1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年三月五日(火曜日)
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昭和四十三年三月五日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
製造たばこ定価法の一部を改正する法律案(内
閣提出)、酒税法の一部を改正する法律案(
内閣提出)、物品税法等の一部を改正する法
律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部
を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及
び質疑
昭和四十一年度
昭和四十二年度衆議院予備金支出の件(承諾を
求めるの件)
午後二時五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/0
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001・小平久雄
○副議長(小平久雄君) これより会議を開きます。
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製造たばこ定価法の一部を改正する法律案
(内閣提出)、酒税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、物品税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/1
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002・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 内閣提出、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案、酒税法の一部を改正する法律案、物品税法等の一部を改正する法律案、及び租税特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣水田三喜男君。
〔国務大臣水田三喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/2
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003・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 製造たばこ定価法の一部を改正する法律案、酒税法の一部を改正する法律案、物品税法等の一部を改正する法律案、及び租税特別措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
政府は、さきに経済の安定的成長に即応する税制のあり方とその具体化の方策につきまして、税制調査会に諮問したところでありますが、昨年十二月に同調査会から、当面改正を必要とする事項について、昭和四十三年度の税制改正に関する答申が提出されました。
政府といたしましては、当面の経済情勢と、これに対応する昭和四十三年度財政金融政策の基本的なあり方と関連し、この答申を中心として昭和四十三年度の税制改正等につきまして鋭意検討を行なってまいったのであります。
その結果、中小所得者の負担の軽減が急務であることを考慮して、平年度一千二百五十億円の所得税の減税を行なうほか、輸出の振興、技術開発の促進、中小企業の構造改善等、当面要請される税制上の措置を講ずることとし、他面、所得水準、物価水準等の状況に応じて間接税負担の調整及びたばこ定価の改定を行ない、歳入の充足をはかることといたしました。
これらの税制改正等のための所要の法律改正案のうち、今回はここに製造たばこ定価法の一部を改正する法律案、酒税法の一部を改正する法律案、物品税法等の一部を改正する法律案、及び租税特別措置法の一部を改正する法律案を提出した次第であります。
まず、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案につきまして、その大要を御説明申し上げます。
製造たばこの小売り定価は十数年来据え置かれておりますが、この改正案におきましては、この間における所得、消費水準の上昇及び諸物価の動向等を考慮し、また財政収入の確保をはかるべく製造たばこの小売り定価を引き上げることとしております。
このため種類別、等級別に法定されている最高価格を、紙巻きたばこについては十本当たり五円ないし十五円、パイプたばこについては十グラム当たり十円ないし二十円、葉巻きたばこについては一本当たり十五円ないし六十円、それぞれ引き上げる等所要の改正を行なうこととしております。
次に、酒税法の一部を改正する法律案につきまして、その大要を御説明申し上げます。
この改正案におきましては、酒税の税率が、所得水準、物価水準の変動にかかわらず定額に据え置かれているために税負担が低下し、他の諸税の負担との間に均衡を失してきている点を考慮し、清酒特級及び一級、ビール並びにウイスキー類に対する税率を引き上げる一方、所要の規定の整備合理化をはかることといたしております。
まず、清酒特級及び一級、ビール並びにウイスキー類の税率の引き上げをはかることとしております。すなわち、これらの酒類に対する従量税率を、種類別、級別間の格差を考慮しつつ、おおむね一〇%ないし一五%程度引き上げることといたしました。この結果、通常の容量の容器一本当たり、清酒の特級は六十円、一級は四十円、ビールは七円、ウイスキー類の特級は六十一円、一級は、アルコール分四十二度もので四十一円、四十度もので二十八円、二級は三十九度もので二十円程度の増税となります。また、ウイスキー類特級の従価税率については、従量税の税率の引き上げに見合ってその税率の引き上げを行ない、新たにウイスキー類の一級及び二級の一部のものについても、税負担の適正化をはかるため、昭和四十六年四月から従価税制度を導入することといたしております。
次に、酒類の定義の整備をはかることとしております。すなわち、しょうちゅうについて、一定の限度内での砂糖等の混和を認め、また、ウイスキー類のうち、ウイスキー原酒またはブランデー原酒が混和されていないものは、ウイスキー類の範囲から除外して、スピリッツ類とする等、酒類の定義について所要の整備を行なうことといたしております。
このほか、手続の簡素化をはかるため、ウイスキー原酒等についての未納税移出の承認制を申告制に改める等、所要の規定の整備を行なうことといたしております。
次に、物品税法等の一部を改正する法律案につきまして、その大要を御説明申し上げます。
物品税につきましては、国際競争力の強化等の見地から、カラーテレビジョン受像機等十品目につきまして、暫定的に税率の軽減または非課税の措置を講じてまいりましたが、その暫定措置の期限は本年中に到来することとなっております。これらの物品のうち、小型カラーテレビジョン受像機等六品目につきましては、すでにその目的を達成したものと認められるところから、その期限到来とともに本則税率を適用することとしたのでありますが、パッケージ型ルームクーラー等四品目につきましては、その生産及び取引の実情に顧みまして、なおしばらくの間、その税率の軽減または非課税の特例措置をとる必要があると認められるのであります。
このため、この改正案におきましては、パッケージ型ルームクーラー等四品目について、その税率を漸進的に引き上げ、または非課税措置を延長することといたしております。すなわち、パッケージ型ルームクーラーについて一五%の軽減税率、小型の白黒トランジスターテレビ受像機及び温蔵庫について五%の軽減税率をなお二年間適用し、あわせて他のトランジスターテレビ受像機及び電子楽器について非課税措置を継続することといたしております。また、アンサンブル式レコード演奏装置の暫定措置の期限到来に伴い、その構成部分品に対する税率の調整をはかるほか、オールチャンネルテレビ受像機について、今後二年間課税標準の特例を設けることといたしております。
このほか、これらの改正に伴う所要の規定の整備を行なうこととしております。
最後に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について、その大要を御説明申し上げます。
この改正案におきましては、最近の経済情勢と当面の政策上の要請にこたえ、税制上の特別措置について、新設あるいは整理合理化、適用期限の延長等を行なうことといたしております。
第一に、輸出の振興をはかるための措置といたしまして、輸出の伸長に貢献した企業に対して、輸出割り増し償却率及び海外市場開拓準備金の積み立て率の特別割り増しを認め、また技術等海外取引の特別控除制度、及び海外投資損失準備金制度について、その適用範囲を拡充するほか、国際観光ホテルの建物等に適用する耐用年数を短縮し、民間外貨債の利子を非課税とする措置を講じております。
第二に、技術開発を促進するための措置といたしまして、試験研究費が増加した場合の税額控除制度を拡充する一方、電子計算機産業の育成に資するため、電子計算機買い戻し損失準備金の制度を創設することといたしております。
第三に、中小企業の構造改善を促進するための措置といたしまして、特定の商工組合等の組合員の工場、機械等、及び事業協同組合等の共同教育施設について、割り増し償却制度を新設するほか、中小企業者の機械等の割り増し償却制度の業種の指定期間を延長することといたしております。このほか、中小企業構造改善準備金等、中小企業に関する課税の特例について、その適用期限を延長することといたしております。
第四に、既存の措置のうち、特定設備を廃棄した場合、及び合併をした場合の税額控除制度について、その適用範囲を縮減する等の合理化を行なう一方、その期限を延長することとし、また、価格変動準備金制度について、その積み立て率を引き下げて、整備合理化を行なうことといたしております。
第五に国債についての別ワク少額貯蓄非課税制度、原油備蓄増強のための石油貯蔵施設、及び大都市の地中送配電設備についての特別償却制度を創設し、また期限の到来するその他の特別措置については、実情に応じて期限の延長を行なうことといたしております。
なお、以上のほか、収用等に伴う圧縮記帳の特例等に関する申告要件についての宥恕規定を設ける等、所要の整備合理化を行なうことといたしております。
以上、四法律案の趣旨について、御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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製造たばこ定価法の一部を改正する法律案
(内閣提出)、酒税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、物品税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/3
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004・小平久雄
○副議長(小平久雄君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。阿部助哉君。
〔阿部助哉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/4
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005・阿部助哉
