1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十五年三月六日(金曜日)
午後三時十四分開議
出席委員
委員長 池田 清志君
理事 大村 襄治君 理事 田中 龍夫君
理事 床次 徳二君 理事 箕輪 登君
理事 川崎 寛治君 理事 中川 嘉美君
理事 永末 英一君
宇田 國榮君 山田 久就君
豊 永光君 広瀬 秀吉君
美濃 政市君 山本弥之助君
大久保直彦君 不破 哲三君
出席国務大臣
外 務 大 臣 愛知 揆一君
国 務 大 臣
(総理府総務長
官) 山中 貞則君
出席政府委員
総理府総務副長
官 湊 徹郎君
総理府特別地域
連絡局長 山野 幸吉君
外務政務次官 竹内 黎一君
外務省アメリカ
局長 東郷 文彦君
外務省欧亜局長 有田 圭輔君
委員外の出席者
沖繩及び北方問
題に関する特別
委員会調査室長 綿貫 敏行君
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三月五日
沖繩復帰のための準備委員会への日本国政府代
表に関する臨時措置法案(内閣提出第五四号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
沖繩復帰のための準備委員会への日本国政府代
表に関する臨時措置法案(内閣提出第五四号)
沖繩及び北方問題に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/0
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001・池田清志
○池田委員長 これより会議を開きます。
沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。
沖繩援助費等について、政府から説明を聴取いたします。山野特連局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/1
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002・山野幸吉
○山野政府委員 昭和四十五年度の対沖繩援助費につきまして、その概要を御説明いたします。
昨年秋行なわれました日米首脳会談において、沖繩の本土復帰が一九七二年中に実現することとなったことに伴い、明年度の沖繩援助におきましては、本土及び沖繩双方の復帰準備体制の整備強化に即応し、行政各般にわたる格差の是正措置、各種制度の整備及び産業経済の振興開発等を強力に推進することにより、沖繩の本土復帰の円滑な実現をはかることを基本とし、これがため特に、一、復帰に備え、沖繩経済の開発と産業基盤の整備をはかるため、復帰記念事業としての主要島嶼の一周道路の改良整備等の公共投資を中心に、財政援助計画の拡大をはかること、二、社会保障制度、医療体制の整備充実及び文教施設の拡充強化等本土との格差の是正、制度の整備等について援助措置を強化すること、三、琉球政府及び市町村の財政を強化するため、琉球政府行政運営費について援助措置を講ずるとともに、市町村交付税に対する援助の増額等により、一般財源の充実をはかること、等に重点を置き、援助計画を策定したものであります。
この結果、明年度沖繩財政援助費は、一般会計分二百六十億一千六百八十八万余円、財政投融資分七十億円を合わせ三百三十億一千六百八十八万余円となり、これに前国会において成立を見ました沖繩における産業の振興開発等に資するための琉球政府に対する米穀の売渡しについての特別措置に関する法律に基づいて沖繩に積み立てられる本土産米穀資金の予定金額を加えますと、総額ば三百五十億円余に達する見込みであります。これにより、明年度援助額は、本年に比して約五四%の伸びとなり、これによって復帰準備は着実に遂行されるものと考えております。
以下、援助計画のおもな内容について逐次簡単に御説明いたします。
まず産業振興及び国土開発関係の援助といたしましては、農地農業用施設、道路、港湾、漁港、林道等の産業基盤を前年度に引き続き整備するとともに、那覇新港、泊漁港、石垣漁港、西表縦断林道等についても継続して工事の進捗をはかるほか、今後の沖繩産業開発の先導となるべき基盤整備事業を特に復帰記念事業として実施することとし、おおむね一九七二年完成を目途に、沖繩本島、宮古島、石垣島、西表島、久米島等主要五島の循環道路の改良新設を行なうための初年次分の援助を行なうこととし、また、本島北部一帯の広範な水資源の調査及び南部戦跡の整備のための経費について援助することといたしました。
農林漁業及び中小企業の振興については、財政投融資を拡大し、金融上の援助を行なうほか、特に中小企業につきまして、新たに近代化資金制度の創設、信用保証事業の充実、指導事業の強化等を行ない、復帰に備える体制を整えることとし、農林漁業関係では、家畜導入、糖業振興等従前からの事業にあわせ、明年度においてはキビ作合理化対策、病害虫防除、農産物流通対策、沿岸漁業振興対策、農業試験研究等の事業を加え、基幹産業の体質改善と振興をはかることとしております。
また、都市計画事業を大幅に拡大して那覇市を中心とする都市建設を推進するほか、下地島に三千メートル級の大規模な滑走路を有する訓練飛行場を建設し、離島の効果的開発をはかることとしております。
治山事業、河川改修、海岸護岸改修、造林事業等についても前年に引き続き援助を行ない、国土の保全につとめるとともに、新たに国土基本図を作成するための援助を行ない、国土の開発利用に資することとしております。
社会福祉及び医療関係の援助につきましては、国民年金事業に対する援助のほか、各種年金保険制度のうち、いまだ実施されていなかった厚生年金保険及び国民健康保険について明年度から制度の発足が予定されますので、新たに本土の国庫負担制度に準じた援助を行なうことといたしました。また、生活保護の基準を、ほぼ本土並みの水準に引き上げることを目途に援助を充実し、身体障害者福祉及び老人福祉対策をはじめ、母子福祉資金、世帯更生資金等についても本土における国庫補助制度に準じた援助を新たに行なう等、社会福祉及び低所得者対策の充実に配慮し、児童福祉対策においてもその内容の充実につとめております。
また、本土との格差是正の見地から社会福祉施設の拡充整備をはかるため、保育所、老人ホーム等を従前に引き続き整備するほか、重症心身障害児施設精神薄弱児及び養護施設等の新設を行ない、住宅対策といたしましても公営住宅及び財政資金による融資住宅の増加をはかることといたしました。
精神衛生対策、ハンセン氏病対策、原爆被爆者対策等いずれも前年度の対策をさらに充実することとし、結核対策といたしましては、新たに健康診断費及び在沖患者医療費について援助を行なうようにいたしております。
なお、沖繩の医療水準の向上のため、かねてから建設を進めてまいりました新那覇病院も明年には完成の運びとなり、その建設の最終年次として、建築費とともに設備備品についても援助するほか、精神衛生対策の一環として、精神病院の増築についても援助することにし、さらには、離島僻地の医療体制を整備する経費として、診療船の購入費援助とともに医療、救難業務等多目的に利用されるヘリコプターの購入費に対し援助することにより、従来から継続して実施してきた無医地区に対する医師派遣とあわせてその対策を充実いたしております。
軍雇用者の解雇対策といたしましては、御案内のごとく、本年度援助費の中で、特別給付金等にかかる援助措置を中心に一応の応急措置をとったところでありますが、明年度におきましては、まず失業保険の運用に要する財源の援助をはじめ、軍雇用者援護措置費として本土における駐留軍離職者対策に準ずる援護が沖繩においても実施できるよう措置し、再就職訓練のため、本年、雇用促進事業団が着手した総合職業訓練所の設置とあわせ公共職業訓練所の整備及び基地内職業訓練に要する経費についても援助するとともに、離職者の援護指導等のための公共職業安定所の整備についても措置することといたしました。
文教関係の援助につきましては、教育水準の向上のため、義務教育諸学校の施設備品を前年に引き続き整備するほか、沖繩における高校施設整備の現況にかんがみ、新たに高等学校の施設の整備及び産業教育設備についても援助することとしております。また、琉球大学の整備につきましても、かねて建設中の保健学部の施設は、明年度をもって完成いたしますので、既設学部を含め設備備品の援助を大幅に拡充し、その内容の充実をばかることとしております。また、義務教育職員の給与費、教科書無償給与費、準要保護児童及び特殊学校児童の就学奨励費、私学振興費、国費学生招致に要する経費等について引き続き援助を行なうほか、水産高校実習船の建造、教育研修センターの増築等に要する経費について新たに援助することとし、僻地教育の振興についても本土に準じ援助することといたしました。
次に、琉球政府及び市町村の行財政関係について申し上げますと、琉球政府及び市町村の行財政水準の向上をはかることは復帰準備のための最も重要な課題の一つでありますので、明年度においては、新たに琉球政府の行なっている国政事務及び県政事務を含め行政運営費の一部を援助することにより、琉球政府の財政力の強化をはかることといたしました。
また、市町村については、市町村交付税の財源としての援助を大幅に増額し、一体化施策の進捗に沿って市町村行財政の充実強化と住民サービスの向上に資することといたしました。
以上のほか、前年に引き続き、航路標識、気象観測施設、警察通信施設の整備及び南方同胞援護会を通ずる福祉事業の援助を行なうとともに、今年度から新たに市町村消防施設の強化に必要な財政援助を行なうことといたしました。
また、今年十月本土において実施される国勢調査にあわせて沖繩においても国勢調査を行なうこととなっておりますので、これに対する援助を行なう等、本土との一体化の促進をはかることといたしております。
また、米軍基地周辺の小学校、幼稚園、病院等の公共建物の防音工事についても新たに援助するほか、昨年秋の台風第十一号及び十二号による災害復旧工事、離島通信及び離島航路の整備調査等住民福祉の向上のための施策を進めることといたしております。
なお、近く、多年沖繩住民が要望してきた国政参加が実現の運びになるものと期待されますので、選挙の執行に要する経費をあらかじめ計上し、その円滑な実施をはかることといたしました。
以上のような援助事業を予定し、それぞれについて経費の見積もりを行なっておりますが、災害その他不測の事態の発生等に備え、明年度においてはあらかじめ援助費のうちに調整費を計上し、援助事業の迅速な執行と琉球政府の財政の安定に資することといたしております。
明年度援助計画実施に要する経費は、本土産米穀資金による二十億円を途き冒頭申し上げましたとおり総額三百三十億余円となりますが、予算計上等については、日本政府と琉球政府との会計年度の相違を考慮し、昭和四十五年度一般会計分百八十五億六千余万円、同財政投融資計画分三十五億円、合計二百二十億六千余万円と、昭和四十六年度一般会計計上予定分七十四億五千余万円、同財政投融資計画予定分三十五億円、合計百九億五千余万円とにそれぞれ区分計上または計上予定いたしております。
なお、昭和四十五年度の対沖繩援助費は、さきに述べた二百二十億六千余万円に前年度分六十九億五千余万円を加えた二百九十億一千余万円と相なっております。
次に、以上御説明いたしましたほかに、沖繩の復帰対策の推進体制を整備するための沖繩・北方対策庁設置に必要な経費として三億三千百余万円、尖閣列島及びその周辺の資源調査に必要な経費として三千百万余円、本土産米穀の琉球政府への売り渡しにより生ずる食糧管理特別会計の損失を補てんするための繰り入れ金として二十二億を含め所要の経費を計上いたし、また、北方領土問題並びに北方地域に関する諸問題の解決を推進するための諸対策に資するための北方地域総合実態調査経費及び同地域元居住者の実態調査経費等として三百万円余を計上するほか、昨年発足いたしました北方領土問題対策協会を推進母体として今後も積極的な北方領土問題に関する世論喚起をはかるための啓蒙宣伝、調査研究、国民大会、領土展、キャラバン隊派遣経費、北方地域元島民の生業研修経費等にかかる補助金として四千四百万円余、合計四千七百万円余を計上いたしておりまして、これらの経費の合計は二十八億四千六百余万円となっております。
以上をもって私の説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/2
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003・池田清志
○池田委員長 山中総務長官から発言を求められております。これを許します。総理府総務長官山中貞則君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/3
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004・山中貞則
○山中国務大臣 先日は、ただあいさつだけでよいということでございまして、新聞報道その他で何だか沖繩及び北方問題特別委員会をばかにしたような記事が出ておりましたけれども、御列席の皆さまはそういうことでなかったことは御理解をいただいておると思いますので、お許しをいただきたいと思います。
本日は、沖繩問題及び北方問題についての所信の一端を述べさせていただきたいと存じます。
まず、沖繩についてでありますが、多年わが国民の宿願でありました祖国復帰は、昨秋の佐藤・ニクソン会談によって一九七二年中に、核抜き、本土並みという大多数の国民の意思に沿った形で実現を見ることとなったわけでありまして、まことに慶賀にたえません。今後、政府は、施政権返還のための具体的交渉に入るわけでありますが、これと並行して、復帰を円滑に進めるための内的的な諸準備を進めなければなりません。何といっても、四半世紀の間、他国の施政権下に置かれてきた沖繩を祖国に迎え入れるという事業は、政府が真剣に取り組むべき一九七〇年代初頭における歴史的大事業であります。
私は、この重要なときに、沖繩問題を担当する国務大臣に就任しましたが、微力のすべてをなげうって全力をあげて本問題の処理に取り組んでいく決意であります。
現在、沖繩県民の間には、復帰を目前にして、復帰後の経済的、社会的諸問題について不安を抱いている向きのあることを私は承知しております。さきの大戦において身をもって祖国の防衛に挺身され、多大の犠牲と甚大な戦禍をこうむりながら、戦後はそのまま長い年月米国の施政権下に置かれてきたことが、国際緊張のもたらした結果であり、祖国日本の努力のみでは解決し得なかった問題であることを理解していただけるとしても、沖繩百万同胞の方々の心情については、一億国民とともに祖国が償いの心を持ってまず事に処すべきであり、担当大臣としての私はこのことを一そう痛感しているところであります。政府は、すみやかに沖繩の将来の展望を含めた復帰対策の基本方向を確立し、沖繩県民の方々が喜んで復帰の日を待ち望むような体制を整える責任と義務があると考える次第であります。
私は、この認識に立って、今後、豊かな沖繩県づくりを目標に、本土、沖繩の一体化施策を強力に推進するとともに、政府諸機関の協力を得て早い機会に沖繩復帰の基本方針を策定し、円滑な沖繩の祖国復帰を期し、沖繩県民各位の抱いておられる不安や動揺の解消に全力を傾ける決意であります。
政府は、さきに沖繩の復帰対策の大綱を決定するため、内閣に沖繩復帰対策閣僚協議会を設置したのでありますが、さらに、現在の総理府特別地域連絡局及び沖繩事務所を改組し、総理府の外局として沖繩北方対策庁を新設し、その現地機関として沖繩事務局を設置し、沖繩に置かれる返還準備委員会日本政府代表と協力して復帰準備対策の遂行に万全を期すこととしている次第であります。
明年度沖繩援助予算につきましては、復帰準備を本格的に進めるため、一体化施策を一段と充実強化し、かつ、復帰に備えて沖繩の経済、社会の開発、発展をはかるために必要な財政措置を講ずることとした次第であります。ただいま特連局長からはすでに詳細な予算の内容の説明を御聴取いただいておるわけでありますが、私からあらためて概括的に申し上げますと、明年度の沖繩援助総額は、一般会計において二百六十億一千六百万円余、財政投融資において七十億円、合計三百三十億一千六百万円余となり、前年度の援助額を百億円以上も上回るものとなっております。これに本土産米穀の売り渡し代金の沖繩における積み立て運用額二十億円を加えますと三百五十億円以上に達し、本年度の援助額に比べ実に五四%の大幅な増額を示しております。
私は、これら当面の措置に引き続き、沖繩復帰対策の大綱の策定に取り組む方針でありますが、復帰対策の策定及び推進にあたっては、第一に、従来政府が進めてきた一体化施策について、その対象範囲を拡大し、政治、経済、社会、教育等の諸制度について積極的に本土との整一化をはかるとともに、立ちおくれの著しい社会資本の充実、公共施設の整備、社会福祉の充実等、本土との格差の是正につとめること、第二に、経済問題については、沖繩経済が復帰に際し急激な変動を来たさないよう十分配慮しながら、長期的展望に立って、日本経済の一環としての沖繩経済の新たな役割りを探究し、その長期開発構想を策定して沖繩経済の維持発展振興に努力すること、第三に、復帰の際に処理を要する諸問題、特に本土法適用に際しての経過措置等については、沖繩の政治的、社会的、経済的実態に即して慎重に検討し、綿密かつ周到な用意をすること
等を主眼といたしたいと存じます。
