1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年四月二日(火曜日)
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議事日程 第十三号
昭和四十三年四月二日
午後二時開議
第一 刑法の一部を改正する法律案(第五十五
回国会、内閣提出)
第二 中小企業投資育成株式会社法の一部を改
正する法律案(内閣提出)
第三 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規
制に関する法律の一部を改正する法律案(内
閣提出)
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○本日の会議に付した案件
田澤吉郎君の故議員島口重次郎君に対する追悼
演説
原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律
案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
日程第一 刑法の一部を改正する法律案(第五
十五回国会、内閣提出)
日程第二 中小企業投資育成株式会社法の一部
を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 核原料物質、核燃料物質及び原子炉
の規制に関する法律の一部を改正する法律案
(内閣提出)
午後二時六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/0
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001・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
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002・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 御報告いたすことがあります。
議員島口重次郎君は、去る三月十七日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
同君に対する弔詞は、議長において去る三月二十二日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
〔総員起立〕
衆議院は議員正五位勲三等島口重次郎君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます
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故議員島口重次郎君に対する追悼演説発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/2
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003・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) この際、弔意を表するため、田澤吉郎君から発言を求められております。これを許します。田澤吉郎君。
〔田澤吉郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/3
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004・田澤吉郎
○田澤吉郎君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員島口重次郎君は、去る三月十七日急逝されました。まことに痛惜の念にたえません。
いま、私の脳裏には、戦後第一回の青森県議会議員として、君と党派を越えて提携協力し、荒廃した郷土の復興と民生の安定のために献身したころの記憶がなまなましくよみがえるのであります。以来、私は、君の円満無比な人格と実行力を伴うた深い見識に対して、心から尊敬の念を抱いていたのでありまして、過去幾たびかの選挙においても、君を相手にして戦うことをむしろ誇りとさえ感じていたのであります。
君が入院加療中との報に、私は梅のはちを持って病床を見舞いました。寒に耐えて咲く梅の花のごとく、君の御病状もまた回復に向かわれることをひそかに祈ったのでありますが、この願いもむなしく、永遠の眠りにつかれた君を思うとき、私は言いようのない無念さと深い悲しみに心打たれるばかりであります。(拍手)
私は、ここに、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、つつしんで追悼のことばを申し述べたいと存じます。(拍手)
島口君は、明治四十五年一月、青森県弘前市にお生まれになりました。大正十三年、小学校を卒業し、家具商につとめられたのであります。実社会を通じてあらゆる辛酸をなめ、貴重な体験を積み重ねるうちに、生来旺盛な向上心と正義感を持った君は、十六歳にして早くも無産運動に身を投ぜられ、ここに島口君の苦難に満ちた生涯を決定する社会主義運動の第一歩が踏み出されたのであります。若き気鋭の社会運動家島口君は、昭和初年の小作争議に、はたまた弘前の電灯争議等に、津軽地方の労働運動の先頭に立って日夜奮闘されたのであります。
申すまでもなく、当時のわが国の労働運動は未曾有の弾圧に直面したのでありまして、島口君にとって最大の試練の時でありました。昭和七年から終戦に至るまで、検挙されること十数回、前後三たび、八年にわたる獄中生活を送るなど、君の青春は文字どおりあらしの中の青春にほかならなかったのであります。(拍手)しかるに、この間に処して、君はいささかも動ずることなく、き然として節を貫き通されたのであります。これこそ、強固な信念と真に勇気ある人にして初めてなし得たものと申せましょう。(拍手)
戦後、わが国に平和がよみがえるや、君もまたあらゆる桎梏から解放されました。「政治は独走してはいけない。大衆とともに歩み、大衆全体がしあわせにならなければならない。」と、君はこの信念をいよいよ固め、新たな出発をされたのであります。昭和二十年十一月、こんとんたる世情の中に日本社会党が誕生するとともに、いち早くこれに参加して、そして昭和二十二年に弘前市議会議員及び青森県議会議員に当選して以来、県議会議員に当選すること三たびに及びました。
この間、君は、だれにでも、そしてどんな問題に対しても、その解決のためには決して労をいとわず、苦を惜しまなかったのでありますが、なかんずく社会の底辺にあるいわば日の当たらない人たちに対しては、みずからを顧みず、親身になって、あたたかい救いの手を差し伸べられたのであります。このような実践活動に立脚して、君は、労働運動に、民生の安定向上に、あるいは県政の発展に大きな寄与をされたのであります。
