1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十六年十二月十五日(水曜日)
午前十時九分開議
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○議事日程 第十二号
昭和四十六年十二月十五日
午前十時開議
第一 沖繩の復帰に伴う特別措置に関する法律
案、沖繩の復帰に伴う関係法令の改廃に関す
る法律案、沖繩振興開発特別措置法案、沖繩
振興開発金融公庫法案、沖繩開発庁設置法
案、沖繩における公用地等の暫定使用に関す
る法律案及び沖繩の復帰に伴う防衛庁関係法
律の適用の特別措置等に関する法律案(趣旨
説明)(前会の続)
第二 沖繩平和開発基本法案及び沖繩における
雇用の促進に関する特別措置法案(趣旨説明)
第三 租税特別措置法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
第四 一般職の職員の給与に関する法律の一部
を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
第五 特別職の職員の給与に関する法律及び沖
縄復帰のための準備委員会への日本国政府代
表に関する臨時措置法の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
第六 防衛庁職員給与法の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一より第六まで
一、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する
法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/0
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001・河野謙三
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
日程第一 沖繩の復帰に伴う特別措置に関する法律案、沖繩の復帰に伴う関係法令の改廃に関する法律案、沖繩振興開発特別措置法案、沖繩振興開発金融公庫法案、沖繩開発庁設置法案、沖繩における公用地等の暫定使用に関する法律案及び沖繩の復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置等に関する法律案(趣旨説明)(前会の続)
日程第二 沖繩平和開発基本法案及び沖繩における雇用の促進に関する特別措置法案(趣旨説明)
以上両件を一括して議題といたします。
まず、沖繩平和開発基本法案及び沖繩における雇用の促進に関する特別措置法案について、衆議院の発議者から順次趣旨説明を求めます。衆議院議員細谷治嘉君。
〔衆議院議員細谷治嘉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/1
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002・細谷治嘉
○衆議院議員(細谷治嘉君) ただいま議題となりました日本社会党、公明党、民社党、三党共同提案にかかる沖繩平和開発基本法案の提案理由とその要旨を御説明申し上げます。
沖繩が本土から分離せられ、アメリカの軍事支配に組み込まれて以来、すでに二十五年余の歳月が経過いたしております。過ぐる太平洋戦争で、本土の防波堤として約二十万人にものぼる民間人の犠牲と国土の荒廃を余儀なくされた沖繩県民にとって、その傷のいえぬまま、四半世紀の長きにわたり異民族支配のもとに放置されたことは、何としても納得のいかぬことであります。しかも、この間、朝鮮戦争を契機に、米軍によって沖繩の戦略的機能は太平洋のキーストーンとして著しく強化されてまいりました。この結果、面積わずか二千三百八十八平方キロメートルしかない沖繩で、その一二・五%もの広大な土地が軍事基地として占有され、人口が一番密集している沖繩本島では二二%以上となっており、いかに軍事基地の占める割合が高いかがわかります。しかも、これらの基地は沖繩全島の平たん部を占有しており、経済的に開発可能な地域はすべてアメリカ軍が握っていると言っても過言でありません。
こうした開発可能な土地をアメリカ軍の手によって奪われ、生活の基盤を失った県民は、好むと好まざるとに関係なく、生きるために、年とともに巨大化するアメリカ軍基地に基地労働者となって働かなければなりませんでした。基幹部門たる第一次、第二次産業の停滞と第三次産業の異常な発展は、すべて巨大なアメリカ軍基地の存在によるものであり、これが基地依存経済といわれる沖繩経済の根源であります。しかも、この基地依存経済のもとで暮らす沖繩百万県民の生活はきわめて不安定であるとともに、本土における国民所得の七割にも満たぬ所得水準は、必然的に福祉、医療、社会保障等、県民生活のあらゆる部面においても低水準の状態を余儀なくされております。こうした沖繩県民の生活を向上させ、基地依存経済からの脱却による平和経済への転換は、日本政府と本土国民に課せられた義務でございます。そのためには、アメリカの軍事基地の全面撤去がはかられなければなりません。政府が去る六月に調印した沖繩返還協定によるアメリカ軍基地の全面的存続のもとでは、沖繩経済の平和的発展は全く不可能でございます。沖繩を戦争の恐怖とアメリカの軍事的重圧から解放するばかりか、さらに沖繩の平和的開発を推進し、沖繩百万県民の生活を物心両面にわたって豊かなものとすることは、国民総生産第二位を誇る日本経済にとっては可能なことであります。
したがいまして、ここに提案いたしました沖繩平和開発基本法案は、沖繩の経済、社会を平和的に開発するため、開発の目的、主体、手続、開発計画の内容及び開発行政機構の基本を定め、もって国の責任々明らかにいたしたものでございます。
次に、その内容の概略を御説明申し上げます。
まず、第一章におきまして、沖繩を戦争の恐怖と他国の軍事的重圧とから解放し、進んで日本の沖繩として平和開発をはかるため、軍事基地の全面的撤去がその基本であることを明らかにいたしております。
さらに、沖繩の平和開発は、本土との格差をすみやかに解消するばかりでなく、同時に東南アジア諸国の平和開発に寄与することを基本方針としております。そして、政府は、沖繩の自治権を地方自治の本旨に沿って尊重しつつ必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講ずべきことを明らかにいたしております。
第二章におきましては、沖繩総合開発計画の内容とその策定、手続を明らかにいたしております。すなわち、沖繩総合開発計画は、アメリカ軍基地のあと地その他の土地の平和利用に関する事項、産業基盤整備に関する事項、生産条件が沖繩に適する農畜産物の振興・流通機構の整備及び価格安定に関する事項、林業の振興と利用に関する事項、遠洋漁業及び沿岸漁業の育成に関する事項、製造加工業の育成及び輸出増進に関する事項、中小企業の共同化、近代化に関する事項、観光資源の開発及び旅行関係施設の整備に関する事項、社会福祉、医療施設の整備及び医師、看護婦の確保に関する事項、生活基盤整備に関する事項、僻地を含む学校教育施設の整備及び社会教育施設整備に関する事項、離職者の技術再教育及び職業紹介の推進に関する事項、公害防止と環境保全に関する事項、その他沖繩の開発に関し必要な事項を定めることとし、長期計画及び年度計画とすることを明らかにいたしております。そしてこの沖繩総合開発計画は、沖繩の離島開発について十分考慮を払うと同時に、東南アジア諸国との経済的、文化的交流に特に配慮すべきことをうたっております。
次に、沖繩総合開発計画の策定の手続につきましては、沖繩県は、関係市町村の意見を聞いて沖繩総合開発計画案を作成し、政府は、沖繩県の計画案に基づき、沖繩開発審議会の議を経るとともに、国会の承認を受けなければならないといたしております。また、国は、沖繩において、沖繩の自治権の確保と東南アジア諸国との交流をはかるため、水道事業、電力事業を県営化するための必要な措置及び亜熱帯農業調査研究機関の設立に必要な措置を講ずることといたしております。
第三章におきましては、沖繩の、平和開発を推進するために必要な行政機関の設置について明らかにしております。すなわち、沖繩の平和開発に関する施策を総合的かつ積極的に推進するため計画の調整機関としての沖繩開発庁と、その附属機関として委員三十三人以内からなる沖繩開発審議会の設置をするとともに、沖繩の平和開発に必要な資金を調達、融資するため、沖繩開発金融公庫を設置することを規定いたしております。
なお、念のため申し上げますと、本法案に基づいて沖繩県及び市町村の財政力を充実強化し、戦後の格差解消と行政水準の向上をはかるため、各種補助率の大幅引き上げ、地方交付税の強化、特例交付金の支出等を内容とする復帰に伴う沖繩の財政特例法案及び計画の調整推進と事業執行の沖繩県への委任を内容とする沖繩開発庁設置法案及び沖繩にある琉球開発金融公社、大衆金融公庫及び琉球政府の各種特別会計を一本化して、それに政府資金の出資による沖繩開発金融公庫を設立し、その監理、運営について沖繩県の意思を反映させる等を内容とする沖繩開発金融公庫法案の三法案を提出する予定でございます。
以上が、本法律案を提案する理由並びにその要旨でございます。
何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/2
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003・河野謙三
○議長(河野謙三君) 衆議院議員川俣健二郎君。
〔衆議院議員川俣健二郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/3
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004・川俣健二郎
○衆議院議員(川俣健二郎君) 私は日本社会党、公明党、民社党を代表いたしまして、ただいま議題となりました沖繩における雇用の促進に関する特別措置法案について、提案の理由とその要旨を説明いたします。
太平洋戦争の惨禍から戦後期を経て今日に至る年月は、日本国民にとって、ひとしく苦悩の道でありました。国民は、大小の差はあれ、戦争が残した傷あとを背負いながら日々の生活にいそしんできたのであります。その努力と願いにもかかわらず、日本社会は決して国民の平和と福祉を達成できているとは言えません。しかし、顧みまして、わずかに幸いであったのは占領時代を短く終え、戦後期から早く脱却できたことでありましょう。
ただ、沖繩県民については、全く事情が異なっていることは御承知のとおりであります。過ぐる大戦において、沖繩は本土の防波堤として直接戦場となり、老若男女を問わず、二十万人余の民間人が戦死し、戦争終結とともに、死を免れた人々も米軍キャンプに押し込められたのであります。米軍キャンプから解放された人々が郷里に帰ったときは、家も田も畑も、金網と銃剣に囲まれ、基地と化していたのであります。沖繩の戦後はここから始まり、二十五年余の今日まで続いてきたということを忘れてはなりません。沖繩は平野部のほとんどを米軍基地に奪われたために、県民は生活基盤を失い、やむなく基地に依存して働かなければなりませんでした。巨大な基地の存在は産業の正常な発展も阻害し、第一次、第二次産業は停滞して第三次産業のみが肥大するといういびつな産業構造をつくり上げてしまったのであります。今日の沖繩の社会構造を見ると、基地労働者、米軍人軍属に使用される者、基地関連産業の零細企業の従業員、さらに中小零細な企業や商店、過密人口をかかえた零細農家、これらすべて不安定な営みを続けていると一口に表現できると思います。沖繩の復帰が実現した場合、沖繩の経済環境が激変することは疑問の余地はありません。その原因が、一定の基地縮小、ドル防衛政策による基地経費の削減、本土企業製品の流入、農業の不安定化などの点にあることは広く指摘されているところであります。沖繩が独自にかかえているこのような条件に加えて、今日、ドルショック、円切り上げによる日本経済の不況がさらに大きな圧迫を加えようとしていることも指摘しておかなければなりません。したがいまして、基地労働者のみでなく、中小企業、農業など広範な産業分野から多数の失業者が発生すると見なければなりません。しかも、復帰と同時に職を失う者、経済環境の変化に従って時日を経てからあらわれる失業者等々、その態様はさまざまでありましょう。これらの人々に安定した職を確保し、基地経済から脱却して平和経済を建設するためにあらゆる協力を行なうことは、政府と本土国民に課された義務と言わなければなりません。二十五年余にわたる沖繩県民の苦悩、今日の沖繩の姿は、すべて政府の方針によって沖繩を本土から切り離した結果に負うものであって、沖繩県民に何らの責任を帰すことはできないことをあらためて思い起こしていただきたいと思うのであります。
本法案の主要な点は次のとおりであります。
第一に、沖繩において職を失なった者には、すべて新たな職につく手助けを政府が行なうことといたしました。
第二に、新たに職につくまでの間、就職促進手当、職業訓練手当などを支給し、その間の生活を保障することといたしました。
第三に、労働大臣の諮問機関として、沖繩雇用審議会をおき、専門に雇用の促進をはかることといたしました。
以上のように特別の措置を行なうことといたしましたのは、単に沖繩県民への同情とかあるいは政府や本土国民の義務を強調するあまりということではありません。それは雇用対策法、職業安定法、職業訓練法、失業保険法等で構成されております現状の雇用促進制度だけでは、沖繩における大量の失業者の発生に対して何らの有効な対応をもなし得ないと判断されるからであります。
何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決され、沖繩県民の願いにこたえてくださるようお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/4
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005・河野謙三
○議長(河野謙三君) これより、去る一日、趣旨説明の聴取をいたしました沖繩の復帰に伴う特別措置に関する法律案外六案、及びただいま趣旨説明を聴取いたしました沖繩平和開発基本法案外一案に対する質疑を行ないます。順次発言を許します。稲嶺一郎君。
〔稲嶺一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/5
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006・稲嶺一郎
○稲嶺一郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、沖繩の復帰に伴う特別措置に関する法律案外六法案につきまして、総理並びに関係閣僚に対し若干の質問をいたしたいと存じますが、質問に先立ちまして、私は沖繩県民の代表といたしまして一言申し上げたいと存じます。
佐藤総理は、昭和四十年八月、わが国総理として初めて沖繩を訪問されて以来六年有余の樹、沖繩の祖国復帰を最大の政治課題といたしまして、終始一貫、前向きの姿勢をもってこれが解決に当たられ、復帰の実現に御努力くださったことに対し、心から感謝の意を表する次第であります。(拍手)
返還協定とそれに関連する国内諸法案につきましては、国会の中でも、マスコミの上でも、盛んな論議が展開されてまいりました。協定に若干の不満な点はあるにしても、これを承認し、まず復帰を実現し、しかる後継続的努力によって完全なるものにしようとする考え方に対し、最初から完全かつ理想的なものでなければならないとし、協定反対または粉砕、関連法案阻止等が叫ばれておるのでございます。私ども沖繩県民は、過去二十六年の長い間、異民族支配という十字架の重荷を背負わされてまいりました。沖繩県民の純粋なる民族感情は、まず復帰を実現することであり、一日も早く日本国民としての主権を回復し、過去の重荷を軽くして、新しい沖繩県の建設に邁進したいのであります。このような県民の悲痛なる訴えを一億国民が心をむなしゅうして謙虚に聞くならば、私は、だれ一人としてこれを理解できない人は日本一億の同胞の中にいないと思うのであります。(拍手)議員各位におかれましてもこのことを十分御認識の上、返還協定のみならず関連法案についても御審議いただきますよう切にお願い申し上げ、私の質問に移らしていただきます。
返還協定に関連する国内七法案の内容は、復帰に伴う県民生活の混乱を最小限度に防止し、かつ、復帰後における豊かな沖繩県を建設していく上において適切なる措置であると考えますが、中には国民に十分理解されていない点があるように思われますので、これらの点につき、主として県民生活に関係の深い問題を中心に、私の提案をも含めてお尋ねいたしたいと存じます。
第一に、沖繩の自治に関する問題について総理にお伺いいたします。
政府は、沖繩が復帰する時点より沖繩開発庁を新設し、その地方支分局として沖繩に総合事務局を設置することといたしております。北海道の場合と同じく、沖繩の振興開発を総合かつ強力に推進するためにこれら機関設置はぜひ必要でありますが、他面、開発庁を設置することによって、沖繩そのものの自治が侵害されるのではないかとの疑念を持つ者もあります。私は、沖繩県知事を振興計画の作成者とする等、かなり沖繩県の自治を尊重する旨配慮されているように思いますが、さらに沖繩振興開発審議会の委員構成、開発金融公庫の役員構成等においても沖繩県民をできるだけ多く登用する等、県民の自治については十分配慮すべきだと思いますが、政府はどのようにお考えでありましょうか、お尋ねいたします。
第二は、復帰後における沖繩県を平和のキーストーンにすべきだということでありますが、本問題につきまして具体的な提案をいたしますので、総理並びに外務大臣の御賛意を得たいと思います。
わが国としては、平和を擁護すると同時に常に平和を追求していかなくてはなりません。この意味で、第二次大戦終えんの地であり、長年軍事基地といたしましての役割りを負わされてきた沖繩をして、東洋における平和のキーストーンにすることはきわめて意義深いものがあると思います。
これを具体化するためにはいろいろな方法があると思いますが、私は、平和の表徴である国連機関及び国際的施設を沖繩に設置したらどうかと考えております。たとえば国連大学の誘致、南北文化センターの設置、国際海洋研究所の開設等であります。これらの機関または施設は、歴史的、社会的、地理的条件からいたしましても沖繩が適地であると考えますが、政府といたしましてこれらの実現に努力していただけるかどうかお伺いいたします。
