1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年三月二十六日(火曜日)
午前十時五十三分開議
出席委員
委員長 小峯 柳多君
理事 天野 公義君 理事 宇野 宗佑君
理事 鴨田 宗一君 理事 島村 一郎君
理事 中川 俊思君 理事 堀 昌雄君
理事 玉置 一徳君
内田 常雄君 遠藤 三郎君
小笠 公韶君 大橋 武夫君
岡本 茂君 海部 俊樹君
佐藤 孝行君 櫻内 義雄君
始関 伊平君 塩谷 一夫君
菅波 茂君 田中 榮一君
橋口 隆君 武藤 嘉文君
岡田 利春君 佐野 進君
多賀谷真稔君 楯 兼次郎君
千葉 佳男君 古川 喜一君
塚本 三郎君 吉田 泰造君
岡本 富夫君
出席国務大臣
通商産業大臣 椎名悦三郎君
出席政府委員
公正取引委員会
事務局長 柿沼幸一郎君
大蔵政務次官 倉成 正君
大蔵省証券局長 広瀬 駿二君
通商産業政務次
官 藤井 勝志君
通商産業省貿易
振興局長 原田 明君
中小企業庁長官 乙竹 虔三君
委員外の出席者
参 考 人
(東京中小企業
投資育成株式会
社社長) 江沢 省三君
専 門 員 椎野 幸雄君
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三月二十六日
委員田中六助君、丹羽久章君、橋口隆君、中谷
鉄也君及び永井勝次郎君辞任につき、その補欠
として菅波茂君、佐藤考行君、長谷川四郎君、
佐々木更三君及び赤路友藏君が議長の指名で委
員に選任された。
同日
委員佐藤孝行君、菅波茂君、長谷川四郎君、赤
路友藏君及び佐々木更三君辞任につき、その補
欠として丹羽久章君、田中六助君、橋口隆君、
永井勝次郎君及び中谷鉄也君が議長の指名で委
員に選任された。
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三月二十五日
北海道地下資源開発株式会社法を廃止する法律
案(内閣提出第九六号)
同月二十二日
化粧品の再販契約制度に関する請願(山下元利
君紹介)(第二九九三号)
同(加藤常太郎君外一名紹介)(第二九九四
号)
同(野呂恭一君外一名紹介)(第二九九五号)
同(小沢佐重喜君紹介)(第三〇一〇号)
同(菅波茂君紹介)(第三〇一一号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律
案(内閣提出第二五号)
中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する
法律案(内閣提出第二六号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/0
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001・小峯柳多
○小峯委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、前回に引き続き参考人として東京中小企業投資育成株式会社社長江沢省三君が出席されております。
参考人におかれましては、御多用のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/1
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002・佐野進
○佐野(進)委員 私は、この前の堀委員の質問に引き続きまして、中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する法律案について質問を続けていきたいと思います。この提案理由の説明に沿って質問を続けていきたいと思います。
この中で一番先に「資本取引の自由化、発展途上国製品の進出あるいは労働力需給の逼迫等わが国の中小企業を取り巻く内外の環境にはきわめてきびしいものがあり、これに対処するため」にこの法案を出したのだ、こういう提案の説明です。
そこで私は、この内外の経済環境ということについて若干貿易振興局長、それから公取の事務局長に質問をしてみたいと思います。
まず、外のほうですが、ここに書いてあるような、いま私が読み上げたような外的な要因に加えて、いま一番問題になっておるのは、御承知のとおりドル不安、ポンド切り下げの不安、さらにそれに基づくアメリカの一連の対策の中で輸入課徴金制度をつくるとか、いわゆるわが国の貿易について非常にきびしい新しい条件が出てきたと思うのです。したがって、そういう新しい条件について、いま政府は、それぞれ具体的な手を打ちつつあるし、また各界において、それに対応する措置を講じつつあるわけですが、いまや課徴金の問題は必至の情勢にある、こういうようにいわれておるわけです。したがって、この前参考人がお見えになってお話しになったように、課徴金制度がもし創設されるような場合には、国内におけるその取り組みについて幾つかの提案をしておられるわけですが、こういう問題について、貿振局長は、創設されたということを前提としての対策をいま考えておるかどうか、この点についてひとつお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/2
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003・原田明
○原田政府委員 先生御指摘のとおり、内外の情勢、特に海外におきましては、ドル不安、課徴金の問題をめぐりまして、わが国の輸出にきびしい環境があらわれてまいっております。特に課徴金の問題につきましては、まだはっきりアメリカがこれを実施することに踏み切るかどうかという見通しはついていない状況でございます。しかしながら、もしこれが課せられるというような状態が起こりますと、わが国の輸出がかなりの打撃を受けるということは必至と存ぜられますので、この対策をもちろん検討いたしているわけでございますが、具体的にアメリカがもし課徴金に踏み切ります場合に、課徴金だけでいくのか、戻し税を併用するのか、あるいはまた課徴金にいたします場合にも、その率を、巷間伝えられております五%ないし三%にとどめるのか、あるいはもうちょっと高めてくるのだろうか、それからまた発展途上国を除外するのではないかといわれておりますが、はたして除外をするのかどうか、それからまた除外をいたします場合に、国という名前で除外するのでなくて、品目で除外をするということにするのかどうかというようなことによりまして影響が非常に違ってくるというふうに考えております。したがいまして、現在の段階におきましては、まだヨーロッパ諸国の出方その他もきわめて微妙でございますし、課徴金を防止するという一点にしぼりまして対策を講じております。しかし、もし課せられました場合には、やはりわが国の輸出がこれを乗り越えて出ていけるような対策をとる必要があるのではないかというふうに考えております。つまり日本の貿易構造その他から見まして、向こうが制限をしたからこちらも制限をするという形ではございませんで、できるならば、向こうが輸入防壁を設けても、それを乗り越えて輸出を拡大していくという方策のほうが望ましいのではないかということで、そのための具体的方策として考えられますようないろいろな事柄について、アメリカの出方を見て臨機応変に手が打てるようにということで検討いたしている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/3
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004・佐野進
○佐野(進)委員 アメリカが課徴金制度を設けるということは、自国のドルを防衛するということ、国際収支をよくしようということ、だから、アメリカが自国の経済を安定、発展させるための措置であるから、アメリカの利益ということを前提に考えておることはもう当然だと思うのです。したがって、そういう中からくる対策というものに対して、われわれが安易な形の中でこれを理解して取り組むということであっては、なかなかそう都合のいいような方向で問題の処理をはかることはできないのじゃないか、こう思うのです。いま局長は、アメリカが障壁を設けたならば、その障壁を乗り越えるだけの国内における体制を強化する、それが第一だ、もちろん課徴金制度をなくするということに対して努力するが、設けられてもそういう対策を当然考えるべきだという。これは、もうそうしなければならぬと思うのですが、しかし、それには、それにふさわしい対策というものを、もういまの段階で、特に、課徴金が設けられる設けられざるにかかわらず、低開発国、いわゆる発展途上国の製品の進出その他もろもろの情勢からするならば、当然立てておかなければならぬいま時期だと思うのですよ。したがって、そういうことについて、いまのような程度のお答えでは、たいへん時期的に何かおくれをとるのではないか、こういう点が強く感ぜられるわけです。
そこで、私は、それに関連してお聞きしたいのですが、アメリカは、みずから輸入課徴金等を設け、いわゆる輸入障壁を高くするとともに、輸出振興をはかる、そうしてみずからのドルを防衛する、こら言っておるのですね。アメリカが輸出振興をはかるということは、必然的に、日本をはじめEEC諸国あるいは低開発国等に対して、いわゆる日本の競争場裏に対して積極的な手を打ってくるということになる。みずからが障壁を高くするとともに、みずからが外国へ進出しよう、こういうことですから、そうした場合、EEC諸国あるいはイギリスをはじめカナダ等は、それぞれ具体的な対策を立てておる。日本は、ほとんどその対策が立っていないわけでしょう。片や、向こうは、障壁をつくる、そして輸入の壁を高くする、そういう形の中で、こっちは、それを乗り越える対策を立てるのだ、こう言いながら、逆にアメリカのほうは、外国に対して輸出振興をはかるのだということを政策の重要な柱にして、具体的にもそれにいま取り組みを開始しているのでしょう。日本は、ここに書いてあるように、発展途上国の製品の進出あるいは資本の自由化という受身の一方、さらに、アメリカの強力な圧力を受けようとしておるときに、それに対してどういう対策を立てるのか。乗り越えていくのだというどころではなくて、こっちのほうがこわされるのじゃないか。こういうことについて、どう対策を立てられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/4
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005・原田明
○原田政府委員 まことに先生御指摘のとおり、アメリカは、単に輸入制限という形で貿易の面における国際収支の改善をはかろうとしておるだけではございませんで、ジョンソン・メッセージによりますと、五年間に二億ドルの輸出振興予算を組む、また、最近では、さしあたり二百四十万ドルの輸出振興予算を要求するというようなことで、輸出に大きなドライブをかけようとしておるようでございます。アメリカの力は、産業によっては非常に強力でもございますので、第三国市場でわが国との競争が非常に激化する、また、その結果、わが国とアメリカとの競争だけではございませんで、ヨーロッパ諸国も含めまして、いわゆる輸出競争が激化するという、御指摘のとおりになる傾向があると思います。したがいまして、私どもは、安易な輸出振興策ではとうていこれは乗り切れないということで、鋭意努力をしてまいっておるわけでございますが、その第一番は、やはり輸出を担当いたします国内の産業、これの競争力なり体質が強化され、それからまた、輸出がしやすくなる環境というものができ上がるということが一番先決であるというふうに考えている次第でございます。したがいまして、先般来、輸出会議を個々の産業ごとにすべて開催をいたしまして、輸出振興のための体制を築き上げる。そのために、各業界ごとの特殊性に応じまして、いかなる振興策をとることがいいかという御議論を願って、業界としても、輸出に道義的な責任を持って振興に当たろうではないかという体制をつくり上げていただこうということでやっております。
しかしながら、こういう振興の体制というのは一日や二日ででき上がるというものではございませんので、あわせまして、いわゆる輸出振興策、米国あたりもやろうとしておりますような輸出振興策を強力にこの際推進をすべきであるということで、現在までに実行されておりました金融、税制、保険及び予算というような各種の面におきまして、これを強化拡大するということでまいっておるわけでございます。まず、金融面におきましては、公定歩合が上がりましたけれども、輸出に関する金利だけは確実に据え置いていただく。したがいまして、輸出の金利と一般の金利との開きが大になりまして、それだけ相対的に輸出は有利になるという状態が起こっておるわけであります。
また、資金量的にも不便を感じないようにということで、輸出に関する金融は別ワクにしてもらいたいということを確保いたしまして、輸出に関する限りは、資金の量の面からも、いわゆる引き締めの余波を受けて輸出が困難になるという事態が起こらないようにということでお願いをして、現在そのとおりに実行されつつあるものと信じております。
それからまた、長期金融の面におきましても、輸銀の資金の拡大、それから、金利引き上げの防止というような面に力を入れております。
また、最近、特に為替不安その他から取引の不安定、リスクというものが大きくなっておりますので、輸出保険におきましても、すでに前臨時国会におきまして補正予算で三十億円の出資の追加をいただきまして、その面から、輸出業者が不安を感じないで輸出ができるようにという体制をある程度整えることができたものと考えております。
なお、このほかに、いわゆるジェトロその他の振興予算という面におきましても、それぞれ応分の予算の拡大というものを見ております。
これだけで十分である、これだけあればもう安易に世界のきびしい輸出情勢に対処して輸出ができると考えているわけではございませんが、しかし、先生御指摘のような状況でもございますので、こういう各種の面に力を入れまして、輸出振興に一段と努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/5
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006・佐野進
○佐野(進)委員 もう一点だけ聞いて次へ進みたいと思うのですが、私は、いまお話しのような点で、きびしい外的条件に通産当局が取り組んでおるということについて、それだけ論議しても一時間や二時間費やしたって終わらない内容があると思うのですけれども、しかし、きょうの法案審議の前提として一度聞いておきたいと思って聞いておるわけですが、そうすると、今度の法案の提案理由の一つとして、資本の自由化をはじめ云々という説明があるのですが、資本の自由化はもちろん重要問題だけれども、それ以上に、いま当面するアメリカ経済の影響を受けた日本経済、なかんずくそれに基づく中小企業の受ける影響というものが非常に深刻な状況を招くだろうというのは、だれもが否定することのできない現実なんですね。だから、提案理由を説明した時期よりももっと深刻な段階になっておるわけです。したがって、そういう深刻な事態に対処するその通産当局の取り組みというものが、いまの説明程度では、私は、非常に弱い、不足しておる、こういうぐあいに感ぜざるを得ないわけです。
そこで、通産政務次官にお尋ねしますが、いまさっき私が質問しているごとく、いわゆる課徴金制度を初めとする一連のドル防衛策に基づいてアメリカの輸入に対する制限がきびしくなる。これは課徴金制度がつくられなくても、何かそういう現実に起きている問題がそのとおり通らなくても、きびしくなることは当然ですね。その反面、日本に対するアメリカの逆攻勢というか、輸出振興というそのあおりは、それは必然的に受けざるを得ないわけです。その受けざるを得ない段階の中における取り組みというのは、いわゆる資本自由化の影響云々というようなその提案の次元とまた違った意味における深刻さがあると思う。だから一体どうするのかということになれば、このアメリカの課徴金制度をはじめとする一連のドル防衛策に対して、日本経済を守り、その影響を受ける中小企業の利益を守るために、どういうような報復措置といってはちょっとことばが適切でないかもしれぬけれども、どういうような対抗策を立てるのか。対内的な問題として、いわゆる国内における相手方のとろうとする措置については、いま貿振局長が、その障壁を乗り越えるという形の中において輸出業者に対して力をつけてやるのだということを言われたわけです。しかし向こうから攻めてくることに対して、あるいは壁がどんどん高くなることに対して、何かやらなければしようがないでしょう。アメリカが課徴金制度を創設しようとしても創設できない最大の原因は、EEC諸国の了解が得られないということでしょう。その中には日本の了解が得られないなんということは一つもないわけですね。EEC諸国が了解してくれるならば、もう課徴金制度を創設するのだということになるでしょう。そうすると日本は、受ける被害は最も大きくして、相手からは相手にされないというような、きわめて弱い立場に立った取り扱いしかされない。いわゆる近代国家の一環をになっておるとか、近代国家になりつつあるなんていつも言っているそのことばと違った、国際経済においてきわめて弱い取り扱いしかされていない。特にアメリカからされていない。そういう点について、一体何をするのか、どうしたらいいのかということぐらいは、政府はもっとき然たる態度で取り組みを開始していただきたい。お願いするということだけではいかぬのではないかと思うのです。これは通産大臣がいれば、もっと食いつきたいのですが、政務次官ですから、そう食いついてもしようがないから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/6