次に、当面解決を要する問題として、沖繩における軍関係労働者の大量解雇問題が発生しておりますが、政府としては、今回の大量解雇が沖繩における社会一般に与える影響がきわめて大きく、かつまた、大量解雇をめぐって生じている労使間のトラブルが日米友好のためにも好ましくないものと考えておりますので、当面の措置として琉球政府が行なう軍関係離職者対策に積極的に協力することをきめ、財政的、技術的援助を行なうこととするとともに、米国に対しても離職者救済措置の円滑な処理及び労使間のトラブルの円満解決をはかるため、先般、解雇予告期間を本土並みとすること、退職手当の増額についても本土並みに考慮すること、再就職に備えて基地内における職業訓練を実施すること等を申し入れた次第であります。特に、本問題をめぐって全軍労と米軍との間に生じているトラブルにつき、基地機能の維持は関係地域住民の協力と理解なしではあり得ないという認識を日米ともに持ちつつ、特に復帰後に向けての長期的展望に立って労使間の安定をはかることが大切と考えますので、政府としては、今後とも事態の進展に応じて適切な措置が講ぜられるよう米側と協議してまいるとともに、沖繩の現在の雇用形態が労使関係を硬直化させた遠因をなしていると判断されますので、雇用制度の改善について本土に準ずる間接雇用形態への切りかえを目標に、外交ルートを通じて積極的に努力してまいる決意であります。
なお、これらの復帰対策については沖繩県民の意向をまず優先して反映させるべきであり、この意味においても沖繩県民代表の国政参加の早期実現が望まれますので、各位の格別の御配慮をお願いする次第であります。
次に、北方領土の問題についてでありますが、沖繩の一九七二年返還が確定した今日、戦後処理として残された最後の懸案である北方領土問題の解決に国をあげて取り組まなければならないと考えております。
政府は、従来より、ソ連に対し機会あるごとにその返還を要求し、昨年秋には、愛知外相の訪ソの際もコスイギン首相との会談において強くその返還を要求いたしたのでありますが、ソ連側は、日ソ間の領土問題は解決済みだとの主張を繰り返すとともに、第二次世界大戦後の領土の現状を変更することは他に波及することとなるので好ましくないと主張し、何ら前進を見るに至っていないことはまことに残念にたえません。このように過去の日ソ交渉の経過を直視するとき、北方領土問題の解決はなかなか容易なことではないと考えさせられます。
したがって、今後北方領土問題の解決にあたっては、まず政府が先頭に立って努力することはもちろんでありますが、国民の一人一人が北方領土問題についての理解と関心を高め、強力な国民世論を背景にして今後ともねばり強い交渉を続けていくことが肝要であり、同時に、北方領土問題の解決なくしては、日ソ間の真の友好、協力関係の発展はあり得ないとの立場を堅持しつつ、沖繩以後の新事態を踏まえて、新しい国際情勢の展開の中で本問題の解決をはかる必要があると考えるのであります。
このため、政府は、今回沖繩の復帰準備対策の推進と並行して本問題の解決促進をはかるため、前にも述べましたように沖繩・北方対策庁を設置するとともに、他方、既存の北方問題各省連絡会議を通じて関係機関の緊密な連携のもとに政府施策の推進をはかってまいりたいと考えております。また、さきに発足させた北方領土問題対策協会を推進母体として北方領土問題に関する国民世論の高揚をはかり、政府、国民一体となって本問題の解決に不退転の努力を続ける決意であります。
以上をもって所管大臣としての私の沖繩問題及び北方問題についての所信表明といたします。今日まで長い間これらの問題に取り組んでこられた特別委員会委員各位の御協力を期待してやみません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/4
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005・池田清志
○池田委員長 ただいまの山中総務長官の所信表明に対し質疑の申し出があります。この際、これを許します。川崎寛治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/5
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006・川崎寛治
○川崎(寛)委員 四時までという時間だそうで、だれもいないものですから私が少しお尋ねしたいと思います。
まず第一に、四十七年からいつになるか、返還協定の関係になりますけれども、完全に復帰、こういうことになりますと、四十六年の予算、それから四十七年の予算の組み方というのはたいへんむずかしいいろいろな問題があると思うのです。そこで、今回もアメリカの援助予算が大幅に削減をされた。そのことは日本政府の四十五年度の予算の閣議決定と相前後してだったと思うのです。そうしますと、そういういま施政権を持っておる者が施政権者としての責任においてやらなければいけない、しかも一番谷間に落ち込む大事な時期ですね。佐藤・ニクソン会談のあと、それから四十七年という間で一番混乱が多い、そういう時期にアメリカ側のそうした援助費の削減の連絡、それは先般の日米協議委員会で正式に連絡になるのか、あるいはその前に、日本政府側が予算編成をしておる最中に、大体削減されるであろうということは昨年の夏から予測されておったことなんでありますけれども、正式にそういうものが日米間で——どういうルートで、いつ、今回の削減という連絡があったか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/6
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007・山中貞則
○山中国務大臣 なかなかアメリカという国もさっぱりした国のようで、そこらのところはさっぱりし過ぎておりまして、たとえば一九七〇会計年度の中の実行予算を二百万ドル削減しましたね。こういうことも削減したことがあとで明らかになるというようなことで、したがって今度の予算編成の最中にアメリカのほうから、今度はアメリカの援助予算というのは相当落とすことになっておるからという連絡も通告も何にもないんです。ただ、ふたをあけてみると、援助予算そのものも大幅なダウンであるとともに、一方ではまた組みかえなどがしてありまして、弁務官予算のほうに四十一号道路というのが逆に予算が三倍くらいふやして入っておるというようなこともありまして、これも結果は形、ルートが違うだけで、やはり琉球政府のほうに入るようでありますから、そこらを差し引きますとおおむね五百万ドルくらいという感じになるようであります。しかし、これらについてもアメリカ側としては日米協議委員会の席においても、向こうからこのような今回は減らすことにした、これはアメリカの一九七一年度の予算の姿勢であって、あに沖繩のみならんやであるというような説明も何もないのですね。率直に言って、こっちのほうから、相当減らすようであるが、やはりそういうものについては施政権者であるから配慮をしてもらいたい、アメリカの基本的なインフレ対策の姿勢はわかるけれども、こういう一挙に減らすことについては、本土政府も努力するが、そちらでも考えてもらいたいという発言をしなければ答えはない。ぶちあけたところ、私はどうも外交官でないので、こんなことを言うと、あとのことはまた貝のふたを閉ざして私には情報が入らないようになるのかもわかりませんが、率直に言ってそういうことなんですね。では、どうしたのかというと、私のほうでは、二百万ドルが一九七〇会計年度で削減をされたという現実の事態を踏まえて、少なくとも次年度予算も容易なものではないだろう。アポロ計画そのものなり、従事者の大量解雇なりというものまで行なっておるわけでありますから、これは相当のものが出てくるということは予想しておりまして、しさいに分析してみますと、たとえば教職員の人件費に六百万ドル出しておった、こういうものはおそらく切ってくるだろうなという、そういう一応の推測は立てながら、予算編成には当たりました。その結果、大蔵省側としては、国税を納めていない地域に対して交付税的なものをやるのはどうもという、財政法上のたてまえからいえば、あるいは私は大蔵省の言うことも筋があると思いますけれども、当然反対もありましたけれども、御承知のとおりの予算の中で、琉球政府の行政援助費、財政援助費に二十億新規につけておりますし、また調整費十億というものも新しく新規の費目として設定をいたしまして、そのような財政上の問題に対処するとともに、これは後ほど御質問もあると思いますが、おそらく一方においては、財政ばかりではなくて、全軍労の解雇者数というものがふえるのじゃないかということで、それが一体幾らふえるかと予測して予算を組むわけにいきませんので、そういうふえた場合でも相当な程度まで、千名程度までは予測していない数字が出ても、本土のほうの一時給付金と再就職手当というものは対応できるようにという気持ちをもって、調整費十億を組んだわけでありますが——ここまではいまだこの段階では答弁しなくてよかったのかもしれませんが、要するに、アメリカ側の連絡というものは、その意味においては少し遺憾な点があるという気持ちがいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/7
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008・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それで日米協議委員会というのは、そういう援助関係の日米間の協議をする正式の機関ですけれども、これが十分機能していないという点を指摘せざるを得ないと思うのです。そこで、これはいま総務長官も少し触れられましたけれども、先のことを考えますと、四十六年、四十七年というものについては施政権者側の最後の処理段階の姿勢というものについて相当明確にさせておく必要がある。もともとアメリカの援助に対して、日本がピックアップ方式で援助項目に対応して援助をしていく、こういういまのシステム自体が少しおかしなものになっておるわけなんですから、そこらはひとつ明確にしてもらいたいと思います。だから、四十六年、四十七年のそういう見通しというか、そういうものについて明らかにしていく予定なのか、その辺、これは現地側としましてもやみくもに手探りで引いているようなかっこうになりますから、この点は早く明確にしておく必要があるのじゃないか、こう思いますが、その点について伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/8
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009・山中貞則
○山中国務大臣 日米協議委員会が十分に機能していない、確かにそうだったと思います。ただ、これは日本政府側の琉球政府援助予算を組みますときに、施政権者としてのアメリカ側の了解をとり、ちょっと前まではアメリカ側がそれを日本側にこういうものを組んだらどうだというかっこうだけでも提示するような形式をとっていたやに聞いておりますけれども、現状から見ると、今度は予算以外の日米間の当面の問題等についても話し合いが——発表文の中には入りませんけれども、進められつつあるというようなことを考えますと、たとえば全軍労の解雇問題については日本政府とアメリカ政府の問題ではない。ことしの一月の初めごろ言っておりましたアメリカの態度が、これは日米両国の問題として取り上げようという姿勢を示し、それに対応する姿がいろいろとちらほら出てきていることは皆さん御承知のことだと思いますが、こういうことで日米協議委員会がようやく機能し始めたというふうに御理解賜わりたいと思います。私は、どうも外交のことはしろうとで、育ちもたいしたことはありませんので、外交からいえば何だか横車ばかり押して、ちっともルールもモラルも知らないやつだといわれるようなことがあるかもしれませんけれども、しかし、私は、祖国政府が何をしなければならないか、そして何を義務としてとらえなければならないかという点を、アメリカ側にとってもマイナスでないと思うならアメリカ側がこれを受けることが正しいことであると信じますがゆえに、私としてはひたむきにこれを押していくということであります。私の一応の日米協議委員会の姿勢を申し上げたわけでありますが、そこで一九七一会計年度といいますと、アメリカ側の予算はどうなるか、それに対して日本政府側の予算は長期的展望で早目に見通しを立てておかなければならぬじゃないかという御指摘もごもっともだと思いますが、アメリカ側がいまのようなインフレ対策的な予算をこのあとの七二会計年度でもとるような形でとっていくのか、あるいは基地の縮小そのものという好ましい形態になっていくのか、経費だけになるのか、まだわかりません。ただ、私ども日本政府側といたしましては、やはり本土の責務として、沖繩類似県というものが、本来本土の一県であったならば、どのような交付税なりあるいは国の補助なり援助なりを受けてしかるべきものであるかということを、絶えず念頭に置いて対比しつつ、先ほども申しましたが、国に対する負担が皆無の地域であったとしても、少なくともアメリカの援助予算等の変化によって復帰までの一、二年間というものが非常な危機にさらされるというようなことのないように対処したいと思っております。これは機動的に行なわなければならないし、しかも、その推測をしっかり定めて、これを理論づけながら、財政当局ともよく根回しをして、さしあたり来年度の予算に結びつけるための、ことしの八月末おそらく締め切る予定である昭和四十六年度予算の形態はどのようなものにするか、これをいま全力をあげてこれから取り組んでいきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/9
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010・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それではそういことで、まあ相手のあることでもありますけれども、主体的に進めていただきたい、こういうふうに思います。
それから次には、軍関係労働者の問題でありますが、これはいまの所信表明にも大筋は説明があるわけですけれども、軍関係労働者の諸君が要求しておりました三つの大きな要求、そのうちふところの痛まない問題というのは、予告期間の問題が一つありますけれども、あとの退職金やあるいは間接雇用制度の問題というのは、これは間接雇用制度ができるかどうかだというところにかかってくると思います。そこでお尋ねをしたい点は、これは具体的にもお尋ねしたいのですけれども、日本政府側のこの間接雇用制度についての、各省の事務レベルでももう進められておるというふうにも聞いておりますが、大体いつごろまでに日本政府側のをまとめるのか、あるいは日本政府もまとめないでアメリカ側と折衝しながら固めていく、そういうふうな形になるのか、そこらをひとつまず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/10
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011・山中貞則
○山中国務大臣 まずやはり日本政府のほうの要求として形はまとめなければいかぬと思います。向こうさんの御意向を聞きながら詰めていこうったって、とてもそれはいつの日になるかわからないと思います。私は、やはり現在の全軍労の一番のトラブルの出発点は、雇用形態にある、私自身がそう信じますから、この所信表明も私が書いたので、ふだんの所信表明と少し違っておる感触がだいぶ出ておると思いますが、したがってその間接雇用形態というものを、布令百十六号を撤廃せよとかあるいは裁判権がどうだとかというようなことまで詰めなければできないという解釈をしますと、これはなかなか実現しっこないと思うのです。そこで私としてはまず、直接にアメリカの兵隊の銃口とわが同胞とがぶつかり合うというような、このような状態を避ける。しかも基地関係のサービス業者の方々との間に県民が相争うというような悲劇を絶対に繰り返させてはならぬという観点から、雇用形態についてすみやかに実をあげたい。アメリカ側がこれに対してアメリカ自身のためでもあるという気持ちにぜひ立ってほしいという願望を、たびたび直接間接に伝えております。私としては、これから先の二年間を日米友好のいしずえになる二年間にするもしないも、やはり沖繩をどう扱うかにかかっておるとアメリカには直言をしておるわけでありますけれども、そのような見地から私ども日本政府が、あるいはそれに準ずる形態でもって、少なくとも軍が直接雇用する形態というものを、それにワンクッション置きまして、間接雇用形態を実現せしめて、そして相なるべくんば本土との退職金の落差の三六%程度といわれておりまするものを、こちらのほうも全軍労の方々にめんどうを見て差し上げるようなことができれば、現時点においては一番望ましい形態であると考えまして、いま積極的に詰めておるところであります。
余談でありますが、私、万博の開会式に国会が一応ひまがありそうだと思いましたので、ランパート高等弁務官とこの問題を詰めるべく訪沖計画を立てたのでありますが、ランパート高等弁務官の先島関係の視察日程とぶつかりまして、どうも私が期待するような、じっくりとひとつ二人きりでとことんやろうという時間がとれそうにないし、それにうっかりしておったのですが、屋良主席が逆にまた万博に上京されるのですね。そうすると主席もいない、弁務官もいないところに私が行ったのではこれは話にならぬので、私延ばしましたけれども、延ばしたからといってこの問題を私がほうっておくわけでないので、マイヤー米大使等のルート等を通じながらこの問題をすみやかに詰めていって、なるべく早く急いで結論を出してあげることが、予想される春闘の労使の交渉においても、建設的な空気に変わるのかあるいは絶望的な自暴自棄の交渉に変わるのかという重大な時期であると思いますので、相なるべくんば私どもの努力がその間に実ることを期待して、いま一生懸命やっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/11
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012・川崎寛治
○川崎(寛)委員 その気持ちはよくわかるわけで、だから私も春闘の時期等を頭に置きながらお尋ねをしておるわけですが、日本政府側の案をまとめたいという時期は大体どの辺に置いておられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/12
