1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年四月三日(水曜日)
午前十時四十八分開議
出席委員
委員長 仮谷 忠男君
理事 笠岡 喬君 理事 坂村 吉正君
理事 湊 徹郎君 理事 安田 貴六君
理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君
理事 芳賀 貢君 理事 津川 武一君
愛野興一郎君 伊東 正義君
今井 勇君 上田 茂行君
小沢 一郎君 吉川 久衛君
熊谷 義雄君 小山 長規君
佐々木義武君 白浜 仁吉君
染谷 誠君 丹羽 兵助君
本名 武君 粟山 ひで君
井上 泉君 角屋堅次郎君
島田 琢郎君 竹内 猛君
野坂 浩賢君 馬場 昇君
美濃 政市君 中川利三郎君
瀬野栄次郎君 林 孝矩君
稲富 稜人君
出席国務大臣
農 林 大 臣 倉石 忠雄君
出席政府委員
農林大臣官房長 大河原太一郎君
農林省農林経済
局長 岡安 誠君
農林省構造改善
局長 大山 一生君
林野庁長官 福田 省一君
水産庁長官 内村 良英君
委員外の出席者
公正取引委員会
事務局審査部第
一審査長 妹尾 明君
外務大臣官房審
議官 杉原 真一君
外務省アジア局
次長 中江 要介君
外務省欧亜局外
務参事官 加賀美秀夫君
通商産業省生活
産業局繊維製品
課長 田口健次郎君
資源エネルギー
庁石油部精製流
通課長 松村 克之君
農林水産委員会
調査室長 尾崎 毅君
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四月二日
愛媛県長浜町沖浦地区の漁港計画反対に関する
請願(湯山勇君紹介)(第三二四五号)
農業共済改正に関する請願(加藤紘一
君紹介)(第三二四六号)
農山漁村における有線放送電話の育成強化に関
する請願外十件(正示啓次郎君紹介)(第三三
〇二号)
畜産業の経営安定等に関する請願外六件(坂村
吉正君紹介)(第三三〇三号)
同(服部安司君紹介)(第三三〇四号)
同外一件(山口鶴男君紹介)(第三三〇五号)
同(大村襄治君紹介)(第三三四三号)
同外九件(黒金泰美君紹介)(第三三四四号)
同外一件(山口鶴男君紹介)(第三三四五号)
同外十八件(井出一太郎君紹介)(第三四二八
号)
同外一件(岩垂寿喜男君紹介)(第三四二九
号)
同外十一件(上村千一郎君紹介)(第三四三〇
号)
同外八件(浦野幸男君紹介)(第三四三一号)
同外一件(大竹太郎君紹介)(第三四三二号)
同(太田一夫君紹介)(第三四三三号)
同外一件(越智伊平君紹介)(第三四三四号)
同(岡田春夫君紹介)(第三四三五号)
同外三件(小沢辰男君紹介)(第三四三六号)
同外七件(小澤太郎君紹介)(第三四三七号)
同(加藤六月君紹介)(第三四三八号)
同(吉川久衛君紹介)(第三四三九号)
同(久保等君紹介)(第三四四〇号)
同外九件(住栄作君紹介)(第三四四一号)
同外三件(高鳥修君紹介)(第三四四二号)
同(津川武一君紹介)(第三四四三号)
同外一件(坪川信三君紹介)(第三四四四号)
同(成田知巳君紹介)(第三四四五号)
同(古川喜一君紹介)(第三四四六号)
同(橋本龍太郎君紹介)(第三四四七号)
同外一件(原茂君紹介)(第三四四八号)
同外一件(三宅正一君紹介)(第三四四九号)
同外二件(山口鶴男君紹介)(第三四五〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
連合審査会開会申入れに関する件
漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣
提出第四九号)
漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法
の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)
沿岸漁場整備開発法案(内閣提出第七〇号)
保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案
(内閣提出第五一号)
農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内
閣提出第五二号)
農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正す
る法律案(内閣提出第七八号)
農林水産業の振興に関する件
水産業の振興に関する件
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001・仮谷忠男
○仮谷委員長 これより会議を開きます。
漁業災害補償法の一部を改正する法律案、漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案、及び沿岸漁場整備開発法案の各案を一括議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川利三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/1
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002・中川利三郎
○中川(利)委員 いま漁民の暮らし、すなどりそのものは、たいへんな危機におちいっているといわれております。三月十二日のある新聞によりますと、「漁業経営危機突破全道緊急漁民大会」——これは北海道でありますが、「漁民に春らしい春を」という呼びかけの中で、特に「漁網綱、資材が狂騰、魚価は安過ぎ、やってゆけぬ」という見出しで、漁民の絶叫ともいえる叫びを載せているわけでありますが、ちょっと参考までに読みますと、「同大会は冒頭から「漁民に春らしい春を迎えさせないのは誰だ」の激しい声に始まり、漁民代表意見では、漁網綱、資材の値上がりは何%程度どころか何倍にも値上がりしている現状にあり「他物価に比して安過ぎる魚の価値を見直す政策が今年度中に実行されなければ、漁業者がストをしよう」など激しい言葉が次々と出た。」こういうことを書いておりまして、「さらに、東京で開かれる予定の全国大会に決議文を提出し、全国規模の運動が展開される。」こういうような記事があるわけであります。
さらに、それを受けまして、全国段階で、この三月二十八日ですか、「総力あげ漁業危機突破大会開く、各代表が窮状を訴え、深刻さ、ひしひしと迫る」なんということを見出しに出しまして、こういうことを書いている。「国民食生活安定に必要な水産物の確保のための漁業生産を、社会的使命として日夜努力している全国漁業者の悲痛なる叫びを結集した。」どこへ行ってもこれが現状だと思いますが、こういう漁民の苦しみの現状に対して、農林大臣はどのように把握しているのか、まず第一にお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/2
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003・倉石忠雄
○倉石国務大臣 いずれの仕事も、石油危機等はじめとして、昨今いろいろな仕事の用具が高騰してまいりました。そういう意味でなかなかやりにくいということは、私どももよくわかるわけであります。
そこで、まずそういうものの手当て、確保をすることが大切であるのと同時に、価格の安定について最善の努力をしていかなければならない、そういうことが一つだと思います。
もう一つは、魚価の安定等をばかりますために、流通機構の改善等、できるだけの措置を講じまして、安定的な作業ができますようにつとめなければならない。そういう意味で、私どもといたしましては、他産業と同じように、漁業につきましても最大の努力を鋭意続けておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/3
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004・中川利三郎
○中川(利)委員 いま大臣のお話もありましたように、石油危機などによるところの漁業の資材の異常な暴騰あるいは魚価安、こういうものが原因だというお話でありまして、それに対する対応をしなければならない、こういうことでありますが、異常な漁業資材の暴騰や魚価安を引き起こしたほんとうの背景といいますか、こういうものについてはどういうふうに御認識になっていらっしゃるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/4
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005・内村良英
○内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、最近漁業資材が非常に上がっております。そこで、たとえば昨年までの漁網でございますが、価格の動向を見ますと、昨年の前半期には大体価格はずっと安定して推移しております。他の漁業資材についても一般的にそうでございます。そこで、昨年暮れあたりから価格が非常に上昇をし出したことは、いわゆる石油危機といわれる現象と非常に関係があるのではないかと見ております。魚価につきましては、これは漁業でございますから、非常に魚の種類も多うございます。そこで、魚価が低迷しておるものもございますし、かなりいい値が出ておるものもございます。一がいには言えませんけれども、私どもの見ておるところでは、大体魚価も一般物価の上昇程度は上がっているというふうに見ているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/5
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006・中川利三郎
○中川(利)委員 漁網は、価格がいままではずっと横ばい、むしろ安定しておったのだ、魚価も一般的な程度には上がっているのだ、こういうことでございますが、たとえば漁業資材については、農林大臣にことしの一月十二日に、私と津川さんと諫山さん三人で、直接会見を申し入れまして、ワイヤロープやその他の漁網で困っているから、すぐひとつ段取りしてほしい、こういうような申し入れもし、大臣から検討するというようなお話もいただいておったわけでありますが、特にこういう異常な漁業資材、ロープや漁網の暴騰、こういう問題について、農林省としてはどういう検討をしたのか、お話しいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/6
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007・内村良英
○内村(良)政府委員 漁網綱につきましては、御案内のように使用原糸が化学製品でございますから、石油の問題が起こりましてから漁網綱の価格が上がり出した事態に対応し、農林省といたしましては、石油の供給制限による影響を最小限にとどめるため、原材料の生産の増大、製品の国内需要への優先的な供給等について通産省に申し入れをいたしまして、通産省の協力を得て関係業界を指導してまいったところでございます。四十八年度について見ますと、漁網綱につきましては、四十七年に比較いたしまして生産も増加し、さらに内需向け引き渡しは生産の増加以上に増加しておりますので、必要量の確保という点につきましては大体達成されたのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/7
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008・中川利三郎
○中川(利)委員 量の確保は達成されたようだ、問題は価格だ、こういうことのようでありますが、まさにそのとおりだと思うのです。価格が異常な暴騰なんです。このような危機的な価格の異常な高騰に対して、きょう通産省がここに来ていらっしゃると思いますが、通産省としては漁網資材についてどういうふうな措置をとったのか。私は、こういう事態の中では、まさに異常でありますから、当然メーカーの原価その他について把握し、適切な指導をするべきだと思いますが、この点はどうなっているのか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/8
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009・田口健次郎
○田口説明員 御説明申し上げます。
通産省といたしましては、漁網の値上がりの原因になっております原料価格、なかんずく原糸価格につきまして、特にナイロン繊維、ポリエステル繊維につきましては、価格引き上げについて通産省の事前了承を得るべき物資ということで、価格の抑制につとめておるわけでございます。
こういった原糸価格の上昇防止ということとあわせまして、漁網ロープ業界、これは中小企業業界でございますけれども、これに対しても極力その値上げの防止、値下げにつとめるよう指導してまいってきておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/9
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010・中川利三郎
○中川(利)委員 もう一回通産省にお伺いしますが、原糸の価格を押えれば漁網ロープが安くなるのかどうか。原糸、原糸とあなたはおっしゃいますが、原糸の価格を押えたりなんかすることはもちろん必要な手当てだと思いますが、そういう異常高騰が現実に起こっているわけでありますから、何かほかの要因があるのではないかとも考えられるわけでしょう。この点についてはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/10
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011・田口健次郎
○田口説明員 最近の漁網ロープの価格上昇でございますけれども、これは主として石油を原料といたします原糸等の原材料価格の上昇によるところが大きいわけでございますが、それだけではございませんで、加工段階におきます染色、それから熱処理、樹脂加工に使用いたします重油価格の上昇でコストが上がっておるということと、それから昨年末は石油が不足で漁網ロープも不足するのではないかということから、仮需が一時的に非常に盛り上がったということで、一部に値上げの行き過ぎがなかったとはいえないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/11
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012・中川利三郎
○中川(利)委員 一部に値上げの行き過ぎがなかったとは言い切れないという状況ですね。現実に私、せんだっても三重県に行ったり、あるいは秋田県に行ったり、いろいろな漁港、漁村を回ってきたのですが、どこに行っても漁業資材のことが問題になるのです。まさにこの漁民の全国大会の決議にもありますように、これは漁民だけの問題じゃなくて、国民にとってもたいへん切実な課題になっておると思うのです。だから、政府のみならず漁民、国民にとってもこの緊急、切実な課題の解決に立ち上がるということは、まさに社会的に正義の仕事だ、そういっても言い過ぎではないほどに、いま重要な位置づけを持たねばならない、こういうふうに考えるが、この点について大臣の御所見はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/12
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013・倉石忠雄
○倉石国務大臣 漁業につきまして、いまいろいろ重要な問題が起こっていることにつきましては、どなたもお感じになっていらっしゃることだと思います。そこで、われわれにとりましては、国民食糧の中の重要なたん白資源の半分以上を占めておるのが魚介類でありますので、これがやはり安定的に供給されることでなければ困るわけであります。したがって、その漁業を続けてまいりますために必要な資材が先ほど来のお話で高騰してまいっておる、こういうようなことが大きな混乱の一つであります。
そこで、ただいま通産省からも御説明がありましたように、われわれといたしましては、通産省とも連絡をとりまして、この手当てについて、あとう限りの最善の努力をいたしておる。そこで先ほど申し上げましたように、量においては心配はない、価格において、やはりいろいろな状況で高騰は免れない、こういうような最中に、私どもといたしましては魚価が安定してまいるように最善の努力をいたすためには、いまのような点について特段の力を入れなければならないことは申すまでもございません。そこで価格安定については両省で相談をいたしまして、できるだけそういう抑制措置を講じてまいる。同時にまた、漁業それ自体、つまり生産から流通、消費に至るまでの過程におけるロスをできるだけ省いて、消費者にも大きな負担をかけないようにしながら漁業の安定をはかっていく、非常にむずかしい問題ではございますけれども、そういうところに重点を置いて最善の努力をいたしてまいりたい、これが私どもの努力いたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/13
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014・中川利三郎
○中川(利)委員 いま問題になっておるのは、非常な価格の暴騰なわけでありますが、いま大臣の御説明のように、農林省もがんばっておる、通産省もがんばっておる。私が申し上げたいのは、確かにそういうことで、それぞれ緊急切実な課題解決のために立ち上がっていただくことは非常に大事だと思うのですが、もう一つ言いたいことは、国民的立場からもこういう問題について積極的に取り組んで、この事態解決に当たるという、そういう姿勢も、より社会正義にかなうものではないだろうか、この点について大臣の御見解を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/14
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015・倉石忠雄
○倉石国務大臣 皆さんがそういうことに理解を持っていただいて御協力を願うということは、なかんずく流通段階なんかにおいてはそういう気持ちをみんなで持っていただくことは、非常に効果があがることだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/15
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016・中川利三郎
○中川(利)委員 大体いま前段のところで御質問したわけでありますが、では漁網綱、つまり漁網やロープの問題でお伺いするわけでありますが、いま日本の中で漁網綱の大手メーカー、こういわれるものは大体何社ぐらいあるのか、大体どの社なのか、ひとつ社名をあげて、ちょっと御説明をいただきたいと思うのです。これは農林省でも、通産省でも、どこでもけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/16
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017・田口健次郎
○田口説明員 御説明申し上げます。
まず漁網でございますけれども、メーカーの企業数が全体で三百八十一社ございますけれども、このうち中小企業が九八%、大企業が八社になります。おもな会社の名前をあげますと、桃井製網、平田紡績、日本漁網船具、函館製網、泰東製綱、ニチモウ、日東製網等でございます。
それから繊維ロープをつくっております会社は、全体といたしましては二百十三社ございますけれども、このうち大企業は泰東製綱、東京製綱等三社でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/17
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018・中川利三郎
○中川(利)委員 そういうことをお伺いしたわけでありますが、たとえば漁網の場合三百何社あるけれども、大手といわれるのは八社にすぎない、こういう状況ですね。ニチモウ等八社ですね。それで、これまであまり価格の問題が問題にならなかった、こういうことは、先ほどの御答弁にもありましたわけでありますが、つまり価格がずっと横ばい傾向にあった、そういうことでいままで問題にならなかったというような御答弁でありますが、今回の異常な暴騰、これは一体どこに原因があったと見られるか、と言ってもあれですが、やむを得ないと見るのか、どこに問題があったのか、だれがこういう、つまり仮需要がどうだとか先ほどありましたけれども、漁民が買い過ぎてこういう状態になったのか、そこら辺の御見解、つかみ方をひとつ通産省からお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/18
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019・田口健次郎
○田口説明員 御説明申し上げます。
ただいま御説明いたしましたように、たとえば漁網の場合、メーカーの数が三百八十一社、大企業が八社と申し上げましたが、全体として四十社が自分で糸を買って製品を売っておる。残りがいわゆるその下請関係でございます。そういったことから、直接に売り買いしておるのは約四十社でございますけれども、この四十社が、いわゆる価格の人為的なつり上げをやっておるというような事実は、私ども存じていないところでございます。昨年末からことしにかけましての異常なといってよろしいほどの漁網ロープの価格の上昇の原因といたしましては、先ほど申し上げましたが、原料あるいはコスト関係の上昇のほかに、やはり一時的な需要者側からの品薄になるのではないかといったような仮需要がございまして、その需給でもって、メーカーのほうも、おそらく一部の品目につきましてはコスト上昇を上回ったような価格の上昇があったものもないとはいえないというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/19
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020・中川利三郎
○中川(利)委員 そうすると、結論的に、今回の異常な漁網資材の値上がりというものはやむを得ないと考えておるのか。それからもう一つは、メーカー側には全く責任がないと考えておるのか。いまのお話ですと、何かそういう実需者、ユーザーが買い急ぎしたようなかっこうでの御答弁に受け取られますが、この点はっきりさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/20
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021・田口健次郎
○田口説明員 御説明いたします。
このたびの値上がりにつきまして、メーカー側について、やむを得ないというふうには必ずしも通産省としては考えておりません。先ほど申しましたように、中小企業が多いわけではございますけれども、かつまた原料コストも相当上がっておるわけではございますけれども、やはりその一部に値上げの行き過ぎもなかったとはいえないというふうに考えておるわけでございまして、そういった行き過ぎたものについては、できるだけ値下げをさせる、それから原料の上昇以上には製品の価格の上昇をさせないというふうに今後とも力を入れていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/21
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022・中川利三郎
○中川(利)委員 行き過ぎたものに対しては値下げさせると言うけれども、具体的に、行き過ぎた会社、行き過ぎたものというのはどういうものですか。
それから、いまあなたの御答弁だと、ユーザー、つまり実需者も値上げをしたけれども、メーカーも値上げしたかもわからないというような発言なわけですね。一体どっちだと考えておるのですかということを聞いておるわけですから、はっきりお答えいただきたいと思うのです。両方ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/22
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023・田口健次郎
○田口説明員 実は値上がりの原因について、需要者側あるいは生産者側、いずれに原因があったかという御質問でございますけれども、これについては、いわば需給で相当上がってきたということで、どちらとも言いかねるのではないかというふうに思います。別言すれば、両方値上げについていわば関係があったといいますか、そういった形になっておるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/23
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024・中川利三郎
○中川(利)委員 くどいようですが、通産省、もう一回お伺いしますが、今回の異常値上げはやむを得ないものでもなかったようだ、何ぽかの前兆があったかもわからないというような言い方ですが、あなたのほうでは原価その他をつかんでいらっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/24
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025・田口健次郎
○田口説明員 漁網ロープ等につきましては、御高承のように非常に多品種でございますので、それぞれの品目について、いわば原価と価格との関係というものを見なければいけないかとは存じます。私どものほうは、必ずしもすべての品種について正確にコスト関係をつかんでおるわけではございませんけれども、標準的なものについて、大体どのぐらいのコストがかかっておるか、あるいは原材料の上昇が価格の上昇に影響を与えておるかということをなるべくつかみたいということで、現在、一部把握につとめておるという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/25
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026・中川利三郎
○中川(利)委員 私、いろいろ農林省がこれに対して指導してきたことも知っておりますし、通産省も何ぽか関心を持っているということも知っているわけですが、非常にやり方が事態の本質をついていないということを御指摘申し上げたいわけです。