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007・藤井勝志
○藤井政府委員 アメリカはEECの意向を中心にして、日本など大して意に介しておらない、しかもその日本が経済的な被害というのは一番大きいではないか、いま貿振局長が答えましたような問題では、かまえとしてきわめて遺憾である、不十分である、こういう御意見でございますが、これは、もともとアメリカが課徴金制度を考え出したというのは、EECが国境税、こういったものをかけたというところから端を発しておる。したがって、相手はそういういきさつがございます。ただ、おっしゃるとおり、とばっちりを受けるのは、日本の繊維、雑貨という中小企業が集中的に大きな被害を受けるということは御説のとおりでございます。したがって、この問題は、その後、中小企業投資育成会社の提案理由の説明のくだりあたりとは違って、国際経済情勢はきわめて深刻な場面に展開をしてきておること御指摘のとおりでありまして、私は率直に申し上げると、おそらくこれはもう皆さん同感だと思いますが、国際経済は戦後最大の危機に直面しておる。このときにあたって、それを乗り越えてということで、先ほど貿振局長は、四十三年度予算編成にあたって政府の取り来たった貿易振興対策を御説明申し上げたわけでございまして、御指摘のごとく、現時点から見れば、きわめてまだ不十分であるというおしかりを受けるのもごもっともだと思うのであります。われわれとしては、さすればどのような具体的方途ありやということで、昨今苦慮いたしておる最中でございまして、とりあえずは、先ほど局長から答弁いたしましたように、課徴金制度廃止一本にしぼって最善の努力を尽くそうというかまえであります。
しかしながら内面的には、まだいま発表すると、いかにもへっぴり腰に見えて、条件闘争のように見えますから、具体的なお話を申し上げることは、ちょっとこの場においては差し控えたいと思いますけれども、積極的に乗り越えるようないろいろ案を検討しておる。アメリカと同じように課徴金的なものを取るということは、食糧とか原材料を輸入しておるアメリカと日本との関係において、これはプラスマイナス、マイナスが大きいという面、したがって積極的に輸出振興をやる場合、いろいろいま検討いたしておりますが、先ほど局長が話をいたしましたように、どの程度の課徴金を取るか、あるいはまた課徴金だけでいくか、戻し税的なものを含めるか、まだ向こうの出方がわかっておりませんので、いろいろなことを想定して現在内部で検討しておる。しかもこの問題は、一通産省だけの問題で片づくわけではございません。大蔵省を含め政府ぐるみで問題解決に当たらなければならぬという決意においては、佐野先生のお気持ちとわれわれ何ら変わるものではない。その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/7
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008・佐野進
○佐野(進)委員 私、いまの政務次官のお答えで気持ちはよくわかるわけですが、ただ、この前参考人を呼び、あるいはその後の委員会でたびたび各委員から課徴金の問題について意見が出され、特に堀委員のほうから、いわゆる議会において、この件については商会委員会として決議をして、そうして積極的に取り組みを開始すべきだ、こういう点について強い発言もあり、通産大臣は、あらゆる可能な範囲の中においてあらゆる努力をする、応援もする――応援というのは民間の業界の人たちに対する応援もする、政府としては積極的に取り組む、こういうことを言っておる反面、政府は、いま政務次官がお答えになったことと違ったような意味で、何かアメリカに遠慮することが問題解決の一番近道だというような、そういう印象を受ける行動が続いておるわけですね。この問題について最大の責任を持つ国会の委員会が、いまだこの決議をすることもできず、あるいは本会議上程ということもでき得ない段階の中で、自由民主党の特使という形で三名の方がきのう羽田から行かれた。しかもその特使の中へは、商工委員会の委員長とかあるいは理事とかという最高の責任者が入って、商工委員会等の空気を反映するということであれば別として、いわゆる通産当局に対して関係の最も深い商工委員会はほとんど無視されておるというような形の中でそういうことが行なわれておるということは、裏を返せば、政府は、この問題については、国会の発言あるいは国会の協力ということはかえって迷惑なんだ、必要がないのだ、むしろこの問題は、民間財界人と自由民主党の一部の人たちの協力があれば、課徴金問題の解決が一番早くはかれ、それが効率的なんだ、こういう判断に立って取り組みをしておるのだというように理解せざるを得ないわけですが、そうなると、この前、通産大臣がわれわれに対して答えたその意味とだいぶ違った評価をいま政府は行なっておるというように断定せざるを得ないんですが、これについて政務次官はどのように処置してきたのか、この商工委員会の意向と党とかの関連の中でひとつお聞きしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/8
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009・藤井勝志
○藤井政府委員 私も代議士で衆議院出でございますが、現在は一応政務次官という立場でございますので、いま党の、あるいは民間の特使、こういったものが出ておる、委員会でせっかくの重大問題の決議の運びがつかない、こういうようなことについての政務次官の考え方を申し述べろというような御指摘でございますが、委員会は委員会、私も商工委員なら大いに自分の意見を申し述べますけれども、政務次官という立場では、委員会は理事会を中心に運営をされておるし、党は党で党の機関で事をきめて運んでいただいておるわけでございますが、あらゆる総力を結集して問題の解決に当たっていただくということは非常にありがたいことだというふうに思う以外お答えのすべがない、こういうことでございまして、この委員会においていろいろ御心配いただいておるということも委員長を通じて承っており、委員長に対しては大いにひとつ議会でも推進を願いたい、こういうふうにお話をしておるという事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/9
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010・佐野進
○佐野(進)委員 私の申し上げていることは、通産大臣が、この前、この問題を阻止するためにあらゆる努力をします、したがって民間人の行動については積極的に協力します、国会の皆さんの協力も切にお願いします、こういうことを言っておるわけですね。また、このことは単に一党の利害の問題でなく、日本経済、なかんずくこの影響を受ける中小企業の存立ということは言い過ぎになるかわからぬけれども、一非常に重大な影響をそれらの業界に与える重大問題なんですね。このとき、せっかくそれらの問題を審議する商工委員会において積極的な取り組みをしようという燃え上がる気持ちに対して、政府側がやったのか、あるいはそうでなく一部党だけでそういうようなことをしたのか、ということをいまここで追及しても始まりませんが、印象としては、政府はこの問題について超党派的な運動、協力について好ましい姿勢でない、ことばの表現とはうらはらに、これはいわゆる与党だけの協力によって事を処したほうがいいんだ、こういうような印象を外国は受けると思うんですよ。国内問題としてのいろいろなかけ引きは別として、これらの問題の取り扱いについて、あまりにも近視眼的な、あるいはあまりにも狭量な処理しか行なえなかったのではないかという印象を受けざるを得ない。したがって政府は、これらの問題については、いま少しく積極的に国内の世論を高めるとともに、その中心である国会の協力を求めるための積極的な姿勢をこの際打ち出す必要があるんではないか。通産当局としてはそういうような姿勢を閣議その他に対して積極的に主張して、そしてきょうやっとこの委員会で議院運営委員会のほうへ決議案を出すということについて了承されたという程度の発言しかないわけですが、これは政府は違いますと言ったって、政府自民党でこう言われるわけだから、たいしてかわりはないということになってくると、政府の姿勢がきわめて弱いということにならざるを得ないと思うのです。こういう点については理事会等における仕事もあったそうですから、私は、委員長に対する要求は堀委員のほうからされておりますので、それはそれといたしまして、政府に対してこの問題についてもっと積極的な取り組みをするよう強く要望しておきたいと思います。
そこで外の問題は打ち切りまして、内の経済環境の中で一点質問をしておきたいと思う問題があるわけです。それは、中小企業がここ毎月のように戦後最高戦後最高といわれるほどの倒産の記録を更新していっているわけです。毎月最高になっていくから、どこまで行ったら終わりになるかわからないほど中小企業の倒産がある。特に五、六月ごろ集中されるであろう、こういうようなことがいわれておるわけですが、そういう中で、中小企業対策として、協業化なりあるいは振興事業団なり、いろいろな施策を中小企業当局はやっておるわけですけれども、中小企業の持つ本質的な弱さから、それらのことについてこれこそ妙薬であるといわれるような効果をあげる施策というものはなかなか出てこない。その反面、大企業、いわゆる巨大産業を運営しておる企業については、これは簡単ではないのでしょうけれども、比較的中小企業に対比して簡単にと思われるほど企業合同が行なわれておる。新聞紙上でもここのところ毎日、大型合併というような形の中で企業合同をしておる企業について報道がされておるわけであります。一番近い例では、川崎重工業、川崎航空機、川崎車輌が四十四年三月を目途に合併するその準備に入った、こういうようなことがいわれておるわけですし、さらに王子製紙、十條製紙、本州製紙、さらにその合併するまでの間に東北パルプと十條製紙が合併をするというような、いわゆる資本の集中化の傾向が非常に強まってきておるわけです。そうすると、いまでも大企業と中小企業との格差という形の中でいわゆる下請の賃金が遅払いになるとか、あるいは系列化が強化される中でその支払いがおくれるとか、あるいはダンピングされるとか、いろいろな条件があるわけですが、さらにそれに加えて大企業の合併というものが中小企業に与える影響というのは、これは合併したという文字であらわし得られないほど非常に複雑な要素を持つ影響を中小企業に与えておることは、だれも否定できないわけです。公取はこういう問題について、いわゆる独禁法との照らし合わせの中で一体どういう取り組みをいままでしておるのか、これからしようとするのかということについて、まず最初に御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/10
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011・柿沼幸一郎
○柿沼政府委員 公正取引委員会といたしましては、ただいま御指摘のような中小企業問題に対して、独占禁止法の立場という一つの角度からその施策を講ずるわけでございますが、独占禁止法の第十五条に合併についての規定がございまして、国内の会社が合併いたします場合に、一定の取引分野の競争を実質的に制限することになるような場合、それから合併が不公正な取引方法で行なわれるような場合には合併をしてはならないことになっておりますので、個々のケースにつきましてこういった観点から十分慎重に検討をしてまいるという立場に立っておるわけでございます。御指摘のように、大きな企業というものは下請関係でも広範に関連企業を持っておりますし、それから販売関係でも非常に広範な関連企業を持っております。それから同じ業界の中でも中小企業との関係を持っておりますので、この条項の適用、ことに一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるかどうかという点につきましては、そういった業界内あるいは関連業界の状況も十分慎重に審査して結論を出すというふうにいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/11
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012・佐野進
○佐野(進)委員 ここに山田公取委員長の発言が王子系三社合併の問題について新聞に出ておるのですが、その新聞用紙のシェアが六〇%に達するからといって、それだけで問題にするのは当たらない。」こういうような表現と、前後にいろいろあるわけですが、そうすると、いわゆる市場占有率の六〇%というものは、一つの会社がそれを供給するということ、それだけでは問題にならないのだという評価は、たとえば市場占有率について、あらゆる企業、大企業が合併する形の中で、八〇%になったといっても、これだけでは問題にならないのだ、こういうような発言に相通ずるわけですね。六〇%は問題にならないということは、五〇%以上はもう過半数のシェアを持つものだけれども、それはそういうことだけでは問題にならないということだと公取の考えておることは、企業合併ということに対しては、何ら一つ一つの問題について市場占有率ということでなくして、ただそのことが消費者に対して不利益か、マイナスかということだけが問題であって、独禁法の第十五条に規定しているような、そういう形の中における制限、あるいは独禁法を制定したときの精神、こういうものはもういまの時点の中で問題にならないのだ、こういうぐあいに解釈して取り組みをしている、こう理解していいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/12
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013・柿沼幸一郎
○柿沼政府委員 独禁法第十五条に規定しております「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ということを判断いたします場合に、その当該業界における市場占拠率というものは非常に重要な判定要件の一つだと思います。ただいま御指摘のございました川崎グループの合併ないしは王子グループの合併、いずれも公正取引委員会としてはこれから審査に入る案件でございますが、特に王子の案件の場合には、その点について十分慎重に検討しなければならない問題を含んでいるというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/13
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014・佐野進
