1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年四月二十五日(木曜日)
午前十時三十四分開議
出席委員
委員長 八百板 正君
理事 小笠 公韶君 理事 金子 一平君
理事 砂田 重民君 理事 粟山 秀君
理事 唐橋 東君 理事 武部 文君
理事 和田 耕作君
青木 正久君 木野 晴夫君
中山 マサ君 広川シズエ君
村山 達雄君 山下 元利君
木原 実君 村山 喜一君
河村 勝君 有島 重武君
出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
国 務 大 臣
(経済企画庁長
官) 宮澤 喜一君
出席政府委員
公正取引委員会
委員長 山田 精一君
経済企画庁国民
生活局長 八塚 陽介君
委員外の出席者
行政管理庁行政
監察局監察官 加藤 好郎君
経済企画庁国民
生活局参事官 小島 英敏君
経済企画庁国民
生活局消費者行
政課長 岩田 幸基君
文部省初等中等
教育局中学校教
育課長 奥田 真丈君
厚生大臣官房企
画室長 首尾木 一君
農林省農林経済
局参事官 内村 良英君
通商産業省企業
局次長 下山 佳雄君
通商産業省企業
局消費経済課長 谷村 昭一君
中小企業庁指導
部商業第二課長 小津 修二君
運輸大臣官房参
事官 内村 信行君
郵政省電波監理
局放送部業務課
長 河野 弘君
自治省行政局行
政課長 林 忠雄君
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四月二十五日
委員吉田之久君辞任につき、その補欠として河
村勝君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員河村勝君辞任につき、その補欠として吉田
之久君が議長の指名で委員に選任された。
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四月二十三日
公共料金の値上げ問題に関する請願(井出一太
郎君紹介)(第四四六六号)
同(小川平二君紹介)(第四四六七号)
同(小沢貞孝君紹介)(第四四六八号)
同(吉川久衛君紹介)(第四四六九号)
同(小坂善太郎君紹介)(第四四七〇号)
同(下平正一君紹介)(第四四七一号)
同(中澤茂一君紹介)(第四四七二号)
同(羽田武嗣郎君紹介)(第四四七三号)
同(林百郎君紹介)(第四四七四号)
同(原茂君紹介)(第四四七五号)
同(平等文成君紹介)(第四四七六号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
消費者保護基本法案(砂田重民君外二十四名提
出、衆法第二一号)
消費者保護の強化に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/0
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001・八百板正
○八百板委員長 これより会議を開きます。
砂田重民君外二十四名提出の消費者保護基本法案を議題とし、審査を進めます。
前回に引き続き質疑を行ないます。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。砂田重民君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/1
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002・砂田重民
○砂田委員 きょうは宮澤長官においでをいただきましたので、基本法案の最終的なことについて、長官に二、三お伺いをしておきたいと思います。
消費者保護基本法が当委員会に付託になりましてから、私どもは、消費者保護基本法の姿勢に基づきまして、各省が持っておられます消費者保護関連の現行法を、それぞれ担当の皆さんと一緒に共同作業で洗い直しをしてみたわけでございます。いろいろな問題点が煮詰まってまいりました。各省を担当しておられます方々も、非常に前向きに積極的に御協力をくださいまして、こういった方向で現行法を考え直していこう、運用のやり方をこういうふうに改めていってみよう、こういう答えをそれぞれちょうだいしましたのですが、当委員会といたしましては、これらの問題について後刻決議をすることにいたしておりますが、今後も引き続いてアフターケアをしていきたい、当然そういう責務もまたあるわけでございます。
つきましては、いろいろな問題点が決議の形で後ほど明確になると思うのですが、これらのことにつきまして、参議院選挙が終わりましたあとで予定されるでありましょう臨時国会——もちろんそれまで答えの出ないこともたくさんあると思いますが、各省がこの基本法の姿勢に基づいて洗い直しをしてこうやっていこうという決心をしていただいた、それらの問題の中間的な御報告でけっこうでございますが、答えが出たものは答えが出たものとして、参議院選挙のあとの臨時国会でこの委員会にぜひ御報告をしていただきたい、かように考えるのでございます。長官のこれに対する御意見を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/2
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003・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 たいへんに適切な御要望であると考えますので、ぜひとも取りまとめまして国会に御報告することにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/3
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004・砂田重民
○砂田委員 ありがとうございました。
そこで、きょうがいよいよ消費者基本法の当委員会での審議の最終日でございますので、長官に、こういうことをおやりになる気はございませんか、また、やっていただきたいというわれわれの気持ちがあるものですから、伺っておきたいと思うのですが、アメリカにベター・ビジネス・ビューローという機関があることを御承知であろうと思う。この機関は、アメリカの企業がみんな集まって、その企業の会費だけで運用されておる、自警的な、自主的な、非常にりっぱな活動を長年の間しておられます。私は、この基本法というものがはっきり制定されますことを機会に、日本の企業界にも産業界にもこういう運動が起こってくることが、日本経済全体にとってほんとうに好ましいことだと考えるのです。そういう機運が日本の企業界、産業界の中に少し芽ばえてきているような感じがするのでございますが、これはひとつ宮澤長官としても、そういった活動が日本の産業界の中になお一そう芽ばえてくるように、何らかの働きかけをなさる御意向はありませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/4
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005・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 ベター・ビジネス・ビューローが各地に長い歴史を持ってアメリカの場合活動しておりますし、全国組織もあるように承知しております。そして、御指摘のように、組合員の会費によって運営されておる、相当大きなものになっておるところもあるようでございます。それだけにああいう仕事もできるのであろうと思いますが、わが国の場合、ようやくここで消費者の意識が高まりつつあり、また業界自身も、二、三の不心得の者の行動によって業界全体の信用が落ちるということは非常に困るというケースにぶつかりまして、自衛意識もだんだん出てきておるように思います。繊維業界などに少しそういう動きがあるようでございます。やはりこれは、もっと組織として育てていくことが望ましいと思います。各業界とも同業団体を自発的につくっておるところが多うございますから、そういうことをやる一応の人のまとまりのようなものはあるかと思います。ただ、相当の金を出してまで業界の名誉、信用を維持しようということまで、なかなか全般的には意識が高まってきておりません。しかし、私としては、もうそういう時代であると考えますので、関係大臣の御協力も得まして、これは自発的にそういう動きになりますように働きかけてみたいと思います。これは、そういう気になりませんと、形だけつくりましてもあまり意味のないものでございますから、そういう理解と自発的な意思のもとに、そういうものができ上がりますような努力を私どもとしてもいたしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/5
