1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年三月十四日(木曜日)
午前十時十六分開議
出席委員
委員長 八田 貞義君
理事 小沢 辰男君 理事 佐々木義武君
理事 竹内 黎一君 理事 橋本龍太郎君
理事 河野 正君 理事 田邊 誠君
理事 田畑 金光君
大坪 保雄君 海部 俊樹君
齋藤 邦吉君 澁谷 直藏君
世耕 政隆君 中野 四郎君
中山 マサ君 増岡 博之君
三ッ林弥太郎君 箕輪 登君
粟山 秀君 渡辺 肇君
井上 普方君 岡本 隆一君
加藤 万吉君 後藤 俊男君
島本 虎三君 多賀谷真稔君
八木 一男君 山田 耻目君
山本 政弘君 本島百合子君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 園田 直君
出席政府委員
人事院事務総局
給与局長 尾崎 朝夷君
文部省大学学術
局長 宮地 茂君
厚生政務次官 谷垣 專一君
厚生大臣官房長 戸澤 政方君
厚生省医務局長 若松 栄一君
厚生省社会局長 今村 譲君
厚生省児童家庭
局長 渥美 節夫君
厚生省保険局長 梅本 純正君
委員外の出席者
文部省大学学術
局大学病院課長 吉田 壽雄君
労働省労働基準
局監督課長 藤繩 正勝君
労働省職業安定
局審議官 道正 邦彦君
参 考 人
(日本赤十字社
副社長) 田邊 繁雄君
専 門 員 安中 忠雄君
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三月十三日
委員加藤万吉君及び島本虎三君辞任につき、そ
の補欠として川崎寛治君及び大原亨君が議長の
指名で委員に選任された
同日
委員川崎寛治君及び大原亨君辞任につき、その
補欠として加藤万吉君及び島本虎三君が議長の
指名で委員に選任された。
同月十四日
委員枝村要作君、島本虎三君、平等文成君及び
八木昇君辞任につき、その補欠として井上普方
君、横山利秋君、多賀谷真稔君及び岡本隆一君
が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員井上普方君、岡本隆一君、多賀谷真稔君及
び横山利秋君辞任につき、その補欠として枝村
要作君、八木昇君、平等文成君及び島本虎三君
が議長の指名で委員に選任された。
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三月十二日
せき髄損傷障害者の援護に関する請願(石田博
英君紹介)(第二四〇五号)
同(粟山秀君紹介)(第二五九七号)
外傷性せき髄損傷障害者の援護に関する請願(
石田博英君紹介)(第二四〇六号)
同(河野洋平君紹介)(第二四〇七号)
同(粟山秀君結介)(第二五九八号)
柔道整復師法制定に関する請願(田村良平君紹
介)(第二四〇八号)
同(竹内黎一君紹介)(第二五一五号)
国立村山療養所の結核病床廃止反対に関する請
願(本島百合子君紹介)(第二四〇九号)
視力障害者の援護に関する請願(本島百合子君
紹介)(第二四一〇号)
満蒙開拓死没者の遺家族援護に関する請願外一
件(小川平二君紹介)(第二五一三号)
戦争犯罪裁判関係者に見舞金支給に関する請願
(進藤一馬君紹介)(第二五一四号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
医師法の一部を改正する法律案(内閣提出、第
五十七回国会閣法第八号)
厚生関係の基本施策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/0
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001・八田貞義
○八田委員長 これより会議を開きます。
厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
本件調査のため、本日、日本赤十字社副社長田邊繁雄君に参考人として御出席いただいております。
質疑の申し出がありますので、これを許します。後藤俊男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/1
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002・後藤俊男
○後藤委員 実は、去年のたしか十一月だったと思いますが、特に滋賀県の大津の日赤病院を、党の調査といたしまして調査に行ったわけでございますが、それにかんがみまして、全国的に日赤病院の運営なり要員の問題、さらに昨年末における闘争の終結の問題、それらを中心にひとつお尋ねをいたしたいと考えておるのであります。
まず第一番に、聞くところによりますと、今日、日赤病院が全国に百前後あると思います。この前、先週のときにもお尋ねをいたしたような次第ですが、労働基準法に基づく三十六条協定、これの締結なしに、一週間に五十時間以上の超勤をやっておられる病院もある、こういうふうなことを聞いておるわけでございますけれども、副社長のほうから、全国に病院が幾つありまして、そこで働いておる従業員の総数が一本どれだけであって、現在どの程度の超勤がされておるか。しかもその病院の中で三六無協定のまま超勤をやられておる病院、これらの情勢につきまして、ひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/2
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003・田邊繁雄
○田邊参考人 お答えいたします。現在、赤十字が経営しております病院の数は、全国で九十四ございます。そこで働いておりまする職員の総数は約二万名強でございます。
そこで、お尋ねの三六協定が結ばれておる病院は幾つあるかと申しますと、五十四でございます。残りの四十はまだ締結を見ておりません。本社といたしましては、すみやかに結ぶことが望ましいので、鋭意締結を督励いたしておりますが、これは一方的にできないことでございますので、せっかく努力中でございます。
そこで五十数時間の超過勤務を三六協定なしにやっておるのはというお話でございますが、ちょっとその前に御説明申し上げますと、赤十字の労働時間は、就業規則によりまして、実働一週間に三十九時間三十分となっております。したがって、これを超過したものは全部赤十字では超過勤務と言っておりますので、労働基準法上の八時間、あるいは御承知のとおり病院事業では労働時間は労働基準法で九時間が認められておりますので、九時間をオーバーした時間が超勤時間ということでございます。したがって、病院では労働許容時間が九時間でございますので、五十四時間までは三六協定がなくても勤務を命じ得るわけでございます。一週間の勤務時間が三十九時間三十分、労働基準法上の許容時間が五十四時間ございますので、一週間に三六協定がなくとも超過勤務できるのが十四時間三十分でございます。こまかい話で恐縮でございますが……。したがって、一月に四週間あるとすれば、大体五十八時間までは三六協定がなくとも超過勤務ができる、こういうことになるわけでございます。
ついででございますから御説明申し上げますが、ことしの二月中に、この五十八時間をオーバーして働いた病院が九病院ございますが、このうち四病院、ごく少数の人は、三六協定なしに五十八時間以上働いております。しかし、これを詳細調べてみますと、三人ないし五人ということでございまして、いずれも、交通災害等による緊急の手術であるとか、そういった緊急の臨時の必要によるものでございまして、これも労働基準法上、こういう場合にはそれをこえて勤務ができるということでございます。なお、この点につきましては、いつ何どきか超過勤務の必要が生ずる病院もあると思いますので、未締結の病院については、せっかく組合あるいは労働者の代表者と交渉いたしまして、三六協定をすみやかに結ぶように督励をいたしてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/3
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004・後藤俊男
○後藤委員 いま副社長が言われましたのは、一週間五十八時間までは超過勤務協定がなくてもできるのだ、こういう説明だったと思いますが、組合との協定におきましては、一日八時間ということで協定が結ばれておるのではないかと思うのです。そうなりますと、それ以上のものについては労働基準法に従って協定を結ばなければ超勤を行なうことができない、こういうことになろうかと思うのですが、私の間違いでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/4
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005・田邊繁雄
○田邊参考人 赤十字の労働時間は一週間に一二十九時間三十分、こう相なっております。それから労働基準法上の労働時間は、御承知のとおり病院では一日九時間と相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/5
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006・後藤俊男
○後藤委員 そうしますと、病院のほうは週に三十九時間半だ、労働基準法では九時間、こういうことになっておるのですが、それなら三十九時間半と九時間との差額につきましては超過勤務手当が支払われておるのかおらないのか、この点明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/6
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007・田邊繁雄
○田邊参考人 労働基準法では、労働基準法で定めた労働時間を超過した場合には超過勤務手当を払わなければならぬことになっております。したがって、一日九時間までの勤務については超過勤務を払う法律上の義務はないのでありますが、しかし赤十字といたしましては、その法律の規定にかかわらず、職員を優遇する見地から、三十九時間三十分を超過した分については、労働基準法の超過勤務に相当する超過勤務手当を支給いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/7
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008・後藤俊男
○後藤委員 そうすると、三十九時間半以上の超過する分については超過勤務手当は全部支払いをいたしておる、こういうことでございますね。
ではその次に、現在におきましても、九十四の病院のうちで四つの病院がいわゆる規則を守らずに超勤が行なわれておる、こういうふうに私、考える次第でございますが、この点間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/8
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009・田邊繁雄
○田邊参考人 先ほど御説明申し上げた点についてあるいはことばが足りなかったかもしれませんが、九十四の病院中、四つの病院が二月中において三六協定なしに超過勤務が行なわれた、しかしこれが法律違反であるかどうか。これは御承知のとおり、先ほど申し上げたような状態の超過勤務でございますし、その超過勤務の実態が先ほど申し上げたようなことでございますれば、これは労働基準法において別個の条文でございますが、臨時、緊急の必要によったものと考えられる点もございますので、これはそういった手続をとればよろしいのじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/9
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010・後藤俊男
○後藤委員 労働基準局の基準局長はおいでになりませんが、課長がおられると思うのです。それで、いま話が出ましたように、日赤病院においては週三十九時間半の勤務時間である。労働基準法では九時間までいけるんだ。いわば労働基準法というのは最低を示しておると思います。ただし副社長の説明によりまして、その差額については超過勤務手当を全部支払っておる、こう言明されますので、その問題についてはそれ以上どうこう言おうとは私は思いませんけれども、ただ現在におきましても、四つの病院がいわば労働基準法できめられたとおりの手続を経ずして超過勤務が行なわれておる。しかもこの四つの中には、私が調べたところによりますと、半年なり一年なり二年ぐらい無協約のまま超勤が行なわれておる。しかもその超勤の時間が一日に三十分なり一時間ならこれは別問題でございますけれども、かなり多い時間、月五十時間、六十時間という超勤が行なわれておるわけでございます。これに対して労働基準局としてはどういうふうにお考えになっておられるか。先ほど副社長も、申請さえすればいいのだ、別な扱いになっておるから、こういうような説明でございますけれども、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/10
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011・藤繩正勝
○藤縄説明員 ただいまお話しの労働基準法三十六条に基づく協定の問題でございますが、そもそも労働時間は、御承知のように一日八時間、一週四十八時間というのが原則でございます。ただ、たとえばいま問題になっておりますような病院、診療所等におきましては、九時間、五十四時間という例外が認められておりますが、いずれにいたしましても、それをこえて超過勤務をすることは例外でございます。できるだけ所定の労働時間の中で勤務をするのが本来のたてまえでなければならないわけでございます。
そこで、その例外を行ないます場合には、過半数の代表と協定を結ぶということと、割り増し賃金を支払うという二つの手段によりまして、できるだけ時間外労働を防ぐというのが労働基準法のたてまえでございます。したがいまして、所定の手続きなしに時間外労働が行なわれているというようなことは、たいへん遺憾なことだと私どもは思っております。
実は、かねがね病院、診療所につきましては、そういう問題が民間等にも見られまして、私どももその点は関心を持っておるわけでございますが、一方におきまして、看護婦の不足というような問題も実際問題としてございますので、そこで、ここ数年来厚生省当局に毎年お願いをいたしまして、法の違反の起こらないように、定員の充足、予算の措置等もお願いを文書でもって出してまいって、逐次改善はされてまいってきておると私どもは考えますが、なお私どものほうの監督を強化すると同時に、そういった措置をそれぞれ講じていただきまして、違法な残業等がないようにしてまいらなければならないというふうに考えておるのでございます発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/11
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012・後藤俊男
○後藤委員 そうしますと、先ほど副社長が言われましたように、四つの病院については、あなたが心配されておるような方向で、いわば法律に従わずに、違法な手続で超過勤務が行なわれておる。これは副社長自体が、四つの病院ではやっております、こういうことははっきり言明しておられるわけでございますが、この現実に違反であるという問題に対しては、日赤としても、さらに労働基準局としても、どういうふうにこの間違っておる問題を処置されるか、この点が問題だと思うわけなんです。いつも、政府のほうといたしましては、法律を守れ、法律を守れ、国労におきましても順法闘争がどうこうというようなお話もございましたけれども、法律を守らぬからすぐ処分するんだというようなことで、いままで組合ができてからでも、違法だ違法だということで処分を受けておる者がかなりたくさんあるのであります。しかも日赤といえば政府に非常に近いところでございまして、その人方が堂々と、四つの病院ではきめられた規則を守らずに、いわば労働者に長時間の超勤をやらしておる。これは現実がはっきりしておるわけなんです。これをどうされるのか、ひとついま申し上げました点をお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/12
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013・藤繩正勝
○藤縄説明員 先ほども日赤のほうからお話がございましたように、臨時緊急の場合に、労働基準法の三十三条の規定によりまして、事前の届け出あるいは事後の届け出というようなことが行なわれておる場合もあろうかと思いますが、しかし、いずれにいたしましても、私どもが二、三臨検、監督をいたしました結果によりましても、やはり違法な残業が見られることは事実でございます。労働基準監督署といたしましては、そのつど所定の手続によりまし是正勧告をいたしておりまして、その結果の報告も求めておるところでございますが、先ほど申し上げましたように、予算その他の問題もございますから、総合的に厚生省にも御協力をいただきまして、改善をしていかなければならないというふうに考えております。そういった措置が講ぜられても、なおかつ直らないというような場合があれば、私どもはさらに法の手続によって処理していかなければならないというふうに思いますけれども、いろいろそういった問題もからむ問題でございますので、厚生省に重ねてそういった措置の充足についてお願いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/13
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014・後藤俊男
○後藤委員 いま言われた三十三条は緊急の場合だと思います。たとえば急病人ができたとか、そういうふうな緊急の場合には協約があろうとなかろうと、そんなものに縛られておるわけじゃない。これは人命に関することだということは私も十分承知しておるわけです。が、それ以外にかなり一カ月に長い超過勤務をやっておられる。この点を私は指摘しておるようなわけです。
そこで、なぜ一体三六協定が結べないのか、この点でございますが、組合は組合、あるいは日赤本社は日赤本社のほうの考え方で意見の対立という点もあるようにも聞いておりますけれども、ただ、先ほど副社長の言われました勤務時間では三十九時間半である。労働基準法では一日九時間だ。だけれども、先ほど副社長は、その差額につきましては超過勤務手当を全部支払う、こういう考え方だということをはっきり言っておられますし、現在においても支払っておるんだ、こういうような説明を私聞きましたので、この三六協定の締結の問題 労使の間でなぜ一体、一年、一年半、二年も無協定のまま今日に至っておるのだろうか、その原因は一体どこにあるのか、この辺をひとつお気づきの点を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/14
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015・田邊繁雄
○田邊参考人 前半のことについては私は詳細わかりませんが、たとえば先ほど御指摘のあった大津病院について申し上げますと、ずいぶん前から三六協定の締結のための交渉を継続しておるのであります。最近におきましては、今月の四日に交渉をいたしましたが、話し合いがつかないのでございます。そのおもなる原因は、組合のほうが各職場ごとに取りきめを行ないたいということで譲らないものでありますので、各職場ごとに話がまとまるというためには相当時間がかかるというようなことで、歩み寄りができなかったと思われるのであります。これはしかし手続に関することでございますので、実態的な点につきましては、私想像することもございますけれども、実情まだ聞いておりませんので、あとでまた調べて御説明申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/15
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016・後藤俊男
○後藤委員 いま私は、なぜ三六協定が結ばれないのだ、この原因についてお聞きしたわけでございますけれども、日赤本社として、日赤の副社長、管理者として、この四つの問題、四つの病院について、いま基準監督署のほうからも言われましたとおり間違った方法で労働者に超勤をやらしておる。これは間違いないと思うわけです。現実に起きている四つの病院については、相変わらずこのままいかれるのか、早急にどういうような処置をされるのか、その点につきましてひとつお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/16
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017・田邊繁雄
○田邊参考人 法律違反をしておるということでございますれば、これはいかなる理由がありましょうとも戒めなければならぬことでございますので、一方において三六協定締結について至急これを督促いたしますと同時に、それが結ばれない間はどこまでも法律を守って違反のないように厳重指導してまいりたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/17
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018・後藤俊男
○後藤委員 いまあなたは、違反するような点があれば、こう言われますけれども、現実にたとえば大津日赤の超勤の実績を調べてみましても、これは組合の調べじゃなしに当局の調べですが、その資料によりましても、間違いなく三六協定がないのに、三十三条にも該当しないのに、かなり五十時間、六十時間の超勤が行なわれておるわけです。これは明らかに違反じゃないですか。違反の行為があれば、これを締結するまでは超勤は一切やりません、こういうように副社長は現在言われたわけですから、そういうことになってまいりますと、はたして病院の運営が成り立っていくのかいかぬのか。そこへ話を進めざるを得ないことになるわけですが、その点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/18
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019・田邊繁雄
○田邊参考人 これは理屈を申しますれば、どうしても三六協定がない以上法律違反になるということでありますので、法律違反をすることは厳重に戒めなければならぬことでございますので、厳重にやらなければならないわけでございます。しかし病院の経営上非常に困るという問題になりますると、これはそのために必要なる要員は充足しなければならぬ、こうなってくるわけでございます。ただ、これはいろいろの事情があると思いまするが、病院全体の場合もございましょうし、やむを得ず臨時勤務という場合が相当あるのじゃないか、特定の人について相当あるのじゃないかと思われますので、さような場合には必ず法律上、三十三条による行政官庁の届け出というものを励行するように指導してまいらなければいかぬのじゃないかと思っております。いずれにいたしましても、お説のとおり法律では三六協定を結ぶことを認めておるわけでございますので、その協定が結ばれた場合においては超勤が認められるわけでございますので、せっかく指導督励いたしまして、すみやかに三六協定が結ばれるように努力してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/19
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020・後藤俊男
○後藤委員 いま副社長が言われました三十三条の拡大解釈というようなことで行なわれるのではなしに、病院という経営の内容なり実態なり、そういう点はあるわけなんです。いま言われたように、この四つの病院については、明らかに法律に違反して今日勤務体制が行なわれておりますから、できるだけ早くこの問題を解決する方向へひとつ全力を尽くしていただきますように、お願いをいたしたいと思います。
それから、その次には看護婦さんの徹夜の問題でございます。私も資料は二、三持っておるわけでございますけれども、現在日赤の九十四の病院の中で、看護婦さんが徹夜勤務をされておるのは、月に一体どれくらいになっておるだろうか、何回ぐらいになっておるだろうか、この点をひとつ資料に基づいて間違いのない御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/20
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021・田邊繁雄
○田邊参考人 赤十字病院の看護婦の勤務体制でございますが、大部分の病院は三交代制をとっております。三交代制の勤務体制は、午前八時から午後四時まで、これは先ほどお述べになりました夜間勤務には関係ございません。その次は午後四時から十二時まで、これは十時から十二時までの分が夜間勤務に該当するわけでございます。それからその次の班が午前十二時から翌朝八時まで、これも明らかに深夜勤務に該当するわけであります。この二つの班でございます、深夜勤務に該当すると申しますと。昨年の五月における全国平均看護婦一人当たり一月の回数は、いずれの回それぞれ五・七回でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/21
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022・後藤俊男
○後藤委員 いま言われた深夜作業というのは十時から夜明けの五時までだと思いますから、三交代ですから、前にひっかかってあとにひっかかる、これらが一回の回数になるわけですね。平均して看護婦さんの徹夜作業は、月平均して五・七だ、それ以上はやっておりません——これは平均の問題ですけれども、そういうことですか。それは間違いないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/22
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023・田邊繁雄
○田邊参考人 それぞれ五・七でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/23
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024・後藤俊男
○後藤委員 それぞれ五・七ということは、一一・四と解釈していいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/24
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025・田邊繁雄
○田邊参考人 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/25
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026・後藤俊男
○後藤委員 そうしますと、これはもう副社長も御承知だと思いますけれども、昭和四十年の新潟県立病院の闘争のときに、人事院が判定を出しております。これは四十年だったと私思うわけですけれども、その判定によりますと、夜間勤務については平均月八日とする、これを大きく上回るということは許せないんだ、少なくとも月八日というのを基準にして、各病院とも全力を尽くしなさい、こういう人事院勧告と申しますか、人事院の判定と申しますか、こういうものが四十年に出ておるわけでございますけれども、四十年、四十一年、四十二年、四十三年になりまして、約三年たっておるわけでございますが、この人事院の判定に対しましては、九十四の日赤病院におきましては、女子の徹夜作業について、このことは全く無関心に、そんなものはおれのところはたいしたことないんだ、おれのところは考える必要はないんだ、こういうふうなことでやっておられるように、話を聞いておりますと聞けるわけでありますけれども、この人事院の判定を一体どういうふうに日赤としてお考えになっておるのだろうか。ただ、これもある日赤病院の資料でございますけれども、多い月には十七回、十八回、十九回という徹夜作業が行なわれております。これは先ほど副社長も言われましたように、五・七というのは二つに割られたものですから、私も迷ったわけですけれども、一カ月に十一・四回の徹夜作業をやっておる。これは平均でございます。多いところは十八回、十九回——二十回というのはいまのところございませんけれども。ところが四十年の人事院の判定では、月に八日にしなさい、それ以上女の人を徹夜させるということはあらゆる面に影響がある、こういう判定が出ておるわけなんです。そうだとするのなら、これらを尊重されたとするのなら、それに従って改善を行なわれるのが私は当然ではないかというふうに考えるわけでございますが、これに対してどういうお考えかお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/26
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027・田邊繁雄
○田邊参考人 人事院の勧告については承知をいたしておりまするし、また女子の健康管理の上から言いましても、深夜勤務が多いことは決して望ましくないということも十分承知いたしておるのでございますが、ただ赤十字のように看護婦が一〇〇%以上充足しておるところにおいても、なおかつさような勤務にならざるを得ない実態でございます。
ついでに御参考までに申し上げておきますが、赤十字における看護婦の充足率は、昨年の十月現在で調べておりますと八千百七人でございます。これは看護婦が五千八百六十八人、准看護婦が二千二百三十九人、看護助手を入れないでそうでございます。それで、定床のほうから申しますると、十月における実働の病床は二万四千八百床ということになっておりますので、外来及びこの実働病床数に対応する医療法上の必要要員というものは、看護助手を除きまして七千五百五人でございます。うちの場合は看護助手がそのほかに相当数ございます。これを入れればもっと大きく、一万人以上になるのでございますが、看護婦と准看護婦だけでも六百二名の超過になっております。そういうところであっても、三交代制の先ほど申し上げたような体制で行なう限り、平均このくらいにならざるを得ない実情でございます。
われわれといたしましても、何とか深夜勤務の回数を減らそうとしていろいろくふう研究をいたしました。たとえば二時間ずらすわけです。十時から翌日の朝六時までにする。そうしますと、超過勤務は先ほど申し上げた半分で済むわけです。ところが、これでありますと、交代時間が深夜にかかって非常にぐあいが悪い。女子の健康管理上、また女子の生活上、現在より一そう悪くなる、こういうことがわかったわけでございます。また変則的な交代制ということも考えられる。一方は短くし、一方は長くするということも研究しました。赤十字以外のところでも研究しましたが、これも健康管理上問題がある。そこでやむを得ず先ほど申し上げたような体制に落ちついておるわけでございます。
ついでに申し上げますが、ただいま御指摘になりましたような人事院勧告どおりに、一カ月に八回ということに限定いたしますと、看護婦の数は四ベッドに一人という割合でなしに、二・五ベッドに一人、こういうふうに定員を増加せざるを得ない、こういうことになるわけであります。われわれといたしましては、できる限り看護婦の夜勤回数を減らすようにくふう、努力、研究はいたしますけれども、将来の課題といたしまして、現状におきましてはこの程度であることがやむを得ないのではないかと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/27
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028・後藤俊男
