1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十六年十二月十五日(水曜日)
午前十時三十三分開議
出席委員
委員長 松澤 雄藏君
理事 小島 徹三君 理事 田中伊三次君
理事 高橋 英吉君 理事 羽田野忠文君
理事 福永 健司君 理事 畑 和君
理事 沖本 泰幸君 理事 岡沢 完治君
石井 桂君 大竹 太郎君
鍛冶 良作君 島村 一郎君
千葉 三郎君 永田 亮一君
松本 十郎君 村上 勇君
黒田 寿男君 日野 吉夫君
林 孝矩君 青柳 盛雄君
出席国務大臣
法 務 大 臣 前尾繁三郎君
出席政府委員
法務政務次官 村上 達雄君
法務大臣官房司
法法制調査部長 貞塚 克巳君
法務省人権擁護
局長 影山 勇君
公安調査庁長官 川口光太郎君
文部政務次官 渡辺 栄一君
委員外の出席者
法務省刑事局総
務課長 安田 道夫君
文部省初等中等
教育局高等学校
教育課長 西崎 清久君
最高裁判所事務
総局総務局長 長井 澄君
最高裁判所事務
総局人事局長 矢口 洪一君
最高裁判所事務
総局経理局長 大内 恒夫君
最高裁判所事務
総局民事局長 瀬戸 正二君
最高裁判所事務
総局家庭局長 外山 四郎君
法務委員会調査
室長 松本 卓矣君
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委員の異動
十二月十日
辞任 補欠選任
青柳 盛雄君 林 百郎君
同日
辞任 補欠選任
林 百郎君 青柳 盛雄君
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十二月九日
秋田地方法務局羽後出張所の存続に関する陳情
書
(第一四二号)
外国人登録事務費等全額国庫負担に関する陳情
書
(第一四三号)
精神障害者による犯罪の予防対策樹立に関する
陳情書
(第二一七号)
族称記載の戸籍簿書換えに関する陳情書
(第二一八
号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣提出第一五号)
検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣提出第一六号)
人権擁護に関する件
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/0
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001・松澤雄藏
○松澤委員長 これより会議を開きます。
裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
本日、最高裁判所長井総務局長、矢口人事局長、大内経理局長、瀬戸民事局長及び外山家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/1
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002・松澤雄藏
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。畑和君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/2
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003・畑和
○畑委員 私は、簡単に二点について質問をいたします。
最初の問題は、さきの六十三国会で成立しました沖繩の弁護士資格者等に対する本邦の弁護士資格等の付与に関する特別措置法、こういうのがございましたが、そこの第二条第四項によりますと、「選考に合格した者は、その選考に合格したときに、裁判所法第六十七条第一項の規定による司法修習生の修習を終えたものとみなす。」ということになっております。そのため、本土復帰にあたって、沖繩の裁判官それから検察官について、その在職年数の期間の計算、それから号俸の格づけなどをどのように扱うか、これは問題があると考えますけれども、それらの点をひとつ説明していただきたい。沖繩の復帰に伴う関係法令の改廃に関する法律案がいま出ておるが、あれの二十三条、あるいは検察官の場合は二十条等にも関連があります。この辺の関係を、ひとつ裁判所のほうから、続いて検察関係のほうから、法務省のほうから説明していただきたい。簡単でよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/3
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004・貞塚克巳
○貞塚政府委員 まず、制度のあらましについて御説明申し上げます。
御指摘のとおり、昨年成立いたしました沖繩の弁護士資格者等に対する本邦の弁護士資格等の付与に関する特別措置法の規定によりまして、本年三月第一回の選考の合格が発表されまして、現在ただいまのところ、本土の法曹資格を有する者が約二百名いるわけでございます。そのうち本来の本土の資格、つまり、たとえば戦前においてすでに裁判官あるいは検察官の資格を持っておりましたような者が、そのうちわずかに十五名でございまして、あとの百八十数名は、ただいまの特別措置法の規定によりまして、選考に合格したときに、司法修習生の修習を終えたものとみなされるわけでございます。したがいまして、その者は、本年の三月現在において司法修習生の修習を終えたと同一になるわけでございます。
ところで、御承知のとおり、裁判所法あるいは検察庁法の規定によりまして、裁判官、検察官につきましては、いろいろ在職年数が資格要件としてきめられているわけでございまして、たとえば判事補、検察官、弁護士を十年やらなければ、判事に任命される資格を取得しないというような規定があるわけでございます。
そこで、沖繩におきます在職年数をどう取り扱うかという点につきまして、今国会において提出されました沖繩の復帰に伴う関係法令の改廃に関する法律案、これは昨日衆議院で可決されたところでございますが、その二十条、二十三条におきまして、その通算に関する規定を設けているのでありまして、これによりますと、ごく大まかに申しますと、沖繩の弁護士資格を取得した者の在職年数に限って、それから二年を控除して、それを本土の裁判官、検察官、弁護士の在職期間として通算するということでございます。二年を控除いたしましたのは、従来の沖繩の法曹資格の取得につきましては、本土におきますような司法修習機関というものが必ずしもなかったということでございます。その均衡を考慮したわけでございます。しかし、それが原則でございますが、沖繩における在職年数が二年を経過する以前に本邦の司法修習生と同一の修習課程を終える、これは本土に委託修習をしておるわけでございますが、最近はそういたしておるわけでございますが、そういう者についてでございますとか、あるいは本土の弁護士資格をすでに取得している者につきましては、その後の在職年数の全部を通算するということになるわけでございまして、したがって、本土の資格をもともと持っているというような者につきましてはすべてが計算される、それから本土の資格を取得いたしました後の期間というものも全部通算されるということになるわけでございます。そういった例外はございますが、そういった通算の規定を設けまして、不都合が生じないように配慮いたしておるわけでございます。
そこで、そういった者につきまして、給与の格づけとかいろいろな問題が生じてまいりますが、そういった問題につきましては、裁判官につきましては、裁判官の報酬等に関する法律の第三条によりまして、各判事、各判事補及び各簡易裁判所判事の受ける報酬の号等につきましては、最高裁判所が定めることになっておるわけでございまして、それらの方々が本土の復帰に伴いまして本土の裁判官に任命されました場合には、その報酬の号等につきましては、最高裁判所が自主的に決定されるということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/4
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005・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 ただいま貞家部長から御説明ございましたように、私のほうで具体的な号俸をきめるのでございますが、ちょうど本土と全く同じで、いわゆる損をすることのないようにきめていきたい、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/5
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006・畑和
○畑委員 続いてそれでは第二の質問。最高裁の事務総局から調査室を通じていただいた資料で、「本土と沖繩の裁判官・検察官の報酬(俸給、給料)月額」こういった資料がございますが、この資料によって沖繩の裁判官、それから検察官の給与の実態を日本の本土の場合と比較して調べてみますると、初任給が本土に比べて相当高い。そしてその後四、五年の間は本土の場合より同じく高いのですが、反面上のほうは、沖繩の高裁首席判事などは本土の判事の四号より、それから検事長においては本土の検事の六号よりも低い、こういうような実態になっておると思うのですが、その実態を、ひとつさらに詳しく説明してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/6
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007・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 御指摘のとおりのような状態でございまして、もう少し申し上げてみますと、判事補の初任給のところでは沖繩のほうが高いわけでございまして、それは本土に持ってまいりますと、大体判事補になりまして四年から五年くらいのところに当たるわけでございます。そういたしまして、今度は逆に判事の一番高いところは、本土のほうがずっと高くなっておりまして、大体判事補も入れまして、修習終了後十六、七年くらいのところが向こうの一番高いところに当たるというような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/7
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008・畑和
○畑委員 そこで、本土復帰にあたって沖繩の裁判官、検察官、これの給与を本土の裁判官、検察官の給与制度の中にどのようにして移行さしていくかという問題がございます。これは衆議院をきのう通りました特別措置法の六十四条、裁判所職員の特別の手当、それに関連しまた三十二条あるいは五十五条の一項、こういったものとの関連がございますが、これをどういうふうにしてだんだんアジャストしていくか、それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/8
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009・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、特別措置法案の中の六十四条で特別の手当という規定がございます。これは一般の職員につきましての特別の手当を規定いたしました五十五条に対応する規定でございます。一般の職員につきましては、この五十五条から、具体的な運用ということになりますと、人事院規則で定めるということになっておるわけでございます。それに対応いたしまして、六十四条は、「人事院規則」というところを「最高裁判所規則」というふうに読みかえることができるというふうに定めておるわけでございます。
私ども、結論といたしましては、先ほど申し上げましたように、本土の職員と全く同様に扱って、経験年数等遜色のないものとしてこちらに移行していきたいという原則でございますが、先ほども申しました、下に厚く上に薄いといいますか、そういうたてまえになっておりますので、これをこちらに移しますと、判事の上のほうはむしろずっと多く給与をもらうという形になりますが、判事補の下のほうに当たる方々は、現在の沖繩の給与よりも低い給与になってしまうおそれがあるわけでございます。そこで、その差額というものをこの特別の手当という形で支給いたしまして、昇給いたしますればその特別の手当というものを減少していくという形で補うことができるのではないかというふうに考えております。
しかし、一体何と何を比較するのか。本俸と本俸だけなら簡単でございます。いろいろな手当がございます。どの手当とどの手当までひっくるめて比較するのかということになりますと、これは人事院規則等で詳細に定めがなされましたときに、それに対応いたしまして、私どもも同様の立場から、同様にこれとこれを対比してきめていくというふうに定めていきたいというふうに考えておるわけでございます。そういう関係で、まだ中身まで確定はしておりませんけれども、結果において、現在受けておる待遇よりも決して下がることのない扱いをいたしたい、このように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/9
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010・畑和
○畑委員 いままで全然法域も何も違っておるところから日本の本土に帰ってくるわけですから、その辺にそういった技術的な問題もいろいろあろうと思います。ともかく沖繩の裁判官あるいは検察官、それとまた職員、そういった人が、日本に復帰することによって差別がないように、ひとつ十分に配慮していただきたい。
以上で、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/10
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011・松澤雄藏
○松澤委員長 岡沢完治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/11
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012・岡沢完治
○岡沢委員 私は、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案の審議と関連をいたしまして、この機会に主として家庭裁判所の問題につきまして、制度上あるいは待遇等の問題も含めてお尋ねをいたしたいと思います。
家庭裁判所といいますと、一般の地方裁判所あるいは簡易裁判所、高等裁判所に比べまして、何か裁判所でないような印象を、国民も法曹界一般も持っておるのではないか、ことばに言い過ぎがありましたらおわびをいたしますが、ちょっとそういう感じがいたします。しかし、よく考えてみますと、最近の親子の断絶、あるいは新しい相続制度、あるいは国民全般の権利の主張、特に妻の権利の主張等を考えてみたり、老人問題を考えてみたり、また少年事犯に関連いたしましては欠陥教育、性のはんらん等を考えてみました場合に、家庭裁判所が扱う事件の質、量あるいはそれが社会、個々の家庭、大きくは国家に与える影響というのは、私はきわめて重要ではないかという感じがいたしまして、そういう角度から数点について質問をいたしたいと思います。
