1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年四月二十四日(水曜日)
午前十時二十一分開議
出席委員
委員長 八田 貞義君
理事 小沢 辰男君 理事 佐々木義武君
理事 田川 誠一君 理事 橋本龍太郎君
理事 藤本 孝雄君 理事 河野 正君
理事 田邊 誠君 理事 田畑 金光君
大坪 保雄君 海部 俊樹君
齋藤 邦吉君 澁谷 直藏君
田中 正巳君 竹内 黎一君
中山 マサ君 増岡 博之君
三ツ林弥太郎君 箕輪 登君
粟山 秀君 渡辺 肇君
枝村 要作君 加藤 万吉君
後藤 俊男君 島本 虎三君
平等 文成君 八木 一男君
山本 政弘君 本島百合子君
北側 義一君 伏木 和雄君
關谷 勝利君
出席国務大臣
労 働 大 臣 小川 平二君
出席政府委員
労働大臣官房長 石黒 拓爾君
労働省労働基準
局長 村上 茂利君
労働省職業安定
局長 有馬 元治君
委員外の出席者
議 員 田邊 誠君
労働省労働基準
局賃金部長 渡辺 健二君
専 門 員 安中 忠雄君
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四月二十四日
委員三ツ林弥太郎君及び大橋敏雄君辞任につき、
その補欠として周東英雄君及び北側義一君が議
長の指名で委員に選任された。
同日
委員周東英雄君辞任につき、その補欠として三
ツ林弥太郎君が議長の指名で委員に選任された。
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四月二十三日
医師、看護婦の増員に関する請願(平林剛君紹
介)(第四三五〇号)
同外五件(下平正一君紹介)(第四四〇三号)
せき髄損傷障害者の援護に関する請願(石橋政
嗣君紹介)(第四四〇〇号)
外傷性せき髄損傷障害者の援護に関する請願(
石橋政嗣君紹介)(第四四〇一号)
心配ごと相談所補助金の増額に関する請願(藏
内修治君紹介)(第四四〇二号)
観光開発に対する自然保護施策の強化に関する
請願(井出一太郎君紹介)(第四四二八号)
同(小川平二君紹介)(第四四二九号)
同(小沢貞孝君紹介)(第四四三〇号)
同(吉川久衛君紹介)(第四四三一号)
同(小坂善太郎君紹介)(第四四三二号)
同(下平正一君紹介)(第四四三三号)
同(中澤茂一君紹介)(第四四三四号)
同(羽田武嗣郎君紹介)(第四四三五号)
同(林百郎君紹介)(第四四三六号)
同(原茂君紹介)(第四四三七号)
同(平等文成君紹介)(第四四三八号)
ソ連長期抑留者の処遇に関する請願外五件(大
野市郎君紹介)(第四五二三号)
原爆被害者援護法制定に関する請願(大原亨君
紹介)(第四五二四号)
戦争犯罪裁判関係者に見舞金支給に関する請願
(加藤六月君紹介)(第四五二五号)
医療労働者の増員及び労働条件改善等に関する
請願(川上貫一君紹介)(第四五二六号)
同(谷口善太郎君紹介)(第四五二七号)
同(林百郎君紹介)(第四五二八号)
老齢福祉年金の増額等に関する請願外五件(原
健三郎君紹介)(第四五二九号)
医療保険制度改革試案反対に関する請願(松本
善明君紹介)(第四五三〇号)
医療保険制度改悪反対等に関する請願(松本善
明君紹介)(第四五三一号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
最低賃金法の一部を改正する法律案(内閣提出
第二号)
最低賃金法案(河野正君外九名提出、衆法第一
号)
労働関係の基本施策に関する件(失業対策に関
する問題)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/0
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001・八田貞義
○八田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の最低賃金法の一部を改正する法律案、及び河野正君外九名提出の最低賃金法案の両案を議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。枝村要作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/1
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002・枝村要作
○枝村委員 政府は、今回最賃法の一部改正案を提案されたのでありますが、この中で業者間協定方式については、これを廃止すると言っております。改正の中の一番重要な点はここだと思います。したがいまして、この廃止するということについての理由をひとつ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/2
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003・小川平二
○小川国務大臣 業者間協定方式は、今日まで最低賃金を普及いたします上において非常に大きな役割りをになってきておることは、御高承のとおりと存じます。現在、件数にいたしまして二千件、適用されておる労働者の数は四百五十万人ということになっておるわけでございますが、この方式は、申すまでもないことでございますけれども、協定を結んでおらないものを拘束することはできないことでございます。そういう意味で、本来一つの限界を持っておるわけでございます。最近の経済事情等にかんがみて、この方式による最低賃金の普及が限界に近づきつつあるのではなかろうか、こういう認識を政府は持っておるわけでございます。同時にまた、この方式がILO二十六号条約に抵触するかいなかという点につきまして論議が分かれておることも事実でございます。したがいまして、この業者間協定方式を、この際一定の経過期間の後に廃止すべしとの御答申をいただいたわけでございますが、政府が諮問いたします際には、ILO二十六号条約に適合する形で答申を願いたい、そういう希望を付して御審議をお願いしたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/3
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004・枝村要作
○枝村委員 そうすると、いまの答弁によりますと、業者間協定ではもはや限界にきた、こういうことでございます。そのことは、結局業者間協定では、いわゆる中小企業、未組織の最低生活が保障されていない労働者に対する生活の保護、労働の権利、その他を守るということが、もうできなくなったから今度の法改正になってあらわれてきたというようなお答えと認識していいわけでありますね、一つの問題として。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/4
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005・小川平二
○小川国務大臣 業者問協定方式そのものが、本来労働者の保護において十分でない、何らかの欠陥を持っておるという意味で申し上げたのではないのでございます。従来非常に大きな役割りをになってきていることは先ほども申し上げたとおりでありますが、これを今後もいままでのように急速に普及していけるかどうか、最近の経済の事情等にかんがみまして限界に近づきつつあるというのは、さような意味で申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/5
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006・枝村要作
○枝村委員 しかし、それは単なる観念論ではなくて、やはり業者問協定そのものでは救われないということ、これはもちろん経済の発展その他の事情によってなることもありましょうけれども、総体的に見た場合には、いま言いましたような理由でいわゆる限界にきたというように理解しなければ、いまあなたが言われたような抽象的な理由だけではわれわれとしては納得できないのでありまして、その点はひとつ隠すことのないようにはっきりお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/6
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007・小川平二
○小川国務大臣 私は、別に抽象的なことを申し上げているわけではないのでございまして、実際問題として業者間で協定が結ばれますためには、それを容易ならしめるための前提として、たとえば業界に少なくとも親睦団体のようなものが存在していることが必要であろうと思いますが、諸種の事情でそういう業者間に各種の団体もない、話し合いの機会がなかなか得られないというような事情のところもずいぶんあるようでございます。
実情につきましては、基準局長からお耳に入れるようにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/7
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008・村上茂利
○村上(茂)政府委員 ただいまの点については、昨年五月に最低賃金審議会から答申がございました。その答申の前文におきまして、業者問協定方式の果たしました役割りとその限界に近づきつつあることを示唆しておるのでありますが、私どもが大づかみに理解したところによりますと、一つは構造的な面における問題 一つは技術的な面における問題があるだろうと思います。と申しますのは、業者問協定方式を推し進めました対象は中小企業でございますが、その中でも重点業種を設定いたしまして、かなり精力的に業者間協定方式を進めてまいったわけでございます。
ところが、ただいま大臣も仰せになりましたように、業者間協定が成立し得るような業者のグループがあるものとそうでないものとがあるわけでございまして、業者間協定方式を成り立たしめる業者のそのような結合関係が認められないような構造のところにおいては、この方式を進めることは非常にむずかしいということが言えるかと思います。しかして、この方式を採用しますのには、関係業者の方々から判を取りまして、皆さんの御了承を得るわけでございます。そういった手続的、技術的な面もございまして、ここ数年間業者間協定を推し進めてまいりましたけれども、そういった面に技術的な、構造的な面における一つの制約がある。業者問協定方式を前面に推し進めて最低賃金制を普及していこうといたしましても、そのような限界がある。そこで先ほど大臣も申されましたように、業者問協定方式については、いろいろな問題もあり、この際この方式を廃止いたしまして、審議会方式を主軸とする最低賃金方式を展開していこうというのが最低賃金審議会の答申の趣旨でもあろうというふうに私ども理解しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/8
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009・枝村要作
○枝村委員 確かに答申の前段には非常に「役だってきた」、こういう表現もあります。しかし、一応最近の審議会がもともときめたことですから、自分たちが答申したものによって法律ができ、そしてそれがいろいろ今日まで運用されてきたのですから、それ自体を中央最低賃金審議会が否定するというわけにはまいりませんから、そういう意味で一つのまくらことばのようなことで「近代化に役だってきた」という表現はしておりますけれども、それはそれだけの意味であって、実際は、やはり現行のものでは行き詰まってきたということで、これによってはいわゆる最底辺で働いておる労働者、これが救われないということになったから、何とか改めなければならぬということになり、それが答申となって、この法改正となって進んできたというように見ていかなければなりません。しかし、その問題については、あとから時間がありますればゆっくり聞きますが、もう一つのILO二十六号条約に抵触しないようないわゆる完全な法に改めていただきたいという、こういう諮問を行なって、それに基づいて答申もなされて法改正がされる、こういうふうな第二番目の理由を述べられたのでありますけれども、この点についてひとつお伺いしていきたいと思います。
政府は、四十一年二月にあらためて諮問をつけ加えております。四十年八月に初め諮問いたしましたのに、いわゆる追加諮問をいたしております。その内容は、あなたのほうで説明していただいてもいいし、私のほうから申し上げてもいいのでありますけれども、はっきりしております。ちょっと読み上げましょうか。「最低賃金制の基本的なあり方については、昭和四十年八月貴審議会に対し、わが国の実情、今後における産業経済ならびに雇用労働の動向、海外における最低賃金制の現状等広い視野から御検討いただくようお願いしたところであり、ILO第二十六号条約との関係についても、これに含め検討されるものと存じておりますが、この際、これを明確にする意味で、最低賃金法がどう条約に適合するよう、答申をたまわりたく、お願いいたします。なお、答申は、できるだけ早くお願いいたしたいと存じます。」こういうふうに出しております。問題は、これはあとからも言いますが、この諮問に答えた答申というものが出されておるかどうか。諮問に対して答申が、名実ともにぴしゃりそれに答えたものとして出されたものがあるかどうかということなんです。私どもいまの答申案を見ましても、このILO二十六号条約に抵触する云々ということに対するずばりそれを解消する、ないしは指摘するような文面というものは、この答申案の中にはどこを見てもないと思うのです。あるとするならばどこにあるのか、ひとつそれを教えてもらいたいのです。
それともう一つは、こういう追加諮問をしなくてはならなかったというそういう事情も、やはり五十二国会の予算委員会の審議の中から生まれてきたのであって、政府自体が五十二国会の予算委員会の答弁の中で、そういう方向で進みたいということはありましたけれども、はっきり追加諮問として、この問題に触れてやろうというそういう態度は、当初はその段階ではなかったのに、野党のわが党の追及にあって、そうして委員会そのものが混乱というところまではいきませんけれども、ある程度真剣な場面に突き当たって、そうしてしぶしぶというわけじゃありませんけれども、はっきりその予算委員会の中でこういう追加諮問をいたしますということになった事情もあるのでありまして、そういうところからいろいろ見てまいりましても、先ほど言いましたように、この答申の中のどこにそういう二十六号条約に抵触する云々という明確な指摘があるのか、これをまずお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/9
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010・小川平二
○小川国務大臣 諮問がなされました当時の経緯につきましては、基準局長から御説明を申し上げるのが適当と存じますので、ただいま説明をいたさせますが、答申そのものは、諮問の趣旨に合致した答申をいただいておると私は理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/10
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011・村上茂利
○村上(茂)政府委員 四十年八月に最低賃金審議会に諮問いたしました際には、ILO問題も含めまして私どもは諮問いたしたという理解を持っておったのでございますが、それは諮問の発言要旨の一番最後に「海外における最低賃金制の現状等広い視野から」云々というのがございますが、海外における最低賃金制ということの中には、もちろんILOの最低賃金に関する条約をも頭に置いておったのでございますが、この程度の発言では明確でないということで枝村先生御指摘の国会の予算委員会で問題があったわけでございます。そこで、ILO二十六号条約に関する点を明確ならしめるという趣旨で、あらためて追加諮問をいたした次第でございまして、その内容は先ほど御指摘がございましたとおりでございます。この諮問に対して、審議会の中間答申と申しますか、昨年五月の答申が答えておるかどうかという点については、答申そのものの文面には、このような内容の改正をすればILO二十六号条約に適合するのだというような判断は、答申そのものには示してございません。ございませんけれども、業者問協定を廃止することによりまして、ILO二十六号条約の要件は満たすというふうに判断をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/11
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012・枝村要作
○枝村委員 政府のそういう判断の基礎については、あとからまたその問題だけを取り上げて質問をしていきたいと思います。
そこで問題は、先ほどちょっと言いましたように、五十二国会の予算委員会の中で、わが党の八木昇、多賀谷両委員がいろいろ質問をいたしました。それは三十九年二月にさかのぼっての問題を取り上げたわけなんですが、その当時、三十九年二月の予算委員会で、多賀谷委員が大橋国務大臣に対して質問したのに対して、現行最賃法は業者間協定方式をとっているので、ILO二十六号条約に照らして適当なりやいなや、多少法律上疑問の点がある。したがって、その点についてILOの事務当局に対して判断を求めている。それがため、まだ批准していない。こういう答弁を、いま言いました大橋国務大臣が答えておるわけです。そのことについて追及していくわけでありますが、多賀谷委員は、その前年に直接ILOの事務局に行って、いろいろ問いただしたところ、その時点では、全然照会とかそういうことなんかは一切受け付けておらぬ、こういうふうなことを確かめて戻っておる。そういうことを知っておる多賀谷委員に対して、いま言ったように、照会しておるとかなんとかというような答弁で、早くいえば、うそを言ってその場をごまかそうとした。そういうことが今度は先ほど言った五十二国会で追及されて、それに対して、時の小平労働大臣は、実は恐縮いたしましたということで、頭を下げたか下げぬかわかりませんけれども、一見、客観的に見れば、その事実を認めたような調子のことになっておる。それで、そんなことではいけないじゃないかということで、いろいろ追及されて、そうして先ほど言いましたように、この問題については、政府は政府なりの考え方から、はっきりと中質審に諮問するということになっていったんです。こう見てまいりますと、現在の法律、いわゆる三十四年成立した最賃法はILO条約の第二十六号並びに同勧告三十号から見て、違反しておるということがはっきりしてきておるのではないかというように私は考えるわけです。政府は、疑問点があるということで、違反とか適合ということには触れておりませんけれども、そういういろいろな経緯を見て、いま言いましたように、これは明らかに条約に違反しておるのではないか、こういうふうに思っておるのでありますが、その点について、ひとつ労働省の見解をはっきりここで述べていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/12
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013・小川平二
○小川国務大臣 私は、政府が、業者間協定方式が明白にILO二十六号条約に抵触するということを認めたという事実は、おそらくないのじゃなかろうかと存じておりますが、何ぶんこれは私が就任いたします前のことに属しますので、当時の経緯につきましては、あらためて基準局長からお聞き願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/13
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014・村上茂利
○村上(茂)政府委員 御指摘の大橋労働大臣のころからの問題につきましては、私、局長をいたしておりまして承知いたしておりますので、私からお答え申し上げますが、ILO事務当局に対しまして、わが国の最低賃金法がILO二十六号条約との関係でどうなっておるのかという問い合わせ云々の問題でございますけれども、ILOの取り扱いといたしましては、批准をした条約につきまして当該国の法制との関係を審査いたしますのは、条約勧告適用委員会でございますが、わが国はILO二十六号条約を批准しておりませんので、ILOが正式に取り上げまして、わが国の最賃法が二十六号条約とどういう関係にあるかということを判断することが、これはできないわけでございます。労働省といたしましては、非公式に接触を保ったのでございますが、批准してないので、当該国の法律との抵触関係を答えることはできない、こういう慣行であるということが明らかになりまして、答えは得られないといったような状態になってまいりました。大橋労働大臣のころにおきましては、そういった状態であったわけでありますが、正式な回答は期待し得ないという段階におきまして、先ほど御指摘の五十二国会の予算委員会の段階に及んできたわけでございます。
ところで、政府としましては、三十四年に最低賃金法が制定された当時から、最低賃金そのものは審議会で決定いたしますので、三者構成の審議会で審議されるものでございますので、ILO二十六号条約に適合するという見解を持しておったわけでございますけれども、枝村先生御指摘のような、適合しないのじゃないかという御意見もあったわけでございます。そういう経緯をたどりまして、五十二国会の予算委員会におきまして問題として取り上げられたわけでございますので、先ほど申しましたように、最低賃金審議会にあらためて追加諮問をするという形をとったわけでございます。ILO二十六号条約に適合するかいなかという点については、そのような扱いで経過してきたというのが事実であると私どもは存じております。しかし、この段階におきましては、業者問協定を廃止することによりまして、ILO二十六号条約に適合するということについては問題がないというふうに信じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/14
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015・枝村要作
○枝村委員 批准していないからそういう問い合わせもできない、こういうふうな言い方をしておるのですけれども、三十九年の二月の予算委員会では、いま照会中ということをはっきり答弁しておるじゃないですか。とにかくILO事務当局に対して、その疑義の問題についての判断を求めているということをやはり労働大臣が答えておるのですから、いまあなたのような答弁では、前言をみなひるがえして、何もしなかったということになると、またうそを言ったということになるのですがね。ただ、照会したその当時、多賀谷さんがILO事務当局に行ったときにはなかったということでありまして、その後やったかもしれません。やったということになるのでしょうね、そういう答弁では。そうしたら、それは正式な公文書であるかどうかにかかわらず、やはり照会したのですから、内輪のことばでいいのですが、回答下もいいのです、口頭でもいいのですが、何らかあったはずであります。そういうことで、やはりいまのような答弁では、これは実際私は納得するわけにいきません。ですから、その経過はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/15
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016・村上茂利
○村上(茂)政府委員 先ほどの御答弁にも、非公式に接触した、こう申し上げたわけでございます。そこで、接触したことは事実でございますけれども、ILO事務当局のほうにおきまして、手続はこうなっているんで、見解をオフィシャルに示すことはできない、こういうことが明らかになったということでございます。何ぶんにも国際的機関との接触の問題でございますので、そういう手続上こうだという見解を示されましたので、接触はいたしたことは明らかでございますけれども、答えはオフィシャルに得られなかったというのがこれまた事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/16
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017・枝村要作
○枝村委員 その問題は、またあとに譲りまして、結局、疑義があるということは明らかにされております。ですから、今回の法改正は、その疑義を完全に解消するために出された、こういうことははっきりおっしゃっておるわけですね。ですから、私とすれば、疑義がある。それが労働省の内部にあって二つに分かれておるとかおらぬとかいうことは、これは別にして、これは労働大臣として、疑義があるということは、適合でないということでありますから、あるのです。疑義があるということは、解明すれば、適合か違反かどっちかになるでしょうけれども、少なくともいまの業者間協定の現行法では、そういうことが、それはだれが見ても、照らし合わせてみれば疑義があるのですから、この疑義はやはり適合ではないわけです。疑義があることが適合ではないとすれば、これは違反ではないか、こういうことになるのじゃないか。二つ割って半分ということはないわけですね。その点をもう一点ひとつ明らかにしてもらいたいのです。
それで、いつでしたか忘れましたけれども、山手労働大臣の時代に、参議院の社労委員会でしたか、この問題に触れて、山手労働大臣は、最初は適合だと言い切りまして、野党から追及されて、次回の社労委員会でその発言を取り消した。取り消して、どういうことを言ったか、それを私、まだ知っておりませんけれども、少なくとも適合であったということは取り消したのですから、どこに戻るかといえば、あなた方の流儀でいえば、適合でないから違反だということになる。山手労働大臣はそういう考え方を述べておる。そういう歴史的経過もあります。ですから、もう一度、くどいようですけれども、適合か、そうでなかったら違反か、どちらか、こういう質問に対して明確なお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/17
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018・村上茂利
○村上(茂)政府委員 法律についてもそうでございますが、特に条約につきましては、参加各国がいろいろ討議しまして採択する文章でございますので、その文章の理解につきまして必ずしも明確でない点があるという場合が少なくないわけであります。ILO二十六号条約におきまして、たとえば関係労使は平等の数及び条件によって最低賃金決定制度の運用に参与する、という場合に、この参与というものはどの程度のものであるか、いろいろ解釈のしようがあると思うのであります。
そこで、いま適合しているのか、していなければ違反か、こういう二つの形しかあり得ないというたてまえからの御質問と思いますけれども、実はその解釈自体がいろいろ幅があるものでございますから、適合するようでもあるが、しかし問題もあるようでもある。いろいろな意見がございますので、その基礎の上に立って、労働省はできるだけ合理的にこれを判断したいというふうに考えてきたわけであります。そこで適合するかいなかという点については議論があるという見解をとっておりますのが労働省の立場でございまして、そのことは、ここ数年間一貫して申し上げておるはずでございます。適合している適合していないといったような見解表明はいたしておらぬつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/18
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019・枝村要作
○枝村委員 事務当局は一貫しておったかもしれません。事務当局の官僚の一員として、あなたはそういうふうに一貫して答えたかもしれないけれども、最高の責任者である政府、労働大臣は、やはりずっと変わってきておるのですよ。それはあなた自身も、あなたの基準局長の立場を離れてみたらずっと変わってきております。変わってきておるからこそ、今日の法改正としてあらわれてきたんじゃないか。しかも、そういう問題についてだけ取り上げて追加諮問しておるんじゃないかと思うのです。
そういうことだと私どもは見るのですが、それはそれとして、それでは疑義がある、こういう判断をしたのはいま言いましたように政府自身が持ったのかあるいは労働者の判断でそのように考えさせられるようになった、いわゆる労働者のほうからいろいろやかましく言って、そうして政府がそういう疑義ということばを利用しながら、国会その他の公式の場面で発言するようになったのか、それとも政府自身の中からそういう疑義というものを持つようになったのか。しかもそれを持つようになったとすれば、いわゆるいまの現行の最賃法が制定された当時からか、あるいはその後、それでなかったらいつごろからそういう疑義を持つようになったのか、その点をひとつ聞いておかぬと私も困りますので答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/19
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020・村上茂利
○村上(茂)政府委員 三十四年に最低賃金法が制定されまして以来、ILO二十六号条約との関連におきまして政府はこの条約に適合するものという判断を持っておりました。ところが、その法制定の直後からILO二十六号条約に違反するのじゃないかという意見があったことも事実であります。そうして相当年数を経過したわけでございます。現行最低賃金法が最低賃金審議会の答申を得まして、計画的に業者問協定を普及するという段階に進んでまいりました。それで先ほど枝村先生御指摘の大橋労働大臣の段階に進んできたわけであります。その当時になりましてILO二十六号条約に適合しないんじゃないかという意見が、労働組合あるいは先ほど先生御指摘の国会議員の先生方から、強く主張されるという経過をたどってきておるわけであります。
そこで、政府としては適合するという判断を持っておりましたが、適合しないという意見もございました。そういう段階におきまして、最低賃金審議会に対しまして追加諮問という形で、先ほど申し上げましたものを追加諮問いたしたという経過をたどっておるわけであります。私どもはそのように理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/20
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021・枝村要作
○枝村委員 そうすると、いわゆる労働側あるいは社会党をはじめとする野党の側からいろいろ追及されて、その部面で疑義があるというように政府も若干考えて所要の手続をとったということで、そのことを裏返して言えば、政府は依然としていまの業者問協定でもILO二十六号条約に適合したものだ、こういうふうに考えておるということなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/21
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022・村上茂利
○村上(茂)政府委員 先ほど経過を申し上げたわけであります。その経過の中におきまして、昭和四十一年二月に追加諮問をしたという段階における労働大臣の立場といたしましては、適合しないという有力な意見もあるという前提に立ちまして、この問題を審議会で諮問してもらいたい、こういう態度で臨んでおるわけであります。したがって、そこではことさらに適合しているのだという主張を明らかにしているものではないのでありまして、いわば虚心な立場に立ちまして審議会でひとつ検討してもらいたい、こういう態度で臨んでおるわけでございます。
その後、労働省といたしましては、適合するとかそういう見解表明はことさらにはいたしておらないわけでありまして、すべてを審議会におまかせいたしまして、十分審議してもらいたいという態度で今日に及んでおるわけであります。先ほど、ここ数年は一貫して適合するともしないとも申しておりませんと申しましたのは、その審議会審議における経過とも関連いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/22