たとえば私が調査したところによりますと、漁網が何百社あろうとも、実際市場を支配しておる大手のメーカー七、八社、この連中が支配するという条件の中ではどんなこともできるのだという実例を私、持っておるのですね。彼らが何かやれば必ずこういうことになるという、そういう結果としてあらわれた事例を、いま一つ御紹介したいわけでありますが、これは大臣にお聞きするわけですが、鮭鱒の漁網の事例でこういうのがあるのですね。
ことしの二月五日から七日にかけての三日間の、ある会社の出張報告書というものが私の手元にあるのです。これを見ますと、先ほど来農林省や通産省がいろいろと私に説明しましたけれども、実態が、何かカルテルというか、談合ですね、こういうものを明らかにやったという証拠物件があるわけです。この実例でまいりますと、「目的」というところには「北海道部会並びに鮭鱒流網前途禁話合い出張のため」ということになっておりまして、「報告事項」にはこう書いてあるのです。「二月六日午前十時より鮭鱒同業会北海道部会を開催、四十九年度流網網地並びに仕立副資材要求価格の再確認と前渡金話合いのためのメーカー側としての意思統一を行った。」そうしてこの同業会北海道部会審議報告によれば、ここに出席した連中はどこどこかというと、先ほどあなたが大手メーカーだと言われたそういう連中、たとえば桃井、ウロコ、泰東、森下、平田、富山、ニチモウ、こういう七社が集まって談合したあれがあるのですね。
たとえばその談合は、いろんなことについて談合しておりますが、価格についての談合についてはどう書いてあるかといいますと、「網地は、モノ」については「四十八年十月価格の三五%アップ、マルチ」——マルチというのは原糸ですね。「四十八年十一月価格の二〇%アップを基礎として算出、その一〇〇%価格かける八〇%掛を中部流網の場合全鮭連渡し」——全国鮭鱒連合会渡しですね。「沿岸流網の場合道漁連」——北海道漁連ですね。「道漁連渡し価格とした。(算出方法は本部会案と同様である。)仕立工料は」——網地てすから仕立てなければなりませんね。「仕立工料は日鮭連価格を適用、又副資材は本部会案を遵守する事にて要求案を決定した。(それぞれの要求価格は別紙の通り。)」こういうものがある。そうしてここに別紙ということで、各社の「網メーカーの価格協定表」というものがこまかく書いてあるのですね。
こういうことは、あなたはどうのこうの言っても、まさに漁民いじめというよりも、これはカルテルそのものじゃないですか。いまの日本の漁民が切実な声をあげているこの漁網ロープ資材が、こういうからくりでやられているということについて、まことにけしからぬことだと思うのですが、農林大臣はこれに対してどういう見解をお持ちか、御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/26
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027・倉石忠雄
○倉石国務大臣 情報はいろいろあるかもしれませんが、私どもいまお話しのようなことはまだ調べておりませんけれども、せっかくお読みのことでありますので、なお調べてみますが、私どものほうといたしましては、通産とも連携をとりまして、いまのような時代でございますので、漁業の振興上支障のないように、できるだけ漁網綱その他の漁具につきましては、低廉で行なわれるように指導いたしておるわけでありますが、ただいまお話しのございましたようなことは、お読みになったのでありますので、一ぺん取り調べてみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/27
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028・中川利三郎
○中川(利)委員 通産省はこのような事例についてどう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/28
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029・田口健次郎
○田口説明員 私どもは、いま先生のおっしゃられましたような事情について、実は何も存じませんでしたわけでございますけれども、さっそくその事情を調査するということにいたしたいと思います。
なお、かりに価格協定のようなものがあったとすれば、きわめて遺憾なことでございますし、事態の是正につとめたいというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/29
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030・中川利三郎
○中川(利)委員 つまり、先ほど来農林省は——まだ農林省の答弁はもらってないのですけれども、この前、各県知事あてに通達を出しているのですね。網地、ロープが高いから価格を押えろという通達を出した。あるいは日網工ですか、そういう網の工業会にも出しましたね。そういういろんな指導をした、あるいは勧告をしたとか、調査しているとかなんとか言いながら、こういう事例がちゃんとやられているということについて、まあこれから調査しますということもわかりますけれども、この事例については一体どう考えるのか、まことに遺憾なものなのか、これから調査しなければ、こういう事例があえてここに出されてもなおかつわからないものなのか、農林大臣の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/30
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031・倉石忠雄
○倉石国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、これはさっそく通産のほうでも調べてもらわなければならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/31
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032・中川利三郎
○中川(利)委員 先ほど通産省でしたか、農林省の方でしたか、忘れましたが、いままでこの網地が問題にならなかった、ロープや漁網が問題にならなかった、これは価格がほぼ横ばいであったということ、つまり平穏無事な状態であったということだから問題にならなかった、こういう御意向を漏らしておったのですが、しからばその価格が普通無事のときそういうカルテルがなかったのかどうかということ、つまり寡占といいますか、独占といいますか、何百社あろうとも大手のものが五社なり六社、七社あれば、全体として彼らはもう思うようなやり方ができるというもう一つの実例を私は持っているわけであります。しかもこの種の談合は、ニチモウをはじめその他の大手が、日常的に、習慣的に毎年のように行なっているという事実も指摘したいわけでありますが、つまり漁民はその間さんざん高いものを買わされてきたということであります。
その例として申し上げたいのは、これは私の調べた資料で、去年の場合ですが、ロープと漁網の、特に北海道です。北海道というのはものすごく魚の力の強いところで、特に北海道漁連というものはすごい力を持っておるわけでありますが、それを相手としたところのこれも報告書であります。昭和四十八年三月二十七日、「ロープ工業会の件」ということが書いてあるわけでありますが、ちょっと読みますと、「先般森綱からの連絡の通り札幌に於て繊維ロープ工業会が開かれ、その結果、道北分会が稚内製綱の音頭取りでロープ関係の値上げにつき各社からそれぞれ意見が出され、四月一日より値上げすることとなりました。」と書いてある。そうしてそこに出席したロープ工業会の出席者の名前は、これも先ほどあなたが言った親方衆がずらっと名前を連ねておる。十五社参加しています。「出席者、稚内製綱、北海道製綱、」もちろんニチモウは入っております。「北辰製綱、北日本製綱、稚内漁網綱、函館選網、日東製網、東北製綱、紅丸商事、大同漁網」云々というように、十五社入っておりますね。
そこで、ここで彼らは何をどういうふうにやったのかというようなことで、議事進行の成り行き次第まで全部書いてあります。特に「漁網関係については」——最初ロープのほうで話し合って、この連中がさらにあとから、こういうふうに書いています。「漁網関係については後日関係のある会社が再度集まり検討すると云うことで再度集まりました。」そのときの出席者は、「東北製綱、北日本製綱、紅丸商事、函館製網、日東製網、大同漁網、稚内漁網綱、稚内製綱、北辰製綱、ニチモウ、以上十社」、こういうふうに書いてあるのです。しかもこの漁網関係について見ますと、「各社の競争が激しくなり、ユーザーからの要請で値上げがむずかしくなるとの意見が大勢を占めたため、各社の現在の販売価格を出し、これを基準として値上げ価格(最低販売価格)を出し、四月一日よりこの価格以下では各社とも販売を行はぬとの申合せを行ないました。」こうはっきり書いてあるのです。これは一体どういうことですか。つまりことしも上げるということをいっておりますが、去年も同じようなことをやっておるのだ。日常茶飯事みたいにやっておるのだ。こういう実態について行政官庁は全く知らなかった、通産省も農林省も知らなかった、今回は石油で値上がりしたのじゃないかというようなことでやっておるということは、けしからぬじゃないかと思うのです。この事実について、過去にも慣習的にこういうことが行なわれておるということだついて、農林大臣の御所見を求めたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/32
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033・田口健次郎
○田口説明員 御説明申し上げます。
私どもといたしましては、先生御指摘なさいましたような、価格についての申し合わせがなされておったという事実は存じておりませんでした。しかしながら、先ほど申しましたように事実をさっそく調査して、適切な対策をとりたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/33
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034・中川利三郎
○中川(利)委員 通産省は全く知らなかったと言う。すると、何をしておったのか、あなた方は何を行政指導しておったのか。事実こういうものがちゃんと手に入っておるのです。農林大臣、あなたは通産省にいつもものを頼んでおる、通産省にお願いして価格の問題でやっておると言うけれども、こういう通産省ならば全く頼みがいがないと言えば通産省のお役人には済まないけれども、あなた方はそれなりにやっておると思いますけれども、本質をつかない問題の処理なり、解決なり、行政指導というものは、何ら意味がないと思うのです。そういうことで農林省として通産省に価格問題を頼まなければならない、こういう状況ですが、いまのような通産行政のあり方がどこからきておると思うのか、ひとつ農林大臣の御意見をお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/34
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035・倉石忠雄
○倉石国務大臣 通産省も一生懸命でやっているのですが、中にはわからないこともあるでしょう。ですから、いま事例をおあげになりましたので、通産が調べてみるというお話でありますので、こういうことはなかなかよくわからないかもしれませんけれども、やはり行政指導上重要な位置におるわけでありますから、十分ひとつ調べてもらうように、われわれのほうもそういうことが現実に行なわれておるとすれば、やはりお互いも被害者でありますので、今後も行政はひとつしっかりやってもらうように、私のほうからも希望いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/35
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036・中川利三郎
○中川(利)委員 つまりロープ価格あるいは漁網価格がものすごい暴騰をした、その裏はこういう仕組まれたものだということが明らかにされただけでなくて、通産省や農林省なんかが、ずっと長い間低迷状態であった、横ばいであったと言う、その時点での価格でさえも、そういうかっこうできめられておったということが明らかであります。つまりいま漁民は、漁網が高くてわれわれは生きていかれないのだと切実に悲痛な叫びをあげている。漁網綱資材が狂騰しておると各新聞が書いている、この中で全国大会を開いてみな悲痛な叫びをあげておるときに、メーカーが平然と漁民の苦しみをよそに談合して価格をきめておった、こういうことはまことに許すべからざることだと思うし、その点をいまあなた方は認めて、これから段取りするということになっておりますが、いかにそれがひどいかということの一つの実例を申し上げますと、たとえば去年の漁網についての北海道の事例をあげますと、稚内地区PE網、つまりポリエチレンの漁網ですね。各社価格、これにきめましたよという表がここにあるのです。この表を見ますとニチモウやウロコや北辰や各社の製品別の現在の価格に対して、四月一日からの協定価格というものを一番はっきり書いてあるのですが、各社ともその日までの製品価格がものによってばらばらです。たとえば一つの例を十二本の八節の百ひろ——あなたならわかりますね。この項目で見ますと、ニチモウはその時点までの値段が三万二百円なんですね。安いところにいくと紅丸は二万六千五百円でやっているのです。日東は二万八千五百円、同じ品物がですよ。ところが四月一日からの協定価格のところを見ますと全部三万三千円にしているのですね。いいですか、つまり各社ずっと書いてあるのですが、そのうち一番高いのがニチモウで三万二百円です。だから、このニチモウ並みに各社を引き上げるというなら話はわかるけれども、このニチモウの三万二百円を三万三千円にして、各社が全部、二万六千円のところも、二万五千円のところも、三万三千円にしておる、そういう新しい協定を結んでおるということですね。こういうまさに異常な、カルテルとはこういうものだという事実関係として出されているのですね。これはもう何というか、ただ月並みな取り締まりするのなんのということではどうにもならない、たいへんな事態であり、漁民の感情からするならば、まさにつらの皮をはぐとか何とかいうものではなしに、全国の漁民がこの話を聞いたなら、怒り心頭に発するだろうと思うのです。こういうことについて、やはり今後に臨む態度を非常に国民が注目するだろうと思うのですが、これについて農林大臣は先ほど来いろいろお話ありましたが、どういう強い態度で臨むのか、ひとつその決意をお伺いしたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/36
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037・倉石忠雄
○倉石国務大臣 これはやはり関係省が通産の監督に属する仕事でありますので、せっかくお話がございましたことですから、一ぺんよく調査をいたしまして、その上で相談をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/37
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038・中川利三郎
○中川(利)委員 そこで、先ほど来申し上げましたように、ことしもそうですけれども、去年あたりの場合のメーカーの感覚の問題ですがね。こういう重要な談合の場合に、普通ならば社長だとか、あるいは副社長、取締役が出てやるわけですが、ここはそうじゃないのです。この連中の、各社から出たそれぞれの名前を私書いておりますけれども、調べてみましても課長クラスなんですね。つまりこれがあたりまえで、もう神経、感覚が麻痺して、別に秘密とも思っていないし、そんなこと悪いことだと思っていないのですね。そういう状況が一つあるということですね。全くそういう漁民の苦しみをよそに、こういう重要な問題を、課長クラスのところでやってこいということで報告をとって、自分で判こを押している、こういうような状態なんです。まことにゆゆしいというか、感覚麻痺といいますか、問題にならないあり方だと思うのですが、これらについて、きょうは公正取引委員会も来ていると思いますけれども、こういう問題が現実に明らかになった以上、公正取引委員会としては十分調査をして明らかにする必要があると思うし、これ自体カルテルの疑いがあることを裏づけるものではないかと思いますが、公取の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/38
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039・妹尾明
○妹尾説明員 お答えいたします。
漁網とロープの価格協定の問題でございますが、実は先ほどお話しになったようなことは、本日初めて承知したようなわけでございまして、いまこの場ですぐこの問題につきまして具体的にどうこう申し上げることはいたしかねるのでございますけれども、一般論として申し上げれば、業界の主要なメーカーが集まりまして、販売価格について話をするということは、これは独禁法の関係で問題になる事例があると考えます。それが事実であるとすれば、私でもとしては独禁法との関係で調査の必要があるというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/39
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040・中川利三郎
○中川(利)委員 いま公取も、初めて聞いたけれども、事実とすればこれは問題だという御指摘があったわけでありますが、農林省は直接の価格の問題での担当ではないということはわかっておりますけれども、しかし農林省も——水産庁が、農林大臣の名前で各県に、あるいは関係業界に、価格がひど過ぎるじゃないか、こういうことでわざわざ通達まで出しているという事例があるわけであります。先ほど来農林大臣は、通産省にもいろいろと言うことで、農林省の責任はないかのような、もちろんないとは言いませんけれども、これは通産省が主管だということはわかりますけれども、やはり御自分の問題として、漁民は農林省の所管ですから、ひとつ責任を持ったかっこうで、通産省と協力してやっていただきたい、こう思うわけです。
そこで、先ほど前段に申しました、ことしの二月五日から七日まで三日間にわたって、鮭鱒漁網の談合をしたわけでありますね。このことは、各大手メーカー七社が出席したということを書いてありますけれども、この中に協定価格表があるということも先ほど申し上げましたね。これはまだ実施されておらないのですよ。いま実施せんとしておるのです、この協定価格表というのは。まだやられてないのです。そこで、この問題についてはさっそくこれを撤回させて、取り消さして——明らかになっておるわけですから、そういう強い指導をすべきものだし、撤回させるかどうかということだと思うのですが、これについて農林大臣の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/40
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041・内村良英
○内村(良)政府委員 鮭鱒につきましては、来月から漁期が始まるわけでございます。そこで、大部分の漁業者はすでに網の手当てをしていると思いますが、なお現在手当て中の鮭鱒の漁業者がいることも事実でございますので、通産省とよく相談いたしまして、必要な措置をとる必要があればとりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/41
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042・中川利三郎
○中川(利)委員 通産省と相談して必要な措置をとる。先ほど通産省は、何かもうけ過ぎているものに対して金を返させるということまで言っているのです。あるいはそういう不当なものに対しては厳重にやるというのです。二月五日から七日まで三日間にわたった談合、それによってきまった価格、カルテル価格、こういうものははっきりしているわけですから、通産省はどういう御指導をしますか。もとへ撤回させなければならないと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/42
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043・田口健次郎
○田口説明員 事実をよく調査いたしまして、かりに価格協定等の事実があるといたしました場合には、こういった事実を是正する措置をとりたいと思います。
それから価格につきましても、先ほど申しましたように、原料価格の値上がり、これに対する価格の値上がりといった関係を調査いたしまして、その値上がりを抑制する。それからあるいは行き過ぎたものにつきましては極力引き下げさせる、こういった指導をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/43
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044・中川利三郎
○中川(利)委員 通産省にも、農林省にも申し上げたいのですが、これは明らかに不当な事例です。あり得べからざることをやっておるのですよ。これに対して是正させるとか、行き過ぎたものに対しては行き過ぎないようにさせるというようなことでは、問題の外だと思うのですね。こういう不当な、前段に申し上げましたように、そういうことできめられた協定価格表なんです。こういうことが明らかになって、撤回させるかどうかということが非常に大事なことです、漁民の立場からいいましても。行政指導としても、これは大事だと思うのですね。撤回させるじゃなくて、あなたは是正ということばを使っているけれども、もちろん実態を調べなければならないでしょう。実態が明らかになったら撤回させるべきじゃないですか。是正ということは、何が何だかはっきりしない。通産省はそういうものだということはわかっていますけれども、それじゃいけないのですね。もう一回答弁してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/44
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045・田口健次郎
○田口説明員 御説明申し上げます。
先ほど、事実を調査いたしまして、それから価格協定のような事実がかりにあるといたしますればと申し上げたわけでございますけれども、是正すると申し上げましたのは、価格協定が行なわれているような、そういった事実をなくするという意味でございます。したがいまして、いまのようなかりに事実がございますれば、そういった協定を撤回するということであろうかと思います。
なお、公正取引委員会との関係もあろうかと思いますけれども、これは公正取引委員会の御判断にまちたいと思います。私どもとしてはメーカーのほうをかばうといった気持ちは全くございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/45
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046・中川利三郎
○中川(利)委員 カルテルということは、数社が集まって価格について協定すればカルテルなんですよ。そうでしょう。だから具体的内容はそれをどう裏づけしていくかということになるわけでありますが、談合して、大手メーカー数社が集まって価格をきめる、価格協定表、ここにある、しかもこれはいま実施されようとしておる、こういう異常な事態の中に、これだけははっきり申し上げておりまして、これを不当か不当でないかまだわからないというような御見解ということは、はなはだ私は遺憾だと思いますが、特にあなたがわざわざ断わったように、独占メーカーとそう癒着しておるものじゃないということであれば、先ほど原則的立場から、公正取引委員会が一般論としてだがということでもああいう話をしたわけですが、まさにこれは談合して、数社が価格をきめたという典型事例でしょう。これに対してまだあなたはほかに調査をするとか——内容的なものを別にして、一般原則でいいから、これに対してこれを撤回させる意思があるかどうかということを聞いているのですから、はっきり答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/46
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047・倉石忠雄
○倉石国務大臣 私どものほうの仕事に関係のある仕事でありますので、政府は一つですから、私から感触を申し上げますが、あなたの御指摘になったようなことが事実であるならば、これはやはり先ほど公取からお答えいたしましたように、社長が出ようと出まいと、やはり各社が集まって相談をして価格をきめるということはカルテル行為でありますので、それはそれなりに処置されるべきものであると思います。またよくないことなんです。
それから一方において、いまあなたのお話のございましたようなことを、きょう初めて実はわれわれも、通産の者も承るわけであります。そこでやはり責任を持って役所が処置をするなりお答えするなりというのは、真相を調査した上でないと、責任のあることを申し上げろといわれてもなかなか困るわけであります。したがって、初めて承る事実でありますので、政府側は十分これを調査いたしまして、その上で処置をいたしたい、こう申しておるわけでありますから、私どものほうでも、直接監督権はあるないにかかわらず、われわれの所管いたしております漁業者に重大な関係のあることでありますので、私どものほうでも、通産からよく事情を聞きまして、それ相当に対処したい、こう思っておるわけでありますので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/47
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048・中川利三郎
○中川(利)委員 いまずっと話してきた事例だけでも、漁民の暮らしと命、漁業にとってもう命の次に大事なこの漁網あるいはロープ、こういうものが、そういうからくりの中で価格がつくられておった、そういう点が明らかにされたと思うわけでありますが、特にこの漁網資材については、今回の漁業三法案の審査の中でも、附帯決議案の中にこういうものが盛られているということもあると思うのですが、これはわが農水の全体の問題でもあるわけですね。こう見てきた場合にいえることは、そういう資材の原価というものが、全く漁民の納得によるものではなくて、十分価格を下げる余地があるものだ、まだまだずっと下げさせる余地があるものだ、彼らは不当に上げているのだということでありますが、これについては農林大臣から、これから調べてそうするというから、あらためて返事はもらいませんけれども、そういう実態を強く指摘しておきたいと思うわけです。