○佐野(進)委員 きょうはこのことが質問の本旨でございませんから、あまり質問を続けませんが、ただ、いわゆる企業合併という形の中で市場占有率を六〇%以上も持つ、そのことは問題にならないのだ、ただ消費者がそのことによってマイナスにならなければいいのだという程度の表現しかし得ない。これはほんとうにそうなのかそうでないのか、公取委員長に聞かなければわからないけれども、公取委員会があり、独禁法が存在し、独禁法が制定された当時の経過並びにその後における日本経済の実態、こういうものから見たとき、公取というものが何かここのところへきて特に自主性を失った――自主性を失ったということが適切な表現かどうかわかりませんが、ともかく時代の推移にはやむを得ないのだという形の中で、積極的に消費者の利益を守り、独禁法制定の当時における、日本経済の独占化を排除するというかこれを抑止するというか、そういう点についての取り組みがきわめてルーズになっているのではないか、こう思うわけです。その問題は、結論的に、大企業が合併するということだけでなく、それに関連する企業、特に小さな中小企業に与える影響というものはきわめて大きい。大企業の、いわゆる市場占有率六〇%以上を持つ企業が、その内部的な整備された機能の中で生産を拡大発展させていくならば、それに小企業が対抗し得る条件などというものは当然考えられないわけです。それは長時間労働あるいはまた極度な低賃金。しかしそれらといえども労働力不足の現状から確保できないとするならば、中小企業が倒産していくこと、あるいは系列下に入り、賃金労働者化していくこと、これは必然の運命です。そういう必然の運命がわかっていながら、公取委員会がそれに対して具体的な問題を重視する形の中でしか何ら取り組みができないのだという表現でおるということは、中小企業をはじめ消費者の利益を守るという公取委員会の方針その他からたいへんはずれているのじゃないかと考えるので、この点については公取委員長にぜひ聞きたいと思って、おとといは来ていただいたのですが、私の質問時間がなくてできなかったのですが、ひとつ委員長によく伝えていただき、来たるべき機会にさらに具体的に私はこの点の質問をしたいと思うのです。
いわゆる内外のきびしい条件の中で、これはまた政務次官に御質問申し上げたいわけですが、ここで提案理由にある「資本取引の自由化、発展途上国製品の進出あるいは労働力需給の逼迫」という条件に相対比して、いわゆる企業合併というものが持つ中小企業に与える影響ということについて、政府はいま少しく慎重な配慮と具体的な取り組みをしていただく必要があるのじゃないかと思いますが、この際ひとつ御見解を聞いておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/14
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015・藤井勝志
○藤井政府委員 御指摘のように、中小企業にいわゆるしわ寄せされてくるというような企業合併は十分注意しなければならぬ。しかし問題は、日本の産業全体が国際競争力を持って伸びていくということがもう大前提でなければならぬということを考えますと、やはりもとがつぶれたのでは結局それに関連する中小企業そのものがなくなってしまうということになりますから、私は今度の川崎関係グループそれから王子製紙グループの合併というものは、やはり激しい国際競争に勝つために、親企業が土台をしっかりして、それはひいては中小企業、関連企業にプラスの要素になる、役立つという方向でこの合併はなされたものであるというふうに期待をいたしたい。それにはずれるような方向であれば公取において適正な御指導を願う、こういうことになるのではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/15
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016・佐野進
○佐野(進)委員 それでは次に質問を進めたいと思いますが、その次に提案説明の中で、投資育成会社に対する出資をする形の中で「経営の基盤を強化する」というような表現があるわけです。中小企業の経営の基盤を強化するために投資育成会社に出資をしていくのだということでありますが、これは中小企業庁長官と東京中小企業投資育成会社の江沢社長さんがお見えになっておられるようですから、このお二人に質問したいと思うわけですが、この中小企業投資育成会社法の中で指定業種というものをきめておるわけです。二十三業種を指定しておるわけですが、近代化促進法によると、今年は百幾つですかの業種を指定し、前年に比較して、二十業種ほど近代化促進業種を拡大しているのにもかかわらず、この中小企業投資育成株式会社法における指定業種というものに対しては、この法律が発足して以来全然拡大の努力をしていない。いわゆる二十三業種に限定し、いまなおそれを拡大する意欲を持たないということはいかなる事情によるのか、この点をひとつお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/16
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017・乙竹虔三
○乙竹政府委員 中小企業投資育成会社の投資対象は、佐野委員御指摘のように、政令で二十三にきまっておるわけであります。このねらっておりますのは、中小企業の自己資金を充実することによりまして産業構造を高度化し、また国民経済の競争力を高めるということをねらっておるわけでございまして、このねらいは御指摘のように近代化促進法のねらいとほぼ同様でございます。ただ主眼が自己資本の充実ということをねらっておるわけでありますが、この業種の指定につきましては、したがいまして、両方の法律のねらいがほぼ同様でございますから、範囲もほぼ同様でいいわけであります。ただ御指摘のように、投資育成会社法の施行令のほうは二十三で、それから近代化促進法のほうが百余で、本年さらに二十幾つ追加になるわけでありますが、この違いは、施行令のほうは大体大分類と申しますかによっておるのが大部分であります。それから近代化促進法のほうは中分類以下によっておるということでございまして、たとえば繊維産業の例で見ますと、促進法施行令の五十九以下で非常にたくさんの業種が、「ねん糸製造業」「紡毛紡績業」「織物業」「メリヤス製造業」等々指定になっております。それに対しまして、中小企業投資育成株式会社法施行令のほうは、十五に「繊維工業」ということ一つで指定をしておる。したがいまして、先生御指摘のように、今回の二十数業種の追加はほとんど育成会社施行令のほうでは従来の指定でカバーできると思います。ただ、さらに詳細に申し上げますと、若干食い違いがございまして、近代化促進法のほうで指定されておりまして、投資育成会社法施行令のほうで読めませんものが数業種ございます。たとえばクリーニング業でございますとか、人造真珠の製造業でございますとか、練炭、豆炭の製造業等々数業種ございますが、こういうものにつきましては、もし育成会社の投資対象として適当な業界からそういう希望が出ますれば、追加をする意向でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/17
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018・佐野進
○佐野(進)委員 そうすると、結局近代化促進法に指定された業種とこの業種とは大体同じようなものであり、特に指定業種として読みかえることのできないもの以外の業種については、希望があれば指定業種として加えることは可能だ、こういうようにいまの答弁を聞いていいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/18
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019・乙竹虔三
○乙竹政府委員 お話しのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/19
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020・佐野進
○佐野(進)委員 そうすると、これは社長さんに質問申し上げたいのですが、私は投資育成株式会社の概要について読ませていただいておるわけですが、この中で三会社とも投資指定業種でありながらいまだ全然投資をしていない業種が三業種あるわけですね。たとえば貨物自動車運送業、鉱業(石炭鉱業を除く)、それから皮革または皮革製品製造業という業種があるわけです。さらにいま中小企業庁長官の御説明によれば、精神としては近促法に該当する業種は指定業種としてもいいのだ、こういうようなきわめて幅広い考えを持っておられる。もちろん中小企業投資育成という対象の仕事とすれば、いまの長官のお答えは当然だと思うのですが、三会社とも統一してこれらの業種に対して投資をしていない。その理由はどこにあるのかちょっとお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/20
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021・江沢省三
○江沢参考人 私どものほらは、なるべく広くこの制度を利用していただきたいと存じまして、指定された業種につきましてもできる範囲において取り上げたい、こう存じております。いま御指摘の三業種について一件も取り上げがないというお話でございますが、それはおそらく、私どもの記憶の範囲では、要望がなかったというようなことだと思います。あれば私どものほうは、厳重に審査はいたしますけれども、できるだけ広くこの制度を利用していただきたいという気持ちでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/21
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022・佐野進
○佐野(進)委員 いまの御答弁で私はちょっと満足できないのです。ということは、投資育成会社が発足してから今日までの経過の中で、投資育成会社ができましたよといって、じゃ金を貸してくださいという企業がどんどん会社のほうへ行くほど積極的な条件ではなかったと思うのです。やはり会社が設立されてから、その社員の人たちの努力によって、あるいは中小企業庁はじめ通産当局の努力によって、こういう制度ができ、これを利用することによって経営基盤を強化する必要があるのですよということでいろいろな運動が行なわれ、その中から投資が行なわれていった。したがって、私は、中小企業投資育成会社が今日までくる経過の中で、その経営者はもちろん、職員の方々が非常に苦労されてきたということは否定することのでき得ない現実だと思うのです。これからはわかりませんよ。ある程度経営基盤が確立された以降は、みんながよく知ってきたから、それはどうかわかりませんが、いままでは努力してきたと思うのです。努力してきた中において業種指定された範囲内で投資が行なわれていった。そうすると、この三業種については、特に皮革または皮革製品の業界が、投資育成会社のお世話にならなくても、その業界が安定し向上しておるというようには理解でき得ない面があると思うのです。とすると、やはり投資育成会社のほうでこの業種については――業種指定をしたからといって何も全部やらなければならぬということじゃないのですよ。いわゆる会社の役員ないしは職員の判断に基づいてその仕事に片寄りが生じておるのではないか。そういう点についてそういうことがあったかどうか。あるいはいまのようにただ申し入れがなかったというような程度だけではちょっとおかしいのではないかというような気がするから御質問を申し上げておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/22
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023・江沢省三
○江沢参考人 私のお答えが不十分だったと思いますが、申し入れがわりあいに少ないということは事実でございます。それから、ありましても、これは取り上げるにはどうも条件として不十分だというふうなものは、やはり私どもの性格上お断わりせざるを得ぬというようなものもあったと思います。できるだけ広く利用していただきたいという気持ちはやまやまでございますけれども、やはり経営の基盤ということも考えなければなりません。私ども担保も何もとりませんで、ほんとうに長い間資金を供給して自由に使っていただくというかっこうになりますので、審査についてはきわめて厳重な審査をせざるを得ぬ、こういうふうな仕組みになっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/23
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024・佐野進
○佐野(進)委員 私はこの会社の法案を審議するについていろいろ研究さしていただいたわけです。指定業種の問題については、いま中小企業庁長官からお答えがあったから、それでいいと思うのですが、その指定業種間におけるところの投資の平均化といっては語弊がありますが、今後会社を強化させ発展させていくということでこの法案を審議しているのですから、そういう点についてはひとつ会社のほうでも格段の努力を払われることが必要ではないかと思うのですが、その点、ひとつ聞いておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/24
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025・江沢省三
○江沢参考人 お説ごもっともでございますので、できるだけの努力は今後とも続けていきたい、こう存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/25
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026・佐野進
○佐野(進)委員 そこで問題になるというのはちょっとおかしいのですが、私注意しておかなければならないことは、これは中小企業庁長官に御質問申し上げますが、この三会社が発足した今日までの経過の中で、それぞれ資料等がたくさん出され、私もそれを読ましていただいておりますが、この投資育成会社の投資対象になった会社は、それぞれ一定の条件のもとに投資を受け、投資を受けたということについての効果の中でさらに発展をしておる、非常にいい条件にあるということは否定することのできない事実だと私は思います。その反面、投資育成会社の投資を受ける会社とそうでない会社というのが今度は画然と出てくるわけです、社会全体の中に、中小企業全体の中に。そうすると、投資育成会社の投資を受けた会社というものが優良会社であり、いわゆるきわめて健全な企業であるという――これは直接は会社だけれども、まず政府の背景のもとに成り立っておるわけだから、政府並びに地方公共団体あるいは金融機関のお墨つきを受けた企業となる、片一方、その投資を受けられない会社はそうでない企業ということになってくると、この会社の今後の発展の姿と相対応して、そういう格差がますます出てくるのではないか。そのことによって、いわゆる指定された業種というものが優遇せられ、指定されなかった業種というものは、劣悪企業とまでは言わないけれども、いまのお話のように、投資の対象にならなかった企業としての格づけをされるということが将来大きな問題になってくるのではないか、こういうような心配が発生するわけですが、これについて中小企業庁当局はどのように考えておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/26
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027・乙竹虔三
○乙竹政府委員 この投資育成会社法をつくっていただきまして、間接ではありますけれども、政府が中小企業者の自己資本の拡充に一役を買う、つまり投資家として片棒をになうという制度ができておるわけであります。いまお話しのとおりこの会社は、発足当時はお客も少なかったのでありますけれども、その後、会社当局の非常な御努力で、いま相当投資対象もふえてきております。投資先につきましては、非常に効果があったということがいわれてきておるわけでございます。そういうことでございますので、私たちといたしましては、できるだけこういう制度が広く拡充されまして、そして中小企業者の自己資本の充実という方法によりまして、中小企業の体質改善を進めてまいりたいと思うわけであります。