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006・砂田重民
○砂田委員 ぜひひとつこれをお願いをいたしておきたいと思います。
最後に一点だけ。国民生活白書のことで先般同僚の有島委員からも長官に御質問があったのですが、一つ明確にしておきたいと思いますことは、この消費者保護基本法は、ほかの基本法にございますような年次報告のことを規定いたしておりません。実はこれは、われわれは意識をしてわざと書かなかった点でございます。国会に年次報告が提出されて本会議でその説明がございましても、それをまじめに聞く方もあまりたくさんないし、相当分厚い年次報告を熱心にお読みになる方も少ないような気持ちがいたします。われわれはそういうことではなくて、ひとつこの消費者保護行政の強化のことについては、これは別に法律で定められたことではなしに任意的ではありますけれども、企画庁が毎年出しておられるその国民生活白書と、法律に基づいて公正取引委員会が国会に提出をなさいます年次報告と、これをあわせて国会ごとの物価委員会で議論の対象にしてみんなで勉強しよう、そういう意図のもとに、年次報告というものは基本法の中には書かなかったわけでございます。そういう意味をもってわざと書かなかった年次報告のことでございますから、それだけ私どもは、企画庁が編集なさいます国民生活白書に実は期待をいたしておりますので、この消費者保護行政のことについても、一般的な国民生活の実態等をお書きになるだけではなくて、国民生活白書の中で相当なページ数をさいてぜひとも触れていただきたい、このように考えるわけでございます。四十二年度の国民生活白書はもう準備をしておられると思うのですが、四十二年度からすぐというわけにも、これはタイミングからしてもいかないことじゃないかとも思います。しかし、少なくとも四十三年度からの国民生活白書は、そういう意図も持ってひとつ編集をしていただきたい、このように考えるのでございますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/6
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007・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 先般お尋ねのございましたときに、私の申し上げようが、ことばが足りなかったように思います。あのときに申し上げようとしておりましたのは、実は今回も、場合によっては白書にそういうものを書いてみようかという準備もいたしてみたくらいでございますから、そういう意味のことを申し上げたつもりであったのでございます。したがって、今回法律案が成立し、また、先ほど御指摘のありました御決議などが成立いたしますと、これから改善をしなければならないポイントというのは非常にはっきり出ておりますので、それらについて、一年間にどういうことが行なわれたかというようなことについて、これは確かに白書の内容の一部としてふさわしいものだと考えますので、来年はぜひそういうふうにさせていただきたい。のみならず、今後急速に全部のことが片づくとは思えませんので、やはりその年その年における変化なり問題点なりを、できるだけ白書に取り入れてまいるようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/7
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008・砂田重民
○砂田委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/8
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009・八百板正
○八百板委員長 有島重武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/9
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010・有島重武
○有島委員 ただいま砂田委員のほうから、本消費者保護基本法のアフターケアのことについて御質問ございましたけれども、私は同じような観点でございますが、一けただけ視野を広げまして、今後こうした問題を検討していかなければならないのではないかと思われる点につきまして、提起を兼ねて御質問いたすわけであります。
最近、製鉄にしろ製紙にしろ、重工業の各部門におきまして大企業の合併が相次いで行なわれております。これらが独占禁止法の違反の疑いがあるということが言われておりますけれども、またその一面、これは国際経済、自由化に対処して企業の強化をしていかなければならないわけでありますから、不可避的な事態であるとも考えられる。こうしたことにつきまして、今後の国民経済の健全な発展のために、従来の経済事象を調整していくパースペクティブといいますか、原理ということについていま相当深刻に再検討しなければならない時期に来ているのではないか、そういうふうに思われるわけであります。
初めにお伺いしたいのは、大企業の強化に対応しまして、中小企業の対策ということについても当然これは強化していかなければならないのではないかと思うわけでありますが、こうした措置が、今度は消費者保護ということと関連づけられてどういう影響をもたらしていくのだろうか、こうしたことも考えていかなければならないのではないかと思うわけであります。これはなお考えてみますと、いろいろな経済法則がございますけれども、それがそれぞれに成立した時点におきました事情に応じてつくられたどんな原理であろうとも、それは一種の暫定措置として理解してもいいのではないか。そうした経済の根本原理であるといっても、これは当時の世界認識、世界の経済の状態ということに対応した一つの暫定措置として考えられていいのではないか。ですから、当時は絶対不滅の経済法則であるというふうに確信を持たれ、またはそれによって相当な効果をあらわしたというようなことであっても、新しい事態に立ってもう一ぺん全部を総ざらいに考えていくべきではないか。極端に申しますと、新しい経済原理というものが導入されるようなことを、現在各所でもって望まれているのではなかろうかというような気もいたすわけでございます。そういった点について御所見をひとつ承っておきたいと思います。
それからもう一つ、きょうは時間がありませんのでまとめて質問させていただきますけれども、それは独占禁止法の問題であります。これは国内でありますと助け合っていくということがございますけれども、国際間にはほとんど徹底した弱肉強食の自由競争ということが行なわれ得る。そうなってまいりますと、独占禁止法そのものがすでに一つの競争制限であるというふうにも考えられるのではないか。それから、国内におきまして、いまは独禁法の適用除外ということがほとんど経済の全般に及んで、寡占化の傾向というものが時代の流れではないかというふうに考えられるわけであります。それで、独占禁止法を適用するか適用しないかというような境界線がはなはだ不明瞭である、あるいは不明朗であるというふうにも言えるのではないか。これは現行の独禁法の運用技術の問題からやはり一歩脱して、独占禁止法そのものの限界点を見きわめて考え直さなければならないときが来ているのではないか、そのような感じがするわけでございますが、その点の御所見を承っておきたいと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/10
