1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十六年十一月三十日(火曜日)
午前十時五十九分開会
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委員の異動
十一月三十日
辞任 補欠選任
塩見 俊二君 平島 敏夫君
原 文兵衛君 棚辺 四郎君
柴立 芳文君 竹内 藤男君
鍋島 直紹君 初村瀧一郎君
安井 謙君 土屋 義彦君
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出席者は左のとおり。
委員長 玉置 猛夫君
理 事
寺本 広作君
増田 盛君
占部 秀男君
河田 賢治君
委 員
片山 正英君
高橋 邦雄君
竹内 藤男君
棚辺 四郎君
土屋 義彦君
初村瀧一郎君
平島 敏夫君
若林 正武君
神沢 浄君
杉原 一雄君
松井 誠君
上林繁次郎君
藤原 房雄君
中沢伊登子君
国務大臣
自 治 大 臣 渡海元三郎君
政府委員
自治政務次官 小山 省二君
自治大臣官房長 皆川 廸夫君
自治省財政局長 鎌田 要人君
事務局側
常任委員会専門
員 鈴木 武君
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本日の会議に付した案件
○昭和四十六年度分の地方交付税の特例等に関す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
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001・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。
昭和四十六年度分の地方交付税の特例等に関する法律案を議題とし、これより質疑を行ないます。
御質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/1
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002・神沢浄
○神沢浄君 私は四十六年度分の地方交付税の特例等を中心にした一連の地方財政措置についてお伺いをしていきたいと思うのですが、その具体的な質問内容に入る前に、ちょっと基本的な考え方を先に——大臣おられぬようだから次官にお伺いしておきたいと、こう思うのですが、私、今回のこの措置を一覧して感じますことは、一応当面の問題に技術的に対応した苦心の点についてはわかるような気もしますけれども、しかし地方財政の問題というのはいまきわめて深刻でありまして、当面の技術的ないわば継ぎはぎ対策みたようなものだけでは、これはもう解決にならないのではないか、こんなふうに考えられるところであります。何となれば、今日地方財政が直面をしておる問題というものは、ドルショック等による経済変動の結果、いわゆる現象上の危機と、こういわれておるものももちろんあるわけですけれども、しかし、同時に、地方財政そのものの根本的な問題は、ドルショックによらずとも、ドルショック以前からすでに景気停滞などの中でもってそれぞれ病根といいますか欠陥といいますか、こういうものが露呈をされてきておりましたところの財政不安、それに加えて、これはもういま地方自治体の共通したところの悩みでもあり苦情でもあるわけなんですけれども、国の政策のしりぬぐいというようなことを、これはもうどうしても避けられないような仕組みになっているわけです。たとえば公害の問題あるいは過密過疎対策の問題とか、交通災害や清掃、保健、消防、いろいろな点について国の政策が推し進められれば推し進められるに従って、そのしりぬぐい的なものがみんな地方行政の中へしわ寄せをされていく。こういうような状況のもとにあり、したがって、いま地方財政というものは多方面にわたって財政需要というものが増大をしてきておる、こういう状況であろうかと思うわけであります。
これは何によって起こってきておるか。やはり一つは今日の地方財政制度上の欠陥、不合理というものがあるようであります。それから繰り返してまいりましたように、国の地方財政政策というものがやはり根本的な不合理性を持っておる。そういう地方財政そのものの本質的な問題というのがその土台にありますから、したがって、その土台にある問題と、ドルショックなどを中心にした経済変動によっていま目の前に現象的に出ているものとがそれぞれ相乗的にからみ合って、地方財政の本質的な危機とでもいいますか、そういうようなものをいま私どもの目の前に現出をしてきておるのではないか、こんなふうに考えられると思うわけであります。私は今度の措置などを検討するにあたりましても、当たらない例になるかもしれませんけれども、今回のこのドルショックというのが、たまたま地方財政の体質にちょうど当ててみたレントゲンの透視みたいなものであって、これによって今日の地方財政が持っておる欠陥とか弱点とか、まあ病気にたとえれば、その病因、原因というようなものを非常に端的に浮き彫りにしてきておるのではないか、こんな感じがしてならないわけです。
したがって、この際、この地方財政問題というものに措置をしていこうというのは、ただ単にこの目の前の現象に対してびほう策を講ずるだけではこれは問題解決にならぬのじゃないか。やはりいま指摘をしてまいりましたような地方財政そのものが内包しておる本質的な欠陥とか、あるいは弱点とか、こういうようなものをいわゆる政策に根本的に解決をしていくような方向をもって、そういう考え方の上に立って当面の問題をも措置していかなければこれは解決策にならぬのじゃないか、こういうような感じを強く持っておるわけなんですが、この根本的な点についてひとつ次官の所見をまず伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/2
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003・小山省二
○政府委員(小山省二君) いま御指摘になりましたような地方財政が内蔵しておる弱点と申しますか、それはやはり地方の自治体が財政需要の自主財源と申しますか、それが確立されておらない。要するに、地方交付税によって地方の財政需要をある意味においてはまかなっておる国の方針に、勢い地方が追従せざるを得ないというようなところに問題点があるのではないかと、また先生の御摘もその辺を御指摘されておるのではなかろうかと思います。したがいまして、私どもとしてはできるだけこの自主財源の確立という基本的な方針に沿って、逐次そういう方向に沿うように財源の確立をはかってまいりたいということで鋭意努力いたしておるのが現状でございますが、まだ十分にこれらの目的を達し得ないという現状に対しては、たいへん遺憾ではございますが、将来ともそういう方向で善処をいたしてまいりたいという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/3
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004・神沢浄
○神沢浄君 それは、その考えのほどは理解できるんですけれども、そうなってまいりますと、今回の措置というものの内容については、いまのお考え、あまり生きていない。こういうようなことを実は率直に感ぜざるを得ないわけでありまして、そこで若干具体的な問題に入ってまいりたいと思うのですが、まず地方債の問題、これは局長さんのほうからひとつお願いをします。
地方債の問題については、第一点として、地方税の減収を地方債をもって補てんをするという、こういう方針がとられているようであります。この問題について、まず第一に、私は一つの疑問を持つのですが、これはいわゆる地財法そのものに、少なくとも条文などは解釈いかんでいろいろな説明もつくかもしれませんけれども、まあ条文ももとよりでありますけれども、大体地財法の精神にこれは抵触している点はないだろうか、こういうことが言えるんじゃないかと思うわけであります。これは地方税の減収ですから、端的にいえば明らかに赤字です。赤字を原因にしたところの措置として、これを地方債でもってまかなわせるというこの指導のあり方というのは、どうも自治省自体が地財法の精神というものをじゅうりんした方針をとっている。こういうように感ずるのですが、まずその点をひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/4
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005・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) 地方税の減収に対して地方債をもって減収補てん対策に充てておるのじゃないかという御指摘でございますが、何と申しますか、この説明をわかりやすくするという意味で実はそういう言い方をしておるわけでございますが、厳密にはただいま御指摘になられましたように、地方財政法はそういった歳入欠陥補てんのための起債というものは認めておらないわけでございまして、私どもが一般に地方税の減収千三百三十四億に対する対策として、この起債と申しておりますのは、その間にもう一つ実はクッションがあるわけでございまして、結局この建設事業に対して起債をつける。それによりまして、一般財源を充当いたしておりましたものを、そこで財源の振りかえをする。こういうことで回り回って地方税の減収補てんになる、こういうことを考えておるわけでございます。
それだって、結果的には歳入欠陥補てん債ではないかと、こういうおしかりを受けるかもしれませんけれども、もともとこういう考え方をとりましたのは、御案内のとおり、もしこれが年度開始前に地方税の減収というものがございましたならば、あるいはそれに見合っての歳出というものを切り詰める、あるいは起債をふやしまして、いわゆる建設事業についてはできるだけ起債でまかなう、こういったような所要の措置が講ぜられたところであろうと思うわけでございます。ところが年度中途、しかも、それも半ばを経過いたしましてからこのような急激な税収の落ち込みということになったものでございますので、いまさら歳出を切り詰めるわけにはまいらない。歳入の面でそれだけの所要額を確保するということでございますれば、やはり建設事業に対して一般財源を従来充てておりましたところに起債をつけてやって、その一般財源を浮かしてやる。こういう措置よりほかにちょっと措置はございませんものですから、そういう措置を講じたわけでございまして、ある意味におきましては、昭和四十年度におきましても同様の措置をとったわけでございまして、その措置にならったということも言えるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/5
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006・神沢浄
○神沢浄君 いまの御説明の中で昭和四十年度の問題が話されたけれども、この点については私もやっぱりあとでちょっと触れてみたいと思っておりますが、しかしいま説明をお聞きしておりましても、ちょうど大風が吹いたらばおけ屋がもうけたというような話と同じようなことで、何かやっぱり法律の解釈そのものにはこれはぴったりしないですよね。やっぱり法律というやつはそんなに持って回して、大風が吹いておけ屋がもうけるという式であってはこれはならぬと思うわけでございまして、しかも地方財政というものの健全性を保持していくという特に指導の責任のある国の立場からすると、この法律の解釈などはもっとやっぱりどんずばりというか、どこからも疑義が起こらないような指導をしていかなければこれはおかしいんじゃないか。いま御説明がありますように、地方債というのは、やっぱりその地方公共団体の独自の建設事業をこれは目的にしておるんでしょうから、そういうことと、税の減収によるものへの穴埋めといいますか、補てんというものとは、これはもうまるきり、どうこじつけてもつじつまの合っていかないような問題なんで、そういう点がどうもまだぴんとこないんですね。くどいようで悪いかもしれませんが、もう少しわかりやすくひとつ説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/6
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007・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) 端的に申しまして、この一千億の起債というのは建設事業に充当されるわけでございます。で、ただその結果といたしまして、いままで一般財源をもって建設事業の財源にしておったものが、起債が入ってまいりますのでその一般財源が浮く。それが回り回りまして減収対策になると、こういうことでございまして、地方財政法の解釈、運用といたしまして、建設事業に起債を充てる、その原則というのはみじんも動いておらない。無理な解釈をしておるわけでも何でもないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/7
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008・神沢浄
○神沢浄君 この問題はまたあとから触れてみたいと思います。
同じ地方債で、今回の場合、公共事業への地方負担というやつを地方債でもってまかなわせるというんですが、この公共事業というやつは、これはもう明らかに景気変動のこの情勢に対する国の景気対策ですね。国の景気対策によってそういうところの地方負担というのをこれを地方債でまかなわせる。この結果というのは、やっぱりこれは借金の一つですから、地方財政を圧迫していることはこれはもう免れないところと思うわけであります。そういう点から考えましても、やっぱりこれはもう憲法が保障しておる地方自治の本旨というようなものを国の政策の影響、結果というものが左右しておるという、こういう矛盾がまあ出てくると思うわけなのでありますから、したがって、この点についてもやっぱりこれはもう地方財政法に規定するところのものに何か著しく抵触するような感じがしてなりません。それらの点についてもひとつ説明を受けたいと思います。
それからもう一つの問題点としては、こういうふうな考え方が今後も発展をしてまいりますと、国の政策が結局地方のその自主性というか、自治の本来性というようなものを拘束をしていく、まあ結局は地方自治が国の政策に隷属をさせられていく。自治を守っていくために一番大切な何といいますか、地方の中央への隷属性というようなものをこれは排除していかなくちゃならぬというのが自治省あたりの指導方針の根本なんですけれども、そういう点と全く逆行するような感じがしてならないわけですが、その点についてもひとつ所見を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/8
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009・小山省二
○政府委員(小山省二君) 今回政府が景気浮揚対策の一環として行なっております公共事業につきまして、これが地方の財政を圧迫するというような面については私どもも十分配慮しなければならないと思っておりますが、公共事業そのものが地方の自治体にとって決して無縁のものでない、地方住民にとっても非常な影響のある事業でございますので、私どもはある意味において、景気浮揚対策として取り上げない場合においては、それぞれ地方自治団体が独自な立場で公共事業を積極的に行なわなければならぬと、こういう意味からも考えてみます場合においては、ある程度この受益を受ける地方自治団体においてもその負担の一端をになうということは、まあある意味においては最小限度やむを得ない処置ではなかろうか。かような考え方に立って、今回の公債によってこれらの公共事業を処理しようというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/9
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010・神沢浄
○神沢浄君 あまりいま私もよくわからぬけれども、まあそれでこの地方債問題というやつを私もこれいろいろ調べてみたんですが、第十一次の地方制度調査会の答申というやつがございますね。これの中に「次に掲げるような観点から、明年度以降は継続すべきでない。」と、こうまあはっきりうたってありまして、そうしてそれに続いて、「地方債は、過去において苦い経験をなめたように、公共事業等の半ば義務的な地方負担に対して、財源補てん的な意味において発行されることは適当ではない。地方債は、本質的には、各団体の特性に応じ、単独事業や公営企業等のような本来地方債をもって財源とすることが適当である事業について積極的に発行さるべきものである。」、それから、まあ若干飛ばしますが、「財源配分を行なうにあたっては、国は、特別事業債のごとき措置によることなく、地方団体に配分すべき財源を、一般財源をもって措置すべきである。この場合国税の減税に伴う地方交付税の減収に相当する分については、地方交付税の率の引上げによって補てんすることが適当である。その他の所要財源については、たとえば、特例交付金のごとき措置によって配分されることが適当である。」、こういうような答申がされておりますですね。で、さらに特別事業債ということばが使われておるけれども、これはまあその際の措置の用語だっただろうと思うのですけれども、「特別事業債は、従来地方交付税制度によって一般財源によって措置されてきたものに代えてとられたものであり、このような応急臨時の措置により地方の既存の一般財源を削って将来への負担を残すことは、地方財政の本質および現況にかんがみ、適当でない。」、こういうふうになかなかはっきりと調査会の答申というものはその方向というものを示しているところなんですね。こういうようなきわめて明瞭な考え方が示されているにもかかわらず、今回政府がとった措置というのは、この答申には全く沿っていないというか、全然この答申の考え方というものは生かされていない、こういうことになると思うのですが、あとからこの交付税の問題などについてもお聞きしたいと思うんですけれども、まず第一に、この調査会の答申は今回の場合は全く尊重されなかったかどうかという、こういう点についてお聞きをしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/10
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011・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) 昭和四十一年度の地方財政の非常に窮乏いたしましたおりに特別事業債というものをいま御指摘になりましたように出したわけでございますが、これは結局交付税がふえない、地方税もふえない、そういう状態の中で地方団体の財政需要というものをまかなってまいりますために、結局この地方債を大幅に増額いたしまして、交付税の基準財政需要額の中の投資的な経費に当たる部分の相当額のものを振りかえたことがございます。それに対しまして、ただいまお読み上げになられましたような地方制度調査会で御指摘をいただいておるわけでございます。今日の事態、年度中途になりまして巨額な財源不足を生じてまいったわけでございまして、それに対する財源措置ということで私どもも苦慮いたしたわけでございます。
確かに、御指摘になられますように、これがもし普通の状態と申しますか、でございましたら、公共事業をまかなってまいりますためには地方税、交付税の一般財源、それに地方債、こういうものがまざり合いまして公共事業が推進されてまいるわけでございますので、それに対しまして、いまの交付税なり税なりというものは、ふえるどころかむしろマイナスが立つ、こういう状態のもとで、結局この財源としては地方債以外に見出すことができない。
かってのように、国に財源がございまして地方に財源がないということがございます状態でございますと、国から一般財源というものを、それに見合うものをよこせ、こういうことも言えるわけでございますが、御案内のとおり、国のほうも国税の落ち込み、所得税の減税、こういうことでやはり八千億に近い国債を追加発行するという事態のもとでございますので、結局、国、地方を通じての財政の運営ということを考えてまいりますというと、やはりこの際のまさに応急の措置ということになろうかと思いますが地方債を全額充当する。ただその場合に、後年度にやはり財政負担を残すものでございますから、その中の約八割に相当します千二百億につきましては、政府資金を充当することによりまして、利子負担の軽減をはかる、こういうことで措置をいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/11
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012・神沢浄
