1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十四年六月二十日(金曜日)
午後一時五十三分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 任田 新治君
理 事
宮崎 正雄君
達田 龍彦君
矢山 有作君
藤原 房雄君
委 員
亀井 善彰君
河口 陽一君
小枝 一雄君
鈴木 省吾君
田口長治郎君
温水 三郎君
森 八三一君
和田 鶴一君
足鹿 覺君
杉原 一雄君
武内 五郎君
鶴園 哲夫君
中村 波男君
沢田 実君
向井 長年君
河田 賢治君
政府委員
農林省農政局長 池田 俊也君
農林省農地局長 中野 和仁君
裏務局側
常任委員会専門
員 宮出 秀雄君
参考人
全国農業会議所
専務理事 池田 斉君
全日本農民組合
大阪府連合会書
記長 梅原 昭君
全国町村会理事 川野 平治君
神奈川県農政部
総括主幹 神戸 正君
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本日の会議に付した案件
○農業振興地域の整備に関する法律案(第五十八
回国会内閣提出、第六十一回国会衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/0
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001・任田新治
○委員長(任田新治君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
農業振興地域の整備に関する法律案を議題といたします。
参考人として、全国農業会議所専務理事池田斉君、全日本農民組合大阪府連合会書記長梅原昭君、全国町村会理事川野平治君、神奈川県農政部総括主幹神戸正君の御出席をいただいております。
この際、参考人の方に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席いただきまして厚く御礼を申し上げます。参考人におかれましては、忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願い申し上げます。
なお、議事の順序について申し上げます。
初めに、池田参考人、梅原参考人、川野参考人、神戸参考人の順序で御意見をお述べいただき、次いで委員から御質疑を申し上げるという順序で議事を進めてまいります。
それでは、池田参考人からまず御意見をお願い申し上げます。池田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/1
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002・池田斉
○参考人(池田斉君) 本日は、農業振興地域の整備に関する法律の当委員会の審議と関連いたしまして、私ども、これに深い関心を持っておる立場から、参考人として意見を申し上げる機会を得ましたことをまずもってお礼を申し上げたいと存じます。
私どもの立場というのもおかしいわけでございますが、私、先ほど御紹介にあずかりましたように、農業会議所というところにおります関係もございまして、かつて四十二年に農林大臣から農業構造改善の促進に関する諮問を受けまして、九月に実は答申をいたしておるわけでございます。
この答申の中におきまして、今日のようなわが国の農業を取り巻くいろいろの情勢の中で、何と申しましても一つ欠けておる問題は、農業なりほかの産業あるいは都市、そういうものを通じまして、この国土を全体としてどういうふうに合理的に利用区分をして、それぞれの産業の立地というものをもう少しはっきりさすべきではないかと、こういう視点から、特に農業の地域につきましても、農用地として保全すべきところは十分これを確保して、そういう地域に農業施策というものを積極的に重点的に強化する、こういう形で、言うなれば今日提案をされておりますような地域指定を農業においてもいたしまして、土地の合理的な活用ということを農業施策の重点化と関連してやるべきである、こういう立場からの答申をいたしておることは、あるいは御案内かと存じます。
そういう意味から申し上げまして、われわれはこの法案にもちろん賛成でございます。したがいまして、一日も早くひとつ結論的には成立をさせていただきたい。特にこのことを——御案内のように都市計画法が生まれまして、そうしてこの六月十四日から施行されておるわけでございます。そういう面から申しますと、いわゆる都市政策の側からの土地利用区分と申しますか、これがすでに前面に押し出てきておるわけでございまして、これとかみ合う姿におきましては、どうしても一日も早く農政の面からこれに対応する立法措置、これをどうしてもひとつ急いでいただかなければならぬ、こういう観点を含めまして、今日段階におきましていろいろ内容的には問題があると思いますけれども、結論的にはひとつこれの成立を、一日もひとつ早くしていただきたいというふうに考えるわけでございます。
しかし、そういう前提に立ちましても、やはりこの法律を実施運用する場合には、いろいろな問題があるわけでございまして、そういう面から二、三、ひとつ内容につきましてお願いを申し上げ、御審議の参考にいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
申すまでもなく、いろいろな施策はありますけれども、現在わが国におきましては、総体としてやはり地価政策が確立しておらぬ、こういうところにいろいろな問題のむずかしさの根底があると思います。特に、土地利用区分をそれぞれいたしますといたしましても、土地というものが個人の私有財産であり、しかも、その財産価値というものが、いま申し上げましたように、地価対策が確立しておらぬということで、これに対する中期なり長期の財産価値変化と、これに一面非常に気持ちが動揺し、また、ある意味では財産を守るだけではなくて、その価値の増大ということを念願すると、こういう側面が今日あらゆる土地問題について付随しておると、こういうことがあるわけでございまして、そういう意味におきましては、この法案を扱う場合におきましても、特に都市計画法との関連もあるわけでございまして、十分運用上について以下申し上げるような点を御検計をお願いいたしたい。
で、法律はきわめて簡単な法律でございますが、第八条に、農業振興地域の整備計画を立てるという条項がございます。これにつきまして特に私ども農業会議所なり、市町村の農業委員会の立場からひとつお願いを申し上げておきたいのは、この計画を策定するのは市町村に相なっております。そのことは、結論的には「市町村長が」ということになると思いますけれども、たてまえは市町村に相なっております。そこで、この計画を策定する場合には、町村の中の関係機関あるいは農業団体、そういうところの意見をひとつ十分反映するような具体的な措置をお考えを願いたい。これは、計画を立てる場合に、第八条にいろいろな項目が並べられておりますが、それらはいま申し上げましたような農業者の意見の反映ということを十分はかる必要があり、そこにある各機関なり団体の意見を含めましてひとつお願いをいたしたい。
特にその中で問題になるのは、土地に関する一つの問題であります。第八条の第二項の第一号にありますように、農用地として利用すべき土地の区域、それのまた利用計画と、いわゆる土地利用計画をどう立てるかという問題がございます。それから第八条の二項の三号に、農地保有の合理化計画、こういうものがございます。これらにつきましては従来農業委員会が土地問題につきましては法律的な権限に基づいていろいろ今日行なっておることは御承知のとおりでありまして、土地の状態なり今後の利用について、基盤資料その他を含めまして具体的な仕事とのタッチにおきまして、農民の立場からこの問題を承知しておるのは農業委員会であると思います。したがいまして、市町村がこれを立てるわけでございますけれども、私どもは、少なくともこの八条二項の一号あるいは八条二項の三号、こういう問題につきましては、できますればあらかじめ農業委員会に土地利用計画あるいはそれの保有の合理化というような問題につきまして計画案を作成させまして、それを十分尊重して全体の振興計画の土地問題に対する位置づけと、こういうことをぜひお願いをいたしたい。
そういうことをやりませんと、やはり農地行政の結果的には二元化というような問題につながるのではないかというふうに考えるわけでございます。特に、一番大事なのは、やはり土地利用計画というものをどう立てるかということだと思いますし、これが法律の中では必ずしも明確に相なっておりません。したがいまして、最終的に市町村が立てるわけでございますが、その機関としての農業委員会の役割りというものをひとつ機能的にも発揮する措置を十分考えていただきたいというのが第一点でございます。
それから、言うまでもなくこの農業振興地域を指定いたしますと、これは逆にそういう地域は、先ほど申しましたように、財産的な地価の値上がりを期待するというような問題に対しましては、農業を通しての収益をあげるという場面が中心になり、そっちのほうはある程度チェックをするという問題に当然なります。法律の中にも、転用はきびしくこれを制限するということに相なっております。したがいまして、それに対応するだけの、農業をほんとうにその利用計画に基づいて精進をするという農業者のその意欲を十分ささえるだけの農政面なり、あるいは財政面での十分な措置と、できるだけの優遇措置をそこに行なうということがなければ、これは先ほど申しましたように、地価政策のない今日の段階の農民の気持ちの中におきまして、振興地域に積極的に入って将来とも農業を精進していこうと、こういう問題の意思にそぐわないような現象が出る危険がございます。
そういう面では、法律の中でもそういう問題がある程度書かれておりますけれども、必ずしもこれは十分な形のことが約束されておらないような感じもいたします。農政をこの地域に集中をして、そしてできるだけひとつ、たとえば基盤整備等につきましては、この地域の補助率は従来の補助率にとらわれないで、もっと大幅な引き上げをやるとか、あるいは固定資産税等につきましても、そういう地域につきましては、ある程度優遇措置をとるとか、また第二次の構造改善事業が、農林省の考え方ではこれが通りますと、これと合わせた形で実施をいたしたいというような考え方もございますけれども、この第二次の構造改善事業そのものにつきましても、もっと施策の充実をはかるというような問題を十分にひとつやっていただきたい、こういうことでございます。
それから一方、市町村の——きょうは町村会の代表もおられますので当然触れると思いますけれども、農業振興地域に指定をされますと、そういう地域でござますので、やはり工場の誘致でございますとか、その他いろいろな町村の財政を緩和しようというような方向での問題が事実上チェックをされる、こういうことで、町村の財政につきましてはむしろマイナスの要素が出てくる可能性さえあるわけでございます。したがいまして、そういうところにつきましては、むしろ地方交付税交付金をふやすとか、あるいは起債等につきましても十分の措置をとるとかというようなことで、市町村財政の確立に対しまして十全な措置をとっていただきませんと、市町村長の立場になりますと、そういうプラス、マイナスの問題が出てくるわけで、その辺も十分にお考えを願いたい。
それからその次の問題は、第三十一条の問題でございます。これは生活環境の整備の問題でございますが、農林省の初めの原案はかなり実体的な姿において、この二十一条を具体的にひとつ法律事項としてやると、こういう姿勢でございましたけれども、この点が法案が出るまでの過程におきまして、各省の折衝の中におきまして、何だか宣言立法的なこれは条項に相なっております。農業振興地域として指定する場合に、やはり大事な問題は、農業の地域として将来にそれがつながるわけでございまして、今日、都市生活その他との関連におきまして一番問題は、やはり農村の生活環境の整備の問題がおくれておる、このことは、農業振興の問題とあわせて十分ひとつ、二十一条は宣言立法的なものでございますけれども、具体的にはこの面の実施面におきまして関係行政機関の連係を強化して、名実ともに、この二十一条は宣言立法ではなくて実体的な面でのこれが発動になる、こういう方向への運用をぜひお願いをいたしたいというふうに考えるわけでございます。
それからなお、農地の移動に対する税制上の優遇措置をぜひお願いをいたしたい。これは二十三条にいろいろ書かれておりますが、具体的な措置はこれからのように聞いております。特に譲渡所得税につきましては、御案内のように、現在百万ということに控除料が本年から改正されておりますけれども、私どもは、土地収用法等ですでに行なわれておりますように、少なくとも三百万以上の特別控除をこの農業振興地域の中の農地の移動については行なうべきではないかというふうに考えておりますので、明年度の税制改正におきましてはその点の実現をぜひお願いをいたしたい。
それから十八条の規定で、農業委員会がいろいろ土地のあっせんを行ない、それが流動化を通しまして規模拡大につながるような、そういう一つの考え方が出ております。これにつきましては、十分ひとつ農業委員会を指導して、法律が通りましたらやりたいと思いますが、これに対しましてのいろいろな税法上の軽減措置があわせて二十三条に書かれております。しかし、不動産取得税、いわゆるその売ったほうに対しましての特別控除はいろいろ書かれておりますが、買ったほうについては、これは不動産取得税の軽減問題は触れておりません。これは地方税に相なりますので、いろいろ問題があるかと思いますが、ひとつこの点につきましても軽減措置をぜひお考えを願いたいというふうに考えるわけでございます。税金その他の面におきましていろいろそういう特例措置をお考えを願いたい。
