1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年三月十五日(金曜日)
午前十時八分開議
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○議事日程 第八号
昭和四十三年三月十五日
午前十時開議
第一行政機構の簡素化等のための総理府設置
法等の一部を改正する法律案及び行政機関の
職員の定員に関する法律案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X00819680315/0
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001・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X00819680315/1
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002・河野謙三
○副議長(河野謙三君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、行政機構の簡素化等のための総理府設置法等の一部を改正する法律案及び行政機関の職員の定員に関する法律案(趣旨説明)。
両案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。木村国務大臣。
〔国務大臣木村武雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X00819680315/2
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003・木村武雄
○国務大臣(木村武雄君) 行政機構の簡素化等のための総理府設置法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
先般、政府は、行政の簡素化と能率化をはかるため、総理府本府ほか十七省庁について、それぞれ内部部一局を整理削減することを決定し、また、これよりさき、各行政機関に置かれている審議会等のうち設置目的が類似するもの等について、その整理統合を行な庁ことといたしておりますが、この法律案は、これらの具体的措置を講ずるためのものであります。
法律案の内容について御説明申し上げます。
第一に、局の整理等についてであります。
総理府本府につきましては、青少年局を廃止し、総理府の機関として青少年対策本部を置くことといたしました。
警察庁につきましては、刑事局と保安局を統合して刑事局とし、同局に保安部を置くことといたしました。
行政管理庁につきましては、行政管理局と統計基準局を統合して行政管理局とし、同局に統計主幹一人を置くことといたしました。
防衛庁につきましては、教育局と人事局を統合して人事教育局といたしました。ただし、従来の教育局の所掌事務のうち、部隊訓練の基本に関する事務は、防衛局につかさどらせることとしております。
経済企画庁につきましては、総合開発局と水資源局を統合して総合開発局といたしました。ただし、従来の水資源局の所掌事務のうち、公共用水域の水質保全に関する法律の施行に関する事務は、国民生活局につかさどらせることとしております。
科学技術庁につきましては、資源局を廃止し、従来の同局の所掌事務のうち、資源の総合的利用のための方策一般に関する事務等は計画局につかさどらせることとするとともに、同庁の附属機関として資源調査所を置くことといたしました。
法務省につきましては、訟務局及び大臣官房経理部を廃止し、大臣官房に官房長及び訟務部を置くことといたしました。
外務省につきましては、北米局と中南米・移住局を統合してアメリカ局とし、従来の中南米・移住局の所掌事務のうち、中南米諸国に関する外交政策の企画立案及びその実施の総合調整に関する事務等はアメリカ局につかさどらせることとするとともに、大臣官房に領事移住部を置くことといたしました。
大蔵省につきましては、理財局と国有財産局を統合して理財局とし、同局に次長一人を増置することといたしました。
文部省につきましては、文化局と外局である文化財保護委員会を統合して文化庁とし、同庁に、次長一人のほか、長官官房、文化部及び文化財保護部を置くことといたしました。また、文化庁に附属機関として文化財保護審議会を置くとともに、従来の文化財専門審議会を廃止することといたしました。