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011・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 最近、相当規模の大きい合併の話がいろいろに伝わっておりますが、これらは、やはり国際化に備えて規模の利益を追うとか、あるいは技術の発達によって単位当たりの設備が大きくなる、あるいは労働事情を反映して労働集約的でない資本集約的なほうに進まなければならないとか、おのおのそういう理由のあることであると思いますし、しょせんは合理化、コストの引き下げということをねらっていくわけでございますから、それ自身は消費者にとって不利なものであるというふうに考える必要はないと思います。むしろコスト引き下げが消費者に適正に還元されるならば、消費者にとってもいいことであろうと思います。ただその場合、そういうことによって企業の数が減ってまいりますと、おのずからおのおのの持つシェアが大きくなるわけでございますから、独占禁止法で禁止しておるようなことが起こりやすい環境になるというふうに考えます。ただ、いま言われました寡占という状態を、独占または半独占と考えることはどうも適当でないと私は考えております。幾つかの、少なくとも数個の企業が併存しているという状態が寡占であると思いますので、その間に競争が行なわれるということは、これは普通であれば行なわれるのが当然であります。かなり激しい競争が行なわれると考えるのが当然でありますが、しかし、無数に企業がある場合に比べれば、やはり話し合いがしやすい、比較としてはしやすい環境であろうと思います。したがって、そういうときには、他方で不公正競争が行なわれないように十分に監視をしていく必要がある、こういうふうに考えております。
なお、独禁法そのものの問題につきましては、公正取引委員長がおられますので、御答弁があるかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/11
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012・山田精一
○山田政府委員 独禁法は、御承知のとおり、第一条に書いておりますところの目的を追求いたすところのものでございまして、一言で申せば、公正にして自由な競争をいかにして確保するかというところに尽きると思います。したがいまして、経済情勢が変わりました場合において、その経済基盤の判断において十分これに対応した判断をいたさなければならないと思いますが、根本の原理におきましてはこれは何ら変更を要するものではない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/12
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013・有島重武
○有島委員 宮澤長官より御指名があって山田委員長からお話しいただいたわけでございますけれども、私、ちょっと言い過ぎになるかもしれませんけれども、公正取引委員長のお立場というのは、独占禁止法を運用していくお立場なんだと思うのでございます。いま問題になりますのは、そうした運用のお立場の方から見ればこれはまだまだ運用の余地がある、そのお立場から見ればあらゆる事象が一つの視点をもって考えられるわけでありますけれども、その基準になっている視点そのものが、公正取引委員長のお立場からは、これは変更すべきものであるというふうに速急な判断を下されるということはほとんどむずかしいのじゃないか。それは行政のお立場からすれば、ほんとうは現在ある法律をどのように運用していくかという、その技術論に重点がかかってくるのじゃないかと思うわけであります。いま長官に質問申し上げましたのは、もう一歩広い立場、視野に立つて、独占禁止法というものを再検討するという時代が来たのじゃないか、しかもその独占禁止法の限界というものをいま考え直していかなければならないのじゃないか、そういうようなことを伺いたかったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/13
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014・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 独占禁止法によって不公正な取引というものは禁止をされておる、もしあれば是正をしなければならないということになっておるわけですが、不公正でなくても非常に大きな利潤を得ているとかなんとかいうような、もう少しどうかならぬかというような事例というものは、私はないわけではないと思います。けれども、かりにそれについて何かしようといたしますと、おそらくは新しい技術あるいは新しい創意によって企業を興して、当然これは、それなりの報酬を少なくともしばらくの間は得ることになるわけです。そういうことを押えるということは、かえって自由競争によって新しいものが生まれてくることに弊害になるのじゃないか。理屈としては、弊害にならないようにそういう監視なり機構なりができるという、理屈では考えられますけれども、実施すればおそらくはイニシアチブを殺すことになるというように考えられますので、そういうことのメリットがわからないではありませんが、デメリットのほうが大きい、こう私としては考えております。したがって、取引方法が不公正であるということになればこれはもう問題ございませんが、不公正でないということであれば、やはり経済活動は自由であることが望ましいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/14
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015・有島重武
○有島委員 まだまだかみ合わない感じがするのですが、いまのお話の中で公正、不公正ということがございました。何が公正であるか、不公正であるかということは、一つの既成事実が出てまいりますと、昔考えていたのはかなり変更される場合があるのじゃないか、そういうように思うのでございます。
それから、先ほどの第二番目の質問にもう一ぺん戻しますと、こういった例が適当かどうかちょっと疑問がありますけれども、先般佐藤首相が憲法の問題について、憲法を改正する考えがあるかどうかというような話の場合、これは首相としては憲法を守る立場であるということを明言されました。それで、党としては変更の意思があるということは綱領でもって明らかである、そういうような議論が展開されておりましたけれども、これはやはり行政官としての一つの立場と、それから政治家としての一つの立場、多少違ってくるのじゃないか。そういった意味から、このことをもう一ぺん、技術の問題としてだけではなしに、世界経済の中におけるこれからの日本の国民経済という、そうした問題として現行法の限界点を考えるときが来ているのじゃないか、そういうふうに考えまして御質問申し上げたわけでございます。
この問題は非常に時間がかかる問題であると思いますので、近い将来にまた詳しくいろいろ検討してまいりたいと思います。
質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/15
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016・八百板正
○八百板委員長 ただいま佐藤内閣総理大臣がお見えになりましたので、この際、内閣総理大臣に対する質疑を行ないます。
なお、先ほどの理事会の申し合わせのとおり、質疑時間は一人五分以内にお願いします。
それでは、これより質疑に入ります。砂田重民君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/16
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017・砂田重民
○砂田委員 五分でございますから、すぐに質問入らしていただきます。
