1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年五月二十一日(火曜日)
午後一時十六分開会
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委員氏名
沖繩及び北方問題等に関する特別委員
委員長 伊藤 五郎君
理 事 増原 恵吉君
理 事 山本茂一郎君
理 事 岡田 宗司君
理 事 佐多 忠隆君
理 事 黒柳 明君
井川 伊平君
植木 光教君
内田 芳郎君
大谷 贇雄君
北畠 教真君
小柳 牧衛君
近藤英一郎君
田中 茂穂君
平泉 渉君
安井 謙君
山本 利壽君
稲葉 誠一君
川村 清一君
野々山一三君
森 元治郎君
吉田忠三郎君
山田 徹一君
片山 武夫君
春日 正一君
地方行政委員
委員長 津島 文治君
理 事 船田 譲君
理 事 吉武 恵市君
理 事 鈴木 壽君
岸田 幸雄君
小柳 牧衛君
柴田 栄君
高橋文五郎君
林田 正治君
林田悠紀夫君
森田 タマ君
八木 一郎君
占部 秀男君
小林 武君
成瀬 幡治君
林 虎雄君
松澤 兼人君
松本 賢一君
辻 武寿君
原田 立君
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出席者は左のとおり。
沖繩及び北方問題等に関する特別委員会
委員長 伊藤 五郎君
理 事
増原 恵吉君
山本茂一郎君
佐多 忠隆君
黒柳 明君
委 員
植木 光教君
大谷 贇雄君
北畠 教真君
小柳 牧衛君
近藤英一郎君
平泉 渉君
山本 利壽君
川村 清一君
山田 徹一君
片山 武夫君
春日 正一君
地方行政委員会
委員長 津島 文治君
理 事
船田 譲君
吉武 恵市君
鈴木 壽君
委 員
高橋文五郎君
林田 正治君
林田悠紀夫君
林 虎雄君
松澤 兼人君
松本 賢一君
国務大臣
自 治 大 臣 赤澤 正道君
国 務 大 臣 田中 龍夫君
政府委員
内閣法制局長官 高辻 正巳君
内閣法制局第三
部長 荒井 勇君
総理府特別地域
連絡局参事官 加藤 泰守君
厚生省環境衛生
局長 松尾 正雄君
厚生省医務局長 若松 栄一君
事務局側
常任委員会専門
員 瓜生 復男君
常任委員会専門
員 鈴木 武君
説明員
文部省初等中等
教育局審議官 佐藤 薫君
農林省農地局管
理部長 中野 和仁君
自治省行政局行
政課長 林 忠雄君
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本日の会議に付した案件
○小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置
等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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〔沖繩及び北方問題等に関する特別委員長伊
藤五郎君委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/0
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001・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) ただいまから沖繩及び北方問題等に関する特別委員会、地方行政委員会連合審査会を開会いたします。
先例によりまして、私が連合審査会の委員長の職をつとめます。
それでは、小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案を議題といたします。質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/1
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002・船田譲
○船田譲君 私は、この暫定措置法を中心にいたしまして、なお近い将来に予定されております復興法のアウトラインなどにつきまして若干の質問をさしていただきたいと思います。
まず最初に、土地の所有権の問題でございます。が、主として総理府総務長官並びに関係の政府委員の方にお尋ねしたいと思います。
一番目は、旧島民の土地の所有権につきましては、この協定の五条三項、あるいはこの法の九条、第十三条等の趣旨から、昭和二十一年一月以降の施政権分離によってもそれが消滅しないで、基準日の状態が凍結されたまま持ち越されて、今回の復帰とともにその状態が復活すると解釈してよろしいかどうか。つまり、土地の所有権の点につきましては、復帰後何らの手続あるいは申し出等をしないでも自動的に復活するものであると考えてよろしいかどうか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/2
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003・田中龍夫
○国務大臣(田中龍夫君) 二十数年間、荒廃に帰しておりました小笠原が復帰いたしましたら、この現住の島民の生活の安定保護をはかりますと同時に、戦前に住まっておられました方々の権利を保護するということが、これがやはり非常に重大な問題でございます。さような意味におきまして、この五条なりなんなりの規定を設けた、かような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/3
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004・船田譲
○船田譲君 そうしますと、旧島民の基準日における所有権というものは、今回の復帰によって自動的に——申し出も何もしないでも——復活したと考えてよろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/4
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005・田中龍夫
○国務大臣(田中龍夫君) 当然に自動的に権利は復活いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/5
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006・船田譲
○船田譲君 同様に、この法の第十三条の関係ですが、耕作を目的とする地上権、永小作権または賃借権で、もし基準日から法施行後一年までの間に権利が消滅しておるものについて書いてございますけれども、消滅していないものであるならば、その権原は所有権と同じように復帰とともに自動的に返るものと考えてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/6
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007・田中龍夫
○国務大臣(田中龍夫君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/7
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008・船田譲
○船田譲君 次に法の十三条の第一項に基づく、いわゆる特別賃借権の申し出を所定の期間内に賃借権者が行なわなかった場合、その場合はその権利は消滅してしまって、それ以後は旧島民の土地所有者の処分は自由であると考えてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/8
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009・田中龍夫
○国務大臣(田中龍夫君) 消滅いたしましたものにつきましては復活いたさない、こういうふうな考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/9
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010・船田譲
○船田譲君 次に、現島民の法定賃借権の存続期間でございますが、それは借地法の規定にかかわらず法施行の日から十年と法の九条に規定がございます。で、特別賃借権のほうにつきましては存続期間について定めがございませんけれども、これはどういうわけでございましょうか。いわゆる永小作権と考え得るものであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/10
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011・田中龍夫
○国務大臣(田中龍夫君) これらの問題につきまして、立法いたしました担当官からさらに詳細なる説明をいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/11
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012・加藤泰守
○政府委員(加藤泰守君) お答えいたします。九条の「賃借権の設定」の場合十年の期間と定めておりまして、その借地法の第二条第一項の本文の規定を排除してございますが、その関係は、借地法では堅固な石づくりの建物等につきましては六十年、その他は三十年という期間が定められております。その規定を排除する意味で十年といたしたわけでございまして、そういうことでございます。が、十三条のほうは、これははっきり書いてございますように、特に期間の定めのない契約というふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/12
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013・船田譲
○船田譲君 そうしますと、法定賃借権のいわゆる九条のほうですけれども、十年を過ぎた後にもし土地の所有者から返還を迫られた場合にはこれに対抗できるわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/13
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014・加藤泰守
○政府委員(加藤泰守君) 九条の二項におきましては借地法の第二条第一項本文だけを排除しております。したがいまして、いまの契約の解除の問題につきましては、これは借地法の普通の規定が働く、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/14
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015・船田譲
○船田譲君 次に、法定賃借権者の占用のために、帰島した旧島民の土地所有者が、法の十一条によって、国有地について代替地の貸し付けであるとかまたは交換等を要求した際に、その貸し付け料あるいは交換の条件などにつきましては、法定賃借権及びその賃借料との間にバランスをとって特例措置のようなものを講ぜられるのかどうか承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/15
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016・加藤泰守
○政府委員(加藤泰守君) 第十一条におきまして国有地の貸し付けをあるいは交換をいたします場合におきましては、国有地の適正な料金といいますか、そういうものあるいは国有地の適正な価格によって交換する、あるいは貸し付けるということになるのは当然でございます。九条のほうの法定賃借権にかかわる賃料は、もちろんその当該土地の賃料の関係でございますので、そちらの適正な賃料ということを予測しております。この両者に特に関連を持たせるつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/16
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017・船田譲
○船田譲君 次に、土地の所有権については、復帰によって、先ほど言われたように、自動的に復活すると、こう考えられるわけでありますけれども、基準日当時における漁業権者の権利は、これは消滅したと考えられるわけでしょうか。また鉱業権者の権利はあらためて出願の手続をしないと復活しないようになっているように思いますけれども、そういう根拠はどこにあるのかお教え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/17
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018・加藤泰守
○政府委員(加藤泰守君) 漁業権につきましては、これはいわゆる私法的な関係でございませんので、一応解釈といたしましては、二十一年の一月二十九日に行政権分離されまして日本の法令が及ばなくなりました。それがさらに平和条約の三条によりましてアメリカに施政権が渡ったという関係から、さかのぼりまして、一月二十九日以降は漁業権は消滅しているというふうに考えております。
鉱業権につきましては、鉱業権そのものの考え方といたしましてはいまと同じような考え方になるわけでございますが、ただ、鉱業権の、実際のあそこにありました鉱業権関係は期間が二年くらいであったと思いますので、その限りで消滅しているわけでございます。ただ、そういう権利を持っておる方々が今後再びその権利を取得したい、こういう場合におきましては、特に特殊の事情がございますので、優先順位を与える、こういうふうに措置したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/18
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019・船田譲
○船田譲君 次に、行政関係のことについて主として自治大臣にお聞きしたいと思います。
法の第十八条では全小笠原諸島について一村制をとられるようになっておりますけれども、行政上無理はないかということでございます。また、戦前のように、小笠原支庁直轄地域というものを設ける必要はないのかどうか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/19
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020・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 地方自治と申しましても人間がいないわけでございまするので、いまとやかく言っても始まらぬわけでして、村という形を一応整えて、だんだん帰島する方々ができましてからやっぱり普通の地方公共団体の形をとることになるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/20
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021・船田譲
○船田譲君 そうしますと、復帰を待ちまして将来は幾つかの村ができる可能性もあるという意味でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/21
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022・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/22
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023・船田譲
○船田譲君 それから、村長職務執行者の任命につきまして都知事が自治大臣の同意を得ることになっております。これはどういう理由によるものか、お聞きしたいと思います。たとえば八郎潟の大潟村については知事だけの任命になっておるように思いますけれども、この間のことをお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/23
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024・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 行政執行にあたって小笠原の場合は特に国が関与しなければならぬ面が非常に大きいと思うわけでございます。そういうことからそういう方法をとっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/24
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025・船田譲
○船田譲君 いまの現地でカウンシルというのか、いわゆる五人委員会からだんだんに村政審議会に移行して、さらに将来は村議会の設置にまで発展するという一つの過程があると思うのでありますが、その過程の構想を、どういうふうになっていくかということをお聞きしたいのであります。つまり、旧島民の帰島者の数がどの程度の段階になったら村議会や村長選挙が行なわれるか。これに関しましては法の二十条に「自治大臣の指定する日」と書いてございます。それはいつごろに目標を置いておられるかお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/25
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026・林忠雄
○説明員(林忠雄君) 現在は現地に約二百人の良民の方がおられるわけでございますが、復帰いたしまして、旧島民の方々がそこの現地の復興と細まって次々と帰島していかれる。帰島してまいりましてある程度の島民ができ、ある程度の社会ができまして、それで独立の村として体制が整えられる段階になった時期を見計らってこの指定をするという構想でございますが、いま御質問のように、大体いつだということは、実はこれは推測することが非常に困難でございます。復興事業の進み方いかん、それから旧島民の方々が帰られる時期その他をにらみ合わせまして、大体何人帰ったらということも非常に困難だと思いますけれども、帰られた方と現地にできます社会とそれを見合わせて、一日も早く自治法上の完全な村になる、その日を待つわけでございます。ただいまの段階で二年先、四年先ということはちょっと申し上げかねるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/26
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027・船田譲
○船田譲君 次に、国のつくります小笠原総合事務所、これは国家行政組織法上どういう性格の機関であるかということをお聞きしたいと思います。また、この総合事務所が行なうべき国の行政事務にはどんなものがあるかということです。で、いまこの法によりますと、自治大臣がこの事務所については管理権と職員の任命権を持っておられますが、同時に各省の長はその所掌事務に関しまして同じく総合事務所長あるいは総合事務所職員に対する指揮監督権を持っておるわけでございますが、この間の調整をどのようにはかっていかれるかということについてお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/27
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028・林忠雄
○説明員(林忠雄君) 国家行政組織法の原則によります場合は、各省庁はそれぞれその所管の事務について出先機関を設けることができるようになっております。地方支分部局を設けることができるようになっておりますが、その場合は、各省庁それぞれの職権の幅の中の出先機関ということになります。ところが、小笠原が復帰いたします。と、戸籍の事務にいたしましても、植物防疫にいたしましても、それぞれの各省の仕事は現地で処理しなければいけない仕事が相当各省にわたってたくさんございます。そこで、国家行政組織法の原則によりますれば、その必要な仕事の数だけの出先機関をどうしても置かなければいけないということになる。ところが、きわめて限られた区域に、しかも復興を総合的にやってまいります必要上、そういうたくさんの出先機関を、しかも非常に小さい出先機関を現地に設けることは行政経済上も不経済でもございますし また、復興を一貫的にやっていこうという場合にも支障があると考えまして、いわば国家行政組織法の特例といたしまして、この二十六条の一項に書いてございます。ように、「国の行政機関の権限に属する事務を処理するため、現地の総合行政機関として」という、この機関の性格をはっきりあらわした条文をここに書いてございます。つまり、国家行政組織法の原則によって各省それぞれの仕事のための出先機関ではなくて、それらを全部処理できる出先機関をそこに暫定的に設けるという意味でございます。そこで御質問の「自治大臣の管理」ということが書いてございますが、そういう各省の出先を兼ねたような性格のものを設けますとしましても、それは国家行政組織法では、国家の所属でないと職員の任命権とか、あるいは予算執行の世話とか、そういうことができませんので、将来小笠原の復興は自治大臣において取りまとめて進めていこうという考え方もありますので、一応自治大臣の管理とする。したがって、まあ、この管理というのは、そこの取りまとめと申しますか、お世話係という感じでございます。そして、したがって、任命も自治大臣が独自でやるわけではございませんので、ここに書いてございますように、それぞれの「関係行政機関の長と協議して」というのは、農林関係の仕事であれば農林大臣と協議してそのほうの専門の人をそこに任命する、そういうような構成を考えておりますし、それから内部機構につきましても、自治大臣独自できめるわけではなくて、関係行政機関の長と相談してきめる、こういう処置をとっていくつもりでございます。したがって、仕事としては各省の仕事を全部そこでやれますものですから、各省庁の関係行政機関の長は、それぞれに直接に指揮監督ができるということにこの二十八条に規定いたしました。取りまとめて申せば、国家行政組織法にはないような姿の一つの総合的な出先機関という構想をもって条文をつくったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/28
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029・船田譲
○船田譲君 東京都知事が去る五月十七日の記者会見で、小笠原支庁長と村長を兼務をさせて、その者をあわせて国の総合事務所の次長とすることについて自治省の基本的了解を得たというようなお話があったようでございますが、事実かどうか。もしそうだといたしましたときに、その次長は、身分上国家公務員の地方事務官になるのか、あるいは都職員として残っておるのかということをひとつお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/29