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013・山中貞則
○山中国務大臣 その時期を聞きなさんなとさっきから言っているので、じゃいつまでと言ったって、向こう側がそれにノーと言った場合には身もふたもなくなってしまうでしょう。だからやはりこちら側からつくるのですが、つくるについてはつくったものに相手が乗ってくるかどうか、そこらの打診はしながらつくらないと、やはりそれはたとえば一番むずかしいのは、日本政府がそのまま直接向こうで雇用者になるという形態はちょっとむずかしいですね。そういうものを、むずかしいものはむずかしいとして、しかし一番望ましいものはそれだと思うのですね。そこらの感触は表裏それぞれ違うものを持っておりますけれども、一番望ましい形態であり、なおかつ米側が、譲歩してほしいと私どもは思いますが、施政権者として受け入れてもらえる形を詰めていきたい、こう思っているわけで、私が三月十四、五日に弁務官と向うでじっくり詰めたからといって、その席でそれが最終決定であるかというとそれもまた弁務官としてもワシントンあるいはまた同じ筋でも国務省系統というものもありましょうし、なかなか双方外交ルートと直接の責任者とはそれぞれ隔靴掻痒の感を持っておるわけでありますから、十分の横の連絡も必要でありますので、私としては、まあ日付を申しませんけれども、なるべく早くその結論を得るようにいま努力中である、交渉中であるということを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/13
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014・川崎寛治
○川崎(寛)委員 ぼくがその点をくどいように言いますのは、いまも長官が言われたようにルートが幾つもあるわけですね。だからなかなかクロスしないわけですよ。これはまあ準備委員会の法案を審議する際にも明確にしたい、こう思って、これは外務省側にもアメリカ側の系統図というものを明確にするように資料要求しておりますけれども、これ以上お尋ねしません。ただそういうふうにルートがありますので、長官のお気持ちはわかりますが、なかなかそれがクロスしないという点について、従来の経緯というものを知っておりますから、それだけに私はたいへんしつこいようですがお尋ねしておいたわけであります。その点はよくわかりました。それでひとつなるべく早い機会に固めていただきたい、こういうふうに思います。
それから時間がもうございませんので最後に、沖繩対策の閣僚協議会ができておる。それが全体をまとめますね。いま各省に復帰対策室なりそれぞれの名称で対沖繩を検討する機関があるようです。そこで本委員会でこれからいろいろのことを審議をいたしてまいるについて、総理府あるいはこの新しい機構ということになるにいたしましても、各省のそれぞれ復帰対策室なり準備室なりというものにおける検討、そういう検討事項を、あるいは固まっておるものがあるなら固まっておるもので、そういうものを、委員長のほうにもお願いしたいのですが、ひとつ本委員会でいろいろ論議をしていく材料として、この資料の提出について各省の分もできればお願いしたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/14
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015・山中貞則
○山中国務大臣 いままではどうもばらばらで、各省が自分たちの役所の関係の問題を調査したり指導したりしておったようです。しかしやはりこれはもう復帰が間近いことでありますから、これから先いろんな構想をまとめていく上において各省ばらばらでは困りますので、いま各省のいろいろの既存の調査資料なり、これから先派遣されるものについては、全部私の手元に報告書が届くように、そしてそれぞれの各省の行政ルートごとの違いというものが一本にしぼった形で青写真ができ上がるようにいま整理しつつございますが、各省の調査したものあるいは各省なりの考えておるようなことについては、それは当然委員会の資料要求にも応ずるでありましょうし、私の手元にありますものは全部委員会に資料として提出をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/15
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016・池田清志
○池田委員長 委員長に対する調査要求につきましては承知しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/16
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017・川崎寛治
○川崎(寛)委員 では終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/17
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018・池田清志
○池田委員長 山中総務長官に対する自余の質疑は次回に譲ります。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/18
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019・池田清志
○池田委員長 速記を始めて。
床次徳二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/19
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020・床次徳二
○床次委員 ちょっと特連局長に伺いたいのですが、この予算の中に、復帰記念事業として、本島並びに各島の周遊道路とありますが、今日の時間においてすでに記念事業として確定したものは何と何があるかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/20
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021・山野幸吉
○山野政府委員 ただいま御説明申し上げた中にもございますように、一つは本島、それから久米島、宮古、八重山、西表の周遊循環道路を整備する、これを大体三カ年の計画をもって、初年度分が記念事業としてあるわけでございます。これは従来の道路整備と違いまして、十分の十、日本政府が全額負担して行なうたてまえにしております。
それとあわせまして、記念事業の第二としましては、北部の水資源の総合的な調査をやろうということで、北部の十何河川、相当数の河川の水資源調査を考えております。
それからいま一つは、南部の戦跡地帯に平和公園をつくる計画がいま進められておりますので、そこの事業の一環としまして道路整備等の事業費を計上しております。行く行くは、この平和公園をどういう形で記念事業として完成さすかという全体の計画の問題もございますけれども、平和公園の完成ということを一つ目標に置いております。いまのところはその三つを記念事業として考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/21
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022・床次徳二
○床次委員 とりあえず三つの事業が記念事業として考えられているようでありますが、なお将来の調査を進めた結果においては追加する考え方がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/22
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023・山野幸吉
○山野政府委員 明後年以降の問題としましてはまだ私どもは具体的に考えておりませんが、実は、たとえば宮古島に建設しますジェット飛行機の訓練基地等も相当大きな仕事でございますし、これなんかも実際は復帰記念事業といえばそれに類似したようなものかと思いますが、なおこれらは今後ひとつ総務長官とよく部内で検討いたしまして、また委員会等の御意見等も十分拝聴いたしまして検討してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/23
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024・床次徳二
○床次委員 いまの記念事業が確定しておりますことは将来の振興計画に非常に有意義だと思いますが、記念事業の決定については、やはり将来の基礎になるのだということを考えて、そうして計画を十分考えていただくことが必要なのじゃないか。なお、記念事業でなくても、将来の開発の根幹になりますものが、道路の問題あるいはいまの調査に引き続く水資源の確保の問題あるいは土地拡張等、いろいろ出てくると思います。基本的な問題は、調査が終わったならばなるべく早く計画を確定しておくことが関連した事業の開発のために非常に必要なんじゃないかと思う。ひとつぜひその点はすみやかに、きまり次第発表し、一般の参考に資するようにしていただきたいと思います。
それからもう一つお尋ねいたしたいのは、琉球大学の保健学部の問題であります。ここに「施設は、明年度をもって完成し」ということを書いてありますが、保健学部の完成された実態はどういう形になるのか。施設だけでなしに内部も完成するのかどうかという点ですけれども、その大要を説明してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/24
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025・山野幸吉
○山野政府委員 保健学部のほうは、主体の建物は完成いたしますし、備品の一部が充足されますが、なお今後残りますのは備品の関係でございます。それから生徒はもはや教養学部のほうへ採用しております。したがいまして、ほぼ現在の整備状況で間に合っていくと思いますが、いま申しましたように、備品の関係がまだ若干不足しておるという程度でございます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/25
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026・池田清志
○池田委員長 この際、愛知外務大臣から発言を求められております。これを許します。外務大臣愛知揆一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/26
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027・愛知揆一
○愛知国務大臣 一言ごあいさつ申し上げます。
先般の第三次佐藤内閣で、引き続き私、外務大臣を仰せつかりました。まことに浅学非才の者でございますが、何とぞ各位の御指導、御協力のほどを心からお願い申し上げます。
外務省の所管事項につきまして、その概略を御説明申し上げたいと存じます。
御高承のとおり、昨年十一月ワシントンにおける佐藤総理大臣とニクソン大統領との会談の結果、核抜き、本土並み、一九七二年中という沖繩の施政権返還の基本的大綱について日米間の合意が成立し、当面返還協定締結のための交渉を進めるとともに、これと並行して沖繩の円滑な本土復帰を実現するための諸般の復帰準備を進めていくこととなります。
施政権返還協定につきましては、今後の米国政府との交渉を通じてその内容を確定していくことになりますが、先ほど申し上げました米国政府との間で合意されました基本的大綱のワクの中で行なわれることは言うまでもございません。
一方、復帰準備につきましては、昨年十一月の佐藤・ニクソン会談の結果、両国が緊密に協議し、協力すること、及びそのため東京の既存の日米協議委員会がその全般的責任を負うとともに、現地において新たに準備委員会を設置することに意見が一致いたしました。
この合意に基づき、その後日米協議委員会の機能拡大及び準備委員会の組織及び任務に関し米側と協議を続けてまいりましたところ、今般双方の間最終的な了解に達し、三月三日私とマイヤー駐日米国大使との間で沖繩の復帰準備に関する書簡の交換を行ないました。
戦後四分の一世紀にわたり、政治、経済、社会等のあらゆる分野で本土と異なった諸制度のもとに置かれてきた沖繩の復帰にあたっては、沖繩住民の生活に無用の摩擦と混乱を起こさないよう周到かつ十分な復帰準備を行なう必要があります。このような準備を進めるにあたり、本土政府たる日本政府、施政権が最終的に返還されるまでの間、沖繩の施政全般にわたる責任を有する米国政府、並びに沖繩住民の民意を代表する琉球政府の三者が、相互に緊密な協力関係を保ちつつ諸般の施策を講ずることが最も肝要であります。したがって交換公文にも明らかなとおり、日米両国政府は、復帰準備のための協議、協力を進めるにあたり、沖繩住民の福祉及び利益の一そうの伸長をはかることを目標とすることとし、その見地から琉球政府の意見を十分考慮に入れることに意見の一致を見ております。特に準備委員会に顧問として参加する琉球政府行政主席の意見には、最大限の考慮を払う方針であります。
なお、この準備委員会への日本国政府代表に関する臨時措置法案は、本国会に提出し御審議をいただくことになっております。
私は、今後、総理府総務長官その他関係閣僚とも協力の上、日米協議委員会及び準備委員会を十分に活用し、米国政府との緊密な協議のもとに琉球政府の意見を尊重しつつ、沖繩住民の民意に即した復帰準備施策を講じ、もって豊かな沖繩県の基礎づくりに資するよう努力を傾注してまいる決意でございます。
沖繩の返還がいよいよ現実となった今日、北方領土問題はわが国に残された唯一の領土問題であります。この問題に対するわが国民の関心も従来に増して高まっております。政府としては、国後島及び択捉島は歯舞群島及び色丹島とともに、わが国固有の領土であり、当然わが国に返還せられるべきであるという立場から、国内世論の支持を背景にソ連に対し、機会あるごとにこれら北方諸島の返還を要求してまいりました。
これに対し、ソ連は領土問題は一連の国際協定により解決済みであるという従来の態度を変えておりません。
昨年九月、私は訪欧の途次、ソ連政府の招待を受けて訪ソし、コスイギン首相、グロムイコ外相などと会談いたしましたが、その際にも、わがほうは国をあげて北方領土の返還を切望している旨を強調し、ソ連側が一刻もすみやかにこれらの島嶼をわが国に返還して、日ソ平和条約を実現するよう強く促したのであります。
これに対し、コスイギン首相は「第二次大戦の結果、形成された国境はこれを尊重すべきであり、現在の国境の一部にでもさわれば、他の領土問題にも波及することとなる。したがって現在、領土問題を持ち出すのは現実的ではない。」と述べ、わが国との話し合いに応ずる気配を示さなかったのでございます。
私はかねて領土問題の解決はひとりわが国をあげての熾烈な要求であるのみならず、この問題の解決なくしては日ソ間に真に安定した善隣関係の発展は期待し得ない旨を、ソ連政府に対して指摘しておりますが、政府としては今後ともあらゆる機会をとらえてソ連側にこの問題のすみやかな解決方を促していく方針でございます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/27
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028・池田清志
○池田委員長 沖繩復帰のための準備委員会への日本国政府代表に関する臨時措置法案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/28
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029・池田清志
○池田委員長 まず、趣旨の説明を聴取いたします。愛知外務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/29
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030・愛知揆一
○愛知国務大臣 それでは、続きまして沖繩復帰のための準備委員会への日本国政府代表に関する臨時措置法案の提案理由を説明させていただきます。
昨年十一月ワシントンで行なわれた佐藤総理大臣とニクソン大統領との会談の結果、全国民の悲願である沖繩の返還が来たる昭和四十七年中に実現することとなりました。さらにこの会談におきまして、沖繩の復帰を円滑ならしめるため、日米両国は緊密に協議し協力することとなり、東京に現在置かれております日米協議委員会がその全般的責任を負うとともに、現地沖繩におきましても、新たに、大使級の日本国政府代表と琉球列島高等弁務官をもって構成される準備委員会を設置することに意見が一致いたしました。さらに、この準備委員会の組織、任務等につきましては、このほどアメリカ側との間に具体的な合意が成立いたしました。
したがいまして、政府は、この準備委員会において、わが国代表が十分な活動と円滑な職務執行ができるよう、沖繩復帰準備委員会日本国政府代表事務所を設置することとし、このため所要の事項を定めたこの法律案をここに提出することとした次第であります。
次に、この法律案の概要を申し述べます。
