1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十六年十一月十七日(水曜日)
午前十時五十分開議
出席委員
委員長 齋藤 邦吉君
理事 宇野 宗佑君 理事 木野 晴夫君
理事 丹羽 久章君 理事 藤井 勝志君
理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君
理事 松尾 正吉君 理事 竹本 孫一君
奧田 敬和君 木村武千代君
倉成 正君 佐伯 宗義君
地崎宇三郎君 中川 一郎君
中島源太郎君 坊 秀男君
村上信二郎君 毛利 松平君
森 美秀君 山口シヅエ君
吉田 重延君 吉田 実君
阿部 助哉君 佐藤 観樹君
貝沼 次郎君 伊藤卯四郎君
寒川 喜一君 津川 武一君
出席政府委員
大蔵政務次官 田中 六助君
大蔵大臣官房審
議官 中橋敬次郎君
大蔵省主税局長 高木 文雄君
中小企業庁次長 進 淳君
委員外の出席者
大蔵省証券局企
業財務第一課長 宮崎 知雄君
大蔵省銀行局総
務課長 磯辺 律男君
国税庁直税部長 江口 健司君
大蔵委員会調査
室長 末松 経正君
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本日の会議に付した案件
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一〇号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/0
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001・齋藤邦吉
○齋藤委員長 これより会議を開きます。
租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。貝沼次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/1
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002・貝沼次郎
○貝沼委員 通産省がまだ入っておらないそうですから、大蔵関係から始めます。
要綱によりますと、特別措置の対象とする中小企業者の項で、青色申告書を提出している個人または法人となっております。この対象になる人は、すべて青色申告をしている方ばかりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/2
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003・高木文雄
○高木(文)政府委員 そのとおりでございます。白色の場合には帳簿というものが前提になっておりませんので、繰り戻しということが考えられないというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/3
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004・貝沼次郎
○貝沼委員 実際に白色というのは大体どれくらいの率ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/4
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005・高木文雄
○高木(文)政府委員 概数で、個人関係では約半分が青色で、法人では大体七割をちょっとこえて八割に近くなっておると思います。青色のほうが多いわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/5
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006・貝沼次郎
○貝沼委員 帳簿がないので、欠損金の繰り戻しによる還付制度ができないというわけでありますけれども、この白色の人は、それならばこのショックで困らないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/6
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007・高木文雄
○高木(文)政府委員 その問題は、青色申告者とそうでない方と、いわゆるドル関係によるショックが同じように影響しているということはあると思いますが、しかし技術的に、欠損金の繰り戻しというのは、過去において納めていただいた法人税をお返しするということでございますので、やはり明確なる一定要件に基づく帳簿関係がそろっていないことには、技術的にやりようがないということでございまして、現に純損失または欠損金繰り戻しの制度は存在しております。ただ、一年間というのを三年間に延ばすというのが今回の特別措置でございますが、現行制度上一年間の繰り戻しの措置も青色だけに限られているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/7
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008・貝沼次郎
○貝沼委員 飛び飛びになりますけれども、同じく要綱の三番目のところ、事業転換の場合の償却の特例のところでございますが、事業転換の場合、「同法に基づく認定を受けた転換計画」、こういうふうにありますね。この基準というのはどういう基準でされたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/8
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009・進淳
○進政府委員 転換計画につきましては、個別業種ごとにきめておりまして、個別業種ごとの基準はただいま手元に持ち合わせておりませんけれども、業種ごとに関係者が集まりまして、一定の国際競争力その他を前提といたしましての全体の共同化事業の基準でございますとか、そういう計画をきめまして、これに合致する場合には認めるというような仕組みで実施いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/9
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010・貝沼次郎
○貝沼委員 どうも抽象的なんですけれども、もっと具体的な柱か何かありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/10
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011・進淳
○進政府委員 全体の共同化計画の構想でございますとか、たとえば国際競争力に備えての生産性基準でございますとか、生産品目の品種なり技術水準その他全般的なことを考慮いたしましての基準でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/11
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012・貝沼次郎
○貝沼委員 それでは質問を戻しますけれども、まず初めに通産省にお伺いいたします。
この法案を審議するために非常に影響がありますのでお伺いしますが、本日の新聞報道によりますと、日銀の営業局長が「輸出成約はひところに比べかなり回復したが、業種、企業によって差が大きく、これからもそう急速に回復するとは思えない。企業の資金需要もますます落込み、金融緩和は一段と進んで、市中貸出し金利低下の環境は整ってきた」と、こういう話が出ておりますが、こういう見方というものは通産サイドでも同じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/12
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013・進淳
○進政府委員 私どもの調査した結果でも大体似たような結果が出ておりまして、中小企業庁でも毎月二回ドル・ショック以後定例的に百産地の実情を調査いたしておりますが、その結果は全般的には新しい契約ベースで六〇%ないし七〇%程度の契約まで回復してまいっておりますけれども、やはり業種によって多少のばらつきがございます。しかし、まだ平均いたしまして一カ月半程度の契約残、受注残と申しますか、ございますので、まだ個別に、あすとまるというところまでは至っておりませんけれども、ばらつきがあることは中小企業庁でも存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/13
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014・貝沼次郎
○貝沼委員 それだけになお一そうこの中小企業対策に力を入れてもらいたいと思うのでありますが、きのうの質問に続きまして、考えられることは、従来の輸出専門の業者が今度は国内に商品を出していく、こういうふうになりますと、いままで国内を市場としておった企業がそれによって圧迫されます。こういう事実というのは幾らもあると思うのですけれども、こういうような圧迫される企業に対してもこの法律を適用していくのかどうか、その点についてお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/14
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015・進淳
○進政府委員 この法律自体は、特に法律改正をします信用保険保証の問題が中小企業庁としては重点でございますので、この信用保証の問題につきましては、保険に関連いたしましては輸出実績を有するものということで考えておりますが、先般実施いたしました金融の特別措置、六分五厘の低利融資をいたしましたが、これらについては、先生御指摘のような関連の中小企業業種を指定いたしました場合に、必ずしも輸出実績がございませんでも金融の対象にはいたしたいということで、御指摘のような滞貨あるいは減産といいますか、特に年末を控えまして、そういう値くずれ防止というような意味も含めまして金融には含めるように、すでに通達も出しております。そういう趣旨で対策を講じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/15
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016・貝沼次郎
○貝沼委員 それから、企業の方といろいろお話をしますと、いろいろやっているうちに相手国のバイヤーに弱みを見せないようにしていかなければならぬのですね、弱みを見せるとすぐにつけ込まれてしまいますから。ところが、どうしても見せてしまうというのですね。そこで、業者が弱みを見せなくてもやっていけるような体制というものが私たちは非常に大事だと思うのですけれども、そういう意味においては特にどういう点に注意されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/16
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017・進淳
○進政府委員 その前にちょっと先ほどの説明を訂正さしていただきますが、輸出信用保険につきましても、産地業種に指定されております場合には、その産地業種であれば適用することにいたしております。
それから、次の対外取引あるいは国内も含めての取引、これは実は輸出取引と国内取引とは先生御指摘のように関連がございまして、輸出が不振になれば国内に投げ売りするというような場合も出てまいります。換金売りということもございますので、いずれにいたしましてもこういう不況ということが生じます場合には、どうしても共同的な行為によりまして値ぐずれを防止するということが必要であろうかと存じております。で、現在中小企業の団体法によりましてカルテルを認められております。これは公正取引委員会と協議する必要がございますけれども、私どもといたしましては、できるだけこれを弾力的に運用さしていただきたいと思っております。もちろん、単なる価格のつり上げということでは困りますけれども、特にこういう際でございますので、年末に値くずれするとか、そういう非常事態の場合には、できるだけ早く業界の協調態勢をとる。
それから、輸出関係につきましても、輸出入取引法によりましてそういう共同行為ができますので、両方並行して業界の秩序維持ということを考えたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/17
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018・貝沼次郎
○貝沼委員 次の問題は、結論としては地場産業を守ってもらいたいということでありますが、先日私は、こういう影響を受けておる企業の方々とずいぶん話し合いました。その結果、企業としては資本金の非常に小さい人、これが非常に多いということですね。通産省で出しておるドル・ショック倒産一覧表というものを見ましても、非常に資本金の小さなものばかりであります。
そこでまたこういう話を聞きました。これは岡山の話でありますけれども、通産省に陳情に行ったわけですね。そうしたら、そんなのが岡山にあるのかと言われたとか言われないとかいう感情的な話であったのですけれども、もしそういう態度であれば、ほんとうに地場産業は守ってくれないのじゃないかという心配をしておる人もおります。私は、いや、そういうことは絶対させないという政治家としての決意を述べてきたわけでありますけれども、そこで特にそういう点をお願いしたい。
要するに、小さいものほど中小企業庁は特に手をかけてもらいたい。たとえば岡山県ではカナリヤなんというのがありますね。よく雑貨雑貨というのはみんな聞くところなんです。ところが、カナリヤなんです。雑貨は置いてもこれは腐らないですね。ビニールなんというものは腐りません。それ自体も非常に打撃を受けておりますけれども、カナリヤは、一日一日えさも食べるし、また、病気になったり、商品価値も変わるわけです。こういうようなものもある。そして、このカナリヤの人が言っておりましたのは、今春ふ化したカナリヤの出荷時期に入ったわけですけれども、カナリヤが生きものであるだけに、金づちで頭をなぐられたような気がする。しかしながら、そのままおくわけにいかない。やはり、生きものであるから処分しなければいけない。そこで損を覚悟で出荷しなければいけない。アメリカで飼われているカナリヤの七〇%というのは実は岡山産であるわけです。年間大体二億円くらいかせいでおるわけですけれども、これに課徴金一〇%というものがかかりますと、替為差損も入れて——大体約束の価格というものが、雄一羽が千円くらいなんですね。そうすると、八百円ぐらいになるのじゃないか。この地帯の生産者一人当たり平均出荷数というのはせいぜい二百羽でありますから、非常に損が大きいということであります。そこで、事態打開のため、輸出業者に働きかけて輸出差損分だけ輸出価格を上げればよいが、カナリヤは生活必需品でないだけに、価格を上げればそれだけ需要が減る、ライバルのイギリスに市場を食われることにもなる、こういうわけで、非常に先行きが不安であります。こういうのは業種転換といいましても、あるいは合理化といいましても、ちょっとむずかしい業種になっておるわけですね。
こういうものがあるということ。そのほか、たとえば中国一体にありますクリスマス用品であるとか——これはもう有名なところであります。あるいはビニールのすだれであるとか、あるいはかばんであるとか、香川県あたりのボタンであるとか、あるいはゴルフボールであるとか、こういうような零細に近い企業というものがいまあっぷあっぷしておるわけですね。そうして私が聞きたいのは、こういうような中小企業といっても、いわば零細企業に近いような企業が、現在審議されておるこの法律によってほんとうに救われるのかどうか。ただ法律は通ったけれども倒産しましたというのでは、私は何にもならないと思うので、ほんとうに救われるのかどうか、正直なところをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/18
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019・進淳
