1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十五年四月二十四日(金曜日)
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議事日程第二十号
昭和四十五年四月二十四日
午後二時開議
第一 民事訴訟手続に関する条約の締結につい
て承認を求めるの件
第二 民事又は商事に関する裁判上及び裁判外
の文書の外国における送達及び告知に関する
条約の締結について承認を求めるの件
第三 外国公文書の認証を不要とする条約の締
結について承認を求めるの件
第四 日本国とルーマニア社会主義共和国との
間の通商航海条約の締結について承認を求め
るの件
第五 日本国とブルガリア人民共和国との間の
通商航海条約の締結について承認を求めるの
件
第六 教育的、科学的及び文化的資材の輸入に
関する協定の締結について承認を求めるの件
第七 農林省設置法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
第八 許可、認可等の整理に関する法律案(内
閣提出)
第九 情報処理振興事業協会等に関する法律案
(内閣提出)
第十 国民年金法等の一部を改正する法律案
(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 民事訴訟手続に関する条約の締結に
ついて承認を求めるの件
日程第二 民事又は商事に関する裁判上及び裁
判外の文書の外国における送達及び告知に関
する条約の締結について承認を求めるの件
日程第三 外国公文書の認証を不要とする条約
の締結について承認を求めるの件
日程第四 日本国とルーマニア社会主義共和国
との間の通商航海条約の締結について承認を
求めるの件
日程第五 日本国とブルガリア人民共和国との
間の通商航海条約の締結について承認を求め
るの件
日程第六 教育的、科学的及び文化的資材の輸
入に関する協定の締結について承認を求める
の件
日程第七 農林省設置法の一部を改正する法律
案(内閣提出)
日程第八 許可、認可等の整理に関する法律案
(内閣提出)
日程第九 情報処理振興事業協会等に関する法
律案(内閣提出)
日程第十 国民年金法等の一部を改正する法律
案(内閣提出)
日本私学振興財団法案(内閣提出)
宮澤通商産業大臣の中小企業基本法に基づく昭
和四十四年度年次報告及び昭和四十五年度中
小企業施策についての発言及び質疑
午後二時六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/0
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001・船田中
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
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日程第一 民事訴訟手続に関する条約の締結
について承認を求めるの件
日程第二 民事又は商事に関する裁判上及び
裁判外の文書の外国における送達及び告知
に関する条約の締結について承認を求める
の件
日程第三 外国公文書の認証を不要とする条
約の締結について承認を求めるの件
日程第四 日本国とルーマニア社会主義共和
国との間の通商航海条約の締結について承
認を求めるの件
日程第五 日本国とブルガリア人民共和国と
の間の通商航海条約の締結について承認を
求めるの件
日程第六 教育的、科学的及び文化的資材の
輸入に関する協定の締結について承認を求
めるの件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/1
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002・船田中
○議長(船田中君) 日程第一、民事訴訟手続に関する条約の締結について承認を求めるの件、日程第二、民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約の締結について承認を求めるの件、日程第三、外国公文書の認証を不要とする条約の締結について承認を求めるの件、日程第四、日本国とルーマニア社会主義共和国との間の通商航海条約の締結について承認を求めるの件、日程第五、日本国とブルガリア人民共和国との間の通商航海条約の締結について承認を求めるの件、日程第六、教育的、科学的及び文化的資材の輸入に関する協定の締結について承認を求めるの件、右六件を一括して議題といたします。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/2
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003・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。外務委員長田中榮一君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔田中榮一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/3
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004・田中榮一
○田中榮一君 ただいま議題となりました六案件につきまして、外務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、民事訴訟手続に関する条約は、訴訟当事者の一方が外国人または外国に居所を有する場合、各締約国間において、民事または商事に関する裁判上の文書の送達及び証拠調べ等の司法共助について、相互に協力すること等を内容とするものであります。
次に、民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約は、国家間の裁判上の文書等の転達の方法及び経路の改善、並びに外国にいる訴訟当事者が文書の送達を受けなかった場合にこうむる不利益の救済等について定めております。
次に、外国公文書の認証を不要とする条約は、公文書を外国で提出する場合に要求されている認証を、文書作成国の当局が証明文を付することによって締約国の間では不要とするものであります。
次に、ルーマニア及びブルガリアとの間の通商に関する二条約は、両国との間の友好並びに経済関係の発展を促進するため、各締約国は、出入国、身体及び財産の保護、経済活動、関税、輸出入制限及び商船の出入港等の事項に関して、相互に最恵国待遇を与えること等を内容としております。
最後に、教育的、科学的及び文化的資材の輸入に関する協定は、ユネスコの提唱により作成されたものでありまして、各締約国は、書籍、出版物その他の教育的、科学的及び文化的資材の輸入に対し、関税を免除する等の便益を相互に許与するものであります。
右六件は、それぞれ外務委員会に付託されましたので、政府から提案理由の説明を聞き、審査を行ないましたが、詳細は会議録により御了承を願います。
かくて、四月二十三日質疑を終了いたしましたので、これら六件につき採決を行ないましたところ、いずれも全会一致をもって承認すべきものと議決いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/4
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005・船田中
○議長(船田中君) 六件を一括して採決いたします。
六件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/5
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006・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、六件とも委員長報告のとおり承認するに決しました。
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日程第七 農林省設置法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
日程第八 許可、認可等の整理に関する法律
案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/6
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007・船田中
○議長(船田中君) 日程第七、農林省設置法の一部を改正する法律案、日程第八、許可、認可等整理に関する法律案、右両案を一括して議題とたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/7
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008・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。内閣委員長天野公義君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔天野公義君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/8
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009・天野公義
○天野公義君 ただいま議題となりました二法案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、農林省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案の要旨は、本省の付属機関として草地試験場、熱帯農業研究センター及び農業者大学校を設置すること、地方農政局に統計調査事務所の組織を吸収統合すること等であります。
本案は、二月十八日本委員会に付託、三月五日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重審議を行ない、四月二十三日、質疑を終了、討論もなく、採決の結果、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
次に、許可、認可等の整理に関する法律案について申し上げます。
本案は、行政の簡素化及び合理化をはかるため、合計八十四、関係法律四十九の許可、認可等の整理を行なおうとするものであります。