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030・林忠雄
○説明員(林忠雄君) 国の総合出先機関のほかに、東京都としても、現地での地域における行政というもののために出先機関を設けられることは当然予想されますし、現在都とも、御相談の中では、都があそこへ地方自治法上の支庁を設けるという御予定のようでございます。そうしますと、国の行政機関と都の行政機関が別々に独立をして別々の職員で仕事をするという場合よりも、それはある程度その間の連絡を密にして一体的に仕事をするほうが、より現地の復興その他のためによかろうということで、都とも御相談を進めておりまして、いまお話の出ました都知事のお話のような線で大体話は進んでおります。その場合は、身分的には都の職員という身分をちゃんと保有したまま、また国の職員の身分もあわせ持つ。地方公務員と国家公務員の身分をあわせ持つということは通常ではございませんわけでございますけれども、これを、この法律に基づきます政令でそういうことができる根拠を設けまして、双方の身分をあわせ持つというふうな取り扱いにする予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/30
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031・船田譲
○船田譲君 現在島にいる島民と、今後帰島する旧島民との間に、あるいは感情的な問題であつれきが生じるおそれもないわけではございませんが、それを生じないような措置をどのように考えておられるかということです。それで、現在五人委員会が自治組織で、何と申しますか、秩序の維持、安寧の維持をしておられますけれども、いよいよ復帰になりましたときには、当然そこに警察官の派遣というようなことも考えられると思うんですが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/31
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032・林忠雄
○説明員(林忠雄君) これは都のほうで、警察署を設ける、あるいは警察官を派遣するということで、現在お考えになっているはずでございます。それで、通常の日本の内地と同じ体制のもとに治安維持もはかっていくことになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/32
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033・船田譲
○船田譲君 次に、これから出される予定の復興特別措置法ですか、復興法の制定のスケジュールについてちょっとお伺いしたいと思います。
大体、いつごろ成案を得て国会におかけになるか。また、もしつくるとすれば、奄美群島振興特別措置法ですか、あれのように時限立法にされるかどうかということをちょっと承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/33
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034・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) これはまだなかなかどういう形のものを出せるようになるかわかりませんが、しかし、次の国会での予算措置のこともあるものですから、内心はたいへん急いでおるわけでございます。めどとしては、一応予算要求のたてまえから言って、大体概略のものは年内にという考え方ですけれども、なかなか間に合いかねるのじゃないかということを憂慮しております。
それから、この振興措置法をつくります場合には、やはり時限立法になると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/34
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035・船田譲
○船田譲君 振興法では、やはり奄美方式によって知事が計画案をつくられて、それを、内閣総理大臣がたとえば小笠原復興審議会みたいなものをつくって、そこの議を経て決定して、都が主体となって復興事業を行なっていく。これに対して国がかなりな高率の負担あるいは助成をしていく。そういう形になると理解してよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/35
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036・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 私、この間奄美へ行ってまいりましたけれども、奄美が復帰しましたときと小笠原の場合と、まるで条件は違うと思います。奄美はそれでも相当な人口があったわけです。けれども、今度はまるでいないところから出発することになりますから、そのために、さらに国の責任がそれだけ重大になることが考えられます。もちろん、都の一つの村というか公共団体でございますから、都としても十分これに対していろいろ御計画いただかなければなりませんけれども、国の持つ比重のほうがさらに大きいという判断のもとにものが進められることになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/36
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037・船田譲
○船田譲君 次に、医療問題につきまして、厚生省医務局長さんその他の方にお聞きしたいと思います。
米軍がいま万般の医療をやっておられますけれども、米軍の撤退後、日本人の医師を派遣する計画についてお聞きしたいのと、それからその医師が行きましたときに適当な医療施設があるかどうか。また、医薬器具や医療品等の補給の関係はどうなっておるか。
それからもう一つは、重症患者で、派遣した医師がどうしても手に負えないというときに緊急輸送をしなければならないと思いますけれども、聞くところによりますと、自衛隊はあそこにヘリコプターを二機装備しておくということであります。が、それがあてにできるかどうかというふうなことにつきまして聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/37
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038・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 従前の小笠原の医療は、米軍軍医並びにその助手、看護婦によってまかなわれていたのでございますが、その施設は、米軍が使っておりましたのが約七十坪の施設が残っておりまして、それに入院用のベッドも四ベッドございます。したがって、施設としてはこれをそのまま使ってやっていけるであろうと見ております。ただし、レントゲン機械等もございますが、すでにこれは非常に型の古いものでございますので、それらのレントゲン機械等をはじめとする若干の医療機械設備等については、これは更新せざるを得ないであろうと考えております。
なお、医師、看護婦につきましては、これは内地から送ってやらなければならない。すでに、これも御承知のように、新聞紙上等で希望者の申し出もあるようでございまして、その処遇あるいは身分等について現在東京都において折衝中と承っております。
なお、重症患者等につきましては、従来グアム島の病院に飛行機で輸送しておりました。今後のやり方といたしましては、やはり父島にはヘリコプターがつきます。硫黄島には飛行機の発着ができるそうでございますので、それらの両方の輸送機関を利用する。あるいは、場合によって船を、たとえば海上保安庁の巡視船というようなものを利用するということが考えられております。従来の実績を見ましても、米軍のグアム島に輸送されましたものは、心臓の病気の精密検査、ガンの精密検査、あるいは盲腸、痔、それからヘルニア等の患者が輸送されております。おそらく同じようなものが内地で診療を受けることになろうと思います。それらの輸送の方法あるいは輸送機の問題につきましては、現在なお都と関係官庁が話を詰める段階になっておりまして、決定的な結論はまだ出ていない状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/38
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039・船田譲
○船田譲君 それから、政府の調査団の報告など読んでみますと、現島民にわりあいと結核患者がいるということでございますけれども、予防接種などの対策はどう立てていらっしゃるか。もう一つは、本土との間、あるいは今度完全な外国になってしまう米領諸島との間の人の往来のときの検疫の問題はどうなるか、簡単でいいですからお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/39
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040・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 結核が多いということでございますが、精密な結核の症状その他については私もまだ承知しておりません。しかし、この十年間死亡者が一人もございませんという状況から、おそらくそれほど重い結核患者はないものと存じております。で、各種の予防接種につきましては、これは従来から米軍の手で行なわれております。しかし、非常に閉鎖社会でございますために、最近伝染病等の出たためしがないようでございます。しかし、内地との交流等も行なわれますので、今後は日本内地と同じような程度で予防接種等も行なわなければならないと考えております。また、この米領との交通関係になりますと、当然外国との交通になりますので検疫が必要になってまいりますが、これは通常の例——まだこれ具体的にきまっておりませんが、通常の例から申しますと、診療所の医師を嘱託として検疫を行なわせるということになろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/40
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041・船田譲
○船田譲君 内地との間の場合はどうでしょうか、いまの検疫の問題ですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/41
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042・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) これが内地に復帰いたしますと、もうこれは通常の検疫ではございませんので、その間はいわゆる検疫法に言う検疫はなくなります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/42
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043・船田譲
○船田譲君 私が心配しますのは、むしろ、あちらからこちらへ病気が入ってくるというよりも、いまおっしゃられたように閉鎖社会でわりあいと抗体等もないと思います。それで、こちらから入っていく人たちに対して何らかの方法で検診をする必要があるんじゃないかということでございますが、それはお考えになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/43
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044・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 復帰いたしますと、同じ内地でございますので、これを検疫あるいは強制的な健康診断ということはむずかしくなろうと思います。結局は、その早期診断でもって伝染病の早期発見並びに伝播防止というものをはかるということが必要になってくると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/44
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045・船田譲
○船田譲君 次に、農地関係のことについて若干お聞きしたいと思います。
この暫定措置法では、農地法の施行に関しましては、法七条で、「通常の期間を考慮して」政令で日を定めることになっておりますが、この「通常の期間」というのは、どのくらいの期間を考えていらっしゃるか。また、その期間を考えるにあたっては、何か前例があるかどうかということをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/45
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046・中野和仁
○説明員(中野和仁君) 旧島民が復帰いたします。時期等もございますが、復帰いたしましてから、大体内地でありますれば、現在やっております開墾をいたしまして、竣工検査をいたしますのは大体五年から七年かかります。その程度を考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/46
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047・船田譲
○船田譲君 次に、現島民の法定賃借権を認める土地で旧島民の農地にかかっているものがあるかないかということが一つ。それから、現島民で法十三条の特別賃借権を認められるような者はいないかどうかということが第二。それから第三点は、米軍にいま雇用されている者が離職をして収入の道がない。この法では三十条で優先的に政府関係、あるいは公共関係の機関の補助職員として雇うことになっていますけれども、それでもなお就労できないでやむなく農耕に従事しなければならないという者が生じた場合に、そういった現島民の人が旧島民の農地に関して耕作権を得ることができるかどうかという問題です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/47
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048・中野和仁
○説明員(中野和仁君) 法定賃借権と特別賃借権がダブっているかどうかはちょっといまのところわかりかねます。
それから、調査によれば、現住民は家庭菜園的なものを多少やっている程度でございますから、特にこの法律に基づきまして申し出による賃借権を得るということはないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/48
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049・船田譲
○船田譲君 三番目の、これはいままではないと思うのですが、もしこれからどうしてもほかに就労できなくて現島民が農耕に従事しなければならないような羽目になった場合に、旧島民の所有地に何らかの方法で耕作権を取得することができろかどうかという点について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/49
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050・中野和仁
○説明員(中野和仁君) いま御指摘の問題につきましては、今後農業開発をやっていきます場合にどういうふうにしてやっていくか、その辺とも関連をしてくるかと思います。たとえば、現行にありますような開拓。パイロット制度を使いまして開墾していく場合、入植させるということを考えた場合にはもちろん可能性はございますけれども、まだいまのところどういうふうに開発していくかということが判然といたしませんので、明確なお答えはできないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/50
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051・船田譲
○船田譲君 法の十三条の特別賃借権で「相当な賃貸借の条件」というのが書いてございますが、その「相当な賃貸借の条件」というのは、本土の統制小作料の最低程度の額というか、それよりもっと安いかということをお聞きしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/51
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052・中野和仁
○説明員(中野和仁君) ここで申し上げております「相当な賃貸借の条件」と申しますのは、その現地の土地あるいは使用、収益の状況等一切の状況から客観的に判断するということになろうかと思います。その場合に直ちには小笠原に統制小作料を及ぼしませんので、農地法の適用をしばらくずらしますので、その間は両者の話し合いでいろいろきめていきます。もめました場合には、知事のあっせんなり、そうでなければ裁判所で客観的な観点から相当な借地条件をきめる、こういうことになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/52
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053・船田譲
○船田譲君 次に、文教関係について若干お聞きしたいと思います。
現在、現地では九年制のラドフォード提督初等学校というのがあって、そこで米国人教師が学校教育を行なっているようでありますけれども、今後日本の公立小中学校となることによって米国人教師が雇用できなくなります。したがって、日本から日本の免許状を有する日本人の教師を派遣しなければならないと思いますが、その計画はどのようになっているか。それから、現在までのところは学習指導要領も違うわけでございます。また、現島民の子供は日本語の力も弱いと思われますので、その間の経過措置をどのようにされるかお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/53
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054・佐藤薫
○説明員(佐藤薫君) いろいろございますので、まとめてお答えいたしたいと思います。
まず、現在の実態でございますが、児童生徒の数が全体で六十名でございます。教職員は校長も含めまして三人でございまして、これはすべてアメリカ人でございます。このほかに、パートタイムで、幼稚園の先生と日本学級の先生が二人おります。それから教育内容は、おっしゃるとおり本土とはだいぶ違っておりまして、すなわち、本土の場合は小中を通じまして、国語、社会というふうな各教科、あるいは道徳、特別活動、学校行事、四つございますが、現在のラドフォードにおきましては、いわゆる教科だけの教育でございます。しかも、それについても若干日本本土と違うところがございます。教科書はアメリカのものでございます。教授法は、教授のことばは英語でございます。したがって、日本語能力は当然低いわけでございます。そういうふうな実態でございますので、子弟の教育の問題につきましては、あくまでも日本国民を育成するというふうな観点から、できるだけ本土と同じような小中高の教育を行ないたいというふうに基本的には考えております。しかし、お説のとおり、日本語が非常にに弱うございますから、それの指導も考えましていろんな特例措置を講ずる必要があると考えております。まず、教育課程でございますが、これが具体論につきましては、どの程度、どういう範囲に措置を講ずるかは都と相談しましてきめたいと考えております。
教科書につきましては、本土で使っております。ものを無償で供与したい、これは当然でございます。
さらに日本語の教育につきましては、別途、並行してやるべきであると考えております。
次に、教員の問題でございますが、具体的な教員の選考とか派遣計画は東京都ですることになっております。文部省としまして目下検討し得る問題は、教員定数をなるべく手厚くしたいというのが第一点でございます。
第二に、その待遇につきましては、将来沖繩に在住することになるであろう他の国家公務員との関連も考慮しますけれども、なるべくそれらもあわせながら十分に手厚い待遇をしたいというふうなことを考えております。できれば僻地手当の増額とか、あるいは教員住宅の建築なども考えられるかと思います。とりあえずはそういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/54
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055・船田譲
○船田譲君 現在グアムの高校や大学に留学している現地人の子弟がかなり——多少あると思いますが、そういう者とか、あるいは現地のいまの九年制の初等学校を卒業した者が、復帰後に日本本土の高等学校なり大学なりに転編入したいというような者が出ましたときにその取り扱いをどうするかということ、その場合資格の問題をどう考えるかということ、あわせてこれを特別な給費制度なり何らかの方法で奨学制度は考えられないだろうかということについてお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/55
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056・佐藤薫
○説明員(佐藤薫君) 生徒数は、現在グアム島におります二十名のうち、二年生、三年生は向こうで引き取ってくれますから、残った問題は、グアム島の十名ございます。それからもう一つは、この六月に卒業します。ラドフォードを出ます十一名の人、合わせて二十一名の生徒が対象になるわけでございますが、それについては、東京都では現地に高等学校をつくるという計画でありますので、具体的な進行を見まして文部省としても全面的に御協力をしたいというふうに考えております。
それから、学費の問題ございまするが、いまのところは、一応当然に適用されまする日本育英会法の奨学金を適用するほかはない。また、大学の学生につきましては、できるだけ安い、いい寮を、大学の寮を世話するというふうな、自主的な面でいろいろあっせんをするよりないといまのところは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/56
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057・船田譲
