1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年四月二十五日(木曜日)
午前十一時二十五分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 北條 雋八君
理 事
青田源太郎君
梶原 茂嘉君
秋山 長造君
委 員
木島 義夫君
紅露 みつ君
山本茂一郎君
亀田 得治君
山高しげり君
国務大臣
法 務 大 臣 赤間 文三君
政府委員
総理府総務副長
官 八木 徹雄君
法務省刑事局長 川井 英良君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
説明員
内閣総理大臣官
房参事官 占部 英雄君
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本日の会議に付した案件
○刑法の一部を改正する法律案(第五十五回国会
内閣提出、第五十八回国会衆議院送付)
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001・北條雋八
○委員長(北條雋八君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
刑法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。
御質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/1
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002・秋山長造
○秋山長造君 前回に引き続きまして、きょうは副長官に来ていただいておりますので、交通問題の政府としての総合的な対策というようなことを中心に若干お尋ねしたいと思うのですが、ただ理事会にちょっと時間がかかり過ぎましたので、十分なお尋ねもできないのですけれども、時間の許す限りお尋ねしたいと思います。
四十二年——去年一年の交通事故のうち、人身事故といわれるものだけでも五十二万一千四百八十一件から発生しております。そのうち死者一万三千六百十八人、負傷者六十五万五千三百七十七人というような膨大な数字になっていることは、御承知のとおりでございます。こういう人身事故ももちろん含めての交通事故全部についての話ですけれども、こういう交通事故が頻発する、激増するというこの根本原因は一体何かということについて、当然総理府のほうでもお考えになっていると思うんですけれども、今日のいわゆる交通事故、交通問題の根本原因というものは何かということについて、ひとつお考えを聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/2
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003・八木徹雄
○政府委員(八木徹雄君) 交通安全対策の総合調整の役割りをしております総理府の立場で申しますと、あらゆる要件が積み重なっておると思うのでございます。一つは、やはり道路交通環境——道路自体の問題、道路に施設されなければならない踏み切だとかあるいは歩道橋だとかいった安全施設もまだ十分ではないという問題。もう一つは、やはり自動車の構造上の問題、なお経済の非常な発展に伴い、また国民の消費水準の向上に伴う飛躍的な自動車の増加傾向の問題、それに対応する運転手の質の問題、それの背景になります安全教育であるとか、あるいはこれは歩行者のほうの分もあるし、運転者自身のほうにもありますし、そういう問題。とにかく交通安全に関連するあらゆる環境というものが十分に解明できてない、それぞれの問題をそれぞれ片づけていかなければ問題の本質的な解決ができないというような、そういう傾向だと思うのであります。そういう意味において、われわれはそのあらゆる分野についてできるだけすみやかにこれが整備をはかっていくように努力しておるところでございますけれども、秋山先生御指摘のとおり、なお犠牲者は大幅に漸増するという傾向で、非常に遺憾に思っておりますけれども、今後交通安全対策本部の活用を通じましてこれらの絶滅のために懸命の努力を払ってまいりたいと、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/3
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004・秋山長造
○秋山長造君 いまおっしゃった点は、もちろん私も別に異論はないわけでございますけれども、ただ、いまおっしゃったようなことだけではなしに——いまおっしゃったようなことが全部それぞれ整ってくればだいぶ交通事故等が減るであろうということは考えられるのですけれども、そういういろんないまおっしゃったような施策を整えていくためには、やっぱりこれは政府が基本的な一つの交通政策といいますか、基本的、総合的な交通政策というものをやっぱり持たれなければ、これはばらばらにはできぬと思うのです。そのために、交通対策本部とかあるいは交通安全国民会議とかいうようないろいろなものをつくって努力をされてきたのだろうと思うのですが、ただ、それらのせっかくの御努力ではあるけれども、まだどうも、率直に言いまして、個々にはいろいろ問題にするけれども、ほんとうに政府が本腰を入れてこの交通問題と取り組んでおるところまで来ていない感じを持つのです。
