1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十六年十二月三日(金曜日)
午前十時三十四分開議
出席委員
委員長 松澤 雄藏君
理事 小島 徹三君 理事 田中伊三次君
理事 高橋 英吉君 理事 羽田野忠文君
理事 福永 健司君 理事 沖本 泰幸君
理事 岡沢 完治君
石井 桂君 大竹 太郎君
鍛冶 良作君 千葉 三郎君
永田 亮一君 松本 十郎君
林 孝矩君
出席国務大臣
法 務 大 臣 前尾繁三郎君
出席政府委員
法務大臣官房司
法法制調査部長 貞家 克巳君
法務省入国管理
局長 吉田 健三君
委員外の出席者
最高裁判所事務
総局人事局長 矢口 洪一君
法務委員会調査
室長 松本 卓矣君
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本日の会議に付した案件
裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣提出第一五号)
検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣提出第一六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/0
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001・松澤雄藏
○松澤委員長 これより会議を開きます。
裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を一括議題といたします。
本日、最高裁判所矢口人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/1
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002・松澤雄藏
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
質疑の申し出がありますので、これを許します。羽田野忠文君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/2
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003・羽田野忠文
○羽田野委員 裁判官の報酬等に関する法律それから検察官の俸給等に関する法律の各一部改正案ですが、これは大体内容は同じようなことですから、両方一緒に質問をいたします。一緒に貞家調査部長からお答えをいただきます。
まず、この両法の俸給、報酬ですが、引き上げ率は大体どのくらいになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/3
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004・貞家克巳
○貞家政府委員 今回の両法律案によりまして、裁判官、検察官の報酬、俸給の月額が引き上げられることになるのでございますが、報酬、俸給の月額の引き上げ率は、裁判官につきましては平均七・八六%、検察官につきましては平均八・五九%という数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/4
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005・羽田野忠文
○羽田野委員 これは、今回やはり同様に引き上げられる一般の政府職員の給与引き上げ率と比べて、どういうふうな関係になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/5
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006・貞家克巳
○貞家政府委員 一般職の職員の給与に関する法律の適用を受けます職員につきましても給与改定が行なわれるわけでございますが、それらにつきましては、俸給表全体の改善率が一〇・三六%ということになっております。したがいまして今回の改善率は、本俸をとりますと、裁判官、検察官は若干一般職に比べて下回っているという結果になっております。
その理由を申し上げますと、お手元の資料の三〇ページから三三ページに改定前、改定後の比較表がございますが、これをごらんいただきますとおわかりになりますように、この表の末尾にいきますにつれて引き上げ率が高くなっております。と申しますのは、今回の八月十三日の人事院勧告におきましては、主として中等級以下の職員の給与改善に重点を置いたのでございまして、裁判官、検察官は対応いたします号俸が一般職職員のほうでは比較的上位の者に相当しているということから、結果的にこういうことになったわけでございます。
〔委員長退席、高橋(英)委員長代理着席〕
ちょうど昨年の給与改定の例によりますと、この場合には今回と全く逆でございまして、一般職が一〇・七%というのに対しまして裁判官が一八・三%、検察官が一五・五%というふうに、非常に裁判官、検察官の率が高くなっているのでございます。これは昨年の場合でございますが、こういうように対応する号俸が、一般職のほうにおきましてどういう取り扱いをされているかということから、結果的にそういうことになったわけでございます。
ただ、以上申し上げましたのは本俸についてだけのことでございまして、これ以外にいろいろの手当を受けるわけでございますが、そういった手当につきましては、たとえば裁判官、検察官の初任給調整手当でございますとかあるいは期末、勤勉手当につきまして、いわゆる割り増しというような手当てが講じられておりますので、そういった点を含めますと、裁判官、検察官の給与改定が特に低かったということにはならないのではないか、結果的にはそういうことになるのではないかというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/6
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007・羽田野忠文
○羽田野委員 そうすると、率から見ると非常に違いますね。一般職は一〇%をこえておる、裁判官は七・八六というと、大体二%くらいの違いがありますね。率は違うけれども、今度の場合には下に厚くという趣旨であって、裁判官、検察官は高給を受けている者が多いから、率は低いけれども額においてはそう違わぬと、そういうことなんですか。そこのところがちょっとはっきりしない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/7
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008・貞家克巳
○貞家政府委員 金額自体を比較いたしますとさようでございまして、決して総額が少ないということにはなっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/8
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009・羽田野忠文
○羽田野委員 それから、いまの答弁でちょっと私は疑問に思うのだが、本俸のほうでは率にこういう差があるけれども、裁判官、検察官には初任給調整手当があったり、あるいは期末あるいは勤勉手当、こういうふうなものがある。そういうものを全部包括して考えれば、特に裁判官、検察官が低いということはないんだ、こういうような御説明でしたね。
そこで、なるほど初任給調整手当などというものは、これは裁判官、検察官に特殊なものと考えられるが、期末手当、勤勉手当というのは、裁判官、検察官でなくほかの者も大体出ますね。そういう包括してバランスをとらなければならぬような給与の引き上げというようなのが何かおかしいのじゃないか。本俸なら本俸でバランスをとる、それから勤勉や期末でまたバランスをとるということのほうが合理的じゃないかと思うのだけれども、いまあなたの御説明のような方法のほうがいいのか、その点はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/9
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010・貞家克巳
○貞家政府委員 裁判官、検察官の本俸自体をどう格づけるかという点、非常にむずかしい問題でございまして、むろん他の一般の公務員、特別職、一般職を含めまして、全体とのバランスも考えざるを得ないわけでございます。
