1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年三月二十一日(木曜日)
午前十一時四十二分開議
出席委員
委員長 永田 亮一君
理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君
理事 中垣 國男君 理事 猪俣 浩三君
理事 神近 市子君
上村千一郎君 鍛冶 良作君
佐藤 孝行君 齋藤 邦吉君
千葉 三郎君 中馬 辰猪君
山口 敏夫君 中谷 鉄也君
成田 知巳君 山本弥之助君
岡沢 完治君 山田 太郎君
松本 善明君
出席国務大臣
法 務 大 臣 赤間 文三君
出席政府委員
法務政務次官 進藤 一馬君
法務省刑事局長 川井 英良君
法務省矯正局長 勝尾 鐐三君
委員外の出席者
警察庁交通局交
通指導課長 綾田 文義君
警察庁交通局運
転免許課長 西川 芳雄君
法務省刑事局刑
事課長 石原 一彦君
運輸省自動車局
業務部旅客課長 菅川 薫君
最高裁判所事務
総局民事局第一
課長 井口 牧郎君
最高裁判所事務
総局刑事局第一
課長 佐々木史朗君
最高裁判所事務
総局家庭局第一
課長 松井 薫君
専 門 員 福山 忠義君
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三月二十一日
委員綱島正興君、馬場元治君、福田赳夫君、村
上勇君、岡田春夫君、佐々木更三君及び西村榮
一君辞任につき、その補欠として佐藤孝行君、
齋藤邦吉君、上村千一郎君、山口敏夫君、中谷
鉄也君、山本弥之助君及び岡沢完治君が議長の
指名で委員に選任された。
同日
委員上村千一郎君、佐藤孝行君、齋藤邦吉君、
山口敏夫君、中谷鉄也君、山本弥之助君及び岡
澤完治君辞任につき、その補欠として福田赳夫
君、綱島正興君、馬場元治君、村上勇君、岡田
春夫君、佐々木更三君及び西村榮一君が議長の
指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
刑法の一部を改正する法律案(内閣提出、第五
十五回国会閣法第九四号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/0
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001・永田亮一
○永田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。中谷鉄也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/1
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002・中谷鉄也
○中谷委員 若干の問題についてお尋ねをいたします。
刑罰というのが、社会全体の倫理観、生命尊重ということにその基盤を持っていなければならないということは、言うまでもないことであります。そのような意味で、罰せられる者が正しく罰せられねばならないということも、また当然のことであろうかと思います。そこで、前国会におきまして、未必の故意の問題についてお尋ねをいたしましたが、この問題について、さらに掘り下げてお尋ねをいたしたいと思います。
昭和四十二年七月、法務省刑事局から自動車運転による故意犯適用事例という資料をいただきました。要するに、本来業務上過失致死傷ではなしに、未必の故意、すなわち、その故意の内容が殺人の故意あるいは傷害、暴行等の故意によって、したがって傷害致死傷になるという場合には、そのようなものとして起訴されねばならない、捜査されなければならない。そうでなければ正しい社会的な倫理観に根ざしたところの処罰というものがなされない、こういう前提でお尋ねをいたします。
この一ないし二十六の具体的事例が、故意犯適用事例として掲げられているわけでありまするが、これはいつからいつまでの、年度別にはどういうことに相なっているか、これをまず最初にお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/2
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003・石原一彦
○石原説明員 ただいま中谷委員からは、前国会に配付した資料について御指摘がございましたが、実は今国会において配付いたしました「刑法の一部を改正する法律案についての資料」の一四七ページから一五四ページまでに、二十六例以外に、最近において故意犯を適用された事例も含めまして、合計三十二例を資料化いたしてございます。この分は、昭和三十七年から四十二年の十月末まででございます。
なお、判決の原本につきましては、本人の氏名等もございますので、ただいま手元にございませんので、年度別に何年かということは申し上げられませんが、昭和三十七年以来昭和四十二年十月末までに、一審でもって故意犯が適用された事例は三十二件となるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/3
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004・中谷鉄也
○中谷委員 本件について、刑法の改正によって禁錮刑の三年を懲役もしくは禁錮の五年というふうな刑の引き上げをする必要はないではないか、その以前に、未必の故意をもって処罰できるものは未必の故意をもって処罰をする、そのような態度こそ必要ではないかという趣旨の質問が従来なされておったと思いますが、年度別に直ちにお答えをいただけないということでございまするけれども、昭和三十七年から四十二年までのいわゆる三十二例のうち、年度別にはどのような傾向に相なっているでしょうか。悪質な事犯がふえてきているということを法務省は指摘をされました。とするならば、未必の故意の適用事例というものが年々ふえているのかどうか、傾向としてお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/4
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005・川井英良
○川井政府委員 この種の事件が全部本省への報告事件になっておりませんので、この一、二年の間に照会をいたしまして、過去の記録の中からさがして報告をさしたものであります。この三十二例というのは、ここ数年間におけるものは大体尽くしていると思われますけれども、かなり抜けておるものもあることを一応御了承賜わりたいと思います。それから各年次別に出すということは、これは調べれば年次別の数字が出ると思いますので、至急この三十二例の中をもう一ぺん年次別に整理して、あとでお答えを申し上げたいと思います。
それからもう一つは、なるほど未必の故意という法の解釈に基づきまして、運用としまして、過失犯に類するような行為でありましても、故意が認められる場合におきましては、殺人ないしは傷害致死というふうな罪名をもってやることが法のたてまえでございますので、でき得る限り、故意の認められるものにつきましてはそういう処理をいたしておりますけれども、御承知のように、故意とかあるいは過失とかいうものは主観的な要件でございますので、今日の訴訟法のもとにおきまして、このいわゆる未必の故意があるのか、あるいは認識ある過失にとどまるのかどうかということは、実務の実際におきましては非常にデリケートであるし、まためんどうなことでございますので、なるほどそういうふうなたてまえにはなっておりますけれども、数多くの事故につきまして未必の故意を大幅に認めて処理するということには、おのずから限度があることでございますので、どういう数字になっておりますか、数字が出た上でまたお答え申し上げなければなりませんけれども、そういう数字ないしは傾向だけからいたしまして、直ちに事故の傾向というものを推測することは、ちょっと困難ではないかというふうな気がするわけでございます。むしろ、それにあわせて、また別個のいろいろな状況というふうなものを総合して御観測をいただかなければならぬ問題ではなかろうか、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/5
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006・中谷鉄也
○中谷委員 事故の傾向を推察をし、推定をするということでお尋ねをしておるわけではないわけなんです。要するに、刑罰というものは、罰せらるべきものがそのような形において正当に罰せられなければならないという観点からお尋ねをいたしております。といたしますと、本来、未必の故急に当たる事案を検察官が未必の故意として訴追することなしに、いわゆる業務上過失致死傷として訴追をしておる。そういうふうな姿勢の中に、かりに刑法の改正案が成立をして、禁錮三年が五年の懲役もしくは禁錮ということに相なったときの危険性を私は指摘をいたしたいわけです。したがいまして、年次別の本件についての割合がどうなっておるかということについては、ひとつ明確に御答弁をいただきたいと思います。なお、本件について、しからば検察のほうで未必の故意としての、すなわち、殺人あるいは傷害致死傷としての送検を受けて、そうして公訴提起の段階において業務上過失致死傷に変更した、起訴の段階においてそのような最終的な心証を得たという事例は一体どの程度あるのか。
なお本件について、未必の故意として、すなわち、殺人あるいは傷害致死傷として起訴をして、その後訴因変更を命ぜられて業務上過夫致死傷に変更した事案はどの程度あるのか。要するに、安易な起訴をしてもらいたくないというのが私の考え方なんです。本来、兇器といわれているところの、兇器にもなり得るところの自動車によって人をひき殺した、それが未必の故意だということになれば、殺人の行為があったということになれば、懲役十年、懲役十五年というふうなところの刑を受けることも私はやむを得ないだろうと思う。しかし、未必の故意と紙一重の事案があるというふうな、あなたのそのような説明によって、未必の故意としての努力を怠って、そうして業務上過失致死傷として起訴をするという考え方は、刑が引き上げられたときには非常に危険だというふうに考えるわけです。したがいまして、いま申し上げた点についての資料も整理していただけるかどうか、この点についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/6
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007・川井英良
○川井政府委員 以前に整理いたしました故意犯によって有罪とされた事例の中には、故意犯として起訴したけれども、裁判の結果、過失犯に認定されたというようなものも注のほうにたしか記載しておったと思いますが、今度の資料の中にはそこまで詳しく整理しておりませんので、これも先ほどの年次別のものとあわせて、前の資料をもう一回整理し直しまして、後刻またお答えを申し上げたいとと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/7
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008・中谷鉄也
○中谷委員 警察庁の交通指導課長に同趣旨の質問をいたしたいと思います。
要するに、悪質な交通事犯というものは何か。当然結果についての重大性も観察しなければならないけれども、いわゆる過失の重さ、この点に問題がある。同時に、過失を飛び越えたところの未必の故意ということになると、これはもういわゆる厳正な処分をしなければならない。そこで、警察から検察庁に未必の故意として送検されておるところの事例はどの程度あるのか。これは多数あることだろうと私は思うけれども、そのような資料についてお答えいただけるかどうか、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/8
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009・綾田文義
○綾田説明員 未必の故意については、先ほど本省の刑事局長からお話がありましたように、警察庁におきましても、正当な刑罰が科せられるようにということで、ずっと前から、そういう未必の故意に関する殺人あるいは傷害罪ということを、取り調べの際に十分調べて送致をするようにという指示を出してあります。統計につきましては、警察庁としてははっきり全国別でとっておりませんが、警察庁に府県からそういう特異事案として報告のありましたものは、いま手元に資料はございませんけれども、私のほうで、かつてたしか教養資料としても府県のほうに流したことがあります。以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/9
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010・中谷鉄也
○中谷委員 お聞きしているのはそういうことではないわけなんです。未必の故意について四十二年七月で二十六例、その後三十二例の未必の故意についての一審判決の具体的事例ということを中心に、未必の故意に当たるものは未必の故意として起訴すべきではないか、そういうふうな起訴のしかたをするなら、何も禁錮刑の三年を懲役もしくは禁錮の五年ということに引き上げなくてもいい、同時に、またそれが正義に合致するのではないか、こういう趣旨の質問を展開しているわけなんです。未必の故意についての指導をしておるとか、こういう場合が未必の故意になりますよという教養資料を流したというようなことをお聞きしているわけではないのです。一体、未必の故意として立件して検察庁に送致された件数が幾らあるか。なお、その運命が、未必の故意として送検をしたけれども、検察庁がある意味では慎重に、あるときには憶病に、あるときには安易に、未必の故意であるものを未必の故意でありながら起訴しないとか、あるいはまた、本来の未必の故意という警察の見方は強過ぎるということで業務上過失として起訴したとか、そういう結果としての運命、これは一体どういうことになっておるのだろうかということについて警察庁としても重大な関心を持っておられるだろうと思う。そういう資料があるかどうか。未必の故意の適用を拡大したらいいじゃないかというのは、本件刑法の、審理にあたっては従前から指摘され続けてきたわけです。したがって、そのような資料についての準備が本来警察庁においてなければならないと私は思う。そういう点で、そういう資料がありますかと聞いておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/10
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011・綾田文義
○綾田説明員 御質問の故意で送致した件数は、警察庁では現在のところはとっておりません。ただ、そういう事案があった場合には、特異事案として府県から警察庁に報告するようにという指示を出してありまして、府県からそういう特異事案の際には報告がまいるわけであります。そういう資料はございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/11
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012・中谷鉄也
○中谷委員 そうすると、その特異事案の報告事例集というものを整理していただければ、未必の故意のいわゆる送検の資料というものは御提出いただけるわけですね。先ほど刑事局長が答弁をいたしておりましたけれども、昭和三十七年から昭和四十二年までの未必の故意の一審判決の具体的事例ということに相なっておる。したがいまして送検は、一審判決が昭和三十七年でございますから、昭和三十六年から年次をとらなければいかぬかもしれません。いずれにいたしましても、そういう資料は整理してお出しいただけるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/12
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013・綾田文義
○綾田説明員 警察庁に特異事案として報告のあった資料はまとめることはできます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/13
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014・中谷鉄也
○中谷委員 出していただけますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/14
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015・綾田文義
○綾田説明員 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/15
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016・中谷鉄也
○中谷委員 未必の故意の問題については、それらの資料をいただきましてから、あらためてお尋ねをいたしたいと思います。
次に、「刑法の一部を改正する法律案についての資料」の八〇ページないし八一ページ以下の資料についてお尋ねをいたしたいと思います。
まず八一ページの資料、すなわち「業務上過失致死傷罪及び重過失致死傷罪の科刑状況 通常第一審終局被告人の科刑その他終局区分」についてお尋ねをいたしますが、昭和四十年に禁錮三年以上の刑に処せられたものが六件、同じく三十九年については二十件ということに相なっております。この点についてまずお尋ねいたしたいのは、昭和三十九年、四十年、この二つの年次でけっこうですから、三年以上とありますけれども、この内訳はどういうことに相なっておるか、この点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/16
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017・石原一彦
○石原説明員 この統計は司法統計年報からとったものでございまして、御承知のように二百十一条の刑は、禁錮三年が法定刑の最上限でございます。しかしながら、統計をつくります際に、統計の書き方といたしまして「以上」というものが入っておるというぐあいに了解しておりますので、この三年以上と申しますのは、すなわち三年そのものの数字であるというぐあいに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/17
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018・中谷鉄也
○中谷委員 そうすると、いわゆる道交法との関係で併合罪になったというようなものは、この司法統計の中には出てきていないわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/18
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019・石原一彦
○石原説明員 道交法の点につきましては、同じただいま御指摘の資料の一〇三ページ、道路交通法令違反事件の科刑状況のところに三年以上という欄がございますが、それに記載されているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/19
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020・中谷鉄也
○中谷委員 そうすると、統計の上では三年以上、二年以上とあるけれども、これは統計の形式の上からであって、それはもう禁錮三年ということが上限なんだ、こういう趣旨ですね。そういたしますと、この統計を拝見しておりまして非常に奇異に感ずるのは、昭和三十九年と四十年で、三年以上の欄が二十と六、こういうことに相なっておる。これは、一体どういうことなんだろうか。この機会に四十一年の司法統計、あるいはまた四十二年の現在法務省において確認されている三年以上のこの欄に当たる件数は一体どの程度あるのだろうか、この点はいかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/20
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021・石原一彦
○石原説明員 司法統計につきましては最高裁判所にもお尋ねしたのでございますが、現在昭和四十年までができておるというので、それまでの数字を掲げたものでございます。なお、昭和四十一年、四十二年度におきまする分につきましては、検察庁にかつて照会したものではございますが、私どもがとりましたのは、中谷議員御承知のとおり実刑の部分でございまして、これは執行猶予が含まれている数字でございますので、その関係においては、執行猶予になったものも含まれた分で四十一年、四十二年の数字はとっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/21
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022・中谷鉄也
○中谷委員 三年以上というものについて、別の資料によりますと、執行猶予の執行猶予率はゼロだというふうに伺っておりますが、いずれにいたしましても、それを含むとか含まないは別にいたしまして、四十一年、四十二年の資料というものはないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/22
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023・石原一彦
○石原説明員 執行猶予を含めました分についての資料はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/23
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024・中谷鉄也
○中谷委員 そうすると、執行猶予を含んでいない資料についてはお手元にあるということでございますか。もしあるとすれば、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/24