○阿部助哉君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました製造たばこ定価法の一部改正、酒税法の一部改正、物品税法等の一部改正の三法律案に関して、質問を行ないます。
これらの改正案は、たばこ、酒及び幾つかの製品に対する間接消費税を引き上げるという、一見定価表の改定のようなものでありますが、その社会的、政治的影響は、見のがすことのできない重要問題を蔵しておるのであります。
たばこと酒の値上げに対しては、ごうごうたる非難の声があがっております。国民世論の判定は、すでに明らかであります。すなわち、値上げには絶対反対であります。総理大臣、大蔵大臣のお耳にこの大衆の声がはたして聞こえておるかどうか、まずその点をお伺いいたします。
たばこ、酒に対する税金の家計に占める比重は、低所得者であるほど重くなる逆進性の強い税金であります。所得税の課税最低限引き上げの恩恵を受けることのできない人々、すなわち所得税を納めるほどに達しない低所得者、生活保護家庭からもしぼり取ろうとする貧乏人泣かせの税金であります。(拍手)しかも、たばこや酒は、普通にはやめようと思ってもなかなかやめられるものではない。税金を取り立てるほうでは、むしろその点がねらいだとも聞いておりますが、人情の弱みにつけ入って税の増徴をはかろうとする財政政治の非人間的な姿勢に問題があります。佐藤首相は、人間尊重を看板にして政権につかれたと思うのでありますが、御所見を承りたいのであります。
たばこと酒の税金を引き上げることについて、政府の理由とするところは、税制調査会答申によるものと思われる。税調答申は、要するに、一つは、酒の値段は所得や物価の水準に比べて安過ぎる。たばこは、原価の上昇にかかわらず、昭和二十六年以降据え置きだ、だから引き上げよ、もう一つは、所得減税を行なったあとの穴埋めということであります。
この第一の点でありますが、現在、国民が何よりも物価問題に最大の関心を寄せているのは、所得に比べて物価が高過ぎるからであります。高いのは、所得ではなくて物価、物価なのであります。また、ほかの物価に比べてたばこや酒の値段が安過ぎるというが、これまた事実に全く反した詭弁であります。酒造会社が原価を割って酒飲みに奉仕しているという話は聞いたことがありません。専売公社は、普通のメーカーに比べれば暴利をあげていることになります。われわれ国民は、経済法則から見て、たばこと酒をもともと不当に高く買わされていたのであります。普通の計算でいくならば、すなわち税金分を差し引けば、いま一箱七十円のハイライトはわずかに二十二円五十銭、一本百二十円のビールは六十円で買えるのがあたりまえであります。それだけの値打ちのものなのであります。
このように、現状でも五〇%を上回る税金分だけ、値打ち以上に高く買わされているのであって、所得や物価に比べて安過ぎるとの前提は、全く政府の独断でありまして、国民は断じて納得のできないところであります。(拍手)
第二の点でありますが、本年度の物価は、政府の控え目の見通しによっても、昨年度の物価上昇率をはるかに越えるのであります。したがって、名目所得の伸び以上に税金が大幅にふくらむものであって、ほうっておいたら大増税になってしまいます。そこで、所得税の課税最低限の引き上げにより、その大増税の勢いに若干の手かげんを加えたにすぎないのであります。これを減税と呼ぶのは、うそになります。
このように、税調の値上げに対する考え方は根本的に間違っている。大蔵省の隠れみのであるとか御用調査会といわれるのはけだし当然であります。(拍手)たばこと酒の値上げに関する提案の前提が間違っておると思いますが、大蔵大臣いかがでありますか。
佐藤総理は、当面、政治の再重要課題は物価問題であると言明されております。政府みずから、その気になればコントロールのきく公共料金、その公共料金が物価上昇の先頭を走っておるではありませんか。酒、たばこに至っては、じかに政府の手の中にあるのであります。提案されたこれらの法案を撤回するか、それとも強引に成立をはかるか、首相発言の真偽を映す鏡として国民大衆の注目するところであります。総理の歯切れのよい御答弁をお願いいたします。
酒については、すでに業界から、この機会に原料米の値上げを理由とする値上げ実施の要求が打ち出されております。政府はこれにどう対処するか、大蔵大臣に承りたい。
課税は公平に行なわれなければならない。生計費に食い込むような課税を行なってはならないことは税制の原則であります。ところが、わが国の税制が大資本の保護助成と経済成長優先を基本としておりますことは、だれの目にも明らかなところであります。たとえば、所得税の納税者は約二千万人、人間らしい生活もできない人々にまで収奪の手を伸ばしておりながら、一方、資産家にはかの悪名高い利子配当の特別減免を実施いたしております。法人税のごときは、特別の減免措置項目があまりにも多く、税法の本体と特別措置のいずれが基本かと怪しむほどに大資本の保護助成がなされておるのであります。利子配当の減免措置とともに、いつも非難の対象となっておるところの交際費について見ますと、この交際費というものは、物価をつり上げる作用を働くことがありましても、その逆ではありません。経済的に見ても、また道徳的に考えても、マイナスの費用であります。
われわれは、税金だからといって、そのすべてに反対するものではありません。しかし、それには、原則に従い、公平な税制を国民大衆とともに切望するものであります。この際政府は、貧乏人泣かせの酒やたばこの値上げをする前に、利子配当の特別措置の撤廃、六千億にも達するばく大な交際費への全面課税に踏み切るべきであると思うが、大蔵大臣の御所見をお伺いしたいのであります。(拍手)
次に、大蔵省編集の「財政金融統計月報」百九十一号に、税金担当の局長が「これからの税制」と題する論説で、「酒税は、気持よく酔っている間に支払われ、たばこ専売益金は、紫煙をゆったりとくゆらしている間に納まる仕組みとなっている」と述べております。一日の労働で疲れた亭主のために晩酌の酒を買う主婦が、酒屋の前で、ためらい、ためらい、やりくり算段をめぐらすその心情や、いわゆる百円亭主の小づかい銭をめぐるトラブル、普通の家庭では、酔っぱらったり、紫煙をくゆらしたりする前に、こういう段階を踏まなければならないのであります。税金を取り立てる人と勤労大衆との間には、問題に対する焦点の置き方がこんなにも違うのであります。勤労大衆の生活実態にあえて目をつぶって課税をすることは、あまりにも冷酷であります。今日、政治の重要課題は、平均以下の庶民の生活水準引き上げにあることを銘記すべきであると思うが、大蔵大臣の御所見をお伺いしたい。
政府当局の答弁には、えてして戦前との比較や諸外国との比較によってみずからの施策の弁明を行ない、質問の焦点から離れた答弁が多いのでありますが、特に直接税と間接税との比率を、これら外国の例をとってみても、所得水準の差異、財政構造の違いなど、通り一ぺんの比較はほんとうの比較にならないので、その点に関する御答弁は無用であります。
最後に、今日、資本主義世界をあげて重大な経済的危機に直面しております。アメリカのドル危機とベトナム情勢がそのことを最も雄弁に語っております。わが国経済が例外であるとは当局者も思ってはおられないのではないでしょうか。この危機を勤労大衆の犠牲によって乗り切る、つまり大資本に対するフルサービス、アメリカに対する協力、さらには経済的、軍事的対外膨張政策のための財源を大衆課税によってまかなうため、政府はその財源に苦慮しておる。その打開の第一歩が十三年ぶりのこの間接税、物品税の大増税であります。政府は、この大増税を突破口として、次には最も悪質な大衆課税である売り上げ税の実施に踏み切るのではないか。この点、国民大衆の注目し、かつおそれているところであります。政府は、売り上げ税の実施はやらないとここで明言できるかどうか、はっきりとお答えを願いまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/5
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006・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
世論、大衆の意見に十分耳をかすかどうか、まず第一のお尋ねでございます。ただいま民主政治の世の中でございます。この時期に政治を担当する者が国民の意見を聞く、これは当然のことであります。御承知のように、今回の予算につきましても、所得税の減税についてはたいへんな支持を得ております。また同時に一面において、たばこその他の点で値上げをせざるを得ないやむを得ない事情も国民はよく承知をしていただいております。
次に、私は、さらにお答えをいたしますが、佐藤内閣は物価の問題を最大の課題として取り組んでまいっております。十分その効果があがらないといって社会党の諸君は気をもんでいらっしゃるようでありますが、いましばらく時間をかしていただきたい。必ず効果をあげます。内閣は総合的施策をこの上とも積極的に展開するつもりでございます。
次に、今回の措置につきまして、ただいま私は所得税の減税の話に触れました。申すまでもなく、こういう際でありますから、公共料金その他を値上げするということは物価に影響する、そういう観点からできるだけこれは避けなければならない問題だ、これは御指摘のとおりであります。しかし、一面で、四十三年度の予算編成にあたりまして、私どもはただいま申すような低所得者の所得税も、減税の計画を公約どおり実施しております。同時にまた、財政の体質を健全化する、こういう要請にもこたえなければなりません。そういう点で、ただいま一部の値上げ、これもやむを得ない措置でございまして、公共料金、いわゆる鉄道定期の値上げなども最小限度にこれをとどめました。
また、酒、たばこがただいま問題になっておりますが、これも先ほどの大蔵大臣の説明にありますように、いわゆる大衆酒、そういうものは、据え置くことにいたしまして、これには触れておりません。また、たばこにつきましても、最も消費の多いハイライトについては、その値上げ幅を縮小いたしましたし、さらに朝日、ゴールデンバットは値上げをしない、据え置いたような次第でございます。私はこれらの点を十分説明することによりまして、国民の御理解を得たいと思います。
ただいま社会党の立場から御批判をいただき、政府はいさぎよく本案を撤回しろ、そうして出直せ、こういうことがございましたが、歯切れのいいことばで御返事いたしますが、政府は慎重に審議したのでございますから、この際撤回する考えはございません。はっきり申し上げます。
その他は大蔵大臣からお答えいたします。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/6
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007・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) ただいま租税の逆進性のお話がございましたが、およそ間接税は逆進性を持っておりますので、日本におきましては、日常生活必需品にはただいま間接税を課税しておりません。もし課税しておる物資がございましても、生活必需品と認められる一定の低い額までは税金をかけないというような措置もとっておりまして、この逆進性の問題については非常に注意してやっておるところでございますが、そのうちでも酒とたばこというものは、ある程度高率な負担を課するということは、これはわが国だけじゃなくて、各国とも財政の慣例、通例といまなっておるものでございます。したがって、先ほど、酒、たばこは安いから税金をかけるのだということは承知できないというお話でございましたが、これは確かに安いからもっと税金をかけるというものではございませんで、もともとこの二つは、どこの国でも高率な課税をしておるというのが実例でございます。特にこれが定額税制度でございますために、物価水準が上がったり、所得水準が上がったりするのに伴って、相対的に税負担が下がっておるという関係がございますので、この調整をしようとするのが今回の値上げでございまして、おっしゃられるように、安いから税金をかけるという意味ではございません。
