1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年四月十八日(木曜日)
午前十時四十八分開会
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委員の異動
四月十六日
辞任 補欠選任
北畠 教真君 天坊 裕彦君
四月十七日
辞任 補欠選任
天坊 裕彦君 北畠 教真君
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出席者は左のとおり。
委員長 中村喜四郎君
理 事
楠 正俊君
小野 明君
鈴木 力君
委 員
北畠 教真君
久保 勘一君
近藤 鶴代君
内藤誉三郎君
中野 文門君
岡 三郎君
千葉千代世君
松永 忠二君
柏原 ヤス君
北條 浩君
発 議 者 千葉千代世君
国務大臣
文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
政府委員
文部政務次官 久保田円次君
文部大臣官房長 岩間英太郎君
文部省大学学術
局長 宮地 茂君
文部省管理局長 村山 松雄君
事務局側
常任委員会専門
員 渡辺 猛君
説明員
文部大臣官房人
事課長 諸沢 正道君
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本日の会議に付した案件
○日本育英会法等の一部を改正する法律案(千葉
千代世君外一名発議)
○女子教育職員の出産に際しての補助教育職員の
確保に関する法律の一部を改正する法律案(千
葉千代世君外一名発議)
○国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/0
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001・中村喜四郎
○委員長(中村喜四郎君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
日本育英会法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、発議者から提案理由の説明を願います。千葉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/1
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002・千葉千代世
○千葉千代世君 ただいま議題となりました日本育英会法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由と内容の概略を御説明申し上げます。
日本育英会は、昭和十九年日本育英会法に基づいて設立されまして以来、国家的な育英奨学事業として人材の開発と教育の機会均等に大きく貢献してまいりました。しかし、その事業等については今後なお一そうの充実改善をはかることによりその発展を期待しなければなりませんが、当面特に急務と考えられる次の諸点について改正を施そうとするものであります。
まず、その第一は、日本育英会の学資の貸与及び貸与金の返還免除の対象に、文部大臣の指定する養護教諭養成機関及び教員養成機関を加える問題であります。
養護教諭養成機関は、養護教諭の需要を満たすことが困難な事態に対処するため教育職員免許法第五条第一項の規定に基づいて、また、その他の教員養成機関は、幼稚園教諭、音楽の中学校教諭等を確保するため同条別表第一の備考第二号の規定に基づいて、それぞれ文部大臣が教員養成の機関として適当な条件の整ったものについてのみ指定するものであります。現在前者は四十九校、後者は五十三校が指定されておりますが、通常の各種学校とはその性格、実態を異にするものであります。しかも、ここで所定の単位を取得した者に対しては、養護教諭、幼稚園教諭、音楽の中学校教諭等の免許状が授与されているのであります。
かように、厳格な条件を付して、文部大臣が指定した養成機関で修業し、教育職員免許法によって同一の資格を与えられるものが、学資貸与の対象にされておらず、またこれら養成機関の教育の職についた者が貸与金の返還免除の対象にされていないことはまことに不合理と言わなければなりません。
さらに、養護教諭、幼稚園教諭等の充実は、学校教育の当面の重要な課題でありますが、その充足はきわめて困難な現状であり、一そうの養成確保につとめなければならないにもかかわらず、これら養成機関が日本育英会の学資の貸与及び返還免除の対象に加えられていないことは、その養成確保の面からも著しい障害となっているところであります。
したがいまして、現在学資貸与の対象の決定は政令で規定すべき事項となっておりますが、文部大臣指定の養護教諭養成機関及び教員養成機関に在学する者への学資貸与の道を開くとともに、それら養成機関の教育の職についた場合にも貸与金の返還免除の法的措置を講ずべきものと考えます。
第二には、日本育英会の貸与金の返還免除に関する条件の緩和に関する問題であります。
現在、学資の貸与を受けた者が教育または研究の職についた場合の貸与金の返還免除の条件として、日本育英会法施行令第十八条ないし第十九条は日本育英会法第十六条の四第二項の規定に基づいて、原則として、大学等を修業または退学後一年以内に教育または研究の職につくことを要するものとしております。ただし、文部大臣の認可を受けた特別の事由のある場合にはその期限を延長することを認めております。すなわち、大学、高等専門学校等の奨学生であった場合には、傷疾疾病等の事由がある場合にさらに一年以内、大学院の奨学生であった場合には、傷疾疾病のほかに返還免除の対象とされていない教育または研究の職への就職、留学等の事由がある場合はさらに四年以内と、それぞれきわめて限られた事由のある場合に限って延長することが認められているにすぎません。
教員または学術研究者の需要供給の関係が各都道府県ごとに完全に計画的に行ない得るものでありましたら、現行の一年の猶予期間で十分でありましょうが、児童生徒の減少、教員または研究者の志望者数の変化等の事情もあり、また、教員養成について開放制のたてまえをとっていることでもありますので、その需給関係を完全に計画的に行なうことは不可能と言わなければなりません。
したがいまして、教員または研究者の需要の少ない年度におきましては、修業後一年以内に教育または研究の職につくことのできない者、あるいは返還免除の対象とされていない教育または研究の職、すなわち助教諭、非常勤講師等の職にしか就職できない者が多数生じているのであります。
かように、修業後一年以内に法令の定める教育または研究の職につくことのできなかった者は、その後せっかく法令の定める教育または研究の職についても、貸与金の返還免除は認められないのであります。
これは、本人の責任ではなく、たまたま修業時の教育または研究者の需給事情等によるものでありまして、そのため返還免除措置に差異が生ずることはきわめて不合理、不均衡と言わなければなりません。
少なくとも、貸与金の返還を免除するため修業後教育または研究の職につくことを要する期間を三年に延長すべきものと考えます。
なお、貸与金返還免除の条件として、日本育英会法第十六条の四第二項は「一定年数以上継続して」教育または研究の職になければならないものと規定し、同施行令第十八条ないし第十九条はこの年数を二年と規定しているのでありますが、上述の改正に対応する意味からも、また返還免除に関する基本的条件という意味からも、これまた日本育英会法に明確に規定することが望ましいものと考えます。
なお、日本育英会法第三十六条の二において、当分の間沖繩における教育または研究の職についた場合も、同法第十六条の四第二項に定めると同じ条件で返還免除に関する規定が適用されることになっておりますので、以上述べました二点についても同様の改正を施すべきものと考えます。
第三には、日本育英会の貸与金の返還免除措置の適用に関する過去の不均衡を是正する問題であります。
まず、過去の不均衡の実情について申し述べますと、その第一点は、日本育英会の貸与金の返還免除の制度は、昭和二十八年の法改正によって、まず、義務教育の従事者と高度の学術研究者を確保する目的で発足したものでありますが、その実施については、法改正前に貸与した貸与金についても適用することとされたのであります。しかるに、その実際の適用にあたりましては、日本育英会法施行令附則によって、大学院における貸与金については法の規定どおり全面的にさかのぼって適用されましたが、大学における貸与金については国立大学の教育学部または学芸学部の小学校または中学校の教育養成課程に在学する者に対してのみ、昭和二十五年度以降に貸与した貸与金についても適用されたのであります。したがいまして、一般の国・公・私立大学の修業者の貸与金については、昭和二十五年度にさかのぼることなく、昭和二十八年度以降この制度が適用されたのであります。
第二点は、昭和三十六年の法改正によって、高等学校進学者の急増に対処するとともに科学技術者の養成を促進する目的で貸与金の返還を免除される職について、大学、高等専門学校等の貸与金については従来の義務教育に従事する教員のほかに高等学校、大学、高等専門学校等の教育の職を、大学院における貸与金については従来の大学のほかに中学校、高等学校、高等専門学校等の教育または研究の職をそれぞれ加え、公布の日から施行され、その施行の際現に大学等に在学する者に対しては、その在学期間中に貸与した貸与金については返還免除の措置がとられたのでありますが、それ以前の貸与契約により学資の貸与を受けた者については返還免除措置が講じられなかったのであります。
第三点は、昭和四十年の法改正によって、貸与金の返還を免除される職に幼稚園の教育の職が加えられましたが、その施行についても第二点に述べたと同様の措置が講ぜられたにとどまったのであります。
以上申し述べましたように、貸与金の返還免除の制度は、教育または研究の職に優秀な人材を確保するための政策として行なわれたものでありますが、法による利益の供与はできるだけ平等であることが望ましく、同じく重要な教育または研究の職にありながら、その出身学校の差異あるいは修業年度の相違によって貸与金の返還免除の措置に差異を生ずることはきわめて不合理、不均衡と言わなければなりません。また、教育の現場においても、このような不平等の存在は教員相互間に好ましくない影響を与えているのであります。
したがいまして、このような不合理、不均衡を是正するため、昭和二十五年四月一日以後に日本育英会から学資の貸与を受け、修業後教育または研究の職についた者の貸与金で、その返還を免除されなかったものについても、その返還を免除できるように措置すべきものと考えます。
なお、この法律は公布の日から施行することとしておりますが、貸与金の返還免除の対象の拡大及び返還免除の条件の緩和に関する改正規定は、昭和二十五年四月一日以後の貸与契約により貸与した貸与金についても適用することとしております。
以上が本法律案の提案理由と内容の概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/2
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003・中村喜四郎
○委員長(中村喜四郎君) 以上で本法案についての提案理由の説明聴取は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/3