それからもう一つは、ただ、いまおっしゃったようなことだけでなしに、大体高度成長政策というようなことで、各いろんな交通関係の企業が競争も激しい関係もあって、どうしても交通安全というようなこと、あるいは安全輸送というようなことをイの一番に考えていかなければならぬはずなんですけれども、事実上それがあと回しになりまして、とにかく競争に勝たなければいかぬ、少しでもかせいでもうけなければいかぬという、どう言いますか、交通企業の営利主義といいますか、営利第一主義というようなことに走り過ぎておるという面があるのではないか、これも私は重要な、交通事故がこのようにどんどんふえている大きな原因じゃないかと思うのです。たとえば、始終この運賃値上げなんかが行なわれ、それを政府が許可する場合に、必ずその条件として、値上げ分というものは安全施設その他の充実ということへ振り向ける、そうして事実上のこのサービスを向上するというようなことが政府が許可される条件にいつもついておるわけです。それから、その企業のほうが値上げの申請をする場合にも、値上げの申請に必ずそういうことをうたっているわけですね、いつの場合にも。ところが、いまだかつて、それがそのとき約束されたとおりにほんとうにやられておるかというようなことについての確認ということは、政府もおやりにならぬし、また企業自身もそこまでほんとうに良心的に私はやっていないと思うのですよ。ただその場限りの美辞麗句に終わって、実際にはもうますます営利主義に走っている面が非常にあるのではないかというこの点が第二。
それからもう一つは、やっぱりこれはもう国鉄なんかのような国営事業も例外じゃありませんが、公営にしても、民営にしても、そういう交通機関の従業員、労働者の——まあいろんな面を含めて広い意味で言うのですけれども、労働条件というものは依然として非常に諸外国に比べて立ちおくれている点があるんじゃないかと思う。特に民間の小さい企業なんかにおきましては、これはもう労働時間にしても、また夜勤の状態にしても、それから賃金なんかのあり方にしても、これは全くでたらめだと言うてはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、極端なことばをもってすれば、全くでたらめのもうやりほうだい、やりっぱなしの状態じゃないかと思うのですね。労働基準法なんかに一番はまってない、まあことばをかえて言えば、労働基準法違反が普通の状態というような状態で放任されていると思うのですね。で、さっき副長官のおあげになったこと以外に、そういう問題がやっぱり整ってこないと私は十分じゃないというように思うのですが、そういう点についての総括的な御見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/4
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005・八木徹雄
○政府委員(八木徹雄君) 御指摘のようなことが現実にあるわけでございます。確かに交通事故の激増する原因の中にそういう企業体質というものが一つの問題点としてあるということは否定できないと思います。総合調整をやる総理府といたしましても、そういう意味において、責任官庁であるそれぞれのところに問題の本質的な解決のための努力を絶えず要請をしておるところでございます。御指摘のように、大企業であっても、たとえば例をあげるとまことに失礼と思いますけれども、南海電車のように、ああいう問題が何回も頻発するといったような現象がある。歴代運輸大臣はそれに対して厳重なる勧告をし、運賃を値上げするときには、電車の安全装置について、あるいは軌道の安全性の確保のための整備について、また労働条件についても過労に至らないような勧告というものをしながら、そしてまた企業はそれを約束しながら、しかもああいう事件ができておるということが現実でございますので、それらの点をさらに究明していくということが大事であろうと思いますし、政府としてもそういう方向で努力しておるところであろうと確信をいたすものであります。また、御指摘のように、ダンプなどに見られるような、世間でいういわゆる一匹オオカミ的なものから、それに毛のはえたような中小・雰細企業というものが労働過重の傾向を一つ助長しておる。そのこと自身が居眠り運転につながる、また事故のもとになるという現象を繰り返しておるわけでございますので、ダンプ規制法の中にもありますように、これが根本的な解決のためには、企業の安定をはかっていく、その意味においても企業の合同といったようなものをひとつ推進さしていかなきゃならぬといったようなこともやっておりますが、それがまだ実効をあげるほどの整備ができていない——これは答弁する側としても非常に言いづらいことでありますけれども、これはやはり精力的に、集中的にその問題に取り組む姿勢を行政全体がひとつ堅持をして、そして一朝一夕に直ることでないでありましょうけれども、一朝一夕に直らないからという前提で放任されてはならぬことでありますので、一そう努力を重ねて、そういう社会的ムードといいますか、企業そのものを変えさしていくような、そういう方向に全力を注いでいくようにしてまいりたい。交通安全の問題というものは、国民全体の総ぐるみ運動でこの問題の解決をはからなきゃならぬという、そういう意味合いから交通安全国民会議など開いてその意見も徴しておりますけれども、そういう御指摘を絶えずいただき、またその方向の改善のために国民会議自体も献策していただき、また国民会議の構成メンバーである団体側も協力をしていただいておるところでございますので、なお一そう努力を重ねて一日も早くそういう悪循環を断ち切るようにしむけてまいりたいものと、こう考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/5
