1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年五月十日(金曜日)
午前十時四分開議
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○議事日程 第十九号
昭和四十三年五月十日
午前十時開議
第一 国務大臣の報告に関する件(農業基本法
に基づく昭和四十二年度年次報告及び昭和四
十三年度農業施策について)
第二 国務大臣の報告に関する件(林業基本法
に基づく昭和四十二年度年次報告及び昭和四
十三年度林業施策について)
第三 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
第四 日本開発銀行に関する外航船舶建造融資
利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
第五 医師法の一部を改正する法律案(第五十
七回国会内閣提出、第五十八回国会衆議院送
付)
第六 社会保険労務士法案(衆議院提出)
第七 保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する
法律案(山本杉君外一名発議)
第八 日本万国博覧会の準備及び運営のために
必要な特別措置に関する法律の一部を改正す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
第九 公衆電気通信法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
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001・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/1
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002・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、国務大臣の報告に関する件(農業基本法に基づく昭和四十二年度年次報告及び昭和四十三年度農業施策について)。
農林大臣から発言を求められております。発言を許します。西村農林大臣。
〔国務大臣西村直己君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/2
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003・西村直己
○国務大臣(西村直己君) 昭和四十二年度農業の動向に関する年次報告及び昭和四十三年度において講じようとする農業施策につきまして、その概要を御説明申し上げます。
まず、昭和四十二年度農業の動向に関する年次報告について申し上げます。
四十一年から四十二年の半ばにかけてのわが国経済は景気上昇の過程をたどったのでありますが、このような状況のもとで、四十一年度における農業の生産性及び農業従事者の生活水準は、前年度に引き続き上昇し、他産業との格差もやや縮小を見たのであります。しかしながら、このような格差の縮小には、農産物価格の上昇に負うところが少なくないのであり、また、生活水準の上昇も、依然として兼業化の進展に伴う農外所得の増加に負うところが大きいのでありまして、生産性の向上がなお一そう強く要請される次第であります。
近年、その伸びが停滞していた農業生産につきましては、米生産の回復や野菜、果実などの増産等により四十一年には上昇に転じ、四十二年におきましても、米の記録的な豊作を中心にかなりの伸長を示しております。他方、食料需要は内容の変化を伴いながら増大しており、農産物の輸入も引き続き増加する傾向にあります。
次に、農業経営の動向について見ますと、農業就業人口は四十一年度には前年度より三・九%減少して一千六十五万人となり、農家戸数も四十一年十二月現在で五百五十万戸に減少いたしました。このような傾向の中で、兼業農家は農家数全体の七〇%に達しております。他方、農業に専念し、農業所得だけで勤労者並みの生活水準を享受している農家も一部に育成されつつありますが、なお経営規模拡大への道には険しいものがあるのであります。このように生産性の高い農家がその数を着実に増加し、農産物の供給に占める割合を高めていくという動きも、現在のところ、なお微弱でありまして、構造政策の推進が一そう急務であることを痛感する次第であります。
以上が第一部の概要であります。
次に、「第二部農業に関して講じた施策」は、昭和四十一年度を中心といたしまして、おおむね農業基本法第二条に掲げる施策の項目に従って申し述べたものであります。
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最後に、「昭和四十三年度において講じようとする農業施策」について申し上げます。
ただいま御説明申し上げました農業の動向にかんがみますとき、農業の近代化を一そう促進することがきわめて重要であることは申すまでもありません。よって政府は、農業基本法の定めるところにより、農業の生産性及び農業従事者の生活水準の向上をはかるため、同法の定める施策を着実に具体化することを基本的態度として農業施策を講ずることといたしております。
特に、農業構造の改善につきましては、生産性が高く経営規模の大きい自立経営や効率の高い生産組織を育成しながらわが国農業の体質を強化改善するため、農地の流動化の促進、総合資金制度の新設、協業等集団的生産組織の助長、農業地帯の保全振興対策等をはじめとする一連の施策を充実することといたしております。
以上、昭和四十二年度農業の動向に関する年次報告及び昭和四十三年度において講じようとする農業施策につき、その概要を御説明した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/3
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004・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。武内五郎君。
〔武内五郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/4
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005・武内五郎
○武内五郎君 私は、日本社会党を代表して、今国会に提出された昭和四十二年度農業の動向に関する年次報告並びに四十三年度において講じようとする農業施策について、若干の質問をするものであります。
農業基本法が施行されて、本年すでに六年を経ております。しかるに、農業生産は昭和三十年後半から停滞し始めて、特に米麦の生産減退が目立ってまいりました。幸い四十一年は天候に恵まれて、米の生産の回復と蔬菜、果実の増収となり、四十二年は、稲の記録的豊作によって農業生産は上昇の形を示したのであります。農家所得も同時にかなりの伸びを見せております。しかし、この農家所得の六〇%は実は農外所得であり、農業所得よりも兼業所得のほうが年々大きくなっておるのであります。農村人口の流出、兼業、出かせぎの増加等、矛盾に満ちた日本農業の姿を見るのであります。また、畜産物をはじめ生鮮食料品の価格の上昇は、農家経済に有利に影響するごとくに見えたのでありまするが、実際は、農業所得の伸びよりも経営のための支出のほうが一段と大きくなって、むしろ農業の危機が一そう深まったことを感じさせるのであります。
政府はさきに、農基法体制のもとで二・五ヘクタール以上の自立経営農家を十年間で百万戸つくると言いましたが、六年たって自立経営農家は、全農家の九%足らずで、少しもふえてまいりません。しかも、流動した農地の二〇%は、工場敷地や宅地に転用されたものであります。農業経営拡大のためにはあまりにささやかな面積であり、専業農家の経営規模拡大との結びつきはきわめて弱いものであります。私は、日本農業の危機は、このような農業経営を育てようとすることさえ困難にすることから出ておると考えるものであります。
しかし、政府は、もっぱら小規模農家が大規模農家へ農地を移動させないからであるというふうに考えて、昨年いわゆる新農業構造政策を打ち立てたのであります。その中心は農地法の改定であります。そのおもな点は、小作契約が簡単に解約ができること、小作料の最高額統制を撤廃し、不在地主を許すなどであり、さらに、法人会社が農業目的と称して農地の取得ができることになるのであります。これは、農地の売買が進まなくても借地農業の経営を可能にして、不在地主の存在や資本家的農業に道を開くことに相なるものであります。かくて、おそらく耕作農民からの土地取り上げ問題が頻発することは避けられないことになると思うのであります。また、会社形態の法人が農地を取得すれば、アメリカのデカルプのごとき会社が日本の食品会社と合弁で経営ができるようなことになると思うのであります。農民は、不安定な農地にしがみつきながらも、生活維持のためには出かせぎにたよらなければならない状態に相なるのであります。農地の流動化は、単に農地だけをいじくる政策だけでは、十分な解決は得られるものではなく、多くの進んだ国では、離農すべき者や離農を希望する者に対して、親切な施策がとられておることを忘れてはなりません。社会的諸条件から生まれてくる負担を農民にだけ、になわせてはならないという考え方から、西ドイツやフランスやオランダでは、農業からの隠退を希望する老齢農民に対して、老齢農民年金が交付されており、デンマークでは、年金のほかに、離農者の農業施設はもちろん、営農のための融資残高の引き継ぎまでされるのであります。ベルギーやスウェーデンでは、生活保障を与えられながら職業の訓練が進められておるのであります。
私は、日本が農地流動化がこうように渋滞した原因は、第一は、農基法農政にあると考えるものであります。農基法の描く日本農業のビジョンは、自立経営農家であります。これは、企業的経営農家ではなくて、賃金水準の低い家族労働に依存するものであります。すなわち、農村を低賃金労働のプールとして維持するためのものであります。それには、農産物価格は低く押えておき、農民は生活のために兼業農家となり、出かせぎ農民とならねばならないのであります。これが、日本の資本主義が要求する農業政策であります。だから、零細農民は農地にしがみついて離れないのであります。
第二は、離農すべき者に対する不安のない職業と生活の保障がないことであります。だから、政府の農業構造政策をリップポリシーという批判のあることは、いなめない事実であります。
第三は、自立経営農家として、資金の融通、土地の取得、経営の指導に手厚い保護を受ける者と、それからはみ出される者とが同じ村にあって、差別農政がとられることであります。それは農地の流動化ではなくて、農民の対立の激化となるのであります。
さらに私は、次の点を指摘しなければなりません。自立経営農家育成にあたって、融資と指導が融着する場合、往々にして官僚的指導が強められることであります。それはもはや、指導ではなくて強制となり、手厚い保護育成ではなくなるのであります。私は、これらの諸問題に当面しつつ、農地流動化の円滑な進め方について、総理並びに農林大臣のお考えを承りたいのであります。
次に、食糧需給の問題に関してお尋ねいたしたいと存じます。