それから最後に、都市計画法との関係につきまして一言触れてみたいと思うわけでございます。どうも都市計画法が先行してすでに法律が出ておると、しかも建設省の当初の考え方が、実施面におきましては、われわれが初め承知をいたしておりましたものを飛び越えまして、すみやかに四十四年度内にほとんど全体に近い線について線引き作業を終わりたいと、で、四十四年度は、聞きますところによりますと七百三十三と、こういうことを聞いております。四十五年は百二十五と、当初は四百ぐらいを初年度やるということでございましたが、このテンポが非常に狂ってきております。そういう問題との対応におきましては、この地域振興法が私どもの考え方では、都市計画法がいろいろ出てまいりまして、この市街化区域と調整区域の線引きをすると、この調整区域を農業地域としてどう守るかという問題とこの地域振興法がかみ合ってくると、こういう問題をぜひひとつ考えてみなければならない問題ではないかというふうに考えておるわけでございますが、本年度七百三十三やりますと、農業地域振興法の予算上の指定は本年度は四百と、もう全部かりに振興地域にかみ合わしましても足りないと、こういう問題につながるわけでございます。その辺の実施運営のズレがございますので、そういう面につきましては、ひとつ四十五年度の予算におきましては十分そういうう問題にすみやかに対応できるようなこの地域振興法の指定の予算措置等についても考えていただかないと、どうも農業振興地域というものが都市計画のほうからも疎外をされ、また農業政策の面からも疎外をされ、谷間に取り残される、しかもその地域は農地転用だけは農業振興地域と同じであるというようなおかしな問題になる危険がございます。したがって、それは片一方の法律が早く通って先行すると、地域振興法があとから追っていると、しかも本年度の予算措置がズレがあると、こういう問題に関連があるわけでございますので、この点につきましては、四十五年度の予算措置等につきまして十分国会のほうからも政府にひとつ御鞭撻を願いまして、そういう問題がないようにお願いをいたしたいと思うわけでございます。
私はやや個人的な見解でございますけれども、やはり現在の農業地域の問題を考えますと、純農村地域というものは、しばらく時間をかけながらいろいろやってもそれほどの問題はないのではないか。一番問題が多いのは、いわゆる都市計画法の関係におきましてその市街化区域に隣接をする言うならばいわゆる調整地域あるいはそれに近いそういう農村地帯をどうするのか、もう一つやはり過疎地域の問題であろうかと思います。したがって、どうも政府の側におきましていわゆる純農村を大事にするという気持ちはわかりますけれども、当面のタイミングから見ますと、むしろ過疎地域であるとか、あるいは市街化される周辺の農業地域、そういうところにこの農業地域振興法がむしろ先行して指定をされるというような姿での問題がより大事ではないか、こういうことを考えておりますので、その辺は今後の運用の問題との関係もあると思いますけれども、以上そういうことを考えておるわけでございます。
きわめて簡単でございますが、結論はいろいろ運用上の注文を申し上げましたけれども、すみやかにひとつこの法案の成立を念願している立場から申し上げたわけでございまして、どうかよろしくお願いを申し上げたいと思います。御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/2
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003・任田新治
○委員長(任田新治君) ありがとうございました。
次に、梅原参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/3
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004・梅原昭
○参考人(梅原昭君) ただいま池田さんから最後の締めくくりといたしまして、この法律にとって一番大事なのは、都市近郊と過疎地域の問題じゃないか、こういうお話がございまして、私もこれに全く同感でございます。そのような立場から農業と都市計画というものが一体どのような関係にあるのかということを初めに二、三例をあげながら、考えていることを申し上げてみたいと思います。
大阪で八尾市というところがございますけれども、そこに大阪でも有数の植え木を育成する地域がございます。これはかけがえのない植木の育成地帯でありまして、大阪のように農地の転用の多い所であるにもかかわらず、その地域は全く転用がないというような地域でありますけれども、いつの間にか農民の全く知らないでいる間にその地域が宅地造成を目的とする土地区画整理事業の区域の中に組み込まれておったということが最近農民の中で発見されまして騒ぎが起きているわけであります。
さらに別の例をあげてみますと、大阪のようにどんどん都市化してしまっておる所では畜産、とりわけ養鶏のようなものは、町の中ではだんだんむずかしくなってまいりまして、隣近所ににおいの点で迷惑をかけるとか、あるいは鶏の病気が多くなるということで、大阪府であっせんをいたしまして、町の中の養鶏所を山の中に移しまして、いわゆる養鶏団地をつくったと思ったら、間もなくそれに追いかけまして、今度はそこにニュータウンをつくるから、泉北ニュータウンというのをつくるから、せっかく移ってもらったけれども、もう一度御引越しを願えないだろうかということで、いろいろ話が違うじゃないかということがありましたけれども、泣く泣く移転を余儀なくされた、こういうふうな事例がございます。
実は大阪だけの特殊例ではないわけでありまして、先だって茨城県の南のほうにある竜ケ崎というところに参ったわけでございますが、そこでは住宅公団が来るということで農民との間に大きな紛争が起きておりまして、お話を聞いてみますと、その住宅公団が来るというその地域は、昭和四十一年に集約酪農地域として農林省から指定をされている地域でございます。ところが、その後二年間たちまして四十三年になりますと、いま申し上げました住宅公団がやってきて、買収と区画整理方式を組み合わせたニュータウンをつくるのだ、こういうふうなことになりました。もちろんこれが実現をいたしますと酪農などやっておられるものではございません。で、その地域はよそのところと違いまして専業農家も非常に多い。それから近ごろ農家で若い者が少なくなったということが言われておりますけれども、若い優秀な青年がたくさんおる地域でありまして、私が先ほど来申し上げておりますような、これこそまさに農業の振興地域ではなかろうかと、こういうふうに思うところでございます。
こういう優先的に農業振興地域として指定をしなくちゃならないような幾つかのところがどんどんとその都市計画のためにつぶされておるという現状がすでに出ておるわけです。こういうところは守ろうとすれば新しい法律をつくらなくとも十分守れるところだというふうに思っております。したがって守れるところを守っておらないと、こういう状態でありましては、新しい法律をつくってどれだけの効果が新しく出てくるのかという点についてははなはだ疑問を感ぜざるを得ないわけであります。
次に、都市近郊の農業の役割りについて若干申し上げてみたいと思うのですが、大阪というようなところは、あまり知らない方から見ますと、家ばかり立ち並んでいるかのごとく、こうしばしば言われるのでありますけれども、実際には大阪府下の人口七百万ありますけれども、七百万の人口の消費する野菜の四割までは大阪の農民が実は生産をしておるわけです。そういう大阪の農業の中で、常識的に言いますと、大阪の町の中というふうなものは、今度の新都市計画法でもこれは優先的に市街化区域に組み入れられるでしょうし、そういうところでは農業が全然ないだろうというふうに思われがちですけれども、大阪府下の中でも大阪市内が実は一番専業農家の率が高い。しかも非常に収益の高い農家がそこに存在をしておるというふうなのが統計でもすでにあらわれているわけでありまして、こういう農家を、今度のこの農業振興法によりますと、市街化区域というものについてはこれは対象外にするのだという考え方が明瞭に出ておるわけです。必ずしもこの法律だけではないわけでありますけれども、いま申し上げましたように、町の中で、常識的に見れば存在していないと思われるようなところに非常に優秀な農家が多くある。そういう農家を一体どういうふうにしようとするのか。私はこの法律は何らの回答も与えていないと思うのです。
そういうことを申し上げますと、市街化区域についてはいたしかたないのであって、調整区域において農業をまさに守ろうとしているのだというふうな意見がしばしば聞かれるわけでありますけれども、私はこの説明に対しては非常に疑問を持っております。といいますのは、この法案の第四条の第三項に、農業振興地域整備基本方針は、国土総合開発計画、以下国土計画、多くの地方計画との調和が保たれたものでなければならないと、こういうふうな規定がしてあります。で、たくさんの計画が列挙してありますけれども、その中で、私が具体的に知っております近畿圏整備計画との関連について申し上げてみたいと思います。
近畿圏整備計画によりますと、大阪府下の農地の九九%が近郊整備区域という区域に指定をされております。この近郊整備区域というのは一体何かといいますと、近郊の農業として整備する区域ではございません。全く逆でありまして、近畿圏整備法という法律によりますと、「計画的に市街地として整備する必要がある区域を近郊整備区域として指定することができる。」こういうふうに法律は規定をしております。したがいまして、これは計画的に市街地にするところなんだ、そういう地域として大阪府下の九九%の農地は指定をされておるわけであります。したがって、このような近畿圏整備計画との調和が保たれるものでなければならないということは、一体何を意味するのか。大阪府の農地というものはすべて消滅をして、市街地になってよろしいんだということを受け入れることを意味する以外の何ものでもないと思うのであります。大阪府のことだけを申し上げましたけれども、近畿圏整備計画の図面を広げてみればはっきりいたすわけでありますけれども、指定を受けておらないところは山間僻地だけでありまして、やや極端な言い方をいたしますならば、近畿圏整備計画との調和が、もし保たれるならば、近畿地方における農業というものはほとんど消滅をする、消滅を余儀なくさせられる、そういうふうな計画が近畿圏整備計画に盛り込まれているわけであります。
同様のことが首都圏整備計画でもあるわけでありまして、首都圏整備計画がそのまま実施され、それとの調和がもし保たれるものであるならば、関東地方における農業は、しょせんほとんどが消滅をするといってもよかろうかと思います。この法律に規定されております中部圏開発整備計画であるとか、あるいは新産都市の建設基本計画であるとか、その辺のことは私くわしく存じませんので申し上げませんけれども、もし図面を広げて調べてみるならば、私がいま申し上げてるのと同じような結果が出てまいるのではなかろうかというふうに考えるわけであります。そういたしますと、近畿地方の農業を捨て、関東地方の農業を捨て、一体どこで農業を整備しようとするのか。ややもしますと、都市近郊あるいは都市計画ということばが使われる場合に、東京とか大阪とかという大都市の近郊だけの問題である、きわめて特殊な問題であるというふうに考えられがちでありますけれども、いま、政府なり、あるいはそれぞれの地方において作成をされております計画というものは、そういう特殊なものではなくて、非常に広大な地域を含めて計画を立てられているわけであります。しかも、その中では、その計画というものは農業の問題が中心になって計画が立てられているんではなくて、建設省が中心になって、土木建設の立場からだけ計画が立てられているわけであります。そういうものとの調和が保たれなければならないということを前提にしたこの法律というものは、非常に広い意味合いにおける都市近郊農業というものを消滅させる以外の何ものでもないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。そのような意味合いにおきまして、この法律は、農業の振興というのを、建設省が推進をする建設計画に支障のない限りにおいて振興をはかるという、非常につつましやかな構想でありまして、このような消極的な農業振興政策に対しては賛成することができないということを申し上げて、私の意見を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/4
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005・任田新治
○委員長(任田新治君) ありがとうございました。
次に、川野参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/5
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006・川野平治
○参考人(川野平治君) 私は、農振法を、末端の行政を行なっておる町村長の立場から意見を述べたい。