第三は、基地の整理縮小と経済開発との関連について外務大臣並びに総務長官にお伺いいたします。
米軍基地の整理縮小については、沖繩の振興開発並びに県民生活等との関連について十分配慮すべきであると思います。
まず、都市開発、水資源開発、道路、港湾等の建設整備にあたって、必要不可欠な個所については整理縮小を急ぎ、沖繩の振興開発に支障を来たさないようにすべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
さらに、基地の整理縮小は、基地労働者の雇用転換、基地関係業者の転業対策、返還される基地の利用等と並行して進めらるべきであり、これらの間にズレのないように総合的に取り上げるべきであると存じますが、この点について政府の見解を伺います。
第四に、復帰に関連して生ずる失業者の対策について総務長官にお尋ねいたします。
復帰に伴って失業者の数は数万人にのぼるものと予想されておりますが、これらの救済並びに吸収等の対策はまことに深刻であります。政府は沖繩振興開発特別措置法において、救済の面では職業訓練、失業手当の支給等、かなり具体的な措置を講じているのでありますが、反面、失業者の島内における吸収策は不十分なように思われます。新しい産業を誘致し開発することは時間のかかる問題であり、復帰に伴って急激かつ大量に生ずる失業者の吸収策としては、直ちに効果があらわれるとは考えられません。よって私は、失業者吸収策の面からいたしましても、本島縦貫高速道路やモノレール、港湾等の公共事業を復帰前後に集中的に施工すべきであり、かつ、このことは産業基盤整備の見地からも必要だと考えますが、政府はこの問題についてどのように考えておられますか、お尋ねいたしたいのであります。
第五は、経済の振興開発のために先導的役割りを果たす産業の沖繩への誘致の問題について総務長官にお尋ねいたします。
沖繩の振興開発を推進する上において大型企業を誘致することが必要でありますが、目下沖繩に誘致されている産業は、わずかに石油産業だけであり、一時進出を計画していたアルミ、造船、弱電その他の産業は、沖繩進出を断念または延期する等の動きにあります。このことは、現在の日本経済の不況ムードにもよりますが、最も大きな原因は、沖繩において、用水、電力、道路、港湾等、産業基盤が貧弱であり、しかも金融、税制等、政府の助成策が明らかにされていないことによるのであります。政府としましても、沖繩の振興開発を推進するにあたりまして先導的役割りを果たす産業を沖繩に誘致するためには、産業基盤の整備を急ぐとともに、政府による積極かつ果敢なる優遇措置を早急に明らかにすべきかと存じます。この点につきまして政府の御見解を承りたいのでございます。
第六に、沖繩の天然資源開発に関する問題について総理並びに外務大臣にお伺いいたします。
その一つは、尖閣列島の石油資源開発でありますが、尖閣列島がわが国固有の領土であり、沖繩県に所属することは明らかであります。しかるに、同列島における石油資源は、沖繩の振興開発を推進する上からも、あるいはわが国エネルギー源の確保という観点からいたしましても、早急に開発すべきだと思います。もしも開発にあたりまして、近隣諸国との間に摩擦が起こる可能性があるとすれば、政府はこのような障害を早急に解決し、開発を促進すべきではないかと存じますが、いかがでございますか。
さらに、沖繩には、天然ガスやコーラル等が豊富に埋蔵していると言われていますが、これが開発の推進についても政府の御見解を承りたいと存ずる次第でございます。
第七に、海洋博開催に関する問題について総理にお尋ねいたします。
昭和五十年に沖繩において開催されます国際海洋博が復帰記念事業として取り上げられる以上、復帰対策の最優先事業として取り扱われるべきものと思いますが、いわゆる関連公共事業についても、それと同等同格の優先事業として格づけし、それらの総合調整が望まれます。たとえば空港、港湾、道路、宿泊施設等の整備拡充は海洋博事業と一体的に進められるべきものと思いますが、これに関し、各省庁間の調整はどのようになっているのか伺いたいのであります。
また、海洋博の施設並びに事業内容は、あと利用が総合的かつ効果的にはかられてこそ、沖繩の総合開発に役立つものと思いますが、準備段階においてどのように考えておられるのか。また、あと利用を博覧会施設のみの利用ということだけでなく、海洋青少年訓練センター、国際海洋研究所等広く地域事業の振興という観点から検討することも肝要であると思います。その際は、民間資本の活用についても総合的に取り上げるべきだと思いますが、これらの点についても政府の御見解を承りたいのでございます。さらに、博覧会事業は、現地の県民感情を含め、いわゆる現地事情を十分参酌して企画され開催されるべきものと考えますが、計画準備段階において、どのような方法で現地の声をくみ取られるのかお伺いいたします。
第八に、農地法の適用及び農業災害補償制度の適用に関する問題について農林大臣にお伺いいたします。
沖繩の場合、農地の大部分を軍用地に取られ、やむなく他市町村へ移住し、それがために、地主が不在となっている土地が非常に多いのでありますが、これらの土地は農地法が適用されますと、国に取り上げられるのではないかとの不安を地主は抱いているのであります。法案によりますと、これらの点については、沖繩の実情に即した特別の措置を講じておられるようでありますが、県民の不安を解消するためにも、この際、政府の御見解を明確にしていただきたいのでございます。
さらに、農業災害補償制度の適用に関する問題であります。現行制度では、沖繩の主要農業産物であります砂糖キビ、パイナップルには適用されないことになります。政府においては、砂糖キビ、パイナップルを同制度適用品目にすべく検討されておるようでございますが、復帰時点から即刻適用していただきたいというのが沖繩県民の強い要望でございます。この地元の要望に対し、政府はどのように対処されるおつもりなのか、承りたいのでございます。
第九に、自衛隊の配備と公用地の収用について防衛庁長官にお伺いいたします。
復帰後における沖繩県に対し、本土と同様に自衛隊を配備することは当然でありますが、問題は公用地の収用であります。沖繩の軍用地主は、過去において、安い地代で半強制的に土地を収用されたという苦い経験を持っております。公用地の収用にあたっては、この点を十分留意すべきであると存じます。すなわち、土地の収用にあたっては、地主と十分に話し合い、合意を求めることに努力し、賃貸料についても地主連合会の要求に十分こたえるべきであると存じます。この点が満たされるならば、公用地等暫定使用法について一部の人々が主張している強制使用法的な意味はなくなり、問題は円滑に解決されるものと存じます。したがいまして、これらの点につきまして、政府の見解を承りたいと存じます。
第十は、基地周辺整備に関する問題並びに県民の請求権問題について防衛庁長官にお尋ねいたします。
復帰後もやむなく米軍基地は残るのでありますが、これに対し、沖繩県民の理解と協力を得るためには、基地周辺住民のこうむる騒音等の被害に対し、緊急かつ十分なる対策が行なわれるべきであると思いますが、政府の対策について伺いたいと存じます。
次に、沖繩県民の強い要望であります請求権問題については、協定並びに合意議事録によるもののほか、防衛庁関係の特別措置法案において、講和前人身被害に対する補償措置が取り上げられておりますが、講和前の軍用地復元補償その他の請求権についてはどのように対処し、解決をはかろうとしておられるのか、これらの点につき政府の御見解を承りたいと存じます。
以上が政府に対する私の質問でありますが、質問を終わるにあたりまして、私は沖繩県選出議員として同僚議員各位に訴えたいと存じます。
冒頭にも申し上げましたが、沖繩県民の大多数は、一日たりとも早く祖国日本へ復帰したいということであり、復帰反対または復帰をおくらしてもいいということは一部の主張にすぎないことを、この場ではっきり申し上げておきたいのでございます。(拍手)沖繩百万県民は、政府、民間を問わず、すべて一九七二年復帰を既定の事実といたしまして、これを目標としておのおの準備を整えてきたのでありますが、かりにも祖国復帰の日が将来に持ち越されるようなことがありとするならば、政治、経済、社会、すべての面に大混乱が起こることは火を見るよりも明らかでございます。このような県民の立場を考えました場合、議員各位におかれましてもこの際イデオロギーや政党等、おのおのの立場を乗り越えられまして、返還協定の承認のみならず、国内関係法案の成立に御努力に相なり、沖繩の祖国復帰を一日も早く実現し、沖繩百万県民が、一億同胞のあったかい激励と支援のもとで新しい豊かな県づくりに邁進できますように切にお願い申し上げまして、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/6
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007・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 稲嶺君にお答えをいたします。
まず、沖繩開発庁の設置は、稲嶺君の御指摘のとおり、沖繩の振興開発を進めていく上に必要であり、またこれが沖繩自治を侵害するおそれも毛頭ありません。沖繩開発庁は、沖繩の振興開発をはかるため総合的な計画の作成並びにその実施に関する事務の総合調整及び推進の役割りをになう行政機関として設置しようとするものであります。また、この計画の策定にあたっては、沖繩県知事が作成する原案に基づいて、沖繩の代表を含む沖繩振興開発審議会の議事を経て決定する等、沖繩の自主的な立場を十分尊重する趣旨を貫いております。
さらに、同庁の出先機関である沖繩総合開発事務局の機能も、県民の便益と沖繩の開発発展に資するため、許認可事務等を現地において一元的に処理しようとするものであり、沖繩県及び市町村の権限として、その事務の分野を侵すものではありません。
また、沖繩振興開発審議会の委員としては、沖繩県知事、県議会議長並びに市町村長及び市町村議会議長の代表者が参加することとされており、さらに、沖繩の各分野の代表等を学識経験者として委員に任命することが予定されております。なお、さきの衆議院の審議を通じ、沖繩の要望をさらに広く反映させるべきだとの意見があり、学識経験者の委員の数を増加する修正の行なわれたことは稲嶺君も御承知のとおりであろうと思います。
次に、国連大学の設置の可否については、ユネスコと国連とが協力して一年間検討を行ない、その結果が国連事務総長報告書として、現在開催中の国連総会に提出され、目下審議中であります。したがって、現段階では、これをわが国へ誘致することや、その国内での位置、場所等をどうするかなどは具体的に検討する時期に至っておりませんが、建設的な御提案でありますから、政府としても今後十分に検討したいと考えます。
次に、南北文化センターについては、琉球大学の長期構想の一環として、東アジア及び東南アジアに関する科学・文化の研究センターを設けたいという考えがあるように聞いております。また、海洋研究所については、後に詳しく説明をいたしますごとく、海洋万国博覧会との関連の御提案であろうかと思いますので、この二つの機関の設置の御提案につきましては、それぞれ具体的に検討が進められる段階でその必要性等を研究してまいりたいと考えます。
次に、御指摘のとおり、尖閣列島はわが国の領土であることには疑問の余地はありません。したがって、領土問題についてはいかなる国とも交渉を行なうつもりはありませんが、東シナ海の大陸だなについては関係国間に意見の相違がありますので、政府としては、関係諸国との円満な話し合いにより大陸だな問題の解決をはかった上、この地域の石油資源の開発に取り組みたいと考えております。また、天然ガスについては尖閣列島周辺のほか沖繩本島南部にも有望な地区がありますので、政府は昭和三十五年以来琉球政府と協力して調査、探鉱を進めておりましたが、沖繩経済振興の見地からその開発を積極的に助成してまいりたいと、かように考えております。
次に、国際海洋博についてのお尋ねにお答えをいたします。まず海洋博は、沖繩の自然条件を生かしつつ今後の沖繩経済振興に大きく貢献する事業として推進すべきものと考えます。このような観点から海洋博を経済発展に必要な社会資本整備の契機とするとともに、御指摘のとおり、海洋博の施設は単なる一時的な行事にとどめず、今後の沖繩の経済発展に役立つ恒久施設として残し、有意義なあと利用をはかるようにしたいと考えております。また、海洋博を成功させるためには、会場建設とあわせ相当大規模な関連投資を可能な限り一体的にかつ迅速に行なう必要があることは稲嶺君御指摘のとおりであります。このため政府は、関連公共事業を含め海洋博事業の円滑な準備、運営に資するよう、準備の進展に応じ万全の体制を整えていく所存であります。なお、地元の事情をしんしゃくしてまいるべきだとの御意見がありましたが、これも正しい御指摘だと思います。政府といたしましては、御指摘のように、計画段階から海洋博事業の内容、準備、運営等について広く地元をはじめ民間各方面の意見が十分反映されるよう配慮していく所存であります。
以上六点について私からお答えをし、その他は関係大臣からお聞き取りをいただきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/7
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008・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 私に対しまする質問は、尖閣列島の問題であります。この尖閣列島につきましては、ただいま総理から詳細に述べられましたが、この問題、わが国の領土であるということにつきましては、これは先般の、本席におきましても申し上げましたが、一点の疑いもないのであります。したがいまして、この島々におきまして石油資源があるというようなことでありますれば、これは、もちろんわが国の手において開発をいたします。また、その領海内におきまして資源があるというようなことでありましても、わが国がその開発に当たります。ただ、大陸だなの問題につきましては、各方面からいろいろ着目をされまして、いろいろまあ言い分があるようであります。これらの言い分に対しましては、いずれの一国の言い分といえども、一国だけの言い分を承認する、そういうことはいたしません。これが国際法の原則でございます。わが国は、関係諸国と協議の上、円満な話し合いによりましてその開発を進めていく、こういうことを基本方針としていきたいと、かように考えております。(拍手)
〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/8
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009・山中貞則
○国務大臣(山中貞則君) 今後の新しい沖繩県の開発計画をつくるにあたって、基地の存在というものが、都市計画や道路について非常な障害がある、この点は確かに私もそのとおりだと思います。しかし、いまこれをすぐ、全く基地のないものとしての設計書を描くこともできませんが、しかしながら、衆議院においては、すでに基地の整理縮小に対する院の決議がございまして、総理もそれに対して、自分も復帰を待たずしてこの国会決議に沿って努力をし、そして、沖繩県の新しい未来づくりのために基地の整理縮小につとめたい、こういう意思の表明もございましたので、その線に沿って、外交活動並びに私の沖繩県づくりのための作業を努力してまいりたいと存じます。
さらに、沖繩の復帰に伴う失業者の予測、あるいはそれに対処する手段として、新たなる角度から、やはり現地における島内の企業求人あるいはまた雇用市場貢献という立場から、公共事業その他を中心に積極的な投資が行なわれるべきではないかという御提言であります。もちろん、そのことがすべて公共事業によって吸収されるものでもありませんが、来年は、新生沖繩県の第一歩を踏み出す年でありますし、昨年、大体公共事業と見られるものについては、五十八億程度の本土からの復帰対策費でございましたけれども、来年度予算の編成にあたっては、現在、三百九十二億の要求をいたしまして、それぞれ道路整備、これには、那覇から石川までに至る中央高速自動車道路というものも、計画の第一歩を踏み出そうといたしておりますが、港湾、漁港、空港、下水道、水資源開発、土地改良、治山治水、こういうものに重点を置いてまいる所存でありますが、それによってやはり直接間接の求人に貢献することであろうことは、これは論をまたないところでありましょうし、また、先ほど来の御論議にありました海洋博覧会の昭和五十年開催にしても、直ちにそれに関連する付帯公共施設なり投資が行なわれなければなりませんので、これらには相当高度の知能労働者というものも要求されてまいるわけでありますので、それらの点も勘案しつつ努力をしてまいりたいと存じます。
さらに、先導的役割りを果たす産業の誘致にあたって、基盤整備とそれに対する配慮というものが必要である。確かに基盤整備の中でも、ことに工業用水道あるいはまた電力、こういうもの等は焦眉の急であります。したがって、来年は、工場用地の造成あるいは港湾施設、運輸施設等の整備はもちろんのことでありますが、北部の水系の開発、南部導入等によりまして、工業用水の確保にも遅滞のないように努力したいと存じますし、また、電力については、沖繩電力株式会社を出発させて、ほとんど全部を国の責任においてこの需要にこたえるための開発をしてまいるつもりでございます。さらに、それらの前提に従って、沖繩に対して有効かつ適切、そして沖繩の既存企業に脅威を与えない企業というものの進出が確保されなければなりませんが、企業は何といってもやはり採算を前提といたしますので、それらについて、本土税制の恩典等で考えられる限りのものについて、一応の措置をしてみたわけでございます。今回の法律の中で租税特別措置等に関連をいたすものとしては、農用地等の譲渡にかかる所得税の課税軽減の問題、あるいはまた事業用資産買いかえの特例、これは本土においては各種の制約がございますが、しかし、沖繩においては、那覇市その他の都市計画地域内の移動以外は全部この買いかえの特例の対象にしたい、既存企業についても十分に活用してまいりたいと考えております。さらに、減価償却の特例は、中小企業の近代化、構造改善等について十分配慮を税制上もしてありますし、また、地方税の課税免除、不均一課税等に伴う交付税を中心とする財政上の措置も配慮いたしております。なお、特定事業として認定をされましたものについて、本土企業等においてこれに積極的に進出をいたします場合には、海外投資損失準備金というものを初めて——税法上は少し名前と実態と合わない感じもいたしますが、沖繩に進出する企業にも適用したいと考えておるわけであります。まあ、これは将来の具体的な構想としてその第一歩を踏み出そうとしております自由貿易地域については、さらに自由貿易地域投資損失準備金というものをもって、その企業の進出意欲を助けたいと考えておるわけでございます。さらに、沖繩振興開発金融公庫において、これらについて各種融資を低利長期のものをいたしますことはもちろんのことでございます。
