1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十四年四月十五日(火曜日)
午前十時二十九分開会
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委員の異動
四月十一日
辞任 補欠選任
沢田 実君 矢追 秀彦君
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出席者は左のとおり。
委員長 八木 一郎君
理 事
川上 為治君
剱木 亨弘君
土屋 義彦君
大矢 正君
委 員
赤間 文三君
井川 伊平君
内田 芳郎君
大谷藤之助君
大谷 贇雄君
村上 春藏君
阿具根 登君
小柳 勇君
近藤 信一君
竹田 現照君
矢追 秀彦君
瓜生 清君
須藤 五郎君
国務大臣
通商産業大臣 大平 正芳君
政府委員
通商産業政務次
官 植木 光教君
通商産業省繊維
雑貨局長 高橋 淑郎君
事務局側
常任委員会専門
員 小田橋貞寿君
参考人
日本綿スフ織物
工業連合会会長 寺田 忠次君
日本綿スフ織物
工業連合会専務
理事 野沢 久雄君
日本紡績協会専
務理事 有田 円二君
日本化学繊維協
会会長 宮崎 輝君
日本絹人繊織物
工業会会長 安井 睦美君
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本日の会議に付した案件
○特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正
する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
○産業貿易及び経済計画等に関する調査
(米国の繊維製品輸入制限阻止に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/0
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001・八木一郎
○委員長(八木一郎君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について報告いたします。
四月十一日、沢田実君が委員を辞任され、その補欠として矢追秀彦君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/1
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002・八木一郎
○委員長(八木一郎君) 特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため参考人として日本紡績協会専務理事有田円二君、日本化学繊維協会会長宮崎輝君、日本綿スフ織物工業連合会会長寺田忠次君、日本絹人繊織物工業会会長安井睦美君、以上四名の方に御出席を願っております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
参考人各位には御多用の中を本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。本日はそれぞれのお立場から忌憚のない御意見を承り、もって本委員会の審査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
なお、申し合わせによりまして、各参考人にはそれぞれ十五分程度の陳述をお願いいたし、その後、委員からの質疑にお答えいただくことになりますので、さよう御了承を願います。
それではまず有田参考人からお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/2
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003・有田円二
○参考人(有田円二君) 私、日本紡績協会の有田と申します。御指名によりまして特定紡績業に対する構造改善の実施状況及びわれわれ業界から見ました今後の問題につきまして御報告を申し上げたいと思う次第でございます。
特定繊維工業構造改善臨時措置法は、諸先生方の絶大な御支持によりまして、一昨年の七月二十五日に公布されまして、八月十五日施行になり、その後具体案をきめまする基本計画が一昨年の九月二十一日に公布せられたわけでございます。われわれが構造改善の目標といたしましたのは、法律にも書いてございますように、繊維工業をめぐる経済的諸条件の著しい変化に対処しまして、その国際競争力を強化するということであったわけでございます。これは平たく申しますと、いわゆる後進国の追い上げ、あるいは労働力の不足という非常に困難な内外の事態に対しまして、いわゆる三本の柱と申しておりますけれども、第一番目は設備の画期的な近代化を行ないまして、あるいはまたその利用度を向上しまして、そうして資本集約化をはかっていくというのが第一点でございます。第二点は経営規模の適正化。要するに経済単位といわれております五万錘を目標といたしまして中小紡績をグループ化するという適正規模の達成ということが第二点でございます。第三点は過剰設備の廃棄。非常にたくさんございました過剰設備を廃棄しまして、経営基盤を確立をする、そうして近代化のための投資環境を整備していくというこの三本の柱を通じまして、われわれ業界の体質を改善をいたしまして、輸出産業としてますます国民経済の発展に寄与していきたいというのが構造改善の目的であったわけでございます。この三本の柱の中には、すでに二年を経まして一応完了したものもございますし、また、目下努力をしております実施中のものもございます。今日は、その進行状況を御報告申し上げたいと思っております。
この三本の柱のうちで、まず一応完了しましたのは過剰紡機の廃棄ということであります。本件につきましては、昨年の八月十日に通産大臣から告示が出まして、おおむね百万錘を目標とする一括廃棄を行なうようにという告示が出たわけでございます。そしてその百万錘のうちのおおむね六十万錘というものは一伸割り当て、われわれプロラタ方式と申しておりますけれどこも、一律割り当てによってやるようにという御指示であったわけでございます。その後、業界におきましては、政府御当局の御指導も受けまして、指示の一によります一律割り当てのプロラタ分につきましては十一月の十日をもって申し込みを締め切りました。そうして登録番号等を確認いたしました上で、一月五日に一斉停止をしました。廃棄に着手したわけでございます。指示の二によります任意廃棄につきましては、これは業者の任意による廃棄でございますので、どういうふうにしてこれを確保すべきかということをいろいろ相談をしたわけでございます。結局事業協会の買い上げ価格であります一錘三千円というものにさらにプラスをしまして、二千円の上乗せをいたしまして、これは業界独自の負担でもってやるということにいたしまして、任意廃棄を募集をいたしました。一月三十日に締め切りました。これも審査の上、二月二十八日から一斉停止をしました。廃棄に着手をいたしたわけでございます。そしてプロラタ分、任意廃棄分ともに三月の十五日までには全部廃棄を完了いたしました。ここに一括廃棄は完了したわけでございます。
その結果を申し上げますと、法律上の特定日と申しますが、昭和四十三年八月十日告示の出ました日現在におきましては、第一区分の精紡機は一千二百六十万九千五百二十八錘あったわけでございます。この中から政令によります第一号、第二号の除外設備百一万四千七百十八錘、第三号除外といっておりますが、これは純合繊先染合繊というものをやっておりますけれども、七十六万八千五百五十四錘、これだけ除外をいたしました。一括廃棄の対象となります設備は一千六十万二千四百二十四錘あったわけでございますが、これに対しまして一律廃棄は六・三五%という割合で強制廃棄をいたしました六十二万八百四十二錘、この中には使用停止設備がございまして、これは三分の一に換算しております。実数は六十七万一千錘余あったわけであります。それから任意廃棄のほうは十六万七千七百十三錘、これも実数は十七万五千八群錘ばかりあった。したがって、合計いたしまして七十八が八千五百五十六錘、実数は八十四万七千錘あったわけでございます。こういうふうにいたしまして、一括廃棄は完了したわけでございますが、これとほとんど同時に転廃業者の廃棄が行なわれました。これは一社で、ごく小さい会社でございましたので、三千二百二十錘あったわけであります。
これが一括廃棄に関する報告でございますが、この三本の柱のうちの二番目の企業の規模の適正化ということにつきましては、わが国の紡績業者の八六%という頭数が五万錘未満、適正規模といわれております五万錘に達しないものでございます。そういう状態でございましたので、これを何とか適正規模に達したものを多くしたいということで実行したわけでございますが、何分にも中小紡績というものは、これは一国一城のあるじでございますので、企業の独立性ということとも関連いたしまして、なかなか成果をあげることができなかったわけでございます。しかし、若干の先覚者の非常な努力によりまして、今日までに中日本紡績組合というのが六社で約十六万錘でございますが、それから阪南紡績協同組合、これは四社で七万六千錘でございます。それから名古屋紡グループというのが三社でこれも七万六千ぐらい、KDMというグループが三社で五万三千錘、そのほか岸商嘉グループ、三社で四万四千、そのほかにも若干計画中のものがあるように聞いております。これはまだはっきりとしていないわけでございます。しかし、四十四年度からは開銀融資につきましても、中小紡のグループ化をするものにつきましては七・五%という特利を認めていただくということが実現をいたしましたので、グループ化ということはさらに進行すると思います。あるいはすでにできましたグループが強化していくという見込みも十分にあると思います。
それから第三の柱でございます設備の近代化。これは実は構造改善の真の目的でございます。ほかの二本の柱、すなわち過剰設備の廃棄とか適正規模の達成ということは、近代化を促進するための手段であったと申しても差しつかえないわけでございます。近代化の目標といたしましては、昭和四十六年度末までに自動連続方式——オートメーション方式を九十万錘、それからラージパッケージ方式を百五十方錐それからオートドッファー、オートワインダー方式というのが約三百万錐、それから非量産番手というものの近代化が三百万錘、全部合わせまして八百四十万錘の設備を大幅に近代化をする。そうして面接部門だけで四百八十三億円の投資をするという計画でございました。これができますと、二十番手に換算しました生産性が一コリ当たり計画当初の昭和四十一年度に五・一人でありましたものが四十六年度末には二・九人、三人を切るということになっておったわけでございます。また、それによりまして、現在二交代制がいままでおもな操業であったわけでありますが、三交代制の操業を四十一年度に七万錘しかなかったものを、四十六年度末には二百五十万錘にまで増大しようという計画であったわけであります。こういう計画に対しまして、開銀融資も四十二年度までには約四十億というものが使われまして、四十三年度には約四十八億というものが使われております。ことしはさらに五十億をこえるものが申請されると思っております。そういう近代化をやりまして、その結果としてどういう成果があったかということでございます。これはまだ正規の集計なり報告はできておりませんけれども、私が自分なりに調べましたかりの見積もりによりますと、オートメーションの連続自動方式、これは四十一年末に十三万一千錘であったものが、それが四十三年——暦年末でございますが、四十三年末には三十四万三千錘になった。約二・六倍に増加した。二年間で二・六倍になった。オートワインダーは六百十台あったものが一このオートワインダーというのは中小紡績の中でも非常に役立つ近代化でありまして、非常に労働力を節約いたします千二十二台になった。これは一・六倍に増加した。オートドッファー、これは自動玉揚げ機でございますが、これは七百十九台あったものが四千七百八十七台になった。六・七倍、非常な増加でございます。そういう近代化に並行いたしまして、三交代の操業も四十一年に七万錘であったものが四十二年の十二月末では百四十三万錘になった、四十三年度末には百七十万錘に達する見込みで、計画どおり四十六年度末には二百五十万錘に達するものと確信をしております。そういうふうな近代化の結果、生産性も非常に向上いたしまして、この二年間で約二割向上するわけであります。四十一年に二十番手で一コリ当たり五・一人でありました操業能力が、四十三年の暦年末にはコリ当たり平均四・三人になっております。これは平均の数字でございます。非常に近代化しました工場では一コリ当たり一人という工場も出ております。それほど近代化の成果はあがってきております。四十六年度末までにはさらに大幅な生産性の向上ということを期待しております。また、構造改善計画が立てられました当時、予見されておらなかった新しい設備がございます。これは空気精紡、オープンエンドスピニングあるいはブレークスピニングと申しておりますが、これが昨年以来導入されまして、すでに四十四年の四月一日現在、これも非公式な調べでございますが、九十一台設置されております。これだけの大規模な空気精紡機が設置されておりますのは、もちろん日本の紡績企業だけでございますが、これも昭和四十六年度末には七百四十台に達するものと予測しております。
