1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年三月二十八日(木曜日)
午前十時三十一分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 青柳 秀夫君
理 事
植木 光教君
小林 章君
西田 信一君
柴谷 要君
中尾 辰義君
委 員
青木 一男君
伊藤 五郎君
大竹平八郎君
大谷 贇雄君
田中 茂穂君
竹中 恒夫君
徳永 正利君
藤田 正明君
木村禧八郎君
田中寿美子君
戸田 菊雄君
野溝 勝君
瓜生 清君
須藤 五郎君
国務大臣
大蔵大臣 水田三喜男君
政府委員
外務省経済局長 鶴見 清彦君
大蔵政務次官 二木 謙吾君
大蔵省関税局長 武藤謙二郎君
大蔵省銀行局長 澄田 智君
事務局側
常任委員会専門
員 坂入長太郎君
説明員
大蔵省国際金融
局次長 奥村 輝之君
食糧庁業務第二
部長 荒勝 巖君
参考人
日本開発銀行総
裁 石原 周夫君
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本日の会議に付した案件
○日本開発銀行法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
○アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法
律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院
送付)
○関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
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001・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
日本開発銀行法の一部を改正する法律案、アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、関税定率法等の一部を改正する法律案を便宜一括して議題とし、質疑を行ないます。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/1
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002・柴谷要
○柴谷要君 関税定率法の一部改正案につきまして二、三質疑をいたしたいと思います。
まず、第一に、最近アメリカが実施しようとする課徴金そのものはガットの規定に違反するものであると私は思うのであります。それにもかかわらず、アメリカが実施の方向に傾いているのは、国際収支の改善、ドル防衛という表向きのねらいのほかに、二つの背景があるといわれております。その一つは、輸入課徴金創設のきっかけとなったEECにおける国境税の強化であります。もう一つは、米国議会を中心とした保護貿易主義の台頭という国内問題がからまって表面に出てきたと思われる節があるのであります。もしそうであるならば、特に秋に大統領選挙が控えていることもあり、国内の声を無視するわけにはいきません。そこで、ほぼ実施されるのではないかと私どもは考えるのでありますが、これらの問題についての見通しをひとつお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/2
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003・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) これは先生のおっしゃるような状況で出てきているものでございます。で、秋のガットの閣僚会議では、アメリカの代表は、当時は議会で輸入制限法案が問題になっているという程度の段階でしたので、いまの大統領が在任中は輸入制限法案は法律にしないということを言いました。これは拒否権を発動すると、こういうことだったと思います。ところが、暮れになりまして国際収支が非常に悪いということになりました。それから、いま先生がおっしゃられましたように、アメリカは、アメリカの国際収支が悪いのは、一つはヨーロッパの黒字国が黒字をため込むから悪いんだ。そこで、その問題をしきりに追及しておりましたのと、さらに、特にドイツが国境税調整で、ことしの一月一日から率を上げてしまう。そうすると、黒字の国がそういうものの率を上げると、さらに黒字を吐き出すというのと逆の方向へ動くというので好ましくないということで、非常にこれはOECDでドイツに対してやめるように言っておりましたが、ドイツはどうしてもやめない。そこで、これは私の想像ですが、年末になりまして大議論の末、ドイツがそういうことをやめないんならばこちらもやったらどうか、アメリカの国際収支は非常に悪いということで、三十億ドルの国際収支改善という一月一日の大統領教書を出しまして、その中で、貿易面でも五億ドル改善したい、そういうことになったわけであります。で、その後の動きは、お話のように、いままでガットのチャンピオンといわれまして、世界の貿易の自由化ということを推進してきましたアメリカがこういう方式をとる、内容はきまっておりませんが、先生いまおっしゃいましたように、課徴金というような方法をとるということになりますとガットに違反します。そこで、それは非常に将来の国際貿易の健全な発展に好ましくないということで、各国とも、何とかそれをやめさせるようにということをいろいろと努力してきたわけでございますが、その中の一つとして、今度ケネディラウンドの繰り上げ、各国が繰り上げるなら、それでアメリカの国際収支に寄与するから、このケネディラウンドの繰り上げという方法は前向きの方法ですので、これで課徴金を思いとどまるようにということをいまやっている最中でございます。まず初めにドイツが熱心に主張しまして、EECの中で、フランス以外の各国はこれに同調する。その次にイギリスが、また下院で演説をしまして、これを繰り上げの方向でやる。それから日本も、EFTAの各国もその方向へ踏み出しますので、問題は、いまフランスがどうするか、いまの見通しとしましてはフランスの態度がかぎになっている。で、フランスさえ賛成してくれれば非常にものごとは明るい方向へ動くのではないか、そういうふうに思われます。
なお、もうひとつ先生がおっしゃられました点ですが、国内の輸入制限の関係、この関係はなかなか根強いものがありまして、必ずしも楽観を許さないという問題はあると思います。いまのところそういうことで、右に動くか左へ動くか、非常に大事な段階に立ち至っている、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/3
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004・柴谷要
○柴谷要君 カナダやイギリスが、かつて輸入課徴金を採用したときには、アメリカはガット違反だと言って非難したほどで、そういう事例があると思う。そのアメリカが輸入課徴金を実施する場合には、国際収支の赤字国が緊急対策として輸入を制限できる措置をきめているガット十二条の規約を採用するといわれているが、国際収支を理由とする輸入制限のできないガット十一条が再び十二条を採用できるかどうか、これには疑義があると思う。ましてアメリカが発展途上国への輸入賦課税を免除するようなことがあれば、ガット第一条の最恵国待遇の原則に反することになると思うが、政府の見解はどうか、これを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/4
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005・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) 課徴金がガットに違反するという点、これは先生のおっしゃるとおりでございます。それから、後進国に対して適用しないで、先進国にだけ適用する。そうしますと、たとえばガットの形の上ですと、国境税調整というものはガットに違反しないということになるのですが、その場合でも後進国に対しては適用しない、差別適用ということになりますと、これもガットに違反する。そこで、アメリカはその場合にウェーバーをとるよりしようがないだろう。で、私どもは、目下のところ、そういうことをやめるようにということを強く言っているわけでございますが、さらに万が一ガットの場でアメリカが、こういうものを反対にもかかわらず実施するということでガットの場に取り上げられるようになりましたら、日本としてはその場でさらに反対をする、こういうことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/5
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006・柴谷要
○柴谷要君 これまでガット体制のもとで世界貿易の拡大を推進してきたアメリカが、ドル防衛というこの一点でガットの存在を無視するような対策をとることは許せない行為だと思う。これに対して一体どう考えておられるのか、この点もひとつ説明を加えてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/6
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007・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) これは全く同意見でございまして、特に先ほども先生おっしゃられましたが、カナダやイギリスがいろいろなことをやるというその際に、アメリカは強くそういう措置をとらないように反対をしておったわけでございますが、ガットの大黒柱のような国がそういうことをやるということは、特にガットの将来というのに対して非常に暗い影を投げるものだと思います。さらにアメリカがそういうことをするというと、ほかの国に連鎖反応が起こる、こういう心配がございます。そういう意味で、日本としてはどうしてもこういうことはやめてもらいたいということを強く言っているわけでございますが、これはまた日本ばかりではなくて、他の先進国も非常に憂慮して、したがいまして、ケネディラウンドをアメリカには繰り上げを要求しないで、外国は繰り上げをする、こういうことをしても、何とか世界の貿易が自由化のほうへ進んでいるのを逆転させるようなことが起こらないようにしたいということで、いま全力を尽くしている、そういう状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/7
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008・柴谷要
○柴谷要君 関税一括引き下げの繰り上げ実施ということによって米国の輸入課徴金等の貿易制限処置を断念させることができるかどうか。それから、現在、輸入付加税措置のため民間使節団がアメリカに行っている。この関税一括引き下げの繰り上げ実施が交渉の材料になっているのか。繰り上げ実施品目の中に産業界に及ぼす影響が非常に大きなものがあると思われるのですが、これらの点をどう考えておられるのか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/8
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009・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) まず、第一の御質問は、繰り上げ実施でアメリカの課徴金またはそれに類似する措置をとめられるかどうかということでございますが、これは現在ではフランスも含めた先進国のほとんどが繰り上げ実施をするということで、その条件として、アメリカが輸入制限的なこういった課徴金のような措置をとらないということを言っておりますので、実際の見通しとしては、各国の歩調がそろった場合には。それでもなおかつアメリカが課徴金をやるということはほとんど考えられないと思います。
それから、第二点の、佐藤使節団がこれを条件にして交渉をしているのかという御質問でございますが、御承知のように、佐藤使節団は民間の使節団でございまして、さらにもう一つは、アメリカの態度は、公式にはまだ政府としてはやるやらぬもきまっていない。したがって、中身もきまっていないということでございますので、交渉ということにはなりませんけれども、しかし、日本もこういうことで努力をするのだから、ぜひ思いとどまってもらいたい、こういうことは話しております。
なお、アメリカの内部の動きは非常に複雑でございますが、アメリカの中にも、日本がそういうことをやるというのを大いにヨーロッパのほうへ宣伝をしてもらって、ヨーロッパのほうもそれに同調するようにやってもらいたい。アメリカの財界としてもヨーロッパの財界に繰り上げを頼んでいるのだというような状況でございます。
それから、繰り上げでもってどういう影響が起こるかということでございますが、実は、この繰り上げの問題につきましては、イギリスは一応の案を発表しまして、それでEFTAの国はそれに追随するということでございます。それから、EECのほうは繰り上げをやるかやらぬかということがまだはっきりしておりませんので、どういう案になるか、最後のところ、一体いつの分をどのくらい繰り上げるのかということは、おそらくもし繰り上げにまとまるとすれば、これから各国が集まって相談をするということになると思います。で、そのときに繰り上げのしかたでございますが、いまのケネディラウンドでも、各国の国内法の関係でもって、たとえばアメリカはことしの一月一日に第一回目のを実施しましたが、日本、それからヨーロッパ、これは七月一日に第一回と第二回とをあわせて実施する、こういうふうに違いますので、全体としては繰り上げを実施する国の間でバランスをとるということは考えられますけれども、それがこまかいところまで一致するということは必ずしも必要ないのじゃないか。それから、また、それもなかなかむずかしいことでございます。しかし、ある年度で繰り上げがおくれた分は、また次の年度で少しほかよりも早くするということで、繰り上げ全体としてはバランスをとるというようなことにたぶんなるだろうと思っております。そういう状況ですので、一体どの産業にどういうふうな影響があるかということはなかなかむずかしいのでございますが、いまケネディランドの関係の繰り上げで影響が大きいだろうと、そういわれております業種というものは、たとえばまず一番心配になるのは中小企業関係でございますが、これは繊維とか雑貨、そういうものが影響をするのじゃなかろうか。それから、そのほか先進国と競合するものについても若干の影響は出るだろう、そういうふうに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/9
