1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十五年四月一日(水曜日)
午前十時五十一分開議
出席委員
委員長 加藤 清二君
理事 小山 省二君 理事 始関 伊平君
理事 古川 丈吉君 理事 山本 幸雄君
理事 渡辺 栄一君 理事 島本 虎三君
理事 岡本 富夫君 理事 寒川 喜一君
伊藤宗一郎君 久保田円次君
浜田 幸一君 林 義郎君
松本 十郎君 土井たか子君
多田 時子君
出席政府委員
総理府総務副長
官 湊 徹郎君
内閣総理大臣官
房審議室長 青鹿 明司君
経済企画庁国民
生活局参事官 西川 喬君
厚生省環境衛生
局公害部長 城戸 謙次君
通商産業省企業
局立地公害部長 柴崎 芳三君
委員外の出席者
議 員 角屋堅次郎君
法務省刑事局参
事官 鈴木 義男君
最高裁判所事務
総局民事局長 矢口 洪一君
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
公害紛争処理法案(内閣提出第一八号)
公害紛争処理法案(角屋堅次郎君外五名提出、
衆法第五号)
公共用水域の水質の保全に関する法律の一部を
改正する法律案(内閣提出第二〇号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/0
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001・加藤清二
○加藤委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の公害紛争処理法案、角屋堅次郎君外五名提出の公害紛争処理法案、及び内閣提出の公共用水域の水質の保全に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
この際、おはかりいたします。
最高裁判所長官の指定した代理者矢口洪一君から、各案について本日の出席説明の要求があります。これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/1
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002・加藤清二
○加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、承認するに決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/2
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003・加藤清二
○加藤委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。林義郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/3
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004・林義郎
○林(義)委員 私は、いま議題になりました公害紛争処理法案、及び公共用水の法案につきまして若干の質問を行ないたいと思います。
まず、その質問を行ないます前に、副長官に若干のお尋ねをしたいのでございますが、公害の問題というのが起こってまいりましたのは昭和三十年代になってからのことだと私は思っておりますが、ごく最初におきましては、いろいろと複数の企業が集まって害毒を流した、その害毒が集まって公害を起こしたのではないかという観念が流布されていたのではないかと思います。ところが、それがだんだん激しくなりますと、単独の事業、単独の企業におきましても、いろいろと害毒を流してくる、こういうふうなことになりまして、いろいろな議論の上、この公害対策基本法によりまして、大気、水質、騒音、振動、地盤の沈下、悪臭といういわゆる六つのものにつきまして規制をしていこう、また対策を立てていこう、こういうふうな考え方になってきているのだろうと思います。ところで、六つございますけれども、この中でいわゆる振動とか、地盤の沈下とか、悪臭等につきましては、まだまだいろいろと対策を実行するにおきましての未解決の問題もたくさんあると思いますが、現実にそこまで技術が進歩していないというような点もあると思います。これらについても、いろいろなそういった問題を解決して処理すべき問題だろうというふうに私は考えます。
先ほど申しましたように、いままで公害が増加してきたというのは、日本の経済が高度成長を遂げてきた。それからいろいろな科学技術というものが進歩をしてきた。そこにおきましていままでの政策というものは、どうしてもGNPを増加させる、経済成長率を幾らにする云々ということがずいぶん議論されてきましたけれども、そういった議論をされてきた点から、大きな社会の転換というものがはかられていかなければならないような時代にきているだろうと思います。先ほど申しました六つの公害基本法の中に掲げられているような害毒以外にも、いろいろな問題が、これから科学技術の進歩その他の問題につれて私は出てくるだろうと思うのです。たとえばプラスチックの廃棄物の問題であるとか、あるいはBHCであるとか、農薬の公害の問題、いろいろございます。また食品添加物の問題についてもいろいろ問題があると思います。さらに言うならば、だんだんと高い建物ができてくる。そうすると日照権の問題というふうな問題も出てくる。こういった問題がいろいろ出てくると私は思います。これから経済がますます発展してくる。社会がますます高度成長を遂げていく。言うならば文明なり文化というものが発達していけば、そういった意味においても個人のいわゆる私的な福祉というものと、社会的な福祉というものの調和をどこに求めるかということが、これからの大きな政策的な課題にならなくちゃいかぬ。むしろこれが中心になっていろいろ考えられていかなくちゃならぬ時代になるのではないだろうか、こういうふうに考えておるわけです。したがいまして政府として、公害対策基本法に書いてあるからこれはやるのだ、書いてないから、あるいは法律にないからやらないのだということではなくて、そういった広い観点から積極的にそういった問題、いわゆる社会的な福祉という問題を相当強くしていく——社会開発ということばで言っておられますけれども、そういったことに積極的な姿勢で取り組んでいかれる必要があるのではないかと思います。この辺につきまして総括しておられますのは総理府でございますので、副長官に御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/4
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005・湊徹郎
○湊政府委員 ただいまお話がございましたように、私も全く同様に考えております。この問題が起きてきた原因から見れば、ただいまお話しのように、産業公害というふうな形で出てまいっておりますが、だんだん都市が過密化してまいりますと、産業に関連のない、生活そのものから出てくる——先ほどプラスチックの製品の投棄という話もございましたが、これなんかむしろ家庭や何かのごみ処理みたいな形で出てくるいわば都市公害、こういうふうな形も出てまいっておりますし、最近の交通事故等も、当然考えようによっては一つの公害の形態だろうと思っております。そういう意味では、公害対策基本法には六つの典型的な公害をあげてございますけれども、あるいは場合によって電波障害等も入ってくるでありましょうし、同じ産業廃棄物の中でも、あるいは将来は自動車その他、家庭の耐久消費財等の投棄、これなんかもかなり数がふえるだろうと思います。そういう意味で、公害基本法の精神をくみながら、私どもとしてはそういう社会経済の時代の発展に従って出てくるであろう公害等に対しても、絶えず対処する、そういうかまえでいくのが当然であろうと思いますし、それぞれに個別法もあるわけでございますから、そういうふうな点で、できるだけ公害に関しては対処していくというっもりでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/5
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006・林義郎
○林(義)委員 次に、最高裁判所の矢口民事局長がお見えになっておられますので、ちょっとお尋ねしたいのでありますが、三月三十一日の毎日新聞のトップ記事に「最高裁新見解」といたしまして「原因と推論される企業、無過失立証の責任」という大きな見出しで出ております。内容はもうすでに御存じだと思いますが、二十日に開かれた衆議院の法務委員会で岡沢完治先生の質問に対してお答えになったということでございますが、これにつきまして私は若干の御質問を申し上げたいのです。ここに書いてありますところでは「民事訴訟法の厳格な解釈では、被害者である原告側を救済することは困難。一応の推論が成立したと裁判官が判断すれば、被告側に無過失を立証させるべきであり、これは、法律を改正しなくてもやれる」ということが出ておるわけでございます。
それで私はお尋ねしたいのですが、現在大体どのくらいの案件か。この新聞の中に出ておりますのは、「全国各裁判所に八百六十六件(昨年末現在)」としてございますが、こういった数字は間違いないかどうか。そういった事件がどの程度まで日にちがかかっているのか。いわゆる公害の裁判というのは非常に長い長いと、こういうふうなことをよく言われるわけであります。その辺の実態につきまして、もしも資料等お持ちでございましたならば若干御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/6
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007・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 お尋ねの件でございますが、まず現在裁判所に係属いたしております事件の数等について申し上げたいと思います。
私ども調査いたして現在持っております事件の基準日は、本年の一月一日を基準にして全国の調査をいたしたわけでございますが、いわゆる公害基本法による公害というものと必ずしもその範囲を同じくしておるわけではございません。公害対策基本法でいまおっしゃいましたような提示をされておる公害のほかにも、たとえば鉱物採掘による地盤の沈下、日照・通風の妨害、汚水の浸入、井戸水の枯渇、眺望の妨害といったようなものを一括いたしまして、私ども公害関係の事件というふうに考えておるわけでございます。
その事件の数といたしましては、厳格には訴訟事件が百八十六件係属いたしております。また調停事件が四十七件係属いたしておりまして、合計二百三十三件と相なっておるわけでございます。
それ以外にも、私どもといたしましてはいわゆる特殊損害賠償事件というものを考えております。たとえば医療過誤の事件でございますとか、それから薬品、食品関係の欠陥によるところの人体の損傷等の事件でございます。それから船舶、航空機、自動車等の構造上の欠陥、あるいは運行上の欠陥に基づく損害賠償の事件。場合によりましては労働災害等に基因する損害賠償事件もございます。そういったものもひっくるめまして、これを特殊の損害賠償事件と考えておりますが、この全部合わせましたものが、ただいま御指摘の八百六十六件ということに相なっておるわけでございます。
ところでそういった訴訟の係属の状況でございますが、これは元来が非常にむずかしい問題を含んでおりますので、必ずしも非常に迅速に審理されておるということは言い得ないのじゃないかと存じますが、四大公害事件等ということでしばしば問題になげます四つの事件につきまして、いつからかかっておるかということをちょっと申し上げてみますと、阿賀野川の水銀中毒事件、これは新潟でございますが、四十二年の六月に訴えが提起されておるわけでございます。また四日市の公害事件、これも四十二年の九月に訴えが提起されております。それから富山のイタイイタイ病事件、これは四十三年の三月に訴訟が提起されております。また熊本の水俣病の事件、これは比較的新しゅうございまして、四十四年の六月に事件が提起されておるという状況でございます。
一応御説明いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/7
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008・林義郎
○林(義)委員 そこで、いま御説明ございましたような事件、いろいろと特殊の案件、医療とか、薬品とか、あるいは船舶、自動車の構造の問題というのを除きまして、いかゆる公害事件というものは二百三十三件という話でございますが、その事件というのは、おそらく損害賠償請求訴訟事件だろうと私は思います。それはやはり民法の七百九条以下のいわゆる「不法行為」の問題になるだろうと思いますが、その点につきまして、いわゆる故意、過失の責任は損害賠償を請求するほうから言わなくてはならぬ、これは私は当然の原則だろうと思います。それから、故意、過失によって損害を与えるというところの因果関係を相当説明しなくてはいかぬだろう。実際問題としては、それは確かに御指摘のように、その被害者側のほうでそれを説明することはこれまた非常に金のかかることで、専門の知識も要る。大体加害者のほうは非常に零細なところが多いということで、非常にむずかしい問題だろうと私は思います。この場合に、ここに新聞に書いてありますのは、たとえば「公害を認定した当時の厚相など所管大臣が、認定した根拠を証言すれば足り、」ということですが、そういったことまでやると、裁判所のほうとしては、そういった厚生大臣の認定はどのくらいの証拠能力を持つのか、これは私は非常にむずかしい問題だと思うのですが、もしその辺の見解を民事局長が明らかにしていただけるならばしていただきたいし、まあこれは裁判の問題でございますから、私もあまりこの辺でお尋ねするのもどうかと思うのですが、もしよろしければそういった点について、いままで地裁とか、あるいは高裁なんかで判断が出ているのじゃないかと思いますので、そういったところもありましたらお述べいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/8
