1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十五年四月十六日(木曜日)
午前十時二十二分開会
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委員の異動
四月十六日
辞任 補欠選任
柏原 ヤス君 白木義一郎君
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出席者は左のとおり。
委員長 佐野 芳雄君
理 事
上原 正吉君
鹿島 俊雄君
吉田忠三郎君
渋谷 邦彦君
委 員
黒木 利克君
高田 浩運君
玉置 和郎君
徳永 正利君
山崎 五郎君
山下 春江君
山本 杉君
中村 英男君
白木義一郎君
国務大臣
労 働 大 臣 野原 正勝君
政府委員
人事院事務総局
職員局長 島 四男雄君
厚生省医務局長 松尾 正雄君
林野庁長官 松本 守雄君
労働政務次官 大野 明君
労働大臣官房長 岡部 實夫君
労働省労政局長 松永 正男君
労働省労働基準
局長 和田 勝美君
事務局側
常任委員会専門
員 中原 武夫君
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本日の会議に付した案件
○中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○労働問題に関する調査
(白ろう病に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/0
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001・佐野芳雄
○委員長(佐野芳雄君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
本日、柏原ヤス君が委員を辞任され、その補欠として白木義一郎君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/1
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002・佐野芳雄
○委員長(佐野芳雄君) 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案を議題といたします。
御質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/2
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003・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 この提案された中小企業の退職金の共済法の一部を改正する法律案、この法律案の審議にあたって、私は、この中小企業というものを共済制度だけの問題としてでなく、まあ、ここの場は法律案も出されておりますから審議しなければならないと思いますが、やはりこの問題を扱う場合に、中小企業というものをもう一回いまの時点で真剣に、これはただ政府とかあるいは与党とか、野党とかという立場じゃなくて、認識してみなければならぬのじゃないか、こう思うのですよ。そういう意味でだんだんと私は質問をしてまいりたいと思いますが、一口に中小企業といっても、これはたいへん困難なむずかしい問題ですね。たとえば業種にしても、業態にしてもあるいは規模にしても多種多様で、さまざまなその規模とかあるいは業態、業種によって問題が出てくる、こういうことですね。それからもう一つは、たとえばいまのこの法律の提案理由の中にも、この制度は福祉の増進をはかるもの、ですから福祉的な面でとらえられていると、こう見るのですが、さて福祉といっても、これまた御承知のように、釈迦に説法でございますが、たいへん定義というものが広範にわたっているので、これもむずかしい問題だろうと、こう私は思っているわけです。そういうむずかしい問題をここでいま一つ一つやろうという気はしていないのですけれども、概念として、やはり今日置かれている中小企業というものの実態を、みんなでこの認識をやはりある程度統一をしながらこういう法律案を審議することがいいのじゃないか、これは自分自身として考えているわけです。で、ここに書かれております福祉の増進と、それから中小企業の振興に役立つものだ、こういう理由が申し述べられていますが、その意味では、これは法律を側面から見て、確かに従前なかったものが十年ほど前にこの法律が創設されて、ある程度整備をされてきて、なおかつ、客観的にいまの中小企業者が置かれている現状を捕捉していく、こういうものでしょうから、役立つものだとは思うのです。しかし、本来、この中小企業の問題をとらえる場合に、いままでは中小企業の政策ということになりますれば、その政策上、大企業と中小企業との関係において、何といっても基盤が弱いですから、たとえば資本力の問題あるいはマーケットの問題、まだ幾つかたくさん数え上げると問題がありますけれども、いずれにしても、大企業と比較して不利であることは明らかである。だから不利の補正というそのことが優先されて施策なり、またそれを補なう対策というものがとられておったのですね。しかし、それだけではいまの置かれている中小企業というものを救い上げていくということにはならぬと思う。だから二つの側面を持っていると思うのですよ。確かにいま言ったように、大企業と比較をしての不利の補正ということがまずとりあえず当面施されなければならぬものであるけども、もう一つの側面を持っていると思うのですよ。それは戦後の急激な技術革新であるとかあるいは近代化であるとか、もう一つには、最近特にそうでございますけれども、人手が不足である。なかんずく若年労働力が非常に不足をしている。そういう状況の中だけに、やはり中小企業といえども近代化をしていく必要がある、あるいは高度化をしてまいらなければならない。それをどう育成助長、援助するか、こういうやはり私は一つの側面を持っていると思うのです。ですから、私はこの法律案審議にあたって、そういう二つの側面を持っているということの立場に立って、しかも、この法律案に賛成する立場でこれから政府のほうに数点質問してまいりたい、こう考えているのです。
第一には、私が申し上げるまでもなく、ここ数年間、国会は中小企業がいま置かれている環境というものはどういう状態になっているのかということを議論をしてきて、たいへんきびしい状況に置かれている、こういう前提に立って、まずその体質改善、それから近代化の必要を国会は説いてきた。そうして、これがための具体的な施策というものは、財政、金融、それから企業分野の確立、事業量の確保、つまり、仕事量を政策的に提供するということが事業量の確保ということですね。こういうことをたびたび、政府を叱咤激励、鞭撻をする意味において、国会では取り上げてきた。私は、こういう認識を持っているのですが、これは労政局長の分野じゃないかもしれませんがね。次官もそういう経験をお持ちでございましょうが、こういう認識でどうですか。私はこういう認識をとりあえず持っている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/3
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004・大野明
○政府委員(大野明君) ただいま吉田先生御指摘の点については、もうすでに多々論議されてきたところであります。いずれにいたしましても、いまの大企業と比べて中小企業の不利を補正しろとか、あるいはまた技術革新あるいは近代化、それに伴う労働力の問題、それに対する助成、援助、こういうような二つのものを基幹として、もうすでに国会では多々論議されてきたということでございまするが、そのとおりでございまして、この点は、現在も十二分に配慮して、特に労働省では労働力というものを中心に考えておりまするが、いずれにいたしましても、中小企業が大企業に比べまして、資金の調達とかあるいは資金の内容が不安定であるとか、これは金融機関にも一つ問題があることは事実であります。その反面、労働力ということになりますると、現在、中小企業のみならず、各企業において労働力が非常に不足しておる今日でありますから、まず何といっても、とりあえず魅力のある職場にするように、やはりそれに伴ったいわゆる福祉面においても大企業に負けないように国が援助しようというような形で行なっていきたい。その一つとして、今度提案いたしましたこの法案も、十年前に御指摘のようにできたわけでありまするし、それから徐々に改正いたしておりまするが、それよりも、また先生方の御意見を承って、より以上内容を充実したいという考えで提案した次第ですから、先生のそういう非常に大局的なものの見方の中の一環としてひとつよろしく御審議をたまわりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/4
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005・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 次官も、この限りにおいての認識は私とそう変わっておらないと思う。それに対する政策的なものですね、これはむしろ通産省の分野であり、あるいは委員会とすれば商工委員会の分野ですし、それ以上のことは退職金共済法ですから、冒頭申し上げたように、きょうは側面からの助成、助長、そこのところにしぼって、中心を置いてやらなければならぬ。それ以上の政策的なこと、中小企業に対する政策等についてはいいのですが、しかし、認識としてはいつも持たなければなりませんから、いまそういう意味で申し上げたわけです。
そこで、前段の認識は大体私と変わっていないと思うのです。そういう上に立って今日まで政府がとってきた幾つかのこれに対する施策というものがあるんですが、そういうものを政府としても曲がりなりにも整備をされてきたんでありますけれども、今日的情勢の中では、それが万全であるとは考えられないと思います。なぜかなれば、政府がいままでとってきた施策というものは、いわば五〇年代の後半、それから六〇年代の中小企業の政策ではなくて、出てきた現象に対応する対策であったと私は思うのです。こういう点は、ここでもそういう対策というものではなくて、政策だとかあるいは施策の一環としたものだ、こういうことに、ややともするとなりまして、それをもとにまた議論を発展させなければならぬが、この点はこれ以上言いません。私は、少なくとも、出てきた現象、事象に対する対策であったと、こう思っておるのです。こういう見方ですね。
そこで、では具体的に政府がとったものは何か。先ほどちょっと触れましたが、何といっても、中小企業の経済的な面、それから社会的な面、これから出てくるものは答えとして何かというと、つまり不利の補正ということにならないのです、方程式的にこうやってみると。そういうものを側面から中心的にとられてきた、それは幾つかあります。この問題についてはあとで申し上げますけれども、政府がとってきたものですね。したがって、十年前にこの法律が創設をされて、漸次整備され、なお補強しようと、今度の提案はより充実というようなことを言われておりますけれども、整備しようということだと思うのです。ですから、この法律もそういう意味では、つまりこの不利の補正という域を脱していないのじゃないか、こう思うのですが、こういう点はどうですか。これは具体的にこの法律に今度関係してきますから、労政局長として、あなたの認識でいいのです、いま認識の問題を話しているのですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/5
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006・松永正男
○政府委員(松永正男君) 大所高所からの御議論でございますが、私も先生と同じように、中小企業対策というもののあり方といたしまして、やはり体質を強くして、そうしてひとり立ちができるという方策というのが基本になるべきだというように考えております。ただし、大企業との関係におきましては、よく経済面においても、社会面においても、日本の特殊性として二重構造というようなことが言われており、格差があることは事実でありますので、やはりそのときそのときの状況に応じた格差で埋めていく政策と、それから基本的には経営の近代化、あるいは技術の向上、体質改善といったようなことを通じて、その自力をつけていく、これが並行してといいますか、相関連しながらなされるというのが政策の方向ではなかろうかと思うわけであります。そういう二つの観点、そうして基本的にはやはり自力をつけるということのほうが基本的な政策ではなかろうかと、こういう位置づけにあるように感ずるのでございますけれども、その二つに分けますというと、中小企業退職金共済法というのは、これはできるだけ格差を埋めるという、いわば不利を穴埋めする方向の政策であるというふうに私も認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/6
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007・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 この面でも、つまり起案者の労政局長のほうもそんなに認識、考え方は私と変わっていないような気がするんです。あと、体質改善をどうするか、構造変革を求めるためにはどういう手だてをするかという問題は、それは通産省のほうの分野になりますから、私はここで議論しません。しませんが、そういう本質的な、しかも内容にわたった議論は別といたしましても、今日やはり二ついまちょっとした私は認識の問題を提起してみて、おもな点では労政局長とやや一致したわけです。ですから、そういう上に立ってみた場合に、今日の中小企業の問題というのは対策であってはならない。やっぱり七〇年代における中小企業を一体わが国の産業経済の分野でどう位置づけをしていくかという、いまちょっと労政局長も言った位置づけの問題をとらえて、そうして長期的な政策を持たなければならないのではないかと私は考える。すなわち中小企業政策というのは、先ほど言ったように二つの側面からとらえなければ、これは実態に合わないものなんですね。これは資本主義がどうとか、社会主義がどうとかいう議論の前に、与党だとか、野党だとか、何党だとかいうことを抜きにして、わが国の中小企業というものをとらえて政策的にこれを扱う場合には、何といってもこの二つの側面からとらえなければならないというものが出てくると思うんですね。したがって、その、一つというのは、これは前に申し述べたように、いまの大企業と対照し、比較をしてとらえられる、再三申し上げるけれども、不利の補正ということだと思う。もう一つの側面は、ちょっと先ほど私が言ったように、近代化、高度化、その中には体質改善あるいは構造変革の問題等々も含まれてくると思うんですが、いずれにしても、こういう政策が中小企業においては何といっても車の両輪のようなものにしてかみ合わせていかなければ、この問題の本質の解明をすることはできないと、こう理解しておりますがね。この点はやや政治的な、法律とはちょっとかけ離れておりますから、大きな問題ですから政治家としての次官のほうがいいじゃないかと思いますがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/7
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008・大野明
○政府委員(大野明君) ただいま先生の御指摘になった点については、政治家としてということでありますけれども、現実面から申し上げましても、中小企業の事業数というものはもう九九・三%、大企業は〇・七%、労働力においては七七%と二三%というような形でありますけれども、いずれにいたしましても、わが国の産業構造からいっても、こういうふうに中小企業は非常に多いという現実、しかしながら、先ほどからお話しのありましたように、現実においては金融面において、また、その労働面においていろいろと問題が非常に大きいことは事実であります。しかしながら、その反面、中小企業者が国内産業はもとより、輸出産業にも非常に大きな地位を占めておる今日において、やはり中小企業の育成ということが今後のわが国の経済を支えるということでありますからして、労働省といたしましても、この点については十二分に配慮をして、先ほど申し上げましたように、その一環としてこの法案を少しずつでも前進させていきたいということでありますからして、そういう意味からいっても、われわれは政治家として、やはりわが国の高度成長経済というものを今後も維持し、その中において中小企業の育成並びに中小企業に働く人たちの健全なる生活ができるような方向づけをしていきたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/8
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009・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 次官、そのあとの考え方は政治家の考え方ですから、大野次官の考え方はそういう考え方ですね。そこらあたりにいくと、多少私は私の考え方がありますがね。それは何回も言うけれども、この場の議論ではないのですから言いませんけれども、ただ、こうした側面の助長、助成、それから援護、次官はいま育成という表現を使いましたが、いずれもそんなに変わっていないと思う。そういう面でこの法律がとらえられているわけですけれども、私は、中小企業を助けていく場合のものの見方、考え方、つまり思想ですがね、そういうもののとらえ方というものは二つの面があると思う。一つの面は、この大企業との格差とか、いろいろなことを言いますけれども、それは大企業と対照をして、比較をしてやはり不利というものを補正をしていかなければならぬ面が一つあるだろうと思う、政策的に。それからもう一つは、中小企業といえども今日の技術革新あるいは急テンポに変わってきた経済構造の中では近代化、高度化あるいは構造改善の面もあるであろう。変革の面もあるであろうし、必然的に体質改善の問題もそこから出てくるであろうが、そういう二つの面を持っておると思うのですよ。この二つの面をいわば車の両輪のようにかみ合わして初めて中小企業というものに対する基本的な、本質的な政策というものがそこから引き出されなければならんじゃないかと、こういう私は見方で、またそういう認識だと、この認識はどうかということなんですよ、大野次官ね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/9
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010・大野明
○政府委員(大野明君) いま先生御指摘のとおりだと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/10