この献身的な活躍は、君の人格と相まって、やがて広く人々の信頼と期待を集めるところとなり、昭和三十三年に行なわれた第二十八回衆議院議員総選挙において、君はみごと当選の栄を獲得され、ここに青森県第二区に初めて社会党代議士の誕生が実現したのであります。(拍手)
本院に議席を得られてからは、運輸、商工、農林水産等の各委員会の委員あるいは理事として、じみではありましたが、常に一貫した信念と節操とを保って、真摯かつ熱心に審議に当たられ、独自の風格を備えた存在でありました。長年にわたる実践活動を通じて体得した豊富な知識と深い識見に基づき、君は、現実に密着してものを見詰め、かつ現実の中から問題を的確に把握されたのであります。技術革新や大企業進出に伴う中小企業の問題、あるいは他産業の成長発展から取り残されがちな農業の問題等々、各般にわたって事あるごとに直ちに取り上げ、しかも、たんねんな質疑を積み重ねて、一つ一つ着実に成果をあげていかれたのであります。君のこの盛んな活躍ぶりは、国会の会議録が雄弁に物語っているのでありまして、君の名もこの会議録とともに不滅であると存ずるのであります。(拍手)
日本社会党においては、政策審議会の商工部会副会長、あるいは寒冷地対策、東北開発、貿易自由化対策等各特別委員会の委員を歴任し、党務にもまたすぐれた業績を残されたのであります。
君は、また郷党のために終始意を用い、リンゴの輸送、青函トンネル、高速自動車道の早期着工等の諸問題について、われわれと手を携えて懸命に奔走努力されてまいりましたが、さらに、内閣の東北開発審議会の委員としても多年のうんちくを傾けておられました。ことに晩年は、東北圏の総合開発を一そう強力に推進するため、東北圏開発整備法の立法化になみなみならぬ熱意をもって取り組んでおられたのであります。
かくて、島口君は、本院議員に当選すること前後三回、在職六年十一カ月に及び、この間国政に残された功績はまことに偉大なものがあります。(拍手)
思うに、島口君は、大衆政治家として大衆の中に生まれ、大衆とともに育ち、その全生涯を大衆のためにささげられたのでありました。君は、まれに見る強い正義感の持ち主で、権威に屈せず、利害を顧みなかったのであります。そして、身を持するに清廉、いたずらに辺幅を飾らず、ただ一筋にみずからの信ずる道を邁進するというかたい信念の士でありました。(拍手)君は、一見望洋たる風貌の中に、明朗にして温和、しかも何の気負いもてらいもない島口君独自の魅力を秘めておられたのであります。君は、だれにも気軽に肩をたたき、ひざを交えて語り合い、そして茶わん酒をくみかわされました。郷土の人たちにとって、君は力強い仲間、よき相談相手としての島重さんであったのであります。私は、そこに大衆政治家島口君の本領をはっきりと見ることができるのであり、これこそ、われわれ政治家が大いに学ばなければならないところであると存ずるのであります。(拍手)
君は平素人一倍健康を誇っておられたのでありまして、去る二月十七日、君が入院されたとの報にも、私は必ずや近い日に健康を回復されるものと確信しておりました。しかるに、長年の過労がこの不幸を招いたものでしょうか、いまだ五十六歳という若さで突如として去ってゆかれるとは思いもよらないことでありました。まことに痛恨限りないものを覚えるのでございます。(拍手)
君の眠る郷里弘前の地には、いまなお白雪をいただく津軽富士が、ありし日の君のき然たる姿を象徴するかのごとく、津軽平野を圧してひときわ高くそびえ立っております。偉容を誇る津軽富士を仰ぎ見る限り、郷土の人たちの胸中には、君の遺訓がいつまでも強く生き続けていくものと信じて疑いません。(拍手)
現下、わが国は内治に外交にきわめて重要な時期に当面し、政治に対する国民の関心がいまほど高まっているときはないのであります。このときにあたり、君のごとき名利を求めることなく、ひたすら国民大衆のために議員の職責を遂行するという清廉の士を失いましたことは、本院にとっても、国家にとっても、まことに大きな損失であると申さなければなりません。(拍手)
ここに、島口君の生前の御功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈りして、追悼のことばといたします。(拍手)
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原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/4
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005・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 内閣提出、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣園田直君。
〔国務大臣園田直君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/5
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006・園田直
○国務大臣(園田直君) 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
昭和二十年八月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾の被爆者につきましては、昭和三十二年に制定された原子爆弾被爆者の医療等に関する法律により、医療の給付、健康診断等を行ない、その健康の保持及び向上をはかってまいったのでありますが、原子爆弾の傷害作用の影響を受けた者の中には、身体的、精神的、経済的あるいは社会的に生活能力が劣っている者や、現に疾病に罹患しているため、他の一般国民には見られない特別の支出を余儀なくされている者等、特別の状態に置かれている者が数多く見られるところであります。したがって、これら特別の状態に置かれている被爆者に対する施策としては、医療の給付等の健康面に着目した対策のみでは十分ではなく、これらの被爆者に対してその特別の需要を満たし、生活の安定をはかることが必要であると存じます。このことにつきましては、昭和三十九年に行なわれました衆参両議院の決議、その他関連法律の制定の際の附帯決議等におきましても強い要望のあったところでありまして、政府といたしましても、昭和四十年において被爆者の実態調査を実施する等、被爆者対策の総合的な改善について慎重に検討を進めてまいったのでありますが、このほどようやくその成案を得、ここに原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律案を提案することといたした次第であります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