同時に、私がこのような、あなた方は何ぼさがしても——さがしてもいないけれども、こういう資料を手に入れたということは、それなりに社会正義、先ほど私冒頭お断わりしたように、やはり政府やあるいは行政庁だけでなくて、一般も社会正義のためにこのような不当をやはり告発してきた、そういうことの中で、私はこの資料を手に入れているわけですが、そういう社会正義の行動、いまこそ国民のすべての人が、こういうものは許さないのだ、いい世の中をつくるためには、われわれは捨て石になるのだ、それを政府としても正当に評価するのが国民の願いにこたえるものだ、こういう評価をすることが非常に大事だと思うのです。その点について、先ごろ農林大臣からもっともだというような御発言がありましたが、こういう経過で、たとえば、会社によっては何というか、けしからぬことをしたなんていうことで、とんでもない措置をとる。あるいは就業規則なんかきめて、何か自分のどんな悪いことでもふたをしてしまう、こういう傾向も一般的には見られるわけでありますが、こういう事例に対して、社会的にみんなが告発していく、国民みんなが立ち上がる、それでこそ漁民や国民の命も暮らしも守られる、こういうことだと思うのですが、こういう社会正義的な行動に対する評価として、大臣の御見解をさらに重ねてお聞きしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/48
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049・倉石忠雄
○倉石国務大臣 中川さんが社会正義を御主張なさることはたいへんけっこうなことだと思いますが、社会正義に反するようなことにつきましては、これはもう国会できめた法律でがんじがらめにできているはずであります。社会正義は、一番これを大切に守らなければならぬのは政府の立場であります。したがって、先ほど来お話のございましたような事柄につきましては、私どもは広範な所管を持っておりますから、あるいはたまには目につかないことで不注意なこともあるかもしれません。そういう立場に立って厳として法を実行してまいる、社会正義の立場に立ってやっていくことは当然なことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/49
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050・中川利三郎
○中川(利)委員 政府は社会正義の立場に立ってやっている、今回のメーカーのやり方ですね、これはやはり社会的に不正義だ、こういうふうに私は思うのですが、これについてもう一回ひとつ大臣の御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/50
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051・倉石忠雄
○倉石国務大臣 あなたと議論するつもりはありませんけれども、初めてここへお話を出されて、あなたの御判断で、正義とか不正義とかということを一つのメーカーに対して断定を下していらっしゃる。そのことが間違いであると私は言っているわけではありませんけれども、やはりそういう初めて承った事柄につきましては、それぞれ監督の立場におるものが厳密に調査した上でなければ、あなたの御意見にすぐ同調するというのは、これは非常に無責任でもあり、よくないことではないか。でありますから、時間をかしていただいて、十分調査の上で、御納得の行くような判断と処置をいたしたい、こう言っているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/51
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052・中川利三郎
○中川(利)委員 大臣は、一つのメーカーを私がほじくり出した、こういうような言い方ですが、一つのメーカーをほじくり出してはいないですよ。つまり三百何社もあるけれども、その中の資本金何億円以上の有力メーカーが集まって談合して価格をきめた、これは明らかに社会の不正義ではないかということを聞いておるのですね。これに対して、まだ調べなければわからないというようなこと、それだったら、談合して有力メーカーがきめるということ、そのことでもいいのです、一般原則としてもいいのですが、これはやはり不正義でしょう。あなたは、そこを調べなければわからないという筋合いのものですか、これは。子供がそういうことを聞いたら、農林大臣何かおかしいのじゃないかと言うかもわかりません、小学生が。どうかもう一回お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/52
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053・倉石忠雄
○倉石国務大臣 さっきあなたが御指摘になりました、メーカーが何社か集まって談合して価格をきめた。これはさっき承っておりまして、公取の御回答を待つまでもなく、カルテル行為である、こういうように私はそばにおって感じておりました。公取のお答えもそのとおりでありました。ですから、そういう事実そのものが真実であるならば、これは不当な行為である、それぞれ責任を追及されるべきものである、こう思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/53
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054・中川利三郎
○中川(利)委員 政府は社会正義の立場だ、そういう立場でこれをやらなければたいへんです。私はメーカーというものは、この場合非常に不正義だ。もう一つ、政府に劣らず正義感がやはりこういう問題を社会的に告発する、一般の国民といいますか、こういう方々が、こういう問題を明るみに出してくれるわけです。そういう資料を出してくれるわけですから、これはまさにあなたは正当に位置づけなければならないじゃないか、そういう国民の努力を多とするものでなければならないと思うのですね。こういうことについてはどう考えますか、一般の国民が正義に立ち上がったという、こういう行動なり行為に対してですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/54
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055・倉石忠雄
○倉石国務大臣 だいぶ哲学論みたいになってまいりましたが、一般大衆——大体日本人というのはわりあいに黙っておりますけれども、判断は正しいと思います。私はそういう意味で、日本人というものの聡明さというものは、やはり今日の成功の基をなしておるものであると思いますが、大ぜいの人が、これは反社会的であると断定するようなものは、やはり反社会的のようであります。まあ理屈は抜きにして、具体的なお話がございましたので、鋭意調査いたしまして、これは今後そういうことのないように、もしあったとすれば、これは困ることでありますので、き然たる態度で私どもは処理いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/55
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056・中川利三郎
○中川(利)委員 なぜ私はそういう哲学的なような問答をしたかと申しますと、実は今回のカルテルの中心的な役割りを果たしたのは、漁網綱の資材の最大大手メーカーのニチモウなんですね。そういう悪いことをする会社なんというものは何をするかというと、労働者に対して首切りだとか、不当な組合に対する介入だとか、いろいろなけしからぬことをやっておるわけですね。そこで、そういうことがまた社会的な実態として明らかにされれば、今度自分が反省するのではなくて、逆に居直って、何をいうか、また不当なやり方をさらに強める、そういうことが懸念されるから、そういうことを申し上げているわけであります。ですから、ここではその問題をやるのが本意ではありませんし、私の時間も参りましたので、このニチモウそのものがいかに悪徳商法、そういうことをするやつはさらに商法そのものも悪徳だということを、私はまた後日、あすの一般質問の際にでも引き続いてひとつこれをやる、こう思いまして、きょうのところはこれで私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/56
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057・仮谷忠男
○仮谷委員長 瀬野栄次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/57
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058・瀬野栄次郎
○瀬野委員 水産三法について農林大臣に質問をいたします。
昨日二時間近く当局に質問をしてまいりましたが、大臣に対する質問を保留しておりましたので、はしょって若干の質問をいたしてまいりたいと思います。
まず本論に入る前に、昨日質問の中でいろいろ論議してまいりました日ソ漁業交渉の問題と、日中漁業交渉の問題等を冒頭に質問申し上げたいと思います。
御承知のように、日ソ漁業交渉がかなりきびしいものがあるわけでございますが、水産庁は一日に、日ソ漁業交渉でソ連側が操業してきたサケ・マスの漁業規制区域について、三月三十日発表したソ連側規制案の地図は誤りで、規制区域を実際の提案より広目に発表していたので訂正すると発表しておられます。訂正の理由については、水産庁は、いわゆるソ連側と、日本語の意味を取り違えていた、こういうふうに説明しておられるようでありますが、これはモスクワで水産庁職員がソ連側提案を公電として書く際に誤ったものといわれ、この付近の水域はサケ・マスの好漁場の一つであり、水産庁としては、間違い公電によって日ソ間の交渉がこじれることなどをおそれて、急いで訂正を発表したやに聞いておりますが、昨日も日ソ漁業交渉問題でいろいろと論議をしてまいりましたが、A区域、B区域、いま、いろいろと論争の焦点になっております。御承知のように畜産問題で、日本国民の動物性たん白質がきびしいものが今後予測される中で、水産資源も二百海里説等、いろいろ海洋法会議の問題等もございまして、早急にはこれがきまらぬにしても、今後ますます規制がきびしくなってくる。日本国民の水産物に対するたいへんな心配が、今後推移する段階にございます。
そこで、いま指摘しました問題については、昨年の日ソ共同声明におけるソ連側と日本側の声明文の中で、わが党の渡部委員が、昨年十二月の衆議院予算委員会で指摘したわけであります。当時はその誤りが四十一カ所ということになっておりましたが、その後の調査でますますふえて、六十数カ所もいわゆる欠落または誤り等があり、問題となったわけです。この問題については、大平外務大臣から、再びこのような落ち度がないように外交交渉に当たりたい旨の答弁があったばかりでありますにもかかわらず、今回再び日ソ漁業交渉において、最も焦点である漁業規制区域に大きな誤りがあったことはまことに遺憾であり、かつ重大であります。その責任は大きいといわざるを得ません。したがって農林大臣から、この誤りについて内容がどうであったか、この公開の席で原因をまず明らかにしていただきたい。最初にお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/58
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059・内村良英
○内村(良)政府委員 まず第一に、ソ連提案の発表の性格でございますが、従来日ソ交渉始まって以来、提案がございますと、新聞記者団等の要請もございまして、ソ連提案について発表してきたという歴史がございます。したがいまして、今回の交渉のときも、わがほうの代表団からソ連提案について発表したわけでございまして、日ソ両国合意の上で発表している性質のものではございません。
そこで、どういうことで間違いがあったかということでございますが、電文の書き方にやや不正確なところがあったわけでございます。御案内のように、カムチャツカ半島に沿って禁漁区があり、その横に休漁区があることは御存じのとおりでございます。そこで今度のソ連提案は、西経百七十度と百六十度の間、さらに北緯四十四度と五十四度の間に休漁区をつくるということを提案いたしたわけでございますが、電文の書き方が禁止区域の東側沿いの線に囲まれる水域という電文で来たわけでございます。そこで私どものほうで判断しまして、やや不正確な表現であったわけでございまして、ちょっとこれ、地図の上で御説明しないと、なかなかわかりにくいわけでございますけれども、禁止区域に沿って休漁区があるわけでございます。そこで禁止区域に沿ってと書いてあったものでございますから、それを禁止区域に沿いまして休漁区をとったわけでございますが、正確な向こうからの文書が直ちに送られてまいりまして、それを見ますと、百六十度の線を北緯四十四度まで延ばすということが明らかになったわけでございまして、電文の書き方にやや不正確な点があったというところから、若干の誤解が生じたわけでございます。したがいまして、直ちに水産庁といたしまして、発表している発表文の訂正をやったわけでございますが、これは別に日ソ合意でやったわけでもございませんし、日ソ交渉には何らの影響もないということでございます。私のほうの電文の書き方があいまいであり、その解釈を若干誤ったというところに原因があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/59
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060・瀬野栄次郎
○瀬野委員 水産庁長官からいま説明がございましたが、日ソ漁業交渉には関係ない、私のほうでいろいろ訂正をした、こういうことですが、この大事な緊迫している中に、しかも数日前から数回にわたってこのことを私は指摘してまいりましたが、よもやと思ったことが現実となって現われた、こういったことはまことにけしからぬと私は思う。そこで、ただ電文の誤りを日本側が訂正しただけで事足りるかどうか、こういったことは、もっと前からわかっておったのではないかと私は思うのだが、こういった指導監督といいますか、連絡といいますか、こういったところに緊張を欠いていたというか、慎重さが足らなかったと私は指摘せざるを得ません。
そこで、これについて今後政府はどういうような措置をされるのか、いま一応の説明はぼざいましたけれども、そんなことで事足りるのか、今後の日ソ漁業交渉に問題を残さないか、再度ひとつお答えをいただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/60
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061・倉石忠雄
○倉石国務大臣 いま水産庁長官が申し上げましたように、これらの最終的な決定でもありませんし、ソ連側とこちらも同時発表するとかいうふうな、そういう発表ではございませんで、中間でこういう話が出たということの情報が向こうから参りました、それの電文の読み違いということで、電文の読み違いというふうなことは不注意ではございますが、そういうことでありまして、日ソ交渉それ自体には、直接相手方との間にそごを生じたというふうなことではないものでありますから、慎重に扱うようには私から注意をいたしますけれども、そういう意味でひとつ軽くおとりをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/61
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062・瀬野栄次郎
○瀬野委員 農林大臣、この問題は軽い問題ではないと私は思う。北洋漁業に従事している漁民はたいへんなこれは真剣な問題でありまして、けさほども現地から電話をいただきまして、私たちも、こんなけしからぬことがあったのかということで、事もあろうにこういった日ソ漁業交渉がかなりきびしい段階にあるさなかに、水産庁のこういった訂正ということは、全くわれわれは理解に苦しむところです。
そこで私は、大臣にさらにお伺いしたいです。けれども、こういう、いわば国益を損じるような問題、こういったことに対して、農林大臣は、また政府としていかなる責任をとられるか、このことをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/62
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063・倉石忠雄
○倉石国務大臣 責任とかどうとかというふうな問題ではございませんで、いま申し上げましたように、向こうから参りました電文の勘違いをいたしました。そしてそれが、どうせモスクワでも当方から行っております代表が記者会見をするのが例のようでありますし、したがって、こちらでも記者会見をして発表する必要があるということで、その発表しましたものが電文の読み違えで若干の違いがあった、こういうことでございますので、電文の読み違えというふうなものは、文字そのものを読み違えたというよりも、やっぱり誤解を生ずるような書き方が出てきたので、そういう結果になったのだろうと思いますが、それはそれほどに内容に対して重大な影響を持ってくるようなものではありませんので、そういうことでひとつ御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/63
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064・瀬野栄次郎
○瀬野委員 農林大臣は、内容についてはそう心配がないようなことをおっしゃるけれども、われわれはそうはいかないのです。相当これは重大な問題だと思うのです。今後きびしい交渉が行なわれる中で、すでに先ほど指摘しましたように、昨年も六十数カ所の誤りがあった。大平外務大臣も相当これに対しては申しわけないということで、今後落ち度がないようにするということを言っておるし、そのやさきにこういったことです。今後も起こりかねないと思う。そういった意味で、私はこういったことは慎重に扱ってもらいたいし、十分モスクワにおける交渉に当たっている職員も、また水産庁としても、いわゆる眼光紙背に徹して、漁民のために、いまたいへんな水産問題の重大転機に来ておりますので、対処していかねばならぬ、今後十分な監督指導を強く私はお願いしたいと思うのだが、その点大臣どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/64
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065・倉石忠雄
○倉石国務大臣 その点は全く御同感でございまして、たいへん不注意のありましたことをおわびいたしますと同時に、なお引き締めてちゃんとやるようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/65
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066・瀬野栄次郎
○瀬野委員 時間の制約もあるので、この問題については今後また見守ることにしまして、内容と真相をよく検討した上で、次の機会にまたいろいろと関連質問することにしますが、漁民の窮状を思いましたときに、たいへんな問題であるので、大臣の決意もあったように、今後慎重な対処をしていただくと同時に、監督をしてもらいたい、かように強くお願いをしておきます。
もう一点は、昨日質問した中で、日中漁業協定の問題、これも当局からいろいろと答弁をいただきましたが、所管大臣にさらに確認をしておきたい意味で質問を申し上げるわけでございます。日中漁業協定は、東シナ海と黄海における安全操業や水産資源の保護を目的として、昭和三十年に民間ベースで結ばれたわけであります。その後一時的に中断されたこともありまして、関係漁業者自身の努力によって何とか今日まで続いているわけでございます。現在の民間協定レベルでは、その話し合いに困難を来たし、また話し合いのために訪中するにも、その旅費は関係漁業者の自己負担ということなどもあって、関係者の中からは、政府間ベースによる協定締結の願いは切実なものとなっております。その切実な願いが、日中国交回復時における日中共同声明の中でようやく日の目を見て、漁業についても民間取りきめをも考慮しつつ政府間協定のための交渉を行なうという合意に達したものであります。そこで政府間協定の移行の時期は、当初協定の期限切れである昨年六月二十二日を予定しておりましたが、ついに実現できず、民間協定がまたもそのまま一年延長されることになり、いよいよ今年の六月二十二日をまた迎えるわけでございます。特にこの問題については、九州関係は重大関心を持っておることであります。そこで政府間交渉については、関係漁業者からも切実な要請がたびたびなされておるところでございますので、今後政府の積極的な取り組み方をやっていただきたいと思うのでありますが、農林大臣の所信を承りたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/66
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067・倉石忠雄
○倉石国務大臣 日中漁業協定は、共同声明の第九項に掲げる実務協定の一つでありまして、できるだけ早急に締結すべきものである。この点については、本年一月の大平外相の訪中の際も、両国政府間で意見の一致を見ているところでございます。また四月中旬に、漁業協定について専門家会議が開催されることになっておりますので、政府といたしましては、この専門家会議の結果を踏まえまして、早急に本格交渉を開始できるよう、中国側と話し合ってまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/67
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068・瀬野栄次郎
○瀬野委員 この日中漁業交渉については、いま大臣がおっしゃったような方向で、六月二十二日以内にはぜひひとつ交渉がまとまるように、鋭意今後の積極的な努力を重ねてお願いをいたしておきます。
次に、沿岸漁場整備開発法の中で、昨日第二条について根本的な問題をいろいろ指摘したところであります。この沿岸漁場整備開発法は、私は、この法案を見る限り拙速主義でやっている、こう言って指摘をしたわけです。国が当然実施するときに、政令でいろいろと書いてあるのは、これはおかしいじゃないか、はっきりさせよというようなことを申し上げたわけです。現に沿岸漁場整備法のほかに、沿振法といわれる沿岸漁業等振興法、海洋水産資源開発促進法、水産資源保護法等があります。この中にはすでにもう空文化して機能していないものもあるわけで、こういったものをもっと検討して、いわゆる三法とのかね合いをうまく検討すればよかったのではないか、法律のための法律になっているのじゃないかということで、主体性がないというようなことをきのう指摘したわけでありますが、この法案の制定にあたっての根本的な問題でございますので、沿岸漁場の整備及び開発事業を実施する者というものについて、都道府県、市町村等に限定することなく、当然国が実施する道を開くべきである、そしてその実施体制、事業内容等について検討を進めるとともに、本事業の積極的な推進をはかるための指導助成につとめるべきだ、かように思うわけです。すでに法案が提案されておりますので、少なくともこういった決意で臨んでもらいたい。この点について、農林大臣の所信を承りたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/68
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069・倉石忠雄
○倉石国務大臣 沿岸漁場の整備開発事業のうちの実施者を、地方公共団体だけでなく、国としたほうが適当な事業としては、その事業の施行に高度の技術を要するもの、それからその事業規模、施行方式等からして、国みずからが実施することがむしろふさわしいもの、そういうものであろうと思いますが、国営で実施いたします場合の実施体制の整備の問題も含めまして、今後ともひとつ検討してまいる必要があろう、このように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/69
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070・瀬野栄次郎
○瀬野委員 次に、漁業をめぐる国際環境の問題でございますけれども、わが国の漁業生産の約八〇%を占める遠洋漁業及び沖合い漁業は、いずれも公海で行なわれる漁業でございまして、これらの漁業をめぐる国際的環境の条件というものが、先ほども指摘申しましたように、非常にきびしいものがあるわけです。第三次国連海洋法会議も近く行なわれる。先般の農水委員会においても、三回にわたって私このことを指摘してまいりましたが、現在中南米、AA諸国でも、いろいろと意思統一をはかることをやっておりますし、アフリカでも四月から五月にかけまして準備会議が開かれる、そして三分の二議決ということでいろいろ検討されておる。先進国においては全員ということで議決の持ち方をいろいろ検討されておるところでありますが、ことしだけに終わらず、おそらくことしはまとまらぬで、来年のウイーンにおける会議に持ち越すのじゃないかというようなことを水産庁長官からも昨日答弁があったわけでございますが、今後この二百海里説、こういった問題等いろいろ議題にのぼってくる。おそらくことしにははっきり結論が出ないにしても、来年、再来年と、そういった趨勢の中できびしいものがある。そうしますと、沿岸漁業は、かなり日本海沿岸がきびしい中で、だんだんだんだん締め出されてまいりますと、いま水産国日本として誇っております一千万トンの漁獲量が、四百万トン減じて六百万トンになるというような憶測もできるわけで、これではまたゆゆしき問題ではないかと思います。
そういったことで今後の水産業の将来を見ましたときに、日本としても、いろいろこういった海洋法会議の行くえ等を踏まえた上で対応のしかたというものを考えでいかなければならぬ。また今後のやり方によっては、対応のしかたも十分にあるのじゃないか。たとえば経済協力をするとか、入漁料を払う、こういったことはすでに南米で、いわゆる業界が入漁料を払っておる例もございますわけでございまして、わが日本としても、他国に対して港をつくるとか、学校、病院をつくるとか、いろいろな対応のしかたがあると思う。こういったこともあわせて今後十分いまから検討しつつ対応していかねばならぬと思うのですが、農林大臣は、この点についてはどういうふうな見解をお持ちであるか、お答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/70