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006・秋山長造
○秋山長造君 たとえば、いまの交通業者が運賃値上げなんかを申請する場合、あるいはそれを許可する場合の条件とされているサービス向上とかあるいは安全施設の整備とかいうようなこと、これはもう実際に約束どおり履行されてないということは副長官もお認めになったわけですが、これをただ約束を守らぬからしかたがないでほうっておくんでは、これはもう政府の責任は済まぬと思うのですが、そういうことをもう少し秩序立って監視をし、そうして確認をしということはおやりにならぬのですか。さしあたってそういう面の監督官庁は運輸省でしょうけれども、運輸省なんかは、走らすほうにばかり熱心で、どうもこういう交通安全あるいは安全施設の整備というようなことはまことに不熱心なといいますか、大ざっぱにやっておられるのじゃないかという感じがしていかぬのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/6
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007・八木徹雄
○政府委員(八木徹雄君) 不十分だということで、そういう御指摘があると思うのであります。しかし、行政当局においてはそれで手をこまねいているかというと、そうではないと思います。定例的な安全点検ということを行なっていることはもちろんでありますけれども、そうではなくて、運輸大臣なども言明しておりますように、臨時に緊急の点検を行なう、あるいは機械化に対する約束事項が守られておるかどうかということについての追及もするというようなことをもちろんやっておるわけでございますけれども、それでいてなお事故ができておるということでありますので、だから十分ではもちろんないわけでございますけれども、やはり行政当局のほうが安全点検について、約束を守っているか守っていないか、決して放任しているということではないと思いますが、なお一そうひとつ念には念を入れろということがございますわけでございますから、そういう意味において努力を一そう重ねさすように総理府からも十分に注意をさすようにいたしたい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/7
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008・秋山長造
○秋山長造君 たとえば、さっきおっしゃった車の構造上の問題があるという御答弁があったのですが、国際的に見ましても、日本の車くらい、もう型にしても、何にしても、いろんな面が千差万別で、なかなか複雑雑多な国というものはあまりないのじゃないでしょうかね。そこらに一つ交通安全問題の問題点があるということの御指摘だと思うのですが、たとえば、せんだってテレビで私ちょっと見たんですが、いまの日本の車のバンパーはどうも衝突したときなんかに必要以上に事故を大きくする、バンパーなんかもう少し弾力を持たしたバンパーができぬかということでどこかで試験をやっておるということがありましたが、そういうことを個々にはやっておるところはあっても、それがなかなか全般の施策としてあらわれてこない。これはどこに障害があるのですか。案外同じ政府でありながら、通産省あたりにそういう方面の抵抗が部内にあって、そういうことがうまくいかぬのじゃないかという疑問を持つんですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/8
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009・八木徹雄
○政府委員(八木徹雄君) よく御指摘されるところでありますけれども、一つはやはり過当競争というものか、そういう安全施設に対していささか不感症であったというようなことは、いままでとしては言えるのではないか、こう思います。そういう意味合いで、売らんかなという体制だけではなくて、やはりある意味においては乗りものは凶器にもなるわけでございますから、その意味における安全性の確保ということについては十分に留意すべきである。これは交通安全の閣僚協議会の中でも指摘されて、日本の自動車の構造上の問題につきましても、漸次改善の方向に向かっておりますし、また通産省自身も企業合同等を推進すろことによって、車種の何といいますかある程度統一化の方向に向かっているということもあり、それらの問題がようやく緒につきかけたところだ、こう言っていいのではないかと思います。各国ともに、自動車の安全装置、安全性を高めるための技術改善については努力をしておるところでありますし、日本の輸出の大きな柱にしようとする自動車のことでございますから、そういう意味からいきましても、少々おそきに失したうらみはあるかもわかりませんが、企業家のほうもいまは、安全性を無視した自動車の販売というものはあり得ないという、そういう企業方針というものも確立してきて、そういう方向に行こうとしておるところであろうと思いますので、さらにそれらの点について拍車をかけるように努力をいたしてまいりたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/9