○進政府委員 この法律によりまして、輸出関連産業も含めまして、信用保険についての特別措置を講ずることになるわけでございますが、金融あるいは、さきに実施いたしました為替取引の安定化措置の三つを柱にいたしまして施策を進めておるわけでございます。それによってなかなか継続困難な場合には産業転換に対する助成ということを考えております。
まず第一にカナリヤでございますが、確かに産地業種に入っておりませんけれども、現在のあれではございませんが、これは各府県からの推薦によりまして私ども選定いたしておりますので、これらにつきましては県と相談してみたいと思います。しかし、輸出比率が多い場合には、大体二〇%以上を想定いたしておりますが、個々の業者でも輸出比率が高い場合には、個別の企業であっても取り上げまして、この恩典の対象にいたしたいと存じております。そういたしますれば、その場合には、保険の引き受け額が倍額になりますので、たとえば無担保、無保証の場合には八十万が百六十万、無担保の場合には三百万が六百万、それから低利融資の道を開けますので、特に零細企業を個別企業ごとにできるだけ拾い上げていくようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/19
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020・貝沼次郎
○貝沼委員 何ぶんよろしくお願いいたします。
大蔵省に伺う前に通産省にもう一度お伺いしますが、この欠損金の繰り戻しの件であります。この前私が予算の分科会で特恵関税の影響のことについて質問いたしました。そのときは、「特恵関税の暫定供与およびこれに伴う調整援助措置(案)の骨子」というのがありまして、これによりますと、これは案でありますからこのとおりにならなかったわけでありますけれども、「税法上の措置」として「法人税または所得税の繰戻し」これが「転換計画に従って事業の相当部分の転換を実施した後三年間の、欠損金額または純損失額についての過去五年にさかのぼる法人税または所得税の繰戻し」というところがございます。ところが、これがなくなったわけでありますけれども、今回三年というふうな——一年から見ればけっこうだと思うのですが、この当時五年といったことは、やはりそれぐらいは必要ではないかという判断があったからこの案が出たのではないかと思うのです。どういう理由でこれが没になったかわかりませんが、そこで、今回三年となっているけれども、その陰にはやはり五年ぐらいの要求があったのではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/20
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021・進淳
○進政府委員 欠損金の額の問題でございますが、確かに、過去をさかのぼればさかのぼるほど理論上調整ができることにはなるわけでございますが、現実の欠損金と利益との調整ということから考えますと、現実問題として、私どもは、三年程度さかのぼれば、よほど大きな欠損でなければ埋め合わせばつくのではなかろうかというような考え方で三年間としたわけでございまして、もちろん先生の御指摘のように、五年とすればそれだけよけいに埋め合わせがつくことは当然でございますが、実際問題といたしまして、私どもは、よほど大きな欠損でなければ三年程度でいけるという判断できめたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/21
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022・貝沼次郎
○貝沼委員 これは聞くだけでありますが、なお新聞等の声を聞きますと、繰り延べに対してもさらに延ばしてもらいたいというふうな声があったようでありますが、これは本則どおり五年ということになっております。これについては大蔵省はどういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/22
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023・高木文雄
○高木(文)政府委員 今回の措置によりまして繰り戻しが三年ということになります。繰り越しは従来から五年認められておるわけでありますから、通算して八年というふうになるわけであります。八年間で損をならすことができるということでありますれば、これはよほど欠損の額が大きい。それから、過去においてまた非常に大きな利益があってよほどたくさんの法人税を納めておられるというような、非常に異例の、特例の場合には、八年よりもっと長いという場合であればなお十分な救済措置ができるということかもしれませんけれども、きわめて常識的に考えて、前後を通じて八年ということであれば、まあまあ九割九分までの個人、法人についてはそれでカバーできるのではないか、私どもはそう判断いたしまして、現在の段階では繰り戻しを三年にするというところにとどめているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/23
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024・貝沼次郎
○貝沼委員 これは過去の実績等を全部調べてから考えたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/24
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025・高木文雄
○高木(文)政府委員 今回のことはかなり大きなショックでございますし、それから企業別にも輸出産業だけに特にしわが寄るという関係もございます。したがって、過去の例は必ずしも参考にならぬのではないかと思うのでございまして、いま御指摘のように、過去の不況期等と比較してということではございませんので、まあ何ぶんこういうことはほとんど初めての経験といってもいいわけでございますから、そういう意味では過去の事例を突き合わしたということではないと申し上げたほうがよろしいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/25
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026・貝沼次郎
○貝沼委員 そうではなくて、これから欠損が出るわけですけれども、過去に相当もうかっておるならば八年間ではちょっと無理ということもあり得るわけですね、いまの御説明では。過去にその企業がもうけたかもうけないかということもかなり影響するわけですね。そういうことは全部調べてから大体これくらいならだいじょうぶということで結論を出されたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/26
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027・高木文雄
○高木(文)政府委員 まず繰り戻しの期間を何年にするか、過去何年に戻るべきかということでございますが、これは今回の措置では御存じのように三年にとどめておるわけでありまして、場合によってこれをさらに古くまでさかのぼる措置がとれないかということは一般的には議論されたわけでございますが、この点につきましては、御存じのように、現在、税の調査の期間等の関係からいいましても、大体三年までさかのぼるということにもなっております関係もありまして、他のそういう税法の規定との関係からいいましても、四年、五年にさかのぼるというのはちょっといろいろ差しさわりが出てくるのではないか。もしいま申しましたように、過去三年、それから先五年、八年ということで不十分であるというならば、むしろ先のほうにもつと延ばすかという問題は、それは考えられないことはないかもしれません。そのことは考えられないことはないかもしれませんが、まあいまのところ八年であればまずまずいけるのではないかという感じで判断をしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/27
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028・貝沼次郎
○貝沼委員 さらにこういう声もあったと思うのです。現行商法では差損について繰り延べ資産への計上を認めていないけれども、これを繰り延べ資産としてさらにこの繰り延べ分については損金に算入できる道を開いてほしい、こういう要望ですね。これは非常にむずかしい問題がありますので、そのままそっくりというわけにいきません。また、この差損の計算なども、とてもじゃないけれどもどうして計算していいかわからないと思うのです。しかしながら、零細企業を見ますと、やはりこれは何らかの方法が考えられてもいいんじゃないかという、要するにほんとうの零細クラスに対してはある程度考えてもいいのではないか。非常にむずかしいことでありますけれども、そういうふうな気がいたしますが、この点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/28
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029・高木文雄
○高木(文)政府委員 いまのその問題、為替に伴いましていろいろ出てきております損失処理の問題については、業種、業態また企業の大きさ等によっていろいろ問題がございます。いま御審議願っております中小企業の問題につきましては、為替に限らず、輸出関連産業について一定の産業に限っておりますけれども、必ずしも為替差損だけに限らず、輸出に関連ある企業について出た損失についての繰り戻しということを御審議願っておるわけですが、現在すでに出ました損についての繰り越しについては現行法上五年認められているわけでございます。別途、それとは別にむしろ大企業を中心にして為替差損の繰り延べ経理ということが一部問題になっておるわけでございますが、これにつきましては、別途また来年度の税制との関連において一応検討はいたしております。一応検討はいたしておりますが、まだその前に現実に出た、実現しております損だけで御存じのように相当の税収減が起こってきている現状でございまして、先般所得税法の審議の際にもたびたび申し上げましたように、今年度は法人税で二千九百億円の減収を見込みました上に、来年度の税収としてはさらにかなりの減を見込むということであらわれてきておりますように、現実に最近年次における損益としてもうそれが実現をしているという現状でございますので、はたしてさらにその上に特別措置を要するものかどうか、その辺については検討はいたしておりますが、まあかなりむずかしいのではないかと思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/29
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030・貝沼次郎
○貝沼委員 私は、大企業はこれはやる必要ないと思うのです、いつももうかっているのですから。差損ばかり言っているが、それによってもうけている部分もあるのですから。またその計算もむずかしいし、これはもうやる必要はありません。しかし、零細の場合はちょっとしたことが非常にこたえるんですね。そこで、零細企業に対しては何とかこういう考えはできないかと思ったわけでありますけれども、まあ計算が非常にむずかしいし、技術的にむずかしいと思うのですが、零細企業についてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/30
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031・高木文雄
○高木(文)政府委員 御質問は為替差損のことであろうかと思いますが、一般の中小企業が輸出に関連あります場合にも、これは自分自身で直接の外貨建ての取引をするということは非常に少ないわけでありまして、輸出商社等を通じてほとんどの商品が外へ出ていくわけでございます。したがって、中小企業自体が外貨建ての債権債務を持つということは必ずしも一般的ではないわけでございます。そこで、今回の措置を考えます際にも、むしろ為替差損ということを中心に考えられるよりは、為替差損を乗り越えて一般の差損全体を通じて見たほうがいいんじゃないか。そのかわり、もちろん全く今回のいわゆるドル・ショックと関係ない企業にまで及ぼすのはいかがかということで、輸出関連企業ということにそういう点ではしぼっておりますけれども、これは為替差損だけではなく、一般の損にも及んでいるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/31
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032・貝沼次郎
○貝沼委員 国税庁にお尋ねします。
「国税庁は三十日、変動相場制移行と米国の輸入課徴金制度の影響で業績不振となった中小企業に対する税務執行について延納や納税の猶予など既存のあらゆる納税緩和の制度を活用して救済策を講ずるよう各国税局に指示した。すでに政府はドル・ショックを受けた中小企業対策として税制上の特別措置をとることを閣議決定し、沖繩国会に税法の改正案が提案される予定だが、」まあこれは提案される前の話でありますから。「現行法の中にも業績不振の会社などに適用される予定納税額の減額承認制度、仮決算による中間申告制度などがある。国税庁としてはこれらの制度を十分活用することをはかったもので、とくに輸出関連産業が集中している税務署などには業者を集めて説明会を開くなど、納税緩和措置を周知徹底するよう指示している。」こういう報道が出ております。非常にけっこうなことだと思いますけれども、このことについて、これをやった結果どういうような結果が出たか。それから「説明会を開くなど」というふうにありますが、これはどういう形で行なわれましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/32
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033・江口健司
○江口説明員 ただいま先生の御指摘のありました通達は、九月二十九日に全国の税務署に出したものでございますが、これはいま御指摘のとおり九月二十三日の閣議決定にございます緊急中小企業対策についてという中に、税制上の特別措置という中に税務の今後の措置がございますが、かねて八月の末にドル・ショックその他でもって各輸出産業を中心とします産地について納税者の方々からいろいろな質問もあり、それから納税の窮状を訴えるというような報告が参りましたので、急遽この閣議決定もあり、九月二十九日に通達を出したわけでございます。
まず、この通達を出したあとの状況はどうなっておるかという御質問でございますが、実はまだ報告を徴するということにつきましては、現在法人も個人も通じまして税務の最繁忙期に当たっておりますので、これらに伴う結果についての報告を徴するという措置を実はやめたわけでございます。御指摘のとおり、個人の所得税につきましては、この十一月に第二の納税期が参ります。したがって、この分につきましては、主として事業所得者が中心になりますが、十月末までの現況で、業況が悪くなるというものにつきましては十一月十五日、今月の十五日までに予定納税額の減額承認の手続をしていただきます。それから一年決算の法人につきましては、中間申告の制度がございますが、これは一年決算のうちの六カ月を経た場合に、その段階での確定申告に準ずるものを出していただくわけでございますが、もし御本人のほうから中間申告が出ませんと、税務署のほうで前年度実績の二分の一でもって更正決定をする、こういう手続になっておりますが、普通の場合はとかくいたしますと、中間申告をしないために税務署のほうから一方的に決定されるおそれがございます。したがって、案外この中間申告というのが小企業等の場合には認識されていない向きもあるやの感じを持ちましたので、中間申告制度によりまして、ことしは去年と状況が違うということを申し出ていただきますとともに、その場合の決算指導を十分に行なうように、特に輸出を中心にしますような産地についての税務署では、特に積極的に該当の業界等にお集まりをいただきまして、現在の制度でこういう手続があるということをお教えするようにということを申し上げておるわけでございます。
