1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年五月十五日(水曜日)
午後三時七分開議
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○議事日程 第二十一号
昭和四十三年五月十五日
午後三時開議
第一 清掃施設整備緊急措置法案(内閣提出、
衆議院送付)
第二 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を
改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
第三 中小企業金融制度の整備改善のための相
互銀行法、信用金庫法等の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
第四 金融機関の合併及び転換に関する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
第五 運輸省設置法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
第六 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規
制に関する法律の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
第七 競馬法の一部を改正する法律案(衆議院
提出)
第八 刑法の一部を改正する法律案(第五十五
回国会内閣提出、第五十八回国会衆議院送
付)
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○本日の会議に付した案件
一、頻発する炭鉱災害に関する緊急質問
一、日程第一より第八まで
一、沖繩地域における産業の振興開発等のため
の琉球政府に対する資金の貸付けに関する特
別措置法案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/0
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001・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/1
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002・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
この際、おはかりいたします。
大矢正君から、頻発する炭鉱災害に関する緊急質問が提出されております。
大矢君の緊急質問を行なうことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/2
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003・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。発言を許します。大矢正君。
〔大矢正君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/3
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004・大矢正
○大矢正君 私は、社会党を代表し、最近の続発する炭鉱災害、特に去る十二日夕刻発生し、すでに六人の遺体を収容、残る七人の生存もほぼ絶望と見られ、遺族と関係者に不安と悲しみをもたらし、石炭産業の将来に重大な影響を及ぼした美唄炭礦の災害について、総理並びに関係各大臣に、以下若干の質問を行ないます。
質問に先立ち、このたびの災害によって殉職された六名の方々の御冥福と、未確認のまま今日に至っている七名の方々の存命を祈り、すみやかな救出に関係者の努力を期待いたしたいと思います。
このたび発化した美唄炭礦の災害は、事故が休日のできごとであったため、不幸中の幸いといいましょうか、過去の三池炭鉱の災害ほど大きな規模に拡大しないで済みましたが、しかし、この事故が、かりに平日の作業中に起こっていたらと考えますると、罹災者の数とは別に、この災害の重大さを指摘しないわけにはまいりません。
美唄炭礦は、御存じのとおり去る一月二十日にもガス爆発を起こし、十六名のとうとい生命を奪って間もない炭鉱であります。わずか四カ月足らずの間に二度も重大災害を引き起こし、多数の殉職者を出すに至ったことはまことに遺憾であります。
最近の炭鉱災害の傾向を見ますると、短期間に重大災害を連続して起こす例が非常に多くなっております。これは事故を起こしたことによって生じた出炭の減少と、その損失をすみやかに挽回しようとする経営者のあせりと、経営者をそのようにさせている資本主義的な石炭企業の構造上の矛盾によるものであります。
本年に入ってからのおもな炭鉱災害を拾うと、一月の美唄炭礦のガス爆発、同じく一月の太平洋炭礦の落盤事故、二月の大夕張炭礦におけるガス爆発、五月に入っての離別炭礦の落盤事故、そしてこのたびの美唄事故と、すでに六件の重大災害を記録し、今回の美唄事故を除いても、殉職者九十六名を数えるに至っております。
また、昨年一カ年の災害は、件数で三万七千八百五十八件、死亡者二百四十八名、重傷者一万七千二百九十三名、軽傷者二万八百九十三名、炭鉱で働いている者三・七人のうち一人が一年間に一度はけがをするという驚くべき結果となっております。所管官庁である通産省は、死亡者、罹災者の数は逐年減少の傾向にあると説明をしておりますが、山の数と在籍人員の減少を考えあわせるとき、むしろ事故と罷災者は増加の傾向にさえあると思われるのであります。
なぜ炭鉱災害は続発するのか、どうして災害を防止することができないのか、これが今日の炭鉱で働く者の最大の疑問であり、悩みと苦しみであります。
炭鉱の災害について、本院が本会議で質疑を行なうのは、四十年四月以来三年ぶりのことであります。三年の問にも数多くの災害が発生し、その災害はとうとい比命を容赦なく奪ってしまいました。私は、四十年二月、本院で行なった炭鉱災害に関しての私の質問に対する総理の答弁とその決意の披瀝をいまでも忘れません。「人間尊重なくして何の生産ぞやと言いたいのであります。」「人間尊重、人を相手の経済発展であります。」、これは、保安確保、人命尊重についての私の質問に対する総理の答えであります。私は、せっかくの総理の決意の表明であるから、不安を抱きながらも期待をして見ていたのであります。しかし、三年たった今日、炭鉱の労働者に与えられたものは、低賃金と合理化による労働強化、そして命と石炭を引きかえにする人命軽視の石炭政策であります。人の命は、まずこれを尊重する、その上で生産を考えるという人間尊重の決意は一体どうなっているのか、また、どのような実効ある措置をとったのか、総理の責任ある御答弁をいただきたいのであります。