白書は、「一時的な農業生産の増大があったにもかかわらず、食料輸入の増加と自給率の低下が続いて、食料の効率的供給という面から見れば、必ずしも無条件に評価するわけにはいかない」と、いささか反省を含めて述べております。日本の農業政策が大きな誤算を繰り返してまいりました。それは食糧生産と需給の予測に関するものであります。
その第一は、昭和四十一年、四十二年の豊作に恵まれて、米の生産回復を見ることができましたが、麦類、雑穀類、イモ、豆の生産低下の傾向は大きく、特に米麦の絶対量が不足しておるのであります。政府は、消費内容の変化は米麦の消費量の減少となると考えたのでありまするが、実際は、三十七年度から逆に消費が増加してまいりました。
次に、農基法農政の主柱であります。選択拡大農業の畜産、果樹、蔬菜等の成長作物は、価格対策の確立がないために、生産起伏が、はなはだしく、乳牛、肉牛の飼養は減退し、果実、蔬菜は激しい価格の変動からくる悩みを抱いておるのであります。
第三は、開放経済体制に対する立ちおくれからくる日本農業の苦悶であります。政府は封鎖体制を持ち続けながら農業の体質を改善しようと考えたのでありますが、これがたいへん甘いものでありました。自由化の波は外国農産物の流入を増加させており、米、豚、乳製品等をはじめ農産物の輸入量は年々著しい増加を示しております。選択拡大農業の大宗たる酪農は、飼料の六〇%を外国飼料にたよらねばなりません。だから日本の酪農はアメリカの畜舎の陰で行なわれていると言われておるほどであります。過日、東京晴海埠頭にアメリカの農業見本市が開設されました。羨望にたえない魅力ある農産物が豊富に陳列されておりました。これがアメリカ農業の日本上陸であると言った人がありました。しかしながら、わが国が食糧の絶対量に不足しておることは事実であります。この食糧不足をいかにして乗り切るかということが日本の農業政策の課題であります。
その第一は、国内農産物の生産体制を立て、真にやむを得ないものに限り外国農産物を輸入するという自給政策であります。
第二は、食糧の輸入を自由にし、日本の工業製品の輸出を進めるというものであります。開放経済のもとでは、安い外国食糧の輸入がはるかに合理的であり、いたずらに食管赤字を増大させて財政負担を大きくする必要はないというのであります。最近、「開発輸入」ということばが使われております。資金、機械、技術を低開発国に投入して、そこから農産物を輸入しようというものであります。これは帝国主義政策の露骨な考え方であります。いま、日本の農業はこのような岐路に立っているといわれております。それは、この二つの道のいずれを選ぶかということであります。基本法農業の選択拡大方式は、米麦軽視の思想で貫かれていたことは否定できないのであります。米の生産は今日安定的な農産物の一つでありますが、それにもかかわらず、昭和三十七年をピークに作付面積は減少し、また麦類に至っては、年々その減少が著しくなっております。昭和三十年代を通じて、少なくとも三十七年までは乳牛、豚、鶏の増産が見られたのでありますが、三十八年以降の減退は、海外畜産物の輸入政策が選択拡大政策とは逆行したものとなったことを示すものであります。私は、食糧の自給体制を無視した政策は国の農業政策として許されるものでないと存ずるものであります。かつて、フィリピンが主食をアメリカに依存して、マニラ麻、ココヤシ、たばこ等の商業作物の選択的農業をとったことが、ばく大な主食輸入の片寄った農業国となり、今日なおかたわな性格の農業を続けておるのであります。
私は、総理並びに農林大臣にお尋ねいたします。
第一、食糧の自給体制を堅持し、外国農産物の輸入に対しては、日本農業育成の立場からこれを規制する考えをお持ちかどうか。
第二は、政府の中には、米価のスライド制移行をほのめかして、食管制を空洞化させるような発言も聞かれるのでありますが、政府は食管制をあくまで堅持すべきものと考えておるかどうか。
第三は、今日減産の方向にある畜産物、蔬菜、果実の価格安定策と、飼料自給対策を必要とするが、その考えはありますかどうか、お伺いしたいのであります。
以上で私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/5
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006・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 武内君にお答えいたします。
農業基本法ができまして、この基本法の中に生産政策、また価格政策、さらに構造政策等が盛り込まれております。これらの政策を総合的に遂行することによりまして、立ちおくれておる農業を産業としてりっぱに確立する、農業が近代産業として運営される、こういうところへ実は持っていきたいというのがねらいでございます。そこで、ただいまもいろいろお話がありましたように、なかなかその目的達成は容易なことではありません。自立農家というものが、ただいま言われましたように、わずかではありますが、たいへんその中身が整備されたと、かように私は思います。しかし、一方、兼業農家の数が非常に多いし、その兼業農家もいわゆる一種兼業というよりも二種兼業が非常に多い、いわばわが国の農業が零細である、こういうような点が指摘されます。それは、ただいま武内君の話されたとおりであります。これを変えていかない限り、いわゆる産業としての農業というものの確立はできない、かように私どもは思いまして、その構造政策に特に意を注いで、いろいろ構造上の改善をはかっておるわけであります。その中身を一々は申しませんけれども、構造政策に特に力を入れておる。それが今回の農地法の改正等にもつながる次第でございます。
ただ、その場合に、いわゆる自立農家を育成強化することはけっこうだが、そのために兼業農家あるいは零細農家というものが虐待をされているのだ、こういうような御批判がただいまあったと思います。私は、自立農家をつくることと、いわゆる兼業農家を保護することと、その政策は矛盾するものではないと思います。また、矛盾さすようなことがあってはならないと思います。したがいまして、兼業農家についての手当ても、同時にまた、これらについての処置も、私は並行してやれるように思います。また、ただいまは、資金的な供与をはかるその結果、官僚統制になる、あるいは官から押しつけがましい改革をしいることになる、強制になるというような御批判でございましたが、そういうようなことがあっては、これはたいへんでございます。私は、官がさような強制だとか、あるいは統制をする、こういうようなことをさせないように、この上とも皆さんとともども留意していきたいと思います。したがいまして、ただいまのような点についての御注意は十分私は考えてまいるつもりでございます。
次に、食糧自給体制についてお尋ねがございました。このただいまの状況のもとにおきまして、米麦を中心にしての食糧自給体制、これはある程度非常に高いところでとどまっておると思います。しかし、いわゆる食糧といわれる中に、飼料等を含めて自給体制を考えますと、なかなかこれが一〇〇%というわけにはまいりません。そこで、ただいまわれわれが一応計画いたしておりますものは八〇%前後、その辺で安定的な供給をするようにしたいものだと、かように実は考えております。このことは、しばしば申し上げたとおりであります。その点で、一部アメリカに依存するとか、あるいは低開発国、発展途上国に特別な便宜をはかって食糧を輸入するのではないか、こういうような疑いがあるようなお話でございますが、私どもはそういうような考え方はしていない。ただいま申しますように、どこまでも食糧は安定供給、そういうことに力を入れる。そのために必要な施策をとっておる。したがって、簡単に割り切りまして、これから食糧は輸入に依存するんだというようなドラスチックな考え方は、もちろん持っておりません。このことは、いまの農業自体の目的が安定供給と、それから農業者の福祉の向上にその目的があると思いますので、それと矛盾するような政策は、私どもは採用してはおらないつもりでおります。また、その意味におきまして、食管会計についていろいろの考えがあるんじゃないか、これから変えていくのじゃないのか、したがって、これを厳守するということを明言しろというお話でございますが、私は、いまの状態のもとにおきまして、食管制の基幹を乱るようなことは考えておりません。これは、食管制度のその基幹が守られる、かように御了承を——また、さようにいたします。
次に、価格政策の問題でありますが、価格の問題につきましては、畜産物あるいは野菜等の価格が安定されることが必要だと、かように思います。したがいまして、ただいまも種々価格安定政策を採用いたしておりますが、これではまだまだ不十分だと、かように考えますから、これらの点につきましても、御指摘のありましたように、さらに実効があがるように、この上とも努力をするつもりでございます。
いろいろお話を承りましたが、私からお答えするところは以上でございます。(拍手)
〔国務大臣西村直己君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/6
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007・西村直己
○国務大臣(西村直己君) 大体、総理から申し上げたことで尽きていると思うのでございますが、二、三補足を申し上げます。
実は、農地の流動化等を中心に御批判があったと思います。農地法については、先般ここで趣旨を御説明申し上げまして、いろいろな御意見も出ました。同時にまた、本日も出ております。ただ、私どもは、日本の農業が零細であるということ、規模がこまかいという点につきましては、一つの歴史的な所産でございます。しかし、経済がこうした異常な発展をする中においての近代農政としては、経営規模を大きくしてまいるという努力はやはり続けてまいらなければならぬ。そこでもって、もちろん他のいろいろな施策が必要でございます。たとえば、この国会でも御審議を願いつつありますところの農業振興地域の整備に関する法律案、言いかえれば、この点は農業立地でございます。農業立地を強めてまいる、そうして国としての大きな施策を特段にそこに重点的にやっていこう。いわゆる環境整備なり農業立地なりの思想の中で、さらに農業をやろうという意慾の強いところで、農地法の精神を生かしながら農地が立ち直るという態勢が私どもは望ましいのではないか。もちろん、それからくるところの弊害が起こらぬように規制等も加えながら、農地の流動化をやってまいりたいというのが、一つの精神でございまして、どうかその点は御了解が願いたいと思うのであります。
それから、一番むずかしいのは、農業を離れていく方々の問題でございますが、今日の日本の農業者の経済内容を大体見ますと、開拓者とか一部の方は非常に借財があり、また、北海道の一部には借財が多いといいますが、全般的には借り入れ金よりは蓄積その他のものが多いのであります。しかし、農を離れるということは人間の職業の大きな転換でありますから、これはやはり農林省だけでなくて、他の省との関連をもちまして、円滑な転換を絶えずはかってまいりたいと思うのであります。
それから、食糧の自給体制等でございますが、これも基本的には総理からお話がございましたが、自給体制の堅持ということは、これはもう当然のことでございまして、イギリスその他の例を見ましても、私どもはあくまでも食糧の自給体制を堅持していく。もちろん、それには主食もございますが、同時に、酪農その他の関連農産物で非常に需要の強いものがございます。そこで、私どもは、草地の拡大というようなことを林野とあわせまして考えてまいりたい。そこで、今回の農地法の改正の中にも、草地利用権の設定というような新しい制度を加えて、国内の飼料自給体制を深めながら、主食なり関連農産物の供給強化を高めてまいりたいと思います。もちろん、その間におきまして食管の問題も、総理がお触れになりましたように、食管の基本なり精神なりというものを十分体しながら、適正な食管制度なり価格の運営というものをやっていかなければならぬという、そういう考え方であることを申し上げます。