私は、家庭裁判所を活用する一つの方法として、やはり家庭裁判所の権威を重くするということも、着眼点として無視されておるのではないかと考えます。そういう意味から、実際に裁判の実態を考えてみますと、御承知のとおり家庭裁判所は裁判所法三十一条の三によりまして、家事事件の審判、調停、少年事件につきましては保護事件、成人の少年に関係する特別の刑事事犯をやるわけでございますけれども、いわゆる人事訴訟、離婚、相続等の裁判になりますと、すべて地裁の係属になります。これが一つは私は家庭裁判所の裁判官自身にも、法曹界のわれわれ自身にとっても、何か家裁が地裁に従属している、権威が低いという印象を与える一つの理由になっていないかということを考えるわけでございまして、いわゆる人事訴訟の第一審を現行の地裁から家裁に移すということを、私は検討する必要があろうと思うわけでございますが、最高裁と、あわせまして貞家調査部長の御見解を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/12
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013・外山四郎
○外山最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘いただきましたように、家庭裁判所が国民に密接した裁判所として、非常に重要な機能を営んでおることは申すまでもないことだと思います。家庭裁判所の機能といたしましては、ただいま御発言のありましたように、福祉的な機能を営んでおりますとともに、重要な司法的な機能も営んでおると考えております。そういう意味で、家庭裁判所が裁判所としての権威のあるものであるべきことは、もとより当然だと私どもも考えております。
それに関連いたしまして、ただいま人訴を家庭裁判所に移管してはいかがという御意見の御趣旨であったろうと思います。この点は、私どもの間でもいろいろ検討したことがございますが、これはやはり家庭裁判所の性格に関します非常に重要な問題点を持っておると思うのでございます。家庭裁判所は、その出発点において、通常の裁判所とは異なって、対立抗争の場として裁判所ではない特殊な裁判所として考えていこうという構想であったように思うのでございます。そのような意味からしまして、家庭裁判所が訴訟事件を扱うということにつきましては、家庭裁判所の本質的な性格に関連する問題として、私どもは、今後とも慎重に検討してまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/13
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014・貞塚克巳
○貞塚政府委員 家庭裁判所の権限の問題は、私、必ずしも全般的に所管をいたしておるわけではございません。司法制度に大きな関連を持つ問題としてお答え申し上げるわけでございますが、ただいま最高裁当局から説明がありましたように、家庭裁判所の権限をどうするかということは、この本質、性格に非常に大きな影響を持つ問題、ひいては司法制度全般について非常に大きな問題であると思うわけでございます。したがいまして、私ども、ふだんから司法制度全般につきまして、裁判所の権限、その分配ということにつきましては検討をしているわけでございますが、事柄が事柄でございますだけに、まず運営の衝に当たっておられます最高裁におきまして十分の御検討をお願い申し上げたい。それに協力いたしまして、私どもといたしましても、慎重にこの問題に取り組んで検討を進めたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/14
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015・岡沢完治
○岡沢委員 最高裁の家庭局長、貞家調査部長、ともに非常に慎重論でございます。私も裁判制度の根幹に触れる問題であるということは十分承知しながら、しかし、実際に家庭裁判所の権威を高め、あるいは家庭裁判所の裁判官の誇りを高める意味からも、家裁の場合は調停と審判、それも最後は、訴訟になれば、いずれは地裁に行くというところに、やはり家庭裁判所全体の社会的な評価を低め、そして当事者自身の誇りを失わせている大きな理由が実際にあると私は思います。また、家庭事件の多いのは東京、大阪等大都市でございますが、その大都市のいわゆる地裁の負担というのが非常に多いことは御承知のとおりでございます。結局、離婚にいたしましても、相続にいたしましても、長い間調停をやって、最後は地裁に行ってまた数年争う、そのあとまた高裁、最高裁ということで、実際問題として役に立たないというのが国民の一般の気持ちではないかということを考えました場合、その事件につきましても、調停前置主義から、家庭裁判所で十分調停や審判の対象になるなら、結局は地裁に移って、たくさんの事件をかかえて四苦八苦している地裁が、いわば別の事件のような考え方で非常に長い時間をかけて、実際は、裁判の要請である迅速な裁判という点について、大きな国民の期待を裏切っているというのが現状ではないかということを考えました場合、先ほど貞家部長が答えられましたような、家庭裁判所のおい立ちについての特別性はございますが、しかし、やはり人事の、あるいは少年事件の最後の結論も、家庭裁判所が責任を負うという一つの筋を通すのも、制度として考えてみるべき時期に来ておるのではないかと私は考えるわけでございます。
あわせまして、家庭裁判所の専任所長の充足率、これを最高裁にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/15
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016・外山四郎
○外山最高裁判所長官代理者 ただいま、家庭裁判所は四十九庁ございますが、このうち二十三庁について専任の所長が置かれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/16
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017・岡沢完治
○岡沢委員 いま家庭局長のお答えのとおりでございまして、半分以下しか専任所長が置かれておらない。これは判事さんの人員の問題等もあると思いますけれども、やはり最高裁自身が、家庭裁判所を軽視しておるという指摘を受けてもしかたがないのではないか。また、私はいつも、私の持論でございますけれども、裁判官は、単に法律、良心に基づいて裁判をしていただくだけではなしに、その前提として、大いに社会的な経験を経ていただくということが、裁判の大事な要素ではないか。そういうことを考えますと、判事さんにできるだけ司法行政についても経験をしてもらうという意味からも、私は、家庭裁判所の所長さんというものを専任にしていただいて、そういう意味での幅広い裁判官を養成してもらうということも一案ではないかと思うわけでございますが、重ねて家庭局長の見解を聞きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/17
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018・外山四郎
○外山最高裁判所長官代理者 御趣旨はよく理解できるつもりでおります。家庭裁判所の専任所長をふやすことにつきましては、私どもとしては、毎年その方向で実現をさせつつございまして、今日、二十三庁の実現を見ておるわけでございますし、今後もその方向で検討してまいりたいと思っております。
ただ、兼任所長と申しますと、いかにも片手間のような感じに響きますが、これは、制度から申しますと、兼任ではなくて併任でございまして、どちらの所長でもおありになるということが、制度としては言えるわけでございます。この併任の所長の方々も、家裁の問題については、もちろんでございますが、非常に御関心をお持ちになり、家裁の司法行政について御熱意をお持ちになっておられる方が多数あるのは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/18
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019・岡沢完治
○岡沢委員 この家庭裁判所の専任所長任命の問題と関連いたしまして、これは私の希望意見でございますけれども、家庭の所長は、一般的にも、法曹界の評価として、地裁の所長よりも一つランクが低いのではないか。地裁所長の前提といいますか、前の格づけとして家裁所長になるというような印象はいなめないわけでございます。また、裁判官にいたしましても、われわれの友人にも裁判官がたくさんおりますが、家裁へ流されたとか、あるいは何か支部へ行くのと同じようにランクの低いところへ行く、あるいはからだの弱い者が家裁に多く任命されているというような実態は、私は事実としていなめないと思うのです。しかし、先ほど申しましたように、家庭裁判所が国民生活の中で占める地位を考えました場合、必ずしも地裁と比較して低いとは言い得ない。むしろ、先ほど申しましたいまの社会現象からいたしまして、家庭裁判所が国民生活の安定その他に占める役割りというのは、あらためて見直されなければならないということを考えました場合、社会経験の深い、また、裁判官としても誇り高い人が家庭裁判所の判事になる、あるいは所長になるという道を考えるのは、私は、司法行政上の一つの着眼点でなければならないと思うわけでございます。そういう点からいたしますと、私は、家裁の所長には、できれば家裁判事を長くつとめた人からまず抜てきをするというのも一案ではないかというふうに感じますし、また、家裁、地裁判事の交流等につきましても、いわゆる能力的な差のない、むしろ家裁の重要性ということについて、最高裁御自身も考え直してほしいというふうな感じはいなめないわけでございます。
時間の関係もございますので、次に移ります。同じ家庭裁判所の調査官制度の問題について、これから数点お尋ねいたします。
乙号支部への家庭裁判所調査官の配置はどのようになっておりますか、お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/19
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020・外山四郎
○外山最高裁判所長官代理者 ただいま乙号支部の中には、いわゆる特乙というのが御承知のとおりございまして、ここでは少年事件も管轄しておるわけでございますが、そのような乙号支部におきましては調査官の配置をしてございます。その他の乙号支部につきましては、原則として調査官はおらないのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/20
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021・岡沢完治
○岡沢委員 乙号支部の中の特乙というのは、きわめて数が少ないことは局長自身御承知のとおりでございます。家庭裁判所調査官、これは家事調査官、少年調査官がございますが、この制度は発足当時非常に高く評価され、また国民からも期待されたものでございますが、現在はこの調査官制度というのが、司法部内でもあるいは国民からでも忘れられた存在になろうとしておるんではないかという感じが私はいたします。しかし、実際には家庭裁判所の調査官というのは、その学歴等を見ますと、司法試験の受験者よりも一般に高い。大学において心理学、社会学を専攻した人が多いようでありますし、また、希望に燃えてあるいは責任感に燃えてこの職を選ばれた人が多いわけでございます。しかし、実際には、単に裁判官の補助機関のような任務しか与えられていない。これはおい立ちを考えますと、先ほど家庭局長がお答えになりましたように、家庭裁判所が、対立抗争ではなしに、あるいは事件の大小ではなしに、その事件の背景等を考えて、心理的、社会的な治療方法を考える。その場合に、その調査官の果たす役割りは私はきわめて重要だと思います。また、先ほど来繰り返しておりますような現在の社会事象との対比から見ましても、私は、家裁の特色を生かす意味からも、この調査官制度の活用というのは、きわめて重要な着眼点でなければならないというふうに思うわけであります。いま、経済的にすばらしい成長を遂げました日本でも、むしろ社会的、心理的には病的状態にあるというのが日本の一つの特色かと思います。そういう場合に、家庭の病院として、社会の病院としての家庭裁判所の役割りを考えました場合に、そしてまたその家庭裁判所の特色の中心的な一つの問題として調査官制度があるということを考えました場合に、この調査官制度をどうして生かすか、どうしてその方々に誇りを持って、責任を持って使命に邁進してもらうかということは、きわめて重要だと思うわけであります。
ところが、実際問題として、いまお答えのように、乙号支部にはほとんど配置されていない。国民の立場からいたしましても、もちろん平等なサービスを受ける権利がございます。乙号支部に係属した家事事件、少年事件については、調査官制度の恩恵に浴さないという事実があるわけでございます。こういう点につきまして、今後家庭裁判所調査官の充実についてどのような御用意があるか、定員の問題、予算の問題と結びつけてお答えいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/21
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022・外山四郎
○外山最高裁判所長官代理者 ただいま家庭裁判所及び家庭裁判所調査官制度につきまして、たいへん御理解の深いおことばをいただいたと存じておりますが、調査官の重要性につきましては、私どももこれは従来から少しも変わらぬ評価をしておるわけでございまして、何か調査官が忘れられた存在になっておるのではないかという御指摘がございましたが、私は、決してそのようには考えておりません。調査官が家事事件、少年事件の処理の中で占める比重というもの、役割りというものはきわめて高く、重要なものだと確信しております。調査官の仕事は補助機構であるとしても、その調査官が補助機構として果たす役割りは、ただいまおっしゃいましたように、家庭裁判所の本質的なものに関連する、きわめて高く評価されるべき仕事であろうと考えておるわけでございます。
その点に関連しまして、乙号支部に調査官が配置されていないのは、調査官の評価との関連があるのではないかという御趣旨にも聞こえましたが、私は、その点は決してそういうことではないと思います。乙号支部に調査官が配置されておりませんのは、結局、調査官というものがまだ十分の数がいないということに帰すると思います。確かに仰せのとおり、乙号支部におきましても家事事件を扱っておりますから、いやしくも家事事件を扱う以上は、調査官というものが配置されておるべきだという議論が当然あろうかと思います。ただ、乙号支部の家事事件の状況を見ますと、調査官の一人分の事務量に満たないところがほとんどでございます。そのような意味で、乙号支部に調査官を配置いたしますことは、調査官の使い方としては非常に不経済なことになるわけでございます。そこで、乙号支部の事務量も含めまして調査官を各庁に配置しておりまして、乙号支部でも調査官の活動が必要な場合には、本庁あるいはその他の支部からてん補をするというような形で調査官の活用が行なわれておるのでございます。