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023・枝村要作
○枝村委員 どっちも言っていないから問題があるのですよ。ですから、ほんとうの政府の考え方、態度というものが、一体どこにあるかというのは、私ども聞いておかねばならぬし、知っておかねばならぬと思う。いいころ八兵衛でごまかして、すべて審議会にまかしてあるということでは、政府としての基本的な正しい態度ではない。政府の消極的な態度を、これは明らかに適合しているなら適合しているとはっきりおっしゃればいいし、違反なら違反とはっきりそれを認めて、本格的なやはり最賃制に取り組む、こういう姿勢こそが正しいのではないかという意味から私は質問しておるのです。いままでの答弁を聞くと、どっちも言わぬでああいう諮問をしたということ、これは裏返して言えば、あまりやかましいものだから、しょうがないから、結局そういう形で当面の問題をごまかしてやわらげていこうという手段に利用されておるようにしか思えぬのです。それではほんとうの最低賃金法を制定して、そして生活にあえいでいる人たちの生活水準を引き上げて保護するという、こういう仕事に労働省としては、これでは本気に取り組めぬですよ。そういうふうに考えられてもしかたがないでしょう。ですから、くどいようですけれども何回もそういう意味で聞いておるのです。答えられませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/23
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024・村上茂利
○村上(茂)政府委員 何ぶんにも十年近い経過をたどって発展してきた問題でございます。先ほど来経過を中心にして申し上げておるわけでありますが、その十年の歳月の中には、社会的認識その他の変化もいろいろあり得ると思うわけでございます。労働省としましては、先ほども申しましたように、この問題について適合するかいなかという点については、虚心な立場で審議会に諮問をいたしたということであるわけであります。いろいろ見方はございましょうけれども、最低賃金審議会に、最低賃金制度のあり方につきまして疑問をいたしておるという段階において、ILO二十六号条約についても、これに適合するような答申をいただきたいということを申し上げるということは、当時の状況下におきましては、あり得る適切な態度ではなかったかというふうにも私は考えておるわけでございます。したがいまして、解釈に幅のある条約につきまして、政府が適合している、あるいはしていないという態度を明確にしなければならないかどうかという点については、いろいろな見方もあろうと存じますが、今日の段階におきましては、答申をいただき、そして法案を提出しておるような次第でございますので、過去の経過に対する価値判断というものについてはいろいろあろうかと存じますけれども、その過去の経緯の中に問題を認識していきたいというふうに私どもは考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/24
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025・枝村要作
○枝村委員 どうもはっきりお答えになりませんが、こういう審議会とか諮問機関というものは、元来民主国家における一つの方法として、やはり広く学識経験者や国民の意見を聞いて、それを政策に織り込んでいくべきだと思うのですけれども、今日のやり方は、政府の一つの責任のがれのために、そこに形式的な民主主義的な形をとりながらのがれていこうという、そういうことが非常にたくさん出てくる。全部が全部とは言いませんが、ほとんどそういう形に審議会とか諮問機関というものが埋没されておる、こういうふうに見てまいっても差しつかえないような現状です。ですから、それでは私は本来のそういう機能を果たすわけにはいかぬと思う。だとすれば、どこが一番しゃんとしておるべきかといえば、やはりこういう労働者の地位向上を、労働条件をよくするという、その指導は、行政の責任にある労働省が、審議会にすべてまかしてあるからという責任のがれではなく、はっきりした自身の態度というものを示すべきだ。それを示さずに、いま言いましたように逃げているというのは、それ自体私は民主国家の運営として正しくないと思うのです。
こういう押し問答をしても時間がたつわけですから、先ほどあなたがお答えになりました、現最賃法の業者問協定方式が、ILO二十六号条約に抵触しておると思われるいわゆる条項、部面についてひとつ答えてください。あなたは先ほど適合しておるということばかり言ったのですけれども、疑義があるとするならば、何かあなた方流の、どうもここがおかしいという事項があるはずなんです。その部面、条項を、ひとつどこかあなた方流に見たものをおっしゃっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/25
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026・村上茂利
○村上(茂)政府委員 私らの立場から申し上げるというよりも、この十年間の経過の中で、一般に問題点として指摘されておる点はどこかというふうに考えますならば、ILO二十六号条約の第三条の第二項二号の条項が特に問題になろうかと存じます。それは「関係のある使用者及び労働者は、国内法令により定める方法及び程度においに、最低賃金決定制度の運用に参与するものとする。ただし、いかなる場合においても平等の数及び条件によるものとする。」この条項が一番問題になり得ると思うわけでございます。しこうして、この文章の中で、「最低賃金決定制度の運用に参与する」という形が、審議会に労使が平等に委員として参加しておれば足るものであるかどうかという点について、業者間協定方式も審議会に申請されるまでは、業者が協定したものでありますから、使用者がいわば一方的に決定した内容のものでございますが、それが最低賃金となるるためには審議会で審議される。その審議会で審議される過程におきましては、労使が平等に参与しておるわけでございまするので、そのような理解に立てば、この第三条第二項第二号の条項にも適合するのではないかという見方もあるわけでございます。しかし、そもそもが業者間協定という形でいわば使用者だけがきめた内容のものを、審議会という機関を経過するにしろ、そもそもの出発点からこの労使平等参与という形になっていないじゃないか、したがって、この条項に適合しないじゃないか、こういう意見もあったわけでありまして、この点につきましては、業者問協定方式を廃止しますれば、そういった疑問は全く解消するというふうに私ども存じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/26
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027・枝村要作
○枝村委員 そうすると、業者問だけで最低賃金をきめることになっておる現行の最賃法は、これはILO条約に違反しておると見ていいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/27
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028・村上茂利
○村上(茂)政府委員 業者問協定で取りきめられました最低賃金に関する協定というのは、最低賃金そのものではございません。法定の最低賃金となりますためには、審議会の審議を経まして、労働大臣または都道府県労働基準局長が告示したものが最低賃金であります。そういう理解に立ちますと、なまの業者問協定そのものが最低賃金でございませんので、法的な最低賃金としては、審議会の審議を経て、労働大臣または都道府県労働基準局長が告示したものが最低賃金であるとなるわけでありますから、その点が形式と実質とあわせましてどう理解するかという理解の問題になろうかと思うわけであります。この条項に違反するのだという説に対しまして、いや適合しているという説もあるゆえんであろうと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/28
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029・枝村要作
○枝村委員 そういうふうに言われると、典型的な官僚の答弁としか受け取れない。そういうふうなことでは、これは全く児戯にひとしいような答弁としか思えぬですよ。それでは、現行法による業者間協定方式そのものも、結局、あなた方に言わせれば、全く権威のない、単なる見せかけのものだというようにしか、あなたの発言ではとれませんよ。それは全く法そのものを無視した答弁ではないですか。答弁というよりも、あなたの答弁がほんとうなら、むしろそういう精神ですよ。これは、労働大臣、そういうふうな考え方では政府は見ておるのですか。現行法ですら、そういうふうに、この審議会できめるやつは単なる見せかけのようなもので、最終的決定は告示によってというような、そういう答弁をあなたとして認めますか、答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/29
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030・小川平二
○小川国務大臣 この問題について論議が分かれておることは事実でございます。論議の生ずる余地なからしめることは言うまでもなく望ましいことでもなく望ましいことでありますから、条約に適合する形で答申を願いたい、かように審議会にお願いをいたしたこともこれまた事実でございます。
この条約に適合する、抵触しないという論拠として、これは最終的には三者構成の審議会の議を経て決定されるのであるから、労使平等参与という原則に反するものではない、かような解釈がなされておるということは、これは事実であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/30
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031・村上茂利
○村上(茂)政府委員 ただいまの私の答弁につきまして、ことばが足りませんので補足をさせていただきたいと思います。
私は、現行最低賃金法の解釈で、現行法上の最低賃金とはどういうものであるかということを申し上げまして、そしてILO二十六号条約との関係におきましては第三条第二項第二号の解釈につきまして適合しないという説と適合するという説がある、その適合するというのは、こういう解釈の場合は適合するという見方があるであろうということで、一つの解釈論的なものを申し上げたわけでございまして、労働省がいまそれを肯定して、そういう立場に立つのかという点になりますと、そういう問題を一応別にしまして、現段階におきましては審議会の答申をいただきまして、そうして業者問協定を廃止すべし、こういう答申をいただいていま改正法案を出して審議していただいておるわけでございますから、改正前の法案を基礎にしまして、この条約との適合関係をことさらに云々するということは、実はあまり実益のないことでもあろうかと存ずるわけでございますが、その点誤解のないように補足させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/31
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032・枝村要作
○枝村委員 実益がないという態度に対しては、私はきわめて不満なんです。もし、違反した最賃法を今日まで何年にわたって政府が施行してきた、運用してきたということについては、やはり大きな責任があるわけなんですよ。そのために低賃金労働者が非常に苦しめられたという責任は、これは憲法上からいっても非常に重要な問題だと思うのです。それを、過去のものであるから、いまそれを論議しても実益がないというようなことではこれは許されぬと思う。ぼくのいま質問しておるのは、現行法の業者間協定方式がどうかということを中心に、ひとつ徹底的に論議してみて、そうしてそれがもし誤りであり、国際法に違反しておるとするならば、これは率直に認めて、新しい観点に立ってやはり出発していくということこそ、ほんとうの意味の本格的な最賃制度というものが確立されていくんだ、こういうことで言っているんですから、あなたのように、過去のことをいまさら論議しても実益がないじゃないかというようなことではこれはいけないわけです。それはあなた、もう一ぺん答弁をし変えなさい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/32
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033・村上茂利
○村上(茂)政府委員 まあ先ほど来るる御質問ございまして、私も御答弁申し上げておるわけでありますが、過去十年間にわたります経過におきましては、いろいろ異論があったわけでございます。今日の改正法案を提出するに至りました、その至るまでの過程におきまして、いろいろ御議論を賜わりましたことは、これはもう非常に有益であり、今後の最低賃金制度運用の非常に重要な判断と申しますか、考え方になるだろうと思うわけであります。そういう意味で今日までのいろんな問題点を踏まえて今後の最低賃金制度の運用に遺憾なきを期するということは、非常に大事でございまして、そういう意味では実益のないというような発言は適当でなかったというふうに、私、取り消しさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/33
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034・枝村要作
○枝村委員 それで最初ちょっと触れました、今回の中間答申では、ILO条約に適合するとかいうような文章は一言も載っていないのでありますが、政府としては、これは今度の答申、そしてそれに基づくこの法改正は適合するものだと理解するというような御答弁であったと思うのですが、その根拠をいま答申の中から私は求めたいと思うのです。この法解釈によるILO二十六号条約との関係についての解明ではなくして、この答申の中にそれを求めたいと思う。文章にはないが、じゃ、ほかの何かの方法でそういう申し伝えというようなものがあったのかどうか、中賃審の会長から労働省に対してですね。その点をひとつ明らかにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/34
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035・村上茂利
○村上(茂)政府委員 いわゆる書面によるそういう意向表明とか、そういうものはございませんけれども、いろいろ審議の過程におきまして、業者問協定を廃止するということになりますと、最低賃金審議会の調査、審議に基づく最低賃金というものが中心になるわけでございます。そのいわゆる審議会方式というものにおきましては、使用者の側がイニシアチブをとるとか、労働者がイニシアチブをとるとかということではなくして、審議会の場で平等にこれを行なう、こういう形になりますので、ILO二十六号条約との関連を見ますときに、労使のいずれか一方、あるいは業者間協定といったようなものがないということから、ILO二十六号条約との関係におきましてはもう問題はない。労使が平等に参与しておるということがこれは明らかでありますので、審議に当たられました諸先生方もその点についてはほぼ共通の御理解を持たれたのではないかというふうに私ども推測をいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/35
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036・枝村要作
○枝村委員 では結局推測の域を出ぬということなんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/36
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037・村上茂利
○村上(茂)政府委員 これは今日までの経過におきまして、業者間協定方式が議論されてきたわけであります。この業者間協定方式が廃止されれば、ILO二十六号条約との関係におきましては問題がなくなるという理解が、審議会委員のみならず、一般の方々にあったのではなかろうかというふうに私は考えるわけであります。そこで四十一年二月の追加諮問にこたえてこの答申がなされたわけでございますが、ILO二十六号条約に適合しているという判断で昨年五月のこの答申があったものというふうに私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/37
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038・枝村要作
○枝村委員 最初、あなたのほうからもお答えがありましたけれども、わが国の経済、労働事情の推移の展望や諸外国における最低賃金制運営の実態などから、広い視野からひとつ御検討願う、こういうことが主たる追加諮問の内容です。そこから二十六号条約との関係を明確にしていただきたいという、こういうつながりになっておるわけです。それ自体に答申の内容は触れておりません。——むしろ触れてはおりますけれども、これはなお問題が残っている、こういう表現で出しておるわけなんですね。そうすると、諮問に対してはっきり答えを出しておらぬ。ただ十六条方式を採用する。九条、十一条を廃止するということによって、いわゆる条項と条約、国内法といまのILOとの関係、その条文適用事項、この関係においてあなた方は抵触しない、疑義一切解消された、こういうふうに独自で判断されておるにすぎないのであって、審議会に求めたあなた方のその意図というものは、完全に黙殺されたとは言いませんけれども、これはたな上げされておる。しかもそれはむしろ今後の本格的な最賃制のあり方に問題が残されていって、いま討議を進められておるということになっておるのではないですか。その点をお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/38
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039・村上茂利
○村上(茂)政府委員 先ほども申し上げましたように、四十一年二月の追加諮問におきましては、ILO二十六号条約との関係についてもこれに含めて検討されるものと存じておりますが、「この際、これを明確にする意味で、」云々というふうに追加諮問をいたしておるわけであります。こういう追加諮問があったということは、最低賃金審議会においても十分承知の上で答申がなされておるわけであります。したがって、昨年五月に出されました答申が、ILO二十六号条約との関係におきまして、依然として疑問点を包蔵しておる、そのままにしておいて答申がなされたというふうには私ども考えられないのでありまして、先ほどから申し上げましたとおり、業者問協定の廃止によりまして、ILO二十六号条約に適合するという認識の上に立って答申がなされたというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/39
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040・枝村要作
○枝村委員 問題は、次に進みますが、われわれからすれば、あるいは多くの日本の有識者が非常に考えておるのは、やはり現行法は明らかにILO条約の水準から見ても疑義がある。私は、違反とはこの場ではっきり言わずに、あなた方の答えている疑義ということで用語を使いますけれども、疑義があるというのを認めておりながら、やっぱり今日まで長い間、法律を施行して実施してきた。そしてその結果一定の役割りを果たしという、こういう評価を政府自身もし、あるいは中賃審もこの答申の前文でどういう事情があるにせよ書いたということなんです。これは明らかになっておる。
問題は、二十六号条約は一九二八年にできたわけですね。これはいまからもう四十年前の話なんです。四十年前といったらきわめて一昔といわれるほど、今日のように急速に発展している世の中から見れば、ほんとうに昔々のことなんです。その当時できた、古いと言ってはいけませんけれども、特にまた後進国の非常に賃金の低い人たち、苦汗労働者、こういう立場でつくられたこのILO条約を、世界第三位まで生産力があがった日本でまだ批准できないということは、これはどう考えてみてもおかしな話だと思う。そういうふうに見られたってしかたがないと思うのですね。いまごろになって業者問協定を廃止して十六条方式にする、手おくれもいいところであると思いますけれども、しかし、今日政府が提案いたしました十六条方式による法改正も、厳密に検査していくとまだ疑問点がたくさんあるように私どもは見ます。しかも、先ほど言いましたように、今度の答申は中間答申であり、暫定的なものでありますから、ほんとうの意味のものをつくるのは、いま審議をしております中賃審において近く出されると思うのですね。そういういろいろな事情、そういう段階にあるのですから、政府はそうはやらずに、もう少し周囲の状況、中賃審の審議の状況などもにらみ合わせながらこの問題を取り扱ったらどうか、こういう意見が労働者側その他学識経験者の間から出されておる。こういうことを知っておるかどうか。また知っておるとするならば、政府のほんとうの腹をひとつお聞かせを願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/40
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041・小川平二
○小川国務大臣 さきになされました答申はいわば中間答申でございまして、今後の基本的なあり方につきましてはなお引き続いて御審議を願う、少なくとも当面なさるべき改正について答申をいただいておるわけでございまして、これは将来最終的な形の答申がなされます場合にも、少なくとも今回の改正は、その際において実行さるべきものとして答申がなされるに違いない、そういう答申である、このように私どもは考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/41
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042・枝村要作
○枝村委員 大臣の答弁はよくわからぬですけれども、では話をかえていきます。
一定の役割りを果たした、こういうことを言っていらっしゃいますが、具体的には一体どういうものか、ひとつそれを示してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/42
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043・村上茂利
○村上(茂)政府委員 現行最低賃金法が制定されたのは三十四年でございますが、それ以前の段階におきましても最低賃金制度を実施するという動きはあったのでございますが、なかなか実現するに至らなかった。そして三十一年ころになりますと、行政指導によりまして業者間協定の方式の最低賃金ができてきたのであります。そのような傾向を踏まえまして最低賃金制度が法的な問題として扱われ、そしていろいろ議論がありましたけれども、ともかくも日の目を見たのが三十四年のことであります。しかし法律はつくられましたけれども、最低賃金決定の数は少なかったのでございます。その後さらに審議会の答申を得まして、重点業種について金額の目安を設定いたしまして、計画的に最低賃金制度を普及するという形で進めた結果、今日のように約二千件、四百数十万の適用労働者がいるという程度まで発展してきたわけであります。しかしながら一方におきまして、業者問協定方式が中心となる以上、その業者問の協定を可能ならしめるような業者のグループと申しますか、そういうものがない場合には、業者間協定方式による最低賃金決定が非常にむずかしいわけであります。
そのような過程をたどりまして、次にはその不備を補うべく十六条方式がようやく昨年ごろから積極的に運用されてまいりまして、最近における傾向はむしろ十六条方式による最低賃金を審議会で決定するという方向に転換してまいりました。そういうような経過の概略を見ましても、業者問協定方式というものが果たしてきた機能と申しますか、それなりに最低賃金というものを産業界なりあるいは労使関係者に理解していただくというためには、非常に大きな役割りを果たしてきたのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。これはただに私どもの認識にとどまらず、最低賃金審議会の答申の中にもそういう趣旨が示されておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/43
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044・枝村要作
○枝村委員 あなたのほうの答弁も、ただこうなったということを明らかにされた経過だけでありまして、ではそれによって労働者の生活権が保護されて、ないしは業者問協定であってやっぱり最低賃金が設けられることによって、他の産業よりもいい意味で普及して発展していったということになってはおらぬのでありまして、適用労働者が四百万か五百万になったというだけで、幾らなってもその賃金が安く、しかも低賃金で押えつけられていくというようなものだったら、これはくそにもならぬわけです。歴史の発展段階をながめて——歴史的史観ですか、こういうことから見れば確かに業者問協定も、悪法も次のいい法律に変えていくための一つのステップとしての大きな役割りは果たす。悪いやつでなければいいものになっていかぬのですから、そういう意味の役割りはあったかもしれませんけれども、業者間協定そのものが、先ほど言ったような目的に合致して、その趣旨に沿った有効な効力をあげた、そういうものでは一つもないと思います。ないからこそ、こう変えていかなくてはならぬということになっておると思います。
それはやっぱり業者が申請権を持って、そして委員会でこれにいろいろ参与して審議して、そしてこういうふうに決定されるということになるのですけれども、しかし、その途中労働省は、それだけではいけないからといって、いろいろ目安賃金なんかもきわめていると思うのです。その点はあなた方からいわせれば、だから必ずしも業者だけがかってにきめていくものではないというようにお答えになるでしょうけれども、なると仮定して、その目安は一体何を基準にしてつくられていったのか、その点をお伺いしたいのです。それで、法第三条の生計費というものは、はたして考慮されておったのかどうか、この点をお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/44
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045・村上茂利
○村上(茂)政府委員 最低賃金審議会で最低賃金額の目安をきめます際には、一般的賃金の上昇傾向、それから学卒初任給、それから消費者物価指数とか、あるいは家計費調査とか、そういった現在求め得られます各種の資料を使いまして、そうして目安の額を決定しておるわけであります。具体的な金額の決定につきましては、労使それぞれの立場からの主張がございますけれども、できるだけ客観的な資料を使い、そしてそれに対する御理解をいただきまして、今日まで最低賃金の目安を決定してきたという次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/45
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046・枝村要作
○枝村委員 そうすると、労働省はいままで一ぺんも生計費云々ということを言ったことをわれわれ聞いたことないのですけれども、法にちゃんと定めてある生計費を基礎にこの賃金を決定していくということについて、審議会に一切まかせてあるから、労働省はそんなことには一切関与せぬという答弁ではわれわれ許されぬと思うのです。それは人事院勧告でも、大蔵省のいわゆる最低生計費ですか、これを算出する場合にもいろいろマーケットバスケット方式とか、あるいはいろいろな科学的な理論的な根拠に基づいて算定されておるのです。ところが、この目安をきめる場合には、そのような同じ政府の部内でも、指導する場合に、労働省の場合は、いいころかげんといっては悪いのですけれども、そういうものに基づかず、それこそつまんでこのくらいがよかろうというような調子で、業者が強力に反対しないような程度のものを目安としてきめていくというようなやり方としか見受けられぬのですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/46
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047・村上茂利
○村上(茂)政府委員 最低賃金額の決定につきましては、最低賃金法におきましても「労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。」こう示されておりますので、現在求め得られますいろいろな資料によりまして、労働者の生計費、類似の労働者の賃金等を判断いたしておるわけでございます。先生御指摘の、人事院とかあるいは大蔵省のいわゆる生計費と申しましても、人事院の場合は十八歳の標準生計費でございますし、大蔵省の場合は課税最低限度の生計費、こういうことでございまして、一口に生計費と申しましても、いろいろな立場からの理解のしかたがあろうかと思うわけでございます。労働省としては先ほど申し上げましたように、現在各種の統計がございますけれども、生計費の面におきましては、消費者物価指数だとか、あるいは家計収入の調査だとか、あるいは人事院その他の資料も参考にいたしまして、審議会で審議するための基礎資料を調整いたしておるような次第でございます。いいころかげんとか適当とかいうことではございませんで、現在求め得られます資料はあらゆる努力をいたしまして調整し、審議会委員の御判断に供しておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/47
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048・枝村要作
○枝村委員 結局、労働省の指導する目安の額というのは、どう考えてもこれは科学的でない。悪くいえぱ生活保護を受ける人のいわゆる基準を基準に求めておるとしか見えぬ賃金を決定する、そのものを見たらわかるでしょう。失対賃金よりもずっと低い、失対賃金の一番下の二十二ランクの賃金よりも低い賃金を業者問協定、十六条方式でもそれが採用されておる。業者間協定はまだいい。そうなるといま言いましたように、生活保護者の基準を基準とした賃金算出をしておるとしか見れぬのです。そう見てくると、科学的どころじゃない。まるきりつまみの金額できめておるというふうに見られてもしかたがないのじゃないかと思う。しかも、いままでのやり方は、大体最賃法というものは、労働者を守る法律なんですから、業者が申請してきめていくというのは全く筋違いで、むしろ賃金をきめる場合には、労働省がいろいろ資料を集めて、そうして権威のあるものにしていく、これは諸外国みなそうなんですが、そういうたてまえをとっていかなければならぬ筋合いのものなのです。そこまでまだなかなかいかぬにしても、少なくとも労働者の共感を得るような、これならという水準を出していくためには——先ほど言いましたような人事院と大蔵省がきめるものはこれまた別だといっても、根拠そのものにはなり得るものなんですから、そういうふうにすべきなのに、いままでしなかった。こういうやり方は、いままでのものとしてではなく、将来にも関連することでありますが、やはり大きく考え直していかなければならぬ、こういうふうに思うが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/48