この法律案におきましては、外務省の機関として沖繩復帰準備委員会日本国政府代表事務所を設置することとし、その任務は、準備委員会において日本国政府を代表し、準備委員会を通じて行なう沖繩の復帰準備に関し在沖繩アメリカ合衆国政府機関との協議に当たることと定めております。次に、この政府代表事務所には、準備委員会への委員となる政府代表であり、同時に事務所の長として事務を掌理する特別職の国家公務員を置くほか、同政府代表を補佐する職員を置くこととしております。政府代表及び職員には、いずれも外務公務員の身分を与えることとしております。また、給与につきましては、現在の日本政府沖繩事務所の職員に対すると同様、在勤手当の支給を定めております。
なお、この法律の施行により、従来の沖繩島那覇に駐在する諮問委員会の委員となる日本国政府代表の設置に関する暫定措置法は、廃止されることになっております。以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。何とぞ慎重御審議の上御賛成あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/30
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031・池田清志
○池田委員長 ただいま愛知外務大臣から所信表明に引き続きまして、昨年当委員会に付託せられました沖繩復帰のための準備委員会への日本国政府代表に関する臨時措置法案についての趣旨の説明があり、われわれ委員会はこれを聴取いたしました。
本案に対する質疑は次回に譲ることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/31
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032・池田清志
○池田委員長 この際、竹内外務政務次官から発言を求められております。これを許します。外務政務次官竹内黎一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/32
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033・竹内黎一
○竹内(黎)政府委員 このたび外務政務次官に就任しました竹内でございます。知識も経験も至って乏しい者でございますが、私なりに最善を尽くす覚悟でございますので、諸先生方のお引き立てのほどよろしくお願い申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/33
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034・池田清志
○池田委員長 外務大臣の所信表明に対しまする質疑の申し出があります。順次これを許します。美濃政市君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/34
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035・美濃政市
○美濃委員 時間があまりないようでありますから、簡単に沖繩の返還条件に関する問題、北方領土の問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。
まずその一つは、今回の日米会談あるいは共同声明の中で、ベトナム戦争が終結しない場合に、沖繩にある米軍が重要な役割りを果たしておるということを認め合って再協議をする、十分な協議をするという表現になっておりますが、私どもの受け取り方では再協議というふうにも受け取れるわけでありますが、ベトナム戦争の現況から見た状態あるいは終息することを強く会談の中では希望しておるようでありますが、一体どの程度の範囲でどういうことをここで話し合いをしたのか、まずこれをお尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/35
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036・愛知揆一
○愛知国務大臣 これはまことにごもっともなお尋ねでございますので御説明いたしたいと思います。
沖繩の返還につきましては、共同声明の第六項から第八項が一番重要な事項になっております。すなわち、七二年中に返還する、本土並み、核抜きということになっておりますが、これは動かない一つのいわば鉄則になっております。そしてベトナム戦争の問題につきましては、第四項に出ているわけですが、これは第二項から三項、四項と、国際情勢特に現在日本の周辺あるいはそれに関連する国際情勢についての意見交換や認識が触れられておりまして、そのくだりでただいま御質問の点が出てくるわけでございます。
そのくだりのところは、現に戦争状態を継続しておるアメリカ側の立場からいたしますると、日本の総理大臣とともに、この状態は七二年までには続いていないんだ、終結しているはずであるということについて、両者強い願望と希望については合意が一致しておりますけれども、しかしアメリカの立場からすれば万々一終わっていないかもしれないという可能性を絶対的に排除することを明言するわけにもいかないという立場から、万々一そういうことがあった場合には協議をいたしたい、協議に応じましょう、平たく言えばそういうことで意見の一致を見ているわけでございます。したがって、まず第一に七二年までに現状のような状態でないということを前提にしておるわけでございますから、そういう可能性が絶対的に排除されない状態ではあるけれども、そういう状態の出ないことを希望しながら、しかし万一の場合には協議をしたいと言っているわけでございますから、その協議の内容がいかなるものであるかということにつきましては、その共同声明の文言以外に何らの話し合いというものはなかったわけでございます。したがいまして、その協議の中でどういうことが話されるかということは現在からは内容が明らかでない。ただ、前段に申し上げましたように、返還についての三つの原則といいますか、これは絶対に動くものではないということが前提になっておる、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/36
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037・美濃政市
○美濃委員 いまお話しのように、あの場合、この場合という前提条件をつけた話し合いでないという。そうすると外務大臣として、この問題は現状の状態だった場合にはどうなるという推定をしておりますか。現況のベトナム状態が七二年にも続いておったと推定した場合どうなると……。個人見解でよろしいと思うのです。これはどういうふうになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/37
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038・愛知揆一
○愛知国務大臣 これはいまもるる申し上げましたから、その前提は省きますけれども、観念的に仮定の問題としてお答えをいたしますれば、返還になれば安保条約及びその一連の協定、取りきめ、交換公文、了解事項というものは何ら変更なしに適用されるわけでございますから、返還後になりますれば、そういう万々一の、たとえば米側からこうこういうことをやりたいということがありましても、それが第六条に基づく交換公文に規定されているような事項であるならば事前協議の対象になる、そして事前協議がかりに観念的な問題としてまいりました場合には、現在まで本土においてとっておりますような態度で応酬をする、態度をきめるということが妥当であると、こういうふうに観念論、一般論としては考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/38
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039・美濃政市
○美濃委員 次に、核兵器の有事持ち込みについて、これは、「米国政府の立場を害することなく、」まあ私どもの受け取る感じでは、事前協議の対象にするという約束をしてきたのではないか、こう思うのですが、帰ってきての報告と、私どもがテレビその他で承知したアメリカ側の発表は、この点はかなり食い違っておるのですが、このいきさつはどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/39
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040・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは総理と大統領との間の会談で、そうしてその結果は共同声明が出まして、共同声明以外には何の、文書も何もございません。そして日本側といたしましては、総理大臣の記者会見とかあるいは共同声明発表と同時に、念のため外務大臣説明要旨というものを書いて内外に配っておきました。それによって必要な解釈は、ごらんをいただきたいと思うのでありますけれども、いまの核の問題は共同声明の第八項にあるわけでございますが、これはやはり本土並みということと関連しているわけでございまして、率直に言えば本土並みということで全部はカバーされるわけですけれども、核につきましては、特に日本の世論としても一番焦点で、これが一番大事なところでございましたから、特に第八項を設けて、そして日本の国民感情、核兵器についての日本国民の特殊な心情というものから説き起こして、日本の核に対する政策についてアメリカ大統領が十分な理解を示してそのとおりに沖繩返還を実施するということを約したということになっているわけでございます。安保条約関連取りきめは本土並みに適用されるわけでございますし、核についても条約及び関連の取りきめからいえば、事前協議をアメリカがするというその立場は持っているわけでございまして、これは安保条約からくる当然のことで、そのことがそこに触れてありますけれども、しかしその結論として、日本の欲せざることはやらない、日本の言うとおりにやる、つまり核は持ち込みを許さないというそのことで、沖繩の返還は実施するんだということを確約しているわけでございますから、この核抜きということにつきましては、私は疑問を残す余地はない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/40
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041・美濃政市
○美濃委員 そうすると、いまお話を聞いたのは、アメリカ側は有事の際には核兵器の持ち込みは事前協議の対象と考えておるわけですね。そう判断していいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/41
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042・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは現在の状況におきましても、安保条約の第六条に基づく交換公文で、在日米軍が日本の提供している施設区域を活用する場合に、重要な配備の変更あるいは装備の変更、それから戦闘作戦行動、これらについては日本に事前協議するということになっておるわけでございます。そしてその事前協議に、重要な配備、装備の変更というものは何であるかということについて、両国に了解事項があって、これに核の問題が約束されているわけでありまして、これはもう観念的な問題ですけれども、もし核を持ち込みたいというときには、どうしても事前協議にかけなければならないということが条約上で約束されているわけであります。それに対して日本は非核三原則のたてまえから、日本としては持ち込みを許しませんよという態度が明確になっている。さらにこれを補強しているのが岸・アイク共同声明、日本の欲せざるようなことについて日本に対して協議をかけることはしないという趣旨の共同声明が出ておる。これが現在の安保条約の構成でございますから、そのまま本土並みに沖繩にも適用される、これが法体系でございます。それに対して、くどいようでございますが、特に沖繩の場合にも、これは国民の一番の関心の焦点でございますから、あらためて日本の態度というものをはっきり表明して、それに対してアメリカ大統領としては、そのとおり理解して、そのとおりに沖繩を返還をいたします、こういうことになっておりますから、これで核抜きということが確保される、こういうことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/42
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043・美濃政市
○美濃委員 これは核三原則をあのようにかたく表明しておる立場、あるいは国内世論も当然でありますし、核兵器に対する国際世論も御存じのとおりでありますから、これはやはり核兵器というものは事前協議の対象から除いてしまえば問題はなくなると思うのですけれども、持ち込まれてきてから協議するのだというのは、核三原則を表明しておる佐藤内閣あるいは佐藤総理大臣として、今回の会談はもっと努力する必要があったと思うのです。これはもう事前協議から除いてしまう、核兵器だけは世界人類のために、こういうものを使うべきでもないし、日本に持ち込んでもらっては困るから事前協議などの対象から除外する、この交渉はやらなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/43
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044・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは、そういうことにいたすとしますと、現行の安保条約自身を少なくとも実質的に改正することになるわけでございます。沖繩の返還交渉にあたりましては、現行の安保条約が本土並みに沖繩に適用されるということをもって、われわれの基本的の態度としておりましたが、現に本土に適用されております安保条約のそういう意味の改正ということは、こちらから提案をしなかったわけでございます。提案をしなくとも、現在の体制でもって、こういう日米間の意見の一致であれば、本土についてそうでありましたように、沖繩につきましても、核というものの持ち込みは許さないということがきわめて明確になる。さらに、御承知のように、すでにこの共同声明ができましてからほんのわずかたった期間、昨年の十二月十四日でございましたかに、メースB等の撤去ということが公にアメリカ側からも発表されているとおりでございますから、そういうところから御理解いただいても、この核抜きということは確立されたか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/44
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045・美濃政市
○美濃委員 私は、この核持ち込みということについては、いまの御答弁を聞いておって、非常に問題があると思いますけれども、時間の関係で、いずれ法案審議の中か何かでもう少し煮詰めたいと思いますけれども、きょうはこの程度にしておきたいと思います。
ただ将来、これは御答弁は要りませんが、特にこういう問題につきましては、安保条約を自動延長だ、それを強く主張すると、安保条約の改定につながる。当然だと思うのです。ですから、意見だけを申し上げておきまして、いずれ後日にしたいと思います。
次に、いまいろいろお話を承り、あるいは前段の、ベトナム戦争の状況によって協議はととのえられる、十分協議するという事項から見ると、今回の沖繩返還にあたって私どもの受け取る感じは、本土並みと、こう言うけれども、沖繩の基地については何か既存権的なもののにおいがするわけです。この関係はどうですか。私どもの受ける感じは、一連のいろいろの取りきめ事項を見て、沖繩の基地は本土並みと言うけれども、何か既存権のにおいがついて返ってくる、こういう受け取り方になるのですが、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/45
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046・愛知揆一
○愛知国務大臣 この点は、私からいえば、非常に大きな違いになると思いますのは、現在は、沖繩が不幸にしてアメリカの施政権下にございますから、沖繩にある米軍というのは、あたかも米国本国の領土内にある米軍と同じ状況でございますから、どこへ作戦行動を展開しようが、核兵器を使おうが、自由使用でございますね、沖繩の基地全体が。あるいは沖繩全島がと申してもいいかとも思いますが……。安保条約、それの関連取りきめが全部適用されますと、戦闘作戦行動にしても、それから核兵器にしても、あるいは艦隊の移動あるいは師団の移動というようなものが全部事前協議にかかりますから、米軍の行動には非常に大きな制約がかかります。その辺は全く変わってまいりますし、それから地位協定もそのまま本土並みに適用されますから、沖繩の人権問題というようなものも、全く本土と同様に相なります。そういう点で私は、もう完全な本土並みということが言えると思います。
ただ、さらに、望むらくは、よく問題になり、私どももそれは大きな問題だと思いますのは、基地の占めている密度というようなことになりますと、本土に比べては非常に大きな比重を占めておりますから、さらに今後におきましては、米側と相談をして、逐次これを不用のものから整理をし縮小をするという方向へ持っていかなければ、こういうことで、そういう面でも実質的な本土並みにこれから努力していかなければならない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/46
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047・美濃政市