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004・中村喜四郎
○委員長(中村喜四郎君) 続いて、女子教育職員の出産に際しての補助教育職員の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、発議者から提案理由の説明を願います。千葉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/4
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005・千葉千代世
○千葉千代世君 ただいま議題となりました女子教育職員の出産に際しての補助教育職員の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、提案理由及び改正内容を御説明申し上げます。
去る第四十六回国会における本法の一部改正によって、女子の実習助手が法の対象に含まれ、国立及び公立の小学校、中学校、高等学校、盲学校、ろう学校、養護学校及び幼稚園に勤務する女子教育職員のすべてが、この法律の適用を受けるに至りました。その結果、いまや、学校教育の現場に勤務する教職員のうち、ただひとり事務職員のみが産休補助職員の適用のワク外に取り残されることとなったのであります。
事務職員は、その名称の示すとおり、学校の事務を担当し処理することがその本務でありますが、その事務内容は、文書の整理、起案、統計などの庶務的なものから職員給与、学校給食費、物品購入等に伴う会計の分野、施設設備の管理の面に至るまで多岐多様にわたり、教員の教育活動と相まって有機的に学校運営を推進するためのきわめて重要な使命をになっているのであります。
たとえば、一人の事務職員が出産のための休暇に入った場合、その事務は、一括してクラス担当外の教諭が代行したり、教頭と教諭が分割して処理に当たったり、あるいはまた養護教諭に充当するなど、種々の方法がとられましょうが、いずれの方法によるにせよ、一人の専門家の事務量のすべてを本来ふなれな教諭に課さなければならないことは、おのずから教育プロパーの面に手不足を生じて、児童生徒の自習時間を設けたり、事務職員の代理として養護教諭が教育委員会等への出張中、児童生徒の負傷事故の手当てが粗略に流れるなど、しばしば正常な学校教育を阻害する要因をもたらしております。
このように、学校教育をより正常に運営し、より円滑に推進して、その教育効果の高揚を期するための陰の力となっている事務職員の重要性にもかかわらず、事務職員配置の現状をながめますと、必置制が規定されている高等学校においては比較的充実しており、国立及び公立の高等学校に勤務する者の数は三万七千六百余人でありますけれども、中・小学校においてはいまだ十分な配置を見るに至らず、国・公立をあわせ、その数約一万四千三百人にすぎない状態にあり、かつまた、その代替職員の臨時任用の道も開かれていないために、女子事務職員は安心して出産することができない状態にあるのであります。
ちなみに、女子事務職員の概数は、義務教育諸学校において約六千三百人、高等学校において約七千七百人であります。
ここに、昭和四十一年の義務教育関係の事務職員の出産状況を申し上げますと、年間出産者七十八名のうち、産前六週間の休暇を完全にとれた者はわずかに一〇%にも達しない六名にすぎず、休暇日数十日以内の者は三十五名、実に全体の四〇%をこえるという実情でありますから、出産者の大半が、産前においてはほとんど皆出勤、時間出勤、あるいは自宅執務を余儀なくされているのであります。これらはすべて複雑な事務をふなれな教員に依頼することの不安、給与事務や報告書提出期限の切迫、地教委の監査、学校行事や授業への影響に対する心づかい等、事務職員の旺盛な職能的責任感に基づくところであり、その教育に対する献身的態度を雄弁に物語るものであると申すべきでありましょう。
以上申し述べました理由により、女子の事務職員の出産の場合について、女子教育職員の場合と同様に職員の臨時任用を行なうことができるよう措置して、学校教育の正常な実施の確保に資する目的をもって、ここに本改正案を提出いたしました。
改正案は、第一に、法第二条第二項の法の対象に新たに「事務職員」を加えることといたしました。この改正を行なうことにより、女子の事務職員の出産の場合、補助職員の臨時任用を可能にするものであります。
第二に、法の題名及び本則中の「女子教育職員」の字句を「女子教職員」に改め、「補助教育職員」を「補助教職員」に改めることといたしました。
従来、事務職員は、その給与の面では、教員と同様に義務教育費国庫負担法及び市町村立学校職員給与負担法の適用を受けておりますけれども、教員職員とは呼ばれず、他の法律においても教職員と呼びならわされております。それゆえに、事務職を本法の適用対象に加えるにあたり、題名及び本則中の「教育職員」「補助教育職員」の字句を、事務職員をも含めて「教職員」「補助教職員」に改めようとするものであります。
なお、この法律は、実施のための準備期間の必要性を考慮して、公布の日から起算して三月を経過した日から施行することといたしてあります。
何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/5
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006・中村喜四郎
○委員長(中村喜四郎君) 以上で本法案についての提案理由の説明聴取は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/6
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007・中村喜四郎
○委員長(中村喜四郎君) 国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
前回に引き続き、質疑を続行いたします。
なお、政府側から灘尾文部大臣、久保田文部政務次官、宮地大学学術局長が出席いたしております。
質疑の申し出がありますので、これを許します。岡三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/7
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008・岡三郎
○岡三郎君 国立学校設置法の一部を改正する法律案について質疑をするわけですが、その前に、文教行政として重要な問題であった朝鮮大学校の問題について、一つ二つ質疑したいと思うのですが、いろいろと対立が報道されておりましたが、昨日東京都の美濃部知事が行政ベースにおいて朝鮮大学校の認可をしたと。これに対して文部大臣が、違法ではないが妥当ではないというふうな見出しの新聞報道がなされているわけですが、その点について、違法ではないが妥当ではないというその真意をちょっと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/8
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009・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 朝鮮大学校の認可の問題でございますが、現在の学校教育法の解釈、適用の関係から申しますというと、知事の処分を直ちにこれを違法だというふうに申すわけには私はまいらぬように思います。ただ、この問題につきましては、御承知のように、政府としましては、もっぱら外国人の教育を目的とする学校類似の施設を各種学校という制度でもって実施していくということは必ずしも適当でないという考えのもとに、従来地方に対してそのような行政指導をしてまいってきていることは御承知のとおりであります。そういう観点からいたしましても、文部省としましては、この行政指導の方針を尊重していただきたかったと、こういう心持ちがいまいたしております。
同時にまた、具体の朝鮮大学校につきましては、いろいろと批判もある教育施設でございます。その成立の経緯、あるいはその内容でありますとか、教育の程度でありますとか、基金の関係でありますとか、とかくの批判のある問題であり、しかも、大学程度の教育をやっていこうという目的のように見受けられるのでありまして、従来の方針に照らしましても、またその施設の重要性ということから考えましても、これが認可という問題についてはよほど慎重な配慮を必要とする、このように私どもは考えておる次第でございまして、そういう政府の希望に対しまして、政府の態度につきましては東京都知事もよく御承知のことと思うのであります。また一面、この制度のこの学校の認可につきましては、東京都の私学審議会におきましても慎重に検討をせられました結果、幾多重要な問題を提起して、知事の慎重な考慮を望んでおられたように思うのでございますが、そういう審議会の答申に対しましてほとんどこれが顧みられていないのではないか、このようにも認められるわけでございます。
そういう意味におきまして、私は、あえて違法とは申しませんけれども、この認可については知事の深甚なる考慮と判断というものを期待いたしておったわけでございますが、それが逆の結果となってまいりましたので、私はその判断に対しまして、またその認可という事柄に対しまして、妥当とは思えない、こういう趣旨のことを申したようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/9
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010・岡三郎
○岡三郎君 まあ文部省の考える点は一応わかったわけですが、しかし、東京都に対して二年前に各種学校としての認可を求められておったと。これに対して私学審議会がいろいろと検討したけれども、最終的には、いろいろと条件めいた点が答申に書かれておるけれども、最終的な判断はやはり都知事に一任するというふうな内容のものではないかと、こういうふうに受け取っておるわけです。
そうするというと、一応の法律に基づいて認可を要請されてきている。しかも、外国人学校制度に関する法律とか、そういうものについてはいまだ明確でない。一応提案するという政府の意図ははっきりしておりますが、法律的に見てもこれが既成事実として発効しているわけではない。そうなるというと、立場として、いつまで待つんだというふうな点について政府自体が明確にこの点について問題を提起しない限りにおいて、やはり仕事の性質上、都知事が各種学校の認可について、内容的に整備されていればこれを認可せざるを得ないような条件に追い込まれるんではないかということをわれわれ考えるわけです。
そうするというと、問題によってはおくらしてくれとか、問題によっては早めてくれとか、そういうふうに文部当局が言われても、実際の行政をやっている末端においては実情にそぐわない点が出てくるという点について、美濃部知事も慎重熟慮、配慮して、文部大臣にもいろいろ御相談申し上げ、苦しい条件の中から、これは一方的というよりも、よくよく困ったあげくの果てにそういうふうな判断をせざるを得なかったというふうにわれわれはとっているわけです。だから、これをいつまで待てとか、そういう点について言われるわけはないと思う。そういう点からいうと、美濃部都知事のとった態度というものは、これはやむを得ぬ決断だったというふうにとっているわけですが、こういう点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/10