○船田譲君 この点につきましては、日本に施政権が返ってからかえって悪くなっちゃったというようなことにならないように十分配慮が望ましいと思います。
それから最後に、学校の生徒だけでなく、一般島民も日本語はほとんどできない、あるいは忘れてしまったと思うのでありますが、その日本語教育を中心にいたしましたいわゆる公民教育と申しますか、社会教育の計画はどのようなものがおありかお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/57
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058・佐藤薫
○説明員(佐藤薫君) まず、成人の日本語能力でございますが、おっしゃるとおり、非常に低うございまして——と言いましても、戦前日本の学校で教えを受けた中高年齢層は大体読み書きができるが、しかし、二十歳代あるいはは三十歳代はほとんど読み書きができない、こういう実態でございます。これに対しましては、文部省としてはとりあえず都と話し合いながら三つの面お考えております。一つは、日本語教育講座の開設でございます。たとえば週二回くらい、一回二時間くらい、二十六週間、合計百四時間くらいの日本語の講座を開く。場所は学校あるいは集会所等を利用したい。講師は、先ほど申し上げたような相当手厚い待遇をする予定でございますので、その先生方に講師をお願いしたいと思っております。カリキュラムにつきましては、現在いろいろな資料がありますので、それらを参考にしながら都とよく話し合いを進めてりっぱなものをつくりたいと考えております。
第二は、録音テープによる自己学習を契励したい。これは日立製作所がつくっている「レッツ・ラーン・ジャパニーズ」というのがありまして、すでにテキストは現地に送ってあります。プレーヤーも現在向こうにあるということでありますから、そういうふうな録音テープを大量に送りまして自己学習の機会を大いに奨励したいというように考えております。さらに一般教養としましては、映画その他をつくりまして、本土の実態その他を紹介するようないい映画をたくさんつくりたい。とりあえず三つのことを計画しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/58
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059・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/59
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060・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 速記を始めて。
〔委員長退席、地方行政委員長津島文治君善
席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/60
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061・船田譲
○船田譲君 いま私は日本語のことを申し上げたのですが、現島民の持っている唯一の特技というのは、英語がしゃべれたり書けたりすることだと思います。そのほうの温存もはかっていかないと、彼らが就職その他で非常に不利になると思いますが、その点はどうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/61
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062・佐藤薫
○説明員(佐藤薫君) お説のとおりでございまして、それについては労働省その他と相談しまして、適切に考えてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/62
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063・船田譲
○船田譲君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/63
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064・鈴木壽
○鈴木壽君 この暫定措置等に関する法律案は、各方面の分野にわたりましていろいろな規定をやっておりますので、問題は広範囲にわたっておると思うのであります。ただしかし、私はきょうのこの場では地方行政という立場から、特にこの法案の第四章関係、第五章関係、これを中心にお尋ねをし、政府の所信についてはっきり伺っておきたいと、このように思います。
小笠原がいわゆる返還されて復帰することになって、新たにその区域でもって小笠原村をつくるということになっておるわけでありますが、具体的に条文のそれについてお尋ねをする前に、まず最初に、二、三政府の考えを聞きたいと思います。
昭和二十一年のいわゆる行政分離、これによって、それから、さらには昭和二十七年の四月の平和条約第三条、これによっていわゆる施政権というものが、日本のそれが及ばなくなったと、こういうことなんでありますが、これについてひとつここではっきりさしていただきたいことは、これが日本の行政権が及ばなくなったことであり、施政権が及ばなくなったということであって、領土としては、日本がそれをいわゆる割譲とか、そこを失ったということではないと、こういうふうに考えるのでありますが、その点いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/64
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065・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。ただいま御指摘の点は、確かに行政分離があり、それから平和条約の第三条による施政権の放棄というものがありますが、ちょうど沖繩におけると同じように、われわれは領土権を、そのまま普通の意味における、つまり平和条約には領土権を喪失したものがそれぞれ規定してございますが、そういうものとは同一には考えられない。そういう意味で、日本は領土権を失ってはいない、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/65
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066・鈴木壽
○鈴木壽君 そういたしますと、沖繩でも、私どもが言っておりますいわゆる潜在主権というものがあるんだと、と同様に、小笠原諸島に対してもそれがあるんだ、こういう主張は依然としてできると思いますが、その点はいかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/66
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067・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 全く仰せのとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/67
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068・鈴木壽
○鈴木壽君 領土が失われておるのではなくて、行政権が及ばないだけであると、施政権がそこには及んでいないんだと、こういう前提に立ちます。と、小笠原諸島というものは依然として日本の領土であり、しかも東京都の区域であったと、こういうふうに考えるべきだと思うんですが、その点はいかがでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/68
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069・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) おっしゃいますように、確かに、ただいま領土権の問題としてお話がございました。これは主権の及ぶ範囲の問題でございますが、その主権の作用のうち施政権が米国に属しておるということでございまして、それを除いた部分、いわゆる残存主権、これが日本国に残っておる、こういう意味のことであります。それが、それと同じように、小笠原なりその他の区域が東京都の区域に属するかどうかというのは、いまの問題とは別に、その残された国の主権として一体それをどう考えていくかということでございますが、すなわち領土権が属している、残っているということと、区域が当然に東京都の区域に属するということは同じ断面での話ではなくして、確かに御指摘のような問題はございますが、領土権は残っているから、それは東京都の区域に属するという問題には私はならないと思います。しかし、さらにお尋ねかもしれませんが、地方自治法の五条一項という規定には「普通地方公共団体の区域は、従来の区域による」という規定が日本の主権の作用としての法の形でできております。ので、そのできております形から申せば、行政区画としてはやはり東京都に属する。その法律の適用上はそう見てよろしい。したがって、結論は同じになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/69
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070・鈴木壽
○鈴木壽君 結論は同じになるというふうに言われますけれども、話を聞いております過程のことからしますと、お話の過程からしますと、いや、そうとも言えないんだというようなこともおっしゃっておるのでありますが、日本の領土であり、その日本の領土の中に一つの東京という区域がある。しかし、その一部分の小笠原に行政権——日本の行政等がそこには手が伸びておらない。ですから、その普通にわれわれが言う区域の中で行政権が及ぶ、施政が及ぶ範囲とは言われないかもしれぬけれども、いわゆる区域という、そういう形の中には当然入っておるのだというふうに考えるべきではないだろうかと思うのですが、重ねて、どうも少しなにですけれども、簡単にひとつお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/70
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071・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 途中で、その領土権の範囲の問題と東京都の区域の——東京都と申しますか一いずれにしても、区域の帰属の問題とは同じ論法にいかないけれども、というところで、やや少し説明をつけ加えたのが不適当だったかもしれませんが、ただいまの問題だけに限定をいたしますれば、自治法の規定による「従前の区域による」という「従前の区域」、これは行政組織法上の行政区画の問題としては依然としてそうであるということを申し上げて差しつかえないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/71
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072・鈴木壽
○鈴木壽君 復帰した場合に、したがって、扱いとしてはいわゆる未所属の区域ではないのだと、こういう扱いになると思いますが、それでよろしゅうございますね。いまのお答えからすれば、返ってきた場合にそれが未所属の区域なんだと、それを今度東京都なら東京都——どこかの区域に編入するというそういう手続は、いまの長官のことばからしますと不要になる、こういうふうに思うのですが、その点どうかと、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/72
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073・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) ただいまのお話は、ちょうど奄美群島のときも同じ考えを持ったわけでございますが、自治法の規定の五条一項の規定の適用から考えまして、やはり返ってくれば東京都の区域に属するということになる。その意味で、未所属とは考えておらないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/73
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074・鈴木壽
○鈴木壽君 これは、いまこういうことを持ち出すのは変でありますが、この小笠原の返還ということがきまった際にこの所属をどうするかということで、政府部内でだいぶいわゆる直轄論というふうなものが出ましたね。すると、いまの考え方、お述べになったような考え方からして、直轄論というものはどうしてもやはり根拠が薄弱だと言わなければならぬと思うのですが、その点はどうですか。いまでも、直轄論はあり得ると、こういうふうにお考えですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/74
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075・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) その問題は私も事実上多少関与いたしましたのでよく存じております。が、この当然であるかどうかということは、必ずしもすぐに東京都に属するのが当然であるということには私はならぬと思います。というのは、要するに、領土の問題と違いまして、一定の区域の地域をどこに帰属せしめるかというのは、まさに主権の作用としてどう考えてもいいわけでございますので、それをどう考えるかということは、当然一つの問題になり得る問題だと私は思っております。しかし、いままでの法制のあり方、東京都の区域のあり方、そういうことから言えば、東京都の区域に属させるのが当然であろう、自治法のたてまえもそうではないかというような言い方から言えば、それがいままでのたてまえであり、いままでの実際であったということからそこに落ちつくようになるという意味では、当然と言うのはいささか過ぎるかと思いますけれども、そういう道が一つの道として考えられるのも無理からぬことであるというふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/75
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076・鈴木壽
○鈴木壽君 これはあなたのいまの結論としては、まあ東京都の都政の区域、あるいはいまの自治法のたてまえ、そういうものからして当然ということばを使いたがらないわけでありますが、当然東京都のほうに入るのだというようになっていると、こういうように申されましたが、その前に一つ、施政権の問題であるから、区域をどこにつけようが、それはそのときのそれによって自由だということですね。これは国の一つのいわば施政権の——そういうことでは、あるいはそういうこともあると思うが、しかし、それも現行法なり現在の制度なり、そういうものが一体どうであるかということによってやはりきまってこなければならない問題だと思います。もっとはっきり具体的に言うと、かつて東京都の中に所属しておった地区だ、地域だと、それから自治法の中にも、新しい自治法ができた場合に、昔のそういう区域をそのままその区域としていくんだという規定があるわけですから、かってにどうしてもいいんだと、どのような所属のさせ方をしてもそれは自由だというような考えは、ちょっと行き過ぎではないだろうかと思うのですが、しかし、これはあなたの趣旨ではないようでありますから、ちょっと私はその点についてひっかかるところもあるわけですが、いずれにしても、結局はあれですね、念を押しておきますが、当然従来の所属しておった区域に、今回も復帰に伴って当然帰ってくるんだと、こういうたてまえをとるべきが筋であろうというように理解しておく、これでよろしゅうございますですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/76
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077・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) そのとおりでけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/77
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078・鈴木壽
○鈴木壽君 そうしますと、やはり直轄論というのは影を失ったと思うのでありますが、論としてはあるいは残っているかもしれぬが、実体としては消滅したと思うのでありますが、そこで十八条についてお聞きしたいのであります。これは自治大臣にもひとつお答えをいただきたいのですが、「第五条第一項及び第七条第一項の規定にかかわらず」の「第五条第一項の規定」というのは、先ほど法制局長官が引用された「普通地方公共団体の区域は従来の区域による」ということ、二項もありますけれども、一項はこれだと思うのですね。それから「第七条第一項」というのは、「市町村の廃置分合又は市町村の境界変更は、関係市町村の申請に基き、都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、直ちにその旨を自治大臣に届け出なければならない」ということ、こういうのでありますが、こういう規定にもかかわらず、「東京都に属する小笠原諸島の区域をもって小笠原村を置く」、こうあります。そうすると、第五条第一項、第七条第一項、こういう規定を引用しない、それには関係なくと、こういうことになると思うのでありますが、そこら辺ひとつどういうのであるのか。さっきからお聞きしております。少なくとも東京都に属するという問題に関しては、第五条第一項が適用されてしかるべきではないか、こういうように思うのに、そういう規定があるにもかかわらずこうだと、こういう表現のしかたをしておりますから、そこら辺の問題です。ね。第七条一項についても同様であります。それからいま一つ第十八条について、「東京都に属する」という、この「属する」ということは、さっきからお聞きしておりますように、潜在的に所属しておったということを意味するのか、そしてそれが今回の復帰によっていわば顕在化したという、そういう意味での「属する」のであるかどうか。
それからいま一つは、小笠原村というのはこれは新しい村でありますから、新しく村をつくるのでありますから、かつての大村とかという五カ村がございましたが、こういうものは一体どこへ行ったのであるか、どうなったのであるか、この点をひとつ自治大臣、法制局双方から見解を聞かしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/78
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079・荒井勇
○政府委員(荒井勇君) お答え申し上げます。
この第十八条の冒頭のところで、「地方自治法第五条第一項及び第七条第一項の規定にかかわらず」と書いてございますが、このうちの「第五条第一項の規定にかかわらず」という部分は、東京都に属する、東京都という普通地方公共団体の区域が従来の区域によるという部分に、その適用について触れている問題ではございませんので、これは第四章の章名をごらんになりましてもおわかりいただけますように、村の問題を取り上げているわけでございます。で、その点は、戦前にございましたような、あるいは地方自治法施行の時点で、普通地方公共団体の区域として従来の五カ村がかりに存したとしたならば、従来の五村の区域によるのではないかという解釈が生まれてくる余地がありますけれども、そういうことはないのです。
それから「地方自治法第七条第一項の規定にかかわらず」という部分は、今回新しい小笠原村を置くわけでありますけれども、この点も、従来の五村の廃置分合というものについてこの七条一項以下だ定めておりますような方式によってこの五村を統合するというような方式によるのではなくて、すなわち、それは「関係市町村の申請に基き、都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、直ちにその旨を自治大臣に届け出る」というような方式ではなくて、法律自体がその設置をきめるという方式をとっているわけでございます。そのように、従来の五村の区域によるとか、あるいは五村が統合される手続について自治法の七条一項のような規定が働くのではないので、それはこの暫定措置等に関する法律の第十八条の規定自体によって、その法律の規定で設置されるということを言っておるわけでございます。
で、御質問の第二点の、「東京都に属する」という文言でございますけれども、東京都という包括地方公共団体の区域がこの地方自治法第五条第一項の規定により「従来の区域による」のは、別段の立法がされない限りは当然のことでございますから、この法律の施行の日、すなわち、この復帰に関しますところの南方諸島及びその他の諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の効力の発生の日がこの法律の施行の日で、この協定の効力発生によりまして、平和条約第三条におきますような施政権というものが日本側に返還されることによって、これは当然に東京都に属する、この法律の施行の日に東京都に属するということになると同時に、この法律の施行の日に小笠原村を置くとういことで、そこに書かれているわけでございます。
それから、従来の五村はしからばどうなるのかといいますと、この第十八条の規定によりますれば、この法律の施行の日に小笠原諸島の区域をもって小笠原村を置くわけでございまして、これと抵触するような関係の地方公共団体の設置は、当然予定していないわけでございます。で、それは法律的に考えれば、昭和二十一年一月二十九日の行政分離の時点をもって消滅したものと解するのが正当であろうと、こう考えております。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/79
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080・鈴木壽
○鈴木壽君 いわゆる旧大村等の従来の村、これが行政分離のあったときから、昭和二十一年の一月二十九日からそれをもって消滅しちゃうんがと、こういうことでございますか。それはいわゆる行政分離ということ、これはどういうふうに考えるべきかということにも関係してくるのでありますが、それによって村そのものが消滅をしたと、こういうように言えるものかどうか、ちょっと私は問題があると思うんですが、いかがでございますか、もう一度。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/80
