1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年四月十六日(火曜日)
午前十一時三分開会
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委員の異動
四月十日
辞任 補欠選任
大谷 贇雄君 鈴木 万平君
小山邦太郎君 中山 福藏君
出席者は左のとおり。
委員長 北條 雋八君
理 事
青田源太郎君
梶原 茂嘉君
秋山 長造君
委 員
斎藤 昇君
中山 福藏君
大森 創造君
亀田 得治君
西村 関一君
野坂 参三君
山高しげり君
国務大臣
法 務 大 臣 赤間 文三君
政府委員
法務大臣官房司
法法制調査部長 川島 一郎君
法務省刑事局長 川井 英良君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総局民事局長 菅野 啓藏君
最高裁判所事務
総局刑事局長 佐藤 千速君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
説明員
法務省刑事局刑
事課長 石原 一彦君
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本日の会議に付した案件
○刑法の一部を改正する法律案(第五十五回国会
内閣提出、第五十八回国会衆議院送付)
○訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/0
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001・北條雋八
○委員長(北條雋八君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
刑法の一部を改正する法律案を議題とし、政府から逐条説明及び資料の説明を順次聴取したいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/1
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002・川井英良
○政府委員(川井英良君) 本法案につきまして、逐条説明を申し上げます。
まず第一項は、第四十五条後段中「確定裁判」を「禁錮以上ノ刑ニ処スル確定裁判」に改めるというものであります。
この改正は、刑法第四十五条後段の併合罪となる罪の範囲を、禁錮以上の刑に処する確定裁判があった罪と、その裁判確定前に犯された罪とに限るものとしようとするものであります。
元来、数個の罪について訴追された被告人に対して有罪の裁判をする場合に、一罪につき一刑を科する原則をとるならば、犯罪の数だけの有期自由刑を併科することとなって、犯人に過酷な結果を来たし、また、死刑と死刑、無期刑と無期刑を併科することとなって、刑の執行を不能ならしめる等不当な結果を生ずることとなるので、諸国の立法例においては、このような場合には、併科主義を緩和して後述のいわゆる吸収または制限のある加重主義を適用し、数個の罪の全体を評価して一刑を科することとしているのであります。
わが刑法においては、確定裁判を経ない数個の罪を同時に審判して有罪の告知をする場合は、これを第四十五条前段の併合罪として、これに科すべき主刑につき次のような原則によっているのであります。
その第一は、いわゆる吸収主義に関し、一罪について死刑に処すべきときは、他の刑を科さない。また、一罪について無期の懲役または禁錮に処すべきときは、罰金及び科料以外の他の刑を科さない。
その第二は、いわゆる制限のある加重主義に関し、有期の懲役または禁錮に処すべき罪が二個以上あるときは、その最も重い罪の法定刑を一定限度で加重した刑期範囲内で一個の懲役または禁錮の刑を科する。
その第三は、いわゆる併合主義に関し、罰金については、死刑以外の他の刑とはこれを併科し、罰金に処すべき罪が二個以上あるときは、その合算額の範囲内で一個の罰金刑を科する。拘留は、死刑及び無期の懲役または禁錮以外の他の刑と、また科料は、死刑以外の他の刑と、いずれも併科し、拘留または科料に処すべき罪が二個以上あるときも二個以上の拘留または科料をいずれも併科するということになっております。
すなわち、わが刑法は、原則として、禁錮以上の重い刑に処すべき罪が二個以上ある場合には、併科主義を緩和する吸収または制限のある加重主義をとっており、数個の罪のうちに罰金以下の刑に処すべき罪がある場合は、原則として、併科主義によることとしております。例外となる場合は、数個の罪のうち、一罪について処すべき刑が罰金以下であって、他に死刑に処すべき罪が競合しているとき及び一罪について処すべき刑が拘留であって、他に死刑または無期の懲役もしくは禁錮に処すべき罪が競合しているときであって、この場合には、吸収主義をとっているのであります。
ところで、審判の対象となっている数罪の間にすでに確定裁判が存在する場合は、その確定裁判があるにもかかわらず、さらに犯した罪とその裁判確定前に犯した罪とを併合して全体として評価し、いわゆる吸収または制限のある加重主義のもとに一個の刑を科するものとするときは、不当に犯人に利益となることがあるので、わが刑法は、第四十五条後段において、右の併合罪の範囲を制限し、確定裁判にかかる罪と、その裁判確定前に犯した罪とを併合罪とするものとし、右の確定裁判後に犯した罪については、これを別個に評価して別に刑を科することとしているのであります。
したがって、ある罪について確定裁判があった場合、その前後に犯された二個以上の罪が右の確定裁判のあった後に審判されるときは、これら二個以上の罪の併合罪関係は右の確定裁判によって遮断され、その犯人は常に二個以上の刑に処せられることとなるわけであります。
しかしながら、この場合、右の確定裁判の前後に犯された罪がいずれも禁錮以上の刑に処すべき罪であるときは、確定裁判後に犯された罪を別個に評価し、確定裁判前に犯された罪との間に吸収または制限のある加重主義を認めない点において、併合罪関係を遮断するかどうかに最も実質的な差異が生ずるわけでありますが、確定裁判の前後に犯された罪がいずれも罰金以下の刑に処すべき罪またはそのいずれかが罰金以下の刑に処すべき罪であるときは、その罪の処断が原則として併科主義による以上、別個に評価するかどうかに実質的な差異はほとんどないわけであります。
したがって、かように数個の罪の併合罪関係をその間に確定裁判が存在することによって遮断することは、前後の罪がいずれも禁錮以上の刑に処すべきものであるときに最も実質的意義があるとすれば、このような併合罪関係を禁錮以上の刑に処する確定裁判によって遮断することは別として、必ずしも罰金以下の刑に処する確定裁判によってまで遮断しなければならないというものではなく、かえって、罰金以下の刑に処する確定裁判によっても併合罪関係を遮断することとすることは、刑事審判の手続及び刑の執行の手続に複雑さを加えるものであり、また犯人に不利益を生ずる場合もあるので、この際、刑法第四十五条を改正して、併合の関係を遮断する確定裁判を、禁錮以上の刑に処するものに限ろうとするものであります。
近時、道路交通法違反の罪等によって罰金以下の刑に処せられる者がきわめて多数に及んでいるのでありますが、このような裁判も、それが確定すれば刑法第四十五条後段の確定裁判に含まれるので、数個の罪で訴追されたすべての事件の裁判においてその調査を必要とするのであります。そのため、検察庁における捜査の段階においても、裁判所における審理の際にも、右のような確定裁判の存否について明確を期するため、その調査を行なっているのでありますが、元来この調査には相当の時間と手数を必要とし、その事務量は少なからぬ実情にあるのであります。そこで、右のような現状にかんがみ、刑法第四十五条後段につき、早急に今回のような改正を加えることは、現下における刑事裁判手続の迅速円滑な運用をはかる上においてもきわめて有意義であると考えるのであります。
なお、すでに公表されている改正刑法準備草案は、その第六十三条において、今回の改正法律案と同趣旨の規定を設けていることを付言いたします。
次に、本法案の第二項は、第二百十一条中「三年以下ノ禁錮」とあるのを「五年以下ノ懲役若クハ禁錮」に改めるというものであります。
この改正は、最近の自動車運転に基因する業務上過失致死傷事件及び重過失致死傷事件等の実情にかんがみ、その法定刑に新たに五年以下の懲役を加えるとともに、法定刑の禁錮の長期を五年に引き上げようとするものであります。
まず、法定刑に新たに懲役刑を選択刑として加える点でありますが、近時における自動車運転に伴う業務上過失致死傷及び重過失致死傷事犯等の中には、傷害、傷害致死等のいわゆる故意犯とほとんど同程度の社会的非難に値するものが相当数見受けられるに至っているのであります。たとえば、相当量の飲酒をした上での酒酔い運転、運転技量の未熟な者の無免許運転、はなはだしい高速度運転等のいわゆる無謀な運転に基因する事犯中には、きわめて軽度の注意を払えば人の死傷等の結果を容易に予見し、その発生を防止することができたのにかかわらず、これをさえ怠ったため、重大な結果を発生せしめたような事案が見受けられるのであります。これらの事案は、故意犯に属するいわゆる未必の故意の事案と紙一重の事案であり、このように人命を無視するような態度で自動車を運転した結果、人を死傷にいたした場合も、単に故意犯でないとの理由で、禁錮刑ないし罰金刑によって処罰せざるを得ないことは、国民の道義的感覚からいってむしろ不自然に感ぜざるを得ないというべきであり、この種事犯中きわめて悪質重大なものに対しては、懲役刑を科し得るものとすることが相当であると考えられるのであります。
次に、法定刑のうち禁錮刑と新たに加えるべき懲役刑の長期をそれぞれ五年とする点でありますが、近時における自動車交通の発達に伴い、主として自動車運転に基因する業務上過失致死傷及び重過失致死傷の事案は、一般的にその過失の態様、程度のみならず、その行為の結果において重大なものが増加しつつあることにかんがみるとき、犯情の最も重大なものに対しても現行の禁錮刑について定められた三年をもって責任を評価することは、いささか軽きに失すると考えられるのでありまして、諸外国のこの種の事犯に関する立法例等をも参酌すれば、法定刑の上限をこの程度に引き上げることが望ましいと考えられ、これによって過失の態様、程度及び行為の結果に応じ、具体的事案に即したより適切妥当な刑の量定をなし得ることとなるのであります。
なお、すでに公表されている改正刑法準備草案は、第二百八十四条において、業務上過失致死傷及び重過失致死傷の罪に対する自由刑として、今回の改正法律案と同様「五年以下の懲役もしくは禁錮」を規定していることを付言いたします。
最後に附則でありますが、附則の第一項は、「この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。」というものであります。
これは、改正法の施行期日を定める規定であります。
その第二項は、「この法律による改正後の刑法第四十五条の規定は、数罪中のある罪につき罰金以下の刑に処し、又は刑を免除する裁判がこの法律の施行前に確定した場合における当該数罪についても、適用する。ただし、当該数罪のすべてがこの法律の施行前に犯されたものであり、かつ、改正後の同条の規定を適用することが改正前の同条の規定を適用するよりも犯人に不利益となるときは、当該数罪については、改正前の同条の規定を適用する。」というものであります。
前項によれば、改正法の施行後に罰金以下の刑に処し、または刑を免除する確定裁判があった場合におけるその罪とその確定裁判の前及び後に犯された罪について、改正法による改正後の刑法第四十五条の規定の適用があることは明らかであります。しかしながら、改正法の施行前に確定裁判があった場合におけるその罪とその確定裁判の前及び後に犯された罪について、新法の適用があるかどうかは必ずしも明らかではないので、この項は、本文において、これらの罪についても新法を適用することを明らかにしたものであります。したがって、改正法施行前に確定裁判があれば、上記の罪のうち、確定裁判の後に犯した罪が、改正法の施行前にあろうと施行後にあろうと、すべて新法が適用されることとなるのであります。これは、確定裁判の前と後に犯された数罪を併合罪としない現行法に比し、新法は併合罪とすることによって一般的に犯人に有利な取り扱いとなり、また、新法の取り扱いによれば、刑事裁判の迅速円滑な運用をはかり得ることとなるので、このような取り扱いを認めることとしたものであります。ただ、特定の場合には、新法を適用することが、改正法による改正前の刑法第四十五条の規定を適用するよりも、犯人にとって不利益となることがあるので、刑法第六条の趣旨をくみ、この項ただし書きで、対象となっている数罪がすべて改正法の施行前に犯されたものである場合において、犯人に右のような不利益が生ずるときは、例外的に旧法によることとしたのであります。
その第三項は、「前項の規定は、この法律の施行前に確定した裁判の執行につき従前の例によることを妨げるものではない。」というものであります。
この項は、前項の規定が、数罪中のある罪につき罰金以下の刑に処し、または刑を免除する裁判が改正法の施行前に確定し、その他の罪の全部または一部につき改正法施行のときまでにまだ確定裁判がない場合に関する規定でありますので、その他の罪の全部または一部につき改正法施行前に禁錮以上の刑に処する確定裁判があった場合におけるその刑の執行については、すべて従前の例によるべきものであることを念のために明らかにしたものであります。
以上がこの法律案の逐条説明であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/2
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003・石原一彦
○説明員(石原一彦君) それでは次に、お配付申し上げました刑法の一部を改正する法律案についての資料につきまして御説明申し上げます。
ページを追いまして御説明申し上げることといたしたいと思います。
第三ページは、刑法の一部を改正する法律案の要綱でございます。
第七ページは、この刑法の一部を改正する法律案そのものを登載したものでございます。
次に、第十一ページの新旧対照条文及び参照条文は、改正法案が成立した場合に現行法の規定がどういうふうに変わるかということを響いたものでございます。そのうち中心になります四十五条と二百十一条につきまして読み上げさしていただきます。四十五条につきまして、現行法では「確定裁判ヲ経サル数罪ヲ併合罪トス若し或罪ニ付キ確定裁判アリタルトキハ止タ其罪ト其裁判確定前に犯シタル罪トヲ併合罪トス」とこうございますが、改正法におきましては「確定裁判」といいますのを「禁錮以上ノ刑ニ処スル確定裁判」と改めるものでございます。それから第二百十一条は、現行法が「業務上必要ナル注意ヲ怠り因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ三年以下ノ禁錮又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス重大ナル過失ニ因リ人ヲ死傷二致シタル者亦同シ」というところの「三年以下ノ禁錮」という個所を「五年以下ノ懲役若クハ禁錮」に改めるものでございます。
次に、一二ページから一三ページにかけまして参照条文がございますが、ただいま読み上げました第二百十一条の罰金千円と申しますのは、罰金等臨時措置法によりましてこの場合には五万円になるということを明らかにした法律を掲げたものでございます。
第一九ページ以下は、四十五条関係の資料でございます。第一九ページは、いわゆる競合犯というものの立法の沿革を記載いたしました。
一九ページの一番最後の昭和三十六年改正刑法準備草案(競合犯)の項がございますが、ただいまの逐上説明中、この準備草案においても同様な規定ができているというふうに申し上げました点は、この点に関するものでございます。
それから二一ページは、刑法四十五条後段が適用される場合を例示、図解いたしたものでございます。すなわち、一人の者がA、B、C、D、Eという犯罪を犯した場合に、Cという罪につきさきに確定裁判があったという場合には、A、Bは刑法第四十五条後段の併合罪に相なるわけでございます。その確定裁判を経たあとのD、Eという犯罪につきましては、刑法第四十五条前段の併合罪になるということでございます。
なお、これに関しまする判例を二一ページより二三ページまで掲げた次第でございます。
次に、二五ページ以下は、刑法第四十五条の後段が適用されて判決の主文が二つに分かれた事例を調べました。
二五ページの四十年について申し上げますと、第一審で有罪になりました被告人の数は四百六十一万九千三百四十五人でございますが、そのうち地方裁判所では五万七千百十六人、それから簡易裁判所では四百五十六万二千二百二十九人に相なるわけでございます。この数字をもとといたしまして四十五条後段の適用の実態がどうなっているかということを示しましたのが、二六ページ以下の表でございます。
二六ページの表は非常に複雑でございますが、二六ページの一番最後にございます平均について簡単に申し上げますと、刑法第四十五条後段が適用された結果主刑が二つ以上に分かれた場合の被告人の数は千三百四十五人でございます。そのうち中間確定裁判というものが禁錮以上の刑になっている者がどれだけあるかと申しますと三百九十四人でございまして、千三百四十五人に対する率をとりますと二九・九%に相なります。したがいまして、残りの九百五十一人、このパーセントは七〇・一%でございますが、これが罰金以下の刑に相なるわけでございます。その九百五十一人のさらに内訳を見まして、二つに分かれた場合の刑が両方とも懲役であるか、あるいは懲役と罰金であるか、あるいは罰金以下であるかというふうに、三段階に区分いたしましたのがその表でございまして、懲役刑のみのものが八百二人、懲役刑と罰金以下のものは百二十三人、罰金以下のものが二十六人、こうなるわけでございます。