以上が構造改善の進行の状態でございますけれども、この構造改善は、もとより後進国の非常な追い上げとか、あるいは労働力の不足という内外の非常に困難な事態の中で実行されてまいりましたので、したがって、この進捗状況にも、中には非常に順調に進んだものもございますが、中にはなかなか思うようにいかなかったものもございます。しかし、われわれ業界としましては、来年の六月末には、いわゆる繊維新法も失効するということでございまして、そうして完全な自由競争時代を迎える、そういう時代でもございます。また後遊園の追い上げとか労働力の不足とかいう困難な事態はますますきびしくなってくる、そういう状態でございますので、今後ともますます構造改善、体質改善に努力をいたしまして、ほんとうに後進国との賃金格差があっても、問題にならないというような状態にまで資本集約化を達成をしまして、国際競争力を強めていきたいというふうに覚悟をしておる次第でございます。そのためには、今後近代化には一そう努力をいたします。したがって、開銀融資につきましても、特に金額及び低利の融資の確保ということもともに望ましいことでございます。それからまた、技術革新の時代にふさわしいような耐用年数——現在の耐用年数は紡績は十四年ということになっております。これは構造改善という思想が起こる前の耐用年数であります。今日欧州諸国でも構造改善に努力をしておりますフランスやドイツでは、六年ないし十年ということで、技術革新の今日の時代には、十年あるいはそれ以下という耐用年数のほうが望ましいわけでございます。こういうようなこともわれわれ強く希望しております。そういう点につきましては、諸先生の今後一そう御理解をいただきまして、われわれの構造改善につきまして御指導御支援をお願いしたいと思っております。
はなはだ簡単でございましたけれども、構造改善の概略を申し上げました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/3
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004・八木一郎
○委員長(八木一郎君) 次に宮崎参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/4
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005・宮崎輝
○参考人(宮崎輝君) 宮崎でございます。
ただいま有田参考人からお話がございましたように、日本国内では、いま懸命になって構造改善を実施しておりますが、一方、一番繊維の輸出先でありますアメリカでは、輸入規制を自主規制の名において行なわせようとしておりますが、私は、アメリカの輸入規制の問題を中心にお話をさせていただきたいと思います。
と申しますのは、御承知のように繊維産業としましては、日本でも一番大きな問題は構造改善でありますが、それが何といいましても後進国の追い上げという問題に対抗していかねばならないという点でありますとともに、日本における繊維産業に従事しておる雇用数は約百九十万といわれております。アメリカは二百五十万と発表しておりますが、この多大な雇用をかかえておることと、それから製品のほとんどに対して多くのものが輸出されておる。大体、昭和四十三年度で二十億ドルに達しましたが、四十四年度では二十九億数千万ドルに達する見通しでありますが、二十億ドルに達してまたそれをこえる輸出をかせいでおる産業であるということでありまして、この商品がまた広く世界各国で、ガットに入るいろいろな名目のために割り当て制をしかれておるということで、これを伸ばしていくためには非常に困難があるということでございます。特に綿製品につきましては、御承知のとおりLTAというものがありまして、実にがんじがらめに縛られております。これを伸ばしますのは、特に化合繊、毛でありますが、この化合繊、毛にLTAを拡大適用しようというのが、現在アメリカのニクソン政権のとっておる政策でございます。このためにスタンズ商務長官がすでにヨーロッパに参りまして、五月十日に日本に来るということになっておりますが、それまでに事務局の人たちが日本にも来て、この問題を——沖繩問題という名前のもとでありますが、事実は繊維の問題に対するLTAの拡大適用を考えよう、交渉を始めよう、あるいは打診しようという状態になってきております。このLTAといいますのは、実は日本で十三年前に自主規制を始めたというのがそもそものはしりでございまして、それから政府間ベースの協定になり、それからSTA、それからLTAというふうになってまいりまして、来年の九月の三十日にこの期限が切れることになっております。その一年以前にレビューするということになっておりますが、この七月ごろにそれを延ばすか延ばさないかという問題、あるいはこれを改定するかどうかという問題を含めまして、レビューが行なわれるということになっておりますが、その七月の前の六月ごろに、綿製品協定を毛製品及び化合繊にも拡大適用するというためにガットの会議を開こうということになっておりますのは、この七月の問題を意識しているというふうに考えております。それではなぜこのLTAができたかということでございますが、これはちょうど一九五六年に自主規制を始めました当時は、朝鮮戦争が終わったあとでありまして、非常に世界的に不況でありましたが、特にアメリカの繊維業界は非常な不況でありました。その上に、いわゆるワンダラー・ブラウスというのが多く流れ込んだというような状況でありましたために、いま言いましたように、日本が進んで自主規制を実施したわけでございまして、それから現在のLTAに発展をしてきたということでございます。しかしながら、現存の化合繊及び毛を含むアメリカの繊維産業はどうかと申しますと、非常な繁栄をしておりまして、昨年度は未曾有の繁栄をしているのみならず、ことし、一九六九年も雇用、利益、生産ともに非常な順調な発展を遂げるであろう、ということは、テキスタイル・ワールド誌が報告をしております。こういうように、一九五六年当時とは全く事情が違った現在において、なぜアメリカがこういうようなことをやるかと申しますと、ニクソン大統領が選挙のときに公約をしたというだけの理由でありまして、これはアメリカのATMIが突き上げておるという、全く政治的な理由に基づいて行なわれておることははっきりしております。諸先生方が選挙のときにいろいろと公約をなさると思いますが、そういう公約をなさることは自由でありますけれども、それはあくまでも国内的な問題であって、それを外国に拘束するような公約によって、それを強行されるということは、これはまことに理解しがたいことでございます。ニクソン大統領が記者会見で、クォータ法案を通すのではなくて、輸出国の自主規制による方法でいくんだということを申しておりますけれども、これは実はしろうとには非常に合理的であるように思われがちでありますが、実は全くクォータ法案と差がないのであります。御承知のようにアメリカでは独禁法の規定がございまして、業者間の協定ができません。それで、鉄の場合は自主規制をするということをこちらからアメリカの国務省に手紙を書きまして、その手紙を公表するという方法をとっておりますけれども、繊維の場合は、先ほど申しましたように、すでにありますLTAを拡張適用するということでありますから、政府間の協定になるのでありまして、その意味でスタンズ長官が近く来日されることになっているわけであります。しかしそれと同時に、アメリカでは憲法の規定がございまして、政府間協定になります場合には、やはり授権立法——国会が大統領に交渉の権限を委任するという授権立法が必要であります。それから第二は、協定に入る人と入らない人との間の不利益といいますか、バランスをとるために、入らない人にはアウトサイダーを規制するレギュレーションを発動し得るという規定になっております。ですからあくまでがんばってアメリカの言いなりにならないと、おまえはアウトサイダーだというので、一方的に押しつけられる、それを断わると押しつけられるということで、クォータ法案と変わらないという仕組みでありまして、アメリカでは農業法二百四条というのを改正して、このアウトサイダーを規制することができるようになっておりまして、そのために実は.香港が最後まで反対したいうことになっております。しかもその上に、カテゴリーというものがたくさんありまして、カテゴリー別にワクをきめまして、そうしてやられますから、そのカテゴリーを全部充足することは不可能でありまして、結果においては輸入制限になるという方法をとっておりまして、同じように今度またカテゴリーを設けるのだということで、特にアメリカ国会に出ております法案はその点に触れております。そういうことでありまして、特にこれから伸びなければならない化合繊、毛等におきまして、アメリカの産業が非常に栄えているために、その合理性がないということに気づいたのでありましょう、今度ATMIの大会でスタンズが演説しておりますが、その中で、ロー・コスト国からくるところのテキスタイル・アンド・アパレルということばを使っておりまするが、市場撹乱を防止するために新しい何らかの方法をとらなければならないということを申しております。それと同時に、アメリカでは繊維産業だけで一九六八年に八億ドルの赤字になったので、これはたいへんなことだ、だから輸入制限をしなければならぬということを申しておりますが、大体繊維だけではなるほど一九六八年にアメリカは八債ドル赤字になっておりますが、これはアメリカと全世界との関係でそうなっている。日本はアメリカから穀物を買っておりますが、農産物だけで日本は十三億ドル近くの赤字になっております。ですから単品をとらえて国際収支を比較するということは非常におかしいのでございまして、日本はアメリカから穀物を買う、いろんなものをまた売っているというのでありますが、同時にアメリカ系統の資本の会社から石油を約十億ドル以上買っております。それからそのほかにアメリカのスチール・メーカーの経営をしております鉄鉱石を買っているのですが、そういう間接的なものを入れるとお互いさまなんです。そういうことで、私は理由は全くないと思っております。