なお、それから、畜産物、果樹、蔬菜の価格の問題がございましたが、これは現在それぞれ法律がございます。その法律の運用において弊のあるところは、私ども今後とも検討を加え、直してまいるつもりでございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/7
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008・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 山田徹一君。
〔山田徹一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/8
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009・山田徹一
○山田徹一君 私は、公明党を代表して、ただいま説明のありました昭和四十二年度農業の動向に関する年次報告に関し、重要な数項目にしぼって、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
質問の第一は、構造政策のあり方についてであります。
白書は、わが国農業の構造問題を多角的に分析し、結論においても、構造の近代化、すなわち自立農家の育成を最も重要な柱だと指摘しておりますが、分析も不十分であり、それを講じようとする施策も、はなはだ甘いと考えざるを得ないのであります。たとえば請負耕作を黙認することによって広範に発生しているやみ小作は全く分析されておりません。去る三月発表の四十一年産米生産費調査によると、青森県は調査農家八十戸で、小作地の小作料は平均二万二千六百十七円、高知県は四十戸で一万七千六百一円、香川県は八十九戸で一万五千六百四十四円であります。これらは、いずれも統制小作料とやみ小作料との平均でありますから、やみ小作料だけをとればもっと高い水準となり、このような高水準のやみ小作が広範に発生している現状において、農地法改正により、小作権設定を中心とする規模拡大をはかろうとする法律をつくっても、高水準小作料の再現は必至であり、農業の発展を阻害する最大の要因と考えるものであります。小作料の引き上げが、米価を引き上げる要因となり、さらに諸物価の引き上げにもはね返る危険性も生じます。したがいまして、その考えについてお答え願いたい。
また、農家負債の問題は、農家経済調査による平均値だけを見ると、一見問題ないようでありますけれども、個々の農家にとってはきわめて深刻であります。災害を受けやすい開拓地や北海道の畑作農家が、かなり以前からこの問題に悩んでおりますほか、構造改善事業等により、養鶏、養豚、あるいは機械化を行なったものの、これに失敗して負債に苦しむ例が各所にあります。ものごとを平均的にながめることも必要でありましょうが、これらの離農したくとも借金のため動きがとれない層に対する分析と対策が必要と考えるのであります。また、昨年農林省が発表した「農業構造政策の基本方針」では、農業の地域区分と、それに対応する農政の展開が大きい柱となっております。しかし、白書では、一応各項目について地域別の分析をやっておりますけれども、地域政策的農政としてのビジョンは明確にされていないのであります。特に問題なのは、離農する人々に対する対策がほとんど検討段階であり、地価問題に至っては初めから触れようとしておらないのであります。もっと構造問題の分析を深め、ほんとうに効果のある構造改善を推進する政策を確立すべきだと考えるのでありますが、総理大臣並びに農林大臣の見解を伺いたいのであります。
第二は、農産物の自給率についてであります。
今日、わが国農政に課せられた大きな問題は、食糧の自給率の低下による輸入農産物の激増をどう解決するかであります。食用農産物の自給率の推移を見ると、三十五年の八七%をピークとして年々低下し、三十九年は八一%、四十年は八二%、四十一年は八一%、四十二年は七五、六%を下回ると見られています。品目別についても、三十五年を基準に考えても、全品目の自給率が低下し、特に、濃厚飼料は六七%から四〇%に、大豆は二八%から八%に、大麦は九九%から六五%と著しく低下して、畑作物を放棄しようとする傾向が見られます。それは、もうからぬ畑作ともいわれ、裏作も考えられず、年々作付が減少しているのであります。白書にも、耕地面積は、四十二年には前年に比べ田畑合計して五万八千ヘクタールと大幅に減少した、畑地は二・九%と全地域にわたって減少、水田でも北海道、東北、北関東の三地域を除いてすべて減少しています。一方、農地が他に転用されたのは、三十五年度の二倍近い二万九千ヘクタールと、逆に激増をしている現況であります。政府は、このようなきびしい実態の上に立って、どのような自給率を目標として生産性向上をはかっていくのか、お伺いします。
さらに、自給率の低下による農産物の輸入激増についてであります。国際収支の赤字が増大されているその中にあって、農産物の輸入額は、前年を一六・六%上回る二十二億六千万ドル、邦貨にして八千百五十億円にも達しております。これは国内総輸入額の二三・八%であり、世界的に見てもイギリス、西ドイツに次ぐ世界第三位の輸入国になっているのでありますが、さらに主要食糧である穀類及びその加工品と米、小麦、バレイショの輸入については八一・二%と、第一位であり、イギリスの二六・四%、西ドイツの一三・八%、フランスの一三・八%と比べて圧倒的に多いのであります。これは、わが国農業政策の基本がいかに貧弱であるかを示すよい例であり、まことに遺憾であります。農産物の巨額な輸入は、国際収支の悪化を増すばかりでなく、国内自給率を、じり貧に追い込むものと考えられます。これは政府の農業政策の見通しを誤った失政のあらわれであると、断ずるものであります。農林大臣の御所見をお尋ねいたします。
第三は、米麦を含む農産物価格についてであります。
米麦と一部の農産物の価格は比較的に安定しているが、他の大部分の農産物の価格不安定は、そのまま農業従事者の生活の不安定につながり、かつ、適地適産と選択的拡大を著しく妨げているのであります。白書には、米は対前年度上昇率七・七%に対し、雑穀、豆類はマイナス〇・八%、野菜は三・五%、果実五・二%、そのほか畜産物等、いずれも大きく下回っております。それは米麦の価格支持政策がもたらしたものであると思いますが、この行き詰まりを、いかに解決するかという問題が少しも示されず、義務的な報告に終わっている点は、これまた、まことに遺憾であります。また、第二の米価闘争と言われ、現在問題になっている乳価についても、何ら述べられていないのは、どういうことなのか。四十三年度の米価問題並びに食管制度の今後の方針、乳価問題に関する対策について、大蔵大臣並びに農林大臣の所信をお伺いいたします。
第四に、農業労働力の減少についてであります。
農業人口は最近一年間に九十二万人も減少、四十一年度の農業就業人口は、前年度より三・九%減少、総就業人口に占める比率は一九・三%と、ついに二〇%を割り、農業の将来に暗い印象を与えているのであります。特に、労働力流出の七〇%までが新卒者で占められております。農村の人口流出は、依然として経営規模拡大に結びつかず、逆に農村人口の老齢化、女性化をもたらしている。このように若い労働力が農村から流出されることは、農村の荒廃を意味するものであり、まことに重大かつ憂うるべきことであります。農業の将来に対する明るいビジョンを明示し、若い労働力を確保、育成することを真剣に考えなければならないと思いますが、政府はこの点についてどう考えているのか、明確なる所見を総理並びに農林大臣にお伺いいたします。
最後に、農村環境の整備についてお伺いいたします。
白書は、農家の生活環境が都市に比べ非常に悪いことを分析しておらないから、一向に解決されないのが現状であります。この問題はその大部分が農林省所管ではありません。農業振興地域の整備に関する法律案においても、環境整備問題は訓示規定があるだけであります。しかし、道路、住宅、衛生、レクリエーション、その他農村に適合した生活環境施設の整備は、健康で文化的かつ生産性の高い農業及び農村の建設に不可欠の問題であります。この点に関し、総理大臣の具体的な構想を示していただきたいと思います。
以上、基本的な問題にしぼって御質問いたしましたが、政府の具体性のある答弁を期待しまして、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/9
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010・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 山田君にお答えいたします。
先ほど武内君にもお答えいたしましたように、農業基本法の命ずるところでは、自立農家をとにかく育成強化しなければならない、そしてこれを中心にしていわゆる村づくりをするというのが骨子でございます。しかしながら、農業の現状は自立農家ばかりではありません。兼業農家が非常に多い。兼業農家の場合におきましては、いわゆる農業生産でお手伝いをすることもわりに少ないのでありますから、他の面でいわゆる農家収入——農業収入ではございません、農家収入をふやすようにして、そして兼業農家がしあわせになられるように総合的な施策をいろいろ努力しておるわけであります。しかも、これは政治の全般として考えることでありまして、どちらかといえば、専業農家、この育成強化が農業基本法の命ずるところでもある。われわれはそういう線でいろいろくふうをしておるわけであります。
ところで、御指摘になりましたように、この専業農家に力を入れるために、農地の拡大あるいはだんだん規模を拡大する。そういうことが無理なために、小作料等がずいぶん高いものがある、こういうお話でございます。小作料も——私どもが自立農家をつくるという場合には、零細な農地を相手にいたしまして、そうして自立農家がそれらのものを借りて、あるいは買い取って、そうして経営することがいいだろうと思いますので、ただいま言われるような小作料の面で特に昔のようにまたなるのだ、こういうことはないはずであります。しかし、特殊な例等について御指摘になると、そういうものも地域的にはあると思いますから、こういう点は農林当局におきましても、特に力を入れるべきではないだろうか、かように思います。一般的傾向から申せば、最近は雇用の機会が非常に増大しておりますから、いわゆる零細農家もこの雇用の関係で出かける、その土地を専業農家の方が借りて、そうして農業経営をするという場合でありますから、この小作料の問題は、むしろ零細農家を助けるような方向にあるだろうと私は思います。したがいまして、昔のように小作料の高いことを心配することはないだろう。したがって、今回は農地法を改正いたしまして、小作料の最高額の統制、これをはずそうということで、皆さま方にもお願いしているわけでございます。