なお、これは例年の例でございますが、十一月の上旬は「納税者の声を聞く旬間」というものを全国で実施しておりますが、この機会には個人はもちろんでございますが、中小法人の方々も多くお集まりになりますので、この機会を通じまして、各税務署でもって現行制度でとりあえずこういう制度がありますということをPRすることにつとめた次第でございます。全部報告を徴しておりませんが、たまたまこの声を聞く旬間のときに私ども全国に手分けして参加したわけでございますが、ある産地地域、この地域は繊維関係の輸出産業の中心でございますけれども、最近の法人の各月の申告状況を見てまいりますと、従来でありますと、平均的には大体全法人のうちの六割からせいぜい七割くらいが有所得申告をしておられます。ところが、ことしになりますと、これが約半分くらいに有所得申告が減っておるという実態が、部分的ではございますが確認できました。したがいまして、中間申告等によりまして現行制度を十分活用していただいておるという実態がその辺から部分的ではございますが、うかがえたわけでございます。
なお、今後も年末等を通じまして源泉徴収の説明会等が今月の末あるいは来月の初めに行なわれますが、そういう機会をとらえましても、現行制度の賦課の面あるいは徴収の面についての活用方の説明を十分してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/33
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034・貝沼次郎
○貝沼委員 これは非常にけっこうだと思うのですが、この仮決算による中間申告制度で、あらゆる企業というものは中間に申告できるわけですね。——わかりました。
政務次官にお尋ねいたします。いままで政府は輸出——こういう意味の、いま議論されているような、中小企業などがやっておるような輸出でありますが、こういうような輸出は政府としては奨励してきましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/34
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035・田中六助
○田中(六)政府委員 輸出振興ということから一応奨励はしてきたと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/35
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036・貝沼次郎
○貝沼委員 奨励はしてきた。これはそれでいいと思います。奨励をしてきたら、いまドル・ショックにあってひどい目にあっておる。ところが、中小企業は輸入課徴金あるいはストライキなどもありまして製品がだぶついておる。それからまた転業もする。あるいはほかの国との競争もありまして、どうしても技術革新をしなければならないところもある。いろいろあるわけですけれども、要するにいま日本は非常に困っておる。こういう場合に、こういういま審議しているような法律も私は大事だと思います。と同時に、業者の話を聞きますと、やはり政府が責任を持って輸出を奨励してきたんだから、今度はこういうショックにあった場合、その商品をかかえ込んで泣くということではなしに、これをたとえば二年とか三年とかの間は、この商品を政府が責任を持ってあげましょう、その間にちゃんと市場を開拓しなさいとか、あるいは政府が責任を持って市場を開拓してあげますとか、いろいろなそういう意味の姿勢というもの、責任というものがあるんじゃないか。いま政務次官は、政府が輸出を奨励してきたとおっしゃいますから、奨励してきたんなら、私はそれだけの責任があると思いますが、この点はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/36
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037・田中六助
○田中(六)政府委員 日本は輸出ということが至上命題になっておりますので、その点いままでジェトロなどを通じて情報の収集とか、あるいはマーケットの調査、開拓というようなことを指導してきて、できるだけいい方向にという指導はしてきた点の責任、それは結局輸出奨励ということに私はなると思います。そういう責任はやはり政府にありますし、それだけにこういう対策を講ずるような措置を現在行なっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/37
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038・貝沼次郎
○貝沼委員 じゃ具体的にお伺いしますが、ほんとうにさばくことのできない商品をかかえておるところ、これは政府で買い上げてくれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/38
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039・田中六助
○田中(六)政府委員 それが非常にむずかしいところで、いま私企業ということと、それから行政指導といいますか、ほとんど海外の場合はジェトロを通じていろいろな調査、情報収集あるいは指導をやっておるわけでございますが、これから先もそういう方向は政策としてはやっていくつもりですけれども、ただ御承知のように国際的な問題でもありますし、どれだけ輸出力があるかという問題で、後進国の追い上げ、価格の問題、それから新しい機械、各国とも傍観しているわけではなくて、それぞれジェトロみたいなものを設けてやっておるわけでございますので、市場の競争が非常に激しいわけで、いろいろな点でネックが出てくるのは、これまたほんとうは計算済みでなければならないわけでございますが、私企業の限界ということもあり、実態的にはこういうものだというのをさらけ出して証明するということは、非常に困難な場合が多いんじゃないか。
そういうことから、そんなら損害が、今回為替差損がドル・ショックで起こったから全部見るということが、はたしてこれまたできるかどうかということも疑問でございますが、ただやはり大きなショックを与え、企業の社会性と申しますか、いまはほとんど私企業でも、いろいろな点で見ることは、政府の一つのつとめでございますので、全部見ることはできませんが、何とか救済したい、あるいは事業転換をさせたいという方針をいま展開しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/39
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040・貝沼次郎
○貝沼委員 何とかしたいということでありますけれども、その何とかする、あるいはこの法律をいまつくった、あるいは税制措置をした、金融措置をした、こういうふうにすると、これはいかにも政府がやったように見えます。しかしながらこれは、金融措置にしても国民の税金であるし、あるいは税制にしても、それが減ることによって社会資本というものが不足したり、あるいは財政が減るわけでありますから、これは政府が特別大きな顔をできることじゃないのです。そういうところに持っていったというのは、これは前々からわれわれが指摘しておりますように、現在の政府の根本的な経済政策というか、あるいは政治的な姿勢というか、こういうものがあると思うのです。特にアメリカに対する追随というか、アメリカを信頼し切って失敗した、こういうことが大きな原因だと思います。これについて政府が一体どれほど責任を感じているかということは、私は実際、非常にこれは憤りを感じます。
そこで、いまここには通産当局並びに大蔵当局がおるわけでありますから、その両方からほんとうに自分たちのいままでやってきた行政あるいはそういうやり方について、今後心を新たにしてやっていくという姿勢があるのかどうか、その点を代表の方から伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/40
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041・進淳
○進政府委員 従来、中小企業の輸出振興策につきましては、政務次官から御答弁申し上げましたように、ジェトロを通じまして主として市場調査なり情報収集を行なってまいりました。その際に、発展途上国等の追い上げもございまして、できるだけ高級品化対策と新しい有利な市場開拓という意味で、たまたまアメリカのような所得水準の高い国に対する輸出がかなり伸びてまいったことは事実でございます。その結果、御指摘のように非常に影響をこうむっております。
今後の指導方針といたしましては、できるだけ市場の分散化をはかりたいということで、それからやはり輸出の急増ということもいろいろ問題を起こしておりますので、いろいろな意味で、たとえばアメリカ国内におきましても市場を分散する必要があるというようなことも考えております。また業種といたしましても、できるだけ幅広いいろいろな業種で輸出振興をはかってまいりたいというふうに、従来の方針をできるだけ新しい体制に即応するように考え直してまいりたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/41
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042・高木文雄
○高木(文)政府委員 主税局の立場というのは、たいへん微妙でございます。輸出ということはわが国の経済の実情、資源の少ない国であるという前提に立ちます場合に、どうしても輸出に相当ウエートを置いて考えなければならぬというのが実情であることは事実でございます。そのゆえにこそ過去においていろいろの輸出振興策がとられてきたということでございます。それで、その輸出振興策について前国会において御審議願いましたように、若干それをトーンダウンするという程度の改正が行なわれたわけでございますが、それが結果的には若干輸出ラッシュというようなことで、このような問題を巻き起こした一つのもとにもなっておるわけでございます。
そこで、今後輸出について税制上どのように対処していくかということは非常にむずかしいところでございまして、六月の例の経済総合政策八項目というときに、輸出振興税制について再検討することが政府部内において合意されたわけでございますが、さて、具体的に再検討する内容については、今日までいまだその細目を決定するには至っていない現状であるわけでございます。その辺の、今後の輸出についてどの程度に税制上考えていくべきかということは、一面において課税の公平と申しますか、負担の公平と申しますか、そういう角度からの問題を別にいたしましても、産一業奨励策という意味におきましても非常にデリケートな問題であると思っております。私どもは真剣にその問題と来年度の予算に関連いたしまして取り組んでまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/42
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043・貝沼次郎
○貝沼委員 通産当局におかれましても、また国税庁におかれましても、中小企業から直接また相談なり、あるいはいろいろ申請等もあると思います。そういうときには、特に親切にこの際めんどうを見てやっていただきたい。そのことを切にお願いいたしまして、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/43
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044・齋藤邦吉
○齋藤委員長 広瀬秀吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/44
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045・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 最初に大蔵省にお願いをいたします。
今日、日本の経済が非常に不況の状態を迎えて、このことはもうすでに昨年秋口以降ずっと続いておったわけでありますが、さらに今回のいわゆるドル・ショックといわれる諸問題、輸入課徴金の問題、あるいはまた変動相場制への移行、円の実質切り上げ、こういうような形を通じて、主として貿易関係を通じて経済の不況が深刻になってきたという事態にあるわけであって、しかも今回の不況というのはまさにたいへんな不況だ、かつて戦後類を見ない深刻な不況である。質的にも量的にもそういう状態にあるのではないか。しかも期間もかなり長引く、こういう状況にあるわけであります。過般、経済企画庁が年度当初の経済見通しを変更した。しかし、それ以上のむしろ落ち込みになるだろうし、また、したがってその景気回復のテンポもかなりおくれるであろう、こういう状況も見られるわけであります。
そうなってまいりますと、今日財源の問題、いわゆる税の自然増収というようなものが大きく期待はできない状況を迎えている。そういうようなところから、今回も、年度当初の四千三百億にプラスして七千九百億の公債を発行する、こういうことになっているわけであります。これが明年度昭和四十七年度になりますと、ことしは一兆四千億も見込めた税の自然増収がおそらく一兆円も減って、四、五千億ぐらいしか見込めないのじゃないかという予想すら立てられておる現状であります。こういうところで、一体この財源確保というものに対して、大蔵当局としてはどういうように対処しようとするのか。あくまで公債発行に最重点を置いてやっていくのか、あるいは増税を考えていくのか。こういうような二つの方法しかないと思うのでありますが、あるいはそのほかに方法があるのか。それらを含めてこの財源対策についての基本的な立場というものをどういうところに置かれておるのか、この点について、最初に政務次官からお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/45
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046・田中六助
○田中(六)政府委員 いま広瀬委員御指摘のように、自然増収も五千億もあればいいほうじゃないか、それよりも下回るおそれもあるわけでございまして、といって増税でこれをまかなうということは、いまの体制から私はほとんど考えられないし、大蔵省当局といたしましても、増税ということは頭の中にはないのじゃないか。むしろ、公債政策によっていく以外にないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/46
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047・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 いまの結論は、公債政策以外にはない、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/47
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048・田中六助
○田中(六)政府委員 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/48
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049・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 これは、いずれまた大蔵大臣お見えのときに質問をいたしたいと思うのですが、公債につきましても、簡単に安易に歯どめなしに公債政策に転換をするということは非常に将来危険を伴う、非常に財政の硬直化をもたらす大きな原因にもなるしするわけでございますが、特に赤字公債の方向あるいは日銀引き受けの方向というようなことをなりふりかまわずやるということになったら、これはまたたいへんな国家財政上の大問題であろうと思うわけであります。