○神沢浄君 そうしますと、答申の精神というようなものは尊重しなきゃならないわけですけれども、今日当面しておるところの国、地方を通じての財政のきわめて困難な情勢の中で、地方債を充当させるようなこの方針をとらざるを得なかったというか、余儀なくとったというか、こういうふうに受け取ってもよろしいわけですか。したがって、その際であれば、やっぱり答申の中でもって指摘をしておりますように、本来一般財源をもって措置すべきである。一般財源をもって充当できるような措置をすべきである。こういう点からいたしますと、今回の措置がやむを得ず余儀なくとった措置であるとすれば、やはりこの地方債については、これはもう元利ともやはり政府が保証していくような、国がこれを措置をしていくような方針というものをとらなければ私はその考え方というものが生きてこない。技術的にはこういう方法をとったといたしましても、しかし実際には政府がめんどうみていく、こういうようなことでなければこの考え方というものは生きてこない。これではただ自後地方財政を困難にしていくような、非常に窮屈にしていくようなままでもって無責任に措置しているということにならざるを得ないと思うわけでして、そういう点についてはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/12
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013・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) これは率直に申しまして、私はかなり意見のあるところでございます。と申しますのは、公共事業についてこの元利補給をするということは、結果的には全額国が金を持って地方の公共団体の、あるいは住民の利便に供されるような公共事業というものを全部やる、こういう形になるわけでございます。公共事業の考え方もいろいろあるわけでございますが、やはりそれによって受益をしますものは、先ほど政務次官も申しましたように、むろんこれは地域住民でございますし、地域社会を離れて公共事業というものはあるわけではございません。これは釈迦に説法めいて恐縮でございますが、でございますから、それに対しましてはやはり国の地方との負担割合というものは、たとえば一方が七で片方が三、こういったような割合になっておりますけれども、やはり国と地方とが金を出し合って、そういった意味で社会資本というものを整備していく、これが公共事業の性格だろうと思うわけであります。
したがって、それに対するやはり財源としては地方団体の交付税、先ほど申しました交付税、地方債、こういったものがそれぞれまざり合わされまして財源措置がとられておるわけでございまして、それを全部国からの財源でまかなう、こういうことになりますというと、ちょっとやはり公共事業というものの性格なり、あるいはそれに対しまする従来からの財源措置と申しますか、というものの考え方と少し異質なものになってくるのじゃないだろうか。したがいまして、地方団体が負担をするということは当然の前提としてそれを立てまして、それの場合におきまして全額地方債を充当するということになります。その場合の利子負担を結局利子補給にかえまして、政府資金というものを八割まぜたということでございまして、私ども元利補給までを国がやるべきだというのは少し行き過ぎではないだろうかという感じを、率直に申しましてそういう感じを持っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/13
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014・神沢浄
○神沢浄君 確かに一つの意見だと思います。そういう点でもって、その点についての理解というようなものはできるように思うのですが、ただ問題点は、もちろん国だけの事業ではなしに、受益の立場は地方にもあるわけですから、地方が負担をするという考え方まではいいと思うのですが、しかし、それを地方債をもってやるということになると、明らかに地方財政というものは大きな将来にわたるところの負担というものが生ずることになるわけです。
したがって、そこでやはり交付税の問題というものがいやおうなしに出てくるのじゃないかと思うのですが、交付税というのは、これはもうわれわれの承知するところでは、やはり地方の固有の財源だという、こういう考え方に立つわけですから、したがって借金をさせるということよりか、むしろ交付税率の引き上げその他を中心とする、地方がやはり地方固有の財源の中でもって負担に応じられていくというような、こういう措置こそ望ましいのではないかというふうに思います。したがって、何か交付税については四十年前後の景気変動の際に引き上げが行なわれているようですが、今回の場合はどうして交付税率の引き上げという措置がとられないのかという点に入っていきたいと思うんですけれども、まずはその点の説明をひとつお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/14
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015・小山省二
○政府委員(小山省二君) 今回の交付税の問題につきましては、御存じのとおり年度半ばのことでございまして、交付税に対する配分もすでに決定をされておるようなときでございますので、したがいまして、特にこの国税の減収に伴う交付税の不足分については、これは補てんをすることといたしたわけでございます。また政策減税によるところの国の責任における減収分に対しては、これは政府の責任においてこの減収分を補てんする。こういうふうな処置によりまして、一応定められた交付税のあれを確保するということについては、まあ自治省といたしましてもできるだけ配慮をいたしたつもりでございます。
将来、交付税をどの程度配分するかというような問題については、来年度の予算編成とからめまして十分ひとつ大蔵当局とも協議をして、できるだけ交付税率の引き上げ方については私どもも努力していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/15
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016・神沢浄
○神沢浄君 いま来年度の話が出てきたわけですけれども、私はいまこうやって当面の措置をかりに提案されておるような形でもって済ましていったといたしましても、これはもう次年度の情勢というようなものを考えますときには、これは全く私は目の前の継ぎはぎ、びほう策にしかならないのではないかというような感じがしてならぬところでして、ちょうどいま次官から来年度の問題にちょっと言及がありましたから、局長さんからでもいいですけれども、いま地方自治体でも次年度情勢というものを非常に不安にも感じ、憂慮しておるところだと思うのですが、ひとつ次年度の見通しといいますか、特に四十七年度における予算編成の方針の中で地方財政が置かれる立場、それから地方財政計画の一番地方が苦にしておる歳入の点についての見通し、こういうふうなものについてちょっと聞きたいと思うんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/16
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017・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) ただいまの段階におきまして、明年度の景気の動向というものを予測することは非常に困難でございます。率直に申しまして、通貨問題あるいは米国の輸入課徴金の問題、こういった点についての見通しも全然つけられない状態でございますので、そういう前提での景気動向の予測というものは非常に困難でございますが、幾つかの仮定を置いて私どもまた大蔵省でも試算をいたしております。で、先般政府の税制調査会で、大蔵の主税当局は、来年度の国税の自然増収四千百億という数字を申しております。その席上において私どものほうの税務局長は、明年度の地方税の自然増収三千億ということを申しております。これはもちろん、いずれも減税前、制度改正なきものとしての現行制度による税収でございます。そこで地方税、譲与税含めまして三千億、それから国税四千百億ということでございまして、その自然増収の中にはこの国税三税以外の、たとえば自動車重量税の自動増収、こういったようなものも含まれておるようでございますので、この国税三税に対応いたしまする交付税の増といたしましては、千二百億程度しか見込めないのではないだろうか。そうしますというと四千二百億、これが税それから交付税の増収の現在の段階における見通しでございます。それに使用料とか手数料とか、その他の雑収入の増というものをせいぜい織り込みましても、おそらくいまの数字が、四千二百億が五千億に達するかどうかというところであろうと思います。
他方、歳出のほうでございますが、歳出のほうは現在の人員のままで、地方財政計画で組んでおりまする人員で、一切増を見込まない前提で給与関係経費の増だけで四千三百億ございます。でございますから、結局、明年度の税と交付税は完全に給与関係経費と見合って消えてしまうと、そうしますというと、あと社会福祉関係の経費の増、それから公共事業の増、それからここ数年来、私どもの特に力を入れておりますところの景気がよかろうが悪かろうが地方団体として早急に整備をしなければならぬ生活関連の社会資本の整備ということで、いわゆる単独事業というものを非常にふやしておるわけでございますが、そういったものを大体前年並みの伸びということで見てまいりますというと、やはり一兆五千億ぐらいの歳出の増ということになります。で、これはもちろんいまの給与関係経費も含んでございますが、一兆五千億の増に対しまして、財源といたしましては地方債を除いて五千億しかない。でございますから、一兆円の財源不足というものがいまのところはどのように計算をしても見込まれる。こういうことでございまして、これはまあ地方財政といたしましては未曾有の巨額な財源不足ということでございまして、私どもこれは非常の措置をしなければ地方財政に取り返しのつかない禍根を残すおそれがあるということで、非常なそういった意味での危機意識と申しますか、切迫した感じで明年度の地方財政対策というものに取り組んでまいりたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/17
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018・神沢浄
○神沢浄君 大体見込まれる増収が五千億、歳出増が一兆五千億、差し引き一兆、これはどうしても足らなくなる、こういうことのようであります。何か地方財政に関心を持っておるような方面の見通しなども、大体その辺にまあ各方面とも一致をしておるというようであります。
そうなりますと、今度は次年度の地方財政のやりくりを自治省としてはどういうふうに指導をされていこうとしておるのか。先ほども地方債の話でもって若干お聞きをしたのですけれども、そうなりますと、やっぱりその中でもって次年度の対策の中で占める地方債の比重というものもかなり大きなものになる。そういうことになってまいりますと、極端な言い方をすると、これはもう地方財政は地方債で身動きの取れなくなるような方向というものが出てきておる。地方自治の本旨も何もあったものじゃない。ということは、とりもなおさず、さっきも若干触れたわけなんですけれども、私はいま景気変動云々といっても、これは国の政策の結果だといわれると思う。あるいは景気刺激対策といっても、これはもう明らかに直接的な国の政策、そういうふうな国の政策の結果を受けて、地方財政が全然身動きがつかなくなって、地方自治体の、これがなくなってしまったら自治体はもう骨抜きですけれども、財政上の自主性というものは全くなくなってしまうような非常な危険の状態というものがいま目の前にあるのではないかと思うわけであります。そういう点からしても、冒頭次官の御意見もそのためにあえてお聞きをしておいたわけなんですが、私は今回の措置についても、やはりいまお話がありましたような、きわめてこれはもう地方自治体有史以来の危機とでもいうような——オーバーな言い方になるかもわかりませんか——次年度情勢というものも控えておる今日、やはり地方自治体の自主性が守られ、根本的な打開策がとられていくような、ちゃんとそういう芽が出ておるような措置でなければ、今次の措置というものも私は全く意味ないんじゃないか、こういうふうに考えられると思います。
そこで、先ほど次官もちょっと触れられましたが、次年度対策にまで続いていくこの上におきましては、交付税の問題ですね、交付税率の引き上げを含む問題等についても自治省としてははっきりそういう方向を持っておられるのかどうなのか。それから、いまの地方債などにつきましても、これ以上自治体に背負わしていっていいのかどうなのか、こんな点も含めてちょっと考えを聞かしていただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/18
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019・小山省二
○政府委員(小山省二君) まだ交付税率の変更等については、自治省として決定されたわけではございませんが、国の明年度の財政規模がどの程度になりますか、また税収等の見込みによりまして、国の税収が景気回復がおくれて大幅な減収を見るようなことになりますると、交付税率を多少引き上げたとかりに仮定しても、地方の財政需要をまかなうような収入増とはなり得ないような感じがいたすわけであります。したがいまして、私どもとしては来年度は相当きびしい環境のもとに置かれるということはもう十分考えなければならない問題でございます。したがって、地方団体の行財政を通して一そうのひとつ合理化が要請されるようになるというふうに考えておりますが、しかし、いずれにしても現状のままで地方財政をまかなうということはこれは許されませんので、何らか独自な地方財源の確保をはかっていかなければならないというふうに考えておりますが、具体的にいまだこういう方法で地方財源の確立をはかるというところまでお答えできる段階に至っておりませんが、できるだけ早急に自治省としてもそういう考え方を取りまとめまして、明年度の予算編成に対しては万全を期してまいりたいというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/19
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020・神沢浄
○神沢浄君 局長、どうですか、この地方債の問題、一番引っかかるところなんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/20
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021・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) ただいま政務次官からもお答え申し上げたわけでございますが、この来年度の巨額な財源不足というものをどういう手段で埋めていくかということになりますと、これはもう御案内のとおり、結局交付税で措置をするか、それから税で措置をするか、それから公債で措置をするか、結局この三本柱のコンビネーションと申しますか、組み合わせということになろうと思うわけでございます。で、その場合に、やはりこの建設事業に充てますところの財源といたしましては、率直に申しまして、ある程度地方債の増額ということもこれは予定をしなければなるまいというふうに考えるわけでございます。
御参考までに申し上げますというと、現在この歳出の中で地方債が公債費に占めておりまする割合、地方債の元利償還に充てまする財源の、支出額の占めておりまする割合をとってみますというと、都道府県が四十五年度の決算まで出ておりまして、市町村があと数日で決算が公表できる段階になると思いますが、都道府県が四十五年度の決算で三・四%でございます。それから四十四年度の決算になりますが、都市が六・八%、町村が五・四%、こういう状態でございまして、私ども公債をもって財源措置をする場合の一つの目安といたしましては、この歳出の中に占めますところの公債費というものの割合と申しますか、これを一つの目安に置きまして、たとえばそれが、いまここで数字を申し上げますことはちょっとまだ研究不足でございますが、あるパーセントまではある程度公債を発行しても財政に累を及ぼすということにはならないのじゃないかという一つの安全なラインを引きまして、それまでのところはある程度地方債を充実するということも考えていいのじゃないだろうか。ただその場合に、これはあくまでも平均値でございますから、団体ごとに財政力の比較的強い団体と、それから弱い団体とあるわけでございますので、その間におきまする地方債の張りつけ方につきましては、やはり団体の財政力その他の実情に応じた配分というものを考えてまいりたいということで、全体的には明年度の財源対策としての地方債の取り扱いについては臨んでまいりたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/21
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022・神沢浄
○神沢浄君 問題がまた返りますけれども、今度の措置の中でもって給与改定のほうの財源として、経費の節約が百五十億、これはもう全体の額の約二〇%ぐらいになっているようでありますが、一つの問題点は、今日の地方の行財政の現状の中で、経費を節約しろといっても経費節約の余地があるかどうか。何か同じようなことの繰り返しになって恐縮ですが、やはりいま地方におきましては国の政策のしわ寄せといいますか、たとえば不況になって国が不況対策をとれば、それに対応してやはり地方も不況対策を当然とらなければいかぬし、また、ただ国の政策の関連でとるだけでなくて、まあ国の場合はこれは間接的ですから、ある程度机の上でもってまとめた一つの方針、施策を遂行するというのみで済むかもしれませんが、地方の場合は、目の前にその業者の倒産を見て、あるいは、もう滞貨をしてほんとうに困難しきっておるような、こういう実態というものを見ますと、地方自体でもってやはり独自の不況克服対策というようなものをこれはとっていかなければならぬようなところへいま追い込まれてきておることは現実です。ごみ片づけの問題にしても、あるいはふくそうしておるところの交通安全の対策にいたしましても、国が手をかさなくても地方におきましては、いわば国の政策の中の地方がやらなければならないというか、別な言い方をすると、しわ寄せを食っておる。そういう立場からして、すべてそれをやらなきゃならないのが地方自治体の立場だと思うわけです。国とはそういう点においてかなりの相違があると思うんです。それがやっぱり同じ方式で、国で節約方針をとって、同じように地方においても節約方針をとらせると。考え方としてはあり得るけれども、現実に今日地方の行政の中で節約をしろといっても実際可能かどうかというような点が、はたして自治省においても十分検討された上でもってある程度の一つの見通しを持ってやっておられるのかどうなのか。ただ単に一つの措置、計画の一環として、そして勘定を合わせるというか、こういうふうなことでやられておるのか、私などにはそういう点が非常に疑問に思えてならぬ点ですし、また地方自治体の側から聞いてみますと、これは不平たらたら、苦情一ぱいというようなところが実態だと思うわけです。
したがって、もしここで地方の実態にそぐわない方針を押しつけていくということになりますと、いわば自治の低下はもとよりのこと、たとえば必要な経費なども削減をしなけりゃならないというような事態も起こってくるし、ひいては、そのことは住民サービスを低下をさしてしまうというふうなことになりまして、きわめて自治の低質化をもたらしてしまう、こういう危険が大きくあると思うわけであります。そういうような点について、大体この節約の方針をとられますが、地方における推定される節約の内容というと、どういうふうなところが節約できるか。そしてその点については、自治省の把握しておる点では、自信を持って指導できるというふうな点があるとすれば、どういう点であるかというようなことについての説明をほしいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/22
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023・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) この給与改定財源の問題でございますが、これは御案内のとおり、この交付税をもらっておりまする団体、もらっておりません団体、全部で二千五百七十一億所要額がございまして、すでに当初におきましてこの措置をいたしておりますものが千六百七十億ございまして、その残りが九百一億、交付団体でございますと七百億ということでございます。したがいまして、この節減の額を御判断いただきます場合は、根っ子になりますところの二千五百七十一億なり、あるいは交付団体の千九百八十億、約二千億あるわけでございますが、これをベースに置いて御判断をいただきたいというふうに思うわけでございます。