そこで、しかしロー・コスト国という意味はテープ・レーバー国ということで、いわゆる香港、台湾、韓国、日本というところが対象になるということになると思いますが、日本の賃金はテープ・レーバーじゃございません。フランス、イタリーと同等以上になっておりますし、昨日も鉄鋼の貸金回答がございましたが、あんなふうに毎年上がりますと、一三%以上に上がるのです、ですからテープ・レーバーという時代ではすでになくなったということであります。しかし市場擾乱ということばを使っております。市場撹乱のないものはそれじゃいいのか、それからテキスタイル・アンド・アパレルということを申しますと、フィラメントとファイバー、繊維には糸と綿がありまして、それを織ったり紡績したりするわけでありますが、織る紡績以降の工程を言うのであって、フィラメントとファイバーは入らないのだというようなニュアンスがあります。そういうことをいたしますと、EEC、ヨーロッパ方面ではフィラメントとファイバーを輸出しているのが多く、アメリカもフィラメントとファイバーを輸出しているということで、やはり対象になるのは日本を中心とした東南アジアだということになると思います。これはつまりアメリカがヨーロッパと日本と東南アジアの分断作戦をねらっているのでありまして、そしてガットの会議につかせよう、ヨーロッパはあまり実害はないし、特に英国毛織物は高級品であるから、市場撹乱の事実はないし、しかもロー・コストでないから除外する。結局目標とするのは日本及び東南アジアの諸国であるということになると思いますが、その香港、台湾、韓国等には日本からの原料はほとんど九割でございまして、それをかれらは二次製品等にしてアメリカに売っているという実情でありますから、対象になるのは日本及びそれを中心にした国々であるということになると思っております。しかもアメリカは一方では自動車の資本の自由化と百二十一品目の非関税障壁の撤廃ということを強く日本に要求をしております。そういう意味におきまして、アメリカの言うことは一方においては自由化を主張しながら一方においては自三規制を要求するということで、全く理由にならないというふうに考えております。特に綿製品協定のLTAにおきましては、LTAは綿以外のものには及ぼさないということを書いてあるのです。そういうように書いてあるにかかわらず、これを毛及び化合繊のほうに及ぼそうとすることは、全く協定の違反ではないかというふうに考えております。
次に、この問題は、それではすでに鉄もやっているじゃないか、それだったら化合繊もやったらどうか、毛もやったらどうかというようになりますが、これは実は非常に重大な問題でありまして、化合繊、毛が、先ほど申しましたようにアメリカにおいて繊維産業全体が非常に繁栄をしておるにもかかわらず、大統領が選挙で公約したらそれによって輸出国は自主規制を強制されるのだという例が一つできますと、他の、たとえばテレビ等に問題が起こっておりますが、他の製品においてアメリカの事業が栄えていないという場合に、その自主規制を要求されます場合にはこれを拒否することが日本はできなくなるということで、これは全産業の問題であって、決して事が化合繊や毛だけの問題ではないということをひとつぜひ御理解をいただきたいと思います。
しかしながら、それじゃどうしたらいいか。市場撹乱が現に起こっているのかということでありますが、これは実は日本の倒産件数というのは世界一多いのでありまして、アメリカでも倒産は一部あるでありましょう。しかしながら、そういう場合、実はガットの規定の中にちゃんと救済条項がありまして、ガット十九条というのがあるわけです。一部製品の輸入が増大して、そうして市場撹乱が起こった場合には、一部関税を上げる等の方法がありますし、またアメリカでは通商拡大法がありまして、救済するというような方法もありまして、非常に完備した制度を持っておりますので、そういうような制度を十分に活用することによってこの問題は解決し得る。ということは、すでに制度上、アメリカもまた社会的にも完備しておるわけであります。それで、ほかに、よくヨーロッパの人が問題にするのでありますが、二毛為替制度であるとかあるいは国家の補助であるとかいうような制度をとっている国があるから、そういうのはやめてくれということを申しますが、これは当然でありまして、そういう制度の撤廃を要求するというようなこと、そういうことがアメリカとしてやるべき道ではないというふうに考えております。大体、あらゆるそういう関税障壁をお互いに除いて、そして自由な貿易に向かって推進していくというのが全体の国のとるべき措置ではないか。特にアメリカは、御承知のように輸出を五年の間に五百億ドルまで伸ばそうという方針を打ち出しておりまして、そういうふうにして大いに輸出を拡大しようという方針を立てておるわけでありまして、そういう場合に、逆によその国においては輸出を減らせということは筋が通らないというふうに考えております。特に、もう一つの問題は、いわゆる発展途上国に対しまして、そんなにこわいのかということであります。ただいま有田参考人もおっしゃいましたように、いわゆる発展途上国のお家芸に対抗するために、設備の近代化をやっているのだということでありますが、アメリカこそ近代化をやるべきじゃないか。アメリカの賃金はドイツの倍です。日本の四倍近いといわれておりますが、それにもかかわらず繊維以外の産業は全部栄えているわけです。そして五百億ドルまでも輸出していこう。その中にはもちろん農産物もあるわけでありますが、そういう国であるならば、繊維産業についてだけなぜ近代化をやらないのか。近代化をやって、堂々と後進国に対抗していけばいいじゃないか。しかしながら、強撚物というのがあるのですが、こういうものはアメリカはつくりませんから、そんなものは輸入したらいいということになるのでありまして、私は、アメリカこそ思い切ってそういう設備の近代化、構造改善をやるべきじゃないかと思っているのです。実は最近やっておるようですが、その上にプラス、もっと後進国に出ていけ。現にアメリカの自動車、石油資本は外国に出ていこうとしているわけですから、なぜアメリカの繊維産業だけが出ていかないのか。現にスタンズの演説の中に、やむを得ず後進国に出ていかざるを得ないだろうということを言っておるのです。私は、やなを得ず出ていくのじゃなくて、喜んで、他の産業と同じように、勇気を持って後進国に出ていって、みずからこれを賃加工してアメリカに持っていくべきだということを考えております。そういうような意味において、アメリカは、アメリカの繊維産業以外の他の産業と同等以上のひとつ勇気を出してこの際は出ていくべきではないかということを言ってておるのであります。
最後にもう一つ申し上げたいのは、この輸入制限の問題につきまして、非常に日本に対する不信の念が世界中ございます。というのは、日本は折れるのじゃなかろうか。いままでの例から見てよ最後に折れるのは日本じゃなかろうか。裏で取引するのではなかろうかというので、ヨーロッパも発展途上国も異口同音に日本に対して不信感を持っております。これらはそうでないのだということを何度説明してもなかなかわかりませんが、ぜひこの意味において、日本はこの不合理な要求には応じないのだ、しかしそのかわり日本はやるべきことはやるという態勢でいくんだということを、ぜひ国会ではっきりひとつ意思表示をしていただいて、政府及び行政府を督励していただきたいということを、この機会にお願いさしていただきたいと思います。
時間でございますから、これで失礼いたします。ありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/5
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006・八木一郎
○委員長(八木一郎君) 次に、寺田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/6
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007・寺田忠次
○参考人(寺田忠次君) 私は、日本綿スフ織物工業組合の寺田でございます。
先生方現下のきびしい繊維業界の現状を心から御心配くださいまして、構造改善事業の完遂に大きな御期待をかけてくださいますことについては、ありがたく厚く御礼を申し上げます。
二年前に諸先生方の特段の御配慮によりまして織布業構造改善対策を確立していただいたのでありますが、その後、綿織物の各産地は、産地ぐるみになりまして構造改善事業の円滑な実施をはかってまいりました。その実施の状況を申し上げたい、かように考えます。
昭和四十二年度におきましては、実施産地は二十三でございます。設備ビルドの規模は約六十億円でございまして、その内訳は織機三十一億円、準備機等が十七億円、共同施設に十二億円でございます。企業の集約化の件数は約百六十余でございまして、参加事業所が約二千有余であります。商品開発の件数はビニロンホース基布の開発など三件でございまして、労務対策につきましては、従業員の宿舎や住宅の建設など六十四件でございます。
昭和四十三年度の実施産地は二十八でございます。設備ビルドの規模は六十九億円で、この内訳は織機が約二十七億円、準備機等が二十五億円、共同施設十七億円、企業集約化は八十四件で、五百余の事業所が参加しました。この結果、両年度で三千有余の事業所がグルービングに参加いたしまして、労務対策では従業員家族住宅の建設など八十件がございます。
次に、これらの構造改善事業の実施効果につきまして申し上げたいと思います。グルービングを通じまして思い切った設備ビルドを断行した企業につきましては、たいへんな近代化効果をあげております。省力化、能率の向上、高級品種への転換等によりまして高収益をあげていることが認められます。一例を申しますと、織機の前工程である綜続筬通しの部分につきましては、新鋭設備を導入した結果、従来この工程で必要としていた三十四人を一挙に四人に減ずることができました。また別の例では、百十七台の普通織機の工場で、その半分の台数を超自動織機に入れかえましたために、能率の向上のみならず、高級織物の生産が可能となりまして、従来の水揚げが一躍倍増したのであります。
グルーピングにつきましては、中小零細規模業者のグループ化の促進と共同施設の整備拡充が活発に行なわれております。前に申し上げましたように三千有余の事業所で結成いたしました約二百五十のグループが原料の共同購入、共同販売など経営の合理化をはかり、あるいは共同施設を設置し、個々の企業では設置でき得ないような新鋭設備を購入いたしまして、大きな成果をあげております。たとえば一つの産地におきましては、十億円余の投資でございまして、準備工程等の巨大な共同施設が建設されておりまして、中小規模業者の経営の合理化に非常に大きく貢献しております。このようにいずれの産地もそれぞれ顕著な効果をあげておりますが、第二年目の四十三年度におきましては、予算規模を拡大していただいたにもかかわりませず、革新織機の開発がおくれたこと等の事情によりまして、遺憾ながら予算を完全に消化し得なかったということの結果に終わりました。国会並びに関係の御当局に対しましてまことに申しわけないことと恐縮に存じている次第であります。この未消化になりました事情を申し上げますと、四十二年の四月に大阪におきまして開催されました国際見本市に、二つの国産革新織機が出品されました。これを参観いたしましたものは、一台一千万円もする外国の革新織機と比較いたしまして、その性能がやや匹敵すると思われるようなこの国産織機が二百万円以下で入手できるということで、この国産織機の量産化に期待をかけておりまして、四十三年度の計画にはこの革新織機を取り入れようとしたのでありますが、量産化がなかなか実現しなかったために、国産革新織機によるビルドが実行されるに至らなかったことであります。この結果、資金面から見ますると、設備ビルドが織機以外のものに重点が移行したのではないかとか、あるいはまた上乗せ廃棄を回避したのではないかという誤解を受けることになって、まことに遺憾でございましたが、これは一に革新織機の開発が期待よりおくれたことによるのでありまして、やむを得ない結果でございましたので、この際、この事情を御理解賜わりたい、かように考えるわけであります。