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071・倉石忠雄
○倉石国務大臣 お話のございました第三次海洋法会議の開催を前にいたしまして、発展途上国を中心として、沿岸国に最大限二百海里に及ぶ排他的管轄権を認めろという主張が強く行なわれておることは御存じのとおりであります。また、わが国の漁業をめぐる国際情勢には、そのほかにも幾多きびしい難問題がたくさんございますが、このような状況に対しまして、わが国遠洋漁業の安定的発展をはかりますためには、今後関係国との協力、それから協調を推進いたしまして、共存共栄をはかってまいる必要があると痛感をいたします。このため政府といたしましては、発展途上国との間では相互に、いまもちょっとお話がございましたように、漁業の発展をはかるとの立場に立ちまして、海外漁業協力等を通じまして、わが国漁場を確保するとともに、また北太平洋等先進国との間では、あらゆる機会をとらえて、相互理解を深めてまいる必要があるのではないか。そういうようなことで、これはなかなか広範囲な外交的問題でもございますが、そういう努力を続けまして、遠洋漁業の長期的安定をはかってまいりたい、このように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/71
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072・瀬野栄次郎
○瀬野委員 この問題については、十分ひとつ将来のこともあわせて対処していただくように重ねてお願いをしておきます。
次に、海洋水産資源開発促進法の制定が行なわれてはや三年が経過しておるわけですが、御承知のように、沖合い遠洋海域における新漁場開発のための調査を行なって、海洋水産資源開発センターを、昭和四十六年七月に設立して、四十六年以来新漁場開発の企業化調査を実施しておることは御承知のとおりでございます。先日も若干指摘をしたわけですが、現在これが一応成果をあげておるといえば、ニュージーランド沖合い周辺の海峡で四隻によるところのイカ漁業、それともう一つは、南極海のオキアミ、これは皮がかたいためにエビせんなんかに使う程度でありますが、今回六十万トンくらいとれたということですけれども、日本に持ってきて養殖のタイに食べさせると、二、三カ月でタイの色がずいぶん赤くなって色がつくということがいわれておりますが、それにしても、これは相当の距離であり、採算がとれるかどうかと、いうことは問題であるということで、まさにこの海洋水産資源開発センターを設立して三年を経過するにもかかわらず、何が企業として成り立つか、目ぼしいものはないわけです。金はかなりの金を使いながら、目ぼしいものがない。今後またこれというものもないということで、私はたいへん憂慮しております。また油危機を迎えまして、なかなかこの漁船の給油がむずかしい状況等を考えましたときに、農林大臣は、これに対しては特段の監督、指導等、今後こういった漁業がきびしい中にあっては、積極的な働きをさせなければならぬ、こう思いますけれども、大臣のお考えと決意をひとつお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/72
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073・倉石忠雄
○倉石国務大臣 海洋水産資源開発センターは、昭和四十六年七月につくられまして以来、新漁場の開発のための調査を実施中でございます。
事業内容といたしましては、漁場として未利用または低利用の段階にありながら、潜在的に相当量の有用水産資源が存在すると推定される海域におきまして漁獲試験等を行ないまして、それらの漁場が企業的な漁業操業に適するものであるかどうかの判断をするための調査を実施いたしております。センターは現在、マグロはえなわ、海外コントロール、まき網、サンマ棒受け網、イカ釣り、沖合い底びき網、カツオ釣り、底はえなわ及びオキアミ等九業種について計画的に調査を進めておる次第でありますが、センターは設立以来三年目を迎えまして、多くの調査はいまだ途中段階にございまして、一律にその成果を評価できる段階ではございませんが、たとえばニュージーランド周辺のスルメイカの漁場につきましては、調査の結果、企業化の目途も立ちまして、昭和四十八年には百数十隻のわが国漁船が操業するに至っております。また北部中央太平洋の海山群漁場におきましては、クサカリツボダイ資源がかなり豊富に存在することが確かめられ、今後有望な漁場となる可能性があると考えられます。さらにまた南極海のオキアミ資源につきましては、わが国として昭和四十七年から初めて調査に乗り出したところでありますが、現在なお調査中ではありますけれども、漁獲方法の開発面でかなりの好成績をあげております。今後の成果が期待されておるのでありますが、その他についても調査は適切な方法で着々進めておりまして、その使命達成に努力中でございます。
いま申し上げましたような調査のほかに、これからはわが国の水産物需要の増大にこたえながら、わが国漁業の将来の発展の場を確保するためには、今後国際的制約の少ない深海における未利用資源の開発を積極的に進める必要があります。そのためには海洋水産資源開発センター及び関係業界の出資によりまして、昭格四十八年七月、深海漁場開発株式会社が設立されまして、今後この会社が建造保有する高性能調査船を海洋水産資源開発センターが用船して、開発調査を強力に推進していくことといたしております。なお、この調査船は、四十九年七月に起工いたしまして、十一月に進水、五十年三月竣工引き渡しの予定であります。
なお、この調査船による今後の調査海域、調査方法等の具体的諸問題につきましては、現在水産庁は、深海漁場開発等推進方策研究会を設置いたしまして、専門家による検討をいたしておる最中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/73
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074・瀬野栄次郎
○瀬野委員 最後に一点だけ質問して質問を終わりますが、栽培漁業振興施設整備事業の問題ですが、昨年、私このことで質問をいたしまして、ことしさらにまたこの問題を取り上げたわけですが、御承知のように、四十八年度事業着手は五カ所で、四十八年、四十九年事業となっておりまして、新潟県、石川県、福井県、島根県、山口県等でございます。昨年指摘しました際も、島根県があとで割り込んできたために、ついに瀬戸内海方式が日本海沿岸にとれなかったということで、当時の櫻内農林大臣にきびしく私はこのことを指摘して、全く残念であるということを申し上げたわけでありますが、ことしは御承知のように、熊本県、宮城県、神奈川県、長崎県、富山県、愛知県、佐賀県、八県が大体予定されております。ところが、この予算が、四十八年度事業着手の五カ所にしても、一カ所につき二億五千万円、ことしもまた二億五千万円になっております。先日指摘しましたように、長崎県野母崎の県営栽培センター、すなわち長崎県水産試験場増養殖研究所等においても、同じようなことがなされておりますが、三億円かかる。ところが、資材またはあらゆる物価の値上がりによってまだ四、五倍はかかるであろうということで、かなりの金がかかる。こういったことでは、みみっちいものしかできないということで、真に栽培漁業振興施設になるかどうか疑問であります。全漁連でも御承知のようにグリーンレポートというものを発表し、日本海の周辺二万七千平方メートルあるが、五千平方メートルについては一応の漁礁をつくっておる。魚類の培養魚礁を設置して魚類をふやすべきだということを言っておりますし、瀬戸内海のように国営方式として、現在府県中心主義ではなかなかこれがみみっちいものになる。国の意欲とうまく組み合わせねばならない。そういったことで、府県単位ではこま切れであって、経済効果があがらぬということを指摘しております。栽培漁業センターを設置しても、県知事は自分の県のことを考えるのは当然でございまして、どうしても目先のことにとらわれやすい。魚は県境を越えて遊泳するわけでありますので、私は、県の意欲にこの施設整備事業が期待をすることはたいへん問題である、また二億五千万では何ができるか、こう言いたいのです。国主導型の漁業開発に大いに期待せねばならぬときに、この計画は全くナンセンスではないか、かように指摘せざるを得ません。そういったことでこの問題について、さらに二億五千万円を、ことしも同じ予算で七カ所やることになっておりますけれども、こんなみみっちいことでできるかという問題、時間が参りましたので、簡潔に大臣から御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/74
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075・倉石忠雄
○倉石国務大臣 県営栽培漁業センターの補助対象につきまして、いまお話しの二億五千万でございますが、すべての必要なシステムが対象となっておりますけれども、地域の特性、栽培漁業振興計画の内容によって一カ所当たりの施設費がこれを上回る事例もあると存ぜられます。また、最近の建設関係費の異常高騰によりまして、対象事業費の拡大要望もございますので、今年は一応計上いたしました二億五千万円でありますが、次年度につきましては、事業費の拡大について一そうの努力をしてまいりたいと、このように思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/75
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076・瀬野栄次郎
○瀬野委員 以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/76
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077・仮谷忠男
○仮谷委員長 この際、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。
午後零時二十四分休憩
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午後一時五十分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/77
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078・安田貴六
○安田委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
この際、連合審査会開会の申し入れに関する件についておはかりいたします。
すなわち、建設委員会においてただいま審査中の生産緑地法案について、連合審査会開会の申し入れを行ないたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/78
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079・安田貴六
○安田委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
なお、連合審査会開会の日時等は、建設委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせすることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/79
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080・安田貴六
○安田委員長代理 質疑を続行いたします。柴田健治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/80
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081・柴田健治
○柴田(健)委員 昨日も水産三法に関連していろいろ御質問を申し上げたのですが、きょうはなるべく時間を節約するということで簡潔にお尋ね申し上げたいのです。
沿岸漁場整備をするということはいいことでありますから、大いにやっていかなければならぬ。しかし、いまいろいろの問題が出ておることも御承知のとおりだと思います。特に瀬戸内海に関係する府県が約十一県、この十一県の住民というか約二千二、三百万人のこの生活用水というか、そういうものとか、工場から入ってくる水、たいへんな汚水というものがあの瀬戸内海に流れ込んでおるわけであります。これらを考えたときに、あの瀬戸内海の水量というものが、推定八億トンともいわれ十億トンともいわれておるわけですね。あの水をきれいにするためにはどうしたらいいんだろうかということで、いろいろ専門的に研究しておられる方もあるわけでありますが、沿岸漁業の中で瀬戸内海の漁場において優秀な魚がとれてきたこの歴史的な経過、そういうものを考えたときに、どうしても瀬戸内海をもっときれいにしなければならぬ。この水をきれいにするためにはどうしたらいいのか。たとえば二千三百万人が毎日水を使って流しておるその水を、とめるわけにいかないし、きれいにしろということになると、いま水質の汚染の度合いを見ると、洗剤というのが大きな弊害を起こしておるようにも考えられる、それから洗剤をとめるということもなかなかできにくい、工場排水をとめるということもできない、そういうことで、水銀、PCBその他含めて、この瀬戸内海の水をきれいにするためにはどうしたらいいのか、ひとつ長官、考えがあれば聞かしてもらいたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/81
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082・内村良英
○内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように瀬戸内海の海はかなりよごれておるわけでございます。四十八年の五月に調べた調査によりますと、瀬戸内海におきましては水産生物用に適しない水域が約五・二%になっております。それから汚濁水に比較的強いボラやノリに適する海域が三六%ございまして、水がきれいでブリやワカメ等に適する地域が五八・八、すなわち瀬戸内海はかなりよごれているということははっきりしているわけでございます。
これにつきましては先生御案内のように、瀬戸内海環境保全臨時措置法、これは環境庁の所管でございますけれども、この法律ができまして、この法律の運用によって瀬戸内海をきれいにしていこう。そこで、その他水質汚濁防止法、海洋汚染防止法等の法律があるわけでございますが、瀬戸内海につきましてはこの瀬戸内海環境保全臨時措置法に基づきまして汚染の負荷量の規制が行なわれる。すなわち全体で一定の俗っぽく申しますと酸欠状態につきまして規制をするということで、二月一日からこれにつきましては各県に指示がいっているわけでございます。そういうことで、国全体といたしまして瀬戸内海の環境の整備ということについて取り組んでいるわけでございますが、水産庁といたしましても、公害対策として魚介類の定期調査、公害防止調査指導体制の整備、さらに一般国民に対します公害防止思想の啓蒙、普及、さらに公害防止器具の整備、汚染漁場の浄化、赤潮、特に瀬戸内海は赤潮が多いわけでございますから、赤潮被害防除技術の開発、公害を受けた漁業者がおります場合には、これに対する救済措置というようなことをやっておるわけでございまして、さらに基本的にはヘドロの除去ということをやらなければなりません。ヘドロの除去につきましては二次汚染の問題も、これは非常に技術的にむずかしい問題でございますので、現在水産庁におきまして二次公害防止、除去技術の事業化試験、それからさらにどこをとるかということが問題になりますので、ヘドロの堆積量の調査等もやっているわけでございます。そういうことで、瀬戸内海というのは沿岸漁業の重要な漁場でございますので、水産庁としても真剣にこれの漁場整備、漁場保全ということに取り組んでいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/82
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083・柴田健治
○柴田(健)委員 ヘドロの問題その他具体的にいろいろあるでしょうが、いま当面一番困っているのは赤潮だと思うのですね。その赤潮対策は、赤潮が発生をしてどんどん移動してくる、それを防ぐというのでなしに、その以前に赤潮が発生しないような処置を講じなければならぬ、要するに予防措置、この予防措置についてどういうことが具体的にできるのか、ひとつ御説明を願いたいと思います。予算を見ると、赤潮防止に三億九千九百八十三万三千円と昨年よりは大幅に伸びておるわけですが、この予算でどういう方法でやろうとしているのか、その点具体的に御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/83
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084・内村良英
○内村(良)政府委員 先生御案内のように、赤潮は自然的な現象で起こることもございますし、人工的な汚水等が原因で起こることもあるわけでございます。いずれにいたしましても海が富栄養化いたしまして、それによってプランクトンの大量発生ということから赤潮が起こってくるわけでございます。したがいまして基本的には、赤潮の防除と申しますか、赤潮が出ないようにするためには汚水の海への流入を規制し、さらに堆積しているヘドロの除去というようなことをやらなければならないわけでございます。
基本的にはそういうことでございますけれども、それでは現在赤潮被害防止対策として何をやっているかということでございますが、まず第一に、これは四十八年度から実施しているわけでございますが、瀬戸内海をモデル海域といたしましてテレファックス等を利用した漁協、県、水産庁の瀬戸内漁業調整事務所を通ずる赤潮関係の情報の収集、処理、通報体制の整備ということで、まず赤潮の発生を直ちに関係者に知らせるということをやっておるわけでございます。
それから赤潮発生時における活魚の避難をするための施設の設置、これは酸素を供給いたしまして魚が窒息するようなことがないようにするわけでございます。
それからさらに赤潮生物の回収除去技術及び赤潮発生の基盤と考えられる、先ほど申しましたようなヘドロの除去技術の開発試験というようなことに対して助成を行なっているわけでございますが、さらにヘドロの除去事業を実施するための基礎資料を整備するため、瀬戸内海におきましては先ほど申し上げましたようにヘドロの堆積分布状況、堆積量状況等の調査を四十九年から行なうことにしているわけでございます。
さらに、今国会で御審議願っております漁災法の改正によりまして、赤潮特約というものを入れまして、被害漁業者に対する救済をやろうというようなことを赤潮については対策としてとっておるわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、基本的には海の富栄養化から起こる現象でございますから、汚水の流入を極力防止し、さらに堆積しているヘドロを除去するということが基本的には大事なわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/84
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085・柴田健治
○柴田(健)委員 ちょっと私たちの考え方とは違うというか、水産庁の考え方がどうかお尋ねしたいのですが、この赤潮被害防止施設の設置費補助、これは私は、補助という考え方がおかしい。全額国が持つべきだ。加害者がわからない、原因不明というようなものは、法律的にいうと、瀬戸内海の水面は公有水面として当然国が管理しなければならぬ、国が管理するものについて原因者がわからない、加害者負担の原則が使えないという場合は、国が全額持ってやるべきだ。その補助という考え方自体、国はどうも逃げておるのではなかろうか、こういう気持ちを持つわけですが、この点の補助という考え方を捨てて、赤潮対策については国が全部持つ、こういう考え方にはならないものか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/85
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086・内村良英
○内村(良)政府委員 赤潮の発生する地域、発生しない地域があるわけでございます。さらにこの事業の性格、漁協が主体になってやるわけでございますから、それに対して国と県と地元が三分の一ずつ助成する。実質的には漁協の負担にならぬというようなことでやっていくのが現状においては現実的ではないか。ただ、非常に大規模なヘドロの除去事業というようなことになってまいりますと、それはまた別問題として検討すべき問題だと思いますが、現在私どもがやっておるような事業は、助成ということでやるのが現実的ではないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/86
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087・柴田健治
○柴田(健)委員 その末端で、われわれに責任をかぶせるのはおかしいということを言うのですよ。どう考えてもわれわれもそう思う。補助という考え方、要するに国と県が全部持ってやるというならわかるのですよ。原因者がわかって、明らかに加害者がわかるというなら、それはいろいろ処置も講じられる。けれども、こういう不特定の場合、原因者がわからないという場合には、あの公有水面を管理する責任は国なんですから、国が全額持つのがあたりまえだ。それを補助という考え方で三分の一、三分の一、三分の一なんというのはおかしい。これは直すべき必要がある。どう考えても、補助政策というのは国は無責任だということがいえると私は思うのです。これは直す必要があると思うのですが、これはまあ長官では直らないので、大臣で直すか直さぬか、大臣どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/87
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088・内村良英
○内村(良)政府委員 先ほど申し上げましたように、事業の性質が生きている魚の魚槽の設置、それに酸素を供給するという事業、あるいは海水を上げる装置につきまして酸素の補給施設をつくってやるというような事業でございますから、やはりそこにある人がはっきり利益を受けるわけでございます。したがいまして、そういった事業の性格から見れば、この事業は助成事業でやったほうがいいんじゃないか。先ほど申しましたように、瀬戸内海全体を、大規模なヘドロの除去をやるというようなことになってまいりますと、これはあるいは助成ということでやるわけにはいかない事業になってくるかと思いますけれども、私どもがやっております赤潮被害防止施設設置費補助金というような事業から見ますれば、これは国及び県が助成してやるというのが適当ではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/88
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089・柴田健治
○柴田(健)委員 長官の考え方は、依然として受益者負担の原則論ばかりやっている。事が違うと思うのですよ、私は。公害に関するものは、国が思い切って処置をしなければならぬ。瀬戸内海環境保全法でもそうですよ。実際は国が責任を持ってやるというのが本筋なんですよ。それを地元に利益があるんだ、受益があるんだからと、受益者負担の原則を前面に出す、そういう考え方自体が、私はほんとうに本気で公害対策をやっているとはいえないと思うのです。公害対策について国がまともに考えるならば、国がほとんどこの財源を財政的には全部持ってやるというぐらいな気持ちでないと、関係者の協力を得られないと私は思うのです。おまえたちは利益があるんだから、何ぼか補助をつけてやるから、あとはおまえやれ、こういうことではほんとうに瀬戸内海の水はきれいにならない。あの水をきれいにしようと思うたら、国が思い切って財政措置をしなければならぬ、そういう考え方にはならぬのですかと、こう尋ねているわけです。発想を変えたらどうですか。発想の転換というのはそこだと思うのです。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/89
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090・内村良英
○内村(良)政府委員 先生も御案内のように、公害対策といたしまして、原因者がわかっている場合におきましては加害者がこれを負担するという原則でやっているわけでございます。そこで、原因者がよくわからない、原因者がいるには違いないわけでございますが、具体的にだれであるかというようなことが確定しない事故がかなりあるわけでございます。水産について言いますと、一般に海水の汚濁だけではなしに、油を流したとか、あるいはPCBとか、水銀とか、いろいろな問題があるわけでございます。そこで、非常に大きな、一地域の住民の範囲を越える大規模事業によって公害対策をやるというような場合には、国がやるということも考えられますけれども、先ほども申しましたように、ただいま私どもがやっております赤潮被害防止のための魚槽に酸素を供給するための施設その他という問題になってきますと、これはやはり地元の利益もございますし、私どもといたしましては助成事業としてやるのがいいのではないか。この経費まで国の負担、要するに税金で全部まかなわなければならぬかどうかという点につきましては、私はいまのままでいいのではないかというふうに考えるわけでございます。もちろん公害問題について国が常に助成でやるというようなことを私は申し上げているわけではございません。事業によりましては当然国がやるべきものもございますけれども、ただいま私が御説明申し上げましたこの赤潮被害防止施設、私どもがやっているような事業につきましては、これはある程度地元で見ていただいてもいいんじゃないか。もちろん国もそれに対して助成しているわけでございますから、現状でいいのではないか、繰り返して申し上げますけれども、そういうようなふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/90
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091・柴田健治
○柴田(健)委員 長官、きのうあなた、魅力ある職場というか、そういうものをつくっていくと言った。あなたの言っていること、どうも理解ができない。私は頭が悪いかどうか知らないけれども……。
