1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年三月二十六日(火曜日)
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議事日程 第十号
昭和四十三年三月二十六日
午後二時開議
第一 道路整備特別措置法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
第二 関税定率法等の一部を改正する法律案(
内閣提出)
第三 公害防止事業団法の一部を改正する法律
案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
国立病院特別会計法の一部を改正する法律案
(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
最低賃金法の一部を改正する法律案(内閣提
出)及び最低賃金法案(河野正君外九名提
出)の趣旨説明及び質疑
日程第一 道路整備特別措置法の一部を改正す
る法律案(内閣提出)
日程第二 関税定率法等の一部を改正する法律
案(内閣提出)
日程第三 公害防止事業団法の一部を改正する
法律案(内閣提出)
中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律
案(内閣提出)
午後二時九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/0
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001・小平久雄
○副議長(小平久雄君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/1
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002・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 内閣提出、国立病院特別会計法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣水田三喜男君。
〔国務大臣水田三喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/2
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003・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 国立病院特別会計法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、従来一般会計で行なってまいりました国立療養所の経理を、新たに国立病院特別会計において行なうこととするものであります。
御承知のように、国立療養所は、これまで戦後におけるわが国の結核対策を推進する上に大きな役割りを果たしてまいったのでありますが、これに加えて、近年は国民の疾病構造の変化に伴う各種の長期慢性疾患、重症心身障害、進行性筋萎縮症等の新たな医療需要にこたえることが強く要請されてまいったのであります。しかしながら、現在の国立療養所の施設の多くは相当老朽化しておりますので、このような時代の要請にこたえるためには、すみやかに、かつ、計画的にその整備を促進し、充実した医療を行ない得る体制を確立する必要があります。
今回の改正措置は、国立療養所を特別会計に移すことにより、その収支を明らかにし、なお足らないところは一般会計から補足する措置を講じまして、その経理を明確にいたしますと同時に、ただいま申し上げましたような国立療養所の実情にかんがみ、特別会計において借り入れ金の導入、資産の効率的活用、予算の弾力的運用等を行なうことにより、その施設、設備の整備を促進し、あわせて経営の円滑化をはかろうとするものであります。
なお、国立療養所のうち、らい療養所につきましては、その特殊性にかんがみ、引き続き一般会計において経理することといたしております。
次に、この法律案の概要について申し上げます。
新たに国立病院特別会計において国立療養所にかかる経理を行なうことといたしましたことに伴い、同会計を、病院勘定及び療養所勘定に区分いたしますほか、療養所勘定においても施設費を支弁するため必要があるときは借り入れ金をすることができることとし、また、各勘定相互間の資産の移動に関し必要な規定を設ける等、所要の規定の整備をはかることといたしております。
なお、昭和四十三年度の暫定予算の期間中に行なわれる支出及び債務の負担並びに収入で国立病院及び国立療養所にかかるものは、暫定予算が失効することとなった場合には、この会計の各勘定において行なわれたものとみなすことといたしております。
以上が、国立病院特別会計法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
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国立病院特別会計法の一部を改正する法律案
(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/3
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004・小平久雄
○副議長(小平久雄君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。中嶋英夫君。
〔中嶋英夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/4
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005・中嶋英夫
○中嶋英夫君 私は、日本社会党を代表し、国立病院特別会計法の一部を改正する法律案につき、若干の質問をいたします。
佐藤内閣は、財政硬直化を言い立てて、国民生活に直結する予算を引き締め、他方、破綻しつつあるアメリカの戦争政策に追従を深め、依然として海外援助や、軍事予算については、積極的にこれを推し進めようとしております。財政が苦しいのなら、まず国が懸命にやりくりをすべきであって、国民の耐乏によって経済危機を克服しようとすることは誤りであります。
ドル防衛への協力をわが国とともにアメリカより要請されたヨーロッパ諸国の反応はどうであったでありましょうか。西ドイツは、契約済みのF111A戦闘爆撃機の購入をキャンセルいたしました。イギリスは、同じく戦爆機の買い入れをやめ、スエズ以東の軍隊の撤退を声明しています。在欧米軍の駐留費負担増には各国ともにべもなくこれを拒絶しておるのであります。あまつさえ、共通してジョンソン政府に突きつけたのは、ベトナム戦争という危険で損な道楽をまずやめなさいという態度であります。一方西ドイツは、中国と巨額の鉄鋼プラント輸出を積極的に進め、イギリスは、アメリカの干渉を排除してキューバに肥料プラント輸出を決定しております。すなわち、苦しいときにむだな戦争にはつき合っていられないという態度と国民に協力を求める前に、まず政府が国民生活に直接影響のない予算、支出を先に圧縮するという方針が、いまや世界の常識なのであります。(拍手)
さきに健康保険の国民負担を強引に引き上げ、米、運賃、酒、たばこ、次々の値上げをねらう佐藤内閣は、国立療養所の独立会計によって、いままた国民生活、特に不幸な国民の療養を脅かそうとしておることは、断じて許すことができないのであります。(拍手)
まず、園田厚生大臣に伺います。
終戦直後の結核患者は、入院を要する人だけで百五十万をこえ、年間の死亡者十四万を数えておりました。それが今日、入院を要する者四十六万、年間死亡者二万と激減いたしたのであります。その理由は、国民の生活水準の総体的向上、結核医薬の飛躍的な進歩にあったことは申すまでもありません。しかし、さらに重要な原動力となったものは、戦後二十余年の間、わが国の結核医療の中核として、企業採算にとらわれずに、結核患者を収容し、一元的な運営によって治療、看護に当たってきた国立療養所と、その職員の努力にほかならないのであります。(拍手)
問題は、では、はたして国立療養所の役割りが終わったかどらかであります。確かに顕在化した結核患者は減少いたしました。しかし、今日なお百四十万の患者が保健所に登録されておりますし、排菌——菌をまき散らしておる患者で医療を受けていない者が十四万人も存在していることもまた事実であります。
一方、国が積極的な援護の手を差し伸べなければ生きていけない重症心身障害児や筋萎縮症などの患者に対し、国立療養所の持つ機能を十分に働かせていくことは、今日、政府にとって緊急の課題なはずであります。その意味におきまして、国立療養所の役割りは決して終わっていないばかりではなく、むしろ、今後も、企業採算にとらわれず、その存在の意義に徹して、国立療養所の果たすべき役割りを重要視すべきであると考えるのであります。(拍手)厚生大臣は、今日、医療の合理化、近代化に名をかりて、営利主義に走っておるわが国の医療機関の中で、せめて国立療養所くらいは医療の初心に立ち返って運営すると、ここで宣言する気概をお持ちと思うが、いかがでありますか。(拍手)
また、医療の本質についてどのような見識をお持ちであるか、お聞かせ願いたいのであります。
次には、現在五万四千床を持つ国立療養所が、都市周辺に限らず、農山漁村にも配置されており、僻地医療のつとめを果たしてきた役割りを、企業採算という観点から放棄せざるを得なくなる問題であります。
第三には、企業採算を重視する立場が、必然的に医療内容を低下せしめ、医務の営利化を促進することになり、国民の健康と生命を守る使命から遠ざかる結果となることであります。
さらに、その第四は、各種基準料金の徴収や差額ベッドの新設等により、ただでさえ貧しい長期慢性患者の生活を圧迫し、国民ひとしく保障されなければならない医療の場からさえ、これらの人々を締め出す結果になるということであります。もとより、国立療養所の施設、設備が改善されることは喜ばしいことであります。しかし、だからといって、何ゆえにそれが患者や医療労働者の犠牲の上に築かれなければならないのか、厚生大臣の解明を求めます。
次に、赤澤自治大臣に尋ねます。
御存じのとおり、国立療養所を特別会計に移管することにより、従来の医療費二割引き制度は廃止されます。ところが、国立療養所に入所しておる患者の六割以上は、結核予防法、精神衛生法、生活保護法などによる公費負担患者で占められておるのであります。そして、これらの患者の医療費の十分の二は、地方公共団体が負担すべきものとされておるのであります。といたしますと、二割引き制度の廃止、基準料金の徴収によりまして、地方公共団体の負担は当然ふえてまいるのであります。そうでなくとも、この数年来、厚生省は、予算面からこれら諸法律の適用対象人員の削減をはかってきているのであります。したがいまして、今後ますます地方自治体の首長は、その意に反し、涙をのんで公費負担患者の治療打ち切りという残酷な措置をしなければならないところに追い込まれるでありましょう。自治大臣は、このような事態に立ち至ることを決して好まないと信じますが、所見を伺います。
また、特別会計制度への移管によって生じます地方財政の負担増に対し、いかなる措置をとられるかを明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
次に、水田大蔵大臣に伺います。
第一点は、さきに国立病院が特別会計に移管される際、今後も一般会計から二五%は繰り入れると約束されていたにもかかわらず、現在ではその半分にも満たない一一%の繰り入れにすぎないのであります。今回の国立療養所の特別会計移管にあたって、一般会計から繰り入れるから従来と何ら異ならないと言われておるのでありますが、本日、ここで、従来と変わらない率の一般会計からの繰り入れを行なっていくと確認してよろしいかどらか。
第二点は、医療費二割引き制度は国立療養所の特質からとられた措置であり、今後もその特質において何ら変わるものではありません。したがって、この制度を引き続き認められ、これに対し国庫負担をすべきだと考えますが、いかがですか。
第三点は、国立療養所の地方移譲など払い下げを行なう計画はないと理解してよろしいか。