次に、構造改善事業を円滑に実施するために必要と思われる事項について申し上げたいと存じます。
第一に、緊急に革新機械の量産化、実用化をはかることであります。機械業界に国際水準に近いような機械の開発と量産化を強く要望いたしまして、機械業界からも努力するとの回答は得ておりますけれども、早急にその努力を結実させていただくということはまだできておりません。
第二に、原料糸の品質の改善をはかることであります。織機の高性能化に応じましてその効果をあげるためには、良質の原料糸を使用しなければなりません。したがって今後糸の品質をより一そう向上させることが必要でありまして、これにつきましても紡績業界の協力をお願いしておるわけであります。
第三に、新製品の開発と市場の開拓をはかることでございます。需要構造の変化や消費促進のために特に努力を要するのでありますが、織布業のように中間製品のメーカーとしては、自己努力のほかに、紡績あるいは化繊の各社や商社の御協力にまたなくてはならないことがたくさんございますす。これについても関連業界に積極的な御協力友お願いいたしておるわけであります。また、今後の輸出振興のためには、加工度の高い中小企業製品の開発が必要でございますが、われわれ中小企業の場合、海外市場の動向等を研究する機会が少ないので、ジェトロや在外公館にてサンプルやあるいは市場動向の情報等を収集して提供していただくようにお願いしております。
第四番目に、労務の確保でございます。労働力の不足はまことに深刻でございまして、当業界の在籍者は約十五万人余であります。退職と採用の状況を見ますと、退職者が充足者を大幅に上回っております。毎年約一万人余の充足ができずに操業に支障を来たしておるわけであります。各企業はもちろんのこと、産地組合におきましても求人の開拓や定着性の向上に鋭意努力をはかっておりますが、多額の資金を要することでもあり、御当局に対しまして雇用促進事業団の資金の増大や、共同福利厚生施設の建設や、建設の助成等についてなお一そうの御高配をいただきたいとお願いする次第であります。また技術革新に伴いまして従業員の技術の研修や技術者の社会的地位の向上などが必要でございますが、これらにつきましても、政府御当局の格段の御配慮をお願い申し上げているわけであります。
第五に、なお一そう強力にグループ化を促進することでございます。過当競争の排除と生産取引秩序の維持のために、中小零細規模の業者のグループ化が必要でございますが、これらのものが親機に依存している現況にありますので、今後は親機を中心とした合理的な関係のグループ化を促進して品種の専門化あるいは品質や技術の改善をはかっていきたい、かように考えております。このグループ化の促進並びに業務の運営につきまして、関係御当局の御指導をいただきたい、かように考えております。
なお、昭和四十四年度につきましては、ただいま各産地は構造改善事業計画の策定中でございますが、ことしは革新織機開発のテンポの見通しもややはっきりしてまいりましたので、現在の最新鋭機を中心に、予算の許される範囲で構造改善事業に取り組むことになりまして、予算は一〇〇%消化する見通しでございます。この計画につきましては、関係御当局の指導を受けまして最善を尽くしてこれを完遂し、所期の効果をあげたい、かように考えておるわけであります。来年度の四十五年度は、革新機械の量産化も期待されますので、構造改善の希望は殺到してくるものと考えております。私どもは画期的な構造改善対策によって織布業の振興をはかり、もって国内で消費する衣料や工業用資材を自力で提供し、また加工度の高い製品の輸出増加をはかるようにしなければならないとかたく考えているわけであります。総力をあげてこの事業を完遂したいと考えておりますので、国会の諸先生方におかれましても、また関係御当局におかれましても、なお一そうの御高配と御指導をお願い申し上げるわけであります。
なお細部にわたりまして野沢専務が参っておりますので、お許しを得まして補足説明をいたさせます。よろしく。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/7
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008・八木一郎
○委員長(八木一郎君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/8
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009・八木一郎
○委員長(八木一郎君) 速記を始めて。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/9
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010・八木一郎
○委員長(八木一郎君) それでは、この際、参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。
特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案審査のため、本日参考人として、日本綿スフ織物工業連合会専務理事野沢久雄君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/10
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011・八木一郎
○委員長(八木一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/11
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012・八木一郎
○委員長(八木一郎君) それでは野沢参考人、御意見をお述べいただきます。短時間にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/12
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013・野沢久雄
○参考人(野沢久雄君) 時間もないそうでございますので、簡単にお願い申し上げます。
ただいま寺田参考人から大筋について申し上げましたので、御承知いただけたと思いますが、二、三の問題点を申し上げて御指導いただきたいと思います。
一つの問題は、金融の問題でございます。構造改革の制度を諸先生のおかげをもちまして現在実行中でございまするが、設備資金のうちの七割は長期低利の融資をいただいております。なお三割分につきましては、事業協会等の保証によりまして運営をしておるわけでございまするが、残念ながら私どもの業界は長年にわたりまする不況によりまして、それにプラスいたしまする自己資金の調達が非常に困難な状況でございます。機械設備等はこの長期低利の資金によりまして充足できるのでございまするが、そういたしまする場合には、当然若干の工場も直さなければいけません。あるいはまた付属設備の追加も自己資金によって充当しなければなりません。そうしなければ構造改革によるほんとうの生きた姿にならないわけでございます。ところがいま申し上げましたような業界の実情によりまして、なかなかこのプラス・アルファの資金の充足が、自分だけの力によってはむずかしいのが、非常に私どもの業界として困っておる問題でございます。この問題につきましては中金、公庫等それぞれ内容の御相談を申し上げて進めておるわけでございまするが、本件につきまして特にまた今後諸先生のお力添えをいただきたいというのが一つの問題でございます。
それから次には、構造改革の一つの大きな柱でありまするグルービングの問題でございます。申し上げるまでもなく、現在流通革命なり、あるいはまたファイバー、糸段階の企業合併等、繊維業界の姿が着々近代化されておるわけでございまするが、それに伴い、われわれの現在のような一万六、七千人というような零細過多な実情を改善していかなきゃならぬ。統合あるいは協業化によって、この経済の流れに沿っていかなきゃならぬのでございまするが、これがまた非常にむずかしい問題でございます。先ほど有田参考人も申されましたように、長い間一国一城のあるじとして経営してまいりましたのを、みんなと一緒に仕事をしていくということになりまするためには、いろんな問題がそこで起きてまいるわけでございまして、私ども中小企業の関係におきましては、協同組合あるいは企業組合等それぞれの制度によって運営をしていくわけでございまするが、産地産地によりまして、また、業態業態によりまして、その統合、集合化の姿というものは、現実に合った姿、合った内容で運営をしていかなければ生きたグルーピングができないということになるわけでございまするので、このグルーピングの問題につきまして、法の運営等におきましても十分流動的な考え方で御指導をいただきたい、かように思うわけでございます。
それから、簡単に申し上げまするが、最後に労働問題でございまするが、私どもの業界は、いま寺田参考人から申し上げましたように、毎年大体一万人ぐらいずつ減っていきます。これは、だんだん労働力が不足になっておりまする現在の段階におきまして、やむを得ないといえばやむを得ないのですが、しかも、今度の構造改革という問題が、企業の合理化、設備の近代化によって省力化をして、さらに合理的な織布業に脱皮するということでございまするので、当然ではございまするが、ただしかし、私どもの中小企業の構造改革の目標は、必ずしもマスプロではございません。むしろその企業企業に即応した、中小企業にふさわしい、付加価値の多い中小企業にすることが構造改革の一つの目的でもあるわけでございます。さらにまた、マスプロ製品の場合におきましてもだんだん製品が高度化していきます。織機の面につきましては合理化をされて人も少なくなるわけでございまするが、高級製品をつくればつくるほど、あと始末が手数がかかります。というふうなことで、幾ら構造改革を進展させましても、人がどんどん減ってしまってもよろしいということにはならない。やはりある程度の労働力の確保ということは、どうしてもこの構造改革を推進するためにも必要であるということでございます。
それらの問題につきまして国会の諸先生にも十分御理解をいただきまして御指導いただきたいというのが私の補足説明でございます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/13
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014・八木一郎
○委員長(八木一郎君) 次に、安井参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/14
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015・安井睦美
○参考人(安井睦美君) 日本絹人絹織物工業組合連合会の安井でございます。
織布業の構造改善事業につきましては、諸先生方の格別の御配慮、御援助によりまして目下実施しておりますことを厚く御礼申し上げます。
私どもの業界における構造改善事業の実施状況につきましては、四十二年度の設備ビルド実績は約四十億、四十三年度は約八十九億になっております。さらに本年度、四十四年度の計画は約八十三億程度の事業規模を予定しております。現在冬産地の計画を見ますと、これを大幅に上回っておるようでございます。それだけに構革の熱意は盛り上がっているような実情でございます。