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011・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 まあ、大体ここまでの過程では意見が一致していると思うのですよ。そこで、さて意見がそこまで一致し、認識が統一されるとすれば、具体的にしからばどういう手を打つか、どういう政策なり、施策を政府は持たなければならぬか、こういうことになるわけですね。したがって、私は一つの例を申し上げますけれども、とりあえずやっておかなければならぬ例ですよね。何といっても今日では大企業がどんどん中小企業の分野に野放しに進出をしてきておるという問題があります。そのために、これはすべて中小企業の倒産の例を見ればよく出ています。如実に出ておりますが、その結果は、全部中小企業に働いておる ここではその意味での退職金制度とか、共済制度とかいうことでそれを補ってやろうということですけれども、働いておる中小企業の労働者に全部おっかぶさっておる、しわ寄せされておる、こういう点ですね。こういう点は労働省の仕事ではありませんが、私のことばをして言わしむるならば、野放し状態になっておる。たれ流し状態ですね、もうひとっことばを強めれば。こういう状態になっておるんじゃないか、具体的に。これは一つの例ですがね。それからもう一つは、中小企業自身も企業同士で過当競争をやってますね。この過当競争に対して、これは全く手がないというわけじゃないですよね。あとで申し上げますが、政府もそれなりに、たとえば不況カルテルという制度を立法措置でしていますから、全然ないとは言っていない。いないが、とにかくこの過当競争の面を今度は見た場合に、これは政府には中小企業庁なんていうものがあるけれども、最近のこの何といいますかな、薬品工業などはかなりどんどん人間の体質に合うように——ここには大正製薬の社長さんもいますが、決して私は上原さんの宣伝をするんじゃありませんが、かなりのものがききめの有効適切な薬品などが出ていますが、これは中小企業というのは薬品でなおるわけじゃない。まあ、一つの例で言ったんですが、適切な正しい中小企業の過当競争に対する、それに対応する施策というものは、政府は打ち出していない、こう思うんです。ですから、結論的に私が言えば、こうした中小企業の本来持っている弱い立場というものを政府はこの際やっぱり保護する、そうして、やはり何といいましても、ちょっと局長も先ほど触れましたが、みずからが生きていける道を確保してやるための諸般の政策なり、施策というものを整備するということが先決ではないかと、こう思うんですが、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/11
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012・松永正男
○政府委員(松永正男君) 先ほども申し上げましたように、長期的なものの見方といたしましては、中小企業の高度化という表現が適切かどうかわかりませんが、体質の強化ということが長期的に基本的な問題だと思います。ただし、それは一朝一夕にまいりませんので、そういう方向を指向しつつ、先生のおっしゃいますような、大企業との間において保護すべき点は保護をするということとあわせて、おっしゃいましたように、車の両輪ということになるのではなかろうかと思いますので、現状におきまして、いま御指摘になりましたような過当競争等によって中小企業自身が共倒れになる、あるいは大企業との関係において競争上非常に不利な立場に置かれる、あるいはまた、特に縦の関係におきまして下請というふうな関係で、大企業との関係でいろいろ不利な条件がある、そういうようなところを補正をしまして、そしてその保護をしつつ、実際にみずから伸びていく力をつけていくということ、まあ、そのウエートはどうかというようなことになりますというと、また個々具体的にいろいろなケースが出てくるかと思うのでありますが、その両方が適切に連絡し合い、からみ合って対策を決定する、こういうふうに私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/12
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013・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 労政局長は通産省の局長じゃないから、だから結局労働力をどう産業なり、経済なり、中小企業の各分野に提供するかという立場で中小企業をながめているわけですね。だから、そういう意味では私どもと同じようなものだと思うんですよ。だから私は先ほども言ったように、政府は何も手を打っていないということじゃない、打っている。しかし、打っている手だてはどういうことかということについては、いまのあなたの答えられたようなものになっていますけれども——答えたということより、あなたの考え方を述べられたのだが、あなたの答えられたようなものだと思うのです。そこで、冒頭に申し上げたように、国会で非常にこの問題が真剣に取り上げられて、幾つかの決議をしたり、あるいは理論展開をしている中で政府がとってきたものがある。いま、あなたもおっしゃったように、たとえば下請け企業に対してどうするとか、あるいは中小企業そのものに対してどうするとか、協業化をどうするとか、何かいろいろ手だてした法律があるのですよ。それは御存じのように、中小企業団体法という法律がありますな。その中において、不況の場合においてカルテルというものも制度としてちゃんとできたのだね。それから、いまあなたが申されたように、下請けの場合については、下請けの代金支払い遅延をどうするか、問題はずいぶん国会で議論のあったところですよ。ですから、そのあとに下請代金支払遅延等防止法という法律を制定した。おととしでしたか、創設した。いま、あなたが答えられたようなことのためにそれをつくり上げてきたのです。しかし、さてその創設されたときと現状では、百八十度の転換をしたというとあまりにもオーバーですから、そういう表現はしませんけれども、たいへんな変わり方なんだね、情勢が。ですから、そういう情勢に対応している手だてでは必ずしもない。ないよりはましでございますけれども。ですから、もっともっとこういうことについても、これは通産省の分野だといえばそれまでですから、そこのところはあなたに聞こうとしませんが、労働省の労政局としての分野からながめて、この問題を解決するものがまだあろうと思う。そういう意味では、いまの提案されているようなものだけではまだ不十分である、不足ではないのか、こう思うのですがね。この点は、労政局長としてどうお考えですか。労政局の分野として考えていいんです、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/13
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014・松永正男
○政府委員(松永正男君) 労働省で、中小企業対策として扱っております政策の大きな柱といたしましては、先ほど御指摘になりましたように、いわゆる補完的な、できるだけ格差をつめていこうというような政策が主として労働面からとられておるというふうに見ることができるかと思うのでありますが、それらの施策が十分であるかどうかということになりますというと、われわれも決して現状でもうこれでいいんだというような考え方は持っておらないのでありまして、今後におきましても、毎年々々の予算編成等におきまして努力をいたしまして、改善をしていくという方向をとらなければならないわれわれの責務であるというふうに考えておるわけでございますが、同時に、労働面からいたしまして、自力をつけるといいますか、体質を改善するというような面につきましては、たとえば職業訓練というような、現在中小企業に雇用されておる人たちの労働の質を高めるというような積極面につきましても、現在事業内訓練の保護助成ということをいたしておりますけれども、さらに拡充をしていく、単に訓練の運営費につきましていろいろな助成をするだけではなくして、施設とか、機械設備といったような面まで助成の対象を広げてやろうということで、四十五年度予算等においても、そういう点の予算を計上いたしておるのでありますが、同時に、融資等の面におきましても、主として雇用促進事業団でございますが、量的には雇用促進事業団が中心になるわけでございますが、中小企業退職金共済事業団等におきましても、あるいはまた安全設備の融資というような面におきましても、それぞれ融資のワクを設定いたしまして、できるだけ低利な融資でそういう施設の拡充ができるような施策を講じておるのでございます。それと同時に、先ほど先生おっしゃいましたような、主として中小企業庁を中心にするこの中小企業の体質改善強化という面、そういう面もあわせまして進めていくということでございますが、そのいずれの面をとってみましても、今後改善をしていかなければならない余地は、おっしゃるとおり、たくさんある。そういう面については、私どもいま御提案申し上げておりますこの法案も含めまして、今後さらによりよくしていくという努力は継続をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/14
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015・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 いま局長が答えられた点は、労働省として、先ほどの二つの側面の一つの不利の補正、そういう面でとらえた施策なんです。大いに私は積極的にやっていただきたい、こう思うのですが、しかし、いまあなたも答えられた、たとえば職業訓練についてという問題についても、前々国会でようやく訓練法が整備をされた、こういうことです。そうしていま予算審議していますが、その予算、これは本委員会でも予算の説明がございましたが、いまどうですか、松永局長がそこで幾つか並べた政策、確かに労働者の質的な向上というものを目ざさなきゃなりませんから職業訓練も大切なんですが、予算で見ると、どうもいまの演説ほど予算がついていないですな、そういう意欲というものがどうもうかがえない。ですから、労働省の予算全体で、これはたしか千五百億程度ですね。そうして大企業を——私、決してここの場で政府の政策批判をしようなどという気はないんでありますけれども、そういうこの計数的なものをはじき出して、計数上分析しても、やはり批判じゃなくて現実に出てくるものがあるんです。通産省のいわゆる大企業育成、擁護のための予算の何十分の一じゃないですか、これは。これでは将来のわが国の産業、経済、特に企業というものの原則からながめた場合に、これはいびつになっている。企業というのは、釈迦に説法だけれども、資金、財政、機材、労働力——労働力というのは人間ですから、これがつまり佐藤総理大臣じゃないけれども、均衡を保ちつつ調和させなければ企業とは言えない。そういう意味から申し上げますと、幾つか並べた政策はけっこうですからどんどん推し進めてもらいたいと思うけれども、やはりそのためには、たとえば労働者の質的な向上をはかるといっても、訓練をやるためには金がかかるわけですから、これは次官のほうで答えてもらいたいと思うのですが、あまりにも労働省の予算配分といいますか、予算要求において、いまの政策をさらに進めていくということになれば、その点が少し欠けているんじゃないかと、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/15
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016・大野明
○政府委員(大野明君) ただいまの点につきましては、確かに一九七〇年代のわが国の経済をささえていくためには、金融よりもむしろ労働力と言われておる今日において、現況においては、事業内訓練一つとりましても六億二千万というような非常に少額である。私も、労働政務次官になって初めてこの実態を知って少ないと思っておりますので、今後、来年度の予算等においてはますます意欲を燃やして、私が幸い政務次官でおりましたならば、もっともっとより多くの予算をとるように最善の努力を傾ける所存であります。そして、何としても、中小企業の、先ほど申し上げた育成の一環として大いにやっていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/16
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017・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 そこで、次官も大いに積極的に意欲を持ってやっていきたいということですが、まだまだそこだけでは抽象論ですよ、率直に言って。ですけれども、それは法律に直接に、関連あるけれども、直ちにということになりませんから、その抽象的ではあるけれども、意欲的にやるということですから、その意を私は了とします。いままでざっと申し上げたのは、大企業との対比、比較対照で一つの面を話したのですが、国会では、もう一つの側面もやはりより積極的に取り上げてきておる。それはいまもちょっと出ましたが、経済の構造が急激に変化したわけでしょう。高度成長政策がいいとか、地域経済計画がいいとか悪いとかいう問題じゃなくて、現実にわが国経済の構造というのは急激に変わってきたわけです。それに呼応するように人手が不足になってきている。非常にこの問題は深刻化してきたのですね。その人手の不足だという状況の中に、とりわけ若年労働者がたいへんな状態だ。こういうことはしばしば国会で指摘をされたところです。国会論議になったところです。そういう一つの状況と、もう一つの状況は、それは歴代内閣がとってきた政策、これは立場によってわれわれは反対した。しかし、いま反対したとか賛成したという議論はここではやめますが、これも現実的に資本の自由化、貿易の自由化、この政策がとられてきていますから、わが国中小企業といえども、この経済の国際化というものを全く無視するわけにはいかないというのが現状じゃないかと私は思うのです。だからこそ国会は、この際は業種別に中小企業というものを洗い直して、近代化なり高度化をするために政府はあらゆる力を尽くして、あなたも申されたように、中小企業そのものがみずから生きていくようにやらなければならぬと言っておった意味はここにあるのじゃないか、私はこう思うのだ。それが国会論議になると、一口に言って、構造問題を打開するためにかくかくしかじかのことをやりなさい、こういうことを言っておったのですね。そこで、政府が重い腰を上げてとってきたものは何かということで調べてみた。調べてみたら、ややそれに適応をするような、対応するような施策としてとったものは、御承知のように、中小企業基本法という法律ですよ。これは憲法のようなもので、いわゆる理想像のようなものがたくさん掲げられてありましたが、具体的なものはないですよ。ないが、まあ中小企業基本法というものは、いま言った一面のものをとらえての手だてだと、こう思っている。それからもう一つは、中小企業の近代化促進法というものがつくられて、その二つを一連の輪として、政府があとのほうの一面の側面を描きつつとった手だてではないかと、私はこう思うのですがね。この見方は間違いであるかどうかという問題は、これは次官でけっこうですが答えていただきますが、私は、これだけの手だてでは、いわゆる二つの側面がある一つの側面の施策を完全に満たしているかということについては、残念ながらそうなっていないと言わざるを得ないわけです。これは、しかし、私の見方ですが、私はそういう見方をしている。この点を二つに分けて、簡単でけっこうですから答えてくれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/17
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018・大野明
○政府委員(大野明君) いわゆる中小企業に関する法律というものが非常にたくさんあるわけでありまするが、それは現況の中小企業自体が、一番最初に先生御指摘のように、非常に多種多様であると、その内容、実態等においても非常に複雑であるというような点において、なかなか国といたしましても、その施策が十分に遂行されておらぬということは事実でありまして、この点においていろいろと改善する余地はたくさんあるというふうに考えております。もちろん、今日まででき得る限りの努力はいたしてまいってきたとは思いまするけれども、しかしながら、その大企業との不利補正にいたしましても、また技術革新あるいは近代化、労働力等に伴うところの助成、援助、いわゆる側面、両輪という先ほどからのお話でありまするが、この点が両々相まつべきであるのにそうじゃないということでありまするが、私も、現実に考えてまだそこまでいっておらぬというふうに思っておりまするし、これについては、今後、先ほども労政局長が申しておりましたように、いわゆる体質の強化、そういうようなことに十二分に留意してやっていくべき問題であろうというふうに思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/18
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019・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 労政局長はどう見ていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/19
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020・松永正男
○政府委員(松永正男君) たいへんに広範囲な問題でございまするので、私全体をカバーするほどの見識を持っていないのでございますが、確かに、御指摘になりましたような二つの法律、それからそれに合わせまして中小企業近代化資金等の助成法といったようなものが車の両輪の中の片一方の輪であると、これはおっしゃるとおりだと思います。こういうものが具体的にどういうふうに適用され、どれだけ効果をあげておるかというようなことにつきましては、詳細私も把握はしていないのでございますけれども、現在の労働の側面から見ました中小企業という観点から見てみますというと、やはりたとえば賃金、労働時間、それから安全衛生というような面、そういう面から見ましても、このような体質改善の方策がもっと進むことによりまして労働面の側面もまた解決していくと、改善されていくということであると思いますので、こういう政策をもっと強化をし、促進する余地がまだあるのではないかということは、私どもは、仕事を通じての実感として感ずるのでありますが、同時に、われわれのほうから労働プロパーの面からいたしまして、御指摘になりましたような訓練にいたしましても、それから災害予防というような面におきましても、それからまた、最低労働条件の確保というような面におきましても、なお努力する面がたくさん残っておる、こういう認識を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/20