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009・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、最終的な判断は裁判の問題でございますので、各事件を担当いたしております裁判官が、自己の自由なる心証に基づいて、何ものにも拘束されない判断をされるわけでございます。損害賠償ということになりますと、ただいま御指摘のとおり、その原因、そしてその原因に基づく結果、しかもその原因行為が故意または過失によって惹起され訂たものであるといったことを原告側すなわち被害者側が主張し、立証しなければいけない、これは当然のことでございます。で、私、実は御指摘の新聞の記事にございます法務委員会での御説明を申し上げましたものは、先月十二、十三日の両日、公害を担当しております全国の裁判官が集まりまして会同を開きました際に、どういうような話し合いを行なったのかという御質問に対してお答えしたものでございまして、こういうふうな方法でやれとか、あるいはこうでなければいけないとかいうような意味で申し上げたものではないわけでございます。そういったことが問題になったという御報告をいたしたものであるわけでございます。
ところで、そういった原則はもちろん原則でございますけれども、事案によりまして、どのような行為があってどのような結果が起こったかという因果関係の問題について、裁判官が、Aという事実からBという事実が起こったのであるという認定をいたしますことにつきましては、それぞれの事案に即した認定のしかたがあろうかと存じます。端的に現場を目撃して、たとえば車がセンターラインを越えて歩道に乗り上げてそこを歩いておった人を殺傷した、それを見ておった者があるということになれば、非常にはっきりした原因と結果の認定であると思います。しかし、それが深夜であってだれも見ておった者がいないということになりますと、たとえば現場にあります車の塗料でございますとか、いろいろな科学的な観点から、そのAという車がBという人を殺傷したという認定をする必要があろうかと存じます。
そういうふうに、事案によりましていろいろと違いますので、一がいにどうこうということは申し上げられませんが、民事訴訟の一般原則といたしましては、あくまでAという事実からBという事実が起こったという因果関係を証拠をもって認定する、証明の程度に認定することが必要であるわけでございます。ただ、その証明の程度の認定が、そのように必ずしも常に直接に行なわれるとは限らないわけでございますので、場合によってはいろいろの間接的な事実からそういう事実があるというふうに認定する場合がございます。たとえば普通の契約で申しますと、契約書があるとか、場合によっては契約書も何もないけれども、契約当事者の日記があって、いつ幾日に契約をすることになっておると書いてあり、当日契約したと書いてある、あるいは中身に契約したとはっきり書いたものはないけれども、そういう書類か日記等が証拠に出されれば、一応契約をしたのではないかという認定に達するわけでございます。そのように間接事実からの総合から主要事実を認定することを、私ども一応の推論というふうに申し上げるわけでございまして、そのような一応の推論というものはこれまでの訴訟一般においてもしばしば行なわれておるわけでございます。何も特に公害ということで新しくそういう事実の認定のしかたというものが出てきたわけでもございません。ただ公害というものの性質上、ある程度この蓋然性の理論と申しますか、そういったものが入ってきやすいのではないか。ある程度はそれを導入しないと、この訴訟の立証技術として困難を、不可能を要求することに近くなるのではないか、そういった議論が出ましたことを実は御報告申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/9
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010・林義郎
○林(義)委員 いまの説明で大体わかったんですが、やはり公害の問題につきましては、民事局長も御指摘になっておられますように、相当に専門的な知識が要る。正直なところを申し上げて、裁判の方は法律の専門家ではあられても、いわゆる疫学であるとか、あるいは自然科学とか、いろいろな薬学とかいったものについての専門家ではないし、それがどういう関係を持つかということにつきましては、相当に専門的な知識が要る。ところが裁判ということになりますと、これは原告と被告の双方で弁護士を立てるし、また双方で有利な鑑定人を出すとかいうことになりまして、なかなかその辺の問題はむずかしい問題です。おそらく疫学的に申しましてAからBであるという結論と、AからBでないという結論と、いろいろ出るだろうと思うのです。私はそういった意味におきまして、なかなかこの問題を裁判で解決してやるということが、無過失損害責任主義というようなものでもとるということなら別でしょうけれども、現行の体系をとっていく限りにおきましては私は非常にむずかしい問題だろうと思います。まあそこに私は実はこの公害紛争処理法案の一つの大きなメリットがあるというか、一つやはり行政制度としてこういったものをやっていかなければならぬ問題があるんだろうと思います。
もう一つ聞いておきたいのですが、先ほどありましたのですが、そういったいろいろな薬学的な問題であるとか、医学的な問題とかいうものをされるときに、たとえば行政庁のほうで、厚生省なり、あるいは総理府なり、その他の役所において判断されたことを、裁判の証拠として、あるいは一つの有力な証明手段としてお使いになることがいままであったのかどうか、その辺をちょっとお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/10
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011・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 正確に個々の事件についてお尋ねの件について調査をいたしたわけではございませんが、一般的な問題といたしまして、行政機関等において認定された事実、たとえば公害問題等につきまして公害病というようなことで認定をされておるといたしますと、そういったことはもちろん一つの証拠として十分に価値を持っておるものでございます。ただ、それだけで十分であるということになるか、あるいはもっとほかの証拠が要るということになるか、あるいはこれではだめだということになるか、これは最終的にはやはり裁判官の自由な心証によるというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/11
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012・林義郎
○林(義)委員 その問題に関しまして大体私の感じました点は、最高裁におきましてもその点はっきりと割り切って、役所のほうでこう言ったからそうだというふうな形で全部あとの立証責任を転嫁するというようなことは、なかなか私はできないということだろうと思いますし、またもう一つ、これは別のことでございますが、最近いわゆる公害罪という問題がだいぶ出ております。これは予算委員会等でも御質問があったようでございますが、政府のほうからも単独立法ででも公害罪はぜひつくりたい、こういうお話でございますが、これはやはり公害の問題ということになりますと一これはいまお話がありましたのは民事の問題でございます。私は刑事の問題であればこれは人権の尊重という問題と関連して、またより非常にむずかしい問題があるだろうと思います。公害罪はつくらなければいかぬという要請は確かに私もわかるのですが、技術的にはいろいろむずかしい問題がたくさんあるだろうと思うのです。たとえばいまのお話にありました相当因果関係というか原因関係をどういうふうな形で結びつけるかという問題、それとまた過失なり故意というものとどう結びつけるかという問題も、おそらく刑事問題としてもいろいろあると思いますので、これは法制審議会でいろいろ御議論があったのではないかと私思っておりますが、法務省の方来ておられましたならば、その辺のいままでの検討しておられた内容につきましてお述べいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/12
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013・鈴木義男
○鈴木説明員 公害罪の問題につきましては、法制審議会の刑事法特別部会というところがいま刑法の全面改正を審議しておるわけでございますが、この特別部会でかなり前から検討を行なってきた一わけでございます。で、昨年の六月に開きました刑事法特別部会でこの公害罪、これは正式には公害罪ということではございませんけれども、公害をも考慮した犯罪ということで毒物等を放出する罪というのを検討いたしましたが、これの結果、この種の犯罪を、刑法を全面改正する際には、その一環として取り入れるという方向は一応きまったわけでございます。
この案の内容を簡単に申しますと、毒物あるいはその他の健康に害のあるものを大気、あるいは公共の水域、これは河川、海あるいは湖等でございますが、公共の水域に放出したり流出させたりいたしまして、その結果、これらの大気あるいは水域を汚染して、さらにその汚染したことによって多数の人々の健康すなわち生命、身体に危険のある状態を生じさせた、こういう場合を犯罪として考えようということでございます。これは故意犯と申しますか、そういう結果が出ることがわかりながらやった場合と、それから過失犯すなわち結果が出ることを必ずしも意識しないでそういう結果を出した場合とその二つを考えておるわけで一ございます。
先ほど申しましたように、こういう案につきましては、法制審議会といたしましては一応規定を設けようという方向になったわけでございますが、その内容につきましてはなお若干問題がございまして、内容についてはさらに検討をするということで現在なお検討中の段階でございます。
二、三問題になりました点を申しますと、一つはこの規定でいきますと、大気あるいは水域を汚染した場合だけが問題となっておりますので、その他の公害、騒音とか、振動とか、地盤沈下等の問題は一応ここに入っておりませんので、そういう点をも一含めたほうがいいのではないかという意見も出ております。また、この規定ですと、先ほど申しましたように、有害物を出すということと、汚染するということ、さらには多数の人の生命、身体に危険を生じさせるということがいずれも要件になっておりまして、その間に因果関係と申しますか、この行為があったからこうなったという関係が必要でございますが、そういうことをいたしますとなかなか立証の困難な場合もあるのではないか。むしろこういう罰則をつくるにあたっては、何か行政的に定められた一定の基準があって、その基準以上に有害物等を出したということだけで処罰することにしてはどうかというような意見。あるいはこういう規定を置きました場合に、一つの企業だけから有害物が出ております場合にはわりに認定がしやすいわけでございますが、幾つかの企業の行為があって、競合いたしまして、一つの企業だけならばそういう危険な状態は発生しなかったけれども、多数の企業から有害物が出たために危険な状態になったというような場合は、はたして先ほど申しました規定で十分考えられているのかどうか、そこがはっきりしない。これらの問題点がいろいろ出ましたので、法制審議会としてはさらに検討を続ける、こういうようなことになっております。
それからなお、先ほど御指摘の因果関係の問題とか、故意、過失の問題とかということは、民法上ももちろんいろいろ問題がございますけれども、刑法の問題といたしました場合には、これはもう必ず原告と検察官のほうで十分立証しなければいけないということになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/13
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014・林義郎
○林(義)委員 いま公害罪の問題についてお話を聞いたのですが、これも立法技術として非常にむずかしい問題があるという感じを私も持っておったわけです。これは何としてでもやはり公害の問題——最初にお話し申し上げましたように、公害というものはこれからやはり政策の中心として置いていかなければならないという観点からしますと、ぜひ何らかの形でやっていただきたいし、そういった形で、法制審議会等におきましても積極的な御結論が出されるようにぜひお願いをしておきたいと思います。
いま民事の問題、刑事の問題いろいろありましたのですが、やはりそういった問題を通じまして、裁判所の手続ということだけでは、公害問題の処理というのは現実問題としてはなかなかできない。そこで、そういった点からいたしましても、現在いろいろと最高裁なり法務省で考えられております問題では解決つかない問題がたくさんあるし、そこに公害紛争処理法案というものが現在としても非常に価値のある法案であり、また公害の実際的な処理ということにおきましては非常にいい制度じゃないかと私は思います。これは先国会におきましても、大体社会党さん、民社党さん、その他の各党の方の御賛同を得て、修正案も出て、衆議院のほうは通っておりますので、私は一刻も早くこういった法案が通って、こういったものによっていろいろな問題が解決されるということで、ほんとうに公害問題を具体的な問題として前進させなければいかぬのではないかというふうに考えております。ぜひ今国会におきましても、この法案の成立をはかっていきたい、こう希望しておるものでございますが、この公害紛争処理法案につきまして若干のお尋ねをしたいと思います。
先国会におきましての議論を聞いておりますと、いろいろ問題がございますが、いわゆる国家行政組織法にいう三条機関、八条機関というような点の争い、いろいろな議論があったようでございますので、ちょっとお尋ねしたいのですけれども、第三条に、「内閣総理大臣の所轄の下に、中央公害審査委員会を置く。」——「所轄の下に、」というふうなことばが使ってある。普通何か置くときは、委員会を置くとか、内閣の中に何々を置くとかというふうに書いてございますが、わざわざ「所轄の下に、」ということばを使われたが、「所轄」ということばの意味をちょっと御説明いただきたいことと、それから第七条に、「委員、長及び委員は、独立してその職権を行なう。」ということが書いてあります。こういった点からしますと、所轄された上に、かつ独立であるというふうなことが中央公害審査委員会の性格だろうと私は思うんです。その辺につきましてどういう解釈を政府はしておられるのか、その辺をお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/14
