1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年四月二十五日(木曜日)
午前十時三十二分開議
出席委員
委員長 野原 正勝君
理事 大野 明君 理事 斉藤滋与史君
理事 葉梨 信行君 理事 山口 敏夫君
理事 山下 徳夫君 理事 枝村 要作君
理事 川俣健二郎君 理事 石母田 達君
加藤 紘一君 瓦 力君
小林 正巳君 住 栄作君
田川 誠一君 田中 覚君
高橋 千寿君 戸井田三郎君
橋本龍太郎君 粟山 ひで君
大原 亨君 金子 みつ君
島本 虎三君 田口 一男君
田邊 誠君 中村 重光君
村山 富市君 森井 忠良君
山田 耻目君 山本 政弘君
田中美智子君 寺前 巖君
大橋 敏雄君 坂口 力君
小宮 武喜君 和田 耕作君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君
出席政府委員
内閣法制局第四
部長 別府 正夫君
内閣総理大臣官
房管理室長 伊藤 廣一君
厚生大臣官房審
議官 三浦 英夫君
厚生省援護局長 八木 哲夫君
委員外の出席者
外務省アジア局
外務参事官 大森 誠一君
厚生省社会局保
護課長 山崎 卓君
社会労働委員会
調査室長 濱中雄太郎君
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委員の異動
四月二十五日
辞任 補欠選任
村山 富市君 中村 重光君
山本 政弘君 山田 耻目君
小宮 武喜君 神田 大作君
同日
辞任 補欠選任
中村 重光君 村山 富市君
山田 耻目君 山本 政弘君
神田 大作君 小宮 武喜君
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本日の会議に付した案件
連合審査会開会に関する件
原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子
爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一
部を改正する法律案(内閣提出第二四号)
原子爆弾被爆者援護法案(大原亨君外十三名提
出、衆法第一四号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/0
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001・野原正勝
○野原委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案、大原亨君外十三名提出の原子爆弾被爆者援護法案の両案を議題とし、質疑を行ないます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。森井忠良君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/1
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002・森井忠良
○森井委員 私の場合は去る十一日の社会労働委員会の質問、審議の都合で中断をしておりまして、その続きをさせていただきたいと思うわけであります。
さっそくでありますが、わが衆議院社会労働委員長の野原先生から非常に貴重な資料をいただきました。この「にんげんをかえせ」という詩集でございます。野原委員長は、被爆者の援護の問題について非常に熱心にお考えをいただいておるようでありまして、何ものを贈っていただきましたよりもたいへんうれしゅうございます。ありがとうございました。
そこで若干、これは実態をかなり把握しておりますので、お持ちでありましょうが、御披露したいと思います。「ヒロシマの空」という題で、林幸子さんというかわいい子供さんが書いておられまして、読んでみますと、
夜 野宿して
やっと避難さきにたどりついたら
おとうちゃんだけしか いなかった
——おかあちゃんと ユウちゃんが
死んだよお……
八月の太陽は
前を流れる八幡川に反射して
父とわたしの泣く声を さえぎった
その あくる日
父は からの菓子箱をさげ
わたしは くわをかついで
ヒロシマの焼け跡へ
とぼとぼと あるいていった
やっとたどりついたヒロシマは
死人を焼くにおいにみちていた
それはサンマを焼くにおい
燃えさしの鉄橋を
よたよた渡るおとうちゃんとわたし
きのうよりもたくさんの死骸
真夏の熱気にさらされ
からだが ぼうちょうして
はみだす 内臓
うずまく腸
かすかな音をたてながら
どすぐろい きいろいしるが
鼻から 口から 耳から
目から とけて流れる
ああ あそこに土蔵の石がきがみえる
なつかしい わたしの家の跡
井戸の中に 燃えかけの木ぎれが
浮いていた
台所のあとに
おかまがころがり
六日の朝たべた
カボチャの代用食がこげついていた
茶わんのかけらがちらばっている
かわらの中へ くわをうちこむと
はねかえる
おとうちゃんはかわらのうえにしゃがむと
手でそれを のけはじめた
ぐったりした おとうちゃんは
かほそい声で指さした
わたしはくわをなげすてて
そこを掘る
陽にさらされて 熱くなったかわら
だまって
いっしんに掘りかえす父とわたし
ああ
おかあちゃんの骨だ
ああ ぎゅっとにぎりしめると
白い粉が 風に舞う
おかあちゃんの骨は 口に入れると
さみしい味がする
たえがたいかなしみが
のこされた父とわたしに襲いかかって
大きな声をあげながら
ふたりは 骨をひろう
菓子箱に入れた骨は
かさかさと 音をたてる
弟は おかあちゃんのすぐそばで
半分 骨になり
内臓が燃えきらないで
ころり と ころがっていた
その内臓に
フトンの綿がこびりついていた
——死んでしまいたい!
おとうちゃんは叫びながら
弟の内臓をだいて泣く
焼け跡には鉄管がつきあげ
噴水のようにふきあげる水が
あの時のこされた唯一の生命のように
太陽のひかりを浴びる
わたしは
ひびのはいった湯のみ茶わんに水をくむと
弟の内臓の前においた
父は
配給のカンパンをだした
わたしは
じっと 目をつむる
おとうちゃんは
生き埋めにされた
ふたりの声をききながら
どうしようもなかったのだ
それからしばらくして
無傷だったおとうちゃんのからだに
斑点がひろがってきた
生きる希望もないおとうちゃん
それでも
のこされる わたしがかわいそうだと
ほしくもないたべ物を のどにとおす
——ブドウが たべたいなあ
——キゥリで がまんしてね
それは九月一日の朝
わたしはキゥリをしぼり
お砂糖を入れて
ジュースをつくった
おとうちゃんは
生きかえったようだとわたしを見て
わらったけど
泣いているような
よわよわしい声
ふと、おとうちゃんは
虚空をみつめ
——風がひどい
あらしがくる……あらしが
といった
長くなりますのではしょらしていただくわけでありますが、これはその当時のなまなましい記録でございます。
私から申し上げるまでもなく、あの原爆は一瞬にして、放射能とともに数千万度の熱線あるいは爆風、あらゆるもので広島と長崎の三十万という大量の生命を奪ったわけであります。
先般の委員会で、私はこういった現実に基づきまして、ようやく野党四党で被爆者援護法というものをまとめて今国会に提案をいたしました。それに対しまして齋藤厚生大臣からは、野党四党案に対します評価はいかんという私の質問に対しまして、言うなれば、大ざっぱに申し上げますと、気持ちはわかるけれども、現在の時点では賛成できない、こういうふうにおっしゃっておられるわけであります。その結果、先般の委員会では、いままでの御答弁を繰り返されまして、言うなれば国際法違反のこの原子爆弾に対しまして、厚生大臣は国際法違反の問題については明確にされませんでしたけれども、いずれにいたしましても、そういった原子爆弾の問題について私が国家補償の精神を貫いてほしいという要求をしながら質問をしたわけでありますが、それに対しまして厚生大臣は、国家補償的なところもあるが社会保障的なところもある、言うなれば中間であるという御答弁があったわけであります。
ただ、私は、昨年の三月二十九日の本委員会におきまして、わが党の山田耻目議員から、やはり同じような援護法の問題について質問しておるわけでありますが、齋藤厚生大臣は、それに対しましてかなり前向きな答弁を一部なさっていらっしゃるわけでありまして、「人類の歴史において原爆が投下され、その洗礼を受けましたのは唯一、日本民族だけであります。」さらに、平和憲法を持つ日本として、まだこういった原爆の問題が処理をされておらないということについてはきわめて遺憾であるということも申されたあとで、「私はいまここでいつのときこの法律をつくりまして提案したいというお約束はできませんが、何とか援護法というふうなものができないであろうかということを前向きに検討さしていただきたい。それにはもうちょっと時間をかしていただきたいということを私は率直に申し上げまして、お答えといたしたいと思います。」と、こういう答弁が去年の三月二十九日の社会労働委員会で齋藤厚生大臣からなされておるわけであります。時間もたっておりますので、もうすでに一年経過しておりますわけでありますが、先般の委員会で私が申し上げました野党四党が、できれば自民党も一緒に出していただきたかったわけでありますが、いろいろの事情がありまして、とりあえず野党四党という形になっておるわけでありますが、昨年の齋藤厚生大臣のお気持ちとあわせて、再度援護法の問題について、先ほども読み上げましたようなあのかわいい子供さんの詩の実態から見ても、私は今回政府がお出しになったものだけではどうしてももの足りない。野党四党案の評価と、それから今度原爆二法の改正案をお出しになった政府の立場を、再度厚生大臣から虚心たんかいにお気持ちをお聞かせ願いたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/2
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003・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 森井委員が、被爆をされた子供さんの体験の話をされたわけでございますが、まさしく戦争というものは残酷であり、悲惨なものであり、特に原爆というものが、ほんとうに悲惨な被害を国民に与えた姿というものをなまなましく表現されたものでございまして、ほんとうに原爆というもののおそろしさというものを私もしみじみ痛感をいたしておるわけでございます。
そこで、今回野党四党の方々が、原子爆弾被爆者援護法案というものをお出しになられた、これはこれなりに評価をすべきであると私は考えております。しかし、この考え方は、先般の委員会においてもお答えいたしましたように、国家補償的、国家賠償的な考え方に立っておるわけでございまして、私どもの考えております法体系におきましては、国家賠償というのは国と身分的な何らかの関係があったもの、これを中心にして国家補償的な立法をする、こういう法体系のたてまえになっておるわけでございまして、原子爆弾の被爆者につきましては、社会保障の体系において、この援護の充実をはかっていこう、こういうふうに来たわけでございます。特に放射能被爆という特殊な医療を必要とする方々の援護でございますから、医療を中心にした今日までの措置がとられてきておることは御承知のとおりであります。そこで、私は従来から考えておるわけでございますが、国家賠償といったふうな身分的な関係はもちろんありませんから、そちらのほうに割り切っていくということはできない。しかし、私も先般の委員会で御答弁申し上げましたが、原子爆弾が投下されたのは、日本民族に対してが初めてであり、唯一であります。今後もないことを私は念願をいたしております。そういうふうなこともあり、さらにまた、日本が戦後、大戦に敗れて平和憲法を選択した、そしてまた今後とも平和に徹した国づくりにいそしんでいこうというふうな国の考え方、これはもう国民みな同じであります。国家の方向というものをより一そう明らかにするような意味合いにおいて、何かしら従来の社会保障的なもの、単なる医療ということではなしに、生活も援護していくといったふうな方向を目ざした立法措置がとられないであろうかということを私は考えてまいりましたが、やはり今日までのいろんな法体系等の問題等がございまして、いま直ちにそうしたものを立案するという段階に至っておりませんことは、率直にそういうふうに申し上げることができると私は思うのであります。しかしながら、私の気持ちというものは、医療を必要とする特殊性に立脚した従来の法律以外に、もっと生活保障的な面ということになりますと、そちらのほうに近づくわけでございましょうが、その生活保障的な面にもう少し充実した措置がとられないであろうかというところに力点を置いて、実は昭和四十九年度の予算においても特別手当というものを新設するというやり方にいたしたわけでございます。
すなわち、これはなるほど金額が少ないとか、対象の人数が少ないとか、私はいろいろ言い方があると思うのです。言い方はあると思いますが、従来の単なる医療援護のみといっては失礼ですが、そうしたものを中心とした援護の措置から一歩踏み出したものである、私は私なりに自分のやった今回の措置について、実は評価しているのです。これはもう率直に言って森井さんも評価していただけると私は思うのです。なるほどそれは皆さんのおっしゃるような国家賠償までいっていません。いっていませんが、従来の一つの考え方から一歩踏み出したものだ、こう私は考えているのです。そういうことで、私は今後ともそういう方向に向きながら、国家賠償といったふうな理念的なものだけではなしに、現実に生活をしておる被爆者の方々の生活というものを頭に描きながら、援護を前向きに進めていく、こういうふうなことが私は必要ではないかと思っておるわけでございます。
そういうふうな考え方で今回の法律というものができ上がったわけでございまして、いま直ちに皆さん方の野党四党の法律案に賛成かと言われれば、いまの段階では私は賛成いたしかねます。しかし、そのお気持ちは私も十分理解しておりますから、従来のような医療救済というワクだけではいきますまい、そういうことから一歩踏み出して、援護の充実をはかっていく、こういう方向に今後とも私は進んでいくべきである、こういうふうに考えておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/3
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004・森井忠良
○森井委員 そうすると大臣、今回特別手当を一部新設されまして、認定疾病治癒者に対して幾ばくかの特別手当を出す、これはおっしゃったように私どもも評価をいたします。しかし、ことばは悪うございますが、これはないよりいいという程度で、あの金額であなたがおっしゃったような生活保障的なものと明確に申し上げるにはまだいかない。これは評価はしながらも、率直に気持ちを申し上げておきたいと思うのです。
ただ、それよりもさらに私は大きく評価申し上げたいのは、いま大臣がおっしゃいました生活保障的なものに目的を向けたいというこの点ですね。先般の委員会でお出しになりました社会保障と国家補償の中間的であるけれども、私の解釈ではできるだけ国家補償に近づけたい、これもいま大臣の御答弁と考え合わせまして、私は前を向いておるというふうに思うわけです。したがって、今回の認定疾病治癒者の特別手当の新設という問題、評価は申し上げますが、これはやはり順次続いていくものの一つとして考えてよろしいかどうか、この点も大臣からお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/4
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005・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 原子爆弾被爆者の援護については、年々歳々努力をいたしておりまして、私は、今回提案をいたしました法律に定めた援護ですべて終わりというふうな考えはごうも持っておりません。いま私があなたに申し上げましたような、何かしら第三の、第三のと言ってはあれですが、中間的なものがあってしかるべきではないかといったふうな考え方で、今後とも援護の充実のためにはこれを起点としてさらに努力をいたしてまいりたい、こういうことをはっきりお約束申し上げることができます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/5
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006・森井忠良
○森井委員 前向きな御答弁でありますが、そうすると、具体的に、今後認定疾病治癒者の特別手当については、何回も申し上げますように評価を申し上げますが、それ以外にどういうものが考えられますか。順番をつけていくとすればどういうものがあるのか、明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/6
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007・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 これは、いますぐ順番といいましても、四十九年度の予算に伴う法律案を御審議いただいておるわけでございまして、五十年度、五十年度以降の計画的な段階的な改善の方針をいま言えといわれても困ります。しかし、私は個人的に申しますと、これは個人的なことを言うていいのかどうか疑問もありますが、たとえば特別手当が七千五百円。ないよりあったほうがいい程度のものだなんておっしゃるけれども、しかしそうはいうけれども、これだけの窓口を開くというのはたいへんなんですよ。それはやはり一つの考えに基づいてやるのですから、ひとつないよりはましだ程度だなんていわないで、もっと評価していただきたいのです。やはり皆さん方のおっしゃることが国民に大きな影響を持つのですから、率直に高く評価してもらいたいくらいに思っているのです。あまり評価なさいませんが、特別手当の額の問題とかあるいは範囲の問題とか、いろいろありますよ。だけれども、どっちを先に順番をきめてやるかと言われれば、きょうの段階では申し上げることはできません、ごう言わざるを得ないと思います。しかし私のこの前の答弁以来、森井委員十分私の気持ちはわかっていただけると思っていますから、私はこれのみをもって終わりとしない、これだけで満足だとは思っていません。今後ともそういうふうな額の問題もありましょう、あるいは範囲の問題もありましょう。そして、徐々に私の言う生活援護的なものの方向に向けるように努力をしていかなければならぬのじゃないか、こう思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/7
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008・森井忠良
○森井委員 きりで壁に穴をあけますと、最初は小さいのですけれども、回しておるうちにだんだん大きな穴になっていくわけですね。大臣の答弁は、いまの認定疾病治癒者の特別手当の新設については、私はそういうふうに理解をしたいと思うわけです。なるほどいまは医療法なり特別措置法の改正案をお出しになっていらっしゃるわけですから、厚生大臣としては、いまの時点ではあの原爆二法がもう最善のものである——最善とは申し上げませんけれども、いまの時点では最良のものであるという考え方でお出しになっておられる。しかし一方において、そういうふうにこれから前向きに取り組みたいということを考えあわせますと——どういうものが考えられるか、順番をつけなさいというのは少し質問がむずかしゅうございましたけれども、私ども野党で、いままで政府がお出しになったものに賛成とか反対とかいう形で処理するのじゃなくて、具体的な御提案を申し上げておるわけです。しかも齋藤大臣は克明に御検討くださいまして、先ほどの御答弁で、あの野党四党案についてとるべきものもあるなと、私はそういうふうに理解をしますと、一つのサンプルを私ども社会党だけじゃなくて、いまのところ野党四党で出しましたけれども、ある意味で中身をもうちょっと自民党の皆さんとも御相談をして、できれば自由民主党の皆さんにも御賛同いただいて、よりいいものにしていこうという考え方もあるわけであります。そういたしますと、将来の展望としては、いまは認定疾病治癒者の特別手当の新設という形にとどまりますけれども、大臣の御答弁、御説明のありましたように、生活保障的なものに広げていきたいというお考え方からすれば、野党四党案というものは、おっしゃいましたようにいまの時点では無理かもしれませんけれども、ごく近いうちに——具体的に遺族援護の問題も含めまして私ども出しておるわけでありますから、あるいはそれぞれの手当の拡充、あるいは被爆者の年金の問題、具体的に項目をあげて私ども野党四党は出しておるわけでありますから、それを重要な参考にして、先ほどおっしゃいました生活保障的なものを広げていくというお考えがあるかどうか、この点大臣からお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/8
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009・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 野党四党の御提案については、それなりの評価をせらるべきであるということを私は初めに申し上げておるわけでございますから、私どもが将来のいろいろな施策をいたすときに、表現のしかたなどはいろいろあるにしましても、皆さん方の御意見は十分承り、貴重な御意見として、参考といいますか、もっと強く、努力の目標として進んでいくべきものがたくさんあると思います。全部を全部やるというわけにはまいらぬと私は思います。特に念のために申しますと、遺族の問題などは、これはなかなかたいへんです。現在生活しておられる方々が中心になると思いますが、皆さん方の御提案になっておりまするいろいろな項目につきましては十分理解をし、尊重をいたしてまいりたい、こういう考え方に変わりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/9
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010・森井忠良
○森井委員 しつこいようでありますけれども、これは齋藤厚生大臣がおっしゃいましたように、去年よりはことしが確かに政府の態度も進んでおるのです。これは万人の認めるところです。ただ私どもと評価はかなり違いますけれども、政府なりの努力をしていらっしゃることについては、私は万々認めておるわけです。
そこで、そうするとことしよりもまた来年の進歩がほしい。これは人間でありますから、また、あれだけ全国で呻吟をしていらっしゃいます被爆者の皆さんや遺族の皆さんが、もう昭和三十四年以来ずっと叫び続けておられましたこの被爆者援護の問題でありますから、したがって、ことしよりはさらに来年が進むもの、こういうふうに理解をしたいと思いますし、厚生省としてもさらに前向きに取り組んでいただきたいと思うわけでありますが、この点については、大臣、確認をしてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/10
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011・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 こういう社会福祉ということは退歩を許されない、すべて前進を目ざして進んでいくべきものであることは、私が申し上げるまでもございませんから、去年よりはことし、ことしより来年というふうに充実のために努力する、これはもう当然のことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/11
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012・森井忠良
○森井委員 これは衆議院の社会労働委員会の速記録です。万々間違いはないと思いますが、去年の三月二十九日に、これもくどいようで恐縮でありますがもう一度言わしていただきたいと思うのでありますが、「私はいまここでいつのときこの法律をつくりまして提案したいというお約束はできませんが、何とか援護法というふうなものができないであろうかということを前向きに検討さしていただきたい。」こうおっしゃっておられます。いまの大臣の答弁とあわせまして、来年度以降さらに被爆者の援護措置というものが前に進む、その場合一つのサンプルとして——いま具体的のほかの提案がないわけでありますから、野党四党が出したものです。これはもちろん被爆者の団体の皆さんの意見も十分取り入れて国会に提出をしたものでありますけれども、いま日本の中に被爆者援護で進んだものとすれば——まあ、進んだものというのはまた大臣ひっかかるかと思いますけれども、具体的に厚生省から出しておられます原爆二法に対しまして対案としてお示しをしておりますものは、私ども野党四党案だけなんです。そうしますと、いま申し上げましたような経緯から、ほんとうにそういう意味で来年度以降前向きに取り組んでいただくというふうに理解をしてよろしいかどうか、再度、くどいようでございますけれども、御答弁を願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/12
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013・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 原子爆弾被爆者の援護についてはできるだけの充実をはかっていかなければならない。しかもまた、そういう方向は、単に従来のような医療だけでとどまっていいのかどうかというところにいろいろな問題があるということは、たびたび私申し上げているとおりでございます。そういう面において私は、先ほどもお答えいたしましたが、皆さん方の御提案になっておりまする法案というものは十分尊重いたしたいと思います。その中にはできないものがあります、はっきり申しまして。できないものもありますが、十分尊重しながら、被爆者の生活の実態に即した援護の充実に——まあ前向きというのは当然のことなんでございます。うしろ向きの前進なんというものはないのですから、私はあくまでも前向きに前進を続けてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/13
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014・森井忠良
○森井委員 事務当局にお伺いするわけですけれども、先ほど齋藤厚生大臣の御答弁にありました軍人軍属、国家と雇用関係にあった者、おそらくこれ以外に国家が強制をした者というのが当然入るのだろうと思うのでありますが——そうですね。この該当者は全国でいま何名くらいですか。大ざっぱでよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/14
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015・三浦英夫
○三浦政府委員 援護局の所管でございまして、あとで援護局から数字をとりまして御答弁さしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/15
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016・森井忠良
○森井委員 何百何十何名というところまでいいませんけれども、常識としてわかりませんか。私どもも常識程度のことは知っておるわけでありますが、一応厚生省の公衆衛生局長代理が知らないというのはおかしいじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/16
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017・三浦英夫
○三浦政府委員 援護法関係で障害年金関係が五千七百名、遺族年金が十一万七千名であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/17
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018・森井忠良
○森井委員 ちょっと私の言い方が悪かったのかな。悪くはないと思うのですけれども、軍人軍属、準軍属、これも国家補償で現在援護されておるわけでありますから、その対象者は何名かと言っておるわけです。(「援護局でないとわからぬよ。」と呼ぶ者あり)援護局という話がありますが、私はやはり被爆者援護のことを考えるなら、これは常識ですよ。私も援護局に聞かなければ正確な数字がわからないということくらいわかりますけれども、まああとでいいです。やむを得ません。
そこで、ぼくは大臣の答弁にひっかかるわけでありますが、遺族は別ですよ、とおっしゃるわけですね。これは、そうですかと引き下がるわけにいかない。先般の委員会でも申し上げましたけれども、今度の戦傷病者戦没者遺族等援護法で警防団、医療従事者等が出ました。これは国家補償だ、こうおっしゃるわけです。これは議論を蒸し返しませんけれども、厚生大臣、少なくともあの戦時の状態からいけば、これは単に広島、長崎の人だけでなくて、やっぱりなぜ軍人軍属を優先しなければならないのか。これは憤りを込めたいま声になっておるわけです。逆にいえば、あの人たちは、警防団、医療従事者というのは別にしまして、軍人とか軍属というのは、もともとこれは戦争その他に従事するのがむしろ職業なんですね、早くいえば。そういう人たちにうんと厚い国家補償の援護をしておられて、実質的にはもう、私はあえて議論を蒸し返しませんけれども、あの戦争中の諸立法、そういうものから見ると、もう戦闘員と非戦闘員との区別は、あの終戦直前の日本が旗色が悪くなったころには、差はほとんどなくなっておるわけですね。何らかの形で国家の強制措置がある。これはもう私はこの委員会で時間がありませんから申し上げられませんけれども、もう一億国民総員が全部この戦闘に参加をするという形の法制になっておる。これをあなた方も認めていらっしゃるじゃありませんか。今回その部分のうちの一つであります警防団、医療従事者がかろうじて準軍属並みに扱っていただいた、こういうことなんです。しかし、国民感情としては、先ほど申し上げましたようなプロの軍人も含めまして、そういったむしろ戦闘に、ことばが悪うございますけれども、従事をするのが仕事であった皆さんには援護の手が厚くて、一般国民を言うなれば強制的にこの戦争に巻き込んだ、事実巻き込まれたわけでありますが、そういった人たちに援護の手を差し伸べないという基本的な考え方が私は問題だと思う(「そうだ。」と呼ぶ者あり)いま自民党からもそうだとおっしゃっていただきましたけれども、私はこのことは非常に大事だと思う。なぜ遺族が援護できないのか、お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/18
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019・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 過ぐる大戦において被災を受けましたのは、ある意味からいえばすべての国民であったと思います。身分関係があろうがなかろうが、すべての国民が被災を受けておったということは事実でございます。
そこで、皆さん方がお述べになります原爆の被害者の遺族ということになりますと、そのほかにも一般国民の被災者というのはたくさんあるわけであります。一般の国民も戦争によって、たとえば東京においても三月十日の大空襲によって数十万の人がなくなりました。そういう一般国民の被災者との関係とかいろいろな問題を考えなければなりません。一がいにこの人たちに、この原爆の被爆者に対してとこういうだけでは問題が解決しない。こういう一般被災者というものも頭に描いて考えなければならぬ問題でございまして、いま直ちにこの問題についてだけ遺族の援護をしなければならない、こういうことになるかどうか、これは私は非常に問題があると思います。ただ、そういう問題もありますが、私はこの原子爆弾被爆者でいま非常に生活に苦しんでおられる人々の生活を何とかしなければならないということで、従来の一般被災者と同じようにまたされたのでは問題の解決できませんから、何とか別の道をあけることができないだろうか、実はこういうことで苦労しているのです。そういうわけで、いま直ちに、一般戦災者と同じように考えられがちである遺族の問題を取り上げるということは非常に困難であるということを私ははっきり申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/19
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020・森井忠良
○森井委員 原爆被爆者の援護法を議論するとき必ず出てくるのが一般戦災者との関係なんですよ。これはもう過去ずっとそういう議論がされておるわけですね。そこで私は先ほど数字を聞いたのですよ。お答えがありませんでしたけれども、軍人軍属、準軍属含めましても、多くておそらく二百数十万じゃないでしょうか。原爆と一般戦災者合わせましても、せいぜい五十万ぐらいじゃないでしょうか。おそらく厚生省がいままで本委員会等で明らかにされたのはせいぜい四、五十万ですよ。片や軍人軍属、準軍属というのは二百数十万。しかも一般戦災者並びに原爆被爆者、この比率も、五十万とすれば、おそらくそのうちの三十万が原爆、一般戦災者二十万なんです。もう一度申し上げますが、軍人軍属というのは二百数十万いる。もうこの際私は、そういった一般戦災者との関係をお考えになる必要はないと思う。特にこの原爆の問題については、原爆二法がありますように、これは原子爆弾の放射能によって特殊な状態にあるということが法律に書いてあるわけですね。したがって、これを先行させるのは当然だ、こういうように考えるわけです。
厚生省として、そういった点についても十分把握をされて、来年度以降必ず被爆者援護法をおつくりになるように強く要求いたしまして、私の与えられました時間が超過をいたしましたので、たくさん質問したいことはございますけれども、一応終わらしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/20
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021・野原正勝
○野原委員長 中村重光君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/21
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022・中村重光
○中村(重)委員 いま森井委員の質問に対して大臣はお答えになっておられたのですが、被爆者に対する対策については手帳の一本化と制度的な問題を含めまして、歴代大臣が進めてきた施策と比較をいたしまして、確かに私は齋藤邦吉大臣の被爆者に対する取り組みは前進的なものがあるということを率直に評価をいたしたいと思うのです。ですけれども、被爆者援護という問題については、大臣、原理的な上に立った対策をやはり考えていくのでなければ、根本的な被爆者対策ということにならないのじゃないでしょうか。戦傷病者戦没者遺族等援護法が国家補償の原理に立っているわけですね。それにもかかわらず、被爆者援護というものが社会保障の上に立った対策ということでは、私は片手落ちというのか、不十分な点があるという感じを常に持っているわけですが、その点大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/22
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023・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 これはもうたびたびお答え申し上げておりまするように、原爆の被爆者というのは国家に対して当時何の身分的な関係というものを持っているわけではありません。一般の戦災者と同じ立場にあるわけでございます。ただ一方は焼夷爆弾によって死に、一方は原爆によってなくなられた、こういうことであろうと思います。そういうふうなことでありますが、原爆の被害者につきましては特殊な医療を施さなければならない、こういうふうなことがあり、その必要があり、そうしたことで医療を中心に援護というものがそちらのほうが進んでまいっておるわけであることは御承知のとおりであります。しかし、私は国家補償的な援護ということを表に振りかざしての議論になりますと、一般被災者とどう違うのだ、こういうまた議論が出てくるわけなんであります。
そこで、私はそういうことをいま議論することなく、現実いま原爆被爆者として苦しんでおられる方々、現におるのですから、その人たちの生活を考えたときに、医療だけで十分であろうか、もう少し生活のほうに向いての援護の措置を講ずる必要があるのではないか、ですから、国家補償的なものと社会保障的なものとの中間的な措置が何かないであろうか、そういうふうな意味合いにおいての援護に関する立法というものができないであろうかということを私は終始主張し続けてまいりました。そういう考え方から一歩でも踏み出そうではないか、まあこれは中村委員に評価されたようでございますが、私はこれほんとうに評価していただけると思うのです。私は、ことしはそういう方向に向いた非常に大きな第一歩であったと思うのです。
そこで、これについても額が少ないの、範囲が狭いの、いろいろ意見のあること私は承知しておりますよ。承知しております。しかしそういう方向に向こうではないかという一石を投じた、私はそう思うのです。でございますから、私としては率直に言いますと、原理原則的なことにあまりとらわれないで、国家賠償とか社会保障とかあまり言わぬでも現実の生活の実態、そういうものを頭に描きながら前進を続けていき、その原爆被爆者の援護の充実をはかる、それがやはりしあわせではないか、そういうことを一歩一歩積み重ねていって、そして最後になって、ああこの辺ならもう援護という名前をつけていいかなということになれば、そのときに援護法ができましょう。しかし私としてはあくまでも原理原則的なことをあまりこだわらないで、現実の原爆被爆者の生活の実態にふさわしいような何か援護の充実をはかっていく、そういう方面に私は力を入れたほうがいいんじゃないかと思うのです。原理原則でいえば、これはやはり社会保障のワクを出ることはできません、こう言わざるを得ないです、これは戦災者との比較対照を考えてみれば。だからあまりそういうことを言わないで、何かしら私はその中間的なものと言っているのは、私は含みのある表現ではないかと自分で考えておるわけでございます。
でございますから、私は今後とも生活のほうに目を向いたような方向に、いままでの原爆被爆者の援護の向きを変えていくということがやはり必要ではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/23
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024・中村重光
○中村(重)委員 原理原則ということも私は大切であると思います。ですけれども、大臣お答えのように、こだわる中身が国家補償の精神に沿ったような形が進められている。大臣がいま中間的というようなことでお答えがあったわけですが、そういう中身が確かにこれは国家補償的な上に立った対策であるというように理解されるような内容であると、私は何もそうこだわる必要もないと思います。しかし、どうしても社会保障の原理の上に立った対策であるがために、幾多の制約というものが私は免れないんだというように思っているわけです。
それから大臣が、これは冒頭お答えになりました被爆者援護対策が、一般戦災者と同じような考え方の上に立っているというお答えがあった、これがすなわち制約が加えられている原理といえば私は原理ということになっているのではないかというように思います。
いまさら申し上げたくもありませんけれども、原子爆弾というのが国際法に許されていない兵器を使って大量殺戮をやった、それに対して講和条約によってアメリカがその賠償を免れた。しかし、これは被爆者と相談をして権利の放棄をやっているのではない、政府がやった。ならば、やはり政府は当然その被害者に対して補償していくという私は義務というものがあるのだという考え方の上に立っているわけです。
それから、一般戦災者と区別されなければならないと考えます点は、大臣御承知のとおり強い熱線、爆風それから永続的な放射能障害というものがある。瞬時にして都市が崩壊してしまう。それから財産の喪失、労働する場所を失ってしまう。こういったことは一般戦災者の場合は考えられない。原子爆弾の被爆者なるがゆえに、このような異なった特殊な災害をこうむっておるということを考えてみますと、国際法に許されていない兵器でもって殺戮をされたというこの事実とあわせて、一般戦災者と同一視した対策ということを考えることは間違いではないかというように考えますが、その点はどのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/24
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025・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 これはもう中村委員お述べになりましたことは、私は十分理解をしてお答えを申し上げ、政府の施策もそのような考え方によるものでございます。
すなわち、原爆という非常に熱線の高い爆弾であり、国際法的にも問題がある。さらにまた、そのあとの医療においても放射能の被曝を受けて特殊な医療をしなければならない、これはもう私十分理解しているのです。そのとおりだと思っています。でありますからこそ、従来とも医療については特別な援護法をしなければならぬ、こうなってきたわけなんです。