そこで、従来から私どもがとっております考え方といたしましては、一般の政府職員につきまして給与の改善が行なわれました場合、そしてその理由が生計費あるいは一般賃金事情の変動というようなものによって、例年行なわれておりますようなベースアップがありました場合には、裁判官につきましては、裁判官の報酬等に関する法律の十条にもその趣旨はございますけれども、現在ある裁判官と対等額を受けている、同じ額を受けている行政職の俸給額の増加割合と同一の割合をもって増加させるというのが最も堅実で、しかも妥当な方策ではないか。もちろん、一般職のほうにつきまして、特殊の事情によりまして給与の改善が行なわれるというような場合には、必ずしもそのとおりにスライドしていくということが適当でない場合もございましょうし、裁判官、検察官自体の給与のあり方につきまして常に合理的な結果を求めなければならないことは当然でございますから、そういった合理化ということを常に念頭に置きつつも、やはり一般のベースアップの際には、他の政府職員の増額にスライドしていくという方法をとっているわけでございまして、これは先年の臨時司法制度調査会の意見におきましても、その方法をとるのが妥当であるというふうに言っているわけでございまして、もちろん手直しは常時いたしますけれども、基本といたしましては、そういう精神にのっとってやっていくのがわれわれの態度でございます。
したがって、御指摘のように、ときによってはやや下がり、ときによってはやや上がるという結果になりますけれども、大きな目で見ますと、これは全体として対等にはなっているというふうに言えるのではないかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/10
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011・羽田野忠文
○羽田野委員 よくわかりました。
それで、ちょっといま説明に出ました裁判官、検察官の初任給調整手当は、ことしから始めたものですね。それで実際にどういうふうにやられておるのか。それからこの初任給調整手当は、まあ大体言うなれば裁判官、検察官の志望者が比較的少ない。司法の統一的な教育制度である司法修習を終わった者の中で、弁護士にいくほうが多くて、裁判官、検察官になる者が少ないというようなことが、いろいろな理由もあろうけれども、その少ない理由の一つが、やはり給与が少ない、経済的な面もあるというようなことも一部加味されてこの手当ができたと記憶しておりますが、この調整手当を現実に実施したことによってどの程度の成果が出てきたか、具体的に何かそれがわかれば説明してほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/11
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012・貞家克巳
○貞家政府委員 初任給調整手当の支給を始めましたのが本年の四月からでございます。そこで、これを支給するようにした実質的な理由は先生御指摘のとおりでございますが、それによってどのような効果があがったかという御質問でございますが、実は本年四月以降でございまして、まだ本年度の司法修習生終了者から裁判官、検察官の志望者が飛躍的に増加したというような現象は見られておりません。
ただ、実施は四月一日でございますけれども、事実上そういったニュース等も伝わりまして、あるいは若干の者が任官を志望するというようなことになったかもしれないと思うのでございますが、結果といたしましては、昨年の数に比べて若干程度増加した。つまり、判事補あるいは検事に任官を志望する者が若干名増加したという状況でございまして、本年度はその程度でございますが、これがはたして効果があるかどうかという点は、おそらく来年度以降ということになると思います。もちろん、任官志望者の減少が給与の面だけというふうに申し上げることはできないかと思いますけれども、この点がやはり相当の効果をあげるのではないかというふうに私どもは期待している次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/12
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013・羽田野忠文
○羽田野委員 それから、これも先ほどあなたの答弁の中に出てきましたが、裁判官、検察官の期末及び勤勉手当が相当上がってくる、そういうことで、総合的なバランスで裁判官、検察官の全体的な給与というものは、他の一般職員より下がることはなくして調整がとれているのだ、こういうことでしたが、今度上がる期末及び勤勉手当の基礎となる額、いわゆる今回増額される額、これはどういうふうな意味で、どの程度の範囲で、どの程度の額増額されるのか、その内容をちょっと説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/13
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014・貞家克巳
○貞家政府委員 今回の人事院勧告におきましては、民間の賃金事情を調査いたしましたわけでございますが、上級の役付職員の賞与におきまして官民の格差が非常に大きいという点を注目いたしまして、一般職の職員につきまして管理監督の地位にある者につきまして、その職責に応じまして、期末手当及び勤勉手当の算定の基礎となります給与の額に俸給月額の二五%以内の額、具体的には人事院規則でその割合をきめるという、そういういわゆる期末、勤勉手当の割り増しの措置を勧告しているのでございますが、それに従いまして、一般職の職員の給与に関する法律、特別職の職員の給与に関する法律につきまして、そういう趣旨の改正が行なわれることになっております。
そこで、具体的には人事院規則できめることになるわけでございますが、本省の課長クラス以上につきまして、具体的な割合はまだきまっておりませんけれども、二〇%あるいは一〇%というような加算が行なわれるということになる予定と聞いております。また、特別職につきましても、その重要な職責の者につきまして二〇%程度の割り増しを行なう——割り増しと申しますのは、算定の基礎となる額に本俸の月額の二〇%あるいは一〇%を加えるという措置でございます。そこで、裁判官、検察官につきましても、こういった一般職員の例に準じまして、最高裁判所の規則あるいは法務大臣が内閣総理大臣と協議して定めます準則によりまして、それと同趣旨の措置をとる予定でございます。
いま考えておりますのは、これは資料の四二ページ以下をごらんいただきますと、これが改正案による給与の月額表でございますが、この四三ページの一番左の欄に、「補2 簡7 検10 副4」とございます。そのクラス以上につきましては二〇%の割り増しを行なう。それから「補3 補4」とございますが、その二つのランクにつきましては一〇%の割り増しを行なう。これは検察官についてでございますが、おそらく裁判所におかれましてもそれと同一の措置をおとりになるものというふうに考えているわけでございますが、一応二〇%、一〇%というものを一律につけまして、次に四四ページ、四五ページをお開きいただきますと、これは「補5 簡10 検13」とございますが、このクラス以下につきましては、初任給調整手当の欄に数字がございますが、司法修習生出身者につきましては、初任給調整手当によってカバーされる。初任給調整手当を受けられなくなった者、つまりある程度の年限に達しました者につきましては、これは一応一般の職員の管理監督の地位にある者と同一視いたしまして、ごく一部が一〇%、その他は二〇%という増額を行なうという予定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/14
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015・羽田野忠文
○羽田野委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/15
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016・高橋英吉
○高橋(英)委員長代理 沖本泰幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/16
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017・沖本泰幸
○沖本委員 きょうは法案の審議でございますが、給与法案につきまして御質問をいたします前に、法務大臣に二、三お伺いしたいわけでございますが、きょうの新聞に、北朝鮮との交流を拡大して、札幌のオリンピックに百人ほどお呼びになり、入国の問題が相当緩和されるのではないかというような希望的な記事が出ておったわけでございます。
その記事に目を通してみますと、「朝鮮民主主義人民共和国との関係を改善するため、対策を検討している」こういう内容で、あるいは先月の国連で中国の代表が、「「国連が朝鮮に関して行なつた非合法的な決議(一九五一年二月一日決議=朝鮮戦争への中国義勇軍の参加を“侵略”とみなし、すべての国に対し中国を援助しないよう要請)は破棄されなければならない」と強調したことからも、北朝鮮との関係改善は日中正常化と一体であるとの分析をしている。外務省筋は、今後中国の働きかけによって朝鮮問題をめぐる国際世論も大きく変化し、来年の国連総会では、韓国および北朝鮮の無条件招請決議が成立する可能性も予想されるとしている。」だから当面、冬季オリンピックを人事交流のチャンスとして、少し大幅に広げていくというような内容が出ております。そういうことで、結局、「北朝鮮からの入国を、原則として選手、役員は希望通り、報道関係者は十人程度、観客は百人程度−と大幅に認める方針」こういうふうに出ておるわけでございます。