それから酒造業者についてのお話がございましたが、いま酒造業者が、政府の払い下げ米の値上がりとか、あるいは労務賃の上がり、販売経費が上がったというコスト高から値上げについての要望が出ておることは十分承知しておりますが、しかしこれは、いわゆる便乗値上げというふうに言うことは少し妥当ではないように思われます。やはりコスト増によって値上げの要望があるということは確かでございますが、しかし政府としましては、物価政策の見地から見ましても、また消費者に、増税による値上げ分とコストアップによる値上げ分は、これははっきり区別する必要があると私どもは考えますので、政府が、今回の値上げの措置をとる以上は、業界に対しましても極力値上げは自粛していただくよう、いま要請しているところでございます。
それから低所得者に対しては、生活水準の引き上げが当面の急務であるというふうにおっしゃられましたが、これは同感でございまして、税から見ましたら、これは課税最低限の引き上げということがいま急務であるというふうに考えます。所得税の税率についていろいろ御希望がございますが、まだ税率をいじるよりも、私は課税最低限を引き上げる仕事のほうが先だというふうに考えて、今回もその方針で、中小所得者のための所得税の改正を行なった次第でございます。
それから売り上げ税の問題がございましたが、これは日本の租税体系を大きく変更することで、大きい問題でございますので、これは将来の長期税制のあり方として、経済の動向とからんでこの問題はどう考えられるかという課題を税制調査会にいま出して、ゆっくり研究してもらっておるという段階でございますので、いますぐに、この売り上げ税というようなものを私どもは考えておるわけではございません。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/7
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008・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 河村勝君。
〔発言する者あり〕
〔国務大臣水田三喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/8
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009・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 租税特別措置でございますが、これは御承知のとおり、配当利子課税の合理化を昨年はかったばかりでございます。したがって、あと二年の暫定期間がございますので、この期間の間に、いままで実施した実績をよく調べながら、次の機会においてこの改定はしたい、昨年実施したばかりでございますので、今年はこれを変更しないことにいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/9
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010・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 大蔵大臣に申し上げます。発言を補足する場合は、議長に通告の上でなされるよう御注意いたします。
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011・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 河村勝君。
〔河村勝君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/11
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012・河村勝
○河村勝君 私は、民主社会党を代表して、ただいま提案された酒税法の一部を改正する法律案、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案、並びに物品税法等の一部を改正する法律案について、若干の質問をいたします。
昭和四十三年度予算案を中心をする政府の施策を通じて、そこには国民生活疎外の傾向がきわめて顕著にあらわれていることを私ははなはだ遺憾に存ずるのであります。(拍手)社会保障の停滞、佐藤内閣の一枚看板である社会開発は、停滞からもはや後退を始めております。物価対策はかけ声だけ、今度はいよいよ増税であります。こう申せば、政府は、必ず内外のきびしい経済情勢を説いて、これくらいのところが精一ぱいのところだという弁明をされるに相違ありません。しかしながら、私は今日の経済危機に対処する政府の姿勢そのものに、実は、根本的な問題があると思うのであります。
その一つは、当面する国際収支の悪化に対処する政府の態度であり、いま一つは、いわゆる財政硬直化に対する政府の心がまえであります。
第一に、政府は、現在危機に直面しております大きな国際収支の逆調を、すべてポンドの切下げあるいはドル不安から起こった国際経済環境の悪化にその責めがあるかのごとき顔をして、当然であるかのように景気過熱対策のための財政規模圧縮を強調しております。しかしながら、今日に至るまでの経緯をつぶさに検討してみれば、国際収支の大赤字には、国際経済環境の悪化に帰せらるべき要因はきわめて少なくて、ほとんどすべてが政府の経済施策の欠除に由来するものであります。口に安定成長を唱えながら、昨年春以来の設備投資暴走に対して、何ら有効な対策を講ぜず、走るがままにまかせたからではないのですか。いかに今後の国際経済環境がきびしくとも、昨年来からの施策に誤りがなければ、これほどの大騒ぎはしないで済んだはずであります。
財政硬直化という現象についても同様であります。政府は、財政硬直化打開ということをにしきの御旗にして、しゃにむに自分たちの主張を通そうとしております。一体、財政硬直化というのは何であるか。要は行政機構のとめどのない膨張、それから放漫な補助金行政などから硬直化現象が生まれて、それがたまたま節度を欠いた公債政策と競合したがゆえに財政の弾力性を喪失させたということに帰するのではありませんか。硬直化打開の名のもとに、そのしわ寄せを国民生活に持ち込もうとするのは、あたかも賊軍がにしきの御旗を盗用するにひとしきものではないでしょうか。(拍手)
今日の事態を招くに至った政府の失政に対して、佐藤内閣には何らの反省もなく、また、したがって、危機打開に真剣に取り組む誠意も勇気もないようであります。だから、やることもきわめて不徹底であって、防衛費をはじめ、削減可能な経費が数多くあっても、何らかの抵抗の強いものには避けて通ってしまう。だから、結局のところは、財政規模は、形式的に見てもせいぜい景気に対して中立型、実質的には、景気抑制どころか、むしろ景気刺激型の予算規模をつくり上げてしまっているのであります。それだけではありません。なお悪いことには、抵抗の強いところに目をつぶるかわりに、弱いところには遠慮なく耐乏を強制しております。
ただいま政府の企図している酒、たばこなどの値上げのごときはその代表的な例であって、間接税の負担の適正化であるとかあるいは合理化だとか称しておりますけれども、しょせんは所得減税の財源を大衆課税に求めようとする全く矛盾した財源対策と言うほかはないのであります。(拍手)また、国民の悲願ともいうべき住宅難の解消の問題にいたしましても、重点の置きどころを知らない一律圧縮の犠牲になって、政府みずからつくった五カ年計画すら、もはや完全に目標達成の可能性を失ってきているではありませんか。
佐藤総理にお尋ねいたします。
国民大衆に耐乏を求めようとするならば、政府みずから過去の非を率直に認めて、しかる後にまずみずからなすべきことを果敢に実行しなければならない。それが正しい政治のあり方であるし、また、それでなければ国民は決して犠牲になることを納得できないものだと考えるが、総理の所信はいかがでありますか。
次にお伺いをいたします。政府は千五十億円の所得税減税案を提案されようとしております。しかしながら、酒、たばこ等の値上げ並びに物品税の引き上げによって、この減税分は完全に相殺されます。したがって、その他一般物価の値上がり分だけは完全に実質増税になります。口に減税を唱えながら、実質的に増税を行なおうとするのは、そもそもいかなる意図に基づくものでありますか。
第三にお尋ねをいたします。政府は物価の安定を明年度の最も大きな課題の一つとしております。先ほどの総理の答弁にも、また施政方針演説の中でも、消費者物価の上昇を四・八%以内にとどめるべく最大の努力をする決意だと述べておられます。それにもかかわらず、酒、たばこなどの値上げによって、一般物価上昇の火つけ役を政府みずから買って出る、それは矛盾そのものだとお考えにならないのかどうか。
第四に、財源を大衆課税に求めるのは、いかなる場合でも最後の手段であります。昨年の暮れ、政府は財政審議会の応援を求めて、政府の予算編成方針の正当性を裏づけをしてもらいました。しかし、政府はこの片棒をかついでくれた財政審議会の答申ですら、都合のいいところだけつまみ食いをして、骨の折れるところはほおかぶりをしております。この報告は、財政硬直化の元凶ともいうべき行政機構の簡素化と補助金の整理、合理化について勇断をもって臨むことを政府に要望しております。あなたはそれに対して、総理大臣としてどれだけの検討をし、どのような決断を下されたのか、具体的にお伺いをしたい。
また、それ以前になすべきことはまだあるはずであります。これは先ほど阿部君が触れた問題であって、悪名高い利子配当分離課税の期限を繰り上げること、あるいは交際費課税を強化すること、こういう問題について、先ほども大蔵大臣の答弁がございましたが、まずこういうものに手をつけるのが至当ではないかと考えるが、総理大臣に重ねて御答弁を要求いたします。
次に、大蔵大臣にお尋ねいたします。
四十三年度の租税増収見込みは九千億に近い額に達しております。そのうち所得税の増収見込みだけで、減税予定分を含めて三千九百二十三億円に達します。この所得税増収見積もりの大部分は——来年度、給与所得について一一%のべースアップを見込んでおります。営業所得についても同様に一一%のアップを見込んでおります。その一一%のアップのはね返り分がその大部分を占めておるわけであります。言いかえれば、世界にたぐいまれな高い累進税率のおかげで、これだけもうかるわけであります。それならば、四千億円に近い増収分の中から千億円程度のものは納税者にそのまま返すのが当然だと考えるが、大蔵大臣の所見を伺いたい。
第二に、たばこについては長い間価格を据え置いているということを値上げの理由としておられます。なるほど、昭和三十年ごろと対比して、専売益金率は多少低下をしております。しかしながら、いまなお益金率は六〇%をこえております。定価の六〇%以上が税金なのです。そればかりではありません。専売益金総額のごときは三十年度に対比して二三〇%という大増収であります。たばこの販売高は年間二千億本、老若男女、たばこを吸う者も吸わない者も平均して一人一年二千本、一日六本を消費するという大衆消費物資であります。これほどもうかり、これほど財政に寄与している状態のもとで、今日物価安定を至上命令としている時期に、何ゆえに値上げをされようとなさるのでありますか。(拍手)酒についても同様であります。昭和三十年度対比、酒税の増収率は清酒で二二六%、ビールや洋酒に至ってはたいへんであります。ビールは四五三%、洋酒は四三六%、一体これでどこに増税の理由があるのでありますか。