第四点は、昭和四十三年度四十五億円の国立病院特別会計に対する融資が、年金積み立て金のうちの還元融資分から行なわれているのでありますが、国立医療機関に対する融資がこのワクから行なわれることは、還元融資の趣旨から申して不当ではないでありましょうか。
第五点は、今回の改正により、国立療養所の土地を売却することができ、その収入十八億円を設備費に充てたいとのことでありますが、御承知のとおり、国立療養所の多くは旧軍の療養所であり、その敷地を調達する際は、強力な軍の圧力、憲兵の脅迫、どうかつによって農民からただ同様に取り上げたものが多いのであります。(拍手)解放農地には再補償までしておきながら、暴力的に奪った農民の土地の地価が高くなっているので、これを売って収入をはかろうとは何ということですか。このような小ざかしい考え方は、国民に奉仕すべき公務員の持ってはならないものであると思われますが、大蔵大臣の所見を伺います。(拍手)
最後に、佐藤総理にお尋ねいたします。
今国会の運営ははなはだしく渋滞いたしております。なぜなのでありましょうか。野党のせいではないのであります。それはあなた方の姿勢が悪いからなのであります。しゃにむに健康保険法等を改悪し、そのために、せっかく議会制度を高め、円滑なる運営をはかろうとしていた与野党間の好ましい努力の積み重ねを打ちこわし、口に平和に徹すると唱えながら、危険な戦争政策にうかうかと踏み込み、経済の危機を国民の犠牲によって乗り越えようとし、国家利益、国民利益に背中を向けているような政治姿勢、それが国会の運営を妨げておるのであります。(拍手)
心ある与党の議員諸君が、最近日増しに沈痛な表情を深めていることにお気づきになりませんか。(拍手)威勢のよい言動で、無理押しを主張し、一見あなたを激励しているようでありながら、実は佐藤内閣の命運を弱めてしまう、短見、硬直、無謀の動きを何と見ておられますか。
激動する内外の情勢下、一国の総理として、痛烈な反省の中から責任ある見解を発表していただき、その立場から次の問題、すなわち、国民皆保険体制下でありながら、わが国の医療機関が自由競合のもとに置かれ、それに対応できていない現況において、国立療養機関あるいは公的医療機関がいかにあるべきかについて、総理の明確なる方針をお示し願いたい。
質問を終わるに際し、私は、総理との合意を求めたいことがあります。それは、富国強兵は過去の迷夢、富民平和こそきょうからあすへの希望、強い国、犠牲となる人が多い強い国よりも、よい国、人々のしあわせ多いよい国こそ、われわれの築き上げなければならない日本、祖国日本であるという合意であります。いかがでありましょうか。(拍手)
〔「こんな格調高い演説は久しぶりだな」と呼ぶ者あり〕
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/5
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006・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 珍しく格調の高い質問演説を聞きまして、私も……。(拍手)
そこで、ただいま御意見を交えてお尋ねがございました。国会こそは、国権の最高機関として、政治の責任を国民に対して負っているところだと思います。政府の姿勢が悪いから国会の審議を放棄するとか、こういうものであってはならないと思います。私は、どこまでも国民のために国会の審議を真剣に続けられることが、それこそ民主政治下における議員諸君のつとめでもあろうかと、かように思います。(拍手)もちろん、ただいま述べられましたように、政府の政策が意に満たない点があるならば、それこそ国会の審議を通じて国民に明らかにしていただきたい、それが本来の国会の使命である、私はかように考えるのであります。(拍手)
その観点に立って、ただいま国立あるいは公的の医療機関のあり方はいかにあるべきかというお尋ねでございます。申すまでもなく、国立あるいは公的の医療機関、これは国民皆保険のもとにおきまして、重要な役割りをただいま果たしております。政府が特に意を用いておりますことは、医療機関の内容が整備されること、同時に、適正なる配置、この二点に重点を置いておるのであります。そうして、この国立並びに公的の医療機関は、地方における医療機関の基本的なあり方としてその役割りを果たし、同時に、私的医療機関が果たし得ないものを、この公的のものが果たしておる、かように私は考えておるのであります。また今後もその運営においてもさような意味の役割りを果たすべきだ、かように考えております。かくして、国立あるいは公的の医療機関と私的の医療機関と一体となりまして、国民の医療に万全を期す、かような政策でございます。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/6
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007・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。
国立療養所を特別会計に移すことにより、その収支は区分経理されることとなりますが、国立療養所の特殊な性格にかんがみまして、独立採算制をもって運営するということは、これは考えられません。したがって、適正な運営によって生ずる収支の差額については、今後とも一般会計から繰り入れるという方針は変わりございません。今年度は二百五億円の繰り入れをいたします。今後どうなるかというお尋ねでございましたが、いずれにしましても、独立採算制をとらないという以上は、経営に伴う収支の差額は全部一般会計から繰り入れるほかございませんので、この繰り入れをやって、この会計が支障を来たすようなことは絶対にいたさせません。
その次に、二割引きの御質問がございました。御質問の趣旨は、二割引き制度の廃止によって、患者の負担が増加して、患者を圧迫することになるのではないか、したがって、この二割引き制度を継続したらどうかというお尋ねだと思いますが、この点につきましては、すでに入っておる患者については、その既得権を保障して、従前どおりやはり二割引きを継続いたします。それから新たな患者につきましても、自己負担のある者については二割引きを行なうというようなことによって、患者負担の増加を避けるという措置をとりますので、この点は御安心願いたいと思います。
それから、国立療養所を地方に移譲するのではないかということでございましたが、これはそういう計画を一切持っておりません。国立病院が昭和二十四年に特別会計に移されたときには、この地方移譲ということをやりましたが、今度の国立療養所のほうでは、地方に払い下げるというような計画は一切持っておりません。
次は、還元融資の問題でございましたが、いま還元融資の対象機関の病院関係のワクを見ますと、年金事業団には四百五十億円還元融資しております。この四十五億円が医療関係、病院関係。それから医療公庫には二百八十五億、地方公共団体の病院関係には二百億というふうに、病院関係に相当この年金の金が融資されておりますが、国立病院関係においても、さっきおっしゃられたような額が予定されています。これは病院と国民生活は非常に関係の深いものでございますから、拠出者の利益と遠ざかった措置というふうには思いませんので、ここに年金が融資されるということは、私は決して悪いことではないというふうに考えております。
それから、土地の払い下げの問題でございましたが、日本医療団から継承したもの、あるいは旧陸海軍の病院から継承したもの、いろいろございますが、用地の取得は、当時においては合法的に取引されたものでありまして、収奪されたものではございません。したがって、今後、この余剰土地を処分することはあるかもしれませんが、その場合には、やはり住宅とか教育施設というふうに公共用を優先して、余剰土地の払い下げというようなことには、十分留意して処分したいと思っております。(拍手)
〔国務大臣園田直君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/7
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008・園田直
○国務大臣(園田直君) 医療は、国民の健康と生命を守る大事な問題であって、国の責任において、何人といえども平等にその医療から守らるべきの筋であることは、御意見のとおりであります。しかしながら、国が責任を遂行するためには、税の再分配によるか、あるいは保険の掛金によるか、あるいは一部患者の負担によるか、その点を実際に適切にするように、国民の納得する点で、現実の運営をはかっていかなければならないと考えておりまするが、将来ともその基本方針に従って、逐次、鋭意向上するよう努力していきたいと考えております。
なお、国立療養所は、御指摘のとおりに、都市から離れておる個所が相当多かったので、僻地診療の役割りを果たしております。特別会計移行後におきましても、地域の医療事情に応ずるよう極力留意をして、運営していきたいと考えております。
三番目に、国立療養所が特別会計に移ることによって、独立採算制をしいられ、営利化して、患者、従業員に負担が転嫁されるのではないかという御指摘でありまするが、これは政府としても、十分今後の運営について、御指摘の点は注意をし、運営をしなければならぬ点であると考えております。
御指摘のとおりに百六十ヵ所、五万千四百のベッドは、戦後、結核対策の唯一の基地として発展してまいりました。もちろん、いま結核に対する対策が終了したものとは考えておりません。いまこそ、まさに終えんしつつある結核に対して、さらに一段と強力な結核対策をいたさなければならぬ時期であると考えております。したがいまして、政府は、今年度も三百八十四億、昨年よりも三十二億の予算増をいたしまして、結核の撲滅に鋭意努力いたしたいと考えております。
しかしながら、御承知のとおりに百六十ヵ所の療養所は、建物もすでに老朽し、施設もすでに古びてまいりまして、単に新しい薬の力だけで結核に対する療養をやっておるような状態で、今日の国家財政では早急にこれを近代化し、整備することは、きわめて困難であります。したがいまして、今回、特別会計に移行することをお願いしたわけでございまするが、先般、大蔵大臣から話がありましたとおり、本年度の会計四百二十億、そのうち、一般会計から繰り入れましたもの二百五億、四九%は一般会計から繰り入れておるわけでありまして、今後とも、この国立療養所の持つ特別な使命に基づき、政府は、正常なる経営収支の差額は一般会計から当然繰り入れるべきものであって、なおまた、御指摘のありました二割引き制度の廃止は、社会保障の充実によって、廃止はいたしましたものの、ただいま入院しておりまする患者及び新しく入院しまする患者の自己負担分を有する者は、これはそのまま割引は続行する。したがって、負担は患者になるべく転嫁しないように努力をいたしております。
なおまた、医療担当の従業員につきましても、御承知のごとく、政府は五%定員削減の方針をとっておりまするが、療養所に従事する者は、その五%の削減もいたさず、現在の定員のままやっていきたい。
差額ベッドにつきましては、優良個室を希望する者もありまするので、現在きわめて少数設置しておりまするが、この差額ベッド等を大幅に増加することは、御指摘のとおりに営利化するおそれがありまするから、今後とも大幅な増加はしないよう、十分留意したいと考えております。
なお、整備についての財源、一般会計からの繰り入れ、借り入れ金、余剰土地の売り払い等については、大蔵大臣からお答えしたとおりでございます。(拍手)
〔国務大臣赤澤正道君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/8
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009・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) お答えいたします。
地方財政の面では、公費負担の増加額につきまして、交付税の基準財政需要額の算定に取り入れまして、財源の裏づけをしております。したがいまして、市町村が公費負担患者の治療を打ち切るなどということは考えられません。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/9
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010・小平久雄
