもらったような気になって。貴重な自分の会社のお金をどういうふうに使うかということは、法に違反しない限り自由でしょう。ところが、税金を使うということになりますと、黒い霧問題で不審を抱いておる大衆の負担になっておるわけですね。だから、締まりは逆でなければならない。ところが、日本の通弊で逆なんですね。国家予算からもらった金はただもらったような気になっておる。出したほうもそれに対してあまり責任を感じない、こういう通弊があります。そういうことを一般の社会通念としてみますと、いまの御説明ではちょっと心もとないわけですね。ルーズになっておる。協会自身が赤字を出すわけではないでしょう。失敗してもおれたちの責任ではないというエクスキューズがある。そういうものに査察の権利を与えておって、そして国家予算の責任がある通産をはじめとする政府が、これの問題に対して無責任であるということはおかしい。だから、これは協会内にそういう機関を設けて厳重にやらせることはけっこうだが、それだけに委任しておくということは、私ははなはだ手落ちだと思うのです。ぐるになってしまう。ぐるになって、そういうことに対する正義感あるいは緊張感というものはお互いにないわけです。そこから出てくるわけです。ですから、役所としては、自主的に万博協会にそういう管理監督のことをきびしくするように待望されることはけっこうで、われわれも期待いたしますが、それだけにやらしてあるということで、税金を出した国民に対する説明としては、私はちょっと足りないのではないか。いかがでございますか、どういう方法をとっておられるか。もしあるとすれば、政府と万博協会とのこの施行に関する監督関係というものを聞かしていただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/77
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078・橋本徳男
○橋本説明員 補助金の支出の形態につきまして、それが乱費等におちいらないような手段といたしましては、通産省と会計検査院にも入ってもらいまして、常時会計検査院と連絡をとりまして、会計検査院の監督のもとで、不適当と思われるものは事前のいろいろ相談の上で現在やっておりますので、役所と協会との関係は、通産省と会計検査院が一緒にそれを監督しながらやっておりますし、それから協会内部の問題といたしましては、先ほど申しましたように、監察室というものを特別な機関として設けておりまして、この室長は警察当局から出てもらうというようなことで現在やっておるので、そういう形で十公国民に御迷惑をかけないようにやっていく体制を整えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/78
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079・穗積七郎
○穗積委員 それでは、ついでにお尋ねをしておきますが、協会がいろいろな工事を施行されますね。そのときには、わが国においては普通は入札が行なわれるわけだ、指名または競争入札が。そういうやり方、原則についても、一々役所で方針を与えておるわけですか、それは協会の全く自主性にまかしておるわけですか、いずれでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/79
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080・橋本徳男
○橋本説明員 私のほうから、基本的な考え方といたしまして、原則はあくまで競争入札ということにしております。ただ、この博覧会の事業は、たとえば非常に特殊な施設でございますために、競争入札だけではいかない、技術、能力をそこに加味しなければならないというふうなもので競争入札のできない場合に限って、指名というふうなことをやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/80
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081・穗積七郎
○穗積委員 そういう原則のみならず、その入札による工事契約ができたときに、それが妥当な契約であったかどうかは点検しておられますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/81
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082・橋本徳男
○橋本説明委員 一回一回はやっておりませんが、定期的な検査を事後においてやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/82
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083・穗積七郎
○穗積委員 契約のみならず、その契約を施行いたします施行の過程において、はたして契約書どおりに行なわれているかどうか、点検する機会はどういうことでやっておられますか、機会並びに方法です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/83
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084・橋本徳男
○橋本説明員 これは会計検査院とうちと両方で定期にやっておりまして、非常にしさいな事項まで好ましくない点を指摘して、一々それを改善さしておるという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/84
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085・穗積七郎
○穗積委員 直接協会または政府の行なう工事だけでなくて、あの千里山というところは、私も一、二度通過して、これが会場になる予定地だ、あるいはせんだって、去年の暮れでしたか、工事中のところをそばを通ったりしていましたが、全くの未開の地ですね。そして、あそこへ地下鉄がもうすでにできて、それから裏には大きな有名なリビングタウンができて、そこへもってきて万博ができる、こういうことによって、自然に地価の値上がりで土地所有者をはじめとする不労所得者というものができるわけです。それらについての配慮は、私は法律上責任はないかと思うのですけれども、運営において、いろいろな情報を利用したり、その不労所得の増をねらったいろいろなことがうわさされておりますが、そういうことを役所はお耳にしておられますかどうか。もしお耳にしておられるとすれば、これも国民から見て黒い霧の一つだと思う。もしされておるとすれば、そういうことをなからしめるような特別の配慮あるいは監督をしておられると思うが、事情万般たなごころを指すように役所のほうは事情を御存じでございましょうか。どうですか、それの対策はどうなっておるか、伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/85
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086・橋本徳男
○橋本説明員 土地の買収等につきましては、大阪府においてこれを実施して協会へ提供するということになっておりますが、これにつきましていろいろな問題が起きておるので、これを疑惑の生じないような形において、実は大阪府が従来の例に基づきまする近傍類地の価格によるというふうなたてまえでやっております。したがって、その関係で買収その他に若干手間どっておるという面もございますが、それ以外の点につきましては、いろいろ新聞等におきまして話を聞いてはおりますけれども、具体的にここだというのをわれわれのほうで把握しておらないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/86
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087・穗積七郎
○穗積委員 これは国民から見ますと、さっき言ったようないろいろなセクションがあるわけです。法律的には政府は必ずしも責任はない、そういうことになっておりましても、国民から見ますと、これは当然ですけれども、政府の行なう事業に見えるわけです。それにいまの付随したいろいろな不当または不正が行なわれているというのを政府が知らぬでおるということでは、私は万博を汚すものだというふうに思うわけです。そういうわけですから、私は、いまここで、あなたは法律的に権利を懈怠しておるというふうな言い方はしませんけれども、そういう実情はつまびらかに大阪通産局を通じて調査ができるわけです。それに対して何らかの、行政措置とまではいかなくても、勧告、注意を促すことはできるわけですから、特にこれから追い込みになりますので、どさくさの中でいろいろなことが行なわれるであろうと地元の大衆はみんなうわさをしておる。そのことを私は申し上げまして、その心がまえを強く政府に要請いたしておきます。お聞き取りになりましたね。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/87
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088・橋本徳男
○橋本説明員 よくそういうふうにやっていきたいと思います。ただ、現地におきましては、ちょっと私のあれが間違ったかと思いますが、たとえばあの周辺におきまして、必ずしもそういう黒い霧ばかりでなくて、いろいろ工事の過程において交通事故その他もできてはいけないということで、特別工事用の道路を近傍につくるとか、あるいは地元の警察などの協力によりまして交通の特別施設をつくるとか、それからまた、先般、御承知のように、万博の直接の原因ではございませんが、若干その関係において中小企業の倒産等がいわれておりますので、こういったような点につきましては、十分協会がその信用調査等によって他に迷惑を及ぼさないような方法によって今後の発注を行なうようにということで、業界を指導しておりますので、今後も十分注意していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/88
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089・穗積七郎
○穗積委員 関連してちょっとよそに入りましたけれども、本筋に返りまして、大臣にお尋ねいたしますが、政府代表の人事は国会承認の案件でございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/89
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090・三木武夫
○三木国務大臣 これは内閣の人事でございます。国会の承認は受けない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/90
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091・穗積七郎
○穗積委員 次にお尋ねしますが、万博協会の事務局員の構成並びに人選はどういうことでやっておられますか。現在何人くらい職員がおるわけですか。そうして予算はどれくらいになっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/91
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092・橋本徳男
○橋本説明員 現在の人員は約四百名でございます。それで、予算は大体一年間に四十二年度で九億ないし十億程度の運営費だと思っております。
それから構成は、大体全体の五分の三程度が地元大阪府市の出身でございまして、それ以外は関係の省からも出ていただいておりますし、あるいは銀行その他の企業から協力を求めておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/92
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093・穗積七郎