以上の諸点について、政府の誠意ある答弁を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/12
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013・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 河村君にお答えいたします。
政治をする者の姿勢について冒頭にお話がございました。私も同様の感を持つものであります。国民の協力を得るためにはみずから範を示すこと、これが必要だと思います。しかし、このことはいわゆる戦時中にしばしばありましたような率先垂範型ではございません。私はむしろ国民の協力を求める、こういう意味において先憂後楽型の姿勢で臨むのが政府の態度ではないか、かように思います。
次に、今回の財政的措置、これはどうも増税案ではないか、こういうお話でありますが、十分御審議をいただけば、いわゆる増税案ではない、政府のいうところ、率直に申しまして、増税減税、プラスマイナス・ゼロになっている、かように申しておりますが、いわゆる増税型ではございません。この点はよくひとつ御了承いただきたい。また、十分これから御審議をいただくのでありますから、その際にお願いをいたします。
そうして、ただいま税制調査会の答申に基づいて、私どもはこの案をつくったのであります。その一部は、御指摘になりましたように、物価問題が大事だと言うにかかわらず、物価の火つけ役である公共料金その他のものを上げている、これはとんでもないことじゃないかというおしかりを受けましたが、この公共料金やあるいは政府がきめる酒、たばこ等の値段を上げたこと、これは、見方によりましては、なるほど現在ただいまの状況においては悪影響で、好ましい状態ではございません。しかし、このことが財政の健全化をもたらし、同時に物価安定、長期的に見れば、これは必ず国民の要望される物価の安定に寄与する、こういうものであることを御了承いただきたいと思います。
次に、行政機構の簡素化並びに補助金の整理の問題についてお尋ねがございました。この問題は河村君の御指摘のとおり、政府は勇断をもってこれと取り組まなければならない、かように思います。すでにこの問題については、補助金等合理化審議会がさきに答申を出しておりますし、臨時行政調査会なども三十九年に意見を述べておられます。政府は、ややおくれておりますが、今日ようやくこれらの問題と取り組もうといたしております。したがいまして、ことしの予算は御審議をいただいておりますが、新しい補助金はつくらないという方針で、また補助金を必要とするならば、いままでの補助金を整理して、そして新しいものに取りかかるということで予算を編成いたしました。
また、行政機構の問題も、一省一局廃止ということをいたしました結果、新しい局の増設はございませんし、公社、公団も新しいものはございません。そういう意味で、まず消極的な目的は達したと思いますが、この上さらに三カ年計画で積極的に法令、制度その他全般についての検討を加えて、そして行政改革本部でこれらの問題を取り上げ、最終的には閣議で決定してまいるつもりでございます。これも三カ年計画でございますから、いましばらく時間をかしていただきたいと思います。
また、利子配当税並びに交際費の問題についてお尋ねがございました。先ほど大蔵大臣がお答えをいたしたとおり、これらのものはすでに四十二年度に改正をいたしまして、ただいままだ期限が到来いたしておりません。あと三年で期限が到来する、かように私理解しておりますが、この期限が到来すれば、また、それまでもなく、こういう問題が固定化しないように、流動的にこれらの問題にも真剣に検討を加えて取り組んでまいるつもりでございます。なるべく御趣旨に沿うようにしたいものだと思っております。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/13
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014・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 昭和四十三年度の源泉所得税の見積もりにおきましては、御指摘のように、個人給与の伸びを一一%と見ておりますが、これは政府の経済見通しにおける雇用者所得の伸びを勘案して算定したものでございまして、この一一%はベースアップ率を見込んだものではございません。四千億円の所得税の自然増収の中には申告所得とかあるいは利子配当、こういうようなものの増収分が含まれておりますので、給与所得税の増収分だけを見ますと、来年は千六百七十三億円という計算になっております。したがって、この千六百七十三億円の給与所得税の増収に対して一千億円の減税ということでございますから、減税の財源がそう豊富であるということは言えないだろうと思います。
それともう一つは、この減税について御判断を願うためには、一年、単年度で判断を願うのは非常に無理だと思います。昭和四十年度をかりに境にして見ますと、その前の三年間は自然増に対する所得税の減税が大体一四%でございました。ところが、四十一年、二年、三年と見ますというと、特に四十一年は公債を発行したにかかわらず、三千億円の大幅減税というようなことをやりましたために、この三年間は、平均すると、やはり一六%以上の減税ということで、過去の減税に比べてこの三年間の減税はそう減っていないというようなこともあわせて御判断を願いたいと思います。
それから酒、たばこの税が年々ふえておるということでございますが、これはこのとおりでございまして、他の税金一般と同じようにふえて、これが自然増となっておるものでございますが、税額がふえるということと益金率がふえるということとは別ものでございまして、たばこの益金率を申しますと、昭和二十六年には七三%以上の益金でございましたが、それがだんだんに販売量の増加にもかかわらず、どんどん率は減ってまいりまして、本年はすでに五十何%と、六〇%を切っておる状態でございます。したがって、この所得の水準、物価水準の上昇に伴って相対的に低下をしておるという点から、この税の調整をはかろうとしたのが今度の値上げでございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/14
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015・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 田中昭二君。
〔田中昭二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/15
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016・田中昭二
○田中昭二君 私は、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案外二法案に対し、公明党を代表して質問をいたします。
わが国の税が重税で、しかも不公平であることは、万人の認めるところであります。この重税、不公平に対する不満が解消され、納得のいく税制改正がなされることを、国民は切望しているのであります。(拍手)
来年度の税制改正では、まず所得税の初年度千五十億円の減税を行なう一方、間接税は、たばこの値上げ、酒税の引き上げ、物品税の一部引き上げ等によって千五十億円の増税となり、その増減税は差し引きゼロとなっているのであります。
ポンド切り下げをはじめとし、米国のドル防衛強化などによって、わが国の国際収支は悪化し、四十二年度約七億ドルの大幅赤字に続いて、四十三年度も三億五千万ドルの赤字が見込まれております。この国際収支の悪化は、所得倍増等のバラ色の幻想のもとに続けられた長年の放漫財政のとがめともいうべきであり、この改善のためには、来年度はきびしい景気抑制策を避けることはできませんし、また、国債発行額を減額することも必要となってくるのは当然のことであります。
このような事情を背景にして、来年度の減税のための財源が窮屈であり、税制改正、すなわち減税が困難であるという政府の説明があったわけであります。しかし、このような考え方は、国民を説得する力を持っていないのであります。財政硬直化のもとで、資金の配分、選択はきわめてむずかしい問題をかかえているのでありますが、だからといって、それを口実に、減税問題が後退するようなことは絶対許されないことであります。このような放漫財政の累積によってもたらされた過酷な重税をどのように解消するのか、国民の期待は切実でありますが、来年もそれは裏切られたのであります。その政治責任は重大といわねばなりませんが、政府はいかなる見解を持っておるのか、承りたいのであります。
いま、その実質減税ゼロの実体を考えてみるとき、標準世帯の所得税の課税最低限を十万円引き上げて、その減税分財源を、たばこ価格、酒税、物品税等の引き上げに求めたことがそれであります。これは明らかに、国民大衆にそのしわ寄せをし、現在の税制のもとにおいて、むしろ増税という結果をもたらすのであります。これでは、将来にわたって、間接税の増徴をしなくては所得税減税ができないという不安な印象を残すものであり、また、約四兆七千億にものぼろうとする租税収入から、わずかに一千億円の減税財源もつくれないで、しかも増税という方法によらざるを得なかった政府の態度は、全く大衆不在の姿勢といっても過言ではないのでありますが、総理の所見を伺いたいのであります。
次に、酒税の値上げについて具体的にお尋ねいたします。
昭和九年から同十一年ごろのいわゆる戦前は、清酒一本の平均値段は一円五十銭でありました。そのうち税金は三十五銭、すなわち二割三分です。その後だんだんと税金は上がって、今回の改悪案では清酒一本が千百十円となり、そのうち税金が五百十三円、約四割六分となるのであります。先ほどの二割三分と比較して、約二倍という重税になるのであります。また、戦前と現在の物価上昇の倍率を五百倍と見て、その割合から見れば、清酒一本せいぜい七百五十円が相当であります。それが千百十円になり、約三百六十円の五割高となるのであります。負担する税金も、百十五円が五百十三円となり、約五倍という想像もつかない高い税金であります。この五倍近い負担の増加率を、佐藤総理並びに水田大蔵大臣はどう考えているのか明らかにしていただきたい。
さらに、この問題は、物価上昇の要因でもあるといわなければならない。宮澤経済企画庁長官にも、この点を具体的に説明していただきたいと思います。
政府は、今回改正しなければ、物価の上昇とのつり合いから見て、意図せざる減税になるなどといって増税をはかろうとしておりますが、それはあまりにもてまえがってな理屈であり、了解に苦しむのであります。なぜかならば、政府は、税金の負担をできるだけ軽くして、消費者にも、生産者にもともに喜ばれるようにするのが当然ではありませんか。ここで特に聞きたいことは、酒の税負担割合が、昭和二十五年において七割八分を最高に年々下がってきて、昭和四十一年には四割までになってきたのを、物価の上昇に拍車がかかっている今日、なぜ増税しなければならないのか、その理由の説明を求めるものであります。
また次に、直接税と間接税の負担が不均衡になってきたという理由から、間接税である酒税を上げるというのはまことに筋違いだと思うのであります。間接税が低いのではなく、逆に直接税が高過ぎるのであります。このような納得のいかぬ不均衡論議をやめて、今回の酒の値上げは避けるべきであります。この酒の増税で、すなわち酒の値上げで一番苦しむのは、消費者大衆と生産販売業者の双方ではありませんか。特に中小企業の生産者は、実収入が増加するわけではなく、売れ行きにも重大な影響が考えられ、実質的な欠損が予想されるのであります。総理は、それを御存じなのか、その責任はどうおとりになるのでしょうか、お伺いいたします。