次に、農林大臣として答弁をいたします。農林大臣代理として答弁をいたします。
沖繩における農地の所有者の現状は、初めは、戦時中における強制疎開その他によって、やむなく自分の居住所在市町村を離れた方々、さらにまた、米軍による基地の強制使用等に伴って、みずからの村を離れて住まざるを得なくなった方々、あるいはまた、本土の農地法が適用されていない現状下において、市町村の統合等、あるいは分村等が行なわれたために、本土の農地法で見れば不在地主とみなされなければならない方々、これら、まことに万やむを得ない事情の方々がおられますので、これについては本土農地法に見られない特例を設けて、在村地主とみなして、同じ小作地の所有面積について認める措置をとろうといたしておる次第であります。
さらに、農業災害補償制度の適用については、御承知のとおり、水稲、畜産については直ちに沖繩においても適用することが可能でありますが、肝心の沖繩の基幹作物でありますキビ、パインの適用になりますと、なかなかここに問題がございまして、幸いにしてパインについては、現在の果樹共済と呼んでおりますものの中でこの実行ができるのではないかということで、この方向でいま検討いたしておりますが、キビについては、地域特産物についてどのような掛け金と給付、そしてそれの仕組みを全国的な規模としてとらえるのか、あるいは地域的共済を国が行なうことがはたして可能なのか、再保険制度の中で取り入れていくべきなのか等について、なお検討の余地がありますが、しかし、干ばつ、台風等において、現在のままでまいりますと、農家の人々は、生産者価格を幾ら高くきめられても、いわゆる工場に売り渡すキビそのものによって収入が補てんされない現状が明瞭に出ておりますので、どうしても農家の人々に対して、この基幹作物に対する非常の場合の収入補てんという制度が考えられなければなりませんので、これも十分に積極的に検討してまいりたいと考えておるところであります。(拍手)
〔国務大臣江崎真澄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/9
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010・江崎真澄
○国務大臣(江崎真澄君) 会期の途中に、にわかに防衛庁長官に任ぜられました。よろしくお願いをいたします。
さて、御質問の第一点でありまするが、自衛隊の配置については御理解を示していただきまして、たいへん感謝申し上げるのでありまするが、米軍の基地、自衛隊の基地、その他公共用関係の土地の契約については地元と十分配慮をするように、これはまことに当然なことでありまして、今日まで必ずしもこの賃貸料につきましても適正であったとは言い得ないものがありまするので、地元の要求を十分参酌して、期待に沿えるような措置を講じたいと思います。そればかりか、今後この賃貸借関係は防衛施設庁において行なうわけであります。これは、本土におきまして施設庁もだんだんなれてはおりますが、やはり新たに施政権が戻ってまいります沖繩県において個人の重要な土地を契約するというような話につきましては、慎重の上にも慎重に十分ひとつ配慮をするように、私、赴任間がないのでありまするが、特に施設庁長官に、前線でこの交渉に当たる者の顔がいわゆる祖国の顔に見えるし防衛庁の顔に見えるんだぞ、だから特訓を施してでも、十分地元の意向をくんで話し合いができるよう、きめこまかに措置するようにということを重ね重ね申しておるような次第でございます。
第二点の請求権の問題でありまするが、講和前の人身損害補償で実情とかあるいは氏名等がはっきりわかっておりますその補償漏れの事案につきましては、人道上の問題もありまするので、今回特に見舞い金を支給することができるように立法措置を行ないました。その他のいわゆる講和前の補償漏れ事案にかかわる請求につきましては、復帰後、一々実情を調査いたしまして、すみやかに適切な措置を講ずる所存であります。そしてまた、もし必要がありまする節は立法措置でこたえていく、こういう形にしたいと思っております。
なお、講和前に形が変更され、復帰前に返される土地の復元措置の問題、これにつきましては、返還協定の第四条二項及び三項を適用して米側が処理することになっております。復帰後のものにつきましては、当然、十分の補償ができるよう、これまたきめこまかな手配をいたしたいと思います。
第三点は基地周辺の整備についてでありまするが、これは各位の御協力によりまして、本土におきましてもだんだん整備が思うように進んでおります。したがいまして、沖繩においては、アメリカ施政権下においては、この整備が思うにまかせなかった、このこともありまするので、今後は十分ひとつ積極的にこれらの問題と取り組みたいと思います。しかし、実情がつまびらかでありませんので、とりあえず来年度におきましては調査費を五千八百万円計上して、事こまかに調査をいたしまする一方、緊急のものとして、すでに明らかになっておりまする道路の改修であるとか、河川の改修でありまするとか、学校の騒音防止の問題であるとか、こういうものについては、概算要求でありまするが、十億六千万程度のものをいま要求いたしております。しかし、これとても十分なものとは思っておりませんので、なお今後ひとつ追加の方向で努力をしてまいる予定であります。
なお、大事な点は、沖繩の財政基盤等が非常に本土と違いまして貧困なものもありまするので、この際、基地周辺の民生安定、施設の助成の対象としては、市町村だけでなく、沖繩県自体を含めまして、補助率も十割とするような考え方で手配をしてまいる予定であります。
以上お答えいたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/10
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011・河野謙三
○議長(河野謙三君) 川村清一君。
〔川村清一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/11
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012・川村清一
○川村清一君 私は、日本社会党を代表して、沖繩返還協定に関連する国内法案について、総理並びに関係大臣に対して質問をいたします。
衆議院沖繩返還協定特別委員会において不当不法にも強行採決された十一月十七日、琉球政府屋良主席は、沖繩問題の重大な段階において、将来の歴史に悔いを残さないため、また歴史の証言者として、沖繩県民の要求や考え方をここに集約し、県民を代表し、あえて建議をするとして、建議書を携行、上京したのであります。屋良主席上京の日程は、政府・自民党は知っていたはずです。それにもかかわらず、口を開けば、沖繩県民の声を聞き、平和な豊かな沖繩県をつくり、県民をあたたかく本土に迎えると言っていた佐藤総理、総裁が統率する自民党は、議会制民主主義を破り、屋良主席の建議には一片の耳もかさずに強行採決を敢行したのであります。このことは、沖繩県民をして本土政府並びに国会に対し、いかに大きな不信感をいだかせる結果になったか、はかり知れないものがあります。(拍手)その意味で、総理の責任はきわめて重大であり、私どもは絶対に容認することができない。この際、総理の政治責任を明確にしていただきたい。なお、佐藤総理は、その後琉球政府の建議書をお読みになられたか、お読みになったら、それに対する御見解をお伺いしたいのであります。
屋良主席の切々たる訴えに、私どもは強く胸を打たれ心からの感銘を覚えたのであります。徳川封建の時代には島津藩に収奪され、明治以来は本土政府によって常に差別の政治を押しつけられ、太平洋戦争では日本軍隊によって直接戦争にかり出され、あるいは防空壕から追い出され、あるいは集団自決を迫られるなど、十数万の非戦闘員がとうとい生命を失ったのであります。戦後は、異民族の統治のもとに、人権を無視され、あらゆる屈辱に耐えながら、いちずに日本国憲法のもとへの祖国復帰を願い、戦い続けた沖繩県民には、長い歴吏の流れの中から、沖繩の心が強く形成されたのであります。屋良主席の建議書は、その沖繩の心の叫びをもって、返還協定並びに関連する国内法の制定に対し建議し、具体的施策の実現を要望しております。沖繩の心とは何か。一つは反戦平和を貫く心であり、二つには基本的人権の尊重を求める心であり、三つには地方自治の確立を要求する心であり、四つには県民本位の経済開発を願う心であります。反戦平和を貫く沖繩の心は、米軍基地の完全撤去を要求し、自衛隊の配備に対しては強く拒絶反応を示しているのであります。施政権が戻ることによって、米軍の基地機能はすべて本土並みに、日米安保条約のもとに規制されるから心配がないとか、独立国である以上、国を守るために、自衛隊の配備は当然であるとの政府の論理は、沖繩の心には通じないのであります。この点、佐藤総理はどのように評価されるか、御見解を伺います。
私は、反戦平和を貫く沖繩の心を心として、まず公用地等の暫定使用に関する法案に対し質問いたします。
今日、米軍が使用している基地面積は、沖繩の全土の面積比一四。八%、沖繩本島の面積比は実に二七・二%に及ぶ膨大なものであります。その大部分は米軍が沖繩占領の初期に、住民を収容所に強制収容し、その間に好きかってに取得したものであり、さらに朝鮮戦争を契機にして、沖繩基地建設が本格化すると、一九五三年から五五年にかけて銃剣を突きつけ、ブルドーザーでならし、県民から強奪したものであり、ポツダム宣言に規制せられた占領目的に違反し、しかもその手続において土地所有者に法的に争う道を一切認めない不法なものであります。したがって、施政権が返還された時点で、これらの土地が所有者に戻されることは当然であり、もし継続使用を望む場合は、土地の所有者及び関係人との間に任意に協議をし、契約を結ぶべきであります。しかるに、本法律案は、現在どおり米軍に使用させるため、政府は基地用地を強制的に取り上げ、しかも五年間の長期にわたり米軍をそのまま居すわらせようとしており、さらに米軍基地ばかりか、復帰後、沖繩に配備される自衛隊の土地使用についても強制使用をしようとしているのであります。一九五三年、講和発効の場合、本土においても米軍基地の使用継続をはかって、土地使用、米軍特別措置を制定したが、この場合は、六カ月をこえない期間として限定したのであります。本土の場合は、一時使用の期間が六カ月であるのに対し沖繩は五年、このことは明らかに米軍の行なった沖繩土地収奪の違法性、不当性を引き継ぐことであり、五年もの長期にわたり有無を言わせず強制収用を許すことは、暫定使用の名のもとに土地強奪を合法化しようとするものであり、県民の基本権を不当に侵害するものであります。
さらに、自衛隊の土地収用については、安保条約の地位協定に基づく米軍への基地提供とは全く異質のものであり、本土においては、自衛隊の用地使用には土地収用法の適用がなく、現行法のもとでは強制収用は許されない。自衛隊法百三条による防衛出動の場合のみに限って認められているのであります。したがって、本土においてはできない自衛隊用地の接収を、復帰に伴う暫定措置とし、米軍基地使用に便乗して土地収用を強行しようとすることは、許されることではありません。しかも、復帰後の沖繩と沖繩県民のみに適用されるという特別法であることは、沖繩県民のみに差別をつけ、著しい不利益を与えることであり、不当であります。さらに、その手続は、本法の施行前に告示し、施行後は通知することによって権利が取得されることになっており、現行法にいまだその例を見ないものであります。結論的にいって、本法律案は明らかに憲法第九条、十四条、二十九条、三十一条、三十二条、九十五条に違反する疑いがあり、軍事目的優先と国民基本権の抑圧であると断ぜざるを得ません。したがって、このような戦後立法史上かつて例を見ない悪法は直ちに撤回されることを要求し、総理並びに防衛庁長官の御見解をお尋ねします。(拍手)
次に、復帰に伴う特別措置法並びに沖繩振興開発特別措置法を中心に関係大臣に質問いたします。
人権の尊重を要求する沖繩の心は、社会保障の確立した豊かな生活を希求し、今日まで二十六年間にわたって米軍の支配によって受けた非人道的な人権の侵害に強く抗議し、人的、物的な損害の補償を要求し、不当な裁判に対しては、日本国憲法のもとにおける公正、平等な裁判を受ける権利を主張しているのであります。
沖繩返還協定第四条で、日本国及び日本国民のすべての請求権を放棄したが、直接の被害者である沖繩県民の意思を退け、県民固有の権利を放棄した政府の態度に対し沖繩県民は強い怒りを表明しております。国際法上の原則に従えば、施政権者である米国は、施政権の返還にあたり当然原状回復の義務を負うべきであります。にもかわらず、責任を回避し、日本政府は、これに対して法的承認を与えたことは、県民の基本的人権の回復と補償を要求する沖繩県民に対する挑戦であり、国際信義にも反する米国政府の行為を認めた政府の政治的、道義的責任を強く指摘せざるを得ません。(拍手)
対米請求権の放棄に伴う債務性補償の具体的措置については、当然復帰に伴う特別措置法に明文化して国が責任を負うべきであります。しかるに、一部を除いてはほとんどの部分について講じていないことは容認できない。したがって、対日平和条約の発効前及び発効後、施政権返還までの間、米国の施政権下において沖繩県民がこうむったすべての損害について、国の責任において補償するための必要な特別立法を講ずべきであります。その用意があるかどうか、政府の見解を明らかにしていただきたい。
返還協定第五条は、米施政権のもとに行なわれた裁判の効力について、民事、刑事とも原則としてそのまま有効として承認し、日本国がその効力を引き継ぐ旨を規定し、この引き継ぎには、米民政府及び琉球政府の裁判が下した確定判決の執行も含まれております。米施政権下の裁判の効力をそのまま承認することは、二十六年間も沖繩県民の人権を無視し、侵害し続けてきた異民族による軍事優先の米国統治下における屈辱的な裁判の効力をほとんど無条件に近い形で認めることであり、沖繩県民を含めた日本国民の肯定することのできないものであります。本協定の先例ともいうべき奄美返還協定においては、民事判決は、公序良俗に反しない限りこれを認めることとし、刑事判決についてはその効力を否定し、返還後、服役中の者または事件係属中の者に対し、日本があらためて裁判権を行使できるとされております。国際法上の原則及び日本国憲法のたてまえから言っても奄美方式が妥当であるにもかかわらず、政府はいかなる理由によって沖繩県民の人権を無視する方針を打ち出したのか、明確な御答弁をいただきたい。
自治権の確立を願う沖繩の心は、異民族支配から脱却する運動の中から生まれてきたものであります。今日までの復帰運動は、人権回復運動であり、自治権確立の闘争でありました。米民政府布告、布令及び指令が、漸次沖繩の独立を認め、琉球政府の権限の拡大をもたらしたものは、実に復帰運動のエネルギーであったことを認めなければなりません。沖繩返還に伴い、中央には沖繩開発庁が設置され、沖繩には行政組織では類例のない機構と権限を持つ沖繩総合事務局が設置されることになるが、この機関は、沖繩の自治に重大な影響を与えるものとして危惧されており、本土と沖繩の一本化という名目のもとに機械的に一元化せんとする政府の施策に反対しております。今日まで沖繩は、異民族の支配下といえども一個独立の琉球政府を構成し、県民の自治意識は、戦いの歴史を通じて、他府県に比べ最も高く定着しております。この県民の自治意識を高揚し、これを開発の原動力にすることが沖繩振興開発政策の基本でなければなりません。政府提案の開発行政組織とその運営方針は再検討する必要がある。振興開発審議会の構成は、少なくともその半数以上は沖繩県民をもってあて、総合事務局は設置の必要がない。米民政府にかわって沖繩代官政治にならぬようきびしく政府に反省を求めて、政府の御見解を伺います。
県民本位の経済開発を願う沖繩の心は、県民福祉の向上を第一義とし、自治権尊重に立った開発、平和で豊かな県づくりを志向した開発を求めております。沖繩の経済開発は、異常な基地依存経済から早急に脱却して、健全経済に移行することが最大の課題であり、そのためには米軍基地が縮小、撤去されることが絶対の要件であります。経済の中心地になるべき中部地区における基地面積は、総面積対比実に五四%、嘉手納八八%、コザ市六七%、まさに基地の中に沖繩が存在するような現状では、開発のための土地利用基本計画を立てることも不可能であり、第一次産業一〇%、第二次産業二〇%、第三次産業七〇%という跛行的な産業構造を均衡のとれた構造に変化し、福祉豊かな、平和な沖繩の建設は、とうてい望むことはできない。一九七〇年、琉球政府が作成した長期経済開発計画は、一九七二年復帰を前提として、七一年を初年度とし、八〇年を目標年次としているが、その時点における基地収入の総需要に占める割合は皆無となる。つまり十年後にはほとんどの基地が開放されるものと想定しております。山中総務長官も、沖繩開発計画の中で一番障害になっているのは基地であることを認めているが、はたして十年後には基地が完全に撤去されることになるのかお伺いいたしたいのであります。
次に、振興開発計画は、昭和四十七年度を初年度として十カ年を目途として達成されるような内容のものでなければならないと規定してあるが、昭和四十七年度の資金計画はどうなるのか、資金計画のない開発計画は、絵にかいたもちにひとしいので、この際明らかにしていただきたい。
さらに総務長官は、海洋開発に努力すると言明しているが、その構想と展望についてお伺いいたしたい。沖繩は亜熱帯に位置し、黒潮の流れと関連して、さんご礁と白い砂と透明な海水は、熱帯的観光資源として貴重な価値を持つものであり、また、この海域は水産資源に恵まれ、漁場価値も高く、将来の水産業の発展に大きな希望を持てる地域であります。ただし留意すべきは、観光施設は自然の破壊につながるので、破壊防止には万全の策が講じられなければならないし、工業公害や米軍演習で漁民の漁業権行使を侵害することを許容してはならない。要は、県民福祉の立場に立ち、自然破壊と海洋汚染を伴わない海洋開発が推進されなければならない。これに対する所信をお伺いいたしたい。
次に、関連して外務大臣にお尋ねします。