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010・秋山長造
○秋山長造君 通産省の部内にそういうことについての抵抗があるということは、私ただばく然と感じておるんじゃなしに、いろいろあるんですよ。あるんですけれども、きょうはもう時間がありませんから、その点はさらに質問をしませんけれども、そういうことを一つとってみましても、どうも政府のほうにも交通安全閣僚協議会といういまおっしゃるような機関があり、交通対策本部があり、またがっては交通基本問題調査会というようなものがあり、それから交通安全国民会議というものがあり、それにならって都道府県にも都道府県の交通安全県民会議というものがあり、さらにまたそれとは別な都道府県の交通対策協議会というものがあり、またさらに民間団体として交通安全協力会というものがありますね。それから交通対策協議会もあり、交通安全対策協議会——安全だけくっつけたまた別な組織もある。ざっと目ぼしいものをあげても、そういうふうに交通安全をはかるという趣旨でいろいろな団体、似たような機関、似たような組織が中央・地方にあるわけですね。これはとってもたくさんあると思うんですよ、各地区それぞれに。それはそれでそれぞれの理由があってできておることとは思うんですけれども、これだけいろいろなものがあって、そうして口を開けば交通事故が問題になり、交通安全対策が問題にされながら、しかも交通事故はますますふえる、また犠牲者もますますふえるということは、一体どこにその問題があるのか、根本は何だということになりますと、結局はしかたがない、やっぱり政府に責任を引き受けてもらわざるを得ない。まあ総理府にも調査室か何かあるようですけれども、その程度のことで事務的にただやっておるだけではこれはもうどうにも追っつかぬと思うのですね。だから、政府自身の交通安全対策というものが、さらにそれを具体的にやっていく機構だけでも、組織だけでも、これだけ何やかやごちゃまぜにあるのですから、これではばらばらでまとまりがつかぬと思うのですよ。数の多いことは別に悪いとは言いませんけれども、多ければ多いなりに、全体としての意思の統一、まとまり、調和というものがなされて動いておるのでなければ、これはやってみるだけで何にも効果のあがらぬことに終ってしまうのではないかという気がするのです。たとえば交通安全国民会議なんかだって、なかなか打ち出しは大げさでりっぱなもののようですけれども、その中身——交通安全国民会議が四十年につくられてそれ以来ずっとやっておられるわけですけれども、その内容ということになると、何か総花的で、ただ場当たりな意見を言い合ってみるだけに終わっている。まあいわば政府自身の気休めのようなことに終っているんじゃないかという感じがするんですけれども、交通安全国民会を四十年から三年間やってきて、これをやったためにどういう効果があった議か、どういう面がどういうふうによくなったというようなことを端的にここでおっしゃるようなことが何かありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/10
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011・八木徹雄
○政府委員(八木徹雄君) 秋山先生の御指摘のとおり、確かに交通安全対策的なものに対して、いわゆる会議だとか、協議会だとか、本部だとか、いろいろのものがあって、いわゆる評議倒れに終わっているのではないか、そういうお気持があるのではなかろうかと思うのであります。決して、そのかっこうだけをつけて、そして何かやっておるようなポーズだけをするといったような、そういう気持ちは毛頭ございません。流れとすれば、行政当局の責任においてやらなければならない対策本部の系統、それから民間団体を含めた民間の御意見を十分に取り入れ民間の協力をお願いする国民会議的な流れ、それから民間独自でやっておる交通安全協会的な仕事、それぞれはそれぞれの役割りがあって、そしてそれぞれ十分にその努力をしていただいておるわけでございますが、われわれは、国民会議の議を徴し、それが対策本部に反映をし、最終的には閣僚協議会の中に持ち込んで、具体的施策として予算化、法律化という方向でものごとの処理に当たるようにいたしておるわけでございます。