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010・柴谷要
○柴谷要君 関税暫定措置法で認めている重要機械類の免税制度等は毎年一年間の暫定措置として延長されているのですが、すでにその目的をもう達しているものと私ども思っているわけです。いつまでも適用期限を延長していくのでは暫定措置の目的は失している、こう考えられる。そこで、永久的な措置として考えて差しつかえないのか、これらの問題についてひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/10
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011・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) 永久的な措置とこの制度を考えておるわけではございません。しかし、御承知のように、ケネディラウンドの問題もございますし、それから、国連の貿易開発会議でいろいろと議論されている後進国に対する特恵の問題もございますし、日本の産業を近代化するという必要は次々と起こってきますので、やはりもう一年延長させていただきたい。法律は延長させていただきますけれども、内容につきましては、次々と必要のなくなったものは落とす。しかし、新しく必要ができたものは入れると、こういうことでやっております。で、実際の品目について申しますと、初めて外国で新しい非常に能率のいい機械ができたというときにはこの制度に乗りますけれども、しばらくしますとそういう機械が日本でできるようなことになる。そうしますと国産保護でそれは落とすということで、中身は次々と入れかわっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/11
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012・柴谷要
○柴谷要君 今回の改正品目は、簡易税率を除いて百五十六品目となっているが、そのうち、いわゆるアドバンスカット品目といわれているものが二十六品目入っている。わが国がこれに踏み切ったのは低開発国対策のためと思われるが、他の主要諸国ではいかなる対策を立てているのか、まずお聞きしたいことと、それから、国内産業にどのような影響が及ぼされるのか、これらの点についてひとつお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/12
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013・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) これは先生御承知のように、ちょうど国連の貿易開発会議が始まると、そこで低開発国、開発途上国のほうが相当いろいろな要求をしてくるだろう。そこで、ケネディラウンドでいずれは実施することになっている品目を一挙に引き下げを実施して後進国のためにサービスしようと、こういうことでございますが、ほかの国がどういうふうにやっているかということでございます。国で申しますと、アドバンスカット、あるいはアドバンスインプリメンテーションを実施すると約束しました国は、アメリカ、イギリス、カナダ、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、スイス、EEC、日本のほか、これらの国が約束をしているわけでございます。そこで、そういうことをして国内産業に対して困ったことが起きないかという問題でございますが、これは実はあまり声を大きくして申し上げにくいのでございますが、多分に開発途上国に対するゼスチュアという意味がございまして、国内には犠牲を払って非常に苦しいところをやるというような品目は選びませんで、国内に対して心配のあるような影響はないだろうと、そういう品目だけを選んで品目をきめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/13
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014・柴谷要
○柴谷要君 まあ国内産業に影響のないような品目を選んでやったということは用意周到でけっこうだったと思います。そこで、次の質問を申したいと思うんですが、ケネディラウンドが実施されることによって協定税率が適用されない国が出てくるわけですね。具体的には中共との貿易についてはこの税率が適用されない。したがって、今後これらの国との貿易が阻害されるような結果にならないよう、貿易の振興のためどのような措置を一体考えているのか、この点をひとつ明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/14
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015・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) ケネディラウンドの状況、これはガットの状況が全部そうでございますが、ガットの考え方というのは、世界じゅうの貿易を自由化し、関税を下げていく。そのためには一国だけがかってに下げるということはいろいろとむずかしかろう。それは国際収支の面から考えましても、あるいは国内産業に対する負担を考えましても、問題があるわけでございます。そこで、お互いに交渉してお互いに下げる、そして、その結果をメンバーの各国にみな適用すると、こういうことで関税を下げていこうというのがガットの関税引き下げの考え方でございます。そこで、ガットの加盟国にはそういうことで一々交渉いたしまして、これはケネディラウンドでは一番大きな関税交渉でしたので、非常に長いことかかって各国と交渉したのですが、そういうことでまとまった結果が、まず加盟国の間に適用される、その次はソ連のように、日本とソ連のように二国間の条約でもって最恵国を約束しているこういうグループがございます。そうしますと、これは一番低い税率を適用するということですから、その条約に従って、ケネディラウンドその他のガットの状況がソ連に対しても適用される、そういうことになります。ところが、ガットの加盟国と申しますが、正確に言いますと、その中に三十五条を援用していると、こういう国がございます。で、三十五条を援用している国は、日本に対して援用している場合には、日本とその国との間はガットに入っていないも同然なことになります。で、そういう国の中で、日本に対して実際は差別待遇をしていない、こういう国がございます。その場合に日本も、これはガットの規定は二国間には適用になりませんから、条約上譲許税率が適用になるわけではございませんけれども、しかし、向こうも差別待遇をしないということで、こちらも差別待遇をしない、こういう便益関税という制度でそういうことをいたしております。そうでなくて、向こうが差別待遇をしている国と、あるいは中共のように国交がない、したがって、正確にはどういう税率を適用しているかわからん、こういう国に対しましては譲許税率は適用になりませんで、国定税率を適用する、こういうことにしております。その場合、先生がおっしゃいましたように、国定税率と譲許税率が差のあるものについては、国定税率の適用を受ける国について高い関税率が適用される、こういうことになります。そのためにそういう国との貿易が阻害されては困るという問題が、先生御指摘のように、起こってまいります。その対策といたしまして私どもの考えておりますのは、今度御審議願っておる法律の中に、大豆とか銑鉄とか、その他の品目の国定税率をケネディラウンドの譲許税率が下がるのに合わせて下げるということを御審議をお願いしてあるわけでございます。これを通していただきますと、そこの点については、法律上、形だけ申しますと、譲許税率は適用にならないのでありますが、しかし、実質的には適用される国定税率が譲許税率と同じであるから、効果としては譲許税率が適用になったと同じことになる、こういうことになります。
そこで、中共との貿易でございますが、金額で申しますと、今度御審議をお願いしております法案を除きまして、約六〇%が差がない。ところが、さらに今度お願いしております十九品目の国定税率の引き下げということで、これが金額のウエートで約二〇%になります。そこで、約八〇%については差がない、こういうことになります。なお、残り二〇%についてどうするかという問題でございますが、その点につきましては、二つの点から考える必要があるだろうと思います。一つは、御承知のように、後進国が相当日本に対して差別待遇をしている国がございます。そういう国に対してこれは外交交渉をしておりますときに、ともかくお互いに世界貿易を発展させるという観点からガットが考えているように、無差別最恵国でいこうじゃないか。そこで私のほうは、あなたのほうが差別している間は、日本のほうも差別待遇をせざるを得ないが、これをお互いに最恵国の待遇を供与し合うということにしようじゃないかということで、後進国の差別撤廃の武器にこの譲許税率というものを使っております。そこで、そういう武器という点から考えまして、極端に申しますと、たとえば国定税率を全部譲許税率と同じにまで下げてしまう、日本の関税率が一本の体系、こういうことにいたしてしまいますと、相手のほうは、いや、別に日本は形の上では譲許税率を適用するとか国定税率だとかいうけれども、中身は同じなんだから、日本から何ももらうものはないのだ、そういうからのようなものをもらうために、自分のほうは差別を撤廃するというのではつまらぬ。それよりも、とにかくこれは非常に後進国は日本が輸出超過になっている国が強いので困っているのですが、後進国で日本が輸出超過になっている国は、たいてい二国間の収支均衡だと、もっと日本が輸入してくれ、これに対しまして日本のほうは、それはおまえの国の産品が高いから輸入できないのだということを主張しているわけでございますが、そういうので、非常に後進国との差別撤廃の交渉は、いまでも非常に苦労しております。そういう観点でひとつものを見る必要がある。
それから、個々の品目につきまして、これは品目別に異なりますが、国内産業への影響ということを考えていく必要がございます。そこで、中共との貿易に戻りますと、いま残っております品目の中で一番比重の多いのは生糸でございます。その次が絹織物でございます。それで、まず生糸のほうが解決しませんと、絹織物のほうは解決いたしませんので、まず、生糸でございますが、この二品目だけで今度ケネディラウンドの関係で差がつく。一四%の中の半分近くになりますその生糸につきまして、これは政府の中で四十三年度中にこういう点を検討をして、国定税率をケネディラウンドで引き下げられる率に合わせられるかどうかという結論を出そうということになっております。その検討を要するという点は、これは主として農林省の関係でございますが、農林省としては中共の生糸がどのくらい入ってくるか、値段はどのくらいになるか、いまでも相当輸入があるわけでございますが、それの見通しをつけ、それから国内の養蚕業にそれがどういう影響を及ぼすか、そこのところを四十三年度中に検討をして、この検討については前向きで国定税率を譲許税率まで下げる、そういうねらいでこの検討をしよう、そういうことになっております。その他の品目につきましても、特に主として中共が関心を持っているこういう品目につきましては、同じような検討をいたしたいと思っております。いまそういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/15
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016・柴谷要
○柴谷要君 たいへんどうも克明な御答弁をありがとうございました。
そこで、私しろうとなものですから、私自身がしろうとでわかるようにお尋ねするわけですが、その中共との貿易で差がないものが六〇%、それから、今回の国定税率の引き下げに伴って十九品目が行なわれるので、これが二〇%、いわゆるガット加盟の国と差のないものが大体八〇%、中共と貿易の場合にこれが八〇%と言える。そのほかに、主として生糸、絹織物等の問題について関心が高い問題であるから、これに見合うようにこれから検討をしていこう。また、そのほかにも、中共が重視しているような品物については個々の問題について検討を加えていこう、こういう御答弁だと了解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/16
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017・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) お話のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/17
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018・柴谷要
○柴谷要君 それでは、最後の御質問でございますが、関税率の改正の中で、特に問題があると思われるのがトウモロコシではないか。今度二次税率を四〇%、相当に引き上げられているが、これらは国内イモでん粉業者の保護のためなのか、また、従価四〇%という数字の根拠をひとつお聞かせを願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/18
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019・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) 食糧庁の荒勝業務第二部長が見えておりますので、食糧庁の第二部長から詳しく御説明をお聞き願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/19