しかし、そういうふうな特殊な被害を受けられた方々でありますから、それだけで満足すべきものではあるまい。やはり生活も十分に考えてみるという方向に徐々に向きを変えていくべきではないか、こう私は申し上げておるわけでございまして、中村委員のお述べになりましたことについては、私は十分理解をいたしておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/25
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026・中村重光
○中村(重)委員 私もあなたの被爆者対策というものが前進した点を評価し、あなたも私の主張をお認めになったということになってくると、中身が大体一致した、あまり意見が異ならないような形ですね。その中身というものが充実されなければならないというように考えるわけですから、大臣としては、今後十分その点に対するいまのお答えの上に立った対策を強力に進めていただきたい。
予算の問題についても、昭和四十八年度が百三十三億、昭和四十九年度の予算が百五十五億ですが、これは一六%の伸びにすぎないということですから、やはり予算の伸びにいたしましても、大臣がいまお答えになりましたような中身を盛り込んでいくということになってまいりますと、もっと大幅な予算というものを組んで対策を講じていくという必要があろうということを私は意見として申し上げておきたいと思います。
具体的な問題について見解をただしたいのですが、認定被爆者ですね、これが御承知のとおり減る一方ですね。医療審議会の審議がきびしいのか、なるべく認定被爆者をふやすまいという考え方の上に立っているのではないかというようにすら私どもは考えるわけです。認定ワクの緩和というのか、撤廃ということをお考えになる必要があるのではないかというように考えますが、この点は事務当局からでけっこうですからお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/26
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027・三浦英夫
○三浦政府委員 御承知のとおり、現在認定被爆者につきましては原爆の審議会で認定をしております。その認定率は八七%くらいになっておりまして、出てきたものは全部御審査することにしておりますから、私どものほうでそれを差し控えるとか、そういうことはございません。かなりの方が認定になっておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/27
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028・中村重光
○中村(重)委員 だから、あなた方はそういう形式的なことばかりお答えになるのですよ。厚生省の一つの方針というやつがあるのだね、その方針は医療審議会の上に影響を及ぼしてきている。だから、そういう書類が提出されない、そういう制約を加えている。だから、その書類が上がってこない。しかし、その方針を変更される、緩和されるということになってくると、認定被爆者としての申請がどんどん上がってくる、こういうことになるわけですから、中身について考えていく。そうして答弁もそういう形式的でなくて、私の質問の趣旨というものを十分理解した上に立ってお答えをいただきたい。
それから認定被爆者というのは、これは法律によって医療費はただになっている。しかし認定被爆者に対して国民健康保険等に入っていなければ医療の交付をしないということになってくると、これはただじゃない。なぜにそういうことをおやりになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/28
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029・三浦英夫
○三浦政府委員 まず、認定患者さんの問題でございますけれども、認定患者さんが年齢がだんだん高年齢化してきます。それに伴いまして、疾病構造等も変化してまいりますので、原爆審議会の審議態度といたしましても、たとえばそれに相応したような疾病の範囲を広げて審査しているような次第でございまして、八七%と申しましても、質におきましてはかなり従来の疾病よりは前進を立ているようなつもりでございます。
ただ、それはそれといたしまして、中村先生の御指摘のように、原爆審議会におきまして、そういう年齢層の移行とかあるいは疾病構造の変化に伴いました審査については、さらに前進した対策で臨んでみたいと思っておる次第でございます。
第二点の認定患者の医療費でございますが、御承知のとおり、認定患者の医療費が全額公費負担になりますのは、原爆疾病に限られております。原爆疾病以外の、たとえば、極端な例で申しますと、交通事故であるとかあるいは一般的な疾病につきましては、御承知のとおり、現在の法律制度では、やはり保険を優先をさせまして、保険で支払えない自己負担の分を公費で負担をする、こういう仕組みがとられておる次第でございます。したがいまして、認定患者さんでも、原爆症以外の疾病におかかりになりましたときには、やはり保険が適用になってくる。こういうたてまえになっておりますから、そういうたてまえから申しましても、やはり国民健康保険あるいは一般の健康保険等に加入されるのが当然ではないかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/29
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030・中村重光
○中村(重)委員 そういうたてまえ論を言っているのではなくて、認定被爆者がその認定によった疾病によって治療を受けるという場合は、原爆の手帳だけを持っていっても治療しない。国民健康保険なら国民健康保険に入った手帳を持っていらっしゃい、二つ合わせなければ医療の交付はいたしませんよということだったら、いまあなたが答弁するようなことにならない。そういうことをやっているから、そういうことがないようにしなければいけないということを申し上げるわけです。これは調査をされて、そして実態をお調べの上お答え願いたい。具体的な事実を私は指摘して、質問をしているわけです。長崎の被爆者の遺族会の会長である杉本という方がおられる。この人が、私がいま申し上げたようなことで、両方の手帳を要求されているという事実がありますから、お調べをいただきたい。
それから、これは大臣からお答えいただきたいのですが、被爆地の復元調査をやられた方々が痛切に感じて言われることは、二キロ以内で被爆をした方々、これは放射能におかされているという人たちが非常に多い。それから健康が非常に弱っている。かぜ引きその他、すぐ病気にかかりやすいということですね。体力が非常に弱くなっていますから、結局それに伴って仕事をする力、生活力というものも低下をしていくという事実があるわけです。
それから、二キロ以内でなくなった方々を中心にして、やはり感じられておることで、被爆者で今日まで三十万もの人たちがなくなった、線香一本もあげていないというこの扱いというものは、非常に冷たいのではないか。国は、弔慰金の支給等をなぜにやらないのであろうかというようなことが、被爆者から悲痛の声としてあがってきている。このことを考えてみますと、二キロ以内で被爆をした方々に対しては、私は認定制度ということを撤廃しないならば、認定被爆者としてこれを認定するということが必要ではないかということが一点。もう一つは、当時なくなった被爆者の方々に対しましては、弔慰金というものを当然支給をしていくということが考えられなければいけないのではないか、そのように考えますが、その二点に対しては、大臣、どのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/30
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031・三浦英夫
○三浦政府委員 まず、距離の問題でございますけれども、確かに先生御指摘のとおり、原爆の被爆地の中心から距離の近い方ほど被曝が多い、それも距離の自乗に比例するということをいわれております。そういう観点からいたしまして、原爆の認定患者さんを認定する際には、そのほかの疫学的調査もございますし、さらにその距離という点につきましては、非常に着目をしてやっております。たとえば従来長崎が一・六キロ、広島が一・三キロでございますか、百ラドの基準がそういうことでいわれておりましたし、あるいは先生御指摘のような二キロということも、特別被爆者の対策等につきましては、距離というものは重点を置いてやっておりますが、ただ距離のその中におられる方々が全部疾病をお持ちになっているという医学的な関係ということにつきましては、なかなか証明がつきにくい。距離の近い方ほど、たとえば白血病とかその他肝臓等の障害の多い方は見受けられますけれども、そういう二キロ以内の方が全部疾病におかかりになるということの医学的な関係の証明は、なかなかつきにくいような状態でございます。ただ、そういう関係がございますが、私ども原爆の運用にあたりましては、距離ということに着目をした運用審査をやっております。しかし、距離が近いから一律に手当を支給するとかどうかということについては、いま申し上げた観点からいかがかと思っておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/31
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032・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 距離の地域の拡大については、そういうことを望んでおられる御意見のあることも、私十分承知をいたしております。そこでこういう問題につきましては、今後とも各方面の意見も十分聞きながら対処していく、こういうふうにいたしたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/32
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033・中村重光
○中村(重)委員 三浦審議官、被爆者の特別被爆手帳を交付する地域、二キロから三キロ、そしてまた特別の地域、さらにこれを拡大をしていく。それから健康診断地域として、また特別の地域を指定していくというように、やはり距離というようなものも被爆者対策として重点を置いてやってきたことは、あなたお認めになると思う。ならば、認定被爆者の制度というのがあるんだから、二キロ以内で被爆をした人たちが、私が指摘をした、またあなたがお認めになったような事実があるんだから、二キロ以内で被爆をした人たちに対しては、原則として認定被爆者としてこれを遇する。そして具体的な被爆の医療等に対しては、これは特別手当を支給をするという慣例もあるわけでありますから、そういったようなことと、具体的な医療を行なう、こういう場合はいまあなたがお答えになりましたように、これをはずしていく、手当の支給をはずすといったようなこともあるでしょう。ですけれども、一応二キロ以内の被爆者というものは、認定被爆者のワクの中に入れるんだ、そういったようなことを当然配慮していくということが私は筋ではないかというように思います。先ほど申し上げたように、特別被爆地域というようなことを拡大をしてきたということは、やはり距離というものを相当重視したということは事実でありますから、その同じような線の上に立って考えていくということはあたりまえじゃありませんか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/33
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034・三浦英夫
○三浦政府委員 先ほども申し上げましたとおり、私どもの行政運用といたしまして距離ということは、一番重点の着目として、審議会その他認定等は当たっておる次第でございます。御指摘のとおり、今度はなくなりますけれども、特別被爆者が距離が二キロから三キロに延びた。二キロということが非常な一つの要素であるということも、十分検討に入れております。したがいまして、最近における原爆審議会の認定患者等の認定にあたりましては、二キロということは一つの重要な要素として認定に当たってきたような次第でございますし、今後ともそういう心がまえでは臨むつもりでおる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/34
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035・中村重光
○中村(重)委員 距離は、審議会の審議の際に一つの要素になっている、いまのお答えの中からそのようにうかがえる。だから私が申し上げたように、二キロ以内の近距離被爆者というのは、原則として認定被爆者として考えていく。具体的な医療の交付にあたっては、それに基づくところの特別手当等の支給にあたっては、その具体的な事実の上に立って処理していく。原則として二キロ以内の近距離被爆者を認定被爆者とするということについては、それではそのような考え方であると理解をしてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/35
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036・三浦英夫
○三浦政府委員 先ほども申し上げましたとおり、距離の近い方々につきましては、たとえば白血病であるとか肝臓というような原爆に直接起因する疾病の方が多いということは、事実でございます。ただ、たとえば二キロ以内の方がすべてそうなるということではなくて、医学的には、距離の近い方であっても、原爆疾病にかからないという方もたくさんおられるようでございます。したがいまして、二キロ以内におられる方を全部認定患者さんにするということにつきましては、いかがかと思う次第でございますが、ただ先ほどから申し上げますように、原爆に起因する疾病にかかっておられる方で、二キロ以内に住んでおられる方々が認定を申請された場合には、やはり距離というものは非常に重要な要素として勘案をして認定をしていきます。こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/36
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037・中村重光
○中村(重)委員 時間がないからこれ以上申し上げませんけれども、原則として近距離被爆者というものは、認定の大きな要素であるというようにお答えになる。ですけれども、医療審議会の審議というのが非常にむずかしい。認定被爆者というのが年々減ってきているという事実が証明しておるということです。ですから私が申し上げたように、二キロ以内の被爆者というものの放射能におかされた原爆障害が非常に多いということをお認めになるならば、審議会の認定にあたっては、もう少し勘案をしていくということを同時に行なわなければ、距離は重視しておりますとお答えになりましても、単なる答弁に終わるのだということを申し上げておきます。
それから、地域制限の廃止の問題ですが、毎年毎年少しずつ地域を広げていくというやり方、これでは厚生省として大蔵省との予算折衝の場合だってお困りになるだろうと私思うのですね。だからして、一つの爆心地から円なら円を描いて、そういうところは一応厚生省が進んで全部検討して、大幅に地域の制限を拡大をしなければならないという点は、これは思い切って拡大をしていく。できるだけ地域を拡大すまい拡大すまいとして、何というか少しずつ地域を拡大していくといういまのあり方は適当ではない。今度の長崎県の場合におきましては、健康診断地域というので長与、時津という二つの町を、拡大というか健康診断地域としてお認めになった。ところが一つの行政区域であるところの長崎市が、たとえば東長崎市であるとかあるいは福田町であるとか式見町であるとかいうのが、もっと距離が近いのにもかかわらず、今日までこれが認められていないという事実がある。だからして、一つの方針をお出しになって、爆心地から円を描く。したがって、一挙に地域を拡大しなければならないとするならば、地域を拡大をして、いまのような無原則なやり方をやらない、そういうことが必要ではないか。少なくとも一つの行政区域といったようなものは、これはその地域を拡大をしていくということは当然でありますが、そういう基本的な方針、また具体的なことについて長崎市の例を私はあげてまいりましたが、広島も同じであります。その点についてはどのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/37
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038・三浦英夫
○三浦政府委員 今回御審議を願っております法律の内容に、従来からの特別被爆者と一般被爆者の区別をなくしまして、いわゆる手帳の一本化ということの御審議をお願いしている次第でございます。本来であれば、特別地域の拡大につきまして特別被爆者とか一般被爆者というようなことの、先生御指摘のような小出しの改善をはかってきたわけでございますが、もうこの際、大臣からの御命令もございまして、そんなちょびちょびとした拡大をやるなということで、いわゆる手帳の一本化に踏み切った次第でございます。ただ手帳の一本化に踏み切りまして、全部被爆者として取り扱ってみましたところが、やはり先生おっしゃるような多少のアンバランスの地域がある、そういうところから健康診断地域と称すべきものを新たに設けまして、今度政令で二カ町村を指定することにしております。
ただ御指摘のとおり、これだけで十分かどうかということになりますと、私どものほうも必ずしもそれは十分とは申せない点がございます。そういう関係から、本年度は長崎県及び広島県に依頼いたしまして、もう一ぺんアンバランスの是正について検討してみてください。そうしてその結果、必要があればさらに健康診断地域を拡大するとかいうふうなことをするというようなことで、とにかく昭和四十九年度におきまして長崎、広島両県でアンバランスがあるかどうかということについて調査をすることになっておりますので、その結果を待ちたいと思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/38
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039・中村重光
○中村(重)委員 それじゃアンバランスの是正をするということは、いまの答弁として確認をいたします。具体的な事実として申し上げましたように、広島も私はあると思います、はっきりアンバランスとして認められるものが。長崎県の場合におきましても、先ほど触れましたように長与町であるとか時津町という爆心地から相当距離の遠いところが健康診断地域として入ってきた。同じ行政区域である長崎市の中で、東長崎町、福田町、式見町、こういったところが入ってないということは、これは明らかにアンバランスとして認められるところなんです。こういうところは直していくということでなければならない。同時に、また田上町等々からも申請が出ているわけであります。五十年度は、そのアンバランスを直してしまうということを確実に実施をしてもらうということを強く求めておきます。
それからこの健康管理手当等の所得制限の撤廃もそうなんですが、この手当の支給の制限、年齢を五十歳から四十五歳に今度引き下げになられました。もう三割程度しか残っていないと私は思います。毎年毎年これもちびちび五歳ずつ年齢を引き下げていく、そういうことではなくて、もう年齢制所の撤廃を当然なさるべきではないかという点が一点であります。
もう一つは、厚生大臣が指定をするところの疾病にかかっていなければ健康管理手当を支給しない。健康管理、これは病気にかからない、健康を維持していくということでなければならない。だが、大臣が指定しているところの八つの疾病、四十九年度から二疾病が追加されて十の疾病になった。そういう疾病にかかっていなければ健康管理手当を支給をしないということはおかしいじゃないか。これは健康管理じゃないじゃないか。医療手当の延長にすぎないではないか。だから年齢の制限であるとか、あるいは厚生大臣が指定する疾病にかかった者でなければ支給しないというような、そういう制限条件をこの際取っ払ってしまうということが必要であると私は考える。その点に対してはどのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/39
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040・三浦英夫
○三浦政府委員 健康管理手当につきまして、発足当初は六十五歳であったと思う次第でございます。今度御提案しておりますのは、四十五歳に引き下げをしておりますけれども、これまで国会に御説明をしてきた経過といたしましては、原爆の被爆者の方々が、いわゆる加齢現象がある。一般の方々に比べて早く老齢化するというようなことから、健康管理手当を一般並みの六十五歳ではやや高過ぎるので、引き下げを行なわしていただきますという経緯できたわけでございます。
今回四十五歳にさしていただきましたのは、いわゆる加齢現象というよりはむしろ中高年齢層の方々につきましては、やはり特別な健康管理が必要であるという観点から、四十五歳に引き下げさしてもらったような次第でございまして、そういう被爆者の実態にかんがみまして、五十歳を四十五歳とさしてもらったような次第でございます。結果としてみますと、五歳ずつ切り下げのようになっておりますけれども、それなりの意味を持ちまして御審議をお願いしているような次第でございます。
それから健康管理手当と申しますのは、私が先生に申し上げるのは何だか失礼のようでございますが、やはり原爆に関係のある御病気になって、その方々が特別な保険の関係の経費が要るとか、あるいは病院にお通いになるための交通費が要るというような関係からでございまして、そういう趣旨からいたしますと、やはり原爆に関連のある御疾病になった方々に健康管理手当をお出しするのが妥当な措置だろうと思う次第でございまして、およそ原爆関係の御疾病に関係のない方々にまで健康管理手当を支給するということまでするのはいかがかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/40
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041・中村重光
○中村(重)委員 健康管理手当を支給するときは障害の種類として八つが今度は十になるわけですね。それから医者が診断をする、「1の欄の疾病と原子爆弾の放射能の影響との関連」ということで、1が「放射能の影響によるものであることが明らかである。」、2が「放射能の影響によるものでないことが明らかである。」、3が「放射能の影響によるものであるか否か不明である。」こういったようなことを医者に診断をさせる。なかなか町のお医者さんではわからない。それだから、無難のこの「放射能の影響によるものであるか否か不明である。」とか「放射能の影響によるものでないことが明らかである。」というところにマルをつけたがる。しかし冒頭申し上げたように、大臣もお答えになったように、異常な爆弾を落とされて、兵器によって殺戮され、身体障害というものが起こってきている、体力が非常に弱ってきている、病気にかかりやすい。しかしその病気にかかってもこれが放射能の影響によるものであるかどうかということはなかなかわからない。
〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕
だから医者は無難なところにしるしをつける。したがって、これではだめだからといって健康管理手当を支給もしない。また先ほども申し上げたように、認定被爆者の場合もしかりであります。そして被爆者の健康はますます阻害されてくる。何とかしようというときにはもう間に合わない。健康管理ということにはならないのだから、被爆者に対してはそういうむずかしいいろいろな制約条件をつけるのではなくて、年齢の制限を撤廃をする、十の疾病にかかっておる、そういうようなことも撤廃をする。そして、わずかな手当なんだ。これに対してあまりにむずかしいことをやるということは、私はやめなければならないというように考える。ほんとうにその名のごとく、被爆者の健康管理を行なうところの手当でなければならないということを強調するわけなんです。この点に対しては、いまのあなたの答弁のようなそういう形式主義的なことではなくて、実態というものを十分認識した上に立って対策を講じていくということでなければならないと私は考える。この点に対しては大臣からお答えをいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/41
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042・三浦英夫
○三浦政府委員 健康管理手当につきまして、原爆関係の疾病に関連があるかないかの医師の診断の問題でございますけれども、この点につきましては、かねて先生等から御指摘がありまして、現在では三つの欄ではなくて、関連がないことが明らかな場合のみ記載をするということに訂正をさせてもらっております。したがいまして医師といたしましては、従来のように三つの欄で不明と書くようなことはなくて、明らかでない場合だけその旨を記載するということになっておりますから、従来よりは医師の判断といたしましては二つに一つでございますから、より簡明に健康管理手当を支給するかどうかということにつきましては判断がつくと思う次第でございます。その点につきましては、健康管理手当が従来以上に受けがたいようなことのないような支障は除去しておるつもりでございます。
ただ基本問題といたしまして、年齢制限あるいは疾病関連につきまして撤廃せよというお説でございますけれども、この点につきましては最初申し上げましたとおり、年齢制限につきましては中高年齢層という意味のそういう対策から、今度四十五歳ということで御審議をお願いしている経過がございます。
それから、やはり原爆に関連のある御疾病の方々に限って、健康管理手当をお出しするということが健康管理手当制度そのものの考え方でございますので、疾病の区別をなくすというか、疾病を除いて全部の方々に出せというような御趣旨のあることにつきましては、ちょっと法律の精神からいきましていかがかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/42
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043・中村重光
○中村(重)委員 だから三つあったのを二つにしたために、かえってあなたは善政のように言うけれども、悪政になるわけだ。明らかであるというようなこと、これは「放射能の影響によるものであることが明らかである。」ということはなかなか医者は診断しない。そうなってくると、不明でありということであると、これは疑いがあるのだから、これをひとつ何とか認めてやろう、健康管理手当を支給してやろう、こういう形に運用としてやれるけれども、影響によるものであることが明らかである、影響によるものでないことが明らかであるという二つになってくると、影響によるものでないことが明らかであるというところに医者はマルをつけたがるわけです。だからその場合に、よるものでないことが明らかであるというようなことは、なるべくこれをやらないように、よるものであるということが明らかである——まあ、手帳を持っているわけだから、そしていま、あなたはずいぶん、年齢制限ということを必要であるといったような印象を受けるような答弁をしたのだから、だから四十五歳以上の人であるならば、もう原則として健康管理手当を支給をするという考え方の上に立った、特別のものはこれを除くということがありましても、そういう上に立った運用というものがなされるならば、私はこの三つあったのを二つにしたのは善政になると思う。要は運用の問題。どういう考え方で運用しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/43
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044・三浦英夫
○三浦政府委員 三つの欄を二つの欄にいたしましたのは、むしろ簡素化をして、私どもの期待としましては、原爆関係の疾病に関連があるということを医師が書いていただくことを期待して改めたような次第でございまして、これはむしろ関係者の方々が二欄にしたほうがいいという御要望がありましたので、それに基づいて行なったような次第でございます。ただ、四十五歳以上の方々に原爆関係の関連の疾病のない方々があっても、全部健康管理手当を支給せよということにつきましては、先ほどから申し上げましたように、健康管理手当の性格そのものがやはり原爆関係の関連のある疾病になって非常にお苦しみになっている、そういう方々を対象として支給するということにものの考え方ができ上がっておりますので、疾病の条件を除去するということにつきましては困難かと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/44
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045・中村重光
○中村(重)委員 年齢の問題も、もう二世三世を除いては、被爆手帳を交付されているものは四十五歳以下というのは三割なんだ。だから、あなた方だって年齢制限をもう撤廃する必要があるだろうとほんとうはお考えになっていらっしゃる。予算折衝の中で、一挙に実際に引き下げるということになってくるとなかなかむずかしいというようなことで五歳ずつちびりちびりとやっているということが実態でしょう。そういうようなことでなくて、予算もわずか、総予算の伸びから比較をいたしますと一九・四%の伸びに対して一六%の伸びにすぎないんだ。実際下回ってきている。これではせっかく大臣が前進的なことをやっているような形にはなっているのだけれども、なかなかそういうことにはならないというようなことで、問題が実はあるということを指摘をいたしておきます。
それから、時間がまいりましたが、大臣、私は先ほど申し上げましたが、所得制限の撤廃、当時なくなられた被爆者に対しまして弔慰金を支給する。私はもう少しあたたかい気持ちをもって対処するということが必要ではないかというように考えます。いつまでも被爆者に対しましても、今度は税八万円以上が所得制限という形になってまいりましたが、これはもうなくしてしまうということが必要ではありませんか。弔慰金も支給をしていくということが必要ではありませんか。その点を——こういうことは事務当局の事務的な答弁ではありませんよ。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/45
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046・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 弔慰金の問題はいまにわかにすぐ行なうというわけにはなかなかいかぬと思います。さらにまた所得制限の撤廃でございますが、これもほんとうをいうと、やめるのが一番望ましいと私は思います。年々歳六所得制限の範囲は広げて、広げるというか縮めるというか、改善をしておるわけでございますので、今後とも御趣旨を十分体しましてそうした方向に努力をいたしてまいりたいと思います。いまにわかに全部撤廃するというわけにはいきませんが、徐々にそういう方向に私は進めていくべきものである、かように考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/46
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047・中村重光
○中村(重)委員 所得制限をにわかに撤廃することはできないというのは、どういう理由でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/47
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048・三浦英夫
○三浦政府委員 現在、社会保障関係の各種の施策につきましては、すべてやはり所得の制限というのが行なわれておるのは御承知のとおりでございます。たとえば結核予防法であるとか精神衛生法とかいうような医療そのものの関係につきましても、やはり高額の御所得の方々は公費負担を御遠慮をしていただくとか、あるいは一部負担をしていただくというような趣旨からでき上がっております。この原爆被爆者につきましても社会保障的な観点からまいりますと、やはり所得制限というのは緩和ははかるべきではございますけれども、多少の所得制限というのはやむを得ない措置ではないかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/48
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049・中村重光
○中村(重)委員 だから先ほど私は、社会保障というような上に立ってやると、こういう実際やらなければならぬことがひっかかってくるのだ、大きな制約条件になるのだ、だから国家補償の精神の上に乗って対策を講じなくちゃならない、こう言った。ところが大臣は、国家補償と社会保障の中間的なもの、ともかくあまりそういう原理にこだわらない、こういうことでやらなければならないというようなお答えがあったわけです。だからいまあなたがお答えになったような、そういう社会保障という見地に立ってこの対策を講じているのだからこれができないのだということになってくると、大臣が答弁した趣旨にすら反するということになる、中間的にもならないということになる。だからして、この所得制限の撤廃というのは当然やるべきであるというように私は主張いたしておきます。少なくとも、大臣が先ほどお答えになったようなことが事務当局の答弁によって否定されるというようなことがあってはけしからぬことだということを私は申し上げておきます。
さらに、もう時間が参りましたから、意見として申し上げる。被爆孤老の収容の問題。被爆老人がいつ死んだかわからない、三日も五日も一週間もたって、ああなくなっておったということがわかるというようなことでは話になりません。もう少し被爆孤老というものを全部収容していくというような考え方の上に立っていかなければならない。さらに被災者福祉会館といったようなところがある。そういうところの設備はきわめて不完備です。冷暖房もない。そこでは被爆者の職業補導もやっている。そこらで働いている人たちは被爆者なんだ。それに対して、夏はものすごく暑い、冬は寒いと言ってふるえておる。健康はいよいよ阻害される。こういう実態がある。もう少しそこらあたりにきめこまかい配慮というものがなされなければならないということを申し上げておく。
それから被爆手帳の交付の問題にいたしましても、あなた方に申し上げると、保証人が二名なくたってよろしい、二名なければ一名でもけっこうです、一名も保証人がなければ、その当時働いていたところの上司か何かの証明、職場の証明があればよろしい、それでもなければ、本人の誓約書を出してもらうのだ、こういうことを言っている。それはそう書いてある。しかし現実には保証人二名ということをあくまで要求をしている。その保証人というのは三親等であってはならないとかなんとか当時の実態を知らないやり方をやっている。だから、窓口は現実には私が指摘をいたしたようなことがあるわけなんだから、そういうことを実際にもっと調査をして、踏まえて、そうして実情というものを無視しないようにしなければ、いまのように保証人制度ということになると、無理して保証人をつくり上げてくるといったような、そういう形式主義というものがむしろ悪い結果を招くというようなことがあるわけです。これに対して、調査費がありません、あまり被爆者手帳をたくさん交付すると医療費がたいへんかさんでくる、地方自治体の負担が非常に伸びてくるといったようなことが制約条件になっているわけだから、実際に私どもが質問すると、答弁はきわめて前向きのような答弁をするけれども、中身は前進したものは何もないということを肝に銘じてあなた方はお考えにならなければならないということを強く指摘をしておきたいと思います。
最終的に大臣から、いろいろと私が意見を交えて申し上げたことに対して、今後の被爆者対策をどう進めていくかということについて、総括的にお答えをいただいて、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/49
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050・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 中村委員がお述べになりましたことにつきましては、来年度においても改善を必要とするものがあればできるだけ改善もしてまいりたいと思います。それから運用上改めなければならぬもの、あるいは手続的に改善をしていかなければならぬもの、さまざまあると私は思いますが、被爆者の援護につきましてはきめのこまかい対策が必要でございますから、中村委員の御意見は十分尊重いたしまして今後とも対処いたしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/50
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051・葉梨信行
○葉梨委員長代理 山田耻目君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/51
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052・山田耻目
○山田(耻)委員 去年この委員会でいろいろお尋ねもしたわけですが、去年の三月二十九日でございましたから、ちょうど一年になります。私は二つに分けてお伺いをいたしますが、現行医療法制度の中で、かなり原爆被爆者が矛盾を感じたり困ったりしておる事柄、この点について、去年お尋ねをしたことなどについていま一度確認をしていきたいと思います。
一つは、胃ガンを含めて各種のガンの患者を認定患者として取り扱うということについて、ことしは大幅に前進をしたことをまず感謝をいたしております。去年、いま一点申し上げました中で、原爆の被爆者は手帳を所持しておりますので、一般の社会保険の証明書と被爆者手帳を、同時に受診をしておる医療機関に出しますと医療は無料の措置を受ける、こういうふうになっておるわけですが、七十歳以上の老人医療の無料化が昨年実施をされまして以来、原爆被爆者に対しては、七十以上に年齢が到達をしても無料の診療券を交付をしない、こういう措置がございます。ところが原爆被爆者は手帳交付をいたしておるから、結果として無料診療を受けておるので交付をしないという措置のようでございましたが、原爆被爆者手帳というものは県単位に発行いたします。そのために、長崎の七十以上の被爆老人が東京で受診できない。ところが七十以上の無料診療券は全国共通である、こういう不便が出ておることを指摘をいたしました。そしたら加倉井さんが、それはよろしくない、社会局によく言ってその措置を改めさせるということを言っておりましたが、今日どうなっているのか、その点をひとつ御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/52
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053・三浦英夫
○三浦政府委員 老人医療と原爆被爆者の手帳をお持ちになっている方の医療との関係につきましては、昨年の国会で御指摘を受け、さらに附帯決議等にも盛られておることでございます。その線に沿いまして社会局とも話を済ませ、現在かなり順調に事が運んでおるように聞いておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/53
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054・山田耻目
○山田(耻)委員 あなたたち順調に運んでいるという答弁だが、きょうは四月二十五日ですよ。去年三月二十九日ですから、三百七十日過ぎている。これだけの期間を置いて、この中には多くの原爆被爆者がなくなっていきましたよ。そういう一つの状態を検討して前進させておるという答弁では、去年の私に与えてくれた答弁とは違いますよ。違う。何なら当時の議事録、読み上げましょうか。違うですよ。だから私は、これは当然すみやかに実施をされておるものと理解をしておった。ところがいろいろ老人被爆者に聞いてみますと、いや私のところは何ともございません、不便この上ございません、こういう答えしかはね返ってきてないのです。これは三浦さん、前向きで検討しております、前進をしておりますという答えでは、現実に即応できる回答とは思えないのですがね。これはもっとものの言いようございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/54
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055・三浦英夫
○三浦政府委員 御承知のとおり老人医療は市町村が主体でございます。全国に五千ある市町村でございまして、御指摘の点につきましてはなお一そう社会局とも協議をいたしまして、円滑にするように努力をしてまいる所存でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/55
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056・山田耻目
