1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年四月十九日(金曜日)
午前十時二十一分開議
出席委員
委員長 八田 貞義君
理事 小沢 辰男君 理事 佐々木義武君
理事 橋本龍太郎君 理事 藤本 孝雄君
理事 河野 正君 理事 田邊 誠君
理事 田畑 金光君
大坪 保雄君 海部 俊樹君
齋藤 邦吉君 田中 正巳君
竹内 黎一君 中山 マサ君
増岡 博之君 箕輪 登君
粟山 秀君 枝村 要作君
加藤 万吉君 後藤 俊男君
島本 虎三君 西風 勲君
平等 文成君 八木 一男君
八木 昇君 山本 政弘君
本島百合子君 大橋 敏雄君
伏木 和雄君 關谷 勝利君
出席国務大臣
労 働 大 臣 小川 平二君
出席政府委員
労働大臣官房長 石黒 拓爾君
労働省労政局長 松永 正男君
労働省労働基準
局長 村上 茂利君
労働省婦人少年
局長 高橋 展子君
労働省職業安定
局長 有馬 元治君
委員外の出席者
議 員 河野 正君
議 員 八木 一男君
議 員 枝村 要作君
議 員 田邊 誠君
参議院議員 小平 芳平君
専 門 員 安中 忠雄君
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四月十八日
医療労働者の増員及び労働条件改善等に関する
請願(小川三男君紹介)(第四一四九号)
同(川上貫一君紹介)(第四二三八号)
同(田代文久君紹介)(第四二三九号)
同(谷口善太郎君紹介)(第四二四〇号)
同(林百郎君紹介)(第四二四一号)
同(松本善明君紹介)(第四二四二号)
ソ連長期抑留者の処遇に関する請願(黒金泰美
君紹介)(第四一五〇号)
同外一件(瀬戸山三男君紹介)(第四一五一
号)
同(増田甲子七君紹介)(第四一五二号)
同外一件(内田常雄君紹介)(第四二三二号)
老齢福祉年金の増額等に関する請願(福永健司
君外三名紹介)(第四一五三号)
同(青木正久君外一名紹介)(第四三〇七号)
特例老齢年金制度改正に関する請願(曾祢益君
紹介)(第四一六六号)
同(門司亮君紹介)(第四一六七号)
医療保険制度改悪反対等に関する請願(川上貫
一君紹介)(第四二三三号)
同(木原実君紹介)(第四二三四号)
同(田代文久君紹介)(第四二三五号)
同(谷口善太郎君紹介)(第四二三六号)
医師、看護婦の増員に関する請願外五件(木原
実君紹介)(第四二三七号)
心配ごと相談所補助金の増額に関する請願(藏
内修治君紹介)(第四三〇二号)
生活保護制度改善に関する請願(中澤茂一君紹
介)(第四三〇三号)
外傷性せき髄損傷障害者の援護に関する請願(
中澤茂一君紹介)(第四三〇四号)
引揚医師の免許及び試験の特例に関する請願(
粟山秀君紹介)(第四三〇五号)
同(八田貞義君紹介)(第四三〇六号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
最低賃金法の一部を改正する法律案(内閣提出
第二号)
駐留軍労働者の雇用の安定に関する法律案(河
野正君外十一名提出、衆法第九号)
国有林労働者の雇用の安定に関する法律案(河
野正君外十一名提出、衆法第一〇号)
家内労働法案(河野正君外十一名提出、衆法第
一一号)
最低賃金法案(河野正君外九名提出、衆法第一
号)
最低賃金法案(小平芳平君外一名提出、参法第
九号)(予)
労働関係の基本施策に関する件(失業対策に関
する問題)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/0
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001・八田貞義
○八田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の最低賃金法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
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最低賃金法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/1
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002・八田貞義
○八田委員長 提案理由の説明を聴取いたします。労働大臣小川平二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/2
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003・小川平二
○小川国務大臣 ただいま議題となりました最低賃金法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
最低賃金制につきましては、昭和三十四年の法施行以来今日までにその適用を受ける労働者は、中小企業を中心として約六百万人に達するとともに、その金額も逐次改善され、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善と中小企業の近代化に役立ってまいりました。
この間、わが国経済の高度成長の過程において、若年労働者を中心とする労働力の逼迫等により、一般の賃金の上昇は著しいものがあり、このような中でなお改善から取り残される労働者に対し、より効果的な最低賃金制度を確立してその生活の安定と労働力の質的向上をはかっていく必要はますます大きくなっていると考えます。
かかる事情にかんがみ、政府は、昭和四十年来中央最低賃金審議会に今後の最低賃金制のあり方の御検討をお願いしていたところでありますが、昨年五月、同審議会より答申が提出されました。その答申に基づきまして、最低賃金の決定方式については、業者間協定に基づく決定方式を廃止し、最低賃金審議会の調査審議に基づく決定方式を中心とすることに改めることが適当であり、また、このような措置を円滑に進めるためにはある程度の経過措置が必要と考え、ここに最低賃金法の一部を改正する法律案を提出いたした次第であります。
次に、この法律案の内容につきまして概略御説明申し上げます。
第一には、最低賃金制度をより効果的なものとするため、業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金の二つの最低賃金決定方式を廃止することといたしております。
このことに関連して、最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金につきましては、労働大臣または都道府県労働基準局長は、従来、その他の方式により最低賃金を決定することが困難または不適当と認めるときに限り審議会の調査審議を求めることができることとされておりましたが、その要件を除き、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善をはかるため必要があると認めるときは、調査審議を求めることができることといたしております。なお、最低賃金審議会が調査審議を行なう場合においては、関係労働者及び関係使用者の意見を聞くものとするとともに、労働大臣または都道府県労働基準局長の最低賃金の決定に先立ち、関係労働者及び関係使用者は異議の申し出をすることができることといたしております。
第二には、業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金の二つの決定方式の廃止に伴う必要な経過措置を定めることといたしております。すなわち、現在まで業者間協定に基づく最低賃金決定方式が広く実施されている実情にかんがみ、その廃止に伴い無用な混乱を生ずることのないよう、法施行の際現に効力を有する業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金は、法施行後なお二年間はその効力を有することとし、その間においてはなお従前の例により改正または廃止することができることといたしております。しかしながら、その期間内に最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金が新たに設定または改正されたときは、その最低賃金の適用を受ける労働者については、業者間協定方式による最低賃金はその効力を失うものといたしております。
以上この法律案の提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げました。
何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
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八田委員長 次に、河野正君外十一名提出の駐留軍労働者の雇用の安定に関する法律案、同じく国有林労働者の雇用の安定に関する法律案、同じく家内労働法案、及び河野正君外九名提出の最低賃金法案、以上四案を議題とし、審査を進めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/3
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004・八田貞義
○八田委員長 提案理由の説明を聴取いたします。まず、河野正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/4
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005・河野正
○河野(正)議員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました駐留軍労働者の雇用安定に関する法律案の提案理由並びにその骨子について、御説明を申し上げます。
御承知のように、この法律案はわが党から数回にわたって提案いたしてまいったものでありますが、残念ながら成立を見なかったのであります。しかしながら、日本社会党が再三再四にわたってこの法律案を提案いたします理由は、この法律案が駐留軍労働者が雇用の安定と生活確保のために、必要欠くべからざるものと判断しているからであります。
これまでも強調してまいりましたが、駐留軍労働者の地位はきわめて不安定であります。三十九年には、アメリカのドル防衛政策とその戦略変更によって、五千人をこえる労働者が解雇されました。また四十年においても約二千人に近い労働者が離職するなど、毎年数千名にのぼる労働者が予算の削減や部隊の統廃合などの合理化によって離職せざるを得なくなっているのであります。しかも、これらの離職者のうち、再就職した者はわずかその三〇%前後にすぎず、その他の者は、なお安定した職場を得ていないというのが実情であります。
この一事をもってしても、駐留軍労働者の雇用がいかに不安定であるか明らかだと思いますが、日本社会党といたしましてはぜひとも、緊急にこれらの労働者の雇用安定をはかる必要があると考える次第であります。
特にこれらの労働者は米軍のもとで働いているものでありますが、その雇用については日本政府が雇用主であります。したがいまして、これらの労働者がもし米軍の都合により解雇されました場合には、日本政府がその再雇用の責任を持つのが当然だと考えるのであります。
しかも米軍基地は、日本政府の意向とはかかわりなく、アメリカ政府の軍事戦略によって、変更、移動または廃止される地位にあるのであります。したがいまして、駐留軍労働者の職場は、いつ、いかなる事由によってなくなるかわからないという特殊性、不安定さを持っているのであります。この点こそが、一般産業の雇用問題と根本的に相違するところでありまして、そこに、駐留軍労働者の雇用安定策の必要性が存在するのであります。
日本社会党は、以上のような理由から、特にこれらの労働者の雇用について法的保障が必要と考え、駐留軍労働者雇用安定法案を提案いたしているのであります。
次に、法律案の概略を御説明申し上げます。
第一に目的では、米軍の撤退等に伴なって解雇される場合には、安定した職場への再就職を容易にするための必要な措置を講じ、これらの労働者の雇用の安定をはかろうといたしているのであります。
第二に、本法案によって保護される駐留軍労働者の範囲は、もっぱら政府雇用労務者だけを対象といたしております。
第三に、防衛施設庁長官がアメリカ軍の撤退等の場合に余剰となった労働者を解雇しようとするときは、労働大臣の同意を得なければならないことといたしました。この場合に労働大臣の同意は、解雇されようとする労働者が安定した職業に再就職することが確実である場合にだけ許され、かつ、その同意はあらかじめ駐留軍労働者雇用安定審議会の意見を聞かなければならないこととしております。さらに、同意を得ないでなされた解雇は無効であることを確認的に規定いたしております。
第四に、雇用計画についての規定は、アメリカ軍の撤退等による余剰の労働者を転職させる計画の作成義務を労働大臣に負わせ、これには解雇制限を受けた労働者についてだけではなく、将来予想される余剰労働者についても雇用計画に織り込むことといたしております。
第五に、就職促進の措置の実施を規定し、職業指導、職業紹介、公共職業訓練その他の措置が効果的に関連して実施されるような義務を労働大臣に義務づけました。
第六に、労働大臣の不同意にかかる労働者に対する措置を規定し、解雇制限を受けた労働者にはそのすべてに対して転職促進の措置を必ず受けさせる義務を課すことといたしました。
第七に、駐留軍労働者雇用安定審議会に関する事項を規定いたしました。
以上が、駐留軍労働者の雇用安定に関する法律案の提案理由とその骨子であります。何とぞ慎重審議の上、本法案の御採決をお願いするものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/5
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006・八田貞義
○八田委員長 次に八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/6
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007・八木一男
○八木(一)議員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました国有林労働者の雇用の安定に関する法律案について、その提案理由と内容について御説明申し上げます。
現在、五十万人に及ぶ山林労働者は、人里離れた山奥で家族と別れ、昔ながらの封建的身分差別と非近代的な労働条件に苦しみながら、森林資源の造成、木材生産に従事しているのであります。しかし歴代保守政府の進めてきた高度成長政策は、山林労働者をも一そうの貧困の谷間におとしいれ、近代文化の恩恵に浴することもなく、生活の近代化は望むべくもない状態に放置されているのであります。すなわち、これらの労働者の賃金は、依然として人間としての最低生活を維持するにはほど遠い状態であり、労働条件を規定した労働基準法の中心的規定であります労働時間、休日休暇の規定は、その適用が除外されているのであります。したがって、これらの労働者は、低賃金構造との関連で、今日もなお長時間労働が強要されている状態であります。
わけても十五万人に及ぶ国有林労働者は、国有林に専業的に働き、その生計を国有林に依存し、二十年、三十年の勤続表彰を受けておりながらも、林野庁当局の降雪、積雪を理由とする休業のため、毎年首切りが行なわれているのであります。その結果、毎年三カ月から六カ月にわたって失業するという状態が繰り返され、国有林労働者の身分、生活を極度の不安におとしいれているのであります。
しかも、これらの国有林労働者は、定員内職員、常用作業員、定期作業員、日雇作業員、臨時日雇作業員という雇用区分によって、その労働条件に大きな格差が設けられているのであります。このような国有林労働者の差別支配を強行している当局が、国有林を管理運営する林野庁という名の政府機関の一部であることは、私の最も遺憾とするところであります。
さらに、去る四十一年三月の中央森林審議会の国有林経営合理化に関する答申によると、国有林野事業を利潤追求を第一義とした企業性重視の立場から、労働者や地元農民、中小企業者の犠牲によって一そうの合理化をはかろうとしているのであります。これは高度成長政策のしわ寄せによる国有林経営の悪化を、国有林労働者の人減らしと労働強化によって切り抜けようとするものであり、その矛盾をますます拡大する以外の何ものでもありません。
最近開催されましたILO国家公務員専門家会議において、恒常的な職務を遂行するため必要とされる職員は、常勤として採用されなければならないし、その間といえども常勤と非常勤との間の法的身分の違いをもって、賃金や労働条件全体について差別の理由とすべきでないという報告をしているのであります。したがいまして現在、林野庁が行なっております労務政策は、このILOの見解にも全く違反しているのであります。
このような国有林労働者の現状にかんがみまして、これらの労働者の雇用を継続させ、その雇用と生活の安定をはかる必要があると考えるのであります。これがこの法律案を提出する理由であります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
まず、国は、国有林労働者として前年度及び前々年度において、それぞれ継続して六カ月以上雇用された者、また前年度において継続して十二カ月雇用された者については、当該労働者が希望するときは、これらの労働者を常時雇用する国有林労働者として雇用しなければならないものといたしました。
第二に、国有林労働者が一年を通じて労働することができるようにするため、国はできる限り、国が直接実施する国有林野事業の事業量の増大及び作業量の平均化をはかる義務があることを明らかにいたしました。
第三には、国は、前年度において継続して六カ月以上国有林労働者として雇用された労働者で、常時雇用の国有林労働者の対象とならなかった者については、当該労働者が希望する限りは、次年度においても再雇用を保障する義務があることといたしました。
第四には、常時雇用される国有林労働者が、降雪または積雪のために休業せざるを得なくなった場合には、国は、労働基準法第二十六条の規定にかかわらず、特別休業手当として、平均賃金の六〇%以上の手当を休業期間を通じて支払わなければならないことといたしました。
以上が、国有林労働者の雇用の安定に関する法律案の提案理由及びその概要であります。何とぞ慎重審議の上、すみやかに満場一致、御賛同あらんことをお願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/7
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008・八田貞義
○八田委員長 次に枝村要作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/8
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009・枝村要作
○枝村議員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました家内労働法案につきまして、提案理由並びにその概要を御説明申し上げます。
さて、御承知のように、今日の日本経済の目ざましい発展は、一方ではあらゆる分野に格差やひずみを生じ、特に家内労働の性格にも大きな変化があらわれ、物価高に対する収入を確保するため、一般労働者の主婦が家内労働に従事する傾向が強まってまいりました。また経営者にとりましても、電気器具、プラスチック製品、メリヤス、紙器などの分野では若年低賃金労働力の不足に対処するため、家庭主婦の家内労働への活用が増大しておるのであります。
政府の調査によりましても、現在家内労働者は約八十四万人にのぼり、そのうち九〇%以上が女子で占められ、地域的には六大都市に集中し、産業別には繊維工業並びに雑貨工業がその八〇%を占めているといわれております。しかし、これらは家内労働者の工賃は、驚くなかれ一時間当たり三十円程度といわれ、しかも労働条件もきわめて劣悪で、作業環境が不備なため安全衛生上の問題が頻発していることは御存じのとおりであります。
政府も、こうした現状を放置しておくことができず、さきに臨時家内労働調査会を設置し、今後の対策として最低工賃と標準工賃制度、労働時間の適正化、安全衛生、労働保険の適用などについて、その必要性を強調しているのであります。これを受けて現在、家内労働審議会において具体的検討を進めているのでありますが、審議会におきましても早急に法的措置を講ずる必要があるとの意見が圧倒的多数を占めているのであります。
しかも今日の家内労働の増大は、学卒労働力の不足からくる賃金上昇のために、中小企業が家内労働に依存する結果あらわれた現象でありまして、わが国経済の質的向上、二重構造の解消という意味からもきわめて重要な問題と言わねばなりません。また家内労働が増大すればするほど、雇用労働者の労働条件の向上を阻害する要因となっていくことは明らかであります。わが国低賃金の温床的役割りを果たしているこれら家内労働者を苦汗労働から解放し、あわせて家内労働に依存せざるを得ない諸産業の近代化を促進する上からも、いまや抜本的な立法措置を講ずることは国家の急務であると考えるのであります。これがこの法律案を提出する理由であります。
以下、この法律案の概要について御説明申し上げます。
まず第一に、本法案の適用範囲は、同居の親族以外の者を使用しないで家内労働に従事する者に限ることとし、事業主がこれらの家内労働者に物品の製造等を委託する業を営む場合は、行政当局に届け出なければならないことといたしました。
第二に、家内労働者には家内労働者手帳を交付し、労働条件などを委託に際して明記させ、もって委託者の不正を規制することといたしました。
第三に、家内労働者の最低工賃は、社会党提出の最低賃金法案による一般労働者の最低賃金額に見合う額で、都道府県労働基準局長が、地方家内労働審議会の議を経て決定することといたしております。