しかし、御案内のとおり、これがほんとうに軌道に乗ったのが昭和四十年以降ということでございますので、四十年以降に数々のことをやらしていただいておりますけれども、このことは、ちょうど政府委員も来ていることでございますから、政府委員のほうで、昭和四十年以来とった予算の傾向、あるいは対策の傾向、あるいは法律案の傾向といったようなものについては、あとで説明させてけっこうだと思いますが、まだまだその激増する交通事故に対処するのに何か追っかけられているようなかっこうでございまして、これを未然に防止するというところの万全の対策ができるというところまで行っていないことは、これはもうまことに遺憾ながら認めざるを得ないと思いますけれども、いまのように追っかけられる行政から、これをひとつ前に立ちふさがって防止できるところまで行くように、懸命のかけ足で努力をしていかなければならないのではないか、そういう意気込みをもって、まあ総合調整の役割りを持っております総理府といたしましても、それぞれの機関を活用しながら、いま一生懸命努力をいたしているところでございます。ひとつ御協力もいただきたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/11
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012・秋山長造
○秋山長造君 安全対策は交通事故に追っかけられているのじゃなしに、交通事故のほうが先行して政府の安全対策のほうが追っかけているのですけれども、なかなかだんだんその距離が広がる一方で追っつかぬという、交通対策のほうが追っつかぬことだろうと思うのですが、それで、たとえば交通基本問題調査会というのがありましたね、前に、島田さんが会長でやっておられた。あれが三十九年の三月に一応の結論をまとめて答申を出したわけですが、その中にも、すみやかに政府の責任で交通安全基本法というようなものをつくって、そして国として法制的にも組織的にもこの交通安全というものに本格的に取り組んでいくという体制をつくれという答申ですが、これなんかだってもう三十九年の三月に出ているのですからね。今日までまる四年たっているわけですね。それでいまだに交通安全基本法というものもできない。まあ政府のほうはこれは投げ腰になって、むしろ与党のほうにでもやってくれというようなことになっているようですが、何かこの間与党のほうでまあある程度交通安全基本法の筋書きみたいなものがまとまりかかったというような話を聞きましたけれども、これなんかも私は政府としてはこれは全く自信喪失というかっこうじゃないかと思うのですがね。本来これは、与党のほうでやってもらうのじゃなしに、政府自身が——これだけの膨大な機構を、手足を持っておられるのですから、政府自身がやっぱり、そのせっかく答申が三十九年の春出ておるのですから、それに基づいて真剣に取り組まれて、もうとっくに堂々たるどこに出しても恥ずかしくないような総合的な交通安全基本法というようなものぐらいはつくっておられてしかるべきだと思うのですけれども、一体この交通安全基本法というものはこれからどうされるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/12
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013・八木徹雄
○政府委員(八木徹雄君) 取り組んでから確かに時間がかかっておりますので、申しわけないことだと思っておりますが、もう御存じのとおり、ようやく各省間の協議もととのいまして、陸上交通に関するその安全基本法に対する基本的方策というものは政府部内では一応固まったわけでございます。ただまあ、こういう国会の状況の中でございますので、ぜひともひとつ各党の協力をいただいて、出すと同時に、ひとつこれが通過できるようにいたしたいという気持ちで、いま与野党間でお話をいただいているようでございますが、問題は、緊急を要する陸上交通ということに政府側が予定をいたしておるのに対して、基本法の性格上海上も航空も同時にやれという、そういう海上、航空をこの際含めるか含めぬかという——いずれその海上も航空も安全基本法のことでございますから入れなければならないことでございますけれども、これを同時にこの際出すか出さぬかという、そのことのためにまだ協議がととのわないのでありますが、私たちのほうも、いままでのお約束もございますし、でき得べくんばこの国会でこれが処理をいたしたいという気持ちで、党のほうにもお願いをし、国会対策のほうでも御検討いただいているところでございますけれども、それではその範囲をこれまでにするとか、これまで拡大をするとか、あるいは提出の時期をいつにするといったようなことがまだ明定されておりませんので、できるだけすみやかにこれがひとつ国会にはかられるようにしむけてまいりたいと、一そうの努力をいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/13
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014・秋山長造
○秋山長造君 もちろんこの国会中に出して、この国会中に成立させるという方針でおられるのですか。どうも政府は——あなたの総理府のほうで作業の責任は持たれるわけでしょうけれども、総理府のほうもこの基本法の問題は投げておられるのじゃないですか。与党にぶちまかせたようなかっこうで投げておられるのじゃないかという感じがするのですけれども、総理府自身でほんとうにやっておられるのですか、この基本法の作業。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/14