本案は、三月二十五日本委員会に付託、三月二十六日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重審議を行ない、四月二十三日、質疑を終了、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党及び日本共産党の五党共同提案による附帯決議が全会一致をもって付されました。
附帯決議の内容は、次のとおりであります。
予防接種法の改正による腸チフス及びパラチ
フスの定期予防接種の廃止に伴い、政府は、今
後の腸チフス及びパラチフスの予防対策上支障
がないようワクチンの開発その他一般予防対策
の推進に万全を期すべきである。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/9
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010・船田中
○議長(船田中君) これより採決に入ります。
まず、日程第七につき採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/10
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011・船田中
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
次に、日程第八につき採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/11
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012・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第九 情報処理振興事業協会等に関する
法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/12
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013・船田中
○議長(船田中君) 日程第九、情報処理振興事業協会等に関する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/13
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014・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。商工委員長八田貞義君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔八田貞義君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/14
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015・八田貞義
○八田貞義君 ただいま議題となりました情報処理振興事業協会等に関する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、情報化社会の要請にこたえるため、特に緊急を要する対策として、電子計算機の利用の高度化を進めるとともに、プログラムの開発と流通の促進及び情報産業の育成をはかる措置を講ずるために提案されたものであります。
本案の要旨の第一は、電子計算機利用高度化計画等に関する措置でありまして、性能のすぐれた電子計算機の設置及び先進的かつ汎用的プログラムの開発についての計画の策定、必要な資金の確保、プログラム調査簿、情報処理技術者試験等について規定しております。
第二は、情報処理振興事業協会の設立であります。この協会は、民間の発意によって設立され、政府及び民間の出資によって構成されるものでありまして、その業務は、先進的かつ汎用的なプログラムを委託開発し、またはその利用権を取得
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/15
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016・船田中
○議長(船田中君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/16
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017・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
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日程第十 国民年金法等の一部を改正する法
律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/17
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018・船田中
○議長(船田中君) 日程第十、国民年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/18
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019・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。社会労働委員長倉成正君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔倉成正君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/19
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020・倉成正
○倉成正君 ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案のおもな内容は、
第一に、年金額等の引き上げについてでありますが、国民年金については、老齢福祉年金を現行の月額千八百円から二千円に、障害福祉年金を月額二千九百円から三千百円に、母子・準母子福祉年金を月額二千四百円から二千六百円に、それぞれ月額二百円引き上げること、児童扶養手当については、児童一人の場合の手当の月額を現行の二千百円から二千六百円に引き上げること、特別児童扶養手当については、児童一人につき手当の月額を現行の二千百円から二千六百円に引き上げることであります。
第二に、母子・準母子福祉年金、児童扶養手当及び特別児童扶養手当の受給者本人の所得による支給制限の限度額を緩和することであります。
本案は、三月十八日本委員会に付託となり、昨日の委員会において、質疑を終了し、採決の結果、本案は原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/20
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021・船田中
○議長(船田中君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/21
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022・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日本私学振興財団法案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/22
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023・加藤六月
○加藤六月君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、内閣提出、日本私学振興財団法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/23
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024・船田中
○議長(船田中君) 加藤六月君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/24
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025・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
日本私学振興財団法案を議題といたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/25
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026・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。文教委員長八木徹雄君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔八木徹雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/26
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027・八木徹雄
○八木徹雄君 ただいま議題となりました法律案について、文教委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
わが国の学校教育において私立学校の果たす役割りは、近時ますます重要さを加え、しかも、私立学校の現状は、公費による適切な援助を必要としております。この要請にこたえるため、本年度は新しく教員給与費を含む経常費補助を行なうため必要な予算を計上し、私立学校に対する助成措置を一段と充実強化することといたしております。このため、私立学校振興会を発展的に解消して、新たに日本私学振興財団を設立しようとするものであります。