次は、物品税についてお尋ねいたします。
この税金は、戦争中に戦費調達のために創設された税金であり、戦争の悪夢、亡霊がしみ込んだ悪税といわなければなりません。この悪税たるゆえんは、本来奢侈品にのみ課税すべきものを、生活必需品にことごとく課税しようとすることであります。いま日常生活の中からその実態をあげれば、化粧品、嗜好飲料、コーヒー、ココア並びにテレビ、冷蔵庫、家具等の品物には、すべて高い税金が課せられております。その反面、ぜいたく品の高級呉服類には全く課税されていないのであります。本来公平を期さなければならない税の徴収が、こんな片手落ちでよいのか、私は理解に苦しむのであります。
政府は、口では、物品税はぜいたく品にのみ課税すると言明しておるが、実際は反対であり、逆に、大衆の生活必需品に多くの高い税金をかけていることは見のがすことのできない事実であります。消費者の事情も考えず、貧富にかかわらず、同じ条件で税を負担させることは、まさに不公平、不合理きわまる悪税というべきであります。このような物品税は、根本的に改正しなければならないのは当然のことであります。それにもかかわらず、なぜ増税をはかろうとするのか、この点、責任ある答弁を総理にお願いしたい。
また、この物品税の課税が不当である一例として、マッチに対する課税を見れば明らかである。大蔵当局の説明によれば、マッチの課税は、その理由は何にもない。生産業者の希望により、課税してもらわねば生産本数がわからなくなるからだという、全く根拠のないものであります。総理、以上のような無見識な政策、物価上昇による国民生活の圧迫、この大衆を無視した増税の強行は断じて許すことはできません。すみやかに大衆課税の増税をやめ、国民の納得する方向に改めるべきであると思うが、総理並びに水田大蔵大臣の所見を伺いたい。
次に、たばこの値上げについてでありますが、専売公社総裁は、今回の値上げについて、「たばこの原料並びに生産量はここ十年間に約八割も上がっているのに、たばこの価格は上がっていない、また、企業努力も限界にきたので、原料並びに生産量の値上げ分をこれ以上吸収できない段階にきている、また何といっても、政府からたばこだけで五百五十億の増収を上げよという至上命令がきているので」と、値上げの理由を述べているが、たばこの値上げは政府主導型物価上昇の典型的なものであり、他の物価に同様な影響を与えるものであるが、あえて値上げしようとする理由を率直に述べていただきたい。
聞くところによると、輸入たばこの混合率が低減しているということであります。優良品の米国バージニア産の原葉の量を減らしてまぜ合わせている事実は、そのたばこの品質を低下させていることであり、しかも、それを同じ定価で販売していること自体が実質的な値上げであり、政府の欺瞞政策といわざるを得ません。
次に、小売り業者が、その仕入れについて、売れ行きの悪い品物までも割り当てられるために小売り業者の利益が減り、人知れぬ大きな損失と被害をこうむっているのであります。もっと小売り業者の実態を調べ、実情に即した配送方法を考え、改めるべきであると思うがどうか。
次の問題として、たばこの独占的輸送における専売公社とその子会社のたばこ配送会社及び日本通運の結託による不合理は、一般にもよく知られているところであります。このたばこ輸送における複雑多岐化によって生ずる国費の浪費は、近代経営におけるガン的症状であると考えます。この流通機構を改正することにより、約二一%の流通費が節減されるともいわれている。この節減分により財源確保が十分得られるではありませんか。このように、企業を経営上、運営上から近代化、合理化してこそ、抜本策といえるのであります。これに対する総理並びに大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。
また、中小運送業者が締め出されている事実です。大企業優先の政府の施策からすれば、中小業者の倒産などやむを得ない事柄かもしれませんが、もし、政府に中小企業育成のあたたかい援助の強い意思があるならば、一日も早く悪弊のあるこの問題について改めるべきと思うが、その施策について総理並びに大蔵大臣に伺いたいと思います。
このように見ると、今回たばこの値上げをすべき正当な理由が見当たらないどころか、逆にたばこ企業の近代化、合理化によって、さらに財源が確保できるという確信すら持てるのであります。したがって、政府の値上げ案は、現状無視以外の何ものでもなく、値上げの必要性は全くなしと断ずるものであります。
以上、今回の税制改正について述べましたが、国民は重税、不公平が一日も早く解かれんことを願っております。総理は、課税最低限を百万円まで引き上げることを公約しておりますが、これを早急に実施し、また、その財源は間接税の増徴に求めてはならないと主張するものであります。国民から過重な税金を徴収し、この重税にささえられた国家繁栄であってはならない。あくまでも個人の幸福と社会の繁栄こそ実現すべき目標であり、これが税制の当然の論理であります。この意味において、国民の税負担をやわらげ、公平にするべく、根本的税制の改正こそが急務であります。
総理の勇断を心から期待し、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/16
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017・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 田中昭二君にお答えいたします。
私が準備してきたこととやや違うことをいろいろお尋ねになるものですから、話が十分つかめないで、あるいは私が少し的はずれのことを申すかわかりませんが、お許しを得たいと思います。
そこでまず第一に、現在の税金がたいへん高い、しかも不公平だ、重税にして不公平だ、この断定をされました。しかし私は、諸外国と比べてみまして、今日のわが国の税は、国民にたいへん軽いものを課しておる、かような確信を持っております。いずれこれらの点は数字で他の機会に十分お話をしてみたいと思います。
また、不公平だと言われるのは、おそらく租税特別措置の問題だろうと思います。この租税特別措置は、それぞれ政策目標があって、その措置が講ぜられておるのであります。したがいまして、これをただ単に不公平だと非難することは当たらない。十分その政策目標を達した、そういうものがあるかどうか、そこを御審議いただきたいと思います。
そこで、今日国民に対してどういうように考えておるかという基本的な態度についてお尋ねがありました。御指摘になりましたように、税はもちろん公平でなければなりません。そうして、その上軽いことができればそれにこしたことはありません。しかし、ただいまの状態では、いわゆる財政需要はたいへん大きいのであります。私どもは、社会保障をはじめ、さらにさらにもっと財政支出をふやして、そうして国民の生活を豊かにしなければならない、かような状態であります。そういう際に、一方で、税を減らせ、積極的に仕事をしろ、かように言われましても、それはできることではありません。二つは、二律背反しないような状態においてこれが行なわれるのであります。しかし、御指摘になりましたように、どこまでも税は公平でなければならないし、また、低所得層に対しては負担を重くしないように、これらの方々の生活の実情に即するように、さらにあたたかい政治をしなければならぬこと、これは御指摘のとおりであります。私は、そういう意味で今日いろいろ努力してまいっておりますが、この上ともさような方向で続けて努力を払うつもりであります。
また、御指摘になりましたように、ただいま税の問題もさることながら、物価の問題が今日私どもの内閣に課せられた重大なる課題だと、これはもうしばしば申しております。ただいまこの税の問題とあわせて、物価の問題とも関連をしてお尋ねにお答えをしなければならないと思っております。
そこで私は、先ほども河村君や阿部君にもお答えいたしましたように、現在の時点においてはあるいは逆行しているように見えるかわからないが、長期的に見れば必ず財政も健全化し、物価の安定ができるんだ、そこに一つの希望を持っていただきたい、そういう意味でぜひとも御理解を賜わりたい、かように申し上げておるのでございます。私は、先ほど来田中君のお尋ねになりました点についても、さような意味で私どもがさらに努力すべきその方向を示された、かように御意見を伺っております。
次に、物品税について御批判がございましたが、これはいわゆるぜいたく品を軽く見ているというようなものではございません。いまの日本の物品税は、いわゆる売り上げ税ではございません。この物品税は、高級なものに対しては高い税を課しております。大体担税力のある者、こういう立場から五%以上四〇%まで税の率が変わっておると思います。これらの点で、いわゆる高級品につきましてはその担税力がありとしてこれを課しておるのでございまして、いわゆる御批判は御批判ですが、無視している状況ではございません。
次に、マッチの問題についてお尋ねがございました。確かにマッチに課税しておる、こういう点で強い御批判があるのだろうと思います。このことは、いずれ今後税制調査会等の審議を通じましてその負担軽減をはかるべきだ、これはすみやかに改めよ、かような御意見が述べられましたが、私どもも、その方向で前向きにこういう問題と取り組んでまいりたいと思っております。
次に、大企業援護で大衆不在のいまの税制ではないか、こういう御意見でございますが、これは先ほども申しました租税特別措置についての御批判だと思います。しかし、租税特別措置は大企業ばかりではございません。先ほど申すように、政策目標に合致するような減税措置をとっておりますから、中小企業も同様に、まず大企業と半々程度の利益を受けておる、かように思います。これらの詳細は、大蔵委員会等におきまして、さらに重ねて説明を大蔵当局からすることにさせていただきます。
次に、交際費についてはいわゆる減税措置がある程度とられておりますが、これもさらに詳しくは、四十二年以後の措置によりましてこれに対する対策を立てるべきだ、ただいまはその実施中でございますから、期限が来ます前に、また期限が来ましたら、そういう点とも取り組むことをお考えいただきたいと思います。
酒税の問題やたばこにつきましては、いずれ大蔵大臣からお答えすることにいたします。
次に、間接税と直接税とがあまりにも不均衡になっている、こういう理由で今回の税制改正をしたのではないかというお話でありますが、そういうような意味ではございません。先ほども大蔵大臣から阿部君にお答えしたとおりでございます。
次に、専売公社と日本通運との関係でありますが、お調べになりましたのはやや古いところの御意見ではないか。最近は、各地におきましてたばこの配送会社がそれぞれできておるようであります。いわゆる日通自身の問題ではないように思っております。これは三十八年ごろまでは、お話しになったように日通が一手でやっていた。そこでいろいろの批判があったと思います。したがいまして、これは順次改善されつつある、かように私は考えております。
その他の問題につきましては、大蔵大臣からお答えいたします。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/17
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018・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。