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015・八木徹雄
○政府委員(八木徹雄君) やっております。ただ、総理府が予定いたしましたのは陸上交通安全基本法という、そういう陸上交通の分を整備をいたしたわけでございますが、それでひとつ出さしてもらおうと思ったところ、待ったがかかって、いま海上なり航空なりを含めてどうするかということの協議を与野党間でひとつしていただいておるということでございます。その結論が出さえすれば、陸上交通ならいつでも出せるような準備はできておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/15
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016・秋山長造
○秋山長造君 じゃ、要綱ぐらいはできておるのですね。その資料出してください、参考に。確定したものでなくても、その要綱でもできておるなら、それを資料として出していただきたいのと、それからついでに、交通基本問題調査会の答申ですね、これも資料として出していただきたい。それからもう一つは、もうここで時間がありませんから、交通安全国民会議結成以来の今日までの審議経過ですね、それをここで時間をかけて答弁していただくかわりに、時間を省く意味で資料としてこの次までに出していただきたい。それはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/16
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017・八木徹雄
○政府委員(八木徹雄君) 承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/17
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018・秋山長造
○秋山長造君 それからもう一つは、交通問題の研究機関ですね、その研究機関らしきものが各省それぞれに何かあるようですけれども、これはとても不徹底で、これこそ間尺に合わぬわけですが、衆議院の決議なんかでも、交通科学研究センターというようなものを充実した相当整備されたものをつくって、もろもろの交通問題と科学的に取り組めということが言われておるのですが、これなんかについても何か一つの構想を持っておられるのですか、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/18
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019・八木徹雄
○政府委員(八木徹雄君) 科学技術庁を中心にやっていただておりますので、その実態をちょっといま事務当局のほうから聞こうとしたのでございますけれども、その科学技術庁で総合調整やっております研究の成果についてちょっと私知識を持ち合わしておりませんので、またほかにひとつ報告をさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/19
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020・秋山長造
○秋山長造君 その点、また後日適当な機会に御答弁願いたいと思います。もう時間がありませんからこの程度にいたしますが、ちょっと最後に参考にお尋ねしておきたいんですが、今回の刑法改正によって刑罰をいままでの三年から五年に上げるということが問題になっておるわけですが、政府としては、あるいは総理府としては、この交通問題全般の中でこの刑法改正というものをどういうように位置づけをしておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/20
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021・八木徹雄
○政府委員(八木徹雄君) 先生も御指摘のとおり、交通安全を確保していくためには、一つは運転者の技能と運転者の交通道徳に対する認識の問題、それが一つあると思うのであります。われわれはそういう意味において技能の教育なりあるいは安全教育というものを一方において進めておりますけれども、なお事故が起きてきているという、特に飲酒運転などが依然として、あるいはスピード違反というものが依然としてあるということを考えますと、ある程度やはり、決して望ましいことではないかもわかりませんけれども、こういうような制裁措置というものがあるということがそれらの問題に効果をあげていくために必要悪としてやむを得ないことではないか、こういうような気持ちでわれわれは、今回の刑法改正につきましては、現状にかんがみてこれを是認する立場でお願いをいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/21