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020・荒勝巖
○説明員(荒勝巖君) お答えいたします。
私たち、毎年でん粉につきまして農安法というものがございまして、国内産のイモ並びにでん粉につきまして年々政府で値段をきめまして、そうしていわゆる基準価格というものをきめましてその年の基準をきめているわけでございます。それに対しまして、最近国内のイモでん粉がだんだん減少してまいりました関係で、輸入にたよらざるを得なくなってきました。その結果、最初はタイ国あたりのタピオカでん粉等でございましたが、逐次、最近技術の発達によりまして、トウモロコシからでん粉をつくるいわゆるコーンスターチというものが年々ふえてまいりまして、ことし、いわゆる四十二イモ年度で約四十万トン前後のコーンスターチを生産するようになった次第であります。それの結果、いわゆる外国産のトウモロコシによりますでん粉が非常に市場に流通するようになりました結果、国内産のイモでん粉と、外国産のいわゆる日本で加工されましたコーンスターチが競合する、そういう値段の面で非常に競合が強くなってきた。ところが、国内産のイモでん粉のほうにつきましては、先ほど申し上げました農安法に基づきまして、多少でも年々政府の基準価格を引き上げざるを得ない。ところが、外国産トウモロコシのほうは、逆に特にアフリカとか中南米のトウモロコシが非常に大量に生産されました結果、年々値下がりしてまいりまして、つい二、三年前まではトン当たり大体平均いたしますと六十七ドルから七十ドル前後で、外国産トウモロコシによるコーンスターチが国内産イモでん粉よりもある程度高い値段だったということで、そう国内市場に対して強い圧力にはならなかったわけでございます。ところが、昨年の秋ごろから急速にその外国産トウモロコシの値段が下がってまいりまして、大体昨年の秋からこの三月ごろまでの平均の輸入トウモロコシの値段が、大体CIFで六十ドル前後に現在なっているわけでございます。そういたしますと、この六十ドル前後のトウモロコシをそのまま従来のように一〇%前後、あるいは二五%という関税をかけましても国内産のイモでん粉と非常に競合いたしまして、その結果、食糧管理特別会計で相当量の国内産イモでん粉を買い上げてもなお追いつかないというような結果になりまして、今回いわゆる二次関税率をキロ当たり八円六十銭の関税をお願いするようなかっこうになった。その具体的に値段を申し上げますと、トウモロコシの輸入価格を、先ほど御説明申し上げましたように、CIF価格六十ドルということで、それを円に直しますと、約トン二万一千六百円ぐらいかかる。それから、コーンスターチをつくりますと、加工歩どまり約六六%という前提で計算いたしますと、コーンスターチのいわゆる原価というものがトン当たり約四万二千七十六円と、こういうふうになりまして、そうして、そういうことから計算いたしますと、国内産のイモでん粉と抱き合わせをして国内に流していく。そういうふうに国内産の馬でん、甘でんは非常に高い値段でございますので、たとえば甘でんだとトン当たり五万九千六十七円というふうな値段でございますので、それらを平均いたしますと約五万五千百四円という値段になりまして、その五万五千百四円からコンスの販売原価として四万二千七十六円を引きまして、歩どまり六六%をかけますと、キロ当たり八円六十銭というふうな値段になるような次第でございまして、そういうことから計算をいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/20
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021・柴谷要
○柴谷要君 現行までは第一次税率一〇%、二次税率二五%としてやっておったわけですね。ところが、今度の改正によりますと、第一次はゼロ、第二次が四〇%、こういう改正なんですが、一次をゼロにして二次を高めたこの根拠ですね、これをひとつ局長のほうから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/21
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022・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) これは非常にわかりにくい改正をお願いしていてまことに恐縮なんでございますが、先ほど先生が御質問になられましたように、一体何のねらいをもってこういうことをしたのかということでございますが、一つは、こういう農産物につきましては後進国が相当関心を持っております。ちょうどこれが発表になります時期は国連の貿易開発会議が開かれるという時期でございまして、そして関税率審議会でもそういう議論は非常に多かったのでございますが、この際、農産物の関税を上げるということは非常に日本の関税政策の姿勢を疑われて困るんじゃないかと、そういう心配をいたしました。そこで、なるべく関税を日本は上げたという非常に単純な形にしたくないという考慮もございました。そうしますと、その点から申しましても、二次税率は上がりますが、二次税率で輸入されるというのはほとんどないわけでございますから、実際に一次税率で入る。この一次税率で入るというのは、政府から割り当ての証明書をもらった人がその数量だけこの一次税率、安い税率で輸入できるわけでございます。輸入の大部分はそれで入ってくるので、そちらのほうをゼロにしたのだということは説明にも都合がいいという問題も一つございます。
それから、もう一つ、先ほど荒勝部長が申し上げましたように、輸入のトウモロコシからつくったコーンスターチは安いので、その安いものと国内のイモからできたでん粉とを抱き合わせをする。抱き合わせをする場合に、輸入原料からできたほうが安いほど抱き合わせの比率がうまくいくと、こういうこともございまして、そこで、たいへんわかりにくいのでございますが、一次税率は無税で、二次税率は引き上げると、それで結局二次税率で入るものはないので、一次税率で入ってきたもののコストがいままでよりも安くなる、その安い差益をコーンスターチの業者にはポケットに入れさせませんで、国内のでん粉の高いのを引き取る、それの抱き合わせの材料にする、そういうことに使っております。そこで、たいへん複雑な改正をお願いしておる、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/22
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023・柴谷要
○柴谷要君 それで内容がわかってきたのですが、私は、国内産のイモでん粉業者を守るということにあるならば、一次をゼロにすることのほうが危険じゃないかという考えをしたわけなんです。ところが、安く入れて、そして抱き合わせて精製をする、そして価格を下げるけれども、その利益は国内のでん粉業者のほうに還元させる、こういう考え方なんですね。それで、はたして将来、非常に関税が安くなったから外国の安い品物をどんどん入れて精製をするというようなことになるというと、国内のイモでん粉業者が置き去りにされていくんじゃないかという心配がまたここに生まれてくるのですよ。この点については食糧庁も大蔵省本どう考えておられるのか。これは安いものが入ってきて、これを精製してどんどんもうけて売れるということになれば、国内の高いものを買って抱き合わせてという複雑なことをしなくても、抜けがけの功名じゃありませんけれども、そういう安いものを入れてやろうとする者が出てくるのではないかという考え方をするわけですがね。しろうと考えですが、そういう点についてのお考えはどうなんでしょうか。農林省と大蔵省両方から意見を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/23
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024・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) いずれ詳しくあとで農林省のほうから説明があると思いますが、簡単に申しますと、一次税率というのは、政府から割り当ての証明書をもらった限度だけしか適用されない、そういうことになります。そこで、割り当ての数量を先生が御心配のような事態が起こらぬようにしぼる。しかし、これはあまりしぼり過ぎますと、また国内の物価に悪い影響を及ぼすと、こういうことがございますが、まずその割り当ての数量を政府がしぼるわけでございますから、そこでそういう御心配のことがなくなるようになるし、それから、割り当ての証明書をもらったものは、その結果が必ず拘き合わせにいくようにという構造を考えております。そういう割り当ての証明書をもらって輸入しても、その差益は拘き合わせのほうに吸収されてしまう、そういう形でもって御心配のようなことが起こらないようにということにする考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/24
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025・荒勝巖
○説明員(荒勝巖君) 日本におきますでん粉の需給関係等からいたしまして、大体四十一イモ年度、いわゆる去年のものでございますが、大体年間百二十万トン前後の需給でちょうどバランスが合うというようにわれわれは計算しているわけでございますが、四十二イモ年度、去年の十月から今年の九月までの年間の需給でございますが、大体五、六%前後需要がふえるだろうということで、たとえば本イモ年度は百二十七万トン前後の需要がある、こういうふうに計算している次第でございます。そのうち、いわゆる国内産のカンショでん粉が四十九万五千トン、それからバレイショでん粉が約二十万八千トン、小麦粉でん粉というのが約七万トン前後、そのほかどうしてもタイ国のタピオカでん粉、あるいはそのほかの外国産でん粉を多少入れなければなりませんので、約二万七千トンばかり入れますと、いわゆる残り差額が大体コーンスターチに置きかえざるを得ないということで、ことし約四十七万トンのコーンスターチを計算の中に織り込んでいるような次第でございます。そういうふうに、先ほど関税局長のほうから御説明がありましたように、年間の需給見込みを立てまして、不当にしぼることもなければ、また、過大な数字もいたしませんで、大体過去の傾向値から本年度予想される需給見込みを立てまして、そのうち、国内産のでん粉等から差し引いた残りをいわゆるコーンスターチに充てる。この分につきまして、先ほど関税局長からお話がありましたように、政府といたしましては、いわゆる一次関税で大体これを入れることにいたしまして、それ以外のもの、いわゆるトウモロコシについては自由輸入を認められているのではありますが、二次関税をキロ当たり八円六十銭の関税をかけることによりまして、事実上ある程度輸入を制限しているということで国内の需給バランスを合わせるとともに、いわゆる国内糖化用のでん粉につきましては、国内産のイモでん粉と抱き合わせしまして、安いコーンスターチと高い国内産のイモでん粉で、何とかの形でプールしまして消化されていくようにわれわれはねらっている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/25
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026・柴谷要
○柴谷要君 いままでは第二次でも二五%、第一次は一〇%と、こういう状態でいて、一次、二次の差が少なかった。しかし、今回はゼロから四〇というのですから、非常に差ができてきた。そのゼロということは、説明を聞いてみると、国内イモでん粉業者の保護のためには、割り当て制をもって第一次の輸入割り当てをするのだと、こういうことで来たわけです。この割り当ては農林省がおやりになるのですか、大蔵省がおやりになるのですか。これは一次の場合の何トンの輸入量はどこどこ業者にやらせると、こういう割り当ての、何といいますか、証明というか許可というか、そういうものはどちらでおやりになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/26
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027・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) これは二段になっておりまして、どれだけの数量というワクをきめるほうは関税率審議会の割当部会というのできめます。そのあと実際の切符を切るほうは農林省がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/27
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028・柴谷要
○柴谷要君 そこで、うがった質問で申しわけないのですが、昔割り当てとか切符制度があったときに、業者はこれをたくさんもらってやることが利益が多いということで、非常に切符をもらうためにいろいろの行動が伴ったのですね。今回のこういう処置に伴って、ゼロの第一次税率を受けて輸入ができるということになると、たいへんその利益が得られるということで暗躍する業者が出てくるのじゃないか、こう思いますが、これらの問題については、これはうがった質問で申しわけないのですけれども、これらの問題が起きないとは断言できないと思うのですが、これらの問題にどういうふうに対処していこうというお考えですか、これをちょっとお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/28