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011・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 美濃部知事としてはあるいはやむを得ないという判断のもとにおやりになったのかも存じませんけれども、私どもとしましては、あのような判断のもとにああいう処分をなさるということにつきましては、先ほど申しましたように、なされました以上はこれを違法とかなんとか言うつもりはございませんけれども、いかにも残念だという気持ちがいたしております。
いま一つは、文部省としまして、ああいう種類の学校教育施設につきましては別にいわゆる外国人学校、こういうようなものを創設することにいたしまして、それをもってその所を与えようと、こういうつもりで、現に法案をつくって国会に提案をいたしまして、御審議を待ちに待っておるようなわけでございます。少なくとも、その法案についてまた国会でもいろいろな論議が行なわれることと思うのでありますが、そういうものの推移というものをごらんになるということも、やはり今日の場合として、この判断をなさる大きな参考にもなるのではないかと、かように考えておるわけであります。
もちろん、いつまで待てとかどうしろというふうなことを私どもが言う立場ではございませんけれども、いろいろ判断を願う上におきまして、私はもっともっと慎重な御考慮が願いたかったということを申すわけでございますので、そのように御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/11
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012・岡三郎
○岡三郎君 少し私は文部省の考えている点はわかるけれども、やはり地方自治には地方自治としてのたてまえが私はあると思う。したがって、二年前に出されたものをいままで放置しておられたこと自体おそきに失する。行政ということを考えたときに、一体これをてきぱき処理していくというのが負荷された責任であろうというふうに私は考えます。ただ、それが政治的に見てどうのこうのというのは、それぞれの立場においてあると思います。しかし、行政ベースにおいてやるということは、政治的な問題をやはりむずかしい問題であるから抜きにして、条文に照らして、そうしてこれが違法の学校でない、いわゆる各種学校にのっとってそういう設置をしていく場合において適法であるというならば、これをやはり放置しておくこと自体が行政的に見ると怠慢であるというそしりも免れぬと私は思うわけです。だから、そういう点で、文部省なら文部省というものが、どういうふうにやられるかということについて、一応文部省の意向は言われたけれども、しかし、少なくとも最終的には都知事の責任においてこれはやるべき問題であるということを考えたときに、一面において、これを放置するならば、先ほど申しましたように、政治的な問題を配慮してこれを引き延ばしているというふうなそしりも免れないと私は思う。だから、そういう点についてはやっぱり客観的に見て、行政的に措置するものは措置する、こういうふうな角度でやられること自体が、各地域の責任を持った行政官の姿勢ではないかというふうに考えるわけですが、この点どう思いますか。
灘尾さんもやっぱり内務官僚としてやってきた場合について、それぞれの任務なりそれぞれの責任なりの分担があると思う。しかし、それをいろいろの面において配慮してもらいたいということはいいとしても、時間的な経過から見た場合に、二年間放置されてきているこの現状、なおこれをいつまで待つのかといった場合に、私はやはり時期というものがあるのではないか。そういう点について私はむしろおそきに失したのではないか。こういう問題は純行政ベースで考えて処置をしておいて、政治問題は政治問題としてまた別個にやるのがよろしい、こういうふうにお考えになるのが至当ではないかと思うのですが、この点どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/12
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013・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 行政事務を遂行していく上から申しまして、いたずらに問題をただ握っておくというような態度は好ましい態度とは思えません。しかし、この問題については、認可すべきであるかすべからざるかという判断が大事だと思うのであります。したがって、事務の遂行の遅速という問題よりも、認可すべきかすべからざるかという判断について慎重にやってほしいと、こういうことでございます。その点は問題がおのずから別ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/13
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014・岡三郎
○岡三郎君 私はね、慎重にやったと思うのですよ。その点が文部省の意図に沿っていないから配慮が足りないと言われることは、まことに残念だと思うのですね。とにかく東京都知事に当選して以来、この問題については非常に慎重配慮してきた。時間の経過がこれを証明すると思うのです。そういうふうなことを考えていった場合に、先ほど言ったとおり、ある問題についてはこれをどうする、ある問題についてはこれをどうする、それは重要であるからどうだということの前にですよ、各種学校として認可してほしいと提出されたときに、各種学校としての要件を整備していれば、その許可しないこと自体がおかしい。法律的な問題になっていると思うのです。だから、角度は別なんじゃないか。その別であるということを一緒に合わせると、妥当でないとか遺憾であるとかいうことになると思うんですが、そうではなくして、どういうふうな角度でも、各種学校の要件を整備して、それの許可を申請された問題については、各種学校としての要件を整備しているかどうかという点について十分検討して、その範囲内においてこれを認可するかどうかを進めていく。あとの問題はまた別なんじゃないですか。それがごっちゃになっているような気がするんですが、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/14
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015・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 各種学校として適当であるかどうかというところに私は問題があると思うのであります。したがって、認可にあたっては、知事としてはいろいろの問題を考慮せられまして、十分検討を遂げた上で、認可するかどうかということで決定せられたものだと思うのでありますが、先ほど来申しておりますように、政府といたしましては、現在の各種学校の制度をもってあの種の学校を取り扱うことは不適当であるという判断をいたしております。これは政府の判断、また政府の方針であります。そういう方針を政府が持っておるということは十分御承知のことであります。同時にまた、この設置認可について審議すべき審議機関も、いろいろな重要な問題を提起して、知事の慎重な判断を望んでおるわけであります。そういうことの適否の問題であります。その適否の問題についての判断の問題でございますので、私どもは私どもの立場において、このような認可処分をあのような形で決定せられましたことについてはいかにも不満足である、こういう気持ちを率直に表明いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/15
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016・岡三郎
○岡三郎君 それは明敏な灘尾さんにしてはずいぶん政治的な解釈だと思う。それは政府の方針でしょう。それは法律ではなくて方針でしょう。地方自治体としての行政的な権限ははっきりしておる。だから、現行におけるところの法律に基づいて認可を申請されてきたものを、政府の、まだ法律になっていないから方針ですよ、方針があるから何もできないということになるならば、それを筋道立てて追及していけば、地方の行政官自体が政治的立場に立たざるを得ないし、また政治的立場というものが優先されるということになれば、行政というものは私は乱れてくると思う。現行法規の中においては、各種学校については明確なる国としての法律がある。外国人学校制度その他について政府の方針はあるけれども、それは方針であって、まだ具体的に施行されていないということになれば、既存の法律に基づいて行政処理をするということが正しいのではないか。方針は方針としてあるにしても、それはそれとして、現場の地方行政官が現行法律に基づいてそれを処置していくということについて適当でないということは、適当でないじゃないですか。それは言いたいでしょうけれども、それは押えておくべき問題だろうと思うんです。これは一つの行政という問題について、法律をどういうふうにやっていくかということについては、これはあとのほうがこの問題に関しては正しいと私は思っておる。政府の意図と行政の実際の法律に基づく処理という問題はおのずから別である。これを混淆しておるというふうに私は考えざるを得ない。
それで、まあいろいろ問題がありますが、大学校といっても、いまいろいろ大学校という名前のついている学校がありますよ、さまざまな。警察大学校もあれば何々大学校もある。どのくらいあるんですか、大学校という名前の学校は。これはどういうふうになっておるか、そういうものはよろしい、こういうものはいけない、こういう区別は何かあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/16
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017・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 純粋の法律論といいますか、現行法を純粋に解消すれば、大学校という名称を使ったからといって、これは違法というわけにはまいりません。大学という名称は困りますけれども、大学校という名前を使ったものは違法というわけにはいきません。ただ、同じ名前をつけるならば、まぎらわしい名前はつけないようにという行政指導は差しつかえないと思います。
現に認められておりますいろいろな大学校があることは御指摘のとおりです。との大学校は、それぞれ法令に基づいてできておる学校でございます。そこで、そういう法令に基づいての学校の名前になっておるわけであります。ですから、おのずからかってに大学校という名前をつけたというのとは趣が違っておるだろうと思います。あるいはそうでないものの中にも一、二あるかもしれません。一、二あるかもしれませんけれども、これは違法だということで私は追及するつもりはございませんけれども、一般的に各種学校としてやります場合に、大学とまぎらわしいような名前をなるべく避けるようにということは考えてしかるべきことじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/17
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018・岡三郎