そういうことになりますと、結局この投資育成会社の規模をどの程度に考えていくかということになるわけでございますが、これは多々ますます弁ずということであろうと思います。ただ政府といたしましては、その財政的規模もございますために、現在程度の資金援助という意味で、優先株方式によりまして投資をしておるわけでありますが、業界の資金を動員するというためには、やはり政府の資金もこれが誘導的効果を持つということの意味におきまして、政府の資金が多いことが望ましいと思うわけでありますけれども、現在のところ財政的規模の制約がございまして、一応先生御承知のような政府の出資ということでございまして、それに対応するものとして、民間からの出資がございまして、トータルにおきまして、現在までのところ六十一億の出資であり、それと中小企業金融公庫からの借り入れ金を合わせまして、二百三十三社の投資をしておるわけであります。しかし先ほど申しましたように、これはなるべく多く対象はふえたほうがいいと思うわけでありまして、ふやすためには、一つにおいて、この投資育成会社の出資ないし融資規模、つまり投資規模をふやすか、あるいは投資育成会社で出資しております対象企業をなるべく早く卒業させていくか、この二つの方法があると思うわけでございます。出資のほうは、民間サイドは別といたしまして、政府サイドにおいて財政規模の関係上制約があるということ、もちろんわれわれは今後とも努力はいたしたいと思うのでありますが、制約がありますので、なるべく早く卒業させていくという方向で、こういういい制度をなるべく広く中小小業者に味わっていただきたいと思うわけであります。ただ、この卒業させる問題につきましては、実は先日堀委員から詳細なる御質疑がございましたように、育成会社の設立当時と証券市場への上場基準が変わってきたというために、卒業問題をさらに知恵をしぼって考えていくということが必要になってきた。これは堀委員からも強く御指摘がございました点で、この卒業問題について政府としては新しい知恵を考えていくという必要がある。卒業制度を考えることによりまして回転を早めていって、その回転を早めることによって中小企業者に一人でも多くこのいい制度を使ってもらえるということを考えてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/27
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028・佐野進
○佐野(進)委員 私は、この中小企業投資育成会社の職員は、一般公務員と同じように罰則規定があって、法律の中でその出処進退については刑事的責任を追及される、こういうきわめて重要な立場に立つ職員だと思うのです。いわゆる一般民間会社のような背任、横領と違った意味において公的な性格を持つものだと思う。そのことの持つ意味は、この会社の運営によって受ける利益というものが非常に大きい、いわゆる対象業種についての中小企業の方々の受ける利益が非常に大きい、したがって、それを指定、選定する場合における職員が、私心を離れて中小企業の健全な発展、育成を期するという形でなければいけない、それからいわゆる自己の判断に基づくところの投資という形でその対象業種を決定する、会社を決定するということであってはいけないというきわめて制限された措置が法律の中で定められていると思うのです。したがって、それほど重要な性格を持つものですから、選定する際に、でき得る限り多くの業種、でき得る限り多くの中小企業をその対象にしてもらわなければならない。これから中小企業はきわめてきびしい条件の中に立たされていくときだけにそう思うのです。そうすると、さっき長官が言ったように、一刻も早く優良企業は卒業してもらって、新しい企業をどんどんその投資の対象にしていく、そのためには資金が必要だ、こういうことになってくるわけですが、その選定の方法について、これは会社の社長さんに要望と意見を申し上げたいと思いますが、さっきから申し述べている法律の精神に基づいて選定業種をきめる際に、さっきお話しのように、これから三業種についてもさらに努力をするというお話ですから、個々の中小企業について、どのような対策に基づいて投資会社をふやしていかれるつもりであるか、この点について一応お聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/28
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029・江沢省三
○江沢参考人 創立当初から、なるべく広くこの制度を活用していただきたいという気持ちは一ぱいでございまして、私ども機会があれば地方のほうに出かけまして、制度の説明会を開きまして、多くの方々に、こういう制度がある、今後自由化その他で中小企業に特にしわ寄せがくるので、この難局を切り抜けるのには、何といっても借り入れ金だけでやっておっては非常に危険であるから、ぜひひとつこの制度を利用して、少しでも充実し、少しくらいの風では倒れないようなものにすることが大事ではないかということを申し上げているわけであります。それがだんだん浸透してまいりまして、最近では申し込みも非常にふえております。こういような非常にむずかしい内外の情勢になっておりますし、私どもこのときこそと思っておりますので、全力を尽くして御期待に沿いたい、こんなふうに考えております。
〔委員長退席、中川(俊)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/29
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030・佐野進
○佐野(進)委員 それでは、この企業選定の方法については、ひとつ慎重な配慮と、それから積極的にワクを広げていく、そしてその結果、選定業種、いわゆる選定された会社と選定されなかった会社との中における格差というものも、できる限り早く埋めるように長官のほうに対して要望して、次へ進みたいと思います。
そこで、そういうように質問してぐると、非常に期待が大きい、そうしてまた、現状の中においてはもっともっと拡大していかなければならぬ、こういうことがはっきり出ているにもかかわらず、今回三会社に対して一億円ずつ増額する、そして三億円を増額するということなんですね。中小企業庁は、この投資育成会社のいわゆる中小企業における対策の格づけというか――いろいろありますね、振興事業団をつくるとか、あるいは三公庫に対する融資を拡大するとかいろいろあるけれども、投資育成会社に対する中小企業対策としての格づけは、一体どの程度に置いているのか、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/30
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031・乙竹虔三
○乙竹政府委員 中小企業対策としてお金の対策が一番大事である、これは申すまでもないわけでありますから、対策の根本がお金の対策、したがいまして、中小企業の従来の政策といたしましては、この育成会社のできるまでの従来の対策としては、金融面なりまた税制面なり、あるいはもっと端的に補助金というかっこうで予算面なりの施策、これが中心をなしております。特に中小企業と申しましても、しかし企業でございますので、金融対策が中心で、政府としては他人資本を供給するというのがお金の対策の中心をなしてきたのであり、今後もやはりこれは中心をなす政策であると私は思うわけでございます。しかし、そういう他人資本といいますか、金融政策だけで助成をいたしましたのではどうしても限度がある、中小企業の体質改善に限度があるということで、この投資育成会社制度が創設されたわけであります。申すまでもなく、自己資本を充実することによりまして体質を改善する、さらに、自己資本を充実することによりまして金融動員力も強化される、こういうことで育成会社制度が創設されたわけでございますので、政府のお金の対策といたしましては、これが第一の対策であるということは申し上げられないと思います。しかし政府の金融政策を主にする中小企業に対しますお金の対策を、非常に大きく突っかい棒をし、そうして中小企業がだんだん成長していって、大企業といいますか非中小企業になっていく、その越えられないみぞを越えるための橋になるという位置づけがこの投資育成会社の制度であるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/31
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032・佐野進
○佐野(進)委員 提案理由の説明に「その業務の運営に必要な資金を調達するとともに経理的基礎を固めるため、」こうなっておる。そうすると、先ほど来の質問の中で答弁しておるように、会社の現時点の中において中小企業振興のために果たす役割りは非常に大きい、 こうあなたも何回も言って、業種も広げなければならぬ、それからその会社に対してもどんどん積極的に掘り起こすのだ、対象会社についても掘り起こすのだ、こう言っているわけでしょう。そうして「業務の運営に必要な資金を調達するとともに経理的基礎を固めるため」と、非常に表現がオーバーなんです。それでどの程度かというと、一つの会社は一億円だという。その会社が一つの事業をやるのに一億円というのならいいですよ。しかし、それはもちろん呼び水ではあろうけれども、それがこれから何十、何百、何千という会社に投資育成していくということになるわけですね。いまは二百三十三社だけれども、そうすると、ことし中小企業投資育成会社の法律を一部改正して、こうやってわれわれが審議をするにしては、ちょっと金額的には、その対象としても、この提案の内容としてもきわめて弱いんじゃないか。ということは、いわゆる中小企業対策の中における格づけとしてきわめて低いところに置いての一つの対策として中小企業庁は考えておるのじゃないかと私は心配するわけです。だから、その点どうなのかということを聞いておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/32
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033・乙竹虔三
○乙竹政府委員 私は、その格づけは決して低いものではない、先ほどまずい説明で申し上げましたように、金融政策では越えられないギャップといいますか、中小企業が成長していく場合にギャップがある、それを越えていくためにはこの制度を使わざるを得ない、その制度に依存するところが非常に大きいと思うわけでございます。ただ先生御指摘のように、それほどおまえ期待をいたすならば、この三億円というのはあまりにも小さいじゃないかという御指摘でございますが、これは確かにいまのお金の値段で三億というのは小さいと言われれば小さいわけでございますけれども、ただその育成会社は、政府が一二%――現在資本金が三つの会社を合わせまして六十一億であります。その中で国の出資分が一二%で七・五億であります、あとは地方公共団体、民間からでありますが、とにかく相当な成果をあげているこの育成会社の火種と申しますか、政府の供給しております火種は七億五千万であります。その七億五千万を三億ふやすということでございますので、確かにおっしゃるように小さいと言われれば小さいわけでありますけれども、いまの財政の硬直化の規模から言いますれば、まあまあ財政当局としても見てくれたというような感じがするわけであります。
〔中川(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
もちろんこれは大きなほうがありがたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/33
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034・佐野進
○佐野(進)委員 実は大蔵省にも来てもらうようにこの前は頼んでおいたのだが、きょうはまだ来ていないということがいまわかったのでたいへん残念なんですが、これはまたあとで質問することにして、政務次官に最後に質問をして終わりたいと思います。
いままで私はずっと一時間以上にわたって質問を続けてきたわけですが、私は、中小企業投資育成株式会社法の一部改正法律案については、これはたいへんいいことだ、こう思っておるわけです。思っておるわけですが、いまずっと質問を続けてきた結論として感ずることは、中小企業庁長官も会社の社長さんも非常に意欲を持っているのに反して、金額は非常に少ない。だから単なる中小企業対策の一環として取り上げた、それも中小企業庁としてはきわめて微々たる対策の一環であるように感ぜざるを得ないわけです、私としては。したがって、こういう点について大蔵省当局にもっと突っ込んで財政事情その他から聞いてみたいと思ったのですが、遺憾ながらここへ来ていないのだからしようがないわけですけれども、政務次官はこの会社について将来どう考えるか、私がいままで質問したことの経過を踏まえて、あなたの決意を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/34
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035・藤井勝志
○藤井政府委員 投資育成会社の歴史はまだ浅いわけでございますが、その足跡、並びにただいま中小企業庁長官からお答えをいたしましたような、金融政策だけではほんとうに中小企業が育成されない面を大いに補完しておるというこの役割りから見て、もう少し育成会社そのものを育成していくということの必要性は御指摘のとおりであります。
ただ問題は、育成会社の機能のあり方がいわゆる民間の創意くふうというものを中心に置いてやってもらう、やはり投資なんというのはお役人ができる仕事ではございませんから、そういう面からいうと、生きた経済に即して民間の創意くふうを生かすというこの前提のもとに、政府としてもできるだけの応援を惜しむべきではない、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/35
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036・佐野進
○佐野(進)委員 質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/36
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037・小峯柳多
○小峯委員長 千葉佳男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/37
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038・千葉佳男
○千葉(佳)委員 先ほど佐野委員からも質問があったようでありますが、今回の改正の趣旨ですね、「業務の運営に必要な資金」というのと「経理的基礎を固めるため」というのを二つ並べて、おそらく二本の柱になると思うのですが、その「経理的基礎を固める」という意味ですね、これを長官にお尋ねし、さらに実際会社を経営されておる参考人には、なぜ経理的な基礎を固める必要があるのか、その必要性についてお尋ねしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/38
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039・乙竹虔三
○乙竹政府委員 会社の事業資金はイコール毎年他の中小企業会社に対します投資規模でございますが、この二、三年大体二十億程度で、きておるわけであります。今後も毎年二十億程度の投資規模の拡大を考えていきたいというふうに私ども中小企業庁では思っておるわけでございますが、これは投資でございますので、まず第一にお答え申し上げますのは、長期の安定した資金でならなければならないということと、それから、海のものとも山のものともわからぬと申したら少しことばが強過ぎますが、極力経理的基礎のしっかりしていると思われる会社に投資をするわけでございますが、これは金融ベースでなくて投資ベースでございますので、極力その投資の元種の資金コストは安くならなければならないというふうに思うわけでございます。そういうことから申しますと、毎年の所要の二十億の金というのは、なるべく育成会社の出資の金で調達できれば望ましい。育成会社がよそから借りてくるということになりますと、どうしても期間が短くなりますし、また市場金利も相当高いということで、なるべく出資の金が望ましい、こういうことになるかと思うのであります。しかし、さっき政務次官が答弁いたしましたように、この投資育成会社のイニシアチブと申しますか主導権、責任、これはあくまでも民間がおとりになるということでありまして、民間の出資が大部分であるということがいいことであると思うわけであります。しかし、こういうふうな会社でございますので、やはり政府が相当大きく肩を入れているということでなければ民間側の出資もスムーズに引き出せないということになると思うわけであります。そういう意味におきまして、政府の出資によって資金コストを下げる、しかも長期の資金を供給する、第三に民間の出資を誘導する、こういうふうなねらいが政府の出資にあるというふうに思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/39