それから第二点といたしましては、その節減をかける対象といたしましては物件費と維持補修費、これに限定をいたしておるわけでございます。御指摘になられましたような人件費、あるいはこの社会福祉系統の経費、そういったいわゆる住民サービスにつながり、あるいはこの不当な人員整理と申しますか、そういうことにつながるような節減というものはもちろん考えておらないわけでございまして、で、私どもがこの節減を可能であると判断をいたしましたのは、この物件費におきまして、地方財政計画上この物件費、維持補修費合わせて三千六百六十三億というものを見込んでおるわけでございますが、この三千六百六十三億に対しましての節減等を予定いたしております額が百六十五億ということでございまして、まあ割合にいたしますと四%でございますので、この程度のものの節減は可能ではないだろうか。また、むしろこれだけ財政が逼迫をしておるときでございますから、積極的な節減のための努力というものを地方団体においても積極的にやるべきだ、そういうことによりまして、できるだけこの対住民サービスのほうに余力を振り向けていくべきだ、こういう判断も実は私どもいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/23
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024・神沢浄
○神沢浄君 ちょっと異論があると思うのですけれども、時間の関係もあるようですから……。
もう一つ、地方税の減収の埋め合わせに積み立て金を取りくずせ、こういう措置がとられておるようですが、三百三十四億ですか、これも私は国の指導方針としては地財法の精神に抵触しやしないかというような疑問を持つわけであります。というのは、積み立て金、これは地方財政の健全性を確保せしめるというのが主要な目的だろうと、こう思うわけですが、そして、たとえば緊急不可欠な住民のための建設的な仕事などの場合にはこれは取くずしてもいい、こういうようなこと。あるいは前年度の赤字に対しては埋めてもいいというようなことがありますけれども、今回のやつはまだ前年度の赤字ということにもならぬでしょう、経過中のことですから。それからもう一つは、その赤字そのものが、繰り返しになりますけれども、やはり国の政策の中でもって必然的に生じてきておる赤字ですから、こういうものを対象として積み立て金の取りくずしというような方法をとっていいのかどうか。極端に言えば、先ほどお話ありましたように、来年度は一兆くらいはもう明らかに足らぬようになってしまう、また取りくずしをやるというようなことになってくると、せっかく地方自治体が苦労をして財政の健全化のために積み立ててきたものを、目前のそのような国の政策に基づく理由によって地方財政の健全性をそこなっていくというような、こういうことになりかねないのでありまして、したがって、そういうふうな点から、やはり私はこの措置も地財法の精神には著しく抵触していくのではないかというような考え方をしておるわけなんですが、その点の見解をひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/24
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025・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) 地方財政法の第四条の四におきましては、第一号に「経済事情の著しい変動等により財源が著しく不足する場合において当該不足額をうめるための財源に充てるとき。」は積み立て金を処分することができるという条項があるわけでございます。で、私どもは、まさにこの今回の事態というものはこれに当たるのではないだろうか。御案内のとおり、昭和四十一年度から四十五年度に至りますまで——四十五年度はちょっと落ちたわけでございますけれども、大体年率一〇%台の経済成長率を示してきたわけでございまして、それによりまして地方税、交付税も順調な伸びを示しまして、その間におきまして、やはりこの資本主義経済の常でございます景気循環というものがある。そういうときに備えて財政調整積み立て金を積み立ててきておられるわけでございまして、まさに今日のような事態にこれを発動せずして、いつ発動するのかという感じすらするわけでございまして、私どもは、この際は、財政調整積み立て金というものの取りくずしということも、まさにこういうときのために積み立ててきたわけであるから取りくずされたらどうであろうか、こういう判断に立っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/25
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026・神沢浄
○神沢浄君 おそらくそうおっしゃるだろうと思ってお聞きしたのですけれどもね。私の指摘したいのは、そういうただ条文上の問題だけでなしに、このような状態の繰り返しが行なわれていけば、この財政調整積み立て金の本旨にもとってしまうんじゃないかという点をお聞きしておるわけでありますが、実は通告しました時間がもうなくなったようでありますから、最後に一つだけ次官にお伺いして終わりたいと思うのですが、まあいろいろ疑問点などをお伺いしてまいりましたけれども、集約をしてみますと、結局今回のこの措置というものは、やはり私が最も懸念をしておりましたような、当面のびほう的な意味が大部分のように思えてならないわけであります。将来にわたって地方の財政というものの健全性が確保されていくということにはつながっていないように思うのですし、しかも来たるべき新年度については、先ほど御説明がありましたような、おそらく地方自治体の迎えるところの未曽有のピンチであると、こういうようなことである限りは、ここで全く根本的な方針というものがとられなければ、これは問題の解決にはならないと思うのです。
そこでまあ大体何かあればすぐに動揺し、事あれば不安になってしまうような地方財政の現状のあり方というものはどこにあるのか、起因するのかということになりますと、やっぱりこれは確固たる自主財源というものを持っていないことじゃないかと思うのですよ。三割自治ということが久しくいわれてきているわけなんですが、三割自治ということば自体がすでに問題でありまして、そこで次官に、今回のこの経済変動によって、いま直面をしているところの地方財政のピンチ、むしろこれをひとつ積極的に取り上げて、こういう事態を契機にして、そして地方財政の体質の根本的な打開というか解決といいますか、こういうふうな点にひとつ自治省としては取り組む決意を持たれておられるのであろうかどうか。交付税の引き上げなどをはじめとして、むしろ税源の配慮等も含めて、少なくとも国と仕事は対等ですから、対等するところの、三割自治などという汚名をなくして、少なくとも、五割・五割、フィフティー・フィフティーくらいのまあ税源というものの確保ということに、ひとつこの際自治省としては取り組んでいただきたいと思うし、そういうようなお考え方を持たれるかどうかという点について、ひとつ御意見を伺って終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/26
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027・小山省二
○政府委員(小山省二君) 御指摘のとおり、私どもは地方財源の確保ということは多年の熱願でございます。しかしながら、国の財政と地方の財政とが無関係であり得るはずはございませんとおり、また国の政策と地方の自治行政というものが、ある意味においては一体化をはからなければならぬ面もございますので、私どもはそういう立場から、国全体の財政計画を通しながら、できるだけ自主財源の確保をはかるというたてまえをとってきておるわけでございます。しかし本年度のような、私どもが全く予期しないそういう要因のために経済の回復が非常におくれてきた、そのために減収が行なわれたということになりますると、かりに、私どもが年来主張をしておる自主財源が確立されておったとしても、やはりこの財源補てんには相当の方途を講じなければならなかったのではなかろうかというふうに考えております。しかし、最近、住民生活を取り巻くいろいろな環境施設というものを急速に整備をしなければならぬというような社会的な要因もございますので、私どもは、将来さらに地方財源の確保というような面については、一そうのひとつまあ努力を払って、自主財源の確立につとめてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/27
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028・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) 本案に対する午前中の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
午後零時六分休憩
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午後一時七分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/28
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029・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
本日、塩見俊二君、柴立芳文君及び原文兵衛君が委員を辞任され、その補欠として平島敏夫君、竹内藤男君及び棚辺四郎君が選任されました。
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030・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) 休憩前に引き続き、昭和四十六年度分の地方交付税の特例等に関する法律案の質疑を行ないます。
御質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/30
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031・杉原一雄
○杉原一雄君 自治省のほうもたぶん御承知だと思いますが、すぐそこに都道府県会館があって、その隣に、あれは市町村会館ですか、はっきり私は知りませんけれども、地方財政危機突破云々という大きな懸垂幕が下がっておりますし、加えて、そんなことを言わなくても、あるいはそれぞれの地方団体から四十六年度の当面する地方財政について何とかひとつめんどうを見てもらいたいというのが緊急要請として上がっておる。それは第一点として公共事業の拡大に伴う地方財政の確保の問題あるいは第二点として地方税等の減収に伴う財政措置の強化の問題、こういうことで給与改定の財源措置の問題等をも含めながら、かなり激しい強い要望が上がっておることは御承知のとおりだと思います。私はそうした地方自治を担当する皆さんの要望にこたえて、地方財政の確保を主体に、お互いにそのために知恵をしぼって相協力しながらいきたいという願望を持って、これから許された時間を質問をするわけでありますけれども、幸い午前中神沢委員のほうから、それぞれ地方交付税の問題あるいは地方債のあり方の問題、おしなべて今度の措置の問題等について詳細な質問がございましたので、私は角度を変えていま一度自治省の腹固め、今後の展望を確認したいと思うのであります。
その前に、先般の委員会であったと思いますが、自治省当局が事務次官名によって各省庁事務次官に対して出されました「四十七年度の地方財政措置について」という、通達とおっしゃったかと思うでありますが、出ているわけであります。すでに四十七年度の予算は、概算要求であろうと、およそ事務的段階ではかなりのところまで煮詰まっていると思うのでありますが、この時点で、重ねて自治省として、先般各省庁の次官等に出されたこの通達は、その中心は新聞見出し等から言えば「社会資本の整備を」とあるわけです。詳細は自治省からここにもらっておりますけれども、その線は自治省の期待どおり各省庁の予算の面にかなり具体的に実現しているかどうか、なかなか困難でしょうけれども、それを簡単にひとつ願望と現実ということで対比しながら答えをいただければ幸いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/31
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032・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) 私どもが各省庁に対しまして、翌年度の予算の編成の要求の段階でお願いをいたしておりまする基本は、もう午前中の質疑にもございましたように、国の施策によりまして地方団体に不当な負担というものが寄らないような、たとえば国の施策のために地方団体の職員数をふやすとか、あるいは施設の設置あるいはその他の補助につきまして超過負担を強いるとか、あるいは地方団体の財政運営に累を及ぼすようなことのないようにということでやっているわけであります。
で、この点につきましては、現在大蔵省で予算査定の段階でございまして、もちろんまだ外部に明らかにされた段階でございませんので、この査定の結果というものはわれわれ知り得ないわけでございますが、要求の段階におきましては、たとえば来年から実施を予定されておりまする老人医療につきまして、地方負担を最初二分の一というあれでつくっておりますのを地方団体の負担を三分の一にする、国の負担を三分の二にする、こういったような要求がございました。あるいはまたごみ、じんかい、屎尿等の処理施設につきましての補助単価、かなり現実に合っておらなかったわけでございますけれども、これの是正をはかるとか、そういった形での超過負担の解消、補助率の適正化、こういった面についての成果はあがっておるように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/32
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033・杉原一雄
○杉原一雄君 それでは次の問題提起をしていきたいと思いますが、四十年度、ちょうど今年と同様とは言いませんけれども、四十年度の地方財政についても補正の処置が年度途中で行なわれておりますし、今度はまた四十六年度の財政の補正処置が行なわれたことは、まああなた方は本省ですからよく御理解しておられるわけですが、この辺比較検討しながら、私は、日本の経済の現状と地方行財政のあり方について神沢委員からも提起があったわけですが、重ねて、今後の地方財政のビジョンと申しますか、確固たる方針を出していただきたいと思うのであります。
最初の四十年度の地方財政の補正処置をとられた時点のことでございますけれども、これは両方にまたがった質問になると思いますけれども、地方財政がなぜそうした手直しをしなければならなかったかと、つまり地方財政困窮の、窮乏の原因ですね。その当時出された「地方財政詳解」などというものもあるわけですが、それらを目を通して見ましても、非常にことば少なに、経済が不況だと、だから収入が予想より少なかったからこうせざるを得なかった。こういったようなことで大体流されているわけですが、いま一度、今度の場合と比較対照しながら、なぜ地方財政が苦しくなったか、主たる原因はお説のとおり経済の不況でありますが、経済不況ということばは同じでも、私は内容的には違うと思うのであります。でありますから、四十年当時の経済不況、佐藤さんが天下を取って二年目であります。その当時の不況の実態と、それが財政的にどのようなはね返りがきたかということと今度の場合と対比してその原因を明らかにしたいと、こう思うのであります。はっきりわかりやすく説明をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/33
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034・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) 昭和四十年から四十一年にかけましての経済の不況、したがいまして当時におきまする財政の困窮、それから今日の時点におきまする困窮というものとの間には、私ども質的にも量的にもかなり相違があるのじゃないかという感じを持っております。
と申しますのは、御案内のとおり昭和四十年の不況、これは戦後の、少なくとも最近ここ何年かのわが国の経済におきまして、一番落ち込んだ年でございまして、あの年の実質成長率は五・四%でございました。そこで四十年度には国におきましては二千六百億の歳入欠陥補てん債、いわゆる赤字国債というものを出しまして、戦後初めて国債を出し、それから翌四十一年度からは建設国債ということで、いわゆる国債を抱いた財政ということに転回をしたわけでございます。ところが四十一年の下期から経済は急速に回復をいたしまして、四十一年度は一一%だったかと思いますが、に実質成長率はまた復元をした。わりと短い間に景気のすみやかな回復、浮揚というものがありまして、あと四十二年度から一二、三%の成長率でこのまままいりまして、四十五年度で一〇%を割りまして九・八%でございます。それがここへまいりまして、改定後で五・五%というところまで落ち込んでおるわけでございますが、今回の不況と申しますのはやはり当時の不況と違いまして、当時でございますと、経済が過熱いたしまして輸入がふえて、そこで景気が落ち込むと、こういう形をたどっておるわけでございますが、今度は輸出がふえ過ぎての、いわゆるニクソン新経済政策というものによる景気の落ち込みというものがございますだけに、四十年、四十一年当時のような形でのすみやかな景気の浮揚ということがどうなんだろうかという点におきまして私ども疑問を持っております。
もう一つは、やはり当時と今日とにおきましては、財政の規模も、国もそうでございますし、地方財政でも計画ベースで規模をとってみますとやはり倍以上にふえております。これだけの大きな財政ということになりますというと、それだけ財源の不足額というものも当時と比較にならない額、あの年でございますと大体二千五百億の財源不足を生じまして、それに対する対策を講じたわけでございますが、今度はおそらくそれが一兆円の財源不足ということになるわけでございまして、そういった面からもやはり当時とは比較にならない質と量の財政上の危機であるというふうに私ども判断いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/34
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035・杉原一雄
○杉原一雄君 そこで先の場合とあとの場合、こちらは輸入超過、こちらは輸出超過、そうして外圧というふうにいまおっしゃったわけですが、そのことはそれなりに私は受け取っていいと思うのですが、その場合にもっと突っ込んでいったら、四十年はたいへん不景気だった、それをだんだん浮揚して景気回復してきた、今度はまたがたんと落ちた。こういうところは、これは人間の世の中ですから人間がつくっていると思うんですよ。そうしますと、何かそこにいまおっしゃったことよりも、もっと一皮むいて、そのネックになる問題ということで、自治省からお答えを求めるのはいささか無理かもしれませんけれども、それは経済の質なり、あるいは経済構造の問題とか、産業構造の問題とか、そういう問題等についてもある程度の洞察をしておかないと、対策は出てこないんじゃないかと実は思うわけですが、局長、そこまで触れた見解表明できませんか。先の場合とあとの場合、これ非常に違うんですよ、不況は不況でも。不況であると交付税が何でこうなって、財政欠陥はこうなるということはすぐに方程式が出てくるわけですが、その不況というものが四十年は何に起因し、現在の四十六年度では何に起因しているかということですね。この辺のところをもっと突っ込んだ自治省当局の腹のすわったところを見せてもらえませんか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/35
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036・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) どうも不勉強でございまして、そこまでの勉強を実はいたしておらないわけでございます。で、ただ私ども税収の面から、いわゆる景気の動向というものをこう見てみますというと、御案内のとおり、ことしの六月でございますからこの三月決算以降の推移でございますが、六、七、八、九月まで二月おくれでとっておるわけでございますが、この税収の動向というものを見てまいりましても、この税収の落ち込みというものがもちろんあったわけでございますけれども、年度中途、たとえば九月末なら九月末という段階で、すでに前年の調定実績を下回っておる県がことしすでに六県あるわけでございますが、このような事態というものは少なくとも四十年の時点ではなかったということは言えると思います。それが大体産業構造的に見ましてやはり大府県——東京とか大阪とか、そういったいわば工業的な先進県というところに、これはある意味において当然でございましょうが、強く出てきておるということでございまして、この財源対策という面におきましても、その辺の地域性というものも考えながら、きめこまかに考えていかなければならないだろう。不況の原因はまで突っ込んでの御答弁は、とても私ども微力をもっていたしましてはできませんので、ごかんべんいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/36