○岡三郎君 最終的に申し上げますが、やはり政策は政策として、繰り返すようですが、いろいろ各種問題をかかえて、一々政府の意図自体がこうだああだといわれても、現行の法規に照らしてそこに違法がなければ、手続上十分配慮してこれを処理するということにしても、時間のメリットが私はあると思うんです。たまたまこういうふうな問題が政治的な課題になってきておるので、文部大臣も一言言わなければならぬ立場に立ったんでしょうけれども、あくまでもそれは現行法律に基づいて処理すべき問題であるので、どういうものについてはもちろん違法ではない。違法ではないけれども、政府の考えている点と違っているやり方というものがかりにあったとしても、これは当然そういうふうな処理というものは地方行政の中で行なわれていく問題が多々あると思う。
逆にいうと、先般の京都の教育長問題にしても、地方自治体の教育委員会のほうで、この岡田教育長を適当だといいながら、文部省のほうはぐずぐず言ってこれをやらない。それには政府の政治的な意図がある、こういうふうに見られる、事ごとに。文教当局というものが政治的な中立ということを標榜しておりながら、政治的な意図というものをむき出しにやるということにおいて行政が乱れるおそれがあると私は思う。そういう点で、やはりたてまえはたてまえとして明確にしてもらわぬと困ると思う。
次に、この問題について、文部大臣談として、外国人学校制度の法律を強行するというふうな談話があったように見えますが、それはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/18
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019・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 法律案を国会に提出いたしておりますことは御承知のとおりであります。政府が法律案を強行するなんということができるはずのものじゃもちろんございません。国会の御審議にまつだけであります。
政府としましては、とかくいわゆる外国人をもっぱら対象とする学校について問題の多いこと、そこで新たなる制度を創設いたしまして、しかるべき所を与えようという趣旨の法律案でございますので、なるべくすみやかにひとつ御審議を願い、ぜひ通過させていただきたい、これを念願するのみであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/19
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020・岡三郎
○岡三郎君 それでは、無理にこれはやろうという意図ではないようだから、一応……。しかし、状況によれば、日韓条約の締めくくりとかなんとか盛んに言っておるから、いろいろな問題がこの中に政治的にあまりにも行なわれるということは、将来にやっぱりいろいろな問題を起こすので、私はその懸念の中から申し上げたわけです。
本論に返ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/20
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021・楠正俊
○楠正俊君 ちょっと関連。文部大臣にお伺いしますが、美濃部知事の談話の中に、認可しなかった場合にはその閉鎖も命じなければならないということが書いてあるんですが、私はそう思わない。この認可しなかったら閉鎖を命ずると、認可と閉鎖との関係が、関係はないように思うんですが、その点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/21
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022・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 問題が法律の解釈論になってくるわけでありますが、現行法の解釈から申しますと、ねばならぬということではございません。できるということが書いてあります。法律の条文をそのままに解釈すれば、いま申しましたように、閉鎖を命ずることができると。やるかやらぬかということは知事の判断の問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/22
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023・楠正俊
○楠正俊君 そうしますと、ここに「閉鎖を命じなければならないという一層困難な事態にいたるだろう。」と書いてある。これは何か間違っておるんで、いまの大臣のお話によりますと、そういうこともできるんだということですから、一そう困難な問題に立ち至るというようなことはまあないわけなんで、知事の談話は、何か困難な問題が起こるから、だから認可しなければいけないというような印象を与える談話になっているということは、これは何か意図があるような気がするんですが、これはいまの大臣のお答えではっきりいたしましたので、もうこれ以上質問いたしませんが、知事の思い違いであるというように私は解釈いたします。(「そんなことは本人のいないところで言ったってわからない」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/23
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024・岡三郎
○岡三郎君 第一番に、国立学校の中に政令で設けられている付属小中学校の問題、特に先般の福岡教育大学の付属の小学校において起こった不祥事件について、一応もう時間が相当経過しておるので、文部省に正確に御報告をまず願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/24
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025・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 福岡の付属小学校の問題につきましては、私どもまことに遺憾なことと存じております。十分学校当局に対しまして将来を戒めたいと思っております。この事件の経過については局長からお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/25
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026・宮地茂
○政府委員(宮地茂君) 福岡教育大学付属の福岡小学校におきます昭和四十三年度の入学者選抜試験にまつわるいわゆる収賄容疑によりまして、当小学校の教諭が福岡県警に逮捕され、身柄送検となりました。四月十二日現在起訴された者が六名となっております。
その送検の理由といたしましては、かいつまんで申し上げますと、福岡小学校の入学者選抜にあたり六人の各教諭は、それぞれ多数の志願者の父兄から合格ができるよう有利な取り扱いを受けたい趣旨のもとに現金または小切手の供与を受けた事実、並びに合格者の父兄から謝礼として現金または小切手の供与を受けた事実によるというのが理由になっております。また、その他に任意出頭を求められ、書類送検を受けた教諭が四名ございます。また、直接容疑ということではなくって、参考人として事情を調査をされた者が校長と大学の事務局の庶務課長、二名でございます。
大体そういう状況でございますが、先ほど大臣から発言もございましたように、この事件はまことに遺憾なできごとでございまして、さっそく学長も本省のほうに参りまして、私も直接会いまして事情を聴取すると同時に、事件は事件として、今後の問題、特にこういうことが学校の社会的信用を非常に失墜した問題でもあるし、事件の問題については司直の手でやるとしても、大学としてはまた別の意味でこれに対する検討が必要ではないかということを申しましたし、また学長もそのように考えまして、現在のところ司直の手でさばかれておるということとは別個に、この問題についての調査対策委員会を学長以下おも立った教職員で組織いたして、いろいろ事情を調べております。それから、起訴されました六名の者は、これは法の規定にもございますが、直ちに休職を命じておりますし、また起訴者以外の書類送検になりました四名には目下自宅謹慎を命じております。
ところで、この問題が起こりまして、学年末でございましたが、三月の終業式は三月の十九日でございます。その間は生徒の授業に支障のないように、教育学部の講師、助手、こういったもので小学校の教諭としての資格を持っている者に臨時に小学校勤務を命じまして、終業式まで授業に支障のないような措置をとりました。また、新年度の入学式が四月十一日でございます。ついせんだってでございますが、この新学年からの教職員の組織といたしましては、新たに、県の教育委員会とも相談もいたしまして、優秀な職員を七名、これは公立学校の先生でございますが、それをこの付属小学校のほうに採用方をお願いしております。それから、とりあえず七名でございますが、書類送検になった人、これらは自宅謹慎しておりますが、起訴されるとかされないとか、一応法律的な形式的な要件は別といたしまして、教育者としてこういったような疑いを持たれ書類送検されたといったような先生がそのままその学校にとどまるということも、これは教育上あまり適切でもございませんので、そういったようなことも含めまして、今後の教員の配置がえ、採用、こういうことは目下検討されておるところでございます。
大体以上が概要でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/26
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027・岡三郎
○岡三郎君 いまの御報告によりますと、六名の者が休職、四名の者が自宅謹慎、これは一体どういう処分なんですか。要するに、嫌疑を受けて六名が起訴された。片方の四名は起訴保留になったのか。それは金銭の額によってかどうかよくわからぬが、内容的にもう少し具体的に、御調査があったと思うのですが、それはどうなんですか。これは学校ぐるみやっていたという印象で、非常に世上に与えた影響が大きいと思う。ごく一、二の不心得者がやったというのではなくして、学校全体の、過半数以上が大がかりでこういう問題を平然とやっていたというところに問題があるのではないかと思うのですが、具体的にもうちょっと、内容はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/27
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028・宮地茂
○政府委員(宮地茂君) 先ほど申し上げましたように、六名の者が起訴されました。その送検の理由は先ほど私ほぼその事実どおりをお読みいたしたわけでございますが、もう一度それでは申し上げます。昭和四十三年度付属福岡小学校の入学者選抜にあたり、前記各教諭はそれぞれ多数の志願者の父兄から、合格できるよう有利な取り扱いを受けたい趣旨のもとに、現金または小切手の供与を受けた事実、並びに合格者の父兄から謝礼として現金または小切手の供与を受けた事実によるというのが、その送検の概要でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/28