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029・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) 先生御指摘になりましたように、関税割り当てが昔の輸入の外貨割り当てと同じような弊害が生ずる危険がございます。そこで、関税局といたしましては、なるべくこういう関税割り当てという制度はやめていきたいと、そういう根本姿勢でおります。しかし、先ほど来御説明いたしましたように、トウモロコシにつきましては非常にむずかしい条件のもとですので、どうも例外的にこういう制度をとってやる。しかも、証明書につきまして抱き合わせがつくということも、これまたたいへん例外的なことでございますが、そういうことでやっていくことは、これはやむを得ないんじゃないかということで関税率審議会のほうでもお認めになった、わけでございます。その運用につきましては、これは非常に農林省としても苦心が要るということは事実でございます。この場合に、ただ、割り当てをもらった人は安いものでそのもうけがポケットに入るということになっておりませんで、だき合わせでもってその差益をはじき出すというような形になっておりますので、このトウモロコシにつきましてはそういう弊害は少ないかと思いますけれども、先生が御指摘になったような問題は皆無だということは言い切れないと思います。そこで、農林省のほうでこの運用についていまいろいろと苦心しておるわけでございますが、実際にどういうふうに割り当てるかということにつきましては、農林省のほうから答弁していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/29
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030・荒勝巖
○説明員(荒勝巖君) 今回新しく制定さしていただきますゼロ%の関税の分につきましては、いわゆる糖化用にだけ限定しておる、いわゆるブドウ糖、あるいは水あめに使うということの分についてのみゼロ%の関税で、いわゆるこういう用途といいますか、のりとかその他のほうに使います関税のほうは一〇%、こういうふうにきめておる次第でございますが、このゼロ%の関税の分につきましては、従来、昨年、いわゆる四十二会計年度までは政府のほうでトウモロコシをコーンスターチメーカーに対して、工場の設備能力とか過去の実績とかを勘案いたしまして、一定の比率でコーンスターチメーカーに割り当ててきたような次第でありますが、この四十二会計年度以降の、いわゆることし四月からはそういう制度を改めまして、だんだんコーンスターチメーカーもふえてまいりましたし、なかなかある一定の尺度で割り当てることはむずかしいというふうに判断いたしまして、考え方を多少改めまして、先ほど多少御説明いたしましたように、いわゆる国内の糖化メーカーが国内産のイモでん粉を引き取った数量に比例いたしまして、安いゼロ%でできましたコーンスターチが自動的にそこに割り当てられる。その割り当てられた切符を企業努力によって集めてきたコーンスターチメーカーに対して、政府はその数字をそのままどんぴしゃ割り当てるということで、政府自身において、ものさしを勘案してコーンスターチメーカーに安いトウモロコシを割り当てるようなことはしない方針で現在進んでおります。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/30
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031・柴谷要
○柴谷要君 まあ私が申し上げたことに注意してくれればけっこうなことでありますし、このよい制度が完全に運営されてこそ、初めて国内産業によい影響を与えると思いますので、大蔵省並びに農林省の十分なる御努力をお願いして、最後の一間で終わりたいと思うのですが、衆議院のほうでは、この関税定率法の一部改正をめぐって附帯決議がついた。附帯決議の内容というものは十分私ども検討して、本委員会も超党派で賛意を表して後ほど上程をしたいと思うのですが、これに対して、大蔵大臣が出席しておりませんから、局長にお尋ねしておくのですが、大蔵大臣はこの附帯決議に対してどのような意思表明をなされたか、それを聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/31
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032・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) 御趣旨に沿って善処いたしますという趣旨の返事を衆議院でいたしておりますので、今度も同じ答弁をすることになるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/32
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033・柴谷要
○柴谷要君 大臣が、御趣旨に沿って善処いたしますということなんですが、これはまあおざなりの答弁ですね、まあこれはわかりました。だけれども、先ほど局長が私に答弁をされました内容は、非常にけっこうな御答弁でございましたので、ぜひ大臣もその線に沿って、ひとつ中共との貿易の問題については、なお一そう努力していただくように要望しておきたいと思うのですが、大臣にその旨をお伝え願って、ぜひ実を結んでいただきますようにお願いをして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/33
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034・須藤五郎
○須藤五郎君 課徴金の問題や何かにつきましては、先ほどから柴谷委員が質問いたしましたから、重複を避けまして、私は多少時間があるようですから、この法案の条項について少し質問をしたいと思うのです。
第九条に、不当廉売関税に関して「当該貨物の正当価格と不当廉売価格との差額に相当する額と同額以下の関税を課することができる。」という条項がありますが、従来こういう第九条の条項に該当するような実例はあったのか、具体的にちょっと説明してもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/34
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035・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) この不当廉売関税の改正の趣旨でございますが、これは日本の輸入の問題というよりも、元来は輸出の面で、特にアメリカでダンピングだということで高い関税をかけられるということがたびたびございました。そこで、ケネディラウンドの際に、そういうことは困るということで、アンタイド・ダンピング・コードというようなものができまして、これでもってダンピング防止の関税を乱用されないようにということで、手を縛ろうということでこのコードができたわけでございます。
そこで、日本のほうではいままでこれを適用した例はございませんけれども、このコードができて、そしてアメリカのほうが手を縛られるということは日本のために非常に利益になることでございますので、日本でもそれに合わせて、これは外務委員会のほうにコードはかかっておりますが、それに伴った手続等の規定をしておこう。で、日本のほうは実際これを適用するということは今後もほとんどないと思いますけれども、アメリカに要求して、そしてアメリカのほうの手を縛って、こちらのほうも形だけ整えておこう、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/35
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036・須藤五郎
○須藤五郎君 この第九条に「当該産業を保護するため」と、こうあるのですが、この当該産業の中には当然農業も入るのですか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/36
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037・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) これは一次産業まで入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/37
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038・須藤五郎
○須藤五郎君 全部入るのですね。
そうすると、これで課税をして、廉売によって損失を受けた人たちを守るというのですが、この同額の関税を課して、その得た金は、これは何ですか、不当廉売によって損失を受けた業者に対する補償にその金が使われるのですか。どういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/38
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039・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) それは補償に使われるというよりも、向こうのダンピングの分を全部関税で取ってしまいますから、向こうが安売りをして損をした分は日本の国庫の収入になってしまう。そこで、ダンピングしなかったと同じになりまして、その上に普通の関税をかけるのですから、国内には損害は出ない、これをかけますと。そういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/39
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040・須藤五郎
○須藤五郎君 不当廉売によって損害を受けるのは日本国内の業者でしょう。そうすると、政府は関税から取るから、国庫のほうは損はないけれども、外国の不当廉売によって損失を受けたいわゆる当事者である日本国内の業者、その人はやはり不当廉売で損をしっぱなしで、何ら補償を受けないということになるのですか。そこのところはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/40
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041・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) これは実際はないと思いますが、もしそうなりそうなときにはこちらで用心しておりまして、日本へ安いものが入ってくる前に、損害を与えるおそれがあるときも発動できますから、そこでもって防ぎとめたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/41
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042・須藤五郎
○須藤五郎君 ぼくはそこの点がどうも何だかはっきりしないと思うんですね。アメリカが農産物を不当廉売で日本へダンピングでどんどん持ち込む、そのために日本の農民は大きな損害を受ける、政府はその場合に関税で差額を取ることによってそれを国庫へ入れてしまう。政府はそれでいいかもわからぬが、しかし、実際に実害を受けた農民はそういうことでは救えないわけなんですね。その農民の補償は一体だれがするのか。その関税を取ったやつを農民に分配するというのならわかるけれども、それは国庫が取ってしまう。じゃ農民は被害を受けっぱなしということで、何ら補償されないということになるんじゃないですか。そこの関係はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/42
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043・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) たとえば百円で入るべきものが向こうのダンピングで八十円で入ってきた。普通は百円に関税がかかるものを、今度はその差額のダンピングの分の二十円だけは取ってしまいますから、国内には損害は起こらない、農民のほうにも損害は起こらない、こういうことにしようということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/43
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044・須藤五郎
○須藤五郎君 百円で入ってくれれば国内の農産物と価格がバランスがとれるのです。ところが、百円で当然入ってくる分が八十円で入ってくると、日本の農民の生産物との間のバランスがくずれて、日本の農産物を八十円に値を下げて売らざるを得ないような状態が起きてくるわけです。その場合、そうすると、百円で売れるものを八十円で売るということになると農民は大きな損害を受ける。その損害は一体どこで補償してやるのかということを言っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/44
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045・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) ですから、せっかくアメリカの業者が八十円で売ってきましても、差額の二十円をダンピング関税で取ってしまいますから、百円で売ったと同じことになるのです。その上にまた関税をかけるわけですから、したがって、ダンピング関税を取ってしまえば国内の農産物には影響は及ばない、こういうことにしようというのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/45
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046・須藤五郎
○須藤五郎君 それはぼくの質問に当たっていないのです。あなたのお答えは。要するに、当然百円で入ってくるべき農産物がアメリカのダンピングによって日本に八十円で入ってきたとすると、アメリカのダンピングによって被害を受けたものは日本の税関ではないのです。実際は日本の農民なんです。その農民の被害をどう補償するのか。政府はその関税の差額を取ることによって、政府の損失はそれで済むかもわからないけれども、日本の農民の受けた被害というものは救われないと私は思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/46