先日の本会議において、また、ただいまの本会議において、福田外務大臣から、尖閣列島の領土権について御答弁をいただきましたが、納得できないのは米国政府の態度であります。尖閣列島は、現在、石垣市に編入されており、魚釣島、久場島、南小島と北小島は個人の所有地であり、大正島その他は国有地であります。しかも米軍は、久場島と大正島を射爆場として使用し、所有者に対し年間一万ドル以上も使用料を支払っており、今回の米軍基地了解覚書A表の(八四)黄尾嶼射爆場は久場島であり、(八五)赤尾嶼射爆場は大正島である。この事実から見て日本に施政権は返還するが、その帰属については関係しないと称している米国政府の論理はあまりにもえてかってであり、国際法上も認められるものではありません。したがって、政府は、米国政府に強く抗議すべきであります。この点についての御見解を伺います。ただし尖閣列島周辺の大陸だな資源開発は別の問題であります。東支那海、黄海は、中国大陸、韓国から広大な大陸だなが続いており、その地下には豊富な良質の油田が埋蔵されている可能性が調査の結果判明したため、この大陸だな資源をめぐって国際的に問題が生じてきたのであります。琉球政府の長期経済開発計画にも、尖閣列島周辺の海底石油の開発が将来の展望として示されており、沖繩経済開発のため重要な問題であります。しかしながら、一方、現在わが国外交上最大の課題である日中国交回復のための外交交渉では必ず問題になり、避けて通られない問題でもあります。これに対して、政府はどのような見解を持っているのか、明らかにしていただきたいのであります。
最後に、佐藤総理にお尋ねいたします。
米国政府は、日本の国会において、関連国内法が成立しない限り批准書は交換しないと言っているが、これは明らかに日本国の国会の権限を拘束する内政干渉であり、われわれは容認することはできません。この声明は、関連法案全部をさしているのか、それとも何か特別の法案を示しているのか、佐藤総理、ニクソン大統領との間に何らかの約束がなされているのか、この際、国民の前に明確にされたいことを要求して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/12
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013・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 川村君にお答えいたします。
沖繩返還協定並びに関連諸法案は、戦後二十数年の長きにわたり外国の施政権下に置かれてきた沖繩を祖国に復帰させるための本のであります。衆議院においては、協定並びに関連諸法案とも、すでに可決を見たことは御承知のとおりであります。この審議を通じて幾多の問題点が指摘されたのでありますが、審議のあり方につきましては、政府としても反省すべき点は謙虚に反省し、すみやかに沖繩の祖国復帰を実現し、国民各位の御期待にこたえたいと念願しております。参議院におかれても、さらに審議を掘り下げていただき、すみやかに協定の承認並びに法案を成立させていただくよう心からお願いをいたします。
琉球政府の建議書につきましては、従来の琉球政府の要請と異なるものもあり、また、問題の性質上実現が困難と思われるものもある半面、政府としても、政令の段階で、あるいは運用の際に実施を予定しているものも含まれております。また、さきに衆議院において、県民の意向をさらに取り入れて法案の一部修正が行なわれたのでありますが、政府としては、今後とも県民の要望に沿い得るよう、格段の努力をしていく所存であります。
次に、川村君御指摘のように、沖繩県民は戦中、戦後を通じて、異常な体験を重ねてこられただけに、軍事的なものに対して特殊な感情の存在することは、私も十分承知しております。しかしながら、返還後、沖繩県民の安全を確保し、災害時の救援など、民生安定のための任務を果たすことは政府として当然の責務であります。政府としては、自衛隊の配備にあたっては県民感情を十分尊重し、自衛隊本来の姿について、県民の理解を得るよう、できる限りの努力を払う考えであります。
また、返還後の沖繩駐留米軍は、安保条約の目的に従ってのみ施設・区域の使用が許されるのであります。これまでの米軍とはその機能が大幅に変わる点についても、県民の御理解を得るようつとめてまいります。
なお、しばしば申し述べますとおり、沖繩の米軍基地の整理縮小については、今後あらゆる機会に米側と話し合いを重ね、県民の要望に沿う決意であります。
公用地等暫定使用法案を撤回せよとの御意見でありますが、撤回する考えはございません。わが国は、沖繩の復帰とともにこの地域の施政の権能と責任を引き受けることになります。復帰の際、米国が施政権者として公の目的のために使用している土地等の大部分は、そのまま引き続き公用地等として使用する必要があり、これらの土地等の取得については、できる限り地主等関係者の合意を得るよう最善の努力を払う所存でありますが、この法案は、沖繩の円滑な復帰を実現するための経過的、暫定的措置としてやむを得ない立法であると考えます。重ねて申し上げますが、政府としては撤回する考えはございません。
次に、国内関連法案が、これはそれぞれの大臣から説明いたしますが、これが成立しなければ米国は批准書を寄託しないというのは内政干渉ではないかとのお尋ねがありました。政府としても、現在御審議をお願いしている沖繩復帰関連法案は、沖繩の返還を円滑に実施するために必要不可欠であると考えております。現在施政の責任を負っている米国政府としても、施政権の移転が円滑に行なわれることを期待することはきわめて当然でありまして、このような期待の表明をもって内政干渉と言うのは当たらないと思います。大統領と別に密約などはございません。はっきり申し上げておきます。(拍手)
〔国務大臣江崎真澄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/13
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014・江崎真澄
○国務大臣(江崎真澄君) お答えを申し上げます。
ただいま自衛隊の配備につき、ましては佐藤総理からも詳細の答弁がありましたが、全く沖繩のあの特殊な存在、しかも戦中、戦後における事情等を勘案いたしますると、自衛隊に対する理解がないだけに、特に何となく旧軍のイメージがこの上に重なり合うのではないか、このことはよくわかるような気がいたしまするので、特に自衛隊を理解してもらうべく、そのほんとうの姿を理解してもらう努力を今後も継続的に積極的に続けてまいりたいと思います。もともと自衛隊の任務はその土地の住民の全面的な協力がなければ効用を発揮できるものではありませんので、粘り強く説明をしてまいりたいと思います。
自衛隊がいまこの公共用地の暫定使用法によって沖繩県に配備されることは憲法違反ではないか、こういうお尋ねでありましたが、憲法違反とは思いません。自衛隊がその任務といたしておりまするところは、民生の協力であり、あるいは災害派遣であります。最も本質的な任務は局地の防衛であります。主権が日本に戻ってまいりまする以上、沖繩県に主権が存在いたしまする以上、当然この防衛を確保することは自衛隊の任務でありまして、いわゆる憲法二十九条三項にいう公共のためのものであることは言うまでもありません。したがって、このような自衛隊が沖繩の復帰に伴い、この法律に基づいて土地等を使用することは、他の公共用地等における場合と何ら異なることはないのであります。自衛隊の土地等の使用について、憲法に違反する疑いがあるということはございませんので、重ねて申し上げます。
この土地の話し合いにつきましては、先ほど稲嶺議員にも答弁を申し上げましたように、十分運用の面において配慮をいたしてまいりたいと思います。大部分の地主とは円満に話し合いが妥結するものと確信をいたしておるのでありまするが、多数の地主の中には、海外に移住された方、あるいは居所の不明な方等もありまするので、そういう場合、もし契約ができないというようなことがあって、一日もゆるがせにできないこういった問題の遂行ができなくては困りまするので、暫定使用法を御提案を申し上げたわけでありまするが、あくまで話し合いを続けてまいりたいと思います。
請求権につきましては、先ほど稲嶺議員にお答えしたとおり、はっきりしておりまするものについては、一時金、見舞い金を人道上の問題としてお出しすることにきめておりまするが、復帰後もなお実情を詳細に調査いたしまして、この補償をいたしてまいりたいと思います。それに立法の必要があれば、もちろん立法措置をとるのにやぶさかではございません。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/14
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015・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) なぜ対米請求権を放棄したのか、こういうお話でございます。対米請求権は全部放棄したわけじゃございません。アメリカの法令、また沖繩における布令、これに基づく損害賠償は、これはアメリカ政府がこれをとり行なうと、こういうふうにしてあります。なお、その他法令上の根拠はありませんけれども、いわゆる復元補償、また那覇軍港の海没地の補償、こういうものもアメリカがやる。しかし、これで全部済んだかというと、済んでないのです。これはまあ無数のいわゆる請求権といわれるものがあります。これらはその実態を把握しませんと、これが権利として成立するものであるかどうかわからない。その実態を精査いたしまして、ただいま防衛庁長官が申し上げましたとおり、適正な処置、つまり予算で片づくものは予算で片づける。しかし、これは法律を要するような重大な問題である、こういう問題につきましては、立法いたしまして御要請にこたえたいと、かように考えております。
次は民事、刑事の裁判権を、これを引き継ぐことにしたのはどうかと、こういうお話であります。これはやり直しをするということにしますると、いまの沖繩の状態から見ますると、民事、刑事、きわめて多数の問題がありまして、混乱が生ずる。こういうような見地からやり直しはいたさない、こういうふうにいたしたいわけです。ただつけ加えますが、沖繩の司法制度、これはかなり進んだものです。近代的な体系を整えておる、こういうふうに見ておりまして、御安心願って差しつかえないんじゃないか、かように考えます。
それからまた、尖閣列島で米軍の射爆場なんかがあってけしからぬじゃないかと、こういうお話ですが、この米軍の射爆場としてA表で提供することにした、これこそは、すなわち尖閣列島がわが国の領土として、完全な領土として施政権が今度返ってくるんだ、こういう証左を示すものであると解していただきたいというお答えをいたしまして、御答弁といたします。(拍手)
〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/15
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016・山中貞則
○国務大臣(山中貞則君) 沖繩振興開発審議会の委員の構成について二分の一以上沖繩県民をもって構成さるべきであるという御見解については、私も傾聴すべき御見解であると思いまするし、また衆議院において、すでに学識経験者六名の原案を十一名に修正して、総数二十五名が三十名に変更になりました。法案自体が変わりました。したがって、これは各省庁に関係することが非常に多うございますので、十三名を各省庁から出すことになっておりましたことに対するバランスの問題でもございましょうから、それについて学識経験者を十一名に増加いたしましたことについての沖繩県側の代表については、十分の配慮をいたしたいと存じます。原案の段階においても、本来は知事と県議会議長とが代表となるべき一つの定型があるのでありますが、しかしながら、今回の場合は市町村長代表を二名、市町村議会議長代表を二名という構成で配慮はいたしたつもりでありますけれども、ただいまのような御意見がございまして、衆議院でも修正されたわけであります。十分配慮してまいりたいと存じます。
それから沖繩総合事務局は必要がないという御意見でありますが、現在、琉球政府では国政相当事務を実は行なっておるわけであります。これについて沖繩の人々は、自分たちの居住する、復帰後は沖繩県となるべき地域の中において許認可事務その他等が処理されております。これが復帰後になりまして、熊本とか、あるいは福岡とか、本来のブロック機関の存在するところまで出かけていかなければ仕事が片づかないようになったら、やはり沖繩県民の皆さまにとっては、たいへん日常の行政事務の上で困難であろう、困難な事態になるであろうということも配慮をいたしまして、沖繩の県知事並びに市町村長が本土の知事、市町村長であったならば持っておるべき本来の権限を侵しておるところは絶対にないということを確認した上で、もっぱら沖繩県民のために総合事務局をつくるものでありますので、その点は御理解を賜われば幸いと存じます。
なお、琉球政府の長期経済計画によって、十年後に沖繩においてはアメリカ軍の基地はなくなるという、そういう前提がなされておるがどう思うかということでありますが、実はこれは非常な難問であります。極東情勢、国際情勢が、あるときにはきわめて急激に緩和の方向に向かい、また局地的には紛争も起こるというこの国際情勢の中で、十年後にアメリカ自身が今日取得しておるところの軍用地がどうなるかという問題は、私どもとしては琉球政府の計画の前提となっておることが、すなわち十年後には基地がなくなる事態ということがきわめて望ましいことでありますけれども、しかし、それについていまここでどう思うかと言われても、それを具体的に、十年後にはアメリカ軍の基地はなくなっているでしょうと明言できる立場にないし、その現在の時点にはないということを御理解を賜わりたいと思います。
さらに、四十七年度の、すなわち来年度の振興開発計画に基づく振興開発金融公庫の資金という問題がございました。現在、琉球政府の五特別会計並びに民政府の開発金融公社、あるいはまた大衆金融公庫等をこれに吸収することにいたしておりますが、本年度の、一九七一会計年度のこれらの貸し付け計画では約二百億でございますが、さらにこれを開発銀行その他の金融機関の性能を付加したものにいたすことにも当然原因もございますけれども、しかし、全体としての来年度の貸し付け契約については六百二十億ほどの予算要求をいたしておりまして、もちろん、条件は本土のいかなる条件よりも低利もしくは長期というものを組み合わせて、当然沖繩の振興に積極的に役立ち得るものとしての内容をいま整えようと努力をいたしておるところでございます。
さらにまた、最後の、沖繩の今後観光立県という一つの柱をつくるにあたっての注意すべき自然破壊、あるいはまた公害等の問題は、これは当然に配慮をしなければなりませんし、また、海洋博覧会を行なうにあたりましても、これは単に行なってあと取り払うというようなことではなくして、沖繩県民のための、沖繩の観光立県の拠点にして残さなければならない、そういうレナアウトをしなければなりませんし、また積極的に、世界が競争するであろう海洋開発の拠点にもこの海洋博を契機として沖繩を位置づけたいということを念願しておる次第でございまして、御注意の点は十分——直接の監督する立場にもございませんが、琉球政府と連絡をとって努力をしてまいりたいと存じます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/16
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017・河野謙三
○議長(河野謙三君) 外務大臣から答弁の補足があります。外務大臣。
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/17
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018・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 尖閣列島に関連いたしまして、日中間の大陸だなはどういうふうな関係になるのか、こういうことについてお答えを落としましたので、つけ加えます。
尖閣列島周辺の大陸だな問題につきましては、先ほど稲嶺議員にお答えいたしたとおりであります。
そこで、この大陸だな問題につきましては、おそらく中国がまあ何か申し入れをしてくると、こういうようなことが起こってくると思います。政府におきましては、かねてから申し上げておりまするとおり、日中間の国交の打開はこれは歴史の流れである、まっ正面からこれに取り組みますと、こういうふうに言っております。そこで、具体的にこれをどういうふうに展開していくかということになりますと、どうしてもこの政府間交渉を始めなきゃならぬ、こういうふうに考えておるのであります。この大陸だなの日中間の問題、これはその政府間交渉の過程において解決をすると、そういう考えであることをお答え申し上げておきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/18
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019・河野謙三
○議長(河野謙三君) これにて一時間休憩いたします。
午前十一時五十四分休憩
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午後一時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/19
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020・森八三一
○副議長(森八三一君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
質疑を続けます。内田善利君。
〔内田善利君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/20
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021・内田善利
○内田善利君 私は、公明党を代表して、先般趣旨説明のありました沖繩関係法案について、総理並びに関係大臣に対し若干の質問を行なうものであります。
言うまでもなく、沖繩返還は七〇年代の重要課題であり、二十数年間異民族支配下にあった沖繩百万県民はもちろん、本土一億国民にとって長い間の悲願でありました。しかるにその間、沖繩県民の生活は苦闘と忍従そのものであったと言っても過言ではありません。
