1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十六年二月二十六日(金曜日)
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昭和四十六年二月二十六日
午後二時 本会議
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○本日の会議に付した案件
公衆電気通信法の一部を改正する法律案(内閣
提出)の趣旨説明及び質疑
午後二時五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X01219710226/0
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001・荒舩清十郎
○副議長(荒舩清十郎君) これより会議を開きます。
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公衆電気通信法の一部を改正する法律案(内
閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X01219710226/1
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002・荒舩清十郎
○副議長(荒舩清十郎君) 内閣提出、公衆電気通信法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。郵政大臣井出一太郎君。
〔国務大臣井出一太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X01219710226/2
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003・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 公衆電気通信法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
近時、電話等の普及に伴い電報の果たす役割りが変化し、電報事業の収支は著しく悪化してきております。また、最近における生活圏、経済圏の拡大と情報化社会の進展に対処して、通話の制度を改正する必要性が生じており、加入電話に対する需要も年々増加の一途をたどっております。
一方、社会経済活動の高度化に伴い、電気通信回線に電子計算機等を接続して行なうデータ通信に対する社会的要請が著しく増大してきております。
以上のような情勢にかんがみまして、公衆電気通信法の一部を改正して、電報事業の健全化、通話料金体系の調整合理化、電話の拡充等をはかり、サービスの改善につとめるとともに、公衆電気通信の秩序を勘案しつつ、データ通信の発展、育成を助長し、わが国の情勢化社会の健全な発展に寄与しようとするもので凝ります。
この法律案のおもな内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、電報につきましては、普通電報の基本料を二十五字まで百五十円、累加料を五字までごとに二十円に改めるとともに、市内電報、市外電報の区別を廃止する等、電報に関する制度を改正することといたしております。
第二に、電話につきましては、自動の市内通話に時分制を採用し、一定の区域内はすべて三分ごとに七円とするとともに、近距離通話の料金を引き下げる等、通話料金の体系を整備し、また、加入電話は、全国にわたって設置場所の変更ができるようにする等改正することといたしております。
第三に、電話の設備料は、単独電話を一加入ごとに五万円にする等これを改正することとしております。
第四に、データ通信につきましては、民間企業等が電子計算機等を設置して電気通信回線を利用する制度としまして、新たにデータ通信回線使用契約の制度を設け、その種類は、特定通信回線使用契約及び公衆通信回線使用契約の二種とすることとしております。
これによりまして、民間企業等は、一定の条件のもとに、オンラインによる電子計算機の共同利用、計算サービス業、情報検索業等を行なうことができることと相なります。
また、日本電信電話公社または国際電信電話株式会社が行なうデータ通信サービスについても、これを法定することとしております。
この法律案の施行期日は、設備料関係の規定は昭和四十六年六月一日、データ通信関係の規定は、公衆通信回線に関するものを除き昭和四十六年九月一日、電報関係の規定は昭和四十七年三月一日、その他の規定は昭和四十七年九月一日から昭和四十七年十二月三十一日までの範囲内において政令で定める日としております。
以上をもちまして、この法律案の趣旨の説明を終わります。(拍手)
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公衆電気通信法の一部を改正する法律案(内
閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X01219710226/3
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004・荒舩清十郎
○副議長(荒舩清十郎君) ただいまの趣旨の説明に対して、質疑の通告があります。順次これを許します。武部文君。