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025・石原一彦
○石原説明員 現在ただいま手持ちいたしておりませんが、検察庁からとりました報告につきましては、後日提出することができます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/25
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026・中谷鉄也
○中谷委員 三十九年から四十一年、四十二年、この四年間を見通しまして、二十件から六件というこの傾向が、四十一年、四十二年にどのような傾向に相なっているか、この点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/26
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027・石原一彦
○石原説明員 御質問の趣旨やや判明しない点もありますが、この司法統計年報は、有罪が言い渡された年次を中心にしてできているわけでございます。しかしながら、発生年月日から申し上げますれば、その前に発生したということもございますので、四十一年、四十二年の分を見ましたときにも、判決の言い渡しがあった分だけしかとれないということを御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/27
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028・中谷鉄也
○中谷委員 そういうことを聞いているのじゃないのです。大体判決の言い渡しに要する日数は一年二カ月だということがいわれておる、常識になっているわけです。だから四十年の六、あるいは三十九年の二十というのは、傾向としてはいつごろの事件だということは容易に推定ができるだろうと思うのです。要するに、私が知りたいのは、そういう傾向を知りたい。昭和三十九年に二十件あったものが四十年に六件になっている。そういたしますと、悪質事犯が激増してきたということで刑法の改正を期待するのだとおっしゃっている。二十件もあったものが六件になっているということなら、四十一年、四十二年はどういう傾向になっておるのか。要するに、質問は非常に端的なんです。ふえているのか減っているのか、この点をお尋ねしているのです。件数についての具体的な把握はないとおっしゃるのだけれども、一体どういうことになっているんですか。逆に言いますと、昭和三十九年の二十件がピークであって、あとはさらに漸増しているのか漸減しているのか、その点をお聞きしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/28
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029・石原一彦
○石原説明員 先ほど申し上げましたように、ただいま確たる数字を持っておりませんので明確にお答えはできないのでありますが、四十年以降の分につきましては、同じような傾向が持続していると見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/29
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030・中谷鉄也
○中谷委員 同じような傾向というのは、三十九年に二十件あったものが四十年に六件、圧倒的に少なくなっているわけですね。漸増、漸減というものではない、言うてみれば激減している。そうして四十一年、四十二年と、そのような四十年のような状態が続いているという趣旨ですが、さらにまた、その激減しているような状態というならば、四十一年、四十二年はさらに一そうそのようなカーブを描いて少なくなっているという趣旨なんですか、これはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/30
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031・石原一彦
○石原説明員 御質問の前提が悪質重大事犯がふえているではないか、あるいは行刑に頭打ちの傾向があるではないか、それが三年以上の数字が減っているから、そういうことは見られないのではないかという点にあるのだと思います。しかしながら、私どもが考えておりますのは、法定刑が三年とありましたうちで、この統計で出ますのは二年以上というのが相当多いわけです。二年以上につきましては悪質重大事犯と見られるのでありまして、その意味から申し上げますならば、これは足していただけばすぐおわかりになりますように、昭和三十五年は十八件でありますが、三十八年四十九件、三十九年五十五件、四十年七十一件というぐあいに激増傾向を示しているのでありまして、この傾向は四十一年、四十二年も同様であるというふうに見ているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/31
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032・中谷鉄也
○中谷委員 評価まで入っていないのです。前にもそういうようなお答えがあったんです。二年以上についての三十五、六十五というところの欄を見てくれというふうな局長の答弁はもう先刻承知しているのです。ただ私が聞いていることにお答えいただきたいのです。私がお聞きしているのは、二十件が六件に激減しておりますね、そうすれば、そういう傾向が続いているとおっしゃるんだったら、四十一年、四十二年はさらにそのよりなカーブを描いて減っているんですか、それとも、同じような傾向というのは、六件程度のものが四十一年、四十二年と続いているという趣旨なのですか。だから、その二年のことはそのときに聞くのです。そこまでおっしゃっていただく必要はありません。そのことについておっしゃっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/32
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033・川井英良
○川井政府委員 長期の三年、法定刑の一ぱい一ぱいいった事件は三十九年の二十件、それから四十年には司法統計で六件というふうにあらわれておりますが、私も実は四十一年、四十二年の正確な司法統計による数字を非常に関心を持って知りたいと思いまして、その正確な数字を出すように前々から指示しておったところでありますけれども、この裁判所のほうの統計はなかなか一種独特な統計をとっておりまして、たくさんある中から一々また記録あるいは照会をしまして、先ほど申し上げましたような併合罪になっているようなものを除くとか、それから事故ばかりではございませんで、たまたま窃盗がくっついておったためにたいへん重くなったというふうなのもかなりあるようでございますので、従来の統計の、一応出ている統計の中からさらにまた個別に当たりまして、それらのものを排除して、純粋に事故だけのものにして、頭打ちが何件あるかというふうなことからやっておるわけでございます。そこで、四十一年、四十二年につきましても最高裁の事務総局のほうにお願いしまして、なるべく早い機会に前と同じような形、たてまえにおける数字をお示し願いたいということを言っているのでありますけれども、実はまだ報告を受ける段階に至っていないということでございます。そこで、それじゃ検察庁のほうへ至急照会をして、少なくとも四十一年度くらいでそういう数字は出ないかということをやっておりまして、これもすでに倉庫に入っているものの中から一々出しまして、その内容につきまして、いま言いましたように、併合罪になるものを除きまして、純粋に事故だけという解釈で整理さして、順次報告を受けておりますが、四十一年度については、四十年度とほぼ同じくらいの数字をいまのところ示しておるというふうに私承知をいたしております。ただここで、よけいなことですがつけ加えさしていただきたいのは、私の考え方は、二十件だから多い、したがって、法改正の必要がより増大しておる、六件だからその必要は減ったんじゃないか——そこまでおっしゃらなかったのでしょうが、私、御質問をお聞きいたしまして、もしそういうふうな大筋であるとしますならば、私は多少意見が違っておるのでございまして、刑法に掲げられました法定刑の最上限を具体的なケースにおいて量刑しなければならないということは、裁判の実情としては、特に刑事裁判の実態としましては、これはかなり重大なことだと思うわけでございまして、前回に最高裁の刑事局長も出ておりまして、もうこれ以上の悪質なものはないんだということにならないと、裁判官としては法定刑の一ぱい一ぱいをいくという量刑をするということはできないんだ、自分の長い判事の体験からいってもそうなんだという答弁をされておりました。私、裁判官をしたことはありませんけれども、私ども検事の立場として量刑をする場合におきましても、これ以上の悪質なものはないという場合でないと最高刑が盛れない、これが裁判の実態だ、こう思うわけでございまして、そういうたてまえに立ちますと、たとえ一件でも二件でも、年間におきまして最高刑を盛らなければならないような事案が出ておるということは、私はやはり法改正の必要性を物語って余りあるものだ、こういうような立場に立って、よけいなことをつけ加えさしていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/33
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034・中谷鉄也
○中谷委員 はたしてそうでしょうか。たとえば、次のようなことを法務省は説明をされるわけですね。窃盗の場合は、初犯で懲役十年へいく例なんというのはありません、絶対にありませんとおっしゃる。本来、窃盗などという犯罪はむしろ反復累行されるところに意味があるのであって、そういうことを言い出しますと、窃盗罪について、何十回もとにかくどろぼうをする、前科もたくさんある、そういう人の場合であっても、いろんないわゆる刑の加重をいたしましても、上限というのはおのずからきまってくると思うのです。たとえば、最近アメリカのほうでは、天文学的数字のどろぼうをしたというふうな報道がなされておりました。そういうような場合に、たとえば百億の金をとったという場合、われわれは、その法定の刑についてはとうてい納得できないという場合だってあり得るだろうと思うのです。たとえば現在、日通の事件について五億円のお金が行くえ不明だといわれておる。はたして検察庁がどの程度捜査できるんだろうかというようなことが伝えられておる。そういう事案についても、収賄罪にしろ、贈賄罪にしろ、法定刑の上限というものはきまっております。そういうような場合に、その事件だけをとれば、人によれば、とにかくこんな者は島流しにしたらいい、無期にしたらいいと言う人だっています。そういうふうな矛盾というものが、法定刑がきまっておる中にはあるんじゃないか。いわゆるそういうふうな例というのが——克明に資料をと、やぼを言って要求はいたしませんけれども、上限一ぱいまできてしまったという事例が、ほかの事案についても私はあると思います。逆に申しますと、死刑の上というものはないわけです。ただしかし、考えてみますと、二人の人を殺しても死刑、一人の人を殺しても死刑になる、十人の人を殺しても死刑、刑の質というのは死刑は死刑しかないんだから、そういうような場合、普通の死刑よりも重い死刑をしなければいかぬじゃないかという議論だってあり得ると思います。しかし死刑というものについてはもうはっきりきまっておる。そういうようなことで、人間については、特に悪質な死刑だからこういうような死刑の執行をしょうなんということになってはたいへんなことになる。そういうふうなことで、六件というその頭打ちというものがその程度のことであるならば、全体としての刑は上げるべきではないという考え方を持つわけです。これも、局長よけいなこととおっしゃったので、私もよけいなことということで申し上げておきたいと思います。
そこで、次にお尋ねをいたしたいのは、八十ページないと八十一ページの資料のうち、先ほどから何べんも引用いたしました昭和三十九件二十件、昭和四十年六件、それから八十三ページの資料、昭和三十九年二十件、昭和四十年五件、八十五ページの資料の昭和三十九年七件、昭和四十年一件という、こういうふうな落差ですね、この原因は一体何か。こういうふうな激減の原因は一体何か、この点について御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/34
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035・川井英良
○川井政府委員 この原因について、もちろん重大な関心を持っていろいろ検討中でございますけれども、この三十八年二十件、三十九年二十件——これは偶然の数字だと思います。それから三十七年には十八件、その前には八件、それから四十年になってまた六件と、こういうふうな数字になっておりますので、この傾向が、さらにまた二、三年少なくなっていくというような状況になっておりますれば、その辺の原因の検討ということがまた理由づけられると思いますけれども、何といたしましてもこれだけの数字しかございませんので、三十九年二十件、翌年の四十年が六件になった、さあどうだと、こういうふうにいろいろ考えてみましても、的確な理由というものがはっきりつかめないのであります。ただ、先ほど刑事課長からもちょっと触れまして、あとで御質問になるということですが、あわせて二年以上を見ていきますと、これが大体同じような傾向でもって漸増をしていくというような傾向を示しておりますので、この辺のところもあわせ考えまして、頭打ちの三年がなぜ減ってきたかというようなことについては、いまのところ的確にお答えするような理論的な根拠を持ち合わしておりません。私も関心を持って、ほかのいろいろな数字あるいは実態とあわせて今後検討していきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/35
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036・中谷鉄也
○中谷委員 刑法の改正案が最初に国会に提案されたころは、三十八年、三十九年ごろの資料があったときだろうと思うのです。したがいまして、こういうふうに激減してくると、やはり提案の理由あるいは趣旨あるいは提案しなければならない情勢というものが変わってきたんじゃないかと思う。しかし、その点については、五件あるいは六件と激減しておっても無視できないんだという、私のほうは、その点については別な考え方を持っておるという点で違うわけなんですけれども、では、原因究明という観点から一点だけお尋ねをいたします。
一体検察官が求刑をされますその求刑というものはどういう意味を持っているのかということについては、いろんな考え方や評価があると思うのですけれども、検察官の意思としてこの八十一ページ、八十ページにあげられている統計の二年以上ということを法務省のほうでは力説されるわけですが、求刑は一体どういうことに相なっておるのか、どの程度の求刑をされたものについてどんな判決があったのか。三十九年二十件、二年以上は三十五件、四十年は六件、二年以上は六十五件になっているものの求刑についてはどういう内訳になっているか、この点をお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/36
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037・川井英良
○川井政府委員 三十九年の二十件について何年の求刑をしたか、またその年の二年以上の量刑があった六十五件についてどういうふうな求刑をしたかということを、いますぐ——手元に持ち合しておりませんけれども、二年以上あるいは三年以上のような重刑を言い渡された者は、ほぼ検事の求刑と歩調を合わしておるという傾向を申し上げることができると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/37
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038・中谷鉄也
○中谷委員 そうすると、昭和三十九年、昭和四十年の三十五件、六十五件というのは、ほぼ検察官の求刑と歩調を合わしておるということは、二年あるいは二年六カ月程度の御求刑があったものではないかと思われる。こういうことの趣旨だとすると、頭打ち論というのは、悪質事犯が激増しておるということは刑事局長も二年以上の御説明の中で力説された、これは私も認めます。悪質事犯でないとは絶対に言わない。しかし、二年以上の欄については、現行の禁錮三年以下でまかなえるということになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/38
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039・川井英良
○川井政府委員 そのとおりだと思います。やはり三十年から、ここに示しておりますような統計をごらんになっていただきましてもわかりますとおり、八件でも六件でも、とにかく最高刑の三年以上というふうな刑が具体的なケースにおいて盛られなければならないというような実態をやはり重要視しなければならない、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/39
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040・中谷鉄也
○中谷委員 先ほど、傾向として、二年以上については、ほぼこれに見合うところの求刑があったものと思うということの御答弁がありましたが、その求刑の内訳については、資料としてお示しいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/40
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041・石原一彦
○石原説明員 調査にある程度日がかかると思いますが、調査後であれば、資料を提出することができます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/41
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042・中谷鉄也
○中谷委員 そうすると、いま一度お尋ねをいたしますけれども、近時、悪質な交通事犯が激増した、そうでございますね。そうしてそれは未必の故意と紙一重の事案というものがある、こういうものについては刑法を改正しなければまかなえないのだ、こういう趣旨の歴代の刑事局長さんの御答弁であったと私は思うのです。といたしますと、激増したが、まかなえないとおっしゃるけれども、二年以上という欄に書かれているものは悪質な事犯だ、これはしかし、現行刑法の二百十一条でまかなえる。そうすると、激増したのでまかなえないというのは、この二十件、二十件、六件、これが激増したという趣旨なんでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/42
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043・川井英良
○川井政府委員 この交通事故は、御説明するまでもなく、重い軽い、情状の悪質、しからざるものとにかかわらず、ものすごい勢いで激増しているということは御存じのとおりでございます。その中で何を悪質と言うのかということは、これはまたいろいろ人の見方によって多少ニュアンスも相違があるかもしれませんが、私どもが悪質と主張いたしておりますのは、自動車の場合でしたら、酒を飲んで運転するとか、あるいは無免許のままで運転をするとか、あるいは著しい無謀な運転をするとかいうようなことが直接の原因となって重大な人身事故を起こしたというようなものを私ども一応悪質ということばで概念づけているわけでございます。そこで、量的に非常にふえました事故の中で、いま申し上げましたような基準でもってしさいに検討してみますと、そのいわゆる悪質なる事故も、全体の量的な増加と正比例いたしまして非常にふえているというようなことを悪質な事故が激増しているのだというふうな表現でいままで申し上げてきたわけでございます。
そこで、現行法は禁錮三年以内ということになっておりますので、検察官も裁判官も、実務の実態におきましては、その法定刑の範囲内でもって悪質なものとしからざるものとに段落をつけて適当に量刑をしていくということになっておりますので、その裁判の実際の結果、最高刑の三年をいったというものだけがいわゆる悪質な事犯であって、たとえば、二年ないし二年半というような量刑を得たものは、これはいわゆるいま申し上げましたような基準から申しますと、必ずしも悪質ではなくて、禁錮三年の範囲内で十分まかなえるものだというふうにはきちんと言い切ることはできないのじゃないか、こう思うわけでございます。悪質とは何ぞやということが法律できまっておるなら別問題でございますけれども、御承知のように、そうではなくて、情状の酌量なり評価の問題でございますので、その辺につきましては、悪質の幅にかなりな幅があるものだということでございます。その幅を具体的に刑に当てはめまして、その具体的なケースについて定められた法定刑の範囲内でどれだけの刑を盛るかということは、これはなかなか一がいに割り切って御説明申し上げることはできない、こういうふうに思うわけでございます。私は、算数的には、頭打ちの三年をいったというものは、これはきわめて明白でございますけれども、必ずしも三年でございませんでも、たとえば二年半以上ぐらいな重刑をいった、三年の法定刑の中で二年半という刑がいったということは、これはかなり悪質性を示すものではなかろうかというようなことを考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/43
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044・中谷鉄也