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037・杉原一雄
○杉原一雄君 私は無理なことを意地悪く聞いているわけじゃない。内外の情勢がきわめて重大な状況にございますから、ここでてこを入れなきゃならぬわけですが、てこの入れぐあいを間違うとまた変なことになるわけでございますから、地方財政の問題もまたこれとは非常に無関係ではないということで、日本経済はどうあるべきか、政治経済体制はどうあるべきかという基本論に突っ込んでいかないと、地方債が多いとか少ないとか、交付税率をこの前二・五上げたから五くらい上げようとか——これはどのくらい上げるかわかりませんけれども、しかし上げたいとおっしゃったから、あとでこれは付言いたしますが、こういうことだけでは結局解決つかない問題であると思う。
同時にまた、逆に、長洲教授あたりの提起している日本内外のこの経済情勢の中で軌道修正しろという提案の中で、やはり地方財政、地方自治はどうなければならないか、自治体行政並びに財政力の強化を大きな柱にあげておるわけです。これは私はかなり当を得た提案だと思いますから、こうした提案の根拠になるものは、やはり日本経済が今日あるその原因の問題が、長洲教授一派の学者の諸君が考えるつかみ方と自治省のつかみ方とは違うかもしれませんけれども、一応そうした問題に対するところのはっきりした洞察力を持っておらないと、大きな木が枯れかかっているからそれにこやしと水をやると、それが景気対策だということになっては困るわけですから、そうした観点からお聞きしておるわけでありますが、財政局長のほうでは不勉強というおことばで逃げておられるわけですが、不勉強ではなくして立場上言えないということでしょうね。それ以上局長を追及するのも残酷だと思いますから、これは後ほどまた御検討いただいて、そちらのほうから提起いただければと思います。
そこで四十年度の地方財政補正の措置、つまり対策と現在の対策、これは現在の対策は提案されているわけですから、ことさらあげつらう必要はございませんけれども、やはりそこを比較した場合、同じような面もあるが違った面もあるということですね。だからこれをその対策面で対比しながら、なぜこういう結果になったかといういわゆる比較の上に立って、現在の自治省が提起しているこの補正措置の問題を性格的な展望を含めて明らかにしてみたいと思うのですが、それは局長お答えいただけると思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/37
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038・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) 四十年度の対策と今回の対策との比較検討でございますが、四十年の当時におきましては、御案内のとおり、国税の三税の落ち込みに伴いまして地方交付税が五百十二億落ちました。それから地方税、譲与税が五百三十一億、減が立ったわけでございます。そこでこの地方交付税の落ち込みに伴いまする五百十二億というものにつきましては、国の一般会計から措置をいたしまして交付税の総額を減額しないこととしたわけでございます。それから地方税、譲与税の減収の五百三十一億円につきましては、百三十一億円を節減等によって措置をすることにいたしまして、残りの四百億円につきましては地方債を増額することによりまして財源振りかえの措置を講じました。なお給与改定の問題が当時もあったわけでございますが、この年の給与改定財源所要額三百六十八億につきましては、六十八億円を節減を立てまして、三百億円を交付税特別会計で借り入れをいたしました。今回の場合と違いますのは、公共事業の年度内の拡大というものは行ないませんで、この当時はむしろ景気が悪いものですから、公共事業の予算執行を留保しまして、それを今度は解除をする、こういうやり方をとったわけでございまして、その面での地方財政の負担はございませんでした。
今回の措置といたしましては、交付税の減額、減税に伴いまする五百二十八億につきましては、これは全額一般会計をもって補てんする措置を講じますと同時に、国税三税の減収に伴いまする落ち込みの七百四十六億につきましては、交付税特別会計が国の資金運用部資金から借り入れをする、ここが実は前回の措置と違っておるところでございます。あと給与改定財源の措置、それから地方税の減収、譲与税の減収対策、これは全く前と同じ考え方でございまして、この交付税の国税三税の減収に伴う分の措置につきましては、四十年度におきましてはいわゆる出世払いの証文、将来地方財政が好転をした暁には返すと、こういう趣旨で出世払いの証文といわれるものが当時の自治大臣と大蔵大臣の間に交換をされまして、その後のもろもろの財政事情の推移の中でこの出世払いの証文というものは破棄をして、結果的には払わないで済んだわけでございます。
これにつきましては、実はどうして当時と今度と違ったことをしたのかということについていろいろ御意見もございます。御質問もございました。私どもはやはり国の政策による減税というものについては、これは当然国が埋めるというこの基本線は堅持すべきでございますけれども、国税の減収に伴うものにつきましては、これは国の資金運用部資金から交付税会計が借りまして、地方団体に対する総額というものはこれは増減ないことにしたわけでございますが、その間においては、むしろ貸し借りということをはっきりさして、所定の償還計画をもって償還をするということのほうが考え方としては筋が通るのではないだろうかということで措置をいたしました。そこのところが相違する点でございます。
それから公共事業の財源措置、これにつきましては、当時ございませんでしたが、今度は新しい問題として出てまいりましたので、それにつきましては、午前中お答え申し上げましたような経緯をたどりまして、全額地方債、そのうちの八〇%は政府資金、こういう措置を講じたわけでございまして、これは当時なかった措置でございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/38
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039・杉原一雄
○杉原一雄君 かなり詳細に御説明いただき、しかも比較検討が明確でありましたので、よく理解できたと思いますが、そこで四十年度のそうしたあとを受けた四十一年度の財政計画、この中で四十年度の補正措置というものを具体的に四十一年度の年間財政方針の中に生かされた分として、どういう点が最大に考慮されたか。たとえば交付税率が二九・五でしたか、それが三二になったのが四十一年だったと思うんですが、そうした意味で、四十一年度に財政計画上どう乗せて地方財政の自主確立を目ざされたかということを簡単に御説明いただいて、そのことは、次の私の質問である今度の補正措置が引き続く四十七年度の予算、地方財政のあり方についての一つの方向づけになるのかならないのか、そうした問題等をあわせ考えてみたいと思いますから、そういうことを踏まえながら四十年度の次の四十一年度の財政方針、財政計画ということにどういうふうな色づけをし、計画を上乗せされたか、その辺がわかるように簡単にお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/39
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040・小山省二
○政府委員(小山省二君) 私からちょっとその点についてお答えを申し上げてみたいと思うんでありますが、まあ私は四十年度の不況と今回の不況との比較でございますが、一口に申しますと、四十年度の不況というのは、その要因がわが国の国内の経済状況によっての不況であって、今回の不況は、むしろ国内の要因より対外的ないろいろな問題点に端を発しての不況感というふうに私ども理解をいたしておるわけであります。したがって、四十年度の不況は、比較的国内経済政策によって不況を克服することができたわけでありますが、今回の不況の要因というのは、むしろ対外的なものにその大きな要因がございますので、たとえばアメリカの新しい経済政策等、要するに、日本国内においては直ちに処理できにくいその経済的な要因による不況感というものが強く私は響いておるような感じがいたすわけでございます。
したがって、当時の四十年度にとった考え方が今日の不況時にそのままある程度適用できるかというと、必ずしも私はその政策では今回の不況感は乗り切れない。当時は不況の時期もそう長期でもございませんでした。したがって、国の財政の能力から考えて交付税率を引き上げるというようなことが可能でございましたが、現在の国の財政状況を見ました場合に、必ずしも交付税率を引き上げることが可能であるかどうかという点については相当私は慎重に検討しなければならないような条件下にあるような実は感じを持っておるのであります。したがって、来年度の景気浮揚対策が税収によらずして、むしろ公債政策等によって財政規模をささえるということになりますれば、私は交付税等においても現在望むような税収を期待するということ、交付税の金額を確保するということは、したがって困難な実情になるのではなかろうかと思っております。四十年度の当時の地方財源の不足額は千五百六億でございました。本年度の不足額は五千三十億六千万円、したがって金額もかなり当時と比較いたしますれば大きくなっておりますし、また今後におきます税収の期待も非常にむずかしい段階でございますので、私どもはもちろん交付税によるところの財源確保も十分検討しなければなりませんが、地方税そのものをもう一度検討し、自主財源というものを確立する新しい検討をする時代に入ったんではなかろうかというような実は感じのもとに来年度の予算折衝に当たりたいというような考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/40
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041・杉原一雄
○杉原一雄君 時間がまいったようでありますから、最終的なところで、午前中の次官の答弁では、交付税率の引き上げ等検討するとおっしゃったわけですけれどもね、この前みたいなぐあいにはいかぬだろう。しかし、いまの答弁によると、そうじゃなくて、たいへんむずかしい、こういうことになったわけですがね。
そこで、四十七年度の財政方針はすでにお出しになっておるところでありまして、ここでどこが悪い、どこがどうだということはなかなか言いかねますけれども、これは次の通常国会等で論争すると思いますが、ただ地方交付税のあり方の問題と、それから地方債のあり方の問題、おしなべて地方財政の自主財源の確保、つまり地方財政あるいは地方自治は住民のものでありますから住民の要求にこたえるように、このような自治省みずからも答えているように、社会資本の充実などは当面緊急の要請だと思いますが、そうしたものにこたえるようなものになっていないのではないだろうかと思われますから、その辺のところを、交付税はどうあるべきか。簡単に税率を上げるとか上げないとかいう問題もさることながら、まだほかに、それを含めて地方税体系の問題にも関連してくると思いますから、そうした点はどうだろう。で、地方債のあり方の問題、このような形で、来年も都合が悪いからまた地方債をふやしていこうじゃないかというような話になると、これはどっこい神沢さんが心配するようなことにもなるし、おしなべて地方財政の自主的財源をどう確保をして、地方住民の切実なる要求、いまさら公害とかなんとか申しませんけれども、そうした要求にこたえるような、地方財政の確立の指針をここで簡単にお出しいただければよいと思いますが、いかがでしょうか。
私の質問はそれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/41
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042・小山省二
○政府委員(小山省二君) ただいま御指摘になりましたような方向で、自治省といたしましては、税制調査会に自主財源の確立のためのいろいろな方途について諮問をいたしておるのでございます。いずれ調査会から何らかの結論をいただけるものと私ども考えておりますが、方向としては、いま御指摘になりましたような方向で自主財源の確立について検討をいたしておるということを申し上げて、お答えいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/42
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043・藤原房雄
○藤原房雄君 午前、午後いろいろ質疑がございましたが、最初に当委員会のことでございます。まあいろいろな事情があったと思いますが、きのうおそく、開会されることがきまったようでありますが、非常に大事な法案でもございますし、いろいろな事情のあることはよくわかるのでありますけれども、やはり慎重審議が必要だと思いますし、今後こういうことのないようにひとつ委員長にも十分に取り計らいをお願いしたいと思います。特にまた、大臣の出席もないようでありますけれども、やはりきちっとした方向でやっていただきたいということを一言お願い申し上げておきます。
このたびの地方財政の落ち込みということにつきましては、同僚委員から経済変動、日本の経済のあり方という、こういうことからいろいろな問題の掘り下げ、お話がございました。私もこのたびのドルショック、いろいろ考えますと、そこから派生して現在なお円の切り上げ、輸入課徴金等につきましてははっきり見通しが立たないという国民の不安な状況、こういうことから、ただ表面的にドルショックのために日本の経済にいろいろな影響があったということだけではなくて、四十年とこのたびの不況のことについて対比してお話が先ほどございました。確かにこのたびの不況というのは根本的に質的に大きな相違があるのじゃないか、このように思います。
ここで経済的な問題について云々しようとは思いませんけれども、また日本の経済というものは世界の経済の中に大きな関連性があるわけでありますから、その世界経済の動向ということの中の日本経済という、こういう考え方で見ていかなければならない。過日コナリー財務長官が来たときも、経済成長が五%ということで非常に不況だというこちらの説明に対して、完全雇用で経済成長五%なんというのは不況じゃないなんという、こういう日米の間の大きな見解の相違といいますか、こういうこともいわれておるようでありますし、こういう従来とった政策を一つ一つあげていまここで論ずる気持ちはございませんけれども、この国際情勢、国際経済の大きな変動期、そしてまたその大きな波をかぶった日本の経済、また今日までの経済成長至上主義という、こういう状況の中で大きな一つの転換期を迎えたのではないか、こう私どもも思うわけでありますが、何せ国の財政規模を上回る大きな地方財政をあずかる自治省でありますから、先ほど来いろいろお話もございましたけれども、過去の財政のあり方に対する反省といいますか、それを踏んまえて今後どうするかという、こういうことは非常に大事なことだろうと、こう思うわけであります。大臣がいまいらっしゃいますれば、こういう点についていろいろお聞きしたいと思っておったわけでありますが、根本的なこととして、地方財政という見地からいたしまして、今後の財政は質的な大きな転換を迎えようとしている。それに対してどのように日本の財政の過去のあり方から反省、そしてまた未来に対しての見通し、こういう点、お考えになっていらっしゃるか、まず最初この点お聞きしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/43
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044・小山省二
○政府委員(小山省二君) 過去の財政から今後のわが国の財政のあり方について御質問をいただいたわけでありますが、私も四十年以来今日に至るまで、日本の経済の成長率、それは世界各国と比較してあまりにも高度な成長を持続し過ぎた。言うならば、均斉のとれた経済の成長ではあり得なかったということについては、この機会にわれわれも反省をしなければならないような点があるように思うのであります。要するに、世界経済の中で日本だけが独自な成長を遂げていいというものではないわけであります。世界経済の中で果たすべきわが国の役割りというものを考えました場合、私どもはもう一度これから日本経済の今後のあるべき姿について、やはりこの機会に再検討をしなければならないような感じをいたしておるのでございます。もちろん、今回の不況の要因につきましては、いろいろな面から私どもその原因があろうと思います。言うならば、長い間の高度成長の反動だという面も見られないこともございませんし、また先ほどお答え申し上げましたとおり、アメリカの新しい経済政策に基づくところの要因というものも、今日の不況の中の一つの原因になっているのではなかろうかというふうに考えております。
したがいまして、私たちはできるだけ今後は経済の成長率よりも、むしろ安定した成長という路線に日本経済を乗せなければならぬ。そのためには私どもとしてどういうことをなすべきかということにつきましては、まあ私は門外漢であるわれわれがそこまで申し上げることは控えなければならぬというふうに考えておりますけれども、もう御承知のとおり、来年度の予算編成の直前でございますが、政府としても当然そう遠くない機会に、おそらくこれからの経済の見通し、あるいは経済政策等について政府としてまとめた見解を発表するものと考えるのであります。したがいまして、誤解を招くおそれがございますが、私はいずれにしても、いま御指摘のように日本経済が一つの大きな反省期、転換期にきているという、この事実だけは率直に認めなければならぬ。またそういう立場に立って、これから日本経済の安定成長に地方財政も一役を買わなければならぬ、協力をしなければならぬ、私はそういう気持ちの上に立って、これからの地方財政計画というものに取り組んでまいりたいというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/44
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045・藤原房雄
○藤原房雄君 まあこれは大へん大きな問題でありますし、国の将来にかかわることでありますから、まあここで云々するだけで片づくことでは決してなかろうと思いますが、ひとついま政務次官のお話のあった点、まあこういう方向に進んでいただきたいと、こう念願するわけであります。
先ほどからいろんなお話で、類似する点も二、三あるかと思いますが、確認の意味でお聞きしたいと思いますが、今回のこの補正予算の地方財政対策で、地方交付税の措置額が千八百二十四億、その中の所得税の年度内減税に伴う地方財政の減収額の穴埋め分として五百二十八億、これを除けば地方団体の財源不足額というのは千二百九十六億、これが全部借金で対処しようという、こういう形になっているわけですね。先ほども四十年度とことしとの対比でいろいろのお話がございました。午前中もこれに関する質問もあったようでございますが、四十年度のときには交付税の落ち込み分については全額国で補てんしたということですが、今回はこの落ち込み分については借り入れということにしたわけですが、それに対して年度の途中で云々というのは、先ほど、午前中ですか、御答弁があったようでありますけれども、四十年度のときには非常に短期に景気が向上したわけでありますけれども、このたびは昨年に引き続いて本年、また来年度もそう見通しが明るいわけではないという、非常に長期化しているという、こういうことからいたしまして、やはり私どもは全額国で補てんするというのが筋ではないか。こういうふうに考えるわけでありますけれども、この点ひとつもう少し詳しく説明を願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/45