実は私が十五年くらい前に、私自身まだ政治家になろうなんて考えなかったころなんですが、選挙の演説をしていたことがあります。私のおやじの選挙なんですが、私のおやじの選挙の演説が、自民党は生産を考える政党であって社会党は分配ばかりを言っている政党だ、そういう議論が通用した時代があったわけでございます。今日ではもうすっかりそういう社会情勢とは変わってしまいまして、政党たるもの何党といわず、生産と分配と消費と、この三つの柱のバランスに立って政策を考えていかなければならない、そういう時代になったと思うのです。十五年前と今日とを比べての経済成長の成果というものは、たいへんなものがございます。産業が発展をいたしますし 国民生活はたいへん向上をしてまいりました。しかし、そこに反面、いろいろなひずみが出てまいりました。そのひずみに対する処置の施策がいろいろ講ぜられておるわけでございますが、今日までただ一つ見のがされてきた大きなひずみが、私は、企業と消費者の力の格差ということであると思う。力のない消費者の利益を政治、行政で守らなければ、公正、自由な競争という問題も、自由な選択という問題も、こういった経済の原理的なメリットすら失われよう。そんな考えから今日基本法を私どもは提出をいたしましたのですが、こういう消費者保護行政、消費者保護のための政策を強化してまいりますのに、二つの非常に大きな問題があると思うのです。この二つは総理に解決していただかなければならない問題だと思う。きょう総理のお供をして出席してくれております各省の消費者保護行政の担当官は、昭和二十二年ごろにできた法律、そういう全く社会情勢の違った時分にできた法律を利用して、まことに苦労して消費者保護行政をかろうじていままでやってまいりました。そういう人たちに、各省の中で消費者保護行政に日が当たっていない。法制的にも財政的にも日が当たっていない。その日を当てていただくのは、私はどうしても総理にやっていただかなければならない問題だ。それが一点でございます。
もう一つは、産業保護行政に重点を置いて今日まで働いてもらっておりましたすべての行政官に、あらゆる行政の最終目的が国民生活の向上にあるのだ、生産の目的は消費にあるのだという、そういうことを頭で理解するするだけではなくて、行動で示していただかなければならない。宮澤長官は、この基本法は行政の意識革命だということばを使われました。この行政の最高責任者としての総理に、この意識革命の指導をやっていただかなければならない。この二つの問題は、私は、行政の最高責任者としての総理に期待をしなければ解決のしようがないような気がいたします。この二点についてのひとつ総理の御決意のほどを承らしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/17
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018・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 ただいま言われますように、経済発展、経済伸展、これの最終目標、経済活動の最終目標は国民生活の向上にあるのだ、そして、国民生活の向上にあるのだというところから消費ということが考えられる。そして私ども、しばしば企業家あるいは勤労者それぞれの立場が違うと言いながら、生産者も同時に消費者である。これは農村でも農民、食糧生産に携わっておるが、やはり消費者の立場だ。工業生産に携わる者も、同時に消費者の立場だ。かように考えますと、やはり生活の向上、そのことは同時に、消費者としての立場において経済発展の利便を享受するということにあるだろうと思うのです。ところが、いままで議論されてきたものが、どうも各省で扱っておるものを見ましても生産に力が入って消費が忘れられておる、消費者行政はどこにあるのだ、こういうようなことが言われております。また、いま自民党自身の事柄についても批判されましたが、なるほどわれわれは生産の政党だ、社会党は分配の政党だと言われたが、分配の政党が、生産を考えないで、現在のあるがままで分配だけを考えてはおられないだろう。われわれもまた、生産と言いながらも、分配を全然考えない生産というものもあり得ない。これはただ、表現のしかたがどちらに重点を置いたかということだろうと思います。それをいま砂田君が言われるように、両方が均衡がとれた形において、拡大均衡の形において両者の調和をはかっていく、そこに行政の真の意義があるのだろう、こう言われることには私も同感であります。
そこで二十二年、古い行政組織のもとにおいて、行政法規のもとにおいてこういうことをしている。これは、申し上げるまでもなく、時代の要請にこたえるゆえんではありませんから、ひとつ思い切ってこれを改革していかなければならないと思います。同時にまた、最近の消費者行政の立場、これは総合的施策によって初めて消費者の立場が保護できる、かように私は考えますので、いま内閣において私自身が会長をやっておる物価安定推進会議、これは行政の総合的な効力を発揮させよう、こういう実はねらいであります。ただいま指摘された点も、新しい情勢に対応するようにいまの制度を改正していくこと、これは当然でありますが、同時にまた、ただいまのような意味合いにおきまして、相互の関連をとって総合的に消費者保護の実をあげるようにしたいものだ、かように思います。在来からの考え方と同じような考え方ではありますが、今度は表現のしかたが違う、私はかように思いますので、基本的な取り扱い方が変わっているとは思いません。しかし、どうしても表現のしかたによりまして力の入れ方が変わりますから、いままでの公務員諸君が、行政に携わっておる諸君が、どちらかといえば生産に力を入れて消費者のほうは軽視された、こういうような非難を受けやすいようになっていたのじゃないかと思います。しかし、この際はあらためて、経済発展の最終目標は国民生活の向上にあるのだ、そういう立場で消費者の保護に一そう徹底するように、しかもそれは、通産あるいは農林、そういう個々の立場でなくて各省とも関連を持つ、こういう意味で広く総合的に効果をあげるようにいたしたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/18
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019・八百板正
○八百板委員長 武部文君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/19
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020・武部文
○武部委員 私ども四党が今回消費者保護基本法を提出するにあたって、第一の目的の中に、私どもは、「国民の消費生活の安定及び向上を確保する」、こういう点を第一条の目的として定めたわけであります。
今日、有害食品あるいは有毒ないしは不良、そうした消費財がたいへん多く出回っており、消費者の保護が非常に重要である、こういう点を考えたわけでありますが、反面、今日のように消費者物価が異常な値上がりをしておる、そうなってまいりますと、消費者は、必然的に安い商品、悪い商品、不良な商品を求める傾向におちいることは当然だと思うのであります。もしそうなってくるといたしますと、私どもが今回提案をいたしましたこの消費者保護基本法の第一条の目的であるところの、国民の消費生活の安定や向上を確保するという、こうした精神が著しくこれは削られてくる、こうなることは当然だと思うのであります。