今度の農振法あるいは都市計画法、いずれにしても国土をどう有効利用に活用するかということで、その国土は私どもは国民のものである。現在生きている国民ばかりでなくて、将来の子孫のためにも国土というものは共有物であるという前提に考えている。したがってこの国土を国民生活の上においてどう国民に繁栄をもたらすかという観点から、それぞれの立場でいろいろの計画を立てるのは当然であると思う。まあ現在の国の総合開発を初めとして、いまも話の出た近畿圏、中部圏あるいは首都圏というような計画もできておるし、さらには県においても振興計画が立っておる。町村においてもみずからの町村の繁栄のためには振興計画を立てておる。まさにお花畑に行ってみるがごとくに振興計画は花盛りであると言っても過言でない。
こういう際に末端の行政を行なっておる町村長が当面する大きな問題は、都市計画法といま審議の対象になっておる農業振興地域整備法、この二つであります。いろいろな計画があるけれども、当面町村長が末端の行政を行なう上においてどうしても取り組まなければならない大きな問題が、この二つに現時点においてはしぼられると思う。その中の農振法について私ども町村長が行政を行なう場合に、市は多少違いまするけれども、農政を離れて町村行政はあり得ないとまで直言したいくらい、その農業というものの実態が、常に農政の大きなかさの下に農業というものが行なわれている。
昭和の初めから計算してみましても、あの不況のどん底におるときに経済更生運動を展開した。さらに昭和の中ごろにおいては標準農村運動を展開した。最近は新農村運動が行なわれ、農業基本法ができてからは構造改善運動を展開した。極端に言って私は農業基本法は日本農業の方向を示したということで、構想の問題である。これには当然計画法がなくちゃならぬ。一つの方向を示された農業基本法に対して、できれば農業基本法ができた当時に基本構想の農基法に対して計画法が当然対象にならなければならなかった。しかるにいまの曲がりかどに来ている農業をほんとうに繁栄に導くためには、基本法に対する計画法がどうしても必要だ。それが今日対象になっている農振法だと私は考える。したがっていままでいろいろなことをやったけれども、これは基本計画に対する実施計画である。
戦争当時の農業を見る、いわゆる農村を見る国の方針は、富国強兵という大きな柱で農業の育成をしてきた。終戦後は日本の富を農業の上からあげようとはおそらくだれも考えてない。工業立国になった現在そういうことは考えられないでしょう。さらに軍隊を廃止したいまにおいて、強兵なんということも考えられない。したがって経済的な理由でどうしても農業というものは発展させる一つの方途を考えなくちゃならぬ。これが私は農振法だと強く訴える。
ただ、農振法が現在のような時代にきて、いまだに参議院の段階で審議の過程にあるということは、いまの農業の実態から考えてみておそ過ぎる。少なくとも農基法ができた当時に、こういう問題が論議の対象になるべきだったというふうに考えます。今度の農振法はわれわれ町村長に非常に責任を強く要求している。先ほど、町村というところで計画をするんだ、あるいは知事の認可を得るんだという問題がありましたけれども、実際にやるのは町村長だ。私は新農村時代から農政には強く関心を持って取り組んできている。したがって、国の政策と末端の農業との間に市町村長がどれだけ苦労しておったかということがよくわかる。今度はこの農振法では市町村というものが非常に強く呼びかけられている。当然そうなければならんと思う。非常に責任を強く町村にかぶせてある。
農振法の中でわれわれが計画を立てる場合に、幾つかの問題が農用地の区域を指定している中で、新しい近代農業を営む場合の基盤整備とか農業近代化施設をする場合に、特に先生方にお願いしたいことは、農民は比較的食いやすいものを先に食って、食いづらいものはあと回しにするきらいが強い。もっと極端に言えば隣に蔵が建てば腹が立つというようなことわざがあるとおりに非常に協同性が薄い。
現実に農業構造の改善事業をやってみて強く感じたのは、その地域内に住んでいる人が全部専業農家じゃない。兼業農家が非常に多い。共同事業をやる場合に、属人的な三分の二という数字を基礎にして——いろいろ区画整理にしろ、土地改良事業にしても、属人的な三分の二というものを取り上げている。ところが兼業農家収入というものが農業収入を対象にしていない。生活の基磯は農業外収入をもって生活の基礎にしているだけに、こういう人たちが一緒に混在している、むしろ専業農家になる人は統計的にみても二〇%しかないという、こういう中で、共同事業をやらせる場合に、三分の二という基礎を属人ももちろん必要でございましょうけれども、属地的な三分の二というものをひとつ考えてほしい。現実に農業構造改善事業をやって、一番共同事業の隘路になったものは兼業農家だ。これは当然の話なんです。しかも、その人たちが多い。専業農家の数が非常に少ない。農業を真にやろうとするものは、専業農家だ。いわゆる自立経営農家です。こういう人たちの生きられるようにするのには、属人的な三分の二ということでなくて、属人とあわせて属地の、農地の面積も対象にすべきであるということを一つ考えてほしい。
さらに、われわれが末端の行政をやってみて一番強く訴える問題は、雑則の二十条に、国や県は、援助するという規定のもとに、必要な助言、指導、融資その他の援助を行なうように努力しなければならぬと書いてある。なぜここに国の補助という義務づけられた問題を取り上げてもらえないのか。融資の道を開いたり、助言したり、指導したりするというようなことは当然なんだ。もっと強く国の補助というものが義務づけられた方向になぜできなかったのか。
第一次農業構造改善事業をやって、全国で二千二百二十の市町村に一般会計から百四十億の金を出している。全体の工事費が二千七百九十億に対して大体五%ぐらいを一般会計が負担をしておる。しかも自治法は、自治の本旨に基づいてみずからの経費でみずから行政をやれと言っておる。国会議員の先生方は、自治体の財政が好転しているようにあるいは思っているかもしれないけれども、よくなったのは県だけだ。市町村のような地区ではまだ三割行政に達しないところが相当ある。相当の経費をつぎ込んで農業構造改善の第一次事業をやった。
いま一つ、先ほど池田先生が指摘された二十一条の生活環境の整備、——農用地の中で、基盤整備をやったり、近代化施設を行なう、これは当然であるが、それだけで農民が満足するかどうか、それと同じくらいに必要なものが農村の環境整備です。土地の環境は非常に整備されている。しかしながら、農村においての環境は遅々として進まない。やりたくもできないんだ。これがほんとうの町村の実情ですよ。なぜこれを、こういうようなまあないにまさるような程度の表現しかできなかったのか。農用地域の中の近代化を進めると同じように、農村環境の整備ということは、どうしても必要だ。
まあ、法律は一応こういう問題で処理されるであろうが、運用の面において、先ほど申し上げた共同事業の三分の二の基礎と、国の補助金と環境の整備というような問題は、農民が喜ぶような線に運用を願いたい。
私は少し極端な発言をしたいと思うが、法律や農政は鉄筋コンクリートの中で計画できる。しかし農業をやるのは農民だ。田畑へ出て、みずから農業をやらなければ、農業の生産性の向上はあり得ない。特に第一次の農業構造事業をやってみて、農民が国の方針に従っての政策に喜んで飛びついたか、現実は必ずしもそうでなかった。その中に入って市町村長がどれだけ苦労したかわからぬ。極端な表現をすることを許されるならば、農民は農政に対して多かれ少なかれ不信感を持っている、こういう発言をこういう席上でするのはいかにも失礼でありまするけれども、実態がそうだ。
今度の米の問題にしてもそうです。あれほど増産を対象にして開田をさせて、米が余ったからこれを処置するのは、当然しなくちゃならぬけれども、減反をさせるという、かつては蚕糸業の問題にしても補助金を出すから桑園を改植しろ、これは単なる一つの事例にすぎませんけれども、こういうような面があるだけに、今度計画を立てる場合の市町村長というものの苦労は並みたいていでない、一般的にいえば、農業に対して悲観説が多いということです。その中で農業をやっていく人がいる。三十五年——四十年の国調を調べてみると、全国で二〇%以上の人口減の町村が九百近くある。よく最近は過疎の問題や過密の問題が調じられている。学者でも評論家でも過疎・過密を問題にするが、適疎・適密の問題を取り上げて論議している人は非常に少ない。こういうふうな人口減少の町村はいかにして人口をふやすかということで、工場誘致をする、産業を振興させる、こういう問題で取り組んで、一時は自治体は企業と結婚したとまで言われた時代がある。その結果についてはいいところもあるし悪いところもある。こういうような中で私どもは末端の行政を行なうときに、やはり農政を離れて行政のあり得ない町村においては、どうしても農振法を通過さしてもらいたい。
先ほど申したとおりに、第一次の農業構造改善事業でも百四十億の金を一般会計から出してまで農業構造事業を遂行したのです。おそらく今回においても、国が考えているような五割程度の補助金ならば、この法案が通って第二次構造改善事業が実施されるということになれば、関係町村は相当なものを一般会計から繰り出さなければ、農民が考えているような近代農業の建設ということは不可能だと思う。したがって第一次農業構造のときには県に頼んで、特に基盤整備に対しては二〇%のかさ上げをしてもらった、こういう例があるのです。五割の補助金でなければならぬというはずはないと私は思う。したがって補助金の率もできるだけ増加をしていただいて、農振法に基づく計画を立てる場合等においても、市町村からあまりに一般会計から支出しないようにできるならば非常にしあわせだと思う。
農振法に対してはまだ訂正の問題もあるし、いろいろありまするが、時間がだいぶ切迫したので、都市計画法との関連を少し述べてみたいと思う。
今度の対象の優良農地は、少なくとも二百ヘクタールというものが一応考えられているようだ。全国でも三千市町村を一応対象にしているようでございまするが、問題は新都市計画の地区との接点における計画の問題であります。私は埼玉県ですが、埼玉県の九十六の市町村の中に、今度の都市計画の対象の市町村は政令できめられた六十三の地区と、さらに十三の地区が一応対象にされている。新都市計画法はすでに施行されておる。一方においては都市化の問題を対象にして論議されて、関係市町村は線引きでいま非常に悩んでおる。それ以外の町村も指定はされなくてもいろいろの問題が影響してくる。こういう際になぜ都市計画と農振法の振興地域とが同時に検討できないのか、この接点が非常にむずかしいです。予算の関係上で五年間に三千を一応対象にしていると私は聞いておる、すぐ決定できないのならば、一方は法律改正して施行されているのだ、一方はこれから審議していくのだ、審議が完了した暁には、こういう問題を、農振法の問題と都市計画法の問題とを同じように線引きがしたい。したがって全体の指定ができないのならば予備指定のような形で線引きを考えてもらいたい。
ようやく国でも農業に対して、国策として産業として農業を取り上げる決心がついたようであります。こういう際に、これから農業にいそしむ人たちに私はこういうことを申している。村へは、水が高いところから低いところへ流れると同じように、所得の低いところから所得の高いところへ資本も人も流れている、この姿でなおかつ所得が少ない、農基法がいうような、他産業と均衡のとれるような生活ができる農民をつくるために、若い人と常に話をしている。いま農業に残ろうという人は、一大決心がなければ農業に残るということが、あいまいな考え方ならばやり遂げられないぞと、少なくとも残るのならばと、私はこういう発言をしている。
勤皇家の浅見絅斎先生が政見一般の書物の中で、志という一つの表現を、雁くさってウジとなりウジのなお飛ぶがごとしということばを使っている、このぐらいの気持ちでなければいまの人たちは農業に残ろうとしても途中でくだけてしまうぞ、若い青年たちが近代農業に踏み切るために親たちの反対をまず第一に説得して、新しい施設のもとに農業をやって、ことしあたりは相当の成果をおさめている、こういう人たちに常に言うのは、やはりいまの農業の中で国がはっきり国策として農業を育成するのだという線が出た以上は、必ず君たちの農業にもいい結果がもたらされるような施策が講じられるであろう。だから十分検討をして農業を献身的に研究してくれろと、農村に必要なものは学生じゃないんだ、あるいは評論家じゃないんだ、農民の仲間に飛び込んで活動してくれるオルガナイザーが必要なんだ、こういうものを私は村でも考えていきたいから、必ず君たちが日の目にあうような時代がくるから十分研究してほしいというような意見を若い者と話し合っておるわけであります。
いろいろまだありますけれども、時間の関係でこの程度で終わりたいと思いますが、ぜひ私が申し上げたような問題を、農振法を一日も早く通過させてもらって、そして迷える農家の人たちに安心して農業に進めるような方向に持っていっていただくことをお願いして終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/6
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007・任田新治
○委員長(任田新治君) ありがとうございました。
次に、神戸参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/7