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046・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) 交付税は、御案内のとおり、国税三税の三二%の額ということになるわけでございますので、その交付税というものが予算計上額を下回わるというような形での減収ということになりますというと、形式論理的には当然それだけの分というものは落ち込むということになるわけでございますが、ことしの景気の急速な落ち込みによりまする交付税の減、国税三税の減というものが顕在化いたしましたのが九月過ぎてからのことでございまして、すでに交付税の総額というものは決定を八月にいたしておりまして、十一月に普通交付税の最終配分をもってことしの交付税の配分は終わる。こういう段階のもとで交付税を減額するということは、これはとうていできる話でございませんので、これにつきましては、地方団体の総額を確保する、交付税の総額を確保するという措置をとりました点につきましては、前回の四十年度も今回も全く変わりがないわけでございます。
ただ、その総額を確保するための措置といたしまして、四十年度におきましては、先ほど申しましたように国の一般会計が結果的には全部穴埋めをした形になっております。今度のやり方といたしましては、国税減税に対応する分につきましては、これは国の一般会計が穴埋めをする。しかし、この国税三税の減収に伴いまする落ち込み分については、交付税特別会計が資金運用部から借り入れる。したがいまして、それは利息はもとより一般会計の負担でございますけれども、元本は、これは来年度から八年度にわたって返していくというところに前回と大きな相違があるわけでございます。この点につきましては、私ども減収に伴いまする落ち込み分というものにつきましては、やはり理屈としては国の政策減税に伴う減というものとは違えて考えていいのではないだろうか。結局景気全般の落ち込みによりまして国税も地方税も減になる。それに対応する手当てといたしましては、やはり将来の税収の自然増加、あるいは交付税の自然増加というものを引き当てにして借りるという形で措置をするほうが、考え方としては筋が通っておるのではなかろうかという判断に立ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/46
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047・藤原房雄
○藤原房雄君 明年から八年ということでありますが、これは政策減税とは違うという判断に立ったということでありますが、これはまあこういう主張もわからないわけではありませんけれども、先ほど冒頭に申し上げましたように、このたびの不況というのは従来とは違うという質的な問題について考えあわせまして、こういう計画ではたして今後地方財政が、四十年度以降持ち直したあのときと同じような考え方といいますか、予測し得ない、このたびの不況のほうが問題点が多いといいますか、いろいろなことがあるのじゃないかという感じがするわけでありまして、こういう政策減税と違うというだけでは、地方自治体が今後持ち直していけるかどうかということが非常に問題があろうという気がするわけであります。今後この問題につきましては、いろいろな推移を見ながらまた検討しなければならぬことだと思いますが、いずれにしましても、四十年と今年との国の対策、対応のしかたというものがこのように違うということにつきましては、いろいろな理由があろうかと思いますけれども、とにかく地方財政が非常に窮迫しておるという現況の中から、何とかしてもらいたいという、また全額国庫の対応策を講じてもらいたいという、地方自治体としてはたいへんな窮状の中から訴えているわけで、この点ひとつ今後の推移というものを十分に見て、十分な対応策をまずお考えいただきたいと、こう思うわけであります。
それから、時間もありませんのであまり具体的な問題に触れられないのであれでありますけれども、基本的なことだけお伺いしますが、不況がどういうふうに今後推移するかということについては予測できませんけれども、いずれにしましても地方財政とか地方交付税が伸び悩む。その反面では、給与の増加とか公共事業費の拡大に伴う地方負担の増加、または過密過疎、公害、都市対策、一そうそういうことで財源というものが必要になってくるわけでありますが、今年度以上に来年度の地方財政というものは深刻になろう、これはまあいろいろな方々が訴えられておるところであります。こういう非常に財源の不足に対して、当然多様化する社会の中にありまして、地方財政の危機が叫ばれておるわけでありますけれども、地方財政対策、地方財政に対する今後の考え方といいますか、いままでは過疎とか過密ということも、そうあまり深刻な問題ではなかったのでありますけれども、これに対する十分な対応策を考えなければならぬ。公害もまた大きな問題である。都市対策についてもそうですが、こういうことからして、非常に各地方で財源の不足を来たすということはもう目に見えておるわけであります。そこにこういう不況になってきたということでありますから、基本的にこの地方財政に対する考え方というものは、いままでのような考えではなくて、やはり新しい時代に即応した考えというものにならなければならないと思いますし、自治省としても、そういう将来のことにつきましては、いろいろ分析をしてお考えになっていらっしゃると思うのでありますが、この点につきまして、将来の見通し、またはこの対策等についてお考えがございましたら、基本的な問題でけっこうでありますから、御答弁願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/47
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048・小山省二
○政府委員(小山省二君) たいへん経済の見通しということが、現在の段階では私ども非常にむずかしい時期にあるのではないかというふうに考えております。ただいま大蔵大臣もローマに参りまして、できるだけ早く円の平価を決定するために各国と協議をいたしておるようなわけで、いずれにしても、そのような円がどの程度の切り上げで済むか、あるいは課徴金の撤廃というものが完全に撤廃されるのかどうか、いろいろ対米関係のみならずこれから各国への輸出問題、さらにはお隣の中国との貿易関係、いろいろの点から考えまして、一体日本の経済の立て直りはいつごろ立て直りを見られるだろうか、不況を脱することができるだろうかというこの見通しの上に立ちませんと、やはり地方の財政計画もおのずと計画を立てることが困難になるわけでございます。ただ方向といたしまして、いま御指摘になりました地方の財政需要というものは非常に強いものがございますので、何とかこれらの地方住民の要請にこたえるためにその地方財源というものを確立しなければならない。しかも、その財源は、できるだけ自主財源をもってこれらの要請に充てると、こういう考え方の上に立って地方税全般にわたってやはり私は再検討をしながら、これら住民の要請にこたえる方向で解決をしたいというふうに考えておるわけでございます。したがって、現状の程度でまいりますれば、当然国税の伸びもかなり私は制約を受けるのではないか。そうなりますと、当然国税の減収に伴う、まあ減収と申しませんでも、税収の伸びがきわめて低いという場合においては、交付税を十分確保するということはこれまた困難でございますので、したがって、当然そういう段階になりますれば、国と地方の財源調整というものもあらためてその時点において十分検討されなければならない課題ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。ただし、現在の段階で交付税率を引き上げるとか、あるいはどの程度にするとかいうようなことは、まだ申し上げるような状況に立ち至っておらないように私ども考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/48
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049・藤原房雄
○藤原房雄君 次は起債に関する問題なんですが、まあ従来までは高度経済成長にささえられまして大幅な税の自然増収があり、その自然増収を一つの財源としていろんなことがなされておったわけであります。そういう予算編成の段階で、この自然増収というものにつきましてもいろいろ考慮を払うというこういう状況は、先ほどからのいろんな現在の経済情勢の中では考えられないといいますか、こういう従来とは異なった条件の中に現在はあるということが一つは言えるだろうと思うのでありますが、それだけに国や地方自治体の財源難というものはいろんなところに波及してくる。国では、そういうことで財源の不足を国債で補おうという、こういう傾向のようであります。地方財政につきましても、国の公債政策というものに伴いまして、起債依存というこういう傾向がだんだん高まってくるのではないかと、こう思うのでありますが、公債依存という、起債という問題につきましては、まあこれは一様には言えないと思いますけれども、やはりある程度慎重でなければならないということは言えるだろうと思います。現在私は、起債が多過ぎるという、こんなことを言うつもりはございませんけれども、やはりこの起債のあり方ということにつきましては、ある程度慎重な考慮が払われなければならない。そしてまた、この起債につきましては、ときによっては元利償還を国で見なければならない場合もやはりあるのではなかろうかと、このように考えるわけでありますけれども、この起債のあり方につきまして、基本的にどのようにお考えになっていらっしゃいますか、お聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/49
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050・小山省二
○政府委員(小山省二君) 現在の考え方としては、できるだけ弾力的に考えてみる必要があるのではないか。たとえば数年前、税の自然増が相当見られるような地方財政の状況下においては、できるだけそれらの税財源をもって充てる。しかし、今日並びに今後予想されるような税収の確保がきわめて困難な状況下においては、ある程度私は公債というような、一種の借金政策になりますが、そういう面で弾力的に補てんをしていくというような考え方でいく。私どもは景気の変動というものに対してはできるだけ避けなければなりませんが、現実の問題としてかなり日本経済というものは、単に日本の政策的な立場においてのみ解決できない、そういう状況下にあります場合、私どもはこれからの地方財政に対処する場合、よほどそういう点について再検討をしなければならないような時に差しかかっておるのではないか。したがって私は、地方債についても思い切ってひとつ弾力的な考え方で今後税収とにらみ合わせながら処理していくということで、いまの日本経済の実力から考えて十分借金政策にたえられる力を持っておるという面で、今後もつとめてそういう形の中で地方財政を処理していくというようにいくのではなかろうかと私ども考え、また私もそういうふうな弾力的な考えで対処すべきだというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/50
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051・藤原房雄
○藤原房雄君 四十年の不況のときには地方交付税の税率を上げました。また、たばこ消費税率の引き上げとか、こういう措置がとられたわけであります。深刻な現在の地方財政の危機を何とか打開しようということで、来年、税率の引き上げや、または新税というようなこともいろいろ計画があるというふうなことも聞いておるわけでありますけれども、私どもこういう新税あるいは税率アップという大衆に負担のかかるようなことにつきましては断固反対でありますけれども、こういう非常に地方財政の危機、これは先ほど来言われておりますように、いろいろな経済の要素によって今日こういう状況になっておるわけでありますけれども、それに来年は沖繩が返ってくるということに伴いまして、当然沖繩を入れて地方財政というものを大きく見ていくと、こういうことになりますと、先ほどからいろいろ議論になっております地方交付税率というもののアップということがどうしても必要だろうと思うのでありますが、その点については、八月でしたか、委員会がありましたときに、自治大臣も、それも入れて、ともにこの不況対策、地方財政の危機、沖繩のことをいろいろ勘案して、この税率の問題については考えていきたいというようなお話しもあったわけでありますが、現在何%をどういうふうに考えておるなんということは政務次官の口から出るわけはないと思いますけれども、自治大臣が過日仰せになりましたように、税率のアップは当然考えの対象になるというお考えが大臣の口から言われたわけでありますけれども、そういう点につきまして自治省として大蔵省にどれほど強くこの点を訴えているかという、強い交渉が持たれているかという、この点私どもはどうなっているかお聞きしたいところだと思いますし、それから四十年度との比較対照からしまして、また沖繩が返るというこういう時点からいたしまして、当然ここで少なくとも三五%くらいの交付税率でありたいものだと、こう思うわけでありますけれども、ここら辺の大蔵省との折衝、まあ詳しいことは別といたしまして、強力な交渉をなさっておるかどうか、その辺のいきさつについてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/51
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052・小山省二
○政府委員(小山省二君) 先般大臣が委員会で、地方税全体を含めて、もちろん交付税を含めまして、いま自治省としても再検討の段階であるというお答えを申し上げたということでございますが、おそらく私もそういう方向でいま検討をされておるのではなかろうかと考えております。
御承知のとおり、景気浮揚策のいかんにかかわらず、できるだけ国民負担の軽減をはかるということは、これはもう政治の姿勢として当然でございます。しかし、一方、それぞれの地方住民が要請しております各種の財政需要にこたえるためには、また財源の確保ということが一面非常に重要な課題に相なっておるわけでございます。したがいまして、私どもは来年度の景気の見通し、またこの不況感をいつごろ脱することができるかと、問題はこれらの見通しの一点にかかっておるわけで、したがいましてこれらの見通しがある程度目鼻がつきますれば、それに基づいた新たなるその対策によりまして、今後交付税率の改定でありますとか、あるいは新しい地方税の創設でありますとか、各種の問題を当然検討しなければならぬというふうに考えておるわけであります。御承知のとおり、ただいま地方税につきましては税制調査会のほうに諮問をいたしまして、それぞれ御検討を願っておる段階でございますので、したがいましてこれらの答申を待ちまして、私どもとしては最善のひとつ努力をいたしまして御期待に沿うような方向で来年度の予算をつくり上げたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/52
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053・藤原房雄
○藤原房雄君 大蔵省にその点は強く訴えていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/53
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054・小山省二
○政府委員(小山省二君) 現在、事務的段階で折衝しておるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/54
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055・藤原房雄
○藤原房雄君 それから、ちょっと沖繩の話が出ましたので、沖繩のことについてお聞きしたいと思いますが、沖繩につきましては沖繩臨時特例交付金という、仮称でありますけれども、これを創設するという自治省のお考えのようであります。現在大蔵省と折衝中というようなことを聞き及んでおるわけでありますけれども、その内容について基本的なことだけひとつお述べ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/55
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056・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) 沖繩に対しまするいわゆる一般財源対策ということでございますが、私どもの判断といたしましては、沖繩の行政水準と申しますか、風土の特性なり、あるいは沿革的な理由がございまして、内地の府県あるいは市町村との間にかなりの格差がございます。そこで現在この内地の府県や市町村に適用されておりまする交付税制度をそのまま直ちに沖繩の県なり市町村なりに適用するということになりますというと、その間の行政水準の差あるいは沖繩の行政の特殊性というものが十分に反映をされない、こういうおそれがあるのではないかというふうに考えまして、この交付税とは別に、交付税よりも手厚い措置ということで、臨時特例交付金というものを創設をしたらいかがであろうか。そういう線で現在大蔵省と強力に折衝いたしておるところでございます。
この考え方の基礎といたしましては、まず沖繩の県なり市町村に対しまする交付税ベースで申しますと、経常経費的なものを県、市町村合わせまして三百億と、それから沖繩に対しましては、ただいま申しました内地との行政水準の格差というものを早急に回復するということで、振興のための特別措置法がございまして、それで十年間は補助負担率の特例を設けております。それに対応しまして、その裏負担と、それから単独事業、これの大体百三十億とを積み上げまして、これを投資的な経費に見合う分。それから三番目といたしましては、沖繩県の、あるいは市町村の特殊性といたしまして、たとえば職員の数が多い、あるいは内地にない制度というものがある。あるいは経過的な点で申しますと、復帰後知事選挙あるいは県会議員の選挙を行なわなきゃならない、あるいは沖繩国体というものが行なわれる、こういったような臨時的な支出の要もございます。そういう特殊なものに対しまする分といたしまして二百億。合計六百三十億というものを積み上げまして、そのうちの一割は交付税の中から持ちまして、国の一般会計からは残りの五百七十億足らずのものを支出をしてもらう。来年度、四十八年度になりますというと、同じような積み上げ計算をいたしまして、その額の二割を交付税で持つ、で、残りの八割相当分を国の一般会計で持つ。逐次そういうふうに交付税の持ち分を一割ずつ上げていきまして、十年目からは完全に内地の交付税の中に取り込んでいく、こういうシステムで沖繩の臨時特例交付金というものを考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/56
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057・藤原房雄
○藤原房雄君 確かに、本土と沖繩とは大きな行政上の水準の差というものがあるだろうと思います。それに対するいろんな配慮があって、いまお話のおったようなことになったろうと思うのでありますが、いま特別委員会で沖繩の問題がいろいろ議論されておりますが、やはり本土並みということが強く叫ばれるわけですね。これは本土並みということは、まあ基地もさることながら、あらゆる面でやはり本土並みでなけりゃならないということを基本に考え、そしてまた、まあ特殊なことは別といたしまして、原則的には本土と同じ姿の中でやはり本土と同じようにされるというのが地元の方々の強い要望であります。このことから考えまして、やはりこの臨時特例交付金というものが、別ワクという特別な扱いではなくして、十年間でこれは本土と一緒になるんだということでありますけれども、やはり復帰の時点において、こういう地方財政の面においても本土並みという姿がはっきりとなされておるという、そこまで配慮がされているというような姿というのが望ましいことだと思うのでありますが、やはりいつも問題になることでありますけれども、交付税、それは地方自治体の自主財源であるというそこから出発してこのことは議論されますけれども、どうしても、臨時特例の交付金というような形というものと本土並みの同じ交付税率による交付金を受ける、これでは受けるほうとしましては、沖繩県としましては、同じお金をもらってもずいぶん感じももちろん違うだろうし、これこそほんとうの本土並みという姿ではないか。その上に立って行政水準の差につきましては交付税率を少しく上げていくというような、こういう考え方もこれは当然あろうかと思います。もちろん、自治省としましても、私のいま申し上げましたようなことにつきましては十分検討がなされたのではないかと思いますけれども、やはり沖繩の特別委員会等でいろいろ議論される点につきましては、細部にわたって配慮がなされているかどうかということ、こういうことが非常に議論の焦点になっております。どうしてこういう形にできなかったのかということと、沖繩県が入れば当然それに伴って、各県の配分ということからいたしまして、税率を上げなければならないということになるわけでありますけれども、最初に申し上げました、沖繩に対する、何で特例という形にしたかという、本土並みの姿にできなかったかという、これに何か大きな問題があったら、その点、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/57
