1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年四月十九日(金曜日)
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昭和四十三年四月十九日
午後二時 本会議
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○本日の会議に付した案件
森林法の一部を改正する法律案(第五十五回国
会、内閣提出)(参議院回付)
教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内
閣提出)の趣旨説明及び質疑
南方諸島及びその他の諸島に関する日本国とア
メリカ合衆国との間の協定の締結について承
認を求めるの件及び小笠原諸島の復帰に伴う
法令の適用の暫定措置等に関する法律案(内
閣提出)の趣旨説明及び質疑
都市計画法案(第五十五回国会、内閣提出)
都市計画法施行法案(内閣提出)
午後二時十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/0
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001・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
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森林法の一部を改正する法律案(第五十五回国会、内閣提出)(参議院回付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/1
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002・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) おはかりいたします。
参議院から、第五十五回国会内閣提出、森林法の一部を改正する法律案が回付されました。この際、右回付案を議題とするに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/2
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003・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。森林法の一部を改正する法律案の参議院回付案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/3
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004・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
本案の参議院の修正に同意の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/4
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005・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、参議院の修正に同意するに決しました。
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教育公務員特例法の一部を改正する法律案
(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/5
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006・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 内閣提出、教育公務員特例法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。文部大臣灘尾弘吉君。
〔国務大臣灘尾弘吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/6
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007・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 教育公務員特例法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
政府におきましては、教育の重要性にかんがみ、これに携わる教員の給与につきまして、かねてから特に留意してきたところでありますが、このたび、国立及び公立の小学校、中学校、高等学校等の教員について、その勤務の態様の特殊性を考慮し、これに、当分の間、特別の手当を支給する等の措置を講ずるため、この法律案を提出したものであります。
次に、法律案の概要について申し上げます。
第一は、国立の小学校、中学校、高等学校並びに盲学校、ろう学校及び養護学校の小学部、中学部及び高等部の教員には、その勤務の態様の特殊性に基づき、教職特別手当を支給することとし、これに伴い、この手当の支給を受ける者には、超過勤務手当及び休日給を支給しないことといたしました。教職特別手当の額は、俸給の月額並びにこれに対する調整手当及び暫定手当の月額の合計額の百分の四に相当する額といたしております。
なお、俸給の特別調整額を受ける者には、この手当を支給しないこととし、教職特別手当に関し、必要な事項は人事院規則で定めることといたしております。
第二は、国立学校の教員に支給される教職特別手当に関する事項は、人事院の勧告にかかる事項とし、一般職の職員の給与に関する法律に定める給与と同様に、人事院の研究、勧告の対象といたしております。
第三は、公立学校の教育公務員の給与の種類及び額は、国立学校の教育公務員の給与の種類及び額を基準として支給されることとなっているため、今回国立の小学校、中学校、高等学校等の教員に教職特別手当が支給されることにより、公立のこれらの学校の教員に対しても教職特別手当が支給されることとなることに伴い、これらの教員については、時間外の勤務等に対する割り増し賃金の支払いを定める労働基準法の規定は適用しないこととすること、公務のために臨時の必要がある場合においては、時間外の勤務を命ずることができることとすること等、所要の規定を整備しようとするものであります。なお、時間外の勤務を命ずる場合においては、教員の健康及び福祉を害しないように考慮しなければならないことといたしております。
以上の措置は、いずれも当分の間の措置として行なうものでありますので、教育公務員特例法の附則の部分の改正によることといたしました。
第四は、市町村立の小学校、中学校等の教員に支給されることとなる教職特別手当は、これらの教員にかかる他の給与と同様に都道府県の負担する給与とし、国庫負担の対象とする等、関係法律について所要の規定の整備をはかりました。第五は、この法律は、昭和四十四年一月一日から施行することといたしました。
以上が教育公務員特例法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
教育公務員特例法の一部を改正する法律案
(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/7
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008・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。唐橋東君。
〔唐橋東君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/8
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009・唐橋東
○唐橋東君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました教育公務員特例法の一部を改正する法律案に対し、佐藤総理並びに関係閣僚、人事院総裁に質問をいたします。
具体的な質問事項に入る前に、この法案制定のねらいは何かを見ますと、全く自民党政府の教育支配、政治権力の教育介入以外の何ものでもないと断言せざるを得ないのでございます。(拍手)
申し上げるまでもなく、教職員は、明治憲法下においては、天皇の官公吏として官吏服務紀律のもとで、超国家主義教育の実践者とし、聖職として無定量の勤務を要請され、実行してまいりました。現憲法が制定され、初めて教師も人権を守られ、近代的な労働法下で勤務条件としての時間制が確立しました。それが、このたびの法案では、教職特別手当なるものを新設しまして、時間外労働に対する割り増し金制度に立っている労働基準法の基本をくずしてまで成立させようとすることは、自民党や文部官僚がどのように抗弁しようとも、教師から労働者の意識をなくし、時間外でも命令どおりに働かせることによって、ひたすら政府の方針に忠実なる公務員に仕上げようとするものであり、近年、はなはだしくなった政党の教育支配、政治権力の教育介入を一そうやりやすくしようとする悪質なるたくらみであるごとは火を見るよりも明らかであります。(拍手)
このことは、この法案提出までの経過を見れば、なお一そう明らかであります。すなわち、四年前、中村文部大臣は、超過勤務手当支給の方針を明らかにし、全国の実態調査をした結果、その実態が明らかとなりました。したがって、四十三年度より実施することにし、劔木前文部大臣もしばしば国会において言明し、超過勤務手当として六十三億円の予算を要求しました。しかるに、戦前のような国家主義、軍国主義教育に郷愁を持つ前近代的な自民党議員の一部がこれをはね返し、佐藤総理の民族意識の高揚、灘尾文部大臣の国防意識の涵養という方向と一体となって、現在の労働法体制をくずしてまでも強行しようとしてきたものでございます。
教育委員会法の改正、勤評の実施、学力テスト、教科書検定、指導要領の改正、管理職の設置、日の丸、君が代の強制、紀元節の設定や、さらには今回の明治百年記念等、一連の中で意図しているものは、教育の中央集権体制の確立であり、この法案によってさらにこれを一歩前進せしめようとするものであります。またILO、ユネスコの国際条約の精神を踏みにじってまで強行しようとしているのであります。おそるべき反動の実体がここにあらわれているのであります。(拍手)だからこそ、党内からも右傾化が批判され、ごく最近の世論調査の結果では、佐藤内閣の支持率は三〇%を割ったではございませんか。したがって、このような反動法案を撤回することを強く要望して、以下質問に入りたいと思います。(拍手)第一、佐藤総理の教育に対する基本的姿勢についてお伺いいたします。
総理は、施政方針演説で、民族の理想を実現し、民族の活力を保持するためには、日本人が独立の気概を持てと強調いたしました。しかし、佐藤総理の言う民族精神の高揚は、第一に、個人の基本的な人権の制限、国民生活の抑圧の意図が明らかになっていることであります。第二に、独立の気概の強調が、中国の敵視と、そこから起こる第三次防衛計画とを結びつけていることでございます。だから、当然のことである民族精神の高揚も、平和に徹するとの呼びかけも、国民は信頼しておりません。それは、ちょうど戦前の軍国主義者が唱えました東洋の平和と、佐藤総理が力説する極東の平和が同じであることを国民は知っているからでございます。(拍手)しいて相違する点をあげれば、戦前は日本が自主独立でわが道を進んだのに対し、あなたは、安保体制のもとでアメリカ追従の道を進んでいることでありましょう。しかし、このことはかえって戦前以上の危惧の念を国民に与えていることもまた事実でございます。これに対する所見をお伺いいたします。
次に、民族意識の高揚についてお伺いいたしますが、いま、政府・自民党は、明治百年の諸行事を政府の主催のもとに、民族意識高揚の資としています。この場合、明治の歴史に対する政府のとらえ方が問題でございます。確かに明治は、日本歴史の上で近代化に成功した輝かしい時代でありました。それは藩という極端な封建制をくずし、士農工商という身分の差別を撤廃して、個人の自由を認めたところに明治初期の意義がございましょう。しかし、その後の明治政府は、初期の自由民権運動を弾圧し、富国強兵のもとに、市民の自由を臣民の義務に切りかえ、日清、日露を通じて大陸侵略政策に踏み込みました。そして、民主主義を抹殺した事実は銘記しなければなりません。過去の歴史の一部を強調して国民を引っぱることではなくて、ほんとうの民族の連帯感を深め、祖国愛を養おうとするならば、過去の歴史の全体を知るとともに、現時点における政治の浄化による政治不信の解消、物価安定による経済不安並びに住宅、税制等における不平等の解消、アメリカ一辺倒より脱する独立の外交等、ただいま直ちに実行する問題は山積しております。(拍手)この方向を打ち出してこそ、侵略戦争の道に進んだ明治の歴史を克服し、真の、独立の気概にあふれ、平和を樹立する充実した民族精神が育つのであり、ここに教育の焦点もなければならないと思うのでありますが、総理の所見をお伺いするのであります。(拍手)
第二に、教育行政の基本的要件である政治権力の介入の排除、すなわち教育の中立性の確保についてお伺いいたします。
政党政治の中で最も大切なことは、そのときの政権担当者並びに責任政党が持っておりますところの教育政策を国民に強要したり、学問の自由を束縛し、政治を批判する者を排除してはならないことであります。だからこそ、教育基本法第十条には、教育は、不当な支配に屈することのないようにと明記してありますし、第八条には、政治教育の尊重を取り上げています。政治教育の実施は、高い理想のもとにおける現実の政治の自由な批判から出発します。この自由な批判の中にあって、初めて民主主義の発展と政治への信頼性が樹立いたします。
しかるに現在は、ベトナム反戦を口にすれば偏向とされ、教育の中立の名によって、教育の場に政治問題を持ち込ませないようにして、持ち込めば偏向教育者とのらく印を押すようになりました。全く戦前の平和主義者の弾圧と同じ様相を呈してまいりました。(拍手)これをいま改め、権力の介入を排した正しい教育の中立性を確立し、高い批判精神に富む教育の場としなかったならば、総理は、戦前の戦犯が歩んだ道を再び歩んでいることとなるのであります。これに対する所見をお伺いしたいと思います。(拍手)
第三にお伺いしますことは、責任政治のあり方についてお伺いいたします。
端的に申し上げまして、四年前、中村文部大臣は約束しました。劔木前文部大臣もまた約束をし、国会においてあるいは教育団体との約束において、超過勤務手当を支給すると言明したのでございます。同一の政党、同一の総理のもとででございます。行政の責任から見て、総理は、文部大臣がかわろうがかわるまいが、この約束を実施することによってのみ政党政治が成立いたします。このように約束を中途で変えた場合の責任の所在に対し、総理大臣としてどう考えておられるのか、また、国権の最高機関である国会において言明した責任をどうお考えになっておるのか。前の大臣は、明らかに現行法上の超過勤務手当の支給を約束しているのでありますから、お伺いする次第でございます。(拍手)
次に、文部大臣に対し、現在までの経過の中から、まず次の四点をお伺いいたします。
第一点は、ILO、ユネスコ勧告にもあるとおり、教員の給与、勤務条件については、教員団体と交渉してきめるべきものであるとされています。が、今回は、政府が一方的に決定し、あとになって関係五団体を集めて、単に説明会を開いたようでございますが、これは明らかに勧告に反したやり方であります。ILOの勧告に従うべき責任を持つ行政府として、ILO、ユネスコ勧告に対処する基本的な方針を明確にお伺いしたいのでございます。
第二点は、中央労働基準審議会の諮問を経ないで決定している理由についてお伺いいたします。すなわち、この内容は、労基法の根本であります。時間外の割り増し賃金制の適用排除であり、時間外勤務に対しても超過勤務手当の形で支給しないという超勤の性格を変更する重大な意味を持っております。換言すれば、現在の労働基準法の拘束時間制という近代労働法の精神を否定するものでございます。したがって、当然中央労働基準審議会の意見を聞くことが、行政府としてとるべき責務であると思うのでありますが、これに対する所見をお伺いいたします。
次に、お伺いしますことは、この手当支給の基本となりました教員の勤務の態様の特殊性ということは何をさすかということでございます。すなわち、態様の特殊性を超過勤務時間のとらえ方が困難であると理解するならば、現在まで文部次官通牒にて勤務の実態を明確にしておくことにし、超過時間の算出についても運用要領で詳細に示しており、超勤の捕捉は十分になし得る現状にあるわけですが、これをどう理解するのですか。しかも、この上に立った文部省の実態調査の結果がそれぞれ出ておりますが、出た結果は信用ならないというのでございましょうか。この点についてお伺いしたいのでございます。ただこの場合、超過勤務命令が出ていないのは、出せば超過勤務手当を支給しなければならないから出さなかっただけでありまして、命令が出ていない時間だから超過勤務の時間として信用できないというような説明は成り立ちません。