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021・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 大事なことですからね、あと二、三そういう認識の面を聞きながら本論に入りたいと、こう思っていますがね。佐藤総理大臣は、この国会の施政方針演説の中で中心をえぐっておったものは、何といっても内政を中心にするということ。しかも、先般も何か国内かあるいは海外の新聞記者か知りませんが、新聞記者会見などをやりまして、この国会で当然提案なりあるいは趣旨説明をしなければならぬこと以上のことをいろいろ彼は言っているのですよ、佐藤君が。その中にも内政に力点を置かなければならない、こう言っていますね。内政とは一体何かということになるのですが、これはたくさんありますよね。ありますが、やはり少なくとも佐藤内閣が産業経済を中心にして、中期経済計画というものを是正するかしないかは別として、そこに一本の柱を置いていることは間違いないですよ。その中に中小企業というものがある。総理大臣は口を開くと、七〇年代を指向するということをよう使いますね。そこで、七〇年代を指向するのはけっこうですがね、指向するならば、いわゆる行政全般にわたって七〇年代を指向しなければならぬでしょうね。そういう意味で申し上げるのですが、中小企業だってやはりこの七〇年代を指向して政策的にとらまえないと、佐藤さんの七〇年代指向というのは何であるかということはちっともこれはつかみ得ない、こういうことになるんでありまして、七〇年代の中小企業の政策というのは、いままで二つ三つ私が申し上げてきたただ単にこの一つの側面の不利の補正、もう一面の近代化、高度化、こういう面で従来とってきたことだけでは、七〇年代の十年間の長期展望をわれわれ専門家じゃありませんが、展望してみた中で比較にならないほど中小企業というものの置かれている位置づけというものはきびしいものがあると私は認識しています。再三申し上げるようだけれども、人手の不足だという問題をとらえても、あるいはそのために派生的に出てくるつまり賃金上昇の問題もあるでしょう。ありますね、これは。この問題は佐藤内閣の経済政策が完全に行なわれてないから物価が上昇する。しかし、物価論議はここではやめますが、そういう問題もあると思う。いずれにしても賃金上昇の問題がありますね。あるいは技術革新という問題がありますね。そういう幾つかの構造変革から出てまいりました波及に、中小企業というのはその存立の基盤をいまゆられているのですよ。私は、かつてないほど中小企業は危険にさらされていると思う。これは決してオーバーな認識じゃないと思う、表現ではないと思う。そういうやはり深刻な客観情勢というものを把握をした認識に立たなければ、これに対する対応策というのはほんとうの意味で生まれて来ないと思うのであります。いまこそ政府は抜本的なこれに対する対応の政策を打ち出さない限りは、迫まりくるこうした諸情勢に中小企業は耐え得られないということになるんじゃないかと思うのですがね。労政局は、いわゆる経済政策なり産業政策というものは専門にやっているわけじゃないですけれども、しかし、先ほど言ったように、労働というものはやはり産業、経済、企業の柱です。一本の柱であることは間違いないのですから、その面でとらえた場合に、私のような認識があまりにもオーバーな認識であって、あまりにも心配で、それは君、老婆心だよと、そんな深刻じゃないですよという状況であるかどうか。あなた方は経済の専門家じゃないと言いますけれども、現実にやはりその一翼をになっている、労働の面をとらえているわけですから、その面では、われわれから見ると専門的だと思うのですよ。そういう労働面でけっこうですから、専門的な考え方というものをひとつ聞かしてくれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/21
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022・松永正男
○政府委員(松永正男君) 労働面からまず第一に考えられます点は、労働省の設置法にも書いてございますように、勤労者の生活の向上ということであるわけでございます。これは言うまでもなく、先刻御承知のことでありますけれども、日本の人口構成の中で勤労者の占める割合というものが逐年大きくなってきている。その場合に、雇用労働者かあるいはその家族就業者かというような問題がございますけれども、言うなれば、大部分の国民が勤労者であるということは言えると思うわけでございます。したがって、そういう観点から国民の生活を向上させるということは、即勤労者の生活を向上させるということとほとんど同義語であると考えていいのではないかというふうに考えます。そして、先ほど申し上げましたように、規模別の就業者の数を見てみますというと七七%ぐらいが中小企業である、こういうことになりますというと、やはりポイントは中小企業の勤労者の生活がよくなることがイコール国民の生活がよくなることだというふうにつながってくるのではないか。たいへんラフな言い方でありますがそういうことではなかろうかと思います。したがいまして、労働の面から見まして、労働者の生活の改善ということの場合には、中小企業というものがどうなっていくかということとほとんどもううらはらの関係になってくるというふうに見ていいのではないかと考えます。そういう観点から考えますというと、最近、経済審議会におきまして経済社会発展計画の手直しをいたしまして新計画を持ったわけでございますが、その中で、いろいろな議論がございますけれども、たとえば雇用者所得の伸びというものを推定をいたしておるわけでございます。そういう伸びが国民経済の伸びの中で確保されるという場合には、やはり中小企業対策というものが非常に大きなウエートを持ってくる。これはもう否定できない事実だと思います。そういう意味におきましては、先生の御認識に対しまして、私どもの認識もそういう面から同じような認識が持てるというふうに言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/22
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023・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 いま局長答えられたのは従業員のパーセンテージですね。これは、従業員はさることながら、わが国のこうした産業あるいは事業等々の面で見ると、総事業所数というのは、御承知のように九九・三%ですよ。残り〇・七%よりないのですよ、大企業というのは。これはぼくが勝手に言っているのじゃなくて、企画庁が出した白書にちゃんと示されていますよ。政府みずからが出した資料ですよ、これは。いまあなたが申されたように、従業員の数は七七・一%、この資料を見ますると、しかも、最も大切に見なければならない点は、製造業としては出荷額は五〇%ですよ、この白書によれば。卸売り、小売り販売高についても五〇%ですよ。だからわが国経済、産業をささえている面は、つまり五〇%ですから半分だということでは済まされないと思う。わが国の産業、経済をささえているものは何か、今日の繁栄をもたらしたものは何かというと、佐藤榮作君によれば、わが自民党の政策だなんと言っていますけれども、そうじゃない。中小企業の人々がその繁栄をもたらした最たるものだと言っても私は過言でないと思う。これは政府の白書にそう書いてある。後段のことは書いてあるのじゃなくて、数字的なものはそう書いてあるので、これはろそも隠しもないことなんであって、あなたがたまたま従業員の数のことを言うたから、あえて計数的にいわゆる販売高についてあるいは事業所の数を言うただけのことなんですね。だから認識とすれば、私は、そんなにあなた方と相違がない、こう思う。
たまたま意見が一致していますから次に進みますけれども、そういう幾つかの問題を頭の中で整理をしてみて、なおかつ、先ほども言うたように、国際的な問題を見のがしてやっぱりこの問題をとらえるにあたっては欠ける面があると思う。今日まで政府は資本自由化、貿易の自由化、この政策は一貫して進めてきていますね。その結果、国際的に一体どういう現象が起きているかというと、つまり発展途上にある国々では、これは衆議院でもわが党から問題として取り上げた特恵関税の問題があるでしょう。発展途上国からはこういう問題が提起されている。それから今度は、一面、先進国のほうからは貿易、資本の自由化促進ということでどんどん逆にわが国は攻められている。片や特恵関税の早期実施をしなさい、これは韓国あたりでも言っているでしょう、このことはね。こういう国際的には大きな問題が存在をしてきているというのが現状なんですよ。だから、私は極端なことばを申し上げますけれども、もはや今日の中小企業というのは、わが国の内政では——先ほど来、いろいろあなた方と意見をやりとりしておったのですが、全くないとは言わぬけれども、五〇年代の後半と六〇年代を指向した政策であるために、七〇年代に向けては何もないわけですから、ある意味においては、わが国の中小企業は、最近ではやや幾つかの手だてがありまするけれども、まだまだ内圧をされている。だから、この点では、佐藤榮作君が内政を充実するといったってそう簡単にいっていない。逆に中小企業は佐藤内閣の政策によって圧迫を受けている。一方においては、いま申し上げた二つの面で外圧を受けている。板ばさみにされている。中小企業というのは、わが国の圧力と外国の圧力のはさみ打ちになっている。だからこそ中小企業というのは今日重大な危機にさしかかって、いやおうなしに転換点をどっかで求めなければならぬ、こういう状態になっているんじゃないですか。私は、こういう認識を持っております。中小企業を扱う場合に。この認識をきちっとお互いに統一をして、その上に立って意識を高めて、広めて、深めなければ中小企業の問題は解決しない、こう思うのですが、次官どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/23
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024・大野明
○政府委員(大野明君) 先ほど来、いろいろと中小企業に対してあらゆる角度からの御発言があったのでありまするが、ただいまの御発言は、要するに資本の自由化とか、あるいは貿易の自由化とか、そういうようなことについて、いわゆる今日内外から中小企業は圧力を受けているのじゃないかということでありまするけれども、私どもといたしましても、でき得る限りそういうことがないように努力を払っておるつもりではありまするが、いかんせん、なかなか複雑な形態のものを可及的に是正するということが至難であるために、非常に御不安な点もありまするし、また、事実そういうようなことで、昭和四十三年度あたりは非常に倒産が多かった。四十四年度は幸いまあまあというようなところでありまするが、本年、四十五年度においては、御承知のように、金融の引き締めというような現況から、将来どういうふうになるのか非常に心配しておりまするが、しかしながら、近年、技術革新その他においても、また、その勤労者の勤労意欲、あるいは今日においては一億総勤労者とも言える日本の現況から言って、そういう意味の努力において解決できる面もたくさんあるというふうに私は考えておる次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/24
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025・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 いま次官から答えられたが、認識の点はそう変わらぬと思うんですね。そこで、その上に立って変わることがないようにさらにというようなことなんですね。その議論をもう少し先に進めてみるとどうなるかというと、いま起きている問題は確かに倒産件数ではある一時期から見ますると少なくなってきている。その面ではよい方向には向かっていますけれども、やっぱり停滞分野というものがたくさんあるわけです。たくさんということは、もう中小企業においてはほとんどということですね。だから、いまの大野次官の意見をそのまますなおに認めて議論を発展させると、あなたのほうは政府を担当しているわけですから、政府の責任において勇気を持って育成、助長、助言などなどの諸般の施策を確立をして、この停滞分野というものの中には幾多の要素がありますし、また多種多様な形態も出てくるでありましょうから、そういうものをやっぱり成長分野に転換させるという政策を政府は責任を持ってすみやかに整備をしてまいらなければならないという答えになるんです、この議論を発展させれば。しかし、こういう問題は、冒頭に申し上げたように、これは商工委員会、通産省あるいは経済企画庁の分野になりますから、きょうはやめて、これ以上の議論の発展は私は後日に譲ることにいたします。したがって、せっかくここまで認識論をやってきたわけですから、労働省としてのこれについての今後の施策の踏まえ方について、私は一言だけ要望しておきたいと思う。
それは、労働省の分野は確かに三つの柱の一つでしかありませんから、もとより、その中心というのは労働力の確保、産業人の育成、いま出されている法律もその一つでありますけれども、労働者の福祉を増進をしていくという諸般の政策というものが当面の一つのやっぱり政策として整理をしてまいらなければならぬ課題だと、こう思うんですが、少なくとも、労働省といえども、七〇年代に労働政策上持たなければならない幾つかの政策というものは、いままでのような助長であるとか、助成であるとかというものだけでなくして、いままで私がある程度申し上げてきたような、その認識に立って労働問題というものをまつ正面からぶっつけたような、こういう正面から取り組んだ政策でなければならない、こう私は信じているんです。それがゆえに、これからの政策をつくり上げていく場合に、ぜひともそういう方向でとっていただきたい。これが一つ要望です。同時に、労働省のこれに対する決意というものをこの際聞かしていただきたいと思うんです。それから漸次本論に私は入っていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/25
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026・松永正男
○政府委員(松永正男君) ただいま御質問になりました七〇年代の政府施策の中におきまして、労働問題を正面から取り上げて施策に反映さしていくということに対しましては、私どもも微力ではございますが、その決意でおるわけでございます。私どもが労働行政を戦後始めましたときにおきましては、何といいましても、失業者の対策ということが最大の課題でございました。三十年代までのわれわれの政策というものが、重点といたしましては、職を得られない方々にどうやって職を与えるかということに最大の重点を置いてきたことになります。しかし、御指摘のように、労働力不足ということが深刻化してまいりまして、そしてまた、国際化時代ということで外国との関係が非常に問題になってくる。それも単に先進国との競争ということだけでなしに、いわゆる発展途上国に対していかなる援助をし、そしていかに対処していくかという両面を含めた国際化の問題があるわけでございまして、そういう環境の中で、今後、労働力問題を中心にいたしまして、労働行政というものが政府施策の中で占めるウェートがますます大きくなってくると思うのでございます。当委員会はじめ国会の先生方の御指導も得まして、私どもといたしましては、今後の新しい時代における労働政策に御指摘のような決意で積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/26
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027・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 局長から、労働省を代表して決意を述べられましたが、まあその程度にしておいて、具体的にこの法律に関係する点で二、三、この機会に尋ねておきますが、事業所の数であるとかあるいはそれに働く労働者の数、先ほど言ったように、販売高等々の比率は、わが国経済の中ではその果たす役割りというものがどんなものであるかということは、計数的にも明らかに示されていると思うんです。そこで、その果たす役割、占める比重はさることながら、中小企業は、今後の課題として、再三言うようだけれども、七〇年代の変化にこれからどう対応できるかどうかということが一番問題だと思うんです。その問題の解決、解明といいますか、そういうものいかんによってはわが国の経済に重大な影響を及ぼすものだということだけは、これはどなたでも一緒だと思う。この白書をずっと読んでみると、この白書には政策めいたものは何もないけれども、出てきているいろんな幾つかの中で教えられる面がありますよ。将来の指針といいますか、方向を定める上において非常に教えられるものがある、今度出された自書の中ではね。ですから、この点は、当然政府は政策を早急に整備していくということに結論づけられるのであるけれども、この際、中小企業の場合は、具体的に業種、業態、規模に応じて正しい正確な方向というものを積極的に、ただ通産省の責任だとか、労働省の責任だとかあるいは経済企画庁の分野だというようなことではなくして、先ほど来言っているように、中小企業の労働者というのは七七・一%を占めているわけですから、その労働を担当している労働省といえども、一緒になってより積極的にいままでのものをさらに前に進めるようにやってもらいたいし、そうならなければならない。あなたがいま決意でそういう方向のことは示したわけですから、あえて答えをここで重複して求めようとしないけれども、そういう考えを私持っている。そのためには、一つの例を申し上げますけれども、政府だけの私は責任を言うんじゃない、この際は。中小企業の諸君も、中小企業自身も自主的に七〇年代の急激な変化に対応できるような、自力でできるようなことに中小企業の諸君もやっぱり努力してもらわなきゃいかぬ。そうすると、どういうことになるかというとですよ。努力するためには幾つかのまた中小企業自体も問題が出てきますね。金融の問題であるとか、あるいは先ほど言ったように事業量の問題、つまり仕事量をやはり提供してやらなきやならぬという問題、そういう関係で出てくる、中小企業と政府の中でですね。労働の問題では労働省との関係が出てくる。出てきますね。だから、中小企業が自主的に努力をするということは何かということになれば、自助努力ということになると思いますね。これに対して一体政府が、先ほど言った今度一面のとらえ方に戻るわけですが、どういう補助を具体的に与えていくという考え方を持っているのかということを、これは労働面でけっこうですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/27
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028・松永正男
○政府委員(松永正男君) 先ほどの御答弁申し上げた際にも一部触れたわけでございますが、現在、労働省におきまして、中小企業関係につきまして、いま御指摘のようなみずからの努力によって質を改善し、自力をつけていくということに対しまして、いろいろの角度から助成を行なっております。まず第一は、中小企業につきまして、特に集団をとらえまして、この集団の中におきまして、相互協力によりまして労務管理の改善を行なっていく、そしてまた労使関係の安定をはかるというような事業に対しまして約二億円でございますが、計上いたしまして補助をいたしております。これについては、都道府県が同額を負担をいたしますので、中小企業の集団に対しまして国、都道府県から四億円の補助金が出ております。
それから、このただいま御提案を申し上げております共済制度につきまして、国庫の補助を九億五千万円計上をいたしておりまして、この中小企業の退職金共済の仕事をやっているわけでございます。
それから事業内訓練の助成につきましては、先ほど申し上げましたように、二億六千万円を計上いたしまして、みずから訓練をやるということについて国から運営費等の助成をいたしております。
それから中小企業退職金共済事業団におきまして、中小企業から掛け金を徴収をいたしておりますので、還元融資という形で約二十億円の融資をいたしております。
それから雇用促進事業団におきまして、これは大企業も対象になりますが、対象は主として中小企業になっております。実績におきまして主たる部分が中小企業でございますが、融資といたしまして、百七十億円の融資をいたしております。