なお、カッコ書きにいたしましたのは、その事件のうち道路交通法違反事件にかかるものでございまして、ただいま申し上げました数字の内数に相なるわけでございます。
次に、二七ページの表は、高等裁判所におきまして刑法四十五条後段を適用しなかったということによって破棄されたという事件数を掲げました。合計で申し上げますと、昭和三十七年から四十二年の十月まで百七十件あるわけでございますが、このうちの百四十五人、率にいたしまして八五・三%が、中間確定裁判が罰金以下であるものを看過したがために高等裁判所で破棄されたものでございます。したがいまして、改正法が成立いたしますと、この分につきましては調査の労が非常に省けるということに相なるわけでございます。
その次に、二八ページにある表は、ただいま申し上げましたように、高等裁判所で一審が中間確定裁判を看過したというので破棄されたものにつきまして、刑が変わっているであろうか、いないであろうかということを調べた表でございます。これにつきましては、二八ページの表の左のほうの計について申し上げますと、合計が百七十人でございますが、そのうち一審と同じものが百十三人に相なるわけでございます。この率は六六・五%になります。したがいまして、実質上刑が分かれましても、刑の総量におきましては一審の計と同じということに相なっているわけでございます。
次に、二九ページ以下五七ページまでは、ただいま申し上げました四十五条後段を適用して原則判決を破棄いたしました控訴審の判決結果につきまして事例をもって御説明するという趣旨で全事件を登載したものでございます。
しばらく飛びまして、五九ページ、犯罪の競合に関する外国の立法例でございますが、今回行なおうとする改正におきましては、ほかの外国の立法例もあるということをあらわしたものでございまして、六〇ページに1、2、3と一応三つの範疇に分けて説明を加えてございますが、日本の場合にはむしろ3の類型に属するものでございます。その刑法典の名前を六〇ページで書きました、その内容を六一ページから六三ページまで記載したものでございます。
次に、六七ページ以下は、刑法二百十一条関係の資料でございます。
六九ページの統計は、交通事故による死傷者の累年比較をいたしました。なお、四十二年度におきましては、本資料作成の段階におきましては六月までの統計がわかっていたにすぎないのでございますが、その後判明いたしました分につきましては、補正表をもちまして後に御配付申し上げておりますが、近年の数字だけ申しますと、昭和四十一年度における死者数は一万三千九百四人でございます。分に直しますと、三十八分に一名が死亡しているという結果に相なります。なお、同じ四十一年度の負傷者数は五十一万七千七百七十五人でございます。これは五十秒に一名が負傷している結果と相なるわけでございます。なお、四十二年度の死者数は一万三千六百十八人でございまして、三十八分六秒の間に一人の方がなくなられているという数字になります。なお、負傷者は六十五万五千三百七十七人でございまして、四十八秒に一人の方がけがされているという数字になるわけでございます。
次に、七〇ページ、七一ページの数字について御説明申し上げます。これは業務上過失致死傷事件等の通常受理人員の推移を見たものでございまして、七一ページの左の欄、左から二欄目に刑法犯の通常受理人員がございますが、これは刑法に該当するものといたしまして検察庁で受理した数字でございます。昭和四十一年度は八十二万五千三百二十一人検察庁で受理いたしたのでございますが、そのうちの四二・四%、すなわち三十四万九千九百五十二人になるものが業務上過失致死傷事件と相なるわけでございます。なお、四十二年度の刑法犯通常受理人員は八十七万二千五百十二人でございまして、それに対する業務上過失致死傷事件の受理人員は四十四万一千百六十八人、指数にいたしまして五四〇七となります。この四十四万一千百六十八を刑法犯の率で見ますと、五〇・六%に相なるわけでございます。実に刑法犯受理人員中の半数以上が業務上過失致死傷事件であるということに相なるわけでございます。
なお、ここには書きませんでしたが、従前は窃盗が刑法犯中代表的なものであるということでございまして、刑法犯のうちで最も多いのは窃盗でございましたが、昭和三十九年以降は業務上過失致死傷事件が窃盗犯を上回る結果と相なっております。
次に、七二ページ、七三ページでございますが、これは起訴の人員を比較いたしました表でございます。起訴率と、それを内容的に分けまして、公判請求と略式命令に分けた表でございます。
次に、七四ページ、七五ページは、以下七九ページまであります表の総括でございます。すなわち、業務上過失致死傷事件と重過失致死傷事件の双方につきまして、受理とそれに対する処理状況、すなわち起訴と不起訴を分けた表でございます。
そこで、その内訳表のほうの説明は省略させていただきまして、八〇ページ、八一ページについて御説明申し上げたいと思います。
これから九三ページまでの表は、業務上過失致死傷罪と重過失致死傷罪の科刑状況についての統計表でございます。このうち御留意をわずらわしたい点は、八一ページの左から五欄、六欄でございまして、禁錮刑に処せられた者の三年以上の欄と二年以上の欄についてでございます。三年以上の欄につきましては、昭和三十年、三十五年以下三十九年まで累年増加の一途をたどっておりましたが、昭和四十年には六人と事件数では減っております。しかしながら、二年以上の刑を見ますと、昭和三十六年以降累増の一途をたどっておりまして、いわば法定刑三年のうち、悪質と見られる、おそらく結果も重大であったろうと思われる二年以上の刑について足してみますと、昭和三十年は六人、昭和三十五年は十八人、昭和三十六年は二十三人、昭和三十七年は四十五人、昭和三十八年は四十九人、昭和三十九年は五十五人、昭和四十年は七十一人と、毎年累増の結果と相なっているわけでございます。
以下は、業務上過失致死傷、業務上過失傷害、業務上過失致死、重過失致死傷、重過失傷害、重過失致死等に関する内訳表でございますので、説明を省略させていただきます。
次に、九四ページ、九五ページの統計表でございますが、これは業務上過失致死傷罪及び重過失致死傷罪の科刑状況の比率をとったものでございます。注目すべき点は、禁錮の実刑率でありまして、一番最下欄にございますが、最近におきましては二九%、二七%、二九%という傾向でございまして、実刑そのものは横ばいになっていると思われるのでございます。
次に、九六ページ、九七ページは、業務上過失致死傷罪及び重過失致死傷罪の略式事件についての科刑状況を示したものでございます。
次に、九八ページ、九九ページまでは、道路交通法、違反事件の受理人員の推移を表にいたしました。
次の一〇〇ページ、一〇一ページの第九表におきましては、道路交通法違反事件の処理人員を比較したものでございます。
一〇二ページ、一〇三ページは、道路交通法違反事件の科刑状況を統計で示したものでございます。この点も、三年以上あるいは二年以上という懲役になりましたところが問題になるところでございますが、二年以上を足しますと、昭和三十五年におきましては一人、昭和三十六年は二名、昭和三十七年は六人、昭和三十八年は七名、昭和三十九年は六人、四十年は二十人、これまた累増の結果を示しているものでございます。
一〇四ページ、一〇五ページの第十一表は、道交法違反事件の略式と即決事件の科刑状況を示したものでございます。
次に、一〇六ページ、一〇七ページは、東京都におきまする人口と車両の数字を示しました。人口につきましても増加しているのでありますが、ただいま問題になっております自動車につきまして、一〇六ページ、一〇七ページの左から三欄について申し上げますと、明治四十年、すなわち刑法が制定された年におきましては十六台でございましたが、昭和四十一年におきましては百三十万台をこえるという結果に相なっているという表でございます。
次に、一〇九ページでございますが、これは刑法二百十一条がいかなる立法の経過をたどったかという表でございまして、明治四十年に制定されました当時におきましては業務上過失致死傷罪だけでございましたが、昭和二十二年の法律改正によりましていわゆる重過失致死傷罪が加わったということでございます。
なお、一一〇ページの数字の4と書いてあります改正刑法準備草案は、先までの逐条説明にもございましたように、刑の体系に関する限りは本改正案と同じであるという準備草案を示したものでございます。
一一一ページの表は、自動車運転と刑法二百十一条との関係を図解いたしたものでございまして、まん中に昭和三十三年の判例がございますが、これは業務に関する最高裁の指導的な判例という意味でこれを掲げました。
なお、自動車につきましては、バス、タクシー、トラックの運転手、いわばそれを営利として運転している運転手、あるいは会社、官庁、商店等の雇われている運転手、あるいはオーナードライバーである医師、商人、サラリーマン、さらに免許を持たない者でございましても、反復しておれば業務上過失致死傷罪のいわゆる「業務」というものになるということを明らかにしたものでございます。
次に、二四ページから一四五ページまでは、昭和三十七年の年頭より昭和四十二年十月末までに、三年以上の実刑になったということで法務省刑事局に報告のありました事例を掲げたものでございます。御注目いただくであろうと思われる分についてのみ御説明申し上げます。
一一五ページのナンバー1は、西宮のタンクローリー炎上事件といわれたものでございまして、禁錮三年六月の刑になっております。
なお、ナンバー3は、猿投町事件といわれたものでございまして、ダンプカーによりまして保育園の子供等合計三十三人、うち一人が死亡したのでございますが、禁錮三年の最高刑が言い渡された事犯でございます。
次に、二六ページのナンバー5は、三河鳥事件でございまして、国鉄の事件につきましては後に申し上げますが、この三河島事件ともう一件の合計二件が懲役二年以上になっているわけでございます。なお、ここでは、三河島事件につきましては禁錮三年の分のみを掲げましたが、ほかに懲役二年になっているものもございます。
次に、しばらく飛びまして、一二〇ページのナンバー25、これも自動車以外の業務上過失致死傷事件のものでございまして、水上温泉菊富士ホテルにおける従業員の不注意に基づきました事故でございまして、泊まり客三十人が死に、二十人にけがをさせた事案でございます。
次に、一二七ページのナンバー66、これが上田鉱業の炭坑爆発事件でございまして、禁錮二年に相なっております。その隣のナンバー67、これは津の参宮線事件でございまして、運転士が赤信号を無視したことによって免じた事故でございまして、先ほど申し上げました三河島の事故と津の参宮線事故の二件が禁錮二年以上の実刑になった案件でございます。
それから、さらにしばらく飛びまして、一三六ページ、一三七ページ、ナンバー123、ナンバー125、ナンバー126がいずれも重過失致死事件でございますが、自動車以外の事故事件でございます。
以上百七十九例中、ただいま申し上げました七件を除きまして、残りが自動車の交通事故による業務上過失致死傷あるいは重過失致死傷事件と相なっているわけでございます。
次に、一四七ページから一五四ページまでは、自動車の人身事故事犯につきまして故意犯の認定をなされた事例を掲げたものでございます。動機があり、あるいは未必の故意が認められたというものにつきましては、検察官におきましても故意犯の適用を至適とし、裁判所もまた故意犯で認定したものでございまして、これが昭和三十九年から四十年の十月までの事例でございますが、合計三十二例あるわけでございます。
なお、最後に、一五五ページ以下は外国の立法例を掲げたものでございまして、おおむね懲役五年という線が各国ともとっている例であろう、こういうことを示すために立法例を集めたものでございます。簡単に申しますと、ドイツでは、死んだ場合は五年、傷害の場合には三年。その内容につきましては、自動車、電車、船舶、航空機、すべて含めているようでございます。
一五七ページ、ナンバー2にいきまして、スイスは懲役三年でございます。
なお、しばらく飛びまして、二八〇ページのナンバー6以降は東欧の法制を集めたものでございまして、ブルガリアにおきましては最高刑は懲役十年になっているようであります。
一六四ページ、ナンバー11、チェコスロバキアにおきましては、死んだ場合は十年、けがした場合が五年というような法定刑のようであります。
ナンバー12は、ソ連邦の一共和国を形成しておりますロシア共和国の刑法典でございますが、死んだ場合には懲役十年となっているようでございます。
なお、英米法の関係におきましては、一六九ページ、ナンバー18とナンバー19にございますが、ニューヨーク州の刑法におきましては懲役五年、なお、イリノイ州におきましては、自動車運転で死の結果を来たした場合には懲役十年というのが最高刑になっているようでございます。
以上をもちまして資料説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/3
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004・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 本案の自後の審査は後日に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/4
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005・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 次に、訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないたいと存じます。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/5
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006・亀田得治
○亀田得治君 まず最初にお聞きしたいのは、今回の改正では、当事者並びに証人の日当について、現在千円以内というのが千二百円以内、二百・円上がった。それから鑑定人などにつきましては、七百円以内というのが三百円上がって一千円以内、こうなっているわけですが、提案説明によりますと、物価指数その他諸般の事情を考慮してこのように上げた、こう言われているわけです。
そこで、最初に物価指数の問題ですが、これはどういうふうな基準でとられたものか、御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/6
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007・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) 証人の日当と鑑定人の日当と、今回はこの両方を値上げいたしているわけでございますが、証人の日当は、昭和三十七年に改正いたしまして、その次が今回の改正ということになりまして、六年ぶりの改正でございます。それから鑑定人のほうは、昭和三十一年に改正いたしておりますので、これは十二年ぶりの改正ということになるわけでございます。
そこで、お尋ねの点でございますが、証人につきましては、昭和三十七年から現在までの物価の変動というものを考えたわけでございますが、大体賃金と物価と、それぞれ指数が違います。それで、これを全部大体ひっくるめまして計算をいたしますと、昭和三十七年当時を一〇〇といたしました場合に、現在は大体一五〇ぐらいになっております。それから鑑定人につきまして、昭和三十一年当時と現在とを比較するわけでございますが、これは実は、証人の日当、それから鑑定人の日当の性質によりまして、どういう点の値上がりを計算に入れるかということを少し区別して考えたわけでございますが、鑑定人につきましては、賃金のほうは除外いたしまして、物価だけの指数を平均してみたわけでございますが、昭和三十一年を一〇〇といたしました場合に、現在では一三五、大体三割五分の増加ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/7
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008・亀田得治
○亀田得治君 いま両方の御説明がありましたが、現在というのは、いつの時点ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/8
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009・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) 本年、つまり昭和四十三年でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/9
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010・亀田得治
○亀田得治君 本年といいますと、こういうのは大体時点を明確にいたしますわね。そういう意味でお聞きしているわけですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/10
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011・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) 本年の一月でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/11
