1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年二月十九日(火曜日)
午後二時三十七分開議
出席委員
委員長 安倍晋太郎君
理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君
理事 村山 達雄君 理事 森 美秀君
理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君
理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君
伊藤宗一郎君 宇野 宗佑君
大西 正男君 奥田 敬和君
金子 一平君 鴨田 宗一君
栗原 祐幸君 小泉純一郎君
小宮山重四郎君 三枝 三郎君
塩谷 一夫君 野田 毅君
萩原 幸雄君 坊 秀男君
村岡 兼造君 毛利 松平君
山下 元利君 佐藤 観樹君
高沢 寅男君 塚田 庄平君
松浦 利尚君 村山 喜一君
山中 吾郎君 荒木 宏君
小林 政子君 田中 昭二君
竹本 孫一君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
出席政府委員
大蔵政務次官 中川 一郎君
大蔵大臣官房審
議官 大倉 眞隆君
大蔵大臣官房審
議官 岩瀬 義郎君
大蔵省主税局長 高木 文雄君
大蔵省銀行局長 吉田太郎一君
委員外の出席者
大蔵省主税局税
制第二課長 福田 幸弘君
大蔵委員会調査
室長 末松 経正君
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本日の会議に付した案件
割増金付貯蓄に関する臨時措置法案(内閣提出
第一一号)
印紙税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/0
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001・安倍晋太郎
○安倍委員長 これより会議を開きます。
割増金付貯蓄に関する臨時措置法案を議題とし、質疑を続行いたします。田中昭二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/1
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002・田中昭二
○田中(昭)委員 割増金付貯蓄法案につきましては、いろいろ審議の途中で政府の考え方を聞いてまいりますと、賛成する部分がたいへん少ないし、勉強すればするほどいろんな重要な問題が浮き彫りにされてきたと私は思っております。そこで、私もまとめてひとつ政府の考え等をお聞きしながら、また意見も交えながら簡単にお聞きいたしますから、ひとつ私の意のあるところをくんでいただきまして、それを確認するというような意味も含めて御答弁いただければありがたいと思っております。
わが国は、昭和三十年代半ばから経済のいわゆる高度成長が続いてまいりまして、物価は長期的、持続的上昇を続けてきたわけでございます。簡単に申し上げますが、その間、消費者物価は大体六、七%の上昇、卸売り物価が一、二%の上昇、ただ土地だけが一〇%程度の上昇を続けてきたわけでございまして、これはいまの自民党政府のとってきましたいわゆる高度成長、その中には静かでございますがインフレ的要素が含まれており、ある学者はこれを基調インフレだと、こういうふうにも言っておるわけでございますが、これが一昨年、田中内閣が発足して以来、いわゆる徐々にいままできました流れが少し速度を早めまして、かけ足的にやってまいりました物価上昇、そして昨年からは突如として爆発的な悪性インフレに見舞われて、国民はほんとうに生活防衛のために戦っておるわけでございますが、大臣、あなたもお認めになっておりますように、いわゆる狂乱物価の怒濤、またいまの物価上昇、最近の物価は投機的様相を帯びておる。そういう状況、これは頭の片すみどころか、大きく大臣の悩みとされておるところだと思います。
そこで、たいへん問題になりますのは、この法案にも関係のあります、いわゆる預金の目減り対策、そしてこのインフレの高進する中におきます預金の元本が実質的には減価する、そういう状態が続いております。その反面、資金を借り入れた側は、いわゆる債務者利益が大きくなるという不公平が続いてきております。そこで、大臣も財政演説の中で、不公正な状態を何とかしなければならないというようなお話もあったわけでございますが、——詳しくは申しません、簡単に申し上げますと、以上のようなことは、おそらく大臣も私と同じような認識だろうと思いますが、世間の動向も大体おおむねこのようであろうと思いますし、大臣もこの点については御異存ないものと思いますが、まずお尋ねするわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/2
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003・福田赳夫
○福田国務大臣 御指摘のように、ただいまの物価情勢は非常に異常である。この異常な物価状態のもとにおいては、家庭の生活におきましても、あるいは企業の運営におきましても、先が見通せない、こういう大きな問題がある。家庭も企業もその日暮らし、こういうような傾向になるし、また同時に、この物価の異常高の中では、社会的公正というものがそこなわれる、こういう性格を持っておる状態だ、こういうふうに見ておるのであります。
そこで、そういう状態を放置することは許されない、早期にこの異常な物価高を抑圧しなければならぬ、さように考えまして、いわゆる短期決戦、こういう大方針のもとにこの問題に対処したい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/3
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004・田中昭二
○田中(昭)委員 そこで、いまおことばをちょっとお忘れになったかと思いますから、私つけ加えて確認しておきますが、その物価上昇で一番犠牲になっておるものは、先ほど私が申し上げましたいわゆる預金の目減り。こういう問題があるわけであります。これは当然、この貯金の法案を審議する中においても、私以外の委員からもいろいろ話があった。そういうことも十分おわかりいただいておるわけでございますね。
そこで端的に入ります。私は、ここでこの法案にどうしても賛成できない、反対せざるを得ないということを一、二まとめてみますと、結局、これはわずかな射幸心を求める人たちを投機的な行動にかり立てる、そしてわずか百分の二か三くらいの人がかりにくじに当たったとしましても、その残りの九八%、九七%の多くのくじからはずれた人たちは、いわゆる社会不安までも呼び起こすような恨みといいますか、私は恨みということばは適当であるかどうか知りませんけれども、そういうものを持つでしょう、ですから、そういう段階では、これは割引貯金ではないかという御意見まで出たわけです。これについては、大臣の先日の御答弁でも、そういうことにならないように考えておるというような御答弁もございました。しかし、これらのくじにはずれた多くの人たちは、さらに射幸心を求める、そしてその多くの人たちの、いわゆる庶民のささやかな金利が、一部分の人のために奪われてしまう、こういうことを考えますと、私は、これは貯蓄の本質を破壊するものであると言っても過言ではないと思うのであります。
その反面、この貯金を取り扱う金融機関の立場で、いろいろメリット、デメリットがあるということが言われました。メリットでは、この貯金によります金の吸収によりまして安定な資金が定着する、そこでその集められた金が融資に回って、金融機関は、この低金利時代にさらに利益を拡大していく。デメリットとしては、募集のためにはいろんな経費もかかり、労働の強化というような問題も出てくるという話がありました。こういうことを考えてみますと、はたしてこの法案は、物価抑制のための成果はどうだろうか、これは政府答弁の中でも、たいへん疑わしい、はっきりしないということもお聞きしました。こういうことで、異常な物価高のおりから、この宝くじの預金やいままでの既存の定期預金の金利等については一部を引き上げていこうかというような、だけれども、こういう小手先の預金者対策ではすべての国民が納得することはできないだろう、こういう考え方が、政府、日銀部内の中にも強くなった。私はこれは当然だと思います。
そこで、いま私が申し上げましたことの結論として、政府は、一つとしては、特定の定期預金に限って一時的に利上げをする。これは昨年末から特利つきの貯金、それで一つの道を開いた。一時的に特別な定期預金に利上げをする。二つ目には、従来の定期預金よりも高利回りの定額預金を新しくつくろう、こういうお考えがあるかと聞いておりますが、この点は、大臣のお考え、大体いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/4
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005・福田赳夫
○福田国務大臣 こういう割増金付定期預金という制度が行なわれる、これだけを考えているわけじゃないのです。物価高対策といたしましては、もうほんとうにオーソドックスな総需要抑制政策というものを強力に進めるという方向を打ち出しておるわけであります。そういう大きな方向を打ち出すと同時に、いろいろな考えられる諸手段をあわせ行なう。こういう諸手段の一つとして、割増金のことを申し上げておるわけなんです。
いま具体的に田中委員から、短期の定期預金を創設する考えはないか、あるいは定額貯金というようなことを考えておるかというようなお話がございますが、私は、この割増金付定期に限らず、何とか貯蓄者に魅力が持てるような手段がありますれば、この際、それを果敢に採用していきたい、こういう考え方を持っておるのです。まだどういう方法というところまで煮詰まっておりませんけれども、鋭意そういうものを検討しておる。何とか全体の金利体系というようなものにそう支障がない、そういう範囲内において、考えられるものはないかということにつきまして鋭意検討いたしておる、考えておるということを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/5
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006・田中昭二
○田中(昭)委員 私は、大体政府はこういうことを考えているということが報道されましたから、そういうお考えがあるのだろうなということをいまお聞きしたわけでございますけれども、その辺がどうも——結局、何といいましても、このインフレの場合に犠牲になりますわずかな預金者、かりにサラリーマンが十年間、十五年間働いて百万円ためた。その金は、かりに二〇%の物価上昇が続けば、三年で半分になりますよ。百万円が五十万円の価値しかないということになるのじゃないでしょうか。五年すれば三分の一の減価になってしまうのです。そういう事態がいままでも続いてきた。いまからもまだ続くであろうということが予想される段階において、この預金の目減りということは、先ほどから申しますように、十数年続いてきたわが国の低金利政策、その中で預金よりも物を持っておったほうがいいという、このインフレの高進につながるいわゆる経済のメカニズム、いまここに問題になっております割増金付貯蓄というような目先のことでは、さらにいろいろな金利体系等のこともございましょうけれども、政府の中にも、そういう小手先のことでは、これは政治とはいえない、長期にわたるこの物価高騰から預金者を救済するということはいまや政治的な要請になっているという判断が強くなってきておると思うのですが、福田大蔵大臣、これはいまこのチャンスをはずしてはできない問題だ、私はこう思っておるのです。どうでしょうか。もう少し政府のお考えをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/6
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007・福田赳夫
○福田国務大臣 インフレ、物価高、その被害者は、これはひとり預金者ばかりじゃないのです。これは大体において、世の小さい者あるいは弱い者、そういう立場の人は非常に物価高の影響を深刻に受けるわけなんです。そういうことを考えるときに、どういう対策がいいか。それは、でき得る対策はそれぞれ講じますけれども、要するに、この物価高を一日も早く克服してしまう、これが最善の対策である、こういうふうに考えて、総需要抑制政策を中核とするこの物価高の抑制対策を強力にいま進めておるわけなんです。
そういう中におきまして、しかし取り得る手段があればというので、予算の中におきましては、あるいは社会保障対象に対する配慮を厚くしなければならぬとか、また預金の関係の方々に対しまする考え方もとらなければならぬというので、預金者に対しましては、昨年とにかく二%の金利の引き上げをやってきておる、こういうようなわけです。この上とも何か名案があればそういうこともしてみたい、こういうふうにいま考えておりますので、私といたしましては、とにかく時局に対する対策のかなめは何といっても早期にこのインフレを克服する、その一点にある、こういうふうに考えますので、それに対しましては全精力をあげて取り組んでいきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/7