第一に、現行の原子爆弾被爆者の医療等に関する法律に基づき、その負傷または疾病が原子爆弾の傷害作用に基因する旨の厚生大臣の認定を受けた者であって、その認定にかかる負傷または疾病の状態にある者に対し、月額一万円の特別手当を支給することといたしております。
第二に、特別被爆者、すなわち、原子爆弾の放射線を多量に浴びたと認められる者であって、造血機能障害、肝臓機能障害その他の原子爆弾の影響との関連が想定される障害を伴う疾病にかかっている六十五歳以上の者、一定の身体上の障害がある者または母子世帯の母もしくはこれに準ずる者に対し、月額三千円の健康管理手当を支給することといたしております。
第三に、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律に基づき、その負傷または疾病が原子爆弾の傷害作用に基因する旨の厚生大臣の認定を受けた者であって、同法による医療の給付を受けている者に対し、従来、同法により医療手当を支給していみのでありますが、これをこの法律に移行させることといたしております。
第四に、特別被爆者であって、一定の精神上または身体上の障害により介護を要する状態にあり、介護に要する費用を支出している者に対し、介護手当を支給することといたしております。
第五に、国は、特別手当、健康管理手当及び医療手当にかかる事務の処理及びその支給に要する費用を交付することとし、また、介護手当の支給に要する費用についてはその十分の八を、その事務の処理に要する費用についてはその二分の一を負担することといたしております。
以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
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原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/6
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007・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。山田耻目君。
〔山田耻目君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/7
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008・山田耻目
○山田耻目君 ただいま趣旨説明のございました原爆被爆者特別措置に関する法律案に対しまして、日本社会党、民主社会党、公明党三党を代表いたしまして、質問を行ないたいと存じます。(拍手)
私は、質問に先立ちまして、本法案の提出に至る過程を振り返り、戦後二十三年、あまりにもおそ過ぎた法案提出の側面に若干触れなければなりません。そのことは、本法案の内容をより充実させることになるでありましょうし、戦後二十三年間忘れ去られていました原爆被爆者に対し、世界唯一の原爆被爆者国としての政治の責任を、より十分に果たすことになるものと思うからであります。
昭和二十年八月六日と九日、広島と長崎に投下されました二発の原子爆弾は、瞬時にして三十万余の人命を奪い、すべてを破壊し尽くしてしまったのであります。生き残った人々は三十余万人といわれておりますが、その実数を把握しようとする努力すら、政府にも地方自治体にもなかったのであります。
こうした冷酷な政治の外に忘れ去られた被爆者は、白血病に悩み、造血機能の障害に苦しみ、見るにたえないケロイドに結婚や就職という人間の権利も奪われ、髪の毛は抜け、皮膚に斑点をあらわし、歯ぐきから血を出しながら、やがて死んでいったのであります。この人たちに、なぜ政治の力で救済の手が差し伸べてやれなかったのでありましょうか。被爆後十二年たった昭和三十二年四月、原爆医療法がわずかな臨床上の保護を目的として成立をし、自来四回の改正を行なったとはいえ、ほとんど被爆者の生活救済として見るべきものはなかったのであります。
昭和三十八年十二月七日、東京地方裁判所はその判決において、「被爆者に対して救済策をとることは多言を要しない、それは立法府である国会、行政府である内閣の職責であり、終戦後十数年を経て高度の経済成長を遂げたわが国において不可能であるとはとうてい考えられない、われわれは本訴訟を見るにつけ政治の貧困を嘆かずにはおられない。」と判決をいたしておるのであります。(拍手)昭和三十九年四月わが党の提議に基づき、衆議院、参議院ともに各党満場一致で、原爆被爆者の援護強化に関する決議を採択いたしておるのであります。昭和四十年八月、茅誠司氏、湯川秀樹氏など世界平和七人委員会の人々や、東大、京大、早大の各総長など、日本の国際的有識者四十七人の連署による援護法のすみやかなる制定を要望した要望書が佐藤総理の手元にも届けられておるのであります。
総理、このようにして、地裁の判決、衆参両院の決議、国内の代表的な世論に顔をそむけて放置した政治責任は、一体だれに追及されるべきものでありましょうか。放置した理由は一体何なのか。政治の姿勢について、総理、あなたにどうしても解明してもらわなければならないのが第一の問題点であります。(拍手)、昨年十二月十五日、社会党、民主社会党、公明党三党は、共同して、援護法の早期実現について二十項目の申し入れを政府に行ないました。自民党を含め、四党の打ち合わせがなされ、かろうじて日の目を見ることになり、本国会に特別措置法の上程がなされたのでありますが、その内容は大幅に修正され、被爆者の実質的な生活援護にはほど遠い内容のものであります。しかし、一歩前進した一里塚としての評価は高く行ないたいと存じております。
本法案の内容につきましては担当の閣僚にただしたいと存じますが、いま一点、基本的なものとして、総理、あなたに伺いますが、今日、なお、一カ月平均六人の人たちが、受ける有効な治療もなく原子病で死没を続けておるのであります。悲惨この上もございません。原爆の死没者に対して、国として一菊の花も、一本の香華もたむけてあげられないいまの政治を、冷酷とは思われないでありましょうか、死者一人に対して五万円の香華料を支給するにしても、年間わずかに三百六十万円の経費でございます。的確な死没者名簿の把握される昭和三十二年四月以降の死没者七百九十余名に対して遡及支給をいたしましても、四千五百万円程度の経費の支出で済むのであります。昭和二十九年、ビキニにおけるアメリカの水爆実験による被爆者に対して、アメリカ政府と日本政府の折衝により、死者一人に対して五百万円、被爆者一人に対して二百万円の補償金が見舞い金の形式で支払われておりますが、私はこれと対比しようとは思いませんけれども、せめて広島、長崎の原爆死没者に対し、一人五万円程度の弔慰金の支出を考慮することは、さして至難なことではないと存じます。平和に徹し、愛情の政治を説かれるあなたの所信を、この際明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