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029・岡三郎
○岡三郎君 だから、私の言うのはその中身ですよ。現金または小切手、あるいはギフトチェックというようなものを受けている。そういったものはどの程度になっているのか。具体的な内容をお尋ねしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/29
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030・宮地茂
○政府委員(宮地茂君) これは実は学校といたしましては、いろいろな証拠書類といったようなものは警察のほうに押収されておりますし、またこの事件で逮捕され起訴された者との面談も学長としてもできませんし、まあそういうことで、大学といたしましては、司直の手でさばかれ、厳正にさばいてもらうということについては、それはそれとして進行してもらいたい。そのかわり、大学として検討し調査すべきことは自分たちでもやるということでございますので、いま直接の、先生のお尋ねの、何十何万円というはっきりした収賄容疑の金額は承知いたしておりませんが、一応報告によりますと、一応、個人の名前はまあわかっておることでございますが、控えさせていただくということにいたしまして、最低は十七万円、最高は百二十二万円程度の金品というふうに私のほうは報告を受けております。
それからもう一つ、六名の者は起訴されまして、これは公務員法に基づいて休職を命じております。それから、自宅謹慎を命じております者は、懲戒としてということよりも、一応道義的に自宅で謹慎をしておるということのようでございます。いずれこの六名の書類送検につきまして、容疑はございますけれども、はっきりした起訴とか不起訴とか、そういうことがわかっておりませんので、とりあえずの措置でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/30
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031・岡三郎
○岡三郎君 その問題についてはまた別個にやりますが、文部大臣にお伺いしますがね、こういうふうな事件が起こってきた原因、それはどういうふうにお考えですか、文部当局として。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/31
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032・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 個々の問題については何とも申し上げかねるわけでございますが、要するに、学校の教職員の服務に関するいわゆる綱紀がゆるんでおる、そういうことについてのものの考え方に大きなゆるみが生じておるのではないか、かように考えまして、いかにも残念に思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/32
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033・岡三郎
○岡三郎君 私はですね、その付属小・中学校のあり方、これは福岡小学校だけではなくてですね、各地域において、そのエリート的な一つの学校教育のあり方、こういうものがあって、押すな押すなの入学者、こういうふうな中からこういう問題が発生してきているんではないかと思うのです。したがって、選抜方法そのものが一つのやはり問題になってくるんではないか。教育大学にかかわらず、国立大学の付属の小・中学校というものについて私は問題点があると思うのですよ。特殊な層を集めて教育するということは、教育大学にしろ、あるいは国立大学の付属として、一体どういう教育の価値をねらっているのか。問題はそこにあると思うのです。ただいたずらに、社会的な名誉欲というか、付属の小学校というものは中央、地方におけるところのあこがれの的になっているということですが、ここに一つの問題の発足点があるのではないかと私は思う。一体、付属小学校なり中学校なり、付属というものは一体何だと、何をすべきところなんだと、これが明確でない限り、ただ付属へやれば上の学校へ出ていくのにぐあいがいいとか、あるいはあなたのお子さんはどこへ行っておりますか、付属ですといって鼻を高くするということになれば、競って、無理をしてでもそれへ入りたいということから問題が発生をしてですね、いろいろな情実とか因縁とか、そういう金銭の授受という問題がそれに伴ってきているのではないか。つまり、多くの志願者の中から選抜する。それが小学校ですよ。こういうところに、全国的な付属に対する文部省としての考え方をまとめてもらわにゃ私はいかぬじゃないかと思う。
これはわれわれのところにも一、二の投書がございますが、これは福岡の教育大学の付属の問題だけではない。多かれ少なかれ、そういう情実というものがあるのではないか。事実として、私のほうはこうですということを言ってきているところが一、二あります、問題を。ですから、私は、全国の付属がみんなそうであるとは言いませんけれども、その選抜方法とかそういう付属のあり方、こういう問題について根本的にメスを入れてもらわないと、この問題は、たまたま綱紀がゆるんだからそこに問題が起こったということではないのじゃないか。こぞって、自分の学区域があって小学校がある、公立の学校があるにもかかわらず、名誉的な考えから、付属というものをエリートコースというふうな考え方の中において、学校側も父兄の側もそういう方向でいたずらに競争心をあおるという結果がこういう問題を惹起していると私は思うのですが、この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/33
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034・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 付属の小学校というものに対しましての御批判でございますが、私も、その点につきましては、確かに岡さんのお話に耳を傾けなければならぬものがあるような感じがいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/34
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035・岡三郎
○岡三郎君 感じじゃないよ、文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/35
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036・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 付属小学校というものが、ただ単に父兄を喜ばせるだけの学校であってはならぬと思う。その設置の趣旨というものはあくまでも貫いてまいらなければならないということは申すまでもないことだと思うのでございます。現実は、エリートコースとでも申しましょうか、そういうふうな扱いをされて、父兄の人たちもそのような気持ちを持って付属小学校を見ておると、こういうところに反省すべきものがあるかと存じております。
しかし、その問題はその問題として大いに反省をしてまいらなければなりませんし、文部省としても、こういう問題を引き起こしているわけでございますから、ただ間違いを起こした人たちに対する措置という問題だけでなしに、どこかそこらに狂ったところがあれば、これを是正していくということについては十分考えてまいらなければならぬと思っております。まあそれにいたしましても、学校の先生方がそういうふうないわば誘惑に負けると、こういうことがあってはならぬことであります。これはこれとして、また規律は正していかなければならぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/36
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037・岡三郎
○岡三郎君 この事件にかんがみて、文部省としては、通達かそういうふうな問題は出したことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/37
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038・宮地茂
○政府委員(宮地茂君) とりわけ通達という形式では流してはおりません。しかし、今回やっておりますように、福岡の付属の学校には十分この趣旨は伝えておりますし、また、ごく形式的に通達云々も一つの方法でございますが、教員養成の大学の関係者の会合もございますし、そういう席ではもちろんこういう趣旨の徹底をはかりたい、このようにいまのところは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/38
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039・岡三郎
○岡三郎君 端的にいうて、特に付属の義務制の学校ですね、これが選抜方法をいろいろとやられる。これはいま言った世評ですから、志願者が多い。しかし、選抜方法をいろいろなやり方によってやるというところに、またいろいろな問題が出てくるのじゃないか。これについてはしばしばいろいろと指摘されて、それでやっぱり抽せん入学とかいろいろな問題が過去において論じられたことがあると思うのです。東京教育大学の付属等においても、抽せん入学という方法をやっておられる。そうするというと、そういう情実がからむ余地がございませんね。私は、国立大学、教育大学の付属の学校というものは、特殊教育というか、エリート教育のようなことをやっていること自体ががまんがならないのですよ。
一体、なぜそういう大学に付属を設けるのですか。その設ける意味合いというものは、結局、実際にやはり先生の養成をするという場合において、端的に児童の取り扱いとか教科のいろいろな取り扱いについて実地指導をするというふうないろんな問題があるにしても、特殊の層を集めて、そうしてエリート研究をやるということでは私は意味ないんじゃないか。国立大学ならば、国民全体に対してやっぱりいろいろと研究せられるということになるならば、ごく普通の子供を対象にして、そうして研究をするということにおいて、その研究の成果というものが全国的にその地域地域においても影響するということも考えられるが、特殊の層を集めた付属によって何をやろうとしておるのか。この点、明確に、文部大臣、考えてもらいたいと思うんですよ。一体付属というものは何をねらって置かれておるのか、いま私が言ったように、教員養成としての一つの指導的な立場において、そこにおいて実地訓練をするというふうな問題を考えれば、いまの付属のあり方というものはあまりにも違い過ぎるんではないかと、こういう点があるんですが、選抜方法とあわせてその点をお答え願いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/39
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040・宮地茂
