1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十六年十二月四日(土曜日)
午前十時二十分開議
出席委員
委員長 床次 徳二君
理事 金丸 信君 理事 國場 幸昌君
理事 二階堂 進君 理事 湊 徹郎君
理事 毛利 松平君 理事 久保 三郎君
理事 細谷 治嘉君 理事 中川 嘉美君
理事 門司 亮君
天野 光晴君 池田 清志君
石井 一君 小此木彦三郎君
小渕 恵三君 大石 八治君
大村 襄治君 加藤 陽三君
木野 晴夫君 佐藤 文生君
佐藤 守良君 正示啓次郎君
田中伊三次君 田中 龍夫君
谷垣 專一君 谷川 和穗君
羽田 孜君 藤波 孝生君
三ツ林弥太郎君 箕輪 登君
武藤 嘉文君 村田敬次郎君
森 喜朗君 森下 元晴君
山下 徳夫君 豊 永光君
渡部 恒三君 石川 次夫君
川俣健二郎君 木島喜兵衞君
武部 文君 美濃 政市君
山口 鶴男君 伊藤惣助丸君
桑名 義治君 斎藤 実君
二見 伸明君 小平 忠君
田畑 金光君 東中 光雄君
米原 昶君
出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
外 務 大 臣 福田 赳夫君
文 部 大 臣 高見 三郎君
厚 生 大 臣 斎藤 昇君
通商産業大臣
大蔵大臣臨時代
理 田中 角榮君
運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君
労 働 大 臣 原 健三郎君
建 設 大 臣 西村 英一君
自 治 大 臣 渡海元三郎君
国 務 大 臣
(総理府総務長
官) 山中 貞則君
国 務 大 臣
(国家公安委員
会委員長)
(行政管理庁長
官) 中村 寅太君
国 務 大 臣
(防衛庁長官) 江崎 真澄君
国 務 大 臣
(環境庁長官) 大石 武一君
出席政府委員
内閣法制局長官 高辻 正巳君
人事院事務総局
管理局長 茨木 広君
総理府総務副長
官 砂田 重民君
防衛政務次官 野呂 恭一君
防衛庁参事官 鶴崎 敏君
防衛庁防衛局長 久保 卓也君
防衛施設庁長官 島田 豊君
防衛施設庁総務
部調停官 銅崎 富司君
環境庁水質保全
局長 岡安 誠君
沖繩・北方対策
庁長官 岡部 秀一君
沖繩・北方対策
庁総務部長 岡田 純夫君
沖繩・北方対策
庁調整部長 田辺 博通君
外務政務次官 大西 正男君
外務省アメリカ
局長 吉野 文六君
外務省条約局長 井川 克一君
大蔵大臣官房審
議官 前田多良夫君
大蔵省理財局次
長 小幡 琢也君
文部省初等中等
教育局長 岩間英太郎君
委員外の出席者
議 員 上原 康助君
議 員 安里積千代君
議 員 瀬長亀次郎君
沖繩及び北方問
題に関する特別
委員会調査室長 綿貫 敏行君
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委員の異動
十二月四日
辞任 補欠選任
宇田 國榮君 大野 明君
加藤 陽三君 渡部 恒三君
關谷 勝利君 小此木彦三郎君
田中伊三次君 羽田 孜君
武藤 嘉文君 森下 元晴君
同日
辞任 補欠選任
小此木彦三郎君 關谷 勝利君
羽田 孜君 田中伊三次君
村田敬次郎君 宇田 國榮君
森下 元晴君 武藤 嘉文君
渡部 恒三君 加藤 陽三君
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本日の会議に付した案件
連合審査会開会に関する件
沖繩の復帰に伴う特別措置に関する法律案(内
閣提出第一号)
沖繩の復帰に伴う関係法令の改廃に関する沫案
(内閣提出第二号)
沖繩振興開発特別措置法案(内閣提出第三号)
沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律
案(内閣提出第六号)
国家公務員法第十三条第五項および地方自治法
第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の
地方の事務所設置に関し承認を求めるの件(内
閣提出、承認第一号)
沖繩平和開発基本法案(細谷治嘉君外十六名提
出、衆法第一号)
沖繩における雇用の促進に関する特別措置法案
(川俣健二郎君外十六名提出、衆法第三号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/0
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001・床次徳二
○床次委員長 これより会議を開きます。
連合審査会開会に関する件についておはかりいたします。
ただいま本委員会において審査中の七案件について、内閣委員会、地方行政委員会、法務委員会、大蔵委員会、文教委員会、社会労働委員会、農林水産委員会、商工委員会、運輸委員会、逓信委員会及び建設委員会からそれぞれ連合審査会開会の申し入れがあります。これを受諾するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/1
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002・床次徳二
○床次委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。
なお、連合審査会の開会につきましては、関委員長と協議の上決定し、公報をもってお知らせいたします。
引き続きおはかりいたします。
連合審査会において審査の必要上、最高裁判長官指定代理者から出席説明の要求がありまし場合、その承認につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/2
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003・床次徳二
○床次委員長 異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/3
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004・床次徳二
○床次委員長 次に、内閣提出にかかる沖繩の復帰に伴う特別措置に関する法律案、沖繩の復帰に伴う関係法令の改廃に関する法律案、沖繩振興開発特別措置法案、沖繩における公用地等の暫定使用に関する法律案、国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の地方事務所設置に関し承認を求めるの件、細谷治嘉君外十六名提出にかかる沖繩平和開発基本法案及び川俣健二郎君外十六名提出にかかる沖繩における雇用の促進に関する特別措置法案、以上の各案件を一括して議題といたします。
この際、江崎防衛庁長官から発言を求められております。これを許します。江崎防衛庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/4
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005・江崎真澄
○江崎国務大臣 一言ごあいさつを申し上げます。
全くはからずも昨日防衛庁長官に任命をされました。新聞等では江崎元防衛庁長官と書いてございまするが、これはもう十年も前のことであります。その後国際情勢も著しく移り変わりました。特に、ただいま御審議を賜わっておりまする沖繩復帰の問題等、いろいろ大きな変化がございます。全くのしろうとでございまするので、特にまた会期の途中で交代いたしましたために、大まかなことはともかくとしても、細部にわたりまして御満足のいくような御答弁ができないのではないかといまから憂慮をいたしておるような次第でございます。
どうぞ今後とも格別の御支援を賜わりまするよう、幾重にもお願いを申し上げまして、ごあいさつにかえます。よろしくお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/5
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006・床次徳二
○床次委員長 この際、細谷治嘉君から発言を求められております。これを許します。細谷治嘉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/6
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007・細谷治嘉
○細谷委員 この委員会に付託されております法律案、この委員会では慎重に審議を尽くそう、こういうことで去る十二月の一日、二日と全委員が現地沖繩に参りまして、つぶさに沖繩の方々の御意見をお聞きした上で、委員会としてのまた国会としての役目を果たそう、こういうことであったのでありますが、けさの新聞を拝見いたしますと、総理は、二階堂理事に対して御苦労さんだと答えたあと、記者団にあんな公聴会は効果がないな、こういうふうに語ったと報道されております。お聞きいたしますと、総理は砂田副長官にわざわざ指示をして、沖繩の現地の調査に参った委員の出迎えのために羽田に派遣されたということだそうでありますが、このことばが事実とするならば、軽率のそしりを免れないと思いますし、またあるいは別に、効果がないなということについては何らかの総理としての意図があったのではないかと、こう思います。そのあとで、あるいはきのうの閣議において、閣僚は冗談といっても責任があるんだから発言は慎重にしなければならぬと指示をしておりながら、総理みずからがこういうことを言うことはまことに遺憾だと思うのでありますが、これについて総理のお考えを承りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/7
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008・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 私は皆さん方がたいへん熱意を持って沖繩にお出かけになり、しかも先島にまで渡られて公聴会を開かれた、そのことを高く評価しております。したがいまして、皆さん方がお出かけになった、さらにまたお帰りになる、こういうことでお出迎えをいたしたわけであります。
ところが、その皆さん方がお帰りになるまでの新聞の論調では、どうも行政協定、そのほうが強行採決をした後であまり効果がない、こういうような話が伝わっております。この……(「行政協定はおかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)行政協定はおかしいのですが、返還協定の強行採決の後のこの公聴会、これは時期を失しているんじゃないか、こういうような批判が出ております。このことは、皆さんもおそらくお出かけになってお聞き取りだったろうと思います。私はそのことはまことに遺憾に思う。皆さん方がこれだけの熱意を込めておやりになっているにかかわらず、さような批判が出ている、こういうことを実は私自身はあまり意には介しないほうではありますけれど、皆さん方の御熱意があるだけに、実は非常に意外な感がしておったのであります。
私は、そういうようなことも考えながらただいまのような発言をし、どうもそういう意味において、あるいはこれがいまのおしかりを受ける、軽率じゃないか、かようなお話が出ておるようでございますが、私自身確かにただいま言われるような点があった、このことを申し上げて、率直に軽率だというおしかりはおしかりとして十分謙虚に承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/8
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009・細谷治嘉
○細谷委員 新聞に書かれてあることについて、総理から別に意図はないが、そのことば自体は軽率であった、こうお認めになったわけでありますが、やはりこの問題は国会軽視、こういうことにもつながるわけでありますから、私から総理に申し上げるのはどうかと思いますけれども、総理みずからが閣議で、ことばは慎重にしろと言っているわけでありますから、こういうことばについては、総理もやはり慎重を要するんじゃないか、こういうふうに思います。
これに関連してもう一つ私が総理に伺いたい点は、私も詳しく調査したわけでありませんけれども、歴代の内閣の中で、改造されましてからの現在の佐藤内閣、すでに三人の人が更迭されております。このことは、新聞の論調でもはっきりいたしておりますように、それの大臣ばかりでなく内閣全体、したがってその首班である総理にも当然責任があるんだ、こういうことを新聞等も指摘しております。私もそう思います。この問題について総理はどうお考えになっているか、所信のほどを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/9
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010・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 私は、私自身の政治責任については、私自身十分考えておるつもりでございます。これは皆さん方の御意見も十分承っております。したがいまして、ただいまどうこうするということは申しませんけれども、私自身がその責任は私自身で解決する、そういう決意であることをこの機会にはっきり申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/10
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011・細谷治嘉
○細谷委員 おそらく、内閣始まって以来三人もの大臣が更迭したということは歴史にないことであろうと思います。総理もその責任は感じ取るということでありますから、私は、この問題についてきょうここでこれ以上申し上げませんが、内閣自体、あるいはその首班である総理の責任は重大だ、こういうことを指摘してきょうのこの場は終わっておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/11
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012・床次徳二
○床次委員長 この際、おはかりいたします。
議員上原康助君、安里積千代君及び瀬長亀次郎君から委員外発言の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/12
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013・床次徳二
○床次委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
質疑を続行いたします。上原康助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/13
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014・上原康助
○上原議員 やっと発言する機会が出てきたわけですが、この機会に、まず総理にあらためて御所見を伺っておきたいと思います。
私は、昨日来の議論をここで蒸し返そうとは思いません。しかし、西村前防衛庁長官の御発言、そして更迭、新しく防衛庁長官に任命をされたその前後、江崎氏を任命をしたその前後を受けての重大な国会でありますので、そのことが沖繩問題と十分にかかわり合いを持っておるという前提に立って、最初に質問をしたいと思うのです。
端的にお伺いをいたしますが、総理が西村前長官を更迭をしたその理由というものはどこにあったのか、あらためて明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/14
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015・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 御承知のように昨日の話で、西村前防衛庁長官の発言が不穏当であった、かように思うから、私どもも陳謝の意を込めていろいろ釈明をいたしたわけであります。しかし、皆さん方がどうしてもお聞き取りくださらない、大事な沖繩返還協定の、この委員会において、野党の協力なしにこの問題を単独でとやかくすべきものではない、かように考えましたから、皆さん方の御要望もいれ、私はどこまでも国会の運営を円滑にする、こういうことがその主眼でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/15
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016・上原康助
○上原議員 そういたしますと、西村前長官が行なった発言そのものが政治的に責任を問わるべきものである、不穏当であったというおことばをいまお使いになりました。そのことに重大な責任をお感じになって更迭をなさったのだ、軽はずみにも、重大な沖繩国会がいま開催中であるので、何とか沖繩国会を糊塗しようという立場で更迭をしたのじゃないということですか。その点を明確にしていただかないと、西村発言というのは単に防衛庁長官一個人の問題ではないと思うのです。先ほども端的な御指摘がございましたが、やはり内閣は全体として連帯して国会に責任を負わなければならない、その最高責任者である総理みずからの責任は一体どうなさるのか、そのことをいま国民は問いかけている。それを明確にしていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/16
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017・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 先ほどの話は、いずれ速記をよく御検討願いたいと思いますが、また私自身の政治責任につきましては、細谷君の御質問にはっきりお答えしたつもりでございます。これもまた速記を十分御検討願いたいと思います。(「本論に入れ」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/17
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018・上原康助
○上原議員 本論に入れという意見もあるわけですが、これこそが本論なんです。振り返ってこれまでの佐藤内閣の各閣僚の発言内容というものを私たちは十分検討しなければいかないと思います。そういう背景なり、政治姿勢というものが沖繩問題に対する佐藤内閣の姿勢として、自民党内閣の政権のあり方として出されてきているということ、私たちはこのことを糾弾をいたしたいと思うのです。
倉石元農相の憲法否定、いわゆる憲法のめかけ論の問題、小林元法務大臣の国会否認、西村前長官の国連否認のこういう発言、しかも今年になってからも四名の閣僚が辞任をしておる。そのお二人は失言によって辞任をせざるを得ない、七月の改造以降もう三名じゃありませんか。国連における中国問題をはじめ、これだけの政治責任というものを積み重ねておきながら、内閣全体として国民に信を問う、責任をとるという態度のないところに、私は今日の国民の政治に対する不信があらわれていると思うのです。沖繩県民も、こういう内閣で沖繩問題が処理されるというところに大きな不満があり、いろいろな要求が出てきている。これをただ一人の大臣の首をすげかえたからということで逃げようというお考えはまんざらないと思うのですが、あらためて総理の決意のほどを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/18
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019・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 先ほど細谷理事にお答えしたとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/19
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020・上原康助
○上原議員 細谷理事にお答えをしたというだけでは納得がいきません。私たちは沖繩問題を含めての国会論議の中で、やはりお互いの責任の所在というものを明らかにする。先ほど総理は、野党の協力なくして国会運営ができない、沖繩問題の審議ができないということをおっしゃった。そうであるならば、十七日のあの暴挙は何ですか。そういうことをやっておきながら、出ばなをくじいておきながら、野党の協力を求めるなんて、まさに権力意図じゃないですか。その面は先ほど来の御答弁では納得いきませんので、一体、総理はこれだけの政治責任に対して、どういう責任を総理みずからおとりになろうとしているのかをもう一度明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/20
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021・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えしたとおりでありますので、いずれ速記をよくお読みください。そのために速記がとってあります。記録がとってあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/21
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022・上原康助
○上原議員 だいぶ高姿勢で、総理のいまの態度なり、おことばには全然誠意というものが見られません。私は、そういう総理の高慢な態度、高姿勢というところに、やはり佐藤内閣の本質というものがあらわれていると思うのです。全然総理みずからの責任というものはお感じにならないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/22
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023・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 先ほど私は、私の責任については私が考えます、私が感じ取っております、こういうことを申し上げたのでございます。
それより以上を私にこの際に話せと、それは御無理というものです。幾ら野党と申しましても、そこまでお話しになるわけにいかぬだろう。また、私どもの政治のあり方について、これは所見がそれぞれの立場によって違うのですから、これはもう上原君のその立場なら上原君のような発言があるだろう、それは私は間違いだとかどうだとか申し上げるわけではございません。しかし、その御意見は御意見として謙虚に承っておきますということは、先ほど申したとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/23
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024・上原康助
○上原議員 別にことばのやりとり、あるいはくどくど申し上げようとは思いません。私がお伺いしているのは、これだけ国民が政治に対して——もちろんそれは野党を含めての問題もあるでしょう。私は野党の政治責任というのを回避しようと思いません。国連問題、中国問題、物価問題、公害、そして閣僚の辞任、そういう重大な政治責任を積み重ねておきながら、個々人の閣僚にだけ責任を持たして、総理みずから責任の所在を明らかにしようとしない、いずれ明らかにするというような、濁すところに問題があるということを強く指摘しているわけなのです。いま明らかにできないというのですが、いつ明らかにできるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/24
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025・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 その時期をお尋ねになりましても、私はお答えはできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/25
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026・上原康助
○上原議員 十分責任をお感じになって、誠意を持って国政に当たっていただきたいと思います。
そこで、防衛庁長官にお尋ねをいたしたいと思いますが、先ほど就任のごあいさつの中で、たいへん重要な時期に長官を引き受けてという謙虚な御発言がありました。これから沖繩問題を中心に、特にいま日本の防衛のあり方、あるいは国外から軍国主義の復活だというようなことで、いろいろ問題が提示をされておりますそういう重要な時期にあたって、わが国を取り巻く国際情勢、国内情勢を含めて、新しく防衛庁長官に就任をなされた長官として、どういう姿勢で、もちろん佐藤内閣、自民党内閣の政策の一環ですからある程度はわかりますが、長官個人のお立場でどう対処をしていかれようとしているのか、まずその所見を承ってから本論に入りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/26
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027・江崎真澄
○江崎国務大臣 日本を取り巻く環境は複雑でありますが、わが国はあくまで自衛に徹しまして、平和を追求して、豊かで、国際間においても信頼をされる国づくりに努力をしてまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/27
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028・上原康助
○上原議員 沖繩の復帰との関係において、防衛庁が従来とってきた施策なり方針に、何らかの変更を加えるお気持ちもございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/28
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029・江崎真澄
○江崎国務大臣 従来沖繩問題に取り組んでまいりました佐藤内閣の姿勢、また関係閣僚の主張等等を踏襲したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/29
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030・上原康助
○上原議員 佐藤内閣の姿勢を踏襲するだけでは問題解決ははかれないわけなんです。
そこで、私はきょうは公用地等の暫定使用に閲する法律案、この問題を中心に議論を進めてまいりたいと思います。
この件については、すでに本委員会なりで先輩委員の方々がいろいろと議論をなさっておりますが、私は、まず、公用地等のこの法案の名称そのもの自体に問題があるということを最初に指摘をしたいと思うのです。
一体「公用地等」の「等」というのはどういうものが含まれているのか、なぜあえて「公用秘等」としたのか、その面をぜひ明確に説明をしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/30
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031・江崎真澄
○江崎国務大臣 これは政府委員から詳細に答弁をさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/31
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032・島田豊
○島田(豊)政府委員 「公用地等」の「等」でございますが、これは、この法律案の対象になります土地が、いわゆる公用地だけでございませんで、公共用地もございますし、あるいは公企業体の用地もございますし、あるいは米軍に提供いたします施設、区域の土地もございますので、そういうものを含めまして「等」といたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/32
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033・上原康助
○上原議員 そういうごまかしはいかないのですよ。そうであるならば、じゃ、公共用地が幾らで軍用地が幾ら、その分類はどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/33
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034・島田豊
○島田(豊)政府委員 公用地は、たとえば自衛隊が使用いたします土地あるいは運輸省関係の航空保安施設、その他の国の使用いたします土地、こういうものが含まれるわけでございますし、公共用地は道路あるいは水道、こういうものが含まれておりますし、公共企業体は電気電力施設関係が含まれております。そのほかは米軍の基地でございまして、その一つ一つにつきましての面積等につきましては、これはいまちょっと簡単に申し上げられませんが、いずれ御必要があれば調査いたしまして御回答申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/34
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035・上原康助
○上原議員 またずさんな答弁が始まったわけですが、私がお聞きをしているのは、皆さんはあたかも、沖繩における公用地等の暫定使用というような法律のタイトルをつけ、名称をつけて、すべてが公用地あるいは公共用地、そういうものに使われているかの印象を県民や国民に与えようとしている。その意図が私はいかないというのですよ。これは明らかに軍用地じゃありませんか。その大部分はやはり米軍が継続して使う軍用地でしょう。本来からいうとこれは軍用地等の暫定使用。なぜあえてそこまで「公用地等」というようなことでやっているのか。この中で軍用地は一体幾らなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/35
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036・島田豊
○島田(豊)政府委員 軍用地の面積ということでございますれば、今回提供を予定いたしておりますところの施設、区域の提供予定面積は、二億九千四百五十五万九千九百平方メートルでございます。
なお、この法律案におきまして「公用地等」といたしましたのは、これはしばしばこの委員会でも論議がなされておりますように、従来米軍が使用しておりました土地につきまして、これを米軍に引き続き提供する、あるいは自衛隊が使用する、こういうものもございますし、あるいは従来水道、電気、道路その他に使用されておりましたものも、引き続きそういう同じ機能を果たすために使用するというものもございますし、こういうものにつきまして、これを一括してこの法案で規定をしよう、こういうことがその趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/36
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037・上原康助
○上原議員 一括したところにやはり問題があるわけなんですね。私はここで電気、水道とかあるいは道路の問題を言おうとしておるわけじゃありません。それは当然公共用地として、住民福祉の立場から考えても、もちろん接収その他の方法においては問題があるにいたしましても、公用地という立場での暫定使用なり提供というものは当然だと思う。やらなければいけない。しかし問題は、アメリカが不当、不法に強奪をした土地そのものあるいは現在配備をされていない自衛隊が、アメリカの目的に収用された土地を、この法律を押しつけることによって使用しようとしている。この二点を問題にしたいわけなんです。
防衛庁長官にお伺いしたいと思います。あるいは外務大臣でもいいです。沖繩県民がなぜこの公用地法案に大きな不満を持っているのか。この法律はどうしても通してはならないという強い要求がある。その心情なり要求というものは一体どう理解なさっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/37
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038・福田赳夫
○福田国務大臣 この公用地等に対する沖繩県民の気持ちは私もよく理解しています。しかし、一方におきまして米軍に基地を提供しなければならぬ。また自衛隊を配備しなければならぬ、そういうような要請もこれあり、ぜひともこの法律には御協力を願いたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/38
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039・上原康助
○上原議員 じゃ政府は、沖繩の軍用地がどのような経緯を経てアメリカ軍に接収をされ、強奪をされてきたか、その経緯について説明をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/39
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040・島田豊
○島田(豊)政府委員 この軍用地の取得に関する今日までの経緯につきましては、これはかなり長い説明を要するかと思います。ごく概略的に申し上げますと、当初一九四五年でございますが、四月一日に米軍が上陸をいたしまして、六月二十三日に御承知のとおりに、牛島中将の自決によりまして戦闘そのものが実質的には終了いたしました。そして沖繩が直接の占領下に入ったわけでございます。そしてその時点におきましては、住民の方々が山の中に疎開をされる、あるいは強制的に住所を追われると、こういう事態があったわけでございますが、その間、全島がほとんど軍用地といっていいくらいの状況にあったのでございます。そして終戦後一定期間は住民の方々も収容所に収容されたことがございまして、その後、逐次今度は特定の区域を開放されてその中に移住をさした、こういう状態が続いたようでございます。そしてその間に国際情勢の変化もございまして、膨大な軍事基地がつくられた。そこで住民の方々が、軍用地の土地代の支払いを要求し始められたころからこの軍用地問題が具体的に上がってまいりまして、昭和二十七年ごろから逐次各種の布令がなされまして、たとえば契約権に関する布令あるいは土地収用令あるいは軍用地域内における不動産の使用に対する補償、それからいわゆる黙契、この時代を過ぎまして、さらに昭和三十二年には米合衆国土地収用令が出され、そして地元の方々のたいへんな土地の適正な使用に関する陳情がアメリカ本国にも陳情団として行かれまして、その間にプライス勧告が出たりなんかしまして、そして昭和三十三年に土地政策会議というものが米国と琉球政府の間に持たれまして、この土地政策会議がしばしば繰り返され、そしてそこに方針が出てまいりまして、昭和三十四年の布令第二十号という形で、今日の土地の賃貸借あるいは収用に関する今日までの基本的な法令ができ上がったというのがごく簡単な経緯でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/40
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041・上原康助
○上原議員 いま大まかな概略が説明されたわけですが、そうしますと、終戦当時あるいは講和発効後から、布令二十号が制定されるまでの土地の収用なり接収の方法というものは、皆さんは、たとえば本土でいう成規の法の手続を経て接収されたものと見ておるわけですか。その間に接収された土地に対して住民は、沖繩県民はいろいろの要求なり反対意見を提出しております。布令二十号にまとめるまでの経緯というもの、しかもそれは戦時中でない講和発効後なんです。それは合法的になされたと政府は受け取っているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/41
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042・島田豊
○島田(豊)政府委員 まあ占領治下におきましては米側が軍用地に土地を使用いたしまして、それに対する借料も払われておらなかったという時期がございまして、それに対する地元からの借料要求というものが出てまいったのがこの発端でございますが、その後米側におきましても、その適正な賃借料を払うというための努力が繰り返しなされました。ところがその間におきまして、その借料が非常に低いというふうなことからいろんな問題が生起いたしまして、それに対しまして、米側も昭和二十八年の軍用地域内における不動産の使用に対する補償というこの布告第二十六号によりましていわゆる黙契、つまり米軍と土地所有者との間に黙契が成立をしたということでこの問題が一応処理をされました。しかしながら、その後におきましてもいろいろ地主の方々の不満がございましたので、それに対する——まあ一方におきましては契約を結び、一方におきましてはそれに応じないといいますか、契約が成立しない場合に吹きましては土地を収用するという両方の二本立てでまいってきておるわけでございます。その後この問題がさらに紛糾いたしまして、いわゆる土地政策会議というものが持たれ、これが三つの分科委員会に分かれましてそれぞれ詳細に討議されまして、両者間に一つの妥結を見た、その成果が布令二十号でございます。
そこで、いまのお尋ねの土地収用に関する手続でございますが、これはもちろんアメリカの施政権下における手続でございますので、わが本土に適用されております土地収用法、この手続の内容と比べてみますと、もちろん非常にそういう意味では土地収用法のほうがいろんな補償面におきましても手続面におきましても、厳格にその所有者の権利が保障されている、こういうことは言えようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/42
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043・上原康助
○上原議員 いまの御答弁についての議論はもう少し先に進めるとしまして、もう一度ここで政府の御認識をいただく意味において、先ほど若干説明があったわけですが、沖繩の軍用地、なぜこれだけ県民が強く反対をしているのか、結論から先に言うと、いまいみじくも本土の土地収用法のほうが補償面その他の面、手続面でいいと言ったわけですが、本土の土地収用法より悪いのが、いま皆さんが提案をしている法案じゃありませんか。あとでそれは結論的に議論をしたいと思うのです。アメリカのやった以上のことを皆さんいまやろうとしているんです、実際。これが何があたたかく沖繩を迎える心ですか。そこに問題があるということを総理もわかっていただきたいと思うのです。
まず沖繩の軍用地の問題は一九五〇年の七月一日、これは講和の発効の問題と関係あります。これを基点にして処理されてきたということ、この時点で布告二十六号賃借権いわゆる黙契というもの、講和発効前から米軍が継続使用してきた土地に対し、一九五〇年七月一日以降黙契による賃借権を定めたのが、これ。これで十分いかない。いろいろ問題が出て、さらに布令九十一号、一九五二年の十一月一日、平和条約後において新規に使用せんとする土地に対する任意契約による賃借権の取得を定めたもの。ここでも問題が出てきている。布令百九号、一九五三年四月の三日、布令九十一号による任意契約に応じなかった土地に対する賃借権の収用を定めたもの。布令百六十四号一九五七年二月の二十三日、上記いわゆる布告二十六号、布令九十一号、百九号による賃借権の一部が、布令百六十四号によって限定つき土地所有権または定期賃借の切りかえをやろうとした。さらに布令十八号一九五九年一月の十三日、布令百六十四号による限定つき土地保有権が布令十八号により定期賃借権に切りかえられた。(限定つき土地保有権の設定時点に遡及しての切りかえ)こういう経緯を経て、一九五九年二月の十二日に布令二十号、従来の布令、布告により米合衆国が使用してきたすべての権利が布令二十号による不定期賃借権または定期賃借権に切りかえられた。その後は一括して布令二十号の手続を経なければならないということになっている。
ほかにもたくさん経緯がございますが、時間がありませんからやりませんが、少なくともこういう経緯を経て、あるときはブルドーザーで銃剣で、焼き払ったりひき殺したり、そういう中で取り上げてきた土地なんだ。布令も何も法の手続を経ない。布告もそうなんだ。高等弁務官がぼんぼん発行する中で住民の生命、財産がみんな取られてきたのが、沖繩の土地なんですよ。こういう土地に対して私たちは、アメリカが不当に接収をした、アメリカ側がどう合法的であるといったって、こういう布令の中で合法もくそもあるもんじゃない。こういう経緯を経てきているから、沖繩の土地問題については十分な法の手続を踏んで、返還の時点においては、少なくとも地主個々の合意の上に立って土地問題を処理しなさいというのが沖繩の要求なんですよ。皆さんは、いまこの公用地法の中でこういう経緯をおわかりなのか、あるいはそれはアメリカの施政権下で行なわれたことだから、やむを得ないという立場でとらえようとしているのですか。この件については、総理の見解を賜わっておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/43
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044・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 沖繩の軍用地についての経緯、これは先ほど説明のあったとおりでございます。私もその事実を知らないわけではございません。問題は現在使用しておる土地、それをあるがままの姿で引き継ぐような方法はないだろうか、新しいものでなしにあるがままの姿という、そういうところにくふうが重ねられた、かように私は思っております。しかもこの方法が最善だとは思いませんし、これは暫定的なものなんだ、そういう意味で暫定的な立法措置だ、かように御理解をしていただきたいと思います。そういうところに沖繩同胞の非常な不満があり、もっと何か実情に沿った措置はできないだろうかという、そういうお気持ちのあることも十分わかっておるつもりであります。でありますから、いま国会で、本会議で、基地の縮小についての決議が行なわれた、そういうような点とわれわれは積極的に取り組むべきその立場にある、こういうことを考えますので、いまやろうとしておる公用地、この問題は暫定措置である、かように御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/44
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045・上原康助
○上原議員 全く納得のいかない答弁なんですが、一体あるがままの姿で引き継ぐというのは、だれに引き継ぐのですか。沖繩のいまの軍用地をあるがままの姿で引き継ぐ方法はないかということを考えてこういう法案をつくった、あるがままの姿の基地をだれに引き継ぐのですか、それをはっきりさせてくださいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/45
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046・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 いまアメリカの施政権下にあるものを日本の施政権下に移す、こういうことであります。それで日本のほうが表面に出て、そうして日本が基地区域を今度は安保の関係で米軍に提供する、こういう形になるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/46
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047・上原康助
○上原議員 私は、いま安保の問題を論じているわけじゃないんですよ。一体沖繩県民の私有財産をあるがままに日本が引き継ぐ、形式上はそうでも、アメリカにそのまま使わすということでしょう。安保条約があるからその形でいいということにはならないと思うんです、個人の私有財産というのは。われわれが議論をしているのは、アメリカの施政権下においてこのように不当な方法で接収をされた土地が、日本の憲法のもとに復帰をするという大義名分を立てておきながら、問答無用で県民の私有財産、しかも不当にアメリカが収用した土地をそのままの形で引き継いでいいのかということ、そこに根本的な問題があるんですよ、総理。しかも暫定とおっしゃいましたが、五カ年というのは暫定ですか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/47
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048・高辻正巳
○高辻政府委員 法律案の審議に当たりました者として、一応御質問がありました諸点について御説明を申し上げたいと思います。
まず、この法律がはたして必要であるかどうか、これについては、現に公用、公共用の用に供されているものでありますので、これがとたんにそういう用途に供されなくなったらどういうことになるかということをお考えいただければわかると思うのでありますが、中身についてはいろいろな評価があろうとは思いますけれども、政府としては、つまり法律案の提案者としては、やはりそういうものの公用、公共性というものは途中で中断されては困るという認識が一つあるわけでございます。それにしましても、こういう法律のやっかいにならずに、そういう公用、公共用の用途というものが引き続き中断することなしに継続していくということができれば、これは一番いいことでありまして、そのための努力は、政府当局からお話をしておりますように、所有権者の合意を得てその使用権を取得するようにいたそうということが第一の努力であり、それはまた法律案の第一条第二項に明記されているわけであります。
ところがそういうふうなぐあいにして、うまく中断することなしに使用できるということになれば幸いでありますが、そうでない場合も法律論的にはあり得るので、そういう場合のために、したがってごく一部といいますか、万一の場合に処してこの法律案が用意されておるということをまず御認識をいただきたいのであります。
それからもう一つ、それにしても五年は長いではないかという御議論があろうかと思います。この点についても、むろん短いにこしたことはない。まず第一に強制使用というようなことなしに済ませたいというのがほんとうの気持ちでございますので、五年というのも長いといえば確かに長い。しかしながらこの点についても、一口に五年と申しますが、法律案の中では、五年の中で「政令で定める期間」ということにして、できるだけ私どももさらに政令を審査いたしますが、その段階では、できる限りこれをやはり五年ということに画一的にしないで考えていこうという心組みでおります。それにしても五年というのは長いではないかという御議論もあろうかと思いますが、これは、とにかくよく例に出されるのでありますが、平和条約発効の際の措置としては、確かにもっと短うございました。これはしかし、当時の土地の提供、使用に供したというような状況は、すべて国がめんどうを見ておりましたということもあります。そういうものが、今度は遺憾ながら施政権が向こうにありますために、全然政府の手を離れて土地の使用関係が設定されておる、これが一つ。もう一つは、何せそういう土地のことでありますから、その所有者は居所不明という者も多かろうし、あるいは海外移住をしたということも多かろうし、そういう人たちをさがし求めて新たな契約を結ぶ期間もかなり考えていかなければなるまい。それから、日本の法令に従う成規の権原を取得するための手続、これもそう簡単にはできまい。そういうような、あげればおよそ三つぐらいの理由になりますが、そういうことで一応五年以内で政令で定める日という期間にいたしたわけであります。
一応この法案の審議に当たった経過について御説明を申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/48
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049・上原康助
○上原議員 誤解なさっちゃいかないので、私は短ければいい、長いから困るという議論をしているのじゃないのですよ。本質的なことを言っているのです、先ほどから。法制局長官に一点だけお尋ねしたいのですが、私はあなたに質問したくないのです、実際は。あなたは沖繩へ行ったことはありますか。それだけ聞いておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/49
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050・高辻正巳
○高辻政府委員 遺憾ながらまだ行ったことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/50
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051・上原康助
○上原議員 沖繩へ行ったこともなければあまりわかったふりをしないで、法律はあなただけが解釈するのじゃないのですよ。
それで、いま公共性の問題が出たわけですが、一体自衛隊が派遣、配備をする——現在沖繩には自衛隊は配備をされていないわけなんです。アメリカが収用した土地を自衛隊が継続して使うという場合、こういう法律のかっこうでできるわけですか。自衛隊の派遣は、やはり緊急性の必要がない限りできないと私は理解をするわけなんです。皆さんは、自衛隊の問題を出すとすぐ、日本の本土になるから、あるいは安保条約が適用されるからというようなことで議論をするわけですが、私は自衛隊そのものに根本的な疑問を持ちます。しかし、百歩譲って皆さんの議論の立場に立つとしても、自衛隊配備ということ、自衛隊が使用する土地というものは、これはあくまでも新規なんですね。それを従来アメリカが使っておった土地を横取りするかのようにぶんどるという、その法的根拠ということと、先ほど法制局長官も、いわゆる公共性の中断というものはいかないのだというようなことを言いましたが、中断することがあってはいかない。もちろん電気とか水道とか道路はそうでしょう。しかし自衛隊をいま配備をする、これを中断したからといって、沖繩の防衛そのものに何の影響がありますか。しかも、皆さんが出している資料においても四万、約五万近くのアメリカが現に駐留をしている。皆さんは野党の言うこと、あるいは私たちの、私の言うことに矛盾がある云々と言っているわけですが、あなた方が言っていることにも矛盾があるのだ。その点、あえてこの公用地等の暫定措置の中に自衛隊使用の分まで含めた理由というもの、自衛隊の配備というものは、あくまでも緊急の場合でない限り私はできないと思う。それについての説明をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/51
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052・江崎真澄
○江崎国務大臣 日本の国土になれば、これは当然政府として、その沖繩県なるものに責任を持つわけでありまするから、自衛隊を配備することになるのは、これは当然のことだと思います。しかもまた、なぜこれを公共用地として自衛隊が踏襲するのかという御質問でありまするが、自衛隊が任務とするところは、言うまでもなく国の防衛であります。それからまた、災害の救助、民生の協力等々でありまして、これは、日本の施政権が及べば当然自衛隊として県民に責任をもってこういった任務を遂行しなければならぬものだ。したがって、公共用地を踏襲するということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/52
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053・上原康助
○上原議員 江崎さんはハト派だと聞いたのですが、そういう御答弁をなさっていると、長くつとまらないかもしれませんよ。
私がお尋ねをしているのは、防衛論から言うと、そういう論理も成り立つかもしれません。一つの理屈かもしらない。まあ佐藤内閣ですからね。だが、そういう論があるにいたしましても、その自衛隊が使おうとする用地そのもののいわゆる収用の方法というもの、これはやはり憲法を頂点とする適正の法の手続を踏まなければ、私有財産の使用というものは、接収はできないわけでしょう。本土においては、じゃどういう方法で公共用のために供する土地は収用されているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/53