そこで、私が今回総理にお伺いをいたしたいことは、きょうの決議にもその点を実は四党で行ないたいと思っているのでありますが、公共料金の問題が物価の上昇において非常に重要な役割りを示すと私は思うのであります。さきの国会で当委員会に総理の出席を求めた際、公共料金の問題について総理は、公共料金の値上げというものは物価の上昇に非常に重要な意味を持つ、こうした点について慎重にこれは配慮しなければならぬという答弁をされたのであります。ところが今日、国鉄の定期あるいは酒、たばこ、NHKの受信料、電話の架設料、こうした一連の公共料金が相次いで値上がりをしておるのであります。経済企画庁長官の説明によりますと、昭和四十三年度の消費者物価の値上がりは四・八だとおっしゃっておるけれども、四・八ということを信ずるものはあまりない。特に銀行筋あたりでは、もっと高い数字になるだろうということを言っておるのであります。私が申し上げたいことは、広い意味における政府が直接、間接に関与する公共料金は、企画庁の答弁によりますと三十四の種類にわたっておるのであります。今日、消費者物価の値上がりが政府主導型の値上がりだと言われるのも、私はこの辺に原因があるように思うのであります。そういう意味から、当面いろいろ課題になっておる私鉄運賃の値上げ、あるいはタクシー、バス料金の値上げ、さらには一連の通運料金の値上げ、さらには本年秋予想される消費者米価の値上げ、こうしたことが、これから先わが国の消費者物価の値上がりに非常に大きな影響を与えると私は思うのであります。したがって、きょう当委員会で決定をいたします消費者保護基本法というものが成立いたしましても、こうした問題についての政府の配慮がない限りは、この法律の意味が半減をすると私は思うのであります。したがって、こうした公共料金の値上がりにたいへん大きな役割りを果たされる総理として、この消費者保護基本法と密接不可分の意味を持つ一連の公共料金の値上げ、将来の消費者物価の値上がり、こうしたことについてどのような決意でおられるのか、その点をお伺いをいたしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/20
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021・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 消費者保護基本法第一条、さらにまた附帯決議等あとで出るだろうと思いますが、そういう点で御心配の点を武部君がただいま御披露になりました。消費者行政について力を入れることは、先ほど砂田君にお答えいたしましたからそれは省略させていただきますが、企業の利潤の分配、こういうことをやはり考えなければならぬのじゃないだろうかと思うのです。それはどういう割合がいいかということは別でありますが、とにかく資本と労働と、さらに消費者に還元する、こういうような三者分配、その方法が守られて、そうしてその分配が適正であるならば、私は企業も発展するし、また消費者からも不平を受けることがないのじゃないか。これが一つの新しい考え方で、ぜひともそこへ持っていかなければならない。ただ力だけでこの分配方法をきめてはならない。特にその際に忘れてならないのは、利潤は消費者に還元するということ、これが忘れられると、これはいまのようなちぐはぐなことになる。しかし、私がこの三者分配ということを申しましても、どういう割合がいいということを申しておるのではありませんから、そこを誤解のないように願います。しかし、特に消費者というものを忘れた利潤の分配は国民が納得しない、満足しない。
そこで、いま公共料金を出され、そうして公共料金のうちでも私鉄だとかタクシーだとか、その他通運料金等に触れられました。これなどは、私がただいま申し上げるような点が非常にはっきりした業種ではないかと思います。企業である限りにおいては、利潤はやはり上げなければならぬ。利潤を上げる限りにおいては、やはり企業というものが適正に運営されることが必要だろう、そういう意味でやはり企業が成り立つというその基本に立って、公共料金の適正化ということが考えられる、これがしばしば公共料金の値上げになる。そうしてそれは当座においては好ましくない、——武部君が御指摘のようにこれが物価の先駆をなす、いつも刺激的な材料、公共料金にさわれば一般物価が便乗する、これが上がることはほんとうに困ります。しかし、やはり公共事業がそのままであるわけにもまいりませんから、料金は適正なものに変えていく。しかし、その当座は悪くても、長期的に見れば企業の健全化ということで必ず物価が安定していく、落ちつく、こういう方向に向かわなければならない、かように私は思います。
ところで、ただいまの最初に分配の話をし、公共料金のあり方等に触れたのであります。しかし、公共料金が先駆をなすという意味において、これの値上げに私どもも軽々に賛成してはならない、慎重でなければならない、これはもう当然のことであります。ただ、私が申しておるのは、この理論的な基礎を申し上げておるので、どんどん上げていくというつもりではございません。したがって、一般の経済情勢にもよりますし、また国民生活、国民の負担能力等も勘案し、その公共料金の適正化の時期はなかなかむずかしいのではないだろうか。諸条件を勘案してしかる上で処置すべきものではないか、かように思います。私は、そういう意味で、ただいまもうすでにきまったものは別といたしまして、これからの値上げについては、私鉄、タクシー、通運料金等においては慎重にこれに対処をしよう、こういうことを宮澤君にも話をし、また担当の大臣もそういう態度でこれに臨んでおります。でありますから、これらの点はいま早急にどうこうという問題は起こらないであろう、かように思います。しかし、基本的には一つの問題点——理論的なものをやはり考えざるを得ない。
そこで、いま問題になりますのは、私が一番心配しておりますのはこの秋の消費者米価の問題、同時に、ただいま展開されておる春闘、これがどういうところにおさまるのか、こういうことは相互に、春闘相場と消費者米価が直接関係があるとは思いませんけれども、経済の運営上から見まして、特に重要なる点だとしてこの二つは注意していかなければならないな、かように思っておる次第であります。しかし、私ども民間の労働争議に政府自身が干渉する、関与する、さような考え方は毛頭持っておりません。したがって、せんだっての経団連の会合におきましても、こういう際、国際経済の非常にきびしい際、しかも日本国内においてむずかしい状況になっておる際、この春闘が労使双方において円満に平和裏に、できるだけ早い機会におさまるようにということを、実は私自身の所見としてあいさつをいたしました。また物価安定推進会議の席上におきましても、ただいまの春闘の問題と消費者米価の問題、この二つが実は頭にこびりついているという話を、率直に実は披露した次第でございます。いまの問題については、武部君もいろいろさらに掘り下げた質問、御意見等が述べられたいだろうと思いますけれども、私、いま申し上げるような観点でこれまで公共料金と取り組んでまいりましたから、これは本会議その他の委員会でも私の所信を明確に申し上げました。今日直接の影響としては好ましくない、しかし、長期的に見れば、これはやはり全体の物価の安定の方向へ寄与するものだ、また、そういうように私ども行政で指導してまいりますという話をしておりますので、その点を御了承いただきたいと思います。
国鉄の定期の改定につきましては、物価安定推進会議からも意見を述べられておりますが、今回の処置は、これは是正程度のものだからということで、いわゆる改定の問題としては取り組んでおらない。本格的な改定をするのには、もっと全体の長期にわたる再建計画、それを立てて、しかる上で料金改定と取り組め、こういうような意見書まで実はいただいておる次第であります。私ただいま申し上げますように、物価が上がらないようにただいま四・八——これはだれも信用していない、言っているのは政府だけなんで、言った宮澤君自身も不安を持っているんじゃないか、こういうようなきびしい御批判がございましたが、政府は四・八、これを目標にして最善の努力を払って、これを実現するつもりでただいま苦心しておる最中でございます。またその熱意、その誠意、これだけはひとつ買っていただきたい。なかなかむずかしい目標数字だと私も思いますが、しかし、これが全然見込みのないものではない、かように思います。電話なども、架設料金には触れましたけれども、いわゆる料金改定を強く要望されましたが、それと取り組まなかったのもこういう点に私どもがくふうをしたその一端だ、かように御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/21
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022・武部文