調査官の増員につきましては、私どもとしては最も力を入れて、予算の上でも努力をしてまいっているつもりでございますし、年々、十分な数とは必ずしも言えないかもしれませんが、増員の結果を見ておるのでございます。なお、その点につきましては、今後とも努力を続けるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/22
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023・岡沢完治
○岡沢委員 家庭局長は、調査官制度の真髄なり評価について当然のお答えをされましたが、一般のわれわれ法曹界の者も、国民から見ましても、調査官というものは何だろう、その職責についての認識すらもないというのが、私は実情ではないかと思います。私は、調査官の機能というものを高く評価するだけに、ぜひ乙号支部にも配置していただきたいし、特に、私は家庭裁判所が行なっております家事相談の価値といいますか、国民へのサービスというのは、非常に大きな評価をすべきだと思います。私の承知する範囲では年間二十万件、これが家庭紛争の解決に直接間接に非常な貢献をしている。その家事相談の実際は、これは調停委員が当たられる場合もありますし、書記官が当たられる場合もありますが、一番数多く私は調査官が当たっておられると思います。まあ畑委員も青柳委員も弁護士でございまして、弁護士からは、家事相談をあまりやると弁護士法に触れるのではないかという批判も一部にはありますけれども、しかし、法律相談の前の一般国民の家庭の悩みあるいは手続的な面でアドバイスをする家事相談の役割りということを考えましても、先ほど外山局長が、乙号支部では家事事件としまして調査官の一人分に当たる仕事もないからだというお答えがございましたが、家事相談の担当者というような意味を考えました場合に、私は、乙号支部に確実に配置するというだけの価値と必要は、日本の国民の感情からいたしましても、あるいはこれは国民の税金を使うということを考えた上からも、なお十分許される必要な措置ではないか。調査官の増員には努力しているというお答えでございましたが、実際にはその御努力が足りないとはっきり指摘して間違いではないという感じがいたします。
ことに、調査官の実態を見ますと、裁判官の場合でございますと、事件が多いというような場合には自分で期日をきめるわけですから、先に期日を延ばせばいい、これは当事者の犠牲においてですけれども。調査官はそういうわけにはまいりません。裁判官と、補助機関というより分業的な立場にあると私は思いますが、裁判官がきめた期日に間に合わすように調査をしたり、報告をしたりしなければなりません。そういうことを考えますと、調査官の不足あるいは仕事の過重ということについては、もっとあたたかい配慮が必要ではないか。裁判官につきましては、最高裁のいまおそろいの局長自身がほとんどが判事出身であるだけに、自分たちの仲間意識というのが当然あると思います。調査官に対して、それがないと言えばしかられるかもしれませんが、やはりそういう点で、幾らか調査官の存在あるいは処遇あるいは人員の充足等について、裁判官ほど努力がなされていないという見方をするのは、必ずしもわれわれのひが目でないと思うわけでございまして、家裁の調査官の充実あるいはそのPR、あるいはその機能の発揮等について、家裁当局としてあるいは最高裁として、ぜひこの際前向きに検討してもらうべきだと私は思いますが、もし御意見があれば、重ねてこの点についての最高裁の意見を聞きまして、次の質問に移りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/23
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024・外山四郎
○外山最高裁判所長官代理者 ただいま家事相談の点について御指摘がございましたが、御承知のように家事相談は、家庭裁判所ができましてから自然発生的にこのような事務がふえてまいりまして、御指摘のように、非常に多数の家事相談を家庭裁判所が扱っております。そういう面でも、家庭裁判所の調査官の活動する場面があることは、おっしゃるとおりでございます。調査官は、多忙な中にも非常に努力をしてその職責を果たしてくれておると思いますが、調査官の増員またはその質的向上ということにつきましては、私ども、先ほど申しましたように、今後一そうの努力を続けてまいりたいと存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/24
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025・岡沢完治
○岡沢委員 家裁の問題はこれで終わりますから、家裁関係はお帰りいただいてけっこうでございます。
次に、いわゆる特殊損害賠償事件。公害事件等を中心にいたしまして、最近はサリドマイドやスモン等の薬事訴訟、あるいは欠陥車、航空機、船舶等の損害賠償事件、あるいは新しい労働災害事件等が激増していることは、ここで指摘するまでもないと思います。いわゆる四大公害訴訟をはじめといたしまして、私どもの承知している限りでは、公害訴訟だけで三百件近い事件が、現に全国の裁判所に係属をしておる。特殊損害賠償事件等は千件をこえまして、千三、四百件裁判所に係属中と聞いております。まあ、四十五年末に対比いたしまして六〇%の増であるということを考えました場合に、そしてまたこれらの特殊損害賠償事件は、社会的な要請として国民の大きな期待が裁判所に集まっておるということを考えました場合、こういう事件に対する裁判所の対応策というのが、人的に、物的に、あるいは機構的に考えられなければならないと思うわけでございます。先ほど申しました家庭裁判所の調査官の問題も含めまして、場合によりましたら、こういう公害訴訟等の場合に、調査官制度の採用というようなことも、東京、大阪その他高裁管内の大都市裁判所には、当然考えられるべきだと思うわけでございますが、そういう面も含めまして、いわゆる特殊損害賠償事件に対する最高裁の人的、物的、機構的な御用意につきまして、ちょうど予算編成期でもございますし、構想をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/25
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026・瀬戸正二
○瀬戸最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、公害裁判の迅速化につきまして、四つの対策を考えているわけでございます。
その第一は、公害事件の処理につきましては、裁判官に自然科学上の専門的知識が要求されるわけでございます。この知識を補充するために、予算上の措置として次のような施策を講じております。第一は、研究会の開催でございます。これは昭和四十五年度から、東西二ブロックに分けて実施しております。第二は、専門図書の配付でございます。第三は、大学教授等専門家の協力を得る措置。これらを、第一の自然科学上の専門的知識の獲得の方策として実施しているわけでございます。
第二に、公害事件は新しい類型の訴訟であるために、法律上も従来の理論で解決し得ない問題が数多くございます。そこで、これらの問題につきまして、裁判官が相互に研究、協議することが要請されるわけでございますが、この要請にこたえるために、次のような施策を講じております。第一は、中央会同の開催でございまして、これは昭和四十五年三月に第一回を開催いたしまして、本年も引き続き十一月に第二回目を開催いたしました。第二は、協議会の開催でございますが、これは四十四年七月に第一回を開きましたが、本年の九月に第二回目を開き、さらに来年二月に第三回目を開く予定になっております。
第三番目は、公害事件は科学裁判でございますから、裁判事務の処理上各種の器具の整備が要請されるわけでございます。たとえば携帯録音機、八ミリ映写機、振動計、騒音計、照度計、こういった科学的な器具の整備が要請されるわけでございまして、この器具を配付するための予算措置を講じているわけでございます。
第四番目に、公害事件の原告は公害の被害者でありまして、貧困者が多く、その上、公害事件におきましては鑑定等の証拠調べに多額の費用を要するのが普通でございます。そこで、このような原告のため、訴訟救助の制度を活用する必要がございまして、このために必要な予算措置を講じているわけでございます。
以上のような四つの施策のために、必要な金額四千百四十七万五千円が、昭和四十六会計年度において認められております。今後もこのような施策を拡充していく所存でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/26
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027・岡沢完治
○岡沢委員 この問題の質問をもう少し詰めてみたいのですが、きょうは十二時に採決ということで、あと青柳委員もおられますので、次の質問に移ります。
司法修習生が、修習の二年間に勉強をする中身、あるいはその修習態度、あるいは修習期間中に将来の法曹人として受ける教養その他の価値というものは、私は、日本が法治国家であるだけに、非常に与えるところの影響が大きいと思います。そういう点から、司法修習生の問題について若干お尋ねいたします。
修習生関係の年間予算はどれくらいであるか。一人当たりの修習生の国費の支出は大体どれくらいになるか。それから修習生の指導要綱と申しますか、修習生のカリキュラムの作成についての留意点、あるいは修習生の指導目標等について、包括的にお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/27
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028・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
修習生の一人当たり年間必要金額は、大体百万とお考えいただきたいと存じます。で、その百万の中で、修習生の給与として実際に支給いたしておりますものは、七十万前後でございます。したがいまして、その差額というものが、修習生に直接必要な経費的なものに充てられておるということでございます。しかし、これは実際の金額でございますが、修習生が現地等に配属になってまいっておる期間が相当あることは、岡沢委員も御承知のところでございますが、そういった場合には、これは裁判所のそこにおきますいわゆる経常的な経費、裁判所の一般的な経費と込みになってしまいますので、十分そういったものを勘案いたしまして支出されておりますので、実際は、この百万円という金はもっと上回った金額になるのではないかというふうに考えております。修習生は、一期大体五百人余りでございますので、一千名前後の修習生の百万というものをお考えいただきますと、それが年間の修習生に直接必要な経費というふうにお考えいただけるのではないかというふうに思っております。
それから、修習生の指導の問題でございますが、これはたびたびの機会に申し上げておりますように、後輩法曹の養成としてきわめて重要なことでございまして、それぞれ大学等におきまして一応の法律学の知識も修めておりますし、また、相当程度の高い司法試験等にも合格してきてはおりますけれども、まだまだそれは初歩的なものでございます。したがいまして、実務法曹家として役立つためには、まず何と申しましても専門的、技術的な能力の修得ということが第一であることは当然でございます。しかし、これはそれさえできれば満足すべきものであるというものではございませんので、実はその奥に、いわゆる高邁なる人格と幅広い識見というものを備えておる者でなければ、一人前の法曹としてはむしろ欠格であるとも言うべきであるわけでございます。したがいまして、研修所におきます指導また実務修習上におきます指導というものも、いま申しました技術的な面と全く並行して、ある場合にはそれの大前提になるものとして、高邁なる人格の陶冶、法曹たるにふさわしい品性の養成ということに力を入れて、いわばこの二本立てと申しますか、そういった観点から二年間の修習指導を行なっておるというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/28
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029・岡沢完治
○岡沢委員 いま年間一人当たりの国費の支出百万ということですが、たとえば実際の研修所の教官である裁判官、検察官あるいは弁護教官の給与、あるいは研修所自体の運営費用というものは、全く無視された数字だと私は思うのです。私は、むしろここで明らかにしたがったのは、修習生一人当たりに国民の税金はどれだけ使われているということを、トータル的に修習生にも自覚してもらって、国民の期待にこたえるような修習内容の修得に努力してもらうという意味から申し上げたので、先ほどの人事局長の答弁は、全く一人当たりの直接の支出だという感じがいたしました。これはまた別の角度からの御答弁が、もしできるなら明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/29
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030・長井澄
○長井最高裁判所長官代理者 ちょっと資料がこちらにございましたので、概算のところを御説明申し上げます。
司法研修所の昭和四十六年度の概算要求額は十億五千万円でございまして、これを修習生千名で割りますと、一人当たり百万円という金額になるわけでございますけれども、ひとついまの根拠を御了承いただきたいと思います。——失礼いたしました。概算要求ではなく、予算として認められた金額でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/30
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031・岡沢完治
○岡沢委員 しかし、それも司法研修所だけではなしに、御承知のとおり二年間の大半を現地に行くわけでございますので、そのほうの間接的な経費ということを考えますと、かなりばく大な国民の税金が一人の修習生に使われているということをお互いに認識し合って、特に、研修所の指導に当たられる先生方にも、その意味から責任ある指導をしていただき、また、修習生の自覚を求めたいという意味での発言でございました。
この機会にちょっとお尋ねいたしますが、例の阪口元修習生、罷免をされたわけでございますが、当委員会における答弁でも、理論的には再採用は可能である、司法試験に合格していることは明らかでございますから。この見解はいまも変わらないかどうか。また、かりに再採用された場合に、二年間の修習のやり直しも必要としないという解釈が成り立つと思いますけれども、その点の御見解をこの際重ねて明らかにしてもらえればありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/31