○副議長(小平久雄君) これにて質疑は終了いたしました。
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011・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 内閣提出、最低賃金法の一部を改正する法律案、及び河野正君外九名提出、最低賃金法案について、趣旨の説明を順次求めます。労働大臣小川平二君。
〔国務大臣小川平二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/11
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012・小川平二
○国務大臣(小川平二君) 最低賃金法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
最低賃金制につきましては、昭和三十四年の法施行以来今日までに、その適用を受ける労働者は中小企業を中心として約六百万人に達するとともに、その金額も逐次改善され、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善と中小企業の近代化に役立ってまいりました。この間、わが国経済の高度成長の過程において、若年労働者を中心とする労働力の逼迫等により、一般の賃金上昇は著しいものがあり、このような中で、なお改善から取り残される労働者に対し、より効果的な最低賃金制度を確立して、その生活の安定と労働力の質的向上をはかっていく必要はますます大きくなっていると考えます。
かかる事情にかんがみ、政府は、昭和四十年来、中央最低賃金審議会に、今後の最低賃金制のあり方の御検討をお願いしていたところでありますが、昨年五月同審議会より答申が提出されました。その答申に基づきまして、最低賃金の決定方式については、業者間協定に基づく決定方式を廃止し、最低賃金審議会の調査審議に基づく決定方式を中心とすることに改めることが適当であり、また、かような措置を円滑に進めるためには、ある程度の経過措置が必要と考え、ここに最低賃金法の一部を改正する法律案を提出いたした次第でございます。
次に、この法律案の内容につきまして、概略を説明申し上げます。
第一には、最低賃金制度をより効果的なものとするため、業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金の二つの最低賃金決定方式を廃止することといたしております。
このことに関連して、最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金につきましては、労働大臣または都道府県労働基準局長は、従来、その他の方式により最低賃金を決定することが困難または不適当と認められるときに限って、審議会の調査審議を求めることができることとされておりましたが、その要件を除き、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善をはかるため必要があると認めるときは、調査審議を求めることができることといたしております。なお、最低賃金審議会が調査審議を行なう場合においては、関係労働者及び関係使用者の意見を聞くものとするとともに、労働大臣または都道府県労働基準局長の最低賃金の決定に先立ち、関係労働者及び関係使用者は異議の申し出をすることができることといたしております。
第二には、業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金の二つの決定方式の廃止に伴う必要な経過措置を定めることといたしております。すなわち、現在まで業者間協定に基づく最低賃金決定方式が広く実施されている実情にかんがみ、その廃止に伴い無用な混乱を生ずることのないよう、法施行の際、現に効力を有する業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金は、法施行後なお二年間はその効力を有することとし、その間においては、なお従前の例により改正または廃止することができることといたしております。しかしながら、その期間内に最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金が新たに設定または改正ざれたときは、その最低賃金の適用を受ける労働者については、業者間協定方式による最低賃金はその効力を失うものといたしております。
以上が最低賃金法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/12
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013・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 提出者田邊誠君。
〔田邊誠君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/13
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014・田邊誠
○田邊誠君 私は、提案者を代表いたしまして、最低賃金法案につき、提案理由並びにその内容の概要を御説明申し上げます。
戦後、わが国経済は著しい荒廃と混乱の中から再出発したにもかかわらず、異常な成長を遂げてまいったのであります。今日、その経済成長率は、実に先進国でも世界第一位を示す状態に立ち至っているのであります。しかし、この経済の高度成長の中には、国民の勤勉で低廉な労働力の提供が、その重要な要素として存在しておることを、忘れることはできないと思うのであります。もちろん、今日までの社会機構の中では、労働市場は、ごく一部の例外を除いて、常に買い手が値段をつける買い手市場でありました。しかしながら、現下のわが国の情勢は、経済成長が招来したひずみを是正し、格差を解消することが急務であることが叫ばれ、また、若年労働力の不足の事態が起こりつつある状況にあり、労働市場も大きな変革を来たしつつあるといえるのであります。
この事実に着目するとともに、今後わが国が近代国家として、国際競争下にあって正しく発展し、真の福祉国家としての実をあげるためには、まず勤労国民の労働力を大切にし、その価値を高く認めることが肝要であるといわなければなりません。
申すまでもなく、最低賃金制度は、ときとして団体協約によって最低賃金をきめる制度を含むこともありますが、通常は、法定最低賃金を設け、賃金についての最低限度を国の法律によって強制する制度でありまして、歴史的には極貧階層救済のための労働者保護立法として発足したのであります。次いで、貿易競争からくる国際緊張を緩和する役割りを果たし、これが国際連帯を強める結果となり、ILO二十六号条約の採択と、次いで、これが批准が七十ヵ国以上に及ぶまでに至ったのであります。さらに、第二次大戦後は、労働者の最低生活水準を保障する制度として受け取られるように発展してまいったのであり、今日、最低賃金制度は、労働の価値の正しい評価と、再生産に必要な生活をなし得るに足る賃金を、国家によって保障することを常識とする制度となっておるのであります。
しかるに、わが国の労働者の賃金の現状はいかがでありましょうか。わが国の工業生産が、造船の世界第一位、化学繊維の第二位、自動車、鉄鋼、セメントの第三位など、世界有数の地位を占めるに至っていることは周知の事実であり、これに比べて、国民一人当たりの所得が世界第二十位前後という低位にあることも動かせない現実であります。さらに、月二万円以下の低賃金労働者が八百万人も存在し、内職労働者で低い工賃に呻吟している層が二百万世帯にも及んでいるのであります。
この生産と所得、経済成長と賃金の著しい不均衡を是正し、労働者の生活の安定と労働能率の向上をはかるとともに、産業の平和を維持するためには、労働者に最低賃金を保障し、規定することが絶対に必要不可欠であると信ずるのであります。(拍手)
現行最低賃金法は、施行後十年になんなんとしておりますが、適用労働者数は、昨年十二月末現在で、中小企業労働者千三百万人のようやく半数に近い六百十一万人であり、しかもそのうち、現行法の中核をなす、悪名高い第九条の業者間協定方式によるものが二千二件、四百六十七万人も占めておるのであります。さらに適用労働者数の七六%は、依然として日額五百五十円以下、月額換算一万四千円以下の低い賃金決定を受けている状況にあるのであります。
このことによる低賃金労働者の存在が、他の労働者の賃金に多大の悪影響を与え、一方、法的規制賃金として、米価決定の重要な要素である生産費中の労働力評価の基礎ともなり、農民所得水準を押える役目もなしておるのであります。さらに生活保護基準、失業保険の最低額、失対賃金、国民年金とも関連し、国民生活水準を低く規制しておるのであります。さきに指摘したとおり、この国民の犠牲の上に、表面上のわが国経済の高度成長と繁栄が築かれてきたことを看過することは、断じて許されないのであります。
われわれは、現行最低賃金法が、わが国の低賃金構造の裏づけと政府の低賃金政策を合理化する役割りを果たし、一方、国際貿易市場で歴史的にわが国の信用を失わせてきたソシアルダンピングの原因をなし、さらには、業者間協定によって、賃金は労使の直接交渉で決定すべき原則と権利も踏みにじり、低開発国においても適用可能といわれるILO二十六号条約に違反する指摘すら受けてきた経緯にかんがみ、この際、新しい時代に即応した正しい最低賃金法の実施に踏み切るべきときが来たことを認識し、ここにこの法案を提出した次第であります。
以下、法案の内容について御説明申し上げます。
まず第一に、最低賃金の適用については、全国一律制を採用いたしたのであります、わが国のように、いまだに産業別、業種別、地域別の賃金格差が存在し、なおかつ、低賃金労働者が多数残されている状況では、この制度の実施があくまでも必要であると思考いたすのであります。それぞれの格差賃金をきめることは、最低賃金制度の本来持つ効果をなくさせるからであります。なお、この上に労使の団体協約に基づく産業別、地域別に拘束力を持つ最低賃金の拡張適用の制度も確立することといたしました。
第二は、最低賃金額決定の基準は、生活賃金たる原則を貫き、労働者が人たるに値する生活を確保するために必要な経費である生計費と、一般賃金水準の動向などを考慮してきめることといたしました。
第三には、最低賃金額の決定及び改正は、最低賃金委員会において行ない、同委員会に強力な権限を与え、その決定に一般的拘束力を持たせ、行政機関も追認せしめることといたしたのであります。
第四に、最低賃金委員会は、六ヵ月に一回、必要生計費及び一般賃金水準に関する調査を行ない、その結果を公表するとともに、基礎となった必要生計費が三%以上増減したときには、最低賃金額の改正を決定しなければならないとしておるのであります。
以上、この法律案の概容について御説明申し上げましたが、この際、賃金支払い能力の問題と関連して、この法案による全国一律制最低賃金の実施は、中小零細企業の存立の基礎を脅かし、経営を困難にするのではないかという論に対して、一言言及しておきたいと存じます。
そもそも今日、わが国中小企業が常に経営の危機に立ち、相次ぐ倒産に見舞われておる原因はどこにありましょうか。このことは、政府の大企業偏重の財政、税制政策に基因し、これに呼応する小規模企業への強い金融引き締めと、大企業からの下請単価の切り下げ、下請代金支払いの長期手形化による遅延などの圧迫が、中小企業の基盤を不安定にしておる要因ではありませんか。その結果としてのしわ寄せが、労働者の賃金、労働条件に転嫁されていることを考えるとき、中小企業家とそこに働く労働者は、ともに大企業の共通の犠牲者であるといえるのであります。一律制最低賃金の実施は、大企業による下請単価の切り下げを防止する歯どめになると同時に、労働力の再生産を円滑にし、労働能率を高めることから、経営の改善と近代化に役立つ結果ともなるのであります。そのためには、格差賃金の残存よりも、最低賃金は国が責任を持つという規定のほうが、中小企業家自身も歓迎する制度であると確信するのでありまして、この際、日本経済の二重構造を解消し、中小零細企業の経営安定のためにも、中小企業への国の保護、助成政策の推進と相まって、この全国一律制最低賃金の実施が必要であるゆえんがここに存在することを、深く認識していただきたいのであります。