〔武部文君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X01219710226/4
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005・武部文
○武部文君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま政府より提案されました公衆電気通信法の一部を改正する法律案について、総理並びに郵政大臣に質問をいたします。
本法案は、財界並びに産業界の強い圧力によりまして、政府の基本政策の確立とか、情報通信網を公共的に発展させるための諸条件の整備など、必要かつ十分な準備作業がほとんど行なわれないままに、いま、しゃにむに、一部の民間企業のために、公衆の電話通信網を野放しにし、さらにこのための料金値上げと制度の改革とを強行しようとするものであります。(拍手)
言うまでもなく、私ども日本社会党は、いま急速に進行しつつある情報化の進展に重大な関心を持ち、これに伴う情報化基本政策の策定並びに情報通信のあるべき姿についても政策審議を重ね、今国会中にも具体的な形で政策を提案し、政府にこの実施を要求する準備をいたしておるのであります。
すでにさきの第六十三国会におきましては、私どもの提案によりまして、情報化の進展に伴うプライバシーの保護と基本的人権の保障、また情報の民主的な管理、公共的システムの確立、さらには情報の平和的利用と国民生活向上への優先的利用など、情報化三原則ともいうべきものが確認され、政府もこの原則に立つ情報化基本政策の確立と基本法案の策定を私どもに約束してまいったのであります。
しかるに、政府は、いまなお情報化の進展に対する基本政策を明らかにせず、また、国会に約束してきた基本法案を提案することもなく、公共的につくられてきた公衆電気通信網を一部の民間大企業の要求に沿って開放するために、電話料金の不当な値上げをはかり、また、企業利益に沿って制度を改革しようとしているのであります。
そこで、まず私は、総理に二つの点をただしておきたいと思います。
その第一点は、情報化に対する基本政策もなく、基本法案を提示することもなく、大企業の圧力に屈して、通信回線を野放しに開放してしまう。これは、総合交通の基本政策がないままに自動車新税を強行しようとすることと軌を一にすることであり、政府のさか立ちした不勉強な姿勢についてどのように責任を感じ、どのように考えておられるのか、ひとつ国民の前に明らかにしてもらいたいのであります。(拍手)
第二の質問は、本法による料金の値上げについてであります。
いま天井知らずの物価上昇に対する政府の公共料金抑制政策が注目されているさなかに、政府は一体何を考え違いをして、電話の設備料の引き上げや市内料金の実質的値上げ、電報料金の大幅値げをはかろうとするのか。郵便料金の値上げについては赤字を理由としている政府が、四十四年度電報の赤字を差し引いても二百六十八億円もの黒字である電話料金の値上げに、どのような国民の納得し得る理由を持っているのか。このあたりの政治姿勢を説明していただきたいのであります。(拍手)
私ども日本社会党は、電話設備料の三万円から五万円への引き上げが、国民生活における情報通信化の促進を阻害するものであり、本法第一条の精神に著しく反するものであるから、値上げを中止し、また、加入区域の広域化についても、数年来主張してまいりましたグループ料金制によってサービスの公平化をはかるべきであり、特に市内電話料金については、時分制を採用するとしても、政府案の三分七円を国民生活の実態に沿って五分七円とすべきであると考えるのでありますが、総理は、このように不当なものを正しくし、不合理なものを国民の生活実態に沿って合理的にしていく考えがあるのかどうか、こうした政治姿勢をとり得るかどうか、明快にしていただきたいものであります。
また、公衆電気通信網の利用につきまして、いま国民の電話の申し込みで、つかない電話が約三百万個に達しており、一般の加入電話の申し込みを優先させる国民優先の原則的な立場を再確認していただくとともに、特に心身障害者の家庭や老人家庭には、特別に電話を最優先的に設置するなど、情報通信に恵まれず、特に必要とする人々に対する公共政策を提案いたしますが、総理の所見をお聞きいたしたいのであります。
次いで、郵政大臣に対し、幾つかの質問をいたします。
第一は、政府が改定の理由としてあげている、情報化社会の進展に対応してという点につきまして、郵政大臣、あなたは情報化社会などと現状を規定していますが、いま私たちの社会における情報は、確かに著しく増大をし、ときには情報公害とも思われるような問題を引き起こしながら、あらゆる分野にわたって影響が拡大してまいりました。しかし、いま情報化社会ということばで語られるものは、一方では未来社会の問題として扱われ、他方では単にコンピューター化の現象をとらえてきたのであります。一体あなたは、情報化の現状並びに展望にどのような判断を持ち、未来学者たちの評論ならいざ知らず、情報化社会という概念をどのように考えているのか、明快にしていただきたいのであります。
これに関連する第二の質問は、本法案によります通信回線開放によって、わが国の情報通信のシステムが、長期にわたって制度化してまいるものと思われますが、今後の情報化の進展に対する政府の見解ないし見通しについては、ほとんど明らかにされておらず、この点については、新全国総合開発計画にも、新経済社会発展計画においても触れられておりませんが、ひとつ本法案の提案者である郵政大臣の見識をただしておく必要があると思うのであります。