第四に、家内労働者の労働時間、危険有害業務の委託等について若干の規制を加えるとともに、労働基準法の規定を大幅に準用することといたしまして、一般労働者と同様にその労働条件の改善をはかることといたしました。
第五に、家内労働者が団結して労働条件等につき、委託者またはその団体と労働協約の締結等の交渉をするため、家内労働者組合を組織することができることとし、これに労働組合法の規定を準用するとともに、家内労働関係の当事者間において争議行為が発生した場合におけるあっせん、調停について規定いたしました。
以上が本法律案の提案理由とその主たる内容であります。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/9
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010・八田貞義
○八田委員長 次に、田邊誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/10
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011・田邊誠
○田邊議員 私は、提案者を代表いたしまして、最低賃金法案につき、提案理由並びにその内容の概要を、御説明申し上げます。
戦後、わが国経済は、著しい荒廃と混乱の中から再出発したにもかかわらず、異常な成長を遂げてまいったのであります。今日、その経済成長率は実に先進国でも世界第一位を示す状態に立ち至っておるのであります。しかし、この経済の高度成長の中には、国民の勤勉で低廉な労働力の提供が、その重要な要素として存在しておることを忘れることはできないと思うのであります。
もちろん、今日までの社会機構の中では、労働市場は、ごく一部の例外を除いて、常に買い手が値段をつける買い手市場でありました。しかしながら、現下のわが国の情勢は、経済成長が招来したひずみを是正し、格差を解消することが急務であることが叫ばれ、また、若年労働力の不足の事態が起こりつつある状況にあり、労働市場も大きな変革を来たしつつあるといえるのであります。
この事実に着目するとともに、今後わが国が近代国家として、国際競争下にあって正しく発展し、真の福祉国家としての実をあげるためには、まづ勤労国民の労働力を大切にし、その価値を高く認めることが肝要であるといわなければなりません。
申すまでもなく、最低賃金制度は、ときとして、団体協約によって最低賃金をきめる制度を含むこともありますが、通常は法定最低賃金を設け、賃金についての最低限度を、国の法律によって強制する制度でありまして、歴史的には極貧階層救済のための、労働者保護立法として発足したのであります。次いで貿易競争からくる、国際緊張を緩和する役割りを果たし、これが国際連帯を強める結果となり、ILO二十六号条約の採択と、次いで批准が七十カ国以上に及ぶまでに至ってきたのであります。さらに第二次大戦後は、労働者の最低生活水準を保障する制度として、受け取られるように発展してまいったのであり、今日最低賃金制度は、労働の価値の正しい評価と再生産に必要な生活をなし得るに足る賃金を、国家によって保障することを常識とする制度となっておるのであります。
しかるに、わが国の労働者の賃金の現状はいかがでありましょうか。わが国の工業生産が造船の世界第一位、化学繊維の第二位、自動車、鉄鋼、セメントの第三位など、世界有数の地位を占めていることは周知の事実であり、これに比べて国民一人当たりの所得が、世界第二十位前後という低位にあることも動かせない現実であります。さらに月二万円以下の低賃金労働者が八百万人も存在し、内職労働者で低い工賃に呻吟している層が、二百万世帯にも及んでいるのであります。
この生産と所得、経済成長と賃金の著しい不均衡を是正し、労働者の生活の安定と労働能率の向上をはかるとともに、産業の平和を維持するためには、労働者に最低賃金を保障し、規定することが絶対に必要不可欠であると信ずるのであります。
現行最低賃金法は施行後十年になんなんとしておりますが、適用労働者数は昨年十二月末現在で、中小企業労働者千三百万人のようやく半数に近い六百十一万人であり、しかもそのうち現行法の中核をなす、悪名高い第九条の業者間協定方式によるものが二千二件、四百六十七万人も占めておるのであります。さらに、適用労働者数の七六%は、依然として日額五百五十円以下、月額換算、一万四千円以下の低い賃金決定を受けている状況にあるのであります。
このことによる低賃金労働者の存在が、他の労働者の賃金に多大の悪影響を与え、一方、法的規制賃金として、米価決定の重要な要素である、生産費中の労働力評価の基礎ともなり、農民所得水準を押える役目もなしているのであります。さらに生活保護基準、失業保険の最低額、失対賃金、国民年金とも関連し、国民生活水準を低く規制しておるのであります。さきに指摘したとおり、この国民の犠牲の上に、表面上のわが国経済の高度成長と繁栄が築かれてきたことを看過することは断じて許されないのであります。
われわれは、現行最低賃金法が、わが国の低賃金構造の裏づけと、政府の低賃金政策を合理化する役割りを果たし、一方、国際貿易市場で、歴史的にわが国の信用を失わせてきたソシアルダンピングの原因をなしてき、さらには業者間協定によって、賃金は労使の直接交渉で決定すべき原則と権利を踏みにじり、低開発国においても適用可能といわれるILO二十六号条約に違反する指摘すら受けてきた経緯にかんがみ、この際、新しい時代に即応した、正しい最低賃金法の実施に踏み切るべきときがきたことを認識し、ここにこの法案を提出した次第であります。
以下、法案の内容について御説明申し上げます。
まず第一に、最低賃金の適用については全国一律制を採用いたしたのであります。わが国のように、いまだに産業別、業種別、地域別の賃金格差が存在し、なおかつ低賃金労働者が多数残されている状態では、この制度の実施があくまでも必要であると思考いたすのであります。それぞれの格差賃金をきめることは、最低賃金制度の本来持つ効果をなくさせるからであります。なおこの上に労使の団体協約に基づく産業別、地域別に拘束力を持つ最低賃金の拡張適用の制度も確立することといたしました。
第二は、最低賃金額決定の基準は、生活賃金たる原則を貫き、労働者が人たるに値する生活を確保するために必要な経費である生計費と、一般賃金水準の動向などを考慮してきめることといたしました。
第三には、最低賃金額の決定及び改正は、最低賃金委員会において行ない、同委員会に強力な権限を与え、その決定に一般的拘束力を持たせ、行政機関も追認せしめることといたしたのであります。
第四に、最低賃金委員会は、六カ月に一回、必要生計費及び一般賃金水準に関する調査を行ない、その結果を公表するとともに、基礎となった必要生計費が三%以上増減したときは、最低賃金額の改正を決定しなければならないとしておるのであります。
以上、この法律案の概要について御説明申し上げましたが、この際賃金支払い能力の問題と関連して、この法案による全国一律制最低賃金の実施は、中小、零細企業の存立の基礎を脅かし、経営を困難にするのではないかという論に対して一言言及しておきたいと存じます。
そもそも今日、わが国中小企業が常に経営の危機に立ち、相次ぐ倒産に見舞われている原因はどこにありましょうか。このことは政府の大企業偏重の財政、税制政策に基因し、これに呼応する小規模企業への強い金融引き締めと、大企業からの下請単価の切り下げ、下請代金支払いの長期手形化による遅延などの圧迫が、中小企業の基盤を不安定にしておる要因ではありませんか。
この結果としてのしわ寄せが、労働者の賃金、労働条件に転嫁されていることを考えるとき、中小企業家と、そこに働く労働者は、ともに大企業の共通の犠牲者であるといえるのであります。一律制最低賃金の実施は、大企業による下請単価の切り下げを防止する歯どめになると同時に、労働力の再生産を円滑にし、労働能率を高めることから、経営の改善と近代化に役立つ結果ともなるのであります。そのためには格差賃金の残存よりも、最低賃金は国が責任を持つ、という規定のほうが、中小企業家自身も歓迎する制度であると確信するのでありまして、日本経済の二重構造を解消し、中小、零細企業の経営安定のためにも、中小企業への国の保護、助成政策の推進と相まって、この全国一律制最低賃金の実施が必要であるゆえんが、ここに存在することを、深く認識していただきたいのであります。
国民の待望するこの法案について、何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いして提案理由の説明を終わります。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/11
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012・八田貞義
○八田委員長 次に、予備審査のため本委員会に付託されております小平芳平君外一名提出の最低賃金法案を議題とし、審査を進めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/12
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013・八田貞義
○八田委員長 提案理由の説明を聴取いたします。小平芳平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/13
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014・小平芳平
○小平参議院議員 ただいま議題となりました最低賃金法案につき、提案者を代表いたしまして、提案理由並びに内容の概要を御説明申し上げます。
申すまでもなく、国家が強制力をもって賃金の最低限を規定する労働者保護の立法、すなわち最低賃金制は、近代国家に不可欠の制度であります。ゆえにILO二十六号条約、最低賃金決定制度の設立に関する条約は、一九二八年のILO総会で採択されて以来七十七カ国が批准を終了しております。わが国は先進工業国として大きな躍進を遂げながらいまだにこれが批准されないのは、政府の労働政策の重大な欠陥といわざるを得ません。近代産業国家においては、いかなる労働者に対しても、労働者の最低生活を保障するとともに、企業間の不公正な競争を防止し、経済の健全な発達と産業平和、労働市場の近代化を達成することがきわめて重要であります。
すなわち企業にとっても必要以上の低賃金、低生産性は決してプラスとはなりません。むしろ賃金水準を安定し向上していくことにより、良質の労働者を得、企業の機械化、近代化を促進することが必要なのであり、また、国民経済の面から見ても、賃金の上昇とともに労働者の生活が向上し、購売力が上昇し、有効需要を喚起し、経済活動が活発となっていくのであります。それは企業と労働者がともに繁栄する道にほかなりません。
しかるにわが国最低賃金法は、昭和三十四年四月に成立しましたが、その内容はいわゆる業者間協定がその主体となっておりまして、ILO二十六号条約の労使平等の原則に反しているのであります。労働者側の参加しない業者間協定のごときは、悪法の最たるものであることは言うまでもありません。政府もようやくその非を認め、今回最低賃金法の一部を改正する法律案を提案いたしました。しかるにわれわれは、この政府案では労使平等の原則を十分に尊重しない非民主的な要素を指摘せざるを得ません。また、現行の最低賃金の原則でも、本来の労働者保護の精神を十分に確立しているとはいえません。
そこで公明党は、大衆福祉実現のために、すべての労働者に最低賃金を保障することといたしました。
次に、法案の内容について御説明いたします。
まず第一に、すべての労働者に健康で文化的な生活を営むために必要な賃金の最低額、全国一律最低賃金を十八歳の労働者に必要な生計費の全国平均によって算出することにいたしました。
第二に、右の全国一律最低賃金の決定または改正は、中央最低賃金委員会がこれを行なうこととし、同委員会は、労使各十人及び公益五人の委員をもって構成することといたしました。
第三に、中央最低賃金委員会は、一定の地域内の十八歳の労働者に必要な生計費が全国平均に比して著しく高い場合に、当該地域についての最低賃金を決定することができることといたしました。
第四に、以上のほか、労働協約に基づく一定の地域内の産業別最低賃金を認めることができることとしました。
何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/14
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015・八田貞義
○八田委員長 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。島本虎三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/15
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016・島本虎三
○島本委員 委員長の権威において、委員会を開催する場合においては、はっきり統制を保ってもらいたのです。大臣が来なかったならば政務次官をなぜ呼ばぬ。大臣が来れないと言ったら、呼ばなくとも政務次官来るのが代行じゃないですか。(「入院中だ」と呼ぶ者あり)ちゃんとそれも言わないで、ただ来れない、来れないで、何ですか。(「要求してないんじゃないか」と呼ぶ者あり)これは要求してあるんですよ。了解なしにそんなことをしてはいけません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/16
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017・八田貞義
○八田委員長 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/17
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018・八田貞義
○八田委員長 速記を始めて。
島本君に申し上げます。
労働政務次官は病気中でお休みだそうでございまして、御出席ができません。この点、御了承をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/18
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019・島本虎三
○島本委員 労政局長、来ておりますか。——これはあえて私が要求していないことを言うなら、無理押しでしょう。要求してあるのに、かってに政府委員室のほうで必要ないだろうと言って、きょう来なくてもいいでしょうとあとから私のところに言いに来たのです。何でそれを言う必要があるのですか、こっちから言うのを……。ですから、委員長の権威にかかわると言っているのです。官僚に牛耳られるような社労の委員会でないはずですよ。何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/19
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020・八田貞義
○八田委員長 いま島本委員の御提案につきましては、委員長は知らないでおりまして、まことに申しわけございません。さっそく労政局長に出席するように求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/20
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021・島本虎三
○島本委員 職安局長にちょっとお伺いしますが、局長のほうでは大臣が国会で答弁されましたこと、または委員会等において、議事録に明確に答弁として載っておる問題については、それを尊重して、行政面では必ず大臣の意思に沿ってこれを行なっておりますか。それをまずお伺いいたしたいと思います。
それは、去年、昭和四十二年十二月二十日、衆議院の社会労働委員会で現在の労働大臣が所信を表明して以後、委員の質問に答えていろいろ答弁されました。その問題について、安定局長としては大臣の意を継いでそのまま行政面に反映しておりますかどうですか、それをお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/21
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022・有馬元治
○有馬政府委員 大臣が国会において御答弁された内容につきましては、私どもその意を十分に体しまして実現につとめておりますので、御了解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/22
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023・島本虎三
○島本委員 これは大臣と労政局長が、過般の参議院の逓信委員会で、大船渡のいわゆる不当労働行為問題について、その所信を求められたことがあるのです。そしてその際、大臣と労政局長が、その官僚機構の中で大臣や本省のほうではっきりそれを示達していることが、下部末端で完全に歪曲され、あるいは停止されている事実を身をもって体得をした一つの事件があったのです。大臣がおればわかるのです、労政局長がいればわかるのです。そのために呼んであるのです。それがいないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/23
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024・八田貞義
○八田委員長 すぐ呼びます。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/24
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025・八田貞義
○八田委員長 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/25
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026・田邊誠
○田邊委員 議事進行について。御案内のとおり、国政に関する非常に重要な審議を当委員会で進めておるわけでございます。特にきょうの島本君、八木君の質問は、それぞれいわば底辺に働く労働者の問題を取り上げて、労働省に対してその姿勢をたださんとするものであります。そういう重要ないわば国会の審議にあたって、労働省の当該局長が、委員の求めに応じて国会へ出てくるのは当然の責務であり、これを欠かすようなことがあっては、いかような答弁をいたそうとも、実際の運営というのは円滑にいかぬと私は思うのであります。そういった点で、きょうそれぞれ要求の局長が定刻に出席をしておらないということは、労働省は姿勢を正しておらないということに私はなるだろうと思います。きわめて遺憾であります。ひとつこの際労政局長の所見を承ると同時に、今後十分戒めたいと思ってお伺いしたい。委員長からもひとつ厳重な御注意をいただきたいと思うのであります。労政局長からひとつ御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/26
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027・松永正男
○松永政府委員 ただいまおしかりを受けましたが、重要な国会審議に対しまして支障を生じまして、まことに申しわけないと存じております。お許しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/27
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028・八田貞義
○八田委員長 委員長においても、政府委員に厳重に注意を与えます。今後かかることのないように、委員会の権威にかけて運営してまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/28
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029・島本虎三
○島本委員 きょうは大臣がいませんから、特に労政局長がその衝に携わっておった問題について、ひとつこの際明確にしておきたいと思うのです。