○後藤委員 いまから二、三年前だと思いますが、看護婦さんなり女子の深夜作業に対する人体に及ぼす影響についての調査が行なわれたと思います。これらなり、さらにはそのほかのいろいろな情勢を考えまして、昭和四十年には、人事院として、女の人を徹夜させる場合には大体これくらいが妥当である、これ以上はやらさないようにせなければいかぬ、こういう判定が出たものと私は解釈しておるわけなんです。その当時争議をやっておりました新潟の県立病院におきましては、昭和四十三年までには徹夜作業を十回にする、昭和四十五年には大体判定どおりのところへ持っていこう、こういうような計画まで話がされまして、あの争議は解決したと私は考えておるわけでございますけれども、それほど女子の徹夜作業に対する衛生上の調査なり、さらに人事院がこれが一番よかろうという判定を出しておる。にもかかわらず日赤におきましては、月に八回というのが基準であるというのに、十八回、十九回も深夜作業を行なわせておる。これはいま副社長の説明によりますと、病院の運営上何ともいたし方がない、いたし方がないからこれは労働者にしわ寄せしておくのだ、そのしわ寄せがこのまま続いていくのだ、できるだけ努力はしたいと思うけれども、いまのところはいかんせん何ともしかたがない、こういうような説明だと私は考えておるわけでございますが、これに対して、厚生大臣も幸いおられますが、いま申し上げました問題につきまして、厚生大臣としてはどういうふうにお感じになり、しかも当面の問題としてどういう方向へこれを進めるべきだろうか。いわば人事院の判定にも沿うことができずに、七、八回がよかろうというのが二十回近くの深夜作業が行なわれておる、女子職員の人体をむしばまれるそういう方向へ、いま日赤の経営の中におきまして看護婦さんを中心に行なわれておるわけなんです。これは一刻も早く直さなければいけないし、さらに人事院の判定の方向へ早く善処しなければいけないというふうに私は考えておるわけです。これに対して大臣の御見解をひとつ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/28
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029・園田直
○園田国務大臣 これはただいまのあなたの御質問の経緯においていろいろわかってまいりました。当初から日赤に対する私の考え方は、一つは、日赤というものが非常に使命が逐次変わってきておるが、特に今日の国際情勢下において日赤の持つ使命は大きい。したがって、政治的な干渉を与えないように注意しなければならぬことが一つ。もう一つは、しかしながら、私のところに参ります投書、あるいは新生児の事件、いろいろの事件等が起こりますのは、日赤の病院が一番多うございます。そういうことから、理由は那辺にあるのか、いろいろ各方面の御意見を承り、あるいは看護婦の一部の方々の御意見等も聞いてみますると、やはりいま質疑の中の経過でいろいろ出てまいりましたように、これは原因はやはり日赤経営の総ワクの問題にあると思います。
一つは、日赤が特殊な使命を持っておることは御承知のとおりでありまして、公衆衛生の環境の改善あるいは救急等を持っておるにもかかわらず、その財政が戦前と違いまして窮乏を告げておる。したがって、ややもすると病院の収支の中からそれが吸い上げられるようなおそれがあるのではないか。したがって、病院経営としても無理な中に経営をしておるのではなかろうか。そういうわけで、第一には、看護婦さんその他の職員が過重な勤務になっていることも非常に大きな原因である。なおまた看護婦さんの中にも、いろいろ意見を聞いてみますと、非常に無理をして定員を充足したために、その質の中にいろいろ無理をして入れたようなものがあるということも聞いております。そういう観点からして、幸い新しく人事が変わり、近く新しい社長が任命される時期でもありますから、この際厚生省と日赤と十分検討と懇談の機会を設けて、これを契機に、看護婦配置の基準がこれで適正であるのかどうか。あるいはいま御質疑の中に出てまいりましたいろいろな問題点について、職員が安心していけるような環境にあるのかどうか、あるいは政府がこれに対していままでどおりの公的補助でよろしいのか、あるいは経営はどうか、こういう点をひとつ総合的に、体系的に、いままでおっしゃったような具体的な事実を基準にしながら、正しい方向へ切りかえていかなければならぬ時期である、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/29
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030・後藤俊男
○後藤委員 いま大臣から大体総合的に、日赤病院の経営なり要員の問題なり、あるいは財政的な問題なりでかなり無理をしておるのではないか。これをひとつ、国鉄の経営状態じゃございませんけれども、根本的に検討して、幸い社長がかわられた時期でもあるので早急にやりたい、こういうふうな説明だったと私聞いておるわけでございますが、聞くところによりますと、昨年でありますか、日赤事業の振興懇話会の答申が出たと思います。この答申というのは、いま厚生大臣も言われたようないろいろな心配があるものですから、懇話会として日赤に対して今後こういうふうな方向へいくべきではないか、こういう答申ではないかと私は想像しておるわけでございますけれども、そうなりますと、懇話会の答申そのものはこれからの運営の基礎にもなるような気がしますので、重点だけでけっこうでございますが、その懇話会の答申の内容をひとつ御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/30
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031・田邊繁雄
○田邊参考人 懇話会の研究項目の一つの大きな柱として「赤十字病院の経営方針について」というのがございます。ずいぶん御勉強なさったのでございますが、その意見の概要を、要約したものがございますので簡単に御説明いたします。
第一は、赤十字病院としての特色の発揮ということでございます。その特色といたしましては、各般の救護業務、災害であるとかその他の救護業務それから看護婦の養成、その他新興国などに対する医療協力、僻地診療、交通災害、こういうものをあげております。
それから第二番目には、赤十字において経営しておるその病院の範囲、これについて意見を述べております。現在赤十字社が持っておる病院の数は、開設者としての責任能力の限界を越えているように思われる。これらの病院の全部が必ずしも赤十字の基本的任務を達成するために必要不可欠なものとは考えられない。中には赤十字社の負担となっているものも見受けられる。もちろん当該地域の住民の必要に応じて行なう市民病院的役割りも重視しなければならない面もあるが、でき得れば、必要に応じ地元の地方公共団体等への経営の移譲を行なうことを考慮すべきである。
それから三といたしまして、国及び地方公共団体からの財政援助その他であります。現在、赤十字社の行なっている看護婦養成であるとか災害救護業務というような事業は、いわば国家的な事業でもあり、かつは赤十字病院が当該地域において果たしている公共的な役割りでもあるのにかんがみ、国及び地方公共団体は、これらの事業に対し積極的な財政援助を講ずべきである。財政援助というのは病院の施設整備に対する建設資金の援助、こういう意味でございます。二番目は、外に向かって財政的援助を要請するためには、赤十字病院自体としてもまずその姿勢を正しくし、全員一致協力して病院運営の健全化、合理化にあらゆるくふうと努力を払うべきである。三番目に、各病院は、その事業が赤十字病院の名のもとに運営されている以上、現在行なっている病院相互間に相互援助の方途をさらに強化するようにくふうする必要がある。
以上述べられた諸方策とその指向する赤十字病院のあり方については、それが政府の病院行政の一環をなす面があるので、その実現は政府の病院行政と離れては考えられない。この際政府に対して、すみやかに病院行政の基本方針を確立して、上述の諸施策の実現に協力していただくようにお願いすべきである、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/31
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032・後藤俊男
○後藤委員 そうしますと、先ほど大臣が言われましたけれども、この懇話会の答申なるものは去年の十月に出ておりますから、医療を中心にして早急にひとつ検討をしたい、こういうふうなことだと私は思うわけでございますけれども、そういう方向で解釈してよろしいんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/32
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033・園田直
○園田国務大臣 御意見のとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/33
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034・後藤俊男
○後藤委員 先ほど、看護婦さんの徹夜作業の問題なり超勤等の問題につきましても触れたわけでございますが、これは大臣なり副社長も十分御承知だと思いますけれども、今日九十四の職場の中で、かなり多くの職場では有給休暇すら消化できない。代休の消化だけがやっとである、こういう職場もかなりあるわけなんです。これは一々申し上げませんけれども。これもやはり要員不足だと思います。いまから二年前でございますか、大津の日赤におきまして赤子の取っかえ事件がありました。さらに表面には出ておりませんけれども、かなり人命に影響するような問題が起きておることも内々御承知だと私は考えておるわけですけれども、これらの問題もともにその中の一部として早急に考えていただく必要があろうと思うわけなんです。
現在、日赤におきましても看護婦の養成は行なわれておると思いますが、大体昭和四十三年度として、この看護婦の養成計画なり、さらにその養成の費用については、一体どこが負担しておるのだ、こういう点について御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/34
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035・田邊繁雄
○田邊参考人 四十三年度における養成計画の概要でございますが、短期大学が二カ所、それから高等看護学院が三十八カ所、一カ所は両方が過渡的にダブっているものでございます。合計三十九カ所の看護婦養成、施設があるわけでございますが、採用人員は九百十九名を採用する、四十三年度における卒業者の見込みは八百六、七十名、全体として実際養成する看護婦の総数は三千名程度であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/35
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036・後藤俊男
○後藤委員 養成の費用はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/36
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037・田邊繁雄
○田邊参考人 費用につきましては、これは病院の負担としない、赤十字の支部のほうでこれを負担するというのが原則でございまして、一部は病院が負担するということになっておったのでありますが、その割合がだんだん病院のほうに多くなっておりまして、現在はおおむね四分の三程度のものは病院だ、四分の一が赤十字社の一般の財政から支出の負担をする、こういう情勢になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/37
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038・後藤俊男
○後藤委員 いまの副社長の説明はまことに真正直な御説明でございまして、昭和四十年度には看護婦の養成をする費用が四億円要った。ところが、四億円のうち、独立採算制で非常に困っておる病院が三億負担したわけなんです。四分の一の一億円だけは病院に負担させない、こういう四十年度の実績が示しておるわけでございますけれども、それなら一体いま副社長が言われましたように、原則として病院に負担をかけない。これは原則というのはどういうふうに解釈するといいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/38
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039・田邊繁雄
○田邊参考人 赤十字における看護婦養成事業という意味がだんだん変わってきているわけでございます。当初は病院においての看護婦の要員を養成するという意味が少なくて、いわゆる一般の救護看護婦を養成するという部分が非常に多かったわけでございます。最近におきまして、実際問題としては当該病院等における要員を養成するという面が多くなっておりますので、つまり看護婦養成によって受ける病院の反射的利益と申しますか、そういうことが多くなっておりますので、自然反射的利益が多くなるにつれて病院のほうに自然ウエートがかかるようになってきた、こういうことでございます。たてまえといたしましては、支部においてその費用を出す看護婦の数、それから病院において経費を負担する看護婦の数というのをきめまして、それぞれ分担いたしておりますが、それは看護婦さんに必要な諸経費でございます。そのほかに学校を経営するための職員経費がございます。それは当該病院において負担するということになっております。先ほど原則と申し上げましたのは、これは少し強過ぎたかと思いますが、原則的には病院にあまり負担をかけないでいきたいという主張を言ったのでございまして、そういう方針をはっきり確立して制度上にそういうふうに扱っているということではございません。独立採算制をとっている病院でございますので、看護婦養成までも当該病院のその保険の単価の費用の中から出させるということは、これは非常に酷なことでございますので、できる限り病院の負担を軽減して支部の経費において負担することはもちろんでありますが、国または公共団体等からの援助も一部お願い申し上げておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/39
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040・後藤俊男
○後藤委員 病院の財政的なあり方につきましては、私はあまり詳細には知らないわけでございますが、九十四の日赤の病院は独立採算制でやられておる。その中の収入の千分の二が日赤本社に入る。これは間違っておれば御訂正願いたいと思うのですが、そういうようなことを私聞いておるわけでございます。そういうふうな面から考えていきますと、いま副社長が言われましたように、昭和四十年度には四億のうち三億まで病院に苦しい負担をかけた、あとの一億はそれぞれ心配するところで心配しているんだ、ところが、原則としては各病院には負担をかけないのが原則である。これは言い方の表現が悪かったかもしらぬけれどもという条件つきのことばでございますけれども、それならば、昭和四十三年度についてはもちろん看護婦の養成計画があり、これらに対する財政的問題も全部予算ができておると思うわけでございますが、いま言われたような気持ちの上に立ちまして昭和四十三年度の養成計画が立っておるかどうか、この点をひとつ御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/40
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041・田邊繁雄
○田邊参考人 昭和四十三年度の看護婦養成計画におきまする財政的な面につきまして、いま詳細に説明申し上げる材料を持っておりませんが、別段従来と大きく変わった点はないと思います。先ほど私の申し上げましたような程度の財政負担が、病院の負担になると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/41
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042・後藤俊男
○後藤委員 それで、いままでどおりの考え方で各病院に四分の三くらいの負担をかけることに結果的になる、こういう考え方でございますけれども、これは各病院が独立採算制であり、原則としてこういう考え方でおるんだけれども、今日こうなってしまった、こういう説明だと思います。いろいろ財政的な配慮から考えてみますと、まことに苦しい病院のほうへの財政的負担というのは、とにかくできるだけ少なくしていただく、この方向へひとつ昭和四十三年度も全力を尽くしていただく、こういうことでお願いしたいと思うわけです。
それから、その次の看護婦さんの定員の問題でございます。私は全く過去の歴史というものを知らぬわけでございますけれども、患者四名に一人ということが定員らしく言われておるわけですけれども、四名に一人というのは何を根拠としてこういうものをはじいたのか、その点、簡単でけっこうでございますけれども、ひとつ説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/42
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043・若松栄一
○若松政府委員 その四名に一人という基準は医療法の施行規則で定められておりますので厚生省からお答え申し上げますが、これは医療法の施行されました約二十年前にきめられたことでございます。これはきめられた当時におきましては、大体当時の実態ということが基礎になってきめられたように承知しております。これが科学的な根拠、積み上げというものがないということは確かでございます。これが現在でもなお正しいかどうかということについてはいろいろ議論がございます。ただ、これは標準でございまして、絶対的な基準ではございません。したがって、現実には四対一よりもはるかに多くて三対一の程度の病院もございますし、結核療養所等においては大体五対一、精神病院等においては大体六対一というのが現実の標準になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/43
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044・後藤俊男
○後藤委員 いま言われたように、別に科学的根拠はない、戦争が済んだ当時の実態に合っておるという説明ですけれども、何か仄聞するところによりますと、戦争が終わった当時、患者の数を看護婦さんの数で割ったら四が立った、だからこれは四人に一人でよかろうということが、二十何年たちました今日も依然として続いておる。だからこれは当然再検討する時期にきておると私は思うわけです。しかも、いまから半月か一カ月前でございますか、新聞でちらっと見たわけでございますが、園田厚生大臣になられてからですけれども、出産の場合には、親子でございますから、実質においては八名に一人のような形になるわけですね。これらについてはひとつ検討するのだというようなことを、十分読みませんでしたが、そのようなことが書いてあったような気がするわけでございますが、いずれにしても、四名に一名という基準は、大東亜戦争が終わったころ、患者の数を看護婦の数で割ったら四が立ったので四名に一名ということで、全く科学的根拠もなければ何もないものが今日も依然として続けられてきた。だから、もう再検討する時期にきている、これは間違いないと私思う次第でございますが、この子供が生まれた場合の定員の問題、これはやはり赤子の取っかえ事件にもかなり影響があるのじゃないかというふうな気もいたしますので、大臣は先ほど懇談会でひとつしっかりやるわいと言われましたが、それまでの問題として、当面いま申し上げました問題をいかにお考えであろうか、これをひとつお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/44
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045・園田直
○園田国務大臣 新生児については、御承知のとおりに、患者としてただいままで扱われておりません。お産をしたおかあさんの付属物として扱われておるわけであります。この点は、看護婦の勤務の過重という点から言っても、新しい生命を持って生まれてきた子供さんに対する態度から言っても矛盾でありますので、医療法施行規則を改正して、新生児も患者に数えることにただいま準備をしておるところでございます。
なおまた、いまの基準の四名に一人という数字も、すでに二十年を経過いたしております。昨日も御意見が出ましたが、ほかの場所では、近代化されて設備ができてまいりますと人手が省けるわけでありますが、医療においては、医療技術が進めば進むほど、看護婦さんの仕事はふえてくるし、数も多くなるわけでございますから、これは当然検討しなければならぬ時期であると考えておりますが、率直に言って、これは財政上の問題と看護婦さんの定員を充足することに苦心している結果、そのワクにはめられていままで押し流されてきたものだ、このように考えておりますが、いずれにしても、やはり現実は現実として検討すべきものは検討し、そしてのその検討の方向に向かって財政的その他の問題を打開する方向に進みたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/45
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046・後藤俊男
○後藤委員 そうしますと、いま言われました産婦の問題なり四名に一人という定員基準の問題につきましても、財政的な問題もあろうけれども、早急にひとつ検討する、そういうふうに解釈してよろしいわけですね。
それから、その次には、昨年の十一月でございますか、日赤労働組合と日赤本社の間で、ベースアップ等の問題で中労委の調停案が出ておると思うわけです。この中労委の調停案は大体三項目からなっておると思うわけでございますが、この調停案は日赤本社も受諾をされたわけです。受諾された以上は、調停案を完全に実施をする、わかりました、こういうことで受諾をされたと私は解釈しておるわけでございますが、第一項目から第三項目まで、これは最終的にはやはり組合と団体交渉をやってきめるという事項もあろうと思いますが、完全実施という方針のもとに組合と団体交渉をやってこれを御決定なさるという気持ちであるかどうか、ひとつお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/46
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047・田邊繁雄
○田邊参考人 大体そういう気持ちでやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/47
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048・後藤俊男
○後藤委員 そうしますと、この第一項の中でございますけれども、公務員と同じようにベースアップについては十月一日より実施をする。ただし——ただしとは書いてありませんが、「熊本、長浜の二病院については遅くとも十二月一日よりとすること。」これは二ヵ月ずらしてあるわけなんですね。もうちょっとはっきり申しますと、九十四ある病院の中で九十二だけは十月一日からベースアップしなさい、ところが、いま申しました熊本、長浜だけは、どこに何があるのかわかりませんけれども、十二月一日までおまえらしんぼうせい、おまえらも同じ仕事をしているけれども、おまえのところは上げるわかにいかぬ、こういうような中身になっておるわけであります。調停案が出る以上は、やはり日赤本社の意向も十分説明されて、その上に立ってこういうような調停案が提案されたと私は解釈しておるわけでございます。この二つの病院が、こういうふうな落差をつけて調停案が出された、このことに対する根拠をひとつ御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/48
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049・田邊繁雄
○田邊参考人 財政状態が思わしくないのでベースアップの時期をおくらしたものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/49
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050・後藤俊男
○後藤委員 そうしますと、この熊本、長浜はいわば病院として赤字だ、赤字の責任はおまえらにあるんだ、だからおまえらの手当は二カ月ずらすよ、こういうふうに解釈していいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/50
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051・田邊繁雄
○田邊参考人 これは十二月一日からすでに調停案のとおり実施いたしております。赤十字本社といたしましては、でき得る限り実は一斉に実施いたしたいのでございます、ただ、先ほど申し上げましたとおり、赤十字病院の全体的構成というのは非常に複雑でございまして、明治十九年に病院ができまして以来逐次発達してきた経緯、しかも大部分が都道府県病院あるいは公立病院を移管した、そういう地方的事情に基づいて移管になった関係上、一口に申しますれば、きわめて複雑な過程を通って、主として地方の発意に基づいて病院が設立されておる。しかも、病院の建設あるいは改築、設備の整備に要する資金というのは、ほとんど全部が地元の資金によって建てられております。この点がいわゆる他の公的病院と全く性格の違う点なんです。
赤十字といたしましては、病院の開設者でございますけれども、先ほどの答申案にもありましたとおり、病院の開設者としての責任能力を果たしているかということを考えておるわけであります。すでに開設者としての資格なり責任を果たすだけの能力があるのかどうか、常に反省しながらやっておるわけでございますが、そういう過程でございますので、三十六年の大争議のときの中労委の裁定におきましては、ベースアップのできる病院はベースアップを所定の期日どおりにいたしました。できない病院は労使双方相談の上で若干おくらせることもやむを得ない、こういう裁定があったわけでございます。その後赤十字社といたしましては、でき得る限りベースアップの時期も公務員に近づける。当初は半年くらいの差があったのでありますが、現在は二カ月程度に縮まっておるわけであります。また、当初は相当多数の病院が同時に一斉にベースアップからおくれていたものも、だんだん督励いたしまして、努力いたしまして、今日はごくわずかの病院になっておるわけでございますが、独立採算制というたてまえを基本といたしております関係上、いままではこういうことになるのもやむを得なかったわけでございます。私どもとしましては、来年以降におきましては、勧告も出ておりますので、一斉にやらざるを得ない。そうなりますと、どうしても実施の時期というものも若干おくれざるを得ないのじゃないか、その間をどう調節していくか、その点を苦慮いたしておるわけでございますが、ただ、私ここで申し上げたい点は、独立採算制をとっておるということからくる必然の結果でこういうことになったということで御了承いただきたいと思います。
〔委員長退席、佐々木(議)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/51
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052・後藤俊男
○後藤委員 そうしますと、九十四の病院のおのおのの病院で独立採算制でやられておるから、非常に黒字のところは出せるけれども、赤字のところは出せない。もう少し極端なことを申しますと、黒字の非常に多いところは大体平均でしんぼうしてくれ、赤字のところはちょっと遠慮してくれ、一口に一言ってこういうようなかっこうになっておるように思うわけです。各九十四の病院の経済内容が一律ではないと思いますし、ここに書かれておりますところの熊本と長浜につきましては、ベースアップを二カ月分おくらされた。これは、おまえのところの経営内容が悪いからおくらされたんだぞ、普通なら二カ月前にベースアップになるのを二カ月伸ばされたということは、副社長が言われましたように、経営内容が悪いからだ。それなら経営内容の悪いというのは一体だれの責任か、おまえらにも責任があるんだ、だからおまえらも二カ月間しんぼうしろよ。表現のしかたはいろいろあろうと思いますが、そう言っても私は間違いないと思うわけです。それなら、その経営内容の赤字の根源、原因というのは一体どこにあるんだ、ここまで徹底的に追及されまして、なるほどそこで働いている職員に原因があったんだ、こういうようなことになるとすれば、あなたの言われることも一応の筋として私は通ると思うわけでございますが、いずれにしても九十四の病院はりっぱな管理者がおられまして、その人が管理、運営を全部行なっておられると思います。その結果、赤字になったからおまえのところは二カ月間延期だ、こういうふうなことにつきましては、どうしてもなるほどそうかという気持ちにはなれないわけです。これも昨年だけではなしに、過去にもそういうことがあったように私は聞いておるわけでございます。
そこで、いまの説明ではどうも納得ができませんが、昭和四十三年度につきましては、相変わらずいままで考えたような方針で、経営内容そのものがいわゆるベースアップの実施期間にまで影響してくる、こういうことになるのかならないのか。さらに熊本と長浜につきましては、十二月一日から実施されたんですから、あとの九十二の病院は十月一日から実施されておると思うのです。なぜかといえば、おまえの病院は赤字だ、これはおまえらの責任だから引くんだぞ、こういうふうなやり方でございますが、こういうやり方がいいか悪いか。正しい、間違いないと副社長は相変わらずお考えになっておるかどうか、この点の御意見をもう少しお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/52
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053・田邊繁雄
○田邊参考人 一口に病院を経営していると申しましても、経営主体の性格によって、家庭の事情に入ってみますといろいろなことがございます。私も若干他の病院を知っておりますが、全額まるがかえの病院の場合と、それから全部自分でやっている場合、しかも自分でやっているのでも、非常にたくさんの病院をかかえているものなどいろいろであります。済生会の病院であるとか赤十字の病院のような場合には、その設備資金は全額自己調達でございまして、その調達の中には、国または直接地元の地方公共団体からの援助というのをだんだんふやすようにしております。そこで、そのまるがかえの病院のほうには非常に長所があるわけでございます。確かにそれは開設者の責任を完全に果たしておるわけでございますが、同時にそれにも弊害がございます。赤十字病院は公的病院でありながら、本部のほうからは何もしてやらないで、自前で全部やれというやり方は、決していいことじゃございません。しかしこれはやむを得ないのです。赤十字で病院を持っている以上は、開設者として金がなければどこからかもらってくる知恵とくふうと努力をしなければならぬと思います。今日赤十字がかなりたくさんの病院を持っている姿がいい姿だとは私は決して思いませんが、だからといってほうっておくわけにはまいりませんので、現状に即してできるだけの努力をやっているわけでございます。
そこで、赤十字の場合は、独立採算制を基本としながら、同時に病院相互間の助け合いと申しますか、相互扶助の道を開き、だんだんこれを強化するということが赤十字病院の将来及び現状、それから赤十字社の病院の開設者としての能力に最もマッチしたやり方ではないかと私は考えておりますし、またそう思っております。また各方面ともそういうふうになっておるわけでございます。それにはやはりみんなで努力をしなければいかぬ。努力をしている過程において他がこれを援助してくれる、これが病院の立ち直っていく現実の姿でございまして、これは審議会の答申でございます。その結果、今日御承知のように、病院の中でベースアップができない病院がだんだん減ってきた。二病院というのは今日までの間で最も少ない数だと思いますし、またベースアップの時期も非常に国家公務員並みに近づきつつある、こういうことでございます。私どもは、来年度、四十三年度以降におきましては、これをゼロにするという目標のもとに努力をしてまいりたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/53
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054・後藤俊男
○後藤委員 日赤といたしましては、先ほどもお話がございましたように、経営のあり方なり要員の面なり、その他かなり問題の点があろうと思いますし、さらに大臣も言われましたように、非常に無理した独立採算制のような形になっておるのではないか、こういう点もあろうと私思うわけでございます。ただしかし、日赤病院は全国で九十四病院ありますが、少なくともベースアップの問題なり手当の問題くらいは、同じ時期に、同じような方向で上げるように持っていくのが、日赤の経営のあり方から考えてみましても一番いい方法ではないかというふうに私感じるわけでございます。これからの問題といたしましては、おまえのところは赤字だからこうだ、おまえのところは黒字だからこうだ。腹の中では、あなたもそういうことをやりたいと思っておられないけれども、万やむを得ずそうなってしまったのだということかもしれませんが、その点も十分考えていただいて、今後こういうことのない方向へ力を入れていただくように、ぜひお願いをいたしたいと思う次第です。