国民の待望するこの法案について、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いして、提案理由の説明を終わります。(拍手)
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最低賃金法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び最低賃金法案(河野正君外九名提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/14
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015・小平久雄
○副議長(小平久雄君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。枝村要作君。
〔枝村要作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/15
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016・枝村要作
○枝村要作君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました最低賃金法の一部を改正する法律案について質問を行ないます。
田邊議員も指摘いたしましたとおり、本来、最低賃金制は、社会発展の基礎ともいうべきもの.で、生産に従事する労働者の労働の価値を正しく評価し、労働者が再び誇りと希望を持って労働に参加できるよう、その再生産に必要な生活をなし得るに足る賃金を国が保障する政策であり、国家の果たすべき最低の義務であります。十年前、多くの労働者の反対意見を無視して制定した現行法について、政府は、今日までに適用されている労働者数は中小企業労働者のおおむね三分の一に当たる約六百十万人、賃金決定数は二千四百十五件で、金額も逐次改善を見て、賃金の低い労働者の労働条件の改善と、中小企業の近代化に実効をあげてきたものであると強弁しているのであります。これは中小企業経営者やそこで働く労働者の実態を知らないもはなはだしいといわなければなりません。
今日の賃金水準の上昇の原因は、現行最低賃金法の普及によってもたらされたものではなく、政府のいうところの、いわゆる高度経済成長期における若い労働力の不足と、物価上昇に苦しめられ続けた労働者の生活の中から生まれてきた経済的な要求が、この結果をもたらしたものでありまして、むしろ現行最低賃金法は、これらの労働者の賃金水準を上げるのではなく、これを口実に賃金凍結あるいは低下せしめる役割りさえ果たしてきたことは、広く知られているところであります。
労働者の代表が賃金決定に参加することができないという悪名高い現行最低賃金法は、ILO二十六号条約を引き合いに出すまでもなく、およそ最低賃金制度の名に値しないものであり、国際的な非難を受けてきたのもむしろ当然といわなければなりません。政府は、労働者にとって最低賃金がいかなるものであるかを知り、諸外国の最低賃金制度の歴史的経過を正しく認識し、さらにILO二十六号条約の求めるところを理解するならば、産業別間の団体交渉及び団体協約の締結を否認し、企業組合に固執するわが国の使用者に対して、ILO二十六号条約の精神に沿った最低賃金法を確立することこそが、近代的労使関係をつちかうための政府のとるべき政策であったはずであります。しかるに、政府が現行法を施行したということは、労使関係の世界的な趨勢にあえて逆行し、労働者の生活を無視した低賃金の中に、大企業のみの繁栄を願うという立場を明らかに示しているといえるのであります。この政府の基本的な姿勢は、今回政府が提案いたしました一部改正案の中にも依然として存在していると見なければなりません。
以上の観点から、私は総理並びに関係大臣に質問いたします。
まず最初に総理にお尋ねしたいのでありますが、最低賃金制とは、先ほども申し述べましたように、労働者の労働の価値を正しく評価し、労働者が安心して労働に従事できるように、その最低の生活を保障すべきものであり、いわば国家のなすべき最低の義務ともいうべきものであります。しかるに、わが国の最低賃金制度は、業者間協定というおよそ最低賃金制度にあってはならない方法によって、むしろ労働者への低賃金政策の手段として悪用されてきたのであります。それは、わが国の国民総生産が世界第三位であるのに対して、その成長をささえてきた国民の一人当たりの所得は実に世界第二十一位という、ばかげた結果に端的に示されているといわなければなりません。確かに、このたびの改正案によると、悪名高い業者間協定の部分は削除されてはおりますが、今日までのその政治的責任は、これによって免れることはできないのであります。総理は、この国民総生産世界第三位、国民所得世界第二十一位という哀れな数字から、いかなる実感、感想を持っておられるか。また、これまでの業者間協定中心であった現行最賃制度のおかげで、多くの低賃金労働者が列外の生活をしいられている実態に対して、どのような政治的な責任を感じておられるか、総理の率直な御意見を表明していただきたいと思います。
次に、労働大臣にお伺いします。
言うまでもなく、賃金や労働条件の決定は、労使対等を前提とした両者の自主的な交渉によって決定されるのが原則であり、これは、いまや世界の常識となっておるのであります。ところが、このたびの改正案によりますと、この最低賃金を決定する審議会の構成は、労使と、政府の一方的任命による公益委員に労使と同等の権限を与え、しかも多数決制を採用するという、まことに奇妙な形をとっているのであります。しかも、最低賃金を決定しようとする事業、職業または地域の発議権が、労働大臣または各都道府県の労働基準局長のみにあって、最も必要である労働団体にその権利が認められておらず、ざらに、審議会は単なる政府の諮問機関にすぎないと規定しておるのでありますから、労使対等、調停者としての公益委員という、ILO二十六号条約及び同勧告三十号の原則を逸脱していることは明らかであります。
このたび提案された一部改正案は、団体協約締結者である労働者の基本的権利及び発議権を封鎖し、政府が思うままの産業や地域をみずから選別し、それらに対し、政府の所得政策に見合う目安賃金を最低賃金額として決定するという意図を内包しているのであります。それは、現に最近の十六条方式による最低賃金の決定額が、失対労務者の賃金よりも低いという事実を見ても、十分に証明できるところであります。これは明らかに政府の賃金統制であると思われるのでありますが、労働大臣の御見解を伺いたいのであります。
次に、わが国の最低賃金法について、全国一律の最低賃金制度確立を強く要求する声のあることは御承知と思いますが、今日、全国一律最賃制の確立についてその反対論を唱えているものは、賃金格差や地域格差、あるいは大企業と中小企業との二重構造からくる各企業間の格差のあることを理由にあげて、全国一律最賃制が実施されると、支払い能力が伴わない企業は倒産するかのごとき幻想を与えているのでありますが、これは実態の認識不足もはなはだしいもので、第一、労働時間や就業年齢制度や休日、休暇を法制化して、これを企業格差や地域格差があるにもかかわらず実施したことによって倒産した企業の例がないことが示しているように、全国一律最賃制の実施が企業の倒産につながるという議論は、全く意味のない議論であります。ましてや、全国一律最賃制を実施するより先に、経済の二重構造の解消を実現し、中小企業の近代化をはからねばならないといろ議論は、事実を全く歪曲した悪質なものであり、耳を傾ける余地もありません。もともと、経済の二重構造は、大企業の中小企業収奪の機構としてつくられ、温存されてきたものであり、政府もまた、みずからその政策に協力してきたことは、衆目の一致するところであります。
今日、地域格差は、若年労働力の不足による流動化の傾向によって、徐々にその格差が縮小され、また賃金格差も、政府の統計でも明らかにされておりますように、若年労働者の初任給はほとんど変化なく、全体としてもその格差は非常に接近しているのであります。本来、最低賃金額は、企業の支払い能力によって決定されるものではなく、その国における労働者の文化的な最低限度の生活を保障する実質的な賃金額でなければなりません。
わが国が、西ドイツと並ぶ生産力を世界に誇っている一方、国内では労働者の生活条件の平均化が進んでいる今日、全国一律最賃制による労働者の生活向上の実現は、地域的にも、経済的にも、その基盤は十分に備わっているはずであります。したがって、全国一律最賃制が、今日政府の努力によって実現できないはずはないと思います。それができないのは、今日なお前時代的な考えから、労働者の生活を犠牲にして、大企業最優先の政策を捨てないからであると断定せざるを得ないのであります。
これからの日本経済は、先進国の名にふさわしい高度の技術を伴った近代的な生産体制と、それにふさわしい労働条件の向上を基礎とした経済構造に脱皮しない限り、日本の国際的な地位の向上もないと考えますが、総理並びに大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
次に、労働大臣にまた質問いたします。今後の最低賃金行政について、いかなる所見を持っておられるか伺いたいと思います。
かつて、大橋元労働大臣は、ある程度の地域的な例外を認めるならば、全国一律制による最低賃金も無理ではないと思うと、しばしば公式の場で言明され、それを受け継いだ石田元労働大臣も、同様の意思を表明したのであります。ところが、その後就任された各大臣は、大橋発言から後退を続け、そのことが、特に最近における中央最低賃金審議会をはじめとして紛糾が起こり、ひいては、いたずらに労働者の政府に対する不信を招き、今日の混乱を引き起こしてきた最大の原因であると思うのであります。労働大臣は、この大橋発言を積極的に支持されて、今日のぬぐいがたい労働者の不信感を取り除き、労使間の正常化をはかることが目下の急務であると確信いたしますが、その見解を伺いたいものであります。
また、このだびの改正案のもととなっておる昨年五月の中央最低賃金審議会の答申によりますと、この改正は、あくまでも一定期間の経過措置に必要な最小限の改正であり、将来に向かって、なお最低賃金制のあり方については検討を進めていくと述べているのであります。したがって、その答申も中間答申であるとされています。このことは、このたびの改正がいわば暫定的な措置にすぎず、将来に向かって、新たな改正が必要であることを認めているからにほかなりません。今後、労働大臣は、いかなる原則をもって最賃行政に対応していかれるつもりか、その所見と確固たる決意を聞かしていただきたいと思います。
最後に、現行法が実施されて以来九年になりますが、その適用労働者数はわずかに六百万人にすぎず、一千三百万に及ぶ中小企業労働者の大部分は、業者間協定方式によっても適用困難な労働者であり、労働組合すら結成できず、劣悪な労働条件のまま放置されています。したがって、賃金決定に対して異議を申し立てることができるとあっても、これら未組織労働者は、その発言の場を確保することさえできないのであります。そのような労働者を救済するためにも、わが党が提案している全国一律方式以外には救われる道はないと思うのであります。
わが党の全国一律方式は、今日の労働者の最低生活の全国的な水準、あるいは若年労働者の初任給水準も、労働市場の需給状況をも反映して立案したものであり、今日の状況における最も適応したものであり、全国の労働者が心から要求しているものであるのであります。
政府は、今日のような大企業中心の政策を改め、中小企業に対する助成、育成政策を促進して、労働者の最低生活を保障する本来の目的を達成するため、この際、法の抜本的な改正を行ない、今日の最低賃金行政の混乱を収拾し、もって、正常な労使関係を樹立することが、行政府の当然の措置であると思いますが、そのお考えはないか、総理並びに労働大臣にその見解をただして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/16
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017・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 枝村君にお答えいたします。
御指摘になりましたように、わが国の経済はすばらしい発展を遂げてまいりました。これは何と申しましても、戦後のわが国の国民が、政府といわず、国民といわず、一体となって生産に励み、再建に努力したたまものだと思います。
