1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年四月十七日(水曜日)
午前十時四十分開議
出席委員
委員長 加藤常太郎君
理事 金丸 信君 理事 砂原 格君
理事 丹羽喬四郎君 理事 森下 國雄君
理事 渡辺 栄一君 理事 岡本 隆一君
理事 佐野 憲治君
伊藤宗一郎君 池田 清志君
稻村左近四郎君 浦野 幸男君
大野 明君 佐藤 孝行君
澁谷 直藏君 正示啓次郎君
田村 良平君 葉梨 信行君
廣瀬 正雄君 阿部 昭吾君
井上 普方君 島上善五郎君
下平 正一君 福岡 義登君
渡辺 惣蔵君 吉田 之久君
北側 義一君
出席国務大臣
建 設 大 臣 保利 茂君
出席政府委員
建設大臣官房長 志村 清一君
建設省計画局長 川島 博君
建設省都市局長 竹内 藤男君
委員外の出席者
自治省財政局財
政課長 首藤 堯君
専 門 員 熊本 政晴君
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四月十六日
国道一六一号線の整備拡幅等に関する請願(山
下元利君紹介)(第四〇六一号)
名神高速自動車道路の通行料金引下げに関する
請願(山下元利君紹介)(第四〇六二号)
都市計画法及び都市再開発法制定反対等に関す
る請願(広沢賢一君紹介)(第四〇八七号)
奈良バイパス早期建設に関する請願(奥野誠亮
君紹介)(第四一二一号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
連合審査会開会に関する件
都市計画法案(内閣提出、第五十五回国会閣法
第一五二号)
都市計画法施行法案(内閣提出第五六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/0
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001・加藤常太郎
○加藤委員長 これより会議を開きます。
連合審査会開会の件についておはかりいたします。
目下本委員会で審査中の都市計画法案、都市計画法施行法案、両案につきまして、農林水産委員会から連合審査会開会の申し入れがありました。この際、これを受諾し、明十八日木曜日午前十時から農林水産委員会と連合審査会を開会することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/1
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002・加藤常太郎
○加藤委員長 異議なしと認め、さよう決定いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/2
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003・加藤常太郎
○加藤委員長 都市計画法案、都市計画法施行法案、右両案を一括議題とし、審査を進めます。
両案に対し質疑の通告がありますので、順次これを許します。阿部昭吾君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/3
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004・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 前に引き続いて若干の御質問をいたしたいと思うのであります。
建設省が発表されております長期の建設構想があるわけでありますが、それらの中で、過密過疎の問題、これとの関係で、工場等が一定の地域に集中する、こういう状況を集中しないように措置をする、手だてをしなければいけない、こういうふうに指摘をしているのでありますが、実際上はそういう努力はやられておらないというふうに思うのであります。企業も集中し、それから都市も集中し、あらゆるものが集中する、これに対する一定の規制、一定の計画的な配置というものが必ずしも有効にはやられてこなかったというふうに私ども思うのであります。したがって、こういう状況を野放しに、いわば企業の側から野放しで集中をしていく、こういう状態の中で、今日のこの都市計画法で市街地の建設を中心にした方向だけを一定の規制をするというぐあいになりましても、ほんとうに効果的な総合的な建設ができるかどうかということになると、非常に疑問だと言わざるを得ないと思うわけであります。そういう意味で、野放しに集中する企業あるいは過密、こういうものに対して、今日の都市計画法を設定することによってはたしてほんとうに効果的な、根本的な角度での、過密過疎にも対応し、合理的な効果的な打開策ということになり得るのかどうかということになると、疑問を持たざるを得ないと思います。こういう点に対して、建設省が描いておる日本の建設あるいは総合的な計画というものの観点から今日の都市計画法だけでこれがやられるという見方は、非常に甘いのではないかというふうに思うのですが、この点について大臣の見解をお聞きしたいと思うのであります。
特に、これは私の意見でありますけれども、企業はやはり企業採算を追求する、こういう観点で、もうけになるというふうに判断をいたしますれば、どこにでも進出をしていくと思うのであります。それが今日の大都市の集中、過密という状況を生み、一方、地方の過疎現象というものが生じてきたと思うのでありますが、そういう意味では、今日の野放しの企業の動きに対して一定の規制を加えるということがなければいけないのではないか、たとえば新たに企業の立地をする、工場その他を大きくする、こういうような場合に、国が一定の規制をしながら、国の指示するところ以外には新たな企業の立地なり工場を広げるなどといったようなことはできない状態に規制していくというようなことでないと、今日の都市計画法だけで、いま起こってきております都市の集中、工業の集中、過密、過疎といったような根本的な問題の解決はできないのではないか。都市計画法だけで、今日のこの都市があらゆるところで秩序なしにスプロールしているという現状を合理的に解決するということはできないのではないかと思うのですが、大臣の見解を承ってみたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/4
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005・保利茂
○保利国務大臣 お話しのとおりの推移になっておりまして、もともと、この国土の均衡ある開発、発展をねらうという意味で、ある地域に集中するというようなこと、ある地域のみが集中発展をするというようなことを避けていかなければならないという考えから、新産業都市とか、あるいは工業整備地域であるとかといったような年来の施策が持たれてまいっており、また全国総合開発計画でもそれをねらってきておるわけですけれども、現実は、なるほど、この新産都市ないしは工業整備地域の計画的な、ないしは公共的な見込みは、おおよそ所期の成果をあげつつあるただいま過程であります。また、これが決定的なあやまちであるというようなふうに断定することはできないと思いますけれども、とにかく予想しておったたとえば工業開発が行なわれていくにもかかわらず、人口の寄りぐあいというものはどうもその所期のとおりにいっていないということが反省されなければならぬ、そういう点は、この秋に発表を予定されておる全国総合開発計画の改定にあたって一番焦点的に検討をされているところだと思うわけであります。したがいまして、この都市計画法でもう万能的に現状の都市問題にすべて取り組んでいけるものだとはもちろん考えていないわけなんでありますが、ただ、この都市地域の土地の利用計画をどう立てていくかという、いわゆるその都市問題についての第一歩を開くという意味においては意義がある。しかし、それがすべて万能的に、これさえうまくやっていけば何とかなっていくのだというようなものじゃないことは、もうこれは阿部委員よく御承知のとおりであろうと思います。したがいまして、この都市問題、土地問題というものには、あらゆる総合施策が相関連して相続いて行なわれていかなければ、とうてい今日の国民的な要請にこたえるということはできないであろうというような考えを持っておるわけであります。いずれにいたしましても、都市地域の土地利用区分を明確にして、そうして都市環境を整備してまいらなければならぬという上からいきますると、どうしても欠かせない立法になるんじゃないか、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/5
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006・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 今度の都市計画法は、私どもそれなりに一つの重要な、歴史的な課題に対応したポイントであることは、そのとおりだと思っているわけであります。ただ問題は、今度の都市計画法によって土地利用区分というものを明確にする、そのことによって、従来国民の持つ、個人の持ついわば権益というものを制限する、こういう性格を持っているという意味でも、画期的なものだと思うわけであります。一方において、そういう強い私権の制限を意味するものになっておる。同時に、他方、国の長期計画等によりますると、工場や何かが一定地域に集中するのをどうしても阻止するんだという意味のことを、建設省は従来長期的な構想として描いているわけでありますけれども、私どもは、いま大臣が答弁されるように、新産都市にしても、あるいはその他のいろいろな工業開発都市の問題にいたしましても、建設省が描いておるようなぐあいには必ずしも——そこらに企業がうまく分散されて適正な合理的な方向に向いているかどうかということになると、そのことが全く無意味だったとはあながち言えない面もあろうかと思うのでありますけれども、それよりも、より早いテンポで大都市集中、こういうものが先行しておると思うわけであります。そういう意味で、国の描いておる計画というのは、そういう面では非常にルーズな側面を持っておる。したがって、新産都市なりあるいはいろんなもので国が一定の計画を樹立いたしましたならば、そこにしゃにむに企業の側を規制して引っぱり込んでいく、こういうものがないといけないのではないか。いま大臣の御答弁で、新産都市もやったし何もやったし、それがある程度の成果をあげつつあるというのですけれども、ある意味では非常にゆるやかな努力などとはもっと違った速度で大都市集中というものは先行して進んでおると思うのです。これをやはりもっと一定の規制をする、政治や制度の責任において規制をしていわばはめ込んでいく、こういうことがなければいけないのではないかと思うのですが、そっちのほうはいまのところ野放しなんです。企業は全く企業サイドで、企業の側の立場で、企業利潤を追求するのに有利と判断すれば、大都市集中であろうと何であろうと、どこにでも秩序なしにそこに集中していく。私はやはり、都市計画で零細な農民なり一般の市民の持っておる私権というものを制限する以上、国全体の将来の発展計画というものも、企業の側をも規制していく、こういうことがなければいけないのではないか。そういう、一方の側、つまり、日本の経済や産業を大きく動かしておる立場にある企業の側をも規制するということがないと、単にいまの都市計画法で零細な庶民の権利を一定のワク組みにはめ込んでいくという努力だけをやっても、やはり全体を動かしているのは何といっても企業の大きなエネルギーというか、動きのほうがより強力であり、より優先していっておると思うのです。その企業の側を一定のワク組みにはめ込んでいくことなしに、市民の側を都市計画法ではめ込んだだけでは、日本全体の大きな総合的な合理的な建設の方向というものは出てこないんじゃないかということを言いたいわけなんです。企業の側をはめ込んでいくだけの準備があるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/6
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007・保利茂
○保利国務大臣 過密現象に対しまして、たとえば首都圏におきましても工業制限地域であるとか、市街地は、おおむね工場とかあるいは学校等の制限措置をきびしくとっておりますから、工業施設等が過密地帯にこの上集中するというようなことはないわけでございますけれども、しかし、だんだん企業にしましても、経営の管理形態といいますか、非常な進歩をいたしてきておりますから、したがって、この管理の中枢機能というものはどうしても一つの地点に寄りたがる、また寄らなければならないというようなことになる。
〔加藤委員長退席、森下委員長代理着席〕
そこに持ってきて、そういう工業制限をやっておるにもかかわらず、やはり集中傾向をとりますのは、サービス業といいますか、第三種産業といいますか、そういうものが不可避的に発展をしてくるというようなことに注目をしていかなければならないのじゃないか。そこで、いま阿部さんの御提案のようなそういう趣意が、おそらく通産省あたりで考えている工業立地適正化という、新しい工場施設なり工業施設なり、そういうものをできるだけ誘導して持っていこうというねらいがあるのじゃないか。そこで、たとえば首都圏なら首都圏についてみますと、現に既成市街地についてはある程度の制限措置をとっておるし、それは実効をあげておるわけでございますから、それに手を加えても目的を達し得るのじゃないだろうかというような感じを私は持っているわけであります。だから、大体の行政指導の面としましては、ただいま阿部議員が言われるようなことに持っていかなければ——そう持っていっても、しかし人はついていかない。といいますことは、だんだん、合理化といいますか、近代化といいますか、多くの人を養成して大きな生産をあげていくというような生産の合理化というものは非常な進歩をしておる。しかし、それだけに、管理機能というものは都市に集中してくるという傾向をよく見て、その上に立って今後の国土計画、開発計画あるいは都市計画等を勘案していかなければならないのじゃないかというように考えておるわけでございます。
〔森下委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/7
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008・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 大臣はなかなか答弁が柔軟で、むずかしいのですが、私は、たとえばいま通産省が考えておるあの方向も大きな問題を残していくと思うのです。これは企業の側をいかにして地方の負担と住民のいろいろなものを制限する規模の上に乗っけて押し込んでいくか、こういう性格を持っている。したがって、私どもも、この行き方には、農業の側、地方の側から見ると、またたいへんな警戒をしておる側面があるわけですけれども、ただ私が言いたいのは、いまの都市計画法というのは、どうも庶民の側、一般農民や零細な土地を持っておる一般市民の私権を制限するという側面が強く出ておる。そうしてまた同時に、その制限をある一定限界において加えなければならぬ状況にあることも、私ども否定できない側面があると思うのです。ただ問題は、企業の側に対しては何らの規制なり制限というのはないじゃないか、そっちのほうがあらゆるものをいろいろ準備しながら無制限に練り歩けるというのが、いまの日本の全体の社会体制であり、仕組みではないか。そういう意味で、大臣の答弁ですと、誘導するなんということを言うのですが、私は、たとえば工業開発をやろうとして地方で非常な苦労をして工場用地の土地造成なんかをやる。幾らやってもそこへ来ないのですね。なぜ来ないのかということになると、もうかるかもうからぬかという、企業の側からのそういう判断があらゆる意味で優先する。そういう場合に、やはり国が一定の規制を加えるというようなことがあっていいんじゃないか、そういうものがないから、どうしてもやはり大都市の、企業の側から見て有利なところだけに集中するという側面があると思う。そうかといって、いま大臣のおっしゃる、通産省で描いておる構想は、これはたいへん地方の庶民の負担と犠牲においてこれを乗っけていこう、こういう側面が浮き彫りになっておりますだけに、私どもはいままで警戒しておるわけでありますが、なかなか大臣の答弁が——誘導なんということばをいつまでも使われるのですけれども、一方の側は私権の制限、一方の側は誘導などとおっしゃるのですが、実際はそうではなくて、野放しにのし回っている、こういう状態になっているように思われてならぬのであります。
観点を変えたいと思うでありますが、前回も農業サイドからの観点でお尋ねをしたのでありますけれども、いままでずっといろいろございました中で、市街化区域、それから市街化調整区域、農業振興地域、私は、この市街化区域の中における問題は、先般お尋ねをいたしました市街化区域内における優良農地、優良農民、農業の将来に対して希望と夢を持つ優良農民というものをどう扱うか、こういう問題をお尋ねしたわけでありますが、今度は、農業振興地域、これはいいと思うのです。市街化調整区域、これは前々からいろいろな観点から指摘をされておりまするように、私どもの立場からは、農業振興地域だというふうに割り切っていいのかどうか、そのために、農業投資なり、いろいろな基盤整備なり、営農計画なり、そういうものを、全部将来とも農業のための土地というぐあいに割り切った投資なり何なりをやっていっていいのかどうか、この辺について従来いろいろな指摘があったけれども明快なる答弁がされておらぬと思うのです。私どもは、この農業サイドから見ると、農業振興地域というのは、農業の観点から投資もやり、開発もやっていいというふうにはっきりしてもらわなければいけないのじゃないかと思うのですが、その辺はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/8
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009・保利茂
○保利国務大臣 都市計画法で私権制限的なにおいが一方にあって、一方には企業に対する強制的な設置誘導に対する問題——現在の過密都市の状況を見ますと、折り重なってしまっておるわけなんでございますね。それで、その折り重なっておるこういうふうな乱雑な状態にある土地を、それでは新たに造成して生産して需要に応ずるということもできないものでありますから、したがって、この過密地帯における利用区分というものを明確にして、住居地域は住居地域、商業地域は商業地域、工場地域は工場地域として、それぞれの用途に応じて高度の利用をはかっていくという以外にはないと思うのです。したがいまして、ある程度利用目的が制限を受けてくるということは、これはお互い市民生活、都民生活を守っていく上におきまして、公共的な要請からしてごしんぼう願わなければならぬところだろう、こういうふうに都市計画の土地の面については考えておるわけでございます。この点は阿部議員よく御理解のとおりでございます。そこで、問題の農林省で考えられておる農業振興地域とこの都市計画法との関連でございます。これは、お説のように、おそらく、国土開発、国土利用の最大の焦点は、今後の農村、農業をどう持っていくか、都市のありようをどう持っていくかという、全く唇歯輔車の関係に立っておる。お話のように、市街化区域における農地あるいは農業の扱い方につきましては、やや明白でございますけれども、調整区域、いわゆる市街化抑制区域にある農地、農業に対してどうするか、これは私は、原則的に農林省がどういうふうな具体的な指導をされるか、建設省としても非常な関心を持たざるを得ないところでございます。また、この接点をどう調整してまいるかということが、本法の冒頭にもうたってある非常に大事な点でございます。建設、農林の間では十分の連絡をとって、地域住民の方々に御理解のいけるような措置、指導をしていかなければならぬ非常に大事な点だと思うのであります。しかし、私は、市街化調整区域を農業サイド、農村サイドからして、農業振興地域として扱われるということには寸毫の異存も持っていないのであります。ただ、実際に線を引かれる場合にどういうふうになるか、これは全く両当局が抱き合って相談をしていかなければならぬ点だ、こういうふうに大ざっぱに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/9
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010・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 非常にわかるようでわからないのですが、農業振興地域というのは、これはきわめて明快です。それから市街化区域というのも、これまた明快です。もっともその中における優良農地、優良農民という問題が一つ問題としてありますけれども。その間に、私ども理解のしかたとしては、市街化調整区域というものがはさまっておる、こういう理解なんです。都市サイドから見ますと、市街化調整区域というのは、将来の市街化予備地域、将来都市が大きく膨張していくと、十年、二十年、三十年の間に、その際に、市街化区域というのは十年というぐあいにめどを持っておるわけですが、その市街化調整区域というは、いわば都市の側から見ると、市街化候補地域ないしは予備地域、こういう側面を持つ、農業の側から見ると、現状は農業、将来どうかすると都市に攻め込まれて狭められ、蚕食される可能性のある個所、こういうぐあいになるんじゃないかと思うのです。したがって、それをいま大臣がおっしゃるように、いろいろ現地で調整をして、そこは地域の皆さんの希望に沿えるように、無理のないように、そうして農業の側からいうならば、当面農業をやる場所というぐあいに力を入れてやってもらっていい、こうおっしゃるのですが、私どもは、この前も言いましたように、特に私の頭の中に描かれるところは、米作日本一という都市近郊農業というものを私は持っておるものですから、そういう地域には、基盤整備なりあるいは暗渠排水なり、いろいろな農業の施設、装備、基盤整備、そういう意味での投資を行なっていくわけです。投資を行なっていって、ところが十年たったら都市がここにふくらんでいくということになると、どうしてもせっかく投資したものがパーになってしまう。逆に、私ども地域での区画整理事業などを見ますと、つい近年水路の整備をやった、あるいはその他の農業の施設をやった、ところが、それを区画整理組合で今度は宅地造成をやって分譲せざるを得ないということになると、土地改良区に対して、いままで将来に繰り延べ償還することになっておった資金などを全部まとめて払わねばならぬ、こういう問題さえ起こってきているわけなんですね。そういう意味で私どもは、市街化調整区域というのは、当面農業に全力をあげなさいとおっしゃるならば、将来とも農業の場所というふうに割り切っていいのかどうか、割り切ることができないとなると、農業サイドからはどうも一つまた新しい問題が起こってくる。従来のように将来の都市予備地域、市街化候補地域ということになるのだとすると、これは農業の側でも二の足を踏むし、困るのじゃないか、こういう点はっきりさせるべきではないかと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/10
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011・保利茂