それからその次の第二項目でございますけれども、いわゆる賃金の低い人の問題です。組合のほうとしては一万八千円、日赤本社のほうとしては一万五千七百円でございますか、これらが基準として団体交渉が行なわれておるだろうと思います。先ほど副社長も言われましたように、調停案は完全実施する方向で団体交渉をしてきめる、この方針だけは明確にされましたので、第二の問題なり第三の「わたり」の問題につきましても、ぜひひとつ完全に実施をしていただく方向でお願いをいたしたいと思います。
そこで、私一つお尋ねいたしたいと思いますのは、先ほどから副社長も、各九十四の病院が独立採算制だ、いままで日赤としては、さっきからとやかく言いましたような方向の労働問題の扱いをされてきた。それなら、ベースアップの問題なり手当の問題なり昇給昇格の問題については、独立採算制の各病院の支部で団体交渉できめるのか、あるいは本社のほうで団体交渉をやってきちっときめるべきものであるのか。団体交渉の単位と申しましょうか、それは一体どういうふうなお考えで今日おられるのか、御見解を聞きたいと思います。先ほどからの副社長の説明によりますと、九十四が全部独立採算制でやっておるのだ、おまえのところは赤字だから二カ月も延ばされるというような結果が出ておる。そのことに対する団体交渉は本社でやるのか、支部でやるのか、この点を明確にしておく必要があろう、こういうふうに思いますから、お尋ねするわけでございます。
〔佐々木(義)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/54
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055・田邊繁雄
○田邊参考人 赤十字は大きな組織でございますので、病院の経営につきましても、本社の権限、支部の権限、病院長の権限あるいは責任と申してもよかろうと思いますが、そういうものをはっきりきめております。理論的に申しますれば、本社の権限ないし責任に属する事項については本社に、病院長の責任と権限については病院長に、こうなるわけでございます。いわゆるベースアップ、具体的に申しますれば、俸給表の切りかえ、それの適用ということは給与規則の問題でございますので、当然本社でございます。それから昇格の問題等、これも給与規則の問題でございますので、当然本社でやるわけでございます。ただ賞与に属するものは院長の権限になっておりますので、賞与額の決定は各病院でいたすことに相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/55
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056・後藤俊男
○後藤委員 そうしますと、ベースアップの問題なり手当等の問題については本社に権限があるのだから本社の団体交渉できめる、各地方の病院に属することは病院の団交できめるのだ、こういうふうに解釈すべきことをいま副社長は言われたのですけれども、そのことは間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/56
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057・田邊繁雄
○田邊参考人 何が地方で行なわれ、本社で行なわれるかという具体的なことについては、先ほど申し上げたとおりでございます。手当と申しましてもいろいろなものがあると思いますので、基本線は先ほど申し上げたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/57
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058・後藤俊男
○後藤委員 いま副社長が言われましたように、手当といっても、夏期手当とか年末手当とか、一般的なものをさして言ったつもりでございますけれども、これはことば不足でございますが、そういうベースアップ等の問題につきましても、各支部は各支部でやはり団体交渉をやると思うのです。ところが本社のほうから、おまえのところの病院がいかに黒字であろうとも、ことしはこれ以上出してはいかぬぞというようなことを制限されるような方向で労使の問題を指導しておられるようにも聞いておるわけなんです。これは間違いかもしれませんけれども……。労使の問題についての団体交渉について最終的には本社が権限をお握りになっておるということでございますが、九十四の病院は独立採算制でありますし、いわばその中心は各病院が握っておるような形になると思います。その上に本社があって世間をにらんで、おまえのところはだいぶ黒字だけれども、これ以上出したらほかの病院に影響するからあかんぞというような場合もあるかもしれませんけれども、その辺のところは、ひとつ今後の問題として間違いのない、正常な労使関係の指導をお願いいたしたいと考えます。
その次には、昨年か一昨年でございますか、現在も海外派遣が行なわれておると思うわけです。タイの北東地方のゲリラ戦の非常にあぶないところではございませんけれども、その付近のスリサケ県のスリサケというところへ、日赤病院関係のお医者さんなり看護婦さんが六名ないし七名派遣されて仕事をしておられる。半年ほどおられて帰ってこられる。この報告の内容も、私簡単に読ましていただいたわけでございますが、現在、一体どうなっておるのか。しかもこれはどういう任務を帯びて派遣されるのか。一体その性格は何であるか。この点を中心に御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/58
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059・田邊繁雄
○田邊参考人 特に申し上げますと、実はただいまお話しになったような海外への診療団の派遣というものは、赤十字が主体となっておるものではございません。これは御承知のことと思いますけれども、政府の委託を受けて実施いたしておりますのは、海外技術協力事業団、こういう団体がございます。外務省所管の団体でございます。そこが政府の委託を受けまして、主として東南アジアの開発途上にある諸国への診療班の派遣ということを実施いたしておるわけでございます。これは技術協力という意味において実施いたしておるわけでございます。事業団としては、この診療団を海外に派遣しようとする場合は、派遣する先の現地調査を十分に行ないます。あらかじめ予備調査班というものを現地に派遣いたしまして、向こうの政府なりあるいは現地の関係各方面と十分折衝を遂げ、調査もいたしまして、そうしてこれならばやれるという見通しをつけてその計画を確定するわけでございます。その上で赤十字あるいはその他の医療機関もあると思いまするが、そういう医療機関に対しまして診療要員の推薦方を依頼してくるわけでございます。それで、赤十字といたしましては、そういう海外への医療協力ということは、赤十字社の使命なり趣旨にも合致しておりまするので、希望者を募りまして適任者を選定して推薦する。したがって、要員は身分関係におきましては、海外技術協力事業団の職員のようなものとなって派遣されるわけでございます。
今日まで赤十字はかような方針で実施してまいりましたし、今後もそれに協力する考えでございまするけれども、ただいま、ちょっと行った人たちの間に何か非常に不平なり不安があるようなお話でございますが、私どもが聞いたところでは、別段生命の危険があるわけでなし、まあすこぶると申しますか、大体において快適であった、こういう報告を受けているわけでございます。したがって、その報告を聞いた他の診療機関の方々も、もし将来われわれのところに行かないかという勧誘があった場合には行こうではないか、そういう機運も相当出ておるように聞いておるわけでございます。しかし、御指摘の点は大事な点でございますから、十分注意して、派遣要員を推薦するにあたって留意してまいりたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/59
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060・後藤俊男
○後藤委員 いま現在はどうなっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/60
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061・田邊繁雄
○田邊参考人 現在は第三次の派遣でございまして、これは半年交代でございます。全部名古屋の赤十字病院から派遣されております。外科医師が一人、内科医師が一人、衛生検査技師が一名、それからレントゲン技師が一名、合計四名でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/61
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062・後藤俊男
○後藤委員 そうしますと、いま説明がございましたが、少し私わかりませんのは、たとえばいまの説明ですと、政府のほうからひとつベトナムへ行ってくれぬか、こういうふうな話が日赤へ来た場合には、そうかということで日赤で相談されて、やろうということになるとやれぬこともないというようにも解釈ができるわけでございますけれども、その日赤につとめておられる病院の先生なり看護婦さんが、たとえばスリサケへ行かれたのは六人でございますが、どういう規則に基づいてそういうところへ派遣という形になってくるのか。あるいは日赤病院のほうから行けというような命令が出た場合には、もうどうしても行かなければいけないというようなことになっておるのか。行かなくてもいい、行かなくてもいいと言うけれども、行きたい行きたいと言うからやったんだということなのか、その辺もう少しわかるように説明をしていただきたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/62
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063・田邊繁雄
○田邊参考人 これは先ほども申し上げたとおり、身分は海外技術協力事業団に切りかわって、その間は赤十字のほうは休職になるわけでございます。したがって、赤十字の旗を立てて行くわけじゃないのです。これはあくまでも本人の希望でございます。身分関係に基づいて命令するというものではございません。向こうから推薦方の依頼があって、私のほうで希望者を募って推薦するわけでございます。われわれのほうの業務命令あるいは身分上の関係による命令、こういうことでは絶対ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/63
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064・後藤俊男
○後藤委員 いまの説明ではっきりしておるように思うわけでございますけれども、海外派遣の問題につきましては、ものを言う人に言わせるとかなりなことを言う人もあるわけです、今日のこういうむずかしい情勢でございますと。あくまでも本人の希望である、危険は絶対ないんだ、派遣しようとする場合には行く先を十分調査をして、しかも向こうに行った場合の旅費等についても十分考える。万一間違いのあった場合につきましては、これに対する補償も万全を期しておるんだ、こういうようないろいろな点がたくさんあろうと思うわけでございますけれども、海外派遣の問題はややもすれば疑わしい方向で見られることもない問題でございますから、その点今後とも慎重に扱っていただきますように、くれぐれもお願いいたしたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/64
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065・田邊繁雄
○田邊参考人 これは、政府のほうからお答えするほうが適当かと思いますが、海外技術協力事業団の職員として派遣される以上、その団体において、間接には政府において責任を持つというようなことは当然だと思います。ただ、一言だけ申し上げますが、これは赤十字として派遣するものじゃございませんので、将来あるかもしれませんが、赤十字が国際赤十字団の要請に応じて、避難民であるとか、あるいは一般傷病者のために派遣するという問題とは全然別でございますので、その点は御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/65
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066・後藤俊男
○後藤委員 最後に資料に基づいてひとつ御説明いただきたいわけでございますが、先ほどから日赤病院の経営の問題なりいろいろな問題が出ました。現在におきましても、各病院ごとに非常に財政的には苦しいと思うわけなんです。しかしながら、新築、増築しておられるところもたくさんあるわけでございますが、現在新増築しておられる場所につきましては、どれくらいな資金を全国的にお使いになっておるか、さらには、そのお金につきましてはおそらく国からの借金だと思いますけれども、これらについては一体どういうようなケースでお借りになっておるのか、しかも返済については一体どうなっておるのかという点。それから、この問題につきましてはまだ触れておりませんが、九十四の病院の中には現在といえども赤字病院があると思います。これらの赤字病院に対しては、今後どういう方針で対処していこうと考えられておるのか。この四点につきましてひとつ間違いのない説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/66
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067・田邊繁雄
○田邊参考人 施設整備がどのように進められておるか、こういうお尋ねでございますが、昭和四十年度は九病院、総額二十五億でございます。うち厚生年金が十六億。昭和四十一年度は、二十二病院について三十二億の貸し付けが行なわれまして、厚生年金が二十一億。四十二年度は十七病院、四十億、厚生年金が二十七億となっております。
それから、こういった整備資金の主要財源は何かといいますと、先ほど申しましたように、約七割は厚生年金の還元融資でございます。それ以外には、地元の地方公共団体、主として県または市でございます。これがだんだんふえつつある状態です。それから地元の篤志家の寄付がございます。これは、走十字はその点ありがたいことでございまして、地元の篤志家からの寄付がございます。それから、なるべく低利、長期な金を銀行から借りる。これが主要な財源でございます。
それで、こういった計画を立てる場合の手続、これは非常に大事なことでございますが、どういった手続、順序を経てその病院の改築計画が立てられるか、主要財源計画が立てられるか、これは私ども非常にやかましく言っております。で立てたものをすぐ本社にもってきて承認するというやり方はとっておりません。これに対しては、特に将来の償還という問題、それからそれが病院の職員の処遇の上に影響を及ぼすということは十分注意しなければなりませんので、慎重な配慮を払っておるわけでございます。私どもがそのための具体的方向として進めておりますのは、各都道府県ごとに、地元の公共団体の相当ヘッドクラスの方々や、地方の有識者の方々にメンバーになっていただいて、医療施設経営審議会あるいは医療施設建設委員会という名前のところもございますが、これは必ず設置してほしい。そこに整備計画というものをかけまして、はたしてその改築なり増築が地方の医療事情、地方住民の医療のニードにマッチしておるものかどうか、過剰投資にならないかどうか、こういうことを十分自己調整するように指導しておるわけでございます。それから、計画内容に無理がないかどうか、将来償還もできないようなものを立てて将来無理な経営にいくことはないか、こういう点について、将来の経営計画も十分に立てるように指導いたしております。
それから、第三番目の資金の調達面でございますが、できるだけ、地元地方公共団体等からの助成を受けるように、これには先ほど申し上げましたとおり、現実に実際面で院長以下の力、熱意というものを証明する必要がございますけれども、そういったやり方をとって、関係各方面の方に十分に御理解をいただく、そういう点を指導いたしておりまして、県、市からの助成をふやす。それから償還に問題がないか、無理にないかどうか、そういうことを慎重に検討した上で、地元の支部長はたいてい知事でございますので、地元の県当局の御指導も得まして改築計画を立てて、本社で承認する、こういう形をとっておるわけでございます。このやり方は赤字病院、不振病院についても同じでございまして、まず病院当局をして将来の振興方策を立てさせまして、それを病院経営審議会にかけてその内容を確認して、その確認したことを、それぞれの関係機関が実行していく、病院長は病院長の分担を実行し、県、市当局は、財政援助を当局がそこで約束したことは実行していただく、こういう総合的な活動を必要といたしておりますので、現在そのように指導いたしております。赤十字病院と申しましても、赤十字だけの力ではできませんので、関係各機関との共同において、これが行なわれるように、そういう特別なくふう、努力をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/67
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068・後藤俊男
○後藤委員 約二時間にわたりまして、質問すべきところはさしていただいたわけでありますが、いずれにいたしましても、日赤病院そのものは性格上病院でございますので、やはりみなの力でよくするということが一番大切ではないかと思います。しかも、要員不足の関係で四つの病院においては労働基準法も守られない、こういう窮迫した状態であるということは、これは間違いないと思います。さらに看護婦さんの問題にいたしましても、七回、八回の徹夜が二十回近く行なわれておる。要員不足そのものが労働者にしわ寄せになってきておると言っても間違いないと思うわけです。その他財政的な問題につきましても、かなり多くの問題をかかえておるのが今日の日赤病院ではないかというふうに思いますので、ぜひひとつ先ほど大臣も言われました、早急にすべての面を検討する、園田大臣になってから日赤病院はりっぱになった、要員も充実した、こう言われる方向で検討するのだというお気持ちが先ほどの回答であったと私は聞いておるわけでありますが、九十四の病院の中でも、まことに苦しい病院がございます。たとえば私の地元にある日赤病院のごときは、当局の不当労働行為があるかないかは別問題にいたしまして、第一組合から、第二組合から、もう一つの何とか組合とか、幾つかに分かれておりまして、そこの職場にいきますと、全然不当労働行為が行なわれておらないとは言えないと思います。やはり労使の間における問題も正しく指導していただくこと、これも日赤病院運営上非常に大切なことではなかろうかと私は考えますので、多くの問題を取り上げましたが、ここの論議だけで終わるということでなしに、ぜひひとつ早急に実行に移していただく。
それから、もう一つ最後に確認いたしますのは、昨年末の中労委の調停案でございますけれども、これにつきましては副社長も言われました。受諾した以上は完全に実施をする、そういう方針でいく、団交をやってきめて実行に移すのだ、こういうようにはっきりここでも言明されましたので、その方向で一刻も早く、昨年末のベースアップ等の労働条件の問題につきましても解決をしていただくようお願いをいたしたいと考える次第でございます。ひとつここで厚生大臣と副社長に対しまして、長時間いろいろと質問をいたしましたが、最後に御決意を聞かせていただいて、終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/68
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069・田邊繁雄
○田邊参考人 赤十字はいわゆる病院経営団体でないのでございまして、先ほど大臣も申されたとおりであります。もちろん病院経営も大事でございますし、その他重要な仕事がたくさんございますが、そうかといって病院経営をなおざりにするという気持ちはございません。私もできる限り、赤十字の持っている力の限り、これの経営改善に努力を注いでまいりたい、かように存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/69
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070・園田直
○園田国務大臣 日赤の病院は公的医療機関であって、しかも日赤というものに対する国民のイメージは、相当高い崇高なイメージを持っております。しかしながら、現実においては、いま述べられましたような諸般のいろいろな条件から、公的医療機関が一般の私企業の医療機関並みに押し込められているところに問題があると思いますが、しかし、それは単に病院ばかりでなく、その他日赤諸般の問題について、早急にしかも全般にわたって検討しなければならぬ問題であると考えます。まず第一に、国の責任である点については、私、責任を持って財政問題あるいは諸団体からの寄付等の問題については一切のことを努力するものでありますが、なおまた日赤の新しく出まする新社長以下の幹部諸公ともこの現実をもっと強く見られて、単に日赤という昔の名前の中に幹部職員がたてこもっておるようなことはないように、国、日赤職員及びこれに対する国民の方々の御協力を求めて、全力をあげて御意見の方向に前進したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/70
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071・八田貞義
○八田委員長 田邊参考人にはたいへん御多忙中御出席をいただきますことにありがとうございました。
質疑を続けます。河野正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/71
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072・河野正
○河野(正)委員 私はさきの委員会におきまして、このたび北九州市立病院の病院業務の一環でございます給食業務を民間に委託された、こういう合理化政策の一環として発現されました問題点について、いろいろ厚生省あるいは労働省当局の御見解を承ったところでございます。その結果として、結論的に申し上げますというと、園田厚生大臣は、医療法上もまた職安法上からもいろいろ問題点があるので、したがって白紙の立場から再検討を加えてまいりたい、こういうような結論的な御発言があったところでございます。このことがその後どのような経過になっておるのか、ひとつあらためて厚生大臣の御見解を承りたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/72
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073・園田直
○園田国務大臣 先般河野委員の御質問に答弁をいたしましたが、その方針に従いまして、なお関係各省の間に意見の調整をし、現地とも連絡をする段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/73
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074・河野正
○河野(正)委員 いまの答えはたいへんなことであって、事態はそういうことになってないわけです。もうすでに再検討をいたしますと大臣も御見解を述べられたわけですから、厚生省としては結論を出して、自治省当局に対して回答文を寄せられておるのが現実でございます。ですから検討した結果がもう出てまいっておるわけです。いまの答弁は現状の事実と非常に食い違っておりますが、これについて再答弁をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/74
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075・園田直
○園田国務大臣 いま申し上げました答弁は、いま言われた事実の上に立っての答弁でございまして、そういうような経緯もあったようでございますが、なお大臣としては各省の意見を調整する必要があると思いまするので、たとえ一応回答が出ておりましても、このような問題は、その方針のまま、疑義がある場合に押し切ることは、ささいな問題でなくて、他の問題等にも波及いたしまするし、たとえ一応厚生省の意向がきまりましても、率直に、反省すべきところは反省をし、直すべきところは直したい、こういうことでございますので、手続上、この経過を質問された方に連絡しなかった点については、大臣からおわびを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/75
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076・河野正
○河野(正)委員 それならば、こういうふうに理解していいかどうかお尋ねしたいと思いますが、すでにことしの一月二十二日に医発第八一号をもって医務局長名で自治省の財政局長に対して回答を寄せられておるわけですね。その回答の内容については、さらに検討をして、もし不適当であればそれを取り消してもよろしい、こういうことになろうかと思いますが、そのように理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/76
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077・園田直
○園田国務大臣 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/77
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078・河野正
○河野(正)委員 そこで、四十三年一月二十二日付の厚生省医務局長名で自治省財政局長あてに出されました回答文についてはさらに再検討を行なうという大臣の表明がございました。ですからこれは、私どもは一応決定的なものでないという前提に立ってさらにひとつ質疑を行なってまいりたい、かように考えます。そこで、いよいよ自治省に出されました回答に対して再検討いただくわけですから、そういう再検討に対しまするいろいろな検討の資料として私どものいろいろな疑義がございます意見を開陳してまいりたいというように考えます。
大体、私は問題点は三つあると思います。一つは医療法第二十一条に関連する問題、第二は職安法に関連いたします問題、第三には保険局長通達に関しまする問題、大体三つの問題点があるというふうに理解をいたします。そこで、逐次それらの問題点についてここで御見解を承ってまいりたいと思うわけでございますが、その第一は、医療法第二十一条におきましては、「病院は、省令の定めるところにより、左の各号に掲げる人員及び施設を有しなければならない、」その中身として十五項目ございます。たとえば第一項目には省令をもって定める員数の医師、歯科医師、看護婦その他の従業員、第二には各科専門の診察室、三には手術室、四には処置室、五には臨床検査施設、六にはエックス線装置、七には調剤所、八には消毒施設、九番目に給食施設というのがあるわけでございます。そういたしますと、この病院の給食施設というのは、この二十一条の規定によりますと、法定の施設であるということが言えると思いますが、その点については御異論ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/78
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079・若松栄一
○若松政府委員 病院に必要な施設でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/79
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080・河野正
○河野(正)委員 法定の施設である以上は、病院が当然責任を持ち得る体制でなければならぬ。このことは、いみじくも昭和三十六年十月三十日、福井県から厚生省に疑義解釈が求められておるわけですが、その中に「病院の給食施設は医療法第二十一条の規定により病院の有しなければならない法定施設であり、かつ病院自らがその業務を担当すべきものと解します。」これに対しましては厚生省は否定をしておられぬわけでございます。そういたしますと、いま局長から病院の給食施設というものは法定の施設であると言われた。したがって、その業務も当然病院みずからが担当すべきであるというのが私は至当な見解であると思いますが、その点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/80
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081・若松栄一
○若松政府委員 この法律の趣旨からいいましても、病院が直営することを期待していた趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/81
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082・河野正
○河野(正)委員 そこで、さらにその点についてもう一点申し上げておきますが、いま局長さんから御答弁ございましたように、給食施設というものは病院みずからがその業務を担当しなければならぬということを期待しておるということですから、それがそのとおりでございますれば問題ないわけですけれども、もしそれを民間に委託することができるということになりますれば、はたして医療法の体系そのものが保てるかどうか。具体的に申し上げますならば、法定の施設というものがたくさんございまして、大体十項目以上ございますが、たとえば給食施設が民間に委託できる、下請できるということになりますれば、法で定めた他の施設、それは診察室もございますし、手術室、処置室、臨床検査室、エックス線室、調剤室、消毒室、こういう施設も全部下請に出せるということになるわけですね。そういたしますと、いまは給食施設が北九州市立病院の場合には問題になるわけですけれども、このことが許されれば、一切の法定施設というものが民間に委託することができるということになっていくと思う。そうした場合に、はたしてこの医療法の体系というものは保たれるかどうか、この点についていかが御見解でございますか、承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/82
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083・若松栄一
○若松政府委員 医療法の二十一条に羅列されましたものの中でも、たとえば手術とかレントゲンのように、全く医療そのものというものと、給食のように、医療の一環ではあるけれども医療それ自体とは若干ニュアンスの違うものとあると考えておりますが、そういう意味で給食の場合は、いろいろの条件を検討いたしました結果、万やむを得ない場合で病院の管理者がその責任を十分に果たし得る、管理が徹底し得るという条件で一部を委託することができると考えておりますけれども、手術であるとかレントゲンであるとかいうようなものを委託するということが、医療の本質をそこなわないという保証はきわめて少のうございますので、そういうものについては、これを委託を許すというようなことは全く考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/83
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084・河野正