○美濃委員 私の申し上げたことも、沖繩が本土に復帰するのでありますから、現在の条件そのままというのではないですが、完全に本土並みかあるいは、いま大臣も言われておりましたように、かなり基地の規模も大きいわけでありますから、そういう中から何か既存権的なものが、ある程度——若干かある程度かわかりませんが、感じとして既存権的なものが、本土並みというけれども本土を越えたものが、残るのではないか、こういう感じがするのです。いまのところ、それがどの程度のもので、どうであるということは言えないですが、これは進んでくると出てくるのではないかと思うのです。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/47
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048・愛知揆一
○愛知国務大臣 その点は、私は、ごもっともな御心配であり御意見であると思います。これは基地の問題に限りませんで、やはり沖繩県をほんとうに本土と一体化といいますか、あらゆる面においての格差の解消、というよりはむしろあらゆる面における水準の飛躍的向上ということ、全部総合的にこれから本土政府として大いに努力しなければならないことである、かように考えますので、お考えの方向については私どもも同様に考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/48
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049・美濃政市
○美濃委員 次に、今回の声明の中で、韓国あるいは台湾等の情勢が分析されて、いろいろされたわけですが、これはアジアあるいは国際の緊張緩和という表現がなされておるけれども、日本の最も近いところでこういう表現をされるということは、かえって、緊張緩和でなくて、緊張刺激でないかと私は思いますが、あえていま、そう心配するような状況でもないのに、戦闘行為が起きておるわけでもないのに、こういう近いアジアの近隣の国の緊張を刺激するような表現をあえてしなければならなかった理由と、会談の中でこれはアメリカ側から慫慂されてこういう表現を使うことになったのか。どういう理由と、どういう意図をもって、こういう表現を使われたか、これをお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/49
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050・愛知揆一
○愛知国務大臣 これはまず第一に、第二項にもはっきりしておると思いますが、国際緊張の緩和ということを基本的な考え方にしておる。それから、たとえば中国本土の情勢分析なども、一九六七年の、まあ向こうは相手がかわりましたわけですけれども、佐藤・ジョンソン会談後の共同声明と比べてごらんいただきますと、俗なことばで申しますと、相当ソフトになっているつもりでございます。それから、別な意味で、予算委員会等でもだいぶん御論議をいただいたわけですけれども、総理大臣の演説がよく引用されるわけですけれども、私から申しますと、逆にあの演説の中では、たとえば台湾海峡をめぐる問題については、そういう事態は予見できないことが幸いなんだけれども、ということばもはっきり入っているわけでございますので、基本的にはそういう緊張がないことを望んでいるわけでございますが、しかしたとえば朝鮮におきましては、これもいろいろの見方があろうかと思いますけれども、現に三十八度線をはさんで、多くの説明も不必要と思いますけれども、とにかく緊張状態にある。この状況いかんによってはわが国自身としても自分の独立、安全に直接の脅威があることがあるかもしれぬ。その場合に処する見方というものははっきりしておくことが国益の上から言っても大切であるし、また同時にそういう姿勢をとっておくことによって逆に緊張というものが緩和される、こういう考え方も私はあると思うのでありますが、そういう点で一般的な姿勢というものを総理が示したものであって、これは御質問の範囲外になると思いますけれども、そういうことは私の当時発表いたしました説明にも出ておりますように、これが具体的に事前協議の際の予約であるとかあるいはイエスということを約束したとかそういうことではございません点を、あわせて御理解をいただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/50
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051・美濃政市
○美濃委員 何かお話しを聞いておると、いわゆる事前にそういう危険の抑止的な姿勢もとにかく必要なんだというふうに聞き取れた、私の聞き方の違いかもしれませんけれども。そういう考え方は平和外交の中ではやはり持つべき手段ではないのじゃないか。あまり外交としてこういう表現をされるということは、私の考えではかなり疑念を持つわけですね。また御説明を聞いておると、私の聞き違いかもしれませんけれども、何か将来の抑止的な姿勢も必要なんだというふうに聞き取れるわけなんですが、今後ともそういう考え方で、これらの問題には、佐藤内閣の姿勢としてはそういう姿勢が当然として望まれていくという方針であるかどうか、この機会にちょっとお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/51
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052・愛知揆一
○愛知国務大臣 抑止ということばが出ましたが、そういう状態が起こらざるように抑止するという考え方でございますし、それから、これもたびたび今度の国会でも論議が出ておりますように、日本としては平和憲法のもとに、徴兵もなければ海外派兵もなければ、非核三原則というこれが基本国策でございますから、そういう点とあわせてお考えいただければ、佐藤内閣の真意というか、ほんとうの気持ちというものが御理解がいただけるんじゃないだろうかと私は思いますけれども、そういうことで御理解していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/52
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053・美濃政市
○美濃委員 次いで七一年末までに残存輸入制限品目をなくするという表明をしておるわけですが、これはもう全部やるということを約束してきたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/53
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054・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは実は共同声明の第十二項だったと思いますけれども、政府としてはこの共同声明よりしばらく前に、いわゆる残存輸入問題についての態度というものを二、三回にわたって閣議決定して基本方針を明らかにしております。一九七一年中に、これは正確な数字はちょっと間違うかもしれませんが、大ざっぱに申しまして、昨年の十月ごろを基準にいたしまして百二十品目が残存輸入制限としてある。その中の半分、六十品目は七一年中に自由化をするという閣議決定をしました。それから残りの半分六十についてもできるだけすみやかに自由化をすることについて最大限の努力をする、そうしてその進行の状況に応じて随時報告を集めて随時また閣議で協議をしよう、こういう取りきめをしておりまして日本自身として自主的にやっておったわけなんでございます。この問題について、これはアメリカだけではございませんが、日本は、百二十も残存輸入制限をやっております国はほかに世界的にないものでございますから、各国から輸入自由化についてはいままでもずいぶん要請されておりましたのでそういう態勢をとったわけでございます。たまたまこの会談でもその点についての話が出ましたので、日本としてはもうこうこうこういうことにしているのだということを表明した。そのことが、もうその閣議決定のほとんど文字どおりがそこにあらわれているはずでございますから、これは会談の結果というよりは、むしろ日本の自主的な自由化についての態度というものをそこに表明したものだ、こういうふうに御理解いただいてけっこうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/54
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055・美濃政市
○美濃委員 貿易問題は大切な問題で、また後ほどいろいろ承りたいと思いますが、最後に、北方問題で御報告をいただいたわけですが、この交渉の中で——この問題はなかなか困難性が強いということは私も承知しております。問題は、安全操業の問題は領土問題と離して何とかしていかなければならない問題だ。ところが大臣がソ連へ行ったときに安全操業に触れていない。触れたのだが報告から落としたのかそれとも全然触れなかったのか。
それからもう一つ、これは農林水産委員会に外務省も来ていただきまして、第十一進洋丸、第十三福寿丸という日本の漁船にソ連の監視船が追突して沈没し死者を出した問題について、ソ連側に日本政府として補償を要求するという方針をきめまして、道庁が取りまとめをいたしまして今回出てきたわけです。二億七千三百六十五万円という補償金額をソ連に要求するということを日本政府の態度としてここまで持ってきて、これから外交交渉になるわけです。これはひとつ大臣としてスムーズに取り扱って、これを早期に解決してもらいたいと思いますが、見通し等について承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/55
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056・愛知揆一
○愛知国務大臣 安全操業の問題の経過はこういうことになっております。
昨年の九月、私がソ連へ参りましたときに提案をいたしまして、こちらが返還要求をしている島々の距岸三海里以遠十二海里以内の水域において日本漁船に対して安全操業を認めよ、これが第一でございます。そしてその際に、これからの話し合いによっては若干のいわば自主規制は考える、しかし入漁料というようなものは払わない、これを基本線にして具体的な話し合いに入ってほしい、こういう提案をしてまいりました。この点については、ソ連側の総理や外務大臣は、関係する役所が多いので、それらの意見を取りまとめて検討いたしますということを約束いたしまして、具体的の話し合いに入ることを期待しているわけですが、率直に言ってまだあまり進捗はないのでございます。率直に言って、ソ連との話し合いというのはなかなか日にちがかかりますものですから、督促につとめておりますけれども、当方の基本的態度はそういう態度でございます。
それから各種の不幸な事件につきましては、その当時も第十三福寿丸が遭難した直後だったものですから、これはコスイギン総理にも強く要請をいたしまして、結局こうした不幸な事態が起こるのは、安全操業の問題や、あるいは領土問題が解決しないことに根本の原因があるんだし、かような非人道的な、ことにあのときには二週間以上も消息もわからなかったわけです。そうして突然回答をよこした。こういうふうな非礼な態度では納得することはできないということを中心にして、反省を求め、その後もこの成り行きについてはこちらも大いに監視しておるわけでございますから、ただいまお話しのような点については、今後とも私といたしましても全力をあげて求むべきことは求めていくようにいたしたい、こういうふうな考えでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/56
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057・池田清志
○池田委員長 中川嘉美君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/57
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058・中川嘉美
○中川(嘉)委員 外務大臣にお尋ねいたしますが、返還協定についての対米交渉に関して伺いたいと思います。
まず、たいへん短い質問でありますが、協定を作成していく上においてはどういう手続で進められるか、この点を最初にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/58
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059・愛知揆一
○愛知国務大臣 大きく分けて二つの筋になるのでございますが、一つは、返還協定それ自身の案文の作成や相談でございまして、これは日米間の、ほんとうのと言うと語弊がございますが、純粋の外交折衝で、外務省と国務省の間で詰めていきたいと思っております。
それから、もう一つは、内容、実質の問題でございますが、そのほうは先ほども御説明いたしましたが、日本側としては日米協議委員会で、沖繩を本土と一体化するためになさねばならないいろいろの具体的な問題がたくさんございますが、その実質上の点と、あるいは米側との相談は、この協議委員会の性格を今度変えていただきまして、アメリカとも合意ができまして、従来は沖繩援助費ですね、日米双方の援助費についての相談の場であったのでございますが、今度は返還についても実質的ないろいろの問題を取り上げる、この相談並びに折衝の場としていく、その現地機関として準備委員会がいよいよできることに相なったわけでございます。そこではたくさんの問題がいまも予想されておりますが、それをほぐしながら、
一方協定の条文づくりのほうを急いでまいりたい。それから返還協定自身の案文のほうは、問題の大小は比較になりませんけれども、奄美大島の返還協定というような前例もございますから、そういう点も大いに参考になろうかと思います。ただ問題の性質は同じであっても、幅と歴史が問題なく多いものですから、あるいはまた小笠原諸島にはなかったような問題もございますから、そういう点できょう御説明いたしましたこれから協議委員会のなすべき仕事というものはたいへんなことだと思います。これは並行的にやってまいりたいと思いますので、まだそのタイムスケジュールまではできておりませんですが、これから鋭意努力いたしまして、もう再来年のことでございますから、これからほんとうに一生懸命やっていかなければならないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/59
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060・中川嘉美
○中川(嘉)委員 実はそのタイムリミットのことでここでもう少しお聞きしたかったわけですが、いつまでにその協定の締結を完了するかということ、すなわち七二年の返還であるならば、締結そのものは七一年の具体的に言っていつごろをめどにするのか、この辺が言ってみれば非常に大切な、大事なところでないかと思います。そういった意味で、具体的時期を実はいまお答えいただきたかったわけですが、そうすると、いまのところははっきりした時期は外務大臣のほうからはお答えいただけないという現状でしょうか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/60
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061・愛知揆一
○愛知国務大臣 それはたいへん恐縮なんですけれども、一九七二年中というのが合意できましたから、私どもの気持からすれば、一九七二年早々にもう全部返還が実現できるようにという心組み、それを目標にしてやっていかなければならない。それが終期になります。しかしその前に、たとえば協定案文づくりをやって、アメリカと合意ができる。そしてそれを国会の御審議にかけて慎重に御審議いただかなければなりません。その期間も相当見なければなりませんから、逆算してみますとこれはたいへんなことだ。それで、よけいなことを言うようでございますけれども、七二年返還ということは、私当時も申しましたのですが、これはいわば即時返還だ、最大限度の努力をしてすべてが片づいて七二年のできれば早期にケリをつけるということについては、よほどスピードアップしなければならないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/61
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062・中川嘉美
○中川(嘉)委員 次に、返還協定の中身の問題でありますけれども、核抜き、本土並み、七二年返還という大ワクの中で返還協定を結ぶという、先ほどもそのようなお話がございました。その点について核抜きの事実を確かめる方法はどのように考えておられるか、どういうように協定に織り込まれるか、こういった問題で、まず第一に政府が米国を信頼するというそういう言い方、核抜きということに対する検証、確認の方法ということになりますと、これは一体どうなるか、どういうことを具体的にやるのか、この点につきましてもこの席でひとつお答えいただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/62
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063・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは核抜きの検証ということは御意見がいろいろあると思いますけれども、アメリカ側が大統領が最高の責任者として、核を抜いていわばきれいな姿でお返しをいたしますということでございますから、それを信頼して受け取るということ、政府としてはそれで十分であろうかと、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/63