○穗積委員 次に進みましょう。万博は、今度は対外的な影響を主に考えてやるわけです。日本国民にもむろん何らかの効果をあげるためですけれども、アイデアといいますか、スローガンはどういうことになっておるか。あれで確定であるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/93
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094・鶴見清彦
○鶴見政府委員 スローガンといいますか、モットーにつきましては、「人類の進歩と調和」ということが確定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/94
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095・穗積七郎
○穗積委員 それに対して細目のスローガンはもうないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/95
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096・橋本徳男
○橋本説明員 ございません。その一つ一つのサブテーマがつく。それにさらに細目的なテーマがついておるのでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/96
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097・穗積七郎
○穗積委員 三木外務大臣に……。このテーマには平和というテーマはございませんでしたね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/97
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098・橋本徳男
○橋本説明員 サブテーマといいますか、副題という意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/98
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099・穗積七郎
○穗積委員 主題。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/99
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100・橋本徳男
○橋本説明員 主題は「人類の進歩と調和」だけでございまして、サブテーマの中にいろいろうたってあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/100
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101・穗積七郎
○穗積委員 ただ、どうでしょう、私が申し上げるまでもなく、かくのごとき情勢の中で開かれる。一九七〇年といえば、与党と野党で意見は違いますけれども、安保の改定の年にも当たる。それから、対外的にはアメリカとベトナム、アメリカと朝鮮、アメリカと中国との関係等もいろいろな場合が考えられて、変化発展があろうと思うのです。そういう時期を画してやる国際的な行事でありますから、単に貿易だけでなくて、いま言ったように、「人類の進歩と調和」そういうことをやるならば、アジアで開かれる万博に平和のことばが消えておるというのは、しかも平和憲法下のわが国で行なわれる万博にしては、たてまえといい、時期といい、情勢といい、平和のことばをスローガンに加えるべきではないかということを私は強く感ずるわけですが、大臣の御所見はいかがなものでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/101
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102・三木武夫
○三木国務大臣 これは平和ということと同じ意味だと私は思っております。平和の実質的内容は調和であり、進歩である。調和のないところに平和はないし、進歩のないところに平和はない。だから、ことばの中には入っていないけれども、これは正確に言えば、調和と進歩を通じての平和、こう考えられて間違いがない。これは実質的平和です。平和、平和とお経のように言ってもだめですからね。その実質的な内容を端的にあらわしたものが調和と進歩である。実質的な平和に一歩進んでいるところに、このテーマの非常にいいところがあると私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/102
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103・穗積七郎
○穗積委員 あなた方はおきめになったほうだから、自画自賛で主観的にいいと思われることに対して、私は疑いを持つわけじゃないが、客観的に言いまして、平和と調和をぜひ入れたければ、平和、調和、進歩でいいけれども、三つ重なってはちょっとごろが悪い。それならば、調和が平和と同意語であるなら、平和と進歩の万博だというスローガンが、特にこの際アジアの日本において開かれるについては、最もアダプトしているのではないかという感じを強く持つわけです。私は、ここで議論してもしようがないことですから、これ以上議論しようとは思わない。しかしながら、きょうは通産大臣お見えになりませんから、外務大臣を通じてお聞きしますが、通産大臣には橋本参事官を通じて伝えていただきたい。私は、ただ思いつきでなくて、かねてあのスローガンの発表になったときから、一九七〇年という時期を考えて、やはり平和という字は避けるべきではない、むしろ積極的に平和の文字を入れるべきである、調和、進歩ということばが悪いと言うんじゃない、それにけちをつけるのではなくて、この際、やはり平和ということばが、一九七〇年万博の、しかも日本における万博のスローガンとしては積極的な必要さがあるのではないかということを信じまして、要請、提言をいたしておく次第であります。それを総理にも伝えて、ぜひひとつ内閣においても御検討をいただきたいということを要望いたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/103
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104・三木武夫
○三木国務大臣 これは申し上げておきますが、この段階でテーマが変わるというような印象を与えることはよくない。これはお断わりをいたします。やはり調和と進歩ということで万博をやっていく。実際問題として、平和というものがサブタイトルに一ぱい出てくるわけです。そういうことで、このタイトルは、直接に平和というものでなくても、実質的な平和の調和と進歩というものになっておりますけれども、サブタイトルの中では平和が一ぱい出てくるので、あなたの御趣旨にはそむいていませんが、テーマを変えろという提案は、混乱を起こしてはいけませんから、きっぱりお断わりをしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/104
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105・穗積七郎
○穗積委員 大体内閣の態度はわかりました。それも理解できる。そういうことでありますので、もし趣旨において賛同するのであるならば、方法としてはいろいろなサブタイトルなりあらゆる説明、会場におけるしつらえ等でぜひ考慮すべきであるということで、私は重ねて強く要望するわけでございます。ぜひ通産大臣にもお伝えいただきたい。外務大臣にも重ねてそれを要望いたしておきます。
次に、カナダの博覧会では、非常な恥をかいた、批判を受けたでしょう。これは認めておられますか、おられませんか。もし政府が率直に認めておるとすれば、どういう点に欠陥があったのか、自己反省をしておられますか。今度の大阪万博ではこういう方法で過去のあやまちは二度と繰り返さないという自信があるならば、それも承りたい。カナダの反省からひとつ承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/105
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106・橋本徳男
○橋本説明員 カナダの博覧会におきまして、日本の政府館がややコマーシャル的であるという批判を受けたことはございます。しかし、これが必ずしもカナダに集まった観客がそういう見方で見たのかどうかというところには問題はあるかと思いますが、そういう誤解を受けることにつきましては、私たちも遺憾に思っております。御承知のように、この博覧会は、そういった見本市と違いまして、より高い理想へ向かっての平和の祭典でございますので、大阪万博の際には、そういうことの絶対ないようにということで、出展者に対しましても、出展の内容について協会から詳しくその指導書を頒布して、現在の段階におきましては、出展者も大体そういう気持ちにもなっておりますし、かつまた、広告等につきましても、強い規制をするというふうな考え方で臨んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/106
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107・穗積七郎
○穗積委員 それから、これは大臣にお尋ねしたほうがいいかと思いますけれども、招請状の相手です。これは国交回復国には全部お出しになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/107
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108・三木武夫
○三木国務大臣 国交のある国には全部招請状をすでに出しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/108
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109・穗積七郎
○穗積委員 そこで、お尋ねしたいのは、未回復国も事実存在を認めていて、しかも、わが国と経済文化の交流をしておる国には招請状を出すことが、いま申しましたように、平和と調和と進歩のスローガンの万博であるならば望ましいと思うが、これは出ておりますか。もし出ていないとすれば、理由を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/109
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110・三木武夫
○三木国務大臣 万博の条約によって、外交機関を通じて招請状を出すということになっておりますから、外交関係のない国を招請するということは、こういう手続上できないのでございます。したがって、招請はしておりません。過去にあったほかの万国博覧会の例に徴しても、全部そのようになっておりますので、そういう万国博覧会条約あるいは過去の先例等も徴して、さような手続をとったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/110
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111・穗積七郎
○穗積委員 外務省からお配りになりました資料の中に、政府機関だけでなくて、招請活動をやっているわけですね。方法は幾らもあるんですね。しかも、未回復国で、すでに日本においていろいろな貿易展覧会をやり、かの国においてわが国の貿易または工業展覧会を幾たびかやっているわけです。そうなりますと、しかも、実際の主催責任者は万博協会であるとし、それが政府機関ではないということでありますれば、いまおっしゃるような招請の手段方法において何ら欠けるというところはないし、困るところはないし、また精神においては何ら差しつかえないように思う。参加するしないは相手国の自由ですから、これは別ですけれども、世界の平和と調和と進歩ということが目標であり、しかも主催者が、予算は補助金の形で補助をいたしましても、実際行なうのはそういうものです。しかも、未回復国で、政府の予算を使って補助金を出して、わが国のいろいろな文化、経済の展示会をやったり、相手国の展示会をわが国において行なった事実もある。そういうことであるならば、どうもいまの三木さんの御答弁はあまりにも官僚的であって、ちょっと納得ができませんが、どういうものでしょうか。通産省はどういうふうにお考えになりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/111