○武部委員 それではこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/22
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023・八百板正
○八百板委員長 和田耕作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/23
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024・和田耕作
○和田委員 総理に御質問申し上げます。
私どもは、生産者中心の政治から国民生活あるいは消費者の立場を重視しなければならない時期に来ているという意味で、消費者保護基本法というものを五年前から主張してきておったのですけれども、今回ようやく消費者保護基本法として成立するようになるだろうということで、たいへん満足しているわけでございます。
この問題につきまして一、二総理に御質問申し上げたいのは、物価問題特別委員会で各党がほんとうに心を合わせて、いろんな見解の相違はありましたけれども、この消費者保護基本法を推進するようになったのは、昨年の九月に神戸に視察に行ったときからのことなんです。そのときに、いまの武部さんもおられたし、自民党の砂田さんもおられた、私も有島君も当時おったのですけれども、そのときに——神戸は非常にそういう運動が盛んなところでございまして、モニターの人たちとか、あるいは消費者運動を推進している代表者の人が、約八十人くらい集まっておられたんですね。そこでいろんな意見を聞いている中で、こういう意見がたくさん出てきたのです。つまり、政府は物価を安定させたいと思っておる、できればこの物価を引き下げたいと思っていることは佐藤総理以下いつでも言っておられるけれども、やっておられることは逆の方向になっているんじゃないか。つまり、私どもは一生懸命やっておるけれども、物価の問題についてむなしい気持ちになるんだ、こういう訴えを各方面の方がおっしゃっておられる。これはたいへん私たちの気持ちを打ったことばでございまして、私どもは、当然政府として、公共料金の引き上げにしましても物価の問題にしても、本気になって佐藤総理が努力しておられることはよくわかります。わかりますけれども、しかし、公共料金を上げなければならない理由がたくさんある、この判断にたいへん迷っておられるという状態もよくわかるわけなんですね。わかりますけれども、実際に運動をしている人は、そういうむなしさを感ずるという気持ちがあるわけですね。こういうところに——つまり、政治を行なう姿勢というものを、生産者中心からもっと消費者の立場を考えていく、そういうように変化させる時期だ、こういうように思うわけです。
そこで、この基本法の中にも、一つの柱としまして、消費者みずからが、新しく変わっていく消費構造に応じて、品物その他に対する正しい知識を持たなければならないということと、消費者の自主的な組織活動を推進していかなければならないという項目があるわけです。この問題を特に総理に気を配っていただきたいと思うのですけれども、この項目が基本法の中に入ったことが伝えられますと、マスコミの人たちも、消費者運動を進めている人たちも、さあまたこれは政府としての訓示規定だ、国民に何か命令するような項目が入ったんだという受け取り方をされたわけですよ。そういう受け取り方をされるところに、いままでの政治の姿勢がやはりうかがわれるわけなんですね。私どもはそういう気持ちじゃないのです。国民の自主的な運動というものがなければ、さような法律ができても中身ができないんだという意味で、こういう消費者の役割りというような項目を入れておるわけです。そういうふうなことでございまして、だんだんおわかりになっていただいておるようでありますけれども、今後、消費者活動を推進している人たちの運動に対して、総理みずからが深い関心を持って、できるだけそういう人たちと接触するような機会を持っていただきたい、これが第一問でございます。総理は、銀行家の大会にはよく出られる、あるいは経団連の大会にもよく出られる。それと同じように、こういう消費者の運動が出れば消費者の会にも顔を出してやっていただきたい、そういうお気持ちでやっていただきたいということが一つあるのです。
もう一つの問題は、先ほど有島さんも、それから武部さんもお述べになったのですけれども、物価の問題なんですが、この基本法の中に、物価については、一般の物価の公正な価格形成の条件を整えるという項目が一つあると思うのです。もう一つの項目としては、公共料金については、国民の利益を尊重しなければならないという項目があるのです。それはそれとして、前者では公正取引委員会がこれを監視しておる、後者では各種の政府の委員会があるわけなんです、公共料金のきめ方について。この問題は、特に今後とも重視して、正しい運営をしていただきたいと思いますけれども、ここでひとつ要望を申し上げたいのは、つまり自由な価格形成の条件でもなければ、公共料金でもない、そういう産業あるいは物品が急速に出てきているようです。あるいは八幡、富士の大合併の問題でもそうですけれども、いわゆる寡占価格に対してどういうふうな監視の機構をとるかという問題ですね。これはつまり、自由な価格形成の条件からだけ見ることもできないし、公共料金の決定的なメカニズムからも出てこない。そうすると、こういう問題を 物価の、しかも国民に非常に関係があることですから、特殊な監視機構といいますか、国民生活の立場から、あるいは公正取引の立場からチェックできるような何らかの組織を御検討いただく時期に来ておるのじゃないか、こういう問題を含めて御要望を申し上げたいと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/24
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025・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 国民から見まして、国会というところは、各党でお互いに主張し合い、どちらかというとけんかの場だ、国民不在の国会だという批判を受けてまいったのであります。しかし、この委員会におけるただいまの消費者保護基本法、これはいわゆる四党でほんとうに共同して審議された、私はそれに対してほんとうに敬意を表しますし、また、それでこそ初めて消費者保護の実績が成果をあげるのだ、かように私も思っております。そういう意味で、皆さん方の御健闘についてはほんとうに敬意を表します。
そこで、もっと消費者自身に接触しろ、これは過去におきましても、私は、みずから出かけることは少なくても、それらの代表の方にお目にかかっておることは、しばしばお目にかかっておりますし、また直接陳情なども聞いております。また、ただいまもそういうお話がありましたので、さらに今後は積極的にそういう意味では努力をしたい、かように思っております。ことに私、消費者団体が、いままででも非常に消費者保護に役立った例を幾つも知っておりますが、たとえば食品工業で有毒色素を使っておる、そういう色素を食品工業から駆逐した消費者団体——これは地域的なものでございますが、そういうようなことで成功された方々のお話も直接聞いております。さらにまた、不良なものあるいは誇大広告等についてずいぶん迷惑をこうむられた、こういう意味で行政府をさらに鞭撻された、こういうような方にも実はお目にかかっております。したがって、消費者行政をやる場合には、品物も多いことでありますから、一つのかたまった組織そのものではないだろうと思いますけれども、それぞれの分野においてそれぞれ適切な消費者の組織があっていいだろう、かように思います。また、そういうものの出てくることを、この際は心から期待する次第であります。政府並びに地方自治体等におきましても、そういう組織が容易にできるように力をかすように考えております。