所得税の減税の穴埋めを酒、たばこに求めなくてもよかったじゃないかというお話でございます。いま税に大体二つの傾向を持った税がございまして、一つは所得税でございますが、御承知のように高度の累進構造になっておりまして、国民の所得水準が上がるということになりますと、何もしないでそのままこれは実質的な増税になるという性質の税金でございますので、したがって、所得税は、どうしても中小所得者のために常にこれは減税しなければならぬものと私どもは考えております。したがって、こういう、そのままにしておけば増税になっていくというものについては、今回これを減税することにいたしました。と同時に、一方、酒、たばこというような定額税制のものは、これはそのままにしておくと、さっき申しましたように負担が相対的に低下していく。酒にしましても、たばこにしましても、昭和二十六年から据え置きにしておりますので、その間、相当の相対的負担低下というものが見られておりますので、今回はそういうものについての調整もこの際しよう。そうして公債をできるだけ減らして、財政の健全化をはかろうというような目的から、こういう調整のきく措置、ことに税制調査会は、もう何年となくこの酒、たばこの問題を指摘しておりますので、今回のような情勢のときにこの調整問題を片づけようというふうにやったことでございまして、所得税の穴埋めをわざわざここへ求めたというようなことではございません。
それから、戦前と現在との酒の税金の違いについてお話がございましたが、御承知のように、戦前は造石課税でございまして、特級とか一級とかいうことについて分類差等の課税をしたものではなくて、造石高に課税するという方式でございましたし、いまはそうではございませんで、製造場からびん詰めして出されるときに数量に応じ課税されるという、課税の方法が違っておりますので、そのまま比較して論ずることはなかなかむずかしいと思います。私どもは、昔と比較するのではなくて、こういういまの制度になってからの税金の実質的な低下問題と比べて今回の措置をとったということでございまして、特に増税をはかったというようなものではございません。
それから、たばこについて品質の問題がございましたが、嗜好品でございますので、嗜好に応じていろいろ原料のまぜ合わせというようなものについてはくふうをこらしておりますが、しかし、品質を落としているといろことは、専売公社においてはないものと私どもは考えております。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/18
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019・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 間接税の増徴が購買者の負担になるということは否定ができないところであります。そこで、今年度の財政をつくりますときに、私どもが面しました選択というものは、国債をさらに増発するか、所得税を据え置くか、あるいは間接税を据え置くかという、その三つのうちのどれかであったわけでありますが、国債を増発するということは、財政の正常化からどうしても避けたいという気持ちでありました。そこで、ただいま大蔵大臣の言われましたように、所得税については非常に累進構造が急である、勤労意欲も企業意欲もそぐほどに急であるということから、調整の減税だけはやむを得まいということになりまして、そこで、決して評判がいいということでないことは承知をいたしながら、一部の間接税の増徴に踏み切ったわけであります。この点は、所得税に比べますと、まあどちらかといえば、選択の余地が消費者の側にあるわけでありますし、また、ごく一部ではありますが、最低のものは据え置く、こういう決心のもとにこれに踏み切ったようなわけであります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/19
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020・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 広瀬秀吉君。
〔広瀬秀吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/20
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021・広瀬秀吉
○広瀬秀吉君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました租税特別措置法の一部を改正する法律案に対し、総理大臣及び関係各大臣に質問をいたしまして、誠意ある明確な御答弁を求めるものであります。
まず最初に、今回の税制改正を数字的に見ますと、千五十億の所得税の減税、これに対して、間接税の増税千五十億で、差し引きゼロだ。租税特別措置法の改正案をながめてみましても、特別措置の改廃によって、整理によって四十一億円増だ。そして全くそれと同じ額だけ、今度は新しく輸出振興の名において、あるいはその他の名目をもって、四十一億円減税をはかる、これも差し引きゼロだ。そこで政府は、今度の減税は実質ゼロだ、こうおっしゃっておるわけでありますが、先ほどからの論議を通じまして、いまでも総理大臣は実質減税はゼロであるとお考えでありますか。ごまかしてはいけません。ことしこそ増税になったと、はっきりおっしゃるべきじゃないでしょうか。所見を承りたいのであります。
今日、国税収入の三〇%強は所得税であります。相次ぐ消費者物価上昇と名目賃金の引き上げの中で、強度の累進構造を持つ所得税制によって、毎年の減税にもかかわらず、昭和三十五年度から昭和四十二年度までに実質所得の伸びは三四・八%、所得税額の伸びは八六・三%であり、ほぼ二・四倍以上に負担額が増大しているのであります。一般会計歳入における自然増収がことしは九千四百七十六億円、その中からわずかに所得減税一千五十億、それも四・八%の物価上昇による調整分、物価調整分四百三十億を引きますと、わずかに六百二十億に減ってしまいます。増税一千五十億と比較すると、ちょうどその物価調整減税分に該当するだけ増税になるという姿は、もうあまりにも明瞭ではございませんか。しかも、たばこ値上げによる増税五百五十億、これはおそらく六百億ぐらいになるだろうと思いますが、その七割は、所得減税の恩恵に浴することのない七十一万円以下の低所得階層がこの増税分を負担するということを考えるならば、これはたいへんな大衆泣かせの増税だといわなければなりません。(拍手)
このように、四十三年度は、まさに血も涙もない貧乏人泣かせの物価値上げと増税の年、まさに大衆収奪の年となろうとしておるのであります。ポンド切り下げ以降のきびしい国際経済環境のもとに国内景気を抑制する、同時に財政硬直化を打開しなければならないのだから、国民大衆がその犠牲を負担するのはあたりまえだ、そう言いたいのでありましょうが、今日、引き続く物価上昇の中で、貧しい生活に耐えながら勤労の汗を流している国民大衆、なかんずく勤労低所得者に何ほどの説得力を持ちますか。財政硬直化を政府は昨年から大々的に宣伝をし、キャンペーンを展開しました。それを理由に、今度の税制で、国民大衆に重税、増税を押しつける。一方において、受益者負担を露骨に打ち出してまいりました。これこそ佐藤自民党内閣の経済財政政策の失敗によるツケを、何ら責任のない勤労国民大衆に支払わせようとする、まことに悪質な、政治的な姿勢を示すものだ、こう言っても過言ではないと思うのであります。このような政府は一体、佐藤さん、いい政府でありますか、悪い政府でありますか、お伺いをいたしたいのであります。
第二に、総理及び関係大臣にお尋ねいたしますが、財政硬直化をもたらした原因は一体どこにあるか、この際はっきりしてもらいたいのであります。財政硬直化の原因は、大企業、大資本の高利潤を追求する立場に対して国家財政が奉仕し過ぎたのです。そういう財政政策をやり続けてきたのだ。選挙向けに人気取り政策をやったのだ。圧力団体と自民党の予算ぶんどり合戦におおばんぶるまいをやってきたのだ。安易な公債発行によって財源を無限に調達できるような錯覚におちいって、公債発行をやってきたのだ。物価対策が欠除しておったのだ。税収面においては、特に所得税の累進構造からくる大衆課税構造によって、高度成長時代に自然増収がある程度あったということで安易な気持ちになり過ぎた。特に大企業、大資本家中心の租税特別措置を既得権として温存をしてきた。このところに財政硬直化の最大の原因を私は求めるべきだと思うのです。そうだとするならば、硬直化だからおまえらが犠牲になれということではなくて、まず第一に大資本を中心に、そのサービスに重点を置いた既定経費の洗いがえを勇断をもってやる、不要不急の軍事予算は削減する、租税特別措置法に対しては思い切った整理、改廃を断行する、物価安定をやる、これが当然の対策であります。
租税特別措置法による大企業、大金持ちに対する減税額は、所得、法人税で約二千五百億、地方税を合わせますと四千二百億になるわけであります。半分整理しただけだって二千億くらい軽く出るわけであります。総理並びに関係各大臣が財政硬直化をほんとうに打開しようとする熱意があるならば、いまや全く硬直化した租税特別措置、政策効果が全くあいまいな租税特別措置、そして、大企業だけに片寄った既得権的な隠れた補助金ともいうべきこの措置を徹底的に整理をする、このことをまっ先に取り上げるべきだったと思うのです。財政硬直化問題の火つけ役であり、また明敏をもって鳴る経済企画庁長官がこのことを一言もいわゆる宮澤構想の中で触れなかったのは一体どういうわけでありますか。
第三にお尋ねしたいのでありますが、この十年間、特別措置による減税額は国税だけで一兆五千六百億の巨額に達しております。地方税のそれもおそらく一兆円に達するはずであります。しかも、この恩恵のうち、約八割に大法人、大金持に与えられてきた。昭和四十三年度税制改正において、先ほども申し上げましたように、貧しい勤労大衆には実質増税を押しつけながら、この年もまた約二千五、六百億の特別減税がこのことによって行なわれるわけであります。税の基本原則に照らして納得できるものではありません。一体、総理、大蔵大臣、税の基本原則をいかがお考えですか。
税制における最も大事な鉄則ともいうべきものは、最低生活費に課税しない、税金が公平であって、納税者に納得されるものでなければならないと思うのです。この公平の原則を著しく乱して、まじめに納税するのがばかばかしくなるというような、国民大衆の納税意欲を鈍らせてしまうような、そういうものが租税特別措置の存在そのものであります。政策減税の性格を持っている特別措置において、意図された政策目的に沿った効果が国民の前に証明され、これだけ国民経済の発展、国民生活の向上に役立ちましたと明らかにされるならば、国民にとっても何ほどかの救いになるでありましょう。それが全くあいまいであります。総理大臣、大蔵大臣の所見を伺いたいのであります。
次に、各論的に聞いてまいります。
その一つは、貯蓄奨励の名のもとに行なわれる配当所得課税特例、利子所得の免税、分離課税及び税率軽減等の措置についてです。配当所得課税は至れり尽くせりの優遇によって、標準世帯二百三十六万三千八百六十六円までは所得税がゼロです。わずかに住民税が四万八千五百八十四円かかるだけ。一方、これと同額の給与所得者は、所得税で二十七万九千二百二円、住民税で十二万七千七百四十七円、合わせて四十万六千九百四十九円負担します。事業所得者は、所得税で三十五万四千五百七十九円、住民税で十三万五千六百四円、個人事業税九万六千円で、合計五十八万六千百八十三円の税金を納めなければならないわけです。配当所得だけで食っている人は、二百三十六万円まで所得税が無税だ。これと比較してどうでしょうか。配当所得者は、不労の資産所得である、担税力が大きい、相続可能な、安定した資産の上に立っているのです。給与所得者は一体何ですか。相続のきかない不安定な労働力だけにたよる担税力の少ない階層であります。この不公平、この矛盾、これについて総理はいかが説明されますか。