次に、農家が離農する場合に、いろいろの問題が起こっている、ことにそれが特殊の開拓農民あるいは開拓地等においてはそういう場合があるという御指摘でありますが、おそらくこの離農する場合に、資金難やあるいは農業経営の失敗というようなところから、いわゆる窮迫型離農というようなこともありましょう。それについては、それに対する特別な対策を立てなければならない。一般的傾向から申しますと、ただいま申しましたように、雇用の機会が増大しておりますし、農家の経理内容もよほど改善されておりますから、最近では、いわゆる窮迫型離農というのは、わりに少ないように思います。自分の兼業しておるそのほうの仕事に専念する、こういうので、その労働力の事情から離農するというのが普通の形ではないかと思いますので、政府はそういう意味のものの対策を立てておるわけであります。こういう人たちに対しまして——また特別な事情によって離農する、こういうような場合には、職業転換給付や職業訓練等を実施いたしまして、離農が円滑に行なわれるようにいたすつもりであります。
次に、価格安定、また国内自給率、輸入問題等についてお触れになりました。食管制度等にもお尋ねがありましたが、これらは所管大臣からお答えすることにいたしまして、私の答弁は割愛させていただきます。
次に、農村人口の流出の問題。いまの離農の問題とからみ合いますけれど、一般的に見まして、都市化の傾向がある、そして農村は疲弊する、いわゆる過疎現象を生ずる。その場合に一番問題になりますのは、農村の農業の後継者の問題だと、かように思います。適当な後継者を得ること、これはただいまの農政におきましても、特に力を入れなければならない問題でありまして、御指摘のとおりであると思います。そこで、そのためには、まず環境の整備を積極的に行なっていく。この白書でも申しておりますように、都市に比べて農村はたいへんおくれておる。こういうところから、道路や住宅や、またその他の上下水道等、生活環境の施設の拡充をはかって、そして環境の整備をし、いわゆる後継者をふやすような状態にする、これが私どもに課せられた役目だ、かように思っておるわけであります。
ただいまお尋ねのこれらの点、あるいは、さらにもっと詳しく答えろというようなお話もあろうかと思いますけれども、その他は各大臣からお聞き取りいただきたい。(拍手)
〔国務大臣西村直己君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/10
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011・西村直己
○国務大臣(西村直己君) 小作料の問題は、ただいま総理からお触れいただきましたことで要は尽きておりますが、特に私のほうから申し上げたい点は、小作料の最高額をはずしましても、今日は労働需要の非常に強い時代でございます。したがって、その間におのずから調整はつく。いま一つは、現在行なわれております小作料統制を受けておる地域は、そのまま十年間は残ってまいる、こういうような法のたてまえになっておるわけでございます。
それから、いま一つ、地域人口とか、自給度を上げるとか、あるいは同時に長期見通しであるとか、これらを一括して申し上げますと、御存じのとおり、現在昭和三十七年につくりました農業基本法に基づきます長期見通しというものを持っておるのでありますけれども、これが現在の実勢に合わないので、現在取り急いで一つの国としての長期見通しを立てようと、鋭意努力中でございます。もちろん現在は、昭和四十一年度を基準にいたしますと、米につきましては九四%、鶏卵等は一〇〇%、果実が九〇%台近くとか、いろいろあります。中には、物によりましては、小麦、大豆等低いものもございます。また、酪農品につきましても、自給度は多少上がります傾向にありましても、裏には飼料輸入等、大きな問題が控えております。そこらを見合わせまして、国としてさらに自給度をどの辺まで、どのような形で持っていくかという点を、さらに明確にすべく鋭意努力をいたしておりますと同時に、それと見合いまして、例の農業地域振興法案でも御審議を願っておりますように、県あるいは町村の段階において振興地域、農業立地をきめます場合に、整備計画あるいはその基本になる整備方針というようなものは、おのずからやはり、どこにどういう主産地を形成していくかというようなことを、いま少し明らかにしてまいって、そういう方向に沿って、他の施策とあわせまして自給率を高めてまいるということを、長期的にも考えてまいりたいと思うのでございます。
それから、価格の中でもちろん農林物資につきましては、価格支持制度というものを相当部分入れておることはすでに御存じのとおり、米麦をはじめ、それ以外にも蔬菜であるとか、あるいは畜産物につきまして、それぞれ法律がございますが、先ほど申し上げましたように、時代に合わせて、特にこれらは絶えず検討を加えていくことを必要とすると思いますが、同時に私どもは、ただいまたとえば乳価のような問題が出ております。乳価のうちで、原料加工乳につきましては、すでに保証価格の改正で済んでおるわけでありますが、市乳につきまして問題は出ておりますが、これは委員会等におきましても十分御論議もありました。私どもはできる限り中央、地方のあっせん等を通じてこの問題を打開してまいりたいと思うのであります。根本は、やはり日本の草地の拡大によって酪農を基盤的に固めつつ、あわせてこういった現実の問題を解決していかなきゃならぬと思います。
それから、若い労働力は、もちろん先ほどお話が出ておりましたように、確保ということが大事でございますが、私どもはそのためには、一つは教育の面から、今回の農林省設置法等におきましても、中央に農業者大学校、それから、あるいは後継者育成資金を今年度予算には相当規模拡大をいたしておる。同時に、各府県等におきましても、伝習農場等の研修機関等を通して、程度のほんとうに高い、合理的な、農村の青年子女の後継者の育成ということとあわせて、住みよい環境づくりというものを、一農林省だけではなくて、関係省とあわせて、質のよい、中核的な後継者、労働力の確保につとめてまいりたいと思うのでございます。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/11
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012・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 私への質問の第一は、乳価についての問題でございましたが、御承知のように、問題が二つございます。一つは加工原料用の乳価の問題であり、一つは飲む牛乳、飲用乳価の問題でございますが、加工原料乳の生産価格につきましては、ただいま不足払い制度がとられております。したがって、政府が保証価格の決定をしなけりゃなりませんが、本年度はこの三月の末に、百キロ当たり四千二百五十二円と決定いたしました。この保証価格は、昭和四十一年に制度が発足してから年々引き上げられておりますが、問題は、この酪農の振興が永続的に、ただこの価格政策にのみ頼っていいかということでございまして、これは好ましいことではございませんので、やはり酪農の生産性の向上ということに、もう一段の力を入れるべきであるというふうに考えております。
で、飲用乳価の問題は、これは政府がきめる問題ではございませんで、ただいま生産者と生乳業者との間で値段の交渉が行なわれております。まだ帰趨はわかりませんが、昨年、末端の消費者価格を値上げしたばかりでございまして、本年度は、この両者の折衝においても、末端価格を上げないで済む方向に落ちつくというふうに私どもは聞いておるところでございます。
質問の第二は、今年度の米価、食管制度の問題でございますが、今年度の生産者米価については、まだ政府として何ら方針をきめておるところでございません。生産者価格と消費者価格の関連の正常化ということに十分の検討を加え、また、いわゆる総合予算主義というこのたてまえも頭に入れまして、適正な価格の決定をいたしたいと考えております。食管制度の問題は、御承知のように、もう農政のうちで最も大きい比重を占めておる事項でございますし、また、国民経済に深い関係を持っておりますので、簡単にこれは取り扱える制度ではございませんので、慎重に対処する必要があると思います。ただいま財政制度審議会の第一部会でこの問題と取り組んでくれておりますが、あらゆる機関の意見を十分に聞いて、この改善には努力したいというふうに考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/12
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013・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/13
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014・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第二、国務大臣の報告に関する件(林業基本法に基づく昭和四十二年度年次報告及び昭和四十三年度林業施策について)。
農林大臣から発言を求められております。発言を許します。西村農林大臣。
〔国務大臣西村直己君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/14
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015・西村直己
○国務大臣(西村直己君) 昭和四十二年度林業の動向に関する年次報告及び昭和四十三年度において講じようとする林業施策につきまして、その概要を御説明いたします。
まず、この年次報告に述べております林業の動向について申し上げます。
四十一年における木材需要は、建築需要の増加等により、きわめて旺盛でありましたが、国内における木材生産は若干の増加にとどまり、外材輸入量が大幅に増加をいたしました。このような事情から、木材価格もかなりの上昇をいたしたのであります。この木材価格の上昇に伴い、四十一年度の林業所得は著しく増加いたしました。
〔議長退席、副議長着席〕
また、毎年の造林面積は減少傾向を示しておりますが、各県における公社造林の進展など新しい動きも見られ、さらに、林道はまだ十分とは言えませんが、逐次整備されつつあります。
一方、林業経営の動向について見ますと、林業機械の導入など林業生産技術の進展が見られますが、私有林経営の規模は零細なものがきわめて多く、経営基盤が脆弱である等、林業構造の一そうの改善が必要な状況にあります。
林業従事者の動向につきましては、山村農民の流出が著しく、林業労働力の不足が目立っております。
次に、林業に関して講じた施策でありますが、これは、最近、特に四十一年度以降において、政府が林業振興上実施した主要な施策を述べたものであります。
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最後に、昭和四十三年度において講じようとする林業施策の概要について申し上げます。
政府といたしましては、近年における林業の動向等にかんがみまして、林業基本法の趣旨に従い所要の諸施策を講ずることといたしております。特に、木材需給の安定を期するために、外材輸入の適正円滑化と相まって、森林施業の合理化、計画化を推進するとともに、林道の整備拡充、造林の推進等の施策を講じ、もって国内の林業生産の増大及び生産性の向上をはかることといたしております。また、林業構造改善等のため、林業構造改善事業、入り会い林野整備事業等の推進をはかりますとともに、国有林野の積極的な活用のための施策を講じ、あわせて山村労働力の流出に対処して林業従事者の養成確保等の施策を充実することといたしております。さらに、近年の経済成長、災害発生の実情に対処し、森林の国土保全機能の確保をはかるため、治山事業の拡充実施等の施策を推進することといたしております。