○保利国務大臣 市街化区域に指定する地域は、今日の全国に起こっております都市化の現象に対しまして、大体この先十年くらいで市街化するであろうというところに対しは、都市の基幹施設——道路でありますとか、水道であるとか、下水道であるとか、そういう基幹施設を優先的にこれは実施していかなければならぬ。そうして一面におきましてはそういう意図、計画をせられつつも、一方においてはスプロール化が行なわれていくというようなことを防ぎとめていかなければならぬ。そこで、そういう無秩序な開発が行なわれないように抑制をしていこうという、そっちの面からきているわけでございますから、調整区域というは、それぞれ全国地域地域によって起こってくる現象が異なりましょうから、その地域でみんな一律には私はものは言えないのじゃないかと思いますが、それだけに、計画は地についたものでなければならぬわけでございます。したがって、十年後はどうなるであろうか、しかし、日本の工業が全体の動向にもかかってまいりまするし、そういう点は、少なくとも十年くらいの間ではまあこの地域を市街化区域としておけば心配はないのじゃないかというところを市街化区域として指定する、そこには都市施設を行なう、一方のほうはもうそのかわりできるだけ現状のままでいっていただく、農業なら農業がその目的を十分に達するようにもろもろの農業施策を講じられていくというのは当然のことでございます。それがそのうち農業振興の地域として指定せられれば——指定はせられない状態で農業施策が講ぜられていくかということは、これは農林省が主としてごくふうになるところだ、そういうふうに考える。私の考えでは、とにかく調整区域のスプロール化を予防してまいる、そして、こっちのほうは都市施設を講じていくというような考え方に中心を置いておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/11
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012・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 この面はあとでまたわが社会党といたしましてはさらに最終的に総括的にもっと詰めていただくことになろうかと思うのであります。どうもいまの大臣の御答弁では、私どもの側ではとんと納得いたしかねる点であります。
それから、これは大臣、全国の大工さん、左官屋さん、板金屋さん、つまり住宅建設に直接携わっておる方々、この皆さんの数はどのくらいいらっしゃるというふうにお思いでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/12
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013・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 いま手元に資料がございませんが、調べたものがございますので、あとで御答弁したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/13
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014・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 今日の段階では、いわゆる住宅建設に従事をしておる職人の皆さんは——住宅建設という問題は、現況はある意味では労働力不足の面でも非常に著しいものがあるのであります。この皆さんがいま非常に心配なさっておりますのは、都市計画法によって将来住宅の性格というものが一挙に、たとえば不燃化、鉄筋コンクリート、鉄骨、軽量鉄骨、こういったようなぐあいに、住宅建築の様式そのものも次第次第に規制をして変えてくる、今日の都市計画法というのがそういう前提を持っているのではないか、こういう懸念を強く持っているのであります。この面に対して皆さんに御安心のいくような、納得のいくような御説明を、ひとつこの機会にできるならばしてほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/14
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015・保利茂
○保利国務大臣 阿部議員の御質問は、どうも都市計画法を一部において誤解をされておるのじゃないか、これはたいへんなことだと実は思っておるわけなんです。そういう方々の誤解を解くだけの努力が少し足りなかったのじゃないかというようなところも反省をいたしておりますが、基本的には、とにかく密集市街地等に見られますように、そうしてまた、私たちは、世論でいわれますように、不燃化、耐震耐火の建物に変わっていかなければならない、そして近代都市としての姿を整えていかなければ都市生活の改善というものは期待できないということ、これは異存のないところでございます。したがって、あるいは都市計画法と関連している再開発法等がねらっておりますのは、主としては旧市街地の、既成市街地の再開発でございますから、その再開発のところは将来比較的近代的な住宅等に取りかえられていかなければならぬ。これはぜひそうしなければならぬ。しかし、そうだからといって、それでは大工さんの仕事が減るのかといいますと、なるほど、外郭はこれは大工さんの手によらぬかもしれませんけれども、内装その他ますます仕事はお忙しくなるわけなんです。ただ、指摘せられ、また非難されておるように、そのスプロール化の現象の一つに、目に余るもの、たとえば違反建築等があれほど世論のきびしい議題になっているわけです。こういうものをできるだけ一つの秩序の上に乗っかっていただいていこうというわけで、住宅問題はお話のように何さま大きくのしかかってどうしても打開しなければならぬ、こんな計画じゃ間に合いはせぬじゃないかといって皆さんから、おしかりをいただくような状態でございますから、住宅の建設計画というものは、四十四年度、四十五年度ではさらに大幅にふやしていかなければならない、特に東京や大阪のごとき都市過密地帯において住宅建設の要請は強いわけでございますから、お説のように、大工さん等の仕事が、この都市計画法を実施されればたいへん職場が狭められるじゃないかという御懸念は、これは全く誤解だと言わざるを得ないわけでございまして、どうかその点は、実際にのこをふるい、つちをふるっておられる方々も、そういう誤解はひとつ解いていただいて、まともに、日本の都市の姿というものをどう持っていくか、それは一に建設なんです。建設の中に大工さんの果たされる役割りというものは、たとえ姿がどうあろうとも、非常に大きなものがあるということを私は確信いたしております。したがいまして、一部で非常に御心配のようでございますけれども、そういう事態はございませんから、ひとつその誤解はぜひこの機会に解いていただきたいものだと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/15
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016・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 私は、ただいまの大臣の御説明でもその誤解はますます大きくなるというふうに実は思うわけなんです。ちょっと聞いてください。たとえば姿、形は変わっても、内装その他日本人の住宅における木造部分というものは決して減りはしない。これはそのとおりかと思う。しかし、従来の大工さんというのは、大体一つの建物なり工事そのものを込みで全部請け負う。こういう形で仕事をしてきておったと思うのです。ところが、今度は、これはむしろ都市計画法そのものよりも、都市再開発法なり建築基準法の問題の場合に大きい問題になるんじゃないかと思うのですけれども、その場合、でかい建物、高層建築、こういうものが市街化区域内に一定のワク組みで規制をしてこの建築を進めていくということに当然なっていくのだと思う。その場合、大工さんは内装を担当しなさい、板金屋さんはその部分を担当しなさい、左官屋さんは左官の部分だけを担当しなさいというぐあいに、いわば大きい建設業者の中で労務者として働く機会というものは当然にある。しかしながら、従来やっておったような込みで一つの工事そのものをみずからの責任で請け負ってやるという形は大いに圧縮されることになるのではないか、こういう念懸を現在——日本の住宅建設に対して、現場において大工さんや左官屋さんやあるいは板金屋さん、皆さん方大いに貢献してきたと私は思っているのです。この皆さんが、こういう大きな移り変わりの時代に入ってまいりますと、これはある意味でいう合理化の犠牲というものをまともにかぶせられてくる。この懸念は、私は決して誤解だというふうに片づけてしまうわけにはいかない、こう思うのです。したがって、こういう時代の大きな移り変わりの転換を遂げなければならぬ段階において、従来日本の住宅建設その他に大きな貢献を果たしてきた膨大な数にのぼる人々に対して、どういういわばてこ入れというものをやっていくのか、こういうことがなければいかぬのじゃないかと思うわけなんです。そういう意味で、自民党の皆さんは大きな建設業者の皆さんのことを中心にしていろいろ考えておりますから、なかなかきびしい批判ややじがあるようでありますけれども、こういうやじが出てまいりますると、ますます私ども、いままで住宅建設やその他に対して貢献してこられた大工さんや左官屋さんとか、そういう職人の皆さん方の将来というものに対して、どういうてこ入れを政府は考えるのかということについて、ある種の、誤解ではなしに、問題を指摘せざるを得ない、こう思うわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/16
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017・保利茂
○保利国務大臣 よくわかりました。これは私がかわって少し代弁をせざるを得ないわけなんです。われわれ、これはどの党派にかかわらず、あなたの社会党だけでなしに、われわれ——私も党派としては自民党ですから、自民党にしましても、みんなそれぞれ選挙区を持っております。選挙区の中に大工さんやあるいは左官屋さん等の業態をみんな関連を持っておるわけです。私も現実に持っております。したがって、左官屋さんの組合とか大工さんの組合、全建総連とかなんとかいいますが、そういう方々と常に接触し話し合いをしてきまして、よくわかっておるのです。したがって、おまえのほうは大きなものだけが相手だからということは、これはひとつひらに御容赦をいただきたい。実態はよくわかっておる。御懸念の起きた、誤解を大きく持たれたのは何から起因してきているか、私は想像いたしておりますが、建設業法が改正せられるのではないか——建設審議会で建設業法改正の答申も出されておるわけでありますから、これはどうもそういったような業態の方方にとって非常に利害が深い。そこで、これはどうもやめてもらわなければならぬというような動きがその建設業界のほうであった、御意見があったということは、よく承知をいたしておる。私はその点を十分配慮いたしまして、この国会へ提案することを見合わせておるわけで、もう少しその辺の事情を勉強して、私どももそれぞれ選挙区を持ち、その業態の方々の意見を聞く機会が多うございますから、みんなもう少し勉強した上でひとつ取り組むなら取り組むようにしようということで、このほうは実は御心配のないようにいたしておるわけなのです。ところが、どうもそうではなしに、やはり何か一つ反対の山がなければいかぬということで、都市計画法なんかに持ってこられておるようですけれども、これは全くの的はずれです。その点は私は端的に申し上げる。どうか業界の方々もそういう誤ったことでこういう御心配をなさらないように。私が今日まで衆議院でも参議院でもおしかりをいただいておるのは、何だ、おまえたちのやっているのは、持ち家ばかり力を入れて、公営だとか公団だとかいうものが少ないじゃないか、こういうお話でございます。公営住宅等は、皆さんが御心配になるように、おそらく一軒建ちの木造家屋をつくるということもこれはもうないので、全部アパートであるわけです。ところが、それじゃその率が非常に高いのか。実際の状態は、現に六百七十万戸の計画の中でそういうものは、非常におしかりをいただくように、少ないのです。全体としても四百万戸というものは民間の住宅に期待をしておる。その公的施策住宅の中におきましても、あるいは金融公庫等の融資による戸数が相当部分含まれておる。それは主として持ち家なんです。そういうものはみないまお話しの大工さん方の手にかからなければいかぬ。大工さんの業態が、ある場合においては大企業の下請をされる、ある場合においては大企業の中に労働を提供されるという場合も相当ある、ある場合には自分でみずから一戸の建築全体をやられる場合もある、そういう非常に複雑な業態でございますから、これは一般にこの場合あの場合というわけにいかぬのです。おしなべてそれじゃ全体の大工さんの仕事というものは減ってくるのか。ますますふえてまいります。それはふえると言っても下請ばかりの仕事じゃないのか。そうじゃありません。住宅計画それ自体が、大きな部分というものが一戸建ちの住宅というものが期待をせられるわけでありますから、ざっくばらんのところ、どうかひとつあまり御心配いただかないように願いたい。しかし、建設業法の扱い方につきましては十分な配慮をしていかなければならぬということは私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/17
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018・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 いまの大臣の答弁だけで私どもまだ安心するわけにはいかない。いきませんが、その問題は、建設業法の問題なり建築基準法の問題なり、いまいろいろ検討されておるということでありますから、その機会にさらに論議を深めていきたい、こう思うわけであります。
委員長から再々時間の催促をされておりますが、私の記憶では、まだ私の持ち時間は大体もう四十分ぐらいある、こういう理解なんですが、なるべく早く終わるように結論に入りたいと思うのです。
もう一つは、都市計画の事業を実際に進める場合に、それぞれの開発行為を行なう主体が出てくるわけでありますが、その場合の国の負担、国の責任においててこ入れをする財政上の措置、こういうものは、いままでの論議の過程では、非常に——私は、今度の都市計画法の改正以降、国が従来と違った観点でのてこ入れを一体どこまでやるのかということになると、まだまだいままでの論議の中では必ずしもそう前進した姿というものは明らかにされてきていない、こう思うのでありますが、この面について国が従来と違った観点でどの程度のてこ入れをするのかということをこの機会に明確にしてほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/18
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019・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 市街化区域を定めますその中には、当然十年以内に優先的に市街化をする区域というものがあるわけでございまして、優先的に市街化をはかるということを法律できめております。そういう精神に従いまして、私どもとしましては、国の従来の公共投資というものをなお一そう市街化区域について集中的に行なっていかなければならない、そういうことを法文上も書いてある、こういうふうに理解しておるわけでございます。したがいまして、従来既成市街地中心に行なわれておりました都市計画を、広域的な都市計画に改めてまいるわけでございますので、既成市街地中心の公共投資を一部転換いたしまして、新市街地に対する公共投資を優先的にやってまいるということが一つでございます。もう一つは、開発者が宅地開発をやります場合に、どうしてもそこに都市計画できめられた幹線街路なりあるいはその他の公共施設というものが定められております場合には、それにつきましてもそれを考慮して整備していかなければならないわけでございますが、そういうものについてその費用の一部を公共団体なり管理者なりに持ってもらうという制度をはっきり書いてございます。これに対する財政措置はどうかということだろうと思いますけれども、これにつきましては、従来からございます都市開発資金という制度、これはおととしできたわけでございますが、これは都市計画を円滑に遂行するためには、どうしてもこういう資金がなければならぬということで、国会の御審議もお願いして法律に基づいてつくってあるわけでございます。これを強化充実していく。それからさらに、起債の中に先行取得債というようなものもございます。そういうようなものを強化充実することによって、そういう開発者から買い取る資金の手当てをやってまいる、こういうような考え方を基本に置いております。そういうような考え方で市街化区域の公共投資の優先整備、開発者に対する負担の軽減ということをやってまいりたい、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/19
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020・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 いろいろいま御説明があったのでありますが、たとえば従来の既成市街地の整備の費用というものをある程度抑制してこれを新市街地に集中するようにするということになると——既成の市街地そのものも、いま都市計画という観点で整備を要求されておる分野は非常に大きいと思う。そのほうを抑制して新市街地の整備の側に集中するということになりますと、ここにもたいへんな問題が起こってくるというふうに思うわけであります。私は、既成市街地の整備のほうを抑制するという議論は、どうもそのままには受けるわけにまいらぬ、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/20
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021・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 ことばが足りませんでしたけれども、従来でも漸次新市街地に対する投資がふえております。たとえば街路事業にいたしましても、今度の五カ年計画の街路事業の費用を見てまいりましても、従来に比べまして、年々相当の率で新市街地に対します投資がふえております。それから、公共投資全体で申し上げますと、これは国の財政力の充実に応じて将来も十分ふえてまいるわけでございますが、その中で既成市街地と新市街地に分けますと、新市街地の占める割合が漸次ふえていくだろう。私どものほうで長則的な見通しの計算をやってみますと、それによりますと、十分に新市街地の伸びを考えてまいりますと、それによって新市街地の公共施設の整備費はほぼまかなえていくのではないか、こういうふうに考えておるわけでございまして、既成市街地のほうと新市街地の割合は、漸次新市街地の割合がふえてくるという従来の傾向をさらに推進していくという形になる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/21
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022・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 この場合、もっと端的に、たとえば国の補助率を従来よりも大幅にアップする、たとえば三分の二なら三分の二は全部国が負担するというぐあいに明確にすることは困難ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/22
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023・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 公共施設の中で一番大きな費用は街路事業でございます。それは現在でも三分の二ということになっております。それ以外の、下水道でございますとか、あるいは公園というようなものについて国の補助をもっと上げる必要があるのではないかということだろうと思うのですが、これは公共下水道等につきましては、現在補助事業以外の非常に枝葉のほうの費用まで公共団体が持ってやっておるわけでございます。そういうような費用につきましては、私どもといたしましては、国庫補助の対象事業をもっとふやしていくということを考えていかなければならぬということで、その補助率も問題でございますけれども、国費の投入割合を事業について今後ともふやしていきたい、こういうような考え方を持っておりまして、現在のところ、補助率そのものをさらに上げるということは考えておりません。ただ、四十二年度、四十三年度においても、下水道につきましては、従来三分の一ないし四分の一という補助率を、一般のものは十分の四、それから流域下水道につきましては二分の一というところまで上げてまいったわけでございます。そういうようなことをやってまいりまして今後とも国費の投入率はふやしてまいる、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/23
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024・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 大臣に伺いたいのですが、いまの問題、私はこの前も申し上げたのでありますが、たとえば区画整理事業等になりますと、ほとんど全部地方の段階では区画整理組合をつくる。組合をつくる場合に、その構成は、ほとんどかつての土地所有者の皆さんが組合員になって区画整理組合をつくる。この事業を進める場合に、いま局長が言われる幹線の道路、下水道、こういうものを除く、たとえば公園用地をとり、側溝を整備する、あるいは将来いろいろな公共的な性格を持つ敷地を確保する、こういう問題は、区画整理事業組合の中で、たとえば区画整理事業を行なう組合の用地の部分、総体面積の中の三五%程度のものを、減歩率と称して個人が全部提供する、こういう中で、土地の工事の費用から、側溝の費用から、公園を整備する費用から、その他いろんな定区画整理区域内に整備しなければならないものの費用というものは、土地の総体区画整理の面積の中の三五%程度を公に提供するものを処分する中で財源を満たしておるというのが現状なんです。このことが、区画整理事業を行なう組合が土地を分譲していく場合に地価を高くしなければならぬという原因になっておるわけです。したがって、そういう公共的性格を持つ部分はことごとくやはり公共の責任において行なっていく、こういうぐあいになるべきだと思うのです。したがって、これらの事業の場合に、国の補助はすべてについて三分の二なら三分の二だ、こういうぐあいに明確にしたほうが——いま個人の資金を一定限度において制限して都市計画というものを進めようとしておる画期的な変革をこの都市計画法の段階でやろうとしておるわけですから、国もやはりそのくらいまで前進した姿を出すべきじゃないか、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/24