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049・村上茂利
○村上(茂)政府委員 御指摘のように、できるだけ客観的な資料を整えまして、合理的に金額を算出するということは、そうであらねばならないと思います。ただ、たとえば失対賃金のように、屋外労務者の賃金を基準にしまして算出するというものは、そもそも屋外労働者の賃金が高いわけでございますから、かなり高いものに設定される。そこで、最低賃金の額を云々します場合は、いわばスタンドポイントをどこに設定するか、年齢は何歳を見るか、それから労働としてはどの程度の労働を見るか、その基準が明確になりませんと、金額の高低は、さまざまな形が出ると思うわけであります。現在の最低賃金は、むしろ無技能、いわば雑役のようなものも含むといったような観点で金額を考えます。そうしますと、金額は非常に低くなるわけでございます。しかしながら、生産に携わる基幹労働を中心にして最低賃金額をきめるということになりますと、かなり高額なものになろうと思います。したがいまして、できるだけ合理的な資料を用いまして、科学的に金額を算定することが望ましいのでございますけれども、そのよって立つ基準をどこに求めるか、年齢的に、あるいはまた労働の種類について、何にその基準を求めるかということが明確になりませんと、場合によっては非常に低い額になる、ある場合には高い額になる、額のきめ方についていろいろな形のものがあらわれてくるだろうと思います。そういった問題も含めまして、審議会でいろいろ御検討を賜わりたいと労働省は考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/49
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050・枝村要作
○枝村委員 そういういろいろ資料の求め方、生計費にしても、イワシ一匹であれば、それは安いものになるかもしれません。しかし、それは作為的なものであって、常識的にわれわれが考えるのは、文化的な生活が営まれるという憲法に示されておるそういうことだと思う。それはどうかといえば、一般水準と比較していくことなんですが、いま言っていることは、先ほどから言っているように、科学的な根拠は何もない。生活保護を受ける者を基準にしてやられておると見られてもしかたがない。きわめて低い賃金が決定されておるのです。
そこで、労働大臣にお伺いするのですが、労働者が生活を維持していくために、あるいは国民として文化的な生活ができるようにするための必要な生計費は、いま一体幾らくらいあればできるかということです。これをひとつ示していただきたいのです。幾らあったら食えるか、——食えるかということではなく、あたりまえの生活ができるか、今日の水準をひとつ示していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/50
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051・小川平二
○小川国務大臣 生計費と申します場合に、各種の生計費があり、それぞれ別の算定方式が存在していると存じます。いま、それぞれについて、事務当局からお耳に入れたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/51
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052・村上茂利
○村上(茂)政府委員 これは先生御承知のことかと存じますが、一般的に言えば、理論生計費と実態生計費と、生計費という考え方について基本的に大きな二つの見方がございますし、それから額につきましても、大都市を中心とする、小都市を中心とする、全国平均でいくというような地域差をどう考えるかという問題もございます。また一番問題になるのは、その生計費といいます、その生計費の内容ですが、ただいま先生御指摘のように、イワシ一匹といったような、もう最低限度ぎりぎりの生活が中心になるのか、そうではなくて、人事院がやっておりますような十八歳の標準生計費を考える、生存するための最低の生計費を考えるというようにいろいろあるわけでございます。労働省としては、別に公式に、こう考えているという数字を持ち合わせておりませんので、そういう他のほうで算出している資料を使うということにしているわけでございます。どういう問題認識のもとに生計費を考えるかということによって、内容がかなり違ってくるというふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/52
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053・枝村要作
○枝村委員 やはり労働省が、ちゃんとした具体的な数字を示すだけの用意と準備を整えぬというところに問題がある。どれだけの生計費なら、労働者が文化的な生活をしていくことができるのかというくらいのものを持たずに、最低賃金制を確立していくとか、最賃法をつくっていくというようなことを言っても、これまた全然——たとえできたにしても、今後の運用というものは、もうまるっきりできなくなるのではないですか。そういう自信のない、他人まかせ、審議会がやってくれるであろう、こういうことでいいものかどうか、こういう疑念が当然わいてくると思うが、その点、労働大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/53
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054・小川平二
○小川国務大臣 最低賃金を設定いたします場合に、生計費が考慮さるべき一つの大きな要素であることは当然でございます。そのほかに物価でございますとか、あるいは企業の支払い能力でございますとか、各種の要素が問題になると存じます。私どもといたしましては、審議会の御審議に役立たせますように、あとう限り広範な、十分な資料を提供して御審議を願う、こういう態度で臨んでいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/54
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055・枝村要作
○枝村委員 ここで望むのは、いままでのような態度ではなく、やはり労働省自身がこれだけあるべきだということを示していかれるべきだというふうに私は思います。それから、いままで業者問協定で効果があったということのうちの一つに、いわゆる五百七十万か六百万の労働者に適用された。しかし、これはわずか三分の一くらいです。だから、あと残された人たちはそのまま放置されている——されているのではなしに、やはり労働省が放置しておった。この責任は免れないと思うのです。ですから、今後十六条方式になったら、その人たちはすべて救われるかというと、いままでの大臣答弁子の他から見ると、そういう確信もないようであります。そうだとすると、今日の世の中のように、ますますインフレ傾向が出てまいりますと、そういう部類に属する労働者は、すべての条件がますます低下していって、ほんとうに取り残された人たちの層に加わってくる。むしろそういう人たちは、ますます拡大されていくという傾向にあるのであります。そういう人たちを、では労働省は当面どうして救おうとするのか、こういうことをお聞きしたいのです。業者から申請することをあえて待っておるのか、あるいは業者がいまきめたものでも改定してくるのを、受け身の形でただぼんやり待っておるのかどうかという点であります。その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/55
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056・小川平二
○小川国務大臣 あるいは御質問の趣旨を私が取り違えておれば恐縮でございますが、従来業者間協定方式を中心として賃金の改善をはかってきたわけで、それなりの実績をあげております。しかし、いま御指摘のように、今後なお賃金の面で改善を要する労働者が多数取り残されておることもこれまた事実でございます。かような点にかんがみまして、今回改正法案を提出して御審議を願っておるわけでございまして、現行法によりますれば、審議会方式を適用し得るのは、他の方式によることが困難または不適当な場合に限られておりますのを、そういう制約を解き放しまして、これからはもっぱら審議会方式によりまして、なお取り残されておる多数の労働者の賃金の改善を進めていきたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/56
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057・枝村要作
○枝村委員 しかし、それではもう労働大臣のお話だけに終わってしまうような気がするんで、具体的にいま取り残されておる人たちをどういうふうに救うていくか、こういうことに対する方針というものが、なければならないでいいんですが、あれば明らかに示していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/57
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058・村上茂利
○村上(茂)政府委員 大臣が御答弁になりましたように、今度は十六条方式でやるわけでございますから、審議会方式で、積極的にその最低賃金適用の一つのプログラムが編成できるわけであります。しかしながら、現に最低賃金審議会でその最低賃金を適用するにあたってどのような進め方をするか、それを全国全産業一律という形でいわば網をかぶせるのか、あるいは産業別、職種別さまざまな方式を用いまして網をかぶせるのか、あるいはまた地域別に網をかぶせるのかといった点が、まさに基本問題として検討されておるところでございます。労働省といたしましては恵まれない労働者にできるだけすみやかに最低賃金制度が設定されますことを強く望んでおりますけれども、何分にもいま申しましたような最低賃金方式をどのような形を考えるかという議論をいま熱心にされておるところでございますから、今日の段階におきましては、どの方式でどのような網をかぶせるかということはお答えいたしかねる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/58
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059・枝村要作
○枝村委員 十六条方式で何とか救われるというようなにおいのお話がありましたが、これはまたあとから十六条方式の問題について若干質問していきますが、どうもいまのところ、私どもの聞くところでは何ら具体的に十六条方式で救われるというものを持っておらぬような気がするのです。あとから申し上げますけれども、十六条方式を採用したのは、単に批准をしやすくするためだという政治的意図だけであって、実質効果のあるものの法改正ではないような気がするのです。まあそれはあとから言います。そういうふうに見ていくわけですが、いまのお話もありましたように、業者がそういうふうに申請し、あるいは改定してくれることを望むという態度ではやはりいけないと思うのですね。もう少し積極的にやらねばならぬと思いますが、しかし現行法ではどうにもならぬという弊害があるようであります。それはまたあとから言います。
今度は具体的に入りますけれども、現行法が、いま言いましたようにいろいろな問題点があって、実際には実効性がないとわれわれは思っておるのです。そうすれば、この法が改正されて、業者問協定が廃止される運命にあるのですけれども、二年間はやはり有効だ、こういうふうになっている。それから新設はもちろん禁止されているのですけれども、その改定は許されておる。これはそうなると、こういうものを残すことによってむしろ混乱が起こるのではないかというように私たちは思うのです。政府の答弁は、混乱を起こさないために経過措置としてというように言っておりますけれども、逆なような気がしてならぬのです。その点はどのようにお考えになっているか、もう一度答弁してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/59
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060・村上茂利
○村上(茂)政府委員 現に約二千の業者間協定方式の最低賃金があるわけでございます。法の改正と同時に現在ありますものを全部廃止するということにつきましては、すでにそれらの最低賃金の実施されております労働者にとりましては、直ちになくなるということは非常な不安定な状態に労働者をおとしいれるというおそれもございますので、二年間は存続させたい、こういう考えでございます。そしてそれを単にそのまま存続するかどうか、金額を改定したいというものは、さらに引き上げるという措置を講ずる、それから審議会で十分検討いたしまして、不適当だというものは改定やそのようなことは認めない、こういうことで、二年の間に一度審議会でふるいをかけるという措置を講ずるわけでございます。そういった段階におきましては、目安的なものをさらに改定して、そしてふるいにかける基準をつくり直すのかどうか、いろいろ問題があろうかと存じます。しかし、現に最低賃金審議会におきまして、運営小委員会で最低賃金額の目安の改定等の問題がいろいろ真剣に検討されておるわけでございますので、この二年間を漫然そのまま経過するということではなくして、有効な、その後の賃金上昇に見合うような形の内容のものに改変いたしまして、審議会にオーソライズして、存続かいなかを決定する、こういう措置を講じたわけでございまして、私どもは最低賃金審議会の答申にそういうような経過期間を設置すべしという内容のものをいただいたということは、非常に適切な方法ではなかろうかと考えまして、改正案はそのような経過措置を設けたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/60
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061・枝村要作
○枝村委員 しかし、業者問協定というものは、やはり問題が多く残されておる、こういうように大体みな考えてきておるのですから、こういうものをやはり二年間置いておくということは、むしろそれを逆用して、ますます低賃金に押えつけられるという労働者の存在を、依然として認めるということになるのではないですか。ですから、この法が改正されるなら、直ちにいまきめたやつは全部廃止して、そうして新しい方式——これに賛成するかせぬかはわかりませんけれども——に切りかえていくという、そういう勇断をむしろとるべきではないか。それでこそ法改正のあなた方の目的が達成されるのではないかと私どもは思うのですよ。ですからどうせ変えるならやはりそういうことをして、経過措置というようなことで、こういうごまかして温存させていくようなやり方というやつはいけないと思う。ただ、あなたのほうの答弁の中で、そういう改定の問題は、それはなるべくさせぬようにする、そして十六条方式でカバーしていくというように言われるかもしれませんけれども、しかし、法そのものは、生きておればそれはやはり利用して、なるべくいわゆる業者が申請しておったこの権利というものを守ろうとする、こういうのがやはり使用者、企業者に当然本能としてあるわけです。それを生かすことは、いま言いましてように、むしろ逆の意味で混乱を招いてくる。あなた方の混乱というのは確かに一時的にはあるかもしれません。しかし、苦しみの中から新しいものを生み出すというのですから、そんなことはあってもあたりまえなんですから、そこは勇断をもってやるべきじゃないか、こういうふうに思のですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/61
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062・村上茂利
○村上(茂)政府委員 私どもは、最低賃金法運用の経験にかんがみまして、問題になる点はいろいろありますが、一番問題になるのは、金額だと思うのでございます。その金額を、どういう額のものに設定するかということを抜きにして、ある制度を廃止するか、あるいは改正するかということを論じましても、実際労働者の身になって考えますと、一番肝心なものは金額だ、こういうことになろうかと思うわけであります。そういう意味で、その法改正と同時に制度全部改正いたしまして、業者問協定を廃止してしまったという場合には、現在あります二千余の最低賃金というものがなくなって、金額について全然何らの基準もない状態に放置される。そのような状態がいいのか。そうでなくて、その後の賃金情勢を考えまして、目安を改定しまして、そして、より有効なものに設定していく。しかも、それを業者問協定方式として存続せしめるのか。そうじゃなくて、十六条方式をフルに活用いたしまして、そしてそれに抵触する業者間協定方式の最賃を廃止していくという方向をとっていくのか。これは、今後の運用の非常に重要な点でございます。私どもはいたずらに業者問協定方式を温存するということを願っておるわけではございません。むしろ十六条方式の活用によりまして、適正な金額に改定をいたしまして、それに抵触する業者間協定方式の廃止という形になるのではなかろうかというふうに考えております。
現在の傾向を申し上げますと、この改正法案が国会に提出されたというこのような動きからしまして、業者問協定方式の申請は最近は出てこなくなりました。したがいまして、このような方式を長らえさせるというふうに私どもがもし考えるとしましても、もう産業界の大勢はそういう形になっていないのじゃないかというふうにも想像できるわけでございまして、いろいろお考えはあろうと存じますけれども、現在最低賃金審議会で審議されておりますその結果を私どもは待ちまして、今後の運用に誤りなきを期したい、かように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/62
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063・枝村要作
○枝村委員 先ほど言いましたように、この十六条方式になりまして、それから業者問協定を新たに申請するということは、これはできません。いままできまったものは改正することが有効にされておるのですね。だったら、ほんとうに労働省が十六条方式でこれを拡大し、拡張して、できるならば、全労働者にそれを適用させるというほんとうの腹があったんだったら、新設は許されぬのですから、いままである五百万なら五百万の労働者に適用されておる業者問協定は、直ちに破棄しても別に困りはせぬ。むしろ破棄したために、そこの最低賃金が保障されずに、ダウンしていくというようなことは、これは絶対にあり得ないことなんです。上げる場合に、改定の意思をもって業者間協定というものは生かされておるのですけれども、それもおそらく彼らは業者間協定そのものを通じて賃上げの改定は申請してこぬと思うのです。だとするならば、何のために置いてあるのか。それは賃金をくぎづけにしておこうという、そういう考え方を持つ悪い業者に対して、やはり一定の法律的な根拠を与えるにすぎないのではないかということになるわけであります。ですから、ほんとうに労働者がそういう行政指導をして、すべての労働者の生活を守る、保護するという立場をとるならば、そういう悪用されやすいような業者問協定というものはやめてしまって、そしてきわめて強い姿勢をもって十六条方式を、その運用方法についてはまだ明らかにされておりませんけれども、あまねく産業にも業種にも適用していくというような態度をとられてしかるべきだ、このように思います。ですから、あることが、かえって私は間違いではなかろうか、こういうふうに考えております。その点についてもう一度、前と同じような返答なら、してもらわぬでもいいですから、何かもう少し考え直そうという回答ならば、ひとつお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/63
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064・村上茂利
○村上(茂)政府委員 これは御承知のように、最低賃金を決定します場合に時間差があるわけでございます。この法公布のごく近い機会に設定されたものと、前年あるいはその前の年に改定されたもの、いろいろあるわけでございます。そこで法施行と同時に改正をすると申しましても、つい最近設定されたものについては金額はそう動かない。しかし、去年、おととし設定されたものについては金額が実勢と合わなくなっておるという場合には、これを改定する、こういうことが考えられます。そういった現存する最低賃金が設定された時期のズレがございまして、一方においては金額にもかなりの高低があるということからいたしまして、経過期間中にこれをどう処理するかという場合には、そういったそれぞれの最低賃金の実態を判断しまして処理するということになろうと私は存じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/64
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065・枝村要作
○枝村委員 その問題はこの程度におきまして、その次に十六条方式について若干お伺いしておきたいと思います。
現状ではどういう業種の内容あるいは地域でこれが適用されておるかということを、簡単でいいから説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/65
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066・渡辺健二
○渡辺説明員 現在の現行法のもとにおきましては、十六条方式につきましては、いろいろ制約がございまして、他の方式によることが困難または不適当な場合にしか発動できませんので、それを活用するに困難があるわけではございますが、昨年の答申が出まして以来は、現行法のもとにおきましても、でき得る限りこの方式の活用につとめておりまして、現在までに全国で三十件、約百五十万弱の労働者に適用を見ておるわけでございますが、おおむねこの方式によります場合には、石炭と金属鉱業につきましては、労働大臣の決定によって全国にわたる坑内労働者につきましての最低賃金が決定されております。それ以外につきましては、各基準局ごとに大体県内全般につきまして業種別、たとえば機械金属であるとか、あるいは繊維であるとか、家具建具であるとかいったような業種別に、各県別に、県の範囲別に十六条が適用されておるという状況になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/66
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067・枝村要作
○枝村委員 金額は最低、最高、標準、幾らですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/67
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068・渡辺健二
○渡辺説明員 金額は、決定されました時期にもよりますし、地域、業種にもよりまして必ずしも一様ではございません。労働大臣が決定いたしております石炭の坑内の最低賃金につきましては、ことしの二月から一カ月二万一千円に相なっております。金属の坑内の最低賃金につきましては、一昨四十年度にきまりました一万六千円というのが現在適用になっておりますが、現在その改正について労働大臣から調査、審議を求め、その審議がいまなされておるところでございます。地方の十六条による最低賃金につきましては、一年ないし一年半くらい前に決定されましたものには五百円前後のものがかなりございますが、最近できております十六条最賃につきましては、たとえば埼玉県の機械金属は一日六百五十円、和歌山は一日六百四十円といったような金額も出ておりますので、最近は、おおむね五百五、六十円ないし六百四、五十円の問ぐらいの金額で十六条の最賃は決定されておるものが多くなっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/68
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069・枝村要作
○枝村委員 最低はたいてい五百五十円と言われましたね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/69
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070・渡辺健二
○渡辺説明員 最近はその程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/70
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071・枝村要作
○枝村委員 そうなると、先ほどちょっと言いましたように、失対賃金の一番下のランクよりちょっと安い、六円ほど安いのですが、そういうふうに業者問協定でも、十六条方式によっても、何ら別に変わりがない。しかもいわゆる大産業の労働者の初任給最低は、ほとんど二万円以上こしておると思うのです。だから、同じ産業でも、それの系列下あるいはその下請の中小未組織のそういう労働者にこの十六条方式が適用されて拡大していくものか、そういう方針を立ててやろうとしておるのかどうか、この点をひとつ率直にお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/71
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072・村上茂利
○村上(茂)政府委員 現在の十六条方式は、非常な制約のもとにあるわけですが、しかも、かなりな速度で昨年一年間に進展してまいりました。業者間協定方式が廃止されますと、十六条方式を今後有効に活用しなければならない、これは先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。その方式が全国全産業一律方式か、あるいは産業別、職種別、地域別か、いろいろ考え方がありましょうが、少なくとも業者間協定方式にとってかわりまして十六条方式が前面に出るのでありますから、今日までいろいろな調査をいたしておりますし、今後もこの制度を有効に活用したいというふうに考えております。すでに十六条方式で、たとえば神奈川の機械金属というような例を見ましても、約三十万の労働者がある一つの十六条方式の最低賃金を適用されるというような形で、かなりまとまったものが包括的に最低賃金の適用を受ける、こういうことになります。そのような段階で、いま御指摘のような下請関係その他の最低賃金をどうするという問題も真剣に検討いたしまして、適正な最低賃金制度を普及いたしたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/72
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073・枝村要作
○枝村委員 そうすると、業種別というのはどのように理解していいのですか。先ほどちょっと私言いましたように、いろいろ制約はされておりますけれども、あまねく産業に関連する労働者にも適用できるような業種選定、といってはおかしいのですけれども、そういう業種として取り上げていくものかどうか。いまのところ金属、石炭といいますけれども、金属というのははたしてどういう種類のもので、どういうふうに全国的に適用されていっているかというのは私よくわかりませんが、ほんとうに金属産業なら金属産業に従事しておる労働者にはみないっておるかどうかという問題もありますし、将来この十六条方式だけで解決できる問題じゃないと思いますけれども、しかしこれをてこに、本格的な最賃制度というものをつくっていくとするならば、その端緒にやはりこれがなるのですから——これがみじめな失敗で終わるか、終わらぬか、それはわかりません。それは労働者の決意いかんにもよりますけれども、将来の発展のためにこの十六条方式が大きく活用され有効性を持っていったとするならば、いわゆるフランスその他でとられておる、諸外国の例にならって、そういうきまったことが拡張適用されるような方向でいかれるものかどうか、こういう問題についてお考えがあれば、ひとつお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/73
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074・村上茂利
○村上(茂)政府委員 現在までの措置は、まず業者問協定方式がつくられておりまして、そしてその上に立ちまして十六条方式というものが考えられておったわけでありますが、今後は業者間協定方式がなくなるわけでありますから、その十六条方式を発動するのも産業別にするのか、職種別にするのか、地域別にするのか、いろいろ考え方があるわけですが、現に石炭産業あるいは金属鉱業、これは産業別の最低賃金を十六条方式で設定されておるわけであります。そういうことが可能なものがどのくらいあるのかということの検討が必要だろうと思いますが、金属鉱業なら金属鉱業、これはすべての金属鉱業にまたがっております。もちろん一部非鉄金属の特殊なものは除いておりますけれども、かなり広範囲にわたりまして、全国的に適用があるわけでございます。そういう適用の難易の問題もございまするから、一がいにこれは産業別、これは職種別といったような判断は困難かと思いますが、相当綿密な調査をいたしまして、可能なものから十六条方式を発動していきたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/74
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075・枝村要作
○枝村委員 いまのところ、具体的にどうするという方針が明らかにされておりませんが、将来やはり産業別に地域の格差はあっても、漸次それを解消しながら進んでいくとすれば、やはり社会党が提案しておるように、全国産業一律という方式によりましてむしろやっていこうという基本的な考え方で、もし通るならば、当面この十六条方式というものを進めていったらいいじゃないか、また必然的にそうなるのじゃないかというふうに考えるのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/75
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076・村上茂利
○村上(茂)政府委員 すべての労働者に最低賃金を適用するという命題のもとに考えております場合には、ILOでいろいろ考えております考え方、たとえば産業別、職種別、地域別、そうした各種の方式を総合適用いたしまして、すべての労働者に適用するという形もあろうかと思います。それから、いま先生御指摘のように、全国全産業一律という方式もあろうかと思いますが、その場合、具体的に額の設定の場合に、生計費はどうするのだ、何はどうするのだといったような問題を考えますと、どういうふうにかみ合わしていくのか、いろいろ議論があるところだと思います。いませっかく最低賃金審議会で検討されております段階でございますので、どのような方式がよいとか、どうしたらよいというような考え方は、ここで申し上げることは差し控えたいと存じますけれども、いずれにしましても、労働者にできるだけ広く適用される最低賃金制というものを考えていきたい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/76
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077・枝村要作