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112・橋本徳男
○橋本説明員 全く同じでございまして、条約上外交ルートを通じて招請を行なうということになっておりますので、国交のない国には出し得ないというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/112
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113・穗積七郎
○穗積委員 それから最後に、これは政府全体に対してお尋ねをするのですが、万博の経済的効果の問題ですね。経済外の効果というのは、なかなかエスチメイトが困難でございますから、これは何とでも相当主観的に抽象的に効果があったと言い、なかったと言い、いろいろできると思いますが、経済的なメリットにつきましては、具体的に評価ができるのではないか、過去における実績から見て。そして、われわれが何百億という予算を使って、はたして、この国際情勢のきびしい、経済情勢のきびしい中で、一体どれだけの経済的効果が——これは国民に対して政府も責任があろうと思うのです、これだけのことをやる以上は。それについて、たとえばいままでわが国が参加した国際博覧会を通じて出ておる統計でも説明ができるでしょう。それが時間がないならば、この間のカナダの評価の中でもできると思う。今度のものについても、その点については一応の見込みといいますか、目算なくしてやるべき仕事ではなかろう、こう思うので、過去における実績と、今度のあれを行なうことによって生ずるであろう効果ですね、一九七〇年の国際経済情勢というものを考えますと、私は決して甘くないと思うのです。これは率直に言いますが、私どもの革新陣営の中においても、ドル、ポンドの権威がくずれるのはいつであるか、くずれる必然性がある、それはいつであるか、どういう形で日本にはね返ってくるか、これはこの二、三年来、保守、革新を問わず、与党、野党を問わず、一切の政治あるいは行政、特に経済行政に関係のある行政機関の注視の的でなければならなかったと思うが、一九七〇年というものを単なる外交関係でない国際経済関係を想定して、一体どれだけのメリットが考えられるか、これは私は国民に対して重大な責任だと思うのです。その点について、締めくくりとしてお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/113
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114・橋本徳男
○橋本説明員 外国の例でございますが、外国としまして、非常に詳細なそういった形は出ておりませんが、端的にわかりますのは、ブリュッセルの博覧会の例でございまして、ブリュッセルの博覧会の終了後、ベルギーの輸出が非常に急激に伸びております。この因果関係ははっきりいたしませんが、これはおそらく博覧会があずかって非常な力があったであろうというふうに考えております。
それから、日本の場合の試算でございます。これにつきましては、いろいろな大学あるいは調査機関によりまして必ずしも同一ではございませんが、一応考えられておりますものは、大体先ほどのように、関連公共事業、会場で七千億の投資が行なわれる。これに会場関係のいろいろな日本の国内並びに海外の諸国から千億円に近いパビリオンの建設投資が行なわれるであろうということ、それにいろいろな会場におきまする支出、そういったものを合わせますと、一兆近い程度の投入になるであろう。これがその乗数効果によりまして、経済に及ぼす影響は大体二兆に近いものである。といいますことは、経済成長率に対しまして〇・二、三%の上昇への寄与をするであろうというふうに実は考えております。
それから、さらにそれを外貨の面で見ますと、上限は八億、九億という程度の外貨の収入が得られるというのと、下限は二億ないし三億ということで、かなり幅はございますが、数億程度の外貨収入という、この博覧会によって見込まれた試算額は、ほぼ妥当な線ではなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/114
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115・穗積七郎
○穗積委員 大事な点ですから、大臣から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/115
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116・三木武夫
○三木国務大臣 いろいろ御指摘になりましたが、国際政治の上において、この問題は、ベトナムというものが、一九七〇年には、われわれの期待も込めて、これはやはりベトナムの戦争の終結がもたらされておるに違いない、これに期待も含めて言います。
また、国際経済の上においても、私は、一九七〇年の国際経済を今日以上にきびしいものだとは考えていない。いまが一番きびしい時期ではないか。一九七〇年が経済的には非常にきびしい、今日以上のきびしい経済情勢だとは思っておりません。
国内政治の上において、安保危機ということばがありますけれども、われわれは少しも危機だとは思っていないわけです。何のために一九七〇年を焦点にして安保危機という危機感を盛り上げるのか、私にはよくわからない。一九七〇年安保危機の年にあらず。きわめて万国博覧会を開催するにふさわしい環境のもとに一九七〇年を迎えるに違いない、こういう大きな期待のもとに万博を迎えたいと思っておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/116
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117・穗積七郎
○穗積委員 最後に、これはもう議論ではありません。私は、念のために、いまの手放しの楽観的な御感想でこういう計画をなすっておられると、違う場合も十分あり得る。それは単なる杞憂ではなくて——きょうはそれが主目的ではないし、それから時間もありませんから、遠慮いたしまして、結論だけ申し上げておきますが、いまの国際情勢から起きてきた最近の資本主義諸国間における内部的矛盾と対立というものは、これが最高調ではないと思うのです。私はこれが始まりだと思う。したがって、過剰生産と労力不足に伴う物価値上がり、並びに国際収支の困難さというものは、決してそんな楽観すべきものではない。安保安保とおっしゃって、安保を与党、野党の対決のように御理解になると、これは間違いであって、私の言うのは、一九七〇年におけるアジアを中心とする外交情勢を言っておるのです。このことは、言うまでもなく、経済情勢のうらはらになるわけですね。そういう点から見まして、いまおっしゃるような手放しの楽観論をもってあなたが見通しを立てられ、それで国民に、おれについてこい、これはまかせろ、こういうことを言われても、これはかえってあなたのためにも危険ではないかとすら思うくらい、私は、いまのお話はそのまま受け取りがたい見通しを持っておるわけです。ですから、その点は、苦言はまた楽しからずやですが、どうかひとつ謙虚にお聞きになって、もう一ぺん再検討というか、情勢分析については、もっとシビアーに熱心に検討されることを期待いたしまして、これで私の質問は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/117
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118・三木武夫
○三木国務大臣 いまの私の発言は、国民についてこいという意味ではない。この万博を成功さすためには全国民の協力が要りますから、これはみなの協力を得なければならぬし、また、一九七〇年をいかにも危機で、万博の開催もできない、そういうふうには考えていない。しかし、世界情勢がそんなに手放しの楽観というわけではありませんが、一九七〇年に焦点を合わして、非常な危機が到来するという考え方には賛成できないということでございます。手放しの楽観というわけではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/118
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119・秋田大助
○秋田委員長 曽祢益君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/119
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120・曾禰益
○曽祢委員 私は、けさの理事会で決定されたように、本日の委員会は万博を上げる、それから公海に関する条約、領海及び接続水域に関する条約の審議に入るということでありますので、しかも時間が経過しておりまして、早く二つの条約に入るのが大体の委員会の総意であるかに思いますので、私は、自分の意見にも触れるかもしれませんけれども、きわめて簡単に万博に関する法律について御質問いたします。すでに戸叶、穂積両委員からの質問の中にありましたが、私は、政府の準備に非常な不備な点があった、それからもう一つは、何といってもお役所のなわ張り根性、もう少しきれいなことばで言えばセクショナリズムにだいぶ悩まされてきた、これが実情だと思うのです。私は、そういう意味で、たとえばこの法律案そのものが、提案理由の説明書に書いてあるようなものでは実はおかしいので、「とりあえず昭和四十一年九月に外務公務員法に規定する政府代表を発令して暫定的にその任務の一部を処理せしめてまいりましたが、これは非常勤かつ無給でありました。最近ようやく、万博の開催の時期が近づくにつれまして、政府代表の任務が次第に増大するに至りまして、全面的な活動を行なわなければならない事態に立ち至ったので、本法律案を提案する」云々、こんなおかしなことはないので、本来ならば、スタートの一番重要なときから本格的にこれに取り組むべきであったのではないか。特に非常勤かつ無給で、外務公務員法による政府の代表というようなことでやれば、これは対外的にも対内的にもなかなかやりにくい。そういうやりにくいものを任命したということが事務渋滞の原因であり、あるいはセクショナリズムにかえって火をつけられた点も当然あろうかと思います。そういう点を反省して、これからもっと集約的に、国費をむだ使いしないように、そこでこういう臨時措置を出されたと思うのです。これも穗積委員も触れられたところですが、万博万博といって、国会議員から地方関係議員まで、一体どれくらい外国旅行しているかというのですよ。私は、こういうことの国費は乱費をしておいて、そうして政府代表のほうは非常勤かつ無給である、そういうところにやはり姿勢が正しくなかったと思うのです。しかし、これを悔い改めるのですから、いい方向へ向くこととして、おそかったけれども、私はこの法律案の趣旨に賛成していきたい。こう言うと、まるで討論みたいになってしまうのですが、そういう気持ちで、過去の失敗の点だけを荒ら立てするのじゃありません。そういう点から、今後ほんとうにしっかりやってもらいたいという意味です。われわれ心配するのは、何といっても、全体の責任者は通産大臣です。しかも、その準備から開催からその他、実施者は協会です。そうして対外的責任者は外務省であり、この代表です。これは、これ以上権限を一緒にすることができないから、自然に分かれているのでしょうけれども、その間のチームワークがほんとうにうまくいかないと何にもならないのです。