○山田(耻)委員 社会局によく言って、やるというのが去年の話だったと思うのですよ。ことしも同じ答弁をあなたはいま繰り返していらっしゃるのです。それは少し国会というものを軽視してはおりませんか。去年の答弁のほうがまだ進んでいるのですよ。ちょっと読んでみましようか。「老人医療の受給券の問題でございますが、これは社会局のほうから申請があれば出すようにという指導をいたしてございますので、」私が申したようなそういう事例がないように社会局としては措置をいたしますというのが去年の答弁なんですよ。あなたのほうがちょっと後退しておるような気が私はする。しかしそれをいまここで責めてみてもどうにもなりませんが、いま私が申したように、全国に五千の地方自治体がありますけれども、これは厚生大臣から、いま私が申し上げたような趣旨に基づいてすみやかに措置をしてほしいという通牒をお出しになれば簡単に片づくじゃないですか。そんなことを役所が実行に移すことに手間ひまかかるとは私は思いませんよ。そういう通牒をお出しになっていないのでしょう。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/56
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057・三浦英夫
○三浦政府委員 地方自治の問題がございますので、むしろ一片の通牒でやりますよりは、全国市町村につきまして具体的に協力をいただけないような市町村について、私どもと社会局と連携をとりまして個別に調べ上げて、個別に県を通じて必要によって指導していく、こういうことのほうが実効があがると思いまして、従来からもそういう線でやっておる次第でございます。ただ一片の通牒を出しましても、全国五千の市町村でございますし、自治地方の仕事でございますから、むしろそう簡単にはいかないのではないかと思っておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/57
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058・山田耻目
○山田(耻)委員 できたところがございますか、やっているところが。やっているところがあるなら私はあなたの答弁を半ば信じて伺っていいと思うのですよ。全国でできているところはまだないでしょうが。きょうまで何の指導をしたのですか。各都道府県の社会課を通してこのように診療受給券を発行してほしいという通牒をお出しになって、これは国がやっている措置なんですから、そして各県が所管の各市町村に対して指示を出されれば、私はそんなに一年かかってもまだ努力中でございますという答弁をいただけるようなことになってはいないのじゃないか、おやりになっていなかったのじゃないかという気がしてならないのです。齋藤大臣、あなたは去年被爆者関係には非常に理解のある態度を示されて、ことしの法律はかなり前進をしており、私は感謝しているのですが、こういう何となく制度上の抜けたところ、そういう点に対して去年は非常に答弁はりっぱだった、しかしいまだ放置されている。これはひとつ大臣、すみやかに善処していただくように、大臣のお考えはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/58
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059・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 両局でどういう相談をしているか私もいま詳細に承知しておりません。しておりませんが、お話しの点、私は非常にごもっともな話と承っておりますから、できるだけすみやかに両局を呼んで何とか解決しろということで早く解決させるように努力いたします。
〔葉梨委員長代理退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/59
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060・山田耻目
○山田(耻)委員 いま大臣の答弁で私も来年のこの委員会でまた確認する己とのないように、ことしはしっかりけじめをつけていただきますことを、いまの大臣の答弁で期待をして、この問題は終わります。
それから時間が非常に少ないので困るのですが、過去ずっと問題を詰めてきましたが、いまだ片づいてきませんものに、原爆患者は放射能を受けておりまして、ある意味では毛細血管などに非常に支障を来たしていることはこれは医学上証明されておるわけです。その一つの結果が、去年私委員会で言ったのですが、たいへん老齢現象、老化現象が早いわけです。そういうことで、原爆患者に対しては医学上治療の効果がどうかということは証明されていないようですけれども、とにかく温泉療養というのは非常にいい、こういうことがいわれているわけです。そうして温泉療養をやりますと、マッサージとかはりとかきゅうとか、こういうものを同時並行してやっていけば、老化現象なりあるいは弱まっておる細胞関係がかなり活発になっていくだろう、いままでこういうことをいわれてきたわけです。
そこで私たちも過去何回か言ったのですけれども、温泉療養は、それぞれ中心地でございました広島は有福温泉、山口は湯田温泉、あるいは別府、長崎とそれぞれ設備を持っておりますけれども、ところが行きました患者はほとんどマッサージをとります。そうしていろいろと老化現象なりあるいは直接持っておる疾病に対する何らかの措置をしたいということで療養に専念をしておるわけです。ところがマッサージとか、はりとかきゅうとかをやる場合には、医師のその療法を許可する許可書といいますか、認定書といいますか、そういうものがなければ、その代金をめんどう見てもらえない、こういう仕組みになっています。これは私は少し法律のほうが先行し過ぎておって、現実が非常におくらされている。これは適切な療養措置ではないように思えてならぬ。
たとえば山口県の湯田には、厚生大臣所管の湯田温泉療養所がございます。この温泉療養所はそこに患者が行って温泉療養を受けたり、そこの先生あたりはマッサージをやってくれます。そこへ患者が行きますときはいいわけです。しかしそこが一ぱいで、隣のほうの宿泊所に泊まってマッサージ師を呼べば出費がかさむ、こういう矛盾した現状が出ておるのです。何とかこういう温泉の療養なりマッサージ、はり、きゅうというものに対して、もっと制度の幅を広げてあげて、それは私が、ここに証人がおるわけですから、こういう老化現象を進めていく人間というものは——私はこの前も言ったが原爆患者でも優等生で健康なんですよ。しかし多くの人たちはだめなんです。その人たちが温泉療養を受けてマッサージをするということは、全く付随したものとして認めてやる。そういうふうな考え方をひとつことしからお持ちになって、その取り扱いについて適切な措置を願えないものだろうか、こういうふうに思うわけですが、これは古く長く論議した事柄なので、ここらあたりでけじめをつけたいなという気がいたすわけでありますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/60
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061・三浦英夫
○三浦政府委員 マッサージ、あんま、はり、きゅうの問題につきましては、かねてこの原爆関係の法律のときに御審議があったことは、速記録等で拝見いたしております。ただ御案内のとおり、医療というものはやはり医師の統轄というか、医師が行なうというのがたてまえになっております。そういう関係から、これは原爆関係だけの医療ではなくて、厚生省関係あるいは他省の関係、医療というものはすべてやはり医師の統轄のもとに行なわれるというのがたてまえになっている次第でございます。したがいまして、どうも独立をしてマッサージ師の方あるいははり、きゅう師の方が医療を行なう、それに対して医療費を支給するということにつきましては、現在の医療体系のもとでは非常に困難ではないかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/61
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062・山田耻目
○山田(耻)委員 これは現在の医療体系から見たら、医師によって認定された者、こういうことがいわれておりますので、私はそれはそうだと思うのです。しかし現実に、原爆被爆者でそういうところへ行って温泉療養をしたりマッサージを受けたりする人はほとんどもう六十近い人です。
せんだって出ました広島原爆病院の原爆白書を見ましても、ことしなくなった人たちの平均年齢は六十九歳でございます。しかも八十七名の死亡者の中でガン関係が約七〇%、平均年齢より早く死んでいくのですよ。しかもそういう難病、奇病というものに取りつかれて死んでいくのです。だからそういう人たちが、そういう新聞を見たり話を聞いたりしますと、やはり温泉に行ったら、直接医者に、あなたはマッサージしなさい、はり、きゅうをしなさいという処方せんは書いてもらっていないけれども、やはりかかって、老化現象に役立つのか何に役立つのかわからぬけれども、治癒に役立てたいということで努力しているのです。この実態をやはり政治とか行政というものは無視してはいけない。それは手続的に、医療法の中に医者の証明をもらえばいいのだと書いてあるのだから、そのとおりやってもらわなかったらだめだよ、これでは血も涙もないといいますか、正しく法を生かして使っていないという感じがしてならないのです。ここらあたりには実質的に適用ができる、そういう措置を被爆者に対してしてあげたい、こういうあたたかい思いやりとか気持ちというものが持てないのだろうか。こういうふうに十数年間、原爆被爆者問題については毎年一日か二日委員会を開いて議論をしておる、この実態の中ですら解決できない。それは政治というものがあまりにも非情じゃないか、そういう結論にしかならないのですよ。だからここらあたりで、もう長いこと議論し合ってきたので、いまのような取り扱いについてはやはり検討してみる必要がある、こういう認識にすら立てませんか。いかがでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/62
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063・三浦英夫
○三浦政府委員 山田先生におことばを返すようになって非常に恐縮でございますけれども、検討はいたしてみますけれども、ただ現在の医療法、医師法その他の体系からまいりますと、医師以外の方が、いわばマッサージといっても診療、治療になりますので、そういう関係に立つということは非常に困難ではないかと思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/63
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064・山田耻目
○山田(耻)委員 齋藤大臣、やはり官僚は定まった法律の中の運用しかなかなか考えてはくれません。だからやはり政治というのは行き詰まった法律なり法制、政令というものを現実に適合させて、どう改正をしていくのか、これが私は政治の要諦であるし、うまみだと思うのですが、大臣、いまごく短時間のやりとりですがいかがでしょうか。やはり何とかいまの医療法を改正して、ほんとうに数少なくなっていく原爆被爆者に対して、思いやりのある措置というものはとれないかという私の主張に対して、制度上の改正ということを検討してみたい、こういうお気持ちはございませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/64
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065・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 マッサージ等の問題については私も被爆者の方から話を聞いたことがございます。私も、実は心情的には何とかならぬかな、こういう感じがしているのです。しかし日本の医療の基本に関する問題ですから、これはそう簡単にはいかないと私は思います。そこで法律改正、これも実際問題私はむずかしいと思います。そこで、やり方において何かいい知恵はないのかな、実は私はほんとうに率直にそう思っているのです。あんま、はり、きゅう、マッサージ、それが原爆被爆者の医療に役立つのか役立たないのか、私は医学的な意見を持っておりません。ほんとうをいうと私はわかりません。医学的にはわかりません。しかしそういうものを何とか保険の中で見てもらえぬだろうかという意見を聞くのですが、何とかならぬかなということを私も思っているわけでございますから、いますぐ、どういうやり方でこの問題を解決できるかどうか、私もいまのところ自信はありません。自信はありませんが、何とか解決の道を探ってみるようにひとつ十分検討をいたしてみます。それだけはお約束申し上げておきます。法律改正というわけにいきますまい。これは実際の運用の問題だと私は思っているのです。何かできないか、私はほんとうに心からそう思っているのです。ところが医療法というものが厳として存在しておりまして、これをくずすということになると、これは実際たいへんなことです。これは山田委員もう御承知のとおりなんです。私も心情的に同感でございますから、何とか運用の妙を発揮することができるかできないか、ひとつ検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/65
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066・山田耻目
○山田(耻)委員 どうも、最後の詰めができるようなしろものとそうでないものとがありますので、これはひとつ大臣のおっしゃるように、ほんとうにそういう心情を持っていただいておると思いますので、御検討いただきまして、何らか適当な措置を講じて、措置できるように御配慮を求めてこの質問を終わります。
時間があまりございませんので次に進みますが、去年のこの委員会で二世、三世問題というのをかなり議論をいたしました。それで現実の措置として、それを大っぴらに調べられて届け出をすれば、子供の就職とか結婚問題にも影響があるかもしれぬというふうな人権問題に発展する可能性もあるので、それは申請主義だという議論が片側で出たり、また片一方では、現実に二世、三世で放射能に起因した疾病あるいは関連疾病と思われるようなものがある、そうした場合にはひとつ被爆者手帳を交付をして、定められた諸手当を交付していく、こういうことを片側では議論を深めていきましたり、最終的には直接原爆医療機関である広島原爆病院と長崎の原爆病院、ここには研究費が出してあるから、この研究費を使って二世、三世の直接診療をすることは、直接医療機関ではひとつ認めよう、こういうことを、附帯決議をつくりますときに、そのときたしか自民党は増岡委員が代表をなさっていたと思いますけれども、話を詰めて附帯決議をつけたわけなんでございます。それで私、広島原爆病院なり長崎原爆病院で二世、三世の、そういう子供さんの人たちの診療が、研究という名目であれ、実際に行なわれておるものと理解をしていたのですけれども、ところが広島病院にしても長崎病院にしても赤字の経営をやっておる、そういう関係でなかなか二世、三世の治療が思うように進んでいない、こういう報告を受けておるのです。現実にはこれがどうなっているか、簡潔でけっこうですから、これからどうしようとするのか、それらについてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/66
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067・三浦英夫
○三浦政府委員 二世、三世の原爆被爆者に対する影響の問題につきましては、御案内のとおり二千万の調査費を計上いたしまして、かねて研究を続けております。ただ現在までのところ二世、三世への影響があるというような医学的な判断は出てないようでございます。そんな関係から、二世、三世に対する法的制度として原爆援護の措置をとるということは現状では困難かと思います。ただ昨年の附帯決議の際の、長崎あるいは広島に現実に入院をしておられる方の医療費の自己負担分ぐらいは無料にならないかというようなお話があったことは事実聞いております。そんな関係から、その附帯決議の精神から、実は国会明けに長崎県と広島県の当事者を呼びまして、現在それぞれの病院にある程度の補助金が出ておるから、その中からある程度のやりくりとか、あるいは何とか県のほうでごめんどうを見てくれないだろうか、こういう要請はいたしまして、一応県のほうも善処してみます、こういうことで事は至ったようでございますが、どうも最近調べてみますと、やはり両県ともその措置がとられてないようでございます。そんな関係から、実は本年度初めてでございますけれども、先生御指摘のように、長崎、広島のそれぞれの日赤病院が病院経営に原爆関係からかなりの赤字がある、こういうようなことから、二千三百万程度でございますけれども、本年度病院に対する助成金を計上しております。その中からでも、去年の附帯決議の趣旨を生かした措置を行政運用としては考えてまいりたいと思っておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/67
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068・山田耻目
○山田(耻)委員 どうも厚生省というところは二年おくれぐらいでものを考えようとするのですね。私は、斎藤大臣というのはずっと昔から古く知り合いなんです。人柄もよく知っていますよ。だから私は、去年のこの委員会で、ほんとうにかわいそうだし、何とかしてやはりそうした人たちについても深い配慮を及ぼしていきたいという大臣のお話しがございました。それを受けて、各局長なりそれぞれの主管というのは、まじめに仕事をやってもらわなければ困るのですよ、そのために月給を払っているのですから。
私は、こういうふうな答弁をこの委員会で、これでさっきから社会局の無料診療と二つ聞くわけですけれども、これは三浦さん、まさに十二年にわたってこういう問題を取り上げてきておる私たち自身にとっては、ほんとうに何とも言えない気持ちがするんですよ。人の生き死ににかかわる問題ですから、厚生省が外地に兵隊さんの骨を拾いに行くことも大事ですよ。しかし、あの戦争によってこれだけ多くの人間が死んでいっている。しかもその二世、三世の中に、あなた方は口を開けば後遺症もなければ弊害もないとおっしゃっているけれども、現実に存在しておった事実がたくさんあるんですよ。しかしそれはそういうことばの言い方だけで消されていく。これじゃ私は、一体厚生省というのは何のためにあるのかという気さえ持つようになるんですよ。
だから、二世、三世の問題については、私もたいへん不満でしたけれども、去年はあの措置で了解したんです。そうして、直接研究費というものを使いながら、二世、三世の診療をやってみよう、この中で医学的に、どういうふうに後遺症というものが残っていくんだろうか、そういうことをつぶさに研究してみようという気持ちが私の中にもありましたよ。しかし、いまだその金の出場所は、県と相談をしてみたり、県がやっていなかったり、そういうおくれておる理由の説明だけしか述べておられぬ、これじゃ私は困るのです。
この問題につきましては、ことしはぜひとも具体化してください。そうして、二世、三世にほんとうに後遺症があるのかないのか、医学的に真摯に究明する態度を、厚生省所管のそうした病院に対しては、私は直接指導、督励をしてほしいと思う。
私たちは専門家でないからわかりませんけれども、昭和三十年までは原爆被爆者の七十数%は白血病であったというデータが厚生省にも出ているでしょう。白血病とは一体何なのか。白血球のガンでしょう、白血病というのは。そのとおりですよ、白血球のガン。その血液を受けて胎内で成長していった二世は、完全に無傷である、何の影響も受けていないということは私はないと思う。しかし私たちは専門家ではございませんから、これ以上多くは、実証する以外にはないんですよ。その努力もいたしますけれども、現に私たちの耳に入ってくるのは、関連疾病でとうとう死にました、こういう言い方を多く聞くんです。だから、それが親の被爆に起因するという立場をとれば、同情がわくという気持ちになる、その気持ちから言っているのとだけは私は思いたくない。これも一年間ほっぽり出されてきたんですけれども、どうかことしはまじめに取り組んで、この問題に対する原因の究明と、そうして去年から積み残されておる診療の措置、そうしてその中から関連疾病と見られれば所定の手帳を交付して所定の援護措置を行なっていく、こういう三つに分けて始末をつけてもらうように、重ねて強くお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/68
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069・三浦英夫
○三浦政府委員 二世、三世に対します原爆の影響があるかどうかの点につきましては、本年も相当の研究費を計上いたしまして研究をし、さらに必要があれば健康診断等を行なっていく、この措置は続けてまいりまして、なるたけ早い機会に結論を得たいと思っております。ただ、医学的な問題でございますので、現在までのところはむしろ二世、三世に対する影響はない、こういう結論のほうというか、そういうデータしかございませんので、なおそれはそれといたしまして、真剣に研究を続けてまいりたいと思っております。
なお、先ほど申し上げました長崎、広島両病院における子供さんの問題につきまして、昨年は県にお願いをして、国費というものを持ち合わせておりませんでした。本年は幸いにして、長崎、広島両日赤病院に対して、若干ではございますが、赤字補てんの予算が計上できましたし、県とも打ち合わせをいたしまして、御指摘の点につきましては適宜な措置をとってまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/69
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070・山田耻目
○山田(耻)委員 ちょうど時間になったのですが、もう一つだけ……。
これも昭和四十二年のときにここでやりまして、当時は齋藤大臣ではございませんで、もう一人の齋藤大臣、笑わぬ殿下のほうでしたが、お約束らしきものをいただいたのですが、何か総理府のほうの横やりが入ってだめだったという話がございました。それは、日本という国ほど戸籍法の進んだ国は世界でも珍しいのです。非常によく進んでいる。にもかかわらず、原爆で死んだ死没者の数、氏名が把握できない。それはおかしいじゃないか。少なくとも昭和三十二年以降は原爆医療法ができてカルテが残っております。手帳も交付されております。だからこれはわかる。しかし、昭和三十二年以前の原爆の瞬時死没者、事後原爆疾病によってなくなった死没者、こういうものの数が把握できない。私はナンセンスだと思うのですよ。この数をしっかり把握をして——当時私が言ったのは、昭和二十一年以降なくなった人たちの死因をただしていく。それが現行の疾病によるいろいろな病理学上の病名がついておるでしょう。その一つの傾向値をたどっていくだけで原爆後遺症というものの模索ができる。だからその死因調査、病名調査まで含めて国が当然やる必要があるんだ。しかし当時の国勢調査にそれを私が求めたのは、そういう病名を追跡することまでを含めて求めませんでした。しかし、日本という国がどれだけ原爆によって死没をしたのか、その数の把握ぐらいは国家がしなければ一体どうするんですか。一体アメリカに気がねをして調査をしないのか、どこに気がねをして調査をしないのか、皮肉も多く申したわけですけれども、当時の斎藤厚生大臣は、それは何とかして実数把握につとめたいと思う。たまたま昭和四十五年に国勢調査をやられました。この国勢調査でひとつ併設調査をしてて——これは総理府がやるのですけれども、各所管省から、こういう調査をあわせてやってくれという意見があればやることになっておるわけですから、そういうことを厚生大臣も了解を求めて、委員会で審議を終わったわけです。ところが、昭和四十五年の調査のときにはできなかった。たまたま私も落選しておりましたし、そのことの追跡をすることもできませんでした。多くの同僚委員の努力もあったわけですけれども、今日までやられていない。たまたま来年国勢調査です。来年は、援護法の問題もいろいろと議論が高まってきております中で、何とかして原爆投下以後どれだけの直接死者がおり、事後の関連疾病を起こしてなくなっていった人がおるのか、そういうことの実数調査をぜひともやっていただきたい。これは大臣いかがでございましょうか。あなたのほうの意思をお固めになって、総理府のほうに併設調査の御申請をいただくように法律的にはなっておるようでございますから、総理府の見解もあわせてお伺いできれば、おいでいただいておりますので、幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/70
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071・三浦英夫
○三浦政府委員 来年の国勢調査の件に関しまして、私のほうからも統計局のほうには、はたしてそういう調査が可能だろうかということはいろいろお打ち合わせしましたけれども、やはり国勢調査の中で、あるいは統計局からお答えしていただくのがしかるべきかもわかりませんが、全国的なセンサスの中で付帯調査というのは非常に困難だということを聞きましたので、厚生省といたしましては、かつて昭和四十年に一度厚生省で予算要求をいたしまして実施いたしております。来年はそれから十年目になりますので、来年は厚生省で予算要求をして、実態調査を行なっていきたいと思っております。ただ、先生御指摘の、死亡された方の調査ということになりますと、検討はいたしてみますけれども、非常に困難が伴いますので、そういう調査になりますかどうかということを含めまして、五十年には厚生省で実態調査を行なってみたいと思っておる次第でございます。
なお、それとあわせまして、現在継続して続いておりますいわゆる復元調査の点につきましては、来年はさらに促進をしてまいりたいと思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/71
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072・山田耻目
○山田(耻)委員 厚生省単独でおやりになるということです。しかし死没者調査は非常に困難だ。私は、どのような困難であろうと、調査可能な事柄なんですから、調査不可能というなら別ですよ、調査可能な事柄であるものを、非常に困難ということばだけで逃げ去ろうとしておる。これは昭和四十二年の中間報告を受けた調査でもそうです。困難ということばだけで実態調査可能なものから逃げておる。これは来年国勢調査をやるけれども、国勢調査の併設調査ではむずかしいから厚生省独自でやる。それはけっこうです。おやりなさい。しかし困難だからということばで調査確実なものを逃げたら、もう来年は承知しませんよ。今日の日本の戸籍法に基づいて調査能力を持っておる、私は国の力があると思っているから、調査能力がありますよ。だからこそ、厚生省という国の行政機関がやるんでしょう。困難ということばで逃げてもらったら、私は今度は許しません。だから、それは国勢調査でやりにくければ、どうかひとつ厚生省でおやりください。けっこうです。私は実態をつかみたいわけですから。実情把握をしたい。これは注文ですけれども、厚生省がおやりになるんだったら、可能な限り、どういう死因でなくなったのか。おそらく当初の原爆の死没者は、昭和三十年以前はいわゆる悪性腫瘍、いまのガンとかいわれるものは非常に少なくて、白血病が非常に多かった。こういう一つの事柄も、私たちの単純な推理でするわけですけれども、そういう死因調査も含めてやっていただいて、そうして傾向値を出していただければ、原爆被爆後三十年間にどういう形で原爆被爆者は死に至る病の変遷をたどっていくのか、こういう傾向値が必ず出てくるはずです。それらを背景としながら、援護体制なり将来の原爆被爆者に対する後遺症の問題あるいは治療の方法の問題、こうしたものが予測できるのではないか、このように思っていますから、そういう死因調査を含めて、厚生省独自でおやりになるのなら、ぜひともお願いしたいと思います。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/72
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073・三浦英夫
○三浦政府委員 山田先生におことばを返すようになって恐縮でございますけれども、戸籍簿から死亡された方を調査するということは、御案内のとおり、死亡の原因等が戸籍簿には出てまいりませんし、かつ、戸籍簿というのはそうやたらに見せられるものでもございませんので、こういう意味から全数調査とかいう形のものは、私はもう困難というか、不可能に近いのじゃないかと思う次第でございます。
ただ、先生御指摘の原爆被爆者の手帳保有の方は、死因の傾向等につきましては、これは大事なことでございますから、どういう形になりますか、十分検討をしてみたいと思っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/73
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074・山田耻目
○山田(耻)委員 時間が過ぎてしまいましてこれで終わりますが、その調査が始まります前、これは審議できませんから、私はあなたのところに伺います。伺いまして、その調査項目についてひとつ私にも見せていただいて、私の意見も聞いていただきたいと思います。
質問はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/74
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075・斉藤滋与史
○斉藤(滋)委員長代理 大原亨君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/75
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076・大原亨
○大原委員 いままでの質問を受けまして、重複を避けながら問題点をまとめて質問いたしますから、明確に、しかも簡潔に御答弁いただきたいと思います。
社会党はじめ野党四党が原子爆弾被爆者援護法をいろいろ討議の過程を経まして提案をいたしました。森井委員はじめ各委員の質問に対しまして、厚生大臣は、遺族関係についてはかなり問題である、しかし医療と医療に伴う手当から、現在現存の被爆者を中心とした援護制度の問題については、熱意をもって取り組みたい、こういう意味の御答弁があったと思います。
そこで私は、もう一回原点に返って簡明に問題点だけをひとつ指摘をして見解を聞きたいと思うのですが、野党四党案は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の法律に準拠いたしまして、国家補償の精神でやるべきである、こういうことであります。それについては、政府あるいは与党の諸君の中で、これは与党の中にはかなり賛成者があるわけですが、なお踏み切れないというのが実態であります。われわれはいろいろな点から検討をいたしましたが、国家補償の精神でなすべしという論拠の第一点といたしましては、これはいままで何回も議論いたしましたから焦点を合わして申し上げますが、戦争行為におきまして国際法が禁止いたしておるのは、害敵手段として非人道的な兵器を使うことは認めていないわけです。それから攻撃、爆撃の対象についても、無制限には認めていないのが国際法です。これはヘーグの陸戦法規はじめ各関係法規で、国際法として、慣例法として認められておるわけであります。一般戦災者との関係についても議論があったわけでありますが、原爆の場合には、害敵手段として毒ガス以上の兵器を使っているというところに、爆風や熱線や放射能の後遺症等をめぐって、非常に大きな問題になっておるわけであります。したがって、サンフランシスコ条約で、たとえばアメリカならアメリカの言い分もある、たとえば真珠湾攻撃について国際法違反ではないかという議論もあるわけですが、アメリカと日本の国家間においては、国家間の請求権を放棄したわけですから、そこで、日本の政府は、そういう非人道的な兵器による深刻な被害者に対しては国家補償を、条約を締結した日本の当事者、戦争を開始した日本の責任者として当然なすべきではないかという議論が一つであります。
それから、われわれが国家補償による援護法に踏み切ったもう一つの理由は、話があったわけですけれども、国の命令服従の関係があるという点であります。この二つの点について、私は厚生大臣としては、ここまで議論してきたわけですから、事務当局でなしに政治的な見解を示してもらいたいと思います。この問題につきまして厚生大臣はどういう見解でありますか、お聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/76
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077・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 いま大原委員がお述べになりましたこと、私もそういう点は十分理解をいたしておるつもりでございます。そういうふうな理解の上に立って、被爆者の援護の措置をどうやって講じていくか、こういうことになると私は思うのです。
そこで、いろいろ大原委員がお述べになりましたこと、十分理解はいたしておりますが、いままで国家賠償的、国家補償的な考え方の立法というのは、国と何らかの特別権力関係にあったものを中心にして処理をする、特別権力関係にあったものという考え方でございます。一般統治権の発動として何らかの関係がある、それはもう当然のことでございます、国民ですから。すべての国民がみな国の一般統治権下にあるわけでございます。そこで国家賠償的なものはいわゆる特別な権力関係にあったものを対象とする、一般統治権の発動の中にあるものについては社会保障の中でこれを行なう、こういう体制できておるわけでございます。
ところで、どうも原爆被爆者に対する援護というものは、その二つの法体系の中にあって何かしら中間的な位置づけをするのが適当ではないかというのが実は私の持論なんです。従来ある賠償的なものと一般社会保障的なものと、何かどちらにもいきにくい中間の位置づけが適当ではないか、こういうのが私の基本的な考えでございます。
そこで、そういう立法ができないものだろうかということを、実は私も大臣に就任して以来、国会でいろいろ質問を受けるたびに、何かいい知恵はないのかということをずっと考えてきたわけでございますが、いまにわかにそうした位置づけをする立法というものはなかなか容易ではない。しかし、そういうむずかしい中にあって投げてはおけない問題である。要するに原爆被爆者に対する援護の考え方というのは、放射能を受けた方々に対する医療について特殊な配慮をしなければならぬという法律があるわけでございますから、その法律の考え方をもう少し生活援護的な方向に実態を向けていく、そういう方向づけをして努力を積み重ねていって、そうした中で中間的な位置づけを徐々に確立していくというのが適切な手段ではないか、これが私の取り組み方の基本的な考え方でございます。従来の医療だけではなしに、生活的な面をとらまえた方向にいくべきものではないか、これが私の基本的な考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/77
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078・大原亨
○大原委員 われわれの主張との間に若干ダブった点もあるのですけれども、そこの認識が問題であります。
援護局長に御答弁をいただきたいと思うのですが、つまり戦傷病者戦没者遺族等援護法では、軍属の場合には雇用関係があるわけですが、大臣、準軍属の場合には雇用関係はないわけです。ないわけですけれども、総動員法その他——警防団その他を含めてですが、法制局の見解もいままで聞いてまいりましたが、これは命令服従の関係等を背景として国が権力を発動して行なったという関係にある。この二つを援護法の対象にしている。これが国家補償の論拠である、そういうふうに理解してよろしいかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/78
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079・八木哲夫
○八木政府委員 お答え申し上げます。
戦傷病者戦没者遺族等援護法の考え方あるいはたてまえといたしましては、軍人あるいは軍属のように直接軍の構成員である者、それから、先生から御指摘がございましたように、国家総動員法によります徴用工でございますとか動員学徒あるいは戦闘参加者のように、直接の軍の構成員ではございませんけれども、戦争協力につきまして相当の強制力が及んでおる、先ほど大臣からお話がございましたように相当な特別権力関係があるというような方々、直接の軍の構成員ではなくても、身分上はやはり軍の構成員と同じように見てもいいんじゃないかというふうに考えられる方々につきましては、国の使用者責任という考え方もあるわけでございますので、そういう見地から、国家補償という考え方で戦傷病者戦没者遺族等援護法等の対象にしている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/79
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080・大原亨
○大原委員 厚生大臣、いまの答弁で、雇用関係にある者が一つなんです。身分関係を中心としたものがね。それから、総動員法その他、戦争に動員しまして、国が責任を持って命令服従の関係にある者、これが二つです。いままで議論してきたことです。
そこで、前の戦傷病者戦没者遺族等援護法は、この審議をいたしますときに私のほうで指摘をして、附帯決議にも入っておるわけでありますが、その当時、昭和二十年三月以降、サイパンが落ち、沖繩が占拠され、そして東京の大空襲があってから以降の国民義勇隊に関する閣議決定や義勇兵役法や旧防空法は、男子につきましては十四歳以上六十五歳以下、女子につきましては十八歳以上四十五歳以下ですから、子供もおれば、年寄りも一緒に生活しておるわけです。そういう意味において、それぞれ懲役とか罰金とかという背景で、個別的に命令を受けるかあるいは包括的に命令を受けるかは別にいたしまして、これはものすごい、閣議決定によりまする——当時、内務大臣は警察ですが、陸海軍大臣と共管のもとに一億の総武装をやり、総動員をやったわけです。あなたは厚生大臣として外国に行っておられましたから、私は代理の内田さんと議論をいたしたのでありますが、たとえば内務省の訓令におきましては、町内会は公共団体の補助機関というふうに、終わりごろにははっきり規定いたしまして、そして命令できるようになっておりましたし、異動につきましては、届け出その他がございまして、自由に異動できないようになっておるわけですね。そういう点からいっても、原爆という非人道的な兵器ではかり知れない最初の経験を経た、そういう深刻な被害はもちろんですが、そういうことと合わせて、この戦争の遂行について政府は責任があるわけですから、基本的に被爆者は非戦闘員であるという理由をもって国家補償を免責することはできない。こういう点は、私は法制局の見解を入れまして、今日まで、援護法案の審議を通じましても徹底的に議論してきたところなんです。ですから、国家補償ということについては、この戦争犠牲者、原爆の犠牲者については当然に踏み切ってしかるべきである。いろいろな立法対象の特殊性はありますよ。それはよく知っておりますが、そういう点についてわれわれ野党案は、それを踏み切ってやるべきであるということで、準軍属で軍属に準ずる措置をとれば、準軍属と軍属の差はないわけですから、それと放射能の被害の特殊性を考えてやるべし、こういうふうにやったわけであります。ですから、厚生大臣がいままで議論されましたことを踏まえて、私どもが議論を発展させるという意味からも、私どものこの主張について十分理解ができるというふうに私は確信をいたしておりますが、厚生大臣はどのようにお考えですか、この点についてあらためてお聞きをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/80
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081・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 これは先ほどもお答えいたしましたが、皆さん方が野党四党で被爆者援護法案を国会に出されたということにつきましては、私はそれなりの評価すべきものがたくさんあるというふうに考えております。しかし、皆さん方の御意見は、先ほど申し述べましたように、国家補償的な考え方に立っておる、その点についてはいまにわかに私は賛成いたしかねる、こう申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/81
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082・大原亨
○大原委員 私が主張をいたしております点は、当時の状況から考えて、たとえば国民義勇隊に関する三月二十三日の決定にいたしましても、それ以降の決定にいたしましても、あるいは義勇兵役法の施行についての勅令や政令にいたしましても、占領軍が来たという現実の前に、政府が資料を焼却をいたしましたり、閣議をふいにしておったわけです。ですから、命令服従の関係について明確に出てこなかった。その中から一方、具体的な従事令書等を中心にいたしまして、警防団、医療従事者の問題が出てきたわけです。これは一歩前進です。だからその点については、私が指摘をいたしました点は、十分国家補償の精神でやるべしという議論の論拠として、政府部内においてもこの問題を十分討議をしてもらいたいと私は強く要望をいたしておきたいと思います。
〔斉藤(滋)委員長代理退席、葉梨委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/82