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047・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) その百円のものが百円でくれば全然被害はないわけです。それが八十円でくるから二十円のところが問題になるわけです。その二十円のところは、入るときにダンピング関税で取ってしまいますから、したがって、八十円で国内に入ってきても、それに関税をかけられるので、百円で入ってきて関税をかけられると同じことになります。ここで二十円せっかく向こうでダンピングをやったのを吸収してしまいますから、損害は起こらない、こういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/47
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048・須藤五郎
○須藤五郎君 今後そういうことで入ってくるということは絶対ないということですね。私は入ってきた場合のことを言っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/48
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049・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) これは損害がなるべく起きない前に発動したいという考えでございます。しかし、実際問題として、日本ではいままで一ぺんもそういうことを適用しておりませんし、このねらいは、主として日本が輸出の面で痛められる、それを痛められないように、乱用されないようにという趣旨で国内のほうも形を合わせたということが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/49
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050・瓜生清
○瓜生清君 局長に一問だけ質問いたしますが、さっき柴谷委員に答弁された中で、生糸の輸入関税ですね、中共の。目下農林省で検討中であって、昭和四十三年度中に結論を出したい、しかも、前向きの姿勢でやりたい、こういうことの御答弁があったわけですね。そこで、それは下げるということだと思うのですが、何か大蔵省ではほぼどのくらいまで下げたらどうだろうというような、そういう、何といいますか、原案といいますか目安といいますか、そういうものはありますか。それだけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/50
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051・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) これはいま日本の関税の体系が譲許税率と国定税率の二本立てになっておりますが、今度大豆と銑鉄についても国定税率と譲許税率と同じにするということをしております。それで前向きで検討をするわけでございますが、私どもが考えておりますのは、そのときにまた間の関税率の改正をするということはなるべくしたくない、それでやるかやらぬか、これからの検討でございます。これは国内の養蚕業にも影響がありますので、軽々しく扱えないのでございますけれども、やるときには国定税率を譲許税率と同じにする、右か左かということでやりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/51
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052・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) それでは、暫時休憩いたします。
午前十一時四十一分休憩
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午後零時二分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/52
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053・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、質疑を行ないます。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/53
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054・木村禧八郎
○木村禧八郎君 大蔵大臣、関税定率法の一部を改正する法律案に対する附帯決議が衆議院で付されてこちらに回ってきているわけですが、この附帯決議につきまして大蔵大臣はどういうふうに衆議院で所見を述べられましたか、その点をまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/54
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055・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 附帯決議に対して私の発言しましたのは、だいま御決議のありました事項については、政府としても御趣旨に沿って善処したいと存じますということを申したわけでございますが、で、政府として御趣旨に沿ってどうするかということにつきましては、結局今度の関税の問題から、国定税率と協定税率との間に相当大きい開きができましたので、中共が主として関心のある品目については、国内産業への影響を考えながら、個々に前向きでこの国定税率の引き下げを検討していきたいという意味でございまして、私どもは、この決議もそういう趣旨でございましたので、これに沿って今後善処するというお約束をしたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/55
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056・木村禧八郎
○木村禧八郎君 もう少し具体的に、関税局長、いまの大臣のお述べになったことに対して、もう少し具体的に補足されることがありましたら補足的に説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/56
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057・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) もう少し具体的に申し上げますと、まず中共からの輸入品の中で、今度お願いしております国定税率の引き下げも含めまして、金額のウエートで八〇%は差がなくなるわけでございます。残りの二〇%のうちで、ケネディラウンドの関係で差ができますのが一四%、従来からあるのが六%、こういうことになっております。
そこで、一番問題になりますのは、その今度ケネディラウンドで差が出るのが、金額が大きいのは生糸でございます。で、この生糸につきましては、私どもの考え方は、これは御承知のように、国内の養蚕業に対する影響がございますので、四十三年度中に中共からの輸入がどういう数量でどのくらいの価格でくるかということを検討いたしまして、それで国定税率を譲許税率と同じにするような方向で前向きで検討しよう、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/57
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058・木村禧八郎
○木村禧八郎君 そうしますと、結局まあ実質的には関税定率法の第五条の規定による便益関税の適用に関する政令ですね、政令の第一条に掲げるこの便益関税適用国、現在五十二カ国といわれておりますその一つとして中華人民共和国を新しくそこに掲げる、そういうことと実質的にほとんど変わらぬ、こう見てよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/58
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059・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) 実質的にはいま八〇%は差がないわけでございますが、さらに残りの二〇%につきましても、生糸のように、個別に検討をして国定税率を下げる、そういうことで実質的に差がないようにしたい、そういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/59
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060・木村禧八郎
○木村禧八郎君 そうしますと、いままでの経過から見まして、非常に何というのですか、前進的な、前向きな解釈になってきたと思うのですが、従来は、結局ケネディラウンドにつきましては、その相手国をわが国が承認していない場合、それから、相手国がわが国に関税上の差別をしておるような場合ですね、そういう場合には便益関税を適用することは困難である、こういうように御答弁になったわけです。そこで、そういうような立場で今後この関税定率法が通るということになると、日中貿易に今後非常に大きな支障が生じてくる。そうでなくてさえ、特に大蔵大臣は前によく南漢宸さんに会われて、今後の日本と中国との経済交流、貿易の振興等につきましてもいろいろ意見をかわされて、日中の経済交流、日中貿易は非常に重要であるということを認めるということを大蔵大臣がお述べになったことがあると思うのです。したがって、先ほど大臣も、衆議院における附帯決議を尊重され、その趣旨に沿うて前向きで取り組んでまいるというお話もあり、関税局長もそれの補足的な説明で、実質的にこの便益関税の適用と同様の措置をとるというふうにお述べになった。この点はまあ従来、前に言われたことについてはいろいろまあ再検討された結果そういう結論に達したのであって、依然として前に言われたような二点ですね、あの二点というものが変わらないということになると、せっかく先ほどのような御答弁をいただいても、そこに不安が残るわけです。そこで、そういう点については、いろいろわれわれもまあ各方面から資料をいただき、検討してみましたが、便益関税適用については、理論的に、また、実際的に——実際的にというのは、日本の国益上これは必要であるというふうにわれわれ理解するに至ったわけですが、その経緯について、もう少しそういう結論に到達した経緯について伺っておくと、われわれはかなりその点についてはまあ安心できると思うのですがね。その点について具体的にひとつその経緯を説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/60
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061・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) もう理由は私ども簡単でございまして、日中貿易を縮小したくない。やはりこれは拡大したいということから、この制度の問題として、便益関税は、これはいまのところ、立場としてはやりませんので、さっき申しましたように、実質的にこれを解決していくような方向をとりたいと、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/61
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062・木村禧八郎
○木村禧八郎君 これはもう私が指摘するまでもなく、最近の日本の国際収支は非常に重大な環境のもとにさらされるようになってきておるわけです。そこで、いまのケネディラウンドと便益関税の点につきましては、一応それで了承いたしましたが、この際、日本の国際収支の問題につきまして、この関税定率法ですね、実施することによりましてどの程度の国際収支の改善を期待しておるのか。国際収支の改善は関税政策だけではないのでありますけれども、この関税定率法の改正によってどの程度の改善を期待されると見てよろしいのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/62
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063・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) これは、先生いまおっしゃられましたように、この関税でもって日本が下げる、その面では多少輸入がふえるわけです。しかし、相手国のほうを下げさせる、それで差し引き日本の輸出がどのくらいふえて、日本の輸入がどのくらいふえるか、なかなかむずかしいことでございますので、ちょっと数字を申し上げかねるということでございますので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/63
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064・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 結局その世界貿易を拡大するという方向へのお互いの協定でございますので、輸入も伸びるでしょうし、輸出も伸びる。そして各国間それぞれどこの国がこの引き下げによってお互いに得するかということにつきましては、交渉の過程において、そう各国とも、どこが得になるというようなことでなくて、お互いがこの利害が均衡するというようなことを中心の折衝で積み重ねてきたということでございますので、これはこれによって世界貿易が拡大するということは言いますが、輸出がふえる場合は輸入も伴ってきておりますので、日本の国際収支についてどういうことがあるかということは、簡単にはちょっと計算できないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/64
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065・木村禧八郎
○木村禧八郎君 ちょっとさっきのケネディラウンドの問題で一点落としておりましたので、つけ加えて質問しておきますが、先ほど実質的にはほとんど便益関税を適用すると変わらなくなるという御答弁でしたが、そんならなぜ便益関税を適用されないか。実質的に同じならこの際適用しておいたほうがいいんじゃないかと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/65