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008・田中昭二
○田中(昭)委員 そのとり得る政策、魅力ある政策、その一番のいい方法は大蔵大臣の頭の中に、ある程度固まってきたのじゃないか、これしかないというようなことがあるのじゃないかということで、いまそういうような報道もなされておりますから、私確認の意味で申し上げたわけでございまして、たいへんくどうございますけれども、もう一ぺんその考えられる方法、これを私新聞報道等を見ましてここに書き抜いてまいりましたから読み上げます。どうかひとつ銀行局長も、いまから私が申し上げること以外にいいことがあれば、こういうことがありますと答えていただきたい。なければ、いまから申し上げますことを、大体そういうことで検討せざるを得ないだろう、それはそういうことでやりますという御回答を、ひとつ大臣のほうからいただきたい。
一、一つの方式としまして、琉くじの抽せんではずれても、六カ月定期預金の金利は大体年六・二五%を保証するというような宝くじにするという案。それから宝くじの原資は、預金者を当てにするのじゃなくて、金融機関が負担して、宅くじの賞金も含めて預金者が受け取る平均利子を年九・五%程度にするという案。これが二番目ですが、三番目は、同時に宝くじのついていないいわゆる六カ月定期預金の金利を年九・五%に一瞬的に引き上げる、こういう三つを加えた方式。もう一つの別の方式からいえば、六カ月定期などの特定預金の一時的な利上げをできるだけ早期に実施する。そしてそれが一方で、その六カ月の期限が切れますときに新しく定額預金に連動させる、そういう二つの方式がいま政府で考えられている、こう新聞等にも報道されておるのです。
これが大体そういうものかどうか。それ以外にこういう方法があるというなら、銀行局長のほうから一つでも二つでも言っていただいて、大臣としては、いまのこれで間違いなければ、政府内ではそういう方向でやっているということでお答えいただきまして、私の質問を終わりたいと思いますから、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/8
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009・吉田太郎一
○吉田(太)政府委員 できるだけ簡潔にお答えさせていただくことを御了承いただきたいと思います。
まず第一と第二の問題は、宝くじつき預金、いわゆる割増金付貯蓄について、金融機関のほうで持ち出しにすべきではないかということになろうかと思います。したがいまして、これは一つの問題であると考えましてお答えさせていただきたいと思いますが、これにつきましては、むしろこの割増金付貯蓄そのものをほかの預金形態よりも有利に扱うということになるわけでありまして、この委員会においてもいろいろ御議論がありましたことからいたしましても、この割増金という方法の預金をほかの預金金利よりは有利にするということについては、私どもは消極的に考えております。したがいまして、この最初の分類の分については、そういうことは考えておりません。むしろこれは推定に基づく記事であろうかと思います。
それから第三、第四につきましても、この九・五%でございますとかいうことは、全くの推測であろうかと思います。ただ、第三の問題につきましては、確かに一つの検討に値する方法であろうかと思います。御承知のように、十二月末にボーナス預金ということをいたしましたのもこれの趣旨でございます。ただ、その金利を九・五%にいたしますということは、もう御説明申し上げるまでもなく、一年の定期七・二五%をはるかに突破する金利でございますので、むしろその期間中はほかの預金はすべてここに集中する、こういう問題が起こってくるということについてどう考えるか。そういうことになりますと、たとえば国債の個人消化でございますとか、その他の債券市場にどう響いていくかという問題もあろうかと存じますし、それからその期間中に集中する預金がそれぞれの金融機関に入ってまいりますが、そういう個人の定期性預金のウエートの高い、比較的中小企業金融を専門にしておる金融機関の貸し出し金利がどうなっていくかという問題、そういう問題を考えていかなければならないという問題がございます。
それから四の定額預金問題につきましても、これはほんとうに預金者に利益が出てまいりますのは、むしろおそらく四年後から有利になっていくというような仕組みの性質でございますので、現在いろいろ御指摘のございます今日の物価高における預金者の利益からいってどうであろうかというような問題もあろうかと思います。したがいまして、確かにこの後ほどの二つの問題は私どもの検討の対象にはなっておるわけでございますが、これがただ一つの有利なもので、これしか方法がないということで現在の段階できめるにはまだ早い、もう少しほかの研究をしてみる余地があるのではなかろうかというように考えております。
ほかの方法につきましては、もちろん金利をいじくるという以外に、現実に銀行がそういう預金を受け入れていく場合に実行可能であろうかというような問題も含まれておるわけでございまして、いろいろな仕組みを私どもは机上では考えておりますが、まだ金融機関の実態をいろいろ調査しておる段階でございまして、いましばらくなお研究したい、かように考えております。
要するに、前提が、できるだけ今日の段階において金利体系にすぐ影響があるということのないように、現在の引き締め下において、一方では中小企業金融というものの疎通に配慮しなければならない。また、こういうむずかしい時期でございますので、信用秩序に摩擦、混乱が起こることをできるだけ回避しないといけないというようなことを配慮してまいります場合に、いろいろの問題がございまして、いましばらく検討してみたい、かように考えておるのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/9
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010・福田赳夫
○福田国務大臣 大体御質問に対するお答えはいま銀行局長からいたしましたが、田中さんのおっしゃる、貯蓄者の立場を考慮していろいろ配慮すべし、こういうことにつきましては、私ももう配慮しておるのです。また、私の頭の中はそういうことで一ぱいでございますが、なお具体的な結論には到達しておらぬ、こういうのが現状でございますが、なお鋭意検討いたしまして、できましたならば、田中さんのお話しのような御趣旨が実現できればなあと、こういうふうに考えて、鋭意とにかく検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/10
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011・安倍晋太郎
○安倍委員長 この際、福田大蔵大臣より発言を求められておりますので、これを許します。福田大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/11
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012・福田赳夫
○福田国務大臣 去る十五日の委員会におきまして、武藤委員並びに田中委員から御指摘のありました割増金付貯蓄の態様につきましては、御質問の中で述べられた御趣旨に沿って配慮いたしたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/12
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013・安倍晋太郎
○安倍委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/13
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014・安倍晋太郎
○安倍委員長 これより討論に入ります。
討論の通告がありますので、順次これを許します。佐藤観樹君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/14
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015・佐藤観樹
○佐藤(観)委員 私は日本社会党を代表して、割増金付貯蓄に関する臨時措置法につきまして反対の討論を行ないます。
政府が預金吸収のために考えたこの法案は、狂乱インフレの鎮静、抑止政策としての一端をとうてい果たし得るものではありません。ただでさえ貨幣の価値、信用が下落している現在、十万人に一人一千万円が当たるという投機的行為は、政府が推進すべき行為ではありません。国民に射幸心をあおるだけで、一億総投機を呼び起こすような政策は、とてもわが党は容認できません。
いま預金政策として断行すべきことは、日に日に減価する預金に物価騰勢に見合う利子をつけてもらいたい、せめて老後のために、病気をしたときのためにとたくわえた預金を目減りさせないでもらいたいというのが、インフレの最大の被害者である国民のささやかな偽らざる心境です。
また、吸収されると予定される一兆五千億円は、金融引き締め下で、この使い方によってはさらにインフレを助長することにもなりかねません。
加えて、ますます銀行間の預金獲得競争を激化させ、中小企業を相手とする弱小金融機関を大きく圧迫することは必定です。この過当競争で、銀行に働く労働者の労働強化につながるおそれが多分にあります。
国民の安定した貯蓄性向を高めるために、貯蓄政策の基本を確立することこそ緊要でなくてはなりません。
わが党は、本法案の審議にあたり、すでに各般から反対の意見を述べたとおり、断じて承服できないことを明らかにして、反対の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/15
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016・安倍晋太郎
○安倍委員長 小林政子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/16
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017・小林政子
○小林(政)委員 私は日本共産党・革新共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました割増金付貯蓄に関する臨博措置法案について反対の討論を行ないます。
反対理由の第一は、本法案についての政府の提案理由でも明らかなように、物価対策としての総需要抑制を国民の消費支出に求め、個人の零細な資金の吸収を射幸心を利用してはかろうとしている点であります。
すなわち、物価抑制のために国民の消費支出を押え、個人の手元資金の吸収をはかろうとすることは、今日の異常な物価高の原因を国民の責任に転嫁することであって、本末転倒といわなければなりません。インフレ下のもとで国民生活は圧迫され、消費支出は増加しても、実質的な生活内容は低下させられているのであります。OECDの調査によっても明らかなように、日本の国民所得は世界で第十七位、GNPが第二位と示されているように、国民消費支出をインフレ要因と見ること自体が重大な誤りであることは明らかであります。
物価高騰の原因は、歴代自民党政府による高度経済成長政策の破綻を、田中内閣が日本列島改造論などの一そうの経済成長政策で切り抜けようとしたことに原因があるのであります。また、大企業が、高度成長で手に入れた豊富な過剰流動資金を使って、土地投機をはじめ買い占め、売り惜しみの操作などによって製品原価を引き上げ、暴利を得てきたことによるものであります。大企業に対する規制こそ当面緊急に行うべきものであります。
第二の理由は、割増金付貯蓄は著しい射幸心を持つものであり、ギャンブル性を正当化するものであって、金融預金政策から見ても邪道であるという点であります。
割増金は預金者の利息の範囲でつけるものであって、利息をゼロとする場合あるいは預金並みの利息をつける場合においても、当せん率三分の一以下の中で、圧倒的多数の預金者が普通支払われる利息の支払いを受けることもできず、その一面、賞金で射幸心をあおり立て、投機性の強い募集手続を講じて一般国民から預金を集めるということを、公共性の強い金融機関が行なうべきでないことは自明の理であります。
さらに、物価上昇率が預金金利を上回り、預貯金の目減りによる預金減価が問題になっているとき、その補償に責任を持つこともせず、ギャンブルを正当化することは、金融政策の貧困さをあらためて明らかにしたものといわなければなりません。
第三の理由は、預金獲得の点について大手金融機関に有利に、弱小金融機関に不利に働くものであるからです。