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054・高辻正巳
○高辻政府委員 仰せのとおりに、一般の場合について私有財産を公共のために用いるという場合については、憲法二十九条三項の規定にあるわけでありますが、むろんそれには、それ相当の手続が必要であることは言うまでもないわけであります。しかし、公共の利益のためにやむを得ない必要があるというときに、その公益上の必要性と私人が受ける損失との均衡を考慮しまして、妥当な範囲内で通常の場合に経由すべき手続を簡略化したり、あるいは省略化することは、前にもお話ししたことでありますが、国会の制定した立法の中にも、その例がないわけではありません。一番身近に、これは例にならぬとおっしゃるかもしれませんが、小笠原の復帰の際の立法もそうでありますし、また、現在通常の手続が規定しております土地収用法におきましても、緊急使用という条項がございます。これは百二十二条、百二十三条でありますが、公益のためにどうも免れないというような場合については、通常の手続によらずしてその土地を使用することができるという規定がございます。くどくどと申し上げる必要もないと思いますが、何と申しますか、すべての場合について公式的な手続が必要であるかどうかということになれば、それは理想であるにしでも、実際上の場合には、法律の認めるところに従って、そういう手続の簡略化あるいは省略化があるということを申し上げたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/54
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055・上原康助
○上原議員 法制局長官とあまり法律論争はしかくないわけですが、じゃあなたは、この公用地筆の暫定使用は、いまあなたが述べた本土法に比較して、本土法の範疇に入っているとお考えなんですか、それだけ確かめておきましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/55
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056・高辻正巳
○高辻政府委員 本土法の範疇に入っているかというお尋ねでございますが、お尋ねの趣旨、十分私理解できないのでありますが、本土法の、確かにこの法律はこの国会が制定してくださるとすれば、それはわが国の国法でありますし、その国津の中身は、いままでの例を若干申し上げましたが、そういうことに照らして、いままでと特にこれは変わった法律であるということにはならないということだけは申し上げられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/56
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057・上原康助
○上原議員 私は、法律はずぶのしろうとでわかりませんが、たいへん残念なことには、私は、伊藤内閣のいろんな政治責任なり、法律の誤りをおかしている最大の罪はあなたにあると思うのですよ。日本の法律はおれ一人が知っているというような立場で、そういう学問というのは私は要らないと思う。常識的に判断をして、国民なり常識のある人々がわかるような法律の解釈をしてくださいよ、そんな詭弁を弄して。だから、私はあなたは沖繩に行ったことがあるかと聞いたのだ。いま長官がおっしゃることは、この公用地法案は本土の土地収用法とも全然違う。地位協定に基づく特別措置法の附則とも違う。これはお認めになりますか、防衛庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/57
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058・江崎真澄
○江崎国務大臣 法律の解釈の問題ですから、関係者から答弁させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/58
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059・高辻正巳
○高辻政府委員 ただいまのことでありますが、確かに、土地収用法の手続の一般手法をとっていないことは確かであります。これは確かでありますが、先ほどからのお話を繰り返すことになりますが、この公共の必要性と私人の利益との調和を保つということについて、一般の場合については一般の手続がありますが、先ほど御指摘をしましたように、土地収用法にもそういう規定があるわけでありまして、今回の場合に特にどこが違うかといえば、現に公用、公共用の用に供されているものですから、それが中断されては困る。しかも、それまではわが国は施政権を持っていないということでありますので、やむを得ない方法として、これは小笠原復帰の際もそうでありますが、そうでない一般の場合についても、そういう手続の省略がある場合があるということを申し上げた。まさにその場合がこの場合に該当しておるわけであります。したがって、また、私が何かいかにも政府の政策の実現のためにのみやっているように思われているかもしれませんが、これも前にちょっと申し上げましたが、私どもはやはり立法の素材を国会に提供することによって、立法活動のお手伝いをほんとうにさせていただいているつもりでございます。したがって、法制局長官が見て、これはとてもいかぬというようなものは、法制局長官の手元でこれはなくなっておるわけのものであります。これを一々御説明する必要もありませんと思いますので、ただそれだけを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/59
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060・上原康助
○上原議員 さすがに苦しい御答弁だと私は受け取るのですが、端的にお聞きをしたいのですが、本土の土地収用ともいま長官も違うと言う。確かに一般的なあれはありますよ。私もいくらしろうとでもそのぐらいはわかる。あるにしても、収用の方法が違うということ、期間が違うということ、私は期間の問題はあとで議論をしたいと思ったのですが、地位協定に基づく特別措置法においても六カ月でしょう。土地収用法もその範囲以外はできないのじゃないですか、公共用地のは。なぜあえて本土においてはできないものを沖繩にはこういう、まさしくこれは憲法違反です、あなたが何と言おうが。成規の法の手続を経ずして私有財産というものが没収できますか、憲法の三十一条、九条に違反することは明らかです。あなたがどういう詭弁を弄そうが、われわれは一般的な通念としてはそうとしか受け取らない。しかもこの法律の中身というものは、本土においてはそういう手続では、自衛隊用地だろうが公共用地だろうがとれない、あえて沖繩だけになぜ法律を押しつけるのですか。そこに問題があるということを指摘をしているんですよ。これまでして、そのままの形でアメリカに基地を提供する、だから私たちはこれは反対なんだ。ここに根本的に、法律の提案のしかたの問題、中身が違っているということ。まさしく沖繩に対する新たな差別、平和時において銃剣を突きつけているようなものじゃないですか、この法律は。私はこういうものが権力によって、あるいは多数の横暴という民主主義、そのような方法で沖繩県民に押しつけられるということに問題があると思うのです。したがって、この公用地等の法案問題は、百歩譲ったとしても、本土における法の手続を踏むということがぎりぎりの線、そうして沖繩県民の個々の地主の意向というものを尊重する立場で法案をつくりかえる。何もなければ引き継ぐことができないとおっしゃるでしょう。理屈からいえばそうかもしれない。しかし、憲法を頂点とする法律を沖繩にかぶせるというならば、本土と異なった法律が沖繩に悪法として押しつけられるということに、ほんとうに問題がないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/60
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061・高辻正巳
○高辻政府委員 先ほどもお話がございましたが、道路等について自分は何も言っているわけではないといまもおっしゃいましたが、そういうことをおっしゃっております。それについては、手続面についてどうということをおっしゃるわけでもないようでございます。要するに、おっしゃっている趣旨は、特定のものについてはどうかというむしろ政策論ではないかと、私ども伺っていてそう思います。したがって、法律論を私がまたあらためて申し上げることは差し控えたほうがよかろうではないかと思いますので、問題は、むしろそういう政策上の当否の問題を論じながら、それを憲法論のほうに持っていらしているような感じを率直に持ちます。
憲法論につきましては、先ほど来お答えしているとおりで、公用、公共用の用に供されているものが現に向こうの施政権のもとにある、それを中断することは、やはり一般の公共の福祉に照らしてよろしくないという考えがもとにありまして、そういう場合については、それにふさわしいと申しますか、それに相応する手続をもって足る。これはいままでの例もそうであるし、小笠原の例もそうであるし、また土地収用法の通常の規定の中にも、そういう場面の規定がございますということを申し上げるにとどめたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/61
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062・上原康助
○上原議員 何も小笠原の議論をしているのじゃないんですよ。沖繩と小笠原とを比較すること自体に、あなたの頭の古さがあるのです。
ではお伺いいたしますが、本土においては自衛隊が使用する土地はどういう法律に基づいて収用しているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/62
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063・島田豊
○島田(豊)政府委員 自衛隊の土地の取得にあたりまして、地主との契約が成立しない、したがいまして、やむを得ず何らかの方法で取得しなければならぬという場合におきましては、土地収用法を適用して手続を進めることになります。ただ、本土におきましては、今日までこの事例はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/63
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064・上原康助
○上原議員 総理、いま施設庁長官は、本土においては自衛隊に供する土地については土地収用法を適用しているのだ、しかし実質的にはその適用はないのだ。先ほどからの議論でわかりますように、もちろん、現在の土地収用法の収用のしかたにもいろいろ問題が出てくると思う。しかし、私たちは社会生活を営むわけですから、公共用地、社会福祉という概念に立つならば、万やむを得ないで土地収用法を適用することによって私有財産を接収しなければならない。しかも、そこには成規の法の手続を踏まなければいかないわけなんです、憲法もある以上。収用法でもそうなんです。だが、この公用地等の中身というものは、まさしくこの土地収用法よりもっと悪い中身なんですね。本来からいうと土地収用法で沖繩のものもやらなければいかないんだ、ぎりぎりいったって。なぜあえてこの問題を、やれ電気とか水道とか道路を、あなた方も住民も使っているのじゃないか、そういう議論をしているんじゃないんだ、われわれは。アメリカが不当に接収した軍用地等、そのことを自衛隊まで先取りをする、あるいはカモフラージュをする形で使おうとしている。ここに問題があるということなんです。だから、この公用地法というものは、本土における法の実態なり手続面を含めて、全く異なった法律をいま沖繩に押しつけようとしている。これだけこの法律に対して、現地側なり野党各派が強く問題を指摘しているという点をおわかりになりませんか。どうしてもこの法律を、また十七日みたいに強行採決なさるんですか。——笑わぬでくださいよ。ほんとうに沖繩にこういう法律をあなたどんどん押しつけておって、あたたかく迎えます、豊かな沖繩づくりができますか。成規の法の手続を著しく逸脱をした法律であるということを政府はもう一度考え直して、この問題、この法律に対する新たな政府の見解というものをここで明らかにすべきだと私は思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/64
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065・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 私は当委員会にずっと顔を出しております。そうして皆さん方の質疑応答を聞いております。そうすると、ただいまの公用地等の問題につきましても、政府側が一貫して説明しておりますのは、まず契約が第一でありまして、あらゆる方法を尽くして契約をいたします。しかしながら、どうも沖繩の実情から申しまして相当の期間を要するという、これはたいへんに所有者の多いこと、あるいはまたその中には不在地主等もある、移住その他等でなかなか手続がむずかしいという、そういうことでありますから、本来のある姿は、どこまでも話し合いで納得ずくでやるということであります。そういうものができない場合に一体どういうことになるのか。これは、やはり継続してあるがままの姿でそれを引き継いでいこう、こういうことであります。しかも布令というような形で法律を出すわけじゃありません。皆さん方の御審議をいただいて、そうして日本の憲法のもとにおけるりっぱな法制定の手続を経て、ただいまのような処置をしようというのであります。私は、その点は沖繩の方もおわかりではないかと思っております。私どもが最初から話し合いは無用だ、何でもかんでも法律一点張りでやるというのなら、これは上原君の御批判もさることだと思います。しかし私は、ただいまのような手続をとっておる今回の処置、これについてなお御不満だということは、どうも私自身は理解に苦しむのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/65
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066・上原康助
○上原議員 どうも私がお尋ねをしていることには総理はちっとも答えていただけない。私のほうがむしろ理解に苦しんでいるんですよ。私が言っているのは、皆さんは、国会において審議をしたんだ、多数で可決したからそれが法律だということがいままでの日本の法律、悪いのは大体そうなっている。しかし、この法律の中身そのものが憲法そのものに違反をしている疑いが十分あるということ、土地収用法とも異なっているわけでしょう。なぜ沖繩にだけ本土と異なった、悪いものはみんな押しつけて、教育委員のごときは任命制にするなといっても、いや、本土と一体化だから押しつける。いいのは全部取り上げて、悪いのはどんどん押しつけていく。今後この法律というものが一つの前提となって、本土における自衛隊の使用の土地の改定問題も来年ある。場合によっては拡大解釈でどんどん拡大されていく危険性さえあるということ、このことを私は議論しておるのですよ。
じゃ、いま総理はこういう暫定措置を設けるのは、不在地主がいるとか、あるいは地主の中に海外移住をした人がいるからそれだけの時間がかかるのだ、私はこのことばも国民が聞いていると、あたかもそうかというような印象を受けるかもしれない。一体、じゃ、不在地主は何筆あるのか、地主が海外に移住して契約がむずかしいというのは、一体、いまの約三万八千四百の地主の中に何名いるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/66
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067・島田豊
○島田(豊)政府委員 本年の七月三十一日現在の地区工兵隊の資料でございますが、現在布令二十号によりまして、いわゆる土地収用をやっております筆数が八千七百三十一筆ございます。このうちに海外移住等で代理人の指定がないというものが二百六十八筆、居所不明が四百五十二筆、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/67
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068・上原康助
○上原議員 総理、いまの施設庁長官の御答弁でもわかりますように、八千七百三十一筆数、そのうちに海外移住者はわずかに二百六十八、不明の地主が四百五十二、一割にも足りないです。この人々は、私は契約の問題、皆さんがいう暫定の手続の問題にそんなに支障を来たさぬと思う。皆さんがこれだけの法律を提案をしている意図そのものは、まさしく総理が先ほどおっしゃったように、沖繩の基地をいまの姿で引き継ぐんだ、アメリカにそのまま使わす、自衛隊そのものも入れていく、そこに第一の主眼を置いておるわけでしょう。ほんとうに話し合いで解決をしようという意思があるならば、せめて本土において自衛隊に使用されている土地の収用のしかたなり、あるいは地位協定に基づく法律の附則等にきめられていることでやろうというのが、私はほんとうのあるべき姿じゃないかと思うのですね。そこを著しく飛び越えてこのような法律を出しているというところに問題があるということです。そうお考えにならないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/68
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069・島田豊
○島田(豊)政府委員 御承知のとおりに、今回の法案の第二条第一項にございますように、「それぞれ当該各号に掲げる者が、この法律の施行の日から当該土地又は工作物について権原を取得するまでの間、」暫定的に使用する、こういうものでございます。そこで、権原を取得するその方法としましては、もちろん、まず第一義的には地主との契約でございます。したがいまして、これにつきましては、今後私どもは、全力を傾けまして地主との契約交渉に当たるわけでございますが、しかしながら、中には先ほどの住所不明者あるいは海外移住者等を含めまして、契約がどうしても最後の日までにととのわないという場合が予想されます。一〇〇%地主との契約が成立するということは、いまそういう保障がございませんので、やはり一人といえども契約に応じられないというふうな場合に、それが基地の中の一つの土地でありました場合に、これをどういうふうにして取得するかということが問題でございまして、それは成規の手続は先生御指摘のように米軍の基地につきましては特別措置法、自衛隊の場合には土地収用法がございます。したがいまして、本来でありますればそういう手続を踏んで使用権を取得するというのが正当のあり方だと思いますけれども、この復帰の日までの間におきまして、土地収用委員会もございません米軍の施政権下のもとにおきまして、そういう成規の手続をすることができない。したがいましてそういう契約の不調あるいはそういう手続がとれないというふうなことの関係で、引き続きこれを使用する必要のある土地につきましては、やはり暫定的に使用期間を設けまして、その間にさらに引き続き地主との契約交渉を積極的に行なっていく、あるいはどうしても契約に応じられないという場合におきましては、成規の手続を踏むという考え方がこの法案の根底でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/69
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070・上原康助
○上原議員 本来であるならば成規の手続、いわゆる土地収用法とか地位協定に基づく特別措置法の手続を踏むべきだ、施政権が異なっているからできないとおっしゃっているわけですが、復帰の準備、六七年の佐藤・ジョンソン会談から一体化論をぶちあげて、ことばだけを先行させて一体化政策も何も準備をしてきていない。そこに大きな問題があるのじゃないですか。やろうと思えばできたんだ、この法律の手続によって。何でもあとで法律でもって押しつけてしばりつければできるという、そういうところに佐藤内閣の政治姿勢というものが出ているのですよ、これは。そういうような御答弁では納得しません。あくまでも、ぎりぎり譲っても、本土における収用法なり地位協定に基づく成規の手続をとる。そのことが憲法に規定されていることなんです。
そこで念を押しておきたいのですが、この公用地法案の中で、今後自衛隊が使う施設「区域というのは法律の第二条の一のハに規定されている一思います。それ以外にありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/70
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071・島田豊
○島田(豊)政府委員 御質問が第二条の第一項の第一号「引き続き自衛隊の部隊の用に供する土地又は工作物」こういうことでございますれば、まさにここに書いてあるとおりでございます。そして、了解覚書の中におきまして、C表に掲載されておりますところのもの及びB表に掲載されているもの、こういう施設を現実には引き継ぐということになるわけでございます。(「それ以外にあるか」と呼ぶ者あり)したがいまして、それ以外にはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/71
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072・上原康助
○上原議員 防衛庁長官にお尋ねをしておきたいと思います。
自衛隊配備の問題についても触れたいわけですが、時間がかなりきておりますので……。いま施設庁長官の私が尋ねたことに対しての答弁の中で、いわゆるC表の一部、B表、合意議事録ですか、それ以外は自衛隊が使うということはないんだという答弁でした。復帰後一年以内に六千八百名を配備をするという計画をお持ちだという。この法律の解釈からすると、かりに一年以内にアメリカと合意をした場合はもっと拡大をされる危険性があります、このハというのは。今後自衛隊が、現にアメリカが使用している施設、区域をアメリカと合意の上で使用する場合に——われわれは使用できないとこの法律から解釈いたします。しかもその範囲というのは、先ほど答弁がありましたようにC表の一部とB表の一部、それ以外にはないということをここであらためて確認をしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/72
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073・鶴崎敏
○鶴崎政府委員 ただいま御質問の、このC表あるいはB表に載っておる自衛隊の使用予定の施設以外に、将来自衛隊の使用するものはないのかということにつきましては、この公用地等の暫定使用に関する法律としては、ただいま申し上げたものしか予定しておりませんけれども、やはり将来の自衛隊の配備その他に関連しまして、現在予定しておるものよりも若干の移動ということはあり得ることかと思います。
さらにC表、B表に載っておりますのは、自衛隊が米軍から返還を受けまして、専用的に使用する施設について触れておるわけでございますが、それ以外にも、米軍の施設を地位協定の二条4項(a)によりまして共同使用するというようなことはあり得るわけでございますが、この件につきましては、今後のアメリカとの折衝の問題、こういうことになろうと思います。しかしこれにつきましては、いま問題に載っております暫定使用法にかけるというようなことは予定しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/73
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074・上原康助
○上原議員 政府の答弁というのはこれまで、念を押すと必ず問題が出てくるんです。この法律に限ってはB表とC表の一部だということなんですが、これは確かにそうなんです。書いてある。しかしいまの御説明からすると地位協定の二4(b)、二4(a)、それを拡大解釈することによって、現在アメリカが使用している土地というものもどんどん自衛隊にいつの間にか占有されておったということになりかねない。そこに実際この法律の新たな問題もひそんでいるんです。皆さんは、問題を詰めて提起をする形で質問をすると本音のことを言っている。この法律に限ってはないんだが、必要に応じて拡大をしていくかもしらない。じゃあ、この法律以外に何に基づいて自衛隊は使用していくということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/74
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075・鶴崎敏
○鶴崎政府委員 私の先ほどの御答弁がちょっと不十分でございましたが、共同使用等の問題につきましては、日本本土で現在やっております手続と全く同じ手続でやることになるわけでございます。そこで、地位協定の二条4項(a)によって米軍の施設を自衛隊が共同使用するという場合には、日米間で合意をしまして、地位協定に基づいて設置されております日米合同委員会で、日米間の合意を経て決定するわけでございますが、その以前に関係の所有者等とは事前のお話し合いをし、国有財産の場合には国有財産の審議会に諮問をして国内処置をとった上でやる、こういうことになっておりまして、これにつきましては、本土において現在やっておる手続と全く同様の手続で処理する、こういうことに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/75
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076・上原康助
○上原議員 また質問を続けますが、大蔵大臣代理に一点だけ。
ロンドンの蔵相会議において円切り上げの問題、あるいはアメリカのドル切り下げの問題が新しく出てきております。復帰前に私たちはそのことを予想いたします。変動相場制移行によって沖繩県民は大きな犠牲を受けた。さらにアメリカがドルを切り下げるという場合においても、現に通貨をドルにしている沖繩においては新たな問題が出てくると思うのです。だから現在から対策を立てないと、またどろなわ式に沖繩県民にすべて犠牲をおっかぶせる結果になる。その見通しなり対策についてどうお考えになっているか。この点だけ政府の見解を確かめておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/76
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077・山中貞則
○山中国務大臣 沖繩県民の生活の問題は、私が閣内で責任を持たなければならぬ立場にございますし、通貨等については大蔵省の専管事項ではございますが、いままでも十分に協議をしてきめてきております。すなわち、ただいま言われましたように、ドルそのものが切り下げられ、さらにまた対応して円が伝えられるような相当高いパーセントで切り上げられるという事態になりますと、現在、一応支出いたしました予備費は十億でありますが、さらにそれを復帰まで続けようといたしております金額の積算の根拠が、ドルの切り下げの部門と円の切り上げの部門とを対応して計算をされました幅というものが、本土の物資を八〇%使う沖繩の人たちの生活に与える影響というものに、積算の前提として相違がもたらされるわけでありますから、現在の四百四十品目に対する計算方式による復帰までの支出というものは当然それに対応して、沖繩県民からは生活上もあるいはその仕組みの上においても、何ら変化のない復帰までの足取りが歩めるように措置をいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/77
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078・上原康助
○上原議員 この件はきょうは深入りいたしませんが、ドルの切り下げ問題、円の切り上げ問題が現に実施された場合に、本土以上にまた沖繩に大きな犠牲がくるであろうということは当然予想されます。従来から事前に対策を立てないところに問題が出てきているということ、その点を私は強く指摘をしておいて、今後万全の対策をとって、今度こそ沖繩県民にほんとうに犠牲をしいない、その点をやっていただきたいということを要望いたしたいと思います。
そこで、先ほどの議論に戻りますが、今後自衛隊が使う土地については、日米合同委員会なりで十分協議をしてなさるんだということ、これは当然だと思うのです。しかし、私たちが懸念をするのは、こういう暫定法案という形で地主と契約をするあるいは強制的に収用をしていく、そのことは、従来アメリカの布令、布告によってなされたように、米軍の基地縮小というような大義名分——実態はそうでない。沖繩の基地そのものを自衛隊がどんどん拡大をして使用していく、あるいは共同使用していくことになりかねない問題もまたあるということ、これを指摘をしておきたいわけなんです。だからこそ、沖繩県民は、自衛隊配備とこの土地収用法に反対をしている。同時に、何回も申し上げるように、本土において法の手続を踏んでいる以外の収用のあり方というものには、百歩譲っても同意できないということをあらためてここで明確にしておきたいと思うのです。
そこで、いま一点この法律の関係でお聞きしておきたいのは、第四条に原状回復の義務というのが出ております。これは請求権の問題、復元補償問題、いろいろ関係するわけですが、一体この原状回復の義務というのは、どの起点をスタートにして原状回復するのか。おわかりですか。現在アメリカが使っているわけでしょう。もうアメリカは原状回復の責任はありません。日本政府が来年の四月一日なら四月一日、七月一日なりやった。そうすると、原状回復するのはかりに日本政府の責任であるとするならば、七月一日を起点とするとなると、前のことについては責任の回避になる、アメリカは施政権は日本に返したんだから。そういう谷間に沖繩はいままで突き落とされてきた。ここでいう原状回復の問題はどういうことなのか明らかにしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/78
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079・島田豊
○島田(豊)政府委員 この法案第四条の解釈につきましては、この原状回復の原状というものがどういう時期であるかということでございますが、これは、今後の暫定使用に関する法律案でございますので、この法律によりまして使用が開始される、そのときの原状、こういう意味でございます。しかしながら、先ほど御質問の復帰前における形質変更に対する原状回復をどうするかという問題でございますが、これは、今後地主の方々との賃貸借契約におきまして、その原状は、アメリカが使用を開始した当時の原状に回復をするということを契約書の中にうたうつもりでございますし、またこの暫定使用法によりまして使用します場合に、本人にそれぞれ通知をいたしますけれども、その中に原状回復についての内容を、つまり先ほど申しましたように、アメリカが現に使用開始したときの原状に回復をする、あるいはそれに必要な補償をする、こういうことを通知申し上げると同時に、具体的にこの米軍の基地が返還になりました場合に、その使用をさしていただいておる地主の方々との間に補償契約を結びまして、その間には遺憾のないように措置をする、こういう所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/79
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080・上原康助
○上原議員 この点と関連いたしまして、総理に一点だけもう一度確認なりお尋ねをしておきたいと思うのです。
いわゆる対米請求権の問題、これについては、せんだっての本委員会でわが党の堀委員のほうから、いろいろこまかい点まで御指摘があったようですからあらためては申し上げません。しかし、ここで私は沖繩県民の立場ということを踏んまえて申し上げておきたいことは、請求権というからには賠償、補償に対して要求する権利が認められて、初めて請求権ということになるわけですね。これまでのアメリカがやってきたことも見舞い金、日本政府も見舞い金、慰謝料とか、いわゆる沖繩県民の犠牲に対して、被害に対する正当な権利として認めていないというところに問題があるわけなんです。これをまずわれわれは、こうむった被害に対しては、加害者に対して請求をする、賠償を要求をする、あるいは補償を要求する権利があるということを認めたいということ、確認をしたいということ、それが一つ。いろいろ議論がされたようですが、たとえば、ここに私の住んでいる嘉手納村の一例だけ申し上げておきたいと思うのです。井戸汚染の問題なり未解決問題がたくさんございます。賠償要求十二万八千八百二十八ドル七十一セントに対して、わずかに一万六千二百九十ドル三十一セント、件数は二十五件、ほんとうに十分の一弱の補償しかアメリカはやっていないわけなんですね。泣く泣く受け取らざるを得ない。井戸は油で燃える、そういう不満というものがまだ残っているわけですよ。金を受け取ったから、不満でも受け取ったからもうそれで事が済んだというようなことではないのですよ。あるいはまた未解決の問題にいたしましても相当ある。こういう問題については、人身事故を含めて法的に立法化をする形で、今後復帰の時点なり、これから調査をして法的措置をやって、それに予算の裏づけをやる。もちろんアメリカが賠償すればそれにこしたことはないんだが、いまのけちなアメリカがそれ以上なかなか出さぬでしょう。この点についてあらためて私は、せめてこのことだけ総理の口から、県民が二十六年の間に受けたいろいろな差別や被害に対して、正当に要求できる賠償についてはやるんだということを、立法化をしてやるんだということを、この場で国民の前、県民に明らかにすること、せめてもの責任の一端を私は佐藤内閣が果たしたことになると思うのです。立法措置をやって、十全の対策をとるということをあらためてここで確認をしていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/80
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081・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 この前も外務大臣からお答えいたしましたように、実情を十分調査して、必要があれば立法措置をとる、こういうことでございます。ただいま見舞金という形で、本来あるべき権利、それを片づけられる、そういうところにもどうも不満がある。本来の権利なんだ、恩恵的なものじゃないんだ、こういうようなお気持ちもあるようでございます。しかしながら、私は、アメリカに対してこの機会に、いままでの対米請求権、これに一つの処理を引く。しかしこうむられた沖繩の同胞、それらの方々のその損害については、私どもがアメリカにかわって、いわゆる形は見舞金というようなことばを使っておりますけれども、その本来のあるべき権利のその態様において処理する、これが政府の考え方であります。しかしながら、どうも政府がやる限りにおいては、見舞いというそういうような恩恵的なことばしか使えない、こういうようなこともございますから、実情をよく調査した上で、なお立法的措置が必要ならば立法的措置をする。これは過日答えたとおりでありまして、今日も変わりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/81
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082・上原康助
○上原議員 ぜひこの請求権問題、県民のこうむったいろいろの被害、犠牲に対する補償を、私はやはり日本政府として、これだけは何も不当に要求しているわけじゃないわけですから、それさえも償えないというならば、それこそ沖繩処分どころか、沖繩の県民の心というものは永遠に報いられない形になりますので、あらためてこまかいことは申し上げません。総理の責任において、そのことはぜひやっていただきたいということを、強く要望いたしておきたいと思うのです。
そこで、時間も来て、たくさんあるわけですが、なかなか全部はできませんので、最後に外務大臣にお尋ねをいたしますが、毒ガス問題について一点聞いておきたいと思うのです。
政府は、これまで沖繩には毒ガスがないんだ、全部撤去をされたということをたびたび答弁をしてまいりました。九月の九日でしたか、最終的に運搬、撤去された時点でも、県民はこの件について非常に疑惑を持っております。まだ残っているのじゃなかろうか。その後いろいろ追跡調査なり関係者の意向なりを聞いてみますと、どうも残っている節が非常に濃い。現段階で毒ガスは一切ないという確証があるのかどうか、またそういう情報が最近新聞紙上なりにも出ているわけですが、政府はどういう対策なりあるいは米側にお聞きになったことがあるかどうか、まずその点から確かめておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/82
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083・福田赳夫
○福田国務大臣 去る三日のサンケイ新聞に、毒ガスがまだ撤去し切れないという記事があります。そこでさっそくアメリカ政府に確かめたところ、アメリカ政府では現地とよく打ち合わせたようであります、調べたようでありますが、そういうことは一切ありませんというはっきりしたお答えがあった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/83
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084・床次徳二
○床次委員長 上原君、予定の時間が参りましたので、簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/84
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085・上原康助
○上原議員 一切ありませんということで、すべてこれまでも逃げてきたわけですが、じゃ従来毒ガス兵器を扱ってきたいわゆる二六七化学中隊というのはどうなったのか、その点についてまずひとつ説明をしていただきたいと思うし、これと一七五兵器中隊との関係はどうなっているのか、政府はおわかりなのかどうか、説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/85
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086・福田赳夫
○福田国務大臣 その点も米側に照会したんですが、一七五武器中隊は通常兵器を取り扱う中隊であり、また二六七化学中隊については先般の毒ガス撤去作業終了直後解隊されたが、当時の現員百三十名のうち八十五名は九月二十七日ジョンストン島に移駐し、残余は一般兵たん支援及び保安業務要員が第二兵たん部に配置がえされたほか、一部はすでに本国に除隊、帰国いたしておる、こういうお話でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/86
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087・上原康助
○上原議員 どこかの新聞記事をそっくり写したような御答弁じゃないですか、それは。確かに二六七部隊は九月の二十七日に解隊しております。総員百三十名とおっしゃったが百八十名、そのうちの八十五人はジョンストン島へ九月二十七日午後五時に行っている。残りの九十五人は一七五部隊に編成がえになっているわけですね。そしてこの一七五部隊が従来毒ガス兵器を扱っておった二六七部隊のおるところに、いま読谷村の都屋から移転をしている。ここに疑惑の一つの問題が残されているということ。
さらに貯蔵庫の問題ですが、ここにいわゆるレッド・ハット・エリア、毒ガスが貯蔵されておった地域が全部示されております。確かに六十一のイーグルがある。レッド・ハット・エリアと書いてある、アメリカはわざわざ英語で。しかしこの太い線のほうは、それ以後新しく構築をした貯蔵庫なんですね。むしろふえているわけなんです。このような事実というものが最近発覚をしてきている。しかもアメリカは、当時全部毒ガスは撤去したと言ったんだが、調査したのはこの地域だけ、あとのほうは全然さわりもしない、ここにまだなぞが深まっているということ。したがってこれをぜひどういうふうになっているのか、政府として確かめていただきたい。
いま一つは貯蔵庫が新設されているという一と。われわれの推測、調査では、少なくとも三万トン以上の毒ガスが沖繩に貯蔵されておると思う。一万三千トンが運ばれたというのだから。半分しかまだ運ばれていないとわれわれは見ています。さらに十月の二十一日に天願桟橋からジョンストン島へ向けて毒ガスが運ばれた疑いが米軍資料によって出ております。荷積みをされている。この中身はホスゲンだ。また十月の下旬と十一月の中旬、辺野古から天願桟橋、知花彈薬庫地域に、毒ガス類に類似したものが大量に運ばれた疑いがあります。こういう事実が次から次と——われわれは何もただ問題を蒸し返そうということじゃないのですよ。核の問題にしても、皆さんはないないと言っているわけだが、幾らでも材料が出てもなおアメリカの軍事の壁によって点検ができない。しかし現地で働いている人々や沖繩の周囲の住民というものは、こういうことはわかるわけですから、一体どうなさるおつもりなのか。ここに私たちは——核抜きの問題についても総理や外務大臣あるいは政府の皆さんがいろいろ御苦労もあるでしょうが、言ってもなかなか信用できない。アメリカのやっていることに深い固い軍事のベールがあるということ、このことを強く指摘をしておきたいと思うのです。
委員長の時間の指摘もありましたので、これ以上は触れませんが、したがって、私はここで委員長にも要請いたしますが、政府に、この毒ガスの問題について——いま外務大臣は、アメリカとかけ合ってみたが、ないということを言ったんだが、これだけの事実を示されて、総合的にまず点検をやるということ。このレッド・ハット・エリアだけではなくして、一体、この新しくできた弾薬庫というのは、何が通常入っているのか、核兵器なのか、毒ガスなのか、あるいは辺野古の弾薬庫にしても、サブロックを含めての核があるということを指摘をしても、全然追跡調査しない。中身は毒ガスであるかもしれない、一部は毒ガスかもしれないという情報も入っています。こういうものを総点検するということを、ここであらためて私は強く政府に要求をいたしたいと思うんです。この問題については、理事会でもはかってぜひやっていただきたい。これに対する総理の明確な答弁をお願いしたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/87
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088・福田赳夫
○福田国務大臣 ガス倉庫を新設しているということ、これはいまお話がありました。また、この間新聞にもそういう記事があったように記憶しておりますが、これは照会してみましたが、さような事実はないというふうにいっております。
それからなお、いろいろな御指摘でありますが、資料をひとつ上原さんからもいろいろお聞かせ願いたい。そして、これはどうも調査してみる必要があるなというふうに考えますれば、私どもも適当なる措置をとります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/88
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089・床次徳二
○床次委員長 上原康助君、大体時間になりましたから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/89
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090・上原康助
○上原議員 総理に、最後にいま一度確かめておきたいと思います。
きょう公用地等の問題を含めていろいろ議論いたしましたが、残念ながら、私の納得がいく答弁はまだ出ておりません。しかし、これ以上きょうは深追いはいたしませんが、先ほど来言いましたように、沖繩の軍用地の問題というのは、その経緯、歴史、過程、そうして現在の状況を含めて再検討する余地がこの法案にあるということ。何度も申し上げるように、本土で適用されている以上の悪法を、沖繩に適用するということはまかりならぬ、これは常識論です。そんなむずかしい法律論は要りません。
そういう意味で、この公用地等の暫定措置法については、ただ期間を三年にするあるいは二年にする、そういうような問題じゃないということ、本質的な問題というものを解明をしていただきたいということ。
さらに、請求権の問題や、そのほか開発法の問題を含めて、きょうは触れられませんでしたが、あたたかく沖繩を迎え入れるということであるならば、態度で示していただきたいということ。ことばだけのやりとりではもういけません。県民が望んでいることは、具体的に、日本政府がどういう施策によって、沖繩の県民生活が維持、向上できるかというところにかかっているということ。そして、基地の問題も、ただ国会で決議をしたからなくなるというような簡単なものではない。そういう面を含めて、いま私が指摘をした毒ガス問題を含めて、沖繩問題がいかに複雑であるかということを、あらためて、あるいは御理解をいただいたかもしれませんので、それに対する総理の新たな御所見を賜わって、私の質問を終えたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/90
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091・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 いろいろ御意見を交えてのお尋ね、これに対して外務大臣その他からも、私は政府がほんとに誠意をもってお答えしたと思います。私自身が、やはりいまのお話で開眼した点もございます。したがって、ただいまのような問題について、なお調査を必要とする段階ならば、外務大臣もみずから進んで調査をいたしますと、かように申しておりますから、ただいままでのところでは、どうも上原君の積極的な御協力を得ないと、外務大臣も調査に乗り出すという元気はまだないようでございます。
私は、その他の問題については、どうも遺憾ながら、立場上の相違があり、見解の相違があると、かような点も多分にあるように思います。いわゆる議論をいたしましても、これは所見を異にする、こういわざるを得ないような点もあるように思いますので……(「事実問題だ」と呼ぶ者あり)事実問題ではなくて、法律問題が主のようでございます。事実問題は、先ほど冒頭にお答えしたように、これらはもっと調査をすることに御協力を願うというか、もっと資料についての——この場でなくともけっこうですが、もっとわれわれが調査する、それに必要な調査の資料の御提示を願いたい。これは外務大臣が答えたとおりであります。
その他の点は、どうも所見を異にしておる、こういわざるを得ないのではないか、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/91
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092・上原康助
○上原議員 いまの処理の問題ですが、資料を提供することにやぶさかではないものもあります。しかし、私が積極的に協力しないからといってできない仕事でもない、むしろ皆さんのほうが提示するのが筋だと私は思うんです。
あとの問題は、見解を異にするということでまたお逃げになるようですが、佐藤さんはもう長い間はおつとめにならないと思いますから、せめて沖繩問題については、これだけは石にかじりついてもやるという総理ならば、やろうと思えば、できないことじゃないと思うんです。もしもできたければ、さっさとおやめになって、責任を明らかにしたほうがいいかと思うんです。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/92
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093・床次徳二
○床次委員長 委員長に対する御要望は、理事会において善処いたしたいと存じます。
午後一時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
午後零時十七分休憩
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午後一時八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/93
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094・床次徳二
○床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。安里積千代君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/94
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095・安里積千代
○安里議員 二十何年にわたりまするアメリカの統治に終止符を打って復帰するというこの重要汁国会にあたりまして、おそらくその復帰を前提として沖繩からの国政参加も認めていただいたものだ、このように信ずるわけでございまするが、この沖繩に関しまする重要な問題、佐藤総理のおことばを引用しますならば、まさに戦後を終わらしめるという、このような重要な案件を審議する中にありまして、基本になりまする沖繩協定につきましては、御案内のような姿で採決され、あるいはまた議決されてまいりまして、せっかく沖繩から国政参加をいたしましたけれども、十分な発言の機会というものが得られなかったことは、単に私の責任を感ずるばかりでなく、沖繩県民の不満とするところであります。
そのことをまずあらかじめ申し上げておきまして、私は限られたきょうの時間の範囲内におきまして、あえて政府を追及するという立場でなくして、沖繩の気持ちと政府の皆さま方のお考えなさっていまするところの間には、相当の差があるのじゃないかというような感じをいたします。質疑を通しましてこれらのことが明らかになることによって、これからの諸対策についても誤りないことを期していただきますとともに、二十何年間のこの政治の中に政治の責任を持っておったアメリカ自身に対しても、日本の国会の名において、国会の論議を通じてアメリカにも大きな反省を求むるところの機会にしたい、このように思うものであります。そういう立場から政府とされましても、単にいろいろな御意見を固執することなく、アメリカに対してもものを言うという、独立国としての権威ある立場における御答弁をお願い申し上げたい、こういうふうに思うわけであります。
そこで、返還協定は、まさにアメリカのやりました政治に終止符を打ちまして、これが引き継がれて日本自体のこれからの新しい政治が始まりますその引き継ぎ書がいまの協定だった、こう考えております。
ところで、先ほどの上原議員の質問の中に、軍用地問題に関連をいたしまして、総理は、軍用地の現在あるままの姿を一応引き継ぐというおことばもございました。私はこのように見ております。確かに協定は、もしこれを事業にたとえますならば、長い間のアメリカのやったところの事業を今度は日本が引き継ぐ、この引き継ぎ書である。ところが、この引き継ぎ書というものが、総理も言われましたように、現在高をとらえての引き継ぎ書であるように私は感じます。しかし沖繩の立場からしますならば、現在高を押えての引き継ぎであってはならないのだ。二十何年間におけるアメリカ統治の中においていろいろなことが行なわれました。この分析の上に立って、これを総ざらいして、その上の引き継ぎでなければならない。帳簿じりだけ合ったから、これでもって引き継ぐということは安易にすぎるのじゃないか、こう思うわけであります。
そこで、まず第一に私は総理にお尋ねいたしたいと思います。
二十六年間におきますアメリカの沖繩に対する施政の成果と申しますか、評価と申しますか、これをどのように評価しておられますか、総理の見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/95
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096・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 沖繩の現地で、皆さん方が戦中戦後を通じてなめてこられた今日までの御労苦、これは私どもに想像のつくところではございません。戦中戦後を通じてさぞ御苦労が多かったろうと、こういうことは口で申しますけれども、みずから戦中戦後を経験された皆さん方のお気持ち、私どもとの間に相当のズレのあることは、これはもう私も率直に認めたほうがいいんじゃないか、かように思っております。