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015・青鹿明司
○青鹿政府委員 初めに、三条の「所轄の下に、」という法律用語の御説明になるわけでございますが、行政機関の上下の関係を示すことばに「管理」とか、「監督」とか、「所轄」というふうなことばが使われております。このうち「管理」は、一番関係の密接な場合に使われることばでございまして、「所轄」ということばは、比較的独立性の強い機関が上級官庁との関係をあらわすのに「所轄の下に、」ということばが使われておりまして、たとえば公正取引委員会なんかも同様のことばを使っております。
それで、独立の職権行使でございますが、公害紛争処理というものは、やはり何といっても中立的に処理されなければならない問題でございますので、やはり委員長なり委員が職権を行使する場合には、独自の判断で適正な解決がはかられるということを本旨とすべきであろうという第七条の独立の職権の規定を入れたわけでございます。
そのほかに、たとえば委員の中立性を保つために、任命につきましては国会の同意を得るという規定も入っておるわけでありまして、これらを担保といたしまして、紛争処理の委員会の事務の処理が独立的、中立的に行なわれるようにという配慮をいたしておるわけであります。このような実体を備えておる委員会でございますので、上下の関係にも「総理大臣の所轄の下に、」という表現を使ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/15
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016・林義郎
○林(義)委員 そうしますと、私は、国家行政組織法を見ますと、八条機関というのが、いわば「附属機関その他の機関」、こういうふうにしてございまして、中を読みますと、「審議会又は協議会」、これはきわめて諮問的な機関でございますし、それから「試験所、研究所、文教施設、医療施設その他の機関」ということでありまして、こういったようないわば附属機関を——あまり独立してどうだこうだという機関ではない。おそらく御説明としては「その他の機関」のその他の中に入るだろうと思いますが、私は、いまお話のございましたような、わりと独立性が高い——「所轄」ということばも「管理」ということばと違って、わりと独立性を保持するような機関である、こういうようなお話でございましたので、この機関はむしろ三条機関というような感じが、すらっと読むと何かするわけでございますが、その辺につきましては、むしろ考え方として三条のほうの機関につきましても、四条の中で、「所掌事務の範囲及び権限は、別に法律でこれを定める。」ということになっておるし、それから八条のほうも「法律の定めるところにより、」云々、こう書いてありますので、その辺は法律的に別に定めれば、特に三条機関か八条機関か、その二つの中のどちらかでなければいかぬということではなくて、その辺は法律で、具体的に実態に合ったような形で定めればいいというお考えでございますか、その辺を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/16
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017・青鹿明司
○青鹿政府委員 行政機関を組織法上三条にするか八条にするかという問題は、いわばその機関の位置づけの問題でございます。それでどういうふうに位置づけるかにつきましては、やはり行政組織面からの政策的な考え方なり要請があるわけでございまして、今回の法案を提案するに際しまして、中央委員会をどうするかという問題を考えますときに、問題は、やはりこの機関が十分にその所掌事務を遂行できるような制度的な保障を与えることが必要であろうというような配慮をいたしておるわけでございまして、その関係でただいま申し上げましたような独立性、中立性保持のための規定とか、あるいは職権行使に際しまして必要な出頭命令権を与えるとか、あるいは文書、物件の提示の要求権を与えるとかいうような規定を置いて、その事務の遂行に支障がないような配慮をいたしておるわけでございます。したがいまして、八条機関であるか、三条機関であるかということよりも、いま申し上げましたような規定に基づいて、この委員会が十分にその機能を果たせるようにという点が問題でございますので、この点につきましては、十分な配慮をいたしておるわけでございます。
八条機関には、御承知のとおり、いろいろな本のがございまして、その中では比較的三条に近い機関であろうと思いますけれども、実際は社会保険審査会等、同様の機関も八条につくられておりますし、八条機関でありましても、十分所期の機能を果たしていけるもの、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/17
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018・林義郎
○林(義)委員 いまお話がございましたのですが、八条機関にするか三条機関にするかという問題は、いずれの機関であれ、要するに公害にかかわる紛争の処理をほんとうにうまくやれることが必要なのであって、公害の紛争につきまして和解の仲介、調停、仲裁あるいは裁定というようないろいろな制度が考えられておるわけでございます。社会党のほうの御提案の案につきましても、そういうような案でございますが、政府側にお尋ねしたほうがいいのか、社会党の角屋先生のほうにお尋ねしたほうがいいのか一まず角屋先生にお尋ねしたいのでありますが、社会党のほうの案によりますと、いわゆる裁定機関ということになっておるわけでございます。裁定機関ということになりますと、私が普通に考えますと、当事者の一方からの申し立てでよろしいということでございますし、そうしますと相当に準司法機関的な性格をこの機関は持たなくてはならないのではないだろうかということでございます。そうしますと、普通によく考えられますのは、公正取引委員会がいろいろ準司法的機能というものを果たしておるわけでございまして、公正取引委員会がやった場合におきましては、これは審決をいたしたときには、もしもそれについて不服があるときには東京高裁に持っていくというふうな規定になっているのが例でございます。
ところが、今回の社会党案につきましてはそうではなくて、地裁に持っていくというふうな考え方になっておりますが、その点裁定機関というもので考えられておるのは、そういった準司法機関的なものを考えておられるのかどうなのか、その辺を角屋先生にお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/18
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019・角屋堅次郎
○角屋議員 いまの三条機関、八条機関の点については直接お尋ねがなかったと思うのですけれども、これは政府案と社会党案では、われわれのほうは御承知のように三条機関をとっておるわけでございまして、昨年来の国会の議論の中でも、前任者の総務長官床次さんは、裁定制度をとるとすれば、これは三条機関にしたほうがいいだろうという答弁をされておるわけでございます。それは別にして、公害対策基本法の論議以来、公害対策基本法に基づく委員会を三条機関で置くべきだという考え方を受けて、しかも裁定制度等もとるということの関係もこれあり、三条機関のあれをとったというのが、お尋ねはなかったのですけれども、われわれの考え方の中にございまして、同時に和解の仲介あるいは調停、仲裁という政府の三つの方式、われわれのほうでは仲裁にかえて裁定制度をとる、こういうふうにしたわけでありますけれども、これも社会党が独自に考えたというよりも、公害対策基本法が制定される以前のいろいろな意見、あるいは日弁連その他のいろいろな意見というものを総合いたしまして、せっかく設けるからには、公害の特殊事情、また裁判との関係というふうなところから見ても、権威ある裁定という制度をとるほうが望ましいのじゃないか。これは日弁連の意見の中にも、審判権の付与という中で、「準司法的性格を持った独立の行政委員会とし、単に調停・仲裁を行うばかりでなく、何等かの形に於て審判権又は裁定権を持つものとしなければ実効を期し難い」というようなことを御承知のように意見の中で述べておるわけでございます。われわれのほうでもそういうふうな全体的なことを考えて、裁定制度をとろうということでいたしました。ただ、行政と司法との関係で、裁定から裁判に移行する場合に、裁判のほうはどこで取り扱うかという点をいろいろ議論をしたわけでございますが、権威ある裁定をなされるということになれば、先ほどのお尋ねは裁判との関係でなされましたが、それが科学的に見ても客観的に見ても、有力な裁判上の判定の資料になるだろうということを含め考えて、三審制度そのままのルールでいこうということに法案としてはいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/19
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020・林義郎
○林(義)委員 憲法の規定からしまして、何人も裁判を受ける権利を侵されることはない、こういうことがありますので、戦後におきましてはいわゆる行政裁判所というものがなくなったわけでございます。そういった場合におきましても、いま社会党の御提案されておりますような裁定機関というものが、ほんとうにいわゆる純粋の行政機関としていろいろ行動をするということになりますと、それはここに持っていった場合でなければ裁判を受けられないということになりますとまた問題になりますし、裁判のほうは裁判のほうとして独立いたします。そうすると、さっき最高裁の民事局長からお話ございましたが、民事の問題につきましても因果関係の説明につきましては相当に前向きでやらなくてはいかぬ、皆さんそういうふうに考えておられるし、裁判官のほうも準司法的ということでそういった点を考えておられるということで話もありました。しかし、何といったところで、やはり法律制度として無過失責任という形まではとてもいっていないんだ、こういうふうな点もございまして、そういう点は裁判として非常にむずかしい問題だと思います。
それからこちらのほうで行政裁判所的のような形にいたしますと、またそういったもうひとつむずかしい問題が出てくるのじゃないだろうかと私は思うのです。そういった点につきまして、制度として確かに裁定という制度は一つの考え方だろうと私は思いますが、その考え方につきましてもいろいろな問題が出てくる。たとえばさっきお話がございましたところの特殊損害の問題等につきましてこれを取り上げるということになれば、確かにいろいろな技術的な問題についてはできるかもしれないけれども、そういった問題についての専門家というものは、また非常にたくさん入れていかなくてはならぬという問題もあるだろうと思います。しかも、これは特に裁定という形で当事者の一方から申し立ててやるということで、確かに社会党の御提案理由によりますと、加害者に対して徹底的な追及をするんだ、被害者の救済をこれによってやるんだ、こういうふうなお話でございますが、そういったことになりますと両方いきり立って、ほとんど裁判をやるのと同じようなことになるのではないか、実際問題としまして。私はそういう感じがするのです。そうしますと、そこの場合におきましては、先ほどお話のありましたような特殊の裁判事件、医療とか薬品とかいうような問題と同じような問題と考えられるし、むしろ裁定機関というふうな形にされるんだったならば、それは当面の問題としてはいろいろな問題があると思うので、それは裁判所のほうへ問題を持っていっておく、取りあえず非常にやわらかい形でもって、仲裁制度という形で双方話し合いがつくところはつけてそこで処理をする。話し合いがつけばわざわざ裁判に持っていく必要はないわけですから、つけるというような形でやったほうがいいのではないだろうか、私はそういうふうに思いますが、その辺どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/20
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021・角屋堅次郎
○角屋議員 公害紛争処理法案として裁定制度をとるかどうかということは、十分議論しなければならぬ問題だと思う。ただ先ほど来の議論の中でも出ておりましたように、公害の場合にすべてというわけにいきません、非常に問題となるような公害紛争というのは、因果関係というものを立証するのはなかなか困難であります。十分専門的な立場から科学的に究明も行なわなければならぬという性格を持っておることは御承知のとおりであります。問題は、司法の場合はたてまえとしては弁論主義であり、それらのものについて被告、原告そのいずれの場合にも、立証については責任を持たなければならぬという立場です。ところが公害の被害者というのは、あるいはお年寄りであったり子供であったり、個々の場合にはなかなかそういうむずかしい因果関係をみずからの手で明らかにしていくことは困難であろうと思います。したがって、行政的に公害紛争処理法案を置くとすれば、科学的究明ということの十分な体制もとり、やはり党のほうでは専門調査会を設ける、そうして昨年の段階では政府与党もその必要性を認めて法案の修正を行なうという形で一歩前進さしたんですね。そういうこともやりながら、裁定制度を権威づける、普通、裁定制度の場合には、御承知のように、そうなればやはり被告、原告側のいろいろな述べることというのは、いわば主になるのか補完的になるのかといえば、科学的究明を行なう裁定機関そのもののほうの原因究明というのが相当な重みを持って、それと関連をして双方からのいろいろな主張も出会うという形になると思うんですね。そこが裁定制度の場合と訴訟の場合で行なわれるやり方というのは、原告、被告の関係においてウエートが違うと私は思うのです。われわれとすればこの公害の、しかも問題の非常に深刻になるような性格の紛争については、現行の裁判制度から見て、そうしてこれをせっかく置くからには権威のある裁定をやりたいということで、諸般の具体的な情勢から裁定制度に踏み切ろうということにいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/21
