1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十七年三月二十一日(火曜日)
午前十時九分開会
—————————————
委員の異動
一月三十一日
辞任 補欠選任
鈴木 力君 秋山 長造君
—————————————
出席者は左のとおり。
委員長 大松 博文君
理 事
久保田藤麿君
楠 正俊君
宮之原貞光君
安永 英雄君
委 員
金井 元彦君
志村 愛子君
高橋文五郎君
内藤誉三郎君
永野 鎮雄君
濱田 幸雄君
宮崎 正雄君
片岡 勝治君
内田 善利君
矢追 秀彦君
萩原幽香子君
加藤 進君
国務大臣
文 部 大 臣 高見 三郎君
政府委員
文部政務次官 渡辺 栄一君
文部大臣官房長 井内慶次郎君
文部大臣官房会
計課長 須田 八郎君
事務局側
常任委員会専門
員 渡辺 猛君
—————————————
本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○教育、文化及び学術に関する調査
(昭和四十七年度における文教行政の重点施策
に関する件)
(昭和四十七年度文部省関係予算に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106815077X00219720321/0
-
001・大松博文
○委員長(大松博文君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
去る一月三十一日、鈴木力君が委員を辞任され、その補欠として秋山長造君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106815077X00219720321/1
-
002・大松博文
○委員長(大松博文君) 次に、理事の補欠選任についておはかりいたします。
委員異動に伴い、理事が一名欠員となっておりますので、この際その補欠選任を行ないたいと存じます。
理事の選任につきましては、先例により、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議こざいませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106815077X00219720321/2
-
003・大松博文
○委員長(大松博文君) 御異議ないもあと認めます。
それでは、理事に宮之原貞光君を指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106815077X00219720321/3
-
004・大松博文
○委員長(大松博文君) 教育、文化及び学術に関する調査を議題といたします。
まず、昭和四十七年度における文教行政の重点施策について文部大臣から説明を聴取いたします。高見文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106815077X00219720321/4
-
005・高見三郎
○国務大臣(高見三郎君) 第六十八回国会において、文教各般の問題を御審議いただくに当たり、所信の一端を申し述べます。
本年は、明治五年、学制発布により、わが国の近代学校制度が創設されてから百年の歴史を画す記念すべき年に当たります。
百年前、われわれの先達は、日本の歴史の変革期に当たり、勇気と英断をもって、新しい時代の扉を開きました。「邑に不学の戸なく、家に不学の人なからしめん」ことを期して学制が発布されて以来、教育の普及と充実のためにたゆまざる努力を重ねてきた結果、特にその普及の面におきまして、国際的にも高い水準の成果を見ておりますことは、御同慶にたえないところであります。
しかしながら、今日の時代は急速な発展と変貌を遂げつつあり、世界の各国は、国家繁栄の基盤として教育の持っている重要性に目ざめ、国力をあげて教育の刷新、充実に取り組んでおります。わが国がこのような世界の進運に伍し、限りない未来にわたって発展を続けていくためには、教育の普及充実と刷新に一段と努力を傾注し、教育の量的普及に加えてその質的充実につとめ、豊かでたくましい人間性と創造的英知を備えた日本人として、国際社会で積極的に活躍できる人間の育成をはかっていかなければならないと考えます。このことは、わが国の伝統を踏まえつつ、世界から評価され、人類の歴史に輝きを添えるような高い学術・文化の基盤を築き、美しく花咲かせることを目ざすことにも一なると存じます。