厚生省につきましては、国立公園局を廃止し、大臣官房に国立公園部を置くことといたしました。
農林省につきましては、蚕糸局と園芸局を統合して蚕糸園芸局とし、これに伴いまして食糧庁の業務第一部と業務第二部を統合して業務部とし、農林経済局に企業流通部及び国際部を置くことといたしました。
通商産業省につきましては、鉱山局と石炭局を統合して鉱山石炭局とし、同局に石炭部を置くことといたしました。
運輸省につきましては、観光局を廃止し、大臣官房に観光部を置くことといたしました。
郵政省につきましては、監察局を廃止し、大臣官房に首席監察官一人を置くことといたしました。
労働省につきましては、労働基準局と安全衛生部局を統合して労働基準局とし、同局に安全衛生を置くことといたしました。
建設省につきましては、営繕局を廃止し、大臣官房に官庁営繕部を置くことといたしました。
自治省につきましては、行政局と選挙局を統合して行政局とし、同局に選挙部を置くことといたしました。
なお、以上のほか、大蔵省の財務参事官を財務官に改称し、通商産業省化学工業局の化学肥料部を廃止することといたしております。
第二に、審議会の整理統合についてであります。
審議会等につきましては、すでに一昨年、審議会等の整理に関する法律により、各府省を通じて三十四を整理いたしましたが、今回は、これに引き続きまして、大蔵省につきましては、金融機関資金審議会及び外国為替審議会を廃止し、農林省につきましては、中央作況決定審議会と農林漁業用固定資産評価審議会を統合して農林統計審議会とし、建設省につきましては、住宅対策審議会と宅地審議会を統合して住宅宅地審議会とすることといたしました。
このほか、以上の措置に伴いまして、関係法律の規定の整備を行なうことといたしております。
なお、この法律は、公布の日から施行することといたしておりますが、自治省行政局と選挙局の統合に関する規定は、本年八月一日から施行することといたしております。
以上が、行政機構の簡素化等のための総理府設置法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
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次に、行政機関の職員の定員に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
行政の簡素化、能率化を促進し、必要最小限度の人員で行政を遂行するためには、行政需要の消長に伴う定員の配置転換を各省庁内はもとより、各省庁間を通じて強力に行なう必要がありますが、このためには各省庁別に定員を法定している現行の法制を改め、弾力的、合理的な定員管理制度を実現することがぜひとも必要でありますので、この法律案を提出した次第であります。
法律案の概要について御説明申し上げますと、まず、公務員数の抑制をはかるため、内閣の機関並びに総理府及び各省を通ずる定員の総数の最高限度を法定いたしますとともに、これらの機関別の定員は政令で定めることとし、定員配置を合理的、弾力的に行なおうとするものであります。なお、大臣、政務次官等及び自衛官の定員は、現行どおり別途法律で明らかにすることとし、また、五現業の定員は現行どおり政令で定めることとして、いずれも定員の総数の最高限度の対象には含めないこととしております。
以上の制度改正に伴い、各省庁設置法等につき所要の改正を行なうこととしております。
以上が、行政機関の職員の定員に関する法律案の趣旨でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X00819680315/3
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004・河野謙三
○副議長(河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。山崎昇君。
〔山崎昇君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X00819680315/4
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005・山崎昇
○山崎昇君 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨説明のありました「行政機構の簡素化等のための総理府設置法等の一部を改正する法律案」及び「行政機関の職員の定員に関する法律案」に関連して、行政機構の改革、公務員の定員管理に対する政府の基本的な見解について若干の質問を行なうものであります。