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008・神戸正
○参考人(神戸正君) 私は一農業経営の研究者といたしまして、神奈川といいます都市近郊に職場を得ましたので、多年、都市近郊の農業を遠隔地の農業と比較しながら農業の問題と取り組んでまいりました、そのような立場から発言をさしていただくわけでありますが、農業振興地域整備法案が、都市近郊農業地域の農業と農民のためにどの程度の役割りを果たすであろうかにつきまして、いささか疑問を抱いている者でございます。
と申しますのは、この法案と非常に深い関係があると思われます第二次農業構造改善事業の地域の規模が、聞くところによりますと、おおむね百ヘクタール以上という大型のものでありまして、すでに都市計画区域の網をかぶせられました都市農業圏域の中に、このようなまとまった農業地域を求めることは容易でないと考えられるのであります。したがって、市街化を抑制すべき区域とされている市街化調整区域の中では、この法律の恩恵にあげかる農業振興地域の指定を受ける余地が少ないほどのスプロールが進んでいるという点でございます。したがって、全般的に申しますならば、都市農民のこの法案に対する関心は、新都市計画法の陰にあるというのが率直な印象でございます。
そこで、私がこの機会に申し述べたい論点は、都市と農村の交錯する地域としての都市近郊農業地帯において、都市計画法と農業振興地域整備法案とがどのように補完し合うか、そして営農意欲に燃える本格的な都市農民のために役立つように運用していただければ幸いであるということでございます。
いま本格的な都市農民と申しましたが、その意味は、値上がりする地価にあぐらをかいて、金利生活者的な安易な消費的対応が一般化しております中で、それとは違って、積極的な営農意欲に燃え、すぐれた経営者能力を持った農業者のことでございます。これらの本格的な農業経営者は、都市近郊という立地こそは農業を産業として確立できる恵まれた農業立地であるといたしまして、高い地価、高い労賃、農業が受ける公害、これをまあ都市圧とでも申しましょうか、そういう都市圧をたくみに避けまして、一方には、市場に近接している立地あるいは都市に投下されております社会資本、そういった都市に近いというメリットを生かし、——いわば都市益とでも申しましょうか、そういう都市益を生かして、農地を真に生産財としているプロダクティブな企業的農業者がいるということでございます。
ここ十数年来の引き続く都市近郊の地価の上昇は非常に激しいものがあるわけでありますが、そういう中で農家階層の分解が進んでまいりまして、このような企業化を目ざす本格的な農業者が都市化の荒波の中で孤軍奮闘しているのであります。このような自立的経営の経営規模——正しくその中身の表現をいたしますならば、営業規模とでも申しますか、ビジネスサイズ、こういう営業規模はきわめて大きく、都市への社会的、経済的な貢献度がきわめて高いことは、多くの資料によって指摘されているところであります。これら都市農民が生鮮食料品の供給に果たす役割りは今後ともかなりの高いシェアを占めていくものと私は考えております。無秩序な都市化によってこの地域が崩壊することは避けるべきでありまして、新都市計画法の調整機能に期待しております。しかし、もともと経済は自由奔放なものでございまして、都市化を整然と導くことは容易なことではないと思います。農業を含めまして諸産業の調和ある発展のために、過密と公害に悩む都市自体にとりましても、その周辺に快適な自然を持つことが必要であります。私は都市農業が、単に生鮮食料品の供給にととまらず、花卉——花とか花木とか植木とかあるいは観葉植物であるとか、そういうものを含めた自然供給産業、あるいは緑化産業として位置づけられる必要性が、人口の集中によってべた一面に埋め尽くされるであろう市街化区域の中で、ますます高まってきておると思うのであります。
そしてこのようなシェアの高い近郊農業をささえている本格的かつ先駆的農業者を核といたましして、おおむね二十ヘクタール以上の集団的優良農用地に、志を同じくする都市農民が農用地を集約的に活用し、末長く農業に取り組もうとする動きが、都市計画の区域・区分、いわゆる線引きを控えて市街化予想区域の中に生まれてきておるのでございます。
農業諸団体から寄せられております御要望の一つは、市街化区域の打ち抜き調整区域としての集団的優良農用地等の規模基準を引き下げよということであります。市街化予備的な調整区域でないほんとうの意味の市街化を抑制する調整区域については、その中に入り込んでくる経営群の経営の集約度が一つ、それに都市への貢献度の高いと思われる作目、それに加えて農業のにない手の志向などを十分に考慮して、その規模の基準を引き下げて適用する方策が講ぜられる必要があると考えております。
さらに、農業振興地域整備法案の土地利用に関する措置の中の勧告、協議、調停という行政指導では、純農村的な地域の規制措置としてはよろしかろうと思いますが、都市計画区域内で長期にわたり市街化を抑制すべき区域を農業的に保全しようとするためには規制力が弱いのではないかと考えるものであります。特に都市計画法に定められた規制措置と比べて弱いのではないかと思われるのであります。
私の手元に、ニューヨーク州の農業保全委員会からロックフェラー知事に昨年提出されました報告書があるのであります。その中にメガロポリス農業の位置づけともいえる興味ある幾つかの指摘があります。
その一つは、農業は、単なる農耕ではない——アグリカルチャー・イズ・モア・ザン・ファーミングというような表現なのでありますが、これは関連産業としての農業の役割りとして、食糧供給産業は農場以外の部面で多くの活動分野を含み、一次産業として狭義の理解から付加価値過程を含む全過程としてとらえようとする姿勢がそこに出ておるわけであります。
その第二は、農場は開かれた空間——ファーミング・ミーンズ・オープン・スペースというようなことばが使われておりますが、農場は開かれた空間であり、経済的貢献に劣らず重要なのは、農業は景観の一部だという考え方であります。そして都市化に弱いのが農業だ、さらに、計画に忘れられがちなのが農業だという指摘でございます。そしてこの報告書の勧告の中で、農業的利用が優先権を持つ新しい地域区分のための条項をつくるべきであると勧告しておるのであります。
わが国と国情を異にするとは申しましても、そういった問題が私どもは当面している問題に非常に似ているのに驚くのでございますが、わが国の都市計画区域の中の市街化調整区域、特に打ち抜きの調整区域の中でもへ市街化予備的な地域を除いて、農業振興整備のための農業的な公共投資が積極的に導入されることによって、本格的な都市農民が鼓舞激励され、生産的な緑地が農民の努力によって保全されることになりますならば、健康で文化的な都市生活への大きな貢献になると考えるのであります。
都市的土地利用と農業的土地利用の調和が確保されるように配慮されまして、住みよい国土が築き上げられることを、この農業振興地域整備法案に期待するものであります。都市的土地利用を優先した新都市計画法がすでに施行されておりますだけに、わが国の国土利用の中で農業の位置づけを明らかにしようとするこの法案への期待が深いわけでございます。
適地適作、適地適産の地域分担を進めていく生産の誘導が必要であることは申すまでもありません。国土の資源の合理的な利用という視点からみましても、低いコスト生産のための大量産化をねらうためには、農業の振興をはかるにふさわしい農業振興地域が指定さるべきであります。そしてその地域の実情を踏まえ、さらには市場に対して経済的に引き合う出荷量規模を確保できる相当規模の土地が農業振興地域の指定について考えられていることはけっこうでありますが、都市に近いところほど出荷量規模は相対的に小単位でもよいのであります。
聞くところによりますと、農業振興整備地域として指定される相当規模の土地とは、二百ヘクタール以上だとのことでございます。過疎に悩む遠い地方の低い地価、低い労賃の地帯におきましては、数百ないし数千ヘクタールをこえる土地面積支配型の大型農業の成立をもあわせて期待しているものでありますが、日本の農業が集約化の農業であるという私の認識からいたしますと、労働と資本の限界投資効率は、はたしてわが国の遠隔地農村が高いか、あるいは近郊内圏が高いか、興味深いところであります。私の手持ち資料によりますれば、その結論は、近郊内圏が高く、しかも花弁、野菜、果樹の順で資本効率が高いのであります。過疎現象は申すまでもなく、近代農業を進めるために必要な良質労働力の都市への放出でもありますから、この近代的農業をにない得る有能な人材をいかにこの遠隔ないし中間地域の農業振興地域にとどめるかの配慮が必要であると考えるのであります。
農業に安心して取り組める場なり環境なりを保全することは、都市農業の有能なにない手についても同じように重要であります。この点につきましては、第六条の、農業振興地域の指定要件の中に、農業就業人口の現況及び将来の見通しに照らして、農業経営の近代化がはかられる見込みが確実であることとし、さらに第八条の、農業振興地域整備計画に定められるべき事項、あるいは第二十一条の生活環境施設の整備などが、十分な予算的な裏づけをもって実現されますならば、有能な人材を農業振興地域にとどめ、その地域のプロモーターとして活躍願えるのではないかと思うのであります。
農業地域の分担と需要に見合った生産方向の誘導ということは、それぞれの経済地帯別になされるべきでありまして、すでに山村振興法などの地域立法がなされているのでありますから、この際、農業振興地域整備法案のワクに当てはまらぬような諸問題があるといたしますならば、ときすでにおそい感がするのでありますけれども、近郊農業団地整備法案の御検討を御一考願えれば幸いであると思う次第でございます。
いずれにいたしましても、私は、この農業振興地域整備法案が、日本農業の発展のために一日も早く成立することを願うものでございます。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/8
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009・任田新治
○委員長(任田新治君) どうもありがとうございました。
それでは質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/9
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010・足鹿覺
○足鹿覺君 各参考人に共通して御意見を承りたいのでありますが、三点ないし四点にわたると思いますけれども、そのまず第一点は、先ほど梅原参考人からも述べられましたが、大都市周辺におけるいわゆる近郊地農業のあり方、これは都市の形成との関係で、神戸参考人もただいま該博な知識を御披露になりまして、非常にわれわれ裨益するところが多かったわけでありますが、そういう考え方のもとにあって、今回制定されようとしているこの立法は、十年後には市街地における農業を転出を余儀なくせしめる結果に、法の目的はいかにあろうと、結果においてはそういう結果をもたらすものであろうと思われるのであります。そういう意味からいって、前段に述べられた神戸さんの御意見とは変わった結論が出はしないか。都市と近郊地農業というものの調和をとるのではなくして、むしろ都市近郊地における市街化区域内における農業というものは締め出される心配があるのではないか、こういう懸念を抱かざるを得ないのでありまして、その点矛盾なく調整ができるでありましょうか。運用面でその調整が可能であると考えられますかいなか。この点を四人の参考人の方々に伺いますが、特に梅原参考人、神戸参考人につきましては、その点をしかと御所見があれば承りたい、かように思います。
いわゆる大局論に立った川野参考人の御意見等は、これはきょう論じましても、われわれにはわれわれの意見もありますし、国会が従来とってまいりました、たとえば五〇%の第一次構造改善事業に対する二〇%のかさ上げは、これは政府は五〇%であったものを、国会の意思によりまして、昭和三十八年、農基法の制定されました翌々年に、構造改善事業実施の補助率の増加を地方交付税の中に入れることを決議し、政府にこれを要請して、あれが七割になったことは御承知のことでありましょう。でありますから、そういう点については私どもよく存じておるのであります。だがしかし、その中にあって、そういう措置を従来講じてまいった中にあって、なおこの補助が効率的に所期の目的を達成するかいなかということを、各参考人の具体的所見を聞いておるのでありまして、その点もう少し明確に御所見を承りたいと思うのであります。
そういう意味合いから、第二点、市街化地域の線引きはコンパクトであるということが望まれる。一昨々日、現地公聴会をわれわれ開いたのでありますが、そういう声もございました。四人の参考人の方々はこれはできるだけ市街地の膨張を予想して広いがよいとお考えになりますか、狭いほどいいと、コンパクトであるほうが適当であるとお考えになりますか。この点を具体的に御所見もまじえて御意見を明らかにしていただきたいと思います。
