1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年三月二十八日(木曜日)
午前十時三十分開会
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委員の異動
三月十五日
辞任 補欠選任
大森 久司君 木島 義夫君
山本茂一郎君 中山 福藏君
三月二十八日
辞任 補欠選任
中山 福藏君 山本 杉君
谷村 貞治君 内田 芳郎君
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出席者は左のとおり。
委員長 北條 雋八君
理 事
青田源太郎君
梶原 茂嘉君
秋山 長造君
山田 徹一君
委 員
内田 芳郎君
木島 義夫君
斎藤 昇君
山本 杉君
大森 創造君
亀田 得治君
山高しげり君
国務大臣
法 務 大 臣 赤間 文三君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総長 岸 盛一君
最高裁判所事務
総局総務局長 寺田 治郎君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
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本日の会議に付した案件
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
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001・北條雋八
○委員長(北條雋八君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。赤間法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/1
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002・赤間文三
○国務大臣(赤間文三君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、裁判所における事件の適正迅速な処理をはかる等のため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点とするところを御説明申し上げます。
第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、高等裁判所における訴訟事件及び地方裁判所における借地非訟事件の適正迅速な処理をはかるため、判事の員数を十二人増加することにいたしております。
第二点は、裁判官以外の裁判所職員の員数の増加であります。これは、高等裁判所、地方裁判所及び家庭裁判所における事件の円滑な処理をはかる等のため、裁判所書記官、家庭裁判所調査官及び庁舎の管理要員等を増員しようとするものでありまして、合計十三人を増加することにいたしております。
以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますよう、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/2
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003・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 本案に対し質疑のある方は順次御発言を願います。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/3
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004・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/4
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005・秋山長造
○秋山長造君 ちょっとお伺いしますが、これは幼稚な質問かもしれませんけれども、いまお聞きのように、この法律案の提案説明は法務大臣がやられた。それで内容は、法務省とは関係ない裁判所の定員法について審議をするわけですけれどもね。これはまあそういういまのたてまえになっているから提案権がないと、したがって法務大臣がやられるということになっておるのですけれども、これはどうもぴんときませんね。それで、予算の提案なんかについても、裁判所は二重予算の提出権を持っておられるようでございますね。これは、いまの法制上から言えば、やむを得ないからそうなっているのだろうと思うのですが、これは何が根拠になってこういう形になっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/5
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006・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいま秋山委員からお話のございました問題は、現行法ではまさしくそうなっておるわけでございますが、単に現行法でそうなっているというにとどまらず、やはり三権分立の基本にも触れる問題を多々含んでいるきわめて重要な問題であるというふうに私ども常々考えているわけでございます。で、結局まあ憲法がすべての基本であろうと思います。その憲法をいかに運用して、日本の、大きく言えば政治と申しますか、すべてのことをやっていくかと、そのときにどういうふうに権限を分配するかということであろうと思います。そして、これは憲法にも規定がございますし、あるいは憲法に規定があるなしにかかわらず、およそ今日の近代国家におきましては、国会が最高の機関である。そうして、すべての方策は国会で議決される予算なり法律でもって動いていく、これがまあ根本であろうと思います。その場合に、その国会でおきめになることをだれが言い出すかということについては、いろいろな考え方が立とうと思います。現行法でも国会みずからが発案されると、すなわち、国会の、具体的に言えば政党でございましょうし、国会の議員さん方が数名で発案されるという形式がある意味では一番すぐれた方式であるというふうに考えられるように私ども常々思っているわけであります。しかし、同時にまた内閣もやはり、政府、すなわち日本の国政を担当する行政の最高機関として、責任をもって法案をお出しになる。これまた確かに一つのやり方であり、そしてその内閣でお出しになった法案が国会で可決されますれば、それはりっぱに最高機関の権威を持った決定として動いていく。これも非常に重要なやり方であろうと思います。ただ、その際に、それでは最高裁判所に提案権を認めてはどうかと、この点については、憲法なり国会法上そうなっているという以上に、やはり三権分立の精神から申しましても、そもそも裁判所というものはそういう形での政治責任を負うものではございません。したがって、裁判所は、定員法のようなものでございますとそれほど問題はないかもしれませんけれども、いずれこの参議院でも御審議いただきます、たとえば裁判所の管轄をどうきめるとか、あるいは裁判所の配置をどうするというようなことでも、やはり一つの政治問題でございますから、それについて政治責任を負うのはやはり内閣であり、最終的には国会でおきめになるという、こういう形であろうと思います。のみならず、現在の憲法では、最高裁判所はいわゆる違憲審査権というものを持っておるわけでございます。そうなりますと、違憲審査権を使いますためには、やはりこれは法律の制定の過程ではあまり裁判所というものが意思表示をするということは好ましいことではない。提案がおかしいばかりでなしに、実は私ども、法務委員会には、従来の慣例で出席いたしまして、そして法案の御審議の際にある程度の意見を述べさせていただいておるわけでございますけれども、しかしこれもかなりの場合には事務当局限りの意見であるというお断わりをしなければならないような場合が出てまいるわけでございます。ここで、この法律に御賛成申し上げるとか、あるいはこういう法案はできるとけっこうだと申し上げておいて、いざ最高裁判所はそういう法律は違憲だと言うことは十分あり得るわけでございます。いま問題になっております職員定員法のようなものにつきましては、これが違憲であるというようなことで問題になる余地はなかろうかと思いますけれども、一般的には、そういうわれわれは提案権が認められておらないし、認められないのが妥当じゃないかと思います。そういう関連でできておりまして、それでは裁判所の職員の数をきめるのは裁判所の仕事ではないのかということになると思います。私どもは裁判所の職員をきめることは非常に重要な裁判所の関心事であると思っておりますが、最終的には内閣が一つの政治的な責任を持って、これだけの裁判官で裁判を動かしていくべきものだと、たとえば訴訟遅延があるからどうかということは最終的には内閣の政治責任で判断し、そして最終的な決定権は国会でお持ちになっておるということで、私どもはあくまでここで御説明申し上げますのは、現在裁判官が何人ぐらいおり、欠員がどうなっており、訴訟がどうなっておると、こういう実情であるということを申し上げて、その資料のもとで国会の御決定をいただく、いわばその参考資料を御報告申し上げておるというようなつもりでいつも出てまいっているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/6
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007・秋山長造
○秋山長造君 これは外国の例はどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/7
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008・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、戦前のようなシステムでございますと、裁判所というのは司法省の一機関でございますから、そういう場合にはそういう問題が起こらないわけでございます。そして現在、大陸法、たとえばドイツでありますとかフランスにおきましては、大体日本の戦前のシステムでございますから、そういう点は問題にならないわけでございます。現在の制度はアメリカに比較的近いわけでございますが、アメリカでもむろん最高裁判所は提案権は持っておらないように私は了解しております。そしてアメリカの場合日本とかなり違うのは、規則制定権というものがかなり強力な力を持っております。御承知のとおり、憲法の七十七条で、最高裁判所には規則制定権というものがございます。規則で定員をきめるということを申し上げているわけではございませんが、たとえば訴訟の手続というような問題については、かなりの程度に最高裁判所の規則にまかされておる。つまり、法律から委任されているような形になっておる例が多いわけでございます。しかし、これにも一つの問題がございます。日本ではやはり、重要なことは国権の最高機関である国会でおきめいただく、そしてそれのいわば補いなりあるいはそれと両立する形で規則をきめるというのがここ二十年来の大体のやり方でございますが、その点にはいろいろ実は議論がございまして、規則制定権はある面においては法律に優先するというような説も学説としてはあるわけでございます。大体はしかし、裁判所が立法的作用をやる場合には、規則制定権の行使であるというのが普通のやり方であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/8
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009・秋山長造
○秋山長造君 アメリカの最高裁判所の予算だとか定員だとかというようなものはどういう形できめておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/9
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010・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これも実は、突然のお尋ねでございますので、詳しいその規定の内容等を調べてまいっておりませんが、これはやはりアメリカの場合には、大統領がお出しになって、連邦議会でおきめになると、こういうふうに承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/10
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011・秋山長造
○秋山長造君 それは、各州の裁判所がありますね、それも大体連邦と同じことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/11
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012・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 州ごとに大体同様のようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/12
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013・秋山長造
○秋山長造君 そうしますと、この三権分立ということがたてまえではあるが、もう一つ徹底し切れぬところがありますわね、日本の場合は。そうすると、裁判所が提案権を持たないということは、むしろ持たないほうが、立法過程について裁判所が関与しないほうが、違憲審査権を持つ裁判所のたてまえとしてそのほうがベターだということでそうなっている、いまのようになっていると言うんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/13
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014・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 私、違憲審査権の点を申し上げましたのは、それも非常に重要な一つのモメントであろうという趣旨で申し上げたわけでございます。それ以外に、たとえば、そもそもいまここでは定員法でございますので、これなんかは、もしかりに最高裁判所が提案権を持つとすれば、最も最高裁判所が提案するにふさわしい法案であろうと思いますが、これ以外のものでございますと、たとえば裁判所の管轄をきめるということ一つにいたしましても、これはやはり地元の住民の意見を聞き、あるいはその他の利害関係、あるいは弁護士会等の意見を聞く、そういういろいろな手続を経て、一つのそれが行政であろうと思います。そういう情報収集その他のいろいろ施策を経て法案というもの炉形づくられるということであろうと思いますが、裁判所の司法行政は、原則として裁判所内部の司法行政、すなわち職員の管理とか、あるいはいろいろそういうような内部的な規律ということが中心であるように憲法上なっております。つまり、対国民に働きかける行政というものはやはり内閣の御権限にあるほうが自然ではなかろうかと、一応かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/14
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015・秋山長造
○秋山長造君 まあその点は、一応おっしゃるとおりかもしれぬ。そうなりますと、法律の提案権は、いまおっしゃるように、法務省がやる。ところが、予算については、例の財政法の規定がありますね。二重予算提出権というんですか、そういうものがある。そうすると、それはまた別なたてまえになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/15
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016・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 予算の中には、非常にその裁判を運営していくための直接の経費が多々あるわけでございます。典型的なものは、例の裁判費というものでございます。一例をとりますれば、たとえば事件のために検証に行く旅費というようなこともございます。その他いろいろなものがございますが、そういうふうに裁判を実際にやっていく上の必要欠くべからざる経費というものがございまして、それがなければ裁判は動かない、こういうことになりますけれども、これはやはり内閣だけの御判断ではわれわれとしては承服することができない場合もあり得る。やはり、その程度の裁判費しか計上してくれないのじゃ承服できない、裁判が動かなくなるということで、国会の御判定を仰ぐということが十分考えられるし、そのためにこういう規定もあると思います。そういう点が、定員法が非常に関連してくるわけでありますが、定員についても、私どもとしては、これだけの人間がいなければ裁判は動かないということをつとに考えておるわけでありまして、そういう点で、予算でつまり定員を計上していただくということになると思います。これは実は、そういう関係から申しますと、定員というものも予算でかなり実質的な御論議もいただいており、それの一環ということになるだろうと思いますが、ただ法律という形をとっておりますので、法律はやはり、内閣の提案で、国会の議決が必要であると、こういう形になるわけであります。しかし、そうかと申しまして、定員法というものを政令でやるということはとうてい考えられませんし、裁判所の規則でやるということも穏当でないので、やはりこれは法律できめていただくのが一番好ましいということで、予算とうらはらでおきめいただいておる、かような実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/16
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017・秋山長造
○秋山長造君 そうしますと、せめて予算だけでも、裁判所の要求というか、裁判所の自主性、そういうものをある程度保障する一つの便法として、財政法にそういうものがつくられておると思います。それだけのものがあるのですが、この二十何年間、裁判所の予算というものは予算委員会で——予算全体についてはなかなか論議をやっておるけれども、裁判所の予算ということで特別に論議になった前例がありますか。それからもう一つは、財政法でそういう特別な権限——権限といいますか、特別な法が認められておるわけですが、それがこの二十年の間にその効用を発揮された前例があるのですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/17
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018・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいまお話の点、まず裁判所の予算について国会でどの程度従来論議がされてきたかという点かと存じますが、この点は、衆議院におきましても、参議院におきましても、大体において分科会の段階でかなりきめのこまかい御審議をいただいておるのが前例でございます。今回の国会では、まだ参議院のほうでは分科会が開かれておりませんので、その点について御論議いただいていないわけでありますが、衆議院では、十数日前に分科会がございまして、事務総長以下私ども出席いたしましていろいろ御説明を申し上げた、こういう実情でございます。これはもう毎年大体そういう例になっております。ときによりまして比較的問題点が少なくて御了解いただく等、いろいろございますが、大なり小なり分科会の段階でやっていただくことが普通でございます。きわめてまれには、一般質問等の段階でお話が出ることもあったように記憶いたしております。
それから二重予算の問題でございますが、これは目に見えた過去の実例といたしましては三回ぐらいあるわけでありまして、少し古い例では、昭和二十五年ぐらいの例で、これは給与問題でございますが、大蔵省と妥結をいたしませんでして、そうして二重予算の準備をして、まさに提出するというところで内閣のほうで同調していただいた。二十七年ごろにもそういうような例があったように記憶いたしております。さらに近いところでは、三十五年にもやはり同様の例で、出す一歩寸前というところまで行った例があるように記憶いたしております。ただ、こちらのほうで出す準備なり、あるいは出す一歩手前というところまで参りますと、多くの場合には、何らかの形で内閣のほうでもこちらの意見に同調していただくような形になりますので、実際に国会の場で二重予算という形で論議された例はないように記憶いたしております。
ただしかしながら、これはいわば目に見えた実例でございまして、いわゆる目に見えない効用というのは、これは非常にあるわけでございます。と申しますのは、つまり内閣——直接には大蔵省でございますが、大蔵省としては、裁判所の予算をあまり大幅に削減した場合には、二重予算を出される危険があるということは、大蔵省の関係の方々すべて常に意識しておられるわけでございます。そういう意味で、またわれわれのほうでも、まあこれはときには、二重予算問題だというような含みの発言と申しますか、そういうようなことで、牽制と言ってはことばがたいへん俗っぽくなって恐縮でございますが、いろいろそういうような話にいく場面もしばしばあるわけでございます。そういう点が、大なり小なり効用を発揮しておるわけであります。ただしかし、二重予算の制度が最高のものかどうかということでは、またいろいろ御意見もあろうと思いますが、一応従来の経過はそういう実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/18
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019・秋山長造