いま一点、総理に伺います。
今回の特別措置によって新たに追加されましたものは、認定被爆者に特別手当として月当たり一万円を支給する項目のほか、七項目ございますが、昭和四十年厚生省の行なった被爆者実態調査に基づき、最小不可欠なものとして法律化し、予算額として十八億四千三百九十一万円の算定を行なったのでありますが、これが何と四三%に満たない七億八千八百二十五万円の少額しか組まれておりません。このような実態では、国の被爆者対策に熱意あるものとして受け取るわけにはまいりません。あらためて委員会審議の際、十分な検討を行なうよう担当大臣に指示さるべきだと思いますが、総理の見解を示していただきたいと存じます。
次に、厚生大臣に伺います。
昭和四十年の厚生省で行なわれました基本調査では、被爆者手帳の交付者二十五万三千百七十九人となっており、手帳の交付を受けていない者の申し出が四万五千五百四十三人あるので、被爆者総数は二十九万八千七百二十二人であると、その数を示しているが、結婚や就職の障害をおもんぱかって申し出ない者や、広島、長崎のように訪問調査をした地域では二三%の申し出があり、訪問調査をしない地域では五%の申し出しかない実情から見まして、かなりの潜在被爆者がおり、全国の被爆者総数は三十万をかなり上回るものと推定されます。手帳未交付者をさらに追跡調査なさる用意があるかどうか、伺いたいと思います。
第二には、死没者調査をなぜなさらなかったのか、了解に苦しみます。医学者が原爆後遺症のきめ手として要望する発病率の分母が明らかにならないからであります。死没者と生存者の総数を分母として、発病率を分子として疾病の状態を分類するとき、初めて合理的な被爆者の対策が樹立されるのであります。この貴重な調査を怠ったのは、死没者の補償要求を故意に握りつぶすためのものであるといわれておるが、真意を伺いたい。なお、あらためて調査なさる用意があるかどうかを、あわせて伺いたいと存じます。
第三には、昨年五十五国会におきまして戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に際し、各党全会一致の決議をもちまして、「政府は、わが国が世界唯一の原爆被爆国である事実にかんがみ、原爆被爆地において、旧防空法、国民義勇隊組織に関する閣議決定などによる国家要請に基づき、防空等の業務に従事中死亡または身体に障害をこうむった者に対し、昭和四十三年度を目途として具体的な援護措置を講ずること」の附帯決議を行なったのであります。その後何らの具体的措置も講ぜられておりません。この措置には救済すべき法律的根拠が明白でございます。旧防空法第十二条及びこれに基づく防空従事者扶助令、昭和十六年勅令第二十二号及び終戦直前の昭和二十年三月二十三日の閣議決定による国民義勇隊の組織決定は、隣組組織あるいは警防団の組織、目的と行動を規整したものであり、防空法とともに老幼者、病弱者、妊産婦を除いて、国家権力により広範囲に国民を結集させ、違反者には刑罰をもって臨むという強制法規でございました。したがって、負傷者や死没者に対しては、最低、当時五百円から最高千五百円までの扶助金が支給され、死没者には別に葬祭料の支給が制定されていたのであります。
この法令は、昭和二十一年一月に廃止になったのでありますから、当然、原爆による身体障害者や死没者に適用されなければならないものでありますが、敗戦のどさくさにまぎれ、いまだに放置されて現在に至っております。戦後は予算措置もなく、しかも旧内務省の解体などにより、請求の事務を扱う官署すらもなく、請求不能の状態に置かれたことは、まことに不法かつ不当の措置といわなければなりません。
このようにして、原爆により死没した者、身体障害者に対して扶助令の適用がなされておりませんが、戦傷病者戦没者遺族等援護法の改正をなさるその中に挿入されるのか、本法の改正でなさるのか、どう措置をしようとするのか、具体的な考え方を明らかにしていただきたいと思います。
第四に、法律の名称を原子爆弾被爆者援護法に改め、医療審議会を援護審議会に改める意思があるかどうか、伺いたいと存じます。
次に、大蔵大臣に伺います。
あなたは、歳入にあたっては大資本や金持ちにきわめておおようであり、租税特別措置の拡大強化をはかられる一方でございますが、歳出にあたっても、当、不当の原理をわきまえられず、最小不可欠の被爆者の必要経費である厚生省原案を四三%に圧縮する大なたをふるわれた。この根性は、原爆患者の救済は旧地主や在外財産の補償を行なうほどの政治的価値がないと判断をされたのか、放置しておけばやがて死没していくという冷酷な立場をとられたのか、また人道上、政治上、ゆゆしき問題であるので、今後も引き続き予算措置を講じていく所存なのか、見解を明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
次に、認定被爆者の特別手当、医療手当、特別被爆者の健康管理手当、介護手当に対し所得制限を行なうといわれているが、これらは原爆患者にとり最低最小の必要経費であり、許されない暴挙だと思います。必要経費として認め、所得制限を撤廃なさるつもりはないか、伺いたいと思います。
なお、低所得者で生活保護の適用を受けている認定被爆者に対して、特別手当月額一万円を支給する場合は、特別手当が生活給であるというたてまえから、併給しないという解釈がとられると聞きますが、対象人員はわずか三千五百六十四名、原爆患者で最も重症の人々であります。特異な条件を考慮して特に制度化された趣旨に基づき、全額必要経費として認め、併給される用意があるかどうか、お伺いをいたします。
次に、自治大臣に伺います。
今日まで被爆者対策が放置されたのは、もちろん国の行政上の責任でもありましょうが、地方自治体の広島、長崎など、特別の県、市を除き、放任されていたところにも責任の一端があるのであります。今後は地方自治体も国にすべての責めを負わすのみでなく、積極的に自主財源により、可能な助成を行なうよう指導なさる用意があるかどうかを伺いたいのであります。
最後に、総理、いままでの質疑を通し、政治の最高の責任者としての実りあるあなたの答弁を期待をして、質疑を終わりたいと思います。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/8
