1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年四月十八日(木曜日)
午前十時三十二分開会
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委員の異動
四月十八日
辞任 補欠選任
日高 広為君 紅露 みつ君
谷村 貞治君 増原 恵吉君
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出席者は左のとおり。
委員長 北條 雋八君
理 事
青田源太郎君
梶原 茂嘉君
秋山 長造君
委 員
紅露 みつ君
斎藤 昇君
増原 恵吉君
大森 創造君
亀田 得治君
山高しげり君
国務大臣
法 務 大 臣 赤間 文三君
政府委員
法務省刑事局長 川井 英良君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
説明員
法務省刑事局刑
事課長 石原 一彦君
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本日の会議に付した案件
○刑法の一部を改正する法律案(第五十五回国会
内閣提出、第五十八回国会衆議院送付)
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001・北條雋八
○委員長(北條雋八君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
刑法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/1
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002・秋山長造
○秋山長造君 刑法の改正案についてお尋ねをするわけですが、その前にちょっと一言だけ法務当局の御見解をお尋ねしておきたいと思うことは、きのうきょうの新聞にも大々的に報ぜられているから御承知だと思うのですが、例のもめておりました朝鮮大学校の問題について、きのう美濃部都知事が各種学校としてこれを認可するという決定を下されたわけですが、で、それをきっかけに賛否の議論がまた巻き起こることは、これはまあやむを得ぬと思いますが、ただ遺憾なことは、いわゆる右翼団体等がこの問題について非常にエキサイトしまして、そしてはなはだしきは知事個人の身辺すらあぶないというような、非常に緊迫した情勢下にあるやに聞くんですがね。これに対して法務当局としてどう対処されるおつもりですか、ちょっと御見解を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/2
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003・赤間文三
○国務大臣(赤間文三君) 警備のほうは、御承知のように、直接は警察のほうが当たると思います。まあ法務省もひとつ十分関心を持って、遺憾なことの起こらなぬように注意をしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/3
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004・秋山長造
○秋山長造君 大臣のおっしゃるとおり、直接の関係は警察でございますけれども、しかし法務当局としてもこの重大な関係をすぐ持ってくる問題ですから、ひとつ不測の事態等の万々が一にも起こることのないようにひとつ十分御配慮を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/4
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005・亀田得治
○亀田得治君 ちょっと関連して。ちょうどそういう質問が出たから私もお聞きしておきたいんですが、新聞記事等を見ると、知事のほうにいろんな手紙が来ておる。その中身としては、実力にも訴えかねない、そういう意味をも含んでおるようなものもあるようだというふうなことがちらっと載っておるわけですがね。まあそういうことになりますと、これは警察だけじゃなしに、検察庁自体としても事はきわめて重大なことであって、いろんな警備は警察にまかしておくというのじゃなしに、むしろそのような手紙を出しておること自体がすでに刑法その他の罰条に当たる場合もあり得るわけでしてね。新聞等にあのようなことが書かれている以上は、重要な地位にある人を対象にしておることでもあるし、当然検察当局としても積極的に、どういうものが一体来ているのか、名あて人、差し出し人はどうなっておるか、そういうことは私は調べて当然だと思うのですが、その点どうでしょうか。まあ調べるといっても、正式の調べでなく。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/5
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006・赤間文三
○国務大臣(赤間文三君) いま亀田委員のあれでありますが、まだこちらのほうには報告が一つも来ておりませんので、そういうものについては、先に秋山委員に答えたように、警察のほうでできるだけのことはやるだろうと思いますが、法務省もあわせて十分ひとつ関心を持って、大事が起こらぬようにあらゆる面に十分注意をするようにしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/6
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007・亀田得治
○亀田得治君 まあ警察がやるだろうというふうな趣旨でおっしゃっているようですが、そうじゃなしに、やはり秩序維持の最高責任者である法務大臣の立場から、このようなことが新聞等にあるし、あるいは委員会において発言があるのだが、一体どうなっておるのかということを、やはり積極的に連絡をしてほしい、端的に言えば。そういうことはできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/7
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008・川井英良
○政府委員(川井英良君) まだ私のところに具体的にその問題について検察庁のほうから報告を受けておりませんが、従来のあれから申しましても、おそらく警視庁が投書あるいは脅迫めいた文書というようなものについてはすでに厳重な捜査を開始しておりまするし、また同時にこの身辺についてもいろいろ警備を強化しているというふうに考えられるわけでありますが、いま御指摘のような問題は、なるほど刑法に触れる容疑も出てまいりますので、おそらく東京地検におきましても十分に警視庁と連絡をとって遺憾のないように措置をしていると、こういうふうに思いまするけれども、本日そこまでまだ確かめてまいりませんでしたので、次の機会に私その点について、地検としてどの程度タッチしているか、またどういうふうな関心を持ってこれに対処しているかということを確かめた上で、また次回にお答えを申し上げたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/8
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009・秋山長造
○秋山長造君 とにかくこれは、不測の事態等が万一起こってからでは問に合いませんので、十分ひとついろいろな動きに対しても警戒をしていただきたいということを重ねて申し添えておきます。
刑法の質問に入りますが、今回の改正を、端的に改正の理由を、まあせんだって来大臣なり局長から相当詳細な御説明を聞いたわけですが、これを端的に改正の理由を言えばどういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/9
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010・川井英良
○政府委員(川井英良君) 改正の動機は、最近の主として自動車による交通事故が非常に多くなってきたということよりは、むしろ悪質、重大化と申しましょうか、非常に悲惨な、どなたがごらんになりましても、これはひどいと思われるような事故で、その多くは、酒を飲んでいたとか、あるいは未熟な無免許運転であるというようなものが、そういう悪質なものが非常に多くなってきたということが、改正のおもなる動機でございます。それから、その結果、ここ数年来の裁判の実情を見ておりますというと、最高限は禁錮三年でございますけれども、その禁錮三年の最上刑を盛られるような判決がかなり出てきたということ、これは平たく申しますというと、刑法のその刑の頭打ちの状況を示してきたと、こういうふうなことがこの改正をお願いするに至った主たる動機でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/10
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011・秋山長造
○秋山長造君 従来、こういう何か特別な問題が非常にふえて、そしてそれに対して緊急に措置をしなければならぬ、対策を講じなければならぬという必要の起こった場合には、大体特例法あるいは特別措置法というようなもので対処してきている場合が多いと思うのです。これはまあ、こういう問題に限らず、一般行政上のいろんな問題についても同じことだと思いますがね。単独法で対処するという場合は非常に多いと思う。まあ今回の場合は、そういう悪質な交通事犯が非常にふえているという特殊な必要からにもかかわらず、やはり刑法という基本法をいきなり改正ということになるわけでございます。現在の刑法が、明治四十年に制定されましてから今日まで、六十年ずっと続いてきておるわけですが、この六十年間の間に、今回の場合のような、何か特別な犯罪が多いために、その必要から刑法そのものを改正して、そして刑を重くするというような例が過去においてあったのかどうかということを沿革的に御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/11
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012・川井英良
○政府委員(川井英良君) 社会現象が変化をしてまいりまして、それに対処するために、法律、特に刑罰法令を整備しなければならないということは、御指摘のように、いままでたびたびあったわけでございます。その中で、ごく取締りの行政的な必要のために行なうというふうな場合には、多くは刑法によりませんで、いわゆる特別法の改正とか、あるいは特別の新しい立法とかいうふうなことでまかなってきたのは、まさに御指摘のように通常の例でございます。ただ、刑法におきましても、御案内のように、過去におきましてたびたび一部改正をいままでしてまいりました。戦後におきましても、数回にわたって刑法の改正を行なっております。で、刑法は、御説明するまでもないことでございますけれども、ほかの刑罰法令——私どもそれを罰則と称しておりますが、この罰則と、それから刑法で定められておる刑罰というふうなものは、刑法の理論の面でここに本質的な一つの区別を理論的にいたしているわけでございます。そこで刑法は、何と申しますか、国の法の秩序の最低限と申しまするか、これだけはどうしても国民一般が守らなければ国の最低の秩序が保たれない、こういうふうな考え方のもとに、いろいろあります反社会的な行為の中から、ごくだれが見ましてもこれはいけない行為だというふうなものだけを取り上げて規定してあるわけでございます。したがいまして、時代の変化によりましてあまり動きがないようなもの、本質的に反社会的な行為だと、こう評価されるようなものだけを刑法に規定してあるわけでございます。そこで、そういうふうな観点から、多くの場合においては取り締まり罰則でまかなっておりますけれども、過去の例におきましても、最近の例としましては、たとえば幼児なんかを誘拐をしてそうして身のしろ金を要求するというふうな悪質な事件が数年前に出たことがございまして、これに対処して特別重い刑罰規定を設ける必要がありはしないかということで、これはすでに誘拐罪が刑法に規定がございますので、その刑法の一部に修正を加えて重い罰則の刑罰規定をつくったというふうな例がございますし、また……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/12
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013・秋山長造
○秋山長造君 それは何年の改正ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/13
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014・川井英良
○政府委員(川井英良君) それは三十九年でございます。
あるいは、新しいものとしましては、たとえば窃盗罪は動産だけでございますけれども、最近不動産についても侵奪の行為が非常に多いというようなことで、不動産についての侵奪罪という——一つの窃盗罪でございますが、そういうふうな特別な類型を持った新しい刑罰の規定を設けたとか、それから最近問題になっております凶器準備集合罪というふうなものも、刑法の規定の中に新しく二年以下の刑罰をもって設けられた規定があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/14
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015・秋山長造
○秋山長造君 それは何年の改正ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/15
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016・川井英良
○政府委員(川井英良君) 侵奪罪は三十五年の改正でございます。凶器準備集合罪は三十三年の改正でございます。
大体おもなものを申し上げますと、そんなような事例がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/16
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017・秋山長造
○秋山長造君 幾つか事例をあげられたわけですが、それにしても、六十年間国の最低の秩序を確保するための基本法として生き続けてきたこの刑法の性格からいいますと、あくまでこれは、ほかの法律、ほとんど国会のたびに一部改正をやっているような一般の法律とは違って、やはり国の基本法の中でも最も基本的な、いわば憲法に次ぐくらいな地位を持った大きな基本法ですから、これはあくまで、刑法の改正、一部改正というのは、よくよくの例外的な場合に限られているし、また限られるべきものだろうと思うのですが、その点の認識は当局のほうも私と同じでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/17
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018・川井英良
○政府委員(川井英良君) 全く同感でございまして、国の基本法典中の基本法典とも言うべきものだというふうな理解に立っております。で、六十年間の実績を見ましても、改正というのは非常に少ないわけでございます。
それから、今回の改正は二カ条でございますけれども、法務大臣の諮問機関として設けられておる法制審議会にこの案をかけまして、そして十分に意見を尽くしていただきまして国会に提案をしたというふうな手続を踏んでおりますのも、基本法典を私どもが心から尊重している、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/18