と申しますのは、いま職安局長のほうからは、大臣が答弁されたその趣旨に基づいて全部行なっている、ごうまつもそれに背反するようなことはない、こういうような答弁でございますし、労政局長は、過日の参議院の逓信委員会で、大臣と労政局長が呼ばれ、小林郵政大臣と郵政省のそれぞれの責任者が全部出席して行なわれた大船渡のいわゆる不当労働行為の問題について、いろいろ追及されたことを覚えておられるだろうと思います。その中でいみじくも、あってはならないことがありました。高橋郵政政務次官が、首を切るような、こういうような場にある人は、どのようなことがあっても家族や本人にその理由は納得できるように知らすべきである、これをやらせます、こういうように言ったわけです。そして山本人事局長を通じてこれが示達されました。しかしながら、それが仙台郵政局の手で改ざんされ、大船渡局は混乱局であるということで、それが行なわれなかったことがいみじくも明確になったわけです。こういうようなことば二度と再び繰り返してはならない、こういうようなことは、厳重にその席上で、参議院の逓信委員会で、当時渡辺勘吉委員のほうから申し渡されたことをあなたと大臣が聞いておったはずです。こういうようなことは、問題は、参議院であろうと、衆議院であろうと、郵政省であろうと、労働省であろうと、これは同じ問題であります。大臣がせっかくそれを思い、そうしてそれをはっきり答弁した。それが下部、末端で変えられるようなことがあっては、綱紀の紊乱どころか、とんでもないことです。当時小林郵政大臣は直ちに特使を大船渡に出してその真相を調べさせた、こういうようなことがありました。それもあなた知っているでしょう。いま大臣のほうで、十二月の二十日です、この社労の委員会で、この中高年齢失業者等に対する就職促進の措置、こういうような問題を含んでいろいろ質問されました際に、八木委員の質問だったと思いますが、これは実態を十分にきわめて、改めるべき点は改めてまいりたいと思っております。そして明らかに法律に違反するような通達が出ておるといたしましたならば、その部分を削除しなければならぬ、そのことは当然だと思っております。こういうような答弁があったわけです。こういうようなことは、あたりまえのことなんです。このあたりまえのことがちゃんと下まで行なわれなければならないということです。こういうようなことは、労政局長としても十分見ていなければならないじゃありませんか。あなた自身、参議院ではございましたけれども、こういうようなことを身をもって体験してきたはずです。大臣と二人だったでしょう。いま職安局長のほうからは、大臣の意を体してやっている。そういたしますと、労働省の事務当局の態度、それも大臣の態度と一致していなければならない。一月二十四日の全国の労働基準局長労働主管部長合同会議で、有馬職安局長が、昨年来いわゆる流入闘争戦術に対する各種の通達を出しておりますが、既定方針どおりやり抜きたいと思っております、こういうことが職業安定広報二月十一日号で発表されておるわけです。それによってトラブルが起きているから今後改めたいという大臣の方針に対して、既定方針どおりにやり抜けという事務当局の号令であります。これでは、かつての大船渡と同じようなことになっていませんか。上から下まで全部大臣の答弁のとおりですか。この点は、ひとつ労政局長と職安局長と、両方から御答弁を一応承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/29
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030・松永正男
○松永政府委員 ただいまの大船渡の郵便局の事件につきましては、私も何回か国会審議の際に同席をいたしまして、郵政大臣あるいは郵政政務次官、人事局長、郵務局長等の答弁を聞きまして、よく承知をいたしておりますが、先ほど御指摘になりましたような、人事局長の、たしか電話連絡だったと思いますが、それが局でとまって下まで徹底しなかったということについては、これは非常に遺憾なことであるという感想を率直に私も持ちました。ただ、あのときに、現地における事情等を考慮して郵政局の判断でやったらしいけれども、それは遺憾であるから直ちに徹底する、もう一度直ちに連絡をして徹底するようにいたしたいという人事局長の答弁があったと記憶をいたしておりますので、そのように徹底したものというふうにいまは考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/30
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031・有馬元治
○有馬政府委員 御指摘の、一月二十四日の全国合同会議におきまする私の指示でございますが、これは、そのとおり全国の労働主管部長に指示をいたしております。と申しますのは、従来からの既定方針どおりに貫けという趣旨は、流入闘争に対する各種の通達、指示が、われわれは法令に違反するものではないという確信を持っておりますので、従来どおりの既定方針で貫けということを指示した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/31
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032・島本虎三
○島本委員 さらに、まともな安定した職を求める失業者に対して、現在職安行政の下部では、いわゆる職安のいうとおりにならないからという理由によって失業保険の支給をとめたり、法律で定められた手続さえも無視して窓口で追い返す、こういうようなことは職安行政の反動化として著しいものがあることを指摘しなければならないと思います。失対事業の打ち切りと失業保険の事実上の改悪、通達行政による給付制限の強化、こういうようなことによって失業者のいわば生活手段を奪ってしまっておる。それと失業者を低賃金労働にかり立てている最近の雇用と失業対策、こういうようなものに対しては目をおおうものがあるわけです。こういうようなことは絶対にないということを保証できますか、職安局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/32
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033・有馬元治
○有馬政府委員 ただいま御指摘のございました失業保険の給付制限、あるいは求職受理における若干のトラブル等のことでございますけれども、これは現在の流入闘争の実情からこういった問題が出てきておるのでございまして、私どもは失業保険の給付制限につきましても、失保法の規定に基づきまして給付の制限を正当に行なっておるつもりでございます。したがいまして、今日の雇用、失業の情勢に対処して、失業者に安定所の門戸を閉ざすというふうな趣旨では決してございません。私どもとしては、失業者、求職者を相手とする仕事がわれわれの主たる仕事でございますので、門戸を閉鎖するような指導は絶対に行なわないつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/33
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034・島本虎三
○島本委員 私は、残念ながらここに具体的な例を幾つかあげなければならないと思います。これは三つ、四つあるわけです。おもに今回、この具体的な実例によっていかに実施されているかというような点を、ここに解明してまいりたいと思います。
まずその一つは、三月二十三日の北海道のローカル放送ですけれども、「一〇二」の前の道央チャンネル「北の視点」という七時二十分から同三十五分までの間のNHK放送に、明確にのせられた事件があります。その題名は「日雇労働者」、そしてこれは小樽の職安から失業保険打ち切り、中高年就職措置の不認定の措置を受けた状況とその背景が問題である、こういうようなことでいろいろその事件が報道されました。それによりますと、病気入院中の父親をかかえた小樽市豊川町の高橋キクヨという四十一歳の未亡人の人です。この人が本年の一月十七日に小樽の公共職業安定所へ参りまして、中高年齢者就職促進措置申請書交付方を要請し、二十日に申請書を出しております。そして本人もいろいろ職安へ通っております。そのあと一月二十五日に面接に行って、仕事がない。二月二日、ない。それから八日になってようやく一カ所指示されたところがございまして、そこへ参りました。そして履歴書を持っていった。その条件としては、半年たったならば常雇いになれる、しかし当分は手取り六百円だ。しかし生活保護法でも、北海道では現在、子供一人をかかえた三人家族でも二万円をこえている。まして父親が病気で入院中である、そういうような女の人が、せめて生活に必要な二万円くらいはほしいのです、こう告げたところが、採用不採用は職安に報告する、こういうふうに言ったまま帰された。そして十二日に失業保険を受給に行った。その場所で午後二時から来なさいと言うので、二時に行ったところが、失業保険の証書、それを取り上げたまま重大な宣言をしているのです。二時間三十八分にわたっていろいろ質問している。たいへんなことを言った、いまごろ二万五千円や二万八千円出す業者なんかどこにもない、こういうふうに言っている。二万円くらいほしい、これは当然です。生活保護法の適用を受けても二万円をこえますから、せめて二万円くらいほしいという要望に対して、そんなに出すところはどこにもないということで断わられた。まして今度は、そんなことを言った覚えはありません、こういうようなことでそのまま指導官が帯同してもう一回その事業所へ行った。そして、いろいろ手当を入れると二万円くらいにはなるだろう、したがって電話で言ってあるからそのままつとめなさい、こういうふうなことがあったわけです。
しかし十三日にもそこへ行って、それが最後になりましたけれども、あとから職安に報告しておくから、こういうふうなことで職安のほうへ行ってみたところが、二万五千円や二万八千円を要求するのか、とんでもない、こういうようなことで今度は逆に失業保険を打ち切られているのです。そしてあげくの果てに、いい仕事もないから身を固めたらどうですか、結婚したらどうですか。職業安定所は結婚紹介所になっている。そういうふうなことまで言っておるのです。無礼じゃございませんか。(「結婚は永久就職じゃないか」と呼ぶ者あり)不規則発言で、結婚は永久就職じゃないか、こういうふうなことを言っておる人もありますけれども、しかしながら、まじめにやっている人に対しては、こういうようなことは言うべきじゃございません。そしてまた、あなたは組合の人に言われて就職を断わったのか、こうまで尋問しているわけです。これは本人は全然違うと言っている。そして所長と両方合わせて聞いたところが、全然またそれも違っている。本人は断わってない。所長は断わっただろうと言う。こういうふうなことは、はたして現実の面として親切な扱いでしょうか。これは許されないと私は思います。これだけじゃございません。そのあとにまだ重大なことを言っているのです。私どもは憲法や法律は知らなくともいいから、通達三二五号と三三五号、これを実施しておればいいのだ、こういうふうなことを言っているのです。大臣がいま言ったこと、これを安定局長がすなおに流しておいて、下部末端でこういうふうなことが行なわれたとすると、これはどこかおかしいじゃありませんか。これに対して職安局長、ひとつ御所見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/34
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035・有馬元治
○有馬政府委員 小樽の事案につきまして種々御指摘がございましたが、いろいろな経過がございまして、私どもも現地から報告を受けておりますが、その間に求職者と求人者との間におきまして若干いきさつがあったように承知いたしております。こういう点でいま御指摘がありましたように、求職者が求人者に断わったというようなことにつきましては、その辺が逆に受け取られておるというふうな点もございまして、私どももなお現地を督励して、この問題については早急に求職者たる高橋キクヨさんの御要望に沿うような措置をまずとりたいと思っております。
それから、御指摘がございました失業保険の給付制限の問題、これも私どもが報告を受けておりまする経過から申しますならば、こういった事例については給付制限をするというケースが多いわけでございまして、この点も多少先ほど申しましたようないきさつの食い違いがある点を考慮に入れるならば、給付制限についての可否の問題も確かにあろうかと思います。この点はさらに現地において実情を究明してみたいと思います。
それからあと、派生的な問題といたしまして、結婚をしたらどうだというようなよけいな指示があったかに承ったわけでございますが、こういったことは窓口の指導官として職業相談、職業指導の過程においてあるまじき言動でございますので、もしあったとするならば厳重に警告を発し、自後こういったことのないように、善処をいたしていきたいと思います。
また、組合に言われて断わったのではないかというふうな御指摘もございましたが、これもやはり窓口の職員としてこういった究明をすべきではないと思いますので、これも厳重注意をいたしたいと思います。
さらに、憲法、法律の問題につきまして御指摘がございましたが、これはどういういきさつで現地の所長が憲法や法律よりも通達だけをたよりにやっていればいいというふうな応答になったのか、経緯がよくわかりませんけれども、われわれ公務員といたしましては、憲法をはじめ関係の法令を十分熟知した上で、具体的な通達を背景に窓口行政を展開する、こういうふうな仕組みになっておりますので、いま御指摘のありましたような言辞が現場においてあったとするならば、これも非常に公務員としてはまずい応待のしかただと思います。厳重に注意をいたしまして、自今かかることのないように、是正をいたしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/35
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036・島本虎三
○島本委員 自今かかることのないようにこれは厳重に注意し、指導すべきです。
この際、大臣に一言お伺いしておきます。
それは、いまちょっと聞いたとおりです。大臣の来ない間に若干時間が経過したりしたことは残念ですけれども、大臣が十二月二十日にいろいろ答弁されました。われわれはそれを心から信用していました。あえてことばを飾るわけではございませんが、卒直に、いままでのどの労働大臣よりあなたの場合は人間的であり、この大臣はわれわれは今後期待が持てるのだ、私ははっきりそうさえ思いました。おせじじゃございません。しかしながら、その大臣のことばがそのまま下部末端に浸透しているかどうか。これは職安局長も労政局長も、さしているということです。ところが、いま申しましたように、下部末端へまいりますと、必ずしも労働行政サービス機関ではなくて、官僚の流れをくむ一つの国家公務員の悪い面、官僚的な面のむき出しであります。こういうような点は是正しなければなりません。
その中で、私がぴんとくることが一つあります。それは憲法や法令のことは知らなくてもよろしい、ただ通達だけをやっていればいいのだ。こういうような考えがもしあるとするならば、これは重大な失言です。こういうようなことは許されません。憲法九十九条にも、これははっきりしていますから大臣も御存じだと思います。これに関連して、閣僚である倉石さんもやめられたのですから、この点においてはもう十分御存じだと思います。「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と、はっきりこうなっているのですが、そんなことを知らなくてもいいのだ、ただ通達だけ守っていればいいのだ、こういうようなことがことばの端にも出るような、こういうやり方は、たとえどのような状態であっても妥当ではありません。こういうような点は、ひとつ姿勢を正すためにも十分気をつけなければならない問題だと思います。下部末端ではこういうような傾向がございますから、その点は大臣としても今後指導上、十分気をつけてもらわなければならない。まして、いま例をあげたその人のいわゆる首切り状、この不認定にした理由というものが簡単です。「職業相談過程を通じて見られる客観的事象により不認定とする。」客観的事象とは何ですか。ただ、それだけなのです。これは不親切です。大臣がせっかく人間的なりっぱな答弁をなすって、われわれにかつてないような期待を持たしたのです。それがいま三カ月にして足元がくずれ去るということは、これは忍びがたいことです。私は、こういうようなことのないように今後十分注意してもらいたい。大臣に御所見を承りたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/36
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037・小川平二
○小川国務大臣 現地の担当者が懇切、公正という点におきましていささかでも欠けるところがあるといたしますと、これはまことに遺憾なことでございますし、私がかねて言明を申し上げております気持ちとも反することでございます。
先ほどから御指摘のある事件につきましては、安定局長から答弁を申し上げましたように、まず第一に、御本人の御期待に沿うようにあらゆる努力をいたしてみたいと存じますし、担当者のとった措置に適正ならざる点がありますれば、今後厳重に戒めるつもりでございます。どうぞそのように御了承いただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/37
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038・島本虎三
○島本委員 一女性ですけれども、こういうようなことになりまして——いま大臣は厳重に注意をし、是正をする、こうなっておりますけれども、不認定になったものは、一年経過しなければ、その措置の申請ができないというのが、いまの法律の盲点なんです。それも、そういうような不確実な状態、血も涙もないと思われるような状態で不認定にされたあと、病気の父親をかかえて二万円ももらえないで、私が会ってきたそのときにはもう売り食いです。自分の着たものまで売ったり、今度は自分でいろいろなものの行商に歩いたりして生活しているのです。そんなものが切られているのです。婦人少年局長としてこういうようなのが方々にあるということは、もう十分考えて対処しなければ、婦人の地位も向上しません。これは向上どころか、生活を守れないじゃありませんか。大臣は幸いにしてあたたかい思いやりを持っております。あなたは、これに対して今後十分対処していかなければならないと思います。職安局長に対して女性の立場からも、あなたはこういうようなことが絶対ないように、一年間といわず、この措置の不認定は手続上のミスもあることであるから、もう一回やってもとへ戻して、これを早急にやらせるようにここで要請すべきではないかと思うのです。幸いに大臣は同情的ですから、この場ではっきり言ってみてください。御意見を承ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/38
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039・高橋展子
○高橋(展)政府委員 この事案につきましては、私ども詳細についてまだよくわかっておりませんので、出先におきまして情報を得ました土で関係機関に御相談申し上げたいと思います。ただ、この事案に関しましては、ただいま大臣、職安局長からお答え申し上げた線で処理されるかと思いますが、その認定、不認定の問題等につきましては、婦人だけの問題であるかどうか、この辺もまた問題があるかと思います。
確かに婦人が現にお困りになっておるそういうケースにつきましては、私どもとしてはできるだけの方策をもって救済いたしたいと思います。地方に、私どもの婦人少年室がございまして、婦人問題の相談業務等をいたしておりますので、お困りの問題の場合には、また婦人という立場でお役に立てる面もあるかと思いますので、御相談をいただきますれば関係機関と御連絡の上処理いたしたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/39
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040・島本虎三
○島本委員 まあこの問題に対しては、職安局長、やはり全国にある問題の一つのポイントですから、ほんとうであるといってこれだけで済まされないで、十分配慮してもらいたいと思います。職安局長のいままでの答弁はわかりました。しかし、そのわかったのをそのままにしておくと困ります。法的にも、一年間の猶予期間がなければどうにもできないことになっておりますので、そのままでいろいろなことをしてもちょっと困ると思うのです。法は法として考え、またミスがおのが身にあるならばそのミスを反省して、その事態をもとに戻して十分考えてやる措置等もあたたかいやり方ではないかと思いますが、職安局長にこの一点だけお伺いしておきたいと思います。いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/40
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041・有馬元治
○有馬政府委員 先ほどから申しましたとおり、なお事実関係について多少究明もしてみたいと思いますし、その上で善処をしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/41
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042・島本虎三
○島本委員 ここに、同じ事件で東京にもございます。東京では藤代榮一さんという四十三歳になる人です。これはもう去年の十二月八日に求職の申し込みをしております。そして直ちに面談に応じております。家族五名で生活保護の適用を受けておる人です。それでもやはりいろいろな関係から五万円くらいのところで働きたい、こういうように言ったところが、そんなところはありませんと一回断わられております。そして今度は、全日自労の組合の人と絶対同行してこないでもらいたいということを強く要請されております。これはどういう意味なのか私はわかりません。しかしながら、十二月十五日には一回就職あっせんを受けました。しかし、自動車の免許証を持っておらないために、五万円の給料は出せるけれども、うまくないといって断わられておる。そして二十一日にまた行っているけれども、総評の調査団が来たという理由で拒否されておる。それから十二月二十五日に今度は全日自労の二、三の人に同行してもらって行っております。しかしながらそこでは、一時間半にわたって話しておりますけれども、大体において刑事二名が所内に入り込んでいる状態であります。それから本年になって一月十二日に、今度は中村金太郎商店に紹介されております。しかしながらここでもまた、免許がなければなくてもいいというようなことでありますけれども、いろいろな条件がどうしても合わないので、これは返事を待ってもらっております。それと、本年の一月二十二日、また別なところに行っておりますが、条件がどうしても合わないので断わられております。そして二月九日になって、今度履歴書を見てあっせんされたコンクリート会社では、四万円から四万五千円と申し込んであるけれども、給料はまあ考慮してもいい、五万円ぐらいは出せるのだ、しかし生活保護の適用を受けているというようなことでは困るといってこれは断わられておる。生活保護の適用を受けておるのが理由で断わられるというのが私どもどうもわかりませんが、実際そういう例もあります。それから今度は申請書の交付を拒否されております。二月二十一日に、二カ月半になって、自労の人と同行してきたので、三月七日、三月十一日、それからその後四月九日まで数回行っておりまするけれども、ついにこれは正当な求職者と認めないということであっさり否決されておるような状態があります。これは一体どういうことでしょう。まして、行ってみると刑事まで張り込ませる、こういうようなことはここの面では少し穏やかではないんじゃないか、こう思われます。この件についてひとつ所見を承っておきたいと思います。