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083・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 先ほども申し上げておりますように、皆さん方の御提案になりました援護法案につきましては、十分検討はいたします、こう申し上げておるわけでございます。しかし、いま直ちに私どもは国家賠償の考え方に立つ皆さん方の御意見にはいまにわかに賛成いたしかねます、こう申し上げておるわけでございまして、今後とも十分研究するにはやぶさかではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/83
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084・大原亨
○大原委員 厚生大臣、私が言った論拠について反駁する資料がありますか。旧防空法関係は、非戦闘員が、一般民間人が財産防護のために、生命防護のために自主的にやったんだということで戦争犯罪の追及を逃げた経過がある。しかし、これは占領中だったから私どもはそのことについていまとやかく言っているのではない。しかしいまや全貌が明らかになって、国の命令で総動員体制がとられて、閣議決定その他でどんどん動員が行なわれた。その背景には、防空法や総動員法に匹敵するような権力動員の背景がある。こういうことについて論拠を明確にして、野党案について政府は尊重した態度をとってもらいたい、こういうことを主張いたしておるわけであります。私の主張は御理解いただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/84
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085・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 私は、冒頭に申し上げましたように、国家賠償という考え方は国と特別の権力関係にあった者を対象とするという法体系で進んでおりますし、そしてまたあの当時の戦争というのは、私が申し述べるまでもなく、すべての国民が巻き込まれておった戦争であったという事実は私は承知しております。しかし、総力戦なんということばも使われたことがございますが、そういう中にあって、特別権力関係と一般の統治関係にあったものというものの間には、おのずから差はあるのだというのが従来からの私どもの考え方でございまして、特別権力関係にあった者について国家賠償的な法体系をつくり、一般的な統治権の発動等として行なわれておった者についてはそれなりの社会保障的な考え方で行なう、こういう基本的な考え方をいまにわかに改めるという考えは持っていないわけでございます。しかし、先ほども申し上げているように、その実態というものを考えてみれば、原爆の問題とかあるいはアメリカとの請求権の問題とか、あるいは総力戦であったというふうな問題、あるいは放射能による疾病の医療について非常に特殊的なものがあるとか、いろいろなものを考えて国家賠償と社会保障との中間に位置づけるものではないかということを私は申し上げておるわけでございまして、特別権力関係と一般の権力関係というものは分けて考えるというのが今日までの私どもの考え方である。それをいまにわかに改めるということはできませんと、こう申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/85
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086・大原亨
○大原委員 私が言っているのは、特別権力関係と一般権力関係について差別をつける理由はないではないか、特別権力関係ではないか。たとえば国民義勇隊は、昭和二十年三月二十三日に閣議決定でやったやつは早くから総動員法と同じように現行援護法の対象にしておるわけです。しかし、総動員法に匹敵する防空法については、陣地の構築から敵前上陸に対応するまで全部あったじゃないか。軍の命令であるいは警察の命令でぱっと動員する体制にあったじゃないか。そういう組織もできておったじゃないか。ましてや義勇兵役法というふうな、ものすごい兵役法に匹敵するような法律が六月にはできておるではないか。そういうことが戦後の特殊事情で明確にされなかったので、一般権力関係ということで埋没しておるけれども、まさにこれは特別権力関係ではないか、こういう議論を立法論としてやっておって、その一部が逐次実現ができておるわけです。私は、原爆についてはまずこれについて踏み切るべきであるということを主張いたしておるわけですが、この点について、どうするかということは別として、あなたの法律の理解としてはいかがでしょう。
もう一つは、社会保障と国家補償についてそれほど議論を私はしないのです。社会保険か社会保障かということで、保険料を払ってお互いの相互扶助をやるか、あるいは一般財源でやるかということで議論いたしましたが、しかし、ここで社会保障か国家補償かという議論は、国家補償は広い意味における社会保障ですから、一般財源でやるということですから、全部国民でやるということですから、あなたの議論の趣旨はわかるけれども、そういう議論には私はあまりとらわれていない。ですから、私は立法論では特別権力関係ではないか。たとえば六十五歳以上あるいは十四歳以下は権力関係になかった、こう言うのならいいですが、しかし、一緒に生活しておったわけですから、問題はこれを離れて処理もできぬということがある、特別権力関係ではないかということを私はいままでずっと論争してきたわけです。私が言っている点はわかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/86
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087・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 なるほど国家総動員法なり防空法なり特別権力関係に編入されたものについては、国家賠償的——そんなことばも使わぬでいいです。戦傷病者援護法というものによって今日まで措置をしております。しかしながら、原爆の被爆者の方々というものは、総力戦といわれたんですから、そうしたいろいろな法体系がかりにあったにしても、特別権力関係の中に入ったということはない、かように私どもは考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/87
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088・大原亨
○大原委員 あなたはその特別権力関係になかったということをどういうことで結論づけるのですか。私が言っているのはまさに特別権力関係ではなかったか。そのときに差別することはできないのじゃないか。ましてや雇用関係で月給をもらっていなかった、報酬をもらって働いていなかった、しかし、そういうことであるならばそういうことであるだけに、より厚い援助をすべきであるというのが、準軍属と軍属の処遇を一体化した今日までの援護法の経過なんです。ですから、そういう精神でいくならば、まさに特別権力関係であるのではないか。それを否定する材料はないじゃないか。それを実態と法律関係を明確にしなさいということを援護法のときに追及いたしまして、あなたがいないときでしたが、そこで附帯決議をいたしておるわけです。特別権力関係でなかったという論拠についてのあなたの答弁では、私の質問に答えている答弁ではない。その施策をどうするかということは別として、私が言っているまさに特別権力関係であったのだ、防空法にいたしましても、一年以下の懲役があったわけです。あるいは千円以下の罰金があったわけです。いまのお金に直せば四、五十万円でしょう、七、八十万円かもしれない。そういうことがあったわけです。閣議決定でも何度もやったのです。閣議決定でやったものも国民義勇隊の場合は援護法の中で準軍属も軍属と同じ処遇をしたわけです。ですから、特別権力関係の問題としてはこれを差別する理由はないじゃないか、しかも放射能の被害の特殊事情、原爆の特殊事情、そういうものを加味した特別立法を原爆被爆者援護法でつくるべきではないかという、そういう議論、その私どもの議論は議論の問題として、こういう主張を大臣は理解をすることができると私は思っておる。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/88
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089・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 国家と特別な権力関係に入るか入らぬかということは、国家とその個人との間に何らかの行為がなければならぬわけでございましょう、何らかの行為が。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/89
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090・大原亨
○大原委員 あると言っているのだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/90
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091・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 それは私はあったとは認めることはできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/91
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092・大原亨
○大原委員 なぜ認めないの。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/92
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093・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 何にもなかったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/93
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094・大原亨
○大原委員 あなたは、警防団、医療従事者はどういう行為がありましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/94
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095・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 それぞれの法令に基づく従事命令書なり医療関係の何とか指定とかなんとかいろいろありましたね。ああいうふうな令書がいっておるとか、あるいは包括的な令書がいくか、個別的な令書がいくかは別としまして、そういう従事令書がいくとか、いろいろな国家の行為、国家と本人との間の何らかの行為があったはずでございます。一般の市民との関係にはそういうものはなかったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/95
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096・大原亨
○大原委員 とんとんとんからりと隣組というのが戦争中の歌の中にあるけれども、町内会は内務省訓令によれば、補助機関だというふうに終わりには規定したのですよ、明確に。町内会とか隣組とか職場においては防空戦闘隊をつくったのですよ。私は東京で職場に、新聞社におりましたけれども、つくったのですよ。そして包括的に名簿を防空本部に出して警察と軍が監督したのですよ。そしてそれの命令に違反して離脱したりいたしましたら処罰の規定があったのですよ。ですから個別的、包括的にも特別権力関係にあったというふうに考えても私は法律上は何ら疑惑はない。ましてや義勇兵役法施行令の問題は議会で制定したのですけれども、勅令その他について明確な点がありますか。私は特別権力関係の議論は議論としては卒業して、そして実態について究明するという議論の段階である。あなたは先般の援護法のときにおられなかったですけれどもね、そういうふうに言っておるのです。特別な権力関係あり、こういうふうに私は言っているのですよ。その主張は理解できますか。私は政策については言いませんけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/96
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097・八木哲夫
○八木政府委員 ただいま大原先生からお話がございました防空法関係の問題につきましては、確かに防空法上いろいろな意味で従事者はいろいろあると思います。しかし、先ほども御説明申し上げましたように、援護法の準軍属として取り扱っておりますのは、軍人軍属以外でございましても軍の構成員と同じように、現実の身分関係がなくても同じ程度の国の強制力なりあるいは関与というものが及んでおる。したがって身分はなくても軍人軍属と同じ程度の国の強制力が及んでおったという範囲の方々につきまして準軍属として処遇しているわけでございます。したがいまして防空法上におきましても、先般御審議いただきました警防団等につきましては、特別の従事令書がある等、いろいろな意味で身分関係があるのと同じように扱ってもいいじゃないかということで、準軍属の処遇の範囲に加えたわけでございまして、一般の応急防火義務者等まで、すべての国民まで対象にするということは、現在の援護法なり遺族援護法等のたてまえからいきますと、そこまでは無理であるというふうに考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/97
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098・大原亨
○大原委員 現在の政策についての説明はそれでいいんです。しかし私は法律論争をしているわけです。これから国会でどういう立法をしようかという法律論争をしているのです。旧防空法では一年以下の懲役と罰金について、応急防火を含めて、隣組や職場の防空を含めてきちっとそういう罰則があったわけです。罰則の適用があるのです。扶助規定もあるのです。広島、長崎はすぐどたん場で敗戦になったから実施しておりませんけれども、法律条件はあったのです、それはあるのです。ですから、ある意味におきましては、精神的なそういう雰囲気と一緒にむしろ大きな拘束を受けて戦闘に協力したということは当然のことなんです。逆に言うならば、国家は戦闘行為について責任をとる、いつ戦争を開始し、いつ終結するということについてあるのですから。もし三月にやっていれば八月六日のことはなかったわけでしょう。ですからそういう戦闘員、非戦闘員、一般権力関係、特別権力関係で議論をすることは、これは議論だけでは私はこの政策は出てこない。ですからこれは国家補償の精神で踏み切って、総合的に、申し上げたような点を判断すべきであるという理論的な根拠なんです。その根拠については理解ができますか。政策についてはともかく、政策はいま局長が申し述べたとおりです。議論として理解できますかと言っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/98
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099・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、国と特別権力関係を結ぶには、それなりの行為が必要であります。それらの行政行為があったかなかったかそれが問題で……。(大原委員「それがあったのですよ」と呼ぶ)私はあったとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/99
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100・大原亨
○大原委員 たとえば、包括的に命令をするということについての権力関係について否定する材料がありますか。私は資料がありますよ、そういう規定や資料がありますよ。たとえば国民義勇隊の場合だって閣議決定であったのです。調べてみましたら、私の広島が一万名ほどあるのですが、他の地域はなかったのです。国民義勇隊はほとんど適用者はないのです。国民義勇隊と警防団については、内務省と軍の間に長い間紛争があったのです。これは一体にすることということがあったわけです。だから防空法関係と義勇隊で総動員をするという関係は、終わりのころには一緒になったわけです。だから私が主張している点について、単にあなたはがんばるというのではなしに、政策の問題は別ですよ。政策は身分関係がなくても、戦闘下で協力したのは沖繩みたいなものがあるのですから、援護法の対象になっているのですから、沖繩はそうでしょう。身分がなくても軍人軍属でなくても戦闘の現場において協力したという事実があるならば、これは援護法の対象にしているのですから、まさに原爆が投下され、焼夷弾が投下されたという状況においては、戦闘状況ではないですか、敵前上陸があるという状況においては。だから実態的にも法律上も私は特別権力関係にありということを否定する材料はない、もしあるならば出してもらいたい、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/100
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101・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 どうも私とあなたと特別権力関係とか一般権力関係とか……。(大原委員「あなたが言い出したんじゃないか」と呼ぶ)私が言い出したことばなんですが、どうもはっきりしておりませんが、特別権力関係にあるということは、中身はどういうことかというと、身分的な包括的なものであるはずでございます。それにまた準ずるものであります。そういうふうな関係に入りまするためには、それぞれの行政行為というものがあって、国と本人との間に特別権力関係が結ばれておるわけです。そこで、特別権力関係と一般国民はどうあったかというと、一般国民は戦争遂行ということのもとに、一般統治権の発動としての法令の適用の中にあったことは事実なんです。これはすべての国民が法令のもとにあります。戦争遂行という目的のために制定される法令の適用の中にはすべてあります。あったことは事実です。しかし、それは私どものいう特別権力関係というものではないのです。特別権力関係というのは、身分的に、またはこれに準じたものにおいて国と本人との間に特別な包括的な権力関係に置かれているもの、それを私どもは特別権力関係と言う。それから一般国民はそういうふうな中にはありません。一般の統治権の発動として行なわれる法律体系のもとに一般国民は行動しておった。そのことが特別権力関係であると私は申しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/101
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102・大原亨
○大原委員 義勇兵役法とかそれから防空法とかいうようなものは、特別権力関係を規定したのじゃないですか。特別権力関係じゃないですか。法律で権利義務を決定して国の命令で動くようにしたじゃないですか。罰則がちゃんとついているじゃないですか。それを特別権力関係でないといってどこで議論が進展しますか。あなた、言い張っただけではだめですよ。実際の具体的な施策はどうするかという議論は別ですよ。別ですけれども、そういう問題点については、明確に私は国会の論争で理解した点を発展しなければ国会の審議の意味がない。あなたが野党の四党案を理解したということにはならぬじゃないか、こういうことなんです。こういうことについては、私はもう少し明確にこの問題について法規と実態を検討することを強く要求いたします。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/102
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103・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 もちろん法律などは十分私も検討いたしますが、防空法等において、先般来御審議いただきました戦傷病者戦没者遺族等援護法の中において特別な医療従事者の指令を受けるとかそういうかっこうにある者が、いわゆる特別権力関係にある、従事令書を受けたとか、そういうことを私どもは申し上げ、それを今度は軍人軍属と同じような取り扱いをしようじゃないかというところまでこぎつけてきたわけでございます。一般国民は、一般統治権の発動による法令のもとにおける一般的な権力関係にあったにすぎないものである、身分的なものではない、私はさように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/103
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104・大原亨
○大原委員 身分的なものではなくても援護法の対象になっておるのです、国家補償の対象になっておるのですよ。それは知っておるでしょう、あなたは。だからあの原爆投下という特殊的な問題と、それから戦闘状況における国家の責任と、それから権力服従の関係、そういうものから考えて、それぞれニュアンスはあるけれども、援護法について、私どもが国家補償の精神で立法するという障害になるようなものは一切ない。私はその点をもう一度、援護法の審議との関係で指摘しておきます。
これのためにかなり時間を食ったわけですけれども、この点は私どもは絶対譲らないです。あなたが一般権力関係、特別権力関係の議論を出したのです。統治権との関係においてすべて特別権力関係ですよ。閣議決定ですらなっておるじゃないですか。
それからもう一つは、援護法に踏み切る際に問題点はどういう点かといいますと、いままでの議論を集約してみますと、認定制度ということが一つ問題になる。認定制度というのは、原爆放射能に起因する因果関係が明確なものと、そして因果関係が否定できないもの、こういうものは認定被爆者というふうにして入れたわけです。もう一つは、特別被爆者の中で、認定患者以外の被爆者で、厚生大臣が指定した八つの疾病を今度は十にしますが、その指定疾病、いま約五万人あるのですが、健康管理手当の対象になる疾病です。これは放射能をたくさん受けた場合におかされやすい病気ということでしょう。第三は関連疾病です。関連疾病は治癒能力が劣っておるという特別被爆者の制度ですね。だからあらゆる病気については医療費を見ましょう、こういう制度です。だから潜在被爆者と顕在被爆者というふうに、われわれはよく議論するわけですが、顕在被爆者ということになれば、第一の厚生大臣が指定した疾病の問題だと私は一応思います。しかしその次は潜在被爆者でありますけれども、そういう問題点があります。
〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕
だからそういう人々を対象といたしましては、いま特別手当の制度があり、健康管理手当の制度があり、そして認定患者の中には介護手当と医療手当の制度がある。これを拡大をすべきではないか。医療の改善に伴って、所得保障的なものを、手当とつくか年金とつくかわからぬけれども、やるべきではないか。厚生大臣は被爆者年金——被爆者年金とわれわれが出しておるけれども、被爆者年金のうちで、被爆者で生存者についてはこれはまっ先に考えるべき問題である、こういうふうに言われたけれども、私はいまの制度をもう一歩踏み切って、これを国家補償というならば国家補償でよろしい。私どもは国家補償と呼ぶ。そういう点でやはり現存被爆者を対象とする、身体障害者年金等を含めて被爆者年金をつくるべきではないか、こういう点につきまして厚生大臣は、いままでの討論がございますから、大臣のほうからひとつ見解を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/104
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105・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 原爆被爆者に対する援護の道は今日まで、すでに御承知のように医療援護というものを中心として進めてまいったものでございまして、生活的な面というものを重視した考え方というものはあまりなかったわけでございますが、私も、今後とも生活の面に目を向けた援護の充実をはかっていく必要があるのではないかということで、実は今回初めて特別手当という制度を新設したわけでございます。
私がこういう制度を新しくつくろうという気持ちになりましたのは、いま申し上げましたように医療援護だけではない、やはり生活も考えてあげるという考え方、そういう方向にこれから進んでいこうではないかという一つのあらわれでございます。それが将来年金ということになるのかならないのか、それは私はいま何とも申し上げることはできません。ところが、いま申しましたように、年金とかなんとかいうことになりますと、国家賠償的な考え方になるではないかといったふうなことから、これは率直に言うてなかなかむずかしいと思います。むずかしいと思いますが、私はやはり生活の面に相当力を入れた援護というものに今後とも力を入れていかなければならぬであろう、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/105
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106・大原亨
○大原委員 国家補償の精神で芽ばえが出たとするならば——いまお話しのように四千名余りの認定被爆者の中で、一度認定された人に対して、認定疾病の状況がなくなっても七千五百円、一カ月間に手当を出す、こういうことについてやったことは、そういう国家補償的な考え方である、それから所得制限については、たとえば健康管理手当等についてもそうですが、所得制限はこれは撤廃すべきだ、年齢制限と一緒に所得制限は撤廃すべきだ。年齢制限の問題は四十五までいったのですから、いま三十歳まで、戦後三十年続いたのですからあとわずかです。厚生省の態度の決定もそうだったわけですから。だから私は、そういう諸制限を撤廃して金額を増大していくならば、医療手当や介護手当の処理の問題と一緒に考え方を脱皮していぐならば、国家補償という、そういう議論はともかくとして、これは国家補償的な、そういう制度になり得るわけです。野党案は十分これらを踏まえてつくったわけです。被爆者年金をつくったわけですから。その点は厚生大臣はよく理解をして処理をしてもらいたい。御了解いただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/106
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107・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 でございますから、私は国家賠償などということを言わないで、私はそういう考えを持っておりませんから、そうではなしに、従来医療援護ばかりであったのを、生活も十分見るような方向に見ていかなければならぬという考え方で今回の提案になったわけでございます。この点は大原委員十分御理解いただけると思うのです。そこで、私は今後ともこうした面をさらにさらに充実していく、これは絶対必要だと思っております。特に年齢の問題、所得保障問題、もう必要があったら年齢なども将来はもっともっと制限がないような方向に持っていくことは望ましいでしょう。さらにまた所得制限などについても、もうないことが望ましい、これは私はそうだと思うのです。しかし、いまにわかに従来の考え方を切りかえることは困難でございます、こう申し上げているわけです。年齢の問題なり所得制限の緩和の問題なりについては年々努力をしており、ことしはこの程度が適当ではないかということで御提案をいたしておるわけでございまして、今後とも私は、こういうふうな問題については前向きに——まあ、前向きにといってもおまえらのやり方はおそいじゃないかというおしかりをいろいろいただきますが、逐年改善のために努力はいたします、その充実をはかっていきます。しかも医療援護ばかりじゃなくて、生活援護のほうに目を向けながら、そういう対策についても年を追うて努力をいたしてまいりましょう、こう私は誠意を持って答えているつもりです。私は真剣にそう思っているのですから、今後ともそういう方向で努力をいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/107
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108・大原亨
○大原委員 これは野原委員長もかなり積極的な御意見です。戦後二十九年ですから、やはりこの際、原爆被爆者対策についてはいろいろな議論を寄せ集めて、質的に飛躍をすべき点は飛躍をして、そしてこれについて一応のめどをつけるべきときである、こういうのが私はコンセンサスだと思うのです、国民的な合意だと思うのです。だから、厚生大臣は、提案している政府の立場があるだろうが、しかし大臣は局長などとは違うわけだから、行政大臣であると一緒に国務大臣じゃないか。だから議論した上においては飛躍をすることがあってもいい。そういう決断をしなければ官僚と同じだ。だからそういうことのために議論をしているわけですから、いまやそういう点を総合的に考えて、そしてやるべきではないか。これは野党案はいろんな点で議論があればやってもらいたいけれども、しかし野党案はそういう点では非常に現実性を持った、背景を踏まえた決断であるというふうに私どもは確信をしておる。もちろんそれぞれ政府が執行する場合においては、実態の面等からもいろいろあるだろう。しかしこれはいろいろな実施の問題であるからそういう問題はともかくとして、基本的には原子爆弾の援護法をこの際総合的につくるという点においては決断をすべきときにきているのではないか、私はこういう点を強く主張いたしておきます。この点を理解をして政府は、厚生大臣は責任ある措置をとってもらいたい。答弁しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/108
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109・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 たびたび同じようなことばかり申し上げますが、皆さん方の提案につきましてはそれなりに私は評価をいたしております。したがって、皆さん方の御意見についても十分尊重をいたしまして、今後とも努力をいたしてまいりたい、こういうことを申し上げているんです。でございますが、ただあなた方とは考え方の出発が多少違うんですね。皆さん方はいわゆる国家賠償的な考えでこういうことをやれとおっしゃる。私はそこまではまだ踏み切れません。飛躍せいということをおっしゃいますが、そう私も飛躍できません。やはり漸進的に、目ざす方向は被爆者の生活を守るということであると私は思います。医療だけで十分でないということを私も十分知っているのです。でございますから、こういう法案を私も提案しているのです。でございますから、出発の角度は違っても、生活を守ろうではないかというその点については私はあなた方と意見は違っておりません。ただ、国家賠償的だ、こうおっしゃるから、それはそういうわけにはまいりませんぞ、いまにわかには賛成いたしかねます、こう申し上げておる。で、私は中身の充実には今後とも努力をいたします。こう申し上げておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/109
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110・大原亨
○大原委員 そこで今度は、時間も、いよいよ顔もそろったようだから私も努力しますけれども、具体的な問題についていままで議論がずっとありました。ほとんど出ております。一つは認定のしかたに問題があるのですね。たとえばいろいろな石田裁判等が起きているように、条件つきの認定というふうなことには問題があるわけです。原爆症自体についての真相がはっきりわかってない段階において、条件つき認定というのは矛盾ではないかということが一つ。
もう一つは、もう理屈は言いません、介護手当の支給については、範囲の拡大もさることながら、家族介護についても原爆の特殊性から見てこれは対象とすべきではないか。ただし書きを付しているやつを削除すべきではないか。実際上の運営ではそうすべきではないか。
それから第三の問題。これは大臣からひとつ答弁いただきたいのですが、原爆当時、八月六日、九日に胎内にいた胎児、被爆胎児の中で小頭症というのがあるわけです。知恵おくれです。それは二十九歳になりました。それを置いて親がこの世の中を去っていくわけだ。そういうこと等について、原則的な問題と一緒に、老人問題いろいろ議論になったけれども、そういう小頭症の問題等について、これはABCCはじめ、当時の胎児について放射能を浴びた人は因果関係がありといっている。そういう施設、生活保障、たとえばこまかい問題では、テレビをずっと見ているというわけだ、一日じゅう見ている。そういう人々に対しては、たとえばNHKの聴視料を免除するとか、そういうこまかなところに至るまでやはりやるべきではないかということです。
私はいままでの議論の中で三点を取り上げて、前の二点については政府委員、あとの一点については厚生大臣に御答弁をいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/110
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111・三浦英夫
○三浦政府委員 原爆症患者さんの認定の問題でございます。御指摘の点もあります。私どもとしても、疾病構造の変化あるいは老齢化現象等に伴いまして、認定のしかたにつきましても逐次それなりの改善は加えていっているつもりでございます。先ほど山田先生がおっしゃいましたけれども、昨年取り上げられました胃ガンの問題につきましても、距離等勘案いたしまして、認定患者に加えているような次第でございまして、今後ともその点につきましては関係の医学界とも相談しながら、前向きに取り組んでいくつもりでおる次第でございます。
第二点の介護手当の問題でございます。法律では家族には介護手当は出してはいけないと書いてあるのではなくて、御案内のとおり、実際に介護手当の支給がというか、介護手当の支弁が行なわれた場合には支給せよということに法律のたてまえはなっておるわけでございます。ただ現実の問題といたしまして、同居のたとえば配偶者であるとかあるいは扶養の親族であるとかいうような、生計を一にする場合には介護手当の支弁が行なわれていないだろうから、したがって結果として、そういう意味の狭い家族には介護手当は出せませんと、こうなるわけでありますけれども、たとえば生計を異にする親族、あるいは生計を異にした親とその子供の関係等においては、介護手当がもし実際に支給されれば介護手当を支給する、こういう仕組みになるわけでございます。ただ一律に家族に全部介護手当を支給せよということになりますと、介護手当の問題は、御案内のとおり生活保護その他諸般の制度とのバランスの問題がございます。むしろ原爆の医療関係は生活保護その他のあとからできた制度でございまして、そのバランスを考えながら対処していかなければならぬということから、家族に出した分まで全部介護手当を出しますというような法律改正にするということは困難かと思っておる次第でございます。
第三点の胎児の問題でございます。胎児につきましては御案内のとおり、被爆者の援護の体制に現在なっております。ただ、御指摘の施設その他万般の援護体制等の問題につきましては確かに不十分な点がございます。身寄りのないお年寄りの方につきましては養護老人ホーム等がつくられておりますけれども、こういう……(大原委員「老人じゃないよ、二十九歳だ」と呼ぶ)おそらくいま二十九歳ぐらいのそういう方々につきましてのそういう施設その他の施策の問題につきましては、長崎あるいは広島県当局に相談して、必要があれば適宜な施設等をこれから考えてまいりたいと思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/111
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112・大原亨
○大原委員 これで最後に厚生大臣の見解を求めますが、いままで国勢調査の議論もあったわけです、死没者を含めて実態調査。唯一の被爆国だというのだからやったらいいじゃないか、できないことはないじゃないか。この中でその議論と一緒に、復元調査というのは広島、長崎ではかなり進んでおりまして、ここにだれがどういうふうに住んでおって、どこへ行ったかということまで、追跡しようと思えばできます。もうほとんど地図は完成しておりまして、ここにだれが住んでおったかということはわかる。これをずっと拡大をしていきますと、そういう被爆の実態についてアプローチすることができる一つの大きな道です。これについては格段の努力をすること。それからいまの小頭症の問題、たとえばNHKの聴視料の免除の問題等もあるわけです。いつもじっとして外に出ないでテレビを見ているのだから。そのくらいはやってもいいじゃないかという議論があるわけです。そういうことについても厚生大臣は努力をしてもらいたい。
それから二世、三世の問題については、二世、三世も議論がありましたが、これは遺伝性ありという学説もあるわけです。しかし、断定はまだしてないわけです。たとえばABCCの調査を見ますと、五十年規模でやっているのですからまだ結論が出ていないわけです。しかし、これは調査の対象なんです。疑いありということでやっているわけです。ですから、そういう疑いがある場合には、健康診断は希望者にはする道を開く。それからそれに認定疾病あるいは指定疾病等の容疑がある場合には治療の機会を与える、そのくらいは被爆者とみなした行動として、結論を断定するわけではないわけですから、したがってこの問題についてはきちっとこまかな処理をしてもらいたい。
沖繩の問題については、専門委員を派遣しておることは、年二回非常に歓迎されている。しかし、沖繩の被爆者が今日まで本土よりもやはり施策がおくれておる。これについては何らかの治療の機会を与えると一緒に、援護の措置をとってもらいたいという要望がある。
こういう三点を私は最後につけ加えておいて、あとの問題はたくさんあるわけですが、それぞれ同僚の委員から指摘をされましたので、私は三点をあげまして厚生大臣の御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/112
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113・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 沖繩の問題につきましては、私も陳情を受けておりますから、十分ひとつ検討させていただきたいと思います。
それから二世、三世の問題、これはなかなかむずかしい問題でございます。しかし、大原委員がお述べになりましたように、疑わしい場合において健康診断の問題とか医療費の問題とか、こういう問題につきましても、十分前向きに検討をいたしてまいりたいと思いますし、それから胎内にあった子供がもうすでに大きくなってテレビばかり見ているというお話でございます。これは私は実情がどういうことになっておるかよく承知しておりませんが(大原委員「小頭症」と呼ぶ)それについては実情調査の上、NHKともよく相談をしてみたいと思います。
それから実態調査でございますが、国勢調査と一緒に付帯調査をするということは非常に困難でございますが、厚生省は厚生省なりに、昭和五十年度において原爆被爆者の実態調査というものを行なう計画でございますから、本年度からその準備のためのいろいろな調査をいたすわけでございます。どういう項目を調査するかといったふうなことについても、本年度中にはっきりきめまして五十年度にやっていく、こういうことでございます。この点については国会のいろいろな御論議も十分踏まえまして、必要なものについてはできるだけできるように調査を進める、こういうふうにいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/113
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114・大原亨
○大原委員 以上で私の質問は終わります。終わりますが、まだ触れてない問題もあります。これはわがほうの野党が出しました案を十分検討いただきまして、政府においてもしかるべく責任ある措置をとってもらいたい。いまやこの問題は、やはり二十九年たって三十年目ですから、国民的な合意の上に施策を質的にも前進させることが必要である。そういう面においては、きょうの大臣の答弁につきましては、大臣の勉強不足もあって十分納得できるものではないけれども、しかし、これは国会は国会の自主的な権威があるのでありますから、国会におきましてもそれぞれ議論をいたしまして、そうしてしかるべく対応措置をわれわれとしてもとりたい、こういうことでございまして、一そうの質的な脱皮、頭の切りかえを特に要求をしておきまして、厚生大臣いつまでやっておられるかわからぬが、しかし、やっておる以上は責任を果たしてもらいたい、こういう観点で厚生大臣に強く要望をいたしておきまして、私の質問を終わります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/114
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115・野原正勝
○野原委員長 この際、連合審査会開会に関する件についておはかりいたします。