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019・秋山長造
○秋山長造君 まあ、この資料によって沿革的なことを拝見しておりますと、たとえばすでに、現行刑法に対する根本的な改正というよりも、むしろ新しい刑法をつくるという立場で、改正刑法準備草案というものがいま鋭意検討されておるさなかのようでございますけれども、法務省としては、あるいは政府としては、この改正刑法、あるいは新しい刑法というものを、大体何か一つの時期的な目標を持ってやっておられると思うんですがね、作業を。これはもうすでに、三十六年ですか、これが発表されたのは。以来やがて十年が来ようとしておるんですが、大体いつごろを目標にやっておられるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/19
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020・赤間文三
○国務大臣(赤間文三君) この改正刑法の準備草案ですが、これは、いまお述べになりましたように、昭和三十六年の十二月に公表された。その後、調べてみますと、法制審議会にかけておりまするが、昭和三十八年の五月刑法の全面改正について諮問を受けましてから、刑事法特別部会に五つの小委員会を設けて審議を重ねておる。現在は、第一次審議をようやく終わって、これからいよいよ第二次審議に入っておるというような状態でございます。最終答申を得るまでにはまだ数年を要するのではなかろうかと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/20
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021・秋山長造
○秋山長造君 第一次審議を終わって第二次審議——第一次審議を終わったという意味はどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/21
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022・川井英良
○政府委員(川井英良君) 大綱はただいま大臣から御説明申し上げたとおりでございますが、三十八年に法務大臣から法制審議会に諮問をいたしました際に、まあこれはドイツの改正刑法の状況を見ておりましても、非常に長い問期間はかかっておりますので、希望意見といたしまして、できれば三年くらいの間に結論を出していただきたいという、諮問にあわせまして大臣から要望事項を法制審議会に伝えてございます。三十八年ですから、四十一年の五月に大体三年が来たわけでございますが、まあ非常に、何といいますか、複雑な、めんどうな作業であるとともに、刑法は御承知のとおり非常に大きな学説の対立もございますので、ほとんど日本の刑法学界の一流の先生方を集めて慎重に審議をしていただいているというようなことで、はなはだ残念なことでございますが、三年という要望の間には、ほとんど、何といいますか、第一次のいわゆる審議がまだ完成しないような状況でございまして、第一次と申しますのは、三十六年に公表いたしました準備草案を参考案として検討していただいておりますので、その参考案についても、第一回の意見の討論の結果というのは、第一次の検討でございます。それがすでに終わりまして、今日第二次の、いわば第二読会のようなかっこうに入っておりまして、いまの見通しでは、本年末か来年の三月末ころまでに大体第二読会が一応終了するというふうなめどのもとに、法制審議会に側面からいろいろお願いをいたしております。第二読会を終わりますというと、三番目の最後の草案の調整の段階に入るわけでございますが、この最後の段階がまた非常に大きな問題が留保のままになっておる問題が数点ございますので、それをあわせまして第三読会というものはやはりかなり時間がかかるのじゃなかろうか、こういうふうな見通しでございますので、早ければここ二、三年の間、少しまた問題が紛糾いたしますというと、やはり五、六年たたないとこのめどがつかないのではないかというふうなただいま見通しでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/22
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023・秋山長造
○秋山長造君 しろうとくさい質問で恐縮ですけれども、第一次審議会に参考案として付議されたのが改正刑法準備草案ですね。この改正刑法準備草案は、これは学者等の意見を入れないで純然たる法務当局だけで準備されたものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/23
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024・川井英良
○政府委員(川井英良君) 六十年を経過して、判例の集積もずいぶんありますし、学説の進歩もあるし、それからまた国の情勢も非常に大きく発展変化をしているというようなことにかんがみまして、刑法について全面改正の必要があるのじゃないかというふうな考え方から、法務省の刑事局長を会長といたしまして、在京の刑法学者、在京の裁判官、弁護士、検察官というような法律専門家の中から適当と思われる方々を委嘱いたしまして、そうして刑事局の中にその準備会をつくりまして、数年にわたりまして一応議論を重ねてまいりました結果できましたのが、ただいま御指摘の改正刑法準備草案でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/24
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025・秋山長造
○秋山長造君 その草案の審議に参加した在京の学者その他専門家、こういうのは大体法制審議会のメンバーにいま入っておられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/25
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026・川井英良
○政府委員(川井英良君) 現在、法制審議会の中に刑法のために刑事法特別部会という特別部会を設けまして、そうしてその部会を五つの小委員会に分けて審議をいただいておりますが、それぞれの本来の部会と、それから小委員会の中に、かなり拡大して大ぜいの方をお願いいたしておりますので、本来の法制審議会の委員、それから刑事法特別部会の委員、それから小委員会の委員、こういうふうにいろいろ分かれておりますが、ほとんどの方がどれかに所属されておるという状況になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/26
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027・秋山長造
○秋山長造君 第一次の審議を大体終えられて、第二次の審議に入っておられるわけですが、第一次の審議で相当重大な留保事項が数点あるというさっきお話があったのですが、重大な留保事項数点というのを簡単でよろしいからちょっと参考にお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/27
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028・川井英良
○政府委員(川井英良君) たとえば死刑の問題、死刑を廃止するかあるいは残しておくかというふうな問題、残しておくにしましても死刑を言い渡す場合を思い切って制限したらどうだ、いや現行のままでいいじゃないか、こういうような意見の対立がございます。それから、ただ罪を犯した者を刑務所につなぐというだけではなくて、保安処分というようなものを設けて、頭が悪いために、あるいはからだに特別な欠陥があるために犯罪を犯したと思われるような者は、刑務所ではなく、医療的な処分で行なうというようなことで、保安処分を設けたらどうだというふうな意見と、今日いろいろな国家財政その他の面からいってそこまでいくというのは多少まだ早過ぎるのではないかというふうな意見の対立もございます。
それから、禁錮と懲役というふうな区別を今日行なっているけれども、こういうふうな区別を残存しておく必要があるかどうか。これはむしろ、拘置刑というような一種類の刑罰に自由刑を限定して、そして矯正の面でもってその個々の人に合った矯正処分を行なうほうがいいのじゃないか、こういうふうな意見と、いややはり禁錮刑というような昔からの一種の名誉刑的なものを残しておくということが今日の法の秩序を守っていく上においてぜひとも必要だということで、この点についてもかなり激しい意見の対立がございます。その他まだかなり、こまかい点に言及いたしますと数点の問題点がございますが、おもな問題点は、そんなところがペンディングになっている大きな問題点だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/28
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029・秋山長造
○秋山長造君 そうすると、第二次の審議では、そういう保留になっている問題を中心にさらに意見の調整をやる、こういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/29
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030・川井英良
○政府委員(川井英良君) 第二次の審議にも、その過程におきまして問題点をやっておりまするし、同時にまたあわせて、問題点以外の点にまだ罰則が非常にたくさん数がございますので、その一条一条につきましてそれぞれ審議を続けておるという段階でございますが、ただいま申し上げましたような大きな基本的な問題点につきましては、とても第二次の審議の過程においてはまだ解決が望まれないのではないかというふうに見通しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/30
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031・秋山長造
○秋山長造君 せんだって、三月の二十八日の新聞で拝見したのですが、刑事法特別部会ですか、その部会で、酒酔い犯罪について今後は刑を減免しない、したがって酒に酔ってどうこうというようなことは今後は刑を減免する理由にはならぬというような新聞記事を見たのですが、こういう問題はこの審議の過程で個々に取り出して何か具体的な措置をされるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/31
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032・川井英良
○政府委員(川井英良君) 先ほど申し上げましたように、五つの小委員会に分かれて、刑法全体を総則二つ、各則のほうを三つに分けて、それぞれ委員長をきめて審議をいたしておりまして、審議が相当、条文が一つの小委員会で、二、三カ条ずつたまったところで、全体として十条ないし十数カ条、一応小委員会の審議が済んだという段階で、年に大体三回くらいの割合で刑事法部会というものを開いております。その刑事法部会は、小委員会に所属されておる委員の方を全部集めた、いわば総会のようなものでございまして、その部会に各小委員長から小委員会でもって審議されて意見の一致した案を提案して説明をいたしまして、それについて質疑回答して、部会でもって異論のないものは一応部会において決定した案として採択をしていくというような審議のやり方をいたしております。いま御指摘の、三月二十八日だったと思いますが、それはたしか第十二回の部会の際に、第一小委員会のほうから提案された問題でございまして、そのつど部会でもって問題になった点がそういうふうに新聞でもって報道されてくるという状況でございます。
そこで、いま御指摘になりました酒酔いの犯罪をきつくやったらどうか、こういう問題でございますが、これは、御承知のように、酒を飲んだ結果泥酔をしてしまった、前後不覚で全然わからないというようなときによく殺人事件を起こしたというような事件が、具体的な事件としてはよくあるわけでございますが、この場合に、刑法の総則の中に、心神喪失の状態で犯罪を犯しても罪にならない、それまでに至らないけれども、心神耗弱の状態で罪を犯したらそれは刑を軽くするとかというような刑法の総則の規定がございます。その場合に、酒を飲んでいたから全然何もわからなかったのだということで、酒を飲んでいた結果人を殺したりけがをさせてもそれは全然罪にならないというようなことについて、各国ともに何らかここに法の解釈上あるいは立法上打つ手がないかということがいろいろ研究をされてまいりました。そこで、いまおあげになりました酒酔い犯罪というようなものの点につきましては、そういうふうな場合に、最初に、酒を飲む前に、自分は非常に酒癖が悪い、酒を飲むと乱暴する性癖があるのだということを十分自分が知っておるのに、したがって今晩またある程度、度を過ごすと乱暴するかもしれない、こういう認識がある人がたまたま酒を飲んだ、その結果、犯罪を犯してしまったというふうな場合には、初めに自分がそういうことするかもしれないという認識、意識があったのだから、現実に犯罪を犯したときにはほとんど無意識的に犯したとしましても、犯された結果について最初の認識を根拠にして何らかの刑事責任を問うことができないだろうかというようなことが各国でいろいろ議論されて、そういうふうな法令を新しく制定したところもあるようでございます。今後、ただいまあげられました事例は、そのような点に関しての酒酔い犯罪というようなものについてある程度刑事責任を問うことができる、そういうふうな立法を考えよう、こういうふうな問題点の論議でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/32
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033・秋山長造
○秋山長造君 いや、いまおっしゃったような事情は一応理解しておるのです。ただ、私のお尋ねしたいのは、こういうように、早ければ二、三年、おそければ五、六年たたなければ最初の結論が出ないと一方ではおっしゃるなら、こうやって小委員会等で何かちょっとまとまった意見が出れば——新聞に出る出ないは、これは新聞の報道の自由でやられるからいいのですけれども、これが何かすぐ具体化されるという印象を受けましたから、そうすると、刑法典の全面的な改正を一方では鋭意やりながら、ちょいちょいそのつど出てくる結論、いわば小さい結論ですけれども、この小委員会で出る小さい結論をすぐ法務省のほうで取り上げて、そうしてとりあえずそこだけ一部改正をやる、こういうように持っていかれるのかどうかということをお尋ねしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/33
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034・川井英良
○政府委員(川井英良君) そういうつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/34
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035・秋山長造
○秋山長造君 じゃ、たまたま新聞に報道された酒酔い犯罪の刑の減免はしないというのは、そういう方向で一応の小委員会での結論が出たという事実を報道したにすぎぬわけですね。それに基づいて刑法の一部改正、あるいはそこまでいかぬまでも、たとえば局長通達か何かそういうもので求刑の基準がありましょう、検察庁では。求刑の基準なんかをちょっといままでと変えるとか、そういうようなことにはならぬわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/35