なお、皆さんのほうでも調査されたはずですから、その調査の点とあわせて、私の質問に対して別な観点からでもよろしゅうございますから、異議があるならばはっきり申し出てもよろしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/42
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043・有馬元治
○有馬政府委員 東京の藤代さんと萩原さんの二人の事例について御指摘がございましたが、私どもも現地の三鷹の安定所を通じていまの経緯の報告は大体受けております。ただ、第一点としましては、藤代さんの場合に月収五万円の御希望がございまするが、労働市場の状況からいいますと、無技能の場合には東京都においても五万円というのはそれにのみ固執する場合にはなかなか条件が折り合わないという場合もございます。したがいまして、藤代さんの場合に、三回にわたって紹介をいたしましたが、運転免許を持っていないというような理由で、五万円までは出せないというふうな断わられ方をされておるようでございます。
最後に紹介をいたしました小沢コンクリートの場合に、生保の適用があるから採用できないというふうな理由を御当人が申し立てておるようでございますが、私どもの聞いたところでは、求人者との面接過程におきまして、冒頭に待遇問題を取り上げるような人はうちでは採用したくないというふうな言い方をしたように報告を受けております。これも、求人者の態度にはいろいろございまして、私どもが一々求人者の採用のときにおけるやりとりを指導するわけにはいきませんけれども、もし生保の適用を受けておる人だから採用しないのだというふうなことを言っておられるとするならば、これはやはり今日の国の制度を理解しない求人者だと思いますので、その点は求人者に対して厳に注意をいたしたいと思います。
また本件をめぐりまして全日自労あるいは総評の調査団等が介添えをしておるようでございますが、私どもの基本的な指導は、身体障害者あるいは精薄者等の場合において保護者が安定所に付き添ってくるということは従来もやっておりますけれども、一人前の男子、あるいは女子の場合におきましても、安定所に求職を申し込みあるいは相談をするという過程におきましては、やはり御当人と担当職員との間に職業の相談なりあるいは指導なりという過程を踏むことにしておりまして、第三者が不当に介入をしてくるということは、組合の場合であろうとあるいはその他の場合であろうと、職業紹介の原則にもとるという考え方で指導をいたしております。
ただ、ここで全日自労の介添えにまぎれてといいますか、介添えと一緒に私服刑事が張り込んでおったという事実は、私ども承知いたしておらないのでございますが、これはもしそういう事実があるとするならば、警察当局の見地からそういった警備がなされたのではないかと思います。私どもの立場におきましては、よほどの事態がなければ警察官を要請いたさないつもりでございまして、こういった日常のケースについてはわれわれの側から警察官の派遣を要請するということはいたさないつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/43
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044・島本虎三
○島本委員 いま私も、途中で切れましたけれども、萩原中心さん、四十九歳になる人もあるのです。この人はまだ私申し上げておりません。しかし、世帯人員が八名もおります。ペンキ職の職人です。この人は自分の腕に技能がありますから、そういうものを生かしてもらうためにずいぶん職安通いをいたしております。しかしながら、やはりこれも申請書の交付を拒否されております。そして最後には同じような状態のもとに、第一に、職業は十三歳のときからやっているペンキ職をやりたいのだ。これは安田という係長にはっきり言っているのです。第二には、常用として安定したところに働きたいのだ。第三には、通勤の可能なところに職がほしいのだ。すべてあたりまえのことです。第四には、働く以上社会保険の完備した、退職金制度の確立されているところが望ましいのだ。第五には、私ども親子八人が最低生活でもいいから食べていける賃金を払ってくれるところであるならばよろしい。こういうようにお願いしたところが、げんなりした顔をしておった、こういうことです。いま五つに分けて言いましたけれども、これは普通ありきたりなこと、常識的なことです。それにペンキ職です。腕に技能があります。そして生活保護の適用を受けています。そして法二十七条によって、働く意思がありますから、働きたいといって行っているのです。それが紹介義務を打ち切られるということはどうしたことでしょう。いかにそういうようなことがあっても、腕に職がある人でしょう。本人に働く意思があるでしょう。こういうのは困難な条件があってもあっせんしてあげたほうがよろしい。また当然それくらいはある。うちがどんどん建つし、成長産業でしょう。熱意を持ってやったらできるんじゃないか。
この二人の点だけはぜひやってやったほうがいいのじゃないか。具体的な問題で二人やると、ほかのも全部やることになりますから、いいことです。したがって、この二人をいま浮き彫りにしてあげました。この二人に対しましても、ひとつ今後就職を十分あっせんするように、本来の職安行政に活を入れてやってほしい、こう思います。この点いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/44
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045・有馬元治
○有馬政府委員 御両人の求職の意思を確かめた上で、安定所としては最善の措置を講じて早期に再就職をはかってまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/45
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046・島本虎三
○島本委員 それから、先ほどから申しました中で私少し話をしてみたい点がございます。それはいわゆる同行を拒否する、このことがちょいちょいいわれるようでございます。これは組合の人——名称は全日自労でしょう。この人たちが行くとどうしても交渉に応じられないとか、またそういうような措置を受けられないとか、こういうようなことが示達されているようでありますけれども、これはどういう意向ですか。これはあり得ないことだと思います。労政局長もそこにいますから、両方相談しながら、今後のためにひとつ十分検討願いたいのです。組合の人が同行するとなぜ拒否しなければならないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/46
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047・有馬元治
○有馬政府委員 普通の同行は、先ほど申しましたように、身体障害者とかあるいは精薄者の場合にはあることでございますが、その場合といえども、職業相談なり職業指導の過程におきましては、第三者の介入は通常の場合あり得ないわけでございます。同行者は控え室に待っておるというのが普通でございまして、いま御指摘の就労者団体の場合には、それが普通の状態における同行とかあるいは控え室における待機とかいうふうな状態ではないのでございます。そういった異常な状態に対しましては、私どもも失対就労者あるいは措置の希望者以外に、一般の求職者あるいは保険の受給者、求人者というふうな多数のお客さんをかかえておりますから、それらのお客さんの関係もございまして、安定所の窓口における正常な業務の運営を確保するために、最小限度の御指導を申し上げておるというのが実情でございます。そのための通達指導も昨年来やって、今日ようやく正常な状態に戻りつつあるというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/47
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048・島本虎三
○島本委員 戻りつつあるということは、同行してもそれを受け付けて事なきを得ているのか。同行していく場合には一切これを拒否して、認定書の用紙の交付もしない、こういうようなことで正常化しているのか。考えようによっては正常か、不正常か、これが逆になってしまう問題ですが、これはどういう意味で正常化しているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/48
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049・有馬元治
○有馬政府委員 普通の状態において、平穏かつ秩序ある方法によって同行し、あるいは控え室に控えておるというふうな状態は間々ございますので、これは私どもは問題にいたしておりませんが、御指摘のような全日自労さんのほうでは、いわゆる流入闘争の戦術をとっておりまして、過去三年有余にわたってこの闘争が現実に第一線の窓口で展開されておるわけでございます。この実情は新聞その他写真等で御承知かと思いますが、私どもも非常に大切なお客さんでございまするから、この指導等につきましては、過去三年来いろいろと苦労をしてまいったのでございまするが、どうもこの流入闘争の現実は、われわれとしても従来の手段方法をもってしては対処できないというふうな事態でございましたので、陳情の取り扱いについての基本的考え方を、昨年六月、全国の知事に通達をいたしまして、この全日自労さんの流入闘争についてはき然たる態度で対処してもらいたいということをお願いをしたのでございます。
流入闘争の実情は、御承知かと思いまするが、一口に申し上げますならば、大体の類型といたしましては、まず求職者の掘り起こしをやる。次に学習活動をやる。そして集団の陳情という形ではございまするけれども、求職者を連れてきて求職者にかわって安定所に陳情する。またこの陳情が普通の陳情ではございませんでして、安定所の相談なりあるいは指導に第三者として猛烈に介入をしてくる。次の段階は求人者に対して各種のいやがらせをやる。こういった一連の流入闘争が現実に展開されておるのでございます。こういう異常な事態につきましては、私どもとしても極力正常な姿に戻すべく、いろいろな手段をもって協力をいたしておりまするが、基本的には、こういった闘争に対してどういう考え方で対処すべきかということを、昨年の六月通達いたしました。これを背景に、今日まで第一線で業務運営の正常化に非常な努力をいたしました。今日ではだんだんと正常化が行なわれておる、こういう状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/49
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050・島本虎三
○島本委員 一人で行っちゃどうも十分じゃないので、弁護士と一緒に行って、弁護士がかわっていろいろ話してくれた。意思を高度に理解してくれるためには、最もいい手段ですから、弁護士を帯同して行ってやった、こういうふうな場合には、やはりそれも同行として拒否いたしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/50
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051・有馬元治
○有馬政府委員 弁護士さんがお見えになるということはまずないのでございますが、これは法廷の訴訟でも何でもございませんで、本人の求職活動、それを背景に職業の相談、指導を行なうというのがわれわれの任務でございまして、弁護士さんのような訴訟専門家を帯同することは、普通の状態におきましては絶対必要がないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/51
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052・島本虎三
○島本委員 あなた、誤解してますね。あなた、弁護士は訴訟だけやればいいと思っているのですか。それは、弁護士会からしかられますよ。本人が、自分の意思を高度に理解してもらう。そのために介添えとして弁護士が行ってそれをやる場合には、これはもう、いかなる場合でも許されるじゃありませんか。そういうようなことは、おそらくあり得ないだろうということで、いまあなたはそういうような答弁をなすった。もしこれをやった場合には、仮定ですけれども、あなたは拒否いたしますかどうかというような見解を聞いているのです。やった場合にはどうします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/52
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053・有馬元治
○有馬政府委員 弁護士さんが職業相談の過程に介入する例は、いままで聞いたことございませんが、もしそういった事例が直接窓口の職業相談なり職業指導の場面に出てくるということになりますならば、やはりこれは第三者の介入として、ある場合にはお断わりをしなければならぬ場合もございましょう。弁護士さんが、背後において求職者の各種の相談にあずかるということは、これは当然といいますか、よくあることだと思いますが、直接職業相談、職業指導の矢面に求職者になりかわって弁護士が立つということは、普通の場合にはあり得ない状態だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/53
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054・島本虎三
○島本委員 だから、大臣いなければだめなんですよ。せっかく口ではいいことを言っても、具体的な問題になって、そして談交の一つの例をとってやっても、そういうふうにして、もう正反対の結論が出てくるのです。弁護士は何だと思いますか。あらゆる場合に自分に代行してもらう、代行してもらって、自分の意思をちゃんと表明する。言えない場合には言ってもらえばいいのです。そうでしょう。組合の役員だって、その道に立ったならば、弁護士と同じようなものだ。それが行ってそばで——これはもう同行するのは悪いとか、こういうようなことを言うなんというのは、あまりにも考えが少しへんぱ過ぎやせんですか。これはもう、全日自労の諸君に例をとるならば、この綱領や何かを見ましても、失業者を、まともな職業を与えてそして就業させる。そのためには、助言をしたり知恵をかしてやるこういうようなことはあたりまえだとされているでしょう。規約を見てもそのとおりなんだ。それなのに、その人が行って、就職のいろいろお手伝いをすることがだめだ。これは組合を否定するということですか。弁護士もだめだ。本人の意思をかわって表明してくれる人も、失対の場合ではだめなんですか。労政局長、今度あなたの番だ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/54
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055・松永正男
○松永政府委員 私の所管ではございませんので、的確なお答えができるかどうかわかりませんが、職業安定所におきまして就職の相談なりお世話なりするという場合には、やはり御本人がどういう職歴を過去において持っておるか、どのような技能があるか、そしてどのような条件を希望しておるか。それからまた求人者との場合におきましても、人と人との関係でございますので、そのような職業、能力、希望条件といったようなものとあわせまして、やはり気持ちよく働けるかどうか、求人者側では気持ちよく働いてもらえるかどうか、あるいはまた気持ちよく使えるかといったような、非常に人間的な要素が入ってくると思うのでございます。したがいまして、やはり職業紹介という仕事は人間を扱う仕事で、きわめて人間的なものであります。そうしますと、御本人が一番大事である。この点は私どもといたしましても、御本人ととっくり相談をすることが、職業安定所の機能としては一番大事なことではないかと考えるのでございます。そういう観点から、いま安定局長も答えられたと思うのでありますが、労働組合運動その他との関係につきましては、また御質問があれば——そちらの労使関係というような面から申しますと、また別の角度で、私どものほうの問題になるかと思うのでありますが、安定所の窓口における問題といたしましては、非常に人間的な関係ということが大事であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/55
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056・島本虎三
○島本委員 職安局長、いまの、意見がありましたら聞いておきましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/56
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057・有馬元治
○有馬政府委員 先ほどから申し上げておるとおりで、また労政局長がいま申し上げたとおりの考え方でおりますが、弁護士さんがいままで出てきた例をあまり知りませんので、どういう場合に必要になってくるのか、先ほどから聞いておるのですけれども、弁護士さんが本人にかわって職業相談をするというケースは、まず必要ないのじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/57
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058・島本虎三
○島本委員 これは、ひとつあなたと私の争点として、この問題は残しておきます。これはもう少し皆さんのほうで検討しておいてもらいたい。というのは、本人が行っても十分わからないおそれがある。したがって、自分の意思を高度に理解してもらうための便宜として、手段として、たとえば弁護士さんがそばについて行っても、あなたは同行者として拒否するのか。あなたは拒否すると言った。この問題は大きいですから、私はひとつ保留しておきます。委員長、この問題に対してもう少し調べて、はっきりした回答を文書によって私の手元へほしいと思いますので、委員長からこれを要求しておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/58
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059・八田貞義
○八田委員長 八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/59
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060・八木一男
○八木(一)委員 労政局長に御質問いたします。
職業安定法の第一条に、「この法律は、雇用計策法と相まって、公共に奉仕する公共職業安定所その他の職業安定機関が、関係行政庁又は関係団体の協力を得て、各人に、その有する能力に適当な職業に就く機会を与えることによって、」云々というふうにあるわけです。——労政局長、質問中はこっちを見て、注意をしていてください。読んだとおりの条文ですから、間違ったことを読んでないですから。「関係団体の協力を得て、」ということが職業安定法第一条にある。関係団体ということは、これは雇用する雇用主の団体だけではない。関係団体です。当然失業者の関係の団体、具体的には全日自労、そういう団体に当たるわけです。そこの協力を得てというのが職業安定法第一条にあるわけです。この問題は、職安局長とはわんわんやっていますからあれですが、労政局長はその御答弁のときに、これを頭に入れて御答弁にならなければいけません。自由労働組合の人たちが、職業安定所の行政に協力をして、そういう求職者について来るということは、職業安定法上非常にりっぱなことなんです。労働省は感謝をして、よくついて来てくださいました、労働条件についてその求職者と一緒に——求職者が世の中全部知っているわけじゃないから、それを御相談ください、ぜひおいでくださいというのが職業安定法の趣旨なんです。あなたは、この問題の専門じゃないから、ほかの、労政の大家であるけれども、この問題について不注意だといけないから、いま島本先生の御質問について、これをじっくり頭に入れて、労政局としては全日自労の方がいらっしゃることは実によいことである、ぜひ労働省からもお願いして来ていただきたいという意味の答弁をしなければならない。そういう点の御注意を先に申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/60