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009・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 山田君にお答えいたします。
山田君はみずからが被爆者であられ、したがいまして、原爆被爆者に対しての理解と同情は他の人より以上に深いものがある、かように思います。ただいまの質疑を通してのお話にも、その点が節々にあらわれておりまして、私はたいへん感動いたしたものであります。そうして、ようやく今回、各党の申し合わせにより、原爆被爆者特別措置法案を提出することになりました。この点では、お話しになりましたように、おそきには失したが、この際出ましたことは、これは前進である、かように考えております。
これは私が申し上げるまでもなく、衆参両院における決議なり、また各党が話し合われて、ようやくこの特別措置法案が立法された、その経緯等から見ましても、原爆被爆者に対して私どもが、ほんとうにお気の毒な状態、これに理解と同情を寄せた結果だ、かように思っております。しかしながら、この法律自身がこれで万全だというものではございません。したがいまして、今後とも必要に応じて、さらに前向きで整備を検討すべきものだ、かように思います。
また、ただいま、被爆者の諸君が月に平均六人も死亡していく、たいへん気の毒だ、こういう方々に対して葬祭料を出すことを考えたらどうか、こういうお話がございました。私もたいへん心を打たれたのでございまして、この種の方々に対して葬祭料を出すようなことについて、これは前向きでさらに検討を続けていくつもりでございます。
以上、お答えいたします。(拍手)
〔国務大臣園田直君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/9
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010・園田直
○国務大臣(園田直君) お答えいたします。
第一は、四十年に行なった実態調査が不十分ではないかという御意見でございまするが、この際の調査は、原爆の医療審議会の委員をはじめ、関係各方面の方々の経験者の意見を十分に取り入れて、基本調査は全員、健康及び生活実態の調査は二十分の一を調査したわけでありますが、その調査にあたっては、技術上の問題等もあって、御指摘の点があると存じます。しかしながら、ただいま提案いたしました法律案の成案を得るためには、さらに各方面の意見も聞き、あるいは実際に被害を受けられた方々の御意見も承っておりまするので、その調査で、被爆者の置かれた特異な状態、あるいは衰弱者の方々の模様等は、これを守るために十分案に盛られたものと考えております。しかしながら、なおいろいろな観点から、潜在の方々の数は相当多いと考えまするから、御指摘のとおりに、機会あるごとに調査を実施したいと考えております。
第二番目には、防空従事者に対する御意見でありますが、これは原爆の被爆を受けた防空従事者ではなく、全防空従事者全般の問題として調査をいたしておりまするが、実際上なくなられたときに、いろいろな交付金あるいは見舞い料を受けた方と受けなかった方は、調査がはなはだ困難でございます。そこで、ただいまはこれが警防団員であったという関係から、消防庁でこれを調査することにいたしておりまするので、この調査ができ次第、おくれておることは申しわけございませんが、これに対する検討をいたしたい。したがって、その検討をする場合には、遺族援護法の側面として考えていきたいと考えております。
なお、特別措置法を援護法の名称に変えて、内容もさらに充実する考えはないかという御指摘でございまするが、内容につきましては、御指摘のとおりに、長年の間できなかったことが第一歩を踏み出したわけでありまするから、逐次充実をしていきたいと考えておりまして、その内容は、当然御指摘のとおりに、援護の方向に向かっていくべきであると考えておりまするが、名目は特別措置法という名目を使っておりましても、その内容の拡大ができないことはないという考え方と、もう一つは、遺族援護その他の援護法がありまするので、これと混同視しないようにやったわけでありまして、この名称につきましては、逐次御相談をしていきたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/10
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011・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。
厚生省の要求予算を四三%に切ったというお話でございましたが、そうじゃございません。最初当初要求がございまして、概算、閣議の決定の前にもう一ぺん追加要求が出てきました。この査定のことを言っておるのだと存じますが、この両方の要求金額を加えて八二%、四十五億円が今年度の予算でございまして、昨年度の二十八億に比べまして、本年度は六一%以上の大きい増額で、さっき厚生大臣が御説明になりましたような新しい措置をとったということでございまして、初めて原爆被爆者に対する援護措置について一つの軌道がしかれたということは、非常に喜ばしいことと存じております。そんなに、おっしゃられるように予算を切ったわけではございません。
それから、所得の制限、併給の問題は、他の施策との関連を考慮いたしまして、今後十分検討することにいたします。(拍手)
〔国務大臣赤澤正道君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/11
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012・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) お答えいたします。
原爆被爆者対策は、事柄の性質上、国の施策によって的確に措置されることを期待しておりますが、地方団体でもこれが円滑に実施されますよう、ただいま山田さんから強い御要望もありましたが、積極的に配慮してまいりたいと考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/12
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013・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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日程第一 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/13