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058・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) おことばを返すようでございますが、この交付税で本土並みにということになりますというと、実は私どもは、沖繩がせっかく、戦後二十何年間、いわば目の色の違う人のところに里子に出されておったのが返ってくるわけでありますので、それを受け入れるためには本土並みであってはいけない、むしろ本土並み以上のことをしてあげなければならないという気持ちが私どものこの臨時特例交付金ということでございまして、そのためにはやはり沖繩の特殊事情というものを加味する。いわば内地の府県、市町村と沖繩の県、市町村と比較をしてみますというと、その行政水準の間に非常な差がございます。ある程度不満足ながら仕上がった内地の県なり市町村に対して適用されている単位費用あるいは補正の数値というものをそのまま沖繩に持っていきますというと、沖繩の場合にはやはり足りない。そういう特別な配慮を加えるということでございますというと、交付税とは別ワクで、しかも内地の県や市町村並みじゃない、内地の県、市町村よりも手厚い制度というものをやはり経過的にはつくらざるを得ない。で、もとより、いま御指摘になりましたような一日も早く内地と同じ制度の中に入ってくるということが理想でございますので、いまの沖繩振興のための臨時措置法でございますか、これも十年の間は手厚い措置を、内地の県、市町村とは違った手厚い高い補助率、負担率というもので措置されるわけでございますので、それとはずを合わせまして、こちらのほうも十年間というものを一応目途に置きまして、経過的に内地よりも手厚い措置をとる、こういう考え方であったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/58
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059・藤原房雄
○藤原房雄君 これは本土の都道府県、市町村にいたしましても、国税三税、これは地方自治体の基本的な自主財源であるということにつきまして、しばしば議論がなされまして今日まできているわけであります。そういうことを考え合わせますと、これは同じ手厚い措置ということでありますけれども、もちろん手厚いことはけっこうなことでありますが、やはり交付税率は本土よりも上げなければならないと思いますし、さらにまた、特殊なものにつきましては特別な配慮がなければならないと思いますけれども、これだけのものは沖繩の自主財源として、これはもう地方自治体として自主財源としてあるんだという、同じお金をもらってもそういうはっきりとした、地方自治体に自主性を持たせた自主財源としての意識というものをはっきり与えるということが大事なことじゃないかと思います。手厚い措置ということばを強調されれば、いま局長のおっしゃったようなことになるかもしれませんけれども、やはりあくまでも自主財源としての意味合いというものを持たせる上からいきまして、当然本土と同じ交付税率であってはならないと思います。何%かアップすることになると思いますし、そのほかのことについても何らかの処置がなければならないと思いますけれども、やはりこれだけのものは当然沖繩県の自主財源として運用することができるという、こういう強い地方自治体に対する意識というものを与えることが大事じゃないか。そういう配慮のほうが実際は大事なんであって、そういうことが欠ける。そういうことがいろいろと積み重なるところに、どうしても差別があるんじゃないか、本土並みでないというような意識というものを与えることになるんじゃないか、私はこう思うのでありますけれども、その点を私は強調しているわけなんですけれども、その点については、政務次官、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/59
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060・小山省二
○政府委員(小山省二君) 今回設けられると予定されております臨時特例交付金の制度が、何か沖繩の人に対する差別的な考え方の上に立ってこのような交付金の制度が設けられたようにいま御質問いただいたわけでございますが、私どもとしては、先ほど局長が申し上げましたとおり長い間異国の統治下にあった沖繩のおくれておる行政格差をできるだけ早く解消して本土並みの行政水準に引き上げたい。そのためには、従来内地で出しておった交付税率ではその目的が達成しにくいだろうという考え方に基づきまして、十年間という期限の中で沖繩の行政水準を本土並みに引き上げる特別な交付金を交付しよう、こういう考え方を持ったわけでございます。この制度については、確かに山中長官も一部検討してみてはどうかというようなお話のあったことも事実でございます。しかし、同一な交付財源の中で、一方内地においてはこれだけの比率、一方沖繩だけはこれだけの比率ということを分けますことは事実上むずかしい問題でございますので、むしろ沖繩の特殊性というものをできるだけ尊重できる制度の中で交付税を考えたらどうか、こういう考え方でございまして、差別を考えたような意思は毛頭ないことをひとつぜひ御理解いただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/60
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061・藤原房雄
○藤原房雄君 次は住民税のことですが、これはいままでいろいろ議論されておりますが、ちょっと確認の意味でお聞きしますが、大蔵省も、年度内に所得税の減税を実施いたしまして、所得税と住民税の課税最低限がだんだん開きつつある。こういうことからいたしまして、当然国民大衆の声でもございますし、住民税の減税ということについては自治省もいろいろ検討なさっていると思いますが、こういう非常に不況の中で地方財政の危機の中でのことでありますから、いろいろな配属がなければならないと思うのでありますけれども、この住民税の減税につきまして現在どのようにお考えになっていらっしゃるか、減税はするのかしないのか、また、どのくらい考えているか、この点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/61
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062・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) 率直に申しまして、明年度の地方財政の状況から申しますというと、減税前で、午前中申し上げましたような数字になっておりますので、とうてい減税の余地はないというのが実情でございます。で、ただ、ただいま御指摘がございましたように、住民税の課税最低限と所得税の課税最低限との格差が非常に大きい、開いているということにつきましての住民の御不満、これは平安でございます。ただ、その間の減税を行なうということにいたしました場合の減税の規模、それからそれに対応しまする減収というものは、これは、やはり別途補てんの措置を講ずるということでなければとうてい減税はできないだろうと申しますのが私ども事務的に現在判断をいたしておりまするところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/62
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063・藤原房雄
○藤原房雄君 では、税に関する話が出ましたので、それに伴いまして非課税措置のことにつきまして、これは電気ガス税をはじめ非課税措置がおよそ三千億円くらいあるだろうと言われておるわけでありますが、この地方税の非課税措置を、国民に直接関係のある部分については、国民に利益をもたらす、こういうものは別にいたしまして、洗い直してみる必要があるのではないか。そして、やはり、当然現時点において今日非課税措置というものは妥当、適当でないというものにつきましては、これは廃止する、こういう措置も考えなければならぬと思うわけでありますけれども、その点、自治省もいろいろ検討はなさっていると思いますけれども、この点についてはどうお考えになっていらっしゃいますか。また、検討しているかどうか。また、何についてはどのようにお考えになっているか。この点、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/63
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064・小山省二
○政府委員(小山省二君) 電気ガス税につきましては、大衆課税というようなことから、機会あるごとにこの減税方あるいは廃止について強い御要請のあることは、もう私どもよく承知しておるところであります。しかし、いま申し上げましたとおり、地方財源そのものが非常に窮迫いたしております現段階におきまして、はたしてこのような財源を廃止することができるかどうか、私どもも実は苦慮いたしておるわけでございますが、先ほど来お答え申し上げましたとおりに、ただいま地方税制全般にわたって税制調査会でいろいろと御検討いただいております。その結論を待って方向を決定したいという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/64
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065・藤原房雄
○藤原房雄君 時間もだいぶ過ぎましたので、これで終りますが、最後は地方の公営企業のことです。これはばく大な赤字をかかえておりまして、これはいろんなことが言えますが、特に公共的なものとして都市交通ですね、交通機関の市営バスとか都バス、電車、こういう都市交通の公営企業におきまして、これは非常に料金も、赤字になるということになりますと、すぐ赤字補てんのために料金を上げるという、こういう対策がなされる。公営企業の赤字解消に安易に料金値上げという、そんなことがあっては、公共性ということから考えまして、そういう安易なことではならないと思います。生活環境の整備また市民の足という、こういうことから考えまして、都市の総合的な交通対策という、こういう抜本的な考え方とともに、料金問題ということにつきまして、やはり自治省としてもこれらに対するはっきりとした考え方がなければならないと思います。公営企業については非常にむずかしい問題もあろうかと思いますけれども、基本的に料金問題そしてまた都市交通対策、こういう関連でどうお考えになっていらっしゃるか。今後この赤字解消という方向に向かって自治省がもっと積極的でありたいという、こういう私どもは気持ちがするわけでありますけれども、どのように考えていらっしゃるか、今後の方向といいますか、所信をお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/65
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066・小山省二
○政府委員(小山省二君) 公営企業は、御承知のとおりあくまでやはり独立採算をたてまえとしてその企業の健全な運営をはかっていかなければならないという原則は堅持しなければならないと思っております。しかし、やはり公営企業の持つ公共性というものは、これは十分尊重し、理解してやらなければなりません。したがって、赤字を安易に料金に依存するということは、これは私どもも極力避けなければならぬ。ことに公共料金が物価に及ぼす大きな影響等考えました場合、直ちに経営の赤字を料金改定に求めるということは、まあ先ほども申し上げましたとおり、厳に避けなければならないというふうに私どもも理解いたしております。しかし、一方公営企業の持つ独立採算制ということを考えてみますると、最終的にはやはり企業の独立採算の面から料金問題というものをある意味においては無視するわけにもいかないという一面があるわけでございます。したがいまして、赤字をすべて国家負担あるいは地方自治体の負担において解決をするというような安易な考えは、やはり私どもはこれは避けなければならない。したがって、たいへんきびしいようではございますが、やはり企業の徹底した合理化、近代化等によりまして、その独立採算の原則というものを踏んまえながら、必要に応じて国家並びに地方の団体がある程度の援助をして、公共性をやはり堅持していくという考え方で、これからこれらの公営企業に対して指導監督をしてまいりたいと、かように私ども考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/66
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067・藤原房雄
○藤原房雄君 また、この都市交通の問題ですね。これから近代的な方向に向こうわけですが、近代化され、また都市交通というのは今後大きな課題になるだろうと思いますけれども、それと公営企業の関係性といいますか、あり方といいますか、そういうことについてはどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/67
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068・小山省二
○政府委員(小山省二君) 都市問題を考えます場合に、やはり都市交通というものは非常な大きな私は力を持っておると思うのであります。したがいまして、この交通網の確保、これは私どももできるだけ積極的に取り組んで解決をはかっていかなければならない課題でございますが、したがいまして、公共性を尊重していくか、やはり企業としての独立採算制というものを堅持していくか、この辺に指導面でたいへん私はむずかしい面があるように思うのであります。特に最近都市交通機関は、いずれも建設費に多額な投資をいたし、かつ経営はいずれも赤字でございます。常に労使間に問題を起こしておるというような実情から考えまして、やはりこの辺で公営企業そのものを再検討しなければならぬ、そういう段階にきた。言うならば、どちらに重点を置くかということがいまの公営企業法の中ではきわめてあいまいである。一方においては公共性というものを非常に尊重するようなことになりながらやはり独立採算制を強くうたっておるというようなことは、なかなか両立しがたい条件でございます。やはり公営企業というものを再検討してもう少しはっきりした方向づけをしてやるというようなことが私は必要ではなかろうか、またその段階にきておるんではなかろうか。したがいまして、できるだけ早くこういう問題を解決するために、私は適当な委員会のようなもの、そうして衆知を集めて一つの結論を出すようにしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/68
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069・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、鍋島直紹君、及び安井謙君が委員を辞任され、その補欠として初村瀧一郎君及び土屋義彦君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/69
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070・河田賢治
○河田賢治君 二、三の問題について質問したいと思います。
だいぶ他の委員から発言がありましたので、そういう点は省略して質問したいと思うんですが、まず第一に、今度補正予算が組まれまして、いま地方交付税の特例法案を審議しておるんですが、これは主として、経済企画庁あたりの責任、あるいは大蔵省になると思いますけれども、しかし、一応地方自治体としても財政問題を扱うわけですから、四十六年度の、つまり三月までですね、現在組まれておる公債なり、あるいはいろんな借り入れ金なりその他措置をするわけですが、大体これでこの措置がいまの経済の動きと関連してまあ同に合うだろうというふうにお考えですか。あらためてまた年度末に事態の推移によっては補正予算を組んでいくと、こういうようなお考えでしょうか。その辺をひとつ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/70
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071・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) 今回の措置によりまして今年度の地方財政は年末度までこの状態で何とかこの当面の危機は回避できたというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/71
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072・河田賢治
○河田賢治君 二、三日前の殖産省あたりの製造工業などのあれを見ましても、経済企画庁のこれは来年の予算にも関係するんですが、法人税などが非常な落ち込みがくるというので、この十月に経済企画庁が表明しました実質五・五%ですか、こういうものも練り直さなければならぬということをちょっと書いておるようでありました。そうしますと、今日特に地方交付税などは御承知のとおり所得税やあるいは法人税、酒税、これらに大きな影響を与えるわけです。昭和四十年でも、これはまあ国民所得のあれから見ましても前年度よりは法人所得というものが落ち込んでいるんですね、御承知のように。私は経済学者じゃないですからわかりませんけれども、スタグフレーションといわれるように、一方においては景気はあまり出ない、そして他方においては物価が上昇する。こういう関係のもとでは、法人税もそう思うようには伸びないと思うんですね。ところが、一方においては物価が上がりますから、最もこれに影響するものは人件費であり、また働く勤労者の給与収入ということになるわけですね。そうすると、このほうはどんどんどんどん一応上がってくるわけです。そこに地方財政も非常に今日いろんな点で苦しんでおるわけですけれども、しかし、法人税がほとんど前年あるいは前年以下というような状態だと、経済企画庁は一応この間新聞に出しておりました。こうしますと、おそらくこの地方財政のあれからしましても、そのほうの収入というものは、多少それは景気の浮揚政策はやっておりますけれども、しかし、これは単に国内だけの需要で調子を上げたからといって、国際的にアメリカからはシャットアウトされる、西欧では非常に警戒される、いろんな今日の世界経済の状態の中で、そう輸出なんかも伸びるとは思わぬですね。したがって、いまいろいろな会社、企業では労働者の首切りやあるいは休暇、そういうふうにどんどん人を減らす政策もとっております。人のふえるところは非常に少ないです。そういう状況の中ではなかなか法人税も期待することができないと思うんですね。そうなれば結局、これまでこれは企画庁が実質成長率五・五%と、それにのっとって大体基本ができているわけですけれども、そうしますと、やっぱりこのまま経済がそう伸びなければ、成長が伸びなければ、やはりまた補正予算を組まなきゃならぬという事態になるんじゃないか。単にこれはこの本省だけの問題を考えるのじゃなくて、地方自治体自身が地方税として事業税やその他を取っているわけでしょう。ですから、こういう点もこの九月のもう地方議会では非常に予算の立て方が苦しいと言ってかなり投げ出したようなところもあるわけですね。ですから、こういう事情の中で予算の再編成ということは、これは大蔵省が主導権をとるわけですけれども、しかし、自治省としてもそういう場合をも一応考慮して、その場合には一体どういうふうにするかというようなお考えを、最悪の事態をわれわれは一応覚悟してきめておかなきゃならぬ問題じゃないかと思うんですね。その点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/72
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073・小山省二