このことは、かつて発行されていた昭和二十六年から二十九年の実績を見ても明らかであります。昭和二十六年では、定期預金中に占める割増金付貯蓄の率は、全国銀行七四・七%、信用金庫三四・二%、昭和二十九年をとってみても、全国銀行六二・九%、信用金庫三〇・三%であったことを見ても明らかです。全国的規模で募集できる都市銀行と一定地域でしか募集できない弱小金融機関とではおのずから格差が生じ、ますます格差助長につながるものであり、また金融機関相互間の過当競争の弊害を招くことになることは明らかであります。
また、この割増金付貯蓄は、地銀、相銀、信金と比較して預貯金率が低下している都市銀行のために、大量の長期預金の吸収をはかろうとしているとも判断できるのであります。
さらに、このようにして集められた資金が大企業に貸し出され、そして投機資金として流用させないという歯どめが明確にされていないのであります。
第四に、募集期間が一カ月から三カ月以内という短期であって、この間募集金額を売り尽くさなければならないということで、この預金獲得が、すでにいまですら重い労働条件のもとで働く金融労働者の労働強化をしいる結果になることは明白であります。それにもかかわらず、これを事前に防ぐ対策が何ら保障されていないのであります。
私は、以上あげた理由によって、本法案に対してわが党は反対することを表明いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/17
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018・安倍晋太郎
○安倍委員長 田中昭二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/18
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019・田中昭二
○田中(昭)委員 私は公明党を代表いたしまして、割増金付貯蓄に関する臨時措置法案に対し反対の討論を行なうものであります。
反対の第一は、同法は、政府が財政金融政策における失政の責任をたな上げにして、インフレ、物価高の責任を国民に押しつけるための何ものでもないということであります。
昨今の異常なインフレ、物価高は、国民が生活防衛のために生活費を切り詰めてまでしてたくわえた預貯金まで食いつぶしておるのであります。その預金は、一方では異常な物価高騰により、その目減りは一そう激しいものとなっておるのであります。
したがって、ただでさえ目減りしている預貯金を、国民の射幸心をあおってさらに預金を集めるというのは、国民の生活を破壊し、インフレの犠牲を国民に押しつけるものといわなければなりません。むしろ、いまこそ、預貯金金利を大幅に引き上げるべきであります。
さらに、第二の理由は、この割増金付貯金では、最高三分の一以下の割増金となっておりますが、当局は、現実には七割から九割八分、すなわちほとんどの預金者は少数の射幸心を充足する者のために犠牲になる道を開いて、社会的不公正を一そう助長することが目に見えております。
そうでなくとも、物価狂乱で、一方では大企業、資産所得者等のように実質所得をふやしている者がいる反面、サラリーマン等はインフレの影響をもろに受け、犠牲をしいられているときであります。でありますから、むしろ、このような社会的不公正の解消のために、抜本策を急ぐべきであります。
最後に、都銀偏重、大企業優遇の金利体系を放置したままで、見込まれるおよそ一兆五千億円の預金が大企業に融資されれば、金融引き締めの強化がしり抜けになり、インフレを助長することは明らかであります。これまでの産業優遇の金融行政を、国民福祉優先に転換する抜本的改革がはかられることこそ先決であります。
以上申し述べました理由により、政府原案に反対して、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/19
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020・安倍晋太郎
○安倍委員長 竹本孫一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/20
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021・竹本孫一
○竹本委員 私は民社党を代表いたしまして、本法案に反対の意思を表明したいと思います。
第一に、発想の転換という問題でありますけれども、発想の転換ということがいわれてからすでに久しいものがあります。しかしながら、発想の転換とは一体何であろうか。私は政治の質を変えることだと思います。生活の質ということがよくいわれますけれども、同様な意味において、政治の質を変革しなければならぬと思います。
今日は、大臣もよく言われるように、すべてが投機的であり、エゴイズムであり、狂乱状態であります。こうした精神状況をほんとうの意味で正常に戻す、そういう発想の転換、政治の質の変革が必要であろうと思います。そういう点から、私どもは、まじめな意味での勤倹貯蓄を奨励することが、これからの経済政策における第一義的要件でなければならぬと考えております。
しかるに、今回の法案は、同僚議員からしばしば強く指摘されておりますように、むしろ投機心や射幸心を刺激することによって所期の目的を達しようという、最もわれわれの好まない発想でありまして、発想の転換というものではなくて、これは逆転である、むしろ悪徳の奨励であるという意味において、反対であります。
第二に、今日のインフレ状況の中で、そのインフレから庶民の生活を守る、あるいはまじめな貯蓄をした人の立場を守っていくということのためには、特別なくふうが必要であろうと思います。
貯蓄政策についてもいろいろと論議が深められましたけれども、私は、過剰流動性を吸収するためにも、またインフレの被害から目減りその他まじめな預金者の立場を守っていく意味におきましても、一つは一〇%くらいの預金の新しいものを考えたらどうか。二つには、ある特定のものに限ってでも、少なくとも預金金利というものを物価の急激な上昇にスライドさせたらどうかということを考え、わが党としての案をわれわれはまとめておりますが、いずれにいたしましても、そうした新しい貯金政策、このインフレ状況下において預金者を守ることのできるそういう貯金政策というものを考えなければならぬと思いますけれども、いまだ大蔵省においてその結論が出ないで、最後にたどりついたものが、あるいは最初かもしれませんけれども、こういう割増金付であるというようなことは、まことに遺憾に存じます。
要するに、政治というものは、国民の良心に訴えるものでなければならぬ、あるいは民族の使命感に訴えるものでなければならぬと思います。国民のさまつな射幸心やなんかに訴えて国策を遂行しようということは、それ自身われわれの尊敬することのできない考え方でありまして、私は、この法案が大蔵省から出されたということ自体にも非常な怒りを感じておる次第でありまして、本案に反対するゆえんであります。
以上で討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/21
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022・安倍晋太郎
○安倍委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより採決に入ります。
割増金付貯蓄に関する臨時措置法案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/22
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023・安倍晋太郎
○安倍委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/23
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024・安倍晋太郎
○安倍委員長 ただいま議決いたしました割増金付貯蓄に関する臨時措置法案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表して森美秀君外三名より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
この際、提出者より趣旨の説明を求めます。山田耻目君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/24
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025・山田耻目
○山田(耻)委員 ただいま議題となりました割増金付貯蓄に関する臨時措置法案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表し、私よりその提案の趣旨を申し上げます。
案文でありますが、案文はお手元に配付してありますので、案文の朗読は省略いたします。
提案の趣旨といたしましては、政府は本法の施行にあたって、第一に、割増金付貯蓄によりまして銀行に吸収された資金が、大企業に貸し出され、物価の安定、金融引き締め政策の効果を減殺することのないよう窓口規制等金融政策の運営に十分配意することであります。
第二に、割増金付貯蓄の募集については、金融機関相互間の過当競争を排除するとともに、募集の個人割り当て等に走って労働強化を来たすことのないように十分指導することであります。
なお、第三といたしましては、最近の物価の動向にかんがみまして、預金者の立場を十分配慮し、預金金利のあり方について深く検討することであります。
以上でありますが、御賛成をお願い申し上げ、趣旨の説明を終わります。
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割増金付貯蓄に関する臨時措置法案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行にあたり、次の点に留意すべきである。
一、割増金付貯蓄により銀行に吸収された資金が、大企業に貸出され、物価安定、金融引締め政策の効果を減殺することのないよう窓口規制等金融政策の運営に十分配意すること。
二、割増金付貯蓄の募集については、金融機関相互間の過当競争を排除するとともに募集の個人配当等に走って労働強化をきたすことのないよう十分指導すること。
三、最近の物価の動向にかんがみ、預金者の立場を十分配慮し、預金金利のあり方について検討すること。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/25
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026・安倍晋太郎
○安倍委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
おはかりいたします。
本動議のごとく附帯決議を付するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/26
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027・安倍晋太郎
○安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。福田大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/27
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028・福田赳夫
○福田国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って十分配慮いたしたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/28
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029・安倍晋太郎
○安倍委員長 おはかりいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/29
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030・安倍晋太郎
○安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/30
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031・安倍晋太郎
○安倍委員長 次に、印紙税法の一部を改正する法律案を議題といたします。
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印紙税法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/31
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032・安倍晋太郎
○安倍委員長 まず、政府より提案理由の説明を求めます。福田大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/32
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033・福田赳夫