国会の中でも、日朝友好促進議員連盟、仮称でございますが、こういうものも発足しております。こういうふうな中で、中国問題と同じように、国会議員の中で北朝鮮の問題を取り上げて、関係を改善し、友好的な関係に早く持っていきたい、こういうふうな動きに現在なっておるわけでございますが、しばしば言われることは、北朝鮮はいままで非常に差別されてきておった。こういうことで、朝鮮民主主義人民共和国の方たち、日本に在留する方々の祖国往来の問題も非常に幅を狭められておる、こういうふうな見方で、現在までいろいろ問題があるわけですけれども、こういうものを含めまして、現在に至った段階、国際情勢、こういうものを大臣が御判断なさって、この新聞に出ているような方向にいま御検討を重ねていらっしゃるのか、あるいは今年ないし来年度においての祖国との往来なりあるいは北朝鮮から再入国の問題なりを、どういうふうな改善をしていかれる御方針であるか、これらの問題に対して大臣の御見解をお伺いしたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/17
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018・前尾繁三郎
○前尾国務大臣 北朝鮮との交流につきましては、従来から、御承知のように未承認国として、韓国との関係その他の事情で非常に厳格に考えてきたことは事実であります。また、世界全体の情勢から考えますと、すでに中共が国連において唯一の政府というふうに変化を来たしておりますが、方向としては北朝鮮も同様な方向にいくのではなかろうかということでありますが、現実においてはまだそこまで至っておりません。
ただ、オリンピックの関係は、日本が主催国としての義務から考えますと、これは極力世界全体の人に来てもらうという意味を持っておりますので、その点については、できるだけわれわれも緩和して考えていきたい。しかし、それ以外の問題とは結びついた問題ではない。ただ、韓国と北朝鮮との関係もかなり雪解けの方向に進むのではなかろうかというふうに考えておりますが、残念ながらまだ現在の段階においては、赤十字でいろいろ交渉して、率直に申しまして、われわれが予想したよりも進行は必ずしもよくないように承知しておるのであります。
したがって私は、最もそのときの情勢に合った行き方をしなければならない。常に前向きで考えていかなければなりませんが、と申しまして、現実に摩擦を生ずるようないろいろな韓国との関係もあります。行き過ぎもある程度やらないようにという考え方でいかなければならぬのであります。そういう意味では、私はその事態に最も適応した処置をやっていきたい、できるだけ前向きでいきたい、これが私の偽らざる率直な考え方で、それに沿っていろいろと検討してもらっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/18
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019・沖本泰幸
○沖本委員 現在開かれているこの沖繩国会の中でも、総理の発言されている朝鮮との関係、台湾との関係、こういう問題がクローズアップされてきておるときでもあるわけです。総理も、衆参の代表質問あるいは各委員会の質問の中でも、こういう問題を改めてもいいと、自分の観測を変えていくような答弁もなさっておるわけです。
〔高橋(英)委員長代理退席、福永(健)委員長代理着席〕
そういう関係にもあるわけでございますし、また、いままでかたくなに敵視政策をとってきた、こういう関係にあるわけですから、そういう問題を解決する一つの糸口というものは、何かの形でなければならないわけです。何にも起きないときに何かを改善していくということは非常にむずかしい問題でもあるわけです。ですから中国が国連に復帰して、そして唯一の政府として世界じゅうで認められた、同時にやはり同じような関係国として北朝鮮も考えていく、こういうふうなものが形として出てこなければならないと私は考えるわけでございます。
そういう観点に立ってみましても、オリンピックが一つの端緒ともなり、そういうところから一つの考えを開いていっていただいて関係を改善していただく、こういうことでなければ関係改善の糸口は出てこない、私はこういうふうに考えておるわけでございます。
そういうことから、われわれとしては、いままで北朝鮮に帰る方々の問題にいたしましても一つも改善されてきておりませんし、あるいは「よど号」の問題に対しても、はっきりとこういう形で、われわれはその好意にこたえたというものもありませんし、どうしても関係を改めていく端緒をどこかでつくっていっていただいて、友好を進めていただくような形に道を開いていただかなければならないと思うわけです。日朝貿易にいたしましても徐々に開けつつある、こういう形にもなってきておるわけですから、そういう関係をオリンピックだけはずして、それ以外のことは従前どおりだ、こういうふうな形だけでは一つも前向きに問題が開いていけるとは考えられないわけです。ですから、まずわれわれが考えておることは、人事交流なりあるいは経済交流、こういう形で開かれていかなければならないと考えるわけですから、もう少し具体的に検討していただいて、この問題を大きな問題としてとらえていただいて、すみやかに国交が保っていけるような、友好がはかられるような方向にお考えいただきたいと思うわけです。次の通常国会あたりに対して何らかの方法をお考えになるおつもりはございませんでしょうか。御検討なさっているような内容はございませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/19
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020・前尾繁三郎
○前尾国務大臣 率直に申しまして、本年も、現在の状況になる前に私は、御承知のように、例年正月に帰しておったのを、最も気候のいいときに、また人数にしましてもかなり緩和してやってきたようなわけでありまして、決してうしろ向きというような考えは持っておりません。ただ行ったり来たりはあんまりよくない、大勢としてずっとだんだんよくしていくということを考えておりますので、きわ立った行き方をすることが逆にまたあと戻りする、そういうようなことになりましては、私はむしろそのほうが非常に心配なわけであります。ただいまお話しの点は私も十分考えておりますので、今後につきましても、常に情勢を分析して誤りのない進展をしていきたい、かように考えております。
〔福永(健)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/20
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021・沖本泰幸
○沖本委員 本来がこの問題ではございませんので、これぐらいで終わりたいと思いますけれども、どうぞひとつこのオリンピックだけでぽっつり切れないで、何らかの形でだんだん広がって、前向きに希望的な継続ができるような窓口をこれから開いていただきたいことをお願いするわけでございます。
それでは、きょうの審議の本題に入らせていただきます。最高裁のほうにお伺いいたします。
速記官の中にしばしば問題があるということで、私も陳情も受けておりますし、そういう関係から、せんだっても共産党の青柳先生がお触れになっていらっしゃったこともございます。そういうことで、非常に目立たないところでひとり御苦労していらっしゃるのではないか、こういうふうに考えまして、少しいろいろとお伺いしてみますと、職業病が盛んに出てきている。特に、むずかしい名前で、頸肩腕症候群とか書痙病、こういう病名だそうですけれども、それがある。それが非常に多いということを伺っておるのですけれども、その起こる原因等の実態について少し御説明いただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/21
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022・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 御承知のように、からだのある個所を非常にひんぱんに動かしますような職業に従事しております者は、いわゆるその職業の特有の病気というものにかかりやすい場合があるということが、近時非常にいろいろの職業が機械化されてまいりましたこととも関連いたしまして、社会的に一般にいわれておるわけでございます。その一番典型的な例が、コンピューターというのが非常に普及いたしましたために、キーパンチャー、キーを打つパンチャー、これはもう絶えず機械的に欧文タイプのキーを打つような形でキーを打っております。そういたしますと、手の指をしょっちゅう使うわけでございまして、そこでその指に関連いたしまして筋が非常に疲労をしてまいりまして、その疲労がとれないで重なっていくということから、痛みを覚えて思うようにキーが打てなくなってくるという、これがいわゆる腱鞘炎というやつでございまして、これは非常に典型的な病気であり、職業病、近代病としていわれておるわけでございます。それからまた、字をしょっちゅう書いておりますような仕事をいたしておりますと、これは力を入れないでもやはり昔の筆と違いますので、どうしても無理がかかると申しますか、そういうことがございまして、いわゆる字を書くとき以外はどうもないのでございますが、字を書こうとすると書けなくなる病気があるわけでございます。