次に、職務の態様の特殊性を、時間にとらわれないで働くことを意味し、これに対する手当と解釈するならば、当然無定量の勤務となり、ここに聖職観が成立するわけでございます。ともかく、職務の態様の特殊性とは何をさすのか、具体的にお伺いいたします。
第三には、この教職特別手当を支給されない教員に、公立大学、公立高等専門学校及び幼稚園の先生方がありますが、それらの人々はすべて学校教育法にいう教員でありますが、今回の法令では、教職特別手当の支給の対象者となっておりません。なぜこのような差別が生じておるのか、その根拠を明白にしていただきたいのでございます。
次に、お伺いすることは、人事院の勧告との関係であります。すなわち、この手当は人事院の勧告にかかわる事項の中に含まれるものとしてありますが、それならば、新しく設けるときこそ人事院の意向を聞くべきでございます。超過勤務手当であるなら人事院の意向を聞かなくてもよかったので、文部省はそのつもりで出発しましたが、途中で自民党の文教部会の横やりで超過勤務手当の性格でなくなったので、結論として、人事院勧告にかかわる事項とせざるを得なくなったようでございますが、少なくとも性格が変わったならば、その時点で人事院の意向を聞き、勧告を得てから実施すべきであると思うのでございますが、どうでしょう。このような行政の手続体系を乱した文部大臣の所見をお伺いする次第でございます。
文部省は、いまや自民党文教部会の出先機関であるといわれておることを大臣は知っておられると思います。(拍手)政治権力の教育介入のはなはだしきあらわれであり、大臣はこの介入を排除する任務を持つことを自覚されたいと思います。
次に、労働大臣にお伺いいたします。
現行法では、明らかに教職員に超過勤務手当を支給することになっております。それが従来超勤の命令をしないために手当を支給しなかっただけであります。今回、時間外に対する報酬として四%を一律に支給することになったわけですが、ここで疑問なのは、第一に、実態調査でも明らかになったように、小、中、高等学校の超過勤務時間はみな別々でございます。これを一律に、いつでもどこでも時間外勤務として、勤務した時間に関係なく支給することは、労基法の割り増し賃金制を根本からくずすものでありますが、こんなことが労働基準法のたてまえからいって許されることなのですか。災害その他避けることのできない事由による場合でなくて、平常の場合、このようなことが許されるものではございません。所見をお伺いいたします。
第二は、前述のように、それぞれの超過勤務時間は考えなくてもよろしい。他方では労基法のいわゆる三5六協定もできないとされておりますので、業務命令によって無定量勤務に追いやられることは当然出てまいります。そのため、法の体系から見て、全く竹を木についだように「健康及び福祉を害しないように考慮しなければならない」と付記したのであります。もしこれを付記しないと、真正面から憲法の生存権違反となることをおそれたためでございましょう。しかし、この文をつけてみても、その判断は管理者側の自由裁量によりますので、現実としては、無定量勤務となり、四%をこえることは当然出てまいります。このように四%をこえた場合でも、一律に四%で押えることになっておりますが、このことは明らかに労基法の最低基準の原則に反することになります。これをどう処置するお考えでありますか、所見をお伺いいたします。(拍手)
人事院総裁にお伺いいたしますことは、今次改正案は、他の公務員との均衡を根本的にこわしておりますが、これは人事院として見のがし得ないものだと思いますが、いかがでありますか。すなわち、国家公務員は、国公法附則十六条で労基法の適用除外を規定しておるが、同法第一次改正法律附則第三条で、当分の間労基法の規定が準用され、人事院規則でこまかく定められております。地方公務員は、地公法上、一部適用除外の定めがあるが、そのほとんどが適用されております。両者とも、時間外勤務制度が確立されているにもかかわらず、同一公務員の教員のみが労基法三十七条を全面排除することは、他の公務員との均衡を著しく失した措置となるのでありますが、この不均衡を認められるのですか、お伺いいたします。
以上申し上げましたように、現在の法体系から見ても全く矛盾の多いものであり、総括的に見ますと、憲法の精神に違反する法案であります。(拍手)また手続上から見ても全く不完全であります。したがって、これを撤回していくことが正しい教育を樹立することでありますので、再び撤回を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/9
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010・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
民族精神の高揚が国民生活を圧迫する、こう言われますが、私にはその論理がよくわかりません。私は、民族を愛し、祖国を思い、祖国を守り、祖国に尽くすということを説いてまいっております。(拍手)国民生活を圧迫するというようなものではございません。同時にまた、私は、しばしば独立、自主、これを唱えております。そうして、独立の気概を持てと国民に呼びかけております。「独立心なき者は国を思うこと深切ならず」、これは福澤先生の喝破されたことばであります。(拍手)このことばが中共敵視政策につながる、そういう論理も、頭が悪いのか私にはわかりません。
次に、明治百年の行事についてお尋ねがありました。私は、この明治百年のとらえ方について、その歴史をどうとらえるかが問題だと言われる事柄につきましても、一応考えざるを得ないと思います。しかし、私が明治百年の行事を行ないます。ことは、いたずらに懐古趣味でかようなことを申すのでもありませんし、復古調で明治百年を云々するのでもありません。私どもは過去百年の間にすばらしい発展をいたしてまいりました。そうして現状は一体どうか、これからは一体日本をどう持っていけばいいのか、私どもはそれをひとつ考えてみたいのであります。(拍手)過去を考え、未来に向かって、りっぱな日本国民、日本国をつくって、そうしてこれを次の世代に引き継ぐ、これがわれわれに課せられた使命だ、かように私は考えるのであります。(拍手)このことは、ただ政治の場ばかりではございません。教育の場におきましても同じことが言えるのであります。どうかそういう意味で御理解をいただきたい。
次に、教育の中立性、権力支配を排せ、こういうお話がありました。私が申すまでもなく、御記憶にあるように、良識ある公民たるに必要な政治的教養、これは教育上十分尊重すべきものであると考えております。同時に、教育の政治的中立性を確保することも重要な課題であります。党派的な勢力の不当な影響または支配から教育は守らなければなりません。(拍手)その意味におきまして、中立性ということは理解ができるのであります。
次に、責任政治という点から、中村元文相あるいは劔木前文相当時に話したことと、今回の措置が違うではないか、こういう御指摘であります。しかし、両大臣とも当時十分教員の勤務状況を調査した上で、そうして教員の超過勤務について何らかの措置をとると言ってきたのでありました。私どもは今日のこの調査によりまして、今回この種の手当を支給することが、教員の特殊な勤務状況から最も適当なる給与制度である、かように考えてただいま提案しておるのであります。(拍手)
この案を撤回しろ、かようにお話でございます。が、−私は撤回はいたしません。委員会におきまして十分御審議のほどをお願いをいたします。(拍手)
〔国務大臣灘尾弘吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/10
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011・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) お答えいたします。
まずILO、ユネスコの勧告にかかわる、いわゆる教員の地位に関する勧告についてでございますが、これは世界的な教員の不足という実情にかんがみまして、近代社会の発展に貢献すべき教員の地位を高めることを目的として採択されたものと承知いたしております。しかし、世界の国々の国情はいろいろ異なっておるわけであります。教育制度もいろいろでありますので、勧告という、すなわち法的拘束力のない形式をとったものと存じます。したがって、この勧告につきましては、わが国の種々な事情を考慮しながら、わが国みずからの立場に立ちまして、教員の処遇改善をはかる上の参考といたしたいと存じております。なお、わが国の現行制度におきましては、公務員の給与の決定につきましては職員団体と協議しなければならないということにはなっておらないのであります。
次に、中央労働基準審議会の諮問の関係について申し上げたいと存じますが、現在におきましては、労働基準法は国家公務員たる教員には原則として適用はございません。地方公務員たる教員につきましては、一部を除いて適用がございます。が、その監督権限は、御承知のように、地方公共団体の人事委員会等にあるわけでございまして、労働基準監督機関の権限は及ばないことになっております。
また、今回の改正法案は、労働基準法を直接改正するものではございません。教育公務員特例法の一部改正でございまして、その結果として、国公立の小、中、高等学校等の教員につき、労働基準法第三十七条等を適用しないこととするものであります。
労働省におかれましては、以上につき、慎重に検討せられました結果、今回の措置は実質的には公務員関係の問題であること、また前例に徴しても、このようなケースについて諮問した例がないこと等を考慮せられまして、今回の措置につき、労働省の附属機関である中央労働基準審議会に対して諮問せられなかったと、私どもは承っておるのであります。したがって、今回の教育公務員特例法の一部改正が、この審議会の審議の結果や答申を得た上でなければ提案すべきではないというお考えには、賛成いたしかねる次第であります。
次に、教員の勤務態様の特殊性に関する御質問でございますが、勤務態様の特殊性とは、小学校、中学校、高等学校等の教員につきましては、いわゆる特別教育活動の指導でありますとか、家庭訪問でありますとか、学校行事の実施等が正規の勤務時間をこえて行なわれる場合がありますが、これらはその性質から見ましても、勤務した時間の長短に対応して手当の額を算定することが必ずしも適切でないと存じます。また、その勤務の場所から見ましても、学校を離れて行なわれるものが含まれておるわけでありまして、管理、監督の地位にある者が、その勤務の実態を直接に把握することも困難な特殊の事情があるわけであります。
なお、本来、勤務時間内に仕事が処理されるということはきわめて望ましいことであります。文部省としましては、今後におきましても勤務時間の適正、合理的な運営を指導することといたしておるわけでございまして、いわゆる無定量の勤務を教員にしいるというような不合理な考え方は全く持っておりません。
次に、公立の大学、高専、幼稚園の教員に対する教職特別手当の関係でございますが、小学校、中学校及び高等学校の教員には、特別教育活動の指導、家庭訪問等、ただいま申し上げましたような仕事がございます。大学、高専等の教員とは趣を異にする勤務の態様があると存じます。また、昭和四十一年度に、特にこれら小、中、高等学校の教員の勤務状況につきまして調査を行ないました結果、正規の勤務時間をこえて仕事をしているという実態が認められたわけでございます。そこで、このたびの暫定措置としましては、当面、特にこれらの学校の教員に対して、この手当を支給することとしたものであります。
なお、小、中、高等学校の教員に限らず、大学、高専等の教員にも、一般の公務員とは異なる勤務の特殊性があると考えますが、これらの学校種別を含めた教員全般の給与体系や勤務時間等につきましては、今後十分に検討いたしまして、改善を加えたいと存じておる次第であります。
次に、この法案と人事院の勧告との関係についての御質疑でございます。教員につきましては、原則として超過勤務を命じない。このような立場に立ちまして、従来から指導をしてきたところでございますが、先ほど申しましたように、昭和四十一年度に行ないました教職員の勤務状況調査の結果により、小学校、中学校及び高等学校の教員の正規の勤務時間をこえる仕事について、その状況が明らかになりました。今回の給与改善措置は、このような教員の勤務の実態と関連して、当面、暫定措置として行なうものであること、その措置の対象が、小学校、中学校、高等学校等の教員に限られたものであるとともに、措置の内容が、本法のような基本的な給与に変更を加えるものでなく、給与の一部である手当の創設であること、また、給与の改善措置を行なうにあたっては、制度的には必ずしも人事院の勧告を経なければならないことにはなっていないことの理由から、人事院の勧告を待つことなく措置することとなったものでございますが、今回のこの法案の作成にあたりましては、人事院にも御相談をいたしまして、作成いたしましたような次第でございますので、何とぞ御了承をいただきたいと存じます。
最後に、この法案は、もとより教員の給与改善に関する暫定の措置でございます。本年度以降、教員の給与の実態等につきまして、十分に調査を遂げまして、願わくば、りっぱな、特別な給与体系をつくりたいものと、私どもは念願いたしておる次第であります。(拍手)これをもって、あるいは教育の中央集権化であるとか、あるいは教育の中立侵害であるとか、あるいは反動政策であるとかいうことは、およそ当たらないものと私は考える次第でございます。(拍手)
〔国務大臣小川平二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/11
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012・小川平二
○国務大臣(小川平二君) お答えいたします。
教職員の勤務が所定労働時間内において行なわれることが望ましいことは、申すまでもございません。ただいま文部大臣から答弁のございましたように、文部省は、従来原則として超過勤務を命じないことを指導の方針としてとってきておりますが、労働省といたしましては、この方針は適切でございまするから、今後ともこれを堅持してもらいまするよう、特に要請したところでございます。
このたびの改正法案におきましても、教員に超過勤務を命じます場合においては、第一に、公務のため臨時の必要があること、第二に、その健康及び福祉を害しないように考慮すること、この二つの要件を満たす必要があることといたしております。したがいまして、無制限に、無定量の時間外勤務が命じられるということは起こり得ないと考えております。
なお、今回超過勤務手当にかえて創設されます。る教職員特別手当は、教職員の正規の勤務時間をこえる勤務が、時間的な計測になじまないものであり、また勤務の場所等から見まして、管理者がその勤務の実態を直接把握し得ない種類のものがある。このことにかんがみまして、これが一律に支給されることは、やむを得ないと存じます。なお、教員の超過勤務時間が、個々の教員の間で著しい差異が生ずることは、もとより好ましくございません。したがいまして、職務の分担、勤務時間の割り振り等については、今後も文部省で適切な指導をされると聞いておる次第でございます。(拍手)
〔政府委員佐藤達夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/12
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013・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) お答え申し上げます。御承知のとおりに、人事院は、地方公務員たる教員の方々は所管しておりませんので、私といたしましては、国立学校の教員に関する面についてお答え申し上げます。
御承知のとおりに、先ほどお尋ねの労基法三十六条、三十七条の関係は、実は教員を含めまして一般の国家公務員につきましては、給与法及び関係の規則で例外が設けられておりまして、現在これらの労基法の規定は準用にはなっておらない実情でございます。したがいまして、国家公務員たる先生に関する限りにおいては、今回の法案では、その点については変更はないということになるわけであります。したがいまして、人事院として残る問題は、超過勤務手当を支給せずに、特別の手当を支給することはどうかという問題が残るわけでありますが、これは御指摘のとおり、相当大きな問題でございますけれども、全然これが例がないわけでもないわけであります。御承知のように、超過勤務にかわります特別調整額というような制度も一部にはございますので、全然その例のないものとは申し上げられません。したがいまして、今度の案も絶対にこれは不可であるということにはならないと思います。
ただ、具体的の問題としては、本案に関連いたしまして、大学、それから高等専門学校、これらの先生方を一体どうしていただけるかというような問題なども含めまして、具体的には、私ども人事院として、まだ研究すべき問題があるわけであります。したがいまして、先ほど文部大臣がおっしゃいましたように、人事院に対して、この法案についての意見は確かに聞かれておるわけでありますが、私どもとしては、いま申しましたようなことを述べまして、しかし、本案は法文にも明らかになっておりますように、当分の間という限定的な立法になっておりますので、私どもとしては、暫定措置としてはこれを了承いたします。しかし先ほど申しましたような諸点について、なお今後検討を続けてまいりたい、こういう気持ちでおるわけでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/13