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012・亀田得治
○亀田得治君 この証人の場合と鑑定人の場合で、指数をとられる場合に、証人の場合は賃金と物価をとった、二つを平均して出した、鑑定人等の場合には、賃金を除いて物価の指数だけをとって出した、区別をされたようですが、これは何か理由があるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/12
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013・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) 証人の日当でございますが、証人に対して日当を支給する趣旨と申しますか、その日当の性質を考えてみますと、大体二つの意味があろうかと思います。
その一つは、出頭に要する雑費を支給するという意味でございます。これは従来大体国家公務員の日当がその趣旨で支給されておりますので、証人につきましてもそれと同じような意味合いで出頭雑費を見る必要があろうと考えたわけでございます。そこで、その点につきましては、先般の改正の際にも、大体国家公務員の六等級の職員の日当——当時三百円でごさいましたが、これを基準にして考えておりましたので、現在では同じく六等級の職員の日当、これが昭和四十一年に改正になりまして現在四百円でございます。これを基準にして考えておるわけでございます。
それから、日当の持ちますもう一つの意味といたしまして、損失補償の分というのがございます。これは、証人として裁判所に出頭したために、その間自分で働いて収益を得ることができなくなった、その利益を得られなかったことに対する補償の趣旨でございます。この損失補償分につきまして、先ほど申し上げました値上がりの影響を考えようとしたわけでございまして、この損失補償は、賃金と物価との平均の指数によって計算するのが妥当ではあるまいかというところから、先ほど申し上げましたような一五〇という指数を一応考えた次第でございます。
それから、鑑定人の場合でございますが、鑑定人の場合は、御承知のように、日当のほかに鑑定に対しまして鑑定料というものが支給されます。そこで、鑑定人の日当の性質といたしましては、どうしても出頭雑費のほうに主眼が置かれることになりまして、損失補償分については、全然見る必要がないというわけではございませんけれども、それほど多く考える必要はないのではないかというようなところから、これは物価指数だけの率で考えたらよかろうというふうに考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/13
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014・秋山長造
○秋山長造君 ちょっと関連。三十七年の改正で証人の日当千円になったわけですね。その前幾らだったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/14
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015・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) この参考資料の九ページに、その従来の値上げの状況を記載した表がございますが、これをごらんいただきますとおわかりになりますように、千円の前は三百円であったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/15
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016・秋山長造
○秋山長造君 そうしますとね、鑑定人のほうは三十一年の改正で七百円になったわけですね。だから、三十一年から三十七年に至る六年間というのは、逆に鑑定人のほうが七百円で、証人のほうは三百円だったわけですね。いまの現行法になると、今度証人のほうは物価だけでなしに賃金ということも考慮して鑑定人よりだいぶ高くしてある。その三十七年以前は逆に証人のほうが鑑定人の半分以下ということになってます。それは何か、当時といまの基準のとり方といいますかね、事情が全然変わったわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/16
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017・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) この証人の日当と鑑定人の日当の間に差異を設けるかどうか、それから差異を設けた場合にどちらを高くしたほうが合理的であるかという問題がまずあるわけでございます。これは非常にむずかしい問題でございまして、考え方によって違ってくるように思われます。仰せのとおり、昭和三十七年以前におきましては証人の日当よりも鑑定人の日当のほうが相当高かったわけでございます。なぜこういうことになっていたかということにつきましては、あまりその点を説明したものがございませんので、私の推測でございますが、証人というのは裁判所に係属しております事件に直接何らかの関係を持っておる者でございます。およそ国民は、納税の義務があると同じように、裁判に協力する義務があるわけでございまして、その事件に関係を持っておる者は裁判所に出てきて必要な証言をする義務があるというふうに考えられるわけでございますが、この義務の程度が証人の場合には非常に強いわけでございます。ところが、鑑定人のほうはその事件に直接関係があるという者ではございません。特定の事項についての判断の知識、技能というようなものを持っておる者でありますれば、だれであってもかまわないわけであります。そういう意味では、裁判所に出ていって鑑定をする義務というものはそれほど強くないわけでございます。おそらくそういう点を考慮いたしまして、証人については普通より幾らか安い日当、それから鑑定人についてはなるべく普通並みの日当を差し上げるのが至当ではないかと、こういう考えで鑑定人の日当のほうが高くなっていたのではないかと思うわけでございます。ところが、御承知のように、物価がだんだん上がってまいりまして、日当の額を是正しなければならないというときになりまして、証人につきましては、先ほどちょっと申し上げましたが、損失補償的な意味がかなり含まれている、そういう趣旨から、その点を大幅に取り入れて考える必要があるということで、昭和三十七年の改正がなされたわけでございます。ところが、鑑定人につきましては、これは報酬、俗に言う鑑定料というものが別に支給されますので、それほど損失補償というものは考えなくてもいいのではないかというようなところから、鑑定人については特に値上げが行なわれなかった。こういう関係で、考え方が変わったということになろうかと思いますけれども、現在では証人の日当が鑑定人のそれよりも高くなっている、こういうことではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/17
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018・秋山長造
○秋山長造君 三十七年ですから、六年ばかり前ですが、そのときにあなたがこういう仕事をやっておられたかどうか知りませんが、そうすると、まあまあいまおっしゃったようなことで一部の事情はわからぬこともない。しかし、それにしても、相当、昭和十九年から表がずっと出ておりますが、ずっと伝統的に長年の間、証人の日当が非常に安くて、鑑定人の日当がだいぶ上回って、三倍くらいにきておりますね。それが、三十七年になって急に一いろんな物価その他の変動ということを考慮したにしても、逆になってずっとクロスしてきているわけですね。特に、一般の会社なんかでのこういう日当なんかの立て方ということなら、ある程度根拠なしに何となくいろんな事情を考慮してということも理解できるのですが、こういう法務省あたりで、特に訴訟費用なんかというような、一番法律的にきちっとやっていかなければならぬというような性質の日当について、ばく然とこういうように逆になってきたような何か相当根拠があってやったんではないかと思うのですが、そうすると、いままでは証人の人権というものがいいかげんに考えられておった、したがって、何ぼかやっておけばいいんだというくらいな扱いでずっと伝統的にきていたのが、それじゃいかぬということで、こういうように三十七年を境に逆になってきたんでしょうか。いまあなたのおっしゃる程度のばく然とした事情で、長年鑑定人は三倍、証人は三分の一くらいでずっと扱われてきたものが、三十七年から逆にこうなってきたという、その切りかえどきの事情というものをもう少しはっきりしませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/18
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019・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) 確かに、証人の日当が鑑定人の日当を途中から追い抜いたというのはおかしな形になっておるわけでございますが、ずっと以前のほうを見ていただきますと、たとえば昭和十九年以前は、この参考資料の七ページと八ページにあるわけでございますが、この辺の日当の額というものを見ていただきますと、その当時としてはそれほど低い額ではなかったということが言えるのではないかと思うわけでございます。それが、だんだん物価の変動に応じて、それに完全にスライドして上げられるということが困難でありましたために、幾らか実質的に減ってきた。それを是正するために、昭和三十六年、七年というような改正が行なわれて、現在の千円になったというふうに思われるわけであります。鑑定人につきましては、その際あわせてやるかどうかという点は当然検討されたと思うわけでございますが、一つには、先ほど申し上げましたように、鑑定人につきましては、普通十万とか二十万というような相当高額な鑑定料が支払われる関係にありますので、日当を少しぐらい減らしてもというような感じではなかったかと思うわけでございます。
それから、外国の立法例などを見てみますと、証人につきましては損失補償を見る、鑑定人につきましては鑑定料を見るというのが多いようでございまして、そういった外国の立法例の考え方に合わせてみますと、現在のような立て方のほうがむしろそれに一致するということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/19
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020・秋山長造
○秋山長造君 だから、現在の立て方が悪いというのではないんですよ。証人を安くすべきだと言っているのではないんですけれども、それはいまのほう、がいいのだろうと思うが、それにしても、いまあなたがおっしゃるような、証人のほうは損失補償という意味に重点を置く、それから鑑定人のほうは、鑑定料というものが別に相当高額のものが入るのだから、安くてもいいじゃないかという意味、それはいまの状態でおっしゃる意味はわかるのだが、しかし、そういうことは何もいまに始まったことではないのだし、昔から事情は同じだと思う。にもかかわらず、ずっと長年にわたって鑑定人の日当のほうが高くて、七ページの表なんか見ますと、最高の場合は証人の十倍ですわね、鑑定人の日当のほうが。証人のほうが十分の一ですね。だから、いずれにしても、そういう事情はいまに始まったことじゃないので、昔からずっと一貫しているはずにもかかわらず、昔から鑑定人の日当のほうが非常に高くて、比較して相対的に高くて、証人が低かったということは、どういう事情だったんだろうかと思う。昔は、証人なんかというものは呼び出し状一本で呼びつけたらいいのだ、金なんか払う必要はないのだという思想が長年あったから、そうなってるのか。それとも、そうでなしに、何かほかにもっときちっとした事情があってそうなっているのか。今日の現状でなしに、現状以前の長年——明治から大正、昭和と長年逆なことが続いてきている、その事情が急に変わったわけでもないだろうに、どういうものだろうかという、過去の経緯を聞いておる。疑問を持っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/20
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021・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) 先ほど申し落としたわけでございますが、こういう事情が一つあったのではないかと思います。それは、民事訴訟と刑事訴訟と違うわけでございますが、刑事訴訟の鑑定人は必ず鑑定料の支払いを受けることができるたてまえになっておりますが、民事訴訟のほうの鑑定人は、これは民事訴訟費用法におきまして、鑑定について特に、あまたの時間または特別の技能もしくは費用を要した場合に相当の金額の報酬が受けられると、こういった限定的な書き方がしてあるわけであります。したがって、民事訴訟の鑑定人というのは日当だけしか受けないという場合もあり得るという法律のたてまえになっております。実際にはすべて鑑定料をもらっておりますけれども、法律のたてまえの上では鑑定料がない場合もあり得るというたてまえになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/21
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022・秋山長造
○秋山長造君 それはどこ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/22
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023・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) 民事訴訟費用法、この参考資料の四ページの十一条の二項でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/23
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024・秋山長造
○秋山長造君 だってあなた、民事訴訟だけでなく、刑事訴訟だって、八ページの表を見ると、やっぱり刑事訴訟の鑑定人だって十倍になっているのじゃないですか。そこらはどういう理由で長年こうなっていたのですかね。いまでなくてもいいですが、もうちょっときちっとした説明をしてください、次の機会にでも。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/24
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025・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) ついでのことでございまするが、ちょっとよろしければ、いまの問題につきまして御参考に申し述べさせていただきたいと思います。
当初、証人の日当は公務員の日当の下のほうと合わせてずっと考えられてきた経過がございます。公務員の日当は何ぞやということを考えますると、これは俸給をもらって出張いたすような場合の日当でございまするので、出張に伴うところの諸雑費、湯茶弁当代、そういうものが内容になっているのではないか、かように理解いたすわけでございまするが、沿革的にはそれとリンクされて証人の日当というものがきまってきたという経過にあるように思われます。しかしながら、日当という同じ呼び方をいたしましても、その機能と申しまするか、その中身というものは必ずしも同じではないのではないか。同じ日当と申しましても、別途報酬が支給されまするところの鑑定人、通訳人、翻訳人及び国選弁護人の日当の場合と、それから報酬が支給されないところの証人の日当とは、おのずからその機能を別意に考えることになるのではなかろうか、こういう考えが生じまして、去る三十七年に、それまで三百円にとどまっておりましたものが一挙に千円に値上げされた。で、鑑定人等の日当は七百円のままに据え置かれてきた。この三十七年の改正の際に、政府の提案理由の説明といたしましても、証人の日当の本質に触れて、出頭雑費のみならず、出頭に伴うところの遺失利益——出頭することによって収入を失うという点を補償する必要があるのだということが強調されたということから、このように一拠に三百円から千円に値上げされた。そこで、いまから経過をたどって考えてみますると、やはりその際に、同じ日当と申しましても、証人の日当につきましては、その機能の理解のしかたでございますね、それが明確になったと申しますか、変わったと申しますか、そういうことではなかろうかと実は考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/25
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026・秋山長造
○秋山長造君 そうすると、何ですね、やっぱり三十七年の改正を境に証人の日当についての考え方というものがはっきり変わったわけですね、そうですな。それで、物価賃金を基準にして証人の日当をきめるようになったのもじゃあ三十七年の改正のときからですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/26