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032・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 当委員会で岡沢委員の御質問に対して、法律的な問題としてお答えしたところはいまも変わりはございません。かりに再採用されたとして、修習期間をどのように通算するかという問題は、これはいろいろのケースがございますので一がいにお答えしかねますが、法律的に、通算が不可能であるというものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/32
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033・岡沢完治
○岡沢委員 次の質問に移ります。
最近、東京地裁で、サリドマイド裁判に関連いたしまして西ドイツのレンツ博士を証人にお呼びしたことは、お互い承知しているところだと思います。このレンツ証人の、いわば証人としての出張旅費、日当等の経費の支弁がどのように扱われておるのか、またお差しつかえなければ、御本人の名誉に反しない範囲で、その額、内訳、それから支出主体等を明らかにしてもらえればありがたいと思います。と申しますのは、単に一人の証人という問題ではなしに今後日本の裁判所が扱う事件も、国際的なケースも、日本の国力の発展等を考えますと少なくないと思いますし、また、レンツ証人が果たされた役割りは、単に当該事件への影響だけではなしに、国民の裁判への関心、また日本の裁判制度そのものへの、ある意味での貢献等も無視できないと思います。その意味から、このレンツ証人に関連した経費の面を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/33
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034・瀬戸正二
○瀬戸最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
レンツ証人尋問に要した費用の詳細は、次のとおりであります。
第一は、往復航空賃でございますが、これは四十八万九千二百円、鉄道賃百八十円、日当三万八千三百円、宿泊料六万四千八百円、以上合計五十九万二千四百八十円。滞在日数は二十五日でございます。で、原告らに対しまして訴訟救助がされておりますので、右費用は裁判費の項のうち証人等旅費の目から支出され、本人には現金、日本円で支給されております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/34
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035・岡沢完治
○岡沢委員 次の質問に移ります。
私は本職が弁護士でございまして、ときどき裁判所へ参りますので、第一線の裁判官から聞いた話でございますが、その裁判所の中身、どこだと言われると、それは申し上げないほうがいいと思うのでございますが、ある裁判所へ参りましたら、友人が支部長をしておりまして、庁舎が新築された、それはありがたいけれども、調度品の予算が全くついていないと、まあ特別の理由があったのかもしれませんが、非常に支部長として悩んでおりました。裁判所は他の行政官庁と違って、寄付等はもちろん性質上絶対避けねばなりませんし、マスコミ等の批判もきわめてきびしいことは当然でございます。また、ある意味では裁判所の独立あるいは権威というようなことを考えますと、ある程度調度品につきましては、間に合わせのものでは好ましくないという事情もあろうかと思います。予算関係でいろいろ御苦労いただいておることはよくわかりますけれども、やはり日本が法治国家であり、いつも申し上げます法の優位ということを考えました場合、裁判所の経費はこういう面ではけちるべきではないという感じがするわけでございまして、この裁判所新改増築に関連して、調度品の予算等の手当てについてどういう配慮がなされておるか、この際明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/35
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036・大内恒夫
○大内最高裁判所長官代理者 裁判所の庁舎の新築あるいは増築の際に、それにふさわしい備品を整備しなければならないという点につきましては、岡沢委員の仰せのとおりでございまして、私ども全くそのとおりに考えます。
実際の運用といたしましては、新築あるいは増築がかなり前から予想されますので、各裁判所といろいろ相談をしまして、その手当てにつきましていろいろ準備を進めておるわけでございます。ただ、本年度の特殊な事情でございますけれども、本年度は補正予算によりまして、昭和四十七年度に完成すべき庁舎を一部繰り上げて本年度に完成するといったようなことが若干の庁ございます。そういった庁につきましては予定が繰り上がったわけでございますので、そういう手当てに準備が不足と申しますか、そういった事態を生ずるところも若干ございまして、おそらくただいま御質問の庁も、あるいはその中の一つではあるまいかとも推測をいたしますけれども、いずれにいたしましてもそういった面をよく含めまして、ただいまお話がございましたような予算の点につきましても、万全の用意をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/36
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037・岡沢完治
○岡沢委員 いつもこの委員会では、裁判所の予算要求に関する限りは、与野党反対は一人もないわけでございまして、自民党から共産党まで、むしろ予算をとれというのがわれわれの姿勢でございますので、これはまた国民の声だと聞いてもらってもいいと思います。先ほどちょっと申しましたように、裁判官がただでさえ忙しいのに、あるいは裁判のおくれ等が指摘されているときに、こういう裁判以外のことで裁判官が気をつかうということのために、裁判の遅延があっては私は好ましいことではないと思う。その意味からも、予算の獲得についてはぜひ御努力をいただきたい。法務大臣がおられますけれども、一般的に裁判所は大臣を持たない。そのために、どうしても予算がけちられがちだというふうに言われておりますので、その辺、国会のバックアップもあるということで、ぜひこれは国民のために、あるいはまた迅速な裁判のためにも、この予算獲得に御努力いただきたいと思います。
別の質問でございますが、裁判官が幅の広い識見を要請されるということは、先ほど人事局長からも御答弁がございました。それと関連いたしまして、レンツ証人とも結びつきますけれども、やはり裁判官が外国の知識を得る、あるいは外国に行った経験を持つということは、これも大事な国民的な要請ではないかと思うわけでございまして、裁判官の留学制度あるいは裁判官が外国を視察をする機会についてどういう配慮がなされておるか、現在の実例、戦前、戦後、あるいは外国の例等ももしございましたら、比較してお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/37
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038・長井澄
○長井最高裁判所長官代理者 裁判官の海外留学に関しましては、まず予算の面から申し上げますと、昭和四十六年度の海外出張の予算といたしましては、外国旅費として留学関係が三百六十万円、在外研究、これは裁判官を現実に派遣して、司法制度に関する研究をしてもらうものでございますが、及び国際会議、この二つを合わせまして九百万円、合計で千二百六十万円ということになっております。(「少ないな、けたが違うじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)
海外派遣の現状でございますけれども、外国留学は、毎年数名ずつの裁判官が欧米の大学に留学しております。在外研究につきましては、やはり数名の裁判官が数カ国に派遣され、わが国の司法制度の当面する問題をテーマに外国の施策、運用の実際を見聞し、研究し、成果は貴重な研究報告として提出されて活用いたしております。国際会議の出席は、司法の分野でも国際的協力を必要とする問題が増加いたしまして、国際会議の数も相当数にのぼっておりますので、会議の開催も定例化する傾向にございます。国際会議の構成員としてわが国の占める地位もその比重において増しておりますので、運営に関与を求められる機会も多くなってまいりました。それで、年に三回ないし四回の国際会議に代表として出席いたしておりますが、これは先輩の裁判官が裁判所を代表して出席するという形になっております。ただ、何ぶんにも司法は国内の問題でございまして、国際関係として行政面で登場する機会が非常に少ない現状でございますので、この点は、来年度の予算の要求におきましても努力をいたしまして拡充したいと思いますので、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/38
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039・岡沢完治
○岡沢委員 いまお聞きのとおり、不規則発言もあげていまの予算は一けた少ないんじゃないかという声もございました。私の隣におられます特命全権大使の経験を持つ福永さんも、国際的な経験が裁判所にも必要であるという意味の御発言もしておられました。私は、裁判官に広い視野を持っていただくということは国民のためでもあるということを考えまして、また外国のいろいろ会議等の出席は、いまお答えもございましたが、大体先輩の裁判官、退官まぎわの方が慰労的に行かれる場合が多いわけでありまして、これでは意味がないわけであります。若い優秀な前途のある裁判官に、留学の機会あるいは外国視察の機会を与えるということは、国民のために必要であるという観点から、ことばでなしに、予算面であるいは人的な面で、ぜひ実行されることをお願いをいたしたいと思います。
最後に、沖繩の裁判官と内地の裁判官の人事交流については、私は沖繩と内地の一体化等考えました場合、きわめて重要な課題でもあると考えます。しかし、実際は給与あるいは機構の問題、子弟の教育の問題、むずかしい問題があろうと思いますけれども、この辺についてどのような配慮がなされておるかお尋ねして、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/39
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040・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 非常に重要な問題でございますが、御指摘ございましたようないろいろな困難な問題も内在しておるわけでございます。しかし私どもは、沖繩がこれまで置かれてきた地位、またそこで裁判官をなさっておった方々の御苦労ということを考えてみますと、やはりこれは本土と全く一体をなして適正な交流人事というものが行なわれるべきものであるというふうに考えておるわけでございます。
ただ、あくまで、沖繩におられる現在の裁判官の方の意に反するというようこなとをやりますれば、これは非常にお気の毒でございますので、十分に私どもの真意もお伝えし、また現地の裁判官の御意向も伺った上で、できるだけ広範囲な交流といったようなことを、今後いたしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/40
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041・岡沢完治
○岡沢委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/41
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042・松澤雄藏
○松澤委員長 青柳盛雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/42
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043・青柳盛雄
○青柳委員 時間がないと最初から言われるので、三点ほどお尋ねしようと思ったのですが、一点だけに限ります。
それは、少し旧聞になりますけれども、十月の中旬に広島の公安関係の方々が、土曜日の午前中からゴルフをやりに出かけたということが、朝日新聞で暴露されているわけであります。その内容は、時間がありませんから簡単にいたしますけれども、要するに朝日新聞の調査したところでは、八年ほど前から広島の治安関係の幹部の人たちによって構成されているゴルフの会だそうでございまして、たとえばその会に出席した方は、広島高等裁判所長官の足立進氏、あるいは広島地裁の所長の宮田信夫氏、また広島家裁の所長の池田正亮氏、それから民事二部長の加藤宏氏、それから広島地検の検事正の平井卓二氏は、当日所用のために欠席したけれども、メンバーであることは間違いない。それから広島県警の本部長の浜田達治氏、広島公安調査局長の西村伸一氏、自衛隊第十三師団長の和田昇治氏、広島鉄道管理局総務部長の池田浩規という方、こういう方々が、その日は十三名ほど、十時半ごろから役所の車を利用いたしまして、いつも行っているところの広島県賀茂郡の西条町のゴルフ場へ出かけたということなんであります。ときたまたま、司法の反動化ということが問題にされ、あるいは国鉄のマル生運動というようなことが言われ、また公安調査庁が労組や民主団体に対していろいろと偵察をやっておるというようなことが問題になったのでありまして、このために、広島県内の労働組合をはじめといたしまして大ぜいの人たちが、代表約三十人、それぞれ関係方面に抗議をしたようでございます。
これに対しまして、広島高裁の足立長官は、「官庁の代表者としてこういう交際はいいのではないか。いなかへ来るとあるんです。公安関係と意思の疎通をはかるため、と了解している。着任した時、以前からの慣例だと勧誘されてはいった。長官は直接、裁判しないし、ゆ着しているということは全くない。おつき合いですよ。」と言っておられるし、また加藤宏という地裁の判事は、たまたま原爆被害者が国を相手に訴訟を起こしている、原爆医療法に基づく認定申請却下処分の取り消し訴訟の担当裁判長だそうでありますが、この加藤氏は、「親ぼくだけの会だし、順次、人も入替っている。金も各自で出しあっているし、問題にするほうがおかしい。」こういう趣旨の開き直りをしているわけでございます。また、西村伸一公安調査局長は、新聞の報道によりますと、情報を集めるためにはどこへでも行くのだ、しかし、治安連絡会議というものがあって公式にやっておるから、別にこの種のグループは必要だとは思っていないけれども、どこの地方でもやっていることだからかまわない。しかし、裁判官が入っておるとは知らなかった。しまいに、おわびする以外にないと、これだけがおわびするようなことを言っておるわけでありますが、いずれにいたしましても、その名も「こうあん会」というのでありまして、公安関係の幹部で八年も続いてきたものだそうでございます。