○秋山長造君 二重予算を出された場合には、もちろんそれについての責任を持って答弁をされるのが裁判所だと思いますけれども、そうでない場合、たとえば今回のような場合の、法律案についてはもちろんですが、予算についても責任を持って答弁されるというのは、法務省、法務大臣ということですか。さっきの話では、あなた方は権限はない、責任はないのだけれども、まあ便宜上詳しいから説明に出てきているのだというような意味の御発言があったんですが、その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/19
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020・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) きわめてデリケートな問題でございますが、今回の予算案、いま参議院で御審議いただいております予算案は、私どもはそれで一応了承して、そうして内閣案としておきめいただいたわけでございます。そういう意味においては、私どもとしては定員がこのようにきめられることに異存がないというふうに申し上げているわけでございます。しかしながら、それ以外の決定について、およそ私どもとして一切どうということを申し上げられる立場にはございませんが、予算という限度では私どもは御了承を申し上げたということになるわけでございます。そこで、たとえば二重予算を出した場合に、一体どうなるか。二重予算については、当然裁判所が御説明申し上げることになるわけでございますが、そういうときに、それの裏づけの法律がどういう形になってくるかということは、これもまたきわめて次のめんどうな、なかなかデリケートな問題であろうかと考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/20
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021・秋山長造
○秋山長造君 二重予算の規定があるために、これをやったことはないけれども、そういう規定があるということで暗黙の強い効用があるのだというお話ですが、今度のこの定員法をちょっと拝見しますと、二十五人ですか、全部で。あなたのほうでは、現在の裁判所の実情、また今日の社会経済の要請というようなことを考えられて、ずいぶん膨大な人員を要求されましたね。それに対して二十五名ということで了承されたわけですけれども、ちょっと要求された——まあ俗に言う吹っかけたということじゃないと思うんですよ。いやしくも裁判所が予算要求を出される以上は、やっぱりそれだけの確固たる根拠を持って、これは絶対必要だということで、裁判所の機能を何とか曲がりなりにも発揮していくためにはそれだけのものが必要だということで出されたと思うんですよ。それに対する二十五名というのは、私は幾らでもたくさん雇ってむだづかいせいというわけじゃないんですよ。それはないですけれども、それはかたくやってもらわなければいかぬけれども、これは相当かたくやられた結果の要求だと思うのですが、それに対して二十五名というのは、あまりにも要求額とそれから結果とが隔たり過ぎているので、どういうことなのかというやはり疑問を持つのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/21
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022・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいまの秋山委員のお話の点は、これは実はいつの国会でもいろいろお話がございまして、いつも私どもにお話がある問題でございます。まずその前に、私ども内閣のほうへ要求書を提出いたしましたその数が、あらゆる意味で現在の必要数というわけでもないわけでございます。つまり、もっと必要な面もあるわけでございます。と申しますのは、あれはすべて大部分が年次計画でございます。したがいまして、今年度はとりあえずということであって、あれだけ入れば今後ともいいということでもないわけでございます。それから逆にまた、あの数字の中には多分にいろいろな事件数等の見通しというものを頭に置きながらはじき出したものもあるわけでございます。この見通しという点の最も典型的な例が借地事件の関係でございまして、借地事件についてはあるいはもう少し伸びが大きいのではないかというようなことも頭に置きながら要求をいたしまして、それが十二月の段階で少しずつその実績がわかってくるというようなことが一つのいわゆる足を引っぱる要因になった面もあるわけでございます。しかしながら、これらは全体としてはそう大きな数ではございませんでして、最も大きな問題は二つあるわけでございます。
一つは、裁判所におきましては、裁判官の増員というものが中心になって、その他の職員の増員が考えられる場合が普通でございます。つまり、裁判官がふえませんことには、書記官だけふやしても事件は必ずしも速くいくとは限らないわけでございます。そこで、どうしても裁判官の増員に見合いながら書記官等をふやしていく。そうなりますと、裁判官につきましては、給源というものがきわめて限られておるわけでございます。その給源は、一番中心になりますのは修習生から判事補を経て判事になるというコースでございます。これは現実はそうでございます。望ましいかどうかの点は別といたしまして、現実はそうでございます。そこで、その数が一応基本になる。しかし、それにつけ加えて、やはり弁護士なり検事からも来ていただくという数をいつもある程度見当をつけるわけでございます。検事のほうはほとんど言うに足らない数でございますので、結局は弁護士からどのくらい来ていただけるかということを見当をつけて要求をいたすわけでございますが、いよいよ予算案を最終に決定する段階では、実際に来ていただける可能性がないとなれば、充員の見込みが立たないということで、結局充員の見込みの立つ限度で妥結せざるを得ないというのがかなり大きな要素でございます。
それからもう一つ、本年の特殊な例といたしましては、御承知のとおり、内閣のほうでいわゆる定員の抑制のプランをお立てになっておるわけでございます。これはあくまで内閣のおやりになることでございまして、いわば私どもの関するところではございませんけれども、しかし、国家の財政がさような状態であるということは、やはり私どもとしても頭に置きながら行動せざるを得ない。そういう場合に、裁判の面におきましては、これは事件が遅延している状況でございますから、とうてい定員を抑制するということは考えられないわけでございますが、一般の行政の部門につきましては、たとえば報告事項の簡素化というようなことで協力する余地があるかどうかということを検討いたしまして、そういう意味で、本来ふやすべきものを抑制して、いわば定員の転換をはかって増員ということも考えておるわけでございます。なお、この関連におきましては、本年七月からいわゆる反則金制度が施行されまして、その関係で裁判所へ来る事件がかなり大幅に減るという見通しになるわけでございます。その減る要因というものも頭に置きながら、つまり定員の転換をする。ここに出ておりますのは二十五名でございますが、私どもは実質的には約百名前後の増員というふうに踏んでおるわけでございます。そういうことは、本年度のいろいろな環境のもとではやむを得ないものであると、かようにまあ考えて、この線で妥結したというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/22
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023・秋山長造
○秋山長造君 もう一、二点ちょっとお尋ねしますが、裁判官の定員ですね、裁判官の定員はきまっておるわけですが、これはまあ定員をきめる以上ば、何かその根拠というか、基準といいますか、めどといいますか、何か一つのものがあって、それによって何名と、こうきまっておるはずだと思うのですが、よく警察官なんかの定員が問題になる場合に、警察庁のほうでは、人口との比率が幾ら、人口何人について警察官が一人、だから日本の場合はまだ欧米の国々と比べて警察官が少ないんだとか多いんだとか、そういう説明をよく警察庁あたりからされるわけです。まあそれも一つの説明のしかただと思うのですが、裁判官の場合、そういう人口との比率というようなことを当然一番お考えになることじゃないかと思うのですが、そういう資料がおありになるかどうか。
それからもう一つは、国家予算の総額と裁判所の予算との比率を出して、そしてそれでふえたとか減ったとか、あるいは欧米の諸国と比べて日本は裁判所予算が高いとかというような比較もしばしばやられると思うのですが、そういう点は、まあ防衛庁あたりで、防衛予算が国民所得の何%とか、アメリカはどうだ、イギリスはどうだ、だから日本はまだまだふやさなきゃいかぬというようなことをよく政府のほうで説明されるんですが、そういう角度から考えた場合に、一体日本の裁判官の定員というものはどのぐらいな位置づけになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/23
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024・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) まことにごもっともなお尋ねであると考えております。実はその点は、私どもも始終いろいろ外国と比較をし、また戦前等と比較をしながら仕事をやっているわけでございます。ただ、戦前と比較をいたします場合にも、非常に法制が変わっているわけでございます。たとえば刑事事件などにおきましては、戦前は、警察、検察庁の書類が全部まず回ってきて、それから裁判が始まる、こういうことでございますが、いまでは、いわゆる起訴状一本主義ということで、とにかく起訴状だけで審理を始める、それからあと全部直接調べる、こういう関係でございまして、そういう関係からだけなかなか戦前との比較がむずかしい。また、地方裁判所は戦前ではすべて合議制でございましたのが、戦後は単独制を大幅に取り入れている。そういうような関係から、なかなか戦前との比較がむずかしいわけでございます。それからまた、各国の比較でございますが、これが実に差が大きいわけでございます。一般的に申しまして、たとえばドイツのような国では、裁判官が非常に多いので、裁判官一人当たりの国民数というものがつまり西独では四千人余でございます。つまり四千人に一人ぐらいの裁判官がおるわけでございます。それからイタリアでも、やはりそれとあまり違わないような数字のようでございます。それに対しまして、日本では四万人——三万数千人について一人というようなことでございますから、これは十分の一ぐらいしか裁判官がいない、こういうことになるわけでございます。ところが、逆にイギリスあたりでは、十二万人ぐらいに一人しか裁判官がいない。むろんそのほかにいろいろ補助裁判官的なものはおりますけれども、本来の資格のある裁判官はそういうようなことでございます。そういうようなことで、これまた非常に制度が違いまして、たとえばドイツなどではいろいろ特殊裁判所というものがあるわけでございます。そういうものがすべて入ってくるわけでございます。それに対して日本では、最高裁判所を頂点とする一本の形になっている。そういうところもかなり違うわけでございます。それから、訴訟のやり方等がずいぶん手続が違いまして、ちょっと法曹人口の比較ではなかなかむずかしい。しかしこれは、亀田委員ここに御列席でございますが、亀田委員も御参加になりました臨時司法制度調査会でも非常に問題になりまして、一般的には、裁判官といわず、検察官といわず、弁護士といわず、法曹人口が非常に不足している。したがって、法曹人口をもっとふやすべきだというような結論が出まして、それに基づいて数年来修習生の採用等も逐次ふえてまいっているというような実情のように承知しているわけでございます。
それから予算の関係でございますが、予算も本年度の場合には総予算に対しまして六%強でございます。したがいまして、かなり低い比率になっていることは、非常に遺憾に思うわけでございます。ただ、この点でも、実は諸外国と比較いたしてみますと、諸外国の場合は比率そのものが非常に低いわけでございます。と申しますのは、日本の裁判所でこれだけの比率がありますかなりの要素は、営繕費でございます。人件費が圧倒的に大きいわけでございますが、営繕費が相当大きな要素を占めている——全体の一割余あろうかと思います。ところが、アメリカ等では、おそらく、営繕費というようなものが、ほとんどでき上がっているせいかもしれませんけれども、たとえばアメリカの連邦では〇・〇八%という、これはちょっと問題にならない低い額でございます。同時に、これはおそらく裁判所側の事情としてはそういう営繕費の問題がございましょうし、それから国家全体の問題としてはおそらく防衛費というような問題の関連でもあろうかと思います。よくわかりませんが、とにかく膨大な予算でございますから、裁判所が人件費を中心にして組む場合に、アメリカの連邦なんかではこういう低い比率になる。しかし、ドイツなんかでは、これに比べましてやや高いようでございます。ただ、ドイツの場合には、検察庁と含めました数でしか出ておりませんので、裁判所だけを切り離した場合にどのくらいになるか。日本の場合にも、検察庁、法務省と加えましてパーセントを出しますと、二%弱になるわけでございます。ドイツでも検察庁と含めましたパーセントではやはり二%台のようでございますので、このパーセントの比較だけではちょっと私ども一がいに言えない。しかし、裁判所の予算として、現状で必ずしも満足はいたしておらないわけでございます。本年度はこの辺でということで、今後ますます増額については、私どもとしても努力をし、また国会のお力添えもいただきたいと考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/24
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025・秋山長造
○秋山長造君 必ずしも満足していない。ただ満足していない程度よりは少し違うわけですね。必ずしも満足していないが、この程度でよかろうということなんですか。そういうことをお尋ねするのは、私は何でもかんでもふやしさえすればいいという意味で言っているのじゃないのですよ。ただ、この間も新聞にちょっと出ておりましたね。浦和の地裁の法廷で大島隆司裁判長が公判中に心筋梗塞でなくなったのですね。詳しいことは知りませんけれども、いろいろ伝え聞いてみると、非常に過労な状態の中で仕事をやっておられたようですが、法廷で倒れるということもあまり例は多くはないことだろうとは思いますが、しかし現状からいいますと、裁判官のみならず、その裁判官の仕事を補助していかれる書記官その他裁判所職員全般的に、ああいう勤務の特殊な性格でもあるでしょうけれども、じっと家の中に閉じこもって、そうして相当神経の疲れる仕事ですね。非常に過重な勤務になって、一般的に過労状態のままでずつといっているんじゃないかというように思う。しかも、世論の要求としてはすべて、裁判がおくれる、おくれる、なかなか金のない者ではこれはもう訴訟を起こしたくても起こせない、うっかり裁判にかかったら、これはもう結局、何年かかってやってみたところで、元も子もなくなって、精根すり減って往生してしまうというふうなことになっている。だから裁判はもっとスピーディに能率的にやれという要求はずいぶん強い。特に選挙裁判についてよく言われることですけれども、それに限らないと思う。スピーディにやりさえずればいいというわけのものでもない。いいかげんな雑なことをやってもらっては困る。だから別の面で障害が出てくるけれども、しかしそれにしてもやはり裁判が非能率であるという声が高い。それにはいろいろ事情があるでしょうけれども、やはりそういう人員の問題というようなことも相当響いている要素だと思う。だから、そういう点をどういうように解決していかれる御方針なのか。
それからもう一つは、聞きますと、やはり裁判所の関係は、これは一がいには言えませんけれども、大体論としてあえて言えば、職員の保健あるいは厚生というような面がほかの役所よりも不十分なんじゃないか、おくれているんじゃないか、ルーズにおろそかになっているのではないかという感じを持つのですが、たとえば、職業病といわれるような何らかの病気を持ちながら、それを何とかごまかしてとにかく勤務を続けざるを得ないというような状態が相当あちこちあるんじゃないかというように思うのですけれども、いろいろなことを申し上げますけれども、そういう点についてひとつお考えを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/25
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026・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいまの秋山委員のお尋ねはきわめて多岐にわたっておりましたので、それぞれについて要点的に申し上げたいと存じますが、その前に、私先ほど裁判所の国家予算に対する比率を〇・六%強と申し上げたつもりでございますが、あるいは六%強と申し上げたといたしますれば、それは私の言い間違いでございます。
そこで、まず浦和の大島裁判官の問題でございますが、実は裁判官が自宅で執務中に病気になる例はないではございませんが、法廷でお倒れになったというような例はきわめて希有な例でございます。そこで、私どものほうとしても、さっそくその実情を調査いたしまして、まだ実は現在調査中でございますが、一応わかりましたところでごく簡単に申し上げますと、大島裁判官は、刑事の裁判長でございまして、明治三十六年にお生まれの方で、もう定年にお近い方でございます。そうして第二刑事部の総括裁判官として、法廷合議事件の二分の一と、単独事件の十分の二を御担当になっておったということになっております。
浦和の裁判所には、実は事件の増ということで、昨年の四月の定員改正の際に裁判官一名を増員いたしておるわけでございます。ただ、新受事件を見ますと、刑事事件は四十年ごろから横ばいの状態でございます。民事事件のほうの増が多いわけでございます。したがいまして、その増員になりました裁判官は主として民事のほうに振り当てられるという形が自然であったのではなかろうかと、これは現地の裁判所できめることでぐざいますが、さように一応推察いたしておるわけでございます。刑事のほうは、事件数そのものとしてはここ数年さほど大きな変化はございませんし、また他庁と比較いたしましても特に事件が多いというふうには見えないわけでございます。ただしかしながら、裁判官の職務は先ほど御同情のあるお話のありましたとおりのことでございまして、私どもとしては一そうその増員なり充員ということに努力をいたしたいと考えておるわけでございます。
それと、先般来、いろいろ予算あるいはその他の関係で御援助いただきまして、いわゆる宅調廃止という問題が相当全国的に実現しつつあるわけでございますが、遺憾ながら浦和の裁判所は営繕計画としては比較的あとのほうの順位にならざるを得ない実情にあるわけで、実際のその職場環境というものはほかに比べてやや悪いという実情であるわけでございます。そういう点は、今後とも努力しなければならないというふうに考えておるわけでございます。
それから審理期間の問題でございますが、これは実は、先ほどちょっと触れました臨時司法制度調査会でも、訴訟遅延について相当論議されまして、いろいろ御意見がございまして、一般的、常識的には訴訟は非常におくれておるということでございますが、ただ刑事事件については、むしろ一般的には必ずしもそれほどおくれておるわけではなくて、特殊の事件が非常におくれておる、こういう関係にあるのではないかと、それに対して民事事件は全体的に非常におくれておるというような、ほぼ結論のようなものが出たわけでございます。ただ、統計的な数字をとりますと、お手元に参考資料として出ておりますものの一二ページにもございますが、民事でも、簡裁では平均約五カ月強、地裁でも十二カ月程度ということでございまして、この平均数をとりますと、目をみはるほどのおくれでもない。決して速いとは申しませんが、たとえば諸外国と比較いたしましても著しくおそいということでもないわけでございます。ただ、この平均審理期間の中には比較的簡単な事件も全部込めて入っておりますので、これだけではとうてい満足できない。私どもとしては、とりあえず本年予算的にいろいろ定員上の配慮のお願いをいたしましたのは、高裁について審理期間を半減したいということで計画を立てておるのが現在の実情でございます。その上で、さらに地裁、簡裁のほうにも及ぼしていぎたい、かように考えておるわけでございます。
それから職員の健康管理の問題でございますが、これは私どもとしては、少なくとも他省庁より健康管理の点でおくれておるということは絶対ないというふうに確信いたしておるわけでございます。職員全部につきまして毎年二回必ず定期検査を実施いたしております。それから、速記官でありますとか、あるいはタイピストでありますとか、そういう特殊の職員につきましては、特別の定期健康診断として、いま申し上げましたもののほかに、年二回、いろいろ、腕の部分でありますとか、目の部分でありますとかの特別定期健康診断をいたしておるわけでございます。その一環としての精密検査もいたしております。昭和四十一年の暮れにも精密検査をいたしましたし、昭和四十二年——昨年の暮れにも精密検査をいたしたわけでございます。これは労働衛生科学の専門の医者にお願いいたしまして、性格テスト、タッピング、皮膚温、疎血検査、聴力、血圧、問診等の内容のようでございますが、要するにかなり精密な検査をする、こういうことをいたしておりますし、いろいろ検査の際には、単純なる方法によらず、かなり進んだ機械を取り入れまして、それでやっておるつもりでございまして、相当ほかの省庁よりもおくれているということは毛頭ないように確信いたしておりますが、その点は今後とも努力いたしたいと、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/26
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027・亀田得治
○亀田得治君 秋山委員から一般的に御質問がございましたので、私は重複を避けて、ひとつ関連する事項で、具体的な諸問題について少しお聞きをしておきたいと思うのです。