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014・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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南方諸島及びその他の諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/14
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015・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 南方諸島及びその他の諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、及び、内閣提出、小笠原諸島の復帰に伴う法令の暫定措置等に関する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。外務大臣三木武夫君。
〔国務大臣三木武夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/15
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016・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 本年四月五日に東京において署名いたしました南方諸島及びその他の諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件につき、趣旨の御説明を申し上げたいと思います。
佐藤総理大臣とジョンソン大統領は、昨年十一月十四日及び十五日にワシントンで行なわれた会談において、小笠原群島等の南方諸島及びその他の諸島の地位について検討し、これらの諸島の日本国への早期復帰を達成するための具体的取りきめに関して日米両国が直ちに協議に入ることに合意いたしました。よって、政府は、昨年十一月以降米側との間に協議を行ない、協定案作成の作業を進めました結果、最終的合意に達しましたので、本年四月五日に東京で、外務大臣と米側ジョンソン駐日大使との間で協定の署名が行なわれた次第であります。
この協定は、本文六カ条からなっております。が、以下簡単に逐条御説明いたします。
第一条は、米国が小笠原群島等に関して平和条約第三条に基づくすべての権利及び利益を日本国のために放棄し、日本国がこの協定発効の日からこれらの諸島の行政、立法及び司法上のすべての権力を行使する権能及び責任を引き受けることを規定しております。
第二条は、安全保障条約等日米間に締結された諸条約が、この協定発効の日から小笠原群島等に適用される旨を確認しております。
第三条は、小笠原群島等において米軍が現に利用している設備及び用地が、硫黄島と南鳥島にあるロラン局施設用地を除いてすべて日本国に引き渡されることを規定しております。
第四条は、南鳥島にある米国気象局の測候所が、この協定発効の日に日本政府に引き渡されることを規定しております。
第五条は、日本国が、米国の施政期間中に小笠原群島等において生じた対米請求権を放棄するが、米国または現地の法令で認められる日本国民の請求権は放棄されないことを規定しております。
第六条は、この協定が、日本側の国内手続完了の旨を米国政府に通告した日から三十日後に発効することを規定しております。
この協定は、日本国民の多年の念願であった小笠原群島等の復帰を実現するものであり、日米両国間の友好関係の一そうの緊密化に資するものと考えられるのであります。
以上が南方諸島及びその他の諸島に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件についての趣旨でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/16
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017・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 国務大臣田中龍夫君。
〔国務大臣田中龍夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/17
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018・田中龍夫
○国務大臣(田中龍夫君) 小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、南方諸島及びその他の諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定に基づく小笠原諸島の復帰に伴い法令の適用についての暫定措置を定めますとともに、小笠原諸島の旧島民及び現島民の小笠原諸島における権利または利益の保護、並びにこれらの者の生活の安定をはかるため、特別の措置を講じ、あわせて小笠原諸島をその区域とする村の設置、及び現地における国の行政機関の設置等について、所要の特例を定めようとするものでございます。
以下、この法律案の概要につきまして申し述べます。
まず第一に、小笠原諸島が二十余年にわたりまして無人島に近い状態で放置されていたことにかんがみ、国及び地方公共団体は、その責務として、旧島民の帰島及び生活の再建並びに現島民の生活の安定に留意すべき旨を定めております。
第二に、現島民に対する措置といたしまして、まず、建物等の敷地として、他人の土地を使用しておる現島民の居住の安定をはかるために、法律上その所有者がその使用者のために賃借権を設定することとし、次に、現島民で漁業を営む者の利益を保護するために、小笠原諸島周辺の海域における漁業につきまして操業を制限し、また合衆国軍隊の引き揚げによる離職者の生活の安定、就職促進等をはかるために、失業保険法及び駐留軍関係離職者等臨時特別措置法の規定の適用につきまして、政令で特例を認めることにいたしたのでございます。
第三に、旧島民に対しまする措置といたしまして、まず、本土引き揚げ当時存在していた耕作に関する権利を保護するための措置をとることといたしておりまするが、耕作に関する権利が、この法律の施行後一年を経過する日までに消滅しておる場合には、一定期間内に申し出ることによりまして、賃貸借契約を締結させることとし、また、旧島民で漁業を営んでいた者の利益を保護するために、現島民と同様の扱いをすることといたしております。
第四に、小笠原諸島におきまする行政組織につきましては、まず小笠原諸島を区域とする地方公共団体として、小笠原村を設置し、また現地における国の行政機関としては、小笠原総合事務所を設置することといたしております。
以上のほか、小笠原諸島の復興について、別に復興法を定めること、復興の計画的かつ円滑な推進をはかるために、一定期間、特定の場合を除き、容易に原状に回復することができないような土地の形質変更、工作物の新築等を認めないこと、その他公職の選挙及び最高裁判所裁判官の国民審査についての暫定措置の政令への委任、旧鉱業権者に対する旧鉱区にかかる鉱業権の出願の優先的取り扱い等につきまして規定いたしております。
この法律案の施行期日は、小笠原諸島の返還の協定発効の日といたしております。
以上が小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案の趣旨でございます。(拍手)南方諸島及びその他の諸島に関する日本国と
アメリカ合衆国との間の協定の締結につい
て承認を求めるの件及び小笠原諸島の復帰
に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法
律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/18
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019・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。青木正久君。
〔青木正久君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/19
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020・青木正久
○青木正久君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました協定及び法律案に対し、総理大臣並びに関係大臣に若干の質問をいたしたいと存じます。
〔議長退席、副議長着席〕
思えば、昭和十九年三月、太平洋戦争の激化に伴い、当時の陸軍大臣の強制疎開命令によって、小笠原諸島七千余名の人々は、すべての財産を島に残し、わずか手荷物三個を持っただけで、国家の政策に従って本土に引き揚げてきたのであります。自来二十有余年、父祖の島に帰るあたわず、幾多の苦難を経験された旧小笠原島民の皆さまは、本日この協定が国会に提出されましたことを、どれほどの期待と喜びをもって見詰めておられることでありましょうか。(拍手)
そもそも、平時に領土が返還されるということは、歴史的に見ても希有のことであり、今回の成果がいかに大きく画期的なものであるか、認識させられるものであります。(拍手)私は、国民の一人として、全国民の皆さまとともに、これまでの日米両国政府の努力に心から感謝をささげたいと存じます。(拍手)
さて、昨年十一月、佐藤総理は強い決意をもってアメリカを訪問され、予断を許さない国際情勢にもかかわらず、ジョンソン大統領との会談の結果、その共同声明において、小笠原諸島の施政権の日本返還について合意に到達されましたことは、日本国民の久しく待望してきた悲願の実現でありまして、まことに高く評価さるべきものと信じます。(拍手)しかしながら、喜びと感謝の中にも幾つかお聞きしておきたいことがございますので、以下、国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。
まず第一点として、佐藤総理・ジョンソン大統領の共同コミュニケ及び本協定の前文によります。と、これら諸島の日本への早期復帰を、「この地域の安全をそこなうことなく達成するための具体的な取極に関して日本国政府及びアメリカ合衆国政府が直ちに協議に入ることに合意し」云々とございます。小笠原諸島が返還されますことは喜ばしい限りでございますが、これは日本の防衛範囲が広がることをも意味することと思います。したがいまして、この地域の安全保障の問題は、国民のひとしく心配するところでもございます。総理が共同声明の中で、「この地域の防衛の責任の多くを徐々に引受ける」と申されましたことは、一体どのような内容を意図されたものでございましょうか、総理大臣並びに防衛庁長官に御説明いただければ幸いに存じます。
次に、条文によりますと、アメリカ軍が現に利用している硫黄島及び南鳥島の通信施設、いわゆるロラン局は、地位協定に基づいて引き続き米軍が使用するとのことでありますが、このロラン局につきまして、国民の一部には、これはポラリス潜水艦あるいはB52などに通信指令を発するためにのみ使用されると憂える向きがあるとも聞いております。私は、この施設は、遠洋漁業に従事するわが漁船あるいはわが航空機が、通信や連絡を受けるといったような点もあるのではないかと思いますが、この点、実際どのような活動をしているのか、お教えいただきたいと思います。
第三点として、小笠原諸島の復興計画についてお伺いいたします。小笠原諸島約三十の島々は、あの島もこの島もジャングルとなって、荒廃しておるそうでございます。営々と築き上げた開拓の歴史も、また村落も、濃い緑のネムノキやヤシやビンロージュなどの熱帯樹に埋もれておるそうであります。政府は、小笠原村の未来図をどのように描かれようとしておられるのか。現島民と旧島民との間の土地問題をはじめとする利害調整など、当面の暫定措置につきましては、今回の法律案によって処理できることと思いますが、二十余年の年月は、あまりにも問題を山積させました。農業、漁業、観光事業などの産業開発、教育、港湾、電気通信、交通等々、いま村づくりのポイントをしっかりと定めておかなければ、小笠原の島々は俗悪な観光地になり果てるか、あるいは黒潮に洗われるだけの、文字どおりの南冥の離れ島として放置されることになると思います。これではきょうの喜びを無にするだけではなく、かつまた小笠原貞頼により発見されたと伝えられるそれ以来の小笠原の光揮ある歴史に沿うゆえんではないと考えられます。旧島民の帰島規模にも関連してくるとは思われますが、単に離島振興に終わることなく、積極的、年次的復興計画があってこそ、この絶海の孤島群が、平和で美しい村に育ち得るものと確信いたします。この点のビジョンをお示しいただきたいと存じます。
次に、小笠原返還を機にどうしても伺っておきたいことは、いまだ返らざる北方領土と沖繩についてでございます。
北方領土に関しましては、昨年三木外相がソ連を訪問されました際、コスイギン首相から、平和条約に至る中間的なものをつくることを外交機関で検討してはどうかとの提案があったように承知しております。その後かなりの月日がたちましたが、その中間的なものがはたして一体どのような内容なのか。あるいはこの問題につき日ソ両国間で話し合いが進んでいるのかどうか、示されてもよい時期に到達しているように思いますが、外務大臣から御答弁をいただければ幸いに存じます。
さらに目を転じて沖繩問題を考えますとき、今回の協定の意義をあらためて認識しないわけにはまいりません。すなわち、今回の成果を沖繩、小笠原という大きなワクの中でとらえるとき、今般その一環たる小笠原が、日米友好関係の基礎の上に立って返還されましたことは、将来の沖繩問題の解決に一つの明るい見通しを与えたものと申せましょう。もちろん沖繩と小笠原とでは、多くの面において事情を異にしており、今回の取りきめがそのまま沖繩返還の際の先例となるものでないことは、だれの目にも明らかなところでございます。しかしながら、このたび小笠原の返還が実現したことは、政府が常々明らかにしている日米友好関係の基礎に立って米国と話し合うことこそ、沖繩問題解決のための最善にして最短の道であるとの態度の正しさを立証するものであります。(拍手)その意味から、政府に対し、今回の成果の意義を十分にかみしめ、さらに、日本国民の総意たる沖繩の本土復帰の実現に一段の努力を払われんことを望むものであります。
この際、私はあわせて、米国政府が、今回小笠原の返還にあたって示された日本国民の強い願望に対する深い理解をさらに進めて、残された沖繩につきましても一そうの理解と協力を示されんことを切望するものであります。(拍手)
ベトナム紛争は和平への糸口が見出され、国際情勢は刻々動いている現時点におきまして、沖繩問題はどう進んでいるのか、外務大臣の御説明をいただきたいと存じます。
最後に、小笠原返還協定が国会に提出されたいま、私はいくさの庭に立った戦中派の一人といたしまして、どうしても忘れることができないことがございます。それは、小笠原諸島に含まれる硫黄島が太平洋戦争の大激戦地の一つで、私の同年代はじめ、とうとい生命が数多くこの島で失われたことでございます。私は、きょうの歴史的な日に、ここに散っていった英霊の御冥福をあらためて心からお祈り申し上げたいと存じます。(拍手)
この点に関連し、硫黄島の摺鉢山の頂山には、米軍海兵隊員の記念碑が残されると聞いておりますが、わが英霊を顕彰する慰霊塔をも早急に建立すべきものとかたく信じております。(拍手)三木書簡にもございますが、政府はこの点具体的にどう御計画になっておられるか、総務長官にお伺い申し上げまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/20
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021・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 青木君にお答えいたします。
戦争によって失われた領土が平和時に返ってくるという、これは御指摘のとおり、歴史上にもまことに希有な例でございます。この事柄は、日米両国の友好、信頼、理解の上に初めてでき上がったのでありまして、私は、今回の小笠原の復帰を、この意味において、日本国民とともに心から喜びたいと思うものであります。(拍手)この問題が、昨年ジョンソン大統領と話し合って半年くらいの間に、最終的な取りきめにまで達しましたことは、全く喜びにたえません。
ただいまお尋ねがありました共同声明の中にあります事柄ですが、ただいままで二十数年間アメリカの占領下にあり、アメリカがこの地域の防衛に当たっておりました。したがいまして、今回日本に復帰した場合に、その防衛を、アメリカと日本との間に順次に、まあ徐々に日本が引き継いでいくという、これで別に新しいものではございません。これらの地域が全部本土並みに扱われる。そうして、いままでアメリカが担当していたから、それを徐々に日本がこれにかわっていくというだけでありまして、これは本来の日本領土になったその証拠でございます。何か新しい約束でもあるような言い方をされますが、さようなものでないことを、この機会にはっきりさしておきます。