たとえば沿岸漁業が、これから飼う漁業に大きく転換しようとする。だから、そういう飼う漁業に大転換をしようとするために沿岸漁場の整備法という法律をつくって、思い切って財政投資をする。そうしてまた、漁民もきれいな海で本気で漁労に就労できるように、希望というか、そういう意欲を持ってかかろうとする。財政投資を一方ではするのですよ。財政投資を思い切ってする。そして、これからほんとうに利益があがろうとする直前に、公害やその他で全滅になる。全滅になったら今度はおまえらが利益を受けるのだから金を出せ、何ぼか負担してやりなさい、こんなことを繰り返していくならば、漁民はもう希望を持たないと思うのですよ。本気でやっても、また借金が残るだけだ。だからそういう公害関係に関する限りは、もう国と県が全部めんどうを見てくれるのだ、われわれは魚を飼う、そういう養殖漁業に全力投球できるようにしていくのだというようにしないと、公害が発生したら、おまえらが利益を受けるのだから負担金出してきれいにしなさい、国はささやかな補助をつけましょう。これではあなた、きのう言った魅力ある漁場、魅力ある職場とは言えないんじゃないですか。どうですか、この点。長官、もう少し割り切って、発想の転換——あなたは優秀な長官だから、ほんとうに日本の沿岸漁業を発展させるのなら、いままでのようなありきたりの考え方では、沿岸漁業というものは発展しない。この辺で思い切って、同じ金の使い方でも考えた使い方をしていく、そういうものの考え方にならないものかと私は申し上げるのです。どうですか、その点。
〔安田委員長代理退席、山崎(平)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/91
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092・内村良英
○内村(良)政府委員 私も先生がただいま御示唆がございましたように、公害について全部国が持つということができればそれはいいことだと思います。ただ現実問題といたしまして、やはり予算上の制約もあるということで、優先度に応じましていろいろな施策を考えていかなければならぬ。その場合におきまして、先ほどから繰り返して申し上げておりますけれども、現在私どもがやっております赤潮被害防止施設のような仕事は、やはりいろいろな事情から考えまして、国と県が助成して地元も多少出してもらうということのほうが現実的ではないか。もちろん全部国で持てればいいわけでございます。しかしなかなかそうもいかない面もございまして、やはり優先的に考えていった場合においては漁場整備の、たとえば魚礁整備とか構造改善等を進めまして、そちらのほうで漁場の整備を進め、さらに公害防止につきましては先ほど申しましたように、政府全体をあげてただいま取っ組んでおるわけでございますから、そうした面でだんだん漁場をよくしていく。赤潮が発生した場合にその被害を防止するような仕事は、現状におきましては助成事業としてやるのはやむを得ないのではないかというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/92
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093・柴田健治
○柴田(健)委員 長官は、一方では漁災保険法がある、こういう保険制度があるじゃないかというが、この漁災法を活用するというのはあくまでも好ましい姿ではないと私は思う。これは天災地変というか、ほんとうに不可抗力で、天災で災害を受けたという場合のみ適用する制度であって、この制度があるから、少々被害ができても何でもいいじゃないか、救済できるじゃないか、こういう考え方があなた、あるような気がするね、先ほどの答弁を聞くと。そういう考え方から見ると、どうも一貫性がないという気がするのですね。だから公害については、海をきれいにするについては、国が思い切ってやる、こういう発想にならないか。大臣、どうですか、かぜのぐあいが悪いのでどうも……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/93
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094・内村良英
○内村(良)政府委員 私は決して漁災があるからいいということは申し上げているわけではございません。やはり保険をもらう前に損害防止をするというのはこれは当然でございまして、漁災の関係者も赤潮防止等につきましてはかなり金を使っているわけでございます。したがいまして、漁災があるからいいということではございません。しかし、万一自然災害が起きたときには、漁災のような制度があったほうがいいということは当然でございまして、そういう意味で赤潮についても、従来は赤潮は人災的な面もございますので、損害評価のとき等に問題があったわけでございます。したがいまして、今度の赤潮特約によって掛け金の負担をあまり増高しないで、ほとんど掛け金はふえない、増加する分は国と県で持つということにいたしまして、漁業者を赤潮の被害から救済しようとしているわけでございます。しかし、そういった赤潮特約を受ける前に、そのようなことにならぬほうが望ましいのは当然でございまして、私どもといたしましても、損害防止については大いに力をいたさなければならぬことは当然でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/94
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095・柴田健治
○柴田(健)委員 あなたもう少し、日本の水産業を発展させようとする最高責任者ですから、この点はほんとうに真剣に将来考えてもらいたいと思うのです。ただ国会答弁でうまく逃げたらそれでいいというものじゃない。われわれも、何もあなたを責めて言うておるのじゃないですよ。日本の水産業をどう発展させて、魚介類のたん白資源をどう確保していくかということを基本に考えて言うているのですからね。だから要するに、漁民に本気で働いてもらわなければいかぬです。漁民に本気で働いてもらうためにはどうしたらいいかということを、真剣に考えている。ほんとうに漁民に本気で働いていただくという施策がどんどん推し進められていけば、何も毎年毎年漁民が減ってくる、毎年労働力が削減されていくということはあり得ないと思うのですよ。漁場を見放して、もう漁業じゃ食うていけないから、他の職を求めて転身をしているのが実態であるのです。これ以上漁民の数を減して、あなたがどんなに沿岸漁業を一生懸命整備をし、漁場を確保し、とる漁業から飼う漁業へと言うて号令をかけたって、第一線で働いてくれる者がだんだん離れていくようではどうにもならぬのじゃないですか。長官、その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/95
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096・内村良英
○内村(良)政府委員 私も、働く者がどんどん兼業化していくとか、あるいはその職場から去っていくということであっては、水産業の発展に非常に支障が出るということは先生の御指摘のとおりだと思います。
それから先ほどの御質問で、もっと漁場をきれいにすることに力を入れるべきである、この点も先生のおっしゃるとおりだと私は思います。そこで水産庁も非常に努力をしておりまして、先生御案内のように、いわゆる漁場保全に関する予算は四十八年度三億五千万円であったのを、四十九年度はこれを二十一億にふやしております。したがいまして、水産庁といたしましても過去からこの漁場保全につきましては非常に努力しているわけでございまして、四十九年度、これほど予算のふえた科目はないのではないかと私は思います。したがいまして、こういったものを基礎にして、さらに予算をふやし、事業を拡大して、漁場保全にはなお力を尽くしていかなければならぬというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/96
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097・柴田健治
○柴田(健)委員 これに関連して、もう一つ力を入れてもらいたい点は、海の大掃除ですよ。これはヘドロも掃除のうちに入るわけですけれども、瀬戸内海には長年いろいろなものを捨てちゃって、いろいろなものがいま沈んでいるわけですよ。そういうよごれた中に魚礁を確保していくということで入れてみたところで、結局酸素が欠乏するか余るかといういろいろな問題が出てくるわけです。この海の大掃除をするのにもっと力を入れたらどうかという気がするのですが、どうですか、この点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/97
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098・内村良英
○内村(良)政府委員 海の掃除につきましては、昭和四十六年度から予算をとってやっております。どういうことをやっておるかといいますと、網の魚の入る部分をとりまして、大きな網を引っぱりまして、それによりまして漁場の廃棄物等の除去をやっているわけでございます。予算額を申し上げますと、昭和四十六年度三千万円でスタートしたわけでございます。初めは五水域であったわけでございますが、四十七年はこれを四千八百万円、四十八年はこれを九千六百万円ということに拡大いたしまして、四十八年は約二千三百平方キロメートルの海域についてこれをやっているわけでございます。四十九年は予算を一応一億二千万円といたしまして、二十四海域について、二十四の海底についてこれをやると同時に、従来は海底だけ網で引っぱっていたわけでございますけれども、四十九年からは水面もきれいにするということで、海面に浮かんでいるいろいろなビニール等の浮遊物も除去するというようなこともやろうということで、予算措置をとっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/98
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099・柴田健治
○柴田(健)委員 大体瀬戸内海は、いまから十年前と今日では、交通量が非常にふえたわけですね。どうしても、海にものを捨ててはならないのに、遠慮をせずに捨てておる。海上保安庁が監視の目を光らしてもなかなか直らない。そういうことで、交通量がふえればふえるだけ海がよごれていくわけです。陸上でもそうです。交通量がふえればふえるだけいろいろな事故が起こる。それと同じようで、交通関係でいろいろなものを流す、廃棄物を遠慮せずに捨てる。どうしても直らない。これをモラルの問題だといえばそれだけのもので、船舶の所有者、航行する船の責任者、管理者というものは、十分そういう社会的責任を負うてくれればいいけれども、なかなか負わない、これは日本人の悪いところなんですが、そういうことも考えられる。あの瀬戸内海の交通量をふやすような政策を進めてきたのは水産庁も責任があるわけですから、運輸省とよく相談をして、海の掃除はただ水産庁だけがやるのでなしに、もっと運輸省にも力を入れさしたらどうか、こういう気がするのですが、この点についての運輸省との関係はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/99
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100・内村良英
○内村(良)政府委員 御指摘のように、水産庁は直接被害者の代表をしているわけでございますから、ただいま御説明申し上げましたような予算措置をとって海の掃除をやっているわけでございますが、運輸省のほうも、それについて全然責任がないというわけではございませんので、今後運輸省ともよく話し合って、向こうでも少しやってもらうようにしたいというふうに考えておりますが、現在までのところ、この海の掃除につきまして運輸省と協議したことは、私の記憶する限りではないように聞いておりますが、なお、担当官がおりませんので、担当者に聞きまして御返事申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/100
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101・柴田健治
○柴田(健)委員 私たちは、瀬戸内海における船舶のクリーニング場をつくったらどうか、こういう提案をしたことがあるわけです。一定の場所で掃除をして、航行中はいろいろな汚物や廃棄物は捨てないように、それから船舶のクリーニング堤ぐらいは、水産庁は運輸省にやかましく言うてつくらしたらどうかという気がするのですよ。どうですか、この点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/101
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102・内村良英
○内村(良)政府委員 現在私どもにとりまして一番問題なのは、いわゆる油濁の被害でございます、場合によりましては工場が流すこともあるわけでございますけれども、船舶が油を流しまして、それによって海面がよごれ、特にノリの養殖等は非常に大きな被害を受けるというわけでございます。
そこで、船舶をきれいにするという提案がただいま先生からございましたし、私どもとしても、非常に真剣に検討しなければならぬ御提案だと思います。しかし、当面私どもが一番重視しておりますのは、汚濁被害でございまして、これにつきましては、運輸省に対していろいろ要求し、現在もいろいろな話し合いをしているところでございます。そこで、まず、私どもとしては、何としてでも油濁を出さないようにしてもらいたい、それから出したときにはその補償を出してもらいたいということで、この点につきましては水産庁は非常に強い態度で運輸省といま交渉しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/102
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103・柴田健治
○柴田(健)委員 そういう点については、今後十分運輸省にも責任を持ってもらわないと、水産庁がどんなに本気になったって、これは正直言うて被害者のほうです。加害者のほうに、もう少し社会的責任というモラルを守ってもらうようにしていかないと、どんなに財政投資をして努力をしても、あとからあとからよごされたんではどうにもならない。この点は、今後十分折衝をしてやかましく言うて解決するように努力してもらいたい、こう思います。
次に漁船の問題なんですが、瀬戸内海の漁船を見ると、沿岸漁業ですから小型ばかりです。大型は少ないのですが、この小型漁船の更新の問題なんですが、この更新率はいまどうなっておるのか、ひとつお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/103
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104・内村良英
○内村(良)政府委員 海水動力漁船の更新率は、毎年八%程度でございます。そこで、この点につきまして最近の統計はないのでございますが、昭和四十年末の調査では、船齢十年をこえる漁船が約二二%になっております。この傾向は、専門家の見るところでは、あまり変わってないのではないかというふうに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/104
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105・柴田健治
○柴田(健)委員 水産庁の統計というのがなかなかおくれて出てくるものだから、現実にわれわれが漁協なら漁協に行っていろいろ調べてみると、大きな食い違いがあるわけですね。それから上の、統計数字だけをたよって結論を出すというと軽率な面もあるので、水産庁の統計数字というのは、どうもぼくらには過去のやつを添えてもらえぬものだからよくわからないのですが、漁船の更新はできるだけ早くやらないと、要するに遭難という事故の起きるもとです、陸上でも一緒ですが。事故防止という立場から言うと、漁船の整備、更新という、その面についての点検は、行政庁としても十分指導しなければならぬと思うのですね。その点について、いまの遭難事故というか、事故の減少があまり見られない。事故防止という立場からいうと、もう少し行政指導をすべきだ、こういう気がするのですが、この点についてどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/105
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106・内村良英
○内村(良)政府委員 先生御案内のように、総トン数二十トン以上の漁船につきましては、船舶安全法によりまして運輸省が検査を行なっております。これは普通の商船とは違いますので、これの検査の場合の装備の基準につきましては、水産庁といたしまして、運輸省とよく話し合って、その漁船の特性を十分生かすような検査をしてもらっているわけでございます。
それから遠方海域に出漁する二十トン未満の漁船、すなわち沿岸から百海里以上のようなところへ出ていく船につきましては、昨年の船舶安全法の改正によりまして新たに船舶安全法が適用されることになりました。そこでそういった二十トン未満であっても遠方海域に出漁する漁船の装備の基準その他につきましては、現在運輸省と協議を行なっております。したがいまして、この点につきましては従来よりも安全性の確保のために一歩前進になるわけでございます。
その他沿岸小型漁船に対しましては、水産庁といたしまして、一昨年の三月に小型漁船安全基準というものをつくりまして、それに基づいて地方庁、漁業協同組合等を指導しているわけでございます。船のことでございますから、当然漁業者としても自分の船の安全性については関心があるわけでございまして、このような小型漁船安全基準というものを示したことにつきましては地方でも非常に歓迎されているという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/106
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107・柴田健治
○柴田(健)委員 指導はしておられるのだけれども、まだ十分でないから私から申し上げておるので、もう少しきめのこまかい指導をひとつ強めてもらいたい。そうしないといけない、こういう気持ちで申し上げておるので、この点には万全な処置を講じてもらいたい。
次にお尋ねしたいのですが、養殖漁業ということになれば、えさの問題です。この飼料問題について、水産庁はどういう研究をせられ、現在年間どれだけ消費されておるのか、これからどうやって飼料を確保していこうとするのか、この点、ひとつお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/107
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108・内村良英
○内村(良)政府委員 ただいま養殖につきましては、人工飼料よりも、あまり需要が強くないようななま魚が使われております。この数量は約六十万トンになっているわけでございまして、これを人工飼料のほうに切りかえなければならないという問題がございます。これにつきましては、水産庁が試験場あるいは府県に頼みまして研究をやっておりますが、特にハマチの養殖等の場合には人工飼料の固形がうまく溶けませんので、うまく消化しないというような技術的な問題がございます。そういった問題の解明のために、現在いろいろ試験研究をやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/108
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109・柴田健治
○柴田(健)委員 三つの点で質問申し上げたのですが、お答えが飛んでしまったな。いまどの程度の消費量があるのかということをお尋ね申し上げたのですが、お答えはないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/109
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110・内村良英
○内村(良)政府委員 ただいま申し上げましたように、現在のところでは生きた魚を六十万トンぐらい使っておりまして、養殖で使っている人工飼料の数量はあまり大きくございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/110
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111・柴田健治
○柴田(健)委員 いろいろ意見を聞くのですが、どうも人工飼料のほうは当てにならないとか、信用ができないとか、魚に食べさせていいやら悪いやらと、こういうことをよく聞くのですね。だから、水産庁が十分責任を持ったものを試験的に食べさしておるのかどうか、そういう人工飼料をつくっておる業者、飼料会社にいいかげんにやりなさいというてやらしておるのか、この点が明確でないという気がするわけですね。この点について、水産庁はどういう処置をとっておるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/111
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112・内村良英
○内村(良)政府委員 ただいま申し上げましたように、国といたしましても人工飼料の開発には努力をしておるわけでございます。そこで、そういう試験を業者に頼んでおるのかということでございますが、私どもといたしましては、県の試験場等に委託いたしましてそういったものの開発をやっておるわけでございます。したがりて、業者ベースではなしに、一応公共の試験研究機関でいろいろ研究しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/112
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113・柴田健治
○柴田(健)委員 いずれ将来は人工飼料がふえてくると思うのですね。なまの魚を無制限に食わせるということはできない。いずれ人間さまのほうが先に食わなければならぬ。魚に食わせるよりか人間さまが先に食うようになるのじゃなかろうか、こういう気持ちがするわけですが、人工飼料をこれから多く取り入れていかなければならぬという形になってくると予測するならば、やはり試験というものは非常に大事なものだ。だから、試験については十分万全な措置を講じてもらいたい。そして、県の水産試験場だけでなしに、国の研究所でもやるとかして、いま何カ所ぐらいそういう人工飼料についての試験をやっておられるのか、この点ひとつ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/113
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114・内村良英
○内村(良)政府委員 八海区で試験をしております。遠洋水域を除きまして、あらゆる国内の試験場の海区で試験しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/114
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115・柴田健治
○柴田(健)委員 次に、きのう少し触れた所得の問題なんですが、他産業と所得の格差をなくしていくという立場で長官は答えられたのでありますけれども、いまの大企業に雇われておる労働者と、ささやかな個人経営の漁民の所得、それらの所得の格差が——安定した賃金の取れる労働者も賃金は高いとはいえないけれども、結局個人経営の漁民の立場からいうと、沿岸漁業の一年間の稼働日数、それと水揚げというか、水揚げはするけれども、実際は資本投下をしておる。船を更新しても相当の金がかかるし、網とかいろいろな資材の購入にしても、本委員会でも先ほどから資材問題でいろいろ質問があったのでありますけれども、資材の高騰による必要経費が非常にふえてくる。個人の所得そのものはあまりないという漁民の声があるわけですね。他産業との所得の格差をなくするためには、魚のとる量をふやすということも必要でありましょう。けれども、それはある程度限界があるし、なかなかうまくいかない。どうしたらこの所得がふえるか、この点が問題だと思うのですが、この点について長官の見解を聞きたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/115
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116・内村良英
○内村(良)政府委員 所得の問題でございますが、ただいま先生から御指摘がございましたように、諸物価の値上がりによって今後漁業経営に非常に大きな影響が出てくるのじゃないか、特に船の建造費その他も非常に上がってきて、一方魚価が十分上がらないということになるのじゃないか、私どももそういう点非常に心配しておるわけでございます。今日までの状況を見ますと、若干数字的にこれをチェックしたわけでございますが、昭和四十七年の漁業経済調査によりまして、五トンから十トンの経営層の収支状況を見ますと、漁業収入が六百十七万円、漁業支出が三百八十一万円で、漁業支出のうち最も大きいのが雇用労賃で四二%、それから漁船の償却費、これが漁船の建造費になるわけでございますが、一五・五%となっておりまして、漁業所得は二百三十六万二千円になっております。この所得を都市勤労者世帯の所得と比較いたしますと約一・七倍であり、世帯員一人当たりをとりましても一・三倍になっておるわけでございます。そしてこの調査の場合に、漁船の建造費というのは償却費の中に入っております。そこで、その償却費が五トンから十トンの階層でどうなっておるかというのを見ますと、償却費自体が五十八万九千円ということになっております。これは漁船の耐用年数を六年で見ておるわけでございます。これから考えてみますと、いまの漁船の建造費から見ると、とてもこれではできないのじゃないかということで、今後船をどんどんかえていくというような場合に非常にむずかしい経営上の問題が起こってくるのじゃないか。これにつきましては、魚価を安定的にして魚価で十分引き合うようにしなければいかぬわけでございますが、それ以外に一応金融措置、これは制度金融が船をつくる場合にいろいろあるわけでございます。その金融措置の拡充等にもなお努力していかなければならぬ問題があるというふうに考えておるわけでございまして、ただいままでのところ五トンから十トン階層の漁業収支状態は都市の勤労者よりも若干いいということになっておりますけれども、今後非常にむずかしい問題が出てくるということにつきましては、ただいま先生の御指摘があったとおりでございまして、そういったことが起こらないように、いろいろこれから施策を講じなければならぬというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/116