まず、行政機構改革についてお尋ねいたします。
戦後、歴代内閣は、行政機構の改革を目途として幾たびか審議会、調査会等を設置し、その答申または勧告を受けているのでありますが、その実効はほとんど見るべきものがなかったことは御承知のとおりであります。特に、昭和三十六年十一月には、行政を簡素、能率化し、責任体制を明確にして、むだのない行政、国民のための行政を実現するために、従来の審議会と異なったフーバー委員会日本版と、鳴りもの入りで宣伝した臨時行政調査会が設置されたのであります。この調査会は、二年七カ月にわたる歳月、二億円にのぼる多額の費用、そして百三十八名に及ぶ専門家を投入し、昭和三十九年九月、千ページ余にわたるきわめて膨大な答申を出したのであります。
その内容は、内閣機能の改革、行政機構の統廃合、共管、競合事務の改善、事務再配分、公務員、予算、会計等、十六項目に及び、基本的、長期的展望に立つものから、当面早急に改善できるものなど、きわめて広範多岐にわたっております。この答申を受けた当時の池田内閣は、行政改革本部の強化、あるいは実現可能なものから逐次実施する等の具体策を決定したのでありますが、その具体的実施を見ないまま佐藤内閣に引き継いだのであります。
佐藤内閣は、発足以来、重点施策の一つとして行政改革を取り上げ、「臨調答申のもとに新時代に即応した合理的な行政機構を確立したい」と言明しているにかかわらず、自来三年有半の間に手をつけたものは、答申の実施推進のための行政監理委員会の設置、官房長官の国務大臣への昇格、世論のきびしい批判を浴びた環境衛生金融公庫の設置、経済企画庁の国民生活局の設置、若干の審議会の統廃合と一部許認可の廃止などにすぎず、わが国では画期的と言われた臨時行政調査会の答申のほとんどが、たなざらしのままになっており、まさに政府は有言不実行の見本であり、行政機構改革の政策は、単に国民を欺く、から宣伝になっていると言わざるを得ないのであります。佐藤総理の行政機構改革に対する基本的な姿勢についてお伺いしたいのであります。
さらに、今回の一省庁一局削減法案は、総理府本府外十七省庁について、それぞれ内部部局一局を機械的、画一的に削減するものであって、あらゆる視野から問題点を指摘し、それぞれについて抜本的な改革案を示した臨調の答申には、ほど遠いものであります。今回のこの法案を出された直接的な意味は那辺にあるのか、臨調の答申とどのような関連があるのか、また、臨調の答申を今後どのように実現されるのか、総理の所信をあわせてお伺いしたいのであります。
次に、財政硬直化と今回の法案との関連についてお尋ねいたします。
さきにも一言触れましたように、わが国の臨時行政調査会は、アメリカにおけるフーバー委員会を範としていることは周知のとおりであります。フーバー委員会は、一九四七年から二年間、一九五三年から二年間の二回にわたり、アメリカ合衆国連邦政府の行政改革について画期的な調査研究を行ない、その結果、経費の節減、業務の重複の除去、不用業務の廃止等によって、第一次勧告の実現率がおよそ七〇%にも及び、一九四八年から一九五二年までの経費の節減額は実に十二億ドルをこし、さらに、全勧告による節減可能額は、年間予算四百二十億ドル中五十億ドルに達するといわれ、行政運営の根本にメスを入れ、そのあり方について考察を加えたことは、単にアメリカのみならず、各国の行政改革のあり方に力強い示唆を与えた点で、その実績は評価されているのであります。
ひるがえって、わが国の来年度予算案を見ますと、財政硬直化を理由として、社会福祉、公共事業の圧縮、酒、たばこ、国鉄定期の値上げなどによる実質減税ゼロといった、国民生活に耐乏を求めるきわめて不満なものであります。この財政硬直化の真因は、積年にわたる自民党内閣の政策の失敗にあると思うのであります。政府は、行政制度の硬直化にその原因の一つを求め、国民に耐乏を求めるとともに、政府みずからも率先して経費の節減を行ない、財政の硬直化を打開する姿勢を示そうとして、今回この法案を提案したというのでありますが、今回の一省庁一局削減は、実質的には単に部局の名称を変えたのみの見せかけの改革であり、また、三年間に公務員の定員を五%削減したとしても、行政需要の変化に伴う今後の増員要求分は別ワクで検討されることになっているのであって、行政需要の変化に応じて適切な体制をとるという行政改革本来のたてまえからも、また、経費の節減も期待できない今回の措置は、財政硬直化打開策には少しも寄与していないと思うのでありますが、この点について総理の見解を聞きたいのであります。