炭鉱災害はなぜ続発するのか、これはいままでの政府の施策が、精神的な意味も含めて、単に災害が起こらないことを期待するという限度にとどまり、積極的に石炭産業の構造的な問題と取り組まなかったことに、その原因を求めることができると思うのであります。総理は最近の会議において、石炭産業のこれからのあり方に対し、従来どおり経営は私企業にまかせることが望ましい旨表明されております。しかし、今日の石炭産業は、その経営を私企業にゆだねる限り、人命尊重の精神を貫くことはできません。
石炭産業は他産業と異なり、老朽化が激しく、常に若返りをはからなければなりません。坑道は年とともに延長し、深くなり、ある炭鉱のごときは、坑道の延長実に八万メートルに及んでおります。若返りのため立て坑をおろすにしても、多額の資金が必要であり、今日の石炭産業はその負担に耐えられません。若返りができないから、長い坑道を維持する。長い坑道は、人手不足と重なって事故の大きな原因ともなっております。
今日、石炭産業がかかえている最大の悩みは、労働力の不足であります。労働力をなぜ確保できないのか、それは、数多い分割された企業では、保安、資金、鉱区等、十分な配慮がなされないため、事故の続発、低賃金と労働強化がついて回り、働く者に魅力を与えないからであります。この際、政府は従来の石炭産業の私企業による経営を断念して、国家的な立場において経営すべきではないかと思うのでありますが、総理の考えを承りたいのであります。
次に、お尋ねをいたしたい点は、ただいま進められている石炭鉱業審議会の石炭政策の再検討と安全確保の関係、特に石炭対策の中における保安の位置づけについてであります。
先ほど来、私は、石炭産業が内包する欠陥と悩みの最大のものは、労働力の確保であり、その確保が困難な理由の第一は、生命への不安があることを指摘いたしました。そこで、今日、石炭産業の危機を救い、その自立を達成するために最も必要な石炭政策の柱は、保安の確保でなければなりません。石炭政策の再検討を進めている政府として、安全の確保に、どのような態度と考えを持っておられるか、お答えを願いたいのであります。
このたびの美唄炭礦の災害は、異常な盤圧による規模の大きな盤ぶくれと崩落であります。坑内火災というものも、これに付随いたして起きましたが、この二つの事故の同時発生であります。そこで、たとえ異常な盤圧による落盤等があったといたしましても、坑内火災が起こらない限り、あのような重大な災害には発展しなかったと思うのであります。そこでお尋ねしたいことは、この種の事故は不可抗力のものなのか、それとも予知できることであり、防止対策を立てるによい範疇のものなのかどうか、ということであります。
事故発生後、責任をのがれる意味で山はねということばを使い、山はねは技術的に未知の分野にあり、不可抗力であるかのごとき印象を、一般に与えようとしたといたしますれば、その責任はきわめて重大であります。すでに美唄炭礦では、二月にも同種の事故があり、もし不可抗力であるということになると、事故が起こることを前提としなければ、採炭ができないことになります。
そこで、この際、通産大臣から明確にお答えをいただかなければならないのは、現地における藤井政務次官の発言であります。藤井政務次官は、昨日、現地での記者会見で、災害の原因を山はねと説明しております。私は、このたびの事故が、山はねと呼ばれる不可抗力のものではなく、異常な盤圧によって発生した盤ぶくれと崩落であって、坑内火災はまた付随的なものであり、安全に対する細心の注意と措置が、守り、かつ講じられていたならば、防ぎ得たものであると考えておりますが、大臣の見解を承りたいのであります。
また、藤井政務次官が同じく昨日の記者会見で、美唄炭礦は近く閉山をする旨発言をしておられるようでありますが、これはきわめて重大であります。今日の石炭危機はなぜ起こったのか。低い賃金と悪い労働条件、きょうもまた何トンかの石炭と命を交換している石炭労働者、それでもあすを期待して暗やみの中で死と戦いながら山を守っているこの炭鉱労働者に、罹災者の安否も不明ないま、閉山を口にするなどはもってのほかであります。責任ある通産大臣のお答えを求めます。
次に、監督行政についてお尋ねをいたします。
監督行政のあり方については、いままでもしばしば指摘してまいったとおり、二つの弱点を持っております。一つは、監督行政が生産を目的とした行政機関である通産省に置かれているということであり、いま一つは、監督官の定員不足と、待遇の悪さであります。私は、四十年二月の本会議で、「監督行政は労働省に移管すべきではないか」とただしましたところ、当時の石田労働大臣は、「現在、鉱山保安行政は通産省の所管になっているが、今回の事故にかんがみ、この問題について検討いたさなければならない時期に来ていると考えます」と答えているのであります。出産を目的とした行政機関に、生命と安全を守る役割りを果たさせようとしても、それは困難であります。これ以上災害が発生することを防ぎ、かけがえのない人命を尊重する立場からも、すみやかに保安行政は労働省に移管すべきであると考えますが、総理の御所見を承ります。
また、監督官は山の老齢化、坑道の延長等により、ますますその必要性が増しております。しかし、本年度予算においてはその増員が認められないばかりか、監督官に対する待遇の改善も行なわれておりません。これでは監督行政が徹底せず、不行き届きが災害を発生させることにもなりかねません。政府は監督行政強化にどのような具体案を持っておられるか、お聞かせを願いたいのであります。
昨年は重大災害と称される規模の大きな災害のみを拾っても十九件、本年もまた一月以降すでに六件を記録しております。保安監督行政は、ただいまのところ、その主体が通産省にあるとはいいながら、労働大臣には働く者への安全を守る使命と通産大臣に対する勧告権が与えられております。労働大臣として、通産省に対しどのような措置をとってきたのか、また、続発する炭鉱災害から働く者の安全をどのようにして確保されるおつもりか、お答えを願いたいのであります。