○河野(正)委員 給食施設を民間に委託してはならないという法文上の明文はない。それならいま局長が言うように、手術室、処置室、こういうものは医療の本質だから民間委託は好ましくないという意見は、成り立たぬと思うのです。たとえば内科疾患のごときは、給食という治療がかなり大きなウエートを持っている。外科の場合は手術でしょう。内科の場合は食餌療法というものが非常に大きなウエートを持っている。たとえば結核のごときそうでしょう。そうすると、医療の本質論から、これは民託してもよろしい、これは民託にしてはいけないという理論は、私は成り立たぬと思うのです。ですから、これは医療法第二十一条には並列してあるわけですから、どれが重くてどれが軽いということはないと思うのです。また中身について検討してみても、いま私が申し上げたような事情ですから、それは区別がつけられぬと思うのですよ。手術室が第一義で給食室が第二義だ——これは内科の専門病院については、むしろ手術室よりも給食室ですよ。それをいま北九州のちょうちん持ちか何かわからぬけれども、いまのように、給食よりも手術が大事だから、手術室は民間に委託してはいけない、給食は万やむを得なければいいという議論は成り立たぬと思う。内科と小児科を主とした病院であっても、法定施設ですから手術室は持たなければならぬわけですよ。しかし内科とか小児科においては、手術よりも食餌療法のほうが大きなウエートを持っている。いまのような解釈で、はたして医療の本質を局長が十分御理解していただいておるか、その点について私ども疑問を持たざるを得ないと思うのです。給食施設であろうが手術室であろうが何であろうが、それは専門病院によってそれぞれの特性があるわけですから、いまのような区別をしては成り立たぬと思うのです。そういうのはやはり成り立ちますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/84
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085・若松栄一
○若松政府委員 患者の給食は医療上きわめて重要なものであり、特に内科、小児科等におきます給食の医療的な価値、意義の重大性の認識においては、先生と全く同感でございます。しかし、現実に給与される食事がどういう過程を通ってつくられていくかということで、その過程の一部を委託することによってその本来の目的、趣旨がそこなわれないで済むということであるならば、その一部を委託することも許されることではないかというふうに考えたわけでございますが、本来の趣旨から言いまして、委託でなしに全面責任を持って病院自体がこれを実施することが望ましいということに全く変わりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/85
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086・河野正
○河野(正)委員 その本来の任務として病院が直営でやるべきであると言われながら、一方においては、手術室とか診察室とか検査室とかいうものと、この給食施設というものを差別して考えておられる、そういうところに問題があると私は言っているのです。病院は、外科の病院であろうと内科の病院であろうと、これこれの施設については持たなければならないというのが医療法二十一条の規定ですよ。外科の場合はなるほど手術室が最も大きな本流でしょう。しかし内科とか小児科においては、手術室よりもむしろ給食のほうが大きなウエートを持つわけです。ですから、専門科目によってウエートが違うわけですから、それを一律にとにかく給食のほうがウエートが低いんだというような言い方は私は困ると思うのです。しかも、福井県の疑義解釈における厚生省の回答にもございますように、法定の施設であるがゆえに、病院みずからその業務を担当すべきものであるというこの解釈については、否定はなさっておらぬわけです。したがって厚生省は、「病院の給食施設は医療法第二十一条の規定により病院の有しなければならない法定施設であり、かつ病院自らがその業務を担当すべきものと解します。」こういう考え方は当然生きておると思うのです。それが間違っておれば、当然福井県に対して、そうでないとおっしゃらなければならぬ。そう言ってない。ですから、これは医療法のたてまえからいえば、結局、この給食施設というものは法定施設であるから、病院みずからがその業務を担当する、こういう筋が通されなければならぬと思うのです。私どもは、法律をそのまま解釈すれば、そう解釈するのが最も妥当であり、正当であるというふうに考えるわけですが、重ねて御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/86
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087・若松栄一
○若松政府委員 趣旨といたしましては、どこまでも病院本来の任務としてやるということについて、私どもも全く同感いたしておるわけでございます。何らかの事情によりまして、本来自分で自営することがなかなか困難である。また自営することを努力してみても、その中でなかなか完全な実施が確保されないという場合に、やむを得ず一部の業務を委託する場合があり得る。そういう場合において、なおかつ本来の使命、趣旨というものを全うし得るということであれば、それも真にやむを得ないことではないか。本来の趣旨というものと真にやむを得ない特例というものの使い分けというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/87
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088・河野正
○河野(正)委員 それならば、実施が直営でできない、本来の病院業務としてできないというような具体的な例はどういう例ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/88
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089・若松栄一
○若松政府委員 具体的な例はいろいろあると思います。たとえば公的医療機関等でございますと、定員というものがワクで縛られます。病院を開設したけれども予定よりも非常に忙しかった、どうしても定員を確保できない。それでやむを得ず診療面に定員を全部使わざるを得ない。そして給食業務の一部を委託せざるを得ないということがあるいは起こるかもしれません。また病院を開設する場合に、給食施設を運営しようと思っても適当な技術者が得られないという場合に、しかも民間に相当な能力を持った技術者を擁する団体なり機関なりがあって、その者に委託するほうがより効果的な給食ができるというような場合もあろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/89
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090・河野正
○河野(正)委員 そこで重ねてお尋ねするわけですけれども、あなた自身が医療法二十一条を全く無視したことを言っておるじゃないですか。あなたはいま公的医療機関においてとおっしゃった。定員で縛られるから、そういう場合は給食を民間に委託しなければならぬとおっしゃった。ところが、第二十一条の一項目には、「省令を以て定める員数の医師、歯科医師、看護婦その他の従業者」を持たなければならぬということになっておるわけです。ですから、持てなくて片一方をやるということは、二十一条の第一項目にすでに違反することでしょう。私的医療機関は民間ですから別として、公的医療機関にそういうことがあるということを引例されたことが適当な回答でございますか。公的医療機関ですよ。あなたは公的医療機関ということばを使われたが、公的医療機関においてもこの二十一条を守らぬでもいいと言うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/90
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091・若松栄一
○若松政府委員 私がいま公的医療機関の例を引きましたのは、たとえば公的医療機関を開設する、そしてさしあたり二百ベットを開設しようという場合に、三百床なら三百床のベットをつくっておいて、初年度であるからまず二百床程度に予想しようということで、それにふさわしい人員等をやってみた。ところが、実際は二百五十の需要があって、どうしても二百五十を入れなければならぬということになりますと、現実にその医療を消化するために、あらかじめ予定された定員ではなかなか困難だという事態も起こってまいるという意味で、当初から少ない人員を予定するというのでなしに、当初は二十一条に規定する合理的な人員を予想して定員等の確保をはかったつもりであったけれども、現実は食い違ったというような場合に、年度途中であって定員も得られないということから、やむを得ずそういうような措置をとることもあろうということを申したわけで、初めからこの二十一条に規定する設備人員を除外して計算したという趣旨ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/91
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092・河野正
○河野(正)委員 いまあなたがおっしゃっておることは、あわててお答えになっておるからちぐはぐになっておるわけです。当初三百名で予定した。ところが、それ相応の人間が集まらなければ、給食設備も小さいものでいいわけです。全般的に人員配分も違ってくるわけでしょう。ですから、三百名で発足しようとしたけれども、実際二百名分の人員しか確保できなかったということになれば、二百名分の人員配置というものがなされるべきであって、そこで給食がゼロになるというわけではない。そうでしょう。ですからあなたの答弁は、どういうことを言ってもどうも納得できぬわけですよ。当初三百名で発足する予定だったけれども、人員が得られなければ、当然この医療法の規定によって、二百名の人員であれば二百名で出発すべきだと思うのです。そうすれば、何も給食の人員は診療部門に向ける必要はないわけですよ。それは結局、三百名であるのに患者が三百五十名入ってきた、だから給食を引き揚げてこっちにやったというなら話はわかるけれども、いまおっしゃったように、三百名で出発したけれども、三百名の人員が集まらぬ、だから、結局その給食の人員を診療部門に振り向けるということは、ちょっと理屈が合わぬ。合わぬでしょう。どうでしょう。あなたが合うというならほかの人に聞いてみたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/92
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093・若松栄一
○若松政府委員 私が申し上げましたのは、たとえば三百床の病院を開設するという場合に、平常化すれば当然三百名になりますので、それに必要な要員を確保することが必要になってくるわけでございますが、その三百名の病院であっても、当初の一年度はとてもそれだけ入らぬだろう、百五十かせいぜい二百くらいしか入らぬだろうという予想のもとに、一応二百名の診療をするに必要な要員を確保した。それにもかかわらず、予想が狂って二百五十名入ってきたというような場合は、そういうような予定された人員ではとても全部まかなえないので、緊急を要する医療、直接医療部門に人員を充当して、そして委託の可能なそういう一部を委託に出すということも起こり得るであろうというふうに申したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/93
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094・河野正
○河野(正)委員 それなら、あなた方は病院の分類調査なんかやっておられますね。それは保健所がやるわけですけれども、法定のベッド数、規模に応じて人員配置がどうなっておるかということについての分類調査を行なうわけです。そうしてその際人間が足らなければ、いろいろ行政上の勧告が行なわれるわけですよ、民間においては。公的医療機関においてそういうことはせぬでもいいわけですか。たとえば二百ベッドの法定ベッドがあるといたしますね。そうすると、それに見合うだけの人員配置が行なわれていなければいかぬというわけですよ。厚生省も保健所もきびしくその間の規制を行なっているわけですよ。ところが厚生省の場合は、二百名の人間をもらったけれども三百名入れてもよろしい、その場合には足らぬから給食の人員を診療部門に振り向けていいということなら、一切の分類調査をやめてください。そんなえてがってなことはない。そして私的医療機関で悪いのを公的医療機関がよろしいということはない。そういうえてがってな厚生行政というものはあり得ぬと思うのですよ。それについて厚生大臣どうですか。それは、民間の場合は分類調査をやって、二百名の法定ベッドがあった場合には、それに応ずる人員の配置はどうあるべきだ、それに即応する態勢がなければ行政勧告が行なわれるわけですよ。ところが、いまの若松局長の話によると、二百で予定して人員を集めた、ところが三百入ってきた、そういう場合には給食を引き揚げて診療部門に振り向けることがあります、そういう民間に許されぬことが公的医療機関に許されるのかどうか、そういう議論は成り立ちますか。これはたいへんなことですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/94
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095・若松栄一
○若松政府委員 法定の許可を得た人数にふさわしい職員を置くことは当然であります。ただいま例を出しております、一応将来三百床の病床にしたいということで三百床の建物をつくった。しかし、初年度は百五十ないし二百しか入らぬであろうということで、一応二百床なら二百床の使用許可をとって、それに必要な人員を確保した。ところが、その地域の需要が非常に強くて、二百床で断わろうとしても、民衆の要望にこたえるために断わることが適当でないという場合に、さらに五十床なら五十床の使用許可をとっていれば、当然それに必要な人員も確保しなければならぬわけでございますが、その際に、たとえば公的病院などでありますと、年度の途中で定員増加というようなことが困難でございますので、やりくりをして、その適当な人員の中で診療人員を確保する。その結果として委託可能な部面について委託に出すことがあり得るということを申したわけでございまして、法律上の規則に違反したことをやれというわけでは決してございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/95
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096・河野正
○河野(正)委員 給食を民間に委託する、委託しないは別ですよ。ところが、医療法二十一条には、病院としてはこれだけのものを備えなければならぬ、人員を配置しなければならぬといっているわけです。それをしなければ五千円以下の罰金という罰則があるわけでしょう。それを公的医療機関の場合はどうしてやってよろしいのか。それは引き揚げなさいというわけにはいかぬのですよ。最初から三百名の法定ベットがあれば、三百名の法定ベットに即応する人員その他の体制をつくらなければならぬということになっているわけですよ。患者が二百五十であろうと二百であろうと問題にならぬわけです。問題は、法で定められたベット数が幾つあるかということが問題なんです。それに対応する人員を配置しなければならぬということになっているわけですよ。だから結局三百名の法定ベットだ。それが二百五十であろうと三百であろうと、それは問題にならない。要するに、法律で認められたベット数に応じた人員配置をしなければならぬということになっている。それに違反した者は五千円以上の罰金なんです。そういう法律違反を公的医療機関ではやってよろしい、民間の場合はやってはいかぬ。それは分類調査だってやるわけです。年に一ぺん保健所が来てやりますよ。どうして民間ではいかぬのですか。公的医療機関においてはよろしいのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/96
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097・若松栄一
○若松政府委員 民間と公的医療機関で別々に考えているつもりは全くございません。民間であろうと公的医療機関であろうと同じでございます。ただ公的医療機関の場合には、定員というものに縛られているという困難があるために、やむを得ず、そういうような事態の場合に、民間病院であれば使用許可を五十なら五十増して、そして必要な人員を配置することができますけれども、公的の医療機関の場合などは、使用許可は五十増してもそれにふさわしい人員を急速に確保できない。したがって一部を委託するということでございますが、委託するという場合に、この医療法二十一条の人員を配置しなかったかどうかということになりますと、委託ということによってその機能を確保したという場合には、この人員を確保したということにみなして差しつかえないというのが、委託の原則でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/97
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098・河野正
○河野(正)委員 違いますよ。定員が確保できなかったから民間に委託していいという議論じゃないです。やはり法定ベッド数に応じた人員を十分確保しなければならぬというのが法のたてまえですよ。ですから、あなたがその他の理由で民間に委託するということをおっしゃれば、それはそれなりに検討の余地があると思う。ところが、定員が確保できないから民間に委託するというようなことは、この二十一条の精神からいうと許されないわけです。これはあなたが何とおっしゃっても許されない、この法律では。だから、これは当然その定員の確保と法定施設の規模というものは、常に一致しなければならぬということなんです。そのことと民間委託とは別な問題なんです。ですから、あなたが人員配置の問題と給食委託の問題とをからましておっしゃれば、これはいつまでたっても私は了承できないわけです。給食を民間に委託しようがしまいが、法定施設に応ずる人員は確保しなければならぬ。それが確保できない場合には五千円以下の罰金という罰則があるわけです。ですからこれは、あなたの人間が足らなかったから民間委託するんだという議論と、いまの二十一条の精神とは違うのです。全然別個の問題です。民間に委託しようがしまいが、とにかく法定施設については法定の人員を確保しなければならぬということです。法定施設の法定人員を確保できないからといって、それだから民間に委託するという議論は別問題なんです。これはもう少し二十一条を検討してもらわぬと困ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/98
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099・若松栄一
○若松政府委員 二十一条の、施設とそれに必要な人員を確保しなければならないということは、その人員に関しましては、公務員であれば公務員法上の定員として確保しなければならぬ、あるいは一部は非常勤職員としてその機能を確保することもありますし、また一部は委託ということによって機能を確保するということも、この人員を確保するという広い解釈の中に入ってくるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/99
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100・河野正
○河野(正)委員 それなら、あなたのほうの出しておる書類の中にあるわけですよ。たとえば、給食等においても単に経営上の便宜のためやっちゃいかぬという、ちゃんとあなたのほうの解説書があるわけですよ。人間がおらぬから給食は別に移しますなんて、それじゃ全く経営上の便宜のためじゃありませんか。その点はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/100
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101・若松栄一
○若松政府委員 ただいまの委託する場合を保険局の通知で「経営上の便宜のため」という文言がございますが、私どもは、単に全く経理上もうけようとか、あるいは少しは倹約しようというような、そういう趣旨だけでやってもらっちゃ困る、どこまでも施設の管理者として完全な給食を行なうという管理の責任を全うするということが主眼でなければならぬ。単に経理上の便宜だけではいかぬという趣旨が入っているわけでございまして、その意味では、その前段の管理の責任を全うせいということを省略してありますために、ことばの上では経営上の便宜ということが非常に目立っておるということは、この通知そのものが非常に不手ぎわであったと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/101
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102・河野正
○河野(正)委員 人間を確保することができないから民間に給食施設を委託する、こうおっしゃっているのですね。そういうことが経営上の便宜じゃないですか。人間がおらぬから経営ができないわけでしょう。あなたそうおっしゃっているでしょう。人間が確保できないから民間に委託するんですと、こうおっしゃっている。そうすると、人間が足らぬから民間に委託することは経営上の便宜じゃないですか。違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/102
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103・若松栄一
○若松政府委員 経営上の便宜が確かにあると思います。もちろん経営上の便宜も入っております。しかし、この通牒の趣旨は、単に経営上の便宜からだけやるというような考え方はだめだぞ、どこまでも本来自分みずから施設を運用し、みずから給食をするという責任があるから、そういう管理責任を全うした上で——それは多少経営上のことも理由になるだろうがと、そういうような趣旨でございますので、もっぱら経営上の便宜のためにやるということはまずいぞ、そういうような趣旨に解釈いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/103
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104・河野正
○河野(正)委員 これではあなたとちょっと歯車かみませんから、あなたが全責任を負い得るということになるならば、そういうことでさらにまた論議を重ねていきましょう。
それで、あなたがこの給食業務を全責任を負い得るということは、これは職安法施行規則の第四条の一号にいう「財政上及び法律上のすべての責任を負うものであること。」ということだと思うのですね。そこで、三十二年の十月二十五日に三重県から厚生省に対して疑義解釈を求めておるわけですが、その中で病院で直営でやっている姿というものは一体どういうものだという疑義解釈に対する厚生省の回答があるわけです。それによりますと、「病院の管理者が給食の全責任者となり下部組織に給食係を置き、献立の作成、必要材料の購入指示、材料の検収、食餌の調製の監督および検食はこれらの職員によって行い、材料の入手、献立に基づく食事の調製および調製食餌の配膳室までの運搬業務は病院外の者に請負わす方式。」これが三十二年十月二十五日の三重県知事あての医務局長の回答ですね。そうしますと、職安法施行規則第四条の第二号「作業に従事する労働者を、指揮監督する」という問題がありますね。このことと関連して、もしこういうことが直営であって、これ以外のものが民間委託だというた場合に、いま厚生省の方式をとれば、当然私は、職安法施行規則第四条二項に該当する、すなわち職安法違反になる、こういう見解を持つわけですが、この点はいかがでございますか。これは労働省にひとつ見解を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/104
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105・道正邦彦
○道正説明員 先生御指摘の労供の条文は、安定法上最も重要であり、かつ最も解釈のむずかしい問題でございまして、先生御指摘のように、規則をもちまして安定審議会等の意見を徴しまして、解釈規定を置いておるわけでございます。安定法上の施行規則の解釈と他の法律との関係がどうなるかということにつきましては、ただいまここで他の法律についての私の意見を申し上げるわけにはまいらないわけでございますが、要するに安定法の施行規則四条の解釈といたしましては、ここに書いてございます四項目のすべてを満足させているかどうかということを、実態に即して判断するということによってきめるべき性質のものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/105
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106・河野正
○河野(正)委員 この職安法施行規則第四条の規定は、いま私が指摘いたしましたことも含んで、四つの条件が整っておったときには職安法違反にならないということなんですね。だから一つでも欠けておれば職安法違反だということです。その際、厚生省が言っておりますような、「病院の管理者が給食の全責任者となり下部組織に給食係を置き」——下部組織というのは病院内の下部組織ですよ。「献立の作成、必要材料の購入指示、材料の検収、食餌の調製の監督および検食」は病院の職員が行なうということですね。そして下請がやった場合は、やる範囲は「材料の入手」、これはいままで国鉄でいわれている使い番と同じですね。病院側が必要材料の購入を指示するわけです。それは病院内でなければならぬということが書いてあるのです。ですから、下請がやる「材料の入手」というのは、国鉄でいわれておる使い番と同じで、言われたものを買ってくる。購入の指示は病院がやらなければならぬということを厚生省は言っておるわけです。それから「献立に基づく食事の調製および調製食餌の配膳室までの運搬業務」、これは病院外でやってよろしい。病院外でやってよろしいという作業内容というものは、これは単純労務ですね。一切の監督というものは病院がやるわけですから。もしこういう方式で民間に委託した場合には、これは明らかに施行規則第四条の二項目目に該当するというか、違反するというのか、こういう事例だというように私どもは判断するわけですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/106
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107・道正邦彦
○道正説明員 施行規則の四条二号の、「作業に従事する労働者を、指揮監督するもの」というのは、通常の雇用関係にある場合等に想定されますように、事業場の責任者が労働者を指揮監督して労務につかせる、こういうことについて使っている用語でございまして、この解釈につきましても同じでございます。ただいまの先生の御指摘に関連いたしまして、たとえば病院の給食でございますので、専門的な知識、資格等が必要とされる場合もあると思いますが、それにつきまして、たとえば調理士であるとか栄養士であるとか、そういう点は四号のほうの専門的な知識、経験という事項に該当するかどうかという問題になろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/107
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108・河野正
○河野(正)委員 その解釈じゃなくて、これは前回の社労の委員会でもあったわけですけれども、四条に違反するかせぬかということは、形式的な面が一つございますね。形式がどうであっても実体がどうかということが、実体論としては一つあるわけですね。その実体はここで調べるわけにいきませんから、私はまずここでは形式論について検討を加えたいと思うのです。そうしますと、この厚生省の指導方針によると、結局一切の監督を病院側がやる体制でなければならぬ。下請がやっていい場合は、たとえば運搬しますね。それから病院側がこれこれ買うてこいと言ったのを買いに行きますね。自分の意思で買いに行くのじゃない。自分の意思で買いに行けば、あるいは職安法違反をのがれるかもしれません。これは非常に微妙なところです。その前に文章で、病院側のやることは「購入指示」と書いてある。ですから、結局買いに行くほうは、これは国鉄の使い番と同じことで、使い番というものは、これはもう職安法違反の疑いの最たるものです。これは労働省が言っているわけです。ですから、少なくともその解釈ではなくて、この文章からわれわれが判断するとするならば、明らかに職安法違反になりはせぬか、こういうことを言っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/108
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109・道正邦彦
○道正説明員 私、病院の経営、ことに給食の実態につきまして必ずしもつまびらかにいたしておりませんので、断定的なことを申し上げかねるわけでございますが、先生御指摘のように、たとえば先ほども問題になりました国鉄の使い番、そういうものと同じであるという前提に立ちますならば、職安法の解釈上疑義があるということは申し上げられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/109
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110・河野正
○河野(正)委員 そこで、解釈論議が出てきましたから、ここでもう一つ具体的な例をあげて労働省の判断を求めたいと思います。
それは四十二年の十一月に出された「病院経営管理指導要領」というのがある。これには、一つには「給食業務は、治療の一環として行なわれるものであるから、病院の直営としてその業務を行なわなければならない。」この原則からいけば、当然下請をしてはいかぬということですね。これは厚生省が出した資料ですよ。第二項目目、これが労働省に関係するわけですけれども、この文章を読んで、ひとつ労働省、判断をしてもらいたい。第一項目目では、治療の一環だから給食業務というものは病院の直営としてその業務を行なわなければならないんですよ。第二項目目は、「止むを得ない事情により、」これは下請の場合ですね。「第三者に病院内の給食施設を使用して、給食業務を委託している場合には、病院に給食係をおき、献立の作成、材料の購入、検収、食餌の調整の監督をこれらの職員が行なう体制でなければならない。」と書いてあるわけです。一切の監督を行なう体制でなければならぬというんですね。この場合の下請業務というものは単純業務でございますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/110
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111・道正邦彦
○道正説明員 厚生省からお出しになりました指導要領の内容は、いま先生から伺ったわけでございますが、これが病院の給食のあり方としてこれでなければならないのだということでございますならば、安定法の解釈上もやや疑問の点があるということは申し上げられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/111
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112・河野正
○河野(正)委員 実体論は別として形式論を論議しておるわけですから、こういう形式を整えた場合に、施行規則四条の第二項目に該当しないかどうかですね。該当するかせぬか、イエスかノーかそれだけ答えてください。ややなんという、そういうことばではなくて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/112
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113・道正邦彦
○道正説明員 ややは取り消します。取り消しますが、この点につきましては、指導要領の解釈について、いま厚生省とも打ち合わせをしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/113
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114・河野正