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036・川井英良
○政府委員(川井英良君) そういうことにはなりません。それからなお、これは法制審議会の総会を経ませんと審議会としての意思になりませんので、まさに途中の段階の基準でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/36
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037・秋山長造
○秋山長造君 そこで、もう一つお尋ねしますが、改正刑法準備草案の前の改正刑法仮案というのが出ていますね。これはどういうものですか。全然しろうとで、そういう点よく知らぬですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/37
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038・川井英良
○政府委員(川井英良君) 第一次大戦のあとでございますが、やはり当時の日本の情勢、経済的にも社会的にも非常に大きな変化を見ました際に。、刑法についてもその当時の新しい日本の飛躍というようなことを考えたと思いますけれども、それに沿うような刑法典の改正が必要だというふうな非常に大きな国家的な意思に基づきまして刑法の改正が企てられたわけでございます。長い間かかっておりましたけれども、たしか大正十五年だったと思いますが、刑法の改正仮案という名目で発表されましたのがただいまお示しの案でございます。仮案として発表されまして、社会各方面の意見を集め、また検討を重ねられましたけれども、その後またその仮案は、仮案として発表されただけで、とうとう国会に提案されて正規の改正案になるというふうな目を見ないでそのままになってしまったというのがこの仮案でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/38
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039・秋山長造
○秋山長造君 やはり準備草案と同じ形で発表されたわけですね。法務当局、当時の司法省の案として発表されたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/39
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040・川井英良
○政府委員(川井英良君) 大体同じような趣旨であったように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/40
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041・秋山長造
○秋山長造君 それだけの大部なものが一応まとめられて発表されたにもかかわらず、その後、やはり当時も法制審議会、何かそういうものがあったんでしょうが、そういうところでの議論にもならず、またそこへ諮問もされないままに済んでしまったということでしょうか。それからまた、発表されたまま済んでしまったということについては、これは何か当時内容的についての問題点があまりにも多くて、学者の意見がもうとても調整できる見通しがないというようなことでそのままになったんでしょうか。あるいは、社会、経済、政治を取り巻くいろんな情勢があって、そのために一貫してこういう基本的な問題と取り組むだけの当時国家的な余裕がなかったということでそのままになったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/41
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042・川井英良
○政府委員(川井英良君) いろいろな見方がありますけれども、私どもいまから文献をいろいろ読んでみまして、いま仰せになりましたあとのほうの事情でもって正規の改正にはならなかったのじゃないかというふうに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/42
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043・秋山長造
○秋山長造君 一応はあの諮問をされたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/43
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044・川井英良
○政府委員(川井英良君) 当時はいまのような制度化された法制審議会がなかったようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/44
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045・秋山長造
○秋山長造君 二百十一条の問題に入りますが、二十二年に改正をされて、そうして重過失致死傷に関する規定が追加されておりますね。今回の改正については、先ほど局長がおっしゃったように、悪質な交通事犯が非常にふえた。それから実際の量刑の実情が、最高刑が科せられる事例が非常にふえたわけです。いわば頭打ち現象を呈しておるというような特殊な理由で改正を提案されているわけですが、二十二年のこの改正というのはどういう事情があったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/45
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046・川井英良
○政府委員(川井英良君) 業務上過失致死傷という場合の、この業務ということにつきまして、御承知のように、判例がだんだん確立してきまして、解釈はかなり広いわけでございます。営業のためだけにそういう運転業務をしているとか、あるいは危険な業務に従事しているというだけではありませんで、たとえば特別な免許を必要とするという業務でありましても、無免許で長い間もぐりでそういうふうな業務を行なっておったというような人がたまたま事故を起こしたというふうな場合には、無免許の業務でございますけれども、刑法二百十一条の適用の面ではそれを業務と見るのだというようなことに、判例がだんだん解釈が確立されてきたわけでございます。ところが、その後における科学の進歩といいますか、社会の、産業の発展とともに、そういうふうな特別な免許とかなんとかいう業務を必要としないもの、あるいは永続的にもぐりでやってこなくてもたまたま簡単にそういうふうな仕事をやることができるというふうな業態のものもたくさん出てまいりました。たとえば、学生がふらっと、トラックがとまっているということで、学校で習い覚えた若干の知識をもとにして動かすというと簡単にトラックが動くというような例もよくある例でございますので、高等学校の生徒が学校の帰りにふざけてとまっておったトラックに乗って百メートルばかり運転してしまった結果非常に大きな事故を起こしてしまったというふうな事例も間々出てきたわけでございます。そういうふうなものをそれじゃどういうふうに処理するかということになりますと、これはただたまたま一回しかそれをやらなかったというようなことになりますと、これは判例の解釈によりましても業務ということにはなりませんので、普通の過失致死傷罪というようなことになりますけれども、公平の観点から考えてみますとそれはいかにもおかしい、勉強をして正規の免許を受けてやっている人は重くなるし、そうでない者はぱっと一回だけふざけてやって大きな事故を起こしてしまったというようなものを特に軽くする理由はないじゃないかというようなことから、業務上過失致死傷と並べまして、重過失で同じような事故を起こしたというふうな場合には業務と同じようにしていいんじゃないかというようなところから、二十二年の改正で重過失致死傷をそこに加えるようにしていただいたというのが大体のいきさつでございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/46
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047・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 質疑の途中でありますが、この際委員の異動について御報告いたします。
本日、日高広為君及び谷村貞治君が委員を辞任され、その補欠として紅露みつ君及び増原恵吉君が委員に選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/47
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048・秋山長造
○秋山長造君 今回の改正は、たとえばこのいただいた資料を拝見しても、相当改正せざるを得ないという角度から、ずいぶんいろいろな具体的な統計等を根拠にされているわけです。そうして悪質交通事犯が非常に多いという具体的な理由をあげておられるんですがね。で、二十二年のこの重過失致死傷に関する改正をやられたときの理由がいまおっしゃったようなことならば、終戦後のあの非常に混乱していた当時ですわね——二十二年、そういうときに特にこの二百十一条に限ってその改正をされるということはちょっとぴったりこない。いまおっしゃったようなことなら、何もいまに始まったことじゃないので、常時昔からずっとあったことだろうと思うんですがね。だから、いつかは改正しなければならぬと改正の必要に迫られながら、いろんな事情で四十年間もほうっておかれたのが、たまたまこの段階で改正ということになったのか、それとも何か当時の、いまでいえば交通事故が非常に多いというような目に見える何か理由、二十二年にこれだけの規定を追加せざるを得ないという具体的な何か事情があったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/48
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049・川井英良
○政府委員(川井英良君) 説明がたいへん足りませんで申しわけございませんが、この二十二年の刑法の改正は、六法全書をごらんいただいてもわかりますように、非常に大きな改正でございます。これは、いまの現行憲法が施行されることになりまして、その憲法の精神に沿わないような規定を一斉に落とす、同時にまた新しく憲法に盛られました平和主義といいますか、あるいは人命尊重の考え方といいますか、そういうふうなものを前面に大きく出しまして、刑法のいわば一種の体質改善的な改正を行なったのがこの二十二年の改正でございます。
そこで、ただいま申し上げました重過失致死傷は、重過失致死傷だけに理由を限定して申し上げましたので趣旨が徹底いたしませんでしたけれども、これはあわせて暴行とかその他人命に影響のあるような刑を一斉に整備する、あるものはそれを引き上げるというようなことをやっておりますので、重過失致死傷もそういうふうなものの一環として一応取り上げられた。あわせて、いま申し上げましたようないろいろな理由がありましたので、重過失致死傷は新しく二百十一条に加えるに至ったというふうなのがこの二百十一条に重過失を入れるに至った遠因的な理由と近因的な理由でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/49
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050・秋山長造
○秋山長造君 二十二年の改正は相当大きい、こういう基本法の改正としてはこれはもうちょっと普通の場合に考えられない規模の大きい改正——おっしゃるとおりですが、ただしかし、その改正といいましても、大部分は削除されておりますね。いままでの旧憲法体制のもとでしか是認されないような条文が全面的に削除されていただけですわね。したがって、いま議論しておるような意味の改正というものはわずか数点ですわね。いまおっしゃったような涜職だとか傷害だとか脅迫だとかというようなまあことですけれども、それらの涜職だとか傷害だとか脅迫だとかというような点についての改正ということは、これはまあ具体的な特殊な事情というようなことが何も根拠にならなくとも、まあわかるわけです。二百十一条の改正については、やはりいまの場合は交通事故というものが非常にふえて、しかもその中に悪質なものが非常にふえているとおっしゃるような一つの具体的な事情、根拠というものがあるというように説明されているわけですが、そうすると、今回の改正に見合うような特別な当時のこう何か、どうしても重過失致死傷という規定を入れなければ当時の現行法ではこれはさばき切れぬという何か特別なその事例があったんですか。ああいう戦争直後の混乱した中で何かあったんですか。そういうことじゃなくて、やっぱりほかの涜職とか傷害とか脅迫とかという条文を手直しすると同じような意味で、一般的な観点から手直しをしたということなんでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/50
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051・川井英良
○政府委員(川井英良君) まあ、この脅迫罪とか、あるいはわいせつ罪とか、あるいは公務員の特別職権乱用罪とかというふうなものを一斉に刑の引き上げを考えております。一面において、先ほど御指摘のように、憲法の精神に沿わないものは削除するというような措置をとっております。で、この過失致死傷罪というものは、戦前からも、先ほど申し上げましたような業務の解釈と関連いたしまして、これを特に軽く処罰するというのはおかしい、重過失の場合においては同じように処罰してもいいんじゃないかというので、必ずしもそういう事例が多くなったということではございませんで、そういうふうな裁判の上でもって不合理性が前から指摘されておったと、こういうことが事情になっておりますので、二十二年の改正の際に、特に人命尊重というたてまえから低いものを上げると、それは憲法の精神に沿うではないかという大きなたてまえのもとに、従来から不合理性を指摘されておった重過失致死傷罪をこの二百十一条の中に織り込んだというのが真相でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/51
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052・秋山長造
○秋山長造君 そうしますと、何か特別な、こう具体的な事例が非常にふえたからということでなしに、刑法が制定されてからまあ当時の段階でいえば四十年ばかりたっておるわけですわね、その四十年来の学説の積み重ね、それから判例の積み重ね、そういうものの上に立ってこの改正は行なわれた、したがって、時期的にいえばもっと早く改正をしてしかるべきものだったのが、まあいろいろな事情でこのときまで延び延びになっておったというふうに受け取っておけばいいわけですか。
それから、さっき大正十五年に発動されたままになったという改正刑法仮案ですね、この中ではやっぱりこの二百十一条の規定はそういうように一応なっておったのかどうか、両点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/52
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053・川井英良
○政府委員(川井英良君) 仮案には重過失致死傷が入っておるはずでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/53
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054・秋山長造