○枝村委員 きのうの海部委員の質問に対して大臣が答弁されましたこと、それから本会議でも同様な答弁がありましたのは、今後十六条方式を適用する場合には、いわゆる重点産業を中心に進めていく、それからあと漸次……、こういう方式になるのでしょう。ところが、重点産業というのは、やはり政府が助成すべき産業、政府が望むべき産業、こういうものだというふうにわれわれは見るのです。そうすると、サービス業とか地場産業などは、やはり政府が重点とすべき産業でないという非重点産業になる。こういうのは依然としてあと回しにされる、こういうことになるわけです。そういう考え方を大臣も明らかにされたということは、あなたは十六条方式が採用されても、いわゆる最低賃金制を施行する一つのほんとうの目的というものはかなえられてはいない、かなえようとする、そういういつもどうもならないような気が答弁の中からはするわけであります。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/77
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078・小川平二
○小川国務大臣 これは重点産業とか、あるいはいわゆる重要産業という意味で申し上げておるわけではございません。この際に特に急いで賃金の改善をはからなければならない業種がどのようなものであるかという点に着目いたしまして、重点となるべき業種についてさしあたっては普及をはかっていく、そういう意味でございますから、その点はどうぞそのように御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/78
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079・枝村要作
○枝村委員 むしろ大臣答弁とすれば、いわゆる中小企業の日の当たらない、非常に低賃金で貧しい生活に甘んじておる人たちを救い出していく、それを中心にこの方式を採用していくというように答えたほうがいいと思うのです。そうせぬと、重点産業といえば、そういう人たちのところはいいとは言いませんけれども、ある程度日の当たるところにあるとするならば、そういうものをどんどん助成していくということは、結局何のために最賃をつくったのかわからぬ。むしろ政府の雇用対策その他の政策の一環としてこの最賃制が運用されるとするならば、これはわれわれから言わせれば、独占擁護の政策の一環として政府が採用しておるのではないかというふうに疑われてもしかたがないわけです。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/79
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080・小川平二
○小川国務大臣 まさに御発言のありましたような趣旨で運用していこう、こういうつもりでおるわけでございます。したがいまして、重点産業というようなことばも使っておらないわけでございます。その点は、ただいま私が申し上げたような意味にぜひ御理解をいただきとうございます。この際、特にあらためてお耳に入れる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/80
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081・枝村要作
○枝村委員 この際、田邊議員に質問をいたします。
きのう海部委員からも質問がありましたが、あまり時間がないようでして明確な答弁が田邊委員から聞けなかったわけなのですが、一つは、全国一律制最低賃金法は、いわゆる支払い能力を無視したものではないか、こういう意見が特に使用者側を代表する方々から出ておるようであります。これに対して、田邊委員は本会議の趣旨説明の中である程度明らかにされましたけれども、この際、これに対して明確にお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/81
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082・田邊誠
○田邊議員 最低賃金法をきめる際に、常に賃金の支払い能力が問題にされるわけであります。特に全国一律制最賃を実施をしますと、支払い能力を越えてこれが設定をされることによっての非常に大きな影響があるじゃないかという疑問が投げかけられておるわけであります。
私は考えるのに、支払い能力ということばの持つ意味自身が、いろいろと問題であろうと思うのであります。個々の企業にわたって支払い能力を云々するということになれば、これはもう当然最低賃金の意味をなさなくなる、こういうふうに私は思っておるわけであります。一つ一つの企業について、その支払い能力を越えるから最低賃金をきめることはでき得ない、こういうことになりますならば、いわば低賃金で悩んでいるところの労働者の地位を引き上げようというこの法律の持つ意味というのが、ほとんどなくなるわけでありますから、そういった点で、私は個々の企業の支払い能力を云々することは論外だろうと思うのです。
ただ、この際問題になるのは、一つの産業にわたって支払い能力を越えるというようなことが云々されるだろうと思うわけでありますけれども、これはもう枝村委員も御案内のとおり、諸外国において最低賃金をきめ、それが一つの産業の支払い能力を越えるというようなことで企業が倒産をし、企業がつぶれたという例はあまり見当たらないのでありまして、企業のいろいろな近代化の努力、合理化の努力等によって十分補ってきたわけであります。そういった点から言いますならば、ここでもって個々の産業の支払い能力を問題にすること自身が、いわば最低賃金を低く押えようとする一つの有力な意見になっていることをこの際私どもは十分知らなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
最近支払い能力の問題よりも、労働者の生活水準のことを重点に置かなければならぬということが強く主張され、ILO二十六号条約の採択の際にも支払い能力が前提ではないということが強く主張されたのは、やはり私はそこにあるだろうと思うわけでありまして、そもそも最低賃金が低賃金労働者を救うという、労働者保護立法であるというこの大前提に立ちますならば、このことは特に銘記しなければならぬと思うのであります。しかも、支払い能力といいますけれども、これは、企業はあくまでも一定の利潤を確保して、その上に立っての支払い能力を云々するわけでございますから、一律制最低賃金が、直ちに支払い能力の限界を越えるということだけでその企業がつぶれるというようなことに結びつけることは、きわめて早計であろうと思うわけでありますし、また支払い能力自身が、これはその時代時代、その経済の動向によって変動するものでありまして、決して固定化しているものではございません。
そういった点から見ますならば、この支払い能力だけを特に取り立てて、私どもが提案をしている一律制最低賃金についての反対意見としてこれをお述べになることは、きわめて現在の時代に即応しないことではないか、こういうように私は考えておるわけでありまして、おそらくこの一律制最低賃金が実施をされますならば、それに対して企業は、それ相当の対応する策を講ずる中でこれを切り抜けることはできるだろう、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
しかも労働者側からいいますならば、いま申し上げたように一定の利潤を確保する、こういう前提に立った支払い能力を云々することはあくまでも反対をする立場に立つだろう、こういうふうに思うわけでございまして、労働者の生活を守るために私どもはあくまでもこの問題は労働者側に立った生活水準の引き上げ、こういうことを最重点にしなければならぬ、これを私は特に強調いたしたいと思うわけであります。しかし、もちろん使用者、労働者を含めての最低賃金委員会において決定するのでありますから、昨日も申し上げたとおり、企業の実態、各産業の実態についてこれを全部無視するような、そういう最低賃金がきまるはずはない、こういうように私は確信をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/82
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083・枝村要作
○枝村委員 そうすると結局、支払い能力を云々して全国一律、全産業一律の最賃制に反対しようとする人は、まあためにするためのものだというように理解してよいと思うのです。諸外国の例を見ましても、田邊委員が言われましたように、支払い能力云々でこの最低賃金を論ずるところはないようでありますから、社会党提案のこの法案が実施されることによってそういうことはないということがいまの答弁で明らかにされたわけであります。
そこで、社会党案の最低賃金制の実施は、結局労働者にどういう影響を与えるか、単に労働者だけではなくして、国民生活の向上の部面でどういういい意味の影響を与えるか、これをお伺いしたいのであります。マイナスがあるならばまた別でありますけれども、私はないと信じておりますし、諸外国の例を見ましても、最低賃金制、いわゆる幅の広い全国的な性格、産業別の性格を持つこれが実施されたために、国民生活全体にはいい影響と、産業発展のための効力を得るために生まれてきているというように伝えられておりますし、ここにも書いてあります。それらの点もいろいろ考えますと、結論的にはいま私が言ったようなかっこうになると思いますが、田邊委員はどういうように考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/83
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084・田邊誠
○田邊議員 いま御発言がありましたとおり、最低賃金法が決定をされることによって、過去においても労働者の生活水準を引き上げる役目を果たしておる、これは私は疑いない事実だろうと思うのです。私どもは一律最低賃金制の実施によって、さらに日本の中における極端な低賃金労働者の層を逐次なくすことができるというふうに考えておるわけでございますし、そういった点から労働者をはじめとする国民生活全体の水準を引き上げる重要な役目を果たすだろうと思っておるわけであります。しかも、この最賃制の実施によって、さらに労働者のいわば権利意識を目ざめさせ、使用者と労働者の間において、その労働条件の維持改善のために積極的な活動が推進をされるだろう、こういうふうに思っておるわけでございます。
ただ、私がこの際率直に申し述べたいのは、この最低賃金制なるものが実施をされておるからといって、そのことだけで労働者の生活が極端に向上するというふうに考えるのは、これは早計だろうと思うのです。あくまでやはり労働組合なり、労働者と使用者との間における団体交渉、いろいろな交渉によってその地位を高めることが第一次でありまして、この最低賃金制というのは、いわば補完的な第二次的な役割りを果たすものである、したがって、労働者のいろいろな自主的活動というものが主体である、それとお互いに相補う中でもって、その効果をさらに発揮するものである、こういうふうに考えるわけでありまして、あくまでもそういった意味ではその効果は部分的である、こういうふうに認識をしなければならぬと思うのであります。しかし、そうは言いましても、この最低賃金制が果たしてきた役割りというものは当然無視できないわけでございますから、私どもはそういった意味合いで今後ともこの効果をさらに倍加するような方向に向かって、考え方を新たにしていかなければならない、このように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/84
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085・枝村要作
○枝村委員 では田邊委員に対する質問はこれで終わります。
次に、労働省にお伺いいたします。労働基準法は一体憲法第何条によって定められておるのか、ひとつ基本的な問題をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/85
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086・村上茂利
○村上(茂)政府委員 憲法第二十七条第二項の「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」その規定を受けまして制定されておる法律でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/86
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087・枝村要作
○枝村委員 それと同時に、二十五条の文化的な生活を営むという、これの精神もやはり貫かれておるのではないかというふうに思います。そういたしますと、現行の最賃法はこの精神を貫いておるのではなくして、憲法精神を侵しておるのではないか、ないしは骨抜きにしておるのではないか、このように思うのです。それは一体何かというと、その根拠は、この最賃法が制定される以前は、以前の労働基準法の中にあった最低賃金の項は、明らかに憲法精神を貫き、そして労働者の生活を保護するという、こういうことだったと思うんですね。ところが、新たに最賃法が制定されると同時に、その条項は二十九条から三十一条まで全部削られた、こういうふうになっておるわけです。これは明らかに私が言いましたような憲法精神違反ではないか、違反と言わぬまでもそれが侵されて骨抜きにされておるのではないか、こういう考え方を持ちますが、どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/87
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088・村上茂利
○村上(茂)政府委員 枝村先生御質問の趣旨を、あるいは十分理解しない答弁になるかとも存じますけれども、一つには法律の精神の問題と、一つは法律の体系の問題があるだろうかと思うわけでございます。かつて労働基準法の中に、最低賃金に関する条項が定められておりましたことは御指摘のとおりでございます。しかしながら憲法二十七条第二項で申しておりますのは「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」法律で定めるということを示しておるわけでございまして、労働基準法という法律の中で定めなければならないという趣旨ではないわけでございますから、最低賃金制度を労働基準法とは別な法律で定めるということは、法的には何ら差しつかえないことではないか、かように存ずるわけであります。
それから、次の問題といたしまして、しからば現行の最低賃金法の考え方が、憲法二十五条の生存権保障の規定の精神というものを受けていないのかどうかということでございますが、現行最低賃金法の内容としますところは、最低賃金のきめ方の方式をきめておるというのが主たる内容でございますが、問題は、賃金額の点にあるわけでございます。先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、最低賃金額の決定につきましては、労働者の生計費とか、あるいは同種の労働者の賃金などを考えまして最低賃金額を定めるように、こういう趣旨は明らかにされておるわけでありますので、憲法第二十五条及び労働基準法第一条に定めますところの労働者が人たるに値する生活を営むための云々という考え方、この考え方自体は最低賃金法におきましても抹殺されておるものではない、むしろ最低賃金額の決定の考え方自身の中には、そういうものが生かされておるというふうに私ども考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/88
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089・枝村要作
○枝村委員 まあ法体系の問題であろうが何であろうが、憲法が最高のものであり、その下に労働基準法というものが設けられておるんです。だからそれは憲法の範囲内において定められるべきものであります。ですから、そういう意味では基準法はその精神によってやはり貫かれておるわけです。その基準法の中の、最低賃金の項がこの最賃法ができたために削られる、まあ削られてもいいでしょう、削られてもいいですけれども、その定められた精神を侵すような決定が最賃法で採用されるとするならば、これは法律ができたからしかたがないということではなくして、それ自体すでに骨抜きにされ憲法を侵害しておるのではないか、こういう考え方を持つべきことが正しい。ですからそういう法律は、これはもう憲法に違反している法律ですから、直ちに破棄してもとに戻すか改めるかすべきだと思う。今度の十六条方式も、もとの基準法にありました最低賃金という項、二十四条ですか、これに戻ってきたようなかっこうにされておるということですね、精神的に言っても、条項的に言っても。そうだと思う。だとすれば、いまの最賃法はやはり憲法、労働基準法を侵しておる、ないしは骨抜きにしておるということを、政府みずからが法体系の上で認めておるのではないかというように考えられるわけです。それで、昔の——昔と言ったらおかしいのですけれども、削除される前の二十八条から三十一条というのは、あなた知っていらっしゃるでしょう。特に二十八条は、「行政官庁は、必要であると認める場合においては、一定の事業又は職業に従事する労働者について最低賃金を定めることができる。」というのですね。今度、十六条方式がこれだと思う。ですから、行ったり戻ったりしておる。行ったり戻ったりする間のその期間というものは、少なくとも憲法、労働基準法の精神に違反した——ということばはいけぬかもしれませんが、やはり若干これを侵しておったということになるのではないかと私は思うのです。ですから、現行の最賃法というものは、いろいろILOとの関係その他、労働者の生活を保護するという精神に欠けておるということと、もう一つ一番大きな、憲法を侵しておるということにもなってくるのではないかというふうに私は見るのです。この私の意見に対して、労働大臣はどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/89
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090・小川平二
○小川国務大臣 御質問に対しましては、ただいま基準局長から御答弁申し上げたとおりでございます。憲法の趣旨を、現存の諸条件のもとであとう限り貫徹をしなければならない。そういう趣旨で立法がなされておる、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/90
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091・枝村要作
○枝村委員 まだ、たくさんありますよ。基準法の二条の、対等な立場で労働条件を決定するという、これも現行最賃法では全然認めていないわけなんですからね。特に、業者間協定方式を採用してやる場合には、はっきりそれが言えるわけであります。そうして基準法では、労働時間や休日は全国一律にちゃんと制定しておる。ところが、賃金だけはそういうことをさせないという。こういうことも実はおかしな関係に置いておるのではないか。同じ法律の中でそういうことをやっておるということは、賃金だけ特別な何かの政策で別に扱おうとする意図がある、こういうふうに見ても間違いないのではないかと思います。
さらに、第三章の二十四条の賃金の支払いの項、この精神は、労働者の生活を保護するという立法精神であるということは明らかだ。制定された当時、労働大臣は社会党の加藤勘十氏であったようであります。それから基準局長は寺本広作氏であったようであります。この人はいま熊本県知事です。特にこの人が書いた本の中にも、そういうことが明らかにされておるのです。当時論争になったのは、不景気であるときには賃金の支払いも、あるいは延ばしたり停止したり、形が違って、現金で払わなくてもいいとか、ここに書いてあるようなことが当然起こり得るから、それを抑制するために二十四条がこしらえられた。それは相当反対もあったようであります。不景気なときには、企業の経営の困難な中から、賃金の支払いをいろいろ変更したりなんかするとか、あるいは毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないという事実も、法で規制することはないじゃないかという強力な意見もあったけれども、当時、立法精神を貫くためにこの条項に決定したといういきさつがある。こういうふうに寺本さんは書いておられるようであります。
だとすれば、これはやはり中小企業などの未組織労働者に対し、最低の生活を保障し、賃金支払いをちゃんとこういうふうに定めて、生活を脅かさないようにするための法律であると思うのですね。この精神からいいましても、そしてこの全体を流れる、憲法から労働基準法のこの精神からいたしましても、現行の最賃法というものは、先ほどから言うように、どうもその精神に違反し、侵しているような気がしてならぬということの結論に到達するわけであります。私はそういうふうに考えます。
もう一度質問いたしますけれども、先ほど言いました旧法の二十八条のこの規定は、今日政府がとろうとしておる十六条方式と同じものであるかどうか、この点をひとつお聞きしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/91
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092・村上茂利
○村上(茂)政府委員 御指摘のように労働基準法二十八条の規定にございました最低賃金の制度は、「行政官庁は、必要であると認める場合においては、一定の事業又は職業に従事する労働者について最低賃金を定めることができる。」こういう規定になっておりまして、第二十九条で、審議機関として賃金審議会制度を定めておったものでございます。したがいまして、この部分と現行最低賃金法の十六条を対応して考えますと、九条方式、十条方式などの制約がない改正法における十六条の方式を考えてみますと、実質的にはほぼ共通のものがあると申して差しつかえないと存じます。
先ほど、そのほかの御質問、御意見もるるございましたけれども、第二十八条との関係の部分についてだけお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/92
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093・枝村要作
○枝村委員 労働大臣にもう一ぺん聞きます。
いま、共通のものだというお答えがありましたのですが、では、これまで十年ですかの間、なぜああいうふうな業者問協定を主とした最賃の決定のしかたをしたんですか。しかも、それを放置しておった。こういう政治責任はやはり免れるわけにはいかぬのです。歴代の労働大臣も、初めの大橋さん、石田さん、——石田さんからだいぶ狂ってきたんですけれども。この現行法はきわめて現状にそぐわぬ、近いうちに労働者の要求するような最低賃金制度を取り入れなければいかぬと言っておった。それがずっとこっちにまいりまして、いまでは、そういうことは他人が言ったようなことばににおわせてごまかしていこうとするのは、どうも私どもとしては納得できない。しかも、いま言ったように、十何年間、法の精神に反するような、憲法の精神に反するような最賃法を放置しておいた。そうして労働者自身を苦しめてきたということに対する責任の問題について明らかにしてもらいたい。本会議では、総理大臣はそのことについては一つも触れなかったと思いますけれども、ひとつ労働大臣からその点について答えてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/93
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094・小川平二
○小川国務大臣 労働基準法にかつて存在をしておった規定と、現行の十六条とは、趣旨において同じものじゃないか、しかるにもかかわらず、長い年月がその間に経過しておって、結局同じところへ戻ってきておるんじゃないか、こういう趣旨の御質問であろうと存じますが、基準法のただいま御指摘の諸規定が削除された当時の経緯等について十分存じておりませんので、この点は基準局長から答弁を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/94
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095・村上茂利
○村上(茂)政府委員 かつて労働基準法の中に最低賃金に関する条項が二十八条以下にあったのでございますが、その条項によりまして、現実に最低賃金を設定するという現実の問題になりますと、いろいろ問題がございまして、中央最低賃金審議会でこの問題を具体的に扱ったのは、昭和二十五年と記憶いたしておりますが、二十五年に第一回の会議が開かれまして、最低賃金制をどうするかということが論議されたのでございます。その後、審議会でいろいろ議論しておりましたが、昭和二十六年七月の第十回の会議におきまして基本方針を決定したのでありますが、その方針として、最低賃金制は一般産業の労働者を対象とするものと、これを適用することが困難な低賃金業種の労働者を対象とするものとの二本立てを原則とするというような方針がきめられまして、いわゆる日の当たらない労働者に対する最低賃金決定という観点から、絹人絹織物製造業、家具建具製造業、玉糸座繰り生糸製造業及び手すき和紙製造業の四業種を対象といたしまして、これに最低賃金を設定しようという試みがなされたのでありますけれども、その結果は十分実を結ばなかったといういきさつを私どもは承知いたしております。
そのような経過の中に、行政指導によりまして業者問協定方式なるものが静岡のかん詰め業者の間において設定され、それが各地に普及してくる、こういう経過をたどったのであります。
そのような規定は基準法上ございますけれども、なかなか最低賃金が具体的に設定されなかったというかなり長期にわたる経験と、業者問協定というものが指導によって逐次設定されてきたという事実の上に立ちまして、最低賃金制度をどうするかという検討が再びなされました結果、現行最低賃金法が昭和三十四年に制定されたということに相なるというふうに私ども承知しておるわけでございます。
そこに法律制度と現実との間の関係がどういうふうに発展していくかということについて、当時、これは申すまでもないことでありますが、敗戦後の非常に混乱した経済の中からだんだん経済が立ち直りまして、そして昭和三十年代の好況期を迎えるわけでありますが、そういった経済の発展、変動の中における最低賃金制度の考え方というものが、いま申しましたような基準法上の制度と、現実との関係がどう動いてきたかという点を思いあわせまして、私どもそれなりの理由があったのではないかというふうに存じておりますが、いずれにいたしましても、最低賃金審議会の答申を得まして、三十四年に法改正をしたということでございます。それがほぼ十年近い今日に至りまして業者問協定を廃止する、こういう段階に立ち至ったわけでございます。
先ほど来枝村先生が御指摘になりました憲法との関連においてどうかという点につきまして、これはいろいろ御議論があると思いますけれども、いわゆる審議会方式が中心になるという形がこの際明確になりましたことは、方向としては私ども至当な方向をたどっておるのじゃないかというふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/95
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096・枝村要作
○枝村委員 もうあまり時間がありませんが、まだまだお尋ねしたいことがたくさんあるわけなんです。特にILO二十六号条約と今度の改正法との関係について、まだわれわれとすれば抵触する部分がたくさんあるような気がいたします。その解明が必要だと思います。
それからまた、政府のこれまでとってきた態度は、きわめて変えられてきておる、変化してきておる。これはやはり政府自身の基本的な考え方というものが確立されておらぬその証拠でありますから、この政治的な責任についての追及も必要だと思うのです。いままで申しましたけれども、これはまだまだほんとうの核心には入っておらぬような気がいたしますから、これもまだ残されております。
しかし、いま申しましたように、あまり時間がありませんから結論に入っていくわけでありますが、今回の法改正は、いままでの質疑応答の中で明らかにされておるのでありますが、いわゆる中間的な答申に基づいて、それによってこの改正法が提案されておるのであります。とりわけ、ILO二十六号条約を批准したい、そしてそれに抵触しないための法改正の目的がどうも強いような気がいたすのであります。十六条方式によって恵まれない労働者があまねく、全地域に最低賃金の額が適用されていくというような内容を持つ法改正ではどうもないような気がしてならないのであります。しかも中賃審では本格的な討議をいまからするといっておるし、中賃審の中のいろんな意見も、法改正を求めておるこの内容についてもILOとの関係については疑義があるような点がまだ完全に解消されておらないように見えます。ですから本来の目的であるところの労働の価値を評価して、再生産に必要な生活をなすに足る賃金を国によって保障するという制度への改正ではない、そういうようにはどうしても受け取れないという感じを私は受けたのであります。先ほど言いましたように中賃審ではいま本格的な審議が行なわれておるのでありまして、しかもそれは最後の段階に到達したと聞いております。ですから近く答申が出されようとする、こういう段階にあると思うのです。だとすれば、先ほどちょっと言いましたけれども、このように急いで不安定な改正法を通さなくてはならぬという理由は一つもないような気がするのであります。
そこで、小川労働大臣にここでひとつお聞きしたいのは、むしろ決意として表明していただきたいのは、過去において大橋あるいは石田労働大臣が発言したこと、それは労働者の、あるいは国民の多くの人に歓迎され、期待されたことだと思う。それをあなたは意識を十分しながら、思い切った本格的な最賃の制度を打ち立ててもらいたいと思います。そして近代国家の面目にかけてあなたのやったことが世界史の一ページを飾るように、それくらいの決意を持って、気魄を持って臨んでいっていただきたい、こういうことを最後に申し上げて、ひとつ御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/96
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097・小川平二
○小川国務大臣 今回中間答申を受けて、改正案を提出いたしまして御審議を願っておるわけでございますが、この最低賃金制の根本的なあり方につきましては、今後継続して審議会で御検討をいただいておるわけでございます。その際におきましては、ただいまも御指摘もございました全国全産業一律最賃方式をも含めて、明確にそういう文言で、これをも含めて御検討願うということで諮問をいたしておるわけでございます。
ただ、審議の模様は、ただいまおことばにありましたように、非常に近い機会に最終的な結論を出して答申を願えるというような状況ではないと承知いたしておるわけでございます。全国全産業一律最賃制というような点につきましては、非常に議論の分かれておるなかなかむずかしい問題と承知いたしておりますから、そういう点から考えましても、非常に近い将来に結論が導き出されるとは考えておりません。が、慎重に御審議を願いました上で答申が出されました暁には、これを十分尊重してさらにりっぱな実効ある最低賃金制度を実現させるために努力してまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/97
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098・枝村要作
○枝村委員 先ほど申し上げましたように、いろいろまだ質問をする点がございますので、きょうはこれで終わりますが、全体の質問とすれば、留保いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/98