次に、行政管理庁長官にお尋ねいたします。
まず、今回の一省庁一局削減法案の内容についてであります。
先ほども提案理由で述べられましたように、今回の法案によりますと、総理府においては青少年局を廃止して青少年対策本部を設置し、経済企画庁においては総合開発局と水資源局を統合し、また、労働省においては労働基準局と安全衛生局を統合し、厚生省においては国立公園局を大臣官房国立公園部に格下げしておりますが、以上申し上げた局は、いずれも、ここ数年間にそれぞれ行政需要に対応して設置または昇格いたしたものばかりであります。特に、総理府青少年局は、昭和四十一年四月に、青少年行政の総合性と一貫性をはかる見地から、臨調答申実現の一環として設けられたものであり、また、労働省の安全衛生局は、昨昭和四十二年八月、年間七千人の死亡と七十万人に及ぶ労働災害発生の現状に照らし、労働者の安全確保の重要性を認識し、新設されたばかりのものであって、発足以来一年もたっていないのであります。これらの局の削減または統合は、朝令暮改であり、機構いじり以外の何ものでもなく、これらの措置によって行政能率が上昇するものでもないと思われますが、今回の改正案のこの不合理性についてどう考えられるのか、お伺いいたします。
次に、先ほども触れましたが、臨時行政調査会の答申を受け入れた政府は、国民の側に立って、国の行政を監察し、臨調の改革意見を実現するために行政改革を推進するいわゆる監視機関として、昭和四十年五月に行政監理委員会を設置したのであります。
この行政監理委員会は、臨調答申以降の政府の行政改革を見て、臨調答申の基本的事項についてはほとんど実行に移されておらず、実現を見たものはきわめて小部分に限られ、しかも、それらも不十分な形においてしか実現されていないことは遺憾である、特に臨調が緊急の必要があると認めて、他の問題と切り離し、昭和三十八年八月に提出した「首都行政の改革に関する意見」が、その後数年を経過しているにもかかわらず、全く実現の見通しが立たず、現状はいわばたな上げの形になっていること、
答申は全体として実現可能性を念頭においた改革意見であったにもかかわらず、その基本的な事項については、いまだほとんど実行に移されていないこと、
答申のうちで一応機構の面で実現されたといわれるものも、実は機構の強化、新設の場合に限られており、機構の整理、縮小、廃止に関する改革意見は、一部を除いてほとんど実現されていないこと、
行政組織の基本に関する事項の部分はすべて実現せず、また、その具体化のための積極的な努力がなされていないこと、
などを指摘し、内閣が熱意をもって行政改革の実現に臨む態勢を固めることを要望しており、また、昨年十一月には、政府の行政改革に対する熱意が疑われるといろ異例の「行政改革の緊急事項に関する意見書」を出しているのでありまして、行政監理委員会のこの意見書をどう扱われようとするのか、行政監理委員長としての考えを明らかにしていただきたいのであります。
また、かつて昭和三十一年に、河野行政管理庁長官は、各省庁における課の一律二割削減を実施したことがあるのでありますが、数年後には二割削減前と同数の課が復活し、課の削減に伴い設けられた職の数だけが激増した歴史があるのであります。
今回の一局削減も、過去の歴史と同様、たとえ一時的に局は減少しても数年後には復活し、局削減に伴い設けられた職の数のみが増高するという結果に終わり、かえって機構の膨張の因をつくるのではないかと思いますが、行政管理庁長官の将来の見通しについても、お聞かせ願いたいのであります。
次に、自治大臣にお尋ねいたします。
申すまでもなく、臨時行政調査会の答申は、ひとり中央政府における行政改革のみでなく、地方自治体の行政改革にも及んでおります。すなわち、その答申で、現地性、総合性、経済性の三原則をあげ、行政事務再配分の緊急性を指摘し、特に、企画事務は中央省庁で、地域住民の生活に密着した実施事務はできる限り地方公共団体、特に市町村に優先的に配分し、都道府県は、市町村の能力を越える事務を担当すべきだとしております。
地方公共団体の組織及び運営の改革を推進するためには、国と都道府県、都道府県と市町村との二重行政の排除など、いわゆる行政事務の再配分に本格的なメスを入れることが前提であると思いますが、一向に改善されていないのであります。行政監理委員会の行政改革の緊急事項に関する意見書におきましても、最も緊急に措置すべき問題の一つであると述べておりますが、自治大臣は、これらの点について、今後どのように措置されるのか、まずお聞きをしたいのであります。