そのおもな内容を申し上げますと、この法人は、私立学校教育の充実及び向上に資し、あわせてその経営の安定に寄与するため、補助金の交付、資金の貸し付けその他私立学校教育に対する援助に必要な業務を総合的かつ効率的に行ない、もって私立学校教育の振興をはかることを目的とすること、この法人の資本金、組織、業務、財務及び会計、監督等について所要の規定を設けること、私立学校法の一部改正を行ない、私立学校の公共性を高めるとともに、助成効果の一そうの確保をはかり、その教育研究の充実を期するために、学校法人の経理の適正を確保するための規定及び所轄庁の権限に関する規定を整備しようとするものであります。
本案は、去る三月二十四日当委員会に付託となり、翌二十五日政府より提案理由の説明を聴取いたしました。自来、本案について、日本私立大学連盟会長時子山常三郎君外三名の参考人から意見を聴取する等、慎重に審査をいたしましたが、その詳細は会議録により御承知を願います。
かくて、四月二十四日、本案に対する質疑を終了、次いで、河野洋平君外三名から、この法律による改正後の私立学校法第五十九条第十項及び第十一項の所轄庁の権限に関する規定は政令で定める日までの間は適用しないこととする旨の、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党の共同提案にかかる修正案が提出され、次いで、本修正案及び原案について採決いたしましたところ、本修正案及び修正部分を除く原案は起立多数をもって可決されました。
次いで、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党の共同提案にかかる附帯決議案が提出され、採決の結果、異議なく可決されました。
かくて、本案は附帯決議を付して修正議決すべきものと決しました。
以上、御報告いたします。(拍手)
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/27
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028・船田中
○議長(船田中君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/28
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029・船田中
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
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宮澤通商産業大臣の中小企業基本法に基づく
昭和四十四年度年次報告及び昭和四十五年
度中小企業施策についての発言発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/29
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030・船田中
○議長(船田中君) 通商産業大臣から、中小企業基本法に基づく昭和四十四年度年次報告及び昭和四十五年度中小企業施策について発言を求められております。これを許します。通商産業大臣宮澤喜一君。
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/30
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031・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 中小企業基本法第八条に基づきまして先般政府が国会に提出いたしました昭和四十四年度中小企業の動向に関する年次報告及び昭和四十五年度において講じようとする中小企業施策の概要を御説明いたします。
昭和四十三年から昭和四十四年にかけて、わが国経済は拡大基調を続けました。このため、四十四年の中小企業の事業活動も好調に推移し、資金繰りもさしたる逼迫感は見られず、収益も概して好調であり、倒産件数も四十三年と比べてかなり減少いたしました。
しかしながら、近年改善されてきてはおりますが、中小企業の生産性や技術水準における大企業との間の格差は、依然として大きく、また、労働力不足の進行、あるいは発展途上国の追い上げや資本自由化の進展など、中小企業をめぐる最近の経済環境の変化は、これまで生産性の低さを低賃金で補うというような経営形態をとってきた中小企業に対しては、きわめてきびしい影響を及ぼしております。
他面、産業の高加工度化に応じて部品点数や加工工程がますます増加し、また所得水準の向上に伴って高級品や個性ある商品に対する需要が増大するなど、中小企業に適した新しい分野が次々と展開されてきており、この意味において、中小企業は今後ともわが国経済の中で重要な役割りを果たしていくことが期待されております。
このような環境変化の中にあって中小企業が発展していくためには、技術水準の向上、設備の近代化、製品の高級化、事業の共同化等を進めて生産性を向上させる必要があります。特に機械関連産業では、下請企業の技術水準の向上や設備の近代化を親企業の協力を得て進めるとともに、消費財産業では商品企画力の充実が重要になっております。また、中小商業においては、地域構造の変化に対応して近代化を進めることが要請されております。
このため政府といたしましても、中小企業基本法の精神にのっとり、中小企業者の自主的努力を助長するとともに、事業環境の整備をはかることが責務であると考え、中小企業施策を最重点政策の一つとして取り上げております。
四十四年度におきましては、中小企業振興事業団の高度化資金を大幅に拡大するとともに、新たに構造改善制度を設け、業種別の体質改善を強力かつ総合的に促進することといたしました。このほか、設備、技術、経営、労働等各般にわたる施策を拡充いたしました。その際、経営基盤の弱い小規模企業の体質の改善につきましては、特にきめこまかい配慮を払っております。
さらに、四十五年度におきましては、内外のきびしい環境変化を乗り越えていくため、中小企業の一そうの近代化、体質の改善をはかることとし、あらまし次のような施策を推進していくこととしております。
まず第一に、中小企業振興事業団の融資事業を大幅に拡充し、中小企業の共同化、集団化を進めることとしております。その際、特に中小企業者からの要望の多い工業団地、商業団地、共同施設等について強力な助成をはかってまいるとともに、繊維工業の構造改善に必要な資金についても特段の配慮を払っております。
第二に、国際競争力を強化するため緊急に対策を講じる必要のある業種について、構造改善を鋭意促進するため、税制面、金融面、指導面等から一そうの助成を行なうこととしております。
第三に、近代化のおくれが著しく、きびしい環境変化にさらされている下請中小企業については、下請中小企業振興法を制定し、その近代化を促進するとともに、下請企業の受注あっせん体制の強化をはかることとしております。また、下請取引についても引き続きその適正化につとめてまいります。
第四に、中小企業者の近代化投資等に必要な資金の円滑な供給を確保するため、政府関係中小企業金融三機関に対し財政資金を大幅に投入し、貸し付け規模の拡大をはかる一方、信用補完制度を充実して、民間資金による中小企業向け融資の増加につとめる所存でございます。
第五に、小規模企業対策につきましては、特に経営改善普及事業を充実するとともに、設備の近代化と金融の円滑化にも特段の配慮を払っております。また、地方税における事業主控除の引き上げ等により、税負担の軽減をはかることといたしております。
第六に、中小企業の経営管理の合理化と技術水準の向上をはかるため、診断指導事業を充実するとともに、中小企業者の技術開発に対する助成、公設試験研究機関による技術開発等の施策の拡充強化をはかることとしております。また、中小企業における労働力の確保とその資質の向上、従業員の福祉の増進等のための施策を推進することとしております。
第七に、流通部門につきましては、中小企業振興事業団による助成を強化するとともに、中小企業金融公庫及び国民金融公庫の特別貸し付け制度を拡充する等の措置を講じ、その近代化を進める所存でございます。
以上が昭和四十四年度中小企業の動向に関する年次報告及び昭和四十五年度において講じようとする中小企業施策の概要でございます。(拍手)
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中小企業基本法に基づく昭和四十四年度年次
報告及び昭和四十五年度中小企業施策につ
いての発言に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/31
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032・船田中
○議長(船田中君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。横山利秋君。
〔横山利秋君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/32
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033・横山利秋
○横山利秋君 私は、日本社会党を代表して、ただいま報告されました昭和四十四年度中小企業白書などについて、政府に質問をいたしたいと存じます。
今回の四回目の中小企業白書は、多くの数字や統計を用い、地をはうような努力で中小企業の身辺に触れ、特に機械、消費財、流通の三部門にわたりまして中小企業を分析しています。その努力を買うに私はやぶさかではありません。
しかし、白書はそれにとどまっているのであります。いま大臣の御報告をお聞きになったように、大臣の報告もあれやこれや一ぱい並べただけで、一本筋が通っていないということを私は痛感するのであります。今日の中小企業が何を考え、何を望み、政府の一九七〇年代の新しい経済政策が中小企業にどういう役割りを与え、またどんな結果をもたらすか、正直に話していません。政府がそれにまたどう責任をとろうとしているのかも、はっきりしないのであります。すなわち、中小企業に対し、大胆かつ率直な政府の構図がないのは、きわめて遺憾千万といわなければならないのであります。(拍手)むしろそのことは、政府の経済政策が中小企業不在のままに立てられていて、せいぜい実行過程で生じた被害者を救済するという立場しかないからでありましょう。