以上、昭和四十二年度林業の動向に関する年次報告及び昭和四十三年度において講じようとする林業施策について、その概要を説明した次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/15
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016・河野謙三
○副議長(河野謙三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。中村波男君。
〔中村波男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/16
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017・中村波男
○中村波男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま報告のありました、林業白書並びに昭和四十三年度において講じようとする林業施策につきまして、ごく基本的な問題にしぼって数点質問をいたしたいと思うのであります。
まず、総理にお伺いをいたします。
国内の木材生産は、ここ数年、完全に停滞しただけではなく、民間の造林は縮小の傾向にあり、このため木材需要の増大はあげて輸入に依存し、毎年非常な勢いで輸入が激増し、今日では輸入依存率は四割になんなんとし、輸入金額はチップを含めて総輸入の八・二%、三千五百億円と、石油に次ぐ第二位を占めるに至ったのであります。しかも、木材価格は急上昇し、物価上昇の大きな要因となっております。わが国は国土の約七割が森林という林業国でありながら、かかる事態を、一体、総理は何と考えておられるのか。政府は、戦後一貫して独占資本に奉仕し、財政経済のあらゆる分野にわたって勤労大衆をこれに隷属させる政策をとり、林業についてはさらに大山林地主を温存し、山村の民主化をはばんできたのであります。このため、林業労働力は減少し、大山林地主は切り惜しみ、貿易商社は木材輸入に狂奔し、紙パルプ資本は原料用チップを海外に仰ぎ、国内林業に向けるべき資本投下は先細りになるといった悪循環におちいっているのが、わが国林業の現状なのであります。この憂うべき現状を総理はどう理解し、どう打開するお考えであるのか、林政の基本的な姿勢について総理の所信を伺いたいのであります。
次に、木材の需給と木材価格の上昇について、農林大臣並びに経済企画庁長官に伺います。
政府は、林業基本法に基づいて、四十一年四月に需給の長期見通しと、森林資源に関する基本計画を公表しました。それによれば、輸入依存率が最大となるのは昭和五十年ごろの二九%ということでありましたが、現実には四十一年三三%、四十二年三九%と、初めから大きく狂っているのであります。このように狂ったのは、長期見通しが中期経済計画で想定していた経済成長率を基礎に置いたが、現実の成長率がこれを大きく上回ったなどという言いわけはやめまして、長期見通しと基本計画は再検討すべきであり、なお、この問題は実に深刻であり、波紋は大きく広がっているのであります。すなわち、木材の輸入の増大は、食糧輸入とともに、その大部分が国内で消費されるのでありますから、国際収支上からもきわめて重要な問題であります。加うるに、海外の状況はきわめてきびしく、特に丸太の輸出については、輸出国側は規制を強めようとしており、その丸太輸入は世界一位で、わが国の製材業及び木材流通に及ぼす影響は、今後きわめて大きいものがあります。
その実態の二、三を指摘いたしてみますと、外材輸入は、独占的大手商社によって、利益本位に思惑的輸入が行なわれているばかりか、木材市況を見ればわかりますとおり、外材主導型であり、木材輸入が国内価格の安定にあまり寄与していないと、私は考えるのであります。そればかりか、木材関係企業は、大手商社を中心に集中化、系列化が進み、弱小企業の下請化、さらに、倒産を引き起こしているのであります。また、木材チップ輸入の急増によって、国内チップの生産にしわ寄せされ、ひいては、拡大造林を停滞さすなど、国内生産に及ぼす影響は必ずしも小さくないのであります。要するに、木材はますます海外に依存し、資本はますます国内林業から逃避するという局面を打開するには、当面、輸入対策の総合的な調整と同時に、根本的な国内生産体制の確立が何よりも必要であります。白書は、地域別、階層別に、かなり克明に分析しておりまするけれども、残念ながら、林業の衰退の原因を究明する問題意識に乏しいのであります。
さらに、木材は、早くから自由化されておりながら、戦後ほぼ一貫して価格が上昇し、最近の上昇率は、四十年を一〇〇として、木材、木製品の四十二年の指数は一二〇・七となっており、卸売り物価総合指数一〇四・三よりも五倍近い上昇率であります。今後、このように木材価格が上昇するかどうかは、物価政策上きわめて大きい問題であります。私は、木材価格は、長期的には、ある程度の上昇傾向はやむを得ないと思ってはいますけれども、急激な上昇は絶対に避けなければならないのであります。こうした観点から、木材価格の動向及びその対策について、経企庁長官の所信を伺い、また、農林大臣には、価格上昇が生産、消費に与える影響について、どう対処されようとしているのか、あわせて明らかにしていただきたいのであります。
農林大臣に対します第二の質問は、国内生産体制整備の問題についてであります。林道、造林は、林業近代化の基盤となるものであり、すみやかにその整備を急がなければなりません。
しかるに、林道は、森林計画における計画量の六、七割程度しか開設されていないことについては、本日は不問に付するといたしましても、今日、政府の行なっている公団林道、関連林道、スーパー林道、農免峰越し林道等の開設などが、その設置目的から大きく逸脱し、私鉄などの観光資本に奉仕したり、政治路線と批判を浴びている事例も少なくありません。したがって、政府は、林道網の整備に一段の努力を払うとともに、林道投資の効率化をはかるべきであります。
また、造林についても、団地造林制度の創設等が行なわれたほか、公団、公社造林、その他、いろいろな制度がありながら、造林はきわめて不振であります。この際、官公造林制度の復活を含め、造林政策の根本的な再検討が必要であります。また、所有構造が複雑な上、経営というよりは、財産保持を目的とする傾向が強いわが国にありましては、この体制にメスを入れることなくして、林業の近代化ははかり得ないのであります。私は、この体制的な問題を打ち破る一つの方策として、切り惜しみに対する規制措置を講ずること、さらに生産の組織化をはかることだと考えているのでありますが、このことに対し、農林大臣はいかなるお考えをお持ちなのか、お聞きをいたします。
農林大臣に対します第三の質問は、国有林のあり方についてであります。
林業白書は、「国有林の針葉樹については、資源的制約もあるが、将来持続的に供給に支障を来たさぬように配慮した」と言っております。資源的制約がなぜ起きたかといえば、もともと紙パルプなどの木材大資本に安い原木を大量に供給したということが大きな原因であります。また、当然国の一般会計でまかなうべき治山事業費や森林開発公団に対する出資を、林政協力費の名のもとに国有林特別会計から吸い上げる結果が、国有林労働者への劣悪な労働条件の押しつけ、材価の高い里山への人工林伐採の集中、林地荒廃のおそれのある短伐期林業の採用等、百年の計をもって進めるべき国有林経営のあり方は、きわめて場当たり的であります。政府はこのような国有林経常のあり方をすみやかに是正すべきであります。
国有林に関する第二の質問は、国有林活用法案についてであります。国有林を地元農林業のために活用することについては、わが党もかねがね主張してきたところで、現に制度的にその道は開けているのであります。しかしながら、林野庁は、共和製糖事件に見られるように、不法、不当な交換や払い下げを行ない、また、なわ張り的根性から正当な国有林活用申請を抑えてきたことは、責められるべきであり、かかる行政権の不当な行使は改めることは言うまでもありません。私は、国有林活用の道は、法の制定いかんにあるのではなく、政府の国土利用に対する政治姿勢と経営規模拡大への熱意にかかっていると考えているのであります。したがって、制度上に屋上屋を重ねる活用法案の提案は、いたずらに政治的活用を助長し、国民の財産である国有林が、活用という美名のもとに悪用の道を開くものであり、かかる意味において、わが党は強く反対をいたしているところであります。(拍手)この際、政府は、一部の不当な要求を退け、国民的立場から、勇断をもって国有林活用法案を撤回すべきだと考え、あえて総理及び農林大臣の見解をお聞きいたすところであります。
最後に、林業の労働力不足の一大要因が、低賃金に加えて、きわめて劣悪な労働環境と労働条件にあると考え、この観点から、労働、厚生両大臣に質問をいたします。
労働力問題は、今日経済のあらゆる分野に大きい影響を及ぼしておりますが、とりわけ林業にとっては、その生産体制が前近代的なだけに、深刻であります。すなわち、今日のような地主的な経営では、その近代化によって労賃をカバーすることはできません。むしろ、労賃その他の労働条件を引き上げることによって、経営の近代化を促すべきであります。しかしながら、実際問題としては、林業白書が述べておりますように、その労賃は、最高の切り出しで一日千三百八十四円、造林では千二十三円にすぎず、これでは一カ月の収入はせいぜい三万円前後であり、しかも多くは臨時、日雇いというきわめて不安定な雇用条件のもとにあるのであります。また、この実態は民間労働者だけではなく、国有林の常用作業員の一〇%近くが生活保護世帯並みの賃金しか得ていないといわれているのであります。政府の施策は、社会保障にせよ、労働政策にせよ、主として常用雇用者が対象でありますために、林業労働者はそのワク外に今日放置されておるのでありまして、一体、このような非人間的な労働条件を政府はどのように考えておられるのか、私はまず林業労働者の過重労働の規制、労働基準法第四章の適用除外の廃止と労基法の完全適用、失業保険などの日傭者保険の弾力的運営をはかる等の措置をとられるよう強く要望いたしますとともに、雇用安定法の制定と相まって社会保障制度の拡充をはかるべきだと考えておるのであります。また、昭和四十一年十月の労働省の発表によりますと、切り出し作業における災害発生は全産業中最大の件数にのぼっており、さらに、チェーンソーなどの機械導入使用によって、白ろう病その他新しい職業病が林業労務者の健康を侵していることなどもありまして、就業に二の足を踏んでいる実態をまず政府は認識し、これらの対策を積極的に取り上げるべきであります。
以上私が指摘した事項及び意見に対し、労働、厚生両大臣から所信及び具体的な対策をお示しいただきたいのであります。私はごく基本的な問題にしぼって質問をいたしました。わが国の林業はいまや衰退の徴候が強いのであります。政府の誠意ある答弁を期待いたしまして質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/17