第三点は、地方十万都市の場合、つまり近畿圏、中部圏、首都圏は別といたしまして、地方十万都市の場合に一つ例をとって御意見を承りたいのでありますが、その場合調整地域の範囲は、都心地より八キロないし十キロの区域の線引きが考えられておるのであります。で、これは地域によって相当差が出てくると思いますが、たとえば私の居住しておりますところは中国地方でありまして、海岸線から脊梁山脈まで旧里程で言いますと七里ないし八里というような急峻なところであります。さよういたしますと、八キロないし十キロはいわゆる平たん地を全部調整地域の中に入れてしまうことになるのであります。これは所によっていろいろ異なった条件がありますから一律には言いかねますが、いわゆるケース・バイ・ケース、地域の情勢に即応した線引きが行なわれるのが至当と思われますかいなか。一律一体に八キロないし十キロ、一つの国が定めたものを弾力なしに線引きを行なうことが適当であると断定をされますかいなか。この点につきましても具体的なひとつ——もう原法は、新都市法が実施になっておりますので、まだ本委員会といたしましては審議がおくれておるような印象を参考人各位はお待ちになられたと思いますが、私どもは本法と都市計画法が同時に並行して実施されることを期待しておったのでありますが、残念ながら都市計画法が先に出発をし、問題点を残して本法が前国会からの継続審議としてようやくいま本院に回ってきておる段階でありまして、これは当委員会における責任でも何でもありません。自然の成り行きがこういう結果になっておるのでありまして、その点はよくお考えになりまして、元来は、言うならば都市計画法と本法とが同時に並行して行なわれて、ほんとうの成果を、緊密一体の成果をあげるのではなかったか、このように思われるのでありますけれども、残念ながら実情はそれと違ったことになっておるのであります。その点もよくお含みの上、八キロないし、十キロの線引きが、すでにこの法律とは別に新都市法によって進められつつある段階にある。これに対して弾力的、ケース・バイ・ケースでいくことを妥当と考えられるかどうか、この点を第三点としてお伺いいたします。
第四点は、調整地域内の優良農地というものの規定があるのであります御承知でありましょうが。これは現在農林省が考えておりますものが、つまり農業地域の領土宣言というのは、われわれの解釈によりますと、調整地域そのものではなくして、その調整地域の中に二十ヘクタールを規模とする優良地域というものを設定しようとしておる。これをいわゆる領土宣言、ほんとうの意味における領土宣言、こういうふうに——間違えました。市街化地域内においてそういう案を考えておるのでありまして、そういたしますと、その二十ヘクタールというような相当広範な面積が市街化地域内にあり得るのかいなか。適用するような条件が整っておるのかどうか。したがって、われわれはこのようなまとまった地域を基準を設けることは実情に沿わないのではないか、これは五ヘクタール前後程度の、これまた地域の特性に即応してそういう団地をつくるべきではないか、こういう考え方を持っておるわけでありますが、この点につきまして四参考人の皆さんからお聞きいたしたいのでありますけれども、これは池田参考人、梅原参考人、神戸参考人のお三方からは特に具体的な御意見がございましたら承りたいと思います。
最後に、現地公聴会をいたしました際に、まだ末端では十分この本法の趣旨が一年以上も継続審議になっておるにもかかわらずおりておりません。むしろ新都市法が先行いたしまして、その先行する中にあって、良心的な農業協同組合長等が部落座談会等の際に本法の趣旨を説明したりして地域住民の声を熱心に聴取して、先般の現地公聴会でその意見を代弁して述べられた結果、その方の御意見は、いろいろな立場もあるが、せんじ詰めるところ反対である、こういう結論に達した、現地住民の声を聞いた結果は反対である。こういう結論を述べておられました。
そういうふうにいろいろこれはその地域地域における実情がからみ合っておるようでありまして、はたして本法を実施することにおいて、勤め人、通勤人がたくさん農村から都市へ通っておる今日、いわゆる地域を定めて、さい然と区域を定めて、ここからは都市である、ここからは農村だと、そういういわゆる線引きによって分画することが可能であるかどうかということになると、われわれは一点疑念なきを得ない。そういう点につきましてある程度のスプロール現象を是正しながら、都市と農村が一つの不協和音でありましても、一つのハーモニーをそこに見出すような施策というものがないものであろうか、私権の制限を一方において講じながら、はたしてこの線引きをして、本法が目的を達成するような成果をあげるかいなかという点にかかって私どもは心配をいたし、熱心な審議をいたしておるわけであります。
本日は四参考人からいろいろ御高見を拝聴いたしましたが、そういうわれわれの心境なり審議に臨む心がまえも御参考になりまして、以上私が述べました四点ないし五点について御所見を拝聴いたしたいと存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/10
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011・任田新治
○委員長(任田新治君) どなたでも順序はかまいません、けっこうですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/11
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012・池田斉
○参考人(池田斉君) 時に都市計画法との関連についていろいろな御質問という形で意見を出されましたが、実は私も都市計画法の審議の際にやはり参考人に呼ばれましていろいろ申し上げた経過もございます。その辺のことを考えながらいまの御質問に、適切であるかどうかはあれでございますが、申し上げたいと存じます。
第一点の、大都市周辺の、まあ都市周辺の近郊農業と都市計画法施行の調整という問題で、結局その地域の農業はいろいろ言いながらも消滅をしていくのではないか、こういうお考えのようでございますが、私は必ずしもそう考えないわけでございます。御案内のように、市街化調整区域というものは、一つは五年ごとに調査をするということで、言うならば市街化区域の予備地域的な性格のところと、それから恒久的にやはりこれを農業地域として守っていくところと、こういう二つのものが、線引きとの関係で、市街化区域と調整区域が観念的にはあり得ると思うのでございます。
そういうことでございますので、農振法がもう少し外側の問題を考えるという——これは二百ヘクタールとかいろいろな問題がございますから、私は、そういう形ではなくて、少なくとも調整区域の中の恒久的な優良農用地、というものは、むしろ農振法をかぶして、そうして、言うなれば、第二次構造改善事業等もやはり弾力的な運用をはかって、そうして恒久的にそういう地域を守っていく。これは私は可能であるし、またそういう施策が大事だろうと、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、もし農振法が純農村地帯を優先して守っていく法律であるといことでありますと、いまのような心配が起こるわけで、それならば、先ほど神戸参考人が申されましたように、別途の都市計画に直結して対応するそういう農業上の地域を守る立法措置が、特にこの調整区域の中の優良農地をどうして保全をし、その地域の農家を守るか、こういう問題の立法が私は要るような感じがします。しかし、これは農振法を拡大的に運用することにおいて、何も二百ヘクタールとかそういうことにこだわらないで、やはり予備地域以外の調整区域の優良農地、そこにおる農家を守ると、こういうことを、農振法の運用面でぜひひとつすみやかにこの問題の措置を考えてもらいたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
それから市街化区域は狭いのがいいのかどうかと、こういう御意見でございますが、これにつきましては、建設省は十年間に約十九万ヘクタール、人口の伸び、産業のいろいろな問題との関係で、そのくらいあれば合理的な都市計画ができると、こういうことを、九百地域の市町村に関連をいたしまして数字的なことを私も聞いておるわけでございますが、一ヘクタールに対してどのくらいの人口密度というような問題も一つございますし、一体それぞれの市町村の段階で将来どういう人口の伸びがあり、またどういう産業の立地を考えるかというようなことで、それに必要な面積があればいいわけであって、何も機械的に広くするという必要はないと思います。
特にこの問題は、一方において都市化を進める場合には、いまのような都市づくりではなくて、ほんとうに上下水道だとか、いろいろ都市の基盤を構成する、そういうような市街化の条件を先行して整備をして住みやすい都市をつくるのだ、こういうことを考えますと、非常にこれは膨大な財政が伴うわけでございまして、建設省では十年間に約二十兆というような数字を出しております。そういう問題に、国と県と市町村という段階におきまして、十年間の都市化の段階の財政がどれだけ見合うかと、こういう問題がありませんと、やたらに市街化区域を広くいたしまして、それが中途はんぱになっておる、こういうことが長期間に放置されるということは、これは国土利用の全体の立場から見まして、都市計画法もそういう問題まで考えておるとは思われないわけでございまして、そういう意味では必要な範囲の都市ということをどういり形で線引きをするか、こういう問題もございますし、何も市街化区域を広くする必要はない。またその問題については、むしろ私は反対の態度を従来からもとっております。
したがって、調整区域につきまして問題になるのは、線引きをした外側と内側、しかも予備的なもの、それから恒久的に優良農地で守るところ、完全に市街化区域に入るところ、この辺の問題をどういうふうにしてうまくやっていくか、こういうところが問題である。私どもが特にいろいろお願いをしておるのは、都市といわゆる予備地域的なところの施設の共用でありますとか、そういうような問題を含めて、現実的にそこに住んでおる住民が、農民を含めまして、十分ひとつ国のそういう合理的な計画に対応する、こういうことを実は念願をすべきではないか。
それから地方都市、十万以上の都市の場合、これは私はよく存じませんが、八キロから十キロというような機械的なことでやるというようなことでございますが、これがもしそうであるならば、こういう機械的な考え方はもちろんとるべきではない、やはり先ほど申しましたように、一応十年間ですから、その地方都市の十年間の展望というそれに見合うそういう市街化区域の設定が合理的に行なわれなければならないし、その外側の調整区域というものは、むしろ地方の十万都市でございますならば、それこそほとんど農業地域であると思いますので、私は、その地域にできれば農振法をかぶして、そうして全体として農政を守っていく、こういう態度こそ必要ではないかというふうに考えております。
それから二十ヘクタールの問題でございますが、これにつきましても、私どもは特に当委員会ですか、建設委員会におきましていろいろ申し上げましたが、二十ヘクタールはあくまでも原則であって、特に大都市圏の周辺におきましては、五ヘクタール、六ヘクタール、そういうまとまった土地でもそれが相当——もちろんそこでやられる作物との関連もありましょうが、たとえば花卉でありますとか、園芸的なものでございますとか、そういうようなものにつきましては、何も二十ヘクタールという機械的なことでやる必要はないのではないか。この点につきましては建設省からも、そういう問題については弾力的な扱いをするという回答を得ておりますので、現実的に二十ヘクタールで完全にしばりつけるということは運用上もないというふうに確信を実はいたしております。まあ大体以上のとおりです。
それからなお、最後の問題は非常にむずかしい問題で、スプロールを適当にコントロールしながら、完全な姿でなくて不協和音でもある程度うまく調和をとるような方式、これは非常に傾聴すべき御意見ですが、具体的にそれをどういうふうにして考えるかということにつきましては、いまここで意見を申し上げるだけの準備がございませんので、ごかんべんを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/12
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013・梅原昭
○参考人(梅原昭君) いろいろな点につきましてお尋ねがございましたけれども、基本的な点から申し上げてみたいと思うのでありますが、新都市計画法の第二条で「都市計画の基本理念」ということを述べております。その中で、冒頭に、「都市計画は、農村漁業との健全な調和を図りつつ、」云々、こういうふうに書かれております。したがって、都市計画というものは都市側の、建設側だけの問題ではなくて、農林漁業との健全な調和をはからなくちゃならぬということが規定はされておりながらも、それが単なるうたい文句になっておるというところに問題があるのではないかと思います。
で、なぜそれが単なるうたい文句にしかすぎなくなってしまうのかということでありますけれども、農林漁業側と申しますか、具体的に申し上げまして農林省側において、受けて立つべき具体的な農業を守るべき構想なり、あるいは全国的なあるいは地域的な、何といいますか、あるべき姿というものができておらないというところに根本的な原因があるのではないかというふうに思います。で、先ほどたとえば二十ヘクタールという一律的なものは実情に合わないのではないかというふうな問題、あるいは地方都市において都心地から何キロというふうな距離を示して、都市計画区域、調整区域などをきめていくというのは画一的ではないか、こういうふうな、お話がありましたけれども、なぜ画一的になるのかというのは、たとえば、ある地域なら地域において、農業はかくあるべきなんだ、この地域においてはこういう作目を守るべきなんだという確固たるものがあるならば、それを基礎にして非常に実情に合ったものができてくると思います。