そこで、ただいま御指摘になりましたように、一九六六年のわが国国民の総生産力、これは三位と御指摘になりましたが、六六年では第五位でございます。しかし一九六七年、これは英、仏を追い越しまして、ただいま世界第三位になっております。こういう国民総生産がそこまでふえたのに、パーキャピタ、国民一人当たりの所得は二十位あるいは二十一位前後だ、これは情けないではないか、それは一体どういう理由でそうなるのかというお尋ねでございます。私はこれらの点をよく考えてみますると、なるほど鉱工業生産は非常に伸びてまいりました。しかし、わが国の経済の構造上から見まして、生産性の低い部門がある。ことに欧米諸国に比べて見劣りのするものがあります。それは申すまでもなく、農業や中小企業部門でございます。これらの部門で生産性を上げない限り、一人当たりの国民所得はふえてまいらないのであります。そこで、農業についての近代化あるいは構造改善、中小企業の近代化育成等力を入れまして、欧米に劣らないような生産性の向上をここに実現をし、そうして国民所得を増していきたい、かように思います。それでこそ、初めていわゆる近代国家がそこにでき上がると思います。その方向で今後とも努力いたすつもりでございます。
なお、今回一応最低賃金制について改正を提案いたしておりますが、これは、申すまでもなく、中央最低賃金審議会が答申をした、それに基づいて政府が所要の改正をしようとするものであります。賃金は、何と申しましても、経済の実情に即して考えていき、一定の目標を立て、働く者の生活向上、これをねらっていかなければなりませんが、経済の実情に合わないと、その効果が十分あがらないように思います。そこで、最低賃金審議会は、ただいまのような観点から、今回の答申をいたしたのであります。しかし、これをもって、もちろん足れりとするものではございません。したがいまして、今後、将来の賃金のあり方はいかにあるべきかということにつきまして、審議会は引き続いてその審議をする予定でございます。しかる上におきまして、政府は答申を得たら、それに従いまして、それを尊重して、それぞれ改善をし、いわゆる生活の向上をはかり、賃金の適正化をはかると同時に、産業の効率化、能率化に努力をするつもりでございます。
その他の点につきましては、主管大臣からお答えいたします。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/17
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018・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 御指摘のように、最近の生産性の向上に伴いまして、外国と比べて日本の賃金水準は非常に改善されております。また、国内におきましても、賃金の規模別格差は非常に縮まって、大きい改善がもたらされておりますが、それによって、いわゆる二重構造が解消の方向に向かっているということは事実でございます。したがって、ここで最も経済の実情に即した実効のある最低賃金制を確立するということによって、今後実質賃金の水準を上げるという施策をとろうとすれば、この施策を可能とする基盤というものは、ようやく日本の社会に成熟してきたものというふうに私は考えます。(拍手)
〔国務大臣小川平二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/18
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019・小川平二
○国務大臣(小川平二君) お答えいたします。
ILO二十六号条約との関連で御質問をいただいたのでございますが、ILO二十六号条約は、関係労使団体と協議すべきことと規定いたしております。また、関係労使は平等の数及び条件によって参与すべきものであると定めておるのでございますが、特に発議権については触れておらないのでございます。しかし、今回の政府提出の改正法が実施されますれば、二年の経過期間後には、業者間協定による最賃は廃止されることになりますので、二十六号条約との適合についての問題はなくなるものと考えております。
改正法案によりまして今後制度の中心になる審議会方式におきましては、審議会に最賃設定について調査審議を求めますのは、これは行政官庁でございますが、権限の行使につきましては、従来も関係労使の意向を尊重して行なっております。現行法には、審議会が行政官庁に建議する権限を設けておるのでございますから、労働者もまた使用者側も、決定改廃について希望がありますれば、しかしてそれが審議会の建議として採択されますれば、当然行政官庁はその意向を尊重することとなるのでございまして、勧告について述べられましたお説のような趣旨に反するものではないと存じております。
今回の法案は、中央最低賃金審議会の中間答申によるものでございます。この点はお説のとおりでございまして、中間答申の趣旨に従って、今回の改正案を提出いたしたのでございます。
最低賃金制の今後のあり方についての政府の所見いかんというお尋ねがございました。それに関連いたしまして、大橋、石田元労働大臣の発言を引用なさったのでございますが、その発言の趣旨を否定いたすつもりはございません。ただ、この問題は労使双方に重大な関係を持つ問題でもございまするし、種々の論議もございます。したがいまして、今後労使、公益各側の代表が入っておいでになりまする最低賃金審議会で十分論議をしていただき、その御意見を伺った上で、政府がこれを尊重しつつ、最終的な判断をするのが適当であると存じます。それに先立って、政府が見解を示すことは差し控えるべきではないかと考えておるのでございます。
全国全産業一律最賃制についてのお尋ねでございますが、これにつきましては、産業別、地域別に非常に大きな格差が存在している現在、一律の最賃制を実行いたします際には、ある場所においては単なる名目的なものになってしまう。他の場所においては、実行されることがむずかしい最低賃金になるのではないかというような反対の議論もあるわけでございます。これまた、労使双方にとってきわめて重要な問題でございますから、審議会の御審議を待って、政府の意見を決定いたしたいと存じております。なお審議会におきましては、すでに小委員会において、今後の検討の問題点等も整理されて、総会にはかっておられることを、御参考までにお耳に入れる次第でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/19
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020・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 田畑金光君。
〔田畑金光君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/20
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021・田畑金光
○田畑金光君 私は、ただいま趣旨説明のありました政府提出の最低賃金法の一部を改正する法律案について、民主社会党を代表し、以下、総理はじめ関係大臣に質問いたすものであります。(拍手)
現行最低賃金制は、先ほどのお話のように、昭和三十四年七月施行され、今日に及んでおりますが、その中心は業者間協定に基づく最低賃金決定方式であります。元来が中小企業を対象とする制度であるがゆえに、最賃決定が使用者の一方的決定にゆだねられてきたところに、この制度のもとで労働者の生活安定をはかるには限界があることは、当初から予期されていたところであります。もちろん法施行に伴う積極面もなかったとは申しませんが、反面、最低賃金の名において最高賃金化し、これが中小企業労働者の賃金くぎづけ的な役割りを果たしたことも事実であります。
昭和四十二年九月末現在、適用労働者数は約六百万、中小企業総労働者数は千三百二十八万人に対し、適用率四三・四%であり・普及率はいまだ半分に満たない状況であり、これら労働者の中には、最低賃金設定の必要な労働者が多数にのぼることも事実であります。しかも、現行最低賃金の運用状況を見ますると、適用件数約二千五百件中、業者間協定方式に基づくもの、実に二千四百件をこえ、金額別に見ますると、四百円から五百五十円未満までをほとんど占めておるということは、業者間協定方式が、もはや今日の労働経済情勢に即していないことを端的に表明するものであります。
御承知のとおり、わが国経済は、昭和三十年代、高度成長期に入り、ことにここ数年来は、産業構造、労働力需給関係には大きな変化が生じ、賃金上昇の幅も年々大きくなり、なかんずく、若年労働者や中小企業労働者等、従来賃金の低かった分野の上昇が著しく、その結果、各種賃金格差も漸次縮小の傾向にあることはいなみがたい趨勢であります。しかも、資本の自由化をはじめ、わが国経済の国際化が一そう推進されつつあるとき、この変化に対応し、適正な労働条件のもとに、公正な競争を確保することは、わが国産業、企業に課せられた当面の課題であり、中小企業も例外ではなく、経営の近代化、合理化を通じ、その体質改善強化を急ぐべきであります。
佐藤総理は、先ほどもお話がありましたように、国民総生産において、わが国が世界第三位に達したことを非常な誇りとしておられますが、ただ、経済の高度成長だけをとらえて、大国としての誇りが保たれるものでありましょうか。国民所得の平均水準は、先ほどのお話しのように世界で二十一位であります。また労働者の平均賃金はなおアメリカの四分の一以下であり、ヨーロッパ先進国、たとえば西独に比べますると二分の一以下であるなど、著しく低い状況にあります。アジア最大の工業国家に成長したはずのわが国が、今日なおILO二十六号条約も批准できないという状態であります。同条約については昨年六月現在、批准国はアジア四ヵ国を含め、七十八の国にのぼっておるのであります。また、社会保障の最低基準設定に関するILO第百二号条約についても、批准のための国内条件が整備されていないというのがわが国の現状であります。ILO二十六号条約が批准できない最大の理由は、いま労働大臣がお話しありましたように、賃金決定について、労使平等の参与の原則を持つ同条約第三条の精神に明らかに抵触するからであります。
佐藤総理は、このような最低賃金制を今日まで放置されてきたことに対し、いかなる責任を感じておられるのであるか。また今後の最賃制のあり方について、いかなる御所見をお持ちであるか。あわせてILO二十六号条約批准について内閣の方針を伺っておきます。
次に、労働大臣にお尋ねいたします。
今回の法律改正案は、申すまでもなく、昨年五月、中央最低賃金審議会から、時の労働大臣に対する答申に基づいてなされたものであります。この改正によって、今後の最低賃金決定方式は、労働協約の拡張適用による方式及び最低賃金審議会の調査審議による方式によることとなるわけであります。このことは、わが党が、年来、現行最賃法に関し、とりあえず改正すべしと主張してまいりました点と共通しております。その限りにおいて、わが党は、今回の改正を、本格的最賃制への過程として一応これを評価するものでありますが、中央最低賃金審議会も、その答申において、「将来の最低賃金制のあり方についてはすみやかに結論が得られるよう、引き続き検討を行なうこととする。」と申しております。このことは、わが党の期待する本格的最低賃金制に向かって、政府も中央最賃審議会も努力してまいるものと理解してよろしいかどうか、この際労働大臣の所見を伺っておきます。
次に、法案の内容につき、二、三お尋ねいたします。
最低賃金について、先ほどお話がありましたように、全国全産業一律論がございますが、業種別、地域別、あるいは年齢、勤続等により賃金格差がなお大きい現状のもとで一律最低賃金を決定した場合に、それが有効に機能し得ると考えておるかどうか。それぞれの国は、最低賃金を全産業一律に決定して対処しておるのかどうか、この点を労働大臣から教えていただきたい。
最賃法は、第一条の目的において、労働者の生活安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保、国民経済の健全な発展への寄与をあげておりますが、業者間協定は、このような目的に即し、適当でないがゆえに廃止に踏み切ったものと思います。それなれば、なぜ二年間の経過期間を設けたのか。業者間協定方式を不適当とするのであるならば、今次改正法施行の時点において、なぜ新方式に踏み切れないのか。その辺の事情を明らかにしていただきたい。