最初に、最高裁判所の調査官の問題ですが、従来、最高裁判所の判例につきまして、調査官室の名前で、「法曹時報」にですね、これに担当調査官による最高裁判例の解説というものをやってきております。そこで、ただいまお尋ねしたいのは、第十九巻の四号——これは昨年の四月のですが、これに、いわゆる宮操事件ですね、この事件の上告審の破棄差し戻し判決につきまして、担当調査官であった船田三雄さんがその解説をしておられます。ちょっとそこを読んでみますが、「右判文をみれば明らかなように、本判決は、被告人等の捜査官に対する自白調書の任意性の存否についてはいずれとも判断を示していないことはもとより、その基礎となる事実、すなわち、手錠の施用の有無、正座の有無等各般の不当な処遇の事実の存否についても、いずれとも認定していないのであって、この点の事実の確定及び任意性の判断は、すべて今後に行なわれる原審の審理の結果に委ねられているのである。この点は特に留意を要するものと思われる。」、こういうことが書かれております。で、この事件は差し戻しになりまして、現在これは大阪の高裁で審理中であります。で、当然、最高裁の差し戻し判決ですから、判決自体のこの理解のしかた、その拘束力の範囲、こういうことが劈頭に、これはこういう重要な事件ですから、特に問題になることなんですね。で、そういう問題について、調査官という立場の人が、裁判官を差しおいて、この点はこう読むべきなんだというようなことを特に書くというようなこととは、私はこれは少し出過ぎじゃないかというように思うわけなんです。このことが現在問題になって、日弁連を通じて最高裁等にもこれは照会が行っておるわけですが、その経過はどういうふうになっておるのか承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/27
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028・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいま亀田委員からお話のございましたように、最高裁の調査官がお話のような解説を雑誌に書きまして、その点で日弁連から御照会をいただいたことは事実でございます。で、私どものほうへ日弁連から照会をいただきましたのは、本年の一月二十日付の書面によるものでございます。そうして、その御照会の内容は、いまお話しになりました解説は一体どういう根拠で何人の責任によってなされているものであるか、これが第一点の御質疑事項でございます。それから第二点は、そういう解説を行なうについて執筆者の間で何らかの基準が設けられているかどうか、特に未確定の事件の解説につき特別な配慮がなされているかどうかというのが、第二点の御質疑事項でございます。それに対しまして、私どものほうでは内部で慎重に検討いたしまして、二月二十一日付で日弁連のほうへ御返事を差し出しておるわけでございます。その内容は別に秘密でも何でもございませんから、ここで朗読させていただきますと、「法曹時報に掲載されている最高裁判所判例解説は、財団法人法曹会からの依頼により、最高裁判所判例集に登載される判例について、最高裁判所調査官が、個人の責任において、個人的見解に基づき執筆しているもので、右解説に関する最高裁判所規則や最高裁判所裁判官会議の決議は存在しない。」、それから第二点といたしまして、「したがって、右解説の基準等については、最高裁判所の関知するところではない。なお、執筆者の間でも特別の申し合せ等はなく、各人の良識にしたがう取り扱いということである。」、こういう趣旨の返事を差し出したというのがいままでの経過でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/28
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029・亀田得治
○亀田得治君 日弁連からの照会がありまして、それに対して内部で検討して、ただいまお読みになったような回答を出したということでございますが、その検討されたというのは、どういう場で検討されたということになるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/29
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030・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは事務総長の回答でございますから、事務総長が中心になって検討したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/30
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031・亀田得治
○亀田得治君 調査官の皆さんもそれに参加されて検討されておるわけですか、あるいはそれは省いて何か別なメンバーで検討されたということなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/31
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032・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、御承知のとおり、小さな建物でございますし、一緒に生活しておるわけでございますから、特に調査官を集めてどうという問題ではございませんが、こういうことが問題になりまして、実は私どもも平素「法曹時報」というものは購読いたしておりますし、解説そのものは読んでおりますけれども、私などはたとえば民事専門でございますので、刑事のほうはあまり読んでいなくて、これが問題になって初めて読んだようなことで、そういうような経過から、これも、一体どういうことでこれが出ているのかというようなことについて、上席調査官等にもよく聞きまして、そうしてどういうやり方をしているかということについてもある程度聞いておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/32
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033・亀田得治
○亀田得治君 特に裁判官会議などを開いて回答を出したというものではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/33
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034・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 普通、事務総長の回答でございますから、別に裁判官会議の議は経る必要はないわけでございますが、ただ事柄の性質上、裁判官会議にも御報告申し上げてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/34
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035・亀田得治
○亀田得治君 この回答の中に、「したがって、右解説の基準等については、最高裁判所の関知するところではない。」と、調査官がかってにやってるんだと、こういうふうな意味にもとれるわけですが、しかし、この「法曹時報」のたとえば表紙を拝見いたしますと、「最高裁判所判例解説」として、その下に「最高裁判所調査官室」と——これは公的な名前ですわね。最高裁の内部の事情をよく知らない人は、当然これは最高裁としてこれをお出しになっておると、こういうふうにやはりこれは考えるのが私は自然だと思うのです。それから、この雑誌の一三八ページですか、この判例解説の一番初めのところにも、やはり「最高裁判所調査官室」と、こういう見出しがつけられて、あとずっと解説が始まっているわけですね。その最高裁判所の関知するところじゃないというふうな回答は、何か非常に逃げておるような印象を与えるわけですがね。大いに関係があると、だれでもやはりそういうふうにこういう問題が起こるまでは見ていたんじゃないですかね、表紙からいっても。そうだとすれば、もう少し突っ込んだ、実際にどの程度関係があったんだとか、いろいろなことがもう少し解明されませんと、何かあれは調査官の諸君がかってにやったんだと、おれは知らぬのだと、こういうふうな感じを受けるわけですが、もう少し真相というものを明らかにしてほしいと思うのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/35
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036・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いまの亀田委員のお話の点でございますが、実は私自身もこの雑誌を二十年来購読しておるわけでございますが、「調査官室」という表示はうっかりしておったようなことでございます。で、この問題になりましてから、なるほど「調査官室」と書いてあるなというようなことでございまして、そこでいろいろ、どういうわけでこういうような表示になったかという当時の事情を聞いてみたわけでございます。で、これはたしか昭和二十九年ぐらいから始まったことのようでございますが、この当時の事情をいろいろ聞いてみますと、調査官の諸君は、この雑誌のみならず、いろいろな雑誌に、いろいろな解説なり、批評なり、論文なりをお出しになる。そのときに、多くのほかの雑誌では、最高裁判所調査官の名で出しているか、あるいは何の何がしと書いて、原稿の一番末尾に最高裁判所調査官とカッコして書く、こういう例が多いようでございます。ところが、この雑誌の場合は書く人が全部調査官でございますので——たまに例外的に調査官でない場合もございますが、大部分、九割以上は調査官でございますので、調査官ということを一つ一つ書くかわりに、調査官の同人というような趣旨でこういう表示になったようでございます。そうして、いま亀田委員からもお話のありましたように、官制上調査官室というものがないことは、これはっとにご承知のとおりでございます。ただ、そうは申しましても、いまもお話がございましたとおり、世間一般の人は調査官室というものがあるような印象をお受けになる、何か一つの機関、官制のものであるような印象をお持ちになるということは、これはまことに恐縮なことでございます。そういう誤解を生じてはよくないことでございますので、こういうことが問題になりました機会に、法曹会のほうへ強く申し入れまして、こういう表示は一切しないようにしてもらう。これは従来とも、何ら調査官室というものがあったわけでもなければ、その機関に基づくものではございませんけれども、ただ調査官の同人というようなつもりで軽く最初に書いたのが例になってずっときたようでございますが、そういう誤解を生じてはいけませんので、その点を今後そういう表示を一切しないというふうに申し入れをいたしまして、たしかこれは数年前にもそうなっておったのではないかと思いますが、そういうような運びにいたしたような次第でございます。そういう関係で、これは「法曹時報」に限りませず、「ジュリスト」だとか、「法律時報」だとか、あるいは「判例時報」だとか、いろいろなものに調査官が書きますものについて、一々最高裁判所が検閲をするというわけにもまいりませんので、これは各人の良識にまかせるほかないと、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/36
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037・亀田得治
○亀田得治君 調査官が自分で扱った事件についてのことを私問題にしてるんですよ。一般的な判例の批判とか、そういうことではないんです。まあその点についての結論的な私の考えなりまたお尋ねは最後にいたしますがね、その前に多少事務的なことを聞くわけですが、財団法人の法曹会、これは責任者なり中身はどういうことになっておるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/37
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038・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 法曹会というのは、たしか明治二十四、五年ごろに、有名な児島惟謙大審院長のときにつくりましたものが、たしか明治の終わりごろに財団法人という形になったわけでございます。そして、これは財団でございますから、会員ということではございませんが、事実上は会員のようなものがございます。で、この雑誌の関係につきましては、編集委員というものがございまして、その編集委員が一応編集について責任を負う形でございますが、直接のこの雑誌の編集人は石丸岩夫君であったと思います。その石丸君が編集の責任者でございますが、編集委員というものがあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/38
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039・亀田得治
○亀田得治君 理事長はいまどなたでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/39
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040・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 理事長という形はとっておりませんが、会長は最高裁判所長官でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/40
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041・亀田得治
○亀田得治君 もちろん法務省——財団法人はみんな各省の所管がありますがね、当然これは最高裁の所管というわけじゃないでしょうから、やっぱり法務省所管と、こうなっているんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/41
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042・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/42
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043・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、最高裁長官が自動的に会長の地位につく、こういうふうにずっと慣例としてなってるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/43
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044・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、明治時代に寄付行為をつくりましたときに、大審院長ということになっておりまして、その後読みかえではなしにたぶんつくりかえたと思いますが、最高裁長官ということになっております。ただ、これは名誉会長のようなことで、実際執務をされるわけじゃございませんが、そういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/44
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045・亀田得治
○亀田得治君 編集委員というのはどういうメンバーでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/45
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046・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これはたしか六名ぐらいいたと思いますが、高裁判事、地裁判事、それから最高検の検事も入っておられたと思いますし、法務省の方もこれまた入っておられたと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/46
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047・亀田得治
○亀田得治君 いまお名前わからぬでしょうか、どういう方がなっているか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/47
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048・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 私の記憶しておるところで申し上げますれば、高裁の仁分判事、地裁の安村判事、それから最高検の本田検事、その他でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/48
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049・亀田得治
○亀田得治君 それから、この執筆されるメンバーですね。やはり原稿料といいますか、そういうものがちゃんと財団法人から調査官の方に出ておるんでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/49
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050・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 先ほどちょっと補足すべきであったかと思いますが、会長等は全部無給でございます。ただ、原稿をお書きになった方は、原稿料は若干出ているように聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/50
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051・亀田得治
○亀田得治君 それはどんな程度でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/51
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052・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 私も正確には存じませんが、何でも民間雑誌あたりよりはだいぶ安いと聞くのでありますが、ちょっと正確な数字はいま記憶いたしておりませんが、おそらくそういう民間の雑誌よりは少し安い程度かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/52
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053・亀田得治
○亀田得治君 これは何でしょうか、最高裁の判例をずっと継続的に解説しておるものですから、何か長期の契約でも調査官の皆さんと財団との間でできておるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/53
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054・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、私の承知いたしております範囲では、何も書面の契約書はないようでございます。そうでございますから、これはいやだと言ってお書きにならない方も実際にはおるようでございます。したがって、最高裁判例集に登載されるものについて全部出ておるわけでもないようでございます。いやだという表現はちょっと妥当かどうか——つまり、書く締め切りにおくれちゃったとかいう理由で、必ずしも網羅的というわけでもないし、そういう意味で、厳格な契約があるものでもないようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/54
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055・亀田得治
○亀田得治君 たいへん中身のこまかいことを聞くようで恐縮ですが、そういう原稿の執筆というものは、自宅でやる場合もあるでしょうし、また、いわゆる調査官室ですか、そこで書かれることがあるんでしょうし、そういう実際の状態というものはどういうふうになっておるんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/55
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056・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) この判例解説ということになりますと、ちょっと私もよくわからないのでございますが、一般問題として、裁判官がそういういわば副収入があっていいのかということは、一つの問題ではあろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/56
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057・亀田得治
○亀田得治君 いまそういうことを言うてるんじゃない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/57