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027・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) その点、三十七年の改正の際は、実は国会で審議をいただきました議事録等を拝見いたしましても、やはり日当の本質論をめぐっていろいろ意見があったように存じます。少なくとも、それまで日当とは何ぞやということが明確にされなかったままで推移いたした。で、千円に上がった際に、やはり出頭諸雑費、湯茶や弁当代にとどまらず、さっき申しました遺失利益の補償の面をなるべくそれは見なければいけないのじゃないかというような思想が出てまいりまして、このような一挙に三百円から千円という改正が行なわれたように私どもは理解いたしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/27
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028・秋山長造
○秋山長造君 それでだいぶわかりましたが、ただこの問題について当局の御説明を聞くのに、あなたのほうが法律をつくられて、法律を運営される当事者ですからね、これはかくかくしかじかですと、こういう理由ですと、びしっと御答弁ができてしかるべきだろうと思うんだけれども、まあお二人とも、そうだろうと思うという、こういう御答弁でね、こうだと、こうはっきり確信を持っておっしゃらぬですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/28
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029・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) これは実は法の解釈にもなるわけでございまして、まあ刑事の関係で申しますると、刑事訴訟法で、証人は旅費、日当、宿泊料を請求することができるとございますし、それから鑑定人等につきましても、旅費、日当、宿泊料のほか鑑定料、あるいは国選弁護人でございますると報酬を請求できると、かように規定されております。で、同じ条文の中で、日当ということばについては変わりないわけでございます。でございまするので、そういう解釈問題もございまするので、まあ裁判所といたしまして、こうだということをはっきり申し上げてしまうということについてちゅうちょを感じましたので、従前の経過を見ますると、こういう損失補償的な面が強調されてこのような経過をたどったのであろうと、かように理解している旨を申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/29
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030・秋山長造
○秋山長造君 まあやっぱりこの法律をつくられる責任は法務省でしようからね、この法務省で、立案者がやっぱりそこははっきり説明をしてくださらなければ、ただ想像みたいな話をされる、またわれわれもそれを想像して理解するようなことでも困るんですが、ここに言う日当とはこういう性質のものだ、何を基準にしてきめているんだということをきちっとしておいてください、それだけお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/30
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031・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) 説明がたいへん不徹底で申しわけないと存じますが、まあ過去の経過の点につきましては、私どもいろいろ考えてみたのでございますけれども、何分にもその当時の資料というものが十分でございませんので、はっきりいたさなかったわけで、このように思うというような多少あいまいな表現を用いたわけでございます。今回の改正の趣旨といたしましては、証人の日当につきましては、先ほど申し上げましたように、実費弁償の面と、それから損失補償の面と、この二つを考慮した、それから鑑定人につきましては、主として出頭雑費の点を考慮した、こういうことに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/31
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032・亀田得治
○亀田得治君 民事訴訟費用法の十一条の第二項の規定ですね、鑑定人などが日当のほかに相当の金額をもらうことができると、この規定は民事訴訟費用法の当初からある規定ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/32
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033・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) これは当初からある規定でございます。ただ、民事訴訟法三百十条第二項の規定は、説明者に関する部分につきましては途中から追加されたという経過になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/33
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034・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、まあ今日の規定は民事訴訟費用法がつくられた当初からあるわけですね。ところが、その当時から鑑定人などは証人よりは日当が非常に高かったわけですね。戦後よりももっと高い場合があり得たわけですね。その鑑定人などが別個に報酬をもらえるから、鑑定人の日当からは損失補償的なものは考えなくていいのだということには、これは法律のたてまえがなっておらぬわけですね。だから、その辺が非常に矛盾があるわけですよ、さっきからの説明聞いておりまして。で、この民事訴訟費用法できめた鑑定人などの日当というのは、日当自体の中に損失補償的なものを相当含んでおると思うのですね。日当というものは、そういうものを含むべきものなんだ、単なる雑費じゃなしに。自分の仕事をやめて来るのですから。出頭して時間をつぶしておるということは、これは証人も鑑定人も一緒ですよ。だから、公務員のように一方でちゃんと月給なら月給をもらっておって、そうして特別どこかへ行くという場合は、出頭雑費でいいわけです。損失補償的なものは、一方で月給自体がそういう性格を持っているわけですから。そうじゃない、裁判に関係のない者がこう出てくる以上は、これは証人であろうが、鑑定人であろうが、私はその点では同じだと思うのですよ。やはりそういう理解に立っておると思うのですよ。それでしかも、鑑定人とか、そういう特殊な専門的な知識を持っておる者は、同じ時間をつぶすにしても一般的に損失が大きいだろうというような意味で、証人よりも相当高いものがこう日当として出し得る余地が与えられておったと私は思うのです。そうしないと、説明が出てこぬ。それ出頭雑費だけじゃ、大体これきまったものです。だからね、その考え方を否定してしまうというのは、ちょっとそれでいいかどうかね、さっきからの説明ですと。いままで二つあったものを、一方のほうをとってしまう、損失補償的なものは。まあとってしまうとまでははっきりおっしゃらない、まあ低く見るというのかね、そういうふうな感じがするお答えのようですが、日当は日当としてやはり両者正当に出頭雑費と損失補償的なものを与えるべきじゃないんですかね。専門的な鑑定人とか、そういう人が特別な時間を鑑定書等をつくるために使うという場合には、それはそれとしてまた評価をすべきなんで、それがあるから当然出すべき日当を少し証人の場合とは違った解釈をしていくというのは、何か無理があるように私は思うのです。さっきの質問と非常に重複してきますが、はなはだしくこれが違った形態になるわけですからね、それでちょっとふしぎに思うわけなんです。それからもう一つは、さっきからの説明ですと、なんでしょう、大体出頭雑費的なものは四百円程度ですわね、考えられておると、残りのものは損失補償的なものだ、内輪を割っていきますとそういうふうな感じがするわけですがね。それが一体損失補償的なものとして正当なものかどうか。そうして、そういう低く損失補償的なものを出しておいて、その人にまた専門知識を活用しているからといって別個に報酬を出すと、これはどうもそこがおかしいですね。そういう別個に報酬を出さなければならぬような人が時間をつぶして出頭するのであれば、少なくとも私はやはり証人と同じようにして、場合によっては若干プラスがあってもいいのじゃないですか、損失補償なんですから。だから、どうしてもこれは、低くするというのではつじつまが合わぬ、低くなるというのじゃね。もう一ぺんきちっとした説明をしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/34
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035・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 法務省のほうでお答えすべきことかもしれませんが、そういう疑問は一つ持っておりますが、いま亀田先生は鑑定人の例をおあげになりましたが、たとえば国選弁護人も同様なことに相なるわけでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/35
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036・亀田得治
○亀田得治君 同じこと言えますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/36
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037・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) ただ、報酬の中身といいますか——を考えますると、国選弁護人の場合は、裁判所に出頭いたしまして弁護をするということがまさに弁護活動でございまして、それに対する報酬というものがあるのではないか、かように考えるわけでございます。でございまするので、裁判所に出てくるということも当然報酬をもってカバーをすべき中身になっておるのじゃないか、こういうような考えも成り立つのじゃないか。鑑定人の場合も、裁判所に出てまいりまして鑑定の結果というものを報告し、あるいは尋問に応じ答えるということ自体が、やはり鑑定活動というものとして一体になっておって、それに対して報酬は支払われると、かように考えることは可能なんじゃないかと、かように思っておるわけでございますが、いかがなものでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/37
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038・亀田得治
○亀田得治君 いまお答えになったようなことになりますと、出頭してしゃべったり答えたりすること、これが弁護人の仕事であり、鑑定人の仕事だと、中心がね、そのこと自体が。だから、そうなりますとね、むしろその日当の中には、単なる損失補償じゃなしに、報酬的なものも加えてやらなければいかぬです。だから、そういういまおっしゃったようなものも日当の中に含めるということなら、とても七百円なんというような日当では、私はますます不適正だと思うのです。やはり国選弁護人の場合でも、そうじゃなしに、その裁判所に出てきて時間をつぶすと、それはやはり私は日当の対象だと思うのです。しかし、裁判所の法廷でしゃべったり、あるいは法廷内で検討したり、あるいは諸般のめんどうを見る、このことは、やはり弁護人がまた別個に報酬をもらえるという立場が私はそこから出てくると思うのですね、そこから。だから、日当、その辺がどうなりますかね。いまちょっとお答えになったのは、そういうようなお答えだと、もっと日当高くしなければいかぬと思うのですよ、鑑定人は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/38
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039・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) そういうような意味じゃなかったのです。先ほど申し上げましたのは、弁護活動の一環として公判廷へ出てきて弁護するということは、依頼者に会ったりあるいは資料を調査したりする全体の弁護活動の一環であるので、そっちのほうは報酬のほうで考えるというシステムを申し上げたつもりであったのでございます。単なる技能料というのではなくて、サービスでございまするが、それは裁判所に出てきて弁論まですることもございますね、それもその弁護活動のまさに大事な点でございますし、それも含めてそれは報酬のほうの対象になるのではないかということで申し上げたつもりだったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/39
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040・亀田得治
○亀田得治君 そういたしますとね、この弁護人とか鑑定人などには出頭雑費だけでよろしいということになるのですか。そうして一方のほうでこの報酬をきちんと払うと、それはきちんと払えば、そのほうがかえって鑑定人にも弁護人にしてもいいかもしれませんがね。逆に、日当の中にわずか二百円上げるか三百円上げるかで議論しているよりね。そういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/40
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041・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 先ほど申しましたような考えをでございますね、とれるならば、仰せのように、日当のほうは出頭雑費ということになろうと思うのです。ただその場合は、一般的に申しまして、社会的地位の高い方々であるということと、それから証人に比べまして在廷時間が長いということは、一般的に言えるわけでございまするので、そういうことを勘案して、出頭雑費的なものもその額を相当高く見るということになってくるのではないか、私はこう考えているわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/41
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042・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、今度は制度でいきますとね、証人のほうは出頭雑費約四百円、損失補償はまあそれを上回るものですね、千二百円以内で。具体的には若干の差はあるのですから、支給は。上回るものが損失補償。で、鑑定人などは、この損失補償はなくて、出頭雑費で、社会的地位等が高いから出頭雑費としても四百円というわけにはいくまい、そういう説明になってくるわけですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/42
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043・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 私の考えでございますと、そういうことになると思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/43
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044・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、この民事訴訟費用法等ができまして、ずっと長い間証人よりも鑑定人などを相当上に日当として扱ってきたわけですね。その場合は、だいぶこれは多いわけですか。その場合の多かった理由も、この社会的な地位等の高い者の出頭雑費というものは高くていいのだ、こういうやはり考え方であったろうと、まあこれは想像になるかもしれませんが、そういうふうに推定しておいてよろしいわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/44
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045・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) もし私のような考え方をとりますると、過去におけるそのきめ方はそういうことであっただろうと言わざるを得ないと思うんでございます。で、端的に、正直に申し上げますると、日当の本質とは何ぞやということが非常にわからないので、法務省ともいろいろ従前も協議をしたわけでございまするが、一つの手がかりといたしましては、去る三十七年の証人日当千円にいたしましたとき、その理由と、それからそのときに七百円であった鑑定人等がそのままに据え置かれたという事実、それを一つの手がかりとして考えておるということを端的に申し上げざるを得ないんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/45