○政府委員(小山省二君) もちろん最悪の事態に対して十分われわれも対処できる態勢を持っておらなければならぬことは御指摘をまつまでもございませんが、しかし、現在の段階におきましては、私は一応今回の補正措置によりまして十分切り抜けることが可能であるというふうに確信をいたしておるわけでございます。私は、むしろこの八月行なわれました例のドルショックに対しては、初めての、まあ経験のないできごととは申しますが、必要以上に財界人がこのドルショックに便乗したような観がありはしないかというふうに思っておるのであります。言うならば、まだこの弊害があらわれない以前に、アメリカのこの突如として発表された新しい経済政策に対して、いち早く、日本の大きな企業が新規卒業生を採用しないとか必要以上のその処置を発表いたしました。言うならば、あまりにもその恐怖感になり過ぎたという感じがあるわけでございまして、現にこの年度末等を見ましても、倒産件数はむしろ非常に減少をいたして、そうわれわれが考えたほどの大きな被害が日本の経済界に出ておらないというような面から考えますと、私は具体的に円の引き上げの価格がきまったり課徴金の問題等が解決しますれば、ある意味においては、日本のこの経済界の危機というものは一応回避できるんではなかろうかというふうな、まあこれは私のあくまで個人の考えであります。したがいまして、私は、これ以上の、つまり最悪の危機というものは当面回避できるのではなかろうかというふうに実は考えております。現状で推移いたしまするならば、この補正措置によって十分地方財源においても確保できるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/73
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074・河田賢治
○河田賢治君 これはあとまた三カ月、四カ月ばかり先のことにもなりますから、ここであなた方の言質を取るということはやりませんが、御承知のように、それはあと歴史が実証するんで。
次に入りますが、第二には、先ほど他の委員からも話がありましたが、昭和四十年、四十一年の不況期に、そうしていま新しい事態での不況、こういう時代に、この前の不況のときにはかなり四十年から四十一年にかけて特別事業債などを発行しましてもこれは国が元利を補給するというようにして全然地方に負担をかけない。あるいはまた、地方交付税の引き上げ率二九・五%から三二と、こういうふうに引き上げて、つまり財源の措置をきちんとやっているわけですね。ところが今回は、御承知のように前回は、四十一年度に地方財源不足額の八九%にあたる二千二百億を実質的に国が負担した。ところが今回は、実際に減税やその他でたくさんのあれが出ているのですけれども、国が直接負担するというのはわずか一〇・五%、五百二十八億にすぎない。その他は大体自治体自身の負担、まず起債であり、節約であり、基金の取りくずし、あるいは交付税の先食いと、こういう結果になっているわけです。そうしますと、四十年、四十一年の不況のときの教訓から自治省は何を学ばれたのですか。あのときの措置が、税源を確保していく、あるいはまた公債なんかを発行しても、地方債は全部国が負担するというふうにして財源を保障しているわけですね、かなりの部分。ところが今回は、逆にそういうふうな状態になっているのです。そうすると、四十年、四十一年の不況のときに、自治省はあれがあまりよくなかったのだ、だから今度は地方債をかかえたり、基金の取りくずしをやったり、節約をして、そして先食いもやるというようなやり方のほうがいいと、こういうふうな考えなのですか。一体その辺は、昭和四十年、四十一年の不況と今度やられておる措置の間に大きな差がありますが、その辺の評価について、まず聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/74
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075・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) 四十年の対策と今般の対策との対比は、先ほど申し上げました四十七年度の対策はこれから実は私ども取り組むわけでございまして、その結果を見て、まあ比較対照ということに相なろうかと思います。で、四十年の対策といたしましては、先ほど申しましたような一連の対比ができるわけでございますが、特にこの問題は、やはり公共事業の負担、年度中途で千五百二十二億の負担というものが出てまいったわけでございますが、これについて特別事業債的な元利補給の措置をやらなかった理由いかんということに帰着しようかと思います。この点につきましては、先ほども申し上げたところでございますけれども、やはりこの公共事業の地方負担というものにつきましては、これは地方自治団体がある程度やはりみずから負担をすべき面がある。かたがた交付税なり地方税の増収が見込めない段階でございますので、これにつきましては全額起債を充当するとともに、その利子負担というものをできるだけ軽減するという考え方から、八割方については政府資金をもって充当するという措置をとったわけでありまして、四十一年度のときの特別事業債的な考え方を、来年度の地方財源対策の一環としてどういうふうに取り入れていくか、これは午前中にも神沢委員のほうから御指摘がございましたように、この当時の地方制度調査会では、特別事業債方式というものについてはかなり批判的な御意見でございます。そういった点もからみ合わせまして、現在せっかく地方制度調査会も、当面の地方財政対策を集中的に御検討いただいておる段階でもございますので、それの結論等もまた私どもいただきまして、万全の措置を講じたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/75
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076・河田賢治
○河田賢治君 たとえば財源の問題ですけれども、いま急増地帯の、これは大阪の昭和四十四年の状態なんですけれども、豊中市という、御承知の大阪市の郊外にある急増地帯の市ですが、ここなどは非常に公債の割合が多くなっているのです。一例を申し上げますと、一般会計総額は昭和四十四年度百五十七億、これに対して歳出のうち公債費が十億八千二百万、歳入のうち市税が四十九億九千五百万、それに対して市債が二十七億七千百万、こういうふうに、市税に対して五五.四%、一般会計総額に対しても一七・六%を地方債に依存しているわけです。ですから、この償還だけでも財政圧迫を強めて、歳出の中に占める公債費の割合が、昭和四十六年に六・八%というふうに公債ですっかり首が絞められているような状態になっているわけです。
ああいう人口の急増地帯ですから、これはやる仕事はたくさんあると思いますけれども、こういうような地方自治体が過密都市にどんどんふえていると思うんです。何でもかんでも地方債地方債ということでやりましても、だんだん地方債自身の今度元利を払わなければならないという事態がずっと続くわけです。そうすると、住民が望むような新しい仕事もまたできがたいという状態であるわけですね。ですから、公債政策というものも、なるほど非常に建設的なもので、将来またそれによって地方住民も利益を得て、経済的な効果、メリットがあれば、公債は有効に役立つわけですけれども、そうでない場合もしばしばあるわけです。ですから、この辺の公債政策というものは考えませんと、何でもかんでも公債を一時発行して、あとはこれを十年、五年くらいで返していけばいいという安易な気持ちで公債政策をやると、これはたいへんなことになるんじゃないか。
また、いま地方自治体の中でも、どこもここも平均ではないんで、アンバランスがあるわけですが、そういう場合に、こういう人口の過密地帯は、過疎地帯もいろいろ問題もありましょうけれども、今日やるべき公害やその他たくさんありますので、そういう問題について、よほど地方自治体を行政指導される自治省がしっかりとつかんでいただかなければならぬのじゃないか。単に統計の上で収入がどうであるとか、支出がどうであるとか、一般的に都市はどうであるとかというようなことだけで指導されていたのでは、これはたいへんなことになる。ですから、これは御承知のとおりきょうの新聞でも、二千億近い償還不足が知事会ではあると申しております。ああいうような問題でも、自治省だけで済む問題でありませんが、この前話したように内閣自身で、大蔵省その他の関係官庁がきめる問題ですが、こういう状態では、地方自治体は他の省の分もみんな背負っているわけですから、こちらでは背負っていなくても自治体としては背負っているわけでしょう。ですから、この辺をやはり私はしっかりとやってもらわなければならぬと思う。
ところが、地方債の問題と同時に、地方制度調査会が始終国の事務の配分だとか、それに基づく財政の配分だとか、こういうことをしばしば答申しておるわけですね。これを総理大臣が受けて、内閣で審議されると思うんですけれども、かなりの部分、重要なものがほったらかしなんですね。全体的に地方自治体の健全な財源あるいは財政を発展させるという方向で地方の財源を保障するようにそういうものが実施されていないわけですね。これは総理大臣が主たる主管者なんで、総理大臣でなければわからぬと思いますけれども、しかし、自治省としてもよほど、これは他の省でもどんどん新しい事業をやっては超過負担をかぶせてくる、地方自治体でも何か新しいことをやれば、これはいいだろうと思って飛びつきますけれども、しかし負担金が、実際には二分の一か三分の二、あるいは五分の四も受け持たなければならぬという場合がしばしばあるわけですから、こういう点の指導、また内閣でもきちんとした統一した指導をやりませんと、地方自治体が、こういう不況のときには非常に税源がきめられておりますから伸びていかぬ。伸びていくときでもあのような超過負担があるんですから、これが伸びなくなったとすれば、しかも住民の要求というものは、やはり生活水準を少しでも上げたい、少しでも便利な社会をつくりたいという要求があります。これらにある程度応じながら地方自治体がやっていく、これはもういまの自治省のこのような財政措置なんかではとうていこれをうまく処理できないんじゃないかと思うのです。ですからこういう点について一体答申が——事務の再配分だとか、あるいは財源の、つまり地方自治体の直接の財源になるようないろんなものを今日まで第九次、十次、十一次等々の御承知のとおり調査会では答申しているわけです。こういう点について、もっと自治省がこれらの答申を尊重して、そして各省についてこれらの実施を求めるというようなお考えがあるのかないのか、その辺を聞いておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/76
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077・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) 結論的には、歴代の地方制度調査会の答申の趣旨の実現につきましては、私ども常時関係各省に対しましてもこれが実現方について強く要請をいたしておるところでございます。また財源の点につきましても、もちろん十分ではございませんけれども、自動車重量譲与税等の道路目的税源の拡充といったことを中心にいたしましてその実現をはかってきたわけでございますし、また当面の問題といたしましても、先ほどの地方制度調査会の答申にもございました事業所課税の問題でございますとか、あるいは軽油引取税の増徴の問題でございますとか、そういったことも含めまして、税源の問題につきましても実現を考慮しておるところでございます。
また、先ほど御指摘がございました豊中市に例を見ますような人口急増市町村、確かに短日月の間にいろんな施設をやっていかなければならない。こういったことで公債費のウエートというのが高くなっております。そういうこともございますので、明年度の予算要求におきまして、関係各省——文部省、厚生省一体になりまして、人口急増市町村に対する学校、保育所あるいはごみ、屎尿処理施設、こういったものの公共施設整備のための補助率を上げる、あるいは交付税でもめんどうを見る、地方債においても万全の措置をとる、こういったことを内容といたしますところの立法措置を含む財源措置というものも大蔵省に対して要求をいたしまして、これが実現に努力を払っておるところでございます。
公債費の問題につきましては、午前中もお答え申し上げたところでございますが、県、市町村、現在の段階におきましてはまだそう財政運営上圧迫を来たしておるという状況ではございませんが、やはりある程度の安全ラインと申しますか、というものを設定をいたしまして、そこに行き着く前に赤信号を出す、こういった形で、公債に対する安易な依存というものを戒めてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/77
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078・河田賢治
○河田賢治君 先ほど申しました地方制度調査会にいまかけられているのは、来年の予算についての問題とか、あるいは土地の問題とか、いま直接やられておりますが、しかしこれまで、まあここ昭和三十八年ごろから第九次、十次、十二次というふうに最近いろんな行政事務の再配分だとか財源の再配分というものが出ているわけですから、景気のいいときはわりあいに何だかんだといいながらスムーズにいくわけですけれども、このような不況時代を迎えますと、こういう地方自治体における財政の問題、これは根本的に相当考えなければならぬ問題だと思うのですよ。今度出ております地方制度調査会への諮問とは別に、これまで出ているものをもう一度再検討して、そしてやはり自治省としては、当たるべきものは当たり、それで、これによって簡素になるものは簡素にする。同時に、地方も国も、その仕事のあり力によって、国がもうむやみやたらに干渉するようなことをやめさせるようにして、そうして地方の自主的な発展、それからまた地方財源の確保という、こういう方向に少し根本的に、根本的といっても、ここ三、四年の間に制度調査会では出しているわけですから、そういうものをひとつ一応自治省あたりでよく考えて、ひとつ予算折衝と同町にそういう問題も提起されるべきじゃないかというように私は考えるわけですが、この点ひとつ聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/78
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079・小山省二
○政府委員(小山省二君) いま局長がお答え申し上げましたように、いろいろ事務の再配分につきましては、私ども自治省だけで解決できない面もございます。したがいまして、もう少し各省との間で調整をいたしまして、もちろんわれわれはそうした答申を当然尊重しなければならない立場にあるわけでございますから、よく各省の間でこの問題についてもう少し調整をいたしまして、できるだけ答申の線に沿うように私どもも今後努力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/79
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080・河田賢治
○河田賢治君 今度の給与の引き上げに伴ういわゆる節約の問題ですね。先ほど来から、節約は主として何と申しますか建造物の修繕とか、それからまた物件費だ、こうおっしゃったですね。しかし、給与のためにやはりある程度そういうものを減らすということになるわけですが、長野県なんか、私じゃないんですけれども、ほかの者をやらしましたら、長野県あたり、一つの課が一億の節約をしろ、五つの課があれば五億だというふうにして、電灯が明るければ消しておくとか、仕事場から帰るときは電灯は消してしまえとか、そういういわゆる普通の会社でいうけちけち運動が行なわれているわけです。もちろん私はその全部が悪いとは言いません。不必要なあかりは消すべきですけれども、しかし、ただそこにだけ目を向けてそうして節約をする。結局は働く労働者としましてもあまりいい感情で働かぬわけですね。
その辺はうまく指導者がやらなければならぬと思いますが、しかし、それと同時に、たとえば、これまでの地方自治体が基金を持っておった、これを取りくずすということに、三百何ぼですか、されているわけですが、全然基金がないところがあるんですね。信州、長野県の岡谷だとか、あの辺の町々は、岡谷、松本、飯田ですか、こんなところにはなかなか調整の積み立て金がないんですね。ゼロなんです。むしろ借金をかかえている、これは。ですから、一般的に三百三十何億あるといっても、裕福な団体と、裕福でもこれから何らかの仕事のためにたくわえておこうというのもあるでしょうし、ずぼらで仕事せぬというのは大体少ないと思うのですね。そういう先を見越した積み立てをやっているのを、それらをいまこのときくずされますと、せっかく自治体で案を立てて一、二年先には何かやらなければならないと思っていることも、できないわけですね。まあ景気、不景気というのは資本主義の経済にはこれはあることなんですから、そういう場合にも備えさせなければなりません。だから、こういう日がさたからといって、自治省が、それは取りくずしてしまえというような経営を、あわて者のような市町村の、自治体の経営をやらせることはこれは正しくないですよ。あなた方のほうがあわてちゃっている。下のほうでは、くずしたくない、できるだけ残しておこう——ところが上のほうは、そんなものはくずしちゃえ、また新しくやり直せというようなお考えになるわけですね。
私、京都ですが、最近はよく市町村で道路の補修やあるいは拡張などやりますが、なかなか技術者が要求に応じて直ちにたくさんの、あちらも直しこちらも直して、それを設計したり、計画の予算を組んだり、そういったことはなかなかできない、ちょっと新しい事業がふえますと。で、地方自治体というものは、やはりこういう地方自治体のそれぞれのこれまでの専門だけでなく、御承知のとおり新しいいま時代になって、やれ緑地であるとかあるいは公害の防止であるとか、いろいろ新しい分野が地方自治体の中に出てきたわけですから、そうすると、そういう人々を、人を減らさないとすれば何らかの形で人を配転さして、そこで教育しなくちゃならぬ。で、そういう技術教育など相当やりませんといまの時代の要求にたえられぬほど、あまりにこれまでの、何といいますか、専門になれ切っちゃって、新しい仕事ができないというのもたぶんあるわけですよ。ですから、そういう点からしましても、やはりここで働く職員の再教育や給与の問題、あるいはいろんな研修等々は盛んにしてやりませんと、私は、これからの財政需要に応じた仕事もできにくいんじゃないか、こう思うわけです。
ところが、先ほど申しましたように、基金の取りくずしだとか、やれ節約だとかいって、あまりにも小さなところばかりほじくるような仕事がいま自治省のほうで企てられて、これが下へおりるわけです。こういう点はどういうふうにお考えになるか。ひとつよく地方自治体の実情と、そしていま当面しているいろんなそういう諸問題をほんとうに解決する能力を早くつくらなけりゃならぬとお考えになっているのかどうか、その辺を踏まえて御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/80
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081・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) だいぶ所見を異にするところがございまして、まず一つは、物件費、維持補修費の節減の問題でございますが、一つの課で一億なんていうようなべらぼうな額には絶対にならないはずでございます。これは私どもも調べておりますけれども、大体、県で全体で百五億、それから市町村で六十億、合わせまして百六十五億でございまして、物件費全体三千六百六十数億の中の百六十五億でございますから、一つの課で一億というのは、私は事実に反するのではないだろうかという感じがいたします。
それから財政調整基金の取りくずしの問題でごさいますが、これは実は県は——県でも市町村でもそうでございますが、財政調整基金、それから減債基金、それから先ほどおっしゃいました、先々あるものをつくるという特定の目的のための積み立て金、大体こういったものを持っているわけであります。それで今度、税収の落ち込みに対応しまして財政調整基金を取りくずさそうと言っておりますのは、いま申しました三つの大別できまする基金の中の財政調整基金でございまして、これはまさに今日のような、こういう経済の変動によりまして見込んでおりました税収というものが落ち込む、こういうときのために積み立ててあるわけでございまして、ただ漫然と貯金をして楽しむという式のものではないわけでございまして、私どもは、こういうときこそ財政調整基金というものを発動すべきではないかということでございまして、その点は、そのほかの減債基金なり、あるいはその他の特定目的のための基金というものはあえて手をつけておらない。それから、市町村の財政調整基金の取りくずしということは、私ども実は考えておらないわけでございまして、府県と指定市、この範囲で財政調整基金の取りくずしというものを中心に考えてまいりたい。と申しますのは、結局今度のこの税の減収と申しますのが、法人事業税、法人税割りでございますので、府県のほうにどうしてもそれが寄るということでございまして、府県の財政調整基金というものを中心にして取りくずしを——大体四十五年度の期末におきましては府県で七百二十五億ございまして、その後、取りくずしたり積み増したりするものもございますので、大ざっぱに申しましてまあ半分程度を取りくずす、なお半分程度のものは残るのではないだろうかというふうに考えておりまして、地方の実情はそれにたえ得ないものではないだろうというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/81