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040・江沢省三
○江沢参考人 いまの企業庁長官のお話で尽きておると存じますが、私ども、関係投資先の企業に対しましては、できるだけ借り入れ金でなく自己資本でやってほしい、これが今後非常に変動きわまりない情勢に対処するゆえんであるということを申しておるわけでありますが、私どもの場合もやはり同じことが言えると思うのであります。借り入れ金は現在若干しておりますが、金利が相当高いわけであります。それも期限が来れば返さなければならぬ、また年賦償還で毎年若干ずつ返さなければならぬというふうになりますので、そうなりますると、投下したものを育成の途中において引き揚げなくちゃならぬというふうなことに迫られるおそれもあるわけであります。ですから、私どものほうは、これは原則としてどうしても自己資本ですべきであるということをしばしば各方面に申し上げておるわけでありまして、そのお話を政府のほうでも聞いていただきまして、今回の三億円の出資ということになったことと存じます。ただし、私どもは、これを自己資本として使うという意味でございますから、いまお話しのように三億円ではとうてい足りないわけであります。これは政府がさらに腰を入れるという一つの徴候としてありがたくちょうだいするわけでございますが、さらに来年度におきましてはもう一息奮発して、政府のほうでも私どものほうに自己資本を充実させていただきたい。それで、無限にそれをお願いするわけにいきませんので、これはもう一回私どものほうで政府の出資を種にいたしまして、民間出資合わせて倍額増資をしたいと思いますが、そういたしますと、その以後はそう大きな出資なくして自然に資金は回転していくというふうな考えでおるわけであります。ぜひ来年度は、皆さん方の御支援によりまして、私どものほうの自己資本の充実に力を入れていただきたいというふうに存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/40
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041・千葉佳男
○千葉(佳)委員 いま出てまいりました借り入れ金の問題ですね。この資料を見ますと、おたくの東京の場合二十五億の資本金に対して六億の借り入れをしておる。大阪の場合は十六億に対して六億。ところが本法の三条四項を見ますと、優先株式を公庫が引き受けるわけでありますから、その「三分の一をこえることができない」、こういう厳格な規定をしておるのですが、それ以外に借り入れという形で中小公庫から出しておるということは――そのあとの十六条で「長期資金を貸し付けることができる。」という規定があるからいいようなものでありますけれども、しかし、この第三条で三分の一という出資の割合を厳格に規定し方ことと、それから大阪なんかの場合は十六億に対して借り入れ六億、そのほかに二億五千万の出資ということにすると、大体八億の金が政府から出ておるということになりますと、これは第三条のやや脱法的なものに近いんじゃないかという気がするのですが、その辺長官どのようにお考えになるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/41
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042・乙竹虔三
○乙竹政府委員 政府の出資分は、先ほどちょっと申し上げましたように、これは三会社通じてでございますが、六十一億の中で七億五千万でございますから、一二%という。パーセンテージでありまして、先生御指摘の第三条の制限にははるかに及んでいないわけであります。今回さらにこれを三億足しましても、たしか一五%になるかと思います。これもはるかに及ばないということでありますが、なぜこの第三条で「三分の一をこえることができない」という規定があるかと申しますと、民間企業に対します政府の出資というものは、これはよほど産業政策的に傾斜した場合といいますか、特に必要がある場合以外は行なうべきではない。と申しますのは、投資ということ、出資ということは、その企業そのものを支配するということになるわけでございますので、民間の創意くふうによる経済運営に対しまして、これは一面では相当大きなチェック材料になるわけである。そういうことから、この投資育成株式会社に対して政府が出資をする、育成会社が個々の民間企業に出資をするということで、間接的に政府の出資にはなるわけでありますけれども、しかし投資育成会社の業務運営というものは、あくまで民間の創意くふうといいますか自主的な運営によってやられるべきである。政府が投資育成会社に出資をすることによりまして、投資育成会社の業務運営、個々のケースに対しまして政府が直接タッチすることがあってはいかぬという趣旨でこの三分の一という制限が設けられ、しかもさらに三分の一だけではということで優先株式という制度、政府の出資は優先株式で議決権がないということの制限をされたわけだと思うわけであります。そういうことでございまして、この優先株式ないし三分の一の制限があるわけでございますが、さらに借り入れ金がいま合わせまして十七億五千万ございます。これは中小企業金融公庫から七分五厘の特別金利でもって金を貸しておるわけであります。先生御指摘のように、もし政府あるいは民間にして十分なる出資財源がございますならば、この育成会社の事業運営資金のもとでございます金は出資財源に求めるのがいいことであることは間違いございませんけれども、そういうことにもいかぬものでございますので、金融公庫からの融資を受けておる。それも特別金利で受けておる、こういうことになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/42
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043・千葉佳男
○千葉(佳)委員 その趣旨はよくわかるんですが、名古屋の場合、いま言いましたように十六億の出資に対して当初二億五千万ですね。それがあとから六億の融資ということになると、この資本金の中でやや半数に近い政府資金が入っておる。そういう点は先ほど御説明があったが、大体火種として政府が出資して、そして民間融資を今度引き出すという当初のねらいからははるかに離れているような気が私はするわけです。そういう点、この借り入れ金の額が名古屋の場合なんか特に多いという事態をどのように見ておるか、こういう私の質問の趣旨ですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/43
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044・乙竹虔三
○乙竹政府委員 確かに間接的ではございますが、政府の金が名古屋は二十二億でございますか、業務資金と申しますか、全部の資本金が十六億で、さらにそれに対しまして借り入れ金が六億ということでございますから、元金と借りた金で合わせますと二十二億であります。その中で金融公庫から出資しておりますのが二億五千万、借り入れが六億ということで八億五千万になるわけではありますけれども、しかし法律の命じておりますのは、さっきくどくど申し上げましたように、あくまでも出資が三分の一をこえてはいかぬということでありまして、なぜこえてはいけないかというと、投資育成会社の運営に政府が事実上の力をも含めまして大きく関与してはいけない、こういう趣旨であるわけであります。もちろん先生御指摘のように、金融公庫からさらに六億という大きな金が出れば、これは非常に大きな債権者でございますから、その点確かに相当影響力があるのではないかという点、これは御指摘のとおりまた影響力があると思います。思いますけれども、法律でいっておりますのは三分の一をこえてはいけないという制限がある、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/44
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045・千葉佳男
○千葉(佳)委員 問題はそこなんですね。三分の一をこえてはならぬという三条四項の規定は中小企業金融公庫の特例法として業務運営とみなす、こういうふうに出ておるわけですから、そういう中小企業金融公庫法の例外として業務運営とみなすというふうに認めて、しかも民間に対する政府の介入、支配というものを避ける、こういう趣旨から言えば、この三条四項の規定というのは非常に当を得た規定だろうと私は思うのです。ところが、先ほど言いましたように、十六条の長期資金のいわば借り入れ金ですね、こういうふうな規定は当初はあまり問題にならなかったと思うのですけれども、いまになってみると、そういうふうな長期資金を借りることができるというこれも、法律上の明文によって中小企業金融公庫から借り入れ金がずっと出る。それがいま言ったように二十二億のうち八億五千万、やや半数に近い金が出る。しかもそれが投資育成会社から見ればなるほど借り入れ金でありますけれども、今度投資育成会社から各企業に出る場合は、これは借り入れ金であろうと何であろうと一つの投資会社の金でありまして、それが株を持つわけですから、そういうふうな点を考えてみると、これは厳格な三条四項で認めた例外規定をさらに脱法的に一まあ脱法ではないのでしょうけれども、こういう明文があるから、そういう意味では当初の政府の介入、支配というのを極力排しながら民間企業の育成をはかるという非常に穏当な精神というものが、実際に運用上この三、四年を経て現在になってみれば、実質的にそこなわれているんじゃないかというきらいがあるのですが、その辺はどのようにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/45
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046・乙竹虔三
○乙竹政府委員 政府といたしましては、この育成会社に対してノータッチというわけでは絶対にないわけでございます。先ほど佐野先生からも強くお話がございましたように、むしろ育成会社に対します政府の力の入れ方は少ないくらいだと思うわけでございます。その力の入れ方、これは資本で力を入れるのが一番いい入れ方でございますけれども、その資本ということになりますと、一般会計からの、ないしは産投等の特別会計からの出資ということになりますし、そうなりますと、予算規模もあって制限がある。しかし一面育成会社に対しまして政府の期待と申しますか、育成会社というものを中小企業の自己資本充実の道具に使いたい、政府としては非常にそれに大きな期待をかけておりまして、そうしますと所要資金は何とか調達せねばならぬ。そういうようなことで所要資金の調達を、安定して、しかも低利の金融でせねばならないということになりますので、さらに中小企業金融公庫からしかも特利でもって融資をしておる、こういうことであります。でございますから、政府としては育成会社に対しては全般的に非常に力こぶを入れ、またこれに期待をし、これに応援をしておる。しかし育成会社の個々の経営についてはタッチはしないで、民間の創意くふうに期待をする、こういうことのからみ合わせでやっておるわけでございます。
さらに、先ほどちょっと御指摘ございましたが、育成会社からの個々の民間企業に対する出資、これも民間企業に対して育成会社は非常に力こぶを入れ、またコンサルタント業務等でいろいろ指導育成もするわけであります。しかし民間企業の経営のキーポイントはあくまで民間企業に創意くふうを残さなければならぬということで、政府の認可しました業務規程ではっきりきめておりますように、過半の株を育成会社が取得して民間企業を支配するというふうなことにならないように、五〇%をこえてはいけないという制限も課しておるわけでございます。そういうことでございまして、先生御指摘のように確かに相当金のもとは政府がめんどうを見なければ金が集まらない。しかし金は政府として極力めんどうを見たいのだが、個々の育政会社の企業運営なり、また育成会社を通じての個々の民間企業の運営に対する関与なり、これは極力直接的に関与しないようにということで、こういう制度及び運用になっておるというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/46
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047・千葉佳男
○千葉(佳)委員 いや、実は私の考えは、総資本量に対して借り入れ資金が多くなったというのは、最初三十八年度から始まって、三十八年、三十九年、四十年、四十一年、四十二年と五年たった現在、育成会社法ができた当初の目的から考えてみると、あまりにも借り入れ資金の占めている比重といいますか、これが非常に多くなった現在、今度三億出資する、各会社一億ずつだ、こういうふうなこそくな手段よりは、むしろ東京が六億ですか、それから名古屋六億、大阪五億五千万、こういうふうな借り入れ金というのをなくして、オーソドックスないき方として三分の一という法律の明文があるんですから、かりに東京にしたら二十五億のうち三分の一というと約八億をこえるわけですね。八億をこえる額までは当然出資できるというそういう余裕があるのですから、二億五千万に一億上積みして三億五千万、こういうふうなことをやるよりは、やはり借り入れ金をなくして出資金をよけいにするという本来の趣旨に従ったやり方というものをやるのが正当なやり方ではないか。だから逆にひねって考えれば、この十六条の規定というのはほんとうの例外規定だと思うのです。投資会社にすれば、本来は政府の出資によって民間に対して融資をする。それが借りるというのは、あくまでも投資育成会社にとっては便法だろうと思うのです。その便法がだんだん大きくなって、名古屋の場合にはもう半分に近くなる、こういう事態になっては、私は今後の考え方として、そういう三億、各会社一億ずつ分けるというようなこそくな手段よりは、むしろオーソドックスに法律の明文にきめられた三分の一というところまで持っていくというのが本来の趣旨に沿うことになるんじゃないか、こういうふうに考えているのですけれども、それはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/47
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048・乙竹虔三
○乙竹政府委員 確かに投資育成会社の資本構成だけから考えまして、また中小企業庁の立場だけから考えまして、これは、先生御指摘のように、資本金だけで仕事ができる、しかも政府の出資が法律の許す限度まで出るということが非常に望ましいことではございますけれども、しかし、これは長官の立場をちょっと離れた申し分かもしれませんけれども、また長官といたしましても、実は中小企業対策として非常に金がほうぼう要るわけでございまして、そういうことになりますと、小さな火種でもって大きな火が起これば、国の、特に一般会計なり特別会計なりの資金効率としては一番いいわけでございますので、現在のところ大体、財政規模がいろいろ窮屈なときでございますから、この程度で、しかも小さな資金量で大きな火を起こすということで、会社でも非常に努力をし、業界でも努力しておられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/48
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049・千葉佳男
○千葉(佳)委員 たいへんくどいようですけれども、小さな火種で大きな効果、こういうふうに再三言われるのですが、それはあくまでも、私が考えるには、いま申し上げましたように借り入れが大きくなった現在は、これは再考を要するのじゃないか、そういう時期じゃないかというふうに思うわけですね。その点、悪く言えば羊頭狗肉というのですか、それにやや似ているんじゃないか。それで、七分五厘という特利で借りているそうですけれども、それがし実際会社を運営されてどのように負担になっているか、ひとつ担当されておる参考人の方から聞いてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/49