次に、構造改善事業の実施による効果について申し上げます。これまで具体的な事例について調べてまいりましたところ、グルーピングを通じて大幅な設備ビルドを断行した企業においては大きな近代化効果を上げており、省力化、能率の向上、高級品種への転換等により高収益をあげていることが認められているのであります。一例を申し上げますと、百三十二台の普通織機の工場で、その半分の台数をウォ−タージェット式超自動織機に入れかえましたために生産数量は一躍二倍近くに増加し、従業員一人当たり付加価値額が二倍以上に増加したというものもございます。また、グルーピングにつきましては中小零細規模業者のグループ化の促進と、共同施設の整備拡充が活発に行なわれております。八百あまりの事業所で結成した約九十のグループが共同受注、共同販売、あるいは原糸の共同購入など、経営の合理化をはかり、あるいは共同施設を設置して、個々の企業で設置できなかったような設備を導入して大きな集約化の効果をあげているのでございます。一例をあげますと、十二の事業所で結成したグループにおいて、スラッシャー・サイジング機を導入いたしまして共同加工を行なったため、従来各事業所において整経、のりつけ等のために要した要員七十二名が一挙に四人に減らすことができた。こういうのもございます。
御高承のとおり私どもの業界は典型的な中小零細企業の集団でございまして、抜本的な構造改善事業を実施することばなかなか容易ならぬことでございます。またその実施上の過程においていろいろ問題がございます。その困難な問題等につきましては、先ほど綿工連の浮田会長、あるいは野沢専務理事からもお話がありましたが、絹人繊織布業におきましても、これとおおむね同じでございますので省略いたしますが、これらを克服しつつ効果的に実施いたすべく最大の努力をいたしております。おかげさまで構革事業も第三年目を迎え、組合員全体の自覚と理解も大いに高まり、積極的に構革事業に取り組んでおり、また組合の基盤も着実に強化しつつありますので、業界は責任をもって構革事業を完遂できるものと確信しておる次第でございます。
この機会に、特につけ加えて先生方にお願い申し上げたいことは、御高承のとおりわれわれ業界を取り巻く内外の環境はいよいよきびしく、先ほど宮崎参考人からもお話のように、特にアメリカにおける輸入制限問題をはじめ、特恵関税の実施、さらに後進国の急速な追い上げ、また国内においては労働需給の逼迫、労働貸金の上昇など織布業の経営はいよいよ困難な状態に逢着しつつあります。したがって、われわれ業界は一致団結のもとに重大な決意をもって構革事業を緊急に完遂いたしたいと努力しておる次第でございます。この実情をとくと御賢察の上、今後における政府の財政、金融措置、対外折衝等につきましては、引き続き格段の御配慮、御援助を賜わりますようお願いいたしまして私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/15
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016・八木一郎
○委員長(八木一郎君) それではこれより質疑に入ります。質疑のあおりの方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/16
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017・近藤信一
○近藤信一君 時間がございませんし、特に本日衆参両院議長の招待によりましてソ連最高会議の民族会議議長のバレッキス氏が十二時半に羽田に着かれるので、それを迎えに行かなきゃなりませんので、各参考人に簡単に御質問を申し上げまして、そして質問のしっぱなしになるかもしれませんが、その点ひとつあしからず御了承願いたいと思います。
まず最初にずっと一ぺんに私質問しておきますので、あとで御答弁をひとつしておいていただきたいと思いますが、紡績協会、化繊協会の有田さんと宮崎さんに御質問を申し上げるわけですが、アメリカではニクソン大統領が就任されましてから、わが国における心配というものは、特に繊維業界におけるところの心配が大きく各地で展開されておるわけです。それは、従来アメリカで日本の繊維製品に対するところの規制問題が常に取り上げられてきた。そこでニクソン大統領になって、これは一そう強められるんじゃないかというふうな空気というものが、わが国の業界にはあるわけなんです。さきに紡績協会も化繊協会も、いかなる規制にも反対だ、特にアメリカではいま日本に自主規制をやれというふうなことが言われておる、それに対して自主規制に対してもこれは強く反対する、これを認めるならばやがては輸入規制につながってくるであろう、こういう意見から反対をしておられるわけでございます。ところがその反面におきまして、アメリカ側の繊維産業の海外への進出というものはこのところ目ざましく発展していっておるというふうにも聞いておりますし、特にこれはヨーロッパにおけるところのアメリカ産業の進出というものもございますし、西独におきましてもこの点非常に心配をしておる。そういたしますると、やがてはわが国に対するところの進出という点もこれは考えられなければならぬじゃないか。いわゆる将来の見通しとして、アメリカの日本への進出はどの程度あるやに思われるのか。この点をひとつ承っておきたい。
さらにもう一つは、合繊などは第一次の資本自由化品目の中にあげられておるわけでございまするから、日本への進出が将来活発になるんじゃないか、こういうふうな見通しもつくわけでございますが、この点どのように考えておられるのか、この点もお尋ねいたします。
いま一つは、特に日本ではアメリカと東南アジアに繊維の輸出というものがなされておりまするけれども、一体、将来ヨーロッパに対するところの輸出面に対してどういうふうな見通しを持っておられるのか、この点も承っておきます。
さらにもう一つは、これは有田さんにも宮崎さんにも共通する点でございますが、今国会で私どもは繊維構造改善に染色整理、これはメリヤスを加えられることになるわけでございます。染色整理は繊維工業に対するところの一つの基本とも申すべきものでございまするから、染色の改善には大いに希望を抱いておられると思うのですが、この点もひとつお尋ねしておきたいのであります。
次に、日本綿スフ織物工業連合会、絹人繊織物工業会に一点お伺いするわけでございますが、今度の構造改善の法案の中に、これは特に繊維機械が含まれていない。このことは私さきの委員会でもこの点を申し上げましたのですが、それはなぜかというならば、特に日本の中小企業の機屋さんと申しますか、織物屋の機屋さんが台湾や香港などによく視察に行かれるわけなんです。そこでまず驚いて帰ってこられることは、やはり新鋭なる機械が設置されまして、そして生産量も非常に上がってきておる。そういう点を見て、皆さんびっくりして帰ってこられるような空気があるわけなんです。行ってこられた方に聞きますと、みん汗その点をお話しなさるわけなんですが、特にわが国の中小企業には若年労務者の雇い入れというものに対して、機屋さんというべき織物屋さん片非常に苦慮しておられる。当然そうすると人的木足をどこでカバーするかというと、私は機械によってこれをカバーしていかなければならぬと思うのですが、その点、今度の構造改善の中に機械が含まれていないという点で、私は先ごろこの委員会におきましても一応政府にその点を追及したわけでございまするが、この点について、いわゆる短来の機屋さんとしてどういうふうにお考えになっておられるのか。
それからもう一つは、構造改善で非常に機屋さんのほうでは活発に動いておられる。産地組合のしっかりしているところはどんどんと進んでおれまするけれども、まだいまだに踏み切れないとい産地組合も多々あるというふうに私聞いておりまするが、この点について、一体なぜ踏み切っていられないのか、どこにその原因があるのか、この点もあわせて伺っておきたいと思います。
以上簡単でございまするけれども、時間がございませんから、まことに失礼でございまするが、質問のしっぱなしということになりますが、ひとつあしからず御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/17
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018・有田円二
○参考人(有田円二君) 近藤先生の御質問にお答え申し上げます。
初めの御質問は、アメリカの繊維産業が海外、特に欧州諸国に進出しておって、わが国に対する進出をどう思っているかという御質問だと思います。なるほど仰せのとおり、アメリカの合成繊維産業、あるいは紡績業でもバーリントンなんかは欧州——英国、ドイツ、ベルギー、スイス等に進出しております。けれども、大体進出しておりますのは合繊製造部門でございます。紡績のほうはあまり進出しておりません。バーリントンなんかは紡績業者でございますけれども、進出しておりますのは流通部門、バーリントンの経営しております流通部門。それからそのほかに繊維の流通業者はこれはだいぶ進出しましてアメリカ式の商売を欧州でやっております。
われわれのほうから言いますと、紡績部門につきましては、たとえアメリカの企業が進出してこようという考えを持ちましても、今日十分に対抗していくだけの自信を持っております。流通部門に対する進出は、これは相当問題でございます。ビッグストアとか新しい流通革命の面におきましては、向こうは一歩進んでおります。これが進出してくることは確かに問題でございますけれども、大いにこれから研究しなければならぬと思います。しかしながら必ずしもマイナスばかりじゃないと思います。これによって日本の流通部門の構造改善ということが促進をされればプラスになる面もあるんじゃないかと思っております。これは私のほうの紡績だけの考えでございます。
それからヨーロッパ市場に対する見通しという御質問でございますが、これは欧州諸国は経済成長も非常に急速でございますし、非常に大事なマーケットと大いに日本としても重要視しなければならぬと思います。しかし御承知のように、欧州諸国は非常にじょうずに輸入制限をやっております。ガットの残存輸入制限を非常にうまくやっております。なかなかノルドウィック協定とかヤウンデ協定というものがありまして、思うように進出できないのが現状でございます。これを何とか打開しようと思いましていま政府にお願いをしまして、現地の調査とか対策ということに非常に力を入れるようにいたしております。
それから、もう一つの御質問の染色、メリヤスの構造改善についてどう思うか。これは、繊維産業というものは、繊維メーカーから最後の小売り店のカウンターでお客様に品物を渡すところまで、全部一体でございます。合繊産業といわず、紡績といわず、織布、染色加工、メリヤス、縫製全部が連帯性を持っております。染色からメリヤスまでみな全部構造改善が行なわれることは、われわれ非常に歓迎するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/18
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019・宮崎輝
○参考人(宮崎輝君) それではただいまお触れにならなかった点についてだけ申し上げますが、アメリカが日本に進出してくる場合には、まず技術的に非常に進んでいるもの、これが出てくると思います。これは現にいわゆるスピンドルというのがありまして、フィラメントの場合ですが、一ぺん糸にひいたものを巻きまして、さらに引っぱるということになっておりますが、いきなり引っぱって巻くという技術がいま確立されておりますが、日本が特許を持っておるわけですが、そういうようなものでありましたら、日本にきてやられますと、うまくこの技術が確立されますと、日本はすっかりやられてしまいます。特許のライセンスはしない、日本も特許をとっておりますから。新しいそういうようなものが日本にきて、かりに一〇〇%の会社ができるという場合には、日本では可能性が非常にあるというふうに考えております。