標準世帯の課税最低限が、ようやくことしみみっちく八十万八千六十三円ということになりましたが、これとの見合いにおいても、この矛盾をどうされますか、お聞きいたしたいのであります。証券貯蓄を増強する、こういう政策目的があるのだと強弁されるかもしれません。しかし、今日個人投資家は、このような不当きわまる税制上の優遇にもかかわらず、完全に証券貯蓄からそっぽを向いているじゃないですか。こういう現状に対して、政策効果があったと、大蔵大臣、お認めになりますか。
利子所得について申し上げます。今日少額貯蓄利子非課税制度があります。五十万円から百万円までに限度額も引き上げられました。無記名、匿名預金までございます。これによる減税額が、大蔵省の調査で、五百億円といわれております。いかにもこれは、低所得層に対しても適用のある、少額の貯蓄利子に対する優遇のように一見見えます。しかし、その実態においては、大資産家の脱税の、そしてまた所得の隠蔽の手段に用いられておることが明らかであります。これらの資産家は、利子分離一五%課税という優遇すら受けないで、それ以上に有利な、まるきり税金がただになる多店舗、多種類という新しい制度の中で、分散貯蓄することによって脱税の実をあげることすらできるわけであります心貯蓄増強だ、当然貯蓄がふえることは望ましいことです。しかし、これをふやすためには、こういう不当な税制によるべきものではありません。いわゆる可処分所得と貯蓄がふえるということとは、〇・九八二という高い相関関係にあるわけです。可処分所得がふえれば、黙っておったって、こんなことをやらなくたって、どんどん貯蓄はふえるのです。日本は世界一貯蓄性向の高い国であります。これらについて大蔵大臣は、いまこそこの制度に対して、年限がくるまで待つなどということを言わないで、この年限の中においても、このような不当な問題を整理する考えはございませんか。
次に、大法人を中心にする各種の特別措置についてお尋ねをいたしたいと思います。
法人所得は、昭和三十五年一兆四千四百六十六億円、昭和四十一年度三兆七十二億円と、二・一倍に伸びております。これに対応する法人税額は、わずか一・七八倍の伸びにすぎません。個人所得の実質伸びに対して、所得税額は二・四五倍に伸びた。これと照らし合わせれば、大法人を中心にした担税力は相当巨額なものがまだあるということを示しております。昭和三十五年以降、企業の内部留保の充実だとか、準備金だとか、特別償却だとか、割り増し償却だとか、いろいろな名目で累積およそ一兆円に近いような大減税をやってきたわけであります。その結果、今日法人税率は基本税率三五%、そして所得三百万円以下の中小法人は二八%の軽減税率でございます。ところが、大蔵省の調査によりまして、規模別負担割合を見ますと、資本金一千万円以下のいわゆる中小法人が実効税率三一・四%、資本金一億円以上の大法人は三二・六%であります。ほとんどここに差がない状況になっております。これは、租税特別措置が大企業に片寄って働いていることを雄弁に物語るものではございませんか。大企業に軽く、中小法人に非常に重い今日の法人税の姿がこういう状態であらわれております。大法人に傾斜した特別措置を大幅に整理、縮小して、中小零細法人——好況の中で昨年は空前の倒産をした体質の弱い中小企業にもっともっとこの点を強化して、大企業に傾斜したものに大なたをふるう勇気はございませんか。
交際費課税の特例については前の方たちもお聞きをいたしましたので簡単にいたしますが、昭和四十二年度の推計が交際費五千七百四十八億円でありますが、このうち特別措置によって五千億円は損金算入が認められ、非課税となっております。飲み食いやキャバレーやゴルフへの招待など、いわゆる不健全な社用消費、これが非課税のまま五千億円もまかり通っている。こういう状態に対して、先ほどのような答弁では私納得いたしません。これは総理の勇断であろうと思いますが、佐藤総理が、人間開発、人間尊重、社会開発というようなことにほんとうに力を入れるとおっしゃるならば、こういうものにこそほんとうに総理の勇断を示していただきたいと思うのです。
なお、今日、昭和四十二年の十二月二十三日の官報号外に掲載されました自民党に対する政治献金、これが二十五億円ありますが、そのうち一千万円をこえる献金の会社、業界、これらを見てみますと、二十九にのぼります。これが約十二億五千万円ばかりあるわけでありますが、大体これらはほとんど租税特別措置法による優遇をたんまり受けております。このようなことを考えましても、自民党と財界のくされ縁などと言われないように、こういう面からももう一ぺん租税特別措置というものを洗い直していただく、大整理をしていただくということを要求いたしたいと思います。
最後に、景気抑制策として昨年重要機械等の特別償却制度の運用について制定されたわけでありますが、これは景気過熱の心配がある場合に、すなわち具体的には公定歩合の引き上げがあって金融が詰まるというような情勢の中では、特別償却を停止して、景気調整、民間設備投資の過熱を防止する、こういうことで、当時大蔵大臣は胸を張って、初めて景気調整税制がわが国においてできた、こう言われたわけであります。ところがどうでしょうか。二次にわたって、昨年の九月、ことしの一月、公定歩合引き上げがあったにもかかわらず、大蔵大臣がそう言って胸を張ったその税制を発動することができない。これはおそらく大手産業界の代表としての通産大臣からの強力な圧力、産業界からの圧力に屈服して、その発動ができないと新聞筋でも全部見ておるわけであります。一体これについてどう考えておられるのか。
また通産大臣には、一体あなたは、大手産業界の代表という形に堕して、ほんとうに景気調整、安定成長というものに対してどのような立場に立っておられるのか、このことをお伺いいたしたいわけであります。大手の言うことならば幾らでも租税特別措置は温存してやる、こういうような態度ではとんでもないことだろうと思うわけであります。
さらに今日、アメリカの輸入課徴金に対して、またこれも輸出所得控除とかその他の特別措置によってやろうというような空気が高まっておるようでありますが、ほんとうに何でもかんでも政策の貧困あるいは対米従属の中から押しつけられたしわ寄せというようなもの、税の公平を害し、政策目的のはっきりしないそういうようなものまでも、租税特別措置でしりぬぐいをさせるというようなことは間違いだろうと思います。これについてもひとつ明快な御答弁をいただきたいと思うわけであります。
以上をもって、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/21
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022・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 広瀬君にお答えいたします。
今回の措置は減税か増税か、増税になっておるかゼロか、こういうお話でございますが、政府は、先ほども申しましたように、増減なし、ゼロでございます。所得税は千五十億円の減税でございますが、その他におきまして千五十億円の増税を考えたということでございます。
また、こういう内閣はいいのか悪いのか、こういう御批判でございますが、これは広瀬君におまかせしておきまして、私はそれにはお答えをいたしません。
そこで、ただいま主として御議論になりましたのは租税特別措置法の問題であります。その点が、先ほど来からもお話がございましたが、租税特別措置はそれぞれの政策目標で設けたものであります。しかし、これをやる以上考えなければならないのは、御指摘にもありましたように、こういうものが既得権化したりあるいは慢性化して、そうしてこれが特別な補助みたいなものになってはならないのであります。そこで、どうしてもやはり流動的にこの種の制度を考えていくということでなければならないと思います。
また、私はその中身についてもう少し説明を加えてみたいと思うのは、これが何だか非常に大企業にのみ幸いし、小企業や零細な企業に貢献がない、かように断定しておられることであります。そこで、この数字を一応読み上げてみます。これは必ず大蔵委員会等におきましても明確になるところでありますから、これは私が申し上げるまでもないのであります。間違いを申すわけではありません。大体租税特別措置として二千三百億程度は考えられております。まず貯蓄奨励でございます。国民の貯蓄奨励千五百十四億であります。これは大企業ではございません、大衆全般がこれに影響している。さらにまた輸出振興、これは二百八十一億であります。技術振興、これは二百二十七億、内部留保の充実三百五億、社会開発の促進が三百四十七億等々となっております。これをこの関係するところから大企業がどの程度、中小企業がどの程度幸いしているかということを考えてみますと、大企業は三百二十一億であります。中小企業はこれより以上の三百九十四億であります。この点を十分委員会等におきましても御審議をいただきたい。そうして社会党の方や皆さん方も、ただ政府をお責めになるのはいいですが、この制度が大企業だけに幸いするんだ、かような政策的な特殊な立場からの御批判だけはやめていただきたい、かように申し上げておきます。(拍手)
次に、税の問題は、お説のとおり公平の原則が守られなければなりません。私は、この点では敬意を表しますし、私も同じ考え方を持っております。同時にまた、最低生活費、これに課税されるというようなことがあっても、これもならないと思います。そういう点では、あらゆる努力をして、最低生活費はできるだけ保障するという、そういう立場であってほしいと思います。政府の努力も、さような点でいろいろ続けられておることを御了承いただきたいと思います。
そこで、御指摘になりました配当所得、給与所得、事業所得、これらの三者の間で、公平でなくて不公平な取り扱いを受けておる、こういう御批判であります。先ほどの租税特別措置等におきましても、これらのものができるだけ公平に扱われるように、こういう立場からものを考えるが、同時に、政策的な目標からも税制を考えたのでありますから、ある程度の差別のあることはやむを得ないと思います。(発言する者あり)しかし、これが非常に大きいことになっては、これはたいへんでございます。ただいまも大きい声をしておられますが、そういうことがあってはならない。税制調査会等におきましても、長期的な税制はいかにあるべきか、こういうことで、これらの三つの所得について、その税制のあり方等を検討しておる、このことはすでに御承知のことだと思います。さらにこういうことについて政府を鞭撻していただきたいと思います。
次に、法人の交際費についての御批判がございました。この交際費については、すでに特別な措置もとり、皆さん方の御賛同も得てまいっておりますが、今後さらにこれらの点についてもくふうが加えられる、かように思いますので、十分御審議をいただきたいと思います。
ただ、この機会に、もう一つつけ加えて申し上げておきたいのは、いわゆる政治献金の場合、これは交際費ではございません。政治献金は、いわゆる法人の寄付金、その他の寄付金と一緒に寄付金として見られるのでございますから、その他の寄付金とともに、一定限度はこれが損金に計上されること、それは御承知のとおりでございます。
その他の点については、関係大臣からお答えいたします。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/22
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023・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 租税の特別措置を中心に御質問がございましたので、一括お答えいたします。