そういう中で、これは若干論理の飛躍があるかもしれないけれども、主税局長に伺うけれども、特に、今日まで租税特別措置というものが、本来本則からいえば当然取るべき税金を、俗なことばでまけてやっておるというものであります。しかも、そのことが政策効果をあげようという特別の時期に、特別の目的をもってやられるわけでありますが、そのことがずっとやはり既得権化してきている、慢性化してきているというようなことで、大企業を中心に、あるいは比較的余裕のある階層に対して減税のメリットを与えてやっている、こういう状態になって、著しく税の公平を害する、税の基本である公平という点を害しておる措置であることは間違いないわけでありますが、こういうものをやはり大幅に整理をする。これは本来その分は、確かに整理した分は増税になるけれども、本来何年もあるいは十数年、二十年にわたって減税の恩恵をしこたま受けてきておるわけでありますから、そういうところを思い切って改廃をして、税の公平を回復しながら、大衆減税の財源もそういうところから持ってくる、こういうような発想というものこそが、戦後二十六年を経て日本の経済力が、同時に円が世界一強い通貨になったというような経済発展の一つの大きな原動力にもなってきて、そのとがめがいま出ておるというような事態にこそ、こういうものを大幅に整理をする、こういう段階を迎えているのではないか、こういうように思うわけでありますが、財源調達の手段としての今日的状況をも踏まえた上で、そういうものに対してどのような基本的なお考えを持たれておるか、この点を伺いたいと思います。
〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/49
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050・高木文雄
○高木(文)政府委員 先ほど政務次官から御答弁申し上げましたように、来年度の歳入はたいへん苦しい状況にございます。そこで来年度は、一応例年に比べて自然増収に依存しがたい分を来年度の場合には公債によらざるを得ないであろうということは、政務次官から御答弁申し上げたとおりでございますが、その場合に、税につきましても可能な限りいろいろくふうをしてまいらなければならぬというつもりでおります。その場合に、一つの要素として、租税特別措置についてどう考えるかということは、まさに、御指摘のとおり問題点であろうと思っております。租税特別措置は、ただいま御指摘のように、各種の政策目的を達成するために租税の誘引的機能を利用しようとするものではありますけれども、しかし、まさにいま御指摘のいろいろ慢性化という問題がありますので、絶えず洗いがえを行なわなければならないということもおっしゃるとおりでございます。私どもとしては、できる範囲においてそのような努力につとめてきたつもりでございます。
しかしながら、それが一面におきましてまだ不十分であるという御指摘をかねがね受けておりますのは、やはりそれはそれなりに理由がある。それぞれの立場から見て、それぞれの制度の有効性ということについて、多少私どもといろいろ見解の相違がある場合もありますが、理由があって今日まで続いてきているというものでございます。もちろん来年度は、先ほど来御指摘のような財政事情でございますから、例年にも増していろいろくふうはされなければならぬと思っております。しかし、特別措置といえどもそれは一つの租税制度でございますので、租税制度の安定性という見地もまた考えなければなりませんので、このような事情があるからということによって来年度に限り特別に急激な変化を加えるということは、またいろいろ影響が出てまいるかと思うのでございます。その辺をどう考えますかはなかなかつらいところでございまして、財政事情、それからもう一つは、従来から問題になります負担の公平の見地からする問題点というものを片方に考えながら、同時にまた、急激な大きなショックを一ぺんに与えるということになりませんように考えながら、一つ一つそれぞれの措置について判断をしてまいりたい。いずれまた御審議をお願いしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/50
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051・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 国税における租税特別措置を年次別に数年間にわたって見てみますと、四十一年からの数字は二千三百八十一億、以下四十二年、四十三年とありますが、二千四百九億、二千六百四十八億、三千二百二十六億、三千八百四十一億、四十六年度は四千三百九十六億、こういうふうに減税額がずっとふえ続けてきたわけですね。そうして国税のはね返り分あるいは地方独自でやっておる租税特別措置、こういうようなものを見てみますと、四十一年千四百八十一億、四十二年千六百十六億、四十三年は千七百二十一億、四十四年二千二百二十一億、四十五年が二千六百八十億、四十六年度は三千十億円と、こういうことで、国税と地方税を合わせますと、約七千四百億円にのぼるわけであります。こういう状況になっておる。これを十年間累積して計算したら、これはたいへんな額になるわけであります。こういうことできておるわけであります。税制調査会でも、新しい政策効果のはっきりしないようなもの、あるいは慢性化しているようなもの、こういうようなものについては整理をしていかなければならぬというようにいわれておるわけでありますが、今日大蔵省の方針というのは、経済が大型化するということを背景にして経済活動全体が伸びているというような状態も当然あるわけだから、いうならばこの租税特別措置の減収額の自然増という面も確かにこれは付随的に起こってくることはわかるのでありますが、新しいものを取り入れていくという場合には古いものを見直した洗いがえをして整理をする。これと、新しい政策、目的、緊急の政策目的のために税制も特別措置をやって減税をはからなければならぬというようなことがあるわけですが、その関係というものは、減らすほうと新しくつくるほうとの関係というものは大体見合う、こういうようにお考えなんですか。そして経済の大型化の部分がこういうように年々減収額が増大していく、こういうことの反映なんですか。その辺のところの方針を聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/51
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052・高木文雄
○高木(文)政府委員 四十三年度ぐらいからだったと思いますが、租税特別措置についていろいろ御批判がある関係もあり、何かやはり一種の歯どめが要るということもありまして、毎年度の租税特別措置の洗いがえをいたしますにつきまして、少なくとも租税特別措置の総額がふえることがないようにということで、いわばワクの中での洗いがえということが今日まで行なわれてきておるわけでございます。それで、さきに四十六年、ことしの八月に税制調査会からいただきました答申におきましても、「個々の政策の目的と税制の基本的原則との調和という見地に立って、たえず既得権化や慢性化の排除に努めるとともに、経済社会情勢の進展に即応し、随時、流動的改廃を図っていくこととすべきである。」という御答申をいただいておりますが、その辺も、大体いままで三年間ぐらいとってまいりましたような考え方とほぼ同じような考え方をとるべしということを頭に置いて、こういう文章での御答申をいただいたものというふうに理解をいたしておるわけでございます。
ただ、いずれにいたしましても租税特別措置につきましては、御存じのように年限がいつまでということがついておりますから、まあ比較的期限切れになります制度がたくさんあります年とそうでない年がありますので、厳密に各年度とも必ずそうすることができると言い切れるわけではないわけでございますが、基本的な腹がまえとしては少なくともそのワクの中でいきたいというつもりでやってまいりましたし、これからもそんなつもりでいきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/52
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053・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 大体四十三年以降というお話があったわけですけれども、そうしますと、四十三年以降でも租税特別措置による減税額というのは大体一〇%以上の伸びを着実に示しているわけですね。こういう状況は大体これからも続けるんだということなんでございますか、それとも決定的な財源不足時代を迎えたというようなことから、既得権化し慢性化して政策目標もあいまいであるという部分については思い切って大胆に打ち切って、その面での財源調達を容易にしていくというようなかまえというものはまだ出てこない、こういうように理解してよろしいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/53
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054・高木文雄
○高木(文)政府委員 先ほども申し上げましたように、従来にも増して租税特別措置の内容の検討はやってまいりますが、さりとて最近の歳入減、財源難というものの中での財源を積極的に特別措置の整理による歳入増に依存するというのは、現実問題として非常にむずかしいことではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/54
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055・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 非常にむずかしい。むずかしいことはわかる。しかしながら、いずれも税の基本的な原則からいって公平を害する面があるんだということは、もう税調でもしばしば指摘をしているところなんです。
そういう面からいって、たとえば昨年あたりから、公害施設関係についての特別償却を認めるというような、政策目的のきわめてはっきりしたものなどを取り入れてきておるし、またそういう面で中小企業に対するさらに有利な償却を認めるというようなことなどもあるわけですが、そういうように政策目的がきわめて切実なものがあるというものについては、私どもも必ずしも反対するものではないし、しかもこれは何年間と限定をして、次々と延長、延長とやって慢性化してしまうというようなことをさせない、政策目的がこれによってどれだけ促進されたということが明確に出るような、そういうものだけに租税特別措置というものは限っていくべきだ。今回の場合等についても、私ども必ずしも反対ではないんであります。そういうように一定の年限をぴしっと設定をし、あるいはまた政策目的というものがきちっとしたものであるならば、われわれもこれを是認するにやぶさかではないのでありますが、全体的に今日の貯蓄の奨励あるいは環境改善、地域開発、資源開発、技術振興、設備近代化、内部留保、企業体質強化、輸出振興、社会保険診療報酬の特例などなどたくさんあるわけでありますが、この中で非常に慢性化して、慢性化したがゆえにもはややれない、政策目標もはっきりしてないようなものが随所に出てくるわけです。こういうものについて一つ一つ午後にやりたいと思っているんですけれども、そういうものに対しても、たとえば貯蓄の奨励というばく然たるものでたいへんなメリットを税制上与えている。そういうようなことを通じて貯蓄、貯蓄、貯蓄の奨励、そしてそのものによって経済を大型化し、国際競争力をつけ、そして世界市場に進出をし貿易立国だ、貿易で国の富をふやしていくんだという、こういう経済成長のパターンというものをいま考え直さなければならないときなんだ。こういう状況を迎えている、新しい段階を迎えている、こういうような場合に貯蓄できるというのはある程度余裕があるからできるんであって、貯蓄のできない階層というのも非常に多いわけなんです。
そういうものにもう今日、五十年度までに至る——まあ最終的には源泉分離選択というようなことの税率を二五%というところで押える。それも四十九、五十年度でそういうことにするんだ、それまでは四十六、四十七が二〇%ですか、こういう状況というものがある。この税制のそういうメリットが貯蓄を奨励することになっているんだということは心ずしも証明がないのです。可処分所得を増大させるということと貯蓄というものが一〇〇%に近い相関度を持っているんだということで、もう前々から税調でも指摘をされておったわけなんですね。そういうものに対しても、すでにもう五十年度までのものをきめてしまったんだからいいじゃないか、こういうようなことではいかぬと思うのです。さらに内部留保の充実強化をはかる、あるいは企業体質の強化というような問題、これなどにも、きわめて政策効果、何をねらってのものかというようなことは、内部留保は自己資本の充実というようなことが、ほとんど実績としてあらわれてこない、政策効果として全くあらわれてこないというような状況などもあるし、特に輸出振興税制に至っては、いまや今日たいへんな問題にもなっている。交際費課税しかり。あるいは社会保険診療報酬の特例しかり。いろいろあるわけでありますが、そういうものについても、いまきわめて弱気な答弁をされておるわけでありますが、新しい時代にふさわしいやはり経済体制、財政体制というものに持っていくためにも、この辺でこの分についてのかなりの勇断をふるった大改廃を行なう、少なくとも半分くらいは整理していくというようなこと、本来納税すべきものを特例を講じて納税を免除し、あるいは減額しということをしているわけでありますから、税の公平を害している。しかも日本の経済がそういう今日の状態を迎えて、新しい時代を迎えている。こういう中で、どうも主税局長はこれをどうするかというようなことについて、基本的な認識と勇気ある態度をあまりにも欠き過ぎているのではないか、このように思うのですが、もう一ぺんお考えをお聞きいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/55
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056・高木文雄
○高木(文)政府委員 租税特別措置の内容につきましては、各般にわたっておりますので、いろいろ複雑な事情があることは御存じのとおりでございますが、ただいま御指摘のございましたように、四十六年度の特別措置による国税の減収見込み額は約四千四百億でございますが、その中で、いろいろなくくり方がございますが、金額として一番大きいのは、やはりただいま御指摘ありました貯蓄の奨励に関するものでございまして、それが約二千百三十億ぐらいになっております。そこで、その貯蓄についても、どう考えるかという問題は確かにあるわけでございますが、貯蓄の制度につきましては、税制上どう考えるかは、これは基本的に非常に長い間、戦前から今日までいろいろと議論がございました。大蔵省の中におきましても、そのときそのときに、税制のサイドと金融のサイドで、いつも非常に役所の中同士でもいろいろな議論があるところでございまして、何が真理としてあるべきなのかということについても、いろいろ議論があるところでございます。
もちろん税のほうでは、すべての所得につきましての総合課税ということが前提になっておりますから、現行制度はそれを前提とし、現在のように非課税制度であるとか、あるいは源泉選択によるところの分離であるとかというものにつきましては、特別措置であると概念しておりますので、それによりますところの額として大体計算されます二千億を特別措置として考えておりますけれども、しかし、これをいまおっしゃいますように、他のもろもろの租税特別措置と全く同じように、課税の公平上きわめてけしからぬものであると考えるかどうかということについては、いろいろな見解があるのではないかと思うのでございます。たとえば少額貯蓄非課税措置は、現在二千億の中で約七百億ぐらいになっておりますが、これは御存じのように、限度が一応一人当たりというか百五十万円ということで頭を打たれているわけでありまして、非常に多額の金融資産をお持ちの方について特別に優遇するということではなくて、むしろ零細な貯蓄というものの奨励ということにつながっているわけでございます。そういうこともあり、源泉選択につきましても、単に総合課税による上積み税率の回避ということだけではなく、個人の持っておられます多数の口座の全部をそれぞれ名寄せして、そうして総合して申告することの繁雑さというような問題との関連において、現在、四十五年度改正からとられてきているわけでございます。