文教行政をあずかる私といたしましては、学制百年の記念すべき年に当たり、先人の偉業を敬慕するとともに、思いを新たにし、このような時代の要請と国民の期待にこたえるため、最善の努力を尽くし、新たな国家百年の計に誤りのないようにいたしたいと決意いたしております。
以下、当面する文教行政の諸問題について申し述べます。
まず第一に、教育改革の推進についてであります。中央教育審議会は、昨年六月、学校教育全般にわたり、今後の進むべき方向について答申されたのでありますが、私といたしましては、この答申の実現について真剣に検討を重ね、国民の要請する方向に、教育の改革を積極的に推進してまいる所存であります。このため、広報広聴活動をより積極的に行ない、改革について国民の理解と支持を得ることにつとめるとともに、教育改革に取り組む行政体制の整備をはかってまいりたいと存じます。
中央教育審議会の答申の提案する改革のための諸施策は、きわめて広範多岐にわたっておりますが、そのうち、新しいよりよき学校制度への研究開発など、慎重な準備のもとにこれを進めるべき課題については、まず所要の調査研究に着手することとし、幼稚園教育の普及充実、特殊教育の拡充整備など、直ちに着手すべき緊要な課題については、昭和四十七年度を初年度として、計画的に実施に移してまいる所存であります。
次に、初等中等教育の改善充実について申し述べます。中央教育審議会の答申に基づく幼稚園教育の計画的な拡充整備については、昭和四十七年度において公・私立幼稚園の大幅な新増設をはかるとともに、五歳児及び四歳児を持つ保護者に対する幼稚園就園奨励費補助の制度を新設して、幼稚園教育の一そうの充実振興につとめてまいりたいと存じます。
なお、昭和四十七年度に、全市町村を対象として幼児教育に関する整備計画について必要な調査を行ない、昭和四十八年度以降の計画的な整備に資する所存であります。
心身に障害を持つ子供たちのすべてが、適切な教育を受ける機会に恵まれ、その障害を克服して有為な日本国民として成長していくようにするため、中央教育審議会の答申の趣旨に沿い、特殊教育の拡充整備に一そうの力を注ぐ考えであります。養護学校につきましては、なるべく早い機会に義務制に移行することを目途に、未設置県の解消をはかるなどの努力を傾注するとともだ、昨年十月開設されました国立特殊教育総合研究所につきましても、その整備を進めてまいる考えであります。
また、施設設備の整備については、従来から努力を重ねてまいりましたが、児童生徒が急増する過密地域における義務教育施設の整備については、その事業量の拡大をはかるとともに、特に、懸案であった小学校校舎の国庫負担率を、中学校と同様に二分の一に引き上げるなどの措置を講じていくことといたしております。また、教職員定数の改善を行なうとともに、教職員の長期宿泊研修のための施設として国立教育会館分館の建設に着手し、あるいは教職員の海外派遣を拡大するなど、教職員の資質向上につとめてまいる所存であります。
児童、生徒の心身の健全な発達にとって重要な役割を果たす学校給食については、今後一そう普及につとめるとともに、施設設備の整備、食事内容の向上、物資の需給体制の整備等についても、さらにその改善充実をはかる所存であります。また、大気汚染地域の児童、生徒の健康の保持増進をはかるため、特別健康診断を実施し、適切な保健管理の徹底を期するとともに、恵まれた自然環境の中で、学校教育活動としての移動教室を開設し、積極的に児童、生徒の健康の増進をはかる事業を、昭和四十六年度に引き続き、これを拡充して実施するよう計画いたしております。
次に、高等教育の改革充実について申し述べます。高等教育の改革につきましては、昭和四十七年度に高等教育改革推進会議を設け、中央教育審議会の答申を踏まえて、高等教育基本計画の策定につとめるほか、大学院のあり方をはじめ、技術者養成、教員養成などの個別的方策についても検討を行なうことといたしております。また、新しい構想に基づく筑波新大学の創設や放送大学の準備に必要な調査を引き続き進めてまいりたいと存じます。
これと並行いたしまして、学部学科の拡充、教員養成や医学教育の充実、大学入学者選抜方法の改善等、当面の措置を急がれているものについては、それぞれ施策を進めてまいる所存であります。特に、社会的要請の強い医師の養成については、医科大学または医学部の創設準備を始めるほか、既設大学の定員の拡充措置を講ずることといたしております。