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050・江沢省三
○江沢参考人 先ほど私がこういう事業の運営はどうしても自己資本でやらなければならぬということを申し上げましたが、そのことはなかなか実際問題としては実現しませんで、借り入れ金でやらざるを得ぬということになったわけでございます。それで、お話しのように、借り入れ金は低利七分五厘というような特別金利を適用していただいておりますけれども、それすら実際の運営上なかなか十分なあれができない。それで、きょうは名古屋の伊藤専務がおいででございますけれども、借り入れ金の多いところは経理上非常に苦しい立場に追い込まれるというのが実情でございます。それで私どもは、ぜひひとつ、今年度はごくわずかなあれでございますが、来年度はもう少し大きな額を政府出資をしていただきたいということ。
それから、現在の出資が優先償還、優先配当という形になっておりまして、これは民間の出資に先んじて配当を取る、六分五厘の配当を取る、それから民間のほうにかかわらず毎年定額償還するという形になっておりますので、これはひとつ民間出資と同じような形で、あるいはできれば民間出資を導入する有力な力にしようとするなれば、政府は遠慮して後配株というような形でこれを出していただければ、非常に幸いだと思う。それは商工中金その他にも前例があるわけでございます。それからいま優先出資、優先配当という制度は、GHQが使いました見返り出資にあっただけで、現在はどこにもそういう制度はないわけでございます。ですから政府側におきましてももう少し腰を入れたというところを見せていただければ、風間出資を集めてそして効率的にこの事業を運営するには大きな力となる、こういうふうに私は信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/50
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051・千葉佳男
○千葉(佳)委員 では最後に。いま申し上げましたように羊頭を掲げて狗肉を売るような、そういうこそくな手段をとらないで、まっ正面からこういう問題に正々堂々と取り組んでいかれるように、いまも政府が本腰を入れてほしいというような参考人の意見もございますので、そういう意見を強く要望しまして、私の質問を終わります。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/51
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052・小峯柳多
○小峯委員長 本案に対する質疑は一時中断し、この際、内閣提出、中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案に対する質疑は去る十九日終了いたしております。これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。
中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/52
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053・小峯柳多
○小峯委員長 起立総員。よって本案は原案のとおり可決いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/53
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054・小峯柳多
○小峯委員長 次に、ただいま可決いたしました。
―――――――――――――
本法律案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
まず、趣旨の説明を求めます。佐野進君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/54
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055・佐野進
○佐野(進)委員 ただいま議決されました法律案に対し附帯決議案を提出いたしましたが、私から自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。
まず、案文を朗読いたします。
中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法施行にあたり、次の事項につき適切な措置を講ずべきである。
一、特別小口保険の付保限度額の引上げ及び対象小企業者の具備すべき納税要件の緩和について、速やかに改善を図るよう努めること。
二、中小企業向け長期資金に係る信用保証の推進を図るための制度の拡充強化に努めること。
三、中小企業に対する信用保証の一層の浸透を期するため、融資基金及び保険準備基金の増額を図るとともに、保証付き金融の金利引下げについて積極的な指導を進めること。
以上が案文でございます。
以下事項別に補足説明をいたしますと、第一点は、特別小口保険の付保限度額の引き上げ及び具備すべき納税要件の緩和についてであります。この点につきましては、すでに第五十一回国会及び第五十五回国会において決議がなされたのでありますが、いまだその実現を見ていないことはまことに遺憾であります。現在特別小口保険は付保限度額五十万円でありますが、無担保無保証人で百万円程度までの保証を受けたいという要望も相当ありますので、今後付保限度額の引き上げについて格段の努力が望ましいのであります。また保証を受ける場合の具備すべき要件として資金の使途、対象企業者、一年以上の居住要件、住民税の所得割りの完納といった制約がありますが、このうち所得割りにつきましては課税最低限が年々引き上げられてまいっておりますため、これまで本制度の対象になっていた零細企業者が課税最低限の引き上げにより保証してもらえないといった政策的矛盾を生じておりますので、真の零細企業対策という見地からすみやかに改善をはかるよう努力すべきことを特に要請いたします。
第二点は、中小企業向け長期資金の確保についてであります。最近の金融引き締めによる影響が中小企業にしわ寄せされている現状にかんがみますと、中小企業にとって特に必要なものは経営安定に資する長期資金の確保であることは申すまでもありません。したがって、中小企業向け長期資金にかかる信用保証の推進をはかるための制度を一そう拡充強化するようつとめるべきであります。
第三点は、中小企業に対する信用保証の浸透強化についてであります。これまで信用補完制度は漸次拡大され、物的担保力及び信用力の乏しい中小企業者に対する金融の円滑化に寄与してきましたが、今後とも信用補完制度を拡充強化するため、公庫の融資基金及び保険準備基金の増額に努力するとともに、保証つき借り入れについては、一般市中銀行が金利を引き下げて、中小企業の金利負担を軽減するよう強力に指導し、もって中小企業に対する信用保証の一そうの浸透をはかるべきであります。
最後に、最近の倒産企業の激増はまことに憂慮すべき事態にあることにかんがみ、倒産関連保証についてはできる限り広い範囲の中小企業者が対象となるよう弾力的運営について配慮されんことを特に要望申し上げます。
以上、決議案の趣旨について簡単に御説明をいたしましたが、委員各位の御賛同をお願い申し上げまして説明を終わります。
以上であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/55
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056・小峯柳多
○小峯委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
直ちに採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/56
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057・小峯柳多
○小峯委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
この際、本附帯決議について、通商産業大臣並びに大蔵政務次官から発言を求められております。これを許します。椎名通商産業大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/57
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058・椎名悦三郎
○椎名国務大臣 ただいま御議決をいただきました附帯決議につきましては、これを尊重いたしまして、御趣旨に沿うように善処したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/58
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059・小峯柳多
○小峯委員長 倉成大蔵政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/59
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060・倉成正
○倉成政府委員 ただいまの附帯決議につきましては、十分関係省と協議し、御趣旨を体して努力いたします。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/60
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061・小峯柳多
○小峯委員長 おはかりいたします。
本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/61
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062・小峯柳多
○小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/62
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063・小峯柳多
○小峯委員長 中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する法律案について、質疑を続行いたします。塚本三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/63
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064・塚本三郎
○塚本委員 中小企業庁長官にお尋ねいたします。
この三億の新たな出資でございますが、この金額、実はもっとよけいでなければならぬという感じが現状にかんがみてするわけでございますが、中小企業庁から大蔵省に要求をしたときの最初はどの程度でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/64
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065・乙竹虔三
○乙竹政府委員 出資三億であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/65
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066・塚本三郎
○塚本委員 最初から三億でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/66
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067・乙竹虔三
○乙竹政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/67
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068・塚本三郎
○塚本委員 各会社からこのコストの利息のつかない金をという要望があったのではないかと思いまするが、その要望にこたえて三億で大体だいじょうぶだ、こういうふうな想定をつけて要求なさったのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/68
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069・乙竹虔三
○乙竹政府委員 会社からの要望はもっと多額でございます。それから私たちのほんとうの希望と申しますか、これはもっと多いほうがいいということはかねがね申し上げたとおりでございます。ただ、予算要求は実は頭打ち制限がございまして、その制限の中で、全省の予算、つまり前年度予算ワクに対しまして二割の頭打ちという制限がございます。その中にはめ込まなければならないという、今回の予算要求については非常にむずかしい点があったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/69
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070・塚本三郎
○塚本委員 江沢さんにお尋ねいたしますが、おたくの発表なさった新聞の談話の中にも、コストをもっと安くしてほしい、現在の会社は実際に赤字になるという状態にいかざるを得ない、単なる金融ではなくして、いわゆる指導育成等の業務があるから、そうなれば四・何%というものは必要経費として見込まなければならないというような言い分が、かつて新聞に発表されたことがございます。したがいまして、そうなると財投の金利七分五厘というものは高い。この金利を下げるということができなければ、コストのつかない出資金を多く迎えるよりしかたがないのじゃないか、こういうふうに思いまするが、すでに要求そのものが三億で、初めから通産省が限界をつくって、こういうふうな形になっておるといういまのお話でございますが、その点、見解どうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/70
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071・江沢省三
○江沢参考人 私どものほうは、いま長官からお話し申し上げましたように、できるだけ自己資本でやるのが本筋であるということを始終申し上げておるわけでございます。借り入れ金は七分五厘ということで非常に安くはしていただいておりますけれども、これとても一般の中小企業者が借りる特別金利――われわれのようなそれを使ってさらに育成事業をやろうという場合には、非常に困難な高い金利じゃないかと私は思います。私のほうとしては、あらゆる機会に、政府の出資の増額、それによって民間出資をふやして、出資金で仕事ができるようにしてほしいということを申し上げておるわけでありますが、財政規模その他の事情もございまして、急にそういうふうな要望に政府としても応じがたいという事情もあったのかと思います。先ほど申し上げましたように、いろいろな事情を勘案いたしまして、いまは非常に大事なときにきておる、内外の情勢も非常に緊迫しておりますので、私ども何とかしてひとつ全力を尽くしてここを切り抜けなければならない、特にしわ寄せを受ける中小企業の環境に御協力しなければならぬ、こう存じておりますので、できるだけいたしますが、資金の性格が弱くては十分なこともできないということにもなりますので、ひとつ来年度は政府のほうの協御力によりまして、資金的にいい資金を、充実した形でいただければ非常に幸いだ、こう存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/71
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072・塚本三郎