それから、そのほか安全衛生関係におきまして、約二十億円の安全衛生施設に対する融資をいたしております。そのほかに雇用促進事業団あるいは都道府県、市町村等におきまして、たとえば勤労青少年のセンターであるとかあるいは勤労青少年ホームであるとか、あるいは働く婦人の家、こういつたような外側からする政府、地方公共団体が設置する福祉施設、これも毎年計上をいたしております。
以上が大体労働政策の面からいたしますところの中小企業に対する助成ないし援助の施策でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/28
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029・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 いま答えられた点は、ちょっと私が聞いたのとは多少方向が変わった答え方なんで、いまの答えは、中小企業の労働福祉対策というものをどうやっているのかということについて、いままでやってきたことと、これからやろうとすることを言われた。それはそれでいいんですが、ただ、その中で、還元融資の話がいま出ましたね。労働省とすれば、還元融資より道はないわけです。私の聞いたのは、中小企業の自助努力に対して政府はどういう援助をするかということを聞いたのであって、労働省としては、いまあなた答えられたことでいいのですが、ただ還元融資の問題になってきますると、これはちょっと大事なことですから、あとで還元融資について聞きますが、一般論として、たとえば金融の問題では、中小企業金融公庫で貸し出すことになっていますね。この問題だって、ずっと先ほど来の認識に立てば、当然貸し付け限度額を引き上げるとか、あるいは利率がものすごく高い、償還が短期ですよ、七年だ。貸し付け金もたしか一千五百万が限度でしょう。これでは中小企業を救う道なんということにはならないし、中小企業の問題を本質的にとらえて、金融面でも、つまり不利を補正するという原則には全然もとっているんですよ。これは、あなたのほうの分野でありませんから言いませんが、たまたま、あなたからいま還元融資という話が出たから、あとでこの問題は利率の問題であるとか、償還の問題で聞きますが、私の聞いたのは、そういうことも含めて政府全体として、労働省として、この自助努力というものが——その責任は中小企業者、中小企業自身にもある、政府だけじゃない。だから自主的にこれからやるだろう、そうすると幾つかの問題が出てくる。その場合に、さきのほうに戻っていって、育成強化、助長、助成、助言等のたてまえに立って、どういう具体的な援助をするのか、こう聞いた。だから、労働省の関係はそれでいいですから、労働省はこういうものを持っていると。これは先ほど言ったように、自助努力に対する援助をしていないということになりませんけれども、まだまだそれは予算は少ないですよ。ですから、私は、幸い労働省の大野次官がいるので激励する意味で言うのですが、もっともっとやっぱり大蔵省に対して、労働者というものは産業経済の柱であるという点を主張して予算づけをやるべきだと思う。そのことを含めて、私が真正面から取り組まなければならないということばを使ったのはそこにあるわけです。こういう点ひとつ留意しながら努力してもらいたいと思う。
そこで、具体的に、この法律は改正点三つよりありませんから、伺ってまいりますが、第一点の問題のその前提として、加入事業主の数が十七万人、従業員数約二百五十二万人、こういう実績をあげていますと、この法律の理由説明の中には書いてある。そこで、加入事業主の数が十七万人ですから、大体十七万事業個所と、こういう理解でいいのかどうか、もうちょっとここのところを、先ほど私は白書で調べてみたんですが、白書だと九九・三%になっておりますね、従業員については七七・一%になっておりますから、それから見ると、どうも、ここではたいへん実績をたたえているような意味の文言が書かれておりますから、そういうものになっているのかどうか。白書との比較でけっこうですから、加入事業主の比率はどうなっているか。それから二百五十二万という数は、この七七・一%に相当するというのは二百五十二万人というものではない、中小企業の従業員の数というのは。つまりこの加入の率ですね、普及率といいますか、そういうものをもうちょっと詳しく聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/29
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030・松永正男
○政府委員(松永正男君) ただいま御質問になりました数字は、中小企業退職金共済事業団と建設業、清酒製造業、これが入っておりますので、それを合わせた合計数字でございます。
全体の事業所との比率がどうかという御質問でございますが、中小企業白書等にも揚げております中小企業の数は四百六十一万でございます。私どものほうでやっております中小企業退職金共済法におきます対象事業所としての基準は三百人をこえないもの、それから金融、保険、不動産、卸・小売りというような業種においては五十人をこえない、こういうふうになっておりますので、それずばりの統計はございませんので、この総理府の事業所センサスをもとにいたしまして、この中退法の対象事業所がどれくらいあるかと推計をいたしますと、総事業所数は、先ほど申し上げた数字でございます。この中で、この法律の対象になるであろうという企業を一応推計いたしますと百五十万くらいに相なります。それから従業員数におきましては二千六百九十二万人、こういうふうに相なっておりますが、先ほどと同じような推計をいたしますと、この法律の対象になるであろうと考えられますものが約千二百万人——千百九十七万人という推計が出ます。それから現在、先ほど御指摘のこの退職金共済に加入をしておりますものとを比較をいたしてみますと、企業者数では七・四%、それから従業員数では一二・八%というような数字に相なります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/30
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031・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 いま答えられたように、推計でありますが、片や事業所数において七・四%、あるいは人員数にして一二・八%、こういうことになりますれば、創設されましてから十年ですか、十年の経過の中では、やや普及率は鈍化の傾向をたどっているのではないかと、この数字だけ見れば考えられるのです。もしそういう傾向があるとすれば、どこに一体問題があるのか、あわせて聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/31
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032・松永正男
○政府委員(松永正男君) ただいまこの対象となるべき総事業所数との比率を申し上げたわけでございますが、この制度のたてまえといたしましては、独自の退職金制度を持っておるところは、それをますます充実してやっていただく。そして自力では持てないところ、したがって、対象といたしましては、中小企業の中の特に小規模零細というようなところが退職金制度を持っておりませんので、そういう方々に加入して利用していただく、こういうことになるわけでございます。そこで、制度発足いたしました十年前と比べますというと、独自の退職金を持っておる事業所の割合がだんだんふえてまいってきております。たとえば四十一年で三十人から九十九人というような規模をとってみますというと、七五・五%のものが退職金制度を持っておるということでございますが、四十三年におきまして賃金労働時間制度総合調査というようなところであらわれておりますのは、それが八八・四%は退職金制度を持っておるというような数字になってきております。ただ、この数字は、制度の調査といたしましては、この中小企業退職金共済に加入しているものも退職金制度を持っておる中に入りますので、全然持っていないものというのは二・六%、この三十人規模から九十九人規模であるわけでございます。そこで私どもの対策の方向といたしましては、こういう持っていない層をできるだけこれに加入していただいて利用していただく、こういう観点から見ますというと、大体企業数で四割はカバーしておる。六割はまだこれから入れていかなければならない。それから従業員数では五割三分ぐらい、五三%ぐらいカバーしている。そうすると、あと四七%ぐらいの従業員の方々にこの制度を利用していただくということになりますというと、非常に私どもとしては好ましい結果になるというような数字に相なりますので、おっしゃいましたように、まだまだ全然退職金制度を持っていないという事業所や、あるいはその恩恵を受けていない従業員の方々、これに向かいまして今後拡大していくという努力をいたしたい。その数量的な感じといたしましては、さらにもう半分入れていくということが必要ではなかろうかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/32
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033・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 わかりました。
そこで、未加入のものが六〇%、それから従業員数にしても四七%、そうしますと、なおかつ、残りは二百五十万人くらい残っておると思うのです。そこでこういう人々を救うために、加入していただくために、どういう手段をこれから用いて加入促進するのかということ、これがやっぱり一つの問題だと思うのですよ。
その考え方と、それからもう一つは、独自でこの退職金制度というものを持っている事業所もあるわけですね。しかし、その場合に、ややもすると、私どもは多少存じ上げていますが、中小企業の退職金制度を持っている事業所といえども、きわめて少ない退職金制度である。それはこの法律から除外されていますから、したがって、この法律だってまだまだこれで満足すべきものじゃないね、百数十万ですからな。ですから一般公務員やあるいは大企業と比較すると、まだまだ格差があるわけです。その格差論議はやめますがね。つまりこの法律で適用されていないものは、適用除外されているものは独自で退職金制度を持っている事業所と、こういうことになれば、この法律より以下のところがあると思う。これに対する指導と調整をどうするか、この二点だけ、簡単でいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/33
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034・松永正男
○政府委員(松永正男君) まず最初の加入促進でございますが、これは私どもの行政ベースにおきましては、都道府県の労働部においてこの事務をやっておりまするので、行政組織としては労政関係の機関、末端は労政事務所でございますが、これを総動員をしまして、加入促進運動を毎年やっているのであります。
それから事業団がみずから事業をやっているわけでございますので、これがいろいろな方法を講じまして加入促進を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/34
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035・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 いろいろな方法といったって抽象的だな、具体的に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/35
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036・松永正男
○政府委員(松永正男君) 具体的に申し上げますというと、まあPRでございますので、ポスターとか、パンフレットとかいうものをつくりまして、それをたとえば商工会議所といったようなところ、あるいはいま申し上げた労政関係の機関あるいはまた銀行、金融機関等が一万数千軒、退職金の掛け金の徴収や、退職金の支払い、それを窓口として扱っております。それからまた中小企業向けの、たとえば中小企業金融公庫あるいは商工中金といったような、そういう金融機関、これも窓口を通じまして業務をやっていただくと同時に、PRに参画をしていただく。それから商工会議所等が中小企業中心でございますので、これもやっていただくというようなことでPRをやりまして、それからたとえば加入促進月間というような月を交通安全と同じようにきめまして、そのときは特にPRに力を入れるというようなことでやっておりますが、一般のたとえば金銭信託等でやっております年金、あるいは保険会社がやっております年金というようなものの宣伝力に比べますというとどうもまだ不足でございますので、このPR、宣伝の面に力を入れるということと、それからいまお願いをいたしております内容改善を具してさらにPRをするというようなことで進めてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/36
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037・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 せっかくその制度ができてだんだん補強整備していっておるわけですからね。ぜひその趣旨を生かして、いまたくさんの加入促進の手段を説明されましたが、より積極的にやってもらいたいと思うのだ。それと一つの方策ですが、これはあなた方のほうで研究してもらいたいと思うのですがね。基準監督署は各事業所、これは大小取りまぜて全部監督しています。この仕事は、基準監督について仕事をするのであるけれども、これは同じ労働省の衝ですからね。やはり監督官だって監督に行くたびに、これは事業のただ安全衛生のための監督じゃないと思うのだ。だからそういう意味で、こういう諸君にも、いまあなたのおっしゃるようなパンフレットとか——こういうものもありますよね。こういうもの等をやっぱり配付したり、あるいは説明をしたりして加入促進をやる手段だってあるのじゃないかとぼくは思うのですがね。これはまあ研究でけっこうですがね、やったらいいのじゃないか、こう思うのですがな。これは答えは要らない。
それから、時間もそろそろもう十二時過ぎていますから、私は、たばで三つ四つ聞きますがね。退職金について、一体、今日中小企業と大企業との間でどの程度の格差があるか。これは平均したものでけっこうです、個所ごとにずいぶんばらばらのものがありますからね。平均して、総括して、大企業、中小企業の平均にどのくらいの差があるのか、これが一つ。
それからこの資料の中には——これは事業団の資料ですがね。退職金の、何年つとめた場合に幾ら幾らという額が出ていますよね。しかし、これは前のものですから、これを今度は改正しようというのがこの法律ですからね。ここには率とか、掛け金を書いたりなんかしていますが、この法律がかりに成立をして施行された段階での退職金というのは——最終年でいいですよ。十年で幾ら、二十年で幾ら、三十年で幾らぐらいが支給されるのか、このことが二つ目。
それから三つ目は、先ほども話が出ましたが、還元融資の問題、これは、この法律で見ましても明らかなように、かつて二百円の掛け金が今度最低四百円、最高が四千円ですね、この法律は。もとより政府の助成金もありまするけれども、この改正では掛け金がかなり高額になってくる。制度的には、冒頭に言った福祉の増進ということになりますが、私の感覚でいくと、やはり福祉とは社会保障制度そのものに通じたものでなければならぬという考え方です。ただ、これは考え方に相違がありますから、あえてそこのところは言いませんが、どうもこの資料を見ても保険制度のにおいが非常に強いような内容になっているわけですよ。簡易保険とかあるいは生命保険みたいなものになっている、この資料を見れば。そこで、そういう制度をつくり上げていく本質、基本論はいまやめますけれども、そういう貴重な掛け金を従業員の方々が、あるいは企業者もかけてまいるわけであります。それは先ほど来、私が言うてきた中小企業を強めていくという、中小企業がみずからが生きていく道をつくり上げていくという一助にもなると思うから、事業資金等についてはいわゆる還元融資ですよ。還元融資についてやはりその運用は従来より以上にやってまいらなければ、この法律の改正をしていくというものに合致しないのじゃないか、こう思うんです。これが三つ目です。
それから四つ目は、今回の改正によって掛け金等の資金がどのくらいふえるのか。二百円から四百円になりますね。これは先ほどあなた申されたように、いまのところは二百五十二万という加入者がいるわけですから、それに逆算してかければ出てくるわけですよ。出ますけれども、いろいろ二人で議論をしておったように、なおかつ二百五十万くらいの未加入の人がいますから、これを積極的に加入促進をやればふえてくるわけです。おおよそどのくらいになるかということは、私どもではわかりません。皆さんのほうでは、ある程度どのくらい新加入者があるかということを試算をしながらやっているものだと思いますから、どの程度の増加金がここで生み出されてくるかということが第四点。
それから第五点は、つまり中小企業の育成強化という中で、還元融資は先ほど言ったように、いつもしてありますから、そのほかに、やはりこれはあくまでも中小企業の労働者の福祉を増進しなければならぬということは、これはもう第一眼目ですよ、この法律の柱は。だから、その眼目に照らし合わせて労働者の福祉施設はやはりどんどんつくってやらなければいかぬと思うのです。こういうことについて、一体、労働省当局はどう考えているかということなんです。これが五点です。これを答えていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/37
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038・松永正男
○政府委員(松永正男君) 第一点の御質問は、退職金につきまして大中小規模等によりまして、どんな格差があるかという御質問だったと思いますが、これは統計的に正確な、そのものずばりの統計は現在のところございませんので、私どものほうで推計をいたしますというと、これは賃金労働時間制度総合調査というものを毎年やっております。それと東京都におきまして、中小企業退職金事情調査というのがございます。その二つの資料で見てみますというと、大体の傾向といたしましては、勤続年数の短い場合においては比較的格差が少なくて、勤続年数が長くなるほど大企業のほうが高額の退職金を払っているというような傾向でございます。いわゆるモデル退職金というものの調査ができておりますが、これで見ますというと、たとえば高卒で会社都合により退職というようなもので見ますと、勤続十年で大企業で三十五万円、中小企業で三十二万円、ほぼ匹敵しているような額でございますが、勤続二十年になりますと、大企業では百四十万円、中小企業では百一万円といったように格差が広がってまいりまして、三十年では大企業で三百五十万円、中小企業では二百九万円といったような平均金額になっておりますので、勤続期間との関係において退職金の格差がだんだん開いているというのが実情でございます。