次に、自治省は、先般都道府県に対し、地方自治体出先機関の改革、外郭団体の統廃合、零細補助金の整理など、行政簡素化の通達を出したのでありますが、地方自治体に努力を求める前に、国は、地方との行政のあり方を是正し、地方自治体の足かせとなっている補助金をはじめ諸問題について、根本的な再検討をすべきであると思いますが、自治大臣の見解をあわせてお聞きしたいのであります。
次に、行政事務再配分の一環として取り上げなければならないのは、地方事務官制度の問題であります。
都道府県の保険課、国民年金課、職業安定課、陸運事務所などの事務処理にあたって、知事の指揮下に属する行政部局に国家公務員を多数配置している矛盾であります。地方自治法が、その附則第八条で、これらの職員は、「当分の間、なお、これを官吏とする。」と規定しているのが根拠でありますが、昭和二十二年に地方自治法が施行されて以来、実に二十一年間にわたり解決されず、ここにいう「当分の間」が不当に長過ぎるのみでなく、むしろ、この種の機構と人員が拡大されてきていることは、地方自治の本旨を無視するものと言わざるを得ないのであります。臨時行政調査会の答申も、行政監理委員会の改革意見も、地方制度調査会の意見も、この地方事務官につきましては、すみやかに地方公務員とするよう述べているのであります。また、全国知事会も、その実現について強く要望しているのであります。この問題についてどう対処されるのか。また、今後いつごろをめどに解決される考えなのか、その見通し等を含めて、自治大臣及び行政管理庁長官の所信を聞きたいのであります。
次に、行政機関の職員の定員に関する法律案について、三点ほど質問をいたしたいと思います。
第一点は、定員の管理に関する基本的な理念についてであります。
国家公務員の定員管理につきましては、昭和二十四年に吉田内閣が、いわゆる経済安定九原則を実施するため、財政規模に応じて行政を縮小する目的から、一般会計で三割、特別会計で二割の人員整理を行なうため制定された行政機関職員定員法で、各省庁ごとに定員がきめられていたのでありますが、昭和三十六年から現行のように、各省設置法で規定されることになったのであります。今回の改正は、国家公務員の定員の総数の最高限度を法律で定め、総理府及び各省庁の定員は政令で定めることになっているのでありますが、行政機関職員定員法を廃止し、国家公務員の定員を現行のように各省設置法で規定した際における政府の提案理由の説明を見ますと、「定員というものは、本来、組織の規模を示す尺度であり、行政規模は、機構と職員の定員により規制されるべきものであるから、従来のように、定員のみを機構と切り離して規定することは、適当でないと思われるので、各省庁等の必要とする具体的な定員は、それぞれ当該省庁等の設置法に規定するようにした」となっているのでありまして、行政機関の規模は機構と定員により一体的に規制されるべきものであるという定員管理の理念は、今回の改正案では放棄されているのでありますが、なぜこの理念を変更したのか。また、定員管理は、本来、職位の種類、質量の管理であって、行政目的にマッチした合理的な組織と事務運営とを前提とした職員の質と量の規制であります。三年間に五%の定員を削減する定員削減とは、何ら関係のない性格のものであります。定員削減も合理的なものであるならば、行政機構、行政運用の合理化がその前提として先行すべきものでありまして、かりに財政目的のための単なる削減のために定員を利用したといたしますならば、定員管理の意義、理念を誤っていると言わざるを得ません。今回のこの改正案は、定員管理の使命であります職位の種類、質には全く関係なく、また定員管理と密接不可分の組織との結びつきもなく、ただ量的に定員の総数のみを規制するものであって、定員管理本来の使命を放棄したものと言わざるを得ないのであります。一省庁一局削減と今回の定員管理は、行政機構にマッチした定員管理の方法ではないと思いますが、佐藤総理のお答えをいただきたいのであります。
第二点は、今後の定員管理のあり方についてであります。
政府は、昨年十二月十五日の閣議において、今後における定員管理について、自衛官を除く国家公務員の既定定員については、三年間に五%を目途として計画的に削減を行なうときめたのでありますが、五%の根拠を示していただきたい。大福帳的な定員の削減は、何の合理性もありません。特に自衛官の定数は、実質的にも、また予算的にも、その充足率は九〇%程度で、毎年二万人以上の欠員をかかえているのでありますが、なぜ今回自衛官だけを除外したのか、その理由を佐藤総理から明確にしていただきたいのであります。