○河野(正)委員 そういうことではなく、打ち合わせしたということでなくて、もうすでに労働省、厚生省、自治省は三者統一見解を出しておるでしょう。いま打ち合わせしておるなんて、そういうごまかしたことを言いなさんな。北九州市はすでに統一見解をもらっておるのです。厚生省が自治省に回答し、自治省が北九州市にやっておる。さっき厚生大臣が言ったのは、そういう回答を出しておっても問題があるなら再検討するというのだから、少なくとも厚生大臣の言うことは一つの筋ですよ。回答を出してもその回答が破棄されるという考え方に立っているのですから、その点はいいです。あなたが検討中というのは、少しあつかましいと思います。はっきりこういう文書が出ておるわけですから、こういう文書が施行規則四条の二項に該当するかしないか、イエスかノーかということを言ってもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/114
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115・道正邦彦
○道正説明員 安定法上疑問の点があるということは申し上げられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/115
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116・河野正
○河野(正)委員 はっきり……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/116
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117・道正邦彦
○道正説明員 疑問の点があるということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/117
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118・河野正
○河野(正)委員 そういうことで、明らかに職業安定法違反の疑いがきわめて濃厚ということに到達をいたしました。そこでひとつ大臣は、一応自治省には回答したけれども、なお問題があるならで再検討を加えて、回答に対する破棄もあり得るということです。いま一つは、医療法上の問題がある。いま一つは職安法上非常に疑いが濃厚であるという労働省の見解がございましたから、その点をひとつ十分大臣お含みおき願いたい。
第三点は、基準給食についての見解でございますけれども、一つには給食の組織の問題がございます。私ばかりあまり長くやってはいかぬので少しはしょりたいと思いますけれども、第二には、直営に関する問題がございます。そうして昭和三十三年六月三十日の厚生省告示百七十八号、またそれに基づきまして昭和三十三年八月二十五日に出されました保険局長通達、それから同じく保険局医療課長通達によりますと、その通達では、基準給食の承認基準として、「給食は原則として当該保険医療機関の直営であること。」直営でなければ基準給食が否認される、こういうことになると思うのです。この点は御異論ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/118
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119・梅本純正
○梅本政府委員 原則として直営であるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/119
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120・河野正
○河野(正)委員 そうしますと、もう一つ私は申し上げて結論を聞きたいと思いますが、それによりますと、「患者給食は本来医療機関における治療の一環と考えるべきであり、また運営上も適切な給食組織を必要とするものであるから、患者給食が医療機関の直営でなければならないのは当然である。単に経営上の便宜のために、病院の設備を提供して外の業者に給食業務の一部を委託するとか、または給食のすべてを仕出し屋等に請負わすようなことは認められない。」こういうような解説文書がついております。これは厚生省の出された書類です。そしてそのあとに、「ただし、実態上当該医療機関が監督でき直営と同一視できる施設、たとえば大学病院附属の公益法人などに業務を委託することは現状においてはやむを得ないものと思われる。」こういうことが書いてあります。ですから特例としては、病院直営と同じような公益法人のようなものがやる場合には、これはやはりやむを得ないだろう、こういうことなんです。特にこれは、こういうような通達を出した時点において、東大の付属病院でそういう実態があったというのです。これは公益法人がやっておる。この事例があったために、これだけは認めざるを得ないということで、こういう注釈が加えられたというのが歴史的経過です。そうしますと、ことばをかえて言うと、今後は認めるわけにいかぬ、正直に言って。原則というのは今日においてはやや絶対的なものだというふうに私どもは理解せざるを得ない。これは厚生省の見解です。私どもかってに言っているのじゃないのです。そうしますと、東大の好仁会の実施しております給食業務は別として、その他の給食に関します委託業務というのは、これは基準看護の承認基準として認むべきではないというふうな見解が成り立つと思うけれども、その点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/120
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121・梅本純正
○梅本政府委員 ただいまの御質問にお答えする前に、私のほうはいわゆる保険の支払いに関する問題でございます。したがいまして、保険の財政から、一定のきめられた基準によりまして点数をきめまして、患者サービスを医療機関なり医師が行なった場合に、その報酬として支払うというたてまえをとっております。そういう支払いの関係の基準でございますので、この給食のようなものも、その大もとに医療法という基本法がございまして、それに定められた一つの制度というふうなものがございます場合には、その上に乗っかりましてこの基準をきめる、こういうたてまえをとっております。
それから、先ほどおっしゃいましたように、健康保険法の解釈といたしまして、原則として直営が当然であるという形をとりまして、一方、先ほどから医務局長がいろいろ御答弁申し上げておりますように、医療制度というものにつきまして、直営に一定の例外措置が認められておる、こういうふうな事情でございますので、その点を受けまして、課長通知の「原則として直営である」という解釈を、先ほど先生もおっしゃいました昭和三十三年八月二十五日の医療課長通知で、もう少し細分をいたしております。これの要件は、「当該保険医療機関が直営することを原則とするが、やむを得ない事情により、直営ができない場合は、当該保険医療機関が給食の実施及び内容について最終的責任をもって第三者に委託することができるものであること。だたし、仕出屋等に委託することは適切な委託と云えないものであること。」こういうなにをしております。先生御指摘のいまの解説書というのは、この課長通知を説明したわけでございまして、先ほど御指摘がありました、「単に経営上の便宜のために」というふうな、非常に誤解を招く表現を使っておりますけれども、これは一つの要件としましてやむを得ない事情によるということと、それから私のほうで非常に中心にいたしておりますのは、先ほどのように給食が医療の内容で、ございますので、そして支払い先は医療機関でございますし、お医者さんでございますので、そういう関係から見て、給食の実施及び内容につきまして最終責任を持ってもらう。最終責任者ということをきめることが私のほうの保険制度の一つの中心になっておるわけでございます。その点をいまの解説書が解説をしたわけでございます。
ついででございますが、先ほどの「経営上の便宜」といいますことも、非常に実質的な意味で通達の中の文句でもございませんので、その二項目を解説する意味で書いたわけでございまして、これは単に経営上の便宜でというか、経営者として非常に便利がいいからというふうな、安易な気持ちでそういうふうな外部に委託をやることはいかぬという点を述べたわけでございます。そういう二原則に対しまして、やはり別に医療法に関する制度がございますので、それを前提に置きまして私のほうの制度としては、最終的な責任を持つ患者サービスについて遺憾がないという点が確保されれば、保険としては支払わざるを得ないだろう、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/121
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122・河野正
○河野(正)委員 そこでまた職安法違反を蒸し返してくるわけですが、最終責任を下請が持たなければならぬことになっているのですよ。それが施行規則第四条の第一項目に書いてある。財政上及び法律上のすべての責任を負えば下請でよろしいということなんですよ。いまあなたのおっしゃるのは病院が負うということなんでしょう。だからこれはまた職安法違反を蒸し返してきた。あなたのおっしゃることだったら職安法違反になるわけです。これはもう見解は聞きません。法律にそう書いてあるのですから職安法違反です。
それからもう一つは、医療法上例外処置が認められておるから民間委託はよろしいとおっしゃったが、これは医務局長に聞きます。どこに例外処置が認められていますか、民間委託をやってよろしいという処置が。あなたがやむを得ず自分の見解を言っておられるわけです。その例外処置がどこに認められておりますか。ですからいまの保険局長の見解によると、明らかにこれは職安法違反です。一切の責任は病院が持つというのですから。職安法違反をはずそうとすれば一切の責任は下請が持たなければならぬわけですよ。ですからもうこれはあなたの見解を聞きません。明らかにこれは下請です。職安法違反である。職安法違反を労働省が認めたということですから、これはとんでもないことです。ですからこれは明らかに職安法違反とわれわれはきめつけます。聞きません。
そこで、医療法上例外処置が認められておるということは、どこにどう例外処置が認められておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/122
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123・若松栄一
○若松政府委員 例外措置ということばは非常に俗な言い方でございまして、私どもの考え方といたしましては、どこまでも直営でやるべきである。しかし直営でやるという内容の中で、一部を委託するということも直営ということの範囲に入れましょう、そういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/123
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124・河野正
○河野(正)委員 例外処置が認められておるから外部委託もやむを得ぬということを保険局長言っておるわけです。例外処置が医療法の法律の中のどこに認められておりますか。それをあなたに聞きたいわけだ。あなたの所管だから。どこに認められておるか言いなさい。法律の何条か。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/124
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125・若松栄一
○若松政府委員 いま申し上げましたように、法律で例外措置を認めておるというわけではございませんが、法律の運用上、直営というものの中に、一部を委託するということについて、これも直営とみなすということに解釈しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/125
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126・河野正
○河野(正)委員 そうすると、保険局長が言ったように、医療法上例外処置が認められておるとおっしゃったけれども、それは認められていないわけでしょう。ちょっと言ってください。認められているのか、認められていないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/126
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127・若松栄一
○若松政府委員 例外を認める規定もございません。したがって当然これは直営が原則でございまして、その原則の中で一部委託するということも、この原則に触れるものでないという解釈でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/127
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128・河野正
○河野(正)委員 そういう後段のことを聞いているのではなくて、保険局長がたまたま、医療法上例外措置が認められているから民間委託もあり得る、こうおっしゃったわけですから、法律の中に民間委託がよろしいという例外措置が認められておるか、認められていないか、イエスかノーか、それだけ答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/128
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129・若松栄一
○若松政府委員 ただいま申しましたように、この例外があるということば自体が非常に俗なことばでございますので、正確に言えば、例外措置が認められているということでなしに、直営というものの中に解釈の幅があるということで、それを便宜的に例外措置というふうに表現されたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/129
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130・河野正
○河野(正)委員 直営の中に含まれるということになると、また職安法に引っかかってくるわけだ。そうでしょう。直営の中に委託が含まれているといういまの見解なら、職安法に引っかかってきますよ。それは当然でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/130
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131・若松栄一
○若松政府委員 直営というものの中に一部の委託を認めているということで、もちろん病院管理上の責任は持ちますけれども、職安上の責任はまたおのずからそこにあるわけでございますので、職安法に触れない程度の委託をしなければならぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/131
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132・河野正
○河野(正)委員 職安法に触れない程度とはどういうことですか。程度をひとつお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/132
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133・若松栄一
○若松政府委員 ただいまいろいろ議論がありましたように、労働省からも、現行の病院管理指導要領は職安法上から見て多少疑義があるというお話がございました。私どももそれを率直に受けまして、細部の検討をいたしております。したがって、現在の指導要領が職安法に抵触するものであれば、これは当然是正していかなければならぬものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/133
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134・河野正
○河野(正)委員 そうしますと、四十三年一月二十二日に出された自治省に対する回答は、全く軽率であったというふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/134
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135・若松栄一
○若松政府委員 おっしゃいました自治省に対する回答は、私どもの職員が現地へ出まして、いろいろ状況を判断いたしまして、職安法上の疑義というようなものも承知しておりましたので、それらの点に抵触しないような形で、したがって、現在の病院管理指導要領そのままではなしに、これをさらに検討して、そういうような違反の疑いのないような形で指導していくということを前提にして、あのような回答をいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/135
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136・河野正
○河野(正)委員 それならば、たとえば病院経営管理指導要領がありますね。この中身については先ほど労働省から、これは職安法違反の疑いがきわめて濃厚であるといわれておる、そうすると、こういう指導要領等についても、今後いままでの誤ったそういう指導については一切訂正をして、それに立って北九州の民間委託が是か非かという結論をあらためてお出しになる、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/136
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137・園田直
○園田国務大臣 私からお答えを申し上げたいと思います。
まず最初の、事情やむを得ざるという法律解釈でありますが、これは医務局長の表現が誤解を与えたと思いますが、あくまで給食は医療の一部である、これはサービスではない、したがってやむを得ざる事情とは、例をあげて言うことは困難でございまするが、私の解釈では、何らかの事情で病院みずからやっておっては医療の目的を達することができないというような事情が、やむを得ざる事情であると考えております。ただし個々の例については、その場その場で検討していきたいと考えております。
三重県知事に出しました通知、あるいはただいまいろいろ御指摘のありました指導要領の内容については、表現あるいは職安法等の問題も疑義があるようでございますから、早急に誤解を生じないように改正するべく検討を命じ、そのようにしたいと考えております。
なおまた、北九州の問題はあらためてはっきり言っておきますが、これは医務局長の名前で通知はしてございまするが、やはり大臣が見てよろしいと言ったものでございますから、大臣が見た以上は大臣の責任でありまして、それは一応通知はいたしましたものの、その後、さらに大事な問題であって、一北九州の問題ではありませんから、いろいろ検討をし、意見を聞き、いろいろこういう難点があると考えましたので、小さいあやまちをかばうために将来大きなあやまちになってはならぬと考えた私の判断でございますから、これは大臣の責任としてお許しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/137
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138・八田貞義
○八田委員長 多賀谷真稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/138
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139・多賀谷真稔
○多賀谷委員 大臣から御答弁をいただいたわけです。それで検討を願いたいと思いますが、実態を五、六分ちょっと質問をしてみたいと思います。
一体、指導事項の状態をそのままいま北九州では厳守されるような体制になっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/139
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140・若松栄一
○若松政府委員 北九州の現地におきましては、病院を実際に管理しております病院局の職員だけにまかせずに、衛生の直接責任者である衛生局長もこれに応援いたしまして、そして私どもとも協議をしながら間違いのないように指導していくということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/140
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141・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私が申し上げていますのは、この指導事項に合致していない現状の状態は、いまやろうとする体制は四月一日から実施ですから、一番重要なことは、先ほどから問題があった材料の購入はどこがやるかといえば、これは民間の三社の業者がやる。そうすると、むしろ医療法のほうから言えば、この指導要綱に沿ってないんですよ。そういうことを調査をしながら、これは大臣からあとで検討するという御答弁をいただいたわけでありますが、なぜ指導要項に従って指導しなかったか。
時間がありませんからもう少し申し上げますが、実は、三重県に出されました通達と、それから指導事項の差異の一番大きな点は材料の購入にある。すなわち、三重県の照会に対する通達は、材料の入手は業者がやるということになっている。ところが指導要項では、材料の購入は病院がやるということになっている。ここがきわめて重大な点であります。そこで私は先般この委員会で、二つ通達が出ておるが内容が違うが、一体どちらが正しいんですかと聞いたら、あとから出した指導要項が正しいのです、こうおっしゃる。そうすると、材料購入というものは病院がやられるんですね。そうでしょう。ところが現実はどうかといえば、材料の購入は業者のやることになっている。今度、三百二十円の単価のうちで材料の購入費が大体百八十円、労務費が六十円、管理費が八十円、これは直営を含みます。要するに病院側の管理を含みますから。直営といえば語弊がありますが、こういうことになっているんですね。ですから材料の購入というのは非常に大きな要素になっている。それは病院でやらないで業者でやる。労働省のほうはほっとしたような顔をしておるけれども……。そうすると医療法のほうは明らかに違反になるわけだ。そこで、この点等を明らかにし、さらに特別食も全部業者でやるということになっておる。ですからそういう点を考えて、大臣が先ほど御答弁になったように、それは小の虫を助けるために大の虫を殺すという状態にならないとも限らない、こういう憂いをわれわれは非常に持っておりますから、ひとつ十分配慮していただきたい。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/141
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142・八田貞義
○八田委員長 この際暫時休憩いたします。
午後一時十四分休憩
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午後二時三十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/142
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143・八田貞義
○八田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
内閣提出の医師法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
質疑の通知がありますので、これを許します。田邊誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/143
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144・田邊誠
○田邊委員 前国会から継続で審議をいたしてまいりました医師法の一部改正について、私は国民の生命と健康を守る立場からの医療問題、国民のための医師づくり、こういう立場から苦干質問をいたしたいと思っておるわけでございます。あとで基本的な態度に対して大臣からお聞きをしたいと存じまするけれども、何といっても医療の問題は、国民万般が非常に関心を持ち、また直接影響するところの大きい問題でございます。したがって、いわばこれは医師の直接の問題であると同時にやはり国民の問題であるとも私は思うわけであります。この問題の取り扱いも、もちろん専門的な中身に対して十分な審議を尽くすことが必要でありまするけれども、その基本となるものは、やはり国民の医療、そのための医療担当者としての医師というものに、一体どうやってりっぱにその職責を果たしてもらうか、こういうことでなければならぬと私は思うのでありまして、大臣も私の意見に同感ではないかと思うわけでありますが、最初にひとつこの問題の取り扱いに対して、厚生大臣としての所感を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/144
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145・園田直
○園田国務大臣 医療行政についていろいろ問題がございまするが、いろいろな問題にいたしましても、要は医療行政を直接担当し、国民の生命を守り、延長するのは医師自体であります。したがいまして、医療行政の主体は、医師がどのように自由にして、しかも自分の技術を発揮できるか、この医師と患者をどのようにつないでいくかという点に重点があると考え、すべての問題がこれを中心にして発展していかなければならないと考えております。したがいまして、一つには、医師の方みずからの努力と協力によって、この資質を向上し、新しい発展する医術に対する対応の処置をしてもらおう。及びわれわれとして特に考えなければならぬことは、医師並びにこれに付随して医療行政に従事する人々の待遇問題については、これと並行して大きく検討しなければならない問題ではないか。たとえば、ただいま医師あるいはこれに従事する人々の待遇というものは、一般公務員よりもまさってはおりますけれども、単に、看護婦にしても、医師にしても、同年限、同程度の学校の修業年限に応じた一般公務員よりもすぐれた待遇をしているというだけであって、生命を守るというとうとい責任及び特殊な技術及び一人前の医師になるまでの多年の年限、こういうことを考えると、いまの給与体系の中に置かれた医師並びにこれに付随する業務の諸君の待遇というものは、ここでひとつもう一ぺん検討をしなければならぬ段階である、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/145
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146・田邊誠
○田邊委員 そこで、審議の中身に入る前に、すでにインターン問題が直接かかわりのある医学生なりあるいは医卒者なりの間でもってたいへんな論争を呼んでおることは、御案内のとおりであります。実は一昨日も、東大の医学部並びにインターンの人たちに対して、このインターン制度の問題をめぐる紛争に関連をして十七人の処分が発表されたのであります。これはたいへんな大量の処分であります。インターン紛争もここまできたかと、実はわれわれもたいへん心配をいたしておるわけであります。このよって来たる要因等については私はあとでお聞きをするわけでありますけれども、文部省おいででしたらば文部省からも見解をお聞きをしたいのですが、事のよしあしは別といたしまして、またこれの直接の処分の対象になりました事犯についてここで言及することは避けまするけれども、何としてもやはりインターン制度の反対の運動というものの一環であったことは、これは疑えない事実であります。これらの問題が起こってきている要因を私ども静かに顧みたときに、こういった事態が起きたことはきわめて遺憾であると思わざるを得ないのであります。この処分までしていま大きな問題となっておる医学生の実力行使といいましょうか、これらに対してどういうお考えであるか、どういうふうにこれを解決しようとされておるか、具体的な事犯についてだけとりあえずお聞きをしたいと思うのです。この問題は、文部省のほうは大学学術局長がお見えになってから御答弁をいただくことにいたしておりますが、これはやはりよって来たるところがいま言ったインターンの問題であるという形でございますから、文部省ばかりでなくて、このインターン問題を直接取り扱ってまいりました厚生省としても、やはりこれは責任があることは疑えない事実であります。厚生大臣としても、この紛争の処理については、ただ単に文部大臣にまかせるばかりでなくて、そのよって来たる要因を考えたときに、大臣としても当然これに対して十分対処をする考え方でなければならぬと思うのでありまして、そういう意味合いからお聞きをいたしておるわけでございますから、大臣からお答えをいただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/146
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147・園田直
○園田国務大臣 新聞に報じられまする東大の問題、これは直接には文部省の所管で、ございますから、処分その他の処置については言及いたしませんが、いま仰せられたような観点からも、私は非常に重大な関心を持っている次第であります。
学生諸君の言い分をいろいろ新聞あるいはその他の文章等で拝見をいたしますが、一つには、今度のインターン制度のいままでの経緯が相当長い経緯があって、いろいろ変転がありましたために、学生諸君の中にも、新しい制度に対する理解の点が浅いところから出てくる問題もあると思いますし、またもう一つには、学生諸君の言い分にも率直に耳を傾けなければならない点もあると思います。なおまた、学生諸君の言い分の中には、インターン制だけではなくて、インーターン制を発起点として、やはり今日までの医学の社会というか、制度というものに対するいろいろな御意見もあるように承っておりますが、そういう点は御意見を十分聞きながら、関心を払いつつ、インターンの問題を中心にして、それぞれ私の所管については検討してみたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/147
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148・田邊誠
○田邊委員 医師の国家試験が三月二十日から始まる予定というふうに聞いておるわけでありますが、いまのところ、全国の医学系四十六大学のうちで、一体この国家試験を受けようとする人はどのくらいおありですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/148
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149・若松栄一
○若松政府委員 出願いたしました者の数が千四百二十二名でございまして、私どもが四十二年三月に卒業したと思われる者三千二十八名に対して四七%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/149
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150・田邊誠
○田邊委員 昨年の国家試験を受けた人数は一体どのくらいでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/150
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151・若松栄一
○若松政府委員 昨年の三月に行なわれました国家試験におきましては出願者が千七十九名でございましたが、実際に受験した者は四百四名であったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/151
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152・田邊誠
○田邊委員 その人数は、当然インターンを終えて国家試験を受ける立場にあった者、これはもちろんその前の年の卒業生というようなこともありましょうが、それを含めた人数の一体どのくらいに当たりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/152