そこで、まずお伺いいたしたいことは、総理の言う豊かで平和な沖繩とは、基地の存在を含めて言っているのか、将来は基地もなく戦争の危機を払拭した上でのものなのかということであります。
御承知のとおり、現代世界の核の存在は人類の存亡にかかわる重大な脅威となっておりますが、沖繩はアメリカの核戦略上の重要拠点となっており、今日までの政府の答弁では、県民の不安をぬぐい去ることはできないのであります。沖繩県民の切なる願いは、核のない、基地のない、すなわち戦争の二度とない平和で豊かな沖繩の復帰であり、復興であります。総理の言う豊かな平和な沖繩とはどの程度を言っているのか、その目標を明確にしていただきたい。そして、先般、衆議院において決議された非核決議及び基地縮小決議をどのように具体化されるおつもりなのか、この二点についで、まずお伺いして本論に入りたいと思うのであります。
質問の第一は、憲法第九十五条と沖繩復帰関連法案との関係についてお伺いいたします。
沖繩復帰関連法案は、憲法第九十五条に該当する地域特別立法であり、したがって、沖繩県民の住民投票によって過半数の賛成を得なければ法律とはならないものと考えるのであります。憲法第九十五条は、第九十二条の地方自治の本旨の規定を受け、国家行政権力の不当な介入から自治権を守ろうとするものであり、特定の地方公共団体の権能、組織、運営に制限を加える立法を排除する規定であります。憲法第九十五条が「一の地方公共團體」という表現、構成をとっていることから、沖繩関連法案が、沖繩県、沖繩の市町村の権能、組織、運営に格別の制約を加えるものではなく、したがって、住民投票を必要とするものに該当しないという解釈はあまりにも形式的であって、当を得ないのであります。一つの地方公共団体の自治権を侵犯しないということは、とりもなおさず、特定地域住民の福祉をそこなわないことであり、固有の権利を侵害しないことにほかなりません。ましてや、特別法の権利義務の承継の中に、はっきりと琉球水道公社、下水道公社の財産その他の権利は沖繩県が承継するとあります。沖繩県が、いわゆる憲法第九十五条でいう地方公共団体であることは明確に打ち出されているではありませんか。したがって、憲法第九十五条に該当することは当然であり、沖繩県民の住民投票に付することを成立要件とすべきなのであります。また、現時点において住民投票を時間的に困難とするならば、返還時には関係法案を暫定的な措置としておき、返還後にあらためて住民投票を行なうべきであると思うのであります。要するに、政府が沖繩県民の意思を尊重するかいなかの姿勢の問題であり、また、憲法に触れる基本的な問題でもあります。政府の見解を明らかにされたいのであります。
第二には、沖繩基地と自衛隊配備問題についてお伺いいたします。
これらの関係法律案は、沖繩返還協定第三条及び了解覚書、そして久保・カーチス協定が前提となっておりますが、これらはまた、一昨年十一月の日米共同声明を基礎としているのであります。しかるに、この共同声明は、当時の冷戦体制下の情勢分析のもとに行なわれたものであり、極東における沖繩の米軍基地の重要性及び韓国、台湾の安全とわが国との関係の緊要性をそのまま認め、その上、事前協議事項の骨抜きさえ示唆しているのであります。このような前提のもとに提出されたこれらの法案は、現実の世界情勢とマッチせず、佐藤内閣の言う、平和を訴え、冷戦体制の解消を志向する政策とは全く矛盾するものと思うが、これについての総理の見解を伺いたいのであります。
次に、総理は、今国会の所信表明において、沖縄軍用地の継続使用が返還の前提となっていると明言し、また、米上院外交委員会の報告におきましても、これら法案の成立するまで批准書に調印しない旨があるのであります。これは明かに沖繩返還と安保条約のワクを越す沖繩基地の確保との取引が行なわれたことを示すものであり、国会の審議権を無視した内政干渉であり、戦後二十数年間にわたり米軍基地の支配下にあった沖繩県民の意思を踏みにじるものとしか思えないのでありますが、これについての総理の所信を伺いたい。
さらに、公用地等の暫定使用法案は、暫定使用の名のもとに、五年間もの長期にわたり軍用地等の強制使用を認めようとしているのは、本土並み返還と言いながら、憲法上から見ても、はたして本土に復帰するとは言い得ない面があるのであります。すなわち、本土では、かつて六カ月暫定使用を認めたのに対し、沖繩の基地のみ五年間の長期にわたることは、憲法第十四条の法のもとの平等に反し、一方的かつ強制的に使用することは私権に対する不当な侵害で、憲法第二十九条で保障された財産権を侵すものであり、さらに土地強制使用の手続面の不備は、同三十一条に規定する法定の手続の保障を侵害すると思われるのであります。これらの憲法上の問題については、琉球政府の建議書、日弁連の要望書等においても指摘しているところであります。これについての見解を伺いたい。
なお、この法案は、米軍基地、自衛隊基地及び公共用地と、性格の異なるものをひっくるめて強制的に使用しようとしている点で、法律的にも非常に問題があると思うのであります。特に、久保・カーチス協定により、派遣される自衛隊の用地については、米軍用地及び公共用地と違って、継続使用ではなく、新規使用であるので、法的にも暫定使用を認める根拠は全くないと思うのであります。さらに自衛隊が土地を強制収用し得るのは自衛隊法第百三条の防衛出動の場合のみであり、土地収用法によっても、同法が昭和二十六年に提案された趣旨から、不可能と解釈するのが当然であり、沖繩においてのみこのような特別な措置を講じようとしているのは、明らかに妥当性を欠くものと思うが、この点についての見解を伺いたい。
次に、沖繩の復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置等に関する法律案において、沖繩における講和前人身損害の補償漏れについて見舞い金の支給をきめておりますが、これは、あくまでも権利としての正当な補償ではなく、米側が布令六十号により行なってきた恩恵的措置を引き継いだものであり、しかも、その他の請求権問題については、政府は何らの措置も講じていないのであります。長期にわたる米軍支配により沖繩県民が受けた損害は広範多数、かつ、ばく大なものといわれ、これに対する政府の明確にして具体的な方針が示されるべきであるとともに、琉球政府の建議書に要請されている沖繩の復帰に伴う沖繩県民の対米請求権処理の特別措置等に関する法律の制定についての政府の見解を伺いたいのであります。
第三に、沖繩の開発についてお伺いいたします。
沖繩振興開発計画を進めるに際して、米軍基地の存在は、合理的かつ効率的な土地利用計画を策定する上で最大のガンであります。沖繩全土に占める米軍基地の割合は一二・五%、沖繩本島では実に二二・五%、その密度は本土の二百八十倍にも達しております。しかも、田畑、宅地で三二%を占め、最も利用価値の高い地域が基地によって占められていると言っても決して過言ではないのであります。この基地の存在を度外視して振興開発を期待することはナンセンスにひとしい。その意味からも、基地の縮小撤去は積極的に要求し、実現していくと同時に、そのスケジュールを計画策定の基本条件に組み込む必要があります。この点について政府の所信を伺いたい。
次に、土地利用計画についてお伺いいたします。沖繩における過密過疎の現象は、むしろ本土より激化しております。八重山、宮古、先島をはじめ、沖繩本島北部などの過疎化は著しいものがあり、反面、那覇市を中心とする本島中南部の都市地域の人口集中とスプロール化は激しいものがあります。また、すでに本土企業の乗り出しによる悪質な土地買い占めが行なわれております。本土においても、都市やその周辺の土地が異常騰貴する大きな原因の一つに過度な土地投資があることは周知の事実であります。政府はこの悪質土地買い占めに対してどのように考えているのか、伺いたい。
これらの問題をこのまま放置すれば、学校や生活関連施設などの公用地・公共用地の取得に悩む本土の失政を沖繩において繰り返すこととなるのであります。振興開発を円滑に推進し、百万県民の福祉の増進をはかるためには、まず土地の利用計画を確立することが重要な条件であり、地価公示制度、用地の先行取得などの施策を強力に実施する必要があります。本土の愚を沖繩にしいることのないよう政府の強力な施策を求めるものでありますが、その見解を伺いたいのであります。
次に、沖繩の水資源についてであります。沖繩におきましては、今回の大干ばつによってあらためて水不足の問題が大きくクローズアップしてまいりました。古来、人間にとって水は命の根源でもあり、生命の維持の上にも不可欠のものであります。しかし、沖繩においては、その大切な水すら米軍基地によりほとんどが奪われているのであります。人間生存の最低限度必要な水資源すら基地によって奪われている。このような異常な現状の上に起こる水不足問題は、まさに天災ではなく、人災であり、政府の責任以外の何ものでもないのであります。この責任を政府はどのような根本的な解決策をもっていつまでに解決しようとされているのか、総理の誠意あるお答えをいただきたいのであります。
次に、沖繩振興開発金融公庫法案についてであります。この法律によって沖繩振興開発資金が一本化されるわけでありますが、一本化されることによって大企業優先にならないか、中小企業が大企業の犠牲にならないための歯どめがあるのか、また、現実に公害企業といわれる大企業の進出が見られ、直ちに開発にプラスすると思われる企業が進出に足踏みしている現状でありますが、失業者救済及び本法案の趣旨からかんがみて、業務の遂行に支障を来たすのではないかと憂慮されるのでありますが、これに対しどのように対処されるのか、お伺いするものであります。
最後に、教育問題についてお伺いいたします。言うまでもなく、教育はただ単に知識を与えるものではありません。次代をになう青少年の人間形成、豊かなる人間性の高揚がその主たる目的であります。そうした教育本来の趣旨が生かされるためには、現場の教職員、父兄、行政当局が一体となって初めて可能なのであります。その基本とも言うべき教育行政制度につきましては、現在、沖繩では三者が一体となって教育委員会公選制を支持しているのであります。これは琉球政府の出した「復帰対策要綱の教育行政制度に関する要請」にも明らかなとおりであります。
そこで、まず第一にお尋ねしたいことは、沖繩が異民族支配下の苦悩の中に自力で築き上げてきたこの公選制をなぜ無視し、行政ぺースの本土並みというにしきの御旗を振りかざすのか、本土並みの返還である以上、当然教育制度も本土並みであるべきだという政府の単純な形式論では、沖繩の教育は本当によくならないのであります。二十数年間の公選制の歴史と重みと、沖繩教育界の努力と成果をどのように評価されているのか、総理にお伺いしたいのであります。
第二には、教育は本来政治権力に左右されるものであってはならないのは当然の理であります。それを本土におきましては、行政府の一方的な都合により、去る三十一年の強行採決という暴挙により、国民及び教育界の声が踏みにじられたのは記憶に新たなところであります。わが党は、教育行政の民主化、教育行政の地方分権化、教育行政の独立の三原則から見ても、公選制こそ理想的な制度と考えます。わが党は、しいたげられたその中で築き上げてきた公選制こそ、沖繩の財産であるのみならず、日本全体の財産であると考えます。総理はどのようにお考えになっているのか、お伺いしたいのであります。
第三には、現在沖繩では、教職員、父兄、行政府と三者一体になった理想的な教育が行なわれておりますが、もし本土並みということで、現在本土に見られる教職員と行政府の対立という悲しむべき事態が起こらないという保障はどこにもありません。万が一そのような事態が起こったとき、その責任をどうされるおつもりか。以上の点につき、総理の血の通った明確なる御答弁をお伺いしたいのであります。
以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/21
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022・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えをいたします。
復帰後における沖繩経済開発につきましては、新全国総合開発計画を改定するとともに、沖繩振興開発特別措置法案に基づいて沖繩振興開発計画を策定し、産業の育成振興、道路、港湾等社会資本の充実、水資源、電力その他エネルギー資源の開発、県民福祉の向上、職業の安定、教育文化の振興、観光開発等について総合的な施策を推進する方針であります。そうして本土との格差をすみやかに是正するとともに、沖繩の地理的、自然的特性を生かした振興開発をはかってまいりたいと考えております。
その次に、衆議院においてすでに採択されました非核決議並びに沖繩米軍基地縮小決議についてのお尋ねがありましたので重ねて決意を申し述べたいと思います。政府は、非核三原則を順守することをあらためて厳粛に声明するものであります。また、返還時に沖繩の核抜きがさらに明らかとなるよう適切な措置を考究したいと存じます。核の持ち込みに関しては、本土、沖繩を問わずこれを拒否することにつきましても重ねて確認いたします。
沖繩における米軍基地の整理縮小につきましては、復帰後すみやかに実現できるよう今日からこの問題と真剣に取り組む方針であります。したがって、この問題についての具体的計画につきましては、いましばらく時間的余裕をいただきたいと思います。
次に、関連法案について住民投票すべきではないかとの御意見がありました。沖繩の復帰に伴う特別措置法案は、沖繩の本土復帰という特殊事態に対応して、復帰時の法秩序の急激な変動を避けつつ漸次本土の法制度のもとに移行させるための経過的な措置を定めたものであります。沖繩の地方公共団体の組織、権能等について新たに本土と異なる特殊な制度を設けようとするものではありません。したがって、憲法第九十五条にいう特別法に当たらないばかりでなく、これらの法案については、その立案の過程で琉球政府と十分意見を調整し、また関係者の意見も伺っておりますので、これに基づく住民投票はもとより、これに準ずる何らかの投票をあらためて行なう必要はないものと私は考える次第であります。
一昨年の私とニクソン米大統領との会談後における共同声明は、当時の双方の認識をあらわしたものであります。その当時と今日では国際情勢にかなりの変化があることは申すまでもありません。政府としては、常に国際情勢の変化を的確に把握し、これに柔軟に対処して、国益をそこなわないようつとめていることを特に申し上げておきます。
次に、国内関連法案の成立が批准の条件だという米側の言い分は内政干渉だとの御意見がありました。これにつきましては、すでに社会党の川村君にもお答えしたとおりでありますが、私は内政干渉だとは考えておりません。米側が、現在沖繩において施政の責任を負っていることから、返還協定の定めるとおりに円滑なる施政権の移転を期待することはしごく当然であり、そのことをもって内政干渉と言うのは当たらないと考えます。沖繩の復帰を円滑に実現するため、現在御審議を願っている関連法案が今会期中にぜひとも成立するよう、この機会に重ねて御協力をお願いする次第であります。
公用地等の暫定使用法案が憲法違反の疑いがあるのではないかとのお尋ねでありますが、衆議院の特別委員会で政府側から繰り返しお答えしたとおり、憲法違反の疑いはないものと確信をしております。すなわち、この法律は、沖繩における公用地等のために必要な土地等の暫定使用について特別な措置を定めたものでありまして、憲法との関係も十分配慮しておりますので、御指摘の憲法各条に違反することはあり得ないと考えております。
また、自衛隊の各種任務は、憲法第二十九条第三項にいうところの公共のためのものであることは申すまでもありません。したがって、自衛隊が、沖繩の復帰に伴い、この法律に基づいて土地等を使用することは、他の公用地等における場合と何ら異なるところはなく、自衛隊の土地使用について憲法に違反する疑いがあるということにはならないと考えるものであります。
沖繩県民の請求につきましては、このうち米国政府が処理すべきこととなるもの以外の請求については、復帰後、実情調査の上、実情に応じて適切な措置を講ずる所存であります。立法の必要があれば、その措置を講ずることも検討いたします。
次に、沖繩においては基地が広大な地域を占めていることは御指摘のとおりであります。したがって、政府としては、今後とも沖繩現地の要望を十分念頭に置いて基地の整理統合に取り組みつつ、沖繩の振興開発と県民の福祉の向上に努力し、豊かな沖繩県づくりをはかりたいと考えております。
次に、沖繩金融公庫は一本化により大企業優先にならないかとの御心配ですが、そのようなことはありません。沖繩振興開発金融公庫は、本土における日本開発銀行、国民金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、医療金融公庫、環境衛生金融公庫、公害防止事業団、船舶整備公団の一銀行、六公庫、一公団、一事業団の融資相当業務を総合的観点から一元的に行なうものでありますが、各業務ごとに区分して資金需要を算定し、これに必要な財政措置を行なって貸し付けをしてまいるので、一本化による大企業優先のおそれはないと考えております。
最後に、教育問題についてのお尋ねにお答えいたします。
内田君は、沖繩の教育委員の公選制をこのまま残すべきではないかとの御意見でありますが、私はそのようには考えません。私も従来沖繩の教育委員会制度は、米国の施政権下にあって、日本国民としての教育を行なう上で意義があったことは十分高く評価しておりますが、本土に復帰した後は、他の都道府県と同様の制度にすることが望ましいし、また必要であると考えます。
次に内田君から、復帰にあたり本土も公選制を採用せよとの御意見がありましたが、私はこのような考えには賛成いたしません。本土の教育委員の任命制は、公選制から任命制に切りかえたいきさつもあり、また、直接住民から選挙された地方公共団体の長が、同じく直接住民から選挙された議員でもって構成されている議会の同意を得て任命するものであって、民意が十分反映された民主的な制度であります。沖繩の復帰を機会に公選制に改める考えはありません。
なお、制度の切りかえにあたっては、その切りかえが混乱を生ずることなく円滑に行なわれることが必要であり、このため、現在の沖繩の教育委員の任期等を考慮した経過措置を講ずることとしております。いずれにせよ、政府といたしましては、沖繩の教育の正常な運営につきまして十分配慮してまいる方針であります。
以上お答えをいたします。(拍手)
〔国務大臣江崎真澄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/22