それから第二点といたしまして、この改正によりましてどれくらいの退職金が支給されるかということでございますが、今度の法律におきましては、掛け金の額を従来の二百円から二千円というのを、四百円から四千円というふうに改めました。そこで中間あたりの数字で見てみますというと、たとえば掛け金を毎月千円かけることといたしまして、二十五年勤続をいたしますというと八十二万四千七十円でございます。それから三十年勤続をいたしますというと、百十八万七千五百三十円という退職金の給付をすることになります。それから最高四千円で見てみますというと、二十五年勤続で三百十九万一千七十円、それから三十年勤続をいたしますと、四百五十九万八千五百三十円というような退職金の支給ができるという制度に相なるわけでございます。
それから第三点といたしまして、還元融資の問題でございます。先生おっしゃいましたような趣旨が非常に大事だと思うのでございますが、そこで先ほど申し上げましたような、従来、大体資金の一割程度は還元融資あるいはまた府県等で中小企業のために福祉施設をつくる、その起債の引き受けといったようなところに充てておるのでございます。ところが、非常にここにつらい事情がございまして、この退職金の制度は、先ほど御指摘になりましたように、保険方式でやっておりまして、お金を積み立てて、その積み立てたお金を予定利回り六分二厘五毛で回しまして、そうしてその元利合計に国庫の補助金を足して支給をする、こういうやり方でございます。そこでその運用ということが非常に重要になってまいりまして、六分二厘五毛が予定でございますが、できるだけこれを高利に回しまして、そうしてその退職金給付が支障なくいけるようにということを考えておるわけでございますが、そういう観点から考えますと、最低限六分二厘五毛を確保するということが至上命令になるわけでございます。そうしてそれとのバランスがとれるということが一つの条件で、還元融資の利率というものが、この中退事業団の場合にはやや高うございまして、七分九厘というような利率になっております。そういう面からいきますというと、ほかのほうの利回りが上がりまして、そしてその六分二厘五毛を確保できるという相関関係におきまして、低利融資ということに持っていきたい。で、実は中小企業の加入者のほうからいろいろ注文がございまして、従来、八分一厘ということでございましたが、それではあまり高過ぎるということで七分九厘に引き下げたのでございますが、そういう意味におきまして、六分二厘五毛の確保ということが退職金給付としては一つの命令になっておるということを踏まえまして、そうして余裕金等の状況を見て、できるだけこちらにも回していくということで、失業保険等の短期保険におきまして還元融資を低利でできるというのに比べますというと、私どものは非常につらい面があるわけでございます。しかし、先ほどおっしゃいましたように、原資もだんだんとたまってまいります。先ほどの第四の御質問に関連するわけでございますが、加入の促進をいたしまして、四十五年度では、労働者数において三十万人程度の加入を増加させたいということでいま計画を立ててやっております。その場合に、加入をいたします方がどのランクの掛け金をお選びになるかということでお金の入りぐあいが違ってくるわけでございます。それから支払いのほうも、もちろん高いのにお入りになれば、あとで払うお金がふえてくるということになりますけれども、そこいらを従来の実績等を勘案し、それから制度改善になりましたので魅力もふえてくるというようなことを加味しまして、三十万人は獲得したい。その計算でまいりますというと、今年度、四十五年度末におきましては七百四十八億円くらいの資金ができるであろうというふうに見込んでおります。それから四十六年度になりますというと八百八十五億円程度の見込みになる。四十七年度になりますと一千億円程度になるのじゃないか。まあ、その辺までは見当をつけまして、いまこれを努力目標にいたしまして加入促進をやってまいりたい。そして、このような資金がたまってまいりました場合に、いま申し上げましたような条件でありますが、それを踏まえて、還元融資等についても増ワクという方向で考えてまいりたいというふうに思っております。
それから、次に福祉施設でございますが、これは御指摘のごとく、私どもと事業団の間におきまして、資金が相当できてまいりましたので、福祉施設をやるべきではないかという議論を昨年、一昨年等においてもやりました。ただ、問題は、予定利回りの六・二五というものをどう確保するか。労働者のための福祉施設であれば、安い値段で利用してもらおうということになるわけでございますので、それと、いまの予定利回りとの関係をもう少し検討しようじゃないかということで、問題意識としては持っておるのでございますが、まだそういう面を検討しておるというのが現段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/38
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039・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 他の委員の質問もありますから、これで終わりますが、還元融資をする場合には非常に喜ばれているわけですよ、中小企業の諸君から。ところが、あなたの答えでも申されたように、非常にその運用がむずかしいと、こう言っているのですが、運用がむずかしいと言うのは大蔵省なんですよ。そうでしょう。だから、この制度で、しかもこれは保険制度ですよ、言ってみれば。退職金制度共済なんという、「共済」はつきませんよ。共済制度じゃなくて保険制度です。制度上のことは言いませんが、しかし、みんな中小企業の人々は、さなきだに大企業との対比、比較の中で、先ほど来、いろいろな議論をしてきたような不利の補正はやらなければならぬというときに、日々の収入も少ない、賃金、手当についても少ない。そういう中から、今度かりに二百円が四百円に、二千円から四千円になったというと、ちょうど倍になったと思うのですが、負担能力というものにかなりぼくは限度があると思うのですよ。だから、あなたのいまの推計で、三十万人くらい新規加入をして、あるいは四十七年については大体一千万くらいの増加が見込まれるであろうというのは、あくまでも推計なんですから、そうなったならばけっこうだと思うんですよ。けっこうだと思うが、たいへんだと思うんだ。そういう苦労に苦労をされて、家計を詰めながら、人並みの生活をさらにさいてこの退職金制度の中に何とか、やはり将来のことだって考えますから、加入していく。そういう貴重な大衆から集められた資金だと思う。だから、運用面にあたって、本来は、やはりそれは労働省が主管してけっこうですが、そういう関係者も含めて運用委員会などというようなものをつくるのが本来の筋道ですよ、純然たる保険でもないですから。それを制度が保険制度のようなことになっているものですから結局——大蔵省の資金運用部資金の中に入るのでしょう。入るものですから、いわゆる還元融資のワクがどうだ、公共事業団体に対する融資のワクがどうだ、ひいては、せっかくの貴重なみなで集めて出した金も、働く労働者の労働福祉の施設についてもワクがかくかくしかじかだと、こうなってくるので、ここのところはぜひひとつ、先ほど来言っているように、労働省は、やはり労働というのは一つの産業経済、企業の柱だということに力点を置いて、こういうやはり還元融資のワクの拡大、あるいは中小企業の労働者の福祉の施設というものを充実するようにやらなければ、この制度だって中小企業の労働者に魅力あるものとするということなんですから、施設もよくするということはやはり魅力あるものにするということなんで、そこに定着させたいということは雇用の面からも出てくると思うんです、労働の政策上からみればね。そういうものが多方面から錯綜して、それが集約されてこういうものがだんだん補強されてきているのですから、ぜひそこのところは大蔵省の諸君に、ただ単なる、簡易保険の金であるとか何かの生命保険の金ではない、本来、これは中小企業の育成、中小企業の労働者の福祉に使うべき金だ、こういうふうにやっていかなければならぬと思うんですよ。しかし、その金が運用されたからといって、ただではない。やはりそれぞれのものに融資したって、労働者の福祉の施設をつくったにしても、やはり利子をつけて貸して返してもらうわけですから、この制度は。だから、そういうやはり運用の点を、もっと本来の法律の趣旨に合致するような運用をしてもらうように私は要望しておきたいと思います。その答えを聞いて私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/39
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040・松永正男
○政府委員(松永正男君) ただいまのおっしゃられました点は一々ごもっともでございますので、運用におきまして、その意を体してできるだけそういう線でいけるような努力をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/40
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041・渋谷邦彦
○渋谷邦彦君 簡単に二、三お尋ねいたしたいと思います。
中小企業の問題につきましては、わが国の経済構造等に特殊ないろいろの面がありまして、常に議論の対象になる問題であります。したがって、真剣に中小企業の今後の近代化育成というものを強力に推進してまいらなければならないのですが、そうした一環として、ただいまの審議されている問題もそういう内容に含まれてくるのじゃないかと、こう思うわけでありまして、もっともっと前向きに取り組んでいく必要があるだろう。そこで非常にふしぎに思いますことは、年間、中小企業の納める税金というものは、私の記憶に間違いがなければ七千億をこすというふうに思われます。ところが、中小企業の近代化、育成資金に要する費用というものは三百億前後、これではいつまでたっても中小企業を育成しようといってもかけ声だけになる。私がなぜそのことを申し上げたいかといいますと、やはりできるだけ掛け金の負担というものを軽くしてあげるために、国庫の補助というものをふやしたらいかがなものであろう。中小企業の方々は営々として働き、そうしてその中から血のにじむような税金を納められておるわけでありますので、多少でもそういう方面にもっとあたたかい手を差し伸べるべきではないでしょうか。まずこの点から労働省としての御見解を伺っておきたいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/41
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042・松永正男
○政府委員(松永正男君) 先ほど吉田委員の御質問にもお答え申し上げたわけでございますが、基本的な認識におきましては、日本の労働者の生活というものがより向上するということがわれわれの労働政策の一番の基本になっておると思うのでありますが、その労働者の生活向上ということが即国民の生活向上と一体不離であるという観点からいたしまして、日本の政治の目的とも直結するというふうに思います。なお、先ほど来、お話が出ましたように、労働者数におきまして七七・一%というものが中小企業に働いておられる方々であるということは、すなわち中小企業に働いておられる労働者の方々の生活が向上するということが国民の生活の向上になるわけでございますので、ただいま税金等の御指摘がございましたし、それから中小企業対策にどういうくらいの力を入れておるかというお示しがあったのでありますが、私どもといたしましては、産業官庁とも連絡をいたしまして、中小企業の体質の強化という面と、それから大企業との間の格差があるものをできるだけ埋めていくという両方の面の施策を今後充実していかなければならないというふうに考えております。先ほども御説明を申し上げましたように、労働面からいたしましては、いろいろな角度から中小企業の労務管理の改善の対策、あるいはいま御審議を願っております退職金共済の制度あるいは事業内訓練の助成、あるいは労働省関係の機関による融資といったようなものをやっておるわけでございますが、これで十分だというものではございませんので、先ほども政務次官から御答弁申し上げましたように、これらの施策をますます充実するという方向で努力していきたいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/42
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043・渋谷邦彦
○渋谷邦彦君 私は、特に国庫補助ということに限定いたしまして、その面で強力にやっていただきたい、先ほどの説明は十分理解しております。
次に、中小企業退職金共済制度、この加入事業所の定着の効率はどういうふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/43
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044・松永正男
○政府委員(松永正男君) 中小企業退職金共済事業団におきます実績を見ますというと、大体年間事業所数において一万くらいの事業所が加入をしてきております。それからその累計におきまして、四十四年末までに約十三万六千の企業の方が加入しておるわけでありますけれども、そのうち二万三千の企業の方が脱退をしておるという状況でございまして、現在、在籍をいたしておりますのは十一万三千という数でございます。それに建設、酒造というようなものを入れますと、先ほど吉田先生の御指摘になりましたような数字になるわけでございます。結局、大体いままでの実績は、年間一万入って約二千脱退というような実績でございます。それから従業員の状況につきましては、毎年二十四、五万から五、六万平均で入ってきております。結局二百五十八万人という方々がこの制度に入ったわけでありますけれども、そのうち、十年間に約百四万人脱退をしておる。そうして現在百五十四万人というのが実績でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/44
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045・渋谷邦彦
○渋谷邦彦君 いまの御説明を伺っておりますと、せっかく加入をしてもおやめになる方が非常に多いという印象を受けるわけでございますが、その主たる理由は何でございましょうか。いろいろな要因があるだろうと思いますけれども、こまかくおっしゃる必要はございませんが、主たる要因はどういうところにあってやめていかれるのか。また同時に、そのやめた方が再加入をなさっているかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/45
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046・松永正男
○政府委員(松永正男君) 企業として脱退をいたしましたものと、それから労働者のほうで脱退をいたしましたものとちょっと性質が違うわけでございます。企業として脱退をいたしましたのは、結局この制度に入ったけれども抜けたということで、私どもとしては、これを入った以上は利用していただくという方向でこれはやらなければならぬ。その中にいろいろな原因が、たとえば企業がなくなったというような点もありますが、企業はやっておってこの制度で脱退したという点については、私どもとしては、十分これは対策を講じ、あるいは反省すべきは反省しなければならぬ面がございます。それから脱退と申しましたのは、退職金をもらってやめた人も入っておるわけです。したがいまして、従業員の方はこの目的が要するに退職金支給でございますので、脱退者が多いということは必ずしもそれは悪いことではないというふうに思いますが、ただ、制度始まって以来十年にしかなりませんので、そうしますと、短期に加入をして短期にやめた人が多いわけでございます。その辺につきましても、やはりこの制度が、たとえば先ほど読み上げました三十年になると何百万という数字がございますが、この制度が動いていきまして、二十年、三十年というふうなところで、そうしてその短期の脱退者が多いということになりますと、やはりこの制度そのものについて問題があるのではないかという感じがいたします。そういう意味におきまして、この制度が非常に長期の制度なものですから、制度が発足いたしまして最高の長い人がまだ十年でございます。そういう意味では短期脱退者が多かったということはいろんな角度から検討してみなければならぬと思います。それから退職金をもらってやめられた方は、一応やめたときにもらえたということで目的は達成したということになったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/46
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047・渋谷邦彦
○渋谷邦彦君 脱退の理由が何か明確を欠くようなお答えであったような気がいたします。やはりいまおっしゃられた中に、総括的には制度上に欠陥があるんではなかろうか、その点については十分反省の余地を残しておるというふうに受けとったわけでございます。そうしますと、この制度そのものがそういう状態であるならば、近い将来において根本的な改正を試みる用意があるのかどうか、これはむしろ労働大臣に伺ったほうがよろしいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/47
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048・野原正勝
○国務大臣(野原正勝君) 御指摘のとおり、どうも定着率がはなはだ低いということ、これをもっと魅力あるものにするには、やはり国の負担等をもってやるべきだと思うのでありますが、そういう面でいろいろ御論議はあると思うのでありますが、今回の改正によりまして二百円を四百円、倍にしたとか、いろんな面で一歩前進という形を見ておるわけでありますが、将来はこの程度ではどうも満足できないんじゃないか、ほんとうに中小企業の退職金共済制度をつくるならば、もっと魅力あるものにして、進んで大ぜいの中小企業の方々がこの制度の中に入ってもらって、従業員の方々も安心して職務に従事できるという態勢には、まだ一歩どうも十分ではないような感じがいたしております。この改正の段階でそういうことを申し上げるのはどうかと思うのでありますが、どうもそこにまだまだ不十分だという感じがするのでありますが、しかし、これは過去のいろんな経緯もあり、審議会の御答申等も得ておったわけでございますので、今回はこれを御承認いただきまして、できるだけ早くもっと前進する方向を強力にひとつ推進すべきだと思います。おそらくこのままでいいとはだれも考えていないと思うのでありますが、一日も早くよりよき制度に改正を含めて一そう検討いたしたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/48
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049・渋谷邦彦
○渋谷邦彦君 先ほど局長の御答弁の中に、いわゆる未加入者の加入促進をはかるためのPR活動を将来ともに怠りなくやっていくと、それで窓口が商工会議所だとか、中小企業金融公庫だとか、そういうような組織を通じても絶えず行なっていくというお話がございました。しかし、もう過去十年間という一つの年月が経過しております。そうした時点に立ちまして推測できることは、やはりこのせっかくの努力をしていらっしゃるにかかわらず、それがなかなか報われない、末端機構まで浸透が非常ににぶいんじゃないかという感じを非常に強く受けるわけですね。どだいお役所のPR活動というのは非常にへたであるというのが定説でございます。ですから、その点をやはり根本的に、せっかくいい方法であると標榜しながら、実は知らない人がまだ大ぜいいるということになったのでは、法の精神から、また制度上のたてまえからいきましても、もったいない話だと、こう思うのでありますけれども、実際に私自身いままでの質疑応答を通じまして感じますことは、特に考えていただきたいこの零細企業ですね。この零細企業の方々は、むしろ全然そういう制度自体あることすら知らないという人がほとんどではないかということを心配するわけでございますけれども、特に零細企業というふうにワクを限って考えてみた場合に、どういう問題があるかということをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/49