なお、国立学校の授業料につきましては、昭和三十八年以来据え置かれて九年を経過しておりますので、諸般の事情を勘案して、昭和四十七年度にその改定を行なうことといたしておりますが、この改定は、育英奨学事業の拡充、国立学校の教育条件の改善、私学助成の強化等の措置と一体のものとして実施しようとするものであります。
次に、学術の振興につきましては、これに関する基本的施策がいかにあるべきかについて、現在、学術審議会において鋭意審議が進められておりますので、その結論に基づいて、逐次、具体的施策の実現に格別の努力を傾けてまいりたいと存じます。さしあたり来年度においては、科学研究費の拡充、南極地域観測及び科学衛星打ち上げの継続などのほか、新たに国文学研究資料館及び溶接工学研究所を創設する等、学術研究の振興をはかってまいりたいと存じます。
次に、私立学校の振興について申し述べます。学校教育において私立学校の果たしている役割りの重要性にかんがみ、昭和四十五年度に創設いたしました私立大学等経常費補助金について、従来の教員人件費等の積算率を引き上げ、新たに事務職員等専任職員を補助の対象にするなど、その大幅な拡充をはかるとともに、私立学校教育共済組合の長期給付に要する費用の国庫補助率の引き上げを行なうことといたしております。
次に、社会教育及び体育、スポーツの振興について申し述べます。これからの教育は、生涯教育の観点から、学校教育、家庭教育、社会教育のそれぞれの役割りを明らかにし、有機的連携をもって進めていかなければなりません。そのため、今後は、国民が生涯にわたり必要な社会教育を受けることができる環境の醸成に格段の努力をいたす必要があります。このため、昭和四十七年度においては、昨年四月になされた社会教育審議会の答申の趣旨の実現をはかるため、社会教育指導層の充実、社会教育施設の整備、社会教育事業の奨励援助という三つの柱のもとに、生涯教育の環境づくりを推進してまいる所存であります。特に、来年度は、社会教育指導員の新設、公民館、図書館、少年自然の家など社会教育施設の整備、幼児のための家庭教育の振興、視聴覚ライブラリーの充実に重点を置いてまいりたいと考えております。
また、体育・スポーツについては、昨年六月、保健体育審議会からなされた体育・スポーツの普及振興に関する基本方策についての中間報告の趣旨に沿い、体育・スポーツ施設の整備、指導者の養成、スポーツ組織の育成等の諸施策の推進に一段と努力してまいりたいと存じます。
次に、文化の振興についてであります。わが国が世界に誇る幾多の貫重な文化的遺産を適切に保存し、その活用をはかるとともに、伝統を承継しつつ新時代に即した芸術文化の創造をはかり、さらに国民各層の芸術文化への参加と享有の機会を拡充する必要があります。このため、昭和四十七年度においては、文化会館等の助成の拡大、青少年芸術劇場及び移動芸術祭の全県実施をはかる等の施策により、地方における文化の振興に力を注ぐとともに、芸術関係団体への助成の強化、優秀映画の製作奨励等により芸術文化活動の促進をはかることといたしております。文化財保護の施策としては、史跡等の土地の買い上げ及び環境整備を促進するとともに、国宝・重要文化財の修理、防災及び買い上げ等の施策を拡充し、文化財の保存、活用に遺憾なきを期してまいりたいと存じます。
次に、教育、学術、文化の国際交流についてでありますが、わが国の国際社会における地位の向上にかんがみ、ユネスコ等の国際機関を通じ、あるいは個々の諸外国との関係により、アジア・アフリカ諸国への教育・学術・文化協力、欧米諸国との人物交流などの事業を強力に推進するとともに、海外に勤務する邦人子女の教育援助については、格段の充実強化をはかりたいと存じます。
最後に、沖繩の教育について申し述べます。本年五月十五日には、沖繩の人々はもとより国民の長い間の念願であった沖繩の本土復帰がいよいよ実現する運びとなりました。今日まで、多年にわたり本土との一体化に尽くされた教育関係者の努力に対して深く敬意を表するとともに、復帰の年を迎えて沖繩に対する教育援助を一段と充実して、本土との格差の解消と教育水準の向上をはかりたいと存じます。
以上、文教行政の当面する主要な問題について所信の一端を申し述べましたが、その他の諸問題につきましても、文教委員各位の御協力と御支援を得て、その解決に努力する所存であります。何とぞよろしくお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106815077X00219720321/5
-
006・大松博文