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099・八田貞義
○八田委員長 この際、午後二時まで休憩いたします。
午後一時一分休憩
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午後二時二十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/99
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100・八田貞義
○八田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/100
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101・八木一男
○八木(一)委員 先日、労働省の内簡といいますか、課長の通達の問題、課長の報告、連絡の問題で、昨年の五月十日に出した問題について、憲法に抵触する非常にけしからぬ文言があった。その問題について、それを取り消す措置をしなければならないということで、次回の社会労働委員会でそのことについて明確な御答弁をいただきたいという質問を申し上げました。さらにまた、三二二号通牒、三三五号通牒が職安法違反だ、その問題について法律違反しないようにしていく、職安局がいままで間違ったことをしておった、そういう立場において、それを直すのは職安局としては都合が悪いというような低次元の問題ではなしに、法律を守り国民を守るという立場において、労働大臣が検討をして明確な答弁をいただきたいということを先週の委員会で質問をいたしました。次回の委員会で冒頭にこれに対する答えをいただきたいということを要求しておきました。次回の委員会は昨日でありました。その冒頭に積極的に明確な答弁がなかったことは、あなたとしては非常に怠慢である。しかし一日おいていまの機会がありますので、積極的にその両方について、憲法違反の条項と職安法一条、三条、十七条違反の問題について、取り消すという前向きな、曲げられない明確な答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/101
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102・小川平二
○小川国務大臣 御発言の前段についてまずお答えをいたしますが、これは前回答弁しましたように、決して憲法を軽んずる趣旨のものではないのでございまして、むしろ平素から憲法の趣旨並びに各条章について勉強を忘らないように、また憲法について各種の論議が行なわれることはあるだろうけれども、さような場合においても一個の見識を持って臨むことができるように、十分平生から勉強をしてほしい、こういう趣旨にほかならないのでございます。ただ、私がただいま申し上げたような趣旨を表現するのには、御指摘のあった文言が必ずしも適当でないかもしれないと存じまするし、思わざる誤解を生ずるおそれもあり得る、かように考えましたので、この点についてはすでに削除を命じた次第でございます。そのように御了承いただきたいと思います。
後段の問題につきましては、十分考えた上次回に返答をしろどいう御要求でございました。勉強をあらためていたしてみましたけれども、前回私が申し上げた答弁をこの際修正をしなければならないという結論には、はなはだ遺憾でございますが、到達しておらないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/102
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103・八木一男
○八木(一)委員 五月十日の内簡について、これを取り消す措置をとられたということは、結果として、具体的としていいと思います。ただその前に、労働省だけを美化した趣旨をお述べになったことは、これは当を得ていないと思う。この「げん惑されない」ということは、これは字句ですから、いろいろな意味で解釈をできますけれども、憲法論議をしないようにということをやるような、そういうようなことにも受け取れます。また、職安局の末端の職員が憲法についてまるで知識のないものであるという現状において、そういうことを出されたとも解釈ができるわけであります。取り消されたことはいいけれども、そういうふうに、労働省のいままでやっておったことが正しい趣旨でのみやっておったのだというようなことをこの場で強調されることは、これは間違いだ。誤ったことについては、そのことを反省をしなければなりません。そういう意味があったとしても、不当である、憲法違反であるという私の主張をした意味の弊害も、必ず起こっているわけである。よし労働省が、いま、憲法を尊重する気持ちで書かれた、それが間違っている疑いがあるというふうに言いたい立場があっても、それだけではない。これによって、憲法の論議はしないのだ、あるいはまたこれによって、憲法の論議については労働省の職業安定所の末端の職員は全然知識がなく、憲法について論議をしたり思慮をしたり判断をする能力が少ないのだ、そういうような状況について判断をして出された趣旨であるというように私どもは受け取れるわけである。ですから、そのような前段の、労働省がすべて積極的によいことをしておったという立場でなしに、そういうことを抜きにして、国民の立場、質問をしている私の立場から言えば、憲法の論議をさせない、憲法違反の疑いのある問題があったのだ。また、職業安定所の人たちが憲法について理解が少ないから、国民が憲法問題を出すと返答できないということの状態があって、こういうものを出したという部分もある。この問題がけしからぬと私の言った部分もある。また皆さま方のほうのそういう部分もあったかもしれない。その両方全部を勘案をしてこれを取り消さすということでなければならないと思う。役所のほうは、取り消さなければならない問題があったときに、その意図はすべてよいものだったというようなことを強調されるようなことであっては、その反省がございません。両方の意味を込めてこの問題を取り消さしたんだ、憲法という問題を常にみんなが頭に入れてこの問題については考えていかなければならない、論議をしていかなければならない、末端の職員は全部憲法の精神を尊重した気持ちで、労働法規にしても行政にしてもものごとを考えていかなければならない、そういうふうに不十分であった、あるいは誤りであった行政を直すために、この憲法に関する内簡の条文を削除した、そういうふうに御説明をされるのがあたりまえである。しかし、いま御説明されましたから、労働省側の主張もあると思いますが、私の主張していることは、あらゆる点で憲法を尊重しなければならない、国民も、特に公務員は憲法については十二分に尊重した考え方ですべての問題について対処をしなければならない。それに対して疑いを起こす、間違いを起こす危険性があるからこの問題は取り消さすんだという点で取り消さしたんである、取り消すんであるというふうに理解をいたしたいと思います。それで、初めからあなたがそう言われるのは当然でありましたが、私はそういう意味で、ほんとうの意味で補足をしましたから、そういう気持ち全部を含めて取り消さしたんだということを確認していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/103
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104・小川平二
○小川国務大臣 これの削除を命じました理由は、私がただいま申し上げたとおれでございます。もちろん憲法について論議をしてはならないという、もともとそういう趣旨のものであったとは思いませんし、また憲法を軽んずる趣旨ではない、むしろ憲法を正しく理解するために平素から勉強を怠ってはならない、かような趣旨で書かれたものでございますが、種々御指摘を受けて反省をいたしました結果、誤解を生ずるおそれがなきにしもあらず、こういうことで取り消しを命じた、撤回を命じた、削除を命じたわけでございます。この点につきましては、いまいろいろおことばがございましたけれども、仰せのような御趣旨ではもともとないわけですから、その点はひとつ御容赦をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/104
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105・八木一男
○八木(一)委員 仰せのような御趣旨ではない——私の言っていることは間違いですか。間違いですか。はっきりとお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/105
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106・小川平二
○小川国務大臣 この内簡に盛られておる趣旨は私が御説明申し上げたとおりでございます。それ以外のものではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/106
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107・八木一男
○八木(一)委員 小川さん、それを一人で考えられましたか。職安局長と御相談されましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/107
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108・小川平二
○小川国務大臣 これは前回申し上げましたとおり、私はこの場で初めて見たのでございますが、一見してこれはあるいは不測の誤解を生ずるものであるかもしれないという印象をまず受けたわけであります。次いでこれを熟読いたしました結果、趣旨そのものは非常に明白になった。その趣旨は先ほど私がお耳に入れたとおりでございます。ただし誤解を生ずるおそれがあるから、これは特に御要望もあることでございますし、削除を命ずることにしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/108
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109・八木一男
○八木(一)委員 誤解を生ずるおそれもあるからといま労働大臣言われました。現に誤解を生じて、そういう問題が方々で起こっている。だからそういう間違いが起こったことを反省して、それを直されるということでなければならない。労働大臣が初めて一見されて誤解を生ずるおそれがある——普通の日本の国民であったら当然なんです。特に責任のある労働大臣だったら当然なんです。そういう労働大臣の正確な判断に基づくことが起こるのだ。昨年の五月からいままでの間においてそういう誤解を生じたことが起こっている。そういうことを反省されてそれを取り消すということになるわけであります。
あなた方が通達を出した。自分の部下を守ろうという気持ちはわかります。しかし憲法の問題に関して、そのような労働省の一部局、そのメンツの問題にこだわるなんということは許されません。またこだわった進言があったと私は予測をいたします。そういうことではなしに、あっさりと、この問題についてはそういう誤解を生ずる疑いがあるので、これを取り消しますということにしていただいたほうがよいと思います。あなた方の言いたいことを言えば、これは憲法を尊重するつもりで書いたと言われるけれども、労働大臣は一見して、これは誤解を生むおそれがあると言われた、当然労働大臣がそういうふうに想像された問題は、六カ月もたてば、七カ月もたてば、誤解をされた、間違った、憲法を無視するやり方がされているに違いない。されている。そういうことは反省をして、そういう問題を起こさないためにその取り消しをするんだということが、すなおな、また当然しなければならない労働省の態度であります。
〔委員長退席、佐々木(義)委員長代理着席〕
前言に固執するのではなくして、あなたの善意も誠意もわかります。ですから、とにかく労働省もしっかり考えて、委員会の意見もしっかり聞いて、それでこれをあっさり取り消す、そういう態度でなければならないと思います。そういうふうに取り消させた理由を直していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/109
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110・小川平二
○小川国務大臣 前言に固執するつもりは少しもございませんし、ありのままを申し上げたわけでございますから、これを修正するつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/110
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111・八木一男
○八木(一)委員 それでは労働大臣、そういうような疑いを、そういうような間違いを起こすおそれがある、労働大臣はそのときにそういう判断をされた。そういう判断をされた疑いを起こすような内簡連絡、そういうものが五月の十日に出された。現在はその次の年の四月でございます。一年近くの間に、そのような疑いが起こるような不適当な通達を出したままであったことは、これは適当でなかったという反省のもとにそういう通達を出されたということでなければならないと思います。これはまたそのつもりでお出しになったんだと思います。その点で理解をしてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/111
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112・小川平二
○小川国務大臣 私はこれを一読して、あるいは誤解を生ずるおそれがあり得るということを感じましたことは、率直にただいま申し上げたとおりであります。かりにこの文言を誤解したことから、現実に好ましからざる何らかの事態が過去に生じた事実がありますれば、御指摘もいただきとうございまするし、すでにそういう誤解に基づいて好ましからざる事態、事件が生じておるということでありますれば、その点は十分反省をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/112
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113・八木一男
○八木(一)委員 それじゃ、労働大臣が誤解し、憲法を軽視するそのことによって、非常に不当なことになるおそれがあるということでこの問題を削除されたというふうに私は理解をいたします。そういう点で理解をいたします。事実の指摘は、私は実情を調べればたくさんございます。
この中にありましたように、職業選択の自由というものは、憲法に完全に保障された基本的人権であります。基本的人権であります。そしてまた当面、この法律と職業安定法においても、そういうことが明記されております。ところが先日、島本委員の御指摘になった問題、私の前々から指摘を申し上げた問題、そのすべてが職業選択の自由という国民の基本的人権を職業安定所の主観的な判断で圧迫する、実際上はその権利をもぎ取るという形のところが方々に出ておるわけです。これがこの内簡で「憲法の職業選択の自由のことばに幻惑されないこと」——ほかの文言を省略してその文言だけを出してみますと、こういうことになります。労働省通達の三二二号とか、あるいはその他の労働省の——いままで法律によらずして、労働力が足りないから、本人がいやでもおうでも方々に配分をして労働力充足をやりたいということで、職業選択の自由を奪い、基本的権利を侵すような考え方を労働省はもともと持っている。そういう持っているものを通達の一環、連絡の一環として、憲法の条章なんかはどうあっても、局長が言ったら、課長が言ったらそのとおりにやらなければならないのだという間違った理解を、末端の職業安定所の職員に与えているわけだ。ここに明らかにあるでしょう。「職業選択の自由、勤労の権利等の言葉にげん惑されないこと。」、これは憲法に保障されたほんとうの人権ですよ。そんなことを口が裂けても労働省の役人が言ってはいけないことだ。ところが逆に、そんなことを言っても、そんなものを無視して職業安定所の指示するところに無理やりに就職させるというような、違法な圧力を職業安定局からかけている。だけれども、良心がある公務員であれば、憲法に基本的人権が定まっているのにこういうことをしていいかどうか疑問になる。その疑問があっても、憲法なんかはどうでもいいのだ、労働省の中央の課や局の言うことを聞かなければ自分たちも諸君もあぶないし、という猛烈な誤解を生むわけだ。そういうことで、この内簡は、労働省が組織的に憲法違反をやっている問題といっても過言ではないわけだ。そのくらいの弊害が起こっている。労働大臣には、職業安定局の人は皆さん大切な部下でしょう。労働大臣が行政せられるときに、明敏な労働大臣だから、就任されてから半年間、この複雑な問題については、局や部や課の意見を聞いて参考にされるのはあたりまえだ。あたりまえですけれども、そこが憲法に違反のようなことをやっているわけだ。そういうことがあるから、こういう問題、こういう内簡が出ている。これは国会とかそういう場では許されないことだ。
それで、その問題が出た。労働大臣はすなおにその問題を取り消されると言われたことは非常にいい。そこで、労働省が間違ったことをやっているのを、かっこうをつけるために、そのようなへんてこな理由を労働大臣に言っていただくような要請をしたに違いありません。そんなものに固執をしないで、あなた方のメンツもあれば、労働省としてもこの問題についていろいろ誤解を生むという反省の気持ちもあった、国会においてもいろいろ問題が取り上げられた、その全部を総合してこれは取り消したほうがいいという結論に達した、それでいたしますと、すなおにお答えになることが当然であります。りっぱな政治家の小川さんが、横にいる人たちに牽制されて、そんな問題の判断がつかないという方ではないと思う。ですから、取り消されたことについては、労働大臣の直感をされたように、すぐ判断をされたように、その疑いが非常にある。労働大臣が判断をされたように、疑われるような内簡が一年近くも来ておったわけですから、そこでいろいろな間違いが起こったのだ。起こったと言い切ればあなたは都合が悪ければ、起こる可能性のあるものを一年近くも置いておったことは非常に間違いであった、そこでこの反省に基づいてその問題を取り消したとか、幾らでも言いようがあるわけです。労働省はいいことをやったのだ、いいことをやったのだけれども取り消す、そんなのでは困ると思う。労働省のメンツも立てて最大限に解釈されてもいいけれども、とにかくこれがそういう疑いを起こすような不適当なものであった、だから取り消すという反省を込めた取り消しをされなければ、仏つくって魂入れずである。あなたの言われた理由もあげてよろしい、私の申し上げた理由も加えて、そういうことを総合的に判断をしてこの内簡を取り消すというすなおな御答弁を願いたい。それが労働大臣のお立場であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/113
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114・小川平二
○小川国務大臣 誤解を生ずるおそれがある、そういう場合があり得るという感じがいたしましたので、私は自分自身の独自の判断で削除を命じたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/114
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115・八木一男
○八木(一)委員 ただいまの御答弁だけで取り消しをされたということに理解をいたします。それでよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/115
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116・小川平二
○小川国務大臣 けっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/116
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117・八木一男
○八木(一)委員 それでは次の問題に移ります。
通達三二二号の問題三三五号の問題であります。この通達三二二号では、「職業紹介等について」の第一号に「団体等の役員など第三者の立会いないし介入は厳に排除すべきものであること。」、第二号に「団体等により誘引又は勧奨を受けて第三者に引卒されて出頭した者及び第三者の立会いのもとでの相談を固執する者は公共職業安定所において行なう職業紹介の対象となる求職者とは認められない者であること。」というような文言があります。それに似たような文言もありますけれども。これはこの前も申し上げましたように、職業安定法の第一条に違反をし、第三条に違反をし、第十七条に違反をいたして.おるわけであります。この法律違反の通達について、これを撤回、取り消し、そういうことをなされないと労働省は法律違反をされたということになります。この問題について理由は申し上げません。いま職安局長がこの法律を認めた助言をしておられたのならいいですけれども、そうでない助言をしておられたとすれば、こういう問題を無視して、労働大臣として、憲法七十三条を順守しなければならない国務大臣として、この問題についてほんとうの責任を持った国務大臣としての立場で前向きの御答弁を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/117
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118・小川平二
○小川国務大臣 この点につきましては、前回答弁を申し上げたとおりでございます。多数の人が集団的に本人とともに出頭されて職業相談に介入をされる。そのために、本人の内心の意思を確認することができない、あるいは喧騒にわたって正常な執務の実行が妨げられる、多数の求人者に迷惑がかかるというようなことでは困りますから、さような事態を避けるための通達でございます。たとえば身体障害者のような方に介添え人がついておいでになるということは、もとより一向妨げないものだとかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/118
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119・八木一男
○八木(一)委員 職業安定法十七条と第三条と第一条に違反の点についてどうお考えになるか、労働大臣からお答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/119
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120・小川平二
○小川国務大臣 違反の事実はないと存じております。ただ、かような通達が出されましたについては、この通達がなされた際の背後の事情、背景と切り離しては考えられないと思いますので、実情について職安局長から答弁をさせたいと思います。この点はお許しをいただきとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/120
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121・八木一男
○八木(一)委員 職安局長の御答弁はまたあとでいただきたいと思いますが、三時間のつもりでございますが、佐々木さんから二時間にしてくれという御要望がございました。協力したいと思います。できるだけ協力をしますから、質問者のほうの質問のペースに合わせてやっていただきたいと思いますが、職安局長の答弁をいただくときにはまた要求いたします。
労働大臣に申し上げますけれども、憲法七十二条という法律も——この前もほかの法律のときに労働大臣は聞かれたと思いますけれども、都合が悪いからといって法律を逃げることはできないわけです。刑法上の傷害をやったときに、どんなにしゃくにさわったからなんとかいっても、やはり事実のときにはのがれ得ないと同じように、どんなにいやだから、どんなにやってしまったから、あと戻しがしにくいからといって、法律の問題ということは逃げることはできない。法律について責任を持っていない普通の国民ですらそういうことであります。猛烈に急いでいたから交通違反をした。行かなければ親の死に目に会えないから六十キロのところを七十キロで走った。つかまってみれば、それでもやはり交通法規には引っかかる。別に人は通っていない、人を傷つけるおそれもないからということで、親の死に目に会いたいというので急いで、六十キロ制限のところを七十キロで走った。それでつかまったときも、気の毒なことはわかりながら法律に触れる。一般の国民でもそうです。ですから労働省が、都合が悪いとか、前からやったからメンツが立たないとか、あるいは職安局が、ほかの面では一生懸命やっておられるから、その部下の言うことはかわいがらなければならないし、それからまた、役所としては大臣一人でやれることじゃないから、職安局の全体のスタッフに聞いてやらなければならないとか、いろいろな立場があるでしょう。いろんな立場があっても、それはわかりますけれども、法律については、これをかってに解釈をしたり、そうは思わないから私は法律違反でもやりますというような態度は許されない。そこは明確にしていただかなければならない。
そこでこの十七条については「公共職業安定所は、いかなる求職の申込についても、これを受理しなければならない。」とございます。「但し、その申込の内容が法令に違反するときは、その申込を受理しないことができる。」ということになっております。この法令に違反する内容というのは、労働者が、法令で夜間の就業が禁止されているのに、自分が夜だけ働きたい、昼間はもう眠くて仕事ができないのだ、そういうところに求職の紹介をしてくれというようなものについては、受理しないことができるわけです。それ以外については何らのことも書いていないわけです。組合の指導者が来たから受理しないとか、その人が組合であるから受理しないとかということは、何も書いてない。法律は法律どおりこれをやってもらわなければならない。これは明記してあります。「公共職業安定所は、いかなる求職の申込についても、これを受理しなければならない。」、逃げを許さないことばです。これについて、複数で来たから、組合員であるからということで受理をしないということは、法律上許されない。
職業安定局の指導によって、各職業安定所が法律違反をしておるわけです。法律違反は、自分のほうが都合が悪いから、役所がこういうやり方をやりたいからというようなことで違反をすることは許されない。労働大臣は、憲法七十三条をごらんになっていただいておると思いますが、その責任のある国務大臣でございます。違反をして、いまその点については常習犯になっている職業安定局の意見を求められれば、大臣のほんとうにまっ白な気持ちで正当な判断をされることが間違いをおかすことになる。日本の国務大臣が、間違いをおかしておる部局の意見の支配を受けて、法律違反という問題についてはっきりした明確な判断ができない、法律違反でありながらそれをごまかして通るということは、国の政治のたてまえとして許されることではありません。職安法十七条違反をどのようにお考えになるか。それは職安局長から聞く問題ではありません。職安局長は違反を指導しておる。その点については発言権がありません。労働大臣から明確なる御答弁をいただきたい。法律違反でない御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/121
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122・小川平二
○小川国務大臣 いかなる求職に対してもこれを受理しなければならない、このように法律は明記いたしております。ただ、求職と申しますことは、これまたお耳に入れるまでもないことですけれども、通常の雇用に入る希望を持ってその努力をするということであろう、このように考えておるわけでございます。しかるに、この辺は実際の問題になりますから、先ほどから安定局長に実情についてお耳に入れさせることをお願いをいたしておるわけですが、そうではなくて、失対に流入させることをもっぱら目的としておる団体の役員の方々等に付き添われて、一緒でなければ求職の申し込みをしない、こういうふうに固執される方は、いわゆる求職者であるとは考えられない、かように考えるのが筋だろうと私は思います。したがいまして、法律違反の事実はない、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/122
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123・八木一男
○八木(一)委員 その失対に流入させることを目的としてということを、かってに主観的な判断をして、労働大臣にそういう間違った理解を与えておるわけです。——労働大臣、職安局長の発言を求めるのはそのときにしますから、横で言うのを、雑音を聞かないでまっすぐこちらを見て答えてください。これがもし失対事業に流入させることが目的であっても、失対事業というのは法的にあるんですよ。それから就職促進措置ということを終わったときに失対事業を適用することになっておるでしょう。失対者扱いではそれを省略して紹介することになっておる。もしそう書いてあっても、そのこと自体は法律違反でも何でもない。運動体の自主性です。しかも自由労働組合にはそのようなことは書いてない。職がない人に対していい職を求める運動の方針が書いてある。それを職安局は、自由労働組合やそういう組合は、失対事業に失業者を流入させることを目的としてというように、かってに断定をしておる。そんなことは書いてない。もし書いてあっても、政府の失対事業という制度があるときに、それの適格者になり得べき者がそこに入りたいということに、どこに違法があるか。一つも法律違反はない。国民は法律違反をしていない。あなたのほうは、法律の番人にならなければならないのに、法律違反をしてそれをとめようとしている。前から職安局は失対みたいなものをなくしたいという考えを持っておることは知っております。けれどもこれは法律できまっていない。いまの政府の方針は、国会で審議してきまった職安法、失対法の法律の精神でやらなければならない。それを労働省の職安局はだんだん変えていきたいという考え方を持っておる。持つのはかってですが、持ったからといって、政府のお役人が法律違反をして、その方向に向けていくということは許されない。自由労働組合が失対に流入させたいという考え方を持っても、これは一つも悪くない。持っていいわけです。しかも、自由労働組合はそうではなしに、求職者が安定した職業につくことを目的として運動をやっておるわけです。安定した職業につけないときに失対事業に流入させることは政府の責任なんです。そういう運動を書いてもらったら、そのことも政府が喜ばなければいけない。失対事業という制度がある。その制度を活用するために、もし流入闘争だけ出しているとしても、それも批判さるべきことではない。そういう制度がある。そこにいく過程を経て入れる制度があるのですから、そういうことを国民が理解し、希望する、問題のわからない人にそういうことを教えるということは、労働省がしなければならないことである。それをしてもらったら、自由労働組合に感謝をしなければならない。しかも、失対じゃなしに労働省の言う安定雇用につける努力が先だ、そういうことを自由労働組合も言っている。自由労働組合がやっていることは、すべて合法であり、すべてりっぱである。労働省がしなければならないことをかわりにしている。文句を言う筋合いは一つもないところで文句を言う。感謝をするどころか、その人たちが来るから、その組合員であるから、そこから話を聞いてきたから受け付けない。職業安定法第十七条に明らかに違反なことを労働省がやっているわけです。