この白書の分析は、一ころと違って、何か楽観に満ちているように思われる。好調な事業活動であるとか、倒産は減少したとか、二、三年前のように、中小企業の存立の基盤をゆり動かすに至っているというようなきびしい表現などはどこにも見られません。しかし、それは、はたして中小企業の実態を正確につかんでいるのでありましょうか。政府の中小企業を見る目が、日の当たる経済成長とともにある中企業以上だけに当てられているからにほかならないのであります。構造改善という政府のうたい文句から忘れ去られている圧倒的に多い零細企業を考えてごらんなさい。女房子供と一緒に、人手不足を補って夜まで働いている人々のことです。物価高と下請代金の引き下げの両面の苦しみに追い回されている中小企業であります。コカ・コーラのすごい成長は、国内の中小清涼飲料業界の過半数に大打撃を与えたこと、同僚諸君の御存じのとおりであります。自由化で外資の進出を受けた中小企業は、四十三年末現在でも、ボールペンに、ちり紙に、皮ぐつに、ドアロックに、ベッドに、歯車、ねじ、油圧機器、ダイヤモンド工具、繊維機械、食料加工機械等にわたって、企業支配の危険性から同業への圧迫を含めて、きびしい試練に立っています。また、特恵関税の供与に常に前途に不安を持って心安んじることがありません。百貨店や、スーパーの新設や増設が、すばらしい勢いでわれわれの周辺にあって、小売り店を圧迫しているのでありますが、今日では、大企業の倒産はほとんどありますまい。中小企業ばかりが相もかわらず不渡り倒産の波の中にあります。これは世界第二という高度成長の中にある奇妙な現象であります。いわば繁栄の中の倒産である。豊富の中の貧困である。産業政策はあるけれども、中小企業政策はないというべきでありましょう。(拍手)
今日まで、中小企業問題については、与野党が一致して満場一致、法案を成立する場合がかなりありました。これは、中小企業問題については、共通の舞台が一つ、与野党の中にあったからであります。その舞台とは、経済が二重構造であるという認識であり、大企業の横暴や収奪から中小企業を守るということ、また、特に零細企業に対しては、社会政策的な立場で立案するという共通の場があったからであります。
しかるに、最近の政府の政策は、明らかに変化を見せてまいりました。四十五年度中小企業政策の基本方針として、政府の文書の中に、新しい時代に挑戦する中小企業の自助努力を助長しつつ、総花的でなく、重点的にと書かれてあるように、要するに、やる気のない中小企業は育成援助をしてもむだという考え方が中心になっています。第二には、中小企業政策も、これまた最近の政府のうたい文句でありますいわゆる経済合理性に沿って展開するという考え方であり、第三番目には、自由化や特恵供与の追い上げを受ける中小企業で、援助をしても結局そろばんに合わない中小企業はむだだから、転廃業しろという思想であり、第四には、物価対策面から、中小企業カルテルを再検討してはずそう、免許制の酒屋やたばこ屋なども、自由にやらせようという動きであり、第五番目には、大企業の合併や中小企業業界の構造改善によって整理統合を推進するという方針でありましょう。
日産とプリンスの合併で、従来のプリンスの下請は大半が二次下請となり、効率の悪いものは漸次日産系列からはずされ、結局、プリンスの下請の相当部分が淘汰をされました。トヨタの下請合理化でも、多くの下請が犠牲を受けています。
これらは、それぞれの理由があるとは思います。しかし、結局は、資本主義の基本路線に立って弱肉強食の政策を中小企業に推し進めることにほかなりません。自助努力というていさいのいいことばも、裏を返していえば、中以上の企業にのみ焦点を合わせて、零細企業に対する切り捨てであり、社会政策的な立場が、その配慮が、もはや存在しなくなるのではないかと言いたいのであります。
ことに、この際指摘しておきたいのは、今日までのいわゆる放漫経営による不渡り倒産が少なくなって、政府の政策、すなわち、開放経済、産業再編成、自由化、対米繊維交渉、特恵関税、また、チクロの製造加工の禁止など、一連の政府の政策によって、すなわち、中小企業自身の責めによらない不渡り倒産や転廃業が多くなってきたという事実であります。それにもかかわらず、政府は、その政策結果を中小企業に転嫁して、何らの責任をとろうとしないのは、言語道断であり、ひきょう千万と言わなければならぬと思うのであります。(拍手)
今度、政府の政策結果から生じた米作問題につきましては、少ないながら、反当たり三万五千円の補償をすることに相なりました。しかし、中小企業に対しては、きょうまでよろしい、あしたからはいかぬという政府の施策によって、チクロの製造、加工、販売禁止により、百億以上の大損失を与えながら放置していることについて、私どもは注目をいたしたいのであります。
われわれは、本日情報化時代に入る第一歩として、先ほど情報に関する法律案を通過させました。白書の指摘をまつまでもなく、コンピューターは第三の産業革命をもたらし、人間社会に大きな変革を与えるでありましょう。注意しなければならないことは、この情報化時代は、あらためて大企業と中小企業との間に著しいコンピューター格差を生ずるであろうということであり、今日までわれわれが努力してきた大企業と中小企業の格差是正や、中小企業に働く人々の福祉増進の効果を崩壊せしめるばかりか、逆行させ、新しい二重構造の要因となる危険のあることであります。革命的な情報化時代の入り口に立って、このことが何人にも予測されているにかかわらず、政府の中小企業対策は何らありません。
要するに、これからの経済の激動の中では、成長部門と停滞部門、成長企業と非成長部門との格差は広がるだろうし、大企業に比べて、労働力、金融力、人件費負担力、需要開拓力、技術革新への適応力、そういうものが乏しい中小企業は打撃を受け、そして、いまの政府は一そうこれを助長させる結果になると心配をするわけであります。マクロ的に見れば、一見好況の状態が続いていくであろう。しかし、ミクロ的には、さらに飛躍するもの、足踏みするもの、脱落するものの差が明らかになり、成長力の乏しい、政府に放置されているものは、縮小均衡の悪循環の渦に突き落とされる危険に直面するでありましょう。
私は、白書に流れるもの、また最近の政府の政策の結果から判断されるものを述べてまいりましたが、この際、あらためて総理以下、通産大臣に伺いたいのであります。
総理は、今後の経済政策の中で、中小企業をどう位置づけているのか。一体、新しく政策展開をする、あるいは政策の構想をする中で、中小企業はいつも存在しないのではないか。中小企業省の設立を拒否続けてきた総理が、それならば、これにかわって中小企業というわが国企業の九五・五%を占める存在を、常に閣議の中で、また政策の中で、その立場に立って主張する仕組みを、どうして考えないのであろうか。そもそも、激動を続ける新しい時代に、中小企業の今後について、どうあなたは考えていられるのか、率直な所信を伺いたいのであります。
第二番目は、産業は新しい革新時代に立っているにかかわらず、今日の中小企業政策は、単に従来の政策の踏襲継続にすぎません。新しい時代に何ら即応していません。白書のすみずみにあるように、中小企業よ、目をさませなど、責任を転嫁する前に、政府みずから中小企業政策に新しい再検討を加えるべきであり、そのためには、たとえば各省ばらばらに推進している構造改善事業を体系化すること、思い切った税制金融上の助成をすること、特に転廃業する中小企業に進んで政府の援助を行なうこと、零細企業に焦点を注いで対策を立てること等を含めて、新しい時代に即応する中小企業振興臨時措置法を制定する意思はないか。
次に、中小企業は、率直にいって多忙であり、施策を十分に理解し、みずからのものとすることは、なかなか不得手の階層であります。そのためにも、かゆいところへ手が届くようにする配慮が必要であり、たとえば協同組合法、団体法、環衛法等々、まさに多岐にわたる中小企業立法を整理統合して、理解と運用に便ならしめる必要があるが、どうか。
また、中小企業問題で決定的な欠陥は、指導者不足であり、またその教育が不十分であり、各種中小企業指導に従事している人々は高年齢であり、新陳代謝がなく、給料が安いのが実情であります。これでは中小企業に新鮮な感覚と活動力を振起させることにはなりません。政府は、これを見のがしていることを反省し、指導者層と指導力の飛躍的改善をすべきではないか。中小企業に関する税金の申告や金融の手続など、思い切って簡素化することが考えられるべきであり、また、無担保、無保証の制限額を拡大すべきであります。これらの思いやりのある行政措置を各般にわたって実行すべきであると思うが、どうか。
第四番目には、中小企業の多くが心配している特恵関税供与によって追い上げられることであります。たとえば敷きもの、布帛製衣類、メリヤス製衣類、おもちゃ、クリスマス電球、ビニール製はきもの、トランジスタラジオ、一次電池と同部品、ベニヤ等については、政府はどう分析をし、どう対処するのか、特恵関税に対する対策を明らかにしてもらいたい。
第五番目は、近代化、合理化を中小企業に要請しながら、他方では金融引き締めによる設備投資の抑制が、大小を問わず、金融機関を通じて行なわれている事実であります。昨年の九月から引き締めについて、政府は中小企業への影響を軽視しているのではないか。三月以降倒産はふえ、窓口規制も強い。四月に入ってから一挙に倒産が続出をしている。この際、政府金融機関を通じて財政投融資の大幅追加をするべきであると思うがどうか。根本的には、銀行法を改正して、一定比率の資金を中小企業に常に確保するべきであると思うが、どうか、伺いたいのであります。
以上、諸般の問題について伺いました。皮肉にも、全国的注視を浴びて圧勝した京都の蜷川知事は、中小企業庁長官当時、自民党政府の中小企業対策にあいそをつかした人であり、圧勝原因の一つは、政府の無為無策の中小企業政策にあるとも考えられるのでありまして、(拍手)この際、御反省の上、十分率直に答弁されるよう要望して質問を終わる次第でございます。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/33
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034・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 横山君にお答えいたします。
いろいろ御意見をまじえて述べられながらお尋ねがございました。
そこでまず、私が申し上げるまでもなく、白書、これは国民各位にそれぞれの実態と施策の現状について理解と認識を深めていただくためのものでありまして、また白書の分析は、政府の施策に的確に反映させるための反省のかてでもあります。ただいま、対策がない、ただ分析倒れだ、かような御批判がありましたが、これが白書というものだと私は思っております。
ところで、これが十分施策の上に取り入れられておらないという。その白書のねらいが十分に効果を発揮できず、せっかくの分析が分析倒れとなってしまったのではまことに残念でございますから、これからは、御意見のように、生きた白書づくりとその活用に一そう努力してまいりたいと考えます。建設的な御叱正をいただいたことを厚くお礼を申し上げておきます。