さらに、復興計画についてお尋ねがありました。アメリカ自身が領土的野心のないところでありますから、軍事的にこれは利用したと思います。が、民生の面におきましては、全く荒廃そのものであります。ジャングル化されております。そうして特殊な住民だけが現地に帰っておりまして、ただいま日本人は百七十四名、かようにいわれております。したがいまして、この百七十四名のもとにおいて復興計画を直ちに立てるわけにはまいりません。旧島民、これは約八千名近い者が当時いたのでありますから、これらの方々が畠に帰っていかれるかどうか、ただいま調査をいたしておる最中でございます。さらにまたその後引き続いて専門的また技術的な調査をいたしまして、しかる上ではじめて、特殊事情に基づく立地条件その他を考えまして、復興計画を立てていくという考え方でございますので、いましばらく時間をかしていただきたいと思います。
この機会に、北方領土並びに沖繩問題について触れられました。詳細は外務大臣からお答えいたすといたしまして、北方領土につきましては、まだ国民的納得のいくような話し合いに達しておらないことを率直に御報告申し上げて、さらにわれわれが努力を続け、民族的な要望にこたえたい、かように思う次第でございます。
また、沖繩問題につきましては、一応の見通しは立っておりますが、しかしこれからがまことに重大な問題だと思います。この地域には百万の同胞が住んでいるのでございますので、小笠原の場合とはだいぶん事かわっております。しかし、さきの戦争で失った小笠原がまず返ってきた、そうして沖繩があと残っておる、こういうことを思いますと、昨年ワシントンでジョンソン大統領と話し合いました事柄は、必ず成果、実を結ぶものと私は確信をしておりますので、アメリカ自身の理解とまた相互信頼とによりまして、この問題も、小笠原同様に沖繩問題を片づけたいと思う次第でございます。(拍手)
最後に、ただいまこの復帰が実現した一まだ実現はいたしておりませんが、この取りきめの御審議をいただきますこの機会に、青木君が御指摘になりましたように、この地域においてとうとい生命を国家にささげられた英霊の方々に、どうか安らかに眠ってください、かように申し上げる次第であります。(拍手)
〔国務大臣三木武夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/21
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022・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 青木君の私に対するお尋ねは、北方領土の交渉がどうなっているかという点でございます。
昨年十一月、コスイギン首相と私との間に、平和条約に至らなくても中間的な処置というものができないものか、両国の外交当局によってひとつ話し合ってみたらどうかと提案がありました。日本もこの提案に応じて、昨年の暮れからモスクワにおいて、中川大使とソ連当局との間に日ソ交渉が始まっておるわけでございます。この交渉は、領土問題も含めて、日ソ間のすべての懸案を総まくり的に話し合うという性質のものであります。領土問題については、両国の見解が非常に大きく開いておりますので、なかなかこの問題の解決というものは容易ではない。しかし、日本は、北方の領土は日本の固有の領土であるという観点から、しんぼう強くこの交渉を続けていく考えでございます。いまのところ、ここに御報告申し上げるような交渉の進展は、領土問題に関してはないということでございます。
第二の点につきまして、青木君が私にお尋ねになりました点は、沖繩問題について今後どうするつもりかということでございましたが、これは昨年の十一月の佐藤総理・ジョンソン大統領の会談において、沖繩の施政権を返還する方針のもとに、日米外交当局が継続的に協議をするという合意に達して、これが共同声明にも出ておるわけであります。きょう御提案を申し上げました小笠原協定、これに日米の外交当局がかかっておったわけであります。これが一応御審議を願う段取りになってまいりましたので、次は沖繩問題というものにかかって、来月くらいから沖繩問題に対する日米間の交渉を始めたいと考えております。国民の悲願である施政権の早期返還、この国民の悲願を体して、精力的な外交交渉をいたす所存でございます。(拍手)
〔国務大臣田中龍夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/22
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023・田中龍夫
○国務大臣(田中龍夫君) お答えいたします。
この暫定法によりまして、まず第一に現島民の生活を安定いたし、さらにまた、旧島民の復帰を希望せられる方々に対しまして、これを計画的に復島できまするように、暫定のいろいろな措置を講ずる次第でございます。
さらにまた、具体的な問題といたしまして、当面住宅の問題、教育の問題、収入確保の問題、医療、電気、水道等、これらすべてこの暫定法によりまして規定いたし、そうしてその間におきましては、さらに入島せられる方々に対しまして、計画的な調査と検討を加えまして、あるいは漁業の面におきましても、あるいはその他諸般の施設もこれに完備いたしまして、計画的な復興計画を策定いたしたい、かように考えておる次第でございます。これらの暫定法の御審議によりまして、これが円滑に処理できますることを期待いたしておる次第でございます。
さらにまた、たくさんの方々が戦死せられました、その英霊の慰霊塔等の問題につきましても、われわれといたしましては、ぜひともこれらの英霊を顕彰いたしたいということで、計画をいたしておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣増田甲子七君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/23
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024・増田甲子七
○国務大臣(増田甲子七君) 青木議員にお答えいたします。
南方諸島の安全保障の関係につきましては、佐藤・ジョンソン・コミュニケの線に沿いまして、いま防衛計画の策定について努力いたしておる状況でございます。
次に、原則として米軍施設は自衛隊の施設としてこれを引き継ぐ、こういうことにいたしております。なお、自衛隊が三自衛隊ございますうち、南方諸島は海上自衛隊が防衛に任ずる、こういうふうにいたしたいつもりでございます。まだ決定はされておりません。
そこで、父島には米海軍施設がございまして、水上機の発着場、埠頭、貯油所等がございまして、九十人の米軍がおります。これは大体においてわが海上自衛隊で引き継ぐということに相なっております。
硫黄島には米空軍の施設がございます。約一万フィートに達する飛行場がございまして、この飛行場はわが海上自衛隊が管理をする、そうして、民間にも使っていただきたい、こういうつもりでございます。
ロラン局のことにつきましては、運輸大臣から答弁があると思います。
南鳥島につきましては、飛行場がございまして、その管理をわが海上自衛隊がする。現在アメリカ兵が約十人をもってこれを管理いたしております。総体にいたしまして、幾ら多くても二百人に満たない海上自衛隊を配置すれば足りる、こう考えておる次第でございます。
なお、民生のことにつきましてでございまするが、夢のある、ビジョンのある島に復興いたしたいという青木さんの御意見はごもっともでございまして、自衛隊につきましても、その方面に協力せよというお申し出がございまするならば、積極的に協力申し上げまして、開拓あるいは土木事業等にこちらの力を相当注ぎまして、そうして、りっぱな夢の島を実現いたしたい、こう考えておる次第でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/24
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025・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 依田圭五君。
〔依田圭五君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/25
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026・依田圭五
○依田圭五君 私は、ただいま提案になりました小笠原に関する二つの案件につきまして、日本社会党を代表して、若干の質問をいたさんとするものであります。
戦後二十余年の間、戦争の犠牲で米国の施政権下に置かれていました小笠原諸島がこのたび返還されますことになりましたのは、当然のことながら、われわれ国民の一応の喜びとするところでございます。(拍手)しかしながら、その反面に、なお幾多の点におきまして、特に荒廃せる小笠原の復帰、振興、防衛の諸点に関連いたしまして、重大な質疑をいたさなければなりません。
わが党は、小笠原対策につきまして、五つの原則、すなわち、平和条約第三条の撤廃と即時無条件全面返還、東京都への帰属、平和な島の建設、復興開発の東京都への一元化、その開発資金の全額国庫負担、返還復帰前におきまする自由往来の五原則を決定いたし、政府に要請いたしてまいったのであります。
しかるに、昭和二十一年欧米系旧島民百三十五人の帰島が許されたのみでありまして、祖国復帰、帰島、自由往来などの全島民の悲願は、米国と日本政府によりまして全く無視されてまいったのであります。旧島民は、早くも昭和二十三年には、小笠原硫黄島復帰促進連盟を結成いたしまして、政府、国会、米国に対して、およそ百回の陳情、請願を行なうなど、帰島促進運動を続けてまいりましたが、帰島の悲願はついに達成することができず、昭和四十年から実施いたしました墓参が、かろうじてほそぼそと許されたにすぎなかったのであります。
それが、一九七〇年が迫り、国民の沖繩返還の要求が、全国的に燎原の火のごとくに燃え上がってまいりました情勢の中におきまして、日米首脳会談において、にわかに返還がきまり、小笠原諸島の復帰が実現する情勢を迎えたのであります。喜びには違いありませんが、あまりにもおそかりしうらみを否定することはできないのであります。なお、無条件全面返還にはほど遠い、幾多の制約のある点につきまして、危惧の念を払拭することはできません。
そこで、佐藤総理大臣及び関係閣僚に、以下数点にわたり質問をいたしたいと思います。
その第一は、総理は、予算委員会等におきましても、しばしばわが党委員の質問に対しまして、沖繩については両三年の間に返還のめどをつけると答弁いたしてまいったのであります。確たる見通しのない、いかようにも拡大解釈のできる、このごまかしのことばに、国民は非常な不満を感じております。いな、むしろ今回の小笠原返還は、沖繩早期返還論を鎮静させるための応急処置なりとする有力な意見もあるのであります。さらに、本協定による小笠原返還は、米軍の基地つき返還である。そのことは、将来の沖繩の核つき返還の道を開くものであり、国民は非常に危惧の念を持っておる。沖繩返還についての明確なる見通しを、この際明らかにいたしていただきたいのであります。
質問の第二は、今回の協定により、なぜ全面返還ができずに、米軍基地を残さざるを得なかったかということであります。その理由について御質問いたします。米国は、グアム島までその第一線基地を後退させるという論議もあるのでありまして、政府は、この小笠原地域につきまして、今後その戦略的価値をどう評価していこうとするのでありますか。また総理は、アメリカの高官が発言いたしておりまするように、日本の小笠原における防衛努力が不十分な場合には、沖繩返還の交渉が軌道に乗らないと考えているのであるかどうか。
質問の第三は、共同声明によりまするならば、小笠原諸島の返還協定で、日来の安全保障上の利益について意見が一致することとされておるのでありますが、本協定の調印にあたりまして、具体的な取りきめ内容は、一体何であったか、これを明らかにしてもらいたいと思います。
また、質問の第四は、この返還協定の前提でありまするところの、共同声明の英文の表現によりまするならば、小笠原地域の領土、領空、領海以外の水域、すなわち公海の防衛責任を、日本が徐々に負うと、総理は表明しているのであります。本協定におきましては、その点が不明確であります。すなわち、共同声明におきまする水域につきましては、わが国の対潜哨戒を考えていると思われるのでありますが、これは安保協定のワクを踏み出すものであります。返還協定では、安保条約が適用されると規定されておりますが、公海における防衛の義務を負うということとの間に、大きな矛盾があります。小笠原水域について、わが国が防衛責任を負担するということは重大な問題でありまするけれども、政府は小笠原水域の防衛責任を要求されているのではないかと思われるのでありますが、事実はどうでありますか。また、返還の直後、自衛隊の小笠原水域の配備は一体どういう具体的な計画を持っておりますか。近い将来におきましては、どういう自衛隊の配備計画を持っておるのか。また、三次防及び将来の防衛計画改定要因とせられる危険性があるのであります。この際小笠原防衛に藉口いたしまして、三次防など関連計画の変更などはあるべきではないと思いまするが、所信を明らかにしていただきたいと思います。
質問の第五は、極東の範囲につきましてお尋ねいたします。昨年の共同声明以後の一連の佐藤内閣の右寄り政策は、いよいよ米戦略体制の網の中へ、小笠原返還を通じまして、日本が繰り込まれていくという危険があるのであります。今回の協定による、硫黄島及び南鳥島における米ロラン基地は、ポラリス潜水艦等の核戦略兵器を誘導する無線電波基地であり、これを日本の施政下に持ち込むようになりましたことは、さらにその危険を深めるものであります。小笠原返還に伴い、安保条約上の極東の範囲につきましての従来の説明は、結論が出ておりません。小笠原地域はもちろんであろうが、その南方のグアム、サイパン、トラックなど米軍支配地域の諸島を含むようになるのであるかどうか。もしグアムなどを含むとするならば、わが国の防衛計画は近い将来全面的な改定をせざるを得ぬほど重大な問題であると思いまするが、どうであるか。また、伝え聞くところによると、先日の閣議では、一応含まないという統一見解を出したということを聞くのであります。が、事実であるかどうか。もしグアムなどを含まないとするならば、それは単なる現在における政府の方針だけでなくて、将来の太平洋地域のいかなる緊急事態に際しましても、変更はないものと了解してよろしいかどうかをお尋ねいたしたいと思います。
質問の第六に、協定によりまするならば、米国に対する請求権を放棄いたしておりますが、その対象となる具体的内容は何であるかを明確にせられたいと思うのであります。
次に、暫定措置法につきまして質問を申し上げます。
小笠原島民は、ほとんど全部が帰島を希望いたしておりますが、問題は、国及び都の受け入れ体制の整備を、一日千秋の思いで待っておるのであります。
そこで、まず第一に現地在島者のすべての生活は、米軍に依存いたしておりますが、これらの方々の、復帰に伴いまする生活環境の激変に対処して、心から安心できる具体的な措置を、早急に明らかにする必要があると思いまするが、どのような準備を進めておりますか。
質問の第二は、旧島民の措置につきましてお尋ねいたしたい。
農地につきましては、各島とも、一部の大地主がほとんどの土地を所有いたしております。硫黄島のごときは、畑地の七割近くを一つの民間会社が所有いたしておる実情にあるのであります。また帰島希望者の大部分は、地主ではなく、旧小作農家であり、借地に住んでいた人たちであることを考慮いたしまするならば、戦前の耕作権、借地権が、何らかの形で保護されなければならないことは当然であります。法案第七条によれば、政令で定めた日まで農地法の施行停止の措置がなされておりまするけれども、農地法の適用によって、本土と同じく不在地主の土地を耕作者に移転するなどの農地改革を行なうつもりであるかどうかを、明確にしていただきたいと思います。(拍手)
さらに、その八割をなすといわれる国有地の一部開放を、これらの帰島希望者に行なう方針があるかどうかを、あわせ御質問申し上げます。
第三は、漁業権につきましてお尋ねいたします。
旧島民の漁業権を侵害されないためにも、乱獲防止の具体的な規制の方法を明らかにされたいのであります。また、なるべくすみやかに漁業組合の設立及び操業開始につきまして、資材、漁具、金融などの措置については緊急な問題であると考えますが、その推進策を明らかにせられたいのであります。
日本本土におきましては、昭和二十四年の漁業法の成立によりまして、旧漁業権は全部消滅させられました。そして補償をしたのであります。小笠原諸島の漁業権はまだ補償をされておりませんが、このことにつきましては、当時の農林大臣が、施政権返還後には特別措置を保障するというように約束いたしておりますので、この補償を政府はどのように扱うかを明らかにしてもらいたいと思うのであります。
質問の第四は、開発方式についてお尋ねをいたしたい。