小川さんが去年から大臣をやっているなら、こんな調子では言いません。あなたは憲法七十三条違反をやっている、職業選択の自由についての違反をやっている、あなたはやめてもらわなければならぬということになる。しかし、あなたはこういう間違ったことをやったあとで労働大臣になられた。問題をよく理解して、問題をよくしようという善意と熱意を持っておられる。だからこの程度で済むのです。いまあなたの横におられる、間違った方策をとっておられる方々に牽制を受ける。法律問題を曲げて解釈をしたり、この場で私が大きな声を出し、八木の質問をしたときだけ過ぎればそれで済むと思っていたら大間違いである。いまの内閣も強い力を持っている。それをバックアップされる与党の方々も非常に力が強い、小川さんなり佐藤さんを同志として守ろうとされるでしょう。しかしその与党の方も、法律違反をしてまでということは許されない。みんなりっぱな国会議員であるからそう思うので、それを、そういう問題をごまかして、こうだからしようがないのだ、こうだからしようがないのだということを、職安局が至るところで言って回っている。だから、ほかの先生方は、ほかのことに非常に勉強される時間が忙しいから、こういう問題を突き詰めてお考えになる時間的余裕がなかった。ここで法律違反という問題が提起をされたならば、その時点から国の政府としては法律違反という問題をしないようにしなければならぬ。そうでなければ国務大臣ではないわけです。いまのような労働省の、こう言ってほしいとか、こういうふうに言ってもらっては困るとか、そういうことを一切排除して、ほんとうに白紙の気持ちで、職安法十七条違反、これはしてはならないことであるという気持ちの御返事を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/123
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124・小川平二
○小川国務大臣 私は信頼しております部下の補佐のもとに仕事をいたしておるわけであります。そうでなければ一日も仕事はできないのでございます。したがって、この場においても必要な助言は受けております。もちろん最終的には私の独自の判断できめることは、申すまでもございません。
就任以来の報告によりますれば、ただいま私が申し上げましたような運動が現に存在をしておるということでございます。しかし、しばしば八木先生からも御注意をいただいておりますから、私自身も機会あるごとに、自分自身で各地の事例等には注意をいたしております。現実にそのような運動が存在をいたしておるようでございます。もちろん、現存のこの失業対策事業が本来の趣旨に従って健全に運営されるようにという趣旨で御協力を賜わるならば、これは非常にありがたいことであり、感謝を申し上げなければならない。また、この制度が存在するということを世間に周知徹底させる面で御協力をいただいておるということであるならば、これまたありがたいことだと存じております。
ただ、申すまでもございませんけれども、失対は職業ではないのであって、正常な雇用に入っていただくまでのいわば一時的な措置でございます。したがって、これに入ることだけを目的としておいでになるということであれば、これはいわゆる求職者であると考えるわけにはいきませんので、さような場合には、これはお目にかからないこともございましょうし、さようなことをもっぱら目的としておる団体の方々と大ぜいでおいでになるというような場合には、これをお断わりいたしまして、あらためてお一人でおいでください、ゆっくり御相談をいたしましょう、こう申し上げる分には、いささかも法律に違反するとは私は思っておらないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/124
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125・八木一男
○八木(一)委員 求職者ということについて労働大臣かってに御判断していますが、職を求めて来る人、これが全部求職者である、それに対して安定職業につけるための努力をされるのが労働省の一つの任務です。ところが、いまのような中高年齢層については、安定した職業が非常に求めにくいということがあるので、就職促進措置というものがあるわけです。就職促進措置というものが終わって、なお本人の希望する安定した職業につけないときに、失対事業というものがあるわけです。これは法的に全部きまっておるわけです。ですから、そういうことを全部を取り扱う責任が職業安定所にある。希望する安定職業につくために来られる。そうして後に就職促進措置を受ける希望を持たれる。それから、そういう安定職業がないときに、このような失対事業に入られる。それをすべて希望されることは国民の権利である。それを受けられるためにこの制度があり法律がある。制度があり法律があるのに、こいつは受け付けないのだ、こいつは受け付けるというようなことは、職業安定法十七条では許されていないわけです。ここでどういうような考え方を持っているから、持っているであろうから、持っているであろう団体の意見を聞いているであろうからというような、そういうことでこれを差別する、分離をするということは、許されない条文になっておる。「いかなる求職の申込についても」と書いてある。妥当なとか適当なとかいうことは、一つも書いてないわけです。労働省でそういうことを判断するということは許されていないわけです。判断することを許されていない。この条文をお読みになったら、日本語ですからわかるはずです。そうお思いになりませんか。労働大臣の御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/125
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126・小川平二
○小川国務大臣 求職というのは、読んで字のごとく、職業を求めることであろうと存じます。失対は、これは職業ではないのでございますから、失対に入ることをもっぱら目的としてお出かけになる方がもしあるとすれば、これは求職者ではないのでございまして、解釈を入れる余地はもともとないと信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/126
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127・八木一男
○八木(一)委員 話が食い違っていますね。ここで失対に入りたいという申請書を最初から出す人があるのですか。ないでしょう。求職の申し込みに来ているんですよ。どこのだれが一番初めから失対にすぐ入れてくださいといってきましたか。一つでも例があったら言ってください。うそを言うもんじゃない。求職の申し込みをしたら、職業を求めているのはあたりまえじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/127
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128・佐々木義武
○佐々木(義)委員長代理 お静かに願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/128
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129・八木一男
○八木(一)委員 そんなことがわからないですか。小川さんは有馬君に牽制されている。小川さんみたいなりっぱな政治家が、こんなわかりやすく書いた条文がわからないはずはない。一ぺんであなたが判断になったら、全部受け付けますというのがあたりまえです。それを、何とかかんとか言ってのがれようとするところに、有馬君のリモートコントロールがある。有馬君、その不謹慎な態度は何ですか。あなたがけしからぬことを入れ知恵するからである。不謹慎だ。
小川さんそういうことです。職業安定局が法律違反をしているんだ。はっきり言えば犯人だ。そんなものの言うことを聞いてあなたが判断をすることはない。ほかの失業保険のことなら、忠実な部下の言うことを聞いてもいいです。この問題については、この人たちが悪いんだ。だからこういう話をしなければならない。職業安定局に何の遠慮をしておるのですか。ほんとうにまじめな人だから黙っておるけれども、職業安定局の労働大臣とでも言いたいくらいの態度じゃないですか。何ですか、それは。
この条文を日本語で解した以上、求職の申し込みをする以上それは求職者だ。おまえが言ってきたのはうそだ、おまえが言ってくるのは違うんだ、そんな権限はどこにあるんだ。国民年金法の国民年金をとるときに、おまえは戸籍上は七十一歳でもほんとうは三十歳だ、福祉年金なんか支給できるかと言ったらどういうことになるか。条文というのはそのまま読むんだ。申請をする人は……(「そんな大きな声出すなよ」「委員長、注意してくださいよ、品位にかかわる」と呼ぶ者あり)委員長、妨害する者は退場を命じてくれ。(「命令する権限はない。」と呼ぶ者あり)命令しているんじゃない。要請しているんだ。
字句どおり解釈しなければいけない。求職をする人は、職業を求めて申請書を出してくるのです。これは全部求職者だ。日本国じゅうに、それを言わないで、失対事業に入りたいからという申請書を安定所にここ半年間に出してきた人の例があったら言ってください。それならば、ここは職を求めるところだから、申請が違うからと、申請書を渡して、別に話をして手続をさせ直しても、それはけっこうです。みんな求職するための申し込みに来るわけです。それならば求職者と思うのがあたりまえだ。それをかってに労働省の方針で、日本国民が——国民は全部法律については平等な権利がある。それによって申請書を出すときに、おまえさんの場合は違うんだ、受け付けられない、そんな差別待遇が許されますか。憲法十四条をあなたは御存じですか。だんだん憲法違反を累積してやってくることになる。あなたはそんな人ではないはずだ。また、日本の国務大臣がそんな人だったら、たいへんなことになる。そういうことを無理に強要しているのはこの連中なんだ。失業保険とかほかのことなら補佐をさしてもいいが、この問題については、この連中の判断を聞かないでください。職業安定法第十七条は「いかなる求職の申込についても、これを受理しなければならない。」と明記してある。来る人は求職の申し込みをするのです。複数で来たから、組合だから、組合の幹部が来たから、あるいは部落解放同盟の幹部が来たから受け付けられないということは許されない。それは職業安定法十七条違反だ。
もうおわかりになったと思う。労働省は法律違反されたら、たいへんなことになる。これは速記に載ります。あなたがいまのまま押し切られれば、労働大臣は、国務大臣は、法律違反をしていながらそれを認めない、強弁をする、なお法律違反を続ける決心であるということになります。これは佐藤内閣や小川さんだけの問題ではない。日本の政治全体の問題、法治国のたてまえとしてとんでもないことになる。そういう意味において、間違いのない御答弁を願いたい。小川さんからお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/129
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130・小川平二
○小川国務大臣 私の考えておりますことは、先ほど答弁を申し上げたとおりでございます。私は、かような通達がなくても済むような事態であることを切望いたしておりますけれども、実際には全国的に、先ほど来申し上げておりますような、失対に流入させることだけを目的とする運動が展開されておるようでございます。この私の認識が間違っておるかもしれませんが、少なくとも当面そのように考えておるのでございます。この通達は、そういう背後の事態との関連なしには理解していただけないと思いますので、私が先ほど来お願いをいたしておりますことは、実情について安定局長の発言を聞いていただきたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/130
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131・八木一男
○八木(一)委員 いまのところ安定局長の発言についてはお断わりします。実情について聞いていられるなら、そういうことを理解しておられるなら、小川労働大臣が言われたらよろしい。別に安定局長のことばをかりる必要はない。労働大臣が言われるなら伺います。
あなたは、そういうような労働省のかってな行政上の都合で法律違反した、こういうことを認められるのですね。労働省の一局の行政上でやりたいということと法律と、どっちを重く考えられるか。ここで、法律が大事か、労働省のかってな行政的な通達が大事か、どっちかはっきりしてください。通達のほうが法律より大事だと言われるならそれでよろしい。明確に言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/131
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132・小川平二
○小川国務大臣 もちろん法律は大切でございます。しかし、現に出されておる通達が法律に違反するものだとは考えておりませんから、この通達を直ちに撤回せよというお申し聞けに対しては、承知いたしましたとお答えするわけにはまいりかねるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/132
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133・八木一男
○八木(一)委員 そこで、その法律違反の問題については、いま法律のほうが大事だというお答えをいただきましたから、その点については、この質問時間内にまたやりますけれども、少しおいてこれから質問をしたいと思うのです。
労働大臣、この法律違反というわれわれが提起している問題がある。そしてあなたは、通達は法律違反であると一ぺんに言えない状態にあるということで、そういう問題について、これからどのようにあなたたちは解決をしていかれようということを、前向きに考えていただきたいと思う。あなたは実際上、この問題も私が申し上げましたように、たとえばこのくらいの木造の部屋の二階に数百人の人が入ったならば、床が落ちて下の人がつぶれるおそれがある、そういうような場合には、これは危険があるから、法律問題と違って、対処しなければならないとお考えだろうと思う。それから、ほかの事務が一切長い時間ストップしてしまうようなことになれば、これは困るとお考えになるだろうと思う。そういう点はわからないではありません。といって法律違反というものは許されるものではありません。だから、さっき言っているような、この部屋に何百人入ってきて、床がつぶれるとか、人がけがするというような場合には、これはそこで受け付けができないということも、そういう事態がもしあったとしたら、わからないではありません。ところが、それだといって法律違反をするということは許されないわけだ。したがって、求職者に労働組合の指導者であるとか団体の指導者が一緒についてくることがある、また、求職者が一人でなくて相当の程度の複数で来られるというときに、それを受け付けないとか、文句を言うことは法律違反だ。明らかに法律違反だ。前のことも、この法律だけでは違反であるけれども、人命が危険であるとか、一切の行政がストップするということであったらお困りでしょう。そこのところの問題で、いま職業安定所のやっているように組合の話を聞いてきたから受け付けない、組合の人が一緒に来たから受け付けない、あるいは求職者がある程度の団体で来られて、そこに組合の人が一緒に来られたから受け付けないということであれば、これはどんな観点からしても、第十七条違反であり、第三条違反であり、第一条違反です。ところが、それを私どもが言うと、職業安定所の人は、さっき言ったような、このくらいのところに何百人入ってきてどうにもこうにもならないのだというようなことの例をあげて、八木一男の質問に法律問題ですぱっと答えたならばそういうことが起こるから困りますということで、労働大臣が法律違反をしない答弁をされた場合に、この通達が法律違反の部分があるということ、あるいは皆さん方の立場で疑いが非常に濃厚であるという部分、そういうことを取り消したならばそういう事態がふえる、そういうおそれがあるから困るというようなことを、ぼくが言ったことよりも十倍くらいの勢いで、あるいは百倍くらいの勢いで、有馬さん、失対部長が小川さんに言っているに違いない。そこで小川さんの明敏な労働大臣としての判定で、その部屋がつぶれてしまうとか、ほかの事務が一切ストップしてしまうということであれば、場合によって、そのときの受付を延期をする、してもかまわないということもひとつ問題としておいて、そうじゃないときには、組合員の人であっても、あるいはそこから聞いてきても、その求職者が複数で——複数というのは二だけじゃありませんよ。一人じゃなしに、ある程度の団体で来られても、またある程度の人数の組合の指導者がついてきても、これは受け付けるのだという態度を示されれば、これは職業安定法第十七条違反でなくなる可能性がある。ところが、それをほんとうの国民の立場でそういう配慮をしなければ、これはあくまでも職業安定法十七条違反になり切るわけです。労働省が、労働大臣が、佐藤内閣が、政府が法律違反をしたということになるわけです。
前に職業安定局長が、私のまじめな質問に対する答弁の中で、法律以前の問題であるという妙なことを言い出して、私はしかりました。その法律以前の中の問題の判定で、いま言ったような、床がつぶれて危険であるというようなものであれば、これは法律以前などという表現は非常に不適当であるけれども、実際上そういう事務はできないという問題が起ころうと思う。そのくらいの程度のときに、その日には受け付けられなくても、受け付けられないことがあってお断わりしてもしかたがない。断われと言うのではありませんよ。しかたがない。そこでも、ちゃんと整理してできれば、したらいい。そのときに、どうしてもそれが事務的に、物理的にできない状態ならば、お断わりしてもしかたがない。その他のときには、そういうような制限を一切つけずにそういう受付をし、事務をしていかなければ、職業安定法の第十七条違反が明白になる。ところが、この通達の撤回、取り消しという問題で、私はほんとうに憤慨していますから、強力にやっておりますから、その問題だけに固着をして、法律違反になったらたいへんだ。——といってこれを撤回したら、部下の職業安定局が労働大臣の言うことを一つも補佐しなくなる。そうではないかもしれないけれども、そういうようないろいろな関係もあると思います。しかしそこの問題であります。ほんとうに私どもは常識的に考えて、どうしても事務がとれないような問題が起こったときには、これは、それがあったから次受け付けないということでなしに、そのとき一時執務について待っていただくとか、お断わりすることがあってもしかたがない。しかたがないですよ。そうしろということじゃない。しかたがない。できるだけ努力をして、そこでもちゃんと整理をして受け付けるのはあたりまえです。しかたがない。ただし、たとえば二十名や三十名の団体の人が来た、七人や八人の労働組合の人が来た、そのときでもそれを断わる、初めから受付もしないというようなことでは、これはいけない。そういうことで、問題は労働省がもし善意であるならば、労働大臣がほんとうに熱意があって善意であるならば、そしてまた、そういう問題に対して労働省が善意を示した、そして熱意を示したならば、その関係の労働組合も、それに対処していい意味で協力をされるでしょう。そういうことをされなければ、問題がいつまでたっても解決をしないわけです。それでこういうふうに申し上げているわけです。
そのことは、労働大臣としてはそれは受けて前向きにやっていただけると私は信じたいと思う。ここまで具体的に申し上げて、それもブレーキをかけた御答弁になるならば、これは、ほんとうに労働省自体が法律を一切無視して、労働省の職安局の恣意を通すということになりますから、国政の重大問題になりますから、労働大臣の不信任案だけではなしに、それをカバーせられれば、佐藤さんの不信任案まで、また、ある点で尊敬をしている自由民主党が私どもと同調されれば非常にりっぱでありますが、これを別な意味でカバーされれば、大自由民主党に対しても批判しなければならないということになります。そういうことは国民の立場からしたくない。政府も信頼をされなければならない。野党も信頼をされなければならない。与党も信頼されなければならない。そうでなければ国民は不幸であります。そういう意味で、いま言ったようなことで前向きな御答弁をぜひしていただきたいと思う。この点については、私はほんとうに一生懸命申し上げておりますから、それをほんとうにまともに受けていただいて、ほんとうの善意の労働大臣として、問題をほんとうによく解決をしようと考えておられる労働大臣として、ぜひ前向きの御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/133
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134・小川平二
○小川国務大臣 前回も申し上げましたけれども、私は、家がこわれるとか、人命に危害が及ぶとか、そういう保安とか治安ということだけを問題にしておるのではないのでありまして、何よりも大切なことは、本人の自由な意思が表明されなければならない、それによって本人の意思を確認しなければならない、これがすべての前提だと考えておるわけでございます。第三者の介入によってそれが妨げられるというようなことがあってはなりません。熱心な、誠実な求職者であるならば、そういう方々の介入を求める、一緒でなければ職業相談に応じない、話ができないということを固執される理由はないんじゃなかろうか、こう考えておるわけでございます。
そこで、繰り返すようですが、現在各地に起こっておりまするような事態を根絶するように御協力が願えまいか。この通達の背景になっておるような事態がなくなりまして、平静な状態に帰するならば、もういつでも私はこの通達は撤回できる、かように考えておるわけでございます。
なお、現存の制度をこれから必要な改善を加えて、ますます本来の趣旨に沿ったものたらしめたいということは私も切望しておりますから、そういう点については、これから先も、とりわけ御熱心である八木委員の御協力も賜わりたいと考えております。こういうところで四角ばったやりとりをすることも、それもまた必要でございましょうけれども、ゆっくりお目にかかって、相対で、私の認識に足らざる点があれば、これを修正、補足する必要がございますから、お話も承りたい、このように思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/134
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135・八木一男
○八木(一)委員 労働大臣は私は人格的に尊敬しておりまして、この問題についてもまじめに考えておられると思いますが、なお職安局長の間違った意識、そういうものに支配をされて、労働大臣は介入ということばを言われるのですけれども、国民のほうは労働省のお役人と違いまして、どういう賃金、どういう職場なら自分は健康を保って一生懸命いそしんで働けるか、そういうことについては、安定所の職員の人と違って非常に知識が少なくて不安感を持っているわけです。そうでなくても、お役所というところはこわいところで、言いたいことも言えないわけです。これを申し上げておかなければいけないと思っても、労働省の職業安定所というところは非常にこわいところです。ぼくもびっくりしました。三重県へ行ってこのお話をしようと思ったら、おとなしそうな顔をしていて、ぷんと横を向いて、おまえらに話してやるものか、口もきいてやるものか、ということで、なんとこわい人がいました。これは国会議員が行くことは初めからわかっていました。国会議員というものはこわいものだとされているが、私はふにゃふにゃしているから、とてもこわくないように見えたのかもしれませんけれども、そういうことがわかっていながらそういう態度ですから、そういうものがいないときにどんな態度か、予測はかたくありません。どんなに高圧的に出るか。
そういう状態があるわけです。問題はむずかしいわけです。自分の判断についても、そういうようなところが自分の健康に向くか、そして健康保険制度があり、社会保障制度があって、そこでもし病気になったときでも、そういう制度で病気をなおすことができるか、そういう問題を知らない人もあります。知っていてもそれを言い出せない人もあります。普通の状態でも言い出せない。特に職業安定所の職員というのは、私の知っているところでは猛烈にこわい。鬼よりこわいと言ってもしかるべきです。そういうところですから、親しい友人、そういうことをよく知っている人たちに一緒に来てもらいたい、その場で相談相手になってもらいたい。当然の話です。あなたは国民にそんなに冷酷でないと思う。弱い人が判断のときに、経験の豊かな人に相談したい。言いたいときに、向こうがこわくて言えなければ、自分も言うけれども、公平に言ってもらう人がほしい、これもあたりまえだと思う。警察だってそのくらいのことはしてくれますよ。本人でなければ話を聞かぬとか、本人じゃなくておまえだけ来るなら、おまえは処罰してすぐ検事局送りだ、そんなことはしません。労働者の職業について世話をする労働省のサービス官庁が、そういうことがあっていいものじゃないのです。だからそういう同じ立場の人が、一人じゃなしに何人か一緒に来て相談し合う、あるいはまたそういうことに経験の深い人、友人または組合の役員、そういう人たちと一緒に来て相談したいというのは、あたりまえでしょう。それをいかぬという理由がどこにあるのですか。労働省は権限を持っているのですよ。組合の人が来てもいけなければ、それは聞かないという権限を持っているんですよ。ほんとに乱用ばかりしているけれども、権限を持っている。職員が、なぜほかの人と一緒なら話ができないか。話ができないというなら、よほど労働省が悪いことをしようとしているからだ。どんなに権力を持っていても、悪いことをしようとすれば、国民は承知できませんよ。ごたごたが起こる。労働省が悪いことをしていないという確信があるのなら何人来たって同じじゃないですか。変なことをしようとしているから、ものがわかってことばをはっきり言える人が来たら困るということになるわけでしょう。正しいことをしているのなら、介添え人が来てどこに悪いことがあるのですか。くだらぬ、けしからぬことをしようとしているから、弱い人なら黙って何も言えない、まともに理屈がわかって、これはこうじゃないかと言える人がついてきたら、自分の悪いことをしようとした方向に向けられないじゃないか、そういうことで職安局がやっているんですよ。介添えが来て、団体で何がいけない。何百人も来て床がこわれるなら、これはしかたありませんけれども、スペースがあって話ができるなら、大ぜい来るほうがあたりまえじゃないか。小川さんみたいな人が、そんな冷酷な考え方を持っているはずはないと思う。
あなたは職業安定所でずっとやったわけじゃないでしょう。職業安定所の人は、そういうことをやって不親切な扱いをしているから、もう少し親切にやってもらいたいということを自分が言いたい、言ったらしかられる、どなられる、だから友だちに来てもらって、複数で言ってもらいたいということになるのです。だから、ほんとうに労働省がまともな行政をやっているとすれば、大ぜいいらっしゃい、友だちが何人いらっしゃっても、職業安定所の言うことは確かだ、これはいい職業だから行ったほうがいいでしょう一つまらぬところにつまらぬことをやろうとするから、そういうことになる。自信があるならば一人で来ても、あなた相談相手にほかの人を連れていらっしゃいと言うのがあたりまえでしょう。それを複数で来たら、団体で来たらいけないというのは、職業安定局の一定のかってな方向を定めて、そっちにむりやりに持っていこうということに対して、国民が困るということから起こったことです。いまも、一定の方向を何とかというようなことを、労働大臣が職業安定局の要請によって無理に言っておられる。制度があるんだから、もしそれでやったって文句の言える筋合いじゃない。しかもそういうことは言っていない。
〔佐々木(義)委員長代理退席、橋本(龍)委員長代理着席〕
求職者が職業を求められて申請に来ても、あなた方は因縁をつけているじゃないか。まともに求職をしているのに、おまえたちはそうじゃないのだ、だから帰れと、因縁をつけたようなやり方をやっている。それを国会を通じて正そうということです。直していただきたいということを質問しているのに、まだ因縁をつけている。元凶のほうの意見を聞いて、そうは思いません一あなた、りっぱな大臣だけれども、この点についてはまだロボットにされているわけです。それでは困ると思う。日本の国務大臣ですよ。失対事業流入をおもな闘争方針としているような関係者があったら受け付けません、そんなことは法律に何もない。自由に安定した職業につけることを目標としている。それにもかかわらず、そういうことをやっていることについて、いまの御答弁をひとつもっと変えていただいて、いま言ったように、私も事態を解決するために、ものすごくたくさんで、実際上いろいろな障害が起こるときには——これはこういうことを言ったら、ぼくはいまの職業安定法十七条違反の問題について弱くなります。だけれども、あなたが問題を一生懸命解決しようと思っておられるから、わざわざ言ってあげているのです。そういうときには受け付けられないときがあるかもしれない。しかし普通の場合で、求職者が一人じゃなしに五人とか十人、二十人ぐらいで来る、あるいは組合の幹部が数名一緒に来るというようなときには、これは普通に受け付けて話を聞くのだ、そうでなければ職業安定法第十七条違反であるということを踏んまえていただいて、そういうときにはそういうふうにさせるようにいたしましょう。しかしあまり大ぜいで、八木一男の言うように、また職業安定局長がそれよりもっとたくさんあると言うように、そういう問題があったときには受け付けられないときもあるかもしれないというような御答弁をされることが、あなたの問題を解決される道です。私はあなたと法律論争をやっているのですから、こんなことを言ったら私は不利になる。不利になるけれども、あなたが熱意を持って問題を解決しようと考えておられると思って、わざと引き下がって、不利も顧みずそれを申し上げているのです。その私どもの気持ちも理解をしない御答弁をなさるなら、佐藤内閣も、小川労働大臣も、職業安定局も法律違反を強弁している、そういうことの問題の追及に移らなければなりません。私にそういうことをさせないように、前向きな、弾力的な答弁を願いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/135
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136・小川平二
○小川国務大臣 役所へ入っていくということは気持のいいものじゃございません。仰せのとおりでございます。私自身もいまだに、労働省以外の役所へ参ります場合は、何となく気おくれを感じるような気持ちがございます。そうでありますから、職安の仕事に携わる職員に対しては、とりわけ懇切でなければいけない、丁寧でなければいけないということを強く指示いたしておるわけでございます。この点でまだまだ行き届かない点もあろうかと思いますから、個々の事例について今後御注意を賜われば、一そう改善していくように指導もするつもりでございます。
ただいまの御質問に対しては、繰り返すようで非常に恐縮になるわけですけれども、やはり職業相談でありまして、本人の内心の意思を確認するということが先決でなければならないし、中にはいろいろ他人に聞かれたくない事情をお持ちの方もございましょう。聞くところによりますれば、外国でも、これは個室で仕切って外へ聞こえないようにして、ほんとうにさしで話をするようになっておるという話も聞いておるわけでございます。したがいまして、何かの事情で自分の意思を的確に表現して相手に理解してもらう能力に欠けておるというような人が——これは特殊の例だと思いますが、そういう人がきょうだいなり親戚に伴われて一緒に相談に来られる、足りない点を付き添いが補足するというようなことは、一向に差しつかえないことだと存じます。この通達の趣旨は先ほど来申し上げておるとおりでございまして、背景と切り離しては考えられない、理解できない。したがって、そういう点についても再三この機会に——これは共通の理解に到達したいというのがここで問答をやっておる趣旨でございますから、私どもの事務当局の言い分もひとつ聞いていただけまいかということをお願いしておるわけでもございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/136