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061・島本虎三
○島本委員 あわせていまの第一条の解釈と弁護士の問題について、それをやっても同行者とみなして拒否するということをやはりお考えですか。それが正しいというふうに考えますか。これは労政局長、反省の色を少しは示してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/61
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062・松永正男
○松永政府委員 ただいま八木先生からも御指摘ございましたような、第一条で「関係団体の協力を得て、」という表現の中に、関係団体として労働組合は入ると思います。したがいまして、私どもも職業安定所の業務に対して、関係の団体である労働組合に協力をしていただくということは、まことにけっこうなことだというふうに考えております。
それから弁護士の問題でございますが、私も弁護士が安定所の業務に必要なのだろうかどうだろうかということについて、どうも多分に疑問を感ずるのでございますが、訴訟とか、あるいはたとえば労働委員会における審理というような仕事になりますと、やはり弁護士さんが通常の場合に出て来られるというふうに考えますが、安定所におきましては、やはり事実問題、しかも、非常に人情の機微にわたる、人と人とが就職ということで結合する問題、雇用関係ができ上がる問題でありますので、はたして弁護士さんが適当なのかどうかということについては、私も自信がございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/62
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063・島本虎三
○島本委員 じゃ、その問題は検討として残しておきたいと思います。これで終わったのじゃありませんよ。
それと、団交についてはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/63
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064・有馬元治
○有馬政府委員 就労者団体との団交の問題は、いろいろな場面があると思いますが、ただいま御指摘の求職者の求職申し込みあるいは就職の相談、指導、紹介、こういう一連の職安行政につきましては、これは全日自労さんとの間に労使関係がございませんので、団交の問題は法律的に起こってこないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/64
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065・島本虎三
○島本委員 これもやはり解決の問題になるのではないかと思うのでございます。これは労政局長、あなたのほうも聞いておいてもらいたい。というのは、これは確かに使用者という解釈からして直接使用者ではない、特別職の非常勤の地方公務員である、こういうような立場から、これは直接の団交権はない、こういうような解釈だろうと思います。使用者というのはそれでは何だ、経済的な行為の伴う人の人事権を持つ、これがいわゆる使用者としての一般の概念でしょう。それは狭義の解釈だ。これをもう少し広く考えてみると、全国的な賃金の決定権があるのはやはり労働省である。そうして人員をふやす、減らす、こういうようなものの一つの権利と予算権も持っているのが労働省である。労働省でなければ賃金、労働条件がきめられない。こういうような権限を持つものは当然広義の使用者であります。広義の使用者として認定されないのかどうか、労政局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/65
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066・松永正男
○松永政府委員 労使関係におきまして使用者という場合には、その労働者との間に雇用従属関係がございまして、賃金その他労働の対価を支払う立場に立つべきものが使用者であると思うのでありますが、ただいまおっしゃいましたように、賃金が労働省といいますか、政府によってきめられるという場合に、自由労務者の方々の労働条件に対して、そのことが非常に大きな影響と申しますか、重大なつながりがあるということは言えると思うのでありますが、たとえば国家公務員につきまして人事院が給与の勧告を国会と政府にする。結果におきまして、その人事院勧告が公務員の労働条件の決定についてきわめて重大な関係を持っている。しかし、その場合に、人事院が使用者であるということと同じような関係ではないというふうに考えられるのでございまして、労働条件について重大な関連がある、関係があるということは私も同感でございますが、そういう意味で使用者とおっしゃるならば、それはそうかもしれませんが、現在の労働法のたてまえにおきます使用者という場合には、それは先生のおっしゃる狭い意味の使用者というふうに、一般的に学者も、また裁判所もそういう見解であるということも事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/66
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067・島本虎三
○島本委員 そういうこともあるということだけでしょう。現実の面で、団交に応じていないその根拠にしているのです。ですから、こういうようなのは、いま言ったように全国的な賃金の決定権、人員をふやす、または予算権、こういうのはやはり労働省にあるのですから、どう考えてみても、賃金や労働条件というようなことをきめる主体である、こういうようなことになりますから、やはりその点ではどう考えてみても使用者でしょう。これは広く見ても狭く見ても使用者です。したがって、もう団交は拒否すべきじゃない、私はそういうように思うのですが、これはやはり拒否すべきだというはっきりした考えがあるならば、この際職安局長お示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/67
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068・有馬元治
○有馬政府委員 若干混線があるようでございますが、団交権の問題は二つの場面があると思います。最初御指摘のありました求職の申し込みあるいは相談、指導、紹介という一連の行政場面に関する問題としては、これは労使関係がございませんので、そこに団交権云々、団交の余地はございません。
あとから御指摘がございました失対労務者となって就労者の団体と施行主体、この間には御指摘のように労使関係があるわけでございますが、ただ、この失対事業の特殊性からいたしまして、失対法をごらんいただけばおわかりだと思いますが、賃金については労働大臣が賃金審議会の意見を聞いてきめる。それから就労の規模についてば、これは毎年予算でもってきめておるわけでございます。まあ普通の労使関係における最も大きな労働条件というようなものが、実は法制上抜けておる、こういうことに相なるかと思いますが、その他の労働条件については、これは団交の余地が当然あるわけでございます。現に第一線においては、普通の企業における以上にそういった場面があるわけでございますので、その点は二つの場面に使い分けをして、団交の問題はお考えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/68
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069・島本虎三
○島本委員 じゃ、これはもう少し具体的に……、職安局長、以前あなたは失対制度について、事業方式を手当方式にという考えがあったかのように聞いていたんですが、これはあったのですか。あったとするとどういう構想でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/69
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070・有馬元治
○有馬政府委員 失業対策方式としましては、事業吸収方式と手当方式と二つの大きな流れがございますことは御承知のとおりだと思いますが、わが国におきましては、伝統的に事業吸収方式を今日までとっておるのでございます。しかし、これに対しては、諸外国がとっておりまするように失業手当方式に切りかえたらどうだ、そのほうが簡単で、資材費、管理費等も要らなくていいじゃないか、こういう強い意見は伝統的にございます。したがいまして、ことしちょうど五年目の検討時期に入るわけでございますが、この失対制度を根本的に検討し直す際においても、失業手当方式に切りかえたらどうだという有力な意見が一部にあることは事実でございます。そのことをさしまして、一部には今度の検討によって、事業方式から手当方式に移行させるのではないかというふうな意見が流布されました。これは私どもの本意ではないのでございまして、手当方式を採用したらという意見があることは事実でございますが、今度の検討にあたりましてそういう方式を、手当方式をとるんだという前提に立った検討をやっておるわけではない。
〔委員長退席、佐々木(義)委員長代理着席〕
これは再々大臣が言明しておりますように、今回の検討については白紙で臨む、白紙で関係者の意見を十分聞いた上で結論を出す、こういう態度でございますので、手当方式に移行するというふうな考え方を前提として検討をやっておることではない、その点は御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/70
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071・島本虎三
○島本委員 これより先は大臣が来なければわからぬのです。大臣は一切白紙だ。この白紙の背景をなすものは何だ。これ以上やってもだめですから、この問題はしり切れトンボになりますが、これで終わりということにさせてもらわなければなりません。しかし、これで終わったというのは、留保という意味です。これ以上先は——大体有馬局長の考え方もわかりましたから、あとは大臣との討論になろうかと思いますので、この問題はこれでストップです。
なお局長、先を急ぎますので聞きますけれども、緊急失業対策法の中で高齢失業者等就労事業というようなのが規定されているようであります。これは、十一条の二ですか。この促進措置の適用を受けなくても、これにはもう老人である場合には入れる仕組みになっていたと思いまするけれども、この現場はいま日本全国のどこにありますかどうか、これをお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/71
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072・有馬元治
○有馬政府委員 現行の失対法におきまして、十一条の二という規定によりまして、御指摘のような高齢失業者等就労事業が実施できるたてまえになっております。しかしながら、今日におきましてはまだこの規定に基づく事業は実施いたしておらない実情でございます。これにはいろいろな事情がありまするけれども、一口にいって現在の、この規定によらない一般の失対事業のほうが、実情に合っておるという面がまだまだございますので、この規定はいまのところ発動しておらないという状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/72
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073・島本虎三
○島本委員 せっかく法律があり、その法律の中で高齢者に対しては現在行なっている促進措置の適用を受けなくても直ちに入れるというような、いわば便法があるのです。それさえも使っておらない。いいところは使わないで、厳格なところだけやって締め上げておる。こういうふうなのがあたたかい一つのやり方でしょうか。十分この辺は考えなければならないと思うのです。
そうするといまやっていないということは、緊急失対法十一条の二による高齢失業者等就労事業は、日本全国どこでも、法にあっても実施している場所はない、こういうふうに理解しておいていいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/73
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074・有馬元治
○有馬政府委員 この規定による高齢者就労事業を始めたほうがいいんじゃないかという御見解でございますが、これは賃金その他の点で、必ずしも、この規定に基づく就労事業は、現行の一般の就労事業と比較して有利であるというふうには私どもも考えていないのでございます。しかし、一方現在の平均年齢が五十五歳に高齢化いたしておりますので、いずれこの就労事業規定に基づく高齢者就労事業をやったほうがいいじゃないかというふうな感じはいたしておりまするけれども、現在のところは、一般の失対事業の中で、高齢者のためにはいわゆる第三種事業という範疇を設けまして、これによって高齢者があまり無理がいかないような事業種目を選定いたしまして、第三種事業を設定をしておる、これが一番今日においては実情に合っているのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/74
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075・島本虎三
○島本委員 無理やりに賃金を下げなくてもいいでしょう。下げてもいいなんてどこにも書いてないでしょう。こういうようにしてやはり失対は打ち切りではなくて、年の順によって入れるような措置さえある。それを使わないのはどうだ、こういうことを聞いているのです。無理やりに下げてまでもこれはやるなんて、こういうような考えを持つから悪いのです。だれもそんなこと言っていませんよ。ですから大臣の気持ちを率直に解して、下部末端のほうでは血の通うような事業を行ないなさい、こういうふうなことを言っているわけです。その一つの例証として、よく失対事業よりも賃金の安いほうへ就職をあっせんする傾向があります。現にやっています。その根拠となるのは地場賃金だ、こういうふうなことを言っております。この地場賃金というものはどういう賃金ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/75
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076・有馬元治
○有馬政府委員 地域における職種別平均賃金ということに相なろうかと思いますが、今日失対賃金が徐々に上がってまいりまして、地域によっては地場賃金のほうが失対賃金よりも下回っておるという地域が相当出てきております。紹介の原則から申しますならば、地場賃金が一応の目安になるわけでございまして、その場合に失対賃金のほうが高いという状態でございますと、その間に紹介を拒否するとか、いろいろな問題が現実に出てきておりますが、われわれの紹介の原則は、やはり職種別の地場賃金というのが一つの目安になる、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/76
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077・島本虎三
○島本委員 そうなると、私のほうにも資料があるわけでございますけれども、当然その地域の同種の業務であって、同職務で同程度の経験年数を有する同年配の者が受ける賃金、それが一つの基準になるんじゃないか、こういうふうに思います。そしてその場合でも、地場賃金と見るもの、資料としては、離職票や求人票、毎月の勤労統計調査、賃金実態総合調査、特定条件賃金調査、屋外労働者職種別賃金調査、給与構成調査、これらから推計された実態調査、こういうようなものが基礎になるのじゃないか。そうしてこれの八〇%くらいである。こういうのが一つの算定の基礎になるんじゃないか、こう思っておりますが、これは間違いですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/77
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078・有馬元治
○有馬政府委員 御指摘の各種の調査がございますが、これらの調査の利用にあたりましては、それぞれの統計の持つ特殊性をよく考慮して考えなければなりませんし、何よりも地場賃金という場合には、全国的な平均ではなくて、やはりその地域における賃金ということに相なりますので、その辺の利用のしかたについては、地域性を十分よく考えてきめなければならぬというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/78
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079・島本虎三
○島本委員 局長、そこがまた全然違っているんです。これは私のもらってきた小樽の賃金の資料です。これをあげてもいいですから、見てください。決してそういうようなことではないんです。実際に地場賃金といわれるのは、求人票、求人要求賃金のことをいうんですよ。これは決して根拠があるものではないんですよ。安く雇いたい、三百円で雇いたいというと、三百円が地場賃金だと称されているんですよ。こういうようなことで妥協してはいけませんよ。したがって、失対賃金より安いほうでばかりやる、低賃金に協力している、こういう結果になるのです。皆さんのほうで、これが地場賃金だと称してやるのは、求人賃金なんです。求人額なんですよ。地場賃金なんといって、ほんとうの賃金かと思ったら、求人賃金だった、こういうことになるのです。全部求人のものの平均なんです。こういうようなことでは地場賃金と言うことはできませんよ。地場賃金というのは、もう少し根本的に考えて対処するんでたければいけません、そうでしょう。今後考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/79
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080・有馬元治
○有馬政府委員 求人賃金が即地場の標準賃金だとは私どもも考えておりませんので、その他の地域における資料を加味して、いわゆる地場賃金というものが想定されるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/80
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081・島本虎三
○島本委員 いまのあなたの考えが、現実に下部で行なわれておりません。ここに資料がございます。これは小樽の資料をもらってきているのです。これは責任者の所長の説明をはっきり求めてあるのです。要求賃金です。ですから皆さんの言うのは、ほんとうの賃金じゃないんですよ。要求に妥協しているのですよ。だから安いところにばかりみなやっている。そして安過ぎるからだめだというと、不認定ということにしてしまう。これじゃいけません。厳重にこれは注意しないといけません。
それと同時に、私はこれで終わらしてもらいたいと思いますけれども、高年齢者層に対しまして、もう少し血の通ったような考え方をしていただきたいと思います。全面的に再検討に入る、こういうようなことになっておりまするけれども、しかし、これを廃止したいという意向じゃなくて、逆に差し迫ったこの事態をいかに解決するか、こういうようなことが重点ですから、いまいろいろ不合理なことが下部に行なわれている、こういうようなことが行なわれないように、そこに全力投球してこれに善処するようにしなければなりません。
それから婦人少年局長も来ておりますけれども、私があげた高橋キクヨの例はほんの一人です。これと同じようなのが方々にあるというこの実態を十分お考え願って、同じ労働省の中でできる限り婦人の地位がさげすまれないように、これを上げるように、このために最大の御健闘を願いたいと思うです。私は同じ労働省内ですから、よくできる問題だと思うからこれをお願いしているのです。
それから労政局長、あなたのほうも、法律の解釈や何かは十分考えてやっていく。これは各方面にあなた出ておりますから知っておるとおなりなんです。いま職安関係になると、考え方が急にかたくなるようです。これはあまりかたくしてはいけません。
〔佐々木(義)委員長代理退席、委員長着席〕
労働組合自身が、全日本自由労働組合なんですから、もっとやわらかく考えて、これを善処しておいてもらいたい。善処することを要望すると同時に、先ほど委員長に注意されたようなことが再びないように私は心からお願い申し上げまして、質問を終わる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/81
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082・八田貞義
○八田委員長 ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/82
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083・八田貞義
○八田委員長 速記を始めて。
八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/83
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084・八木一男
○八木(一)委員 職安局長にもあとで十二分に質問いたしますが、大臣に質問してからやるほうが順序だと思いますので、幸い労政局長見えておりますから、この問題について労政局長に質問をしておきたいと思います。