○秋山長造君 それから前段のほう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/54
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055・川井英良
○政府委員(川井英良君) 大体おおむねお説のとおりだと思います。ただ、よけいなことですが、刑を特別上げるという改正ではございませんで、二百十一条の中に新しい類型を一つ取り込むと、こういうことでございますので、特別事件がふえたとかなんとかということじゃなくて、不公平性、不合理性をそこで解消したいというふうな点でございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/55
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056・秋山長造
○秋山長造君 そうしますと、このいまの場合は、今回の改正ということが、これは昭和四十三年という時点がね、やっぱりこの改正の理由としてあるわけですわね。四十三年という時点が、歴史的に見て交通事犯等が非常に急激にこうふえておりますね。まあグラフを書けばこう山になっていることになるだろうと思う。この昭和二十二年というのは、そういう意味では別に特別な意味はないわけですね。ただ、長年改正さるべくしていろんな事情で延び延びになっていたのが、たまたまこの機会に、新時代にそぐわないようないろんなこの条文を削除したり何かする、大きな手直しをするたまたま機会が来たから、そのときに、いままで延び延びになっていたけれども、ついでにやっただけだと、この程度に解釈したらいいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/56
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057・川井英良
○政府委員(川井英良君) 大体そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/57
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058・秋山長造
○秋山長造君 それで、いま大体沿革的なことはわかりました。
そこで、交通事故が非常にふえておる……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/58
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059・亀田得治
○亀田得治君 ちょっと関連して聞いておきますが、例の刑法の百十七条の二ですね、業務上並びに重過失による失火のやつですね、これは昭和十六年に追加になっているわけです。だから、刑法の仮案等においてそういう考えがずっとすでに出ていたということであれば、昭和十六年の改正のときに当然二百十一条についても同じような改正があってしかるべきなんですがね、それはどうして失火の点だけしか具体化されなかったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/59
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060・川井英良
○政府委員(川井英良君) いまそこまでこう詳しく研究しておりませんが、十六年のときには全然問題にならなかったわけではなくて、私の記憶では、十六年の際にもいろいろ全般にわたっての検討が一応なされておったと思います。ただ、何といいますか、いわゆるその業務の解釈の判例の確立とか集積とかいうようなことも、かなりその当時の資料の中には分厚い研究した資料が見えておりますので、その辺のところ、失火の場合とそれからいまの人命に損傷を与えるというふうな場合との関係でもって、必ずしもそこがきちんと調整がとれなかったといいますか、たとえば今度の改正でも、二百十一条のほうを刑を上げるならば、百十七条のほうについてもすべきではないかというふうな御指摘も当然出てこようかと思うわけでございますが、特にこの人命に影響のあるもの、それから非常に、何といいますか、事実上適用の多い、事件の多いもの、そういうようなものについて一部改正というのを行なっていくのが筋ではないか、一斉に過失事故を上げるというふうなことは一部改正としては慎むべきではないかというふうな観点から、今度もずいぶんそこで刑の調整に苦労したわけでございますけれども、二百十一条のほうは適用の事例も百十七条に比べまして比較にならないほど圧倒的に適用事例が多いということ、片方は失火で直接物に対する損傷でございますけれども、直接には人命に関係のない条文、片方は非常に事件も多いし、また人命に影響があるということで、急遽二百十一条のほうだけの改正を発議したというふうな事情に相なっておりますが、その十六年の改正の際にも、全く同じじゃありませんけれども、ほぼ同じような考え方が働いてそういうふうな結果になったんではないかというふうにいま考えております。これはひとつペンディングにしていただきまして、もう少し勉強させていただいて、適当な次の機会に正確にまたお答えを申し上げさせていただきたいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/60
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061・亀田得治
○亀田得治君 まあ私の質問のときなお詳しくお聞きしますが、百十七条の二の場合は物に対する侵害、二百十一条の場合はこれは人に対するものですからね、むしろこのほうを重視しなきゃならぬかもしれない。にもかかわらず、軽いほうが——軽いといいますか、これはまあ見方によりますけれどもね、そういうふうな意味で、いまちょっとお答えもあったようですが、そのほうが先にこの刑法の中で取り上げられて、そして人身のほうがあとになっておる、そのいきさつがちょっと了解ができないわけですね。で、おそらく今度の準備草案では、失火の場合はこれは五年にするというふうなことにはなっておらぬのでしょう、その点は。そうしますと、その改正の経過が何かバランスがとれておらぬというような感じが持たれるわけですがね。まあそういうところから見ても、二百十一条だけを取り上げてはたしていいのかどうか、そういう点が非常に問題になると思うのです。政府自体がこの二百十一条を軽く扱ってきているわけですわね、百十七条より、経過から見ると。その辺がはなはだちょっと、なぜ一体これがおくれたのか。刑法の仮案の当時にすでに問題になっておるというものが、どうして昭和十六年に百十七条と一緒に具体化しなかったのか。まあ議論はあったというふうにいまお答えがありましたけれどもね。そこら辺、もう少し、想像じゃなしに、経過を明らかにしてほしいと思うのです。これはまあ要望しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/61
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062・赤間文三
○国務大臣(赤間文三君) いま亀田委員の御質問でありますが、私はやはり、だんだんにこう民主主義が進んで、文化が進んでくると、人命尊重ということに重きを置く。今度の二百十一条の改正も、これはもうとりもなおさず、日本の文化が進んできて、人命尊重の点から私はこれが皆さんにお願いをするようになっておるので、それで、これはやはり、だんだんに進んでくると、ますます人命尊重という線に、法律が私はそちらのほうに動いてくるのはもう当然だと思うております。そして、しかも急激に自動車の数がふえて、そして予想以上に六十何万というような死傷者がふえるというような、そういうようなふうなまた事情とあわせて、どうしてもこれはひとつ早くお願いをして人命尊重を達成したい、そういう点が相当この中にある、かように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/62
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063・亀田得治
○亀田得治君 まあ法務大臣、えらい結論を急いで言われますけれどもね。まあその前に、刑法の仮案当時に問題になっていたことであれば、その当時もやはり人命尊重ということをそれなりに考えていたわけですが、だから、それがなぜ昭和十六年に具体化しなかったか。そのころは戦争中で、人命はあまり尊重しとらぬからあと回しということになったのか、それはどうかわかりませんが、その経過を客観的にひとつ事実に即して説明をしてほしい。人命尊重ということはいいことですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/63
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064・川井英良
○政府委員(川井英良君) 正確には当時の記録を調べてまた正確にお答え申し上げたいと思いますが、過失致死のほうはすでに過失致死罪としてのかなりの刑罰を盛った刑がありますので、おそらく失火罪の刑を十六年に引き上げて、同時に業務上失火とそれから重過失失火というものを新しくつくったというときに、その刑の比較において、その当時においては重過失致死傷を設けないで、従来の過失致死傷の刑で足ると、こういうようなことで、刑のバランスの関係から一応見送られてきたんじゃないかというふうに一応考えておりますけれども、詳細は正確にはまた調べた上でお答えをさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/64
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065・秋山長造
○秋山長造君 いまの亀田質問で私もちょっと気づいたんですが、昭和十六年のあの非常時のさ中ですね、そのときにあえて刑法典の改正が行なわれているわけですし、それから大正十年にも行なわれておりますね。いまの資料を後刻お出しになるときに、その十六年の改正された改正点、失火のことはいまおっしゃったわけですけれども、その他にどういう点があったのかということ、それから、大正十年の改正のときには、どういう事情で、どういう点が改正されたかということを、あわせてひとつ後刻お示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/65
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066・川井英良
○政府委員(川井英良君) 「刑法の改正経過と対照条文」という資料が作成されておりますので、これは提出させていただいて、そしていま御指摘のこの年度の改正はこういうふうな趣旨から行ないましたという説明をすることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/66
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067・秋山長造
○秋山長造君 そこで、さっきの本論に返りますが、とにかく交通事故が非常にふえた、特に悪質な事犯が非常にふえたということがもう最大の動機になり、また提案の理由にもなっているわけですが、そこで最近の交通事故、その中にはもちろん悪質であるかないかということも全部含まれておるわけですが、交通事故がやたらに発生しているわけですが、その交通事故の発生している中から、おのずから比率の一つの傾向といいますかね、この問逐条説明のときにも、たとえばという頭書きはおっしゃったわけですけれども、飲酒運転、それから無免許運転、それから無謀運転、こういうものを特にあげられて説明をされたわけですが、一般的に最近の交通事故の特徴的な問題点というのはどういうことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/67
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068・川井英良
○政府委員(川井英良君) 交通事故だけに限定して申し上げますと、ただいま御指摘のような三悪と申しますか、三つの点、悪質な事故と思われるものを調べた結果によりますというと、大部分が飲酒をした上の運転事故であったというようなこと。それから、必ずしも大部分とは申しませんけれども、免許がなくして、しかも未熟な者であって免許を持たない者の運転の結果大きな事故を起こしたというふうなこともかなり出てまいります。それから多くは、無謀なスピード運転と申しましょうか、二十キロから三十キロくらいオーバーした高速度の運転、あるいは信号無視というようなものによるところの大きな事故というふうなものが、非常に事故の面から見ますというと目立った存在でございますので、私ども、この種のものにつきましては、特に重い刑罰をもって臨んでいくというのが、国民感情にも沿うものではなかろうかというような考え方を持っておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/68
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069・秋山長造
○秋山長造君 こうした飲酒運転、無免許運転——無免許運転の中身は、俗に言う未熟運転ということも含まれている。それから無謀運転——スピード違反だとか信号無視だとかいうものもひっくるめて無謀運転。大体この三つが最近の交通事故の最も特徴的なものなんだと、それは今日ただいまの交通事故の実態からいっても依然として変わりはないということですね。そうすると、まあわれわれこの刑法改正の角度から交通事故の問題点を求める場合には、やはりこの三つが中心になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/69
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070・川井英良
○政府委員(川井英良君) この三つに一応集約されるような無謀運転というふうなものは、やはり
一番問題ではないかと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/70
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071・秋山長造
○秋山長造君 そして、その中でも圧倒的に多いのが飲酒運転ということですね。
申すまでもないことですが、この二百十一条に該当する事犯というのは、何も交通事犯だけではない、ずいぶんたくさんあるわけですが、この二百十一条に該当する事犯の中で交通事犯というものが一体どのくらいな割合を占めておるのか、それただ抽象的なことでなしに、何か統計数字をお示し願えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/71
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072・石原一彦
○説明員(石原一彦君) 秋山先生仰せのとおり、刑法二百十一条は、あらゆる業務上過失致死傷事件あるいは重過失致死傷事件を含みますので、ひとり交通事故に限らないわけです。統計的に申し上げますと、実は昨年一月一日から十二月三十一日までに第一審で有罪判決がありました九千三百十七人につきまして分析いたしました。その結果、九九・三%に当たりまする九千二百五十二人が自動車——この中には原付と称します小さな自動二輪車も含まれておりますが、それも含めまして自動車によるものでございます。したがいまして、残りの〇・七%の六十五人が自動車以外のものと、かようになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/72
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073・秋山長造