最後に、定員外職員の問題についてお尋ねいたします。
かつての大量の首切りと、その後の定員抑制策によって、大部分の公務員が過重労働に苦しめられ、他方では、定員外職員が発生して、各省庁とも膨大な数にまで増大し、いわゆる定員外職員問題が重大問題として提起されたことは、御承知のとおりであります。この定員外職員の問題も、当時これを定員化することによって、昭和三十七年には一応終止符を打ったことになっているのでありますが、その後、事業量の拡大と欠員の不補充措置などにより、事業量と定員がマッチせず、最近において再び定員外職員の問題が提起されているのであります。たとえば、北海道開発局は、定員内職員一万一千八百四十八名に対し、定員外職員五千五百八十一名で、定員内職員の五〇%に達し、また林野庁の場合は、定員内職員四万一千百四十人名に対し、定員外職員一万七百名で、定員内職員の二五%に達しているのであります。これらの定員外職員がいなければ、事業の遂行ができないことは、言をまたないところであります。この定員外職員を放置して、いたずらに定員削減のみを行なう政府の無為無策、ここにきわまったと言っても過言ではありません。この定員外職員の定員化についてどのようにされるのか。また、身分の確立と同時に、労働条件の改善についてもどのような対策を講ぜられるのか、総理及び行政管理庁長官の所信を聞きたいのであります。
まだまだお尋ねしたいことがありますが、所定の時間に達しているようでありますので、詳細は委員会で審議することにし、総理以下関係大臣の誠意ある御答弁を期待して質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X00819680315/5
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006・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 山崎君にお答えいたします。
行政機構の改革は、戦後にたびたび調査会、審議会等を設けられ、そうして進められてまいりましたが、あまり実効があがらない、こういう御批判でございます。確かに十分の成績をあげたとは私も思いません。また、時代の変遷によりまして行政需要の消長もございますから、それに対応する行政機構、これが必要だということもよく各界では承知しておるところであります。しかし、この事柄は、抽象的には賛成されましても、具体的問題になりますと、たいへん意見が多いのであります。そこらにこの行政機構改革の困難性があり、また、御批判になりましたような成績のあがっていないという、そういう欠陥もあるのでございます。私は、問題に抽象的、原則的に賛成なものである限り、具体的な問題には、少々の事柄はこれを克服して前進すべきものだと、かように思っております。そこに私どもの一つの政府の決意があると、かように思います。私が申し上げるまでもなく、御指摘にもありましたように、行政そのものは国民のものであります。したがいまして、国民に対する行政が十分に効率的に効果をあげるような行政機構でなければならぬことは、これは当然であります。でありますから、行政改革の基本的な私の考えといたしましては、どこまでも国民の負担ということも考え、同時に、効率的であり、国民に対する行政がその目的を達すると、こういうところに徹したいと考えるのであります。
また、臨時行政調査会が答申を出してまいりましたものが、三年有半になりましても、わずかしか行なわれていない、そうして、それも政府に都合のいいものばかりだ、こういう御批判であります。これは、たいへん私は率直な御批判だと思います。これがなぜできないのか。御承知のように、ただいま最初に申しました原則的な考え方もありますが、同時に、臨調の答申はたいへん広範なものであります。また、行政の基本に関するものでもあります。したがいまして、しばらく時間をかしていただかなければならないように思います。私は、今日まで、できるものから順次やってまいったつもりであります。今回の一省庁一局削減、この問題にいたしましても、確かにこれだけで効果があがったとは思いません。財政的に、一省庁一局削減で非常な軽減をした、かようには私も思いません。しかし、今回一省庁一局削減、これを決意いたしました結果は、一方で、毎年ふえたようなこの局部の増設、これをとめることができました。また、公社、公団等の新設も今回はこれを見ることがない。かような意味におきまして、消極的な効果は確かにあったと思います。また、この事柄は、佐藤内閣が行政改革と取り組む第一歩である、かように理解していただくならば、必ず、この行政機構に対する内閣の態度、政府の態度がこれで明確になったと、かように御了承いただけると思います。私は、この問題をもって事足れりとはもちろん考えておりません。いろいろの批判の多い問題だと思います。しかし、今回計画したものは、ぜひ皆さん方の御協力を得まして、これを成立させたい、そうして行政改革、これを三年計画、この長期計画のもとに遂行していくその熱意、それを理解していただきたい、かように思います。