そこで、この速記官でございますが、御承知のように国会ではハンドライティングの速記をなさっておりますが、私どもではキーを打つ速記というのをいたしております。これは機械速記ということで、裁判所だけで採用しておると言うと少し語弊があるかもしれませんが、それでやっておる速記でございます。そこで、いま御説明しましたように、キーパンチャーがかかるような病気、いわゆる腱鞘炎という病気、それから速記をいたしましても、これは符号で速記をするわけでございますので、あとでいわゆる日本語に直さなければいけない。これを反訳と申しておりますが、その反訳をするためには字を書かなければいけないということでございます。そういうことで、キーを打つことによる職業病、それから反訳をするという意味で字を書くことによる職業病というのが、やはり速記官の中にも出てくるわけでございます。
私どもは、速記と申しますのは、やはり裁判記録の正確な録取と申しますか、正確な記録ということでどうしても必要があるわけではございますけれども、そういうことが伴ったのでは速記官の方にもきわめてお気の毒であるというふうにも考えておりまして、その対策につきましてはいろいろと方法を講じておるわけでございますが、ある程度の数のいま御説明いたしましたような職業病というものが出てきておる、これが現在の状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/22
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023・沖本泰幸
○沖本委員 そういたしますと、この職業病というのはほとんどの方がかかられるのか。これはキーパンチャーということになりますと、一般民間会社のキーパンチャーも同じような病気にかかるのじゃないかということが考えられるわけですけれども、それじゃいまいらっしゃる速記官の中で、比率としてどれくらいそういう病気にかかっていらっしゃるか。それから認定されるのは非常にむずかしい、ひまがかかるのだというようなことも聞いておりますけれども、そのひまがかかる理由ですね、どういう認定の経過をたどって認定されていくか、そういう内容についてお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/23
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024・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 相当数の速記官がおるわけでございますが、速記官がそういう症状を訴えました場合には、最近は少し規定が改正になりましたけれども、これまでは役所のほうで、これはそういう仕事に従事したことによって病気になったのではないかということで、職権でと言うと少しかたいことばでございますが、本人の申し立てがあるとかないとかいうことと関係なく役所のほうで取り上げまして、はたして公務によるものかどうか、あるいは本来何かほかの理由で、たまたま症状は似ておるけれども、それは職業とは直接関係ないものであるかどうかといったようなことを、専門的にお医者さん等の鑑定とかいろいろの角度から検討をいたしまして、これは公務ではないだろうか、あるいはこれは本人は公務というふうに言うかもしれないけれども、公務と見るのはどうであろうかといったようなことで判断をいたしておるわけでございます。
最近では、人事院規則も改正になりまして、各職場にそういったことに関します主任者を置きまして、その主任者が常にこういった公務による障害、職業病といったようなものがありはしないかということを積極的によく調べていく。それからまた主任者が取り上げるかどうかということは別にいたしましても、本人がこれはどうも職業病ではないか、職業によってなったのではないかと思うときには、積極的に申し立てていくという方法が採用されることになりました。そういうふうに現在ではこの主任者がよく見ておりまして、職業病にかかったのではないかと思われる者、あるいは本人からどうもおかしいから公務かどうか調べてくれという申し立てのあった者、そういった者につきましてそれぞれ所定のいろいろの角度からの検討をいたして、これは公務によるものだ、あるいは公務とはいえないのではないかといったような区別をして、公務である場合には、国費をもってその治療をいたすというふうな取り扱いをするわけでございます。そういうことでございますので、職業病ということの発生の度合いというものは、大体公務災害補償ということで取り上げられた件数が、職業病の実際発生の件数というものとほぼ近いものになってきておるわけでございます。
そういう前提からいたしまして、速記官の場合に限って申し上げますと、これまで公務災害補償ということで実際取り上げまして審理いたしました事件が、過去全部で四十四件あるわけでございます。そういうことでございますので、割合にしてはどれくらいになりますか、そう多い数字ではないというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/24
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025・沖本泰幸
○沖本委員 その認定の期間が非常に長くかかる。それで実際に発病してそういう症状にかかっていらっしゃる方々が、非常に苦痛を訴えているわけですね。わかったときはその病気であったという認定を受けるわけですけれども、その認定があるまでの期間ずっとその症状で押してきているわけですから、そうすると非常にそういう点について疑問を持ってくる、こういうことになるわけなんです。
そういうことで、まあわれわれが常識で考えられることは、一般社会でこういうふうな職業病にかかったらしいとか、かかるおそれがあるとか、そういうような場合には、ある一定の厚生施設へ入れるなり何らかの回復的な予防手段をとるとかいろいろな保養施設があるわけですね。また、気分転換のために保養地もあればいろいろなところがあってそういうものを防ぐことができる。他面、腕をずいぶん使いますから神経系統のものになってきます。神経系統の病気とかそういう症状というものは、外部からはなかなかわかりにくい。外傷か何かで目で見えればはっきりわかるわけですけれども、お医者さんでも神経痛というのが一番わかりにくいんですね。そうしますと、わからないところにポイントを置いて、それでわかるまではということになると、裁判所ですからはっきりした証拠を見るまでは認定しない、こういうようなことになってくると、御当人はたいへんな問題になってくる。そこで、そういう問題を認定するのに、こういうものがあらわれたときとかあるいはこういうことになったときとか、そういうことによって認定を早めていくとか、あるいはこれはだましているのではないか、こう思っても、勤務時間とか仕事の内容とかそういうものによって大幅に見て、予防的なところでひとつ養生しなさいとかいうようなことも起きてくると思うのです。それがやはり人を使う場合の一番大事な問題だと思うわけですけれども、お伺いしてみるところによりますと、認定の基準が非常にむずかしくて長時間かかる、こういう御事情があるわけなんですけれども、その点はいかがなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/25
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026・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 職員に気持ちよく仕事をしてもらうという観点からの沖本委員の御指摘は、まことにごもっともでございます。私どももそういうふうな観点から、公務であるか公務でないかということは別といたしまして、症状を訴えるような者があります場合には、やはり苦痛なく愉快に仕事ができるようにしてあげなければいけないと日ごろから考えておるわけでございます。それからまた実際問題といたしましても、現地の速記官の仕事ぶりというのは、各配属されております裁判体の主任書記官が十分各人を見ておりまして、いま御指摘のような症状が訴えられますと、実際に仕事に従事する時間を軽減していくといったようなこともやりまして、最終的な公務かどうかといったようなことの判定まで、適宜現地で事務量の負担の軽減といったようなことも十分配慮するようにということは、日ごろからも申しておりますし、また現にある程度やっておることでございます。ほかの病気と違いまして、速記の仕事に従事いたしませんときには、別に日常生活には苦痛がないものでございますから、そういうような措置をとることによって、ある程度認定に至りますまでの間の予備的な療養と申しますか、そういったこともするようにつとめておる段階でございます。