○中谷委員 私は、二年以上の者は悪質なんだ、こういう前提でお尋ねをしたつもりなんです。また、そのように申し上げました。それはたいへんな悪質なんだ。ところが先ほどの局長の御答弁によれば、このくらいの量刑をされる者はほぼそれと同程度の求刑があっただろうと思われる、こういう御答弁があったから、悪質な事案が激増しておるとおっしゃるけれども、それは別に二年以上という線を引くならば、ことに刑事課長は、二年以上のものがふえておることをよく見てくれ、こうおっしゃるけれども、それは現行刑法でまかなえるし、現行刑法のワク内の問題ではないでしょうか、こう私はお尋ねをしたわけです。そういたしますと、どういうことに相なるでしょうか。二年以上の場合、求刑は二年以上の他刑と見合うような求刑をしておるということだけれども、かりに刑法の改正案が通って、懲役もしくは禁錮の五年ということに相なってきた場合に、現行刑法の三年の範囲内において二年六カ月程度の求刑をしておったものが、要するに五年まで上がる、この二年以上という欄の付近の求刑というものも大幅に増加してくる、求刑が上回ってくるのだということにお伺いしてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/44
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045・川井英良
○川井政府委員 悪質重大なものが頭打ちないしはそれに近い傾向を示しておるということで、刑事政策ないしは刑政のあり方として、特に刑法という法律のあり方として禁錮三年という法定刑は適当でない、こういう観点から相当程度の法定刑の引き上げが必要だ、こういう立場に立って法の改正ということをお願いしておるわけでございます。
そこで問題は、具体的な数字にあらわれてきたところで、いままで三年で済ませておったのだからして、三年までのところは五年に上げなくても三年でいいのじゃないか、いまのところは三年が一ぱい一ぱいですからこれ以上の求刑もできませんし、これ以上の言い渡しもできないわけでございますので、われわれが三印以上でいいと思われるような事案は、三年というあたりに集中して求刑が行なわれ、また量刑が行なわれていた、こういう立場に立つわけでございます。きちんと判決でもって三年がいったというやつは、三年では足りないんだ、ほんとうは三年より上でなければいけないけれども、三年が頭打ちだから三年でやめておいたんだ、必ずしもこういうふうなわけにまいりませんし、また、たとえば二年半という判決が言い渡されたというような場合におきましても、三年という幅の中での二年半ということは、また別な重要な意味を持っておるものではないか、こう思うわけでございまして、個々の具体的なケースにつきまして、この情状の評価に応じまして定められた法定刑の中で刑が盛られていくというような、微妙な、また慎重な実態を考えてみますと、今日三年という量刑の中で二年半という求刑をした事件というふうなものは、未来永劫に二年半でいいんだということにはならないと私は思います。なぜかというと、たとえば、一年とか罰金とかいうような刑罰でしたら、これはまた考え方が別問題でございますけれども、三年というところでもって二年半というような悪質な情状を持ったというようなケースにつきましては、これはまた、そのときそのときのケース、ケースによりまして別な判定が行なわれる可能性は否定し得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/45
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046・中谷鉄也
○中谷委員 そうすると、悪質だというのは、ことに一年以上というふうなところで実刑の判決を受けた者も悪質でございますね。そうなってくると、一番頭打ちになっているものだけの刑を上げるんですよ、ということで何べんも何べんも御説明をいただいた。だから、罰金も上げてないじゃないですか、ということでずっと説明してこられた。ところが、三年という法定刑内の二年以上なんだ、そうなってくると、法定刑が五年ということになってくると、二年以上というところも五年という法定刑内におけるということになって、従来の事案よりも上がってくるだろう、慎重にとおっしゃったけれども、そういうようなお話がある。そうすると、一年以上というのも、三年という範囲内の一年以上と、五年という範囲内の一年以上とでは意味が違うんだということになれば、上がってくるだろう。同じく六カ月ということになってきても、五年という範囲内の六カ月と三年という範囲内の六カ月とも違ってくる。意味が違う。おっしゃるとおり違うから、これも上がってくるだろう。そうすると、三年ということになってくると、五年とは違うんだから、執行猶予の率も違うことを検察庁としては期待するだろうということで、法定刑が上がったことによって、検察庁としては全体としての刑の引き上げを結局期待している、あるいは期待しないまでも、そういう傾向になるんだということを、いまおっしゃったとしか私は理解できないのです。そういうことだとすると、従来の御答弁とは若干違うと思います。
要するに、二年六カ月の求刑で、その二年六カ月の判決をいれる傾向にあるとおっしゃるから、三年以内でいいと私は思うのです。そうすると、本来五年であれば、四年か四年半くらい求刑したいけれども、最高刑が三年だから二年六カ月でしんぼうしているのだという趣旨だとすると、全体として刑の引き上げという問題が出てまいりますね。そういう傾向も、いまお認めになったような気が若干いたしますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/46
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047・川井英良
○川井政府委員 法の改正を行なう場合の態度といたしまして、立法の趣旨についてはいろいろな慎重な考慮をめぐらしたわけでございます。そこで本件は、何と申しましても緊急を要する一部改正ということでございますので、特に必要性に重点をしぼりまして、その範囲内でもって当面これをまかなっていくという考え方に立っておりますので、また話がもとに戻りますが、結局、悪質重大事犯についてこの程度ではまかないないのでもう少し刑を上げるのだ、平たく申して、こういうたてまえでございます。したがいまして、刑の下限でございますけれども、下限につきましては、特に体刑については規定はしておりませんので、一カ月。罰金については、罰金の規定がございますから、罰金についてはこの際さらに特別の手を入れないというたてまえできているわけであります。これは検事が求刑をするとかなんとかいうことではありませんで、法律ができました上は、申し上げるまでもないことでございまするけれども、裁判所の良識ある量刑ということにまたざるを得ないわけでございます。その場合に非常に問題になりますのは、裁判官が量刑する場合に、上限だけを上げて下限を上げていないという立法のしかたというものは、裁判官が量刑する場合に非常に大きな考慮の対象になる、こういうふうに確信しているわけでございます。また、この立法をするにあたっての長い国会の論議というようなものも、裁判官が量刑をする上において重要な参考資料になる、こう思っているわけであります。
そこで問題は、いまの点でございまするけれども、五年以下という体刑の範囲内におきまして、具体的なケースについて具体的な事件をさばくその裁判所が、その裁判所の見識と良識と、それから記録、法廷にあらわれた資料等を十分に勘案いたしまして、その範囲内でもって、そのケースについて最も適当な刑を盛る、こういうことが刑事裁判の約束というか、大きなたてまえになっております。いままでの長い間の日本の裁判所の量刑のあり方、あるいは量刑についての実証的な研究というものは、最近特に盛んになっておりますことは御存じのとおりでございますが、そういうふうなものを検討し、また、将来の裁判の量刑のあり方というようなものを総合的に推測いたしましても、五年になったからということで、いままで一年なり、あるいは罰金なりで済んでいたというようなものが、とたんにそれに応じてスライドして重い量刑が行なわれるというようなことは決してないものだというふうに、そういう確信に立っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/47
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048・永田亮一
○永田委員長 猪俣浩三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/48
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049・猪俣浩三
○猪俣委員 法務大臣が御出席になっていますから、法務大臣に簡単に御質問してみたいと考えます。
私は、去る三月十五日に、法の解釈の態度につきまして法務大臣に質問いたしました。これは私は、老婆心で申し上げたものであることを断わってあるはずである。また、そのときの法務大臣の私への、発言中不穏当のところを取り消したらどうだというお話も、これも悪意あるものとは私は考えておりません。老婆心で申されたものだと思っておるのであります。ただ、どうもあなたは憲法に少し暗いような気がするのだ。一体、法の秩序の根源は憲法である。法務大臣はその最高の行政の責任者でなければならぬ。だから、倉石君なんかよりあなたのほうが憲法というものについてよほどしっかりした解釈をとっておらなければいかぬと思うのだ。その意味において、この際ここにお尋ねをしたいと思う。
私は、二十年近い議院の生活におきまして、委員会において、あるいは本会議においての議員あるいは委員の発言について所管の大臣が取り消しを要求されたなんという事例を聞いたことはありません。同僚の他の自民党の議員諸君が何の発議もしないにかかわらず、答弁に立っておる大臣がその発言の取り消しを委員に要求するがごときことは、いまだかつて経験したことがない。そこで私は、あなたの憲法解釈について疑いを持ってきた。あなたは府知事として長らく府会なんかに臨んでおられたと思う。自治体の議員と国会議員では、その資格が非常に違うのです。あなたは混同されているのじゃないかと思う。まず第一に、自治体の議員と国会議員は一体どこが違うのであるか、同じ議員であるがどこが違うのであるか、それについてのあなたの認識を御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/49
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050・赤間文三
○赤間国務大臣 お答えを申し上げますが、私は、別に先輩の猪俣議員の発言に取り消しを要求するとか、そういう法規めいたことをやるつもりはなく、またやったのは、私は全然そういう意味はないのであります。私は尊敬する先輩として、お取り消しになったらいかがでございますかという事実上のことを申し上げた、こういうふうにひとつ御了解を願いたい。猪俣議員も、私には老姿心からいろいろと教えていただいて、私はありがたく思っております。私もまた、先議としても、そういうことは事実上委員長のほうで取り消されたらどうかということで、法規に基づいてやったものでないことの御了承をひとつお願いをしたいと思います。そういう点について、何も格別おしかりを受ける意味のことを言うたように考えてなくて、むしろ、穏やかにやっていくためにはそれがぐあいがいいのじゃないかというような、一種の老婆心から申し上げたことを御了承を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/50
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051・猪俣浩三
○猪俣委員 これは私は最初に言ったのです。私も老婆心、あなたも悪意があって言ったのじゃないことはよくわかる。しかし、あなたはいま法務大臣という地位にあられる。そしてしかも、これは正式の国会の委員会ですよ。そこの発言に、廊下で立ち話をするような態度ではいかぬと思うのです。あなたの一音一行というものは相当重大な責任がある。いまだかつて私ども経験したこともない。委員に対して大臣が取り消したらどうだという、たとえそれが老婆心であったにしても、異常なことですよ。それをあなたが異常だと感じないところに私は少し疑義がある。そこでいまの質問をしたわけなんです。これは何といっても現職の法務大臣、憲法の最高の番人でなければならない。それが国会議員の地位あるいは府県会議員の地位なんというものをどういうふうにお考えになっているかというようなことは、私は大きな問題だと思う。あなたは、大臣として今後大いに有終の美をなされる意味においても、しっかりした観念をお持ちなさらぬと非常な間違いを生ずると思うのです。私は、これはまだ党の人にも何も話しておりません。それは、これを大げさにしたくないからです。しかし、あなたはしっかりした考えを持ってやらないと、これはいかぬと思うのです。国会というものはそう簡単なところじゃないのです。そこで、あなたは一体国会議員と府県会議員との違いはどこにあるとお考えになっておるか、私はお尋ねしているのです。あなたは長らく府県会議員を相手にしてこられたから、そういうようなおつもりでいると非常に違うのだ。それは、われわれが違うということは感情上言うているのではない。憲法に確固としてある規定から出てくるのです。それについて御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/51
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052・赤間文三
○赤間国務大臣 重ねての御質問でございますのでお答え申し上げますが、私は、法務大臣といたしましては、申すまでもなく、憲法の番人と申しますか、憲法を徹底的に順守し尊敬し、これによってやっていきたいというのが私の考え方の根本でございます。申し上げるまでもなく、国会議員は憲法によって身分を保障されておるりっぱな人格の方の集まりである、かように私は考えております。そういうことにつきましては、今後一そうひとつ国会の権威を皆さん方の御協力を得て高めていくということに努力していきたい、かように私は考えておるのであります。府県会議員などとは全然立場が違うものである、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/52
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053・猪俣浩三
○猪俣委員 あなたは抽象論で違うとおっしゃっているが、私は、憲法の規定から違うことをここで御指摘して、その説明を求めたのでありますが、御説明がない。もちろん憲法の第四十一条には「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」これはみなわかっていることでありますが、比較的わからぬでいることは、憲法第四十三条です。「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」、ですから、われわれは選挙区というものは持っておりますけれども、全国民を代表するのだ。しかるに、議員の中にはそういう憲法の認識がなくて、ただ選挙区の利益ばかりに奔走している議員があるようだ。しかしわれわれは、一たん選挙された以上は全国民の代表でなければならぬ。ところが府県会議員には憲法にそのような規定はありません。地方自治法によって選挙されたものだという規定しかない。国会議員だけが憲法に、しかもその性格、職能、それがはっきり出ている。だから、その意味において国会議員と府県会議員は、同じ議員と申しましても天地霄壊の差がある、その資格において、任務において。それをよくお互いが心にとめなければいけない。われわれは全国民の代表ですよ、一地方の代表者じゃないのです。だから府県会議員を相手にするようなおつもりであると非常な間違いだ、それをあなたはよく認識していただきたい。だから、いまだかつて大臣が議員に対して、取り消したらどうだなんという——それは悪意でないにしても、そういう軽率のことばを吐いた大臣はないですよ。しかも、自民党の議員諸君が何も言わないでおるのに、答弁に立った大臣が、そのままの姿でそういう勧告をするということは、これは実に異常なことなんだ。三権分立の問題にまでさかのぼります。これはあなたの責任問題ですよ。しかし私は、あなたがほんとうに好意でおやりになったと思いますから、党にも話をしませんし、何も話をしない。それこそあなたの認識が——あなたもまだ国会議員になられてから日が浅いんだ。今後の認識を間違わないように私は申し上げておる。国会議員と自治体議員では非常に性格が違うということを頭に置いていただきたい。さればこそ、国会議員は院内における言論については一切の責任を負わぬという全く特殊な特権が与えられておる。院内のことは院内の自律権に従って処罰を受ける。これは、私が取り消さなければならぬ言論を吐いたとするならば、それを権限として抑止できるのは議長ですよ。国会法の百十六条に明記されておる。大臣じゃありません。あなたはいま言った、法規に従った正規の発言じゃないのだ、そう言われたでしょう。それは了解いたしますし、別に私も意地悪くあなたを責めるつもりはございませんが、その区別をわきまえなさい。国会議員というものは院内での言論に対して責任を問われない。ただ、それに対して責任を負わせるのは議長であり、懲罰委員会ですよ。大臣の責任において、自己の所管事項について答弁している間に、議員に発言を取り消したらどうだなんと言うことは不謹慎きわまる話なんだ。あなたが田中前法務大臣だったら私はここでやめませんよ。憲法の専門家なんだから、許すことはできない。だけれども、あなたはそうじゃないから、私はこの程度にしておきますが、どうかさような行動、とにかく議員よりも大臣がえらいなんという頭になって答弁をなさっているととんでもないことになる。これは、論じますれば三権分立の問題から、あなたの行為に対して相当な非難が出てくるわけですが、あなたはそんな悪意のある方だと思いませんので、私はこの程度にしておきます。くれぐれも間違えなさらぬように、これを最後に老婆心で申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/53
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054・赤間文三
○赤間国務大臣 御注意の点は、将来そういうことのないようにひとつ十分注意いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/54
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055・猪俣浩三
○猪俣委員 私はこれで終わります。あすまたお尋ねします。きょうはこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/55
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056・永田亮一
○永田委員長 中谷鉄也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/56
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057・中谷鉄也
○中谷委員 最高裁の方にずいぶん長いことお待ちいただいておりますので、刑事局長に対する質問を一応中断いたしまして、最高裁にお尋ねをいたします。
刑事局の第一課長さん、おいでいただいておると思いますが、次のような質問を最初にさしていただきます。最高裁の事務総局刑事局調査によりますと、「昭和四〇年中に業務上過失致死罪で五〇人以上に対し一年以上一年六月未満の自由刑を言い渡した地方裁判所は全国で四庁」あるそうですが、これらの庁での実刑率は、東京、名古屋、神戸、大阪とありまして、一部検察庁などでは、いわゆる実刑率が違うということについて、何か意見らしきものを持っているような向きもあるやに聞いているわけです。こういうようなことは、先ほど刑事局長がおっしゃったように、まさに各裁判所の考え方、各裁判官の事件に対するお取り組みによって、あり得べきことだと私は思うのですけれども、この点についてひとつ最初に御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/57
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058・佐々木史朗
○佐々木最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねの点は、要するに量刑の地域差という問題だろうかと思いますが、これは数字だけから見ますと確かに相当なアンバランスがあるように見えますけれども、やはり量刑と申しますものはその事件事件によって非常に個性に富んだものでございますので、一々その事件の内容までさかのぼってまいりませんと、考え方なり取り扱いに差があるとはたしていえるかどうか、問題があろうかと思います。したがいまして、私どものほうでも、合理的な差というものがあるのは当然でございますが、合理的でない、非合理な、たとえば個人的な考え方の違いによって量刑にアンバランスが生ずるということは、一面において好ましくないわけでもございますので、その点につきましてはいろいろ会同を催したり研修などの機会に検討をいたしておりますが、少なくとも表面にあらわれた数字のようには、現実にはそういう地域差はないのではなかろうかというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/58
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059・中谷鉄也