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058・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) それについては、裁判所法等の規定もありまして、必要な限度では許可制をとっておるわけでございます。ただ、原稿執筆という点については、どうも許可は要らないのではないか。それじゃどこで書くかという点は、これはもう自宅で書くというものであると理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/58
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059・亀田得治
○亀田得治君 理解しておるというふうなことじゃなしに、実際はやはりこの調査官室第一であり——見出しがそうなっておりますが、だから総務局長きわめて善意に解釈して答弁されておりますが、それはいろいろの時間をつくってお書きになっているのが私は実態だと思うんです。なぜそういうことを聞くかといいますと、財団の責任者が最高裁の長官——まあ実際の執務は別ですよ、しかしちゃんと表はそうなっている。そうして、いままでは調査官室というふうなものを表示してきておる。いろんなことから考えましても、単なるこれは調査官の私的なことだということでは済まされぬように、私はいろいろ考えた結果思うんですよ、これは。ほんとうにそういう私的なものにしたいというのであれば、いろいろ検討の余地があるんじゃないかというふうに思ってるんです。そういう立場からいま若干内輪のことも聞いてみたわけですけれども、これはどうなんでしょうか、実際は担当裁判官は全然この原稿にはタッチしておらぬのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/59
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060・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) その点は、もうタッチしておられないことは確実であろうと思います。
それから、調査官室で書くかというお話でございますが、実は最高裁自体は、御承知のとおり、古い建物で、調査官室は非常に狭いわけでございます。例の宅調廃止問題が起こりましたけれども、なかなか、調査官のほうはむしろ窮屈な状態でございますので、ある程度自宅執務も認めざるを得ないような状況でございますから、おそらく調査官室へ出てきたときに書くということは、これは絶無ではないかもしれませんが、ないのがたてまえでありますし、私はそう理解しているということを申し上げたわけでございます。裁判官の点は、関与しておられないことは明らかであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/60
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061・亀田得治
○亀田得治君 最終的に聞きたいことは、調査官というのは裁判官の何といっても補助者ですわね。だから、その補助者の人が自分が扱ったケースについて解説等を書く場合には、よほど私は注意が要ると思うんです。担当した裁判官が何らかの方法で自分の判決についてつけ加えたい——これは判決だけでわかるようにしておいてもらうのが一番いいわけですがね、しかし、問題によってそういうふうにお考えになった場合は、それは裁判官自身がやるべき分野でありましてね。そういうことをしょっちゅうやることがいいか悪いか、これはまた別ですが、判決を書いておいて、あとで解説というようなことはおかしいという議論も出るんです。しかし、いい悪いは別としても、何かをつけ加えていくというのであれば、私は裁判官以外にはさせちゃならぬと思っております、実際は。それはあなた、調査官は単なる補助者ですからね。その補助者の人が裁判官がつくった判決についての理解のしかたを書くということは、これはもう間違いだと思うんです。積極的に。私は、担当しておらぬ裁判官なり、あるいは学者の方とか、そういう方が、いろいろ他人の出した判例について、自分はこう思うとか、解釈のしかたなり、あるいは結論に対する批判なり、そういうことをされることは、これはある意味で大いに切磋琢磨になって、それはいいことだと思うんです。しかし、担当された手足の調査官がそういうこどをやるということは、やるとしても、ほんとうの意味での解説、要領のいいまとめ、その域を出てはならぬと思うんですがね。これは、そういうことは問題にならぬのでしょうかね。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/61
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062・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいまのお話の点、非常に重要な問題であろうと思いますし、私どもも実は、こういう問題にもなりましたし、どういう経緯でこういうことが始まったかという当時の実情も若干調べてみたわけでございます。いま亀田委員は、担当した裁判官がやるならともかくというふうにもおっしゃいましたが、それは問題だとあとでおっしゃいました。私どもは担当した裁判官が判決以外で自分の判決についてとやかく言うことは非常によくないことだと考えているわけでございます。そこで、調査官なら担当した者でもいいのかという問題であると思います。この解説は、いろいろこまかく調べますと、全部が全部担当した者ではないようでございます。しかし、かなりな部分において担当した者がやっているようでございます。同様に、「ジュリスト」等は、担当した調査官が掲載している例もかなりあるようでございます。そこで、そのほかの雑誌の点はともかくといたしまして、この雑誌にどういう経緯で主として担当した調査官を中心にこういう解説をするようになったのかということをいろいろと当時の関係者に聞いてみたわけでございますが、そういたしますと、これはあくまで資料を並べるものである。と申しますのは、これはまあ亀田委員つとに御承知のように、調査官は、ある一つの法律問題が裁判で問題になりますと、これの従来の学説、それから判例、それは大審院ばかりでなしに、下級審のもの、むろん最高裁のもの、すべて集めるわけでございます。直接間接関連のあるものを集める。それから、事柄によりましては、たとえばドイツの判例を集める、あるいは学説を集める、あるいはフランスのを集める。そういう場合に、独法は読めるけれども仏法はだめだという人は、協力を求めて、数人でまあ協力して調査をするということもあるようでございます。そういうふうにして集めまして、それが資料になって、まあそういう資料の上で裁判というものが出てまいるわけでございます。で、意見というものは、調査官にはあり得るはずのものではないわけでございます。そこで、そういうふうに集めましだ資料を、普通の場合ですと、それを一々、たとえばドイツにはこういう学説があるということは判決には書きませんから、それが埋もれてしまうわけでございますが、せっかく集めた資料をそこに並べて置けば、それがやっぱり一つの参考になるんじゃないかというようなことが、どうもきっかけのようでございます。したがって、いやしくも調査官の意見を書くものとは理解されずに始まったもののようでございます。ところが、やっぱり調査官も法律家でございますから、書くうちについ筆が走って意見的なものが出る。それを心配して、いま問題になっております船田調査官の場合にも、「右意見はあくまで私見にすぎない」と断わっておりますが、こういうふうに断わりましても、やっぱりいまのお話のような心配も出るわけで、そういう点は、やはり意見は避けてほしいということは、これは前にも、たしか部外からの問題ではなかったと思いますが、部内でちょっと問題になりましたときに、これはやはり意見を書く欄ではないんで、あくまで資料を並べる欄であるということを話したことがあるように聞いておりますが、今回の場合にも、そういうことで、上席調査官等を通じまして、こういうふうな問題になったことをよく調査官に徹底させまして、この欄は意見を書くべきものではないということについて、まあ一応の、何と言いますか、調査官諸君の良識をお願いしたような次第でございます。これはしかし、私どもにそういう権限があるわけのものでもございませんけれども、まあ要するに、こういうもののできあがったあれからして、やはりそういう誤解を避けるようなふうにしていただきたいということはまあ常々考えておるわけでございまして、「私見にすぎない」というふうに断わってあることではございますけれども、なるべくそういうものは避けたほうがいいんじゃないか。それから、ただ一つ船田君のために、私、船田君おりませんから、申し上げさせていただきたいと思いますのは、先ほどお読み上げになりましたけれども、その文章自体は実は判決のほとんど繰り返しでございます。で、こういうことは、本来はまあ、書いても無意味といいますか、判決自体で、「被告人等の取調に際し、捜査官が手錠を施したままであったか否か、並びにこれを施用したままであったとしても、その供述の任意性を肯定すべき特段の事情が存したか否かの点その他被告人等の自白調書の任意性の有無については、なお審理を尽くすべき必要があると認められる。」と、判決自体にそう書いてあるんですから、全く同じことを繰り返しておるわけなんで、繰り返しさえしなければ問題はなかったわけでありますが、その繰り返しが問題を生んだわけで、しかし問題を生んだ以上はやはり注意は必要だと思いますが、とにかく書いておることは実は判決の繰り返しであった、こういうふうに一応考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/62
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063・亀田得治
○亀田得治君 判決の繰り返しというふうに言われますが、たとえばその最後に、「この点は特に留意を要するものと思われる。」と、特に留意するかせぬか、そんなことはあなた意見ですわ。そんなことをおっしゃるんなら、判決のまま出しておけばいいわけでしてね。で、なるほどこれずっと見ますとね、この論文の終わりのほうに、「問題点整理の必要上やむなく意見を述べた個所がある。いうまでもないが、右意見はあくまで私見にすぎないことをおことわりしておきたい。」という書き方にこれはなっております。これは、従来こういうふうに意見を入れた場合には書いているんですか、この「法曹時報」では全部。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/63
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064・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 実は私も全部読んでおりませんし、それから全部にわたって調査もいたしておりませんが、いろいろ書くときには、多少とも誤解を生ずるおそれがあるというときには、こういうふうに書くというような扱いが多いようでございます。しかし、漏れなくそうなっておるかどうかは存じません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/64
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065・亀田得治
○亀田得治君 まあともかく、一番終わりのほうにこういう一言入れておるから、もう読む人が読めば誤解が起きないはずだ、そういうわけには私はいかぬと思うんです。こういうことは、やっぱりもっと厳重にやっておかぬといかぬですよ。それは「意見は私見にすぎない」、こう言うたってだね、これは全体的に一番終わりでまとめて言うているだけでしょう。じゃ、どことどこを言うているのか、厳密に言うているのか、これはわからぬわけですよ。だから、そういうルーズなことはやっぱりこの際廃止してもらって、こういう資料等を整理して——一般の実務家なり学者など非常にこれは便宜があると思うんですよ。いいけれども、やっぱりこれは当初の考え方に返って、厳格に私は守ってもらうべきものだと思います、これは。先ほどのあなたのお答えからしても、裁判官自身が判決に補足するようなことを言われることは、これはいかぬと、こうあなたはおっしゃっているわけです。それなら、なおさらいわんやと私は言いたいところですわ、そうすれば。そんなものを許しておるということでしたらね。実際は調査官が裁判官を出し抜いていろんな仕事をやっているんじゃないか、よくそういううわさがありますがね、調査官裁判と。最高裁の人はだだお飾りだというふうな極端な表現を使う人もあるわけですよ。私はそういうことは考えないようにして、筋の通る、ものごとをすなおに考えて言っているわけですが、しかし、こういう裁判官ですらせぬことを、たとえわずかであっても調査官がそういう出過ぎたことをするということは、非常に私は問題あると思う。だから、本件についてこういう弁護士会等からの照会があって、初めてわれわれも真剣に検討してみたわけですが、結論的にはそう思うんですよ。その点どういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/65
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066・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 私、先ほど、裁判官は判決のあとで意見を言うべきでないと申し上げましたのは、裁判官が意見があれば、当然それは判決に書くべきでございます。ことに最高裁の場合は、少数意見、補足意見が許されておるのでございますから、その少数意見なり補足意見に書かないでおいて、そうしてあとで新聞に書くというようなのは、これはどうもおもしろくないというふうに——これは私だけの考えかもしれません、最高裁で検討したというほどのことではございませんが、思うわけでございますが、ただ、調査官はあくまで意見は別に言わない、言うチャンスもない——内部的にも意見を言わないし、それから言うチャンスもないわけでございます。一つの法律家でございますから、調査官といえども問題について意見があるということはあり得ることじゃないか、そういう意味で、しかしおよそ調査官は判決について意見発表の自由がないというふうにはちょっと考えるべきではないのじゃないか、これは多少おことばを返すようになりますが。で、まあ担当した者でなければこれは問題ないと、亀田委員も前からおっしゃっております。しかし、担当いたしましても、それは調査官でございまして、調査官は判決に意見をあらわす方法がないので、実は前にちょっと問題になったと申しましたのは、この判例解説で、この判例には反対であるというような意味のことを明示であったか、暗黙であったか、何かそういうようなニュアンスで書かれたことがありまして、これなんかは、いわば世の調査官裁判に対する、非常にそうでないことのあれだと思いますが、調査官は心の中では意見を持っておるのでございましょうが、それを判決にあらわすには方便がないわけでございまして、そういう意味で、調査官の意見を出す機会を持ちたいということを考えますのも、ある意味では裁判官よりは考えられることではないかというのが私の先ほどのお答えであったわけでございます。ただしかしながら、その点は、かりに担当いたしました者であるといたしますれば、やはり世間の誤解を避ける意味で極力慎むべきだという点は、亀田委員のお話と私も同感であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/66
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067・亀田得治
○亀田得治君 実質的には私の考え方を相当肯定しておられるようですが、そうすれば、こういう問題が起きたときに、もう少し弁護士会に対する回答としては積極的なものがなきゃならぬじゃないか。あれは調査官の言っていることで、関知しないと、最高裁判所は。そういうふうな感じがするわけです。私はそうじゃないんでしてね、やはり最高裁の判決について、いやしくも秩序が乱れるような印象を与えることは、はなはだ私はもってのほかだと思っております。だから、最高裁として無関係というようなことを言わないで、どういうふうにしたら筋の通った扱いになるだろうかということを積極的に私は検討すべきだと思うのです、こういう機会に。第一、あなた、機構からいったって、最高裁の長官が、お聞きしますと、会長でしょう。無関係なんと言うて逃げれる問題じゃないのです。だから、これは私は調査官の諸君の意見も聞いたらいいと思うのです、最高裁は。そうして、当初のやはり私は方針に返って、秩序を正していくべきだと思いますね。そういうことをおやりになるべきだと思うのです。それはどうなんでしょう。これは事務総長どうですか、あなたの御意見をちょっと聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/67
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068・岸盛一
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 先ほど、宮操事件に対する船田調査官の判例解釈についていろいろ御質問がありまして、これまでの経過を総務局長からお答えをいたしたわけでありますが、実はこれは、この返答を日弁連に対して出したほかに、私の部屋に上席の調査官に来てもらいまして、そしてやはりこの問題を問題にいたしまして、こういうふうな誤解を与えるということはよろしくない、そういう点で、調査官同士の中でも十分検討して、そして今後こういう誤解を与えるような執筆はしないというように注意したらどうであろうか。これは実は、事務当局といたしましては、調査官に対する別に何ら権限がないわけでございますけれども、まあそういうことは抜きにしまして、もっと大きな問題として、裁判所の裁判の信用にも関する問題にもつながりますし、それでそういうことをいたしたわけでございまして、上席調査官が中心となりまして、調査官の間でいろいろ討議して、そうしていままでのそういう誤解を招くような書き方は今後十分慎もう、そういういわば申し合わせみたいなことをやっております。
それと同時に、先ほど総務局長からお答えしましたように、あの「調査官室」という表示は、これは実は私どもも二十年余り、別に気がつかずと言えば何ですが、実態を知っているものですから、ついうっかりしておったような次第で、ああいうものは即刻やめなければいけない。と同時に、調査官が解説を書くのは、あくまで客観的な解説でなければならない。自分の主観的な意図をあの解説に盛ってはいけない。そういうことは上席調査官の御意見であって、その上席調査官が中心となって、いわば調査官たちの会合においてそういう申し合わせをした事実がございます。これは外部にあらわれておりませんが、内部的にも、ただそれを私どもは放置してきて、木で鼻をくくったような態度でおくというわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/68
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069・亀田得治
○亀田得治君 まあ、いま事務総長からそういう努力をされたことをお聞きしましたから、一応この問題の質問はこの程度にしておきますが、ただ最後に、やはりちょっと割り切れぬ問題が残っているわけです。調査官の意見発表の方法といいますかね、こういう問題について、これはやはり真剣に研究してください。担当調査官、その調査官は最高裁判官の手足である、こういう立場になっているから、私は言うのですが、そうしませんと、あなた、最高裁の一つの判例について、裁判官と調査官が別々なことを言いだすというふうなことになったら、一体どうなるんです、それは。それは意見は自由だということは言えるかもしらぬが、そうしてその際には特に断わり書きを書くでしょうが、しかしそれは、一体となって仕事をやっている間においてそういうことが発生していいのかどうか。まあめったに起こる問題でもなかろうが、しかしそういうことに発展する可能性のあるようなことはお避けになったほうがいいですわ。だから、そこはひとつ真剣に、こういう問題になった機会においてよく検討してほしいと思います。
それでは、この案にできるだけ直結した問題をひとつ少し取り上げていきたいと思いますが、先ほど秋山委員の質問に対して、浦和の犬島裁判官の問題が出たわけですが、大島裁判官は、これはずいぶん——裁判の開廷状況などをお調べになっているかどうか。ありましたら、どういう開廷をしておったのか、ちょっとお聞きをしたいのです。といいますのは、職場では、もう裁判官がやり過ぎるので、裁判官が先に倒れるか、書記官が先に倒れるかといったようなことまで言われておったようなんですね。それに関連していろいろなお話を聞いておりますが、非常に無理な開廷をやっていたように思いますが、どうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/69
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070・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 大島裁判官は、戦前に弁護士から裁判官にお入りになった方のように伺っておりますが、非常に職務的に御熱心な方でございますし、また、先ほども申し上げましたように、相当なお年でございまして、そうして定年も近い、自然また浦和の裁判所においても上席の地位を占めておられるというふうなことで、裁判事務あるいはその他の司法行政事務、つまり裁判所長の補佐事務その他で非常にお忙しかったように聞いております。先ほど申し上げたように、法廷合議事件の二分の一のほかに、単独事件も持っておられたというふうなことで、そういうふうなことが大島裁判官のお仕事をかなり過重しておる、こういうふうに伺っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/70
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071・亀田得治