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022・林義郎
○林(義)委員 申すまでもないことなんですが、裁判官というのは非常な身分保障がされておるわけです。特に裁判につきましては、自由心証主義ということで、裁判官の独立制度が確立されておるわけであります。行政機関ということになりますと、独立性云々ということをいいましても、やはり内閣の指示のもとに云々という形もありますし、私はこの際、この辺は、先ほど最高裁のほうからお話がありましたが、最高裁におきましても、因果関係につきましては薬学的な問題とか、いろいろな問題を相当採用していかなければならぬし、そういった問題についてはいたしますということでありまして、いわゆる専門家といいますか、専門調査員というものを中央委員会に、今度両方どちらも置いておられるということになっておりますが、そういった方々の知識、経験を十分尊重して、裁判所のほうでも使われるという道もこれから開かれてくるだろうと思いますが、むしろ公害問題につきましては、そういった科学的または薬学的な見解というものの判断をどうするか、いわゆるそういった専門家というものを養成していくことが、公害紛争の上においては私は非常に大切なことだろうと思います。社会党の案にしましても、政府案のほうにいたしましても、そういった点について専門調査員を置いてやっていこうということであります。私はこの専門調査員の活動につきましては、非常な期待をしておるわけでございます。
もう一つの問題は、ここで、この機関につきましていろいろと費用がかかるわけでございまして、裁判のほうでやられた場合だって当然弁護士の費用であるとかなんとかいろいろかかります。いわゆる民事訴訟手続としての和解の手続等でやってもいろいろと費用がかかる。ここでこの法案におきまして、四十四条でございますが、「紛争処理の手続に要する費用」というのがございまして、これは「調停又は仲裁の手続に要する費用は、政令で定めるものを除き、各当事者が負担する。」ということが書いてございます。それから四十五条では「申請手数料」ということで、やはり「政令で定める」というふうに書いてありますが、公害問題というのは、申請するということになれば、特に被害者のほうは非常に零細な方が多い、実際問題として裁判にするのは非常に費用がかかってしようがないということでございますが、こういった形で簡易にやるということで審査会を開くということでございますと、そういった点につきましてはやはり相当政策的な配慮というものを払っていただかなければいかぬと思います。その辺は政令で定めると書いてございますので、おそらく政令の中で幾らということが書いてあると思いますが、その辺一般の民事手続で要するところの費用とか、その他のいろいろな類似の機関におきまして要する費用等があると思いますが、その辺と比較しまして、この辺の費用はどのくらいにお定めになるのですか。政令で定めるわけでございますから、この法律ができてからというお話かとも思いますが、現在話がついておるならば、その辺の内容をお知らせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/22
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023・青鹿明司
○青鹿政府委員 費用の負担でございますが、一つは、御指摘のとおり四十四条関係は手続に要する費用であります。これには具体的にどういうものがあるかということでございますが、三つの分類ができるかと思います。
一つは当事者が直接必要とするもの、たとえば出頭のための費用とか、代理人を選任した場合には代理人の旅費とか報酬、こういった系統の費用が一つあります。
二番目には事実関係の調査とか、鑑定とか、あるいは参考人の出頭とかいうような関係で、委員会の活動に伴って必要なもの。
それから三番目の分類は委員会自身が必要とするもの、委員手当とか、委員旅費とか、あるいは事務用の費用というものに分けられるのではないかと思います。
これらのうち、一の分類に属するものは当事者の御負担にせざるを得ないのじゃないか。それから三に属しますものは、公共的な負担で処理する。問題は二つの関係の、委員会が活動する際の費用でございますけれども、当事者が任意でやられるものは別にいたしまして、やはり公的な委員会の活動に関係する費用は、これは公共的な負担で処理してはいかがかという考え方で、ただいま政令案を検討中でございます。
それから四十五条の申請手数料でございますが、これもいわば民事紛争に関する特定者のための国なり公共団体の役務の提供でございますので、申請手数料をとることとしておるわけでございますが、一応比較されますのは、ただいまございましたように民事調停の費用とか、あるいは建築工事紛争の際の申請手数料というものが一応比較の対象になるのではないかと思います。ただ、公害という特殊な事案でもございますので、極力ただいま申し上げましたものを上限に考えまして、その当事者の負担を軽くするように配慮してまいりたいと考えておるのでございます。
なお、具体的に、いまの民事調停の関係でどの程度の申請手数料が必要かということでございますけれども、金額によりまして差がございます。たとえば一千万円のときには二万一千二百円というふうな申請手数料になるようでございます。それから建築紛争につきましても、一千万円のときには、あっせんの場合は七千円、調停の場合一万四千二百五十円、仲裁の場合が五万五千二百円というようなことでございますが、ここらを勘案いたしまして、極力負担の軽減を考えてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/23
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024・林義郎
○林(義)委員 こういった公害の問題でございますので、特に再度申し上げたいのですけれども、やはり公害というのはたくさんの人が被害を受けるという場合がたくさんあるわけでございます。そういった場合には、特に零細な方が多いという事実もございますので、その辺につきましての十分な配慮をしていただいて、あれだけ金を出すのだから、とてもじゃないが仲裁なんかできないということのないように、十分な御配慮をお願いしておきたいと思います。
次に、水質保全のほうの問題に移りたいと思います。公共用水域の水質の保全に関する法律の改正案でございますが、まずその前に、経済企画庁のほうで、いわゆる公害基本法に基づきますところの環境基準の策定をされたと新聞に出ておりましたが、その大体の内容につきまして、もうきまっていることでございましょうから御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/24
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025・西川喬
○西川政府委員 水質汚濁にかかわります環境基準につきましては、けさ方の新聞にも出ておりましたように、審議会のほうに諮問いたしまして、昨日基本方針に関する答申をいただきました。簡単にその概要を説明させていただきます。
まず、水質にかかわります環境基準に関しましては、基本原則といたしまして各種の行政目標として設定する。
それから、環境基準といたしましては国民の健康の保護にかかわる場合、それから生活環境の保全にかかわる場合、こう分けまして、国民の健康の保護にかかわる場合は、いかなる条件と申しますか、常に維持されなければならない。それから、これは水のほうの特殊な問題でございますので、生活環境の保全にかかわります場合は、通常の条件——異常渇水や、非常に水が足りないとかいうように、自然の条件によって変動があるわけでございますが、生活環境の保全にかかわる場合は、一応通常の条件のもとに維持されることを目標にするということでございます。
それから、環境基準につきましては、現在直ちに達成されることが困難な場合もございます。いろいろな総合施策を講じなければいけない場合もございますので、達成すべき期間というものを明らかにいたしまして、その間におきまして達成を目途とするというようなことを基本原則といたしまして、設定の方式といたしましては、国民の健康の保護にかかわります分は絶対的に確保されなければなりませんものですから、全国一律に設定する。
それから生活環境の保全にかかわります分につきましては、水域の水質保全の特殊性と申しますか、公共用水域の利水形態は非常に多種多様にわたっております。そのようなことを全国一律に設定するということにつきましては、非常に問題がある。
さらに、この生活環境の保全につきましては、公害対策基本法にもございますように、経済の健全な発展との調和をはからなければならぬ、こういうふうに載っているわけでございますが、その経済の健全な発展との調和をはかります場合につきましても、これは個々の水域別に当然考慮されなければいけない問題である。このような観点から、生活環境の保全にかかわります分につきましては、一応利水形態なりそのような形からいいまして、大体その形態が共通的なものを分類いたしまして類型をつくりまして、その類型にそれぞれ水域を当てはめていく。結果的に申し上げますと、水域群別に環境基準をきめるというような方式をとりたいというふうに考えているわけでございます。
その環境基準の内容とする項目につきましては、いろいろな項目が考えられるわけでございますが、現在、疫学的な問題、あるいは科学的な判断や何かから、まだ関係者全部のコンセンサスに達しない部分もあるわけでございます。そのような観点もございますので、項目といたしましては、当面限定しておく。しかし、これが環境基準として十分な項目では決してないというようなことから、国民の健康の保護にかかわる環境基準につきましては、国民の健康を阻害する原因となるおそれのある項目のうちから、当面、あとで御説明申し上げますが、七項目を、それから生活環境の保全にかかわるものにつきましては、水質の汚濁指標として適当と考えられるいろいろな項目があるわけでございます。その項目のうちから、PH、BOD、SS、DO、そのようなものを決定いたしております。それ以外の、今回決定していません項目につきましては、今後も十分検討あるいは関係省の間の研究を進めていただきまして、それである程度コンセンサスに達するような判断が得られましたら、逐次これに環境基準として追加していく、このような考え方にいたしてございます。その項目につきましての基準値につきましては、これは、関係各省庁から提出されました利水目的別の数値がございます。この数値を基礎条件といたしまして、それらを十分検討した上で、それに基づいて——かってにきめたものではございません、ということで基準値を設定しているわけでございます。
それから、この環境基準の一環といたしましては、測定法、これはやはり環境基準が、流水の基準でございますが、それが守られているかどうかというようなことを判断する場合につきましては、一定の基準がありませんと問題になるわけでございますから、測定方法、たとえば測定の地点とか、試料の採取、あるいはその検定等につきましても、これをはっきりきめておく。おおむねJIS、日本工業規格によっております。そういうものを決定する。
それから、先ほど申し上げましたように、生活環境にかかわります分については、通常の条件ということでございますので、通常の条件は、大体河川におきましては定水量以上というようなことをきめております。それから湖沼につきましては、一般的に定水位以上というようなこと、このようなときに測定いたしまして、これが環境基準が守られていなければならない。しかし、そういうような、川におきます定水量以下の場合におきましても、むろん測定をいたしまして、これは参考値といたしまして、そのような状況のときには、異常な渇水のときにどのくらいよごれているかというようなものを一応測定しておかなければならないというようなことを決定しておるわけでございます。
それから、先ほど申し上げました達成期間につきましては、大体原則といたしましてすでに汚濁が生じている地域、あるいは進行している地域であって、よごれてしまっている地域というものにつきましては、原則といたしまして、五年以内に達成することを目標といたします。それで、いろいろな総合的な施策を講じましても、もう現在汚濁しきっておりまして五年以内の達成が困難と思われるものにつきましては、やむを得ませんから、例外的といたしまして、五年以上わずかながら延びるのはやむを得ない、そのような場合には暫定的な中間の目標値というようなものを設定いたしまして、計画的、段階的にこの環境基準の達成をはかろうではないか、このようなことを計画いたしております。
それ以外の、これからよごれていくであろうというようなおそれのある地域につきましては、環境基準を設定することによりまして直ちにこれが維持されるように今後努力をしていく、こういうことを決定しております。
それから、環境基準達成のための施策といたしましては、公害対策基本法にも載っているわけでございますが、排出規制の強化、それから下水道等公害防止施設の整備の促進、土地利用あるいは排水、汚水を出す施設の設置の適正化、河川の流況等の改善、さらに監視、測定体制の整備、汚水処理技術の研究開発の促進、地方公共団体に対する助成、もちろん企業のほうに対しましても、金融面、税制面等において十分この公害排除の問題に対しては助成措置も考えます。特に中小企業に対しては特段の配慮を払うというふうなことも載ってございます。これが基本方針。
さらに、環境基準が一ぺん設定されましたあとにおきましても、先ほど申し上げましたような項目の追加、あるいは基準値の変更、これらにつきましては、科学的な判断の向上に伴います変更等は当然あるわけであります。
それから水域の利用の態様の変化に伴います変更、そのような環境基準の見直しというようなもの、これが規定いたしてございます。