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014・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 日程第一、刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/14
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015・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。法務委員長永田亮一君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔永田亮一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/15
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016・永田亮一
○永田亮一君 ただいま議題となりました刑法の一部を改正する法律案について、法務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、最近における交通事犯の激増と悪質重大事犯の続出の実情等にかんがみ、刑法の併合罪となる罪の範囲並びに業務上過失致死傷及び重過失致死傷の罪の法定刑を改正しようとするものであり、その内容は、第一に、刑法第四十五条後段の併合罪となる罪の範囲を、禁錮以上の刑に処する確定裁判があった罪とその裁判確定前に犯された罪とに限るものとし、第二に、刑法第二百十一条の法定刑に、五年以下の懲役刑を加えるとともに、その禁錮刑の長期を五年に引き上げることであります。
本案は、第五十五回国会に内閣より提出され、継続審議となっているものであります。当委員会におきましては、二月二十七日政府から提案理由の説明を聴取した後、参考人から意見を聞くなど、慎重かつ熱心な審議を重ねてまいりました。
そのおもなる質疑の内容は、「第二百十一条の改正理由は何か」、「その適用範囲はひとり自動車事故だけにとどまらないのではないか」、「法定刑の引き上げによって全体的に刑が引き上げられるおそれはないか」等であります。
かくて、三月二十九日、質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党から反対、自由民主党、民主社会党及び公明党からそれぞれ賛成、日本共産党から反対の各討論がなされました。
次いで、採決の結果心多数をもって政府原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党四党共同提案にかかる附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/16
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017・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 討論の通告があります。これを許します。猪俣浩三君。
〔猪俣浩三君君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/17
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018・猪俣浩三
○猪俣浩三君 私は、日本社会党を代表いたしまして、刑法の一部改正法律案に反対の意思表明をいたします。
政府の本法に対しまする提案理由説明書、赤間法務大臣の法務委員会における所信表明等によれば、道路交通法の一部改正で事が済むはずであります。それをなぜがゆえに刑法改正に持ち込んだのであるか。提案理由説明によれば、「最近における交通事故とこれに伴う死傷者数の増加の趨勢は、まことに著しいものがあり、政府におきましては、かねてからこのような事態を重視して、交通安全対策の樹立とその推進につとめてまいったのでありますが、近時の自動車運転に基因する業務上過失致死傷事件及び重過失致死傷事件の実情を見まするに、数において激増しつつあるのみならず、質的にも高度の社会的非難に値する悪質重大事犯が続出し、法定刑の最高限またはこれに近い刑が裁判において言い渡される例も次第に増加しつつあるのでありまして、この際、この種事犯中特に悪質重大なものに対して、より厳正な処分を行ない得るものとするよう必要な法改正を行ないますことは、今日における国民の道義的感情に合致するばかりでなく、国家の刑政から見ましても、きわめて緊要なことと考えられたのであります。」赤間法務大臣の所信表明によれば、「前国会に引き続き、当委員会で御審議いただくこととなっております刑法の一部を改正する法律案につきましては、交通事情の現況にかんがみ、その成立が緊急に要望されているものと考えます。」こうなっておるのであります。
こういう趣旨であれば、道路交通法の改正で事が足りるのであります。私どもは、こういう趣旨であるならば決して反対はいたしません。なぜゆえに基本法である刑法の改正に持ち込んだのであるか、不可解であります。これがはなはだ危険だとしてわれわれは反対するのであります。
御承知のように、刑法は、民法、商法などとともに三大基本法でありまして、これが改正には慎重にも慎重な考慮を必要とするのであります。だから、これらの法律の改正には、法務省の諮問機関として法制審議会があり、また天下の専門家を集めまして、長い年月をかけて審議し、その結論に沿って政府の原案ができるわけになっておるのであります。
刑法の全面的改正につきましては、昭和三十年十月、時の法務省刑事局長竹内寿平氏を会長とする刑法改正準備会ができ、そこで百二十一回の会合を開いて、昭和三十五年三月刑法改正試案ができ、これを発表して各方面の意見を聞き、昭和三十六年十二月改正刑法準備草案というものが初めて公表されました。
昭和三十八年、法務大臣は法制審議会に対し、刑法に全面改正を加える必要があるかどうか、あるとすればその要綱を示されたいと諮問した。自来今日まで審議を尽くしているのであるが、ただ、ここにわれわれが注意しなければならぬことは、わが国刑法学者の研究機関として最も権威ある刑法学会、これは最高の権威ある学会であります。この刑法学会では、刑法をいま急いで改正する必要はないということで、会員は一人もこの委員会には参加しておらぬ。いま提案理由の説明にあるような緊急の必要があるとすれば、道路交通法の改正なり、単独立法なりにすべきで、一般刑法の改正に持ち込むことは、その影響甚大であり、この理由書に説明してあるような交通の安全対策として、鉄道、自動車、船舶、航空機など、交通産業労働者はもちろんでありますが、そのほかに交通安全と関係のない病院、診療所、薬局等に働く医師、薬剤師、看護婦、助産婦とか、鉱山、工場、工事現場に出て働く労働者とか、幼稚園、小中学校、高等学校などで働く教職員とか、飲食店、旅館などに働く調理士とか、散髪店、美容院などで働く理髪師、美容師とか、さらに、はり、きゅう、マッサージ師、薬種商人、食料品生産・販売業者等々までがことごとく含まれておる。数多くのこれらの人たちが、厳罰の可能性にさらされているということになります。