そこで、この制度につきまして申しますと、四十五年度のときに国会で御審議願いまして、いろいろ御議論がございましたことはよく承知しておりますが、五十年度まででとにかく源泉選択税率を二年ごとに五%ずつ上げて、それでやってみましょうということで現行法ができておるわけでございます。それを前提にして、すべての金融機関なりあるいは証券業界なりが鋭意貯蓄の運動をやっておるわけでございますから、これを途中の段階でひっくり返すということは、現実的な問題として私はなかなかできかねるのではないかというふうに考えるわけでございます。
さればとて、他の特別措置等につきまして一切何もいたしませんということを申し上げているわけではございませんが、四千億の中で二千億がそういう大口の貯蓄奨励ということになっておるわけでもございますので、この特別措置のいわゆる整理、合理化ということを、来年の税収の不足の財源対策という見地からこれをとらえ得るほど金額的に大きなものをこれに期待することは、私はむずかしいのではないかというふうに思っておるわけでございます。まあ、いまたいへん弱気だというおしかりを受けましたが、そういうことでなしに、一つ一つ大いに議論をして、できるだけの整理はいたしてみたいと思いますが、ただ、金額としてはそんなに大きな金額のものを特別措置の整理によって期待することはむずかしいということを申し上げておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/56
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057・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 総体的な問題はそのくらいにして、いま貯蓄奨励制度についての話に入りましたから、なるほど昭和四十六年度の減収見込み額として少額貯蓄の利子の非課税六百八十一億と見込まれておる。そのほかに利子所得の課税の特例、これは源泉分離等でありますが、それと配当所得の課税の特例、この二つを合わせてみますと、前者が二百九十五億、後者が四百二十二億、これだけでも七百十七億ですか、約七百二十億、そういうことになるわけであります。大体この二つで全体の二千百三十五億のうち三分の一は占めるわけであります。こういうものはもう、少額貯蓄非課税程度は、これはまあ架空名義であるとか擬装名義であるとか、あるいは無記名であるとか、こういうようなことで、大きな資産を持っている者が百万なり百五十万なりに分割をしていろいろな金融機関に預託をする。これはまあ銀行局の問題になりまするけれども、そういうことを徹底的にきびしくチェックをしていくというようなことはやらなければならぬと思いますが、この少額貯蓄非課税というものがこの趣旨どおりに行なわれるならば、この程度のものについて私どもとやかくあまり文句を言いたくない。しかしそれ以外の利子所得の課税の特例、五十年を迎えて最高になっても二五%ぐらいのところなんです。上積み実効税率を見ても、大体三百五、六十万以上のところでなければ大体みな特例を選択したほうがえらい得になる。総合課税というようなことから見て、これで相当な増収が得られるはずなわけであります。配当所得、これなどもまず今日株を取得をする、証券を取得をするというような人たちは、かなりゆとりのある階層であることは間違いないと思います。これはあとで証券局にも伺いますが、こういうもの等についてどこまでめんどうを見るというか、優遇を与える合理的な根拠がおありになるのかということについては、国民に対して説得性のないところだろうと思うのですが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/57
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058・高木文雄
○高木(文)政府委員 その点につきましては、おっしゃるとおり現在の源泉選択制度が高額所得者にとって有利になるということになりますから、したがって、現在の所得税の累進の構造をとっておりますたてまえとの関連におきまして、非常に問題がある制度であるということは御指摘のとおりであると思います。
ただ私どもは、実は非常に困っておることがあるわけでございまして、それは現実に総合申告を実あらしめるためには、一方において、納税者のほうにおいていわゆる完全な申告の習慣が、ほんとうの意味での総合申告の習慣が広く納税者の間に定着をしてくることが、もっともっと広がってこないとうまくいかないということが一つでございます。
それからもう一つは、税務署の、あるいは国税局の調査権限について相当強いものを与えていただく、そういうことについてのいわば国民的合意が得られるということがなければいけないと思います。たとえば現実に完全な総合が行なわれるためには、仮装名義預金であるとか、あるいは他人名義の預金であるということがあっては総合が行なわれないわけでございますから、いろいろな意味におきますところのそういう調査が十分に及び得るという状態にないと、現実には制度が総合になりましても、その総合の実をあげることはなかなかできないわけでございます。その問題につきましては、預金制度の秘密性というようなことを非常に尊重する、極端な場合にはスイスのような国もございます。またそれほどでない国もありますが、わが国の場合に、銀行の預金の秘密性といいますか、そういうものと税務署の職員の調査権限との調和をどの辺に持っていくかということについては、まあ率直に申し上げて、必ずしも私どもとしてこれだけの理解があればやれる、皆さんの御理解をいただければ、御支援があればやれるというところまでのなかなか御理解をいただけない現状でございます。
銀行に関しての調査をいたしますにつきましては、いろいろな意味で納税者サイドからも非常に強い抵抗があることは御存じのとおりでございます。そういう状態からいたしますと、税務署の職員にも数に限度がございますから、毎日毎日銀行調査だけやっているわけにまいりません現状におきますと、とうてい税務署の者にそういう調査をやれ、もっと強くやれ、もっとひんぱんにやれというわけにはなかなかまいらない実情がございます。そういうことを考えまして、そういう税の実態等を考えますと、必ずしも理論上総合課税の実をあげなければならない——源泉選択制度では公然と累進をしなくてもよろしいということを制度上認めるものでございますから、そういう特例を置くのはおかしいということはよくわかっているのでございますが、さりとてそうすることがはたして、税務全体としての能率等を考えますと、執行のほうのサイドの実態から申しますと、はたして悪い面ばかりであろうかという点は、私は必ずしもそうでもないのではないか。現状の納税についての国民の認識なり、それから預金というものについての一般の皆さんが持っておられるお考え方なり、税務職員の調査というものについての皆さんのお考え方なりということをあれこれあれこれ考えますと、まあまあその程度の源泉税率で納めていただくということでいくことが一つの現実的解決ではないのであろうか、これが四十五年度のときに源泉分離、源泉選択の制度が税制上とられた実質的な理由でございます。さもなければ、こういう選択によっていわば累進構造を法律上認めないこととなるような制度が答申されるわけはないわけでありまして、そういう実態からきているけわでございます。
そこらを考えてみますと、今後納税思想なり、貯蓄についてのものの考え方なり、税務署の調査というものについての国民の皆さま方の受ける感触なりというものがだんだん安定してまいろうかと思いますので、そういうもの等の変化とにらみ合わせながら考えていくべきではなかろうか。税のほうの立場からいいましても、そうではなかろうか。貯蓄奨励という見地からいいますと、また別の意味で今後またいろいろの考え方が出てこようかと思いますが、税のほうの立場から申しましても、現行制度が理論上は確かにおかしいのでございますけれども、そればかりではないということをひとつ御理解願いたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/58
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059・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 時間がもう午前中の分はありませんので、証券局のほう、株式保有状況の所得階層別の保有状況を、午後までに簡単なメモでいいですから、資料として出しておいていただきたいと思います。
いまの主税局長の御答弁は、いろいろ現実論、実態論を展開されて説明をされたわけでありますが、税の公平というような立場から見ると、きわめて説得性の乏しい議論であるように思います。非常に利にさといと申しますか、個人事業者、こういうような人たちの場合でも、国民を信頼する立場に立って申告納税制度というものがいま定着して、どんどん申告納税者もふえつつある。こういう状況の中で、ひとりこの利子所得者が申告納税には慣熟しない、こういうようなことで徴税の面に難色があるというようなことでは、きわめて説得性の乏しい議論になるわけであって、そういうものは、行政の姿勢というものをきちんと正して、その方向に誘導をしていけばカバーできないことではないわけでありますから、そういう方向に向かって大胆な施策というものを、税の基本の立場というものを踏まえた上で努力をする必要があるということだけきょうは申し上げまして、午前中の質疑をこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/59
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060・藤井勝志
○藤井委員長代理 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。
午後零時三十一分休憩
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午後二時二十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/60
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061・齋藤邦吉
○齋藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。広瀬秀吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/61
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062・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 午前に引き続きまして質問をいたしますが、貯蓄の奨励の名において利子所得に対する課税の特例、あるいは少額非課税措置が行なわれているわけでありますが、現在、日本全体における利子所得というのは幾らになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/62
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063・高木文雄
○高木(文)政府委員 税務統計の上で把握しております利子所得といいますか、支払い利子額の合計額は四兆七千億でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/63
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064・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 昨日、私、資料要求をいたしまして、支払い利子額の内訳をいただいたわけでありますが、これでは源泉徴収対象分、源泉徴収対象外分、これは公社債、預貯金、合同運用信託の収益の分配、公社債投資信託の収益の分配まで含んでの数字でありますが、三兆八千億という数字が出ておるのでありますが、この四兆七千億との差というのはどういうところにございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/64
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065・高木文雄
○高木(文)政府委員 失礼いたしました。訂正いたします。三兆八千億でよろしいわけです。おっしゃるとおり三兆八千億です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/65
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066・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 いま申されました四兆七千億というのは、どういうものが入っての数字になっておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/66
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067・高木文雄
○高木(文)政府委員 広瀬委員のお手元にお届けいたしました資料の外書きと内書きの関係で、ちょっと思い違いいたしまして、外書きを別に加算しましたが、加算の必要はないので、そこの一兆六千億と約一兆三千億、それに八千九百億を足して、合計欄にあります三兆八千億でよろしいわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/67
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068・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 この源泉徴収の対象になる分が一兆六千億支払い利子があるわけです。源泉徴収をしたほうが得だというものももちろんこの中に入っているし、あるいはまた、ごく少額でも入っているわけでありますが、このうち、たとえば高額所得層というのを五百万なら五百万、あるいは三百万くらいに置いてもいいかと思うのですが、総体的な所得、すなわちこの前所得税の場合にも議論をいたしましたが、二百万円以下で約千七百万人というような数字が出ておるわけですが、それ以上は百四、五十万くらいの人数ということになれば、その辺のところを高額所得者とすれば、おそらく三百万円以上ということになれば百万人くらいのところじゃないかと思うのです。そういうように見ていきまして、大体源泉徴収対象になる利子所得のうち、この所得階層別、こまかいところはわからぬにしても、三百万円以上くらいのところに帰属する支払い利子、利子所得というものと、それ以下の分と区分けをしまして、どのくらいの比率になると推定されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/68
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069・高木文雄
○高木(文)政府委員 あるいは少しお時間をいただいて、いろいろな資料を集めて累計をすれば出るかもしれませんが、現段階ではいろいろな種類の預貯金、公債等、それから同じ預貯金でも各銀行別等につきましてのいろいろ名寄せが全くございませんが、御説明ありました統計のほうから出てまいりませんので、何か別の統計をいろいろ使って推計をすれば何か出るかもしれませんが、いまちょっとどういう方法を使って出るか、すぐにお答えいたしかねます。いずれにいたしましても、少し時間をいただいて研究してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/69