ただ、先生も御指摘のように、症状が外から非常にわかりにくいものでございまして、先ほど御指摘のございました頸肩腕症候群といったようなものになってまいりますと、その症候群というものが一般的に外から非常にとらえにくい病気のようでございまして、私どもも医学的にはあまり詳しいことはわからないのでございますけれども、認定が非常にむずかしいというふうにいわれておるものでございます。そういうことで、かりに御本人から申し立てがございましても、それが公務に基因するかどうかということの判断をするのにはやはりかなりの時間がかかるわけでございます。現に東京地裁などで昭和四十五年の九月ごろ申請のありました事件でも、現在まだ最終判定ができなくておるというものもあるわけで、この点は非常に申しわけなく思っております。しかし、ものによりましては、ことしの四月ごろにそういう申し立てがあったものについて、すでに公務の認定をしておるというものもあるわけでございます。申し立ての際にいろいろな資料が整っております場合と、そうでなくて全く一から認定をやり直す場合といろいろのケースがございます。ある程度の時間がかかるわけでございます。その点につきましては、私どもも、確実であれば、適確であれば幾らおそくてもいいなどとは考えておりませんので、十分早くやるということも今後考慮してやっていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/26
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027・沖本泰幸
○沖本委員 問題は、福利厚生施設であるとか予防的な手段を講じていただきたい。そういう予防的な手段も講じよう、施設もつくってあげよう、こういうふうになっても、一番おっしゃっているのは仕事の過度だ。過度から起きてくるんだ。だれかかわってくれる人がおるなりあるいは交代で休めたり、そういうことになればそういう病気にかかる率も少ないんじゃないか。しかしそうではなくて、人が足りなくて、目一ぱいどころではなくて、いわば人権じゅうりんにひとしい使われ方をしておるということです。書記官もおれば裁判官もいらっしゃる、そういう中にあって速記をいろいろとっていくわけですから、それの反訳に長時間かかってくる。それが一つところで一つだけ持っていれば何でもなくて済むように考えられるわけですけれども、幾つもあっちに回されこっちに回されで、兼任が非常に多いというところから病気にもかかりやすい。そういうしわ寄せが全部そこへやってきている。裁判所の仕事のしわ寄せは全部私たちです、はきだめみたいになっているという御苦情もあったわけです。
そういうことですから、何らかの形で認定を早めてあげるような方法をとらなければなりませんが、一般社会でいろいろ考えられますことは、生活が貧困になってきて転落していく、それで生活保護を受ける、こういう段階になってきますと、生活保護を受ける生活保護基準というものが政府で定められておるけれども、その基準どおりやられて自殺した人がおるわけです。電話を持っておるとか、あるいは冷蔵庫があるとか、テレビがあるとか、庭で少し野菜をつくっているとかいうことで保護費から差し引かれてやっていけなくなる、こういうふうに生活保護というものは、結局しゃくし定木にやったんでは目的を達せられないということが現状ですね。そのためにその衝に当たっている人は、自分の許される範囲内でできるだけ保護を加えていくという角度で見ているわけです。ですからそういう例から引いてきてみましても、病気になった場合にもその基準どおりワクをはめて、それに合った者でなければ認定しないという形でやっていくと、いまおっしゃったようなケースが出てくる、こういうことになるんじゃないか。それは少しうそを言っておるかわからないけれども、先ほど申し上げましたとおり仕事の量が多い、いままで長い間やってきているとか、そういうことでここらで認めてやらなければならない、こういう形で見ていただかないとこういう問題は解決しないんじゃないか、こう考えられるわけです。
聞いてみますと、結局認定する手続は、お医者さんの問題もありますけれども、公務の災害について何らかの関係があると推定できたときには、本人から各地裁の所長に持っていって、それから最高裁へ持ってこられる、そういう経路自体が何らかの壁になってくる。事務的な取り扱いの中におくれていく問題があるんじゃないか。ですからこういうところにも、地裁の所長さんのサイドでちゃんとできるようにしておけば、何も人事局長さんが目を通してきめなければならぬという問題ではないと思うのですね。そういうところに問題点が残っているんじゃないか、こういうふうに私は考えられるわけです。そういう点はぜひとも簡略に改善してあげて、一番人権問題を憲法に従って公平に御裁定になる裁判所で人権侵害になっておったということになると、これはたいへんなことになると思うのです。そういうことにつきましては、認定の時間を早めてあげて、早い手続でそういう問題がわかってくるようにしてもらわなければなりませんし、それからそういうことに対しての補償はどうなっていくのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/27
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028・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 まず最初のお尋ねの、早くやるための認定する側を各地の所長等におろしてはどうだろうかという御指摘でございますが、まことにごもっともでございまして、全国に裁判所が散らばっておりますから、地方の裁判所からということになると、郵送の時間だけでも現にかかるわけでございます。ただ、沖本委員が先ほど御指摘くださいましたように、この職業病というのは、ほかの病気と違いまして非常に新しい病気、近代的な病気でございますので、これをよく見るお医者さんというのがなかなか得られないわけでございます。労働災害の研究所でございますとか労働衛生サービスセンターとか、いろいろのそういった方面での特殊な機関がございますが、これが全部いわば東京に集中しておるというような状況でございますので、私ども、現段階ではやはりできるだけ早く私どもの手元に送ってもらう、途中で時間をかけないでできるだけ早く送ってもらって、それでできるだけ早く認定するというふうにやることのほうが、かえって本人のためになり、具体的にいい結果が得られるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。それにいたしましても、中間で時間がかかりますことは非常に申しわけないことでございますので、なお機会を見まして、所長あたりによくその辺は徹底いたしたいと考えております。
それから、実際問題といたしまして、その病気になってからの手当てを早くやるということだけが実は根本の治療の問題ではございませんで、その前に、やはりかからないようにするということが一番大事なことでございます。速記の本来の使命といたしますものは、やはり逐語的なことばを符号で打って反訳して残すということではございますけれども、反訳してことばに直すという点は、これは何も速記官の方でなければできないというふうにまで考えなくてもいいんじゃないか。速記をとることはこれはまあ速記官にとってもらわなければいけないわけでございますが……。といたしますと、そういった反訳という手間をもう少し合理的にできないだろうかといったようなことを、実は私ども考えておるわけでございます。現に一時間の速記をいたしました場合に、反訳は十倍ぐらいの時間がかかるというのが現状でございます。それを何とかもっと時間を縮められないだろうか。時間を縮めますれば、それだけ書痙といったような、字を書けない病気にかかるという機会も少なくなる、ひいては職業病というものをなくしていくという方向に進めますので、そういうことで、反訳等につきましてコンピューター等を使いまして、何か速記官の労働をやわらかくしていって、しかも速記のいいところは残していくという方法がとれないだろうかといったような、そういった角度からも十分にいま検討しておるというのが現在の状況であるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/28
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029・沖本泰幸
○沖本委員 何らかの補償はと、こうお聞きしたのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/29