第三点は、さきの第六十三国会における情報処理振興事業協会法の審議の過程で、商工委員会議決となった事項について、これが閣議でどのように取り扱われ、本法案の提出に至る経過の中でどのように生かされてきたかという点をただしておきたいのであります。
とりわけ私どもが重視しております点は、その第一項と第三項でありますが、その第一項では、すみやかに情報化に関する基本法を提案することが議決され、その第三項では、行政機関の一元化が議決されたのであります。この二点について、特に郵政大臣から、政府の国会議決事項の取り扱いと経過を説明願いたいのであります。
他国の例を引いて恐縮でありますが、アメリカにおいてはすでに一九六七年に通信政策に関する大統領の教書が出され、これに基づいて大統領特別委員会が設置され、ここで国際及び国内の通信事業に関する討議が行なわれ、公共通信政策の役割り、技術開発の方法と政策、インテルサット問題などが論じられているのであります。
いずれにいたしましても、各国とも公共の通信に関する基本政策の樹立にたいへん努力しており、政府の情報通信に対する基本姿勢が確立されつつあるのでありますが、ひとりわが国政府のみがこの点について立ちおくれているのではないかと心配されるのであります。
質問の第四は、通信の公共性についてであります。
本法案による通信回線網の自由化が進められた場合、私は、現行の公衆電気通信法における公共的な性格が著しく変質してしまい、財界や産業界に政府が奉仕する姿となる懸念を持たざるを得ないのであります。大臣の見解をお聞きいたしたいのであります。
さらに、この点に関して、私は、特に本法案による特定通信回線使用の対する個別認可の省令の基準及び認可基準について、骨格的な部分を説明いただかなければならないのであります。
質問の第五は、今回の料金値上げ及び料金制度の改定が、どうも大企業の圧力に屈して、先ほども指摘したごとく、基本政策の条件整備も的確な見通しもないままに、回線の野放し自由化が進められるといった政策抜きの本末転倒な姿が行なわれようとしていることに深く憂慮しているのでありますが、この間の事情について、郵政大臣は何らかの反論なり弁解があり得るか、ただしておきたいのであります。
これに関連をして、設備料の三万円から五万円への引き上げは、これからの通信網の建設のためということでありましょうが、一般加入者の設備料の引き上げによって大企業に開放されたデータ通信が拡大するというようなことが許されるものではないと考えるのでありますが、大臣の責任ある見解を求めておきたいのであります。
最後の質問は、先ほど総理にも若干提案いたしたのでありますが、市内通話料金について、公衆電話はともかく、一般加入電話の通話時間を三分間とする根拠は何か。三分制によって市内通話料の大幅値上げとなるわけでありますが、増収見込み額はどう見積もっているのか。さらに三分七円を五分七円にすべきであるという提案を担当の郵政大臣はどのように考えられるか、伺いたいのであります。
私は、この広域時分制の導入が、私どもが数年来提案をしてきたようなグループ料金制のよりに、利用者へのサービス拡充といった視点からではなく、無政策な通信回線の開放の結果として、コンピューター利用による機械的な情報通信の合理化といったサイドから、一般加入電話による人間と人間との対話の制限へと向かってきたことに、はかり知れない不安を持つとともに、回線開放が基本法の制定のないまま無防備にされるならば、近く予想される大型電算機の導入を中心とした外国資本にも市場を開放することとなり、わが国の情報国外持ち出しの危険すら発生することが心配されるのであります。また、新聞紙上におきましても、今回の料金制度の改定は、企業に安く家庭に高いということが公然と論ぜられているのであります。
この際、私は、心から総理及び郵政大臣に警告しつつ、通信の公共性を国民生活中心に置き直し、真の平等と公平さに徹した料金制度にしていくため、せっかくの御提案でありますが、本法案の根本的な再検討のため、一たん引き下げて、国民の立場に立ち、今日までの国会審議等の経過に照らして、慎重かつ十分な再審査を行なうべきことを強調いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X01219710226/5
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006・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 武部君にお答えをいたします。
御承知のように、データ通信技術は電気通信と電子計算機についての高度の技術が結合したものでありますが、電電公社はこれらについて多年にわたり技術、要員、経験などを蓄積しておりますのみならず、全国をカバーする保守体制を持っておりますので、その能力を十分に活用することが国益と国民の要望にも沿うものであり、また、国産技術の振興にも役立つものと考えます。このような意味において、電電公社が公共的なデータ通信サービス、全国的規模にわたるデータ通信サービス、あるいは情報産業の発展に寄与する通信サービスを中心として公衆回線の利用を認めることは、情報化社会にふさわしい時宜に適した措置であると私は考えます。中小企業の経営合理化にも利用できるものでありますし、国民一般も直接間接その利便を受けるものであります。もちろん一般電話の疎通に支障を及ぼさないように配慮しておりますし、郵政審議会の答申の線にも沿った措置でもあります。決して大企業の圧力に屈して野放しに開放した、そういうものではないことをよく御理解いただきたいと思います。