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070・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 証券の関係で、午前中何か資料はないのかという質問をしたわけでありますが、総理府の統計で「年間収入五分位階級別の有価証券の一世帯当たり現在高」という資料が出てきたわけであります。これによりますと、証券保有はすべてがすべて高額所得層だという数字は出ていないわけです。これはもちろん五千六百世帯ばかりの抜き取り調査でありますから、必ずしも大勢を反映しているとは思いませんが、しかし、総貯蓄の中で、第四分位の世帯が有価証券分は一三・五%である。第五分位になりますと、さらにそれが上がって一八・五%というようなことになっておるわけでありますが、また、第三分位ぐらいのところは一一・三%、第二分位は七・五%、奇妙なことに第一分位、一番所得の低いところでは一〇・九%という数字が上がっているわけでありますが、おそらくこれは長年つとめた結果、二十年、三十年というような長期勤続をして、退職金をもらったというようなことで株を買い込んだというようなことで、その後は低い年金所得でいっているというような、そういう階層が案外株を買っているのじゃないかというようなことが、こんなところに出ているのじゃないかという、これは推定でありますが、できるわけであります。しかし、傾向としてはやはり四分位、五分位という高額所得のところにかなり貯蓄の比重というものが有価証券にかかっているということが傾向的にいえるわけでありますが、日本の場合にキャピタルゲインに課税していないたてまえをとっておりますから、こういう資料もきわめて不備である。したがって、証券貯蓄に対する配当というのがどういう層に集中しているかということについて、数字の上でつまびらかにすることがなかなかいまの状態では困難でありますが、傾向として証券局がとらえている中で、総体の証券保有の中で——線を引きましょう、五百万なら五百万、五百万超の所得者が大体何割くらい証券貯蓄のうち保有しているだろうか、こういうことについて、何%くらい、これはたいへん大胆な推定かもしれませんけれども、そういう数字は全く、皆目わかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/70
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071・宮崎知雄
○宮崎説明員 ただいまの御質問のような、所得階層別的といいますか、そういうものを基準にした統計というものはございませんし、いま御質問のように、五百万以上の所得者がどのくらい株を持っているかということもちょっと見当はつけかねる次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/71
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072・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 このようにして、いわゆる配当の場合どの階層が一番メリットを受けるかというようなことが数字的に何ともわからないわけですね。きわめて世間常識的に考えて、高額所得層に多いことだけは間違いないだろう、このことは肯定されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/72
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073・宮崎知雄
○宮崎説明員 傾向としましては、おっしゃいましたように、高額所得者になるほど有価証券に対する貯蓄というものはふえてまいると思いますので、その結果当然配当所得も多くなっていくということは一般的な傾向としては言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/73
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074・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 この委員会でもどうもそういう程度にしかわからない。これらの問題についてやはり証券局自体あるいは大蔵省自体、どういう階層に租税特別措置によって与えられる税制上の優遇というものが帰属するかということも証明のつかないような形になっている。しかも一般的に貯蓄奨励だ、こう言うだけで、貯蓄奨励ということで、特に低額所得層においてもできるだけ貯蓄はしてもらいたい。貯蓄はやはり経済活動における基本的な原資になっていく、そういう構造は私ども承知しているし、またそのことがない限り経済の発展というのはなかなかないんだ、そういう抽象的な一般的な常識的立場においてはわかるわけなんです。したがって、そういう面では少額貯蓄制度というものでいろいろ貯蓄の目的というようなものを、日銀の貯蓄推進部あたりで出しているものによりましても、家を建てたい、あるいは子供の教育をしたい、社会保障が充実していないので病気になったら困る、こういうようなものが非常に多いわけでありますから、そういう意味でこの少額貯蓄制度というようなものについて私どもはそうきびしく言うつもりはないのですけれども、ともかく私たちが関心を持っておる問題は、利子所得の特例措置につきましても、また配当に対する特別措置についても、高額所得層に、高額所得なるがゆえに一そう税制上の優遇、減税を与えるというまことに奇妙きてれつな税体系になっているということについては、どうしてもこれは指摘しておかなければならぬし、しかも先ほども申し上げたように、こういう貯蓄の過度の奨励、そしてそれに対する減税措置というようなことを通じて原資を調達して、高度成長、海外競争力の強化、そういう政策パターンを強めてきたのがいま完全に行き詰まった、こういうことになっている段階においては、もうそろそろその点は考え直したらどうなんだ、こういうことでありまして、五十年までの分が一昨年、四十四年度にこの委員会で通過をしているわけだけれども、まあ五十年分まできまっているんだが、これをそのまま五十年まで二〇%、二五%というような形で続けるということでいいのかどうかということはもう一ぺん考え直してみたらどうだ。きめた法律は、なるほど租税特別措置も税法である以上、法の安定性というものは必要だという答弁もありましたけれども、しかし、安定性だけを強調するがゆえにそういう見え透いた不公平、世間に納得されない不公平というものを残しておくわけにはいかないだろうし、経済のパターンも変わらざるを得ないという状況下においては、かなり思い切って、五十年を待たずにもう少し大胆な斧鉞をこれに加えるというような気持ちにはなれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/74
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075・高木文雄
○高木(文)政府委員 まず最初に一つお断わりしておかなければいけないのでございますが、源泉分離課税につきましては、確かに高額所得者について非常に有利に働くということは御指摘のとおりでございますが、可能な限りそういうふうにならないようにということは配慮されているわけでありまして、配当につきましては、一つの銘柄については五十万円、また株式について株数の五%をこえますと源泉分離は選択できないということになっております。これはどういう趣旨かといえば、一人で一つの会社にたくさんの株を持っておられるということは高額所得者であるということがわかるわけでありますから、そういう場合にそういう方について源泉分離による優遇を与えられるのはおかしい。ただ、いまのでおわかりのように、一銘柄ということになっておりますので、発行会社が変わってきますと、名寄せということが行なわれなければだれがどういうふうに株を持っておられるかわからないものですから、一つの会社であれば、会社が株主名簿等で当然わかるはずでございますので、一人の方がたくさん持っておられるというときには、それはあまり多くの、多額の株を持っておられるという場合には、そういう源泉分離のようなことができないようになっておるわけであります。
預金につきましても、本来ならば何かそういう源泉分離についての一種の頭打ちがあってもしかるべきではないかということは、制度ができるときには十分検討いたしましたが、株式の場合と違いまして株主名簿というような制度がございませんものですから、預金者の名義分散がかなり簡単に行なわれますし、それから一方の銀行と他方の銀行とどちらの銀行に預けましても同じような利回りで回りますので、限度をきめましてもたくさんの銀行に分けて預けられる。株の場合には株ごとに、たとえば配当は同じ割合であるとしましても、そこには企業の将来性ということについて非常に差が出ますから、そう簡単に分散ということはないのですが、預金の場合には分散が行なわれるということになりますので、総額頭打ち制度というのを預金については非常にとりにくいということになったのでございまして、私どもも、先ほど申しましたような理由で、源泉分離という制度が一面いい点があるということでやっておるわけでございますが、そのことによる弊害はできるだけ避けるべく、制度上もそれを考慮した仕組みになっておるということだけ付言させていただきます。
それからなお重ねて、ただいまの御質問の、これを途中で改正してはどうかという御議論なんでございますが、四十五年度の、昨年春の国会で御審議願いまして、そしてことしの一月一日から初めて源泉分離選択の制度がスタートいたしました。若干前広に制度がありませんと動きませんので、昨年の春の国会で通していただきましたけれども、ことしの一月から源泉分離選択の制度が始まりました。それからもう一つは、所得税でございますから、年分単位でいかないとぐあいが悪いということもありまして、四十六年分からということになりました。そして四十六と四十七が御存じのように税率が二〇、四十八年分から五十年分までの三年間の源泉分離の選択税率が二五ということで、現在の租税特別措置法では都合五年分の税率があらかじめきめられているわけでございます。そういうことでいわば現在は、昨年の春の国会での御審議ではございましたが、四十六年分というのはつまり実施初年度に当たるわけでありまして、四十七年はもう一年、その二〇%という率が続く年でございます。そして四十八年から上がっていく、こういうことになっておりますので、そういう意味で、たとえばある制度があって何年かやってきた、それが相当期間経過したから、予定期間中ではあるが、場合によって変更してはどうかということであれば、そういうことも考えられることでございますけれども、この預金の利子ないし配当についての課税の問題は、まさに四十六年分からスタートしたばかりでございますし、階段状に上がっていくような仕組みになっておりますものですから、先ほども申しましたように、いわば制度の安定性ということに非常にウエートを置いて考えざるを得ないのではないかというふうに考えているわけでございまして、せっかくのおことばではございますが、私どもとしては、ちょっとこれは簡単には手をつけにくいというふうに思っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/75
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076・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 いろいろ税制上における技術的な、あるいは事務的なといいますか、そういう点では非常に問題があるだろうと思うけれども、これは高度の政治判断を必要とすることでもあるし、そういう技術的な面、あるいは事務的な困難さというようなもので税のあり方というものを、正しい公平の原則というものを否定してそのままでいいかどうか。たとえば、昭和五十年になって源泉選択が二五%になったところで、たとえば所得税の税率が現在三百二十万で二四%というところなんですね。したがって、この辺のところの人たちがたとえば一銘柄なり二銘柄を持っておって、四十五万ずつ九十万円の利子所得なり配当所得というものをこれに積み重ねる。そういう上積み実効税率ということになると、三〇%ぐらいの税率との開き五%ぐらいは、少なくともその辺のところでも、そういう差が出てくるのではないか。そういうことを考えてみますと、非常にこのメリットが大きいわけだし、そういう点で、上積み実効税率との関係において、十分その不当性、不公平性というものははっきりするわけであります。
先ほども主税局長が答弁されているように、税率の段階を調整をしていい形にしている。この税率調整、税率の姿というものは、やっぱり総合課税というものが完全に行なわれるというか、完全に行ないきれない面もあるにしても、もっと総合課税の原則というものが確立された中で、税率というものがいい姿になっていく、そういうようにしていいはずなんであります。それを抜きにしておって、片方において分離課税というような問題点を残しながら税率だけいじっても、それは、形はなるほど描いてみればなだらかな上昇カーブを描くというようなことになるけれども、総合課税という原則が貫かれない。こういうような高額所得層に非常に大きなメリットの及ぶこの問題について、税率の構造だけをいじってみても、これは非常に問題があるわけであって、そういう点で、これは政務次官、いかがですか、五十年の分まで現在の法律ではきめているわけですね。これは四十五年の税制改正の際、そういうことできめてある。四十六、四十七が二〇%、四十八年から五十年までが二五%にするということになっているけれども、二五%の税率ということになれば、三百万見当のところになってくるということだけれども、いまのようにして源泉分離をすると、総合課税だとすれば三〇%にもあるいは三四%にもなるものが、二四%で済んでしまう。こういう不合理というものはできるだけ早く——先ほどから何回も繰り返しておりますから繰り返しませんけれども、もう経済の状況が変わっているのだ、パターンを変えなければならないのだ、成長から福祉だというようになってきているわけですから、そういう面で、税の公平の原則というものも、この辺で、現在の五十年まできめておるものも、途中であってもこれを直すというぐらいの勇断がなければ、政治の姿勢は根本的に発想を変えるのだという総理大臣や大蔵大臣が言っている形というものは、全く期待することができない、こういうことになろうと思うのですね。政務次官のお考えはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/76
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077・田中六助
○田中(六)政府委員 控除とそれから税率、そういうものをミックスした累進構造という一つの税体系をずっと実施してきているわけでございますが、やはり時代とともにそういうものも変えていかなくちゃいかぬ。広瀬委員のおっしゃるように、時代に即応した何かを考えなくちゃいかぬ段階にきているとは思います。といって、すぐさまその体系をこわして一回ばらばらにしてもう一度ということは、税そのものが一つの長い間の慣習もありますし、一挙にそれを変えるということはなかなか困難じゃないかと思いますが、十分広瀬委員の意向もくみまして、私どもも検討してみたいというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/77
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078・高木文雄
○高木(文)政府委員 ちょっと一言つけ加えさせていただきますが、私どもは、現在の段階で利子配当についての源泉選択の制度を急激に変えるということは、現実の問題として非常にむずかしいと思っておりますが、将来において考えられます場合にも、先ほどちょっと御説明いたしましたように、配当についてあります一種の制限、つまり一銘柄五十万円未満のものに限るとか、あるいは株式数で発行数の五%以上の株式を持っている場合にはだめだとか、そういう制限がありますが、この制限も一種のそういう高額所得者層についての源泉選択制度が乱用されないようにというための歯どめであるわけでございますが、何かこの種のもろもろの歯どめというふうなものが現実的に行なわれるようなことに、たとえばだんだん直していくというような方向が、まず途中の過程においてあり得るのかということは、従来からも検討をしておりますし、今後の問題であろうかと思いますが、なかなか分離課税そのものがいいか悪いかということになってきますと、先ほど来申しておりますような、繰り返しになって恐縮でございますけれども、理論の問題と税の執行の問題とにまたがる問題としてなかなかつらい分野があることも御理解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/78