政府は、まず父島を中心にいたしまして、開発をいたし、逐次周辺諸島への整備を考えておるようであります。政府のこのような開発方式では、母島、硫黄島などの帰島者の生活安定と開発が大幅におくれますので、同時開発ということについて考える余地があるのではないかと思うわけであります。また開発にあたり、離島及び低開発地域並みの国庫負担などでは、小笠原住民に対しまして、国が報いるには、あまりにも冷淡な感じがいたすのでありますが、全額国庫負担で措置するつもりはないかを御質問いたします。(拍手)
さらに、小笠原開発につきましては、本土府県並みに、東京都を事業主体として国が支援するという方式をとるのか、あるいは公共事業の大部分を国が直轄して行なう方針であるのか、明らかにされたいのであります。
さらに、本格的な復興、振興計画は、いつ、どのような構想と規模で提案せんといたしておりますか、その準備を聞きたいのであります。
質問の第五に、行政組織については、村長のかわりに職務執行者を置くことになっております。が、その選任につきまして、小笠原と同じ条件であるところの八郎潟を干拓した大潟村の場合におきましては、知事が県議会の同意を得て、県の吏員の中から任命いたしております。ところが、小笠原におきましては、都議会の承認は不要でありまして、自治大臣の同意を得なければならないということになっております。また、東京都の吏員という制限もないのであります。これらのことは、東京都知事の権限を制約し、政府職員を充当したい意味であるかどうかを御質問いたします。
また、条例制定権につきまして前に申し上げました大潟村の場合は、知事の承認を得て、条例の制定、改廃をすることにしておりますが、小笠原の場合は知事の権限がはずされておるのであります。
これらの知事権限、都議会権限の縮小は、小笠原を東京都に帰属させました地方自治の理念と矛盾すると思うが、一体、どういう説明をなさりますか。
第六に、本法案によれば、土地収用などの特例を設けております。この特例は、住民生活に必要な公共事業、または公益事業施行につきましては、われわれも十分に理解いたすのであります。が、これは反面におきまして、軍事基地拡張のかっこうの法的な根拠を提供いたしておるのであります。政府は、軍事基地のための接収にあたり、この特例によってその乱用をすることは、厳に慎まなければならないと思いますが、運用の方針をお聞きいたしたいのであります。
最後に、小笠原の旧島民のほんとうの幸福をもたらすかどうかは、一日を争います政府の施策いかんにかかっておるのであります。従来見られまするような国と都の間の権限争い、各省間のなわ張り争いは厳に戒め、一万余の小笠原関係者の二十数年にわたりまする悲願と、硫黄島で悲惨な戦争に倒れた二万数千の霊に対しましても、再びこの悲劇を繰り返さぬよう、平和な島の実現に邁進されることを要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/26
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027・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
まず第一に、沖繩の問題についてお尋ねがございました。日本がさきの戦争で失った領土、これは北方領土とアメリカが占領した小笠原、沖繩、かようになっておるわけであります。北方領土並びにこれらの地域を一日も早く祖国に復帰さすように今日までつとめてまいりました。しかし、先ほど青木君にお答えいたしましたように、ソ連の占領した北方領土については、ただいままだ見通しが立っておらない。幸いにいたしまして、アメリカの占領した地域、まず小笠原が返ることになりました。次は沖繩の問題であります。これから、沖繩の問題につきましては、米政府と継続的な交渉を持つことになるのであります。そうして、その際に、ただいま御指摘になりましたように、軍基地はいかにあるか、こういうお尋ねでありますが、ただいまこれは白紙だと、しばしば他の委員会においてもお答えしたとおりでございます。したがいまして、ただいま言われるように、核基地つき返還ということをはっきり申し上げるようなものではございません。また、小笠原が返ることが、同時に沖繩も返ってくることに私は関連を持つと思います。しかし、沖繩の問題は、直ちに沖繩が返還される、早期返還というのは、まだまだ、なかなかむずかしい状態だろうと思いますので、これは政府が、皆さん方の御鞭撻のもとに、米政府と十分協議するつもりでございます。
そこで、この復帰後の小笠原の防衛についてのお尋ねでございますが、これは、申し上げるまでもなく、小笠原が返ってくれば、その防衛は、本土の場合と同様に考えていくわけであります。したがいまして、小笠原返還協定は、現在小笠原にある米軍の軍事基地について、硫黄島及び南鳥島のロラン局を除いて、日本側に引き渡されることを規定しておりますが、これに関連する自衛隊の配置等、具体的な計画につきましては、目下検討中であります。
なお、小笠原が本土に復帰したあと、この地域に対し、日米安保条約及びこれに関連する取りきめが適用されることは、協定におきましても、確認されているとおりであります。小笠原防衛については、別段の取りきめを行なうことは考えておりませんし、また、今回も、この返還協定をする場合に、新しい取りきめなどはもちろん、約束はございません。いたしておりません。また、そういう関係でございますから、ただいま実施しておる三次防計画、これを変更するような考え方もございません。
そこで、問題になります極東の範囲の問題でありますが、小笠原諸島の返還に伴いまして、これらの諸島が、安保条約第五条の条約地域になることは当然であります。ただいま申したとおりであります。小笠原が安保条約の第五条地域に入ったからといって、第六条の極東の範囲が広がる性質のものではありません。ただし、地理学上、極東の範囲が正確に固定されているわけではありませんし、安保条約で極東といっているのは、そこにおける国際の平和及び安全の維持について、日米両国が共通の関心を持っている地域であり、元来、明確な線で区画されるような性質のものではありません。したがいまして、マリアナ群島であれその他の太平洋における島々であれ、その一つ一つについて、安保条約でいったところの極東に入るか入らないかということを答えることは、本来適当とは私は考えておりませんが、しいて申し上げるならば、グアム島を含むマリアナ群島は、安保条約にいう極東の一部とは考えておりません。これは、私が、この機会にはっきりこの具体的な問題を申し上げておきます。
返還協定の交渉等につきましては、これは外務大臣から、その経過をお聞き取りいただきたいと思います。
以上で、私のお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣増田甲子七君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/27
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028・増田甲子七
○国務大臣(増田甲子七君) 依田議員にお答えいたします。
ただいま青木議員に具体的に詳細に申し上げましたし、総理大臣が、防衛に関する方針は明確に申されております。そのとおりでございます。(拍手)
〔国務大臣田中龍夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/28
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029・田中龍夫
○国務大臣(田中龍夫君) お答えいたします。
まず、旧島民の方々の耕作権の問題で御質問がございました。これらの旧島民の方々の小作権につきましては、引き揚げられました当時に、耕作の権利を保障するための措置といたしまして、暫定法におきまして、昭和十九年の三月三十一日現在で、耕作を目的とする地上権、賃借権等が、暫定措置法施行後一年を経過する日までに消滅している場合は、それらの権利を有しておる者またはその一般承継人は、一定期間内に土地の所有者等に申し出がありますれば、土地を賃借することができる、かようにいたしておりまするし、また、この申し出がございました場合におきましては、本土引き揚げ当時から引き続いて存続しておる賃借権またはその登記がなくても、小笠原に農地法が施行されるまでの間は第三者に対抗できるものといたしまして、旧島民の小作権並びに解約制限をいたしておる次第でございます。
なお、国有地の開放の問題でございまするが、これも、この暫定措置法によりまして、一応の現住民の方々並びに帰島されました方々の生活のめどが立ちました後におきまする復興法におきまして、国有地の開放の問題は有効に計画的に行なってまいりたい。かように考えております。
なお、漁業権の問題に関連いたしましては、現在十五名の方々が漁業に従事しておられるわけでありますが、これらの方々並びに復島されました方々の漁業権の確保のため、また漁業協同組合の設立等の問題につきまして、指導をいたし、そうして安定した操業が確保できるように努力いたすことにいたしております。
なおまた、その他、復興計画にあたりまして、職務執行の問題で、国の事務につきましては、小笠原に事務所を設定いたしまして、御案内のとおり、自治省のもとに責任者が選定されるわけでございまするが、なおまた、同島におきまする村の設置によりまして、これは自治法に従っての自治体としての村を建設する予定でございまするし、なお、その他、土地の収用あるいはまた各般の問題におきましては、この暫定法施行後におきます。る調査等々の結果に基づきまして、復興法を制定いたしまして、その復興法に万般の措置を定めてまいりたい、かように存じておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣赤澤正道君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/29
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030・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) お答えいたします。
この地域は、過去の歴史的ないきさつからいいまして、その復興と開発につきましては、国に大きな責任があると考えておりますので、この地域には特に国の総合事務所を設置するなど、若干特殊な制度を定めました。それは決して、御心配のように、東京都知事の権限を取り上げようなどというものではなくて、逆に、都も国も密接に協力して、一日も早くこの地域の復興をはかっていくためのものでございます。
それから、島々を全面的に同時に開発したらどうかということでございました。これも総合的な計画に基づいて行なっていくものでありまして、・御存じのように、どの島の現状も非常に異っておりますから、それぞれの条件に応じまして、重点的かつ効率的に行なっていくほかはないと考えております。
それから土地収用法の特例を設けましたことにつきましては、決して、御心配のように、軍事基地をつくるなどの乱用など、全然そういうことではございませんので、この地域が交通も不自由な絶海の孤島でございまして、土地の所有権を確認することすら非常に困難な現状にもありますので、すみやかに復興を行なうため必要最小限のものでありまして、そういう乱用の御心配は全然無用にお願いいたします。
次に、国庫補助金、負担金、これをうんとかさ上げする、あるいは全額国庫補助でやったらどうかということでございました。小笠原諸島の復興につきましては、国のとります財政措置につきましては、この地域の特殊事情、また、今後の調査の結果などを考慮しながら、島の復興のあり方との関連において、今後検討いたしてまいりたいと考えております。
それから、現地の住民の日常生活に必要な生活環境施設ないし教育施設についてでございます。が、現地島民の生活に空白が生じないように、必要な関係団体及び機関におきまして責任を分担いたしました上、適切に処理してまいらなければなりませんが、現在、それぞれ専門職員を現地に派遣するなど、遺憾のないように準備は進めております。
最後に、都と各省との間でなわ張り争いなどをしてはたいへん困るということでございました。そういうことは絶対にないと思いますし、今後とも十分配慮いたしていかなければならぬ、かように考えております。(拍手)
〔国務大臣三木武夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/30
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031・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 小笠原の返還交渉の経過は、地位協定によって提供する施設も、南鳥島と硫黄島のロラン局だけでありますから、それ以外に新たなる防衛上の取りきめをする考えはございませんし、それも、ロラン局——これは電波灯台と訳すべきものでしょうから、しごく順調に協定作成に対する日米の交渉は進んだわけでございます。
また、お尋ねの請求権に関しては、日本人に関する特に提起されなければならぬ請求権の実体はないと思っております。(拍手)
〔国務大臣西村直己君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/31
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032・西村直己
○国務大臣(西村直己君) 小笠原の海域の周辺で乱獲されはせぬかという漁業の関係だけ申し上げますが、これにつきましては、御存じのとおり、現在は米軍の施政下にありますけれども、わがほうといたしまして、各都道府県を通じ、できるだけ指導を加えまして、そこへ密漁など参らぬように厳重に指導させております。
返還後におきましては、もちろん、わがほうの手で取り締まりを強化すると同時に、旧島民の漁業者に限って——一般には漁業というものの権利は与えないで、旧島民の漁業者に限って、そこの周辺地域は認めるようにいたしたいと思います。
それから、その次は補償の問題であります。旧漁業権は、御存じのとおり、先ほどもお話がありましたように、消滅はいたしております。そこで、これに対して補償するのかという問題でありますが、これに対しまして、すでに旧島民に対しまして、昭和三十七年に全体として二十二億円が配分され、うち旧漁業者に二億八千万円という見舞い金が出ておるのであります。これは従来の旧漁業権の補償相当額を上回っておるのであります。これらの事情も考慮いたしまして、補償という措置は考えておらないことを申し上げたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/32
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033・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 和田耕作君。
〔和田耕作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/33
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034・和田耕作
○和田耕作君 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました小笠原諸島等についての日米の協定並びにこの暫定措置の法案につきまして、一言二言御質問を申し上げたいと思います。
今回、日米両国の政府によりまして合意に達して、小笠原諸島が返還をされた、二十三年ぶりに日本の本土になったということはまことに喜ばしいことだと考えております。いま、私どもは、この小笠原諸島の復興につきまして考えようとしているわけでございますけれども、何といっても、小笠原諸島というものが日本の南方への窓という、この明るいイメージというものを思い起こしながら、小笠原の復興という問題を考えていく必要があるのじゃないか、こういうことを考えるわけでございます。
小笠原は、東京から南方約千二百キロの洋上にある群島でございますけれども、父島、母島あるいは硫黄島という三つの島を中心とした島々があるわけでございます。ここは気候もたいへんいい。台湾を失った日本にとっては、ただ一つの南洋的な気候を持った島であるわけでございます。いわゆる常夏といわれたようなところでございます。現在はたいへん荒廃しておるようでございますけれども、土地は本来非常に肥えた土地である。従来、東京地方にも豊富な南方系の野菜を提供した得がたいところであるわけでございます。このようなところに加えて、いろいろな海のさちもたくさんとれる可能性を持っているところだというようなことでございます。
とりわけ、こういうふうなものと並びまして、もっと今後の措置を考える場合に重要なことは、小笠原諸島はたいへん平和な島だということでございます。米軍の占有下の二十数年にわたりましても、たいしたなまなましい軍事基地というようなものを置いていない。この点から考えましても、小笠原諸島という島はたいへん平和な島だ。この平和な島は今後も長く維持しなければならない。そういうふうな島だという感じのところでございます。私どもは、このようなこの島の持っているイメージを大切にしなければならない。このようなことがこの小笠原復興の前提として、いまさらのように考えてみなければならないのじゃないか、こういうように考えるわけでございます。