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117・柴田健治
○柴田(健)委員 長官、小規模の漁業経営者を擁護していかなければならぬ、保護していかなければならぬ。保護というとおかしい言い方になるのですが、今後沿岸漁場を整備して思い切って魚の養殖をしてもらうために、漁民の所得をふやすために、またほんとうに魅力ある漁場にして働いてもらうという場合にどうも所得が低いというのではいけないので、やはり漁業の発展になるように、たとえば地方税の減税措置を考えてやるとか、先ほど言うた償却費、要するに基礎控除額を思い切って上げてやるとか、漁業に携わる人についてはある程度の限界線を引いて、そこから下がった場合は税の減免措置を講じていく。ただ災害だけでなしに、災害だけには減免措置が講ぜられるけれども、普通においても漁業振興のためには多少の税金のことでも考慮していく、そういう措置も一方では考えてやらなければいかぬのじゃないか、こういう気持ちをわれわれ持っておるわけです。この点について税法上の問題について今後検討してもらいたい、こう思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/117
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118・内村良英
○内村(良)政府委員 税法上の問題につきましては毎年検討し、これについて大蔵省と話し合いをして、必要なものは通してもらうということでやっておるわけでございます。そこで今後漁業の経営問題が非常にむずかしくなってくる、かりに悪化してくるということがございますれば、税法の問題も関連して諸種の経営対策を考えなければならないのじゃないかと考えております。ただ私の過去の経験によりますと、税法につきましては公平ということが非常に問題でございまして、他産業とのバランス等の問題が常に問題になるわけでございます。したがいまして、そういったことも十分念頭に置きながら、今後の漁家経営対策については真剣に取り組まなければならぬ時期に来ているというふうに私は考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/118
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119・柴田健治
○柴田(健)委員 もう終わりますが、漁業問題も民族の一つの資源として受けとめていかなければならぬと思うのです。いままでのように、ただ嗜好品であるとか、好きな者が魚を食べておるんだとか、高級魚をどうするとか、中級魚をどうするとかいうことでなくして、魚介類のたん白資源を日本はどうしてもとらなければならぬ。それをとらないと畜産物のほうに比重がかかってくる。畜産物を今度伸ばすといったって、そうむやみやたらに伸びる要素はないと私ば思う。それから日本の場合は周囲が海だから、魚介類の摂取量が大体一人平均一日八十グラムから九十グラムという、国際的に見ても非常にたくさんとっている。それは周囲が海だからそういうことになったのだ。日本人はなま魚をよく食うといってよその国では笑うといいますけれども、やはり動物のたん白資材としてそこに重きを置いてきた。それから家畜のほうについては、畜産のほうについては日本人はあまり食う習慣がついてなかった。今度は魚がとれなかったら畜産のほうだというわけにはなかなかいかないし、これは両方併用して考えなければならぬ。そうするとやはり魚も日本の民族の資源として受けとめて、それぞれの施策、対策を講じていかなければならぬ、こう思うわけです。そういう点で、ただ産業の中で一部分的な役割りをしておるというのではなくして、もっと大きな視野に立って考えてもらいたい。これを強く望んで質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/119
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120・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 次に、角屋堅次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/120
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121・角屋堅次郎
○角屋委員 本委員会におきましていわゆる水産三法、新しく法律として政府から提案されております沿岸漁場整備開発法案をはじめ漁業災害補償法の一部を改正する法律案、並びに漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案、この三件は三月六日に倉石農林大臣から提案理由の説明があり、十二日に補足説明がなされまして、三月十九日を皮切りにして今日まで六回の審議が同僚議員によって真剣に続けられてまいりました。その間三月二十六日には三法に関連する団体の責任者を参考人として呼びまして、団体側の意見についても聴取したところでございます。
この三法につきまして、私は日本社会党を代表いたしまして、最終的な締めくくりの意味で総括的な質問をいたしたいと存じます。
すでに同僚議員から水産業の全般的な問題について触れておりますけれども、締めくくりの意味もありまして若干その点についても前段の段階で触れ、後ほど三法のそれぞれの問題のポイント的なものについても質疑を続けたいと思います。重要な点については倉石農林大臣から、説明的な問題については水産庁長官等、政府委員から御答弁願ってけっこうであります。
最初に、本年の六月二十日から八月二十九日までの予定で、ベネズエラの首都カラカスで開会されることになっております第三次国連海洋法会議に関連する問題についてお伺いをいたしたいと思います。
御承知のとおり、一九五八年の二月の時点で第一次海洋法会議が持たれ、また一九六〇年に第二次海洋法会議が持たれて、今日第三回目の海洋法会議の開催が予定される段階に来ておるわけでありますが、申し上げるまでもなく、第三次の国連海洋法会議は、すでに一九七一年から一九七三年の三年間に拡大海底平和利用委員会という名において六回の討議が続けられてまいりました。それに引き次いで、いよいよベネズエラの首都カラカスで本会議が予定されるということに相なっておるわけであります。私はこの六回の拡大海底平和利用委員会に参加をされた斉藤達夫君、田辺隆一君、この両氏の、日本水産資源保護協会の漁業叢書として「第三次海洋法会議開催の経緯と問題点」というのにも目を通したわけでありますけれども、なかなか第一次海洋法会議、第二次海洋法会議以上に日本にとってたいへんきびしい情勢に直面をしておるということを感ぜざるを得ません。第一次海洋法会議の際におきましては、御承知のとおり領海、公海、漁業と公海の生物資源の保存、及び大陸だなに関する四つの条約を採択したわけでございますけれども、領海の幅員については決定に至らず持ち越しになりまして、これが一九六〇年の第二次海洋法会議に受け継がれたというふうに承知をしておるわけであります。
しかし、この第二次海洋法会議の際においても、領海の幅員を統一的に国際的にまとめるということに再び失敗をいたしまして、第二次海洋法会議の以降におきまして今日までの間に、いわゆる第二次海洋法会議で日の目を見なかった領海あるいは漁業水域、こういった問題について関係国間の協定に基づき、あるいはまた、ある国々の一方的な国内法によって、各地の水域でそれぞれ漁業水域が設定されるという状態を迎えておるわけであります。今日第三次海洋法会議を前にして、この見通し等について本委員会でも議論がなされてまいりまして、大臣あるいは水産庁の長官あるいは外務省のそれぞれの担当の責任者から、六月の会議の見通し等について、場合によってはこの会議で取りまとめができなくて来年のウイーンの会議に持ち越すのではないか、こういうことも言われておるわけであります。
しかしいずれにしても、第一次海洋法会議、第二次海洋法会議、それ以後の第三次海洋法会議に受け継がれた漁業関係国の国際的な体制をながめてまいりますと、旧来のいわゆる海洋法体制というものは大きく変貌しようとする時期に直面をしておるということを認識せざるを得ないかと考えております。しかし、私は、そういう情勢のもとにおいても日本はわが国の今後の水産の発展を守る立場から、主張すべき点については国益に基づいて堂々と主張すべきである。が、反面、発展途上国等がいわゆる今日までの従来の海洋法体制のもとにおいて問題提起として持ってまいりました主張等についても、これをかたくなに排除することなく、そういう主張についても深い理解を示しながら、なおかつ日本の主張すべき点については正々堂々と主張すべきだろうと思います。にもかかわらず、先ほど来申しておりますように、いわゆる国際的な海洋法体制というものは大きく変わろうとしておるということを私どもは受けとめざるを得ない。
私は一九七一年から七三年にかけての六回の拡大海底平和利用委員会の経緯を見てみますと、たとえば漁業水域問題についても、国際的には三つのグループに大別できるのじゃないかというふうな感じがいたします。一つは、申し上げるまでもなく、カナダ等を中心にいたしました沿岸国の漁業管理権というものを主張していこうという構想であります。一つは、AA諸国等に代表される排他的経済水域の構想がございましょう。それに対して日本、ソ連、ポーランド等東欧諸国を含めたいわゆる沿岸国の排他的水域の設定、あるいは沿岸国の漁業管理権の主張というものに対して、従来の国際漁業委員会のような場において関係国の合意を通じて管理が行なわれるべきであるという、こういった主張の三つのグループに分かれるのじゃないかというふうに判断をいたします。しかし、これは複雑なコネクションでございまして、六回の会議でもある程度の変貌、変化がございます。
同時に、発展途上国といっても、いわゆる沿岸を持っておる発展途上国と、内陸面におおむねある発展途上国、こういった点においては主張の差異があります。いわゆる南北問題的性格と南南的問題の性格というものを同時に包蔵しながらこの会議が今日まで続いてきておるというようにも予想するわけであります。
同時に、日本としては、こういう会議を通じて議論されておりますいわゆる大陸だなの問題、あるいはまた遡河性魚類の所属の問題について、産卵河川を有する国によって独占的に管理されるべきであるという、こういった主張の問題もきわめて重要でありますし、またインドネシア、フィリピン等わが国との関係で関連を持ちますいわゆる群島理論の行くえというものがどうなっていくかというふうなことも、非常に重要な日本としての問題でありまして、単にエコノミックゾーンあるいは漁業管理権の問題だけにとどまらないという、そういう問題がそれぞれ日本の国際漁業に大きな影響を持ってくるというふうに解していいのではないか、こう思っております。いずれにしても、本年の六月の会議でどういうふうに取りまとめるにしろ、あるいは来年のウイーンに持ち越されるにいたしましても、世界は新しい海洋法体制に入ろうとする趨勢にあるということだけは見のがしてはいけないんじゃないか、こう思うわけであります。
その点で農林大臣にお伺いしたいわけでありますけれども、私の申しましたようなそういう趨勢の状況も判断をしながら、わが国の遠洋漁業がそういった体制の中で漁獲数量の問題あるいは操業する隻数の問題、ことに水産庁あたりでややもすれば軽視しがちじゃないかと思いますけれども、こういう決定いかんによって直接生活権にかかわる漁業労働者の問題というような問題を含めて、どういうふうにこれに対応していこうというのか。こういった問題については、やはり先見性を持って、漁業諸団体あるいは漁業従事者等も含めたそういう人々の深い理解と協力、あるいは要望等も十分取り入れながら、出てくるであろう事態に対してはタイムリーに手が打てるような、そういう対応策が今日用意されなければならぬ時期ではないか、こういうふうに私は考えておるわけであります。まずそういう問題について農林大臣から、第三次国連海洋法会議の今後の推移に対していかなる対応策で臨もうとしておるのか、基本的な姿勢についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/121
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122・倉石忠雄
○倉石国務大臣 第三次国連海洋法会議の開催を前にいたしまして、私どもは、まず第一に発展途上国を中心として、沿岸国に最大限二百海里に及ぶ排他的管理権を認めようという主張がいまお話しのようにございました。わが国の漁業をめぐる国際情勢には、そういう関係で非常にきびしいものがございます。これはいまに始まったことではございませんで、先年来行なわれておるのでありますが、特に沿岸国の広範な排他的管理権で国際的に制度化された場合のわが国の遠洋に与えます影響は、きわめて重大なものであろうと思っております。
そこで、このために政府といたしましては、これら発展途上国との間に相互に漁業の発展をはかるという立場に立って、海外漁業協力等を通じてわが国の漁場を確保することが必要ではないか。それからまた、北太平洋等先進国との間では、あらゆる機会をとらえて相互の理解を深めまして、関係国との話し合いによって遠洋漁業の長期的安定をはかるようにいたしたい、こういうたてまえで考えておるわけでありますが、六月になりまして開催されましてからどういう動きが行なわれるか、これもよく見詰める必要があると思うのでありますが、私は、これを軽く見てはいけないんじゃないか、またいろいろな問題がふくそうして出てくるのではないか。こういうことをきわめて注意深く見詰めて、それに対処することが必要なことだ、このように理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/122
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123・角屋堅次郎
○角屋委員 大臣からきわめて一般的な御答弁がございましたが、先ほども申しましたように、いわゆる二百海里の漁業水域問題というものがかりに決定を見るというふうな情勢のもとにおいて、日本の漁獲数量、隻数あるいは乗り組み員の該当人員というふうなものをどういうふうにつかみ、先ほども申しましたように、やはり今後直接関係があるのはまず関係漁業諸団体や、あるいは漁業・乗り組み員の問題でありますが、そういう点に触れて、先見性のある対応策をこれからどうやっていこうとするのか、これをひとつお話し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/123
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124・内村良英
○内村(良)政府委員 まず影響でございますが、かりに二百海里説が、経済水域ないし漁業水域ができたということになった場合に、昭和四十六年の数字を基礎にいたしまして、わが国の漁船が外国距岸二百海里の水域でとった漁獲高は四百七十八万トンでございます。それから隻数は一万八千八百九十七隻ということになります。そこで、乗り組み員どれぐらいに影響があるのだろうか、これによって生活上の影響を受ける人はどれぐらいかということでございますが、ここに隻数がございますので、その平均的な乗り組み員の数をとりまして、これをかけますと、十五万二千三百七十人という数字が一応出るわけでございます。しかし先生御案内のように、漁業は表作、裏作の関係がございます。たとえばサケ・マスをやったものがカツオ・マグロに行く、あるいはイカ・サンマに行くというようなことがございます。それからカツオ・マグロとイカ・サンマの間で表、裏の関係がございますし、またイカ・サンマ等で表、裏の関係があるということで、その中からどれぐらい、表へ行った乗り組み員が裏にも行くかというようなことについて統計数字がございませんので、これが十万になるのか八万になるのかわかりませんけれども、一応機械的な計算をすると十五万になりますが、実際の人数はこれより少ないということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/124
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125・角屋堅次郎
○角屋委員 実は私は、漁業従業者の問題について特に注意を喚起し、触れましたのは、昨年来、櫻内農林大臣当時から、日本海員組合や、漁船労協や、あるいは大洋や、日本や、そういう関係の漁業労働者や、そういう組織する労働組合の関係が私ども社会党のほうに、これはたいへんな事態も予想しておかなければならぬ、ぜひそういう点について農林大臣や水産庁長官や、あるいは官房長官等にも、私どものなまの要請をひとつ取り次いでもらいたいということで、倉石農林大臣並びに内村水産庁長官の前任者の時代に、私どもお世話をいたしまして、それぞれの向きに要請をいたした経緯がございます。そういう点で、漁業労働者の点も、今後第三次国連海洋法会議の行くえがどうなるかという点に重大な関心を持っておりますし、そういう点について、そのときになってあわてないような対応策というものをいまからやはり準備していく必要があるというふうにも考えまして、特にそのことも含めて要請をいたしておるところであります。
時間の関係もありまして、法案の関係にもある程度入らなければなりませんので、大臣に望みますのは、ぜひ先見性を持った対応策を十分練って、そして国際会議の舞台においては、日本が主張すべき点は国益に基づいて正々堂々と主張する、そして国際協調に基づいて、そこできまります問題については、それに基づいて今後の対応策を立てていく、同時に私から漁業の振興に関する単独決議の問題あるいは三法に対する附帯決議の問題あるいは修正点の問題等を通じて触れておる中にも関連をいたしますけれども、そういったきびしい情勢が出てまいりました際にも、いわゆる海外漁業協力事業等を通じて従来の実績をできるだけ確保する、こういう面の努力もしなければなりません。また同時に、新しい漁場の開発問題というふうな問題にも真剣に取り組んでまいらなければならぬということは、当然のことだと思います。
そこで、ちょうど第三次国連海洋法会議が六月に開催を予定される前に、いま日ソ間で漁業交渉が展開されております。また、四月の中旬からは中国との間で、日中の漁業の政府間協定を結ぼうとする話し合いが始まるわけであります。私はその点で、すでに同僚議員からもある程度触れられておりますけれども、日中漁業交渉の問題について次に御質問申し上げたいと思います。
従来、日中の漁業の問題につきましては、昭和三十年の四月十五日、日中漁業協議会、日本側と、中国漁業協会、中国側との間で締結を見ましてから、途中岸内閣当時に中断がございましたけれども、今日に引き続いておりまして、現在の協定は、御案内のとおり、一九七三年六月二十三日から一年間でございますから、ことしの六月二十二日で期限切れ、それまでにでき得べくんばいわゆる予備交渉から本交渉を取りまとめて、多年の懸案である民間協定から政府間協定に切りかえるということをぜひ実現してもらわなければならぬと考えております。ただ、この際に当然交渉にあたって考えてみなければならぬ問題は一つは、第三次国連海洋法会議の準備会議の中で、中国側が海洋法のこれからの問題についてどういう主張をしておるかということは、念頭に置いてかからなければならぬ一つの問題だと思います。たとえば領海の幅員の問題については、中国側は、各国がその地理的、経済的、社会的事情に応じて自由に決定できるとの立場をとり続けていることは、注目に値する点であります。また、国際漁業、いわゆる遠洋漁業の進出問題については、中国側は、超大国の帝国主義による侵略と奪略であるとして、二百海里の領海やエコノミックゾーンの設定を、超大国の侵略に対抗する発展途上国の自衛手段である、こういった遠洋漁業に対する認識を持っておる点も、注意しておかなければならぬかと思います。
同時に、民間協定を結んでまいりました段階の中で、御案内のとおり、往復書簡が交換されております。この往復書簡の中では、中国沿岸には中国政府が設定した軍事警戒区域、事業航行禁止区域、軍事作戦区域及び機船底びき網漁業禁止区域、こういう問題について、これらの海域は民間協定の漁業水域には含まれておりませんけれども、協定に関連して往復書簡が取りかわされておるという点も、中国との関係では注意しなければならぬ問題だと思います。問題は、そういうことを念頭に置きながら、中国との間で従来取りまとめておる民間協定の問題について、民間側にも現状の民間協定には、やはり相当な批判と強い要望があるというふうに私は聞いておるわけでありまして、これからの中国との話し合いを通じて、さらに前進をした体制をとるお気持ちでおるのかどうか。また、覚え書きで、往復書簡で取りかわされておりますいわゆる軍事警戒区域等の問題に対しては、日本側としてはどういう対応の姿勢でこれに臨もうとしておるのかという問題について、御答弁をお願いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/125
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126・倉石忠雄
○倉石国務大臣 日中漁業協定は、共同声明第九項に掲げます実務協定の一つでございまして、できるだけ早急に締結すべきものであると思います。それから、この点につきましては、本年一月の大平外務大臣の訪中の際にも、両国政府間で意見の一致を見ておるところでございます。また、四月中旬に漁業協定につきまして専門家会議が開催されることになっておりますので、政府といたしましては、この専門家会議の結果を踏まえて、早急に本格的な本格交渉を開始できるように、中国側と話し合ってまいりたいと思っております。
それから、日中漁業協定締結交渉におきますわがほうの方針といたしましては、交渉開始前の現段階で具体的に申し上げる立場にはございませんけれども、中国との漁業協定は公海における漁業の安定的発展を目的とするべきものでございますので、この目的を十分踏まえて交渉に臨みたい、こういうふうに思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/126
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127・角屋堅次郎
○角屋委員 私の問題の指摘の点に直接触れていただけなかった点もありまするけれども、まあわれわれといたしましても、やはり航空協定問題、さらに漁業協定の問題等、実務協定の締結を通じて、日中の友好をさらに実質的に前進をさせるということを期待をしておる者の一人であります。しかしながら、いま民間協定を通じて結ばれておりますところの底びき網、あとから入ってまいりましたまき網という問題を含めていろいろ要望のある点はそれを踏まえながら、また、中国との交渉の中で、中国側のこういった問題に対する見解、あるいは特に中国側で、他国にない特異事項というふうな問題についてどう対応するかということも十分考えながら、しかも民間協定の際にも内容に入っております漁業資料の交換問題や技術の交流問題等、双方がやはりお互いに持てる技術やその他のものを交流しながら、友好親善を促進していく面についても十分留意しながら、民間協定の期限の切れる前に政府間協定が結ばれるように強く要望しておきたいと思います。
次は、日ソ漁業交渉の問題でありますが、これも同僚議員からある程度触れられましたけれども、一九七四年度のソ連側のサケ・マス漁業当初提案あるいは同じくニシンのソ連側の当初提案、あるいは日ソ・カニ漁業交渉のソ連側の規制案等々を見てまいりますと、私どもが十数年来経験しました日ソ漁業交渉の当初提案以上に、何割か増しのきびしい当初提案というふうに私は受けとめているわけであります。代表団の方々はたいへん苦労しておられると思いますが、これらの問題については、代表団に与えられました日本側の主張に基づいて、実りある結果が出るように期待をいたしたいのでありますけれども、この際、日ソの漁業交渉の問題あるいは日中漁業協定の本格的な政府間協定を結ぶ時点までの段階において、必要な場合には農林大臣みずからそれぞれのところへ乗り込むという姿勢で積極的に当たるということも、情勢いかんによっては私は必要でないかというふうにも思っておるわけでありますが、日ソ漁業交渉の今後の対応方針というものを含めて御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/127
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128・倉石忠雄
○倉石国務大臣 こちらから行っております人々は、御存じのようにきわめて練達たんのうの士で、長い聞こういう経験を持っておる人々でありまして、両国関係のことでありますし、相手の国の方々もなかなかゆっくりおやりになるほうでありますので、いま鋭意、一生懸命でそういうことをやっている模様でございます。もちろん必要があれば、それ相当の人物がまた参る必要があれば政府においてもそういうことをいなむものではございませんが、しばらくの間いまの代表でさらに努力を続けていっていただく、その推移を見て対処いたしたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/128
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129・角屋堅次郎
○角屋委員 次は、単独決議の中でも御協議願っておる問題でありますけれども、やはり第三次国連海洋法会議の問題に対する対応策、あるいは一定の形で取りまとめられる場合における発展途上国等を含めた日本側の海外漁業協力事業の推進を伴う日本の漁業実績の確保等の問題、さらにこれからやらなければならぬ重要な問題の一つとして新漁場の開発の問題、特に深海調査等を含めた新しい課題に真剣に取り組む問題等については、午前に同僚議員から触れられたところでありまして、大臣から、いわゆる海洋水産資源開発センターが今日まで取り組んでまいりました九つにわたる漁業種類、二十二の海域にわたる従来の調査、それに基づく活用できる南氷洋、あるいは中部の太平洋地域における問題等について、あるいはニュージーランド等の問題については午前来答弁のあったところであります。さらに深海漁場開発については新しく昭和四十八年の七月に深海漁場開発株式会社を設立をし、いま建造中の調査船を通じて深海調査等に積極的に取り組みたいというふうなこと等についても御答弁がすでにあったところでありますけれども、私は、今度の海洋法会議の行くえいかんによっては、この問題が国際漁業上の問題では非常に重要な、従来以上に比重を占めるというふうに考えておかなければならぬかと思います。そういうことも含めてこれから新漁場開発あるいは深海調査等の問題についてどういうふうに対応していこうというのかという点について、再度御答弁を願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/129