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081・荒井勇
○政府委員(荒井勇君) 小笠原諸島の行政は、先ほど申し上げました昭和二十一年一月二十九日の行政分離によりまして日本政府の管轄から離されたわけでございまして、その点は、昭和二十七年の平和条約の発効によって、追認といいますか、確認されたということになります。その日本政府の管轄のもとから分離されたということによって日本の法令の適用が不能な状態になったということでございまして、日本の地方公共団体の存立の基礎を定めておりますところの地方自治に関する法制というものを行政分離の後においては適用され得ないという状態になったということで、結局、存立の基礎を定めている法令が適用されないということ、それから、その実体から見ましても、従来の住民というものが全くいない地方公共団体というものは、その地縁団体であると同時、そういう人の結合体でございますので、そういう実体もなく、そうしてその法令の適用関係から言っても、自治体の基礎になる法令の適用ができないという状態になったということでございますので、先ほど申し上げましたような解釈になるということだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/81
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082・鈴木壽
○鈴木壽君 住民がいないとかいうことは、これはまた別の面から考えなきゃならぬと思うのです。もし住民がおらぬということをもとにして村が消滅したとか、あるいはまだ生きているとかということでありますと、やはり大部分のところ、住民は昭和十九年の時点でもういなくなっているのですね。ですから、いわゆる行政分離というものとは、住民の関係はちょっと一応切り離して考えていいと思うのです。行政分離されたことによって日本の法律の適用もそこで遮断されておると。これらの村々はいわゆる旧町村制に基づく村で、新しく二十二年にできました地方自治法によるところの村、それは前のものをもちろんそのまま引き継ぎますけれども、そういうものの適用はまだ受けておらないのですね。そういう形によるいわゆる旧町村制のもとにおいてのその村、それが新しい法律の適用にならない前に行政分離によって日本の行政の及ぶ、それが遮断されておりますから、したがって、消えたんだと、もうなくなっているんだと、こういう解釈なのかどうかですね。そこら辺をもう一度くどいようであります。けれども……。これは大事な問題だと思うんです。一方にはこういう考え方があると思うのです。行政分離といえども、その後施行されておる、たとえば日本の地方自治法は行政分離のためにそこには適用されておらないけれども、日本の領土である、東京都の区域である。しかも、旧制とはいいながら、そこにあった市町村には、潜在的には、眠った形でもうそこに及んでおるのじゃないか。そうすれば、今度施政権の返還によってはっきりここに生き返ってくるのではないか。そうなりますと、村も、旧制度のままの村ではあるけれども、生き返ったと見ることができるんではないかという見解も私は立てることができるんじゃないかと思うんです。ただ、そこに人がおるとかおらぬとかいう問題があります。そういういわゆる現実の問題となりますといろいろまた問題がありますけれども、ともかく、施政権の適用なり日本の国内法の適用、そういうものから言って、どうしてもこれは消滅してしまったんだというふうに簡単に言い切れない問題があるんではないかと、こういうふうに私思うもんですから、特にその点についてはあらためてひとつはっきりお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/82
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083・荒井勇
○政府委員(荒井勇君) 現実に人がいなくなったこととの関係は、確かに別問題ではございます。が、その行政分離のときまでは五村の地方自治体としての事務は、東京都、本土に帰ったところの村の事務所が依然としてその職務を執行しておったということでございますけれども、行政分離によってアメリカ側が施政権を行使するんだということになって、日本の法令の適用がないという状態になりますと、その自治体の基礎法規がその潜在的適用ということが考えられるではないかということでございますけれども、現実的には適用がない。で、その実体面と法制面と両方から見て、それは消滅したものというふうに考えて、この十八条それから第十九条というようなものが規定をされているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/83
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084・鈴木壽
○鈴木壽君 行政分離までは、小笠原の旧五カ村の村役場といいますか、東京都の中でというお話ですが、特に役場は、行政分離のときまででなくて、平和条約の発効するときまでやっておったんですよ、平和条約の発効まで。たしかそうだと思います。これは記憶違いか、少し調べていただきたいと、私はそう思っています。それと、あなたの説明、少しその点で根拠になるところが一つおかしくなりますね。そこで、私なお聞きたいのは、いわゆるメモランダムによる行政分離といわれる昭和二十一年の時点なのか、あるいは平和条約発効によって、昭和二十七年の時点なのか、そういうことも実はあとで、もしなんだったらお聞きしてみたいと思っておったんですがね。そういう問題もありますが、そのことから、村役場があったとかなかったとかいうことからだけでは、この問題の、何といいますか、論証の一つの問題としては取り上げられないだろうと思うんですがね。もしあなたが言うように、昭和二十一年のいわゆる行政分離の時点で消滅してしまったとするならば、十八条の規定は今度要らないものが出てくるんですね。第七条第一項なんて、そんなことは何も要らない。要らないから「かかわらず」と書いたと言えばそれまでですけれども、こんなところに持ってくる必要はない。第五条第一項とか、あるいは第七条第一項の「規定にかかわらず」なんていうのは、何か、そういうことでもいろいろな解釈のしかたなり適用のしかたがあるんだけれども、それはしかしやめてこういうふうにするんだぞという書き方なんだ。ですから、これはこまいようなことで少しあれでありますけれども、要らなくなりますよね。直ちにここに、「この区域に小笠原村を置く」と、こういうふうにやれば、それでないところへ廃置分合の規定だとかなんとかということをつけてくる必要はないわけですがね。まあ、それは私余談めいたことになりましたけれども、どう考えるのがいいのか。やはりおっしゃるように、二十一年の行政分離のそのときで旧五カ村というものは消滅してしまったんだと、こういうふうに見るべきかどうか、自治大臣、それから法制局長官、ひとつ御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/84
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085・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 鈴木さんの御意見は基本的な御質問ですけれども、例の天領の話が出ましたときに、私はこの自治法第五条には「従前の区域による」ということになっておるわけなんです。ところが、自治法が施行になりましたのは御案内のように二十二年四月でございますが、「従前」ということは一体どこまでが「従前」なのか。つまり、この時点までの区域を踏襲するのかどうか、そのときにはもうすでに日本の施政権下にはなかったわけでございますので、これは「従前」と言ってもまあまん中があくがといったような考え方がちょっと頭にはあった。しかし、結果的には、やはりまあ「従前」というのは、従来、昔から東京都の区域であったわけでございますから、結果的には、ただいま法制局長官申しましたけれども、東京都に当然帰属するという形になったのでこの件は解消したと思います。
それから「第七条一項の規定にかかわらず」のことをおっしゃっておりますが、これも、従前は村が五つあった。しかし、施政権がなくなってしまい、単なる日本国の領土ですから、村も何もないんだが、従前五つあった村に人がかりにいなくなっても、当時の村民が形成しておったいろんな村の財産だとか、いろんな権利関係などもやっぱり従前はあったわけですから、それが完全に消滅してしまったので、白紙に地図を書くようにはなかなかいかないという考え方もありますし、私どもはこの過程においてはもうそういったことにはこだわらないで、一応さらりと、この七条の市町村の廃置分合に関するこういった手続的なことは一切御破算にして、新しく小笠原村を置くんだというやり方をとることにいたしました。結局、今度村を、五つのものを一つにしたとか、まあ町村合併みたいなことですけれども、法定の手続といったって踏みようがないですし、それからまた、住民がたくさんお集まりになって、そしてまた五カ村に分村をするのが適当であるという時期が来れば、またこれは住民の意思によってできるわけでございますので、私どもはそういうことで、この時点においては、やはり小笠原一村ということで新しくそういうのをつくるということが妥当だと考えてこの措置をとったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/85
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086・鈴木壽
○鈴木壽君 大臣ね、お答えになる気持ちは私はわかりますよ。何といいますか、かなりの政治的な、政策的な点で考えておられるようですが、それは私もわからないわけじゃない。ただ、問題は五カ村というものが一体生きているかどうかということを、私それを必ずここへ持ってきて五つの村をつくれとか、そんなことを言うんじゃないですよ。だけれども、それをどう考えるべきかということは、やっぱり新しい村なら村をつくる、あるいは第十九条の、従来のこれらの村に属しておった権利義務は今度小笠原村に帰属するというような問題は消滅してしまって、一体どこにどうなっておるのかわからぬというようなものを、どういうかっこうででは引き継ぐのかということも、深く考えれば出てきますね。で、私は、そういう点から、いま言ったように一つの新しい村をつくるのがいいとか、五つでなければいけないという、そういう意味じゃなく、一体、昔の村というものはどうなっているのか、それを考えておくことが私はやはり大事な問題だし、現にいままで現地におる小笠原の人々、それから東京都やその他の地域におる、いわゆる内地に引き揚げてこられた小笠原の人々の戸籍事務は、昔の村のそれをとっているのですよ。こういうことから考えると、私は、やはり住民がいないという問題もあるし、いろいろなことがありますけれども、やっぱり一つの村としてのそれというものは残っておるものだと、したがって、それに伴うところの権利義務というものも残っているのだ、だからこそ、新しい村をつくる場合には、そういうものの継承がなければならぬと、私はそう思う。ですから、妙なところに入ったようにお聞きかもしれませんが、私は大事な問題だと思うのですよ。私は希望的なところもあります。観測みたいなところもありますが、やはり生きておる、全然死んでしまった、なくなってしまったんじゃなくて、はっきりはしないけれども、それでも潜在的、生きたものとしてやはりあるのだというふうに思いたいのですね。思いたいのだが、さて、そういうふうになりますと、どうだか、どうも自信がないようなところもありますが、そういうことから、あなた方にひとつそういう、できれば生きておるのだ、はっきりひとり立ちしているのではないけれども、生きているのだということ、こういうことを認める何かがないものだろうかという気持ちが若干この質問の中にはあるのです。それはともかくとして、どういうふうに見るべきか、法制局長官、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/86
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087・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) ただいまのお話の点は、理論上の問題としては非常に興味のある問題には違いないと思います。したがって、また理論上には、いろいろアカデミックな議論としてはいろいろ議論が成り立ち得ると思います。ただ、いまお話しのようなお説もあると思いますし、私のほうの荒井が話をしましたような見方というものもやはりあるのではないかと私は思います。実はこの行政分離というものをどう考えるかということに結局帰着するわけでございまして、私、ここに持ってまいりましたが、先生のお尋ねがどういうお尋ねがあるかわかりませんでしたが、ともかく、行政分離をめぐってのお話もあるやに承っておりましたので、それを見ますと、小笠原を含む地域については政治上または行政上の権力を行使すること——これは日本国政府が行使することを——停止するということに相なっております。したがって、そういうことから申しますと、これは結局は、占領中における連合国最高司令部の一つの覚書でございまして、当時は日本国はまだ占領のもとにあった。で、連合国最高司令官は、日本の権力はその制限のもとに置かれるということになったその一つのあらわれでございます。ので、この段階ではまだ旧五カ村というものはあったのではないかということが見られないではないと、理論的にはそういう一面で考える余地もあるのだろうと思います。それはしかし、はたしてそうなのかどうか、これは相当な時間をかけて議論だけに終わり得るかもしれませんが、これを理論的に究明するにはいろんな見方というものがあってこれはおかしくはないのだろうと、私は率直にそう思います。しかし、そのあとに平和条約がございまして、平和条約が発効しましてからあとは、御承知のとおりに、アメリカが立法、司法、行政の三権を行使することになっております。ので、向こうの権力によって統治されるというのがりっぱにそこでは行なわれるようになったわけでございます。したがって、そこで五カ村の行政分離がどうなったかということになりますと、これはやはり第三部長の申しますような見方というものがそこではさらに強くなるのではないかというふうに考えられる次第であります。いずれにしましても、いままでの御提起になったような問題については、理論的にはいろんなあれこれ議論をしていると始まらないような問題でございまして、これを一義的にきめるには、まあ、しいてきめろと言えばきめますけれども、これは学者といいますか、論者に一任してもいいんじゃないか。要するにこの法律は、旧五カ村と新小笠原村との関係を法律によって一義的にきめようというわけでございまして、この結果がふさわしいものであれば、法律的にはこれができました後は一目瞭然でございますので、それでひとつ御満足を願うほかはないんではないか。理論の問題として大いに論ずる価値は私はあると思いますけれども、それは研究室か何かで大いに議論いたすことにいたしまして、この点はまことに恐縮ながらこの法律によってさい然ときめるということで御了解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/87
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088・鈴木壽
○鈴木壽君 私はさっきもちょっと触れましたが、たとえば第十八条の「地方自治法第五条第一項及び第七条第一項の規定にかかわらず」、こういう規定が入っておらなければ私は聞く気持ちはありませんでした。こういうものがあるから、これはやっぱり観念の巷ではないけれども、やっぱり生きているかっこうだとして、その限りにおいてそうしたとすると、新たに村をつくるというような手続としては第七条第一項にあるようなこういう手続が必要ですからね。ところが、今回はそういう手続を経ないでこういうふうにやるんだと、こういうふうな書き方なもんですから、やっぱり生きてるんじゃないかなと、私もさっき言ったように生きておるように考えております。理屈はまあ十分つけられないんですけれども、そういうことがあったんだなと、ところが、聞いてみると、いや、死んでしまったんだと、こう言うのですから、おかしいじゃないかと、こういうことなんであります。私は、死んでしまったんだとすれば、さっき例としてあげました、たとえば東京駅かなんかで、まあ本籍は村があってもなくてもいいかもしれませんが、いずれ小笠原の昔の村のどこそこということで戸籍事務を本籍の取り扱いをしておるんですから、そこら辺を見てもやっぱり生きておると見るべきじゃないだろうかという気持ちがまだあるわけですね。これは迂遠なような何か理屈だけのことでというふうに聞こえるかもしれませんが、しかし私は、やっぱりこうした返還なりそれに伴ってのいわゆる村の設置なりというものを考える場合に、やっぱり基本的な問題じゃないかと思うんです。将来北方領土、たとえば歯舞、色丹が返ってくる。かつてあそこにはちゃんと色丹村というのがありましたね。歯舞村、北海道の区域に。今度返ってきた場合は、これは行政分離だかになるかどうか知りませんが、死んでいるのか生きているのか、ここらあたりやっぱりいろいろ変わってくると思うんですよね、いろいろな法律をつくる場合に。ただ、そこに村を置いていくというふうなことだけではいかないという場合も出てくるんじゃないか。そういう問題もありますから、こういう機会に小笠原のこういう復帰ということについての法律的ないろいろな規定がこういうふうになされる機会に、やはりいま言ったように、基本的な問題として、一応、われわれはもちろん、政府もはっきりした考え方に立ってそれを明示して、その上でいろいろな御作業をすべきじゃないだろうか、こういうふうに私は思うんです。現実がこうだから何もかもこれでやれというふうなことでは私は許されないんじゃないか、こういう感じがするわけであります。
質問をもう少し続けます。そこで新しく小笠原村というものを置くということになっております。が、先ほどの御答弁の中には、将来必要によって村をふやすこともあり得るのだ、こういうことで、とりあえずということのようであります。それはそれとして、第二十一条の村の機関の特例でございますが、先ほど質問が出ましてお答えがありましたのですが、村長の職務を行なういわゆる職務執行者の任命にあたっては自治大臣の同意を得なければならないということがありますね。なぜ自治大臣の同意を得ることを必要とするのかという質問に対して、先ほど自治大臣は、国の関与する部分が多いので、こういう御答弁がありました。しかし、国の関与する面があるいは多くなるかもしれませんけれども、こういう、新しくできる村とはいいながら、こういう村に一体どういう国の関与が必要なのか、ある予定なのか、これどうですか、自治大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/88
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089・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 関与ということを申したのは適切でなかったかもしれません。関与と言うと、何か東京都内の地方公共団体について国が干渉するようにとれるようにお考えになるかもしれませんが、そうでなくて、国の責任においてやることがかなり大幅であるということで、「関係ある」という意味で申したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/89
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090・鈴木壽
○鈴木壽君 これは大臣、関与ということばを実は重視したのですが、それを取り消されたような形で、それにしても国はいろいろやらなければいけないことがたくさんある、こういう意味のお話であったのでありますが、一体、この村に対して国が直接いろいろなことをやらなければならないといっても、それは自治大臣との関係でどういうことになるのです。それぞれのもし国の仕事をやるとすれば、それぞれの行政機関の責任者なり長が入っていくことであって、それを自治大臣が一々それこそ関与してやるということはおかしいのじゃないか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/90
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091・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 別に深い意味はなくて、単に、各省庁から出てまいりますものがばらばらではまずいから、その統一の窓口というだけの意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/91
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092・鈴木壽
○鈴木壽君 この点は、いわゆる国の関与なり自治大臣の権限といいますか、あるいは管理というので、あとでも国の総合機関の場合にも出てきますから、それはあとであらためてお尋ねしたいと思いますが、こういう例はありませんですね。たとえば、新しく村をつくって職務執行者を任命する場合に、従来新たな村をつくった場合には、ちょうど具体的な例がありますが、大規模な干拓に伴なって埋め立て地にできる土地に新たに村をつくった場合、これまでの法律では、都道府県知事が都道府県議会の同意を得て職務執行者を任命する、こういう形をとっている。そうして、これが考えられる普通の形ではないだろうかと思いますが、なぜここで自治大臣でなければならないのか。それはやはり国のいろいろな仕事がずいぶんある、それを自治大臣は、ばらばらにいってはいかぬから、調整役をするためにいろんな関与——関与ということばは適当ではないかもしらぬが——いろんなことをするための調整役ですか、そういうものの任務を持たなきゃならぬから自治大臣がということだと思うんですが、少しおかしいんじゃないでしょうかね。この点どうですか、ほかの例と比べて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/92
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093・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 少しもおかしくないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/93