以上のような基本方針を定めまして、当面各省関係者の間のコンセンサスに達しました基準といたしまして、国民の健康の保護にかかわる項目といたしましては七項目、シアン、メチル水銀、有機燐、カドミウム、鉛、六価クローム、砒素、この七項目を決定いたしております。審議における過程におきましては、これ以外に、トータル水銀、弗素、有機塩素というようなものが問題になって出ております。これは、先ほども申し上げましたように、健康の保護に影響があるということはわかっているわけでございますが、定性的にはっきりしておりますのは、定量的な問題その他の問題もございますので、今後早急に詰めまして、話がまとまりましたら、逐次この項目に追加してまいりたい、かように考えます。
それから生活環境にかかわりますものというのは、河川、湖沼、海域と、三つに大分類いたしまして、河川につきましては、類型を六つ考えております。六段階を考えております。AA、A、B、C、D、E、こう考えておりまして、それぞれの類型に対しまして、利用目的の適応性というものを考えている。一番いいところは、水道でいいますと簡単なろ過等による簡易な処理でいいもの、それから自然環境といたしまして、自然環境の保全、現在の自然景観等をきれいなままで保全したいというようなところが一番いいクラス。その次のクラスにおきますと、水道については通常の浄水操作を行なわなければいけない水道、水産についてはヤマメとかイワナ等、非常にきれいな水を好む魚類の生息に適する、それから水浴ができるというような、これがその次のランクというふうなぐあいに、利用目的の適応性というものを設定いたしまして、それぞれの類型につきまして基準値を定めておるわけであります。
河川につきましては、PH、BOD、SS、DO、一応この四項目を今回は決定いたしております。これ以外につきましても、たとえばABSとか、フェノールとか、そのようなもののあれが出てきております。しかし、これらも、今後の研究にまちまして、追加してまいる、このように考えております。
湖沼につきましては、段階を四つの類型に分けております。AA、A、B、Cと分けておりまして、それぞれの利用目的の適応性をこのランクに応じてつけておりますことは、先ほどと同様でございます。
項目につきましては、同じように、PH、COD——湖沼の場合には、BODではございませんで、CODのほうを決定いたしております。それからSS、DOというものを決定しているわけであります。
海域につきましては、これは類型といたしましては、A、B、Cの三類型を考えております。
項目といたしましては、PHとCOD、DO、海域につきましてはSSを定めておりません。これは現在まだ、SSのいろんなデータから見ましても、変動幅が非常に大きゅうございまして、その辺のところは、調査の上でもっと詰めましてからSSにつきましてはきめたい。現在のところは、一応PH、COD、DOだけということにいたしております。海域の場合につきましては、御承知のように、海水浴の問題がございまして、大腸菌類の問題がございます。それからさらに水産としまして、油分の問題というのがございます。異臭魚の問題がございます。この油分並びに大腸菌等につきましては、これは現在厚生省のほうの生活環境審議会のほうで数字を検討いたしております。その答申が得られましたら、それに従いまして、大腸菌のことは追加してまいりたい、このように考えております。
以上のような形で、一応基本的な、当面としてスタートいたします数字につきましては、昨日の審議会で答申を得たわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/25
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026・林義郎
○林(義)委員 いまのお話でちょっとわからなかったのですが、河川のところの最後の話で、河川の中でPH、DO、COD、SS、フェノールについて、検討するとかなんとかいうお話があったのですが、これはどういう問題でございますか。ちょっとお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/26
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027・西川喬
○西川政府委員 ABS、フェノール、ABSと申しますのは、御承知のように現在洗剤から出てまいりまして、河川をよごしているわけでございます。水道原水等に被害を及ぼしているわけでございますが、これを環境基準できめるといたしまして、その数字をどうするかという問題がございます。
さらにABSを環境基準として設定いたしましても、現在のところ一般家庭から出てくる洗剤の水でございますので、規制の方法が、環境基準を達成する方途が、現在のところまだ的確な方途は考えられないというような問題で、当面政府の、国の決定いたします環境基準の中に含めましても、なかなかその維持達成の見通しが、現時点ではまだ立たないというようなことから、もう少し検討したいということ。
フェノールは、御承知のように臭気の問題でございまして、現在すでに排水規制をやっております。あれの中では、フェノールについて規制した水域もございます。しかしながら、環境基準といたしまして、この流水中のフェノールというものにつきましていかにきめたらいいかというようなことにつきましては、まだ数値的な問題も一部に残っているようでございます。もちろん厚生省のほうといたしましては、水道原水基準といたしましてのあれは持っておられますけれども、もう少し関係各省間で詰めまして、それから項目として追加してまいりたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/27
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028・林義郎
○林(義)委員 こういった形で環境基準が、去年から非常に早くやれ、またなかなかできない云々という形でお話があった。やっととにかく本年度内ということで、きのうでき上がったことは慶賀にたえないことでございますが、ぜひ、この環境基準に基づいて、早急にいろんな具体策を立てていかなければいかぬ。さっきもお話がありましたけれども、いろんな形で各省ではやっていただかなければならぬことがたくさんあると思います。こういったことにつきましても、基準をつくったらそれで一体みということでなくて、早急にそのほうに手をつけていただきたいということをお願いをしておきます。
この水質保全法の法律の一部改正でございますが、私ちょっと見まして、この法律の一条の「目的」のところでございますが、この中で、ほかの公害基本法とか、大気汚染防止法とか、いろいろな法律とちょっと違う点があるのです。それは普通国民の健康の保護と生活環境の保全ということが書いてあって、あとで産業の健全な発展との調和をはかるものとするというのが二項の中に入っているのが、ほかの二つの法律の例だと私は思いますが、この法律では、特に一項の中で、「産業の相互協和」——「産業の相互協和」ということばはまた非常に珍しい法律用語だろうと思いますけれども、なぜここに入れられたのか。
それからその「産業の相互協和」ということばでございますが、これについてどういう解釈を立法者のほうとして考えておられるのか、その辺をお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/28
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029・西川喬
○西川政府委員 水質汚濁の問題に関しましては、これは一般的な公害問題の中におきましてもちょっと特殊な性格がございまして、いわゆる汚水を出す側と申しますか、これが水資源を利用いたしまして、それによっていろんな生産活動を行ないます、それの排水、それから一般家庭なんかの排水なんかもあるわけでございますけれども、人間が生活していきます上においては、水というものは必要欠くことのできない物質、しかも、利用いたしますと必ずよごれてくるというようなことになっているわけでございますが、それによりまして被害を受ける。ところが、被害の側が——もちろん一般の国民に対するPRというものもあるわけでございますが、大きな問題は、その水を利用している側の被害、いわゆる水産業、あるいは農業、あるいは上水道水源としているそのようなものに被害が生じているケースが多いわけであります。水質問題に関します紛争の実態を見てみましても、約九〇%のものが産業間の紛争であるということが出ているわけです。この点は、他の公害問題とちょっと性格を異にしておりまして、ちなみに大気について考えますと、これは主として産業側と人の健康という問題がほとんど大部分である。それから騒音のほうを考えますと、これはやはり産業側と人の生活環境というものが大部分である。このようなことになるわけでございますが、水質保全の問題は、産業側と産業側という問題が非常に大きいわけであります。
それからさらに加害を与えますほうの産業の態様を見てみましても、これは必ずしも大企業ばかりとは限らないわけであります。一般国民に非常に密接に結びついております産業、たとえば農業の農産加工品、でん粉工場というようなもの、これらはやはり非常に零細な規模の工場なんです。しかしながら、これもやはり加害産業に入っております。それから最近やはり問題になってきておりますのですが、水産加工業、これなんかは被害も水産業である、加害の側もやはり水産業であるわけです。しかも、非常に零細な企業である。同じ水産関係のあれであって、片一方は加害の立場に立ち、片一方は被害の立場に立つ、このような状況にあるわけであります。それでそういうような加害と被害の側の産業間調整ということが水質汚濁問題の場合には非常に大きいわけでございます。しかもそれが必ずしも大企業の被害だけではなしに、いわゆる中小の零細企業の被害、同じような態様、形を持った加害、被害というようなケースもあるわけであります。
そのような見地から、水質保全にかかわります分につきましては、昭和三十三年に法律ができましたときから、この「産業の相互協和」ということが、水質汚濁の問題の特殊性にかんがみまして入っておったわけです。今回、公害対策基本法の精神にのっとりまして、従来ありました「公衆衛生の向上」ということを、基本法と軌を一にしまして、「国民の健康の保護及び生活環境の保全」と、はっきり明示したわけでございますけれども、この水質保全の特殊性というものの「産業の相互協和」という項目は、やはりこの法律の性格として従来どおり残しておきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/29
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030・林義郎
○林(義)委員 それで、いまの産業協和の話はよくわかったのですが、今回この中に第三条の「定義」の中で別途ずっと入れられたわけでございますが、新しく入れられた項目をずっと拾ってみますと、まず「へい獣処理場等」、「採石業」、「と畜場」、それから「廃油処理施設」、「砂利採取業」というのが例示してございまして、あと、「その他屎尿処理施設、」云々と書いてございます。一体、ここに法律でずっと書いてございます施設につきまして、これは具体的にここでこれこれの許容限度を定められるわけでございますが、これの実行をはかるのはどういった形でおやりになるのか。いろんなほかの法律でもっておやりになるのだろうと思いますが、その体系をちょっと御説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/30
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031・西川喬
○西川政府委員 水質保全行政の体系は、御承知のように保全法によりまして指定水域及び水質基準をきめまして、それぞれの規制、取り締まりにつきましてはそれぞれの所管法律がその下にできております。その意味におきましては、保全法が基本法的な性格を有しているわけでございます。従来におきましては、工場、事業場につきましては工排法、それから下水道法、そのような法律が制定されております。今回新たに追加いたしますものにつきましても、ここにありますように、それぞれ第三条のところに定義的に入れておりますように、「へい獣処理場等」につきましては、へい獣処理場等に関する法律の中に規制措置が入っているわけであります。それから採石業のほうにつきましては、採石法の中に岩石を採取する場合の計画の認可が入っているわけであります。そのような、それぞれのここに載っておりますような法律に基づきまして規制を行なっていくわけであります。実体規制はこの法律にゆだねているわけでございますが、ただ水質保全法によりまして基準がきまりますと、この橋渡し規定が必要になるのであります。この法律につきましては、それぞれ基準値なりがきまっている分もございます。あるいは砂利採取のように公害を起こしてはならないというように抽象的な表現のものもございます。今回これが追加になりましたならば、それぞれこの法律に基づきまして水質基準が定められた場合には、それを順守するようないわゆる橋渡し規定をそれぞれの政令、省令等の改正の中において行なうように、すでに関係各省と打ち合わせ済みでございます。それによりまして実体規制は行なう、こういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/31
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032・林義郎
○林(義)委員 そこで、ずっと法律で書いてあるのはわかっているのですが、その次に「その他屎尿処理施設」というのがございますが、屎尿処理施設というのは清掃法の関係で厚生省がおやりになる、または建築基準法の関係で建設省がおやりになる。それから「豚若しくは鶏の飼養施設」というのがございますが、これは農林省のほうで、何か豚または鶏の飼養施設につきましてそういった特別の規制をする法律があるのかどうか。またどういった形でおやりになるのか、ちょっと御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/32
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033・西川喬