〔委員長退席、理事宮崎正雄君着席〕
で、たとえば大阪なら大阪におきまして、池田さんからもちょっと先ほどお話がありましたけれども、本物の野菜づくりの農家であるならば、三反歩をつくっていると専業農家でやっているわけなんです。そういうふうなところへもってきて、二十ヘクタールなんとかといっても、これは全然問題にならないわけです。この地域は野菜づくりの地域として、大阪府全体の立場から見て、どうしてもここは必要なんだ、これは五ヘクタールでも六ヘクタールでも残す必要があるのだ。そういうものが各地にありますならば、私は二十、三十という画一的なものでなしに、中央集権的に上からおろしていくべきものではなくて、それぞれの地域の実情にまかせてしまう、こういうふうなやり方で十分やっていけるんだ。それがないために画一的なものが出てくる。基本的な問題はそういうところにあると思うんです。
都市近郊の農業とそれからこの農業振興地域法とがうまく調整がとれぬのかというふうな問題でありますけれども、先ほどちょっと触れましたように、先ほど竜ケ崎の問題を申し上げましたけれども、竜ケ崎の場合に集約酪農地域だということを申し上げましたけれども、この地域は御承知のように、農林大臣が決定することになっております。で、農林大臣が決定するわけでありますから、その地域をもし守ろうとするならば、農林大臣の力でこれを幾らでも守れる。したがって、そういう地域に対して住宅公団がやってくるという場合には、当然これは農林省のほうに事前に相談があるものだというふうに理解をしております。したがって、そういう関係で守ろうと思えば守れる地域でさえも手放してしまう、こういうような姿勢が、この法律とは関係なしに、すでにもう農林省側にあるわけです。そういう姿勢を持っている農林省が、この農業振興地域法の執行に当たるということになった場合に、どういうふうな問題が出てくるかということになりますと、先ほども申し上げましたように、首都圏の整備計画、近畿圏の整備計画、もちろんの計画に、これは何といいますか、いよいよ抵抗する手段がなくなってしまう。いまこういうふうなものがなくても、どんどんあとずさりしていってしまって、重要な農業地域を放棄しているわけですから、ましてこういう首都圏整備計画、中部圏の開発整備計画、近畿圏の整備計画、こういうものと調和を保たなければいけないのだということになりますと、そういう規定をした以上は、そういう計画に抵抗することはできない。自分自身が抵抗する手段を放棄してしまっておるということになりまして、いよいよもっていままで以上に都市近郊の農業に対する積極性を失ってしまう、都市近郊の農業を衰亡の方向に押しやってしまうという結果以外の何ものも出てこないのではなかろうかというふうに考えるわけです。
最後に、この問題、この法律が農民の中でどの程度の関心を一体持たれているのかという点で申し上げてみたいと思うのですが、先ほど、どなたか参考人の方がちょっとお話しされたように思いますけれども、実はせんだって衆議院の農林水産委員会が農地法改正問題で地方の実情調査を行ないまして、大阪においでになりました。私はそのとき発言したのでなくて、その発言のやりとりを傍聴しておったのですけれども、肝心の農地法につきましては賛成の方もあり、反対の方もありということで、いろいろ御意見がございました。ところが委員の方からいろいろ質問が出てまいりますと、いつの間にか農地法の問題はそっちのけになってしまって、新都市計画法と大阪の農業というのが一体どういうような関係になるか、大阪の農業にとって新都市計画法というのは悪法であるというようなことについて各参考人の意見が完全に一致をしてしまったというようなことがございました。
その中で出ておりますのは、もう大阪のようなところでは、必ずしもこれは大阪だけの問題ではないと思いますけれども、都市近郊にとっては、農地法なんということよりも、新都市計画法のほうがはるかに大事なんです。これが一体どういうようになるのかということのほうが肝心なんです。実はいまごろ、農地法の公聴会というから出てまいりましたけれども、実はあまりぴんとこないのです。こういうような話をしておられました。実は農地法の問題でさえも、さえもというと失礼ですけれども、農地法の問題ですらこれはそういうような状態です。
まして正直申しまして、この農業振興地域整備法というようなものがいま議論になっているということさえも一般的にはあまり関心を持たれておらないというような状況で、ましてその中に一体何が書かれてあり、何が問題になっているのかということはあまり問題になっておらない。特に都市近郊の場合には、それよりも新都市計画法の弊害を一体いかにすれば除去できるか、こういうところが議論になっているということでありますので、その辺のことをひとつ十分に御理解になっていただいて、これだけを先行しても問題の解決にはならない。都市近郊の農民にとっては、新都市計画法の弊害というものをこの機会にどういうようにして、すでに成立した法律でありますけれども、弊害を多少でも少なくしていくかということに最大の関心がありますので、新都市計画法というのは建設省あるいは建設委員会の問題でありますけれども、農民にとって重要な問題でありますので、本委員会においても十分御検討いただくようにお願い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/13
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014・宮崎正雄
○理事(宮崎正雄君) 次は川野参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/14
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015・川野平治
○参考人(川野平治君) 大都市の近郊農業が調整していけるかどうか、あるいに消滅してしまうのではないかというような問題について、私の考え方を述べたいと思います。
大都市周辺でも現在農業が成立している。これは農業に携わっている人の農業に対する考え方の問題だと思います。したがって一がいに消滅するとは私は考えません。したがって農業に従事している人の農業に対する意欲の問題が中心になると私は考えます。特に大都市近郊の農業というものは、おのずから一般平たん地の農業とは別な選択的拡大というものが対象になって、何をすれば農業が生きられるかという問題から出発して農業に従事されているものだと、したがってそういうような地域における農業というものの従事者の考え方が、調整していける考え方ならば、当然現実、将来に向かっても調整した考え方でいけると思うし、その人たちがみずから行なっている農業に対する種目を通して意欲を失うということになれば、消滅の可能性もないとは言えない。しかし一般的に考えてみて、大都市周辺の農業も現実に成立しているという事実から判断して、農民の意欲にしぼられるというふうに私は考えます。
次に、市街化区域の線引きの問題でございますが、市街化の問題は、ようやく末端で線引きの検討に入っているというのが実情じゃないか。埼玉県においても建設省を通じて土木部が中心になって、関係市町村の問題を取り上げて、いろいろな意見交換をしながら線引きの問題に入っております。したがって、指定の対象になる市が市街化区域をどう線引きするかということは、それぞれの市によって違う。都市計画法では附則で、調整区域の現実に引けるところは特例が出ておって、少なくとも十万都市以上のように当分の間されておる。したがって広いのがよいのか狭いのがよいのか、該当対象都市でこれは検討すべき問題である。われわれの立場からするならば、必要なる限度において決定すべきだと思います。必ずしも広いのがいいとは考えません。十万都市の調整地区ですが、調整地区は都市の計画を促進するんじゃない、抑制するんだ。したがってこの地区が八キロとか十キロとかいう御発言がございましたように、これもその地区で決定すべき問題であって、われわれにはよくわかりません。
さらに調整地域の二十ヘクタール、あるいは五ヘクタールという問題の質問のようでございまするが、市街化地域における優良農地の二十ヘクタール、これに対する考え方に対して五ヘクタールというような御意見もお聞きしたようでございまするが、こういう地域の農業というものは、都市形成の上においてそういう地域があるならば当然残すべきだと私は思う。それはやはり市街化の中における緑というもの——ただ市街地をつくるというだけが市街化の目的でなくて、やはりそこに住んでいる人たちの日常生活を通して緑というものがどれだけ生活の上に貢献するかわからない。たまたまそれが農地として生きられるならば、問題はそれぞれの地区の実情に即して決定すべきだと思います。
最後に農振法の末端の浸透の問題、あるいは都市計画法の末端の浸透の問題、どちらも末端に浸透してないことは事実であります。とくに法律ができた都市計画法のごときも、線引きをするために市の幹部がそれぞれの県における上部機関と折衝している段階で、一般の住民はほとんど知っていないのが多いと思う。ただムード的に、市街化地区に編入されるならば土地の価格が高くなるんだ、ムード的に市街化地区に編入してほしいというような空気は流れておると思います。都市建設のために市街化区域がどうなるんだ、都市計画法でいうような目的の点まで一般の住民は聞かされていないのが多いと思います。まして農振法はいま審議中であるだけに、これがどういうふうに集中されるか、原案のとおり通るか、われわれにはまだ未定であるだけに、一応のムードとしてのいわゆる次期対策を通しての考え方から、住民には話してあるが、一般の住民はそれほど真剣に考えていないのが現状の姿ではなかろうかと私は判断します。
以上の点で、一応御質問に対してのお答えを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/15
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016・神戸正
○参考人(神戸正君) 第一点につきまして、私は市街化区域の介在農地というのは、やはり都市計画というものが進んでまいりますので、その地域で末長く農業を続けることは面積整理というものが進んでまいりますから非常にむずかしいだろう。そのためにはやはり撤退疎開作戦というものを、その農家の方々が十年の期限をめどにしてつくっていかれることはこれはしかたがないと思います。しかし私がきょう申し上げましたのは、市街化区域の中で、その予備的な調整区域打ち抜きという形じゃなしに、どうしてもその地域は末長く緑地的な意味をもって残す。そういうものについてはこれは残していただきたいというふうな意味で申し上げたわけでございますので、別に私、その締め出すとか締め出されるとか、そういうふうな形で問題を考えてみたくはないと思うんでありますが、ただ、その土地の農民というのが非常に高い地価の上で、その地代を計算したらペイするだろうかという計算がすぐ出てくるわけでありますけれども、本格的な先ほど申し上げました農民というのは自作地だ。しかも値上がりということからいわば絶縁されたと言っては言い過ぎでありますけれども、そういう農民であります。やはりそういう方々を守っていくという基本的な姿勢が要るのではないかと、かように思うわけでございます。
第二点の、市街化区域はコンパクトたるべきかいなかという問題でありますが、計画的にその土地が整然と、いわゆる用途地域でございましたか、それにしたがって埋まっていくならばコンパクトでもいいかもしれませんけれども、あまりにもコンパクトに締めつけるということはその地価を著しく上げることになる。そうなると、あまりコンパクトであると市街化調整区域を越えて都市計画区域外に飛ぶ可能性が現在の交通輸送手段が発達すると起こるという問題があるのであります。そういった意味から申しまして、やはりその辺はどちらかというふうな言い方はできないのでございまして、そういう全体の都市の発展のエネルギーの大きさというものをいかに正しく予測するかということにすべてかかってくるのでありまして、将来の問題でございますので、その辺はちょっと私にもよくわかりかねるということでございます。
それから第三点につきましては、私、神奈川におりまして、地方都市が八−十キロという圏域で設定されているという事情を知りませんで、もしも物理的にそういうことがあるとすれば、これはおかしな話じゃないかというふうにいま思っておるわけでございます。
第四点のいわゆる打ち抜きの市街化区域内の優良集団農用地の規模の問題でありますが、私は先ほどそういう要望が強いということを申し上げたわけでございます。しかしながら、その集団地が都市のためにもなるという農業だけを主張することはやはり問題があるのじゃないか。都市のためにもなるんだ、農業はもともと公的なものでございますけれども、新しい公共的な意味をこの優良集団農用地の上に乗っけていきたい。そしてその上に入る農家はきわめて集約度の高い都市農業でございますから、土地面積の支配型の経営ではない。だから小さい面積でも十分そこでやれるんだというふうな考え方からすれば、二十ヘクタールを割ってもいいだろう。ただしあまりにも狭くこれを設定するということは、これは多くの農家の方々、必ずしも全部が優秀な、どうしても農業をやろうという方々ではない。土地を売りたいという方々もいらっしゃるわけでございます。そうなってまいりますと、おおむね五年間、市街化調整区域に小面積で確保しておいて、そうしてそれを地価が上がったところで売るというふうな問題が出てくる。そういうふうな形はやはり好ましくないんではないか。都市的な意味におけるオープンスペースは、やはり数字を言うことはちょっとむずかしいんでありますけれども、もう五を切ってはだめであろうというふうな感じがあるわけでございまして、やはり十ヘクタールぐらいのものは何とかしてこれを残していきたいという農家がいらっしゃるならばあげたいというふうに思うのでございます。