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079・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 問題が非常にむずかしかろうとも前向きに、やはりそれらは事務的にあるいは技術的に埋めることのできない障害条件ではないはずでありますから、主税局長も先ほどから何回も言うように、あまり消極的にならずに、勇断をもって租税公平の回復のために一そう努力をしていただきたい。
いま、政務次官も検討をしてみるということでありますから、次の質問に移りたいと思いますが、金融機関の貸倒引当金の問題については、これは阿部委員も触れましたけれども、この問題について一体どのように処置されようとしておるのか。この問題についてはもうすでに総理大臣も本会議で答弁をしておる。大蔵大臣もこれは必ずやりますということをことしの予算委員会の席上でもはっきりおっしゃっておるはずなんです。答弁されておるはずなんです。これについていまどういうように——貸倒引当金が都市銀行、信託銀行、地方銀行、相互銀行あるいは信用金庫等についてずっと見てみましても、貸し出し金に対して滞貸金償却額というか、滞り貸しの償却額がきわめて少ない。こういうことで四十五年の上期を見ましても、その償却額を貸し出し金の割合を見まして都市銀行で〇・二%、信託銀行では〇・〇二%、地方銀行では〇・〇九%、相互銀行で〇・四%、信用金庫で〇・九%、こういう状況になっていて、一%にも遠く及ばないというような状況にあるわけであります。このことはやはり今日の引当金の積み立て比率が過大に過ぎる、この分少なくとも金融機関に対してきわめて優遇が行なわれている、こういうことを物語るわけであります。もちろん金融機関が貸し倒れによって倒産をするというような事態などを避けるためには、ある程度余裕を持ったものであるということについては、基本的な立場はわかるのだけれども、あまりにもこれはひど過ぎる。
こういう状況に対して、聞くところによると千分の十五の積み立て金というものを十二ぐらいにというようなことのようでありますが、大蔵当局としてはずっと前、それほど前ではありませんが、昨年あたりは少なくとも現在の積み立て額の半分ぐらいに積み立て率を減らしても一向差しつかえない状況ではないかというようなことに腹を固めたということも伺ったのでありますが、最近では三年がかりで千分の一ずつ減らしていってというようなことで、だいぶ後退をして千分の十二くらいにとどめようかというところまで譲歩しておるということのようでありますが、これはやはり金融機関に対して、貸倒引当金の設定比率というようなものを見て、あまりにも優遇の度が過ぎるのではないか。このことについて一体これをどうされるつもりなのか、この点について当局側の御見解を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/79
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080・高木文雄
○高木(文)政府委員 去る十一月九日にこの大蔵委員会におきまして、大蔵大臣からも積極的な方向で検討いたしますということを申しておりますが、まさにそのことばのとおりでございまして、私どもの手元で作業を進めております。ただ具体的に率を、私どもとしては現在の千分の十五という率を、ただいま御指摘のように、実際に貸し倒れが発生しました率が非常に低いおけでございますから、これを思い切って下げたいと思っておりますけれども、しかし、それは直ちに金融機関の経理に影響してまいります関係もあり、それからもう一つは、貸し倒れというのはそうしょっちゅう起こってはたいへんでありますけれども、他の企業等につきましてはそう高い貸し倒れ率が起こっておるわけではないという関係もございまして、それを具体的に千分の十五からどの程度に下げるかということについては、なおもうしばらく時間をおかしいただいて作業しまして、関係者間で、また関係業界とももちろんある程度の了解、納得づくでないといろいろファクションが起こりますので、そこらの関係もあり、話をつけたいと思いますから、現在の段階では率をいかにするということのお答えだけはごかんべん願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/80
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081・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 本年度の税制改正においては、少なくともいまの積み立て比率を下げる。半分になるかあるいは千分の十になるか、その辺のところはおよその——正確な千分の幾つ幾つにしますということは言えないにしても、明年度の税制改正の際には、必ずこれは積み立て率を減らすということで提案をされることだけは確認しておいてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/81
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082・高木文雄
○高木(文)政府委員 現在一般の企業の積み立て率が千分の十二になっておるわけであります。金融機関については、特に製造業と同じように多少そういう企業の特質ということにかんがみて千分の十五になっているわけでございますから、そこで、他の企業と同じような率まで下げることにするのか、それともその中間にとどめることにするのかということには問題がございますけれども、とにかく現在の千分の十五のままではぐあいが悪い、これを直すということにしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/82
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083・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 あといろいろお伺いしたいことがあるのですけれども、この問題はその程度にいたします。
ところで、問題の輸出振興税制、この問題については現在いろいろ項目があるわけですが、輸出振興税制は廃止される方向で、来年度の税制改正にはそういう方向でやりますという答弁がこの間あったわけでありますが、これは全面的に廃止をされる、こういうことでございますか。それとも割り増し償却であるとか、技術等輸出の場合の所得はどうするとか、あるいは海外市場開拓準備金というようなものがあるわけですが、その中身について廃止の方向あるいは縮減の方向、いろいろあるだろうと思うのですが、全廃の方向でございますか、それとも中身についてこれは縮減をする、こういうような構想についてこの際伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/83
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084・高木文雄
○高木(文)政府委員 輸出振興税制については、かなり問題がむずかしいわけでございます。と申しますのは、ことしの六月に、総合的な経済政策ということで、いわゆる八項目ということが政府の部内で問題になりましたときに、私どもとしてはなるべく平価の問題を、通貨の変動の問題を起こしたくないということがありまして、それまでに何か国内政策としてとるべきものはとるべきではなかろうかということから、一種の輸出ラッシュを避けるという趣旨で、いわば自発的に輸出を押えるという趣旨で、輸出振興税制をやめてはどうかという提案を政府部内でいたしました。関係省あるいは関係団体等の間でもかなり合意が進んでおったわけでございますが、その段階では、輸出割り増し償却については各方面とも大体やめるということについてはやむを得ぬのではないか、しかし技術等海外所得の特別控除であるとか海外市場開拓準備金であるとかにつきましては、なおもうしばらく何らか別の形で続けてみたらどうかという御意見もあり、そこらをきめかねているうちにニクソン声明の問題が起こったわけでございます。
そこで、新しい事態になりましてからの状況でございますが、これは実はまだ多分に流動的でございまして、私どもとしても政府部内でいずれともきめかねておるわけでございます。これはまた、ある意味からいいますと、もとへ戻りまして、輸出割り増し償却をも含めていずれの方向にいくべきか、いろいろと検討中ということでございます。
その理由は、一つにはこのような事態になりましても、やはりあまり輸出ということに異常な力を入れ過ぎる、税制上優遇をしてまで輸出、輸出ということをするのは国際経済上いかがかという考え方をとるか、それともやはりわが国の場合には貿易立国でございますので、現在は変動相場制のもとにございますが、いずれ何らかの形で通貨問題が片づきました後におきましては、やはり輸出には国の政策として相当の力を入れていくべきであろうから、にわかに輸出振興に関する税制を
挙にやめてしまうのもいかがであろうかという見解とが両々相まってあるわけでありまして、私どものほうでは当然税の負担の公平という見地から、また特別措置法は随時改廃されるべきであるという見地から、そろそろやめてはどうか、私どもはそう思っておりますけれども、政策当局その他別の角度から、やはりなおこれを存続すべきだという意見がございました。来年度の予算に関連いたします税制を御審議願いますまでには大至急決着はつけなければならぬにいたしましても、現在の段階ではまだいずれとも私自身見通しを申し上げる段階ではないわけでございます。
私どもといたしましては、あくまでやめる方向でいきたいと思っておりますが、必ずしもそういうふうに取り進めることができるかどうかここでお約束をいたすというわけにはまいらない。したがって、全体はそういう状態でございますので、割り増し償却はどうか、技術等海外所得の特別控除はどうか、海外市場開拓準備金はどうかというふうに分けて、それぞれ区分してお話しするということもできない状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/84
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085・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 輸出振興税制を廃止の方向で検討するということは、昨年、四十五年の税制改正のときに総理大臣も大蔵大臣もここで言明をしたことなんです。ことし若干整理をされた面があるわけですけれども、わが国の輸出が年率何十倍にも伸びるというものまで含めて、きわめてたいへんな勢いで海外市場に進出をしたという輸出競争力は、まさにこのような振興税制のもとに——そればかりではありませんけれども、この振興税制というものがやはりかなり大きな力があったし、そういう面について海外からの非難なども、ガットの工業品貿易委員会、NTB第一作業部会ですか、こういったようなところで割り増し金などについても、これは輸出インセンティブを与えるものであるという断定を下されて非難の的になっているわけであります。こういうようなことを見ましても、こういう新しい段階を迎えて、この種のものはかなり勇断をもって廃止をして、何といってもやはり輸出をしなければならぬ立場にあるわが国の経済の状況というものはわれわれも十分認識した上でも、なおかっこういうものなしにも輸出は依然として将来とも伸びていくだけの力をもう持ってきている、そういう中でこういうものを持っているということは一そう海外からの非難、こういうものもあるがゆえに、あるいはまた通貨調整などにおいても大幅な不当な円の切り上げまで押しつけられるというようなことにもなりかねない面もあるわけでありますから、そういう問題を含めてこれはかなり思い切って廃止の方向を打ち出すべきである、このように考えますが、政務次官、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/85
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086・田中六助
○田中(六)政府委員 これは政府の八項目ですでにそういう方針をきめておりますし、一連の輸出振興税制は廃止の方向にポリシーとしてはあるわけでございます。ただ御承知のように、ニクソン声明などで課徴金を一〇%かけられてみたり、繊維で自主規制しているのにまた無理やりに政府間協定とか、明らかにアメリカは自由貿易主義に反しております。したがって、そういうものに対処するためのテクニックとしてもやはりこちらから、全面的にという一つの基本方針は少しも変わりませんが、多少のテクニックは必要じゃないかと思います。ただ、言えることは、日本はあくまで貿易立国ということは、貿易の拡大均衡へ向かって進まなければなりません、みずから自由貿易のほうに進まなくちゃいけませんので、日本の基本方針としてはやはりこういう保護税制についてはやめていくという方向でいかなければならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/86
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087・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 そのようなことで、来年度またいろいろ名目を変えたりして振興税制を強化するなどというようなことは絶対にないだろうと私は思うけれども、こういう輸出インセンティブを税制面からも与えるというようなことはもうなしにしていただきたい、このことを強く要望して、次の質問に移ります。
昭和四十六年度交際費はどのくらい使用されると推定をされておるか。約一兆円をかなりこえるのじゃないかと思いますが、その見通しについて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/87
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088・高木文雄
○高木(文)政府委員 実績の数字は四十四年度までしかまだその後出ておりませんが、四十四年度は九千百五十五億円でございます。四十三年度が七千七百三十四億円でございますから、この傾向からしますと、四十五年度の実績も、たぶん一兆に届いたかどうかということではないかと思います。四十六年度はますますちょっと見当がつきませんですが、やはり三十九、四十、四十一とあの不況時にもわずかずつはふえておりますから、四十六年度も一兆はこえておるだろうと思われます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/88
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089・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 われわれは、この交際費課税がきわめて過度の優遇を交際費に与えているということで、前々から主張をしてきたわけでありますが、今年度の税制改正で課税割合を六〇%から七〇%に引き上げるということになったわけですけれども、そこで、この基礎控除現行四百万でありますが、これを三百万程度に減らす、こういうようなことを考えてもいいじゃないか、こういうことを同時に主張をしてきたわけでありますが、この点についての主税当局のお考えはいかがでございますか。今回、前回は見送られたわけでありますが、この点考える余地はないのかということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/89
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090・高木文雄