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137・八木一男
○八木(一)委員 再々労働大臣は事務当局の意見を聞いてもらいたいと言われますが、しかし私は、佐々木さんの要請に従って審議促進に協力したいと思うので、労働大臣と質疑応答をしたい。なお時間を延ばすから幾らでもやってくれと言われれば、それはまた有馬労働省職安局長と五時間くらいやってもいいと思うのです。この委員会の運営の約束がありますから、小川大臣の要請ばかり聞いているわけにはいかないのです。職業安定局長の言うことなんか私はわかっていますよ。またそれを労働大臣自体が言うことができないということはないでしょう。そんなことじゃ困るのです。ですから、いまのところは労働大臣と質疑応答をしたいと思います。
そこで労働大臣、職業安定法十七条違反についてこれだけ申し上げても、いまだほとんど反省の色が見えていない。この問題については、この委員会中に反省の色を見せられないと、法律違反問題として私どもは重大な決意をしなければならないことがありますから、この時間内に十二分に反省をしていただきたい。これは一条だけ言ったのです。
次に、職業安定法第三条の問題です。法律違反はたくさんある。第三条の問題はどうですか。「何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない。」、そうありますね。この問題では、とにかく労働組合員であるからということや、労働組合から話を聞いてきたというようなこととか、それから労働組合が立ち会ったからというようなことで、そういう差別的取り扱いをしているわけです。この条文の精神を生かすことと、それから労働省も、極端に狭義に解釈したいというような、そういう画策をすると思いますが、そういうことではなしに——もうすでにそういうことをこちゃこちゃ言ったのだろうと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/137
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138・小川平二
○小川国務大臣 いや、そんなことは言っていません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/138
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139・八木一男
○八木(一)委員 そういうことではなしに、労働組合員であることについての差別という問題、また労働組合の組合員が組合の関係者にいろいろなことを相談するのはあたりまえである。労働省は労働組合に一番関係の深い省ですから、そういうことで、労働組合だから困る、労働組合員だから困る、労働組合から聞いてきたから困る、労働組合員が一緒に来たから困るということは、この第三条の精神に大いに違反するわけです。この点については、この前のときに労政局長に質問しました。こういう第三条違反があってはなりませんと、いま言ったようなことは第三条に抵触をするということを理解した発言がありました。いろいろ微妙な発言で、隣に先輩の有馬さんがいましたので、何かこういうところの仁義だけは労働省はかたいですから、先輩に遠慮して言いにくそうに言っておりましたが、それは困るという発言が労政局長からありました。あなたの忠実なもう一つのセクションの労政局長のそういう発言がある。先ほどから提起している問題は、第三条違反があるということは明らかです。その点についてはどうお考えですか。これもまた法律違反です。法律違反をあなた方三重にしているわけです。いま言ったように、自由労働組合が何とかかんとかということで、変な因縁をつけて会わないとかなんとかいうことは、労働組合に対する差別ということになる。また、労働組合というものを片一方に認めている立場で、その問題をよく知っていなければならない労働省自体が、そういう不当労働行為と思われるようなことをやる。とんでもないことです。第三条違反という問題はさっきの問題に全部関連がある。それはどう思いますか。労働省は、労働組合法違反をやったり、あるいはまた職安法第三条違反をやる、そういう疑いが非常に濃厚なことをやっている。これを改める考え方がなければならないと思います。それについて労働大臣のすなおな白紙の答弁を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/139
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140・小川平二
○小川国務大臣 職安法の三条に書いてありますことは、「何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない。」、こう書いてあるわけでございます。したがいまして、労働組合員であるからという理由で職業相談、面会に来ても断わるというようなことがありますれば、これは明白に職安法に違反するわけでございます。当面そのようなことをやっておるとは思いません。第三者から職業相談に介入、容喙を受けるような状態のもとでは職業相談に応じないといっておるわけでございまして、そういう事態が生ずる場合には、労働組合員であろうとも、またなかろうとも、これは御遠慮願うということになっておるわけでございます。職業安定法三条に違反するということにはならないだろう、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/140
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141・八木一男
○八木(一)委員 いま言ったとおり、この文言をあなたは非常に狭く解釈しましたね。そういう知恵をつけられたに違いないと思う。労働組合員について差別待遇をしてはいけないということは、この精神から言えば、労働組合自体に差別待遇をしてはいけないということに通ずるわけです。あなたは極端に狭く解釈した。これだけは法律の条文のとおり解釈をされました。
それならば、十七条のほうはなぜ法律条文どおり解釈しないかということになる。これは条文のとおり解釈してもらいたい。労働組合員であるからということで差別待遇はしないと言われたけれども、ほんとうはさっき言ったように、この関係の労働組合、全日本自由労働組合が圧倒的に多いわけですが、そこで何か流入闘争をするとかなんとかということで、因縁をつけておるわけです。それで労働組合員が実際上に差別を受ける。労働組合から話を聞いてきたということだけで会わない。それから介添え人は、労働組合員であれば、労働組合の幹部を介添えに頼むということは当然だと思うのですね。ほかの人が親戚を介添えに頼むという場合と同じように、それは当然のことだと思う。ところが、十七条のあなたの応答では、そういうようなことをうんと言っていられない。こういう点で第三条違反だ。第三条については、あなたはいま答弁を繰り返したように、労働組合員であるからということで差別待遇をしないということだけここの文言どおりやる。それなら、なぜ第十七条についてはその文言どおりにやらないで、背景がどうとかへったくれとか言って、そういうことをやるのか。都合のいいときに都合のいいかってな解釈は許されない。これを文言どおり解釈されて、労働組合のことについて差別待遇をしてはならない、しないということをあなたに言っていただきたかった。あなたは、労働組合員であるということについては差別待遇をしないと、この文言どおりの狭義の解釈をされたわけです。それならば、十七条について、背景がどうのこうの、そういうような解釈は許されない。文言どおりに解釈をしていただきたい。都合のいいときに都合のいいかってな理屈を、労働省はあなたに耳打ちをするわけだ。第三条のほうは、組合員に対して差別待遇をしてはいけないということは、同じように、労働組合についてそういう差別待遇をしてはいけない。また労働組合の組合運動を、ほかの行政的な措置でチェックをするようなことはしてはいけない。これは労働組合法で、労働大臣だから全部おわかりのはずです。ところが実際上組合員に対する差別待遇をし、組合員が一番信頼している組合の指導者を、ほかの人が親戚の人を相談相手にするように相談相手にしてくることを、これをまたさせないようにしているわけですね。そういう点で、第三条違反、ほんとうの第三条の精神違反、それについてどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/141
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142・小川平二
○小川国務大臣 これはもう先ほど御答弁申し上げたことに尽きておるわけでございます。組合員であるからという理由で異なる取り扱いをしておるわけではないので、現実に職業相談に介入される、あるいは容喙される、そういう事実に着目して、さような場合には御遠慮願う、こういうことでございます。これは条文を文字どおり解釈しておるのでございまして、十七条についても先ほど来申し上げたとおり、これはそのまま解釈をしております。
〔橋本(龍)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/142
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143・八木一男
○八木(一)委員 十七条については、何も関係のないものをつけ加えて、あなたは解釈をしようとされておる。三条については、その文言どおり解釈しようとしておる。あなたもお気持ちの中で、ちょっとじくじたるものがあると思う。そういうじくじたる答弁をしなければならないようなことをやっているような職安局に対しては、厳正な点で改めさせていただかなければ困ると思う。職安局のやることは、どこから見てもおかしいですよ。
それでは次の問題に移りましょう。職業安定法第一条であります。「この法律は、雇用対策法と相まって、公共に奉仕する公共職業安定所その他の職業安定機関が、関係行政庁又は関係団体の協力を得て、」と書いてあります。書いてありますから、関係団体の中には、これは野党派の団体というか、そういうような失業者、労働者の団体も含むことは明確であります。したがって、その一番おもな該当者である自由労働組合なり、あるいは部落解放同盟なり、そういう人々の協力を得られる努力を皆さま方が積極的にされるべきであります。ところが、そういう点について労働省が、こういう機関、こういう制度があるということを浸透させる責任を回避して、そういうことをなまけておられることについて、労働組合がいろいろな方々に、こういう制度がありますよということを伝えられる、また一緒に行ってあげましょうかということで来られるということでありますから、この労働組合の協力については感謝し、それを歓迎しなければならないのに、それを介入と称し、そういう人たちが一緒についてきたならばそういう問題を受け付けない。職安法十七条に違反してまでそれをしない。全く二重、三重の法律違反になるわけです。いままでやってきたこと、これは安定局は直していただかなければならない。労働大臣に直させていただければ、有馬さんもほかの点では熱心にやっておられますから、法律違反をしたからけしからぬ、そういう者は転職させてくれとは言いません。しかしそういう間違ったことを続けていただくのは困る。直していただかなければならぬ。また労働大臣が直そうとする気持ちを持たれる。国会で直してもらわなければ困るという意見が出たのを、それを直されたら困るとぎゅうぎゅううしろでひもをひっぱっているような連中、そういうことになれば、これは職安局全体が法律違反をし、あやまちを指摘されても、それを極力論弁を使って逃げようとし、正当な方向に向けようとする労働大臣の足を引っぱってさせまいとする極悪非道な連中だということになる。そういうことをあなたの部下にさせないように、職業安定法違反のこのやり方を改めよう、いままでやってきた問題について、団体の人が来るから会わないというようなことは改めるということを、勇断をもってやらなければならない。あなたは良心的な政治家でありながら安定局に足を引っぱられている。そういうところを改めて、部下にもあやまちを重ねさせないように、日本が法律を順守する国であるようにやっていかなければならないと思う。
そこで、私どもとしては、安定局の言い分を最大限度に事実上認めてあげようとして、さっき言ったような物理的な問題については断わることもあり得る。しかしその他のときには、団体の代表が一緒になっても、複数で来られても、これは受け付けなければいけないというふうにしていただかなければ、政府が法律違反を犯すことになる。この前申し上げたからおわかりだと思いますが、あなたは職安法違反をし、また憲法の七十三条違反を犯すおそれの前に立っておられるわけです。また内閣全体がそういうような法律違反を犯すような関頭に立っておられる。憲法七十三条を読みますと、「内閣は、法律を誠實に執行し、國務を総理すること。」、内閣にそういう責任がある。「法律を誠實に執行し」ですよ。ということは、条文を拡大解釈したり、へんてこりんな解釈をするということと、正反対な日本のことばです。そのとおり誠実に執行するということです。そういうことと違ったことが行なわれているのですから、あやまちを正して職安法違反でないやり方をする。そして実際上の問題については、非常に物理的に問題があるときには受け付けないこともあり得る、そういう誠意を示されれば、その場合には私も自由労働組合の幹部に申しましょう。政府がそういう態度を示されたならば、そういう政府の態度を受けられて、出先でいろいろと憤慨することもあられようと思うけれども、比較的平穏に話が済むようにされるように私も要請をしましよう。そういうことで、このような労働組合の人たちが一緒であれば、あるいは人数が大ぜいであれば受け付けない、事務の処理をしない、そういうことを具体的に改める前向きの意思の御表明を願いたい。
通達を出して変えるということは、役所の中では非常に大きな問題であることを知っております。しかし先日厚生省は、三月二十五日になった不当な通達を、与野党の考え方に従って二十八日これを改めました。さらにそれが不当であるので三十日に改めました。通達を五日間で三回改めた事実があります。労働省のみそのメンツにこだわって、この違法な、不当なものを改められないということはありません。したがって労働省で、ほかのところに大切なところがあれば新しい通達を考えて、この違法な部分、あなた方の立場に立って申し上げれば、違法の疑いが猛烈にある部分を、そうでないようにするということを考えていただかなければならない。そして行政的にはいま言ったようなことで、非常に困るときにはそれはできないことがあっても、通常の場合には、順番にどんどん受け付けてどんどんと仕事をやっていく、そういう立場でなければならないと思う。私は労働大臣が答弁しやすいように、できるだけ極端なまでゆるめて申し上げました。労働大臣はそれに対して、問題をほんとうに円満に解決をするために前向きな御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/143
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144・小川平二
○小川国務大臣 いま憲法その他いろいろな法律を引用なさいまして、私自身がそれに違反しておるというおしかりでございましたが、この職安法の一条は、「関係団体の協力を得て、各人に、その有する能力に適当な職業に就く機会を与える」云々となっておるわけでございます。今後、この関係団体からこういう趣旨で御協力をいただくことによりまして、かような通達を存続させる必要がないような状態に到達できれば、まことにしあわせだと思っておりますので、そういう意味において、八木先生にも今後御協力を賜わりたいと切望をいたしております。本日いろいろの御要望に対して、御満足のいくような回答を申し上げられないのは残念に存じております。いろいろ御高教をいただきましたけれども、ただいまのところ、先ほど来申し上げております私の考え方を、訂正ないし修正する心境には立ち至っておりませんが、せっかく種々御高教を賜わったことでありますから、今後ひとつ虚心に研究をいたしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/144
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145・八木一男
○八木(一)委員 一番最後に言われたことがほんとうに前向きであれば、きょうの御答弁は私としては、待って差し上げると言ったらなまいきかもしれませんが、待って差し上げてもいいと思いますが、そうでなければ、この問題は内閣の問題になりますから、総理大臣の御出席をいただいて、労働大臣が法律違反を固執される、内閣自体法律違反をやられるものであるかどうかという問題を詰めていかなければならないと思う。一番最後におっしゃったこと、ほんとうに虚心担懐に前向きな姿勢でやられるということであれば、その問題の詰めを次回に譲ってもかまわない。
いま、この前にいろいろ御発言がありました問題、たとえば自由労働組合の幹部とだけゆっくりとじっくりと話し合いをする、あるいはまた自由労働組合から要請があったときには職安局長もまぜて話し合いをする、あるいは私とゆっくりと話し合いをするということを、いろいろなお仕事もあろうと思いますが、ほんとうに忠実に近い機会に相当の度数やられて、この通達の問題について、もちろんこの問題に関係のあることでございますから、すべての問題を含めて撤回、修正、あるいはあなた方が突っぱられて、法律問題をまた論議しなければならないこともあるかもしれません。そういうことも全部含めて、私どもはこれを撤回なり修正なりするということを要求をしているわけでございますが、それも含めて、その問題だけでは話にならないということではなしに、話をじっくり聞く場を持たれるならば、その時期をお待ちを申し上げてよいと思う。それからまた具体的な対処について、私の先ほどから申し上げているような対処をこれからしていただく姿勢、そういうことで話していただくならば、お待ちを申し上げてけっこうだと思います。ところが、そういういま申し上げたような気持ちでなしに、ただその場のがれで、職業安定局の言うとおりこの問題は突っぱるのだというお気持ちに固着をしておられるのであれば、いまからそういう問題については——ほかの問題の話はけっこうですけれども、その問題については総理大臣に御出席をいただいて、労働大臣は安定法違反、法律違反をどうしてもやり切るのだと言っておられる、閣僚の一人がそういうことをやられると、佐藤内閣全体が法律違反をやるということになりますから、それでよろしいのでしょうか、佐藤さんも同罪で法律違反をやるということを天下に声明されてよろしいのでしょうかということにならざるを得ない。そのときには、小川さんを反省させるように佐藤さんはなさる。どうしても小川さんがあるところのリモートコントロールに従って動かないなら、小川さんにやめていただいて別な労働大臣が出てこられる、あるいは内閣が全部総辞職をされるという問題まで突き詰めてかいなければならないと思う。そういうことでなしに、さっき私が申し上げたような、この通達の改廃を含めて、やり方を前向きに、よく聞いていくということを含めて、近い機会に何回でも自由労働組合との単独の会談を続けられる、要請があったときには職安局長等を含めた会談をやる、また私との単独会談を近い機会にひんぱんに持たれる、この問題を検討してからこの問題についての結論について労働大臣として対処される、そういうことであれば、この法律問題の詰めをきょうはお待ちを申し上げてよろしいと思う。どちらですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/145
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146・小川平二
○小川国務大臣 労働組合の幹部の方々といつでもお目にかかるというお約束を前回いたしております。その後にその申し出にも実は接しているわけでございますが、ただいまはちょうど春闘のさなかでありまして、職責上力は足りないながら最善を尽くさなければなりませんので、しばらく猶予さしていただかざるを得ない、一段落つきましたらゆっくりひとつお目にかかりまして忌憚のないところを伺わしていただきたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/146
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147・八木一男
○八木(一)委員 私の最後に申し上げたことで言っていただかないと困る。私、さっきこういう意味で労働組合との会談、私も含めみんな含めて、通達の改廃も含めた、それからまたこのやり方を直す方向も含めた、そういう会談を——この前の会談は一般的会談ですが、それも含めた会談ですね。この前の会談もそれを含んでいるかもしれませんが、新しく申し上げたそれも含めた話によって、通達の改廃も含め、それからいまのやり方の直し方も含めた会談を——労働大臣は春闘があって忙しいから、あした何とかといってもだめなことはあります。そういうことはわかりますけれども、できるだけ早い機会に、できるだけひんぱんに、三種類か四種類の会談になりますが、労働組合と労働大臣、その中に職安局長と職安局の人を含めた会談もあり、私を含めた会談もある、そういうものを含めた会談を、いま言ったような内容すべてについてやってみて、それであなたが判断をされて、通達の問題についても、あるいはまたこのやり方についてもすなおに判断をされて、それで結論を出されるというならば、もういま法律問題を詰めるのをお待ち申し上げてもいい。そういうことでなければ、これから総理大臣に御出席をいただいて、違法の問題について追及をしなければならないと思います。私の言ったとおりのことで会談を続けるという意思表示であれば、これはお待ち申し上げたいと思う。そこのところを、八木のいま言ったとおり同じ文句を繰り返すのは速記録を見なければなりませんから、いま八木一男の言ったことで会談を続けるという意思表示していただければ、ほかの問題に私は移るわけです。そうでなければ、これは総理大臣の出席要求をこれからいたします。どちらでも……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/147
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148・小川平二
○小川国務大臣 御期待のような結論に達するということを、あらかじめもちろんお約束申し上げることはできませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、先入主を持たずに虚心にお話を伺って考えてみたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/148
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149・八木一男
○八木(一)委員 それであれば、そういうことを、私からも組合の代表者からも申し上げますから、お忙しいのはわかりますが、できるだけ都合をつけてひんぱんにやっていただきたいと思います。それからまた、具体的な問題を申し上げまして、ほんとうに世の中のために、労働者のために、よい行政のためにも、いい結論を出すというように話し合いをしていただきたいと思います。それと同時に、それまでの問も、この問題で紛擾が起こらないように、憲法の各章、職安法の条章に違反しない。職業安定局の各地にいる人が違反するようなことがあっては困りますし、いけないことですから、違反しないように、できるだけスムーズにいろんな行政を進めていく。それで、いままでスムーズにやっていたところはそのままでやっていいし、スムーズでないところは、できるだけスムーズにやっていくということで職安の行政指導をやっていただきたいと思う。それについての前向きのお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/149
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150・小川平二
○小川国務大臣 実はただいまの御発言の趣旨がよく聞きとれなかったので、はなはだ恐縮ですが、もう一辺簡単に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/150
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151・八木一男
○八木(一)委員 スムーズにやってスムーズに話し合い、さらにこの求職問題について、あるいはそこのいろいろな立ち会い人の問題、そういう問題について、現地では、スムーズにやっておられるところと、スムーズにやっておらないところとあると思う。スムーズにやっておられるところは、それをどんどんスムーズにやっていかれる。それからスムーズにやっておられないところも、労働省としてはいろいろな配慮をして、スムーズにやっていくようにしていただきたいということですね。そのスムーズということから、これはごくばく然としたことを言いましたけれども、いまの話し合いがありますから、その問題は両方の意見が一致を見ていないので明確に言いにくいと思います。ですから、そこでそういう話し合いをすることになっているので、いままでスムーズにやっているところを労働省がスムーズでなくするような姿勢を出すとか、電話をかけるとか——かけたらとんでもないことになりますから、そうではなしにスムーズにやっていただく。スムーズでないところがあれば、たとえば田川の問題にしても、労働大臣がいろいろ骨を折られて、ある程度スムーズに解決した事例があるわけです。そういうことを、ますます失業者、労働者あるいは自由労働組合の意見も入れて、できる限りスムーズにその問をやっていただきたい、その話の詰まるまでの問。これは非常に政治的な大まかな発言であります。できるだけいまスムーズにやっているところの例に従ってスムーズにやる。労働省の主張を通せということではありませんよ。また、組合の言うことを全部聞いていただきたいけれども、全部が全部びんからきりまで聞いていただきたいと言っても、あなたは御答弁がしにくいと思うのです。できるだけスムーズにやるように労働省もやっていただきたいということばの意味をひとつ理解していただいて、できるだけスムーズにやるというふうに行政指導をやっていただきたいということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/151
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152・小川平二
○小川国務大臣 よくわかりました。そのつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/152
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153・島本虎三
○島本委員 関連。これは労働大臣、前回の委員会のとき、大臣がいろいろ所用があって行ったり来たりしておりまして、私の場合には行ったきりで帰ってこなかったのです。そういうようなことがあって、肝心の大臣に対する質問があとに延びてしまいました。結論を得られない点が二点あるままで後日に持ち越した。きょうはその二点にしぼって、具体的な例ですから、これはもう大臣に伺っておきたい、こう思うわけです。
それは、いま八木委員がいろいろ申されましたが、職業安定法の一条、二条に関連して、ここに具体的な一つの例があります。それは東京の池袋の職安の例なんです。一人暮らしの三浦ふみという七十歳になるおばあさんがおるのです。この人はからだはじょうぶでございまして、安定所へ行っていろいろ仕事のあっせんを頼んでおるのです。ところが七十歳ですから、その年では仕事がない、こういうふうに一回は断わられてしまっている。そうして住み込みならあるけれども、これはなかなかいい仕事はない。したがって中高年齢者の促進措置の申請をしたわけです。ところが係の人は、そんなものを何するんだ、こう言って全然受け付けないという事例があるのです。その後いたし方がないので、今度は日雇いを自分でさがしながらやっている。これではまさにどうかと思われるわけです。はっきりした措置ができておって、そうして生活の保障もできて働かなくてもよろしい、こういうものができて、本人もそれに沿っているならいいと思いますが、本人は、からだはじょうぶだから、せめて自分は働きたいのだという意思に沿って行っているわけです。私も会いましたが、じょうぶな人です。こういう人に対して、求職カードを出して取り扱い、状況を三回だけ書いただけで、あとは全然相手にしないという実態があるのです。相手にしないならば、完全にその人をどこかへやって安心していられる状態にすればいいと思うのですが、それもしていない。そういうことでカードにも記入しない。本人は通っている。その人の名は三浦ふみという七十歳の人です。こういうのが現実に池袋にあるのですが、こういう職安行政は大臣としてどう思いますか。本人は就職を希望しているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/153
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154・小川平二
○小川国務大臣 いま御指摘のありました事実は、私自身初めて承ることでございます。また、局長に尋ねてみましたら、役所のほうでも事実について何も知らないようでございます。さっそく事実を調べまして、いま御発言にありましたような事態であるならば、何とか御本人の期待に沿えるようにさっそく研究を命じるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/154
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155・島本虎三
○島本委員 こういうのは具体的な事実としてある問題ですから、これはもう解決は簡単だと思います。しかし下部末端にいくと、こういうような問題でも事務的に案外うとんぜられておるというようなこの実態は、大臣としても、今後の参考に十分肝に銘じておいてもらいたいと思います。七十歳の一人暮らしの女の人です。からだはじょうぶで、おそらく前には力仕事をやっておった人で、なかなか労働能力もある人で、自分は生活保護の適用を受けるのはいやだという意思によってやっているのですが、職安が相手にしてくれない。これじゃ困るじゃありませんか。能力のある人ですから、これはもう十分に善処してやってもらいたい。これは心から希望しておきます。
それともう一つ具体的な例ですが、下関では、千五百名の失対対象者に対して二百名の監督がおって、その中では、おそらくはいろいろと組合用務のためにおくれてきたりこういうような事例のために就労停止一週間、こういうようなことをひんぱんに発令しているということを聞かされております。団体交渉に行って一時間、こういうふうに言って二時になって帰ってくると、就労停止一週間、こういうようなことを言うのだそうであります。もしこういう事実があったならば、以前はどうだったか、これも調べてみましたら、平常は賃金カットで済ましておった。最近千五百名の失業者に対して二百名の監督が来るようになってから、こういうような過酷な扱いをするようになったのである、こういうような報告であります。いままでは賃金カット、今度の場合は一週間の就労停止、こういうようになってまいりますと、なかなかその辺の基準判定がむずかしいようです。これはいかなる意図で、どういうような状態で、こういうような処分がなされるのでしょうか。この根拠も一応明らかにしておかないと、こういうふうなものこそ、まさに巷間伝えられるところの、大臣の意思を裏切るあの失対打ち切りというふうに持っていかれてしまって、こういうような例からして激発してくる可能性があるじゃありませんか。私はこういうようなことははっきり対処してやらなければいけないと思います。前の三浦さんの例はそれでわかりました。いまの例については、やはり大臣としても十分考えておかなければならないと思います。職安局長、これはどういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/155