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025・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 従来の、宅地ができることと公共施設がつくられていくという関係を見ますと、確かに先生おっしゃいますように、区画整理等で幹線部分も全部含めまして減歩率——減歩は当然されるわけです。全部保留地の費用でまかなう、つまり、自分たちが出し合って幹線分まで全部つくってしまうという、一方において区画整理組合がある、片一方におきましては、いわゆるバラ建ちで建てておきまして、あとで全部公共団体があと始末をしなければならぬ、この二色の姿があるわけでございます。宅地審議会の答申等でもいっておりますように、幹線的な施設、これは現在でも、すべての道路私道の部分も公道の部分もございますが、そういう幹線的な道路については全部公共が持つべきじゃないか、それについては補助もすべきじゃないか。しかしながら、お互いの利益のためにつくるいわば区画街路とか、あるいは非常に小さな公園的なものとかいうようなものは、やはりその開発者の負担で建てていくべきではないか。一方において、スプロールのようにまるまる公共団体が負担してしまうというのも行き過ぎであるし、あるいはまた、いままでの区画整理のようにまるまる開発者の負担にするというのもおかしいので、やはり幹線的な施設は公共が負担する、しかし、お互いの利益になる支線的なものは開発者の負担、つまりそれぞれの土地を持たれる方の負担でやっていく。開発利益の還元というようなことがよくいわれておりますけれども、私どもは、ものによってある程度それぞれの方が開発利益に相当するものを出していただくということが必要なのじゃないか、基本的にはそういう考え方でこの法案をつくっているわけであります。したがいまして、区画街路に至るまで全部公共が持つべきだという考え方はとってないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/25
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026・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 従来でも、幹線道路といったようなものは全部国の補助の対象にしてやっておったと思う。区画街路と幹線的道路の区分はどこでやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/26
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027・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 大体区画街路は、現在は四メートルから六メートルくらいの各戸の出入り口まで入ってまいりますような道路を区画街路といっておるわけであります。幹線街路につきましても、宅地造成の区画整理組合等がやるものにつきましても公共で見ているところもございますし、それから見てない地方もございまして、必ずしも全部見ていたわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/27
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028・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 大臣に伺いますが、私ども、区画街路と幹線道路の区分というものは非常にむずかしい問題だと思う。したがって、従来、区画街路についても公共で見ておったものもあるし、見ておらぬものもあるが、区画街路については、私どもの理解のしかたでは、地域の現状を見ておりますと、ほとんど区画整理組合に金を出さして、都市計画事業を行なう市なら市というところにその金は一たん入れさして、その金をまた市が出すというやり方をしているのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/28
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029・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 いまおっしゃいましたのは幹線街路の分だと思います。太いほうです。それは公共施設管理者負担金という形で、公共施設、つまり道路の管理者が区画整理組合に金を出すというかっこうをとっているわけでございます。区画街路につきまして金を全部組合から公共団体に投入してやっているというのはないのじゃないかと思います。ただ、そのあとでできました区画街路もやはり道路でございますので、それの維持管理という問題がある。維持管理を組合がやるが、事業が終わりますと組合が解散してしまいますから、そこで公共団体であとの維持管理はやったほうがいいということで、区画整理に基づきます道路は、区画街路を含めまして全部公共団体に引き継ぐということであります。従来民間の宅造なんかやっています場合に一番困るのは、つくりました道路を公共団体が引き取ってくれないというので困ったものですから、現在住宅地造成事業法でも必ず引き継ぐようにしております。しかし、つくる費用は、区画街路的な小さなものもそれぞれの開発者が出しておる、幹線的な道路は公共団体が負担するというのが姿であるべきじゃないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/29
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030・保利茂
○保利国務大臣 都市計画法が実施せられるということに相なっていくと、相当各地域公共団体の財政負担が大きくなってくるのじゃないか、国においてどういう用意をしているかという第一の御懸念でございますけれども、これはお話のように相当画期的な国土改造と取り組もうということでございますから、確保していかなければならぬと思いますが、いまだにこれにつきましてはその需要が相当強いものと考えなければならぬということを前提といたしまして、これは今後の急速な検討にゆだねるほかは、ただいまのところ、この業態については補助率をどうするとか、この事業について補助率をどうするとかいったようなことも含めて検討をしていかなければならぬところだろう、まだそれに対する十分の用意をしていないことは正直に申し上げまして、検討を続けていくということにすべきであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/30
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031・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 なかなかすらっとならないのですが、区画街路、幹線道路の区分は非常に問題だと思うのです。したがって私は、区画街路と幹線道路の一定の基準を明白にする、つまり、幹線道路とは一体何か、区画街路というのは一体どの程度のものまでかということを明瞭にしてもらう必要があると思う。地方の段階にまいりますと、区画整理事業というのが一つできると、それに隣接してずっと——そうめちゃくちゃにいっているわけじゃなくて、地方都市の段階では一定の将来的な青写真を描いて区画整理事業というものもやってきているわけなんです。その場合に、区画街路事業だというぐあいになる減歩されておる部分は、減歩率三五%という土地を提供させたワク内で事業をやっていく。三五%差し引かれるのでありますから、区画整理組合が所有者から土地を買い上げる、そして整備をした、そのワク組みの中で全部収支を合わさなければならぬのでありますから、整備をした土地を売る価格というものはどうしても高くならざるを得ない。土地が高くなりますから、どうしても建物そのものにもいろんな問題が及んでいく、こういう状況が循環しておるように思うのです。したがって、そういう区画道路なんというものはほんのわずかなものじゃない、たとえば一定距離碁盤の目のように整備されておる道路の大部分のものは、私どもは幹線街路というふうに見ていいのじゃないかと思うのです。その辺の区分がどうもはっきりしない。私は何度聞いても納得がいかぬわけですが、その区分は明確なものが何かないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/31
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032・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 考え方といたしましては、個々の宅地にサービスする道路は区画街路でございます。それから地区全体にサービスするものが幹線街路ということでございまして、幅員的に申しますと、先ほど申し上げましたように、普通の住宅地でございますと四メートルから六メートル、工場とか商業地になりますと六メートルから八メートル、幹線道路の場合はたいがい十二メートルぐらい以上になります。そういうことで考えておりまして、一つの区画整理の中におきまして大体道路の用地に当てられるものは二二、三%ぐらいだと思います。面積的にはその中の一〇%分ぐらいが幹線道路になり、残りが区画街路の面積になる、大体そういうふうになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/32
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033・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 幹線道路というのは、幅員は幾ら、延長は何ぼというぐあいにきちっとできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/33
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034・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 区画整理の地区の場所によりますし、その地区の中の用途の性格によりますので、たとえば、わりあいに自動車が余分に入りますような商業的なものとか、あるいは工業的なものが中に入っておれば、そこにサービスする道路もある程度太くしなければならない、そういうことでございますので、面積が非常に広いのでやはり幹線道路として相当太いものというものもございます。それから、延長は、一つの地域の中を通るわけでございますので、延長は言えないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/34
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035・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 そうしますと、これは区画道路、これは幹線道路という認定はだれが行なうのですか。市町村ですか、建設省ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/35
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036・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 大部分の場合は、幹線道路は都市計画できまってくる。それから区画道路は、通常の場合、都市計画できめない、一つの区画整理事業の中の区画街路としてきめますけれども、一つの道路計画といたしましては、幹線的なものだけ道路計画できめております。今度の法律によりますと、都市計画は知事または市町村がきめるということでありますので、区画整理の場合におきましては、相当大規模なものは知事がきめるようになると思います。小規模のものは市町村がきめる、こういうことになると思います。要するに、一つの都市計画区域、市街化区域の中の道路網計画といたしましては、幹線道路だけがきまってくる。それから、その中で今度は面開発の区画整理事業をやるという場合には、これは一つの区画整理の設計としましてはこまかいところまで全部図面を引くわけであります。そういう形できまってくるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/36
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037・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 最後に、私はこの前も大臣にお尋ねしたのでありますが、市街化区域内の優良農地、優良農民、農業に意欲も持ち、農地もりっぱ——そのりっぱというものの判断がいろいろあると思うのでありますが、その場合の農地については、市街化区域として設定されても、その農民が農地として利用し、生産をあげ、食糧生産のために貢献しておる、その限りにおいては農地法の保護を受けるというふうにしていただけるのかどうかという点を最後にお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/37
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038・保利茂
○保利国務大臣 市街化区域内にたまたま優良農地があり、また、その農地をもって農業を継続していこうという方が、ことしは——来年はあるいは規模を変えられるかもしれないけれども、そういう状態がある限りは、やはり農地として農地法の保護を受けていくということが私は妥当だ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/38
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039・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/39
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040・加藤常太郎
○加藤委員長 田村良平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/40
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041・田村良平
○田村(良)委員 ただいま提案されております都市計画法案につきまして、逐条的なことをお伺いする時間もありませんし、私は、むしろ基本的な都市対策といいますか、国土の総合開発という面から、せっかく大正八年以来約半世紀にわたって放置されました新しい法律が出ておりますので、これを機会としまして、私の考えております国土の総合開発、この全面的観点からする都市への対策というものがはたして現状でよろしいかということについて、私はその政策を中心に大臣に質問をし、また御答弁を賜わりたいと思います。
試みに、よく都市政策とか市街化とかいいますが、何も銀座の町が健康で明るい生活をするわけではありません。そこら辺に若干認識の相違があるのではないか。健康で明るい文化的生活をするのは住民であります。しからば、ただいま東京は一千二百万の人口をかかえて、健康で明るい生活ができておるか。まるきり公害の町であります。政治の貧困以外の何ものでもありません。だから、都市対策といって市街化とか、あるいは市街化調整区域をつくったからといって、しからばその区域内に公害がなくなって、そしてまことにバランスある住民の生活ができるかということを考えてみますと、せっかく五十年にわたるこの重大な関連の多い法案を御提出でありますが、私は、その法案の趣旨、内容につきましては、全面的とは申しませんが、一歩前進をして、何とかこの混乱せる現状を打開するために、建設省御当局の御苦労はよくわかっております。だから、その面についての追及的な質問ではありませんが、これから申し上げますことについて、ぜひひとつ重大な問題として政策論争を展開していきたい、かように思います。
国政の審議というか、私は初めてその重大な責任を背負って国会に出てまいりました。私は高知県の地方から絶えず政治というものの動きを見ておりますが、基本的に申し上げますと、大臣、大都市に偏重せる政治行政の陋習を打破しない限り、国土の均衡ある開発は不可能である、私はこれを前提として持っております。東京で千二百万、何万坪という団地の用地買収が始まります。地価対策を云々されても、とてもじゃないが、押えるすべがありません。需要と供給であります。全面国家管理をする以外にはおそらくできないことでありましょう。そういたしますと、均衡のある国土の総合開発には、国家資本というものをその目的に従って均衡ある投資をしなくちゃならぬ。ただ人がたくさんおるから、そこへ団地をつくろう、下水道をつくろう、地下道を掘ろうとするから、キロ単価二十五億も三十億もかかって、ぶざまな借金を背負って地下鉄をやっておる。こういうことを考えると、先ほど私が申し上げたように、やはり国土の総合開発というものは均衡ある国家資本の投下である、こういうふうに考えます。
四十二年六月十六日に東京都の防災会議が答申を出しております。それを見てみますと、ただいまここで建設委員会の審議のまっ最中ですが、いまここで関東大震災と同じような規模の震災が起こったとすると、実は何もできておりません。そういたしますと、これで予想されます火災とか危険物の災害、津波、地すべり、がけくずれ、浸水、こういうものを当時の関東震災の事実にかんがみて防災会議の答申を見てみますと、最も条件の悪いとき、たとえば食事どき、こういうときになりますと、大体東京都特別区で七百三十二件、三多摩の十六市で六十二件の火災の発生が予想されていますが、現状あります消防力では大体六割くらいしか消しとめることができない。四割は野放しで燃えていく。しかも、御承知のとおり、最近は、ガソリンスタンドあるいはプロパンガス等の燃焼性の強いものが実はたくさん市街に散乱しております。こういうことを考えますと、この一例をとりましても、実におそるべき現代のマンモス東京であります。私は、都市政策というものは、大都会の町を整理する前に、住民の生命、財産の安全をいかに守るか、それが時の政治の一番重大な問題じゃなかろうかと考えます。したがいまして、私がここで端的に申し上げたいことは、どうでしょう、大臣、ひとつ都を移してみませんか。ぼくらの先祖は、かつて日向の都を開き、大和の都を開きまして、お隣の山城、京洛のちまたを開いた。産業、経済、文化がやや飽和点に達すると、時の政治は漸次場所をかえていったわけであります。そしてまたふん詰まりになって、失礼ながら、ネコもしゃくしも江戸へ江戸へ、東京へ東京へとすべり込んで、おまけに、昭和二十年八月十五日正午、日本民族初めての敗戦という体験、領土はついに四つの島になっております。人口は当時の約二倍であります。そうすると、従来どおりの生活ができないことは理の当然であります。したがって、私は、昔からいわれますいわゆる遷都、都市対策の基本的な重大な問題としてこれはどうしても考えてみる必要があるのではないか。はたしてこれから東京があと二百万も三百万も収容できるかどうか。建設省で出しております建設白書によりますと、あと二十年すると約八割の人口が都市で生活するであろう、こういっております。そうすると、この都計法で十年間にきわめて市街地的な様相を帯びたところを市街化区域とする、こういう趣旨でございますが、とりあえずそういう手を打たなければなりませんが、国土の総合開発という観点からいきますと、こういった問題がやはり本質的に検討されなかったならば、そのときそのときのびほう策で、依然としてこの都市の過密人口が解決されない。したがって、ただいまでは、過ぎたるはなお及ばざるがごとしといいますが、過ぎたるもはなはだしい、及ばざるもはなはだしい、こういうことで、まさに過密と過疎ということで、ほんとうに国民生活がいまやこういった問題を中心に塗炭の苦しみにある、こういうように私は考えられてなりません。したがいまして、今後のわが国土の総合開発というものは、やはり大きな都会に大きな国家資本を投げ込むというのでなしに、バランスある国家資本の投資を行なって地域の均衡ある開発にむしろ重点政策を移すべきではないか、こういうことを、実は都計法を読み、あるいは大臣の趣旨説明等を伺い、あるいは、われわれ、戦後二十年、国民の一人として生きてまいりましたそれぞれの生活の体験を通じまして、私は実は真剣にそのことを考えられてなりません。こういう点につきまして、まず大臣から、ひとつ全体的な国土総合開発の政策として、大臣としての御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/41
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042・保利茂
○保利国務大臣 構想的には私も田村議員と同じように考えております。しかしながら、現在の施策が都市に偏重し過ぎておるじゃないかと言われるには、とにかく、これだけの産業が勃興して人口移動が行なわれ、その結果として、通るに道なく、住まうに家なしというような状態があまりに急激にやってまいりましたために、ちょうど大鵬が赤ちゃんの着物を着ているような状態に東京でもなってしまったわけなんで、せめて、いい着物とまではいかぬでも、まあゆかたぐらいはおとなの着物を着せるというくらいまではしなければならぬのじゃないか、これは私は事後追認に追われている現実だと思います。そういうことばかりをやって、大きな国土の均衡ある開発というものを頭に置かずしてやっていってはいかぬじゃないか、そういう考え方がまだ強く各方面から要請せられ、また、工業化しつつある、とにかく昭和六十年ごろには都市人口が八〇%を占めるようになるのじゃないかという現在の傾向をにらんで、そうして全体の均衡ある開発を、それにもかかわらず、遂げていこうとするためには、この狭い国土が有機的に活動が行なわれるように持っていかなければならぬ、これが七千六百キロの国土縦貫幹線自動車道の開発を計画されているもとだと思うわけでございます。そういう考えは一方に持って、これにもばく大な投資が行なわれておりますけれども、しかし、何さま都市化現象というものがあまりに短期間のうちに急速に行なわれましたために、その事後追認、あとを追っかける仕事のほうに追われて、それがまた期待するような成果を生まない。そこで政治の貧困ということをいわれるわけでございます。とにかく、全体の総合開発をにらみつつ、現状の都市環境の整備ということもゆるがせにできないわけでございますから、両面あわせて長期の展望を立てて政府の施策を進めてまいらなければならぬかと思うわけであります。
ただ、一つ御発言の中に重要な御提言があっておりますのは、都を移したらどうかという、これは私は田村議員からその御提言をいただいたことに敬意を表しております。私はまだ口にするだけの実は用意を持っておりませんけれども、一番深く自分の腹の中だけで検討をいたしておるわけで、そういうことなしにこの東京の都市がわれわれの望むような都市環境を整備し得ればけっこうでございますけれども、そういうことを含めないと困難じゃなかろうかというような懸念は十分にあるわけでございますから、これはしかし何さま大きな国民的な——もし提案が行なわれるというようなことになればたいへんな問題でございますし、十分慎重にひとつ検討をもう少し続けさしていただいて発言の機会を得たいものだと思うわけであります。この点どうぞひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/42