私は、いままで数多くの災害に直面し、その事後処理を見ておりますが、遺族対策に十分な配慮がなされたためしはありません。いつも遺族対策には万全を期しますと答えてはいるが、事実は企業にすべてをまかせきりであります。年金はもらっても額がわずかで、とても生活はできない。働きたいと思っても条件が合う仕事がない。これでは夫を奪われ、兄弟を奪われた遺族に対し、慰めることばもありません。遺族について思いやりのある補償体制をつくる考えがあるのかどうか、労働大臣のお答えを願いたいと思うのであります。
質問を終えるにあたり、総理をはじめ関係各大臣の誠意ある御答弁を期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/4
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005・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えに入ります前に、去る十二口発生いたしました美唄炭礦の事故によりまして、とうとい人命を奪われた殉職者六名の方々の御冥福を祈り、また、いまなおその行くえがさだかでない七名の方々の存命を祈って、私も心から哀悼の意を表するものでございます。
そこで、ただいまお尋ねがございました諸点について私の心がまえを申し上げますが、ただいま指摘なさいましたように、私が四十年の事故に際しましてお答えいたしましたとおり、産業の利益、それは人に必ず返ってくるものだ、いわゆる人間尊重、人間に還元できなければならないのだ、経済の発展も、そういう意味で、人の幸福を、それをもたらすための発展なんだ、したがいまして、人命を失うというようなことがあって何の産業の発展ぞやと、かように私は指摘したのでございます。私は、かねてから、人命尊重を政治の基本姿勢とし、基本理念とし、そしてこの問題と取り組んでまいりました。したがいまして、鉱山災害ばかりではございません。各種災害等の発生につきまして万全の努力をいたしまして、これが防止につとめてまいったのでございます。しかしながら、最近は引き続いて大きな事故といわれるようなものはないにいたしましても、中以下の事故が引き続いて次々に起こっております。そうして、ただいま御指摘のような、年間を通すれば多数の人命を損傷しております。私どもの努力にもかかわらず、かような事故があとを断たないことはまことに私は残念に思い、さらにこの上とも一そうの努力をしなければならない、かように決意するものでございます。
そこで、石炭産業の災害防止について考えてみますると、お話にもありましたように、最近、石炭産業はその自然条件がたいへん悪化しておりますし、また、労働力の不足等も出ております。ただいま経営面におきましても、たいへん困難な事態に遭遇しておると思います。そこで、政府は、これらのことを考えまして、鉱業労働災害防止基本計画、これを樹立する、さような意味で、各機関の協力を得て、ただいま防止基本計画を整備中でございます。
私どもが申し上げるまでもなく、この石炭鉱業において最も必要なことは保安施設の整備にある、また、保安監督官の強化にある、かように考えますが、同時にまた、保安教育の普及徹底も期さねばならない、かように思います。どこまでも、その産業——その産業は大事な産業でございますが、第一、保安の点において安全が確保されなければその産業の強化ははかれないと思います。私は、石炭産業が経営困難であればあるだけ、一そう事故が起こらないようにしてこそ、初めて経営がペイするのではないだろうかと思います。多数の犠牲者を出し、そしてその補充あるいはまた出炭等についてさらに力を入れようといたしましても、保安設備が不十分であれば、だれも安心してその職場につくことはないし、また、毎日毎日生産にいそしむことはできないと思います。さような意味におきまして、生産の基盤、基礎といたしましては、どうしても保安第一、そうして安全第一でなければならない、かように思います。この点は、私企業におきましても、当然企業経営者がその点に思いをいたさなければならないと、私はかように思いますので、私企業だから災害が避けられないんだというような考え方でなしに、私企業であればこそ、一そうその安全を確保して、そして従業者の協力を積極的に求めるようにし、今日の困難な状態を打破していかなければならない、かように私は思うのであります。その意味におきまして、ただいま石炭鉱業審議会におきましては、今後の経営形態はいかにあるべきかということで、いろいろ審議いたしておる最中であります。私自身は、いわゆる私企業だと、こういう形におきましてこの話をしておるわけではありません。どちらが望ましいかといえば私企業が望ましい、かようにただいま思っておりますけれども、しかし、ただいま安定策についてせっかく諮問中でございますから、私の意見はできるだけ発表することを差し控えたいと思います。鉱業審議会におきまして、最も適した方法をぜひとも検討されまして、しかる上で、この諮問にこたえていただきたいと思います。で、私は、その場合におきまして、保安の位置づけ、これは申す事でもなく、先ほど来申すように、事業経営の基礎的な条件でありますから、この保安の問題については、基礎の基本的な問題としてこの問題を取り上げる、かようにあるべきものだと、かように思っております。
また、保安行政のあり方でありますが、私は、この出産行政と保安行政というものが、ただいま申し上げますように、保安は生産の基礎だと、かように考えますと、一体不可分の関係にあることが望ましい姿ではないかと思います。したがいまして、現在、通産省が生産を担当する、同時にそれが保安行政をすることが私は適当だと思います。しかし、それにつきましては、先ほど来言われるように、監督行政をもっと強化しなきゃならない。人や監督官や、さらにまた、その待遇等も不十分である、あるいは出張等の実費も不十分である等々の点が指摘されますし、また、生産業者に対する命令なども、もっとその勧告権を活用してしかるべきではないかというような点について思いをいたしまして、本来のあるべき土産行政の姿にこれを保って、そうして保安確保にさらにさらに万全を期するような措置をとっていくつもりでございます。
また、その他の点につきまして、いろいろ御意見がございました——お尋ねがございました。それらは所管大臣からお答えさすことにいたします。(拍手)
〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/5
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006・椎名悦三郎