労働者の生活安定を目的とするのであれば、現行最低賃金の水準は、どう見ても、単身労働者の生活水準すら確保するかしないかの線上にあるものであります。これを平均的家族構成の世帯持ち労働者の生活確保に基準を置きかえるべきであると考えますが、この点について、労働大臣の考え方を承っておきます。
最賃審議会は、中小零細企業の振興助成について政府に建議を行なっております。労務倒産といわれる今日、最賃制すら実施できないような企業では、存続も不可能におちいるでありましょう、最賃制実施に関連して、政府は、中小企業の育成強化に関し、どのような措置をとってこられたか、通産大臣の所見を伺っておきます。
最後に、所得政策の導入について大蔵大臣、経企長官の見解をお尋ねします。
昨年秋、財政硬直化問題に関連し、いわゆる宮澤構想なるものが提唱され、所得政策の導入として、日経連、経団連等、経営者団体はあげてこれを歓迎し、政府に対し、賃金引き上げのガイドラインを提示するよう求めてまいりました。その後宮澤長官自身その意思のないことを言明されましたが、その後のわが国をめぐる経済情勢は内外ともにきびしいものがあります。御存じのように、過日、イギリスにおいては一九六八年の予算案を発表いたしましたが、これは、国際収支の大幅改善を最優先させたもので、国民にきびしい耐乏生活を求めた超緊縮予算となっております。九億二千万ポンドにのぼる消費税を中心とする増税を行ない、一方、所得政策を強化して、賃金などあらゆる所得及び企業配当の増加を最大限年間三・五%に押える立法措置をも講ずるとのことであります。
最近、わが国においても、賃金、物価、生産性の問題等が種々論争の焦点になっておることは、内閣諸公もよく御存じでありましょう。ただ、私は、今日のわが国の社会、経済情勢のもとでは、所得政策を導入する条件はないと考えます。すなわち、所得政策を成功させるためには、第一に生産性の向上であります。すなわち、所得政策は、分配国民所得と実質国民生産との均衡をはかることであります。第二は、財産所得と物価規制であります。わが国での所得政策は単純に賃金抑制論にすりかえられておりますが、同時に、利潤所得等財産所得を何らかの形で抑制することが必要であります。同時に、物価の安定が前提であります。第三には、労使協議制の確立と産業民主主義の問題がございます。所得政策が成功するには、労使の代表と政府の協力体制が不可欠の前提であります。しかし、今日わが国において、このようなことが期待できるでありましょうか。ゆえに、所得政策はその時期にあらず。また、政府が民間賃金相場づくりにガイディングラインの役割りを果たすことは、賃金は労使交渉によって決定すべしとの原則から見ても、不当な介入におちいると考え膨れますが、政府の所見はどうでありましょうか。
時、あたかも春闘の時期に入りますが、この際、所得政策に関し、大蔵大臣並びに経企長官の見解を伺って、私の質問を終わることにいたします。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/21
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022・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 田畑君にお答えいたします。
現行の最低賃金法が制定されたのがちょうど三十四年であったかと思いますが、それから今日まで、この賃金制についての批判はいろいろございます。しかし同時に、現行の制度のもとにおきまして、労働条件が確かに改善され、また、中小企業の近代化なども進めてこられた、そういう意味の功績のあることも見のがすことはできません。
ただいま、私が国民総生産を自慢をした、かように言われますが、別に自慢をしたわけではございません。そして、これよりもさらに、各人の個々の賃金が充実すること、向上されること、このほうに重点を置くべきだ、かように御指摘でございましたが、私もさように考えます。しかし、先ほど枝村君にお答えいたしましたように、この賃金は、何といいましても、労働生産制に対応して上下さるべきものだ、私はかように考えておりますので、労働生産性の低い部門、これを高めない限り、その個々の働く者の所得はふえてこない、かように思うのでありまして、そういう意味で、農業や中小企業の近代化を進めるということを申したのでございます。これらの点は田畑君も十分おわかりだと思います。今回の中央最低賃金審議会が答申を出しましたのも、三十四年にきめてから、経済も非常に発展した、実情も変わっている、それに即応した賃金制度を設ける、かような意味から、三十四年にきめたものをもう改正すべきときに来ているのだ、かように判断して、今回の答申を見、それを尊重して、政府が改正法案を提案しておるわけであります。この法律案ができ上がれば、ただいま御指摘になりましたILO二十六号条約に抵触するものもなくなります。したがいまして、この法律が成立して、そして二年の経過期間を経た後は、ILO二十六号条約に抵触する何ものもないようになりますので、そのときには、ILO二十六号問題とも真正面から取り組めることになると、かように思います。したがいまして、いろいろ御意見はおありのことだと思いますが、一日も早くそういうようなILO条約の批准もいたしたい、かように改正案を提案いたしておるのでございますから、御審議の上、御協力を得たいとお願いする次第であります。
なおまた、今回の改正は、これが最終的なものでないことは、先ほど枝村君にお答えしたので、御了承がいくと思います。最低賃金審議会はさらに今後とも検討を続けて、将来の賃金のあり方、望ましき姿についての答申をそのうち政府に提出することだ、かように私ども期待いたしておりますので、しばらく時間をかしていただきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣小川平二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/22
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023・小川平二
○国務大臣(小川平二君) 最低賃金制の今後のあり方につきましては、ただいま審議会において鋭意検討を進めておられますことは、先ほど申し上げたとおりでございます。政府といたしましても、審議の結果を待ちまして、一刻もすみやかに結論を得たいと考えておる次第でございます。
全国一律最賃制につきましては、いろいろ御議論の分かれておる点でございますが、これまた、審議会の審議の結果を待って、政府の態度を決定いたしたいと存じております。
適用労働者につきましては、ただいまおことばにございました、対象を単身者とするかいなかということは、一つの大切な問題であると存じます。この点もまた審議会におはかりをいたしまして結論を得たい、かように考えておりますので、さように御了承をいただきます。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/23
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024・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 所得政策につきましては、問題が非常に多くて、欧米諸国の例を見ましても、必ずしも成功を見ていないようでございます。わが国におきましては、労働力の不足ということが顕著な現象になってはまいりましたが、外国に比べてまだ相当にゆとりのある段階であると思っております。したがって、今後の推移といいますか、将来の動向はともかくとしまして、いまの段階におきましては、日本においては、まだ所得政策を導入しなければならぬというような情勢の切迫さはないというふうに私は考えております。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/24
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025・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 現在のような内外の情勢の中で、いわゆる春闘の動向には、当然私ども非常に関心を持っております。願わくは、いたずらに名目賃金の上昇を競うことでなく、実質賃金の充実ということに労使とも関心を持ってもらいたい、こう思っております。
所得政策につきましては、ただいま田畑議員の仰せられましたことに、私も概して同感でございますので、現在そのようなことを実際に行なうつもりはございません。(拍手)
〔国務大臣椎名悦三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/25
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026・椎名悦三郎
○国務大臣(椎名悦三郎君) 賃金支払い能力の低い中小零細企業が最低賃金制度を有効に実施してまいりますためには、御指摘のとおり、中央最低賃金審議会の建議にありますように、総合的中小企業対策を実施してまいりまして、中小企業の経営基盤の強化をはかる必要があると考えます。そこで、政府といたしましては、四十二年度におきまして、以下申し上げる六つの施策を講じてまいった次第であります。
すなわち、第一は、中小企業振興事業団の設立による協業化、共同化あるいは集団化の推進。第二に、協業組合制度の創設。第三、小規模企業の体質強化をはかるための指導事業の拡充、それから家族専従者に対する完全給与制の実施。第四、中小企業近代化促進法の指定業種の拡充をいたしまして、今般二十二業種を追加したのであります。第五、官公需の対策、下請取引適正化対策、金融対策の強化。第六、職業訓練制度の強化等でございます。
以上、六つの施策を実行してまいりましたが、今後の方針といたしましては、四十三年度において、政府は、中小企業の構造改善の推進、金融の円滑化、技術開発力の強化等を中心に、施策の拡充をはかってまいる所存でございます。なお、その際において、小規模企業の育成には特段に配慮してまいりたいと存じます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/26
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027・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 松本忠助君。
〔松本忠助君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/27
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028・松本忠助
○松本忠助君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました最低賃金法の一部を改正する法律案について、総理並びに労働大臣に対し質問をいたします。
最低賃金制は、近代国家に不可欠な制度であることは言うまでもありません。すなわち、低賃金労働者の保護、不公正競争の防止、産業平和の確立などをねらいとして各国ともこれを実施し、一九二八年六月には、ILOにおいて第二十六号条約、すなわち最低賃金決定制度の創設に関する条約が採択されているのでありまして、すでに七十八ヵ国がこれを批准していることは御承知のとおりであります。
しかるに、わが国の現行最低賃金法はきわめて悪法といわざるを得ません。労働者保護の立法としては、労働時間の制限、自由な労働組合運動の保障等はすでにわが国においても確立されているにもかかわらず、労働条件の最も基本となる賃金制度に重大な欠陥があり、これをすみやかに解決しなければならないことは当然であります。