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043・田村良平
○田村(良)委員 まあ遷都ということは重大な問題でありますから、軽々にはいかぬでしょうが、貧乏人が十年も二十年も貧乏でいじめられますと、つい腹もたちますので——やはり東京というようなところは朝から晩まで金をたくさん使います。一例をあげますと、今度提案されております首都圏整備を見ても、幹線道路、街路、重要連絡幹線道路に対して、補助事業施行経費は、驚くなかれ、四百七十三億六千七百万でございます。これは一般国道直轄施行分は予算に含まれておらない。ぼくらの高知県でいいますと、四百七十三倍という道路予算をもらいましたら、えらいことになります。一ぺんに高知の道路問題は解消します。東京都だけがこれだけの大きなお金を道路で補助事業として使っているんですね。これではますます太って、マンモス化して、便利がいいからますます人が来るんです。人間というのは不便なところにおるものじゃないですから。その不便を便にするのが進歩ですからね。不合理を合理化するのが進歩です。高知県では、御案内のように、まだ東から西へ鉄道が一本通ってないのですよ。四国には循環鉄道もないですね。日本列島始まって以来、本土と四国に橋もない。片方の東京では、朝から晩まで銀座の柳が枯れ、宮城前の松が枯れる。ひどい公害ですね。排気ガス、ほこり、スモッグ、人間がおるところじゃないです。美しい光あるいはきれいな空気、水、土、緑、こういう人間が生きていくに必要な大栄養源というものが東京ではゼロなんです。隅田川は酸素ゼロ。こういうところに何百億という金を特別につぎ込んで一体どうするか。ぼくらは学生時分には、東京さ行くというんでやってきたんです。おのぼりさんだった。東京におる人がえらく文化人で、おまえのところのむすこはどこへ行った、東京へ就職しとる、こういう調子です。そういうことを考えてみますと、私は、どうもこの現在でも生活のできない東京というようなところへ——現在ですら時差出勤なんてやっておるんですね。これは結局遅刻出勤でしょう。普通の話じゃないですね。八時半から始まる会社に、九時ごろぼちぼち出ていっていいなんて。行ったら、仕事よりか、まず休息だ。おそらく電車で来られるサラリーマンの方はたいへんでしょう。そういうことを考えてみますと、一千二百万というようなばく大な人口をかかえて、一体東京都内で収容できるか。したがって、首都圏整備法というような法律が生まれて、無理やりに金を使っておられます。最初申し上げたように、私は、国土の開発はやはり均衡のとれた国家資本を——四国も日本領土に間違いありません。そういたしますと、現政府の施政権下にありますから、私は、やはりこういう際に、せっかく五十年目、約半世紀のこの重大な都市計画法の改変にあたりまして、今後はこういう問題を、つまり国土総合開発という基本的な問題を十二分に織り込んでお考えになっていただかなくちゃならぬのじゃなかろうかということをしみじみと感じております。したがって、この点について、いまのように、首都圏整備法でばく大な金を持っていかれる、そして地方はからっぽになってくる、実際それは悲惨なものですね。建設省に陳情に行って、ほんとに一億、二億の金を、手をすり足をすり、一年通わなければいかぬ。地方はちょっと待ってください、採算性がとれませんなんて、あっさりけられる。こういうことを考えてみますと、私は、やはり都市政策というものは、国土の総合開発の中で均衡ある国家資本をそれぞれの地域開発へ重点的に移す、それでこそ東京も住みやすくなると思います。そういうことを基本的な考え方として持っておりますので、こういうような点につきまして、建設大臣としてはどういうような御見解をお持ちか、承っておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/43
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044・保利茂
○保利国務大臣 こういう公害に悩まされておるところへ、それでも若い人たちは、何か東京へ行くと文化生活ができるんじゃないかというような妙なあこがれを持っておられるわけです。私も、自分の郷里の若い人たちには、この東京の生活が人間生活としていかにふさわしくない生活であるかということを説いておるわけでございます。どういうのですか、やはり水清ければ魚住まずとかいうのですけれども、ごみごみしたようなところにどうしても集まりたがるんじゃないか。
そこで、冗談は抜きにいたしまして、イギリスのロンドンあたりでもずいぶん古くから都市問題には悩んできておるようでございまして、あるいはニュータウン、衛生都市等を建設する、なるほど建設した当初はいいけれども、子供の代になるとやはりまたロンドンへ向かっていく、こういうふうな状態。そこで選択雇用税、人を使うならばこれだけの税金を企業から取り上げるというような方途までやって、都市集中を防止しようというような努力が払われております。そういう点におきますと、私どもの努力が、まだ日も浅いことでございますけれども、足りないということを反省いたしておるわけでございますが、この都市計画法等が実施せられますれば、これを転機として、お説のような趣意に沿うたやはり一連の指導計画というものが必要になってまいるということを痛切に感じておるわけであります。一面におきましては、やはりこの狭い国土でございますから、どこも十分に脈々と躍動するような利用が行なわれなければ、わが民族の発展というものもできないわけでございますから、そういうことで開発の基盤を整えてまいるということは、今日都市に注ぎ込んでおりますエネルギー以上に重要に考えなければならないという考えを私は強く持っておるわけであります。何さま、先ほど申し上げまするように、とにかくおとなが赤ちゃんの着物を着せられているような現状の都市状況というものを何とか改善を急がなければならぬじゃないかという要請を受けて、取り組まざるを得ないというところが現状だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/44
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045・田村良平
○田村(良)委員 大臣の御見解よくわかりますが、具体的な例を申し上げて、今後の都市開発についてぜひお考え願いたいことは、たとえば先般オリンピックをやりました。使った金が概算九千九百億ですね。東京都内だけで約七百十億の建設工事をやっております。オリンピックのスタジアムとか選手村等、施設に関連する四十二路線、ハイウエイを入れて。ところが、中身を調べますと、用地ないし建物の補償費に七割使っております。国民の税金、五百億以上のものが、東京都のうちをひっくり返したり、立ちのきの補償に使われておる。そしてオリンピックが済んだ。四国の高知県はオリンピックで一銭ももうかっておりません。一兆円をオリンピックで使った。これなら万博は、いまの物価指数でいきますと、二・七倍といわれてますから、多分二兆五、六千億使うでしょう。そうすると、財政硬直の今日、公共事業を打ち切り、繰り延べをしておるときに、そういう外国人を呼んでお祭り騒ぎをするということは、ちょっとぼくらの常識では考えられません。しかし、国際環境としてやむを得ず百二十四カ国に招請状を発してやっておるわけでありますが、大きなところ、大きな町に国家資本がこんなにむちゃくちゃに投入されれば、幾らでもふくれ上がる。しかもまだ、ピーク時には万博は五万人の労務者を使うといっておりますが、労賃なんかまだ予算化されておりません。ただいまでも、万博は、建設工事が五百二十三億六千四百万、運営費が二百三億、政府出展予算が八十二億二千七百万ですね。ところが、この政府の出展の八十二億の中で私が非常に奇異に感じますことは、庭園をつくるのに二十一億二千万使う。人間と自然の調和を世界の人にお見せするために、国民の税金で二十一億かけて庭をつくる。だれがお住みになるかと言いたい。一つの催しものにこんなお金を使うのです。そうなってくると、地域開発ということをお願いし、また、地域開発が国土総合開発の基本的政策でなくちゃならぬということを考えてみますると、使うときにはこういう金が平気で使われておる。ところが、われわれの地域の者が地域開発で一生懸命頼む。建設省は直接関係ありませんが、いわゆる地方幹線鉄道の開発費はことしは一銭も伸びておりません。昨年と同様の金額であります。こういうことを考えてみますと、オリンピックに使ったお金、あるいはただの万博、あるいは東海道新幹線——この新幹線はオリンピックのために準備したわけですが、五年五カ月で三千八百億です。そうすると、五年間かけて、それから四千億の金があれば、日本の技術というものは世界にない汽車を走らすわけですね。これだけのことができる現在の日本の経済力とすれば、私はやはり、放置されました地域開発に、国土の総合開発から、全面的なバランスのある国家資本の投資を重点的になすべきじゃないかということをどうしても考えざるを得ないのであります。この点について、過去のオリンピックあるいは現在進んでおりまする万国博覧会、こういったような問題点を考えまして、一兆円というような驚くべき金がこのようなことに平気で使われる、そういう場合に、私たちの地域の開発につきましては非常に苦しい財政状態にあります。これではいつまでたっても貧弱な地域はやはり貧弱な地域として残る。つまり、いうところの経済格差、地域格差というものはますますひどくなっていくということを考えざるを得ません。したがって、この機会に建設大臣のほうから、こういった問題を含めまして、国土総合開発の均衡のある地域開発についてこの際明確な方向を国としても打ち出すべきじゃなかろうかというふうに考えますので、ひとつ御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/45
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046・保利茂
○保利国務大臣 オリンピックでありますとか、万国博覧会でありますとか、少し分に過ぎた国際的催しをやって、そこに金を使い過ぎるじゃないか、それだけの金はもう少し地域開発のために注ぎ込むことが国益じゃないか、これは田村さんの御見解ですから、御見解は御見解として承りますが、とにかく、日本という国は今日国際社会にわれわれ独立をなしておりまして、やはり世界の中の日本というものがあるがままによく紹介せられるということが、国際社会に発展してまいる基本的なことでございましょう。したがって、オリンピックがあれだけの成果をおさめましたことは、なるほど、金では、オリンピック開催を機として東京にたいへんな投資が行なわれたわけでございますが、その金の投資の代価が日本に対する理解と認識にどれだけ役に立ったかということは、これはにわかに即断はできないだろうと存じますけれども、けだし、新しい日本の姿、日本国民の考え方というものが世界に紹介せられたところは非常に大きいんじゃないか、これは数字をもってはかり得ないものがあるんじゃないかと私は思います。同様に、万国博覧会が関西で持たれるようになりまして、ただいま関連公共事業を急いでおります。しかし、同時に、この関連公共事業は、大阪なり周辺なりの都市改造という意味も、私は非常に大きい意味があるんじゃないかと思っておるわけなんですが、同時に、現代の日本が、平和憲法を掲げて、世界の中に平和国民として立っているという姿を十分に理解してもらうためには、非常に大きな意義と機会を持つようになるんじゃないかと思うわけでございます。
御指摘の、万国博覧会場の中に二十数億の金をかけて日本庭園をしつらえようといたしております。これとてやはり日本の民族の伝統的な自然愛護といいますか、そういうものを紹介するには非常に絶好のチャンスであろう、工事費が高いとか安いとかということはございますけれども、これはこれなりに意義があろうかと存ずるわけでございまして、これはぜひ成功に導きたいということを私どもは念願いたしておるわけでございます。しかし、同時に、今後十年後あるいは二十年後を展望いたしますと、今日の傾向、趨勢をもってしますと、日本の経済成長ないし都市化というものは大体想像せられるわけでありますから、その発展過程においてできるだけ地域のでこぼこを起こさないよう心がけてまいらなければならぬというお考え方については、全く私も同感でございまして、そういう点におきましては、今後また党側とも十分連絡を保って、政府の施策を誤らないように期してまいりたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/46
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047・田村良平
○田村(良)委員 別にオリンピックそれ自体を否定するわけではございません。四年に一ぺんの世界の民族の祭典でありますから、それを日本がアジアで初めて誘致されたことはけっこうでございます。ただ、たとえば、そういうようなばく大な金が一つ行事に使われる、そうすると、国土の総合開発という観点からいうならば、地域はいまあまりにもみじめじゃなかろうか、それだけのばく大な金が使えるのですから、そうすると、もっときめのこまかい行き届いた地域への総合開発、バランスのある、調和のとれた開発をすることができるのじゃないかということの一例として申し上げたわけでございます。たとえば第三京浜国道を三年前に完成しました。これも調べてみますと、十六・六キロの延長で、経費が二百七十八億、キロ単価十六億内外の金を投じて第三京浜がつくられております。われらの四国には、いまだに縦貫自動車道、幹線自動車道の実施計画すらありません。こういうことを考えてみますと、あまりにも何かひどい地域格差、経済格差、政治格差といいますか行政格差といいますか、やはり大都市中心にすべてが動いておるということになると、私は、国土の総合開発というものも、やはりここら辺でもう一ぺんお互い二十年の過去を振り返り、あるいは長き民族の歴史を振り返りまして、やはり新たなる国土の総合開発は、バランスある国家資本を地域に投資するんだ、ただ東京とか大阪とか名古屋とか、大きい町へどんどん行く、おまけにそういう地域は特別法をもって特別な金を持っておる、そうすると、特別なワクに入り得ない地域、あるいは新産都市の指定を受けないところは、ますますその条件が貧弱になります。そういうことを考えてみますと、私はここら辺でひとつ、たった四つしかない島になりました日本でありますから、もう少し地域のバランスある開発をしてもらいたい、また、すべきじゃないか、このことについて実は申し上げたのであります。
そこで、ただいま大臣が、まあ遷都ということはなかなかというお考えでございましたが、私はそれでは一歩譲って、一ぺん権力分散をやったらどうかと思うのです。たとえば防衛庁を北海道に移すのですね。これは簡単でしょう。農林省を九州に持っていきます。厚生省を東北地方に持っていきます。それから建設省と国鉄は四国の高知へもらう。どうですか。これは一本で変わります。これはわけないでしょう、閣議できまるんだから。建設省、国鉄は四国高知地方に置くものとすると書いたらそれでいいでしょう。これは一番簡単です。いまは政治、経済、産業、文化、あらゆるものがすべて東京に集中し過ぎている。したがって、全国民が、市町村長でも村会議員でも、みな必ず東京へ来なければ用事にならないのです。始末がつかなくなったんですね。そうすると、全く激流のように、人の津波が東京へ押しかけてくる。さばき切れぬです。東京の昼間のいわゆる行動人口は——東京都は一千万人籍がありますが、それ以外に何百万という人がおるわけですね。さらに通勤者も入れますと、ものすごい人口です。こういうことを考えてみますと、やはりこの機会にせめてただいま申し上げましたように役所を一ぺん移してみる、中央官庁を分散さす、そうすると、いやでも農林省に用事がある人は九州にみな行かなければならぬ。相当九州に金が落ちます。国鉄と建設省に用事のある者はいやでも四国の高知に来るのですから、おかげさまで高知ももうかる。いま一番日本で貧乏な高知県が、みな東京に金を捨てている。貧乏人と金持ちがけんかすれば、貧乏人が負けるにきまっていますから、全然地域開発ができない。特にただいま高知県は早明浦ダムをやっております。これは、私のほうは約三百戸水没するのですね。水没する土佐村あるいは大川村の村長は、村民の税金を使って、工業用水、都市用水、かんがい用水で讃岐開闢以来の恩恵に浴する香川県高松市に陳情に行っておりますよ。国家の賠償をもらわなければいかぬというところから、関係のないところに一生懸命陳情に行っている。だから、四国の地建は、これこそ早明浦ダムの現地に移すべきです。世紀の事業をやるのですから——吉野川水系の総合開発をですね。こういう大事業を行なうところに来て、土地買収あるいは立ちのき補償を政府としては親切に見るべきだ。こういうことこそ新しい政治だ、それでこそ地域というものはバランスある開発ができるのじゃないか、こういうふうに私は考えますが、御所見をひとつこの機会に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/47
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048・保利茂
○保利国務大臣 一見奇異のごとき御提案を田村議員が持たれるような現状であるということにおいては、認識を等しゅういたしております。ただ、とにかく行政能率を上げてまいります上からいたしまして、この役所は北海道、この役所は九州というようなことでは、とうてい全体の地域の国民の方々に公平に奉仕してまいることは困難じゃなかろうか。しかし、そういう御提案が行なわれていることにこたえて、今後のあり方というものは十分検討してまいらなければならぬというようには感じておるわけであります。また、私は、私の感じからいたしまして、これはいささか個人的な発言になりますけれども、とにかく行政区域にいたしましても今日もう間尺に合わなくなってきている。たとえば東京と埼玉県というのは行政区域を異にしている、千葉県も違う、神奈川県も違う、しかしながら、もはやこの一都三県のごときは全く一体でなければあらゆる施策というものはとりにくくなってきているんじゃないか。そこに行政区画があってひしめいておる。ことさらにそういうような形になった行政区画等につきましても非常に考えなければならぬ段階に来ておるんじゃないか。いわんや、四国のごとき、四国一島四県でございます。それで、それぞれ高知県、愛媛県、徳島県、香川県といったように行政区画を異にして、いまの吉野川の水だけをなにするにしましても、四国全体の開発という上から考えていけば、またそれなりの見方が立ってまいりましょうが、いやこれはうちの川じゃ、これはこうじゃということになってまいりますと、なかなかむずかしいことでございまするし、私は、もうせめて四国単位くらいは、行政単位としても、区画としても一体でいいのじゃないか、そういう考え方で、とにかくだんだん四国開発等が手おくれになってきております。自動車道の整備にいたしましても、ただいま田村議員御指摘ではございますけれども、建設省といたしましては相当重点を置いて地域の御期待にこたえなければならぬということで配慮いたしておるようなことでございます。いずれにいたしましても、田村議員の言われるように、地域の開発ということはきわめて重要である。そういう意味においては、私は、国鉄あたりの赤字線の整理とか廃止とかということに対していたずらに賛成し得ない。ということは、そういうことすらもなくするようにしたら、今日未開発というか、後進性の地帯をどう開発していくことができるかというような疑いすら持っているわけでございまして、とにかくこれからでございますから、全体の日本の発展というものは、ここ十年ばかりは見通しはだいぶ違ってきておりますけれども、これから十年、二十年、あまり見通しを狂わせないようにひとつ地域開発をはかってまいらなければならぬ、こういう反省をきびしくいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/48
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049・田村良平
○田村(良)委員 お伺いしておりますのは、結局、国土総合開発法には何と書いてあるかということです。これは二十五年の五月二十六日にできた法律であります。十七年たっておりますが、私は何も突拍手もないことをお話しておるのじゃなくして、この国土総合開発法は、第一条の目的に、「国土の自然的条件を考慮して、経済、社会、文化等に関する施策の総合的見地から、国土を総合的に利用し、開発し、及び保全し、並びに産業立地の適正化を図り、あわせて社会福祉の向上に資することを目的とする。」したがって、十七年間当然こういうことを、全体的なものを考慮に入れつつ、おやりになっているのではなかろうかと思います。したがって、半世紀もたった今日、せっかく都計法が一本化しておりますときに、私が申し上げましたように、やはりりっぱに国土の総合開発というものを——基本政策はすでに法律化されておるわけですから、この国土開発法の第一条に立脚しつつ都市計画ないし地域開発が行なわれていくということは当然であろうと私は思いますので、実は御質問申し上げたわけであります。
特に関係の深いのは、この第二条には、三号に「都市及び農村の規模及び配置の調整に関する事項」こういうことがあります。そうすると、都市、農村の規模あるいはその配置の調整に関する事項というものは、今日までどうように取り扱われておられましたか。そういうことを考えてきますと、非常に重大な問題であると同時に、やはりそういう抜本的といいますか、基本的な国土開発への総合的な計画というものの中で各省が十二分に論議をせられ、大いに討論をして、そしてよりよい一つの総合開発の具体的案を持ってくる、それがために今度各省で建設省を中心に御議論せられましたので、その点を私はどうこう言うのじゃありません。官庁のいろいろなセクト的な問題は、御努力せられて都計法一本にできたのでありますから、その努力は多といたしております。おりますが、私が申し上げた地域開発というものがあまりにも後手になっておりはせぬか、あるいはあまりにも目の前の人口とか過密の大都市の生活に押しまくられて、為政者というものは、つい、いわゆる国土総合開発の大基本法ともいうべき重大な、ただいま示しました法律の趣旨から、忘れておるか逸脱したかは別として、ここで戻っていただいて、こういう問題を御検討願わなければ、やはり地域開発がおくれていくのじゃないか。この法の趣旨について大臣としてはどのような御見解で今日までこのいろいろな施策を進めてこられたか、二の機会に承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/49
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050・保利茂