それから第二は、たとえば日本の技術がまだおくれておるもの、グラスファイバー等も日本においてすでに会社がもりますけれども、アメリカは非常に進歩している。アメリカのカーテンとか、そういうものについては非常に最近は防燃性の問題が起こっておるものですから、そういう独特な技術を持っておるものを巨木で製造する、こういう危険があります。
それから第三には、もうすでにジョイントベンチャーができておりますけれども、たとえばポリエステルのタイヤコードは、すでにジョイントベンチャーができておりますが、こんなものを日本で始める。こういう意味で、日本でできないもの、日本より進んでおるもの、特許で保護されておるようなもの、こういうものは、私は決して日本は楽観してはいけないというふうに考えております。したがって、われわれも全力をあげてこの技術開発にいま努力をいたしております。
それからもう一つ、ちょっとさっきお話がありましたが、前の参考人お触れになりませんでしたが、日本の輸出のビヘービアの問題でございます。大体アメリカ、東南アジアにそれぞれ三分の一、その他三分の一というふうになっているのですが、EEC、英国になぜできないかということになりますと、実はただいまもお話ございましたように、ノルドウィック協定というものがありまして、日本、香港、台湾、韓国と同じように、日本は迂回して、たとえばスイスに輸出して、スイスのものがフランスにいくことができないような協定を結んでいるわけです。これは特定な商品ですけれども、そういうような問題がありますほかに、ガットの関係で、日本はガットに加盟するときに、三十五条の援用を撤回してもらうというような問題とか、いろいろありまして、みな割り当て制の協定を結んでおるわけです。ヨーロッパの国々ではこれが非常に問題でして、これをカナダと昨年の十二月に結んだわけです。それまでは輸出入取引法で日本が自主的に、ほんとうに自主規制をやっておったのですが、この契約を結んだものでありますから……。アメリカが言いますには、カナダの場合は五五%アメリカ系の資本なんです。これと協定を結んだものですから、なぜ世界じゅうと結んでいるのに、アメリカとだけ結ばないのかというのがアメリカの言い分になっているわけです。実はわれわれ、それぞれやむを得ざる理由によって結んだんだと言いますと、アメリカは今度は、ニクソンが約束したから、政治的理由によっておまえらに自主規制を要求している、こういうふうに言うわけです。それで私どもは、それは実は間違いなんだと、お互いにそういう理由でクォータをやるのは間違いなんで、それは全部はずしていくかワクをふやすように日本はヨーロッパに要求しているんだ、カナダにも同様なんだ、カナダにもわれわれは渋っているだということを言っているのでありまして、そういう意味で、私は将来ヨーロッパ諸国がもう少しワクをふやし、または撤廃してもらう、そして日本の輸出がヨーロッパにもふえていくというふうにする、これはアメリカも希望しておるわけです。アメリカも、圧力がかからないで世界に広く分散していくということを要求しております州ら、これはアメリカと利害は一致しております。
もう一つは、ソ連その他の共産圏に対する輸出でございます。輸出しておりますものの半分ぐらいはソ連に出ております。特にアメリカが木材輸出を制限しましたから、カナダも制限しましたから、ソ連材を日本は買うしかないということになりますけれども、ソ連は林道がないわけです。で、林道をつくるために金が要る。それで日本から二次製品を買うわけです。それを十倍ないし十七倍で大衆に売るわけです。千万ドルは一億七千万ドルくらいの売り上げになるそうですから、利益になりますから、その利益を林道開発に使うわけです。そういう意味で、いま木材の輸入制限で、ソ連から——ソ連の林道をつくると同時に——ナホトカ港その他の港から日本に持ってくるのですが、港の整備が悪いので、港の改修を日本がしてやる。そうして必要な生産財も売るけれども消費財も売ってもうけさしてやって、そうしてその資金をつくらしてやるということになって、この方面の貿易を拡張しております。
中共問題ですが、中共のほうには、普通の安いレーヨンとかというものがうんと出ております。日本では中共との間の政治問題がむずかしいものですから、私どもはそのはね返りを受けておりますが、一本でも使ってくれますと七億ポンド出るわけです。この潜在需要はたいへんなものですから。私どもはガーメント、二次製品、福島あたりでやっているのがほとんどソ連に出ております。ですからソ連、中共というものをこれからほんとうに考えないと、日本の繊維産業というものはむずかしいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/19
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020・阿具根登
○阿具根登君 ちょっといまの質問に関連して一言。いまの御説明聞いておりますと、日本の二次製品がソ連にいった場合は十七倍で売れる、こういう話聞いて、ちょっといまけげんな気がしたのですが、日本の二次製品は格別安く外国にいっておるんですか。大体輸出品は内地よりも安いことは知れわたっておるんですが、そんな気はしないんですがね、ぼくら見てみて。そうすると、よほど安くソ連にやっておられるのか、十七倍というのが、どうもぼくはぴんとこないので、ちょっと教えていただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/20
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021・宮崎輝
○参考人(宮崎輝君) これは十倍ないし十七倍と申し上げましたが、ソ連に売っている商品が必ずしも安いものじゃないんですよ。御承知のようにあの共産圏の国には関税がないでしょう、関税というのがないわけです。それから大衆に売っているものはものすごく高いんですよ。たとえばセーターが一万円、二万円するわけです。たとえば川本でわれわれがデパートで買うものの何倍か高いわけです。したがって一カ月の月給じゃ買えぬわけです。彼らは何ヵ月かの月給をためて、やっと一枚買うというわけです。ソ連の人たちの衣料品に対する価値は非常に高いわけです。日本からおみやげを差し上げる場合、衣料品が一番喜ばれる。したがって、これを何年も洗って着るわけです。それで、たとえばアメリカに売ります場合は、ウォッシュ・アンド・ウエア、一回きりで着捨てる、あるいはドライクリーニングしかやらぬ。ソ連の人たちは何回も着ます、大事なものですから。したがって、ソ連向けのものは特殊なものをつくらないと洗濯に耐えない、こういうものを売っているわけです。現実に十倍ないし十七倍に売られていることは事実です。一時ソ連は非常に衣料が足りなかった。このごろはやっと自由になりましたが、女のもので……。男の人は、ソ連に行かれるとわかりますが、ワイシャツなんかも、ほとんど洗濯を何回もしてのりのついたものを着ておられまして、これが現実であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/21
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022・野沢久雄
○参考人(野沢久雄君) 現在の特繊法の中に機械メーカーが入っていないのじゃないかという御質問があったわけでございますが、私、実は法律の専門家じゃございませんので、法律の中に、いまの特繊法の中に入れていいのか悪いのかという判断はできないのでございますが、私どもは常時機械メーカーとは密接な連絡をしております。その際には通産省のほうからも、繊維局も当然でございますが、重工業局の責任者も出ていただいて、常時密接な連絡を持って現在運営しております。私どもがいろいろ構造改革について、繊維業界のお世話になっておりますので、同様に、繊維業界の育成につきましても、法の形態はどうでもよろしいのですが、十二分に御指導いただきますることをお願い申し上げたいと思います。
それから次に、産地の中でまだ構造改革をやってない産地があるじゃないかというお話でございますが、私どものほうでは、生産のシェアから申しますると、八割以上の産地が現在構革を現に実施をしております。大部分の産地がやっておるということでございます。なお、残余の産地につきましても、現在そのような指導をしておるわけでございますが、なお構革を特繊法でやっておらない産地でも、近代化資金の活用なりでもって構造改革に邁進をしておるというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/22
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023・安井睦美
○参考人(安井睦美君) 繊維機械メーカーの問題につきましては、野沢さんからお話のとおりでございまして、私は一つの刑の考え方から申しますと、われわれ業界あたりの団体といたしましては、機械メーカーとしょっちゅう連絡をとりまして、そして新しい機械の開発、生産についていろいろお話をしたわけですが、現実に国の予算等で全体計画で見れば一千二百八十億からのビルド資金が出ます。これはまず第一に機械メーカーのほうに入るわけでございます。まず第一番に恩恵を受けているのは機械メーカー、したがいまして現状といたしまして、私、石川県におりますが、石川県は絹織機の大部分の産地でございますが、今度の織布業の構造改善事業のおかげで、県内の繊維機器メーカーは非常に潤っているのが実情でございます。法律的なことは別といたしまして、実際問題としまして、私どものビルド資金、国からのビルド資金は、まず機械メーカーのほうにいっている。しかも安定した受注を受けておるというのが実情でございまして、そうしたこともあわせまして、また政府の御指導のもとにおきまして、われわれ業界と密接な連絡において新しい機械の開発その他に努力をされておるのでございます。
それからもう一つの問題としまして、産地でまだ今度の構造改善をやらぬ産地があるのじゃないかというお話でございますが、白絹のほうでは、大体七県十産地がすでに構革を実施いたしております。もうすでにそれだけでシェアからいきますと七〇%以上もこえております。そのほかにたとえば丹後、西陣のような産地、それは純内地向け織物の産地、特殊な産地でございますが、いろいろ計画しておりますが、この特繊法に基づきます構革以外に、いま綿工連のほうからも御指摘のように、取引の改善とか商品、設備の開発という構造改善の大きな問題、市場開拓、これらは別な形でわれわれ連合会といたしまして各産地連携のもとにおいて強力に進めております。またビルドにつきましても、国会の先生方の御努力による例の高度化資金、あるいは近代化資金等によりまして、着実に実施しておりますので、御了承いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/23
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024・大矢正