そこで、この案文だけから見ますと、たとえば第三条に、代表のおもなる任務を書いておるのです。しかし、先ほどの通産省の代表の説明からいっても、単に対外的に約束の履行を保障するというだけでなくて、かなりこまかい仕事も実際は引き受けさせられているわけですね。しかも、その仕事は、特に通産省ですけれども、あるいは協会とも非常に密接なうらはらの関係になってくるのですね。ところが、第四条では、「関係各省庁の長は、代表の任務に関し、必要な措置をとるものとする。」これは非常に包括的な言い方で、これ自身が悪いというのじゃないけれども、こんなのんきなことでうまくいくのか。本来ならば、みんなしっかり援助もし、監督もするのだ、そのくらいの気醜でやらないと、単に第四条ができたから今度の代表と通産省の間がうまくいくなんて、そんななまやさしいものじゃないと私は思う。
そこで、第四条の趣旨です。この法律的の趣旨、政府として、各省として、このことをどう考えていくか。これはこまかいことではございませんので、外務大臣から、第四条の「各省」がどういうことをやろうといっているのだか、どういうつもりで、この代表を活用しながら、各省との調和をとっていくのかということについて、御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/120
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121・三木武夫
○三木国務大臣 これは立法的な措置というよりか、実際的な緊密な連絡が必要でしょうね。そうでないと、これは、条文の上に、各省がいろいろ各省の権限に従ってというようなことがありますけれども、このことよりも、実際的に緊密な連絡をとらなければばらばらになっていく可能性がありますので、こういう政府代表を任命した機会に——従来とも連絡が十分であったとは思いません。いろいろばらばらの点もあったのですから、今後この連絡の点についてはくふうを加えることにいたします。法律よりも、これは実際問題として、この三者が違うわけですから、これがどう一体的な関係をとるかということについて、従来のことも反省し、一段のくふうを加えることにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/121
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122・曾禰益
○曽祢委員 もう一問だけ。
大臣のいまのおことばで、大体私の意図が達成されるような方向が出たと思うのですけれども、とにかく私は、最近、議会と各省との関係等を見ておりますと、ややもすれば、たとえば外務委員会は外務省だけバックする、通産関係は通産省だけバックするというようなことであってはならない。われわれはもちろんそうでないと思いますけれども、セクショナリズムで、片方の常任委員会が片方の役所をバックアップするなんということは実にナンセンスであり、それは国会自身の行き方として誤りだと思います。そういうことでなくて、いま大臣が言われたように、この問題をうまくやっていくためには、ほんとうに、いろいろな権限が分かれているものが有機的、効果的な協力をして実をあげなくてはいかぬ。特にこの代表の問題については、これは新聞に奥村代表の苦衷として伝えられたところを聞くと、実情は知らないけれども、なるほどむべなるかなという点があると思う。したがって、この点を改めるために、特に外務大臣と通産大臣が率先垂範されて、何といっても外務、通産両省が有機的にうまい連絡をして、お互いのセクショナリズムを打破していかなければそれはできないと思う。幸いに三木大臣は通産大臣の経験者であり、また椎名通産大臣は外務大臣の経験者である。しかも両方とも超大ものであるというのですから、けちくさいセクショナリズムを打破して、この法律の制定を契機として、ほんとうにこの代表が有機的な協力のもとに有効な活動ができるようにされたいと思うのです。
私の希望意見でありますけれども、なお、もう一回だけ大臣のお気持ちを披瀝を願いまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/122
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123・三木武夫
○三木国務大臣 非常にごもっともな御注意で、今後私と通産大臣の間はもちろん、協会と政府代表との間にも十分な連絡をとって、ばらばらにならないような注意をいたすことをお約束いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/123
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124・秋田大助
○秋田委員長 日本万国博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法案に対する質疑はこれにて終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/124
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125・秋田大助
○秋田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
本案を原案のとおり可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/125
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126・秋田大助
○秋田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
おはかりいたします。ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/126
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127・秋田大助
○秋田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
—————————————
〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/127
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128・秋田大助
○秋田委員長 次に、公海に関する条約の締結について承認を求めるの件、領海及び接続水域に関する条約の締結について承認を求めるの件、以上両件を一括して議題として、質疑に入ります。
質疑の通告がありますので、これを許します。戸叶里子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/128
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129・戸叶里子
○戸叶委員 私は、ただいま議題になりました条約について質問をいたしたいと思いますが、きょうは主として第三章の無害航行権の問題についてお伺いをいたしますが、それに先立ちまして、一、二点確かめておきたいことがございます。
それは、両条約が審議され出しましてから効力を発するまで相当の時間がかかっております。そのことは、内容的にいかに多くの問題があったかということを物語ると思いますけれども、たいへんに手間どった理由をまず第一にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/129
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130・高島益郎
○高島説明員 領海条約は一九五八年に採択されまして、さらにまた一九六〇年に領海の幅員に関する問題についての特別な会議が招集されました。その結果にもかかわらず、領海の幅員についての決定がなされませんでした。実は領海に関する条約の中では、この幅員の問題が一番重要な問題であるにもかかわらず、そのような規定が採択されなかったということが、この領海条約に関します各国の批准のおくれているおもな理由であろうかと思います。発効いたしましたのは一九六四年の九月でございます。現在三十三カ国が批准しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/130
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131・戸叶里子
○戸叶委員 ただいまお述べになりましたように、やはりこの条約が長引いた理由の一つとして領海の幅員の問題をあげられました。それで、領海の幅員はいまだに決定されず、各国家まちまちであるということも聞いております。そこで、当時提案をした国には、六海里説もあれば、三海里説もある、あるいは十二海里説もある、いろいろあると思いますけれども、大体でけっこうでございますが、どこの国がどういう提案をされたか、そしてどうしてそれがまとまらなかったか、この点を説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/131
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132・高島益郎
○高島説明員 簡単に御説明申し上げますが、先ほど申しましたとおり、この領海の幅員に関しましては、一九五八年の会議と、さらに一九六〇年の会議と、二回にわたりましていろいろな提案が出されました。
まず、一九五八年の会議におきましては、大体におきまして次の四つのような案が提案されました。
まず、米国案でございますが、米国案では、領海は六海里、さらにその外側に六海里の漁業水域を設定することができるという提案でございます。ただし、その漁業水域の内部におきましては、五年間の操業実績のある国につきましては漁業を継続させるという条件つきでございます。そういう趣旨の提案がございまして、これは四十五対三十三で否決されました。総会では三分の二の多数を要しますので、採択に至りませんでした。日本は当時これに対して棄権いたしました。
それから次に、カナダ案でございますが、カナダ案は大体米案と同じでございますけれども、米案のうちで実績を認めない。つまり、漁業水域につきましては無制限に沿岸国が規制し得るという提案でございまして、これはもっと評判が悪くて、三十五対三十で否決されました。日本はこれに対しましては反対いたしました。
次に、ソ連案でございますが、ソ連案は、十二海里までは各国が自由に領海を定め得るという提案でございます。これは非常に評判が悪うございまして、二十一対四十七で否決されました。日本は当然に反対いたしました。
最後に、ビルマその他八カ国の提案でございまして、これも大体ソ連案と似た趣旨でございますけれども、ソ連案のほかに、いま申しました十二海里までは自由だというほかに、十二海里以下の領海を設定した場合には、十二海里までは漁業水域をつけ加えて設定し得る、そういう提案でございます。これは三十九対三十八でやはり同じように否決されました。
このように、この四案とも五八年の会議で全部否決されました。
さらに二年後、領海の幅員に関する会議を開こうということでいろいろやりましたのが六〇年の会議でございます。
大体のあらましを申し上げますと、まず大きく分けまして——このときには大体各国の傾向が非常にわかっておりましたので、大きく分けまして、提案もわりあいまとまっておりまして、二つでございます。
一つは、アメリカとカナダ案、米加案と称しておりますが、この米加案につきましては、前の会議と同じように、領海は六海里、それから漁業水域が六海里、五年間の実績のある国につきましては十年間に限って漁業の継続を認める、先ほどは無期限でございましたけれども、今後は十年間とさらに制限をしたわけでございます。これは委員会の段階で四十三対三十三で採択されました。日本ではこれに賛成いたしました。
もう一つは、AA諸国の十八カ国案というのがございます。これは先ほど申し上げましたソ連案と大体似たようなものでございますけれども、十二海里までは各国は自由に領海を設定し得る、それに達しまして、さらに十二海里以内の国につきましては、十二海里まで漁業水域を設定し得るという提案でございます。これは三十六対三十九で否決されました。