○国務大臣(椎名悦三郎君) 今回の美唄炭礦の事故発生直後、藤井政務次官が団長となりまして現地調査にまかり出ましたのでございますが、その記者会見で、その原因について言及したようでございますが、必ずしも今日の段階において、その原因が究明されておらないのでございます。ガス爆発のおそれがございましたので、坑内に入って、なお十分の調査をすることができない、そのために原因の究明がおくれておることは、まことに申しわけないと存じますが、今後できるだけすみやかにその原因を究明いたしたいと存じております。
なお、藤井政務次官が、この記者会見で、美唄炭礦が再度の事故であるということに関連して、閉山の方向に指導するのもやむを得ないというようなことを示唆したかのごとき新聞報道が伝わっておるのでありますが、当人についてこれをただしたところ、決してさような言辞をいたした覚えはない。むしろ、今後かようなことが再び起こらないように、十分にわれわれは、官民一体となって、この問題に対処していかなければならぬというような点を申しておるのでございまして、何かの誤報であった。そのために、だいぶ現地に不安の念を抱かしたことにつきましては、まことに遺憾に存じております。むしろ、私は、今後とも、この原因究明のために努力を続けるとともに、同炭鉱は月産八万数千トンを出しておるのでありまして、今後厳重な監督指導を行なうことによって、保安確保に万全を期するとともに、同炭鉱のますます炭鉱として、十分な成果をあげることを企図しておるのでありまして、断じて、同炭鉱の閉山の意向は、監督官庁としては持っておりませんことを、ここに審明をいたしておきたいと存じます。
鉱山災害が、にもかかわらず、だんだん方々で起こっておりますことは、まことに遺憾でございまして、今後この自然条件の悪化、労働力の不足等、環境がきわめてきびしさを加えておるのでありますが、これらの困難を克服して、保安の確保を期しつつ、炭鉱事業の経営を堅実に進めてまいりたい、かように考えまして、先般も保安教育の抜本的充実、技術の向上というものを目ざして、鉱山保安センターの建設を進めてまいったような次第でございまして、鉱山保安の政策につきましては、優先的にここに重点を置きまして、鉱業の経常を進めてまいる所存でございます。(拍手)
〔国務大臣小川平二君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/6
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007・小川平二
○国務大臣(小川平二君) お答えいたします。
鉱山の保安問題につきましては、人命尊重、労働者の安全衛化の確保という見地から、強い関心を持っております。鉱山保安法に規定されました、通産大臣あるいは鉱山保安局長に対します勧告については、必要のつど、これを行なっております。現在までに、五回の勧告を行なっているのでございますが、最近におきましては、昨年十一月八日、三井鉱山二川鉱の百度の災害の発生に際して、安全衛生局長名で、鉱山の最高幹部自身が身をもって鉱山保安を徹底して行なうべき旨をおもな内容とする勧告を行なわしめたところでございます。
今回の災害につきましては、原因も十分究明されておりませんので、なお検討を要すると考えまするが、今後とも、必要と考えまする場合には、勧告の制度を十分に活用してまいりたいと存じます。
炭鉱災害のみならず、労働災害をこうむった労働者並びに遺家族の方に対しましては、あとう限り手厚い保護をするよう、努力しておるところでございます。このため、昭和四十年には労災保険法を改正いたしまして、遺族補償の年金化を含みます給付の改善をばかったところでございます。さらに、近く労災保険審議会において、制度の改善について御審議を願う予定でございます。
このたびの美唄炭礦の事故につきましては、遺憾ながらまだ救出の完了を見ておりませんけれども、労働省としては、必要な場合には、昨年制定されました「炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法」によりまして必要な措置を行ないますほか、労災医療機関の十分な活用によりまして、被災者の療養並びに援護の万全を期することとする所存でございます。
また、不幸にして災害の犠牲となられた方々の遺家族の就職対策につきましては、会社をはじめ、関係方面と連携をとりまして必要な措置を講じて、安定せる職場を確保するため、特別の求人開拓、職業訓練の実施、職業転換給付制度の活用を行ないまして、就職あっせんに万全を期しておるところでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/7
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008・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第一、清掃施設整備緊急措置法案。
日程第二、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案。
(いずれも内買う提出、衆議院送付)
以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/8
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009・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長山本伊三郎君。
〔山本伊三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/9
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010・山本伊三郎
○山本伊三郎君 ただいま議題となりました二法律案について、社会労働委員会における審査の経過と結果を申し上げます。
まず、清掃施設整備緊急措置法案は、清掃施設について、四十二年度を初年度とする整備五カ年計画を策定し、これが実施の確保をはかるための手続と政府の義務を定めるものであります。
この計画によって、最終年度の昭和四十六年度には、全人口の九〇%が特別清掃の対象人口とされることになり、し尿にあっては、九千四百万人分の全体が衛生的に処理され、また、ごみにあっては、その七五%が焼却処理の対象となるのであります。これに要する総事業費は千三百三十億円と推算されております。