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094・鈴木壽
○鈴木壽君 少しもおかしくないといってね、これはいま新たな村をつくるための一つのいわば特別的な立法ですわな。新たな村をつくる場合に、完全な自治体ではないんだし、選挙も行なうことができない。こういう場合に、普通であれば、長や議員はいわゆる公選すべきでありますけれども、住民の投票によってきめるべきであるけれども、それができないというので、こういういわば、何といいますか、便法でもないんですけれども、特別なこういう事例がつくられておるわけですね。その場合に、繰り返して言うように、新しく村ができる場合には、他のほうの新しい村については何ら自治大臣の同意というようなことを必要としない。都道府県知事がそこの議会の同意を得て任命できるものを、自治大臣がそれに同意をしなきゃならぬということのその条件をつける理由というものは私はないと思うんです。重ねてひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/94
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095・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 鈴木さん御案内のとおりに、この前私、自治省を担当いたしましたときに、例の八郎潟の新村の法律を通していただいたわけでございますが、あれとこれとずいぶん違いますことは、何せ八郎潟は干拓と申しましても県内のことでございますから、日本の本土の中ですから、距離的なことは全然問題ない。今度小笠原の場合は絶海の孤島で、東京都から一千キロぐらい離れておるんじゃないですか。こういう地域を、東京都に帰属したから東京都知事にやりなさいというわけにもまいりませんし、何と申しましても、初期には国のほうで大きな力をかさなければなかなか開発も進まないわけでございまするから、各省それぞれ出向くのをやはり自治省がこの調整の窓口をするのが一番適当であろう。もちろん、都庁も交えてやるわけでございますが、これ、いずれかの時点には当然これは東京都でみずからやってもらわなきやならぬことには違いありません。しかし、過渡的な措置といたしましては、こういう特殊な地理的また現状でございます。るので、こういう措置をとることが一番適当であると考えてきめたわけでございます。
〔委員長代理津島文治君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/95
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096・鈴木壽
○鈴木壽君 一番適当であると考えたという、これは主観的な問題。客観的に必要とする理由はありますか。あなたは、そういうものがいいんだというふうに考えたと、こうおっしゃるのですけれども、これは大事な問題ですよ。一つの考え方には、たとえば村長の職務執行者の任命というのは、もともと国の権限だというような考え方も一つはありますわな。そういうものを持っておってもいいという。しかし、それは国の権限であるけれども、都道府県知事やいわゆる地方公共団体の機関に委任して行なわせるという形をとってきたんです。それがさっき例にあげた八郎潟の大潟村における一あの法律は具体的に八郎潟の大潟村という法律じゃなかったんですが——一般的な新村をつくる場合の法律でありますけれども、そういう思想があれに出ておるんですよ。それでいいんです。それをなぜ今度、いやおれが出ていかなければいけないんだと、こういうことになるのかということですね。そのほうが一番いいんだと言っても、それはあなたそうおっしゃるかもしらぬけれども、いまのこういうものの考え方、たてまえ、そういうことから言っては、これはきわめて異例なやり方なんですね。私は、あの国の事務所ができて、それに対してあなたが管理するとかなんとかいうこととこれはちょっと違うのですよ。同じに考えては、これは間違いですね。法制的に見てどうですか、法制局長官。あるいはこういう例がないと思うが、どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/96
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097・荒井勇
○政府委員(荒井勇君) この点につきまして審査をした立場から申しますと、理由としましては二点考えられておりました。
その第一点は、先ほど自治大臣が申されましたように、国がこの小笠原の開発行政について責任を非常に大きく持って行なわなければならない、その意味で非常に重大な関心を持つということが第一点でございます。
それから第二の理由としましては、この暫定措置に関する法律案の第二十九条にも書いておりますように、国としましては小笠原総合事務所を設けるわけでございますけれども、そこで処理する国の事務と、それから、「小笠原諸島において関係地方公共団体又はその機関が処理する事務との間の連絡及び調整に関し必要な事項は、政令で定める」、こう書いております。現在のところ人口はわずか二百人程度のところに、国の出先機関がたくさんできる。それから東京都は東京都で、支庁がいずれは復帰と同時に設けられる。それから、小笠原村を設置することに伴いまして、小笠原村長の職を行なう者またはその補助機関というようなものが設けられるというようなことになります。と、その基礎となる人口に対して行政組織のほうが三段階にもできて非常に繁雑になる。それに対して、この小笠原諸島の地域についての開発行政について、国も非常に大きな関心と責任を持つという意味で、この小笠原総合事務所長がたとえばこの職務執行者となるというようなことも法案の途中では考えられたように、国も非常に関心を持ってこの村政についても見守っていきたいという気持ちがある。しかし、それはやはり地方公共団体でございますし、第一次的には包括する地方団体の長であるところの都知事が任命するほうがやはりふさわしい。しかし国の事務と関係地方公共団体の事務の間にやはりその調整をとって、バランスのとれたところの組織なり運営というものをやっていきたいという観点から、この東京都知事の任命権について自治大臣もやはり関心を同意という形で表明するということに最終的に落ちついたということでございまして、そのお互いの、国の事務と地方公共団体の事務を円満に調整していこうということがこの暫定措置法においても大きなねらいになっている。その点からこういう規定に相なったというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/97
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098・鈴木壽
○鈴木壽君 どうもおっしゃることおかしいんですよね。国が重大な関心を持つとか、責任を持つとかいう、そういう長の職務を執行する者になぜ——仕事そのものについてはいいですよ、長の職務執行者に対してなぜ国の国務大臣が同意を与えるとか与えないとかいうことが必要なんです。国の事務と地方の事務の連絡といっても、長の任命に対してどうこうという規制を加えるというような同意権があるとすれば、おまえのところの持ってきたものはだめだぞと言える。言いたくないが、そういうことはあり得ないと思うが、革新の美濃部知事の持ってきたやつはおれは知らぬぞと、そういう事態もこれは起こりかねないことなんですね。これからしますと、私は何も美濃部知事がどうのこうの、革新がどうのこうのという立場で聞いているのではなくて、たてまえということから純粋にそういう質問をしたつもりですが、どうもおかしいですよね。あくまでもこれはやはり新しくできる村、小笠原村を含むいわゆる広域的な東京都という地方公共団体の長の権限でやられるべきことなんです。そういうことが当然だということでそれがずっと行なわれてきているのです。もうふしぎですね、これは。法のたてまえから言ってもおかしいと思う。自治関係の大臣だからといって、なぜそこに村の職務執行者のそれに同意を与えるとか与えないとかという権限を持ち出す必要があるのか。こういうことは私はほんとうに、何といいますか、いまの地方自治とかあるいは組織運営、そういうものからしておかしなことだ。汚点を残すものだと思う。やっぱり一番いいのですか。自治大臣、あなたはしばしばおっしゃるけれども、一番いいのですか。決してよくありませんよ、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/98
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099・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 同意を得て任命するということは、ケースは違いますが、午前中何時間もかかって松澤先生ともいろいろ質疑応答を繰り返したことでございます。まあしかし、やはり知事が革新だからということは考えないけれどもとおっしゃいましたが、とにかく国と知事とが違った考え方に立とうはずはありませんので、この小笠原の開発ということにつきましては、ともに足並みが当然そろうはずでございます。先ほどから申しますように、この開発につきましてはほとんど国が全責任を持ってやるという形になります。が、しかし、地方公共団体の一角には違いありませんが、ここには当然村長もできる。ですから、これはやはり緊密な連絡をとって一体となってやるという意味でこういう仕組みをつくりましたことは、私は決してふしぎとは考えておりませんし、むしろいいことだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/99
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100・鈴木壽
○鈴木壽君 立案に関係したあなたからすれば、これがいいことだとおっしゃりたいでしょうが、決していいことではないということははっきり申し上げておきます。あなた方の部下の行政課長もおるが、行政関係の方々にこれを専門的に検討さしてごらんなさい。これはやっぱりおかしいと必ず言いますよ。こういう例はありませんし、こういうことをすべきでないと必ずおっしゃると思います。あなたはもっと高い政治的な立場でものを言っておられるのでしょうが、これはほんとうですよ。いままでの考え方というものをみんなぶちこわしてしまう、これは。何べんも言うように、こういう場合の長の任命というのは国の権限であるという説もあるし——しかし、その場合であっても、それは都道府県知事、こういういわゆる機関委任事務としてよく言われる知事にそういうことを行なわせるべきだし、そういうたてまえになっているのですよ。知事のそれを拘束する大臣の同意ということが入る。何べんも繰り返して言いますが、私は美濃部さんがどうの革新がどうのということじゃなしに、たてまえ上私はこういうことはおかしい、まじめな気持ちで申し上げておる。これは新村の設置の場合も、他の法律にあるように、東京都知事が任命する。もちろん、その場合であっても、議会の同意を得るという、こういう一つの民主的な形をとっております。そういう形にしてやるべきだと思うのですが、ぜひこれはそういうふうに直したいのでありますが、これはあとの問題ですから。
機関の特例に関連して、二十一条の「執行機関の附属機関として村政審議会を置かなければならない」ということがありますが、これはさっき船田委員からもお尋ねがありまして、それについての答えもありましたが、もう一度、一体この村政審議会の構成、権限、任務、構成の問題とからんで選出のしかた——もしあるとすればね、あるいは任期、身分的にどういうものであるのか、こういうことを詳しくお聞きしたいと思います。これもどうもあまり例のないものであって、しかも、いまの自治法等に定められておるいわゆる執行機関の附属機関としてははたしてどんなものかというふうに私思うものですから、いま述べたようなことについてひとつ詳しく御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/100
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101・林忠雄
○説明員(林忠雄君) この村制審議会の制度は、あくまでもやはり暫定的なものという考え方のもとにつくっております。現在は二百人あまりの現地の住民の方がおられますが、いずれ旧島民の方々が帰島されて現地に村落、社会を築かれる。その場合は当然自治法上の完全な市町村となる予定でございまして、この日が早いことを願っておるわけでございますけれども、当面、社会的な実体が一つの独立した自治体としてないものにつきましても、いろいろな、行政上こういう小笠原村というものを設置してこれを運営していく場合、まだ村長の選挙、議会の議員の選挙を行なわない段階におきまして村長の職務執行者、この「職務執行者」が執行機関となって一応村の仕事をやってまいるわけでございますが、この場合も、最小限、民意の反映と申しますか、現在おられる方々ないしは非常に早く帰島された方々、こういう方々がその村の住民になるわけでございます。こういう住民の方々の意向を反映する一つの方法といたしまして、この村政審議会という制度をつくったわけでございます。制度としては、「執行機関の附属機関」、いわゆる通称諮問機関という姿にしております。それから権限といたしましては、通常の市町村で議会の議決を経る事項、これをおおむね、村政審議会の意見を聞いて処理をするというふうな構成にしております。
それからこの村政審議会の構成でございます。が、現在政令について立案中でございまして、まだ詳細には決定はしておりませんけれども、現在——現在というのは復帰前ですが今日の現地では五人委員会という方々がおられまして、住民の選挙で出ておられるその五人の方々が議決機関兼執行機関として自治事務をやっておられます。復帰当初は、おおむねその姿をそのまま引き継ぐのが妥当ではないかということを考えておりまして、そういう線で事務的な話を進めております。しかし、復帰して逐次旧島民の方々が帰島されますと、現在の島民に旧島民の方々がまじって社会を形成していかれるその段階においては、また私ども、新しく帰島された方々の住民の意思を代表する者もこれに加わらないといけないと思います。ので、復帰当初は従前の組織をそのまま引き継ぐことが妥当と考えておりますが、しかし、それもあまり長い期間ではなくて、旧島民の復帰の実情等とにらみ合わしてそこでそれを改善していきたい。現在大体考えておりますのは、自治法上の一番小さい市町村の村会議員、この定数が十二名でございまするので、これを限度とするくらいの小規模なものにしてはどうだろう。それから、任期も通常は四年でございますが、復帰の進行状況とにらみ合わしてこれもある程度短くして、新しく帰られた方がなるべく短い期間に自分の意見を代表する方々をこの審議会に入れられるようにということで、この任期も一年、二年とはっきりきめてはございませんが、大体通常の四年に比べてもっと短い任期を当初の間はとるべきであろう、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/101
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102・鈴木壽
○鈴木壽君 お答えになったのか、ちょっと私聞き漏らしたのか、議員のような待遇といいますか、処遇といいますか、それがあるのですか、どうですか。ただ身分的なことと、そこら辺どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/102
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103・林忠雄
○説明員(林忠雄君) 身分的には議員さんと同じ特別職の地方公務員でございます。それから待遇につきましては、これは法律では何もきめてございませんけれども、通常の諮問機関の場合のように、特別職として条例で報酬を支給するということに相なるであろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/103
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104・鈴木壽
○鈴木壽君 暫定的にはこういうものも必要であろうというふうに考えられまするが、それはあくまでも暫定的なものとしてできるだけ早くやっていかなければ、これはもちろん単に法的に、いまおる現地の人たちということだけでないのですから、帰島のその状況等々も当然からみ合ってくる問題でございますけれども、できるだけ早く、これは選挙の特例のところにも関係をしますけれども、正規の何か、あいまいなかっこうでのものでなしに、そして十分住民の意思がそこに反映されるような仕組みでやっていくべきだろうと思いますので、ひとつ注文のような形で申し上げたいと思います。ただ一つ、いまあるいわゆるカウンシルと言われておるそうでありますが、五人委員会とかいうものをそのまま審議会の委員としてやるんだと、こういうふうに聞いておりますが、いま直ちにはそれしかないと思いますが、さっきも言ったように、できるだけ早く、帰った人があるならば、帰った人の中からの代表も、しかるべき民主的な方法によって選出されるような形をとりながら、これに入れていくというようなことをしなければいけないのではなかろうかというふうに思います。
それから第二十二条ですが、これは選挙も行なわれておらないいまの時点で、あまり先のことをどうのこうの言うべきじゃないかもしれませんけれども、ここには「小笠原村の議会の議員及び長の任期については、地方自治法第九十三条第一項及び第百四十条第一項の規定にかかわらず、政令で特別の定めるをすることができる。」。で、現行のそれによりますと、長の任期あるいは議員の任期はそれぞれ四年ということになっておるのでありますが、これをどういうふうに特別の定めをしょうというふうなことを考えておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/104
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105・林忠雄
○説明員(林忠雄君) これは通常の四年を短縮したいと考えております。その趣旨は、自治大臣の指定する日から正規の選挙が行なわれることになりますので、自治法上の完全な市町村になるわけでございますが、たとえば旧島民の方々が一千人なら一千人帰ったところでそういう選挙をして、公選の首長、公選の議会を持った正規の自治体となったといたしまして、引き続いて帰島が進んで、それが一年、二年の間にさらに千人の方が帰られる。ところが、最初の選挙された方が四年の任期ですと、あとから帰った方々の意思は代表されないというふうなことがございます。そういうふうに比較的短い間に帰島が進むことを予想しまして、ある程度帰られた方々の意思を代表するような形にするのをできるだけ早くしよう、そういう意味から、正規の選挙が行なわれるようになりましても、最初の長あるいは議員さんの任期を多少短縮して、その後帰られた方々が再び選挙に加われるようにする、そういう趣旨でございますので、それは帰られる方々の帰島の進行状況とにらみ合わせなければいけないので、今日現在において何年間ときめるわけにはまいりませんが、一つの考えとして、最初の任期を二年、二年とするというような考え方もございます。帰島の状況を考え合わせまして任期を定める所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/105
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106・鈴木壽
○鈴木壽君 この四章のところですね、いろいろ各条項ごとにあるわけなんでありますが、特に最後の二十五条のところに、「第十八条から前条までに定めるもののほか、小笠原村の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。」、こういった非常に包括的な書き方をしておるわけなんでありますが、これも、この前の奄美の復帰に伴う法令の適用の暫定措置に関する法律なんかでは、かなり具体的に法令なんかを適用するとかしないとかいう、その措置の必要あるときの法令なんかを具体的にあげておりました。今回はそういうことでなくなっておりますし、さらに、大規模公有水面の埋立てに伴う新しい村の設置についての法律、あの中にも、たとえば村の組織運営等に関しても、各種行政委員会の問題やら、そういうことについて、かなりの具体的な規定をしておられましたのですが、今回はそうでなしに、先ほど申しましたように、ほとんど大部分のものを政令でやれるのだということになっておるのであります。が、その場合に、どうでしょう、いまあげたような奄美のような例、あるいは大規模な公有水面の埋立てによってできた新しい村のあの法律の例のような、ああいう書き方を政令でやっていくのだと、こういうことですか、何かまた、特にこういうことは政令できめなければならぬというように予定しておられるようなことがあるのか、そこら辺を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/106
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107・林忠雄
○説明員(林忠雄君) 奄美の場合とはだいぶ事情が違うと存じております。奄美の場合は、すでに現地に琉球政府のもとに大体日本の地方自治法とほとんど同じ規定を設けた市町村自治法というのがございますし、これに基づいた村の実体があったわけでございますが、それを日本の法令による村、日本の法令による諸機関とみなすことによってものが動くようになっておりましたから、これはだいぶ違う考え方といいますか、ほとんど比較にならないのではないかと思います。むしろ一番近い例は、いまの御指摘の公有水面の干拓によってできました新しい村、まあ具体的には秋田の大潟村、こういうものとの比較と申しますか、こういうものとの関連が一番強いと思うわけでございますが、それとこの小笠原とちょっと違う場合は、大潟村の場合は、いつどれだけの人間があそこに入植して、どういう予定でどれだけの人口の村になるという予定が、ある程度はっきりつかめるわけでございますが、ところが、この小笠原の場合は、今度帰島しまして復興状況の進捗、あるいは旧島民の方々の帰島というのが、小笠原村の場合、はっきりと時間的に予測がつかないという点がございまして、したがって、法律でずばりきめにくいという点もある。そういうことからしまして、相当大幅に政令に譲ったという事情がございます。しかし、その政令による中身といたしましては、特別に違ったことを考えてはおりませんのでございまして、まあ、ここで書きますのは、職務執行者と村議会以外の村の機関、その機関がそれぞれの法令によって所掌する事務があるわけでございますが、そういう機関が置かれるまで、そういう事務はだれが所掌するかというようなことを逐一書いてまいる予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/107