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030・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 失礼いたしました。その補償の点でございますが、公務災害ということになりますと、それをなおしてもとにいたしますための一切の費用というものは、公費でもって支出されるわけでございます。また、その間は当然、給与等は通常働いておったのと同様の給与を支給されるということになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/30
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031・沖本泰幸
○沖本委員 その辺もやっぱり考慮の余地があるんではないか、こう考えられるわけです。
いま反訳の時間についておっしゃいましたけれども、私がお伺いした点では、一時間のものが約八時間かかる、こういうふうにおっしゃっておられます。それで、結局そういう仕事について、労働科学研究所では、大体二時間程度の仕事が適当ではないか。ですから、もうこの辺でなってきているわけですね。それが、この間サリドマイドの裁判でレンツ博士が七十二時間証言をやったわけですね。このときには三十一部の方が担当されたそうです。それで三十一部の速記官は一人だけだった。それが全部担当していたということになるわけです。それで民間の速記者を一人お使いになっていた、実態はこういうことだということなんです。そうすると、これはもう何をか言わんやということになるわけです。ですから病気の原因は、御本人が自然発生的にそういうふうに起きたのではなくて、裁判所の側にその原因をお持ちである。こういうことになりますと、これはたいへんなことになってくると思うのですけれども、結局、いま何人ぐらい速記官が各所各部別に、最高裁の管轄の中にいらっしゃるわけなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/31
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032・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 具体的に東京地方裁判所の民事等で申し上げます。実は民事と申しましたのは、私も現に少し前まで裁判をいたしておりましたので、まあ一番自分がよく知っておるということで申し上げるわけでございますが、部に裁判官が三人おるわけでございますが、速記官が二名配属されておるという状況でございました。その後、やはりいろいろな都合で速記官が一名しか配属されていない部もありましたし、全然速記官がいなくて、いわゆる要領筆記だけをしておるという部もございました。それでは不公平ではないかというようなこともございまして、現在では二カ部で三名の速記官が配属されておるというような構成をとっておるようでございます。しかし、それにいたしましても、通常の場合には大体一週二時間半から二時間ぐらいの立ち会いをしておるということが現状でございます。二時間半から二時間の立ち会いと申しますと、その間、入って出てくるまでしょっちゅう手を動かしておるというわけではないわけでございまして、大体その立ち会い時間のうちの六割から八割ぐらいが手を動かしておる時間だということになるわけでございます。したがいまして、二時間半の八割ということになりますと、実際打ちますのは二時間ということになるわけでございます。一週二時間ぐらい速記をやりまして、まあ主任書記官あるいは裁判長のほうでよく見ておりまして、できるだけ過労にならないようにということは、現実には配慮をいたしておるわけでございます。
ただ、ただいま御指摘のああいう事件になりますと、私、正確な報告を得ておりませんので詳細承知いたしませんけれども、どうしてももうちょっとやってくれというようなことにならないとは、これはやはり場合によっては限らないわけでございます。そういう場合には、ある程度やはり速記官もプールをしておきまして、そういったプールから特殊の場合には応援をするといったような体制もとることが必要ではないだろうかというふうに考えます。
今後は、そういった大きな事件を集中的にやるような場合には、それなりの配慮をしなければいけないということは、ただいま御指摘もございましたし、十分痛感されるわけでございます。まあ現地で裁判をいたしております裁判官あるいはその部の主任書記官等といたしましては、速記官の執務の時間がきわめて過労にならないように、場合によりましては、非常に口の早い証人等には、もっとゆっくり言えというようなこともしばしば注意をする等のこまかい配慮はいたしておる。しかし、それにもかかわらず、事件によりましては、場合によっては少し時間のかかることもあるということが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/32
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033・沖本泰幸
○沖本委員 私が伺ったところでは、東京地裁の部別の速記官数で、数からいくと三十三年九月は二十五人だった、四十三年で三十五人だった、こういうことになるんですがね。こういう数字からいきますと、いま局長はその平均した数字をお述べになりましたけれども、そういうものとの比例は合いますでしょうか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/33
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034・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 全体の数ということになりますと、東京地裁の現在の、民事、刑事とこう分かれておりますので、その全体の数を正確にちょっと申し上げかねるわけでございますが、部の数に人数を掛けていただきますと大体出てくる、間違いのないところではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/34
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035・沖本泰幸
○沖本委員 ですから、地方に行きますと、地方の裁判所では二、三人しか速記官がいらっしゃらない裁判所もある。その中でどなたか病気になると、その人の分が全部残っている人にかかってくる。そういうことが原因で裁判が非常におくれる。一方では裁判を早めるようにという最高裁長官のいろいろな訓示や何かもあるわけなんですが、そういうことが原因でおくれている、こういうことも伺っているわけなんです。その点はいかがなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/35
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036・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 実は、この速記官の需要というのが、各裁判所の訴訟記録作成という面からいって非常に合理的な制度でございますので、需要があるわけでございます。ただ、何か録音機を買うといったような問題と違いまして、養成をいたしていかなければいけないというような関係がございますので、なかなか人が充足しにくいという面が現実にはございます。
そのほかに、御承知のように裁判所は全国四十六都道府県の所在地にございますほかに、甲号支部が百近くございます。乙号支部が百七十くらいございます。そういったところで需要がございますと、一々速記官を配置しなければいけないのが道理ではございますけれども、何ぶんにも速記官の主体というのが若い女性でございます。高校を出たて、あるいは出て二、三年というところの女性が主体でございますので、適材を適所に配置するということになりますと、男子の年配の職員を転勤させるというようなぐあいにはまいらない面がございます。あるところは速記官が非常に多いけれども、あるところは非常に少ない、その少ないところでたまたまお産とかなんとかで休まれる、さあかわりをやるとしましても、普通の労務職でございますと賃金で雇うということもできるのでございますが、速記の場合には何しろ技術が要る、しかも裁判所の速記というのは、いわば裁判所だけでやっておる機械速記でございますので、補充が非常に困難だということはございます。そういった面は、今後も何とか打開していかなければいけない。人をふやす、速記官をふやしていくという形と、それからもう一つは、先ほど申し上げておりますような機械を導入する、場合によっては録音機等でやっていくということも考えなければいけないんじゃないかなということも、真剣に考慮せざるを得ないといったような状況もあるわけでございます。
しかし、それにいたしましても、速記官そのものの適正配置ということには、実は非常に頭を悩ましておるのが現状でございまして、職員構成等からいたしまして不十分な点があること、あるところにかたまりあるところに少ないということで、不十分な点があることは私ども十分承知いたしておりますが、なかなか思うにまかせないというのが現状なわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/36