○中谷委員 数字だけ見ますと、先ほどの実刑率が、東京が四八%余りですね。それから名古屋が同じく四八%、神戸がうんと少なくて、大阪が一一%少しということで、この点について先ほどから私がお尋ねをいたしております法務省の刑事局付の検事のレポートによりますと、過失致死傷の事件に対する実刑率の相違というものは、特に東京と大阪をとっておられるようですけれども、結果主義と過失主義の相違によるものであろうかと考えるというふうな意見を述べているのです。はたしてそういうことで簡単に断定していいのかどうかの問題が、まず私あると思います。それからこれは裁判官の一つの意見というよりも、一つの推定をされた御見解の中には、「示談に対する評価の差が東京と大阪の量刑上の差をもたらす最大の原因ではないかと思われる」というふうなお話もあるようです。そういうふうな点を私若干指摘をいたしたのですけれども、結局そういたしますと、そういうふうな、私が指摘をいたしました点を踏まえた上でも、課長さんの御答弁は、要するに量刑上において数字づらを見ただけで、数字づらにあらわれたような差があるとは思えない。したがって、たとえば量刑上において、これは以下は法務省付検事の若干の意見のようなものでありますが、「一般人の納得し難いほど著しい地域差が存することはたしかに問題であろう。」などと言っておりますが、そのような数字づらだけをながめて単純に評価すべきではなく、一般人の十分納得し得る合理的な地域差だ、こういうふうにお伺いしてよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/59
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060・佐々木史朗
○佐々木最高裁判所長官代理者 お尋ねの点でございますが、まず質問の最初に東京と大阪の地域差というものがございましたが、確かにそういう数字の上の状況がございまして、これは私どものほうでも十分検討いたしたわけでございますが、その結果、実刑率が大きく違ってまいりました最も大きな原因は、ここに法務省いらっしゃいますが、起訴基準が東京と大阪でうんと違っていたということが、一番大きな原因であったように思われます。つまり大阪では公判請求される事件が東京では略式で処理されるというような一それは事件数その他の関係でそうなったのだと思いますが、したがいまして昭和四十一年度におきましては、大阪地方検察庁の起訴基準というものが東京地方検察庁の起訴基準にある程度近づいて処理なさっているように伺っておりますが、その結果だけでもございませんが、そういうことが大きく原因になりまして、四十一年度におきましては実刑率その他の処分につきまして、東京と大阪ではかなり近い状態になってまいっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/60
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061・中谷鉄也
○中谷委員 最高裁に対するお尋ねをずんずん続けていきますが、いまの点ですが、刑事局長さんにお尋ねをいたします。
従来から東京と大阪との起訴基準がずいぶん違う。逆に言いますと、東京で起訴されたらもう助からぬというふうなことが往々にして言われているわけですが、こういうふうな起訴基準が違うというふうなことは、法務省としてもやむを得ないこととして理解しておられるのかどうか、この点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/61
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062・石原一彦
○石原説明員 先ほど佐々木課長から会同等によりまして意見の交換等を行なっているという話がありましたが、私どものほうも同様でございまして、いろいろな実刑率、あるいはその逆である執行猶予等につきましては、資料を配付いたしまして検討はしているのでございます。しかしながら、事件はそれぞれ具体性を帯びているものでございますので、その具体性の程度がどれほど違うかということは、数字においてはなかなかあらわれにくい点がございます。そういう関係でございまして、起訴基準と申しましても、数字上のものを、あるいは型式、図式にしたものを統一いたしましても、やはり個別的事件の差に応じまして基準が違ってくるのもやむを得ないところがあろうかと存じます。しかしながら、一般的な傾向として申し上げますれば、いわゆる起訴基準は最高検のほうで見ているものでございますが、状態が同じようなもの、状況が同じようなものにつきましては、順次同一になりつつあるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/62
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063・中谷鉄也
○中谷委員 特にあまり聞き過ぎておりますので、この点はやはり数字だけを見ると、地域差があると見えますが、神戸が実刑率一・八%でございますね。そうすると、東京が四八・四%ということになると、実刑率というものにはずいぶん差があることは、これはもういなめない事実だと思うのです。そうすると、裁判所のほうで適正な、そして公正な、合理的な量刑をとにかくしておられる、この点私そういうふうに信じますが、そうだとすると、結局、本来神戸などのほうでは公判請求すべきものを東京のほうでは略式命令で落としていく。したがって、公判請求されている事案というのは、ずいぶん、俗なことばでいえばよりすぐられたものだけが公判請求されていく。したがって、起訴基準、公判請求の基準というものが、東京と神戸ではずいぶん違うというふうに言わざるを得ないと思うのです。それは量刑の面でずいぶん違うのだとおっしゃれば別ですけれども、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/63
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064・川井英良
○川井政府委員 私は裁判所のこの種事件についての量刑についてとやかく意見を申すわけではございませんけれども、たてまえといたしまして、裁判所は個々に、申すまでもなく独立した機関でございますので、そのケースについてあらゆる観点から情状その他を勘案されまして、そして最も具体的妥当性のある刑罰が盛られるというのがたてまえでありますから、私は、裁判というものをそういうものと理解する限りにおきましては、むしろ裁判の段階においてはある程度差が出てくることは当然であり、またやむを得ないことではなかろうかと思うわけであります。ところが、私のほうは一体化した機関でございまして、常時——実はあしたも副検事の全国会同をやりまして、この種事件について打ち合わせをやることになっておりますが、そのような会議を年間数回開いておりますので、ただいま御指摘になりましたような数字なりあるいは各地における地域差なりというものを取り上げまして、常時具体的な検討なり連絡をいたしておりますので、求刑のほう、あるいは起訴基準というふうな面についてこそ全国的な統一ということがたてまえとしてとりやすく、また順次それをとるように心がけておりますけれども、これにもおのずから限度がありますので、細部にわたって全部統一するということじゃありませんで、それぞれの検察庁のその地域における地域差とか地域的な伝統とかいうふうなものを尊重いたしまして、かなりな自由裁量の分野を残しております。もちろんしさいに御検討いただけば、いろいろまた問題点があろうかと思いますけれども、私どもの面におきましては、起訴基準につきましても、求刑基準につきましても、きちんとしたものはつくっておりませんけれども、東京ではこの程度のものをやっているな、大阪ではこの程度のものをやっているなということが、各地の検事に一目瞭然にわかるような資料を常時渡してやっておりますので、それは、そういうふうなものを基準に置きつつ起訴基準を考える、その地域に妥当した求刑基準をつくってやっておるものだ、私どものほうはこういうふうに考えております。いまおあげになりました数字につきましては、私も前からいろいろ関心を持っておりますが、確かにいろいろな問題点があると思いますが、これはいろいろな条件を勘案いたしました上で総合判断すべき問題ではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/64
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065・中谷鉄也
○中谷委員 次に、刑事第一課長さんにもう一点だけお尋ねをいたしまして、最高裁の刑事局に対する質問は終わりたいと思うのです。
いわゆる刑罰の感銘力あるいは威嚇力というふうな問題に関連をしてでございます。要するに、次のような説をなす人がいるわけです。反則金の制度というのは、結局反則金制度が施行されるに至ったのは、罰金の刑罰的性格というものが、付科手続の機械性やマスプロ性のゆえに著しく希薄なものになってきた、そういうふうな中では、罰金刑に処せられた者の心の中に刑事司法全体に対する不信と軽視の念が生じてくることは否定できないというふうなことで、反則金制度を推進していこうという考え方が一応法務省の意見のように1法務省付検事の論文の中の一節ですが、思われる。別の角度から申しますと、何かいわゆる刑事司法全体に対する不信と軽視というふうな、大上段にかぶった見解を述べておられるのですが、そうすると、業務上過失致死傷が禁錮三年であったのが、禁錮もしくは懲役五年ということで、上限が、法定刑が上がってくる。しかし、そのすそ野のほうにおいてといいますか、罰金のほうでは上げないということは何べんも力説をされる。上げないどころか、反則金制度ということで、金で済むではないかというようなかっこうで、いわゆるそういう制度を推進される。むしろそういうふうな反則金制度というものが、かえって刑罰の感銘力というものを全体としてなくす作用をするのではないかというふうな感じも私はするわけです。この手続の問題について、反則金制度については憲法上の若干の問題点もあったと思いますが、もしよければそういう点も含めて、現在禁錮刑を大きく上げようとしている中において、反則金制度というものは刑の威嚇力とか感銘力というものの観点から見ると逆の作用をするのではなかろうかというふうな感じもいたしますが、この点について、特に司法全体の問題であろうと思いますので、最高裁の御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/65
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066・佐々木史朗
○佐々木最高裁判所長官代理者 罰金の感銘力の問題でございますが、確かに道路交通法違反事件の従前までの処理の段階におきましては、ただいま中谷委員から御指摘がございましたような御批判を裁判所も受けたわけでございます。しかし、年間四百万件近い事件を処理いたしておりますので、どうしてもある程度画一的な処理にならざるを得ないわけでございます。だからといって、罰金の感銘力がないというようには私どもは考えていないわけでございます。今回反則金通告制度が実施されましたあとの問題でございますが、特に私ども裁判所といたしまして、交通事件、特に業務上過失致死傷事件のうち相当数が罰金刑でございまして、略式手続で処理されておりますけれども、その点につきまして、反則金からのとやかく言われるほどの影響があるかどうかという点につきましては、実施してみなければわからないことでもございますが、その業務上過失致死傷事件の罰金刑というものについての裁判のあり方というものにつきまして、疑問を感じているというようなことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/66
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067・中谷鉄也
○中谷委員 課長さん、もう少しよろしいでしょうか。疑問を感じておると言われた点を、いま少し御答弁を詳しくしていただきたいと思うのです。要するに私がお聞きしたいのは、冒頭に本日お尋ねしたのは、未必の故意について処理した件数についてお尋ねしたわけですけれども、そういうふうな件数については、検察官のほうは公判の維持が非常に困難だというふうなことについて慎重になるという気持ちはわかりまするけれども、私は、本来未必の故意として厳正に処分さるべきものが、相当数業務上過失というようなことで安易に流れているのじゃないかというふうな感じがする。同時に、本来罰金の問題についても、刑の、罰金刑の感銘力ということがあるならば、要するに感銘力を与えるようなとにかく予算を組み、そうして施設をなし、そういうことで刑罰、罰金刑の感銘力を維持するということで努力されたらしかるべきだと思うのです。ところが、手に負えないからということで反則金制度というものを持ち出してくる中で、さらに全体として言うならば、ささやかな施策なんだというふうに刑事局長前回御答弁になったけれども、全体としての交通総合施策というものは非常におくれている、そういうような中で結局一番お金のかからない、三という数字を五に直すということだけが非常に先行している、私はこういうふうな感じがするわけなんです。だから、もう一度お尋ねをいたしますけれども、なるほど現状のもとにおけるところの罰金のいわゆる納付に至るまでの略式手続、交通裁判のあり方というものについては、刑罰の感銘力というものを低下させたような経過はあっただろうけれども、片一方では刑を上げる、三年を五年にするという措置をとろうとしておられながら、片一方では反則金制度というようなものは矛盾しないのだろうかというふうに感じますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/67
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068・佐々木史朗
○佐々木最高裁判所長官代理者 罰金の感銘力の点につきましては、考え方といたしましてそもそも過失犯について刑の威嚇力があるのかどうかといったような基本的な問題もあるようでございまして、刑法学者の間では見解が必ずしも一致していないようでございます。もう一つは、現在の罰金額というものは、はたして犯罪の感銘力というものを訴えるに足りるものかどうかという点につきましても、若干疑問を提出されている向きもあるのでございまして、そういう状況の中で罰金刑の持つ意味というものを最大限実現していくという、そういう裁判のあり方、事件処理のあり方というものは、中谷委員御指摘のとおり、私どもも当然考えなければならないことでございますので、道路交通法違反事件につきましても、そういう感銘力を特に強調しなければならないような事件などにつきましては、御承知のように即決手続というもので、直接裁判官が違反者に出頭をしていただいて裁判をするというようなこともやってまいったわけでありますが、御指摘のような点につきましては、今後も十分に裁判所としては顧慮していかなければならないことであろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/68
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069・中谷鉄也
○中谷委員 刑事局第一課長さんに対してお尋ねをするのは、それだけでございます。
民事局の第一課長さんにお尋ねいたしたいと思います。実は「交通事故による損害賠償事件実態調査の集計結果、」昭和四十一年四月から十二月分までの最高裁民事局で御作成になりましたものについて私なりに検討さしていただいたのですが、どうも時間の関係で詰まってまいりまして、詳細に本日お尋ねをすることができませんので、非常に恐縮ですが、一点だけお尋ねをいたしたいと思います。と申しますのは、この表の中に訴訟救助の項を特に起こしていただいているわけですけれども、訴訟費用の免除等の問題につきまして、従来各地方裁判所に取り扱いの基準といたしましては、生活扶助を受けているという証明をつけていっていわゆる訴訟費用の免除の決定を受けるというふうな例になっているようですけれども、現実の交通事故被害者の場合は、生活扶助を受ける、あるいは受けているというふうなこと以外に、それを受けていなくても、ずいぶん金銭的な面で困惑している面が多いと思うのですが、この点について、何か特に裁判所のほうで今後前向きの形で訴訟費用の免除等の問題について御配慮いただけるのかどうか、ひとつ本日は非常に恐縮ですが、この点だけお尋ねしておきたいと思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/69
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070・井口牧郎
○井口最高裁判所長官代理者 お尋ねの点は、この資料の六二ページに載っている部分であろうと思います。私どもがその実際の訴訟救助の裁判に当たりまして、はたしておっしゃいますように生活扶助を受けているという証明がないと出さないという運用が統一的になされているかどうかという点につきましては、必ずしもそのようには思っておりません。現に私どもが見ておりましても、一般の民事事件に比べまして、交通事故に伴う損害賠償請求事件におきましては、相当な高い比率で救助が与えられているように思っております。ただ、何ぶんにもここにも数字はあがっておりますけれども、訴訟救助を求める事件自身がきわめて少ない、全体の事件から見ますときわめて少ないという現象がございます。これは私どもその救助を与えやすくする、個々の裁判について与えやすくするということも一つの方法でございましょうけれども、むしろ現在救助の申請件数がごく少ないという一つの大きな原因として、救助によって費用の支払いが猶予される訴訟費用の範囲がきわめて限定されるという点で、現実に原告になる人の利益から申しますと、それほどありがたくない。最も大きな額を占めるものは訴状に張る印紙だろうと思いますけれども、それを除きますと、証人の日当であるとか鑑定人の日当程度のものでございまして、結局問題はこの費用の範囲をもっと広げていく方向で検討しなければ、ほんとうの意味の被害者の救済にならないのではないかということで考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/70
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071・中谷鉄也
○中谷委員 最高裁の家庭局第一課長さんに、次のようなことをお尋ねをしたいと思います。この質問で最高裁関係は全部終わります。要するに、少年の交通事故という問題は、交通事故の激増の中で一つの大きな問題として浮かび上がってきていると思うのですけれども、特に家庭裁判所の仕事、活動を通じて少年の交通事故を防止するために当面特に措置せられねばならないことなどについて、ひとつ概括的にお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/71
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072・松井薫
○松井最高裁判所長官代理者 私ども家庭裁判所にとりまして、このような交通事故を犯した少年に対しましても、やはり少年法の基本的な精神、すなわち、少年の健全育成を期し、それに伴いまして環境の調整であるとか性格の矯正であるとか、このような保護的な措置を加えていく、こういう基本的な精神は妥当すると思うのでございます。そこで、現在私ども交通事故を犯した少年を含めまして、交通違反少年に対しまして、受理以降最終の処分までの間におきまして、いろいろな保護的、教育的な処遇を加えておるわけでございます。御承知のように、現在少年法が規定いたしております保護処分といいますものは、少年院送致、保護観察及び教護院、養護施設送致がございますが、ちょうど少年法が施行されました二十四年一月当時におきましては、このような現在八十万件をこえます交通違反ということは全く予測されない状態、六千件以下というふうな件数でございました。それに適した保護処分というものが、現在必ずしも用意されていない。そこで、家庭裁判所におきましては、保護観察の活用につきまして昭和四十年の四月十五日法務省の保護局から道路交通法違反少年に対する保護観察の法律的適用というふうなことで、従来に増して保護観察の活用ということをうたっておられますが、まだ現地の受け入れ態勢その他におきましては、十分でない面がございます。そこで、私どもといたしましては、先ほど申しましたような各種の教育的、保護的措置を講じておるわけでございます。
一例を申し上げますと、たとえば法規並びに交通安全教育に関する講習であるとか、家庭裁判所調査官によります試験観察であるとか、また学校との連絡協調によります当該少年の指導であるとか、さらに保護者、雇い主に対する指示であるとか、警告であるとか、また少年に対する厳重なる訓戒あるいは誓約書の聴取、こういうふうなあらゆる保護的な、また教育的な措置をとっておるわけでございます。しかし、私どもといたしましては、やはりこのような教育的、保護的措置は、本来ならば保護処分として規定せられるべきであるというふうに考えます。たとえば保護処分といたしましては、さきに最高裁判所事務総局が発表いたしました少年法改正に関する意見にも規定されておりますが、受講命令であるとか、交通補導所送致であるとか、交通訓練所送致、あるいは保護者、雇い主に対する指示、こういうふうな交通関係事故に適した保護処分の新設、こういうふうなことがやはり必要である、こういうふうに考えておるわけでございます。大体以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/72
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073・中谷鉄也
○中谷委員 最高裁に対するお尋ねはこれで終わりでございますので……。
次に、刑事局にお尋ねをいたしたいと思いますが、禁錮三年以下というのが、懲役か禁錮か、「若クハ」ということに相なるわけでございますね。そういうことだとすると、かりにこの改正案が成立し場合に、求刑基準の中でどのようなものについて懲役刑を求刑し、どのようなものについて禁錮刑を求刑するということになるのか、この点についてひとつお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/73
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074・川井英良