さっき島本先生の御質問に関して関連質問をさせていただいて、ちょっと御注意をしましたけれども、練達な労政局長だから、労働関係の法律は全部御承知だと思うけれども、いまの職業安定法の第一条については、御承知であっても、所管外だからちょっとぼやけておったんじゃないかということで、さっき御注意を申し上げた、こういうことです。所管の職業安定行政だから、有馬さんに質問するのが当然ですけれども、ほんとうの意味で労働関係の法規で、関係団体の協力ということでは、自由労働組合、そういうような関係団体がその問題について非常に協力をされるということは、ほんとうに感謝をすべきものであって、それを困るというような態度はいけないと思うわけです。ことに就職の問題については、非常にむずかしいので、特に中高年齢層の人たちは、労働市場がよろしくありませんから、失業中ですから、このくらいのところと言われても、いいかと思って行ってみると、その人の体力に合わないような猛烈な重労働であってみたり、行くところが猛烈に層住地から離れておって、通勤その他の条件が非常に悪い。またそういうところで、社会保険が適用されていないようなところに往々にして紹介をされるという場合があるわけです。ところが、失業者の人は、そうお役所とあまりつき合っていませんから、大体お役所の人はこわいのです。特に職業安定所というのは、鬼のごとくこわいというところです。ですから、自分の言いたいことも言えないということもあるわけです。またうっかり自分の希望を述べると、誠実かつ熱心に求職活動をしていないというので、ばさりと首を切られることが各地に起こっております。職業安定局長そばでしかめっつらをしておられるのですけれども、それは事実なんです。そういうことがあるので、ほんとうの求職者に、こういう求職を受け付けて世話をしてくれる制度がある、その中に中高年齢層についてはこういう制度があると——また制度があっても、そんなおっかないお役所なんかなかなか行きにくい。それをやはり行って、いま失業しておるんだから、そういうことの法規に従ったやり方で職業を見つける、あるいはまた措置をしてもらうということを、ほんとうは労働省のほうで、職安局が担当だと思いますが、そのほか情報宣伝あるいはまた普及につとめる課があればそれも一緒になって、全国の失業をした人に、こういう制度がございます、いつでも職業安定所にいらしてください、そのときに条件を示されても、やはり自分で判断がつかないときには、自分の信頼をする人と相談ができるように、御一緒にいらしてください、特に失業者の団体である人は、一番熱心にそういうことを考えてくださっているのですから、その中の中心である全日自労とか、あるいは部落解放同盟とか、そういう人たちと一緒にやってきてください、そういうことを労働省みずからが、失業者のところにいって頼まれるのがほんとうだ。それを全然怠慢で一つもしていない。それで関係団体の方が、ほんとうに熱心に求職をしなければならない人であって、制度を知らない人に、こういう制度があります、行ったらどうですか。ところが役所はおっかないから困る。だから一緒についていってあげましょう、といっても労働組合にも仕事があるから、それじゃそういう同じような人を一人じゃなくて五、六人一緒にバスに乗って行きましょうというようなことに対しては、もうほんとうに労働省や安定局は感謝感激して、ありがとうございますといって、むしろ相談しなければならない。ところが、組合の人が一緒に来たから会わない。それからまたもっとひどいのは、一人で来ても、その人が組合員であるから会わない、その人が組合の人から話を聞いてきたから会わないとか、言語道断なことが行なわれておるわけです。
私はこの問題で、三重県の職業安定所に行ったわけです。現に、そっぽを向いて返事をしない。話に行っても、横を向いている。人間と人間が、話をしにきたら顔を向けるのがあたりまえでしょう。向いている顔をわざわざ横に向けて、全然応答をしないという態度です。実にけしからぬ態度です。そういうことがある。これは職業安定局長もそういう意思でないはずだと思うんだけれども、職業安定局長の出した通達や、またその課長が出したいろいろな連絡、そういうことでそういうことが起こっているわけです。これは労働省全体としても、特に労政のほうでは考えていただかなければならぬ。自由労働組合というようなりっぱな労働組合の、特に労働行政に協力する労働組合の全体の運動について、あなた方は保障をしたければならない。特に労政、職安行政に協力をしようというような、最も労働省としては感謝感激をしなければならない問題について、労働組合が一緒に来るからいかぬ、組合員だからいかぬ、組合から聞いたような者には話もしない、そういうことが全国津々浦々に行なわれておる。これは私は三重県でこの目で見てきました。そういうことについてはいかに先輩の、その他の点についてはすばらしい局長である有馬さんであっても、やはり同僚として、同じ労働省の人として、特に関係の深い労政関係として、そういうことはなくさたければいかぬという意見を持たなければならない。有馬さんとよく相談をされなければならないし、労働大臣をそういう点でほんとうの意味で補佐をされなければならない。ことに、このように組合員であるからいろいろな話をしないとか、受け付けないということであれば、これは不当労働行為になる。労働組合員であればそういう人の扱いを変えるということであれば、労働省という労働者のサービス官庁が、猛烈な不当労働行為をするということになる。そういうことについて、私の申し上げたことは完全にその状態をあらわしております。調べてからということではありません。そういうことがあるので、労政局としても、こういうことははなはだ困る、いけない、労働省全体としてはこういうことはやめてもらわなければ困る、そういう気持ちをここで明確に披瀝をして、職安局等をいい意味で助け、そして労働大臣を補佐して、そういう間違いを正すようにしなければならないと思う。労政局長のあいまいでたい、前向きな、労働者の権利、労働組合の権利、失業者の権利を守る立場に立って、明確な答弁を伺いたい、ごまかすことは困ります。明確な、そのとおりの答弁を要求いたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/84
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085・松永正男
○松永政府委員 ただいまいろいろ実例をあげての御質問でござますが、先ほど来もいろいろ職安局長からの答弁を聞いておりまして、私も直接職安局所管問題について私がとやかく申し上げる筋ではないと思うのでありますが、私なりに理解をいたしましたところでは、やはり職業紹介、職業相談というものが、その御本人との間でほんとうにしっかりした話ができるということが一番の基本になりまして、職業紹介というものがうまくいくのであろうという感じを強くするのでございまして、その場合にやはり御本人以外の方が大ぜい来られて、そこでやったほうがいいのか、御本人とじっくりやったほうがいいのか。それからまた、全日自労という労働組合のいろいろな主張や要求というものにつきまして、別途の形でいろいろな話し合いがなされるということもあるかと思うのでありまして、私はやはり職業紹介というものは、その御本人の気持ちにぴたり合うような、そしてまた使用者と結合がうまくいくような方法、それを重点に置いてやるべき問題ではないか。したがいまして、先ほど弁護士さんの問題あるいは全日自労の組合の方々の問題にしましても、その観点から、第三者が介入してこられることは困るのだということを職安局長が御答弁を申し上げておるように理解をいたしておりますので、組合だから、どうということではなくて、職業紹介ということの本質から出た最もいいやり方ということを考えておるというふうに私は理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/85
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086・八木一男
○八木(一)委員 そばに先輩がおられると、何かへんてこりんに遠慮をして、奥歯に物のはさまったような答弁をしておられる。先輩に対する礼儀は外で個人的に保たれたがいい。あなたは労政局をあずかっている責任のある高級公務員ですから、そんなことは遠慮なしに言ってもらわなくては困る。いま言っているような、本人が担当者とじっくり話すのがいいことはきまっていますよ。ところが失業者というものは、非常に不幸な人は、職業紹介についてそういういろいろな知識を持っていない。それから大体にお役人というのはこわいと思っている。特にまた職業安定所の役人はこわいのです。ちょっとでも、もうちょっといいところありませんか、そんなことを言えば、熱心に求職活動をしていないということで受け付けませんよ。また、就職促進措置の中でそういう職業紹介をされたときにそういうことを言えば、手当をもらっているのをぶち切りますよ。そういうことを方々で言っているのです。鬼みたいにこわいのですよ。うっかりきげんをそこねたら首を切られる。家族で一家心中をしなければならないところに追い込まれる。そのくらいこわい相手ですよ。ですから言いたいことも言えないわけだ。それで紹介で行ってみれば、社会保険もないところばかりだ。賃金が猛烈に少なくて、一生懸命働いても生活できる状態でないところです。そういうことなんです。だからそういう相談には、自分の信頼をしている人たちに相談するのがあたりまえだし、こわい人を相手のときには、ほかの人も一緒についていってもらいたいというのがあたりまえなんです。だから、本人が全部条件を言ってきて、自分一人で行っても別にかまわない。それはそれでいい。ところが安定所がこわ過ぎるのと、とにかく、ほんとうに労働者のため、失業者のためにやる方針でない実態がある。国民のほうは、そういうような労働問題、雇用問題についてはなかなかわかりません。それから大体役所を知らないからこわい。そういう制度があっても、こわいから、お役所に行くのだということでしり込みをする人がある。ところが、そういう制度があることについては、ほんとうは労働省がそこへ行って、こういう制度がありますよ、あなた失業しているじゃありませんか、だから求職の申し込みをしてわれわれに世話をさしてください、三十五歳以上の人であり、あるいはまた身体障害者の人や、あるいは同和地区の人であれば、中高年齢層の就職促進措置というのがありますよ、用紙はこれですよ、先に渡しておきますよ、書いていらっしゃいというくらいな親切があっていいのに、それと全然逆のやり方をしているわけです。まあ職安局で失対事業はつぶしてしまいたい、就職促進措置というのはめんどうくさいなというようなけしからぬ考え方の人がいることは知っています。個人的にそんなけしからぬ考え方の人がいても、現在の法律がそうであり、法律に即しての国務大臣の国会における答弁があればそのとおりにやらなければならぬ。その人が失業者と会うのがどんなにいやでも、そういう制度がなくてもいいと思うような反動的な考え方を自分が持っていても——それは労働省をやめたらいいです。労働省にいる以上は、この法規に従って、国務大臣がここで答弁をしている線に従ってやらなければならない。これと逆な方向が行なわれているわけです。そしてそのことで組合員に対する差別待遇が行なわれる。これは不当労働行為です。労働組合運動を阻害をする、これも不当労働行為です。そういうことが行なわれている。ですから労政局としてはそういうことを一切遠慮なんかなさらないで——ほかの点では有馬さんはりっぱな先輩ですよ。りっぱなことをやられたことについては称賛し、敬意を払いながら協力をするにやぶさかではない。しかし、十のうち二つでも悪いことや不適当なことをやられているときには、それはいけません、それはやめてくださいと言うのがあたりまえです。そんな遠慮した、奥歯にもののはさまったようなことを言うことはない。私の言ったことは全部事実そのとおりです。労政局として決心を固めて、そういう点についての問題に即時当たらなければならない。そういう点について小川労働大臣をよい意味で補佐をしなければならない。そういう気持ちでいまから即時に決心を固めて、いま私の申し上げた線で職を賭して努力をされるかどうか、前向きの御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/86
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087・松永正男
○松永政府委員 私は、ただいま申し上げましたように、職業紹介というものが安定所で行なわれます以上は、そういうあり方が正しいのではないかというふうに考えるのでありますが、その場合に、先生のお示しですと、安定所の役人が鬼よりこわいというようなことでございましたが、こわくないといいますか、私どもそこはぴんとこないのでございますが、やはり親切な職業紹介措置をするということがなされることが基本であろうかと思うのでございます。先ほど来の安定局長からの説明におきましても、流入闘争というようなことばが使われたかと思うのでございますが、闘争ということでなくして、やはり求職者個人個人の方々にいかに希望に合った職を見つけ、そして定職に働けるような状態にするかというところに向かって必要な措置をするということが基本だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/87
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088・八木一男
○八木(一)委員 労働大臣が来られましたから、職安局長に対する質問はまたあとにして、労働大臣に伺いたいと思いますが、あなたは労政局長でしょう。闘争ということばは、どこの労働組合でも闘争ということばを使っているくらいのことはわかるでしょう。どこの労働組合でも運動の一番重要な点については闘争ということばを使うのです。労政局長はそんなことは当然わかっておる。運動と解したらいい。その運動は、労働省がなまけているところを、失業者のためにこれをカバーするために行なわれている運動なんです。ですからこれは労働省としては、感謝感激をしてそのものを受け入れなければならない、そういう状態です。明敏な労政局長はそういうことはわかるはずです。職安局長に一切遠慮せずに、この問題を、さっき私が申し上げたことをはっきりと理解して、即時に、労政局としても、不当労働行為がないように、または労政全体について、先輩の有能な有馬さんを、ほかの点ではよくてもこの点では不適当なことをやっていられるから、助言をしてそれを直すようにされて、特に労働大臣を補佐されなければならぬ、そういう決心でやっていただきたいと思います。
時間の関係がありますから、労働大臣のほうに移ります。
労働大臣に申し上げます。実は私きょうはからだの調子があまりよくありません。発熱もしているし、いろいろな点で三週間ほど調子がよくありませんので、一生懸命やるつもりですけれども、なるたけあまりいら立たせないように、じらした答弁じゃなしに、明確な前向きな答弁をこれからお願いをしたいと思います。そういう点で、そういう答弁についての御要請をしながら——これは職安局長も同じです。要請をしながら御質問を申し上げたいと思います。
労働大臣は、この前十二月に私が質問しましたときに、職安局長通達三二二号、それから三三五号、またこれに関して課長の連絡、またその付属文書その他の点で非常に不適当なことがあるということを申し上げました。違法の点があるということを申し上げました。そのときは御就任まぎわでございましたが、私は即時三十分以内にその通達を全部取り消してくれということを申し上げました。なおそれから具体的に言って、その違法な部分また違法に解釈をされる部分、そういうものを取り消すように指令をしていただきたいということを申し上げました。労働大臣は、そういう違法な部分があればこれは取り消さなければならない、不適当な部分は直さなければならないと言われましたけれども、就任後まだ浅いのでしばらく検討の時間をかしてほしい、総体的にそういう御態度でございました。その中で私の最後に申し上げました、自由労働組合とよく話し合っていただきたいということについては、ある程度実際にやられたことを知っております。しかしながら、それについてはいつも短い時間切れの状態であります。これは数年間、自由労働組合とおもに職業安定局と対した問題でございますので、職業安定局長は年がら年じゅうあなたのそばにおられる、組合のほうはめったに会えない、会ってもちょっとの時間ということですから、大臣の明敏ないろいろな判断にも、その材料がこんなに差があります。また明敏な判断を下す材料にならない点があります。今後ともに自由労働組合の幹部に十二分の時間で話し合いをしていただきたい。まず第一に要請をしておきたいと思います。
それから、さっき申し上げました法律の違反的なもの、そういうものについてあとで申し上げます。
順序は逆になりましたけれども、ちょっと労働組合についての態度について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/88
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089・小川平二
○小川国務大臣 おことばにありましたように、当時は私が就任早々でありましたので、通達についてもいろいろ御教示もいただきましたし、また御質疑を通じて、この問題に取り組んでおられる八木委員の御熱意のほども十分理解をいたしたのでございます。通達の内容については後刻御質疑があると存じますが、そのとき、違法な部分があれば撤回を命じる、かようなお約束をしたことは事実でございます。その後に、その節御要望もございましたし、また当然のことでありますから、組合の幹部の方々と数回お目にかかっております。格別、なるべく短時間で切り上げよう、逃げようという気持ちもなかったわけでございまして、暮れから最近にかけまして、非常に時間の点で制約を受けておったために、せっかくおいでくだすった方々には十分御満足がいかなかったと思います。これから先は多少時間的にもゆとりができますし、もし局長や役所の者をどけて単独でという御希望であれば、私単独で、あとう限り時間もさいてお目にかかりまして、いろいろお話を聞きたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/89
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090・八木一男
○八木(一)委員 その点について前向きな御返事で、満足をいたしたいと思います。組合の方が、労働大臣だけ単独にできるだけ長い時間、ひんぱんにお会いいただきたいというときには、ぜひそれを実行していただきたいと思います。それとともに、また職安局長その他と御一緒にお話をしていただきたいという要請がありましたときにも、その要請について実現をしていただきたい、そういうように思います。それをお約束いただけますか。——首を縦に振っていただきましたから、私、お約束をいただいたものと認めて質問をしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/90
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091・小川平二
○小川国務大臣 これは確かにお約束いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/91
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092・八木一男
○八木(一)委員 前の通達について、法律違反または憲法違反になるようなおそれのある点については、どのように御検討になりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/92
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093・小川平二
○小川国務大臣 おことばに従って、その直後に通達を一読いたしました。明らかに違法であるという部分はなかった、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/93
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094・八木一男
○八木(一)委員 まず第一に、昭和四十二年五月十日、これは通達ではありません。失業対策部業務課長の連絡事項でありますが、この中に、「憲法論議に入り最低生活保障、職業選択の自由、勤労の権利等の言葉にげん惑されないこと。」ということがあります。御承知でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/94
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095・小川平二
○小川国務大臣 その文書がここにございます。いま局長の説明によりますと、課長名による内簡——内簡ということばがあるようでございます。これを見ますと、「げん惑されないこと。」と書いてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/95
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096・八木一男