○福田国務大臣 ただいま議題となりました印紙税法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
政府は、今次の税制改正の一環として、最近における経済取引の推移等に顧み、印紙税負担の適正化をはかるため、その税率及び免税点を引き上げるとともに、納税手続を合理化する等所要の規定の整備を行なうこととし、ここにこの法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案につきまして、その大要を申し上げます。
まず、売り上げ代金の受け取り書について現行の定額税率を階級定額税率に改めるとともに、受け取り書の免税点を三倍に引き上げることにいたしております。
すなわち、現行の受け取り書の税率は、一律に二十円の定額税率とされておりますが、売り上げ代金の受け取り書については、受け取り金額が五十万円以下のものに対して五十円の税額から受け取り金額が一億円超のものに対して二万円の税額に至る階級定額税率に改めることにいたしております。また、これに伴い受け取り書の免税点について、中小企業の負担の軽減をはかるため、現行の一万円未満を三万円未満に引き上げることといたしております。
次に、階級定額課税が行なわれている不動産譲渡契約書、手形等について税率の見直しを行なうことにいたしております。
すなわち、不動産譲渡契約書、手形等につきましては、現在すでに契約金額、手形金額等の大小に応じた階級定額税率が適用されておりますが、不動産譲渡契約書等については契約金額が五百万円をこえるもの、手形については手形金額が二千万円をこえるものの税率を引き上げる等所要の改正を行なうことといたしております。
また、その他の文書で引き続き定額税率課税が行なわれる預貯金証書、物品売買契約書等につきまして定額税率を引き上げることといたしております。
以上のほか、課税文書の交付を受ける者がその作成者にかわって申告納付することができる課税文書の範囲及び印紙税納付計器の設置者がその計器により納付印を押すことができる課税文書の範囲を拡大する等所要の規定の整備合理化を行なうことといたしております。
なお、この法律案は、本年四月一日から施行し、五月一日以後に作成される文書について適用することといたしております。
以上、印紙税法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由と内容の大要を申し上げました。
何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/33
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034・安倍晋太郎
○安倍委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/34
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035・安倍晋太郎
○安倍委員長 これより質疑に入ります。
質疑の通告がありますので、順次これを許します。阿部助哉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/35
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036・阿部助哉
○阿部(助)委員 この印紙税の引き上げでありますけれども、これは税調の答申にありますが、この方針に沿って行なうものでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/36
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037・高木文雄
○高木(文)政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/37
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038・阿部助哉
○阿部(助)委員 そうしますと、この答申では、「中期的な視野に立って、税体系のバランスを保ちつつ、今後の税負担水準のなだらかな増加に対処していくためには、引続き所得税の負担の軽減を図るとともに、一方では、法人税負担の適正化、間接税の整備を図るよう配慮すべきである」こう述べておるわけですね。そうしますと、ここに書いてある「中期的な視野」というのは、一体何年くらいのことをこれは言っておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/38
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039・高木文雄
○高木(文)政府委員 別に何年というわけではございませんですが、ここにいわれました中期的視野という意味は、まあ言ってみれば、ここ数年と申しますか、ここ三、四年と申しますか、そういう意味に御理解いただいたらよろしいのではないかと思うわけでございます。
数年前から、福祉時代へ変わっていく、その場合に、税制におきましてもいささか産業に片寄り過ぎた、産業奨励に片寄り過ぎた税制を何年かかかって直していくべきではないかということを御指摘になっており、税制調査会のほうでもそういう認識に立っていろいろな制度の判断が行なわれております。そういう意味におきまして、この中期的視野という意味は、ただいまから見まして数年前からさらに今後数年へかけてという意味と御理解いただいてよろしいのではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/39
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040・阿部助哉
○阿部(助)委員 そうしますと、ここにありますように所得税の負担の軽減、これをはかる、そのかわりに間接税の整備をはかると皆さんぼかしてあるけれども、これは間接税を強めていく、これが基本的な、これから一貫した政策としてとられる、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/40
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041・高木文雄
○高木(文)政府委員 直接税と間接税のあり方の問題につきましては、かねがね税制調査会でいろいろ御論議をいただいておりますが、そして大体ここに表現されましたような形になっておりますけれども、そのウエートの置き方については、委員の方々の間において必ずしも完全に一致した御見解があるというわけではなくて、委員の間でもいろいろのニュアンスの相違があるように私どもは読み取っておるわけでございます。
私どもが理解しておりますところでは、現行の税制のもとにおきましては、所得税の累進構造との関係で、もし何らの手直しもいたしませんでありましたならば、直接税のウエートが高まっていくことになると思います。しばしば税制調査会に御提出いたしております資料を通じて税制調査会のほうからも指摘を受けておりますのは、大体ここ十年の間に直接税のウエートが六〇%から七〇%に上がった、しかも、その上がる割合は大体一%ずつぐらい上がってきた、こういうことでございました。それについて、それはいけないという考え方の方もございましょうけれども、大体の大ぜいの方のお考えは、この調子でどんどん直接税のウエートが高まることは問題だということでございまして、必ずしもいまの直接税のウエートを下げるべきだというところまでお考えの方ばかりではないというふうに思います。そのあたりは、この「間接税の整備を図るよう」ということばの読み方につきましても、それぞれの委員さんの間に若干のニュアンスがあると思いますが、私どもは、大多数の方々のお考えは、どんどん直接税のウエートが高まるのは困るという認識のもとでの御判断だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/41
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042・阿部助哉
○阿部(助)委員 税調の考えはいろいろあろうけれども、大蔵省自体として、大臣自体としてはどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/42
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043・福田赳夫
○福田国務大臣 私も、かねがねどうも成長政策下においては所得税等の直接税に税収のウエートが片寄り過ぎる傾向になっている。やはりこれは適当な間接税増徴というような形において是正すべき問題ではあるまいか、そういうふうに考えておるわけなんです。ですから、四十九年度におきましても、一方において所得税の画期的な大減税をいたすということにしたわけです。その半面において、軽微でありますけれども間接税を調整する、こういう措置をとる、かように御理解願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/43
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044・阿部助哉
○阿部(助)委員 間接税はやがてこれは大衆課税として転嫁をされると私は思うのですが、それは大臣もお認めになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/44
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045・福田赳夫
○福田国務大臣 間接税は本来転嫁的な性向を持っておる、それは私はそのとおりに思います。しかし同時に、直接税にあまり偏重するという税体系、これも納税者にとりまして重大な問題になると思うのです。その辺はやはり大局的な立場に立ってのバランス、そういうことが必要じゃあるまいか、そういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/45
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046・阿部助哉
○阿部(助)委員 大臣はいまこの狂乱のような物価安定に全力をあげる、こうおっしゃっておられる。ところが、それは大臣の希望的な観測にすぎないのではないか。参議院選挙までは何とか公共料金を押えておるだろうけれども、参議院選挙が終われば公共料金は軒並み上がっていくだろうし、特に、公共料金を中心にしてさらに物価の値上がりの速度は速まるのではないかという不安を国民は持っているわけであります。そういうときに、また間接税の引き上げ、そしてこれが物価に転嫁するという。こういう時期にこの間接税の引き上げというのは、問題があるのではないかという感じがするわけであります。
そういう点で、所得税の軽減というけれども、むしろ高額所得者の減税率があまりにも大き過ぎる、これはいずれ所得税の法案のときにいろいろと質疑があろうと思いますけれども、高額所得者の減税というものが大幅過ぎるのじゃないか。そういうことを踏まえながら、所得税といえば低額所得者から高額所得者まである、それを十ぱ一からげにして所得税の減税をした、その代償に間接税を上げていく、物価値上げにつながるところの間接税の値上げをしていくというところに問題があるんではないかというのが第一の疑問であります。
もう一つは、先ほど局長も話をされたわけでありますけれども、間接税を引き上げるということがこれからの一貫した税制のあり方であるということについて、これはいろいろの論議があろうけれども、私は、大衆課税、いまですら負担の重い、特に所得税すら納めることのできない人たちにまでこの間接税というものは物価の値上がりというもので影響を及ぼしていくということを考えていく場合、この間接税の引き上げをこれから一貫してとられるということに、まず大きな不満と不安を感ずるわけであります。そういう点で、もう一ぺん大臣の御所見を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/46
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047・福田赳夫
○福田国務大臣 間接税と、こう一口に言ってしまいますと、間接税にもいろいろあるのでありまして、たとえば売り上げ税だ、取引高税だというようなドラスチックな間接税方式もあるわけです。私どもはそんなことをいま考えているわけではないのです。やはりいま当面する最大の問題は何だといえば、物価問題だ。この物価問題と斉合のでき得る範囲内の財政措置というふうに考えておるのでありまして、たとえば、いま御審議を願っておる印紙税の税率の適正化、こういう具体的な案件が大衆課税になって、そして物価の引き上げに通ずる、そういうふうな認識はとっておらないのです。