○川井政府委員 求刑の話が出てまいりましたので、先ほどお答えした中に私の答弁が正確でないところがございましたので、ちょっと補足して御説明をお許しいただきたいと思います。
と申し上げますのは、二年以上というようなものについては、ほぼ求刑に沿った量刑であると思います、というふうに申し上げたわけでございますが、その申し上げた趣旨は、この二年の求刑をして二年になった、二年半の求刑をして二年半の判決を受けたんだというふうな趣旨でほぼ求刑に沿った判決です、というふうに実は申し上げたわけではございませんで、長い検事生活の体験から申しまして、三年を検事が求刑すれば、多くの場合に二年半とか二年の判決がある。二年半の求刑をすれば、多少そこに情状が酌量されて二年か一年半の判決があるということは御案内のとおりでございまして、そういう実態になっておりますので、二年以上の重い自由刑がいったものにつきましては、実はおそらく検事の求刑はそれより重い求刑がなされているのが実情じゃないか。これはあとでお調べしてまた御報告申し上げるということになっておりますが、それが出てからでいいと思いますけれども、私の申し上げました趣旨は、おそらく二年半の量刑がいったのは、求刑はほぼ三年の求刑じゃないかと実は思っているわけでありまして、そういうようなことも加味しまして、検事は重いほうがいいと思ったらそれに沿ったような重い判決があったということで、ほぼ求刑に沿っておる、こういうふうに申し上げたわけでございますので、いずれ正確な資料が出てからまた御説明申し上げますが、正確でない点をひとつ修正させていただきたいと思います。
それから、いまのどういうふうな事案について懲役刑を求刑するのかということでございますが、これは本省といたしまして、検察庁のほうへ私どもの希望といたしまして、こういうふうなものについては懲役刑がしかるべきものだというようなことは、まだ実はこまかい具体的な点については、でき上がったものとか、あるいは考えは固まっておりません。ただ、抽象的に申し上げまして、繰り返し申し上げるようでございますけれども、まさに未必の故意と実態において紙一重というような事案については、禁錮刑ではなくして、破廉恥罪としての性格を持ったものとしての懲役刑が妥当だということを立法の趣旨として申し上げておりますので、検察官が実際に運営する場合におきましても、懲役刑の求刑をするというようなものは、まさに未必の故意と紙一重のような実態を持った過失の事故というようなものについて、その中からさらにまた諸般の情状を考慮して求刑があるものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/74
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075・中谷鉄也
○中谷委員 そうすると、求刑基準について、特にどのようなものについて懲役刑を求刑し、どのようなものについて禁錮刑を求刑するかの基準は明確でない、ただしかし未必の故意と紙一重のような悪質、重大なものについては懲役刑を求刑することになるだろう、こういうことですが、資料のいわゆる自動車運転による故意犯適用事例等によりますと、傷害あるいは傷害致死、殺人未遂等の起訴あるいは認定を受けているわけですが、傷害というふうな認定の場合の量刑というのは、六月程度の認定が非常に多いわけです。そういたしますと、かりに六月の求刑をするというふうな場合、こういう場合であっても、業務上過失致死傷罪として悪質であり重大だということであれば、いわゆる過失主義の立場に立つというのでしょうか、そういう場合であれば、結局懲役刑を求刑する。要するに、検事としても何年以上くらいの求刑の場合が懲役刑だという、そういうことには全然拘束をされない。たとえば三月の求刑をする場合であっても、懲役刑を求刑する場合だってありますよということでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/75
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076・川井英良
○川井政府委員 理論的にはそのとおりだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/76
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077・中谷鉄也
○中谷委員 いや、理論的にはということではないのです、私がお聞きしているのは。だから、具体的事例を引いたわけなんです。要するに、傷害として、未必の故意として認定されたものについては、ほとんどが懲役六月とか、懲役八月とか、懲役十月というような事案がずっと並んでいるわけですね。そうすると、先ほどから局長さんが何ぺんも御答弁になっておるように、悪質だとか重大だとかいうようなことは、非常に主観的なものが入る、そういうような評価だと思うのですけれども、そうすると、結局、未必の故意に近いんだというふうな感じを持つとすれば、懲役六カ月というような求刑がどんどん出てくる。要するに、業務上過失について特に懲役刑を入れたことについては問題があると思うのですけれども、そうすると、いわゆる悪質で——、一年以上の、実刑を受けたものが悪質だと理解しておりますけれども、そうでなくて、一年以下の場合だって、懲役刑が、理論的にではなく、実務の面であらわれてくるということになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/77
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078・川井英良
○川井政府委員 法定刑の中に禁錮刑のほかに懲役刑が加えられましたので、刑法の解釈の問題としては、軽い体刑でありましても懲役刑が量刑されるということは、これはあり得ることだと考えます。ただ、実際の問題といたしまして考えてみまして、この禁錮と懲役刑の区別というものは、一応刑法の解釈としまして、御承知のように画然たる一つの区別が存するわけですし、それから実務の実際におきましてどういう場合に懲役刑を量刑するかというのは、この種の事案につきましては、やはり何と申しましても過失の内容が、本質がどういうふうな内容のものであるかということが重大な基準の一つになろうかと思いますし、それからまた、その結果によって引き起こされた結果というようなものも、この種の事件について無視することができないと思いますし、それから特に、いままで禁錮刑だけで済んでいたものが懲役刑が新たに加えられるという趣旨は、特に悪質、重大なものについて、それを考えての一つの方策としてこれが設けられたというふうな趣旨もございますので、それぞれ具体的なケースにつきましてこの運用がなされていくのではないか、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/78
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079・中谷鉄也
○中谷委員 懲役刑というのが新しく加えられたことに関連をして、矯正局長さんにお尋ねをしたいのですけれども、前回から同僚委員が、習志野支所における禁錮受刑者に対する処遇の問題について、特に自動車運転等についての配慮を示しておられる点について何回か質問があったのですけれども、かりに懲役刑の判決を受けたいわゆる業務上過失致死傷の服役者、これらの者についても現在の制度は適用されるのでしょうか。監獄法の立場から見て、そういうことは何ら疑義がないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/79
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080・勝尾鐐三
○勝尾政府委員 現在、御案内のように、習志野には禁錮の受刑者のみを処遇いたしております。将来、交通違反による懲役の受刑者が出た場合、やはりそういう懲役の受刑者を習志野とほぼ同様な集禁施設をつくって処遇をしてまいりたいという方向で検討いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/80
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081・中谷鉄也
○中谷委員 結局そういうような構想をお持ちになっておられるのですが、そうすると、いま一点だけお尋ねしますが、交通事故による業務上過失致死傷の禁錮受刑者のうち、習志野あるいは豊橋などの処遇を受けている服役者の数というのは、どのくらいのパーセントになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/81
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082・勝尾鐐三
○勝尾政府委員 交通事犯で禁錮の言い渡しを受けた者の全国の総数——刑務所の統計は日によって押えておりますが、おおむね二千四百でございます。そのうち、現在集禁をいたしておりますのが八百から千、これは一定の基準で集禁をいたしております。というのは、御承知のように開放的な処遇をいたしておりますので、その処遇に適したものという観点からでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/82
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083・中谷鉄也
○中谷委員 別の委員会がありますので、きょうはこの程度にしておきたいと思いますが、特に私が、あと質問を留保さしていただきましたけれども、お尋ねをいたしたいのは、未必の故意の問題についてさらに掘り下げさしていただきたいと思います。先ほど引用いたしましたレポートの中に「「故意犯」の適用」という項がありますけれども、その中には学者の「現実には、証拠上の難点から、相当多くの暴行の未必の故意を含む事例が、業務上過失致死傷罪として処理されているのではないかと想像されるのである。」ということで、法務省の刑事局付の検事自身もそういうふうな傾向を認めておると思われるようなレポートの記載があります。そういうふうなことで、私がどうしても納得ができないのは、刑を上げようとしておられる、ところが——現実に未必の故意として処罰されるべきものは、厳正に処罰さるべきだと私は思うのです。それが安易に業務上過失致死傷というふうなかっこうで起訴されるということは、国民の正義感が納得しないだろうと思うのです。特に未必の故意と紙一重だということによって刑を引き上げることは、一面では、未必の故意で処罰されるべきものを未必の故意として起訴するという努力を検察官が怠る可能性があると私は思う。
いま一つは、いわゆる結果の責任の重大だという観点に立って、本来過失として処罰さるべきもの、それが未必の故意的なものとしての実質を持っておるんだというふうな感じから、今度は必要以上に重く処罰される傾向も、私はいなめないと思う。そういう点で、ひとつ次回からあらためて、本日質問さしていただいた未必の故意の問題、あるいは資料の提出をお願いいたしました求刑と科刑との関係、これらの問題についてお勢ねをいたしたいと思います。
本日は、この程度で質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/83
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084・永田亮一
○永田委員長 山本弥之助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/84
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085・山本弥之助
○山本(弥)委員 だいぶ時間が経過いたしておりますので、簡単にお尋ねいたしたいと思います。今回の刑法の一部を改正する法律案につきましては、すでに昭和四十年以来の上審議でございますので、相当審議も尽くされておるように思われますし、重複した質問も大部分を占めるのではないかと思います。恐縮でございますが、刑の長期を上げるということは国民生活にとりましてきわめて重要な問題でございますので、重複するところを覚悟の上で御質問いたしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
確かに交通事故は激増いたしておりまして、昭和四十二年の資料等を見ましても、死者が一万三千余人、負傷者六十四万人、あるいは発生件数も五十一万というふうなまことに憂慮すべき状態になっておることは、私どももよく承知しておるところでございます。これらの交通事故による犯罪が犯罪総数に占める割合は、どういうふうになっておりましょうか。お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/85
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086・川井英良
○川井政府委員 全国の検察庁が犯罪として警察から事件の送致を受けるものが、およそ五百万件ございます。その中で、道路交通法違反でありますとか、というような特別法犯を差し引きまして、刑法に規定がありますような、いわゆる刑法犯と称しておりますが、そういうふうな刑法犯は、大体の最近の趨勢として八十万件から九十万件の間をここ数年間上下いたしております。それが大体刑法に規定のある刑法犯の概略の数字でございます。その中で二百十一条に関係のある事故が占める率は、四十二年度で四十四万件余りということになっておりますので、五〇・六%、ちょうど半分を昨年度におきましては交通事故の事件が占めておる、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/86
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087・山本弥之助
○山本(弥)委員 参考のために、刑事局長さんの従来の委員会における答弁等は、外国の例をお引きになっておるようでありますが、外国では、犯罪総件数と二百十一条違反との比率は、どういうふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/87
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088・川井英良
○川井政府委員 御承知のとおり、この種の統計というものは、非常にやかましく、また一番発達しておりますのが、私、外国を数回回ってまいりましたが、日本であろうと思います。よその先進国といわれるところに参りましても、なかなか数字がつかめません。この改正案を国会にお願いしましてから、私どものほうの方面でも、外国に駐在している者がおりますので、それらを督励して調べておりますが、法律の条文が、日本のように一括されて二百十一条というだけではございませんで、あちらこちらに飛んでいるものもたくさんございますので、いろいろ調べておりますが、いま私が申し上げましたように、刑法犯何件のうち何件が交通事故だという的確なものが、実はまだつかめていないような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/88
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089・山本弥之助
○山本(弥)委員 ただいま御答弁をいただきましたように、今日国民生活に大きくのしかかっておるといいますか、国民を不安にしておるという問題は、何といいましても、交通災害の問題であり、公害の問題であり、また、生活に直接関係のあります、ここ数年相当高い上昇率を持続いたしております物価の問題である、こういうふうに考えておるわけであります。ことに、大都市では住宅難があり、私どもの地方、農村地帯におきましては、夫婦が別居しなければならない、子弟の教育も十分めんどうを見ることができないというふうな、出かせぎにどう対応するかという問題があろうかと思うのであります。いわば、いろいろな災害と同時に、生活の不安ということが常に都市、農村を問わずつきまとっておるような感じが、私どもはいたしております。新聞で御承知だと思いますが、私、たまたま朝日新聞の三月十九日付の「カギ」という欄を見たのであります。これは総理府から発表された四十二年度の家計調査でありますが、全俸給生活者が、平均税込みの収入が昨年から一〇・三%の増加をしておる。オリンピック景気の三十九年に次ぐ申び率で非常に明るいという発表をしておるが、この収入を五つのグループに分けて見た場合に、最も収入の多いグループが一〇・六%で、平均の一〇・三%を越えているのは最も収入の高い階層である。五階層に分けておりますが、他の四階層は一〇%以下である。現実の生活は相当きびしいものである。いわば統計というものは、こういうふうな数字を示しておるというふうな、総理府の発表いたしました家計調査の寸評をいたしております。私どもの生活といいますか、収入が上昇しているといいましても、実際あらわれた数字に比較いたしまして、最も収入の高い階層を除きましては、国民全体としてはその日その日の生活に追われるきわめて苦しい生活をしている、こういうふうな実態を端的に示しておる。このことが、いろいろな職域におきましてストレスを示している。いわば私どもの注意力の限度というものが非常に圧迫を受けておるということを示しているものだ。これらの社会現象、あるいは私どもの国民生活の現実を考えながら刑政をお考えになる必要があるのではないか、かように私は考えるのであります。
そこでお尋ねしたいのは、物価問題といいますか、あるいは生活状態ということについては、あまり関係がないので御質問をしないつもりでございますが、今日公害といわれておる中には、これまた労働省の統計等も、工場内の災害等におきましても、六十八万人という死傷者が出ている。この中には交通事故も含まれておるのだろうと思いますけれども、やはり交通災害に劣らないような現在の産業内における災害が起こっておる。いま、これらにはいろいろな事例もあろうかと思うのでありますが、そういう工場内の災害、このほかに、いわゆる公害といわれるものは、工場から出る騒音とか、あるいは亜硫酸ガス等の、地域住民の健康をそこねるような公害等も相当で、無視できないわけであります。こういう工場内における災害に対する勉強を私いたしておりませんが、この刑法二百十一条の関係といいますか、これらはどうなっているか、お聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/89
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090・川井英良
○川井政府委員 刑法二百十一条は、人の生命に危険を及ぼすような業務に従事する人は、通常の人よりは特別高い注意義務を持ってもらわなければいけないのだということを明らかにいたしまして、その注意義務にそむいて人命あるいは人体に損傷を与えたというような場合には、二百十一条の違反になるのだ、こういうふうに規定がなされておりまして、明治四十年に制定されましてから今日まで、そういうたてまえで運用がなされておる。したがいまして、一番多い事故は、過去の統計によりましても、自動車とか、汽車とか、あるいは船舶、飛行機というふうな交通機関によるものでございますけれども、そのほかにも、たとえば、いま御指摘になりましたような工場における爆発事故とか、あるいはこの間ございましたように、船の中でメチルアルコールですか、エチルアルコールですか、積んでおった危険な薬品が流れたために船員の方々が大ぜい窒息されてなくなられたという事故がございましたが、これはあくまで刑事法的な面では二百十一条違反として目下捜査中でございます。それから炭鉱で保安設備が十分でないために事故が起きて何十人という方がなくなられたというような事故も、刑事事件といたしましては、鉱山保安法違反と二百十一条違反でございます。その他土木工事で宅地の造成が行なわれておりますが、不十分なためにそれがくずれて人が死んだというふうな事故がございます。最近神戸でこういう事件を起訴いたしておりますが、これも二百十一条でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/90
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091・山本弥之助
○山本(弥)委員 そういった事案について起訴せられました場合の現実に判決を得たという関係との比率は、どういうふうになっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/91
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092・川井英良
○川井政府委員 先般この委員会で、自動車以外の人災事故の事例とそれについての二百十一条適用の事例を取り急ぎ資料にいたしましてお手元に配付を申し上げておるわけでございますが、この資料をごらんいただきましても、かなりの例が載っております。自動車の交通事故ほど数は多くございませんけれども、かなりな数字を示しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/92
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093・山本弥之助
○山本(弥)委員 公害につきましても、事案が起こりますと、業務上の注意義務を怠ったことについての処刑といいますか、致死傷の関係もございましょうが、それらに比べまして非常に慎重な取り扱いがなされておるというふうな感じがいたしておるのでありますが、これはいかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/93
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094・川井英良