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064・中川嘉美
○中川(嘉)委員 お話でありますけれども、協定の中にこのことが載りませんと国民は信頼はしない。そしてすでに現在でも非常な不安を持って見守っておるという現状でございますが、日米共同声明の中の「日本国民の特殊な感情」に対してというところがありますが、このことがちゃんと——このことといいますのは検証、確認の方法でありますけれども、これがきちっと確認できる何らかの措置がとられなければならないのではないか。この点について協定の中にどのような措置を考えておられるか。いまのお話からしますと、そこまではまだちょっと遠いようでありますけれども、協定自体に何かそういう確認の方法というものがうたわれるかどうか、この点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/64
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065・愛知揆一
○愛知国務大臣 その点についてお尋ねの中に二つの要点があるかと思うのですが、一つは、抜いたかどうかということの事実関係についてどういう確かめる方法があるかということですが、これは私、現在考えておりますところは、ただいま申しましたように、日米両国の関係からいって最高責任者がいわゆる国際的にアシュアするということを合意文書の上でこれほど明瞭に言っていれば、それは結局信頼関係ということになりますけれども、それで十分ではなかろうかと考えます。
それから返還後の核の問題等につきましては、先ほど来るる申しておりますように、現在の安保条約関連取りきめがそのまま適用されるということになりますれば、それでもって必要にして十分である、そういう考え方で協定の作成ということになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/65
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066・中川嘉美
○中川(嘉)委員 次に、本土並みということでありますが、基地に関して特別の取りきめをしないで、いま言われましたような安保条約並びに地位協定、こういったものをそのまま適用すると言われますが、この沖繩の基地の現状からはたしてそれが可能なのかどうか、こういった点をもう少しお聞きしてみたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/66
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067・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは可能かどうかということについては、まず私は、沖繩県民の立場に立って最善の状況において処理をするということが、政府としての最大の眼目であると思うのです。したがって、まず具体的な折衝や調査に入らなければならぬわけでございますけれども、現状のまま、米軍が使っている道路であろうが何であろうがそれをそのままにして地位協定がかぶるということでは、これは沖繩の方々のために最善といえるかどうかは私疑問だと思います。先ほど申しましたように、協定という両国間の法制的のフレームをつくることと、それから一方そのサブスタンスとでも申しましょうか、内容的にどういうふうな姿にして返還してもらえるか、あるいは返還後においても、どういう方向でこれを縮小するとか拡大するとかいうことの話し合いというものは、やはり別途に両立並行していかなければならないと思うのです。そういう意味におきまして、いま具体的に地域的な双方の相談も、あるいはこちら側として十分な調査もまだできない状態でございますから的確なことは申し上げられませんが、基本的な取り上げる姿勢としては、いま申し上げましたような方向でいきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/67
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068・中川嘉美
○中川(嘉)委員 それでは、あの広大な基地の整理縮小というものをいずれにしましても当然考えておられるということですけれども、このことについての政府の方針及び交渉に臨む態度というものがいまのところはっきりしてない、このように了解してよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/68
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069・愛知揆一
○愛知国務大臣 それはいま抽象的、観念的な希望としては申し上げられるのですけれども、これは具体的にこれからの調査並びに双方の話し合いに入るわけでございますから、基本的な姿勢とは何ぞやと言われれば、実質的にもできるだけ早く本土並みにする、沖繩県民の福祉を最善と考えて処理するというのが基本的姿勢です。これはアメリカ側の意見や希望もいろいろございましょうから、今後の折衝にまつ問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/69
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070・中川嘉美
○中川(嘉)委員 たとえば軍用道路の一号線というのがありますが、そういったことについてはどういうふうに扱われるか、このことをちょっと一言……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/70
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071・愛知揆一
○愛知国務大臣 そういう点が実はポイントだと思うのです。これはまだいまのところ抽象的なお答えしかできませんけれども、沖繩県の県民の方々に最善の状況、喜んでいただけるような状況にするということを基本方針にしてこれから対処してまいりたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/71
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072・中川嘉美
○中川(嘉)委員 それでは時間の関係もありますので、次に基地縮小に関して軍労務者の解雇問題、たびたび話が出ておりますが、これについては政府ももちろん努力をしておると思います。本来、基地の縮小と結びつかない解雇というものは、納得ができないわけでありますけれども、これらの問題の処理に当たる政府の態度というものをもう少し詳しくきょうは聞かしていただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/72
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073・愛知揆一
○愛知国務大臣 まずやはり根本においては、もう返還が再来年ということにきまった以上は、軍労務者の問題も日本政府自身が自分のこととして四つに取り組んでいかなければならない、これが基本的姿勢だと思うのです。ですから、いまのお尋ねのところとちょっとはずれるかもしれませんが、たとえば例を申しますと、いま山中総務長官が非常に精力的に努力をしてくれておりますし、私も一生懸命バックアップしているのですけれども、たとえば退職金の問題なんかにしましても、日本政府としての誠意を披瀝して、本来ならば施政権がまだ返っていないんだから、あるいは考えようによっては日本政府としては行き過ぎるのかもしらないけれども、これはもう再来年法制上も返ってこられる同胞のことなんですから、ほんとうに四つに組んでわがこととしてやっていこうではないか、こういう点でわれわれの意見が完全に一致しているわけでございます。
それから、もちろん、基地の縮小なくして解雇者が多いということは、本来なら筋が通らぬことかもしれませんけれども、アメリカ側もいろいろ説明はしておりますが、基本的には基地の問題についてもやはりそういう方向にいきつつあるのじゃないかと思うのです。ですから職業のあっせんとか再訓練であるとかいう点につきましても、それはそれとしてこっちもほんとうに一生懸命になって、本腰を入れていかなければならない、こういう姿勢でいきたい。そういう関係から、詳しくはこれは総理府のほうの御所管ですけれども、四十五年度の沖繩関係のいろいろの予算を相当増額いたしました中にもそういう配慮が相当含まれているはずでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/73
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074・中川嘉美
○中川(嘉)委員 最後に、米側の管理資産の問題でありますが、米側管理資産の処理について、たとえば開発金融公社であるとかあるいは電力公社、水道公社、これらのものを米側が買い取れと要求しているようにいわれております。こういったものについては当然買い取るべきではないと思いますけれども、政府の本件に関する考えを聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/74
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075・愛知揆一
○愛知国務大臣 どういうものをどれだけに評価をして、こういう種類のものは買い取ってくれとか、これはただで置いていくとか、そこまで実はまだアメリカのほうも提案もしておりませんし、それからそこまで入る場合には、少なくとも日本側としても十分調査も必要ですし、あるいは共同調査も現地において必要じゃないだろうかと考えるわけでございまして、その点についてはまだ先方からのあれもございませんものですから——もっともあったらみんな言うとおりにするという意味では決してございません。これは折衝ごとでもございますからいましばらくおまかせいただきまして、日本のために一番有利になるようにこれからも骨を折りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/75
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076・中川嘉美
○中川(嘉)委員 現在のそれらの資産、先ほど申しましたような公社ですけれども、こういった資産は、米側の投資よりも沖繩住民の払った金のほうが多いのではないか、このように思いますが、この点はどのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/76
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077・愛知揆一
○愛知国務大臣 従来はこちらの手がございませんでしたものですから、たとえば情報的にアメリカ側としてはこういうものについてはどのくらいのドルに見込まれるといっているそうだとか、これをこうやればどのくらいになりそうだとかいうことは聞いておりますけれども、政府側としてこの公社については幾らぐらいに見るか、その中のこれはわがほうで引き受けるべきじゃないとかあるとかいうところは、まだいまの段階では申し上げるのに時期が早過ぎるのです。たいへんわけのわからぬようなことを申し上げるようですが、中川さんの御追及なさりたいというところの焦点は私もよくわかるような気がいたします。もうちょっと時間をかしていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/77
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078・中川嘉美
○中川(嘉)委員 そうしますと、これは時期の問題は別といたしまして、要するに沖繩住民の気持ちという立場から考えまして、また日本全体の立場からもでありますが、こういうものを買い取るのはおかしいのじゃないかと思いますけれども、外務大臣のお考えとしては、はたしてこういう問題についてはどのようにお考えになっておられるか。まだこれから将来のことですけれども、ひとつお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/78
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079・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは国際的な前例でも確立しておりますと一つの基準になると思うのですけれども、今回のように平和裏に話し合いで戻ってきたというような場合、あるいは二十五年間施政権をアメリカが持っておって、こうこうこういうふうにしたというような国際的な前例もほとんどないわけでもございますので、要するに、私は私の立場からいいましても、ひとつ国民的になるほどと理解をしていただけるように、あるいは国民的に負担が過重でないように、また沖繩の県民の方々が喜んでくださるようにという観点で、これはほんとに真剣に検討しなければならない問題であると思いますが、同時に国内的に申しましても、政府といたしましても、大蔵大臣がひとつ大きな意見を当然持ち得るわけでございますから、まだその辺とも十分相談する、そういう時期でもないわけで、私だけが抽象論を申し上げましてもあまり足しにならないかと思いますので、その辺のところも御了察いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/79
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080・中川嘉美
○中川(嘉)委員 どちらかといいますと、やはりこういった問題に対してもっと強腰に、すべての米軍の施設を買い取るかどうかというような問題も住民の福祉につながるような、いわゆるむだな金を使わないというような立場で、そういう姿勢で臨むべきではないかと私は思います。そういった点についていろいろお話がございました。いままでのお話を通して、もう一つ積極性というものに、まあ時期の点もあるとはいうものの、欠けているのではないか、このように思います。そういった意味でむだな金を使わないという姿勢、こういった点については外務大臣はこれからどうお考えになるか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/80
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081・愛知揆一
○愛知国務大臣 中川さんのおっしゃるようなお考えには私も全然同感でございます。そういう方向でできるだけの努力をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/81
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082・中川嘉美
○中川(嘉)委員 最後に、先ほどの外務大臣の所信にも「沖繩住民の福祉及び利益の一そうの伸長をはかることを目標とする」云々とありました。このように言われましたけれども、七二年本土復帰を目ざして、さらに積極的に米側と取り組んでいただくことを要望いたしまして、私の質問を終わらしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/82
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083・池田清志
○池田委員長 永末英一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/83
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084・永末英一
○永末委員 外務大臣は、沖繩の返還が行なわれたあとの沖繩における米軍基地の機能と現在米軍が沖繩において持っている米軍基地の機能は変わると思いますか、変わらないと思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/84
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085・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは一言でイエス、ノーと申し上げるのにはちょっと複雑な点があろうかと思いますけれども、日本側の立場といたしましては、日米安保条約によるところの日本のそのもとにおける国益ということで、本土と同様に沖繩の基地を考えるべきである、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/85
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086・永末英一