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050・松永正男
○政府委員(松永正男君) おっしゃいましたように、確かにPRがへたであるということは、私どもも自覚をいたしております。ただし、政府直接でございませんで、せっかく事業団を設立しておるわけでございますので、ここで大いにたくましい商魂を発揮してもらいたいということで、実はしりをたたいておるわけでございます。そして、特に零細企業にいまお触れになりましたけれども、この制度といたしましては、先ほど申し上げましたように、三百人未満というようなことなんですが、実際に御利用願っておるのはもっとずっと零細のところが多うございます。現在の企業規模別の分布を見ますと、四人以下の企業、ほんとうに零細企業でございますが、この方々が三一%でございます、この構成比が。ですから、零細企業の方が非常によく利用していただいておる。それから十人までの方が二七%。結局、総体で見まと、二十人未満で八割を占めておる。こういうようなことでございますので、零細規模の企業の従業員の方々から見ますというと、非常にこれは魅力あるということは言えるのではないか。ただ、大規模になりますと、やはり力もつきますし、それから自分の退職金を持っているというようなこともございまして、私どもとしては、この分布を見ますというと、やはり一つの機能を果たしておるという面がある。ただ、御指摘のように、まだまだ足りない面がありますので、これはひとつPRに力を入れまして、ただ、問題は、相当先の話になるわけでございます。加入して掛け金を営々と積んでいかないというと、十年先幾ら、二十年先幾ら、こうなるものですから、いまの経営に携わられている夢業主の方々が、どうしたら耳を傾けてくださるか、ここが一番苦心の存するところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/50
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051・渋谷邦彦
○渋谷邦彦君 事業団のこのパンフレットの中身を拝見いたしますと、解約条件が述べられておるのですね。その一つに、掛け金をかけることが著しく困難であると都道府県知事が認定したときと、こうある。中には、やはりいまのお話のとおり、自分の経営に手一ぱいで追われるような状態で、掛け金どころじゃないというような方々もございましょう。また、最近倒産が決して少なくなっているという状況ではございません。表向きは仕事をやっている、しかし中身はもう倒産寸前であると、お金は従来どおりきちんとかけていたと、ところがもう突如として倒産しちゃったというような、いろいろなそういう条件が考えられると思うのですね。そういうことを想定してみた場合に、掛け金の上で特に加入の割合が、零細企業の方々が非常に高いパーセンテージがございますので、二百円から四百円、二千円から四千円、これは決していまの物価という面から見た場合に高い掛け金ではないかもしれませんけれども、実際には、しかし、その立場立場に立って企業を経営される方の負担というものは、やはりわれわれが想像するようなものではないのじゃないかというふうに感ずるわけでございますけれども、その辺の御判断はいかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/51
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052・松永正男
○政府委員(松永正男君) ただいま申し上げましたように、零細規模の方に非常に御利用いただいている。したがって、その企業の力も比較的弱い方が多いということでございますので、私どもとしても、掛け金の引き上げということについては、企業の負担能力ということを非常に考えたわけでございます。そこで、全体的な傾向といたしましては、賃金の値上がりの状況あるいは退職金の状況を見ますと、十年前に二百円であったものを最低四百円というのは決して無理でないと思うのでございますが、いま言われましたような事情がありますので、経過規定を設けまして、どうしても無理だという方は四百円に上げないでもやむを得ない。ただし、その場合には労働大臣が認定をいたしまして、おたくはやむを得ないという場合には、なお二百円でもできる道を開いております。私どもの希望としては、四百円に全部上げたいのでございますが、対象が零細企業でございますので、そういう道を開いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/52
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053・渋谷邦彦
○渋谷邦彦君 最後に、退職金の請求支払いということが起こった場合、これは老婆心から聞くわけでございますが、将来ないことを願って、過去において不正というものは行なわれなかった。たとえばある人が退職をしたと、しかし、その人は退職金制度のあることを知らずに、どこか遠くのほうへ行ってしまったと、掛け金を事業主がかけるわけでありますから、すなわち事業主が着服したというような、そういうような過去における不正問題というものがなかったかどうか、また、将来においても絶対に起こらないという保証があるかどうか、この点はいかがでしょう。それだけお尋ねして私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/53
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054・松永正男
○政府委員(松永正男君) 幸いにいたしまして、過去においてはそういう例はございませんでした。ただ、その窓口、銀行で扱っておりますので、この点につきましては、やはり取り扱い者のふだんの訓練といいますか、周知徹底ということが必要だと思いますが、厳正な、正確な取り扱いのできるように、これはまあ日ごろ心がけておるところでございます。将来とも、そういうことのないように努力をいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/54
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055・佐野芳雄
○委員長(佐野芳雄君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/55
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056・佐野芳雄
○委員長(佐野芳雄君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見がないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/56
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057・佐野芳雄
○委員長(佐野芳雄君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより採決に入ります。
中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案を問題に供します。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/57
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058・佐野芳雄
○委員長(佐野芳雄君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/58
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059・佐野芳雄
○委員長(佐野芳雄君) 御異議ないと認めます。
暫時休憩いたします。
午後零時五十二分休憩
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午後二時二十四分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/59
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060・佐野芳雄
○委員長(佐野芳雄君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
労働問題に関する調査を議題といたします。
御質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/60
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061・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 前回に続いて白ろう病についての質問をいたしたいと思います。
林野庁に伺いますが、林業労働力の確保という面でたいへんな苦労をされていると思うのです。そこで、いままで十分な要員配置がされているのかどうか、こういう点。それから、その要員配置とあわせて、白ろう病患者が治療するにあたってどういう状態になっているのか。端的に言えば、要員配置の問題とからめて治療に支障を来たしているのじゃないかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/61
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062・松本守雄
○政府委員(松本守雄君) 第一点は、十分な要員配置ができておるかどうかという点でございますが、一般的に見まして十分な配置をとっておるということでございます。
第二点の白ろう病の患者が発生をすると、その交代要員についてどうなっておるかということでございますが、先般来、チェーンソーその他振動機械を使用する時間規制をいたしました。そこで、当然交代要員がいままでよりも要るわけであります。その交代要員の確保につきましては、目下研修を進めておりまして、事業執行上支障のないように補充を考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/62
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063・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 われわれは、この問題について委員会として現地調査しました。いま十分職員については配置をしている、それからもう一つは、時間規制をしたあとの問題として、できるだけ患者の治療等についても支障のないように努力しておる、こういうお話ですな。ところが、実際、人の問題を処理する場合は、各それぞれの営林署の署長が中心になってやるわけでしょう。昨年の暮れに時間規制というものができ上がったのですが、私どもの伺っているところでは、各営林署では人集めのためにいろいろやっていますけれども、今日のところではさっぱり人が集まってこない。この現象は自衛隊と林業労働者、新聞紙上等によれば、つまり風俗営業をやっているようなところにもそういう現象があるということが書かれているのですが、それはまあ余談として、林業労働者はさっぱり集まってこない。こういうふうにわれわれは伺っていますがね、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/63
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064・松本守雄
○政府委員(松本守雄君) 十二月に労働組合と協議が整いまして、時間規制と交代制がきまりまして、現在各営林局、営林署段階で実地の細部の協議を進めておると同時に、当局としましては、その補充要員の研修も進め、その研修をする場合にも前職の実収まで保障をしながら研修をするということもやっておりますので、逐次その体制は整うかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/64
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065・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 そうしますと、現状の計画、作業に影響のないようにはしていると、こういうことでしょう、結論づけると。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/65
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066・松本守雄
○政府委員(松本守雄君) まあ、一つの転換期にありますので、すぐさまというか、若干の移行する余裕期間は必要かと思いますが、おおむね年間を通じて事業を遂行するのには支障のないような計画で進めるように努力をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/66
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067・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 その努力はけっこうですがね。つまりある程度の猶予期間といいますか、これは過渡的経過期間ですよね、どの程度を見ているのですか、その期間を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/67
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068・松本守雄
○政府委員(松本守雄君) もうすでに協議の整ったところもございますが、いま労働組合と協議中の現地もございます。林野庁としましては、できるだけ早く労働組合の協力を得まして、その現地、現地が具体的な実行方法を切りかえることを期待をし、指導もそのようにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/68
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069・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 林野庁の見解はわかりましたが、基準局長、これはひとり林野庁だけの問題だからといって、あなた方は投げやりにしちゃいかぬと思います。ですから、この間も大阪のガスの爆発事故があったために、あなたはこの委員会に出席しておりませんで、安全衛生部長が来ましたが、さっぱり明快な答弁になっていないし、幸いきょうはあなたが出てきていますから、関連して聞きますが、林業労働力確保という面はもとより、民間林業についても監督指導権は林野庁の長官が持っておりますけれども、やはり職業病、そしてまた安全に——労働力を確保するという面は、これは労働省にもあると思う、そういう面では。民間のみならず林野庁も含めてね。ですから、そういう点で、この間以来、たとえば病気そのものについてもあるいは振動の把握の問題、そういういろいろの問題について、それぞれの学会あるいは研究機関等でも統一された見解というものはまだ出ていないけれども、そういうものについてもできるだけ早く統一させるということが必要だが、それはそれとして、労働省として白ろう病というものの予防、それから林業労働者の安全と労働力を確保するというような意味で、この際は国立の研究機関を設けて、それはどこが中心になろうともいいのですが、大体労働省が中心になってやらなければならぬと思う、職業病ですからね。そういう機関に労働省、あるいは補償の関係は法律的には人事院がやっていますから人事院、それから林野庁、それと病気は厚生省の関係ですよ、職業病といえども病気なんですから。だから厚生省も入って、そういうところで研究して、そして万全な施策というものを立ててまいらなければならぬのじゃないかということを話しておったのですけれども、人事院の職員局長は賛成していますよ、林野でも反対していない。一人あなたがいないから、あなたのほうの部長は何が何だかわからない答えを二、三回しまして、それ以上続けるわけにはいきませんからきょうに持ち越したわけですが、基準局長として、どう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/69
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070・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) ただいま先生の御指摘もありましたように、いわゆる白ろう病につきましては、まだいろいろ見解が統一されない、科学的に統一のできないものがずいぶんございますが、確かに先生御指摘のように、職場における職業病がないように安全が確保されるということが、今後は労働力不足といわれている時代がだんだん深刻になってくることでもございまして、企業、産業にとりまして非常に重大な問題だと、かように考えておるわけでございます。私どもは、そういう見地からしましても、ぜひ、林業にまつわるこの白ろう病というものの医学的な処理、あるいは振動に対する的確な把握というものの研究が早期にできまして、現実に白ろう病の予防に効果のあるようなチェーンソーの使用あるいはチェーンソー自体の改良ということがどうしても必要だと思います。そのためには、いま御指摘がありましたように、林野庁、人事院、厚生省、それと私ども労働省というものがそれぞれの分野におきまして、総合的な力を発揮できるような研究体制をつくるということもぜひ必要だと思いますし、相互の協力がどうしても必要になってくると思います。私どもといたしましては、労働衛生研究所がございますが、この労働衛生研究所を来年以降総合的な労働衛生の研究機関に発展さしたい、こういうように思っておりますが、そういう中で各省の御協力を得てぜひ早く体制ができるようにいたしまして、林業における白ろう病が早く解決するようなことにぜひ全力をあげていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/70