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153・若松栄一
○若松政府委員 国家試験を受けた四百四名というものは、当然国家試験を受ける資格が出てくるはずの者の約一三%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/153
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154・田邊誠
○田邊委員 昨年の三月十二日から行なわれました国家試験における受験者は一三%というのは、大体われわれも承知をいたしておるわけでありますが、この人たちは一体ことしの国家試験にどのくらい受験をする予定になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/154
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155・若松栄一
○若松政府委員 昨年度、つまり昨年三月に国家試験を受ける人たちのうち、実際試験を受けた者が一三%、四百四名でございましたが、例年春秋二回試験を実施しておりますので、秋に二千七百名ほど受験いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/155
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156・田邊誠
○田邊委員 そうしますと、昨年の国家試験を受ける人は一昨年卒業でございまするから、一昨年の卒業でもって現在国家試験をいまだに受けておらない人たち、あるいは合格しておらない人たち、これは大体どのくらい残っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/156
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157・若松栄一
○若松政府委員 正確な実数はちょっといま持ち合わせておりません。およそ三百名程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/157
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158・田邊誠
○田邊委員 その人たちは、ことしは試験を受けようといたしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/158
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159・若松栄一
○若松政府委員 一々名簿を照合してございませんけれども、この中には東大の四十一年卒あるいは横浜市大の卒業生等が集団的に入りますので、この方々は今度の試験を受けるような態度であるように聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/159
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160・田邊誠
○田邊委員 いま大臣お聞きのとおり、この紛争が起こった昭和三十八年前後から、だんだんとインターンに対する批判が高まり、あるいはまた医学生の中からは、これに対して具体的な反対行動といいましょうか、こういうものがなされてまいりました。しかも、それが最終的には試験ボイコットとなり、あるいは医学部の学生の授業放棄となって今日に至っているという事態であります。したがって、われわれは、この事態を何としてもおさめることが為政者としての当然の責任であると痛感をいたしておるわけでございまして、以下お聞きをする中で、最終的にこの法案の審議に対して念頭に置かなければならぬことは、医学教育なりあるいは大きくは医療制度なり、こういったものとの関連の中で医師法の改正をわれわれは当然考えていかなければならぬと同時に、現実に起こっておるところの、これに関連をする、からむところの紛争をどう処理するか、どう解決するかということも、これは考えなければならぬ重大な問題であろうと思うわけであります。そういったことから言いますと、今年度の国家試験の受験者が五〇%にも満たない、こういう事態でありまして、われわれとしてはまことに遺憾にたえないわけでありまするが、結論を先に急ぐわけではございませんけれども、たとえば医師法が政府の提案のごとくこの国会を通過をして実施という形になりますならば、この事態というものがどういうふうにこれから展開をするのか、この紛糾が、この法律改正によってどのような形でもって終息の道をたどるのかということも、私はまずもって念頭においてかからなければならぬことだと思う。このことだけにとらわれることは、私はもちろんいかがかと思います。しかし、やはり現実政治の中においてわれわれは、このことを忘れることはできないわけでございまするから、その点に対して、ひとつ大臣は確固たる決意と見通しがおありかどうか、簡単でけっこうでございますから、まずお聞きをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/160
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161・園田直
○園田国務大臣 御指摘のとおりでありまして、提案をいたしまする政府のほうも、このインターン制度の法律案を契機にして、学生諸君が少なくとも将来に対する希望を持たれ、これに対する理解を持たれ、また政府のほうもきめられた法律に基づいてそちらの方向へ前進するように努力をすることが、お指図のような問題の解決になると考えて、念頭に置きながらやりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/161
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162・田邊誠
○田邊委員 文部省の大学学術局長がお見えでございますが、いま厚生大臣にお聞きをいたしましたけれども、インターン制度にからんで、各所の大学でもっていま紛争が起こっておりますが、その中で東大の十七人の処分という問題が発生をいたしまして、事態はさらに混迷をするのではないかというふうに実は憂えておるわけであります。あなたの新聞談話等も私は拝見をいたしましたけれども、もちろんこの中には思想的な意味の運動の問題もございましょう。しかし、これだけの多数の学生が行動するという中には、やはりその根の中に、ある一つの一致したものがあるだろうと思うのであります。したがって、これらを踏まえながら、いま起こりつつあるこの処分闘争といいましょうか、処分の紛争等を一体どうやって解決をしようとするのか。ただ単に大学だけにこれをまかしておくというわけにはいかないと思っておるわけでございますから、ひとつ文部省としてのこれに対するところの対策はいかようなものか、お聞きをしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/162
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163・宮地茂
○宮地政府委員 最近、医師法の改正に関連いたしまして、国立大学のみならず、公私立の大学等の医学部で、医学部の学生あるいは卒業生、こういった方々で、いろいろ医師法問題について反対の機運が強いということは御承知のとおりですが、私どもが承知いたしておるところによりますと、これらの学生の言い分はいろいろございまして、多少の相違もございますが、大体のところを取りまとめて申し上げますと、要するに今度の医師法改正には教授会として反対声明を出すべきである、出してほしいという一つの要求、それから医師法の改正とは別個の問題として、卒業後の研修、これはするけれども、その研修の内容、カリキュラムは、自分たちが自主的に考えたカリキュラムによってやってほしい、多少譲っても自分らと大学と両者で相談してやっていこうというようなこと、これが中心のようでございます。その他、自分の受けたいと思う場所で研修をさせろとか、施設設備を充実せよとか、いろいろあるようでございますが、そういうものが中心になっておるようでございます。
私、この要求に対しまして、また、こういう要求を掲げる学生の考え方も、一部わからないでもない点もございますが、しかしながら、教授会に向かって、医師法の改正反対を声明せよといったような言い方、あるいは臨床研修は自分らで自主的にカリキュラムを組むのだとか、あるいはせめて一歩譲っても大学と自分らが相談してカリキュラムをつくるのだといったような考え方には、どうしても私らとしては納得もいきませんし、そういう考えは間違っておるというふうに考えます。もちろん、その他施設、設備を充実せよとか、いろいろ付帯的なものもございます。こういう点につきましては、これは厚生省のほうが中心でございますが、私どもといたしましても、医師法改正後の臨床研修につきましては、苦しい国家財政のもとでございますので、この人々が要求するとおりのものはもちろん予算要求はいたしておりませんが、可能な限りの予算要求はいたしておりますし、現在御審議をいただいておるところでございます。こういうようなところへ、その前提として、医学生としてもう少し謙虚に自分らの置かれておる立場を、また将来医師になる者としての考え方を真剣に考えていただきたい、こういうふうに考えております。
東大の事件につきましては、こういったような要求を大学当局に出しまして、たとえば労使双方が団体交渉をするかのごとく、自分らに団体交渉権があるかのごとく、再三医学部長と教授会等と団体交渉を要求いたしております。学校といたしましては、もちろん団体交渉に応ずるといったような性格のものではございませんが、できる限り学生と話し合いをし、学生の了解を得て進んでいきたいということでしばしば話し合いも進めておりましたが、たまたま二月十九日でございますか、東大病院構内に外人を案内した上田病院長が通りかかっておった。そこへこういういわゆる医学生等が押しかけまして、上田病院長に対して団体交渉をしようとした。外人もおることですし、またそれは病院の中でございます。こういったようなことで、いろいろ遠慮しなければならない場所にもかかわらず、相当強硬な働きかけを上田病院長にし、その後、助手でございますが、医局長に対して暴行を働き、また相当長時間にわたって医局長を監禁をした。また強要をして心ならずも医局長に謝罪文を書かせた。こういったようなことに対しまして大学当局といたしましては——これは医学生としましてはいろいろなことを兼ね備えなければいけません。いろいろ医学上の勉強もしなければならぬと思います。しかしながら、そういう学問とか研究とか技術とかということよりも前に、まず医者になろうとする者が病院で一番患者を大事にしなければいけないにもかかわらず、患者がおるその病院内で相当な乱暴を働くということは、もともと医学生としての最初の資格要件に欠けておるというような考え方を大学当局も持ったようでございます。そういうような観点から、今回、先ほど御指摘のようにいろいろ種類が違いますけれども、退学者を含めまして十七名の処分をいたした、こういうことでございます。
これに対して今後対策はどうなんだということでございますが、これは東京大学だけではございません。医科歯科大学でも、大学当局に医学生あるいは卒業生、インターン生ですか、こういう人々が東京大学と同じような要求を掲げております。また卒業試験は受けない、在学生は授業放棄するといったようなことで、東京大学と似たような問題が起こっております。そのほか新潟大学あるいは京都大学等でもこういう問題が起こっておりますが、先ほど来申し上げますように、これは個々の大学で多少の相違はございますが、一貫してこの医学生たちが言う要求は同じでございますし、先ほど私が指摘いたしましたように、これは労使双方といったような関係に大学と学生はあるものでございません。また、いわゆる被教育者と教育者という立場から、被教育者は自分がカリキュラムを組んで自分の好きな教師を雇ってきて教えを受けるといった、いわゆる中世以前のどこかの国にありましたような古典的な大学の考え方というものは、そもそも現在の私どもが考えております教育形態でもございませんし、学校教育法の期待するものでもございません。したがいまして、今後学校と学生が十分話し合うことは必要と思います。ただ処分だけが能ではございませんから、できる限り話し合いはしたほうがいいと思います。しかしながら、基本的に掲げておることは絶対に譲れないんだ。それはストライキをしてでも、卒業試験を受けなくても、ともかく目的のためには何でもやるんだという態度は、これは学生としてぜひ改めてもらいたいし、それを改めない限り問題の解決はない。東京大学と同じような処置をとらざるを得ないのではないか。処置そのものは私は決してすべきではないと思います。しかしながら、やむを得ない大学としての当然の措置であろう、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/163
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164・田邊誠
○田邊委員 詳細にその経過なり、あなたが学生に対して持っている考え方なりというものはわかりました。私の聞いているのは、たとえば処分の適否を聞いておったり、いわばその学生の持っている考え方がいい悪いという問題は、これは重大ですけれども、しかしそれだけを聞いておるのではありません。現実にいま起こりつつあるこの事態というもの、これを何とか解決することが、大学当局はもちろん、文部省の、そして政府の責任である。いま医師法改正が審議になっておるわけでありまするけれども、この医師法改正というものも、これらの現実に起こっている紛争の解決のために、一体どういうような役割りを果たすのか、こういう観点で実はお聞きをいたしておるのでありまして、私も、せっかくの御答弁でございましたから、しんぼう強くずっとお聞きをしておりましたけれども、私の聞いておる要点というのは、これのいい悪いをここで論じるのはやさしいことですけれども、そういうことでなくて、いま国会の審議の場所にある医師法、これに関連をするいまのいろいろな動き、これをどう終息させるかということを一面において考えながらわれわれは今後の審議に当たりたい、こういうように先ほど大臣の決意もお聞きをしたのであります。そういった観点で文部省としては、いまちょっと話し合いというお話がございました。もちろんけっこうでございます。あなた方が考えるところの処断というものもときには必要でございましょう。しかし私はいずれにしても、問題の最終のいわば悲願というものをにらみながらどう対処するのか、このことを実は文部省にお聞きをしてみたかったのでございまして、時間もないようでございますから、ひとつあなたのほうから、私の言う意味がおわかりでございましたらば、再度御答弁をいただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/164
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165・宮地茂
○宮地政府委員 先ほども申しましたが、いわゆる医師法反対というのでは——私どもは、医師法改正は、理想ではないかもしれませんけれども、今日の段階で許されるまあいい方法であろうというふうに考えております。これは理想じゃないけれども、次善の措置という言い方の人もいますが、いずれにせよ現行よりはいい方法だし、今日の状況ではここまでであろう。したがいまして、それに必要な予算措置としましては、私どもも、国立大学ですと医学生に対しての協力謝金は一万五千円ですか、これは将来の問題としてもう少し検討するといったようなことは十分考えていい問題であろう。あるいは施設等につきましても、私どもが大蔵省に予算要求いたしましたもので一、二落ちたものもございます。これは国家財政の関係でやむを得ませんが、しかし今後の問題として改善していくのにやぶさかではございません。そのような努力はいたしていきたいと思います。しかしながら、ただ話し合いとか、いろいろ学生が無理を言うんだから少し引っ込んだらどうだといったような観点から、カリキュラムは自主的につくるんだとかあるいは医師法は反対するんだといったような考え方では、これはもうそれに従うか従わないかだけの問題になってくるのじゃないかというような気もいたしますので、私どもといたしましては、できる限りまずい点は将来の問題として検討してみたいという気持ちは十分にいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/165
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166・田邊誠
○田邊委員 私は、国会で法律をつくり、それを具体的に施行していただく行政府の立場からいえば、それらの法律なりそれらの行政的なものが国民に対して説得力を持たなければいかぬと思うのです。理解を与えるようなものでなければいかぬ、それで協力を得られるようなものでなければならぬと思うのです。そういう立場で言いますると、いま局長のお話では、医師法改正というものがたとえあったにいたしましても、なかなかもって現実の紛争を終息することにはならぬ、あるいは学生に対する説得力にはどうもならぬ、こういうふうにあなたはお感じになっていらっしゃるのか。あるいはまた、これをひとつてことして今後紛争の解決のためさらに努力しなければならぬ、こういうようにお考えであるのか、その点を実はお聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/166
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167・宮地茂
○宮地政府委員 先ほど来申し上げて、新たに申し上げることはないと思うのですけれども、先ほど来申し上げておりますように、予算上の問題とかあるいは行政上の問題で、私どもといたしましても、四十三年度はこれは一応原案ができて国会で予算を御審議いただいておりますが、四十三年度にきまったことはもう四十四年度以後改めないのだということではございませんで、少なくとも、御審議いただいております四十三年度の予算に関するような問題は、今後とも私どもは充実してまいりたいというふうに考えております。しかしながら、いわゆる医学連、青医連の方々が掲げておられますような、教育の基本に触れるような、いわゆる臨床研修のカリキュラムは自分らがつくるのだといった、学校を自分らで管理していくのだといったような基本的なかまえは、私どもとしてはどうしても納得いきませんし、現在の学校教育法はそういう思想でできておりません。ですからその点、そういうもの以外で、予算的にいろいろ考えなければならぬ、あるいは行政上不備な点を整備していくということは、当然考えていくべきだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/167
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168・田邊誠
○田邊委員 私は、ここでもってあなたと論争しているだけのあまり多くの時間はござませんし、局長もほかの委員会でお忙しいと思いますが、私は、現実に学生の先頭に立っている諸君だけをながめてもらっては困ると思っておるのであります。これはもちろん統一した要求なりあるいは考え方というものもありましょうけれども、やはり医学生全体の一つの姿、あるいは今後のわれわれが望むところの医学教育のあり方、こういった点から見てその対策を考えていただく、問題処理に当たっていただく、こういうことでなければならぬと実は考えておるわけでありまして、来年度以降のいろいろな努力については、私は後ほどこまかく厚生省にもお伺いをいたしますから、現在紛争が起こっておるこの事態を当然深くお考えでございましょうから、あらゆる機会を利用し、あらゆるものを一つのてことして、紛争の解決のために文部省当局は特段の努力をされることを私は特に希望しておきたいと思うのでありまして、また時間がございましたならばおいでをいただくことにいたしまして、次の問題に移りたいと思います。
医務局長にお伺いをいたしまするが、現行の医師法によるところのインターン制度、実地修練制度というものは、昭和二十一年から約二十二年余行なわれてきたのであります。その間、昭和二十八年には参議院の社労委員会でもって初めてこの問題が取り上げられて、これのいわば改革に対する一つの意見というものが政治の舞台で表に出されてきたと思うのでありますがしかしそれから先にもすでに十五年の年月を経過をしておるわけであります。今回出されました法律案の中身と大臣の提案説明の中には、このインターン制度というものが医療水準の向上に寄与してきたことは大きい、しかし運用面において、実施修練の施設というものが整備されていなかった、あるいはまたそのインターン生の身分なり処遇というものがきわめて不満足であった、こういったいわば運用上の面から、このインターン制度に対して今度の改正をしなければならぬという意味の説明があったのであります。しかし私は、それだけではたしていいのかどうかということを考えてまいりますると、もう少しく現在のインターン制度のいわば根本に触れて考えなければならない数多くの問題がこの二十年余の間に起こってきたのではないか、こう思うのであります。制度そのものはよかったけれども運用は悪かった、不足しておった、こういう考え方で問題の処理に当たっていいのか。あるいは医学教育というものがだんだん充実してきた、したがって医者としての資格を得るのには、卒業してなおいわば修練をする必要がいままであった、ところが教育の中身が進歩し、充実をしたことによって、この大学を卒業して一年間修練をするという、こういう期間なりそういう制度なりというものが必要でなくなった、卒業と同時に国家試験を受けられるという、こういう立場に立っても決して不十分でない、こういうお考え方に立つのか。あるいは学校を出た者を、いままでのように、説明されておる身分や待遇がきわめて不安定であり、不十分である、こういう状態に置くこと自身に問題がある、こういうように気がつかれたのか。いわば今度のインターン制度を廃止する最も基本的な考え方というものは一体どこにあるのか、この点をひとつお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/168
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169・若松栄一
○若松政府委員 インターン制度それ自体がすでに二十年の歴史を持っております。今度のインターン制度の前には、日本でも長い間そういう制度がなくて、医学部を卒業して直ちに医師になる、そして自主的な研修を行なう制度が慣習的に確立されていたと言ってもいいと思います。しかし、どこまでも慣習的であり、これが決して完ぺきなものではなかったことはもちろん確かであります。そういう意味から、これをむしろもう少し完ぺきなものに近寄せたいという念願から、自由な研修制度からインターンという制度に移り変わってきたことと思っております。そして現実に戦後このインターン制度が導入されました際も、一年間の研修ということが義務づけられましたけれども、どうせ医師というものは卒業後研修を行なうものであるというたてまえから、そう大きな疑問あるいは反対というものなしにしばらくは続いたと思います。比較的新しい時代にこのインターンを実施された先生方もたくさんおられまして、現に大学の教授になられておる方も相当おられます。そういうような先生方の御意見を聞きましても、われわれはインターンを相当有効にやった、制度そのものが必ずしも悪いんじゃないんだ、しかしだんだん世の中に合わなくなってきたことは確かだというようなお話もございました。ごもっともなことだと思っております。制度というものは、世の中が変わってまいりますと、やはりだんだん合わなくなってくるものがございます。そういう意味で、インターンも、初めはそれほど不合理あるいは悪い制度というようなことはなかったのでございますけれども、実施していきます間に、世の中の考え方あるいは社会構造、いろいろな面からこれが相当適当でないものになってきたことは確かだと思います。したがって、これを何とか改正しろという意見が起こってきたことはもっともでございまして、その適合しなくなったという状態における一番大きな問題は、義務づけて研修を行なわせているにかかわらず、国がこれに対して何らめんどうを見てくれないじゃないかということが一番大きな問題だったろうと思いますし、またもう一つは、制度的に研修を行なうということは、現実に診療を行なわなければならない。にもかかわらず、医師でもない、学生でもないという身分では、これはうまくいかないという点もあったと思います。それらの点がだんだん高じててきまして、インターンという制度は悪い制度だというところまでいわれるに至ったと思います。そういう意味で、私どもとしてはこの改革の第一段階におきましては、インターン制度そのものの運用を改善していこうということに努力いたしましたが、それも十分実らないうちに、もうこの制度はむしろ撤廃しろという声が強くなりまして、現実の姿といたしましては、インターン制度は一応廃止して、そして新しい研修制度をつくるというのが今回の法律案であり、現在までに至った経過的ないろいろな段階を踏んできた最終的な考え方であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/169
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170・田邊誠
○田邊委員 いま局長の言われたことの中には、いろいろな重要な問題が含まれておるわけでございまして、それは逐次お伺いをいたしてみたいと思いまするが、しかしいずれにいたしましても、いまあなたのおっしゃった中に、世論がだんだんとインターン制度に対して批判的になってきた、むしろ廃止したほうがいいというふうにいわれてきた。私は、厚生省としての統一した考え方に欠けておるんじゃないかと思うのです。すでに二十八年に国会でもこの種の問題が取り上げられてきた。それからもう十五年を経ている今日において、ようやくこの問題に手をつける。ここに私は、自主性のある研修なんということもいわれておりますけれども、やはり厚生省自身の自主的な考え方、指導的な考え方、これがなかったところに、今日の混迷を招いた一つの大きな要素があるんじゃないかという気がするのです。時代の進歩その他もありましょうけれども、私はやはりこの制度の持っておるところの一つの欠陥、あるいは非常に不満足な点、こういったところにいまさらに厚生省が気がつかれたのではないかと思うのでありまして、相当前からこれに着眼をされてしかるべきであったと私は思うのでありますが、いわばこの問題が起きてから方々からいわれていることは、何といっても厚生省あるいは大学が、本気にこれを解決するために取り組む勇気と決断に欠けておったのではないか、こういう批判があることは、私はあながち的がはずれておるとは思わないのであります。したがって、いわば過去のことを悔やむことはいかがかと思いまするけれども、何としても今日の混迷を憂えるものの一人として、私は厚生省のいままでの態度に対して非常にあき足らない、こういうように実は考えざるを得ないのであります。そういった点から私どもは見まして、今回の法律案というものはきわめて画期的なものでなければならぬ、問題の本質に迫ってこれに根本的な解決を与えるようなものでなければならぬと思っておるわけであります。その点に対してあなたのほうは、一体そういう確信と見通しと決断の上に立った考え方を打ち出したというように、どうしても受け取れないのでございまするけれども、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/170
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171・若松栄一
○若松政府委員 お話しにありましたように、インターン制度というものがすでに世の中にうまく合わなくなってきつつあったということを十分に察知し、さらにこれをいかに解決していけばいいかという大きな見通しに欠けたという点は、私どもも率直に反省しなければならぬと思っております。そういう意味では、事の解法を長引かしてここまで大きな騒ぎにし、世の中に大きな御迷惑をかけたということに対しては、私ども自身率直に責任を感じております。ただ、現在の段階でどのような抜本的な解決ができるかということになりますと、先ほど来大学局長からもお話がありましたように、現在の学生の動きあるいはこれをめぐるいろいろな動きというものは、単にインターンあるいは医師法改正のこと、それだけではございません。それらを契機として発生いたしました大学の医局制度に関する問題であるとか、あるいは学位制度の問題であるとか、臨床大学院のあり方であるとか、いろいろな問題がからんで、これらの動きがだんだん大きくなってきております。そういう意味で、この医師法の改正だけでこれらの動きをすべて解決するということは、現在では全く不可能な状態になっております。そういう意味で、この法律が成立したといたしましても、すべてが終着するとは思っておりませんが、私どもといたしましては、学生諸君その他のこれをめぐるいろいろな階層の方々も、十分にこの情勢を理解していただいて、医師法の問題で解決すべきものはこれとこれ、医局問題で解決すべきものはこう、無給医局員の問題で解決する問題はこう、学位問題に対してはこうと、一つ一つに取り組んで着実に解決していく方向が必要であろうと思います。にもかかわらず、すべてを一括して、ただ焦点の定まらない反対ということだけが盛り上がっていることは、私どもは非常に遺憾に思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/171
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172・田邊誠
○田邊委員 いまの局長の御答弁は実は問題だと思っておるのですが、しかしこれは一応おきましょう。というのは、この問題が起こったときに、あなた自身がたびたびお話をされておるわけであります。談話も発表されておるわけですが、その中に、この問題の解決は、何といっても、たとえば無給医局員あるいは学位の問題、その他いわば医療制度全体につながる問題こういったものの解決なしにははかれないのだ、こういうお話をあなたがしているんですよ。そういったことの発言といまの御発言は、どうもこれは幾らか違うと私は思っておるのですが、相手に望むことは一つ一つずつ解決してみてもらいたい、こういうのではものごとは通らないと思うのであります。しかし、そのことの重要性というものは、私は逐次あとでお伺いする意味で、一応保留しておきます。
それでは、ひとつ具体的な中身に対してお伺いをいたしますが、まず何といっても法律案の中で一番重要なことは、いままでのインターン制度を廃止する、したがって、実地修練を経ないで大学卒業後直ちに国家試験を受けられる、こういうところにあるのであります。そうしますると、医師として医療に従事することを国が認める国家試験——資格を得るわけですから、この国家試験をいままでとは違って大学卒業後すぐ受けられる、こういうことになるわけであります。そうしますると、国家試験を受ける時点、その時点だけにおいて考えたときには、従来は、あなたのおっしゃることを信用すれば、あなたの言うことをそのまま受け取れば、インターン制度にも実は制度上いろいろいい点があった、貢献した点があった、ただ現実にだんだんそぐわなくなってきた、時代の進展にそぐわなくなってきた、こういうわけであります。そうすると、従来のインターンというものは全然有害無益なものであり、逆にいろいろな障害になってきた、プラン面よりもマイナス面だけがあるという考え方であれば別でありまするが、しかし制度そのものには、あなたの言うとおり、もしいろいろな面で非常によい点があったといたしまするならば、今度はインターンをしないで国家試験を受ける、こういう形になるわけであります。そうすると、いろいろな実地修練、臨床を含めたいろいろな勉強をされることなしに今度は国家試験を受ける、こういう形になる。あとでお伺いいたしますけれども、いわば医学教育の進展という問題ともちろん相関関係にありまするが、昨年に比べてことし医学教育が、法律改正を目ざして画期的に充実したり中身が改善されたりという形ではないと思います。日々進歩だろうと思いますが、そういった意味合いからいたしますれば、この国家試験を受けるという時点を考えたときには、従来のいわば臨床経験などを経たインターン後の国家試験と比べたとき、これはどうも国家試験を受けるときという時点に限って見れば、水準の低下、レベルダウンではないかという、これは素朴な国民の意見があるのじゃないかと思うのですが、この点に対してはどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/172
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173・若松栄一