次に、現在の政策は中小企業不在であるときめつけられたようでございますが、これには異論があります。社会党の諸君は、何でも中小企業省をつくればいい、かように御主張なさいますが、中小企業対策は、金融、税制等の各般の施策を総合的に推進することによって初めて実りあるものとなるものであり、関連各省庁の緊密な連絡のもとに、着実に対策が進められているところであります。中小企業省の設置に賛成しないからといって、中小企業政策が不在であるというのは、全く当たっておりません。
わが国産業の実情から見まして、経済発展とともに中小企業の存立分野はますます拡大されてくるものと考えます。しかしながら、人手不足、経済の国際化、大型化、あるいは技術革新などの激しい環境変化に直面しており、その近代化は、中小企業そのものの維持、発展のためのみならず、わが国経済全体の一そうの拡大と均衡ある発展のために必要不可欠のことと考えます。政府としては、今後とも、健全な中小企業の育成のためにあらゆる支援を惜しまない決意であります。このことを特に強調しておきます。
次に、現在、中小企業者のための組織、制度としては、御承知のとおり、多くの法律による各種の制度がありますが、これらはそれぞれ目的を異にし、また、いずれも多種多様な中小企業者の組織づくりの必要性に即応して設けられているものであり、容易にこれを統合できるものとは考えておりません。しかしながら、これら各種の制度が中小企業の組織づくりに十分活用されるよう配慮すべきことはもとよりであり、このため、今後とも中小企業者に対する指導、施策普及事業等を充実して、制度の円滑な運用をはかってまいる考えであります。
また、中小企業者のために、かゆいところに手が届くような施策をという御要望は、まことに同感であり、税制、金融あるいは特恵関税等の手続の簡素化につきましては、今後とも努力してまいります。
なお、御提案の無担保、無保証制度の制限ワクの拡大は、信用保険公庫の収支に直ちに響く問題であり、その建て直しが信用補完制度の当面の課題となっている現時点では、率直に申しまして困難である、かように私は考えております。
特恵関税の問題について、種々意見をまじえてのお尋ねがございましたが、これらの点は、十分御意見を伺った上で、これらに対しても善処する考えでございます。
次に、金融引き締めの中小企業に及ぼす影響でありますが、四十五年度の財政計画は、質的にも量的にも中小企業重視のものとなっております。関係政府金融機関の適切な業務運営によりまして、十分対処できるものと私は考えております。
なお、法的措置によりまして一定比率の中小企業金融を確保せよとの御提案は、かえって国民経済全体としての円滑な金融をそこなうおそれがあるものと私は考えます。そういうことではなしに、中小企業金融対策については、十分配慮してまいります。
以上、私に対するお尋ねのお答えといたします。残りました点については、通産大臣からお答えすることにいたします。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/34
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035・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 総理がお残しになりました点について申し上げます。
現在、中小企業に関する法制、金融等々は、私は制度としてはかなり整備されていると思いますけれども、それが実際に企業を営む中小企業、零細企業の人々との間に何かギャップがありまして、思うように利用されない場合が多いというところに一つ問題があると思っております。この点は、横山議員の言われましたように、まさに指導とか普及とかいう問題であると私も実は考えております。そこで、現在御承知のように、都道府県、六大市、あるいは商工会議所、さらに小さいところは商工会でございますけれども、ここらに診断指導でありますとか、技術指導でありますとか、経営指導、それからもう一つ記帳、これはわりに大事でございますが、帳面をつける記帳指導等々、指導員を置いておりますけれども、これをやはり強化していくということ、ここらが案外今後大事な政策ではなかろうかと考えておりまして、今年度の予算でも、増員も、また待遇改善のほうも、お認めをいただいたわけでございますが、こういうところに今後さらに力を入れていくことが大事であると思います。
また、老朽化等につきましては、事業団でそれらの指導員についての講習を行なっております。
それから、特恵につきましては、先ほどおあげになりましたような業種が、確かに一番特恵で脅かされやすい業種と私ども考えます。そこで特恵もいろいろな事情で、いわれましてからだいぶ日がたちますが、まだ現実にはなっておりません。しばらく時間がかかることと思いますが、あらかじめそれに備えまして、いわゆる構造改善に選びます業種は、一番特恵で脅かされそうな業種を昨年度も選び、今年度も十数種ほど選んでまいりたい、このようにして対処してまいりたいと考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/35
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036・船田中
○議長(船田中君) 岡本富夫君。
〔岡本富夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/36
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037・岡本富夫
○岡本富夫君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま御説明のありました昭和四十四年度中小企業の動向に関する年次報告並びに昭和四十五年度において講じようとする中小企業施策について、総理並びに関係大臣の所信をお伺いしたいと思います。
質問の第一は、中小企業白書のとらえ方の問題と、中小企業政策の基本の問題についてであります。
ここ数年来、年次報告は、版で押したように、中小企業を取り巻く環境のきびしさから、中小企業の体質改善と近代化の必要性を長々と説明したものとなっております。しいて今回の白書の特徴をあげますならば、機械関連産業、消費財産業、流通部門などを、業種別にどのような分野が小回りのきく中小企業に適しているか、そのための条件は何であるかなど、中小企業の活躍し得る場を多少掘り下げておりますことと、七〇年代を展望した中小企業政策について一応は触れていると思います。しかし、この白書を一般の中小企業者、ことに小規模企業者が一見したとして、はたしてどれだけの人がその内容を理解し得るでしょうか。また、たとえ理解をしたとしても、どのように対処することが自分の企業の発展のために最も適切であるか、そして具体的に政府が講じている数多くの中小企業施策のうち、どれを利用すればよいのかといった点になりますと、はなはだ疑問なのであります。たとえば白書に述べている「適応の方向」を示したものの中に「省力化が必要である」とか、「こうした対策のとれない企業は、新たな成長産業へ転換することが望ましい」とか、あるいは「研究開発体制などを充実し」などといった、まことに抽象的なことばが出ておりますが、中小企業者が最も欲していることは、省力化にしても、また、新規産業への転換あるいは研究開発にしても、いかにすればよいのか、どのような助成策があるのか等々の具体的なものを提示されることであります。したがって、今回の白書は、単なる現状分析を羅列したところの、至ってできのよい作文にすぎないと断ぜざるを得ないと思うのであります。
また、労働力確保あるいは構造改善事業及び設備近代化などといったもろもろの課題に対し、政府は従来より多くの諸施策を講じておられるのでありますが、いずれも所期の成果をあげているかどうか、きわめて疑問なのであります。
さらに、もう一点問題になりますことは、ただいま申し述べましたように、施策の活用度あるいはその効果の実態を十分確認しないで、次々と新しい施策を模索しているということであります。私が非常にふしぎに感じますことは、なぜ従来の施策が未消化であるにもかかわらず、次々と新しい施策を無理に出そうとするのか、この政府の姿勢についてであります。
総理は、本年は内政の年と言われました。そうであるならば、この辺で一度じっくりと立ちどまって、足元をしっかり見つめ、政府がこれまで講じてきた多くの中小企業施策が、現実としてどれだけ活用され、成果をあげているか、個々の施策についての実態を把握し、しかる後に、その実態の上に立った将来の具体策を検討すべきであり、白書もこのような観点から作成すべきであろうと考えるのでありますが、総理はどのような所信をお持ちか、伺いたいのであります。
いま一つ総理にお尋ねいたしたいことは、中小企業近代化の方途とその基本的方向の姿勢についてであります。
白書は、「中小企業の発展の方向」のところで、七〇年代のわが国の経済の姿に触れ、流動し、変貌する経済環境の中で、中小企業には需要の変化に対応するための柔軟かつ敏速な適応性が求められ、そのための技術水準の向上と経営力の強化が要求されると述べておりますが、私もまさにそのとおりであると思います。
しかし、政府が行なっている諸施策が、はたして白書が指摘する要求に適合するものであるかどうか、こういう点になりますと、首をかしげざるを得ないのであります。中小企業が環境の変化に対処し、激しい国際競争や大企業の圧迫にうちかって生き抜いていくためには、政府としても、おのおのの業種あるいは規模に適応したきめのこまかい対策を講ずる必要があると思います。
わが国経済がアメリカに次いで世界第二位という高度成長を遂げた今日にあっては、社会政策的視角からの保護政策をやめて、経済政策を強力に打ち出すべきであるというのが、政府の主張するところのようであります。確かに一面からすれば、社会政策的視角から経済政策的視角への移行も要請されるでありましょう。しかし、すべての中小企業者にそれを適用しようとするならば、無理であり、間違いであります。なかんずく、小規模零細企業の場合には、前提条件として社会保障制度の完備が必要であると思います。それなくして、ただ単に経済政策的視角での施策を講じたとしても、何ら問題の解決にはならないのではないでしょうか。
したがって、一つは、中小企業の中でも特に小規模企業に対しては、一般の中小企業施策とは違った観点から、独自の施策を講ずるべきであります。