○委員長(大松博文君) 引き続いて、昭和四十七年度文部省関係予算について説明を聴取いたします。高見文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106815077X00219720321/6
-
007・高見三郎
○国務大臣(高見三郎君) 昭和四十七年度文部省所管の予算案につきまして、その概要を御説明申し上げます。
まず、文部省所管の一般会計予算額は一兆一千八百十一億五千五百五万円、国立学校特別会計の予算額は三千九百七十七億六千四百五十二万二千円でありまして、その純計は一兆二千四百九十七億三千八百十四万五千円となっております。この純計額を昭和四十六年度の当初予算額と比較いたしますと、二千八十七億三百五十七万八千円の増額となり、その増加率は二〇%となっております。
以下、昭和四十七年度予算案において取り上げました主要な事項について、御説明申し上げます。
第一は、教育改革に関する基本施策の推進に関する経費であります。昨年六月、中央教育審議会から、学校教育全般にわたる改革と拡充整備の基本的な施策について答申が行なわれましたが、昭和四十七年度の予算案においては、この答申の趣旨に沿って、先導的試行による学校体系の開発等、なお慎重な検討を要する課題については、まず、調査研究に着手することとし、幼稚園教育の普及充実、特殊教育の拡充整備等、答申の趣旨を直ちに実施に移し得る課題については、来年度から積極的に推進する等、段階的に教育改革を進めることといたしております。そのおもなものを申し上げますと、まず、教育改革に取り組む文部省の行政体制の整備についてであります。昨年七月、「教育改革推進本部」を省内に設置し、教育改革の総合的な推進をはかることといたしましたが、来年度は、さらに、初等中等教育局に先導的試行その他の教育研究開発を推進するため、教育研究開発室を新設するとともだ、幼稚園教育の拡充整備に対処するため、幼稚園教育課を新設するほか、高等教育の改革と計画的な整備充実を推進するため、大学学術局に高等教育計画課を設置する等、機構の整備をはかることといたしました。
次に、教育改革の基本施策の策定に資するため、先導的試行に関する調査研究をはじめとして、高等教育改革推進会議を設置して高等教育基本計画の策定等を進めるほか、教員の待遇改善並びに大学入学者選抜制度と育英奨学制度の改善について調査研究を行なうこととし、このために必要な経費を計上いたしました。
また、具体的施策といたしまして、幼稚園教育の普及充実をはかり、特殊教育振興計画を推進するとともに、筑波新大学の創設並びに放送大学の準備を進めることといたしております。
幼稚園教育の普及充実につきましては、公・私立の幼稚園の計画的増設を進めるため、施設設備の助成に要する経費を大幅に増額するとともに、父兄の経済的な負担の軽減をはかることによって幼稚園教育を一そう普及充実するため、新たに幼稚園就園奨励費補助の制度を設け、十億円を計上する等、総額三十五億円余を計上いたしました。
特殊教育の拡充整備につきましては、養護学校の新設と特殊学級の増設並びに障害児の早期教育の拡大のため、特殊教育諸学校幼稚部の学級増設をはかることとし、特に養護学校につきましては、なるべく早い機会に義務制に移行することを目途として、来年度は未設置県における新設養護学校の施設に対する国庫負担率を引き上げるとともに、必要な施設設備に要する経費を計上するほか、就学援助の拡充、養護訓練設備の整備等、総額四十二億円余を計上いたしました。また、昨年十月開設された国立特殊教育総合研究所につきましては、実験学校の設置等、施設の整備を進めるとともに、研究員その他必要な定員を確保することといたしました。
筑波新大学につきましては、創設準備要員として必要な教職員の定員をはじめ、筑波地区の施設の整備に着手する等、創設に必要な経費十一億円余を計上いたしました。
また、放送大学につきましては、本年度に引き続き実験放送を続けることといたしております。
なお、教育改革を進めるにあたりましては、国民各層の理解と支持を得ることがきわめて肝要であります。このため、教育改革連絡協議会や地方における懇談会の開催等、広報広聴活動に要する経費につきましても配慮いたしたところであります。
第二は、初等中等教育の充実に関する経費であります。まず、義務教育諸学校の教職員の定数及び給与につきましては、引き続き年次計画による定数の増員及び特殊学級の増設に伴う定数の増員を行なうこととしたほか、教職調整額の平年度化、旅費単価の改訂等に要する経費を計上いたしました。給与費にかかる義務教育費国庫負担金は総額六千二十五億円余となっております。