私は一九六五年に沖繩を訪問した。戦後の総理として実は初めてのことだったと思います。そうしてアメリカと交渉を始めましたのがそれから二年たって後だ。一九六七年、時のジョンソン大統領と話をした。そうしていわゆる沖繩返還協定、これに取り組める状態になったのが一九六九年のニクソン大統領でございます。私がアメリカと交渉を始めましたのが、いまの六五年以降であります。そのみずから取り組んだ返還協定、その取り組み方におきましても、私は万全だと申すわけでもありませんし、私だけの考え方だ、かように申し上げるわけでもありません。沖繩百万の県民、同時にまた一億の日本国民、これらがうしろにおればこそ、私はアメリカと交渉ができた、かように思っております。しかし、なかなかむずかしい状態のもとであったということ、これはそのまま私は皆さんに申し上げたいのであります。私は直接にも、すぐにも沖繩返還を交渉したかったのでありますが、なかなかそこにはいけなくて、まず小笠原返還と取り組み、同時にまた沖繩の祖国復帰、その端緒を得たのがジョンソン大統領との会見であります。
同時にまた、今日のこの沖繩返還、それを実現するために、変態的なことではありますが、まず皆さん方の沖繩の国会への御参加を願う、そうしてこの問題と積極的に取り組んでいただこう、こういうことで選挙が行なわれ、皆さん方が初めて国会に席を占められた。かようないきさつであります。私自身が取り組んでからでも、ただいま申し上げるように一九六五年以来多大の時日がかかっております。その点から考えると、戦中戦後を通じての皆さま方の御労苦、これはたいへんなことだと、ただ想像するだけであります。
ただこの際に、私は、皆さん方もそれを考えていただくと同時に、沖繩にあの強大な米軍基地がある、その基地を突き破って施政権を日本に返してもらう、これがいかに厚い壁であるかも、これまた御想像していただきたいと思うのであります。私は、皆さん方のうしろだてがあったればこそ、この返還協定ができたと思っております。しかしなお皆さん方は、今日返還協定、その中身がまことに不十分だ、不十分きわまる、かような御不満でございます。また私どもはそれに対して、不十分、御不満ではあるが、まず何よりも施政権を返してもらうことだ、そうしてわれわれの手によって今度は平和な豊かな沖繩県づくりにスタートしようじゃないか、かように実は申しておるわけであります。私は、経過を考えてみると、これは確かに歴史的なできごとだ、かように評価すべきではないだろうかと思います。
私は、アメリカの施政権そのもの自身が沖繩県の現状に対してどういう状態であったか、どういう貢献をしたか、かようなことは多くを申し上げる必要はないと思っております。私は、アメリカの状態のもとにおいては県同胞も不満ならば、日本国民も不満だ、だからこそ施政権を早く返して日本に帰る、祖国復帰、それを実現すべきだ、かようにわれわれは立ち上がった、かように思うのでありまして、いままでの施政権がたいへんりっぱなものならば、何にも申すことはないと思っております。私は、りっぱなものであっても、なおかつ同一民族が異民族に支配されることはがまんできない、こういう気持ちは残るでありましょうが、それにも増して、ただいまのような状況は、アメリカの施政権下では沖繩県の同胞の真のしあわせはない、かように考えるからこそ、ただいま復帰を急いでおる、こういう状態でございます。これは安里君からお尋ねになりましたアメリカの施政権そのものについての評価というよりも、私はそれが不十分だからこそ、ただいま施政権を返還してもらって、そうして日本国民が一体となって沖繩をりっぱにしよう、このことを考えている。いかにも他のことを申し上げるようで申しわけございませんが、私の考え方は以上のような点で一応概略は尽くされるかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/96
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097・安里積千代
○安里議員 総理が自民党総裁に立候補された当時から、沖繩施政権返還という問題を主張されたことはよく知っております。そして、今日まで具体的に取り組んでこられたということもよくわかります。それだけにまた、公約されたところの沖繩の返還問題というものがもしスムーズにいかなければ、佐藤総理自身も、自分の政治生命をかげるということばもありまするとおり、これはたいへんな問題であります。そういうところから、逆に申しますと、総理自身が熱心であり、公約された以上、この問題を達成しなければならないという、是が非でも達成しなければならぬという、事を急ぐと申しますか、そうするために、また逆の立場からしますならば、協定というものが、内容に不備もあるけれども、まだ要求すべき点もあるのだけれども、急いだといったような感じも私は受けるわけであります。
そこで、総理がるる述べられたのでありますが、私がいま御質問申し上げました趣旨は、アメリカの沖繩での施政の成果をどういうふうに評価するかということを申し上げましたのは、もう少し具体的に申し上げますと、総理は確かに共同声明の中におきましても、沖繩の果たしまするところの軍事的な役割りということの評価というものをニクソン大統領との間にもなされたはずであります。ですから、アメリカの沖繩の施政というものが軍事的に非常に高く評価された立場を総理はとっておられます。それはそれといたしまして、ではアメリカの施政権のもとにおきまする民に対する施政の責任として、アメリカはどのように尽くしてきたか。これを日本の立場から見まして、沖繩の立場から見まして、アメリカが施政権を握っておるという、その中に、アメリカはほんとうに施政権の責任を果たしたのか、アメリカの施政権の行使は正しかったのか、政治の原理に照らしても十分やったのであるかどうか、その民政に対する評価をどのように見ておられますか。私は、そのことはこれから復帰するにあたりましても、アメリカの責任を追及する立場において基本的な問題になると思うからであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/97
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098・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 多くを言わないで簡単に一言で申せば、占領の延長、こういう形で沖繩に施政権を行なっておった、かように私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/98
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099・安里積千代
○安里議員 そのとおりであると思います。
そこで、総理は六五年から沖繩の問題を具体的にやられました。沖繩の人々は二十何年にわたりまする復帰への戦いでございました。その中におきまして、沖繩県民のアメリカに向けまする、本土に復帰することに対しまする戦いの中におきましては、アメリカの施政のやり方というものが間違っておるのだという立場を強く堅持して戦ってきたのであります。これは私が申し上げるまでもなく、総理も御存じであると思います。一体施政権を持っておる——施政権ということばにも、私はこだわるわけでございませんけれども、司法、行政、立法の権利を持つという、これを施政ということばであらわし得るでございましょうが、施政権そのものとは、ことばの上だけでなく内容が違うはずであります。俗に施政権と言っておりますから施政権ということばを使いますが、アメリカが平和条約第三条によって沖繩に対しまする施政の権限を持った。そうする場合に、一体アメリカはどういう基本的な原則に基づいて沖繩を統治しなければならなかったかという点につきまして御理解があられましょうか。あるいは総理御自身のことばからでなくてもよろしゅうございます、アメリカは施政権を持っておる、日本にありますならば平和憲法のもとに統治されます。アメリカはアメリカ憲法でありましょう。では条約によって施政権を握ったアメリカは、沖繩に対する統治する原則というものは一体何だったのだ、どういう方向で政治をしなければならなかったかという、この原則、原理と申しますか、統治の原則、これはどういうものであったと御理解なさっておられましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/99
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100・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 私は先ほど、一言で言えば占領の継続だ、こういうことを申しましたが、そういう意味から、軍事的にたいへん沖繩を高く評価した、そのもとで施政権が行使された、かように思います。ここがわれわれの納得がいかないことだ。最近におきましても、沖繩からの産物についてサーチャージがかかる、アメリカの本土へ品物を出せば課徴金がかかる、こういうようなことは、大体施政権者アメリカ自身が、沖繩の処遇、扱い方についても、やはり本土の州とはどえらい差別をしておる、そういう証左じゃないかと思っております。私は、立法、司法、行政、その全責任を受け持ったアメリカとして、区別さるべき筋のものではなかったろうと思います。いわゆるキーストーン、太平洋のかなめ石、かようにはいわれましても、その他の面においてはやはり施政権で区別されることがあってはならない、かように私は思うのであります。
私は出かけてみて一番不愉快に思ったのはこの点であります。だからこそ何といっても早く祖国へ復帰してもらわなければならないのじゃないか。いわば、貧しくても楽しいわが家という歌がありますが、そういうような気持ちで沖繩の方々とともどもに手をとって建設をはかるべきだ、これが私の一九六五年に感得したそのものであります。あるいは表現が不十分かと思いますが、私はさように考えておるわけであります。また、そういう意味からもアメリカにいろいろ要求しております。
ただアメリカ自身が太平洋の防衛のかなめ石だ、こういうことだけに目を向けて、その他のことに十分の考慮が払われてない、そういうことが最も私の不満とするところであります。これは率直に申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/100
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101・安里積千代
○安里議員 沖繩のような統治の形態というものは世界にも例がないことでございましょう。したがいまして、一体どういう原則に従って沖繩が統治されるべきか、また統治する義務があるかということについては、そのものずばりの原則というものはないかもしれません。しかし、国連憲章七十三条にありますところの非自治地域に対する統治の原則というものは、アメリカが施政権を沖繩に持っておる、こういう場合において適用されるべきところの精神だと思うのですが、条約局長いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/101
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102・井川克一
○井川政府委員 御存じのとおりに、幸いに信託統治地域にならなかったわけでございますけれども、もし信託統治になれば、アメリカ側の意向では七十七条のb項ということになっていたわけでございますが、七十三条の非自治地域に関する宣言でございまするけれども、ちょっと私は、こういうものが適用にならないんではないかといま考えます。と申しますのは、この非自治地域と申しますのは、つまり発達の程度がおくれている地域ということを考えているわけでございますので、沖繩はそういう地域じゃございませんので、私いま、そういうふうじゃないというふうに考えております。なお研究させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/102
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103・安里積千代
○安里議員 ですから、私は初めから沖繩のようなものにぴたりと合うものはないということを申し上げたのであります。信託統治の場合であれ、そういう非自治領域の場合であれ、少なくともある国が他国の領土に対しあるいは地域に対して、施政権を行使する場合における原則というものがそこには示されておるはずであります。ぴたりと合いませんでも、その精神というものは、国際法上の精神というものは、原則というものは、沖繩の場合においても準用し、守らるべきものである、私はこう申し上げるのです。そういうふうにしなければ、アメリカは施政権を持っておるから、アメリカはどんなに原則なしに統治してよろしいというものじゃないと思うのであります。
そこで、そういう議論をしておりましたら時間がなくなりまするので、私申し上げまするけれども、当然施政権を持って、平和条約第三条によって日本にかわって、そうして日本の国民であり、日本の領土でありまする沖繩を治める場合におきましては、施政国アメリカの義務は、司法、行政、立法の権利を有するそのアメリカの義務は、国連憲章の七十三条のような精神、すなわち施政権を持っておる国は、その地域住民の利益を至上のものとして治めなければならない。ことばをかえて申しまするならば、施政権を持っておる国は、施政権国の利益を目的として治めちゃならない。治められている地域の利益を目的として治めなければならない。私は、この原則というものが、アメリカは沖繩の統治において当然履行すべき義務があったと、私はそのように考えるわけであります。この考え、間違いでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/103
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104・井川克一
○井川政府委員 すべて施政権を持っているものが、その施政地域の住民のために施政を行なわなければならないという意味でございましたら、安里先生のおっしゃるとおりだと思います。
ただ、直接七十三条を御引用になりますると、これはまだその自治に達していない地域ということでございまして、私は沖繩は絶対にそういうふうな地域でないと思いますし、この非自治地域だからということではかえってぐあいが悪いのではなかろうか。いずれにいたしましても、施政権者というものは、施政地域の住民に十分の責任をもって施政に当たらなければならないということは当然なことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/104
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105・安里積千代
○安里議員 私は、何も沖繩がそんな自治の云々をしておるものじゃございません。その精神というものは当然統治国の義務だと言うのです。
そこで、先ほど申しました、沖繩の統治に対してアメリカは二十何年間施政権を持ったけれども、一体何のために沖繩を統治したかというならば、アメリカ自身が軍事優先だといいました。軍事基地を保持する、戦争目的と申しますか軍事目的、つまりアメリカの利益を目的として治めた統治、そこから軍事優先ということばが彼ら自身生まれてきたのであります。ですから、沖繩のアメリカの統治の中におきまして、二十何年間というものは、アメリカ自身ですよ、平和条約の有効無効のことは別にいたしまして、少なくとも、施政権を持っておったアメリカは、沖繩において軍事優先の政策をとったということは誤りであったんだということをわれわれは認識すべきじゃなかろうか。そういう認識の上に立って、平和憲法のもとに返る沖繩というものを抱き取る気持ちがなければ、アメリカのおかしたあやまちを引き継がれることにしかならないと私は思うのです。それを、総理も、沖繩が依然としてやはりアメリカのおかしてきたあやまちの、軍事的重要な価値があるんだという立場において、これを引き継がれるという立場において、沖繩としては非常に不満が残るわけであります。
そこで、いまこれらの関係法案は、確かに復帰後におきまする沖繩の経済開発あるいはその他福祉のためにいろいろな配慮が払われておるということを私も認めます。財政上いろいろな配慮がなされております。それは何のためであったかというと、一口に申し上げますれば、アメリカの施政下において沖繩格差が生じたということがいえるでございましょう。本土とおくれた、非常な差が生じた。社会制度の上においてもあるいは経済の面におきましても、あるいは教育の面におきましても差ができた。だから、この差を復帰後において補っていかなければならぬ、引き上げていかなければならぬというのが、いまのこの関連法案のはずであります。
とするならば、なぜアメリカともあろう国が、沖繩を治めておって、このような姿で沖繩を返さなければならぬか。格差が生じたのはアメリカの政治が悪かったからなんです。悪かったということは、統治の目的が、住民の利益を目的として治めたのじゃなくして、アメリカ自身の利益、しかもそれは日本の国では許されないところの軍事目的のために使った。そのことがこのような格差を生じたんです。その中からいま沖繩を引き取ろうとするわけであります。
ですから、これらのことに対する認識というものを政府において持ってもらわないと、本来ならば、日本の総理に対してはアメリカは、佐藤総理まことに申しわけない、沖繩は返さなければならぬけれども、軍事目的のために使ったために住民福祉の点がおろそかになっちゃった、たいへん相すまなかったと言って、何かをつけて返してもらわなければならぬというような気持ちさえわれわれ持つわけであります。そういう気持ちで受け取らずに、しばしば総理がアメリカの好意でもって返してもらったんだという感謝的な気持ちをもってすることが、沖繩の二十何年間の復帰への戦いの気持ちにこたえるゆえんじゃないのであります。ものほしいからじゃありません。そういった線に立つ沖繩の県民の気持ちをくんで、そして協定を考え、それからの政策というものを考えてもらわなければいけないと思います。
ですから、これはアメリカの統治が大きな誤りであったんだ、この誤りからおかしてきた帳簿じりだけを引き継がれるようなことでは、沖繩の心はこの協定に反映してないんだ、こういうことを私は申し上げるのです。私が申し上げることが間違いでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/105
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106・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 安里君に申し上げたいのは二つございます。
私は、いまのアメリカが軍事優先の政策をとった、そこに県民が非常な苦労をした、格差もそこから生じたと、こういうことを言われますが、それもありましょう。そのこと自身がアジアの平和に一体どういうような役割りをしたか、これは考えなければならないと思います。同時に、そのことは日本の安全にはどんな役割りを果たしておるか、これをやはり考えてみる必要があるだろうと思います。私は大局から申せば、そういう点でこれはやはり役立っておった——過去がですよ、役立っておった、かように思うのでありまして、私は、本土自身がすばらしい経済成長をしたといいますが、これはやはりわれわれが安全なもとにある——その安全は日米安保条約というだけではございません。皆さん方が払われた犠牲、そのもとで本土は成長した、かように言ってもいいかと思います。それも大きな役立ちだ、かように思います。しかし、私はそういうことを考えながらも、そういう状態で皆さん方を犠牲にすることは、これはしのびない、だから早く施政権は返してもらいたいと、かように取り組んだのではありませんか。私が戦後は終わらないと言うのはそういう意味でございます。
もう一つの点、これは何か。それは、そういう状態を一気に解決はなかなかできないんだ。先ほどは壁が厚いということを申しました。一気に解決して、そしてきれいな、基地のない沖繩にして日本に返せ、こう言われましても、それは返らないんだ。われわれはもう少し時間をかけていただきたい。これが県民の皆さん方に私が申し上げ得る実は最大のものであります。
とにかくまず施政権を返してもらって、そうしてともどもにいまの基地の縮小その他について、われわれのいままで目を向けなかった点をひとつ今度は新たに民生の福祉向上、豊かな方向、沖繩県づくり、そういう方向に目を向けようじゃないか、こういうことでございます。過般の本会議において、いわゆる基地の縮小整理について取り組め、こういう決議まで受けておるのもそういう点でございます。でありますから、程度の差はございますけれども、いまねらっておることは大体同じような方向だと私はいわざるを得ない。そうして、実際問題はどちらが実情に即した行き方か。政府を鞭撻なさること、これはけっこうでございます。私は皆さん方の鞭撻なくしてはこの大事業はできなかった、かように思っておりますから、この上御鞭撻を賜わりたいと思いますが、いままでの意見の交換、そこらから見まして、どうしても一挙に基地のない沖繩をと、かように言われましてもそれはできないことだ。だから現状においては一応このままで引き継いで、そうして施政権下、いわゆる立法、司法、行政、その三権を日本の本土と一体のもとに置いて初めてあすの沖繩県ができるのではないか、このことを私はお願いするのであります。でありますから、いままでおっしゃったこと、私もそういう点を感じます。ただ、私は沖繩だけが犠牲を払って本土はぬくぬくと成長したんだ、かようには思っておりません。またそういう意味におきまして、十分皆さん方の御労苦をわれわれも考えなければならない、かように思っておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/106
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107・安里積千代
○安里議員 どうもかみ合いません。総理の沖繩返還に対しますところの基本的な政治姿勢と、沖繩県民が純真な気持ちから、そうして政治の道理に立って日本に返せと、苦しい中からもアメリカに対しても、ものを言ってきたその立場と、独立国日本の総理とされてのいまのおことばとは、どうも私どもの気持ちとそぐわないものがあります。
いろいろな申し上げたい点はありますけれども、私はそういう気持ちで沖繩を見ておられたのかと思うと、ほんとうは情けなくなります。しかし軍事優先ということがいかに——これはアメリカ自身が言っておったことなんです。またどなたがごらんになりましても、沖繩は占領以来軍事目的のために使ったということは否定できない事実であります。それが正しい統治のあり方であったかどうかということは、アメリカ自身否定しておるのですよ。日本の憲法に誇るべきものがあるとするならば、どなたも平和憲法だと言われるでしょう。ではアメリカの憲法に誇るべきものがあるとするならば何であると問われた場合に、これはアメリカのトルーマン大統領のことばをもって言わしめますれば、アメリカの憲法でもし世界に誇るべきものがあるとするならば、文官優位であると言いました。これは朝鮮事変の際に、マッカーサーが朝鮮に積極的に軍事行動をしようとしたことに対して、当時のトルーマンがこれに反対しました。聞かないところのマッカーサーを罷免いたしました。太平洋戦争の大功労者であるところの彼であり、おそらくアメリカ国民の非常な尊敬しておる人でありましょうけれども、トルーマン大統領は直ちにこれを罷免しました。そうして、そのときのことばがこのトルーマンのことばなんです。アメリカの憲法においてもし世界に誇るべきものがあるとするならば、これは文官優位である。文官優位ということは政治が軍事に優先するということなんです。ですから、トルーマンはあえてこの名誉あるところの元帥でもすぐ罷免をしたという措置をとったといわれました。ですから、ほんとうはアメリカの政治は政治が軍事に優先する、これがアメリカの原則なんです。日本が戦争に導かれた過去の誤りは、軍事が政治を振り動かしたからの過去の誤りであります。ですから、その政治の基本原則であるにかかわらず、沖繩においては軍事優先だといったことは、彼ら自身が沖繩の統治のまずさというものをよく自覚しておるのです。ですから、沖繩の論争の中におきまして、私どもは二十何年間このことを指摘してきたのです。これに対してアメリカは返すことばはなかったのです。一体、あなた方が軍事優先だというその施策のもとにあらゆる問題をやっておるけれども、アメリカの憲法の精神にも反しはせぬか、国連憲章の地域住民の利益を目的として治めなければならないという原則にも反するのじゃないか、こういう戦いを沖繩県民は支配者の中にありながらやってきたのですよ。それをわれわれの祖国である、これから帰る親元であるところの日本の政治の中において、何でおまえたちは二十六年の間政治を託したけれども住民福祉のためにはさっぱりじゃないか、こういう誤りをあなたおかしたのです、ですから、ある意味において、アメリカ自身そういう責任をとってもらわなければならない、日本にお礼を言って、済まなかったという立場でもって返してもらわなければならない。基本的にそういう強さを、そういう信頼を私たちは日本の政府に持ってもらいたい。そのことが今後沖繩に対してどうするかという責任もあるいは施策も、沖繩県民の気持ちをくんだところの政治が生まれてくると私は思うのです。それを、アメリカがやったことは、日本の平和の維持のために基地も公表したのだ、こういうようなお心持ちで沖繩を見られますというと、返還してから後もまたそんなことに使われるのかというような気持ちがくるのです。
総理、これは単に沖繩が返りさえすればいいというのじゃなくして、もっと日本の民主的な平和憲法のもとにおいて、二十何年間における異民族の軍事支配のもとにおいて苦しんできた、そうして叫び続けた沖繩県民の気持ちにこたえるには、この点を理解してもらわなければ、幾らいい政策をこれからとろうと思いましても、恩着せがましいことにしかなりませんよ、そういう気持ちで私はおるわけです。その気持ちが総理に徹していただかなければ、喜んで復帰するということに対して、われわれの気持ちにぴったりするものがないわけであります。あらためて私の言っておりますことが、沖繩県民の気持ちが、総理の気持ちに通ずるかどうか、承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/107
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108・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 ただいま言われる沖繩同胞の気持ち、これは切々として私の胸を打つものがございます。私は米軍の基地があったからそれでいいのだと、かように申しておるわけではありません。私は日本の安全にはやはりそれが役立っているのだ、かようなことは申しましたけれども、これあるがゆえに日本の安全が確保されたのだ、かように申すわけではありません。私どもはいま日米安全保障条約を結んでおりますのも、日本の自衛隊だけでわが国の安全が確保されるとは私は思っておりません。日米安全保障条約が必要でございます。足らないところはやはり補っていく、こういうことであります。
沖繩が日本に復帰すれば、施政権が返されれば、沖繩に安保の条約また関連取りきめ、それがそのまま適用されるわけであります。別なものがあるわけではございません。したがいまして、その意味においては沖繩の基地が、これは膨大なものでありましても、その扱い方はいままでのような自由使用はできないのであります。したがって、私はこの点で大きなワクがはめられる、かように考えております。また、そういう意味からもこの基地が必ず整理される、かように実は思っております。そういうことなど考えながら、とにかくただいまこの現状で、返還される現状において、基地そのものに直接手をかけるわけにいかないけれども、すでに手のかかった毒ガス撤去やあるいは核兵器のないこと、これは返還時においてはさようなものはないということ、そういう取りきめができておること、これ自身は申すまでもなく、いまの状態から非常な変化を来たすものであります。そうしてそれがさらに今後はその使用におきましても変わってくる、かように思いますので、私どもは本会議の決議、その趣旨を尊重すること、これもただいま申し上げるような中身の変貌があるからこそ、それが予想されるからこそ、私どもは実は賛成しておるのでありますし、またそれなくしては真の祖国復帰は実現しない、かように考えるからでございます。私の表現はまことにまずい点がございますけれども、安里君のいま指摘なさるようなそういう点に触れておると私は信じておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/108
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109・安里積千代
○安里議員 私はまだぴったりしませんけれども、こういうことで進めておりますと時間がございません。具体的な軍用地問題については先ほど上原君からもお話がございました。公用地のほうの問題を一応中止にいたしまして、私ちょっとお聞きしたいと思います。
沖繩の復帰にあたりまして、復帰前、復帰後におきましてもおそらくこの軍用地の問題というものが大きな課題に、問題になろうかと考えております。そこで、先ほど上原君の質問に対しまして、防衛庁当局のほうから、軍用地の、どのようにしてアメリカが使用してきたかということの経過について御答弁がございました。そこでもう一度少しはっきりさせておきたいと思いまするのは、戦争、つまり講和条約の発効前と講和条約発効後においてはアメリカの軍事基地を保有する権限には、これを境にしまして差ができるものだと考えますが……。これは外務当局でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/109
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110・井川克一
○井川政府委員 安里先生御指摘のとおりに、講和条約発効前と講和条約発効後のアメリカ当局の沖繩における地位というものは根本的に違うわけでございます。講和条約発効前は占領軍の権力として行使されております。講和条約発効後は平和条約第三条に基づく施政権の行使として施政を行なっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/110
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111・安里積千代
○安里議員 それでは、戦時法規に基づくところの占領国としての基地の維持、これは交戦国の権利として認められておるものだと理解をいたします。その場合の交戦国というのは、アメリカに対する交戦国は日本だと思いますが、それは間違いないと思います。そこで、交戦国に対するアメリカの軍権に基づく基地の保有であります。しかしそれはあくまでも交戦国に対する戦争遂行目的の範囲を出てない、こういう限度においてなさるべきものだと思いますが、違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/111
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112・井川克一
○井川政府委員 へーグの「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約」及びその付属規則に基づきますところの占領軍の権力として、平和条約発効まで占領に基づく権力を行使していたわけでございます。相手の交戦国と申しますのは、その沖繩が日本の領土でございますので、その領土を占領したということによって占領軍の権力というものが出てくるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/112
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113・安里積千代
○安里議員 私が実は明らかにしたがったのは、確かに日本に対する戦争国といたしまして、沖繩に対するアメリカの軍事基地は保持したはずであります。しかし、私は思いまするのに、日本はすでに八月十五日には無条件降伏をしております。そうしてまた武装も解除されております。としまするならば、それらの以後におきまして、いかにまだ講和条約が発効しておりませんでも、アメリカが沖繩に対して軍事基地を拡大し強化してきたことは、やはりこれでも戦時法規において許されるところの範囲のものでありましょうか。許されても、これは非常に逸脱したところの行為じゃなかったか。この点、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/113
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114・井川克一
○井川政府委員 先ほど私、ちょっと御質問の趣旨を取り違えたかと思います。八月十五日以降講和条約までの問題と、八月十五日以前の交戦状態における権力ということでございます。
いずれにいたしましても、占領軍の権力といいまするものは、講和条約発効まで、占領状態が続いているというときまで占領軍の権力というものがあるわけでございます。確かに仰せのように、特に第二次大戦後、その占領状態が非常に長く続いたということによって、交戦状態が終わってから、いわゆる、何と申しますか、一種の戦後占領的な観念というものがあるのじゃないかというような学説もございます。これをまた混合占領というふうなことばで言っている一人の学者もおりますけれども、しかし、それはやはりいままでの交戦法規及び占領法規というものを変える力——単なる学説でございまして、現在国際法を支配しておりまするものは、講和条約発効に至るまでの間、占領軍の権力が保持されるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/114
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115・安里積千代
○安里議員 こういう法律論をしておりますると時間がございませんが、私が申し上げたかったのは、実はこういうことなんです。
沖繩は、確かに日本に対する戦争の結果として軍事占領されました。しかし事実日本はもう全面降伏いたしましたし、武装も解除いたしました。日本自体としては、もちろんアメリカに対して抵抗する何らの力も擁しておりませんでした。したがって、アメリカに対しては交戦相手国である日本に対しては、もう沖繩において軍事基地を強化していく必要は何もなかったのです。それ以上に強化したということは、何らかほかの目的のため、交戦国としての日本に対するところの軍事基地の強化じゃなくて、ほかの目的のために沖繩の基地は講和条約発効までにおいても強化された。それは何かといいますと、朝鮮事変であったと思います。ですから沖繩の基地が、まず第一に敗戦後におきましても基地が強化されてきた。そうして今度は条約発効後におきましては、当然占領軍としてでございませんけれども、その後においていろいろなことで強化されてまいりました。そこでアメリカ自身は、平和条約発効後におきましては、沖繩の土地をどのような方法で使用するかということにつきましては、彼らがやはり民主主義の国であるだけに苦心をしていますよ。そのために賃貸借契約をしたとか、あるいは地料を一応取ったから暗黙のうちに契約ができたのだとか、あるいは強制収用するんだとかいろいろあの手この手を使ってきたというのはある程度良心的なやり方だったと思う。軍権に基づくところの権力を行使せずに、何とか合理づけようとしてアメリカはあくせくしてきました。しかしこれに対しても沖繩の人々というものは抵抗しました。そうしてあげくの果てが、御承知のとおり一九五四年からアメリカの方策としてあらわされましたところの一括払いなんです。そうしてアメリカの議会で取り上げられて、一九五六年に出されたのがプライス勧告で、そうして当時のレムニッツアー極東軍司令官、アメリカの既定の方針である、不動の方針であると決定されて実施したのが一括払いのあの方式であります。御承知のとおり沖繩県民は、島ぐるみの戦いをしてまいりました。いまこの公用地法案を見て、私はこの法律はなかなかうまくできておると思っております。事務官僚の方々はたいへん法律をつくるのがうまいのだと思っております。形は非常によろしいと思います。しかしこの中に流れておるものは、沖繩の人々が土地を守るためにアメリカの権力と戦って一括払いでもやられる。もしやられておったとしまするならば、地代を払ったから、アメリカがイエスと言うまでの間、地上地下に及ぶ一切の権利を取得する、実質的な買い上げなんです。こういう権利をもし取得しておったらたいへんだったと思います。だが、そういう戦いを続けました。
当時のは総理大臣は岸総理であります。そうしてそのときは、日本政府はアメリカに施政権を渡しておるから、日本政府はくちばしを入れたら内政干渉になるんだ、これが日本政府の沖繩の土地問題に対するところの考えであったのです。県民の島ぐるみの闘争、立法院の総辞職まで決意をした。そうしてついにはアメリカ本国に渡って、私どもアメリカ本国において、支配者と被支配者との間に外交交渉なんておかしな話でありまするけれども、テーブルをたたいて論争をして、ついにアメリカはあの考えを変えて、一括払いをやめさせたんです。そういう戦い、さらにどのような状況で沖繩の土地が取られたか。いまも、もうたくさんの例を申し上げますとあれでありまするけれども、土地を守るために沖繩県民が戦ってきたことを考えなければ、今度の公用地法というものは、法文の形においてはなかなかうまくできておりまするけれども、あの中には沖繩の血が通っていないんです。沖繩の気持ちはちっとも——冷たい法律にしかなっておりません。
伊佐浜というところを接収するとき、一九五四年だと記憶しております。一番初めには、そこはじゃまになるから、蚊が発生するから取り上げるんだというようなことでブルドーザーをもって——部落の人々は抵抗した。年寄りたちも、取るならば自分を殺してからとブルドーザーの前にすわり込んだ。県民大衆がこれを見守った。反対をした。主席、民政官が先頭に立って指揮棒をふるっておった。しかし、その無言の抵抗の前についにやれなかった。だが、翌日午前四時、目もさめないうちにばあっとやっちゃった。これが実態です。
伊江島におきますところの土地の取り上げもそうです。六十一歳になるおじいさんが、この土地を取られたらば自分は死ぬんだといって倒れるまねをしたところが、とらえて毛布でくるんで、飛行場の中に、にわかづくりの金網をつくり、飛行機でもって嘉手納飛行場へ送り、裁判に回した。その弁護に私立ちましたからわかっております。さすがにアメリカの起訴官が来ないで却下になりましたけれども、そうした中から守り続けてきた土地であります。また、そうして取られた土地であります。
それを一片の——アメリカのそういう権力でやられたものを、今度は日本の国会の名において、多数の名において、これをそのままアメリカに提供するというような、こういう姿の中に、沖繩県民の立場からしまするならば、実に冷い仕打ちだ、本来ならば、そんなに無理して取られた土地は、アメリカの統治の中にそんなに無理して取られたか、それじゃ復帰する段階になったらそれをアメリカから取り戻してあげよう、こういう気持ちがあらわれてこそ、私は親心であり、祖国に返る沖繩の人々の気持ちにこたえるゆえんだと思います。そうでなくして、けなげに戦って土地を守ってきた、あるいは戦ってきたところの沖繩の人々が、復帰する段階になるというと、その戦いで守ったところの苦労と申しますか、それはみんな何の価値もなく、逆に現在の姿でもって返されようとします。
沖繩県民がこの法案に対して反対する気持ちというものは、反対せんがための反対じゃないんです。そういう血の通ったところの法律をつくってもらわないというと、幾らでも多数決で、どういう法律でもつくれます。それが国家の名において、国民の名においてです。そして沖繩県民に押しつけられるということは、われわれとしては耐えがたいことであります。この法が憲法に違反するとかなんとかいうような問題もいろいろ論じられておりますから、私はそれには及びませんけれども、そういうこの法の中には、沖繩県民へのあたたかい血は流れていないし、また、日本の国民の沖繩を思う気持ちはあらわれてないんだということを私は申し上げる。この気持ちに対して、この軍用地に対して、どのように処理を今後されるつもりであるか、この点を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/115
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116・福田赳夫
○福田国務大臣 お答えをいたします。
安里さんのいま沖繩の地位に関する御所感、これは私傾聴いたしたわけです。先ほどから私は、総理と安里さんのお話を承っておりまして、これはどうもすれ違いである、断絶がある、こういうようなことでございますが、私はそう感じ取らなかった。総理は、沖繩が今日まで基地の島である、軍事優先の島であった、そういう点を率直に認められておるわけです。安里さんもそれを強調されておる。その基本的認識において、総理と安里さんとの間にどうも寸毫の違いもないように思う。ただ、とらえる施策、そこに問題があると思うのであります。
いま土地使用法案、これが提案されておる。これは土地に対する沖繩県民の考え方、これは総理ももう十分理解しておられる、私も十分理解しておるつもりであります。しかし、現実の問題といたしまして、わが国はアメリカとの間に安保条約を結んでおる。そして施設、区域を提供する義務があるわけであります。いま沖繩の返還が問題になっておるわけでありますが、この問題を一切ここで解消することができるかというと、現実の問題としてそういうことはできないんです、これは。ずいぶん政府当局においてもアメリカとの間に努力をした。したが、今日この時点において、にわかに米軍の基地を撤廃するということじゃ、大事な返還というその問題が、協定でいえば第一条という問題が解決されないんです。そこにむずかしい問題があるんだろう、こういうふうに思います。
しかし、この基地というものがどういうふうな経過を経てきておるか、それが沖繩の県民にどういう感触を及ぼしておるか、そういう点は十分私ども理解できまするので、とにかく先立つものは返還だ、そして返還後において、わが国が三権をこの島々の上に握った上に立って努力し、解決していく、これこそが私は現実的な行き方じゃあるまいか、そういうふうに思うんです。私は、その基調におきまして、心情におきましては、安里さんのおっしゃることを十分理解できるし、行き違いはないと思うんですが、どうも解決の方途において、私どもは現実的、具体的な体制をとらなければならぬ。そう一挙に沖繩の状態がこの条約において一変をするということは、これは現実の問題とすると非常にむずかしいという点も御理解願いたい、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/116
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117・安里積千代
○安里議員 すれ違いがだいぶあるんですよ、基本的な考えで。沖繩の施政権の基本的なあり方に対します基本的な問題からもすれ違いがあります。しかし、これも論争しておってもしかたがございません。
じゃ、こういうふうに承りたいと思いますが、今度の返還協定におきましてアメリカの膨大なる基地を認めております。提供することを約束しております。この提供される土地というものは、アメリカからの要求だったんでしょうか。それとも日本側が、ここは返還しろ、返せと言ったけれども聞かずに、アメリカがこれだけを要求した。だから認めた。なお、日本側が要求したけれども、アメリカがどうしても聞かずに提供する土地になったというのがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/117
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118・福田赳夫
○福田国務大臣 これはわが国といたしますと、なるべく多くの基地をこの返還の機会に返してもらいたいんだ、こういう方針をもって折衝に当たったわけであります。しかし、米国政府におきましては、そう急なことはできない、こういうようなことで、わが国の要請を受け入れないというものが相当たくさんあるわけであります。そういうことで、全部が全部お話のようにわが国が要求してできなかったというのじゃありませんけれども、その一部のものは、わが国が要求いたしましたが、できなかった、こういうふうな御理解でよろしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/118
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119・安里積千代
○安里議員 そうしますと、返還された部分あるいはそのかわりに自衛隊も派遣される、配備されることになっておりますが、この自衛隊が配備されることも、アメリカの返す一つの条件に入っておりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/119
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120・福田赳夫
○福田国務大臣 条件とは申し上げません。しかし、わが国はわが国として、沖繩が本土に返るということにつきましては、わが国の手で沖繩を防衛する義務がある。そこで、わが国としては防衛の計画を進めておるわけであります。自衛隊の配置であります。その配置に必要なる土地は確保しなければならぬ、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/120
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121・安里積千代
○安里議員 将来アメリカがこの基地を縮小する見通しというものがはっきりありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/121
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122・福田赳夫
○福田国務大臣 ただいま協定では、その付属文書でA、B、C表がきまっておるのです。それでA表において基地を提供する、こういうふうになっております。それで、その中に、中部地方、那覇周辺に基地が稠密化過ぎる、こういうふうな感触を持っております。また、どうもゴルフ場の問題とか、よく話題になるのですが、ああいう問題も早急に解決してもらいたいな、こういうふうに思っておるのです。そういうようなことで、具体的な幾つかの問題につきましては、ただいまも話をしておりまするし、これからも強力に交渉を進めていきたい、こういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/122
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123・安里積千代
○安里議員 将来アメリカが沖繩に対する軍事基地というものを撤退するという場合におきまして、そのかわり自衛隊の配備をさらに多くするという、この考えがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/123
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124・福田赳夫
○福田国務大臣 自衛隊の配備は、いまきまっておるところでは、B表、C表に掲げてあるとおりであります。しかし、今後新たに米軍が沖繩を撤退しますと、そういう際において、そのあと地を自衛隊が使用する、そういう場合はなしとしない、そういうふうに考えます。自衛隊が、自衛隊自体の必要から演習場を持ちたいというようなこともありましょう。そういう際に、米軍が撤退をする、そのあと地を使うというような事態があるいは起こるかもしらぬ。午前中の質疑でもありましたが、そういう際には、本土の土地使用の手続に従いまして土地の入手をする、こういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/124
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125・安里積千代
○安里議員 そうしますと、いまでも、この返還を機会に六千八百名からの自衛隊を沖繩に配備するということが相当問題になっておりまするけれども、アメリカの基地が縮小されるにつれて、自衛隊もまた沖繩においては増強されていくというような予想のもとにおいてなされ、基地縮小が達成できたとしても、自衛隊の配備というのが沖繩においてはもっと現在以上に、いま予定されておる以上に多くなるということを、いまこの場においてはっきり言われるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/125
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126・久保卓也
○久保政府委員 沖繩におりまする米軍の任務は、御承知のように、沖繩の防衛と極東の安全と平和ということであります。ところで、沖繩の防衛の任務は自衛隊、日本側が引き継ぐわけでありますから、それがわれわれの見方によりますると、最小限度見積もって約七千名近くのものということになります。ところで、極東の安全と平和の安定化の度合いに応じまして米軍の基地が縮小されることは予想されます。しかし、それは米軍のそういった極東の安全と平和の任務の縮小ということでありますから、それに伴って必然的に自衛隊が増強される、あるいは自衛隊の基地がふえるということではございません。外務大臣言われましたように、沖繩の防衛のために配置された自衛隊の演習場とか、あるいは波止場とか、そういったものの共同使用ということは予想されるだけでありまして、自衛隊そのものの増勢ということとは関係はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/126
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127・安里積千代
○安里議員 それでは今度の計画されておるところのこれ以上に、自衛隊の数、配備なんというものが将来に向けて増強されていくということは考えてない、こういう趣旨ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/127
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128・久保卓也
○久保政府委員 現在の極東情勢の見積もりからいいまして、私どもは現状程度で、つまり七千名足らずのものを計画している、その程度のものでけっこうであろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/128
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129・安里積千代
○安里議員 この法案の内容について、ちょっと二、三点お伺いしたいと思いますけれども、この法案は、復帰前に告示されるということが書いてございますが、何が告示され、その告示によってどういう効力を生じますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/129
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130・島田豊
○島田(豊)政府委員 この法案の第二条第二項の告示は、使用権の設定される土地等を具体的に明らかにして、あらかじめ関係権利者に知らせるという行為でございまして、私どもとしては、行政処分というふうに考えておるわけでございます。
そこで、この告示の方法につきましてはまだ未定でございますけれども、施設の区域、所在、要すれば地番、こういうものにつきまして、これを官報に掲示し、さらに適当な場所に関係の図書を縦覧をする、こういうふうな方法で、関係者が自分の関係しておる土地が使用される区域の対象に入っているかどうかということを十分確認できる、こういう方法でやりたいと思っておるわけでございます。しかしながら、今日まで契約によりまして取得をしておりますその範囲内のことでもございますし、今後も復帰の日までに十分話し合いを続けていくということでございますので、そういう手続の過程におきまして、所有者の方々は自分の土地というものがどういうふうになるかということについては十分知り得る、こういう機会があると思います。この告示は、一つの効力の発生要件と申しますか、そういう処分である、こういうものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/130
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131・安里積千代