二つには、いわゆる中小企業分野に適した業種の企業の場合であります。白書が指摘しておりますように、産業構造の高度化、技術水準の高度化などによって、ますます中小企業の活動分野が広がってまいりますが、そういった高度化現象の中にあって、加工度あるいは嗜好度の高い業種については、あえて大規模化しなくても、それにふさわしい施策を講ずることにより、中小規模のままで大企業と同等の効率を得る企業に発展し得るのであります。
三つには、中堅規模企業の場合については、積極的に構造の近代化をはかり、規模的にも成長を促進させるべき強力な施策を講じていくべきであります。
このように、中小企業を三つのグループに大別し、それぞれの特質に適合した対策を講じてこそ、一つ一つの施策が生きてくると思うのであります。ただし、近代化施策などは当然この三つのグループに共通して講じなければならないでありましょう。そして、これらの諸施策を有機的に結合し、統括して、最大の効果をあげなければならないのでありますが、政府はこの点どのように考えておられるのか。中小企業対策を再検討されて、従来の行き方を改められる御意思があるかどうか、伺いたいのであります。
また、現在のような通産行政の片すみに追いやられた中小企業行政では、とうていこのような政策は遂行できないのでありまして、どうしても中小企業行政を、大企業優先の通産行政から独立させねばならないでありましょう。したがって、わが党は、中小企業省の設置は、七〇年代の中小企業の発展にとって絶対不可欠のものと主張しておりますが、政府に中小企業省の設置を検討する用意があるかどうか、伺いたいのであります。
質問の第二は、中小企業対策の中でも、特に労働力確保の問題、中小企業金融対策並びに税制対策についてであります。
現段階の中小企業にとって何が一番悩みかと申ますと、労働力の不足であります。新規学卒者を含む若年勤労者の中小企業への就職率は、年を追って減少し、さらに定着率も低下をたどっており、絶望的な窮地に追い込まれている状態にあります。労働力不足の傾向は、昭和三十年代後半からすでに出ていたはずであります。所得倍増計画など政府の高度経済成長政策により、労働力不足はさらに顕著となり、今日の事態に立ち至ったわけでありますが、ここにも政府の一貫性を欠いた政策と後手に回る措置の姿勢が見られるのであります。
しかし、過ぎ去ったことはともかくとして、今後政府は総力をあげてこの問題の解決に当たるべきであります。労働力確保の問題は、人口政策、教育制度、その他もろもろの要素が互いにからみ合っており、総合的に取り組むべき問題であります。しかしながら、早急にこの事態を解決するための緊急措置を講ずる必要があります。
労働力を中小企業に定着させるには、種々の方策がありましょう。一つの方法として、住宅の確保があります。私は、国が中小企業勤労者向けの住宅を建設し、特に中小企業勤労者にその住宅を提供してはどうかと思うのであります。この考え方を具体化するには、技術的に問題も多いと思いますが、これに対する基本的姿勢について総理並びに関係大臣の所信を伺いたいのであります。
次に、中小企業金融についてであります。中小企業がその規模が小さいという固有の性格のゆえに、資金量の確保や資金調達の条件の不利など、大企業に比べて多くの不利な点を背負っております。最近、中小企業の金融事情は、金融引き締めの浸透とともに日を追って悪化しております。中小企業政策審議会も、信用補完制度の拡充強化をはじめ、現行の金融制度の改善の必要性を具申しておりますが、中小企業の近代化をはばみ、中小企業なるがゆえに存在する多くの問題を解決するには、どうしても資金の確保が必要なのであります。当面の対策並びに今後志向するところの所信をお伺いいたします。さらに、中小企業の税負担を軽減するための減税措置についてお伺いいたします。その一つは、電気ガス税であります。総理は、国会において、電気ガス税は悪税であり、その廃止について前向きに検討すると何度も言明しておられるところであります。それにもかかわらず、一向実施されない。しかも、最近の物価論議においても電気ガス税の廃止がいわれている。この際、政府は、物価の安定、中小企業のコストの低減等の見地から、早急に電気ガス税を撤廃すべきであると考えますが、総理並びに自治大臣の見解を伺いたいのであります。
その二は、中小法人税の軽減であります。わが党は、現行の二段階の税率から多段階の税率に改めるとともに、その適用範囲を変えることによって、中小企業の税負担の軽減をはかるべきであると主張しております。このような考えが政府にあるかどうか。
その三は、中小企業の自己資金の充実をはかるための措置として、同族会社の内部留保金に対する特別課税を廃止する考えがあるかどうか、伺いたい。
最後に、税制並びに徴税機構の簡素化についてであります。およそわが国の税制ほど繁雑で理解に苦しむものはないと思います。税負担の公平化と並んで、税制及び徴税機構の簡素化をはかることは急務であると考えるのでありますが、総理並びに関係大臣の所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/37
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038・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 岡本君にお答えいたします。
まず、白書は中小企業者の明日の経営に生かせるものでなければならないとの御指摘、あるいは施策の活用状況等を十分把握して白書を策定せよ、こういう御意見、私も全く同感であります。今日の白書は、豊富にケーススタディー、これを取り入れて、業種別に中小企業の歩むべき方向を具体的に示唆するようつとめたのではありますが、今後とも、まだ十分だとは申せませんから、一そうそのような方向で努力いたしてまいる考えでございます。
次に、中小企業の近代化、高度化、これは中小企業の今後の進路を開く最大のかぎであります。個々の企業の設備の近代化、技術革新は当然のこととして、場合によっては事業の共同化、協業化を進め、あるいは情報機能の充実をはかることも大切であります。いずれにせよ、近代化の方向は業種、業態によりまして異なりますが、何よりも肝要なことは、中小企業経営者自身の自助の努力であると、私はかように考えます。
最近、環境の変化に応じて成長分野へ前向きに業種転換をした中小企業も少なくありませんし、新しい時代感覚と専門技術を持った若い層が高能率の中小企業をつくり出している事例も見受けられ、私はたいへん力強く期待し、また喜んでおる次第でございます。政府といたしましては、この自助への努力に対し、金融、経営指導等あらゆる分野において支援を惜しまない所存であります。
中小企業の規模を三つのグループに分けて、その規模別に施策を講ずべきことは御指摘のとおりであります。まあ三つがいいか二つがいいか、それは別といたしまして、御指摘のとおり、私どももやはり規模別にそれぞれ考えていかなきゃならぬ、かように思っております。それぞれの経営力、資金調達力、これに応じた適切な施策を講ずるようつとめてまいります。
次に、中小企業省の新設、これは、たびたび申し上げるように、私は考えておりません。関係行政機関の連絡は十分はかりつつ、広範な中小企業関連施策を進めることによりまして、中小企業対策は十分に確保してまいることができると、かように確信しております。
最近の中小企業の労働力需給の問題でありますが、これに対処するためには、中小企業自体の近代化そのものが何よりも必要であり、さらには、労働条件と労務管理の改善、福祉施設の充実によりまして、中小企業を魅力ある職場とすることが肝要だと考えております。
中小企業勤労者のための住宅建設につきましては、住宅金融公庫の産業労働者住宅資金融資をはじめ、厚生年金、雇用促進事業団等の融資などを通じまして、その拡充には一そう努力してまいります。
次に、中小企業金融の当面の課題が、金融引き締め措置の影響が中小企業にしわ寄せされることのないよう、適切に対処すべきことであることは、これまた政府として当然注意しなければならないことであります。この点につきましては、先ほど社会党の横山君にもお答えしたとおりでありまして、政府も十分きめこまかくこれらの対策を講ずる決意であります。今後の方向といたしましては、中小企業の体質改善を早急に進めるため、構造改善等の政策目的を推進するための政策金融の拡充に特に配慮してまいる決意であります。
次に、電気ガス税につきましては、市町村財政の現状から、悪税とは申しましてもこれを一挙に全廃することは困難でありますが、今後ともその軽減に一そう努力してまいる決意でございます。このことをつけ加えて申し上げておきます。
次に、中小企業に対する法人税軽減の御要望がありましたが、今回大法人の法人税率引き上げにかかわらず、中小企業に対しましてはこの税率を据え置いたことは、中小企業の現況を十分配慮した結果でありますし、税率の引き下げや適用区分の細分化は、個人企業とのバランスから見ましても適切でない、かように考えております。同族会社の内部留保に対する特別課税も、個人企業との均衡上これを全廃するわけにはまいりませんが、内部留保の充実につきましては、今回の法改正による控除方式の改定により十分意を用いているところであります。大蔵大臣にかわって、私から答えておきます。
最後に、税制の簡素化、合理化につきましては、今後とも一そう努力してまいること、これは当然でございますので、これもまた最後につけ加えておきます。ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/38
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039・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 中小企業をいわゆる零細企業、それから普通申しております中小企業、中堅企業の三つに分けて考えるべきではないかというお尋ねでございますけれども、私どもも大体そういう問題意識を持っております。
それで、その中で零細企業については、やはりいわゆる市場法則、経済法則というものがそのまま通りにくい分野であると思っておりますので、こういうところに対しては、普通の市場法則でない保護的な政策を、なおとってまいらなければならない。金融面におきましても、先ほど横山議員に申し上げました指導面におきましても、そうであろうと思います。たとえば無担保、無保証といったようなものも、この分野でやはり一番意味があるのではないかと思います。
それから、いわゆる中小企業につきましては、これはいまさら申し上げるまでもないことでありまして、その上の中堅企業でありますけれども、これは従来機械工業の臨時措置法でございますとか、特定繊維工業の構造改善でありますとか、中小企業よりもう一つ上の、いわば相当競争力を持った企業にさらに競争力をつける、そういう施策を別に講じておるわけでございます。