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023・江崎真澄
○国務大臣(江崎真澄君) ただいま御質問の法的解釈につきましては、総理から詳しく答弁がありましたので、重複を避けます。
そこで、自衛隊といたしましては、午前中の答弁でも申し上げましたように、今後この暫定使用はありますが、極力話し合いによって地主側と決着をつけていく、これは十分努力をしてまいるつもりであります。
それから、自衛隊が、従来公用地として契約下にありました米軍返還のあと地を利用するという点は、これは、基地の島という御指摘があるように、沖繩県における基地はきわめて広うございます。そこで、せっかく返されるわけですが、自衛隊がまた新たに基地を求めるというようなことをしないで、契約下にあったものの延長という形でこれを利用することのほうが妥当ではないかという見解に立ってきめたものであります。
以上お答えを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/23
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024・山中貞則
○国務大臣(山中貞則君) 沖繩の振興開発のための土地利用計画というものは、復帰いたしましたならば、振興開発法の中でよく県側とも相談をいたしながら、その計画をすみやかに土地利用について定めていきたいと思います。なお、現在、復帰前において沖繩における悪質と思われるような土地の買い占め等に対する処置でありますが、これは現在の琉球政府立法によりまして非琉球人ということばが使ってありますが、そのまま使わしていただきますと、沖繩県民でない、居住者でない者の取得する土地の取得、あるいは地上権の設定、そういうものについては琉球政府主席の許可を要することになっております。したがって、当然琉球政府においては、そのような、今後の計画に支障を来たし、あるいはきわめて自然破壊を伴うようなものについての許可はなされないものと思いますけれども、なお、念のためにそれらの点はよく連絡をとってまいりたいと思います。
次に、水資源確保の問題は、これは生活用水あるいは農業用水、工業用水、いずれの立場をとってみても、沖繩にとってはきわめて緊要なことであり重要なことでありますので、すでに申し上げておりますとおり、福地ダムの完全な完成と、それの中南部への供給にかかる導配水管の全額国庫負担による完成促進、並びに、さらに本島北部の東海岸における安波川、普久川等を中心としてダム群の多目的ダム建設について、すみやかにこれを完成させたいと思いますが、これはいずれも全額国費でもって行なうつもりであります。そして、本島北部の西海岸についても、なお表流水等において利用の価値ありと思われますので、これらについては今後調査を進めてまいりたいと思います。
なお、拠点島を中心とする先島並びにその周辺の離島等においては、生活用水、ましてや農業用水にきわめて異常な事態を生ずることは、本年の干ばつの例において明らかであります。したがって、表流水の利用できるところは、貯水地あるいはダム等の建設、あるいはまた貯水槽というようなものを小さい離島にはつくって、すでに着手をしつつありますが、そういうふうにして進めていかなければなりませんし、また今後の問題としては、その島自体に水がなくとも、近くに水のあるところがありますから、そういう島については、海底送水管等の建設をすみやかに完成させるために、いま着々と準備をいたし、着手いたしておるところであります。
金融公庫の大企業優先の歯どめの問題は、総理からお答えがありましたとおり、これは金融公庫の中で、それぞれの目的ごとに資金区分を明確にいたしますので、それらの御心配はないと考えますし、中小企業、農林漁業融資等について、ことに重点を置いて融資計画を定めてまいるつもりでございます。(拍手)
〔国務大臣高見三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/24
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025・高見三郎
○国務大臣(高見三郎君) お答え申し上げます。
総理から詳しく御答弁になりましたので、私からつけ加えるところはございませんが、私は、沖繩が本土へ帰復するということになりまするならば、国民の共通の課題としての基本問題である教育というものの制度が土地によって変わるということは、必ずしも好ましいことではないと、かように考えております。内田先生が御指摘になりましたように、この沖繩の公選制というものにつきましては、私は、沖繩県の教職員の方々、沖繩県民の方々が、異民族支配のもとにおける任命制というものに対する非常に強い意識のもとに、日本国民としての教育をやりたいという情熱から公選制を主張せられ、三回にわたる立法院の決議を拒否せられながらもこれを実現せられた御努力に対し、しかも、日本語教育を最後まで持ち続け、ことに、琉球教育基本法の中には、日本人としての教育を行なうということを宣言をしておられまするこの教育に対する御熱意に対しては、心から敬意を表するものでありまするけれども、同時にまた、返還と同時に、教育制度が地域によって異なるという状態が望ましい姿ではないと考えまするので、この点については、この際、本土と一体化した教育制度にいたしたいと、かように考えておるわけであります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/25
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026・森八三一
○副議長(森八三一君) 柴田利右エ門君。
〔柴田利右エ門君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/26
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027・柴田利右エ門
○柴田利右エ門君 私は、民社党を代表して、現在上程されております沖繩の復帰特別措置法案、開発関係三法案、公用地等の暫定使用法案等のいわゆる沖繩関係七法案について、総理並びに関係閣僚の所見をたださんとするものであります。
私は、質問するに先立ちまして、今回の沖繩返還をめぐる経緯を振り返ってみたいと存じます。
もともと沖繩の早期・核抜き・完全本土並み返還を提唱したのは、わが民社党のいまはなき西村前委員長であります。昭和四十二年八月沖繩視察に行かれたとき、現実面としてアメリカに要求する限度を考え、現地で提唱したのが始まりでありました。当時、政府・自民党は全くこの案に耳をかそうとしなかったのであります。しかしながら、時間の経過とともにそれが国民世論となる中で、政府もこれを取り入れ、その線で進めなければならないようになって今日に至ったことは、御承知のとおりであります。現在、両院においての論点もこれに基づいて行なわれてきたことは、周知の事実であります。このことは総理もお認めになると存じますが、いかがでしょうか。
さて、問題点は、衆参両院の論議を通じて順次浮き彫りにされつつあるように、結論からいって、それがとうてい私どもの言う核抜き・本土並みとは言えないことは明らかなところであります。私は、かかる基本的見地に立って、以下四点にわたって関連法案について質問をしたいと存じます。
まずその第一点は、百万沖繩県民が望んでいる平和で豊かな沖繩づくりは、事態がこのまま推移すれば実現不可能となることは避けられないという点であります。つまり、沖繩の振興開発は、本土の立法措置や計画が実施される前に、その前提となる基盤がくずれつつあるということであります。たとえば本土への労働力の流出がその一つであり、六八年にはわずか四千人だったものが、六九年にはその二倍の八千人と激増し、さらに七〇年はこれを大幅に上回ることが予想されております。また、復帰を目前にして、本土企業のかけ込み的進出は、特に土地の買いあさりなどに見られるように、きわめて無秩序な状態にあることはこれまた周知のとおりであります。これでは沖繩は、政府並びに沖繩県による振興開発以前に、その基盤が喪失してしまうことは必至であります。政府は、このような現状をいかに考え、また、これに対しどのような対策を講じようとされているのか、お尋ねをしたい。
また同時に伺いたいことは、返還の具体的時期についてであります。この時期が具体的にきまらぬ以上、復帰準備及びその予算的裏づけは確定することができません。アメリカ上院の公聴会における政府高官の証言からしても、米国側は七月返還を考えていることは明らかであります。総理は四月返還説を繰り返しておられますが、このような日米間の食い違いは早急に調整さるべきことと考えますが、総理、外務大臣並びに総務長官の所見を伺いたいのであります。
質問の第二点は、振興開発計画の具体的推進についてであります。政府提出法案によれば、振興開発計画の策定に当たる審議会は、その委員構成が現地沖繩県民よりも本土関係者のほうが二倍以上も多いというきわめて異常な構成となっております。このことは、沖繩開発庁とその総合事務局への権限集中と相まって沖繩県民の自治を疎外するおそれがあるものと言わなければなりません。そこで私はこの際、屋良主席の建議書にもあるように、審議会の委員構成を改め、もっと沖繩現地の声が今後の振興開発に生かさるべきだと考えます。総理並びに総務長官の所見をお伺いしたいのであります。なお、衆議院において、本件につきましては五名増員するという修正が行なわれたということであります。この振り分けはどのようになされるのか、この際お尋ねをいたします。同時に、今後の振興開発計画の策定実施にあたって、本土が現在進めている各種開発建設計画、つまり具体的にいえば空港整備、港湾整備、住宅建設、さらには下水道整備等の各種五カ年計画との関係をどのように調整するつもりなのか、あわせてお尋ねをいたします。
第三点は、沖繩関係七法案中の最大の問題点である公用地等の暫定使用法案についてであります。同法案についてはすでに論議されているように多くの問題点をはらんでおります。特に本土の地位協定によれば六カ月しか認められない強制収用が、その十倍の期間である五年も許されること、また、同法案は自衛隊基地にまでその適用範囲を拡大していることなど、断じて容認できない点であります。このことは、沖繩に対する新たなる差別以外の何ものでもなく、沖繩県民の本土に対する不信を一そうかき立てるものであると考えます。そこで政府として同法案を修正、撤回すべきと考えるが、どうか。また、これと関連して、今後の振興開発にあたっても、土地の実態調査の実施がまず先決であると考えるが、政府としてはこの調査を今後いかなる方法で具体化する方針なのか、お尋ねをしたいと思います。
さらにお伺いしたいことは、今後の米軍基地の整備に伴うあと地利用についてであります。われわれはこれらの土地を既得の権益としていたずらに自衛隊に引き継ぐのではなく、沖繩県民の意向に沿った形で今後利用さるべきであると考えますが、政府としてはどのように考えておられるのか、また、沖繩県民の意思はどのようなルートを通じて反映させるつもりなのか、総理、防衛庁長官にお尋ねをいたします。
質問の第四点は、VOA放送についてであります。われわれは、本土法のワクを越えてこのような謀略放送を存置させることは、今回の国連総会において中国の国連加盟を実現させた国際情勢の動向や日中間の国交回復を要求する国内世論に反するばかりでなく、これから実際に中国との国交を回復する上でもきわめて遺憾なことであると考えます。これに対し政府は放送番組内容等を規制すると言っておりますが、そのモニター制を今後具体的にどう進めるのか、この際その方法、手段、そして予算的裏づけ等についてお伺いをしたいと存じます。また、政府は衆議院での審議においてわが党代表の質問に答え、VOAは地位協定の対象外にすると述べておりますが、地位協定が適用されないとすると、VOAによる電波障害などの住民被害についてはどのような法的根拠に基づき、またいかなる方法をもってこれを救済する方針なのか、総理、郵政大臣にお伺いをしたい。
以上、私は端的に四点にのみ質問点をしぼってお伺いをいたしましたが、要すれば、本土と沖繩の形だけの一体化ではなく、心の一体化、血の通った一体化をいかにして実現するかであります。したがって、政府の今後の各種の施策の実施にあたっては、本土からの画一的、機械的な押しつけではなく、沖繩の今日まで背負ってきた歴史からしても、県民の意思を最大限に尊重し、また県民の意思に基づいて行なわれるよう強く要望をいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/27
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028・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 柴田君にお答えいたします。
お答えいたします前に、私はいまはなき西村委員長にずいぶん激励を受けたものでございます。ことに、核抜き・本土並み・早期返還、これは多分に西村委員長の示唆に負うものである、このことをこの機会に、御審議をいただくこの機会に感謝を込めて私も御報告する次第でございます。
さて、柴田君のお尋ねにお答えをいたしますが、最近の沖繩から本土への労働力流出の問題につきましては、基地関係収入などに依存する型の経済から、いわゆる基地依存経済から産業の振興開発による自立型経済への脱却をはかることによりまして、現地における雇用機会を増大させることが基本的に必要である。このような政策を前提として積極的な雇用対策を推進する方針でございます。
また、本土業者等による土地投機についてでありますが、およそ土地投機は地価の値上りを招くとともに、今後の公共事業の円滑な施行に支障を来たすこととなるので、その防止のためには、本土と同様公共用地の先行取得、土地利用計画の確立等を積極的に進める必要があると考えております。なお、本土復帰後は県民生活の安定と福祉の向上のために、沖繩振興開発計画に基づいて沖繩の均衡ある振興開発を推進していく所存であります。
具体的な返還の日取りにつきましては、まだ日米間の話し合いは煮詰まっておりませんが、政府としてはあくまでも四月一日を目標に今後米側と折衝してまいる考えであります。新春早々私も大統領と会談を持つ機会がありますので、そういう際にこれを明確にする考えでございます。
次に、沖繩開発審議会の構成は不適当である、さらに現地の声を生かすようにせよとの御指摘でありましたが、私は沖繩の意見が審議会に十分反映される構成となっていると考えるものであります。御承知のように、この審議会のメンバーとしては沖繩県から県知事、県議会議長、また沖繩県の市町村長及び市町村の議会の議長を代表する者各二名が参加することとされており、さらに学識経験者として沖繩各分野の代表ないし沖繩に理解の深い方を任命することが予定されているのであります。また、衆議院の審議を通じて、学識経験者の委員数を五名ふやす修正がなされたことは御承知のとおりであります。この点につきましては十分御理解をいただきたいと思います。
次に、各種公共事業の五カ年計画と沖繩振興開発計画との関係についてのお尋ねにお答えをいたします。御承知のように、沖繩における公共施設の整備につきましては、本土との格差をすみやかに是正するため、沖繩振興開発特別措置法案第三条により、沖繩振興開発計画を定めることとされておりますが、この計画と全国的な空港整備、港湾整備、住宅建設、下水道整備等の公共事業の五カ年計画との調整が必要な場合には、これら各種五カ年計画の修正等を行なう考えであります。
次に、柴田君から、土地使用法案を修正もしくは撤回をする考えはないかとのお尋ねがありましたが、政府はそのいずれをも考えておりません。十分御審議の上、この国会で成立させていただくようこの上ともお願いをする次第でございます。
沖繩においては、戦災による公簿の焼失、地形の変容等により、権利関係の不明な土地を多く生じたのでありますが、昭和三十二年に本土の国土調査法にならった土地調査法が制定され、昭和三十八年以降は、本土政府の援助のもとに、琉球政府の土地調査庁が本格的な地籍調査を実施しております。復帰後も国土調査法その他の法令による地籍調査を進めていくことになりますが、沖繩本島中部等には、権利関係が不明確なため、国土調査法等による地籍調査が困難と思われる地域が多いようであります。これらの土地については、関係地主等の間の話し合いで自主的に境界の定まることが最も望ましいので、これを推進するためには、関係省庁、沖繩県及び各市町村が協力して援助する必要があると考えている次第であります。
米軍基地の整理に伴うあと地利用につきましては、相当広いまとまった土地であるだけに、豊かな沖繩県づくりに役立つよう利用されるべきであると考えます。このため、土地所有者と十分話し合った上で合理的な利用計画を作成し、一括して公共的目的に利用するとか、個々の土地利用を誘導するとか、適切な手段を講じてまいりたいと考えます。
最後のVOAの問題につきましては、これは廣瀬郵政大臣からお答えいたすことにいたします。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/28
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029・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
沖繩返還の時期いかんということでございますが、いよいよその返還の時期を見当つけなければならない時期に差し迫っております。そこで、返還の時期は理論上はどうかと、こういいますと、双方の返還の準備が整った時点であると、こういうことでございます。しからばその準備状況はどうかと、こういうことになりますと、まず法制上の準備があります。アメリカでは、上院がすでにこの協定を承認しております。したがって、アメリカでは、この協定承認の手続は全部了しておる。また、これに関連する法案もありませんです。わが国においてはどうかというと、まだ協定も関連法案も成立をいたしておらない、こういう状態で、わが国のほうがおくれておる。それから、この協定や関連法案がわが国において成立をいたしましたそういう段階になりますると、これは実体上の準備がある。この実体上の準備は、アメリカ側にもあり、わが国にもある。双方、相当困難な諸問題をかかえております。そういう困難な諸問題をなるべく早く片づけまして、沖繩県民のかねての願望であるこの返還が一日も早く実現されるようにと、こういうふうに願っておりますが、いずれにいたしましても、もうこの見当をつける時期が迫ってきておりますので、双方しめし合わせまして、この実体的な準備体制を取り急ぎ、早期返還を実現いたしたい、かように考えている次第でございます。(拍手)
〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/29
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030・山中貞則
○国務大臣(山中貞則君) ほとんど総理に答弁していただきましたので、私に残っております問題は、復帰を直前にしての本土への人口流出の問題であろうと思います。この点は、ただいまお話がありましたように、最近、急激にふえております。また、それを裏づけるように、本土からの求人、ときには、もぐり的な求人活動等も非常に活発に行なわれておりまして、すでに一九七〇年は——六九年まではお話しのとおりでありますが、七〇年実績では、もう一万をこえまして、一万一千名近くになろうとしておるわけであります。このようなことは、ことに中を分析してみますと、中高卒の若年層の流出がきわめて高くなっております。この点は、沖繩の現地における企業の求人活動が停滞ぎみであることの一つの証明でもありますが、反面においては、復帰を間近に控えて、本土の大企業等への、おそらく、昨年の景気等を反映した求人活動に伴う流出であろうと思いますが、沖繩の新しい未来を考えますと、過疎と貧困の島にしないための政策をとる場合にその働き手であり、にない手である中高卒の諸君が大量に本土に流出していく実態につきましては、私も非常に心痛をいたしております。先般も、沖繩から働きにきております中高卒の若い諸君と話をしてみたのでありますが、やはり、もう一ぺん自分たちがUターンして、魅力のある郷土であるという島づくりをしなければならないということを、その人たちと話しながら、若い諸君がそう感ずるようにしなければならぬということを感じたわけであります。社会資本の整備あるいはまた公共事業等の急速な資本投下等による求人、そういうもの等について、企業誘致等とも関連をしながら、自分たちの郷土にとどまって、そうして人口流出要素にならない沖繩県づくりに精一ぱいやってみたいと考えます。(拍手)
〔国務大臣江崎真澄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/30
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031・江崎真澄
○国務大臣(江崎真澄君) 私への質問も、総理から詳細にすでに御答弁がありました。
そこで、暫定使用の運用についてでありまするが、これは、先ほどもお答えいたしましたように、地主との間では、ほとんどの方と話し合いはつくものと確信を持っておるわけでありまするが、海外に移住をされた方あるいは居所が不明な方、地主の数が多数になりまするので、そういう方もあります。そこで、この暫定使用法をお願いするわけでありまするが、これは施政権返還という、一日も空白を置くことのできないこの場面の例外措置としてでありまするので、運用につきましては、十分ひとつ円滑に事を進めるように重ねて努力をしてまいることをお誓い申し上げたいと思います。
それから、県民の声をあと地利用等についてどう反映させるのか、こういうお尋ねでございましたが、返還が決定いたしますると、五十日以内に、県知事選挙をはじめ県会議員等の選挙が行なわれます。沖繩県当局の協力、沖繩県当局から聞くことはもちろんでありまするが、われわれ、特に施設庁が現地に参りまして、直接折衝の衝に当たるわけでありまするが、現在、いわゆる概算要求として、七百四十九人——七百五十人の人を派遣して折衝に当たれるようにいま大蔵省側と話し合いをしておるわけであります。したがいまして、これだけの人員を配置すれば、相当きめこまかに、沖繩県民、地主、それぞれの意向を聞くことができるのではないか、こんなふうに考えております。(拍手)
〔国務大臣廣瀬正雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/31
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032・廣瀬正雄
○国務大臣(廣瀬正雄君) お答え申し上げます。
まず第一に、VOAの存続についての問題でございまして、沖繩にありまするVOA中継局の復帰後の取り扱いにつきましては、わが国といたしましては、電波法等国内法制上のたてまえからいたしまして、外国政府の放送業務がわが国内において行なわれますことは非常に望ましくないという立場から、復帰後その存続を認めないという態度をもって交渉を続けてまいりました。しかるに、アメリカの政府は、この種の中継活動は米国海外広報庁の事業の一環として諸外国におきましても行なわれておると、なかんずく沖繩におきましては、かかる中継はアジアにおけるアメリカの政策に対する誤解を防ぐために重要な役割りを果たしておるといたしまして、その存続を強く主張してまいったのであります。右のような事態を背景といたしまして、わが国といたしましても、米国政府にとり何らの制約もなく長年継続してまいりました事業が、沖繩返還の結果といたしまして、将来の計画も立ち得ぬままに突如中止を余儀なくされますことが大きな問題であろうと考えまして、そういう理解の上に立って、結局、五年間を限って暫定的に存続を認めるということに妥協をせざるを得ないことになったいきさつでございます。しかしながら、VOAの継続に関しまする交換公文の中に、放送の番組、内容につきましてはアメリカ合衆国政府が責任を負うというようなことになっておりますし、その番組が国際友好上不適当であるというような感じがいたしますような場合には、日本国政府といたしましては、その見解を表明する権利が保留されておりまして、アメリカ政府はこの日本の見解を尊重することになっておりますので、この点は外交折衝で厳重に抗議して改善をさせることができるようになっておるのでございます。
次に、モニター制を今後具体的にどのうよに進めていくかというお尋ねでございますが、沖繩におけるVOAの傍受でございますが、このVOAの放送は、御承知のように、アジアの数カ国に放送をいたしておりますので、なかなか指向性というのが強いのでありまして、各国に向けて放送するということになっておりますから、指向性が強いわけでございまして、どこでも聞けるというわけではございませんが、幸いに沖繩の本島内のVOA送信所に比較的近い場所におきまして聞けるということがわかってまいりまして、その受信設備を設けまして、放送番組をすべて傍受するということにいたしまして、目下、その実施に必要な予算的裏づけ等も含めまして、具体的な方法については関係各省庁で協議を進めておるところでございます。
最後に、VOAは地位協定の対象外にするとのことであるが、電波障害などの住民被害についてはどうかということでございますが、VOAはアメリカの合衆国海外広報庁の一機関で、米軍とは関係なく放送されておりますものでございます。したがって、地位協定の適用を受けるものではございません。また、御指摘の、VOAによって日本の無線局等に混信その他の妨害が生じた場合につきましては、返還協定の第八条に基づきます交換公文によりまして、アメリカ合衆国政府はその「混信その他の妨害をできる限りすみやかに除去するため必要な措置をとる」ということにはっきり明定をされております。また、これ以外の住民に対する損害につきましても、交換公文によりまして、「アメリカ合衆国政府は、中継局の活動からまたはこれに関連して生ずる中継局またはその職員に対するすべての請求を公正かつ迅速に解決する責任を負う」ということとなっておりまして、十分配慮しておるものでございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/32
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033・森八三一
○副議長(森八三一君) 渡辺武君。
〔渡辺武君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/33
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034・渡辺武
○渡辺武君 私は、日本共産党を代表して、沖繩協定関連法案について総理並びに関係大臣に質問いたします。
これらの法案は、アジア最大の侵略拠点としての沖繩の基地の機能を維持し、さらには日米安全保障条約を実質的に改悪して本土をも沖繩化し、あまつさえ請求権の放棄、資産買い取りなどをも取りきめた侵略的、屈辱的な沖繩協定の実施を保障するための国内法案であり、それ自体侵略的、屈辱的なものであります。このことは、アメリカ政府がこの法案の成立を協定批准の条件として強要していることを見ても明らかであります。
政府は、沖繩の施政権が返ってくると宣伝しておりますが、この関連法案のおもなものの一つは、米軍基地と自衛隊の肩がわり派遣のための土地取り上げ、占領中の裁判の引き継ぎ、VOAの存続など、軍事基地だけでなく、県民に対するアメリカの支配さえも日本政府が肩がわりをし、引き継ぐことを内容としているものではありませんか。
そこで、まず軍用地問題について総理に伺います。沖繩の軍用地が米軍の武力によって問答無用に強奪されたものであることは争う余地もありません。土地を返せ、これこそが祖国復帰にかけた県民の最も切実な願いの一つであります。ところが、政府は、公用地等暫定使用法案によって、今度は政府自身が肩がわりして軍用地を強奪しようとしております。総理が、異民族支配のもとで苦しみ抜いた沖繩の今日の事態に責任を感ずるなら、復帰と同時にすべての軍用地を県民に返すべきだと思うが、御見解を伺います。
特に、この法案が明白に憲法違反のものであることは、衆議院での審議がすでに明らかにしたとおりであります。すなわちこの法案は、法律自体の規定によって土地の使用権を強制的に国が奪おうとするものであり、しかも、国民の財産権を保障するたてまえからとして、現行の土地収用法はもとより、悪名高い国家総動員法さえ規定していた、収用すべき土地と所有者の確定その他必要最低限の手続さえ要件としておりません。唯一の事前手続とされている告示でさえ、米施政権下の県民には法的には効果が及ばないものであります。これは国民の財産を保障した憲法第二十九条と、法定の手続を保障した憲法第三十一条とをまっこうから踏みにじるものであります。また、この法案は、本土の土地収用関係法に類例のない不当な土地強奪法であり、沖繩県民にだけ差別的に適用されるもので、法のもとでの平等を保障した憲法第十四条を踏みにじるものであります。政府は、「やむを得ない暫定措置である」、「運用面で気をつける」などと言いのがれに終始し、これらの点については何一つまともに答えておりません。この法案は、いま私の指摘した憲法の各条項に違反していると思うが、これらの論点に対し総理並びに防衛庁長官の具体的な答弁を求めます。政府がこのようにしてまで軍用地を強奪しようとする理由が、米軍基地の機能を一瞬時もそこなうまいとするところにあることは申すまでもございません。総理は、アメリカの利益のためには憲法を無視してよいと考えておられるのか。もしそうでなかったら、このような屈辱的であり、憲法違反の法案を撤回すべきだと思うが、御意見を伺います。
次に、政府は協定第五条と復帰特別措置法案第二十五条によって占領者の裁判を有効として引き継ぎ、さらに復帰後の裁判にさえ、占領中の布告、布令を適用できるとしております。これでは、もし事件が最高裁に係属するようになれば、最高裁の裁判官でさえ、他国の法律で裁判するという屈辱を忍ばなければなりません。総理、一国の主権の主要な内容をなす裁判権について、このような屈辱的な立場をとった独立国がかつてあったでしょうか。あったら承りたい。このような屈辱的な措置ではなぐ、わか党が衆議院で主張したように、現行刑法二条、三条の国外犯に関する規定を沖繩については拡張する特別法をつくり、即時実施するならば、わが国の法律によって復帰時の裁判上の混乱を防ぎ、県民を保護することが可能であります。総理並びに法務大臣はこのような措置をとる意思がおありか、重ねて承ります。
次に、経済問題についてであります。沖繩の膨大な基地は、本土と違い、その三分の一は農地と宅地を略奪したものであります。このため経営の道を断たれた農漁民は安上がりの基地労働力として、また農村市場を失った中小企業は基地サービス業として露命をつながざるを得なかったのであります。政府は、「基地依存経済からの脱却」などと宣伝していますが、基地をそのままにしてどうしてそのようなことができますか。また、基地の存在は、那覇市その他を極端な過密状態とし、都市計画の実施さえも困難にし、県民の願う本島縦貫鉄道の建設を絶望的にし、港湾の経済的利用さえも妨げております。これらの事態をどう解決なさるのか、あわせて総理並びに総務長官の答弁を求めます。
また政府は、今後の工業開発によって、「明るく豊かで平和な沖繩県の建設」なるものができるように宣伝しております。しかし、現に進められているものは、ガルフ、エッソ、東洋石油、アラビア石油などを中心とする一大石油基地の建設であり、アルミ産業の進出ではありませんか。これらが典型的な公害産業であり、水と電力を県民から奪い、雇用効果の最も少ない産業であることは本土で証明済みであります。ところが政府は、いわゆる開発三法によって工業開発地区を指定し、これら公害大企業に税制、金融上の優遇、土地、水、電力、道路などの造成を重点的に行なおうとしております。しかも、他方では、県民には、生活改善に役立つ過疎法、辺地法、離島振興法などの適用さえしようとしておりません。政府は、基地に加えて公害大企業によって県民に新しい災厄をもたらすおつもりでございますか。これがどうして明るく豊かで平和な沖繩県の建設と言うことができましょうか。このような措置ではなく、大幅な援助による農業、漁業、中小企業の振興を重点とし、工業誘致は公害のない、地元に有利な企業に限るべきであります。また、過疎法、辺地法、離島振興法を沖繩に適用すべきだと思うが、総理並びに総務長官の答弁を求めます。
しかも政府は、このような公害大企業の基地建設を強行するために、振興開発計画の審議と決定権を政府が握り、その実施さえも直接国が行なおうとしております。これは沖繩県の自治権の乱暴な侵害であります。沖繩県の自治権を大幅に広げ、県民の自主的な開発を基本とすべきだと思うが、総理並びに総務長官の答弁を求めます。
沖繩県民が心から望んでいるものは、このような沖繩協定と関連法案ではありません。核も基地も公害もない、ほんとうに平和で豊かな沖繩であり、これはまた日本国民共通の要求でもあります。このような協定と関連法案を強引に成立させようとしている総理の責任をきびしく追及して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/34
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035・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 渡辺君にお答えをいたします前に、私は沖繩の祖国復帰、その見方が、共産党とわれわれとではこうも違うかと、たいへんふしぎに思ったものでございますので、その一点は、これははっきり申し上げておきたいのです。どういう点が違うかと申しますと、言われますことは、侵略的、屈辱的な返還協定だということです。(「そのとおり」と呼ぶ者あり)これはそのとおりではございません。また、これは侵略拠点として本土の沖繩化である、これも違っております。沖繩化ではございません。また、米軍に自衛隊が肩がわりする、こういう表現を言われております。自衛隊は米軍に肩がわりはできません。できるのはわずかに防衛、それだけであります。これは肩がわりというのにしては米軍の持つ機能はあまりにも大きい。これらの点を十分認識していただいておかないと、どうも話が一致しにくい、かように思いますので、これだけを明確にいたしておきます。(拍手)
そこで、最初の渡辺君のお尋ねでありますが、これは基地の整理縮小に関するものと私は理解いたしますが、県民の要望につきましては政府も十分承知しております。さきに衆議院の決議が行なわれたことでもありますから、政府はその趣旨を尊重し、今後とも真剣にこの問題に取り組んでまいる所存であります。
沖繩における公用地等の暫定使用に関する法律案は、沖繩の復帰に伴い、沖繩における公用地等のために必要な土地等に関する暫定使用について特別な措置を定めたものでありますが、御指摘の憲法各条の規定との関係も十分配慮しておりますので、これらに違反することはあり得ないと考えております。具体的な点につきましては関係大臣からお答えいたします。
次に、公用地等暫定使用法案は、憲法第十四条第一項違反ではないかとのお尋ねがありましたが、そのようなことはありません。憲法第十四条第一項は「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信條、性別、社會的身分又は門地により、政治的、経濟的又は社會的關係において、差別されない。」として、いわゆる法のもとにおける平等の原則を掲げたものであります。ところで、この法案は、沖繩の地域における土地等に関する権利について特別の制約を行なおうとするものでありますが、人種、信条、性別、社会的身分または門地により差別扱いをしようとするものではなく、憲法違反の御批判は当たらないと、かように考えます。
公用地等暫定使用法案を撤回せよとの渡辺君の御意見でありますが、すでに川村君にもお答えしたとおり、政府としては、せっかくの御注意でございますけれど、本法律案を撤回する考えはございません。沖繩返還を円滑に実現するため必要な関連法案の一つでありますので、御協力を重ねてお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
沖繩の裁判権を引き継ぐことといたしましたのは、復帰前後の社会秩序を維持し、その法的安定性を確保することが必要であると考えたからであります。また布告、布令もいわゆる旧日本法、立法院立法等と相まって復帰前の沖繩の法秩序を形成してきたものであり、布告、布令という理由だけで別に取り扱うことは適当でないと存ずるものであります。
なお、今回の特別措置法では、復帰後適用することが妥当でない布告、布令につきましてはこれを除外する等の措置を講じているのでありまして、裁判権引き継ぎにあたっての具体的妥当性を確保しております。御指摘の国外犯に対する特別立法につきましては法務大臣からお答えをいたします。
基地の整理縮小につきましては、沖繩県民の要望を十分に考慮し、今後積極的に取り組む方針であることはすでに繰り返し申し述べたとおりであります。