なお、情報処理基本法といったものを策定せよとの御意見でありましたが、新しい分野であるだけに種々むずかしい問題を残しております。各方面の意見を聞きながら、今後とも十分検討することといたします。
次に、電話の設備料についてでありますが、電話加入者の専用部分だけでも実費は約七万円かかっておりますし、この程度の負担は十分御協力いただけるものと考えます。むしろ五万円に引き上げることにより、これによりまして、より早く電話が引けることの利便さに御着目いただきたいと思います。
また、電話料金が現在市内通話と市外通話に大きな格差があることは御承知のとおりであります。一方、同一市町村内でありましても市外通話となっている場合が多いばかりでなく、市内通話区域の面積も電話局によって著しい大小の差があり、市内通話地域の合併、拡大についての要望はきわめて強いものがあります。今回の改正は、この市内通話に時分制を導入すると同時に、従来の市内通話区域を大幅に拡大して近距離通話料の値下げを行なうものであることを御理解いただきたいと思います。
また、武部君は、国民生活の実態に沿って、三分七円を五分七円に改めよとの御提案でありましたが、国際通話においても、世界の公衆電話におきましても、すべて三分制が定着しているのであり、テンポの速い近代化社会にあっては、むしろ単位時間の延長こそ国民生活の実態に反するものと私は考えます。
次に、加入電話網は元来加入電話のためにつくられたものでありますので、データ通信への利用を認めるにあたっては、電話の疎通や電話の拡充に支障を及ぼさない範囲内で認めてまいります。
なお、データ通信のための公衆通信網の利用についても、公共の利益のために必要なものを優先する優先受理制度を採用することは、これはもちろんであります。
最後に、身障者などの方々に特別措置をという御提案でありましたが、身体障害者福祉法による身体障害者で、特に電話の設置が必要と認められる方々から加入申し込みがあった場合には、優先的に設置できるよう従来から措置しております。老人家庭についても、前向きに検討いたします。
その他の問題につきましては、それぞれの担当大臣からお答えいたしますので、お聞き取りをいただきます。
〔国務大臣井出一太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X01219710226/6
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007・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 私に関する御質問は、およそ六点にわたっておると思います。
逐次お答えを申し上げますが、第一に、情報化社会の現状並びにその展望を示せという意味の御質問と存じます。情報化社会ということばの定義は、これはなかなかむずかしいと思いますが、平たく申し上げますならば、社会、経済、文化等の発展について人間の知的資源が相対的に価値を増すであろうというような社会、まあこのように一応理解をいたしまして申し上げますならば、この現状及び将来を考えますときに、いまやコンピューターと電気通信とがその推進にあたって最も大きな役割りを演ずるであろうというふうに考えております。
郵政省としましては、この情報化社会においてデータ通信の果たす役割りにかんがみまして、技術開発の動向、公衆通信の秩序等を勘案しながら、現実的、段階的にデータ通信の利用制度を整備してまいりたい、かように考える次第でございます。
第二点、今後の情報化の進展に対して政府は一体どんな見解を持っておるか、こういう点でございますが、このごろは、生活圏あるいは経済圏の拡大に伴いまして、データ通信に対する社会的の需要というものは著しく高まってまいっております。本法案においては、このような需要に処して、データ通信の健全な発展に寄与しようとするものでございまして、いわば情報化社会への、未来へのとびらを開く、この役割りを本法案は果たすであろうというように考えております。データ通信の進展が政治、経済等の全般に及ぼす影響と公衆電気通信の秩序等を総合的に考えながら、関係各方面とも連絡を密にいたしまして、情報化社会の開発に寄与し得るように、基本的方策を策定してまいりたいと思うのであります。
第三点は、昨年成立をしました情報処理振興事業協会に関連をいたしまして、当時の議決、すみやかに情報化に関する基本法を提出すること、さらに行政機関の一元化をどのように考えるか、この二点にわたっておったと思うのでありますが、第一点につきましては、すでに総理からお答えを申し上げた次第でございます。
そこで、この情報処理は、何としましても、非常に広い分野にわたっておるわけでありまするから、関係各省庁とも十分な連絡をして、慎重に対処いたす所存でございます。さらに官民一体的な推進体制、この整備につきましても、関係の向きと連絡を密にしながら、御趣旨の線に沿うように努力をいたしてまいる所存でございます。