採決の結果、全会一致をもって本法律案は原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、実施にあたっての要望事項として、四項目にわたる附帯決議を、これまた全会一致をもって委員会の決議とすることに決しました。
—————————————
次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案は、三つの法律改正を含むものであります。
第一に、戦傷病者戦没者遺族等援護法の適用を受けている軍人、軍属、準軍属に支給される障害年金と障害一時金、及び遺族に支給される遺族年金と遺族給与金について、さきに本院で可決されました恩給法改正法による傷病恩給と公務扶助料の増額に対応する増額を行なうこと、
第二に、未帰還者留守家族等援護法によって給付されている留守家族手当の増額、
第三に、戦傷病者特別援護法により、長期入院患者に支給されている療養手当の増額について、それぞれ所要の増額措置を行なうことを内容とするものであります。
採決の結果、全会一致をもって本法律案は原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、援護の充実努力に関して四項目にわたる附帯決議を、これまた全会一致をもって委員会の決議とすることに決しました。
以上報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/10
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011・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
まず、清掃施設整備緊急措置法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/11
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012・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/12
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013・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/13
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014・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決せられました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/14
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015・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第三、中小企業金融制度の整備改善のための相互銀行法、信用金庫法等の一部を改正する法律案。
日程第四、金融機関の合併及び転換に関する法律案。
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/15
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016・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長青柳秀夫君。
〔青柳秀夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/16
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017・青柳秀夫
○青柳秀夫君 ただいま議題となりました二法律案の委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
「中小企業金融制度の整備改善のための相互銀行法、信用金庫法等の一部を改正する法律案」は、金融の効率化を促進する見地から、相互銀行、信用金庫及び信用協同組合について、融資対象の明確化、事業範囲の拡大、最低資本金額の引き上げ等、制度の整備改善を行ない、それぞれの機関の特性に応じてその機能を発揮させ、中小企業金融の円滑化をはかろうとするものであります。
—————————————
また、金敵械闘の合併及び転換に関する法律案は、金融の効率化を促進するため、普通銀行、相互銀行、信用金津及び信用協同組合の異種合併及び転換の制度を設けることにより、これらの金融械闘が適正な競争を行なうことができるよう環境を整備しようとするものであります。
—————————————
委員会におきましては、二法律案を一括して審議いたしましたところ、金融の効率化と中小企業金融の円滑化との関係、合併・転換の認可の基準等について質疑が行なわれましたが、詳細は会議録によって御一承知を願います。
質疑を終わり、二法律案についてそれぞれ採決の結果、いずれも多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
さらに、「中小企業金融制度の整備改善のための相互銀行法、信用金庫法等の一部を改正する法律案」について、植木委員より、四派共同提案にかかる附帯決議案が提出され、全会一致をもって本委員会の附帯決議とすることに決しました。
また、金融基幹の合併及び転換に関する法律案につきましては、植木委員より、三派共同提案にかかる附帯決議案が提出され、多数をもって本委員会の附帯決議とすることに決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/17
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018・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
まず、中小企業金融制度の整備改善のための相互銀行法、信用金庫法等の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/18