○川井政府委員 確かに、いい意味では慎重な取り扱いだと思いまするけれども、たとえば自動車なんかですと、御説明申し上げるまでもないことでございますが、比較的機械的な構造が簡単でごさいますので、実際問題といたしまして、過失のあるなしということがわりあい早期に判定が可能でございます。ところが、汽車とか電車とかあるいは飛行機とかというような大きなものになりますと、科学的な構造が非常に複雑でございますので、いろいろな観点から考えまして、過失の有無の認定は実は非常に困難でございます。たとえば、カナダ航空でしたか、一昨年の三月四日に事故を起こしましたが、本年の三月四日に第一次の科学的な捜査の結論が出たわけでございます。私どもこういう事件をやるについて、特に複雑なものにつきましては、一々専門家の鑑定を待った上で、その鑑定を根拠といたしまして法律的に過失を認定できるかどうかということを思案するのが捜査の大体の筋道でございますけれども、科学の進歩とともに発生してきた最近のこの種の複雑な新しい事故に対しましては、何と申しましても、今日科学的にそれを明らかにするには早くて二年、大きな炭鉱の事故なんかになりますと、いままでの事例によりましても、検事の手元に鑑定書が出てまいりますのはどういうふうにせかしても二年半くらいかかるというのが実情になっております。そういうふうなものをもとにいたしまして、それについて法律上の過失の有無を判定するということで、どうしても日時が長引いてくるということは、ある意味でやむを得ない点ではなかろうかと思うわけでございます。この種の事件についてことさらにこの法律上の適用を遠慮しているとか、渋っているとかいうわけではございません。最近の公害対策につきましても、その一環としまして、二百十一条の適用については検察庁あげまして細心の注意と努力を払うように、本省といしましては指示しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/94
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095・山本弥之助
○山本(弥)委員 今日工場、鉱山における災害が依然として発生いたしておるわけでありますが、私ども工場、鉱山における災害の発生が業務上の過失がかりにあるといたしましても、それを刑法というか、刑政上そういう災害発生を防止することは非常に至難であるということは、法務省のほうも当然お考えになっておられると思うのでありますが、いわばこういう公害に対する基本的な行政措置がなされなければ、工場、鉱山における災害防止ということの所期の目的というものは達成できない。そこに従事しておる多くの労働者が、経営者の保安施設に対する怠慢、あるいは直接関係責任者の不注意がありましても、これらを十分究明するにも時間がかかる。究明しても、これに二百十一条を適用するというようなことではなく、行政措置によりましてこれらの災害の絶滅をはかるということでなければならぬ、かように考えるわけでありますが、現実には公害に対する基本法ができましても、各省それぞれの見解の相違によりまして、国民あるいは一般勤労者の期待するような措置がなされていないというように私は増えまして、これらを行政上の問題として促進しなければならぬ、かように考えておるわけでありますが、これらの公害と同じように、交通災害につきましても、先ほどのお話を承りますと、犯罪件数の半数を占めるということは重要な問題であるわけでありますので、今日国民生活における最も重大な施策は、交通政策をどうするかという問題で、いわば政治に課せられた、早急に、しかも重点的に措置しなければならないという施策ではなかろうか、かように私どもは考えるのでありますが、現実は道路整備五カ年計画等、何次かにわたって整備はいたしております。しかし、議員立法によりまして、交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法をつくりまして、早急に当面交通安全施策を整備するというような計画を樹立しておりますが、これらも不十分であることは刑事局長も十分おわかりだと思うのであります。国会におきましても、交通安全対策特別委員会ということで総合的な施策を考えているが、私どもは、行政措置によりましてこれらの施策を推進しなければならぬという責任を感じておるわけであります。そうしますと、先ほどの公害とはだいぶ趣を異にいたしますが、交通事故の減少なりということについて、刑事政策が先行いたしまして罰則の長期を引き上げるというようなことで、こういう重大な国をあげての交通対策を先行して解決をするということは、政府全体の施策からいいますと、きわめて不適切な措置ではないかというふうに考えるわけでございます。法務省としてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/95
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096・川井英良
○川井政府委員 御趣旨のところは、私も全く同感でございます。私ども担当いたしております刑事的な方針なり政策なりだけですべて社会の悪が一掃されるというふうには考えておりません。私どもは、もともと考え方としまして、行政のあとからくっついていく、消極的に、出たものを始末していくというのが私どものあり方だというふうに考えておるのでございまして、いままでもそういうふうな考え方で法務、検察を運営してきた、こういうふうに信じておるものでございます。
そこで、本件のような交通事故に対処する方策につきましても、私も御指摘のように、万般の施策が先行いたしまして、そうしてその施策が整ってなおかつ悪質な事故が減らないというようなときに、初めてこの刑罰の働く分野が出てくるのではないか、こういうふうに考えております。そこで、あるいは御説明するまでもないことかも存じませんけれども、四十年の三月あるいは四十一年の五月、四十一年の十一月、昨年もございましたが、この交通安全国民会議を主体といたしまして、また総理府の中にもそれだけを扱う特別な調査室を設けるというようなことで、ほんとうに政府をあげての、一体となっての施策が相当強硬に推進されております。ただ、その施策は相当な予算を要するということと、それからまた実施に移す場合におきましても、かなりな準備と日時を要するというようなことで、今日それが一〇〇%完全に成就されているというふうには私は見ておりませんけれども、少なくとも前を向いた姿勢でもって着々として整備がなされておるということは、私これを認めていいんじゃないか、こう思うわけでございます。
〔委員長退席、田中(伊)委員長代理着席〕
そこで問題は、それじゃ今日これだけ悪質な事故がどんどん出て多数の人命が損傷されているけれども、これに対処して刑罰の面においては何もしなくていいのかどうかという問題が残ろうかと思います。そこで、その交通安全国民会議にも法務大臣がメンバーとして出ておりまして、幹事として私も名前を連ねておるわけでございまするけれども、私どもの所管の面におきましても、なかなか道路整備一つにしましてもかなり時間もかかることでございますので、それが完全に整備するまで手をつかねて拱手傍観しているというのはやはり適当でない。それは国家の財政なりあるいは国民生活の実態なりというふうなことも両々考え合わせまして、最小限度に刑罰の面におきましても何らかの手直しをしていくというのが、むしろある意味では、今日の交通戦争に対処しまして、私どもの義務ではなかろうか、こういうふうな考え方から、四十年の四十八国会からこの改正案をお願いしておるというたてまえに相なっておるわけでございます。そこで、もう少し説明さしていただきますと、今度の改正は、そういうふうな観点と非常に謙虚な立場に立っておりますので、何でもかんでも一斉に刑を上げて、そうして事故を減らすために大いに役立てるんだというような、ある意味では大それた考え方に立っているわけではございませんで、酒を飲んで自動車を運転して人をひき殺すとか、あるいは無免許でもっていたずらにトラックを運転して人をひき殺すとかいうふうな、道路を幾ら直しましても、いかに電灯を明るくつけましても、どんなに高性能の車をつくりましても、避けることができないような、ほんとうにだれが見てもひどいじゃないかというような事故だけにこの刑罰をもって覚せいを促し、そうして幾らかでもその減少を求めようというふうなたてまえから、この三年というところを五年というところに引き上げました。一番下は罰金になっておりますが、罰金で済むような軽微なものはいままでどおりの罰金でいきましょうということで、それは引き上げをしないということです。私どもがお願いいたしておりますのは、たいへんくどいようでございますが、そういうふうなほかの万般の施策によってまかなえないような悪質な、目に余るものが非常にたくさん出てきておる、こういうふうなものはどうしたらいいだろうかというふうなところから、それは刑を上げただけで減るとは思いませんけれども、少なくとも刑を上げることによって覚せいを促す一助になるのじゃなかろうかというふうな立場に立っておるわけでございます。二、三日前に、あるテレビで、横浜の駅の前における飲み屋にドライバーが蝟集しまして酒を飲んでおるところへ放送記者が入りまして、なぜ酒を飲んであんなに車を運転するんだというようなことをいろいろ質問しておるのがありましたけれども、この前事故を起こしたら罰金五千円で済んだ、たいしたことはないんだというようなことで大言壮語して、酒を飲んでまた車を運転していくというようなのを見たわけでございますけれども、私はあれを見て、ほんとうに背筋が寒くなるような気がいたしました。一般の施策ももとより必要でございましょう。それについて私どもいささかも異論はございません。しかしながら、一般の施策によりましても、なおかつまかなえないような非常にひどい事故が、今日厳然として毎日毎日起きている。これに対してどういうふうな方法でいったらいいだろうか。それは刑法の刑罰を少し上げていただくということが、私はかなりな効果があると信じて疑わないものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/96
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097・山本弥之助
○山本(弥)委員 交通に関する会議の一環としてお進めになったが、その他の行政施策がなかなか容易でなくて進まない、そのために悪質事犯に対して刑法の改正を先行せしむべきであるという御意見でございます。基本的に私は考えを異にするわけでございますが、確かに基本的な行政施策が進まないということは、全く遺憾なことでございまして、そういう交通安全対策会議等が設けられましても、ほんとうに国民のための施策が進まない。いわば取り締まり法規、道交法の改正によりまして反則金制度が創設せられ、今回——まあ四十年からでございましょうけれども、刑法の改正、いわば威嚇的に刑を高めることによって交通犯罪を避けようという考え方、これは私、最も悪質な犯罪に対しましては、刑を上げるということによってはおそらく所期の目的は達成できない、やはり基本的な本筋の行政措置が進まなければならない、そういった悪質犯は道路の整備ということがあっても起こり得るであろうという考え方に立ってではなくて、いわゆる総合的な他の施策があるべきではなかろうかというふうに考えるのでありますけれども、その点はその程度にいたしまして、刑事局長さんの従来の委員会における答弁におきまして、国民的感情というふうなことも加味したんだというふうな御答弁がなされておりますが、これのほんとうの考え方というのはどういうのでございましょうか、お尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/97
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098・川井英良
○川井政府委員 どんな法律を立案するにあたりましても、あるいは改正するにあたりましても、それにはそれなりの動機と契機があるのは申し上げるまでもないことでございますが、本件の刑法の改正におきましては、一番直接の動機になりましたのは、いま禁錮三年が最大限の刑でございますので、どんなに悪質な業務上の過失で何百人が死にましても、最高は三年どまりということに相なっておるわけでございます。そこで、ここ数年間における裁判の実情というものを見ておりますと、頭打ちの三年という刑がぼつぼつ出てきているわけでございます。それから三年の中で二年以上というのも、はなはだ悪質だと思いまするけれども、その二年以上——二年ないし二年半という判決を受けた者が、これはまたかなり出てきているわけでございます。私ども日常裁判にタッチしている者としての観測といたしまして、この刑法の法定刑の中で、ほかの罰則と違いまして刑法でございますので、より慎重な運用がなされているわけでございますが、その刑法の罰則の中で最高限が具体的な事件でもって言い渡されたというものが、自由刑の場合におきましては非常に珍しい、希有なことになっているわけでございます。たとえば傷害は十年以下の懲役ということに相なっておりますけれども、普通の傷害で相手が死ななかったというような場合に、懲役十年の実刑がいったというような例は、私三十年こういう仕事をしておりますけれども、ほとんど記憶がないのでございまして、せいぜい懲役六月から一年半ぐらいが大体一番重いということで、まだ傷害で十年いくというような、悪質犯としてはこれ以上悪質なものはないというような例はほとんどなかったということになろうかと思います。ところが、最近の交通事故の実態からいたしまして、裁判の実情といたしましては、禁錮三年ではとうていまかなえないこの惨状、またこの被害感情というようなものを目の前にして、これで禁錮三年でいいだろうかということは、まず実務の間で非常に問題になってまいりまして、たくさん出てあります判決の資料としてお手元に配付してあるわけでございますが、ごらんいただきますと、この判決の中にも、もう三年しかないからやむを得ないのだというような趣旨のことを判決の中に書かれて三年を言い渡されておるというふうな判決が、判決の中に出てきているわけでございます。それから検察官が求刑をいたしますけれども、その際にも、とても三年という求刑ではまかなえない事件が起きた。検事が大きな事件で現場に飛んでまいりますけれども、いたいけな幼稚園児の中にトラックが飛び込んでいって十何人も死んだり、あるいは十数人を死傷させたというような悲惨な事故がありますけれども、それを見て、この被害者たる父母の姿というようなものを検察官あるいは警察官は現場で見て、まず目をもって、あるいは皮膚をもってその感情を知るわけでございます。あるいは法廷におきましても、被害者が出てまいりまして、そして死刑にしてくれというようなことを法廷の傍聴席で裁判長に訴えるというような事例も、一、二ならず報告を受けているところでございまして、そういうふうな何といいますか、事件一つ一つの安易な感傷におぼれては私どもいけないと思いますけれども、そういうふうな日常の庶民の感情というものをやはり裁判の面に徐々に反映させていくということも、私、生きた裁判というものを運営していく上について最も大切なことじゃなかろうか、こう思うわけでありまして、裁判の実務に従事する者の中からも、これではまかなえないというような事例がたくさん出てきている。実際に懲役三年あるいは二年半いったというような事例が非常にたくさん最近出てきているというような実態、それから私の手元に、都道府県の各議会でいろいろ決議などされまして、付近の実態からいって道路整備が着々進行しているけれども、これが全体整備されるということはいろいろな予算その他の面でまだかなりな時間がかかる、しかし酒を飲んであぶない運転をしている者をほっておいてもらっては困る、どうかひとつなるべくもっと重い刑罰に処してもらえないかということで、熱心な方は私に面会を求めて、二十人、三十人というような議員の方がそういうものを持ってきて、そうして自分の管内でこういう事故があった、それについてこの程度のあれしかいってない、どういうふうにしたらいいんだというようなことを訴えてまいられた方もあるわけでございます。そこで、あるいは御質問の御趣旨に沿わないお答えになったかもしれませんけれども、そういうふうないろいろなものも勘案いたしまして、国民的感情というようなことばで表現さしていただいたわけでありますけれども、少なくとも今日の交通戦争という実態について、今日の昭和四十年にできた刑法の禁錮三年という刑は、もう実態をまかなうことができないような限度にきているのではなかろうかというふうな立場から、国民的感情というふうな表現を使わしていただいたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/98
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099・山本弥之助
○山本(弥)委員 その長期の頭打ちになっておる件数は、年間どのくらいでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/99
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100・川井英良
○川井政府委員 これも先般お手元に厚い資料で御配付申し上げておりますが、この八一ページに、昭和三十年に禁錮三年をいった者が三件、それから二年以上いった者が三件、合計六件でございます。それから五年飛びまして三十五年になりますと、禁錮三年が八件、二年以上が十件にふえてまいりまして、それからその翌年の三十六年には三年が八件、二年以上が十五件でございます。それから三十七年には三年が十八件、二年以上が二十七件になっております。それから三十八年には三年が二十件、二年以上が二十九件になっております。それから三十九年には三年が同様二十件、二年以上が三十五件になっております。四十年には三年が少し減りまして六件、二年以上が六十五件というふうにふえております。これは司法統計という最高裁判所のつくっておる統計から引用したものでございます。四十一年、四十二年はまだ統計ができておりませんので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/100
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101・山本弥之助
○山本(弥)委員 被害者の被害を受けた瞬間における感情というものは、私は確かにただいまお話しになりましたように想像に余る悲嘆の状況であることは、これはよく推定ができるわけであります。しかし、冷静にこれらの交通事案に対処いたしました際に考えられますことは、今日いわゆる加害者がどういう刑に処せられるかということも確かに大きな関心事でありましょうけれども、これらを当面どう救済していくか、いわゆる自賠法に適用の問題、あるいは損害賠償請求の民事裁判が適切に迅速に行なわれるということの配慮が、将来の被害者の救済という意味におきましても、あるいはまた加害者といたしましても、自動車事故が将来の生活を破綻にするような責任を民事の上にも負わなければならぬのであるということが、このことのほうが国民感情的にいきますと、むしろ私はこういう事故を減少させる大きな要因になるのではないか、かように考えるのでありますが、お考えはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/101
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102・川井英良
○川井政府委員 確かに仰せのとおりでございまして、刑事的な処置もさることながら、事故が起きた後における民事的な被害者の救済、またそれが反射的効果として加害者のほうに与える影響というふうなものはかなり大きなものがあることは、これは申すまでもないことだと思います。そこで、法務省としてのその面についての手当てでございますが、人権擁護局の中に法律扶助制度を設けまして、本年度四十三年度で六千五百万、四十二年度で六千万の予算を取りまして、これを交通事故以外にも運用されますけれども、昨年の実績を調べてみますと、六割近いものがこの法律扶助制度の適用を見ておりますので、弁護士に払う費用がないために裁判を起こせないというような者につきましては、全国にある九千の人権擁護委員が窓口になりましてその相談を受けまして、そして法律扶助制度があるということを紹介し、その運用によってかなりの事件が推進されております。これは一見額が少ないようでございますが、実は訴訟に勝訴しますというと、その賠償が得られますので、その賠償の中からかかった法律扶助制度のほうはまた償還をしていくという制度でごさいますので、回転をしておりますので、今日のところこの制度でかなりのものをまかなっております。
それから御指摘の民事裁判でございますが、これは実は、最近交通関係の賠償事件の民事の訴訟が非常に早くなっておりまして、私ども最高裁を通じて調べたところでは、長引いておるところもありますけれども、一審の判決が大体六カ月ぐらいで出ておるのが非常に多いようであります。民事の訴訟は、御案内のとおり何年もかかる、何十年もかかるというのが常識でございますけれども、交通事故のあれにつきましては、裁判官の特別な時代についての感覚といいますか、そういうものを反映し、また訴訟関係者の特別な配慮ということもあるかと思いますが、かなり促進しておると思う。それからまた、御承知のとおり、賠償の額も相当な額が判決で認定されておるというようなことに相なっております。
それから自賠法の関係も御指摘にございましたけれども、この自賠法の関係につきましても、今日その運用はまさに軌道に乗ってきたというふうな感があるわけであります。まだ不十分かもしれませんけれども、民事の場合におきましても、かなりな対策が強力に推進されておるということは、認めていいことかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/102
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103・山本弥之助
○山本(弥)委員 すでに質問がなされまして会議録に載っておるのではないかと思いますけれども、この機会に、交通事故といいますか、二百十一条に関連する諸外国の立法例につきまして、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/103
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104・石原一彦
○石原説明員 実はこの点も資料といたしまして御配付申し上げたところでございますが、簡単に御説明申し上げます。