○八木(一)委員 「げん惑されないこと。」ということは、非常にあいまいな意味ですけれども、少なくとも憲法という国の基本法の一番大事な、公務員が全部順守をしなければならない規定のあるものについてこのような書き方は、労働行政、所管行政だけではなしに、国政全体としてもゆゆしき大問題だ、この問題については、ここを削除した通達を即時に出されなければ、これは重大な問題だと思う。「憲法論議に入り最低生活保障、職業選択の自由、勤労の権利」——勤労の権利とは明らかに憲法二十七条で保障されているものなんです。職業選択の自由も憲法で保障されている。職業安定法にも明らかに載っているわけです。そういうようなことを「げん惑されないこと。」というのは、これはどういう意味か知らないけれども、憲法の論議が一番基本的な論議であって、それを拒否するようなことがあってはいけません。憲法の論議に「げん惑されないこと。」というなら、そのことばは、憲法の規定に違反したことを労働省がやろうとしておる、憲法のもとで正道に戻そうとする論議を、 いいかげんな理由をつけて、憲法よりも通達が大事だ、課長の意見のほうが大事だというふうに戻せということになります。これは即時取り消さなければ、関係の課長なりその上司は、憲法違反の問題として全部公務員の職をやめてもらわなければならないと思います。これは即時この内簡についてこれを取り消す通達を出していただかなければならないと思う。これは即時です。事情聴取というのではなしに、こういうものが載っているのですから、日本国憲法を無視するような、それよりもほかの労働省の方針が大事で、憲法の話をしないでほかのことでごまかす、そういうようなことの書き方でございますから、憲法を尊重する公務員が一切やってはならない——それは課長は猛烈な責任があります。その課長の通達によって、地方に散らばっているあなた方の部下の公務員が憲法違反をやる、これは即時に取り消さなければ内閣全体の問題になります。いま取り消すこと、即時にその通達を出すこと、そのことを明確に御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/96
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097・小川平二
○小川国務大臣 これは憲法の尊重すべきは申すまでもございません。また失業対策に関連を持っております現行のもろもろの法令は、憲法の趣旨を具現するために存在をしておる、これも当然だと存じます。したがいまして、職業紹介に際して、憲法について論議をなさることは、これは一向差しつかえないことだと考えておりますが、ただ、憲法の解釈等について非常に論議が微細の点にわたるというような場合には、そういう点についての研究を全部がしておるわけではございませんし、またどのような論議がなされないとも限らないわけであります。ここに書いてありますことは、そういう意味で幻惑されてはならぬといっておるのでございまして、憲法を軽視する思想ではないと考えております。また、この内簡なるものが出されました当時の背景、状況というようなものがどのようなものであったか、これはただいまここで初めて見る文書でございますので、この点は私存じておりません。この点については役所の者にも事情を聞いてみたいと思っております。憲法を軽視する考え方から出てきたものではないと信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/97
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098・八木一男
○八木(一)委員 それは小川労働大臣は国務大臣として、憲法九十九条で非常に大きな責任を持っておられるのですよ。こんな問題は部下に聞く必要はございませんし、この問題について即時判断ができなかったら、あなたは国務大臣の資格がありませんし、国会議員の資格もありません。それは不敏を恥じて即時辞表を両方とも出さなければならない。憲法の解釈というものは文字どおりなんです。公務員は憲法順守の責任を持っているので、出先の人であっても、憲法についての解釈は尊重しなければならない。義務がある者は、憲法についての解釈を知っていなければならない。普通の国民よりは九十九条の公務員はその責任があるのですよ。そういう問題で、憲法の問題について直接重大な責任を持っているのに、公務員でない人の言ったことで幻惑されるというような公務員があったら、それも公務員の資格はないですよ。それだけでこれは解職しなければならないですよ。全部知っていなければならない。憲法の文言は日本語で書いてある。日本語で解釈をして、憲法の条章のとおりやればいい。それを幻惑されるとは何事ですか。憲法について一つも資格のない公務員が労働省にはたくさんいるのですか。職安局長の下にはいるのですか。重大な問題ですよ、それは。憲法に対する解釈の能力のないような公務員を下に持っているのですか。持っていることの明らかな証拠じゃないですか。とんでもないですよ。これは即時あなたは取り消されるという明言がなければ、あなたも資格ありません。それをそばで職安局長がブレーキをかけるようなことをもし言ったならば——そう答えなさいと言ったならばいいけれども、ブレーキをかけるようなことを言ったら、これは職安局長は公務員の資格ありません。職安局長も解職または更迭をしてもらわなければなりません。直ちにこれは撤回をさせる、直ちにこれは取り消す、そういう通達を決意をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/98
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099・小川平二
○小川国務大臣 憲法の趣旨そのものは、何びとにも一読すれば明快であると思います。これはもうおことばのとおりだと思いますが、この解釈、適用、現行のいろいろな法規との関連ということになりますれば、これは非常にむずかしい専門的な問題にもなると存じますし、憲法の解釈についても、こんな厚い本も出ておるようなわけでございます。もちろん大切な仕事に携わっておる職員でございますから、憲法についても十分勉強をしておらなければならない、ことにその趣旨は尊重しなければならない、これは当然でございますが、非常に議論が微細にわたってまいりまする場合に、これは中には憲法について特に勉強をなさっておる方もあるかもしれません。またそういう方の御議論が、必ずしも正当な御議論ではないという場合もあり得るかもしれません。さような場合に、そういった論議にかかずらわってはいけない。それば憲法の問題はもとより大事でございますけれども、平素勉強を怠ってはならないことではございますけれども、それだけのことをここに書いてあるのじゃなかろうか、このように私は一読して解釈されます。したがいまして、直ちにこれを取り消せといういまのおこばですけれども、この場でこれを取り消しますというお約束もいたしかねるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/99
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100・八木一男
○八木(一)委員 ほんとうに小川さん重大な問題ですよ。それをお答え願わなければ——委員長、内閣総理大臣の出席を要求します。直ちに手配してください。これは憲法問題ですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/100
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101・小川平二
○小川国務大臣 私はただいま八木委員に対しまして、この場でその場のがれのへ理屈を申しておるつもりはないのでございますから、この点はぜひひとつ御理解をいただきたいものだと存じております。ただし、かようなことばを使っておりますと、いろいろ誤解を生ずるかもしれません。その点にかんがみまして、これは取り消す方向で研究をさせていただきたいと存じます。この場でお約束はできませんが、そういうことで御了承をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/101
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102・八木一男
○八木(一)委員 非常に重大な問題で国務大臣が答弁できないということでは、小川労働大臣はほかにどんなりっぱな業績があっても、この点で国務大臣の資格はない。憲法の問題というのは、一切そういうようないいかげんなことは許されません。それで幻惑をされるというならば、その公務員は憲法九十九条の資格はないから、幻惑をされるような公務員だと思われたら全部更迭をしてください。また、そういうことを言っておるような局長は更迭をしてください。局長も大臣も、それができなかったら直ちに辞意を表明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/102
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103・小川平二
○小川国務大臣 何ぶん文書について御指摘があったのはただいまのことでございます。したがいまして、私のいま頭の中にある気持ちをそのまま率直にお耳に入れておるわけでございます。ここですぐさまというわけにもまいりかねますが、いろいろ誤解を招き、論議を招く種になることがあり得ると思います。したがって、これを取り消す方向で研究をさせていただきたい、この程度で御容赦を願えればはなはだ幸いでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/103
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104・八木一男
○八木(一)委員 誠実な労働大臣でございますから、私、承服しがたいけれども、ちょっとの時間的余裕を差し上げるので、次回の社会労働委員会開会のときにこれを取り消すという発言を明確にしていただきたい。それが延びたり、それ以外の発言だったら、あなたは憲法を順守しない国務大臣として、私はあなたの資格なり、また閣議があなたにそういうことを強要したら、内閣全体の憲法違反の問題として取り上げてまいりたいと思います。その意味で次回の社会労働委員会においては、これを取り消すという明確な答弁をしていただきたいと思う。
次に、通達の三二二号、これは職業安定局長の通達であります。その第一項は、この前も申し上げました。「団体等の役員など第三者の立合いないし介入は厳に排除すべきものである。」その次に「団体等により誘引又は勧奨を受けて第三者に引卒されて出頭した者及び第三者の立合いのもとでの相談を固執する者は公共職業安定所において行なう職業紹介の対象となる求職者とは認められない者であること。」という条項があります。これはこの前指摘いたしましたから、この点について労働大臣はすでに御承知のことだと思う。このことは明らかに職業安定法第一条、職業安定法第三条、職業安定法第十七条に違反をしております。全部取り消されるのが至当でありますが、少なくともこの違反した部分については、明確に取り消しを即時していただかなければならない。これはこの前から三カ月の余裕を差し上げました。直ちに質問までにこれは取り消しの処置がとられるべきだ。非常にその点で怠慢であります。この法律違反の条項について即時取り消される意図を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/104
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105・小川平二
○小川国務大臣 職業相談でございますから、望ましいことは、本人と相対でその目的を達成するのに適した雰囲気のもとに行なわれることが大事だと考えております。私、前回御質問受けましたときに、何ら予備知識を持っておったわけではございませんけれども、たとえば身体障害者の方であって、自分の意思を的確に秩序立てて述べる能力に欠けておるというような場合に、付き添いの人がついてくるということば一向差しつかえないはずであります。あるいはまた非常に特殊な事態があって、何らか本人のために代弁をする必要があるというような場合に、だれかついてくるということも一向差しつかえないのではないか、そういう御返事をした記憶がございます。ただ、非常に多数の人たちが団体で相談そのものに介入するというような事態になりますと、本来の職務の執行ができませんし、ほかの求人者の方にも迷惑がかかるということがありますから、さような場合には相談に応じられない。この点は御理解願えると思います。この通達は、そういうことがある、あるいはあったという背景のもとに出されておると思います。私は今後そういう事態がないことを希望しておりまするし、なくなりますればこれを撤回するということも考えなければならぬ。現状のもとにおいては格別これは違法という通達ではないのじゃないか、このように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/105
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106・八木一男
○八木(一)委員 職業安定法第十七条「公共職業安定所は、いかなる求職の申込についても、これを受理しなければならない。但し、その申込の内容が法令に違反するときは、その申込を受理しないことができる。」、明文規定であります。「法令に違反するときは」というのは、たとえば、労働法規で禁止されている深夜業で、私は昼間寝て夜起きている性質があるから、夜だけ働ける職業に紹介してもらいたいというようなことは、これは明らかに法令違反です。そういうこと以外では、この法規では「いかなる求職の申込についても、これを受理しなければならない。」ということになる。それ以外に法令違反はない。だから、だれが一緒に来ようが、求職者が少ない人数で同じようにまとまって来ようが、それに助言をする人が一緒に来ようが、これを受理しないということは第十七条違反。一般の行政運用のことと違うのです。法律ですからね。それを、労働省の都合なり何とかの状態があるからということで、一切曲げてはいけないことであります。ところが第十七条に明らかに違反した事実がたくさんありました。少しは改善されたかもしれないけれども、まだまだあります。それはいけないことですから。
こういうことになるもとは、この職業安定局長の通達にあるわけです。ですから、法律違反の通達であります。第十七条違反をさせる通達であります。法律違反の通達というものは、これはあってはならないものであります。状況が何とかかんとかいうような、そういうことで判断してはならない。しかも、状況については、大ぜいの方が来られるなんとかいうのではなしに、大ぜいの方が来られるように労働省はしなければならない。求職者にほんとうにこういう制度があるということをわからして、むしろ労働省にもう少し誠意があり、あるいはまた人手があれば、安定所というところはこういうお世話をします、または中高年齢層についてはこういう措置があります、だからそれを活用していらっしゃってください、また、そういうことについては法令上むずかしいから信頼する人と相談しながら自分の気持ちをきめたいときには、どうぞ一緒にいらっしゃってくださいということをするのがあたりまえであります。
職業安定法第一条には「関係団体の協力を得て、」と書いてある。関係団体は人を雇う団体だけではありません。職を求める人の団体もこの関係団体であります。したがって、現に自由労働組合や部落解放同盟、そういう方々のお世話になっている。労働省の怠慢あるいは人手不足に対して積極的にお世話をしておられるわけです。心から感謝をされてしかるべきだ。感謝の意思を表するどころか、そういう組合の方が一緒に来られたら会わない。そっぽを向いている。私現に見てきているのですからね。私、別にえらがるわけではありません。国会議員の私がついて行っても、そこでいすにすわってこっちを向いていた人が、行ったらわざわざそっぽを向く。何にも口をきかない。そういうようなやり方をしている。国会議員の私が行っても、労働省の関係でいろいろ質問している私が行ってもそうですから、いなかったらどんなことになるか、想像がつくでしょう。そっぽを何いて口をきかない。そういうことが行なわれておる。労働省のほうは、失対事業をつぶしたい、就職促進措置をなるべく適用したくない、そういう状態のもとで、働く場所なり手当を受ける道をふさいでおいて、その人にとって、からだにとっては非常に不都合な労働強化をされているところとか、通勤に遠いところとか、低賃金にこき使われるようなところに、何としても労働力を動員する。強制労働する立場で動員する。そういうところにやりたい。だから、そういうことでは困るのだという人、困るのだということを職業安定所の職員がこわいから言えない人に助言する人、そういう人は来てもらいたくないという考え方が一貫してある。しかしこれは、あってもいけないことであります。法律の精神からいけないことなんだ。そういうことをやるから紛擾が起こる。もとは労働省にある。法規に従っている労働大臣が国会で答弁したことと違うこと、けしからぬことを労働省はやろうとしておる。そういうことについて、気の弱い人は、それでは困るから一緒についてきてもらう、労働省が積極的に連絡しないから、説明をしてもらった人に一緒に来てもらうということが起こる。労働省としては、そういう人たちに減謝感激をしなければならない。ところが、それをしないどころではなしに、行ったらそっぽを向く。口もきかない。労働省の職業安定所の職員は、そのとき職場放棄です。自分の任務を果たしてない。そういうことがある。もともとは労働省の、失業者を弾圧しようというところから始まっている。そのことから、口をきかない職員に口をきけと言ったら、そういうことが起こる。その次の時点から取り上げて職安局で労働大臣に説明している。二段目の職安局の説明からの意見でも、明らかに職安法の各条の違反である。その背景を労働省はよく意識している。その背景は私の申し上げているような、失業者に対する労働省の弾圧政策からきている。どんなにそういう人たちがそういう気持ちを持っても、法律において、国会において、政府と国会との約束ではそういうことはないはずだ。法律という明文規定あるいは国会における政府の責任ある答弁と違うことを労働省の関係の役人がしたいといって、それが紛擾のもとになっている。背景もそういうことです。
そういうことを労働大臣は三月もやってわからないはずはない。しかも、その次の第二の法律的な観点からいっても、どんな観点からいっても法律違反だ。その法律違反の通達を取り消すという結論が三月たって出ないとすれば、あなたの勉強も不足だし、あなたの国政に対する責任感も欠除しているということになる。あなたのような誠実な勉強家が、そういう結論が出ないはずはない。出ないのは、職安局の連中が、自分たちの不当なやり方を弁護しようとして相手の悪口を言う。毎日言う。そういうことにあなたは牽制をされている。国務大臣は、そんな一局に制約をされるような国務大臣であってはなりません。法律に従って、国会における政府と国会の約束に従って、問題を処理しなければならない。
この通達は、職業安定法の第一条、第三条、第十七条に明らかに違反をしておる。それを取り消さないというならば、あなたは、憲法七十三条、内閣は法律を順守しなければならない、誠実にやらなければならない責務を果たしていないことになる。あなたがそういう失態をすれば、内閣全体が憲法違反をしたことになる。有馬さんに遠慮をするのではなしに、佐藤内閣というものを、日本国の内閣というものを、日本国の法律なり最高権威である国会における意思決定、それを守るために、あなたは、このすべてに違反をしている職安局長の通達を断じて廃止をしなければならない。それができなければ、あなたは労働大臣としての資格がありません。あなたは非常にりっぱな政治家と思う。ほんとうの労働大臣として行動してもらいたい。職安局の人たちが何十人押しかけてこようとも、憲法を順守し、法律を順守し、政府の方針を正し、国会との約束を果たすために、断固として職業安定局長の三二二号、三二五号の通達を取り消すということを明言してもらわなければならないと思う。三月の余裕をおいてございます。いま御決心をしていただかなければ、あなたは労働大臣としての責任を果たしておらないことになる。直ちにこの問題について、この部分に対する取り消しを明確にお約束をいただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/106
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107・小川平二
○小川国務大臣 いまおことばにありましたように、この制度の趣旨を普及徹底させるということはきわめて大事でございます。また、当然のことでありますが、現行の制度を正しく運用するということも、これも大切なことでありますから、さような点で協力をしてくださる方々があれば、これは大いに歓迎もし、おことばのごとく感謝もしなければならないと考えております。
ただ、同じことを繰り返すようになりますけれども、非常に多数の方が集団で押しかけてこられて相談に介入をする、そのために本人の内心の意思を確認をするというようなことができないというような、騒然たる雰囲気の中で執務に支障を生ずるというようなことは好ましくないという、この点は御理解願えるのじゃなかろうかと思っております。この通達は、そういう事態を避けたい、こういう趣旨で書かれたものと理解をしております。ただいま思い出しましたが、前回職業安定局長は法律以前の問題云々ということばを使いまして、八木先生からおしかりを受けた記憶がございますが、法律以前の問題と言った意味は、おそらくそういう意味であったろうと存じます。したがいまして、ぜひこれを取り消せというきついお申しつけがあったわけですが、ただいまこれを撤回いたしますというお約束はいたしかねるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/107
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108・八木一男
○八木(一)委員 それでは、労働大臣は法律違反をする事実を労働大臣として認められるわけですね。法律違反をする事実を認められるということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/108