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019・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/19
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020・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 次に、金融機関の合併及び転換に関する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/20
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021・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/21
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022・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第五、運輸省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長井川伊平君。
〔井川伊平君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/22
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023・井川伊平
○井川伊平君 ただいま議題となりました法律案について、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案の内容は、港湾審議会が港湾運送事業の合理化に関する重要事項を調査審議することができる期間を、昭和四十五年三月三十一日まで延長することであります。
委員会においては、港湾審議会の運営状況、港湾運送事業の概要と港湾労働問題等について質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/23
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024・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/24
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025・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/25
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026・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第六、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。商工委員長金丸冨夫君。
〔金丸冨夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/26
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027・金丸冨夫
○金丸冨夫君 ただいま議題となりました法律案について、商工委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。
本法律案は、わが国における原子力開発利用の進展に伴い、最近、核燃料の加工事業が本格化しようとしており、また、核原料物質を原材料として使用する工業が増加してまいりましたので、これらにおける安全性を確保するため、加工施設にかかる設計及び工事の方法の認可並びに施設検査、核燃料取り扱い主任者、核原料物質の使用の届け出等の制度を創設して、その規制を強化するとともに、あわせて、原子炉等の規制の合理化をはかるため、所要の規定の整備を行なおうとするものであります。
委員会におきましては、本改正案に関連して、わが国の加工事業の現状、核燃料確保の方法と見通しなど、わが国における原子力開発利用の諸問題のほか、最近の佐世保港における異常放射能事件について、熱心な質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
質疑を終わり、討論なく、直ちに採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/27
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028・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/28
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029・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/29
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030・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第七、競馬法の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長和田鶴一君。
〔和田鶴一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/30
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031・和田鶴一
○和田鶴一君 ただいま議題となりました競馬法の一部を改正する法律案につきまして、委員会の審査の経過並びに結果を御報告いたします。
本法律案は、昭和四十二年度限りで地方競馬の施行権を失った指定市町村の急激な財政上の影響を考慮して、昭和四十三、四十四の両年度に限り、その収入減を段階的に緩和するため、都道府県が財源補てんの措置を行なうことができるようにするとともに、競馬掛の存在する特別区以外の特別区についても、当分の間、特例措置により、地方競馬の施行権能を与えようとするものであります。