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018・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) わが国の木材需給の状況は、最近の経済発展、それに伴いまして非常に需要が増大した。国内の木材の供給がこれに追いついていかない、そこで外材によっている。これはただいま御指摘のとおりであります。このことは、いまの国際収支の面から見ましても、これはたいへんな問題であります。したがいまして、これと真剣に取り組まなければならないと思っております。で、なぜさような状態になったか。これは中村君も御承知のように、奥地林道が不足しているとか、あるいはわが国の造林が思うように進んでおらないとか、あるいはまた、労働力自身が不足しておる等々の理由によりまして、わが国の林業がただいま不振の状況にあります。また、国内資源だけでは事実まかなえないような需要の状況だと、かように思います。そこで、おそまきではございますが、林業基本法の命ずるところによりまして最善の努力を払っていく。いわゆる生産体制あるいは構造対策に積極的に取り組みまして、そうして総生産をふやし、また、労働政策も特に考慮いたしまして必要な労働力の確保をいたしまして、ただいまのような需給状況に対処してまいる決意でございます。
次に、わが国の国有林野の活用の問題についてお尋ねがございました。ただいまも中村君の言われるように、社会党も国有林野の活用については別に反対ではない、大いに活用すべきだ、かように言われます。しかし、これがどうも不正あるいは利権化する、そういうことがあってはならないという御注意でございます。私どもが今回特に特別措置法を立法いたしましたのも、地方によりましては、たいへん国有林町が多いところがあります。もう林野の八〇%前後を国有林野で占めている。そういうような地域では、農山村の地域開発のためにも、また、農林業の体質改善のためにも、構造改善のためにも、国有林町の活用が必要でございます。だから、そういうような地域についての特別措置の立法がぜひとも必要だと、かように私どもは考えて、今回御審議を願うようにいたしておるのでございます。どうか御審議に際しまして、これらの点を十分お考えいただいて、御協力のほどお願いいたします。(拍手)
〔国務大臣西村直己君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/18
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019・西村直己
○国務大臣(西村直己君) 中村さんの御質問の中で、長期見通しの問題にお触れになっておりますが、確かに、経済の異常な上昇に従って木材需要が非常に強くなって、そのために、長期見通しとは、かなり狂っているじゃないか、これはおっしゃるとおりでございます。ただ問題は、これが率直に申しますと、昭和九十年までの五十年間の見通し、その中において、二年の間にそういう狂いを生じました。したがって、これにつきましては、改定するという問題もございますが、それ以前に、さらに、いま少し需給の推移というものを的確につかみつつ、見通しを検討していくということだけは、私どもはやってまいりたいと思うのでありますが、直ちに改定という前に、十分今後の見通しというものをさらに確かめてみたいと、こういう考えでございます。
そこで、価格でございます。確かに、最近、木材価格が四十一年半ばごろから急速に上がってきたことは事実でございます。これは一つは、経済あるいは景気動向が、特に設備投資、住宅需要、こういったものが急激に強くなるときに、大体木材価格というものは強くなってまいることは、申し上げるまでもないのでありますが、最近、少し傾向が、ことしに入りまして価格の騰勢が鈍化してきた。特に、率直に申し上げますと、四月からは、ややちょっと下がっておる。これは一つは、政府の景気調整その他の影響もあるかとも思うのでありますが、これが今後どういう形になってくるか、さらにまた見きわめますけれども、趨勢としては上がる。ただ、上がり方が、先ほどのお話のように、鈍化していくという傾向ならば望ましいのであります。そこで、それに対する国内産の増大というようなことと、外材の円滑な、しかも、適正な輸入ということについては、不断に留意してまいりたいと思うのでございます。そこで、私といたしましても、この木材につきましては、先ほど総理からお話がございましたように、日本の輸入品の中で相当のシェアを占めておる、大きな分野を占めておる、今日現在で、九億から十億前後のものを、とにかくドルとして食っておるということは事実でございます。したがって、これと同時に、木材というものを非常に使う、使うけれども、一面において、使い方の問題があると思います。いわゆる資源の活用方法というものを考えなければならない。そこで、農林省のほうは、国内産を特に供給していく立場で、いろいろ努力もしてまいりますが、同時に、使われる方面におきましても、十分にこれを考えていただく意味で、私といたしましては、何かこれらの、さらに総合的な、輸入をはじめ、それから林野資源の使い方という面まであわせた——木材資源の使い方の面まであわせたような総合対策というものを万とつ検討してみたらどうかと、こういうことをただいま検討中でございます。
その次に申し上げたいのが、この造林のうちで、官行造林の点をちょっと触れておきます。造林事業につきまして、従来から国庫補助や、公庫によります融資等をやっております。特に昭和四十二年度からは、団地造林事業というものを新規に実施をいたしておるのであって、これらは今後もやってまいるのであります。自行造林につきましては、現在は、水資源で涵養保安林等の公益上必要の強い森林だけについて、森林開発公団でやらしているのであります。これをその他の森林にまで扱わせるかということにつきましては、今後の問題として、ひとつ検討さしていただきたいと思うのであります。
それから、特に現在森林の所有構造が複雑、零細、財産保有的な傾向が強い。これも林業の近代化をはばんでいる一つの理由ではございます。そこで、この近代化のためには、できれば保有規模というものを大きくすればいいのでありますが、保有規模は拡大できなくても、少なくとも協業の促進その他によりまして、基本法によるところの構造改善事業を進めていく、それからもう一つは、計画的な施業の実施でございます。先般も森林法の一部改正で御賛成贈わりましたこの施業の計画化、これによりまして制度化されましたので、こういうふうに森林施業の計画化によって資源活用の能率化をはかってまいりたいと思うのであります。
それから、この林道が観光に使われたり、あるいは政治的に使われてむだじゃないか、もっと効率をあげろ——この点はもちろん留意しなければならぬ点でありますが、今日の林道政策は御存じのとおり、できればネットワーク的な考え方を一つは持って、総体としてのこの林道を効率的に使うような形でつながりを持たせるようにしております。そこで、それが県道あるいは国道につながるという面からみれば、ある場合には観光に使われる部分もあります。しかし、あくまでもその点は森林資源培養のための投資だというところに、私ども今後留意をし、気をつけてまいりたいと思うのであります。
それから、国有林の活用の問題につきましては、総理からもお話がございました。
なお、労働力の問題につきましては、ほかの大臣の方から御返事があると思うのでありますが、私どものほうといたしましても、できる限り雇用の安定、特に通年雇用というようなたてまえの中におきまして、社会保障制度の適用をはかってまいりたい。同時に、国有林の従業者を含めまして、これらの所得の向上ということには、所管大臣としても今後とも努力をしてまいりたい考えでございます。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/19
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020・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 中村議員の言われますように、これは相当私、深刻なやはり問題であると思っております。御指摘のように卸売り物価は、わが国では、一般には一%とか二%とかいう落ちつき方でございますけれども、木材、同製品だけは年に一〇%以上、ここのところずっと上がってきておりまして、したがって、卸売り物価を非常に押し上げる力を持っておることはおっしゃるとおりでございます。輸入のほうは、たぶん昨年、昭和四十二年で十億ドルを突破したと推定されます。おっしゃいますように内需の大体四割でございます。ですから、私どもすでに昨年度から実は各省の関係官の協力を得まして、この問題をどういうふうにすべきかということを、もう数回実は会議をやりまして、基礎的なヒャリングなどもやっておるのでございますけれども、どうも、もう少し重い取り上げ方を政府全体としてしませんと、物価の面、輸入の面、両面から非常に困ったことになってくるのではないかと、実は思っておりまして、先ほど農林大臣がそういう方向を示唆されましたが、私も確かにそう思います。私ども、多少いたしました基礎研究も、そういうときにお役に立てばと実は思ってやっておったのでございます。早急に総合的な対策を考える必要があるのではないか、こう思っております。(拍手)
〔国務大臣小川平二君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/20
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021・小川平二
○国務大臣(小川平二君) 林業労働者が毎年季節的に雇用と失業を繰り返しておるという状態は、もとより正常な状態と申すことはできませんので、一般的に通年雇用を行なうことが望ましいことは申すまでもございません。労働省といたしましては、この方針に沿いまして農林省と連絡をとり、たとえば、事業の実施期間を延長する、あるいは各種事業の組み合わせによりまして雇用期間の長期化を実現する、かようなことを実行いたしまして、雇用の安定につとめてまいりたいと存じます。
また、御指摘のありました林業における労働災害でございますが、発生の状況は逐年減少を見てはおりますけれども、発生の率はなお一般産業に比較してはなはだ高いのでございます。かような現状でありますから、さきに労働災害防止基本計画を策定いたしました際に、林業を重点産業として取り上げまして、災害の発生を逐年減少させるつもりでございます。また、職業性の疾病につきましては、早期の発見、予防対策の強化をはかることといたしております。
それから、林業労働者につきましては、労働時間、あるいは休憩、休日に関する労働基準法の規定の適用が除外をされておりますけれども、労働省といたしましては、労働基準法に基づく監督を通じまして、林業労働者の最低労働条件の確保については、今後もつとめてまいるつもりでございます。
なお、失業、労災の両保険については、弾力的な適用をはかりますために、これから先も検討を続けていきたいと存じております。(拍手)
〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/21
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022・園田直
○国務大臣(園田直君) お答えをいたします。