○若松政府委員 医師というものは、医学を学術的に勉強いたしまして、さらにまたこれを実技の面で研修を重ねてだんだん資質の高い医師になっていくものでございます。基本的にはまず学校教育をやり、学校教育の中でもある程度臨床教育を加えていき、そして卒業後さらに臨床教育を徹底して行なうという形がいままでの行き方でございます。したがって、医師というものは、学校卒業という段階で確かに一つの大きな勉強上の区切りがございます。そのあとさらに一年研修し、二年研修し、三年研修していくうちに、だんだん医師としての資質、能力が向上してまいるわけであります。一体どの点で医師のライセンスを与えるべきであるかという問題は、非常にむずかしい問題であろうと思います。国民の側からすれば、できるだけ高い水準のものになって初めてライセンスを与える、国民を診療するようにしてくれという願いは当然だろうと思います。しかし、これをあまり程度の高いことを望みますと、医師ができ上がるまでに三十歳になるというようなことになりかねません。そういう意味で、どこの段階で線を引くかということは、これは常識的に通常、いままで世界各国も、ほぼ学校教育の修了あるいは一、二年のインターンというところで線が引かれているわけであります。したがって、これが学校卒業と同時、あるいは一年のインターンをやった場合とどれだけの差があるかということは、一年分の差があることは当然でございます。しかし卒業と同時というものも世界各国にも相当多数ありますように、これも決して不当なものではないと思います。より望ましい姿というものは幾らも段階があると思いますけれども、学校卒業と回持ということでも決して不当と考えておりません。そういう意味で、もしも、いまの新しい卒業後直ちに国家試験を行なうという制度と、インターンを一年間行なって国家試験を行なう制度というものを比較いたしました場合に、インターンというものがきわめて合理的、効率的に行なわれていたとすれば、当然一年インターンをやった後に国家試験を行なうほうが国民の期待にこたえ得ると思います。しかし現実には、先ほど来お話がありますように、この現在のインターン制度というものは、一年間の時日を費やして研修をしたというのには、それほどの効果を上げ得なかった。つまり非常に効率の悪い一年間であったという意味から、この制度を恋々として保つべきではない。むしろ学生諸君あるいは教育者、医卒者の方々も、現在のインターンを廃止して卒業後直ちに国家試験を行ない、医師になった上で相当の組織的な研修を行なうことが、より効率的に医師の資質を向上する道であるという御意見が大勢を占めてまいりましたので、私どももその御意見に従って今度のような法律改正の趣旨に踏み切ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/173
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174・田邊誠
○田邊委員 ちょっと一言お断わりしておきますけれども、局長の答弁の中に、何かそういういろいろな意見というものが大勢を占めてきたからそれに従ったということがたびたび出てまいりますが、私はもちろん、世論に従い、あるいは医卒者その他の意見を十分取り入れてやるということについても、これはわからないじゃないですよ。わからないじゃないけれども、しかしそれだけをうのみにするということは、間違いだと思うのです。そのことを私が強調すると、何としてもいまあなたの言われたように、きわめて効率の悪かったインターン制度というものを今日まで便々と——私に言わせれば便々としてやってきたという責任は一体どうなのか、こういう形になるわけでございますから、私は何といっても確固たる一つの医療行政、厚生行政をやはり厚生省に望みたいと思っておるわけでございまして、大臣もお聞きになっていただいておると思うのです。その意味合いで、厚生省自身のこれに対する今後の確固たる方針というものを、ぜひこの際見きわめていきたいと思って質問をしたわけですから、私はその点はよくくんでいただきまして、あなたのほうの考え方というものをひとつ明確に打ち出していただきたいと思う。
いまお聞きをしてまいりまして、感じ方としてはわかります。たとえば、どの線で国家試験を受けさせ、いわば資格を与えるかということについては、これはいろいろ考え方があります。考え方はありますけれども、一応日本では、いわば権威を持たせ世の中に通用する医師を送り出すという意味合いからいえば、最低限度として一年間というものは必要だ、こういう判定だと思うのです。この判断が、いやそうじゃない、一年間というのは実は必要でなかったのだ、逆にいえばあんなものがあったのでかえって水準が低下したというか、誤った方向へ行ったので、そんなものよりはかえって医学卒業後国家試験を受けさせたほうがよかったのだ、こういうふうに言われるなら、それは何をか言わんやです。しかしそうでないですね、御発言が。とすれば、合理的効率的でなかったけれども、ゼロではなかったと思うのです。あなたの考え方に立てば。とすれば、やはり私は素朴に考えて、卒業即国家試験の受験という形というものは、これは国家試験を合格さすというその時点だけ考えれば、水準の低下を来たすのじゃないか、こういうおそれ、心配、これは国民の側からすればぬぐい去ることはできないのじゃないか、私はこう思うのですよ。そうでないとすれば、さっき私がちょっと申し上げたように、逐年医学教育が進んできているということを認めても、昨年からことしにかけて、一体その中身というのが飛躍的に進歩したのか、インターンの制度廃止を予測をしていわば教育内容というものを急速に充実させつつあるかというと、私はそういうことではないだろうと思うのですが、この点は、ここまでくればもうだいじょうぶなんだ、教育のカリキュラムにしてももう国民に心配かけることはない、こういう形でインターンを廃止して卒業時即国家試験の受験資格を与えるという形にしたのか、その点に対して重ねてお尋ねをしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/174
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175・若松栄一
○若松政府委員 一年のインターンを非常に合理的、理想的にやった場合と、全くこれをやらないで卒業後直ちに医師の資格を与えた場合と比較いたしますと、一年間インターンをやったほうがはるかにましであるということは、これは当然であろうと思います。しかし、現実にはなかなか合理的かつ効率的なインターンが行なわれなかったという、つまり弊害もあったという点を考慮いたしまして、むしろ卒業後直ちに免許を与えるという方向に踏み切ったわけでございますが、この間、合理的にやった者に比べて医師の資質において低下があるということは当然だろうと思います。それにもかかわらずなおかつ踏み切ったということは、さらに二カ年間、これは義務としてはいたしませんけれども、国民の意思を代表して国が「研修を行なうように努めなければならない」という法律の規定を置きますことによって、そのような憂いをなくしていこう、一年のインターンよりもより資質の高い医師が一般的に活躍できるような世の中にしたいというのが今度の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/175
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176・田邊誠
○田邊委員 だんだん答弁が変わってまいりましたね、局長。最初は、いわば効率的、合理的でなかったというのが、いまの御答弁では、障害も出てきた。あなたの側からいままでのインターン制度を全面的に否定することはできない、これは私は気持ちとしてはわかるのですよ。しかし、今度の改正の行くえを考えたときに、やはり率直に言えることを言ってもらいたいと思うのですよ。ただ単に比較して、いわゆる一〇〇%の形というものはとれなかった、いわば八十点か七十点くらいだったというような、なまぬるい考え方で今度の問題に対処されるというのではいけないと思うのですよ。ですから、このインターン廃止によって一体不安があるのかないのか。国家試験を受けさせて資格を与えるのですから、そのあとの研修の問題は別としましても——これは付随することはわかります。付随するするならば、一体研修制度というものは義務制なのか。そういうことになってくれば、これまた話はわかる。あなたのことばをそのまま言えば、不安が残るとなれば、国民に不安を与えるような形はとるべきでないと私は思う。とすると、あとで審議を逐次していきまする臨床研修制度というのは、やはり義務制でなければいけない、こういう考え方も出てくる、私の考え方は別として。しかしそういう意見も出てくるかもしれぬ。これはそうじゃないと思うのですよ。そうでないとすれば、あなたの考え方をもう一つ演繹していけば、どうも不安が残るとなれば、このインターン廃止によって、新しい制度、いわば卒業時即国家試験を受けさせる、こういうことは、ある程度準備期間を置かなければならぬのじゃないかという気もするのです。いままでのものが一〇〇でなかったかもしれないけれども、いわば効率的、合理的でなかった、しかしゼロじゃない、マイナスじゃないという形になってくれば、幾らかの不安が残るということになれば、この卒業時即国家試験の受験というのは、逆説的にいえば、ある準備期間を置いて、医学教育を逐年充実していく、それとにらみ合わしてこれを施行するという形でなければならぬと思う。私の考え方はあとで述べますけれども。そういった形ですから、局長、率直に、やはりいまのインターン制度というものは制度的にも現実的にも非常に大きな障害に行き当たっている、われわれとしても、プラスマイナスを考えるときに、いまどうしてもこの制度を切らなければならぬのだ、いわばこういう立場——内容的にいろいろありますけれども、それを総合してという形をとらなければならない。理論的に詰めていけば、いま私の言ったような考え方も出てくるのじゃないかと思うのです。どうでしょう。ひとつその腹のところをしっかりと見せてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/176
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177・若松栄一
○若松政府委員 おっしゃる趣旨、私ももっともだと思います。たとえいまのインターンが不十分であって八十点ないし六十点であるといたしましても、若干のプラスがあるものであるならば、これを廃止することによって多少の不安が起こるだろうということはもっともだと思います。したがって、それを解消するためには、インターンを廃止するだけの準備をまずやる、つまりその準備と言いますのは、端的に言えば、学校教育の時代にもっと臨床教育等を徹底してやって、そして現在のインターンによって得られる程度のものを学部内教育において獲得し、その暁において初めてこのインターンを廃止するというのが順当ではないかという御意見、まことにごもっともだと思います。そういう意味では私も順当だと思いますので、これをやるといたしますと、学部内教育を初めから立て直しまして、少なくとも四年間の学部内教育を再編成して、それが完成した暁に初めで法律改正をやるという筋になる。それがこの先少なくとも四年間以上待たなければならぬことになる。このことは現在の時点においては、理想ではございますけれども、ここまですでに紛糾いたしまして、事がめんどうになった現段階におきましてそれを待つということは現実上なかなか困難で、したがって、不完全ではございますけれども、まず一番大きいうみを出して、それを解決して、そのあとでさらにその欠点を補っていくという形をとらざるを得ない。そういう意味で、現在文部省におきましても、学部内教育を再編成いたしまして、学部内教育においていわゆるベットサイド・ティーチングというものをさらに強化していこうということで、このカリキュラムの再編成ということを現在御検討いただいておるわけでございますが、おっしゃるとおりであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/177
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178・田邊誠
○田邊委員 医学教育の中で特に臨床の研修というものの度合いを今後ふやしていく、充実していくということは、この問題と並行してどうしてもやらなければならぬことだと思うのです。この間参考人が来たときにも、私は豊川さんそのほかの方々にも技術者として実はこの点をお伺いしたかったのであります。したがって、このたびの改正の中におけるインターン制度の廃止というものは、あくまでも国民に不安を与え、医師に対する信頼感を薄らげるような、そういうことは避けなければならぬと思っております。そういう点から見れば、あなたの言われるようなことが今後行なわれることを私どもは信頼しなければならぬと思いますが、それに対する、またいろいろな考え方に対してお伺いをしていきたいと思いますけれども、一応は国家試験を受けて医師の資格を与える。これは国が証明をするわけですから。もちろん医師は一生研修、これは私はそのとおりだと思うのです。これは教育者もまたしかりだと思うのです。しかしいずれにしても、国がいわば国民に対して、この人は医師としてあなたの健康なり生命なりを預かって治療をしても間違いはありませんよというお墨つきを与えることだと思うのです。そういう点に対しては、再度、国民の側から見て不安感を残すようなことはない、こういうようにお答えをいただきたいと思うのですが、そのとおりでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/178
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179・園田直
○園田国務大臣 局長の答弁の中に理論的に誤解を与えるような点があってはなりませんから、あらためて答弁をいたしますが、他の職業もそうではありまするが、人命を預かる医師のことでございますので、不完全とかあるいは不十分という点は、これはいささかも許されません。国家試験が終了したあと私が出します医師の免許状は、人命を預かるに十分であるという証明書でありますから、そういう点から私はこの問題を詰めてまいりたいと思うのであります。
したがいまして、いままでのインターンがそれぞれの時期においてそれぞれの効果をあげてまいったことは事実でありまするが、第一にはインターンとして研修する学生の諸君そのものに非常な不安がある。一つには経済的な問題。一つには医師の免許が学生がわからぬ態度で研修をする。もう一つには、やはり日々における医学教育の進歩によりまして、少なくとも今日学校を卒業して国家試験を受ける段階においては、人命を預かる医師としての最低限の能力ある者と判断をして、このように踏み切ったものであります。しかしながら、医学の進歩は日々著しくあり、しかもその上にいろいろな新しい技術を習得しみがきをかけることが必要でありますから、その後の研修制度というものをお願いすべく提案いたしたものでございます。しかしながら、御質問の中にあるように、国家試験を受ける時点においては、一カ年間のインターンをやった者とすぐ受ける者とには差はないか、こういうことは、客観的に見れば国民に不安を与えてはなりませんし、また所管である私としては放置すべき問題でもありませんから、その点については、試験を受ける学生諸君の努力も願わなければなりませんが、私としては、関係各省と連絡をとり、最低の医師の能力は十分身につけ得るという医学教育の充実をはかることは当然であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/179
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180・田邊誠
○田邊委員 大臣から明確な御答弁がございました。私は、何といっても一つの最低限度のラインを引くという形から見れば、国家試験を受けるということによって国が医者としてのいわば証明をするという立場はきわめて厳格に守らなければいかぬ。したがって、願わくはある年限を置いてこの問題に対処すべきじゃないかという私の素朴な意見というものは、国民も同感だろうと私は思っているのです。さっき厚生当局を責めたわけではございませんけれども、願わくは、五年前あるいは三年前にこの法律案が出されて、その施行が今日から行なわれる、こういうことのほうが私はより万全であったろうと思うのです。そういった点から非常に残念にたえないわけでありますが、いま大臣から今後もこれが内容の充実、特に医学教育の中身に対してその充実、進歩のためひとつ真剣に取り組んでまいりたい、こういうお話がありました。ひとつぜひその方向で対処してもらいたいと思っているわけでありまして、ただ単にこの法律案の改正をめぐる今日の論議だけでなくて、私は、長くこの問題に対しては注目をし、そのつどその状態に対して指摘をしてまいりたいと思っておるわけであります。
そういたしますと、卒業即国家試験を受ける、こういうことによって免許を与えることに対して最低限度のものを確保する、こういうお話でありました。その当然の御答弁の上に立って論議を進めますならば、今回新たに提案をいたしておりますところのいわゆる臨床研修制度の姿というものが浮き彫りにされてくるのじゃないかと私は思うのであります。医学教育がだんだん進歩して、国家試験を受けて一応医師の資格を与え、国民の生命を預かるという立場から医者が誕生いたします。しかしその後における医者の研修というのは、いわば年限を切り、あるいはまたあるワクの中でするという形でなくても、当然続けられるべきものであると私は考えますし、またぜひそう願いたいものだと私は思っているわけでございます。そこで今度の臨床研修制度というものを設けられたわけでありますけれども、これがいままでありましたインターン制度と本質的に異なっているものは一体何でありましょうか。もちろん国家試験を受ける前と受けたあとという時期的な相違もございましょう。あるいはまた一年のインターンが今度は二年以上というように、その年限が変わっているということもございましょうし、そしてまた、あとでもって究明いたす幾ばくかのそれに対する見返りといいましょうか、報酬、給与、こういったものが支給されることに対しても違いがあることもわかりますけれども、いわば医師の研修、そして医学教育からわれわれがくみ取ってくる一人前としての医者の姿を考えたときに、いままでのインターン制度と今度新たに設けようとする臨床研修制度の本質的な違いは一体どこにありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/180
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181・若松栄一
○若松政府委員 従来のインターン制度における研修と今後の研修との一番大きな違いは、私は医師になる前の教育と医師になってからの教育ということだと思います。これは単に医師の資格を持ってから行なうとかいうことでなしに、いままでのインターンというものは、むしろ学部教育にさらに臨床教育の仕上げをして、そこで初めて医師になる。したがってインターンというものはいわゆるローテーションが原則である。診療各科のすべてのものを一応くまなくやるという形でございました。したがって、医師としての基本的な能力を築き上げるというものであったわけであります。今度のものは、医師になりまして、ある程度専門の、将来やろうと思います領域を目がけた研修をやるわけでありまして、自分が内科医になろう、あるいは外科医になろうということをすでにある程度腹をきめて、方向を定めて医者としての研修をみっちりやるところに違いがあろうと思います。もちろん内科、外科といいましても、全般医というような形で広く各科の勉強をしたいという方があることを妨げるものではございませんけれども、一応専門別の教育が始まるというところに一番大きな差があると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/181
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182・田邊誠
○田邊委員 先ほどの前提に立ってさらにお伺いをいたしますけれども、今回の臨床研修制度というのはいわば義務的なインターン制度とは違う、こういう話がいまございました。そのとおりだと思いますが、その前にちょっと簡単なことでお聞きしましょう。「臨床研修を行なうように努めなければならない。」と書いてございます。私はしろうとですからお伺いをいたしますけれども、これはどういう意味でございますか。世の中に、強制的なものとか、任意的なものとか、ある種の規制を加えるものとか、いろいろなものがございますね。そういった面から見て、このことばはどういう意味を持つのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/182
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183・若松栄一
○若松政府委員 このことばの意味は、法律でこのような規定をすることによって、国民の期待、願望をあらわし、同時に医師たる者の道義的な義務を規定するという両方の面が含まれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/183
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184・田邊誠
○田邊委員 そうしますと、これは国民の願望を込めたことばでございますな。医師の側からいいますと、これは道義的なものという意味でございますな。それをひとつはっきりさせてくださいよ。それ以外の何ものでもありませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/184
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185・若松栄一
○若松政府委員 そういう二面が共存しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/185
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186・田邊誠
○田邊委員 これは何らの規制もございませんな。何らの拘束力があるわけではありませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/186
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187・若松栄一
○若松政府委員 法律的な拘束力はございませんが、道義的な拘束力はあると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/187
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188・田邊誠
○田邊委員 ちょっとあとでお聞きしょうと思ったのですが、そういうことばが出てまいりましたから。
そうなってまいりますと、この制度というものは、いわば対社会的に医師としてのいろいろな資格なり身分なり、あるいは社会的な立場なりというものに対して、何か区別したり差をつけるということはないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/188
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189・若松栄一
○若松政府委員 医師の資格につきまして法律的に何らの差別をするものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/189
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190・田邊誠
○田邊委員 登録の問題とも関連をしてきますけれども、これはちょっと先ほど局長のお話がありましたとおり、ものごとを分けていかなければならぬものでありますから、ちょっと保留をいたしまして、お聞きをいたしますけれども、今度の臨床研修制度というものは、御案内のとおり医卒懇いわばあなたのほうから意見を求めた方々の答申をまって実は今度つくられた案でございます。しかし、医卒懇が出しましたところの意見の中には、かなりの大きな問題が含まれているわけです。私はさっき少しく申し上げましたけれども、若松医務局長の考え方というものも、いわばこの問題だけが解決のすべてでない、学位の問題あり、あるいは無給医局の問題あり、そしてまたそれと関連をするところの大学病院なりその他の病院の施設の問題その中で一番重大な問題である指導医の充実の問題、こういう問題とすべて関連をしながら考えなければならぬ、いわば無給医局員の解消の問題などが前提だ、一番大きな問題だとあなたはおっしゃっているのですね。そういった点から、私はこの医卒懇の意見書を見たときには、実はいろいろなことがこの中に盛られておると思うのですけれども、この医卒懇の答申といいますか、意見全体を把握し尊重して今度の医師法改正の中に取り入れたとはどうしても考えられない。形式的には、その一部なりその全体をにらみながら取り入れたということが言えるかもしれない。しかし、その持つ意味とその精神、その目ざすものとを十分把握して、それらを総括的に取り入れてこの案を出されたというふうには、どうしても考えられないというふうに私は思うわけでございますけれども、提案をされた当局としてはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/190
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191・若松栄一
○若松政府委員 御承知のように、医卒懇の答申が出ましたのは昨年の六月でございましたが、そのあと引き続いて、答申の趣旨をできるだけ大幅に盛り込みました法律案も、事務的には作成いたしましたし、それがまた提案される前にその手を直すというようなこともございまして、また前回、五十六国会に提案いたしました法律と、ただいま御審議いただいておる法律案とは、若干違っております。そういう意味では、数度の段階を経ましていろいろ変化が出ておりますけれども、卒業後直ちに国家試験をして医師免許を与え、そしてその後引き続いて二年間研修につとめるという一番基本的な問題においては変わりがないと存じております。ただ、そのほかの、診療科名を標擁するとか、あるいは登録医の名称を標榜するというような点がなくなってきている点は確かでございますが、一番基本的な面においては、なお依然としてその趣旨が生かされておるものと私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/191
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192・田邊誠
○田邊委員 局長がいま言われているように、この種の問題の総合的な解決というのは、大学院や学位の問題あるいは医局制度の問題、そしてまたその施設そのものの充実の問題、こういう問題が相関関係にあることはあなたも御案内のとおりであります。いわば基礎的なものが失われておらないと言いますけれども、こういったものが前提であるという意見もあると思うのです。同時に、並行的にこの問題を処理しなければならぬ、こういう意見もあると思うのですが、少なくとも同じ次元でこれらの問題はどうしても処理し、または対策を講じていかなくてはならぬ問題だろうと思いますが、これらのことはいわば抜きにされ、これらのものが不十分なまま放置された中でこの臨床研修制度というものが出てきたことは、あなた方の考え方の上に立ってみても、どうしても十分とは言いがたいと思うのでございまして、これらの問題の処理は一体どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/192
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193・若松栄一
○若松政府委員 今回の問題は医師法改正の問題でございまして、これは厚生省の所管事項でございますが、ただいま話題に上がりましたような無給医局員の問題だとか、学位の問題であるとか、あるいは大学院の問題であるとか、施設の整備の問題、大学における指導医等の問題も、主として大学に関係した問題でございますので、私どもが直接とやこう言うわけにはまいりませんが、このインターン、医師法問題とからみまして、文部省と厚生省が密接に仕事をすることがだんだん習慣づけられてまいりましたので、そういう意味で私は、形にあらわれない大きな進歩があり、また非常に有益な土壌がつくられつつあると思っております。そういう意味で現在、この医師法問題とからみまして、大学の医学教育の問題が真剣に検討され、すでにその作業が進められるようになってまいっておりますし、また無給医局員問題の有給化といいますか、それとからんで、定員化というような問題についても一歩踏み出すことができておる。そういう意味で、関連した分野におきましても、すでに改善が幾つか緒についたということができると思います。教育病院等における指導医の充実という問題も、今度の改正を前提といたしまして相当の予算等が確保されますと、これも一応緒についたということができると思います。そういう意味で、今度の改正あるいは予算措置だけでは、完ぺきな姿にはまだまだほど遠いものがございますけれども、いろいろな意味で、従来懸案であったものが何らか前進あるいは解決の方向に向かって緒についたということは言い得るものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/193
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194・田邊誠
○田邊委員 これはテンポというのはやはり同じでなければいかぬと思うのです。一方が進んであとのものはおくれておったのでは、いわば画竜点睛を欠くのではなくて、きわめて片ちんばな形でもって歩いていかなければならぬ、こういう形になると思うのであります。そういった点で、あなたは緒についたとおっしゃるけれども、中身に対してお伺いをいたしますけれども、決して十二分なものではない。逆にいえば、きわめて暗い見通しというものがあるわけであります。これらのことが、今度の改正案に対して批判的な意見を持つ人たちにとって、厚生省に対する不信感、政府に対する不信感、こういうことにつながってきておるのではないかと私は思うのであります。反対意見の根幹をなすものに、いわば低医療費政策ということが盛んにいわれておるのは、ここにあるのではないかと私は思うのであります。
大臣、お聞きのとおり、この臨床研修制度というものは、その持つ意味合いがいずれであっても、いま申し上げたような国民医療の確立という立場からいえば、他に持っておるところの医局制度や、あるいは大学院制度、そして指導医の確立という問題、こういう問題を抜きにしてはどうしても考えられない、これがいわば前提でなければならぬ、こういうふうにすら私は言えるのではないかと思うわけですが、これらに対しては、もちろん文部大臣の所管もございまするけれども、政府の一員として、何といってもいわば前向きの仕事をされようとする厚生大臣としては、これに対してはよほどの決意がなければならないと私は思うわけでございます。その点に対するお考えを明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/194
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195・園田直
○園田国務大臣 医卒懇の御意見の最終結論の中には、重要な点は、いまの研修制度を受け入れる病院側の教育の施設、あるいは指導医の確保、こういうものに対する国からの財政的な確保がなければならぬという点が一つの大きな問題であります。今度の予算折衝につきましては、両省にわたる関係もあって、折衝はいろいろ困難ではございましたが、一応指導医に対する謝礼金というものは確保いたしました。次に、最低限ではありますが、指導するための研究会の予算なども計上してはございまするが、決して十分と見るべきものではございません。したがいまして、現実のいろいろな要求もございましたが、局長からも言いましたように、問題は、研修生の待遇にいたしましても、いままで無給だったものが医師の資格に変わったから当然給料を出すべきではありますが、その待遇も決して十分ではありません。あるいはいまの予算措置というものも十分でないことはよく反省をいたしまして、したがって、この医卒懇の趣旨からいたしましても、なおまた、この研修制度の新しい提案というものが、単に医学校を卒業した卒業生の出発点としての問題だけではなくて、医療技術の改善向上及び医療教育の改善向上の一端となり、あるいはまた、学生諸君が言っておるように、いままでの医学界あるいは医学教育界の中に、特殊な技術でありますからやむを得ないのでありますが、俗なことばで言えば、徒弟制度のごときものが非常にあって、近代科学を扱う社会でありながら、外部から見るといろいろまだ封建的な場面もある。こういうものは逐次打破していかなければならぬことであって、この研修生制度自体が一つの到達点ではなくて、到達点に向かうために非常に努力をしなから出発点の門をようやく通った、こういう程度に反省をしながら、御指摘の面についは十分努力をしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/195