現在実施されている最低賃金法は、業者間協定という業者の間で一方的にきめてしまうやり方をとっているのであります。しかし、賃金の決定というのは、ILO二十六号条約の最低賃金決定制度の創設に関する条約にも見られるように、労使対等の原則のもとで交渉し、決定されなければならないのであります。特に賃金決定のような重大な問題については、労使対等でなくてはならないのは当然のことであります。したがって、業者だけできめて、それを最低賃金と称する業者間協定のようなものは、それはわが国のみで最低賃金と名づけただけであって、世界の常識でいう最低賃金ではないのであります。これは明らかにILO二十六号条約の精神に違反しているといわなければなりません。したがいまして、四十二年現在、七十八ヵ国が最低賃金に関する条約を批准しているのにもかかわらず、いまだわが国が批准できないのは、ここに原因があるのであります。
そこで、総理にお伺いいたします。
われわれが常に主張するところの真に労働者を保障するための最低賃金制確立、その熱心な要望にもかかわらず、このような悪法を今日までかかえてきた責任を総理は明確に自覚し、反省すべきであります。
さらに、政府の今回の改正案では、業者間協定を廃止するということのようでありますが、最低賃金額をどのようにして決定するかという問題があります。わが党の案は、基準生計費一本としております。これは中央最低賃金委員会が決定するものでありまして、十八歳の労働者が健康で文化的な生活を営むために必要な最小限の生計費を算定するものであります。算定の方法については、理論生計費、つまり成人一人当たり何カロリー、たん白質が一日何グラム必要かといった科学的な基礎を持って、生活に必要な品目と数量を決定するのであります。そして、品目と数量が決定した上で価格をきめ、生計費を算定ずるのであります。このようにしてわが党は最低賃金を決定することといたしております。
しかるに、政府案では、労働者の生計費の算定も明確でなく、また類似の労働者の賃金を考慮することになっているが、これではむしろ賃金引き下げを招き、かつ、企業の賃金支払い能力を考慮することは、ますます賃金引き下げとなって、労働者保護の趣旨に大いに反すると考えられますが、総理並びに労働大臣より明確なる答弁をお願いするものであります。
第三に、最低賃金額の決定にあたって、政府案は、審議会の意見を尊重して、労働大臣または都道府県労働基準局長が決定することになっております。これでは、労使対等の原則に反することはもとより、特に労働者の意見が十分に反映されがたいと考えるものであります。やはり、わが国の現状においては、労、使、公益の三者構成による委員会で決定することが最も妥当であり、さらに、委員の任命については、労働者委員は労働組合の、使用者委員は使用者団体の推薦を受けることとし、公益委員は両者の委員の同意を得た者を、それぞれ労働大臣が任命するという方向が望ましいのであります。また、賃金委員会は、事務局を持ち、最低賃金の決定のほか、基準生計費の調査、実施の指導、監督を行なうこととすべきであると考えますが、この点について労働大臣より御答弁を願います。
第四にお尋ねいたしますが、最低賃金を決定するにあたっては、業種別、産業別、地域別等に大きな格差があることは望ましい姿ではありません。われわれは、現状としてはやむなく最小限の地域差を認めることにいたしております。すなわち、わが党の案は、中央最低賃金委員会において、一定の地域内の基準生計費が、全国一律最低賃金決定の基礎となった基準生計費より著しく高くなったときは、当該地域内の最低賃金を決定することとしております。将来は、いかなる労働者にも平等に最低の賃金を保障することが当然のあり方であります。政府はこの目標に向かって努力すべきものと考えますが、労働大臣のお考えをお聞かせ願いたいのであります。
第五に、せっかく決定した最低賃金も、日本の経済界の現状のように変動が激しくては、すぐ実情に合わなくなってしまいます。そこで、消費者物価が五%以上も上昇した場合は、当然これを改定しなければならないと思うものであります。特に、このスライド制は重要な要素でありますが、労働大臣はこの点をどのようにお考えになるか、お伺いいたします。
以上の諸点について、明確にして具体的な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/28
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029・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
現行の最低賃金制度、これは悪法だときめつけられました。確かに、現状から見ますると望ましい姿ではない。しかし、先ほど来お答えいたしましたように、功績もまたそれぞれあるのでございまして、過去の功績、これは正しく評価しなければならないと思います。また、ただいま御指摘になりましたような御意見も、十分今回の中央最低賃金審議会では採用されまして、それで今回の答申が出たのでございます。したがいまして、私は、悪法ときめつけられたことをもって一がいに間違っていると申すのではありません。しかし同時に、今日までこの法律、この制度のもとにおいて十分労働条件の改善や、また中小企業の近代化がはかられた、そういうことは正しく評価していいのではないか、かように思います。
また、先ほどお答えいたしましたように、今回の改正ができ上がれば、いわゆるILO条約の二十六号批准、これまた支障がなくなりますから、この点も御了承いただきたいと思います。
次に、この最低賃金をきめる際に、生計費を考えて、その基準生計費だけできめたらどうだ、こういう御意見でございます。もちろん、この生計費が重要なる要素であることは当然であります。しかし、基準生計費だけできめますことについては・何かと問題もあろうかと私どもは考えております。したがいまして、類似の労務の賃金、これまた参照すべきではないか。同時にまた、通常の企業の賃金支払い能力、そういうものも参考にすべきではないだろうか、かように考えております。今回の答申は、政府と申しますよりもそれぞれの専門家が集まりました中央最低賃金審議会、その答申に基づくものでございまして、どうか十分御審議のほどをお願いいたします。
また、これも先ほど来たびたびお答えいたしましたように、最終的な答申を得たというものではございません。経済、産業の発展によりまして、その実情に即応した賃金制度を立てなければならない、かように考えておりまして、今後ともこの審議会は引き続いて諸般の事情について検討するのでございますから、それらの点も御了承いただきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣小川平二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/29
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030・小川平二
○国務大臣(小川平二君) お答えいたします。
現行の業者間協定のILOとの関連につきましては、先ほども申し上げたとおりでございます。ただ、これは論議の存する問題であったことは事実でございますが、二年の経過期間満了後には廃止されますので、ILOとの間の問題は事実上なくなりますことは、いま総理の答弁にございましたとおりでございます。
それから、生計費につきましては、最低賃金法におきまして、生計費のほかに、類似の労働者の賃金、通常の企業の支払い能力を考慮いたしております。最低賃金の決定にあたりまして、もちろん、労働者の生計費はきわめて重要な要素として考慮されるべきことは当然でございますけれども、これのみを基準として最低賃金を決定することにつきましては、たとえば、生計費より賃金の上昇のほうが大きいような場合には、最賃の改善が一般賃金の改善よりおくれるという事態も生じてくるでございましょうし、通常の企業の支払い能力を無視して最低賃金をきめるということになりますれば、産業経済に混乱を生ずるということも起こり得る等、いろいろ問題があると考えておる次第でございます。
なお、御参考までに申し上げますれば、ILOの三十号勧告におきましても、最賃の決定に際しては類似の仕事に対して支払われる賃金率を参照すべし、また、一般的な賃金水準を考慮すべしということが書かれておるのでございます。
それからまた、最低賃金法による最低賃金の決定は、労働大臣または都道府県労働基準局長が行な与ことになっておるわけでございますが、労働大臣ないし労働基準局長は、決定に際してあらかじめ最低賃金審議会に諮問をいたしまして、答申を尊重して行なわなければならないことになっております。さらに、審議会の意見によりがたいと考える場合には、あらためて審議会に事案の再審議を求めなければならないということにもなっておるのでございまして、労働大臣あるいは労働基準局長が、審議会の意見を無視して、一方的な決定を行なうということはあり得ない仕組みになっておるのでございます。西独においてもイギリスにおいても、同様な仕組みをとっておるのでございます。
これまで最低賃金は、地域や業種、職種等に基づく賃金あるいは生計費等の実情に応じて決定され、それらに応じて最低賃金額に相違が見られるところでございます。将来の最低賃金がそういう差のないものに向かうべきかいなかという問題につきましては、これから先の経済の動向、雇用の動向等とも関連をする問題でございます。かような最賃制の基本的なあり方につきましては、種々御議論の存するところでございますが、今後審議会で検討を願う方針でございます。
それから、消費者物価にスライドして最低賃金を引き上げよ、かような御質問がございました。最低賃金の実効性の維持のために消費者物価の動向を考慮しなければならないことは当然でございますが、最賃の決定、改定については、これとあわせて一般賃金の動向、国民生活水準の改善等の要因も勘案されておるのでございまして、わが国の最低賃金の水準は、これまで、実際問題といたしまして、消費者物価の上昇を大幅に上回って上昇してきているという事実を御報告申し上げておきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/30
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031・小平久雄
○副議長(小平久雄君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/31
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032・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 日程第一、道路整備特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/32
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033・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 委員長の報告を求めます。建設委員長加藤常太郎君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
—————————————
〔加藤常太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/33
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034・加藤常太郎
○加藤常太郎君 ただいま議題となりました道路整備特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
本案は、高速自動車国道の建設等、日本道路公団の行なう有料道路事業の増大にかんがみ、この際、地方道の整備をより効率的に促進するための一環として、道路整備特別措置法に基づいて、道路管理者である地方公共団体が、建設大臣の許可を受けて、有料道路の新設または改築を行なう場合において、その資金の一部を無利子で貸し付けることができることとするとともに、この貸し付け金に関する経理は、道路整備特別会計において行なうこととしようとするものであります。
本案は、二月十二日本委員会に付託、三月一日提案理由の説明を聴取いたしたのでありますが、その後における質疑の詳細は会議録に譲ることといたします。
かくて、三月二十一日、討論を省略して直ちに採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/34