先般、法務委員会における参考人といたしまして、日本医師会の会長武見太郎氏からの意見の陳述がありましたが、武見会長は、実際の事例等をたくさんあげられまして、そうして懇切丁寧に説明されました。医者の誤診などについては、デリケートな問題があって、これを自動車の事故などと同じような処罰の対象にすることが無理であることが、明らかにされたのであります。これを十ぱ一からげに、ことごとくその対象にするようになることは、これは刑法という一般法の改正から来る必然的な結果であり、私どもが本法に反対する理由の最大なものであります。(拍手)
前述のごとく、本法に対する提案理由の説明を見ましても、政府委員の説明を聞いても、交通犯罪に対する対策であり、これは国民感情であるといわれたのですが、一たん法律としてできてしまうと、法律の解釈について検察官は自分たちの都合のいいように解釈する傾向があります。これは、特に法務大臣に私は注文するのでありますが、一体、われわれが実際裁判に出ていますると、法律につきまして、国会における審議の状況を明らかにすべく、速記録を提出して、この法律はこういう趣旨でできた、こういう附帯決議がついているじゃないかと言いましても、検事は、国会でどういう審議があろうが、一たん法律としてできた以上は、この法律の解釈は司法権がやるのである、こういうとてつもない論理をもって、彼らの都合のいいような論告をやる。これじゃ民主政治も、国家最高の立法機関である国会の審議も、まるでただになってしまう。そんなばかなことがありますか、一体。(拍手)こういう法律解釈の態度を検察官がとっておる。
こういう際でありまするから、大臣や政府委員やその他は、法律を通したいあまりに、いろいろ委員の質問に対しまして低姿勢で、いや、それはいたしません、それはこうでございますと、親切に答弁しておるのであります。そうしてまた、われわれは国民の代表として、この法律の解釈について、執拗に政府委員と一問一答を繰り返して法というものができ上がる。それを一切無視してしもうて、できた以上は司法権が解釈権を持っているんだということになれば、これは検察ファッショであります。こういうことに対して法務大臣は十分訓示をしなければいけない。
そういう意味におきまして、この法律は非常に危険性をはらんでおる。ある法律の審議において、政府委員がどのような答弁をしょうが、どのような附帯決議をつけようが、これが何も役に立たないということになったら、これはたいへんなことであるが、過去にたくさんある。最もひどいのは、先般、昨年六月だかに行なわれました総理大臣の異議申し立て、行政訴訟法第二十七条による異議申し立て、これなどは少し法務大臣あるいは法制局長官が研究して、総理大臣に進言するなら、こんなばかなことはできないはずなんです。総理大臣がこれまで全部調べるというのは無理かもしれない、それは佐藤さんだって専門家じゃないのだから。これはやはりつけ人が悪いと思う。こういうことに対しましては、私どもは十分警戒しなければならない。
だから、かように何も役に立たぬような解釈をもとにやられる際においては、まず立法そのものが非常に注意して、徹底的にしぼりをかけて、もし交通犯罪に処するためであるならば、それを明らかにして、そうして立法すべきもので、だれにも、いま言ったように医者から、はり、きゅう師にまで及ぶような、こういう広範な対象を相手にするようなものを、刑法という基本法に改正を持ち込むべきものではないのであります。この意味について、私どもはこれに対して反対をしているのであります。
いま法制審議会でも審議中です。それで、交通犯罪についても法制審議会でいま審議中のものがあるし、これから刑法の一罪、数罪問題、累犯の問題等罪数の問題は、刑法の理論として一等むずかしい理論だ。これをいま法制審議会で鋭意研究中なんだ。それを突如として、この刑法の改正を持ち出して、強行するということに対しましては、先ほど申し上げました検察官の態度や、法務大臣の態度、そういうものと照らし合わせまして、この趣旨説明にあるような、交通犯罪を防止するためだけの立法だというふうには、われわれは解釈できない、こういう意味においてこれは反対するのであります。
以上、簡単でございますが、反対の趣旨を述べた次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/18
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019・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/19
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020・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/20
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021・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 日程第二、中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/21
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022・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。商工委員長小峯柳多君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔小峯柳多君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/22
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023・小峯柳多
○小峯柳多君 ただいま議題となりました中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
中小企業投資育成株式会社法は、中小企業の自己資本を充実させ、その健全な発展をはかることを目的として、昭和三十八年に制定され、この法律に基づいて中小企業投資育成株式会社が東京都、名古屋市及び大阪市にそれぞれ設立されました。