次の問題といたしましては、いわゆる合併の問題であります。これはいろいろ議論があろうと思います。しかし、大体和田君も言われるように、合併が今日の経済から見てどうも国際的規模になる、国内の競争よりも国際的競争だ、また最近の進んだ技術等から見て、やはり大きな組織でないと技術開発の研究費、これが十分にまかなえない、企業がおくれるとか、あるいは設備投資等におきましても、いたずらに巨大でも困るかもしらないが、とにかく新しい設備投資、適正な設備投資を必要とする、そういう場合にやはり巨大産業というものが当然出てくる。その際に問題になるのは、巨大産業がその力をどういうように使ってくれるか。先ほど申したように、消費者を十分考えた、その使命をそういうところに置いて、その使命達成に努力してくれれば何をか言わんやですが、力だけをたよって横暴なことをすれば、これはたいへんなことだ、かように思います。そこで、いま言われるように適切な監視機構が必要だ。これは、ただいままでの公取等におきましてもそういうようなことを考えておりますが、公取よりもさらにわれわれ自身が、こういうものについて実は積極的に取り組まなければならなくなっておるんじゃないだろうか、かように思います。日本の場合におきましても、最近の八幡、富士の合併がいま論議の中心になっております。非常に独占あるいは寡占というような意味から問題の議論のあるアメリカにおきましても、USスチールなどはたいへん大きな規模だ、それに次ぐような、今度の合併ができれば第二位になるだろうといわれておるわけでありますが、このUSスチール自身が、それでは非常な強大であるがゆえに害悪を流しているか。そうではない。やはり自身の事業の目標を、消費者、他の産業との関連において正当に理解しているところにあるだろうと思います。私は、今後事業が強大化する場合におきましては、その経済の目標、それをもう一度再確認していただいて、そしてその目標に沿って活動ができるようにしたいし、また、そのために必要ならば政府も監視機構を考えていく、かようにしたいものだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/25
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026・八百板正
○八百板委員長 有島重武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/26
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027・有島重武
○有島委員 国民一般の意思をくみ上げて国政に反映させるということが民主主義の基本的な態度と思いますけれども、本消費者保護基本法は、最もその趣旨を直接に表現した法であると思います。その実行におきまして、実りの多い成果のあらわれますよう、これをお願いいたします。
それで、国民の意思を反映する制度といたしましては、いま和田委員からもお話しございました。第一番目は、代表者を通して行なわれる方法というのがあると思うのです。これは、法をやっております国会でありますとか地方公共団体の審議、その他の審議会であるとか懇談会であるとか、そういう形でもって国民の意思がくみ上げられていく。第二番目に考えられますのは、いまマスコミで行なっております世論調査の方法、こういうこともあると思います。それから第三番目には各種のモニター、これは一つのモニターを行なう主体があって、そこが必要に応じて項目を立ててこれを聞いていく、そういうようなことがいままであるわけでございますが、第四番目に、この消費者保護基本法として一番問題になりますのは苦情処理、相談、こういったことであると思うのです。これは特に代表というか、聞くほうの意思をほとんどまじえないで、直接に庶民の声が赤裸々に入ってくる方法であるのではないかと思われますので、こうした苦情処理機構につきましては、この整備をぜひともやっていただきたい。これは各省庁にまたがっておりまして、一時に統合したものをつくるということはやはり不適当であると思いますけれども、将来は大きくこれを総合的な整備をしていただきたい、このようにお願い申し上げるわけであります。
それから、いまはコンピューター時代でございますので、そうして受け取ったいろいろな苦情なり相談なり、そういったデータをカード整理すれば、これは統計をとることができると思うわけであります。この統計がもし公表されますれば、これは非常に行政監視にもなるし、また、今後どのような行政をやっていくかということについて、非常に客観的な力強い手がかりとなるのじゃないかと思いますので、このことを御提案申し上げるわけであります。
以上に対する御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/27
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028・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 有島君にお答えいたします。
とにかく消費者の意向を把握するということが、消費者保護の基本になるだろうと思います。それを、ただいまのように、たいへん分析して一から四まで区分しての御説明でございました。これなら消費者の方々も納得されるような把握方法、それを現実に示されたと思います。私もそれを、ただいまの御意見のようにさらに強化整備していく、こういうことにしたいと思います。ただいままでも、それぞれのものについてそれぞれの手はとっておりますけれども、いまから言いまするとなお不十分ではないか、かように思いますので、お知恵も拝借し、そうして万全を期すようにしたい。
いまこの消費者問題で一番むずかしいことは、これは一省庁だけの問題ではなくて、総合的にこういうものが働いて対策が立てられなければならない、かように思いますので、そういう意味から、代表者と会うにしてもまた一省庁だけじゃいかぬし、マスコミ対策等になればそれも各省が関係しますし、さらにモニター、これもそれぞれやっておりますけれども、これが十分に自由意思が発表されるような方法を、さらにくふうする必要があるだろうと思います。ことに、最後に述べられました苦情処理の問題になれば、今日のもので十分だとは思いませんし、さらに総合的に苦情処理の問題をどこで扱ったらいいだろうか、いま宮澤企画庁長官とも話をしながら、どうしたらいいかと言っているところですが、皆さん方のお知恵もまた拝借したいと思いますから、いい案があれば、さらにこれを進めていくようにしたいと思います。
また、ただいまも言われましたように、コンピューターシステム、新しいものがそれぞれ考えられますが、こういう機械をこういう調査に使えるように、われわれがさらに機械を使うこともくふうするということにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/28
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029・八百板正
○八百板委員長 これにて佐藤内閣総理大臣に対する質疑は終わりました。
これにて消費者保護基本法案に対する質疑は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/29
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030・八百板正
○八百板委員長 この際、山下元利君から、消費者保護の強化に関する件について発言を求められておりますので、これを許します。山下元利君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/30
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031・山下元利
○山下(元)委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党の四党を代表いたしまして、消費者保護の強化に関する件について決議をされんことの動議を提出いたします。
まず、案文を朗読いたします。
消費者保護の強化に関する件(案)
本委員会は、消費者保護基本法案の審査にともない、各種消費者保護の具体策について検討を続けてきたが、さしあたり次の点について政府はただちに必要な措置を講ずるよう要請するものである。