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109・小川平二
○小川国務大臣 むしろ法律に基づく現行制度の趣旨を生かすために正しく執務を行なわなければならない、それが妨げられるような状態がもし遺憾ながらあれば、これを避けたいというのが通達の趣旨だと考えております。そこで、さっきおことばにありましたように、私は失業者を弾圧すると
いうような心がまえは毛頭持っておりませんし、失対の問題についてはむずかしい問題もいろいろございます。いままでその機会を得ずにおりますけれども、時間ができましたらば、八木先生からもいろいろお話を伺いたいとまじめに考えておるわけでございます。とにかくどうも役人に取り囲まれておって実情を見ておらない、こういう御注意もいただいておりますから、その点、私も反省しておりますけれども、一度お話も伺いまして、この制度そのものを正しくまず生かしていきたい、こういう気持ちでおりますが、この通達そのものをここで撤回するお約束をせよ、こういうおことばでありますけれども、これはこの場でちょっとお約束は申し上げられませんので、御容赦いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/109
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110・八木一男
○八木(一)委員 小川さん、小川さんは誠実に考えておられると思うのです。問題の順序をやはりひっくり返して考えてもらわなければならない。法律違反は明らかに法律違反なんです。法律違反のような通達を出すことは、これは政府の態度としていけないと思う。いまおっしゃったような、あるいはまた有馬局長が耳打ちして、それを受けておっしゃったような事態、こういう通達は取り消しておいて——法律違反、職安法十七条に違反するようなことを、末端の公務員はやりますよ。十七条は、いかなる求職の申し込みについても受理しなければならないというけれども、こんな通達をすれば、末端の人は職安局長が一番のえらい人だと思っておりますからね、だからこの法律があっても、職安局長通達のほうがえらいと思っておる人が多いのですから、職安法十七条違反をあなたの部下の出先の人がやるわけだ。部下に法律違反をやらしてはいけないと思う。だから、この法律の通達は全部取り消せとは言いません、法律違反になる部分を取り消していただいて、ただあなたのほうの心配の、たとえば非常に多数の人が行って混乱して、それでほかの執務が猛烈にできないというようなときには、これはそういう状態では受理しないこともできる、それが順序だ。これだと法律違反が先だ。法律違反を先にやらせることになって、法律よりも、法律でない問題の状況判断で、法律違反をあなたの部下にさせることになるわけだ。法律違反のものは取り消しておいて、職安局長も言っているように、そんなことばたくさんないんだから、鶏と卵で、そのもとは労働省のやり方にあるのですけれども、たとえば一つの安定所に五百人入って、床がおっこって人が死ぬような状態になる、家が倒壊するような状態になるということになれば、それはそのときに執務ができないのは常識的にあたりまえでしょう。木造の家屋でこの半分くらいのところに五百人も入って、床が落ちて人が死ぬかもしれないというようなときだったら、一平方メートル四人以上くらい、五人以上くらい、たとえばこのくらいの部屋だったら二百人以上くらい入ったときには、これは執務はできないから、そのときにはそうじゃない状態でやりたいと言ってもかまわない。順序は逆なんです。こういうような職業安定法第十七条違反のようなことは一切してはならない。ただし、事実上家が倒壊してけが人が出たり、ほかの事務が一切できなくなるような状態のときには、そのときについては執務を一時停止してもかまわない——すべきだというのではない。そういう順序でものをしないと、末端の人は、五人来ても十人来てもいけないのだ、受け付けないのだということで、職業安定法第十七条違反をあなたの部下は起こすことになる。問題は労働省がこうやりたいということじゃない。法律違反を起こすようなことがないように通達をして、それからそういう事態が心配あれば、逆に、非常に多数の人が集まって、家の倒壊その他で危険におちいるような状態、ほかの事務が一切停止をするようなときには、一時的に短時間そういう事務を停止してもしかたがない。それをしろということじゃないのですよ。そういうようなやり方でない。やらないからこういうことが起こる、それはわかりますでしょう。職業安定局長が何を言っても、私はあなたがものを解決できるためにいま申し上げているわけです。明らかにこの違反を起こすわけです。あなたの部下が法律違反を起こすようなことをあなたが指導してはいけません。職業安定局の幹部の人は、さっき言ったようなことが頭にきて間違っているのですよ。そういうことをやろうやろうとするから紛擾が起こる。そうすると、その紛擾のところから転じていって、それだからといって卵を産んだ鶏でありながら、その鶏の責任、自分の責任を全部抜きにして、卵のほうだけをとらえて、だからといって法律違反まで起こさせようとする、これは間違いです。法律違反を末端の人に起こさせるようなことは一切しない通達を出して、しかしそういう心配があれば、非常な拡大解釈をしてはいけませんよ、非常に多数の人が集まってそれて危険をおかしたり——それは別に暴力行為というわけじゃない。床がはずれて下がつぶれるというようなときです。そういうようなことになったり、それからほかの事務が一切できなくなるようなときには、これは一時的に事務の停止もしかたがない——しろということじゃない、というくらいの通達に直せば、これは問題の処理として適当であります。
私は解決のために言いたくないことまで申し上げました。あなたが誠実にものに当たろうとしておられるから。それが最低線ですよ。それも理解されないで、まだ職安局長の説明で騒ぎが起こるからこれは合法である、法律違反じゃないというようなことを聞かれたら、あなたは法律解釈の能力が一つもない。したがって国務大臣の資格はないということになる。ぼくはほかの点では小川さんはりっぱな政治家だと思う。あなたがその衝に当たったときにりっぱな政治家としてのほんとうの能力と責任を果たしてもらわなければならぬ。このことに関する限り、職安局長に御相談したらだめです。職安局長はそういう間違ったこと々やってきて、それで自分の悪い責任もある。だからホストをします。職安局長には一切相談したい、相談するなら私に相談をしてやられるということをされなければなりません。そういうことで、これも労働大臣の誠実性を認めて、次の社会労働委員会のときまでお待ちをします。これも待ちたくないのだけれども、私もくたびれたからきょうはあまり元気がない。だから次の社会労働委員会の冒頭に、こちらから要求をしなくとも、そういうことについて前向きな御答弁を願いたいということです。
それから次は……(発言する者あり)質問を順調にさせる不規則発言は歓迎をしますけれども、質問の妨害をするような不規則発言は、委員長とめていただきたい。二回も三回もそういうことをしたら、その委員の退場を命じていただきたいと思う。わかりましたか、委員長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/110
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111・八田貞義
○八田委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/111
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112・八木一男
○八木(一)委員 ああいうのを二、三回やったら追い出してください。
その次に、実際上の扱いの問題が起こる。私が前もきょうも申し上げた精神で扱っていただかなければならないけれども、いまだに、一番最初の求職者の問題ですが、求職者が職業安定所に行って、組合員であるとか、組合から聞いてきたからであるとか、組合の人がついてきたからであるとかいって、それを受理しない例がたくさんございます。私の事実を知っているのは高松にございます。これはいま言ったような、家がつぶれるとか、そういう状態ではありません。しかるにかかわらず、そういうことが行なわれておる。この通達の撤回、廃止の問題とともに行政指導で、そういう職業安定法第一条、関係団体の協力が要るということに違反をしたり、第三条、組合員であるからということで差別待遇をしたり、第十七条、どうしても受け付けなければならないのをそういうことで拒否をしたり、そういう安定法違反が行なわれておりますので、これは全国津々浦々に即時に、求職者の問題については受け付けるというふうにしていただかなければならない。それについての労働大臣の明確な御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/112
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113・小川平二
○小川国務大臣 私が聞いております限りでは、たとえ床が抜けるというようなところまでは至らないまでも、職員の正常な執務が妨げられるというような事態がずいぶんあるようでございます。これがきわめて例外的な事態であるならば、この通達も必要がなくなると思いますけれども、残念ながらそういう事例がたくさんあるようでございます。そもそもそういう事態が起こったについて、いま鶏と卵というおことばがございました。労働省の側、われわれの側で至らない点あるいは間違った点があるとすれば、これは私どもの責任に属する問題であると存じます。その点は私先ほどから申し上げるとおり、自分で全くとらわれない立場から調査もしてみたいと思っております。いまはそのような事態だと考えておりますので、先ほどから申し上げたような意味で、撤回するというお約束は直ちにできかねるわけでございます。
それから、組合員であるからというゆえをもって話を聞くことを拒否するとか、そういうことがありますれば、これは申すまでもなく法律違反、一点疑いを入れる余地がないと存じます。そのような事例が現実にあったかどうかという点につきましては、私、承知しておりませんので、そういう事例があったという御認識であれば、伺わせていただければ取り調べてみたい。あるいは役所のほうで調べがついておるかもしれませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/113
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114・八木一男
○八木(一)委員 ちょっと騒々しいので静粛にさせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/114
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115・八田貞義
○八田委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/115
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116・八木一男
○八木(一)委員 非常に残念なことに時間が迫っているようであります。私は非常に残念なんです。少なくとも二時間くらいは、大事な労働行政について労働大臣と、労働行政を正すことを目的にやりたかった。あと残り時間は十五分くらいだという話で残念ですが、早く言いますから、そんなに事実を調べるということで時間をとらないで、ぱっぱっと前向きな答弁をしていただきたいと思う。ただし、これはきょうでなくとも続けて質問をやらしていただきますから、委員長においては、この続きをやることの御配慮をいただきたいと思う。非常に妙なことで労働大臣いなくて時間をとりましたから、委員長のほうでお計らいいただきたいと思います。
いまの問題について、労働大臣、その問題の程度ですが、いま言った床が抜けるというところまでいかなくても、それに近いようなものがあったときには、運用上の問題ですけれども、ある程度いたしかたないかもしれないけれども、私の知っている範囲では、たとえば五十人、こんなものでは床は抜けません。三十人あるいは二十人、十人あるいは五人、あるいは組合の代表者が三人くらいついて行っても、それでも拒否をしている。ですから、労働省の職安局の連中が守ろうと思って、労働省が原因でそういう紛擾が起こったときの例だけを申します。ところが、いま言ったような五十人、三十人、二十人、十人、そういうところではそういうことが起こりようがないのです。それをそうじゃなくて、少なくとも組合の指導者が行ったら入れないということをやっているから、こういうことが起こるのです。これは職安行政がこの点については間違った方向をとっている。労働大臣の通達で、いま言った二階がつぶれるような状態、そういうような状態を除き、労働組合員が一緒に来ようが、何人で来ようが、一切受け付けなければならない、そういう通達を出していただきたいと思います。
続けてどんどん申します。次に、三十五歳以上の人には中高年齢層の就職促進措置というものがあります。これは三十五歳以上の人のほかに、身体障害者なり同和地区の人々にはこれを適用することになっております。それが明らかであるのに、その就職促進措置の申請書を渡さないという事実が方々にたくさんあります。これは、求職の申し込みを受け付けたときに、紙は即時にその求職者全員に、労働省がみずから遅滞なく、忘れなく渡していただく。いまは、それを渡してほしいと言っても渡さない実態だ。即時に渡す、こういうことをやっていただきたいと思う。労働省のほうでは、就職促進措置の前にいろいろな職業を紹介するから要らないというようなことを言って、これを拒否する。ほかの職業紹介に並行してやったらいいんです。就職促進の手続の用紙は、まず労働省の職業安定所みずからが、求職運動に来たときに直ちに渡す。遅滞なく渡す。向こうが忘れていても渡すということをやってもらわなければならない。もし職業を紹介するなら、渡しておいてやればいい。それを渡さない。それから申請をしたときには、少なくとも最大限で一カ月までにそれを処理しなければならないことになっておるのに、これが往々にしてオーバーする。二カ月、三カ月、六カ月にもなる。申請をしてから少なくとも一週間以内に認定をする。それができなければ、労働官僚全体が事務について非常に怠慢だということになる。一週間以内にそれを渡す。その次に一週間以内に認定をする。認定をして、就職促進措置の各講習に行った場合に、それが終わったならは——その間に相当紹介もされるでしょう。それが終わって安定職業がない場合には、これも一週間以内に、法規の定めるところに従って失対事業に紹介する。これは前から、大橋労働大臣のときから約束があります。この点についても、二カ月延ばしたり半年延ばしたりする。その延ばす理由は何か。就職促進措置にあげないことで、その人たちは失業しているから暮らせない。あげないから、そういう失業をして暮らせない状態を悪用して、労働条件の悪い、賃金の悪い、通勤の状態の悪い、あらゆるものに関係のないところに強制労働をさせるために、つまらぬ、適当でない事業所に紹介をしょう。はしごをはずしておいて、食う道をとっておいて紹介をして、いやでも食えないから、しぶしぶそういうところに行くということを、やろうとしておるのが職安行政。そういうあらゆる法令に反し、政策に違反したことをやらさないように——求職者の受け付けをしたら、その申請用紙はすぐ渡す。申請が出たら、即時に審査をして認定をする。どんなにおくれても、一カ月以内で認定しなければならない。平均一週間ぐらいで認定をしなければならない。そうして措置をしてそれでも安定職業がないときには、一週間以内に失対事業に紹介をする。その間に安定職業を紹介をするということはやってけっこうだ。その安定した雇用、事業所というのは、賃金についても、それからその人の体力等を考えて、労働条件が非常に苦しいところじゃいけません。それば少しでも苦しい労働条件ではいけません。苦しい労働条件じゃないところ。それから、たとえば社会保険が完全に適用されているところ、通勤に便利なところ、そういうところしか紹介しない。あやまってそういうところじゃないときでも、その人が、私にはこういう点がぐあいが悪いと言いましたときには、すなおに受け取ってほかを紹介をする。あるいはそういう事業所がなかったら、紹介をあきらめて即時に失対事業に紹介をする。そういうことをしなければなりません。それが全然逆に行なわれて、そうして職業紹介所の言うとおりに行った。ところが、行って断わってくると、君は誠実かつ熱心に就職活動をしていないからといって、手当を出せるいろいろな就職促進措置を打ち切って、手当を取り上げる。失対事業に働いている人なら、失対事業の適格を取り上げる。就労を停止をする。そのような鬼のような方法で、むりやりに悪条件のところに就職をさせようというやり方が行なわれておる。これは一〇〇%明らかだ。そういうような行政をやめさせるということをしなければなりません。また失業多発地帯の人については、就職促進措置をしなくても失対事業に直通させるという条文があり、同和地区についても同様適用するという大臣の明確な答弁がありながら、その条文がひとつも適用されていない。これは労働省の完全な怠慢だ。法規が適用されてないものがあるという状態です。こういう点について、ありとあらゆる意味で職安行政が失業者、労働者を圧迫をし、強制労働の方向に持っていく。職業安定所長が職権を乱用し、鬼のようだといってもいいような状態で失業者を圧迫をする。そういう状態を断じて即時やめさせる。そういう決意をぜひ伺っておきたいと思う。前向きな御答弁を即時願いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/116
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117・小川平二
○小川国務大臣 いま御質問の点は、すこぶる多岐にわたっております。十分御趣旨は承りましたから、研究をさしていただきます。ちょうど時間が来てしまいましたので、一々御答弁を申し上げることができませんけれども。実は本会議で、冒頭に例の教育公務員特例法が上程されて、私は労働基準法の関係で答弁をしなければならない……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/117
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118・八木一男
○八木(一)委員 私の申し上げた趣旨で至急に検討されるようでありますから、次の社会労働委員会が開かれるときに、先ほどの二つの問題とともに、前向きな答弁を願いたいと思います。
そこで、問題が御理解がつかないときには——明敏な大臣ですから、つくと思いますが、つかないときには、これは職業安定局長に聞かれるよりは、不肖礼に問題を聞かれて発言をされる、そうして前向きの答弁をされるということをしていただきたいと思いますが、そのお約束をひとついただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/118
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119・小川平二
○小川国務大臣 いま御質問のあった点につきましては、十分考えまして、次の機会に答弁をさしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/119
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120・八木一男
○八木(一)委員 大臣、けっこうです。
ちょっと一問だけ、続けて職安局長に伺います。
職安局長は非常に有能な国家公務員であります。いろいろの実績を持っておられます。よい実績を持った点については、私も評価をし、敬意を表していいと思う。しかし、いま提起されたすべての問題については、あなたの指導は完全に間違っております。ですから、職安局長は——一その点は私は前からもう何回も申し上げている。深くかみしめて、大臣の補佐について、逆行する補佐は一切なさらない、誤りが正される補佐をなされる。そして、いままでやってきたから意地でもそれをやるというような考え方を捨てていただきたいと思う。有能なりっぱな職安局長であることを私は期待をいたしておりますので、私の申し上げることについて、すなおに、明確に、そして決意を込めて前向きな答弁を伺いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/120
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121・有馬元治
○有馬政府委員 全日自労は私どもの最も大事なお客さんでございまして、決して敵視したり何かすることは考えてもおりません。先ほどから御指摘のございましたいろいろな問題につきまして、私も反省すべきところは率直に言ってあると思いますが、大臣に対しましては、やはり第一線の現実ということをよく御認識をしていただき、その上で十分御判断をいただきたい、かように思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/121
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122・八田貞義
○八田委員長 次回は来たる二十二日午前九時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後二時十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01719680419/122
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