○政府委員(宮地茂君) これは付属学校を設置する場合に、私のほうでも設置要綱といったようなものをつくりまして、各大学にもその趣旨は十分徹底しておるわけでございます。一つにおきましては、教員養成大学の付属でございますので、教育研究ということの実験的な機関である。実験学校という性格を持つものである。それから、いわゆる免許状を持って将来教員になる学生の教育をやっておりますから、これらに対して将来に備えての実習をやらせる。いわゆる実験と学習、それがこの設置の趣旨であり、目的でございます。
したがいまして、こういうことから、私のほうといたしましてもいろいろ従来からも通達をいたしておりますが、たとえば教育大学にもいろいろ付属ございまして、盲学校、ろう学校のようなものもございますが、そうでなくて、一般の教育大学の付属の普通の学級、これにつきましては、一般に教育研究及び実習の見地から、素質の異なる各種の児童生徒をもって構成することが望ましいのであるから、既定の学級数の範囲内で極力この趣旨に従って学級編制をしなさいといった学級編制のことも言っておりますが、入学選抜につきましては、入学志願者の募集につきましては、実験実習校としての付属学校の性格を十分志願者、その父兄に徹底させる。
それからまた、先ほど申しましたような趣旨から、教育実習上著しく能力の劣る者等その運営に支障を来たすおそれのある者はこれを避ける必要はあろうけれども、まずたとえばテストを行なってその著しく能力の劣る者はテストではずすとしても、不適格者を除外したあとは、定員を超過する場合は抽せんによって入学者をきめるというような方法がよいのではないか。それから、応募者が著しく多くてテストの実施が困難な場合は、最初に一度抽せんを行ない、その数を減じた後に、また一般の普通児かあるいは著しく劣るかということを判定する程度の選抜試験をやるとか、こういったようなことで指導をいたしておるわけでございます。
福岡教育大学の付属におきましては、心身の発育検査ということで七つの部門に分けましてテストを行なって、先ほど申しましたような抽せんということは使っていなかったようでございます。まあ、抽せんをしなくても、心身の発育検査を十分やることによって公正が期せるという見方もございますが、今回のような事件を起こすまあいろんな誘因があろうかと思いますけれども、一つは入学試験のあり方、こういうことから、学校の先生はそうではない、しっかりしておりましても、父兄がそのような錯覚を起こして、いろんなつけ届けをすれば効果があるんじゃないかというような気持ちを起こさしても困りますので、通達は通達、指導は指導として従来行なっておるところでございますが、福岡の今回のような問題につきましては、当事者の綱紀粛正という点についての処置、処分とあわせまして、こういった入学試験のやり方も影響があったかどうか、また、影響云々は別としても、世に伝えられるいわゆる悪い意味でのエリート学校といったようなことは好ましくございませんので、付属学校のあり方ということにつきましても、実は率直に反省もして検討もし、大学付属学校の指導をいたしたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/40
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041・岡三郎
○岡三郎君 文部省のたてまえとしてはこうだという話はよくわかるのですが、実態がそれに即応していない。だから、口頭禅にすぎないのですよ。実態がそうであれば、こういうふうなことは義務制、特に小学校の場合ですと、これは起こり得べき条件がないと思うのですよ。ところが、いま言ったように、エリート的な学校教育ということを標榜して志願者を集める。中には、父兄の財産を見て、これをいいかどうかということを考えるというような話も巷間伝えられているわけです。要するに、これは義務制の、特にそういう国立大学の付属という問題を考えたときに、先ほど言われたように、あくまでもこれは一般的な国民の子弟として平均的な児童をそこに置いて、そしてこれを教えていくという、いわゆる実験実習学校、それならばある程度意味があると思う、私は。相当な意味がある。しかし、特殊の者を集めて、そしてエリート教育をするのだというのでは、これは弊害をもたらしていくだけで、結局、よって研究されていること自体も、実際の地方の公立学校の小中の学校にこれは直接参考にもならぬ、特殊教育というか、特殊の層の教育研究になってしまうというふうに考えるわけです。したがって、私はやっぱり選抜方法については、それこそ先ほど言ったことじゃないけれども、文部省の強い意向で、これは直轄学校ですから、やっぱりそういう事態が起こらぬように具体的に処置してもらいたい、選抜方法としては。
そうしてもう一点は、そういうふうないろいろな巷間伝えられているようなことについては、学級構制というものについて、いま宮地大学学術局長から言われたような、いろいろと文部省が適切な通知、指導をしておるようだが、実際それが全部に徹底しておらない、こういうふうな傾向が強いということを指摘されておるわけです、一般的にいって。
私はそういう意味において、付属について抜本的にやっぱり改革してもらいたいということを文部大臣に強く要望すると同時に、これに基づいて、そういうふうなことがごうまつも起こらぬような組織ですかシステムですか、そういう点について、まず選抜なら選抜については、抽せんなら抽せんと。もちろん身体的に欠陥のある者は困るし、知能指数が特別に劣っている人が応募していくということはないと思うのです、ほとんど。ですから、そういう点で、やはり一定限度内において心身がじょうぶなら抽せんをもって行なえというふうにして、そこに集まってきた優秀児童だけじゃないところに、付属の教育を推進していく意味が私はあると思う。そういう点では学級編制等についても、実地に指導していかれる。優秀児の教育をやられることもいいでしょう。しかし、平凡児の教育も、こういうふうにやったなら資質がこういうように改善されていくとか、それから知能のある程度劣った子供でも、こういう教育方法でやればある程度水準に追いつくとか、いわゆる多角的な国民教育の実態に役に立つような教育の訓練学校にしてもらわないと、私はいまの現状はエリート学校という一つの父兄のあこがれの的という悪い意味の教育という場がここへ展開されているような気がしてしようがないのであります。実際にやっている付属の先生の中には優秀な先生がずいぶんいるが、いま構成されている児童の層というものが一方的である。こういう面において、十全な教育の影響というものはなされぬじゃないかという心配が私はあるわけですね。この点について文部大臣の英断を願いたいが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/41
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042・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 御趣旨はよくわかりました。文部省としましても、付属学校設置の趣旨を徹底しなければならないわけでございますので、弊害とせられるべきものにつきましては極力その是正につとめてまいらなければならぬと思います。文部省におきましても、また現場の諸君とも十分連絡いたしまして、積極的に検討してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/42
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043・岡三郎
○岡三郎君 いま文部大臣から積極的に付属学校の設立の趣旨にかんがみてこれを適切なものにしていくし、それからそういう弊害が起こらぬような措置をしていくと。来たるべき四十四年度については、ひとつこれを適切に具体的に行なうような指導をいまから進めてほしいと思う。そうしないというと、私はいつまでたっても同じ現象というものが繰り返されていくことを指摘して、次に移ります。
第二の問題は、一般的に教職員の待遇が低いということは私がここで言うまでもないのですが、特に大学の教官の待遇というものは、最近の物価高に比例して——物価高の比例だけではなくして、相対的に戦前に比してあまりにも低過ぎるんじゃないか。これは義務制の学校においても指摘されているところですが、こういう点について文部大臣はどうお考えですか。
これはいろいろとここで大学を設置される、あるいは学部をふやされる、大学院を置く。ところが、その実態としていわゆる頭脳流失といいますか、いろいろと世上にやかましく言われている。日本の学問の水準というものを低下させるのじゃないか、こういう点で強く言われておるわけですが、いまの大学自体における教官の待遇、大学の内容の充実、こういう問題についてどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/43
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044・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) この種の問題は、ただ大学だけ取り上げて、そしてそれだけで考えるわけにもまいらぬ点があろうかと思うのであります。一般的に申し上げまして、私は、少なくとも文部省としましては、大学の教官の待遇はもっと改善せられなくちゃならぬという考え方をいたしております。また、年来文部省におきましても、その方向で努力はしてまいったのでありますけれども、これが十分であるというふうに申し上げるわけにはまいらぬであろうと思います。と同時に、給与も給与でございますけれども、教官のいわゆる学問研究に必要な研究費の問題、これらにつきましても、戦前との比較のお話もございましたが、私どもも決して現在の研究費でもって事足れりと、そのような安易な気持ちでおるわけではもちろんございません。できるだけ研究費の増額等についても努力を継続してまいりたいと存じているわけでございます。こういうふうに思いますが、なかなか思うにまかせない点もございまして、この点は皆さんも御不満でございましょうし、私どもとしましてもさらに努力を傾けていかなきゃならぬ、こういうふうにも考えておる次第でございます。どうかその意味におきましては、せっかく御協力をいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/44
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045・岡三郎
○岡三郎君 文部省として、これは国立、私立を問わず、かなり大学の先生が、アルバイトというと失礼ですが、いわゆるいろいろな収入の道をはからなければやっていけない現状にあるということを指摘されておるわけですが、こういう点で大学の先生自体というものが、そういうふうな自分の職業になかなか専念しにくい、また科目によってはいろいろと文筆でやろうとしても書かしてくれない。はやりっ子と、はやりっ子でない差はずいぶんあると思う、人気のある人とない人とは。その科目によってもずいぶん違うと思う。しかし、いままで指摘されておる点は、大学の研究室自体が民間と、あるいは防衛庁と、いろいろと研究費という問題をめぐって委託研究とか、そういう問題を指摘されてきている。最近において学術交流でアメリカに行った大学の先生が、待遇が違うというので、そのまま向こうへとどまってしまうとか、そういういろんな指摘があるわけですが、ここで御答弁願いたいのは、学術交流の結果頭脳流失の現状というものはどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/45