租税特別措置は、特定の政策目的のためにこれを達成する手段として税の誘引的機能を利用しようとして生まれたものでございますが、御指摘になったように、これが既得権化したり、慢性化したりすることが最も危険でございまして、これが財政硬直化のやはり一番大きい原因であるということは、そのとおりだと存じます。したがって、この効果を常に吟味して、そうしてこれを流動的に改廃することが必要でございますので、一応私どもは、現在の租税特別措置法について、おっしゃられるように洗い直しもいたしましたが、いま総理から言われましたように、これは大企業の優遇措置と一がいに言われていますが、そういう性質のものでは最近なくなってしまいました。この七年間に千六百億以上二千億近い整理をいたしましたので、いまでは中小企業のための措置になっているところが非常に多い。さっきお話がありましたように、もう税額でも中小企業への恩恵となっている税であるというふうに考えられます。特にこれによって優遇されている一番多いものは、生命保険の控除について、これが最高の額でございますので、そういう点から、いまの租税特別措置法の内容というものは相当変わっております。しかし、いま申しましたように、この流動化をはからなければなりませんので、昨年、まず利子配当の問題について五割の税の増税ということをやって、あと二年間期限がございますが、この間に次の措置を考えるということになっております。
配当の問題について御指摘ございましたが、これはもう何度も申しますように、シャウプ税制における法人税のあり方を考えてかからなければ根本的な解決ができませんので、いま税制調査会がこの問題と取り組んで、ことしの十一月までにはこの問題に答申をいただけるということになっておりますので、こういう問題とからんで、法人税の改正と一緒に解決しなければ、この配当課税の問題はうまくいかぬのじゃないかというふうに考えております。これも、あと二年間の暫定期間の間にこういうものの解決をはかりたいというふうに考えております。
それから、この租税の特別措置で景気調整をはかるということについてのお尋ねがございました。私どもは昨年この法律をつくりましたが、実際問題になると、やはり設備投資を押えるのだということになりましたら、押えるときに無差別に押えるのではなくて、当面必要なものと押えたいものとを区別して税の発動ができるという仕組みになっておると非常にやりよかったと思うのですが、そうではなくて、特に通産省当局においては、日本の先端企業としてどうしても必要だといって設備の更新をやらせているというようなものにまで、一律にこれを押えるということがどうかという産業政策の上からも、これは非常に検討すべき問題がたくさん出てまいりましたので、その点で、まだ、この景気調整策の効果とか、そういうものをいま見ながらこの問題をもう少し見守って解決したいといま考えておるところでございます。(拍手)
〔国務大臣椎名悦三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/23
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024・椎名悦三郎
○国務大臣(椎名悦三郎君) 大蔵大臣から、この制度についての大蔵省側の見方についてお話がございましたが、私のほうの側からこれをながめた場合には、これはいま言われたように、大体合理化特償制度の対象となる業種、これがいま三十七ございますが、対象物件の価額が約八百億余り。この内容は、今日の情勢において、輸出の振興のために、あるいはまた資本自由化というものに対処してまいる上において、どうしてもこれは日本の産業としてやらざるを得ない設備投資、そういうものがほとんど中核になっておるわけでございまして、さらに、最近の民間設備投資の一般の動向を見ますと、金融引き締めの効果がだいぶ浸透してまいりました。全体として非常に鎮静化しておる。これを、この制度の対象となる業種について見ましても、まあ、この際見送っていけるものは見送っていこうという気持ちに自然なっているんです。そういうことで、三十七の業種の中でも、そう急を要しないものは自然に見送られておるという状況なのであります。これを一律に停止するということは、これは日本の今日の産業の立場からいってきわめて不得策でございます。もう少しこの事態を見守ってまいりたいと存じます。
それから輸入課徴金の問題についてお話がございましたが、ドル防衛策としていろいろ輸入課徴金の制度が考慮されておるといううわさが飛んでおる。うわさの域を越して今日においてはその可能性が相当に出てまいりました。しかし、米国としても従来自由貿易主義を振りかざしてまいっており、そしてケネディラウンドに見るがごとく、世界の貿易拡大という政策に踏み切っておるこの米国でございますから、そう簡単には実行しないはずであります。しかし、なおこれをあえて行なうという場合におきましては、日本としても、その影響を払いのけなければならぬ。しかし、払いのけるにしても、一体実体がまだはっきりしていない。この実体をよく見きわめまして、そうして具体的にこの対抗策を考えたい、こういう趣旨でいろいろ研究しておる次第であります。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/24
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025・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 財政硬直化ということを国民各位に向かって言うより前に一まず私どもが反省をすべきではないかということについては、さように思います。私どもは、私どもなりに反省をして、ただいま御審議願っております四十三年度の予算を提出したつもりでございます。
ただ、この財政硬直化が、大企業中心の政策をやってきたからこうなったのではないかとおっしゃる点については、どうも私はそう思えないので、この十数年来の経済政策の結果、一番顕著になりましたことは、国内に失業がほとんどなくなって、給与水準が上がってきたということでありますから、この政策の最大の受益者は、大企業ではなくて勤労大衆であろうと私は思います。(拍手)今日の経済で一番顕著なことは、人手不足で賃金がどんどん上がっていくということでありますが、これは私どもが大企業中心の政府でありましたら、こんなことにしてしまってはどうもはなはだまずいわけでありまして、実際はそうではございません。この状態は、大企業にとって実は一番都合のよくない状態でございます。それだけに、やはり勤労大衆のために経済政策をやってきたというふうに考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/25
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026・小平久雄
○副議長(小平久雄君) これにて質疑は終了いたしました。
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昭和四十一年度衆議院予備金支出の件(承諾を求めるの件)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/26
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027・山村新治郎
○山村新治郎君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
この際、昭和四十一年度、昭和四十二年度衆議院予備金支出の件を議題となし、議院運営委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/27
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028・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 山村新治郎君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/28
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029・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。
昭和四十一年度、昭和四十二年度衆議院予備金支出の件を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/29
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030・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 議院運営委員長の報告を求めます。議院運営委員会理事塚原俊郎君。
〔塚原俊郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/30
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031・塚原俊郎
○塚原俊郎君 ただいま議題に供せられました昭和四十一年度及び昭和四十二年度衆議院予備金支出の件について御報告申し上げます。
今回御承諾をお願いいたしますのは、昭和四十一年十二月二十七日から昭和四十二年十二月二十六日までの間に本院で支出した予備金八百十二万円であります。その所属年度は昭和四十一年度百十二万円、昭和四十二年度七百万円でありまして、使途は、すべて在職中なくなられました議員の遺族に贈った弔慰金であります。
これらの支出については、そのつど議院運営委員会の承認を経たものでありますから、御承諾くださいますようお願いいたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/31
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032・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 採決いたします。
本件は承諾を与えるに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/32
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033・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。よって、承諾を与えるに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/33
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034・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。
午後四時十五分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
大 蔵 大 臣 水田三喜男君
農 林 大 臣 西村 直己君
通商産業大臣 椎名悦三郎君
国 務 大 臣 宮澤 喜一君
出席政府委員
内閣法制次長 吉國 一郎君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X00819680305/34
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