所得税がだんだんだんだん重くなる傾向になってくる、それは是正しなければならぬ。同時に、間接税においては何かいろいろくふうをして、そして所得税負担の軽減を埋めていく資源とならなければならぬ、こういうふうには考えますが、間接税なら何でもやるのだ、こういうのじゃないのです。これは選別いたしまして、これならば、これは大衆の負担の関係から見て、あるいは物価政策との関係から見て支障ないというような限度においてやるのでありまして、御所見のようなことにつきましては、懸念のないような配慮をしつつやっておるというふうに御了解願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/47
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048・阿部助哉
○阿部(助)委員 だから、私が当初にお伺いしたように、間接税は大衆に転嫁されるということは大臣認めた。ただ、これはそれほど大きくないから、まあ物価との問題を勘案して、これぐらいならいいだろうということでおやりになると、こういうお話でありますけれども、
〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕
これぐらいならこれぐらいならとやっておったら切りがない。私は、いま大臣が言う物価安定に全力投球をするんだというお話を各ところでおやりになっているという点からいけば、むしろ大金持ちに対する所得の減税をある程度縮めても、この間接税の増徴というものはやるべきではない、やらないほうがいいんだというのが私の考えなんで、そういう点でお伺いしたわけでありますけれども、これをやればやはりインフレに何がしかの刺激になるという点は、大臣、否定するわけにいかぬのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/48
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049・福田赳夫
○福田国務大臣 いま御提案いたしている程度のものが物価上昇の刺激になるとは、私どもは考えておりませんです。これはやはり総需要抑制政策をとっておる、非常に厳重な体制がしかれておるということを前提にして考えていただきたいのです。そういう際に、このくらいな程度の印紙税の増徴がありまして、これが物価に響くなどとは、私どもは全然考えておりませんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/49
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050・阿部助哉
○阿部(助)委員 いや、そんな全然響かないものなら、何もそんなに無理をしてやることもないのであって、これで上げるのが大体見積もりで千四百七十億ですか、局長、そうですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/50
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051・高木文雄
○高木(文)政府委員 平年度千二十億、初年度九百億と現在のところ見込んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/51
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052・阿部助哉
○阿部(助)委員 それは全体の税の中からいけば大きくはないかもわからぬけれども、こんなものをやるよりは、私は、非常な高額所得のほうの減税を減らして、やはり少しでも物価安定の方向へ努力すべきだと思うのであります。
もう一つお伺いをいたしますが、大臣も御答弁をなすったようでありますけれども、それが一貫して間接税の増徴の方向へ行く。先ほども局長の答弁が、こういう方向で行くと、こういうことになってきた場合、やはりこれは売り上げ高税的な方向に移行するきっかけになるのではないかという不安を持つわけでありますが、それは絶対ないという保障ができますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/52
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053・高木文雄
○高木(文)政府委員 売り上げ税、取引高税というものは、経済的取引そのものに着目をして課税をされるものでございます。現在のわが国の印紙税は、もちろん背後に経済的取引があるということを一つのめどにしておるということは否定いたしませんけれども、しかし、現在の印紙税の形態は、いろいろの文書がつくられる、その文書の前提として背後に経済的取引があるということは頭に置いております。その意味において、経済的取引ということと離れておるというわけではございません。しかしながら、あくまで文書が作成されておる、その作成された文書というものを課税の前提として取り上げているわけでございまして、よくヨーロッパにありますようないろいろの取引に注目して課税するという売り上げ税なり取引高税というものとは、基本的に性格が違うものでございます。現に、非常に広範囲に売り上げ税なり取引高税的な制度をとっております西欧諸国におきましても、かなり多くの国において、文書税たる印紙税と取引税たる売り上げ税なり取引高税とは並存して置かれている例がきわめて多いのでございまして、このことは、二つの税がかなり微妙な関係にはございますけれども、本質的に相違があるというところから出ておるわけでございます。
御指摘のように、間接税の増徴問題ということを考えます場合に、長期的な視野でものごとを考えます場合には、わが国におきましても、取引高税なり売り上げ税なりというものを十分今日の段階から勉強をしておかなければならぬということを私どもも考えておりますが、現段階におきまして、それを日本の税制の中に持ち込むというところまでは、まだとうてい踏み切れないという立場にあるわけでございまして、今回の印紙税の整備という問題は、取引高税あるいは売り上げ税というような経済的取引を前提にした税制を大幅に取り入れようという考え方とは基本的に違ったスタンドポイントから出ているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/53
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054・阿部助哉
○阿部(助)委員 もう少しあれしたいのですが、大臣がお帰りになるというので、その前にわが党の塚田君が質問したいということでありますから、私はこれでやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/54
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055・松本十郎
○松本(十)委員長代理 塚田庄平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/55
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056・塚田庄平
○塚田委員 時間もございませんので、大臣に質問いたしたいと思います。
いま同僚の阿部議員のほうからの質問に対して、今度の税制改正については、これは当然のことながら、税制調査会の答申を尊重したということでしたが、税制調査会の答申は、いま同僚から指摘のあったとおり、間接税にウエートを置く検討を進める、直接税から間接税へと、こういうことを長期的な視野とはいいながら、相当のスペースをさいて指摘いたしております。大臣もいま答弁の中で、直接税重点というのは、これは国民に非常に重税感を与える、そういうことばを使ったかどうかあれですが、とにかく何らかの形でこれを是正していかなければならぬという意味のことを言われました。
そこで、これからだんだんと間接税の検討を進めていくという際に、付加価値税というものを一体どう考えておられるか。ひとつ大臣の率直な御答弁をまず承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/56
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057・福田赳夫
○福田国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、わが国では、直間比率というものがだんだん直接税に偏重する、こういう傾向が出てきておるわけなんです。これはまた、一般納税者からいいまして、かなり重大な問題になってくるであろう、こういうふうに考えまして、間接税と直接税とのいわゆる直間比率というものにつきましては、ある程度バランスを考えていくべきものであろう、こういうふうに考えておるわけです。
たとえば、四十九年度には相当多額の所得税減税をする。これは直接負担を減少しよう、こういう意図に出るものでありますが、他面において、印紙税のようなものの増徴を考えるというふうにしておる。これも私が申し述べたそういう考えのあらわれなんですが、しかし、間接税というものは、先ほど阿部委員からも御指摘がありましたが、転嫁的性向というものを持っておる、また同時に、物価との関連という問題も、直接税よりは深いものがある、こういうふうに考えられますので、やはり間接税を考える場合におきましては、その時点の経済情勢というものをよく考えていかなければならぬだろうと思うのです。そういう前提をまず申し上げておきます。
そこで、付加価値税を一体どういうふうに考えるかという問題でありますが、まだ、私は、わが国において付加価値税を採用すべしというふうには、考えは固まっておりません。おりませんが、まあ時間がたつにつれまして、この直接税比率というものがだんだん高くなってくる。そういう現象をどういうふうに是正するかということにつきましては、今日から検討はしておかなければならぬ、こういうふうに思うのです。付加価値税だ、売り上げ税だ、こういうようなことになりますと、これは物価対策の見地から見て、今日のような状態でこれをやったら、これは私は相当決定的な影響というものがあるであろう、こういうふうに思いますので、これは今日の状態においてはとることはできない。しかし、直間比率という問題につきましては、将来を展望いたしまして、いろいろどういう事態になったらどういう課税が考えられるか、どういう事態になったらどういう課税が適当かといようなことにつきましては検討はしておきたい、こういうふうに考えておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/57
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058・塚田庄平
○塚田委員 そこで、第二ですが、実は私は付加価値税という問題を、いま一体政府はどのくらい検討しておるかということについて、深入りして質問する予定でしたが、検討は進めておるけれども、安易にとるべきじゃないというような意味の答弁もございました。私がきょうあえて聞いたのは、今度の四十九年度の税制改正についての答申は、従来にない、きわめて大胆な答申を実は行なっております。それは、たとえば次のようなことがいわれております。大臣は、間接税というのは、転嫁する、しかも逆進的な大衆課税になりがちな税金であるから注意しなければならぬと言っておりますが、答申では、「価格の上昇を招くこととなり適当でない場合があろうとする意見があるが、これについては、そのような価格の上昇を通じて」、これは大臣のお好きな「需要抑制効果を期待することも場合によっては可能であろうし、とくに、その消費者にある程度の負担の増加を求めてしかるべき税目については、むしろ積極的に負担増を求め、これを通じて全体としての消費抑制、資源節約等に資するよう配慮することが適当」である。つまり、総需要抑制というものとからみ合わせて、物価上昇を招くようなことがあっても、この際思い切ってやるべきだというきわめて大胆な意見が出ておるのですが、一体いままでの大臣の答弁とこの答申とをどう考えるか。この際、最後にこれをひとつお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/58
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059・福田赳夫
○福田国務大臣 この答申でいわれておる、特に学者の方々等の意見ですね、そういうものも、私は、傾聴すべきところがある、こういうふうに考えておるのです。たとえばガソリンに例をとって、これが非常な高価なものになるというようなことになれば、自然にガソリンの消費の節約ということになるというようなことに見られるがごとく、これは私は間接税の問題につきましては、先ほども転嫁的性向を持つ、こういうふうには申し上げておりまするけれども、それは性向を持つということであって、個々具体の場合におきまして、いろいろその作用は違ってくる、こういうふうに見ておるのです。でありますので、たとえば今回の印紙税が一体この程度のもので物価の引き上げというような傾向があるかというと、私はそうは思わない。
〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕
特に私の強調いたしたい点は、これはいま総需要抑制政策という非常にきつい政策が一方にとられております。そういうきつい政策がとられている際に間接税がどういう働きをするかという点は、総需要抑制政策というような政策がとられておらない場合とは非常に違ってくる、こういうふうに思うのです。ですから、一がいに論ずることはできないというのが私の所見でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/59
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060・塚田庄平
○塚田委員 これでやめようと思ったのですが、そういう答弁がありましたので……。
いま政府の総需要抑制というのは、それ自体私は目的ではないと思うのですよ。なぜ総需要抑制をするかというと、これは物価を上げない、あるいは引き下げる、そういう一つの手段としてこれは総需要を抑制しなければならぬ、こういうことが言えるのじゃないかと思うのですね。ところが、今回の答申を見ると、物価は上げても総需要抑制効果があるんだからそれはやるべきだということ、あるいはいまの大臣の答弁からいうと、たまたま石油、灯油の例を出しまして、高くなれば買わぬだろう、こういう思想で、はたしてほんとうに国民のための物価引き下げの施策になるかどうかという点が私は非常に疑問だと思うのです、いまの答弁を聞くと。この点もう一ぺん、総需要抑制と物価の関係について承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/60
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061・福田赳夫
○福田国務大臣 それは塚田さんが物価を個々の一種の価格と一緒に論ぜられておるのじゃないかと思うのです。物価というのはこれは全体、いろいろな物資があります。その平均的というか総体の水準のことをいうんで、その中で個々の物資について高いものが出てくる、あるいは安いものが出てくる、私はこれはやむを得ないと思うのです。高くなったものについて、それが需給にどういう影響を持ってくるか、あるいは安くなったものがどういう影響を持ってくるか、これはいろいろの影響があろう、こういうふうに思うのであります。学者先生方がいまこの答申で言われておりますのは、個々の物資のことを言われておるんじゃないか。物価水準を上げなさい、こういう議論ではなくて、むしろ物価水準を下げる、下げるために個々の物資につきましてはあるいは高いものが出てくる、こういうこともやむを得ないのじゃないか、こういうことを言っているのじゃないか、さような理解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/61
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062・塚田庄平
○塚田委員 ここで質問というよりも、もちろんこの答申の中では、課税物品について限定していますよ、これは税金についての答申ですから。しかし、いま言った転嫁というのは、これは単なる課税物品に限定されないで、そうではないその他の面にまでどんどん転嫁していって全体的に物価を上げる、そういう要因になるということをわれわれ主張しているわけですよ。一体、この点どう考えるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/62
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063・福田赳夫
○福田国務大臣 そういうことをいえば、直接税だってそうじゃありませんか。直接税は物価抑制の力がある、こういうふうに見られる。それは間接税と逆だというふうな見方があるけれども、これを全面的にそういうことだというふうに断定することは私はできないと思います。個々の直接税が重なれば、それはコストを高くする、こういう問題もありますので、そのときの経済情勢によって、個々の価格がどういうふうに動いていくかということはこれはまちまちだ、こういうふうに思うのです。物資によりましては、高くなれば需要が抑制されていくであろう、こういうようなものもありますれば、あるいは高くなる、それが一般の物価水準の上昇力に通じていく、こういうものもありましょうし、これは物価水準と個々の物価、物資の価格というものは、私は区別して論ぜられるべきものである、さように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/63
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064・塚田庄平
○塚田委員 それでは大臣はどうぞ。また次の機会に……。
印紙税というのは、若干先ほどの阿部議員に対する答弁の中にもありましたが、どういう性格、どういう目的の税金であるか、だれが何にどういう目的でかけていくものか、これをひとつわかりやすく教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/64
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065・高木文雄
○高木(文)政府委員 非常にむずかしいお尋ねでございます。印紙税の性格論議は、いろいろな角度から議論されているわけでございます。まず印紙税の一番の特色は、文書税だということでございましょう。文書がつくられる、そのつくられる文書が何らかの意味において使われる。作成され、行使される文書というものがあります。その文書がつくられるということの意味、その背景として何らかの経済的利益なりがあるということを推定いたしまして、それに着目して、その文書がつくられたということの背景としてはある程度の負担力があるであろうというところに立って課税されるものでございましょうというふうに、一般には説明されておるわけでございます。間接税にもいろいろなものがございます。印紙税は確かに間接税の中の一つでございます。しかし、間接税の中の、たとえば砂糖消費税であるとかガソリン税であるとか物品税であるとかというふうに、何かある品物を消費をする、あるいはサービスの提供を受けるという事実をとらえまして、その背後に経済的な負担能力ありということで課税されるのとは違いまして、そういう消費とは関係なく文書がつくられておるということ、そしてその文書が、何らかの意味において、総じて経済的な取引に関連があるものであるという事実をとらえている文書税だというところが、他の間接税とはまた非常に違った特色のある性格を持ったものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/65
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066・塚田庄平
○塚田委員 いまの答弁の中で文書税——私は初めて聞くのですけれども、文書に課せられる税金だ。その背後に経済的な利益あるいは担税力というのを見てとれるといいますか、そういうものだ。今回、税制改正の中で相当いままで低率であったものを階級別、段階的にやったというのは、経済的な利益というものに重点を置いた、つまり間接税としての性格をうんと強めた、あるいはもっと言い方を変えれば、従価税的な性格に次第に移行してきている、こう考えていいかどうか、その点を承ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/66
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067・高木文雄
○高木(文)政府委員 大筋としてはそういうととが申せるかと思うのでございます。文書に課税をするという場合に、その文書の持つ経済的意味をどう理解するかということでございますが、その経済的取引なり経済的利益なりというものをはずれての課税ということは、まずまず原則としてはないわけでございます。
そこで、やはりその文書にあらわれましたものから推定される裏の取引なりの経済的な大きさというものによって負担に若干の差があってもいいのではないか、定額税ではなしに比例税率であるほうが、より負担の公平といいますかバランスがとれるのではないかという考え方があるわけでございます。この文書税の場合に、これを定額税にするか、定率税と申しますか比例税にするか、それから今回御提案申し上げております中に相当部分入っておりますような段階的な比例税率にするかというあたりは、非常にテクニカルな問題だとは思いますが、やはり同じ文書でも、たとえば一万円の取引と十万円の取引と百万円の取引とが裏にあるという三つの取引をあらわす文書である場合には、それが定額であるよりは、何らかの程度において、ある程度バランスのとれたものであるべきではなかろうかということが考えられておるわけでございまして、前回の四十二年の改正の際にも、そういう方向に向かって手直しが行なわれてきたわけでございますが、今回の改正も、方向といたしましてはそういう方向に向かっていっているということが言えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/67
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068・塚田庄平
○塚田委員 そこで、従価税的な性格を強めたということなんですが、私どもそう考えると、これは物品税とまではいきませんけれども、ますます先ほど指摘になりました価格といいますか、当該その裏にある経済的な行為の経済利益といいますか、そのかさをいやが上にも上げていく結果になる。それはインフレマインドといいますか、気分的に物価を引き上げていく、そういったほうにも影響していくと考えられるのですが、こういう制度をそういう面とかみ合わせて考えたかどうか、御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/68
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069・高木文雄
○高木(文)政府委員 先ほど阿部委員の御質問にもお答えいたしましたが、私ども一番気になっておりますのは、必ずしも積極的に直接税と間接税のあるべき姿を何か変えなければならぬというほどにも考えておりませんが、どうも間接税のウエートが下がっていくということはたいへん気にいたしております。間接税のウエートが下がっていく一つの原因として、いろいろあるのでございますが、一つの原因としては、間接税の中に定額税がだいぶ多いということでございます。ガソリン税もそうでございますし、酒税も大部分定額税でございます。そういたしますと、経済が大きくなり、したがって取引量も大きくなり、場合によりますと、物の値段が上がりましても、定額でございますから、なかなか税額が経済の大きさの膨張に応じては伸びていかないということで、定額税の場合にはウエートが下がっていくわけでございます。その意味で、定額税と定率税の組み合わせになっております印紙税の中の定額税部分を、漸次定率的にしていくべきではなかろうかというのが私どもの考え方でございます。
その場合に、おまえは物価との関係は考えたかという御質問でございますが、その点はもちろん、物価の問題はいま当面の問題でございますから、間接税について若干の手直しをいたしますにつきましては、印紙税だけでなくて、今回御提案申し上げております他の税につきましても、物価との関係でどう判断すべきやという点は、一通り研究してみたつもりでございます。しかし、何ぶん、しさいに見ていただけば御理解いただけると思いますが、今回の印紙税の改正は、その取引のボリュームとその取引について課せられます印紙税のボリュームから申しましたならば、これが物価に何らかの意味において非常に強い影響を与えるというようなものではないと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/69
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070・塚田庄平
○塚田委員 先ほど阿部議員の質問に対する答弁で、九百億の増税、平年度千二十億ですか、これは印紙収入全部じゃなくて、印紙税収入全体から見れば大体倍でしょう。これは商売をやるごとに、あるいは物を売るごとに文書に印紙を張らなければならぬ。そういう商売をやっておる人たちから見れば、契約するごとに、あるいは譲渡するごとに相対的に倍に上がるのですから、たいへんなインフレマインドですよ。なお印紙も倍に上がったかということで、そんなに響かないというのは、これは高木さん、ちょっとおかしいんじゃないですかね。その辺どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/70
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071・高木文雄
○高木(文)政府委員 印紙税は昭和四十二年から手直しをいたしてないわけでございます。その間において今日まで、国民所得で申しますと三・一倍、四十一年と四十八年、一年ずつ改正の前の年を比べますと、四十一年と四十八年で国民所得が三・一倍、それから一人当たり所得に直しましても二・九倍、あるいは賃金水準でいいましても大体二・七、八倍というくらいの伸びでございます。それだけ経済は大きくなっておるわけでございます。ですから、おっしゃるとおり、今回改正をいたしますと、四十八年と四十九年とを比較されますならば、倍になれば倍ということになりましょうが、別に申しますと、四十八年には、前回この制度の手直しがありました四十二年と比べますと、いわば三分の一くらいにウエートが下がってきてしまっているわけでございます。それをある程度もとの位置に直すといいますか、その程度の引き上げをやってはどうかということでございます。