一、地方公共団体が消費者保護に関し果たすべき責務を明確にするため、地方公共団体の事務として消費者保護に関することを地方自治法上明記するよう検討すること。
また、中央地方を通じて消費者行政が効果的に推進されるよう、国、都道府県、市町村の消費者行政に関する責務分担を確立し、そのための体制を整備すること。
二、消費者利益に関係のある各種の法令について再検討を行ない、必要な法令の制定、改正を準備し、運用の改善を行なうこと、ならびに各種の法令の実効確保のため、国、公立の試験研究機関の整備をはかるとともに、監視体制の強化をはかること。
なかんずく、次に掲げる点について十分に考慮し、所要の措置をとること。
(1) 食品衛生法については、その規定する食品の成分規格を明確にするとともに、特殊栄養食品の標示制度を改善して食品衛生法において規定することを検討すること。また、食品添加物、残留農薬について、その毒性の研究を促進し、許可品目の再点検、規制の強化をはかること。
(2) 農林物資規格法については、輸入物資を含めて対象品目を拡大するとともに、日本農林規格の品質基準の拡大ないし等級別基準の設定、表示制度の充実、表示方法の明確化をはかること。
(3) 食品衛生法、栄養改善法、農林物資規格法、不当景品類及び不当表示防止法を通じて食品の表示制度が海外諸国に比しても立ち遅れており、かつ、最近の消費生活の実態にも適合しなくなつていることにかんがみ、統一的な観点から食品の表示に関する制度のあり方とその運用について根本的な再検討を早急に行なうこと。
(4) 薬事法については、その規定する医薬品について、既許可のものであつても予期せざる副作用が発生した場合には、すみやかにその情報を把握し、製造、販売の停止等必要な措置がただちに講ぜられるような体制を整備すること。また、貯法、製造年月日、有効期限等の表示義務の対象薬品を拡大すること。
(5) 工業標準化法については、実用性能の規定をもつた規格の制定、等級別規格の制定、表示の内容及び方法の改善等につき検討すること。
(6) 家庭用品品質表示法については、対象品目を拡大し、繊維製品等の使用方法その他の表示内容を充実強化し、かつ例えば絵表示を採用する等表示方法の改善をはかること。
(7) 不当景品類及び不当表示防止法については、表示に関する公正競争規約に関連のある業界に対し必要な場合に一定事項の表示を義務づけうるようにするとともに、都道府県知事が公正取引委員会に対し不当表示についての処分請求を行なえるよう検討すること。また懸賞による景品類の提供については、商品購入を条件としないものについても規制しうるようにすること。
(8) 宅地建物の前払式割賦販売については、契約解除の際の損害賠償額の制限、前受金の安全保証措置等必要な規制を加えること。
(9) 消費者の組織については、消費者自身の自主的活動に期待する面が大きいので、消費生活協同組合等民間の消費者組織の効果的発展をはかる方向で適切な措置を検討すること。
三、消費者保護施策の実効をはかるため、各都道府県に、商品テストをはじめ、各種の相談、消費者啓発活動等を総合的に推進できる「生活センター」ともいうべき機構の設置をはかること。
四、学校教育における消費者教育を一層改善充実すること。
五、消費生活にとつて重要な公共料金の決定に当たつては、十分に消費者の意見を反映しうるよう審議会、公聴会その他を活用すること。
六、消費者金融については、消費者保護の立場から、早急に調査研究を行ない、政府の統一見解とその対策をまとめ、万全の措置を講ずること。
七、不良商品等によつて消費者が受けた損害が救済されるように、十分な苦情の処理が行ないうる業界の体制を整備することについて必要な措置をとること。
右決議する。
〔拍手〕
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/31
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032・八百板正
○八百板委員長 ただいまの山下元利君の動議のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/32
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033・八百板正
○八百板委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
なお、本決議の関係各当局への参考送付等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/33
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034・八百板正
○八百板委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/34
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035・八百板正
○八百板委員長 次に、本案を討論に付するのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。
砂田重民君外二十四名提出の消費者保護基本法案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/35
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036・八百板正
○八百板委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決されました。
この際、おはかりいたします。
ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/36
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037・八百板正
○八百板委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/37
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038・八百板正
○八百板委員長 この際、佐藤内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。佐藤内閣総理大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/38
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039・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 ただいま本委員会におきまして、消費者保護基本法につき、またそれに関連する決議案等が決議されましたことについて、私、消費者保護の立場から、たいへんりっぱな決議をされ、また法案が成立したことを心から喜ぶものであります。
ただいまの決議の内容は、たいへん広範にわたるものでありますし、早急の間にこれを実施することはなかなか困難なものもございます。しかし、私は、消費者保護の強化のためには、これらの処置は絶対に必要だ。当委員会の決議の趣旨を尊重し、またその趣旨に沿うように最善を尽くしてこれの具体化を今後はかっていくことを、この際私の決意のほどを表明いたしまして、皆さんの決議におこたえしたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/39
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040・八百板正
○八百板委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午前十一時四十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805063X01019680425/40
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