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082・中沢伊登子
○中沢伊登子君 朝からずっと質問が続きまして、大半、重複をしているような感じがいたしますので、二点だけ御質問をして私の質問を終わりたいと思います。
今度の地方自治体の財源の不足額の中で、地方団体が資金運用部資金から借り入れるお金が七百四十六億でございますけれども、この借り入れ金の返済を四十七年度から八年間にわたって行なうことになっておりますが、最初は少なく、あとのほうが多く返すことになっているようです。年々財政規模が大きくなっていくので、一見、たいへん合理的には見えますけれども、わが国の不況は四、五年ごとにやってきています。これを考えると、昭和五十二、三年ごろに相当額を返済することが適当であるかどうか、この点について、まずお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/82
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083・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) この返済の計画につきましては、ただいま御指摘になりましたような考え方で、この八年間に、しかも最初は、景気の動向につきましての予測もさだかでございませんので、少なく返していくということで組んでございます。それで、いま御指摘になりましたように、ある程度、この間に景気変動の波の低いところがここに重なってくるのではないだろうかという御指摘、私はそのとおりだと思います。ただ、この計画を立てます際に私ども考えておりましたことは、ある程度景気が回復をいたしまして上昇してまいりますというと、当然、交付税なり税の伸びというものも期待されるわけでございますので、そのときには若干繰り上げて返すということで、先の波のときにこれがぶつかりませんような配慮も絶えず加えていくべきではなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/83
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084・中沢伊登子
○中沢伊登子君 大蔵省が今度の資金配分にあたって、従来、民間部門に片寄り過ぎたから、今後は公共部門への資金の導入をはかるべきだというように言っているようですけれども、いままでの例を見ますと、不況時には民間設備投資が落ちるので、当然、公共投資のほうが伸びてまいりますが、これは住民の要望よりも、道路などの公共投資が多いですし、また、これを景気回復のてこにしておりますが、これに対する補助率は三分の一が大半です。この補助率をふくらまさなければ地方は負担し切れないと思います。地方税は落ち込みますし、交付税は減ります。公共投資、公共負担は押しつけられますし、地方自治体は二重、三重の苦しみにあえぐわけです。ところが、景気が回復してきますとすぐに民間設備投資型に戻ってしまいます。今回の地方財政対策も、ただ財源不足対策にのみ追われて、自治省が主張するような形での将来の展望が欠けていると思いますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/84
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085・鎌田要人
○政府委員(鎌田要人君) 当面の財源対策といたしまして、たとえば事業の面におきましては公共事業の追加だけでございまして、いわば、おそらく先生のおっしゃりたいことは、この地方団体独自の立場で行なっていかなければならない、景気浮揚策ということとは関係のない生活関連の社会資本の充実というところの追加計上というものがないではないかという御指摘だろうと思うわけでございます。この点につきましては、今回の措置といたしましては、結果的に単独事業のふくらましというところまではいっておらないわけでございますが、当初計画ベースで申し上げますというと、いわゆる長期計画的に行なってまいりまする単独事業というものが、ことしの財政計画では一兆六千億あるわけでございまして、公共事業の一兆八千億というものとほぼ見合うような大きな額のものを、しかも毎年二割程度のテンポでふやしてまいっておるわけでございます。明年度の財政計画におきまして、私ども、この単独事業というものをどのようにして満度を確保するかということに歳出面におきましては重点を置いてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/85
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086・中沢伊登子
○中沢伊登子君 けっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/86
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087・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/87
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088・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) 速記を起こして。
他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/88
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089・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/89
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090・神沢浄
○神沢浄君 昭和四十六年度分の地方交付税の特例等に関する法律案について、私は、日本社会党を代表して、反対の立場で意見を申し上げたいと思います。
いままでの審議を総括いたしてみますと、大体、大別して次の三点に集約できると思うのでございます。
その第一点は、今次の施策をもってすれば、地方債や借り入れ金を主体といたしておりますために、地方財政の不健全化は、これは避けられないと思うのであります。
第二点としては、四十七年度の展望に好転が期待できない、いや、それどころでなくて、さらに切迫するという現状におきましては、ますます地方財政の危機は深刻化するであろうという点であります。
その第三点としましては、国の経済政策のしわ寄せをかぶりまして、そのために地方財政の自主性が著しく失なわれつつあるという点であります。すなわち現状の三割自治の不合理な財政制度の上に、さらに不合理化して地方自治は身動きがつかなくなり、そのため憲法に規定する自治の本旨とは全く逆に、財政的に中央への隷属化を増強されつつあるという点であります。
私は、以上の総括の中から指摘できることは、いまわれわれが直面している地方財政の問題というのは、ただ単に経済変動に起因する現象上の危機というような単純なものではなくて、むしろ今次の経済変動が起爆剤となって地方自治の本質が、すなわち自治そのものが重大な危機に立たされていると考えなければならないと思います。私は、問題は大きく分けて二つになると思うのでありまして、すなわち地方自治の根本であるところの一つ自主性、一つ健全性、これがどう守られるかということでなければ真の対策とはならないと思うのであります。それが自治の本旨というものだというふうに信ずるわけであります。したがって、今次のこの施策におきましても、当然国の政治の責任としてそれを志向したものでなければならないと思います。それには当面少なくとも交付税率の改善等を含めたところの国と地方の税財源の再配分、すなわち地方財源の自主的な強化確立という点が一番問題だと思うのであります。これが土台に置かれていなければ、どのように当面のびほう策に苦心を払ってみましても、問題の根本的打開にはつながらないと思うのであります。遺憾ながら今次の一連の施策はそれにこたえていないと思うのであります。
以上の理由をもって反対を表明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/90
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091・増田盛
○増田盛君 私は、自由民主党を代表し、昭和四十六年度分の地方交付税の特例等に関する法律案に賛成いたすものであります。
昨年後半以降、わが国の経済は停滞を示し、加えて本年八月のドル防衛緊急対策、為替変動相場制への移行等のために不況の様相が強まり、地方財政の運営にも深刻な影響があらわれるに至ったのであります。
本案は、この事態に対処する当面の措置として、所得税の減税に伴う地方交付税の減五百二十八億円を一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れ、また、地方交付税の減収分七百四十六億円及び地方公務員の給与改定のための所要財源五百五十億円を特別会計で借り入れることとし、別途措置されます地方税の減収に対処するための一般公共事業の財源対策としての地方債一千億円の増額、景気刺激のための公共事業費の増額に伴う地方負担分についての一千五百二十二億円の地方債の発行の措置と合わせまして、地方財政の当面の運営に支障を生じないようにしようとするものでありまして、この際、時宜に適した措置であると考えるものであります。
以上の理由から賛成いたすものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/91
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092・藤原房雄
○藤原房雄君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和四十六年度分の地方交付税の特例等に関する法律案に対し、反対の討論を行なうものであります。
今回の補正予算の地方財政対策を見ますと、地方交付税の措置額千八百二十四億円のうち、所得税の年度内減税に伴う地方交付税の減収額、穴埋め分、五百二十八億円を除いては、地方団体の財源不足額千二百九十六億円はすべて借金によって対処しようとしているのであります。
地方財政を今日のような窮地に追い込んだ原因をたどってみますと、そこには政府の地方財政に対する態度がきわめて場当り的であり、長期健全化の視点を欠いていることを指摘しなければなりません。
過日、自治省より昭和四十四年度の「行政投資実績調」が発表になりました。これによりますと、行政投資額は、前年度に比べて七千億円増加し、生活関連社会資本に対する投資額も若干増加しておることを明らかにしております。しかし、これだけでは決してほめてよいことにはならないと思います。つまり投資額伸び率一八・一%は、民間企業設備投資の伸び率二九・五%に比べてみると、はなはだしく低いのであります。そうしてこのことが、実は、今日のドルショックによる経済混乱を引き起こす大きな一因をなしてきたのであります。
数年前、政府が経済社会発展計画を策定した際、経済企画庁内部では、国際収支の黒字基調は定着したとの認識のもとに、いままでの輸出優遇策を再検討し、福祉社会への大転換をはかるべきだと指摘したのでありますが、結局、政府の採用するところとならなかったのであります。このように見てきますと、経済成長の過程において見込まれる資源配分にあたって、公共部門へ適正な配分を行ない、住民生活に直接関連した行政を行なうための台所である地方財政について、その根本的な体質改善を怠った政府の責任は、まことに重大であると言わなければなりません。生活関連社会資本の立ちおくれは、ここに端を発しているのであります。しかしいま政府が、この時期においてとろうとしている措置は、ただ単に、目前の応急対策のみに終始し、深く反省するところもなく、地方財政の長期ビジョンを欠いていることは、まことに遺憾にたえないと言わざるを得ないのであります。
以上の諸点を述べまして私の討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/92
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093・中沢伊登子
○中沢伊登子君 私は、民社党を代表して、昭和四十六年度分の地方交付税の特例等に関する法律案に反対をいたします。
第一の理由は、今回とられようとするやり方は、今年度限りの穴埋め措置で、きわめて不十分であります。当然に交付税率を引き上げるべきでありまして、この点が納得いきません。
第二の理由は、千二百七十四億円の減収のうち、一般会計からの補てんは五百二十八億円だけで、他は借り入れ金によることとしたことは筋が通らないのであります。つまり交付税制度のもとにおける地方団体の財源不足額は、本来借り入れ財源で措置すべきものではないのであります。
第三の理由は、借り入れ金の返済が、昭和四十七年度から八年間にわたって行なわれることになっておりますが、これは当を得ていないと思います。なぜならば、わが国の不況は、四、五年ごとにやってくる。これを考えるならば、借り入れ金をやむを得ない措置だとしても、これを極力少なくし、早期に返す方法をとるべきであります。
以上、三つの理由によって私は反対をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/93
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094・河田賢治
○河田賢治君 私は、日本共産党を代表して、昭和四十六年度分の地方交付税の特例等に関する法律案に対して反対討論を行ないます。
一、本法案に反対する第一の点は、国税三税の減収による地方交付税の減額に対して、資金運用部資金からの借り入れで措置するということについてであります。これは昭和四十七年から五十四年までの間に交付税から返済するという、いわゆる交付税の前借りにすぎず、従来から三割自治のもとで苦しめられてきた地方財政を長期にわたって圧迫するものにほかなりません。国税三税の減収による交付税の減額、その原因である不況、ドルショックは、佐藤自民党政府が日本経済をアメリカに従属させ、そのもとで独占資本本位の高度経済成長政策を強行してきた結果引き起こされたものであり、とりわけ、戦争と侵略によるドル危機を他国の犠牲で解決しようとするニクソンのドル防衛政策に全面的に協力してきた政府の、反国民的な政策の結果引き起こされたもので、その責任はすべて政府にあります。わが党は政府がその責任を回避し、地方自治体に借金を押しつける今回の措置に反対し、地方交付税の減額分はすべて国が一般会計で補てんすることを要求するものであります。
二、反対の第二の点は、給与改定に伴う不足財源に対する措置についてであります。わが党は、人事院勧告による一一・七四%の給与引き上げさえきわめて不十分であり、労働者の賃金引き上げの四月実施を依然五月とし、低賃金を押しつけるものにほかならないと考えます。今回二割をこえる節約を強要し、しかも全額を交代税の前借りによって措置するという全く容認することのできないものであります。給与費の捻出は、借金や節約でまかなうべきものでなくて、国の一般会計で補てんしなければならないものです。わが党は、不交付団体の給与不足額も含めて、給与改定に伴う不足額を国が全額一般会計で補てんすることを要求するものであります。
第三の点は、今回の単位費用の改定が給与改定に伴う不足分の措置に限られていることについてであります。単位費用については、従来から実情に見合わないという問題があり、それに加えて今回、不況、ドルショックの対策として新たに増加する事業及び人員の人件費など、地方自治体の財政需要は一そう増大するにもかかわらず、それが今回の単位費用の改定に全く含まれていないことです。わが党は、これら新たな財政需要を含めて実情に見合った単位費用の改定を行なうよう強く要求するものであります。
第四の点は、政府が景気浮揚策としてとった公共事業拡大に伴う地方負担分をすべて地方債でまかなうとしていることについてであります。この地方債はその八割を政府資金でまかなおうとしているとはいえ、地方負担はばく大なものであり、地方財政を大きく圧迫するものであります。わが党は、公共事業拡大が景気浮揚としての政策的なものである以上、その地方債の元利償還は国が見るべきだと考えます。さらにまた、地方税の減収に対してとられる措置としての地方債発行については、すべて低利な財政投融資資金でまかなうようにし、その利子補給を行なうこともあわせて主張するものであります。
最後に、わが党は、今回の地方財政の深刻な危機が早急に解決するものではないことを踏まえて、地方交代税の落ち込みを借金でまかなうという、ばんそうこう的な対策ではなく、交代税率の、たとえば現行三二%から四〇%への引き上げ、その配分の民主化など、地方自治体の自主的財源の確保のために抜本的な対策を強く要求して本法案に対する反対討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/94
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095・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/95
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096・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより採決に入ります。
昭和四十六年度分の地方交代税の特例等に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/96
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097・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/97
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098・寺本廣作
○寺本広作君 私は、ただいま可決されました昭和四十六年度分の地方交代税の特例等に関する法律案に対して、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、共産党、各派共同による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/98
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099・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) ただいま寺本君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/99
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100・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) 全会一致と認めます。よって、寺本君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、渡海自治大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。渡海自治大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/100
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101・渡海元三郎
○国務大臣(渡海元三郎君) ただいま議決になりました附帯決議につきましては、政府は、御趣旨を尊重し、善処いたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/101
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102・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/102
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103・玉置猛夫
○委員長(玉置猛夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十六分散会
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106714720X00319711130/103
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