以上二案が委員会で提案されて、米加案だけが本会議に行ったわけでございます。しかし、本会議の段階になりまして、さらにこの米加案に対します修正案が中南米諸国から出されました。これだけでは不十分だ、さらにその十二海里までの漁業水域の外側の公海の部分におきましても、沿岸国と特殊な関係がある場合には、沿岸国は公海漁業についての特殊な優先権を持つべきだという提案でございます。その修正案が五十八対十九で否決されました。さらにその修正を加えた米加案が表決に付されました。それが五十四対二十八で否決されました。三分の二の多数を要しますので、五十四対二十七であれば採択になったのでございますけれども、わずか一票の差でもって否決されたという悲劇的な決議案でございます。
それから最後に、AA等ラ米諸国を加えました十二カ国案というのが出ましたけれども、これは領海についてはこの会議で決定し得ないので、国連にこの問題を差し戻す、当分の間、したがって十二海里までは漁業水域を沿岸国は設定し得るという提案でございます。これは三十二票対三十八票で否決されました。したがって、非常に可能性のあった提案は、最後の修正された米加案であったわけでございますけれども、五十四対二十八、棄権が五票、日本は当時棄権いたしました。日本がかりに——これは仮定の問題でございますけれども、かりに当時賛成いたしましても、五十五対二十八ということでございますので、採択にはならなかったわけでございますけれども、計算上申し上げますと、この反対の国が一国だけでも棄権に回るかすれば採択になったという可能性はあったと思います。
以上のとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/132
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133・戸叶里子
○戸叶委員 そうしますと、日本は依然として領海の幅員は三海里、こういうふうに考えていいわけですか。これは一体いつごろからそういうことを決定されているか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/133
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134・高島益郎
○高島説明員 この会議で、日本は、六海里の領海を設定し得るという提案に対しまして、妥協のために立法論として賛成いたしました。しかし、当時日本の代表がはっきり会議で申しましたとおり、この提案に賛成するのは、日本は立法論として妥協のために賛成するものであって、もしこれが否決されれば、現在唯一の国際法の規則であります三海里の原則に戻るのであるということを申して、賛成投票いたした経緯がございました。したがいまして、日本は、否決されました関係上、依然として昔から言っております三海里の領海という立場に戻ったわけでございます。
歴史的に申しますと、日本が三海里の主張を出しましたのは、ちょうど約百年くらい前になります。大体三海里の領海というのは、十八世紀後年から十九世紀の初期にかけまして確立し出しました原則でございまして、日本は当時まだ鎖国であったのでございますので、実際日本が公式に領海三海里というのを立場として明らかにしましたのは、ヨーロッパにおきます普仏戦争・プロシャとフランスとの戦争の際に中立の宣言をする必要があって、その趣旨のことを太政官布告で言っております。読ましていただきますと、「港内及ヒ内海ハ勿論二候ヘトモ外海之儀ハ凡三里(陸地ヨリ砲丸ノ達スル距離)以内爾國交戦二及候儀ハ不相成尤軍艦商船共通行ハ是迄通リ差許候事」そういう趣旨の太政官布告を出しております。これが実は日本が領海三海里の立場を公式に明らかにした最初でございます。一八七〇年、明治三年でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/134
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135・戸叶里子
○戸叶委員 そこで、いまお話がありましたように、百年ぐらい前に三海里説を唱えて、今日まできておるわけです。領海の幅員というものは、今後においてもいろいろな問題が起きてくると思います。しかも、この条約でもそれがはっきり制定されておらないということになりますと、私はいろいろ問題になろうと思いますけれども、日本の政府として、六海里説ということは、日本は六海里がいいから出そうとされたのでなくて、妥協の産物として出されたように——間違っていたら私取り消しますけれども、伺ったわけです。だとすると、日本政府の考え方は三海里なんだけれども、まあしかたがない、六海里にしようとしたのだというのか、それとも百年前に制定した三海里というのは、やはりいろいろの点から見て、六海里説のほうがいいのじゃないかというお気持ちでいるのか、この辺のところを伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/135
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136・高島益郎
○高島説明員 領海三海里という立場は、いま申し上げましたとおり、かなり古くからとっておるわけでございますけれども、最近の、特に第二次大戦後の各国の立場等を勘案いたしまして、三海里を継続することが、国際的にいって非常に無理があるということは事実でございますので、そういう観点から、立法論としまして、三海里でなくて六海里ということであるならば、日本としても妥協し得るということで、賛成した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/136
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137・戸叶里子
○戸叶委員 立法論として妥協しようとして、そこでまとまらなったから、まあ三海里をとっておる。しかし、大戦後いろいろな情勢から見て、六海里のほうがいい。そうなってきますと、今後において六海里説をとるということになると、やはりこの条約を改定しなければならないというよりも、この条約の参加国といろいろ協議をしなければそれは実現できない、こういうことになるわけでございますね。会議をし直して、そこで六海里説が出てまとまらなければできない、こういうことでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/137
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138・高島益郎
○高島説明員 実は国際法上の考え方といたしまして、領海の幅員につきましては、先ほどのソ連の提案にありましたとおり、沿岸国がかってに国内法によって領海の幅員を制定し得るという考え方と、そうでなくて、伝統的な立場に基づきまして、領海の幅員については沿岸国がかってに規制し得るのでなく、国際法が定むべきものである——国際法と申しますのは、これは慣習法も含んだ非常に広い概念でございますので、国内法のようなわけにはまいりませんけれども、国際的に承認される必要がある、しからざる限り、いかに沿岸国が領海の幅員を制定しましても、これが有効にすべての国に対して主張し得ない、そういう両方の考え方がございまして、日本は後者の立場に当っております。したがいまして、日本は、国際的に何海里かの領海というものが明示的あるいは黙示的にはっきりきまらない限りは、依然として三海里であるので、これに従う立場を継続する。したがって、将来三海里でなくて、やはり国連の主宰する会議によって何らかの取りきめができることが一番望ましいというふうに考えておりますす。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/138
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139・戸叶里子
○戸叶委員 三海里説、六海里説の功罪についてはきょうは申し上げませんが、この条約に沿うて次の質問に入りたいと思います。
次に、七条の六項に、「この条の規定は、いわゆる歴史的湾について適用せず、」こう書いてあるわけですね。そうしますと、歴史的湾という特殊な事情が認められているわけでございますが、この歴史的湾というのは、一体何をさすのか。もしもそれが普通の湾より広い形において認められているといたしますと、条約上非常に不公平になるのではないか。この点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/139
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140・高島益郎
○高島説明員 実はこの五八年の会議におきまして、歴史的湾についてのはっきりした規定を定める必要があるということで、若干の提案もございまして、日本の代表もこれに対しまして、その湾の定義とかそういったものを提案した経緯がございますけれども、実際に合意に達しませんで、歴史的湾につきましては何らの定めができません。その結果、会議の終わりに至りまして、歴史的湾につきまして別途決議を採択いたしました。それによりますと、国際連合総会が歴史的湾を含む歴史的水域の法的制度の研究及び国際連合のすべての加盟国に対するこれらの研究の結果の通報を取り計らうよう要請するという趣旨の決議を採択しまして、実はこの領海条約の中に歴史的湾を含む歴史的水域について一切の規定を入れないことになった次第でございます。したがって、現在は、歴史的湾を持っておる国におきましては、各国それぞれの立場から、歴史的湾はこういうものであるという主張をいたしております。そういうことでございますので、現在歴史的湾というものはどういうものであるという定義をはっきり確定するわけにはまいらない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/140
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141・戸叶里子
○戸叶委員 具体的にどこの湾をさしていわれるのかということが一つ。それから、歴史的湾を主張している国はそれぞれ主張していると思います。この条約に署名した国はそれぞれ微妙な立場にあると思います。そうすると、主張している国とこれを認めない国との間に問題が起きないということはあり得ないと思います。そこで、問題が起きたときはどうするか、日本は、この歴史的湾に対する態度は一体どういうふうにしているか、この三つの点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/141
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142・高島益郎
○高島説明員 現在、外国で歴史的湾として主張している例を申し上げますと、フランスのカソカール湾、イギリスのコンセプション湾、カナダのハドソン湾、ノルウェーのバランゲル入江等、全部ではございませんけれども、こういうものがございます。日本の近くではソ連がピョートル大帝湾を主張しております。
日本といたしましては、このような歴史的湾については認めない立場をとっております。特に日本の近海でのピョートル大帝湾につきましては、事実日本の漁船が操業していたところでございますので、これを歴史的に長い間にわたってソ連が自己の主権を主張していた水域であるとはわれわれ考えておりません。そういうことで、ソ連に対しても制定した直後に二回にわたりまして申し入れをいたしております。
〔委員長退席、田中(栄)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/142
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143・戸叶里子
○戸叶委員 日本はそれを認めないにしても、相手の国があり、しかも、この条約の中に歴史的湾ということばを載せている以上、やはり問題が起きるのではないかということを私は懸念いたします。もしもこれを認めない国から苦情が出た場合に、自分のほうはこれは歴史的湾として認めさせたのだというような主張をした場合、一体どういう結論が出てくるのですか。これも将来の問題として伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/143