○西川政府委員 最後の「屎尿処理施設、豚若しくは鶏の飼養施設等汚水若しくは廃液を排出する施設であって政令で定めるものを設置する事業場」、こういうふうにきめておりますのは、現在屎尿処理施設、これは清掃法、それから屎尿浄化槽は建築基準法でございます。これらにつきましては、はっきりした定義のないこともございます。それからまた屎尿浄化槽等になりますと、一般家庭の屎尿浄化槽も一応法律に全部かかってきてしまうことになるわけでございます。それでは問題がありますもので、やはりある程度以上の規模のものにしなければいけないということで、それを政令にゆだね、政令でその規模をきめたい、こういうふうに考えています。それでこの二つにつきましては、清掃法あるいは建築基準法によって政令が定まりましたならば直ちに規制の対象となり得るわけであります。
ところが、豚もしくは鶏の飼養施設につきましては、現在法律もございませんし、それからまた排水処理技術につきましても現在まだ確定した処理技術がございませんで、問題になっているわけでございます。そのために養豚、養鶏場につきましては、農林省のほうにおきまして早急に排水処理技術を研究、開発したい。それからあわせまして実体規制法の法制を整備したいということでございます。その時点まで定めることができませんものですから、今回この政令にゆだねることにいたしまして、農林省のほうがそういう体制が整いましたら、そのときに政令の中に追加してきめたいということで、この規制対象となし得る道を開いておきたい、養豚、養鶏場につきましてはそういう考え方で政令にゆだねたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/33
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034・林義郎
○林(義)委員 私は先ほど御質問したときに「施設」まで読んだのですが、「等」というのがありますね。その「等」という中は、いま豚もしくは鶏の飼養施設というのはまだ政令も法律もできていないし、技術的な開発もできていないということでございます。「等」の中にも私はたくさんあると思います。たとえば、レストランがいろいろな汚水を流す。海水浴場をよごす。ちょうど海水浴のときに、たくさんレストランが近辺にあるでしょう。そういうときによごすということもいろいろあるだろうと思います。そういう問題とか、先ほどABSの話がありましたが、ああいうような石けんの問題、そういう洗剤をクリーニング屋さんか何かで使うとなれば、またいろいろ問題になると思いますが、そういった点でいわゆる「等」とここに書いてございますが、いまここで当面考えておられるものは何があるのか。それからやはり「汚水若しくは廃液を排出する施設」ですから、基本的な考えとして最初に副長官からお話がありましたように、やはりこの辺につきまして前向きで考えていただきたい、こう思っておりますし、いろいろな業界の実情もあるかと思いますが、この辺は積極的前向きな姿勢でやっていただくことを期待したいのですが、とりあえず「等」につきまして何か当面考えていられることがあれば、御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/34
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035・西川喬
○西川政府委員 この「等」につきましては、いま養豚、養鶏場でも申し上げましたように、同じように政令で道を開いておく、こういう考え方でございまして、当面この保全法が改正されました場合に政令の中に入れるということは、この「等」については現在の時点ではまだ考えておりません。ただ問題となりますもので考えておりますのは、「学校、病院等」このようなもの、これは水を相当大量に使用いたしております。やはりこれらのものは今後問題になってくるんではないだろうか。それから場と石油スタンド、そのようないわゆるサービス業関係、このようなものもいわゆる実体規制法もございません。しかしながら、ある程度の排水を出すということがはっきりしてきておりますので、必要によりましてはそのようなものと実体規制法とあわせまして政令で追加する道を開いて、それからまたさらにいろいろな技術の進歩によりまして、たとえば現在ごみなんかにつきまして、これは集めて捨てているわけでございますけれども、これらがいわゆる液化方式でやるというようなこと、これは決して考えられないことではないのでありますが、そのようなときにはそれらも追加しなければいけなくなるだろうと思います。そのような道を開いておくことをこの政令で定めるものについて残しておく考え方でございまして、現時点ではこの法律が改正になりましてすぐ発効いたしましたときには、この屎尿処理施設につきまして規模をまず定めたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/35
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036・林義郎
○林(義)委員 それからその次に「公共下水道若しくは都市下水路から排出される水」ということでございますけれども、やはり都市公害という観点から考えますと、下水道の完備というのは非常に大切なことだと思うのです。いろいろなこういった公害にいたしましても、それはやはり下水道に集め、下水道の中で一括して処理してしまえば、個々の事業場でいろいろ処理するよりも、はるかに経済的にもなるし、また個々の事業場では大まかな処理をして、最終的に下水道から本流に流すときに処理するというようなシステムを考えれば、私はこれは相当に進歩することになるんじゃないか、そのように思うのです。そういった下水道の対策につきまして、これは所管はどこでございますか、御説明をいただきたいと思いますが、一体この辺、下水道の対策というものにつきまして、いまどういうふうなことを具体的にやっていらっしゃいますか。来ておられなければ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/36
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037・西川喬
○西川政府委員 先ほど環境基準のところで御説明申し上げましたように、公共水域の環境基準をいろいろ達成しますためには、下水道の整備というものは非常に大きなウエートを占める。現在の汚濁の実態を見ましても、一般家庭の都市化によりまして、都市下水のウエートがどんどんシェアがふえてきております。企業の排水を規制するだけではとうていこの環境基準達成は期しがたいということは、大都市地域においては非常にはっきりしてきております。それが達成期間を、原則を五年以内といたしながら、やむを得ず一部総合的な施策を講じても困難なもの、と申しますのは、やはり下水道整備のほうの期間の問題から、五年以内にはとうてい困難であるというようなことがあるわけでございます。もちろんこの排水規制だけでいいましたら、除害施設をつくりましても、二年ないし三年以内にはたいていできるわけでございますが、下水道整備だけは二年ないし三年ではとうてい無理です。下水道のほうの担当の話では、新たに下水道計画を必要地域に計画してから調査を始めて、やろうとすると、最終的に処理ができるまで少なくとも七年くらいはかかる、そのようなことを申しておりました。そのために、やむを得ず五年という期間を、ある特定の例外的な水域については延ばさざるを得ないというようにしたわけでございますが、非常に大きなウエートを下水道が占めているということは、これははっきりしておることでございまして、担当の建設省側におきましても、今後下水道を大いに促進しなければならないというふうに考えておるわけでございます。
現在下水道整備につきましては、緊急措置法がございまして、五ケ年計画を持っておるわけでございますが、実はその五ケ年計画の進捗度もはかばかしくない。これが四十五年で四年目に達するわけでございますが、あまりはかばかしくない。今後環境基準をきめましたら、これは国の総合施策として政府が総力をあげて当たらなければならない問題でございますから、これによりまして、個々の水域につきまして逐次環境基準が定められてまいりましたならば、それに伴いまして当然下水道整備ということも、重要な一環としてあわせて政府の施策として進めていきたい、そういう考えでございますけれども、水質基準に関しましては、経済企画庁長官にも関係行政機関に対する勧告権がございます。すでに下水道に関しましては勧告権を発動したことがかつて一ぺんございます。それからさらに昨年暮れの審議会におきましても、これは勧告権までは参りませんでしたけれども、審議会としてそういう意見が出されまして、これを関係各省に審議会の意見として通達いたしまして、あれしております。現在、指定水域など指定しまして、水質基準を設定する場合におきましても、下水道の整備ということを一番重要な項目として、常に留意事項として審議会の附帯決議としてつけるようにして努力いたしておるところ
でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/37
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038・林義郎
○林(義)委員 最後に、私は一つお願いかたがた質問をしておきたいのですが、いまお話がありましたように、豚もしくは鶏の飼養施設につきましても、まだ技術的な問題について解決されていないし、また法律体系としても解決されていない。また学校やサービス事業、そういったところについて公害の発生原因になるようなものもあると思うのです。やはり公害の原因というのは、基本的には起こらないようにするのが一番趣旨なんでございまして、起こってからあと紛争をどうするこうするという問題よりは、公害の発生がないように未然にやらなければいけない。そうしますと、やはり公害の起こらないようなシステムなり施設なり機械なりというものを積極的に開発をしていく。技術開発の時代でございますから、そういったものについて積極的な施策を講じていかなければならないだろうと思います。最近、そういった形で政府関係機関におかれてもいろいろ研究はしておられますが、やはり政府関係機関だけでこれをやることはなかなかむずかしい点もございますので、民間におきましても、最近株価の欄などを見ますと、公害関連産業なども出ておりますけれども、そういった機関がほんとうにうまく動いてくれる、あるいは施設がほんとうにうまく動いてくれる、私もかつてどこかで見ましたけれども、りっぱな機械を備えているけれども、ちゃんと動いていない。検査をしに来たときだけ動かすというようなこともあるということを何かちょっと聞いたことがあるのです。私は、ほんとうにうまく機械というものが動いていく、国民の健康なり生活環境の保全ということでございますから、そういったことがほんとうに守られていくことが必要なことだと思います。そのためにはやはりつくるところの施設なり機械というものについて施策を講じていかなければならぬだろうと思いますが、その辺につきまして、いまどういうことをやっておられるのかお尋ねをして、さらに最近新聞で見ますと、公害関係の機械についてカルテルができたというような話も聞いたのですが、その辺の話をお聞きしたい。この公害問題はやはり何といったところで事前の予防措置というものを万全にされるということが必要なんで、その辺につきまして政府当局が一そうの御努力をされることを期待をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/38
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039・柴崎芳三
○柴崎政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、公害はその発生源におきまして事前に防止することが最も効率的でございまして、通産省もその点につきまして最大限の努力を傾注し、いろいろ施策を進めているわけでございます。
その点につきましての施策を大きく分けまして、一つは新しい技術開発、もう一つは、有効な機器をいかにして有効に企業家に採用させるか、この二つの方法があるわけでございます。
技術開発につきましては、工業技術院を中心にいたしまして、諸般の体制を整備し、特に試験研究機関直接の研究機関といたしまして、従来の資源技術試験所を公害資源研究所というような形に拡充いたしまして、担当の部を二部から四部にふやすというような対策を講じまして、かつプロジェクトチームを編成いたしまして、傘下の十数カ所の研究員をそのプロジェクトごとに有効に取りまとめまして、工業技術院並びに公害資源研究所におりますプロジェクトリーダーが、その研究を責任をもって推進いたしていくというような体制でそれを考えております。これは今後大いに効果があがるものとわれわれ自身期待しているわけです。
第二の点の、公害防止機器を企業側に積極的に活用させるという点でございますが、これは御承知のように、従来とも中小企業金融公庫、あるいは公害防止事業団、あるいは開発銀行というようなものを通じます融資の制度がございます。これは今後積極的に拡充していく方針でございます。ただ、四十五年度から新しく始められる制度といたしまして、公害防止機器のリース制度というものを設けました。これは新しいアイデアであるわけでございますが、基本的な考え方は、民間の金融機関も大いに利用しようというようなことで、長期信用銀行、いわゆる興銀と長銀と、それから不動産銀行の三者にお願いいたしまして、リース制度に乗っかったリース会社に融資をしていく、その場合必要な資金につきましては、資金運用部でそれをカバーしていくということで、さしあたり二十億円の資金を用意いたしまして、このリース制度の活用を来年度からはかりたいというぐあいに考えております。
対象となる機器につきましては、いわゆる公害を全部カバーするような、その中で特に中小企業に関係の深いばい煙処理の施設、あるいは水質処理の施設、あるいは騒音、悪臭というようなところに重点を置きまして、これを特に活用してまいるというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/39
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040・林義郎
○林(義)委員 最後にちょっとお尋ねしたいのですが、最近新聞に出ておりました公害防止機器カルテルというのは、どういうカルテルを言うのか、ちょっとその辺の説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/40