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046・秋山長造
○秋山長造君 これね、参考人として学者の方なんかがここへ見えてお答えになるのは、それぞれの学者の一家言をおっしゃるわけですから、それはまちまちになってもやむを得ないと思うが、政府がこの法案を説明される以上は、やっぱり政府としてはこうだと、こう考えると、ここに言う日当とはこうだと、どういう基準でどういう根拠でやったんだということをきちっと示していただきたいと思うんですね。そうしないと、法務省は法務省でこうだろう、裁判所は裁判所でああ思うというようなことを言われたんでは、これは学者の学説としてならそれは受け取れるけれども、政府の説明というものはきちっと一本になってもらわにゃ困ると思うのですね。その点、この日当の内容なり基準なり理由というものをきちっとしてきてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/46
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047・亀田得治
○亀田得治君 それともう一つはね、民事訴訟費用法が制定された当時、非常に差がついておるわけですね、両者が格段に。高いわけですよ、鑑定人が。おそらくそれはやはり、当時の議会なり、あるいは議会では議論がなくとも立案過程において論議があったものだと思うんですよ、それをちょっと調べてほしいんだ。さっきからのやつは想像でして、私の申し上げるのも想像、皆さんのお答えも大体想像のようですわ。それをも調べてきちんとしてくださいな。ここで何かこういままでの体系が非常に変わるようなふうにもとれるし、いや考え方、精神は一貫してるんだというふうにもとれるしね。よろしいかそれ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/47
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048・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) 当初の考え方がどうであったかということは、わかる限りで資料を調べて御報告したいと思います。
それから今度の改正についての考え方でございますが、これは一応昭和三十七年に証人の日当が千円に上げられました、鑑定人は七百円のまま据え置かれたと、この時点を一応基礎といたしまして、それと今日とを比較してみた場合にどの程度値上げするのが適当であるかということを中心に考えたわけでございます。で、先ほど秋山先生から御指摘のありました、これについての考え方が統一されていないではないかという点は、まことに御指摘のような面があるわけでございますが、これは昭和三十七年の改正のときにもすでにあった問題でございまして、鑑定人の日当の中に出頭雑費以外のものを含むかどうかという点につきましては、いろいろな考え方がありますので、その当時におきましても結局こうだというはっきりした結論は出なかったように思っております。で、今回の改正はそれを受け継いだという形になっておりますので、内容がはっきりしない面があるわけでございますが、先ほど裁判所が言われたように、鑑定人につきましては、損失補償の分は報酬でカバーされると、こういう考え方がございまして、まあそれを全面的に受け入れるかどうかは別といたしまして、かなりそういった意味合いも実際には考えざるを得ないという感じもいたしますので、そういう点から鑑定人と証人の日当が若干の差が生じてもやむを得ないじゃないかというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/48
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049・亀田得治
○亀田得治君 まあ、ここばかしやっているといつまでたっても進みませんがね、だからはっきりしてくださいよ。今度は七百円を千円にするわけでしょう、鑑定人の場合。それは出頭雑費だけなのか、つまり、社会的な地位があるから、それで出頭雑費だけであるけれども、証人などに渡す千二百円の中の出頭雑費と思われる部分、それよりも高くていいんだ、こういう考え方なのか、それは主体であるけれども若干は損失補償的なものも入ってるんだという考え方なのかね、どっちでもいいんですからね、それをひとつはっきりしてくださいな、はっきり。それと当初の考え方をね、最初申し上げたように。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/49
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050・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) なお十分に検討されていない部分につきましては、さらに検討いたしたいと思います。ただ、公務員の日当、これが出頭雑費であるという考え方に立ちますと、この千円という——今回鑑定人の日当は千円に増額するわけでございますが、千円という日当は、公務員の場合には内閣総理大臣の日当に当たるわけでございまして、鑑定人について出頭雑費としてそれだけ見るということが適当かどうか、ことに証人との関係においてそれでいいのかどうかという点については、多少問題があるように思います。それで、やはり主としては出頭雑費を中心に考えるけれども、それ以外の面、つまり損失補償的な面も若干は何かそこに入ってくるというふうに考えざるを得ないのではないかと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/50
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051・亀田得治
○亀田得治君 得ないのではないかというようなことじゃなしに、こうですと、現段階においてはこういうふうに考えておる——現段階くらいつけてもいいわ。答え自体は、思うとかなんとかじゃなしに、こうだと、こうしておいてもらわなければ、やはりいつまでたっても議論が前進しません。はっきりしてもらえば、またそれに対していろいろな意見が出てきますよ。それじゃ、その点をお願いしておきます。
それと、先ほど、証人の場合は賃金並びに物価の変動の趨勢この二つを平均したものである、こういうふうにお答えになっておるのですが、これはお調べになったやつを一覧表にしてちょっと御提出願いたいと思います。よろしいな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/51
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052・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) けっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/52
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053・亀田得治
○亀田得治君 それから、提案説明によりますと、「物価の状況その他諸般の事情」ということが書いてあるのですが、この「諸般の事情」というのは具体的にはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/53
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054・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) 日当を定めるにつきまして、物価の事情以外の事情として考慮いたしましたのは幾つかございますが、そのおもなものを申し上げますと、裁判所に現在調停委員とか司法委委員とかそれから鑑定委員といったようなものがおります。これらの方々の日当がどうなっておるか、それとの比較も必要であろうと考えたわけでございます。現在、調停委員と司法委員は日当が千円以内、それから鑑定委員につきましては千二百円以内ということになっております。これとのバランスを考えたわけでございます。
それから次に、この日当は訴訟費用の一部となるわけでございまして、結局は民事訴訟でありますれば当事者の負担になります。それから刑事訴訟の場合には、有罪の判決を受けた場合には被告人の負担となるわけでございます。そこで、裁判を受ける当事者の負担になるということになりますと、国民が裁判を受ける権利を保障しております憲法の規定もあることでございますので、あまりこれを高くしてはいけない、国民の裁判を受ける権利を行使しにくくするといった面がございますので、そういった点も考慮したわけでございます。そのほか、これは刑事の関係でございますが、刑事の訴訟のこういった日当は国が一時立てかえて支払うということになるわけでございます。これにつきましては、国の予算がこれをどの程度認めるかということとも関係がありますので、そういったいろいろな点を考慮したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/54
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055・亀田得治
○亀田得治君 根本的な問題として私疑問に思っておることは、臨時措置法をつくってからこれもう二十年以上になるわけですね。この民事訴訟費用法とか刑事訴訟費用法それ自体に一体化させることはできないのかどうかということですね。たとえば、ぼくらがこういう法案の審議があると、平素めったに見ないのですが、審議に備えて六法などを引くと、ややこしいのですね。第一、法律を三つ見なければいけない、民事、刑事、臨時と。こういうことは、なかなか専門家でもこんなものややこしいですよ。うっかりもとのやつを見ているとえらい勘違いしたというようなことになるわけでしてね。なぜいつまでも臨時の法律をそのままにして本法と一体化させないのか、そうしてもらったほうが非常にわかりいいのですが、これはどういうふうに法務省なり裁判所のほうではお考えになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/55
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056・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) まことにごもっともなお尋ねでございまして、この臨時措置法は太平洋戦争の末期に制定されまして、物価が動揺しておる時期における特例法として制定されたわけでございます。したがって、物価が安定してまいりました今日におきましては、これを今後長く存続させるということは適当でないと考えております。法務省といたしましても、裁判所と御相談をいたしまして、なるべく早い機会にこの臨時措置法を廃止して、そうして民事訴訟費用法及び刑事訴訟費用法の中にその内容を移したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/56
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057・亀田得治
○亀田得治君 そういう考え方がはっきりしておるのであれば、これはすぐにでもできるわけですわね。ともかく民事訴訟費用法、刑事訴訟費用法のそこへ取り込むだけなんですからね、数字を移すだけなんですからね。基本的にそのついでに各種の条項を再検討するということなどもお考えになっているんですか。私は必要な点はあると思うんですがね。そういうことならちょっといろいろ多少時間がかかるかもしれぬと思いますが、その点どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/57
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058・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) 仰せのとおり、この臨時措置法を廃止するにつきましては、民事訴訟費用法及び刑事訴訟費用法につきまして、この日当以外の部分につきましても検討をして改正を行ないたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/58
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059・亀田得治
○亀田得治君 その点、私はそういうふうに検討されておるんならけっこうだと思うんですがね。私もまあ注文をつけたいことは若干あるわけなんです。そういうことなら、それはまた次回にでも、少しこまかいことになりますから、聞きますが、体系として民事と刑事というのを一つにこれはできないんですか。おのおの民事訴訟法、刑事訴訟法につながっておるという関係はわかりますがね。しかし、中身は、大体数字的なことで、同じようなことなんです。二つ法律を見るのは、ややこしくて、実際は。両者について特殊なことがあれば、その部分だけは適当な立法のしかたがあろうと思うんです。だから、どうせ検討されるのであれば、なるべくわかりやすいものをつくってもらうという立場から、一本化する、民事、刑事を。そういうことは検討の対象にならぬのでしょうか。また裁判所側にもお聞きしたいんですが、そのほうが私は便利だと思うんですがね。どうでしょうか、実情は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/59
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060・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) 現在考えております検討事項の中には、民事訴訟費用法と刑事訴訟費用法を一本化するということは含まれておりません。これは今回問題となっております証人、鑑定人の日当につきましては共通の問題でございますが、それ以外にかなり、民事訴訟には民事訴訟特有の事項、刑事訴訟には刑事訴訟特有の事項というものが含まれておりますので、やはり別にしておくということも、ある意味では扱いやすいのではないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/60
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061・亀田得治
○亀田得治君 それは、一本にするか別にしておくかというようなことは、議論になってそういうふうにお答えになっているのでしょうか、あなた自身の主観的な考えなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/61
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062・川島一郎
○政府委員(川島一郎君) 私自身の主観的な考えでございます。ただ、検討事項というのは、これは裁判所のほうでも十分考えてつくられたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/62
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063・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) 臨時措置法の改正につきましては、これはいつまでもほうっておくということは、私どもといたしましても不便でございますので、ぜひ本来の民事訴訟費用ということで一本でわかるようにしたいというふうに考えております。その点につきまして、裁判所の中で内々でも検討しておるわけでございます。実は民事訴訟費用法と直接関連をいたしますのは印紙法でございます。民事訴訟用印紙法でございます。この印紙法というものが非常に古くなっておりまして、一部改正がございますが、基本的には相当問題があるように思いますので、この改正とにらみつつ、費用法の改正というものをどの程度にやるか、どういう点をどういうふうにするかということにつきまして、内々ではある程度の研究を進めておりまして、これが固まりますれば、法務省のほうと御相談をして、法律案としてなるべく早い機会に国会に提出いたす運びにしたいという希望を持っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/63
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064・亀田得治
○亀田得治君 これは刑事局のほうではどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/64