委員会におきましては、本法律案提出の経緯、競馬廃止市町村の財政状態、財源補てんの方法、特別区に対する特例措置及び競馬収益の使途等について質疑が行なわれ、別に討論もなく、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
続いて中村委員より、自民、社会、公明三党共同の附帯決議案が提出され、本決議案は全会一致をもって委員会の決議とすることに決定されました。
右御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/31
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032・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/32
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033・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/33
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034・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第八、刑法の一部を改正する法律案(第五十五回国会内閣提出、第五十八回目会衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。法務委員長北條雋八君。
〔北條雋八君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/34
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035・北條雋八
○北條雋八君 ただいま議題となりました刑法の一部を改正する法律案について、法務委員会における審議の経過と結果を報告いたします。
本法律案の要旨は、第一に、悪質重大な自動車交通事犯の続出にかんがみ、業務上過失致死傷等に関する第二百十一条の法定刑に、五年以下の懲役刑を加え、かつ、その禁錮刑の長期を五年に引き上げること。
第二に、刑事裁判の迅速、円滑な運営をはかるため、第四十五条後段の規定によって併合罪となる罪の範囲を、禁錮以上の刑に処する確定裁判があった罪と、その裁判の確定前に犯された罪に限ること等であります。
委員会においては、刑罰の強化で交通事故を防止できるか、また、悪質重大な自動車交通事犯に対処するには、むしろ道路交通法の改正、または単独立法によるべきではないかなど、種々熱心な疑質が行なわれ、さらに、六名の参考人から意見を聴取し、また、交通事犯禁錮受刑者を収容しております習志野刑務支所を視察するなど、慎重審議をいたしました。
質疑を終わり、討論に入りましたところ、秋山委員は日本社会党を代表して原案に反対、梶原委員は自由民主党を代表して原案に賛成、また、山田委員は公明党を代表して附帯決議を付し原案に賛成の趣旨の意見を、それぞれ述べられました。
次いで採決の結果、多数をもって本法律案は原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
最後に、委員会は、第二百十一条の改正規定の運用、交通安全対策等に関する附帯決議を全会一致をもって行ないました。
以上報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/35
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036・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 本案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。秋山長造君。
〔秋山長造君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/36
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037・秋山長造
○秋山長造君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となっております刑法の一部を改正する法律案に対し、反対の意思を表明するものでございます。
まず最初に断わっておきますが、世間の一部には非常な誤解があるようであります。今日、交通戦争といわれるようなこの交通事故の洪水の中で、悪質運転者を厳罰にするのはあたりまえではないか、これに反対する社会党はけしからぬというような説がそれであります。もちろん、これはとんでもない誤解か、しからずんば曲解であります。無免許で、しかも酒に酔って暴走をして人をひき殺したり傷つけたりするような悪質違反は、これは単なる過失ではございません。むしろ一般的な傷害や殺人と同様に、故意犯として厳罰に処すべきは当然であります。現にそうした判例も相当数あるのであります。ところが、故意犯でやるとなると、その故意であることの立証を検察官がしなければならないわけでありますが、その立証がなかなかむずかしい、手数がかかるのであります。そこで、法務省は安易な道を選んで、これを刑法二百十一条の業務上過失でやろうというのであります。いままで「三年以下の禁錮」となっていたのを、「五年以下の懲役又は禁錮」に引き上げようというのであります。刑法が憲法に準ずる国の基本法典でありますがゆえに、私どもはこのような便宜主義の改正に反対してきたのであります。
元来、この二百十一条の業務上過失罪の適用範囲は非常に広いのであります。自動車はもちろん、鉄道、船舶、航空機などの各種運輸交通機関の運転者、操縦者はもちろんですが、それからさらに医師、薬剤師、看護婦、助産婦、さらに鉱山、工場で働く労働者、学校の先生、飲食店、旅館等で働く調理士、それから理髪師、美容師、あんま、はり、きゅう、マッサージ師、食料品の生産、販売者等々にまで及ぶのであります。したがって、今回の改正のねらいがもっぱら悪質、重大な交通事犯だけであるといたしましても、それをこの二百十一条の業務上過失の刑の引き上げでやろうとする限り、右にあげましたような広範囲の人たちの業務上過失についても、全般的に量刑が重くなって、思わぬ迷惑がかかるおそれなしとは言えないのであります。