最後の点につきまして、一つ御参考までに申し上げたい点は、私、横浜市の港北のニュータウンについて多少、私の県内にございますので、内容を知っておるわけでありますが、市街化区域と調整区域のその境目の問題でありますけれども、横浜市ではそういう地域を修復地域という概念を持ち出しているわけでございます。しかしこれは調整区域でございます。しかし将来はこの地域は市街化にするのだという市街化予備軍的な意味合いをすでに持たせておる。やはりそういうふうな計画性というものを 農家の方々は経営転換というのは自由にやれないわけでございます。そういうふうな意味でやはり長期設計を与えるべきである。そういうような意味において私は都市計画法というものがほんとうに農業と都市サイドと、両方が調和があるものであるとするならば、合理的に設定されなければならないし、されるべきである。ただし経済の力というのは、先ほど申しましたように、なかなか秩序あるものではないわけであります。その辺私どもにはわからないのでありますけれども、そういうような点、お答えになりますかどうか、一応申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/16
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017・中村波男
○中村波男君 足鹿委員から大体私のお聞きしようという数点について意見を求められたのでありますが、その中でいわゆる都市近郊農業についての将来、足鹿委員のことばをかりますならば、消滅するような可能性はないか。それはほとんどの参考人が、そういうものではない、また政策的に見ましても、新鮮な野菜を供給するための近郊農業、また神戸参考人が御指摘になりましたように、自然供給農業というような形も農業というものを考える上においてあり得ると思うのです。
そこで私は実際問題として、池田参考人がおっしゃいました中で、いわゆる市街化区域というものを広くする必要はないのだ、これも広く狭くということにも問題があって、初めあまり狭くしておきますと、五カ年間の調整期間のうちにすぐにはみ出てしまって、調整区域がさらに市街化区域に指定変更しなければならぬというような、こういう点からも、どこに基準を求めるかというのはむずかしいと思いますが、それはそれとして、実際問題としていよいよ六月一日から新都市計画法が実施になりまして、いま各府県において線引きの作業が進められておる過程で、結局市街化と調整区域を区分いたしますためには、道路一つ、あるいは川一つ、これによって区域が分けられるわけでありますから、現実の問題として市街化に指定をされれば土地はさらに値上がりをするであろうということは明らかでありますし、調整区域に指定をされれば土地価格というのは抑制をされるという、こういう中に立つ農民の受け取り方、したがって私は特に川野参考人等は村長という立場で実際に農振法の指定をおやりになる立場、また新都市計画法を受けて立たれる立場として、どこに線を引くかというような場合になりますと、たいへんなこれは難事業ではないかと思うわけです。いわゆる農業の立場、都市の立場で高度に判断されましても、受けて立つ農民側からいうならば、とにかく市街化区域に編入してもらいたいという大きな声をどうして押えるかというような具体的な紛争的な事態というものが各地でこれから具体的に起きてくるのじゃないか、こういうような問題を考えまして、その辺の実態というものをどういうふうにいま予想していらっしゃるのか。またそういう実態というものは、各地に起きつつあるような実態というものはないであろうか、こういう点をお聞かせを願いたいというふうに思うわけです。
〔理事宮崎正雄君退席、委員長着席〕
それから、私は法案を審議いたしまして一つの大きな失望を感じておりますのは、政府の説明によれば、農振地域に指定をいたしましていまやろうとしておることは、第二次構造改善事業を優先的にやっていこうということ以外に、さいぜん御意見がありましたように、たとえるならば圃場整備等に対する補助率を上げるなんということは全くいまのところ考えていない。用途制限はしましても、その具体的ないわゆる政策的、財政的な重点というのがそこにかけられなければ農業振興地域としての成果というものはあがっていかないじゃないか。これが私はこの法案の盲点ではないかというふうにいま考えておるわけであります。その点はすでに川野参考人からも御指摘がありましたけれども、こういう点をさらに補強しなければ、用途制限をしたら農業が振興するという、そういう安易なものではないのではないかということを考えておるわけでありますが、それらの点について御意見がありましたならばこの機会にお聞かせをいただきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/17
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018・川野平治
○参考人(川野平治君) 私は冒頭に地方行政の中で一番むずかしい問題をかかえる二点を申し上げたわけです。というのは、いま末端で線引きをどうするかという問題、市街化地域の線引きをどうするか。まだほんとうに住民は都市計画法のねらいというものがよくわかっていない。建設省が、私は埼玉県ですが、埼玉県の土木部が中心になって都市計画を取り上げている。もちろん本省では、建設省と農林省は十分なる連絡をして始めているとは思うが、末端にくるというと、現段階では市街化の問題について一応線を引くことに対する指導はしています。その際における農林省の対象になる農林部が振興地域の問題とからみ合わせてほんとうにとけあった話し合いがなかなか進んでいないように私は考えております。したがって都市計画と農振法の問題とそれぞれの県でもう少しトップクラスで十分意見交換をしながら、ただ建設省の線を引く土木部が、ムード的に先に進んでいるこれとの調整を持ってやってもらいたいということを私は埼玉県の農林部長にも申し上げてあるのです。
そこで末端の市町村がどう線を引くかという問題に対して、いま検討中でございまして、非常にむずかしい。一方においては、先ほどムード的に市街化区域に入るならば土地の価格が上昇する。埼玉県でこういうことばがある。主として県南地帯です。いわゆる東京都に近いほうは地価が上がって相当の金を獲得できた。いい気持ちだからきょうは一坪遊びをしようじゃないか——これが農民ですよ。一坪遊びをしようということは、いかに土地が高いかということであります。したがって線引きの問題は関係市町村はいま非常に悩んでいますよ。どうするか。住民の声にこたえて拡大するか、あるいは一応の見通しを持ってこの辺で線を引くかという問題、これはまあ一がいにこれがいいということは言えないと思うのですね。非常に悩んでむずかしい問題と取り組んでる最中である。もう少し上層部の意見統一をした線で末端の指導をしてもらいたいというのが、現状の市町村長の声じゃないかと私は判断するのです。
それから農地が最近非常に高くなってる。特に仮登記という形式で農地を、転用が対象になりませんから、仮登記という形で農地の、表面的には権利の異動じゃないけれども、登記ができないのだから権利の異動じゃないけれども、仮登記という形で農地の売買が行なわれている。それも埼玉県では、大体農地価格というのが、四十二年度の農地価格の平均は四十一年度の三五%上昇です。四十四年度はさらにこれが四二%上がってる。農地の対象としての売買じゃない、転用価格を含んだ農地の売買です。高く売れるならば、当然処分するならば高いほうがいいのはだれでも同じである。したがって、農地価格というものが急激に上がってるということです。これは今後の農業を行なう場合においても非常にむずかしい問題であると思う。第一に、農業構造をやってみてわれわれが一番隘路を感じたのは農地価格の暴騰ですよ。だから土地価格の問題もひとつ十分に検討してもらいたい。控除方式のようなものが対象になっておるようだけれども、価格の問題というのが非常に今後の農業経営の面において重大な問題になると私は思う。
特に国道あたりが建設される場合に、建設省の買収価格が非常に現状の姿よりも高いということですね。まあさら地にして補償を抜きにして七十万ぐらいの相場を出しています。今後そういう線が出るということは必ずそれに関連して価格が上昇する。しかし一般の空気はそれよりも高い、仮登記をしている価格はそれよりも高い。一年間に仮登記の権利者が三人も変わるということは、農地を対象にして一つの投機をやっている。農業を中心にした考え方じゃない。したがって、土地価格の問題等についても十分なる御検討をお願いしたい。
質問の要点に、市町村長の立場で住民の声にどうこたえるかという質問のようですが、いまは関係市町村長はこの問題で日夜苦しんでいるというのが実情で、いかに結論を出すかという問題までまだいってないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/18
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019・梅原昭
○参考人(梅原昭君) 国の援助という問題に限ってだけこの法律と新都市計画法との比較でちょっと意見を申し上げてみたいと思います。
新都市計画法というのはもともと受益者負担という考え方が非常に強いものですから、住民、とりわけ農民の負担において都市計画をやっていくのだ、国というふうなものはあまり金は出さないのだという、こういうふうな考え方で一貫しているわけですけれども、その新都市計画法においてさえ次に読み上げるような規定をしております。新しい都市計画法の八十三条で、「国の補助」という規定があります。ここでは「国は、地方公共団体に対し、予算の範囲内において、政令で定めるころにより、重要な都市計画又は都市計画事業に要する費用の一部を補助することができる。」こういうふうな規定をしておるわけです。この農振法では、先ほど川野さんが御指摘になりましたように、国の「援助」というところでは、「必要な助言、指導、資金の融通のあっせんその他の援助」、こういうことにとどまっておりまして、補助というふうなことはことばとしても入っていないということがあります。したがってさっきも申し上げましたように、非常に金を出し渋っておる。新都市計画法と比べてさえ、国という立場で都市計画に対する意気込みというものと、農政に対する意気込みというのがいかに違うかというのが条文のちょっとしたところにもすでにあらわれているのではないかと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/19
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020・矢山有作
○矢山有作君 いま足鹿委員なり、中村委員のほうからお話がありましたので、私はただ一点だけお伺いしたいのですが、私どもがまず申し上げておきたいのは、この農振法案について、なぜこういった実地の調査をやったり、参考人の皆さんに御足労を願って慎重なる審議をやっておるかといいますと、私は新都市計画法、それから今度国会で成立しました地価公示法あるいは農地法の一部改正案、さらにまた土地収用法、これらのものを一連のものとして総合して眺めた場合に、いかに農民からの土地取り上げが強化されようとしておるかということを感じたわけです。そういう中で農振法というものが出てまいりました。
ところがこの農振法を見てみますというと、先に梅原参考人のほうから御指摘がありましたように、首都圏や近畿圏、中部圏、あるいは新産業都市の建設計画あるいは工業整備特別地域の整備計画、これら上位計画との調和をはかるという文章が出ておるわけです。そうすると、これらの諸計画というのは、先ほど来お話がありましたように、都市サイドでものを考えた考え方でありますから、したがってこれらの上位計画にしたがって農振関係の計画が立てられるということになると、この法律では何ら都市側からの攻勢に対して、農地を保全するということができないではないか。よく検討してみるというと、この農振法案対しての積極性は何もない。むしろ私は後退する面だけが出てきているのではないかということを痛感したわけです。
といいますのは、最近農林省から資料として出してもらった農林省と建設省との間の調整の方針というものがあります。それを見るというと、いかにこの法案が施行されても、これがうしろ向きであって、農業サイドから農業を守っていくという観点に欠けておるかということを痛感したわけです。たとえていうと、市街化区域の中で二十ヘクタール以上の集団優良農地は、これは打ち抜き農地として残るといっておる。ところがこれらに対してはいわゆる長期に投資効果が及ぶような投資は一切やらぬと、さらに調整区域として二百ヘクタール以上というものが指定されるということになっております。しかしながら調整区域として指定されたからといって、はたして農業投資が積極的に行なわれていくのかどうか、この問題にも非常に大きな疑問があるわけです。