○秋山長造君 いまのは何年の統計ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/73
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074・石原一彦
○説明員(石原一彦君) 昭和四十二年一月一日から十二月三十一日までの間に第一審の裁判所で言い渡された被告人の数でございます。有罪になりました被告人の数でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/74
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075・秋山長造
○秋山長造君 四十二年について九九・三%ということですが、これは四十一年、四十年、三十九年と、その前の二、三年間ぐらいの同じような数字ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/75
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076・石原一彦
○説明員(石原一彦君) もっともな御質問でございまして、実は私どものほうで、第一審で有罪になりましたのみならず、略式命令になりました分も含めて調査しようと思ったのでございますが、現在、業務上過失致死傷を全部含めて、有罪になりますものが年間二十万件に及んでおるのであります。過去にさかのぼりますと相当の事務量になりまして、なお、検察庁で判決原本を保管いたしておりますときに、必ずしも業務上過失致死傷事件だけを別にしておるわけでございませんで、あらゆる事件が年度別に編さんされておる関係から、多忙な検察庁にその点を要求することができませんので、とりあえずただいま申し上げました四十二年度につきまして調べた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/76
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077・秋山長造
○秋山長造君 今回の改正は、最初昭和四十年に出されたわけですがね、そのときの改正理由もやっぱりいまの改正理由と同じことになっている。したがって、そのときに、当然そういう資料を要求されたと思うのです。また、あなたのほうでも、その要求に基づいて、四十年から——まあその年の途中ですから、四十年の資料についてはおっしゃらなかったと思うけれども、三十九年あるいは三十八年あたりの何か数字というものはお示しになったんじゃないかと思うのですが、ありませんか、三十八年、三十九年、四十年。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/77
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078・川井英良
○政府委員(川井英良君) 三年間にわたって長らくいろいろやりまして、いろいろな数字を山のように集めたために、どこにそういう数字があるのか——少し間違っておりましたが、いま課長が申し上げました数字のほかに、別の角度から自分で調べて持っておりますので、四十一年度中に第一審の有罪判決がありましたのは八千四百二十三人でございます。その中で自動車によるものが八千三百五十二人でございまして、したがって、自動車以外によるものは七十一人ということでございますので、先ほどの四十二年度とほとんど変わらないパーセンテージになると思います。それから四十年度は、言い渡し人員が合計七千三百十三名でございます。四十年度は、その中で自動車が七千二百二十名でございます。したがいまして、その他が九十三名ということになりますので、大体同じ程度の数字、パーセンテージ、百分比ということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/78
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079・秋山長造
○秋山長造君 そこまでおっしゃったんなら、ついでに正確なパーセンテージというものはいま出ませんか、これはあとで計算すれば出るんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/79
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080・川井英良
○政府委員(川井英良君) 四十一年度は、自動車が九九・二%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/80
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081・石原一彦
○説明員(石原一彦君) 失礼いたしました。四十年度は、ただいま局長が申し上げましたように、資料がございまして、自動車の分が九八・七%、したがいましてそれ以外が一・三%ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/81
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082・秋山長造
○秋山長造君 自動車によるものがいずれにしても若干ずつパーセンテージが上がってきておる推移がこれでわかるわけですが、自動車による事犯がふえたということはどういう事情によると御判断になっておるのですか。たとえば、それだけ飲酒運転がふえたんだとか、無免許運転がふえたんだとか、無謀運転がふえたんだということもあるいはあるかもしれないが、ただそういう現象面だけでなしに、やっぱりその根本としては、自動車そのものがうんとふえてきたとか、あるいは交通安全対策が自動車のふえていくのにとても追っつけないというような事情もあるのじゃないかということを思うので、そのパーセンテージがこう上がってきた背景になっておる事情というものは相当やはりいろいろなことがあるんじゃないかと思うのです。このパーセンテージの上がってきたその背景について当然御研究になっておると思うのですが、どういう事情ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/82
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083・川井英良
○政府委員(川井英良君) 自動車の事故がふえてきた——相対的にふえてきたという理由は、何と申しましても、自動車の台数が一挙に激増してきたということがやはり一番大きな原因だろうと思います。自動車の激増に沿いまして、道路の設備、あるいは自動車そのものの整備、ないしは自動車を運転する人の教養といいますか、教育といいましょうか、そういったようなものがそれについていけないというふうなことが事故が非常にふえたという大きな原因であることは、もう異論のないところであろうと思います。
ただ、私は、それにしましても、先ほど御指摘のありましたような悪質な重大事件がふえてくるということは、またそれにプラスしまして別な要因が考えられてくるのじゃなかろうかというふうな気がしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/83
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084・秋山長造
○秋山長造君 前段の一般的な原因としては、私もおっしゃるとおりだと思うのです。これはもうあれこれ言ってみても、もう車そのものの数が圧倒的にふえて、しかも、道路だとか、車そのものの構造なり整備状態なり、あるいは運転者の個人的ないろいろな事情というものがそれにとても追っついていかぬという、そこに無理が行なわれておる、その無理から交通事故が出てきている、そこまではわかる。しかしまた、それだけでなしに、別な要因として、悪質な——そういう事情にかかわらず、それとは別に、たちの悪いのがふえてきたんじゃないかという、その点なんですがね。おっしゃる悪質なのがふえてきたというのは、それはどういう事情でそうなってきたんでしょうか、どういうようにお考えになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/84
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085・川井英良
○政府委員(川井英良君) これは一がいに割り切ってこうだというふうに判断はできない問題だと思います。しかしながら、先ほどあげましたような三つの特に悪質と思われる原因というふうなものは、私やっぱりこれは人間の問題ではないかと思います、主としまして。この交通が非常に混雑しておるときに、酒を飲んで運転すれば、注意力が散漫になっているということは、これは科学の実証するところでございますし、それから未熟な無免許運転というようなものをこういうときに行なうということ、それから著しい無謀運転というようなものは、これはいかに道路を整備いたしましても、いかに自動車を改造いたしましても、急激には直らない問題だと思います。いまあげましたような三つの事態というものは、ほかの要因もありましょうけれども、主として自動車を運転する人の問題ではないか、こういうふうに考えております。しからば、その人をそれじゃどういうふうにまた見ていくんだということになりますというと、たとえばトラックを運転するというような人に、非常に過激なノルマを課すというようなことでもって、過労の結果、居眠り運転するとか、あるいはとても普通の状態では行けないので、一ぱい酒をひっかけて、そしてときに感情を刺激して、意識を刺激して運転していくというようなことも、人の世界では間々あることでございますので、私ども人の問題だと。だから、刑だけ上げれば片がつくんだというふうには、必ずしも簡単に割り切っておりません。人間の問題と観念いたしながらも、その人間の問題というものをよりよく人間の知恵でもってうまくまかなっていくというためには、いろいろな方面からの総合的な施策、対策というものがやはり必要であろう。ただ、早く結論を申し上げてはいけませんけれども、刑法のこの改正というものは、その点について一つの対策にはなるんじゃないか、しかもそれは有力な一つの対策というものになるんじゃないかという確信に基づいております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/85
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086・秋山長造
○秋山長造君 この資料の最後のところに、重大な事故の事例がたくさん載っておりますが、この重一大事故というものは、一般的な交通事犯というものが、さっきおっしゃったように、数字の上でも、パーセンテージの上でも、上向きになっていることはわかりましたが、その中でいわゆる重大事故というものがどういう傾向をたどっておるのか。それからまた、重大事故というものはそれぞれ一つ一つ特色もあるんでしょうけれども、それらに共通した最大公約数の一つの傾向というもの、あなた方専門家だからつかんでおられるんじゃないかと思いますがね。そういう重大事故の推移、それからまたそのいろいろな重大事故を通じてくみ取れる一つの傾向というようなものが知りたいと思うんです、ちょっとばく然としたお尋ねかもしれぬけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/86
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087・川井英良
○政府委員(川井英良君) この資料の中に、百十何例の重大事故なるもの、すなわち二年以上の体刑がいったというようなものを収録してございますが、私ども、手元で、これらのものについての記録、主として判決を一応精続いたしまして、いろいろな傾向のあるものをつかもうと努力いたしておりますけれども、この資料をごらんいただいてもわかりますとおり、ただいま仰せのような最大公約数的なものは必ずしも出ないと申しますか、むしろそれぞれ、その事故一つ一つに個性があるといいますか、特性を持ったものがあるようでございます。しいてあげれば、この中で飲酒運転したというのがかなり多いですし、また無免許運転というものも出てまいりまするし、それから、先ほど申しましたように、いわゆる無謀運転に類するものも出てまいりますけれども、すべてその三つに集約されるかというと、必ずしもそうではございませんで、いろいろな形態のものがここに出てきているようでございますが、しいて言えば、やはり一番中で多いのは、飲酒による運転というのが多いのじゃないかという程度のところが、御指摘の、しいて言えば一つの共通性というようなことであげることができるのではないかという程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/87
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088・秋山長造
○秋山長造君 やっぱり、そうしますと、交通事故の問題、あるいはそれに対する対策を考える場合、これは酒をどうするかということがもうすべてひっかかってくるわけですね、いままでのお話から聞いておりましても。さっき、刑事法特別部会でやはり酒の問題一応結論が出て新聞に載ったという話題が出たわけですけれども、要するに、酒を飲まないでしらふで運転をしてくれれば、これはもううんとこの事犯は減る、交通事故は減る。したがって、二百十一条の改正にこう手こずる必要もないだろうと思うのですがね。それと、やはり酒、アルコールというものがここでもう圧倒的な重みを持っているのですね。これは一法務省の問題でなしに政府としての問題かもしれぬですけれども、何か酒をどうするかということについて対策ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/88
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089・川井英良
○政府委員(川井英良君) この百十何例の中で、多いと申しましても、飲酒が百何例もあるというわけではございませんので、しかしながら、悪質な中に酒を飲んでいた者が比較的に多いということは、これはもう申し上げるまでもない事実でございます。この酒酔い運転につきましては、道路交通法の中に、酒酔い運転をしてはいけないということで、事故を起こさなくても酒を飲んで車を運転しておったというだけで刑罰にかかるような法律が、一つは法律の刑罰の対策の面ではできております。
それから、私どもこういう事案を扱いまして、行政当局のほうに、ハイウエーなんかで酒を売っているようなことが新聞紙上にもよく出ているし、私どももそういうところを見まして、はなはだ適当でないじゃないかというようなことから、その所管する行政当局のほうへは、検察当局の意見といたしまして、酒の販売をさせないというふうな手段はとれないものかどうかということは、かなり前から強い要望をしてあるところでございます。この点につきましては、いままで政府当局のいろいろな対策、説明によりますというと、行政指導で自粛的に一これを自粛させるということでもって非常に強い指導はいたしておるようでありますけれども、全く酒を売らないという措置はなかなかとれないようで、運転手は飲まないけれども車に乗っておったお客さんが飲むのだというような弁解が容易になされておりますので、これを強制的に法律で禁止するということはいろいろな面から見て非常に困難だ、しかし自粛をして運転者には売らないということで大いに行政指導をやっているのだというような説明もございまするし、それから、先般、運転手に酒を売り、そしてその人がまた続けて車を運転していくのだということを承知の上でもってあえてアルコール類を提供したというふうな人は、この酒酔い運転の共犯になりはしないかというようなことで、検察庁におきましては、はなはだしくこの常軌を逸したような酒の販売というようなものにつきましては、酒の販売ないしは同時にその運転者と酒を飲んだというような者につきましては、酒酔い運転の共犯としての刑事責任を問うことができないかというようなことで、刑事的な面でございますけれども、そういうふうな二、三の例を起訴したというふうな例も今日あらわれてきておりますので、行政的、司法的な面と相まって、この点についてのもっと強力な手を打つ必要があるのじゃないかというふうには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/89