全体の国民所得の取引から見ましたならば、ものは考えようではございましょうが、いまの千億というベースあるいはそれを倍にした二千億のベースというものは、それほど大きなものではないということからいいまして、またこの税率を見ていただければおわかりのように、大体一万分の一、一万分の二というあたりをねらいとした税でございますので、それが物価への影響は非常に大きいということではないのではないかというふうに理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/71
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072・塚田庄平
○塚田委員 これは局長、四十二年に改正して今度改正になった、その間国民所得は三・一倍だと言われるが、実は四十二年の前は二十九年なんですよ。ずいぶん長い間改正がないでしょう。なぜ一体そういうふうに改正をしなかったか。常識的にいえば、なぜ低い税率で押えられたかというと、これはさっきも言ったように、文書税だからなんですよ。つまり、経済的な利益だとかあるいは負担力とかいうのはかいま見るものであって、補完的な税金なんです。だから、これは上げてはならぬという基本的な思想が流れているんですよ。高木さん、それは認めないですか。つまり、補完的な役割りを本来になわされている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/72
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073・高木文雄
○高木(文)政府委員 いや、そこは酒税でもガソリン税でもそういう問題があるのでございます。日本の間接税の中で最も典型的な比例税率をとっておるものは物品税でございます。物品税の場合には、たとえば蔵出し価格に対して一割とか一割五分とか二割とかいう税率になっておりますから、経済の大きさに応じましてある程度の税の増加が期待されるわけでございますが、酒税につきましても、ガソリン税につきましても、印紙税につきましても、定額税の場合には、そこのところがおくれおくれになっていくわけでございます。その場合に、何年に一度手直しをしたらよろしいかということは、いろいろな議論があろうかと思います。なぜ四十九年度に手直しをしなければならないのか、なぜもう一年待てないのかという御議論があろうかと思いますが、やはり定額税の場合には何年かに一度は直させていただきませんと、そのバランスといいますか、ウエートがだんだん下がっていくわけでありますから、財源を確保しなければならぬという税の立場からは、お許し願わなければならぬことではないかと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/73
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074・塚田庄平
○塚田委員 局長、ぼくはそういうことを聞いているんじゃないですよ。つまり、これは補完的課税だということは、もう税制調査会でも規定しているわけです。つまり、軽度の補完的なものと特に断わってあるわけです。そういう面で、これをぐっと一ぺんに上げることを極力押えなければならぬ税種目だと見なければならぬのですよ。たとえば、これはあとでいろいろ質問いたしますが、局長は経済的な利益がその背後に散らつくと言うが、たとえば議決権行使のための委任状、これなんか一体どのくらい経済的な利益が散らついているんでしょうか。しかし、これは、自由主義社会における、資本主義社会における株式会社という、そういう会社の占める一つの社会的なウエートというものを考え、当然株主は議決権を行使すべきだというところにやはり一つのウエートを置いた文書税をやっておるわけです。それは私は、経済的な利益などが散らつくなんということは考えられないんですよ。だから、これは決して、一ぺんに倍とか、わずか数年の間に倍なんというように上げるべき性質のものじゃない。私は、来年になったらいいとか、再来年になったら少し上げていいと言ってるんじゃないですよ。この点は一体どう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/74
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075・高木文雄
○高木(文)政府委員 お尋ねの点は、問題が二つあると思います。
おっしゃるように、上げ率が倍であるというのは大き過ぎるのではないかという点は、確かにお説のとおりであろうと思います。これは定額税の場合には、それでは経済の伸びに応じて、四十二年から四十九年まで七年間も放置するというようなことをしないで、もっと途中で小刻みに上げていったらどうかという議論が一つあり得るわけでございます。しかし、この印紙税という制度は、非常に大ぜいの方に関係がございます。非常に大ぜいの納税者に関係がございます。そして御存じのように、あの小さい印紙をいろいろな文書に張っていただかなければならないという関係もございます。そうすると、それぞれの事業をやっていらっしゃる方に、従来でございますと、この文書は二十円でいいんだな、これは幾らだなということを大体頭に入れておいていただく必要があるという関係がございまして、まあ私どもは、ときおり上げていくのがいいか、しばらく間を置いてまとめて上げるほうがいいかということの選択という意味では、いずれかというと、後者のほうがいいのではないかと考えているというふうにお答えしたらいかがかと思うのでございます。
次に、いまの株主総会の委任状でございますが、これは御指摘のように、非常に問題のあるところでございます。文書税の性格というお尋ねがございましたが、当初からあくまで趣旨としては、裏に経済的取引があるということがあり、それに経済的利益があるということを推定しての制度なんでございますが、さてそれでは、いかなる文書についていかなる経済的利益を推定すべきかということについては、これはそう数字的に証明できるものがあるわけではないわけでございます。その最も典型的なものの一つが、委任状でございます。委任状の中には、経済的利益に関係のある委任状と、経済的利益に関係のない委任状がございましょうし、株主総会のための委任状は、これは経済的利益に関係がございましょうけれども、さりとて、どのぐらいの利益を見込んだらいいのかというようなことは、計算できないものでございます。そこが、どこまで印紙税の課税対象とすべきかという場合に、非常にむずかしい問題でございまして、まさに委任状の問題というのは、その境界点、境目の点にあるものと思われます。
確かに、これを例にお引きになりますと、委任状というようなものは非常に経済的利益のはかりにくい問題であり、一方において、上げ幅が大きいということを結びつけて御議論になりますと、御指摘のように、少しおかしいのではないかという議論になろうかと思います。しかし私どもは、それを二つ別々に、それぞれ問題のあることは認識をいたしておりますが、いまお答え申しましたことのような判断から、この際といたしましては、従来どおり、委任状についても引き続き課税対象とすることで御提案いたしておりますし、倍率につきましても、いまのような判断でいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/75
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076・塚田庄平
○塚田委員 委任状の問題は、あとで例の新株の買い受けの場合の手続合理化といいますか、これに関連して質問していきたいと思います。
そこで、平年度一千二十億の増税になるのですが、私は、この文書の作成、行使の背後に経済的な利益を見るといった場合に、号別の一号の特にこの不動産の譲渡に関する契約、この点が最近の状況ではだんだんとウエートを高めてきているのじゃないかと思うのですが、大体税収の中のどのぐらいの位置を占めますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/76
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077・高木文雄
○高木(文)政府委員 印紙税の税収につきましては、御存じのように、印紙自体が印紙税だけに使われているわけではございませんので、登録免許税等のほうにも印紙が使われております。その関係で、印紙税の税収というのは、実は総額自体もあまりそう的確にはわかっていないわけでございます。先ほど申しました、大体現在千億、今度改正によって二千億という数字は、これはごく最近に今回の改正をお願いいたしますことと関連いたしまして、非常に荒い目ではございましたが、抽出調査をいたしましてやりました結果から推定をいたしておるものでございます。
それで、そのときの調査の結果によりますと、不動産譲渡契約書に貼付されておりますところから推定しました印紙税収入は、大体、税額で六%前後ということになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/77
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078・塚田庄平
○塚田委員 税額で六%というと、幾らですか、機械的に計算して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/78
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079・高木文雄
○高木(文)政府委員 四十九年の今度の改正前、現行法ベースで大体七十億強というぐらいのところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/79
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080・塚田庄平
○塚田委員 法務省の民事局の統計によりますと、最近、不動産の譲渡契約、登録はぐんぐんふえてきておりまして、昭和四十六年度で——これは残念ながら四十六年しかもらえなかったのですが、二百九十万件の登記件数があがってきております。この中にはいろいろな要素も加わってまいりますが、それにしても、七十億の税収というのは、これは捕捉率が非常に低いんじゃないかということが予想されるのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/80
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081・福田幸弘
○福田説明員 お答えします、計数に関係しますので。
先ほどの四十六年、これは二百九十万件、四十七年が三百二十八万五千件、これは登録件数でございます。それで、税収とのからみということになりますと、これは登録件数でございますので、この一件当たり幾らぐらいかということが判然としないわけでございます。したがって、まあ金額をこれに幾らかけたらよろしいかということがはっきりしませんが、かりに二千ぐらい置けば約六、七十億ということで見当がつきますが、いずれにしろ、今度のこの六%の見当といいますのは、実態調査を昨年やりまして、そのときの事業所調査の結果によります税額の配分でございますので、登録件数のほうには個人の分もございます。したがって、その辺、直ちにこの登録件数とは結びつかないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/81
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082・塚田庄平
○塚田委員 つまり、印紙税の実態の把握というのは、実際いまの答弁では、何ら正確にわからないんだ、こういうことを私は言っておるんじゃないかと思うのですよ。そうしますと、そういう基礎の軟弱な、具体的につかめない税種目について麗々しくこういう改正をやって、しかも、推計九百億なんというのが出てくる筋合いのものかどうかということですね。どうなんですか、一体。自信あるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/82
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083・高木文雄