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065・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 確かに、先生の仰せのとおり、プラクティカルであるということはやはり重要なことだと思います。一本で、それさえ見れば民事も刑事もわかるということができるなら、ベターだと思うのでございます。これは、中身をどうするかという問題のほかに、あとは条文の技術的な問題ではないかというふうに思っておりますが、実は一本化というところまではいままで私どもも考えておりませんでしたので、なおその観点から検討させていただきたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/65
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066・亀田得治
○亀田得治君 一本化の点は多少距離のある議論のようですが、基本の費用法自体をも含めた検討をしなければならぬと思っておるということのようですが、問題点はどういうところが問題におっておるんですか。われわれから見ると、たとえば請求があれば支払うというふうな書き方になっておりますね。しかし、気の弱い者はもうもらわないで帰る、その辺の実態をもう少し聞きたいと思いますけれども、そういうことも相当私はあると思うんですね。それじゃ、それは制度としてはやっぱりおかしいわけですね。単に数字を基本法に含めるとかいうのではなしに、問題になるとすればどういう点が問題になるか、参考までにもしお示し願えたらここでお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/66
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067・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) まず一番大きな点は、民事で申しますれば、訴訟費用としてどの範囲を訴訟費用にできるかという点が一番大きな点でございます。で、その中でも一番大きな点は、弁護士の報酬を訴訟費用の中に取り入れるかどうか。これはまたいろいろな点で、理屈だけで済まないむずかしい面もあるわけでございます。それが一番法律の関係としては大きい、かように思います。で、印紙法の関係におきましては、いろいろこまかい点で問題になるところがございます。これをたとえて言いますれば、印紙法の十条などをごらんになりますと、現実にまだ十円、二十円というような印紙をはってやっている場合があるわけでございますし、たとえば保全の申し立てなどにつきましては、どういう大きな事件でございましても百円の印紙で済むというようなことでございます。それから即決和解あるいは調停等につきましても、訴価によって訴訟と同じように印紙の額を変化させていくということがはたしていいのかどうか。と申しますのは、そういうものはある程度定額制みたいなものを取り入れてもいいんじゃなかろうかというようなこともいま検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/67
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068・亀田得治
○亀田得治君 刑事関係では、やはり弁護士の報酬などの問題が一番大きいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/68
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069・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) その弁護人の報酬の問題でございますると、鑑定人が立てかえ金及び報酬を請求できる、かようになっておることと対応して、記録、謄写等の費用がかかった場合に、それを立てかえ金、実費のほうの支給として考えることは相当かどうかという問題が一つあろうかと思います。それから、これは全般的な問題ですが、やはり旅行をいたしました場合ですね、旅費、日当というものを、これは恒久法においては考えなければならないんじゃないか、これは民刑共通の問題だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/69
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070・亀田得治
○亀田得治君 この民事の費用法の十七条ですね、「請求ニ因リ裁判所之ヲ支払フ」、こういうふうに、請求しないと出さない、こういう規定になっているんですがね、実際の運用はどうなっておるか、ちょっと説明してください。民事、刑事——刑事のほうは規定のしかたがまた若干違いますが、民事はどうでしょうか、もらわないで帰るのがどの程度あるとかですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/70
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071・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) これは「請求ニ因リ」ということでございますが、請求権はあるということに相なろうかと思います。ただ、請求権があるわけでございますが、これは放棄するということがしたがってまたある、法律ではあり得るということになります。現実はどうかということにさらになってくるわけですが、これは実は何%ぐらいになっておるかという資料は持ち合わせておりませんけれども、民事の場合には、純粋な第三者ということもございますけれども、御承知のとおり、大体におきまして当事者と密接に関係のある、たとえば親であるとか、使用人であるとか、そういった関係、あるいは密接な取引関係のある人というような、いわば準当事者とも言える人が証人として呼ばれる場合がかなりあるわけでございます。そういう点から、結局は敗訴者の負担になるわけでございまするから、自分の勝ちと思えば請求しておいてもいいわけでございますが、手続上やはり予納しておいて証人を呼んでもらうという関係になりますので、そういう密接な関係にある証人につきましては、かなりの程度放棄ということが現実において行なわれているということが申し上げられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/71
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072・亀田得治
○亀田得治君 あれは、口頭弁論に立ち会っている書記官などが一々出頭された方に確かめることにしているんですか。何とも言わないが、ほしいんだけれども、ちょっと言い渋って、そのまま帰るというようなことのないようにするためには、確かめなければいかぬわね。その点はどういうふうなやり方になっているんですか、裁判所によって違うかもしれませんが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/72
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073・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) お説のとおり、多少裁判所によってやり方が違うのでございますが、正規にはやはり予納しなければいけないわけでございます。しかし、証人が来ればその場で払うからというような代理人のことばによりまして、出頭してきた場合に、書記官が請求しますかどうかということを尋ねて、そして放棄すると言う場合にはこれは放棄するというような、実際の、少し法律とは離れた慣行になっておるところがございましょうけれども、正規の予納をやらないで証人を呼ぶという場合があると、そして予納しないからそれじゃ全然証人に払えないかと申しますと、それはそうではなくて、放棄すると言った場合を除いては、これを払うということにしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/73
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074・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、その場合は裁判所が立てかえて払うわけですね、予納しない場合は。どうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/74
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075・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) いえ、それは代理人から現実に金を出させて払うわけでございまして、裁判所が立てかえるということはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/75
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076・亀田得治
○亀田得治君 しないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/76
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077・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) ですから、本来なら予納を命じなければならないわけなんでございますけれども、代理人が必ずそのときに払うからということでありますれば、それを信頼してと申しますか、そういうことで動いているわけでございます。信頼して。結局、代理人のほうからそれだけの必要な費用を出してくれませんと、払えないということにもなりかねないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/77
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078・亀田得治
○亀田得治君 それはしかしちょっと困りますわね。それを当てにして出てきたが、どうも期待したようなことを言わない、けしからぬ、払うつもりでいたけれども、もう考え変わって払わないということになったら、これはもうそういう場合にはしかたないんですか。まあ、それでもくれないと言うのは、なかなか心臓の強い証人かもしれませんがね。どうなるんですか、それは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/78
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079・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) まあ、ぜひとも払わなきゃならない証人を申し当ててきまして、そして予納をしなければ呼ばないというよりか手はないと思います。それで、その場合にはぜひ払うとおっしゃるけれども、万一の場合があるから一応予納してくれ、その上で呼びましょうということになると思います。まあ大体、あげますからと弁護士の方がおっしゃってあげないという場合、そういうことでトラブルができたということは聞いてもおりませんし、これは大体において請求もしないでありましょうし、万一請求すればあげますからということであれば、まあ予納しなくても呼ぶという慣行ができてきたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/79
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080・亀田得治
○亀田得治君 放棄書というのはちゃんと一々とっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/80
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081・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) これは、放棄書という形でなくて、記録に必ずつけております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/81
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082・亀田得治
○亀田得治君 放棄書をとるのですか、聞いて記録につけておくやり方でもいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/82
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083・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) 記録の上で、何か記録の上に明らかになる方法をとっておるようであります。放棄書というものを出させるか、あるいは記録の上で出させるか、それはまた裁判所によって多少やり方は違っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/83
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084・亀田得治
○亀田得治君 刑事の場合などはどうしているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/84
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085・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 刑事のほうの実情を申し上げます。
まず、証人の内訳の実情から申し上げますが、被告人の親戚、知人、友人等いわゆる情状証人が多いのでございまするが、これが五〇%くらいございます。その余は、被害者、目撃者、捜査官その他ということに相なります。で、さきに申し上げました親戚、知人、いわゆる情状証人は、日当の請求率は二一二%程度でございます。その余の人たちは、八〇%以上日当を請求しております。
それから、請求の手続の問題でございまするが、これは、昭和二十八年に刑事訴訟法の百六十四条に二項が加わりましたというようなことを契機といたしまして、召喚状には日当を請求することができる旨を記載すると、こういう取り扱いになっております。そういたしまして、現実に証人が出頭いたしました場合には、必ず廷吏が、請求するかどうかということを確かめまして、その手続をしてあげるというようにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/85
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086・亀田得治
○亀田得治君 放棄の場合には、放棄書というものはとらない、あるいはとるか、あるいは何らかの記載でもしておくというふうなやり方をとっているんでしょうか。その点どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/86
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087・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 放棄いたしました場合にはとっていないという記憶でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/87
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088・亀田得治
○亀田得治君 そうしたら、民事局長のほうでも民事関係の状況ですね一いま刑事局長から説明のあった程度でけっこうだと思いますが、最近の支給したのと、しないのと、その辺のところを調べて一わかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/88
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089・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) 全国的にこれは実態調査をしておりませんので、たとえば東京地裁で短い期間でということなら、そういうことができるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/89
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090・亀田得治
○亀田得治君 そうですが、そういう調査はないですかね。刑事局は毎年そういう統計をつくっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/90
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091・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 刑事局におきましては、昨年の五月に一定時期を限りまして調査をいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/91
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092・亀田得治