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108・鈴木壽
○鈴木壽君 小笠原総合事務所の設置の問題で若干お尋ねをしますが、ここで「小笠原諸島に行政国の行政機関の権限に属する事務」と、こういうようなことがありますが、予想せられる国の行政機関の権限に属する事務にどういうものがあるのか、これをまずひとつお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/108
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109・林忠雄
○説明員(林忠雄君) 一通りの国の事務というのはやはり現地でもまず考えられなければいけないと思います。具体的には、戸籍であるとか、ないしは、もしあそこがグアムとの船の交通路に当たる、特に開港することになりますれば、税関、出入国管理、検疫という問題もありますし、それからさらには、気象の観測、それから植物防疫、そういう種類の事務がいろいろございます。現在、この総合事務所においてどの事務とどの事務を所掌するかというようなことについては、なお各省と折衝中でございまして、具体的に総合事務所の中に入る事務全体についての予定は明らかになっておりませんけれども、まあ、たとえば気象観測というような仕事は、これは直接現地の住民との接触のある仕事ではございませんので、気象台はこの総合事務所には入らないという扱いになるのではないか。それから、そのほかには、郵政省の郵便局とか、大蔵省の国税の税務署、あるいは国有財産管理、その他各省それぞれございますけれども、その全体の現地における規模及び総合事務所の中にどれとどれが入るかということについては、なお現在折衝中でございまして、今日まだちょっと確定しておらない面がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/109
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110・鈴木壽
○鈴木壽君 まあ、いまおあげになりましたようないわゆる国本来の仕事、これはいろいろあると思いますね。ですから、そういうものの事務を処理するために、普通はそれぞれのいわば出先機関といいますか、そういうものがなければならぬと思うのでありますが、この法律の二十六条の二項には、「小笠原総合事務所においては、政令で定める地方支分部局において所掌することとされている事務のほか、この法律又はこれに基づく政令の規定によりその所掌に属することとされる事務をつかさどる。」、こういうことがあります。このあとのほうの「地方支分部局において所掌することとされている事務のほか、この法律又はこれに基づく政令の規定によりその所掌に属することとされる事務」という、これは一体どういうことがあるわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/110
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111・林忠雄
○説明員(林忠雄君) この「政令で定める地方支分部局」というのは、いま私がお答えしましたような仕事について、戸籍で言えば、法務省の法務局出張所とかその他、こういう支分部局。この後段のほうの御質問のことは、この法律に基づく事務でございますから、この法律の各個所に、たとえば土地の形質の変更に関する制限、この変更するために総合事務所長の許可を要するとか、あるいは土地の権利関係の調整など、そういった小笠原総合事務所長の権限としてこの問題が出てまいるものがございます。そういうものをさしておるわけでございます。
さらに、この法律に基づく政令というのは、たとえば、前のほうの第八条というようなところに、普通の法規の適用についての特例を政令で定めることができるような条項がございます。それらの特例によって、まあ通常は大臣なら大臣がやる仕事を、現地は遠いから総合事務所長に委任してやらせるということになりますと、内地では大臣あるいは何々局長がやる仕事が、現地では総合事務所長がやるということを政令で書くことができるわけでございまして、そういう政令の規定がこの法律に基づいてできますれば、それがこの規定によって小笠原総合事務所長が処理するということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/111
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112・鈴木壽
○鈴木壽君 その二十六条二項の後段のほうのこれですが、これは第八条の六号、こういうのとも関係をしてきましょうし、これは非常にこの分だけを見ますと、各方面にわたって政令でこの事務をしなきゃならぬというようなこともたくさん出てくるような感じがする。特に「その他小笠原諸島の復帰に伴い必要とされる事項」というようなことになりますと、いわゆるその復興事業、こういうような事柄もこの総合事務所で行なうようになるのではないかというふうに思われますが、ここら辺はどうです。具体的にどういうふうになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/112
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113・林忠雄
○説明員(林忠雄君) 復興事業につきましては、この法律の三十六条に予定しておりますように、別にさらに復興に関する特例法をつくるつもりでございます。したがって、その復興に関する特別法によりまして、小笠原総合事務所長に処理をゆだねる仕事もこの法律の段階では出てくるということは予想しておりますが、現在、それは具体的に何と何であるかはまあきめておりません。
それから、先ほどの八条の六号に基づく政令というのは、これは実態的に必要である場合に、経過措置とかその他特例措置について政令で定めることにより、何しろ海上千キロ離れたところでございまして、通常なかなか出かけていって処理するのもむずかしいというようなところで、現地に即して特に処理をする必要があるような仕事については、小笠原総合事務所長にゆだねられるものも相当あり得ることと考えております。現在、その具体的なものはなお明らかになっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/113
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114・鈴木壽
○鈴木壽君 ところでね、一つ私実は心配なことがあるのですが、それは、この小笠原総合事務所というものを設けて、いろいろ国の事務と称してここでまあ一切——一切と言うとちょっと行き過ぎになりますけれども——法の仕組みが大きなものになり、そうして、そこで扱う事務量というものが大きなものになるというようなこと、そうして、それがいまの地方自治というそういうたてまえから、国の事務あるいは都道府県の事務、市町村の事務と、こういうふうにやっておる、そういう一つの考え方のもとにやっておる、その何といいますか、きまりを何かこう著しく破るようなことになりはしないかという点を一つ実は心配をするのであります。で、もっと申し上げますと、たとえば本来の国の仕事として、さっきからあなたもおっしゃっておりますように、たとえば税関の仕事だとか、あるいは検疫の仕事、あるいは検察の事務、郵政の仕事、これはもちろん当然国の事務所でやるべきでしょうし、ところが、この法律またはこれに基づく政令の規定によっていろいろな仕事を従来国が当然やらなければならないし、そしてまた一方では、地方公共団体をしていわゆる機関委任の形において当然やらしておる、そういうことまでここでやらなければならないようなきめ方をするのではないかという心配があるのですが、そこら辺どうですか、そういう心配は要りませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/114
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115・林忠雄
○説明員(林忠雄君) そういうことは毛頭考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/115
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116・鈴木壽
○鈴木壽君 お考えにならないとすればいいのですが、結果としてそういうふうになってくるんじゃないですかね。なぜこういうふうに大げさな小笠原総合事務所なんと言って、しかも、自治大臣が管理をし、それから、それぞれの所掌事務に関しては行政機関の長が指揮監督をするという、まことにいまの国家行政組織法の上から言って、へんてこりんな形のものがここに出てくるわけだ。しかも、それは相当な権限を持ってやってこられるんじゃないかというおそれは十分にあるわけですね。一体、こういう事務所の長に、これはさっきの問題とも関係するようなことになりますが、自治大臣が管理者になるということ、国の事務の事務所——それが総合という形をとるか、ばらばらな形をとるか、ともかく、ここでは総合という、そこで自治大臣は、何といいますか、そこの管理者。一体、こういう例は調べてみてもないのですね。新しくつくったことだろうと思うのですけれども、そうすると、何かいわゆる、さっきのほうにもちょっと関連をしてくるようでありますけれども、自治体のことだからというようなことで、しかも、自治体の中に国の事務というものを直接やるようなものをどんどん持ち込む場合に、うまくやっていくという場合には、自治大臣のほうがやはりいいんじゃないかということを考えているのではないか、そういう気がしますが、どうですか、この点は別に心配ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/116
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117・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 絶対にその御心配は要りません。これはあくまで国のほうで善意で考えておるわけでございまして、奄美大島だって十カ年計画を終わって——いま第一次の振興計画が今年度で終わりを告げ、来年は第二次の振興計画におそらく入らなければいかぬと思います。これは全部自治省で責任を負うという形になっております。ですから、今度の場合も、やはりこれを促進する重責が自治大臣にかかってまいりますので、好んで自治省でやらなければならないと考えておるわけではありませんけれども、そうしたほうが、復興促進の上においても国の持つ責任が非常に大きいですから、便宜の面もありましょうし、とにかく自治省としては、積極的にこれと取り組んで、早い機会に東京都に渡さなければいかぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/117
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118・鈴木壽
○鈴木壽君 奄美のことをお話しになりましたが、奄美の場合には、そういう総合事務所なんかできなかったのです。いろいろな国の仕事でも、いわゆる国の事務と言われるものであっても、それは鹿児島県知事あるいは鹿児島の行政機関に委任をしています。特に事務所を持ってやらなければいけないというようなことはなかったのです。多少奄美のあの事情と、いまの小笠原の事情は違うかもしれませんけれども、その違いの中には、ごく小さな部分のいまの小笠原諸島みんな合わしてもたいした広さではない、人もほとんどおらない、仕事らしいものはない、国のいわゆる事務なんということはない、そういうことの違いもありますけれども、そういうものを、いずれにしても、何かここに大げさな小笠原総合事務所というものを設けて、自治大臣が管理者になって、そうして地方の、あるいは東京都の仕事のために支庁か何か設けられるかもしれませんが、そういうものの難係もあるからというようなことでやる必要があるかどうかということですね。私はもっと言えば、奄美のようなああいう形で都道府県知事あるいは都道府県の関係の行政機関に委任をする形によって、そうして東京都にやらせる、こういう形をとることが私は自然な形ではないだろうか、こういうふうに思うのです。しかも、もう一つつけ加えたいのですが、いまの地方自治のたてまえ、地方自治のいわゆる地方公共団体が国の事務を処理する形はそういう形をとっているんですよ。これは私が言わなくても、あなた方専門家ですから、自治法の二条の中の事務のきめ方なり、あるいは、それによってできている別表の第一、第二、第三、第四、第五、ずっと見ていきます。と、そうしてまた、一方、地方自治法の第百四十八条なり第百五十条なり、そういうものを見ていきますと、本来の国の事務であるとは言いながら、できるだけ多くのものを地方公共団体にいわゆる委任をした形で行なわせるというのが、いまのたてまえになっておるのですね。そういうのに、ここに大げさな総合事務所などを置こうなんて、大臣を管理者に持ってきてそこの仕事やっていく、国の仕事だからと言ってやっていかなきゃならないということ——ぜひともやらなければいけないさっき言ったような検疫とかなんとかは別ですよ。そうでないものを、いろんな仕事、事務を特に政令でこの事務所でやるようにするというこの考え方、私は少し納得できないんですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/118
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119・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 先ほど申しましたように、何も特殊な目的があって好んで国で取り上げてやるわけでは決してないのでして、先ほども申しましたように、奄美とは状況はまるで違います。まあ小さい島が若干ありますが、東京から千キロも離れている絶海の孤島でもあるし、東京都によろしくやれと言えばそれまでかもしれませんが、そんな無責任なことはできない。よくなわ張り争いでどの役所も権限を広げたがるという話もありまするけれども、自治省は何も好んでここへなわ張りを持とうと思っているわけでは決してございません。やはりそのほうが復興が早くもありましょうし、また、国が中心になっていけるところまでいって、あとで東京都にお願いすることはちっとも間違っていないと考えておりますので、鈴木先生とはちょっと扱い方が、考え方が違うようですけれども、私は、このことがかえって東京都のためにも大きなプラスになるというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/119
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120・鈴木壽
○鈴木壽君 国は小笠原の復帰に伴って、その復興に大きな責任、それを持っているということは、確かにおっしゃるようにあると思いますし、そうでなきやならぬと思います。しかし、その責任を持っておる、重大な関心を持っておるということと、一々のいろんな仕事を直接自分たちの機関でやらなきゃいけないということとは私は違うと思う。いろんな事務なり仕事なりは、やり方は、先ほどから例をあげて申し上げておるように、いまの自治法でも、こうこうこういうふうにしてやるんだよという一つのたてまえがあるわけですね、しかも、それは地方自治を尊重するというたてまえで。ところが、最近は、いろいろ国のいわゆる地方支分部局があちこちにできている、縦割りがどんどんできて、それがそこなわれてきている、そういう傾向を実はわれわれ問題にしなきやならぬと思っておりますが、さらに加えて、ここに、こんなちっぽけなこういうところに、東京から離れていると言ったって、東京都にやれないというところじゃないんですよ。やるつもりでおるのですよ。それを、一々国の手で一切がっさいのことをやってしまわなければ責任を果たせないということに私はならぬと思う。これは責任とか、何といいますか、思いやりとかということの押しつけみたいなかっこうになってしまいますね。責任を感じ、そのためには一生懸命協力をしなければならぬという、そういうことは、これはぐんとあってけっこうなことであります。そうなければならぬと思いますが、だからと言って、いまの先ほどから言っているように、いろいろな自治のたてまえ、仕事のしかた、そういうことを乱すようなことがあっては私はいけないと思う。どうしても東京都でやれない、委任したけれどもだめだということならこれは刑ですよ。そういうことを検討した上で、こういうことも必要だ、こういうことも必要だということであれば、私は何も言いません。しかし、かりにまあ、これからどういうふうになってくるかわかりませんが、復興事業の中でも、場合によっては、国の直轄というようなこともあり得るかもしれぬけれども、それは地方公共団体としての東京都でみな行なわなければならない仕事なんです。と同じように、いわゆる国の事務と称せられるこういうものであっても、国のそういう事務を東京都に委任した形でやってきたし、やれるのでありますから、何を好んでこういうふうなものをつくるのかということについて、私はどうも納得のいかないところがあるのですがね。まあ、これは私、意見になってしまいましたが、そこでひとつ御注文申し上げたいのですが、自治大臣によく聞いていただきたいのですが、いわゆる所掌に属することとされる事務、政令やらいろいろなものをできるだけこれは少なくしてもらいたい。それは東京都あるいは東京都の機関、これでやれるものはできるだけやらせるというたてまえの上に立ってやらなければいけないと思う。そうでないと、必ずこれはあれですよ、あなた方は仲よくしましょうとか、手を握ってやりましょうとか、うまく連絡調整をとってやりましょうと言っておりますが、小笠原総合事務所と、東京都にできるであろう東京支庁との間には、いろいろなことでこれは摩擦が出てきます。ひとつその点、私は御注文を申し上げたいのですが、どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/120
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121・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) こういうものに国が手を出すと、何かそのために混乱が起こる御印象のような御発言でございますけれども、本土でも、たとえば道路一本つくると言っても、私たち自治省の立場から言えば、補助行政でなくして全部地方公共団体の責任でやらしてもらったほうがありがたい、しかし、場合によっては、それは国の直轄でやってもらったほうがいいという主張もあります。これはいろいろな補助とか、いろいろな扱う技術とか、いろいろな面で、農業関係の諸事業だって、とにかく団体営でやる、県営でやる、さらにあるいは国でやってくれという要請も一部にはあります。ですから、私どもとしても、好んで自治省が小笠原に直接顔を出して、そして開発をやらなければならぬとは考えておりませんけれども、そうしたほうが地域住民のためにも、また、東京都のためにもいいと思っているからやっているわけでございますので、御指摘のとおり、そのために何かたくさん自治省が政令を出すのだというようなことは決してございませんので、その点はひとつ御安心願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/121
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122・鈴木壽
○鈴木壽君 あなたのおっしゃることは、実は反論したいこともありますが、まあ、この点十分注意していただきたいということを申し上げておくだけで、この問題については、私は終わりにしたいと思います。
何かこれは大臣、質問という形でなしに申し上げますが、そういうところを見てこういうことを感ずるのですよ、私、少し心が曲がっているかもしれませんが。さっきも法制局長官との間にちょっと出ましたが、国が小笠原を直轄するという直轄論、これはそうでなくなりましたが、 質的に国がいろいろなことをやって、そこで準直轄みたいな、支配するようなかっこうがこういうものの中にあらわれているのじゃないかというような疑いも実は持つわけですよね。何か出しゃばり過ぎる、何べんも言うように。国の責任を感ずることは大いにけっこうであるし、そのために援助なり助成なりというものは大いにやってもらいたい、やらなければこれは完全な復興はできませんから。しかし、そのことと、それらを自分たちの手で全部やらなければいけないのだということは違うのだということを再々申し上げておきましたが、何か私は、こういうものをやって、まず村長の職務をやる者から、大臣の同意を得なければならぬ、総合事務所というものを設けて、そこに自治大臣が出てきて、総合調整と称して、あるいは管理すると称して出てきてそこでやるというようなかまえについて、何か心配をするのです。まあ、これは私の質問ということでなしに、私の心境ですが、もっと本質的に返って、こんな変なものをやらないで、それぞれの仕事について、そういうものを、地方自治を尊重するというたてまえから、東京都にやらせるということがいいのではないかと思うのですが、まあ、その点はそれでその問題についてやめます。
そこで、まだ実はいろいろお聞きしたいことがあります。関連するようなことで。時間もありませんから最後に一つ、これは法制局長官と自治大臣の両方にお聞きしたいと思いますが、新しい村をつくるという、こういう一つのやり方、それから、その村の長なり議会、あるいは条例の制定手続、あるいは、その選挙等における住民の権利、こういうものの特別な規定ですね、この法律は。普通の公共団体としてではなしに、小笠原村だけにやる、こういう規定ですね。こういう性質の法律というものは、憲法の九十五条で言ういわゆる特別立法、公共団体に関連する特別立法として考えるべきではないかと思うのですが、その点はどのように考えておられるのか。これは自治大臣、それから法制局長官にお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/122