住宅につきましては、総理から御答弁がございましたが、これらの公庫あるいは事業団、年金等の融資は地方でも相当喜ばれ、かつ活用されておりますので、これは的を射た施策であると思っております。これからも原資をふやしてまいりたいと考えております。
当面の金融情勢でございますが、四月−六月期が納税期でもあり、決済資金の需要期でもあり、また、やがてボーナスの時期でもございます。そこで、今年度の中小企業関係三機関の融資規模は前年比の一八%増しでございますけれども、当面私ども、これを上半期に傾斜をつけていきたいと思っております。金融引き締めの時期でございますから、ここばかりが楽というわけにはまいりませんが、またそれだけに、この三機関の傾斜を上半期のほうにふだんよりもよけいつけてまいりたいと考えております。
〔国務大臣秋田大助君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/39
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040・秋田大助
○国務大臣(秋田大助君) 御承知のとおり、電気ガス税は、電気、ガスの消費と消費者の担税力との相関関係に着目をいたしまして、その支出面からその担税力を捕捉しておる税でございまして、現在のところは、地方税におきまして、住民税、また固定資産税を補完する意味をもちまして、市町村の有力な財源になっておりますので、いま直ちにこれを全廃いたしましては、現実的に市町村行財政の運営に及ぼす影響等を十分顧慮しなければならないと思われるのであります。しかしながら、ただいま総理からもお話のありましたとおり、この税につきまして納税者に関し一そうの負担軽減をはかることは、中小企業対策の意味も含めましてその必要性が痛感いたされますので、今後かわり財源等をも考慮いたしまして、積極的にこれが大幅の減税につき検討、措置をしてまいりたいと考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/40
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041・船田中
○議長(船田中君) 川端文夫君。
〔川端文夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/41
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042・川端文夫
○川端文夫君 私は、民社党を代表いたしまして、中小企業白書を通して、政府の中小企業政策全般に関して、御質問申し上げます。
白書では、一九七〇年代の中小企業は労働力不足、経済の国際化及び高度化等の、経済環境変化のきびしくなるこの情勢の中で、そのためには、労働力不足等に対処して生産性の向上をはかり、さらに経営の質を高めて、需要の多様化、高度化に急いで対応していかなければならないなどの、一般論としては何人も肯定せざるを得ない方向を示しています。そして、経済環境の変化が激しくなるのであるから、この変化に対応できる適応力を強めなければならないとも強調しています。
しかしながら、中小企業白書の説明はいかに明快でありましても、政府はそのためにどれだけの財政裏づけの努力をしてこられたかということを考えていただきたい。今四十五年度予算を見ましても、中小企業対策費は五百三億円でしかなく、歳出総額の〇・六%という少額でしかありません。中小企業への融資額は、財投の一五%、五千四百億円でしかないのに、一方、開発、輸出入銀行からの融資は五千八百八十億円ともなっております。この事実から見ましても、中小企業への融資はあまりにも低過ぎ、格差是正の公約は、はたしてどこにいったのかと、中小企業者は失望しているのが事実であります。経済発展に取り残されたこれら中小企業が、これからの激しい競争にどうしてラインにつくことができるのでありましょうか。総理は、現下の中小企業、いままでの果たしてきた中小企業の役割り、任務をどう考えて、見ておいでるのか、お伺いしたいのであります。
構造改善事業が行なわれておりまするけれども、これらの事業計画——いま宮澤通産大臣のお答えにもありましたけれども、事業計画を自主的に作成することのできるかなり高度な能力を持つ業界対策となっております。中小企業に熱意があるならば、政策に熱意があるならば、まず現場に行って、構造改善がなぜ必要かということを十分説得し、事業計画を自主的につくることのできない業種には、事業計画作成にも協力するなど、血の通った積極的な指導が緊要でありましょう。生きている経済社会にお役所仕事的方策では、中小企業の実態をあまりにも知らなさ過ぎると言われてもやむを得ないのではありますまいか。
なるほど、三十八年度に成立した中小企業基本法ができて以来、政策の各論はかなり細部にわたっておりますけれども、過去六年間にどのような成果を今日まであげたか、報告ができますか。私は、財政の裏づけも少ないため、毎日不安な心で過ごしているのが中小企業者であると思います。違っておりますか。また、依然として今日倒産が減っておらないではありませんか。
特に、総理に申し上げておきたいのは、七〇年代の中小企業をめぐる環境は、白書が指摘している以上に私はきびしいものと見ております。ことしも金融引き締め等により、七月以降にこれ以上倒産がふえねばいいと祈る気持ちで私は心配しておるのですが、もし、これ以上の悪条件が出てまいれば、重大なる社会問題に発展することをもおそれているものです。政府は、急速に、これらの事情にかんがみて、中小企業政策全体の水準底上げを行なうべきだと信じます。特に、小規模企業者の共通の不満である税制、金融上の不公平は直ちに是正すべきでありましょう。自己の勤労を柱としてようやく成り立っている小規模企業の申告所得のうちから、事業主の勤労報酬分を必要経費として認めるべきです。生産性向上に多くの期待もできないこれら労働性本位の小規模企業に対して、税制改革を強く要望いたすものであります。
金融面を見まするに、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金のいわゆる三機関の金利は、大体年八分二厘と、高いのではありませんか。信用金庫でさえ、優秀な企業には年八分四厘で貸しております。これでは政策金融としてのメリットは何かです七別に政策金融の年六分五厘の特別融資ワク、構造改善には年二分三厘の政府資金貸し付け制度もあるにはありますが、日本の全出荷額の五〇%を占め、従業員数においても二千七百万人といわれておる中小企業の対策としては、まことに微々たるものにすぎないではありませんか。大部分は年八分二厘の融資で、市中金融の補完的役割りしか果たしておらないのが事実です。政府はいまこそ、これからの変化に対応させるために、中小企業金融に積極的な施策を用意すべきだと思います。御所見を伺っておきたいと存じます。
私は、国の中小企業政策としては、財政投融資のワクをまず拡大し、さらに政策金利は常に市中金利より画然と下回るのが当然と思いますが、いかがですか。
一方、歩積み・両建ては依然として巧妙に続けられております。また、政策金融の代理貸しについても、歩積みとみなされるような貸し付けが行なわれている事実に対して、厳重に排除する措置を講ずべきです。
以上の問題について、基本方針は総理、具体策は通産大臣よりお答えを願います。
現在の中小企業対策には、大企業との利害の調整、親企業と下請との関係、資本自由化時期の接近、新興工業国よりの追い上げ等による転廃業の指導等々、どの一つを考えてみましても、容易ならざる大きな問題が累積いたしておるのであります。私は、これらのうちから二つの問題について総理の所見をお伺いします。
その第一は、あなたの去る四月十日の外国記者団との会見です。あなたは、沖繩の領土問題ですら解決したのに、一商品である繊維について日米交渉が解決されないはずはない、早期解決を望む、と話されています。早期解決は望むところですが、いかなる見通しで日米繊維交渉に当たろうとされておるのか、伺いたい。この問題は、米国が国際ルールであるガットの方針に従う以外、日米繊維業界の合意はあり得ないと私はかたく信じております。だが、私の心配していることは、あなたが今国会の五月十三日の閉会な待ちかまえているのではあるまいか、ほんとうは対米妥協をしたいのであるという考え方をお持ちなのではないかという疑いです。このことは杞憂であればまことに幸いです。しかし、国民ひとしく注目しているところでありますから、繊維の対米交渉にはいままでどおりの方針を貫くと明言さるべきだと思いますが、御所見を明らかにしていただきたいと存じます。
アメリカの議会筋が世界の信用を裏切って強引な輸入規制を行なったとしても、日本としては屈すべきではないと思います。このことは単に繊維にとどまらないのであって、雑貨等の対米輸出品に連鎖的に波及することは必至となります。しかも、これら産業の最大の被害者は、言うまでもなく中小企業メーカーとそこで働く勤労者なのです。もしアメリカに屈し、安易な妥協に応じさせられた場合に、政府が四十二年度以来二千億円もの国費をつぎ込んだ織布、メリヤス等の構造改善の効果は一挙にくつがえってしまうのです。繊維関係中小企業に大きな打撃を与え、水泡に帰する結果ともなるのです。あなたの方針いかんは、白書に盛られている百万言も、政策も、日本の中小企業全体から政治に対し信頼を失うに至ることを御自覚いただきたいのであります。
もう一点は、生産分野だけの近代化や高度化のみでなく、流通分野にも同じような努力が今日必要だと思います。そこで痛感されるのは、中小商業の近代化へのおくれです。最近、よく流通革命ということばがはやっていますが、なるほど、百貨店、大きなスーパー、大メーカーは活発な活動をいたしております。残念ながら、中小商業はとうていこれらに対抗できる力はありません。政府は、商業の協業化、高度化という政策を出しておるにはおりますけれども、商業立法では部分的な施策あるのみで、中小商業をいかなる位置づけをするかという基本的な商業政策も立法も、全く欠けている現状ではありませんか。
白書によると、昭和四十四年度に創設した構造改善の目的は、産業の国際化に備えて業種ごとの高度化にあると法の目的に掲げながら、押し迫る中小企業への資本の自由化や特恵関税の実施を目前に控え、何たる遅々たる歩みでしょうか。行政の怠慢として反省を求めたい気持ちで一ぱいです。私は、この対策には、法を改正して、構造改善事業はそれぞれの業種の特質に沿って多角化し、また、改善事業のグループづくりとそのグループの地域範囲の制限を、いまのようなきびしいものより、もっとゆるやかにする必要を提言申し上げます。政府が中小企業をめぐる環境の激変を指摘している以上、今後四、五年の間に、少なくとも構造改善に百業種ぐらいの指定を実施する展望を持つべきだと思いますが、いかがですか。