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037・沖本泰幸
○沖本委員 いまおっしゃってるような速記官の仕事だけでなくて、同じ部屋にいらっしゃるわけでしょう。だからその他もろもろの仕事もおっかぶさってきて、雑用的な仕事もやらされている。それから速記がかかってくると、あっちこっちへ兼任みたいにやっていかなければならない、反訳している最中にそういう仕事がかかってまた出ていく、こういうことで実際はたいへんなんだ、こういうことでございます。そういう点もやはり十分調査していただいて、改善をしていただきたいために御質問しているわけですけれども、ひとつその資料としまして、全国の速記官の配置されている配置数、配置場所、そういうものについての詳細な資料をお願いしたいわけです。
それで、聞きますと、全国で速記官の定員は九百三十五、だけれども実際数は六百十しかいないんだ、三百二十五人が不足しているんだ、こういうことを伺っているわけなんですけれども、この点はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/37
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038・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 速記官の配置の問題等、ちょっといまこまかい数字を手元に持ち合わせておりませんので、後刻また先生に御説明にあがるということにさせていただきたいというふうに考えております。
それから人数でございますが、これは現実の問題といたしましては相当数の欠員があるということも事実でございます。これは先ほど来御説明いたしておりますように、養成ということが非常に困難であるということに大部分が基因いたしておるわけでございます。この速記を始めました当初は、実は養成をいたしますのに高校を卒業したばかりの非常に若い方を採って、それを主流として養成を始めたわけでございます。当時はまだ戦後間もない時期でございましたので、非常に成績のいい方がたくさん応募してくれたという状況になっておりました。ところが、だんだんと一般の民間の企業等が、いわゆる高度経済成長を遂げてまいりますと、高校卒の女性、しかも成績のいい女性といったようなのは、いわば引っぱりだこということになりまして、私どものほうには、公務員の俸給ということになりますと、なかなか得がたいというような状況が出てまいりました。かてて加えて、先ほど来繰り返し御説明いたしておりますように、機械で速記をするということで、いまここで速記をなさっておる方も同様だとは思いますけれども、ことばを聞きまして、そのことばを頭の中で符号に訳しまして、その符号を瞬間に打っていく。ゆっくり考えておったんじゃ次のことばが出てまいりますので、瞬間的にことばを聞いて符号に直していく。これはアルファベッドでございますが、アルファベッドの符号に直してキーに打って、その作業を絶えず繰り返していくという状況のものでございます。これは学校の成績がいいとかいうだけでは必ずしもうまくいかない場合がございます。いわゆる適性というものがどうしても必要になってくるわけでございます。で、せっかく、たとえば百人採りましても、まあ一流の若い二十前後の人方を採るわけでございますが、これを採りましても、適性検査をやっていきます上で相当な減耗を生ぜざるを得ないわけでございます。これが一定の基準に達しませんと、現地に配属になりましてもわからなくなってしまう、かえって御本人にも気の毒だというようなことで、ふるいにかけていかなければならない。それで、卒業される方はかなり減ってくるわけでございます。
そうすると、外部から速記官にすぐ養成を始めますと、速記のために入ってきた人で就職の時期も失してしまう。入って六カ月くらいして、あなた適性がないからもう速記はあきらめなさいと言いましても、それはあきらめさせられるほうもかわいそうでございますが、言うほうも非常にお気の毒だ。あきらめさせられれば退所していただくよりほかしようがないわけでございますが、退所しても就職の時期も失して、本来なら一流の企業にいける人がいけないといったようなこともございます。いろいろございまして、これはやっぱり部内から採らなければいけない。部内から採りますと、事務官とか雇いという身分がございますので、部内から採っておいて、そうして適性のない方はまたもとの職場にできるだけ戻してあげる、もっとも、もとの職場はすでに埋まっている場合もございますので、そのままもとの職場に返れるかどうかわからないが、本来裁判所のもとの職場というもののある方を採っていくのがいいのじゃないかということで、現在はそういうふうにいたしておるわけでございます。もとの職場をあけておくというようなことも必要になりますし、場合によってはもとの職場は一日もあけられないので埋めていくというようなこともせざるを得ないことになります。
そういたしますと、やはりその養成期間の間の人たちは、速記の定員でもって確保していくというような形を現実の問題としてはとらざるを得ないということでございます。その養成中の人は、いわゆる速記官の中に入っておりませんので、速記官という観点から見ますと欠員がある程度ございますが、、養成中の人あるいは将来養成するために現に事務の仕事をやっておる、いわば予備軍といったようなものを考えてまいりますと、そう欠員が多いというわけのものでもないわけでございます。それにいたしましても、できるだけたくさんの希望者を得まして、今後充足いたしていきたいということは、日ごろから念願をいたしておるところであるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/38
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039・沖本泰幸
○沖本委員 ただ、いまおっしゃったようなことだけで定数が足らぬということではなくて、ここにこういうふうなものがあるのですがね。いわゆる頸肩腕症候群ということで公務上認定を電話で知らされたその喜びについて、「公災認定がとれたことは非常にうれしいです。しかし、書研では今までも大勢の人たちが同じような状態で退所させられています。その人たちも安心して治療できるように公災申請を出して戦ってほしい。また二度とこのようなことを繰返さないためにも書研の体質を改善してゆかねばなりません。」こういうような要望が出ているわけですけれども、こういう点を考え合わせてみますと、こういう病気になって認定してもらえないし、やる気がなくなって、いやになってやめていくというところにも、人が足りなくなっていく一つの原因が出てくる。そして人が足りないからよけい仕事の量が重なっていく、それから裁判がおくれていくということになりますと、これは全く裁判所の責任ということになってくるように私たちは考えるわけです。
同時に、疑問を持っている一つの向きとしまして、じゃ大蔵省のほうへ予算を御請求なさるときには、やはり九百三十五名で申請なさっていらっしゃるのだろうが、そうしますと、三百二十五人不足しているのは一体どうなっているのだろうかという疑問が出てくるわけなんです。そういうことで、おそらく大蔵省へ九百三十五人申請していらっしゃると、個人的にそれをふところに入れるということはないでしょうけれども、三百二十五人分の給与は一体どの辺へ入ってしまっているのだろうか、どういう形で消えているのだろうかということになる。一人一人が公務員としての認定を受けた、いわゆる俸給の額によっていろいろ資格があるわけで、そうすると、人の名前とかいろいろなものが三百二十五人分はその中に加わっている、じゃそういう人たちに支払いが起きているのか起きていないのか、そんなのはどこかでぐるぐるとなって、何かほかの目的に使われているのだろうかというような疑問が今度出てくるわけですね。そういうものに対して疑問を解いていただくために、ここで人事局長のはっきりしたお答えをいただいておかないといけないということになるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/39
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040・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 俸給予算は、決してそれはよそのほうに使うというようなものではございません。俸給予算としてしか使われていないわけでございます。
俸給予算の現在の仕組みでございますけれども、定数は定数といたしまして、前年度どの程度の俸給予算が使われたか、裁判所のようなところでございますと、実は大部分が俸給予算でございますが、全体的なトータル金額を出しまして、それは現実に使われた金額のトータルでございます。これは一応裁判官は別でございますけれども、裁判官以外の裁判所の職員は、全部みんなトータルされるわけでございます。そうしてそれに、裁判所における過去の定期昇給の昇給原資といったものの割合を掛けるわけでございます。さらに、過去数年ベースアップが続いておりますけれども、ベースアップ金額というふうなものは、先ほども貞家部長から御説明いたしておりましたけれども、今年度は一〇・二何%の平均昇給率、アップ率ということになりますと、その平均アップ率というものを掛けて、そして俸給予算というものができるわけでございます。そういった俸給予算が足りなくなれば、当然これは、給与を支払うということは至上命令でございますので、予備金等からも支出をいただくこともございます。現に補正予算をお組みいただくというようなこともあるわけでございます。