教材の整備につきましては、従来からの年次計画によるもののほか、新たに中学校のクラブ活動の必修に伴う整備を行なうことといたしております。
次に、理科教育につきましては、学習指導要領の改定に即して中学校の理科教育設備の充実を重点に整備するとともだ、本年度に引き続き理数科教育の現代化を推進するための研修用設備の整備に要する経費等を計上いたしております。また、産業教育につきましては、情報処理教育センターの設置をはじめといたしまして、施設設備を全般的に充実することといたしました。
次に、高等学校の定時制教育及び通信教育につきましては、新たに通信教育の一年次生に教科書を給与する等のほか、施設設備に要する経費の増額をはかることといたしました。
次に、僻地教育の振興につきましては、引き続き教員宿舎、スクールバス等の施設設備の充実につとめるとともに、遠距離通学費の単価を実態に即して増額するほか、新たに保健室の設備について補助を行なうこととする等、僻地の教育環境の改善をはかることといたしております。
次に、教職員の現職教育につきましては、引き続き従来からの研修の充実をはかるとともに、新たに中学校の美術担当教員に対する実技講座を実施することとし、また、学校長等の海外派遣研修につきましては、本年度同様、派遣人員の大幅な増員をはかる等、研修の機会と内容の充実に配慮いたしました。さらに、本年度、準備調査費が計上されている教職員の長期宿泊研修施設としての国立教育会館の分館につきましては、筑波研究学園都市に年次計画をもって建設することとし、初年度に要する経費を国立教育会館に出資することといたしました。
次に、学校給食の普及充実につきましては、新たに木造老朽施設を年次計画をもって改築するのをはじめ、設備の改善更新に要する経費を計上する等、施設設備の充実につとめるとともに、学校栄養職員の増員、調理講習会の開催等、全般的に施策の推進をはかっております。また、引き続き学校給食用物資の低温流通化を促進するための施設設備の補助及び都道府県学校給食総合センターを設置するための補助を行なうとともに、学校給食用物資の流通改善対策に要する経費を増額いたしました。なお、学校給食における米利用校につきましては、炊飯給食の施設設備を整備する等、所要の経費を計上することといたしました。
次に、公害対策につきましては、本年度に引き続き健康増進特別事業として、大気汚染地区の小・中学校の移動教室を開設するとともに、これらの地区の学校における児童生徒の疾病の早期発見のため特別健康診断を実施することとし、所要の経費を計上いたしておりますが、それぞれの事業について対象校の拡大をはかっております。
そのほか、公立文教施設整備費において公害防止工事費を大幅に増額し、また、学校施設の公害対策に関する調査研究を引き続き行なうととも一に、少年自然の家、野外活動施設の施策等とも相まって健康な児童生徒の育成をはかることといたしました。なお、児童生徒の交通安全対策についても、交通事故が増加している現状にかんがみ、引き続き所要の経費を計上し、配慮しているところであります。
次に、公立文教施設の整備につきましては、本年度に対して約三七%増の七百三十二億円余を計上いたしました。その内容としては、過密過疎対策、危険建物の改築、養護学校と幼稚園の計画的設置に重点を置いて事業量の拡大をはかるとともに、多年懸案の小学校校舎の新増築及び未設置県の養護学校の新設に対する国庫負担率の引き上げを行なうこととしたほか、校地の確保のため本年度から措置された児童生徒急増市町村の公立小・中学校施設特別整備事業について事業量の拡大を行なうこととして、これに要する経費五十二億円余を計上いたしております。
以上のほか、教育内容の改善、生徒指導の充実、就学援助の強化、同和教育の推進等、各般にわたる施策の拡充に必要な経費を計上いたしました。
第三は、高等教育の整備充実と厚生補導の充実等に関する経費であります。国立学校特別会計予算につきましては、昭和四十六年度の当初予算額と比較して五百六十七億円の増額を行ない、三千九百七十八億円を計上いたしました。その歳入予定額は、一般会計からの受け入れ三千二百九十二億円、借り入れ金二十八億円、付属病院収入四百六十九億円、授業料及び入学検定料収入百一億円、学校財産処分収入二十七億円、雑収入五十一億円、前年度剰余金受け入れ十億円であり、歳出予定額は、国立学校運営費三千四百二十九億円、施設整備費五百四十九億円となっております。