○亀田得治君 たとえば、昼の休み時間ですね、十分くらいしかとらないでやられる。職務に熱心ということはいいことでしょうが、しかしみんなが協力してやっていくわけですからね、特に裁判所の運営なんていうのは。どっかの外交員が自分の昼めしも抜きにして一人で走り回っている、そんなもんじゃないのですからね。そういったような点で、ずいぶん無理があったように聞いておりますが、そういうことはお聞になっておりませんか。それから、たとえば土曜日でも午後三時、四時までやられるとか——これは特殊な事件の場合には、弁護人のほうからお願いしてそういうふうになる場合がありますが、ともかくそういうことを絶えずやっておられた、詰めてやっておられた、そういう点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/71
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072・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいまのお話の点は、実は私ども、大島裁判官がおなくなりになったことを伺いましたのは二十五日の夕方であったかと思いますが、それでさっそくあと始末の叙位叙勲の問題その他の手続もいたしました。それからなお、先ほど申し上げましたように、どういう状況であったのかということを調査いたしておるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、現在調査中でございますので、いまお話しになりましたような細部の点においては、私は実はまだ聞いておらないわけでございます。かなり詰めておやりになったようには伺っておりますが、具体的な数字等についてはまだ調査の結果が参っておらないような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/72
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073・亀田得治
○亀田得治君 ともかく事件を早く片づければいい、既済件数が上がってくるのが成績のいい裁判官だというふうな、何といいますか、そういう指導が大体最高裁のほうであるんじゃないですか。そういうことが誤解されて、そうして無理な開廷をやられておるというふうなことも影響しておるように思うのですが、どうなんですか。この既済事件をうんと上げる、これは毎月統計表を出さしているわけでしょう。これはやっぱり催促の意味だろうと思うのですがね、毎月出さすということは。それは実際の事情をつかんでおりたい、それだけのことだと言われるかもしれませんが、やっぱり統計を催促されるほうはできるだけ既済件数をふやして報告したい、自然にやっぱりそうなってくるのじゃないですか、口で言う言わぬにかかわらず。その辺、私は決して訴訟の遅延を歓迎するわけじゃないが、無理をしちやいかぬですね。健康なすらっとした気持ちで絶えずやっぱり裁判官の判断をお願いする、これが必要なことなんですから、その辺はどうなっているんでしょうか、指導方針。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/73
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074・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 亀田委員も在野法曹であらせられますし、私自身も現在は事務担当をいたしておりますが、つい三、四年前までは大阪で裁判官の実務をやっておった者でございます。いま亀田委員のお話の点は、非常によくわかるわけでございます。そしてまた、その問題は、おそらくきわめてデリケートでもあり、また処理のむずかしい、また慎重な配慮を要する問題である、かように裁判官の当時にも考えておりましたし、現在も考えておるわけでございます。これは全部の裁判所でそういうことをやっておるかどうかはわかりませんが、大阪の裁判所などでは毎月の既済、未済等を回しております。しかし、これは実は裁判官自身がやっぱり非常に気になることではございます。決してそれによって——おそらくそういうものは最高裁等へは来ていないと思います。裁判官の手元へ来るものでございます。しかし、それはやはり何らかの意味では気になるものでございます。これは国民の大事な事件をおあずかりしておるわけですから、それが非常にたまるということはやはり申しわけないことでございます。しかし、同時に、亀田委員もお話しになりましたように、何でも早く片づければいいというのなら、民事事件などは主張責任や立証責任ではねてしまえば幾らでも判決を書けるわけでございます。しかし、そんなものではやっぱり裁判にならないわけで、十分審理を尽くして、そうして真相を究明して判決をしたい。同時にまたこれが、弁護士さんのほうも個人企業でやっておられますので、準備がなかなかできない。やっぱり事務書面を出すのもおくれる、こちらがやきもきしておっても出してもらえないというようなこともございます。こんなものは、むろん裁判官の成績に関係しそうにないことでございます。しかし、そうかといって、一方では結審して二年も三年も判決を書かないでおるというようなことがかりにあるとすれば、これはやっぱり裁判官として批判を受けなければならないことでございます。その辺のかね合いが、つまりその点はやっぱり、具体的の事件を一つ一つ見て、そうしてこれは判決に熟しておるかどうか。それから、結審すればなるべく早く判決を書くということは、裁判官各人が良識をもって判断すべきであることは間違いないことです。しかし、私どもお互いに人間で、やはり弱い面も持っておりますから、自分だけで自制するといってもむずかしい点もあるので、たまにはやっぱりハッパもかけてもらったほうがいいということもあると思います。そこらのかね合いは非常にむずかしいわけでございますが、良識をもって運用していくというほかはなかろう。おそらく大島裁判官の場合は、非常に責任観念の強いお方で、定年ということについての考慮がおそらくある程度頭の中におありになったのではないか——これは想像ででさいますが、これも何らかの形で、そういう地位が変わるという直前になりますと、自分の担当しておった事件についてはやはり自分が責任を持ってやりたいという気持ちになるのが自然でございまして、そういうところが何らかの形で反映したのではないか、かようにも考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/74
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075・亀田得治
○亀田得治君 一生懸命おやりになっている方にこれは決してけちをつける意味で申し上げているんじゃないんでして、やはりああいう精神的な労働ですから、無理なことをしちやかえって私はいかぬ。特殊な人が非常に馬力をかけてやっても、必ずしも書記官なりすべてがついていけるわけじゃない。どっかにやっぱり無理が出てくる。そういう点がいわゆる訴訟の促進という面が強調され過ぎて、過重になるということは、まことに遺憾に思って申し上げておるわけです。だから、これはひとつ具体的な事案としてお調べを願いたいと思うんです。だから、そういう職務に殉職された方ですから、何といいますか、そんな非難するような意味じゃなしに、裁判官のあるべき姿という立場からひとつ御検討を願いたいと思うんです。
それからもう一つ、東京地裁の駒田裁判官ですね、この方も合議中に喀血されたという事件が起きております。これは一体、だいぶん時間もたっておりますからお調べにになっていると思いますが、そういう勤務の状態ですね、そういうふうなことはどうだったんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/75
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076・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、直接には人事局のほうの関係でございますので、私ある程度資料等を持ってまいってはおりますけれども、こまかい点までは十分にここでいますぐ御報告できるかどうかと存じますが、駒田裁判官は、お話のとおり、胃かいようの疑いで御入院になったようでございます。駒田裁判官の所属しておられますのは、これは御承知のとおり労働事件の関係の部でございます。労働事件の関係の部というのは、これまた亀田委員にあらためて申し上げるのもあれでございますが、非常に、事件数はともかくとして、心労の激しい部でございます。そういうところから実は、東京地裁の労働事件の処理がかなり渋滞と言ってはことばが妥当でないかもわかりませんが、非常に骨が折れるいうことで、これはどうしても部を一つふやすべきではないかというようなことが問題になりまして、それで、昨年の四月ころであったと思いますが——五月の初めでございましたか、部を一つ増設したわけでございます。労働事件を担当する部が従来は二部でございましたのを、三部にしたわけでございます。駒田裁判官の属しておられますのは民事の十一部という部でございますが、その十一部に係属しております事件も若干新設の部のほうに回す、こういうような操作をいたしました。そうしてその負担の軽減をはかったわけでございなす。そういうところから、まあそれ以後は、昨年の四月以前に比べますれば、それ以前よりやや負担としては軽くなったのは数字の上では出ておるわけでございますが、ただしかし、労働事件は数だけではまいりませんので、一件一件が非常に神経の疲れる問題でございますから、そういう点はある程度駒田裁判官の御健康にも影響しておるということはあり得るとは考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/76
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077・亀田得治
○亀田得治君 これはともかく非常に問題でしてね。裁判官は大体きまじめですからね。自分の仕事ということに対してやはり非常に考える、そういう人が私は多いと思うのです。だから、それだけにやれやれやれという空気になりますことは、非常に無理がきているんじゃないかと思うんですよ。東京地裁でたとえば事件の数を見ましても、民事の関係ですが、私のほうでちょっと調べたのを見ますと、三十七年と四十二年新受の関係を調べると倍近くになっていますね、民事事件が。少しずつふえていって、三十七年と四十二年の比較を見ますと倍になっています。その間に、裁判官の増加十八名でしょう。書記官が九名しかふえていないんです。だから、そういう全体の負担増という中から、少しずつ健康を悪くしていく。一ぺんには悪くなるものじゃない。そういうことの結果、公判中に——まあ合議中でありましたが、駒田さんの場合は、そういう喀血をする。そんなに悪かったら、一般の行政官庁でしたら、もう事前に休んだり、休養したり、いろいろしていますよ、大体。それはそうしなければだめですね。だから、そういう点で非常に無理がかかっているように思いますがね。まあ、先ほど秋山君から御質問があって、何とかやっていけそうだというふうな意味のことをお答えになっているけれども、実際に一、二の事例というものを私たち聞いてみますと、そうではない。もちろん、これは全国的には、これまた一様には言えないと思う。非常に閑散なところもあるわけですけれども、それはわれわれも知っております。しかし、それは閑散だからといって留守にするわけにはいかないわけでして、すぐこっちに持ってくるという、そんなことはできるものじゃない。これは役所としては当然のことです。だから、そういうふうに非常に負担が重くかかっている場所、これはあなたのほうでわかっているわけですから、もっと積極的な私は手を打ってもらいたいというふうに思って申し上げているわけですが、この駒田さん以外にもあるでしょう、裁判官で身体を悪くされた方。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/77
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078・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 裁判官なり裁判所の職員に対してたいへん御理解のあるお話で、感謝申し上げるわけでございますが、私、三十七年の統計をちょっと手元に持っておりませんので、三十七年との比較ははっきりいたしませんが、四十年当時と比較いたしましても、やはり若干民事事件はふえているようでございます。その反面、刑事事件は減っているというのが実情でございます。定員の増も、これも正確な数字、三十七年との比較はここに持っておりませんが、おそらくもう少し多いと思いますけれども、それはつまり民刑両方のほうに行く可能性があるので、必ずしも民事へ全部増員にならないという面もあるわけでございます。それから、それならば刑事から民事に回せばということも問題になりますが、やはり裁判官にもそれぞれの専門がございまして、直ちに刑事の裁判官がすぐ民事をやるということもむずかしい面もあるわけでございます。それから、全国的な視野でというお話は、これば全くお話のとおりでございまして、実は定員改正をしますたびごとに、裁判官につきましても、あるいは裁判所の書記官その他の職員につきましても、大体において、地方と申しますか、いなかと申しますか、はじつこのほうから東京なり大阪へ定員を切りかえるという操作をするのがまあここ数年来の例になっておるわけでございます。ただ、定員の切りかえ自体がそう大幅にはまいりません。これは、いま亀田委員からもお話がございましたように、やっぱり最小限度地方裁判所としては民刑各一部は要るということになりますれば、六人なり七人の裁判官は事件が少なくても置かざるを得ない。むろん支部、簡裁等の整理統合ということは、言うべくして容易じゃない問題でございます。そういうことで、つまり定員を中央に集めるについても、おのずから一定の限度がございます。その上にさらに、定員は集めましても、実員の異動ということはこれは一そうむずかしい問題で、裁判官の場合ですと、それでもまだ全国的な異動をときどきいたしますけれども、一般の職員の方の場合に、九州の事件が減ったから東京に定員をふやす、それでは九州の職員に東京に転任してもらうということは、これは実際問題としてほとんど困難なことでございます。そういうことで、なかなか理想的に定員操作もいかない。逐次やってまいっておると、どうしても全体的な平均件数でいきました場合に、ある程度大都会に負担が重くなるということもあるわけでございます。ただ、まだいろいろ聞いてみますと、東京はしかしそれにしてもたとえば労働事件なら労働事件に専念できると、したがって、むずかしくはあるけれども、裁判官としては、やりがいもあり、一つの集中力が出せる。ところが、いなかへ参りますと、民事も少年も家事もやっておる。こういうことが、非常に事務量は少ないけれども、案外骨が折れるという声もあるわけでございます。その辺がなかなか私ども定員を担当する者としてもむずかしいところで、どういうふうにやっていくかと、この辺をかね合いにしながらやってまいっておりますし、同時にまた絶対数の増員という点では、先ほど秋山委員のお話に対して申し上げましたように、充員ということにかなりの問題がございます。亀田委員などにおかれましても、日弁連等に大いに弁護士から裁判官になることをおすすめいただきますれば、非常にありがたいわけでございますが、その辺のところが、われわれの努力が足りないために、結局修習生、判事補というコースが基本的な形になりまして、なかなか充員できないというところが響いてきているのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/78
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079・亀田得治
○亀田得治君 まあ充員についての陳情も承ったわけですが、やはり行きやすくしないとこれは行かぬわけですよ。無理のある職場では、来てくれと言ってもなかなか無理です。それで、今年の増員ですが、ほんのわずかですが、ただ、裁判官が十二名に対して職員が十三名ですか、これは裁判官と職員の数からいいましても職員のほうが少な過ぎるように思いますが、どうでしょう、比較の限りにおいては。従来は何でしょう、職員の数は裁判官より相当数多く増員のたびごとに大体やってきているのじゃないですか、その点どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/79
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080・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、さかのぼってみますと、いろいろな年があるわけでございます。これも毎年、まあなるべく長い目でひとつ見ていただきたいというふうに申し上げておるわけでございますが、たとえば昭和四十年度などは、裁判官が十六人に対しまして、一般の職員がゼロのような年もございました。まあしかし、こういうのは例外でございまして、大体はある程度裁判官より裁判所の一般職員のほうが多いのが前例でございます。ただ、ことしの場合は、先ほど秋山委員のお話の際にもちょっとあるいは出たかとも存じますが、その増の要素と減の要素と両方がからみ合って、その結果要するにこの答えとしてトータル二十五名と、こういうふうに出てきたわけでございます。裁判官のほうでも、判事十二名となっておりますが、実はそのほかに簡裁判事七名増ということを前に予算の御説明のときにあるいは経理局長が申しておるかもしれないのでございますが、これは反面で簡裁判事七名減というものがございまして、それで増減なしの法案になっているわけでございます。したがいまして、それを加えますと裁判官のほうも十九名ということになろうかと思いますが、その一般の職員のほうも、これも、十三といいましても、例年のようなストレートな十三の増ではなくて、ある面ではもっとふえて、それの中から若干を差し引いて答えが何名、それから中には職務の範囲によっては減のものもある、こういうことで、それを全部合計いたしますと差し引きで十三名の増と、こういうことで答えが出てまいっているわけで、その点はお手元の資料の四ページに出ておりますが、そういうような関係になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/80
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081・亀田得治
○亀田得治君 そのいろいろやりくりの結果の数字だということはわかるのですが、いずれにしても社会の要請というものが非常に大きいわけですから、さっきも質問があったように、それにしてはあまりにも小さ過ぎる。そうして裁判官と職員のバランスがとれておらぬ。個々のところを言うのではないのです。だから、そういう点についてはもう少し強い立場でやってもらいたいと思っているのです。これは裁判の実情をぼくらがよく知っておるから申し上げているのです。
まあその程度にしておきまして、あと昼から公務災害の問題ですが、これは人事局長出れますか、昼からにすれば出れますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/81
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082・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) まことに恐縮でございますが、きょうは終日——おそらく夜まで新しく採用いたします判事補の面接をいたしておりますので、本日はちょっと困難であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/82
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083・亀田得治
○亀田得治君 そうしたら、資料だけはひとつそろえておいてください。その関係を特にお聞きしたいと思いますから、相当具体的に、特に東京関係の資料、ここが裁判官も職員の方も一番難儀しておるわけですよ。その点特に聞きますから、要請しておきます。委員長(北條雋八君)午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
午後零時三十八分休憩
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午後一時四十八分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/83
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084・北條雋八
○委員長(北條雋八君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
委員の異動について御報告いたします。
本日、中山福藏君及び谷村貞治君が委員を辞任され、その補欠として山本杉君及び内田芳郎君が委員に選任されました。
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085・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたし、午前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/85
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086・亀田得治
○亀田得治君 人事局長が御出席きょうは無理なようですから、公務災害の関係のことはまた別な機会に質問をすることにして、そのほかの点について若干お尋ねをしておきたいと思います。
その第一は、裁判所の職員の待遇問題ですね、これは事務総長の御見解も承りたいと思うんですが、今度の政府の予算では、総合予算方式ということで、あらかじめ四・八%の賃上げの原資というものを予算に組んでおるわけですが、しかしなかなか、最近のいろんな経済上の指数等を見ても、とてもこれでおさまるものではないというふうに私たちまあ見通しておるわけですが、そういう点について最高裁当局としてはどういうふうな見通しを持っておるかお尋ねをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/86