○安里議員 どういう効力が生ずるのですか。そしてこの告示は、沖繩においてやるという意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/131
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132・島田豊
○島田(豊)政府委員 これは土地に関する第一条第一項によりまして、使用権の対象にいたします土地の区域あるいは使用方法等につきましての告示でございまして、その告示によりまして具体的な効力が発生をする、こういうことでございます。
それから復帰前のことでございますので、官報による告示ということでございますし、それが直ちに沖繩の場合に官報の効力が及びませんので、それにかわるべき方法といたしまして、関係図書を適当な場所において縦覧をして、関係者の方々がそれによって告知できる、こういう方法をとりたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/132
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133・安里積千代
○安里議員 この告示の効力は、沖繩には及ばないでしょう。この法律は、まだ施行前沖繩に及ぶはずはないのです。ただ、便宜的に告知する方法を沖繩においてやろうというのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/133
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134・島田豊
○島田(豊)政府委員 これは先般もお答え申し上げましたが、この告知の効力そのものが直ちに沖繩県に及ぶということよりも、むしろ潜在的効力と申しますか、一つの予備的な告知の方法でございまして、これによりまして、一つの行政庁の処分でございますので、関係者の方々は、復帰前といえども、この告示そのものに不服があるというふうな場合には、行政不服審査法あるいは違法であるということで訴えを提起される場合におきましては、これは行政事件訴訟法、これによりましてそれぞれの手続を踏み得る、こういうことにいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/134
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135・安里積千代
○安里議員 収用によって地主のそれにかわる代償と申しますか補償ですか、これは請求があった場合にはこれを払うということが書いてありますし、しかも、その払うのは政令で定めたところの額だということになっておりますが、この請求者が受け取った場合の法律的効果が何か生じますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/135
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136・島田豊
○島田(豊)政府委員 これは使用権を設定いたしました場合に、その後当事者、つまり国と土地の地主の方々との間におきまして、この損失補償についての十分な協議をいたすわけでございます。もしその協議がととのわない場合におきましては、土地収用委員会の裁決に付するわけでございます。その裁決によりまして補償額がきめられまして、それを受け取られましたら、この損失補償に関する行為はそこで完結。もし裁決がございましてなおかつ御本人がその補償金を受け取られない、それを拒否されるというふうな場合には、供託法による供託ということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/136
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137・安里積千代
○安里議員 そうすると、受け取りを拒む者は供託法による供託、これはそういう詳しいことは書いてありませんが、「関係人の請求があるときは、自己の見積つた当該年度に係る損失の補償の額を払い渡さなければならない。」と、こうあるわけですが、これは契約を承知してない人であろうとなかろうと、請求があればこの代償は払うという趣旨じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/137
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138・島田豊
○島田(豊)政府委員 これは御承知のとおりに、三条の三項にございますように、「土地又は工作物を使用する者と当該土地又は工作物の所有者及び関係人とが協議して定めなければならない。ただし、協議をすることができないときは、この限りでない。」そして「前条第一項の規定により土地又は工作物を使用する者は、その所有者及び関係人の請求があるときは、自己の見積つた当該年度に係る損失の補償の額を払い渡さなければならない。」これはあくまで協議が原則でございます。そこで、協議が進行中におきましてとにかく損失額を払ってくれという御請求がありますれば、一応国が見積もった金額を払いますけれども、しかし、それはあくまでその後の協議によりましてさらにそれが具体的にきめられる。その協議が成立しないときには土地収用委員会の裁決になる、こういう手続になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/138
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139・安里積千代
○安里議員 外務大臣にお伺いいたしたいと思います。
四月二十二日の沖特委で、私が沖繩におきまするFBISのことにつきましてお聞きしましたら、当時、外務大臣は、まだ実態を調査してないということでありました。しかし、これは私のほうから、国務省の関係機関であることや、あるいはあのことがあるために、付近住民の電気器具の使用にもあるいは電灯などの使用にも影響するようなものであり、当然これは復帰後においては存続すべきものじゃないのだということを申し上げたのでありますが、実態はまだつかんでおらぬということでございましたが、これはいつ実態が明らかになりまして、どうなりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/139
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140・福田赳夫
○福田国務大臣 今日までわかったところを申し上げますと、これは外国放送情報局と訳しておりますが、この情報局は、外国の通常放送の聴取を任務としております。これは沖繩に限られた存在ではなく各国に存在しておる。その運営の態様は、あるものは組織としては米軍から独立しており、あるものは米軍の機関として活動しておる、こういう状態であります。そこで、沖繩にあるこの機関は、本年六月一日に在留米軍の一部とするとの最終決定がありましたようです。手続が始まり、去る十月十四日に手続を完了しておる、そういう状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/140
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141・安里積千代
○安里議員 六月一日に最終決定をした、軍のほうの機関にするという最終決定がなされたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/141
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142・福田赳夫
○福田国務大臣 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/142
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143・安里積千代
○安里議員 それまでは国務省の機関であったのが最終決定をされて、そして十月十四日に——府とおっしゃいましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/143
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144・福田赳夫
○福田国務大臣 十月十四日にその手続を完了した、こういうことであります。六月は方針の決定であり、十月は手続の完了である、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/144
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145・安里積千代
○安里議員 そうしますと協定の調印後ですな、そうなりますね。協定の調印後において軍の機関になったわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/145
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146・福田赳夫
○福田国務大臣 方針は六月一日、それから手続の完了は十月十四日、そういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/146
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147・安里積千代
○安里議員 これは六月、調印前に問題になって、これは軍に入れなければならないということになって、そういう方針だ、これは腹の中じゃありませんか。そうして十月十四日に決定した。決定したものは協定の覚書やその他には全然関係ないはずなんです。新たにこれが加わるわけですか。そうして事実十一月一日に看板塗りかえておりますよ。十一月一日にしか看板塗りかえておりませんですよ。これは国務省機関であって軍の機関ではない。ですから、あの覚書のものの外になければならぬはずのものであるし、そうするとこの中に入るわけですか。入るとするならばA表のどこに入るのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/147
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148・吉野文六
○吉野政府委員 お答えいたします。
FBIS、すなわち外国放送情報局は、ただいま外務大臣からお答えになったとおり、六月一日に軍の施設とするということを決定いたしまして、その決定に基づきまして六月十七日われわれは協定を調印したわけでございます。そしてこの手続が最終的に完了いたしましたのは十月四日でございまして、そうしてさらにそれに基づきまして看板を塗りかえたのは、御指摘のとおり十一月一日でございます。なお、FBISの場所はボロー・ポイント陸軍補助施設、A表のボロー・ポイント射撃場、ここにございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/148
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149・安里積千代
○安里議員 そうしますと、いまおっしゃったのはA表でしょう。A表の中には説明があるはずです。しかも、このFBISの機関というものは、はっきりと前から一つの施設として名前もちゃんとあげられておったものです。公明党の調査書にもちゃんと出ておりますよ。ですから、A表の中には、その地域の中に、さらに従来の名前のところが表示されております。六月一日にそれがあるならば、あの覚書の中のA表の中に入っておらなければならぬはずですよ、入っておりますか。FBISのいまの通信部と書いてありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/149
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150・吉野文六
○吉野政府委員 FBIS、こういうようには書いてございませんが、ボロー・ポイント陸軍補助施設、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/150
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151・安里積千代
○安里議員 ですから、この問題については、私はもう追及する時間がございませんので、後の審議の場合に、どなたか、どうかこの点を十分御調査なさって、はっきりさせていただきたいと思います。
もう一つだけ私お聞きいたしますが、沖繩にあって本土にない一つの問題として私は前から提起いたしておりますが、二、三回にわたりまして明確な答えを得ておりませんでした。それは沖繩におきましては、単に軍用地だけではなくして、軍用地地先の干がたの管理権というものがアメリカにある。土地ばかりを支配しておったのではなくして、地先の干がたの管理権というものが布令によってアメリカがみずから管理をしておる。したがって、そこには埋め立てもできなければ、われわれが利用をすることもできない。そういうような干がたが多いし、しかも沖繩の場合には、施設はたいてい海に面しておる。この地先干がたが軍の管理になされておる。復帰後において、この管理権がどうなるか。当然これは消滅するものだということで申し上げたのでありますが、その後、この干がたの管理権は、復帰によりましてはどうなりますか。もちろん、どの表にもない問題でありまするけれども、どうなりますか、はっきりさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/151
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152・吉野文六
○吉野政府委員 A表の(注2)に「この表に掲げる施設又び区域のうちには、これらに接続する制限水域の提供を必要とするものがある。」と、こういうように書かれてございます。御存じのとおり、復帰後、米軍に使用を認める施設、区域のうちには、その機能達成上または保安上の必要から、当該施設、区域に接続しておる制限水域を認める要のあることは、これはわれわれとしても認めざるを得ないわけでございます。ことに、安里先生がいま御指摘のとおり、大部分の沖繩の施設は、残念ながら海に面しておる。したがって、それに接続する水域も、先方、米軍の使用に必要である、その機能達成上また保安上の関係から、われわれも認めざるを得ない。こういうものは、制限水域として、基地の提供とともに、われわれも先方と提供を合意せざるを得ないわけでございます。
なお、干がたにつきましては、御存じのとおり、これは、実は干潮の際に水上にあらわれる部分でございまして、すでに御指摘のとおり、アメリカの布令第三十四号によりまして、「琉球の沿岸にある国有財産で干満の潮水標の間にある部分及びこれに直接つながる国有の浜辺」、これは米側がかってに使っていい、こういうことになっておったわけでございます。しかしながら、今後この干がたも含め、制限水域につきましては、先方と、基地の提供の際に、その区域もはっきりきめまして、われわれとしては一なるべく制限的にこれを先方に提供していきたい。したがって、いままであった干がたが全部米側に提供される、こういうことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/152
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153・安里積千代
○安里議員 本土におきましては、安保条約及び安保条約の関連する取りきめが何の変更もなく沖繩に適用されるということがしばしば言われるわけです。これは、一体地位協定に関しまするどの部分に相当いたしますか。当然、地位協定が沖繩に適用になる、そのうちのどこに入りますか、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/153
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154・吉野文六
○吉野政府委員 第三条の議事録の4に「施設及び区域の能率的な運営及び安全のため軍事上必要とされる限度で、その施設及び区域を含む又はその近傍の水上、空間又は地上において船舶及び舟艇、航空機並びにその他の車両の投錨、係留、着陸、離陸及び操作を管理すること」、こういうことも合衆国がとることができる、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/154
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155・安里積千代
○安里議員 違うじゃないですか、地位協定の第三条でないですか。地域及び区域内における権利等、それは「施設及び区域への出入の便を図るため、」ですよ。こういう出入りに必要な範囲内において、こういう領水を含む隣地は提供することができるというのがあるんであって、この協定の中において、(注2)においてばく然とこのようにしておる。しかも、これは非常にインチキだと思うことは、もう時間がありませんから私はこれ以上申しませんけれども、「必要とするものがある。」と、非常にばく然たることばを使っております。しかし、この間も指摘いたしましたように、原文は、必要と訳すかどうかわかりませんけれども、リクワイアということばを使っておりますよ。要求されるものがあるということばですよ。だから、(注2)によりましては、アメリカ側から要求せられるものがある。要求せられれば、これは承諾しなければならない。しかも、それは、日本本土におきまするような領水とは違って、非常に広範なるところのものがここに書かれております。こういうことで、私は、この軍事基地の提供というものにつきましては、この公用地の法案とも合わしまして、沖繩の問題の場合におきましては、本土と違った、いろいろな姿で沖繩に臨んでおるということがうかがえるのです。これにつきまして、何か釈明することがありましたら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/155
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156・吉野文六
○吉野政府委員 先ほど第三条に関する合意議事録の4ということを申し上げましたが、水域のうちの大部分のものは施設、区域それ自体、こういうことになるわけでございますから、したがいて、地位協定の第二条の一項(a)に基づきまして、わが国はこれを施設、区域として提供する、こういうことになるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/156
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157・安里積千代
○安里議員 私は、限られた時間で、あとありませんけれども、残念ながら、この沖繩関係協定をはじめ関連法案につきましても、不十分ながらいろいろ述べたわけでございます。沖繩の、二十何年間復帰を叫び続けてきましたその叫びの——なるほど、返ることはけっこうではありますけれども、そのことのために沖繩に新しい足かせ、新しい負担、そうしてそれを補うにいろいろな手ももってなされてはおるようでございまするが、沖繩県民の気持ちをほんとうに正しくくんだものではないと思っております。
実は、きょうは、いまの予算の措置の問題につきましてもあるいは教育関係につきましても、いろいろと御質問を申し上げたかったのでありまするけれども、その意を得ません。たいへん不十分ではありまするけれども、少なくとも私は、総理が、沖繩県民の復帰の切実な要求と、いかにアメリカの間違った政治の中において戦い続けてきたか——土地問題であれ、人権問題であれ、労働問題であれ、あらゆる問題において戦い続けてここまできた、その中身に対しまする配慮というものが非常に足りないんじゃないか。今後の措置につきまして、その点を念頭に置かれまして、単に、沖繩が返ってこなければ気の毒じゃないかというような、そういう安易なあるいは恩恵的な立場じゃなくして、真に沖繩県民が平和を求め、祖国へ返る純真な熱情にこたえる、その態度で対処してもらいたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/157
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158・床次徳二
○床次委員長 次に、瀬長亀次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/158
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159・瀬長亀次郎
○瀬長議員 私は、最初に、総理に要請したいと思いますが、いま委員ではありません。委員外発言ということになっております。あの一番すみっこで、佐藤総理は見えなかったと思うのです。沖繩の県民の声を聞こうという場合に、委員の席からはみ出させようかなあ、どうかなあといったようなかっこうで向こうにしつらえられておる。したがって、要望といいますのは、これから委員会も継続される、その正式な委員にしてほしいし、本会議も開かれるだろう、こういった場合でも、沖繩選出の議員をむしろまっ先に質疑に立てるということが、特別選挙法に基づいて選挙された沖繩県選出議員に対する誠意ではないか、私はそう思う。佐藤総理は自民党の総裁でもある。したがって、そういった意味でも、その点をはっきりしてほしいと思います。
最初に申し上げたいことは、十一月の十七日、沖繩県民が予想もしなかったいわゆる強行採決なるものが行なわれた。これはファッショ的暴挙であると私は思うし、しかも十八日には、私を含む安里議員二人が質問をすることになっていた。これは封殺された。そうして、この十七日に採決されたというのが、二十四日の本会議で、またあのような形で衆議院から参議院送りになった。これは実に議会制民主主義の乱暴なじゅうりんである。問答無用である、撃て、これは私非常に危険性を感じます。五・一五事件でありましたか、そのときは犬養総理、しかも青年将校なる暴徒が問答無用、銃弾を浴びせた。今度は立場をかえて、総理自身が問答無用である。
総理は、沖繩県民に対して、あたたかく迎えたいと言っていた。このことばがいかにうつろなものであり、白々しいものであるか、はっきりわかる。あたたかいものではなくて、身を刺す氷が投げつけられた。問題はここにある。したがって、こういったような問題につきまして、佐藤総理は、再びこのような採決でないようなものを行なわせない保障をきょう具体的にその方針を述べてほしいと私は思います。
この問題につきましては、この前現地へ行きました佐藤総理の属する自民党の支持者すら、協定賛成であるといったような人すら、あの方法については、これはたいへんなことをやったなという疑問を持っております。こういった人々にも答えなくちゃいけない義務があると考えます。
もう一つは、私も含めて沖繩県選出の議員、きょうだけではなしに、これから委員会に正式に出席して、発言の自由を保障するという自民党総裁としての御意見を承りたいと考えます。
大体最初に以上のようなものに対する総理の考え方をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/159
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160・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 お答えをいたします。
皆さん方がアメリカの施政権下にありながらも、わが国の国会で発言の機会が与えられた。そういう意味で、祖国復帰よりも一足先に国会に議席を持たれたこと、これは申すまでもなく、沖繩県民、同胞の声を伝えていただきたい、こういうことでございます。
また、今回のこの国会は、沖繩国会といわれております。さように考えますと、何よりも皆さん方に発言の機会を与えること、これは各党の責任だと私も思います。したがいまして、この前の審議等において、また、この特別委員会においても、どうも自分たちの席が十分与えられておらない、こういうようなお話でございますが、私はそうではなくて、各党とも皆さま方に発言の機会を与える、こういう気持ちでただいま取り組んでおること、この点を御了承いただきたいと思います。
また、過日も参議院の本会議におきまして、いわゆる行政協定、この問題が強行採決されたことについていろいろの御批判があり、同時に、私が総理であるというその立場でなく、むしろ自民党の総裁としてそのことをいかに考えるか、こういうような御質問もありました。これは批判を交えてのお尋ねでありました。私はそれに答えて、われわれはどこまでも議会制民主主義を守る、こういう立場でわれわれは言行を最も尊重する立場にあるのだ、また各党ともさようにあってほしい、こういうことを申し上げたような次第でございまして、ただいまおしかりを受けようとは実は思わなかったような次第であります。どうか議会制民主主義、これを守り抜く、こういう立場で、この上とも御協力、また御叱正を賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/160
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161・瀬長亀次郎
○瀬長議員 あなたが議会制民主主義を踏みにじったから私はそう言ったのであって、おしかりを受けると思わなかったなどというのは、これはもってのほかだ。これは時間がありませんから、ちゃんと記録に残っていますから、それだけにとどめて、次に祖国復帰の原点について申し上げたい。
佐藤総理ほか大臣がよく沖繩入りする場合に、必ずといっていいほどあの摩文仁の戦没者慰霊塔に行きます。そこでえりを正し、目にハンカチをおおいます。私は、これに対してけちをつけようと思いません。だが、あの大理石のもとにいま何が入れられておるのか。あれは実は白骨であります。この白骨は、実に何万という白骨がかき集められております。これはこの当時の写真であります。
なぜ私はこれを持ってきたかと申し上げますと、二十六年になる、ややもすると原点を忘れる。いわゆる何万という同胞が——私も参加した。そしてあのときに遺骨を集めて、最初はくつの中に足の指が入っておる。これをきれいにとって、くつはくつ、遺骨は遺骨、鉄かぶとに頭蓋骨がある、これも別々にして穴に埋めた。だが、そのいとまがなくなった。スコップでざるに入れて、遺骨がさらにリヤカーで運ばれてくる、あるいはアメリカの破れたテント、これによって運ばれてくる。これをえり分けるわけにいかぬ。いとまがない。それでついに軍靴も遺骨も鉄帽も一緒になって、あの摩文仁丘のあの中に入っておる。この血、そうしていまは風化して大地と変わっておる。沖繩の大地、われわれの同胞の血を吸ったこの大地は、そうして遺骨は土と化しておる。母なる大地は何を求めておるか。涙ではない。再び沖繩を戦場にするな、平和な島を取り返す、これが真実の——この慰霊塔のもとにいま静かに眠っているのではない。どうなるか考えておる。これが原点である。こういったようななくなった人々の父母、兄弟、姉妹、子供、同僚、このからだに引き継がれて、沖繩の島を平和の島に返せというこの祖国復帰の原点はそこにある。佐藤総理は、このなくなられた同胞と同胞の意思を継いでこの伝統を生かしていき、平和な島にするのだというこの願いに対して、一国の、日本の総理大臣として、また一個人、人間としてどういうふうにお感じになり、さらにその責任をどう果たされんとするか、まずこれからお聞きしたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/161
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162・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 瀬長君にお答えをいたします。
ただいまお話しになるような幾多の惨禍をこうむられた県民の同胞の方々のその心情に対しては、私は心から、御同情ということばでは言い尽くせないような悲しみを覚えながら、ただいまのようなお話を伺ったわけであります。私が、むなしい声だと、こういうおしかりは受けておりますが、平和な豊かな沖繩県づくりに、これから百万の同胞と一億の国民が手を取り合って、ひとつ豊かな平和な沖繩県づくりに進もうと、かように決意したのも、いま言われたような事柄がそのもとになるのであります。原点は何かと言われると、私は、ただいまのようなことを直接私自身も出かけて現地で涙を流してきた男であります。したがって、同じような気持ちで、ただいまの豊かな平和な県づくり、これに励んでいきたいと、かようにいま考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/162
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163・瀬長亀次郎
○瀬長議員 佐藤総理は、私が言ったことと大体同意見だと言われましたが、平和な島にする意味ではもう確認されておると思います。平和な島でなければ、豊かな島をつくれません。平和な島というのは、基地も核兵器もない島、これを言っております。したがって、私は先に進みます。
軍用地の強奪の問題、祖国防衛の名で動員され、十数万の同胞が血を流し、遺骨をあたたかく抱きしめ、同化し、平和を願っている沖繩の大地は、アメリカ占領軍の機関銃と戦車とブルドーザーの暴虐のあらしの中で鳴動を始めた。平和条約が結ばれ、その効力が発生すると同時に、他府県の方々と同じ暮らしができるのだと、歯を食いしばって百万沖繩県民はがんばり続けた。だが、それはかなえられなかった。県民に襲いかかったのは、米軍の軍用地強奪の襲撃の魔手であった。そして、平和条約発効の——平和条約、締結されたのが五一年九月、その五カ月前、一九五一年四月、いまVOAの基地になっておる国頭村の桃原部落の土地の強奪。さらに、平和条約発効後五三年四月十一日、那覇市銘苅部落の畑と墓地——いまは米人のこよなき安楽地と彼らが言っている住宅地域になっている。同じく五三年十二月五日、那覇空軍基地の主要部分となっている小禄村旧具志部落の畑と原野の略奪。次に、同じく五五年三月十一日、いまBDU−8B、核模擬爆弾の投下演習場となっている伊江島の強奪。そして最後に、五五年七月十九日、宜野湾村伊佐浜の田畑と家屋の略奪と強奪。数え上げれば幾らでもあります。いまその中から私は、銘苅部落が、あの畑と墓地がいかに強奪されたか、その点だけを述べます。
白骨をかみ砕くブルドーザー——これなんです。これは五三年の四月十一日未明、銘苅部落民がかけつけたときには、すでに三万坪の田と原野が地ならしされて、アメリカにとってはりっぱなグランドに変形してしまった。そして、さらに土地強奪機械が導入され、そのすばやさは実に目をおおうものがあった。これは、残された墓地と畑に——イモ畑、これに飛びかかっていた。サーチライトが昼を欺くように照らしておる。そのときです。黒山のように集まった群衆の中から、赤ん坊をおぶったおかみさんがイモかごをぶら下げてトラクター目がけて歩み寄った。七、八名がそれについた。機関銃が火を吹き出した。威嚇射撃が始まったのである。しかし、数分もたたないうちに銃口の火花は消えてしまった。かごをかかえて突進したかに見えたおかみさんたちが、トラクターの前ですわり込みを演ずるのではないということがわかったからである。射撃をせぬことがわかった群衆は、勇敢なおかみさんのあとに続いて仕事を始めた。イモ、カズラ——このカズラはほとんどとれない。イモはブルドーザーの下敷きになって、ほとんど完全なものは一個もない。全部白い腹を出してしまっておる。
こうしてアメリカの強奪の魔手は、部落民、銘苅部落民の食糧であるイモを奪い、牛馬、ヤギのえさであるカズラを奪った。それだけではなかった。イモ拾いの集団の中からきゃっと声があがった。打ち砕かれたイモのかわりに白骨のかけらが手に触れたのである。しかも頭蓋骨のかけらである。墓地も容赦してくれなかった。何百年も安らかに眠る祖先の頭蓋骨までかみ砕かれ、手足はへし折られ、打ち砕かれたのだ。生きておる人間や牛馬だけではない。何の罪があるというのだ、死人の骨までしゃぶるとは。これが銘苅部落の土地強奪の手口である。このようにして、沖繩県民の土地はアメリカ占領軍によって強奪された。
この事実を佐藤総理は聞いたことがあるのか。強奪の事実。あるとすれば、これがあなたの言うサンフランシスコ平和条約三条は合法であるという、この合法のもとで行なわれた残虐な暴虐のあらしである。この点確認されるかどうか、お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/163
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164・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 先ほども占領の状態はどういうところから起こったか、こういうような話がありました。しかし、ただいまのような具体的な、そのお読みになったもの、私はそれをまだ見たことはございませんし、また、ただいまのようなお話はまだ承ったこともございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/164
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165・瀬長亀次郎
○瀬長議員 これは実は私が参加しております。だから、この本に全部まとめてありますが、これを全部言うわけにいかぬ。いかぬから時間の関係ではしょったのでありますが、いつかごらんになって勉強してください。そして沖繩県民の心をほんとうにつかむためにはどうすればいいか。いわゆる政治哲学はどういうものであるかという、ここに私は示されておると考えるから、その点を指摘したわけであります。
次に防衛庁長官。よくかわるものだから名前が——江崎防衛庁長官でしたね。軍用地法案についてでありますが、正確な名前が長たらしいので——沖繩における公用地等の暫定使用措置法などといって、いかにももっともらしいことをいっておるが、この法案は、いままで私が申し述べましたあの強奪、アメリカの強奪を合法化するものである、こう私は思っておりますが、どう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/165
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166・江崎真澄
○江崎国務大臣 やはり日本の施政権下にくれば、自衛のための自衛隊というものを配備する、これは非常に必要なわけでありまして、緊急性もあると思います。また、特に沖繩は、災害常襲県といいますか、非常に災害の多いところでありまするし、かつての、さっきお読みになりましたあの当時の日本軍隊の性格と、自衛に徹するいわゆる今日の自衛隊の性格が違うわけですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/166
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167・瀬長亀次郎
○瀬長議員 そんな長ったらしいことでは、時間が制限されておりますから、これを合法化するものだと思うが、そうは思わぬかと一言でいいのです。思わない、思う……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/167
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168・江崎真澄
○江崎国務大臣 気持ち的に、そういうふうに合法化するというものには思いません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/168
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169・瀬長亀次郎
○瀬長議員 ところが、この具体的な強奪の事実を否定されないとすれば、アメリカは、いわゆる三条、統治権に基づいて事実強奪したのです。その強奪したものがこの軍用地法案で合法化していくということは、これは子供でもわかることなんです。それを合法化しようと思わないとあなたは言われた。では、これはいいです。あなたは合法化しようと思わぬ。
次に、あなた方は安保条約——本土並みというのは、安保条約と地位協定など関連取りきめを何ら変更することなく沖繩に適用されたと言った。では、こういった公用地の暫定使用法案が沖繩を除く他府県にあるかどうか、同じような性格が。アメリカのために区域と施設を提供し、あわせて自衛隊の基地もまるめて提供し、各省関係のものもまたまるめて提供する、こういったのが安保条約をそのまま適用し、地位協定をそのまま適用するという性格ですか。これをはっきり返事してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/169
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170・福田赳夫
○福田国務大臣 安保条約が沖繩に適用される、これは施設、区域を提供するという問題につながってくるわけであります。つまり、基地提供問題につながってくる。それから、自衛隊のために米軍基地を使う、いままで米軍が使っておった基地を使う、こういうことは、わが国の防衛方針から出てきている問題である。そこに共通性はないのです。しかし、日本の国は安保体制下にあるという、その広い見地から言いますると、相互に有機的な関連を持たなければならぬ。こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/170
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171・瀬長亀次郎
○瀬長議員 いまの安保条約、地位協定に基づくものからは少しはみ出していますね。それを私は聞いているのだ。他府県にないようなものでし、う。他府県にないものを適用したのだから、適用しようというのだから、いまの安保条約のワク内では解決できぬでしょう。どうなんですか。ないのだから。本土にないでしょうが、どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/171
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172・福田赳夫
○福田国務大臣 安保条約の条約上の義務として基地を提供する、これは自衛隊のために従来の米軍の基地を継ぐ、これとは違う、こういうことを申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/172
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173・瀬長亀次郎
○瀬長議員 そんなことを聞いておるのじゃないのですよ。いままでの安保条約を何ら変更することなく適用するというから、沖繩県に適用するものと違って、本土であったかどうか。なかったでしょうが。新しくやるのでしょう。こんなものは新しいものですよ。大体区域と施設も、自衛隊の基地も、さらに各省関係のものもひっくるめてつくられた法律などということはないですよ。これだけを聞きたいのです。そうでしょうが、外務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/173
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174・福田赳夫
○福田国務大臣 米軍基地の提供と自衛隊のために使う土地の問題、これは性格が違います。しかし、便宜一括してある、こういうふうな性格だ、かように理解します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/174
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175・瀬長亀次郎
○瀬長議員 便宜のためにやったということですね。便宜のためには、あなた方はどのようなことでもやるのですね。これは外務大臣が答弁されるのはどういう意味ですか。防衛庁長官の管轄じゃないのですか。防衛庁長官に言っておるのだから、あなたは新しい防衛庁長官だから、新進気鋭で選ばれたのでしょうから、あとで答えてくださいね。それからいまおっしゃったように、これはどうにも、解釈はどうしても説得力はないと思うのですよ。ないのだから。いままでの安保条約や地位協定にそんな法律はない。これを何か詭弁を弄して説明しようと思えば思うほど袋路に入っていくのですよ。沖繩のことばに「ゆくしむにや、じょうぬえーかん、とぅらん」というのがあるのです。「うそは門を出る前にはすでにばれておる」という沖繩のことばなんですよ。ですから、私が質同ずるのは、的確にイエスかノーか答えてほしい。
もう一つは、それでは防衛庁長官に。いまのアメリカの合衆国の土地収用法というのが沖繩にあります。これは布令二十号。その沖繩にありますが、これでも一応はアメリカは強制手続として地主と事前協議をやる。はっきりぱんと打ち出されておる。ただし、ただし書きの中に緊急必要な場合にはその限りでないということで、DEの命令で例のブルドーザーが動くというものなんです。ところが、この軍用地法案は逆だ、裸である。取ってしまった。その後も地主と折衝して契約を結ぶような努力をする。ちゃんと取っておいてからだ。布令にもまさる裸の略奪立法である。布令との比較でどう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/175
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176・江崎真澄
○江崎国務大臣 あくまで話し合いを基調にしておるわけですから、そんなに私、変わったものとは思いませんが、解釈のしかたについては、法制局長官から的確にお答えをさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/176
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177・瀬長亀次郎
○瀬長議員 ちょっと法制局長官は出さないでください。あの人は法律もわからないのです。実際沖繩のこともわからぬから、的確な話はできぬと思います。というのは時間が制限されておりますから、それはあとで法制局長官、どこかの大学で講義してもらえばいいと思うのです。
それからいまの答弁で、大体布令をしのぐものじゃないということを言っておりましたが、あなた、布令知っていますか、防衛庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/177
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178・床次徳二
○床次委員長 瀬長君に申し上げますが、先ほどの質問に対して防衛施設庁長官から答弁がありますので、これをお聞きいただいてから、さらに質問をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/178
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179・瀬長亀次郎
○瀬長議員 簡単にお願いしますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/179
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180・島田豊
○島田(豊)政府委員 いわゆる米軍に提供する施設と、それからそれ以外の公共用地の関係と一緒にした法律があるかというお話に対しましては、これは小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律の第十二条に「公用又は公共の用に供するものとして国又は地方公共団体が決定したものが、」云々、こういう規定がございます。それから講和発効のときには、御指摘のように、米軍の地位協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法というものがございました。
それから布令二十号と今回の暫定使用法案との関係でございますけれども、先ほども申し上げましたように、本来の手続といたしましては、この米軍の土地等に関する特別措置法なりあるいは土地収用法というものを適用するというのが原則でございますけれども、その手続に至るまでの間の暫定使用に関する法律でございまして、したがいまして、布令二十号とはやはり性格を異にするものであろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/180
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181・瀬長亀次郎
○瀬長議員 布令二十号と性格を異にする、性格は同じで裸になっているんです、あなた方のは。裸の略奪立法なんです。小笠原、小笠原と言っているんだが、小笠原をアメリカが強奪した事実は、沖繩と比較して一体どのようなことであるか、われわれ知っていますよ。小笠原の場合には、地主も、沖繩におる三万八千という地主がおったんじゃないんだ。こういったものと形式的に比較されるということを沖繩県民は要望してない。私もまた質問していません。また、あなたに別に説明を求めたものでもない。やっかいなことで時間もとられてしまったわけでありますが、それでは、いま申し上げましたように、あなた方がかりにあの土地布令、これを見るならば、この二十号はどうしてできたかというと、県民は土地をとられないために戦いました。そのために、一応は地主と——その前はそうでなかった。すぐとっておった。一応は地主と相談するような方向で変えたんですよ。あなた方は地主と相談せずに——そうでしょう。
今度は憲法との比較を申し上げましょう。沖繩県民は長い間歯を食いしばって、いつかは祖国に帰れると思ったのは、主権在民、平和、民主主義、これを基調とする憲法のもとに帰りたい、そうしてそのもとで、いわゆる国民は法のもとで平等であるという保障を取りつけたいとわれわれは思っていた。その憲法は所有権をちゃんと保障しておるはずである。裁判を受ける権利も保障されているはずである。このあなた方がいま出した公用地法案なるものは、所有権も完全にじゅうりんし、さらに裁判を受ける権利すらそのいとまがない。何にもそこには保障されておらぬ。安保条約、地位協定に基づくあの土地収用法でも、一応は異議申し立てもあるはずである。これはない。法のもとでの平等——祖国に帰る、施政権が返還されるというときに、なぜ沖繩県民は法のもとの平等の原則を踏み破るのか。そういう憲法との関係はどうなりますか。——これはあなたではないんですよ。防衛庁長官、あなただ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/181
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182・床次徳二
○床次委員長 法制局長官からお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/182
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183・瀬長亀次郎
○瀬長議員 法制局長官はいいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/183
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184・床次徳二
○床次委員長 これは瀬長さんに申し上げますが、政府からの答弁につきましては一応お聞きをお願いいたすことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/184
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185・瀬長亀次郎
○瀬長議員 至って簡潔に、一分ぐらいでやってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/185
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186・高辻正巳
○高辻政府委員 簡単に申し上げますが、沖繩の返還ということは、沖繩の住民が日本の国民として憲法のもとに立つことであり、それは言うまでもなく憲法上の諸種の基本的人権を享有するものであります。つまり、沖繩が外国の施政権のもとにあるということと、日本の憲法のもとに復帰するということとの根本的な違いは、まさにその点にあるわけであります。したがって、お話の中にございましたように、沖繩の住民が復帰して日本国の憲法のもとに立つことによってそういう権利が享受し得なくなるのではないかというのとは——まあそうはっきりおっしゃっているわけでありませんが、まさにそのために施政権の返還をするといっていいものであります。
ところで、お尋ねの問題は、この暫定使用法案、これが憲法に違反するのではないかということだと思いますが、これはたとえば三十二条の裁判を受ける権利がない、なるほどそうは書いてありません。この暫定使用法案には書いてありませんが、行政不服審査法とかあるいは行政事件訴訟法とか、そういう法の規定に従って裁判を受け、異議の申し立てをすることができることは当然でございます。そういう面の御心配は無用でございます。
それからまた、平等のことで——簡単に申し上げますが、人種、信条、性別、社会的身分、門地等によって沖繩の住民を差別しているということがないことは、条文をごらんになればわかるものだと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/186
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187・瀬長亀次郎
○瀬長議員 これは総理にひとつ答弁をお願いしたいのですが、私の言っていることは、こういつた公用地法案は東京にもないし、あるいは鹿児島とか宮崎とかにもない、沖繩だけなんです。沖繩だけであるから、おかしいな、こうなんです。それで布令をもまたしのぐような裸の略奪法である。もうちゃんと使ってしまっておるぞ、いいか、通知する、それだけなんだ。そしてあとで契約しましょうなんということになっている。これが根本になっております。だから、そういったものは、安保条約に基づく地位協定の中にもない。他府県にはない。さらに、あの布令というあのようなものをもしのいで、すぐやってしまう。
さらに、憲法。憲法は、やはり、いま申し上げましたように、沖繩県民に施政権が及びましたら、ちゃんと憲法は適用されますね。それで、この憲法の一番根本は、法のもとでの平等であるはずであるが、なぜ沖繩県民は法のもとでの平等の恩恵に浴さないで、このような過酷な裸の強奪法みたようなものを適用されなければならぬのか、これを聞いておるのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/187
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188・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 いま本土にはアメリカの施政権下にあるような県はどこにもありません。御承知のように、ただいまアメリカが沖繩に施政権を持っておるのです。そういう状態が解消しようというその瞬間に、過渡的な状態でいま特別なことが考慮されている、これはもうおわかりだと思うのです。瀬長君百も御承知の上で私どもに困るようなお尋ねをされておる。それはちょっと困ります。本土内にアメリカの施政権があって、それがなくなるような事態があるなら、それについて私は幾らでも答えますが、そんな状態でない。沖繩と本土との変わりはそこにある。だから特別な布令、これをいままではやってきていたが、そのために、それを取り返すためのいろいろの過渡的な法律をつくろう、これがいま御審議をいただいておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/188
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189・瀬長亀次郎
○瀬長議員 私は百も承知はしていないのです。
これは、佐藤総理、いまアメリカの占領下にあるでしょう。そのままの状態で引き継ごうというのだから、一番最後に申し上げますが、これは復帰じゃないような協定になってくるということがだんだん明らかになってくるのですよ。
そこで、この問題は、どうも佐藤内閣のだれが立っても、そういった本土並みということが、いまおっしゃったような、そのまま安保条約や地位協定関連取りきめが沖繩に変更することなく適用されるということに対するこれは疑問なんですよ。みんなそう思って、おかしいな、本土はそんなことはなかったはずだがなと、この疑問はあなた方解明してもらわないといかない一つ基本的な問題なんですよ。