○塚本委員 社長さん、そんなに遠慮なさらぬでもいいと思うのです、おたくはそれ自身でもって会社の事業をなさるわけじゃないのですから。おたくのほうがさらにそれを再投資して、しかもそれには指導育成等のいわゆる使命を背負って、そして開放経済体制に向かうところの中小企業者をさらに出世さしていこうという、いわゆる特殊任務を背負っておられる会社だと思うわけでございます。そのときに、自分のところで使って自分のところの会社がもうけるためならば、七分五厘というのは安いということばも使われるでしょう。社長さんは、率直に新聞で述べておられるように、これは高いんだということを言い切っておられます。国会で通産省や大蔵省がおいでになるからといって、わざわざそういう御遠慮をなさったわけではございませんでしょうけれども、しかし、いわゆる中小企業育成の旗頭として、おたくは堂々と自信のある、そして責任のある発言をなさっておいでになるわけです。そのときに、安い金とおっしゃっても、新聞等の計算を調べてみますと、この配当の利回りは一割をどうしても割るのだというときに、四・三%のそういう必要経費がかかれば一一・八%でございますか、実はこれだけのコストになってしまう。だから結局のところ、そういたしますと財投の金は使い得ないのだというような形になってくる。なぜならば、民間出資が実は九〇%近く導入されてきておる、民間出資でまかなっております会社が赤字だということは、結論としては社長の責任でございますよ。そうであるとするならば、どうしても赤字を出さないようにということが社長の責任だとするならば、いわゆる金利のつく金は使うまい、避けて通らなければいけない、こういう結論がおのずから出てくると思うわけでございます。この点、長官どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/72
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073・乙竹虔三
○乙竹政府委員 この会社の性格から申しまして、確かに、長期の金であるのみならず、コストの安い金である必要は十分あるわけであります。したがいまして、出資――もっともこれは出資と申しましても、出資にもほんとうは配当をすべきものでございまして、出資の金だからこれは安いということにはいかぬわけでございます。しかし出資の場合におきましては、ある程度会社が安定操業と申しましょうか、軌道に乗ってまいった暁においては配当ができる、それに期待をするということで、株主が大局的な見地から出資をしてもらうというのは期待できるわけであります。そういう意味からいいまして、この会社のもと金がやはり出資が主になるのが望ましいかっこうであることは、先生御指摘のとおりであります。したがいまして、そういう見地からいきますと、政府の片棒をかつぎますその政府も極力出資が多いほうがいいし、またこの会社が中小企業業界の体質を改善するという意味におきまして、そういう大局的見地から地方公共団体なり基幹産業、金融機関なんかが大規模に出資してくれるということも非常に望ましいことだと思います。
それから次に、出資が原則であるべきものでありますが、やむを得ざるつなぎの金としての融資、これがいま公庫から七分五厘の金が出ておりますけれども、実は長官の立場だけで申しますると、これは六分五厘程度にさらに下げてもらうことが望ましい。しかし、公庫の金と申しましても、もともと預金部の金ということになってくるわけでございますので、一応いまは一般金利よりも低い七分五厘ということになっておりますが、七分五厘というのは、この会社の性質上から見て、決してそう安い金だとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/73
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074・塚本三郎
○塚本委員 そういたしますと、いま長官もはからずも六分五厘という数字を出されたわけですが、たしかこれは江沢さんのほうでもそんな発言が新聞紙上で出ておったかと思います。これをいまの一分下げるという可能性について、見通しについて、長官どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/74
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075・乙竹虔三
○乙竹政府委員 私たちといたしましては将来そういう努力はいたしたい。ただこれは、大蔵省といいますか財政当局と話が合わなければできぬ話でございますので、いまのところ見通しまでは申し上げかねる問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/75
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076・塚本三郎
○塚本委員 再度お尋ねいたしますが、この法律がつくられたとき、前回の委員会でそんな意見交換がなされておったと記憶しておりますが、これは株式市場に上場するということが条件になっておったと記憶いたしております。その場合、この育成会社が投資をしてから大体何年後くらいに上場できるという予定をお立てになってこの法律をお出しになったか、その当初の見通しはどうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/76
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077・乙竹虔三
○乙竹政府委員 この会社の業務運営につきましては、中小企業庁としては、業務規程を認可するというかっこうで監督をし、また会社の運営の大方針について指導しておるわけでありまするが、この業務規程によりますると、この会社が投資をする相手先の中小企業が相当の期間後におきましては株式を公開するという意思を持っておることということが一つ投資条件になっております。この相当の期間というのは、この制度の設立当時におきましては五年程度が相当の期間、こういうふうに私どもは考えて認可をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/77
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078・塚本三郎
○塚本委員 たしか今年で四年でございますか、五年になりますると大体予定どおりに上場できるような会社が何社ぐらいになる見通しでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/78
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079・乙竹虔三
○乙竹政府委員 これは実は、先日の御審議におきまして、堀委員が詳細に議論された問題に関連するわけでございますので、簡単にお答えさしていただきますけれども、この制度ができましたときには、三証券取引所の上場の最低限度は一億ということでございまして、それを踏んまえて制度ができておったわけでございます。ところが、その後上場基準が変わりましたために、現在のところ、この中小企業投資育成会社の投資先におきまして、すでに資本金一億をこえておるものは四十四社になっておりまするけれども、証券取引所のほうの事実上の上場基準が三億ないし二億五千万円に上がりましたために、まだ数年間これを育成しないと上場というかっこうでの公開はむずかしいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/79
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080・塚本三郎
○塚本委員 大蔵省にお尋ねしますが、いま長官が御説明になったとおりだと思いますが、このことによって、この育成会社としてのいわゆる機能というものが半分はやはりストップされておるような受け取り方を私どもはいたしますが、これは四十年の秋でございますか、暫定措置としてなさったわけでございまするけれども、そのときの理由をもう一度ここで御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/80
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081・広瀬駿二
○広瀬政府委員 上場基準を、四十年十月二十六日の証券取引所の理事会におきまして、当分の間新規上場会社を資本金三億円以上に限るというふうに改めたわけでございますが、これは三十九年の九月ごろから、その当時の経済情勢が非常に不況になりまして、株式の増資をストップいたしました。それが四十年の九月ごろまで続きまして、同じ期間、四十年の九月ごろまで上場がストップでございましたが、その後上場を再開いたしましたときに、歩調を合わせまして三億に上げたのでございますが、そのときに、一億以上の会社で、二部上場になっている会社の中でかなり倒産等が出まして、そうして投資者等の保護の観点から、このような経理的基礎の薄弱な会社の上場は好ましくないということで、そういうふうになったわけでございます。そういういきさつでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/81
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082・塚本三郎
○塚本委員 いまもなおそのような状況が引き続いておると判断なさってみえるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/82
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083・広瀬駿二
○広瀬政府委員 大体変わりないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/83
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084・塚本三郎
○塚本委員 それではもう一度江沢さんにお尋ねしますけれども、江沢さんは東京でございますけれども、東京、大阪、名古屋等におきまして、あの当時の状態と比べてみて今日は変わりないといういま大蔵省のほうからの御答弁でございますけれども、会社の立場から見て、やはりあの当時と同じような状態にあると判断なさってみえますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/84
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085・江沢省三
○江沢参考人 これは証券局長の御判断のとおりかと思いますけれども、非常に内外の情勢が変わってまいっておりますので、御承知のように倒産は毎月新記録というふうに、非常にふえております。この原因がどこにあるかという点はなかなかむずかしい問題でございますけれども、やはり借金で自転車経営をしておったというところに大きな原因があるんじゃないかと思いますので、私どももう少し資力を持って、またスタッフもふやしまして御奉公したいというふうな意欲に燃えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/85
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086・塚本三郎
○塚本委員 私の質問が要を得なかったかと思いますが、三億といういわゆる上場の基準というものは、もう一度もとに戻すべきではないか。もちろんその当時は一億でございますか、その基準ですべて上場させようというわけではございませんけれども、しかし有望な会社に対しては公開させることが、いわゆる株式の調達資金の面からいきましても、きわめて好ましい状態になっておるように私は判断しておりまするが、その点三億ということで縛られてまいりますると、さらに伸びるべき会社がストップさせられてしまう。こういうふうな形になり、かつ最も大きな投資育成会社としての機能そのものが開店休業のような形に追い詰められてきておるのではないか、こういうふうに判断しますが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/86
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087・江沢省三
○江沢参考人 私申し上げましたのは、局長の言われましたように、前と実情はそう変わっていないのじゃないか。やはり前宵、一億円ぐらいの会社では基礎が薄弱なために上場されたらすぐ倒れてしまうというふうなことで、第三者に迷惑をかけるということが非常に多かったと思います。現在三億に上げられたのもその弊害を防ごうという御趣旨かと思いますが、私どもの立場から言いますと、一億円ではどうも事業の基礎としては非常に弱いのではないか。ですから、むしろ私どもといたしましては、まあいろいろ御反対もあるかと思いますけれども、投資対象の規模を、資本金の規模を、前に一億円の上場に対して五千万円というふうになっておりましたが、現在では三億円になったのでございますから、橋渡しという意味では一億五千万円なりあるいは一億円なり、その程度まで対象の規模を広げていただきますと、橋渡しには非常に都合のいいかっこうになると思います。それでありませんと、十年以上育成をしていかなければならぬというようなことになります。そうすると非常に資金効果が鈍るわけであります。いつまでも塩づけにしておかなければならぬ。それが投資対象規模をなにしていただきますと、前に予定したように、五年以内にはほぼ一人前の事業として育って、送り出すことができる、こういうふうに思います。この辺については、いろんな面に関連をいたしますので、私ども、非常にむずかしいかと思いますけれども、そういうほうがむしろ現状に適した方向じゃないか、こんなふうに私は考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/87
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088・塚本三郎
○塚本委員 はしなくもいま社長さんのほうからそんなような御発言がありましたけれども、私はその方法も一つの方法であろうと思いますが、この点は、長官、どうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/88
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089・乙竹虔三
○乙竹政府委員 この会社のねらいが――中小業者が資本を動員いたしますのは、自分の金か自分の身近の人しか動員力がない、しかも事業を発展させていくためには、どうしても自己資本を相当大きくせにねばいかぬということで、つまり社会の金を資本として動員するのにどういう手があるかという知恵の一つがこの育成会社方式だと思うわけであります。したがいまして、社会の金が動員できれば、これは証券取引所に上場されなくてもいい、理屈上はそういうことになると思うわけであります。そういうことでありますが、しかし社会の金が一番スムーズに一番間違いなく動員できて、会社に資本金としてはめ込まれるというのは証券制度である、これは私しろうとでありますけれども、そう思うわけでございますが、証券制度のほうがちょっと高くなってしまったという現状でございますので、この辺大蔵当局といろいろ相談をいたしまして、私たちも大蔵省にいろいろお願いもしようと思うわけでございますが、大蔵省にお願いをして、極力証券取引所以外で何か社会の金が資本金として動員できる手がないかということを私ども大蔵省にお願いをし、知恵をしぼりたいと思いますけれども、さらに、そういう一般の金ではなくて、さしあたり小さな資本金であって、同族だけでやっておったときにはだめであったけれども、育成会社で育成をしたから、それならばあの会社の株なら引き取ってやろうというところがぼつぼつ実は出ておるわけでございまして、これが二つか三つの先があるわけでございます。一つは金融機関、取引銀行でございます。取引銀行が、じゃひとつ株を持ってやろうといり、こういうのが一つ。それから第二は、原材料なり製品なりのお得意先と申しますか、関連事業者、ここが第二。それから第三は、会社が育成会社で育成されておりますうちに、その会社の株主のほうの資力もできまして、もう一ぺんひとつ引き取ってもいい、増資に応じてもいいというふうなところもございます。こういうふうなところへ売り戻すと申しますか、こういうふうな一、二、三の方向は、これはそう非常に大規模にはできぬかもしれませんけれども、私たち、努力いたしますれば相当程度いけるのではなかろうかというふうなことで検討をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/89