こういうことで、現在この問題を考える場合に、何といっても現住民あるいは長く小笠原に住んでおられた古い島民の方々の意向というものが明らかにならなければならない。この意向を重視していかなければならないということだと思います。この方々は、住みなれたこの小笠原の地から、戦争目的ということで、強制的に疎開された人であります。そして、その後たいへんな御苦労をなさっておる方でありますので、この人たちの措置を考える場合には、どうしてもこの人たちの強い希望というものを考えてみなければならない。こういうような意味で、小笠原の復興開発という問題は、単に離島対策といったような性質のものではなくて、国が直接の責任を持って、この島の開発を考えなければならないような性質のものだということを、私どもは考えてみる必要があると思うのでございます。
このような意味で、まず、暫定措置の法案につきましてお伺いしたいのでございますけれども、先ほど申し上げたように、小笠原諸島は、父島、母島そして硫黄島という——これは島というとかなり大きいような感じがしますけれども、これの大きさをちょっと申し上げてみますと、幅が大体四キロ、そして縦が大体六キロ、つまり一里四方よりちょっと大きいくらいの三つの島を中心とした群島であるわけでございまして、このような小さい島にどれくらいの人がお帰りになるかわからないけれども、相当、数千以上の人が帰ると見なければならない。そこで、関係の政府の大臣にお伺いしたいのでございますけれども、現在、日本の本土におる旧小笠原の島民がどの程度おられるのか、どのような生活状態をしておられるのか、あるいはこの島にお帰りになる気持ちを持っておる人がどのようにあると思われるのか、このような問題について、お調べになっていまわかっているところを、ひとつお聞かせいただきたい。
そして、それとともに、復帰を希望される人に対して、政府はどのような補償をなさるのか。あるいは現地に行けば家が要る、あるいは田畑を耕すいろんな資本も要る、あるいはお魚の問題であれば、そういう経営のためのいろんな費用が要るわけですけれども、政府はこのような帰島者に対してどのような援助をしようとされておるのか、その問題についてまず第一にお伺いしたいと思います。
第二の問題は、こういう小さい島でございます。から、何千という人が帰った場合に、土地の問題が必ず出てくると思います。現在おられる住民の土地と従来の所有者の土地の問題は、この暫定措置法案の中にあるようでございますけれども、おそらくこういうふうな方が出るのじゃないか。土地の所有権を持っている人でしかも島にお帰りにならない、そういうふうな意味の不在地主のような状態の方が幾多出てくるのじゃないか。こういうようなものが非常に重なった場合に、今後島の開発計画というものは非常に困難になるおそれがある。ほんとうに向こうに帰って、そして耕作をなさろうあるいは漁業をなさろうという人にとっても、こういう不在地主が出てくれば、たいへん困ったことが出てくる、こういうふうな問題に対してどのような処置を考えておられるのか、このことを第二点としてお伺いしたいと思うわけでございます。
第三点といたしまして、私は、こういう小さな島でありますのと、将来この島は、日本の国あるいは国民全体の一つの福祉という面から開発しなければならぬと思うのですけれども、こういうふうな面から見て、どうしても土地の利用計画というものをあらかじめつくっておかなければならない。この島の開発計画のビジョンに従っての利用計画がないと、小さな島の中で、ごたごたとした無用な問題が起こってくるおそれがあるわけでございまして、このような土地の利用計画というものをどのようにお考えになっておられるのか。今後この島の公共施設をどういうふうに、どこにつくるのか、あるいはたくさんの人が帰った場合に、帰った人たちの意思のままで、いままでの土地の所有権のあるままで、耕作権のあるままで、無秩序にその島に帰そうとしているのかどうか。こういうことは、私は島の開発のためには適当でないと思うのですけれども、こういうような土地の利用計画というものをどういうように考えておられるのか、このことについて、関係の大臣にお伺いをいたしたいと思うわけでございます。この土地利用の計画をきめるための開発のプランというものだけは、これは絶対に必要なことじゃないかと思うわけでございます。総務長官並びに自治大臣のお答えをいただきたい。
また、いま申し上げたような土地の利用計画をつくろうという場合には、どうしても開発の計画がなければならない。いわゆるビジョンがなければならないわけでございますけれども、このようなビジョンをつくる場合に、私ども民社党は、従来の、先ほど申し上げたとおり、現住民あるいは古い島民の利害、要望というものは尊重しなければいけないことはむろんのことでございますけれども、そのためにも、つまりその人ばかりでなくて、日本国民全体の夢といったようなものを満たす、そういうふうな考え方も必要じゃないか。先ほども申し上げましたとおり、日本のただ一つの南方への窓といったような地位を占めるところでございますから、ひとつそのような気持ちからも、この島の開発の問題を考えていただきたい、こういうふうに考えるわけでございまして、そのような意味から、この島は、将来のビジョンとしては、現在の自然環境から申しましても、国民のレクリェーションの場、あるいはいこいの場、あるいは保養地とするような考え方があっていいじゃないか。そのために、そういうふうなものとして開発するためのいろいろな施設が必要であるわけでございます。また、そういうふうな点から見れば、あるいは田畑や山林を無計画に荒らすということもできないし、あるいは先ほどの漁業の乱獲をするというようなこともとめなければならないということになるわけでございまして、そういうふうな意味の形でこの島々を開発していく。これは厚生省からも、国立公園といったような考え方が一部出されておるようでございますけれども、こういうふうな考え方と大体方向を同じくするような考えでございますが、この問題について、総理大臣以下の関係の政府の方々はどのようにお考えになっておられるのか、これが第一の問題でございます。
第二の、今後の開発の一つの目標として考えなければならないのは、日本の南方へのただ一つの窓として、日本は今後南方の諸地域の開発に大きな責任を持っておる。この開発をするための重要な一つの教育センターあるいは技術的な研究機関をそこに配置する、こういうふうなお気持ちをお持ちにならないのかどうか。つまり、今後広い南方に向かっての平和部隊的なものの基地に、この島々を利用するような計画をお持ちにならないのかどうか、これが必要だと思うのですけれども、そういうようなことについての政府の見解をただしたいと思うのでございます。とりわけ、日本の南方へのいろいろな援助というのは、お金のない日本ですから、お金を出すよりは、いろいろな技術的な援助をしなければならないということになれば、なおさらそういうような考慮が必要になってくる、こういうように私どもは考えるわけでございます。このような一つの開発へのプランあるいはビジョンというものがあって初めて、この小さな島、しかも重要な島、しかも数千人あるいは一万人に達するという人たちが帰島を望んでおるであろうというこの島の問題を処理できるのではないか、こういうように考えるわけでございますけれども、ひとつお考えをお聞かせいただきたい。
もう一つの問題は軍事基地の問題でございます。先ほども申し上げたように、戦後の二十数年にわたって米軍が占有しているところでも、たいした軍事基地を持っていない、それほどこの島は直接戦闘には関係のない島だといってもいいところでございます。私は、こういうふうな今度の小笠原復帰の問題が、在来の日本本土並みの基地の状態として復帰されたことは、それなりに評価するものでございますけれども、今後はこの小笠原の基地——現在あるのはたいした基地じゃないと思いますけれども、この基地でも、できるだけこれを集中的なものにする、あるいは通信とかあるいは交通とかいう技術的なものに限定をしていくというような考え方が必要だと思うわけでございます。かりそめにも、ここを現在日本で問題になっておる射爆場にするとか、あるいはそういうふうな自衛隊の兵隊だけをたくさん持っていって、そして、ここを演習場にするとか、こういう考え方をお持ちにならないように、あくまでも平和な島として、そして南方への窓としての小笠原を開発なさるように、軍事基地を縮小ないし漸減あるいは集中化していくという考え方が必要だと思うのですけれども、防衛庁長官は、これをどういうふうにお考えになっておられるのか、このことをひとつお伺いしたいと思います。
最後に、具体的な問題としまして、この小笠原は一千キロ以上の南方にある島でございまして、何といっても、これは交通機関を整備しなければならない。交通機関の整備なしに、この小笠原の開発はできないわけでございます。この交通機関の問題については、たいへんお金もかかるし、たいへんな仕事になるわけでございますけれども、この交通機関の開発の方法についてお考えの点があれば——当然あると思いますけれども、ひとつお話しをいただきたい、こういうふうに考える次第でございます。
以上いろいろ申し上げましたが、最後に、総理にお伺いをしたいと思います。現在われわれは、この二十数年間のブランクのもとで、新しい小笠原というところを、ほとんど無人に近い小笠原というものを、ゼロから出発して開発しようとしておる。これは非常にむずかしい問題でございます。けれども、ある意味では、ゼロから出発するということは、たいへんな利点になるわけでございます。これをまずいものにするか、あるいはたいへんしあわせなものにするかは、一に政府の決意にかかっておるわけでございます。どうかひとつこの問題をお考えになって、そして、現在小笠原にはほんのわずかしか人はいないし、また、いろいろな人がたくさん帰るかどうか、まだはっきりしないのですけれども、いろいろな問題があるこの小笠原に対して、先ほどから申し上げておるような、新しい小笠原の一つの開発計画、夢になるような開発計画というふうなことを目途としたビジョン、あるいはそれを実行する計画等について、総理から取りまとめてひとつお答えをいただければありがたいと思います。
また、伝えられるように、あの島は漁場もなかなかたくさんあるし、また、開発されればいろいろなものがとれる島ですから、日本の資本家たちがいろいろ目をつける。漁業資本家とか、観光資本家がいろいろ目をつける。あまりけちな、そういうもうけるというようなことでこの島をお考えにならないで、ひとつ国が責任を持って、この小笠原のりっぱな開発をしていただきたい。そして、現島民、旧島民のしあわせを願いながら、日本国民の南方への窓として、ひとつこれの開発計画をお立ていただきたい。このことを最後にお伺いいたしまして、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/34
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035・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 和田君にお答えいたします。
和田君御指摘のように、小笠原は、南方への窓であり、常夏の島であり、同時に平和な島でございます。そういう意味で、今回の開発におきましても、こういう点を十分念頭に置いて、そして開発計画を立てたらいい、かように思いますが、何と申しましても、まず第一は、専門的あるいは技術的な調査に基づいて、その上でやるべきことだと思います。そういう際に、ただいま御指摘になりましたような点を十分勘案して、これと取り組んでまいるつもりであります。また、そのうちでも特に必要なのは、この小笠原への交通の確保だ、かように思います。たいへん住民も少ないところでありますから、今日のままですぐペイするというような交通機関はなかなか見つからないだろう、これはたいへん経営困難なものだろうと思いますが、国並びに都が所要の援助をすることによりまして、この交通路を確保する、かような方向でさらに開発に進んでいきたい、かように思います。(拍手)
〔国務大臣田中龍夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/35
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036・田中龍夫
○国務大臣(田中龍夫君) お答えいたします。
まず、どのくらいの人間が本土のほうに帰っておるだろうか、それに対してどういう処置がとられておるだろうか。約八千名程度帰国いたしましたが、さらにそれが増加いたしまして、小一万になっておりまして、東京都、神奈川県、静岡県、その他、関東から各地のほうに散在いたしております。今日、意識調査をいたしておりまして、これらの方々に対して、帰島の御希望なりあるいはその他の調査をいたしつつございますが、ただいま御指摘のとおりに、国の先行投資という、すなわち、援助というものと帰島の御希望というものが相関関係を持っておるわけでございまして、国がどの程度まで先行投資をし、どの程度まで援助するかということが、ひいてはまた帰島の数を決定するもとでもございます。さような関係で、目下調査中でございます。
次は、土地の所有権あるいはまた利用等々の問題につきましては、暫定法で、申し上げましたような処置を、権利関係におきましてはとる考えでございます。
なおまた、小笠原の利用の問題につきまして、非常に斬新な民社党の御計画を拝聴いたしましたが、いろいろな計画、新しい見方によって小笠原を開発していくというこのビジョンの問題は、非常に重要な問題でございまして、われわれも大いに各方面から意見を徴し、また、新しい開発をいたしてまいりたい、かように考えております。(拍手)
〔国務大臣赤澤正道君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/36
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037・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) この復興計画は、今後の調査の結果とも相まって、十分研究いたしたいと考えております。御指摘のように、この地域の特殊な地理的な条件の活用を主眼にいたしまして、豊かなビジョンを含む新しい総合的、計画的な村づくりという方向で、検討を進めてまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣増田甲子七君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/37
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038・増田甲子七
○国務大臣(増田甲子七君) 和田さんにお答えいたします。
軍事基地は、アメリカのものがあるけれども、基地というほどのものではないということでございますが、お説のとおりでございます。その米軍基地を自衛隊が原則として引き継ごうとするものでございます。引き継ぐものでございますが、まだ防衛計画はできておりませんけれども、私は、民生安定のためには、米軍施設のうちでも、できるだけ開放するようにと、こういう方針で進んでおります。
なお、自衛隊の施設として許される範囲内のものにつきましては、各種の訓練、演習等の場所にいたしたいと思っております。
硫黄島には、羽田同様の三千メートルの飛行場があるわけでございまして、これを民間とも共用いたしまして、そうして平和な島にいたしたいというお説は同感でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/38
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039・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 樋上新一君。
〔樋上新一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/39
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040・樋上新一
○樋上新一君 ただいま趣旨説明のありました小笠原諸島の復帰に伴う南方諸島及びその他の諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定、及び小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案に対して、公明党を代表して若干の質問をいたします。(拍手)
去る四月五日の小笠原返還協定調印によりまして、小笠原諸島が実に二十三年ぶりに本土への復帰が決定いたしましたことは、まことに喜ばしいことであり、戦後幾多の苦しみに耐えながら、この日を待ち続けてきた旧島民の御苦労に、心からの敬意を表するものでございます。(拍手)
わが党は、返還を前にして調査団を現地に送り、つぶさに調査してまいりました。その結果、復帰に際し、多くの問題がありますので、島民にかわって、目で見た立場から具体的に質問をいたします。
そこで、まず第一に、今回の復帰と防衛計画の関連についてお伺いいたします。