○保利国務大臣 田村議員御指摘のように、全国総合開発計画は昭和三十七年に持たれて、それを今日にあれしてみますと、かなりの見通しの狂い——と申しますか、大きく出ておるわけであります。こういうことでは困るので、もう一ぺん地域開発をねらって全国総合開発計画を見直してみるという作業をただいま経済企画庁で進めていただいておるわけでございます。これに私も大きな期待をかけ、したがってまた、首都圏あるいは中部圏、近畿圏等の中期計画も、あるいは四国開発計画もそういう中期計画でその全国計画と適応して見直してみる、都市計画の実施にあたりましても、この全国国土計画と適応するように実施してまいらなければならぬというふうに考えておりますが、現状は、とにかく、それにもかかわらず、事後追認といいますか、こういう著しい人口、産業の集中の現象に対してあと追いの施策に追いまくられている。そうして本来あるべき地域開発の焦点がぼけてきておるということについては、この際一ぺん反省をして、出直すような気持ちでやっていかなければいかぬじゃないかというお気持ちについては、私は同感でございますから、そういう上から配慮してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/50
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051・田村良平
○田村(良)委員 それじゃ、総合開発の観点からの質問を次の一点で切りをつけまして、都計法に若干入りますが、実は私申し上げておりますのは、建設省御自身が出された白書によりましても、あと二十年間に全人口の八割が都市へ集中してくるであろう、そういたしますと、この十年間で急速に市街化するであろう、市街化区域をつくってもあるいはこれに押しまくられるのじゃないか、毎年毎年累増する都市への激流人口で——ですから、やはり国土の総合開発で、たとえば都市、農村の規模、都市、農村の配置の調整というものが前面に押し出されて、それから具体的におりてこないと、ここは市街化しますよ、ここは市街化調整区域でよろしいでしょうといってみても、その間にどんどん住民が入ってくるということになりますと、またまたこの都市政策に大きな後手がくるじゃないかということを私は心配するので、総合開発というものをもう少し力強く前面に押し出して、総合開発の中で建設省も理屈を言い、農林省も理屈を言い、厚生省も理屈を言い、それからできたものがそれぞれの担当の行政機関におりていくということでないと、建設省だけが、さあ都会がたいへんだ、大都市の過密人口をどうするかといって、都市局だけが立ち上がってやろうとすると、農地に引っぱられる、厚生省も関係があり、運輸省もあるということになって——私は、やはり実態は、総合開発というオープンから始まって、それから分科会へおりてきて、その分科会の結論がそれぞれの行政官庁へおりてくるということをぜひお願いしたい。ただいま大臣のお話では、経済企画庁でそういう作業を進められておるようでありますから、今度の機会にぜひとも私の提言いたしました問題はやはり世紀の大きな根幹、基本政策として取り入れていただかなければならぬじゃないかということを私は考えますので、あえて申し上げてきたわけであります。
特に申し添えますことは、いま国土の六八%は林野なんですね。この林野は、いまや薪炭林ではありません。ガス、油でございますから——そうすると、いわゆる単なる薪炭の生産地として長い間日本の国民の台所をまかなってまいりました林野は、いまこそ私は新たな開拓、再開発が必要だと思います。アメリカが御承知のように、戦後あの大平原を起こして農地をつくって食糧増産をした。日本はやたらそこらをひっくり返しては宅地をつくるわけですね。これでは総合開発というものは全く足もとからくずれるというふうに考えますので、この点、最後に総合開発に関する点で大臣の御所見を伺って、次の質問に入りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/51
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052・保利茂
○保利国務大臣 国土の大部分を占めております林野の利用ということが、われわれ国民にとりましても非常に重大である、これは田村議員の大先輩である吉田総理から強く言われたのでございます。私は命令を受けたこともありますが、四国の山々を全部計画植林をやってくれというような、これはずいぶん激しい構想を命ぜられたようなことでございます。今日の狭い国土の六八%、七〇%というこの大事な国土利用をどう持っていくかということは、未来の国民へ残すべき今日国民の大きな仕事じゃないと私は思うわけでございます。そういう上からいたして、木材の輸入というものが一面においては今日の外貨事情をどのくらい圧迫しておるかということを考えてみますと、これだけの林野を持っておって、そして四苦八苦をしなければならぬような外貨情勢の中で大きな輸入に待っているということは、これは国民経済の上からいきますと、何と情けないじゃないか、これは反省せざるを得ないわけでございます。これは農林省も非常に苦労をされておると思うのですけれども、ぜひひとつ計画植林といいますか、計画的な林野利用というものが非常に大事になってきておるという認識は、私は全く田村さんと同じ線を憂えておるものでございます。私どもも及ぶ限りの努力を払ってまいりたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/52
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053・田村良平
○田村(良)委員 それでは、大臣の御見解なり御答弁を承りましたので、ぜひとも、ただいま申し上げましたような総合政策の中で、やがて文化的結論を見出すような方向へ日本の政治を大きく転換させていただくように特に申し添えます。
それから都計の具体的な問題でございますが、私は都市局長にかつて非公式にはちょっと私の意見を申し上げたのですが、この行政がこれを扱うに繁雑過ぎはしないか。市町村が都市計画をつくりまして議会の議決を経る、その市町村が議決した計画書を持ってくれば、大臣が見て、専門家が見て、妥当ならばすぐ判を押してよいと思うのです。それがまた都道府県がきめることになっている。それが県知事の計画と行き違った場合には、県知事の計画のとおりにしなければならないと書いてありますから、それなら、むしろ都道府県知事が当該行政区域内の都市計画をつくって、それから上げてきて、よければすぐこれを承認する。ところが、ここに審議会があって、議会の議決というものは基本構想に即しておりませんとなると、市町村議会が都市計画をつくった基本構想でそのまま実施できないですね。また都道府県知事はそれを行政上に介入する。その辺が非常にややこし過ぎる。だから、十五条では、都道府県知事、市町村が定めるべき範囲が定められておりますね。それによると、都市計画は、市町村議会が議決をした基本構想に即して考える。ところが、それが県知事の計画と行き違った場合には、やはり県知事の計画に従わなければならない。ここら辺は、市町村議会で議決しても何にもならぬじゃないか。極端な場合を言いますと、結局県知事のきめたとおりの計画に従う。そういう間に、時間的にも、あるいは事務的にも、たいへんなロスが出てくる。ですから、十五条では、市街地区域及び市街化調整区域に関する都市計画は知事が行なうことになっておりますが、十六条では、市町村が定める都市計画は、議会の議決を経て定められた基本構想に即し、こうなっています、でありますから、市町村議会の議決した基本構想、それに対して知事がまた介入するわけですね。私は、法で示された市町村の計画者が議決を経てそこで都市計画ができたら、それを直ちに責任大臣が見て、建設省がこれは妥当じゃないかということになれば、すぐさま決裁してやればいいのです。なぜそういうスピーディーなことができないかということを私は非常に疑念に思うのです。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/53
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054・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 都市計画をだれがきめるかという問題が非常に議論があるわけでございまして、現実に行政の実態を考えますと、やはり原案は市町村がつくるわけでございます。やはり広域的な都市計画になってまいりますので、知事の段階でそれをチェックするということがどうしても必要でございます。したがいまして、知事が考えておりますものも当然市町村の意見を聞くわけでございます。実際の運用といたしましては、原案を市町村がきめましたものを広域的な計画の調整という立場から知事がチェックする、こういうようになってくると思います。ただ、ものによりまして数市町村を合わせました都市計画区域のようなところで幹線道路をつくらなければいかぬというような場合には、実質上もそういうものは県道ということに道路法上の扱いでもなっておるものが多いわけでございますから、そういうものにつきましては県知事が都市計画をやる。したがいまして、県道と市道が交わるというところがございます場合には、県道のほうが優先するという規定を十六条のほうで置いたわけでございます。そういうふうな考え方でやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/54
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055・田村良平
○田村(良)委員 局長さんの見解はある程度わかりますが、私がお尋ねしておるのは、行政の繁雑さですね。これは実際にやっていくほうはたいへんなんですよ。あなたは局長で黙っておられるけれども、下でやっている人はたいへんなんですね。だから市町村の議決を経て都市計画ができたら、妥当なものならすぐ大臣が認可してやればいいと私は思うんですよ。ただ、数カ町村にまたがって、当該市町村だけの権限でできない場合、そのときには県知事があっせんをするでしょう。二通りでいいじゃないですかね。そこらは、基本構想に即して市町村議会が議決しても、結局知事がまた手を入れなければ、市町村の議決はそのままに実施できないわけですね。そうすると、そういう無用なことをせずに、あっさり県知事が全県一区の都市計画をつくって、それから市町村を呼んで、異議がなければ、ぱっとやればいいのであって、何か形だけはいかにも市町村議会の議決を経てちゃんとできるようになっているが、どっこい、実施になると知事さんが入ってくるというところが、私は、非常に行政上の繁雑といいますか、それから職権が非常に交錯し合って複雑になるということを考えますと、むしろ計画者の立てたものを妥当ならばすみやかに認可するという方向に行けないものかということを重ねて御質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/55
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056・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 十六条にございます「適合したものでなければならない。」というのは、相矛盾します場合に、知事の計画と合わなければいかぬということでございまして、町村の計画は全部都道府県の段階で是正されるということではございません。したがいまして、町村が立てました計画につきましては市町村が決定するわけでございますが、知事の承認が要る、その場合に都市計画地方審議会の意見を聞く、こういう形をとっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/56
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057・田村良平
○田村(良)委員 そのことは、これはいわゆる一方交通になっておりますから、おきますが、これから最初申し上げた国土の総合開発という観点からいろいろな問題が出ると思いますが、ひとつその際にはこの問題とあわせまして御検討願いたい。そうでないと、中央集権が非常に過重、いわゆる大きくなって、地方分権、地方自治体の独立性といいますか、そういうものが常非に薄くなる。やはり議会の議決されたことが住民の意思を一番正しくあらわしたものでありますから、市町村で議決せられた都市計画案が県知事の介入で変更されてきたりするというようなあり方自体が、私どもとしては納得いきにくいのであります。したがって、申し上げたように、数カ市町村にまたがる場合は、これは県知事がおやりになってもけっこうです。そうでない場合は、やはり妥当な計画はすみやかに認可するという方向にいくべきじゃないか、こういうように考えております。
まだほかに問題がありますが、大臣は決算委員会に御出席とのことで御注意いただいておりますから、これで終わりますが、最後に大臣に特にお願いしておきたいことは、同じ国政を審議する立場として、まことに失礼な言い方ですが、とにかく何とかうまく答弁が済んだらいい、あるいは役人は大過なくどうにか済めばいい、しかし、役人は大過なく生活するために働いておるのではなくて、やはり国民一人一人の生活のしあわせというものをどうするか、それには、やはり私が申し上げたように、国土の均衡ある開発に国家資本がほんとうにまじめな意味で積極的に投資せられること、そうでないと、だんだん経済のアンバランス——特に第三次池田内閣は、高度経済成長の犠牲になった農林漁業あるいは中小企業のひずみを直すのだ——残念ながら御病気でおなくなりになりましたけれども、高度経済成長、これも時代の必要できたのですから。いまや世界の一、二を争う重工業の今日を考えますときに、やはり中小企業あるいは農林漁業、こういった地域の山村経済、農村経済あるいは漁村経済についても思い切って一歩前進をしないと、やはりマンネリズム化していきますと、だんだんだんだん大きいところだけにお金が使われる、そうして地域がますます貧乏になってくるということが考えられてなりません。せっかく質問の機会を与えていただきましたので、私なりの考え方を率直に申し上げておりますが、やはりこういう意見というものが日本の国の政治に取り上げられてこそ、私は少しでも地域開発が進んでいくというように考えております。長く地域から中央を見ておりましたわれわれにとりましては非常に切迫感が強いわけであります。どうぞひとつそういう意味で、今後の総合開発についてはこういった面が力強く押し出されますように、くれぐれも善処方をお願いして、時間もないようでありますから、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/57
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058・加藤常太郎
○加藤委員長 井上普方君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/58
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059・井上普方
○井上(普)委員 私は、この都市計画法が内政問題として非常に大きい意味を持ってくるのではなかろうか、このように考えるのでございます。ただいま田村委員からも申されましたように、全国の過疎、過密の問題、あるいはまた地価問題、あるいは住宅問題、あるいは農業問題公害問題等々に実に大きい影響を及ぼしてくる都市計画であろうと存ずるのでございます。そういたしますと、内政の大きい面を実はこの都市計画法は持っておるのではなかろうか、このように考えるのでございます。
しかし、一面におきまして、先ほども田村委員から御指摘がありましたように、昭和二十五年に国土総合開発法というものが制定されました。しかしながら、その国土総合開発法は、先ほどもまた田村委員が指摘されましたように、国土の均衡ある発展ということを中心にいたしまして実は制定されたと存ずるのでございます。現在も昭和三十七年に経済企画庁で全国総合開発計画というものが出されております。しかし、これをなぜ手直ししなければならないのか、私はここに大きい疑問を持たざるを得ないのでございます。
それで、この三十七年の全国総合開発計画の要点といたしまして「地域開発の基本構想」というものがございますし、「全国総合開発計画の性格」というのが出されておりますが、これには「国土総合開発法にもとづく特定地域総合開発計画、地方総合開発計画および都府県総合開発計画は、この計画を基本として策定されなければならない。」これが実は昭和三十七年の全国総合開発計画でございます。ところが、この秋にはまた経済企画庁におきまして総合開発計画を練り直す、こういう御計画のようでございます。しかし、何がゆえにこの全国総合開発計画は手直しをしなければならないかということを考えてみますと、過密、過疎の問題、特に東京あるいは大阪あるいは名古屋というような大都市に人口が集中する、その集中する原因は、先般佐野委員からも指摘されましたし、また、大臣もこれを肯定されましたように、高度成長政策のひずみであるということは大臣もお認めになり、そのようにお考えになるようでございますけれども、しかし、この総合開発計画の内容を私つぶさに拝見いたしますと、何がゆえにこれが失敗に終わったか、この三十七年の、すなわち高度成長政策がピークにのぼりつつある最中に、実は全国総合開発計画というものが打ち立てられたわけでございます。ところが、これが何がゆえにこういうように失敗に終わり、あるいはまた、失敗に終わるというよりも、むしろ手直しをしなければならなかったかという一つの大きい理由といたしましては、この第五節の「地域開発政策の基本方向」に、公共投資については、つとめて先行性を確保することを前提として、用地、用水、交通、通信、電力、住宅、上下水道、文教施設、観光施設等の生活環境施設、治水、利水等の総合的観点に立った国土保全施設の整備をはかるとして、そして財政上の助成措置、政府金融機関による長期融資等、財政、金融上の適切な措置を講ずる、こういうことが実は地域開発の基本方針の第一項に書いてあるわけであります。ところが、これがなされていない。財政上の措置とか、あるいは、公共投資については先行的にこれを確保しなければならない、こういうことを全国総合開発計画ではっきりと昭和三十七年に示されておる。これを守らなかったのは政府じゃなかったか。政府が先行的に投資をやらず、また、財政的にもこれを行なわなかったというところに一つの大きい原因があろうかと存ずるのでございます。したがって、この秋に策定されます、再三申されておりますところの全国総合開発計画も、財政的な裏づけ、あるいはまた、公共事業についても先行性を確保するというような二点がなかったならば、これまた絵にかいたもちになってしまうのではないかと私は考えるのでございますが、大臣の御所見、並びに今後いかにこの財政措置をおとりになろうとするのか、お伺いいたしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/59
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060・保利茂
○保利国務大臣 しばしば申し上げておりますように、私は全国総合開発計画が失敗であったとは考えないのでありますけれども、しかし、言いわけしてもしようがないことであります。相当目当て違いはあったということは言えるのではないか。とにかく、それにもかかわらず、そういう努力を全然払ってきてないわけでなしに、そういう法の要請するところに向かっては相当の努力を払ってきておるわけですけれども、しかしながら、民族の伸びる力といいますか、エネルギーの、何といいますか、それはそういう三十七年の計画を越えて、突き破って伸びてきておる。したがって、事後追認に追われてきておる面が非常に多いというところは反省して、これからのやり方をその反省の上に立って、もう一ぺんまた大きな目違いを十年後に来たさないようにやっていかなければいかぬじゃないかということで、ただいま御指摘の点については、特段の考えを政府も持って、また五年後、十年後になってとんだ目違いをいたしておりましたというようなことにならぬように心がけていくべきじゃなかろうか、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/60
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061・井上普方
○井上(普)委員 大臣、あなたのいまのお話、目違いがあった——目違いがあるのは当然で、大臣も、先般の佐野委員の質問に対しまして、このような過疎、過密の状況、しかも、東京あるいは名古屋、この大都会に人口が集中した原因は、高度成長政策のひずみがその理由であった、これに対して適正な抑制策がなかったということを、この会議録にもはっきりとお示しになっておられるのです。しかし、それを民族の発展の力だと言って逃げようとするのは、私はひきょうだと思うのです。政府としては、当然そういう点に対して抑制を加え、かつまた、この計画法に基づくところの公共事業の先行性及び財政措置を十分にやらなかったところにこのたびの大都市のスプロール化もあるし、また過密都市の現状があり、交通難あるいは公害等々の諸問題が出てきたのではないですか。どうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/61
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062・保利茂
○保利国務大臣 そこは井上さん、全企業を計画的に国が行なっていくということであれば、そのとおりでございますよ。しかし、あくまでも誘導的指導の行政をやっておるわけでございますから、あるいは新産都市であるとか、工業整備地域であるとか——新産都市にはこういうふうな助成も講じますよ、工業整備地域にはこういたしますよ、事業をやられる方はそっちのほうでひとつ事業をやってくれぬかというようなふうに誘導してきたが、そのことは、それじゃ全然無であるのかというと、大体予定の計画どおりに進んでおるわけです。しかしながら、その事業の生産の実態というものがずっと進歩してきておるわけですから、所期するほどの、当時予想しておったほどの労働力はそこに要らない。生産、出荷は相当あがっておるにもかかわらず、人口はそう期待しておったように寄っていかない。むしろ人口は中枢の管理機能のほうにどうしても寄ってくる。そうすると、そこにサービス、第三次産業がついていくということになって、それで集中が行なわれている。これは、ある意味においては、まさに高度成長政策のひずみというか、その結果がここにきておる。これは何も計画的にやっているわけではなくて、計画以上に国民の力というか、民族の力というものが爆発的に成長しておるからこういう現象が起こっておる。そのことは否定するものじゃ決してございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/62
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063・井上普方
○井上(普)委員 総合開発計画は、労働力につきましても言及いたしております。しかも、地域開発政策の基本方向といたしまして、第三項に「労働力移動の円滑化、人間能力の開発のための諸施策を講ずる。」こういって実は三十七年の全国総合開発計画も立てておるわけでございます。それで、大臣のおっしゃるような民族の発展——政府の施策が十分でなかったということは、この総合計画によってあらゆる地域立法というものがいままで立てられてきたはずなんです。ところが、これが行なわれなかったところに、現在の——あなたは民族の発展というようなまことにばく然とした話をおっしゃいますけれども、どうも私は、国の施策といたしまして、たとえて言いますならば、財政投融資にいたしましても、大資本にどんどんと金をつぎ込んでいくというようなところに、この総合計画を手直ししなければならないという考え方があなた方に生まれてまいったのではなかろうかと存ずるのでございます。