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022・秋山長造
○秋山長造君 この点につきましても、もうちょっと突っ込んで御質問したいんですけれども、いろいろやっておられるけれども、どうもこれはといって特に具体的に取り上げて指摘されるようなものがない。やっぱり警察庁とかあるいは法務省なんかが、交通問題にいよいよ、これは総理府にまかしておいてもなかなかちょっとやそっとじゃどうにもならぬ、だからまず法務省あたりでこの問題にも大きく乗り出して、こういう刑法改正でもやってびしっとさせなきゃ、これはもう気合いが入らぬというような感じを受ける。どうも刑罰先行で、こういうことに本来果たすべき政府の政治的な責任というものを転嫁してしまっているというか、持っていっちまってるような感じをどうも受けるんです。まあしかし、この点についても、もうきょうはこれ以上お尋ねいたしません。
最後にもう一つ、これは一体どなたにお尋ねしていいかわからぬですけど、右側通行とか左側通行とかいうことが始終問題になる。これは一体、日本は車は左側通行でしょうけれども、車だけに限ってお尋ねするんですが、日本は左側通行ですが、国際的には一体左側通行が多いんですか、右側通行が多いんですか、それからまた、それぞれどういう事情でそういうことになっておるのか、それからまた、交通の安全という趣旨からして、一体右側通行がいいのか左側通行がいいのか、そういうことを研究なさったことがあるのか、研究しておられるところがどっかにあるのか、そういうことをひとつひっくるめて御答弁いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/22
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023・占部英雄
○説明員(占部英雄君) ただいま御質問、御指摘ございました右側通行、左側通行の問題でございますが、これは歴史的な経過がございまして、わが国におきましては、戦後人と車が対面して交通するという対面交通になりましたときに、現在のような車が左、人が右ということになったわけでございます。これは対面交通とその前の背面交通とのどちらが危険性が少ないかという点でございますが、背面交通の場合は車の側に歩行者の安全をまかせるということになるわけでございますが、対面でございますと歩行者自体が車のほうを見ることができるということでございますので、背面のような車にのみ責任といいますか、歩行者自体は全く受け身にしか危険防止ができないという、これをやめまして対面交通にしたわけでございます。このときに、車が左、それから従来の歩行者左が右になったわけでございます。
それからもう一点、右がいいか左がいいかという問題でございまして、これにつきましては必ずしも定説はないというふうに聞いております。
それからもう一つ、諸外国の例でございますが、まず対面交通が背面交通よりも危険防止上有効であるという考えは一般的なようでございますが、その場合に人と車のそれぞれがどちらが左でどちらが右側が多いかというのも、まあ一般的には——人が左の場合もかなりあるようでございますが、一般的にどちらが絶対的というふうには私も承知していないわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/23
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024・秋山長造
○秋山長造君 右側通行の国が多いんではないんですか、外国では。何かヨーロッパあたりでも、私ちょうど去年の九月の初めごろにスエーデンにちょっと寄ったんです。ちょうど九月一日から一斉に左側通行から右側通行へ切りかえられて、何かその準備に二年ぐらいかかったそうですけれども、それであってもなお数日間は相当な混乱で、大学生なんかでもアルバイトで街頭へ出てずいぶん交通整理やっておりましたが、何か私が聞いたのでは、ヨーロッパでは目ぼしい国はもう——左側通行依然としてやっている国というものはイギリスぐらいだけのようなことを聞いたんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/24
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025・占部英雄
○説明員(占部英雄君) 私も正確な知識を持ち合わせませんので、ここで正確に御答弁できないわけでございますが、まあ大国といたしましては、ヨーロッパの場合、英国が依然として車が左、他の多くは右になっているということは聞いております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/25
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026・秋山長造