まず、諸外国の例でございますが、日本と同じような業務上過失致死傷罪というのを設けておるところもございますし、そうでなくて、英米法のように、いわば日本でいいますれば傷害致死と同じような形式で処罰の体系を定めておるところもございます。ドイツ刑法その他におきましては、大体業務上過失致死傷と同じようなのを持っているわけでございますが、概して申し上げますと、今回私どもが提案いたしましたと同じように、懲役五年という刑が大体平均でございます。なお、東欧諸国にいきますと非常に刑が重いのでございまして、たとえばソ連邦の一共和国を形成いたしておりますロシア共和国等に参りますと、自動車であるとか電車の従業員、いわば輸送機関に従事している者によります過失事故、特に死傷事故につきましては相当重く、日本流に申し上げますと十年間の懲役というところもあるわけでございます。なお、英米法におきましては、はっきりした過失致死傷罪を持っていないところもございますが、大体のところはいわばマン・スローター、傷害致死等で処罰しているのでございまして、たとえばイリノイ等におきましては、一年以上十年以下というような刑が定まっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/104
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105・山本弥之助
○山本(弥)委員 それら諸外国における交通事故の実態といいますか、わが国との関係においてはどういう差異を示しておるわけでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/105
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106・石原一彦
○石原説明員 この点、先ほど刑事局長から答弁がございましたように、全体の数字と、それからいわば業務上過失致死傷罪に匹適するもの、あるいはそれ以外の交通事故による検察庁あるいは裁判所で処理した人員、これはわからないのでございますが、死者については総理府のほうでまとめられました統計がございます。その統計の分け方は、人口十万人のうちで自動車事故等によってどれほどの死者が生じたかというような点でございます。人口十万人当たり自動車による死者の数でございますが、日本は、一番新しい統計で昭和三十八年でございますが、一五・七人でございます。それに対しまして、一番多いのがドイツ連邦でございまして二四・八人、オーストラリアが二四・五人、カナダが二三・五人、フランスが二一・四人、オランダが一六・七人、イギリスが一三・五人、申しおくれましたがアメリカ合衆国が二三二人というような状況でございまして、人口十万当たりでいきますと、日本は必ずしも高くございません。ところが、自動車千台当たりで死者がどのくらいあるかという点を見てまいりますと、日本は、三十八年度の統計によりますと、三・三人でございます。フランスがちょうど一人、ドイツ連邦が一・七人、オランダが一・九人、イギリスが〇・七人、カナダも同様〇・七人、アメリカ合衆国は〇・五人、オーストラリアが〇・八人、かような数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/106
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107・山本弥之助
○山本(弥)委員 その事故の状態はどうでございましょうか。私、わが国では歩行者に対する交通事故が圧倒的な数を占めていると思うのでありますが、外国の例はその辺のことはいかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/107
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108・石原一彦
○石原説明員 仰せのとおり、歩行者との関係でまいりますと、日本は一番率が高い。歩行者との衝突事故が多いわけでございます。日本でその次に高いのは、自動車と自転車、これは普通の自転車、二輪車も入っているようでございます。それから、自動車相互の事故というのも相当高いようでございます。ところが、アメリカを例にいたしますと、一番事故の多いのは自動車と自動車との衝突でございまして、歩行者との衝突は、順位で申し上げますと三番目でございます。日本は一番高いわけでございまして、アメリカ合衆国は三番目になっております。なお、イギリスは、やはり歩行者との衝突というのが一番多いようでございまして、その次が他の自動車との衝突というぐあいになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/108
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109・山本弥之助
○山本(弥)委員 アメリカ等と比較して歩行者、自転車の事故の多いということは、私、道路の整備状況が非常におくれておるということを明らかに、端的に示しておると思うのであります。いわば人・車道の分離だとか、あるいは自転車の遊歩道まで設けているというような地帯におきましては、明らかにこの交通事故というのは重大な過失である。また、ある意味において、自動車相互の事故というものは、単に事故を起こしたということが交通それ自体の阻害になるという実態で、わが国においては、極端な表現で申し上げれば、自動車運転者が道交法を厳守してまいりますと、逆に交通を阻害するというふうな実態にあるわけでありまして、いかに法規を順守することが交通の阻害になり、交通の波をうまくやろうと思えば当然事故が随伴をするというような態勢にある。そういうところの刑罰、刑政というものは、これは相当考慮していかなければならぬじゃないか。やはり金はかかりますけれども、威嚇による刑の引き上げということよりも、どうしても交通施設の整備を高めていく。それから国民的感情からいいましても、先ほど申し上げましたように、むしろ事後の措置についての自賠法の国の配慮、あるいは御努力を願っておりますような損害賠償請求等につきましても、裁判を容易にすることができる、泣き寝入りをしなくて済むんだという態勢をむしろ法務省としては積極的におやりになることこそ、交通対策の総合的な当面先行させなければならない使命ではなかろうか。ただ刑罰によって交通事故を絶滅するんだ、三年が五年になった場合には容易に交通事故も起こせないんだということではなくて、将来の体制が非常な打撃を受けるというような問題——わが国におきましても、御承知のとおり加害者の自殺というような現象も出ているわけでございます。これらは刑罰をおそれるということよりも、むしろ一家の将来の生活上の重大な問題ということの責任を感ずるあまり自殺をしておる。そのことは、あわせて人間としての刑法が要求しております要請に対する責任を負うんだということだろうと思うのであります。ただ単に刑を引き上げることによって事故が減少するんだという考え方をとる限りにおきましては、私は交通対策の総合施策は推進しないというふうに考えます。したがって、何としても法務省としては、先ほど中谷委員の質問もございましたが、禁錮刑に交通事犯によりまして収容せられましたのを、さらに社会復帰で正常な社会人として送り返すんだというふうな矯正の措置といいましょうか、それらやるべき措置が、法務省に課せられた仕事がたくさんあるのではないか。安易な、当分国の施策は進まないんだから、刑罰を高めることによって交通事故を減少せしめようという考え方、これは私は避けなければならぬというふうに考えておるわけであります。しかも今日、運転者に課せられました注意義務というものが、いわば自動車を運転しておるというだけで二百十一条の適用を受けるわけでありますが、まあ悪質な者もございましょうけれども、今日、都市といわず、農村といわず、いわは正常な状態で——先ほど申し上げましたような生活上の問題もありましょうし、雇用主のノルマの強要というふうな問題もございましょうし、いろいろいわゆる精神的に圧力がかかっておると思うのですが、そういった圧力、重圧を受けておる運転手は、まあ非常に悪質な者は別でありますが、運転手のいわば明瞭に、直ちに反応するような状況で運転できる状況にあるのかどうか。その辺の検討を加えられたことがございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/109
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110・川井英良
○川井政府委員 私、御指摘の御趣旨と全く同感でございまして、ただ私の考え方と違っている点は、実態の把握のしかた、認識において相違があるということだろうと思います。ただ刑罰を引き上げることだけをもって満足し、それのみをもって事態がまかなえるというふうな立場でないことは、るるお答え申し上げたとおりでございまして、ほかの民事、刑事はもとよりのこと、一般行政施策ないしは、酒を飲んで運転するというようなことは、もう今日の時代の社会感覚としても、情理としても道義としても許せないことなんだというふうな国民的な認識と申しますか、意識と申しますか、そういうふうなことが漸次高まってくるというようなことも、悪質な事故をなくすきわめて有力な一つの原因になっているというふうに思うわけでございまして、そういうふうな、社会教育をも含めた趣旨での万般の施策が総合的に開発されてくるということが、事故絶滅のために必要であるということは全く同感でございます。
〔田中(伊)委員長代理退席、大竹委員長代理
着席〕
ただ私は、政府としましても刑法の一部改正以外に何もしていないわけでございませんで、先般の国会でも各省出てきまして、それぞれ数字をもって御説明申し上げたところでございますが、これにつきましては、ほんとうに前向きな姿勢でもつて取り組んで、道路の整備の率から申しましても、かなりのものが着々と整備されつつあるというふうな状況に相なっておりますので、かような施策と相まって、刑法の一部改正も必ずやその一端として効果を持つものだということを申し上げているわけでございます。
もう一つ、ほかのほうが十分いっているならば刑法というようなものはなくてもいいじゃないかというふうなもしお説であるとするならば、その御主張に対しては、私にわかに賛成しがたいのでありまして、やはり刑法は刑法としての考えでは、社会悪についての非常に大きな役割りを果たしておるということを、やはり主張しなければならないと思います。
それから今日非常に物価高とかその他いろいろな状況からして、車を運転するそういう業態にあるものの注意力がやむを得ず散漫になっているのではないかというようなこと、ないしは運転手だけを責めることは酷なんであって、それを雇っておる雇い主というものについても少し思いをめぐらしたことがあるかという御趣旨の御質問だったと思いまするけれども、この点についても、私どもは私どもなりにかなり慎重にものごとを判断したつもりでございます。運転手が事故を起こした場合に、それがオーナードライバーでなくて、個人営業ではなくて、雇い主に雇われておるというような場合が非常に多いわけでございますが、それらにつきましても、順次その背後の関係にある、たとえば過酷な労働管理のために、それが一つの原因になって事故が起きたんだということが認められるようなものにつきましては、道路運送法あるいは労働基準法というような規定を適用いたしまして、それぞれ刑罰をもって臨んでおります。そのような事例の資料として前に提出いたしたことがあるわけでございまして、今後なおその方面についても十分な配慮を持たなければならないと思いまするし、またその面についても、ただ労働基準法で罰金をとるとか、あるいは道路運送法で三カ月とか六カ月の懲役をやるというだけではもとより十分ではございませんので、運輸省ないしは労働省、その面を監督する方面にも行政的に意見具申をいたしまして、刑罰とあわせてその実態の行政的な指導について遺憾なきを期するように連絡をいたしております。一昨日だったと思いますが、労働省から係官が出てまいりまして、その面についてどういうふうな行政的な施策をとっているかということについて、詳細な説明がなされたわけでございまして、いまここで受け売りでもって同じことを繰り返す必要はないと思いまするけれども、不十分かもしれませんけれども、私どもなりにその辺についても十分な考慮をいたしております。
それからこういうふうな落ちつかない世相であるから、注意力にもおのずから限度があるんじゃないか、なるほどそのとおりでございまして、個々の一つ一つの事件につきまして、画一的に処理をしてあるいは一方的に重罪にするというふうなことはやりませんで、一件一件入念にこれを担当いたしまして、どういうふうな環境のもとに、どういうふうな具体的な事情で注意が散漫になってこの事故が起きたかということを詳細に調べまして、それぞれ実態に応じた処遇をいたすように心がけております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/110
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111・山本弥之助
○山本(弥)委員 私、法秩序の維持の上から刑法に課せられた使命を否認するものでは決してないのであります。ただ、今日、先ほど来申し上げておりますような運転手の注意力の限界、それらを緩和していくという施策が先行しない限りにおいては、注意力の限界をさらに重くするようなことであってはならないということと、その無理な注意力の限界に対して二百十一条の長期を引き上げて、先ほどのお話を聞きましても、ごく一部であり、また将来これらがふえていくということは将来の問題に属すると思いますけれども、そういうことのために三年を五年に引き上げる、あるいは懲役刑を科するということ自体が問題ではないかということを指摘しておるわけであります。したがって、現行刑法の範囲内におきまして、私は他の施策と相まっての効果をあげ得る、かように考えるのでありまして、しかも先ほど来のお話にもありましたように、長期を引き上げますと、自然裁判上の審理状態からいいましても、それに伴って、個々のケースによって判決をされることの公正を私どもは信じておるわけでありますが、自然刑が全般的に、個々のケースを判断するにいたしましても、引き上げられるのではないかというふうな感じがいたすわけであります。この点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/111
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112・川井英良
○川井政府委員 最初に一般論として申し上げておかなければいけない点は、古い刑法はなるべくこまかく規定をいたしまして、裁判官の裁量の幅を少なくするということが古い刑法の構造でございました。たとえば人を殺しました場合にも、謀殺といってあらかじめはかってやったものを重くするとか、突然偶発的にやったものは軽くするというふうなことで、殺人だけでも五種類にも六種類にも分けて、ものによりましては十何種類にも分けて、こういうものは死刑、こういうものは懲役幾らときめたものがございましたけれども、最近の刑法の傾向といいますか、近代刑法の傾向といたしましては、順次そういうことがなくなりまして、司法権の独立ということと裁判所というものを国民がもり立てて、その裁判所を信頼して、裁判所の裁量の幅を広くして、そして具体的なケース、ケースについてあらゆる角度から事件の実態と情状を調べ上げて、そしてその人の性格に最も沿った刑を盛るということが、近代的な刑法の所産としてつくり上げた結論だと私思うわけでございまして、ごらんいただきましてもわかりますとおり、日本の刑法もその線に沿ってできておりまして、刑の幅というものは非常に広くて、言いかえて言うならば、裁判官の裁量の幅が非常に広くなっているわけでございます。それだけに、裁判官は非常に自由な立場でもってそのケースに最も妥当した刑を盛ることができるようにしてあるというのが、一般論として今日の刑法のあり方、構造でございます。
それを前提といたしまして考えました際に、たとえば本件の場合におきましても、自動車でやった場合は幾らにする、それから電車、汽車の場合は幾らにする、その他は幾らにする。さらにそれを分けまして、酒を飲んでおった場合にはさらにそれに二割増しにする、あるいは無免許であった場合にはそれより一割増しにするといったようなかなりこまかい刑のきめ方というものは、もちろん立法として考えられるわけでございますけれども、刑法の全体系をごらんいただきまして御理解願えると思いますけれども、殺人なんかにおきましても、死刑、無期から三年以上——三年は今日執行猶予になりますので、人を殺しましても、一番軽いものは刑を認められましても全然刑務所にいかないでも済む。上は死刑まである。その中で裁判官が具体的な事情で認定をする、こういうことに相なっておりますので、この二百十一条につきましても、なるほど禁錮三年が五年ということに引き上げになりますけれども、その範囲内において個々の事件事件について最も妥当な刑罰を裁判官が盛るということがたてまえになっております。
〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕
ただ、ここで申し上げなければなりません点は、本件は最初にも申し上げましたが、一部改正でございまして、特に今日のものすごい事故の激増、しかも悪質事故の激増ということに対処するためにこの改正をするのだというたてまえに立っておりますので、下のほうを上げなくてもいいのだ、いまの三年でまかなえないような悪質重大なものだけをやるのだ、こういう趣旨でございますので、それはこの立法の趣旨におのずから明らかでありますけれども、それのみならず、たとえば罰金で済むというようなものにつきましても、今日刑法の金面改正ということを私の手元で行なっておりますが、その全面改正では、この二百十一条は五年以下の懲役、禁錮及び三十万円以下の罰金に処す、こういう案が実はできておるわけでございます。そこで、全刑法の一斉の改正ということになりますならば、私は、ほかの法定刑とバランスをとりまして、罰金の三十万円以下ということに上げないと調和がとれないと思う。しかし、本件の場合におきましては、そういう趣旨ではなくて、くどいようでありますが、当座の緊急性ということから、一部改正でまかなえるということで、本来罰金で済んでいたような軽いものについてはそのままでよろしいのだ、先ほど申し上げましたようなごく悪質な、だれが見てもこれはいけないというようなものについては三年でまかなえないような状況なので、その上のほうを上げるのだ、こういうたてまえになっておりますので、法律のできておるでき方、それから最初に申し上げましたような裁判の実態、それから刑法という法律の体系と沿革的な意味、それから今日の日本の裁判所の長い伝統、また量刑についてきわめて慎重な態度をとっておる裁判所の実績、それからその次には検察官がこれを起訴いたしまして、そして量刑の参考のために求刑ということをいたしますけれども、その求刑の面につきましても、この趣旨を十分にくみまして、これは私ども法務省の範囲内におきましてできることでありますので、裁判に対する求刑の面につきましてもその立法の趣旨に沿うような方法でもって部内を指導して誤りなきを期したい、こういうふうなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/112
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113・山本弥之助
○山本(弥)委員 私、交通事犯につきましては、御承知のとおり、今日の近代的刑法が法定刑の幅を持たせましてその被疑者の実態に即した適切なる刑罰を科するということにつきましては、疑義を差しはさむものではありません。ただ、この種の犯罪は、普通の過失犯でありましたら罰金で済んでおるわけでありますが、業務上の過失犯なるがゆえにその配慮を慎重にしなければいけないということを考えておるわけでありまして、今日、交通事犯の裁判所の審理の状況も実際はそうこまかく——御多忙だということもありましょうから、そう慎重におやりになっておるのではなくて、類似のケースに当てはめて、迅速に処理されることはけっこうなわけですけれども、実際は実地検証その他も要求できないような右から左に処理していくというようなあり方、これらを考えますと、交通事犯の減少をはかるためのいわば威嚇的な精神的な圧力をかけることによって運転者が配慮をするのではないだろうかというようなこによってやりましたことも、実際は全体が重い刑ということに画一的になる、裁判官の独立性もあるにいたしましても、そういう不安があるということが一つでありますし、もう一つ注意義務の問題も、慎重な人が過失を起こさないかということは、自動車の運転等でも一がいに言えないわけでありまして、いわば注意義務の限界からいいますと、慎重な性格なるがゆえにとっさの反射作用が行なわれなくて、結果においては重大な事故を発生することもありましょうし、乱暴な運転をいたしましても、とっさの機転がきくことによって事故を起こさないというふうなケースもあるわけであります。したがって、過失犯は過失犯としてのたてまえを堅持していかれないと、法改正が非常に政策的な運営されるということは非常に困るのではなかろうか、こういうふうな心配があります。この点をどう御判断なすっておられましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/113
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114・川井英良