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144・高島益郎
○高島説明員 先ほど申しましたとおり、歴史的湾を含みます歴史的水域というものにつきましての定義が国際的に確定いたしておりませんので、そういう主張をしている国は、それぞれの立場からかってな主張をしております。そういう関係で、もし何らかの衝突あるいは事故が起きた場合には、それぞれの立場から平和的に話し合いによって解決するという以外に何ら特別の解決方法はないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/144
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145・戸叶里子
○戸叶委員 いまの結論だけのことばをとりますと、それぞれの立場から平和的に解決する以外にないというふうにおっしゃったのですけれども、それぞれの立場で平和的に解決できますか。一方においては、相手国はこれを歴史的湾として認めておる、私たちはそんなものは認めておらない、そこで問題が起きたときに、それぞれの立場から平和的に解決をしますなんということで一体おさまる問題ですか。私はおさまらない問題だと思いますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/145
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146・高島益郎
○高島説明員 国際法の分野では、単にこの歴史的湾の問題だけではなくて、いろいろな問題につきまして、国と国との主張が食い違うということが多々あろうかと思います。その場合に、特に歴史的湾につきましてこういう議論があって、しかも何ら結論に達しなかった問題、特に国連総会に研究をゆだねた問題につきまして、その以前の段階で問題を解決するという場合の基準が何らございませんので、これはやはり先ほど申しましたとおり、外交交渉その他、いろいろ平和的交渉を通じて解決するという以外にないのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/146
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147・戸叶里子
○戸叶委員 そうしますと、それで、もしも話がまとまらないで決裂したときには、どこがどういうふうにするわけですか。やはりこういう問題ははっきりさせておきませんと、漁業の問題とか、必ずいろいろな問題が出てくると思うので、伺っておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/147
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148・高島益郎
○高島説明員 国際社会の現状では、やはりあくまでも平和的解決を継続する……(戸叶委員「それはあたりまえのことです」と呼ぶ)あたりまえのことですが、それ以外に私は方法がないと思います。どうしてもさらに問題が解決しないという場合には、もちろん国際司法裁判所というふうな手続もございますけれども、国際司法裁判所に持っていきましても、それを判断する基準がなければ正当な判決を下し得ないということでございますので、必ずしも有効な裁判は期待し得ないのではないかというふうに私は愚考いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/148
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149・戸叶里子
○戸叶委員 そういう御答弁では私は納得しません。やはりこの問題は、なぜこういうものをここに認めさせたかというところにもさかのぼっていくと思います。それから、あとから私述べますけれども、留保条項なんかについての日本の立場というようなものにも私は触れてくると思います。それで、ここでは満足はいたしませんけれども、先に進みます。
そこで、無害航行権の問題を伺いたいのですけれども、まず第一に、条約に従っていきたいと思いますが、第三章の「無害通航権」の中で、一項で「すべての国の船舶」と、こうある。その中には軍艦はもちろん入るんですか。入るんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/149
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150・高島益郎
○高島説明員 当然に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/150
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151・戸叶里子
○戸叶委員 そういたしますと、「すべての船舶に適用される規則」それからまた「商船に適用される規則」それから「軍艦以外の政府船舶に適用される規則」 「軍艦に適用される規則」こういうふうにわざわざ一項を起こして分けられたのは、やはりそれぞれ内容が違うからというような意味でございますか。その辺だけ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/151
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152・高島益郎
○高島説明員 まず一般的な規定をいたしまして、それ以外の特別な規定を必要とするものにつきまして、別途の特則を定めたものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/152
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153・戸叶里子
○戸叶委員 この条約の審議にあたって、国によっては軍艦がやたらに無害通航をされては困るというような主張をされたということも聞いておりますけれども、この点はいかがでございますか。また、日本はどういう発言をされましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/153
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154・高島益郎
○高島説明員 実は、このD「軍艦に適用される規則」第二十三条というのが、一カ条軍艦についてございます。国際法委員会の原案には、このほかに、軍艦につきまして別途の原案がございました。その原案をちょっと読ましていただきますと、「沿岸国は、軍艦の領海の通航を事前の許可または通告に服させることができる。通常には、沿岸国は、第十七条」これは原案ですから、現在の第十六条でございますが、「第十七条及び第十八条の規定を守ることを条件として無害通航を許すものとする。」という提案が、国際法委員会から国連のこの会議に出されました。この提案につきましていろいろ議論が出ました。まず第一番に、許可に服させることができるという提案につきまして、いろいろ議論された結果、これは非常に反対が多くて、簡単に否決されました。最後に残りまして、事前の通告に服させることができる、そういう規定だけ残ったのに対しまして、表決に付された結果、これが四十三対二十四でわずかながら三分の二に達しませんで、否決された経緯がございます。その関係で、いま私が読みましたこの条文が、軍艦に適用される規則の中で完全に除外されたわけでございます。残った規定がこの第二十三条だけになったわけでございます。
日本は、「許可または」と、許可に服させることができるという提案につきましては反対いたしました。それから、残った「通告に服させることができる。」という案につきましては賛成いたしました。大体、現在、この解釈といたしましては、そういう関係上、沿岸国の事前の許可または通告に服させることができるということにつきまして、規定が完全に欠如した関係から、軍艦についての定めが幾らか不明確になったという解釈をしておる先生方もおられます。名前をあげて恐縮でございますが、横田先生は、たとえば許可については大多数の国が反対したので、これは国際法上、この条約の解釈としても、一般的には認められないだろう、ただし、通告は、これは否決をされましたけれども、非常な多数をもって賛成があった関係からいって、沿岸国は通告に服させることができるということは、必ずしも否決し得ないのではないかということを言っておられます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/154
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155・戸叶里子
○戸叶委員 日本が事前に許可を求めるということに対して反対といいますか、反対した理由は、一体どういうところにあるわけですか。学者の意見でなくて、日本の国の考え方です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/155
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156・高島益郎
○高島説明員 当時、日本は許可につきましてこれに反対をしましたのは、他の大多数の国と同じように、従来からの国際法の慣習法といたしまして、軍艦につきましても、沿岸国の許可にかかわらしめるというのが国際法の慣習に合わないという立場から、反対いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/156
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157・戸叶里子
○戸叶委員 これはあとにも続いてくる問題でございますけれども、日本はやはり平和憲法を堅持している国でございますから、その立場からいえば、当然軍艦が入ってくることに対して許可を必要とするということの提案に対して賛成すべきではないか、私はこういうふうに思うわけです。しかし、日本の国は、ほかの国が大体軍艦が領海内に入ることに対しては別に反対をしていないから、まあそれに従ったのだ、そういうような簡単な形でされたとすると、ちょっと私は問題が残るのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この点もう少し詳しく話していただきたい。私も文献で読みましたところによりますと、軍艦に関して事前の許可または通告を条件として無害通航を認めるということが、第一委員会では通ったけれども、本会議でこれは否決されたのだ、こういうふうに読んでおりますけれども、それは二つ分かれて提案されたのですから。軍艦の通告または許可というふうに分けてやられたのではないように理解しているのですけれども、分けて提案されたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/157
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158・高島益郎
○高島説明員 委員会は過半数の票で可決されますので、票が三分の二なくても可決されるわけであります。先ほど私読みました提案は、委員会では全体として可決された。しかし、それが本会議でもって提案がありまして、「許可」という字について分離投票、分割投票が提案されまして、それが表決に付された結果、反対された。最後に残った「通告に服させることができる。」という提案を含んだ全体の条文につきまして投票に付せられた結果、これが先ほど申しましたように四十三対二十四で否決されたというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/158
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159・戸叶里子