中小企業投資育成株式会社の事業は、設立以来今日までおおむね順調な発展を示し、投資企業数延べ二百六十社、投資額約七十億円にのぼっております。しかし、最近における中小企業を取り巻くきびしい環境に対処するため、中小企業の経常基盤強化の必要から、中小企業に対する投資育成事業の重要性は一段と強まっております。
本案は、このような情勢にかんがみ、中小企業投資育成株式会社の資本金を増額して、中小企業の自己資本の充実を促進しようとするものでありまして、その内容は、中小企業金融公庫が引き受ける中小企業投資育成株式会社の優先株式の発行限度額を、現行の七億五千万円から三億円増の十億五千万円に改めることであります。
本案は、去る二月十二日当委員会に付託され、二十八日政府より提案理由の説明を聴取し、以来参考人を招致するなどして熱心なる質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
かくして、三月二十七日質疑を終了し、同じく二十九日採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対し、一、中小企業投資育成株式会社の投資財源の増強と資金の効率的運用、二、投資対象企業及び指定業種の拡大、投資先の地域的偏在を是正するための会社機構の拡充強化等をはかるべき旨の附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/23
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024・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/24
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025・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第三 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/25
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026・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 日程第三、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/26
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027・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。科学技術振興対策特別委員長沖本泰幸君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔沖本泰幸君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/27
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028・沖本泰幸
○沖本泰幸君 ただいま議題となりました核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、本委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
本案は、最近における原子力開発利用の進展に伴い、核燃料物質の加工、核原料物質の使用等の本格化に対処するとともに、原子炉等の規制の合理化をはかるため所要の規定の整備を行なおうとするもので、そのおもなる点を申し上げますと、
まず第一に、加工の事業に関する規制の整備につきましては、加工事業者が加工施設の工事に着手する前に、加工施設に関する設計及び工事の方法について、内閣総理大臣の認可を受けねばならないこととするとともに、実際の工事が認可どおり行なわれているかどうかを確認するための施設検査制度を設けることにいたしております。
第二に、核燃料の加工再処理の事業におきまして、核燃料の取り扱いに関する安全確保にさらに万全を期するため、核燃料取扱主任者制度を新たに設けることにいたしております。
第三に、原子炉等の規制の合理化をはかるため、原子炉の使用前に受けることを義務づけられている施設検査及び性能検査を一本化して、使用前検査といたしております。
第四に、現行法上の動力炉・核燃料開発事業団及び日本原子力研究所の特別扱いにつきましては、これを廃止いたしております。
第五に、製錬の事業を行なう者以外のもので、政令で定める核原料物質を使用しようとする者は、内閣総理大臣にその旨を届け出ることとするとともに、核原料物質を使用するにあたっては、総理府令で定める技術上の基準に従わなければならないことといたしております。
本案は、去る三月二十七日提案理由の説明を聴取し、以来慎重なる審査を重ねたのでありますが、その詳細につきましては会議録に譲ることといたします。
かくして、昨一日、質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告いたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/28
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029・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/29
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030・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/30
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031・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時十五分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
法 務 大 臣 赤間 文三君
大 蔵 大 臣 水田三喜男君
厚 生 大 臣 園田 直君
通商産業大臣 椎名悦三郎君
自 治 大 臣 赤澤 正道君
国 務 大 臣 鍋島 直紹君
出席政府委員
内閣法制局第四
部長 角田礼次郎君
厚生省公衆衛生
局長 村中 俊明君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X01919680402/31
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