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090・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 ちょっと関連。いまの酒の問題ですね。道路交通法によると、一年以下の懲役と規定しておりますね。先ほどの数字の中に、別段不注意で人を殺傷するということはないけれども、ただ酒を飲んで運転してそれで処罰されて体刑になったものがどれほどあるかわかりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/90
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091・川井英良
○政府委員(川井英良君) 酒を飲んでそのために事故を起こしたという数字じゃなくて、酒を飲んで運転したために、事故は起こさなかったけれども、道交法で処罰された者の数はどのくらいあるか、こういう御質問でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/91
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092・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/92
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093・川井英良
○政府委員(川井英良君) わかりました。いまたまたまここに持ってきておりませんけれども、警察庁の統計の中に道交法の違反の数字があがっておりますので、また後刻連絡の上で持ってまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/93
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094・秋山長造
○秋山長造君 それはひとつ皆に配ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/94
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095・川井英良
○政府委員(川井英良君) では資料として委員会に提出するようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/95
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096・秋山長造
○秋山長造君 いま局長のおっしゃるとおり、全部じゃありませんけれども、これはもう、あげられたたくさんの事例を見ても、ほとんど飲酒運転ということが加わっておりますね。だから、最大中の最大公約数の一つは、飲酒——酒が原因になっていることは間違いないと断定してもいい。したがって問題は、やっぱりその結果起こしたもろもろの事件の責任を問うことももちろん必要ですけれども、しかしやっぱりどうもこれは追っかけごっこのような感じで、まず根本としては、飲酒運転ということさえ何とかとまれば、これはあなたのほうの手をほとんどわずらわさずに済むようなことになるのじゃないかという気がするわけです。そうなると、やっぱりいまのところ、道路交通法というものは警察の関係になるわけですが、全部とは申しませんが、圧倒的に道路交通法の百十七条の二で禁止されている飲酒運転、これをどうすべきかということになってくるのじゃないか。そこからやっぱり、いきなり刑法の改正をするのでなしに、まず道路交通法あたりで処理するのが先決問題じゃないかという議論が出てくるのは、私は当然だと思います。私らも、いま質疑答弁を交換する中で、いまのところはやはり、いままでの議論からいうと、そういう感じを非常に強く持つのですよ。何ですか、この事件になって、あなたのほうの統計数字にあがってきたものに限って出ているわけですけれども、こういう調査はされておりますか。一口に飲酒運転といいましても、さっき局長のおっしゃるように、長距離のトラックあたりで、ちょっとくたぶれたから、路傍のモーテルとかドライブインとか何とかいろいろなものがありますね、ずっと、ああいうところで運転する途中で酒を飲んで、そうしてまた運転を続けていくという飲酒もあるでしょうし、それから、全然そういうことは関係なしに、何か特別な宴会かなんかで酒を飲んで——オーナーの場合に多いかと思いますが、たまたま自家用車で帰る途中事故を起こすとか人をけがさせたという飲酒があるでしょうし、一口に酒を飲むといってもいろいろな態様があると思うのですが、そういう態様によって内容を分析されるというようなことはなさっておるのですか、おらぬのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/96
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097・川井英良
○政府委員(川井英良君) そこまでいろいろこまかい分析をしてやっていくということがもとより望ましいことでございますが、昨年——四十二年度で検察庁が警察から送致を受けた事故だけで約四十五万件あるわけでございまして、刑法犯の五〇・六%ということで、今日全国の検察庁は半日は事故だけに追われているというのが実情でございます。そこで、いまの酒酔い運転とかいうふうなものが重大な事故につながるというふうな傾向は、これは統計の示すところであり、また具体的な事件を見ればおのずからこの結論が出るところでございますけれども、いま仰せのような、どういうところで飲んだものか、営業的に区別し、またオーナードライバー——営業であるものとそうでないものを区別するというふうなことは、まだそこまでいっている段階ではございません。ただ警察庁のほうは、この道交法の主管官庁でございまするので、かなりいろいろの面からの分析、検討をしているようでございます。それからまた、総理府の中にある調査室が専門的にこの交通問題を取り上げて、各関係各省を集めて長い間取り組んできておりますので、そちらの面にはいろいろな角度からの分析が行なわれております。しかし、それらも大体私承知しておるわけでございますが、いま仰せになったような角度からの徹底した分析ということはまだ行なわれていないようでありますので、おそらく貴重な御指摘として、今後の私どもの努力目標として、そういう点についても分析を重ねていかなければならないというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/97
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098・秋山長造
○秋山長造君 私は、総理府の調査室で一いずれまた総理府を呼んでそういう点を少し政策的な面からお尋ねしてみたいと思っておるのですが、やはりそこらをもう少し科学的に——科学的というか、合理的というか、系統立ててやはり究明して、そうして対策を考えるということでなければ、やはりほんとうの根本対策には私はならぬのじゃないかと思うのですね。何かこうしりの抜けたようなことを一生懸命みんなで追っかけ回しているような感じがするのです。それも、あまりに圧倒的に多いですからね。飲酒運転がきっかけになっている重大事故というのは、ほとんど九十何%と言ってもいいくらいな比率を全体で占めているのじゃないかと思うのです。そういう分析はまた後刻聞くとして、感じとしてはどうですか、あなたのほうの事件を扱われた経験その他からの感じとしては、一体、飲酒運転そのものはあなたのほうよりも警察のほうに聞かなければいかぬでしょうが、その飲酒運転が原因になって刑事事犯を起こしているという例で、そういうあなたのほうの手数をわずらわした事件について、どういうお酒の飲み方をした場合が多いのですか。それから、いまの長距離運転なんかで、トラックの長距離運転の途中でちょっと一ぱいやって景気をつけてまた運転していくというような場合が多いのですか。それとも、全然そういうこととは別に、料理屋かなんかで会合で酒を飲んだその帰りに起こしたような事故が多いのですか。これは感じとしてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/98
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099・川井英良
○政府委員(川井英良君) これは感じとしましても千差万別で、ちょっと申し上げようがないと思うのですけれども、少なくとも、ここにあげました百何例かの中で、飲酒しておった者についてさらに詳細記録について検討していけば、飲酒運転で重大な事故を起こした、その飲酒はどういうふうな形でもって飲んだ酒かということは、少し時間をいただければ検討ができると思います。ただ、どうもいままでの印象としては、ほんとうに飲酒したという者はいろいろな形態から出てきておって、どういうような形の飲酒が多いかということはちょっと申し上げられないような感じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/99
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100・秋山長造
○秋山長造君 この改正案の審議中ならけっこうですけれども、やはりあなたのほうで、そう科学的なぴしっとしたものでなくてもいいと思うのですけれども、少なくともここにあげられている事例について大体のことがつかめれば、またそのときにひとつお知らせいただきたいと思います。それが出てくると、これはある程度飲酒運転による事故というものが——ある程度でなしに、相当程度やはり、政治の手いうか、行政の手いうか、何かそういうものによって防ぎ得るのではないか。そうそうたくさんの人がこういうことで人を殺傷して、そうして刑務所に行かなければならぬという事態は、相当これは緩和されるんじゃないか、防げるんじゃないかという気がするんですね。で、政府のほうで、交通安全国民会議ですか、何かああいう大がかりなこともやられているし、こういう交通白書なんかも相当詳細なものが日をかけて出されているし、それから、政府だけでなしに、府県、市町村なんかでも大ぜいの人が手数と時間と金をかけて安全対策、安全対策ということでやっているにもかかわらず、いまのような飲酒運転というような——考えようによっては、これはちょっとした心がけですわね、まあ運転しているのだからちょっとほしくてもがまんしておこうという気になってもらえば、もうないで済むわけなんですね。そういうことで、みすみす大ぜいの人が犠牲になる、また大ぜいの人が罪に問われなければならぬという事態は相当防げるんじゃないかという気がするんですけれども、だからといって、どうもアルコールを全然禁止するということもできぬでしょうし、そんなことをしたらまた大騒動になるだろうから。だから、少なくとも長距離運転の車なんかの走るような主要道路なんかについては、営業も自由でしょうけれども、何らかの形で規制するといいますか、お酒をあまり飲まさずに済むような対策というものを考えなければいかぬと思うのですがね。そういうことをやったあとで、第二弾として、まあ一つのやむを得ざる便法として、この方便として刑法改正と、こういう順序になれば、一番好ましいと思うのですね。で、あの交通安全国民会議なんかも、法務省なんか当然有力な構成員として発言しておられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/100
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101・川井英良
○政府委員(川井英良君) メンバーとして出て、いろいろな発言はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/101
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102・秋山長造
○秋山長造君 まあ安全会議のことはまた総理府のほうへお尋ねしますが、そこで、大体最近の交通事故、交通事犯についての傾向というようなものが浮き彫りにされてきたような気がするのですが、交通事故といっても、自動車が圧倒的に多いわけですけれども、自動車ばかりじゃない。まあ自動車というても、オーナードライバーもありましょうし、それからタクシーもあろうし、あるいはトラックもあろうし、ダンプもあろうし、いろいろありますが、そういう自動車以外の交通機関ありますわね。そういう交通機関の種別、種類といいますかね、その種類別の交通事故、交通事犯発生の数字というようなものはあるんですか、どうなのか。たとえば鉄道は何件とか、あるいは電車は何件とかいうものがね、この資料の中にありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/102
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103・石原一彦
○説明員(石原一彦君) 四十二年度につきまして、特別報告を検察庁からとったことがございます。そのうち二十六人が自動車以外のものでございますが、二十六人のうち汽車、電車の運転操縦に関係いたしますものが三人でございます。以下順次申し上げてまいりますと、同じ汽車、電車でございましても、運転関係でなくて、踏切、信号関係というのが別に出ますが、これが四人でございます。その次が、土木建築工事の関係がございまして、これが五人でございます。それから船舶操縦の関係が三人、それから火災関係が同じく三人、それから爆発事故関係が二人、次に什器の取り扱い関係が二人、その他四人、合計二十六人となっております。ただいま申し上げましたのが科刑一年以上の分でございまして、これが二十六人でございます。
なお、そのほか科刑一年末満というのが三十一人ございますが、この点については内容がはっきりいたしておりません。なお、罰金が八人ございました。この点につきましても、内容は必ずしもつまびらかにしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/103
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104・秋山長造
○秋山長造君 科刑一年以上ですね、いまおっしゃったのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/104
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105・石原一彦
○説明員(石原一彦君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/105
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106・秋山長造
○秋山長造君 で、いまおっしゃった六十五人、そのうち科刑一年以上二十六人——その六十五人なり一年以上の二十六人なりの、この事故を起こしたときの状態というのはどんなんですか。これは飲酒というのはあまりないですか。その原因はどういうことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/106
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107・石原一彦
○説明員(石原一彦君) この関係におきましては、おそらく飲酒によるというものはないものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/107