それといいますのは、私は都市計画法の問題でちょっと調べておりましたところが、新しい都市計画法を立案したその担当者のほうから、こういうことがいわれておるわけです、この都市計画をやっていくについては、何も安心して農業をさせるために、農業サイドから都市計画をつくるのではない、こういうことばがはっきり出ておる。そうしてしかも調整区域というのは、何も五カ年ごとに調査をして、その時点で市街化区域に編入すべきものを市街化区域に編入するということも必要ないのであって、もしあるいは来年、再来年にでも市街化の進行度が激しければ新市街化区域へ編入をして、都市計画の変更をやってもいいんだということがはっきり明示されておるわけです。そうするというと、この法律というのは、通ってみても何らの実効がないどころではない。逆に大きな害の面が出てくる、こういうふうなことを私どもは痛感したわけです。
そういうことで、私たちは、農林省と建設省との調整の方針というものをやはり再検討しなきゃならぬ。そういう立場からわれわれは慎重審議を重ねておるわけですので、この点につきましては、決してわれわれが法案の審議をおくらかしておるというふうにお考えをいただいてはならないと私は思いますので、この点については御理解をいただくように特にお願いをしておきたいと思います。
最後にひとつお伺いしたいと思いますのは、市街化調整区域というものに対して現在の新都市計画法できめておる建築その他開発行為に対する規制で、はたして市街化が急テンポで進んでいくのを防ぐことができるのかできないかという問題であります。私は、いろいろの関係法規を調べてみまして、それを防ぐことは不可能であろうと思います。なぜかというと、たとえば調整区域に対して農業投資をやって土地基盤整備をやったといたします。ところが、その土地基盤整備をやったところほど、むしろ開発をやる人にとってはやりいいところなんです。つまり基盤整備のできた土地ほど、宅地変換をするのには造成費がかからないでやりやすい土地なんです。そういう土地は、しかも、調整区域と市街化区域と区分されたことによって、おそらく、地価が下がるとまではいかないにいたしましても、地価がもう上がってこないということが言えると思います。私はむしろ下がると思いますが、そうすると、そういう、地価が下がる、しかも基盤整備が行なわれる、そういうところに対して、たとえば二十ヘクタール以上の宅地造成をやろうという民間デベロッパーがおったならば、これは何ら規制を受けることなしに開発がやれる。そうなると、そこに開発行為を、二十ヘクタール以上のいわゆる宅地を造成することによって、むしろ調整地域がより一そう市街化される傾向が出てくるのではないか。
しかも——しかもです、たとえば県やあるいは市町村その他、公営住宅団地をつくる場合に、市街化区域の中に土地を求めて公営の住宅団地をつくるということは、これは地価の点から言うて私は非常にむずかしかろうと思います。そうすると、そういう公営住宅ですから、地価の安い調整区域のほうにむしろ出ていく傾向が出てくるのではないか。これは現実の問題としていままであったのです。むしろスプロール化の先頭を切っておったのは、公営住宅その他そういうものが先頭を切っておった。そういう傾向が私は今後も直らぬと思うのです。
そうなると、この調整区域というものをほんとうに調整区域として、——ほんとうにというのは、農業の側から考えていわゆる優良な農地として農業の振興をはかっていこうという積極性を持つとするならば、むしろ私は、開発行為やあるいは建築その他の行為に対して徹底した規制が伴わなければとうていどうにもならぬ、こう思います。その徹底した規制がなくて、この法案をいまの農林省、建設省の両者の調整方針のとおりこれを認めてしまったら、私はむしろ農業の面からいえば後退である、こういうふうに考えておるのですが、おそらく皆さんの中には、都市計画法との関連で、特に私が申し上げた市街化調整区域の問題については検討しておられると思いますので、その私の考え方が間違っておりますかおりませんか、御意見をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/20
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021・池田斉
○参考人(池田斉君) この農振法がむしろ非常に弱体であるからという前提もあるかと思いますが、きわめて、この市街化区域に対応する優良農地を保全しようと、こういう一つの考え方から見て、むしろマイナスでうしろ向きな役割りを持つのではないか、こういうような御指摘がございますが、これは、先ほど、この補助規定でありますとか、あるいは環境整備の規定であるとか、まあいろいろ、確かに内容的には弱い、こういう問題がございますけれども、ただ都市計画法が先行してすでにスタートを切っておる、こういう形の中で、農業のサイドから優良農地を少なくとも守っていこうというそういう姿勢の立法が何もないと、こういうことがもうすでに施行されておるというような現実の動きの中で、私は今後、内容の充実なりあるいは来年度以降のこういう問題に対する具体的な予算措置なり、そういう問題でカバーをぜひしてもらいたいと思うのでございます。
実はこの市街化区域、調整区域のことを具体的にいまいろいろお考えがございましたが、私は、先ほど申し上げましたように、市街化区域を必要以上に広げるという問題が、先ほど川野参考人からも、住民が非常にムードに酔って、地価の値上りという問題におくれをとってはならぬと、こういうことで非常に範囲が広くなって、線引きが、町村の中で具体的に道路一つとかあるいは用水路一つとかこういうことはなかなかむずかしいと、そういう問題をどうするかと悩んでおるというお話は、全く率直な現実の対応だと思います。しかし私は、やはりこの調整区域という姿の中でやっぱり都市近郊の農業を守っていくのだと、こういう人と土地、そういう意欲的な人々が踏みとどまってここでやるような施策について、農業側のサイドから何かそこにひとつはっきりとした線を出していくと、これがいまのところはっきりしていないというところにむしろ混乱があるので、私は都市計画法の中央審議会の委員もいたしておりますが、市街化区域に入るということは結局早晩農業はやめなければならぬということであり、またそこに入ってひとつ金もうけをしようというような考え方も、実際は、先ほどお話がありましたように、その住民の税収なりそういうものが基礎になり、それにまあ国が援助をして一つの財政規模を策定をして都市計画をやっていくと、こういうようなことで、何かこの市街化区域に入ると金もうけにつながるのだと、こういう問題は、少なくとも中央審議会の答申の中にもございますように、これは相当覚悟して入っていらっしゃいというような問題が少し意識的にあそこにも書かれておると思うのです。
そういうような問題を考えますと、いま迷っておるのが実態であって、したがって、農業サイドから調整地域に踏みとどまると、しかもそういうところに農政が手を伸ばすと、こういう面で、非常に不十分ではあるけれども、私はこの農業地域振興法がそこにかぶさってくると、こういう問題をよく説明をし納得をさせるというような何かそういう手段がないと、その辺の問題の整理ができないのではないか。特に調整地域につきましては、先ほど神戸参考人も申されておりましたが、私もやはり実質的には調整地域というものは二つの地域に分けられるのだと。一つは将来やはり都市化されて拡大をされると、要するに調査を行なって、次に実態の、市街化の伸長等の関連でそこまで範囲が及ぶというようなところはあらかじめ予備的な一つの地域として想定をすべきであって、それ以外の恒久的な優良農地というものをどうして確保するか、それにはやはり、放置するような姿で従来の一般の農政がただそこに行なわれるというようなことではなくて、むしろ農振法がそこに優先的にかぶさっていくと、こういうような問題で、十分ひとつ線引きとの対応において住民が迷わない形のPRが行なわれると、こういうことが必要であって、そういう意味では、農振法の法律が通りましたら、その運用についての十分な姿勢を正して、そうして線引きを中心として迷っておる農民層の考え方をよく整理をしてやる、こういうことこそぜひ必要ではないか。そういう意味におきまして、十全ではありませんけれども、この法律がうしろ向きではなくて、少なくともやり方によっては運用上前向きに作用する、こういうことを期待し、これの成立をお願いをしたい、こういう立場で申し上げておるわけでございます。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/21
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022・梅原昭
○参考人(梅原昭君) 調整区域の場合には、御指摘がありましたように、民間の業者が二十ヘクタール以上宅地造成をしようとする場合には、それが可能な道が開かれると思います。そうなりますと、市街化区域と調整区域は一体どういう点で違ってくるのかということになりますと、建設業者の費用の負担、つまり市街化区域の場合には、原則として道路であるとか、下水であるとかいうものは公共団体がつくるのだ。ただ調整区域の場合には、そういう公共施設を建設業者が負担しなくちゃならぬのだという意味での費用負担の違いが出てくるという点だけになってくるわけであります。それだけの条件でありますと、市街化区域よりも調整区域に進出する可能性が非常に少ないように思われるわけでありますけれども、ここで市街化区域と調整区域における地価の格差というふうなものを考慮に入れると、だいぶ事情が変ってくるのじゃないかというふうに思われます。
つまり市街化区域の場合に、著しく地価が上がるという説については非常に疑問を持っておるわけでありますけれども、調整区域については、一般的にいって、売買が、宅地転用が禁止される、こういうふうになりますので、地価が現在よりも著しく下がるということはまずこれ間違いないというふうに思います。しかも先ほど来申し上げておりますような理由で、調整区域だからといって、そこに手厚い農政の保護が今後新しく出てくるというふうにも期待できませんので、そういうところでやはり百姓だけでは食っていけない農民というのが依然として出てくるだろうしあるいはもっとふえてくるかもしれぬ。そうしますと、土地の値段が下がってくる。売りたいというふうな気持ちがありまして、しかもその買い手ですね、買い手は一体だれなのかというと、その二十ヘクタール以上というかなり資本力のある民間の建設業者だけが買い手である。つまり買い手独占という立場になります。
そうなりますと、非常に建設業者の立場からしますと、安い値段で土地の買収がやりやすい。だれか買ってくれる人はいないかということを待ち受けておる農民がかなりたくさん出てくるだろうというふうに予想いたしますと、公共施設を自分の負担でつくらなくちゃならないという点でのマイナスはあるけれども、地価の値下がり、地価の非常な開きという点を考慮に入れますと、そういうマイナスを補って余りある点がかなり出てくるのではないか、そういう意味で、経済法則からいって、調整地域において、二十ヘクタール以上の民間業者がどんどん家を建てていくというふうな状況がかなり可能性としてあるのではなかろうかという感じがいたします。
その場合、そういうふうな地域に対して、いま問題になっている農振法をかぶせることによって規制できるのかという問題があるかと思いますけれども、これは先ほど申し上げましたように、たとえば大阪で例をとってみますと、近郊整備区域というふうな指定を受けておって、つまり上位計画によれば、すでにもう市街化する市街地として組み入れられるべきものだというふうな区域であって、なおかつ調整区域だ、しかもその農振法がかりにそこに適用されるということになりますと、はたしてそれは農振法でそういう地域の転用を排除するということができるのかどうか、非常にむずかしい問題が出てくる。むしろそういう、したがってそういう場合には、法律の規制というものは、先ほど申し上げました経済法則といいますか、とにかく安いところで住宅を建てていくという経等法則のほうがむしろ優先するのではなかろうかというふうな感じがいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/22
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023・任田新治
○委員長(任田新治君) ほかに御発言もないようですので、参考人に対する質疑はこれをもって終わります。
参考人の方には、長時間にわたり本委員会に御出席くださり、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにどうもありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
それでは、本案について、政府当局に対して質疑のある方はこざいましょうか。——ございませんようですので、本案についての質疑は本日はこの程度にとどめておきます。本日はこれにて散会いたします。
午後四時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X02419690620/23
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