第二点といたしまして、土地利用につきまして、第三節にこう書いてございます。土地需要の重点は、「増大する工業用地、生活水準の上昇にともなう住宅用地等の確保に向けられてきている。」これに対して、土地利用の方向といたしましては、平地の利用といたしまして、
第1に、この計画の目標達成のため、優良農耕地等の保全に留意しながら、工業用地、住宅用地などへの合理的転換をはかること。
第2に、とくに過大都市の近郊への無計画な膨脹を抑止し、近郊農業地帯との関連において、宅地開発計画ならびに都市建設計画にもとづいた土地利用計画をはかること。
第3に、農業として利用する耕地については、農業構造改善の方向に即応しながら、農業生産性の向上、農産物生産の選択的拡大をすすめるため土地および水利条件の整備を強化して、土地利用の高度化を促進すること。
こういうことを実は三十七年の全国総合開発計画にはちゃんと書いてあるわけです。いまこの都市計画法で出されております国土の均衡ある発展、あるいはまた産業と農業との均衡ある発展というものは、全部これに書かれておるわけなんです。これをなぜ手直ししなければならないか。手直ししなければならないのは、国がこれらに対して適切な手を打ち、財政的な措置をやらなかったところに原因があるのじゃございませんか。いかがでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/63
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064・保利茂
○保利国務大臣 井上さん、ひとつ御了承いただきたいのは、何もかも建設大臣が、建設省がお答えできる問題じゃないようでございます。ただしかし、御指摘になったことは、私はそのまま肯定せざるを得ないと思うのであります。たとえば都市計画、土地の利用にいたしましても、土地の利用計画を、そのうたっておるようなものにこたえるためには、いまこうやって皆さま方のお手数をかけなければならぬような状態であることは、それはまさに手おくれだと思っております。なすべきことをなしていなかったという意味においては、現在こうだという、現実がそうでございますから、これは抗弁するところも何もないと思うのです。ただ、何も全体の総合開発計画を全部ひっくり返してやり直そうというわけじゃ私はないと思う。現在の作業段階をよく心得ておりませんから、どういうふうに作業が行なわれておるかということは、私はつまびらかにいたしておりませんからよくお答えできませんけれども、そういう点は少しも手直しさるべき点ではない、そういう考えを持って、そういう考えをもっと強く打ち出していかなければならぬじゃないかという意味において再検討が行なわれておると私は心得ておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/64
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065・井上普方
○井上(普)委員 大臣、このとおりで、大体三十七年の総合開発計画が——あなたは、建設大臣であると同時に国務大臣でもあります。だから私は言っているのです。こういう計画がある。しかも、国土総合開発法に基づいて三十七年に計画が出されておる。あらゆる土地立法は、すべてこの開発計画にのっとらなければならないということは、第一番に書いてあるわけです。ところが、これが行なわれていないところに今日の問題が生まれてきておるのではないかと思うわけです。
そういたしますと、この都市計画法というような都市立法は、いまやこれは花盛りです。見てみますと、昭和三十年、四十年以来ずっと、ともかく、住宅地造成事業に関する法律だとか、市街地再開発に関する法律であるとか、あるいは新住宅市街地開発法であるとか、あるいは首都圏の近郊整備に関する法律、あるいは流通業務市街地の整備に関する法律、それから公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律、都市開発資金の貸付けに関する法律、もうあらゆる都市立法がなされておりますけれども、実際、あなたがおっしゃいますように東京あるいは大都会に人口が集中しておる、スプロール化しておる——ともかく通勤に一時間半も二時間もかかるようなところに住みたい人間はおりません。なるべく自分の勤務地に近いところで住宅を持ちたいのが人情です。ところが、このようにスプロール化しなければならないというのは、ほかに安い宅地がないから遠いところに住宅を求めるというのは、住民のむしろ自衛手段ではなかったかと私どもには考えられるわけです。
今度の都市計画法について、実は先般来先輩の委員諸君からいろいろと問題点が指摘されました。しかし、私は、どういたしましても、この都市計画法によって市街化区域の宅地は高騰するであろう、こういう予感がしてならないのでございます。首都圏内においては、農地をつぶせば、あと四百万人くらいの人間が入る可能性があるというようなお話を、だれでございましたか、政府委員の方が言われておりましたけれども、土地の思惑あるいは売り惜しみ、あるいはブローカー的存在が買い占めをやるというようなことによって、まだまだ宅地の値段は上がってきているのです。これに対して適切な手が実は都市計画法によって打たれようとはしておらないように思うのでございますが、大臣、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/65
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066・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 先般来お答え申し上げておりますように、私どもといたしましては、市街化区域をきめます際に、今後十年の予測を立てまして、それに十分な住宅なり工場なりが入り得るような広さの地域をきめてまいりたい、したがいまして、市街化区域のきめ方によって地価に相当影響の差が出てくるのではないかという考え方を持っているわけです。
なお、この前も申し上げましたように、宅地の供給を促進する、宅地の供給をふやすということが一つの地価対策でございますので、私どもといたしましては、市街化区域の中の宅地の供給が促進されるような措置をこの法律で書いてあるわけでございます。
その一つは、この前から申し上げておりますように、宅地というのは、素地だけでは宅地になりませんので、必ず道路とかあるいは排水施設とかいうものが備わったものが宅地でございますので、そういうような施設の整備というものを優先的にやってまいるということが一つであります。
それからもう一つは、市街化区域の中で宅地開発者がつくります、先ほどから御議論のございます幹線的な公共施設につきましては、その費用を公共団体に持ってもらうということが一つでございます。
それからもう一つは農地転用、これもいろいろ議論があると思うのでございますが、市街化区域につきましては農地転用をはずしまして、それに基づきます。従来からございましたいろいろな手続なり、時間なり、労力なりというものを省きまして、この農地の宅地化が円滑に、流動性が高まるような措置を講じております。こういうようなことをいたしまして、宅地の供給が相当行なわれるであろうという期待感によって、これまた地価に対する影響があるのではないかという考え方を持っておるわけでございます。
それ以外に、都市計画法そのものではございませんけれども、宅地供給につきましてはいろいろな施策を講じておりますが、そういうものをあわせまして、市街化区域の中の地価があまり上がらぬような措置を講じたいと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/66
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067・井上普方
○井上(普)委員 都市局長のお話は、同時に、私、先般来の質問を拝聴いたしておりまして、実は一つ大きい矛盾というか、衝突があるように思うのでございます。と申しますのは、農業適地も確保しなければならぬ、日本の食糧を自給自足しなければならぬというのは、大臣の好まれることばでございますけれども、民族の使命だと思います。片一方におきましては市街化区域を設定する、あるいは市街化調整区域を設定する。心の中において、大きく市街化を設定いたしますと宅地の地価が下がるであろうとあなたは——この前にも大臣も、宅地の高騰は宅地の需給関係にあるということを言われておりました。需給関係を解決しようとするならば、これは当然宅地を多くしなければならぬ、農地をつぶさなければならぬ。しかし、他面において農地というものは確保しなければならぬ、数多く確保して、民族の食糧の自給度を確保しなければならぬという二つの面が実は衝突してまいる。これはいなめない事実だろうと思います。この問題につきましては、先般来、われわれの先輩議員がいろいろ質問されたので私はやめておきますけれども、いま都市局長がおっしゃられました先行的に街路をつくり、下水をつくり、あるいはまた道路をつくることによって宅地化が促進されるであろうという考え方は、私は、いままでの建設省並びに各省のやり方からいたしますと、どうも期待はずれになるのじゃなかろうか、このように考えるわけでございます。
一例を、都市局長、あなたの所管の例について申しましょう。あなたは、昨年の下水道五カ年計画の際に、市街地はこの五カ年計画によって昭和四十五年度までには四五%の下水道しかできない、昭和六十年には一〇〇%できるとおっしゃられました。そうでございましょう。すなわち、下水道というものは、都市施設としてはまことに重要な施設です。ところが、現在の東京都内の二十三区の状況を見ましても、下水道の普及率というものは三〇%にも満たないような状況なんです。建設行政が後手後手に回っておる。そこに過密の大きい原因もあると私は思う。だから、あなたのおっしゃる下水道にいたしましても、街路事業にいたしましても、道路にいたしましても、あらゆる都市施設というものを先行的にやって初めてその宅地が確保できるのだという考え方は、いままでの行き方並びにあなたの所管する下水道五カ年計画によっても、これはもはや、先ほど来申しますように、絵にかいたもちであると申しても過言ではないと思うのです。この点、いかがでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/67
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068・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 下水道事業全体で見ますると、先ほど申し上げましたような、先生おっしゃいましたような状況でございますけれども、現在の五カ年計画で現在仕事をやっておるところにおきましても、私どもは、下水道事業は、宅地開発をやります場合には積極的につき合うように指摘しております。したがいまして、公団なりあるいは一部民間等につきましても、宅地開発と一緒に下水道施設をしなければならぬというときには、積極的に下水道事業もつき合って、そうしてそれにつきまして、その宅地の整備と同時に下水道が行なわれましたほうが、これは投資効率からいっても高いわけでございます。たとえば、既成市街地の中で下水道をつくるといいますと、細い道に管を埋めなければならぬ、あるいはシールド工法を使わなければならぬ、そういうような費用に比べますと、新市街地におきまして下水道をやるというのは、はるかに少ない費用で済むわけでございます。
そういう意味におきまして、私どもとしましては、宅地開発に積極的に下水道事業はつき合うように、したがいまして、毎年先生方に御説明申し上げておる予算の方針におきましても、道路につきましても、下水道につきましても、新市街地の公共施設に重点を置くということをうたっておるわけであります。したがって、そういう方向ではおりますけれども、先生おっしゃいますように、現状ではまだまだ不十分な点があると思います。私どもとしましては、今後もそういうような方向で、先行投資の面につきましては積極的につき合ってまいる、しかし、そうは言いましても、既成市街地のテンポをおくらす、あるいは既成市街地の規模を少なくするというわけではございません。私どもの考え方としますと、下水道などは今後大いに伸ばしていかなければならぬ、その伸ばす分の相当部分をさいてまいりますれば、非常に投資効率が違いますので、新市街地の整備が十分つき合っていけるというふうに私どもは考えておるわけでございます。それにつきましては、今後とも努力を要する点はございますけれども、そういうような考え方で都市計画法の運用に当たってまいりたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/68
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069・井上普方
○井上(普)委員 先般、下平委員の質問に対しまして、都市局長は、現在の予算規模の推移によって都市事業はできるのだ、こういう御答弁をなさったようでございます。しかし、下水道一つをとりましても、昭和四十六年には、ここに数字がございますが、あなたのおっしゃったのによりますと、実は三三%、四五%、昭和六十年には一〇〇%できるのだ、こういうお話でございました。下水道というものは、都市施設としましては重要なものだと私は思います。大臣、笑っていますけれども、下水道という事業は、私、医者でございますので、特に衛生という面につきましてこれを考えてみますと、実は、私の親しい者が湿地帯に住んでおりました。ところが、子供が病気してしようがなかった。どうもからだが弱くて困る。ところが、湿気の少ないところに参りますと、とたんに健康になったというのです。私も、衛生学というのはばかにしておったのでございますけれども、なるほど、これは重要なもんだなという感を深くいたしたわけです。特に現在のように、都市の発展に伴いまして下水道が発達しなければ——しかも、毎年毎年一人当たりの水の使用量というものはふえてまいっております。冷暖房もふえるし、水洗便所もふえてくる。こういうようなところにおきましては、どうしても私は下水道というような問題の必要性というものを痛感いたすわけでございます。
この下水道一つをとりましても、大臣、公共事業に先行性がないわけです。公共事業の先行性がないところにどうして宅地ができますか。これは道路におきましても同じことが言えるんじゃなかろうかと私は考えます。また公園にいたしましてもそのとおりじゃないか。
そこで、大臣にお伺いするのでございますが、こういうような都市を、住宅をつくるというような一点をとりましても、先ほど来申しました全国総合開発計画に合致しないいままでの内閣のやり方、これが現在のスプロール化を来たし、過密都市を来たし、公害問題を来たすゆえんであると私は思います。それらについて大臣の御所見をひとつ、あるいは今後の——まあ建設大臣であると同時に、あなたは国務大臣でございますので、その点をひとつ明確に、いかなる処置をとろうとするのか、お伺いいたしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/69
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070・保利茂
○保利国務大臣 私は、井上さんにも事態の認識を同じくしたいと思うのでございますけれども、とにかく、私どもが言っております先進国といいますか、たとえばロンドンとかパリとかニューヨークといったようなところは、まあ一〇〇%の下水道施設を持っておる。それに比べて、日本の都市状態というものはどうであるかといえば、もう実に寒いような感じがするくらいまだ普及していない。そこで、先年、下水道、環境衛生施設を整備していかなければならぬ、福祉国家というか、国民の生活のしあわせを築き上げていくためには、そういう生活の環境を整備することはゆるがせにできないということで、行政的にも機構的にも、従来、建設省がやっておるのか厚生省がやっておるのかわからぬというようなことであったのを、とにかく建設省の行政に一元化して、そうして、道は非常に遠いけれども、とにかく計画的に達成していこうということで、五カ年計画のもとでただいまやらしていただいているわけでございます。
仰せのごとく、何もかもが、ひとり下水道のみならず、公共施設というものがすべてあと追っかけになっておるということは、もう残念ながら認めないわけにいかないわけでございます。先ほど来田村委員も言われておりましたように、残念ながら、とにかくこの短い十数年の間に国の姿が全部変わっている。しかも、戦前の公共投資というものはほとんど見るべきものがなかったという中で、手をつけようとしたときは、国の姿自体が変わってきている。農業国から工業国への急速な変貌を示してきておる。そういうふうに重なり合ってきておるものでございますから、公共投資があらゆる面において、現状から見ますと、何とも焦燥を感ずるような事態。しかし、やはりこの国土というものは、今日の国土であると同時に明日の国土でございますから、明日の国土というものを見て、そしてしんぼう強く、やるべきところは大胆に、やはり福祉国家にふさわしい国土をつくり上げていくという基本的な考えを持って取り組んでまいるべきであるというように考えておりまして、下水道の施設もその一環として、もちろん、先生お話しのように、衛生施設の面としてきわめて重要でございますから、ほかとのバランスを失しないように——しかし、これだけどうも進むというわけにもまいらぬ、何もかもでございます。住宅をとれば住宅、道路をとれば道路、河川をとれば河川、彼此みなそうでございますから、全体のバランスをとりつつ、しかし明日の希望を持って私どもやってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/70
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071・井上普方
○井上(普)委員 大臣のいまの御答弁によりまして、いままでの公共事業が先行性じゃなかった、あとから追っかけていっておるというような考え方からいたしますと、先ほど都市局長が申されましたように、街路を先行するんだ、あるいはまた下水道を先行するんだということによって宅地の造成ができるというような考え方は、私はここに大きい疑問を持たざるを得ないのでございます。市街化区域と決定いたしましても、それらは決して宅地の需給関係を満足さすものでもないし、かつまた、地価の安定にも役立たないということは、いまのお話によってもわれわれはある程度断定できるのじゃなかろうか、このように考えるものでございます。
ここで私は、先輩の委員さんが地価安定施策につきまして十分御質問なさったようでございますので、これ以上地価安定政策につきましてお話し申し上げるのを時間の関係で差し控えますけれども、予算関係におきまして、実はこれを特に法律の第十三条の第三号に、都市施設は、土地利用、交通等の現状及び将来を見通して、「市街化区域については、少なくとも道路、公園及び下水道を定めるものとし、住居地域については、義務教育施設をも定めるものとする。」こうあるわけです。これの予算措置はどういうようにしてやられようとするのか。特に自治省におきましては、この公園、下水道等々に非常な自治体の負担がかかってまいりますし、持ち出しがかなりあるだろうと思います。そしてまた義務教育施設もつくらなければいかぬ。御承知のように、大阪あるいは東京付近におきましてベッドタウンがたくさんできておりますが、そこらのベッドタウンにおきましては、もうベッドタウンはお断わりだ。というのは、この都市施設があまりにも金を食い過ぎるというような事情も生まれてきております。この中においてこういうようなことをうたっておる以上は、ともかく国務大臣としては、内閣が決定した以上はこれらに対しては十分な予算措置をしなければならない、地方団体に対しては、持ち出しを少なくするような方向に進まなければならない、このように思うのでございます。大臣、この点はいかがでございますか。第一点でございます。
第二点といたしまして、この都市施設にいたしましても、自治体の負担が非常に大きくなってまいります。たとえば、この法律でうたっておりますところによると、下水道、街路、駐車場、あるいは河川、運河、汚物処理場、ごみ焼却場、学校、図書館というようなものを備えなければならないことになっております。これはもうすべて自治体の負担になってくるわけでございますが、大臣にまず第一点としてお伺いすると同時に、自治体といたしまして、現在これらの都市施設に対していかほどの持ち出し分があるのか、そしてまた、これに対してどういうように自治省としては対処されるのか。都市計画ができまして、この法律どおりにいきますと、地方自治体の負担というものは非常に大きくなってまいりますが、この点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/71
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072・保利茂
○保利国務大臣 それぞれお話があると思いますけれども、私は、井上さん、こういうふうに思うのでございます。
この生活環境の悪い都市をお互いに住みよい町にしようじゃないかということで計画は持たれる、やりなさいということでなしに、やろうじゃないかということ、したがって、それはわれわれの子孫に引き継いでいくものであるわけであります。そしてまた、その地域の財産でもあるわけであります。ですから、何もかも国がこうしてあげますよ、それだからちょっと土地を出しなさいということでなしに、お互いの地域を住みよい町につくり上げていこうじゃないか、住みよい町につくり上げていくのにはどういう計画を持ったらいいか。それは佐野議員も心配されるように、できるだけ地域住民の意向が反映されて、そういうことなら自分たちもやってみようということになってこないといかぬので、したがって、その事業を進めていくには財政の面が一つの大きな圧迫になってくるだろう。国としては、これは徳島の都市計画をやられるのに佐賀県の者も負担していかなければならぬことになるわけですから、そう何もかもそこをただというわけにはいきませんので、やっぱり全体の負担においてある程度助成をしていきましょうという、そして、住みよい町は自分たちがつくろうじゃありませんかという気持にならなければ、都市計画は何べん議論してみたところでできないだろう、のみならず、困難にうちかって事業を遂行した恩恵というものは、長くそこに住まわれる人たちが受けるわけでありますから、したがってその方々も幾らか負担をしていくというようなことが当然私は考えられるべきであろうと思うわけであります。そういう上で、それじゃ何もかまわぬかということになってきますと、そうじゃないので、それは国全体として、財政の配分といいますか、案分というものも、当然われわれのねらうのは、住みよい、しあわせな国土をつくり上げたいということが国民全体の共通した考えでございますから、その上に立って、できるだけ財政措置を講じてまいらなければならぬということでございます。何もかもいま一ぺんに国がみんなやれ、そしてあとに残さぬようにやれという——そういう意味において地方債等の問題が一方において考えられてくるんだろう、こういうふうに私は考える。問題を私はそういうふうにとらえておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/72