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066・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) ちょっと長くなって恐縮なんでございますが、いまの関税交渉のやり方がどういうふうに行なわれますかと申しますと、ケネディラウンドの例をとりましても、ほかでも同じでございますが、お互いに、たとえば日本がアメリカと交渉しますときに、日本がアメリカに対する輸出の中で、非常に日本が主として関心を持っている品目についてはアメリカに関税を下げさせる、こう言います。それから、その見合いとして、これはまたアメリカが日本の輸入の中で主として関心を持っている品目について、こういうものを日本は関税を下げるつもりだ。したがって、おまえのほうもこの代償をと、こういうことです。アメリカのほうも同じでございまして、今度は自分のほうもこういうものの関税を下げるつもりだが、日本もこういうものを下げる。その場合に、主としてこれは多角的に結果は加盟国全部に適用されるわけでございますが、ほかの国が主として関心を持っている品目について代償を取りますと利益がほかのほうにいってしまいますので、したがって、お互いに主として関心を持っている品目について交渉する。そうしてそのほかの国と交渉するときにはまた同じようなことをしますが、その際に、しかし、アメリカに譲許するつもりのやつでもっておまえのほうは反射的にこれだけ利益を受ける、これは相手国も日本に対して同じようなことを言います。そういうことで、大体主として関心を持っている品目というものを交渉の対象にいたします。と申しますのは、御承知のように、先ほど先生が国益とおっしゃられましたが、まだ残念ながら差別待遇を日本に対してしている国が相当ございます。そういう国が主として関心を持っている品目につきまして、たとえば国定税率を下げてしまうということをしますと、相手のほうは、もうそれでは何ももらうものが日本にはないということになりますと、こちらが差別待遇を撤廃してくれということを言う時期を失いますので、したがいまして、まず中共のことを考えますときにも、中共のことを考えて国定税率を下げるという場合には、中共が主として関心を持っている品目、こういうものを考えていきたい。そこで、いまの便益関税の制度は、これはほかの国もそうでございますが、品目について別に税率をつくるということは非常に複雑になりますし、また、経済外交の面でも非常にめんどうなことになりますので、大体協定税率と、それからそうでないもの、この二本立てにしております。そこで、便益関税ということにいたしますと、ケネディラウンドの成果が全部便益関税としてその国に及ぶということになってしまいますので、これはいろいろ先ほど先生おっしゃられましたような支障がございますが、しかし、主として中共が関心を持っている品目、たとえば生糸につきましては、私どもは四十三年度中に前向きで検討しよう、そういうことで検討していこう、そういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/66
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067・木村禧八郎
○木村禧八郎君 この便益関税を適用している五十二カ国のうち、十一カ国、オーストリア、ポルトガル、ナイジェリア等十一カ国はガットの三十五条の対日援用国なんですね。そういう国に対して便益関税を適用しているんですね。ですから、中国を適用国に入れても別に差しつかえないんじゃないか、そういう点から言ってもですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/67
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068・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) そのガットの三十五条の関係を申しますと、ガットに入っておって三十五条を援用しなければ、これはガットのメンバーですから、当然に譲許税率が適用になるわけです。ところが、その中で三十五条を援用している国につきましては、これはその国と日本の関係ではガットの規定が適用になりませんから、日本から見ますと、それはガットのメンバーでないと同じことになってしまう。したがいまして、ガットの規定による、メンバーに全部一番有利な関税を適用するというその規定は、条約上は適用になりません。で、三十五条援用国の中で、しかし、実質的には日本に対して差別をしておらない、そういう国はございます。その場合にこちらのほうも実質的に差別しない、それで三十五条援用国に便益関税を適用する、そういうことが行なわれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/68
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069・木村禧八郎
○木村禧八郎君 ですから、中国は実際にはガットに加入しておりませんけれども、実質的に加入している国と、こう認めていいんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/69
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070・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) これは貿易交渉や関税交渉を政府間でいたしますから、その場合には、お互いに現行の税率はこうで、輸入制度はこうで、こういうことを正式の書類として交換いたします。それで、会議が妥結しますときには、こういうことをするという約束をいたします。ところが、中共のように国交がない国につきましては、相手がこういう関税をやっているというのが正式にオフィシャルにわからないという問題がございます。ですが、われわれがいろいろな資料で調べますと、中共のほうも、やはりちょうど日本と同じように、条約協定のある国とそうでない国、二つに分けて関税率の体系ができておるように考えます。したがいまして、実質的にいまでも差別されているのだろう、そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/70
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071・木村禧八郎
○木村禧八郎君 実際に中国との貿易取引を見ますと、結局日本はどれだけ輸入できるかによって輸出額がきまっていくということなんですから、したがって、その差別の問題は、まず日本の輸入のほうからきまっていくのですから、それはもう少し実体的に考える必要がある。そこで、実質的に適用と同じような取り扱いを前向きでしていきたいということですから、これからもう少し時日をおいて、さらに一歩前進して、いわゆる実績を見て便益関税適用国にするように今後政府はしていくような考えがあるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/71
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072・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) 便益関税の問題は中共だけじゃございませんで、このごろ非常に困っておりますのは、アフリカで新しく独立した国が次々と三十五条援用というようなことをやっております。そうして差別待遇をして、何かおみやげをよこさないと向こうでやらない。それから、そういう国は大体日本が輸出超過になっております。それで、しかも、向こうからもっと買ってやりたいのですけれども、産品が非常に高くて買えない。そういう関係の外交交渉の道具といたしまして便益関税というものはなかなか大事な道具でございますので、したがいまして、便益関税という制度そのものは、国際的な環境がすっかり変わるとまた条件が変わると思います。いまの状況では、これは非常に貴重な武器だというふうに考えております。しかし、先生おっしゃいましたように、私ども中共について、中共が主として関心を持っている品目で、国内産業も何とかやれるというものについては、国定税率を下げるというような形で実を与えていくという方向でいきたい、そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/72
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073・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それじゃ私に割り当てられた時間があまりありませんが、せっかく大蔵大臣が見えましたから、端的に一、二点伺いたい。
一つは、国際収支の見通しと関連しているのですが、時間がございませんから、いろいろ議論はいたしませんが、結局この政府の国際収支の見通しは、アメリカのドル防衛強化策が行なわれる前にあの見通しを立てられたと思いますが、四十三年度は三億五千万ドルの総合収支の赤字、それから輸出、輸入の伸び率なんかを見ましてもあの当時に見通された。この見通された当時とその後情勢が非常に変わっていると思うのです、前提条件が。それが一つと、それから、外貨準備の流動性が非常に硬直化しております。これは議論になりますから、時間がありませんから言いませんが、たとえば三月六日の日本経済新聞、「外貨準備」、「硬直化の傾向」、こういう見出しで、対米債権の約半分が長期預金ないし長期債権に振りかわっておる、こういうあれが出ておるわけです。そうしますと、今後国際収支のいかん、あるいはユーロダラーの動きいかんではスワップの発動も必要かもしれません。また、IMF借り入れも必要になるかもしれません。そういう状況を一応頭に入れて対処しているのかどうか。もしIMF借り入れをやることになると、イギリスの例を見ましても、非常なきびしい条件がつくわけでしょう、大臣もよく御存じのとおり。そこで、私は、どうも政府の見通しが甘い甘いと言って、と申しますのは、その甘い結果として、結局IMFの借り入れをすることになると、もうかなりきびしい条件がついてくるのですからね。非常に何というか、デフレ的な経済情勢になる公算が大きいわけですよ。そこら辺をどういうふうにひとつ読んでいるか、その読みですね、これをひとつ。
それから、もう一つは、これは国際収支に関連がもちろんあるのですが、特にドル防衛協力に関連があるのですが、まあスハルト氏は大統領になったのですけれども、スハルトさんがきょうですか、見えるそうです。インドネシアに対する援助は、四十三年度予算には六千万ドルと計上されておりますが、新聞の伝えるところによりますと、三千万ドルさらに上積みされるのじゃないか、あるいは一億ドル期待している。いわゆる債権国会議で三億三千万ドルですかの貸し付けがきまって、その三分の一ずつアメリカと日本でこれを負担するとか、そういうことが伝えられているのですけれども、私は、この海外経済協力、海外援助については、この際、根本的に考え直さにゃならぬ時期にきているのじゃないかと思うのです。最近いろんな資料がずいぶん出ています。インドネシアに対する借款とか、あるいは賠償の効果とか、ずいぶんいろんな資料が出ておりますが、これを見ますと日本のやり方が非常にずさんです。これはもう根本的に再検討して、賠償あるいは借款、それからいろんなリファイナンスも含めて。それで、今度は経済協力基金法を改正して、あの貸し付けもまたルーズにするというような、そういうようなことが伝えられているわけですよ。この二点ですね、大蔵大臣、これは私は大きい問題だと思うのです。これはスハルト氏が来て、それで、やあやあなんて握手してにこにこして、そうしてむやみに日本の援助を拡大すべきじゃないと思うのです。一体日本の国内の状態を見たら、とにかく大幅な国際収支の赤字になっているのですよ。それで、今度IMFから借金をした場合、そりゃたいへんなデフレ的な情勢が出てくると思うのです。そういう際にルーズな対外援助とかなんかやっていたら、これは相当大きな海外援助をやっていたら問題になると思う。ちょうどスハルトさんが来て、いい機会ですから、この際に、そんな甘いものじゃないのだと、そういう日本の情勢を知らせる必要があると思うのです。
この二点について大蔵大臣に伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/73
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074・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 国際収支の見方は、もうポンドの切り下げ、ドル防衛問題が起こってからのあれは見通しでございますので、いろいろな条件はもう織り込み済みの見通しでございます。流動性が硬直化しておるとかいうような問題については国際金融局から御説明いたします。
それから、インドネシアの問題ですが、これからインドネシアの大蔵大臣と私お会いをする約束になっておりますので、これからお会いしますが、問題は、やはりいま国会にインドネシア援助のしかたに関する法律案も御審議願うというところでございますし、また、援助を日本がする必要があるという場合にも、その予算額というようなものもいろいろ御審議を願っておるところでございますので、われわれのできることはできる、できない問題はできないというようなことは十分先方にも納得してもらうようなお話をしようと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/74
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075・奥村輝之