さらに、簡単な問題、防衛庁長官、軍用地代の問題ですが、引き継いだばかりだからおわかりにならないかもしれないが、基本的な方針として、いままで軍用地代が安かった、だからせめて地主が要求しているように六・七倍かあるいは七倍ぐらい上げてやろうといったような何か話し合いがあるそうである。しからばその前はどうするのか。安かったことを日本政府は認めておるのですね。そして、安かった前のは一体どうするか、その差額は。これはアメリカが払うのか、日本政府がかわって払うのか、そこら辺を明確にしてほしいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/189
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190・江崎真澄
○江崎国務大臣 施政権が及ばなかった当時の問題については、これはちょっと無理があると思うのです。もちろん、日本に戻ってくれば日本のペースで改めていく、いや、それだけよりももっと優遇をしていこうという姿勢で従来検討されてきたように私承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/190
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191・瀬長亀次郎
○瀬長議員 それでは、こういった損失についてはもう政府は一向おかまいなし、これは請求権の問題とも関連しますが、そう受け取っていいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/191
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192・江崎真澄
○江崎国務大臣 過去の経緯もありますから、倍数の話もあるでしょうから、便宜上政府委員からお答えさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/192
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193・島田豊
○島田(豊)政府委員 御承知のとおりに、沖繩におきましては米国の施政権下におきまして借料が定められておりまして、これは御承知のとおりに、土地借賃安定法という法律できめられておるわけでございます。アメリカが使用開始したころの地目がそのまま今日まで原則として及んでおりますし、それから本土の場合におきましては毎年賃借料の更改をいたしますけれども、五年ごとの更改、その五年ごとにもちろん地料は上がってはおりますけれども、本土の場合に比べまして非常に遜色がありますので、今回の復帰に伴いまして、本土の算定基準をもとにいたしまして借料の値上げ交渉をやろう、こういうのが現状でございます。
そこで、借料の問題につきましては、軍用地の借料がやはり一般の土地の借料よりも低額に定められておる、その法律によって低額に定められておりますので、これに対する差額要求というものが、地主の方々から米国に対してそういう請求権として出ているわけでございまして、これは米国側が一応処理する、こういうことになるわけでございます。まあ今回の借料がかなり値上がりになりました場合に、過去における借料との差額の問題については、やはり今日までの経緯からいたしまして、その差額が当然請求権の形で出てくるということは、そういう場合がありましてもちょっとこれは考えにくいのではないか、かような感じがいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/193
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194・瀬長亀次郎
○瀬長議員 次に、自衛隊配備について久保・カーチス取りきめが行なわれて、それに基づいて六千八百人の陸、海、空自瀞隊を二カ年間で配備を済ますということになっておるようですが、このような久保・カーチス取りきめみたいなものが、ほかの県に自衛隊を配備する場合に、取りきめられることがありますか。あるならある、ないならない、それだけでいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/194
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195・久保卓也
○久保政府委員 ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/195
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196・瀬長亀次郎
○瀬長議員 実際その一つをとってみても、いかに沖繩がたいへんに差別、そして将来は抑圧の方向でいくかということがわかりますが、これと関連しまして、沖繩に六千八百人というと、これは一億国民からいくと百分の一ですから、まあ自衛隊が六十七、八万いなければいかぬということになる。こういったような膨大な自衛隊が行くわけであるが、この沖繩の復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置等に関する法律、この中で、那覇施設局というのが設置される。ここに配備されるのが七百六十四名になっておる。たとえば東京、これは五百五十七名。一番多いのです。本庁ですら六百二十六名。沖繩が七百六十四名。これだけ見ても、沖繩がたいへんな基地になるなということがわかります。これは、沖繩だけでなぜあのような重圧を受けなくちゃならぬのかという、県民が常識ですぐ敏感にぴんと響くものなんです。質は別、量から見て。こういった点を考えてみましても、安保条約、地位協定、関連取りきめなどが何ら変更することなく沖繩に適用されることが本土並みだという三原則の一つが、あなた方の出した協定や提案の中で明らかになっております。
そこで、時間がありませんので、核問題について触れますが、核問題につきましては、沖繩県民は、いままで申し上げましたように、核という問題、核兵器という問題に実に敏感で、そして毎日毎日の台所の中で不安に思っております。なぜか。核問題が解決しないでいる場合には、あの大戦に逝った白骨すら残らぬ、沖繩の土地が吹っ飛ぶ、これが沖繩県民の核に対する観点であり原点なんです。
そこで、最初に佐藤総理に記憶を呼び起こしてもらいたいと思いますものがあります。B52、これが沖繩にやってきたときに、アメリカは、グアム島は暴風が吹いているので退避に来たんだという。ところが、これが避難どころではなしに、一カ月たっても二カ月たってもとぐろを巻いて出ようとしない、そして北爆に参加する、この事実があった。あれもうそでした。暴風は吹いていませんでした。グアム島はそのときの風速は七メートル、これも明らかになっております。うそはすぐばれます。これはともあれ、そのときに、B52は撤去してほしいということを立法院は全会一致で決議した。九名の立法院議員が総理官邸で総理に会った。陳情か、抗議なら出ていけということを佐藤総理言われた。これ覚えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/196
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197・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 そういうことがありました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/197
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198・瀬長亀次郎
○瀬長議員 B52はついに出ていかなかった。そしてついに墜落した。このB52があと五百メートル東北のほうに落ちたならば、いわゆる核爆弾、毒ガス、知花弾薬倉庫にぶち当たったであろう。県民は肝を冷やした。そのとき佐藤総理にお願いしても、ニクソン大統領に陳情してもどうにもならぬ。この命は一体だれが守るか。沖繩県民自身が守らぬといかぬ。命を守る県民共闘会議、党派を乗り越えてつくられた事実もあります。それほど、沖繩県民はだれにすがろうかと思っていたわけなんです。ところが、出ていけ発言で、ついに、佐藤さんという人は、われわれの総理大臣だと思ったが、どこの総理大臣かなといったような声まで事実出ておりました。
この事実はお知らせ申し上げまして、で、私、福田外務大臣にお聞きしたいのは、この前、沖繩に核があるかないかわからぬというところから、「核はあるとにらんでおる」、それから「核があると思います」まで来ております。「思います」は主観です。核があると言い切れますか。そこまで前進しておられますか。お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/198
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199・福田赳夫
○福田国務大臣 核があるとまではまだ前進はいたしておりませんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/199
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200・瀬長亀次郎
○瀬長議員 それでは、沖繩に復帰後残ることになっているようでありますが、嘉手納基地の第十八戦術戦闘航空団は、いわゆる協定調印後も連日のように核攻撃訓練をしており、伊江島、いま土地強奪の件で触れました伊江島でも核攻撃訓練をしております。政府は、参議院本会議で、伊江島の核攻撃訓練は復帰後行なわないと答弁したが、伊江島で投下されたBDU−8Bが核模擬爆弾であることを確認したか。これは確認するように調査すると言われたが、調査結果、それで確認されたならされたという答弁をしてほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/200
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201・久保卓也
○久保政府委員 まだ確認されておりません。米側から回答が参っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/201
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202・瀬長亀次郎
○瀬長議員 この問題につきましては、あれだけ社会党からも、さらに共産党は特に不破質問でこの事実を提起して確認を求め、政府はそれを約束したはずである。にもかかわらず、国会で約束しながらこれをいまだに確認もしておらなければ、調査もしておらぬということになると、国会を一体どう思っておるのか。私は、委員長、この問題については質問を保留したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/202
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203・床次徳二
○床次委員長 瀬長君に申し上げますが、政府委員から、米軍からの回答を得てないという答弁があったことをお聞きになったと思うんですが、それによっておわかりいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/203
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204・瀬長亀次郎
○瀬長議員 私はわからない。この質問は一番重要なものなんです。実は私が調べたものだけでも、米空軍、いわゆる第十八戦術戦闘航空団の飛行計画書がここにあります。この飛行計画書の中には、何月何日だれが乗って、何時何分に飛び立って、すなわち、はっきりいえば、たとえば一時に飛び立って九時には嘉手納基地に帰ってくる。地域は伊江島である。この爆弾はBDU−8Bであり、実際写真をとったら、その信管は先頭は赤である。普通は黄色を使っている。しかも重さもそういった方向で全部一致している。こういったものが、すでにあの伊江島で核模擬爆弾を使って投下演習が行なわれているということについては、この前の衆議院の不破質問でも提起されたはずであります。これにつきまして十分の調査をやり、そして確認することになっていた。確認する。するとなれば、復帰後はこれをさせないのか、させるのか。こういった問題に関連しているから、私はいまそれを詳しく述べるわけなんです。委員長、これに対する政府答弁をお願いしたいと思うのです。これは外務大臣から。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/204
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205・福田赳夫
○福田国務大臣 私は、沖繩の島々に核がある、こういうふうににらんでおるんだということを申し上げておりますが、しかし、沖繩がわが日本に返還をされるその時点及びその以降におきましては、一切核はない、こういうことをはっきり、これは責任をもって申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/205
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206・瀬長亀次郎
○瀬長議員 それでは、核がないとなれば、いま沖繩にある部隊で、いま申し上げました第十八戦術戦闘航空団、さらに、及びそれに付随する第四百弾薬整備隊、さらに水陸両用の海兵隊、こういったもの、さらにいまの第二兵たん、こういったようなもの、これは全部核装備をしておる。核任務を帯びておる。この核任務を持っておる部隊から全部核装備を抜くということになりますか。そう理解してよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/206
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207・福田赳夫
○福田国務大臣 核はもう一切沖繩には存在しないことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/207
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208・瀬長亀次郎
○瀬長議員 それでは、いま申し上げましたような部隊から核を抜くとすれば、この部隊の主要任務——核装備もしておる海兵師団、海兵隊、さらに、いま申し上げました第十八戦術戦闘航空団、こういったものは全部核を抜かれてしまう。さらに105、いわゆるサンダーチーフ、こういったものも核が抜かれてしまうと、任務がなくなる。任務がなくなると、この部隊は撤去するということになりますね。任務がないんだから。この点は、沖繩にハブというのがいるのですよ。これは曲がった毒牙を持っている。これはかむんじゃなしに、撃つのです。ハブに撃たれたといいます。これから毒牙を抜き取る。抜き取ったらハブでなくなる。そうでしょうが。だから、あんた方の言い分を聞くと、いま核装備をしておる、核任務を帯びておる、こういったような部隊から核を抜き去るということになると、任務がなくなる。任務がなくなった部隊をアメリカは好んで沖繩に置きますか。そんなハブはいないはずです。どうなんですか、外務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/208
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209・久保卓也
○久保政府委員 いまのお話は、現在の軍事情勢とは異なります。もちろん、戦争抑止力として核兵器というものが、アメリカなりソ連なり、そういった国にとって非常に重要なウエートを占めることは確かでありますが、しかし、御承知のように、第二次大戦後四十幾つかの武力紛争が行なわれたといわれておりますけれども、その中で核はもちろん使われておりません。したがって、通常兵器による抑止力というようなのが、いまあげられましたような部隊に今後任務として課せられることになるだろうと思います。もちろん、核専用のものが何かあるならば、それは別でありますけれども、いまおあげになりましたのは、通常兵器にも十分対処し得る、むしろそのことのために置かれている部隊であろうと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/209
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210・瀬長亀次郎
○瀬長議員 いま外務大臣が、すべて核はきれいになくなると言われましたが、その確認の方法ですね、ありますか。たとえば米軍の核訓練計画、これは全部核訓練だから、核攻撃の目的を持たなければ核訓練はやれません。これは軍事常識なんです。こういったような、具体的にやめさせるいわゆる保証があるのか。さらに、訓練をやる部隊を沖繩に置かせないように、何らかの方法をあなた方アメリカに取りつけるつもりであるのか。はっきり答えてほしいと思うのです。
〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/210
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211・久保卓也
○久保政府委員 一般に核の有無については、米側は全然われわれに教えてくれません。したがいまして、われわれの察知し得るような場所についてのある程度の情報収集は可能でありましょうけれども、全般的にそういった核の有無を点検するという形での確認ということは、非常に困難であろうと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/211
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212・瀬長亀次郎
○瀬長議員 いまの答弁は実に疑問だらけで、沖繩県民にますます不安を与える。核はなくなりますといったことでは、なくなる保証は何か。全然ない。それでは、そういったようなことであれば、やっぱり核を隠しておくつもりだなという不安がますます濃厚になってくる。核を抜こう、抜くときにはこういうふうな訓練もさせないんだ、こういった部隊から核も抜き去って、きばがなくなるんだ、そのきばを抜く方法はこれだというのは具体的に何もないでしょう。アメリカを信ずるということしか結論は出ないと思いますが、次に、いわゆる非核決議、この問題につきましていろいろ問題になりますが、その前にもう一つ。
第十八戦術戦闘航空団と、それに属する第四百弾薬整備隊、第三海兵師団の第十二海兵連隊、これはいずれも核部隊なんです。もうおわかりだと思うのです。核訓練を行なっていることは、米軍自身の現用している計画や記録で明らかなんです。政府はこれを撤去させるように要求する腹がありますか。——これは外務大臣、答え得ないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/212
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213・久保卓也
○久保政府委員 いまおあげになりました諸部隊が核専用の部隊であるということではございません。かりに専用の分野があれば、それはいなくなるであろうと思いますけれども、非核両用の部隊でありますから、今後核がなくなれば、通常戦用の抑止力としての存在が認められるということであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/213
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214・瀬長亀次郎
○瀬長議員 私の質問で、調査もしていない、確認もしていないとかいったような政府答弁をもとにして、いまのような答弁ができると思うのですか。いまのような答弁がまた通用しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/214
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215・久保卓也
○久保政府委員 私が申し上げたものはきわめて常識的な話でありまして、当然のことだろうと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/215
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216・瀬長亀次郎
○瀬長議員 次に、先月二十四日の非核決議の問題でありますが、非核決議、さらに基地の縮小、整理などという決議をやったわけでありますが、この問題について、これは核持ち込みを禁止する決議であるのか、政府の非核三原則順守を要請するだけの決議であるのか。安保条約を認めることが前提となっておるものだとすれば、非核決議は安保条約を拘束する効果を持つわけなんですか。この非核決議についての総理の見解を承りたい。これはいわゆる法的な拘束力を持っておるのか、政府に対する単なる要請決議にすぎないのか、この点と、もしこの決議が順守しなければならないということになると、安保条約との関連性はどういうふうになるのか。この点は、総理お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/216
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217・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 非核三原則決議並びに核の持ち込み、この問題、これはいわゆる決議はいたしましたが、法律ではございません。しかし、国権の最高機関である国会の決議でございますから、政府はもちろんその決議を尊重する。あの際に私自身がお答えしたとおりであります。瀬長君は欠席でしたか。——それではその点はたいへん残念ですが、ただいま申し上げるように、核の持ち込みはわれわれはノーと言う、こういうことをはっきり申し上げたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/217
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218・瀬長亀次郎
○瀬長議員 もしノーと答えるのであれば、これだけではいけませんね。安心しないのですよ。これは、あなた方は持ち込まさない、アメリカが持ち込む、そういった関係にあるはずだ。そうであれば、これは安保を拘束するものであるのかないのか。安保条約、この中にアメリカの核の持ち込みが予想されておるのか。政府の非核三原則というのは、核政策は、アメリカの核の抑止力、これがありますね。これが上にかぶさっておるわけなんです。抑止力を認めないようなこの非核三原則であるかどうか、ここら辺を明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/218
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219・福田赳夫
○福田国務大臣 核の持ち込みにつきましては、これは事前協議の対象にいたすことにいたしております。核の持ち込みにつきまして事前協議の相談がありました際には、わが国といたしましては、はっきりとノーと言う、こういう方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/219
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220・瀬長亀次郎
○瀬長議員 もしそうであるならば、核持ち込み禁止の取りきめなり協定をアメリカと結ぶ考えがありますか。これは結ばないと、沖繩県民を含む日本国民はなかなか信用しないのですよ。はっきりさせてください。もしその腹があれば、結ぼうじゃないかとできるはずなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/220
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221・福田赳夫
○福田国務大臣 核政策についての日本政府の方針につきましては、アメリカははっきり協力をする、こういうことを言っておるわけです。これで私は一応国民は御安心できる、かように信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/221
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222・瀬長亀次郎
○瀬長議員 これでは安心しないから、私は安心するようにあなた方の答弁を求めているわけなんです。昭和三十五年五月二日の安保国会では、赤城防衛庁長官は、事前協議によって核の持ち込みは日本で拒否するから、在日米軍が核によって報復力を行使することはないと言っています。いま総理も、核を持ち込ませないと強く言うならば、この際、核持ち込みは禁止するということで日米合意、これはあたりまえじゃないのですか。合意する——大統領にあなたは来月あたり会うのだから、これを合意して、共同声明あたりでも出す、協定でも結ぶということにならないと、安心できないのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/222
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223・福田赳夫
○福田国務大臣 核政策についてのわが国の方針、これにアメリカが協力をするということは、これは明瞭になっておることでございます。特に沖繩への核の持ち込みにつきましては、今回の協定の第七条でも明らかになっておるところでございますが、なお瀬長さんのような御心配をされる方もありますので、その点をなおはっきりさせる何らかの方法がないかということにつきましては、いませっかく検討いたしておるという段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/223
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224・瀬長亀次郎
○瀬長議員 いま私が申し上げておるのは、総理も前に言いました、そして福田外務大臣も言いました、いわゆる核撤去の確認、何らかの方法でやりたいと言ったが、この何らかの方法が知りたいわけなんです。これを知らさないと、また知らないと、沖繩県民は納得いかぬわけなんです。特に核問題についてのあの感じ方は、沖繩県民は他府県民と違った感情、心情を持っておるわけなんです。だから、この何らかの方法というものは一体何か。問題はここにあります。この問題につきまして、これは査察の問題、点検の問題になると思います。これは日本の主権下に基地を使わせてやるのに、日本政府が、日本に入ってきては困る核兵器などについて、その疑いがあった場合、この点検を要求するのは当然ではないか、こういったような疑問が起こるでしょう。問題はそこら辺なんです。主権者でしょうが。さらに、岩国でさえ、これは形式的であったかどうかわかりませんが、何かあなた方点検をやったとかいって新聞発表があった。なぜ、岩国でできるのを沖繩は——政府が核があるとにらんでいる、こう言っているわけだから、あると思いますと言っておられるから、基地の点検をさせろ、これはアメリカに言い得るでしょうが。それはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/224
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225・福田赳夫
○福田国務大臣 どうも、核のないという実証の問題、これは、とにかく、わが日本国民が、国土に、また特に沖繩に核がないのだという心証をどうやって得るか、こういう問題であると思うのです。その方法を一体どういうふうにするか、こういうことがいま瀬長さんの問題だろう、こういうふうに思いますが、査察あるいは点検、つまり、わが国が権利としてその状況について点検をする、あるいは調査を行なう、いま、日米安保条約、この適用から見て、さような行き方は非常にむずかしいのじゃあるまいか。それから実際問題といたしましても、核という問題は、これはアメリカの非常に大きな戦略的な問題になっておるわけであります。それをわが国が権利としてその点検を主張するということ、これも実際問題としてもまたむずかしいのじゃあるまいか、そういうふうに考えるのであります。
しかし、先ほどから申し上げておりますとおり、沖繩の皆さんの心情もわからぬことはない。そういうような意味合いから、いままで申し上げている以上の何らか方法があり得ないかということについてせっかく検討しておる、そういうことを申し上げているのです。その検討の結果どういうふうになるのかということについては、この席ではまだ申し上げる段階に至っておりませんけれども、いずれ結論を得ましたならば申し上げるということにいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/225
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226・瀬長亀次郎
○瀬長議員 これまで、点検あるいは査察につきましては、国際法とか国際法の慣例とかいうものを引き合いに出されましたが、ところが、政府がいま進めている軍縮交渉では査察を要求しているではないのですか。たとえば、昭和四十六年五月十二日、衆議院外務委員会で西堀国連局長は、全面的核実験禁止条約をつくれという自民党の石井委員の質問に対し、禁止条約をつくる場合、その義務が順守されているかどうかを確認することが最大の問題で、技術的に非常に精微な検証が必要で、条約の義務が確実に順守されているかどうかを確認する措置のない軍縮条約というものは絵にかいたもちのようなものだと言っております。政府のこの言い方からすれば、検証措置のない非核三原則は絵にかいたもちのようなものではないかといったことがはっきりここへ出てくる。ですから、私がいま申し上げましたのは、そういうものが全然わからずして核抜きだなぞということが、どのように欺瞞に満ちておるかと国民が疑惑を持っておるということの証拠になるから、ぜひ沖繩県民も、日本国民も信頼できるような、うん、これだったら核抜きだなと思えるような一言もこれまでの国会の委員会でも、本会議でも答弁がない。すべて疑問だらけ。これからやりますと、こういった、いま申し上げます査察の件はどうなんですか。ちゃんと絵にかいたもちだと、政府答弁で出ているじゃないですか。非核三原則、絵にかいたもち……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/226
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227・福田赳夫
○福田国務大臣 率直に申し上げまして、査察を行なうということは非常にむずかしい問題だろう。これは私は、甘い答弁はいたすことを差し控えます。しかし、その他の方法で何か説得力のある行き方はあるまいかということをただいま検討しているのです。
〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
何らかひとつこれを実現したい、こういうふうに思っておりますが、これをきょうこの席でお答えできる段階でない、こういうことを申し上げているのです。しかし、とにかく大統領、総理大臣両首脳が共同声明をしておる。また、協定第七条においてもその声明を引用されておる。厳粛に日米両国が、沖繩には核は返還時、返還後にはないということを声明いたしておるわけでありまして、また政府といたしましても、総理大臣がこの間本会議で同様のことを厳粛に声明をするとまで、こう申しておるわけでありまして、ひとつこのことを御信頼願う、そういうほかにはないのではあるまいか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/227
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228・瀬長亀次郎
○瀬長議員 結局、もとに戻って、アメリカを信用しろと——佐藤総理もナショナル・プレスクラブにおいていろいろ発表されましたが、要するに、核問題につきましてはトップシークレットだという。それから、あるかないかわからぬという。あるとにらんでおるという。さらに「あると思います、」まで一応きておる。アメリカを信用しろということでは、特に沖繩県民はニクソンさんを信用しないのですよ、悪いことばかりやられたから。いつもうそばかりついている。だから、問題はそこにあるのです。
そこで、結局、外務大臣がいま御答弁になったからあなたのことを言いますが、アメリカを信用せよということにすぎないんですね。ところが、アメリカが信用できないというのは、これは現地沖繩でも幾らでもあります。うそばかりつかれたから、ああ、もうこの人はうそばかりつくと。B52の問題でもそうだった。さらに石油、燃える井戸、この問題でも、抗議したら、いや、これは日本軍が流したガソリンがやってきたのだ。日本軍は、あのときガソリンなんか一滴もない。木炭車だった。木炭車でやっとかっと歩いていた。こういったようなうそまでつくのです。それを追及されて、ああそうかな、少し出しましょうか、こうなんです。だから信用しない。あなたも信用していないじゃないですか。あなたは、CSGについて、CSGは補給を任務とすると説明を受けたが、それ以外にも何かあるらしいという気持ちを持っていたと、アメリカが信用できないことを認めておる。だからアメリカと話し合って、CIAであるCSGの撤去をきめたではありませんか、あなたは。だから結局、アメリカを信用し切っているとどんな目にあうか、ベトナムでわかるでしょうが。私たちは、そういったことをあまり言わないで、何かの方法で核はこういうふうに抜きますよということを説明できぬものかな、説明できないとすれば、結局、核を隠しておくということにしかならないし、自由出撃、これも、あのランパート高等弁務官やチャップマン海兵隊司令官が言うように、あれは復帰後もちゃんと基地は確保し、自由出撃もできるのだ、ベトナムにいま必要であれば行く体制にあるのだなどと公言している。このような形からいえば、これは信用していいのかどうか、福田外務大臣自体がちょっと疑問に思っておるんじゃないですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/228
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229・福田赳夫
○福田国務大臣 いま核の不存在の問題、自由出撃の問題についてアメリカを信用するかしないか、こういうお話でございますが、私は全幅的にアメリカを信用して、ただいまの案件の処理を進めておるということをはっきり申し上げさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/229
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230・瀬長亀次郎
○瀬長議員 もうすっかりアメリカを信用して——結局、国民が信用できる解明はほとんどなされないというのが現実であるということに結論づけられると思います。
時間がありませんので急ぎますが、もう一つは、サンフランシスコ平和条約、その第三条のもと、その統治権のもとでいかに沖繩県民の民主主義が圧殺され、基本的人権がじゅうりんされたかという問題点について触れます。これは幾つもありますが、私の体験を申し上げます。
私は、一九五六年十二月にアメリカの出した布令に基づいて選挙が行なわれ、那覇市長になった。那覇市長になりましたら、どんな抑圧、干渉が起こったか。アメリカはまずまっ先に、那覇市に補助金をやるというのを補助金を断ち切った。琉銀、沖繩銀行に命令し、そして瀬長が市長である間は金は貸すなと言った。融資の凍結。さらに金を預かりもするな、と言った。これは当時、私に投票しなかった人々まで、市民は憤慨した。さらに、事もあろうに水攻めを行なった。アメリカが水源地を全部持っておる。そして市民に、私は市民集会を開きまして、全部地下水を掘ろうではないかといって、地下水が掘られた。これだけでは間に合わぬ。沖繩南部に具志頭村という村がある。そこにギイザバンタという海に河水がどんどん流れ込んでいるところがある。そこから水道を引こうとした。それで村会ではやがて決議されようとした。アメリカがやってきて、瀬長が那覇市長である間は水はやるな。圧力を加えて、とうとう水攻めが行なわれた。そしてアメリカは、台所を締めてやるならば二、三年続くまいと思ったが、市民が九八%の納税率、これでいつまで続くかわからぬということになって、十一カ月目に、事もあろうに、布令でもって那覇市長を追放した。それだけではない。再び立法院議員にも市町村長にも、市町村会議員とか、公職につくことのできぬように布令を改悪してしまった。これが条約三条のもとにおける自治体に対する干渉と抑圧の姿であった。これは常識を逸脱しております。だからこそ沖繩県民は、このようなアメリカの仕打ちに対しては、このときは、いまも申し上げましたように水攻めが行なわれるようになったときに、全市民が立ち上がったわけなんです。市長がいかにアメリカにきらわれているにしても、われわれ市民まで水攻めをするのかといって立ち上がったわけなんです。
こういった状態があったし、さらに、私は那覇市長になる年の五月九日に沖繩刑務所を出獄したのであるが、これは二カ年間の重労働なんです。私の罪名は犯人隠匿なんです。犯人というのは、奄美大島が復帰してあと、大島の人が二人残って祖国復帰運動をやっていた。そのために退島命令が出た。四十八時間以内に大島に帰れと。ところが、船がないものだから四十八時間以内にこれができない。そして四、五日さまよっていた。これが退島命令の下った犯人である。この犯人を私が隠匿したという意味で犯人隠匿罪に問われた。ところが、裁判の結果はどうだったか。犯人である主犯、これは一カ年の懲役を受けたようなかっこうにして、一カ月後にはちゃんと出て、無罪なのです。私は重労働二カ年。主犯は無罪。主犯である犯人のいなくなった犯人隠匿、これが二カ年の重労働。私はあの裁判のときに弁護士を頼むこともできない。海野晋吉さん——いまなくなられました。人権協会の協会長をしておられました。あの人に手紙を送って、ぜひ弁護してほしい、よろしいということになって、海野さん、さらに宮川寛雄さん、沖繩の人なんです。まだ生きておられます。こういった人々三名が弁護のために沖繩に行こうとして渡航申請をしたら、拒否された。私は弁護士つかないで、結局、いま申し上げましたような犯人のない犯人隠匿罪で、二カ年の重労働で宮古の島の刑務所まで送られた。これは当時、革新であるとないとを問わず、このような裁判が、サル芝居とかいうにはあまりにも近代的じゃない。民主主義の国家とか名のるあれで、犯人はいなくなった犯人隠匿が二カ年間の重労働とは、これ何か。まさにこれは浪花節にもならぬようなことが行なわれた。私自分のことを申し上げますのは、自己宣伝で言っているのではありません。那覇市長である私にさえこのような残虐なことが行なわれたわけなのです。だから一般の沖繩県民が、ほんとうに数限りない人権のじゅうりん、民主主義の旗のもとに反動が行なわれ、さらに自由の旗のもとに自由を圧殺され、基本的人権を重んずるとかいう大統領行政命令のもとに基本的人権をかくのように奪われた。
もう一例は、あのコザに起こった事件があります。与那嶺悦子さん事件、あれは十六歳の女の子である。高校生です。これが午後一時過ぎ自分の家に帰る途中、おかあさんと呼べば、おお帰ってきたかという距離なんです。そこのサトウキビ畑にアメリカ兵に引きずり込まれて暴行を受けた。だが、この子は身に寸鉄を帯びていない。あんなか弱い子がアメリカ兵と戦って三カ所刺された。私見ております。そこから腸が飛び出しておる。収容があと二十分おくれたならばこの子は死んでおった。これがとうとう、身に寸鉄を帯びないこの女の子が、米兵に立ち向かって日本婦人の貞操を守り抜いた。これがアメリカの民主、自由の旗のもとで行なわれた残虐行為である。やはり平和条約三条なるものがどんなものであるか。内容は民族の屈辱これにまさるものないという憤激、この中でこそ、沖繩県民のあの復帰の原点ということの中から、基地があると米兵はいることになる、基地もない、そしてアメリカのいない沖繩をつくりたい。
佐藤総理に申し上げますが、いわゆるヤンキーゴー・ホーム、最初それはありませんでした。いまは次第次第に全島に行き渡っている。ゴー・ホーム・ヤンキー、これはアメリカはアメリカに帰れということ、自然の問題なのです。だれもアメリカはインドに帰れとは言っていないのです。アメリカは生まれた国アメリカにお帰りなさい、それで初めてわれわれは対等平等な交渉もできるのだということを、いわゆる民族の独立というのでしょう。平和日本というのでしょう。民主日本というのでしょう。これを追求してわれわれはその実現のために戦ってきたのだ。ところが、この協定は、まさにその民族の屈辱、その請求権すら放棄してしまった。一体、これまでやられた数々の人権無視、民主主義の否定に対する補償はどうするのか。この協定にも関連立法にも一つもない。私はこの点で、正直言いまして、まさか佐藤総理も——満足していないとか言いますが、そういったことばでは、いわゆる県民の願いは実現できていかないということをはっきり申し上げたいのです。請求権も放棄する、沖繩県民が買うちゃいかぬぞという資産も買い取る。まるで施政権の買い取り。いままで二十六年にわたって沖繩県民を苦しめてもらってありがとうございますと、三億二千万米ドルを進呈する。こういったことがいまだに沖繩県民の常識で考えて納得いくようなことはまだまだ行き渡っていないということを私はっきり申し上げます。
もう一つは、これは、時間がないということでありますので、締めを申し上げますが、よく自民党あるいは佐藤総理みずからも言っておる、返還協定に反対するというのは復帰に反対かということばなのです。これはとんでもないことだ。私なら私、返還協定に反対しています。これは返還のためじゃないか。佐藤総理の口から言ったでしょう。今国会の冒頭の所信表明の、沖繩問題に対するあの結語は、軍事基地の継続使用は返還の前提ともなる。覚えておられるでしょう。さらにロジャーズ国務長官が、あれは同じことばではないが、屋良主席の問題まで引っ張ってきて、返還しなければ基地は維持できない、不可能である。ことばをかえれば、返還が目的ではなくて、基地の維持が目的である。これは佐藤総理と同じようなことになっております。ですから、この協定は、決して沖繩県民が二十六年間血の叫びで要求した返還協定ではない。これは日米沖繩軍事条約である。返還を言うならば、非返還協定にすぎない。これは佐藤さん自身が、ちゃんと所信表明の中でも出ておる。だからこそ、他府県にはない、軍用地のあの収奪法が出ているわけであります。したがって、私たちがいま一番問題にしているのは、なぜ、あの復帰の原点に返って、血の叫びを流した幾万のあのなき同胞たち——受け継がれて、この沖繩の大地は再び戦場となることを拒否する、基地となることを拒否する、基地もない、アメリカ軍もいない、自衛隊もいない、初めて平和な豊かなという、平和ということばが使えるんだということを、からだをもって体験している沖繩県民である。したがって、いま申し上げましたように、このような協定が通らないで——実際言えば、沖繩県民の望む、いま申し上げましたあの紺碧の空、総理はよく知っております、あの美しい沖繩の島、サンゴ礁に取り囲まれて、あの美しい海。軍用道路に道路も全部取られて、水源地も取られておる。全部日本国民である沖繩県民の手に返って初めて平和な島が、沖繩県の回復ができるんだということを二十六カ年間叫び要求し続けてきた。こういった意味で、沖繩県民の心というのは——これは何時間あろうが、かかります。したがって、いま申し上げました私の結論に対しての佐藤総理の最後の所信を承り、この沖繩問題は、私、いま委員ではありません、委員外ですが、今後も引き続き沖繩選出議員に対する発言の自由を保障してもらいたいということを重ねて要望して、私の質問を終わりたいと思います。佐藤総理、ひとつ所信表明をお願いします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/230
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231・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 ただいま、瀬長君がいままで身をもって体験された、その苦難の一部を御披露になりました。私もほんとうにお気の毒だと、話を聞きながらも、自分がその場合になったら一体どうするだろうか、そういうことを思いながら、実は冷静に聞いたつもりでございます。
私と瀬長君との間にはずいぶん隔たりもございます。また、その結論に至りましては大きな隔たりであります。私は、この際、ただいま言われたようなことをも十分考えながら、踏まえながら、一日も早く祖国に返ってくることだ、そうしてわれわれが百万同胞とともどもに平和な沖繩県を建設する、それに邁進すべきだ、かように思います。ただいまの状態で基地のない沖繩、かように言われましても、それはすぐにはできないことであります。しかし、私どもは、ただいま言われるそういう意味の平和な豊かな沖繩県づくり、これにひとつ邁進しなければならない、かように思う次第でございます。
また、ただいまの委員の籍等については、これは理事会等におきましても十分御審議をいただ出たい。これは私がとやかく言うべきことではない、かように思いますので、私の感じを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/231
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232・床次徳二
○床次委員長 桑名義治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/232
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233・桑名義治
○桑名委員 今回の返還協定につきましては、いろいろと問題点がいままで指摘されてきたわけでございます。あるいは、この問題につきましては、基地の問題、あるいはまたVOAの問題や、さまざまないわゆる問題点が提起されたわけでございますが、今回の返還協定の第七条におきまして、返還時にいろいろな問題がスムーズにいくためにアメリカ合衆国に三億二千万ドルの支払いをする、こういうふうになっているわけでございます。そこで、その中で、資産につきましては、琉球電力公社やあるいは琉球水道公社等の九つの施設を日本に移行するために、一億七千八百万ドルのお金が支払われるような実情でございます。本来ならばこの一つ一つについて、それぞれ疑義がございますので、これを問題にすべきではありますが、時間の関係もございまして、今回は琉球水道公社につきまして質疑をしぼってこの問題を提起していきたい、このように思うわけでございます。
そこで、水道公社の問題でございますが、沖繩の年間降雨量というものは二千二百ミリメートルもありながら、大きな集水面積を持つ河川がなく、直接いわゆる取水ではなくて、安定した水源とはいえない、こういうふうにいわざるを得ないと思います。このたびの夏にも異常な渇水を迎えまして、沖繩の住民は非常に苦しんだわけでございますが、復帰に伴いまして、沖繩の上水について今後とも十二分な配慮を払わなければならないと思うわけでございます。
そこで、現在の沖繩の水道につきましては、全島統合上水道ということを言っております。この全島統合上水道とはどのようなことなのか、これを明快にまずお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/233
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234・山中貞則
○山中国務大臣 これは復帰後沖繩県が行ないます県営の広域上水道と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/234
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235・桑名義治
○桑名委員 私はそういう答弁を求めたわけではございません。この全島統合上水道という現在の姿というものは、米軍の施設と、それからさらにこの米軍から水をもらっているいわゆる琉球水道公社というものがあるわけです。それからさらに町村にわたって、それぞれ各家庭に給水をする、こういうふうに聞いているわけでございますが、その全貌について、簡単ながらまず最初に御説明願いたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/235
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236・山中貞則
○山中国務大臣 たいへん失礼いたしました。
現状は、ただいまお話しのように、軍がダムあるいはその他の取水地、ポンプ等を直接所管しておるもの、並びに軍の支配下の琉球水道公社、実質民政府の直接の公社でありますから、したがって、現在の沖繩の各家庭への水の供給というものは、その公社から買う形になっております。したがって、先般も問題になりましたように、まことに奇異なことでありますけれども、公社の総裁が知らないのに値上げの案が発表されたようなことも、復帰直前にして一応過程としてはありました。これは市町村の反対で、なかったことになったようでありますけれども、現在は完全に水源地並びにその供給施設というものはアメリカによって掌握をされておる。しかも、どのような需給事情にあろうと、三分の一はまず米側が先に水の供給を受けておるというようなことが実態であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/236
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237・桑名義治
○桑名委員 そこで、この全島統合上水道の中の米軍のいわゆる施設でおもなもの、これを列挙していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/237
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238・山中貞則
○山中国務大臣 各種の資産の引き継ぎに当たりました大蔵省より答弁をさせます。事務当局に答弁させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/238
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239・小幡琢也
○小幡政府委員 統合上水道のうち、現在米軍が所有しておりますものは、貯水池につきましては平山ダムというのがございます。それから浄水場は天願浄水場それから桑江の浄水場それから与座の浄水場、それからさらにポンプ場につきましては嘉数のポンプ場、それからあとタンクにつきましてはプラザ第二号タンク、その他いろいろございまして、私ども大蔵省のほうで評価いたしましたこの米軍の所有資産の価額は、大体四百八十万ドルでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/239
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240・桑名義治
○桑名委員 協定の第六条で、公社の施設は日本の政府の財産になる、こういうふうに第六条では明記されておるわけでございます。
そこで、この六条の規定というものは、米軍の施設もこれは日本の財産になるのかどうか、この点について明快にお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/240
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241・小幡琢也
○小幡政府委員 現在の米軍の所有施設、これは現在は公社の資産じゃございません。しかしながら、調印の際の米国側との話し合いによりまして、復帰時点までにこの米軍の所有施設は公社に出資されまして、復帰時点におきましては公社の財産となるということになっておりますが、ただ、例外が若干ございまして、もっぱら復帰後も米軍が専用で使用する施設でございますが、たとえば桑江の浄水場、ごくわずかでございますが、こういった米軍がもっぱらそのために使用する、そういう地域的なものにつきましては一応除外する、そういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/241
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242・桑名義治
○桑名委員 そうしますと、現在の特別ないわゆる浄水場を除けば、ほとんどすべてが返ってくるということでございますか。確認します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/242