昨年の佐藤・ジョンソン共同声明の第七項には、この地域の安全をそこなうことなく達成するための具体的な取りきめに対して、日本国政府及びアメリカ合衆国政府が直ちに協議に入ることに同意したとありますが、「この協議は、この地域の防衛の責任の多くを徐々に引受けるという総理大臣が表明した日本政府の意図を考慮に入れるであろう。」と明記されていますが、これは、小笠原返還と引きかえに佐藤総理が日本の防衛力増強の義務をより大きく要求されたのではないか。あるいは、昨今の佐藤総理の右寄りの姿勢から推して、国防意識の高揚を唱え、自主防衛を強力に押し出し、その自衛力増強を国民に押しつけようとするのではないかとの不安を抱かずにはおられないのであります。この点について総理の所信を明確にお答え願いたいと存じます。
かつて防衛庁長官は、二百名程度の自衛隊を派遣すると申しておりますが、将来、小笠原地域の防衛体制とその性格をどのように評価しているのか。また、その規模と、第三次防衛計画の変更はあり得ないかと思いますが、この点についてお答えを願いたいと存じます。
また、硫黄島及び南鳥島における通信施設用地、ロラン局は、わが国の台風観測及び気象観測のためにも重要な役割りを持つものであります。したがって、一切の業務を譲り受け、米軍の撤退を要求すべきであると思いますが、外務大臣にこの見解を求めるのであります。
硫黄島の米空・海軍の撤退の引き継ぎは防衛庁と聞いています。このままの開発計画では、硫黄島は、対潜哨戒機など航空、海上の軍事基地の島になってしまうのではないかと思われるが、いかなる開発計画なのか。また、民間航空開発計画はないのか、総務長官並びに運輸大臣にお伺いいたします。
硫黄島は、かつて栗林師団長以下日本軍約一万数千の将兵が悲惨にも玉砕した島であります。現在でも万余の遺骨がそのままに放置されており、不発弾も相当数埋没していると聞きます。その遺骨収集と不発弾処理を直ちに行なうべきだと思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。
次に、島民の漁場や安全操業を守り、あるいは、海上遭難救助等は、海上保安庁の業務であります。島民の平和と安全を確保するために積極的に海上保安の整備が必要と思いますが、具体的な構想について、運輸大臣にお伺いいたします。
次に、現住民、旧島民に対する補償問題についてお伺いいたします。
まず、父島は漁業、母島は主として農業開発が中心になると思いますが、漁業については、現在カヌーによるきわめて原始的な操業を営んでいますが、問題は、内地との航路の開設と、漁業加工に対する冷凍工場及び加工場の整備が必要であります。また、漁船などの建造についても、国からの資金援助がなければ、開発は不可能であります。水産業振興の方策を農林大臣にお伺いいたします。
次に、農業の開発については、二十三年間も農地を放置しておいたのだから、満足な農耕地にするには時間が必要だと一様に述べており、少なくとも三カ年以上の生活の保障及び住宅対策が完備しなければ、開発は不可能であると思いますが、いかなる計画と見通しをお持ちか、農林大臣にお伺いいたします。
また、現・旧島民の耕作権問題や、病害虫対策、本土を中心にした市場生産など考えられます。が、その具体的方策をお伺いいたします。
さらに、小笠原諸島の八〇%近くは国有地である。農地に向く国有地はどんどん開放すべきであると思いますが、農林大臣の御所見をお伺いいたします。
次に、小笠原諸島は、風光明媚な観光資源に恵まれております。したがって、観光開発は不可欠でありましょう。しかし、無制限に自然の美を破壊するようなことは、十分に留意すべきであります。自然保護と、国立公園など、観光開発の計画をどうするのか、厚生大臣から具体的にお答えを願いたいのでございます。
次に、返還協定の第五条第二項に、「日本国は、南方諸島及びその他の諸島の合衆国による施政の期間中に合衆国の当局若しくは現地当局の指令に基づいて若しくはその結果として行なわれ、又は当時の法令によって許可されたすべての作為又は不作為の効力を承認し、合衆国国民又はこれらの諸島の居住者をこれらの作為又は不作為から生ずる民事又は刑事の責任に問ういかなる行動も執らないものとする。」とある。これは現地島民の権利の保護を規定していると思うが、現地民の土地、住宅等の補償をどのように考えているのか、総務長官にお伺いいたします。
次に、小笠原復興対策についてお伺いいたします。
現在、総理府において、旧島民に対する意識調査を行なっているようでありますが、その概要についてお伺いいたします。また、返還後の小笠原復興法(仮称)の検討が行なわれていると聞きます。が、その概要についてお伺いいたします。
小笠原の帰島プログラムについては、旧島民が最大の関心を持ち、政府の構想を見守っております。したがって、一日も早く復興法の草案なり、帰島のプログラムを発表すべきではないでしょうか。総務長官にお伺いいたします。本来、小笠原暫定措置法と同時に作成すべきではなかったか。旧島民は、政府の方針に不安を大きくしているのであります。
次に、小笠原の復興計画については奄美方式を取り入れると聞いておりますが、昭和二十八年に返還された奄美大島については、三次にわたり、五カ年計画で総額二百億円を投じて、やっと鹿児島県の所得水準の八〇%にこぎつけたといわれています。小笠原の場合も、東京の所得水準の八〇%を目標にする、離島振興法を適用し、他の離島とのつり合いもあるから、小笠原だけを特別に優遇するわけにはいかないと言っているとも聞きます。が、しかし、小笠原の復興開発は、単なる離島の開発援助と全く性格が異なるのでございます。戦前、軍の命令で島民を無理やりに本土に引き揚げさせ、戦後は、施政権をアメリカに引き渡したまま、今日まで行政を空白にしてきた経緯があります。したがって、本土復帰になっても、現在のジャングル化した小笠原には帰れない。旧島民は、国の命令で疎開させられたのだから、少なくとももとの平和な小笠原にして戻してもらいたいと言っております。現地民は、本土に引き揚げた島民はアメリカから六百万ドルの見舞い金をもらったが、われわれ現地民は一セントももらわなかった、米軍が引き揚げた後、現島民の生活が安定するまで、政府において十分な補償をはかってもらいたいとの声があります。このように戦争の犠牲者である小笠原の島民に対しては、戦争犠牲者としての補償を考慮しつつ、小笠原の復興計画及び予算措置を講ずべきであると思いますが、総理の御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/40
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041・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 小笠原の復帰に際しまして、防衛関係で新しい約束はないかというお話でございますが、先ほど申しましたように、新しい取りきめはもちろんございません。したがいまして、この際に第三次防計画を変更したり、あるいはこれを改正するというようなことはございません。
また、この地域に対しての防衛は、日本が自主的な判断によりまして、どういうような派遣部隊を編成するか、ただいま鋭意検討中でございます。さように御了承いただきます。
また、この地域に対する予算のお尋ねがございました。ただいま法案を出しましたものは暫定措置のものであります。いまちょうど調査をいたしておりますから、技術的、専門的な調査が終了いたしますと、今度は復興計画と取り組むことになります。それまでお待ちをいただいて、この段階ではどういうような予算を出すか、そういう点、ただいま申し上げるわけにまいりません、材料がございませんから。また、そういう際に、補償等の問題も十分検討されることはもちろんでございます。
なお、遺骨の収集あるいは観光事業等につきましては、厚生大臣からお聞き取りをいただきます。(拍手)
〔国務大臣三木武夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/41
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042・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 樋上君は、小笠原がアメリカの基地のもとに入ってしまうのではないかというお話でございましたが、現在、アメリカに提供すべき施設は、硫黄島と南鳥島のロラン局、これは電波灯台で、船舶、軍艦が受信機さえあれば広く利用することができるので、そういう施設を除いて全部日本に返るわけですから、小笠原諸島がアメリカの軍事基地のもとに入り込んでしまうというふうには考えておらないのでございます。(拍手)
〔国務大臣増田甲子七君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/42
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043・増田甲子七
○国務大臣(増田甲子七君) 樋上さんにお答えいたします。
防衛計画は、総理がただいま答弁されたとおり、検討中でございます。しこうして、ロラン局を除きまして、米軍施設を原則としてわがほうにおいて引き受けますけれども、他の機会において私がしばしば申し上げておりますとおり、総数において海上自衛隊の派遣数は二百名を出ないということで御了解願ってけっこうでございます。
なお、対潜哨戒機等は参るには参りまするが、しかしながら、常駐はいたさせないつもりでございます。
それから、不発弾の処理等は、御期待のとおりに、十分に努力をいたす所存でございます。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/43
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044・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) まず、航路及び航空路の問題が起きますが、復興資材及び人員の輸送は、国及び都において実施いたします。復興が進むにつれまして、民間輸送の問題が起きますが、民間事業者によりまして、小笠原航路をいずれ開設させる予定であります。小笠原航路は、当初は相当欠損になるとも思われますので、その場合には国及び都において助成する考え方であります。
なお、硫黄島におきましては、三千メーターの滑走路がある飛行場がございますが、これが大型ジェット機の訓練飛行場として使えるかどうか、調査いたしまして、使える場合には共用してまいりたいと思います。当分民間航空路をつくる考えはございません。現地の観光や、住民の定着状況を見まして、民間航空路は将来考えたいと思っております。
さらに、海上保安の問題につきましては、巡視船を派遣しまして、南方哨戒をやるということを当分考えております。そして、父島に巡視船の補給基地をつくる予定でございます。
なお、漁業や民間航空路開設に伴いまして、父島に海上保安署を設置いたしまして、巡視船を将来配置する予定であります。
なお、父島の灯台四個は、引き続いて海上保安庁において引き受けてやります。それと同時に、港湾及び沿岸測量を実施する予定でございます。(拍手)
〔国務大臣西村直己君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/44
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045・西村直己
○国務大臣(西村直己君) まず、水産につきまして申し上げますと、水産は、小笠原におきましては、戦前も主要な産業であります。戦後も主要な産業に相当なってくると思います。そこで、島民が引き揚げまして、空白の期間が相当長いので、関連施設がほとんどございません。そこで、これに対しましては、総合計画の一環の中における水産の占める位置として、こういった公共的な施設等を中心に、相当推進をしてまいらなければならぬと思います。
なお、漁民そのものの、漁業の周辺における権益につきましては、先ほど申し上げたように、十分に旧島民に対する保護を加え、内地のほうから乱獲や密漁等に行かぬように、返還後も厳重に取り締まりをしてまいりたいという考えであります。
次は、農業であります。農業につきましても、長い間の空白がありまして、非常に土地が荒れておるのであります。そこで、土地に対する権利関係は、先ほどお話が出ましたように、法制的にはある程度の方向は十分つくわけでありますが、これの具体的な調整を実際にやっていかなければならぬと思います。さらに大事なのは、予想外に病虫害が多いであろうという点であります。この点につきまして、十分われわれは、今後実情を把握し、対策を立ててまいりたいということが一つであります。
第二点は、従来の小笠原諸島におきましては、カボチャとかトマトとかそういうもの、あるいはバナナ、パイナップル等のものをやっておりました。しかし、今日の日本全体における小笠原の農業というものの主作物を、どういう形で貯蔵、輸送あるいはその他いわゆる日本の内外あるいは島の内外の状況とあわせて考えていくか、十分こういうものを総合的に考え、同時に小笠原の他のいろいろな産業の中における農業というものを位置づけまして、その中においての、もちろん前向きの計画的な成案を得て、私どもは、やがて復興法も出しますが、その際までに十分いい案を持ちたいという考えでございます。(拍手)
〔国務大臣園田直君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/45
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046・園田直
○国務大臣(園田直君) 小笠原で最後まで守ろうとして散華された方の遺骨の収集は、先般、サイパン、グアム、南方八島のほうに政府派遣団を派遣して収集いたしました際、実施はいたしましたが、いまなお洞窟等に未処理のものがございまするから、すみやかに調査をし、派遣をして、収集をし、象徴的なものは故国にお迎えをし、他は、先ほど総務長官から答えましたとおり、最後まで平和を守り抜かれる意味においても、ここに表彰の顕彰碑を建てたいと考えております。
次に、この島は亜熱帯性の海洋島の特性を持っておる景観がございまするので、自然公園に指定をして、この自然の景色を温存し、あるいはまた国民の休養、保健のためにも使うのに適当ではないかと考え、先般、大体おおまかに調査をしましたが、有望であるということでございまするから、将来とも専門家で調査をして、そのように進めてまいりたいと考えます。(拍手)
〔国務大臣田中龍夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/46
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047・田中龍夫
○国務大臣(田中龍夫君) まず、総理府でただいま行なっておりまする三千九百世帯の意識調査につきましてお答えいたします。
この引き揚げの旧島民の方々に対しまして、まず、引き揚げ者の世帯構成、第二は帰島の意識、第三は帰島後の住宅についての希望意見、第四は帰島後の職業についての希望意見、第五は小笠原に権利を有していた土地の状況、第六は小笠原の産業振興の方向、産業振興の施策及び帰島後の生活等に関しての希望意見、これらの項目につきまして、ただいま意識調査をいたしております。
それから御指摘の旧島民の方々に対しましての権利関係を守るということでございまするが、この暫定法を提案いたしました骨子もそこにあるわけでございまして、御質問の土地、住宅につきましては、現島民の現に他人の土地を使用しておられる場合の不法占有とならないような賃借権の設定を法定して、居住の権利を保障することといたしておる次第でございます。
第三に、復興法の内容でございまするが、これは、まだ暫定法を御提案いたした程度でございまして、今後現地に帰られまする意識調査、あるいはまた今後各省の詳細な調査をまちまして、復興法を制定いたす、かような考えでおります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/47
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048・小平久雄
○副議長(小平久雄君) これにて質疑は終了いたしました。
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都市計画法案(第五十五回国会、内閣提出)
都市計画法施行法案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/48
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049・山村新治郎
○山村新治郎君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
この際、第五十五回国会内閣提出、都市計画法案、内閣提出、都市計画法施行法案、右両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/49
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050・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 山村新治郎君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/50