そういうものではございますが、逆に俸給予算が余ったから、これをみんなで分けるということはないわけですけれども、何か別の旅費に使おうとか、あるいは庁費に使おうというようなことは、絶対にできない仕組みになっておるわけでございます。俸給予算というものは、それが職員の俸給に使われております限りは、そして通常の昇給を行ない通常のベースアップがあります限りにおいては、適確に支払われるものではございますが、逆に別のところに持っていくということは、絶対にできないという仕組みになっておるのでございます。その点はひとつ御安心をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/40
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041・沖本泰幸
○沖本委員 それはわからないこともないわけですけれども、すぐに疑問が起きればそういうところに疑問がいくわけですね。九百三十五人定数はあるんだということで、人員としての請求が大蔵省のほうに行っているとしますと、三百二十五人不足している分はそのままの状態になっているじゃないかということになるわけですね。
そうすると、いわゆるいま人員が凍結されていて、そういう関係の中にあって人が三百二十五人不足しているから、その労働分だけ仕事が過重されてくるわけです。そういう分は結局そのままになっていくのか、結局凍結が幾らかの人員増になって、裁判所全体としての人員の割り当てがふえたときにそれが補充されていくのであれば、三百二十五人の不足分はなかなか改善されていかない、こういうふうな疑問も出てくるわけです。そういうことで、一度予算請求のときの仕組みの明細書を資料でいただければ非常にありがたいわけなんですけれども、それをひとつお願いしたい。
同時に、三百二十五人不足しているというのは、総数の九百三十五人中の三百二十五人ですから、ということはたいへんな不足数だということになるわけです。千人おる中で十人不足しておるとか五十人くらい不足しているということであれば、埋め合わせもきくということになるわけですけれども、それが先ほど申し上げましたとおりにまんべんなく全体で不足しているということであれば、またこれも少し角度が違うわけですが、それがどこかにしわ寄せになって、極端な例としてあっちこっちに残っておるということになりますと、一番最初にお話ししましたような職業病にかかっていく原因ができていくということになりますから、働いていらっしゃる速記官の皆さんにしてみれば、われわれが原因ではないのだ、われわれはまじめに与えられた仕事、言われた仕事を一生懸命やっているんだ、ところが余分な速記官以外の仕事もやらされる上に、反訳には時間がかかっていくし人手が足りないし、よけいそういう問題が起きてくるんだということになると、この不足数の問題が全部私たちの肩にしわ寄せが来て、そうして病気に追い込まれて認定も十分裁判所のほうとしてはしてもらえないということになると、一番いやな思いをさせられるのは私たちだ、その原因そのものは裁判所側にあるのに、ということで不満が積もってきますと、これはよけい精神的なものとして仕事の上にかかってくるということになってきます。そういう点はやはり十分お考えなり配慮をしていただいて、早急にこの問題を改善していただかなければいけないんじゃないか、公平に考えてもそういうふうに考えられるわけです。ですから、人権を一番重んじになる裁判所が一番人権じゅうりんだということが結論になって出てきておるわけですから・その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/41
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042・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 まことに恐縮でございますが、決してそういうようなつもりでやっておるわけではないわけでございます。またある程度の欠員ということを申しましたけれども、先ほども御説明申し上げましたように、いわば速記官を養成する過程の、あるいはその養成所に入るための予備軍といったようなところもこれを持っておりませんと、現在の陣容すら維持できないといったようなこともあり得るわけでございます。人件費というものは、元来人数という形で要求するものではなくて、トータルの金額で要求するものだということは、先ほど申し上げたとおりのものであるわけでございます。現に速記官というのは、もともとよその職種のものを組みかえてつくった職種でございます。私ども組みかえがなかなか思うとおりにいかないということで歯がゆさを感じておるわけでございますが、組みかえさえしていけばいい。その組みかえに当たるものが、私が先ほど申し上げました予備軍といったものであるわけでございます。速記官の人員の予算あるいは書記官の予算といったような人件費というものがあるわけでは決してなくて、全部の中から使っておる。しかも予備軍がそれを使っておるのだということで、決してほかのところに使っておるものではないわけでございます。そういうことで、予算要求の仕組みといたしましては、きわめて機械的に計算されましたトータル金額で数字をはじいておる。しかも、それは年々大蔵省に詳細の報告をいたしておる金額でございますので、特段にそういった資料がなくても、大蔵省のほうでももちろんわかって、私どものほうが要求いたします前に、裁判所の昇給率は幾ら、今度のベースアップの率は幾らと掛けていくとこうなりますといって俸給予算はくれるほどのものであるわけでございます。そのようにひとつ、予算要求の仕組みと申しますか技術といったものは、御承知おきをいただきたいわけでございます。
私どもは、速記官が今後も十分に充足されまして、裁判をいたしていく上におきまして速記をしたほうがいいと思われるような事件は、みんなが速記をつけられるように、充足強化をいたしていきたいということは念願いたしております。ただ、そういうことを思うあまり、個々の速記官に現状において過重な負担をかけておるということがあるとすれば、これは非常に相済まないことであるわけでございます。そういうことは、先ほど来個々の例でるる申し上げましたが、現実に速記官を使っていく裁判官あるいは主任書記官という方が、十分にその繁閑を見て過重な負担がかからないように、個々の速記官について調整をしていくということは、これまでもしばしば申してまいりましたし、今後も機会あるごとに強調いたしていきたいと思っております。その結果、場合によりましては、裁判所のほうで速記をつけたほうがいいと思う事件も速記がつけられない、必要に応じては外部速記にたよらざるを得ないというようなことも過渡的には出てまいるかと考えております。しかし、速記官が定員どおりにいっていない、そこにある程度の欠員があるということから、逆に現実に働いておられる速記官に、直ちにその分だけの負担をかけるんだというふうにはおとりいただかないようにひとつ御了解をいただきたい、このように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/42
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043・沖本泰幸
○沖本委員 大体質問は終わったわけでございますが、それにつけましても、いま全体を通じてお話をいたしましたとおりに、職業病に関しまして何らかの補償を十分できるような方法もとっていただきたいし、不足の分を充足していくという分についてもお考えいただきたいわけです。そういうことで一人一人の速記官の方にしわ寄せがいかないように配慮をしておるというお答えではございますけれども、いまのような数字とか外見的な内容を見ますと、当然そういう疑問が出てくるわけですね。ですから、神経系的な病気から起きてくる職業病ですから、そういう点を考えていきますと、そんな精神的な負担も結局はやはり仕事の上に出てくる、こういうことになるわけですから、その点十分御配慮いただきまして、今後早急に改善をはかっていただきたいことをお願いいたしまして、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/43
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044・松澤雄藏
○松澤委員長 次回は、来たる八日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00519711203/44
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