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243・小幡琢也
○小幡政府委員 統合上水道につきましてはさようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/243
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244・桑名義治
○桑名委員 そこで、具体的にお聞きをしたいわけでございますが、タイベース浄水場、それから嘉手納の軍の五尺こういったものは公社の施設の中に入っているかどうか、この点について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/244
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245・小幡琢也
○小幡政府委員 具体的な問題でございますが、タイベースの浄水場につきましては、これは米軍の基地の中にございますが、本体は軍の所有施設、それに公社におきまして改良工事を加えましてそれは公社の所有資産、いずれにいたしましても、これは復帰時点までには全部公社の所有になるということになっております。
それから、御質問のございました嘉手納軍井戸でございますが、これは初めから公社の資産でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/245
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246・桑名義治
○桑名委員 そこで、基地内のものが全部返還になるという、大体こういうふうに考えていいわけでございますが、とするならば、当然返還協定並びに付属文書の中のC表にこれは書き込んでもいいと思うわけでございますが、こういったC表に実際に書き込まれていないという、そういう意図はどこにあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/246
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247・井川克一
○井川政府委員 ABCのC表でございますが、C表の注に、「琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定第六条の規定によって使用を解除される他の設備及び用地もある。」こういうふうになっておりまして、第六条関係のいわゆる公共用のものは、大体C表からはずして、別途第六条で返還されることになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/247
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248・桑名義治
○桑名委員 では、お尋ねをしますが、第六条の一項に、琉球電力公社あるいは琉球水道公社及び琉球開発金融公社の財産は云々ということで、いろいろな規定が載っております。その第三項の中に、「同政府がこの協定の効力発生の日に保有しているものは、同日に日本国政府の財産となる。」と規定されてあります。したがいまして、琉球電力公社並びに琉球水道公社及び琉球開発金融公社の財産は、これは直接日本の財産になるということはこの条文で明らかであるわけです。いま説明のありました付属文書のC表の注の中には、いまも局長が読み上げたように、あとのほうに、「協定第六条の規定によって使用を解除される」と、こういうようにあるわけです。じゃ、ここでいう解除ということと、日本の国の財産になるということと、この表現が違うわけですが、これはどういう違いを持っておるわけですか。C表の注には、これは使用が解除されるとは書いてあります。しかし、日本の財産になるとは書いてありません。こういうことを考えますと、この水道公社のいわゆる米軍の施設というものは必ず日本の財産になる、一切がっさいが日本の施設になるということは考えられないわけです。その点の疑問を明快にお答え願いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/248
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249・井川克一
○井川政府委員 第六条一項におきまして、三公社につきましては、「この協定の効力発生の日に日本国政府に移転し、」と書いてございます。第二項、その他の財産につきましても、「施設及び区域の外にあるものは、同日に日本国政府に移転する。」と書いてございます。第三項は、これは埋め立て地でございます。埋め立て地につきましては、特に所有権その他の関係がございますので、私どもも特にことばづかいを変えたわけでございまして、たとえば「この協定の効力発生の日に保有しているものは、」という字を使い、そして最後に、「同日に日本国政府の財産となる。」というふうに使いまして、一項の三公社、二項のその他の財産と区別して書いたつもりでございます。そして、それで六条の関係は全部日本側の所有権になるということは明白でございますが、ABC表は土地——六条は財産という面から着目しております。ABC表は施設、区域としての土地の面から着目しております。したがいまして、「使用を解除される」ということばをC表の(注)のことばとして使ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/249
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250・桑名義治
○桑名委員 公社のような、そういう財産的なものは六条のような規定にしたんだ、こういうお答えでございますが、しかし、(注)の中には、その他の設備及び用地もある。ここでは土地も含んでいますよ。あなたのいま言ったことと、ここに書いてあることは違いますよ。なぜこれとこれは区別したんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/250
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251・井川克一
○井川政府委員 私、その点をただいま申し上げたつもりでございます。C表のほうは、つまり施設及び区域というほうは、土地という面から着目してつくってあるわけでございます。したがいまして、「使用を解除」するということばを使ったわけです。ところが、六条のほうは、一項、二項、三項ともいわゆる財産という、日本国の所有となる財産という見地から使っているわけでございます。したがいまして、そこにことばづかいの差が出てくるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/251
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252・桑名義治
○桑名委員 それは論弁じゃないですか。では(注)の中に、これは日本国の財産になると明快に書けばいいじゃないですか、この基地の、いわゆる米軍の中にある浄水施設、そういった一切のものを。これはいずれは日本の財産になるわけですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/252
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253・井川克一
○井川政府委員 その点は全く申しわけございませんけれども、詭弁ではございませんで、いろいろ本気で考えまして、意識してことばを使い分けたわけでございます。水道公社の場合には、第六条一項に明白に、財産は日本政府のものとなると書いてございます。日本政府に移転されると書いてございます。C表のほうは土地に注目したわけでございます。土地には民有地もあるわけでございます。したがいまして、その民有地がC表に載って、アメリカの基地から開放されたら日本政府の所有となってはこれはたいへんなことでございます。したがいまして、「使用を解除される」というふうに書いたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/253
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254・桑名義治
○桑名委員 どうもこの内容が明快にならないわけでございます。実際に、基地の中のいわゆる浄水施設やあるいはダム等が必ず日本に返還になるということにどうも疑問があるわけでございます。
そうすると、さらにあらためてお尋ねをするわけでございますが、こういうふうに、たとえば現在は私は、水道の施設の問題あるいは水源地の問題を例に取り上げているわけでございますが、こういうようにC表に載ってない、(注)であげたいわゆる返還される土地及び施設というものにどういうふうなものがあるか、なぜこれを列記しないのですか、CならCに。これは外務大臣にお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/254
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255・福田赳夫
○福田国務大臣 条約局長からお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/255
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256・井川克一
○井川政府委員 まず第一に、第六条の一項と二項の書き方を分けて書いているわけでございます。第二項のほうで見ますと、「その他のすべてのアメリカ合衆国政府の財産で、この協定の効力発生の日に琉球諸島及び大東諸島に存在し、かつ、第三条の規定に従って同日に提供される施設及び区域の外にあるものは、同日に日本国政府に移転する。」基地の中にあるものは移転しない。また特別なものは、ちょっとその後段に出ておりまするけれども。ところが、琉球電力公社、琉球水道公社及び琉球開発金融公社というものは企業体でございまして、企業体でございますから、また基地の中に財産を持っているわけでございます。したがいまして、基地の中の財産も、この三公社に属する限りは全部日本に来るということを明らかにするために一項と二項とを書き分けたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/256
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257・桑名義治
○桑名委員 そうしますと、基地内にあるダムや上水道の維持管理、こういうものに対しては、いまから先は公社の職員が自由に出入りすることができるということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/257
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258・井川克一
○井川政府委員 今後準備作業をいたしまして、合同委員会におきましてそのような施設、区域の出入りのための便宜、自由というものを十分取りきめるそうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/258
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259・桑名義治
○桑名委員 それじゃまだきまってないんですか。実際に——ちょっと待ってください。実際にあなたのおことばを借りれば、今回のこの返還協定に基づいて、基地内にあるダムや浄水場や、そういった一切の施設は日本国に返る、こういうことは明快になったとあなたはおっしゃっておるわけですが、私はまだ疑問があるわけですが、それを百歩私のほうから譲ったとして、この基地内のいわゆる施設に対する出入りが自由にならなければ、これは返還になったことにはならないと思う。したがいまして、これは同時に解決しなければならない問題だと私は思う。そこを明快にしてもらわなければ困りますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/259
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260・井川克一
○井川政府委員 三公社に属するすべての財産、権利、義務がすべて日本国政府に、日本国に移るということは、第六条一項の規定で明白でございます。したがいまして、三公社の財産である限り、基地内、米軍に提供する施設、区域の中にあるものも全部日本の財産となることは明瞭でございます。
それから第二点の、その中にある施設、区域を提供する、したがってその中に水道公社の財産がある、その出入の便宜等につきましては、今後その施設、区域をこれから提供していくわけでございます。その提供行為の中で合同委員会を通ずる協議、したがいまして、その準備はもうそろそろ始まるそうでございまするけれども、その準備行為の中において、その出入りの便宜等を取りきめるということになっているそうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/260
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261・桑名義治
○桑名委員 では、これはまだきまってないということですね。だから今度は次に問題を提起したいわけでございますが、基地内から配管等を布設する場合があります。基地の中のダムから、まず上水道に配管をします。その上水道に配管をしたものを、今度はその水がそれぞれの市町村に流れていきます。それもまた配管工事があるわけでございますが、この配管をした部分について、この法的地位は一体どうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/261
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262・井川克一
○井川政府委員 それは新しく、提供後でございまするから、新しい水道公社というのですか、どういうことになりますか、ちょっと私——権利と申しますか、そういうものの財産でございます。そういたしますと、先ほど先生の御質問のとおりに、それを維持管理するためにどうそこに入る九というふうなことが問題になるわけでございます。また御存じのように、その施設、区域というものはまだ完全な提供行為は済んでいないわけでございます。これから提供行為の詳細な話し合いに入るわけでございます。そこで電線でありまするとか水道でありまするとか配水管の取り扱いその他についてきまる、こまかくきわめていく。しかし、原則として、その立ち入りのために非常に自由が日本側に与えられるのが当然であるという原則については、もちろん米側も了解しているそうでございまして、その具体的細目はいまだきまっていないということだそうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/262
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263・桑名義治
○桑名委員 では、基地の中に——日本の場合、基地の中に鉄道が通っております。その鉄道は、法的地位というものはどういうふうに解釈をされているわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/263
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264・井川克一
○井川政府委員 沖繩における基地の中の鉄道でございますか。(「沖繩には鉄道がないじゃないか」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/264
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265・山中貞則
○山中国務大臣 三公社の資産を評価して合意して、権利、義務を承継したということは、先ほど来御質問になっておりますダムやポンプ場やパイプ、配水管ですね、そういうもの等の維持管理その他が完全に日本側に移されるということでない限り、権利、義務の完全な承継とはいえないわけでありますから、ダムだけ返ってきて、それを管理する者は立ち入り禁止になるなんて、そういうふざけたことはあり得ないわけであります。ただ、外務省当局が言っているのは、その細目の、たとえば琉球水道公社の腕章をつけて入ることとか、いろいろなことの取りきめをこれから事務的にやるわけでありましょう。したがって、答弁が明快でない感じがありますけれども、そのことが前提となって合意されたものである。したがって、逆に立ち入りもできないような施設を引き継ぐことはあり得ないんだということは御理解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/265
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266・桑名義治
○桑名委員 山中総務長官は大臣の立場で実に明快なお答えをするわけでございますが、それを積み上げた事務当局が全然わからないということは大体どういうことでございますか。それではわれわれは納得しかねますね。大臣の答弁には納得しますけれども、しかし、それを積み上げて、それよりも小さな細目にわたって作業を進めていかなければならない事務当局が全然わからないじゃ話にならない。屋根の上へ上がってはしごを取られたみたいなものだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/266
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267・井川克一
○井川政府委員 確かに山中長官の御答弁のほうがおじょうずでございましたが、ただ、私も原則はきまっている、しかし、その細目についてまだ合意がないそうである、こう申したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/267
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268・桑名義治
○桑名委員 先ほど私が提起しました、日本の本土の中の基地に鉄道が通っている事例がございますが、これはいわゆる法的地位というものはどういうふうになっているのですかというお答えが全然出てないわけでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/268
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269・銅崎富司
○銅崎政府委員 お答えいたします。
本土におきまして、鉄道といいますか、例としてございますのは鉄道側線でございますが、これは提供のときに一部使うという提供条件あるいは地位協定二条四項(a)によって使っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/269
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270・桑名義治
○桑名委員 そうしますと、今後返還された基地内のダムの中から新しく配管工事をする場合、やはり同じように地位協定の二条の四項の(a)、これに属する、こういうことになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/270
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271・銅崎富司
○銅崎政府委員 沖繩の場合におきましては、これから米側と調整していくことになるかと思いますが、本土と同様に、提供にあたりましての提供の条件、あるいは二条四項(a)によりまして提供することになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/271
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272・桑名義治
○桑名委員 最初からそういうふうに言ってもらえばすぐに了解したのです。えらい遠回りをしました。
そこで、返還といいましても、事実はこれは公社の買い取りになるわけでございますが、その金額が約四千七百万ドル、こういうことになるわけです。この積算の基礎はどういうふうになっているのか、明快にお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/272
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273・小幡琢也
○小幡政府委員 琉球水道公社の資産の評価額の四千七百三十万ドルの内訳でございますが、水道公社の積極財産、消極財産、ともに引き継ぐということになりますので、まず固定資産、流動資産等の資産を合計いたしまして、三千三百九十万ドルでございます。それから負債の金額、流動負債その他引当金で、合わせまして七十八万ドルございます。したがいまして、資産から負債を引きまして三千三百十万ドルでございますが、これは評価時点が、実は協定の調印日がことしの六月十七日でございますので、その直近の事業年度でございます一九七〇年六月三十日でやった関係上、それ以後復帰までの資産の増加、これを見込みまして、これが千四百二十万ドルでございますので、合わせまして四千七百三十万ドルでございますが、この出資の増加見込みの中には、先ほど申し上げました、現在米軍の所有の施設でございますものを、公社に復帰までに移転するための、移転することによる増加額とか、その他現在工事を実施しております福地ダムの増加分、こういったもの、これを合わせまして千四百二十万ドル、こういうことになっておりまして、それで合計四千七百三十万ドルということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/273
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274・桑名義治
○桑名委員 これは琉球水道公社の年次報告書でございますが、この水道公社の年次報告書の中から、貸借表を見てみましても、これは四千七百万ドルには実際にならないわけですね。確かにいまあなたは、いろいろとまだ米軍の施設になっている分が返ってくるからその分も買うのだ、その中には入っているのだ、こういうふうにおっしゃるわけでございますけれども、しかし、その金額が四千七百万ドルになる、こういうことで了解をしていいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/274
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275・小幡琢也
○小幡政府委員 琉球水道公社の財務諸表がございますが、これの一九七〇年六月三十日現在の数字、これと私どものほうで評価いたしました金額とは若干差がございます。といいますのは、私どものほうの評価は、琉球水道公社の帳簿価額のように、過去の取得価額ではなしに、現時点におきましてこれを調達するとすればどれぐらいかかるかという再調達価額を出しまして、それから、その資産が取得されました時点から、評価時点までの間の減価償却相当額を控除しているわけでございますが、その減価償却にいたしましても、私どものほうの使用しました方法は、本土におきまする税法の減価償却資産の耐用年数等に関する省令、これによってやった関係上、水道公社の評価方法、これは総合償却法でございますが、これとそういった耐用年数等につきまして差があるわけでございます。しかし、何といいましても一番の違いは、先ほど申し上げました復帰時点までの資産の増加額千四百二十万ドル、こういうものを加えておりますので、だいぶ差がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/275
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276・桑名義治
○桑名委員 そうすると、今後のいわゆる施設の分としましては、福地ダムの建設会計が約五百万ドル、こういうふうにいわれておりますが、これも合わせていわゆる資産の対象になっているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/276
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277・小幡琢也
○小幡政府委員 先ほど申しました約五百万ドルは、これは米軍所有の資産の増加分でございます。移転することによる増加分でございまして、福地ダムの分は約八百四十万ドルでございます。福地ダムは全部で千二百万ドルくらいでございまして、そのうち八百四十万ドルが残っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/277
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278・桑名義治
○桑名委員 そこで、次にお尋ねをしたいことは、この水道公社ができ上がる前までのいわゆる資金はどういうふうにして調達されたのか、その内容についてまず最初にお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/278
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279・前田多良夫
○前田政府委員 お答えいたします。
水道公社は米国の高等弁務官の管理します一般資金から主として出されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/279
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280・桑名義治
○桑名委員 答弁するならもう少し丁寧に答弁してくださいよ。米国の民政府一般資金からだけですか。そうじゃないでしょう、統合水道は。米陸軍の割り当て金も入っているでしょう。琉球公社のいわゆる利益金も入っているでしょう。なぜそんなにずさんな答弁するのですか。調べてあるのですよ、一応。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/280
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281・前田多良夫
○前田政府委員 失礼いたしました。
一般資金それから割り当て資金等から出ておるわけでございます。(桑名委員「利益金もあるでしょう」と呼ぶ)利益金もあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/281
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282・桑名義治
○桑名委員 なぜ具体的に言わないのですか。そうしてまた、金額言ってくださいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/282
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283・前田多良夫
○前田政府委員 お答えいたします。
琉球水道公社の資本金の内訳を申しますと、合計で二千九百九十一万一千ドル、ARIAが六百四十七万六千ドル、一般資金が二千三百九万五三ドル、USアーミー分が二千ドル、USネービー分が二十八万七千ドル、その他五十一万ドル、利益剰余金三百八十七万ドル、純資産額合計三千三百七十八万一千ドル、以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/283
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284・桑名義治
○桑名委員 そこで大臣にお聞きしたいわけでございますが、民政府の一般資金の性格についてはどのようにお考えなのでございますか。——この問題につきましては政治的な配慮があるわけでございますので、大臣にお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/284
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285・前田多良夫
○前田政府委員 事実をお答え申し上げます。
これは、民政府の一般資金につきましては、いろいろのガリオア資金というようなものの売り上げ代金をそこへ入れまして、それを沖繩の経済の開発、福祉の向上等のために再投資していく、こういう資金でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/285
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286・桑名義治
○桑名委員 そうしますと、この民政府一般資金というのは、いわゆる占領下にある米軍が民生の安定のために、琉球人のためにいわゆるこの資金を支出している、こういうふうに理解をしていいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/286
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287・前田多良夫
○前田政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/287
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288・桑名義治
○桑名委員 この民政府一般資金の中には、ガリオアの売り上げ代金が再投入されているというお話でございます。
そこで、このガリオアのいわゆる性格について、これをもう一度お答えをしていただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/288
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289・前田多良夫
○前田政府委員 ガリオアの資金の性格でございますが、これは占領地の行政のためにアメリカの軍予算から支出されるところの資金、こういうものでございます。そうしてそれには、割り当てられた資金そのままで直ちに資産になって、たとえば電力の発電所になるとかそういうようなものもありますが、その中には、消費物資のようなものをそれで買い付けまして、それでその売り上げ代金を現地にとどめまして、それをまた再投資していく、これが先ほど申しました一般資金になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/289
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290・桑名義治
○桑名委員 そうしますと、このガリオアの資金が再投資されたいわゆるこの民政府一般資金は、これはガリオアの性格からいいまして、あるいはまた民政府一般資金の性格からいって、返還する必要はない、こういうふうに考えてよろしいか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/290
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291・前田多良夫
○前田政府委員 おっしゃるとおり、ガリオア資金につきましては、これは債務性はございません。沖繩の場合のガリオア資金につきまして債務というのはございません。と申しますのは、ただいま申しましたように、この売り上げ代金と申しますのは、これはアメリカの中に積み立てられた資金でございまして、沖繩とアメリカとの間では貸し借り関係はございませんので、売買関係で、そこでもう切れております。日本のガリオアの場合は、積み立てられましたのは日本政府の中でございますので、アメリカと日本との間ではいろいろまだ未解決の問題があったわけでございます。しかし、ただいま申しますように、琉球、沖繩の場合におきましては、それは売り上げ代金というものはアメリカの金になりまして、したがいまして、その一般資金というものもアメリカの弁務官の管理に置かれる、こういう関係にございますので、貸借とか債務とかそういうものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/291
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292・桑名義治
○桑名委員 そうしますと、この水道公社というものは、ガリオアの売り上げ代金がさらにプールをされて、民政府の一般資金としてこの水道公社ができ上がっている、こういう論理になりますと、この水道公社というものは買い上げる必要がない性格のものである、こういわざるを得ないわけでございます。
この問題につきまして、第六十三国会の沖特の中でこういう質問があるわけです。今日まで三権を行使してきた米国には、当然施政権者としての責任があるわけだから、ガリオアは全部沖繩住民に贈与されたものであって、その資金でつくられた資産、施設等は当然沖繩住民に帰属すべきものであるという結論になると思うがどうか、こういう質問に対して、愛知外務大臣は、総括的にいえば大体お示しのような考え方が正しいと思う、つまり日本本土の場合と背景や経過が違うように考えられると、この答弁は暗に、いわゆるガリオア資金、そういった資金でできたところの資産、施設というものは、当然沖繩の住民に帰属すべきものである、こういうように愛知外務大臣は明快にこの六十三国会の沖特で答えております。
そういった立場から考えますと、今回のこのような水道公社やあるいは電力公社、こういったものを新たに返還をされるからということで買い上げるということは、非常にこれは不当なことである、こういうように私は考えるわけでございますが、大臣の所見をお聞きしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/292
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293・田中角榮
○田中国務大臣 電力公社も水道公社も買い上げということではなく、資産引き継ぎということになっておるわけでございます。
それからもう一つは、ガリオア・エロアの問題については、かつて国会で産投会計法の改正案を審議を願ったときにも同じような議論が行なわれておるわけでございますが、日本は積み立てておりましたから、アメリカ側の返済要求に対してこれを返済をするということにいたしたわけでございます。この返済をする窓口は産投会計から行なうということで、産投会計法の一部改正法をもって審議をお願いしたわけでございます。沖繩に関しましては、本国から経由をしていったガリオア・エロア資金もございます。それから沖繩に直接投資をされた資金もございます。本国を経由してまいったものは別として、沖繩に施政権を行使をしておるアメリカ軍が、ガリオア・エロア資金を使って水道公社その他を行なったわけでございますが、これは当時の愛知外務大臣の考え方というような見方もあると思いますが、しかし、厳密にはアメリカの資産として現に計上せられておるわけでございます。これはアメリカの施政権者がこれを琉球政府の資産として贈与をしたものであれば、いまあなたが言うような問題が起こるわけでございますが、そうではなく、ガリオア資金は軍政府がそのまま運用し、その財産権はアメリカ政府に置いておったわけでございますので、その限りにおいてはやはり引き継ぎのときにしかるべき計算の上に引き取り金額を計上したということでございまして、当時の愛知外務大臣の発言と食い違うものでもなく筋の通ったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/293
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294・桑名義治
○桑名委員 全く筋の通らない論議でございます。私が一番最初に、どういうふうに試算をしましたか——買い取りでなければ試算をする必要はない。しかも試算の内容からいいますと、まあほぼ積み上げた積み上げ方式になっております。じゃこれは買い取りでなければ何ですか。大体どういう性格のお金なんですか。買い取りでなければ、引き継ぎにお金が要りますか。たとえば核を持ち出すとかあるいは毒ガスを持ち出すとかいえば、新しく取りつけ道路をつけなければならない、あるいは住民を避難させてその補償をしなければならない、そういった経費は一応了解はできますよ。しかし、水道公社というのは動かないのですから、そのままの状態でそのまま権利、義務を全部受け継ぐのですから、何のために、ガリオアの資金を返済する必要がなければ、そういう性格のものであるならば——あなたいまはっきりおっしゃった、確かにそのガリオアの資金は支払う必要がないんだとこういうふうにおっしゃった。そうすると、そのガリオアの資金で投資されたいわゆる資産は、琉球政府そのものじゃないですか。私はそう思います。はっきり申し上げて、じゃ買い取りでなければ何ですか、そのお金は。お礼金ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/294
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295・田中角榮
○田中国務大臣 私の答弁を明確にしておきますが、ガリオア・エロアの資金は事の性質上返さなくてもいいんだという議論は、日本国の場合もございました。ございましたが、それは国会において感謝決議をやったりしたからもらったものだという議論でございましたが、当時占領目的達成のために投下をせられたものであるとしても、相手国が返済を迫るというような新しい事態に対して、支払い能力ができた当時の日本としてはこれはお礼を言って返すべきである。しかし、それは両国でもって十分意思の疎通をはかって、この資金の性質が後にも残るようなものにしようということで、日米間で話をして返済をすることにしたわけでございます。
今度は沖繩の問題は、沖繩の琉球政府に与えたものでなく、そのまま水道施設も電力施設もアメリカの軍の施設として現に計上せられておるわけでございます。でありますので、その意味で、日本が施政権を引き継ぐというときに計算をしたものでございます。これは前にも外務省からもこの趣旨を答弁がございましたが、これは私は一つづつっ厳密に計算が確実であるものという性質のものではないと思うのです。それは、核の撤去費用七千万ドルの内訳という指摘に対してもそうでございましたが、この種のものは日韓のときも議論がございました。同時に、今度も議論をしているわけでございますが、初めから三億二千万ドルというのではなく、七億ドルであり、六億ドルであり、五億ドルであり、四億ドルであり、両方が歩み寄って三億二千万ドルにしようといった金額でございますから、私はそういう意味で理解をすべきだと思うのでございます。しかも、先ほど大蔵事務当局が述べましたとおり、この三億二千万ドルの中では、一億七千五百万ドルと七千万ドルと七千五百万ドルと三口合わせて三億二千万ドルとなるわけでございます。積算の数字は大体答弁できるようになってはおりますが、しかし、これは沖繩返還というような両国の外交の結論として出るものは、私はほんとうに数字的にコンピューターがはじき出せる数字とはおのずから違う結論である、こう理解すべきだと思うのでございます。
ですからこの問題は、ガリオア・エロアの性質上から考えて、沖繩住民の帰属であり、引き継ぎに対して、引き継ぎ金額を計上することは不当であるということにはならないと思うのでございます。そういう意味で計算いたしますと、一億七千五百万ドルでなく一億七千八百何万ドルになるのを、まるく一億七千五百万ドルにということで計上しておる数字であることは事実なわけでございますから、これを一億七千五百万ドルの数字そのままに合理的に合わそうとすると、この種の問題に対しては私は明確な理論づけはむずかしいと思います。しかし、十分に日本人は、またお互いも理解ができる数字だと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/295
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296・桑名義治
○桑名委員 私は一向に理解ができません。先ほどからの大臣の答弁は、非常にあっちに行ったりこっちに行ったりでなかなか明快につかめないわけでございますが、そこで私はさらに申し上げたいことは、いわゆる米下院軍事委員会のプライス氏がその報告書の中に、「ガリオア資金の占有権と管理権は安全のため又は技術上及び経済上の理由で民政府が保有してきた。ガリオア資産は、信託財産であり、その主たる受益者及びその残存収益権、所有者は琉球の人達である。」ここでは明快になっておるわけです。そうなってきますと、わざわざ四千七百万ドルのいわゆるお金を出して買い取ったというような姿になることは、これは私は納得できない。その点についてさらにお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/296
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297・前田多良夫
○前田政府委員 おっしゃいますように、一九六七年の米国議会でのプライス法の改正が行なわれました際に、ここに述べた財産は信託財産を構成し、その主たる受益者及びその唯一の残余権者は琉球住民である云々というような趣旨のことがいわれております。このことは、アメリカの会計法の規定に関する証言の部分とも対応する部分でございまして、いわゆるこれらの資金が沖繩の民生のためにのみ使われるべきものであって、いわゆる軍事用に使うとか、そういったものには使ってはならないのだという、そういう趣旨の精神的なことを述べたものでありまして、これがいわゆる信託であるとか、そういう信託が法的にきめられたというような趣旨ではない、こういうふうになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/297
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298・桑名義治
○桑名委員 変なことを言わないでくださいよ。精神的だなんて、そんな法律がありますか。
さらに、米合衆国政府の会計検査院長官の意見、一九五三年の四月二十四日付、これは陸軍長官はガリオア資金及び施設は米国財務省が所有すべきものとみなすべきかどうかについて決定を求めた。この決定に対して長官は次のように述べた。「その資金は、琉球の人達のために考えられまた使用され且つ、琉球の人達のために保有された信託勘定といった性質のものであり、米国の一般的な目的や、陸軍の軍事目的について議会が充当した資金を補うために使用してはならないことは明らかだと思われる。こういった事情から、この資産は「米国財務省に返すべき或は米国財務省の所有する」外国資産だとは思われない」こういうふうに言っているわけですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/298
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299・前田多良夫
○前田政府委員 ただいまの会計検査院長の証言につきましては、一九五三年の補正予算法、第八十二米国議会におきまして、いわゆる第十四章一般規定という予算規定がございます。そこに、千四百十五条の趣旨は、合衆国国庫により所有される海外債権というものは予算法の規定によらざれば使用できない、こういう趣旨のことが書いてあるわけですが、しからばその沖繩におきますところの一般資金は、ここでいうところの合衆国国庫により所有される海外債権に該当するかどうか、こういう証言を求められた場合に、会計検査院長といたしましては、これはいわゆる一般規定の千四百十五条でいっているところの合衆国国庫により所有される海外債権には該当しないんだ、なぜならばこれはそういった軍事上の目的等に使うことはできないのであって、もっぱら現地沖繩の住民の福祉のためにのみ使われるべきものであるから、これは、いわゆるここで一般的な千四百十五条でいうところの合衆国の国庫により所有される海外債権には含まない、つまりこれは議会の承認を経なくても、予算上一々毎年毎年の使用方法を予算に縛られないで、大統領の承認を得れば使用できるようになるんである、つまり使用方法の制限規定からははずれるのです、こういう趣旨を会計検査院長は述べたわけでありまして、これによってその金が沖繩のものである、こういうことを述べたものではございません。これはあくまで米国の所有の金ではあるけれども、その使用方法について千四百十五条の制限は受けません、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/299
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300・桑名義治
○桑名委員 いまの説明の中にありましたように、それはただ単なるいわゆる会計上の問題としてそれを取り上げ、考えることは問題だと思うのです。問題は、なぜそういうふうないわゆる会計上の取り扱いをしなければならなかったか。それはいわゆるガリオア資金あるいはまたガリオア資金の見返りから出たところの資金でいろいろな資産をつくる、それは決して軍のためにつくるのではない、あくまでもいわゆる施政権下にある琉球の人のためにのみ使用するのである、ということは、この前のプライス氏の報告書にもありますように、いわゆるガリオア資金というものは信託財産である、そういう立場、その意味が明瞭にあらわれている、こういうふうに考えることが至当だ、私はこういうふうに考えるわけです。そういった意味からも、先ほど言いましたように、いわゆる愛知外務大臣も六十三国会の中でははっきりと、日本本土の場合と背景や経過が違うから、したがって概括的にいえば、このガリオアでできたところの施設やあるいは資産というものは、これは代価を支払う必要はないんだ、こういうふうに言っているわけです。私はそういうふうに解釈する。
そこで、大蔵大臣代理じゃなくて、私は愛知外務大臣の御答弁を引き合いに出したわけですから、福田外務大臣の御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/300
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301・福田赳夫
○福田国務大臣 桑名さんのような御意見もあるのです。いろいろ議論もしてみた。しかし結局、ガリオア資金は沖繩の民生のために使われた、これは事実である。しかし、それによって、アメリカがそれに対する財産権なり債権を放棄したものじゃない、こういう最終的な判断に到達したわけなんです。ですから、愛知外務大臣が感想を申された、それはそういう事実はあるようでありまするけれども、最終的にはただいま田中大蔵大臣代理が申されたような結論にいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/301
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302・桑名義治
○桑名委員 私は、こういったところに政府の対米追随外交という一面があらわれているのではないか、こういうふうに考えざるを得ないわけです。そういった意味で、先ほどからこの四千七百万ドルの問題についていろいろ質疑を行なったわけでございます。
そこで、先ほど大臣が言われた中に、これは買い取りではないんだ、じゃ何のお金ですかと私はこれをお聞きしたいわけです。これは何のお金ですか、買い取りでなければ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/302
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303・福田赳夫
○福田国務大臣 これは買い取りじゃないんです。資産の引き継ぎでございます。その引き継ぎに対しまして、そういう引き継ぎがあったということも考慮し、また核の問題、ああいう問題もあることも考慮し、協定第七条におきまして総額三億二千万ドルの支払いを行なう、こういうふうにいたしたわけであります。あくまでも、その資産がある、そのアメリカの資産を買い取るという観念をとらないで、総括的に三億二千万ドルを支払いいたします、この支払いにあたりましては、資産が移転をされた、引き継がれた、そういう事実も考慮いたします、また核の問題についての配慮も行ないます、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/303
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304・桑名義治
○桑名委員 核の撤去の七千万ドルだったですか、この問題については外務大臣はこういうふうに言われました。この核の問題は、これが幾らこれが幾らという試算がなかなかむずかしい、そこで高度な政治判断によってこの金額はきめました、この話も全然わからないわけでございますが、この水道公社という問題あるいは米陸軍の水道施設という問題は、そういうあいまいもことして考えられる問題ではない、試算をしようと思えば結局はきちっと試算のできる問題なんです。だから、先ほどから試算はこういうふうにしましたというお話がある、そのきちっとした試算というものは、結局お金を出して、その設備をこっちの手に入れるのですから、これ買い取りじゃないですか。引き継ぎならばお金は要らないでしょう。引き継ぎに何でお金を払わなければならないんですか。代価でしょう、要するに。代価ということは買い取りということじゃないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/304
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305・福田赳夫
○福田国務大臣 三億二千万ドルの支払いをいたしますが、その支払いにつきましてもある程度の根拠を持ちたい、そういうことからまず一億七千五百万ドル、資産の評価をいたしたわけであります。大体一億七千八百万ドルですか、そうなった。一応一億七千五百万ドルと見る。それから軍の労務者の関係七千五百万ドル、それを合計しますと二億五千万ドルなんです。で、これは相手のある折衝のことでございます、アメリカ側では多額の支払いの要求をするわけでありまするが、わがほうとしてはそういうわけにはいかぬ。そこで歩み寄りまして、私はこの歩み寄りはわがほうにかなり有利な歩み寄りであった、こういうふうに思いますが、総額として三億二千万ドルの支払いを行なう、こういうふうにいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/305
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306・桑名義治
○桑名委員 この問題になりますと、いろいろと平行線でかみ合わないようでございますので、一応そういった幾多の疑問があるということを残して次の問題に進んでいきたいと思います。
しかし、これも同じように水道の問題でございますが、沖繩の過去数年前における水需要の伸びを見ますと、米軍需要は横ばい、それから民間の需要は年間約平均二〇%の伸びを示しております。沖繩の方々の一人の一日当たり使用量は二百三十リットルから二百五十リットル、こういうのが現在の姿であります。本土並みになりますと四百リットルから五百リットル、こういうふうに予想されるわけでございますが、これをまかなうためには現在の弱体な水源施設を充実さしていかなければならない、こういうように思うわけでございますが、政府としてはどのような計画があるか、まずお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/306
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307・山中貞則
○山中国務大臣 これは実際は来年度予算の具体的な計画と補助率十分の十の工事というもので明らかになるわけでありますが、現在米軍のほうで行なっております福地ダムをさらにこれを引き継ぐ工事と、それから石川浄水場までのさしあたりメーン送水パイプというものを日本側のほうでつなぐ工事を着工いたします。さらに国頭村の本島北部の東側にある安波川、普久川等の先ほど申された降雨量、流量というものがむだに太平洋のほうに流れておりますから、まず当初の計画としてはこれらをつないだ一連のダムをつくることによって、とりあえずは本島中南部を中心とする水の需要、そして予想される工業開発に伴うところの工業用水等の需要というものに対応さしてまいりたいという計画を立てておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/307
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308・桑名義治