これについて、まず、かねがね公平らしさというものは大事だということを強調しておる最高裁当局としては、どのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/43
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044・矢口洪一
○矢口最高裁判所長官代理者 御指摘のような集まりが昭和三十九年ごろに設立されまして、通称そのような「こうあん会」というような名称でやってきたようでございます。しかし、別に正式なそういった名称があるわけではございませんで、実態は、広島にございます国の出先の機関の長またはこれに準ずる人たちが、親睦の意味を兼ねて集まってゴルフをやっておるということでございます。確かに、スタートをいたします時間をとる等の関係で一つの会ということでやっておりますが、各人それぞれ費用を支払い、また、ゴルフ場で飲み食いいたしますような費用も、全部自弁でやっておるというような状況のようでございます。
ただ問題は、青柳委員も御指摘になりましたように、土曜日の午前中から出かけていったという、これはまことに残念なことでございます。裁判官といたしましても、決して年次休暇がないわけではございません。その辺はきちんとけじめをつけて、休むなら休むということで行くということが、やはり大事なことではなかろうかと考えております。
この問題が起こりまして、現地も非常に恐縮いたしまして、直ちにしさいを報告いたしてまいりますとともに、そのような誤解を今後も続けていくということは好ましくないという見地から、先ほど御指摘のメンバーは、この会から一応脱会するという措置をとったようでございます。私どもも、十分今後自戒してやっていただくように御連絡をいたしたというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/44
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045・青柳盛雄
○青柳委員 公安調査庁にもお尋ねしたいのでありますが、この会に入っていったのは、情報を集めるためにはどこにでも行くんだと言う。しかし、幹部でございますからどの程度の情報が得られるか。
〔委員長退席、高橋(英)委員長代理着席〕
正規な治安連絡会議というものがあるんだそうでございますけれども、このような会はセミオフィシャルというのが新聞の評価でありまして、単なる個人的なおつき合い、いなかだから、やることがないから、親睦的な意味だけでやっているんだという意味のものでもなさそうに評価されているわけであります。現在でも引き続きこれはやっておられるかどうか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/45
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046・川口光太郎
○川口政府委員 御指摘の広島の「こうあん会」につきましては、ただいま最高裁の人事局長から御答弁があったとおりに私たちも聞いております。会の趣旨は、個人的な親睦をはかる目的で当時、昭和三十九年ごろでございますか、できたものだというように聞いております。それが純然たる私的なものであるかどうかということにつきましては、先生御指摘のとおり、そういう私的な交わりで親善をはかって、公務上の連絡もよくなるという副次的な意図ももちろんあるのではないかと思います。
ほかの地方にあるのかどうかを調べてみましたら、東京、大阪等にはございません。それ以外の地方の都市、札幌とか仙台あるいは福岡等にはあるようでございます。その詳しいことは、メンバーその他よくわかりませんが、大体あるというように聞いております。
〔高橋(英)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/46
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047・青柳盛雄
○青柳委員 裁判所のほうは、先ほど私が読み上げたようなメンバーの方々は、どうもこういうことは、誤解を受けるというのでおやめになったといういまの答弁でございましたが、公安調査庁の場合、広島公安調査局長の西村さんその他の方は依然として、この「こうあん会」と称する週末ゴルフクラブみたいなものですね、こういうのに参加していらっしゃるかどうかという点、それからその費用は、公のほうから交際費か何かの形で支弁しているのかどうかという点ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/47
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048・川口光太郎
○川口政府委員 お答えいたします。
西村公安調査局長の場合は、会費は自分で出しているということを申しておりました。会費は月千円だそうでございまして、これを積み立てまして、トロフィーその他の費用に充てる。それから、そのゴルフをやりました日のグリーンフィーとかあるいは食費、懇親会費あるいは賞品代、そういうものは、各自でそれぞれ自分のポケットマネーから支出する、こういうように聞いております。
それから、やめたかどうかということは私まだ確認しておりません。問題の朝日新聞の記事になりました日のことについて尋ねましたところ、当日西村局長は、呉に調査用務がございまして早朝から出張いたしまして、大体十一時ごろそれを済ませまして、それから出かけた。十二時ちょっと前に着いて十二時過ぎからプレーをした、こういうようになっております。土曜日の執務時間は、私の庁では午前八時半から十二時半ということになっておりますので、時間中に出かけたということについて、これはよくない、今後そういうことをしないようにと、上京しましたときに注意をいたしました。やめたかどうかは、ちょっと確認しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/48
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049・青柳盛雄
○青柳委員 どうも弁明のつかない点は、午前十時半ごろから、しかも公用車を用いたという点のようでございまして、この点は、いずれもちょっとまずかったと思っておられるようであります。ほかの点につきましては、いろいろの申し開きの理由もあるようでございますが、警察関係の方はきょうお見えになっておりませんからなんですけれども、地検の検事正平井さんも行っておられるので、法務省のほうからお尋ねするのですが、この点についてお調べになったことがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/49
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050・安田道夫
○安田説明員 検察庁のほうも調べました。やはり先ほどからお話の出ましたとおりの事実関係でございまして、高検の検事長、それから地検の検事正がその会のメンバーになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/50
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051・青柳盛雄
○青柳委員 質問はそれだけで、その後の状況は調べたかという質問ですから、調べたらそうだったというのですが、これは全然問題はないので、そのまま引き続きやっておってもかまわないという方針をとっておられるのかどうかですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/51
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052・安田道夫
○安田説明員 この会の性格というものは、私的な親睦団体ということでございますので、特にこの会を解散しなくちゃいけないとか、そのようなことは毛頭ないと考えております。ただ、親睦の会の運営にあたりまして、いやしくも公私の混同のないように、綱紀の粛正その他の面から十分の配慮をすべきものと考えております。
なお、たまたま問題になりました当日は、検事長、検事正とも出席しておりませんので、特に本件の問題に関しましては、何らの措置もとっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/52
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053・青柳盛雄
○青柳委員 時間がありませんから、これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/53
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054・松澤雄藏
○松澤委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/54
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055・松澤雄藏
○松澤委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
まず、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/55
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056・松澤雄藏
○松澤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
次に、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/56
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057・松澤雄藏
○松澤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
おはかりいたします。
ただいま議決いたしました両法案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/57
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058・松澤雄藏
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/58
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059・松澤雄藏
○松澤委員長 次に、人権擁護に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。畑和君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/59
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060・畑和
○畑委員 私は、きょうは人権擁護に関する件につきまして、おもに文部省当局に質問をいたしたいと思います。
憲法の二十六条を見ますると、御承知のように、国民はひとしく教育を受ける権利があるというふうに書いてあります。「すべて國民は、法律の定めるところにより、その能力に感じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」というふうに出ております。また同時に、教育基本法の第三条にも、それを受けましての規定がございます。私、読むまでもございませんが、教育基本法第三条、「教育の機会均等」として、「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであつて、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によつて、教育上差別されない。こういうふうな規定になっておるわけであります。
ところで、私がきょう問題にし、お尋ねいたす件は、身体障害者に対してその教育の機会を与えるという、能力に応じて教育の機会を与えなければならないといういまの憲法の規定並びに教育基本法の規定に違反をしていわせぬか、そして人権を不当に侵害しておる事実がある、こういうことです。
それは、実は具体的な例を申し上げますと、ことしの三月、埼玉県の浦和の高等学校におきましての入学の選抜試験にあたりまして、浦和に住んでおります作家の大西巨人という方がおります。その作家の大西巨人さんの長男でございます赤人君、十六歳でございますが、これが浦和高等学校を受験をいたしました。その受験をする前に、父親の巨人さんがあらかじめ浦和高等学校の当時の校長の柳瀬さんという方に面会を求めまして、自分の子供が、たまたま浦和高等学校の近くに住んでおるし、血友病という病気になっておって、両ひざ等が麻痺をしている、硬直をしているというようなことで、身体障害者であるけれども、近くである、そしてまた使用の建物が二階建てだというようなことで、車いすその他を使っても、普通の高等学校に入ってすることが可能であり、かつまた、医者の専門的な判断によると、特殊学校よりも普通学校に入れるほうがいいというような意見もあるから、おたくの高等学校を受けたい、こういうことで相談に行なった。ところが、その当時の校長は、非常にけっこうなことである、そのくらいのからだであっては、普通学校での修学に耐えるであろうし、また同時に、それがほかの生徒たちにとっても非常な励ましになる、こういうようなことで、非常にそのことを喜んで、むしろ受け入れてくれました。ただ、試験の成績はわからぬので、その先の問題だけれども、親御さんといたしますと、校長さんがそういう考え方だと、試験の成績さえよければとってくれるであろうということで、試験を受けた模様であります。
ところが、判定会議の結果不合格ということになった。そこで、この親御さんの巨人さんもおさまらない。そこでまた学校に出かけて交渉する、あるいは県の教育局等とも交渉する、こういうような事態が続いた。それで結局は、やはり学力試験の結果と、それから中学校の調査書ですか、俗に内申書ですか、その内申書と両方同じように見て判定するというようなことで、判定の小委員会の段階でもうはずされた、こういうようなことがわかりました。