ただいま本委員会において審査中の雇用保険法案、雇用保険法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、国有林労働者の雇用の安定に関する法律案並びに失業保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部を改正する法律案の各案について、地方行政委員会、農林水産委員会及び建設委員会より、連合審査開会の申し入れがありましたが、これを受諾するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/115
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116・野原正勝
○野原委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
この際、暫時休憩いたします。
午後一時三十六分休憩
————◇—————
午後三時二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/116
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117・山下徳夫
○山下(徳)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
先ほど申し上げました連合審査会の開会日時につきましては、関係委員長と協議いたしましたところ、あらためて公報をもってお知らせすることにいたしますので、御了承ください。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/117
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118・山下徳夫
○山下(徳)委員長代理 休憩前の質疑を続けます。石母田達君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/118
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119・石母田達
○石母田委員 私はきょう被爆者に関して四党が共同提案しております原子爆弾被爆者援護法案並びに政府提案について質問したいと思います。
初めに、先ほどから論議されておりますように、今回私ども四党が共同で提出したものは、いわゆる国家補償の立場に基づく被爆者の援護であります。これは被爆者の方々が二十九年間の念願でありまして、このことが法制化されて、法制局ともかなり煮詰めた検討を行なった現実的なものとして私どもは確信をもって提案をしたわけであります。これは何といっても世界にもないこの被爆者という大きな犠牲を受けられ、しかもいまなお犠牲が続いている。最近の中国地方の新聞を見ましても、老女、おばあさんが原爆症からくるいろいろな病気、そういうものを気にして自殺された記事が出ております。それによりますと、昨年の五月十三日付の遺書を持っておられた。一年近くの間そういう自殺を考えてこられたおばあさんの心境を考えますと、ほんとうにわれわれ国民の一人としても非常に悲憤にたえないところであります。
さらに、最近の報道によりましても、広島原爆病院の「四十八年の診療概況」を発表されましたが、これによりましても、昨年一年間の入院患者数は四百六十七人、これは前年より五十八人減少しておりますけれども、逆に死亡者は八十七人となって、同病院開院以来の最高の記録を示した。死亡者の内訳は、胃ガンが十九人、肝臓ガンが十七人、腸ガンが六人など悪性腫瘍が五十六人と圧倒的な数字を占めているわけであります。六十歳以上の死亡者が八五%を占めておる。こういう数字を見ましても、私どもはこの被爆者に対する国家的な援護というものが緊急な問題になっているということを指摘せざるを得ないと思います。同時に、毎年原水爆禁止運動の中でこの被爆者に寄せられる救援カンパその他の支持状況を見ましても、国民的な支持のもとに、こうしたことが一日も早く国会で実現してもらいたいということはいまや国民的な要求であると私は考えております。こういう立場から出されました四党の被爆者援護法について、先ほど厚生大臣から気持ちとしてはとか、あるいはまたいままでも努力しているというようなこととか、法体系の問題であるとか、いろいろ言われましたけれども、このような国家的な補償の精神に立った援護法という問題について、厚生大臣としては今日、将来とも全く考える余地がないということを言い切れるのかどうか、私は厚生大臣に初めにお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/119
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120・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 野党の皆さんが四党で原爆被爆者の援護法案を考え、国会に提出されておることは私も十分承知をいたしておりますし、皆さん方のこの問題に寄せられる熱意のほども十分私は理解をいたしております。したがいまして、皆さん方のこうした法案に対しては、私はそれなりの評価はいたしておるつもりでございますが、皆さん方の法案はいわゆる国家賠償の精神に立脚いたしたものでございまして、国家賠償ということになりますれば、国家に対し何らかの特別権力関係にあるということが前提でなければならないわけでございます。したがいまして、そういう考えから申しますならば、一般戦災者との調整をはからなければならぬという大きな問題がここにあるわけでございますので、もちろんその特殊性は十分理解をいたしておりますから、放射能を浴びたことによる医療の特殊性ということは十分考えておりますから、今日まで医療援護に関する特別立法をいたしておるわけでございます。したがって、生活の問題を考えるということになりますれば、国家賠償という考え方は私どもは賛成いたしかねるわけでございますので、私としては、たびたび、もう一年間私は同じことを言っておるのです。国家賠償と社会保障の中間的な位置づけをどうやってしていくか、これが非常にむずかしい問題でございまして、したがって、私どもはそういうふうな援護法という名前にこだわることなく、中身において漸進的に改善を加えるものは改善をしていく、こういう考え方に立つことが最も適当である、かように考えておるわけでございます。
特に今回私どもの提案いたしました法案は、特別手当という新しい制度を設けました。これはなるほど皆さんから言わせれば金額が少ない、範囲が狭い、いろいろなことをおっしゃいますけれども、新しい一つの方向を示したものである、私はさように考えておるものでございまして、今後ともそういう方向を目ざして、そういう医療だけじゃなくて生活を見る、生活を考えてあげるという一つの新しい方向を目ざして進むことがこの問題解決の最も適切な方向である、かように考えておる次第でございまして、皆さん方の法案に対しましては、いまにわかに賛成することはできない、かように申し上げておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/120
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121・石母田達
○石母田委員 先ほどの答弁と全く同じでありますけれども、私どもとしては、もう二十何年間、三十年近くたっているわけです。そして被爆者の方々が、今日の法律が制定された以後もいわゆるこうした国家的な補償の立場に立つ援護法を要求されているのには、やはりそれなりの根拠があるわけです。どうしてもそれに基づいた抜本的な改善をしてあげなければ、ほんとうに、あのアメリカの国際法違反の原爆の投下によって、しかもサンフランシスコ条約によってそれに対する賠償の請求を放棄した、こういう今日の事態にあたって、やはり国家がそうした人々に対する補償をするということは当然のことでありまして、特別な権力関係とかいうならば、当時の憲法あるいは最近よくいわれる教育勅語という中にも、なんじ臣民という形で、一つの大きな力によって国民が拘束されていたことを考えますと、その中から特別に軍人軍属だけを取り出すということの中に、私は、政府の政治的な、政策的な意図、軍国主義の復活に利用しようとする考えもその中にひそんでおる、そういう指摘をせざるを得ないのであります。
したがって、今後ともこうした私どもの出した援護法の問題について、国家賠償の立場に立つこの援護の問題については、何としても私は、国民的な運動としても今後一そう強力に推し進めますので、そういう中でぜひともいま言ったような考えを改めて、この援護法の制定を実現するように要求したいと思います。
次に私は、神奈川県の被爆者手帳をもらっておる方が三千五百九十三名、三月現在でございますけれども、その中で特別手当をもらっておる方が二人、医療手当をもらっておる方が二人にすぎません。認定された患者は十名であります。この八名の人々のいろいろの話を聞いてみますと、ほとんど全部といっていいほど所得制限にかかっているということであります。私は、被爆者でありながら、認定を受けながら、いまあなたが言われた、そうした手当をこういう所得の制限によって受けられない、こういうことはきわめて矛盾する。なぜこういう受給権者が少なくなってくるかということについて、政府としてもその改善というものについて考えておられると思います。特に、厚生省としては、省の要求としてはこの所得の制限の撤廃ということに通じる予算を計上されて要求をしておるけれども、大蔵省の段階でこれが実現しない、こういう話も聞いておりますけれども、その点も含めまして、厚生大臣のこうした問題についての御見解を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/121
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122・三浦英夫
○三浦政府委員 健康管理手当、特別手当等の所得制限の問題につきましては、本年度も、本人所得税額七万一千七十円から八万円に所得税額につきまして引き上げる、こういう改善措置を過般とったような次第でございます。なお、この所得制限につきましては毎年改善を加えてきておりまして、いま神奈川県の御指摘で非常に数が少ないようにおっしゃいましたけれども、私どもの所得制限をされておる方の数は、本年度の場合は、まだ改善したばかりでございまして、その統計数字はとっておりませんけれども、過去の傾向で見ますと二割ぐらいが所得制限を受けられる程度ではないかと思っております。なお所得制限につきましては、実は他の社会保障関係の制度にもすべて取り入れられておりまして、所得制限の緩和につきましては今後も努力を続けていくつもりでございますが、撤廃ということにつきましては、他の全体的な関連もございますので、困難かと思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/122
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123・石母田達
○石母田委員 私の質問の中で、厚生省としていろいろ検討されて、これまで予算に、概算要求かなんかの段階で出したけれども、実現してないという問題はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/123
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124・三浦英夫
○三浦政府委員 予算要求の段階になりますと、やはりいろいろなことを大蔵省と、これは政府内部の打ち合わせでございますので、いろいろなものを出してまいります。ただ、最終的に政府として決定します場合には、やはり被爆者の置かれた立場において何が一番優先さるべきかということで決定するようになるわけでございまして、所得制限の問題につきましては、他の、健康管理手当の増額とか、あるいはさらに基本的に大臣がおっしゃいました特別手当の新しい意味合いの創設等に比べますと、やはり他の社会保障関係の関連もあるので、ある程度の制限はやむを得ないということで、政府内部で最終的には意見が一致したような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/124
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125・石母田達
○石母田委員 その厚生省として考えられた中身というのは、所得制限の撤廃という方向ですか、それとも緩和というような性質のものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/125
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126・三浦英夫
○三浦政府委員 実は、所得制限をいつも所得税法で依存をしております。そういう関係で、所得税法の体系そのものが大蔵省の体系になるものでございますから、私どものほうで所得税額をこれだけにしたらこれだけ緩和ということが、なかなか私ども厚生省限りで予算要求のときにきめがたい点がございます。そういう関係から、一応大蔵省に予算要求しますときには、最終的には緩和ということですけれども、一応こっちのほうで所得税額を幾らにしてくれというようなことが、そもそも所得税額の体系が大蔵省の法体系になっておる関係からなかなかきめがたいというようなところから、最初の予算要求の段階では、撤廃というか、大幅緩和というか、そういう関係で大蔵省と折衝に入ったような経緯でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/126
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127・石母田達
○石母田委員 大臣も聞かれましたように、厚生省としてそういう努力も払っているわけですが、残念ながら結果として政府全体としてはそれが実現しないという状況であります。二割と申されますけれども、初めからもう所得制限があることを考えて、これじゃとてもだめだということで申請しない人もたくさんいるわけでございますから、そういう意味で、先ほど大臣が述べられた精神に立つならば、今後この所得制限の撤廃について、ぜひともこれまでどおりの努力を一そう続けられて、そうして政府全体として実現できますように、ぜひ厚生大臣のその点での御見解と御努力の決意を示していただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/127
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128・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 社会保障におけるこういうふうな制度につきましては、所得制限がないということは望ましいことではあります。しかしまた一面考えてみれば、国民というのは自分の生活は自分の力によって守るということがやっぱりこれは基本でなければならぬ、こういうこともあるわけでございまして、一挙にこれを全廃するということは非常に困難なものがあるとは思います。困難なものがあると思いますが、私はできるだけこういうふうな援護を受けられる方々の生活実態にふさわしいように、所得制限というものは緩和してしかるべきものである、大幅に緩和していくのが筋である、こういうふうに私は考えておりまして、年々努力をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/128
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129・石母田達
○石母田委員 こうした所得制限ということは、本来私は、いま出されたように、社会保障にとって、特にまた被爆者というような状況を考えますと、これは全く矛盾するものであるということで、私ども出した援護法につきましては、被爆者であるということで裁定を受けた人々については、年金についても、また医療、介護手当の諸手当を含みまして支給されるようにして、所得制限なしでやるということは、いま言った厚生大臣が目ざしている方向を一日も早く実現するということを法制化した内容でございます。こういう点につきましてもぜひ検討して実現をはかるために努力していただきたいと思います。
それから、三つ目の問題といたしまして、先ほどから出ています特別手当の問題であります。この特別手当の問題は、先ほどの神奈川県の資料にいたしましても、支給されている人がきわめて少ないという中で、今度新しく特別手当がいわゆる治癒あるいは症状固定の者についても半額七千五百円を支給する、こういうことになっているわけですね。この場合の治癒はわかるのですけれども、症状固定というのはどういう規定といいますか、定義といいますか、それをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/129
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130・三浦英夫
○三浦政府委員 従来ございました特別手当というのは、御案内のとおり、原爆症にかかって病気が現在進行中であるとか、あるいはまだ病気が安定していないというような状態で、これは結局のところ医師の判断によるところでございますが、医師の判断によりまして、一応治癒した、あるいは症状が固定したという場合には特別手当制度が打ち切られることになっておりましたが、そういう方々に対しても、今度は法律にありますとおり、死亡するまで七千五百円の特別手当を支給する、こういう仕組みになっておるわけでございますが、症状固定とかあるいは症状の見立ては医師の判断によっているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/130
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131・石母田達
○石母田委員 医師の判断なんですけれども、症状の固定というのはやはり一応の概念、定義があるんじゃないですか。その医師がかってに判断していいというんじゃなくて、こういうものは大体症状の固定だという基準といいますか、それはあるんじゃないですかね。もしあったらそれを聞かしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/131
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132・三浦英夫
○三浦政府委員 症状固定とか、あるいは症状が進行中とか、あるいは軽快をするとか、緩解をするとかいうのは、非常に医学的にはむずかしいようでございます。たとえば結核がどういう場合には症状が固定するとか、精神病がどういう場合に緩解するというようなことは非常にむずかしい判断のようでございますが、やはりその疾病疾病に応じて、専門の医師が長い経験から通常判断されているようなものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/132
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133・石母田達
○石母田委員 私のほうに、横浜赤十字の病院長を最近まで長くつとめておられた方で、服部達太郎という先生がいらっしゃいます。この方は全国でも有名な、いわゆる被爆者のお医者さんでございまして、被爆の当時、広島の赤十字病院の第二外科医長をやっておられた方です。この方は、自分の体験に基づいていろいろこういう「原爆 ある被爆医師の証言」というような、いろいろな本を出されている方でございます。この方のお話などをお伺いし、また、この本を読みますと、いわゆる症状固定というのは治療してももうそれ以上なおる見込みはない、それから、ではほっておくと悪くなるかというとそういうこともない、ただ、いわゆる症状の固定ということになるわけなんですけれども、そういうことが大体医者として症状の固定というふうに考えていいんじゃないか、こういうお話でしたけれども、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/133
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134・三浦英夫
○三浦政府委員 私ども大体同じように理解しておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/134
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135・石母田達
○石母田委員 そうした場合に、いろいろ専門家の話など聞きまして、また被爆者の方々にお聞きした場合に、この原爆症の一つの特徴と申しますか、いわゆる重い症状で固定化するという場合も考えられるわけですが、そうしますと、いままで特別手当をもらっていて、そしてそういう重い症状で固定化したという場合に、そうするといままでよりも半分近く、支給されるものが減額されるというような問題について、厚生省として何か対策を考えておられるのかどうか、それはやむを得ないというふうに思っておられるのか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/135
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136・三浦英夫
○三浦政府委員 私どもが考えましたのは、現在認定患者さんというのは約四千人ぐらいおられるというふうに大体把握しております。それで、現行一万一千円、今度改正をお願いしておりますのは一万五千円でございますけれども、現行の症状が現在おありの方で特別手当の支給を受けておられる方が、そのうちの約千八百人ぐらいとなっておる次第でございます。残りの二千二百名の方の中には、先生御指摘の所得制限に該当するような方もあると思いますけれども、所得制限というのは全般的に二割程度だとにらみますと、それ以外の方は、実は一ぺん認定患者さんになったけれども、症状が固定したりあるいは治癒したというようなことで、認定患者でなくなったという届け出がございまして、現在はそういう状態でなくなっておられる方でございます。実は、大臣のほうから言われましたのは、現在はそういう方々は特別手当あるいは医療手当の支給を受けておられません。そういう方々に新たに七千五百円を支給しようという制度でございますので、むしろいままで認定患者さんで、症状が固定したり治癒されたりした方で特別手当の支給を受けておられなかった方に新しく七千五百円を支給しようという制度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/136
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137・石母田達
○石母田委員 そうすると、こういうふうに理解していいのですか。私、こまかいことはあれですけれども、いままでもらってきた人には、症状が固定した場合でも変わりない、いまのお話ですとそういうことなんですか。いま七千五百円というのは、全部新しい人であって、いままでもらっている人が減額されるようなことはないということで理解していいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/137
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138・三浦英夫
○三浦政府委員 この制度は、現在改正案をお出ししている以前でございますと、認定患者さんが認定患者でなくなった状態になりますと、一万一千円の特別手当の支給があったのが支給を受けられなくなるという仕組みになっております。一万一千円の支給が打ち切りになるわけでございますけれども、今度は同じ状態になりますと、改正後は一万一千円が一万五千円でございますけれども、その半分の七千五百円を死亡するまで支給が受けられるという仕組みになるわけでございまして、その意味で、従来は支給の打ち切りであったのが七千五百円の支給が受けられるという改善策だと思っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/138
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139・石母田達
○石母田委員 もう少し……。こういうことでいいのですか。いまのままでいくと、認定がなくなれば実際打ち切られるものを、今度の場合はそういう人でも七千五百円が受けられる、これはわかります。で、いままでもらっていた人がそういう重い症状で固定して——固定したのはこれは全部認定がなくなるのですか。その仕組みについてちょっと話してください。そうだとすればまた話がわかるけれども、重い症状の方で認定がなくならないで、引き続き減額されるというようなことはないのかどうかということをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/139
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140・三浦英夫
○三浦政府委員 先生のおっしゃる重い症状というのは、医学的にどの程度かは別といたしまして、いわゆる重い症状の方はそのままやはり病気が固定したという意味じゃなしに、従来どおり特別手当等要医療の状態であるのが通常であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/140
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141・石母田達
○石母田委員 実際にはあり得ないと思うということでいいのですね。ないということで……。
それでこの中で、大臣も非常に強調されているように、そういう新しい特別手当をそういう治癒あるいは症状固定という方にも出すのだ。これはそういう状態が続く場合には終身出すということになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/141
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142・三浦英夫
○三浦政府委員 法律改正案の中には、死亡するまでと書いてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/142
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143・石母田達
○石母田委員 死亡するまでということは終身ということですね。それで終身そういうものを出すということは、金額の多い少ないは別として、その方の問題について、いわゆる大きな意味での年金化の方向を目ざしている一つの萌芽的だといいますか、道筋からいえばそういう方向へ踏み出したものというふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/143
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144・三浦英夫
○三浦政府委員 年金かどうかという意味じゃちょっとあれでございまして、いわば認定患者さんのような方は、一ぺんおなおりになっても、やはり精神的にいろいろな不安定なことをお持ちだろう。したがって、特別な保健衛生関係の費用も要るだろうというような配意から、新しい意味合いの特別手当を創設したということでございまして、実体的にはあまり変わりないかもわかりませんが、趣旨としては年金ということはあまり考えていない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/144
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145・石母田達
○石母田委員 私は、あなたたちが長い間の中でやはりそういう方向に考えざるを得なくなったということは、非常におそきに失していると思いますが、そういう方向に目を向けて、名前はどうにしろ、そういう実体的なものを考え出したということは一歩前進だと思います。しかし、その内容あるいはその方々が実際に受給されている数、そういうものについて、現在あるいは今後こうしたものを受けられるということは、いまの制度のもとではきわめて少なくなるんじゃないかということについて非常に危惧を抱くと同時に、今度の援護法の中では、私どもやはりそういうことを考えて被爆者年金というものを設けて、最低二万円あるいは最高二十四万円ということに、障害の程度に応じて差はつけましたけれども、そうしたことを考えて、こういう人々の生活保障というものを考えていかなくちゃならぬじゃないか、こういうことで援護法の中では明記してあります。
そこで、現行法で特別手当を受給されている数がわかりましたら教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/145
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146・三浦英夫
○三浦政府委員 約千八百名でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/146
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147・石母田達
○石母田委員 手帳を交付されている人は総数どのくらいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/147
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148・三浦英夫
○三浦政府委員 約三十四万名でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/148
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149・石母田達
○石母田委員 三十四万名のうち千八百名というのがいまの法の実態だと私は思います。これは先ほど厚生大臣から言われた努力の内容、そして二十九年間たっている今日、先ほど冒頭に申しました近藤ちかさんというような老人がなくなられた、また広島原爆病院が最高の八十七人の死者を出しておる、こういう現状に対して、私は法の適用というものがあまりにもきびしい、せっかくの法の精神が生きていないんじゃないかということをつくづぐ感じさせるような数字であると思います。この問題について、一体何がこういうふうに少なくさしているのか、もっとこの法の精神を受けさせるような問題について最大の困難は何かということについて、それに対する対策も含めて御見解を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/149
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150・三浦英夫
○三浦政府委員 特別手当は、原爆に直接起因する疾病におかかりになったいわゆる認定患者さんに限られている関係で、千八百人とかいうような数字になっておりますが、それ以外に、原爆に関連がある御疾病にかかっている方に、御承知のとおり健康管理手当という制度がございます。これにつきまして、まあ実際の人員は多少下回るかもわかりませんが、予算上約七万四千人ほどの健康管理手当の支給が行なわれておりますから、両方合わせますと八万近い数字になりまして、三十四万人の手帳をもらっている方の四分の一近い方々は何らかの手当をお受け取りになっている、こういうように理解しておりますので、認定患者さんに少ないというのは、そういう原爆の直接疾病の方だということからだと申しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/150
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151・石母田達
○石母田委員 いまはっきり言われましたように、そうしたものが出るというのはいわゆる認定制度の門が非常に狭い、そこに受給者が非常に少なくなるという、最も大きな原因があることがいま政府の答弁によっても明らかになったわけであります。そこで、私どもが原爆のこの援護法をつくる場合に非常に問題になったのが現在の認定制度であります。もちろん法ですから無制限にというものじゃない。しかし被爆者ということを考えた場合に、そういう一般的な概念では処し得ないものがあるんじゃないかということです。そういう中でこの全国の状況を見ましても、いわゆる認定というものが、たとえば昭和四十八年度の認定申請件数二百三件に対して認定は八十七件、四二・九%とまあ半分以下でございます。こういう数字一つ見ましても、現在の認定という問題であなたたちが一体どう見られているのか。被爆者ということから、そういう人たちに対して、法の精神をできるだけ生かして認定しながら法の適用を受けさしていくという点での努力、こういうものについて私は政府の見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/151
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152・三浦英夫
○三浦政府委員 四十八年度の認定のパーセンテージは確かに先生のおっしゃる数字のようでございますが、照会等で保留がございますので、それを加えますと結果としてはもう少し率が上がってくるだろうと思います。ただ、この認定につきましては純医学的な判断で行なわれておりまして、こういう関係の専門の医師によって認定が行なわれているわけでございます。先ほども山田先生の御指摘もありましたとおり、老齢化あるいは疾病構造の変化等によりまして、たとえば胃ガンの問題が昨年の国会で議論になりましたけれども、そういうように逐次認定が変わるといいますか、疾病構造の変化あるいは老齢化等に応じて、従来は認定されなかったものが認定されていくように方向としては行なわれているような次第でございまして、純医学的なものであると同時に、国会等の御意見につきましては、それが反映していくように関係の専門の先生方にも申し上げているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/152
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153・石母田達
○石母田委員 つまりその専門の医師というのは、原爆症の認定疾病については今度八つから十になったということですが、そういうものが一つの根拠になって認定の基準がきめられているわけでしょう。そのことですね。この原爆症の認定疾病の根拠というものは何かあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/153
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154・三浦英夫
○三浦政府委員 これは、原爆症と申しましてもその原爆症の特有の症状ということでなくて、白血病であるとかあるいは肝臓ガンであるというような、一般の疾病と原爆症の方々が特段変わった疾病ということになかなかなりにくいということでございます。結局のところ疫学的な判断であるとか、あるいは被爆地点から非常に近いところには白血病が多発するとか、そういうような観点から認定というものが行なわれているわけでございまして、三十二年にこの制度が発足し、この認定は原爆医療審議会というところがきめられるわけでございますが、その長い経験と医学的な専門の積み重ねによって認定が行なわれてきているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/154
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155・石母田達
○石母田委員 長い経験と医学的な蓄積というのは原爆には通用しないそうです。これは初めてであって、この理論というのは、これは一般でもそうですけれども、自分たちがこう確かめたものをもう一回実験して、そうしてそれが新たに積み重ねられて客観的なものとしていくというのがまあ普通です。ところが原爆に限っては、もちろん新しい実験なんてできるもんじゃない。こういうことからいろいろ自分たちの体験の中から出されて、新しい分野のものとして、特に原爆症は数年後にあらわれる、数十年後に遺伝としてあらわれるというようないろいろなそういうものですので、特に都築博士という方のいわれる原爆後影響症という形、原爆症そのものではないけれども、後にその影響によって続発したものと思われる白血病、再生不能性貧血等を称す、そうした原爆後遺症あるいは原爆後影響症というものを含めて考えなければならぬじゃないか。この点については服部達太郎先生も、自分の経験からいって、いわゆるそういう素因を持つといいますか、病気にかかりやすくなるとかいろいろありますから、これは必ずしもこれこれが原爆症だということはできないんじゃないか、こういう見解を出されているわけなんです。でありますから、そういう被爆者の認定をこの八つとか十とかいう症状だけに限ってやることについては、いまの医学の段階で、こういう特殊なものについてはやはり基準としてこれだけでやるということは非常に危険じゃないか。この点については私どもは非常に討論いたしまして、現状において被爆者と裁定された場合には、この認定によってどうのこうのというんじゃなくて、被爆者の方々がいろんな病気にかかられるというものは、結局そういう後影響症も含めましてやはりそうした症状が出るわけですから、そういう人については、いわゆる手帳を持っていれば医療給付を受けられるという内容にしたのはそういうことなんです。このことが現実にいろんな矛盾があるでしょう。あるけれども、被爆者全体の声を届け、また国としてもこうした人々に対するあたたかい配慮という立場から見ると、この認定制度というものが大きな障害になって、やはり魂のないような施策になっていくんじゃないか、こういうことであります。
こういう点について、その一つの具体的な実例として白内障の問題でいまいろいろ問題になっているわけですが、この白内障の患者で認定されるのは、何か手術ができるということに適合したものでなければならぬということがあるそうですけれども、これは一つの基準か何かで示されている方針なのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/155
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156・三浦英夫
○三浦政府委員 原爆後二十九年たりた今日でございますが、眼科の専門家のお話によりますと、いわゆる原爆症によるところの白内障というのは数年で一応症状が固定するものだそうでございます。現にその後、確かに水晶体の汚濁という白内障の起こっている方がございますが、眼科の専門家の話によりますと、それは原爆症の症状が進行したというんではなくて、むしろ老齢化とかそういう別の要因から白内障の進行が起こってきている、これが実態だと。したがいまして、原爆症に直接関連した白内障ということになりますと、原爆投下後から二十九年たった今日では通常は考えられないところだけれども、しかし現実の問題として白内障の進行ということに着目をすると、やはり認定患者さんとして救う必要がある、こういう観点から、医療審議会で進行しつつある方で取り上げている場合があるわけでございます。白内障というのは結局のところ、早期の場合には薬物効果もございますが、やはりある程度進行しますと、現在の眼科学界の意見によりますと、手術する以外には道がないようでございます。そういう関係から、手術を要する状態になったときに認定医療患者として取り扱うというような運用で行なわれているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/156
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157・石母田達
○石母田委員 きのうもいろいろ本を読んだり勉強しますと、やはりあなたの言われたような一定の固まりができないと手術ができない。それは症状としては重くなるということなんですけれども、そういう中で、そうしなければ認定しないということがどうしても私たち気持ちとしてわからないのですよ。ですから、基準の持ち方について一定の基準を設けられるというのはいいんだけれども、そうしなければ認定しないんだということについてもっと考えなければならぬじゃないか。いまのお話ですと、この審議会の原爆放射線による白内障の認定基準に関する参考意見ということで、中泉会長と植村案として、視力障害が高度であって手術療法に適するものであることというのが出されておりますけれども、これは一つの方針か何かになっているのか、参考意見ということのまま、あなたが言われた方向でやっているのかどうか聞きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/157
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158・三浦英夫
○三浦政府委員 その専門学者の意見を参考というか基礎にして認定が行なわれておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/158
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159・石母田達
○石母田委員 それはまだ確定的なものではなくて参考意見に基づいてやっている、こういうことですね。そうしますとこのあとに、「薬物療法の効果については一般的に否定的ではあるが、特にこれによらざるを得ない場合には、慎重に審議するものとする。」ということも含めてやはりその方針に基づいておられるのだろうと思います。そうしますと、あなたもさっきちょっと、初期の段階での薬物効果はあるかもしれぬけれどもというふうに言われておりますけれども、こうした内容について薬物効果、この薬の中には保険薬に収載されているものもあるそうですが、この薬物効果というものについてこれはないのだ、厚生省の見解はそうだというふうに聞いております。そうしますと、それもまた固定的な意見ではないというふうに理解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/159