○大矢正君 間もなく大臣が見えられると思いますので、輸入制限にからむ問題、その他基本的な問題は大臣が来てからお尋ねをすることといたしまして、紡績協会にまずお伺いをいたしたいと思うのでありますが、私も繊維新法制定の当時には、この委員会で主体になってやった一人ですし、新々法もそうでありますが、先ほどおっしゃられたように、近代化の促進、規模の適正化、それから過剰設備の廃棄という三本の柱が当時あったことは間違いのないことで、今日でもなおそれが柱でありましょう、そこで、そういうことは、一つには国際競争力を高めるということもありますが、同時に、個々の企業が持つ力をいかにして大きくするか、強くするかということもあったのではないかと思うのであります。御了承のとおり、当時は非常に多くの過剰紡機をかかえて?急に過剰紡機を処理しなければならぬというようなせっぱ詰まった状況の中で、特にまた価格が思わしくないというようなことで、経営それ自身も非常に不安定であったということもありましたものですから、法律的な措置によって今日のような状態になっていると思います。そこで、先ほど言われた中では、廃棄、規模の適正化、あるいは設備の近代化等によって生産性が上がった。そのことは裏を返して言うと、コストが下がったというようなお話は、ある意味においてそのとおり実現もされているものと思われますが、そういうものが個々の経営形態として考えてみた場合に、どういう状態になってはね返っているのか。そういうものの結果というものが、必ずそれだけの効果というものを、産業全体という大きな視野だけではなしに、個々の企業として見た場合も、生かされてきているかどうかという問題も一つあると思いますので、その点についてひとつお答えいただきたいと思うわけであります。
それからいま一つは、最近の糸の需給状況から判断をして、はたして採算ベースにあるのかどうか。そうしてまたもう一つ、設備近代化その他をおやりになって、平均的なコストというものはどの程度の水準にまで下がったのか。まあ私ども、過去においては四十番手で百九十円ぐらいという話が当時あったのですが、それからもう三、四年を経過いたしております。したがって、生産性の向上その他によってコスト面でどういう影響があらおれているかということをお答えをいただきたいと思います。
それから化繊協会のほうにお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、対日輪人制限の問題はあとから質問いたすこととして、私は化繊協会がかかえる悩みというのは、もう一つあるのではないか。それは対日輸入制限の問題は、なるほど市場の確保という問題ではありますが、協会それ自身がかかえる設備問題をどのように今後調整をされようとするのかということが問題点じゃないかという気がするわけでありますが、しろうとの私がこういうことを申し上げることはまことにおこがましい限りではありまするが、最近の新聞その他の報ずるところによりますと、設備がわが国の場合非常に小さい。したがって、そういう面で将来外国との間の競争が寒質的にできなくなるような状態になりはしないか。そういう意味ではむしろこの際、官民協調の懇談会形式による設備の調整というものを打ち破って、各企業の自主性に設備をゆだねた大型化をはかることが将来の国際競争力を増す道ではないかという御意見が化繊協会の内部にはおありのように私承っております。これはこれからの化繊協会のあり方としてもかなり私は重要な問題ではないかと思うので、その点に対する会長のお答えをこの際お伺いをいたしたい。まず第一に、二点お二方に質問をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/24
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025・有田円二
○参考人(有田円二君) 先ほどおっしゃいましたとおり、構造改善ということは、マクロで見ますと日本の国際競争力の向上ということで、個々の企業にとりましても採算を改善をしまして、企業の体質を改善せよ、そうして近代化できるようにせよということで、おっしゃるとおりであったわけであります。そこで先ほど申しましたように、いろいろと近代化を進めました。進めましたけれども、これも企業のいままで持っております力というものがございます。非常に進んだ会社もあれば必ずしも十分に進んでいない会社もある。したがって、これから先、構造改善が進み、自由競争をするということになりますと、企業間の格差というものが当然出てまいります。それからコストと、なるほど先ほど申しましたように生産性は平均して二割上がっておりますので、コストも確かにその面では下がったということは言えると思うのであります。おっしゃいましたように、その当時四十番手であのころは百九十円というようなコストでございました。それを何とか百七十円でもいけるようにというのが構造改善の目標だった。われわれもそういう目標で進めております。したがって、近代化をうまくやった会社では、ほぼその目標は達しておると思います。けれども、これは個々の会社の問題でも、なかなかうまくいっている会社もございますし必ずしも十分にいっていない会社もございます。したがって、おっしゃいました今日の需給状況、今日の札場から判断してどうなっておるかということになりますと、四十番手百八十円という相場でございますと、まあ構造改善を非常にうまくやっている会社はどうにかいけるだろう。おくれている会社は非常に苦しい。いままでコストを切り下げたために綿代が高くなったにもかかわらずどうにかやってきたわけですけれども、三十番手百四十円とか百三十円、二十番手百二十円台というような相場になりますと、これはいままで程度の近代化ではなかなかこれは吸収できていかぬと思う。若干その綿がだぶつきまして綿が下がったというようなことでカバーしておる面はございますけれども、いまのような相場では、まだまだなかなかむずかしいと思います。そういうことで、ますますもっと生産性を向上してコストを下げていきたいと思っております。同時にまた、労働力の不足ということも、御承知のように非常に深刻でございます。それから賃金の上昇ということ、その結果として毎年これもおおむね一三%ぐらい上がってきた。それから募集費もだんだん上がっております。そういうものを何とかカバーしていきたいというふうに考えております。したがいまして、近代化ということは幾らやりましてもなかなか十分というわけにはまいりません。大いに努力したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/25
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026・宮崎輝
○参考人(宮崎輝君) ただいまの協調懇の問題についてお答えさしていただきたいと思いますが、御存じのように協調懇と申しましてもいろいろ意見が出ておりますが、よく新聞に出ておりますのは、どちらかといえば自信のあるところですね。自分でどんどん増産して販売ができるんだという自信のあるところ、それから後発で、これからやろうとしているのに非常に縛られて採算点まで持っていけない、非常に時間がかかると、こういう人たちのクレームがよく新聞に出ておる。あの協調懇のメリットを受けている人は黙っておるわけです。これは世間でもそうですが、大体言う人は不平のある人が言うので、不平のない人は黙っている。これをひとつ御了解いただきたいということ。
それから第二は、非常に好況と不況の場合で問題が違うんだといま言われた。それほど悪くないんです。悪くないから強気なんですね。ですから強気で大いに生産をふやしたらいいじゃないか、ふやせるところはふやしたらいいじゃないか。全くそのとおりなんですが、そういう議論が出ますけれども、一たび混乱を起こしますと、かつてのナイロンのときのように混乱をして……。ナイロンは十五トンずつ増産をし、アクリルは二十トンということになった。これはいいことばかりないんで、悪いこともあるんだと。悪いときはどうするのかということですね。ですから、たとえばおっしゃるとおり何十トンもできるんですよ。やろうと思えばできるんです。そのときの問題は、販売力があるかどうかということが一つ。販売力がなければたたき込む。そうしたらいわゆる市場撹乱で輸入規制の大きな材料にされるということになりますから、繊維産業など輸出依存度の非常に高い産業は、国際的な影響も考えながら、やはり生産を押えていかなければならぬ、こういうことが一つありますね。
それから第三は、どんどんやってもいいのだということになったら値段は下がる。下がったら売れない。もっと下がるかもしれぬということから買い控えをいたしまして、かえって売れなくなる。ですから協調懇の発表の場合でも非常な配慮をしておるんですよ、市場に及ぼす影響ということを。ですからそういうようないろんなことがありますのと、もう一つの問題は、私はよく知っておりますから何ですけれども、おっしゃる人は大体私みたいな社長が言うわけです。強気の議論を言うわけです。第一線の常務クラスの人が、協調懇を運営している。この人たちは全然逆なことをしておるというわけで、私が社長で大いに自由化をやらにゃならぬと言いますと、下のほうでは、自分の会社の利益を考えて、後発はなるべくおそく入るようにするということをやっているわけです。後発はまた先発が伸びないようにということをやっておるわけです。そこを私はタッチしませんよ。協会長は、まつ正面から対立をするのに出ませんけれども。ですから、そういういろんなことがありまして、外面と実際とは違うんだいうこと。これは政治も御一緒でしょうがね。ですからその辺が非常に大事でありまして、なるほどよその国は大いに大増産やるじゃないか、それはけっこうですよ。ところが大増高やるということにおける好況、不況ということを考えてみますと、先発は後発をなるべく入りにくいようにしよう、後発は先発が急に伸びないようにしようという、両方不満があって、そういうところに協調懇が成り立っているわけですね。これは団体交渉でも同じですよ。両方ともに不満足のところに、ちょうど中労委のあっせん案が出るようなものですからね。その辺のところをよく考えまして、協調懇も、いよいよ混乱したときに——通産省の方ここにおられるかどうか知りませんが——通産省にかけ込んで、カルテルやらしてくれ、操短やらしてくれというようないくじのないことならやっちゃいけませんよ。つぶれるまであくまでもやるんだ、つぶれたら銀行が困るわけですが、銀行が救済せぬでも、つぶれるまでというような……。自由競争をほんとにやるんでしたら、社会政策でなくても中小企業でも同じでしょう。そういう方針貫くなら貫くでけっこうですと言っている。しかしそうはいかぬでしょう。中小企業対策というものも打ち出されるでしょうというようなことが業界にもあるんだから、あまり強気なことは言わないで……。これはできるんです、方法はあるんです。それなもうちょっと研究した上で、大きなメリットを押しなさらんで小さな不平を緩和していったらいいんじゃないかということで、私は案を持っておるのですが、きょうは言いません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/26
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027・大矢正
○大矢正君 あと三点だけお尋ねしておきますが、もう一回紡協にお尋ねしたいと思うのですが、繊維新法は御存じのとおり来年の六月三十日をもって失効することになっておるのでありますが、もしこのまままいりますると、来年の六月三十日以降に紡機の設置の制限はなくなりますから、言うならば自由な競争ということになりますね。そこで、先ほどあなたの御説明の中に、いままでの合理化、近代化、その他スクラップ等によって、企業別にミクロ的に見ると、それなりのコスト効果のあがったところもあるし、またあがらぬところもあるということであります。法律は来年の六月ですから、一年しかないという状態でありますね。そこで、はたしてこれから一年の間にそういう業界内部におけるアンバランスというものがある程度平準化して、東南アジアその他低開発国からの追い上げの激しい段階の中で、はたしてたえ得る体制ができ得るのかどうか。あるいはまた、紡績というのはカルテルの連続ですよね、そういうことをやらないで、なおかつ設置制限が解かれても、それにたえ得る体制がはたしてでき得るかどうかという不安が実は残るわけですよ。一年後のことだから、一年間たってから私ども意見を申し上げたいということであればいたし方ないことでありますが、しかし一年の期間というのはほんのわずかなものであります。私のそう考える懸念というものをどう感じ取っておられるか、まずお答え願いたい。