その後、そうしたことで教育局等とも話をする。さらにまた、らちがあかぬものですから、その前でしょうか、朝日新聞にも投稿をいたしたのです。投稿といっても、これは作家でございますので、単に一般の投稿とは違うようでありますが、「障害児にも学ぶ権利がある」ということで、朝日新聞の教育欄か何かですか、これに大西巨人さんの考え方が載っております。その後またさらに、当時の文部大臣の坂田さんに対して、やはり質問状を出されております。それをまた「婦人公論」の七月号に、「坂田文部大臣への公開状」ということで、障害児のわが息子の学ぶ権利についてということで、大西巨人さん自身が公開状を出し、同時に手紙も出しているようであります。さらにその後また、らちがあかないので、再び文部大臣への公開状として、「婦人公論」の十一月号にやはり同じく、今度は文部大臣が高見さんになられましたので、その意味も一つはあるのでしょうか、さらに前のことをふえんして述べておられます。
そういった経過を通じまして、そうした最初は個人的な動きであったわけでありますけれども、そのまわりの人が、やはりそれに非常に関心と同情を持ちまして、赤人君の入学を進める運動、正式に言いますと「大西問題を契機として、障害者の教育権を実現する会」というのが、ことしの十月十六日に浦和市民会館で発会式をあげて、百三十人かが集まったというようなことを、実は私も新聞で見て承知をいたしたのであります。これは朝日の中央版にも載っておりますと同時に、各紙の地方版にも取り上げられて報道をされました。それで私も、これは当然の運動ではないか、なぜここまで放置されておったのだろうというような感じが実はいたしたわけであります。
ところでその後、その問題が解決したかと思っておりましたら、いまだに解決しておらぬというようなことで、この会はだんだん大きくなって、そして県当局などといわゆる団体交渉と申しますか、そうした交渉を続けて、もうすでに二、三回やっております。それで近く、今月の十八日かに、また教育局と交渉をするというような運びにはなっておるそうでありますけれども、私は、実は教育関係にはごくしろうとでございまして、よくわからないのでありますけれども、ただ人権問題だというような側面から、実はきょう取り上げてみたわけであります。
実は、これと同じような事件がほかにもありました。それは兵庫県でのできことでありまして、兵庫県の姫路東高等学校というところで、やはりことしの入学試験の際のようでありますが、国鉄職員の矢口喜美雄さんという人の長女の和美さんという十五歳の女の子でありますが、三歳のときに小児麻痺にかかって左足が不自由であります。それで中学校時代は、自宅から六キロの道を自転車で通学して、これに協力した級友四人が卒業の際、県の善行賞を受けた。和美さんは非常に成績がよくて、同中学を女子のトップで卒業した。姫路市内のAクラスといわれる中学校だそうでして、これは、東高合格の太鼓判を押して、十七、八日行なわれた同校の入学試験で、学科では指折り数える中に入っておる。これは校長さんの話ですが、確かに成績はよかった。ただ、ことしから始められた体育実技は、からだが不自由なので体操は無理との診断書をつけ、特別障害者として受験したのだそうであります。ところが、二十一日の発表で、和美さんは不合格だったということ。理由については、脇屋校長は、一つは、高等学校は中学校と違い、教室の移動やクラブ活動など運動量が非常に多く、普通の人の三分の一程度のスピードでしか歩けない和美さんには無理だ、一人のために他の生徒が迷惑するようでは困る。二として、中学の体育が、五・四・三・二・一という例の五段階の評価ですね、そのうちの一で一番悪いやつ、その一の成績では、内申重視のたてまえから考慮せざるを得ない。この二点をあげて不合格の理由を説明したと、こういわれている。
ところで、これがやはり新聞に出まして、それでその結果、県の教育委員会が会議を開いて、そして姫路東高校長に再考を求めるという措置に出た。この異例の措置をとったということは、身体障害者に希望を持たせるとの県教育委の指導方針に沿うためだ、こういうふうに言うております。そしてその結果、学校で善処をして、そして特別入学の許可をまたやった、こういうことです。
まあ程度の問題ですが、小児麻痺で片方の足が不自由、しかし自転車で通える程度。ただ、この赤人君の場合は両ひざが不自由でありまして、これは御承知のとおり血友病ですから遺伝的なもので、この人の弟さん、これもまた血友病で、最初のうちは赤人君だけだったから、おかあさんが車いすや何かで学校へ連れていって、それで通わした。ところが、二番目も入学することになった。二番目もやはり同じく血友病で同じようだから、しかたがないから、今度はタクシー会社と相談をして、毎日毎日タクシーを特別契約をして送り迎えをしてもらう、こういうふうに赤人君にはして、次男のほうの野人という人ですか、この人はおかあさんが赤人君と同じように、やはり小学校に連れていく、こういうことでやっておる。こういう先天的な、結局血が出てとまらぬ、結局内出血する、そこで患部が硬直する、こういう病気だそうでありまして、作家の巨人さんも相当頭を痛めたに違いない。しかし、頭のほうは相当いいわけです。現に私、おとついですか、新聞を読んでおりましたら、朝日新聞の読書欄でしたかね、大西赤人君が書いた小説が、短文か何かの本が今度出るということで、それの本の紹介が出ておりました。偶然、私はこの事件を取り上げようとしておりまして、帰りの電車の中で実はこの文を読んで、なるほどこれは相当天才的な子供だわい、こう思ったのでありますが、そうした相当優秀な子で、父のほうもそれだけの自信は持っておる。そうかと言って、これを特殊学校に入れるよりは、むしろやはり普通の高等学校に入れたほうがいいというのが、そのお医者さんの判断だそうであります。それでそういうことになったわけですが、残念ながら不合格ということになった。そこで会見、交渉等をそうした会がやり、あるいはその前に大西さん御本人が、学校当局あるいは教育局等にもいろいろ談判をしたのですが、らちがあかなかった、こういうことなんであります。
そこで、私も考えるのですが、いままでの県のほうの態度ということもどうも私は納得がいかない。もっと機敏に措置をすることができなかったのか。なるほどいろいろ規則とか慣例とかというのがあるでしょう。そして、かつてはそう内申書は重く見なかったが、最近非常に内申書を重く見る。その理由もわかる。最近は、試験の成績と内申書とをほとんど同じように見るのが方針のようであります。これは文部省の方針なんでしょうが、そうなりますと、結局内申書がどうしても五段階、県によって違うかもしれませんが、五段階評価になっておる。そうすると、どうしても足の不自由な人たちは実技等はできない。しかし、そうかといってゼロということの評価ではないようでありまして、同じ体育の中でも、ほんとうにからだを動かすだけではなくて、ほかの項目もある。四項目ぐらいあるようです。したがって、体操を実際はやらなくても、それに対する熱意とかあるいは研究心とか理解とか、そういった項目があって、そのうちの一つの項目がほんとうのからだを動かすことなんだそうです。ところが、中学のほうではこの身体障害者に対する理解のしかたが間違っておって、それで結局、この子は体操をやらないんだからというので、おそらく体操の点数が一ということになったと思うのです。まあこれも無理な話だと思うのですが、同じ学校に五の点数が何%、四の人が何%というふうに、大体何か格づけみたいなものがきまっておるという話も聞いたのです。そういうことからすると、現場の教師にそれを要求するのは無理かもしらぬ。ほかの子供との関係があるから、体操その他の実技関係がありますから、どうしてもその関係で、その点が悪くなると内申書全体が悪くなるということで、形式的に適用をしまするとそういうことになる。その結果をまた高等学校のほうで、形式的にしゃくし定木的に適用した結果がこういうことになったのではないかというふうに、私はしろうと考えでありますけれども考えるのです。
それで、結局いまのところでは、再三交渉した結果、県の教育局も、中学校の内申書に書かれた評価がどういう経過でそういうふうになったのか、それからさらに浦高の入学の際の選抜会議で、そのような障害者に対する具体的な配慮が正しくなされたのかどうか、この二つの面を調査をするということにまでようやくなったそうです。それまで非常に官僚的な答弁に終始していたようです。今度十八日の交渉のときにその結果が出るんだそうであります。出るかどうかわかりませんが、そういうことだそうであります。現に兵庫県においてもそういった特殊の配慮をして、判定会議をやり直して入学を認めた例もあるわけなんです。それはほかの教師あるいはほかの仲間からすれば、こうした人がいると全体として非常に動きが鈍くなり、足手まといかもしれませんが、やはり入れた以上は——これは小中学校は義務教育ですからいいですけれども、高等学校のほうは義務教育じゃないというような点からすると、とかくこういう人たちは敬遠しがちだ。
しからば、それに対する養護学校などの設備がそれだけ整っておるか、ちゃんとしておるかというと、実は埼玉県あたりでも、何か非常にお恥ずかしい程度のようです。私もこの間寄居の養護学校に行ってちょっと見てまいりましたけれども、いろいろな種類の子供たちが入っておるというような関係もあって、一体正式の高等部というのがあるかどうか、私はないんじゃないかと思う。そうなりますと、これで入れないということになると、私は非常な人権侵害だと思う。やはり特殊な基準で内申を出すべきだし、同時にまた、高等学校のほうでもそういうふうなことは配慮して判定をすべきであるというように私は考えますが、以上、大体の経過と私の意見とを織りまぜて申し上げたのですが、これに対してひとつ文部省のほうの御見解を承りたいのです。
何が文部省のほうでは、こうして大西さんが何度か文部大臣にあてて手紙を出し、公開状を出したにもかかわらず、それに対する返事もないようです。いまだにないように聞いております。と同時に、県の教育局のほうにいろいろ交渉をしてみますると、その会の人が言うには、また大西さんが書いておる文章から見ましても、県のほうでは、文部省からこの問題についてそうした具体的な指導を受けたことも何もない。これはそう言いのがれておるのかどうかわかりませんけれども、そういう返事をしておられる。そうだとすれば、私は文部省においても指導の責任が欠けておりはせぬかというふうに思います。この点等も織りまぜて、ひとつお話し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/60
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061・西崎清久
○西崎説明員 経過その他につきまして、私から初めにお答えを申し上げたいと思います。
〔委員長退席、岡沢委員長代理着席〕
大体、先生がおっしゃいますとおりの経過をたどっております。大西赤人君の入試問題にかかわるいろいろな見解があるわけでございますが、私どもも県の教育委員会に何度も来てもらいまして、どういう実情にこの経過があるのかしさいに調べたわけでございます。その県の考え方、学校の考え方につきましては、大西さんのほうのお考えと若干食い違う面もあるわけでございますが、端的に申しますと、県の方では、内申書と学力検査の成績で残念ながら合格に達していなかった、したがって、障害の程度を判定するに至らずして不合格ということを出すことに相なった。県のほうはそういうふうな立場でおるわけでございますが、大西さんのほうの御理解といたしましては、実質的に障害ということが理由で不合格になったのではないかというふうなお考えが強いように私ども承知しております。
そこで、私どもとしましては県教育委員会に対しまして、この点については大西さんのほうでなお納得しておられない部分が非常に多いと思われるので、大西さんのほうとお会いした際には、納得のいくように十分説明をすべきであるという指導、助言をいたしております。この点、十一月号の「婦人公論」で、大西さんのほうの御見解では、県教委は文部省から指導、助言を受けていないというふうに県教委が申したようでございますので、私ども再度県教委の意見を聞きましたところ、話のプロセスにおきまして、文部省から不合格処分を取り消すような指導、助言を受けたかというふうな質問に対して、不合格処分を取り消すような指導、助言は受けていない、そういうふうな話のやりとりであったようでございます。大西さんと十分お話し合いをするようにという指導、助言は県教育委員会としては受けているんだから、その点について、何ら文部省から指導、助言を受けていないということを申すことはないはずです、まあ県はそういうふうに説明しておりまして、私どもも指導、助言はそういう形で行なっておりますので、その点は了といたした次第でございます。
それから、やはり先生おっしゃいますように入学試験の問題は非常に重要でございますが、具体的な事務の執行につきましては、学校教育法あるいは省令の規定によりまして学校長が許可をし、学力検査は県教育委員会がこれを行なうというふうに、先生お詳しいと思いますが、法令上行政機関の責任者としては県、学校の段階に一応なっております。文部省として、個々具体的な問題にしさいに関与するということはいかがかという私どもの立場がございますものですから、「婦人公論」のほうの記者の方にもお目にかかりまして、県教育委員会等がいろいろお答えするということであるならば、これはまた一つの筋で、責任者がお答えするのでけっこうだけれども、それを飛び越えて文部省がストレートにいろいろとお答えするということは、立場としていかがであろうかというふうなことを「婦人公論」の記者、大西さんを代理される方に私、十分御説明をしておる次第でございます。
それからなお、先生の御質問にございました内申書の扱いでございます。この扱いにつきましては、やはりいろいろな配慮でこういう方については行なわれるのが当然だと思うわけでございます。実際に大西赤人君について、木崎中学でございますが、木崎中学でどのような考え方でどういうふうに内申をつくったかという点は、いま先生おっしゃいましたように、木崎中学から県教育委員会が報告を求めて、そしてその考え方についての県の態度を、十八日に関係者にお会いして御説明するというふうに私も承知しております。その県の説明の態度なりあるいは考え方というものも、私ども後日確かめてみたいというふうに思っておりますし、その考え方についての文部省の指導、助言の立場における当否というものも、内容によってはあろうかと思いますが、その点も、十八日の段階でのことに相なろうかと思いますので、その点、私どもも留意いたしたいと思っております。
そういう次第でございまして、この問題については、県のほうにも文部省としてはいろいろなお話をしておるわけでございますが、若干大西さんのほうと県、学校のほうとの考え方が行き違っておって、両者のお話の焦点がなかなか定まってこないというところで、若干時日を経過したことは遺憾だと思いますが、また話し合いによりましては、お互いの話がおさまってまいることもあるのではないかと期待をしておるわけでございます。
以上、経過その他について御説明申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/61
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062・畑和
○畑委員 文部省のほうのいまの御意見を聞いたのですが、それによると入学試験、学力検査そのものが基準に達しなかったというような御意向ですね。そうじゃないですか。そのようにちょっとお聞きしたのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/62