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123・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 一つの憲法上の問題でございますので、私からお答え申し上げます。が、かつても実は参議院の予算委員会であったと思いますが、当時まだ小笠原をどういうふうに処理するか、つまり、直轄にするかどうするかという問題についてまだきまっておりません当時、九十五条の問題が先んじて論議されたことがございます。そのときに私はお答えを申し上げましたが、そのときのお答えを繰り返すことになりますけれども、今度の小笠原における村の設置、これは御承知のように、その実体というものは、実は地方公共団体としての地縁的な社会団体といいますか、その実体というものは必ずしも十分にできているわけではない。それが結局、大潟村等に比べられるわけでございますが、住民は現在二百人ほどおるそうでございますが、本土から逐次戻っていくということになって、そこに一つの社会的な実体というものができるに従って、一つの、憲法で言う地方公共団体を設けていこうということになるわけでございます。その意味では、過渡的な、順次憲法で見ている地方公共団体になる過程の状況にあると見るのが率直な言い方であると思います。で、いずれにいたしましても、憲法は地方公共団体の存立を保障しているわけでありますから、そういう社会的基盤があるところには必ず地方公共団体を設けなければいけないという意味で、必ず小笠原におきましてもそういう社会的実体というものが備わっていきますので、ここには必ず村なり町なりが——この場合は村であります。が——そういうものを憲法上の要請として設ける必要があるということは、もう間違いのない議論であろうと思います。ところで、その形成過程の地方公共団体に対するそれにふさわしい法律制度、これをつくっておりますのが、いまの小笠原に関するいろいろな特例がそれを反映してできているわけでございますので、そういう法律は、憲法九十五条で言う「一の地方公共団体のみに適用される特別法」とありますこの「一の地方公共団体」ということに——まだ形成の過程にあるそういう地方公共団体は、まあ憲法に言う「一の地方公共団体」というものになって、それの特別法を設けるについては、やはり公平の考え等から言って、当該団体の住民の投票に付するというのが憲法の趣旨でございますので、ただいま申し上げたような形成の過程におけるそれにふさわしい一つの特例というようなものは、憲法九十五条に言うような特別法というふうに考える余地はないというように考えております。したがって、この特例法を住民投票に付するということにしましても、その住民投票に付すべき「一の地方公共団体」というものがまだ形成の過程にございますので、住民投票に付せられるような地方公共団体としてもまだ存立をしていると見るわけにいかない。まあ、あれこれ考えまして、九十五条の憲法の要請にはこの場合の特例法は当てはまらない、こういう結論でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/123
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124・鈴木壽
○鈴木壽君 これも私、妙な小理屈を並べるように聞こえるかもしれませんけれども、やはり一つの問題じゃないだろうか。これは一体どういうふうに規定づけるのか、性格をですね、これは私、大事な問題じゃないかと思っているのですが。
そこで、いまのお話のように、確かに憲法第九十五条で言う一地方公共団体、それとは、今度できる小笠原村、これはあの憲法で意味する地方公共団体とは言えないことは、これは実情から言って言えると思うのです。ですから、その形成過程においていかにして育てていくかということの規定が今回の法律だと、こういうたてまえに立ちますと、どうも該当しないのだと、こういうことになるようでありますが、一つは、そのまだはっきりした地方公共団体としてりっぱなものになっていないということが、一つの決定的なそれだと思うのですが、これも考え方だと思うのですね、実体をどう見るかということだと思うのですね。何べんも引き合いに出しますけれども、八郎潟の干拓に伴ってできた大潟村、村として認められて形成されまして自治大臣に届けられた当時の状況からしますと、あの面積は一万五千ヘクタールくらいのところでありますけれども、人口はわずかに十数人です。世帯数はたしか四つか五つだろうと思います。それでもまあ一つの村としておる。ところが、村として見るか見ないかということに——それから、まあ実体の問題もありますけれども、そういう点からしますと、私は、やはり今度の小笠原、かりにあそこを一つの村としたにしても、せいぜいまあ二百人の人、これは何もてんでんばらばらの生活をしておるわけでもなし、まあアメリカの何といいますか、従属といいますか、依存したような、そういう生活をしておりますけれども、しかし、それの中にも、それぞれのあそこの住民たちは一つの共同社会ということでやっておるのですね。ただそこにいればとかなんとかいうものではもちろんありませんから、その共通の意思を持って村をどうするというようなことについては、実体上不十分なところがありますけれども、これは村として見て見れないわけじゃないと思う。ですから、形成の途上であるからというので、村としての実体がどうということになると、これは一つの事実をどう認めるか、どう認定するかということになって、それぞれこれは見解が違ってくるのだろうと思いますけれども、一がいに村とは言えないというふうな片づけ方もこれはできないのじゃないだろうかと、こう思うのですね。
そこで、いま一つの問題は、この法律自体が、やはり地方自治団体としてのいろいろな組織運営、あるいは何といいますか、住民の権利とか、こういうものに対する大きな制約と申しますか、他と異なった取り扱いをしようとする、こういう法の性質から言って、条文のそういう内容から言って、やはりこの一団体のみに適用される特別の法であるというふうに見ることが私できるのじゃないだろうかと、こういうふうに思うのです。特に後段の問題ですね。私は、この法律というものは、適用する団体があるとかないとかいう、あるいは投票できるとかできないとかいうことでなしに、法律の性質上、この条文から見る内容上、そういう性格の法律ではないだろうかと、こういうふうに思うのですが、ひとつ法制局長官からあらためてそれに対する御意見がありましたらお述べいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/124
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125・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 誤解があるといけませんから申し上げますが、小笠原村が村でないと申し上げているわけではないのでございまして、やはり憲法九十五条の目から見る「一の地方公共団体」であるかどうかが問題の焦点で、そういう意味で申し上げているつもりでございます。これにつきましては、御承知のことと思いますが、東京都の特別区の区長の選任制の問題で、東京都の特別区が憲法に言う地方公共団体であるかどうかということが論争の種になりまして、最高裁の判決が出たことは、御承知のことだと思います。そういう特別区についても、実はそういう問題があります。わけで、いわんやというわけではございませんが、小笠原村という、いまの問題の小笠原村が当然に憲法上の地方公共団体であるというのは私はやはりとれないのではないかと、率直に申し上げてそう思います。ところで、この村に対する、ほかの地方団体に対する一つの特別的な法律ではないかと言えば、それはおっしゃるとおりでございますが、やはり憲法の言う「一の地方公共団体のみに適用される特別法」にはやはり、だからと言って当たるわけにはならないだろうというのが、私の申し上げる趣旨でございます。それはそれといたしまして、この法律は、附則の第一条をごらんになればわかりますように、「南方諸島及びその他の諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の効力発生の日から施行する。」ことになりまして、その施行する日から小笠原村ができ、その小笠原村の組織ができるわけでありまして、その前に住民投票に付そうと言いましても、その地域はアメリカの施政権のもとに現在あるわけでございます。そういうことも、これは余分な言い方ではございますが、かれこれあわして考えます場合に、私はやはり、さっき申し上げた結論が正しいものだと考えております。むろん、御指摘のように、重要な問題であるには違いございませんので、法制局といたしましては、十分な検討を遂げたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/125
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126・鈴木壽
○鈴木壽君 まあ、もう少しお尋ねをしたい、聞きたいことがありますが、あまり時間が長くなりましたから、実は法制局長官、あなたのお話、確かに第九十五条の「一の地方公共団体」という、そういう場合、最高裁ではっきり一つの地方公共団体というものの線が出ておりますね。ああいうものからしますと、いろいろ問題があることは私も認めますが、だからと言って、この法案の性質上というようなことからしますと——だからと言って、この法案の性質上、特にこの小笠原村に対してのいろいろな、まあ、ことばが悪いかもしれませんが、程度の差の違った集約されたようなものがあるということについては私は問題があると思いますが、そこで、ひとつ関連してお尋ねしておきたいのですが、国会法の中に、第七十六条の中に、特別立法のことについての規定がありますね。これについて、ひとつ憲法の言う特別立法、これは違わないものだと思いますけれども、扱い方について書いてありますね。国会で議決をした場合、国会で特別立法として議決をした上で、その地区の住民の人たちの投票を得て、その決定を待ってほんとうの決定とするということが国会法の七十六条にあります。これでも使えないものかと思うのですが、その点をひとつ簡単に答えていただいて、松澤先生がやりたいということでございますから、もしなんでしたら、私の質問に対するお答えを一時とめておいていただいて、松澤先生から御質問になってもいいと思いますから、そのように。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/126
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127・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/127
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128・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/128
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129・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) ただいま七十六条とおっしゃいましたが、六十七条かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/129
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130・鈴木壽
○鈴木壽君 そうでした。六十七条です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/130
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131・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 六十七条には、確かに、国会において最後の可決があった場合には、いま申し上げた特別法については、「その地方公共団体の住民の投票に付し、その過半数の同意を得たときに、さきの国会の議決が、確定して法律となる。」と、こういうことがございます。これはむろん憲法の九十五条の規定を受けた規定であることは確かでございます。実は、御質問の御趣旨、私十分聞き取っておりませんおそれがございますので、私まあ六十七条に加えて申し上げます。ものといたしましては、ここで言う特別法については、そういう地方公共団体の住民の投票に付すとありますので、その地方公共団体、すでに成立している、存立している普通の場合について、九十五条の規定をそのままに国会法の規定の上で明らかにしたものだというふうに承知いたしております。何か抜けておるところがございましたらまた。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/131
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132・松澤兼人
○松澤兼人君 関連して二、三ちょっと御質問申し上げます。
私も、いまの一の地方公共団体のみに適用される法律については、その地方公共団体の住民の一般投票をしなければならないという、これを質問の一つの項目の中に入れておいたわけであります。いま法制局長官の話を聞きますというと、まだ小笠原村というものが形成の過程にあって、いわゆる地方公共団体の形なり実体なりというものを備えておらない。だから、それに適用される特別法というものは住民の一般投票によらなくてもいいのだというような御答弁があったように思いますけれども、これは、この憲法の条文はいろいろ読み方があると思うのです。私もかつて経験したことがありますが、たとえば五大市ですか、特別市制を実施しようとしたときに、その住民とは何をさすのか。たとえば大阪市あるいは神戸市の市民をさすのであるか、あるいはそれを含む府県の住民の一般投票によらなければならないかという問題があったのであります。これは当時の法制局としては、その市だけの住民の一般投票ではいけないのだ、それを含む広い府県の住民の一般投票によらなければいけないということで、特別市制の実施ということはもうほとんど不可能だというようなことになったことを私は記憶しておるのです。この憲法の読み方は一体どういうところにあるか。「その」とか、二の地方公共団体」、たとえば、この場合、かりに小笠原村というものが、いまは普通の公共団体ではありませんけれども、これがもし普通の地方公共団体であると仮定をしますと、その小笠原村に適用される特別法については、その地方公共団体の住民ということはどのようにお読みになりますか。これをまず第一に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/132
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133・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 特別市の場合についての問題があったことは、私も十分に記憶しております。しかし、それはそれといたしまして、九十五条の「一の地方公共団体のみに適用される特別法」、こういう特別法を過半数の同意を得て制定するという場合のその地方公共団体というのはどういう範囲かという問題になりますと、やはりこの九十五条の趣旨がどういうことかということから考えざるを得ないと思いますが、やはり地方公共団体によって、わが国にあまり例がございませんが、一つの特定のある地方公共団体に対して、特別の権利を制限したり、あるいは義務を課するとかいうことが外国にはあったようでございます。が、そういう場合には、平等の考え方から、住民が納得しないでは、いたずらに憲法なり国の議会がかってにつくるということはできないのだという趣旨が基本にあると思います。まあ仮定のお話でございますから、仮定のお話としてむろん私も申し上げるわけですが、かりにある団体、その団体がかりに市町村段階であるとすれば、その市町村に対して、権利の制限をしたり義務を課すということになりますと、ほかの同じような団体と比べて特別に権利を制限したり義務を課することになるという場合には、その同じような市町村の段階で差がある場合には、その市町村について住民投票に付することにいたしますれば私はいいのであろうと、憲法の解釈として一応そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/133
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134・松澤兼人
○松澤兼人君 ちょっと小笠原の問題から少し離れて恐縮ですけれども、たとえば神戸国際港都……何かありましたね、法律がありましたね。長崎原爆だとか、広島原爆だとか、特別の立法がありました。こういう場合は、やはりその市の住民だけに一般投票をやらせて、多数だったらそれが成立するということになったと思うんです。これはそのとおりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/134
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135・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) いまおっしゃいますように、この例はいろいろ国際観光都市とか、あるいは原爆何とか——広島と長崎とを対象とした法律がございます。それは幾つかございますが、それは仰せのとおり、その市の住民投票に付しただけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/135
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136・松澤兼人
○松澤兼人君 それで、その小笠原に返りますけれども、その小笠原村という、まだでき上がってはいないけれども、そういうものを法律の中で規定しているわけですね、小笠原村を置くということを規定しているわけです。それは明らかに、まだ実体はあなたがおっしゃるように、十分にできてないかもしれないけれども、しかし、小笠原村というものはどういうことですか、地方自治法の市町村ということの村じゃないですか。これは別の村というふうに解釈できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/136
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137・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) それは先ほど鈴木さんの御質疑に対してお答えいたしましたが、小笠原村もりっぱな村であることは間違いございません。ただ、ここで議論の対象になりますのは、憲法九十五条で言う、いわゆる憲法上の地方公共団体であるかどうかの問題でございますので、その点は保留をいたしますけれども、一つの自治団体としての村であることは、まあ形成の過程にあるにはせよ、一応そういう一つの組織をつくっていることであることはもう確かなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/137
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138・松澤兼人
○松澤兼人君 そうしますと、小笠原村というのは、自治法上における村であることは確かですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/138
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139・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) その村の言い方だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/139
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140・松澤兼人
○松澤兼人君 だって、二つも三つもないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/140
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141・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 自治法の規定——決してごまかす意味じゃございませんが、自治法の規定による村というのは、あるいは市町村ですね、これは自治法としての仕組みがきまっておりますから、そういう意味の市町村でないことは、これはまた理論上、当然にそうじゃございませんが、広い意味の一つの、何といいますか、特例はあるけれども、村であるかと言えば、それは村だと、こういうことをお答えするほかはないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/141
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142・松澤兼人
○松澤兼人君 自治大臣に伺いますが、村でないものを村だと言ってもかまわないんですか。そういうものをかりに市町村合併をやります。ところが、一部の人が反対だと言って分村してそこに村をこしらえたとすると、その村は一体村であるかどうか。じゃあ、自治法から言えば認められないこの小笠原村というものは——村をこしらえるという、同じ村ですよ。市町村の村じゃないですか。自治法の適用を受けないで村ということを称することができるかどうか、氏名詐称じゃないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/142
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143・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 村という場合に、何といいますか、いわゆる村づくりとかいうことばであらわされる村の実体をつくっていく場合の話と、制度としての村という二つの考え方があると思います。それが少しごちゃごちゃになって、少し私自身御説明が混乱したと思いますが、制度としては、自治法のいろいろの特例はございますけれども、特例のない部分については、やはり地方自治法の規定がある。たとえば、どういうことを規定するかと言えば、自治法上の村の仕事が当然にそこに当てはまるという意味で、自治法上の村と言っても少しも差しつかえない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/143
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144・松澤兼人
○松澤兼人君 村であるかないかわからぬ。あなたは形成の過程と言っているのでしょう。まだできていないものを村と言えるのかどうか、自治法上の、法律的に。あなたは法律の専門家なんだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/144