なお、歳入において、昭和三十八年度改定以来据え置かれてまいりました授業料等につきましては、このたび諸般の事情を勘案し、一方、育英奨学事業の拡充措置等についても配慮の上、引き上げを行なうこととし、授業料及び入学料は、昭和四十七年度の入学生から、検定料は昭和四十八年度入学者選抜の場合から改定することといたしました。改定後の授業料の額は、学部及び大学院の研究科にあっては月額三千円、高等専門学校にあっては月額一千六百円となっております。
まず、高等教育につきましては、前述いたしましたように、高等教育改革推進会議を設けて改革の推進をはかり、筑波新大学、放送大学等、新構想による大学の設置準備等を進めるとともに、一方、従来から懸案の国立大学の学部等につきましては、東北大学薬学部等、県立大学の国立移管をも含め、四大学につき五学部を創設するのをはじめとして、大学院研究科の設置、学科の新設改組、特殊教育と幼稚園教育の教員養成課程の新設、医療技術短期大学部の創設等、社会的要請も勘案しつつ所要の措置を講ずることといたしました。
さらに、学生、教官当たりの積算校費、教官研究旅費、設備費等の基準的経費につきましては、来年度は、学生の教育に要する経費を重点として改善をはかることといたしました。
また、医学教育の充実につきましては、医科大学ないしは医学部の創設準備費を三大学に計上するとともに、医科大学等設置に関する調査を継続するほか、六国立大学医学部の入学定員を増加することといたしております。
次に、国立大学付属病院の整備につきましては、診療科の新設、中央・特殊診療施設の整備等を行なうとともだ、看護業務要員の大幅な増員を行ない、また、非常勤医師の給与の改善を行なうことといたしました。
次に、国立高等専門学校につきましては、新たに八代、徳山工業高等専門学校に関する調査を行なうこととし、また、既設校につきましては、教官の増員、設備の充実等につとめることといたしました。
次に、学生の厚生補導につきましては、引き続き総合的な施策の推進につとめておりますが、来年度は特に厚生福祉施設、課外活動施設等の整備を重点として所要の経費を計上いたしました。
次に、育英奨学事業につきましては、大幅な拡充をいたしました。すなわち、高等学校、大学及び高等専門学校の奨学生につきましては、一般貸与の貸与月額を、来年度の一年次生から現在の自宅通学者にかかる特別貸与程度の額に増額し、特別貸与についても、新一年次生から、所要の増額を行なうことといたしております。
大学院の奨学生につきましては、修士課程、博士課程とも全学年次の学生について、大幅に増額することとし、私立高等専門学校の高学年、通信教育の奨学生等につきましても所要の調整を行なっております。また、奨学生の採用数は、私立大学の特別貸与と大学院の修士課程について増加することといたしました。なお、今後の高等教育機関のあり方に即応した育英奨学制度の改善については、引き続き調査研究を進めるため、必要な経費を計上いたしております。
次に、国立大学のほか公立大学につきましても、教育研究設備の充実、在外研究員の派遣人員の増員等を行なうことといたしております。
第四は、学術の振興に関する経費であります。まず、重要基礎研究の推進をはかるため、大阪大学に溶接工学研究所を、全国共同利用の研究所として国文学研究資料館を、それぞれ創設するのをはじめ、本年度設置された高エネルギー物理学研究所の整備計画を進めるとともに、既設の研究所の整備につきましても所要の経費を計上することといたしております。このほか、南極地域観測事業、科学衛生及びロケット観測事業等について、引き続き拡充をはかっております。
また、科学研究費につきましては、百億円を計上し、すぐれた基礎的研究の一そうの進展を期しております。なお、学術の国際交流につきましても所要の経費を計上し充実をはかっております。
第五は、私学の振興に関する経費であります。まず、私立大学等の人件費を含む経常的経費の助成につきましては、専任教員給与費の補助の拡大をはじめ、新たに専任職員の給与費を補助対象に加える等、本年度に対して五二%増の約三百一億円を計上いたしました。
日本私学振興財団の貸し付け事業につきましては、政府出資金十億円を計上するとともに、財政投融資資金からの借り入れ金として百七十四億円余を確保いたしました。
なお、私立学校教職員共済組合の事業につきましては、長期給付の国庫補助率の引き上げ、既裁定の年金額の改訂等の措置を講ずることといたしております。