○説明員(奥村輝之君) この日本の外貨準備の硬直性についての御質問があったわけでございますが、先般新聞に出ていた点についての御指摘があった。これはアメリカの統計でございまして、日本の国の持っておる外貨並びに日本の民間の外貨資産というようなものが一緒に入っておるわけでございます。私どもとしては、外貨準備の保有にあたっては、絶えず流動性について留意しているわけでございます。その点については御懸念はなくてよろしいのではないか。これは私どもの使命でございます。したがって、IMF借り入れなどについても、外貨の流動性がないから借り入れをするという問題ではございません。これはやはり今後国際収支の改善に向かっていく過程において、もしも必要があれば、それは非常に通常のこととして気やすくつなぎのために借り入れることはあり得る。しかし、いまのところはそういうようなことは考えておらぬわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/75
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076・木村禧八郎
○木村禧八郎君 大蔵大臣、私これ一問で終わりますが、さっき海外経済協力につきまして、できるものはできる、できないものはできないとはっきり言うと言われましたが、その前提としまして、これまでの日本の海外経済協力のあり方というものにつきまして根本的に再検討する必要があるのじゃないですか。この点が私は非常に重要だと思うのです。これはわれわれもこれから根本的に洗っていかなければならぬ。私は、インドネシアの焦げつき債権の問題を一つ取り上げたのもその一環なんですが、きょうは時間がありませんから、これは資料を出していただいてゆっくりやろうと思いますけれども、それ以外の、これまでの借款等も含め、賠償等も含めて、これはたいへんなマイナスになっていると思うのですよ。ちっともプラスになっていない。これまでのような形で経済協力をやっていったら、これはどぶに金を捨てるようなものですよ。これは現在根本的に再検討しなければならぬと思うが、こういう点について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/76
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077・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) おっしゃるとおりでございまして、私ども十分再検討しております。したがって、この援助のしかたにつきましても、従来のように、ただ輸銀を通すというあのやり方だけではいろいろ問題もございますし、したがって、まずインドネシアの問題を中心にして今回経済協力基金の改正の御審議をお願いしておるのもこの再検討の一つのあらわれでございまして、こういう問題からきちっと今後の援助姿勢を整えていきたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/77
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078・柴谷要
○柴谷要君 関連して一問だけ。私はアジ銀の審査のときにお尋ねしたのですが、これはほかでもないけれども、四十三年度インドネシアに対して六千万ドルの借款をやろう、こういうことで経済協力基金ですかの改正を行なっておる。ところが、スハルトさんがきょう来るのは、六千万ドルならば来ないで済むはずなんだから、でかけてくるというのは、実は一億ドル以上の借款を要請に日本にやってくるということです。もしこの問題が出て、大蔵大臣がよかろうというようなことで承知をした場合に、じゃ資金の捻出方はどういうふうに考えられるのか。私は、少なくとも総合予算主義をとっておる四十三年度の予算の内容から見ますると、どうしてもこれは借款をふやすことによって補正予算を組まざるを得ないという結果が出てくるのじゃないかと、私は私なりにそう思う。これはたいへんなことになると思うので、これからお会いになることですから、日本の方針というものを確固としてお伝え願って、いたずらに、先ほど木村先生も言われたように、ただ援助すればいいのだいいのだということじゃなしに、今日まで援助した成果がどういうふうにあがっているかということを十分御検討いただいて、その上で有効適切な援助をすることが望ましいと思いますので、総合予算主義を放てきして補正予算をまた組むような結果にならないように、ひとつその面から大臣に要望しておきますが、この点に対するお考えをひとつお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/78
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079・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) スハルト大統領がおいでになってどういう要望をされるか、この内容はまだわかっておりません。その前に向こうの大蔵大臣と私はきょうお会いするのですから、そこらで大体の要望が出てくるか、そうじゃなくて、単なる紹介であるか、これもお会いしてみないとわかりませんが、いまおっしゃられたような問題は十分私どものほうでは心得て善処するつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/79
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080・中尾辰義
○中尾辰義君 大臣にお伺いします。
特恵関税につきまして一、二お伺いしますが、ただいまニューデリーで国連貿易開発会議が開かれております。二十七日に全会一致で特恵に関する決議を採択しておる。それによりますというと、ことしの十一月には特別委員会の第一回会議を開いて、その特恵に関する今後の進展について検討する、こういうことになっているらしいのですが、この特恵問題は中小企業にとってきわめて影響も大きいし、今後大蔵省は特恵問題に対してどういうような基本的方向で検討をしていくのか、この点につきまして大臣の所見をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/80
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081・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) これからの問題として、いわゆる開発途上にある国々の経済を進展させる、この経済の成長に貢献するというために、いわゆる先進国がこの特恵関税というような問題に踏み切るべきであるという考えからこの踏み切りはつけております。しかし、御承知のように、まだ日本は、日本産業の中には後進性を多分に持っているところがございますので、したがって、これは日本の中小企業にとっては大きい影響を与えるものでございますので、したがって、開発途上国の製品であっても、もう十分競争力を持った品目というようなものは除外してもらうとか、こういうようないろいろな配慮をこれからしなければなりませんので、先進国側でもこの問題の相談をしており、これがまた後進国側もこれについてのいろいろな要望を持っておりますし、この両者の意見がなかなかいまのところ一致しないので、一応大会は終わっても、まだ具体的な問題は一切今後に残されておるということでございますので、その間に処して、やはり国内において中小企業製品が競争力を持つように、国内政策と同時に、特恵に対して日本が主張すべき主張、輸入だけの問題じゃなくて、輸出に対して相当大きな影響を持つのですから、この負担を各国間に公平にやるようにという趣旨で、日本のやるべき、また、主張すべき点はまだたくさん残っておりますので、これはそういう意味で善処しようという方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/81
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082・中尾辰義
○中尾辰義君 こまかい項目につきましては今後の問題だろうと思いますけれども、いずれにしても、わが国は代表を送ったわけですからね、今回の総会に。したがって、何らかの腹案を持って行かれたのじゃないか。何にもなしで手ぶらで行っても審議はできないということで、まあ腹案程度といいますか、その程度でもけっこうですから、農産物加工品等に対してはどういうような見解を持っておるのか。それと、特恵関税の下げ幅はどのくらいをめどにしておるのか、あるいは国内産業保護のために緊急輸入制限等を考えておるのか。それから、第三国市場での輸出利益の負担公平について政府としてどういうような考えを持っておるのか、こういったような点について、大蔵大臣としての所信でもけっこうですけれども、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/82
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083・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) この特恵関税の下げ幅とか、そういうような問題については、まだ今回は全くきまってないというのが実情でございます。で、内容については関税局長から説明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/83
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084・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) いま大臣がお話いたしましたように、内容について今度の会議で詰まらなかったというのが実情でございます。で、御質問の点、たとえば農産加工品をどうするか、これについても対立がございまして、まとまりませんでした。われわれとしては、OECDでまとめたような、農産加工品はケース・バイ・ケースで認める、その他のものは原則として認めて例外をつくる、こちらはケース・バイ・ケースでやっても差しつかえないものだけ認める、こういう話でございます。
それから、期間は十年か二十年かというところが議論になりまして、先進国側は十年のほうが望ましいと思ったのですが、これも詰まりませんでした。それから、関税の下げ幅につきましても、これは後進国のほうは当然ですが、ゼロにしてくれということでございます。先進国のほうは、ゼロにするということですと例外品目が多くなりますよというようなことを申しまして、これも後日の問題ということになりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/84
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085・中尾辰義
○中尾辰義君 輸入制限の問題。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/85
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086・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) それから、政府ガードの問題でございますが、これにつきましてもまとまりませんでしたが、これについては先進国の間でもやり方についてまた議論するところがございます。それから、また、その政府ガードの方式だけでなくて、どういう場合に発動するかということももちろんまだまとまっておりません。
それから、第三国の輸出利益の点でございますが、これはOECDで私ども骨を折りまして、四カ国報告というのが御承知のように出ましたのを、日本が大いにがんばりまして第三国の輸出利益というのを織り込ませまして、それで、今度の会議でもそれは大体認められるというような空気でございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/86
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087・須藤五郎
○須藤五郎君 大蔵大臣に二点ほどお伺いいたししますが、先日の当大蔵委員会におきまして、開銀の総裁は私の質問に対しましてこういうお答えをしていらっしゃるのです。経済援助資金特別会計法が廃止され、同時にその政令もなくなりますが、政府の指示があれば開銀は防衛産業にも融資する、そういうふうに言っていらっしゃる。政府は第三次防で兵器の国産化を目ざすと言っていらっしゃいますし、防衛庁はそのために開銀の融資を要望しておる、こういうように聞いておるのですが、開銀が防衛産業に今後も融資を続けていくのかどうか、この点について大蔵大臣の意見を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/87
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088・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 御承知のように、経済援助資金特別会計のときには、別ワクによって防衛産業への融資ということが行なわれておりましたが、今回これが廃止されて開銀一本になるということになりますと、当然前のこういうものがなくなってしまいますので、これから防衛産業としての融資というようなことは別に私どものほうで考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/88
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089・須藤五郎
○須藤五郎君 開銀の総裁は、政府の要請さえあればこれまでどおり防衛産業に融資を続ける、こう言っていたのですが、いまの大臣のお答えだと、今後開銀に対して防衛産業に融資するというようなことをせいというようなことは言わない、防衛産業に開銀が融資することを大蔵大臣は認めていない、こういうふうにとっていいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/89
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090・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 防衛産業としてのいままでやったようなワクを置いて融資させるとかいうようなことは、いまさせる意思を持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/90