林業につきましては、医療保険と年金保険は任意適用となっておりますが、これを被用者保険に完全適用することは、林業が比較的短期間の季節的事業であること、あるいは林業労務者の雇用形態が請負的なものが多いので事業所との使用関係が不明確であること、その他御意見の中にありましたような点から、技術的には困難な面もありまするが、医療制度全般について、保険の改正検討の時期でございますし、年金については再計算期を迎えておりますので、この時期に、関係各省とも相談をして、御意見の線に従い十分検討をする所存でございます。
健康管理につきましては、各種の健康診断指導あるいはその他の予防衛生活動を通じて、その改善に十分努力をする覚悟でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/22
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023・河野謙三
○副議長(河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/23
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024・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第三、恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長井川伊平君。
〔井川伊平君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/24
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025・井川伊平
○井川伊平君 ただいま議題となりました法律案について、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、昨年十月実施の恩給年額の増額率一〇%ないし二八・五%を、二〇%ないし三五%に修正改善すること等でありますが、衆議院において、外国政府職員等の在職期間の通算について修正が行なわれております。
委員会における質疑の詳細は会議録に譲りたいと存じます。
質疑を終局し、別に発言もなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
次いで、石原委員より、「恩給審議会の答申の早期実現について最善を尽くすとともに、調整規定の実施、傷病者・遺族・老齢者の処遇改善、終戦の特殊事情に関連するものの期間通算等についてすみやかに善処すべきである。」旨の自民、社会、公明、民社各党共同提案の附帯決議案が提出され、これもまた全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/25
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026・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/26
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027・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/27
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028・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第四、日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長谷口慶吉君。
〔谷口慶吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/28
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029・谷口慶吉
○谷口慶吉君 ただいま議題となりました法律案は、わが国海運業が再建整備計画を実施中であることにかんがみ、政府が造船融資に対する利子補給契約を日本開発銀行と結ぶことができる期限を昭和四十四年三月三十一日まで延長しようとするものであります。
委員会におきましては、当面の海運政策をめぐる各般の問題について質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
質疑を終了し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/29
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030・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/30
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031・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/31
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032・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第五、医師法の一部を改正する法律案(第五十七回国会内閣提出、第五十八回国会衆議院送付。)
日程第六、社会保険労務士法案(衆議院提出)。
日程第七、保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案(山本杉君外一名発議)。
以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/32
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033・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長山本伊三郎君。
〔山本伊三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/33
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034・山本伊三郎
○山本伊三郎君 ただいま議題となりました三法律案に関する社会労働委員会の審査の経過及び結果を申し上げます。
まず、医師法の一部を改正する法律案は、医師のインターン制度について抜本策を講ずるものであります。医師の免許は、医師国家試験の合格者に与えられるのでありますが、従来、その受験資格の一つとして、医学部卒業に引き続く一年間の、指定病院における実地修練を終了することが要件とされておりました。これがいわゆるインターンと言われる制度でありまして、それは医師になるための前提要件という性格のものであったのであります。今回の法案によってこのインターンは廃止いたします。したがって、医学部を卒業すれば、直ちに医師国家試験を受けることができ、合格者には医師免許が与えられることになります。しかし、医師の任務の重要性にかんがみ、また、最近の医療の進歩にかんがみて、新しく医師免許取得後に、二年以上の臨床研修を大学病院、指定病院等において行なうことを制度化したのであります。ただし、その研修は、法律によって強制されるものでなく、医師の自主的努力に期待するものとされております。この努力義務規定の表現については、衆議院において自主性を強調するための修正がなされたものであります。また、二年の臨床研修を終了した者の扱いについて、政府提出案にあっては、終了者を医籍に登録することとしておりましたが、登録ということによって臨床研修が事実上の強制をもたらすおそれがあるという反論にかんがみ、衆議院において医籍登録を取りやめ、研修病院長から厚生大臣に報告するにとどめることに修正されてまいりました。
委員会は、審査に入ると、直ちに参考人五人の出席をわずらわして、関係当事者の意見を聴取いたしました。おもな審議の内容は、従前のインターンがもたらした利害得失、新しく生まれる臨床研修について、その性格と内容、研修中の医師の身分と処遇、教育病院における施設の整備と指導要員の充実、さらに、制度の助成に関して政府の姿勢に対する要望が強く主張されたのであります。
質疑を終了、討論に入りましたところ、大橋委員から原案に反対の意見が述べられました。続いて、同委員から、原案における二年間の研修条項を削除し、免許取得後、自主的に引き続き研修するため、医師全般に通ずる研修制度を確立し、これに国が助成措置を講ずるたてまえとすべき旨の修正案が提出されました。次いで、小平委員から、原案に反対し、修正案に賛成する旨の意見が述べられました。
採決の結果、まず、修正案については少数をもって否決され、次に、衆議院送付案については、多数をもって可決すべきものと決しました。
なお、質疑過程に表明された事項及び修正案の意図した事項等を含めて、六項目にわたる附帯決議を、全会一致をもって委員会の決議とすることに決しました。
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次に、社会保険労務士法案について申し上げます。
労働保険、社会保険関係の法規が次第に複雑化してきたことに伴って、これに関する手続事務が、企業、とりわけ中小企業にとっては相当な負担となりつつあります。そのため、これが事務担当者を企業外の専門家に求める企業が多くなってまいりました。かかる情勢にかんがみ、保険に関する手続事務、相談、指導の事務を扱う資格者を制度化する必要が生じてまいったのであります。
この法案は、これが要請にこたえて、一定の資格者について国が試験を行なうこととし、その合格者に社会保険労務士の免許を与える制度を創設することといたすものであります。
採決の結果、 本法案は全会一致をもって可決すべきものと決しました。
—————————————
次に、保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案は、看護婦または准看護婦に相応する資格をもって看護業務に従事する男子の看護人に対して、看護士または准看護士の名称を法定するものであります。
採決の結果、本法案は全会一致をもって可決すべきものと決しました。
以上報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/34
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035・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
まず、医師法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/35
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036・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/36
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037・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 次に、社会保険労務士法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/37