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160・三浦英夫
○三浦政府委員 現在の専門の学界の意見によりますと、薬物効果というのは初期の段階でないと効果がないという、これは通説の学界の意見になっておるようでございまして、その説に従っておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/160
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161・石母田達
○石母田委員 これは参考意見で、それに基づいて審議会をやっているわけでしょう、審議会はやはり専門家がやっているわけでしょう。その中にちゃんとこういうふうに、「薬物療法の効果については一般的に否定的ではあるが、特にこれによらざるを得ない場合には、慎重に審議するものとする。」と、服部先生の見解もやはり自分の経験から見てこういうものだろう、だからケース・バイ・ケースで一つずつ見ていかないと、いまの段階では、全然ないのだというふうに言い切ってしまうのもこれはどうなのかということを言っておられましたけれども、この点については、この参考意見という先の部分は採用して、あとの部分は採用してないという状況なのかどうなのか、これをお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/161
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162・三浦英夫
○三浦政府委員 初期の段階においては薬物効果がある、それからある程度進行してこなければ、手術をしなければ医療効果が出てこない。これら二つの、先ほど申しました参考というか基礎というか、眼科学界その他専門学界の現在の定説になっておりまして、その定説に従ってやっておるような次第でございます。認定の一つの条件としましては、要医療ということが一つの条件だと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/162
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163・石母田達
○石母田委員 これは大臣に聞きたいのですけれども、そういうことで、法律にはいま言ったように医療を要するということなんですね。認定されてしかも医療を要する。その医療を要するというものの基準が、白内障の場合は手術するほどの固まった状況にならないと医療を要するというふうにならないのだ、こうことだそうです。これではあまりに法の解釈が——専門家ということでそういうふうに基準を設けておられるということですけれども、いま言われましたように固定的じゃない、一つの参考意見として出されておりますので、そういう審議会に対しても、この法の精神、いわゆる政治というもののこういう被爆者に対するあたたかい配慮、きめこまかい配慮という点で、この認定の問題における、視器障害というのはやはり原爆に起因する、あるいは後影響ということを考えますと非常に多い症状なんです。そういう中の一つとして白内障の方々が多いわけですけれども、そういう問題については政治的な考慮をも含めて、ぜひあたたかい配慮をやられるように指導していただきたいということを私は厚生大臣にお願いしたいと思いますが、厚生大臣の見解をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/163
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164・三浦英夫
○三浦政府委員 実は、この白内障の問題は、先生御承知のとおり、石田さんの関係ですでに私どもそういう理由で却下しまして、現在訴訟になっております。したがいまして現在の厚生省としては却下した理由ということで行政運営をやっていくわけでございますが、いずれにしても現在訴訟の係属中になっておりますので、その決定を待ちたいと思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/164
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165・石母田達
○石母田委員 だから、そういうこともあるから発言しにくくなるだろうと思って厚生大臣に聞いているのに、またよけいなことを言うから、厚生大臣あれですけれども、私は訴訟の問題で石田さんの問題どうしろこうしろということは、これは厚生大臣として言いにくいだろうから、一般的にいってこういうものについては、先ほど参考意見の段階ですし、それからあなた自身も参考意見のあとの部分も十分これは尊重すると言ったわけですから、そういうことからいうと、ここにやはり政治が冷たいか、あたたかいかというような問題が、これはあなたたちお役人の立場と違ってやはり出てくるわけですから、そういう点について、私は厚生大臣としてこういう白内障あるいは起因する後影響症等を含めまして視器障害、白内障害者の患者に対して、認定の場合にあたたかい配慮をする。そうした点について、ぜひとも配慮ある御見解をお願いしたい、指導をお願いしたいということについて、厚生大臣のほうからお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/165
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166・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 具体的に争いになっていることは別として、政治は常にあたたかい手を差し伸べることが本則である、かように私は考えておるわけでございまして、具体的な事例に即して常にあたたかく処理をしていく、これが私はやはり基本ではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/166
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167・石母田達
○石母田委員 白内障の問題についてもそうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/167
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168・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 そう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/168
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169・石母田達
○石母田委員 白内障についてもそうだということですから、ぜひやっていただきたいと思います。
もう一つ最後に、私は一般検診の内容の改善についてお伺いしたいと思うのです。
これは最近岩手県の資料によりますと、いわゆる一般検診を昭和四十七年の八月七日とそれから四十八年の二月十二日ということでの二回行なわれた結果が出ているのですが、計六十八名の人々が受けて、精密検査を要する者は一人もいないというふうに出ている。つまり、精密検査を要する者はいないということですね。異常なしということなんですね。ところがこの人たちの中に、同じ人も九人ほど入っているのですけれども、十八人の人が、いわゆる健康管理手当を受けるための診断をしたところが、そこには異常ありということで精密検査を受けているわけです。こういう問題を、健康管理手当を受けているわけですね、そういうわけで。そうすると、一般検診の中では異常なし、それでこちらの診断を受けると入っているということから見て、一般検診の内容について改善しなければならぬものが含まれているのじゃないかということを私は聞いたわけですけれども、この点について厚生省としては何か検討されているかどうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/169
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170・三浦英夫
○三浦政府委員 一般検診は、先生御承知のとおり問診とかあるいは聴診、さらに血沈の測定、尿検査、ふん便検査あるいは血圧検査等というような七項目に分けて行なわれているわけでございますが、この一般検査というのはいわばスクリーニングでございまして、一般検査であやしいと思ったものは精密検査のほうに振り向けるようになっておりますので、現在のところ、関係の学会等とも相談して、この七項目あれば一応スクリーニングとしては適当だ、こういうことになっておりますので、現在のところはこの七項目の内容で進めてまいりたいと思っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/170
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171・石母田達
○石母田委員 そのことなんですけれども、七項目というのは、そうすると全国画一的なものですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/171
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172・三浦英夫
○三浦政府委員 一応全国画一でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/172
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173・石母田達
○石母田委員 この横浜の日赤病院、つまり神奈川県でやっている内容を見ますと、ここに原爆患者用として検査項目が書いてあるのです。これはもちろん七項目も含まれまして、それ以外に血液像というもの、それから肝臓機能障害を調べる肝機と書いた項目があるのですけれども、服部先生の書いたものあるいはお話を聞きまして、やはり血液像というもの、特にこの好酸球ですね、そういうものを調べていくということがやはり一般検診の段階で必要なんじゃないか、そうしないと、いまやっている白血球、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリットというような、こういう血液の前の段階だけですと、いわゆる原爆症というようなありがちないろいろなものをやる上については、これだけではチェックできないという御見解なんです。
それでこの問題について、やはり実際の経験からいっても先ほどのように出て、しまいには被爆者の中で、一般検診を受けてももうだめじゃないかという人たちさえあって、初めから受けない方も出ているというふうに聞いているわけです。でありまして、それでは、一般検診のところが全体の門戸になっておるわけですから、ここでそういう状態が起きましては、その後のいろいろな法の適用を受ける上において非常に誤差を生じますので、この一般検診の内容をやはりこうしたところでやっているようにぜひ指導、改善していただきたい。特にいままでの見解から見て、その七項目でいいということでありますけれども、先ほどから何回も強調しますように、こういう原爆症というものは非常に不特定な、不安定なまたいろいろな形で出る、それについてまだ十分な経験の集積というものがないわけです。そして特にこうしたいろいろ努力されている方が、特に自分たちの経験を、体験を通じて得られた内容でこれがいいということでありますので、ぜひともこういう方向についての御検討をお願いしたいということを要望したいわけですけれども、この点についての御見解をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/173
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174・三浦英夫
○三浦政府委員 御承知のとおり、この検査項目は厚生省令できまっているわけでございます。ただ、医学は日進月歩でございまして、やはり検査というものもそれに応じて変わってくることもあると思います。いずれにいたしましても、現在はこれで大体いいのじゃないかということを専門家の先生方も言っておられますけれども、なお今後とも御指摘の点については検討を続けてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/174
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175・石母田達
○石母田委員 では、川久保病院というところでやったデータも出ていますが、これとか原爆について横浜日赤がやっているのを含めますと、大体四千円から六千円ということになります。ですから、いまきめている内容から見ると若干高くなりますけれども、この点については田中議員から関連して質問があると思いますので、私はいま言った一般検診の内容改善について、ぜひとも今後とも検討していただきたいということをお願いしたいと思います。
そして、援護法の問題に立ち返って、私ども四党としてこうした人々を全面的に被爆者として、われわれは医療、生活の給付ということをはかる援護法を提出しておりますので、この実現のために私たちは一生懸命国会の中でも外でも努力したいということを申し述べまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/175
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176・山下徳夫
○山下(徳)委員長代理 田中美智子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/176
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177・田中美智子
○田中(美)委員 私は被爆者の健康診断について質問いたします。
まず、いま全国の被爆者が定期検診を受けることになっておりますけれども、これは大体何%くらい定期検診を受けておりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/177
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178・三浦英夫
○三浦政府委員 御承知のとおり、定期検診は年二回行なわれておりますけれども、現在私どもで把握しております統計では、四十五年度で五一・二%、四十六年度で五二・九%、四十七年度で五四・九%の受診率になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/178
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179・田中美智子
○田中(美)委員 いまの被爆者の方たちの調査と少し数が違うようですけれども、この一番多いところで五四・九%というのはダブっておりませんでしょうか。同じ人がダブったり何かしているということではありませんか。少し数が多いように思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/179
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180・三浦英夫
○三浦政府委員 年二回でございますから、あるいはダブっているかわかりませんけれども、その統計は把握できていないような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/180
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181・田中美智子
○田中(美)委員 ダブった統計というのでは、何人中の何人が検診を受けていらっしゃるかということはわからないわけですね。一回しか受けない方もあるかもしれませんし、二回受けている方が多いと思うのです。ですからいま厚生省のおっしゃった数の半分とは言えないかもしれませんけれども、被爆者の方たちの調査によりますと、約三五%ぐらいというふうに言っているわけです。そういうところの数字をやはりもう少し、一人でも多くの方たちがこの検診を受けられるようにするということであれば、確実な数字というものをやはり厚生省は持っていなければいけない。この数字が大ざっぱで、二度受けたのも一度受けたのもみんな一緒にしてこれを約五四%なんというようなことは、そこにも私は非常に誠意を疑いたいというような感じがするわけです。今後この数字をできるだけ正確にしっかりと調べるような方策をとっていただきたい、これをお願いしたいと思います。三五%といたしますと、これは非常に少ないわけです。半分にも満たない。政府の大きな統計で二回した方を見ても五四%か五五%だ、なぜこんなに検診を受ける人が少ないのか、私は被爆者の方をたくさん知っておりますけれども、たとえば症状が固定しているとか、なおっているとかというふうに幸運にそうなっているという方でも、精神的には決して健康ではないわけです。常に、いつどうなるかわからない、そして何か話していても、自分の命はいつまでかわからないというようなことが、冗談まじりにもすぐ出てくるわけですね。そういうような状態から見ますと、検診というのは当然受けなければならないのに、なぜこんなに数が少ないのか、これは厚生省はどのようにお思いでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/181
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182・三浦英夫
○三浦政府委員 健康診断というのは、御承知のとおり身体に異常がない場合に行なわれるのが健康診断でございますが、おそらく被爆者の方々の中には健康診断でなくて、すでに身体に何らかの異常があるということで、診療行為として検診を受けておられる方も中にはおられるのじゃないか、こんなことも理由になったり、あるいは職場で検診を受けられるというようなこともあるのじゃないかと思います。
ただ、いずれにいたしましても、被爆者の健康ということは非常に大事なことでございますから、私どもも今後とも何とか健康診断を受けていただけるようないろんな方策は考えていこうと思っております。現に一つ御承知のとおり、交通手当の支給等のこともやっておりますが、特に精密検診の場合には交通手当の支給を受けておられる方が昨年で五万三千人もおられますから、精密検査になりますと、かなりの方が行っておられるのじゃないかと思うような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/182
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183・田中美智子
○田中(美)委員 精密検査の方に対するいろいろな配慮というのはこれは当然なことです。疑問が出てきているわけなんですからね。ですから非常に不安も大きいし、事実ほんとうに病気が進行していたらたいへんなことですから、やはりチェックするというのは、一般検診の中でチェックするというところで十分にしなければならないと思うのですね。いまの御返事ですと別なところで受けているかもしれないというふうな、かもしれないという形で放置されているのでは困る、やはりはっきりと、どうして受けていないのか、数字に出てこないのはどこでどういうふうに受けているのか、これをしっかり調査しなければ意味がないと思うのですね。ここが出発なんですから、一般検診というのは。
そういう意味で、私どもが被爆者の方たちや医者などのお話を受けますと、被爆者がいまの健康診断に対して信頼を持っていないというようなことを非常に言っていられるわけなんですね。これはいま石母田議員からありましたように、検診を受けても確かなデータが出ないのではないか。もう少し検診の幅を広げてほしい、そうしなければ受けたってこの定期のではだめなんだというふうなことも言っていらっしゃるわけです。
それからもう一つは、検診を受けに行く場合に、やはり人間ですから私たちもそうですけれども、病院に行ったときに親切に扱われるとかいやな顔をされないとか、そういうことというのは非常にわれわれは気になるわけですね。そういうようなことなどいろいろなそういう問題、それから勤務先の休めないというような状態から行きにくいとか、それから零細中小企業に働いていらっしゃる方ですと日給になりますので、検診に行きますと、そのとき賃金が減るだけでなくて、皆勤手当が減ってしまうというようないろいろなことがあるわけですね。こういうものに対して、東京、和歌山、広島、山口などでは、そういうときの手当を、それぞれ違いますけれども、一人一回について千円くらいのものを出すというようなこともやっているわけです。ですから政府がほんとうに受診をしてもらいたい、させなければいけないと思うならば、病院に行っても病院側が快く受け入れてくれるということと、それからそうしたいろいろな損失のある者に対しても補助を出すとかそういうことをしなければ、このまま放置していたのでは検診というものは決してふえないし、むしろ減っていくのではないかというふうに思うわけですけれども、たとえば奨励金のようなものを出すというようなお考えはないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/183
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184・三浦英夫
○三浦政府委員 現在の五四・九%の検診率がおっしゃったようにあるいはその半分のことになってしまっているのか、そういうことを含めて検診率の状況を私どもももう一ぺん実際を調べてみようと思います。調べまして、それによってこういう原因で検診が低いのならこういう対策ということで、まず検診の具体的な状況をもう一ぺんあらためて調べてから諸般の対策を考えたいと思っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/184
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185・田中美智子
○田中(美)委員 それでは早急に確実な調査をして、それが非常に少ない場合にはなぜ少ないかということで、それを少なくないようにするためのいろいろな方策を至急にとっていただきたい。至急といってもきのうあす原爆が落ちたわけではない。もう三十年もたっているわけですから、これはほんとうにこれから調査するなどということではおそいので、大至急その点をやり、その方策をしていただきたいというふうに思うわけです。
それからもう一つ、これは非常に大事なことですけれども、健康診断を受ける病院ですね。これはどこででも受けられるというわけではないことはもちろん御存じだと思いますけれども、非常に少ない。そのために非常に遠くまで行かなければならないということが出ているわけです。これはつとめていらっしゃる方やまた老齢になった方というのは、たとえ交通費が出たとしても遠くへ行くということは非常におっくうなわけですね。いますぐたいへんひどい状態になっているというときならば行きますけれども、われわれだって虫歯が痛いときには歯医者に行きますけれども、穴があいていても痛くなければ遠くまではめんどうだということで行かないわけです。ですからできるだけ多くの病院で検診が受けられるようにするということをやっていただきたい。
いまの私のおります愛知県では、検診を受ける病院が三十七カ所しかないわけです。名古屋市内だけで見ますと十四カ所しかないわけです。そうしますと一つの区に一つもないというところもあるわけです。そうするとほかの区まで行かなければならないわけですね。特に名古屋市というのはいま非常に公営交通の不便なところだもんですから非常に不便なわけです。タクシーに乗れば非常に高くつくということで、早急に病院をふやしていただきたい。これは都道府県が委託するということですけれども、これをふやしていただきたいと思うわけですが、これについては政府としてはどのようにお考えになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/185
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186・三浦英夫
○三浦政府委員 御承知のとおり、この健康診断の医療機関をどこできめるかということにつきましては、実際は都道府県知事の契約問題になってまいります。やはり医療機関も非常にお忙しいものですから、なかなか契約に応じてくれないところがあるわけでございますが、それはそれとして、もう一ぺん私どもも地域的なアンバランスがあれば考えて、それなりに都道府県に指導というかお願いをして、アンバランスの是正ははかっていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/186
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187・田中美智子
○田中(美)委員 いま忙しいから病院などがなかなか委託を受けてくれないというふうなおことばがありましたけれども、忙しいというよりも、検診をしても病院側としては収入にならない。いま診療報酬や何かで盛んに問題になっておりますけれども、そうしなくても医療の経営が非常に困難になるときに、これがむしろ赤字になるという状態、そういう状態を放置したままでは、どんなにお願いしても、たとえひまであっても、ひまということはないでしょうけれども、あってもなかなか委託を受けるということにはならないと思うのです。それを、ただ忙しいから受けてくれないのだという理解のしかたでは非常に困るのではないかというふうに思うのですね。結局健康診断の単価の問題ですけれども、いま甲表で九百八十円、乙表で千三十円ということですね。この中身がこれに書いてあります。七項目あるわけです。はたして千三十円でできるのかということですね。まずできるとお思いになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/187
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188・三浦英夫
○三浦政府委員 第一次の一般検診につきましては、保健所とかあるいは公的な病院にお願いしているわけでございますが、特に保健所についての九百八十円のほうは、都道府県でございますので、できるだけ御協力をいただくということになっておりますが、決して十分な単価とは思っておりません。従来からやってきていただいておりますので、何とかこれで御協力をお願いしていっているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/188
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189・田中美智子
○田中(美)委員 従来からやっているというふうにおっしゃいますけれども、いまは物価も上がっておりますし、そういう中でわずか千三十円ということで、病院側としては自己犠牲という気持ちで受けていらっしゃる。そういうことでは病院側がいい顔をしようと思っても、そういう患者さんにたくさん来られたのじゃ赤字になる。数が少なければ犠牲的精神でやろう。犠牲的な精神でやってやろうというふうな検診は患者から見れば非常にいやなわけですよ。当然な権利として受けるものですから、それを何か恩恵を受けながら受けるという立場に置かれる。それならば、何か症状が出てくるまでは検診は受けないというふうな形になってしまうわけです。
名古屋市の場合に、老人の検診があります。これは国から五百四十円の補助が出ておりますけれども、この検診というのは、被爆者の検診から見ますと七つのうちの三つをやっているわけです。これは、問診、聴打診というのが一つ、それから検尿と血圧、この三つです。この三つで名古屋市では千円というふうに見ているわけです。これでも病院側では十分でないと言っていますけれども、一応千円で老人の検診をやっているわけです。それを見ますと、これでは問診、打診とかいうのと血圧と尿検査と三つありますが、あと四つは、赤血球の沈降速度検査、血球数の計算、血色素の検査、便検査なども入っているわけです。この老人検診を見ますと、その四つを三十円でやれということになるわけですね。幾ら厚生省が——従来こういうふうにやっておりますし、協力してくれている人もあるのですから、これでやってくださいと言いましても、これはただ病院側の意思でなくて、被爆者自身考えても一般の人が考えても、老人検診が千円のところをあと四つの検査をくっつけて三十円だということは、被爆者に対してひどいんじゃないかという感じが出てくるわけです。どう考えたって三十円であとの検査が全部できるとは思えないわけですからね。こういう問題からして、いかに被爆者の検診の単価が低いかということはだれが見ても明らかだというふうに思うわけです。早急にこの単価を上げるということです。今度の中に上がっていませんね。精密検査のほうだけが百七十六円だけ上がっているわけですね。なぜ一般検診のほうは上げていないか。ここのところが一番大事なんですからね。症状が悪くなって精密検査をしてくださいという方はもちろんのことですけれども、チェックするというのは、やはり一般検診を十分にやるということが出発点なんですからね。ここのところでなぜ単価を引き上げなかったのか、このところをはっきりお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/189
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190・三浦英夫
○三浦政府委員 実は一般検診につきましては保健所等にもかなりお願いしております。そういう点で、確かに単価は決して十分とは申しませんけれども、むしろことし単価が低いという声が出てまいりましたのは、それよりも精密検査のほうが非常に低いという声がありましたので、そちらに重点を置いて大蔵省と予算折衝をして、精密検査の単価の額を引き上げたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/190
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191・田中美智子
○田中(美)委員 精密検査のほうが低い、これはもうひどいもんですよ。名古屋にあります「たから」診療所というところで、七二年、七三年と、二十二件、十六件というふうに精密検査をしているわけです。これは人によって少し違いますからね。平均しますと、七二年では一人五千五百七十七円かかっているのですね。それから七三年では三千六百二十五円もかかっておるわけです。それにもかかわらず実際の単価は二千九百十九円ですね。ですから、実際にこれだけ低いということは、もう話にならぬわけですよ。そうしたら、病院としては精密検査はいやがりますよ。これは精密検査をしなければいけないといえば、自分の責任になりますからね。そうしたら、これはもう一人に何千円の赤字になるわけですからね。ですから、いまのお答えは非常に不誠実なお答えで、不満だというふうに私思うのですけれども、精密検査のほうが非常にお金がかかるからこちらのほうに重点をしぼったということは、一般検診のほうはこのままでいいということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/191
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192・三浦英夫
○三浦政府委員 一般検診につきましては、保健所に御協力をお願いしている部分が非常に多い、何とか保健所のほうに従来どおり御協力いただきたいというようなことでやっておりますが、ただ私どももこれで十分とは思っておりません。また将来に向かって改善の努力はしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/192
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193・田中美智子
○田中(美)委員 保健所、保健所と言われますけれども、政府は保健所の数を減らそうとしている。いま検診するところをふやさなければならないということで、保健所をどんどんたくさんふやして、そこで全部検診ができるようにというなら別ですよ。保健所を減らしていこうとしているじゃないですか。そして、保健所があるから何とかというようなことで、将来に向かってと言っている。何べんも言いますけれども、きのう、おととい原爆が落ちたんじゃないですよ。三十年近い間、ほんとうに踏んだりけったりでこられた方たちをこのような状態に放置しておくということはもう話にならないというふうに思うわけです。
そういう点で大臣にお答えいただきたいと思うのですけれども、この検診の単価というものを早急に大幅に引き上げていただきたい。ことしいますぐこれを大幅に引き上げていただきたいというふうに思うわけですけれども、そのことについて大臣からお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/193
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194・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 単価が低いというお話でございますが、これはどの程度が適当なのか、私もほんとうははっきりわかりません。しかし従来ともこの辺でやってきておるわけでございます。要するに関係者の意見も十分聞いてみます。そうして、ほんとうにこれでやれないというなら、やっぱり引き上げざるを得ないでしょう。よく調べてみます。調べてみないと、これは低いのか高いのか、私もここでちょっと判断ができません。十分調査いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/194
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195・田中美智子
○田中(美)委員 よくぬけぬけそんなことをおっしゃると思うのですよ。三十年もたっているのにまだ調べてもみていない、適正かどうかもわからない、ぬけぬけそんなことを言えたもんだと思うのですね。あきれて話になりませんよ。
もう一度大臣に言いますけれども、原爆医療法の第一条に目的というのが書いてあります。これをもう一度しっかり読んでいただきたいと思うのですけれどもね。「被爆者が今なお置かれている健康上の特別の状態にかんがみ、国が被爆者に対し健康診断及び医療を行うことにより、その健康の保持及び向上をはかることを目的とする。」という形でこういうものがきめられているわけでしょう。このきめられている法文自体が足らないといっているのですけれども、これさえ十分にできないじゃないですか。精密検査のところだって、これは第六番目に「その他必要な検査」というのがあるわけです。ですから医者があれすればいろんな検査があるわけですね。それなのに単価を二千九百十九円に縛っておる。そして一般検診は老人検診より三十円多いだけだというようなことで、調べてみなければわからないとか、そんな返答は、ほんとうにぬけぬけとそういうことをおっしゃるというふうに思うわけですけれども、政府の被爆者に対する考え方の根本がいまの厚生大臣のおことばの中に非常にはっきりあらわれていたというふうに思うのです。三十年たってもこの単価が適切であるか、多いか、少ないかということがいまなおわからない。国会の場で質問されても、これから調査し、これから考えてみなければ、これから専門家の意見を聞いてみなければわからない。これは政府・自民党の被爆者に対する考え方の根本がいまの大臣のおことばにあらわれていたというふうに私は理解し、非常な怒りを込めてこの質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/195
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196・山下徳夫
○山下(徳)委員長代理 坂口力君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/196
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197・坂口力
○坂口委員 四党提案の援護法につきましてはけさからるる述べられておりますし、私、割愛をさせていただきたいと思います。
まず最初にお聞きをしたいと思いますのは、先ほどからもいろいろ出ておりましたが、認定疾病の問題でございます。被爆者の方々と一般の方々との間に疾病像にどのような変化を来たしているかということをまずお聞きをしたい。これは原爆が落ちました当時じゃなしに、現在におけるところの被爆者とそして一般の方々との間にどういうふうな疾病等の差が出ておるか、こういうことを先にひとつお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/197
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198・三浦英夫
○三浦政府委員 先生御専門家でございますのであれでございますけれども、御承知のとおり、原爆症なるがゆえの疾病の特徴というのはなかなか把握できないような状況になっておりまして、いま先生がおっしゃいましたのは、一般の方と原爆の爆心地から近いような方々と比較して疾病状況はどうだ、こういう御質問だろうと思いますけれども、そういう統計につきましてはさだかな統計はとってないような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/198
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199・坂口力
○坂口委員 決してそういうむずかしいことじゃなしに、たとえば高血圧が非常に多いとかあるいはまたガン系統の病気がほかの方よりも多いとか、そういうふうな一般的な問題でございますが、それもわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/199
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200・三浦英夫
○三浦政府委員 結局のところ、原爆の医療関係の法律の中で原爆症の特徴としまして白血病であるとかあるいは肝臓障害、こういうようなものを取り上げております。実は健康管理手当のところで現在八疾病を原爆に非常に関係する病気だとしておりますのが、本年度からさらに呼吸器機能障害あるいは運動機能障害というのをとらえてきております。いわば専門家の方々の間で、原爆を受けた方々にこういう疾病が多いということで運用されているというようなことでございます。特に白血病の方が非常に多いとかあるいは肝臓障害が多いとかというようなことになりますと、あまりそういう特徴的なものは見当たらないのじゃないかと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/200
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201・坂口力
○坂口委員 いや、そうではなしに、おそらく出ているであろうと思います。昨年もこの援護法の審議のときに議論になったと思いますが、特に被爆者の皆さん方が年齢を経るにつれまして、高血圧症あるいは胃ガンといった病気がほかの一般の方々に比べてたいへんに多くなっている、そういうお話が確かに昨年もここで出ました。そういう傾向が出ているというふうに私も聞いております。いまこまかな統計等をお持ちでないようでございますので、一度お調べをいただいて御報告をいただきたいと思います。
私、なぜこういうことをお聞きをするかと申しますと、認定疾病の問題について、現在の認定疾病の範囲が正しいかどうか、これでいいかどうかということが先ほどからずいぶん議論されました。この認定疾病の範囲が正しいかどうかということは、いわゆる原爆が投下されましてから約三十年たちました今日、その被爆者の皆さん方と一般の人々との間にどういうふうな病気の上の、健康上の違いがあるか、その違いを見て範囲を決定する以外に方法がないと思うのです。たとえば高血圧症が非常に多くなっている、あるいはまた胃ガンが一般の方々よりも非常に発生率が高いというような結果がもしも出ていたと仮定いたしましょう。そうしましたら、この問題については一応原爆による影響、直接ではないにしても間接的にしろ何らかの形で影響をしてそういう結果になってきたと、まあ疫学的には考えざるを得ないと思うのです。そういったところからこの認定疾病の範囲というものは考えなければならないのじゃないか、こう私は思うわけであります。この法律ができましてからもうかなりな年数がたつわけでございますが、この間この認定疾病の範囲は変わっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/201
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202・三浦英夫
○三浦政府委員 実は、認定疾病の範囲と申しますか、放射線に起因して起こるであろうところの疾病というものを、たとえば専門家の先生方が一応頭に置いておかれて、その後の高年齢層化とかその他症状の医学的な変化等によりまして即応した認定が行なわれておるわけでございます。
一例をとりますと、当初は胃ガンというようなものは認定疾病でなかったわけでございますけれども、最近では爆心地から非常に近い、二キロ程度のところに胃ガンの患者が出ますと認定患者として取り扱うというように、年齢層の変化とかあるいは疾病構造の変化等に対応した方法で認定が行なわれておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/202