○川井政府委員 最初の、裁判は慎重にやっていると言っているけれども、非常に忙しいし、事件が多いので、右から左へ片づけているという心配があるという仰せでございましたけれども、この右から左へ片づけてまいりましたのは、道路交通法違反というルール違反、駐車をしてはいけないところに駐車をしたり、簡単なルール違反の事故は実は非常に多いわけでございまして、年間約四百万件発生しておるわけであります。これは一々刑事罰になっておりますので、御承知のとおり、今日東京では墨田の裁判所で、ほんとに右から左へ処理しておるわけでございます。年間四百万件という事件を、警察、検察、それから今日の裁判所で処理するためには、一件当たり何分という分がかかっては始末がつかないわけでございまして、ほんとに何秒という間に処理するというようなかっこうになっておるわけでございます。この点につきましては、御案内のとおり、昨年五十六特別国会で反則金の通告制度ということで、新しい方策が立つわけでございます。したがいまして、これによって約六割から六割五分くらいの事件が、事件として減ってくるんじゃないかということを考えております。これまた、この振り向け方を考えておるわけでございますが、人の生命、身体に影響を与えたような業務上過失致死傷の二百十一条違反につきましては、決して右から左に片づけておるというようなことはございません。これは非常に慎重な態度で検挙、処理、それから審理が行なわれておるのでございまして、先ほど、民事の訴訟が非常に驚異的に短期間に、迅速に済んでおるということは申し上げましたけれども、ほんとうはあわせて刑事も迅速にいっているということを申し上げたかったのでございますけれども、これは必ずしも迅速とは言えないわけでございまして、これは一面において、刑罰ということもございますので、かなり慎重に審理しているという、逆に一つの証拠になろうかと思うわけでございますが、人命尊重という立場に立っての事件処理でございますので、また刑罰ということでございますので、非常に慎重にやっているということは御了解をいただきたいと思います。
それから、注意義務につきましては、法律で一定の注意義務を課しておるけれども、個人差があって、そこは一律にやっていいのかというふうな御不安、御心配でございますけれども、全くごもっともなことだと思います。これは過失犯でたまたまそうなりますけれども、故意犯にとってみましても、教育の程度、あるいは知能の発達程度というようなことによりまして、まさに私どもの手元に来る容疑者、犯罪者というものは千差万別でございますので、これにつきましては、できる限りあらゆる調査と慎重な検討を遂げまして、そしてその人に最も合った責任を追及するという立場でございます。一例でございますが、国鉄の事故に例をとって考えてみましても、何百人という死傷者を出しました鶴見の事故、その後に出ました三河島の事故、同じような事態で、同じような大きな事故でございましたけれども、鶴見の事故におきましては、検察官の手元で慎重に検討した結果、これは注意義務の懈怠が認められない、これは不可抗力によって起きた事故であるということで、あの事故は非常に大きな事故でございましたけれども、証拠といいますか、注意義務の懈怠が認められないということで、不起訴処分になっております。三河島のほうに、慎重に検討いたしましたけれども、これは過失が十分で、しかも注意力が散漫だったということで、これは刑事責任を問わなければいけないということで起訴をいたしまして、一審で最高刑の禁固三年という刑があって、いま上告審で係属中ということでございます。一例にすぎませんが、画一的な処理をしているのではございません。部内に課せられた使命に基づきまして、できる限り個人差を十分見きわめまして、その責任とその人の性格に合ったような審理をするということに全力を注いでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/114
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115・山本弥之助
○山本(弥)委員 その点につきまして、私ども、運転者に課せられた注意義務の限界が考え得る範囲内であれば、慎重な人は事故を起こさない、乱暴な性格の者、悪質な者は事故を起こすということは言い得るけれども、今日の道路の事情その他の環境から注意義務の限界が狭められている、あるいは逆に圧力がかかっているというような事態においては、本来の違法性といいますか、その違法性の少ない人も過失を起こすんだ、相当の違法性を持っておる人も、ある意味においては事故が起きない場合もあるかもわからないというようなことが言える状況下において、刑を上げることによって、あるいは件数が相当ある実態において、自然に全般の人が上がっていくというふうな結果になることを心配したわけであります。この点はこの程度で打ち切ります。
一言だけ最後にお聞きいたしたいのは、今日少年の犯罪が全犯罪の三割くらいを占めているかと思うのであります。しかも、その少年犯罪のうち、交通事故の犯罪が、これまた相当の分野を占めていると思うのであります。このことから推定いたしますと、成人の年齢層の犯罪も、若年層に多くなっていはしないかと思うのであります。この資料がありますれば、資料を見ればわかるわけでありますが、この機会に簡単にお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/115
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116・川井英良
○川井政府委員 手元にある資料に基づいて幾らかの御説明を申し上げたいと思います。昭和四十一年度検察庁のとった検察統計によりますと、二十歳未満の少年が犯した全刑法犯——先ほど申し上げました刑法犯でございます。これが二十万二千三十七というのが、昭和四十一度における全刑法犯の少年の数字でございます。したがいまして、先ほど申し上げました全刑法犯からいいまして四分の一、二割五分が少年ということに相なっております。その中で業務上過失致死傷害少年ということで統計をとっておりますが、これはほとんど全部が自動車その他によるところの過失事故でありますので、その二十万幾らの中で、四十一年度の過失事件が五万一千四百四十六というのが検察庁が受けた事故の全件数になっておりますので、ちょうどまた四分の一が交通事故の事件、こういうことに相なっております。その中で、検事が一応の取り調べをしまして、家庭裁判所に送りましたのが五万二百六十一、家庭裁判所で詳しく慎重に審理をいたしました結果、その中から一万六千百六十八、これについては刑事処分が相当であるということで、検察庁のほうへ逆送致になっております。その逆送致になっているものについてまた検事が調べまして、そのほとんど全部について公判請求ないし略式命令請求で起訴をいたしておるというのが、四十一年度における少年の実態でございます。
それから過失事故全体について年齢別の点でございますが、いま私の手元に成人についての年齢別の資料をちょっと持ち合わしておりませんが、傾向としましては、おそらく自動車の運転による事故がほとんど全部、非常に大部分でございますので、自動車を運転するという年齢は、考えていきますと、やはりおのずから若い層に事件が集中しているのではないか、一般的傾向としてはそういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/116
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117・山本弥之助
○山本(弥)委員 今日若年労働者が必要とされておるときに、この刑法二百十一条違反を通じましても、ただ単に刑政上の問題より以上に、青少年対策の必要性ということを痛感しておるわけであります。時間もだいぶ経過しましたので、最後に、せっかく法務省におかれましても刑法の全面的な改正草案ができておるわけであります。いずれこれらの点の改正案が国会にも提案されることであろうと思うのでありますが、今日の交通事情の状況その他から考えまして、刑法の改正が先行することによって激増する交通対策の先駆的役割りを果たそうとすること、このことは避けるべきではないかという意見を申し述べて、私の質問を打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/117
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118・永田亮一
○永田委員長 神近市子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/118
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119・神近市子
○神近委員 いま山本委員の御質問が終わったときにちょうど三時でございます。こうして拝見していると、次官と刑事局長と課長だけがお昼抜きということになりそうですので、きょうは私、人道的な立場から御質問申し上げるので、わざわざおいでを願っている警察庁の西川運転免許課長と、それから落川旅客課長のお二方にだけ一問か二問御質問申し上げて、私の質問は明日に繰り延べたいと考えます。委員長、お許しを願いたいと思います。
私は、いま山本委員のお話を承っておりますと、この交通事故、過密都市の交通の問題が一番大きな問題だろう、人道的に考えてかねて考えているのでございます。私の家族だとか友だちが、タクシーに乗るときには個人タクシーを選べということをしきりに言うのです。どういうわけかといいますと、事故が非常に少ないということ、そしてこの前私は決算でやったと思いますけれど、この問題が非常に問題になったときに、個人タクシーの事故はどの程度かということをお尋ねしたときに、刑事局長だったと思います、別のお方でございましたが、〇・二とおっしゃったのです。それでなるほどな、それだけの事故なら、この個人タクシーをみんなが選ぶということが当然だと思いまして、いろいろ個人タクシーに乗ったときに聞きますのです。そしてなるほどなと思うことがあるのですけれど、免許課長にお尋ねしますけれど、いま個人タクシーの出願はどのくらいございますか。百十一条違反につきましては、決して右から左に片づけておるというようなことはございません。これは非常に慎重な態度で検挙、処理、それから審理が行なわれておるのでございまして、先ほど、民事の訴訟が非常に驚異的に短期間に、迅速に済んでおるということは申し上げましたけれども、ほんとうはあわせて刑事も迅速にいっているということを申し上げたかったのでございますけれども、これは必ずしも迅速とは言えないわけでございまして、これは一面において、刑罰ということもございますので、かなり慎重に審理しているという、逆に一つの証拠になろうかと思うわけでございますが、人命尊重という立場に立っての事件処理でございますので、また刑罰ということでございますので、非常に慎重にやっているということは御了解をいただきたいと思います。
それから、注意義務につきましては、法律で一定の注意義務を課しておるけれども、個人差があって、そこは一律にやっていいのかというふうな御不安、御心配でございますけれども、全くごもっともなことだと思います。これは過失犯でたまたまそうなりますけれども、故意犯にとってみましても、教育の程度、あるいは知能の発達程度というようなことによりまして、まさに私どもの手元に来る容疑者、犯罪者というものは千差万別でございますので、これにつきましては、できる限りあらゆる調査と慎重な検討を遂げまして、そしてその人に最も合った責任を追及するという立場でございます。一例でございますが、国鉄の事故に例をとって考えてみましても、何百人という死傷者を出しました鶴見の事故、その後に出ました三河島の事故、同じような事態で、同じような大きな事故でございましたけれども、鶴見の事故におきましては、検察官の手元で慎重に検討した結果、これは注意義務の懈怠が認められない、これは不可抗力によって起きた事故であるということで、あの事故は非常に大きな事故でございましたけれども、証拠といいますか、注意義務の懈怠が認められないということで、不起訴処分になっております。三河島のほうに、慎重に検討いたしましたけれども、これは過失が十分で、しかも注意力が散漫だったということで、これは刑事責任を問わなければいけないということで起訴をいたしまして、一審で最高刑の禁固三年という刑があって、いま上告審で係属中ということでございます。一例にすぎませんが、画一的な処理をしているのではございません。部内に課せられた使命に基づきまして、できる限り個人差を十分見きわめまして、その責任とその人の性格に合ったような審理をするということに全力を注いでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/119
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120・山本弥之助
○山本(弥)委員 その点につきまして、私ども、運転者に課せられた注意義務の限界が考え得る範囲内であれば、慎重な人は事故を起こさない、乱暴な性格の者、悪質な者は事故を起こすということは言い得るけれども、今日の道路の事情その他の環境から注意義務の限界が狭められている、あるいは逆に圧力がかかっているというような事態においては、本来の違法性といいますか、その違法性の少ない人も過失を起こすんだ、相当の違法性を持っておる人も、ある意味においては事故が起きない場合もあるかもわからないというようなことが言える状況下において、刑を上げることによって、あるいは件数が相当ある実態において、自然に全般の人が上がっていくというふうな結果になることを心配したわけであります。この点はこの程度で打ち切ります。
一言だけ最後にお聞きいたしたいのは、今日少年の犯罪が全犯罪の三割くらいを占めているかと思うのであります。しかも、その少年犯罪のうち、交通事故の犯罪が、これまた相当の分野を占めていると思うのであります。このことから推定いたしますと、成人の年齢層の犯罪も、若年層に多くなっていはしないかと思うのであります。この資料がありますれば、資料を見ればわかるわけでありますが、この機会に簡単にお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/120
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121・川井英良
○川井政府委員 手元にある資料に基づいて幾らかの御説明を申し上げたいと思います。昭和四十一年度検察庁のとった検察統計によりますと、二十歳未満の少年が犯した全刑法犯——先ほど申し上げました刑法犯でございます。これが二十万二千三十七というのが、昭和四十一度における全刑法犯の少年の数字でございます。したがいまして、先ほど申し上げました全刑法犯からいいまして四分の一、二割五分が少年ということに相なっております。その中で業務上過失致死傷害少年ということで統計をとっておりますが、これはほとんど全部が自動車その他によるところの過失事故でありますので、その二十万幾らの中で、四十一年度の過失事件が五万一千四百四十六というのが検察庁が受けた事故の全件数になっておりますので、ちょうどまた四分の一が交通事故の事件、こういうことに相なっております。その中で、検事が一応の取り調べをしまして、家庭裁判所に送りましたのが五万二百六十一、家庭裁判所で詳しく慎重に審理をいたしました結果、その中から一万六千百六十八、これについては刑事処分が相当であるということで、検察庁のほうへ逆送致になっております。その逆送致になっているものについてまた検事が調べまして、そのほとんど全部について公判請求ないし略式命令請求で起訴をいたしておるというのが、四十一年度における少年の実態でございます。
それから過失事故全体について年齢別の点でございますが、いま私の手元に成人についての年齢別の資料をちょっと持ち合わしておりませんが、傾向としましては、おそらく自動車の運転による事故がほとんど全部、非常に大部分でございますので、自動車を運転するという年齢は、考えていきますと、やはりおのずから若い層に事件が集中しているのではないか、一般的傾向としてはそういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/121
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122・山本弥之助
○山本(弥)委員 今日若年労働者が必要とされておるときに、この刑法二百十一条違反を通じましても、ただ単に刑政上の問題より以上に、青少年対策の必要性ということを痛感しておるわけであります。時間もだいぶ経過しましたので、最後に、せっかく法務省におかれましても刑法の全面的な改正草案ができておるわけであります。いずれこれらの点の改正案が国会にも提案されることであろうと思うのでありますが、今日の交通事情の状況その他から考えまして、刑法の改正が先行することによって激増する交通対策の先駆的役割りを果たそうとすること、このことは避けるべきではないかという意見を申し述べて、私の質問を打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/122
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123・永田亮一
○永田委員長 神近市子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/123
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124・神近市子
○神近委員 いま山本委員の御質問が終わったときにちょうど三時でございます。こうして拝見していると、次官と刑事局長と課長だけがお昼抜きということになりそうですので、きょうは私、人道的な立場から御質問申し上げるので、わざわざおいでを願っている警察庁の西川運転免許課長と、それから落川旅客課長のお二方にだけ一問か二問御質問申し上げて、私の質問は明日に繰り延べたいと考えます。委員長、お許しを願いたいと思います。
私は、いま山本委員のお話を承っておりますと、この交通事故、過密都市の交通の問題が一番大きな問題だろう、人道的に考えてかねて考えているのでございます。私の家族だとか友だちが、タクシーに乗るときには個人タクシーを選べということをしきりに言うのです。どういうわけかといいますと、事故が非常に少ないということ、そしてこの前私は決算でやったと思いますけれど、この問題が非常に問題になったときに、個人タクシーの事故はどの程度かということをお尋ねしたときに、刑事局長だったと思います、別のお方でございましたが、〇・二とおっしゃったのです。それでなるほどな、それだけの事故なら、この個人タクシーをみんなが選ぶということが当然だと思いまして、いろいろ個人タクシーに乗ったときに聞きますのです。そしてなるほどなと思うことがあるのですけれど、免許課長にお尋ねしますけれど、いま個人タクシーの出願はどのくらいございますか。くらいの人ならば、何というか、そんなにタクシー会社の雇われた人のように十時間も十二時間も眠いのをがまんして居眠りしながら運転するということはしませんよ。おそらく十時間なら十時間ということで、自分のからだに受ける影響を考えてこれをやめる。その間、財産を遊ばせておかなければならないということになる。私は、同じ家族、兄弟とか、あるいは親子とか、そうして十分に運転の経験のある人、そしてこれなら預けてもいいと親が考えるような人なら、これはこの車をフルに使わせてもいいのではないか。そこに私どもはあなた方の考え方がどうもタクシー業者にばかりお世辞を使って、個人のタクシー、そうして一番市民に安全な、〇・二しかへまをしない、こういう人たちの許可を押えておるということ、そうして許可をしても、これをフルに利用させないというところに、私どもどうもあなた方の考え方に納得のいかないところがある。一番市民のためにはこの健康で身近に使えるそういう人たちを利用させないで、ただタクシー会社のお世辞をとって——そういうようなタクシー会社からは、いまどういうような件数の出願が出ていますか。個人タクシーは八百件といまおっしゃったけれど、タクシー会社の申請はどのくらい出ていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/124
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125・菅川薫
○菅川説明員 いま全国で法人関係では約一千四百件くらい出ております。先生のお話もございましたが、先ほど申し上げましたように、私どもは個人タクシーが好評を博しておるということで、優秀な個人タクシーについては積極的に育成するという方針で、東京の陸運局なんかの関係では、非常に申請件数も多いということもございますが、特別にそちらのほうの事案の処理をするということで、大半の力をそこに集中するというくらいにして、個人タクシーの免許事案の処分にあたっておるわけでございます。ただ、いまの代務運転の場合でございますが、先生がお話しになりましたように、そのお子さんならお子さんという方が優秀な運転能力を持っておるということであれば、それはわれわれとしては当初に個人タクシー事業というものを認めた趣旨に照らして、おおむね個人タクシーを認めるときのいろいろな諸条件に該当すると認められるような方について代務を許すというような形にいたしておりますが、その場合というのは、本来のそういう個人タクシー業者の方が病気等のためやむを得ず事業ができないという場合にはその代務を認めるというような方法でやっておりますので、ただ無制限に代務を許すというわけにも、いまの個人タクシー事業というものの本来の趣旨からちょっといかがかと思われるので、そういう本来の事業者に準じたいろいろな能力等について審査しているというような実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/125
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126・神近市子
○神近委員 私は、きょうはわざわざ来ていただいたので、この個人タクシーの件だけにして、この続きは明日やりたいと思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/126
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127・大竹太郎
○大竹委員長代理 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/127
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128・大竹太郎
○大竹委員長代理 速記を始めてください。次回は、明二十二日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時二十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X01119680321/128
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