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038・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/38
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039・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 次に、保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/39
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040・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/40
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041・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第八、日本万国博覧会の準備及び運営のために必要な特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。商工委員長金丸冨夫君。
〔金丸冨夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/41
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042・金丸冨夫
○金丸冨夫君 ただいま議題となりました法律案は、日本万国博覧会の準備及び運営に必要な特別措置の一つとして、外国政府等の参加要員の住宅施設を日本住宅公団に建設せしめ、万博協会に賃貸させようとするものであります。
委員会におきましては、特に参考人を招致し、また、総理大臣の出席をも求めて、万博準備の進捗状況、テーマの具体化方針、その他万博に関し各般の質疑が行なわれましたが、詳細は会議録に譲ることといたします。
討論に入りましたところ、社会党の椿委員より、本案に賛成するとともに、諸外国、特にアジア諸国への招請活動の積極化、関連公共事業の繰り上げ施工とその財政的配慮、入場料金の大衆化、原爆展示館の特設、資材物資の値上がり防止、担当政府機構の強化について要望が述べられました。
討論を終わり、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どり可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/42
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043・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/43
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044・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/44
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045・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第九、公衆電気通信法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。逓信委員長久保等君。
〔久保等君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/45
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046・久保等
○久保等君 ただいま議題となりました法律案の内容を申し上げますと、本案は、加入電話の架設に対する国民の要望の増大に即応し、その増設に要する費用の一部に充てるため、加入電話の設備料の額を改定しようとするものでありまして、現在、設備料の額が一加入電話ごとに一律に一万円となっているのを、単独電話及び構内交換電話はいずれも三万円、二共同電話は二万円、また、多数共同電話は一万円とすることといたしております。
逓信委員会におきましては、政府並びに日本電信電話公社当局に対し、設備料改定の理由、公社の収支状況、第四次五カ年計画の大綱等について質疑を行ない、慎重審議をいたしましたが、その詳細につきましては会議録により御承知願いたいと存じます。
かくて質疑を終局し、討論に入りましたところ、自由民主党を代表して松平委員より、本案に賛成するとともに、施行期日の修正案が提出せられ、次いで日本社会党を代表して森委員、公明党を代表して和泉委員から、いずれも反対する旨の意見が述べられました。
討論を終え、採決の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/46
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047・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 本案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。光村甚助君。
〔光村甚助君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/47
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048・光村甚助
○光村甚助君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました公衆電気通信法の一部を改正する法律案に対し、反対の意を表するものであります。(拍手)
この改正案の内容とするところは、新たに電話を架設する場合に徴収する設備料を、従来の一加入ごとに一万円となっているものを、一挙に三倍に値上げし三万円とすることを主たる内容とするものでありまして、政府並びに電電公社の提案の根拠とするところは、電話の初度架設費は一加入につき約三十六万円もかかるので、その費用の十分の一にも足りない額で、しかも一回限りの一時的負担金である、一方において、これによって電話加入者としての利便と永久にわたる加入者たる地位とを獲得するものであるから、加入者にとっては、この程度の修正はやむを得ないものであろう、また、一般物価に対してもさして影響を与えるほどのものでもないから、これは現状においてやむを得ないものであるというのであります。あらためて申し上げるまでもなく、最近における電信電話事業の発展はまことに目ざましく、年々の増設によって、電話加入者はすでに一千万を突破し、本年度を初年度とする第四次五カ年計画では、さらに三兆五千億円を投じて九百二十万の増設が計画されているのであります。このように電話の数が増加すればするほど、その利用価値と公共性は、ますます重要度を増して電話は国民の生活必需品の一つとして国民生活に与える影響はきわめて重大となっております。さらに政府並びに電電公社は、今年度、すなわち昭和四十三年度は第四次五カ年計画の初年度として加入電話百四十七万個を主体とする工程を組み、その所要資金の一部に充てるため、今回の設備料を改定することにより二百四十四億円を確保しようとするものであります。
さきに申し上げましたように、今回の設備料の増額は一回限りの負担金であって料金というべき性質のものではないような説明をしておられるのでありますが、何と申しましても、これは一般公衆たる加入者より徴収する料金でありまして、逓信委員会におきましても、電電公社当局は、今回の設備料の改定は全体の電信電話料金の改定の一環としておられ、一般料金の改定を来年度、昭和四十四年度に実現したいとされております。したがいまして、今回のこの設備料の改定は来年度の電信電話料金全体の引き上げにつながるものと考えざるを得ないのでありまして、われわれ日本社会党としては、かねてからこれに反対しているところであります。
次に、われわれが電電公社の事業運営の実体を検討してみまするに、毎年度の事業実績は国有鉄道の場合などと異なり、健全財政そのものであり、きわめて好調であります。すなわち、最近数年間における剰余を見ましても、昭和三十八年度五百八十億、三十九年度六百十三億、四十年度三百五十二億、四十一年度二百三十九億、四十二年度においては二百五十億ないし二百六十億と承っておりますが、以上のようにばく大な剰余を出しておるのでありまして、本年度の四十三年度におきましても、今回の値上げを行なわなくても建設計画の遂行に支障を来たさないのではないかと考えられるのであります。
申し上げるまでもなく、電気通信事業は独占的、公共的国家的事業であります。まず第一に、事業運営の合理化、技術の革新、経費節約等事業内部における経営の改善が十分に講ぜられて、しかる後にどうしてもやっていけない最後の段階においてこそ国民大衆の負担となる料金にしわ寄せをすべきものであると思うのであります。
したがいまして、今日の事業財政の現段階において、あえて設備料の値上げを行なうことは、時期としても尚早に過ぎるものと思われますので、今回のこの改正案は、むしろこの際、これを取り下げて、次に来たるべき全体の料金体系の合理化を検討した結果にまつべきものと思われるのであります。
なお、従来の一万円の設備料を一挙に三倍にし、三万円とした数字的根拠に至っては、幾ら説明を聞いても納得のいく説明は、ついぞ行なわれなかったのでありまして、ただ、電話の需要が熾烈であって、加入申し込みの積滞が二百三十万もあるので、これが解消のために要する多額の費用の一部に充てるため、二百数十億の資金をほしい、そのために三倍に達する値上げを行ないたいというにすぎないものであります。
これを要するに、今回の改正案は、提案の理由、提案の時期、提案の根拠等、いずれの点からいたしましても、私どもには十分納得することができないのでありまして、どうしても本改正案に反対せざるを得ないのであります。
以上私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/48
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049・河野謙三
○副議長(河野謙三君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
これより採決をいたします。
本案の委員長報告は修正議決報告でございます。
本案全部を問題に供します。委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/49
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050・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本案は委員会修正どおり議決せられました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X01919680510/50
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