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203・坂口力
○坂口委員 これは大臣にお願いしたいわけでございますが、いま申しましたとおり被爆者の健康診断の結果いろいろの病状が出ると思うのですが、一般の方々と非常に変わった病状を呈しますような場合、特にいま申しましたような特定の病気が一般の方々よりは明らかに非常に多いという形になってくれば、これはやはり一つの認定疾病として将来は拡大をしていく方向に持っていかないと、いままでの考え方だけに固定した考え方ではいけないというふうに思うわけでございますが、ひとつ大臣のお考え方を聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/203
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204・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 私もあんまり医学的な、専門的な知識は持ち合わしておりませんが、原爆被爆者は加齢現象が非常に強いということをいわれておるわけでございます。そういうふうなことから、被爆者の方々のかかる病気も二十年前と変わってくることはあり得ることだと私は思います。そういうふうな意味において、今後被爆者の方々が、放射能を受けたことに起因して起こるであろういろいろな病気というものは変わってくる、私はそうだと思います。そういう意味において必要に応じ、その範囲、病名の拡大といいますか変更といいますか、そういうことはあり得るのではないか、こういうふうに一般的に考えられます。しかし、私は医学の専門家じゃございませんから……。一般的にはどうもそんな感じがするわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/204
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205・坂口力
○坂口委員 先ほども健康診断の問題がずいぶん議論をされました。昨年もこの健康診断の問題に少し触れさせていただいたのですが、この定期健康診断一つにしましても、その定期健康診断の内容、何をやるかというようなこと、これも一般の方とそれから被爆を受けられた方との病状の差というものを中心にして、定期健康診断の内容というものも考えていかなければならないのではないかと思うわけです。先ほどの議論にありましたように、たとえば血液なら血液だけの内容をいまよりももっと深く掘り下げてやっていくという方向も一つございましょう。検査の項目がふえればふえるほど、それは精密でいいことは当然のことでございますが、しかし、これにも限度のあることだと思います。しかし、必要最小限度に何と何とを拾い上げて並べるかということは、三十年たちました今日、被爆者の皆さん方のからだがどういう状態に置かれているかということから、この内容というものは今後変えていかなければならない問題ではないかと思うわけであります。
そういう意味で、いまこの定期健康診断の中に並べられておりますものは血液の検査と尿の検査、血圧、そういったものが中心に並べられているわけでございますが、先ほど述べましたように、もしもかりに非常に胃ガンが多いというような結果になっていれば、これは胃の透視ぐらいなものはそれに加えるということは当然将来としてはやっていかなければならない。あるいは動脈硬化性の心臓疾患が非常に多いということになればそういったものを、たとえば心電図を加えるとかいうようなことを、この一般検診の中に加えていかなければならないだろうと思うのです。その辺のところの吟味というものがなされなければならないと私は思うのです。
去年も私、この問題を取り上げさせていただきましたが、こうして今年の改正の中に入っております。現在の被爆者の皆さん方と一般の方々との違い、その点を何とかして疫学的に追っていただいて、そうしてこの定期健康診断の内容というものももう一ぺんチェックをしてほしいと思うのです。御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/205
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206・三浦英夫
○三浦政府委員 現在定められております七項目のことにつきましては、これはやはり専門家の間できめられたものでございます。ただ、先生御指摘のとおり、被爆者の年齢の高齢化あるいは先ほどから申し上げているように疾病構造の変化等もございますので、やはりまた専門家の先生方によって再検討は当然必要だと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/206
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207・坂口力
○坂口委員 おそらく医学の専門家は被爆直後の状態を中心にして、現在の一般検診の検査項目等を定めたのであろうと思います。それから三十年の歳月を経ました今日、やはりどうしても今日に合った内容というものを検討していただかなければならない。これは現在の立場でそういう内容を一ぺん検討してくれということを言わないと、技術屋は技術屋としての立場だけでものを考えるという傾向もありますから、その点はやはり行政の場で、あるいは政治の場で改正を進めていただかなければならないと思うわけであります。それが
一つであります。
それから、次には具体的な問題で一例お聞きをしたいと思います。これはいま述べました健康診断とも関係をしてくることでございますが、この方は京都府の船井郡八木町字西田というところの平田孫市さんという方でございます。この方は明治四十二年一月十日のお生まれの方でございます。この方は原爆が投下されました翌日広島に帰りまして、一週間そこに滞在をいたしております。そこで消防団の救助隊員として仕事をいたしております。この人はすでに被爆者の健康手帳はもらっています。千九百四十号という番号になっております。この方が昭和四十八年の八月十七日付で厚生省の衛生局長あてに医療給付の申請をいたしております。ところが、これが却下されまして、現在異議申し立てをし、それが審議をされているという状態であります。この方は診断を京都大学で受けておいでになりますが、その診断書を見せてもらいますと、疾病の名称のところには「内分泌性機能障害による糖尿病」と書いてあります。そのほか高血圧があると書いてあります。「意見書」としまして高月先生というのが意見書を書いておいでになりますが、「因果関係の直接証明は困難であるが、経過が難治性であることに関係があることが推測される。」こういう結果でございます。因果関係の直接的な証明というのは困難である、こういうところからおそらく却下されたのではないかと思いますが、この先生も書いておいでになりますように、「経過が難治性であることに関係があることが推測される。」という一項目が下にも書いてあるわけであります。原爆によるものであるかどうかという判定は非常にむずかしいだろうと思うわけであります。しかし、こういうふうにいずれとも判定しがたいし、このなおりの状態からいってどうも関係がありそうだというようなものはこれはかなりあるだろうと思うのです。ところが、こういう人たちはいままで多くの人が却下されているという経緯がございます。これはどんなりっぱな法律ができましても、その運用上で、その線の引き方によってはその法律が非常に死んでしまうということにもなるわけであります。少しずつではありますが、せっかくこの法律が進歩していくにもかかわらず、実際にはなかなかその恩恵に浴されない、こういうふうな人々がほかにもたくさんおるだろうと私思うのです。こういうふうな却下された件数というのは一体どれくらいあるものか、もし数字がありましたらひとつお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/207
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208・三浦英夫
○三浦政府委員 まずいま御説明のありました平田孫市さんの件でございますけれども、確かにこれは原爆の医療審議会で否決になりまして却下しております。ただ、御本人のほうから異議の申し立てが出ておりますので、あらためて資料等を取り寄せまして、もう一ぺん検討してみたいと思っておる次第でございます。
それから、いまの第二点の認定あるいは却下の関係でございますが、四十八年度で見ますと、認定申請件数が二百三に対しまして、認定したのが八十七、却下したのが七十二、照会等で保留しているのが四十四になっております。したがいまして、却下したパーセンテージが三五・五%になっております。四十五年、四十六年、四十七年も大体同じような数字でございまして、三〇%から四〇%が、最近の傾向では却下になっておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/208
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209・坂口力
○坂口委員 これは却下するかどうかを、この審議会で決定されることだと思うのでありますが、どの辺までを拾い、どの辺までを落とすかということは、一応線があると思うのですが、現在のところ、疑わしきものは拾い上げるという方向なのか、疑わしきは落とすという方向なのか、一体どうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/209
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210・三浦英夫
○三浦政府委員 疑わしきものは拾うという観点で現在運用をやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/210
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211・坂口力
○坂口委員 疑わしきは拾われるという形なら、この人もおそらく私は拾われただろうと思うのです。と申しますのは、一応直接的な原因というのははっきりしない、これは当然だと思うのです。昨年のことです。もう二十七、八年もたってからのことですから、直接的な原因があるとはこれは医者も書けない。しかしながら、その下に、そのなおりぐあい等からいって、これはやはりその関係も推測はされるというふうにここの先生は書いておみえになるわけです。だから、疑わしきは拾うという形でいけば、この人なんかは拾われただろうと思うのです。ところが、この人は明らかに却下されておりますし、そしてこの人が言っておみえになりますのは、問い合わせとかあるいは電話とか手紙とかというものは一切なかった、全く紙きれ一枚で、だめだという返事が来ただけだ、やはりもう少し丁寧に、そういった場合には、そのときの状態はどうであったかというようなことをもう少し聞くとか、何らかの方法がとってもらえないであろうか、こういうことも申し述べてみえるわけであります。だから、いまは疑わしきは拾い上げるというふうに言っていただきましたが、ほんとうにそうなっているのかどうか、これはどの辺のところから拾うか拾わないかということも審議会にまかされておるわけでありますか。それとも皆さん方のほうから、この辺の疑わしいものはひとつ拾ってほしい、あるいはもうそれは落としてほしいとかというようなところを条件をつけておみえになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/211
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212・三浦英夫
○三浦政府委員 現在、審議会の運用といたしましては、全く原爆と関係がないという場合は却下しております。原爆とその疾病とがかなりの関連があるという場合には、拾うというか、認定にする、こういう運用でやっておりまして、その運用基準につきましては、厚生省側と審議会と意見が一致しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/212
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213・坂口力
○坂口委員 そうしますと、今後こういうふうな件数というのは、まだたくさん出てくるであろうと思われるわけです。そのときに、いまおっしゃったように、疑わしきは拾うという立場でぜひひとつ対処をしていただきたいと思うわけです。これは、それ以外に方法はないと思います。限られた方たでもございますし、私どもはどうしてもそういうふうにしてあげていただきたいと思うのです。原爆を受けられた方も、あれからもう三十年たちまして、かなり高齢化してまいっております。高齢化した上に、非常に動脈硬化が早いとか、あるいはガン等におかされるというようなことで、病気と貧困の悪循環を繰り返しているわけであります。こういうふうな人々にどうしてもあたたかい場をつくってあげるということになれば、これはこういうふうなできました法律をどうしてもあたたかい方向に運用しないことには、皆さん方にわれわれとしてのつとめが果たせないと思うわけです。ひとつ、くれぐれもその点お願いをしたいと思います。
それから、話が変わりますが、四十七年度末で被爆者の健康手帳の交付されておる人が三十四万六千八百四十三名、これは私のほうのいただいておりますデーター——合っているかどうか知りませんが、おそらく合っているだろうと思います。その中で、いわゆる認定疾病被爆者、これはやはり四十七年度末と思いますが、四千百五名。そのうちで、ざらに特別手当をもらっている人は千八百三十八名。全体の、健康手帳をもらっている人の中で、特別手当をもらっている人は〇・五%でございますし、認定疾病被爆者の四五%ぐらいに当たろうかと思います。特別手当を受けておみえになる方が全く少ないわけですね。ずいぶん少ないと思うのです。なぜこの特別手当の受給者がこんなに少ないのか、これには所得制限その他があるから少なくなっていることはもう当然なんですが、その点、所得制限以外にこの数を少なくしている要因は何かほかにございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/213
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214・三浦英夫
○三浦政府委員 先生の御質問の少ないという意味は、おそらく認定患者が四千百五名で、そのうち実際に特別手当をもらっているのは半分以下の千八百三十八人しかいないじゃないか、こういう御設問だろうと思いますので、その趣旨に従ってお答えさせていただきます。
一つは、確かに所得制限がございます。ただ、所得制限は二割程度でございますから、残りの方々は、認定は受けたけれども現在では認定の症状がなおった、こういう方々が、四千百人から千八百人にふえた中には含まれておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/214
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215・坂口力
○坂口委員 どのくらいでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/215
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216・三浦英夫
○三浦政府委員 私らの推定では、約千六百人ぐらいだろうと思いますけれども、それが実は、今度新しく創設いたします、疾病がなおっても七千五百円の特別手当を支給さしていただきますという内容になってきているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/216
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217・坂口力
○坂口委員 ところが、約千六百人あるといまおっしゃいましたが、その中で、これまた所得制限があるわけですね。所得制限にひっかかりますと、またほとんどがやっぱりもらえないということになるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/217
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218・三浦英夫
○三浦政府委員 私どもの現在の推定では、今度新たに、新規の特別手当七千五百円の対象者が一千七百六十人ほどと踏んでおりますけれども、そのうち一割ぐらいの百六十人が所得制限を受けて、結局一千六百名ぐらいの方が新しい特別手当の支給対象になるというように理解しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/218
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219・坂口力
○坂口委員 そうしますと、この所得制限の問題でございますが、これもいつも出ることでございますし、けさからも議論されたと思います。所得制限というのもあまりきびし過ぎやしないか、これはもう毎年毎年ここでおそらく議論されてきたことだろうと思うのです。このことについて、現在、この所得制限の問題を何らかもう少し緩和するような方向というのは検討されておりますかどうか、一ぺんひとつお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/219
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220・三浦英夫
○三浦政府委員 この所得制限は、御承知のとおり所得税を納めた額によって所得制限を設けております。四十八年度は七万一千七十円以上の年間所得税を納めた方が同一世帯の中にいる場合には所得制限をしますということですが、七万一千七十円というのを個人所得に換算いたしますと、約百七十万円ぐらいに当たってくるわけでございます。本年度は、それを改正いたしまして、七万一千七十円の所得税額を八万円以上の所得税額を納めている場合には所得制限の対象にいたしますということで、所得に直しますと一人の個人所得が約二百万円になってくるような次第でございまして、年々緩和策ははかっているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/220
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221・坂口力
○坂口委員 そのぐらいの変化ですと、インフレの世の中でございますから、そのくらいは自然に上がってきておるわけです。だから、いまおっしゃったぐらいの変化では、大体毎年同じぐらいなペース、あるいはちょっと落ちるかもしれない、私もその点詳しくわかりませんが、まあ大体同じぐらいじゃないかと思うわけです。もう少し線を上に上げるということをしないと、この特別手当を受けられる方というのはなかなかふえないと思うのです。
これはひとつ大臣にお聞きをしなければならないと思うのですが、いま少しずつは上がっているというふうにおっしゃるわけですけれども、このインフレの上がり方を考えますと、この額はえらい上がっているとは言いがたい額だと思うのです。これは何とかして今後もう少し上がる方向で検討をしていただきたいと思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/221
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222・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 所得制限の問題は、こういう特殊な方々に対しては撤廃してしまうというのが望ましいと私は思っているのです、ほんとうを言って。ただ問題は、自分の生活は自力で守らなければならないという社会における大原則があるわけなんです。そういうことからして、やむを得ずこういう制度を採用しておるわけでございますが、私は基本的には、そういう考え方から、やはりできるだけ緩和していくというふうにしなければならぬと思います。したがいまして、大幅な緩和といいますか改善といいますか、そういう方面に今後とも努力をしてまいりたいということを私ははっきりお約束申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/222
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223・坂口力
○坂口委員 大臣、今後ともと言われますと、いままでもずいぶん大幅のアップが続いてきたように聞こえるわけですけれども、今後はひとつ大幅な改善をしていただきたいと思うわけです。何も月に五十万も六十万もとっておみえになるような方にまで広げてほしいということを言っているんじゃないのです。そんな高額所得者にまで広げてくれとは言っておりません。ほんとうにぎりぎりの生活をしておみえになる、にもかかわらずこの所得制限のためにもらえないという方々がたくさんあるわけであります。この方々は、普通の生活だけでなしに、それに加えていろいろおからだの調子も悪い、仕事もできにくい、また、病院等にかかれば病院に払うお金以外にいろいろのことに要るだろうと思うのです。交通費もたくさん要れば、普通だったら飲まなくてもいいものの一つも買って飲む。あるいは栄養のあるものの一つもやはり用意をしたいというふうなことも思われるだろうと思うのでするそういうふうなことを考えますと、普通の人の所得の額ということだけを頭に入れて考えていただいておったのではいけないと思うのです。だから、もう少し被爆者の生活の実際をよく認識をしていただいて、そしてこの特別手当をもらう人がもっと広範囲にできるように、より前進をするように努力をお願いしたいと思うわけです。
それからもう一つ、続いて特別手当の問題でございますが、各種手当の中でこの特別手当だけが生活保護の収入認定になっているわけでございます。ただし放射能加算として月五千五百円が加算されておるわけでありますが、特別手当だけを収入認定にしているのはどういう理由からか、この点をひとつお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/223
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224・山崎卓
○山崎説明員 お答え申し上げます。
生活保護の制度は、無差別平等の原則に基づきまして、国民の最低生活を確保するという制度でございますし、かつ、他法、他施策あるいは個人の持てる資産能力を活用してなおその最低限にいかない場合に、そのいかない部分を保障する、こういうような制度でございます。一方、この原爆関係につきましての手当といたしましては、特別手当のほかに医療手当とか健康管理手当とか介護料とか、こういうものが出ておることは承知いたしておりますが、特別手当につきましては、その趣旨が生活の安定に資するためということでございますので、どうしてもやはり生活保護のたてまえ上、この点は収入認定をせざるを得ないということでございます。
他の手当等、たとえば医療手当におきましては、原爆患者の精神的安定をはかって、医療効果を促進するというような趣旨でお出しになっておるということでございますので、その種のものでございましたら、生活費との調整ということはいかがかというふうに考えて、収入認定から除外しておるわけでございますが、特別手当の制度の趣旨が、ただいま申したように生活の安定に資するということでございますので、制度としてはやはりこの部分は収入認定せざるを得ない。
ただいま先生おっしゃいましたとおり、放射線加算の問題がございますので、その限りにおきましては制度の趣旨がその部分で生きるような仕組みにはしてございます。
〔山下(徳)委員長代理退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/224
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225・坂口力
○坂口委員 これもひとつ大臣にお聞きしなければならぬと思うのですが、特別手当は一応生活の安定をはかるために支給されるということになっております。この生活の安定をはかるということは、いわゆる生活費にするということとはちょっと違うと思うのですね。生活費にプラスすることの、認定患者が健康上、生活上いろいろの悪条件のもとで生活をしていかなければならない、それにはやはり特別の出費もおそらく余儀なくされるであろう、こういうふうなことから、生活の安定をはかるためという意味でこの特別手当というのは出ておるのではないか。いわゆる生活費というものとは違うと思うわけです。だから、この特別手当というものが認定対象になっているというのは、やはりどうもおかしいように私は思うわけでありますが、大臣の御見解をひとつ賜わりたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/225
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226・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 その点は私は御意見があるところだと思いますが、一万一千幾らのあれの半分は生活に資するということで収入認定をするというたてまえにしておるわけでございます。しかしこういうふうな問題については、やはりいろいろ考えなければならぬ問題がたくさんあると私は思います。今後とも大蔵省とも十分相談しながら研究は続けてまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/226
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227・坂口力
○坂口委員 大蔵省とひとつ打ち合わせをいただいて今後考えていただきたいわけでありますが、やはり大臣のお考えがばっときまりませんと、大蔵省のほうもなかなか動いてくれませんので、まず大臣が腹をきめていただかなければ、これはもうどうにもならない問題でございます。この特別手当を、何とかしてほかの手当と同じような取り扱いをしていただきたいと思うわけであります。これは、先ほどからも何回か話が出ておりますように、特定の皆さん方でございますし、特にこの特別手当をおもらいになっておるような皆さん方というのは、肉体的にも精神的にも非常な御苦労をなすっている方々でございます。だからその点を十分踏まえていただいて、大臣のあたたかい英断をひとつ下していただきたいと思うわけであります。
ここでもう一つ問題になりますのは放射線加算でございますが、放射線加算はいままで五千五百円であったわけでありますが、今回一万五千円になるということになれば、これは当然二分の一ということになれば七千五百円になるのではないかと思いますが、この点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/227
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228・山崎卓
○山崎説明員 確かに、現在特別手当一万一千円に対しまして放射線障害者加算は五千五百円ということで二分の一になっておりますけれども、この額がどういうふうな額に将来なるべきかということにつきましては、なお現在のところ、中央社会福祉審議会の生活保護分科会のほうでも加算の問題等につきましていろいろと御審議願っているところでございますので、そういう御審議の過程等も参酌いたしまして将来善処してまいりたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/228
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229・坂口力
○坂口委員 ということは、来年度ということでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/229
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230・山崎卓
○山崎説明員 政府の提出しております法案が通りますると十月からの支給でございますので、まだ若干の時日もございますから、それまでの間には結論を出すように努力したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/230
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231・坂口力
○坂口委員 これは一方のほうが変わったのでありますから、こちらのほうはぜひそれまでにやはり早期に結論を出していただきたいと思うわけであります。お願いしたいと思います。
それから、これも実は昨年も私お聞きをしたわけでありますが、特別手当とそれから健康管理手当と二つあるわけでございます。この特別手当のほうは、いま申しましたとおり生活の安定をはかるために支給するということになっております。それから健康管理手当というのは療養生活の安定をはかるためとこうなっている。これは全く内容が違うと思うのですね。これは特別手当と併給はしないということに一応なっておりますけれども、併給ということがあってもいいように私見たときに思うのですが、これはどうでございましょう。内容は全く違うと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/231
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232・三浦英夫
○三浦政府委員 先生のお話は、特別手当と健康管理手当の併給があってもしかるべきではないかというような御意見かと思いますが、実は特別手当につきましては医療手当との併給を行なっております。したがいまして、健康管理手当というのは、特別手当が原爆に直接起因する疾病の方でございますし、健康管理手当をお受けになるような方は原爆に関連する疾病におかかりになっている方でございますので、そういう意味合いでは特別手当と健康管理手当の併給というのはちょっと困難かと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/232
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233・坂口力
○坂口委員 そういたしますと、健康管理手当と医療手当との併給はできるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/233
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234・三浦英夫
○三浦政府委員 現在医療手当の制度は、原爆に直接起因した疾病におかかりになっているいわゆる認定患者さんだけに支給することに定められておりますので、健康管理手当と医療手当の併給制度はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/234
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235・坂口力
○坂口委員 そういたしますと特別手当と医療手当との併給はできるということでございますね。わかりました。
以上幾つかの点、お願いをいたしましたが、大臣に重ねて最後にお願いをしておきたいことは、いずれにいたしましても現在つくられておりますこの法律が、少しずつではございますけれども年々前進を重ねているわけでございますが、しかし、われわれから見ますとあまりにも前進のスピードがおそ過ぎるというようなわけで、全く考え方も論点も違いますけれども、野党四党案というものを今回出したわけでございますけれども、これは現在おそいながらも前進はしているというふうに私どもも認識をいたします。ただ、この法の運用について、先ほどからいろいろ申し上げましたように非常にきびしい運用がなされている。もう少しその法の運用をあたたかみのある運用をひとつしてほしいと思う。ここで御答弁を聞きますと、たとえば認定疾病の問題にしましても、疑わしきは引き上げるというふうにおっしゃるわけでございますけれども、現実にはそうなっていない。こういうふうなここでの皆さん方のお答えと現場とのかなりなギャップがございます。そういったことをぜひ今後なくしていただいて、現在ある法律だけでも十分にひとつ行なわれれば、いまよりももっとこれは前進すると思うわけです。その点を重ねて要望をしておきたいと思います。
では私、終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/235
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236・斉藤滋与史
○斉藤(滋)委員長代理 小宮武喜君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/236
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237・小宮武喜
○小宮委員 原爆被爆者の問題については、厚生大臣も非常に理解が深いために少しずつは改善されてきておりますけれども、そのテンポがわれわれ被爆者の立場から見ればどうもなまぬるいのではないか。もっと大臣も、思い切ってここらで積極的な姿勢を示してもらいたいという立場で私いまから質問を行ないます。
今回の原爆被爆者法の改正にあたっても、社会保障制度審議会では、この二つの法案の改正にあたってはおおむね了承するとしながらも、やはり昭和四十六年以降審議会でいろいろ審議するたびに、被爆者認定のあり方とかまた諸手当など、被爆者救済についてまだまだ不十分であるということを四十六年以降の答申でも、私持ってきておりますが、ほとんど毎年指摘されているのですね。そういうような意味で、今回の場合もそういうような答申が行なわれておりますけれども、これに対して厚生大臣としてこの答申を尊重する立場からすれば、もっと積極的な姿勢を示してもらいたいということでございますが、この答申に対して大臣としてどのような所見を持っておられるのか、この答申をどのような形で尊重していくのか、その点についてひとつ大臣からまず所見を聞いておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/237
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238・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 なるほどことしの一月二十三日付で答申をいただきまして、その中でいろいろ不十分であるといったような趣旨の答申をいただいておるわけでございますが、しかし、私としてはできるだけのことをしたつもりなんです。不十分の点は私も十分承知しております。おそらくこれで被爆者の方々が満足しないであろうということも十分わかっております。でございますから野党のほうから援護法が出たわけでございます。でございますから、私どもはこういう審議会の御意見は尊重するというたてまえをとっておりますので、今後の改善の指針として、御指摘のようなところに力点を置いて今後私は努力をしていきたい、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/238
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239・小宮武喜
○小宮委員 いま長崎市で原爆の復元調査をやっているのですが、これをやればやるほど、あらためて原爆の悲惨さというものが認識されつつあるのです。特に従来特別被爆地域、二キロ以内の惨状というのは、そういった調査に当たっておられる方々から聞きましても、いまさらながら、みんながこの問題をあらためて認識し直したということがるる訴えられているわけです。そういった意味で、そういった特に二キロ以内の方々からもいろいろな意見が出ております。したがって、その点についても若干質問をしますけれども、いま認定患者が特に訴えておるのは、認定患者である人たちは医療法によって無料になっているわけですね。ところが認定患者は、やはり国民保険に入って保険料を払っているわけです。そうすると法律で認定患者は——認定患者だけでなくて特別被爆者もみんな医療費は無料ですが、認定患者でありながら、法律でただになっておるのに、何で国民保険料を納めなければいかぬのかというすなおな疑問が出されてきておるわけです。だから国民保険に加入することはいいことですけれども、少なくとも認定患者については保険料を免除すべきだという声が非常に強く訴えられておるのですが、これに対してはどう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/239
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240・三浦英夫
○三浦政府委員 小宮先生におことばを返すようになって恐縮でございますけれども、認定患者さんを全額国費で医療を見る面は、認定の対象になった疾病になっている次第でございます。したがいまして、原爆に起因することと関係のない疾病、たとえば極端な例で申しますと、交通事故とかそういうのになりますと、認定の国費対象の疾病ではなくて、保険を支払った残りの自己負担分を公費で負担する、こういう面の医療費の制度が働いてくることになるような次第でございます。そういう関係でやはり保険を利用されることがございますので、そういう観点から、国民健康保険には加入していただかなければならない、こういう仕組みになっておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/240
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241・小宮武喜
○小宮委員 特別被爆者の手帳を持っていれば、国民健康保険と一緒に持っていけば、すべての病気が医療費は無料になっているのですよ。だから交通事故の場合は別として、それは原爆症の場合にのみ限られておるというような理解には私は立っていないのです。したがって、交通事故の場合は特殊の問題として、そういったこともあるから国民健康保険に加わっておったほうがいいじゃないかという問題にもなりますけれども、かりにその問題を抜きにしても、やはり原爆被爆者に対する、特に認定患者に対する国民保険の保険料をひとつ免除してもらいたいということが新たな問題として出ておりますから、その点について、そういう考え方を全然お持ちになっていないのかどうか。保険料を免除するかということで、あらためてひとつ考え直してもらいたいということなんです。だからいまの患者の病気の問題とかいろいろな関係は一応こちらに置いたとして、認定患者に対する国民保険料を免除してもらいたいというように受け取ってもらってもけっこうですから、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/241
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242・三浦英夫
○三浦政府委員 国民皆保険の体制のもとでございますので、非常に困難かとは思いますが、当該局が保険局になりますので、一度保険局と話し合ってみようとは思いますけれども、国民健康保険が全国民加入という制度、たてまえになっておりますので、非常に困難なことかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/242
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243・小宮武喜
○小宮委員 それで爆心地から二キロ以内の人たちは、かぜ引きでも何でも非常に病気にかかりやすいですね。そういう意味ではこの人たちは自分たちの健康に非常に気を使っておられる。特に年齢的にも老齢者が多いということで、その意味では栄養もとらなければいかぬとか、いろいろな気を使っておられるわけです。その分だけまたお金が普通の人よりは多くかかっているわけです。そういうような立場から、先ほどもここで出ておりましたけれども、やはり所得制限の撤廃の問題も強く訴えられておるのですが、所得制限の撤廃についてはどう考えておられるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/243
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244・三浦英夫
○三浦政府委員 所得制限に関しましては、本年度の四月から七万一千七十円の所得税額を八万円の所得税額に引き上げております。逐年緩和ははかってきているところでございますけれども、ただ社会保障制度というたてまえからいたしましても、所得制限の緩和は大臣の御指示もあり、今後とも緩和には努力していきたいと思いますが、撤廃ということになりますとちょっと困難かと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/244
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245・小宮武喜
○小宮委員 これは午前中も大臣が、私は一年間同じようなことを繰り返してきておりますと言っておりましたけれども、われわれはもう二十数年間、こうして毎年同じことを言っておるわけです。その意味では所得制限の問題も、まあ毎年毎年ちょっぴり上げておりますけれども、やはりこの所得制限の問題は本気で取り組んでいただきたいと思うのです。では、当然特別手当なり健康管理手当をもらえる人で、所得制限によってそれを受けられなくなっておる人は大体どれくらいおりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/245
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246・三浦英夫