○戸叶委員 そこで、次の問題に入りたいと思いますが、この間からこの条約の審議ではなくて、一般の問題としての予算委員会等の質疑応答の中で、外務大臣がお答えになったのは、無害通航はポラリス潜水艦の場合もあり得るということをお答えになっていらっしゃいます。そこで、どういうときには無害通航が許されるかというようなことがここに書いてあるわけです。そうすると、まず第一にあげられることは、「通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる。無害通航は、この条約の規定及び国際法の他の規則に従って行なわなければならない。こう書いてある。そうすると、もしもこの条約をこのまま批准したといたしますと、政府はこの条約に従ってポラリスなり核を積んだ軍艦の無害通航を許すわけです。そういうことは裏を返して言えば、核を積んだポラリス潜水艦でも、日本から見て、無害通航を許しておるのですから、平和も害しないし、秩序も害しないし、安全も害さない、こういうふうに認定をされての上でこの条約に批准をされようとするわけですか、そうしてまた、ポラリス潜水艦を認めようとされるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/159
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160・三木武夫
○三木国務大臣 そういう場合においても、無害という平和、安全、秩序というものを害さない場合に無害航行を認める、こういう前提に立ってこの条約を批准するわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/160
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161・戸叶里子
○戸叶委員 ですから、私もう少し具体的に伺っておるわけです。たとえば核兵器を積んだ軍艦が日本の中で無害通航をしても、日本にとっては平和を害するものでもないし、秩序を乱すものでもないし、そしてまた安全もそこなうものではない、こういう認定をお持ちになっていらっしゃるんですねということを伺っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/161
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162・三木武夫
○三木国務大臣 これは事実の認定に連なると思います。原則としてこの条約を認めるので、その平和、安全、秩序というものは、沿岸国である日本国の認定というものがやはりそこに入ってくることは当然だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/162
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163・戸叶里子
○戸叶委員 ですから、外務大臣としては、そういう該定をお持ちになって、核兵器を積んだ軍艦が日本を無害通航しても——重ねて申し上げますが、平和も害さないし、秩序も乱さないし、安全も害さないというふうな認定に立っていらっしゃる、そういうふうに了解してもいいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/163
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164・三木武夫
○三木国務大臣 具体的には、アメリカとの間に安保条約もあるし、それに基づく地位協定もあって、アメリカの軍艦、これが日本の航行ばかりでなしに、寄港することも自由になっているわけでありまして、そういう意味において、ポラリスの場合においても、そういうのが通過する、いわゆる常に沿岸に来るということではない、沿岸に入ってくるというのではなくて、公海から公海に抜けていく場合に、そこを通る以外に方法がないというような場合に、航行をする。しかも、それは潜水艦は浮き上がってでなければいかぬ。潜水艦は浮き上がって旗を立ててでなければいかぬというわけでありますから、そういういろいろな制約のもとにあるわけでありますから、核を積んでおるという場合で、それをいけぬというふうに考えていないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/164
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165・戸叶里子
○戸叶委員 私も、その軍艦が浮いていなければいけないということもよく知っております。そういうことでなくして、私、条約上から伺っているわけですが、そうすると、いまの外務大臣の御答弁では、浮き上がって、そしてまあ核を積んでいても、これは無害通航をいけないということではない、これははっきりしたわけです。そうすると、やはりこの条約にいうところの平和も秩序も、また安全も害さない、こういうふうに認定をするから、これを通すんだ、こういうことに帰着すると思います。それでは、一体、核三原則の、持ち込ませないということとはどういう関係になるんですか。それはやはり持ち込むことになるんじゃないでしょうか。私はその点を非常に素朴な意味で疑問に思うわけですけれども、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/165
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166・三木武夫
○三木国務大臣 この持ち込みというのは、日本の領海内部に——まあ一番典型的な例は寄港する場合。しかし、領海内でいかりをおろして停泊する場合も考えられるでしょう。そういう持ち込みというのと、それ以外に航行する方法はない、公海から公海に抜けていくような場合に、そこを通るよりほかにはないということで航行する場合は、それを持ち込みと言えるでしょうか。それは、持ち込みと言えないのではないか。核兵器は積んでおるけれども、公海から公海に抜けていくために、そこを通るということが、領海をかすめても、それは日本に対する核兵器の持ち込みというのでは、持ち込みという概念の中には入らないのではないか、こういうふうに解釈をするわけです。それがしかし、ある目的を持って、日本に入ってこようという目的で——それはたとえ寄港しなくても、領海内でいかりをおろすようなことは、それはいけませんよ。日本へ来ることが目的でなくて、ある目的地に行くために、そこの水路を通るよりほかにはないというときに、たまたま領海をかすめて通ることがあっても、それは持ち込みという概念の中に入るであろうか。そういう意思は持ってないんですよ。日本に行こうという意思はないんですから。こういうふうに解釈をいたすものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/166
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167・戸叶里子
○戸叶委員 寄港するなり核兵器を持っていこうという目的がないんだから、核兵器を積んで、そして入ってもいいんだ、こういう議論というものは、日本のような特殊事情の国においては、私は通用しないと思います。なぜならば、政府みずからが核兵器を持たない、つくらせない、持ち込ませないという三原則を声高らかにおっしゃっている理由というものは、やはり日本の安全、秩序、そういうものを考えているから、そういう三原則を打ち出されたと思う。だとするならば、やはり核兵器を乗せた軍艦が日本の領海を通るということは、これはやはり持ち込むことの一つじゃないんですか。私はそう考えるんです。停泊したり、それからまた、そういう意図を持って来ないという場合には持ち込みでないという御理論は、ちょっと通用しないんじゃないかと思うのでございますが、この点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/167
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168・三木武夫
○三木国務大臣 御承知のように、アメリカとの間には、日本安保条約によって日本の防衛はアメリカが責任を負うておるわけですね。アメリカとのそういう関係にある国が、ポラリス潜水艦、しかも、日本へ寄ろうというんじゃいけないんですよ。これは事前協議の対象になる。寄ろうというのでなくして、ある公海に出ていくために、そこを通るよりほかないために領海をかすめて通るということが——しかも、これは日本が歓迎しておるわけではないのですよ。やむを得ず——いままでもほとんど通ったことはないだろう。ポラリスは通ったことはないし、今後もそういう場合というものは実際問題としてほとんどないのではないかと思いますよ。しかし、これは条約の御討議を願うのでありますから、絶対ないと言うわけにもいかぬから、こうやって言っておるのですが、ほとんどいままでないのですよ。これからも私はそういうことはほとんどないだろうと思いますが、条約論としては、ただ、ある公海から公海へ抜けていくときに、そこをこう通っていくよりほかない、そういう場合に、日本の領海をかすめて通るよう合が、持ち込みと言えるでしょうか。日本へ持ちな場込む意図はないのです。核三原則というのは、日本へ持ち込んじゃいけないというのですけれども、日本へ持ち込もうとするのではないのですから。よそへ公海を抜けていこうとするときに、たまたま領海を侵す、領海をかすめて通るのであって、日本へ持ってこようという意思はないのですから、それを持ち込みである、こう断定できるでしょうか。戸叶さんの核兵器に対する非常に厳格なお考え方はよくわかりますが、それを持ち込みだと断定するのには、少し無理があるように私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/168
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169・戸叶里子
○戸叶委員 外務大臣のおことばではございますが、持ち込みということは、一体どういうことですか。いまおっしゃったように、核兵器を持ってきて日本にどっかりとすわるとか、あるいはまた日本の中に入ってきてうろうろするとか、そういうことを持ち込みというふうにお考えになっているようですけれども、今度は軍艦の立場から考えていただきたい。軍艦には核兵器がついていれば、それは持っているわけです。その軍艦が入ってくるのですから、日本に核兵器を積んだ軍艦が入ってくることじゃないですか。持ってくることじゃないですか。軍艦の立場から持ってくる、軍艦にはついているのですから、ついてくるわけでしょう。だから、私どもは、それではちょっと問題じゃないですか。幸いにして、私どもが安保条約を審議しているときには、核兵器を積んだ軍艦などが日本に入ってくるときには、当然装備の変更ということで事前協議の対象になる、こういうふうに答弁されているわけですから、これはやはり通告なり何なりあってしかるべきではないかと思うのです。
〔田中(榮)委員長代理退席、委員長着席〕
しかし、それもなしに大っぴらに通ってもいいということを許すとなると、たいへん矛盾した面が出てくるのじゃないか。たとえば、持ち込まないという意味と、それからもう一つは、いま外務大臣がおっしゃったような安保条約の事前協議の問題と、二つにからんでくるのじゃないかと思いますけれども、この点もう一度伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/169
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170・三木武夫
○三木国務大臣 私は、日本へ持ち込むというのは、ちょっと戸叶さんと違うのです。通り抜けていくのですからね。持ち込むというのではなくて、しかも、潜水艦は浮き上がって旗を立てて通らなければいかぬという条約上の制約を受けておるのですよ。よくよくのことでなければ、そういうことは潜水艦の機能を発揮できないのですから、浮き上がっているのだから……。そういうことで、水路としてその水路を通っていくよりほかないという場合に、いままでも例がない、今後もほとんど考えられぬというのに、それを日本への持ち込みであるというふうに断定することは、私は無理ではないかと思う。日本の領海の中に核兵器を持っておる軍艦が行こうという意思を持って行くのでないのですから、日本へ来るのでないのですから、よそへ行こうとしてちょっと領海をかすめて通るような場合が、核の日本への持ち込みである、こう断定するのは、少し戸叶さんの解釈には無理があるのじゃないか、私はやはり依然としてそういうふうに考えるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/170