第六は、社会教育の振興に関する経費であります。社会教育の振興につきましては、まず、社会教育の指導層の充実をはかるため、新たに社会教育指導員を市町村に設置する経費を計上するとともに、引き続き社会教育主事等の養成、研修につとめることといたしました。
次に、社会教育施設の整備につきましては、公民館、図書館及び少年自然の家を重点として大幅な増額を行ない、これら三種の施設につきましては、本年度の約二倍の二十六億円余を計上いたしました。また、国立青年の家につきましては、第十一青年の家の新設を行なうとともに、第十二青年の家の設置準備調査費を計上することといたしております。このほか、博物館、青年の家等の整備を推進するため引き続き所要の経費を計上いたしました。
また、社会教育事業につきましては、社会教育の新課題の研究につとめるとともに、幼児のための家庭教育の推進をはかるため、新たに、はがき通信と巡回やテレビ放送による相談事業を行なうほか、視聴覚ライブラリー設備の充実等、視聴覚教材の利用促進並びに社会通信教育の普及、奨励につとめることといたしております。
第七は、体育・スポーツの振興に関する経費であります。体育・スポーツの普及振興につきましては、青少年をはじめ広く国民が日常生活の中で体育・スポーツを実践し、健康の増進と体力の向上をはかり得るよう、日常の生活圏域に体育・スポーツ施設を整備するほか、学校における体育施設の整備をはかるため、水泳プール、国民体育館、国民運動場及び柔剣道場を重点に体育施設整備費として三十五億円を計上し、大幅な増額をはかっております。また、これらの施設が積極的に利用されるようスポーツ教室の開設、一般社会における体育・スポーツの指導者の養成等を引き続き行なうこととするほか、スポーツ団体の助成等につきましても拡充することといたしております。なお、来年度はミュンヘンで第二十回オリンピック競技大会が開催されますので、選手団の派遣に要する経費等を計上いたしております。
第八は、芸術文化の振興と文化財保護の充実に関する経費であります。まず、芸術文化の振興につきましては、地方芸術文化の拠点となる文化会館の建設を促進するとともに、これらの施設を利用してすぐれた芸術文化を身近に亨受できるようにするため、青少年芸術劇場及び移動芸術祭の公演回数等を増加する等、地方芸術文化の振興をはかるのをはじめ、優秀映画の製作を促進するため、新たに優秀映画製作奨励金を計上するとともに、芸術関係団体の助成、芸術家の在外研修等の拡充をはかることとしたほか、新たに文化テレビ放送を実施するための経費を計上いたしました。また、第二国立劇場の設置につきましては、引き続き具体的な調査検討を進めることといたしました。
なお、国立の美術館、博物館における陳列品の購入、特別展の開催、施設の整備等につきましても所要の経費を計上することといたしております。
次に、文化財保護事業につきましては、まず、国立歴史民俗博物館の設置を促進するため、来年度は実質的な設置準備に要する経費を計上するとともに、地域住民の郷土の歴史と文化財に対する知識と理解を深めるため、地方歴史民俗資料館の補助館数を大幅に増加いたしました。また、飛鳥・藤原宮跡の保存整備を推進し、飛鳥資料館の完成をはかることとし、平城宮跡については、引き続き発掘調査と整備を実施するとともに、民有地の買い上げを進めることといたしました。さらに、最近の各種開発事業等の急激な進展に伴い、史跡等の買い上げ費を大幅に増額することといたしました。このほか、文化財の保存状況の実態を総合的に調査し、防災計画を緊急に策定する等のため、緊急総合調査を実施するとともに、国宝・重要文化財の買い上げ費を大幅に増加して美術品の海外への流出を防止し、国有化を促進する方途を講ずることといたしました。
なお、無形文化財の保護の強化につきましても重要無形文化財の保持者に支給する特別助成金を増額する等、所要の措置を講じております。
第九は、教育一文化の国際協力の拡大に関する経費であります。まず、教育、学術、文化の国際交流を促進するため、学者、文化人等の交流を推進するとともに、新たに日米の文化教育交流を促進するための所要の経費を計上するほか、日本語教育の海外普及につとめる等、文化の相互交流について配慮いたしております。
また、アジア・アフリカ諸国への教育協力につきましては、引き続き教育指導者の招致とわが国からの指導者の派遣等に要する経費の増額をはかることといたしました。