なお、通産大臣に伺いますが、ここ一、二年の間にどのような業種指定を考えておいでるか、その業種を明らかにしてもらいたい。また、商業、サービス業関係の構造改善についても、構想をお持ちならば明らかにしてもらいたい。あなたが、このような機会に見解を明らかにされることは関係業界に大きな奮起の動機となることを御理解願って、明らかにしていただきたいと存じます。
事業税は、税制として本質的に不合理が多いと存じます。特に個人事業税について見れば、今回ようやく青色申告者の完全給与制度は認められましたが、事業主控除も白色の専従者控除も、まだまだ勤労所得部分にも食い込んでおります。片手落ちが残っております。また、事業税は、企業所在地が大都市に偏在しているため、財源としても大都市に片寄り、地方公共団体間の財政力不均衡をもたらしています。今日中小企業者の怨嗟の的である事業税は廃止するか、または根本的改正の必要があると思いますが、いかがですか。お伺い申し上げます。
最後に、さらに総理に伺いたい。中小企業をめぐる経済環境のきびしい、激しい変化を予想し、それに中小企業者に対処する適応力を要請されるならば、自主力を要請されるならば、白書も指摘している、日本経済発展に果たした中小企業の役割りに見合った努力も政府はなすべきです。まず一般会計予算の中小企業関係対策費の大幅な増額を行ない、対応できる体質改善、高度化へ進むスタートダッシュをつけさせるのはいまだと考えるのであります。それにしては、四十五年度の五百三億円ではあまりにもみじめではありませんでしたか。明年度には少なくとも今年の倍増の予算と構想を持つべきだと思います。あなたの言われる調和と発展がその中からこそでき上がると思うが、総理の御所見をお伺い申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/42
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043・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 川端君にお答えいたします。
中小企業がわが国経済において大きな役割りを果たしてきていることは、御承知のとおりであります。製造業について見ると、出荷額は一貫してわが国の約五割のシェアを維持しております。また、商業の販売額では、そのシェアの低下は見られましたものの、約五割の水準、これを保っております。さらに、最近の産業の高加工度化あるいは所得水準の向上による高級品需要の増大などにより、中小企業に適した新しい分野は次々と展開されてきており、この意味において、中小企業は今後ともわが国経済の中で重要な役割りをになうものと、かように私は考えております。
また、川端君は、白書が中小企業にとっての課題のみを強調し、対策と予算に欠けているという御指摘でありましたが、決してさようなことはありません。白書と一体として提出した昭和四十五年度において講じようとする中小企業施策等は、明確にその具体的方向を示しているものであります。
また、中小企業対策は、ひとり国の一般会計のみによるばかりではなく、金融、税制、財政投融資等、各般の施策によって進められているところであり、今後ともその方向で一そう努力してまいります。
なお、中小企業全般に共通する基本政策についてのお尋ね、さらには金融引き締めのもとにおける中小金融のあり方につきましては、いままでの前質疑者に私がお答えしたところで明らかになったところと思いますので、これは省略さしていただきます。
中小企業に対する金融の措置につきましては、従来から格段の配慮を払っているところであり、中小三機関の基準金利も、四十年以降三回にわたって引き下げた結果、現行では市中金利に比しかなりの低水準となっております。また、一方において、市中一般の金利水準が全般的に上昇傾向にある最近の状況から見ても、また、一般経済情勢等から見ましても、さらにこれを引き下げることは私は考えておりません。また、適当でないと、かように思います。
三機関の政策金融の主体性を強化せよとの御意見でありましたが、中小企業の資金需要が大型化し、かつ政策金融が中小金融の中心となる今後の傾向を考えると、むしろ時代の要請としてその傾向は強められてまいるものと考えます。
また、拘束性預金の規制については、歩積み・両建て預金の自粛整理の方向で一そう強力に指導してまいります。(「効果なし」と呼ぶ者あり)この点において、効果なしというような不規則発言がありますが、私もぜひ効果をあげたいと思いますので、この上とも御協力をお願いしておきます。
次に、税の問題でありますが、個人に対する事業税課税を廃止することは、私は適当ではないと考えます。しかしながら、他面、零細な個人事業者に対しては、できるだけその税負担を軽減、合理化することが望ましいので、従来から、事業主控除及び専従者控除の制度を設け、税負担の緩和をはかってきたところであり、本年におきましても、事業主控除の改定を行なったところであります。今後とも、その軽減につとめてまいります。
次に、資本力等にまさっておる大企業が、中小企業が多く存在する分野へ進出することにより、中小企業が不当な、あるいは急激な影響を受けることのないよう、中小企業団体法、小売商業調整特別措置法、百貨店法、さらには独占禁止法等の運用をはかっているところであります。
しかしながら、たとえばスーパーの出現は、他方において流通の近代化、物価の安定にも寄与することにもなり、また、経済が絶えず流動している現在におきましては、画一的に事業分野を固定化することは、かえって中小企業の発展の機会を奪うことともなり、必ずしも適切ではないと考えます。今後とも、関係諸法の適正な運用により対処するとともに、より基本的には、中小企業の体質改善をはかることが肝要であると考えます。その施策を一そう拡充してまいりたいと思います。生産者ばかりでなく、物価問題のやかましいこの際、やはり消費者の立場にも立って、ただいまのような新しい分野、その方向で伸ばしていくべきではないだろうかと思います。いままでのように、旧来の状態だけで事足りるとは、私は考えません。
次に、日米繊維交渉につきましては、すでに繰り返し申し述べたとおり、政府の基本的態度は一貫しております。繊維問題は、当面の日米間の最大の懸案であると同時に、御指摘のような大きな国内問題でもありますが、日米間の緊密な友好関係維持という観点からも、すみやかに合理的な解決を見出すことが必要である、かように考えております。そうして、私は、国会の終わるのを待っておる、かようなけちな考え方は持っておりません。問題の解決のため、筋を通すべきはもちろんでありますが、日米友好という大局的見地に立って、そうして、互譲の精神がこの際特に肝要であると私は考えております。このような考え方に立って、今後も交渉を続けて、できるだけ早く解決を見るように努力してまいる決意でございます。
また、最後に、ことしはもうしかたがないから許すが、明年の予算編成に際しては特に留意しろと、予算増額の要求がこの際ございました。まあ、一年先の問題でございますが、ただいま御意見は御意見として、十分伺っておきます。ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/43
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044・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 金利の問題でございますけれども、御指摘のように、事業団の構造改善関係には三%以下というような金利もあるわけでございます。ですが、いま総理が言われましたように、市中の長期金利がやや上がりぎみであるということ、金融債の引き受け条件も変わっていくというようなことで、中小企業関係の金利引き下げということには、状況が少し不利でございます。
そこで、私どもとしては、中小公庫あるいは国民金融公庫の中に、いわゆる特利というものを少しずつ中小企業に限って広げていきたいという考えを持っておりまして、現在でも、流通近代化でありますとか、特定機械工業であるとか、輸出振興であるとか、ございますが、このワクと、それから目的を少しずつでも広げていきたいと考えておるわけでございます。
それから、構造改善につきまして、たいへんに御激励をいただきまして、これは、私どもぜひそうしたいと思っておりますが、御承知のように、昨年度いたしましたものは、合板とか、金属洋食器とか、いろいろございますが、四十五年度は十余り新たに選ぼうと思っております。
御指摘のように、また、先ほど申し上げましたように、特恵関係で後進国からの追い上げのあるものを中心に、繊維がやはりどうしても中心になると存じますが、ただいま、もう少し広い範囲で調査を進めております。調べております範囲はかなり広うございまして、鋳物でありますとか、印刷でありますとか、かなりな範囲を調べておりますが、そのうちどれどれに確定するか、もう少しお待ちをいただきたいと思っております。いずれにしても、発展途上国の追い上げとの関係等々を考えまして、十余り選択いたしたいと思っております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/44
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045・船田中
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/45
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046・船田中
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時五十三分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
外 務 大 臣 愛知 一揆君
文 部 大 臣 坂田 道太君
厚 生 大 臣 内田 常雄君
農 林 大 臣 倉石 忠雄君
通商産業大臣 宮澤 喜一君
自 治 大 臣 秋田 大助君
国 務 大 臣 荒木萬壽夫君
出席政府委員
中小企業庁長官 吉光 久君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106305254X02219700424/46
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