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156・有馬元治
○有馬政府委員 下関市の事例につきましては、御指摘のような措置が現地においてとられつつあるんじゃないかと思いますが、これは御承知のように、あの地区の就労状態が正常化してない面が相当ございますので、この正常化の角度から施行者の下関市が取り上げている問題だと思います。これについても、われわれ行き過ぎのないように十分市当局を指導してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/156
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157・島本虎三
○島本委員 これは一部に、こういう五人に二人くらいの監督がついているような状態ではまさに監獄部屋じゃないか、こういうような風評さえ飛んでいるということも聞いているわけであります。こういうようなことからして、当然いろいろな心を探られる結果になり、それがともすれば闘争を激発することの原動力にもなりかねないと思います。まあ大臣がこの問題について愛情を示しておるという以前からの答弁がございました。それを聞いてわれわれもそのまま受け取ろうとしておりますが、片やこういうようなことをやりますと、あらざる心を探られる、それが闘争激発の一つのポイントになる、こういうような予測しないようなことは不幸であります。こういうようなことが絶対ないように今後指導すべきじゃないかと思いますので、この点よろしくお願いしておきたいと思います。よろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/157
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158・小川平二
○小川国務大臣 管理はあくまで適正を期さなければなりませんけれども、さればといって行き過ぎがあってはいけないことだと存じます。島本先生の得ておられる情報が不正確だと申すつもりは毛頭ありませんけれども、これまた労働省としては初めて承ることでございますから、直ちに調査を命じまして、御発言の御趣旨にかんがみて適正でない点があれば即刻是正をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/158
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159・島本虎三
○島本委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/159
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160・八木一男
○八木(一)委員 労働大臣、この前質問の末尾に申し上げたことであります。もう少し中に入るわけですが、求職者の受付をする、そのときに就職促進措置というものの申請書をすぐ交付していただきたいということを申し上げました。これは熱心な労働大臣ですから、当然そのとおりお考えだと思いますが、現地ではそうでないことが起こっております。
就職促進措置というのは、中高年齢層で三十五歳以上の人、それからまた身体障害者、あるいはまた同和地区の人々という場合に、そういうものを適用するということになっておるわけです。そこで、これは事務的な問題であって、事務的な問題を怠慢にしてはいけないと思うのです。職業紹介ですから、安定企業につける紹介の努力はどんどんされたらいいけれども、就職促進措置の申請書はその当該者には即時に渡すということ、それから申請書を持ってきたときにすぐ受け付けるということをやるのが当然のことだと思います。それが非常に渋滞をしております。それを渋滞をさせないようにしていただきたい。
その次には、安定職業につける努力はどんどんされてもいいけれども、申請になって、就職促進措置に乗せるかいなかという判定をされることになる。それが非常におくれているわけです。労働省の内規ではおそくとも一カ月以内ということになっておりますが、二カ月、半年かかるところがずいぶんある。私はこういう問題は半月くらいで済まなければいけないと思います。少なくとも一カ月以内にこの就職促進措置が事務的に怠慢でなしに処理をされるということでなければならない。安定所のやり方として安定企業に就職をさせたいということですから、並行してどんどんやっていただいて差しつかえない、そういうことです。
それから、今度就職促進措置に伴ってコースがきまる。そこにもし事務的な手続があったら、それはすぐ即時やってもらわなければならないし、そのコースがきまってから、幾つかのコースが終わったときに安定職業にあっせんができない場合には、これは失対事業の適格者とするということになっております。大橋労働大臣のときに、この問題がとまっておりましたときに、これは即時にしなければならない。郵便とかそういうことがあるから、北海道の例で問題になったわけですけれども、一週間くらいにするのがあたりまえだというお話がありました。これも非常におくれておって、二カ月、三カ月ということがあるわけです。大体これは失業者でございますから、すぐ安定職業にぱっと就職して満足していければ一番いい。それがなければ、それが一カ月続きますと、これはもう食いっぱぐれになる。それではいけないので就職促進措置というものがあって、いろんな措置によって手当がつくわけです。その手当を早く支給してあげなければその人は食えなくなる。だから事務的に早くしなければならないのに、それがいろいろなところで延びておる。それからコースを終わった後には手当が切れるわけです。切れてから安定職業にぱっと行ければいいのですが、行けない場合には規定に従って失対事業に紹介してもらわないと、これも食いっぱぐれになる。そのあらゆるところの手続が非常におくれているわけです。
それで、労働省の内規でも一カ月以内とされていながら、平均二カ月、三カ月、おそいのは半年もおくらされる。こういうことがあっては本人に非常に気の毒でありますから、一ぺんに申し上げましたけれども、とにかく申請書は言われたら即時全部渡す、手続は受け付ける、それから次に認定をする、その次にコースをきめるというところで、時日を移さずに事務的に能率的に処理をしていただく。その間に安定職業につける御努力は十二分にやっていただいていいと思います。そのことについて、これは当然の話でございますから、前向きの明快な御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/160
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161・小川平二
○小川国務大臣 これは申し上げるまでもないことでございますが、就職促進措置は、就職の特に困難な方に対して手当を差し上げて職業訓練する、文字どおり特別の応援をする制度でございますので、前提といたしましては、特に就職の困難な事業があるかどうかということを、御本人にまじめに求職する意思があるかということとあわせて、研究をする必要があると存じます。したがって、一定の期間を必要ということはやむを得ないと考えております。また、そのコースが終了いたしました場合にも、これまた筋道といたしまして、公共のあるいは民間の日雇いの求人口を、まずもってさがすということも必要であろうと存じます。しかしいずれの場合にも、これがお役所式の非能率のために、仕事が渋滞しておって御迷惑をかけておるということでは申しわけないことですから、あとう限り迅速に処理することにいたしたいと思います。現在でも特殊の事情のあるところではそのような措置もやってはおると思います。いま御指摘を受けましたから、この点についてもさらに、私自身実はあまりこまかいことは知らない点もございますので、そういう点も研究をいたしまして、あとう限り御趣旨に沿いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/161
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162・八木一男
○八木(一)委員 その問題もいろいろなお話し合いのときに申し上げたいと思いますが、労働省自体で、最初の認定までにおそくとも一月以内、それからそのほかのときも一月以内と、内規をつくっていられるようでございますが、それが順守をされていない。それから大橋労働大臣の答弁のときには、コースが終わってから失対事業に紹介するまでは、これは一週間ぐらいでやるべきだという御答弁があった。これは、内閣のお約束、労働省のお約束は、継続性があるものでなければならない。それと非常に背反した状態がありますので、これは迅速に手続をスムーズにやっていただきたい。
それから、その間において「誠実かつ熱心」に就職活動するという問題があります。それを非常に拡大解釈をされて、私どもから言わせれば、国民を非常に困らせるやり方をされておるわけです。「誠実かつ熱心」にというのは、職業安定審議会のほうで、こういう問題は判定が非常にむずかしいので、主観的に流れてはいけないという明確な答申が出ておる。「誠実かつ熱心」じゃないということは、紹介されたところに本人が行かない。行かない場合も、これは病気で行けなかったとか、そういうようなときは、もちろん行かなくても、次の日に行けばいいのです。つまり原則的に、やむを得ざる事由がないのにそこのところに行かない。それから、安定所に出頭してくれという連絡があったときに、これまた、そういうようなやむを得ざる理由のときは、もちろん行かなくてもいいけれども、それでも来られないというような客観的事実を示さない人は、「誠実かつ熱心」に就職活動をしていないということになってもしかたがない。それを主観的に「誠実かつ熱心」でないという判定をすれば、これはとんでもないことが起こる。審議会でそれをほんとうに考えられて、客観的に例示をあげて、そういうことが「誠実かつ熱心」に就職活動をしていないということになるのか——それが順守されていないわけです。これを順守するようにやっていただかなければならない。客観的判断は、この紹介されたところにやむを得ざる事由がないのに行かなかった一やむを得ざる理由は一ぱいありますよ。ある人が行ったら心臓麻痺を起こすようなところに、無理に行かしたら死んでしまう。これは人道問題ですよ。やむを得ない事由がないのに、紹介したのに行かなかった、それからまた役所に来てくれというのに、やむを得ざる理由がないのに何日も出てこられないという場合のみに、そういう客観的な事実だけが「誠実かつ熱心」に就職活動をしていないことになるので、いささかも、安定所の職員の主観的判断で、こいつは気に食わないからふまじめだ、言い方が悪いからふまじめだ、そんな者は「誠実かつ熱心」じゃない、ぶった切るんだということは許されないということになるわけです。その点について拡大解釈をしないように、非常に失業して困って生活に苦闘をしている国民の立場に立っていただく。いま言った職業安定審議会の答申でも、私はきついと思う。そこをさらにほんとうに弾力的にあたたかい配慮をしたやり方をされるべきであると思うのです。この点で、ほんとうに国民の立場に立ってあたたかい前向きの御答弁をひとつ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/162
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163・小川平二
○小川国務大臣 本人の意思を確認するという仕事は、非常にむずかしい仕事であり、同時に大事な仕事だと存じますが、独断におちいったり主観にわずらわされることがあってはならない、これは当然のことでございますから、そういう方針で今後も指導いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/163
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164・八木一男
○八木(一)委員 次に安定職業という問題ですが、これは大橋労働大臣のときに、いまの失対の人たちよりも条件の悪くなるようなことはしないということであった。ところが、いま紹介されるところは、それよりも給料が下がるところであるとか、社会保険のないところ、また非常に労働が過重で本人の年齢とか体質に合わないところへ紹介されることがあります。それから、行ってなれたらすぐつぶれてしまいそうなあぶないところもあります。そういうところでも紹介をして成績をあげたい、と言つちやいけないけれども、ずばり言うとそういう安定所の機運なのです。本人が満足しようがどうであろうが、形式的に何でも紹介してやっておけば安定所の事業の成績があがったということになる。それでは国民が助からない。安定職業というのは、ほんとうに賃金その他の労働条件、社会保険あるいはまた通勤の距離、労働の内容が本人の性質や体質に合うというようなところでなければならないし、特に大事なことは、本人が職業選択の自由を奪われない。そこはどうしても自分にとって職業の内容が向かない、不適だというようなところに、そこに行かなければ「誠実かつ熱心」でないと認定して就職促進措置の認定をしないとか、途中で打ち切る、失対に入っても資格を取り消す、その問就業停止をするとか、そういうけしからぬ刑罰的な実際上のおどかしで強制労働——職業選択の自由を許さない、そういうようなことが行なわれていることが多々ある。そういうことではなしに、ほんとうの立案の精神に従った意味の、本人が満足する安定雇用に熱心に紹介さるべきである。紹介ができないときは、規定に従ったコースでやられるということでなければならない。その点についての大臣の前向きの御答弁をひとつお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/164
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165・小川平二
○小川国務大臣 御本人の幸福、福祉ということを第一義に考えるべきものでありますから、不当に強圧を加えましたり、あるいはおことばにありましたように、点数かせぎのために非常に不安定な職場に送り込むというようなことがあってはならないと存じます。今後も御趣旨のようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/165
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166・八木一男
○八木(一)委員 労働大臣の前向きの御答弁で、そういうことになればこの問題はなくなると思います。
ただ一つ例をあげますと、これは佐賀県の例だと思いますが、就職を紹介された方がある。そこは社会保険がない、病気になったらたいへんだということで、ここでないところを紹介願いたいと言ったら、お前さんは就職に誠実かつ熱心な者でないと打ち切られようとしたので、いろいろ自分の立場を説明したけれども、何の理由も明らかにしないでそれだけの理由で打ち切られた。そこで文句があるならば行政不服審査があるからそこへ訴え出ればいいだろう、何といってもお前はだめだ、切るのだという態度を示した例があります。行政不服審査で問題が片づくのは半年から一年です。失業して収入がなく家族をかかえている方にとっては、首をつれということになる。いま言った客観的事実がないのに、ただ自分のほうが、不適当な社会保険もないようなところに紹介した。そこでほかのところへやってくれと言ったこの当然の申し出に対して、紹介してやったのに断わるのはなまいきだ、そんなやつは就職に誠実かつ熱心な者ではない、ぶった切るということが行なわれる。それではほんとうに冷酷むざん、鬼畜のごときやり方になる。その法律の精神に反する。そういう事実がありましたので、そういうことが決して起こらないようにしていただきたいと思います。
もう一つ、緊急失業対策法の第十条第三項の規定ですが、労働大臣は御承知でいらっしゃいましょうか。御承知がないならば簡単に申し上げます。いろいろごちゃごちゃした条文ですが、こういう就職促進措置その他があるのですが、失業多発地帯では就職申し出の人に対して、そういう措置とかそういうことをしないで失対事業に直通させることができることになっているわけでございます。ややこしい条文ですから、また御答弁のときにお読みいただいてもけっこうですが、そういうことで、この問題についてまだ失対二法が通ってからこの問題が適用された例が一件もないと思います。もしあれば職安局長答弁していただきたいと思いますが、一件もない。こういうことがあるという事態を踏まえてこういう条文がつくられた。そうして議会の審議を経て——野党はあのとき反対して野党のいないところできめられたような状態でございますが、与党の労働問題、失業者問題に熱心な方々が、こういう条文は、こういう事態があることが適当であるという認定のもとに、そこは削除されないで通っている。そうですね。ですからそれが一つも適用されないというのはおかしなことなんです。それはまさに労働省が法律の規定を活用していない、非常に怠慢であったということができると思う。それについては小川労働大臣はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/166
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167・小川平二
○小川国務大臣 これは、何かの事情によって失業者が急速に多発いたしまして、就職促進措置等を行なおうにも能力の限度を越えてしまう、かような事態が起こった場合のいわば最後の手段としてこの規定があるものと考えております。今日までそのような事態がなかったということであろうと存じますが、いずれにいたしましても、これは最後の手段でございますから、これを適用いたしますには十分慎重でなければならない、このように考えております。しかし諸般の事情からこの措置を適用することが適当だと考えられるような客観的な事態が生じてまいりました場合には、もちろんこれは考えなければならぬ問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/167
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168・八木一男
○八木(一)委員 その時点にそういう状態がなければこんな条文は要らないじゃないかという意見が審議中に出ていたわけです。ところが、そういう状態があった、こういう問題があったから、そういうことが予測されているから、労働省も提案のときにこれを入れられた。国会もそれを含んで審議をされた。当然そういう事態があったわけです。それを一カ所も一件もしていないということは、法律条文を活用する点からいって非常に怠慢であったと言える。ことにこの問題について大橋労働大臣は、石炭企業がつぶれる、そこでそういう事態が起こっている、だからこういうことが必要なんだという意思表示をされている。そこで、石炭の問題についてそういうことがあるならば、石炭の企業は失業保険の適用を受けるから一これは何か労働省のほうの規定では、失業保険の受給率が全国平均の二倍以上になったときは失業多発地帯として適用を受けるということになっている。ところがこれは失業保険というものがある。労働者が急に失職したときにはこういう状態が適用される。ところがもっと状態が悪くて、失業保険が五人未満——強制適用じゃありませんから、そういう失業保険のあるような企業に就職できないような失業があるところでは、これはみじめになるじゃないかという質問をいたしました。そこで例として、同和地区は半永久的な半失業状態にある、しかもその失業保険の適用のあるような五人以上の企業に雇われている人は少ない、状態は非常に失業者が多い、そうならば、そういう失業保険をもとにしたやり方では不十分であるということを質問しますと、大橋労働大臣からは、当然同和地区の人々にはこの問題は自動的に適用したいと思いますという答弁があった。石炭においてもそういう事情があります。同和地区の失業状態は変わりはありません。それにもかかわらずこれが発動されていないというのは、労働省の中に、失対事業の数をできるだけ多くしたくない、数が少なくなってこれをちょんとやめたいという間違ったことを、全部じゃないと思いますが、考えている人がいるらしい。それで、そういう条文があっても、できるだけそれを適用しない、それをほうかむりをしてやってきたという風潮があります。これはこの法律を審議をした国会をほんとうに無視したことになろうと思う。そういう状態がある。国民の多数を無視したことになろうと思う、条文があるわけでございますから。失業多発地帯のこの労働省の一般的な適用の限度——失業保険の受給者が非常に多いという状態はもちろんでございますが、大橋労働大臣の答弁のごとく、同和地区においてはそういう状態でありますから、自動的にこういう条文を適用して、そうして失対事業に紹介するということをやられなければ、法律は死文化することになる。その問題について、いままで一件も適用がなかったことは非常に怠慢であると思いますが、今後この問題については、その怠慢を脱却をして、必要なところにはどんどん適用させるというような方針でやっていただかなければならぬと思います。それについての労働大臣の前向きの御答弁をひとついただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/168
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169・小川平二
○小川国務大臣 御質疑の趣旨はごもっともだと存じます。ただ、ここでその場のがれの無責任な答弁を申し上げるわけにまいりませんので、私自身事態を十分研究いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/169
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170・八木一男
○八木(一)委員 ぜひ前向きに御検討になって、その怠慢な点を急速に直していただきたいと思います。
それから、時間が迫ってきましたので、審議に協力申し上げることにして、私の考え方をひとつ申し上げておきたいと思います。
失対事業の再検討ということが、何かことしから来年にかけて行なわれるような時期になっているというようなことでございます。職業安定局長もこの問題について熱心に考えておられますから、御相談になって、いまの行政上の問題については安定局でけっこうでございますが、私の考え方を、一問一答すると時間がかかりますから、すらすらと並べますから、お聞き取りを願って前向きの御答弁をいただきたい。
失対事業はどういうことから発生したかというと、政府の完全雇用政策がその事態においてはなっていなかった。これはあるいはわが党の内閣もそのときに関係があるかもしれません。自民党内閣とあえて申し上げませんが、その当時全体の政府の責任で完全雇用ということがなっていなかった、ほんとうに民衆が困った状態にあったということです。それからわが国には残念ながら、老齢保障の制度、あるいは失業保障の制度、あるいは遺族保障の制度がほとんどなかった。厚生年金の一般的な支給が始まったのはごく最近である。その当時は支給が始まっておらなかった。国民年金制度はその当時なかった。そういう状態でありますから、老齢者に対する保障ということがない。いままでその人たちが戦前から貯金をしてきた金はインフレでただ同然。貯金も保険も民間の保険もみなそういうことです。それで職業がない。老齢保障もなければ、だんなさんを失った未亡人に対する保障もない。それから失業に対する保障もない。そういう大ぜいの国民が飢え死をしなければならないという状態で、そのときの政府がこれに対処しなければならないときに、この失対事業というものができた。でございますから、一面においては労働問題でございますけれども、一面においては、失業保障がない、老齢保障がない、遺族保障はないということから始まった問題であります。したがって労働問題だけでこれは割り切るのは間違いなんです。もちろん労働問題でありますから、社会保障問題だけで割り切ることについても不十分なことがあると思いますが、沿革はそういうことです。ところがいま同じような状態で、職業安定局がほんとうの安定職業をやられることはけっこうでありますが、それがなかなかない状態だから不安定職業に無理につけようというような傾向が出ている。中高年齢層などは、特にそういう安定職業につけられない状態——若い労働者は奪い合いでありますけれども、そういう状態である。それから老齢保障というものが、いまのものであれば、国民年金の老齢福祉年金が七十歳からごくわずか千六百円支給されるという状態、こんなものでは生活の足しにも何にもならないということであります。したがっていまの状態は老齢保障も遺族保障も失業保障もない。ドイツのような無拠出の失業手当はまだつくられておりません。そういう状態でありますから、事態は変わっておらないわけです。したがって失対事業については、再検討の時期においても事態は変わっておらない。したがって、その問題は完全に継続をどんどんさせなければならないし、一そういう状態があるのであるから、それを無理に曲げて数を減らそうというようなことはやめて、さっきいろいろ論議をしましたような手続を経た場合には当然どんどん紹介をする。そしてそういう中でいろいろの労働をしてもらうわけでございますから、老齢の人もいる、それから婦人の人もいる、からだの弱い人もいるという状態でありますから、労働問題一般と割り切って、いままでの慣例を無視して非常な労働強化をしいるようなことはしない。しかも生活保障をほんとうはただで差し上げていいものを、からだの弱い人も含めた中で仕事をしてもらいながら事業効果をあげているわけですから、当然それに見合うだけの賃金も——世の中の物価も上がれば生活水準も上がっているわけでありますから、賃金もぐんぐん上げていく、手当もどんどん上げる、また地方自治体がそれぞれそれに対処して適当な手段をとっていることに中央政府が介入しないという方法でやられるべきだと思います。
これについて非常に無理解な人があるようであります。非常にしあわせな人は不幸な人について無理解であります。失対の事業でずいぶんとい生能率をあげてやっておられますが、しかし、からだのきびきびした、筋骨隆々とした、たとえば何々組でやっておられるような人とはからだが違うわけです。そういうところでどんどん能率的ナ仕事をしてもうけているような仕事を見ている人は、こっちのほうの事業はそれほどきびきびしていない、もっとばりばりしたら賃金も上がるのに、だからいろいろなことで批判を受けるんだというような見方で見る人があります。そういう人たちのつまらぬ意見が政治家の耳にぼっぼっ入ってくる。そういうつまらぬ意見を言う人のほうが大体社会的地位は高いから、小川労働大臣なり国会議員の皆さんなり労働省の局長なりに、もの申す機会が多いわけです。ほんとうの労働の苦しみや失業の苦しみや生活の苦しみを知らない人の意見がわれわれの耳にたくさん入ってくる。だから明敏な政治家でも判断を間違えることがある。老人がいて困るというようなことをよくいわれますけれども、ほんとうであれば、六十歳以上の所得制限とかなんとかいうことなしに、月に少なくとも一万五千円か二万円くらい無条件で差し上げるような年金制度があれば、少しは問題が変わってくるでありましょう。そんなものはないのです。七十歳以上で、所得制限があって、金額も少なく老齢保障も不十分である、そういう状態は一つも変わっておりませんから、失対事業は断じて続ける。それについての批判的な考え方、失業者の、貧しい人の苦しみも知らないで言うような無責任な声はほんとうのものでないというふうに捨てていただいて、ほんとうに失業者を労働省が守る立場で失対事業を守り、育てて、賃金その他の条件をよくしていく、そういう方向で問題を考え、進めていただきたいと思うわけであります。
私の社会保障というのは生活保護という意味ではありませんから、明確に申し上げておきます。生活保護というのは、その食料費の平均が、これは地域、年齢、あるいはまた性別で違いますけれども、一日三十円台の食料費であります。いま生活保護の基準は、これはどこかの裁判で、犬の食料費について一食五十円払えという判決があったが、犬以下のものであって、生活保護の水準であれば、八十まで生きる人が七十で死ぬ、七十まで生きる人は六十で死んでしまう、そういう内容であります。健康で文化的な生活の程度ではありません。ですから、生活保護というものはここで私のいう社会保障にはならない。ほんとうに健康で文化的な相当程度の生活ができる老齢保障、遺族保障、失業保障がない限りにおいては、そのかわりにできた制度でありますから、断じてこれは継続する。該当者については文句を言わずにそれに就労させる。賃金を上げる。労働条件を失業者、労働者の立場に立ってよくする。老齢者がいるときに激しいことをしない。そこで、いろんな三分化というようなことを考えているらしいけれども、本人の意思に反して賃金の少ないところに追いむ込ようなことはしないという方針でやっていただきたいと思うのです。そういう問題について労働大臣の前向きな御答弁を伺いたいし、また職安局長の前向きの御意見があったら、ひとつ職安局長からも伺いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/170
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171・小川平二
○小川国務大臣 いまいろいろ御教示をいただいたのでございますが、私、これからこの問題を白紙で検討を始めたいと思っておりますけれども、おことばにありましたように、失業対策事業は社会保障そのものではありませんけれども、確かに社会保障的な機能を営んでおることは事実でございます。それからまた御指摘のように、年々高齢者、お年寄りがふえてきていることも事実でございます。そういう事実も含めまして、現に働いておられる方の生活の実態ということは十分考慮しなければならない、これは当然のことだと存じております。ただいまの御発言の趣旨はしかと承りましたから、これは念頭に置いて研究してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/171
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172・有馬元治
○有馬政府委員 大臣の御趣旨を体しまして慎重に検討してまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/172
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173・八木一男
○八木(一)委員 時間の点もありますから、これで質問を終わりたいと思います。
大臣の前向きな御答弁については感謝を申し上げて、このとおりひとつ善意を持ってやっていただきたいと思います。職安局長の前向きな御答弁についても満足をいたします。その点について大臣を補佐していただきたいと思います。ただし前段の問題については、これは満足をいたしておりません。先ほども申し上げたように、組合と十二分に話をされて、法律違反でないように、よい行政ができるようにやっていただきたい。そういうふうに強く希望、要求を申し上げまして、私の質問を終わらしていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/173
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174・八田貞義
○八田委員長 次回は明二十五日午前九時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時五十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804410X01919680424/174
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