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087・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 一応私からお答え申し上げ、あるいは総長から補足していただくのが適当かと思いますが、ただ実はこの待遇問題も人事局長の所管でございまして、公務災害についてかなり打ち合わせはしてまいったんですが、待遇問題必ずしも十分打ち合わせしてまいっておりません。しかし、私どもとしても、裁判所の職員の待遇問題ということは、非常に重要な問題として、いつも総局全部の力で検討し、努力しておる問題でございます。そうして、御承知のとおり、いわゆる号俸調整と申しますか、つまり書記官については一六%、家裁調査官についても一六%の特別の調整による多額の給与上の扱いになっておりますことは、これは裁判所職員の職務の重要性ということについて御理解いただいた結果かと考えます。今回のベースアップの問題につきましては、これは今後の経済事情その他も関連する問題でございましょうし、私どもとしては、他の公務員と同様であることはむろん、それ以上に待遇の改善について努力いたしたいと、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/87
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088・亀田得治
○亀田得治君 私どもよく、裁判所につとめておられる職員の方から、具体的に俸給表などを見せてもらうことがあるわけです。で、まあそういう感情的な面だけを申し上げるわけではありませんが、とても現在の待遇では苦しい、しかも四・八%しかベースアップの原資を見ておらない、これでは私はとても、職員の生活をきちんと守って、そして十分仕事をしてもらえると、そういう状態にはならぬと思うのですね。ですから、当然全国の裁判所をあずかっておられる最高裁としては、これは組合のほうからそういう話が出るわけですからね、黙って聞いているわけにはいかない、いろいろ考えておられると思うわけでして、ぜひこの点についてのもう少し見通した意見というものをお聞きしたいわけです。必要であれば、そのことはやはり政府に対しても皆さんから意見も出してもらわなければならぬことなんですね。何か事務総長はせんだって、衆議院でしたか、職員の俸給表について裁判所独自のものを何か研究しておられるというふうに御発言があったようですが、そういうことについてもしできましたら考え方をお聞かせを願いたいわけです。これは単に一つの軽い意味でそういう構想ということをおっしゃったものなのか、あるいはそれを具体化していかないとどうもぐあい悪いというふうな立場でおっしゃっておるものなのか、それらもあわせてひとつお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/88
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089・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) この問題も、一応私から申し上げてはと存じますが、一般に裁判所の職員——裁判官はむろんのことでございますが、裁判所の職員の給与がどうあるべきかということは、非常にむずかしい、また重要な問題であると考えておるわけでございます。そうして、常にそういう問題についても、研究、検討は怠っていないつもりでございます。で、まあ幸いにして、裁判官については別建ての俸給表が一応できておるわけでございます。しかしながら、その内容については、私ども現在の段階においてはやむを得ないと考えておりますものの、これは一〇〇%満足しているわけのものでもございません。臨時司法制度調査会の意見にもあったとおりでございます。ただこの点は、おそらく任用の問題等とも関連することでございますから、現在の裁判官制度のままでこれに画期的な変革を加えるということについては、いろいろ問題があるのではないか、かように思うわけでございます。この前の衆議院で総長がお話しになりましたような問題も、さようなところにも関連をしているのではないかと私は理解いたしておるわけでございますが、なおさらに裁判官以外の一般の職員の問題につきましては、たとえば先ほど申し上げました号俸調整というようなことも、非常に微温的な形ではございますけれども、やはり裁判所の職員の特殊性というものに基づきます一つの給与の形ではある。ただし、給与体系と申しますにはあまりに微々たるものでございますし、大きな顔をして言える形のものでもございませんし、しかしともかくも、一般職の職員の給与に関する法律を準用するといっておりながら、そこでさらにさような手直しをしているということは、ある程度の一つの給与のあり方になっているわけでございます。しかし、さらに進んでいろいろもっとりっぱなものをということになりますと、これは裁判官と同様、いろいろ職務内容なり任用制度のあり方とも関連をしてくる問題でございまして、所管の人事局においては常に研究を怠っていないはずではございますが、その具体的な内容等についてまだ申し上げるというような問題の点までには至っていないというように私は承知しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/89
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090・亀田得治
○亀田得治君 特に私、裁判官以外の一般の職員のことについて実はお聞きしているわけですが、事務総長からちょっとひとつ御真意のほどを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/90
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091・岸盛一
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 現在、裁判官以外の裁判所職員、これはやはり特別職になっておりまして、それで、先ほど総務局長が申しましたとおり、その職責から申しましても非常に重要なものであるわけでございまして、その給与体系が裁判所職員臨時措置法によって臨時的な形でできておる。そうして一般職の給与に準じて、しかし、先ほど総務局長からも説明がありましたように、ある種の職種については特別な号俸調整という手当てでできる限りの優遇をはかろうとしている。そういう点は、特別な措置、手当てとして、それ自体非常に意味があると思いますが、何分にも臨時措置法というのがほんとうはおかしいわけで、これも恒久的なものにするのが筋だろうと思います。数年前に、まず裁判官について——裁判官については独自の給与体系を持っておりますけれども、しかしその階級の区分なんかは一般行政官とそうあまり変わっていない方式でありますので、ひとつまず裁判官について独自の、もう少しランクを少なくした、そうしてそう裁判官が昇給とかそういうことに気をとられることなく落ちついて裁判できるような給与体系はできないものかということで、人事局でいろいろ考えたことがございました。いろいろな案を考えましたけれども、このように毎年のベースアップのある状況のもとでは——ちょっとやそっとのベースアップがあっても、そういうことにおかまいなく泰然としておられることができるのが非常に望ましいと思いますけれども、こう毎年続きましては、そういう状況のもとでは固定化した報酬の体系というものはなかなか困難である。それと同時に、またはたしてそういうことが実際に実収入の点において裁判官にとって有利であるかどうかという点、そういう点につきましてもいろいろ疑問が起きまして、そうしてこういう状況のもとではちょっと当分、研究は続けるとしても、急速にそういうことはできかねる、そういうことでその際は取りやめになったわけでございます。しかし、裁判官を含めての裁判所職員全体の給与体系については、日ごろ私どもも関係の事務当局でいろいろ考えてはおりますけれども、先ほど来申しましたような事情から、急速な実現はちょっと困難であると考えます。一般職につきましては、それでは現行法の体系に乗った上での優遇をまず当面の問題としては考えていったらどうかということで、号俸調整の問題、それから級別定数をできるだけ上のほうを獲得する、そういう努力は毎年毎年続けておりまして、そしてこれは、裁判所の一般職というと語弊がございますが、裁判官以外の職員の待遇が他の行政官庁の職員のそれに比べて決してまさるとも劣るものでもない、これははっきり申し上げることができるのであります。しかし、現状に決して満足するというのではなくて、やはりどういう待遇の、給与の体系をつくったらいいかということは、これはわれわれも今後も検討を続けていく所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/91
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092・亀田得治
○亀田得治君 大体そういうことでしたら理解できますが、いまお答え自身の中にありましたように、どうせ事務総長のほうも裁判所職員の有利のためにそういうことを考えておられるのだろうと思いますが、そういうことをすれば現実の政治の中では結局置いてきぼりになるというふうに私は危惧するわけです。いまお答えになったような立場で当分はやっぱり努力してもらいたいというふうに、これは要請しておきます。
それから次にお聞きしたいのは、裁判官会議ですね、これは各裁判所の責任者であるわけですが、実際上はあまり開かれない。特に、大きな裁判所等になると開かれない。そうして特定の方に委任してしまうというふうな実態になっているんじゃないかと思うのですが、その辺どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/92
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093・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) まず最高裁判所と下級裁判所に分けて申し上げる必要があろうかと思いますが、最高裁判所に関しまする限りは、これは完全に裁判官会議というものがすべての問題についてイニシアチブをとり、また理解をして司法行政を進めていくということは、申し上げられると思います。開催は原則として週一度でありますが、午後長い場合には四、五時間もやられる場合もあります。短い場合でも一時間から一時間半やられるわけでありまして、毎週でございますから相当に時間数としても多いことになろうかと思います。
下級裁判所につきましては、これは最高裁判所ではその開催回数等を定めませず、すべて下級裁判所そのものの方針にゆだねておるわけでございます。これにつきましても実はいろいろ議論がございまして、ある程度開催回数等は最高裁判所のルール等できめるということについても検討の余地はあるわけでございます。あまりにアンバランスということもいかがかという意味もないわけではないわけでございます。しかしながら、私どもとしては、できる限り下級裁判所の自主性を尊重するという立場から、その回数の制約等はしておらない、あるいはもっと開けということも申してはおらない、つまりあくまで自主性にゆだねております。非常に多いところは、これは亀田委員御承知かと存じますが、私も前に勤務しておりました大阪の裁判所では毎月一度開く例になっております。ただしかしながら、これは実際の体験として申し上げるわけでございますが、やはり裁判官会議に定足数というものがあるわけでございます。ところが、その定足数がそろわない場合がかなりあるわけでございます。それはいろいろ大阪の特殊事情もございますが、そういう関係で、毎月開催となっておりましても、必ず毎月現実に裁判官会議が構成されて運営されるとは限らないわけでございますが、たてまえはそういうふうになっておるわけであります。その他の庁はいろいろまちまちでございますが、東京あたりでは全体の裁判官会議というものは年に二度のようでございます。これはまた御承知のように、東京地方裁判所ということになりますと、八王子支部は別といたしましても、本庁だけでも二百人をこえるかと思われる裁判官がおりますので、大体の問題は、民事部会、刑事部会というように、部会を分けてやるというようなやり方をとっているようでございます。そうしてさらに、毎週開く必要のあるような問題は、これは常置委員会に委任する。こういうような形で、三段がまえと申しますか、そういうようなやり方をしているわけであります。そのほか各庁によってまちまちでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/93
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094・亀田得治
○亀田得治君 その裁判官会議の状況ですね、これの全国の動きというものは、最高裁にはやっぱりちゃんとその報告が来ておるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/94
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095・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これはかっては来ておった時代もございますが、報告の簡素化等の問題もございまして、一々詳細な報告はとっておりません。しかし、随時に、たとえば開催回数等の報告はとることもございます。それから会議の結果きめられました事項についての報告は、これは事柄によっては相当詳細にとっております。たとえば一番重要なものは、裁判事務の分配、部の構成と申しますか、つまり第何民事部はどういう裁判官で構成されるかということは大体司法年度末の裁判官会議で決定されますので、その結果に基づいて最高裁判所のほうに報告してくる。これはおそらく裁判官会議事項としては最も重要な事項だと考えられますが、そういうふうに個々の事項について結果の報告はございます。ただし、会議の経過なり内容については報告はとっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/95
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096・亀田得治
○亀田得治君 たとえば浦和とか千葉あたりの裁判所ですと、回数はどれくらい開くのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/96
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097・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 突然のお尋ねでございますので、あるいはあとで資料でお届けしてもと思いますが、私正確に存じませんで、想像で申し上げますれば、おそらく数回ということであろうと思います。数回と申し上げますのは、二回から五回までの間であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/97
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098・亀田得治
○亀田得治君 そういたしますと、委任事項が相当ふえているのだと思いますね。どういうような点を委任事項として扱っておるのか。これは場所によっていろいろでこぼこがあるのだと思いますが、その辺の事情をひとつ説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/98
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099・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これも実は、資料が総務局にあるわけでございますので、持ってまいればよかったのでございますが、きょうそちらのほうが問題となるとは思いませんために持ってまいりませんでしたので、私の記憶で申し上げることになりますので、あるいは間違っておる点もあるかもしれませんが、結局、要するに常務をまかせるということになると思います。端的に申しますと、たとえば最高裁判所で裁判官会同を開くとします。そのときにどの裁判官が出席するかということは司法行政であります。これを決定するのも裁判官会議で決定すべきでございますけれども、これを一々会議を開いてだれが行くか相談していたんではたいへんだというので、常置委員会等に委任しておると思います。これはごく思いついた一例を申し上げたわけでありますが、その他、要するに司法行政というものは非常にたくさんございますから、つまりかなりのものが委任される。しかし、それは実際、いま申し上げましたような非常に常務的なものがおもであろう。まあ絶対に委任しておるはずもないと申し上げてはばからないと思いますのは、部の構成、これは裁判所としては一番大事なことでございます。裁判部をいかに構成するか、むろん書記官も含めてでございます。裁判官なり書記官の配置をどうするかということは、これはどこでも委任はしていないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/99
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100・亀田得治
○亀田得治君 委任をした事項については、これは最高裁に報告する程度になっているんですか、そういうこともしなくてもいい、そこの裁判所独自でやっていけばいいのか、その扱いはどうなんですか。というのは、たとえば「裁判所時報」などを見ておりますと、委任した事柄について最高裁と連絡をとって承認を受けておるということになるのか、報告だけなのか、これははっきりせぬ点もありますが、その辺のところを少し御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/100
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101・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 裁判官会議で委任した事項すべてについて報告をとるというようなことはいたしておりません。だから、ときどき調査をすることはございます。しかし、いま「裁判所時報」というお話が出ましたが、それはおそらくは、下級裁判所で任免の委譲等をした場合に、最高裁判所の認可を得てやりますので、それが「時報」によく載ることがございます、その問題ではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/101
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102・亀田得治
○亀田得治君 任免問題ですね、ここでいま私がたまたま持っておるのは。そうすると、重要なことについては承認を受けるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/102
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103・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これもいま私網羅的に記憶いたしておりませんが、任免問題はその一例であったと思います。そのほかにどういうものがございましたか、ちょっと記憶いたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/103
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104・亀田得治
○亀田得治君 資料がおありのようですから、一度その辺の実情ができるだけわかるような資料をひとついただきたいと思うんですよ。といいますのは、裁判官会議というものがだんだん形式化して、そうして一般の裁判官はもう裁判だけやっておればいいんだ、特定の者にもうそういう裁判所の運営とかそういうことはまかしておけばいいんだというふうなことになってしまうことは、やはり私は逆行だと思うんですね。なかなか会議というものが、司法行政をやるということは不便な点もありますけれども、やはりそこに裁判所の特色、一人一人の裁判官が独立という基礎がありますからね。この基礎というものを考えるだけじゃやっぱりいかぬわけでして、運営自体についてもやはりつながりというものが私はなきゃいかぬと思う。そういうことをもうなおざりにしておりますと、いつの間にかこれが形骸化していく。悪くすると上下の関係——いや、そんなことは考えていやせぬと言いましても、だんだんやはりそういう面でも私は悪い影響が出てくると思うんです。そういう意味で、裁判官会議の問題を以前には少し問題にしたこともありますが、最近だいぶんお聞きしておりませんので、現状は一体どうなっておるのか、そういうことをお聞きしたいわけです。そういう形式化していく、一般の裁判官はもうそういう雑務にはタッチしない、積極的にそういうふうに進んでおるというようなことがあっちゃ私はいかぬと思うのですが、その辺はどうなんですか。また、最高としての指導方針ですね、そういう面についての……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/104