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108・秋山長造
○秋山長造君 これはもうそれぞれケース・バイ・ケースで原因も千差万別、しいて求めれば、やはり不注意と言うか、過失ですからね、そういうことが共通しているということだけでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/108
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109・川井英良
○政府委員(川井英良君) そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/109
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110・秋山長造
○秋山長造君 それから、自動車事故がもう圧倒的に多いですから、自動車事故のことについてだけお尋ねをしますが、この自動車事故の中、あるいはその自動車による事犯の中で、オーナーと職業運転手との統計というものはあるのですかないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/110
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111・石原一彦
○説明員(石原一彦君) 検察庁関係におきましてはその統計ございませんが、警察で一応交通事故になりましたものについて車種別な分類をいたしましたものはございます。ただ、いわゆる白ナンバーで、自家用でございましても、もぐりの営業等をやっているものもございますので、その点は不明でございますが、一応車種別の分類だけはできておるようでございます発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/111
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112・秋山長造
○秋山長造君 それはなにですか、さっき警察のほうの統計を、飲酒運転についての統計を後刻出されるということでしたが、こういうものも何かまとまった統計資料というものは警察にあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/112
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113・石原一彦
○説明員(石原一彦君) ただいま手元にございますのは、警察庁の交通局で出しました交通事故統計というものでございまして、あるかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/113
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114・秋山長造
○秋山長造君 じゃあ、それをお願いしますわね。その詳しい数字はその資料を見ればすぐわかるわけですけれども、法務省のほうとしてはどういうように見ておられるんですか。たとえば、これも詳しく内容を事件について調べればわかることでしょうけれども、こういう事故を起こしている、重大事故を起こしている、その内容についてはオーナーと職業運転手との比率というものはどのくらいに見ておられるんですか、大体の傾向でいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/114
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115・石原一彦
○説明員(石原一彦君) 四十年度の、これも警察の統計によってではございますが、事故原因の総合計約五十四万七千件のうち、貨物自動車によりますものが約三十万件でございます。次に、乗用車によりますものが二十五万件程度でございます。その他は特殊自動車、自動二輪車、原付等でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/115
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116・秋山長造
○秋山長造君 いまおっしゃった乗用車の二十五万というのは、その中には営業も含まれているわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/116
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117・石原一彦
○説明員(石原一彦君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/117
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118・秋山長造
○秋山長造君 この乗用車の二十五万の中に、これはもう詳しい正確な数字をお尋ねするわけじゃないんですけれども、その事件を扱われて、傾向としてはどうですか、オーナーと職業運転手と大体どのくらいな比率になっているものですか。大体でいいです。傾向だけでいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/118
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119・石原一彦
○説明員(石原一彦君) まあ、具体的な数字を持っておりませんので、単なる印象的なことになりますが、オーナードライバーによる事故が相当数あると、かように考えております。と申しますのは、いろいろな統計のとり方がございますが、件数だけから申し上げますと、営業車による事故が多いわけでございます。しかしながら、いわゆる走行距離をもとにして計算をし直さなければほんとうの事故の多い少ないはわからないのではなかろうか。オーナードライバーの場合には走行距離が少ない、営業車の場合には走行距離が多いということがございまして、その点について分析いたしますと、オーナードライバーのほうが多いという統計が警察庁からも示されておりますし、事件を見ましても、さように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/119
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120・秋山長造
○秋山長造君 それから、まあ一番顕著な例は、この資料に書かれているような例ですが、こういう重大事故の地域的な分布と言いますかね、それは当然東京や大阪のような大都会が多いのでしょうけれどもね。まあ、最近はこの重大事故がわりあい、こうずっとまんべんなく地方へ分散しつつあると言いますか、まあ東京や大阪もふえるが地方もふえるということかどうか、そこらの点をちょっとお伺いしておきたいのですが、それと、地域的な分布状態ということと、それから、まあ大体地域的な発生の大体の傾向というようなことをお示しいただきたいと同時に、ここに掲げてあるようなもろもろの重大事故というのはどういう地点、たとえば一口に東京、大阪のような大都会と言うても、そういう都会の中のどういう地点で主として発生しているのですかね。何かこう共通したような一つの傾向というものがあればお示しいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/120
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121・石原一彦
○説明員(石原一彦君) 交通事故の場所的発生状況につきましては、私ども交通事故の広域化ということばを実は使っているわけでございますが、秋山先生の仰せられるとおり、大都市から中小都市へ伝播と言いますか、分布関係が広くなっているという傾向が見られております。
で、なお重大な人身事故に関して申し上げますと、これは必ずしも大きな都市に集中しているとか小さな都市に集中しているとかという傾向が見られないようでございます。その理由を警察庁の当局と話し合ったことがございますが、最近は、幹線道路だけを走るのではかえって時間がかかるというようなことから、非常にこう近回りと言いますか、時間的には近くなる。遠く回るのだけれども時間的には近くなるということで、非常に小さな道路にも車が入るようになったと、そういうところでの事故が散発し始めているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/121
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122・秋山長造
○秋山長造君 そういたしますとね、まあ近回り事故が散発しておるというような一つの新しい傾向ではあるのでしょうけれども、しかし、それは数から言うとそう大きな比率を占めるわけじゃないでしょう。たとえば地方へだんだん広域化しつつあるというのが全般の傾向で、数もそういう数字を示しているのでしょうけれども、具体的にそういう重大事故で大ぜいの人を殺傷するといったような事故が起こった場合、たとえばその場所は、町の繁華街の十字路だとかあるいは裏町の路地とかいうようないろいろ具体的な事故の発生した場所というものがあるでしょうが、そういうものを共通した一つの特徴、たとえば繁華街の十字路付近で起こした事故が多いとか、あるいは学校の前で起こした事故が多いとかいうような、何か一つの傾向というものはありますか、ないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/122
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123・川井英良
○政府委員(川井英良君) これは将来しさいに検討していけば何かが出てくると思いますけれども、いままでのところでは、そういう努力を私どもも警察庁のほうもやっておりますけれども、まだはっきりした傾向は出ておりません。たとえば東京都内で申しましても、人身事故が起きたようなところは、ここで人身死亡事故が起きたから注意しろというような立て札を交通警察が立てて注意を喚起するというようなことを指導いたしておりますので、人身事故が起きたところでもう一回人身事故が起きるというようなことは、絶無ではございませんけれども、非常に少ないようでございます。ただ、踏切なんかでもって同じような人身事故が続いて二度起きたという事例は報告になっておりますけれども、一般の道路とか学校その他のところで続いて何度も同じような死亡事故、重大事故が起きたというようなことはないようでございますが、ただ、もっとしさいにいろいろの角度から数字を集めて適確に分析していけば何らかの傾向が出るかと思いますけれども、今日のところは、私どものほうで取り扱っている事故報告に基づいて検討したところによりますというと、これは場所的にまことに千差万別で、一定の傾向がいまのところつかまえられておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/123
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124・秋山長造
○秋山長造君 交通機関別の数字は、さっき警察のほうの資料をいただくことになっているわけですが、大体、さっきも局長がるるおっしゃったように、この資料にあげているような重大な人身事故については、自動車の台数が非常にふえたとか、あるいは道路がそれに追いつかない、人道、車道の区別もないようなところを大きな車がどんどん走らざるを得ないというような、いろいろ事故が発生した背景というものが一つと、それからもう一つは、そうはいいながら、それとは別に、運転者本人をめぐるいろいろな問題、事情、この二つあるというお話ですが、ここにあげられているような重大事故について、本来厳格に言って、運転者そのものの責任ずばりと言っても、運転者そのものの全面的責任という事故もありましょう。それから同時に、運転者の責任ももちろんあるが、しかしそれ以外に、いまの交通事情とか、道路事情とか、あるいは安全施設が整備さるべくしてそこまでまだいっていないようなことが、それに加わって起こる事故ということもあるのですが、そういう運転者も、一〇〇%運転者そのものの責任という場合と、それ以外の外的ないろいろな条件の加わって発生した事故というようなものの区分けをしたような統計というか、その傾向を知るような資料というものはあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/124
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125・川井英良
○政府委員(川井英良君) これはたいへんむずかしい統計になると思いますが、私どもでいままでやりました検討を申し上げます。大体昨年度で約四十五万件、一昨年三十九万件で、約四十万件の事件を受けましたが、検察官が調べまして、結局運転者に過失がある、これは刑事責任を負わなければいけないということで起訴しましたのが大体が七割から七割ちょっと出る程度くらいを起訴しております。したがいまして、残りの三割ないし二割五分程度のものは全然運転者に過失がないということで、嫌疑はないということで不起訴になったり、多少の過失は認められるけれども相手方にも過失があった、被害者にも過失があったということで起訴猶予されたりしたものは大体三割くらいでございます。そこで、残りの約七割程度が裁判所に起訴されて、これは運転者の過失ということに一応検察官が認定するわけでございますが、その中で、運転者だけの過失にとどまらず、たとえばトラックの運転なんかで、その業務主に道路運送法違反があるとか、あるいは労働基準法違反があるとかということで、運転者を二百十一条で処罰するとともに、そういうふうな関係で道路運送法ないしは労働基準法、そういうようなものの違反でもって、あわせてその運転者以外の者の刑事責任を問うたというふうな例も最近はかなり多くなってきておりまするけれども、その七割の中で、いま申し上げましたような周辺の刑事責任まで問うたという例は必ずしもまだ多くはないわけでございまするけれども、漸次、かなりの数があらわれてきておるというふうな程度が——ただいまの御質問の趣旨にぴったり沿うわけではございませんけれども、ややそういうふうな方向に向かっての私どもの検討の結果でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/125
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126・秋山長造
○秋山長造君 運転者以外のいろんな外的な要件ということになりますと、これはなかなか検察当局で、じゃあどこまでがどうということは、なかなかそこらにも限界が、むずかしい面があると思うのですが、むしろこれは法務省というよりも、政府自身あるいはほかの役所の受け持ちの問題じゃないかと思います。その運転者の責任を問うと同時に、あわせて業主といいますかね、雇用主といいますかね、そういう者の責任を問うという例はどのくらいあるのですか、何かありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/126
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127・石原一彦
○説明員(石原一彦君) 道路交通法違反の中に安全運転管理者等に対する責任を問う規定がございまして、それで申し上げますと、そういう警察の統計でございますが、昭和三十八年は合計いたしまして五千四百七十七件、昭和三十九年が五千八亘一千四件、昭和四十年が六千九百三十九件、昭和四十一年が六千九百三十件と相なっております。なお、昨年の十一月一日、道路交通法の改正によりまして、これまでの条文以外にも責任を問える条文が入りましたので、昨年の十一月一日以降はこの件数がさらに増加するであろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/127