○桑名委員 そうしますと、福地ダムは一九七二年の春を目途に工事中と、こういうふうに聞いているわけでございますが、これで実際にできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/308
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309・山中貞則
○山中国務大臣 これが若干残りますので、したがって、来年度の予算要求に福地ダムの完成に要する費用を要求いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/309
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310・桑名義治
○桑名委員 そうしますと、ダムの費用だけではなくて、それに伴う付随的な工事も一切がっさい十分の十の補助率でやる、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/310
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311・山中貞則
○山中国務大臣 そのとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/311
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312・桑名義治
○桑名委員 そこでお尋ねしたいことは、先ほどから水道施設が全部日本に返還になる、こういういろいろなお話がございましたので、これを前提としてまず考えて次の質問に移りたいと思うわけでございますが、この返還をされた後、米軍の水道料金はどういうふうになるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/312
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313・井川克一
○井川政府委員 合意議事録の「第六条に関し、」というものがございまして、読み上げますと、「琉球諸島及び大東諸島における合衆国軍隊は、日本国本土における合衆国軍隊が千九百六十年一月十九日に署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の関係規定に従って現在享受している条件と同じような条件でのみ、公益事業及び公共の役務を利用する権利を与えられる。」すべて本土並みになるわけでございます。その点は地位協定第七条に書いてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/313
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314・桑名義治
○桑名委員 そうしますと、ここに書いてある「日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の関係規定に従って現在享受している条件と同じような条件でのみ、公益事業及び公共の役務を利用する権利」を与えるということは、現在の米軍が支払っておる——米軍が支払っておるかどうか私ははっきりしたこと知りませんが、現在の沖繩の米軍が支払っておるその料金と同じ料金にするということではなくて、いわゆる日本の本土では地位協定の七条で公益企業と同じような取り扱いがなされておりますけれども、それと同じ取り扱いがなされるということですか。それとも現在の沖繩に駐留している米軍の支払っている水道料金と同じになるということですか。それはそのまま承継されるということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/314
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315・井川克一
○井川政府委員 現在のアメリカ軍が持っているあれとは全く違いまして、地位協定第七条、「合衆国軍隊は、日本国政府の各省その他の機関に当該時に適用されている条件よりも不利でない条件で、」云々と書いてございまするとおり、全く本土と同じように、現在アメリカが幾ら支払っているかということと全く関係ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/315
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316・桑名義治
○桑名委員 そうしますと、今後水道施設が一切がっさい日本に返還をされますと、いわゆる給水計画等も一切が米軍の手から離れて日本の水道小社の手に移ると、こういうように考えてもいいわけでしょうか。それは今回のいわゆる渇水期におきまして、米軍は自由に水を使ったけれども、琉球の人々は沖繩の人々は非常に水に困った、こういう事例があるわけでございます。日本に施設が返還になれば、当然この水のいわゆる配水計画等も一切行なわなければ意味がないわけでございますので、これは確認の意味を込めて質問しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/316
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317・山中貞則
○山中国務大臣 これは沖繩県営水道になるのでありますから、配水計画も取水計画も送水計画も全部沖繩県が責任を持って行なえるようになるしけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/317
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318・桑名義治
○桑名委員 それから、先ほどちょっとお話が出ておりましたが、水道料金の値上げ問題が取りやめになったわけでございますが、復帰後、県営水道になってもいろいろな施設の改善等あるいは拡張等をやっていかなければならないわけです。そこでまた、この水道料金の値上げが行なわれるのじゃないかというような心配が非常にあるわけです。現在本土平均が一立米十六円から十七円であるにもかかわらず沖繩は二十円八十八銭という、現在でも高いわけですから、さらにいろいろな施設を拡充をし改善をした場合当然資金が要る、そういったことで水道料金の値上げが心配になるというような話があるわけでございますが、この点についてちょっと付言をしておきたいと思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/318
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319・山中貞則
○山中国務大臣 電力料金、水道料金等は生活の基本料金でもあり、あるいはまた基盤でもありますので、それらの点が現在よりも高くなることのないような財政的な配慮は当然それぞれの部門においていたしてまいるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/319
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320・桑名義治
○桑名委員 それから沖繩振興開発特別措置法案では、簡易水道だけが補助率のかさ上げの対象になっています。その他についてはどのような処置をなさるのか、その点について伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/320
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321・山中貞則
○山中国務大臣 これは先ほど申し上げました新しく開発するダムあるいは基幹的なパイプ等については、全額国でやるという構想のもとに行なっておりますから、したがって、その他行なわれるとすればまず簡易水道というもののかさ上げが必要であろうということを配慮しておるわけでありますけれども、その後、沖繩県の水道公社となって移りまして工事が行なわれるものについても配慮はいたすつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/321
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322・桑名義治
○桑名委員 それは予算措置で行なうんですか、それともどういうような形で行なわれるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/322
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323・山中貞則
○山中国務大臣 ちょっと私一覧表手元にありませんでしたが、これは利用料金等の関係もあって、地方債の計画で運用していけるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/323
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324・桑名義治
○桑名委員 水道の問題で最後にお尋ねをしておきたいことがございますが、いわゆる水道の取水を、井戸水を取っているという個所がずいぶんあるわけでございますが、その個所にすでに公害が発生をしている、こういうふうに報告をされております。そういう問題御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/324
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325・大石武一
○大石国務大臣 一例だけ、井戸を掘りましたために、土地が一部陥没をして渇水を来たしたという事例がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/325
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326・桑名義治
○桑名委員 その措置はどういうふうになさるおつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/326
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327・大石武一
○大石国務大臣 水質保全局長よりお答えいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/327
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328・岡安誠
○岡安政府委員 お答えいたします。
先ほどの例と申しましたのは、具志川市におきまして水道公社が井戸を掘りまして、それから干ばつと合わさったわけでございますが、周辺の井戸一帯が水がかれたということと、一部の地帯におきまして陥没が起こったわけでございます。
干ばつにつきましては、その後雨が降りまして解消いたしたわけでございますが、陥没の原因につきましては、現在琉球政府において調査中でございまして、どういう原因で陥没したか。一般の地盤沈下とは必ずしもお話ではなっていないんではなかろうかということで、現在調査中でございます。この調査結果を待ちまして、必要な措置があれば、私どももさらに御援助を申し上げたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/328
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329・桑名義治
○桑名委員 水道公社の地下水取水についての公害の問題でございますが、これは沖繩にあるただ一つの公害のいわゆる報告書であるというふうにいわれております、公害防止対策協議会というのがございますが、これによりますと具志川市の天願地域十四カ所のところにボーリングをして地下水を取水をしている。そういったことからたんぼに被害が起こって、すでにその一帯の農作物は水稲、イモなどが五割の減収になっている。あるいはまた、水を必要とする理容館や美容室あるいは鮮魚店は、約三百メートル離れたところから水を運んで営業しているというような事実が報告されているわけです。
そこで、私はこの問題を提起するのは−先ほどから水道の問題を提起してまいりました。しかしながら、水が非常にそういうふうに、ため、ダムが少ないために、そういったいわゆる地下水をくみ出すことはこういうふうな公害を起こしていくことになる。早急にこの問題は対処していかなければならない問題である、こういうふうに考えるわけでございますが、これは先ほどから山中総務長官がたびたびお答えでございますので、この水道の問題について所見を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/329
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330・山中貞則
○山中国務大臣 それはたまたま工事あるいはその工事の前提の設計の段階において、地層その他について予測できない事態が起こったことだろうと思いますが、それらは今後もちろん注意してやるでありましょうし、そのほかにも、基地内に上流を持つ、たとえば嘉手納村の比謝川等の例に見られるように、基地の中において上流で水が汚染されるために、その下流の取水において非常に浄化等に困難を来たしておる例とか、あるいはまた、民間の企業者が水源を持って売水しているために一連の上水道計画が立てられず、ために一昨年大量の赤痢患者を出しました糸満町のような例もございます。これらはいずれも、民間の施設の買収等も前提とした新しい計画というものを樹立してまいりたいと考えております。
なお、基地公害にも、水道の取水地の面からも対処していく用意をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/330
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331・桑名義治
○桑名委員 これは地盤沈下の問題をいま出したわけでございますが、沖繩にも幾多の公害が起こっております。それはもう皆さん御存じのように、基地公害ということはこれは当然ながら、産業による汚染、大気汚染あるいは水質汚染、こういったものが非常に激しくなっておるわけでございます。ここで報告されている中で国場川、ここで河川が汚染をされまして、一挙に数万匹という魚がこういうふうに死滅したという報告も出ております。これはもちろん、上流にある会社に火災が起こって、そしていろいろな薬剤が流れた、こういうことでこういうふうな問題が一挙に発生した、こういうふうにいわれておりますが、国場川も非常に現在は濁り切っているというのが実情でございます。それやらあるいは騒音あるいは悪臭、こういったいわゆる公害が起こっておるわけでございます。
そこで、沖繩の公害がわれわれが考えている以上に進んでいる、こういうふうに考えるわけでございますが、環境庁としては、現地に調査した結果はどうであったか、その調査の方法というものはどういう方法でやったのか、その点について環境庁にまず伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/331
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332・大石武一
○大石国務大臣 沖繩につきましても、残念ながらある程度の公害が起こっていることは事実でございます。これは今後日本に復帰するに伴いまして、日本の本土のわだちを踏まないように、慎重に十分注意してその対応策を進めることが大事だろうと考えております。
大気の問題について申し上げますと、大気につきましては、一番問題になりますのは硫黄酸化物と降下粉じんの問題でございます。あまりたいしたデータはございませんが、いま沖繩本島の各地におきまして、一回だけ大気の硫黄酸化物による汚染度を調査した結果がございますが、その結果は大体良好でございまして、場所によっては〇・〇〇二PPMから〇・〇一九PPM、つまりこれは本土の何分の一かの汚染度でございます。一番ひどいところでございましても〇・〇五PPM一時間値でございまして、これまたそれほどまだ心配する数値ではございませんので、その大気の汚染度は必ずしも心配するほどではない状態でございます。
降下粉じんにつきましては、これはだいぶひどいものがございまして、ことにセメント工場、制糖工場、製鉄工場あるいは製板工場等におきましてはだいぶ粉じんを出しておりましたが、これも大体の工場に集じん機が装置されまして、たとえばセメント工場について申し上げますと、以前には一カ月に百トンくらい一平方キロにおける降下粉じんがございましたが、集じん機をつけました結果、十三トンに減っておる現状でございます。その他の製糖工場あるいは製板工場、製鉄工場におきましてもやはり同様に、大体集じん機をつけまして、その粉じんもだいぶ少なくなっておりますが、さらに今後とも全部の設備をいたさせまして、ことに御承知のように沖繩では、ことしの十二月から大気汚染防止法が実施されることになっております。復帰後は、当然本土の大気汚染防止法が適用されるわけでございますが、十分にその間の事情を勘案いたしまして、経過措置をとりながらその汚染度を少なくするようにつとめてまいりたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/332
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333・桑名義治
○桑名委員 復帰に伴いまして、ますます企業の進出が進むことと、こういうふうに思います。そこで、公害の配慮というものは、これは当然ながら企業の進出の時点で考えていかなければならない問題だと思うわけです。鹿島の工業地帯のように、公害はないないといわれながら、現実には大きなコンビナートでさえも大きな問題になっておるわけでございますので、そういったことを十二分に配慮をされて十二分な措置をとっていただきたい、このように思うわけでございます。
沖繩につきましては、先ほどからたびたびお話が出ておりますように、非常にきれいな水、きれいな山、そういった環境に包まれたいわゆる沖繩が、これに加えて公害で汚染をされるということになれば、これは観光地としての沖繩の存在もなくなってしまうわけでございます。そういった立場を十二分に含んでいただいて、この問題と取り組んでいただきたい、このように考えるわけでございます。
次の問題に移ります。
沖繩におきまして、沖繩の海洋博が開催の見通しになったわけでございますが、この海洋博については現在どのような状況になっているか、まず御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/333
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334・田中角榮
○田中国務大臣 十一月の初めに事務局に届け出をいたしました。現在のところ競争相手の申し込みはないようでございますので、もう少しいたしますと、自動的に開催が決定をするわけでございます。
国内といたしましては、大阪万博の例もございますので、琉球政府及びわが国の財界等、この海洋博を円滑に行なうことができるための機関といたしまして、現在懇談会をつくって、やがては大阪万博で行なったと同じような民間組織に拡大をしてまいりたいということでございます。ことしは調査費も計上してございますし、琉球政府及び地元と連絡をとっておるのでございます。
地元からは誘致の運動等ございますが、この問題は沖繩復帰の記念事業ともいうべきものでございますし、また海洋博覧会というのは万国で初めて行なわれるものでございます。そういう意味で有意義な博覧会といたしますために、あまり地元で誘致運動等でごたごたを起こさないように、琉球政府や地元の間でうまくひとつ候補地をきめていただきたいということで、通産省中心になりながら、政府関係機関と連絡をとりながら準備を進めておる段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/334
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335・桑名義治
○桑名委員 大体の内容はわかりましたが、しかしながら、この海洋博を行なうためにはいわゆる用地の確保あるいは道路の整備、港湾の整備、空港の整備、こういうふうな付随的な大きないろいろな工事が出てくるわけでございますが、現在の沖繩の財政事情から考えますと、当然この整備に大きな負担がかかるんではないか、こういうふうに考えるわけです。十月の二十二日に、渡海自治大臣はこの問題について、全額国庫負担というようなお話をなさったとか、それに対して田中通産大臣はそれを否定なさったというようなお話を漏れ聞いているわけでございますが、これは大体どちらがほんとうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/335
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336・田中角榮
○田中国務大臣 沖繩の博覧会は、規模は違いますが、大阪において行なわれました万国博覧会と同じものでございます。また、世界でも初めて行なわれる海洋博覧会でございますので、この内容を充実せしめ、意義あらしめたいということは、先ほど申し上げたとおりでございます。しかし、大阪の例を見てもおわかりになりますとおり、全額国庫負担でやったわけではございません。まあこの種のものは、官製ということでは盛り上がらないのでございまして、全国民的なものでなければならない、こういうことは、もう私が申すまでもないのでございます。金を惜しむわけではありません。沖繩返還という大事業の記念事業として行なわれるべきものでございますし、その意味では政府が応分の負担をなすべきことは当然でございますが、やはり国民的盛り上がりを増すということからいたしましても、大阪万博でとられたと似たる姿が最も理想的である。また、大阪万博などは収支償わないであろうといったら、その結果は剰余金をどうしようかというような状態でございます。そういうこともございますし、これは全国民的な拠金と全国民的な支援のもとに行なわれてこそ意義あることであるということで、政府は応分の負担を行なうということが最も理想的であるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/336
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337・桑名義治
○桑名委員 私がこの問題を特に全額国庫負担にしたらどうだというお話を申し上げたわけでございますが、これは大阪の場合と沖繩の場合はちょっと事情が違うんじゃないか、こういうふうに私は思います。大阪は財政力もわりに豊かでもございますし、大きな予算規模をしておりますので、幾らでも財政的には融通がつきます。しかし沖繩におきましては、もう大臣も御存じのように、非常に財政的に困窮をしているというのが実情でございますので、その点は、大阪と同一な方式をとるということは私は賛成しかねるわけでございます。そこに幾らかの積み重ねがなければ、これは沖繩の海洋博をやったことによって、いわゆる沖繩県の財政に破綻を来たした、その以外のところにいわゆる公共投資のおくれが非常に目立ってきた、こういった問題が起こったならば、これは何のために海洋博を行なったのか、こういうふうに逆に非難をされる事態が起こるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。この点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/337
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338・田中角榮
○田中国務大臣 大阪と沖繩と違うということはもう当然考えております。しかも大阪の万博も、大阪だけでやったのではなく、全国民的なものでございますし、六千万人余が参加をしたのでございます。沖繩も、六千万人余が参加をすることができなくとも、四分の一世紀以上に及ぶ沖繩の苦労を考えれば、私はやはり全国民的な盛り上がりということが望ましい、こういうことを申し上げておるのでございます。
しかも、この沖繩海洋博が沖繩の振興のためにこそなれ、そのために沖繩を疲弊せしむるなどということは、ごうも考えておりません。ですから、沖繩を中心というのではなく、これが計画その他に対しては沖繩に大いにひとつ発言をしていただいて、負担のほうは本土のほう全体でひとつ負担をする、こういうことでございまして、政府が支出をする金も、政府が特別持っている金じゃないのでございます。これはやはり国民の金を預かっておるわけでございます。ですから、政府の責めに負うべきところ、これは公共投資その他は当然政府が負担すべきでございますが、この沖繩海洋博という性質に徴しまして、やはり国民的な盛り上がり、この海洋博を行なうときには沖繩の皆さん御苦労さまというような立場で拠金をする、こういうつもりでございますから、何も沖繩を困らせるなどということは全く考えていないということだけは、これはもう声を大にして申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/338
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339・桑名義治
○桑名委員 本来は、いまから地方行政関係のいわゆる県財政についていろいろと質疑をしたかったわけでございますが、きょうは、こっちに来ましたら、一時間半ということで時間の制限を受けました。いまから先この問題を質疑する時間がございませんので、一応これで今回は打ち切っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/339
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340・床次徳二
○床次委員長 次に、木島喜兵衞君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/340
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341・木島喜兵衞
○木島委員 私は、教育問題だけにしぼってお聞きいたしますけれども、この沖繩返還に伴っての沖繩と本土に横たわる政治、経済の一体化の問題についてもなかなか困難であろうけれども、より思想的なものの解消がなければ、本来的な一体化ということが困難である。そして、その思想の一体化こそ、政治や経済よりもはるかにむずかしい問題ではなかろうかと思うのです。いわば思想問題の解決しない限り、沖繩問題が終わらないとすらも言えるのではないかと思うのです。そういう意味で、教育問題でありますから、文部大臣を中心にお聞きいたしますけれども、文部大臣として、沖繩の心というものをよく言われますけれども、その沖繩の心というものを一体どのように御理解になっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/341
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342・高見三郎
○高見国務大臣 お答え申し上げます。
沖繩の教育というものを考えてみまして、非常に尊敬をいたしておるところは……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/342
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343・木島喜兵衞
○木島委員 一般的にいって、沖繩の心といいますね……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/343
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344・高見三郎
○高見国務大臣 心というのはどういう意味でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/344
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345・木島喜兵衞
○木島委員 返還に伴って沖繩の心を大事にし、沖繩の心をもって返還に当たる、こういうのが一般的にいわれるでしょう。そこで、教育全体に入る前に、さっき最初に申しましたように、思想の問題の解消がなければ、私は一体化というのは実質的にはできないだろうと思うから、そこで大臣として、教育問題を論ずる前に、このいまいわれている沖繩の心というものをあなたがどういうようにつかんでいらっしゃるだろうかという、沖繩の心だけをお聞きしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/345
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346・高見三郎
○高見国務大臣 戦争中、島ぐるみのあれだけの戦いをいたしました。アメリカの戦史を見ましても、今度の戦争における沖繩戦というものが世界の戦史の中の最大の激戦であったということは、アメリカ自身が認めておるところであります。私は、沖繩県民が、県民あげてほんとうに国土の防衛に当たってくれた、このことこそ日本人の心であり、この事実が——戦後において、この沖繩県民の皆さんは異民族の支配下に置かれた。その異民族の支配下で二十数年を経られた沖繩の皆さんの心境から申しまするというと、最大の被害者はだれであったかというならば、もう言うまでもなく沖繩県人である。いま沖繩の皆さんがほんとうに心から望んでおられることは、日本国民として日本の施政権下に返るということであろう、かように考えておるのであります。沖繩の心と申しますのは、沖繩の皆さんの本土へ帰りたいという願いを私はすなおに受けとめたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/346
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347・木島喜兵衞
○木島委員 日本国民として早く帰ってきたいと思う。しかし、先ほど申しますように、沖繩の人たちの心の中には、たとえば本土との断絶感、距離感あるいは異質感、違和感あるいは不信感、疎外感、被支配感、被差別感というようなものが、沖繩の人たちの心の中にあるといわれております。そのいま言いますような思想的な問題の解決がなければ真の本土並みにもならない、沖繩問題を真に一体化することができないだろうと思うのです。そういうものはあるとお考えになりますか、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/347
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348・高見三郎
○高見国務大臣 私は、沖繩の皆さん方がそういうお気持ちをお持ちになるのもやむを得ないほど悲惨な事態をこの四半世紀なめてこられた、戦中、戦後を通じまして沖繩の皆さん方が経てこられた気持ちの中には、そういう違和感があるのがあたりまえだ。これを私どもがあたたかくお迎えを申し上げ、何とかしてその違和感をなくすることに努力することが私どもの仕事である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/348
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349・木島喜兵衞
○木島委員 いま大臣は、そのような気持ちがあることは四分の一世紀間におけるところの異民族支配とおっしゃいました。私もまさにそうだろうと思うのです。しかし、異民族支配と同時に、もっと長い、いわば慶長の薩摩侵略以来の数百年に及ぶ、異民族支配に対することばで言うならば同民族支配とでもいうべき、そういう長い間の伝統的な歴史的な本土の仕打ちが、さらに、先ほど申し上げましたような断絶感とかあるいは差別感とか被支配感というものを持ったと思うのです。そのことの理解なしに、沖繩の教育、沖繩の心をとらえたところの教育の基本的な腹がまえができないだろうと私は思うのです。その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/349
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350・高見三郎
○高見国務大臣 確かに歴史的な意味から申しますると、慶長の昔からのいろいろな行きがかりがあることは私も承知をいたしております。それなればこそ、今度お迎えする沖繩県民の方々に対して、私どもは、今度こそほんとうに日本人としての共通の利害関係に立つ状態をつくらなければならぬ、これが沖繩の教育に対する願いであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/350
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351・木島喜兵衞
○木島委員 いま、二十五年の異民族支配と同時に、数百年に及ぶ同民族支配というものを肯定なさいました。そういう長い歴史的な経験の中から、先ほど言った断絶感なり不信感なり違和感なり被支配感なりを持ってきた。そういう沖繩の心というものを基礎に置いたときに、沖繩はいま日本に、返還にあたって何を求めていると思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/351
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352・高見三郎
○高見国務大臣 私は端的に申しまして——明治二十一年でございましたか、沖繩県が県として成立をいたしましたのは。それ以来の沖繩というものは、日本におけるれっきとした地方自治団体であった。この事実を無視して考えるわけにはまいらないと思うのであります。したがいまして、そういう違和感を一刻も早く解消することが、教育をあずかる私の仕事である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/352
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353・木島喜兵衞
○木島委員 私の質問と必ずしもかみ合っておらなくてけっこうでございます。私は、先ほど申しますように、数百年間に及ぶ同民族支配、いわば私は大きく四つに分けるのです。私の分け方がいいかどうかわかりません。
その一つは、慶長の役から明治までの薩摩の侵略であります。完全に軍備のなかった琉球王国に対して三千の兵を持っていった侵略、それは形の上では日中両族であったかもしれないけれども、実質的には薩摩の圧政であったろうと思うのです。
第二の時期は、明治から戦争までであります。これは強奪であります。この間において、いまおっしゃいましたけれども、たいへん差別をされたことは事実でしょう。この間もちょっと話がありましたけれども、たとえば地租にしても、地租の改正は、本土は明治六年だったのに沖繩では明治三十二年から三十六年まで、二十六年ないし三十年のおくれがある。市町村制についてみても、本土では明治十二年だったけれども、沖繩では明治四十一年、二十九年の差がある。衆議院の選挙にしても、本土では明治二十三年であったけれども、沖繩では明治四十五年である。あるいは教育においても、皇民化教育とかあるいは同和教育ということばの中でもって差別をされてまいりました。その差別というものが戦争まで続いた。
そして第三の時期が、先ほどおっしゃった戦時中であろうと私は思うのです。沖繩の方々からするならば、あの沖繩の戦争によって本土が直接戦場にならなかった、いわば沖繩がいけにえの島であったという意識をお持ちであることは、これはいたし方ないことだろうと思う。
そして第四が、先ほどからおっしゃいますところの戦後二十六年におけるところの異民族支配でありますけれども、このことだって沖繩の方だけが苦労して、その間に本土が、あるいは神武景気だあるいは昭和元禄だという、そういうことに対する、あるいは経済的には本土人のしこのみたてかという感情をお持ちになるのは当然だろうと思う。
そういう歴史を顧みるときに、一体沖繩の方々が自分の運命を開くのに、自分の手でもってみずからを決定することに参加できず、与えられた条件の中でもって生きることしかできないという、強制された条件の中で生きることしかできない、いう、その繰り返しの伝統の中にあったと思うのです。そのことを、私は沖繩の返還の中でもって考えなければならぬと思うのです。教育でいうならば、そのような与えられた条件の中でしか生きることができない。かくありたいと思っても、ひそかに思うことはできても、しかしそれを叫ぶことはできない、行動することはできなかったところの数百年の沖繩の人たちだったと思うのです。自分はそれは運命と思ってあきらめるにしても、せめて自分の子供にはそのようなことをさせたくないと、だれでもが思ったろうと思う。けれども、その行動を叫ぶこともできなかった。そういう歴史を考えたときに、沖繩の心が求めているものは、私は自治だろうと思うのです。この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/353
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354・高見三郎
○高見国務大臣 お話しのとおり、沖繩の皆さん方が今日まで経てこられました苦労の中で、わずかに沖繩らしい生活をなすっておられたのは自治であるという御趣意には、私も異議はございません。ただ問題は、私どもは、今度はほんとうに沖繩を日本本上と同等の自治体として迎えたいというこの情熱に立っておるのでありまして、この点は御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/354
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355・木島喜兵衞
○木島委員 そこで、もう大臣十分御存じだと思うのでありますけれども、沖繩の公選制による教育委員会制度がどのような経緯をたどってできたかということについて、どのように御存じでございましょうか。もう御存じだと思いますけれども、その経緯についての御理解のほどをお願い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/355
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356・高見三郎
○高見国務大臣 沖繩の教職員の方々が、異民族支配下にあって非常に勇敢に戦ってこられた。たとえば教育法にいたしましても、教育法の中に日本国民のと、「日本国民として」の教育をするという一項目を入れておられます。これは相当の圧力があったことも伺っておるのであります。にもかかわらず、断固として日本国民としての教育をやるのだということをうたわれた。それから、いまお話のありました公選制の問題でありますけれども、この公選制も長い間かかって、異民族の任命した教育委員のもとで教育をやるわけにはいかないということで公選制をかちとられたいきさつも、承知をいたしております。それだけの努力を沖繩の教職員の方々は払ってこられたということを、私は非常に高く評価しておるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/356
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357・木島喜兵衞
○木島委員 立法院の満場一致の三度目の議決でもって、すなわち二回の、アメリカ軍隊を背景とする圧力の中で拒否権を発動された、その拒否権を拒否して三度も同じ決議をしながら、満場一致の決議をしながら、まさにおっしゃるとおり戦いとった。これは先ほど教員だとおっしゃいましたけれども、私は、教員がもちろんその火をあげたかもしれない、旗はあげたかもしれないけれども、立法院の全員の満場一致であるということは、沖繩県民全体の熱望であったと思います。そういう戦いの中からかちとったところの公選制の教育委員会制度であります。そして私は、このことをさらに評価する。先ほどから申しておりますように、数百年間に及ぶところの同民族支配あるいは異民族支配、その中でみずからの運命をみずからの手でもって切り開くことができなかった、その長い歴史の中でもって初めて沖繩の人たちが、きびしい圧政下の中でもって自分たちの運命を自分たちの手でもって切り開いたという最初の快挙であったと思うのですが、その認識をお持ちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/357
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358・高見三郎
○高見国務大臣 お説のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/358
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359・木島喜兵衞
○木島委員 この戦い取った公選制の教育委員会制度、このことが契機となって、米軍の圧制の中でもって、いま申しましたとおりみずからの運命を切り開く基本としての復帰運動の原点となった。この運動は、この法律を通すことによって、沖繩復帰への沖繩人の自信を与えた、このときから立ち上がった、このことを御理解いただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/359
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360・高見三郎
○高見国務大臣 理解いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/360
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361・木島喜兵衞
○木島委員 このように数百年の同民族あるいは異民族の支配の中でもって、沖繩の歴史の中でもって、初めてみずからの運命をみずからの手で切り開こうとしたこの公選制を、いま沖繩の人たちはそのまま残してほしいと要望をしております。たとえば先般出されたところの建議書においても、「琉球政府中央教育委員会、教育委員協会、教育長協会、PTA連合会などをはじめ、すべての教育関係団体は、こぞって沖繩の民主的教育委員会制度の存続を訴えており、また、新聞論調や世論調査の結果もその圧倒的な支持を示し、今やその存続要請は沖繩の決定的な世論であります。」と書いてあります。そのような歴史的な経緯を持ち、いま大臣もお認めになったようなそういう経緯を持ち、そしていま沖繩の人たちが初めて自分たちの歴史の中でやったことを、それを残してほしいというこの公選制の教育制度を、いま私が言ったことを踏まえて、なぜ残せないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/361
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362・高見三郎
○高見国務大臣 私はごくすなおに考えてみまして、沖繩の皆さんが異民族支配下にあって公選制を主張せられた、その勇気と努力には満腔の敬意を表するものであります。しかし、沖繩は今度は本土へ復帰するのであります。少なくとも教育という基本的な問題について、同じ教育制度のもとに同じ教育を受けるということこそ、本土復帰の一番大事な問題ではないかと思うのであります。これが異民族支配下にありますときには、公選制というものの意味があったのでありまするけれども、同じ教育という基盤に立って基本的な問題を扱いまする場合に、ある地域においては公選制であり、ある地域においては任命制であるという制度をとること自体がおかしいじゃないか。その意味において、私はごくすなおな立場で、これは本土と一体化するほうがよろしい、任命制にするほうがよろしいという判断をいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/362
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363・木島喜兵衞
○木島委員 順々にお聞きをしてまいりますけれども、いまあなたが、本土と同じ制度でなければならない、すなおにとおっしゃいました。しかし、今回の復帰の措置はすべて本土と同じでしょうか。沖繩の人たちは、本土並みというときに、たとえばアメリカの軍事基地にしたって、あるいは軍用地、公用地の強制収用にしたって、違いがあることは十分知っているでしょう。そういう人権を無視するものに関しては本土並みではない。そして、沖繩が戦い取ったそういう民主的なもの、それには本土並みだという、このことを考えると、私は、たとえば右側通行を左側通行にすると同じような気持ちでもって気楽に、ただ円滑に本土の法律のもとに移行すればいいんだというものとは性質が異なると思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/363
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364・高見三郎
○高見国務大臣 私は、教育という国民共通の課題に対しては、少なくとも本土並みでなければならぬ、この観点に立っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/364
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365・木島喜兵衞
○木島委員 たとえば国民健康保険もまた、国民的全体のものであります。あるいはもっと基礎的にいうならば、教育よりももっとさきの生命、健康、この国民健康保険制度は、これは本土と違うでしょう。本土並みにならないでしょう。だから、それがなぜ同じにならないのですか。私がさっきから言っているのは、歴史的な経過をずっと言いながら、しかも全沖繩人が要望しておるそういうものを含めて、文部大臣にお聞きしているのです。教育内容の基本的なことは、別個であってはならぬかもしれませんよ。しかし、公選制ということだけでもってなぜしなきゃならないとあなたは主張されましょうか。もう少しお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/365
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366・高見三郎
○高見国務大臣 私は、国民共通の基盤に立つ教育行政制度というものを本土並みにするということは、沖繩復帰の最も大きな要件でなければならない、かように考えておるのであります。なるほど、ほかのところで違うところがあるかもしれませんけれども、少なくとも国民共通の基本的な問題であるとしての教育制度というのは、ところによって違うというようなことがあってはならぬ、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/366
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367・木島喜兵衞
○木島委員 いま大臣が、国民共通の基本的問題である教育制度は同じくなければならぬとおっしゃいましたけれども、しかし、すでに本土では、たとえば義務教育だけでいっても、国公立の学校と私立では制度が異なるでしょう。現にあるでしょう。国民共通の基本的な問題だから同じ制度でなければならぬとするならば、国公立と私立におけるところの教育行政的な制度の違いがあるでしょう。国民基礎が全部そうでなければならぬとするならば、この点との関係はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/367
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368・高見三郎
○高見国務大臣 義務教育の課程における私立というものは、きわめて限られたものであります。限られたものでありまするけれども、確かに制度の上ではお説のとおりであります。お説のとおりでありまするけれども、教育委員制度というものが日本でも、昭和三十一年に制度が改正されて任命制になりました。これは政党政派によりましてはいろいろ御反対もあったのでありまするが、現にこの制度が、すでに十三年定着をいたしておるのであります。これから考えてみまするというと、今度沖繩が返ってくるという場合に、ひとり沖繩だけを別な行政組織のもとに置くことが、沖繩にとってしあわせであるか、ふしあわせであるかということを考えまする場合に、私は公平に見て、こういう制度をむしろ公選制にするよりも任命制にする、本土と一体化するということのほうがより大切な問題ではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/368
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369・木島喜兵衞
○木島委員 大臣、たとえば中教審の答申が出まして、来年から先導的試行をするとおっしゃる。先導的試行、それはあるいは学校が幾つになるかわかりませんけれども、本土の六・三・三・四制という制度と違った制度の教育をする実験校をつくりますね、先導的試行的に。これまた、あなたがさっきおっしゃった、国民共通の基本的な問題である教育制度であるから国民全部が同じ制度でなければならぬとおっしゃるけれども、文部省みずから先導的試行の中でもって、別の制度でもって教育しようとしていらっしゃいませんか。この点をどう御解明なさるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/369
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370・高見三郎
○高見国務大臣 教育の手段、方法につきましての研究、改善というものは、常時加えていかなければなりません。しかしながら、教育行政制度というものはおのずから別な問題であります。委員会の制度というのは、教育行政制度でございます。この辺は誤解のないようにお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/370
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371・木島喜兵衞
○木島委員 六・三・三・四という制度においてすらも国内において別々である。だったら、制度なんか、もっと軽いでしょう、そういう意味では。子供というもの、教育される者から見ればそうでしょう。教育されておる、現にそのことによって直接に影響を受ける国民が、別の制度の中でもって、六・三・三・四という制度以外の制度で教育される。それは公選制か任命制かという問題よりも、国民にとってははるかに差が少ないはずであります。影響が少ないはずであります。これをどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/371
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372・高見三郎
○高見国務大臣 私は、教育の手段、教育の方法というものについては、不断の改善を加えていかなければならぬ。教育行政制度というものは、少なくとも地域が違うから異なった教育行政制度があるということは、望ましい姿ではないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/372
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373・木島喜兵衞
○木島委員 沖繩の人たちは、先ほど大臣もこれは触れていらっしゃったのだと思うのですけれども、任命制の教育委員と公選制の教育委員と、この制度についてどちらがはるかにありがたかったかということ、そのことを十分に知っておると思うのです。知ってきたと思うのです。先ほど大臣、あなたは「日本国民として」と、教育基本法とまでおっしゃらなかったけれども、沖繩の教育基本法に書いてありますよ。たとえば、アメリカが小学校の一年生から英語を三時間ずつやれとやってきましたね。押しつけてきましたね。英語を三時間というのは、二国語の地域をつくるという意図であります。これを排除したのも公選制であったということを、沖繩の人たちはみんな知っております。あるいは高等学校を増設する運動の中でもって、米民政府は英語商業学校をつくろうとした。英語を中心とした学校をつくろうとした。しかし、それも公選制だから排除できた。そういう事実を知っております。任命制は任命者に顔を向け、公選制は国民に目を向ける、それは当然である。任命主席のときに、その沖繩の人たちの政治は沖繩の人たちのほうを向いておったろうか。任命者のアメリカに顔を向けておった。公選になってから、その公選の主席が沖繩の人たちのほうに顔を向けておる。そういうことを具体的に知っておるからこそ、沖繩の人がいまの公選制の制度を強く要望しておるのです。この心が、沖繩の教育は沖繩の人たちによってやるのだというこの自治の精神——私は、数百年間同民族支配と申しました。その同民族支配というものを心にしみ込ませて考えたときに、沖繩の人たちが戦い取ったこの制度というものを沖繩のためになぜ——いまのあなたの、きわめて抽象的に、国民共通なんだから制度だけは同じでいいといっても、それは同じことが好ましいかもしれないけれども、沖繩の今日までの歴史あるいはこの戦い、このことを考えれば、私は公選制の教育委制度があってもかまわないではないか。あったら一体、大臣、どんな弊害があるとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/373