○高木(文)政府委員 交際費につきましては、御指摘のように、非常に問題になっている経費ではございますけれども、一方において企業の種類によってはどうしても必要欠くべからざる面が、業種、業態によっては最小限度のものは必要だということが言えるわけでございますが、どうも四百万円というのは少し高過ぎるのではないかということは、各方面から御意見がございます。私ども多少そういう感じは持っておりますけれども、下のほうの問題というのはどうしても小さい企業にも問題があるという関係もございますので、その辺の実態につきましてもうちょっと念査をしてみないと——異常なる交際費というのは確かに社会的に問題もございますし、そういう意味で、本来経費的なものでございますが、課税をされてしかるべきものと思っておりますけれども、しかし、仕事をやっていく上に必要やむを得ざる部分との分界点をどこに認むべきかということは、やはりよく見詰めておかなければなりません。そういう意味から申しますと、三百万円がいいか四百万円がいいかというあたりはかなり微妙なところでございますので、問題意識は持っておりますが、ここでどうするかということは、まだそれに関するそういう角度からの調査資料等を十分つき合わしておりませんので、ここでお答えするのは避けておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/90
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091・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 一兆円以上といわずに、交際費の損金不算入割合が一番新しい数字でどの程度になっておりますか、これを五年ぐらいずっと年次別に、四十一年が何ぼというようにして、四十六年度の見込みまで示してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/91
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092・高木文雄
○高木(文)政府委員 手持ちの資料は三十九年度からでございますが、三十九年が一〇・〇、四十年が一三・〇、四十一年が一七・九、四十二年が一九・一、四十三年が二一・一、四十四年が二一・六、四十五年度はまだ実績が出ておりませんのでつかんでおりません。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/92
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093・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 損金不算入割合が四十一年の一七・九から四十四年で二一・六、こういうような状況でございますが、四十五、四十六年についてはまだ実績も出てないし、また四十六年度については見込みもはっきりしない、こういうことでありますが、いずれにしてもあとの八割というのは全部損金に算入をされる。一兆円のうち八千億は税金のかからぬ交際費として使える、こういうことでは私どもはまだまだ損金不算入割合というのは少な過ぎる、こういう見解を持つわけでありまして、いま一つの方法として課税割合を六〇%から七〇%にするというような一部の改正は行なわれたけれども、大体いままでこの交際費課税の問題は二年おきあるいは三年おきぐらいに今日まで行なわれてきましたけれども、こういう国全体の経済の大きな変動期にあたって、こういう交際費というものがいろいろ社会的にも指弾を受けるような問題も引き起こしかねない問題だし、あるいは経済道義の面からいってもいろいろ問題のあるものである。もちろん企業にとって、ある程度の交際費が経費として認められることは当然であるけれども、今日当然常識的に許される範囲内ならば、われわれまた国民全体からの非難というのはないわけだけれども、せいぜい二割ちょっとぐらいしか否認されない経費として不算入であるということになっておるわけですが、これではあまりにも少ない、こういうような気がするわけでありますが、その点は主税当局としてはお認めになりますか。もう少し交際費を制限し、交際費課税を強化をしていく、こういうことについては基本的な考えはいかがなんでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/93
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094・高木文雄
○高木(文)政府委員 確かに本来は、税制だけで交際費の規制を誘導していくということは、税制自体としてはあまり実は好ましくないのでございますけれども、しかし、ほかにいい方法がなければやむを得ないことかと思っておるわけでございます。さればこそ、この春の改正で、六〇%という率を七〇に直していただいたわけでございます。そこで、そういう意味から申しますと、それでもなおかつ交際費の増加傾向がとどまらないというのであれば、なお若干の強化の方向で進むということは、基本の方向としてはけっこうであろうかと思っております。
ただ、その場合に、先ほど御指摘がありましたように、最低の、いわば基礎控除的な意味での四百万というような額を直すのか、いわゆる課税割合的な意味での七割というのを直すのか、このあたりのことにつきましては、なおもう少し各種の企業の、先ほど御指摘のありました損金不算入割合などをいろいろと洗ってみて判断をしなければならないものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/94
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095・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 政務次官、同じ質問に対して答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/95
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096・田中六助
○田中(六)政府委員 私、局長と大体同じ意見でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/96
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097・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 どうするのですか、はっきり答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/97
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098・田中六助
○田中(六)政府委員 御承知のように、たびたび言われておりますように、税制改正で本年度六〇%から七〇%に引き上げましたように、やはり方向としてはそういう方向に持っていかざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/98
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099・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 次に質問を移します。
法人税の問題ですが、四十一年度に三五%に税率を引き下げまして、そのあと景気も相当好調になったということで、昨年、四十一年から見ますと二%、三十九年から見ますと三%下げたわけですが、その三%の中で一・七五%ですか、約半分もとに戻した、こういうことで、現在基本税率は三六・七五%ということになっておるわけであります。しかし、今度こういう不況が来たというので、業界筋からはこれをもとの三五%にもう一回戻してもらいたい、こういう強い要請が出ておる、こういうことを私ども承知しておるわけでありますが、その問題について、一体大蔵当局はどのように考えておられるかということをお伺いしたいわけであります。
景気回復のために減税をするという問題の前に、むしろこの点では問題がある。日本の法人税率は、地方税を含めましても、諸外国の法人税率に比較いたしましてなお相当低い水準にある、税調でもそのことをはっきり認め、また指摘をいたしておるところなんです。しかしながら、このドル・ショック以後の不況ということによって財界等ではこれをもとに戻せという主張を強力に展開している。しかし、私たちはこの法人税率は戻すべきではない、また不況段階が終わって好況局面を迎えるならば、むしろ三十九年当時に引き戻していく、さらにそれ以上にも諸外国並みに法人税率は上げてよろしい、それだけの担税力を法人企業は持っておる、こういう立場をとっておるわけなんですけれども、そういう意味では、非常に財源調達の困難な財政上から見れば、そういう状態になっているときに、そういう財界からの圧迫に私どもは屈してはならない。私どもが申し上げまするような方向で、法人税率は徐々に先進諸国並みに引き上げていく、こういう方向が当然であろう、このように考えるわけでありますが、この点についてのお考えをこの際お聞きいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/99
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100・高木文雄
○高木(文)政府委員 法人税率は、二年前に現在のように五%税率を加重するという臨時措置をとっていただいたわけでございます。この五%の臨時加重につきましては、当時から私ども事務のほうの見解といたしましては、まさにただいま広瀬先生の御指摘がありましたように、過去の法人税率と比べましても、また諸外国の法人税率と比べましても、現行の三五という法人税率はやや低いのではないかという認識のもとに立っておったわけでございますが、最終的に決定されます段階におきまして五%の加重税率であり、しかもそれはいわば臨時のものであるということで、いわゆる特別措置法で規定ざれたという経過がございます。特別措置法で規定されたという経過は、ちょうどいまから二年前に、当時たいへん経済情勢がよろしかったということから、いわゆる大法人、中小法人を別にした大法人につきましては、こういう経済状態のもとにおいては担税力がある。よってもって先ほどのような過去の税率とか諸外国との税率とかの関連もあるし、双方にらみ合わせた上でとにかく臨時的に二年間は五%加重をする、こういうことで、政府の最終的な判断としては、そういう意味で臨時措置であり、特例措置であるという判断のもとに御提案申し上げ、それで御承認を得たという経過を経ておるわけでございます。
したがって、打ち明けて申しまして、私どもは当時から税率は諸外国に比べても過去の例に徴しても高くないと思っているわけですから、今後とも三六・七五%であっても決して高過ぎることはないと信じておりますけれども、しかし、一面においてやはり当時の好況ということを頭に置いて、とりあえずの二年間の臨時措置ということで御了承願った向きも各方面にあるわけでございますから、そこらあたりについては、皆さま方の御理解がたいへん違っておるということは否定できない事実でございます。そこで、経済情勢がかように変わってまいりましたので、あらためて現在のような経済情勢のもとにおいて、なお二%近い一・七五という率を引き続き今後も続けていくべきかどうかということは、いろいろな場でひとつ御議論願わなければならぬということでございます。ただ、私どもといたしましては、かねてから各方面から為替差損の問題に関連して、差益については異常差益の特別課税をしたらどうだというような御意見もあります関係もありますし、先ほどから申しておりますように、もともと当時の経済情勢と関係なく二%前後の税率の引き上げはあってしかるべきだと思っておりましたので、自分たちとしては、今後ともこの一・七五という税率はなお引き続き維持したい、そういう方向で臨むべきではないかと私どもは考えておりますけれども、これは広く皆さまの合意を得られるかどうか、非常に問題のあるところだとは思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/100
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101・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 政務次官、この法人税の問題ですね、私どもは先ほど申し上げたような理由で、これは財界の御了承をいただいたのだといういまの主税局長の御答弁なんですけれども、大法人を中心にした財界の意向というもの、あまりにもそれに比重がかかり過ぎている。これはやはり国民全体が当然そうあるべきだという形の中で税制改正が行なわれた、私どもはそういうように思うわけなんです。これは財界の了承が得られたから実施したのだということではあり得ないと思うのです。というのは、税調みずからが、日本の法人税は諸外国と比べて決して重くない、軽いということをちゃんと指摘をしているのです。軽いものならば重くするのが当然であって、それが公平なんであって、そういうような国民的合意の中でやっぱり一・七五%近づけた。旧税率に近づけた。その旧税率自体も、なおかつ諸外国から見て、法人税負担率を比較してみて低いわけなんです。これは歴然たる事実なんです。厳然たる事実なんですよ。そういうものに対して、しかも日本の国際競争力が強過ぎて、いまや世界一強い円になった、世界一強い経済力になったというような状態の中では、法人が、当然負担能力もあるということなんですから、安易に、いまのように御了承をいただいたのだ、あなた方の見方と幾らか違うというような主税局長の答弁は、これはやはりけしからぬと思います。そういう点で、この点では財界の圧力に負けてはならない、そういうように私ども思うのでありますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/101
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102・田中六助
○田中(六)政府委員 税率やあるいは税法の改正、そういうのは一部の者の圧力ではなくて、国会あるいは国民の総意によってきまるものでございますので、局長はそういう発言もあったのですが、もちろん負担能力があるかどうかというものは事務当局としては十分きわめなければいかぬ問題ですから、そういう発言だったと思いますが、いずれにいたしましても、財政需要が来年度は非常に窮迫しておりますので、特に社会資本の充実とか景気の浮揚とか、そういうこともありまして、そういう経済的な環境にございますので、法人税率の一・七五というのは、これはもちろん存続はするでしょうし、それから負担能力があるのは、いまの財界の情勢から見ましても、もちろん十分あるようにわれわれは分析しておりますので、方向としては広瀬委員の言うような方向に持っていくと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/102
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103・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 中小企業庁、ずっとおいでいただいて質問に入れないで申しわけないのだけれども、いま沖繩返還協定特別委員会のほうで強行採決をやられたということであります。私どもも早急に、国対委のメンバーでもありますので、ここで残余の質問は次回に保留をいたしまして、本日はこれでやめたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/103
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104・齋藤邦吉
○齋藤委員長 暫時休憩いたします。
午後三時三十四分休憩
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〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106704629X01119711117/104
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