○永末委員 佐藤・ニクソン会談の一つのポイントは、われわれ日本側は沖繩が返ってくれば、それは当然わが本土における米軍基地が取り扱われていると同じように取り扱われるべしというような考えであったと思うのです。少なくともわが民社党はそうです。アメリカ側は現在彼らが沖繩において軍事基地を保有し、これを使用している、そしてある機能を果たしておる。その機能が沖繩の日本復帰後もなお同様の機能を持つべしというのが彼らの立場であった。その二つの意見が要約にしてまとまった形に出ております。したがって、そこを聞きたいわけですね。だからあなたは日本側はとこう言われましたが、アメリカが一体何を了解しているか、ここが知りたいわけなんです。たとえばこの共同声明の中で随所に、アメリカが現在沖繩基地保有を前提として極東で果たしているいわゆるアメリカの平和維持機能は阻害されないとか、あるいはまた第六項では、これから始まるべき両国政府の協議、取りきめの中に、いまアメリカの沖繩基地が果たしている重要な役割りはそのまま持続せられるであろうというような見通しである。さらにまた第七項におきましても、米国が日本のみならず韓国なりあるいはまた台湾その他の国々に対して持っている国際的な防衛上の義務は、沖繩返還によっても妨げられないということを、総理大臣、わがほうの総理大臣、日本の総理大臣、あなたの総理大臣がわざわざ共同声明に言っておる。したがって、わがほうはこう思うということだけではいけませんね。何か考えたに違いない、何か言っているに違いない。そのことをお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/86
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087・愛知揆一
○愛知国務大臣 これはもう少しバックグラウンドをお互いに考えてみることも適当かと思うんですけれども、私はたとえばアメリカの軍事的な立場から考えれば、安保条約が沖繩の基地に適用されて、こうこうこういうようなことについては事前協議に一々かけて、日本はノーと言っている、できないことだというようなことに対しては、純粋の軍事的な観点から見れば困ることだと思っているに違いないと思います。そして全体の判断として軍事的な立場から見れば、機能が低下することはやむを得ないけれども、この際日本の言う条件で返したほうがより多く日米関係をよくするということから、ひいては世界のためにもなるという最高の政治判断だったと私は思うのです、バックグラウンドからいえば。そういう点からいえば、それから当然具体的に起こってくることは、若干の軍事的の基地の機能あるいは価値が減殺されるということをアメリカのほうとしても考えているんではないでしょうか。同時に日本側といたしましては、私は先ほど申しましたような考え方でよろしいと思うのです。
そういうことで、私は日本の立場において返還に至りますまでの準備作業においてもあるいは返還後におきましても、そういう気持ちで日本としては努力をすべきではないかと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/87
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088・永末英一
○永末委員 現在アメリカが沖繩の軍事基地保有で持っている彼らの利益、つまり彼らの戦略遂行上利益と考えるもの、それからわれわれ日本側に返還後沖繩の米軍基地の機能が著しく変化を来たし、減殺をすると私は思います、その二つのものなのか、その中間なのかというのが非常に問題だ。あなたは佐藤・ニクソン会談のあとで、私はテレビで拝見いたしましたが、記者会見に臨まれた場合に、これらの諸点に触れつつ、一切特別の取りきめをするとかいうつもりはございませんということを言われた。記憶に新しいことです。そこで、たとえば第六項に書いてあるこの意味合いを一体われわれどう解釈すべきか。つまり「沖繩にある米軍が重要な役割を果たしていることを認めた。」このくだりは前の大統領と佐藤総理との会談で、重要な役割りを沖繩の米軍基地は持ち続けるという表現があったところですね。わが外務省の訳では、持っているというようにごまかしたわけですね。コンティニュー・ツーというところです。同じ文字を使っている、今度はコンティニューはございませんが。つまり、いままでの経過からいえば、現在ある彼らの機能を確認しているわけでしょう。そうしてその後に大統領と総理大臣は、「日米両国共通の安全保障上の利益は、沖繩の施政権を日本に返還するための取決めにおいて満たしうることに意見が一致した。」こうなっているわけですね。第七項では、現在日米両国間にある安全保障条約上の取りきめが変更なく使われるんだ、こうなっておりますが、ここのところは一体どういうのですか。これから始まるであろう返還協定をつくるその取りきめにおいて、いま米軍が沖繩で持っているあの基地機能をそのまま阻害しないんだという取りきめをするとすれば、あなたが希望しているようなぐあいにならないんじゃないか、ここをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/88
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089・愛知揆一
○愛知国務大臣 それは変更なしに安保条約一連の取りきめが沖繩に適用されるということはまた大原則なんですから、それがきちっとかぶっていく。それから別にほかのことを求めて言うわけではございませんけれども、よく返還問題が前の国会でも論議されましたように、国際情勢の変化とかあるいは軍事科学の変化とかいうようなことも見据えて考えていかなければならないということを、国民世論の動向とともに三つの原則としてあげておりましたが、そういうものの推移が国際的にある。こういうバックグランドもあわせて考えていく必要があると思うのです。私は、この返還についてはほんとうに、安保条約一連の取りきめが何らの「変更なしに」——何らのとは書いてないですけれども、何らの「変更なしに」ということは、法律文と同じですから、ここが非常に重大なことであると思います。そのために、現在形だか進行形だかわかりませんが、そこに触れるところがあったか、これはわがほうとしては「変更なしに」というのは非常に大事なことだ、そういう感覚で今後とも進めてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/89
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090・永末英一
○永末委員 文章の構造からいきますと、第六項には私がいま読み上げたところがあるわけです。第七項に、沖繩返還に際しては安保条約はそのまま適用されるのだ、こうなっておる。アメリカ側の心配は、この文脈からいきますと、安保条約をそのまま沖繩の米軍基地に適用されては困る、きわめて不利益を感ずる、そこで何らかの言質を日本政府に対してとりたいと彼らが考えたことは、容易にわれわれは推測できることだと思うのですね。私は、第六項でその言質を与えたと思うのです。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/90
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091・愛知揆一
○愛知国務大臣 与えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/91
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092・永末英一
○永末委員 文章のことではなくて、実態的にひとつやってみましょう。アメリカがいま沖繩に持っている軍事基地は、言うならば、極東で何かが勃発したときに即座に出動し得る攻撃部隊のプールなんですね。それはわれわれの本土におけるアメリカの軍事基地とは著しく性格を異にしている軍事基地である。もし、いまある沖繩の米軍基地の機能がそうであるとするならば、安保条約による六条の事前協議のワクでくくられた場合には、アメリカは、沖繩の軍事基地の意義がなくなるわけだ。だから、私は、何らかの取りきめを彼らとしてはしたいのは当然だと思うのです。それは沖繩における米軍基地の中身からそう判断せざるを得ない。そこで、あなたは言質はとられなかったと言われた。これは重要なことですから記憶にとどめておきますが、相手が言いっぱなしたのではないか。日本政府はウイと言ってない、よろしいとは言ってないが、相手もそれを言いっぱなしたのじゃありませんか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/92
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093・愛知揆一
○愛知国務大臣 いや、共同声明は両者の合意でできたことでございますから——ほかのところでは言いっぱなしのところもありますけれども、肝心の沖繩返還のところにおいては合意しているわけですから、何と言いましても安保条約関連取りきめ、そして事前協議の対象ということが私は非常な眼目だと思います。私はあえて、七二年はともかくとしまして、本土並み、核抜きということが実現できた、それが完全な合意が得られたということは、何といっても成果であると確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/93
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094・永末英一
○永末委員 三項で一つやっているでしょう。アメリカがいま沖繩の基地の前提として極東で果たしている彼らの平和維持機能、これは日本にとっても望ましいのだということを総理大臣は言っているわけですね。そして、四項では具体的に朝鮮とか台湾とかベトナムとかの地域を指摘しつつ、同じことをまた確認しているわけでしょう。ベトナムについては先ほど質問がございましたけれども、またわざわざ一項目をあげている。そうしてそういう一つの対象として、五項目はよけいなことですけれども新たな堅持が入っているわけですが、そこで、六項目でもう一ぺんそれを確認している。いよいよ返還交渉を始めましょうよ、しかし返還交渉の中身は軍事基地の使用は妨げないということをアメリカが主張し、あなたのところの総理大臣が承認している。そして、やっと七項目で本土並みの安保条約を変更することなく適用しますよと書いてあるけれども、七項目にも、沖繩の施政権返還が行なわれてもアメリカが現在持っておる国際的な防衛義務の遂行は妨げないんだ、具体的にいつでも出ていってよろしいということを言わんばかりに書いてあるじゃありませんか。こればかり何べんも何べんもアメリカ側が現在の沖繩における米軍基地の機能を担保したい、こういうことを言われておるときに、私は、あなたが一切何も与えなかったということはどうでしょうかね。いまのような文章を書かなければならないでしょうか。たとえば六項目にしぼりましょう。六項目の、これから始まる返還協定、取りきめにそういうことを書きますという約束をなぜされたか。はずしたっていいじゃありませんか。なぜ書いたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/94
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095・愛知揆一
○愛知国務大臣 それは両国間のこれだけむずかしい問題の処理でありますから、いろいろの考え方もございましょう。しかし、先ほど申しましたように、バックグラウンドからいいましても、情勢判断からいっても——これはいまのお答えにならぬかもしれませんけれども、私は、ここ一年の間にもうずいぶん変わってきておると思うし、これからもずいぶん変わるだろうし、また変わることを望みたいと思います。そしてとにかく安保条約の適用が本土並みになる。そして返還を約束したということは非常に大事なことであるし、そのくだりというものが大きな意味合いを今後においても持つであろう。また持たせなければいけない。そういうことは、バックグラウンドの判断からいいましても、沖繩にアメリカの軍事的観点から期待していた機能とか役割りというものはそういう意味においても減殺されてもやむを得ないという判断が先方にあったものではないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/95
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096・永末英一
○永末委員 ちょっと観点を変えまして、メースBの撤去をアメリカは発表して、実施中のところもみなに見せたようですが、メースBの撤去の意味を外務大臣はどう判断されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/96
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097・愛知揆一
○愛知国務大臣 私は、この答弁では御満足されないことをわかりながら申し上げますけれども、とにかくメースBがあったことは事実であって、これを撤去するということをまず第一に取り上げたということは、この共同声明に対するアメリカ側の誠意ある行動である、これによってこの共同声明の底に流れているアメリカの態度というものがよく読みとれる、日本側として私はかように評価いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/97
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098・永末英一
○永末委員 私は、共同声明の結果メースBが撤去されたとは見ないのです。私ども民社党の沖繩第五次調査団が十月二十三日に沖繩に参りましたときに、米軍側のヘリコプターに搭乗してメースBの基地を見せてもらったわけです、説明はございませんが。そのときに私は、すでに前々からアメリカが発表しているとおり、古くさい兵器でございますからメースBは撤去するのだな、こう思いました。外務大臣のように、十一月の下旬に行なわれた共同声明の実行としてアメリカが誠意を見せたとは私は思わないわけです。むしろ初めから彼らは決心をしておった。しかし、いま問題なのはメースBの撤去ということ。そのことが外務大臣の判断としてあなたは、これから沖繩が返還された場合には軍事基地の機能が減殺されるであろうというお見適しであると言われた。その一つの一証左であるとごらんになるかどうかということをひとつお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/98
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099・愛知揆一
○愛知国務大臣 たとえば沖繩に、それならかわりの新鋭の核兵器を持ち込むということを約束でもしているならば別ですけれども、そういうことはございません。考えられないことでありますから、そうすれば旧式なものであろうが何であろうが、これが撤去されたということは、その限りにおいてはやはり軍事的機能が低下されたと見てもいいのじゃないでしょうか。そこは、むしろ問題はこれからのことだと思うのです。これから新しいものが入ってくるということを前提にすればそういう立論が成り立つかもしれませんけれども、そういうことは絶対にあり得ないのですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/99
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100・永末英一
○永末委員 いま流れとして、沖繩の返還後の米軍基地は現在よりもその軍事的機能は減殺される。メースB等も撤去された。そういうことは、その他の兵器においても私はあり得ることだと思うのです。
そこで、地位協定との関連で私は前にあなたに伺ったのだけれども、現在の安保条約下にある地位協定は、わがほうから返還の要求をしてもアメリカがうんと言わなければだめだ、こうなっておる。いま沖繩における米軍基地は、米軍と琉球政府で、私有地については代理人みたいな形で契約をして使用を許しておるわけですね。国、県有地は占領中の継続でやっておる、こういう形になっております。いよいよ一九七〇年代のある日に返還が行なわれたときには、それまでに地位協定によって移行していくような準備をして、その日に地位協定によるすなわち貸与ということが出発するのか、それともそれからぼちぼちやるのか、どういう御方針ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/100
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101・愛知揆一
○愛知国務大臣 これはやはり返還の日、そこで一切のステータスが変わるということにするのが本筋だと思います。そういうふうにしたい、こういうふうな考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/101
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102・永末英一
○永末委員 これで終わりますが、したがって、先ほどお認めになったように、沖繩の米軍基地使用の態様とわが本土とは著しく態様を異にしておる。そこで、もし本土並みの基地貸与の形にするということなら、基地の縮小をしなさいという要求を日本側としてはしなければならない、そういう腹がまえがございますか。基地縮小をしなさいという態度で日米交渉に臨まれるか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/102
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103・愛知揆一
○愛知国務大臣 それは先ほど申しましたように、返還協定の協定案文づくりと別な、並行的な問題なんです。ですから、これについてはさっき原則的なことだけ申し上げましたけれども、沖繩県民の福祉ということを第一に考えていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/103