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046・宮地茂
○政府委員(宮地茂君) 実は昭和三十九年に、これは科学技術庁と共同して、六カ月以上外国にとどまった先生方の調査をしたことがございます。ちょうど突然の御質問でございましたので、私その数字をちょっときょう持ってきていないのでございますが、過去五年間ばかりの間に六カ月以上海外に研究に行かれた方、それを大まかに申しますと——必要がございますれば後ほどまた資料をお出ししてもよろしいですが、ちょうど持ち合わせませんので、正確な数字は別としまして、大体そのうちの大半が二年以内に戻っておられます。二年以上向こうに、外国にとどまられる方のうち、先ほど御指摘のように、外国に完全に就職してしまうといった形になられる方はきわめて比率としては少のうございます。
で、これを諸外国とも比較してみましたが、一番とどまるのはアメリカが多いようでございまして、特にカナダとかあるいはイギリス、西独、こういったところは相当の人間がアメリカに行って、研究者がそこに就職してしまうということになっております。一番大きいのはお医者さんの資格を持った方、それに次ぎましては理工系の方々でございます。で、世界的な傾向としましてそういう傾向がありますが、したがいまして、わが国の学者でもきわめて著名な学者がとどまられるという例はあるようでございます。
その原因につきましては、これは一々御本人からアンケートをとったわけではございませんので、はっきり科学的には申し上げられませんが、一応私どもの考えておりますところは、わが国ではそういう研究部門がないので、たとえばアメリカのその部門に行けば、国内ではその人は非常に優秀なんですけれども、それ以上の勉強をしたいというときには、アメリカのそういう研究機関に就職してやったほうがより一そう自分の学問が進んでいくのだといった、全くこれは研究心、研究意欲からそうやられる。あるいは、似たようなことでは、わが国ではそういった共同研究をするのに適切な先生もないので、アメリカのだれだれといったグループの方々と研究したいということで行かれる方もございます。そういうことで行かれる方もございますが、研究費が少ないとか、あるいは施設設備が不備であるといった研究条件の不備から、外国、アメリカヘとどまるという学者もおるようでございます。
それにつきましては、私ども少のうはございますが、今年度——昨年は科学研究費四十二億でございましたが、それを五十億にするとか、その他諸外国から、アメリカ陸軍極東研究開発局とかNIH——公衆衛生局とかいったところのいわゆる奨学寄付金が国会で問題になったこともございますが、そういったことを一応経理的にはっきりすることはするとして、いろいろわが国の科学研究費も増加して、あるいは国立大学におきましては教官研究費を増加する、あるいは施設設備の関係の予算を、乏しい国家財政でございますが、つけておりますし、また、四十三年度もその他のものと比べますと、比率におきましてはそういう配慮もございまして、相当増額をいま考えておるというような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/46
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047・岡三郎
○岡三郎君 それではひとつ具体的に文部省として、どの大学でどういう先生がどういう方面で向こうへ行っておるとか、そういう点の具体的な資料を出してもらいたいと思う。これはよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/47
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048・中村喜四郎
○委員長(中村喜四郎君) 局長、資料はよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/48
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049・宮地茂
○政府委員(宮地茂君) 先ほど申しました三十九年に調査しましたものは出ますが、その後のことにつきましては、各大学に聞いたり、いろいろまとまった資料もございませんので、資料は出さしていただきますが、そのやり方につきましては、後ほどまた岡先生とも御相談さしていただいて、御趣旨に沿うような形でお出ししたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/49
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050・中村喜四郎
○委員長(中村喜四郎君) 岡君、それでいいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/50
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051・岡三郎
○岡三郎君 いまの点はそれでよろしゅうございますが、私が指摘したいのは、かなり著名な優秀な学者がぽつぽつと抜けて行ってしまう。そうなるというと、日本におけるトップクラスが抜けて行くということは、非常なこれは日本の学術研究その他について影響するところ大と私は思うわけです。そういう点で、先般は名古屋大学の先生が、これは数学の権威者だそうですが、アメリカへとどまってそのまま就職してしまう。さまざまな報道があるわけです。こういう点については、やはり具体的にそういう問題について研究費とかそういうものを充実すると同時に、やはり国内的においても、相互関係でグループ的に研究するとか、そういうふうな面について大きな助成というものをやはり文部省としてのワクにとらわれずにしてやってもらいたいというふうに考えるわけです。これは大きな問題として残っているわけですが、これはあとで資料等から、後刻この点については触れたいと思います。
時間が制約されてきておりますが、次に、大学生の急増対策と関連して、本年度から大学の教職員を増員する、こういうふうな問題で行政機関職員定員法がいま出されておるわけですが、実際問題として学校は四月から発足している、こういう問題について一体文部当局としてはこのブランクをどういうふうに考えておられるのか、まずこの点からお聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/51
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052・宮地茂
○政府委員(宮地茂君) 多少形式的な御答弁になって恐縮かと思うのでございますが、正直に申しまして、三千名近くの四十三年度定員増をお願いいたしております。これらにつきましては、御承知のように、今度各省を通じての総括の定員法ということで定員法の改正が国会でも提出され御検討いただいておるところでございます。したがいまして、私どもといたしましては、特に大学はよその省庁と違いまして、非常に教育研究で内容的にも性格が違いますし、これが増員が行なわれないといろいろ教育研究にも支障を来たします。そういう観点で、ぜひとも現在の総括定員法が一刻も早く審議され可決されて、大学に具体的に配分できることを祈念しておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/52
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053・岡三郎
○岡三郎君 祈念しておるのじゃ問題は解決しないので、あとで具体的にお伺いしますが、文部教官、いわゆる国立大学の教授、助教授、こういう定員と国家行政機関の職員と一緒にして定員法という形でやることが、実態は無理なんじゃないですか。文部大臣、これはどう考えますか。いわゆる大学のそういう教官というものを国家行政機関という形の中に一緒くたにして、そうして定員がどうだこうだということは、実際としてこれ無理なんじゃないですかね。これどうお考えになりますか。これは文部大臣に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/53
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054・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) まず政府委員から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/54
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055・宮地茂
○政府委員(宮地茂君) いままでは各省設置法にございましたが、これは総括的に国のいわゆる国家公務員は何人だというトータルが今度の総括定員法に規定されるわけでございます。そういう限りにおきましては、学校の先生も国家公務員でございますし、ただ職務等いろいろ違った面もございますので、このトータルがきめられただけであとはいかようにも流用できるというようなものでございますれば、御趣旨のように私はそういうトータル表の中に入れられるのはどうかという点があろうかと思います。しかし、一応この総括的な総計の中には一本で入りますが、これが文部省といたしましては、文部本省の職員その他事務職員と教官とを彼此相通じて流用し合うというようなことは従来もやっておりませんし、今後もやるつもりはございませんので、その点の混乱はないということから考えますれば、総括表として定員法の中に規定することは一応支障はないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/55
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056・岡三郎
○岡三郎君 支障はないということですが、いま支障になっているのじゃないですか。現実の問題として、先生が行くべきところに行っていないのでしょう。発令できないのでしょう。大体、一省一局削減とか、いろいろな問題とひっからませて全部こう出てくる。簡単に審議が進みませんよ、全体としてやられる場合に。しかし、学校自体は四月から発足するということが明確になっているわけです。ほかの省庁ならば、これはいろいろとそれが通るまでにやりくりということはできるかもしらぬけれども、大学のほうで先生という問題についてそう便法というものが講じられるわけがないと私は思う。ということになれば、やはりそういうふうな問題とからんで今後継続的に定員の問題が国会の論議になる。そういうふうな問題とからめてこの問題が一緒くたになっているということになれば、そのつどつど影響を及ぼされてくるのじゃないですか、結局。いまのところはいつごろ定員法というのは通るめどを立てているのですか。あなたのほうは、要求したけれども出てくるまでは昼寝であると、それで済まされないのでしょう。これはどういうことなんです発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/56