○亀田得治君 東京地裁なら地裁だけをとって、おそらく何らかの資料というものはあると思いますが、調べてください、よろしいな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/92
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093・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/93
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094・亀田得治
○亀田得治君 それから、先ほどから問題になりました、民事訴訟費用法十一条の二項の報酬ですね、これも統計というようなのは出ておるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/94
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095・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) これも実は統計をとっておりません。事件が、鑑定の対象になるものが非常に雑多でございまして、そして報酬というものも、統計をとってみてどれだけの価値があるかという点に問題があるのでございまして、それはとればとるだけの価値はあると思いますけれども、事務量と、そういう効果の点を考えて、従来はまだとっておらないのでございます。たとえば最高どのくらいのものがあるかというようなことは、これは特殊な事件があれば報告がありますからわかるかと思いますけれども、そういう事務的にわかってくること以外に、従来はまだ統計をとっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/95
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096・亀田得治
○亀田得治君 刑事もそうですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/96
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097・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 若干統計的なものは持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/97
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098・亀田得治
○亀田得治君 ちょっと説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/98
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099・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 鑑定料についてまず申し上げますると、鑑定人の鑑定料、最近のところの平均が年間二万五千円ぐらいになります。通常の精神鑑定でございますると三万円から五万円の程度でございまして、特別な鑑定で高額を支給いたしました例といたしましては、四十万というような例もございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/99
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100・亀田得治
○亀田得治君 四十万というのは、どういう例でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/100
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101・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) これは、鑑定事項は金属の配合成分含有率等の分析ということで、秋谷教授にその鑑定をお願いいたしました事例でございまして、鑑定に要した日数が五百五十日かかっております。鑑定を命じました裁判所は東京地方裁判所でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/101
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102・亀田得治
○亀田得治君 刑事のほうがどうも統計がよくできているようですが、どういう関係でしょうか、民事のほうは。当事者の……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/102
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103・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) 実は、そういうことでございまして、民事のほうは毎年この関係で予算の折衝をするということもないわけでございまして、当事者の、国家予算には関係ないということで、そういう意味で、統計をとる意味が、事件全体としてどういうことになるかという研究のためには役に立とうかと思いますけれども、直接予算の要求というためには必要のないものですから、そういうわけで民事と刑事の間にアンバランスがあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/103
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104・亀田得治
○亀田得治君 しかし、鑑定料を幾らにするかということは、やはり民事の場合に裁判長がきめなければいかぬでしょう。だから、そういう統計をとっておかれるということは、ごらんになる方は、事件が一つ一つ違うということは、これはみな専門家ですから、そんなことはわかった上で見るわけですから、非常に参考に私はなると思うのですがね。初めての裁判官でしたから、ちょっと戸惑うのじゃないですか。だれか同僚の裁判官に聞くとか、先輩の方に聞く。聞いた相手がたまたまそういう問題について公正な考え方を持っている人ならいいけれども、それが間違っておったら、やはり悪く影響するわけですね。だから、一般的にそういうものをそろえておくということは、やはりいいことじゃないかと思いますがね、どうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/104
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105・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) 御指摘のとおりでございまして、鑑定料幾らということは裁判所がきめる、その受訴裁判所がきめるわけでございます。その場合に、やはりかってにきめるわけじゃないわけでございまして、一定の標準というものを考えた上で、そうして裁判所がきめるということに相なろうかと思うわけでございます。ただ、この刑事の場合と違いまして、鑑定の種類というのが、いまでは外国の法規の存在というようなこと、あるいは法規の解釈まで鑑定を学者の先生にやってもらうというようなこともございますし、それから医学のほうの鑑定ももちろんございますし、それから土地の鑑定もございますし、ありとあらゆるものがあり、しかもその中で価格の点からいっても大きいものと小さいものとがある。なかなか一定の標準というのはきめにくいと思うわけでございますし、それから一応の標準をきめましても、やはり物価の変動というものが相当ある。今日の社会の実情におきまして、ほかの物価の変動がありましても、同じ種類のものがたくさんあれば、非常に役に立つかと思います。十年前にこういうことがあったという、たとえば一回しかないような鑑定の資料を出しておきましても、十年後にまたどういうふうに考えたらいいかということ、また新しく考えなければならないことが多いわけでございますから、前の鑑定の実際ということがそれほど役に立つかどうかという点にも疑問があるわけでございまして、何らかの形で統計的なものをとっておくということは、それはそれなりに役に立つかとは思いますが、刑事のほうとは多少事情が違うということを御理解いただければと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/105
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106・亀田得治
○亀田得治君 まあ、その非常に特殊な具体的なケースを扱うわけですから、いわゆる一般的な基準をきめるということは、これはなかなかむずかしいことだし、かえって間違いを犯すこともあるかもしれぬ。だから、そういうことではなくて、個々の事件について判断されたものを集計しておく、これは私は非常に見る人が見たら参考になることだと思うのですね。あとでそれを見て、何もそのとおりするというわけじゃない。これは少し低過ぎるじゃないか、これは少し高過ぎるじゃないか、おれの場合ならこうしようというふうに、やはりだんだん進歩していくのだと思いますね。だから、それはやはり、まあ全部とまではいかなくても、何か適当と思われるようなケースのやつはちゃんとこう資料として整備されるということはやはり必要だと思うのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/106
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107・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) お説はごもっともでございまして、私どももそういうことにつきましてさっそく検討を始めたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/107
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108・亀田得治
○亀田得治君 それでは、この証人並びに鑑定人ですね、これは年間どのくらいの人数になっておりますか。たとえば、昨年が無理であれば一昨年、刑事のほうから先におっしゃってください、そっちのほうがどうも早いから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/108
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109・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 四十一年度における数字を申し上げます。
延べ一証人の数は、十八万七千四百五十七名でございます。これは延べと申しまするのは、一人の証人でございましても二人の被告人に共通というような場合にはそれを二というふうに勘定をいたしますので、延べと申し上げたわけでございます。実数は、十万から十二万くらいであろうと推定いたしております。それから、そのうち日当の支給を受けました証人は約六万、かように推定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/109
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110・亀田得治
○亀田得治君 民事のほうは、ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/110
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111・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) きょう資料を持ってまいりませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/111
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112・亀田得治
○亀田得治君 そうですが、それではいずれ聞きます。
それから、その日当はいままでは千円以内となっておりますが、実際は千円の支給をやっておるのですか、あるいはその以内で若干低目にやったりしておるのか、その辺の事情はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/112
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113・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) これは、御承知のごとく、予算単価というものがございます。今回の案の、証人の最高額千二百円につきましては、六百円の予算単価というものが入っておるわけでございます。そうして、これをいかに支給するかという問題は、この尋問時間というものをまず一応の目安といたしまして考えておるわけでございます。これは従前も同様でございまして、尋問時間、それから特にその地方の状況で裁判所に出頭するのに日時を要したというような場合はそれを勘案してプラスするというようなこと、それから証人の情状証人であるかどうかというようなことについても勘案するという要素もございまするが、基本的には、拘束された時間というものを一応の基準にいたしまして、予算執行上不公平がないように、また予算執行に支障がないように処理いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/113
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114・亀田得治
○亀田得治君 そっちありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/114
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115・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) 支給基準につきましては、事務総長の通達が出ておるわけでございまして、これは刑事も民事も同じ基準でやるということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/115
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116・亀田得治
○亀田得治君 その通達ちょっと見せてください、あとから。
それで、支給金額別の人数、統計というものは整理できていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/116
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117・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 仰せの点についての資料まではちょっとごございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/117
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118・亀田得治
○亀田得治君 最高額の千円を出しておるというのはそうするとあまりないわけですね、ちょうど予算単価としては中間くらいのところをめどにしておるようですから。どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/118
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119・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 従前の、現行の基準で申し上げますると、四時間をこえました場合には七百五十円から千円という基準が一応設けられておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/119
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120・亀田得治
○亀田得治君 まあそれに該当するのが何人あったかということまでははっきりしないというわけですね。一番下の基準はどういうふうにとってあるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/120
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121・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 先ほどの四時間をこえましたものにつきましては、一%くらいでございます。
それから、一番下のところは二時間以内、現行の基準は三百五十円以上五百五十円以内と基準が一応定められております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/121
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122・亀田得治