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063・西崎清久
○西崎説明員 私のことばが足りなくてたいへん失礼いたしましたが、学校長あるいは県教育委員会の考え方は、学力検査、内申書の成績、この両者を総合評価して合格に達しなかった、こういう申し方をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/63
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064・畑和
○畑委員 なかなかその辺が微妙なんで、そうなるから、したがって、結局学力が足りないなら足りないのだとはっきり言ってもらえば、これはあきらめる。ところが、どうも学力が足りなかった模様はないのです。模範答案から、本人のあれからしまして、二百点満点のうち百七十点ぐらいは間違いなくとっている、こういうことなんでして、相当自信がある。同時にまた学校長のほうも、当時その結果をいろいろあれしてみたら、親と話をしたときには、親御さんに対してそれだけは相当な程度、合格点は完全についているというような話の模様だったようです。それは、ますます大西さんも学力の点については自信がある。それを落とされたということは、結局はそれ以外の評価に違いない。そうすると、内申書と両方同じに見るということによって、内申書が実技その他の関係からして、どうしても普通の人よりも不利益に評価されている、その結果が合格の判定に影響している、こういうことだと信じておる。また会の人たちもそう信じておるわけです。いま文部省の御答弁によると、やはり両方総合したものが足りなかったということです。もっとも、そうでなくちゃ言いようがないのです。両方総合したものが足りなかったということです。そうなると、やはり詳しくはっきり、ここまで問題になっているのだから、学力の平均のあれは何点だったのだ、それに対する内申書はこれだけだったからこうなんだといった説明をしないと、ここまできている以上は私は無理だと思います。やはりそういった疑いが起きるのでありまして、それをめぐってまた会の人たちと県との間の交渉が何回か続いております。
そこで、県のほうのいままでの言い分としては、選抜方法の原則としては、「学力検査の結果、調査書の学習の記録、この両者を同等に扱い、他の諸記録を参考に選抜を行う。」これが第一だそうです。第二としては、「健康診断の記録については修学に堪えぬ者を除いては選考の際差等をつけない。」第三は、「学校長は必要に応じて健康診断もしくは面接を実施して選抜のための資料に加えることができる。」こうした選抜方法の三つの原則を示しております。高等学校はそれによってやったのだ。それで、このうち具体的な大西君の場合については、一つの原則に照らして不合格と判定した。したがって健康診断云々は、「健康診断の記録については修学に堪えぬ者を除いては選考の際差等をつけない。」これはもう適用を全然しないという考えで、第一の問題だけで浦高では判定をして、二、三の問題については判定は行なわれないということですから、足がどうだ、こうだということについては、選考の際差等をつけないと書いてありますけれども、その診断書を待つまでもなくそれは使わなかった、こういうことで、第一の、要するに学力検査の結果と調査書の学習の記録、この両者を同等に扱ったのだということになるわけです。そこで、やはり問題がそこに出てくると思う。
それと同時に、その次に県の教育局としては、「教育評価は指導の目標に照らして五段階評価法でなされる。現行では、障害児は、普通学級に在籍する限りはこれによらざるをえない。」こういういままでの答弁のようです。これが私は間違いだと思う。「盲ろう養護学校、精薄、肢体不自由児の学校等はそれぞれの教育目標に照らしてその学校で段階評価がなされている。普通学級に在籍する障害児が高校受験する際は、その中学校の評価にもとづいて選考する以外にいまのところ方法はない。従って浦高のとった措置は違法でも不当でもないと考える。」こういうような答弁になっておるようです。
そこで、私は問題になると思うのですが、結局第一の、二つのあれだけを比べて、両方参考にしてやったということについては、最近そういうことに文部省の方針がなり、教育局もそういうことで内申を同等に見るという結果になったのだと思いますが、これはいつから大体そういうふうになったのかということが一つ。
それからもう一つは、赤人君の場合については、そうなると、私が先ほど申し述べましたように健康診断の問題、そういう問題は別として、要するに修学にたえ得ると判断したものだと思われる。それを使わなかったのですからね。それが一つ。
それからもう一つは、最後に申しました、普通学級に在籍する限りは五段階評価によらざるを得ない、こう言われておるけれども、これが金科玉条なんです。これがまた、私たちの考え方からすれば間違いのもとだと思うのですが、こういう在籍する限りはやはり五段階評価によらざるを得ないというふうになっておるけれども、この判断を正当化し得る法的根拠があるのかどうか。何か、結局は慣例だというような返事をされたそうですが、もし慣例だとすれば、こういうことは健康児の場合にはいいですが、身体障害児の場合には、これははずして別の基準でやるべきである。普通学級に在籍する者は、障害児といえども五段階評価によらざるを得ない、こういうことはやはり間違っていはしないか、こう思うのですが、この点についてひとつ文部省の見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/64
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065・西崎清久
○西崎説明員 先生から三点お尋ねがございまして、第一点は、内申書と学力検査の扱いについて、いつからそのような同等という扱いを指導しておるのかというお尋ねであったかと思います。この点、実は文部省といたしましては、入学試験の実施なり計画の責任者は都道府県でございますので、指導通達を出しております。この指導通達は、昭和四十一年のものが最新でございます。この最新の指導通達では、内申書を尊重するようにというふうな表現はございますが、内申書と学力とをどのようなウエートで扱うかについては触れておらないわけでございます。したがいまして、実態としては、多くの場合、先生がおっしゃいますように、過去には学力検査のウエートのほうが非常に高かったというのが実情でございます。しかし、各都道府県においては、なるべく中学校教育の正常な姿を期待する意味で、内申書のウエートをだんだん高めてきたというところで、現在は半々に扱うような県が多くなっておるというのが実情であろうかと思います。それをどういうふうに扱うかは、県の方針によるというふうに相なっております。
それから、第二点の身体障害の程度を判定する前に、学力検査と内申書によって不合格とならざるを得なかったという点について、それは身体障害という点は、高等学校教育にたえ得るという前提で、そちらのほうで不合格になったのではないか。その辺で、県と関係者との御意見の差があるようでございますが、私どもが承知している範囲では、身体障害の程度を、たえ得るかたえ得ないかの判定は、ことしの段階ではいたしていない。その学力検査とそれから内申書との総合評点で、ぐあいが悪かったというふうな見解であろうと承知いたしております。
それから、第三点の中学校における評価の考え方でございますが、この指導要録で各教科科目の評価を行なうわけでございまして、その様式その他をきめますのは、小中学校の管理者である教育委員会が指導要録についての様式その他を定め、そしてその記入にあたっての考え方を各学校に指導するというのが現在のたてまえでございまして、その市町村の行なう指導要録の様式なり記入については、県教育委員会なり文部省が指導、助言を行なうというふうな姿になっております。それで、身体障害のある方々については、それぞれ評価については内容とか目的があるわけでありますが、やはり身体の障害の程度に応じてこれを課するということは当然必要なことでありますし、学校教育法その他でもこういうふうな点については明記をいたしております。その身体障害の程度に応じて課しまして、そして課されたものについてどういうふうな評価を行なうかについては、法令その他では明確に書いてはおりませんが、私どもの指導、助言の姿といたしましては、やはり主として課したものについて評価を行ない、そして他の生徒なり学年の生徒との関連も考慮して、そういう方々については、特別に一部のものだけを課して評価をしたという、扱いを明記しておく必要があるであろうというふうな形の指導、助言が従来行なわれております。
したがいまして、いろいろと身体障害がある方々については、実技ができない場合もございましょうし、知識、理解だけにとどまる場合もあるわけでございますが、知識、理解の学習をやる場合には、知識、理解の到達度というものがあるわけでありまして、その点については、他の生徒との比較も考えられるわけであります。相対問題として考えられます。
それからもう一つは、実技ができなかったということについては、身体障害のある方については非常にやむを得ないわけでありますが、この点については、教科目標あるいはそれぞれの教科の到達目標というものがあるわけでありまして、それらの点を他の生徒とどのように関連させて評価するかということは、それぞれ具体のケースになると思うわけでございます。
その大西赤人君のケースについて、どのような考え方でどのように行なわれたかについては、まだ私どももつまびらかでございませんので、一般的な考え方を申し上げた次第でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/65
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066・畑和
○畑委員 結局そうしますと、やはり本件の場合につきましては小中学校、それを管理しているのは市町村の、浦和の場合には浦和市の教育委員会、そこがそうした、いま言った内申書の評価ですか、そういった点を指導するということになっておるわけです。それで本件の場合、浦和高等学校への入学試験ですから、その点については、今度は県の教育委員会のほうで直接指導する、小中学校のほうについても間接に市の教育委員会を通じて指導することはありますけれども、そういうことになると思います。なおまた、今度は文部省がその上に立って指導しあるいは助言するということだと思います。
ただ、その点について各地方の立場を尊重する、地方教育というものについて尊重をして、あまり中央から干渉しないということ、その原則は私はよろしいと思う。でありますけれども、往々にして地方のほうでは応用問題がきかないんですね。今度の場合などは私は応用問題だと思うのですよ。やはり憲法と教育基本法と、そういうものをはっきり踏まえておれば、通達とかいろいろなものがあってもそれを乗り越えて、こういう場合にこそそういった原則が適用になる。それを、やはり地方末端のほうにまいりますと、そうした通達その他がいろいろうるさく出るものだから、結局それに幻惑をされて、それをしゃくし定木にやるということの結果が、大原則を忘れ、しかも応用問題ができないという結果に、私は今度の場合なったのだというふうに思います。これは実際がどういうことになるか、これからその教育委員会の最終的な返事を聞かなければわかりませんけれども、どうもそういう感じがいたすのです。兵庫県の場合はすぐそれを改めて、この判定をし直したから新学期に間に合った。今度の場合は、そうした議論をしてやっているうちにもうすでに十二月だ、これですぐに判定をくつがえしてやり直したとしましても、これから三カ月ではもう進学はできない、実際にそうだと思います。こうしたことが、私は非常に官僚的な行き方だろうというふうに思うのです。
その点で、文部省のほうもあまり地方に干渉しないというようなこと、これはよろしいといたしましても、地方教育行政の組織と運営に関する法律というのがございますね。私も今度初めて読ましてもらいましたが、その五十二条、五十二条、それには、違法だとかなんとかというときには、あるいはそうでなくても不適当な場合は、適正にするように指導しなければならぬというようなことにもなっているし、また、五十三条において調査というようなこともいたします。こういう点をもっとおたくのほうでもひとつ活用してもらうべきだ。ただ地方に干渉しちゃいかぬ、いかぬのあまり、地方の教育委員会だけにまかしておきますと、そういった大原則や、それから応用問題はできない。同時にまた、やはりそういう足手まといはなるべく遠慮してもらうというようなことになる可能性がある。
それは、私立学校であって、学力の低いところの学校であれば、あるいはできるかもしれません。ところが、どうしても公立学校でいい学校へやらなければならぬということになりますと、俗に言ういい学校、悪い学校——と言っちゃ申しわけないのですが、浦高なんというのは県下で第一の学校ですが、そこあたりだと、どうもこういう人は困るという配慮があるかもしらぬ。それは、やはりこの際払いのけてもらわなければならぬと思う。こういう子供を一人かかえておりますと、実際は教師たちも非常にたいへんだ。だけれども、これはやはりひとしく教育を受ける権利があるのですから、それに対する配慮を特にやってもらわなければならぬ。そういうことが間違っておったということになれば、もっと早く改めて、率直に話し合って早くやるべきだったと私は思うのですが、現実の問題について、まだ教育委員会のほうの調査結果等があらわれておりませんから、文部省としては明確な私の意見に対する答弁が、あるいはできないかもしれません。できないかもしれませんけれども、どうも事実がそうだといたしました場合に、文部省は私の説に賛成してくれますか、どうですか。結果がまだ調査中なんですけれども、はっきりわからぬけれども、大体そうだとした場合、そうした小中学校の評価のしかたも、大体身体障害者に対しての配慮が足りなかった、同時にまた、高等学校の入学判定についても、やはり同様にそれに配慮が足りなかったということが、こういう結果になったであろうというくらいなことですが、そのくらいのことについては、文部省も私の質問に対して答弁ができると思うのです。そういうことの前提に立った場合、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/66
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067・西崎清久
○西崎説明員 非常にむずかしいお尋ねでございますけれども、木崎中学の評価ということを、具体の問題について、まだ、先生おっしゃいますとおり、私ども承知しておりませんので、何とも申し上げかねますが、やはり中学校における体育その他、障害者に対する取り扱いというものは、心身の障害の程度に応じて課するということは、当然必要なことだと思います。
〔岡沢委員長代理退席、委員長着席〕