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035・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/35
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036・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/36
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037・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長田村元君。
—————————————
〔田村元君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/37
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038・田村元
○田村元君 ただいま議題となりました関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
この法案は、最近における内外経済情勢の変化と関税一括引き下げ交渉の妥結等の国際的動向に対応するため、関税定率法、関税法及び関税暫定措置法について、それぞれ所要の改正を行なおうとするものであります。
すなわち、まず第一は、関税率についての調整でありまして、関税定率法及び関税暫定措置法を通じて六十二品目の実行税率を変更するとともに、暫定税率の適用期限が本年三月三十一日とされている七十二品目について、その適用期限を一年間延長し、また、二十二品目につき同種品目の税率を統一する等の改正を行なうこととしております。
第二は、本年三月三十一日に適用期限が到来する重要機械類の免税制度等関税の減免税または還付制度のうち、十一の制度について、その適用期限を一年間延長することとしております。
第三は、関税及び貿易に関する一般協定のジュネーブ議定書による協定税率の引き下げに応じ、入国者の携帯貨物に対する簡易税率を引き下げることとしております。
第四は、関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定を受諾することに伴い、現行不当廉売関税制度について規定の整備を行なうこととしております。
第五は、新たに開港として、木更津港、土生港及び苅田港を指定することとしております。
本案につきましては、審査の後、三月二十一日、質疑を終了し、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって本案は原案のとおり可決となりました。
なお、本案に対しましては、全会一致の附帯決議が行なわれましたが、その要旨は、米国の輸入課徴金、ケネディラウンドの協定税率が適用されない国との貿易及び国内産イモでん粉の取り扱いについて、それぞれ万全の措置を要望するものであります。
これに対し、水田大蔵大臣より、内閣は善処する旨の答弁がありました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/38
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039・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/39
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040・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/40
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041・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 日程第三、公害防止事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/41
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042・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 委員長の報告を求めます。産業公害対策特別委員長山崎始男君。
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〔山崎始男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/42
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043・山崎始男
○山崎始男君 ただいま議題となりました公害防止事業団法の一部を改正する法律案について、産業公害対策特別委員会における審査の経過並びに結果について御報告いたします。
公害防止事業団は、昭和四十年に設立され、公害防止施設の整備を助成し、促進する役割りをになってまいったのであります。
本案は、その充実強化をはかるため、全額政府出資による一億円の資本金を設けるとともに、追加出資の道を講じようとするものであります。
本案は、去る二月十二日本委員会に付託され、同月二十人目政府から提案理由の説明を聴取し、慎重に審査いたしましたが、その間、公害防止事業団の業務の拡充強化として、事業規模の拡大、金利の引き下げ、集中暖房事業等の問題について論議がなされたのでありますが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
かくて、昨二十五日、質疑を終了し、直ちに採決の結果、本案は原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
なお、本案に対し、
政府は、本法施行にあたり、次の事項について措置を講ずべきである。
一 公害防止事業団への政府出資は今後増額するよう努力すること。
一 公害防止事業団の事業運営を積極的に行なわせるとともに業務の範囲及びその対象地域の拡大を図り、譲渡条件等の緩和及び貸付金利息の引下げについては引き続き努力すること。
一 今後、都市公害にも適用できるよう検討すること。以上の附帯決議が、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党の四党共同で提案され、全会一致をもってこれを付するに決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/43
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044・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/44
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045・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/45
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046・山村新治郎
○山村新治郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
この際、内閣提出、中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/46
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047・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 山村新治郎君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/47
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048・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/48
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049・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 委員長の報告を求めます。商工委員長小峯柳多君。
〔報告書は本号末尾に掲載〕
—————————————
〔小峯柳多君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/49
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050・小峯柳多
○小峯柳多君 ただいま議題となりました中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果の御報告を申し上げます。
御承知のように、これまでも信用補完制度は漸次拡大され、担保力及び信用力の乏しい中小企業者の信用を補完することにより、民間資金を誘導し、中小企業金融の円滑化に大いに寄与してまいりました。しかるところ、最近、金融引き締め等の影響により信用保証協会の代位弁済が急増し、これが中小企業信用保険公庫の保険金支払いの急増を招き、ひいては、保険準備基金が大幅に減少することとなってしまいました。しかも、昭和四十三年度に入ってからも、この傾向は依然として続くものと予想されます。
本案は、このような実情に対処して、保険準備基金を増額して、公庫の信用補完事業の一そうの充実をはかろうとするものでありまして、
その要点の第一は、中小企業信用保険公庫の保険準備基金に充てるため、一般会計から二十五億円の出資を行なうこと
第二は、役員の欠格条項に関する規定を整理することであります。
なお、このほか、公庫の融資基金に充てるため、昭和四十三年度一般会計予算に出資金七十億円が計上されております。
本案は、去る二月十二日当委員会に付託され、二十人目政府より提案理由の説明を聴取し、三月十三日より質疑に入り、きわめて熱心なる質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
かくして、三月十九日質疑を終了し、本日採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
なお、本案に対し、特別小口保険の付保限度額の引き上げ及び具備すべき納税要件の緩和、中小企業向け長期資金の確保及び中小企業に対する信用保証の浸透促進等を内容とする附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/50
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051・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/51
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052・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/52
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053・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。
午後四時十八分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
大 蔵 大 臣 水田三喜男君
厚 生 大 臣 園田 直君
通商産業大臣 椎名悦三郎君
労 働 大 臣 小川 平二君
建 設 大 臣 保利 茂君
自 治 大 臣 赤澤 正道君
国 務 大 臣 宮澤 喜一君
出席政府委員
内閣法制局第二
部長 田中 康民君
労働省労働基準
局長 村上 茂利君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01519680326/53
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