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091・須藤五郎
○須藤五郎君 私は、開銀がこれまで防衛産業に融資をしておったという事実につきまして、開銀の性格、目的にそういう面があったかと言ったら、総裁は、開銀は二十六年当時できたときに「産業」という字句が入っている。防衛生産産業水産業の一つでございますというような、こういうふうな答え方を開銀の総裁はしているのです。そこで、私は、二十六年開銀をつくった当時の会議録を全部出して調べましたところが、その当時の池田大蔵大臣の答弁の中にもそういうことはないのです。開銀が融資する先は電力、石炭、造船、鉄鉱だ、日本の復興のためにこれを使うのだと言って、防衛産業に金を使うのだというような字句は一つもないのですから、それで私はそのときに開銀総裁に言った。それはあなたは「産業」という字の拡大解釈である、いつからそういうふうに防衛産業にも使うように一体なったのか、こう私は言ったのですが、大蔵大臣、これが防衛産業に使われていることが正しいことかどうか、それから、防衛産業に融資することになったのは一体いつからか、何のために融資するようになったのか、開銀ができた当時から武器生産に融資する考えで開銀をつくったのかどうか、それならばその後どういう法的な措置をして開銀が武器製造に融資することになったのかという経過をひとつ話してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/91
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092・澄田智
○政府委員(澄田智君) 私のほうからいまのお尋ねの点について申し述べさしていただきたいと思います。
この前も申し上げましたことでございますが、開発銀行法の当初は、確かに仰せのように、電力、石炭、鉄鉱、そういった基幹産業に対する融資ということを目的に設立をされまして、それを主たる目的に設立されまして、そうして融資の実態においても、基幹産業に対する融資が九〇%以上を占めるようなときもあったわけでございますが、しかし、開銀法の規定のしかたといたしましては、経済の再建及び産業の開発のために一般金融機関の行なう金融を補完する、そういうふうに、当初の目的は、一貫して今日までそういう規定によって、同一の考え方によっているわけでございます。ただ、産業の内容は経済情勢の変化によって変わってきておる、こういうことでございます。それから、経済援助資金につきましては、これは経済援助資金の運用に関する政令というのが昭和二十九年に出ておりますが、この政令におきましても、開発銀行法に規定する開発資金のうち、左に掲げる設備にかかわる貸し付けに必要な資金に供するためというような、そういうような規定をになっておりまして、開発銀行の目的とする資金の中で、特にこういう目的のためにということで、その防衛に必要な防衛産業というような点について援助資金によって融資を行なっておる、こういう次第でございます。したがって、これは開発銀行の目的である産業の開発という中に含まれているもの、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/92
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093・須藤五郎
○須藤五郎君 私は、大臣に、その開銀の創設当時から防衛産業に融資をするという目的で開銀というものをつくられたのか。開銀をつくったのは日本の復興というのが目的で、当初はいま申しましたような四つの産業ですね、これに投資するのが主眼であった。それがいつのまにか曲げられてきた。その曲げられてきた原因はどこにあるのか、いつからそれに対する法的な措置をされたのかということを質問した。私は「開銀十年史」という本をこの間ずっと読んで見ましたよ。そうすると、融資の変遷、融資の内容、そういう点でずっと変わってきている、変わるときがあるんですね。それは昭和二十八年、池田さんがロバートソンと会談して帰ってきてMSA協定が結ばれたその当時からずっとこの融資の方向が変わってきている。武器製造にも融資するというふうになってきているわけです。だから、この開銀の目的というものは、途中でこういうふうに池田・ロバートソン会談を境として、こういうふうに性格がひん曲げられてきている、当初の目的じゃないんですこれは。だから私はその点をこの間開銀の総裁に尋ねたら、最初からだと言う。この「産業」というのは防衛産業も入っているのだと、そんな横着な拡大解釈をした、人を食った答弁をするからぼくはよく調べた。ところが、入っていない。最初は復興のためですよこれは。だから、それがこういうふうに変わってきたのは何か根拠がなくてはならぬ。いつから変わったか、その変わった根拠は何か、それに対する法的な措置をどういうふうにされているかということを私は政治的な立場で答えていただきたい、大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/93
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094・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) これは先ほど開銀の融資対象は、御承知のように、最初は基幹産業への融資、日本の経済復興のための銀行としての発足でございましたから、最初は対象がそうであっても、どんどん経済が変わってまいりますので、後にはこの地方開発ということが非常に重くなってきまして、ここに特別のワクをとって地方開発のほうに融資をするというふうに変わってきましたし、また、最近は流通近代化というようなものが取り上げられてきまして、基幹産業のほうは一応この目的を達したというようなときには、時の要請に応じてこういうものが融資対象となって浮かんでくるというようなことは、これは当然だろうと思います。そのときどきの経済情勢によって融資対象も変わってきて私はいいものだというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/94
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095・須藤五郎
○須藤五郎君 さっきあなた、今後は開銀は兵器産業に融資しないのだ、こういうことをはっきりおっしゃったじゃありませんか。だから矛盾しちゃいませんか、そういう解釈のしかたは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/95
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096・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) だから時代とともに融資対象が変わってくるということは差しつかえないということと、今後防衛産業に特にワクを設けて開銀の融資をさせるというようなことをするかということでしたから、それはいま政府としてする意思はないということをお答えしたわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/96
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097・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/97
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098・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 御異議ないものと認めます。
これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/98
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099・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 御異議ないものと認めます。
これより採決に入ります。まず、日本開発銀行法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/99
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100・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 多数と認めます。よって本案は、多数をもって可決すべきものと決定いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/100
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101・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 次に、アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/101
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102・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 多数と認めます。よって本案は、多数をもって可決すべきものと決定いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/102
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103・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 次に、関税定率法等の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/103
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104・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 多数と認めます。よって本案は、多数をもって可決すべきものと決定いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/104
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105・西田信一
○西田信一君 私は、この際、自由民主党、日本社会党、公明党、民主社会党、以上四党の共同提案として、ただいま可決せられました関税定率法等の一部を改正する法律案に対し、次の附帯決議案を提出いたします。
附帯決議案を朗読いたします。
関税定率法等の一部を改正する法律案に対
する附帯決議(案)
一、今日のきびしい国際経済情勢を充分認識し、米国の輸入課徴金を含む一連の輸入制限措置に対しては断固たる態度をもつて対処し、また関税一括引き下げが実施されることによつて協定税率が適用されない国との間の貿易が阻害されることのないよう貿易の振興のため万全の措置を講ずべきである。
二、国内産いもでん粉類の価格の安定を図るため、とうもろこしの関税割当の運用にあたつては、正常な輸入量を確保するよう充分配慮するとともに、必要によつては農産物価格安定法の運用等により万全を期すべきである。
右決議する。以上でございます。何とぞ御賛成くだざいまするようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/105
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106・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) ただいまの西田君提出の附帯決議案の採決を行ないます。本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/106
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107・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 全会一致と認めます。よって、西田君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議案に対し、大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許可いたします。水田大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/107
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108・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) ただいま御決議がありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って善処いたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/108
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109・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) なお、以上三法案に関し、本院規則第七十二条により、議長に提出する報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/109
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110・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時五十七分散会
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X00919680328/110
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