その課したものについての評価というものは、やはり扱いとしては、その障害の程度をもちろん考えるとはいたしましても、同学年の生徒がおりますし、やはり同じクラスにも生徒がおりますものですから、そういった他の生徒との関連というものも考えませんと、評価というものは出てこないわけでございまして、その辺については、やはりおそらく木崎中学も配慮した上で、しかも個人の配慮をし、他の生徒との配慮も加えた上でやっておるのではないかと思うわけでございます。もしそうであれば、その評価自体が誤りということには相ならぬと思いますし、そうでなければ、また先生のおっしゃいますように、あるいはぐあいの悪い子というふうに申し上げざるを得ない場合もあろうかと思うわけでございます。
ただ、私、思いますのは、高等学校教育はやはり先生おっしゃいますようにいろいろとあるわけでございますが、やはり高等学校教育を受けるに足る資質というものを入学選抜においては判定をするわけでございますので、その辺で、学力なりそれから内申書というものでまず判定し、そのあとで身体の問題というものが話題になることは当然あろうかと思います。ただ、いま伺いました兵庫のようなケースは、まことにその配慮の行き届いたケースだと思うわけでございます。ちゃんと歩けて、しかも自転車にも乗れるくらいの子供であれば、高等学校教育を受けるに足るというふうな判定を再考の結果出されるということは、やはり正当な措置であったのではないかと思うわけでございますが、その辺は、先生おっしゃいますとおり、程度の問題に相なろうかと思いますし、大西さん個人の問題については別といたしまして、その辺についての今後各学校の扱いは、いろいろ留意して行なわれるべきじゃないかというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/67
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068・畑和
○畑委員 兵庫の場合は、片足が不自由で自転車にもどうやら乗れるというようなことで、程度が少し大西君の場合とは違うと思います。大西君の場合も、大体両方の足が不自由だということでありますけれども、どうやら日常のあれは足せるが、体操その他のことはできないということでございまして、しかも相当優秀だと私も思っています。やはりなるべく普通学校の教育を受けさしたいと私自身も思う。あらゆる障害を越えて、やはりいい学校へやって、将来りっぱな大学へ入る資格を得させるということを配慮すべきではないかというふうに思います。
これはこの前、文部大臣代理ですか、秋田さんがこういうことを言っておることがあるのですよ。参議院の内閣委員会のことしの五月十九日ですかの会議録を見ますと、岩間さんの「基本的には、差別的な教育をやめ、すべての障害児が正当に教育を受けられるようにする。この原則は承認されますか。」という問いに対して、「当然のことであろうと存じます。」こう答えている。また、「やはり心身あるいは精薄児童、障害の方々は無限の可能性を秘めておられるわけであります。この点を十分考え、いたずらに独断あるいは何らかの意図を持って、りっぱな教育を受ける権利が事実上無視される。そういう機会が閉ざされるというようなことがあってはならない。」「人間個人の基本的人権の尊厳に徹した処置が、教育界一般に行なわれるように配慮をしていかなければならない、こう考えております。」こう答弁を秋田さんはされておるのでありますが、これは同じ考えだと思うのです。いままで私とのやりとりを政務次官お聞きになったと思うのでありまして、この際、ひとつ大臣にかわりまして次官の考え方、この問題等についての考え方をひとつ承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/68
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069・渡辺栄一
○渡辺(栄)政府委員 お答え申し上げます。
ただいま課長から、いろいろ経過その他につきまして申し上げてまいりましたが、先生もすでに御承知のところだと存じますが、具体的な問題ということになりますと、やはり高等学校教育の課程を履修できるかどうか、またその修学にたえられるかどうかということが問題でございまして、それはやはり具体的には学校長の判断にゆだねられるということになるだろうと思います。したがって、具体的にこの問題がどうであるかということは、さらに十分御検討願わねばならぬ問題であると思いますが、先生も御承知のように、心身障害者対策基本法等も制定されておりまして、その中におきましても、能力、種別及びその程度、こういうものに応じまして十分な教育を施せるようにしなければいけないということもうたっておるわけでございます。
文部省としましても、御承知のように、今日まであるいは盲ろう養護学校、特殊学級の増設あるいは教育内容の改善、また就学奨励費の支給、最近におきましては国立特殊教育総合研究所の設置、こういうようなものを積極的に進めておりますけれども、まだ十分ではない。率直に申しますと、約三〇%収容しておるわけでございます。そういうことでございますので、さらに積極的にこれは進めてまいろうと思っておりますが、先般の中央教育審議会から出されておりました答申の中におきましても、特殊教育の積極的な拡充整備ということが強調されておりまして、私どもといたしましては、御協力をいただきまして昭和四十七年度から新たな計画をもちまして、養護学校の整備につきましては七カ年計画、特殊学級につきましては十カ年計画、特にできるならば、四十八年末には相当な整備をいたしまして、四十九年度からは義務制度にぜひこれを持ち込みたい、こういうような気持ちでございますし、なお、いまお話しになりましたような心身障害児の義務教育後の教育とということにつきましては、盲ろう養護学校に高等部の設置を促進いたしまして、養護教育を中心といたしました後期中等教育の場を拡充いたしまして、十分そのような面におきまする配慮をしてまいりたいと思っておりますけれども、当面はいま申しましたようなことでございますが、私どもとしましては、現時点に立ちまして、心身障害者であって普通の学校で教育を受けることが適当な者については、これはやはり周囲の理解がなければできないと思います。また、せっかく入学できましても、その学校教育にたえられないということであれば、本人は不幸になるだろうと思います。また、同じような程度でございましても、学校の施設、環境等によりましては、たえられない場合もたえ得る場合もありましょうから、これは具体的ないろいろの問題があるかと存じますけれども、極力私どもはそういう御協力のもとに前向きで、身体障害者であるからそういう教育の機会に恵まれないということがないように、むしろ今後は前向きにひとつ指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
具体的な問題といたしましては、いま課長が申しましたように、われわれといたしましても、十分ひとつこの問題には慎重に対処してまいりたいと思います。方針といたしましては、私どもは、心身障害者が十分期待を持って、せっかくの高等教育ということに対する恩典が受けられないというようなことがないように、今後できる限りの配慮をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/69
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070・畑和
○畑委員 そこで、ちょっとお尋ねしますが、高等学校の教育ですね、養護学校あるいは盲ろう学校の高等部というものをもっともっと充実させなければならぬといういまの次官の御答弁であります。大いにそれをひとつやってもらいたいと思います。
ところが、埼玉県の場合、養護学校は、たぶん私は寄居にあったと思うのですが、それは小中学校だったと思いますが、高等部がございますか、ちょっと念のためにお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/70
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071・西崎清久
○西崎説明員 ちょっと私、所管外でございますが、埼玉県におきましては、先生おっしゃいますとおり、小学部、中学部について現在ございまして、高等部はないというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/71
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072・畑和
○畑委員 そういう実情ですから、そうなればなおさら、障害児の方で高等学校へ進学される方については、できるだけ普通の高等学校、公立の高等学校に入れてやる、入れることはむしろあなた方の義務だと思うのですね。埼玉県には養護学校に高等部がない。ではそれをどうするのだといったら、進学したいということである場合には、どうしても普通の高等学校に、公立の高等学校に入れざるを得ないわけであります。そうだとするならば、少しはからだが不自由な子で、少し手数はかかるかもしれぬけれども、やはりそれは入れなければならぬ国の責務があると私は思う。義務教育だけじゃないと私は思う。それが一つ。
それともう一つ、ちょっと聞くのを落としましたのですが、義務教育を免除され、あるいは猶予される制度がございますね。そこで、義務教育をそういうわけで受けなかった人が、自分で独学等をやって、それで高等学校入試の認定の試験を受ける制度がございますね。埼玉県にもあるはずです。ありますが、そうなりますと、その試験科目というのは、体育や何かはないのですね。算数とか国語とかそれから理科とか、五つか六つあると思いますよ。その科目にはそういう体操その他のものはないわけだ。それで、もし受けて合格ずるということになると、高等学校の入学試験を受ける資格がある。そういうことになると、それが学力で通ったとする、学力は優秀だったとする。そうすると、中学時代の内申書なんてないのです。中学に行っていないのですから、内申書なんてないはずだ。そうなると、そういう者に対するあれは試験の成績だけでいかざるを得ない。入学試験の成績だけで、学力検査だけでということと、この問題とが私はやはり同じ問題になると思うのです。だから、こういう場合に内申書なんてそんな重く見るのは間違っている、こう思うのですが、どうですか。ちょっと思いついたので、それとの関連で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/72
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073・西崎清久
○西崎説明員 いま先生のおっしゃいました中学校卒業程度認定試験、就学の猶予、免除者に対しての制度がございます。これは制度の出発当初の趣旨は、就学猶予、免除を受けて、そして自分で独学でいろいろ勉強しておる、そういう方が検定中学校卒業という免状がほしい、必ずしも高等学校に行くということを目当てではないけれども、中学校卒業程度ということの一つの資格の免状をもらって、そして自分の努力の成果を認めてもらいたいということがいろいろ希望としてございまして、私どもとしては、それだけの制度ではいかがかということで、高等学校入学資格という点で中学校卒業程度を押えるというふうな形にしたわけでございます。
しかし、現実問題としましては、先生おっしゃいますように、中卒認定試験を受けて、からだがよくなった、そして高等学校を受験したい、これはりっぱに入学資格があるわけでございます。そのときの高等学校の入学試験の扱いは、いろいろ考え方があると思いますが、たとえば浪人の方が高等学校の入学試験を何年かして受ける場合には、何年か前の内申書を現役の人の内申書と同等に扱うかどうかという点は、各県でいろいろなくふう改善を加えているはずでございます。いわゆる浪人の人の内申書をそのままその人に専属したものとして、何年たってもレッテルとして扱うことは好ましくないというようなことで、内申書の扱いについては、その点いろいろと加味しているということが県においてもあるのではないか。これは埼玉県に限りませんが、埼玉県が幾らかということは別として、それと同じような意味で、中卒認定の人が五科目しか認定を受けていないのですけれども、このあとの高校入学を判定するに際しては、内申書がないわけですから、五科目だけの成績にプラスして、他の中学で履修すべき四科目については別途何らかの試験をやるのか、あるいは面接等でそれについての補いをするのか、あるいは別の形で判定資料をとるのか、これは扱いとしてあろうかと思うわけでございます。したがいまして、中卒認定試験に合格した者について体育がないがゆえに、それとの関連で、中学校における身体障害者の体育の評価というものがいかがあらねばならぬかという直接の関連では私どもとらえておりませんで、それは入学試験におけるそれぞれの把握なり取り扱いの問題ではないだろうかというような考えを持っておるわけでございます。
非常にわかりにくい申し方をしてたいへん申しわけありませんでしたが、実情としてはそういうようなことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/73
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074・畑和
○畑委員 時間が参りましたから、ひとつ次官から答弁してもらって、それでなにしましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/74
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075・渡辺栄一
○渡辺(栄)政府委員 いろいろ御質問のお答えをしている間におきまして、文部省の考え方も大体御理解いただけたのではないかと思いますが、埼玉県の場合、やはり他の学校におきまして、過去におきましても血友病の生徒あるいは筋ジストロフィーの生徒等も入学しておるようでございまして、現に勉学をしておると聞いておりますので、これは身体障害者であるからということではないだろうというふうにわれわれは考えておりますけれども、今後の考え方につきまして、いま再度お話がございましたけれども、私どもとしては、高等教育の普及並びに教育の機会均等というような立場から考えまして、志願者をできるだけ多数入学させていきたい。そういう意味で都道府県、学校等も努力をしておるわけでございますが、特に身体障害者である志願者への配慮というものにつきましては、高等教育を受けるに足る資質があるという判定が得られる場合におきまして、極力あたたかい扱いをすべきであるということは当然でありまして、国としてもそういう方向で、今後さらに積極的に指導、助言をしてまいりたい、こういうふうに考えております。先生の御趣旨に沿うような方向で努力をいたしたいと思っておりますので、御了承をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/75
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076・松澤雄藏
○松澤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後一時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106705206X00719711215/76
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