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071・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 やはり局長というのはなかなかいい答弁をしますよ。その答弁私よしとしますが、せっかくあなたそこまで答えられたんですから、問題の振動の許容量の問題なんです。御承知のように、このことについても、一九五七年ごろからこの問題が国際的にもあるいは国内的にもそれぞれの学者なり、お医者さんが所見を出しているんですよ。この間、私ソビエトのものを参考に皆さんのほうにお上げをいたしましたが、このソビエトなどの基準というものは、必ずしもかなり高い水準のものとは言えないですね。その前に、日本だって三浦豊彦先生が出している所見もありますよ。それから北大の渡辺助教授の所見もある。その他チェコの基準もありますね。ですから、この中でいろいろわが国として研究した結果、どこの部分をとって日本的なつまり振動障害に対する許容量にするかということがまだきまらないというだけだと思うんですからね。いま答えられたことが真剣に取り上げられるとするならば、こういう問題も提起して、ひとりこれは労働省だけじゃないんですから、関係の省庁と一緒にそういう研究機関に持ち込んで、やっぱり統一したものを出してもら、えるようにしたほうがいいんじゃないか、それが筋道じゃないか、こう思うんですが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/71
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072・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) 実は、労働省におきましても、白ろう病に関する振動の研究につきましては、研究委員会を設けまして、労働科学研究所の三浦先生を座長のような格でお願いをいたしております。ただいま先生が御指摘になりましたように、三浦先生は三浦先生としての振動に対する恕限度の考察資料を、御自身の御見解を持っていらっしゃいます。その他の先生方もそれぞれ御見解がおありであり、あるいはチェコスロバキア、スウェーデンとか、ソ連というところでもそれぞれありますが、いま先生がお話のように、まさに日本的な問題がだいぶあるように思います。そういう点からいたしまして、最近産業医学会が終わりましたが、産業医学会でもこの問題が提起されまして、ことし八月に世界標準機構の会議がジュネーブで行なわれますが、これらの結果を見まして、振動に対する恕限の問題を学者の方々としてはさらに討論をしていこう、できるだけ研究の成果を統一したものにして、いわゆる現実の行政の場で実行できるようなものをつくり上げたいというせっかくの御努力をいただいておるわけでありますが、そういう御努力の成果をぜひ私どもは行政の上に反映するようにいたしたい、こういうことで心がけておりますので、いましばらくひとつ御猶予をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/72
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073・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 厚生省の医務局長さん、いま基準局長からかような答弁がありましたね。そこで、厚生省のほうの医学者というのはうんと多いのですから、したがって、職業病の分野は労働省の作業になるとか、労働医学のほうなんだということじゃなしに、ここまできたら、そのことだけではないんですね。補償の問題とか、あるいは基準認定とかなんとか、いろんなことが含まれてきますよ、これから。だから、そういう点を展望したり、想定してみたりして、厚生省としてもそういう統一された、いわゆるどこが中心になるか別として、国立研究所で全部そこに入れて研究していくということについて、どういうふうにお考えですか、これは協力しなければならぬと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/73
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074・松尾正雄
○政府委員(松尾正雄君) 厚生省でも、すでに前にも申し上げましたように、厚生省独自で経費を出しまして、この問題について研究班を組織した事例がございます。そういうことの歴史を見ましても、いま御指摘のように、こういう問題について各関係機関をあげまして一つの研究体制をつくるということであれば、当然それは医学的な面その他の面につきましても、最大限に厚生省も御一緒になってやるべきだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/74
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075・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 人事院の職員局長、この間あなたも賛成したのですが、こう全部聞いてみると反対がない。ところがいまの段階は、それぞれの分野で研究機関を持ったり、人事院の場合は補償の面でとらえて研究している、あるいは諮問している。そういうことですから、それはそれとして、ここまできたらやっぱりそういう問題を含めて一つのものとして洗いざらい出し合ってやることがこの病気の撲滅に役立つのじゃないかと思うので、この間から皆さんのほうはそう私と考え方違っていませんから、答える必要ありませんけれども、関係の機関は機関として、いまやっているものはそれなりに進めてけっこうですが、将来に向けてぜひひとつ、一つのものをつくることについてそれぞれ——労働省が中心になると思いますが、協力し合って努力をしてやらないといけないと思うのです。いまのようなものですと、厚生省は厚生省の所見が出る、人事院は補償の関係でのみ出てくる、林野は林野の特殊性がある、ですから自主防衛の立場でやっている、労働省は安全衛生あるいは基準法の関係、こういうことになるとどうしても食い違って歯車が合わない。ためにかなりわが国の場合はおくれていますね。ですから、それをやはり回復し進めるために、いま直ちにというわけにまいりませんが、ここ両三年くらいの間にめどを置いて、そういう機関をつくるということについて積極的に協力を要請しておきたいと思うのです、関係のほうに。そこでみなうんとうなずいていますから返事しているわけですが、そこまでこうなってくると、次に単行制度というものが必要になる、いわゆる単行法ですね。それは規則にするのかあるいは法律にするのか、これは別問題ですが、再三言うように、ソビエトではこの振動の許容量の問題、国際的には依然としてまだその基準等については結論は出ていないんだけれども、法律、規則の改正をやったわけです、四年前に。それをグラフで見ると、いま国際的に議論されたり、あるいはわが国の国内で論議しているものより必ずしも上回っているとは見られませんよ。しかし、そういうものを取り上げて、もうこの病気の先進国とでもいいましょうか、そこでは単独に、一般的な労働安全衛生の法律から切り離してやっていますね。だから、ここまで皆さんが研究機関を一つのものにして、そこで研究をして統一をした見解を求めるためにやるんだということになったら、私は、来国会なりあるいは次の国会くらいに、めどでいいですよ、めどを置いて、やはりそういうものを制度的につくり上げて対処していくということにならなければならないのではないかと思うのですが、この間も、あなたのところの部長は、まだ依然として許容量がきまりませんからなかなかと、のらりくらりでさっぱりつかみどころのない答弁をしていたんです。きょうせっかく局長来ておりますから、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/75
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076・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) 先般、吉田先生からもソ連の資料をちょうだいいたしまして、私のほうも別途ほかの資料もあわせまして、ソ連あたりではどういうことをやっているか、あるいはカナダ、東独でどんなことをやっているかというような研究も、文書的でございますが、それなりにいま進めているところでございます。実はそういうような資料の集積と、学者先生の御意見を伺いまして、ことしの二月二十八日に「チェーンソー使用に伴う振動障害の予防について」という通知を全国の基準局長に出しますとともに、林業労働災害防止協会という民間の自主的な特別法に基づきます法人がございますが、これにも通知をして、これからチェーンソーの使用に伴う白ろう病の防止についての一応の考え方及び指導方針を示したわけです。これの中身は、先生いま御指摘のソ連のものの中の振動の具体的科学的なことを除きましたものが大体盛られておると思います。それに多少日本的な内容を入れておりますが、これでしばらく行政指導、行政啓蒙というようなことをいたしまして、この中のものを逐次規則化する方向でもっていきたい、かように考えております。
そのめどはいつまでかというと、いま直ちに申し上げられるほど行政指導は進んでおりませんのであれでございますが、とにかくチェーンソーを相当長く使えば白ろう病になるということははっきりしているわけですから、それをいつまでも放置をするということは許されることではございません。できるだけ早い機会にいろいろのデータを取りそろえた上で、単独立法にするか、あるいは基準法に基づく安全衛生規則にするか、いろいろ考え方をそういう点で整理をしなければならないと思いますが、いずれにしましても、行政行為としてぜひ早く具体的な措置を講じて、必要があれば法令の制定も考えると、こういうことでやらしていただきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/76
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077・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 どうもやはりここまできて歯切れが悪いな。これはいろんな意味が含まれておりますよ、必要があればというと。それは、その意味はわからぬわけはないのですよ。患者のこれからの推移を見なければいけませんし、そういうこともあるんだが、この間、あなたいらっしゃらなかったですが、どの関係者に聞いてもこの患者が減る傾向にないのです。ましてや、あなた方はこれから民間の林業労働者の調査をやるんでしょう。いまのところは百未満になっておりますけれども、こんなものじゃないです。これはわが党でも、この間この近県で民有林の労働実態の調査をやってはっきり出てきておりますよ。そういうものが。これは一局地だけの問題ですから、それを全国的に把握したらどうかと言っているんですから、やったら出てくる。そういう趨勢にあることは間違いないです。そのことはわが国だけではないです。国際的にもそうだから、ソビエトでもあるいは西ドイツでも、東ドイツでも、他の国々でも、機械の振動の許容量をはじめとして、認定基準から何からいろいろなものをみな研究して、やはり法律なり、規則を必要として改めつつあるわけだ。ですから必要があればという、そういういろいろなものが含まれるようなことでなくて、必要があるのですよ、絶対に。この機械を使用したならば、あなたのいま答えられたように、必ずと言っていいほどこの病気になることは明かになってきているわけですからね。ですから、いまのような確かに八項目の通達を出しましたが、あれをもって対処したということにはならないですよ。たまたま、あなたは、これ以上放置できないということばで表現して答えているから、私はそれで了とするのだけれども、私は、いますぐと言っているわけじゃないのですから、来年の国会に間に合わなければ再来年の国会、少なくともそういうところにめどを置いて、目標を置いてやはりそういうものについての検討、研究していくということにならなければ、私は、はいそうですかということになりませんね。どうでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/77
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078・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) 必要があればということは、実はたいへん失礼でございましたけれども、法律、規則のどちらにするかというような意味合いで申し上げたわけで、決して必要があれば規則をつくる、法をつくるというような意味でなくて、必要は十分あると思います。ただ、どういう形でいくかということについては、実態調査の結果なり、今後の行政指導の成果なりを見ながら判断をさしていただきたいということでございまして、そのめども、先生のいま御指摘のありましたようなところをひとつ私どもとしては努力目標にいたしまして、今後検討を続けさしていただきたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/78
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079・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 そういうことならそのように了解しますよ。
そこで、もう一つ基準局長にお伺いしますが、国有林の場合は、定期的な健康診断をやっております。ところがいまの基準法にもありますが、さて民有林の労働者の諸君は実態としてどうなっているかということなんですが、これは「朝日」の三月二十四日に出た新聞です。この新聞で見ても、あまり健康診断というのは行なわれていない。しかも、そのときに、患者としてたいへん今日の状況が生活面も含めて苦況を訴えた者が二、三いるのですがね。その中で、健康診断はいままで一度もなかったと。この人は昭和三十五年からチェーンソーを使用していた。三十五年からいままでというと十年間、健康診断を一回もしていない。これは林野庁長官も監督権あるわけだから、あなたのほうも責任あるが、直接的にはないとしても、これは基準法違反なんというものじゃない、こういうことを訴えている。それからチェーンソーを使った場合に蒼白現象が出てくるということは、この人々は全部やはり承知していますよ、この調査の結果では。承知はしていますけれども、チェーンソーを購入する場合に、民間の場合は請負ですからね、昔の大工さんのように道具は本人持ち、こういう形がとられまして、いまでもこの人々は自分で購入していくのですね。したがって一日に二千円か、多くて二千五百円の賃金ですから、三十五年に購入したものをいまだに使用している。まだ満足なものじゃないにしても、林野庁で開発された振動の少ない新しいものが出てきていますね。そういう開発されたものを買う金がないために、依然としてこの古い三十五年に購入したチェーンソーを使用している。そこでわが党の調査団が見たのです。見たら、全然防振装置もついていないし、同僚がたくさんいる中でも、そういった防振装置をつけた機械を見たことがない、こういうことを訴えているのです。だから、ここでやはり問題になるのは、民有林のこうした労働者に対しても、振動が最大の原因になるのですから、振動を基本的には取り除いてやればいいのです。こういう点で、やはり機械の使用制限あるいは機械そのものの性能の検査といいますか、そういう制限基準、これはソビエトの規則はそこまで触れています。ところが、あなた、この間おそまきながら通達を出して、ここでそれを読み上げたのですがね。あの通達の中には、しからばそういう機械についての規制というのはどこにしてあるかというと何らうかがえる点はない。ただ単に機械の整備をちゃんとしなさい、こういうことなんだ。整備というのは、機械というものにはエンジンがついていますからね。潤滑油がちゃんと回っているか、あるいは始動する場合のプラグがどうなっているか、コードがどうなっているか、そういうことを機械を使用する場合に支障のないようにきちっとやるということが整備なんだ。こういう古いものを使っちゃいけないとかあるいはそういうものは何時間使ったら適当かということはあの中には書いてない。だから、あの通達は、そこの部面だけ見ると「ざる」なんです。そういう抜けている点を一体これから労働省は、民有林に対してどういう指導監督するのか。それから権限を持っている林野庁長官はどういう指導監督をしようとするのか、この点、両方から聞いておきたいと思うのです。
ことに、基準局長には、少なくとも民有林の林業労働者についても、国有林の労働者ほどいかなくても、さしあたりは大体四カ月に一ぺんくらいはやや強制的に健康診断を義務づけていく必要があるのではないか。そういうことをやらなければ、あなた方は民有林を調査して把握をしますと言ったって把握のしようがないですよ。それからもう一つは、民有林のほうは、国有林より使っている機械の数も人間も多いのですから、したがって、その機械を使っている人々を今度の調査のときにあわせて調査をして、そういう機械を使うような人を登録制にしていくような形でなければ、完全に把握できないと思っているのですよ。これに対して基準局長、どういう考え方を持っていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/79
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080・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) まず健康診断の問題でざいますが、実は民間林業がああいう状態でございますので、なかなかお医者さんが手近にいないというようなことがありまして、健康診断が確かに不十分だと思います。そういうこともございますので、労災保険の保険施設という形で、先ほど申し上げました林業防災協会と協力をいたしまして巡回健康診断を実施しておりますが、これを仰せのように、ぜひ強化をしてもっと密度濃く巡回健康診断ができるような体制を私どもとしてはっくり上げていきたい、かように考えております。先ほど御指摘のありました通達におきましては、六カ月に一回は健康診断をやれ、そういうように指導しなさい、こういっておりますので、私どもとしては、その通牒が実行できるような巡回健康診断方式の拡充ということをぜひやっていかなければならないだろう、こういうふうにいま考えております。
それからチェーンソー自体が、いわゆる振動が少なくて扱いやすいものであることが白ろう病を起こさない非常に大きな要因でございますので、チェーンソーの選定ということも確かに重大な問題でございまして、あまり長い間使いまして振動が大きくなっておるような、あるいは効率の非常に悪いものを相変わらず使うということは非常に問題があるだろうと、かように考えます。通牒でも一応のことは書いてありますが、実は、きわめて抽象的にしか書いてございません。それは振動の恕限度の問題がはっきりしないものですから、具体的な数字をあげて書けずに、軽いものであるとか、作業条件に合致するバーを使えとかいうような、現地の指導では確かに困るような通知になっておることは、私どもとしては、非常に残念なことなのでございますが、そういう点のことについては今後の研究が進むに従って、あるいは実地指導が進むに従いましてこの中身をもっと具体的なものにしていきたいと、かように考えております。
それから把握の問題でございますが、確かに先生が御指摘になりましたように、民間では機械を自分で買って自分で使うというような場合が多い、しかし、それが賃金が安いために買いかえる金がないというような問題も確かにあろうと存じます。その点は、今度の実態調査で、ぜひそういう具体的な事実を把握していきたい。それを明らかにいたしました上で、そういう状態であれば、先生のお話にありました登録制にせざるを得ないというような問題点も、実態調査の中で明確になってきたものをつかまえて、必要があれば登録制のこともやるというような措置でいきたい。ただ、登録といいましても、なかなか登録の前提の地固めが相当必要である。これらのことは林野庁の方が精通をしていらっしゃいますから、関係省庁と十分連絡をとりまして、実態調査の結果を待って有効な措置のできるようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/80