○三浦政府委員 今度改正をいたしました八万円ではまだ統計をとっておりませんけれども、四十八年度の状況では、二割の方が所得制限を受けておられる状態になっております。八〇%の方が実際に手当を支給されているような状況になっている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/246
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247・小宮武喜
○小宮委員 その健康管理手当の問題ですが、これはぜひ特別手帳を持っておられる人に対しては実現してもらいたい。これは具体的にいろいろ予算の関係はありましょうけれども、特別手帳を持っておられる人が現在どれくらいおられるのか。特に特別手帳の対象ということばかりではなく、少し範囲を縮めてもけっこうですが、原爆の中心から二キロ以内に住んでおられた方で現存しておられる方は何人おられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/247
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248・三浦英夫
○三浦政府委員 原爆被爆者の手帳を所持されている方は、先生御承知のとおり三十四万でございます。ただ、先生御指摘の二キロ以内の方で現存されている方と申しますと、ちょっと二キロの数字は持っておりませんが、三キロの中で現存されている方は約十六万人という統計を持っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/248
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249・小宮武喜
○小宮委員 せっかくこういうような原爆医療等の特別措置法をつくって、何とかしてやりたいということで、特に最近厚生大臣は非常に熱意を持って取り組んでおるわけだから、少なくともそういった特別被爆者には、私は健康管理手当くらいは支給すべきではないかというように考えるのです。だから、特別被爆者に対する特別手当までとは言いませんが、健康管理手当は、当然そういった意味で自分の健康保持に対して非常に気を使っておられる人ですから、それだけまたよけいに出費も要るわけですから、ひとつこの点について大臣の、先ほどからうなずいておられますので、大臣はそうしますということで御答弁なされるだろうというふうに考えますけれども、ひとつこの健康管理手当だけについては何とか、ことしというのはもう予算がありますので無理ですから、来年からでも実現してもらいたいということを特に大臣に要望しますけれども、大臣、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/249
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250・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 私は、この健康管理手当の所得制限というのは、ほんとうに個人的には撤廃すべきだと思っているんです。ただ、国民というものは、自分の生活というものは自力のある者は自力によって生活をしていくという、これは人類社会の基本なんです。そういうことで、撤廃ということはなかなか容易ではない、私はこう申し上げているんです。
しかし、いまのように、ちょっと声を大きくして恐縮ですが、二〇%なんというのは私はおかしいと思うのです、ほんとうを言うと。二〇%のこの所得制限の関係によって、こういう恩恵を受けられない、私はほんとうに適当でないと思っているんです。せめて五%ぐらいならばやむを得ないと、私はそれだけの信念を持っているんです、ほんとうを言うと。五%ぐらいはやむを得ないが二〇%は多過ぎる、こういうわけだ。
そこで私は、来年度以降の問題として、五%というのを目標として——私は具体的に数字を申します。五%ぐらいを目途として今後努力すべきものである、こう考えております。御納得をいただいたと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/250
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251・小宮武喜
○小宮委員 その点はそれではもう、いま二〇%の所得制限によって受給できないという人たちに対しては、来年は五%ぐらいまでは縮めていきたいということで、ここでひとつ確認をします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/251
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252・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 大いに努力します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/252
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253・小宮武喜
○小宮委員 努力じゃなくて、ひとつやってもらいたい、せっかくここで大臣も言われたんだから。それは、努力するということも、大臣の言われることは、ひとつそれは必ず約束を守るということに通じておりますから、私はそういうふうに理解しておきます。
それから、いまの健康管理手当についてはどうでしょうか。その点もいまのようなお気持ちで、ひとつ前向きで答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/253
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254・三浦英夫
○三浦政府委員 御承知のとおり、現在の健康管理手当の制度は、原爆に関連した何らかの疾病にかかっておられる方、現在、御承知のとおり八種類の疾病でございます。本年度はさらに二種類ふやして、十の疾病にかかっておられる方に対して健康管理手当てを支給いたします。なお年齢につきましては、五十歳を四十五歳以上に改めたということで、法案の御審議をお願いしております。
健康管理手当の性格そのものが、やはりそういう原爆に関連した御病気の方が、何らかいろいろな栄養補給であるとかあるいは特別の交通費が要るというようなことからでき上がっている制度でございますので、そういう原爆に関連のない疾病におかかりになっている方まで健康管理手当の支給を広げるというような改正とかということにつきましては、非常に困難なことだと思います。
なお、年齢につきましては、今度四十五歳ということで御審議をお願いさせてもらっているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/254
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255・小宮武喜
○小宮委員 まああなたが言われることもわからぬでもないけれども、そういうようなことを言うものだから、野党としてこういうような援護法を出さざるを得なくなってくるわけです。議員立法でこういうような援護法をわれわれが出すということは、それはもうよくよくのことなんです。だから政府がこれを受けて、むしろ政府自身がやはり援護法的なものを提出するというような姿勢になってもらいたいと思うのです。そうしないと、この問題をまた毎年毎年出して、厚生大臣ももうあきあきしたでしょう、われわれ言うほうもたいがいあきあきしておるわけです。したがって、こういうふうなことを毎年毎年繰り返さぬでもよろしいように、少し援護法的な精神を盛り込んだ原爆対策をやはり打ち出してもらいたい、私はそう思うのです。だから、野党から出されたというのは政府もこれは恥だと思って、もう皆さん方が出さぬでも政府が出すから、そういうものを引っ込めてくれというぐらいの姿勢をここではっきり打ち出してもらえば非常に幸いだけれども、そこまではなかなか行けそうにもありませんが、そういったことで今後やはり——徐々に改善されておるということは非常に感謝しておりますよ。しかしもう一歩踏み込んでもらわぬと、いまの政府の考え方というのは、ここの中に閉じこもって、ここの中で何とかやりくりしておるだけの話で、もっとやはり発想を変えてこの問題に取り組んでもらいたい、こう思うのですが、それはまたあとで触れますから……。
それからもう一つお聞きしますけれども、被爆者手帳が今度特別と一般が一本化されたことは、これも長年の被爆者の声がようやく反映されたということで、これについてはわれわれも敬意を表します。これとても一年や二年で実現したわけじゃなくて、とにかく何年もかかっているわけですから、どうしてもテンポがおそいのですよ。だから、そういうふうな意味で、いま被爆者の問題については、手帳が一本化された、これは非常に敬意を表しますし、今度被爆者の地域拡大によって、長崎の隣接町村の長与と時津町が拡大されたわけで、これも敬意を表します。しかしながら、現実にはこれは厚生省の言い分としては、まだ健康調査も一回もしたことがないので、この実態が一つも把握されていない、したがって、結局、健康調査を無料でやりたいということにすぎないわけですね。だから、それはそれなりに、私もいつもむちゃを言っておるつもりはありませんが、健康調査をいつから実施するのか、それで、健康調査の結果いかんによっては長崎市と同様な取り扱いになるのかどうか、その点についてのお考えをお聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/255
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256・三浦英夫
○三浦政府委員 今度改正をお願いしております法律の施行期日が十月一日でございますので、十月一日以降すみやかに健康調査の実施をしてまいりたいと思う次第でございます。
なお、不定期の健康診断でございますが、その結果、もしも放射能に影響がある疾病であるということが判明したその患者さんにつきましては、その時点をもって、従来の特別被爆者、今度は被爆者と申しますが、そこの患者さんにつきましては、そこに組み入れられて、医療費あるいはさらに健康管理手当等の措置が当然なされるわけでございます。ただ、先生のおっしゃいましたその長与、時津を将来どうするかということにつきましては、その健康調査全体を見て、その両町村の全体的な様子を見て、最終的な判断を将来することになるのじゃないかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/256
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257・小宮武喜
○小宮委員 この被爆地域の拡大の問題ですが、これで長与、時津の両町は指定されたわけですが、さらに長崎市周辺で、これは長崎市内に入るわけですが、日見、東長崎、福田、式見、茂木、三重、深堀のこの七地区は、やはり長崎市内でありながらまだ指定されていないのです。このことについても、もうこの七地区の住民からは、ぜひひとつ被爆地域に指定をしてもらいたいという強い要請が行なわれておるわけですが、この問題について私昨年も、これは厚生大臣のところにもその書類を持っていっておったのですが、その後その問題は音さたなしということになっているわけです。したがって、この七地区について、現在、長崎市が、その当時の住民の健康診断をことしから行なうようになっております。そうした場合でも、長崎市で健康診断をやったその結果によっては、やはりこの時津、長与と同じように、被爆者の認定地域として指定するお考えがあるのかどうか、その点をひとつお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/257
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258・三浦英夫
○三浦政府委員 このたびの改正で、いわゆる手帳の一本化をお願いしております。これが通過いたしますと全部被爆者一本になるわけでございますが、その際になおアンバランスがあってはということで、当分の間ということで、健康調査の対象地区を政令で定めるようにするように改正をお願いしておるわけでございます。
それはそれといたしまして、やはりなおアンバランスがあるかどうか等につきまして、広島県及び長崎県両県に対しまして、ことし中にアンバランスがあるかないかということを一ぺん調査してもらいたいということをお願いしておりますので、その両県の結論を待って、適宜な処置をとっていきたいと思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/258
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259・小宮武喜
○小宮委員 これはもっと先に質問したらよかったと思うのですが、今度の特別手当も現行一万一千円から一万五千円に引き上げられておるし、健康管理手当についても五千円から七千五百円に引き上げられているわけですが、引き上げ幅について一万五千円にしたとか七千五百円にしたというのは何か基準でもおありですか。ぼくらは引き上げ幅が少ない、いつもこう言うと、厚生大臣はいや五割上げましたの三割上げましたのと、いつも何割上げたということだけ強調されて、非常に大幅引き上げをやったということを言われておるのですが、何かそういう、ただ単なる一万一千円から一万五千円にしようじゃないかとか、五千円だから七千五百円にしようじゃないかというようなばく然とした考え方で引き上げておるのか、それとも何か根拠があって、これだけにしようというふうに考えられておるのか。ぼくらはもっと引き上げるべきだというような考え方に立っておるわけですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/259
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260・三浦英夫
○三浦政府委員 健康管理手当の七千五百円につきましては、当面老齢福祉年金を一つのめどにさせていただいた次第でございます。なお、特別手当を一万五千円とさせてもらっておりますのは、健康管理手当の倍程度がふさわしいのではないかというような判断で一万五千円にして御審議をお願いしてもらっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/260
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261・小宮武喜
○小宮委員 そうすれば、来年は田中総理も老齢福祉年金は昭和五十年は一万円にしますということをはっきり言っておるわけです。それで、ことしが七千五百円ということになっておるわけですが、われわれは、老齢福祉年金だって七千五百円をなぜ一万円に上げるのかという主張もしましたけれども、そうしたら、これは田中総理自身も厚生大臣も、予算委員会でも昭和五十年には一万円にしますということを老齢福祉年金については言明しておるわけですから、そうすれば来年は健康管理手当は一万円になる、そうすれば二倍で特別手当も二万円になるというふうに理解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/261
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262・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 福祉年金については申し上げました。それからまた、そういうこともにらみながら今回の改正をしたということを申しますが、それとこれとは同じじゃございませんから、必ずしも二万円になるというふうなことをいま私は約束はいたしません。しかし、そういう御意見のあることは私は十分わかっておりますし、十分尊重いたしまして、そういう方向で努力をいたしますということできょうのところは御納得をいただきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/262
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263・小宮武喜
○小宮委員 わかりました。それはいまなかなか大臣もはっきりそこまでは言えぬと思いますから、まあしかし大臣の努力を期待して、それくらいにします。
それから、沖繩の被爆者の問題です。御承知のように、沖縄の被爆者に医療法が適用されたのは昭和四十二年ですね。これはたとえアメリカの占領下にあったといえ、同じ日本国民でありながら昭和四十二年まで医療法の適用がなされなかったというのは、何か特別御事情がおありですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/263
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264・三浦英夫
○三浦政府委員 確かに、日政援助で当時琉球政府に対しまして原爆関係の援助を開始した時期は昭和四十一年でございます。内地における原爆の医療法の制定が昭和三十二年でございますから、約十年のギャップがある。そういうギャップは、たとえば結核予防法を沖繩県にというか、当時の琉球政府に日政援助でやりましたのも昭和四十年に入ってからでございますし、精神衛生法その他それぞれの法体系のもとに復帰の近づくにつれてやってきたわけでございます。他方におきましても、そういうギャップはそれぞれあるようような状態でございまして、原爆医療だけが特におくれたという状況ではないという認識に立っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/264
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265・小宮武喜
○小宮委員 したがって、沖繩では、医療法が適用されるまで結局自己負担できたわけですね。したがって、この十年間の治療費、金額については三億二千万といわれておりますが、この問題については沖繩の被爆者の間から、十年間おくれたんだから、ひとつ日本政府で自分たちで負担した医療費を何らか見てもらいたいという訴えもいま盛んに行なわれておるし、特に沖繩の人たちからもいろいろわれわれは聞いておるわけです。この点について厚生省として、この十年間おくれて適用された、そのために自己負担を余儀なくされた人たちに対して何らかの措置がなされるのか、そしてまた厚生省としては、これをどういうふうに受けとめておるのか、その点ひとつお聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/265
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266・三浦英夫
○三浦政府委員 確かに、沖繩の手帳を保持されている被爆者からそういうお話は聞いております。ただ、原爆医療関係だけが十年近いギャップがあったというのではなくて、先ほど申し上げましたとおり、それぞれの法律それぞれに日本の政府で始めたときとギャップがあるようでございます。したがいまして、原爆医療だけ切り離してということは非常に困難ですし、しかも純法律的には、こんなことを申し上げるのも失礼かもわかりませんが、日本政府の施政権が及んでなかった状態のときでございますので、原爆の患者さん方についてさかのぼって医療費を支給するとかというようなことはちょっと困難かと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/266
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267・小宮武喜
○小宮委員 困難だというのは、その分については国は何らめんどうは見る必要はないというように理解していいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/267
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268・三浦英夫
○三浦政府委員 法律的にちょっと困難じゃないかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/268
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269・小宮武喜
○小宮委員 法律は、これは皆さん方がつくるわけですから、立法府がつくるわけですから、そういうような意味でほんとうにそういうような沖繩の人たちに対してめんどうを幾らかでも見ようということであれば、それは現行法ではなかなかむずかしいとしても、法律を改正してでもやる気があるならばやれると思うのです。
その問題に関連してまた質問しますが、社会保障制度審議会が四十七年度の答申の中に、韓国などの在外被爆者に対して何らかの措置を講ずることが望ましいということがありますね。この点についてはどういうふうに考えられますか。それも法律の問題ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/269
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270・三浦英夫
○三浦政府委員 韓国の方で、たとえば日本に居住されているような方につきましては、この原爆法は先生御承知のとおり、国籍を問わないことになっておりますので、当然原爆関係の二法が適用になることになっております。ただ、韓国に在住しておられる韓国人の問題につきましては、厚生省の問題というよりはむしろ国際間の問題でございますので、厚生省からどうかという点につきましては、ちょっと御返事しにくい問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/270
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271・小宮武喜
○小宮委員 それでは外務省に質問します。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/271
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272・大森誠一
○大森説明員 外務省としての立場を申し上げますれば、韓国に在住している被爆者の方々についても、韓国政府に協力するということによって、できる限りの救済措置をとることができないものかと考えておりまして、とりあえず一昨年十二月に、韓国政府に対しまして韓国在住の原爆被爆者の実情を照会した経緯がございます。日本政府が韓国政府に協力できる具体的な方策につきましては、その後、韓国政府の意向を打診しているという段階でございます。
なお、韓国側の調査の結果によりますれば、韓国原爆被害者援護協会に登録されている者は六千二百八十一名であるとのことでございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/272
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273・小宮武喜
○小宮委員 大平外務大臣は、外国人被爆者の救済のための特別立法をつくる、特別立法措置が必要だ、そういうような意味の発言をされておるのです。だから、いま外務省が駐韓大使の後宮大使を通じて調査されたというのは、そういうような外人被爆者に対する特別立法措置を考えての調査の依頼なのか。私は当然そうだと思うのですが、そうであれば、外務省としてこの外人被爆者に対する特別立法措置というのを考えておられるのかどうか、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/273
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274・大森誠一
○大森説明員 ただいま先生御指摘の大平大臣の発言につきましては、一昨年の十月、香川県において韓国在住の被爆者救済の問題について意見を求められた際の発言をおさしになったものと存じますが、その正確な内容につきましては、一般論として、外国にいる被爆者に何らかの救済措置を講ずるとすれば、現行体制では困難と思われるので、特別立法を考慮しなければならないであろうとの趣旨であったと承知いたしております。しかしながら、外国にいる外国人の問題について、これを国内法で扱うということにつきましては種々困難があると思いますので、外務省としてはそのような特別立法という形では検討はいたしていないわけでございます。外務省といたしましては、先ほど申し上げましたような形で、韓国政府の意向も聞きながら将来検討してまいりたい、かように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/274
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275・小宮武喜
○小宮委員 いろいろな被爆者団体では、毎年それぞれの被爆者の慰霊祭を行なうわけですが、その場合に必ず韓国の被爆者の代表も来られて、国内の被爆者団体からそういうような韓国の被爆者に対して、民間のそういうような被爆者団体から向こうのほうに、カンパによって幾らかでもというようなことで、むしろやっておるような状況なんですね。そういうような意味で、せっかく外務省が調査をして、その調査結果も判明しているわけですから、やはりただ単なる調査だけでなくて、特別立法措置を講ずるかどうかは別として、今後やはり外人被爆者に対する救済措置について、何らか考えておられるのではないかというように考えますが、ただ単なる調査で、ただ相手に対して調査をしたぞということだけで、これで事足れりということでは、せっかく韓国外務省に対して調査をされた、調査した結果はもうナシのつぶてで何もしないということになれば、やはりちょっと問題がありはしないか。そういうような意味で、外務省としてせっかくそこまで調査しておられれば、私は特別立法ということだけにこだわるのじゃなくて、何らかの意味での救済措置というものを考えておられるのかどうか、ひとつ外務省の所見をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/275
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276・大森誠一
○大森説明員 先ほど申し上げましたように、韓国における原爆被爆者の方が十分な手当ても受けないでおられるということでございましたら、非常に気の毒なことだというふうに私ども考えておりまして、国内立法措置というようなことを離れまして、援護協力という形で何らか韓国政府に協力できないものかどうかという姿勢でおりまして、ただいまのところ、韓国政府としてどういう形のものが望ましいと考えているかというような点を含めまして、韓国政府のほうの意向を打診しているというところでございます。
私どもとしては、ただ調査の結果だけに終わらせるというつもりでなく、ただいまの御趣旨のようなことでやってまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/276
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277・小宮武喜
○小宮委員 この問題については、先月の二十日だったですか、広島市で被爆した韓国人の方が密入国されて、原爆手帳の交付の問題をめぐって訴訟をやられた。その結果、福岡地裁ではこの主張を全面的に認めたというような経過もありますから、やはり外務省としてもそういう経過の上に立って考えてもらいたいということを申し上げておきたいと思います。
それから原爆病院の問題ですが、原爆病院というのは、いま医療施設が被爆者によってほとんど使われているわけです。この原爆病院の運営だとか施設費の問題でかなり原爆病院は赤字を出しておることは御承知のとおりで、これも去年は厚生大臣が適切な措置を考えていただいたわけですが、ことしの予算を見ましても、施設整備費として四千二百万ですか、計上されておりますけれども、いまの原爆病院の経営の状況についてひとつ説明をしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/277
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278・三浦英夫
○三浦政府委員 確かに広島及び長崎の日赤の病院が経営に非常に御苦労されておるという点は私どももよく認識しております。ただ、これはもちろん原爆の患者さんが入っておることにも当然影響があると思いますが、一般的に病院そのものが経営が非常に苦しいということも加わっておるのじゃないかということでございまして、いずれにしても、総合的な経営診断につきましては、ことし長崎県あるいは広島県と一緒にやってみたいと思っておる次第でございます。ただ、それはそれといたしまして、本年度から新規の試みといたしまして、赤字補てんというか、経営費に対しまして両方合わせまして二千四百万ほどの厚生省からの補助金を計上させてもらっておりまして、ことしはそれで何とか御経営いただいて、来年のことにつきましては、さっき申し上げましたように、また両県とも一緒に経営の内容を分析してみたいと思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/278
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279・小宮武喜
○小宮委員 この四千二百万の施設補助費ですね、これは両県に二つに分けて二千百万ずつということになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/279
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280・三浦英夫
○三浦政府委員 ちょっとことばが足りません。四千二百万円のほうは、広島のほうは医療機関、長崎のほうは消防法等の関係による設備の改善、これは設備費の補助でございます。それ以外に、別途経常的な運営費につきまして、両病院合わせまして約二千四百万円の補助金を計上させてもらっておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/280
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281・小宮武喜
○小宮委員 いろいろ弱者救済という問題がございまして、本会議を通過した国民年金法の問題も繰り上げ実施という問題が起きたわけですが、念のためにお聞きしたいのですが、今度の被爆者援護の問題も、改正案では施行の期日は十月一日からになっております。そういう意味の弱者救済の立場から、当然施行期日の繰り上げ実施ということが考えられるわけでございますが、大臣、それはどういうふうに考えておられますか。やはり繰り上げをすべきだと私は考えますが、大臣のお考えをちょっと聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/281
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282・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 弱者救済とかなんとかいうことは離れまして、施行が十月になっておりますので、多少なりとも御意見がございます。私は十分承知しております。でございますから、この問題については与野党で十分お話し合いをお願いしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/282
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283・小宮武喜
○小宮委員 そこで、いよいよ最後に近づいてきたわけですが、先ほどからもるる述べられておりますように、戦後二十八年間たって被爆者の苦しみまた不安というのは年を追うごとに非常に高まってきておるのが事実なんです。特に老人の方々が多いということで、発病率、死亡率も高いということで、被爆者援護というのはその意味でいま非常に盛り上がってきておるし、いま最も強く要請もされておるときなのですが、そういった意味で、われわれは政府の今回の改正案に対して、やはりもうここらで援護法に切りかえるべきだというような認識に立っておるわけですが、野党が提出したこの援護法に対して、大臣としてどういうふうに受けとめておられるのか。もし考えさせられるところがあれば、その点も含めてまず所見を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/283
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284・齋藤邦吉
○齋藤国務大臣 これは、けさからの社労委員会各質問者の方々、口をきわめてそういうお尋ねがございました。私も同じようなお答えをしておるわけでございますので、同じような答弁になろうかと思いますが、野党四党の方々が、今回援護法の制定の必要を痛感されて法律の提案をされたということについては、私はそれなりに評価をいたしておるつもりでございます。ただ、皆さん方の援護法制定の根本理念というものは国家賠償という考え方に立っておられるわけでございますが、国家賠償ということであれば、国家と特別な何らかの権力関係にあった者を対象として今日まで行なっておるものでございます。戦傷病者援護法しかりであります。すなわち、国家と何らかの特別な権力関係にあった者、それはどういう内容かといえば、身分関係が国家において特別なものがあるかあるいはそれに近い関係があった、こういうことであろうと思います。そこで、原爆の被爆者はそういう特別関係にあった者かということになりますと、それは私はあったとは申し上げることはできないと思います。それは、いわゆる一般統治権の発動としての法令の適用のもとにすべての国民が平等にあったものであります。しかしながら、一般戦災者と多少、多少と申しますか、非常に違いますのは、原爆の被爆というところに問題がある。私はそれは率直に認めておるわけでございます。しかも、日本はいまや平和憲法を選択採用をいたしておるわけでありまして、二度と戦争はしてはならない、こういう決意を国家も国民もしておるわけであります。しかも原爆は地球の上に二度と投下されてはならない性質のものである、こういうふうないろいろな意味合いも考えまして、何とかこの問題について決着をつける方法がないだろうかということを私は大臣就任以来今日まで考えてまいりました。そこで、そういう方々に対しましては、国家賠償的なものと社会保障的なものとの関係にどう位置づけるか。私は個人的に率直に申しますと、中間的なところに位置づけるのが適当でないか、こう思っているのです。
ところで、このわが原爆被爆者援護に関する法律というものは、放射能によっておかされたということで、医療中心の法律で今日まで来たわけです。そこで、被爆者の生活の実態というものをとらまえて、その生活を何とか守ってあげるという方式がないだろうかということで、何か第三者の中間的な立法ができないだろうか、こう考えてみましたが、なかなか思うようにいかない。そこで、現在ある原爆の法律をもととして、生活を守るような方向にこれの向きを変えることができないだろうかということを考えまして、今回初めて、いわゆる特別手当という新しい制度を私は創設したわけでございます。もとよりその範囲が狭いとか金額が少ないの、いろいろな批判は受けます。しかし、私は一つの新しい方向に向けるにはこの辺からやはり向きを変えさすことが必要である、こう考えまして、実はこういうことを考えたわけでございます。その点については先生にもだいぶ高く評価されている、内容は別として、方向としては評価されていると私は思っておりますが、そういうふうな向きを変える一つ一つの積み重ねの中で、原爆被爆者の生活の安定、生活を守るという施策が一つ一つ積み重ねられて充実を見ていくのではないか、こう私は考えているのです。
そういうふうな基本的な考えでございますので、皆さん方が御提案になりました国家賠償の理念に立った援護法の制定というものには、私はいまにわかに賛成いたしかねます。これははっきり申し上げておきます。賛成いたしかねます。あくまでも国家の特別権力関係にあった者についての国家賠償、これは私は理解をしておりますから、それに近い者はなるべく戦傷病者援護法によって援護しましょうといって、去年から私は努力しているわけです。これは長崎なら動員学徒の問題、あるいは広島なら防空法の問題、いろいろなことを実にやっているのです。私はやっているつもりなんです。そこで、今度は原爆被爆者に対してどうするか、生活を守っていかなければならぬという方向に向いて、一つ一つ積み重ねていくべきものである、こういうふうに考えております。戦後三十年、ほんとうにまだこういうことが十分理解されずにいろいろなことが言われることは、私もほんとうに遺憾だと思います。何とか早くこういう問題については、二度と国会で皆さん方から追及されぬで済むようにしたいものだと私は思うのです。しかし、やはり筋道は通さなければならぬ。法律というものは、気の毒だ、かわいそうだだけでは問題は済まぬのです。筋を通すという、その中で、その人たちの生活をいかに守っていくか、これが私は大事だと思うわけであります。というわけでありますから、いまにわかに賛成いたしかねますけれども、私の気持ちも十分御理解をしていただきたい、こう考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/284
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285・小宮武喜
○小宮委員 大臣が意欲的に取り組んでおられるということは私も認めます。しかしながら、いまわれわれの考えておるのは国家補償の精神に立っているわけですが、むしろいま政府が考えておられる、今日までとられてきた援護対策というのは、やはり旧憲法下における身分関係を一番重視しておるわけです。したがって、身分関係を中心に援護措置が行なわれてきたことは事実なんです。そのために、たとえば陸軍大将と陸軍上等兵は違うわけですから、援護措置の中でも恩給から違うわけですから、そういうような意味では、直接国家に貢献した人を対象とした、いわゆる身分関係によって援護対策が立てられてきたということははっきりしておるわけです。いま大臣もそれをはっきり言ったわけですから。われわれはその中で、やはり新憲法下における国家補償という立場にそろそろ立っていいんじゃないのか。だから、従来の援護体系というものがそうであったから、それから一歩も出ないんだということでなくて、もうすでに今日の新しい憲法下にあっては、国家補償ということも当然やはり採用すべきじゃないのか。
たとえば、長崎の場合、これははっきり言ってあれだけの死者が出たというのは、空襲警報が解除されていたのです。だから、空襲警報下にあれば、防空ごうにでも入っていたら私は死者の人たち、けがされた人たちにしてもかなり減っていたと思いますよ。しかし、空襲警報が解除されておったからみんな一般の生活を営んでおった、そこにいきなり来たものだから、あれだけの大きな犠牲が出たわけですね。
そういうような意味で、去年、戦争責任者はだれかということを私が質問したところが、大臣が、小宮先生、いまさら戦争責任がだれか、どうかということは、もう言いっこなしにしましょうやという答弁もありましたけれども、やはりそうなれば戦争犠牲者とはだれなのかということを、もう一度あらためて論議をしなければならぬということになってくるわけです。だから、特にいま厚生省が考えておられることは、たとえば被爆者だけに援護措置を講じた場合に、一般の戦争犠牲者との均衡論を非常に心配されておる向きもあります。しかしながら、私たちはそういう人たちを含めても、新しい援護体系というものを考えるべきではないのか。しかも医療法にしても、特別措置法にしてもこれは生きておる人たちだけが対象になっているわけですね。そうすると、そういうようななくなられた方に対しても何らかの、かりにわれわれのほうも、援護法はもう大臣がうんと言うまで毎年出すわけですから、そのうち大臣はやめてしまえばおれは逃げてしまうからいいとお考えかもしれませんが、われわれも毎年出すわけだから、厚生省、政府自身の考え方が援護法的なものに頭を切りかえるまでは、まだこれからわれわれは新しい出発点と思っておるわけですから、その意味ではどちらが根気が続くか知らぬけれども、われわれは今後二十年、三十年やるわけだから、その意味では大臣、そうあまりかたくなに考えぬで、もう来年ぐらいは徐々にでも援護的なものを考えながら取り組んでいくというような考えに立ってもらわぬと、われわれもまた毎年毎年大臣とこうして、大臣がかわればまた別の顔が来るわけですが、毎年これを言うのも、実をいえば大臣にほんとうに気の毒だぐらい思っているのです。そういうような意味で、時間が参りましたので一応ここらあたりで質問を終わりますけれども、特に野党からもこうして四党の援護法案が出てきておるということに立脚して、政府としても前向きで取り組もうじゃないかということで、ひとつ発想を変えてもらって、来年ぐらいは大臣がまた変わった立場からの法律案を提案して、うんなるほど、われわれが昨年言ったけれども大臣はよく考えていただいた、われわれが感謝するようなことを、大臣も来年あたりは考えてもらいたいということを強く要請しまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/285
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286・斉藤滋与史
○斉藤(滋)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。
午後六時三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204410X02119740425/286
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