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073・首藤堯
○首藤説明員 自治省のほうからお答えいたします。
ただいま御指摘がございましたように、都市計画事業を遂行いたしますためには非常に大きな地方負担が必要でございまして、地方団体がこれをこなすのにいろいろと苦心をいたしますのは御指摘のとおりでございます。しかしながら、何と申しましても、御指摘のような最近の社会、経済の進展に伴いまして、各種の公共施設のあり方等を正し、地域開発あるいは社会開発を促進いたしますためには、何としてもこの都市計画事業を計画的にやり遂げていくというのは地方団体の責務だ、このように考えておりますので、このような事業に対しては、できるだけ適切な地方負担に対します財源措置、これを完全にやり遂げてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
四十三年度の例で申し上げますと、私どものほうで処置をいたします財源措置は、地方交付税によります措置、それから地方債による措置、このようなものに相なるわけでございますが、ごく直接に関係のあります事業、たとえば下水道関係、こういうものにつきましては、基準財政需要額、交付税の措置を約二百三十億足らず、それから起債を七百四十億余り、こういったような措置をいたしております。そのほか、特別都市対策事業、つまり過密対策とか公害対策、あるいは鉄道の高架線対策、それから土地区画整理、それから市街地の改造、住宅用地対策、あるいは公共用地の先行取得対策、このようなものを入れまして千百億余りの地方債、それから基準財政需要額においては千二百億余り、合わせますと二千三百億余りになるかと思います。もちろん、このほかに御指摘の学校とかなんとか、こういう問題があるわけでございますが、直接に必要なものにつきましても、そのような措置を四十三年度とっておるわけでございます。それから学校等の施設につきましては、別途、大団地が設定をされます場合には、御案内のように、五省協定等の措置もございまして、宅地や住宅の設置者がそのような学校等を設置して、これを年度償還によって地方団体に譲渡する、このような措置もとってもらうように努力をしておる次第でございます。
以上申し上げましたが、何としても、都市計画の計画的な遂行には所要の財源を確保するように今後とも努力をしていきたい、このような決意でおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/73
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074・井上普方
○井上(普)委員 大臣の御答弁に、私、先般佐野委員から、住民参加がないじゃないかという点は、御指摘のとおりだと思います。といいますのは、大臣はいまもおっしゃいましたが、自分らの住む村だから、村落だから、都市だから、自分たちでよくしようじゃないか、自分たち自身で、子孫に残す町なんだから、いいものにしようじゃないかという住民の意思が結局これに出てこなければならない、こういうお話でございましたけれども、しかし、この法律によって示されておりますところは、わずかに、佐野委員が示された四つの項目にすぎないのでございます。すなわち、第三条の第二項で住民の責務というのをうたっております。それから第十四条の一項に、都市計画は、総括図、計画図及び計画書によって表示する。公示制度ですね。それから十七条の三項には、特定街区にかかる都市計画案は、利害関係者の同意を必要とする。これだけ、四つしか実は住民には関係しておらないのです。ところが、一方におきまして、私もおくればせながら実は勉強してみたのでございますが、イギリスの都市計画法というものを見てみますと、実はこういうように、この法律におきましても非常に私権の制限をやっております。この法律によりますと、市街化調整区域においては、ともかく住宅は建てさせない、あるいはまた街路、下水道の計画のところには家は建てさせないというような、私権の制限を非常に大きくうたっておるわけです。ところが、一方におきまして、国の責任はといいますと、これは国の責任があまり明確になっておらないのでございます。すなわち、国の責務というものはあります。ありますけれども、これは法文の上においてやられておるだけでございまして、イギリスの都市計画法を私見まして、この日本の都市計画法といかに相違するかを見て、実は一驚いたしたのです。イギリスの都市計画法には、「主務大臣は、大蔵省の承認をえて与えた保証に従い、本条の規定が適用される開発に関連して負担し、又は負担すべき次の各号の種類の属する経費に対し、受入れ市町村の議会に負担金を交付することができる。」と明確にうたってあるわけです。それから「開発がなされている土地の取得のため、又は、開発がなされている土地に代る土地の取得のための経費」あるいはまた、用地整備その他の工事に要する経費というものは、これはこの受け入れ市町村の議会に負担金を交付することとするということが、実は明確にイギリスの都市計画法にはうたってあります。この日本の都市計画にはこれらがないわけなんです。ここに私は大きい相違が見出せるし、大臣が言われるように、住民が進んでやろうといたしましても、財源の裏づけがないところに、こういうような町をつくろうじゃないかといっても、わずかに四項目しか実は住民がこの都市計画に参加する道がないのでございます。少なくとも都市計画の図面ができ——しかも、イギリスのこの法律によりますと、タウンマップあるいはまたカントリーマップ、プログラムマップというものがございますが、この条項を見てみますと、全部この地図を公示しなければならぬ。その地図は五万分の一であり、一万分の一、二千分の一というような地図を住民の前に張り出して公示して、そしておまえのところの所有しておる土地はこういうように使われるんだぞということが明確に出されておるのです。ところが、日本の今度出されております新法におきますと、公示制度はいかにも出されております。公示制度は出されておりますけれども、どんな公示のしかたをやるのか、これは政令で全部きめることになっております。イギリスの住民でございますと、一人一人自分が持っておる土地あるいは自分が住んでおる住居地域というものが、この地図によってどういうような姿になっていくかというものが明確に示されるようになっておるのでございますが、日本にはそれがない。大臣、住民参加の方法、しかも、先般来申されましたような公聴会の制度もない。ただ、関係住民が意見を出すことができる、その意見は知事が地方審議会にこれを提出しなければならない、ただこれだけなんです。しかも都市局長は、再三申し上げてまことにどうも申しわけないのでございますけれども、佐野委員の質問に対しまして、住民の参加というものは現行法に規定がございませんが、何とか住民の意思を反映することをしなければならない。答申には、すなわち宅地審議会の答申には、公聴会とか説明会を設けなければならないという規定があるのだ、しかし、行政の実態からしてこういうことができないとあなたはおっしゃっておる。行政の実態でなぜできないのですか。この点、ひとつお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/74
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075・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 一つの問題は十四条の問題でございますが、十四条では、総括図、計画図、計画書によって表示する。従来は、都市計画は、こういうような計画書というような、どういう都市計画をつくるに至ったかというような理由等を書いたものを添付しないようになっておりましたけれども、やはり住民によく知らせるということが大事でございますので、こういう計画書というものを持つと同時に、ばらばらの計画図だけではなくて、一つの総括図を見ればその都市の都市計画がどうなっているかということがわかるように、総括図というものをつくることにしたわけでございます。先生御指摘のように、イギリスの例を引かれまして縮尺を言われましたけれども、縮尺は建設省令できめるということになっております。イギリスの場合も法律に縮尺まで書いてあるわけじゃございません。私どもは建設省令でそれぞれの図面の縮尺をきめてまいりたい、そういうことによりまして、十四条二項にありますように、自分の権利にかかる土地がこれらの区域に含まれるかどうかということを容易に判断できるような図面でなければならないし、計画書でなければならない、こういう規定をしておるわけでございます。
それから、先ほど、イギリスの都市計画法については財政負担の規定が明確にあるというふうに例示を引かれまして申されましたけれども、都市計画法というのは一九六二年の法律でございまして、私も自分で翻訳をやったものですから覚えておるのですが、財政規定がそういう形では入ってなかったと思うのでございまして、たしかそれはニュータウン法じゃないかと思うのです。都市開発法というのは、都市計画法じゃございませんで、ニュータウンでやるやり方と、それから既成の都市を拡張してやるやり方と、イギリスでは二つとっております。その既成の都市を拡張してやります一つの事業方式と申しますか、そういうものをいっておるわけでございまして、一九六二年の都市及び地方計画法という中で財政規定が入っておるかどうか、私はそういうことじゃなかったかというふうに思うわけでございます。
それから三番目の住民参加の問題でございますが、すべての事業につきまして——と申しますのは、都市計画は変更がございます。変更につきましては、非常にこまかい変更もあるわけでございます。そのすべての都市計画につきまして、全部これを公聴会にかけるということは、やはり行政の実務の上からなかなかむずかしい面があるということを申し上げたわけでございます。たとえば、街路の計画をつくっておりますその上に高速道路が来る、その場合に、ランプの位置をきめなければならぬというときに、下の街路の変更というのは——高速道路自身は大問題でございますが、ランプの変更というようなこともございます。そういう変更のような問題につきましても全部公聴会にかけるということは、なかなかたいへんじゃないかということを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/75
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076・井上普方
○井上(普)委員 あなたは翻訳されたそうでございますけれども、私も、国会図書館の立法考査局でいただいておる英国のニュータウン法及び都市開発法という法律で実は勉強したわけでございます。都市計画法、ニュータウン法と二つあるわけですね。ちゃんとあるわけなんですよ。私もニュータウン法も見ました。都市計画法も見ました。このニュータウン法が昨年の六月に変わったということも存じております。しかし、いずれにしましても、国が受け入れ町村に負担金を交付するということはいっておるわけです。あなたはいっていないと言うが、いっている。見せてあげますよ、ここに書いてありますよ。そこまでやらなければ、過密都市というものは実は解決できない。いま自治省のほうから申されましたが、おそらく、あなた方が努力するというのは、ここでは建設大臣もおられるし、政府委員としては当然言わなければならないでしょう。しかし、地方自治体がいま持ち出しておる金額というものは、公営住宅建設にいたしましても非常に大きい持ち出しをやられておるわけです。そうして、いまも下水道に対しまして二百数十億円金を出されたということをおっしゃいましたけれども、下水道一つとりましても、実際九千三百億の五カ年計画ではあるわけです。一カ年にいたしまして千八百億です。そういたしますと、地方負担は、幹線街路だけの——いま国の負担は三分の二でございますね。三分の二でございますから、三分の一はとにかく地方が持たなければいかぬでしょう。千八百億の三分の一、六百億を地方自治体は持たなければいかぬ。幹線だけですよ。幹線のみでも年間六百億持たなければならないのに、二百数十億しか組んでいない。そうして七百三十億円の起債を認めておる、こう言いましても、これは全体の起債です。こういうようなことを考えますと、実際これが法どおり実施されますと、地方自治体の負担というものは実にばく大なものになってくるし、持ち出しが多くなる。その反面、言いかえますならば、住民の受益者負担というのが大きくなってこざるを得ないと思うのでございます。そうしますと、あなたの言われる住民自治、住民参加というものが、こういうように四つによって制限せられる意味は、財政的に縮小せられておるし、地元民に負担がかけられるんだから、これはあまり十分に知らすと、どうも住民が反対するんじゃないかというようなところに、行政的な——行政の実態からということばが都市局長から出てくるんじゃないかと疑わざるを得ないのです。われわれは、住民が自分の村を住みよくする、大臣がさっき言われたのに全く賛成です。そのためにはやはり公聴会とか説明会というもので住民に十分知らさなければならない、それがまず第一点。
それから公示制度にしても、政令によって定める、こう申されておりますけれども、一体地図について何分の一をあなた方は考えられておるのか、そこらあたりをひとつ示していただかぬことには、住民は直接自分の所有地あるいは住宅地がこれに引っかかるのでございます。当然利害関係というものが大きく関係してくると思います。だから、あなた方のおっしゃっておるイギリスのように、これはひどいところになりますと千分の一の地図までも実は公示するような制度になっております。この点をひとつ明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/76
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077・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 計画図は千五百分の一ぐらいの縮尺のもので公示することをいま考えております。それ以外の総括図等は五千分の一ぐらいの図、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/77
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078・井上普方
○井上(普)委員 一体公示って、どこへ公示するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/78
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079・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 これは二十条に書いてございますように、告示をいたしまして、そして県及び市町村におきまして、都市計画の、先ほど申しました図書、またはどっちかでは写しになりますが、それを県の事務所あるいは市町村の事務所で長期縦覧——公衆の縦覧に期限を定めないでずっと供する、そういう考え方を持っております。しかも行政指導といたしましては、どこにそういうものが置いてあるか、あるいはどういうふうにすれば見られるかということを指導してまいりたい、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/79
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080・井上普方
○井上(普)委員 そうすると、だれでもが縦覧することができる、並びに、だれでもがその意見は述べることができるし、かつまた、その地図を個人が買えるような制度を考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/80
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081・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 だれでもが縦覧できるというふうに考えておりますし、意見書も、だれでもが意見を述べられる、住民に限らず、権利者でも述べられる、そういうふうに考えております。それから地図は、現在でも都市計画の図面は買えるようになっております。さらにその制度を広げてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/81
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082・井上普方
○井上(普)委員 都市計画になぜそういうことが法文上書かれないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/82
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083・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 書いてあることは書いてあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/83
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084・井上普方
○井上(普)委員 十七条、十四条にありましたね。「容易に判断することができる」というのが十四条です。十七条の一項には「二週間公衆の縦覧に供しなければならない。」不服審査も、これは意見だって、意見として聞きっぱなしで、それで終わりです。そういうことになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/84
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085・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 先ほどの、自己の権利にかかる土地が含まれるかどうか容易に判断することができるものでなければならないというのは、第十四条二項に書いてございます。それから、あらかじめ計画をきめようとする場合の規定は十七条でございまして、縦覧をどこでするかというようなことを公告いたしまして、そして都市計画の案を公告の日から二週間公衆の縦覧に供するということにいたしております。その公告がありますと、市町村の住民及び利害関係人は、その二週間の縦覧の期間満了の日までにその都市計画の案につきまして意見書を提出することができる。その意見書の処理につきましては、その意見の要旨を都市計画地方審議会に提出いたしまして、そこの御判断を願いまして、意見書を採択するかどうかがきまるわけでございます。手続的にこまかく書いてはございませんけれども、意見書は採択すべきものであると認めれば、もちろん、これは都市計画の変更を原案者がやらなければならないということになるわけでございます。それから二十条におきまして、都市計画がきまりましたと告示いたしまして、そしてその「図書又はその写しを当該都道府県又は市町村の事務所において公衆の縦覧に供しなければならない。」これは期限が書いてございませんので、長期縦覧の制度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/85
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086・井上普方
○井上(普)委員 画期的な都市計画法だ、しかも大臣の言われるように、自分の村、自分の住んでいるところをよくしようというのでありましたならば、住民の参加が当然なければなりません。ところが、縦覧であるとか、意見を——意見も知事に出すのみであって、そしてそれは二週間以内です。出された日から、わずか二週間です。これはもう少し延ばさなければならないと私は思います。
それから、この計画をつくるときには、公聴会なりあるいは説明会というものが開かれないと、自分の村あるいは自分の住む町がどういう姿になっていくかということを住民に知らすことができないと思いますが、大臣、いかがでございますか。自分の村あるいは自分の住んでおるところをよりよくしようというような住民の意思のわき上がりによって都市計画を実施しようとするならば、それくらいのことはなさるべきじゃないかと思うのですが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/86
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087・保利茂
○保利国務大臣 住民参加——住民の意思が、どうもこれじゃ十分じゃないじゃないかという、先般も佐野委員たいへん心配をされて、たいへんごもっともだというふうにも思いましたけれども、かりにある町で都市計画をつくられる。町長さんはよその人じゃないわけですから、その町の町民から選ばれた町長さん。しかもそれぞれ地域地域から町会議員さんが出ておられる。町会の議決というものは当然これはついてくるわけですから、住民の意思が最も公的にきちんと反映しているのは、町議会なら町議会、村議会なら村議会、市議会なら市議会。これは住民の意思がそこに一応反映しておる。その方々に、かりに都市計画がそこに持たれるということになれば、これは町会議員さんも市会議員さんも眠っておるわけにはいかぬと思うんですよ。あなたのところはこうなりますよ、ああなりますよというようなことで、町村議会の議決という一つの関門があるわけでございますから、実際の事情は、その段階においておそらく十二分以上に反映するのじゃないか、そういうふうにも思うわけでございますけれども……(「それは団体自治ですよ。住民の自治じゃない」と呼ぶ者あり)いや、それはそうじゃない。住民がそういうふうに——しかし、実際のそういうことを離れて町民なりあるいは部落の方々に、じかに、こういうふうにひとつやってみようと思うのだというようなことは、これは当然町長さんがやられるか議員さんがやられるか、どっちにしても、そういうことは、形の問題は別としましても、説明——住民の方々の御協力をいただかなければできない仕事ですから、私は当然そういうことは期待をせられるべきだ、こういうふうに思っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/87
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088・井上普方
○井上(普)委員 ただいま大臣おっしゃいましたけれども、議会といいますものは——地方自治法によりましても、はっきりと団体自治というものと住民自治というものと二つ分かれておるのです。いいですか。これは佐野さんが特に言われておりましたけれども、特に住民自治——目分自身の財産あるいは居住権、利害に関係するのでございますがゆえにも住民自治に重きを置いたものでなければなりません。人口十万以上のともかく市町村に都市計画を考えておるようでございますけれども、地方議員というのは部落の代表者じゃないですよ、現在の段階でございますと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/88
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089・保利茂