それから繊維局長にお尋ねをいたしますが、先ほど野沢参考人からもお話がありましたとおり、昨年度の中小企業振興事業団を通しての織布の構改に対しての融資が使い残しが出た、事実これはそのとおりですね。その最大の理由とするところは、国産の新鋭織機の開発製造がおくれて、そのために構改が進まなかったというお話、私も以前からそういう話を聞いておるのでありますが、本年度はそういう新鋭機械というものが十分に間に合い得る体制ができるのかどうかという点であります。
それから最後に通産大臣にお尋ねをいたしたいと思います。お尋ねというよりは、この際、決意のほどをお聞かせいただきたいと思いますることは、後刻各会派共同提案による決議もありますが、アメリカの毛、化、合繊の輸入制限問題が大きな政治課題となっていることは言うまでもないところであります。それがどういう形で行なわれるのか。自主規制と申しましても、その自主規制とは一体どのようなものなのかということも今日ではまだはかり知れないものもありますが、ともあれ自由な貿易を標傍するわが国あるいはアメリカにおいて、そういうような態度がとられることはまことに遺憾なことでありまするし、先ほど協会の会長も、どうも日本人は妥協性が強くて、自分でかってにほかの人が想像もしない時点で妥協してしまうということで、国際協調をある意味においては乱しているという話もありますが、ある意味においてはその発言は正しい面もあるのではないかと思うのであります。よって通産大臣は、いまアメリカが考えておりまする繊維製品の輸入制限の方向に対して、どの程度の強い決意をもって臨まれようといたしておるのか、決意をお聞かせいただきたいと思います。以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/27
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028・有田円二
○参考人(有田円二君) ただいまの繊維新法に関して答えいたします。これはなるほど来年の六月末で失効するということになっております。それまでに構造改善というものがうまく進んで、全部の紡績業者が完全に国際的な、内外ともに自由競争にたえていくことができるかどうかという御質問でございますが、これは非常に重大な問題だと思います。しかし、これは正直に申しまして、あと一年間で全部の業者が完全に国際競争にたえていくという態勢ができるかどうかということになりますと、必ずしも自信はないということになります。たえていく企業もございますし、たえていけない企業もある。しかし、いままでの例から見ましても、たえていけるかいけないかということは非常に微妙な問題でありまして、従来の不況の場合でも、これはわれわれ側から考えまして、非常に困るだろう、この企業はもうだめだろうと思われるような企業もたえていくということもありますので、これは非常に大事な問題でありまして、大紡績の考え方でいくわけにはいきません。中小紡の考え方も当然考えなければなりません。あるいは労働者の側からの考え方も十分考えていかなければならないと思っておりますけれども、必ずしも一年でもってそれが達成できるかどうかということになりますと、私は疑問だと思っております、正直に申しまして。それでは、そういう場合に繊維新法による設備制限というものがなくなっていくということをどうするのかということが問題になろうと思います。これはいままでの構造改善法ができましたときに、四十五年六月末でもって自由競争にしようという考えで始まったと思うのであります。来年の六月末にどういう状態になるか、これは客観情勢のいかんによるわけでございますが、いまのところで考えまして、構造改善法ができました当時の客観情勢と、来年の六月末の客観情勢と、そう大きく違うことはわれわれないだろうと思っております。したがって、これは必ずしも十分な態勢はとれないだろうとは思いますけれども、今日程度のことだったら覚悟しなければならぬじゃないか。客観情勢に大きな変化というものが、いまのところではないように思うわけであります。これが正直なところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/28
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029・高橋淑郎
○政府委員(高橋淑郎君) 織布業の構造改善に関します四十四年度の予算は、事業を遂行いたしますに不可欠なもの、必要最小限ぎりぎりの予算で組んでいただいております。と申しますのは、御指摘のように四十三年度において織機の開発のおくれということが一つの大きな原因になりまして、使い残しがございまして、四十四年度においてはそういうことのないようにということで、予算の面においても未消化のないことを第一に心がけて、各組合、各連合会の方々とよく御相談をして、いま計画を練っておるということでございます。
それから、それでは開発織機が十分四十四年度中に間に合うか、この点につきましては、実はいま試作の段階から量産化の段階に入りつつある。ただし、これはおそらくは本年度の、しかも後半になるのではないかと思われますので、これはやはり四十四年度あるいはそれからあとの年度に織機のビルドというものが相当程度集中してくるのではないか。ただし、その前工程としての準備段階の工程あるいは仕上げの工程、そういうところの設備のビルドということによる省力化の効果というものは非常に大きいものがございますから、その与えられた予算を有効に活用いたしまして、結局振り返ってみた場合に、この計画年次の間にバランスのとれた構造改善がなされたというような姿にぜひ持っていきたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/29
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030・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) アメリカ側の保護主義的な傾向につきましては、新政権ができる前からいろいろうわさされておったのでございますが、ただいままで公式の具体的な御提案はないのであります。ただ、来月の十日にスタンズ長官が有能な随員を連れて東京に参られるということでございます。公式のふれ込みといたしましては、当面の日米間の経済関係について話し合いをしたいというふれ込みでございます。しかし、申すまでもなく繊維、合繊等の自主規制問題が取り上げられることは明らかであろうと思います。したがいまして、私どもとしてはまず先方の言い分を聞かなければいかぬと思いますが、ただいままでのところ、大矢委員が御指摘のとおり、どういう具体的な構想を向こうが持っておるのかさっぱりわかりません。それのみならず、一体この問題を個別のアイソレートした問題として取り上げられるのか、それとも日米経済関係全体のパッケ−ジとして考えておるのか、そのあたりもまだわからないのであります。しかしいずれにいたしましても、アメリカの繊維業界が最近非常に好調でございますから、ガット体制の指導的地位を持っておるアメリカが、何で伝えられるようなことについて考えなければならないかということについて、全くどうも理解に苦しむわけでございます。そのあたり、どのようなお考えを持っているかよく聞いてみなければわからぬと思っておりますが、それに引きかえまして、わが国の繊維業界、なかなか多事多難でございます。そういうわけで、とにかく最近の輸出量を見てみましても、合繊というのはわが国の繊維産業としましては、一つの戦略的なにない手でもあるわけでございまして、業界全体が非常な関心を持たれておることは当然のことばかりでなく、政府全体重大な関心を持っておるばかりでなく、さらに国会におかれましても各政党、与党、野党を問わず非常な御心配をちょうだいしておるわけでございまして、私といたしましては皆さまの御声援のもとに、最善を尽くしまして、もしそのような意味の輸入制限的な企てというようなものが具体的に御提案になるというようなことがございますならば、それらの断念を強く求めなければならない、そう決意をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/30
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031・八木一郎
○委員長(八木一郎君) 参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。
参考人各位には、御多用中長時間にわたりまして御出席いただき、まことにありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/31
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032・八木一郎
○委員長(八木一郎君) この際、産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題とし、委員長から、米国の繊維製品輸入制限阻止に関する決議案を提案いたします。
案文を朗読いたします。
米国の繊維製品輸入制限阻止に関する決議(案)
最近、米国においては、繊維製品の輸入を制限するため、新たに毛、化合繊製品等を対象とする国際協定により各国に輸出自主規制を求める動きが活撥になつているが、かかる制限は自由な国際貿易の発展をはばみ、国際協調を著しく阻害するものである。殊にわが国としては最大の繊維製品輸出市場の縮小となり、目下構造改善を推進しつつある維維工業に深刻なる打撃を与えるものである。
よつて政府は、米国政府に対しかかる輸入制限を断念するよう強く要請すべきである。
右決議する。
それではおはかりいたします。
米国の繊維製品輸入制限阻止に関する決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/32
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033・八木一郎
○委員長(八木一郎君) 全会一致と認めます。
よって本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、大平通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。大平通商産業大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/33
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034・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) ただいまの御決議の趣旨を体しまして、目的達成のために最善を尽くす決意でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/34
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035・八木一郎
○委員長(八木一郎君) それでは次回は十七日午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106114461X01019690415/35
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