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374・高見三郎
○高見国務大臣 これは、昭和三十一年に教育二法が成立いたしましたときの論議のいきさつをごらんになればおわかりになると思うのでありまするけれども、どこでも同じことでありますけれども、この任命制に切りかえましたときの趣意は、ややもすると同一政党に片寄り過ぎる傾向がある。あるいは、公選制にしておくならば、支持団体がなければ選挙に当選ができない。どうしても政党色が非常に強くなるというところから、任命制に切りかえました。そこで、過半数を占める政党の支持者を任命権者は教育委員に任命することができないという制限をつけたのが、わが国の任命制の特色であります。
それで、木島先生がおっしゃる御趣旨、よくわかりますけれども、沖繩におきましても、五十四の教育区の中で、今年春行なわれました選挙では三十幾つという無投票区があるのであります。公選制の意味があるかないかということになりますると、私は、この問題も一つの問題であると思うのであります。私は、あえて議論をしかけるつもりはございません。私は、ごくすなおな立場から考えまして、こうなってまいりまするとやっぱり任命制のほうがいいんじゃないか、こう考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/374
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375・木島喜兵衞
○木島委員 私は、高見文部大臣がすなおであることは、もちろんよく認めております。決してすなおでないなどとは考えませんけれども、しかし、そのすなおはすなおで、またあとでいろいろお聞きすることにいたしましょう。すなおにも、私はちょっとひっかかるところがありますからね。いや、あなたがすなおじゃないと言うんじゃありませんよ。ですけれども、(発言する者あり)あるいは私のほうがすなおでないかに聞こえてね。いま森君なんかがやじっておりますが。それはあとでちょっとお聞きしましょう。
ただ、いまあなたが、選挙によれば同一政党の者が多く出るとか、あるいは政党色が強くなるとおっしゃいますけれども、だが、そこに教育の政治的中立というものが出てくるんでしょう。しかし、ある教育がなされているものは、保守党の七が見ると、これは革新的だと、あるいは革新的偏向だという場合があるし、革新から見ると、これを保守的偏向だというように見る。あなたがいますなおとおっしゃいましたけれども、大臣がすなおに見たという主観は、それで、主観でいいかどうかは、私は疑問だと思うのです。あなたは自民党の大臣でいらっしゃるから、だからその目で見れば、あるいは革新的に偏向していると考えることがあろう。しかし、それをまた、私なら私という、社会党の私が見れば、これは逆に保守党的に偏向だとすることもある。だから、どちらかということは一体だれがきめるかとするならば、これは国民がきめるしかないんじゃございませんか。その、国民がきめるのが、これが投票なんじゃございませんか。公選なんじゃございませんか。どうでしょう。同じ政党から人間がたくさん出るというんなら、それは法律でもって制限すればよろしい。現にありますね。そういうことはできる。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/375
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376・高見三郎
○高見国務大臣 選挙の制度において、同一政党の者が何人以上出てはならぬということをきめるわけにはまいりません。したがって、これは昭和三十一年に法律改正をいたしましたときに、野党の皆さんの中に非常に強い反対がございましたけれども、特に差し入れましたのは、過半数を占めてはならぬという制限をつけたのであります。教育に政治色を入れない、教育の中立性を保つという意味から申しましても、この意味においては、私は公選制よりも任命制のほうがよかった。現に十三年間やってまいりまして、これが非常に不都合であるという現象は出ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/376
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377・木島喜兵衞
○木島委員 いま、不都合な点が出ておらないとおっしゃいましたけれども、これはまたあとでお聞きいたしましょう。
大臣、私は新潟県なんですけれども、かつてある知事が、いまおっしゃいました昭和三十一年の任命制になりました直後のある知事が、一市町村一校長説というのを打ち出したのです。これはたいへん全国的な問題になりました。そのときに、このおれの一市町村一校長に反対する、賛成しない教育委員は任命しないと言いました。これは全国的な問題になりました。これはついに取り下げましたけれども……だから、任命制がいいとあなたがおっしゃるけれども、そういう意味では、逆に教育の中立性が守れないでしょう。あるいは、いまのところ、首長はほとんどは、いわゆる無所属であっても保守党の方々が多い。首長が任命し、議会が同意をする。その都道府県議会は、大半が自民党であります。市町村の議会は、ほとんど大半が無所属であります。しかし、市町村の無所属というのは、実体的には保守系である別語であります。だから、議会が同意せなければ教育委員になれないのであるから、その結果は、教育委員が逆に保守党の方だけ、保守的な方だけが現に教育委員になっていらっしゃる事実というものは、教育の中立だといまあなたがおっしゃったけれども、そして弊害がないとおっしゃったけれども、これが教育の政治的中立の中でもって弊害でないとあなたがおっしゃるならば、あなたはあまりにも事実を知らな過ぎると思う。それをなお弊害がないと言っていらっしゃるとするならば、そのあなたの主観であるすなおこそ、すなおな見方とおっしゃるそのあなたの主観こそ問題であると私は思うが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/377
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378・高見三郎
○高見国務大臣 繰り返して同じことをお答え申し上げますけれども、私は、教育という、政治性のない中正な立場に立つべき教育委員というものは、やっぱり任命制のほうがいいと思う。ことに、日本の本土で任命制をとっておるのであります。今度沖繩の方々をお迎えする場合に、私どもは、何度も申し上げまするように、すなおな考え方をするならば、同じ共通の基盤に立った任命制に変えるほうがよりよいんではないか、こういう考え方に立っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/378
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379・木島喜兵衞
○木島委員 大臣、私は、あなたがいま御答弁になったようなことがあったものですから、だから、それでは現に任命されている教育委員が保守糸の方だけじゃないか、こう申し上げているのです。これが政治的な中立だと、現にあなたが言えるとお思いになりますか、あなたは弊害がないとおっしゃったが。そういう実態、公選制を排して任命制にして以来弊害がないとおっしゃるけれども、政治的中立においては、保守党の方々、保守糸の方々だけが教育委員になっていること、この事実をあなたはどのように評価していらっしゃるのか、事実をどのように見ていらっしゃるのかということを聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/379
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380・高見三郎
○高見国務大臣 私は、同一政党に属する者が過半数以上あってはならないという立法の趣意は、教育の中立性を保とうということであったのに間違いないと思うのであります。現実の問題が、いまあなたのおっしゃるような不都合な問題があるといたしまするなら、それは地方自治体の長たる者の見識の問題であります。私は、次に選ばれるでありましょう沖繩県知事がさようなことをするとは思っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/380
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381・木島喜兵衞
○木島委員 現にある四十六の都道府県の中でほとんどの首長が保守党である場合、全国の市町村がほとんど保守党の首長であるだけに、議会もそうであるから、現実にどうであるかということを聞いておるのです。現に任命されておる教育委員がほとんど保守糸であるということは、あなたはお認めになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/381
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382・高見三郎
○高見国務大臣 私の申し上げておるのは、無所属だから保守糸だとあなたはおっしゃいますけれども、無所属は無所属であります。これは間違いのない事実なんです。それをそのまま保守系だと断定されることのほうが、片寄ったお考えじゃないかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/382
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383・木島喜兵衞
○木島委員 大臣、私は保守党と保守系とを区別しておるのです。無所属の方はほとんど保守系でしょう。保守党であるならば、はっきり保守党と申し上げます。あなたは、保守系だと——政党でないから無所属なんです。その無所属の方が保守系でしょうと申し上げているその事実を、あなたがどう見ていらっしゃるかと聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/383
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384・高見三郎
○高見国務大臣 そういうところがあるかもしれませんけれども、私は、無所属というのはあくまで無所属だと、こう申し上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/384
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385・木島喜兵衞
○木島委員 大臣、すなおというおことばでございますが、私は、大臣としてすなおであることは、教育行政が、あなたの気持ちですなおに考えてではなしに、法律によりすなおでなければならないと思うのです。そういう意味で、少し法律的にお聞きしたいと思うのでありますけれども、大臣、どうでしょう、教育委員会制度というのは、なぜあるのですか。他の行政と別個に、なぜ教育委員制度というのがあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/385
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386・高見三郎
○高見国務大臣 私は、この制度には沿革があると思うのであります。
占領当時、教育委員会法が制定をされた。そうして財政二本立てという制度がとられたことは、御承知のとおりであります。しかしながら、このために地方自治体と教育委員会との間に非常な摩擦が生じたことも、おそらく木島先生御存じでもろうと思う。
そこで、教育の中立性を維持させますためには、教育委員会制度というものを存続しておきながら、これを任命制にするという改正をしたというのが、私は、日本の戦後の教育制度史上の一つの変革の歴史である、かように理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/386
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387・木島喜兵衞
○木島委員 私、いま政治的中立とちょっと離れまして、一体、教育委員会制度という制度、これはなぜ、あるいは何に根拠を置いてつくられたものでありましょうか。——基本的なことはなるたけ大臣から。——まあいいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/387
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388・岩間英太郎
○岩間政府委員 それは御案内のとおり、アメリカにおきまして教育委員会制度ができておりまして、それを基本にいたしまして、わが国におきましても教育委員会制度をつくったということで去ろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/388
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389・木島喜兵衞
○木島委員 岩間さん、ついでに、日本の法律のどこに根拠を置いているんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/389
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390・岩間英太郎
○岩間政府委員 ただいまは、地方教育行政の組織及び運営に関する法律でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/390
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391・木島喜兵衞
○木島委員 局長、教育委員会の運営をされているのは、それはいまおっしゃった法律ですけれども、教育委員会制度というものができたのは何の法律に根拠を置いているんですかと聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/391
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392・岩間英太郎
○岩間政府委員 そのもとになりますと、これは、教育基本法であるということができると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/392
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393・木島喜兵衞
○木島委員 大臣、教育基本法の第十条は、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を」負うと規定をいたしております。あなたの、すなおなとおっしゃることは、それは認めますけれども、あなたの、政治家高見大臣の主観によるすなおというのではなしに、この教育基本法第十条に対して、あなたはよりすなおでなければならないと思うのです。
そこで、不当な支配に服することなく教育は行なわれなければならぬという、それは一体、なぜこのように規定されたのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/393
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394・高見三郎
○高見国務大臣 わが国の戦前の教育が超国家主義の教育であった反省に立ちまして、不当の権力を排除するということがこの立法の趣旨だったと、私は理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/394
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395・木島喜兵衞
○木島委員 まあ大体、だろうと思います。
そういうことは一体何かというと、元来、教育というものも行政の一つであれば、わざわざ教育委員会制度というものをつくらなくても、一般の行政と一本でいいかもしれない。それを、教育委員会制度をつくったというのは一体何かというならば、一つには、元来的に、教育というものは他の行政と異なる面がある。一般の政治、それは現実の生活をいかにするかでありますから、民主政治は政党政治でありますから、政党間の競争と妥協によってなっていく。しかし、教育は未来を準備するものであります。未来を準備し、備えるものだけに、現実との妥協は不要なのです。現実に左右されてはならない。だから、現実的な妥協あるいは競争で行なわれるところの一般の政治、行政と切り離して教育委員会制度ができる。不当な支配に服することはないということは、先ほどおっしゃいましたように、かつてのわれわれが、近い歴史の中にその事実を知っておる。大臣、不当な支配というのは、一体どんなものがあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/395
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396・高見三郎
○高見国務大臣 不当な支配という概念は、一言に尽くせば不当の支配であって、正当の支配でないことを不当の支配と申し上げるほかに方法はないのであります。
ただ、戦前のいわゆる日本の教育というものは超国家主義的な、国家統制の教育であったという反省に立って、日本の教育というものを不当の支配から排除しようというねらいが教育委員会の発祥の原因であったという理解を私はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/396
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397・木島喜兵衞
○木島委員 大臣、過去の反省からできたことは確かなんですよ。だけれども、過去の反省はあるけれども、教育基本法第十条で「教育は、不当な支配に服することなく、」と規定したものは、これから先のことですね。これから先、あの教育基本法ができてから先の将来にわたって不当の支配に服することがないようにしなければならぬ。その不当な支配に服しないところの教育のためには、不当の支配とは一体何であるかということがわからなければ、その教育基本法第十条というものを守ることはできぬでしょう。そこで私は、不当の支配というのはどんなことなんでしょうかとお聞きしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/397
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398・高見三郎
○高見国務大臣 教育の中立性を維持いたしまするために、国家権力が教育の内容に立ち入ることが不当の支配だということを考えなければならぬと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/398
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399・木島喜兵衞
○木島委員 おっしゃるとおり、今日、政党政治であります。だから、政党政治によって、政党の独断や悪意によって教育がなされてはならない。その政党政治の中で、ややもすると政党の独断や恣意が加えられる可能性がある。だから、それを排除し、抵抗力を制度的に保障するために教育委員会制度というものができた。いわば都道府県や市町村における独立的機関、あるいは直接国民にのみ責任を負って行なわれる教育の保障の制度として教育委員制度がある。だから、そういう意味では教育委員会制度というものは独立性を持っておるわけですね。その意味で、いまおっしゃいますけれども、任命制というものとからんでくる。その次に大臣にお聞きしますが……。
県と市町村に教育委員会制度がある。そして、いま申しますように、一般行政と区分するために、不当の支配に服しないために教育委員会制度がある。教育委員会制度は独立性である。教育は元来独立的なものでなければならないという教育基本法第十条が基礎であるならば、なぜ中央教育委員会というのはないのでしょうか。そういう意味では中央教育委員会制度があっていいはずですね。都道府県と市町村だけにあって中央にないのは、この法律からいうとちょっとおかしいのですが、どうお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/399
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400・高見三郎
○高見国務大臣 確かにお話のとおりでありますけれども、そのために文部省があるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/400
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401・木島喜兵衞
○木島委員 大臣、文部省は一般行政の中でしょう。佐藤総理大臣を中心とした一般行政の中に文部省があるのでしょう。教育は不当な支配に服しない。佐藤内閣は自民党内閣ですね。そういう政党も不当の支配の中に入るから、独立性というのでもって都道府県や市町村に教育委員会があるのです。それを文部省があるというなら、これは政党支配になるということになりましょう。だからなぜ中央教育委員会がないのだろうかとお聞きしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/401
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402・高見三郎
○高見国務大臣 木島先生よくおわかりの上での不当の支配論であります。私は、不当の支配という概念は、国家権力というようなものを意味するものではないと思います。たとえば政党とかあるいは組合とかいうようなものの正当ならざる支配を不当の支配、こう理解すべきじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/402
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403・木島喜兵衞
○木島委員 これはちょっと言わしてください。今日政党政治です。その政党政治によって国家権力ができておる。それが正当でないということはこれは基本的に間違いですから、早く直してください。あまりこんなこと議論したくないから直しなさい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/403
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404・高見三郎
○高見国務大臣 私の申しますのは、特定の政党がその政党の恣意によって支配をしてはならない。これは自由民主党が政権をとっておりましても、政権を持っておる政党が教育を支配するという基本的な考え方はいけないということを申し上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/404
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405・木島喜兵衞
○木島委員 大臣、そういうことになりますと、先ほどから言った、しからば教育委員会制度は要らぬということになるのです。地方の教育委員会制度は要らぬということになるのです。そうでしょう。(「委員会はみんな廃止してしまえ」と呼ぶ者あり。)こういう乱暴な方もいらっしゃいますけれども、やはり大臣として、これはこの問題だけでなくて、全体の基本的な問題でございますから、ここだけはすっきりしてください。もちろん、大臣に、私は知っていて質問しているとおっしゃるけれども、それは学校の質問と違って議会の質問というのは、全然知らぬで先生何ですかと聞くのとは違いますよ。ある程度知っていなければ質問できないのですから、そこはきちっとしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/405
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406・高見三郎
○高見国務大臣 これは議院内閣制度において、選挙によって政権を担当する政党がおのずからきまるわけでありますけれども、その政党が教育を支配するのじゃないということを私は申し上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/406
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407・木島喜兵衞
○木島委員 中央に教育委員会制度がないということは、さっきから言いますように、これは教育が不当の支配に服しないということからいうと中央教育委員会制度があっていいはずなんです。ところがそれがないのは実は意味があるのです。教育の地方分権という大原則があるからなんです。中央集権を廃止する、先ほどあなたがおっしゃった、近い過去に、なまなましい中央集権の教育や学問や思想というものを統制してあの戦争に持ち込んでいったという反省があったから、だからこそ教育委員会制度ができたのでしょう。それを中央集権をはずすために地方分権という制度、方針があるから、中央教育委員会というものをつくらなくて、そうして府県市町村にだけ教育委員会をつくったのです。それをお認めになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/407
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408・高見三郎
○高見国務大臣 それはお話のとおりであります。地方の自治体の地方行政の中において、教育委員会を独立させるという制度は、あなたのおっしゃる不当の支配を排除するというために、教育委員会制度を設けたと私はそういう理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/408
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409・木島喜兵衞
○木島委員 時間がなくなりますから先に進みます。
それからさらに大臣、先ほど申しました教育基本法第十条の、教育は不当の支配に服することなく、国民全体に対し直接責任を負うという、直接責任を負うということ、これをどう御理解になりますか、どう御解釈になりますか、一番基本です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/409
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410・高見三郎
○高見国務大臣 これは憲法論になるのでありますけれども、明治憲法におきましては、だれに責任を負うかというと天皇に対して責任を負うという形であったのであります。今度は直接責任を負うということは、政府が国民に対して責任を負うということであります。いままでのように天皇に対して責任を負うという概念と違った概念から出発をしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/410
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411・木島喜兵衞
○木島委員 教育行政の主体を国民に置くことを意味しておると思うのです。国民の意思と教育とが直結をし、その間に他のいかなる意思をも介入させないことが直接です。国民全体に直接責任を負うということは、直接なんだからその間に他のものが入ってはいけないという規定でしょう。だから現実的な一般的な政治においては、一般の政治と違うことは、現実的な一般政治上の国民の意思という選挙とは別個に、教育に対する国民の意思が直接的に表明され、反映されるものでなければならない。国民が自分の目の前でもって自分の村の、自分の町のその学校、その教育、そのことを住民が直接管理、運営をする、住民が直接教育の管理、運営に参画する、国民みずからの手でもって教育が行なわれる。これが直接でしょう、直接という法律の解釈、そう思いませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/411
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412・高見三郎
○高見国務大臣 これは民主制議会制度のもとにおきましては、主権者は国民であることは申すまでもないのでありますけれども、直接責任を負いますのは、国民の心を心として責任を負うという意味において政府が負うべきである、私はかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/412
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413・木島喜兵衞
○木島委員 大臣、あまりおこったような顔をしないで、さっきから任命制、任命制という考え方がおありですから、きっとあなたのお考え方の中には市長が教育委員会を任命したって、市長は国民から選ばれておる、議員も国民から選ばれておる。だからその国民から選ばれたところの市長が任命をし、国民から選ばれたところの議員が同意をするのであるからそれでいいのだ。そういうお立場に立っていらっしゃるとあなたはおっしゃらないが、私はそうとしか理解できないのです、さっきからずっと一貫し考えますと。そういうお立場ではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/413
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414・高見三郎
○高見国務大臣 私が申し上げようと思ったことを先回りして言われましたので、そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/414
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415・木島喜兵衞
○木島委員 大臣、教育基本法をすなおに読んだときに、教育は国民全体に対し責任を負うという書き方と、現に規定されておる教育基本法第十条は、教育は、不当の支配に服することなく、国民全体に対し直接責任を負うという。いまあなたの、国民から選ばれた首長及び議会が選任、同意をするのであるから、それでとおっしゃるけれども、教育基本法第十条をすなおに読むならば、それは国民全体に責任を負うのではなしに——いまあなたがおっしゃったそういうことであれば、教育は国民全体に責任を負うでいい。しかし、不当の支配に服することなく、国民全体に直接責任を負うということは、いまあなたのおっしゃったこととの関係ではどうなりますか。これほどはっきりと、明確にいっておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/415
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416・高見三郎
○高見国務大臣 直接責任を負うという意味は、政府が直接責任を負うのでありまして、私は別にそのことが任命制であろうとあるいは公選制であろうと違いはないと思っております。
ただ問題は、不当の支配に服することなくてやるためにはどうするかという手段の問題として、昭和三十一年に教育委員会法が廃止されまして、御承知のような法律になってきた。そのいきさつは御承知のとおりだと思います。私は、そういう意味合いから申しまして、直接責任を負うという表現が最も当を得た表現である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/416
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417・木島喜兵衞
○木島委員 直接責任を負うという場合に、間接的に任命、同意されることと、直接公選制のほうがより直接的だと思いませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/417
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418・高見三郎
○高見国務大臣 これは教育基本法第十条をひとつ——私の申し上げたことに対して誤解があってはいかぬと存じますので申し上げますが、教育基本法第十条は「教育は、」といっております。教育行政はといっておらないのであります。この辺のことは御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/418
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419・木島喜兵衞
○木島委員 私の質問に答えてください。国民全体に対し直接責任を負うということは、選任、同意という間接的なことと直接国民が公選するのと、よりどちらが教育基本法第十条に忠実な制度でありますか。それをお聞きしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/419
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420・高見三郎
○高見国務大臣 これは昭和三十一年に教育委員会法を廃止いたしましたときに、論議し尽くされた問題であることは御承知のとおりであります。いろいろな弊害がありますので、任命制に切りかえたいきさつは木島先生も御存じであろうと私は思う。「直接」ということばがおかしいじゃないかとあるいはおっしゃるかもしれませんけれども、私は教育制度の問題におきましては、少なくとも教育基本法に違反しているとも考えておりませんし、その点ではあなたと意見を異にするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/420
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421・木島喜兵衞
○木島委員 私三十一年ごろ、一年生ですから、おらなかったけれども、そのことは別としても、私いま聞いているのは、私はより法律に、あなたのおっしゃるすなおでありたいから、教育基本法第十条の直接責任を負うということは、間接的に任命、同意よりも公選制のほうが国民全体により直接的ではないですかということを聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/421
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422・高見三郎
○高見国務大臣 教育委員会法というものがいろいろの弊害を生じているというところから、地方教育行政の組織及び運営に関する法律ができたのであります。これは社会党の皆さんは非常に御反対をなさいましたけれども、少なくともこの国会において、国民の意思としてこの法律ができたといういきさつは御承知のとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/422
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423・木島喜兵衞
○木島委員 私、教育基本法第十条の法律解釈を聞いておるのです。総理大臣どうですか。大臣、だいぶ固定した考え方を頭にお持ちですから、私の質問にお答えになっていらっしゃらないと思うのですが、大臣お聞きになっていらっしゃいまして、不当の支配に服することなく、国民全体に対し直接責任を負うという教育制度、これは公選制のほうがよりこの教育基本法第十条に直接という意味では合っておると思うのですが、総理大臣のお考えいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/423
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424・高見三郎
○高見国務大臣 教育は、主権者である国民に対して責任を負うて行なうという趣意でございまして、これが教育委員会の選任方法に直接関係はないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/424
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425・木島喜兵衞
○木島委員 そこで大臣、直接ということばの上に、教育は、不当の支配に服することなく、国民全体に直接責任を負うのです。国民全体に直接責任を負うだけの教育じゃないのです。不当の支配に服することなく、国民全体に直接責任を負う。だから国家権力で、政府の、政党の支配でもって教育がなされてはならないという一方と、国民に直接責任を負うのですから、そういう意味で公選制と任命制ではどちらがよりこの法律、基本法に忠実であるかいなか。直接ということだが、直接だけ切ってはいかぬです。教育基本法第十条の、教育は、不当の支配に服することなく、直接なのです。この点をどうお考えになりますか。法律の解釈なんですよ。政治的じゃないです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/425
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426・高見三郎
○高見国務大臣 教育は、不当の支配に云々と、不当の支配という意味は先ほど申し上げたとおりであります。しかし、このことが教育委員制度の問題と直接の関係はないということを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/426
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427・木島喜兵衞
○木島委員 時間がありませんから、もう押し問答しても始まりませんから、私は前段に、沖繩における歴史的な事実やあるいはこの法律ができたその経緯や、そして沖繩の心というものをもう少し掘り下げてみたときに、この教育委員会の公選制というものに対する要望というものの強さというものは御同感をいただきました。そして一方においては今日日本に返ってくる。あるいは教育の基本である基本法、その第十条は、一つには教育行政の独立性をうたっておる。その独立性は、不当の支配に服してはいけない、政党や国家権力の支配に服してはいけない。だから独立性がある。同時に中央教育委員会制度がないということは、地方分権なんです。教育の地方分権というものをいっておるのです。そしてより直接的に責任を負うとするならば、教育委員会制度は公選制でなければならないと私は思うし、これは日本全土も実はそうならなければならぬと思うけれども、それは文教委員会にこの改正案を出しておりますから、いま私はこの沖繩特別委員会では議論すべき場所じゃないと思っているから、実は日本全体のことについては触れておらないのでありますけれども、私はそう思うのです。この法律により、あなたのおっしゃるすなおであるならば、すなおに教育基本法第十条を考えるならば、そうだと思うのです。総理大臣もうなずいていただいておりますから。私はそういう沖繩の情理を尽くしたつもりなんです。情理は、情況の情、感情の情を含めた情理、十条の理、こういうものを含めて、そして国民、沖繩県民全部が要望をしておるこの公選制がなぜ分権である、地方分権であるならば、地方の制度にかわってよろしい、ことにその歴史的背景というものを考えるならば当然だと思う。私はいまおそれるのは、米国軍隊を背景として圧制の中でもって全沖繩県民の悲願をになった立法院が、満場一致の議決を二度もし、米国の拒否権にあいながらそれを三度目の議決でもってはねのけて戦い取ってきた。この戦い取った沖繩の県民からするならば、今度その戦い取った公選制の教育委員会制度が、復帰によってまた再び任命制になるならば、アメリカに対する抵抗以上に、アメリカに対する戦い以上に日本政府に対して、より激しい抵抗が、闘争が起こってくることがあるいは当然ではないかとすら思うんです。だから、第三の琉球処分だなどということばが出てくる。私は、今日沖繩の中に沖繩独立論があることを知っております。もちろん、これは私はくみしません。そして、これはわずかでしょう。時代、歴史的な逆行的な方向です、それは。けれども、そういう気持ちが動いてくる、そういう背景を実は私はおそれるんです。だからこそ、私は弊害もない、定着もしておる、この沖繩におけるところの公選制、県民が戦い取った——その戦い取っただけに全県民が要望しておる、これがなぜできないんですか。私は最後にお聞きします。少なくとも、いますぐといわなくとも、憲法第九十五条によって、住民投票によって住民の意思を聞いてみる。そのことが沖繩の心にふさわしい、沖繩の心に適した、ふさわしい復帰の姿だろうと私は思うんです。その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/427
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428・高見三郎
○高見国務大臣 憲法九十五条につきましては法制局長官からお答えをいただくことにいたしまして、私は、ただいまのあなたがおっしゃるお話の中で、客観的情勢の変化というものをひとつ考えておいていただきたいと思うのであります。昭和三十三年に琉球立法院で教育委員会の制度をつくりました当時は、当時の沖繩住民の立場はどうであったかと申しますると、これはアメリカという異民族に占領をせられ、異民族に支配せられている客観情勢の上に立っての公選制の主張であったと思うのであります。今度は、日本へ返るのであります。日本の沖繩県になるのであります。隣の鹿児島県と何の違いがあってもならないと私は思っております。そういう意味において、私は、現在の制度が、客観情勢の変化だという理解に立って、これは本土と同じようにすることが最も適切である、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/428
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429・木島喜兵衞
○木島委員 いまあなたがおっしゃった、昭和三十三年に沖繩がこの公選制をつくったときには、すでに日本においては任命制に切りかえられた二年後であった。確かに、あなたのおっしゃったとおり、当時はアメリカに任命されたということになるでしょう。だからこそ、私は教育基本法第十条という、本来日本の本土にある教育基本法第十条からくるならば、当然それは日本全土も公選制にならなきゃならぬのだと私は思っておるんです。しかし、先ほど言ったとおり、それはこの場では、文教委員会に提案しておるから、それは言わないというから、私も実は攻めづらいんです。もっと実は法理論でもってやりたいところです。しかし、これは後日やります、別個に、日本全体の問題は。けれども、私は、そういうことを通しながらも、せめて九十五条による住民投票によって沖繩県民の心というものをくみ取ってみたらどうか。いまあなたがどうしても日本本土と同じにしなきゃならぬとおっしゃるけれども、沖繩県民に聞いてみる。九十五条によって住民の意思を聞いてごらんなさい。そのくらいのことを検討するという気持ちはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/429
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430・高辻正巳
○高辻政府委員 先ほど、文部大臣も九十五条の問題に関しては法制局長官からというお話でございましたが、法律は、御存じのとおり憲法五十九条一項によりまして、普通は両議院で可決したときに法律になるわけで、その例外が九十五条でございます。したがって、九十五条をかってに適当に解釈するわけにまいりませんので、一通りお話ししますと、いまの九十五条には「一の地方公共団体のみに適用される特別法」と書いてございます。特別法というのは、一般法に対する関係での特別法でございますが、今度の中身は、本土並みにしようというわけでありますので、これを特別法とはいえないだろうというのが一点と、もう一つは、ともかくも沖繩返還に伴ってこの法律は施行するものでございますので、それまでは、実は沖繩には憲法が施行されておりませんので、九十五条の手続を踏むことも憲法上は問題があるだろうということが、九十五条ができないんではないかとする理由でございます。しかし、これもいままで出ておりましたように、九十五条であるかどうか、これを立法過程で最終的に判断されるのは国会でありまして、内閣がその点をがんばって申し上げるわけではありませんが、解釈論としてはいま申し上げたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/430
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431・木島喜兵衞
○木島委員 私は、九十五条は、もちろんいまそれは直接憲法の恩典を受けておらない沖繩でありますから、いますぐと言わなくても、しかしこの問題は、ちょうどこれから一年くらい公選制によった委員が任命として残るのですから、なおこれからでも間に合うと思うし、同時に逆に、私は法制局長官とやるつもりはありませんけれども、たとえば九十五条を考えれば、一つの特定の地方公共団体に特別の法律ができた場合に、それを廃止する場合も、憲法九十五条の適用になるのだろうと実は私は理解しておるのです、逆に言うならば。一つの法律をやめる場合にも。裏表じゃなかろうか。だから、そういう意味では、現に沖繩でもって特別の法律ができておるわけでしょう、返ってきたときには。とすれば、それをやめるにも住民投票という理論すらあると思うのです。しかしいまこれは、もうそういう気持ちがありませんから、するつもりはありませんよ。けれども、少なくとも私は、先ほどから繰り返しておるけれども、歴史的な事実やそのことから考えて情理を尽くしたと申しましたけれども、そういう立場から、少なくとも住民投票によって沖繩県民の心を、聞いてみるくらいのことは、あなたは検討することはできませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/431
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432・高見三郎
○高見国務大臣 私は、県民の心を理解した上で申し上げておるつもりであります。その意味におきましては、できるだけ普遍的な教育行政制度というものが必要である。沖繩県だけが別個の扱いをされるべきものではないという考え方に立っておるのであります。これは私は、私の恣意でさようなことを考えておるのじゃございません。少なくとも沖繩県という地方自治団体ができる場合に、教育行政制度が、沖繩県だけが違った形で残るということが適当であるかどうかということになりますると、私は、これは必ずしも望ましい姿ではない、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/432
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433・木島喜兵衞
○木島委員 どうも一貫して聞いております私に対するところの御答弁は、一貫した御答弁には聞き取れないのであります。総理大臣、最後にお聞きします。ずっといままで私が異民族支配、同民族支配というようなことから、あるいはこの法律が沖繩で議決されたことから、実施されてから、そういう歴史を踏まえ、沖繩の心というものを中心にしながら、一方においては実情を訴える、そして法律田にも実はそうだと申し上げました。そして最後に、せめて沖繩の人たちの心を聞いてみる、住民技票くらいのことを検討することがせめてできませんかと、そこまで私がお聞きしておるでありますけれども、そういうことを含めた総理大臣の御所見を承りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/433
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434・佐藤榮作
○佐藤内閣総理大臣 私も静かに実は文部大臣との質疑応答伺っておりました。ただいま言われるように、沖繩、これはいろいろの過去のいきさつはございます。しかし、最近の沖繩、いわゆる沖繩の心としてただいま木島君が披瀝されるもの、これは、私は沖繩の方々が占領下において日本人の教育を守られたという、ここに尽きるだろうと思います。これはまことに重要なことでありまして、これがいかにも過去その他徳川時代からのいきさつがあるような言い方をされて、狭い心のよりに言われますが、私はもっとおおらかな日本人の心じゃないかと思うのであります。私はそう考えると、いわゆる占領下において、その占領軍の任命する教育委員、そういうところでは教育はまかされない、これがおそらく公選制に踏み切られたゆえんだろうと思います。立法院が三回にもわたって決議をされた。これが米軍、この軍支配にたてつかれたことだと思います。私は、沖繩に初めて守られた教育制度だ、これは高く評価してしがるべきだと思います。私は、国内においてどうして、占領はされたけれども教育そのものが言いなりになったのか、占領軍の言いなりになったのが。教育というよりも教育行政自身がどうしてあのなったのか、これを実は先輩に対してもややふがいなさを感ずるぐらいでございます。しかし、沖繩の方は断固それに反対された。そうして、占領軍から押しつけられるような教育委員会、さようなものはつくらないという、それは公選制度であったと思います。また、本土と同じように英語教育それもあるが、とにかく日本語教育、これを守られた、これは高く評価してしかるべきじゃないかと思っております。その点は私はさように考えるので、沖繩の心はもっとおおらかではないか、ほんとの日本人の心が沖繩において守られたのじゃないか、さように私は思うのであります。
そこで、教育の問題になりますが、教育の問題になると、先ほど来文部大臣がことばを尽くして申しておりますように、教育と教育行政、これは違っておるのだ、こういう話で、先ほど来の公選制と任命制、その話は結論が出てきた、かように私は思うのであります。過去において三十一年にこれはずいぶん議論した。そこでいわゆる任命制に変わった、かように思います。中央に中央委員会がないじゃないか、こういうお話がございます。これも一部においては文部省をつぶしてしまって中央に委員会を設けろ、そうして教育は地方分権、その制度でやれ、こういうような議論のあることも私の耳には入っておりますが、私はやはり全国的な教育行政、それを担当するものは文部省であっていい、かように思っておりますし、それが地方分権、これの妨げにならないで、いまのような文部省がある、かように思っておりますので、私は、これは別に矛盾はないのじゃないか、かように思いまして、たいへん木島君から私の蒙を開いてもいただきましたが、同時に高見文部大臣の説明がまことに納得のいくものである、このことを最後に申し上げて私の答弁といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/434
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435・木島喜兵衞
○木島委員 ずいぶん異論のあるところでありますけれども、ちょうど一時間半になりました。時間を守ることにきわめて厳正である日本社会党は——実は教育問題がずいぶんあるのです。私も実はずいぶん準備しておるのですけれども、もう時間になりましたから、あとは別の機会に個々の問題をお聞きすることにいたしまして、私の質問を終わります。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/435
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436・床次徳二
○床次委員長 来たる六日は、午前十時から、農林水産委員会、商工委員会、運輸委員会及び建設委員会と連合審査会を開会いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後七時十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106703895X01019711204/436
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