○保利国務大臣 それはそうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/89
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090・井上普方
○井上(普)委員 それはそうですとおっしゃいますけれども、昔でありましたならば部落共同体的な性格を持っておりました。しかし、町村合併によって、いま官庁の下請機関みたいになっています。はっきり言いますと、そういうことになって、昔の共同体的な意味合いが薄らいできておるのです。だから、特に個人個人の利害得失に関係する問題につきましては、これは住民自治のほうに重きを置いて、団体自治のほうに重きを置かずに、直接参画する住民自治のほうに重きを置かなければならない。そのためには、公聴会とか説明会をしなければならないと私は思いますし、また審議会でも、特にこの点につきましては強く、設けなければならないということを答申しておるのです。それを計画局長は、行政の実態から調べてみると必ずしもそうでないというような、こういうような言い方をされておる。私は、どうも行政の実態というのは、いま御説明があったけれども、何のことかさっぱりわからない。むしろ、公聴会なり説明会を十分にやる必要があるのじゃないかと思うのですが、大臣、これはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/90
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091・保利茂
○保利国務大臣 先ほども申し上げましたように、竹内局長がその都市計画をつくるわけじゃございませんので、それぞれの地域で計画を策定されるわけでございますから、したがって、その地域住民の方々の意向というものは、町村議会を通じて、それだけでも十分反映できるのではないか。しかし、いまお話しのように、みんなその区域に住まわれる方々がその気になっていただかなければこれはできないわけでございますから、どういう形においてか十分その住民の方々の理解と協力を得られるような努力は積むべきである。それは公聴会であるとか説明会であるとかいうような形で持たれることはけっこうだと思うわけでございますけれども、しかし、原案は、それは実際の運用上やられることであって、一応たてまえは、町村議会の議決というものも一つのワクがあるわけだから、それでいいのじゃないかという考えでございます。その辺は弾力的に考えていいんじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/91
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092・井上普方
○井上(普)委員 特に審議会では強く、公聴会、説明会を設けなければならないと義務づける答申がなされているのです。義務づける答申ですよ。これをうやむやにしてしまっておる。ともかく、大臣は、そういう処置を実行の上であらわすとおっしゃるなら、法文の上でなぜ示さないのですか。どうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/92
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093・保利茂
○保利国務大臣 仕事を急ぐのあまり住民の意思をそこなうというようなことがあってはならぬ、また、そういう意図で原案が作成されたものであるとは私は考えないのでございますけれども、なるほど、審議議会の答申にもそうあるようでございますけれども、それらを頭に置いて原案をつくったものだと理解をいたしております。したがって、実施の段階におきましては、当然そういうふうなことが行なわれなければ実際の事業の遂行ができないだろう、私はそう感ずるものですから、気やすくそう申しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/93
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094・井上普方
○井上(普)委員 それでは、それを法律の上あるいは法令の上で示すつもりがありますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/94
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095・保利茂
○保利国務大臣 そういうことを、審議の段階で——私は申し上げましたように、できるだけひつと一緒に——手おくれになっておるわけでございますから、これを何とかものにさしていただきたいものだ、いろいろ貴重な御意見をできるだけ私どもとしては御審議を通じていただいて、それを織り込んで十二分な成果をあげるような法案にしていただきたい、こう願っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/95
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096・井上普方
○井上(普)委員 不十分ではございますけれども、ともかく私はいずれこの点につきましてはある程度の考え方を示したいと思います。
この程度で終えておきたいと思いますが、先ほど来再三にわたり述べましたように、住民に対しまして非常な義務を負わせており、実は私権の制限をやっておる法律でございます。そこで、この買い取り請求権をこの法律では一応認めております。認めておりますけれども、これもまた外国の例を申し上げて恐縮なんでございますが、英国にいたしましても、あるいはまた西ドイツにいたしましても、フランスにおきましても、買い取り請求権は、これは特にイギリスなんかの場合におきましては、スムーズにいっている理由といたしましては、土地を指定してから地方計画庁が六カ月以内に買収しなければ、その期間の満了後はその土地について収用指定の効力が失われる、こういうふうなことです。フランスにおきましても同様です。西ドイツにおきましても同じように、買い取り請求権は、地方公共団体が先買い権を認めるとともに、買い取り請求権というものを国がぴしゃりときめております。そしてある年限の間に買わなければこれは無効になってしまうのです。これが大体ほかの私権の抑制への見返りとしてなされております。私は一例を思い出すのでございますが、戦災復興土地区画事業というのがございました。大臣、この戦災復興土地区画事業で実は道路計画をずばっとつくったわけです。つくりますと、その道路の中におきましては永久建築物は建てられない規則になっております。昭和二十四年ですかにつくられましたこの戦災復興土地区画法が現在まで続いておるのです。十九年間もそこに永久建築物はつくれないのです。そして近傍類地の価格は、永久建築物が建てられますから、どんどん地価は上がります。ところが、そこには永久建築物が建てられないために、近傍類地の価格の半値以下のばか値段で実は売買せられる。売るほうにしても売れない。それで、買ってくれと公共団体に言いますと、予算の関係でそれは買えませんと言って、放置せられておるような例がたくさんあります。だから、ここでこういうような私権の抑制をやります以上は、当然買い取り請求権を強化しなければいかぬ。ある程度この法律には、いかにも買い取り請求しなければならないという規定は書いてございます。しかし、買い取り請求権を申し出た場合、あるいは道路にかかる、あるいは公園にかかる、あるいはまた学校用地、公共用地としてかかるこの土地を、それじゃ私のところがかかったからひとつ買ってくれと言って公共団体に申し出ましても、予算措置がない以上、いつ買ってくれるかわかりません。英国あるいはフランス、あるいは西ドイツの例ばかり申して恐縮でございますが、これは必ずある年限内に買わなければ個人が自由売買してよろしいということを書いてあります。この私権の抑制をやる以上はそこまでやらなければならないと思うのでございますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/96
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097・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 大正八年にできました現在の都市計画法のもとにおきましても、道路、公園というようなものにつきましては、計画決定の段階で、先生おっしゃいますように、永久建築物が建てられないという形になっているわけであります。これは都市の構築をやってまいります場合に、やはり長期の見通しに基づいて計画をきめておきませんと、その施設の整備ができない。しかし、一方において、生活を奪ってはいけないということで、永久建築物でない建物についてはこれを認めている、こういう形で現在の計画整備がなされておるわけでございます。私ども今度の改正で、木造の建築を建てる場合でも、その事後におきましていろいろ補償その他のこともございますし、そこで建築の禁止ができる、建築の禁止の見返りといたしまして買い取り請求を認めている。したがいまして、これは先生おっしゃいますように、地方公共団体に財政力がなければ動かない制度でございます。もし財政力がなければ禁止ができない。従来どおりの、木造二階建て以下と申しますか、そういうような建物の建築は認められますけれども、永久建築物は認められないというような、従来のような制限があったわけです。こういうふうに考えておったわけでございまして、建築の一切の禁止というようなものとのかね合いにおきまして買い取り請求というものを認めておるわけでございます。買い取りができなければ普通の制限に戻る、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/97
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098・井上普方
○井上(普)委員 私は、買い取り請求権は——これはいままでの都市化の現状からいいましても、特に市街地におきましてはどんどんと永久建築物が建っておるのです。それに現在では、都市計画事業としてばしっと計画がつくられますと、公園をつくる予定になりますと、そこにはもうともかく二階建て以上の木造建築物はつくれないということになってしまっているのです。現在の都市は、御承知のように、先ほども申しますように、永久建築物になりつつあるのです。その中において、買い取り請求をしなければならないということは、法文にはうたってございますけれども、これをした場合には、必ず何年以内に買い取らなければならないという規定をつくらなければならないと私は思うのでございます。大臣、いかがでございますか、ここいらが、住民の参加がないゆえんだと思うのでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/98
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099・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 これは、おっしゃるとおり、問題のあるところかと思いますけれども、木造二階建ての建物という形でまあ住民の生活ができるようにしているということで、計画制限と、それから個人の生活の保障という面の両者の調整をしているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましても、この制度はこのまま残してまいりたい。ただ、禁止をいたします場合には、やはり買い取り請求を働かせなければならない。イギリス等の場合におきましては、御承知のように、都市計画区域の中、施設区域の中は建物は建てられない、したがって、買い取り請求という形がございますけれども、日本の場合にはとにかく建物が建てられるわけでございます。そういう形で制限をしていかなければ、とても都市の構築はできない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/99
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100・井上普方
○井上(普)委員 しかし、これはいつ道路がつくられるかわからないのです。いつ立ちのきを、国から請求せられるかわからないのです。地方団体からやられるか、わからないのです。でございますから、その地価というものは、平家建てだの、二階建てだのといっても、これは大きい制限のワクの中に入って、これこそ私権の大きい抑制にならざるを得ない。あなたは、住居権をある程度認めているから、ここいらでがまんしてくれというお話のようでございますけれども、それではいつ動かされるかわからぬので、バラック建てしか建てられないというのが現状ではございませんか。そしてまた、近傍類地の価格と比べますと雲泥の差が出てきます。永久建築物が建てられないがゆえに、そこに私権の抑制というものが大きくあるので、それはある程度予算の都合もありましょうから、一年なり二年なりのうちに買い取り請求を申し入れたときにはこれは買い取りをしなければならないという義務づけを国のほうになさるべきが私は当然だと思うのですが、大臣いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/100
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101・保利茂
○保利国務大臣 感触といたしましては、あなたのおっしゃるとおりだと思います。そこらのたとえば溜池通り、前のほうが何か都市計画でひっかかっているわけですね。それで永久建築物が建てられない、非常に困っておられる。困っておられるけれども、いま局長が申しますように、そこの地点を利用されて業を営んでいかれることについてはこと欠かない状態です。そこに何も建ててはいかぬ、こうなった場合には、それは買い取り義務を課せることもあるでしょうけれども、とにかく現地点において業を営むことができるという状態でございますから、現在の時点ではその辺のところは折り合っていただいたらどうだろうかと考えておるわけです。感触といたしましては、もう井上さんのおっしゃることを否定するものではおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/101
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102・井上普方
○井上(普)委員 私は実は昭和二十一年からいままで放置せられておる実例を知っておるのです。そこにはいつ街路がつくられるかわからぬというので、バラック建てしか建てていないのです。こういうような実例もあるのです。あなたは感触としてわかるのでございましたら、なぜそれを——買い取り請求に応じなければならないという制度を一応きめておるのでございましたならば、何年以内というワクをきめてやるのが、住民に対する親切じゃございませんか。どうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/102
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103・保利茂
○保利国務大臣 とにかくその地点で業を営むということは可能な状態であります。それでも、いや、おれは永久建築物が建てられなければ困る、そうなると、両方困るわけです。ですから、そこに何も施設をしてもらっては困るということになった場合に、買い取り義務というものが発動するということは、現状においてはやむを得ないところじゃないかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/103
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104・井上普方
○井上(普)委員 大臣は感触としてわかるとおっしゃいましたけれども、ともかく業を営むといいますか、実際問題として、現在では都市は永久建築物に変わりつつあるのです。都市のどまん中で、しかも木造しか建てられない、こういうような事実がありますから、外国の例のように、ある年限をきめて買わなければならないという国の義務をやらなければならないのじゃないか、私はこのように考える次第でございます。大臣も感触としておわかりだというのでございますから、やがてこの問題につきましても大臣としては考え直して、ある買い取り請求の年限をおきめ願えると期待いたしておるものでございますが、ともかく現在の都市計画法というものは、住民参加がないというところで非常に大きい問題を来たしておるのが実態でございます。
と申しますのは、私の国元であった事件でございますが、これは都市局長も御存じのとおり、都市計画の街路事業で実は道を広げたわけです。そうすると、ある一軒の業者が補償金を四千四百万円取りました。向かい側の三十三軒の補償額が四千百五万円です。わずか一軒で四千四百万円の補償金を取り上げたという魚勘事件というのがあります。これも住民に公開でこういうようにすればいいのだということを十分知らしておけば、こういう事件はなかったと思います。そのために、現在私のほうの都市におきましては、街路事業に——局長は、三十三軒の道路拡張はやりますと申しましたけれども、順調に進んでいないでしょう。実は魚勘事件というのは私が摘発した一人なんです。この問題につきましてどうもおかしいというので私が調べ上げて、議会で問題にした事件ではあったわけです。しかし、この問題一つを見ましても、住民参加、住民が十分にこの実態を知ったならば、ああいうような不祥事件は起こらない。しかも不正事件として、スキャンダルとして大きく取り上げたところが、副知事をはじめ、土木部長にしても、計画課長にしても、あるいは係官にしても、四十何個の判こがすわっておるのですが、全部どれに聞きましても、めくら判を押しました、こう平気で議会で言うのです。そういうような事例があるのです。そしてほかの関係した住民は、実は県を信用して、全部県の言うとおりに移転承諾書に判こを押しておるわけです。ところが、県は、これは国の機関委任事務であるがゆえにという理由のために、その個人個人の契約書を個人に見せることをいまだにやらないのです。そこで、私、昨年このことは申しましたけれども、個人と県とが契約したその契約書すら県はその契約当人に見せないのです。住民は、県のお役人が言うのだから間違いなかろうといって判こはついた。判こはついたけれども、実際にはどんな実態か調べようにも調べようがない。県はこれを見せようとしない。なぜかというと、国の機関委任事務であるからこれは見せられませんというのが、県の言い分なのです。そこで私らの考え方としましては、この問題を住民参加という形において解決するならば、これは解決できたと思います。そしてまた、県がその四千四百万円取った魚勘という商店に対して訴訟を起こして、詐欺にかかったとかへったくれとかいうようなことを言わなくて済みます。こういう点で、住民参加の道を大きく開くことによって、公開することによって、私らは都市計画事業がスムーズに進むゆえんではないかと思うのでございますが、いまのこの法律では——ある程度の前進は私も認めましょう。ある程度の前進は認めますけれども、まだまだ不十分である。かつまた、都市局長は、先般佐野委員に対しまして、この都市計画事業というものは、公共団体の固有事務であるか、あるいは地方自治法にいう機関委任事務であるか、どちらなんだと聞かれたら、あなたは、公共団体の事務でございますと言って、まことにぼやかした御答弁をなさった。農地局のほうは、農業振興地域の整備に関する法律案、あれは公共団体の固有事務でございますと明確に御答弁になった。ところが、あなたは、地方公共団体の事務でございますというような逃げ口上で、どちらにでもとれるような御答弁をなさいましたが、この点ひとつ明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/104
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105・竹内藤男
○竹内(藤)政府委員 都市計画法に基づいて公共団体に与えられた事務である、こういう意味で申し上げたのでございまして、私も不勉強で、固有事務、委任事務というのがどれに当たるかということはわかりませんけれども、通常は、公共事務というのは、地方自治法に書いてございます公共事務というのを固有事務、その他法律で特別に地方自治体の事務にしているのを委任事務、こういうふうに言っているようでございます。そういう意味では、特別な都市計画法に基づいておろした事務でございますので、委任事務じゃないか、私はそういうふうに考えます。それから都市計画事業のほう、事業をやるほうは、公共団体の事務にいたしております。これは仕事をするほうでございますので、公共事務、すなわち固有事務に当たるというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/105
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106・井上普方
○井上(普)委員 大体明確になってまいりましたけれども、先ほど大臣が言われたように、自分の村、自分の町は自分でよくするのだというような考え方からすれば、当然市町村あるいは公共団体の固有事務でなければならぬと思います。ところが、局長によると、一部分委任事務だというお話でございます。この点、私らのどうも納得いたしかねる点でございます。
特に私ら、魚勘事件で、不正事件、スキャンダルにつきまして痛感いたしたのでございますが、国の金であるからして幾らでも出せばいいというような考え方が役人一般には通用しているようです。それが県の金また町村の金ということになる、やはり慎重に取り扱わざるを得ない。スキャンダルもそこらあたりから起こってきておるようです。特に、一たん契約したあとで、選挙に一生懸命やったものについては六人だけ再補償をしておる、ところが、ほかのものは契約書すらも見せないというようなことをやって、理由は何だと言ったら、いや、国からの委任事務でございますので見せられません、こういうようなことが実はやられておるわけでございますので、住民参加という点を特に私は大臣に考えていただいて、あるいは実施面におきましても、あらゆる面においても、個人個人の私権をある程度抑制する法律であるということを御認識の上で、ひとつ住民の利益のために、そしてまた、よりよい町をつくるように努力願うことを心からお願いいたしまして、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/106
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107・加藤常太郎
○加藤委員長 明十八日木曜日午前十時から、都市計画法案、都市計画法施行法案、両案について、農林水産委員会と連合審査会を開会いたしますから、お知らせいたします。
次回は、来たる十九日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時三十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804149X01619680417/107
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