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130・内村良英
○内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、今後の海洋資源の開発、未利用資源の開発というものは、わが国漁業にとって非常に大きな問題でございます。そこで、水産庁といたしましては、すでに三年前にセンターを設立しておりますし、さらに新しい会社をつくりまして新鋭の調査船をつくる、これは動き出すのは五十年からでございますけれども、そういった施設を通じまして新しい漁場の開発にはますます力を入れていくようにいたしたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/130
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131・角屋堅次郎
○角屋委員 これは先ほども申し上げましたように、新漁場の開発、あるいはまた特に深海漁場の開発、未利用の資源の積極的な開発等の問題は、従来のペース以上に新しい視点から構想等も取り入れて、積極的に取り組んでもらいたい。私は、従来優良漁場であったようなところ以外のところで新規の開発をやっていこうという場合には、調査をやったけれども、それを企業的に乗せることができないというふうな調査も当然出てくると思います。しかし、それだから成果があがらないというふうに言い切ってしまうわけにもいくまいだろう。これはやはり積極的に努力をし、それを積み重ね、その中から活用できる漁場が見つかるということであって、ときには失敗もあり、ときには予期以上のいい漁場を見つけることもあるだろう、こういうことで、失敗にこりずに、この問題はこれからは非常に重要な問題の一つであるということで、新しい構想等も含めて積極的に取り組んでもらいたい、こういうふうに考えます。
先般来、栽培漁業センターの問題等についても議論が展開をされてまいっておるわけでございますが、御案内のとおり、国営で瀬戸内海の栽培漁業センターというものがすでに設置されて、これが運営されてきておる。そこへもってきて、昭和四十八年、九年というふうな形で、四十八年は五カ所、四十九年は七カ所ということで県営で栽培漁業センターがすでに取り組まれてきていることは承知いたしております。そのほかに、沿岸漁業構造改善事業として県営あるいは市町村営というふうないろいろな形で、昭和四十八年の段階では、たしか七十一カ所構改の形で取り上げられておる。そういう問題も含めて栽培漁業センターの設置や、あるいは生産放流のプランニングが進んできておる、こういうことでありますが、これはすでに議論もありましたけれども、過般来の議論の中で、水産庁長官の答弁を聞いておりますると、瀬戸内海の国営でやっておる栽培漁業センターについても、これからも引き続き国営でやっていくのか、場合によっては県営等の切りかえを考えておるのかというふうな感じをにおわせるような答弁に私受け取られたわけでありますが、同時に、現在、四十八年以降四十九年にかけて、当初水産庁は国営でやろうということを要請しておりましたのが、各県のぶんどり合戦等があったりいたしまして、これを県営の栽培漁業センターに切りかえるといった経過もございまするけれども、これから全国でおおむね四十六カ所程度栽培センターを設置していこうという構想のように伺っておるわけでありますが、その場合に、たとまえとしては一県一カ所、場合によっては北海道とか長崎とかあるいは山口等、若干の県においては二カ所ないし三カ所の栽培センターの設置も今後検討していくというふうに伺っておるわけでありまするけれども、私ば、やはり北海道から沖繩まで考えてまいりまして、すでに国営でやっておる瀬戸内海の栽培漁業センターについては当然今後とも国営でやるべきであるし、また県営ペースでこれから全国的に栽培センターをつくるということではなしに、やはり漁業海域ブロック、あるいは先進的な漁業県で、十分国営として、県営でやる栽培センターの指導的な役割りを果たし得るように県あるいは地域、こういうものを考えながらある程度の個所については、ブロック的にも地域的にも判断をしながら、あらかじめやはり新たな国営の栽培センター等も含めて、全国的な栽培漁業センターの設置を展開すべきだろうというふうに考えておるところであります。
これはあとで触れまするけれども、沿岸漁場整備開発法案の中で、第二条で、沿岸漁場整備開発事業を実施する政令で定める者という、政府の提案しております案に対して、同僚議員からも、また私自身も同時に考えておりますが、国みずからやるべきであるというふうな考え方とも関連をいたしまして、これから設置をされます栽培センターについては、中核的な海域の核になるところ、これは全国的にも先進的な漁業県等を配慮しながらきめていかなければなりませんが、少なくとも全国的には八ないし九カ所ぐらいはそういうものが構想されていいだろうというふうなことを率直に思っているわけでありまして、こういった問題についてのこれからの基本的な考え方はどうかという点について、御答弁を願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/131
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132・内村良英
○内村(良)政府委員 先生御案内のように、栽培漁業センターにつきましては、県営がいいか国営がいいかということがかなり議論ございまして、水産庁といたしましては、昭和四十八年度から一カ所三カ年計画でどんどん県営の栽培漁業センターを、知事の策定する栽培漁業振興計画に基づいてつくっていこうというふうな考え方で現在進めているところでございます。
そこで、こういった事業の性質から見て、それは国営でやるべきじゃないかという先生の御指摘があったわけでございます。(角屋委員「国営もやれ」と呼ぶ)国営もやるべきであるという御指摘があったわけでございます。私どもといたしまして、この県営の事業はまだ始まったばかりでございます。それで今後県営のセンターの運営につきましては、瀬戸内海の栽培漁業センターとよく連携をとりながら、技術的な問題もございますのでやっていかなければならない。ただ、今後この事業が非常に大きくなっていく場合におきましては、と申しますのは、現在のところクルマエビ、マダイ等でございますけれども、将来は他の魚種についてもこういった事業をどんどん広げていかなければならぬ。そうすると魚の種類によりましては、むしろもっと大きな海域でやらなければならぬというような問題も出てくることも考えられますので、そういった問題につきまして、将来、先生のただいま御示唆のございましたような、国営も県営もというようなこともまた検討しなければならぬ問題になってくるのではないか。ただ、ただいまのところでは事業が始まったところでございますので、もう少し様子を見てきめていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/132
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133・角屋堅次郎
○角屋委員 沿岸漁業等振興法が制定をされましてから、これに関連をいたしまして、いわゆる第一次構造改善、あるいは引き続いての第二次構造改善事業というのが今日実施をされてきておるわけでありますが、これら実績に対する批判あるいは改善の問題ということには、時間的にも多く触れることはできませんが、二次構造改善事業の進捗状況は今日どうなっているかという問題と、昨年の暮れに全漁連等団体側から、第二次構造改善事業の問題について、地域指定を従来の毎年十二カ所ぺースから二十四カ所ぺースに引き上げて、二年で指定地域を完了するようにしてもらいたいというふうな強い要請があったり、また従来調査期間については、現行の基本計画樹立に二年も調査期間にかける、これを一年に短縮して、やはりスピードアップをすべきじゃないかという問題等が出ておりまして、第一の点については、ことしは地区をふやしたという経緯がございますけれども、やはりこういった第二次構造改善の早期実施に対する沿岸漁業者の要望というものも踏まえながら二次構造改善事業をこれからどういうふうに推進していこうというのか。これは新しく制定されようとする沿岸漁場整備開発法の長期計画、あるいは特定水産動物育成事業、あるいは十六条の栽培漁業の振興等も含めた観点の中で、第二次構造改善事業の推進をこれからどうやっていくのかという点について御答弁を願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/133
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134・内村良英
○内村(良)政府委員 先生御案内のように、第二次沿岸漁業構造改善事業は、沿岸漁業生産の拡大と近代的な沿岸漁業経営の確立をはかることを目的といたしまして、全国百八地区、数市町村をブロックとする地区でございますが、百八地区につきまして事業実施しようとするものでございまして、四十六年度から逐次事業に着手してきているわけでございます。事業費の総ワクは補助事業費が八百五十四億、うち国庫補助四百億、単独融資事業五百六十億、うち公庫融資の総ワクが四百四十八億というような事業規模を予定しております。
そこで、四十八年度までの進捗状況でございますが、構造改善地区の指定をすでに行なったものが六十地区ございます。このうち三十六地区につきましては計画樹立調査を終えて、すでに本格的な構造改善事業を実施しておりまして、また第二次構造改善事業の一環といたしまして、大型魚礁の設置事業、浅海漁場の開発事業等もあわせて実施しておるところでございます。さらに四十八年度からは新たに漁村センター整備事業及び遊漁対策振興事業をも構造改善のワクの中で実施できるようにいたしております。
そこで次の御質問で、第二次沿岸漁業構造改善事業の早期実施に関する沿岸漁業者の要望があるから、なるべく早くこれを進めるようにしたらどうかという御質問でございます。この点は私どもも全漁連等からそういった要望も受けておりまして、昭和四十九年の予算要求の際には、そういったことをはかりたいということで予算要求をしたわけでございますが、地区指定はふやすということで、特に調査期間の短縮等につきましては一年にすることはできなかったわけでございますが、いずれにいたしましても構造改善というものは急がなければならぬ問題でございますから、今後地域指定の促進その他によりまして、構造改善事業の早期実施をはかりたいというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/134
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135・角屋堅次郎
○角屋委員 次は、公害等により生産力が低下している漁場の復旧の問題に関連してでありますが、これは後ほど法案として触れます沿岸漁場整備開発法案の第二条「定義」のところでも、第二条の中段のところに「沿岸漁場としての効用の低下している水面においてその効用を回復するために行うたい積物の除去その他」云々、こういうことで、いわゆる荒廃漁場の復旧問題が沿岸漁場整備開発法の中で触れられておるわけであります。この点については昨年の水銀、PCB問題で大きな問題になりました際に、緊急融資の問題について提唱し、それが与野党満場一致で緊急措置が御承知のように法的にとられる。その段階で決議といたしまして、いわゆる公害にかかわる漁場等の問題について、そういう状態がどういうふうな程度であるかという点検問題、あるいは食用に供することができないような事態の場合の漁獲の採捕の制限、禁止の問題、あるいは汚染漁場の復旧問題というものを含めた法的な検討を講ずる必要がある。この場合の法的検討というのは、単に沿岸漁業整備開発法でいっておるような、そういう水産庁プロパーという考え方ではなしに、運輸省にまたがる、通産省にまたがる、あるいは環境庁にも関連をする、あるいは建設省にも関係をするというふうな、各省にまたがるような汚染漁場の復旧問題というふうなことも念頭に置いて附帯決議での注文をつけたことは御案内のとおりであります。
そこでやはり従来の沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へという戦後の日本の漁業政策が国際漁業との関連において、沿岸漁業に本腰を入れなければならぬ、沿岸漁業を見直さなければならぬという段階を迎えました今日の時点においては、汚染漁場、これが深刻な状態であれ、それよりも軽い状態であれ、きれいな海にして魚が住み、そこでやはりおいしい魚がとれるという条件に積極的に取り組んでいかなければならぬ、こういうふうに考えるわけでありまして、沿岸漁場整備開発法で考えておる荒廃漁場の復旧問題私は先ほど申しましたようなもっと深刻な状態にあり、他省にもまたがるようなそういう汚染漁場の復旧問題、それに関連をして、PPP原則というものをどういうふうに踏まえて汚染漁場の復旧をやっていこうとするのか、これらの問題について基本的な考え方を御答弁願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/135
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136・内村良英
○内村(良)政府委員 公害による漁業被害に対処するためには水質汚濁防止法、海洋汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、それから最近できました瀬戸内海環境保全臨時措置法等の運用によりまして、漁場の汚染を防止するということが基本的な対策でございます。したがいまして、水産庁といたしましても、これらの法律を所管している関係省と緊密な連絡をとりまして対策に当たっているところでございます。基本的には先年から御指摘がございましたように、この問題は単に水産庁の行政のワクを越えた大きな問題でございますので、ただいま申し上げましたような法律を所管している官庁及び密接な関係のある運輸省その他とも連絡をとって対策を進めております。水産庁といたしましては、公害対策事業として魚介類の定期検査、公害防止調査指導体制の整備、さらに一般国民に対する公害防止思想の啓蒙普及、公害防止器具の整備、汚染漁場の浄化、赤潮被害防止技術の開発、公害被害漁業者の救済対策等の実施をやっておりまして、特に沿岸漁業として重要性を持つ瀬戸内海につきましては、ヘドロの調査、さらにいかにして二次公害を防止しながらヘドロを除去できるかということの技術試験等につきまして予算をとり、対策を講じているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/136
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137・角屋堅次郎
○角屋委員 ぼくは汚染漁場の復旧の場合のPPP原則との関連ということについても質問したわけであります。だから、沿岸漁場整備開発法案の中でそれをどう考えるか。私が去年、附帯決議で立法措置ということの検討を考えてもらうように要請をしております中では、これはきわめて明瞭であります。そういう問題も含めてさらに答弁を願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/137
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138・内村良英
○内村(良)政府委員 今後の漁場の整備、すなわちヘドロの除去等につきまして、原因者がはっきりしているところにつきましては、当然PPPの原則で原因者負担ということで漁場改良を進めていくことになるわけでございます。その他の地域につきましては、今度提案申し上げております漁場整備法案でそういったヘドロのしゅんせつ等も行なうわけでございますから、その場合におきましては、私どもが提案しております法律の体系の中でそういった事業を推進したい、こういうふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/138
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139・角屋堅次郎
○角屋委員 漁業用燃料、燃油等の対策問題に関連して、若干お伺いをいたしておきたいと思います。
昨年来の石油危機といわれるような事態の中で、特に漁船の場合はほとんど無動力船が数少なくて、大部分は沿岸でも、沖合いでも、あるいはことに遠洋漁業ということになりますれば、油をやはり燃料にしながら漁業操業をやるわけでありまして、漁業用の消費量は年間五百二十七万七千キロリットルというふうに昭和四十七年度統計ではいわれておるわけでありますけれども、この問題で特に最近通産省関係でとられてまいりましたA重油の価格をコントロールする、あるいは押える、こういう問題に関連をして、漁業団体である全漁連、あるいは日鰹連、その他いろいろなところで特に遠洋や沖合いの漁業の関係に比重のある船主の場合は、漁業種類の場合は、従来海外から直接A重油を入れてきた実績があり、それはやはり今後の石油対策としても継続していくという前提に立ってまいりますと、たとえば漁業用のA重油四百八十一万キロリットルの昭和四十七年度統計の中で、輸入分というのは二百五十万キロリットルにおおむね達するだろうというふうに、大半は、相当部分はA重油の輸入ということに相なっておる。その中で、全漁連の消費の部分が大体七十万キロリットル程度ではないか、あるいは日鰹連の場合は二十五万キロリットル程度であろうかというふうにいわれているわけでありますが、これは、この間通産省からコントロール価格として出したA重油よりも二千数百円くらい高いという事態にある。また遠洋漁業の関係では、海外の基地あるいは他国で油を補給してやらなければいかぬ。これは相当に高い油を使わなければならぬという問題等も含めて、やはり漁業経営という面で非常な油の重圧がかかってきておるということがあるわけでありまして、国内価格についてコントロールの価格をするならば、外国から入れておるA重油等についても、政策的配慮というものが当然なされてしかるべきではないか。また海外で補給をしなければならぬ割り高の燃料等についても、政策的考慮というものが考えられてしかるべきじゃないかというふうなこと等も考えるわけでありまして、こういった漁業用燃料の今後の対策をどうしていくかという点についてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/139
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140・倉石忠雄
○倉石国務大臣 漁業用石油の大部分を占めますA重油につきましては、先般の石油製品の値上げにあたりまして、特に政策的な配慮を加えて値上げ幅を極力押えたのでありますが、そのこともありまして、現状では輸入品の価格は、国内価格を若干上回っております。輸入A重油につきましては、従来は国内価格より安いのが普通とされておりました。今後の動向いかんによりまして状況が変わってくることも考えられますけれども、漁民にできるだけ安い油を供給することが望ましいことは申すまでもございませんので、輸入品が非常に高いときは、可能な限り国内油に切りかえる等の措置によりまして、安定した価格によって供給の確保につとめたいと思います。また、海外で補給を受けますA重油の価格につきましては、国によりかなりの差がありまして、極端に高いところもありますが、最近では一時より若干落ち着いてきており、大体において国内価格並みあるいはそれより若干高い価格で供給される模様でございます。
〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
それから、ちょっとこの際申し上げておきますが、先ほど日中漁業協定のときに先方の軍の線引きの問題にお触れになりましたが、お答えを私どものほうで遠慮いたしましたが、外務省のほうからせっかくおいで願っておりますので、この際お答えいたしたらいかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/140
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141・角屋堅次郎
○角屋委員 大臣のおっしゃるとおりでけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/141
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142・中江要介
○中江説明員 先ほど日中漁業協定に関連しまして、現行の民間取りきめの中に、取りきめ自身ではなくて取りきめに関連して往復書簡の中に、軍事警戒区域、あるいは軍事航行禁止区域、軍事作戦区域、機船底びき網禁止区域、こういうものがあるが、こういうものをどういうふうに政府間協定では考えていくのかという御趣旨の御質問だったと思いますが、民間取りきめは、これは日中正常化が行なわれますまでの間、政府間の話ができないために民間の御努力で、あの地域の漁業の安定のために貢献してきたものであるわけでございますけれども、一たんこれが政府間の協定ということになりますと、こういった種類の国際法上の問題というものははっきりしていかなければならない。したがいまして、従来は民間の話でありましたために、深くきわめることをしないでいろいろの実際上の解決をはかってきた問題でも、政府間の取りきめとなりますと、中国が設けておりますこういった種類の区域の国際法上の性格というものを、まずはっきり認識して、そしてそれが一般国際法に沿っているものかどうか、国際法の一般原則に合致しているかどうかということについては慎重に検討して、そして国際社会で恥ずかしくない協定に持っていきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
それでは、こういったものについてどれだけの認識があるかと申しますと、現在までのところは専門家会議が一回開かれただけで、今月の半ばから第二回が開かれますけれども、これももっぱら漁業の統計、資料、知識、経験の交換、さらに東海黄海の漁業のあり方についての話というものに重点が置かれますので、こういった国際法上の問題につきましては本交渉の段階に入りませんと、中国側がはたしてこういう区域を公海上に一方的に設定して規制していることが、国際法に照らして許されるのかどうかということについて、にわかにここで意見を述べるということはできない、こういうふうに思っております。いずれにいたしましても、政府間協定を結びます段階では、この点は国際法に照らして間違いのないようにしていきたいというのが外務省の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/142
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143・角屋堅次郎
○角屋委員 大臣はきょうはからだのコンディションの関係もあるようにお見受けをしましたし、これから交渉に入るという問題でありましたので、私から要点を一つだけ質問しましたが、いま外務省からお答えがありましたので、この程度で了承しておきます。
次は、遠洋漁業の関係で、日鰹連その他から提起されておる問題の一つに便宜置籍船の問題がございます。私もその実態はどうかということを必ずしもいま精査しておるわけではございませんけれども、しかし私どもが関係者からいろいろ要請される中に、韓国あるいはパナマ、こういう国々が日本の商社から一定の年限を経た古い船を法人等が買う形の中で、実際の実権は日本の商社が握るというふうに見られておる向きも、内容的には相当あるといわれておるわけでありますが、それが日本の港に対して相当量のマグロ等を入れてくる。これが、日本の漁業法等のきちっとした体制のもとで日本の漁船によって操業し、日本の港に持ってくる、その魚価に大きな影響を与えるという事態が今日出てきておるわけでありまして、これらの問題については、たとえば沿岸漁業等振興法第三条の「国の施策」という条文の第一項第六号のところでは「水産物の輸入によってこれと競争関係にある水産物を生産する沿岸漁業等に重大な損害を与え又は与えるおそれがある場合において必要があるときは、輸入の調整等によって、経営の安定を図ること。」これが国の重要な施策として第三条に書かれておるわけであります。外国の船の問題については外国人漁業の規制に関する法律というのがございますが、沿岸漁業等振興法第三条第一項第六号を受けた形の規制措置というものが、そのまま行なえる形の外国人漁業の規制に関する法律という形には必ずしもなっておりません。これは今日のマグロ等の状況からいたしましても、また今後海外から漁獲物を入れる量が増大する場合に、日本の国内漁業との関係において、日本の漁業に甚大な影響を与えるということがあってはならない。そういう立場から、今後の法的整備等の問題も含めて、便宜置籍船の現状と、これらに対する対策をどう指導しておるのか、また法的措置等の問題については今後どう考えていくのかという点について御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/143
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144・内村良英
○内村(良)政府委員 特に最近問題になっておりますのはマグロでございます。そこで、最近におけるわが国のマグロ類の供給量は、年間四十万トン程度でございまして、おおむね横ばいでございます。輸入量も多少はふえておりますけれども、特に著しく増加をしておるということではございません。若干数字を申し上げますと、マグロ類の輸入量は、四十六年が四万七千三百四十六トン、四十七年が四万六千八百八十四トン、四十八年が五万一千トンでございまして、少しはふえておりますけれども、そう大幅にふえておるということではございません。そこで、供給国として一番大きいのは韓国でございます。四十八年の数字で申しますと、韓国が二万五千百二十一トン、台湾が一万六千二百二十五トン、パナマが四千七百十五トンということになっております。
そこで、これらの国々、特に韓国とパナマは、日本の中古船あるいは新船の漁船を買ってきまして、主として韓国人の漁業従事者がこれに乗り組んで漁業に従事しておるわけでございますが、現在までのところ見ておりますと、この数字で特に産地価格か下がった——もちろん現在産地価格については若干の低迷が見られますけれども、これは輸入ではなしに、日本の総需要抑制による需要の減退がおもな原因になっておるのではないかというふうに市場の関係者等見ておりますし、必ずしも外国からの輸入の影響ということではないというふうに私どもは見ておるわけでございます。しかし、外国漁船による漁獲物の日本への陸揚げにつきましては、外国漁船といいましても一たん外国港に入港して積み出してくる場合には、一般の通商貿易品として取り扱わざるを得ないわけでございます。さらに現在マグロは貿易自由化品目になっております。これを押えるために輸入制限品目にするということでございますが、これはいろいろなわが国貿易体制の現状から見てなかなかむずかしいわけでございます。