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051・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。
都市計画法案、都市計画法施行法案、右両案を一括して議題といたします。
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都市計画法案
都市計画法施行法案
〔本号(二)に掲載〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/51
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052・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 委員長の報告を求めます。建設委員長加藤常太郎君。
—————————————
〔報告書は本号(二)に掲載〕
〔加藤常太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/52
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053・加藤常太郎
○加藤常太郎君 ただいま議題となりました都市計画法案、及び都市計画法施行法案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。まず、都市計画法案の要旨について申し上げます。
本案は、都市計画の内容及びその決定の手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備をはかり、もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とするものであります。
そのおもな内容は次のとおりであります。
第一に、都市計画は、農林漁業との健全な調和をはかり、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保するため、適正な制限のもとに土地の合理的利用がはかられるべきことを基本的理念として定めるものとすることであります。
第二に、都市計画区域は、都市の実態及び将来の計画を勘案して、一体の都市として整備、開発及び保全する必要のある区域を都道府県知事が、建設大臣の認可を受けて指定するものとし、特に必要がある場合には、建設大臣が二以上の都府県にわたって都市計画区域を指定することができるものとすることであります。
第三に、都市計画の内容は、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域とに区分して定めるとともに、用途の地域地区及び土地区画整理事業その他市街地開発事業を定めるものとし、その決定の主体は、建設大臣、都道府県知事及び市町村がそれぞれの規定に従い決定するものとすることであります。
第四に、市街化区域または市街化調整区御内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければならないものとすることであります。
第五に、都市計画事業は、市町村が都道府県知事の認可を受けて施行することを原則とし、一定の場合には都道府県または国等が建設大臣の認可または承認を受けて施行することができるものとすること等であります。
次に、都市計画法施行法案の要旨について申し上げます。
本案は、都市計画法の施行に伴い、施行期日及びその施行に必要な関係法律の一部改正及び経過措置を定めるものであります。
以上が両案の要旨であります。
都市計画法案は去る十二月二十七日、都市計画法施行法案は二月二十八日に、それぞれ本委員会に付託されました。両案は一括議題として慎重審議を進めてまいったのでありますが、その詳細については会議録に譲ることといたします。
かくて、本十九日、両案に対する質疑を終了、次いで、渡辺栄一君外三名から、都市計画法案に対しては、都市計画における住宅建設計画の策定、土地提供者への生活再建措置、都市計画策定にあたっての住民参加、土地の先買い権の行使と土地基金の設置等々からなる修正案、及び都市計画法施行法案に対しては、都市計画法案の修正に伴う必要条文の整理を行なう旨の修正案が、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党の共同提案として提出され、修正案及び原案について各党からそれぞれ討論が行なわれた後、採決を行ないましたところ、両修正案については全会一致、両修正部分を除く原案については多数をもって可決、よって、都市計画法案及び都市計画法施行法案はともに修正議決すべきものと決した次第であります。
なお、修正議決いたしました都市計画法案に対しましては、四党共同提案にかかる附帯決議が付せられましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/53
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054・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 両案につき討論の通告があります。これを許します。阿部昭吾君。
〔阿部昭吾君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/54
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055・阿部昭吾
○阿部昭吾君 私は、ただいま議題となりました新都市計画法案並びに新都市計画法施行法案に対し、日本社会党を代表し、その重要な点についてわれわれの主張を展開し、反対の討論を行なわんとするものであります。(拍手)
今日のわが国における都市社会は、決定的な行き詰まりと混乱を引き起こし、人間生活の基礎的環境条件を全く喪失し、きわめて深刻な事態にあるのであります。大都市への急激な人口集中は、住宅難、交通戦争、公害災害の激発、緑地や遊園地などを持たない今日のこの潤いのない非人間的な都市の姿を現出したのであります。他方において、地方農村社会の人口流出は、いわゆる過疎現象を引き起こし、わが国農業と農村社会を根本的崩壊過程に追い込み、大きな打撃を与えつつあります。私は、今日のこの深刻なる都市問題こそは、一言にして、積年にわたる保守政治の失政によるものであり、保守政治の本質と限界を端的に物語っていると思うのであります。(拍手)今日の行き詰まったわが国都市社会の姿こそは、企業利益の追求をすべてのことに優先をさせてきた保守政治が体質的にもたらした当然の結果であるといわなければならぬのであります。この事実は、過般の審議において保利建設大臣も容認をいたしておるところであります。
都市改造の政策は、企業利益の追及や、単なる経済合理性の追求ではなしに、そこに住む生きた人間を中心に潤いのある人間味豊かなものでなければならぬのであります。都市改革の政策は、進歩的な社会政策と計画的な推進によってこそ着実に行なわれ得るのであります。総理が寛容と調和を言い、調和と風格ある社会をと、ことばだけ何万言述べられましょうとも、戦後歴代内閣の中で一番の右傾化内閣といわれる佐藤総理のもとでは、この新都市計画法が目ざしている健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保するなどということは、木によって魚を求めるのたぐいだといわなければならぬのであります。(拍手)
私は、以下、われわれの主張を展開せんとするものであります。
第一に、本法案の最大の欠陥であり、われわれの容認し得ない重要な点は、地価安定策について政府は何らの保障、何らの歯どめを示さず、地価の高騰を野放しにしているという点であります。今日の都市計画の課題は、都市の秩序なきスプロールを防止し、果てしなき地価の高騰に対し、いかにしてこれを抑制し安定させるかということにあると思うのであります。
われわれはこのような立場から、国及び都道府県また市町村の出資による土地基金を設置し、市街化区域における土地の売買貸借等の権利の移転をすべてこの基金によってのみ一元的に行ない、基金がこの土地の管理と運営等を行なうことによって、土地に対する投機や思惑を抑制し、土地基準価格を定めるための審議会を設置することなどによって、地価安定を確実に実施することを提案してまいったのであります。また、税制による開発利益の社会還元の措置を提案してまいったのであります。われわれのこの現実的、しかも正しい提案は、各方面の共鳴と賛同を得てまいったのであります。政府・自民党も、このような情勢の中で、われわれの提案からははるかな後退ではありましたが、土地基金の設置、基金による土地の先買い権、基金に対する資金の裏づけ、さらに市街化区域内の土地の有効利用促進と投機的取引を抑制するために税制上の措置を講ずるという修正が行なわれたのであります。これらはかすかな一歩前進であります。しかしながら、われわれは、本院における昭和三十九年地価安定対策強化に関する決議、また昭和四十一年、四十二年、本院における土地収用法案の審議に際し、地価安定対策についての佐藤総理の答弁があるのでありますが、これが今日までただの一度も尊重され、実行されたためしがなかったのであります。佐藤内閣のその場しのぎのから手形政策の歴史的な経過がありまするから、なかなかもって信用できないのであります。(拍手)
次に、本法案は、住民に対し、私権の制限を明らかにしているという点で、まさに画期的であります。また住民に対し、負担と義務を強要しながら、住民に計画参加と権利の保証を認めないということも、まことに特徴的であります。これは二十世紀後半の、近代文明国家のやり方ではなくて、十六世紀当時の封建国家における帝王のやり方であるといっても過言でないのであります。(拍手)戦後一番の右寄りの佐藤内閣らしい、なるほどのやり方だと思えてならないのであります。(拍手)
われわれは、都市計画の遂行による都市改革の目的は、ただ一つ住民の幸福にあると信ずるのであります。都市計画策定の過程において、住民の積極的な参加を保障し、計画確定後における、住民の協力による計画の実効性が確保されなければならぬのであります。われわれは、そのために都市計画の策定権者は市町村長でなければならぬと主張するのであります。市町村に都市計画審議会を設け、都市計画策定以前に公聴会を開き、住民の意見を十分に聞き、計画を一定期間縦覧に供し、不服申し立ての道を開き、一定期間縦覧後において、初めて計画は確定するという住民の参加と協力、住民を中心とした都市計画策定手続制度確立を提案してまいったのであります。これに対し、計画権者が必要があると認めたときは、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずる、こういう修正が行なわれているのでありますが、また自治法上の審議会を市町村に設置するということの約束も行なわれているのでありますが、しかしながら、住民の権利は何ら法的に保証されるに至らないというあいまいな状態に置かれているのであります。
次に、われわれが特に重要視しなければならないのは、この新都市計画法実施に際し、その財政措置については、従来の都市計画事業からほとんど何らの前進がないという点であります。一方的に、住民と地方公共団体にしわ寄せをしておるという点であります。われわれは、この点、とうてい納得をすることができないのであります。
われわれは、市町村が都市計画に基づく公共施設の整備に要する経費に充てるために起こす地方債については、他の地方債に優先させること、この地方債の元利償還に要する経費については、その市町村の基準財政需要額に算入する、地方道路譲与税の増額と市町村に対する譲与、また都市計画先行投資の財源措置、都市計画事業に対する国庫補助は、事業費の三分の二とすること等をわれわれは主張し、今日まで審議に当たってまいったのでありますが、遺憾ながら、この財源の問題につきましては、政府・自民党と全く平行線をたどり、今日も依然として激しい対立の状態にあるのであります。
第四に、農業を圧迫し、農民生活に与える大きな不安についてであります。そしてまた、わが国の地方総合開発計画の策定されておらない今日の現段階から考えまして、今後のわが国全体の進路と都市計画がいかなる位置づけをもって相関連するかということが何ら明らかにされておらないという点であります。
二十世紀の終末の段階は、人類が決定的な食糧危機に当面するといわれているのでありますが、今日この新都市計画法案が、わが国の長期的、総合的な計画の中でどれだけの農地を市街地としてつぶしていくかということが、また、わが国の民族の食糧自給体制や食糧確保の計画などとの関係が全く明らかにされておらないのであります。われわれは、緑と潤いのある都市社会、快適な住宅と居住環境の整備のために、土地の合理的な利用を長きにわたって提唱してまいったのであります。が、しかし、同時に、市街化の中に没し去る農地に対し、反面においては、わが国土の中に積極的な農地開発が行なわれて、ここにこそ調和ある計画的な開発、発展がなければならぬということを主張してまいったのであります。この新たなる農地開発事業は、今日の佐藤内閣において最も後退をしている事実であります。
またわれわれは、都市計画ということは、国民に対し、あすへのエネルギーを養える快適な住宅を供給することであり、環境を整備するということであり、この住宅計画を明らかにするということが当然の責任であると思うのであります。土地提供者に対する生活再建措置と責任を明らかにする問題、調整区域は、農業振興の地域として十分な農業投資を行なうこと、市街化区域においても、一定の優良農地については、農地法上、税制上、農地としての保護を受けるべきといった具体的な主張を行なってまいったのでありますが、これらが一部実を結ぶこととなって、幾つかの点で法案修正が行なわれるという段階に相なったのであります。
さきに指摘しましたとおり、土地基金の設置と土地の先買い権及びその資金対策、公聴会の開催、土地の有効利用促進と投機的投資を抑制するための税制上の措置、土地を提供する者に対する生活再建の措置、市街化区域内の優良農地の取り扱い等について、また住宅建設と環境整備について明らかにするという修正が行なわれることになったのであります。これらの修正は、確かに一歩のささやかな前進であります。
また、現行法は、大正八年、半世紀前に制定されて以来、かたかな法文というスタイルに示されているように、今日の急激な都市社会の変化に対応し得ない全くの前時代的な陳腐なものであることは、もちろんであります。その意味で、今日の新都市計画法案に対し、歴史的な期待と希望が大きく集中することは、けだし当然であります。しかるに、今日のこの法案は、都市計画の土地利用の野放しを抑制するだけにとどまって、さきに指摘いたしましたように、最も大切な地価安定対策の欠落をはじめ、幾つかの根本的な点で欠陥を持っているばかりでなく、今日の保守政治の体質がもたらす都市の暴発に対して、かくのごとき手ぬるい、また欠点の多い新都市計画法をもってしては、とうてい実効ある成果を期待することはできないのであります。
私は、最後に、真にそこに住む人間本位の、血の通った都市の形成と整備のためには、われわれ日本社会党の都市政策の実現以外にないということをここに明言し、本法案に対する反対の討論を終わらんとするものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/55
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056・小平久雄
○副議長(小平久雄君) これにて討論は終局いたしました。
両案を一括して採決いたします。
両案の委員長の報告はいずれも修正であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/56
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057・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり決しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02619680419/57
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058・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。
午後五時二十一分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
外 務 大 臣 三木 武夫君
文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
厚 生 大 臣 園田 直君
農 林 大 臣 西村 直己君
運 輸 大 臣 中曽根康弘君
労 働 大 臣 小川 平二君
建 設 大 臣 保利 茂君
自 治 大 臣 赤澤 正道君
国 務 大 臣 田中 龍夫君
国 務 大 臣 増田甲子七君
出席政府委員
内閣法制局長官 高辻 正巳君
人事院総裁 佐藤 達夫君
人事院事務総局
給与局長 尾崎 朝夷君
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