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128・秋山長造
○秋山長造君 いまおっしゃったのは、道交法違反で雇用主の責任を問うた件数ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/128
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129・石原一彦
○説明員(石原一彦君) さようでございます。
なお、申し落としましたが、ただいまは道路交通法違反の、違反の分を申し上げたのでございますが、そのほか労働基準法違反の件数がございます。それでこの点につきましては、昭和三十七年におきます交通だけでございますが、十六人、それから昭和三十八年十九人、昭和三十九年十五人というような件数が公表されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/129
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130・秋山長造
○秋山長造君 雇用主の責任をあわせて問われた件数というのは相当多いんですが、この基準法違反は非常に少ないわけです。これは必ずしも実態をそのままあらわした数字かどうかということには私多少疑問を持つんですがね。といいますのは、さっきも局長の御答弁にありましたように、たとえば悪質な事故を起こしたような場合についても、本人の問題で、関連して、たとえば非常に長距離トラックなんかに該当すると思うのですが、非常に過重なノルマを課されて、あるいは過重なノルマと言えぬまでも、事実上やはり睡眠時間も十分とれないで、しかも、何時から何時までに荷物をどこそこまで届けなきゃいかぬという、そうすると時間的に追われておりますから、だから、いやおうなしに過重ノルマなんていうことになっておる例はこれはずいぶん多いだろうと思うのですね。だから、居眠り運転なんかいうようなことができやすい。それをやるまいと思えば、さっきの話で、ちょっとドライブ・インに入って一ぱいひっかけて、その酒の刺激で元気を出して、またから元気でやっていくというような事情がわりあい多い。それからハイヤーなんかでもそうですが、トラックなんかにしても、大体賃金の実態というのは、きちっとした賃金を払っておるという例はわりあい少なくて、大体の実態としては、何か歩合賃金と言うんですかね、まあかせぎ高で適当に分ける。まあ、それから賃金の遅配だとか欠配だとか、それから運転時間にしても労働時間というワクに入るんでしょうけれども、基準法にきめられたようにきちっとやっている業態というのはわりあい少ないんじゃないか。ほとんどの場合、まあ基準法なんかに関する限りは、こういう業態というのは無法地帯と言いますか、基準法についてはほとんどもう無法地帯のようなかっこうでやられているのが多いのじゃないかと思うのですがね。したがって、そういう実態から言いますと、いま課長のおっしゃった、基準法違反で責任を問われた数は年に十五人か十六人程度だというのは、実際の実態とはどうもだいぶかけ離れた数じゃないかという——私も確たる根拠を持って言うんじゃありませんよ、言うんじゃありませんけれども、実際問題としてはほんとうに言うたら基準法違反というのは非常に多い。あるいは営業用の自動車なんかほとんど全部じゃないかという感じがするんですがね。その点いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/130
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131・川井英良
○政府委員(川井英良君) 労働基準法違反は労働基準監督官が司法警察権を与えられておりまして、随時調べて、そして悪質なものを検察庁に送ってくるということに相なっておりますので、先ほど刑事課長が御説明しましたのは、労働基準監督官が監督実施をした結果、刑事処分が必要だと、こういうふうに認めて送ってきた最も悪質なものが十何件かある、こういう御説明を申し上げました。その後私どものほうから労働省のほうに問い合わせをいたしましたり、また、検察官のお立場から強い実施を、監督を要望いたしまして、その後に私の手元に参っている数字によりまするというと、四十年度は三千六百三十九件の自動車業の事業場について監督を実施いたしております。その結果検察庁に送検されましたのが三十四という数字を四十年度は示しております。それから、四十一年度におきましては飛躍的に増加いたしまして、一万六千九百三十六の事業場について監督を実施いたしまして、送検された数字が三百五十四件ということに相なっております。四十二年度は二万二千五百三十三の事業場について監督を実施いたしまして、これは一月から十月までの数字でございますが、その間に百五十七件の送検がなされております。したがいまして、いままでは——三十九年ごろまでは、わりあいに監督の対象も少ないし、したがって、送検の数も少なかったようでございまするけれども、四十年以降におきましては、監督も事業場も非常にふえましたし、したがいまして、それに応じて悪質として送検される数字もかなり増加してきた、こういうことが言えるのではないかと思いますが、まだこれで必ずしも十分だとは思っておりませんので、労働省の労働基準局とも緊密な連絡をとりまして、このほうの面についても厳格な処理をいたすように私ども会同などあるたびに強い要望をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/131
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132・秋山長造
○秋山長造君 これはあなたのほうよりも労働省のほうにお尋ねしなければいかぬことだろうと思うのですけれども、ただし、その労働基準法が厳格に守られない、ルーズになっているために起こった事故についての処理はあなたのほうで引き受けなければならぬわけですから、直接、間接に非常に関係が深いと思うのですけれども、何万という業態を監査をして、そして百とか二百とか三百とかというのが送検をされている。これはおそらくいま急にふえたということよりも、大体もともとまあ基準法違反はたくさんあるのがいままでそこまで行き届かなかった。それが少し行き届きだしたので、網にかかりだしたということじゃないかと思うのですがね、実態としては。しかし、まあそれにしても何万という業態を調べて、あなたのほうの手にかかるのはまあわずかですけれども、その他の、あなたのほうの手元まで来ないのは、じゃあ全部基準法が厳格に守られているのかといいますと、私はそうはいかぬと思うのですね。よくよくの目に余るのがあなたのほうに来ているのであって、厳格に言えば、ほとんど全部じゃないか、しかし、送検するところまではまあかんべんして、ひとつ注意くらいで許してやったという例がほとんどじゃないかというように私は思うのです。まあ、労働省のほうでも基準局長の通達なんかも出されて、そして自動車運転者の労働時間、その他労働条件の改善というようなことを督励してはおられるようですけれども、なかなか今日の基準監督署の陣容ではとてもこれはそう行き届いたことはできぬと思いますが、しかし、それにしても、やはり法務省としては無関心ではおれないわけであって、この自動車運転者の労働時間、労働条件というものについてはひとつもっともっと関心を持っていただいて、この交通関係の業者の自覚を促してもらわにゃいかぬと思うんですがね。これは、なんですか、こういう問題について労働省のほうとあなたのほうとで何か定期的に話し合われるとかなんかというようなことはあるんですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/132
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133・川井英良
○政府委員(川井英良君) 労働省の労働基準局と法務省の刑事局との間には大体年一回、四月の初めに、従来は意見の交換をいたしまして、過去一年間における違反の実態にかんがみまして、本年度はどういう方面に重点を置いて査察を行なってもらうか、その行なうについてどの程度のものを刑事処分にし、どの程度のものは行政処分にするかというようなことについて話し合いを従来しております。そこで、この労働基準監督官の方は、御承知のとおり、司法警察権を与えられておりますけれども、多くは行政指導によって、ささいなあれでしたら一回くらい警告を与えて、そして様子を見る。警告にもかかわらず再び同じような違反を行なっておったというふうなものを悪質として送検をするというふうなのが従来とられてきた一応基本的な方針になっております。もちろん、最初一回発覚いたしましても、きわめて悪質なものはもとより例外として直ちに送検するというような方向に相なっておりますけれども、従来定期的に意見の交換をして、そしていままでそういうふうなことについて話し合いをしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/133
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134・秋山長造
○秋山長造君 そこらの全国的な、あるいは全般的な実態の把握というようなことは、あなたのところと労働省の労働基準局あたりで、やはり交通運輸関係の業態についてもやられておるのですか。私思うのは、こういう営業用の特にトラックなんか、いわば全国をまたにかけて歩いておるわけです。鹿児島の辺のナンバーをつけたのが北海道を走ったりなんかしているという状態なんです。したがって、よほど何らかの形で行き届いた監督をしてもらいませんと、なかなか一口に業態——業者の実態をつかむと言ってもつかみにくいので、これは自動車にしてもそうだし、船舶なんかにしてもそうでしょうし、なかなか個々の具体的な実態というものがつかめぬということ。だから、結局ばく然とした、何かとにかく基準法がルーズになっているらしいが、さればといって、はっきりした証拠はつかめない。したがって、基準局のほうが問題にするにしても、はっきりした証拠というものがつかめぬものだから、どうも中途はんぱで終わってしまうと、片方はそれをいいことにしてどんどんやるということになるのではないかという気がいたしますので、その点の。私、いまのあなたのほうと労働省と定期的にやっておられるということはもちろんけっこうですけれども、それで十分とは言えぬのが実態じゃないかと思うのです、正直なところ。何かそういう点もう少しきちっとやれるような対策をひとつ研究していただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/134
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135・川井英良
○政府委員(川井英良君) まことにそのとおりだと思いますので、今後私どもも、私どもの面から協力して努力をいたしたいと思います。四十一年度から飛躍的に監督事業場の数がふえましたときの状況について、ほかの委員会で、労働者の労働基準監督官の責任者が出てまいりまして御説明をしているところを拝聴したところによりますというと、この自動車業界に対する労働時間の違反、あるいは休日違反ないしは割り増し賃金の不払いというようなことについて、非常に弊害が出てきているということに着眼をいたしまして、体制を整備して、そして非常に強力な監督実施を行なったという結果がこういう数字になってあらわれてきているので、今後も引き続きこの体制を維持して、この方面についての基準の監督を強化してまいりたいというような趣旨の説明がございましたが、なお私どももこれに協力いたしまして、一そう御趣旨に沿ったような方向でもって努力をしなければならないと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/135
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136・秋山長造
○秋山長造君 飲酒運転、無免許運転、まあ無謀運転、この三つがいわば交通三悪といわれるものだろうと思うのですが、いまの基準法なんかとも関連して、疲労のための居眠り運転ですね、居眠り運転による事故というのはどの程度比重を占めているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/136
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137・川井英良
○政府委員(川井英良君) これもこの重大事故についてごらんいただきますと、ところどころにあるところでございますが、居眠り運転というのも重大事故の中では目立つものの一つだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/137
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138・秋山長造
○秋山長造君 やっぱりいまの飲酒、無免許、それから無謀運転、それに次ぐくらいなやはり比率を占めますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/138
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139・川井英良
○政府委員(川井英良君) それに次ぐほどの比率ということでありませんで、その三つを除いた以外のものの中ではかなり目立つ原因ではないかと、こういうふうな感じです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/139
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140・秋山長造
○秋山長造君 このいただいている資料の重大事故の中に居眠り運転による事故というのはありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/140
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141・川井英良
○政府委員(川井英良君) あるはずです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/141
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142・石原一彦
○説明員(石原一彦君) 御配付申し上げました資料の二五ページでございますが、その3の猿投事件、これは眠け運転、居眠り運転でございます。なお一の西宮のタンクローリー炎上事件。これも疲労のためにやはり居眠りをしていたという事件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/142
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143・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/143
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144・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 速記を起こして。
本案に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。
本日はこれにて散会いたします。
牛後一時十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01119680418/144
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