次に、第四問でございましたが、日本はアメリカ等に比べてたいへんコンピューターの利用その他が立ちおくれておる、こういう御指摘がございました。それなればこそ、おそまきではありながらこの法案を用意をしたということをひとつ御了承を願いたいのであります。
そこで、今回の改正案によりまして、データ通信のために通信回線が使用されるということになりますのですが、これは、公衆電気通信サービスの一環として、あまねく公平に利用されるということを原則として提案するものでありまして、特定の利用者のために奉仕をする、こういった性格でないことをまず御了承を願いたいのであります。したがいまして、データ通信のために公衆通信回線の使用を認めるという場合にいたしましても、加入電話等がそのために疎通上支障を起こすというふうなことがないように、これはもう十分気をつけていたす所存でございまして、公共的なものを最優先に考えていく、こういう心がまえで臨んでおるわけでございます。
さらに、データ通信のために特定通信回線が共同使用されるというような場合におきましては、その使用の態様は、これは電信電話とは異なるのでございまして、電子計算機を共同に使用するためのものでございますから、電信電話の場合よりもその範囲が非常に広く利用できるという措置をいたしたいと考えておるわけであります。
その次に、料金の問題にお触れになったわけでありますが、私どもは、この法案において、通信側線をデータ通信のために利用を認める場合におきまして、電信電話のサービスと、その利用者の現在及び将来の利益を十分に保護するように、データ通信のためにこれが阻害されるというふうなことがあっては相ならぬと考えておるわけであります。また、電電公社がデータ通信サービスを提供するにあたりまして、独立採算をたてまえとして運営することになっておりますので、データ通信サービスの料金は、サービスの提供に見合うものを利用者において御負担をいただく、こういう考え方に立っておるのであります。
加入電話の設備料の値上げは、これは総理がお答えに相なったように、加入電話の建設資金に充当するためのものであって、これがためにデータ通信サービスの提供拡大をはかる、これを混淆するというふうなことは全く考えておらぬのでございます。
一般通話の三分という問題、これはやはり総理かお触れになりましたが、公衆電話は市内三分打ち切り制を現にやっております。あるいは市外通話、国際通話、これはいずれも三分という基本時数が定着をしておるわけでございまして、こういった歴史、沿革を考えますときに、三分がしごく適当であろう、こう考えるわけでございます。
また、市内電話について、時分制をとることによって増収が生じましても——これは事実増収が出ると思うのです。その場合、この増収分は近距離通話の料金の引き下げということに充当いたしますから、ほぼ全国的に自動即時化サービスが可能になった現実に即する料金体系の整備としては適当な措置であろう、このように考えておるわけでございます。
五分七円という御提案もありましたけれども、私どもは残念ながらこれには御同調できない次第でございます。
大体以上をもってお答えといたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X01219710226/7
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008・荒舩清十郎
○副議長(荒舩清十郎君) 新井彬之君。
〔新井彬之君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X01219710226/8
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009・新井彬之
○新井彬之君 私は、公明党を代表して、ただいま郵政大臣から趣旨説明がありました公衆電気通信法の一部を改正する法律案に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたしたいと思います。
本法律案は、全国民が物価高に悩んでいるさなかに、政府が郵便料金の値上げに続いて、公共料金値上げの第二弾として、国民が非常に重大な関心を持っている法律であります。
そこで、まずお伺いいたしたいことは、料金値上げのこの法律案を提出された本意についてであります。
本法律案における新料金の改定は、これまでの四次にわたる大規模な拡充五カ年計画に比べても、けたはずれに巨大な電信電話拡充七カ年計画の重要な一環として策定され、その成功に不可欠な前提条件として位置づけられているのであります。
すなわち、電電公社が発表した昭和四十六年度を初年度とする七カ年計画は、所要資金額十兆一千六百七十億円、建設投資額は八兆五千億円という膨大な規模になっておるのであります。この計画の中に、昭和五十二年度末までに加入電話を一千九百七十万増設する。そのための資金の調達にあたっては、外部資金として財政投融資等の資金一兆三千百十億円、現行単独電話三万円の設備料を五万円に大幅に引き上げて一兆三百五十億円、加入者債券引き受け制度として三兆百二十億円を充当することになっておるのであります。この中で、設備料と加入者債券で外部資金の七五%を占め、特に設備料については二〇%となり、財政投融資等においては、わずか四分の一になっているにすぎないのであります。七カ年の初年度である昭和四十六年度予算原案の財政投融資等の内訳を見ましても、わずか一三%であり、それも縁故債、公募債のみであります。