○高木(文)政府委員 印紙税は税収を推定するのが非常にむずかしい費目の一つでございます。印紙税と登録税と合わした金額、これは印紙の売り上げ圏と現金納付額がございますものですから、これで雪ちっとわかります。これは確実にわかるわけです。ところが、そのうちで、登記、登録のほうに充当された印紙分——これは登録免許税のほうでございます。それと、ここにありますいわゆる印紙税とにその印紙がどういうふうに使われたかということは、なかなかわからないのでございます。調査をいたしましても、普通、印紙というものは取引文書に張りますが、印紙を張るのは作成者でございます。印紙を張った文書を持っているのは取引の相手方でございます。したがって、たとえばどのぐらい抜けているかというふうなことを調べようと考えました場合に、受け取り書なら受け取り書をつくる際に、印紙を貼付する義務はそれを作成するほうの人にあるわけですが、文書を持っている人はその作成する人ではなくて、相手側へ持っていってしまっているわけですから、そこで、印紙税の調査というものについてはいろいろ困難がございまして、おっしゃるように、他の税の場合に比べてなかなか実態がつかみにくいという事実があるのでございます。その点につきましては、しかしながら、いろいろな機会に国税庁等におきましても、ごくわずかではございますが、ある程度の調査はやっております。
なお、いまの不動産譲渡についての契約書なり何なりについての印紙の脱漏が多いかどうかということにつきましては、これは私どもも数字的に証明できません。数字的に御説明はできませんが、不動産譲渡契約書というものは、いかなる意味におきましても、日本の慣行ではつくられる傾向にございます。土地を売ったり買ったりしたときに、契約書をつくらないということはほとんどないわけでございます。しかも、この書面そのものが将来所有権その他の証明の非常に重要な要素になりますので、したがって、その場合に、昔からの慣習でこの印紙の貼付が思ったよりはかなりよく行なわれている分野だというふうに理解はいたしております。しかし、いま御指摘のように、完全にうまくいっているかしらと言われますと、それはいま言ったように、調査自体に非常に困難を伴います関係もございまして、一部いわば印紙貼付漏れというものもないとは言えないという状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/83
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084・塚田庄平
○塚田委員 そこで、戻りますが、平年度千二十億の増税計画なんですけれども、いまのように正確につかめない。つまり、不動産はどのぐらい伸びていくのか、あるいは請負契約も大体同じだと思うのですけれども、全体的にどの項目がどうなのか。二十五ですか、ありますけれども、その推移というものは見てとれないというのが実態じゃないかと思うのです。そういう中で、どうして千二十億という、あるいは九百億という、そういう増税見積もりが成り立つのかどうか、私はふしぎでしようがないのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/84
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085・高木文雄
○高木(文)政府委員 たとえば、法人税の税率を三六・七五から四〇%に上げたら幾ら増収になるかとか、所得税で配偶者控除、扶養控除、基礎控除を幾ら上げたら幾ら減収になるかという場合の計算等に比べましたならば、この千億の増収見込みというものはおまえ自信あるかと言われますれば、非常に困難でございます。それは事の性格上非常に困難でございます。
そこで、千億という数字を出しております根拠といたしましては、御指摘のような問題がございますので、今回七年ぶりで調査をいたしました。現在印紙がどういうふうに貼付されているか、どういうふうに使用されているかというような調査をいたしました。そして一号から二十五号までに大体どういうふうに使われているかということを、たいへん納税者の方には御迷惑でございましたが、昨年の八月にある期日、ある期間を限りまして調査表を配りまして調査をお願いをいたしました。そういうふうにして調べましたものから——もちろんこれは抽出調査でございますから、抽出調査から全体を推定いたします過程等においても一つ問題がございますが、そういう根拠をもとにいたしまして推計をいたしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/85
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086・塚田庄平
○塚田委員 非常にあいまいだということが一応わかりましたが、そこで各号別にやりたいのですが、一、二非常に不合理なもの、つまりこういうやり方では救えない不合理といいますか、そういうものを指摘して御答弁を求めたいと思うのです。
たとえば、不動産譲渡に関する契約書。いま不動産の譲渡で金額の面からいうと一億、二億なんというのはその辺の小さな不動産屋がやるので、大きなものになると何十何百億というようなことになってくると思うのです。先ほど、これは大臣の答弁ですが、私どもは賛成できませんが、所得税で失うものを間接税で補っていくと言わぬばかりの答弁でしたが、それにしても、一億をこえるものを一律に五万円。もういまでは、一億をこえるものなんというのは不動産取引では普通なんじゃないかと思うのですね。
さらに請負、これも大手、たとえば大成とか清水とか、そういう大きなものになりますと、一億の請負契約なんというものは、これはもう下請の部類ですよ。
それから手形、これもたいへん不合理なんです。時間がないのでまとめます。これも一億円をこえるものについては二万円で打ち切っております。ところが、手形は、ここでまた非常に不合理が出てくるのですが、十億、二十億の手形ということになりますと、これは二万円で切れるわけですね。だけれども、中小の場合は、手形を何枚も切るのですよ。同じ一億を払うにしても、サイトの関係がありますから、十枚、二十枚と分けちゃうのです。そうすると印紙税がその分だけごっそり。これは中小に限って言えるのですね。大手は一ぺんに二億でも三億でも手形を切れるでしょう。その場合は二万円で終わるのですから、負担からいうとたいしたことはないのですが、そういう不合理がずっとついて回っているのですよ。私は基本的に下のほうについて三万円の控除、これはいいですが、五十万に上げたということは、二倍半ですね。これは反対ですが、それにしても、上についてはあまりにも甘いんじゃないか。ぷっつり切っちゃってみんな平均しちゃっているのですから。こういうやり方は、とるべきではない、同じ改めるならば。どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/86
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087・高木文雄
○高木(文)政府委員 ただいまのお尋ねもいろいろな御指摘があるわけでございますが、まず第一に、一億円超で、たとえば手形のところで言いますと、従来の三千円を二万円にとめたというのはどういうわけかというお尋ねが一つ入っております。この点につきましては、非常にむずかしいところでございますが、全体の考え方といたしまして、総体として二・五倍ということに置いたわけでございます。二十円を五十円にするというあたりともにらみあわせまして、請負の一億円超、二万円を五万円にするというのとは考え方は同じにしてあるわけでございます。二・五倍をどこから引っぱってきたかといいますと、それはどうして二倍でないのか、どうして三倍でないのかと言われますとたいへん困りますけれども、先ほどの経済の大きさ、伸びというようなものを頭に置いて、二・五倍というところに置いたわけでございます。二・五倍に置きまして、全体を二・五倍に伸ばす。
ただし、なるべく小さい取引についてはわずらわしさをもたらさないようにという趣旨もございまして、約束手形または為替手形につきまして例をあげてみますというと、三十万円超のところからずっと二千万円以下というところまでは据え置きにしました。一番下をちょっと上げました、まん中を据え置きにしました、上のほうを上げた、こういう形をとっているわけでございます。でございますから、おっしゃるようなことが完全には払拭できませんが、多少とも回避できるようにということで、請負の場合でも一千万円以下のところは影響が及ばないようにというようなことは、多少とも配慮したつもりでございます。
それから、いろいろ合計したり手形を分けたり、契約の場合でも、一ぺんにやったり分けたりということによって負担が変わってくるではないかという問題はあるのでございます。これを避けるためにはどうしたらいいかといいますれば、これは比例税率にすればよろしいわけでございます。一億は二千万円の五倍ということにするためには、これは比例税率にすればよろしいわけでございます。しかも、それを頭打ちではなしに、無限にすればよろしいのでございます。しかし、そうやりますと、今度は非常に端数の問題とか、いろいろこまかい印紙をたくさんつくらなければいかぬとか、いろいろな問題が出てまいります。そういうことから、大体現在では、理想を比例税率に置きながら、定額階級別ということにしておるのでございます。
定額階級別にしますと、いかなる場合といえどもいろいろスプリットする、分けることによってうまくいく、じょうずにいけるという方法が出てまいります。そのデメリットはあるのでございますけれども、そのデメリットには目をつぶりながら、一方において簡素化というふうにいかざるを得ない。特に、印紙税というものの性格上、種類をたくさんつくれない。御商売の方にいろいろな種類のものを持っていていただくわけにいかないということがあり、端数の整理の関係があって、そうなっているわけでございます。おっしゃる点は、私どもも、結果といたしましてそういうことが生じておるということを否定いたすものでもございませんし、できる限りそのような矛盾が起こることの少ないように配慮したつもりではございますが、そういう難点が残っておるということは認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/87
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088・塚田庄平
○塚田委員 そこで、最後に、比例税率でやったほうが一番理想的なんだ、こういう答弁がありましたね。これは、先ほどから阿部議員あたりが追及しておる、つまり従量から従価へ、そうしてこれが比例税率で付加価値税あたりにすぐ移行しやすい、そういう形態としてとられる比例税率なんですから、直ちに物価にはね返りやすい、印紙税というものをそういう形態に変えられる、私はそう受け取れてしようがないのですけれども、そういう弊害といいますか、これはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/88
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089・高木文雄
○高木(文)政府委員 そこは非常にデリケートな問題があるのですが、現在の日本の印紙税のたてまえは、文書を作成することを義務づけてはいないのでございます。ただ、文書が作成されました場合には、そういう印紙税を貼付していただきますという形がとられているわけでございます。売り上げ税とか取引高税とかというシステムというのは、何らかの意味において、帳簿もしくは文書の作成というのが義務づけられるということが前提になるわけでございます。そこに非常に大きな開きがございます。
もう一つは、そこの作成を義務づけていないということから、徹底した比例税率をとりますとか、あるいは税率を高めるという形をとりました場合には、それならば文書をつくらないで別の形で取引が行なわれる、銀行振り込み等の方式でもって金銭の授受が行なわれるというような形になるのでございまして、そういうところに現在の文書税たる性格の印紙税の限界があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/89
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090・安倍晋太郎
○安倍委員長 ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/90
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091・安倍晋太郎
○安倍委員長 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/91
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092・塚田庄平
○塚田委員 では、明日に質問を保留します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/92
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093・安倍晋太郎
○安倍委員長 次回は、明二十日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時三十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X00819740219/93
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