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105・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 根本的な考え方において、私も全く同感に存ずるわけでございます。ただ、その具体的な運用の問題は、実は非常にまたこれも複雑な要素を含んでおるわけでございます。と申しますのは、先ほど申し上げましたように、東京はこれは実はかなりうまく運用されておるんじゃないかと思いますが、裁判官会議は年二回しか開かないけれども、民事部会、刑事部会というものを数回開いてそれでやる。それからさらに、もっとひんぱんには、たとえば代表者会議とかあるいは常置委員会というような、各部から一人ずつ出てきてやるとかいうような中間の機構もございます。そういうことで、つまり何といってもあれだけ大きな世帯ですから、いろいろそういう段階的な機構でやっておって、かなりうまくいっておると思います。一方大阪のほうは、毎月裁判官会議を開くといっておりながら、それが流れます場合がかなりあるということになると、これはむしろ形式ではないか。それよりも、もう少し何か東京のような現実的な機構を考えて、そのかわりそれをもっとひんぱんに開く。裁判官会議は年二回なり五回なり、数回にとどめるというほうが、ある意味では裁判所法の精神に沿うわけでもあるのではないかという面があるわけでございます。それから今度は、さらに小さな、先ほど千葉というお話が出ましたけれども、千葉あたりになりますと、支部は別といたしまして、本庁の判事はおそらく数名しかおりませんから、これはもう多くのところで一週一回ぐらいは所長を中心に会食をしたりするわけでございます。そういう際に、正式の裁判官会議と言わなくても、いろいろ話が出るわけでございます。したがって、もう実際上、いわゆる議事録をつくる裁判官会議は開いておりませんけれども、意思の疎通は大阪や東京に比べればかなりよくいっておるわけでございます。その点でも、しかしむろん、非常に独断的な所長でも出ます場合には、問題はあるわけでございます。その辺のところは、私どもとしても十分に注意し警戒して指導しなければならないことはもとよりでございますけれども、多くの場合には、そういう実際的な運用で、会議の回数が少ないといっても、小さな裁判所はうまく運用されている。ただ、またこれもいろいろなことを申し上げて恐縮でございますが、たとえば広島の高裁というようなところになりますと、支部が松江と岡山にあるわけでございます。裁判官会議を開くためには、支部の者をみな集めなければならないわけでございます。しかし、松江、岡山からそうひんぱんに集めるわけにもまいらない。そういうところで、本庁だけの裁判官が集まって一応のことをきめて、あとは了解を得るというようなやり方でもやったことがあるように聞いておるわけであります。したがって、重要な問題のときには裁判官会議をむろん開くわけでございましょうが、その辺の運用は、最高裁で一律に何回とか、どういう機構ということを申しますよりも、それぞれの長の自主性にゆだねたほうが実際に適する扱いになるのじゃないか。東京のように二百名の裁判官を有する裁判所と、十名程度の裁判所とでは、おのずからそこに運用が変わってくるほうが自然ではないかというので、特別の処置は講じておらないわけでございます。ただし、実情につきましてはできる限り把握して、円滑に運用されるように考えておるわけでございます。
ただ、一言つけ加えますと、先ほど来も、根本においてはそうでございますけれども、たとえば会計法なんかでは、裁判官会議でなしに、高裁事務局長とか所長に一応の権限を与えておるというような例もあるわけで、法律上そういうような権限がありますものはまた別に考えるべきだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/105
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106・亀田得治
○亀田得治君 それは、法律上特別な権限を持っておる、それはまあ当然なことで、一般的に、所長なり、あるいは部会を開くようなところでは部会長なり、そういうところに委任していくという事項がふえておるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/106
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107・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 一般的にはおそらくふえてはいないと思います。ただ、いまのお話は、先ほどの「裁判所時報」でときどき目につくとおっしゃる、それがときどき各地にございますとその「時報」に載りますから、それがお目にとまったのかと存じますが、一般的な事項としてはふえていることはないように理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/107
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108・亀田得治
○亀田得治君 じゃ、その辺の実情もちょっとわかる資料を見せてもらいたいのです。お願いしておきます、委員会外でけっこうですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/108
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109・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/109
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110・亀田得治
○亀田得治君 それから次に、配置転換の問題ですがね。配置転換、裁判官以外の問題ですが、現在そういう時期に一応来ているわけでしょうが、従来は、できるだけ本人の意思を聞き、また生活の状況なども考えて、無理のないような配置転換をやるというふうに大体われわれは了解しておるわけですが、近ごろ必ずしもそうばかりでもないというふうなことを聞くわけですが、何かそういう、これも人事局長おりませんので、こまかいことは、具体例などについては、直接の担当局長でないとわからぬかもしれませんが、何かそういう面で方針でも変わってきたのかどうか、大まかなところだけをちょっと聞いておきたいのです。たとえば、非常に組合の活動を熱心にやっている、うるさいからもう少し遠いところへやっておけとか、いや、たまたまその人がそういうことに当たったので、意識してやったわけではないというふうにたいがいこれはお答えになるわけですが、しかし、そう偶然の一致というものがあちこちに起こるわけはないのでして、その辺どうも最近方針が少し変わってきているのじゃないかというふうに思うわけですが、決してわれわれ、人事権を裁判所当局から奪うとか、そんなことを考えているわけじゃないのです。これはともかく、交通事情から見たって、宿舎の事情から見たって、何といったってそういう転換した後のことも十分考慮してやることが、これは全体のやはり能率もあがるわけです。そういう立場からこれは考えているわけでして、その辺どうなんでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/110
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111・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 御指摘のとおり、人事局長の所管でございますので、私は十分なお答えはできないかもしれないと思いますが、私の理解している範囲では、最近に方針が変わったということはないと思います。一般的に言って、大体いわゆる裁判官以外の職員の方の配置転換というものは、本人の意思に反して強行するということはきわめて困難でもあり、また実際にも適しないというのが、従来の裁判所の実情であろうと思います。私ども所管の関係から申しますと、これは先ほど、午前にも問題になりましたように、相当事件がふえたり減ったりするところがあるわけでございます。たとえば九州の裁判所で減って、東京の裁判所ではふえるということは、毎時あるわけでございます。その定員を九州で削って東京につけるということも、これは合理的な立場からやらざるを得ないわけでございます。しかし、そのときに、九州の職員を東京へ持ってくるなんということは毛頭できないし、また私どももそういう扱いはしていただかないように人事局のほうにお願いしており、人事局でもさようなことをされた例はないように承知しておるわけでございます。今度の法案の関係でも、いろいろ増減の関係がございますから、減になった職種と増になった職種と違うと、その点で配置転換については注意をしてやってほしいというような趣旨のことは、職員組合のほうからも十分聞いておりますし、これは私どもとしても十分注意してやるべきことであると考えるわけでございます。ただ、私よく雑談的に話す場合があるわけですが、これは私の所管ではございませんが、同じ勤務地内の、たとえば東京地裁から東京高裁へ移るというようなことぐらいは、相当な程度に協力してもらえないと、それをしも、いやこちらの職場でないといやだと言われても、非常に困るのだと。いま亀田委員のお話のように、通勤が非常に不便であるとか、宿舎がどうだとかいうことは、管理者として当然考慮すべき問題であると思います。しかし、その上の段階として、それにもかかわらずと申しますか、そういうことは別にさわりなくて、しかしただ職場をかわるという場合には、これはやはり大きな立場から職員にも協力をしてもらうのが当然であろう、そういうような立場でいろいろ話しているわけでございますし、大体においてはそういう方向で行なわれていると思いますが、あるいは例外があるのか存じません。それはいずれまた人事局長から御報告申すと思いますが、私はそういうふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/111
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112・亀田得治
○亀田得治君 例外というか、いろいろあるわけですよ、具体的にはね。それは裁判所から最初案を出す場合には、よく本人の事情のわからない場合があるでしょうから。しかし、本人から、しかじかだと、もしそこへ移るとなるとこういうことになるというふうなことでお話があった場合には、そういうことは十分裁判所として聞いて、そうして考慮していくと、そういうたてまえになっているのですか。言い出したらもう多少のことはあってもやっていくのだというふうなことなんですか。あるいは裁判所によって扱いが多少違うのでしょうが、しかしそれは、全体の指導方針という面からみて、やはり最高裁の考え方というものは非常に大事だと思うのです。どうなんですか。あなたが例としてあげられたようなね、同じ場所にいて、そうして地裁か高裁かと、そんなことを私は言ってるのじゃないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/112
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113・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 基本的な考え方は、私、個人として、亀田委員のお話、よくわかるように思いますし、私も大体そういうふうにおそらくされているように理解はしているわけでございますが、しかし、いろいろなケースがあろうと思いますから、その裁判所なり所長なりの方針によって、どうしてもその人に行ってもらわないとぐあいが悪いというようなことがあるいはあり得るかもしれない。そのときに、その人事権と本人の身上とのかね合いということをどういうふうに調整するか、それはなかなかむずかしい問題で、この最終的なところは、ひとつ人事局長が出ましたときに責任をもって申し上げるというほうがいいのではないかと考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/113
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114・亀田得治
○亀田得治君 具体例となりますと、実際に扱っておられる局長にお聞きする以外にないわけですが、事務総長に最後に一言聞いておきますがね。組合の活動家じゃから、うるさいから、少しへんぴなところへやるとかね。それはそういうふうに思っている人もあるいはたくさんの中にはあるかもしれないと私は思う。しかし、その場合でも、そんなことは口にしません。だから、その辺のところはね、いろいろ全国から裁判官なり所長あたりがお集まりになったり、いろいろ機会があるわけでしてね。そういうときについての話し合いというか、指導と言っちゃ少し言い過ぎる点もできるかもしらぬが、そういうことは、職場をやはり明るくしていくという立場から、考えてほしいのですな。なかなか人によって裁判官というのは特色がありますからね。思い込んだらきかぬと、組合のくの字でも言うたちもうきらいだというのがいたり、いやそうじゃなしにそれはもうあたりまえのことじゃないかと、むしろそれくらいの男のほうが仕事をよけいできるというぐあいに逆に考える人もあるし、非常に個人差が強い以上は、その強いのを調整して御意見を言わなければならぬのでしょうから、なかなか事務総長も言いづらい点があるかもしれませんが、その辺どうなんですかね。だいぶきらいなので感情的に処理されているのじゃないかと思うようなのを聞くのですがね。どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/114
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115・岸盛一
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 個々具体的な事例については、私あまりつまびらかにしておりませんけれども、人事の配置転換の方針としては、公平ということが第一番のやはり目標であろうと思います。まわりのほかの人たちがちゃんと何年かたったらよそへ動いているのに、自分だけはがんとしていやだというふうな、いわば本人だけのことを考えているというような場合には、これはやはり……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/115
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116・亀田得治
○亀田得治君 それはそうです。そういう場合じゃなしに。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/116
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117・岸盛一
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) やはり強行しなければならぬ場合もあろうかと思いますが、それが先ほどお尋ねのような組合運動とからませて行なわれるということは、そういうことは私はないと確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/117
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118・亀田得治
○亀田得治君 これは実は弾劾裁判所あたりに出すべき案件かもしれぬですが、ちょっと問題があるんです。決して裁判の内容にわれわれ干渉しようとか、そういうことは一つも思っていないんです。ただ、いろいろ実情を聞きますと、あまりにもひどいじゃないか、じゃそういう問題があれば訴追委員会等の手続をとってそっちのほうでやるべきだろうというふうにぼくら考えておいたんだが、まあ差しつかえなければ皆さんのほうからもお答え願いたいと思うのです。
それは、更生会社になっておる東京発動機というのがありますね、御存じと思いますが。東発、東発と普通言っておる会社です。そこの破産管財人の問題なんです。藤掛という人が更生管財人をやっているわけですが、この人がだいぶん変わった人でして、組合の分裂とかそういう不当労働行為になるようなことはずいぶんおやりになっているんだが、それを許すという意味じゃありませんが、もっとひどい問題としては、暴力団を多数雇い入れて、それはもう乱暴の限りを尽くしておるわけです。あまりひどいからというので組合から陳情があって、社会党の国会議員も実情を見に行きました。その諸君に対してもやるわけですね。会社の更生ですから、その経営者なり労働者も一体になってやっていかなければなかなかそれはできないものですよね。そういう会社としてはあるまじき様相が出ているわけなんです。そこでたまりかねて、こういう管財人は困る、更生のための管財人なんで、もっと良識的な者とかえてほしい、特に能力があるとかなんとかそんな主観的なことは言わない、少なくともみんなが一致してやっていかなければならぬ職場に対して暴力団をほうり込んでくる、そういうことは困るというので、裁判官に変更を要求しておるわけですよ。ところが、それがなかなか、ああじゃこうじゃと言って、許可してもらえない。こういうことをしておったら労働者自身が困るんだということで、非常な非難があるわけです。なぜそんな事実があるのにその更迭ができないのか、こういうことが起きておるんですが、御存じないですか、そういう問題。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/118
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119・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、私のほうとして、おそらく民事局の所管かと思いますので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/119
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120・亀田得治
○亀田得治君 民事第八部ですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/120
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121・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) それで、最高裁の事務総局としては民事局の所管でございますから、民事局はあるいは知っておるかもしれませんが、私は実はいま初めてわかったような次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/121
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122・亀田得治
○亀田得治君 ぼくらがこんな問題取り上げると、何か裁判官の判断に圧力をかけるような印象を与えるので、それはもっとちゃんと訴追なら訴追、そっちのほうで扱ったらどうだ——おそらくそっちで扱うかもしれませんがね、そう言ってあるわけです、法務委員の立場としては。しかし、あんまりこれは少しひど過ぎるんですよ。どうしてそんな割り切ったことがきちんとならぬのだろうとふしぎでたまらぬ。それは、一般の労働者が会社の構内におる、それが乱暴される、妨害される。したがって、一部仮処分も出ています、そういう妨害しちゃいかぬという立場の。それでも直らない。これはおよそ会社更生という立場から見たら逆行ですわね。そんな雰囲気の中でほんとうの会社更生なんて進むものじゃない。こういうのは民事局としては、事裁判官のやっておることじゃというてタッチせぬのですか、最高裁は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/122
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123・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 私先ほど、民事局長はあるいは承知いたしておるかもしれませんと申し上げましたのは、会社更生事件につきましては報告の来る場合がございますので、そういうことで、そういう事件のあることを承知いたしておるかもしれないという趣旨で申し上げたわけでございます。実際にそういうトラブルがあるということを承知しておるかどうかは、私その点までは承知いたしておりません。それから、そういうトラブルがかりにあったという場合に、最高裁の事務総局として何らかの方法があるかという点は、これはおそらくは何もないのではないか——これも所管局長からお答えしたほうが間違いないかと思いますが、私の考えますところでは、ちょっと民事局長から裁判官に指示ということは考えられないので、方法がないのではないかと思いますが、その点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/123
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124・亀田得治
○亀田得治君 これは、裁判所の機構、裁判官のたてまえというものが、外部からこう干渉されぬようにできておりますわな。それは私もよく承知しておる。ところが、刑事局長にしても、民事局長にしても、こんな非常識なことがあっても、これは何にも言えぬものなのかどうか、その辺のいままでの習慣というか、しきたり。ただ統計を集めたり、費用を配分したり、そういう事務的なものなのかどうか、そうじゃなしに、やはり一定のワクを越えたような問題がある場合には、これは何らかの検討ができるようにでもなっておるのか。いやそんなことは全然だめだ、ひどいのがあったら裁判所で被害者がやったらいいのだ——それは正道かもしれませんが、待てませんわね、あまりひどい場合は。そういうような点はどうなんですか、全然ノータッチですか、刑事局長なり民事局長というのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/124