なお、基地経済からの脱却につきましては、沖繩の経済が基地に多く依存していることは事実でありますから、政府としては、沖繩の自主的経済の確立と沖繩の所得及び生活水準をできるだけ本土水準に近づけることを目標として、わが国最南端の亜熱帯性地域の特性を生かし、その特性に適した産業の振興開発を行なうことにより沖繩経済の発展をはかる所存であります。
また、沖繩においては基地が広大な地域を占めているため、道路や都市の整備等を行なう上において障害になっているとの御指摘でありましたが、これは事実そのとおりだと思います。共産党の主張と一致しております。政府といたしましては、今後とも沖繩現地の要望を十分念頭に置いて基地の整理統合につとめ、沖繩の振興開発と県民の福祉の向上をはかり、豊かな沖繩県づくりを進めていきたいと考えております。
次に、開発三法の重点は石油、アルミなど、公害大企業に置かれているとの御質問がありましたが、政府はそのような考えは持っておりません。政府といたしましては、復帰後における沖繩経済の振興開発をはかるため、新全国総合開発計画を改定するとともに沖繩振興開発計画を策定する方針でありますが、これらの計画の中で、できる限りすみやかに沖繩の経済が本土並みの水準に達するように検討を加えたいと考えております。
また、産業の振興にあたっては、均衡のある産業振興施策を講ずることを基本方針としております。その概略の考え方は、第一次産業については、亜熱帯地域の特性に応じた振興をはかり、第二次産業については、既存中小企業の育成、また比較的余剰労働力のある沖繩の現状を生かして、内陸工業団地及び臨海工業地区等における新産業の導入による振興をはかり、第三次産業については、沖繩の自然と文化を生かして、特色ある観光開発をはかる考えでありますが、具体的にはさらに検討を加えたいと考えております。
なお、御指摘の石油精製、アルミ精錬の進出につきましては、十分公害防止対策を講じ、沖繩の自然環境を破壊するようなことのないようにいたす考えでございます。このことは最も大事なことであると私も考えております。
以上お答え申し上げました。(拍手)
〔国務大臣江崎真澄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/35
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036・江崎真澄
○国務大臣(江崎真澄君) 自衛隊の配備は、米軍の肩がわりでは断じてありません。主権が日本に戻ってまいりまする以上、当然自衛隊の任務として、平和を確保するため、局地防衛に任じ、民生の安定に協力をし、しかも災害常襲県というきわめて恵まれない地理的位置にありまするだけに、災害救助活動を活発に行なう。現在は自衛隊に対する理解が県民の中に浸透しておるとは私も思っておりません。しかし、だんだん実態がわかるにつれまして、県民各位も十分御理解が願えるものと思いますし、われわれもまた、実態を承知してもらうべく努力をしてまいりたいと思っております。
さて、公用地等の暫定使用に関する法律案が憲法違反ではないかと、これは、いま総理から御答弁がありましたように、そういうことはございません。まず、この法律が暫定使用の対象としておる土地等は、公共の利益のための特別の必要性が認められ、かつ、復帰による使用の中断を避けることができない、必要からいっても、もうまことにやむを得ないものである。そうして、その使用について正当な補償が与えられることは、これは言うまでもありません。で、対象区域等をきめる告示とか、あるいは関係権利者に対する通知が行なわれることになっております。
それから、憲法二十九条第三項、あるいは三十一条に違反するものということも、これはとうてい考えられないのであります。
また、この法律案は、関係権利者が裁判所に対しまして訴訟を提起することも何ら妨げていないのでありまして、憲法三十二条との関係等におきましても何ら違反のそしりを受けるようなものではないと確信をいたしております。(拍手)
〔国務大臣前尾繁三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/36
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037・前尾繁三郎
○国務大臣(前尾繁三郎君) 総理の御答弁に補足さしていただきます。
まず、沖繩の裁判権を引き継ぎましたのは、総理のお話しのとおりに、沖繩の復帰前後の社会秩序を維持する、そういうためでありまして、これは全く法律技術的なものであります。また、諸外国の例を見ましても、ずいぶんある例であります。屈辱的とか、そういうような問題では絶対にありません。また、布告、布令を引き継ぎましたのも、復帰後適当でないものは引き継がないものであります。また、布令の中には麻薬類の取り締まり、あるいは通貨の偽造とか、あるいはハイジャックの処罰とか、そういうものを引き継ぐのでありまして、これは当然のことだと思います。
また、御指摘の国外犯に関する特別立法をお考えのようでありますが、それは復帰前の沖繩における行為を処罰するということになりますから、アメリカの現在の施政権を侵すばかりではなしに憲法三十九条の不遡及の原則に反する、かように考えているのでありまして、全く適当でない、かように考える次第であります。(拍手)
〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/37
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038・山中貞則
○国務大臣(山中貞則君) 総理から大体御答弁いただきましたので、私のほうは現在のガルフ、エッソ等の石油企業の問題でありますが、これは本土政府が認可してつくったわけではないのでありまして、むしろ当時、通産省あたりは別な意味であったかもしれませんが、相当難色を示して、本土法令その他石油業法等、やはり相当議論した後に、琉球政府の希望が通って認可されたというようなことがございます。しかしながら、それらが本土に返ってまいりまするならば、直ちに本土の各種業法の規制を受けることはもちろんのこと、それに対して本土の公害各種規制立法をそのままかぶせるわけでありますから、これはきびしくチェックしていかなければならないと考えておるわけであります。
さらに、沖繩について過疎法、辺地法、離島振興法を適用しろということでありますが、これは実は適用をしてあるわけでありまして、法律上適用しない立場をとりますのは、沖繩については全部過疎法、辺地法、離島振興法のそれぞれのすべての地域立法の一番有利な条件を適用することがこの法律にうたわれておるわけでありまして、それを全部適用いたしまして、そうしてなおかつ過疎、辺地、離島というものを適用してみても、それはちょっと意味のないことでありまして、それ以上の条件が全部整備されてあるということであります。ことに現在の沖繩法による離島振興法では、拠点島の宮古、石垣両島は除かれておりますが、本土に復帰いたしましたならば、この離島振興の考え方の中には現在の琉球政府の除外されている宮古、石垣も取り入れていくつもりであります。
なお、自治権侵害等については、たびたび申し上げておりますとおり、そういうことを考えておりませんし、また直轄で国がやる場合においても、それぞれの県あるいは港湾その他の管理者、市町村長等の申請があった場合に初めて国が直轄でやるようにしておるのでありまして、いやだと言うものを直轄でやるような、自治権を侵害する例は全然法律でも考えておりませんし、つくっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/38
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039・森八三一
○副議長(森八三一君) これにて質疑は終了いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/39
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040・森八三一
○副議長(森八三一君) 日程第三 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長前田佳都男君。
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〔前田佳都男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/40
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041・前田佳都男
○前田佳都男君 ただいま議題となりました法律案は、国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律により、アメリカ合衆国における輸入課徴金の賦課等の実施に伴って、事業活動に支障を生じているとの認定を受けた輸出関連の中小企業者に対し、その経営の安定をはかるため、一定期間内に生じた純損失または欠損金に限り繰り戻しによる還付を既往三カ年にさかのぼって認める税制上の特例を設けるとともに、その事業の転換を円滑にするため、認定転換計画に従って処分すべき施設について、計画期間内に償却できるよう特例を講じようとするものであります。
委員会におきましては、いわゆるドルショックによる中小企業への影響とその対策、租税特別措置のあり方等を中心に質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本案に対し、嶋崎委員より四党共同の附帯決議案が提出され、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
以上報告を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/41
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042・森八三一
○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/42
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043・森八三一
○副議長(森八三一君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/43
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044・森八三一
○副議長(森八三一君) 日程第四 一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案
日程第五 特別職の職員の給与に関する法律及び沖繩復帰のための準備委員会への日本国政府代表に関する臨時措置法の一部を改正する法律案
日程第六 防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上三案を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長柳田桃太郎君。
〔柳田桃太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/44
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045・柳田桃太郎
○柳田桃太郎君 ただいま議題となりました三件の給与法案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
まず、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案の内容は、去る八月の人事院勧告を実施するため、一般職の職員の給与について、
第一に、全俸給表の全俸給月額を平均一一・七%引き上げること。
第二に、医療職俸給表(一)の適用を受ける医師等の初任給調整手当について、支給月額の限度を八万円に引き上げ、支給期間の限度を三十年に延長するとともに、その逓減方法を改めること。
第三に、扶養手当の支給月額を、配偶者については五百円引き上げて二千二百円に、満十八歳未満の子のうち第二子についても二百円引き上げて六百円に、それぞれ改定すること。
第四に、六月に支給する期末手当の支給割合を〇・一カ月分増額するとともに、人事院規則で定める管理または監督の地位にある職員については、俸給月額の百分の二十五をこえない範囲で人事院規則で定める割合を乗じて得た額を、期末・勤勉手当の算定の基礎としている給与の額に加えること。
以上のほか、筑波研究学園都市移転手当を新設するとともに、高等専門学校の教職員に適用されている教育職俸給表(四)については、義務教育諸学校等の教育職員に対し支給される教職調整額との均衡を考慮して、四十七年一月一日から再び改定すること等であります。
なお、俸給表等の改定は、本年五月一日から実施することといたしております。
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次に、特別職の職員の給与に関する法律及び沖繩復帰のための準備委員会への日本国政府代表に関する臨時措置法の一部を改正する法律案並びに防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の二法案は、一般職の職員の給与改定に準じて、特別職の職員及び防衛庁の職員の俸給月額等について、それぞれ所要の改正を行なおうとするものであります。
なお、内閣総理大臣及び国務大臣等については、昨年に引き続き本年も据え置くことといたしております。
委員会におきましては、以上の三案を一括して審査し、給与改定の実施時期、管理・監督者に対する特別給割り増しの理由、扶養手当と児童手当を併給しない理由、自衛官の処遇と資質等について質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
質疑を終わり、討論なく、三案について順次採決の結果、一般職給与法改正案は全会一致、特別職給与法等改正案及び防衛庁職員給与法改正案は多数をもっていずれも原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、一般職給与法改正案に対し、附帯決議が全会一致をもって付されました。
以上をもって御報告を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/45
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046・森八三一
○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。
まず、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/46
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047・森八三一
○副議長(森八三一君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/47
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048・森八三一
○副議長(森八三一君) 次に、特別職の職員の給与に関する法律及び沖繩復帰のための準備委員会への日本国政府代表に関する臨時措置法の一部を改正する法律案並びに防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案を一括して採決いたします。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/48
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049・森八三一
○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、両案は可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/49
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050・森八三一
○副議長(森八三一君) この際、日程に追加して、
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/50
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051・森八三一
○副議長(森八三一君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。議院運営委員長鍋島直紹君。
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〔鍋島直紹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/51
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052・鍋島直紹
○鍋島直紹君 ただいま議題となりました法律案の内容は、特別職の国家公務員の給与の改定に伴い、国会議員に支給する期末手当の基礎額を改定しようとするものでありまして、本法は、本年五月一日に遡及して適用されることになっております。
委員会におきましては、審査の結果、多数をもって可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/52
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053・森八三一
○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/53
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054・森八三一
○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時四十九分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106715254X01319711215/54
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