次に、定員の管理について、たいへん傾聴すべき御意見を述べられました。私もたいへん教えられるところのものがあったように思います。確かに、定員の管理、これは質量両面からの問題であり、同時にまた、機構、行政の運営の問題、こういう点に十分注意し、重点を置いて、そうして定員の管理をすべきものだ、こういうお説はそのとおりだと私も思います。しかし、今回私どもが総定員制を考えて、こうして管理体制を変えた、この事柄は、いままでのような各省別の定員制であれば、各省間においての融通といいますか——必要なる部局に、必要度の軽いものからそのほうへ転換さすことができたように思います。しかし、内閣全体として、ただいま申し上げるような、わりに必要度の下がった部面から必要度の高いほうへ人員を配置する、そういう事柄が望ましい、かように考えますと、どうも総定員制が望ましいのではないか。そうして、そのことは同時に、国会に対しましては、総定員制の総定員の最高限、これの御審議をいただきますが、また、各省別の定員については、予算を御審議いただくその際に、各省の定員を十分見ていただくということで、国会からも十分御意見を聞く機会があるんだと、かように私は思います。したがいまして、今回のこのくふう、これは新しい一つの試みでございます。そうして、このことは、いわゆる出血整理、そういうことをしないで済むゆえんではないだろうかと私は思うのでありまして、さらに委員会等におきまして、この点も掘り下げて御検討いただきたいと思います。
また、この定員に関しまして、三点に分けてのお話でございます。これらにつきましても、私自身御説明申し上げてもいいのですが、ただいまの自衛官の問題並びに定員外職員の問題等につきましては、行政管理庁長官からひとつお聞き取りをいただきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣木村武雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X00819680315/6
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007・木村武雄
○国務大臣(木村武雄君) 山崎さんの仰せのとおり、戦後、行政改革の見るべきものはあまりなかったとおっしゃったのでありまするが、全くそのとおりであると思います。それだけに、佐藤総理の態度は、驚くべき信念的なものでありまして、確固不動でありまするから、御信頼くださるようにお願い申し上げます。
一省庁一局削減の問題は、各省庁の自主性にまかせまして、管理庁としては、何らの内政干渉はいたしませんでした。その結果を振り返ってみますると、各省庁の態度は、さすが、良識に従って処断されたものでありまして、全く敬服いたしております。これあるがために、今後三年間にわたる行政改革の根本問題と取り組むことができたのでありまして、その曙光もまた発見することができたのであります。その三年間にわたる行政改革の中に臨調答申の十六項目の大半は織り込んで解決するつもりであります。(「総理の答弁と違っているじゃないか」と呼ぶ者あり)少しも違っておるとは思いません。私のほうが補足説明をしたものだと思っております。
もう一つは、行政監理委員会の答申でありまするが、行政監理委員会の答申は四項目あります。そのうちの一つの、特殊法人の整理改廃の問題は、二十取り上げられましたけれども、そのうちの九つは解決いたしております。残りは十一でありまするが、何せ行政管理庁の能力に限度がありまするので、一時にこれを取り上げて解決するというわけにはまいりませんから、能力の限度に応じて、逐次これを取り上げて、御期待に沿いたいと、こう存じております。
機構、定員増加の抑制問題は、四十三年度の予算の中で、すべてこれは解決いたしております。各省庁の機構及び事務の簡素化と、国と地方の関係の問題のこの二つは、これから三年間に行なわれまする行政改革の中に繰り入れまして、全部解決する所存であります。