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125・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、亀田委員は常にむしろ裁判所の独立ということをお話しになっており、事務総局がいろいろ裁判所に対して干渉することはむしろいけないというお立場であると拝承しておるわけであります。私は常にそういう心がまえで、いやしくも裁判の内容に関して事務総局が干渉を与えるような、誤解を与えるようなこともしてはいけないということで、極度に慎んでおるわけであります。ただし、全然外形的なこと、つまり裁判の内容に触れませんようなこと——その一例をとりますれば、たとえば、午前中にもちょっと問題になりました、結審してから判決まで非常に長い間かかっておる、そういう場合には、早くやれとは言わないまでも、どういう事情でそう長くかかっておるのかということをお尋ねする、それによって間接には促進の効果がある、こういうようなことはやるわけでございます。そういう意味で、およそ裁判事件に関しては一切ノータッチというわけではございませんけれども、これはあくまで、そういう外形にあらわれましたような、たとえばいまのような判決の遅延というようなときに、しかもそのときも、早くしろと言うよりは、むしろどういう事情かということを伺うことにより間接にそれを促進する、こういうようないろいろ慎重な配慮をして、いやしくも外部から、特に弁護士会等から事務総局が下級裁判所に干渉を与えたというようなことの疑いを受けないように慎重な配慮をしてやっておるわけでありますから、おそらく民事局長としては、いまお話しになりますことを知りましても、ちょっと手の打ちようがないのではないかと、かように考えるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/125
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126・亀田得治
○亀田得治君 だけれども、そんな暴力団を使うような管財人は困るからかえてくれ、こう言うておるわけですがね。それがほったらかしになっておるわけですな。だから、そういう場合に、なぜそれがきまらぬのかというふうなことは最高裁としては聞けぬのですか、闘いちゃまた悪いのかね。どっちにせいということは、それは裁判官の自由ですよ。だけれども、現にそんな状態になって関係者が困っておるのに、ほったらかしておくというのは、私はいかぬと思う。それは、介入せぬならせぬ、これこれの理由だ、これも一つの見識かもしれぬ。そういう意味ででも、事情聴取というふうなことは最高裁というものはせぬのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/126
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127・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) お話の点は、私事実関係を存ぜずに申し上げているわけでございますので、自然にその話が迂遠になるわけでございます。そうかと申しまして、知りませんことを仮定的な前提でお答えしましたのでは、かえってあとでまた問題を起こしてもと思いますので、そういういろいろの点から申しまして、いまお話しの御趣旨も非常によくわかる点もあるわけでございます。しかし、そうかといって、それでまた逆に今度はそれをやったら、また反対からいろいろ言われることになると、全く事件の渦中に事務総局が巻き込まれることになると思います。したがって、私かつて民事局に勤務いたしておりました経験で申し上げるわけでございますけれども、何かそういうふうな陳情なり投書がありましたような場合に、そういうものがあったという事実を裁判所にお知らせしたことはあったように記憶をいたします。現在どういたしているか知りませんが、たとえば事務総局にそういう上申書等が来た場合に、そういうものが来たという事実を当該裁判所、それも裁判官ではございません、当該地方裁判所に御連絡をして、こういうものが来ておるという事実だけを御連絡をしたことはかってはあったように思います。現在の処理の方法は存じませんけれども、ともかくそういうような配慮をしながら、しかしまあやっておるわけでございますが、それ以上に出ますと、やはり何らかの形で事務総局の裁判干渉ということになるおそれがあるのではないか、かように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/127
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128・亀田得治
○亀田得治君 この程度にしておきましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/128
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129・秋山長造
○秋山長造君 けさお尋ねしたところでちょっと漏らしておったことで、重要なことですから、最後に一、二点をお伺いしておきたいのですが、このいただいた資料の三ページに裁判官の定員、それから五ページに裁判官以外の職員の定員一覧表がありますね。この欠員のところが非常に多いですね。これは多少季節的な要因というものもあるかもしれぬですけれども、これは大体いつもこういうことですか。この資料は十二月一日現在でつくられているけれども、十二月一日現在くらいで、その時点でつくられる資料というものは、こういうような欠員が出てくるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/129
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130・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) まことにごもっともなお尋ねでございますが、裁判官の場合とその他の職員の場合とで、共通の問題もございますし、やや違う問題もございます。まず共通の問題として、特に裁判官を中心に申し上げますと、裁判官の欠員は要するに現在あたりが一番多いわけでございます。つまり、三月の末というときに、一年間の退職者のしわ寄せが全部そこに欠員になって出てまいります。きょうたまたま人事局長が修習生から判事補になる採用の面接をいたしております。幸いにして本年は九十名近い志願者があるようでございますので、判事補の欠員が全部それで埋まるわけでございます。四月の初めに埋まるわけでございます。現在その欠員判事補はたった十四になっておりますが、これはこの中から判事に上がりますために、その欠員が非常にふえるわけでございます。そうして、そのあとで九十人ほどの判事補を埋めるわけでございます。判事のほうは、そういうふうにして判事補になりました者が十年たちますと、これまた四月の初めに十年の資格で判事の任命資格を得るわけでございます。それが、いまここでは欠員は判事三十一になっておりますが、現在の時点ではもう少しふえております。六十人くらいになっておりまして、そうしてさらにそこで十二名増員していただくわけでございますから、七十人近いものが必要にといいますか、埋められるわけでございます。ちょうど判事補から七十人近いものがなりますので、それでこの法案もお願いしている。こういうような関係でちょうど欠員とそれから増員分が埋まる、それが大体四月の初めである、こういうことになるわけでございます。定年にいたしましても、誕生日ごとにまいりますから、まとめて一気にこないわけでございます。逐次にくるのが、三月の末でずっと欠員としてふえていくわけでございます。それから途中退職して弁護士になられる方も、逐次おやめになりますので、これも一年分たまっていくわけでございます。その欠員ができましたつど補充すればいいようなものですが、これは修習生から判事補になり、判事補が十年たって判事になる時期が四月の初めというふうにきまっておりますから、それ以外の時期には給源がないわけでございます。たまたま弁護士や検事からおかわりになる数名の方々は途中で補充いたしますが、そういう関係で、三月の末は非常に欠員の多い時期になり、そして四月に全部埋まりますが、それがまた一年間で減っていくということでございます。
それからその他の職員の関係は、これはまず書記官についてはやはり同様でございます。つまり、書記官研修所で一年ないし二年の研修を終えまして、そうしてその者から充足するわけでございます。家裁調査官も、調査官研修所を卒業するのが三月でございます。これはだいぶ埋まっておると思います。四月一日より早い時期に卒業するのが例でございますから、埋まったものもかなりあると思いますが、要するにこの三月ごろの時点で書記官や調査官が埋まるわけでございます。そうしますと、書記官研修所在職中は事務官として身分を持っておりますから、そこを卒業しますと事務官の欠員ができるわけでございます。それをたとえば大学卒業者から新規に採用しても事務官の欠員を埋められる、こういうことでございます。ただしかしながら、それは裁判官、書記官と共通の面でございますが、一般の職員はそうかといってそれじゃ四月の初めに全部埋まってしまうかというと、これは必ずしもそうはいきません。十幾つの職種の裁判所職員がおりますし、全国に千幾つの組織がございますので、片方で退職して片方で埋まっていくというような状態がしょっちゅう繰り返されておる。その総合的な関係で、常に一%前後——一%から二%、二万人でございますから、一%とすると二百人でございますが、一%前後のものはどこかの場所で欠員がかなりあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/130
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131・秋山長造
○秋山長造君 裁判官のほうはわかりましたけれども、裁判官以外のものはどうです。裁判官のほうはこの四月に十二名の増員分が加わって一応全部埋まる、四月という時点だけとれば。ところが、裁判官以外は、なかなかどの時点をとっても、これが埋まってしまうという時期はないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/131
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132・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 一人の欠員もなく埋まるという時期はおそらくなかろうと思います。きわめて少数の欠員があるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/132
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133・秋山長造
○秋山長造君 きわめて少数というのは、どの程度ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/133
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134・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは一がいに申し上げられませんが、やはり百人前後はどんな少ない場合にも残るのではないかと思いますが、時々刻々それが変わると思うのでございます。つまり、書記官等はほとんど埋まるわけでございます。事務官も大体埋まるわけでございます。ところが、タイピストが退職した、その翌日補充できない、そこに一カ月のギャップがある。そういうのが、全国に千幾つの組織があって積み重なって百くらいのものは大体残っている場合が多いんじゃないかというふうに考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/134
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135・秋山長造
○秋山長造君 そうすると、これは不可抗力というものですか、その百名程度というものは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/135
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136・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 不可抗力とは考えておりません。できる限りそれを少なくするように努力すべきであるし、努力しなければならないと思っております。実はこの欠員数十二月一日現在でつくっておりますが、たとえば一例を申し上げますと、三十八年の十二月一日、これは三十八年の暮れの国会、つまり三十九年の初めの国会に提出したものであると思いますが、そのときには欠員が四百幾ら、それから昭和三十九年三百四十幾ら、それから四十二年のときには三百三十幾ら、そういうようなことで、だんだん減らす努力はしておるわけでございます。つまり、同じこの十二月の時点でとりましても、そういうふうに減らしておりますことは、ひいてつまり一番埋まります時期の欠員数というものは減ってきておるであろう、なるべくゼロを目標にして操作いたしたいと一ただこれはよほどの操作をいたしませんと非常にむずかしいことではございますが、その方向で努力してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/136
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137・秋山長造
○秋山長造君 それからね、やはり六ページの表のまん中の一番下のほうに、家庭裁判所のずっと下に、欠員の十五というのがありますね。これ医療職ですから、お医者さんか看護婦さんかの欠員ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/137
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138・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは医者と看護婦であることは、御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/138
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139・秋山長造
○秋山長造君 けさほども私お尋ねしたのですがね、この裁判所の状態なり、また勤務時間、仕事の内容等、いろいろな面から慢性的過重労働になっているんじゃないか。したがって、いろいろな調査資料なんか見ましても、裁判所職員——これは判事だけでなしに、判事以外の、裁判官以外の職員、タイピストその他に至るまで、非常にからだぐあいの不調を訴えている人が多いようですね。だから、いずれにしても、はっきり病人とは言えぬまでも、とにかくからだぐあいが悪い、ぐったりした状態で勤務しているというのが非常に多いように思う。ところが、局長は、何かもうそういう健康管理なんか完ぺきだというような自信満々な御答弁がけさほどあって、私はそうあってほしいと思いながら、どうもちょっとふに落ちぬような感じもした。十五人も家庭裁判所に限ってお医者さんの欠員があるというのは、これはどういう事情ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/139
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140・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これはどういう事情か、たまたまこの時点に生じたものではないかと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/140
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141・秋山長造
○秋山長造君 いま埋まっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/141
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142・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 正確なことは、資料をここに手持ちいたしておりませんので申し上げかねますが、ただ職員以外の形で医者の応援を求めるような方法をとっておるところもございますので、そういうような方法の影響が出ておる面もあるかと思います。ただしかしながら、その健康管理の問題、先ほど午前に申し上げましたのは、私完ぺきであるという気持ちで申し上げたわけではございません。その方向に向かって今後とも努力したいと考えておるわけでございます。現在でも、定期検診二回と、一定の人には特別定期検診を二回ということで、ほかの省庁と比べて決してなおざりになっておるとは考えておらないわけでございますけれども、しかしながら、まだまだ十分であるとは考えておりませんし、さらに進んで職場環境というものを改善するということが最も進んだ健康管理の方法であろうと思いますので、その点につきましては、いつも法務委員会その他の御後援によりまして環境整備費を計上していただいて、施設その他の充実をはかっておりますので、そういう方向で今後とも努力したい、こういう気持ちでございます。
それからまた、ちょっとつけ加えますと、医者の点は、常勤の裁判所の職員となる形の医師というものを獲得することが困難な土地もかなりあるわけでございまして、そういう土地につきましては、非常勤の職員というような形で応援を求める、ちょっと先ほど申しましたそういうような方法もとっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/142
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143・秋山長造
○秋山長造君 健康管理が完ぺきだとおっしゃったのじゃなしに、完ぺきになるように努力すると、こういうことなら、それで了承いたします。
それともう一点お尋ねいたしますが、代表的な例ですが、東京地裁で二千人以上の職員がおられるわけですね。その地裁の医務室はどの程度なんですかね、看護婦さんが二人程度しかいないという話を聞くのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/143
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144・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) その点、ちょっと資料を持ってまいっておりませんので、人事局のほうに確かめまして、後刻でも資料として提出させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/144
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145・秋山長造
○秋山長造君 その具体的な点は、また別な機会にもう少しお尋ねしますが、私の聞いたところでは、二千人の職員に対して二人程度の看護婦さんで、御承知のような職場環境の中で、そして仕事の中で、職員も二千人、二千人の人が全部が全部医務室に行って裁判所の看護婦さんのやっかいになるとは限らぬ、いろいろ家庭でかかりつけの医者もあるだろうけれども、それにしても二人の看護婦さんで、なかなかいまおっしゃるような完ぺきな状態に持っていくと言うたところで、これはなかなか前途ほど遠い話じゃないかと思う。まああまりこまかいことは御存じないようですけれども、そういう面に至るまでの行き届いた御配慮を一そうやっていただくことがやはり裁判というものの機能を高めていく大きな要素になるというように考えるので、その点はひとつ今後できるだけの努力をお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/145
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146・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) たいへん御親切な御忠告をいただきまして、その方向で努力いたしたいと思います。東京の場合には、地裁ばかりではなしに、たとえば最高裁にもございまして、地裁の職員もそちらに参っておりますし、今朝来問題になりました法曹会館というところでも相当な診療をやっておりますので、そういうものを利用しておるというような関係もあって、ある程度お話のような面も出ておるかもしれないと思いますが、その辺のところは総合的に十分御趣旨を尊重して施策してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/146
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147・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 他に御発言がなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/147
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148・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います、別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/148
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149・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 御異議はないものと認めます。
それでは、これより採決に入ります。
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/149
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150・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X00719680328/150
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151・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時五十九分散会
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