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081・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 登録制にする場合には、なかなかこれまたむずかしい問題があると、あなたの言う意味はそういう意味ですよ。それはないとは言えないと思うけれども、せっかく全体把握のための調査をやるというんならそのときにやればいいと、こう言っているわけですが、しからば和田局長、あなた方は、いままでに七十数名とか八十数名とか、白ろう病患者を把握しておるとこの委員会で報告しましたよ。そうして、民有林における伐木作業に従事しておる者をどう掌握しておりますかと、冒頭、この問題を私この委員会で取り上げたときに、民間労働者の中に大体二十五万とか三十万近い者がいるだろう、どういう把握のしかたでその数を把握したんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/81
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082・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) 労働基準法におきましては、事業場適用届が出てまいります。それから、その範囲は基準法よりも狭まりますが、労災保険の適用を受ける事業場は届け出を出すことになっておりますので、この二つから把握して数をこの前申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/82
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083・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 数はその二つの面で大体集計して申し上げたということなんですが、今度のあなた方の通達では、つまりその従業員といいますか、作業員といいますか、労働者に対して機械の使用の指導、訓練等をも明記されておりますね。そうすると、必ずやその定めに基づいて、労働省のそれぞれの監督局はおそらく訓練とか指導ということになると、講習会か何か——これはしろうとではしようがないから、そういう経験者とか、知識者を入れて講習会とか何とかやるのだと思います。そのときには、その伐木に従事しておる人々は出てきますよ。そこで登録をやったらいとも簡単にいくのじゃないですか、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/83
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084・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) そういうことをやりますときに、確かにチェーンソーを使用する方が出てこられる。いままで一応やりまして、十五万人くらいの方は一応把握しております。それをいわゆる法的な意味における登録というかっこうでいくかどうかという点は、もう少し私どもも研究さしていただきたいということでございまして、登録を決して別に否定をして申し上げておるわけではございません。具体的なこういう人がチェーンソーを使って作業をしておる人だということが行政庁としてわかればいいわけでございますが、先生の御指摘もそこらのところにあろうかと思いますから、その点は、法的な意味における登録でなければうまくいかないかどうか、そういう点も含めてひとつ検討さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/84
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085・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 研究なさることはけっこうですがね。そうすると、原則的には、最近たとえば自動車の運転手も登録制にするという法律が出ておりますね。これは目的が違いますね。つまり労働者の質的な向上の面もあるだろう。まあ主としてそれでしょうね。そういう法律が出ておりますね。ところが、この場合は、そうしたいままで把握されておらない民間林業労働者の中にたいへんな病気があるわけですからね。その前提が一つにはこの病気の撲滅です。民有林の場合は一つはその患者の把握と、さらには予防措置を講じていかなければならぬ。その意味での登録ですからね。私は、この人々は喜んで登録に参加すると想像するのですよ。これは、あなたは研究するということですから、研究の課題でけっこうですがね、やってみたらいいと思うのですよ。そうでなければ、民有林の場合、完全な把握はできないと思うのですね。その後の追跡調査などはできないと思うのですよ。これはどうでしょうか。なぜ私はいまこういうことを申し上げるかというと、この間の調査の結果——これは社会党の調査ですがね。参考としてここで申し上げますが、これは茨城県の久慈郡里美村里川というところで調査した。そのときに佐川製材に勤務いたしておる者で八木明君、それから大橋源弥君、それから松栄製材に勤務いたしておる者で神永境君というのがいるのですが、これは完全に白ろう病患者であるということがお医者さんの診断ではっきりしてきたんです。ところがこの人々は、あなたが申されたあの数には入っていない人ですよ。これは調べてみてください。入っていない。ちょっとわずか一カ所やってこういうものが出てくるのですね。そして、この人々はお医者さんに行ったところが、いま問題になっている腕のしびれ、蒼白現象などが出てきた病気で、つまり通称白ろう病だということを言われたんだけれども、何らこれに対する薬もなければ、言われただけで何の手当ても受けていませんという、これは報告なんです。こういうようにわずかちょっとした一つの村を調じただけでこういうものが出てくるわけですから、私は、的確に調査をして、さらにこの病気を撲滅をするという立場に立つならば、登録をしたならば、事後の対策として、労働省としてもわりあいに——労働省ばかりでないですがね。関係の省庁は対策の立てようがスムーズにいくんじゃないかと、こう思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/85
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086・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) 私どもが七十名ばかり把握しておると、こう申しましたのは、労災保険で医療を行なっておるものについて申し上げました。いまのような場合は医者が、特に薬もないし、治療もできないからというような場合ですと、この前申し上げました数字の中には入ってこないわけです。要するに、病気という扱いを医師がしていないわけでございますので、しかし、それが確かに白ろう病であるならば、それは放置をしておくのは、私どもとしても、確かに手落ちになることでございます。お医者さんのほうから見ても、この病気はなかなかしようがないのだということを言われる、治療方法がないからしようがないのだと言われる向きも、おそらく民間の開業医の中にはあるだろうと思います。それにつきましては、これは厚生省なんかと御一緒にこの白ろう病に対する診断治療の研究が進んでいきまして、それが一般の医師会にも伝って、そういう診療をされる医者の方々にもわかってもらう、こういう体制をつくることが必要であろう。それからそういう患者の方が社会党で御調査になりまして出てこられたようでありますが、そういう方も相当あると思う。そういうこともありますので、四十五年度には私どもも実態調査をしたい。これは統計的に間違いのないような調査にしたいと考えておりますので、そういたしますと、いまお話のような例も相当出てくる。そうして自覚症状がある方も、一体全従業者の中でどのくらいになるだろうかというようなことが出てまいりますので、その結果を待って、どうしても登録をして追跡していかなければいけないのかどうか、そういうような問題も、調査結果によってひとつ判断をさせていただきたいと思いますので、実態調査にみのがくれをしているわけではございませんが、それまでひとつお待ちをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/86
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087・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 待ってくれと言っても、待つとか待てないということをここで言いませんが、この問題は、きのうきょう始まったのじゃないのですから十分承知していたわけだけれども、率直に言えば、労働省としては、統一的に、系統的に——系統的という意味は、白ろう病が出ているのは林業だけじゃないのですから系統的ということばを使うのですが、統一的に、系統的に調査したことがないんです。だから、せっかくあなたのほうは今度本格的に調査をしようというわけですが、これもただ単なる一ぺんの調査で済まないのです、病気の性質からいって。必ず追跡をしなければならぬ。それはなぜ追跡をしなければならぬかということになると、補償の関係もありますし、あとあと治癒認定の問題、この間も人事院の職員局長に開いたのですが、治癒認定という問題が出てくるから追跡が必要になってくる。だから調査の対象事項にして、そういうものを登録をしていくんだということにしなければ、ほんとうの生きた調査にならないのじゃないかなあということが一つと、あとあとの病気を追跡していくねらいは、この病気を撲滅するということなんだから、そういうことのために使えるような生きた調査結果を私は期待するものだから聞いている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/87
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088・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) 先生の御指摘のように、私たちも、白ろう病を全部予防したいということは、そのとおりでございますので、調査にあたりましても、いまいろいろとお述べになりましたことを十分に参考にさせていただいて調査をやってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/88
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089・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 次に、今度は林野庁のほうですが、いま林野庁の場合は、林野庁のほうで委嘱をした先生方が認定とか、治療に当たっているわけですね。それで、いま民間の一つの調査の結果を申し上げたのですが、お医者さんによっては、投薬もしなければ、手当てもしないという。これは一つの例ですが、林野庁ではそういうことはないのでありますけれども、この病気を専門的に扱っているような先生というのは、日本ではまだそうたくさんいないわけですよ。ですから、この診断に当たっては、いろいろ片寄っている面があると、私は、林野の労働組合の末端の諸君から聞くことがあるのです。したがって、これは私の見方が偏見かもしれませんが、お医者さんも片寄ったような形でなくて、できれば専門のところでまとめて、そこに行ってお医者さんに認定してもらう、診断をしてもらう、治療をしてもらうということが理想的なんですが、たまたま国有林の作業の場所の実態からいきますれば、なかなか地理的な問題もあるし、立地条件もありますから、その理想にはなかなか到達できないと思うが、それだけにこの問題はただ官側だ、使用者側だ、そういうことだけでこれは問題解決しないと思うから、両方で十分協議をして、そういうお医者さんというものを委嘱するような方向にしたらいいんじゃないかと思うのです。率直に言って、この前の調査をわれわれが道庁でやったときに、患者はかなり来ましていろいろ訴えておりましたが、やっぱりお医者さんによっては、そのお医者さんの技術を信頼しないとか何とかいうことじゃないのですが、ある先生は専門にやっていますし、ある先生は一般的なこともやっていますから、ややともすれば白ろうだけで見ると、どうも薬もよこさぬし、いまの例のようにたいした治療もしてくれぬということで信頼性がないものだから、どうしても病院に行かないというものが出てくると訴えていたのです。患者諸君が。こういう点は、将来、林野庁としては、どういうふうにこの問題を解決しようとしていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/89
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090・松本守雄
○政府委員(松本守雄君) 林野庁としましては、特に訴え者に関係する医師の規制はいたしておりません。ただ、林野庁各出先に管理区というのがございまして、関係の職員の定期的な健康診断を依頼をしておる医者がおります。そういう管理医に対しましては、例の白ろう関係の病気に関する各種の資料を絶えずおろしておる。林野庁としては、その管理医が地方地方においては白ろう病について知識が一番深いはずであるというふうに思っております。そこで、何せまだ明確な原因がつかめておりません。したがって、医師によっては、その診断結果に幅が出てくるという問題もございます。そういう場合には、必要とあれば大学病院その他、上の系列の病院にも診断をしてもらうという方法が一応労使間の協議でまとまっております。決してそういう偏見のあるはずはないし、今後とも、そういうことのないように指導するつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/90
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091・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 われわれも、実際患者から訴えられたものですから聞いているのですが、いま答えられたようにぜひ偏見的な現象が出ないように、十分労働組合と協議してやってもらいたいと思います。それから、この前も療養期間中の補償とか、あるいは前にも聞いたのですが、せっかくあれは八十にきまった。これは従来から見ると、抜本的だと言われるぐらいのものだと、私は喜んでいる一人ですよ。しかし、現状は、この間から言っているように、賃金制度の問題も含めてですが、やはりその病気は医学者の所見に書かれておりまするように、かなり商い栄養価値のある、食事にしてもあるいは医薬品にしても、高カロリーあるいは高品位のものを使わなければならないとなっているわけです。そうすると、勢い金がかかりますわね。そういう面から行くと、八十というふうに前に進んでまいりましたから非常に前進はしたのであるけれども、これは労働基準法だってそうなのですが、同じように、国家公務員の災害補償法等についても、そろそろそういう特殊なものについては改善をはかっていくということが急務じゃないだろうかなという感じがしますがね、どうですかね、局長さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/91
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092・島四男雄
○政府委員(島四男雄君) 先般も申し上げましたように、人事院といたしましては、この白ろう病については格別の配慮をいたしてまいっている次第でございます。たとえば、その一例といたしまして、ただいまもお話に出ておりました休業補償の面につきまして、法律では百分の六十となっておりますが、この白ろう病患者につきましては、それについてさらに付加給付を二〇%認めておりまして、昨年の暮れに百分の八十にしたわけでございます。ところで、国の姿勢といたしまして、当然この問題についてはもっとさらに前進すべきであるという御意見かと思いますが、私のほうも実はそう思っておりますが、ただ、国家公務員災害補償法の中で、この補償の実施に関しましては、労働基準法であるとかあるいは労働者災害補償保険法であるとか、そういう法律との実施の間において均衡を失わないように考慮しなければならないという規定がございますので、私どもだけで独走するわけにはまいりません。他の社会保険制度とのバランスというものを考えながら前進していきたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/92
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093・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 局長答えられたように、そういう関係の法律は私も知らぬわけではないのですよ、ですから、当然人事院だけ独走できないということは、それは答えられたとおりでありますね。しかし、バランス、バランスということだけ考えていますと、バランスということはどういうことかというと、平均化して、よその状態を見習わなければならぬということになるのですから、そこへだけ力点を置くと、こういう特殊な、本来的に言えば、原爆のようなものとか、けい肺のようなものとか、さらにCOの患者とか、こういうやはり特殊なものですよ、振動障害というやつは。ですから、そういう見方をしながらできるだけひとつ改善の方向で努力していただきたいと私は思うのですよ。なぜかというと、国有林の場合は林野庁で努力をされまして、できるだけそう大幅な減収にならないように職種転換などは考えておりますけれども、現実にはかなりやはりダウンしてくるのですよ。長官、そうですね。その上に今度は、先ほど来言ったように、経費がかかる、こういう問題がある。国有林のほうはまだそれでもいいのですよ、八十を補償するというのですから。民有林の場合は全くないと思いますよ。ですからそういうことをにらみ合わせながら、つまり局長のおっしゃっている意味はそういう意味でのバランス論だと思いますから、そういうふうに理解しますが、ぜひそういうことも十分勘案の上に、各省庁と連絡しながらその改善に私は努力してもらいたいと思うのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/93
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094・島四男雄
○政府委員(島四男雄君) この問題につきましては、関係省庁と十分連絡をとりながらさらに前向きで考えていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/94
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095・佐野芳雄
○委員長(佐野芳雄君) 他に御発言もなければ、本日の調査はこの程度にとどめておきます。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106314410X01319700416/95
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