だから、われわれは、これを刑法二百十一条というばく然とした一般的な規定の改正でやるよりも、むしろ道路交通法の罰則強化によるなり、あるいはそのものずばり、無免許、酔っぱらい、ひき逃げ運転による殺傷事件、いわゆる交通三悪のみを対象とした単独立法でやるべきではないか、そのほうが実情に即しておるのではないか、こう考えるのであります。そのほうがよほど刑罰の対象がはっきりして、乱用の危険も少ないし、第一、ああ、今度は無免許や酒飲み運転などで事故を起こしたらたいへんだ、こう関係者にぴんと響くと思うのであります。かたがた交通事故に対する警告と予防の効果も大いに期待できると思うのであります。どうもこれを刑法二百十一条の改正でやるには、理論的にも、実際的にも無理があると思うのであります。この種の刑罰法規の常として、乱用の危険性というものは確かに否定できないと思います。
それから、一般に交通事故といえば、すぐ罰則強化とくるのが無理からね人間感情だと思いますけれども、しかし、今日カラスの鳴かぬ日はあっても、悲惨な交通事故の新聞に出ない日はないという、このおそるべき事態の根本原因は一体なんでしょうか。政府はもちろん、お互い政治家としても大いに考え直さなければなりません。
第一、政府に基本的な交通政策というものがないのであります。政府の安全対策はかけ声ばかりで、中身がないのであります。道路の改良、安全施設の整備、交通教育の徹底奪いずれも遅々として進まない実情であります。交通安全基本法一つをとってみても、すでに三十九年三月に、交通基本問題調査会が答申を出しておりますのに、四年以上もたった今日、いまだに日の目を見ない状態であります。また、肝心の交通企業が営利第一主義で、利潤ばかりを追求して、安全輸送という社会的責任をてんで顧みないのであります。料金値上げの当座だけは大いに安全施設に力を入れるような約束をするけれども、いまだかつてこれが実行されただめしがないことは御承知のとおりであります。
さらに、国営と公営と民営たるとを問わず、労働基準法その他の法令関係をちっとも守っておりません。交通労働者は、合理化、人減らし、過密ダイヤ、過重労働、ノルマ制賃金等のもとで生活不安にさらされ、心身ともに疲れきった状態で働いておるのであります。大事故寸前の条件がちまたには満ち満ちておるのであります。
政府が真剣に事故防止を考えるなら、何よりもまず、これらの根本原因を取り除くことにこそ全力を傾けるべきではありませんか。しかる上で、どうしても必要ならば、その時点であらためて現行刑罰の再検討を行なうのがものごとの順序であり、敏治の筋道ではないでしょうか。それをおろそかにして、いきなり刑罰の引き上げに走るのは、本末転倒の試行錯誤と言われてもしかたがないと思います。私どもが、一面において、悪質交通事犯に対し厳罰の必要性はこれを十分認めながらも、今回の刑法改正に強い疑問と抵抗を禁じ得ないゆえんであります。
以上をもちまして反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/37
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038・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/38
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039・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/39
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040・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) この際日程を追加して、
沖繩地域における産業の振興開発等のための琉球政府に対する資金の貸付けに関する特別措置法案(内閣提出、衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/40
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041・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。沖繩及び北方問題等に関する特別委員長伊藤五郎君。
〔伊藤五郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/41
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042・伊藤五郎
○伊藤五郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、沖繩及び北方問題等に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
本案は、沖繩に対する財政援助の一環として、琉球政府が行なう産業の振興開発等のための長期資金の貸し付けの財源に充てるため、資金運用部資金等の財政資金を、琉球政府に対して貸し付けることができる措置を講じようとするものであります。
委員会における質疑の詳細は会議録によって御承知願います。
本日、質疑を終了し、討論に入りましたところ、春日委員より、日本共産党を代表して、本案に反対の意見が述べられ、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本案に対し、山本茂一郎委員より、自由民主党、日本社会党、公明党、民主社会党の四派共同提案として、沖繩経済の自立と発展のための長期経済計画のすみやかな樹立、融資条件についての特別な配慮等を趣旨とする附帯決議案が提出され、委員会の決議とすることに決定いたしました。
以上御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/42
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043・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/43
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044・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105815254X02119680515/44
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