それから昭和三十一年度、河野大臣のときに、課を職としたが、数年を待たずして、また課になったじゃないか、その二の舞を演ずる危険がないのか、こういうお説でありまするが、二の舞を演じた失敗を貴重な体験として、三の舞を演じないように覚悟いたしております。
それから地方事務官制度の問題でありまするが、これも二十年間たなざらしになった問題であります。それだけに解決の困難な問題であり、大きな問題であったと思いまするが、それだけに、一日もゆるがせにすべからざる問題だと思っております。これも向こう三年間の行政改革の根本問題の中で解決する決心であります。
それから定員外の問題でありまするが、私が行政管理庁長官になりまして、定員問題と取り組みました後に発見した一番大きな問題であります。何とかしなければならないと考えております。四十三年度の課題としてこの問題と取り組む決心をいたしております。
それから定員の問題でありまするが、やっぱり国の行政機構も、国家の中の一つの組織体でありまするから、他の民間産業とも比較検討してみなければなりません。それに定員の抑制は極力これをやってまいりましたけれども、思うようにいかなかったのでありまするから、今度は向こう三カ年間にわたって五%の定員減の手段をとったのでありまするが、おっしゃるような首切りなどという、むごたらしいものは考えておりません。離 職者などを調査いたしてみますると、三年間に五%を削ることは、皆さんからもさしたる御非難もなく、喜んでもらえると思いまして、五%にしたのであります。自衛官の問題は、部隊の編成、装備などの関連において、定員はやっぱり国会できめるものであると思いまして、現行どおりにしたのであります。
以上お答えを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣赤澤正道君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X00819680315/7
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008・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) お答えいたします。
国と地方との行政事務の再配分につきましては、御指摘のとおり、地方制度調査会からも、臨時行政調査会からも答申をいただいております。これらの事項につきましては、いままでとて、法令改正の際、逐次答申の趣旨の実現につとめてまいってはおりますけれども、現在では行政改革本部が中心となって、具体的な改革が推進されておりますので、この機会に実現を促進するようにつとめたいと考えております。
それから行政簡素化の通達を自治省でやたらに出しておるが、通達だけで片づく問題じゃないんじゃないかという御指摘は、まことにもっともだと考えております。言うまでもなく、行政改革は国、地方を通じて行ないませんと、実現不可能な面が非常に多いのでございまして、これは単に地方を指導するということだけじゃなくて、国との関連においてただいま根本的な解決を検討いたしております。
それから、例の地方事務官の問題でございます。これは、関係各省と始終協議しておりますけれども、なかなかこの意見が一致してきません。しかし、どの省でも、関係各省では、臨調の答申が提出されておりますし、まあすみやかに解決しなきゃならぬ問題であるということについては、認識は一致いたしております。自治省としましては、近く、国及び地方を通じた行政改革の具体案が、ただいま行管長官が申されましたとおりに、各省で急に検討される運びともなっておりまするので、この機会をとらえまして、関係各省の御協力をさらにお願いいたしまして、一括して地方事務官問題を解決いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X00819680315/8
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009・河野謙三
○副議長(河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
本日はこれにて散会いたします。
午前十時五十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X00819680315/9
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