○亀田得治君 鑑定の件数ですね、これは年間どれくらいになっています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/122
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123・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 四十一年の取り調べ実数で申し上げますると、鑑定人五千五百二人でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/123
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124・亀田得治
○亀田得治君 まあ、先ほど平均的なやつは金額聞きましたが、若干幅があっていいわけですが、支給金額別に言うと五千五百二人というのはどういうふうになるのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/124
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125・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 御質問は、日当の点でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/125
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126・亀田得治
○亀田得治君 日当と鑑定料と。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/126
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127・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 日当は現在七百円でございまして、これは七百円フルに支給いたしております。それから鑑定料でございますが、先ほど申し上げました平均の鑑定料しかわからないのでございます。それから最高額は、先ほど申し上げました四十万というようなもの、その他十万円以上の鑑定料を支給したという例が相当数ございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/127
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128・亀田得治
○亀田得治君 何件くらいあるのですか、十万円以上というのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/128
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129・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 年間十件くらいのものにつきましては、鑑定料十万円以上を支給いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/129
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130・亀田得治
○亀田得治君 民事のほうでも、鑑定人の日当は、最高の七百ということで処理しておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/130
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131・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/131
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132・亀田得治
○亀田得治君 民事のほうで十万円以上の鑑定料を出しているという件数もわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/132
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133・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) 件数はわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/133
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134・亀田得治
○亀田得治君 その基準について若干聞きますが、証人なんかの場合には裁判所に出てきて証言の時間というものが基準になって千円の範囲内で操作しておるということですが、鑑定の場合の鑑定料のほうの基準ですね、これはどういうところに根拠があるのでしょうか。ばく然とした何か見当でやっているのか、あるいは、本人たちが社会的に活動した場合にどういう報酬を得ているとか、そういうようなことを聞いたりしてやるのか、どういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/134
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135・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 刑事のほうの実情を申し上げますると、鑑定人のほうから立てかえ金とそれから報酬というものを請求書を一応出してもらいます。それから、従前の鑑定の事例等はずっとまとめまして各庁に配付してございます。でございますから、鑑定事項とそれに対する報酬額というようなものは、各庁では従前の経験として承知しておりまするので、それを参考にいたしまして具体的な報酬額を決定いたすということに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/135
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136・亀田得治
○亀田得治君 その請求書をまず出さすということのようですが、請求金額と裁判所の決定額だいぶ違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/136
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137・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 実はそこまではわからないのでございまするが、この最近の事例では、鑑定料、鑑定報酬が相当高額になっておりまするので、おそらくこの請求されたというものが不合理でないというふうに判断いたしまする場合には請求どおり支払ってる例が多いのではないかというふうに推測するわけでございますす。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/137
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138・亀田得治
○亀田得治君 さっき言われましたね、四十万と、それから十万以上。これはもう特殊な事件でしょうから、すぐお調べ願えばわかると思いますが、それはどうなっているのですか、その点については。請求額と最終決定額というのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/138
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139・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 実は、私ども各庁から報告受けておりますものが、請求額まで要求しておりませんので、結果的に鑑定に要した日数、鑑定料、鑑定事項というふうなことに限って集計いたしておりまするので、請求額まではちょっとわかりかねるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/139
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140・亀田得治
○亀田得治君 その全部についてそんなことをお聞きする必要もないと思いますが、四十万の件と十万の件だけ、ちょっと電話でそれはわかると思いますから、聞いてくれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/140
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141・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/141
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142・亀田得治
○亀田得治君 それから、刑事の場合には、この判決前に日当などを請求しなきゃならぬ、こういう規定になってるわけですね。あれは判決後ではいけないのでしょうか。請求権があるものを放棄するのは別として、放棄もしないのに判決前と、これはまあそのほうが区切りがついていいということはわかりますがね、こういう点はどうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/142
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143・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 御承知のごとく、これらは訴訟費用になるわけでございまして、刑事で申しますると、刑事訴訟法の百八十一条以下で訴訟費用の負担の問題が起きてまいりまするので、言い渡しのときまでに請求するかどうかということがわかっておりませんと、その負担の裁判あるいは免除の裁判というものもできないという関係で、このように日を画しているものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/143
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144・亀田得治
○亀田得治君 民事の場合には、そういう規定はありませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/144
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145・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/145
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146・亀田得治
○亀田得治君 そうしたら、あとからでも請求できるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/146
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147・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) お説のとおり、判決の際は、訴訟費用の負担者だけをきめるということになっております。あとで訴訟費用額の確定決定で、初めて具体的な額がきまるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/147
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148・亀田得治
○亀田得治君 だから、あとから請求しても特に支障はないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/148
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149・菅野啓藏
○最高裁判所長官代理者(菅野啓藏君) ええ、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/149
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150・亀田得治
○亀田得治君 刑事の場合でも、判決言い渡しの際に具体的な金額まで明示するわけじゃないのですから、判決言い渡しの時点で切ってしまうというのは、ちょっと不都合な場合もあり得るのじゃないかと思いますが、どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/150
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151・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 先ほど申し上げましたように、全部または一部を負担させるというたてまえをとっておりまする限りは、訴訟費用があるのかないのかということがやはり問題になると思います。それから、貧困のために訴訟費用を負担させることは相当でない場合には、すでに裁判の言い渡しの際にこれを免除するということでございまするので、貧困であるかどうかということは訴訟費用となるべき額との関係においてやはり考えなければならない事柄であると思いますので、そのような関係から言い渡しまでに請求をするということにしていると、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/151
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152・亀田得治
○亀田得治君 言い渡しの時点においては、裁判所では訴訟費用の計算というものは実際にはしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/152
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153・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 私どもの刑事裁判の経験から申しますると、いま申し上げましたように、訴訟費用の負担をさせなければならないかどうかということは常に言い渡しのときに問題になりまするので、結審をいたしまして判決する際は、そこのところを検討いたしましてきめておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/153
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154・亀田得治
○亀田得治君 判決ごとに一々ちゃんと言い渡しのときには計算をしたものができておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/154
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155・佐藤千速
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) これは証人なんかの日当の支払いの場合は、もう証人を取り調べましたときに、終わりましたときに、すでに裁判長はそういう決定をいたしまして、支給をするということで、ずっと経過をたどってわかっておるわけでございます。問題は、弁護人の報酬であろうかと思います。報酬を幾らにするかということは、言い渡しのときまでには請求しておいていただくという措置をとりませんと、報酬額の決定が、支給できないということになります。で、問題は報酬額であろうかと思うのでございまするが、その場合でも、貧困で一部あるいは全部を免除するかどうかということを考えなければならない立場にございまするので、そこのところは、やはり全体の額というものを裁判官は把握していなければならないので、われわれの経験では、言い渡しのときはそこのところをちゃんと検討いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/155
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156・亀田得治
○亀田得治君 こういう法律、これが問題になるまで、こちらもあまりそういうことを関心を持たなかったものだから、この機会にお聞きしたわけですが、一応きょうはこの程度で、だいぶ時間がおそくなっていますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/156
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157・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時五十分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01019680416/157
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