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145・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) だから、いま申したように、村の組織といいますか、形というものと、村の実体というものと、いま村づくりと申し上げましたが、そういうものと二つの面があるわけです、少なくとも小笠原村につきましては。その実体につきましては、まさに形成の過程にあると申し上げていいと思います。しかし、制度上の村としては、自治法の特例もございますが、村は何をするかと言えば、自治法上の——つまり、制度上の村としての自治法上の機能を果たしていくことになるということ、そういう意味で簡単に言えとおっしゃれば、自治法上の村と言って少しも差しつかえございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/145
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146・松澤兼人
○松澤兼人君 自治法上の実体を備えていないものを村と言っていいかという問題、便宜上ただ村と言うだけじゃないですか。氏名詐称というか、誇大広告といいますか、とにかく実体のないものを村と言うことは法律的に正しいかどうかという、先ほど申しましたように、おれたちはあそこの町と合併するのはいやだと言って、村ということを名のったら、それは違法じゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/146
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147・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 大潟村も実は同じでございますけれども、制度としての村というものは、りっぱにこれを法律でつくられるわけです。制度としての村は、この法律による特例がむろんございますけれども、そうでない部分は、自治法上の村としての当然の機能を果たす、その根拠は自然法であるということを申し上げているわけです。ところが、社会的基盤としての、自治団体の基盤としての村というものは、まだ住民が実際に、ほかの村と比べてもわかりますように、少なくとも、先ほど憲法論議があったわけでございますが、憲法が庶幾しているように、一つの共同的な基盤といいますが、そういうものがまだ完成していない。それといまの制度論とは別個に考えられる、十分に考えられる、それをおのおの申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/147
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148・松澤兼人
○松澤兼人君 私たち普通、組織や運動なんかやる場合に、一つの護憲団体をつくる場合は、護憲団体組織準備会というものをつくるのです。この場合は実体が即していないのだから、村にいくまでの過程だと思う。一種の村にいく準備団体みたいなものを、それを村と言うことは法制的にどうかということです。しかし、あなたのおっしゃるように、いろいろ二面も三面もあるらしいので、こういうことをいつまで言ってもしょうがない。
結局、自治大臣、最後にお伺いしたいが、先ほどお話がありました小笠原諸島が復帰して、これは高辻さんのお話だと、どこへくっつけてもかまわないというお話だったけれども、これは鈴木君の質問で明らかになった。そこで、結局、最初直轄にしようと思ったのが、先ほど高辻君からお話があって、それはそうはいかなくなった。そこで実質的に直轄にしようというのがこの法律のねらいです。文字どおり。鈴木君の心配するのは、自治体でもないものを自治体と言ってみたり、あるいはまたは、あらゆる自治体としての機能を十分に与えないで、国の機関あるいは東京都の出張所といったような、ほんとうの自治体でないもの、国が直接それを支配すると言っては悪いけれども、法律的に言えば管理するということ、実質的に国の管理を強めるということがそのねらいじゃないか。悪いことを言ってすみませんが、毒づいて。ちょっとそこを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/148
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149・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 非常に悪いことでございまして、私はさっきから、それは善意で考えついたことであって、決して何か国あるいは自治省がためにするためにこういう仕組みをつくったわけではないということをるる申し上げたわけでございます。小笠原村ということがなかなかのどがつかえているようですが、かと言って、東京都の過疎地帯として扱うということもはなはだ不十分である。ですから、ここは国が全責任を持って開発をしていくわけでございますので、東京都にちゃんと引き渡すまではこういう措置をとるということが、地域住民のためにもとるべき措置であるということを考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/149
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150・鈴木壽
○鈴木壽君 時間がなくなりましたから、簡単にあと伺っておきますが、さっきの、私、国会法の七十六条と申し上げて恐縮でしたが、六十七条ですが、これは結局、憲法第九十五条の規定について、国会での扱いといいますか、手続といいますか、そういうものの規定だと見るしかないんじゃないかと思いますが、国会でかってに、何といいますか、こういうふうに認めてどんどんやるんだ、こういうことじゃないだろうと思うんです。が、そういうことでどうだろうかというふうにお聞きしたのでした。六十七条に、こういうふうにして最終的にこうして法律が確定する、こういうのでありますね。きめたあとで、そして他の法律によるところの投票による同意とか、いろいろなことをやって、その確定を待って初めて法律として確定する、こういう一つの手続を、何といいますか、詳しくやったものじゃないだろうかと、こういうふうに思うんですが、そういう考え方であれを理解していいと思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/150
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151・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 九十五条は、「国会は、これを制定することができない。」という最後の文句がそうなっておりますが、国会法は、法律になる場合について、住民投票に付して、その過半数の同意を得たときに、その国会の議決が確定して法律となるというわけで、実は九十五条の立法機関としての国会の法律の制定時といいますか、結論としては、全く九十五条の特別法の制定、それは住民投票が確定して必ず同意を得たときに法律となるということを明確にしたということでございます。したがって、鈴木委員のおっしゃることが正しいと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/151
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152・鈴木壽
○鈴木壽君 ひとつ総務長官にお尋ねをします。先ほどから私、心配だとかなんとか、あるいはまた、国が準直轄みたいなことをするんじゃないかということをおそれるというようなことを申し上げましたが、今後のいわゆる復興事業の進め方でございます。さっき、あなた聞いていただいておったかどうかわかりませんが、復興事業等も、今後どういうふうに復興事業の法律ができて、どういうようなやり方をするのか、まだいまのところはわからぬところでありますから、それをああでもない、こうでもないという推測をもってお尋ねするのは、これは失礼だと思いますから、それについてはやめます。ただ、ことしの二月の初めに、政府と自民党の首脳部の方々の、この小笠原の扱いについてのいろいろな協議をなされた結論として、新聞に報じられておるところの一つ、これをちょっと私問題だと思いますのでお聞きしたいのでありますが、いろいろあるうちのたとえば旧皇民の帰島あるいは新しい村づくり、一応の生活の安定、現地の復興についての企画立案は国が主体となって行なう、こういうようなこと、それからあと米軍基地の引き継ぎの問題であるとかいうようなこともありますが、これはここでは触れないでおきましょう。次には、一般行政で郵政、検察、海上保安などは国が実施する、これは当然のことでございましょうね。それから保健所、警察、指定統計、食品衛生、道路、河川、生活保護など、通常都道府県が実施する行政については都が実施する、これは当然なことだと思います。ただし復興事業の内容をなすものは当面国が主体性を持って実施する、こういうくだりがあるわけですね。それから、ついでですから申し上げます。が、消防、戸籍、住民台帳、上下水道、国民健康保険、清掃などは町村が実施する、こういうふうにありますが、この一番初めに述べた旧島民の帰島、新しい村づくり、一応の生活の安定、現地の復興についての企画立案は国が主体となって行なう。それからもう一つ、さっき言いました都が実施する仕事としてあげられたあとで、ただし復興事業の内容をなすものは当面国が主体性を持って実施する、この二つの問題でありますが、こういうことから言っても、私くどいように、何でもかんでも国がすべてのことをやるのじゃないか、そうして政令をつくって、どんどん国のなすべき仕事だというので現地の総合機関を通じてやらせるようにするのじゃないか、こういうことの心配があるということでさっきお尋ねをしたのですが、実はこういうこともありますから、大臣や関係の人たちは、いや、そうじゃないのだということを言っておりますが、どうもこれからの小笠原についてのいろいろな仕事、事務、特に復興事業、こういうものについては、やはり国があくまで主導権は握って、国の手で実施するというようなことがあるようで、そういうことはさまったんじゃないか、こう思うんですが、そこら辺、長官、どういうように把握しておられるかですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/152
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153・田中龍夫
○国務大臣(田中龍夫君) ただいまの御質問をいただきまして、実はまことに意外な感じを受けるのでございますが、私どもは、そこに書きました項目は、決して新しいことではございませんで、この行政事務の内容に応じまして、その行政事務を一体どこが担当するかということを列挙的にあげただけにすぎないのでございます。これは通常の行政事務の中におきまして、国政と都道府県の行なうものと、町村の行なう自治体の行政、それを機械的に並べただけで、何ら他意のあるものではございません。ただし、そこの復興事業の内容をなすもの云々のことにつきまして、非常にこうわれわれが考え及ばなかったいろいろなことをお考えになっておられるようにそんたくできます。が、それは、この東京都におきましても、ほんとうに二十年以上も無人島で過ごしてきたような母島や、それから不発弾が至るところにあり、まだちっとも戦時と変わらないような硫黄島でありますとか、あるいは、その他の婿島とか何島とかいうような、水もないような島、そういうところに対します取っかかりのことは、国がやってくれなければ困るのだということを、東京都自体でも申しているようなので、つまり言えば先行投資と申しますか、ほんとうに小笠原に、最初に、何といいますか、船を持っていって、それで運航を開始する、あるいはまた、通信施設を設けて、そうして現地民と日本との通信連絡を保つとか、序の口のまた序の問題はどうしても国がやって差し上げなければならないということを申しただけでございます。その点はどうぞ誤解がないように、十分ひとつ御了承のほどをいただきとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/153
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154・鈴木壽
○鈴木壽君 あまり私、誤解しているつもりもないのですけれども、何べんも申し上げますように、大体、たとえば国の総合事務所の仕組みとか、あるいは、そこに持ってくる事業とか事務とかというような規定、あるいは政令でいろいろなことをきめてやるという、こういう中に心配せざるを得ないようなものがここに出ているわけです。よね。しかも、一方、ここに復興事業の内容をなすものは国が主体性を持って実施するとなると、これはあらゆることができるというふうに読み取られますものですから、それではおかしいんじゃないかと。先ほど自治大臣にも念を押しております。が、できるだけ——長官、ひとつ聞いてください。できるだけ、従来こういう場合に、都道府県知事あるいは都道府県の機関をもって、国の事務であってもやらせるんですから、それがまた常道だと思うんだが、そういうことをできるだけやって、特に国がこれもやらなければいけない、これもやらなければいけないというふうなことをするようなことのないようにという、実は注文を申し上げておる。そこで、さっきも申しましたように、そのときに長官いられたかどうか——いまおられますから、その問題について、なお念を押して御注文申し上げたい、こう思ってお尋ねをしたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/154
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155・田中龍夫
○国務大臣(田中龍夫君) いままでの小笠原の委員会の中におきましては、皆さま方の御意見の中におきましても、いわゆる一旗組みたいなものがどんどん先に行って、かってな権原をそこに植えつけて、それで無統制な乱脈なことになってはいけないんだというような御注意もあり、また、私が美濃部都知事にお目にかかったときにも、都知事のほうからは、あまり急がないでひとつ計画的にやってほしいというようなお話もあり、これはもうやはりむしろ、その御意見の逆でございまして、あくまでも総合的な計画性を持って新しい小笠原というものを開発しなければならない、そういうふうな、ほんとうにわれわれといたしましては、どうも痛くない腹をさぐられているような、おかしな気持ちがいたしますが、善意中の善意を持ってこれは真剣にかようなことを実は考え、また、規定をいたしたような次第でございます。
それで、ただいまの自治体の権限の問題でございますとか、あるいはまた、地方自治の問題にいたしましても、自治大臣がお話を申し上げたように、われわれはほんとうに先行投資、当初の、私のほうはレールを敷くという、縁の下の力持ちだけを担当いたしまして、あとは自治体に引き継ぐ、自治省に引き継ぐ、こういうことにいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/155
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156・鈴木壽
○鈴木壽君 最後に一つ。この法律にはないことなので、しかし必要だと思いますから、この法律になくともやれるんじゃないかと思うことをひとつ申し上げて、大臣のそれに対するお考えを聞きたいと思います。自治大臣です。新しい村をつくる場合に、いまここで「小笠原村を置く。」ということになりまして、いま言ったような規定は何もそれ以上ありませんが、普通新しい村をつくる場合には、関係地方公共団体の意見を聞かなければならないということでやってきたのが通例であります。そこで、これは関係地方公共団体と言っても、市町村ではあまり関係があるとは言えませんけれども、やはり東京都は関係する地方公共団体になると思いますが、これは自分の区域のところのやつでございますから、その意見を聞くというのは、東京都の議会でも議決をする形で意見を聞いたということになると思うんですが、そういう手続をとって、東京都も、いわゆる関係する地方公共団体も、こういうことに、何といいますか、同意といいますか、承諾を与えているのだという形をとったほうがいいというふうに思いますが、いかがでございますか、法律には何もそういうことをやれともなんとも書いてありませんけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/156
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157・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) この問題は、当初から美濃部知事とも密接な連絡をとっております。それは当然やるべき問題でございますし、知事の意に反して何ごともやっておるわけではないのです。ただ、同意を得るということは、東京都議会の議決ということもありませんでしたけれども、議会にまで一々かけなければならぬということは私ども考えておりません。しかし、少なくとも都知事とも密接な連携をとって、歩調を一にしてやらなければならぬと考えておりますし、そういう方向を現にとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/157
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158・鈴木壽
○鈴木壽君 もちろん、知事とはいろいろ話し合いをしたり連絡をとっておやりになったんだろうと思いますが、私が言うのは、そういうことだけでなしに、新村を置くというような場合には、いままでの法律からしますと、いままでのたてまえからしますと、関係する地方公共団体のいわゆる意見を聞いてやらなければならぬ、こういうことがありますから、この場合でもそういうふうにやるほうがすなおでやり方としていいんじゃないだろうか、こう思いますので、これはもちろん、同意なり意見を聞くということは、地方議会の議決を経なければなりません。そういうことをできたらひとつやって、関係する地方公共団体も同じ気持ちになって、一緒にこういうふうなものをやるのだ、こういう気持ちにならしたほう一ならしたほうというのは少し言い方がおかしいです。が一そういうものが私はほしいと思うのです。が、そういう意味から、どうでしょうか、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/158
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159・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 先ほどからと申します。ように、気持ちとしては、そうあるべきだと思えばこそ、都知事あたりと密接な連携をとって、意見も十分聞いてやっておるわけでございますが、ここにいま法律を提案しておるわけでございますので、やはりこれを御審議願いましたら、この法律のとおりにやらしていただきたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/159
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160・鈴木壽
○鈴木壽君 法律を今度変えて、そういうものをつけ加えてやれというのでなくて、この法律がおそらく通るでしょう。通ったあとも、東京都のそういうものがあったほうが私はいいことではないか、こういうふうに思うから、どうでしょう、そういうことについて知事あたりと話をしたらどうか、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/160
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161・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 東京都議会が賛成の議決をなさることは、これは御自由ですけれども、ここであらためて議論すべき性質のものではないというふうに考えております。ですから、私どもも気持ちとしてはそうでございまするので、東京都の意思を都知事が代表しておるものと考えて、よく話し合っておるということをひとつお認めを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/161
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162・鈴木壽
○鈴木壽君 そう言われると、またもっとやりたくなるのですけれども、ただ今回の第十八条は、「小笠原村を置く。」という、それだけの規定では私はやっぱりおかしいと思うのです。一方的な——いや、これは当然だ、国がやるのだ、こう言ってしまえばそれまでですけれども、そういうやり方をいままではとらなかったし、新村の設置の場合、さっき言いましたように、ちゃんと関係する地方公共団体の意見を聞いてやらなければならぬ、こういう一つの方式といいますか、しきたりといいますか、そういうものができているのですよね。だから、それをなぜやれないことにしたのかということを実は私お聞きしたがったのです。けれども、まあまあここまで来たのだからと思って黙っておりましたけれども、そういうこともありますから、いまさら私、ここに文章をつけ足してそういうものをやれとか、絶対にそういうものが必要だから、それなしにはこの法律の効力を発生さしてはいかぬとかいうことを言うのじゃない。これからの話し合いで、東京都もやはりひとつそれに賛成するというようなことがあったら、うまくいくんじゃないだろうかなというふうに私思うから、どうだろうかと、こういうことなんですよ。ただ、これが正しいんだ、これによってどうにでも法律そのものはやらしてもらわなければいけないのだ、こういうこととは私の気持ちは違うんです。答弁はよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/162
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163・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 他に御質問もなければ、本連合審査会はこれにて終了することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/163
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164・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 御異議ないと認めます。よって、連合審査会は終了することに決定いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105813905X00119680521/164
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