政府は、かかる情報化社会の発展に寄与せんとする電電公社の七カ年計画を認められた以上、国の財政援助を積極的に行ない、一般加入者の設備料の負担を軽くすべきであると思いますが、総理並びに大蔵大臣の明快なる答弁をお願いしたいのであります。(拍手)
次に、料金改定にあたって、具体的な内容に触れてお聞きいたします。
第一に、設備料の性格についてであります。
現行の三万円の設備料については、昭和四十三年に一万円から三倍の値上げによるものであり、また今回は三万円から五万円になるため、六六%の引き上げであり、わずか三年の間に五倍もの驚くべき大幅値上げとなっているのであります。一万円の設備料については、積算の根拠があったのでありますが、三万円、五万円の設備料の引き上げに、納得できる何の根拠と理由があるのか、全く明らかでないのであります。
政府の説明によると、加入電話の大幅な増設の必要性にかんがみ、その設置に要する費用の一部に充てるため、加入電話の設備料を改定する必要があること、これは今日までの経過から見ても、建設資金を債券によって補う方針からいっても、納得できないのであります。もし、政府が設備料を大幅に引き上げて建設資金を補うのであれば、これは重要な政策の変更でありますので、その理由と根拠を明らかにすべきであります。
ことに、昭和三十五年に電話負担臨時措置法から電信電話設備拡充暫定措置法に切りかえた際、設備料と債券については加入者負担にならないようにするとの当局の言明もあり、さらに暫定措置法の制定は、昭和四十七年度の時点までを展望した時限立法であるにかかわらず、公社の七カ年計画においては、施行期間の変更をもくろんでいること自体、国会軽視といわざるを得ません。
さらに、この設備料については、今後新設される電話千九百七十万のうち、八〇%は住宅用電話であります。この住宅用電話は、郵政大臣の認可した設置基準で、架設優先順位は最下位にランクされ、多くの国民の強い要望にもかかわらず、今日まで放置され、その積滞数は、昭和四十五年十二月末現在二百六十七万の多きになっておるのであります。それにもかかわらず、今回の設備料引き上げの負担をすべて住宅用電話におおいかぶせようとしているこの姿勢は、大衆不在であり、企業優先の端的なあらわれであり、この問題の解決なくして認めるわけにはいかないのであります。(拍手)今後新設されるであろう千五百万の加入者と、安い設備料のときに申し込んでおきながら、公社の都合で延引して高い設備料を支払う、このような不合理、不公平をどのように処置されるのかお伺いいたしたいのであります。
第二に、今回の改正の大きな項目の一つである通信料金体系の合理化についてであります。
これまで市内通話は、度数料金制度を採用しておりましたが、これを広域化し、時分制を加味して、広域時分制度を採用するという点であります。単位料金区域を拡大して広域化する点については、都市の広域化、情報網の拡大等により、時代に合った単位料金区域にするということは、一応妥当な策であると思われますが、市内通話に対していままで無制限であったものを、一挙に三分ごとに課金する時分制の採用については納得しかねるのであります。
わが党が本年一月に行なった電信電話利用実態調査によると、市内通話で一回に通話される時分は、三分以内が二六・八%、三分から五分以内が五二・三%、五分から十分以内が一四・二%という実態結果が出たのであります。これによると、三分から五分以内が半数をこえるという結果が出ております。政府のいう三分間という根拠は先ほどお聞きいたしましたが、そういう現実の面をとらえての検討をしたのか、具体的な答弁をお願いしたいのであります。
次に、市内通話に時分制を採用する通話料金体系の合理化案は、結局一般庶民の大幅な料金値上げと、広域化による基本料金の格上げという二重の犠牲によって行なわれるという点が問題であります。これによって、基本料金が値上がりする局は全国七百三十の局で、級局数に占める割合は五一・六%にもなるのであります。わが党の利用実態調査においても、市内通話が八三・五%、市外通話の利用が七・八一%という結果のとおり明らかであります。真の合理化は、現在よいところはそのままにして、条件の悪いところをよいほうに近づけていくようにしていくのが当然と思いますが、どのように考えているのか、所信をお伺いいたしたいのであります。
第三には、通信回線の自由化の問題点であります。
データ通信のために電気通信回線を民間に開放する制度の新設と、電電公社のデータ通信サービスの法定化によって、明治以来八十年以上にわたって国及び公社が独占してきた通信回線を初めて民間に開放するという画期的な意義を持っていると宣伝しているのであります。これによって、わが国の情報システムや情報産業は急速に発展し、社会の情報化のテンポは急激に早まるものと自画自賛しているのであります。しかし、問題点として、郵政大臣の認可事項が至るところで大きな規制となっており、しかも、その基準が明確でないことであります。この点でまず問題なのは、回線に接続する端末機器などは大臣の認可した技術基準に適合しなければならないことをはじめとして、数多くの認可事項を定めて、事実上の認可の裁量権の大幅な余地を残しているのであります。特に技術基準について通産省との話し合いはどうなったのか。また、料金は郵政大臣の認可によってきめることになっておりますが、これでは公社と民間の間で差がつけられるのではないかとの疑問を抱くのであります。さらに問題なのは、公社のデータ通信に法的裏づけを与えることにしておりますが、その種類や範囲について何らの定めもないことであります。公社の事業は通信回線の円滑な運用に限るべきだとの意見さえありますが、この点について郵政大臣はどのように考えておられるのか、お伺いいたしたいのであります。