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104・永末英一
○永末委員 不十分ですが、時間でございますから終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/104
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105・池田清志
○池田委員長 不破哲三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/105
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106・不破哲三
○不破委員 私も沖繩及び千島の問題について、若干の問題点を伺いたいと思いますけれども、沖繩の問題については、いま永末委員が問題にされた点を、もう少し別な角度から伺ってみたいと思うのです。
といいますのは、先ほど外相が、今度の沖繩返還交渉のバックグラウンドは、アメリカ側が日本に返還することで、基地の機能を低下するのもやむを得ないという判断をした結果だというふうに言われました。ただ私は、この日米共同声明を分析的に見てみますと、アメリカ側が日本にした約束と、それから日本側がアメリカにした約束と、沖繩の返還の問題とも、明らかに二つの部分からなっている。一つは、外相がよく言われる本並土みだという問題ですね。これはたとえば第七項を読んでみますと、「日米安保条約及びこれに関連する諸取決めが変更なしに沖繩に適用される」こういうふうに書かれておる。これは確かに本土に行なわれると同じ法的な形式に置かれるという意味では本土並みといえると思うんです。しかし同時に、このあとに、「日米安保条約及びこれに関連する諸取決めが変更なしに沖繩に適用される」という形式のもとで、どういう点が保証されるかということについての、いわば内容の問題について日本側の約束がある。このような態様による沖繩の施政権の返還は、「日本を含む極東の諸国の防衛のために米国が負っている国際義務の効果的遂行の妨げとなるようなものではない」ということを日本の政府側が保証したという第七項は、二つの面からなっておると思うんです。一つには法的な、形式的な面、もう一つは軍事基地の機能の面。前者の面では、法的な形式的な面ではアメリカ側が安保と諸取りきめの適用を約束した。しかし後者の軍事基地の機能の面では、日本側がその形式のもとでもいまアメリカが負っておる国際義務を妨げるようなことにならないんだということを内容的に保証したというふうになっていると思うんですけれども、この後者の、「米国が負っている国際義務の効果的遂行の妨げとなるようなものではない」ということは、単なる飾り文句ではなく、やはり実際に内容のある、事実上の日本の保証の約束だと考えますけれども、その点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/106
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107・愛知揆一
○愛知国務大臣 それは保証とお読みになるんでしょうか。私は、日本政府として保証したなんということは書いてもおりませんし、保証というようなふうにおとりになるのは困ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/107
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108・不破哲三
○不破委員 この点は、総理がこの共同声明直後にやられたナショナル・プレスクラブの演説では、もう少しはっきり書いてあるわけですね。「沖繩における米軍基地の重要性について日米間の基本的な認識は一致しております。沖繩基地の平和維持機能は、今後とも有効に」——これは英文では効果的、同じですけれども、「有効に保たれなければなりません。」というように、平和維持機能が今後とも効果的に保たれなければならないということを、日本側の態度表明としてはっきり明言をされておる、その点はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/108
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109・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは一つは、安保条約の法体系が変更なしに沖繩にかかるということは本土並みなんだけれども、そういうステータスに置いておくことが日本の安全、それから日本を含む極東の安全に寄与し得る、こういう基本観念をいっておるわけでありまして、特に沖繩についてだけ安保がかかる、それで特に何らかの別の取りきめをにおわせるような保証をしたというふうに私は読むべきものではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/109
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110・不破哲三
○不破委員 その点が、大体政府に共同声明の解釈を伺いますと、いつもアメリカ側から取りつけたと思われるところについては、これは非常に明確な約束である、しかし日本側がアメリカのいろいろな軍事問題に関して保証した問題については、これは単なる一般的な見解の表明だとかいうことでいわれておるわけですね。ただアメリカ側は、たとえば例のジョンソン次官の背景説明を読んでみても、外相が、これは単なる一般的な観測だといったという部分を非常に重視をしておる、この約束があるから、今度の施政権返還について、軍事面を含めて何ら心配ないということをアメリカ側としては強調しているわけですね。だから私どもは、やはりよく外相や総理が強調されるように、この共同声明というものは一字一句重要なものとして日米間で合意したというような立場に立つと、いわば日本側が、今後のアメリカ軍基地の機能について表明したことは、決して単なる見解の表明にとどまらない。たとえば沖繩の施政権返還交渉がこれから日米間でやられる、あるいは施政権返還後にこの事前協議の問題が出される、そういう場合に、ここで日本政府が、あるいは共同声明の形で、それから総理の演説の形で表明したことが、実際にこのように効果的に国際義務の遂行を妨げないという約束をしているではないか、これを遂行するためにはどうしてもこの機能が必要なんだというようにアメリカ側が出てくる根拠ですね、これを二つの文章は与えているのではないか、明らかに与えているというように考えるのですけれども、その点は全く単なる一般的な表明で、その後の日米間の交渉で、政治的な意味で——法的にではなくて、政治的な意味で日本側の態度に影響を与えるような、そういう約束がここには何ら含まれていないといわれるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/110
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111・愛知揆一
○愛知国務大臣 結論的にはそのとおりなんです。これは法的な意味だけでなくて、くどいようでございますけれども、安保条約について変更なしにということは——安保条約の、よく世の中には変質論がありますね。この共同声明によって、たとえばアジア安保に変質したとか、あるいは日本は事前協議に対して予約のイエスを与えたのだとか、そういうように読む方があります。ありますけれども、そうじゃないので、これはその法体系として、変更なしにということに表現せられているがごとく、考え方に何らの変更がない。それからことに、これは沖繩返還という問題がここに重点としてあげられているけれども、同時に安保条約というものの性格、運用というようなものについても、前々から政府が考えていたとおりの考え方が変更なしにあらわれているというところが特徴だと私は思うのです。ここに書かれてあることは、安保条約の性格や運用について、ことに一九六〇年の改定以来の政府の考え方には何ら変更を与えていないというふうに私は読み取っていただきたいと思うし、われわれはその当事者として責任をもってそういうふうにお答えをするわけでございます。
なお、この点は言わずもがなかもしれませんけれども、よくジョンソンメモというものが話題に供せられますけれども、これはどこの国のどこの社会にもあることかもしれませんが、まあオフレコでその場限りのということで、何か話したことがあるようですけれども、これは公式のコメントの対象になるべきものではありませんし、ことにその点は、総理も言われていたように、総理と大統領との話し合いでございますし、せめて国務長官でも公式に——ちょうと私がこの共同声明発表と同時に、説明要旨を発表いたしました。これは、いわば公式のものですが、それ以外に私は双方にとって信憑性のあるものと考えることは、むしろ日本側としては見識に関する問題ではないのかとさえ思うくらいでございまして、あまりそういう点はお触れにならないほうがよろしいのではないか。非常に率直な意見でございますけれども、あえて申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/111
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112・不破哲三
○不破委員 それで、この外相のそういう解釈ですけれども、沖繩基地の機能を今後とも有効に保つということを、日本の総理が明言をされ、共同コミュニケでもああいう表現をされたということは、私は実際の日米間には非常に重要な事実として残る重要な問題であるというふうに思います。たとえば、先ほど永末委員も言われましたけれども、沖繩基地の機能というのは、本土の基地の機能と明らかに違うわけですね。
これは私どもの一方的な見解ではなくて、たとえば昨年六月のアメリカの下院の歳出委員会で、レアード国防長官が、沖繩基地はどんな機能を持っているかという定義をしています。これは三つの機能をあげているのですけれども、朝日新聞によりますと、第一の機能は、「この地域の緊急事態にただちに対処できるよう、地上兵力、空軍兵力を準備体制のまま集結させておくことが出来る」作戦基地、つまり、いつでも東アジア全域に対して発進できる作戦基地、これは第一の機能だ。第二の機能は、「西太平洋での陸、海、空軍の作戦を支援するうえで、中心的な補給基地」。第三の機能は、「これら全地域に対する高度の通信施設をもっている。」通信連絡基地、この三つの機能をあげています。
第二、第三の機能は、本土と共通の面があることはあるけれども、しかし第一の機能は、本土の米軍基地には、現状のもとではない機能なんですね。しかも、それが一番重要な機能だ。そういう沖繩基地を、今後施政権を返還して、日本の領域内に取り込むという場合に、この米軍基地の機能は、今後とも維持されるであろうということを、この会談で保証——というと外相は異論を唱えられますけれども、ともかく日本政府の態度として、公開の場所で明言をされた。このことは、今後の沖繩問題で非常に重要な問題点を残したものであるというふうに考えざるを得ないと思います。それは、これ以上伺っても同じ答えが出てきそうなので、これはこれとして、今後に残したいと思うのですけれども、最後に一点、千島の問題について伺いたいと思うのです。
私ども、千島問題については、日本に返還をする交渉をする場合に、二つ障害があると考えています。それは政治的には安保条約が障害になってきている。法的には五一年のサンフランシスコ条約で第二条(c)項の千島放棄ですね。これが障害になっているというふうに考え、この障害の取り除きが千島の返還交渉を効果的に進める場合に、どうしても必要になるだろうという見解を持っておりますけれども、この点に関連して伺いたいのです。
と申しますのは、あの平和条約の第二条(c)項で放棄した千島の範囲について、いま政府がこれは択捉、国後を含まないというふうに見解をとられていることは私どももよく知っております。ただ、五一年この条約を国会で批准した当時、当時の政府はそういう見解をとっておられなかった。国会で政府を代表して西村条約局長が答弁されたときに、明確にここで放棄した千島というのは南千島まで含むということを答弁しております。これは政府の見解として公式に答弁されて、当時政府から、どこからも異論を出されなかったことなんですけれども、政府が公式にこの解釈を改められて北千島だけが含まれるのだ、択捉、国後は含まれないのだということを公式に政府が表明されたのは一体いつの時点かということを伺いたいと思います。サンフランシスコ条約の締結後、そういう見解を表明されたのはいつの時点かということを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/112
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113・愛知揆一
○愛知国務大臣 いま二つの点をあげられましたけれども、安保条約の問題については、特にお答えしなくてもよろしいかと思いますが、(不破委員「二番目の問題だけでけっこうです。」と呼ぶ)二番目の問題は、これもしばしば話題になる問題でございますけれども、まず当時のサンフランシスコ条約にはソ連は入っておりません。
それから、その次に、放棄した千島に国後、択捉は入っていないというのが政府の確定された解釈でございます。(不破委員「当時もですか。」と呼ぶ)
ですから、なるほどいまおっしゃった西村局長の答弁というものがございましたけれども、その後におきまして一その後といいますか、昭和三十年十二月九日の衆議院外務委員会、それから三十一年二月十一日の衆議院外務委員会、それから三十六年の参議院予算委員会、同年十月三日の衆議院予算委員会、それぞれ政府委員もしくは当時の外務大臣から詳しく御説明をいたしております。で、統一解釈を発表いたしまして、放棄した千島の中には国後、択捉は入っておりませんということを明らかにいたしております。そしてこれが今日に至りますまで政府の確定統一解釈でございます。
なお、それ以外に、この三十年以降におきまして当時の池田総理大臣からも、この確定解釈と同様の答弁や御説明をいたしておるわけでございます。
それから、いつも私が申しますけれども、一番結局はっきりしているのは、こういう点にも関連してですが、一八五五年の日魯通好条約だ、と私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/113
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114・不破哲三
○不破委員 ちょっと時間を超過しているようですけれども、あと一問だけこの問題で伺いたいのですけれども、いまの答弁ですと、私の調べた結果と同じだったのですが、昭和三十一年ですね、平和条約が国会で批准されてから五年目にこの見解が初めて出されたというふうに伺いました。したがって、条約を批准した当時には、先ほど私が指摘しました西村条約局長の南千島を含んで放棄するのだという解釈が、政府の法的解釈として表明されて、それで条約が国会で批准されたということになると思うのですけれども、この条約以外にこういうように条約を批准するときに、条約の重要な部分について、条約を批准するときにはAという解釈で条約が批准され、そのことが内外全部わかっているのです。相手国にもわかっている。それから五年たった後に別の解釈が政府から表明をされるというようなケースが、この問題以外に、非常に条約の重要な部分について、それから今後の交渉全体にかかわるような問題について、こういうケースはきわめて異例だと思うのですけれども、ほかにおありでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/114
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115・愛知揆一
○愛知国務大臣 さあ、とっさにそうお尋ねがあっても、ちょっと私いまなんですから、調べて御回答申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/115
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116・不破哲三
○不破委員 この問題は、今後も問題になる点だと思うのですけれども、もう質問はこれでやめますから、ともかく条約を批准したときの解釈というのは、普通の常識ですと、一番法的な解釈として国会の中でも、国内でも、それから国際的にも通用するわけですね。それが択捉、国後を含んだ放棄という解釈でやられた。あの当時の国会では、いま外相が言われた幕末の条約、このことも出されて議論をされたわけですけれども、それとは明確に違うのだということがやはり政府側から答弁されて、南北千島を含むということが確定されたいきさつだというふうに議事録を調べて了解しておるのですけれども、その点だけ新しい解釈を出されたのが五年後だったということを伺いましたので、それで質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/116
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117・池田清志
○池田委員長 次回は公報をもってお知らせいたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後五時五十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106303895X00319700306/117
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