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171・戸叶里子
○戸叶委員 私は、それでは角度を変えて伺います。日本には安保条約の六条で事前協議があります。もう一つは、核は持ち込まないという、いま申し上げました三原則があるわけです。そうだとすると、そしてしかも、この条約の審議にあたっては、軍艦等が無害航行する場合には通告はしてほしいという案には賛成をしているわけです。そういう意味で、この日米安全保障条約の六条に従って通告をするというふうなことぐらいは、日本の政府として立場をとっておくべきじゃないか、こう思いますけれども、この点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/171
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172・三木武夫
○三木国務大臣 これは検討いたします。通告の問題だけは検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/172
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173・戸叶里子
○戸叶委員 通告をすれば、非核三原則にもせめて−私たちの立場は別ですよ。この条約の審議にあたって申し上げていることなんですが、そうすると、この三原則の問題あるいは事前協議の問題等から見ても、通告をしなければどうしても私はおかしい、こういうふうに思うわけです。
そこで、それは検討しておいていただいて、次の問題に入りたいのですが、外務大臣は、通過するだけなら問題はない、ぶらぶらしたり停泊したりするようなことは問題になるのだ、こういうことをおっしゃったのですが、いまでもそうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/173
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174・三木武夫
○三木国務大臣 私は、日本へ来る、日本の領海へ入ってこようという意図でなければ、停泊したり、あるいは日本の領海内を遊よくといいますか、することはないですよ。通り抜けるだけというときは、これはやはりいま言ったように、それは差しつかえないという考えの上に立っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/174
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175・戸叶里子
○戸叶委員 そういうふうなことはあり得ないとおっしゃるのですけれども、あるのですよ。たとえば条約によってもあるのですよ。この三項に「停船及び投錨は、航海に通常附随するものである場合又は不可抗力若しくは遭難により必要とされる場合に限り、通航に含まれる。」だから、緊急に遭難にあうとか、そして、ここでは晴れていても、先方のほうで大雨ならば、その指令に従って動くでしょう。だとすれば、そこで停泊するなり何なりすることはあり得ると思います。で、緊急の入域もあり得ると思います。それからまた停泊もあり得ると思います。こういうときはどうなさいますか。明らかに、日本の国としてはこの条約に入ること、この条項を認めることによって、問題が起きるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/175
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176・三木武夫
○三木国務大臣 これはこの条約の中にもそういう場合の規定がありますが、それはやはり持ち込みであるとか、軍艦が来るという一つの概念のカテゴリーではそういう場合はない、あるいはもっと違った人道的というのですか、そういうふうな角度からの考えであって、それが通常の場合における日本に入ってくるという概念とは私は違うと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/176
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177・戸叶里子
○戸叶委員 人道的であるとかなんとかいうことは、私もわかりますよ。わかりますけれども、法律というものはきびしいと思うのです。そうしてまた、国民はいま核に対して非常に不安感を持っているわけです。そういうときに、停泊したりあるいは緊急の入港はあり得ないなんということをお考えになっておきますと、こういう場合がないということは断言できないと思うのです。だから、そういうときにどうするのかという問題が私はあると思うのですが、それは人道的な問題として、停泊しても、緊急入域しても、それはかまわないのだ、こういう処置をおとりになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/177
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178・三木武夫
○三木国務大臣 その入ってくるというのが普通の場合と違いますね。緊急避難。それでも、停泊したりするような場合には、原因は違うけれども、一つの事前協議の対象にいたすつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/178
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179・戸叶里子
○戸叶委員 これは当然のことだと思うのです。
そこで、私はいままでのいろいろな問題を伺っておりまして、やはり非常に気になることは、この条約そのものに留保条項をつけないという話し合いでこの条約の審議が始まったと思います。ところが、実際問題としては留保条項がついております。その留保条項をつけた内容は何かといえば、軍艦が自分の領海内に入る場合には協議をしろとか、それは黙って認めないとか、いろいろそういうふうな留保条項がついているわけです。そこで、日本がなぜそういう留保条項をつけなかったかということを私は疑問に思いますが、時間がありませんから、政府の立場に立って考えてあげまして、これは五十八年にきめたのだ、そうすると、六十年に安保の審議をやったのだから、事情が変わったのだとおっしゃるかもしれないと私は思うのです。そうだとするならば、いまから留保をするということを宣言してもいいのではないか、こう思うのですけれども、この点はどうお考えになりますか、そのほうがすっきりするのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/179
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180・高島益郎
○高島説明員 先ほどの軍艦の無害通航につきましての許可につきましても、ソ連圏の国が若干留保いたしております。われわれ、この条約は本来ならば留保を許すべき性質のものではない。一般国際法、従来ありました慣習国際法を長年の研究の結果成文化したものである。そういう観点から申しまして、一般慣習法を成文化した国際法につきまして、各国がそれぞれ留保するということは、国際法の法典化というその事業に対しまして非常な影響がありますので、われわれとしては、原則の問題といたしまして、留保は好ましくないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/180
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181・戸叶里子
○戸叶委員 じゃ外務省は国内の影響をお考えにならないのですか、国民の不安というものは全然無視されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/181
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182・三木武夫
○三木国務大臣 だから、戸叶さんの御質問に対して、通告の問題は検討いたしますとお答えいたしましたのは、やはり日本として、いろいろそういう点も検討を加えたいと考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/182
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183・戸叶里子
○戸叶委員 一ぺんこの条約に署名をしてしまいますと、通告ということが正式の手段でできるかどうかということを私はちょっと疑問に思うわけです。むしろ、それよりも、留保というふうな形をとったほうがいいのではないかというふうに思いますけれども、この点もあとで検討していただきたいと思いますが、むしろそうじゃないですか。
もう一つ伺いますが、署名をするときに留保条項をつけるわけですね。しかし、この批准をするときに留保条項をつけるということはあり得ないか、あり得るかということを念のために伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/183
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184・高島益郎
○高島説明員 手続の問題といたしまして、日本の場合ということではなくて、一般的にこの条項に事後加入いたします際、留保をしてはいけないということにはならないと思います。現実に署名した後に入りました若干の国が留保している例はございます。
なお、軍艦の無害通航に対する許可あるいは通告の問題につきましては、特に通告の問題につきましては、先まど申し上げましたとおり、われわれといたしましては、規定がないから留保しなければ通告に服させることはできないというふうには解釈いたしておりません。通告制といたしましても、これは各国といたしましてもそれほどの異議を唱える問題ではなかろう、したがって、積極的に留保の手続をしなくても差しつかえなかろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/184
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185・戸叶里子
○戸叶委員 私、まだ質問がたくさんあるのですが、この委員会室が使われるということで、せかされておりますので、結論にいきますけれども、外務大臣、さっきおっしゃったことをよく考えていただきたい。私の質問も検討されて、ほんとうに国民の立場に立って、私どもは心配を言っているのですから、その辺をはっきりさせて、日本は特殊な立場にあるし、またアメリカとの間に特別法というものもあるわけでございますから、私は、この前の委員会のあとでいろいろ研究してみましたところが、一般法よりも特別法のほうが優先するのだという解釈をあちこちから聞いてまいりましたので、そういう点から考えてみましても、当然これは事前協議の対象になるというふうに考えますので、この辺をよくおきめになっておいていただきたい。これを留保して、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/185
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186・秋田大助
○秋田委員長 両件に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
次回は公報をもってお知らせすることとし、日はこれにて散会いたします。
午後一時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105803968X00419680315/186
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