最後にお伺いいたしたいことは、わが国が、今後急速に進展する情報化時代に立ちおくれることなく、しかも、安定的かつ高度な経済成長を遂げていくためにも、基本となるべき情報処理施策が早急に必要と思われますが、この点どのように考えておられるのか。わが党といたしましては、第六十三国会に情報処理基本法案を提出し、来たるべき情報化時代に備えるべき努力をしてまいったのでありますが、総理は、かかる基本法案なるものを法制化なさる意思があるかどうか、明快なる答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X01219710226/9
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010・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 新井君にお答えいたします。
現在、加入電話に対する需要はきわめて強く、約二百九十万の加入申し込みをかかえております。電電公社は、これを昭和五十二年までの七カ年計画で解消すべく、せっかく努力中であります。このためには多額の建設資金を要するものであります。ただいまもお話しになりましたが、やや金額をオーバー目に見ていらっしゃるようですけれども、それほどはかからないかと思いますが、八兆五千億円程度のものはかかる。今回の設備料の引き上げは、その一助としようとするものであります。
設備料の一般加入者負担を軽減せよとの御意見でありましたが、さきに武部君にもお答えしたとおり、五万円程度の負担金は、加入者の方々に十分御協力いただける程度のものと考えております。
次に、今後の急速な情報化に対処し、各省庁間の情報処理に関する政策の基本方針を統一し、かつ、政策を総合的、計画的に実施するために、基本法を制定すべきという御意見があることは私も十分承知しております。しかしながら、さきに武部君にもお答えしたように、情報処理は、わが国における新しい分野であり、かつ、きわめて広範な問題を含んでおりますので、今後、関係者の意見を十分聴取し、慎重に検討を続けてまいりたい、かように考えております。御了承願います。
また、その他の問題につきましては、それぞれ所管大臣から御説明申し上げますから、お聞き取りのほどをお願いいたします。(拍手)
〔国務大臣井出一太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X01219710226/10
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011・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 新井さんにお答えをいたします。
まず最初に、加入電話の値上げの問題についてでございますが、御承知のように電話の需要というものが、このごろはたいへん増加をしてまいっておるのでございまして、御指摘のようにただいまでも二百九十万ぐらいの積滞があるわけであります。そこで、これを解消するために、電電公社は七カ年計画というものをつくって、昭和四十六年度がその第一年度でございます。そこで、国の建設資金を導入するということもいたしておりますが、何としても受益者に御負担をいただくという点、できるだけ国は国で負担はいたしますけれども、ある部分は受益者にごしんぼうをいただくという立て方をしておるのでございまして、さっき総理も申し上げましたように、一つの電話を引くのに三十数万円かかっております。その上七万円程度のものが屋内設備でございまして、これに近い五万円程度のものを個人に御負担をいただく、こういう趣旨に出ておる次第でございます。
それから第二点といたしましてお答えいたしたい点は、従前からお申し込みについていろいろ特別の配慮をしてきて、いま言われますように、ある時点を境にいたしまして、それから先は急に値上がりが多くなるではないか、これがたいへん不公平だ、こういう仰せでありますが、これはどこかで線を引かなければならぬという性質のものでございますから、前回も同じように施行期日を定めて、その実施の日から値上げをしていただく、こういう仕組みでございまして、どうもこれは他に名案がなさそうでございます。
広域時分制の実施で、三分の問題にお触れになりましたが、これは大体先ほど武部議員にお答えをしたとおりでございまして、三分という制度、これが国際的にも、あるいは国内的にも定着しておると思うのでございます。その際、公明党においてお調べになった電話の時間というものはどれくらいかかっておるという資料をお示しになりました。これは先般、予算委員会でも私伺ったのでございますが、これは私のほうで調べておりますものと少し数字に差はあるようであります。しかし、これらはいずれ委員会等でこまかく分析をしてまいりたい、かように思う次第でございます。