次に、外国人留学生の教育につきましては、国費外国人留学生の採用数の増員と給与の増額をはかり、私費留学生の医療費補助の対象を拡大するとともに、日本人及び日本に対する理解を深めるため、留学生が日本人家庭を訪問する制度を新たに設ける等、その拡充につとめることといたしております。なお、学生の国際交流に資するため、新たに国・公・私立の大学の学生を外国に派遣すを経費を計上いたしました。
次に、ユネスコ活動につきましては、本年七月、第三回世界成人教育会議が東京で開催されますので、これに要する経費を計上するとともに、アジア諸国の文化の交流と振興のため、ユネスコと協力して巡回講師団を引き続き現地へ派遣するほか、アジア諸国の文化の交流と振興のため、ユネスコ・アジア文化センター等の関係団体に対する助成を充実することといたしております。
また、国連国際大学につきましては、昨年暮れの国際連合総会において、国連国際大学設立の可能性について、さらに調査研究を継続し、本年秋の国際連合総会で審議することに決定されましたので、わが国といたしましては、引き続き国連・ユネスコが行なう調査研究に積極的に参加、協力することとし、これに必要な経費を計上することといたしました。
なお、海外子女に対する教育の充実を期するため、新たに通信教育事業を実施する等に必要な経費を計上することといたしました。
第十は、沖繩に関する経費であります。本年五月十五日をもって沖繩の本土復帰がいよいよ実現することとなりました。これに伴い本土復帰後において沖繩における教育の本土との格差をできる限りすみやかに解消し、教育条件の一そうの向上をはかるとともに、琉球大学を国立大学に移管するため、所要の経費を計上することといたしております。その予算額は、国立学校特別会計も含め百三十四億円となっております。このほか、総理府所管予算に文教関係経費として四十二億円が計上されておりまして、これを合わせますと、沖繩の文教関係予算総額は百七十七億円であります。
総理府所管にかかるものも含め、そのおもなものについて申し上げますと、まず、従来から実施してまいりました沖繩教職員の特別研修は、本土復帰後においても一定期間継続して実施することとし、また、学校給食用物資の無償供与につきましても、復帰後、一定期間、国において実施することといたしました。さらに、学校施設につきましては、本土との格差をできる限りすみやかに解消するため、積極的に整備することといたしております。
次に、琉球大学は、五つの学部と附属病院を持つ国立大学として整備することとし、また、国費沖繩学生の給与を継続するとともに、沖繩県の育英奨学基金の造成、私立大学の統合整備の促進に要する経費を計上することといたしております。なお、沖繩の復帰を記念して、沖繩に国立青年の家を新設するとともに、沖繩における文化の振興等についても配慮いたしております。
以上のほか、本土と同様な諸施策の遂行に遺漏のないよう留意するとともに、施設設備の補助率の引き上げを行なう等、所要の経費を計上することといたしております。
なお、とのほか、来年度の当初から沖繩が復帰する日までの間にかかる琉球政府に対する教育援助費は、総理府所管の予算として計上されております。
最後に、本年は明治五年の学制発布以来百年を迎えることとなりますので、記念式典をはじめ各種の記念事業を行なうこととし、来年度予算にこれに必要な経費を計上いたしました。
以上、文部省所管予算案につきまして、その概要を御説明申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106815077X00219720321/7
-
008・大松博文
○委員長(大松博文君) この際、おはかりいたします。
お手元に配付してあります昭和四十七年度文部省所管予算案概要補足説明につきましては、説明聴取を省略し、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106815077X00219720321/8
-
009・大松博文
○委員長(大松博文君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
以上をもって、昭和四十七年度における文教行政の重点施策及び文部省関係予算についての説明聴取を終わります。
本件に関する質疑は後日に行なうこととし、本日はこれにて散会いたします。
午前十時五十四分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106815077X00219720321/9
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。