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090・塚本三郎
○塚本委員 金融機関自体に引き取ってもらうというのは、資金さえあれば何でもいいというような――私はやはり大衆の資金を動員すべきで、大衆はまだ相当金を持っておると思うのです。そうして安全にして有利な投資方法があまり見つからないから、実は金融機関へ安い利息で預けておくという、こういう形にありますので、やはりそういう優良の会社を上場させるということが大義名分でもあり、資本主義の経済体制のもとにおいては、私はこれが一番オーソドックスではないかと思うわけです。このとき、不況の中で大蔵省はそういう御見解を出されたわけですけれども、私のおります名古屋におきましては、そのものずばり二億でございましたね。名古屋だけはこの際一億くらいでも、あの当時と違ってきたのだから、特に東京、大阪というようなでっかい企業がたくさんあるところでは一億であろうが三億であろうがそんなに違いはないかもしれない、しかしいま、最も成長産業として小さいものがつぶをそろえて、自動車、鉄鋼を中心にいたします中京産業界におきましては、やはり公開するならば株の引き取り手は大衆がうんと期待しておる、そのときに二億と言われて一挙に倍にされてしまっておる、このことは安い大衆資金というものを導入する道が閉ざされてしまっておる。こういうふうな声が証券市場には非常にあるわけでございます。こういうとき、いまでもすでに東京、大阪に比べて、名古屋は一億低く御配慮なさっておいでになる。そうであるとするならば、今日そういう声におこたえになって、早く、いわゆるいま出世させて上へ行くということはなかなか困難なようだとするならば、その基準をもとに、地域によって、名古屋あたりはもう一ぺん戻す、一億という形で上場を認める、こういう地元の要望等があったら御検討いただくような考えはないかどうか、もう一ぺんお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/90
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091・広瀬駿二
○広瀬政府委員 東京、大阪が三億でございまして、名古屋が二億というふうになっておることは御承知のとおりでございます。そのほかにも資本命だけじゃなく、株の分布、その他いろいろ基準もございますが、重点は資本金のところかと思いますけれども、名古屋の地元でさらに下げたほうがいいという御要望のあることはいま初めて伺ったわけでございますが、これはなかなか慎重を要する問題だと思います。先ほど申し上げましたように、いきさつが、上場会社で倒産等もあって、投資家大衆に御迷惑を及ぼしたということがあったために、このような厳重な基準をとっておるわけであります。また今後も、むしろ逆に投資家大衆の保護という観点からは、基準を上げろというような声も十分あるわけでありまして、その辺いまの育成の要請とのからみ合いをどうするかという問題だと思います。十分慎重に検討いたしたいと思いますけれども、なかなか困難な問題じゃないかというのが率直なお答えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/91
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092・塚本三郎
○塚本委員 それではもう一度社長さんにお尋ねしますが、この会社が黒字になる見通しは大体いつごろでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/92
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093・江沢省三
○江沢参考人 いろいろな計画を私ども立てておりますが、何とかサービスを十分にしなければいけませんが、会社自体としてもしっかりした基礎をつくるというところに重点を置いてやっていきたい、こう思っております。私どものほうは創立以来ずっと黒字であります。それから、それに関連いたしまして、先ほどのなるべく早く上場して回転をよくするということが大事な、大きな要素になると思います。現在の取引所は、基準三億であります。これに比べますと、先ほど申し上げましたように、私ども対象企業の規模を少し広げるということは、それによって下のほうにサービスしないというわけじゃありません。いまでも千万円以下の企業も取り上げて育成をしておるというふうな実情でございますが、幅を広くやる、そうすると、回転が非常になだらかになりまして、収支的にも金融的にも非常に大きなプラスになります。私どもこれを一億円なり一億五千万円なりに上げろと申しましたのは、金融三法の改正によりまして、相互銀行のほうの対象になりますのが二億円、信用金庫の対象になりますのが一億円というふうに変わるように聞いておるのでありますが、経済規模がかくまで拡大しておるのでありますから、その辺のところは環境に応じて御考慮いただければ、私どものほうの仕事も非常に活発に大きく伸びるようなことになるのではないか、こんなふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/93
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094・塚本三郎
○塚本委員 再度、長官にお尋ねしますが、先ほど私がお聞きしました一億円なり一億五千万の資本金に対しても投資対象にしてくれたら、こういうことのお話が先ほども社長からありましたが、このことについては長官まだ御返事いただいてないと思いますが、その見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/94
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095・乙竹虔三
○乙竹政府委員 現在の法律の立法趣旨によりますと、中小企業者を育成いたしまして、そうして中堅企業に卒業させていくというのが趣旨になっております。したがいまして、最初この育成会社が手がけましたときに、中小企業である必要はある、しかし一ぺん手がけましたらこれを卒業まで持っていきたいということで、再投資、再々投資におきましては五千万以上の規模になっておってももちろんかまわないということになっております。立法論としてこの点をどう考えるかということを先生御指摘かと思うのでありますが、現在のところ、中小企業政策というか、これはやはり中小企業者というものを一応資本金五千万ということで切っていますので、範囲をどうするかということは非常に大きな問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/95
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096・塚本三郎
○塚本委員 わかりました。そういたしますと、何か二律背反的な感じがするわけでございます。この投資育成会社というものは、言ってみますならば、投資だけの会社で、ほんとうは育成会社としてどんどんと育てては上場させて、またその金を次につぎ込んで、そうしてさらにこれをみんなある程度まで、一人前とか言いますと変ですけれども、おそらく立法の趣旨というものはそんなところにあって、そうして健全な会社を出世させることに努力をなさろうとせられたんだろうと思うわけであります。そのときに大蔵省のほうだけ上場の限界を実は三億と上げてしまった。片一方においては中小企業は五千万円だ。あの当時実は一億だから、半分の五千万の資本金を中小企業は持っておれば、それで何割かここに育成会社が投資することによって、いわゆる対外的な信用もあるでしょうし、資金の安定的な供給もあるでしょうし、銀行金利で借りてやるよりも、資本金を拡大し安定させることが、いわゆる景気変動に対処し得る道なんだ、こういう大義名分で私はいい方策だと思っておったのですが、これは金融機関の肩がわり的な役にしか立たないような――そしてたいへん恐縮な表現でございますけれども、さらにこのように景気が悪くなってまいりますと、市中金融機関のいわゆる設備資金や運転資金等が窮屈なので、逆にこの育成会社の中へかけ込みにやってくるというようなことまで新聞の記事の中には散見されるわけでございますね。そうなると、何のことはない、実は金融機関の上にもう一つ余分のいわゆる金融会社のようなものをつくったにすぎないということで、しかもそういうかけ込みがふえてまいりますと、資金量が足りないから勢い財投の七分五厘という金利のものをどうしても多くしなければいけない。おそらく中小企業庁もこのことに対しては二十五億要望なさって十七億というものが今年度認められておるというようなことも、結局そういうほうに回っていってしまう。そうすると、いま社長は黒字だとおっしゃるけれども、それは細々と、投資育成会社としての機能を発揮してないうちはこれは健全でございます。そんな表現は極論かもしれませんけれども、投資育成会社としての機能を発揮しようといたしますと、直ちにこれが赤字に転化してしまう。そして実際には一割以上の配当ということは今日の中小企業に期待することは無理があるとしなければなりません。そうすると、勢いこの育成会社の第二の使命でありました指導育成の金を削って、いわゆる金融機関的な仕事にのみ没頭するかというような形にいかなければ、八割から九割を出資しておいでになる一般の民間の出資者に対して申しわけがない。これは社長として当然の立場であろうと思うわけです。何のことはない、この投資育成会社というのは最初おつくりになったときはその意気込みでありましたけれども、大蔵省の大所高所からのいわゆる一般投資家保護という大義名分のもとに、これは言ってみるならば、何か一人前になり得ないような未熟児的な会社にさせられてきておるような気がいたすわけでございます。ですから、この点を何とか解決しなかったなら、これの本来の立法の趣旨に沿わないのではなかろうか。これを救う道というのは、出資金額を多くいたしまして、いわゆる資金コストのかからないようなものでこれを救っていく以外にはない。せっかく法律としてこれが今日まできて――会社の熱意ある指導によってやっとここまできたという感じをもって私たちは判断しておりますが、そのときにこういう小児麻痺的な会社にされてしまったのでは残念だと私は思うわけでございます。何らかこれに対する処置というのを、財投に期待するということよりも、それならば財投の金の金利を下げるか、それができなければこの政府の一般会計からの出資三億というのをもっと多くしていただくような形にするか、さもなくば最初の予定どおり、あれは一時的なことであるからということでもって上場の資本金の基準を下げていただくか、この三者のうちの一つをとっていただかぬと困りはしませんか。どうでしょうか、長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/96
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097・乙竹虔三
○乙竹政府委員 塚本先生御指摘のとおりでございます。もうお話しのとおりで、一応一億程度が最低の上場の基準という場合に、五年程度持っておればということでこの育成会社は発足したわけでございますけれども、これをさらに三億ないし二億にまで育て上げるということになりまして、どうしても数年持たなければいかぬということになりますと、そこに滞留する資金量は相当ふえてくる。これは先日堀先生から御指摘があったとおりでございます。そういう大きな数字になっておりますので、思い切ってそちらのほうの努力をしなければいかぬと思います。というのは、だんだん中堅企業の要資本額というものはふえてまいるわけでございますから、一人前に育てますために金がかかるのはしかたがないということで、政府もまた民間もその努力をするということをしなければいけない、これは当然だと思います。しかしそれだけではなかなか――今度は学校にたとえますれば、入学希望者が多いわけでございますから、こちらに対する回転も考えなければいけない。要は、極力卒業もさせたいということになりますと、卒業のしかたが現在のような証券取引上場の最低三億ないし二億という線では相当無理があるというのは先ほどちょっと抽象的に申し上げましたのですが、この辺のところは大蔵省ともよく相談をして、中小企業が中堅企業にだんだんなりかわっていく場合の社会資本の動員のしかたにつきまして知恵をしぼらなければならないとい、うふうに考えます。先生御指摘のように、その三つを研究しなければならないという点、おっしゃるとおりだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/97
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098・塚本三郎
○塚本委員 私は、その三つのらちどれか一つでもやっていただきますれば、この会社としての本来の道を生き抜く方法、そしてこれはまくらことばではございませんけれども、資本取引の自由化に対処する中小企業の、まじめにやってきた者はやがて成長していくのだという道を政府が開いてやる大きな一つの方法だと思うわけです。
時間もございませんから、最後に、大蔵省、お聞きのとおりだと思います。大蔵省自身もこの点はお考えになっておられると思うのでありますが、上場の基準を下げることができないといたしますならば、この際は私はこれに賛成していきたいと思いますが、来年度あたりには資金コストを一厘引き下げるか、あるいは出資金をさらにふやすか、どちらかの方法をとっていかなければ、この法律の精神にもとるという感じがいたすわけでございますので、御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/98
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099・広瀬駿二
○広瀬政府委員 私、証券局長でございまして、上場基準の関係に対しまする責任の衝にある局長でありますが、その点につきましては先ほど御説明申し上げたようなことで、基準を下げるということは現在の情勢ではなかなか困難じゃないかと思っております。そこであとの方法につきまして、資本金、政府出資をもっとふやすという方法、あるいは資金量をふやすという方法、あるいは中小公庫からの借り入れ金の問題、これは理財局の所管でございますので、私から担当のほうによく伝えることにさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/99
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100・塚本三郎
○塚本委員 最後に長官、大蔵省から所管違いだということで見解をいただけなかったわけでございますが、このことはおそらく長官のほうでも心配なすって強く働きかけておいでになるでございましょうから、長官のほうからも、こういう強い要望があったということで、来年度あたりどちらかの方法で――せっかくつくっていただいて各地において多く期待されておる。それがこんな状態でいくなら、銀行から金が借りられぬからここから借りよう、幸い財投の金があるんだというようなことでやられたならば、せっかく堅実に伸ばしていこうとする投資育成のその本旨にもとってしまって、単なる金融の場つなぎ的なものになってしまう。そういうことになると、途中でめんどうを見ていくのにもやっかいなことになってしまって、会社としての本来の発展からいって、しがらみ的な形になる危険をいまはらんでいるのではないかという気が私はいたします。その点大蔵省とどうぞ十分折衝していただくように希望を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/100
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101・小峯柳多
○小峯委員長 次回は、明二十七日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時三十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105804461X01119680326/101
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