それから、データ通信にお触れになって、この通信回線の開放の問題、ことに技術基準というようなものであまりにも権限が郵政大臣に集中して、許可、認可の事項が多いではないか、こういう御指摘でございました。これは、当初案をだんだん固めていく過程において、われわれも世論に聞くところがございまして、一つの基準というものは設けます。けれども、何もかも郵政大臣がこれを握って放さないのだ、そういう監督権を乱用するというふうなものではなくなりましたから、これはひとつ法案についてよく吟味をしていただけばけっこうだと思うのであります。
それからさらに、公社と一般民間との間に格差が生じはしないか、こういう御質問でございました。これはデータ通信に関する料金につきましては、公社の電気通信回線に民間企業等が設置する電子計算機等を接続して使用する場合の通信回線の使用料金も、あるいはまた公社が独自に、電子計算機や電気通信回線端末機器をみずから設置してサービスを行なうという場合、そのいずれもこれは郵政大臣において認可をする場合にあたりまして、公社と民間との間に差異をつけるというふうなことは全く考えておりません。すなわち、電気通信回線の使用料は、両者ともに専用の回線使用料または加入電話、加入電信の通話料、通信料と同額として定めるつもりでございます。
さらに、公社の行なう公衆電気通信事業は、いまお答えをいたしましたように、公社の独自のサービスとして提供するのでございまして、いわば、これは、このごろいわれるシステム産業という筋合いのものかと考えておるのでございます。しかしながら、今後は、通信回線を使用する新しい形態の電気通信の分野の発展が種々予想されますので、このような事業に対しては、十分対処していく必要があろうと考えております。データ通信は、電気通信及び電子計算機等の技術が統合して行なわれるものでございまして、公社は、これらに関する長年の経験なり、あるいは技術、要員等を持っておりますので、この能力を十分に活用して、そして国民全体の福祉にとって貢献をするように、こういう指導をいたしてまいる所存でございます。
大体、以上お答えいたします。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X01219710226/11
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012・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 新井さんにお答え申し上げます。
何と申しましても、これからの世の中は、これはもう情報化時代であります。その情報化時代の中にありまして、わが国におきましては電電公社が中核体をなしておる。その電電公社の使命ということを考えまするときに、電電公社のつくる長期計画、これは国家的に非常に重要なものである、かように考えておるのであります。
さようなことを考えますときに、これは公社であり、独立採算制でありますから、そういうたてまえを貫いてもらわなければなりませんけれども、政府におきましても、その長期計画に支障が生ずるというようなことになりますることは、これは絶対に避けさせなければならぬ、かように考えまして、できる限りの御協力をいたし、電電公社の使命達成に遺憾なからしめる、こういう方針でありますので、どうか御安心のほどをお願い申し上げます。(拍手)
〔国務大臣佐藤一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X01219710226/12
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013・佐藤一郎
○国務大臣(佐藤一郎君) お答えいたします。
時分制の採用が、直ちに全面的な実質上の値上げである、この断定はいささか過ぎるのではないかと私は思っております。先ほど調査の違いが議論になっておりましたが、公社の調査によりますと、今日大部分の利用者の実態から見ますと、実質的な値上げになるものではない、こういうふうに感じております。むしろ殺到しております通話需要の調整あるいは利用の合理化、こういうことがはかられますし、また、生活圏の拡大に伴って市外通話料と市内通話料の調整がはかられる。こういう意味で、料金体系の合理化という面を高く評価していいのではないでしょうか。公社は、この合理化のために、むしろ七十億円の持ち出しとなるわけでございます。そういう点から見て、私どももこの点はやむを得ないものと考えたわけであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X01219710226/13
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014・荒舩清十郎
○副議長(荒舩清十郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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015・荒舩清十郎
○副議長(荒舩清十郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時五十九分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
郵 政 大 臣 井出一太郎君
国 務 大 臣 佐藤 一郎君
出席政府委員
郵政大臣官房電
気通信監理官 柏木 輝彦君
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