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057・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) この問題には、率直に申し上げまして、実は私ども頭を悩ましております。ただ、政府といたしましては、一日もすみやかに定員法の国会通過を希望いたしまして、その成立をお願いをいたしておるところでございます。現在の段階において申し上げますれば、なるべくすみやかにひとつ御審議を願って、そうして定員法の成立を希望するという方向で努力をいたしておるわけでございます。文部省自体の立場から申しますというと、御指摘のように、頭を悩まさざるを得ないのが現段階でございます。ともかくひとつ御理解のもとに、なるべく早くひとつ成立さしていただきたい、それを強く国会の皆さん方にもお願いをいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/57
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058・岡三郎
○岡三郎君 まあ腹の中は別にして、それ以外の答弁はできないのかもわかりませんけれども、しかし、現実の問題として、一省一局削減とかいろいろな問題がからんで、政治的にこの問題が審議されてくるということになれば、かなりおくれる。聞くところによれば、きょうこの委員会に行政管理庁のほうから出席を私が求めたところ、いまようやく衆議院の内閣できょう始まったところだと、こういう。この現実を御存じだと思うのですが、ということになると、早く通っても五月の半ば過ぎ、会期末にうまくいっていくかどうかというふうな状態じゃないですか。そうするというと、新しく学校へ入ってきた学生に対して教官が発令できないということになると、この問題について早く通ってくれなければ困るし、早く通ってくれるのを期待するといっても、現場は一体どうなるのかということについて、たとえば先年度までに行なった学部あるいは学科の新増設に伴うものが千三百十九人とか、いろいろ報道されておりますが、学生の学年が進むにつれていま教官がなくて困っているというふうな点には、一つの例をあげるというと、九州の芸術工科大学について、これはどういうふうにやりくっているのですか。いまどうなっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/58
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059・宮地茂
○政府委員(宮地茂君) 芸術工科大学につきましては、定員といたしまして学長を含めまして教官が十五名ということで、定員増の法改正を一応もくろんでおるわけでございますが、いままでこれは九州大学のほうに、芸術工科大学の準備室ということで定員がいままで、昨年六名ついておりました。そのうちから教授、学長——学長予定者も事実上考えて、準備室のほうに昨年来発令しておりました。ただ、その他の教官につきましては十四名、これにつきましては、国立大学に勤務しておられて、それが配置がえになって芸術工科大学へ来るという方につきましては、これは純粋に申し上げればあまりいいことではないと思いますが、窮余の策でございますので、現在勤務しておられる大学と芸術工科大学と併任されるということで、まあ学生の授業に支障のないような、また定員法が通らなくても、これはよくないんですが、そういった窮余の策を講じている。その他民間から来られるような方につきましては、これは非常勤講師でお願いするとか、あるいは九州大学がこの芸術工科大学の創設には全面的な協力大学ということでお願いしておりますので、そこらあたりの欠員を一時借りるとかいったようなことで、これはおしかりを受けることとは思いますけれども、学生の教育が大事でございますので、定員法が成立するまではそういう便法でやりたい、やらしていただきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/59
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060・岡三郎
○岡三郎君 やらしていただきたいといって、いま現実にそうやっているのですか、どうなんですか。もうちょっと具体的に言ってください。学校はどうなっているのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/60
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061・宮地茂
○政府委員(宮地茂君) これから発令をしたいと思って、いま準備を進めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/61
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062・岡三郎
○岡三郎君 それじゃ、いつから学校は始まるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/62
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063・宮地茂
○政府委員(宮地茂君) 学生の入学式は四月二十三日を予定しているようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/63
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064・岡三郎
○岡三郎君 四月二十三日を予定して、きょうは十八日だけれども、いつ発令するのですか、適当なやつは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/64
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065・宮地茂
○政府委員(宮地茂君) 入学式の二十三日までにはおそくとも発令をしたいと、こういうふうに考えて、いま事務的に進めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/65
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066・岡三郎
○岡三郎君 その内容はどういうふうなものになっておりますか。非常勤講師はどうなる、兼任はどうか、その辺はどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/66
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067・諸沢正道
○説明員(諸沢正道君) 九州芸術工科大学につきましては、ただいま説明ありましたように、四十三年度として教官十四名、事務職員二十二名、合わせて三十六名の増員を予定してあるわけでございますが、そのうち目下どうしても開校と同時に必要な教官として十一名の方を、これは他の国立大学等からの採用予定者でありますが、とりあえず、ただいまお話がありましたように、適当ではないかもしれませんけれども、現実に芸工大の教授を担当していただくために、九州大学の教官に発令をいたしまして、同時に、つまり九大の欠員を暫時借りまして、九大の教授ないしは助教授等として発令して、あわせて九州芸工大の教授ないしは助教授として併任発令をいたしまして、そうして二十三日以降の授業に間に合わせるようにしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/67
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068・岡三郎
○岡三郎君 非常勤のやつは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/68
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069・諸沢正道
○説明員(諸沢正道君) 非常勤のほうは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/69
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070・岡三郎
○岡三郎君 そのほか考えているやつは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/70
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071・諸沢正道
○説明員(諸沢正道君) そのほかの足りないものにつきましては、たとえば民間から採用する等、現実に年金の通算等の必要のない方につきましては、非常勤の講師等として発令するようにということで、これは発令は大学のほうになりますので、大学のほうで準備を進めているものと思います。(「この資料と違う」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/71
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072・岡三郎
○岡三郎君 これはあとで……。内容が違う、文部省から出した資料と違うという話がありますが、その九州大学の兼任でとにかく急場をしのぐというても、九州大学のほうはどうなるのですか。余っている人がいるわけじゃないでしょう。九州大学のほうは適当にその間やっておけ……。どういうことなんですか。手当を出すのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/72
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073・宮地茂
○政府委員(宮地茂君) これもこういう急場ですから、あまり適当ではございませんが、事実上、九州大学とか東京大学のような大きな大学になりますと、若干の欠員がございます。したがいまして、これは法学部とか文学部の何講座、何学科というふうなくくりつけなんでございますけれども、一応そこらの欠員がございまして、それらを流用するということでございます。ですから、これは正式な俸給を出すわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/73
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074・中村喜四郎
○委員長(中村喜四郎君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/74
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075・中村喜四郎
○委員長(中村喜四郎君) 速記を始めて。
午前の委員会はこの程度とし、暫時休憩いたします。
午後零時三十八分休憩
〔休憩後開会に至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815077X01019680418/75
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