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041・柴崎芳三
○柴崎政府委員 公害防止機器の業界では、御承知のように、中規模あるいは小規模の企業が乱立している業界でございまして、したがって、公害防止機器につきましても、その品質に非常にばらつきが多いということ、それから非常に過当競争が多いということで、せっかく公害防止機器をある企業で導入しましても、所期の効果が出ない、どうも機器の性能が悪い、あるいはせっかくいい研究をしても、過当競争でたたかれて、その研究が実現する前に企業が左前になるというようなケースがしばしばあらわれる。業界のほうでもこの点を十分自覚いたしまして、合理化カルテルというものをつくりまして、品質の向上を行ないたいということで、公正取引委員会といろいろ相談したようでございます。
公正取引委員会のほうの見解では、合理化カルテルをつくるまでもないでしょう、品質の向上について業界間でいろいろ話し合って、その品質の向上だけを目的とする共同行為であるならば、それはたとえば日機連の中の一つの組織としてつくってもけっこうですというような見解が出てまいりまして、現在日機運の中に公害防止機器関係の会社が数十社ございますが、集まりまして、この品質向上についての具体的な対策を研究しておるという段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/41
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042・林義郎
○林(義)委員 けっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/42
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043・加藤清二
○加藤委員長 古川君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/43
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044・古川丈吉
○古川(丈)委員 途中で中座しましたので、あるいは林君がすでに質問されたかもしれませんけれども、社会党の代表者の角屋さんに一、二伺いたいと思うのです。また、それに関連して私たちの考えも申し上げておきたいと思うわけでありますが、一九六〇年代は経済の成長をずっとやってきたわけなんで、それが効果を生じたわけでございます。一九七〇年代は、この経済成長をやはり継続していかなければならぬが、このひずみといわれるいろいろな不合理なものが出ている。あるいは物価の問題、あるいは公害の問題、あるいは所得格差の問題、交通事故の問題等があげられると思いますが、そういう問題は、一九七〇年代には解決しなくちゃならない大きな政治的課題だと私たちも思っておるわけであります。
ただ、公害問題は、御承知のように、今日は、企業側にたいへんけしからぬというような態度で議論される方があるのでありますが、しかし、今日までは一般の国民の方々も、企業の側も、公害問題はあまり気づかなかったと言えば語弊がありますけれども、問題にしないまま今日まできたわけで、最近になってこの問題が、日本のみならず世界各国で問題になったわけであります。ただ、現在の政府のやり方のたてまえとしては、やはり加害者の責任制度を基本的にやっておるわけなんで、これにはいまお話がありましたように、公害が起こらないようにすること、起こさないようにするための技術の開発の問題がある。また、公害の実態調査の問題がある。また、公害がやむを得ず起こった後において、これを救済する問題がある。こういうような段階があるだろうと思うわけでありますが、この問題は、私は一方において国家的に——これはむしろ社会党案に出てきそうなものだと思ったら出てこないわけですけれども、いま政府のやり方は、原則として、企業に責任を持たしておるわけでありますが、企業に対しては、われわれの考え方と野党の皆さんとだいぶ違うようである。何だか、現在の企業というものに対しては、全く好意的でない立場で、いろいろな議論が進められておる。しかし、現在の国民生活の中で、日本の経済成長も、ただいま申し上げておるとおり、非常に成長したことが国民の個人の生活を非常に豊かにしておるわけでありまするし、日本の国の財政を考えても、法人税と個人の所得税とは、ほとんど個人の所得税に匹敵するだけの法人税を納めておる。個人の所得税も、役所からもらっておるような所得もありますけれども、大部分というものは、企業に働いておる中からもらっておる人の所得で、この企業のわれわれ国民生活の中で占めておる地位というものは、非常に私たちは大事なものである、こういうような考えを基本的に持っておるわけであります。それでありまするから、いま申し上げておるとおり、企業そのものはいま加害者責任制度で考えておるけれども、むしろその一半は国家が持ってもいいんじゃないか、こういうようなことを私は、いまむしろ、社会党の人々あたりからは案が出そうなものだという感じがする。私たちも、こういう点はそういう考え方を将来進めていかなくちゃならぬと考えておるわけであります。
それから、企業に対する基本的な考え方の違うことと、もう一つは、この法案で問題にされておりますのは、基地を除外するかしないかというところであります。ところが、一般的な公害問題が起こる前に、基地の公害問題がすでに問題になって、具体的に私たちが調べてみますと、基地のほうがむしろ公害対策が徹底しておる。それからもう一つは、ここの角屋さんの提案説明の中にもありまするが、国民の健康、生命よりも軍事を優先する考えだと、こういうぐあいに一ぺんにきめつけられておりまするけれども、しかし、世界の各国を見ても、共産国といわず、あるいは自由国家といわず、軍の基地を自由に立ち入り検査をするようなことを許しているところは私はないのじゃないか。国民の身体はもちろん大事でありますけれども、軍の機密を公になにするようなことはない。立ち入り検査とか、そういうことは、当然ない。こういう点の基本的な考え方が私は違うと思うわけであります。ただいま申し上げておるとおりに、私たちも具体的にいろいろ当たってみたのでありますけれども、基地の公害に対しては、ほんとうに一般の公害よりも手厚い対策が講じられておる、こういうような感じを私は受けておるわけであります。
これはいま前提のお話を申し上げたのですが、大体公害紛争処理法案というものが出されたゆえんのものは、一般の公害に対する救済というものは企業の責任だというたてまえをとっておりまするから、公害問題で争いが出ます場合には、民事訴訟の手続をとらなくちゃならぬ。民事訴訟というのは、御承知のとおり、たいへん時間がかかる。しかも公害につきましては、先ほど言うのを忘れましたが、因果関係というものが非常にむずかしい。しかも、因果関係のあることはわかっているけれども、たとえば四日市の場合には、大気汚染があすこの煙突から出ている煙のためだ、しかし、どの会社がどのくらいのウエートを持つということはなかなかむずかしい。そういうようなむずかしい問題がある。民事訴訟でいきますと、なかなか結論が出ない。こういうことで、政府の提案説明にありますように、迅速にものを解決したい、こういう趣旨が今度の紛争処理法案が出された最大の理由だと私は思う。
ところが、社会党案によりますと、政府の仲裁の制度に対して、裁定制度を設けろ、こういうことで、しかも、裁定を受けなければ民事訴訟は起こすことができない、こういうたてまえになっておりまするから、裁定で、これで権威を持たすということになれば、これは因果関係というものを徹底的に究明しなければ私は結論が出ないのじゃないか。そうすれば、民事訴訟を裁定というか、この紛争処理に移すことであって、二重にこの時間をかける。しかも、提案の説明にあるとおりに、裁定を受けなければ一般の民事訴訟が起こせない、こういうことになれば、ますますその問題を解決するのに時間がかかる、こういうぐあいに私は判断をしまして、裁定制度を設ける根本趣旨に、反対のことをこれはやって提案されているということで、私は、時間があればですが、ただ、もう時間がたいへんおそくなっているから、簡単にその要点だけ伺うのですが、その点に対しては、角屋議員はどういう考えを持っておられるか、ひとつお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/44
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045・角屋堅次郎
○角屋議員 幾つかの点について古川さんからお尋ねがございました。
まず、公害のいわば企業に対する見方の問題でありますが、これは公害対策基本法案の議論の経過、あるいは今日現存しております公害対策基本法を見ましても、言うまでもなく、公害の予防、公害の排除、あるいは公害の救済と、三つの柱になる、それらの問題については、これは国あるいは地方の行政機関というものの責務ということが一つ大きくございます。それと、いわゆる企業、法律からいえば事業者といいますか、そういうものの責務というものがございます。同時に、国民の責務というものがある。いわばそういう全体的な相互関係の協力によって、公害の予防、あるいは公害の排除、公害の救済がなされていかなければならぬ。しかし、言うまでもなく、公害については当然、公害を起こす加害者がある、公害を受ける被害者があるということが想定されるわけでありまして、その場合に、公害の加害の多くはやはり事業者側に存する。もちろん、国民の日常生活の中から出されているような排水その他の問題もありますけれども、多くはとにかく事業者から出される。したがって、企業責任という問題は、公害対策の万全を期するために、当然追及をされていかなきゃならぬというふうに私どもは考えるわけであります。しかも公害の責任問題については、単に故意、過失ということだけでなしに、企業の無過失賠償責任の法理に立つというのがわれわれの見解の中に基本的にございます。
同時に、今日公害問題は非常に大きな国際的世論になっておりますが、日本の企業の公害に対する姿勢というものは、もちろん公害対策基本法の議論以来、各種法案の整備に伴って少しく変化をしてきていると言えばそうかもしれませんけれども、特に六〇年代の高度成長以降においては、生産第一主義というものが中心になって、どうしても公害対策に万全を期する、あるいは国民の健康と生命を守るということを常に念頭に置いて、産業の立地その他各般の問題を進められているとは必ずしも言えないと思うのです。それが公害の激増という形になって今日あらわれておるというふうに思うのでありまして、したがって、やはり公害対策基本法で議論されたように、公害対策というのは本来人間の健康と生命というものを至上命令にしている、これが基本であるというのが、当時の園田厚生大臣からも述べられた点であり、また佐藤総理大臣も無過失賠償責任ということで、事実の問題としてそういう問題も十分念頭におきながら、公害対策の安全を期するという答弁の経過があったことは御承知だと思うのであります。したがって、われわれは何も、産業経済の発展の中で企業を目のかたきにするという考え方で問題を考えているわけではないという点は、明らかにしておきたいと思います。
それから、基地公害の問題についてお話がございました。これは、基地公害といっても、日本の自衛隊の場合、あるいはアメリカ等の軍事基地の場合、やはり国際的と国内的と二つ問題があると私は思う。やはり国民の健康なり、生命なり、生活環境なりに公害が被害を及ぼすという問題については、企業たると、あるいは基地公害たるとを言わず、基調においては何ら変わりはない。問題は、公害紛争処理法案として取り扱う場合に、基地を除外するということが適当かどうかというのが議論の存するところであります。
また同時に、政府案でもわれわれのほうの法案でも、基地公害というものが、この種紛争処理法案になじむのかどうかという問題も十分議論しなきゃならぬ問題だと思います。しかし、公害対策基本法制定以来の経過から見て、特に基地については特殊に取り扱うという観念は少なくともあの当時存しなかったと思います。たまたま政府案が最終の決定の段階において、基地は除外すべきであるというふうな声が与党の中で非常に強く起こってまいりました。最終的に、基地は除外するという経過も御承知のようにあったわけでございまして、基地の問題を取り扱う場合でも、やはり因果関係の究明がきわめてむずかしいという問題が、この基地公害の場合にはたしてあるのかないのかということも考えなきゃならぬ。大気汚染とか、水質汚濁という問題で、今日質問にもありましたような裁判ざたも、長期にわたっておるというふうな問題もあります。しかし、基地公害というような場合に、因果関係の究明がきわめて困難であるという問題が、はたしてあるのかどうかというふうに考えてまいりますと、私はそういう問題が全然絶無であるかどうか、今後の問題としてあるいは起こり得るかもしれませんが、一般的に因果関係、原因と結果というものが明らかな場合が多いということだと思います。だとするならば、特に基地なるがゆえにこの紛争処理法案から除かなきゃならぬという形には必ずしもならぬじゃないかというふうに思うわけであります。したがって、軍事の機密とかいろんなことをいわれますけれども、正規にはそういうものについては論議の存するところであります。それは抜きにしても、特に立ち入り検査、あるいは証拠の保全、あるいはその他のいろんなことを徹底的にやらなければ、基地公害の問題について原因の究明はできないであろうというふうに思います。、したがって、そういう点からわれわれが出しておる公害紛争処理法案についても、政府が出されている公害紛争処理法案についても、基地公害がなじめないというふうには私どもは必ずしも見てないわけであります。
同時に、古川先生がおっしゃったような、今日基地公害についていろいろ特損法その他で手厚い対策をとっているじゃないか、こういう問題がございます。これは島本君と政府との間に、前の国会のときにもいろいろ議論があったところでありますが、それは別にいたしましても、そういう点について十分であるかどうかということについても議論があると同時に、しかし、そういうことがなされておるから基地に関する紛争がないかということは、おのずから別だと思うのであります。したがって、やはり公害の紛争が基地についても起こる。当然また王子病院その他の問題が、現実にあちこちで起こっている例もございます。そういう場合には、やはり公害紛争処理法案をせっかくつくるんだから、この路線にのせるということが基本的ではないかというふうに思いますし、基地の特殊性を考えてどうするかというのは、運営上の問題だというふうに思います。