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196・田邊誠
○田邊委員 大臣の御答弁は本質に触れる問題でございまして、これは今回の法律案の改正にわれわれが対処する一つのポイントであろうと思うのであります。ここが分かれ目なのですね。いま私が申し上げたような各種の問題を前提としなければ、何としても政府の考え方に対して信用を置くわけにいかない、いわばこういう立場に立つ意見あるいはまた、たとい不十分であってもこれから先医師を充実さしていくという立場である程度了承するんじゃないかという意見、ここが実は分かれ目なんです。ですから私は、この線をひとつしっかりと踏まえていただいて、今後に対処していただかなければならないと思うわけでありまして、さっき私が申し上げたように、医学生ばかりではございませんけれども、医学生なり医育者なり、あるいはまた一般の国民なりに説得力を持つものでなければならないと思います。そういう意味合いで、いまの大臣の御答弁きわめて重要だろうと思いまして、私もそれを踏まえながらさらに御意見を承ってまいりたいと思うのです。
局長、これは道義的なものであるということであるから、研修をしなかった場合は、これはどういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/196
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197・若松栄一
○若松政府委員 この医師法に基づく研修をしないという方が出ましても、それはいかんともしがたい状態でございます。といいますのは、医師の世界の問題は、すべてを規則で拘束し、あるいは法律等で義務づけるというようなことは、必ずしも適当でないものが多々ございます。たとえば内科医がりっぱな内科医であっても外科手術はできませんし、心臓外科の専門家も脳外科はできません。しかし、それはすべて医師の良識にまって適切な判断が行なわれるわけでございます。そういう意味で、医師の世界の、特に治療の実践におきましても、医師の良識に従うという面が多々あるわけであります。この法律におきましても、医師に対して二年間の研修を道義的に義務づけておりますけれども、これを担保するものはどこまでも医師の道義的責任だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/197
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198・田邊誠
○田邊委員 ちょっと御答弁の中に、義務づけておると言ったけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/198
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199・若松栄一
○若松政府委員 ちょっとよく理解いたしかねますが、医師の世界の問題は、いろいろ義務づけたりいたしましても、実効のあがらないものが多々ございます。ということで、むしろ医師の世界のいろいろな仕事というものは、医師の良識にまかせるということが非常に多い。そういう意味で、今度の研修におきましても、医師に道義的な責任というものがあると思いますので、研修をする、しないということは、どこまでも医師の良識にまつものであるというふうに考えると申したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/199
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200・田邊誠
○田邊委員 研修を義務づけておるような——私の聞き違いかもしれませんが……。これはあくまでも医師の良識にまつ、こういうお話しであります。この点は実は「研修を行なうように努めなければならない」という意味が二色にとられてきておるのですね。というのは、あとの医籍の登録の問題とも関連をするわけですけれども、それを切り離してみても、これは絶対的な強制力を持っているものではないようでありますけれども、しかし私は、いままでのいわば医師がたどってきたインターンを含めての教育の過程、それから無給医局員を通ずるいわばその後の研修の立場、この中にはお話のありましたような、封建的な、徒弟的ないままでの色彩、こういったものを考えてみたときに、確かに国民の側から言えば願望であり、医師の側から言えばいわばこれは道義的なものだというけれども、事実問題としては、やはり研修制度を義務づけておるのじゃないか、強制しておるのじゃないか、こういう感じを私は与えておるのじゃないかと思うのですが、研修しなかった者も、いわば結果的には対社会的に——腕がいいか悪いかは別ですよ。比較の問題は別ですけれどもしかしあなた方の側から見た場合、決して差別するものではない、決して医師としての資格に何ら相違があるものではない、こういう点は確認をしておきたいと思うのです。いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/200
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201・若松栄一
○若松政府委員 おっしゃるとおり、この法律では、「研修を行なうように努めなければならない」ということばを使っておりますが、このことばは通常常識的に言いますと、いかにも義務というふうに感じられることばでございますけれども、法律的に言いますと、全くこれは道義的な義務であって、いわゆる法律的な強制力を持ったものではない。したがって、これによりまして、研修をしないということに関して、医師の法律的な資格に関して何の差別もする必要はないということを明確にしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/201
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202・田邊誠
○田邊委員 それではその次に、今度の研修制度の中で非常に重要な意味を持つのは、何といっても厚生大臣指定の教育病院等のいわば研修のための施設であります。この施設が一体どうなるかということが非常に重要な意味を持つことは御案内のとおりであります。この研修のための施設というものは、一体どの程度の範囲になる予想でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/202
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203・若松栄一
○若松政府委員 現在の法案では、研修を行なう施設は大学の付属病院及び厚生大臣の指定するいわゆる教育病院ということになっております。この厚生大臣の指定する教育病院というものが、資質の高い、十分にその資格にこたえ得るものでなければならないということは当然であります。従来のインターン制度のもとにおきまして、インターン指定病院というものは二百六十施設程度ございましたが、今度の教育病院というものは、これは相当しぼってさらに厳選して選定すべきであるというのが、従来医卒懇その他の方々の御意見でございますので、最終的には、新しい法律に基づきます医師試験研修審議会の御判断をいただくことになっておりますが、現在の予想といたしましては、相当しぼられてくるものと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/203
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204・田邊誠
○田邊委員 前回の当委員会における参考人の意見聴取の中でも、豊川さんなどは、この施設というものはかなり程度の高い、内容の充実した教育病院を考えなければならぬ、こういう意見の開陳があったわけであります。私は当然だろうと思います。そういう考え方に適応した病院というものを、いま御答弁のありましたように、かなり厳選をするということになりますと、これが一体現実的に需要供給の関係からいって十分な配置ができるという見通しはございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/204
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205・若松栄一
○若松政府委員 通常の状態に返りますと、医学部の卒業生は大体年間三千名程度でございます。従来このインターン制度が比較的平穏に行なわれておりました時代に、大体、大学に残ってインターンをやったものが約四割、大学以外のインターン指定病院で研修を行なったものは約六割ございました。今度の私どもの予算では、大学病院と教育病院をほぼ半々程度に選ばれるのであろうという予想のもとで予算を組んでおりますが、そういたしますと、一般の教育病院で約九百名、大学病院で九百名程度になります。したがって、この程度の受け入れば、現在の病院を相当しぼったといたしましても、可能であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/205
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206・田邊誠
○田邊委員 やはり大学の付属病院に残りたい、こういう願望は非常に強いわけですね。これはいい悪いは別として、現実にはそうならざるを得ないと思うのです。いまのいろいろな施設や指導員やその他の配置の結果を見てそうならざるを得ない。したがって、都落ちをしたりいろいろなことをきらうのは、私は一面においてうなずけると思うのです。これも今度の問題の中で、一つのいわば批判的なといいましょうか、反対運動といいましょうかの中のウエートを占めていることも、これは否定できないと思うのです。そういった点から見ただけではございませんけれども、やはり今度の施設の充実ということは、何といってもこれはやはり一番の重要な問題であろうと思うわけでありまして、いまかなり程度をしぼってもだいじょうぶだとおっしゃるけれども、やはり世論が望むような程度の高いこのための施設というのは、相当な努力が、質的にも、またいろいろな予算その他の面でも、必要になってくるのじゃないかと思います。この点に対しては、私は何といっても、この法律の成立等ともちろんこれは関連してくるというふうにあなたのほうはおっしゃるかもしれないが、やはり相当の覚悟と年次計画なり展望というものを持たないといかないのじゃないかと思うのです。こればかりじゃありませんけれども、そういう厚生省の一つの展望なり計画というものを明らかにする努力というものが何か欠けているところに、紛争をさらに深刻にするような要素もあるのじゃないか、こういうふうに思うわけですが、これに対しては、もちろん審議会の答申等もいろいろ具体的な指定の際にありますけれども、やはり厚生当局は、これに対する今後の施策、今後の計画、こういうものを持たなければならぬと思うのですが、私の考え方は間違いでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/206
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207・園田直
○園田国務大臣 ただいまの問題は、学生の諸君が不安に思われる理由の一つにもなっておると思います。厳選ということと、指定病院の数を縮小するということは、同じようで実は意味が違います。現実の時点において、施設の十分である病院が少ないからやむを得ず前より少なくなるということであって、実際は厳選して、その施設を持った病院が数多いほどいいわけでありまして、したがって、数だけを縮めていくと、もちろん学生諸君が心配されるように、定員の充当不足の場合に、低賃金の医師の免許を持った研修生を配置をしてこれをカバーするのではないかなどの心配も出てくるわけでありますし、なおまた、そうでなくても、注意せぬとそういう面におちいるおそれもありますから、いまの施設及び指定する病院の施設その他についても十分配慮をして、御指摘のとおりに年次計画をつくって、いわゆる研修生制度の新しい提案を基準にして、将来どのように計画され、どういうふうに展望されていくかという、未来に対する不安と未来に対する希望を具体的に策定することが、学生諸君の紛争解決の大きな手段になるということを十分認識をいたしております。なおまた、現時点におきましては、指定する場合にもそのような弊害がないように、医師試験研修審議会の議を経て、各方面の意見を聞きながら指定をしていきたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/207
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208・田邊誠
○田邊委員 そこで実は、現在のいわば施設の配置の状態というものを、私は概括的にいろいろながめてみたのであります。それからまた、現在の日本の各地に配置をされておる医師の状態というものに対しても、私はいろいろと検討さしていただいたのであります。あるいはまた、病院と一般診療所との問題、診療所の中における各種の科の配置の状態、地域的に医療機関がどうなっているかという状態、こういう問題をいろいろ私は考えたときに、いま大臣が言われましたとおり、非常に憂うべき状態であることも実は発見をいたしたのであります。これを一つずつお聞きしていきますとたいへんな時間がかかるわけでございますから、あらかじめお願いはしておきましたけれども、この問題を究明するために、現在の日本の医療施設、医療担当者、その中に含まれる医師の問題は、現状認識をする意味から非常に重要なものだろうと私は思っておるわけですが、ちょっといろいろと時間の関係もございまするから、私ばかりでなくて審議に必要ではないかと思っておりますので、委員長、以下申し上げる点に対して、厚生省当局から当委員会に資料を提出をしていただきたいと思っておるわけでございます。
中身は、現在の日本の医療施設の配置の状態、病院の数、一般診療所の数、病院と一般診療所の比率、この割合が適正配置であるかどうか。それから、総合病院の外来患者。それから、一般病院が年々ふえているわけでありまするけれども、これに対する投資は一体どのくらいになっているか。たとえば昭和三十九年、推定八百億、こういうふうにいわれておるわけですが、そういった中身。それから診療科名別の現状は一体どうなっているか。もちろん、病院と違って診療所の場合。内科系のものを総合して内科と称したり、外科系のものを総合して外科と称したり、こういうものもありまするから、それらのものも含めて、一体これの過不足はないのか。あるものに対しては医師が充実しておるけれども、ある近代的ないろいろな病気が出てきた場合に、それに対して医師が不足をしていないか、こういう意味です。それから医療機関は地域的に一体どうなっているか。これはいわゆる無医村を含めて偏在していないかどうか。これと医育機関との関係。いわゆる大学病院等を含めて、やはり医科大学あるいは医学部の多いところにどうしても配置がされがちなんであります。そういった点からその関係はどうなっているか。それからこれは資料ではございませんけれども、そういった面で今後もし是正していく面があるとすれば、それに対する考え方はどうか。それと医師の配置の面ですが、現在、常勤医師はどのくらい、いわゆる非常勤といわれる医師がどのくらいか。実は諸外国と比較を私はしたのですが、いろいろと問題があるのですが、一応おきます。それから人口十万なら十万に対して医師がどのくらい配置されているか。これも外国との比較がございます。これは一体どのくらい増員をされれば、まあまあといわれる状態になるのか。実はその点をお聞きしたいのでありまするが、そういう意味で資料の提供をお願いしたい。それから今後の医師の増員というものの見通しを一体どういうふうに立てられておるかという点。それから医師百人に対して他の医療従事者は一体どのくらいの関係にありますか。たとえば看護婦の不足等がいわれておるわけでございまするが、薬剤師や看護婦、その他エックス線技師等の配置は一体どうなっているのか。これも実は諸外国とのいろいろからみ合いを見ますると、必ずしも日本より多いところばかりでございませんけれども、看護婦が日本と同じくらいの比率だとしましても、その配置の問題等で非常に考えさせられる点がある。そういった点で、医師に対して他の医療従事者の配置はどうなっているか。以上、私がお聞きをする中で、これは医師法ばかりではございません、今後の医療制度全般に関連する問題でもございまするので、ぜひひとつ参考のために提出をお願いしたい、こう思うのですが、委員長を通じてひとつ要求をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/208
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209・八田貞義
○八田委員長 ただいまの田邊委員の資料請求に対しまして、厚生省のほうから御答弁をお願いします。若松医務局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/209
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210・若松栄一
○若松政府委員 ただいまお知らせいただきました資料は、大部分ほとんど即座にできると思います。若干のものについて多少御期待に沿えない点があるかもしれませんが、できるだけ努力いたしまして早急に提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/210
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211・田邊誠
○田邊委員 あしたとは言いませんけれども、来週の審議までにその大体が間に合うようにお願いしたいと思います。よろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/211
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212・若松栄一
○若松政府委員 来週早々くらいに提出いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/212
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213・田邊誠
○田邊委員 これが普通の審議でありますと、実はこの問題をお聞きしながら審議をするという形になるわけでありますけれども、一応これらの問題もし資料提出後においてさらに質問をいたしたい点がございましたならば、後ほどまたお許しをいただいて質問いたしたいと思いますので、その点は一応省きまして次に進ましていただきたいと思っております。
この研修制度の持つ意味の中で非常に重要なことは指導医の問題であります。この指導医の配置というのは非常に重要な意味を持っておるわけでございますけれども、この医師法改正の発足と同時に新制度によってもし発足をするとするならば、一体各界からの要望にこたえるような状態というものをお持ちであるかどうか。指導医といわれる人たちの数は、一体どのくらい増員をはかられてこれにこたえようとされておるか。あわせてその人たちの仕事に対してどのくらいの手当を支給しようとするのか、とりあえずお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/213
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214・若松栄一
○若松政府委員 大学病院における指導医の充実は、文部省からお話があると思います。
一般の教育病院に対しましては、予算で指導医の強化の経費と研修生の研究、研修の経費を合わせまして、一人当たり三十八万円という標準で施設に援助いたしたい。その中で指導医にどのようなやり方でそれぞれの教育病院がお使いになるかということは、ある程度おまかせいたしたいと思っております。
国立病院におきましては、これは相当充実して、現在でも相当の能力のある医長級がそろっているような病院を指定していただくつもりでおります。それでなお足りない面につきましては、大学その他の医療機関からの応援をいただくような手配をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/214
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215・吉田壽雄
○吉田説明員 お答えいたします。御承知のとおり、国立大学の医学部の臨床講座と付属病院の診療科、これは表裏一体の関係にございます。したがいまして、教育、研究及び診療の要員といたしまして、教授以下各診療科につきまして数人ないし十数人の教官が配置されているわけでございますけれども、いわゆる無給医局員を含めまして、医学部卒業後の臨床研修を行なう者に対する教育指導体制は、必ずしも十分と言えないうらみがございます。このため、昭和四十二年度、今年度でございますけれども、病院教官として、これは講師でございますが、新たに百名を増員いたしましたが、来年度、昭和四十三年度も引き続き病院教官を、講師でございますが、百名を増員して、新しい制度によって受け入れることとなります臨床研修医に対する指導体制の強化に充てることとしております。なお、今後ともこれらの指導要員の充実につきましては、なお一そうの努力をいたしたい、このように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/215
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216・田邊誠
○田邊委員 今度の研修医制度というものをつくって指導医も増員をする、こういう形でございますけれども、いまそれぞれお答えがあったように、決してこれで満足すべき状態でないと思うのであります。この指導医の人たちといいましょうか、いわば実際の研修に当たられる人たちはたいへんな努力が要るだろうと思うのですが、こういう人たちが指導に当たられる、従事されることによって、教育病院なりあるいは公立病院、大学病院等が一体正常な業務に支障がないのかどうか。さっき申し上げたように、それぞれの公的病院等は、いわば外来患者等も非常に多い事態、そういうことの中で一体正常の業務に支障なくこの研修が行なわれるのかどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/216
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217・若松栄一
○若松政府委員 今度の制度で教育病院に指定されるような病院は、一般的に言いまして相当程度の高い病院であると思います。そういう意味で職員の充実等も一般のレベルに比べて相当高いということが予想されます。そういう意味で非常に診療に忙殺されていて、とても教育にまで手が出ないというような病院は、事実上除外されていくということになろうと思います。ただ一般の大学以外の病院につきましては、それほど研修だけに専念する教官的な立場の方々を新たに多量に充実するというようなことは、なかなか困難かと思います。しかし現実に東京都内等におきましても、すでに御承知のように、聖路可病院であるとか虎の門病院であるとかいうようなところでは、従来から相当組織的な研修もやり、その訓練もできておりますが、地方の病院等におきましては、必ずしもまだその体制が整っておらないところが多々あると思います。一挙には無理だと思いますけれども、逐次そういう体制をつくり上げ、教育病院というものの実質、権威を高めていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/217
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218・田邊誠
○田邊委員 文部省も大体同じような御意見でございましょうからお聞きすることを省きますが、今度の臨床研修制度でもって大体二年間つとめるという形になりますね。研修をする人の立場といいましょうか、身分は一体どういうものでございますか。一般的に言いましてどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/218
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219・若松栄一
○若松政府委員 通常一般的には研修医という名前で呼ばれることになると思います。しかし病院における立場というものは、これはそれぞれの病院によっていろいろ変わってくると思います。国立病院等がもし教育病院に指定され、研修生の方に来ていただくということになりますと、私どもは国立病院の非常勤医師という取り扱いにいたしたいと思っております。したがって国家公務員である非常勤医師ということになります。民間の病院等でございますと、そのようないろいろな役所的な制度等がございませんので、準職員というような名前で呼ばれることもありますし、あるいは正規の職員に採用するというところもあるかもしれませんし、いろいろそれぞれの病院の性格あるいは扱い方がまちまちになってくると思います。大学におきましては大学病院で、文部省のほうからお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/219
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220・吉田壽雄
○吉田説明員 大学につきましては、一般的に成規の教育課程に属する学生は別にいたしまして、それ以外に特定の事項を研究するいわゆる研究生という者を受け入れておりますけれども、このたびの臨床研修は医師法に基づく特別な制度によるものであるという考え方から、いままでの一般の研究生並みに扱うことは必ずしも適当でないという考え方を文部省ではとっております。したがいまして、このたび国立大学でこの医師法に基づきまして臨床研修を行なう者につきましては、臨床研修生、こういうふうな身分でこれを扱うということを考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/220
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221・田邊誠
○田邊委員 厚生省と文部省は取り扱いがかなり違うようですね。一方は国家公務員で非常勤の医師だ、こう言うのであります。これは労働省、どうなんでしょうか。いわば基準法その他いろいろな法律の規制——国家公務員の場合は、国家公務員法なり人事院規則なり、そういう立場をとるわけでございますけれども、総括してこれはどういうところに当たるのですか。一般的に言って、この研修をする人たちの身分はどういうところに当たるべきでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/221
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222・藤繩正勝
○藤縄説明員 研修実習というものが、通常のいわゆる使用者の指揮監督下に、賃金を取得するために労働する、労働法の分野でいわれておりますいわゆる普通の従属労働、そういう形のものとは著しく形態を異にするということは言えるかと思いますけれども、問題は、そういった実習といわゆる労働とがこん然一体として行なわれるという場合が非常に多いわけでございます。したがって、そういった人たちが、労働法の上でいう労働者であるかどうかというようなことは、非常に限界的な点でむずかしい問題でございますが、いま出ております事案につきまして、私どもも専門的に詳しく実情を承知しておりませんけれども、ただいまいろいろお伺いいたしておりました限りでは、実習が教育目的に限定されるということであれば、労働関係がないということもできましょうが、いま厚生省のほうからお答えがありましたように、いろいろの実態があって、一般労働に従事するという勤務があるということであれば、これはやはり労働者であるというふうに考えなければならないのではないかというふうに思います。現に労働基準法の上でも、技能の習得を目的とする労働者を技能者という概念で予定をいたしておりますし、また、準看護婦でありますとか、あるいは商船学校等の実習生等につきましても、いろいろ例記もございます。したがいまして、この問題につきましても、個別的に十分現実に即しまして私どもは判定をしてまいらなければならないと思っておりますが、一般的にはただいま申し上げたようなことに相なるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/222
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223・田邊誠
○田邊委員 身分の問題これは厚生大臣、一番問題になっているところなんですね。いままでのインターンというのは、医者なのか学生なのかというようなことでもっていろいろ不安定だったわけですが、今度研修制度の中で一体この問題はどのように解明されてきているのかと私は思ったところが、いまやはり厚生省、文部省、労働省、それぞれ見解が違うのです。研修をする人の身分というもの、これはどういうことになりましょうか。これがきちんとしておらないとたいへんな不安を及ぼすのじゃないかと思うのです。いままでのインターンがそうだったのですから、この点はひとつ三省でもってきちんとした見解を詰めてもらう必要があるのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/223
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224・園田直
○園田国務大臣 身分はいままでと違って医師であることは明瞭でありまするが、おのおのの機関によって、受け入れ態勢等の関係から呼び方あるいは取り扱い方が違っておるわけでありまするが、この点についてはもう一ぺん関係各省と意見を統一してみたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/224
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225・田邊誠
○田邊委員 これは実は今度の研修制度の最も重要なポイントなんです。私はもうこの問題は、ほかの審議と違って、大臣の話も十分受けながら審議を進めているつもりです。決して何かやりとりの中だけでもって事を済まそうというのではございません。それだけにこの問題が発足をする一つのポイントになる。研修をする人の身分、これがやはりはっきりせぬことにはまずいのじゃないかと思うのであります。したがって、自後、私は、実はせっかくおいでいただきました人事院なりその他も含めて、待遇の問題、それから登録の問題、これを審議をしてまいりたいと思っておるのですが、この点はちょっと理事の間でもって御検討をいただきまして、私も一つ一つ詰めていきたいと思うのです。そういう意味合いで統一見解を出していただくことが審議を促進する意味で非常に重要ではないかと思うのでございまして、その点をひとつ委員長、お考えをいただいてから審議の進行について実は協力をしたいと思うのですが……。
それでは、ひとつ研修する人たちの身分問題は、この法律改正にきわめて重要なポイントをなすものでございますから、ぜひひとつ、今後の審議に協力する意味合いからも、早急の機会にこれに対する関係当局の統一見解をお出しいただきましてから、さらに審議を続行いたしたいと思います。
本日は、これをもって自後の審議を保留いたしまして、終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/225
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226・八田貞義
○八田委員長 次回は明十五日午後一時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時五十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X00619680314/226
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