○秋山長造君 これは私専門家でも何でもないんですから、こう責任のあることは言えぬのですが、ただ車を運転している人にちょいちょい聞いてみますと、どうもハンドルが車体の右側にある、日本のはそうですわね。ところが、右側でなしに左側にハンドルがあるほうが運転がしいい。したがって、こういうことも交通事故に響いてくる何ぼかの要因になっているんではないかというように聞くんですが、右側通行の国は全部そうですわね、車体の左のほうにハンドルがありますわね。そこらになると、さっき副長官の言われた車の構造上の問題ということに触れてくるんですけれども、そこら辺についてもう少し専門的な説明を、きょうはもちろんいいんですけれども、後日適当な機会に聞かせていただきたい。
それからもう一つは、国別によって左側、右側という何か一覧表みたいなものをめんどうですけれどもつくって出していただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/26
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027・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 ちょっと関連して。いま車の右、左の問題がございましたが、先ほどのお話で、人間は左がいいか右がいいかについては別段定説がないというお話でございましたが、人間は本来人間の肉体の構造上当然左がいいのだという一部に非常に強い主張があるわけなんです。左のほうにあるほうが、人間の、何といいますか、生理的なといいますか、からだの構造なりいろいろの点からそのほうが合理的だという主張があり、またそうすべきだという運動がささやかながら日本でもあるようでありますが、そういうことは検討されたことがあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/27
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028・占部英雄
○説明員(占部英雄君) これは、現在の道路交通法の制定、その後の改正の機会に、たびたび検討された問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/28
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029・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 それじゃ、右でも左でも別段どちらでもいいという結論になったわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/29
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030・占部英雄
○説明員(占部英雄君) これは非常に相対的な問題でございまして、どちらが絶対に交通の危険防止上有利であるというきめ手はいまのところはございません。なお、この問題につきましては、政府部内の研究機関におきましても重ねて検討研究をしている事項でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/30
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031・秋山長造
○秋山長造君 いまの梶原委員の御質問も含めて、何か専門家に来てもらって一応説明を聞かしてください。占領直後に、占領軍の指示があったのかどうかわかりませんが、対面交通ということが——占領軍の指示があってやったのかどうか詳しいことは知らないが、あの当時対面交通というものが初めてできたときに、小学校の子供に作文をつくらせて、そうしてその子供の作文の中で、対面交通のほうがいいとか、左側通行より右側通行のほうが都合がいいとかというようなパーセンテージが高く出たというようなことが新聞に出たことがありますが、これもちょっとその当時の事大主義的な一つの現象だったのじゃないかという気がいたします。子供の作文で、右側通行のほうがいい、いままで左側通行でありましたが右側通行のほうがからだに合っているとか、本性に合っているとか、もっともらしい新聞記事が出たことがありますが、ほんとうに一体どうなのかということ。それから、これは道路の構造にもよると思いますが、ヨーロッパの先進国のように車道と歩道とどこでもせつ然と分かれているところでは、あまり対面交通というものをやかましくやる必要はない。日本のように車道も歩道も区別なく込みでやっているところではこういうことにも相当神経を使わなければ交通事故を防げないということもあるかもしれないが、そういう問題も含めて、どこか政府のしかるべき機関でこういうことを科学的に研究しておられるところがあるに違いないと思う、なければおかしい。一度そういうところの方に出ていただきたいと思います。後日適当な機会にお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/31
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032・北條雋八
○委員長(北條雋八君) 本案に対する質疑はこの程度にいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815206X01319680425/32
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