また、同時にわれわれのほうは三条機関の制度をとっておりまして、独立の事務局もつくり、規則制定権もあるというふうな独立の権限に基づき、いろいろなことが運営上も配慮されるようになっております。そういう点で考えていけばいいんじゃないか、こういうふうに思っております。
また、社会党案で政府の仲裁にかえて、われわれのほうが裁定制度をとっておる。この問題についてもいろいろ触れられました。仲裁についてのわれわれのほうの見解では、これは一方から申し入れた場合には他方の合意が必要である。つまりそういうことになって、やはり仲裁契約的なものに基づいて、しかもそれで話がきめられれば、裁判のほうにはいかないというふうな形で仲裁制度をとるわけでありますが、公害の仲裁までくるような性格の問題については、双方の合意で仲裁をスタートさせるという場合に、はたして加害者がそれに合意するかどうか。私どもの判断としては、加害者としては合意しないケースが多いだろうと思う。だとするならば、せっかくこの和解の仲介、調停に次いで仲裁制度を設けても、これが活用されるというケースは多くなるか少なくなるか、これは今後の事態に待たなければならないが、判断としては双方の合意という前提に立つ以上、少ないと判断せざるを得ないんじゃないか、こう思うわけであります。
それで、林さんの午前の質問のときにも、私は社会党の裁定制度についてはある程度説明を申し上げたつもりでありまして、時間をかけて説明をするのは省略したいと思います。古川先生も、前国会、前々国会以来、その点は十分御承知であります。ただ、裁定制度をとる場合の裁判との関係の問題でありますが、これは、先生知っておって先ほどそう言われたのかどうか知りませんけれども、ちょっと誤解があるのは、つまり、社会党の場合は、訴訟との関係については第六十三条のところでこれが明確になっておるわけです。そこで、「大気の汚染又は水質の汚濁によって生じた人の生命又は身体に係る被害についての損害賠償に関する紛争その他民事上の紛争については、裁定を経た後でなければ、訴訟を提起することができない。」つまり、六つの公害のうちで、大気汚染と水質汚濁、この問題で水俣病にしろ、イタイイタイ病にしろ、四日市の公害ぜんそくの問題にしろ、いろいろな訴訟が起こっているわけであります。しかも、それが社会的にも関係者にも非常に大きな問題になっておるわけでありますが、したがって、この大気汚染と水質汚濁によって人間の生命、健康に被害が出ておる、この損害賠償やその他の訴訟については、裁定を経た後でなければ起こすことができない。二、三のところで他のことも書いておりますけれども、要するに前提はそういうことであります。すべての問題が裁定を経た後でなければ訴訟に持っていけぬというふうには−古川先生もそういうことてないということを理解されての前提だと思いますが、先ほどの御質問を聞いておると、何か裁定が訴訟をストップしておるようにもしとられておるとするならば、その点は立法上明らかにしておくという点を御了解願いたいと思うのであります。
いずれにいたしましても、裁定制度をわれわれとることにいたしましたのは、これは党独自の判断ではなしに、公害対策基本法の制定以前のいろいろな機関における議論、あるいはまた、公害紛争処理法案に対する日弁連その他、各方面の意見というものも総合判断をし、公害対策の現状というようなものを考え、また、せっかく行政機関によって公害紛争処理制度を設けるという場合には、やはり仲裁にかえて裁定制度をとり、そうしてまた、因果関係について十分な究明を行なうために専門調査会等についても陣容を整備し、その上に立って客観的に公正な裁定を下す。これが、訴訟にいたった場合にも重要な根拠として訴訟で活用されるということを期待する裁定制度の採用に踏み切ったわけであります。
以上、御質問の諸点について簡単に御答弁を申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/45
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046・古川丈吉
○古川(丈)委員 角屋議員の御説明の趣旨はよくわかりましたけれども、やはり私が申し上げた疑問というものは除かれない。これは、まあ意見の相違になるかもしれません。
裁定制度に権威を持たすということになれば、因果関係を徹底的に究明をしなければならない。それには相当時間もかかるし、また、いま言われたとおり、全部が全部前提になっておらぬと言われるが、大部分が前提になっておるのですから、これはやはり、この制度というものは、なかなか因果関係とか、あるいは訴訟してもむずかしいが、話し合いがつけば、ひとつなるべく早く解決したいというのがこの趣旨で、それに従わないものは、不服ならば民事訴訟を起こす、こういうようなたてまえになるべき筋のものだと私は思う。これは、もう意見の違いで、それは初めから承知の上で私も言ったわけですが、基地の問題も、私の考えておるところは申し上げたとおりであります。
それからもう一つは、先ほども申し上げたように、今度の予算折衝の中でも、私もその中の一人でありますが、いろいろ公害の問題だけは総理大臣も、さきに角屋議員も言われたように、故意、過失でなくというのは、これはことばが間違ったんでしょうが、とにかくこれは無過失責任を認めなければいかぬという前提のお話で、故意、過失というものは問題ない。私はそれは当然だと思いますが、その点は私も考え方は同じであります。ただ、予算折衝の中で、私、うかつでいま初めて感じたわけですが、大気汚染、水質汚濁の問題は、川崎の空気をいなかへ持ってきて吸うと必ず被害が起きる。ところが、だんだん空気が悪くなると抵抗力というものができてくる。だから、いま通産省でも公害が起こらないような技術開発の研究というものをやっておりますが、厚生省では、科学的な、公害と健康との関係を、今度新しく調査会を設けて、専門の機関をつくってもらうことになりましたが、これは非常にいいことだ、また、われわれもそれに努力したわけでありますけれども、そういう問題がある。だから、この問題はなかなかむずかしい問題だが、むずかしいということだけでは済まされない。しかし、そういう問題もあるということを頭に置いておくことも必要だ、こういうように考えましたから、私が今度気づいたことを御参考までに申し上げたわけであります。
久保田委員から関連の質問もあるようですから、私はこれで打ち切りたいと思います。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/46
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047・加藤清二
○加藤委員長 久保田円次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/47
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048・久保田円次
○久保田委員 経済企画庁のほうに聞きますが、公共用水域というものは一体どういうふうなものですか。簡単でいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/48
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049・西川喬
○西川政府委員 公共用水域につきましては、法律の上には定義はいたしてございませんけれども、いわゆる一般の公共的に使われている水域は全部である、こういうような解釈をいたしております。
それなら、公共の利用というものはどういうものであるか、これは相当幅広く解釈いたしておりまして、現在までの指定水域の中につきましては、ほとんど所有権のいかんを問わず、一般の人が——たとえばそこに池があります。ところが、その池が、一般の人がそこに行って見られるようなものであれば、これはやはり景観その他に使われても公共用に使われている、このような解釈をいたしております。ですから、さくなり何なりをして、一般の民家の、大きな邸宅の中にある池とか、このようなものは完全な私有水面でございましょうけれども、それ以外の、一般の人が行けるようなところにありますものは、所有権のいかんを問わず一応公共用水域になる、このような解釈をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/49
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050・久保田円次
○久保田委員 水と空気は自然がつくったものですね。これは社会全体が利用すべきものだと思います。そこで、いまお答えの中で、たとえば自分のうちで、どこか特定のものでもって水を使っているというものは公共用水域でない、こういう煮味なんですね。ところが、かりにそうだとしたならば、非常に悪水があったというときに、それがずうっと浸透してきて、やはり公害が出てきた。水というものは、全体から見てすべて公共的の本のであるということを原則的に私は考えなければならない。かような意味合いにおいて今度の改正が——昭和三十三年に制定をされて、その後におきましての社会情勢というものは非常に変わってきた。これを要するに、広域的に拡大をして、その水域というもの、公共用水域——これを見ると、「六十八水域について水質基準を設定し、公共用水域の水質の保全に万全を期するべく、鋭意努力を重ねてきたところであります。しかしながら、最近における」と、こう出てきておるわけです。それですから、そういう原則的な考え方から、すでに今日では、もうどこの河川においてもあるいは海の水においても非常に汚染をされてきている。河川のごときは、どこへ行ってもほとんどそうです。だから、むしろこの際、公共用水域というような問題でなくて、水というものは公共性がある、公共用水である、そういう基本的な観点に立って法律を改正する必要があるんじゃないか。この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/50
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051・西川喬
○西川政府委員 この水質保全法の体系は、基本法的な性格を有しているわけでございます。これに伴いまして基準を設定した場合に、各種の法律によりまして実体規制が行なわれる。つまり、規制ということになりますと、これはある程度国民の権利、義務を押えることになるわけでございますが、やはりその実体規制というものの可能性との結びつきがあるわけでございます。いま先生がおっしゃいましたように、水そのものを取り上げるということになりますと、完全な水質保全ということになるわけでございますが、現在の段階といたしまして、そこまで全部実体規制を行なって、規制ができるかどうか、そのような問題がございます。正直に申し上げまして、いま公共用水域ということになりますと、先生がおっしゃいましたように、これは地下水の問題が抜けております。地下水汚染というような問題につきましては、現在のところ法律規制がないわけでございますが、最近いわゆる浸透による汚濁というような問題も出てきておるようでございます。それらにつきましてはまた今後検討してまいらなければならないかとは思いますが、現在直ちにこの法律をそういうような地下水のほうの規制、水そのものの規制に及ぼすべきであるということになりますと、まだまだ検討しなければならない問題が非常に多いんじゃないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/51
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052・久保田円次
○久保田委員 最近においては畜産公害も出ておるわけです。これはもう都会ばかりじゃないのです。したがって、いわゆる地下水で実際公害が起きているところが全国的に非常に多い。こういう観点から、いま答弁がありましたとおり、今後の問題点としてひとつ十分取り上げていただきたい、これを希望しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/52
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053・加藤清二
○加藤委員長 もうよろしいですか。——では、本日の質疑はこの程度にいたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/53
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054・加藤清二
○加藤委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。
理事会におきまして協議願いましたとおり、先ほど東京において開催せられました公害問題国際シンポジウムの事情等を聴取するため、産業公害対策に関する件について参考人の出頭を求め、その意見を聴取したいと存じますが、これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/54
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055・加藤清二
○加藤委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
なお、参考人の人選及び出頭日時等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/55
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056・加藤清二
○加藤委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後一時散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106304381X00619700401/56
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