したがって、今後水産庁としてこういう問題に対してどう取り組んでいくかという問題でございますが、まず第一に、私どもは外国漁船によるマグロ類の輸入について現在一生懸命実態の把握につとめております。さらに最近商社を呼びまして、そういった巷間伝えられるようなことがないようにひとつよくやってくれということを申し入れております。
さらに、わが国の中古船あるいは新船の輸出に
つきましては、ワクをつくっております。さしあたり四月から九月までのワクにつきましては、マグロ船の輸出については従来百隻であったものを七十五隻に削り、さらに一国二十五隻であった輸出ワクを二十隻に削るということで、輸出自体も押えるというような措置をとっておるわけでございます。
なお、こういった事態がさらに非常に弊害が起こってくる——現在のところ私ともの見ておるところでは特に弊害が起こっているということでもございませんので、そういった措置をとりながら今後の事態の推移を見て対策を考えたい。
なお、沿岸漁業振興法三条第一項第六号の規定によります輸入の調整については、これは具体的な実施規定ではございませんので、貿易の問題になりますと、貿易関係法令の運用の問題になってくるということもございます。したがいまして、法的整備につきましては、外国人漁業法との問題も考えながら、もう少し事態の推移を見て、なおわが国の漁業法その他の関係から見ても弊害があるということになれば、何らかの措置を法的に検討したいと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/144
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145・角屋堅次郎
○角屋委員 いまの水産庁長官の答弁は非常になまぬるいし、また事態認識が非常に甘い、ざっくばらんにいってそういうふうに思います。去年水銀、PCBの関係で直撃弾を非常に深刻に受け、さらに最近、いま申しましたような便宜置籍船といったような問題との関連で第二弾目の影響を受けておるという、関係業界の問題については、やはりもっと深刻に受けとめてもらいたい。沿岸漁業等振興法第三条第一項第六号の点は、いわば訓示規定的なものであってということでは、国の施策にならない。やはりこういう事態の場合に、ここでいっているものをどういうふうに実施していくかということが、国の施策に書かれておる以上は政治的責任があるというふうにも思うわけでございまして、これはやはり商社を呼んで注意をする。大体商社はことしになりましてからずいぶん問題が出ておりますように、無国籍のような、もうけ本位で、日本の漁業がどういう影響を受けようがそういうことは念頭に置かないという、わがままな姿勢が非常に横行しておる点もあるわけでございますので、きびしい姿勢でこれらの問題に対処してもらいたいということを申し上げておきたいと思います。
次に、これは同僚議員から特に注文もありましたし、単独決議の中でも触れている問題でありますが、いまの価格問題とも関連をいたしまするけれども、主要農産物の価格の決定方式などと違いまして、水産物の価格というのはいわば相対の価格みたいにしてきまる、とってきた漁業者が、従来以上にコストがかかっていようとかかっていまいと、そういうことにおかまいなしに価格が決定されるというふうな形になっておるわけであります。これは水産物の貯蔵施設の整備充実や流通の近代化、あるいは加工対策の拡充等、こういうものを通じて水産物の価格の安定をはかることはやはり当然のことでありますけれども、同時に、漁業者の意見というものが魚価決定に作用するような仕組みというものをもっと積極的に考えていく必要があるだろう。市場関係においても、そういう代表者がきちっと入った形の中で運営できる方途はどういうものがあるか、あるいはまた非常に低い価格の場合に、具体的にどういう対応をするか、かつて私、多獲性大衆魚の価格安定問題について社会党提案の法案を出したことがございますけれども、そういった問題について、漁業者自身が価格の決定にほとんど発言権、イニシア的な力を持たないということでなしに、もっと漁業経営の安定に資するような価格決定がなされる方途について積極的に取り組む必要がある、こういうふうにも思っておるわけでありまして、これらの点について今後施策的にどうしていくか、お答えを願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/145
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146・内村良英
○内村(良)政府委員 水産物の価格決定につきましては、ただいま先生から御指摘がございましたように、他の工業製品等と違いまして、需給で価格がきまってくるという形になっております。と申しますのは、水産物の場合には、やはり生鮮食品であるという商品の特性に基づいてそういったことになっておるわけでございますが、最近冷凍技術の発達によりまして、かなり出荷調整的なことができる面も出てまいったわけでございます。したがいまして、水産庁といたしましては、そういった面を助長するということのために、産地、中継基地、消費地の冷蔵庫についていろいろ助成をし、冷蔵庫の能力の拡大ということをはかっております。その場合に、漁業者の声をどういうふうに反映していくかという問題でございますが、私どもといたしましては、そういった助成の中心を漁協系統に置いてやっているわけでございます。そういったことで漁協系統の調整保管能力というものが拡大していけば、それだけ魚価の形成について漁業者の声が反映してくることになるわけでございます。さらに、最近の価格形成で一つ注目される動きは、従来消費地の価格というものが産地の価格に反映されるような形であったわけでございますが、最近は、産地市場から加工に向けられるようなものも非常に多くなりましたし、また地元消費もふえておるというようなことから、産地市場の価格形成への影響力も相当出てまいりました。もちろんこれは魚種によって違いますけれども、そういった動きもございますので、今後漁協系統のそういったいろいろな市場活動を助長しながら、水産物の価格安定に漁業者の声が反映できるような体制を極力つくるようにしなければならないし、また努力したいと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/146
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147・角屋堅次郎
○角屋委員 沿岸漁場整備開発法案との関連におきまして若干の質問をいたしてまいりたいと思います。
先ほど来触れておる国際的、国内的情勢とももちろん関連をするわけでありますが、現在わが国の漁業は、動物性たん白食料の過半を供給しておるきわめて重要な産業でありますが、先ほど来述べてきておりますように、内外情勢は逐年きびしさを増してきているわけでありまして、こういう中で、今後どのようにして漁業の発展をはかっていくのか、あるいは国民に対する水産物の供給をいかにして安定的に確保していこうというのか。この法案に関連して、まずこの点についてお伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/147
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148・倉石忠雄
○倉石国務大臣 わが国は四面海に囲まれておりまして、たん白質資源を海洋に依存してきておることはたびたびお話の出ているとおりであります。特に水産業は、国民の動物性たん白食料の過半を供給する重要な食料産業といたしまして、国民経済上大きな役割りを果たしておりますし、その生産も毎年増大を見せて、四十七年には約千二十一万トンを記録いたしました。今後の水産物の需要は、国民生活水準の上昇に伴いまして高度化、多様化しつつ増大する傾向にありますし、また五十七年における食用魚介類の国内需要量を試算いたしますと、約九百三十万トン程度と推定されております。これに対して漁業生産は他産業と異なり、海況や資源の変動などの影響を大きく受けますが、需要の増加に対応して、できる限り国内生産の増大によって安定的な供給の確保をはかることを基本といたして努力してまいりたいと思っております。
それからこのために、まず第一には沿岸漁場の環境保全、これが大事なことだと思っております。沿岸漁場の整備開発と栽培漁業の全国的な展開に合わせて、漁港等の計画的整備、それから沖合い、遠洋における新漁場の開発と国際協調のもとにおける海外漁場の確保が必要なことではないか。それからさらに漁業経営の近代化の促進等の施策を積極的に推進することによりまして、水産物供給の増大をはかってまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/148
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149・角屋堅次郎
○角屋委員 そこで、その答弁を受けて沿岸漁業の関係の問題であります。漁獲高の点では沖合い、遠洋漁業の比重が高いわけでありますけれども、漁獲金額から見ますと、沿岸漁業は四割近くを占めておるわけであります。また漁業者の比重からいえば、大半は沿岸漁業者ということになるというふうなことで、従来の沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へという外延政策から、国際的な情勢から見て沿岸を重視しなければならぬ、沿岸を見直さなければならぬという情勢とも関連して、いま大臣からも御答弁がありましたけれども、積極的な沿岸漁業の振興対策を進めなければならぬ。そこでそういうものを進めていく場合に、政府は今後沿岸からどれだけの生産を期待しようとするのか、またどれだけの生産を確保するような施策を推進していこうとするのか。それらの目標、見通しをどう持っておられるか、明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/149
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150・倉石忠雄
○倉石国務大臣 わが国の漁業を取り巻く環境は、御指摘のように、沿岸海域におきましては漁場環境の悪化、沖合いの遠洋海域における国際的な規制の強化等きわめてむずかしい問題がございますが、特に沿岸漁業は最近生産が停滞ぎみに推移しておりまして、今後生産の増大をはかりますためには、沿岸漁場としての生産基盤の整備開発を推進することがまず第一だ。それから天然の資源のみに依存してまいりました従来の漁業に加えて、いわゆる栽培漁業を本格的に推進する必要があるのではないか、このように思っております。そのためには、新たに沿岸漁場整備開発法を制定いたしまして、魚礁、消波施設の設置、しゅんせつ等の沿岸漁場整備開発の事業を総合的かつ計画的に推進するために、沿岸漁場整備開発計画制度を確立するとともに、漁業者みずからが栽培漁業等の推進のため行なう特定の育成事業を推進することといたした次第であります。
それはこの間御説明申し上げた中にも書いてありますが、今後の沿岸漁業の生産の見通しにつきましては、海況の変化、資源の制約等もろもろの要因がございますので、的確な見通しを立てることはなかなか困難でありますけれども、従来の漁業生産の趨勢をもとに、これら沿岸対策による生産の増大を織り込んで試算いたしますと、十年後の昭和五十七年には一応三百三十万トン程度の生産の見通しが得られると思うのであります。
なお、本法案によります沿岸漁場整備開発計画を作成する時点におきまして、計画との関連においてさらに適切な生産の見通しを検討の上明らかにしてまいりたい、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/150
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151・角屋堅次郎
○角屋委員 「沿岸漁場整備開発事業」と第二条で書いておる問題とも関連をいたしまして、全国漁業協同組合連合会、沿岸漁業開発対策研究会、こういう形で同僚議員からもときどき引用されておりますが、昭和四十五年十一月に「沿岸漁業資源・漁場開発の背景と対策」というグリーンレポートが出されておりまして、大臣も、非常に熱心に議論され、取りまとめられたこういうグリーンレポートについては、十分尊重してこれから実施をしていく御意向と判断をしておるわけでありますが、その場合、日本列島は申し上げるまでもなく南北非常に細長く、海流も北海道から沖繩までということになりますと非常に変化がありますし、また沿岸の海域も、それぞれの地域によって必ずしも一様ではないわけであります。こういう沿岸海域の諸条件から見て、沿岸の水産動植物の増養殖、さらに対象生物の違い、事業の工法も異なってくると思うのでありますけれども、今後の沿岸漁場整備開発事業というものについては、どういう点に重点を置いて事業の推進をやろうとするのか、この点についてお考えを聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/151
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152・倉石忠雄
○倉石国務大臣 まず、沿岸漁業の安定的な発展と水産物の供給の増大をはかりますためには、沿岸漁場の整備開発を進めて沿岸性水産動物の増殖をはかりながら、いわゆるとる漁業からつくる漁業を推進することが重要である。したがって、ここに重点を置いて本事業を進める方針でございます。沿岸漁場の実態は、海域によって異なっておりますから、各海域の特性と当該地域の沿岸漁業の育成方向を十分見きわめた上で、実情に即した漁場の整備開発を行なってまいる考えでありますが、具体的にたてえば例示申しますと、一つは砂浜、岩礁地帯等であって漁場に恵まれない海域に、魚礁等の設置によって漁船漁業の漁場を造成いたしますこと、第二は、増殖場または養殖漁場としてすぐれた条件を持つ適地を開発いたしまして、増殖場または増殖生産地を形成すること、それから第三には、沿岸漁場として重要な水域のうち、汚泥、廃棄物等公害原因物質の堆積のため生産力の低下いたしました区域に対して、漁場環境の保全、回復をはかること等に重点を置いてやってまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/152
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153・角屋堅次郎
○角屋委員 沿岸漁場整備開発法案は、第三条で「沿岸漁場整備開発計画」、当初は五年を目途にして国の長期計画を立てるという考え方に立ちまして、その実施については第五条でこれを受けとめ、さらに第六条では「特定水産動物育成基本方針」を都道府県が都道府県の海区漁業調整委員会の意見を聞いて定めるという方式をとり、また、それを受けて漁業協同組合、漁業協同組合連合会が、第八条によって「特定水産動物育成事業」を推進していく。育成水面等の関係の法制的な問題については、以下十四条までのところに書いてあるわけであります。
そこで、いままでの特定水産動物育成の実施状況を見ますと、大体瀬戸内海でもその他のところでも、クルマエビあるいはマダイといったような数種類のものに限定されておるわけでありますが、今後この特定水産動物育成事業というものを展開していく場合には、どういう構想でどういうふうに実施をしていこうとするのか、このお考えを聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/153
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154・内村良英
○内村(良)政府委員 栽培漁業の推進によりまして沿岸漁業の生産の拡大をはかるため、過去十年間魚介類の種苗の大量生産と放流の技術の開発に努力してまいりました結果、ただいま先生から御指摘もございましたように、クルマエビについてはすでに事業化の段階に達し、またマダイ、ガザミ等につきましては事業化の見通しを得ているわけでございます。今後は放流した幼稚仔及び天然幼稚仔の健全な育成をはかりまして、商品サイズまで成長させた上で採捕することによりまして、沿岸資源の涵養と地先の栽培漁業の発展をはかろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
このような観点に立ちまして、そういった一定の商品サイズまで放流したものを成長させるための必要に基づきまして、特定水産動物育成事業を設けることとしたわけでございますが、今後こういった面は大いに拡大していかなければなりませんので、クルマエビ、マダイ、ガザミ以外の魚種につきましても積極的にこれを開発していきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
次に、現在大体現実的な事業化が可能だと思われるものについて申し上げますと、カサゴ、メバル、カレイ、ヒラメ、こういったものについて逐次事業を拡大していくということを考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/154
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155・角屋堅次郎
○角屋委員 私ども、沿岸漁場整備開発法案につきましては、この法案が今後の沿岸漁業振興の立場から、そのグラウンドである沿岸漁場を整備開発しようということで長期計画を立て、あるいは特定水産動物についての都道府県の基本方針に基づいて漁業協同組合等が特定水産動物育成事業をやる、あるいはこれらのものと種苗の生産施設の整備運営とあわせ栽培漁業の振興をはかろうという考え方については、これは十分意味のある法律である。内容的にはやはりひ弱い点も必ずしもないとはいえない。できれば鉄棒を入れたいという気持ちがありますけれども、鉄棒を入れるということになると与野党でまとまるかどうか。ことし長期計画についても府県から積み上げて、来年度長期計画をすべり出して実施に入っていこう、また客観的にもそういう情勢に来ておるという時期に、法的整備を強く注文をつけて鉄棒を入れたいということでもこれはなかなか困難であろう。そこで、若干の、針金といってはちょっと弱いかもしれませんが、軽い鉄棒程度を入れたいということで、四点修正を考えたわけでございます。
その第一点は、先ほどもちょっと触れましたけれども、第二条の関係の沿岸漁場整備開発事業については、まず国みずからがやるという考え方を打ち出すことが必要であるし、それには都道府県、市町村等地方公共団体、また漁業団体等相協力して沿岸漁場整備開発事業を推進することが必要である。それで、「政令に定める者」のところを、「国、地方公共団体その他政令で定める者が実施するものをいう。」というふうにいたしたいというのが修正の第一点であったわけであります。ただ、この点については、「国」を政令の中で書くことは可能でありますが、要は政令で書くにいたしましても、国みずからやる姿勢が政府にあるかどうかということが問題でありまして、今後沿岸漁場の整備開発をやるためには、国みずからも国営でやっていく姿勢というのをバックボーンとして総合的に実施することが当然必要であろう、また必要であるというふうに認識しておるわけでありまして、これは幾たびか同僚議員から質疑がなされてまいりましたけれども、近い機会には国みずからが乗り出して、国富事業等も含めて沿岸漁場整備開発事業をやっていくというふうな点については、はっきりお答えを願っておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/155
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156・倉石忠雄
○倉石国務大臣 沿岸漁場整備開発事業のうちの実施者を、地方公共団体だけでなく、国としたほうが適当な事業としては、その事業の施行に高度の技術を要するもの、それからその事業規模、施行方式等からして、国みずからが実施することがふさわしいという御意見もあるようでありますが、国営で実施する場合の実施体制の整備の問題等もいろいろございますので、なおこういう問題については十分検討してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/156
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157・角屋堅次郎
○角屋委員 この第三条の「沿岸漁場整備開発計画」は、やはり長期計画で非常に重要な意味を持つものでありますから、これについては第十六条の「栽培漁業の振興」の関係、これは言うまでもなく、「国及び都道府県は、沿岸漁場整備開発事業及び特定水産動物育成事業の実施を」と、これは十五条の前のところはすべてそういうことで二本の柱は書かれているわけでありますが、それに十五条までにない「水産動植物の種苗の生産施設の整備運営」、この三本の柱をあわせ推進することによって栽培漁業の振興につとめなければならぬというふうに十六条はなっているわけであります。このあとの部分の「水産動植物の種苗の生産施設の整備運営と併せて」という栽培漁業の振興に関する十六条と三条の長期計画については、第三条第三項のところで十分それを念頭に置いてということに修正をする必要がある。これは各党の理事間で御相談中でありますので、これについてはそういうふうにわれわれとして修正を考えておるということだけを申し上げるにとどめたいと思います。
それから、特定水産動物育成基本方針につきましても、これは都道府県がその区域に属する水面について、海区漁業調整委員会の意見を聞いて、いわば都道府県プロパーで特定水産動物基本方針をきめるというふうな法的な考え方に立っておるわけであります。私は、いわば都道府県の自発性、創意性というものを尊重しながら、都道府県が特定水産動物育成基本方針を立てるという考え方は、これはこれとして尊重いたすというふうにいたしたいと思うわけでありますが、その場合に、やはり海は一つでありまして、各都道府県がそれぞれ思い思いでやるのではなしに、全国的な視点から、国としては必要に応じてこれらの都道府県の特定水産動物育成基本方針について助言や指導や、そういったサゼスチョン、サポートというものをやっていく必要がある。あるいは隣府県との関連も起こるかもしれない。これは場合によっては技術指導が中心になるかもしらぬし、あるいは全国的視点、隣府県の関係という意味からのサゼスチョン、サポートということも生じてくるだろう、こういう点についても修正点として理事間で御相談を願っておる点でありますので、この点についても、そういうことで注文を申し上げておきたいと思います。
それで、これは行政庁もよくきらうのでありますけれども、附則の「検討」というので、実は附則の中に一項目を設けまして、この沿岸漁場整備開発法を今後実施していく中において、沿岸漁業等振興法、あるいは漁業法、あるいは海洋水産資源開発促進法、あるいは水産資源保護法といったようないわゆる沿岸漁業関係の諸法令全般との関連を検討してきながら所要の措置を講じていくということが、これからの沿岸漁業振興のために非常に重要である。これを附帯決議ではなしに、袋小路作戦ではありませんけれども、附則の「検討」の中に入れて、政府にきびしく注文をつけるということが立法府の姿勢として必要ではないかというふうにも考えたわけでありますが、やはりその法律のワク内で処理できるという問題については、漁業災害補償法あるいは森林法の際に附則「検討」としてつけましたけれども、いま申しました附則「検討」の趣旨は他の法律にも関連する問題でありまして、法制局との関係においてもいろいろ意見も出たところでありますので、これは単独決議の重要な項目としてこれを入れるという形の取り扱いを御相談しておるところであります。
その点で、特に附則「検討」に考えておりました、沿岸漁業をめぐる今後のきびしい情勢にかんがみまして、総合的、計画的な観点から、これからすべり出そうとする沿岸漁場整備開発法、あるいは沿岸漁業等振興法、漁業法等現行の沿岸漁業の関係諸法令全般にわたってすみやかに検討して所要の措置をとるという姿勢に政府自身があるかどうかということを、この機会にお伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/157
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158・内村良英
○内村(良)政府委員 今後、沿岸漁業の問題がわが国漁業にとって非常に重要な問題になってくることは、先生の御指摘のとおりでございます。さらに、国内法の体系を見ますと、特に漁業法につきましては、すでにできましてから相当の年月が経過しております。そこで、客観情勢も変わっておりますので、現在、水産庁におきましては、漁業法を中心にもろもろの制度を見直す検討会を設けて、すでに四十八年度から検討を始めました。これにつきましては、あと一年ないし二年の歳月がかかるかと思いますが、そういった中で、先生からただいま御指摘がございました事項についても検討を加えていくというような姿勢で進めたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/158
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159・角屋堅次郎
○角屋委員 次は漁業災害補償法の問題であります。時間がだいぶ迫ってまいりましたが、それを念頭に置きながらお伺いをいたしたいと思います。
漁業災害補償法につきましては、三十九年の十月発足の法律で、ことし十周年を迎えようとしておるわけでありますが、これが三十九年に国会で検討をされた段階においては、参考人招致のときにも若干触れましたけれども、仮谷農林水産委員長と当時修正の問題についていろいろ協議をいたした経緯がございまして、附則「検討」その他の所要の修正、附帯決議の準備をしたわけでございます。その際には、政府の行なう保険事業というのが欠けておりまして、附則「検討」の第二条第二項のところでその実現を目ざして検討するのだという形で注文をつけまして、これが四十二年五十五回国会の場合に改正案として出されてまいりました。四十二年の五十五回国会の改正は政府の行なう保険事業が中心でありましたけれども、今度の漁業災害補償法の関係は各方面にまたがっての実に大幅な改正が提案されておるわけであります。
私どもは、数年来それぞれ検討会で十分慎重に議論をされて答申が出され、それを受けて政府が出されてきた漁業災害補償法の一部改正案については基本的に賛成であります。ただ、これからの問題とも関連をして若干の点についてお伺いをしておきたいと思います。
まず第一は、漁業共済の補償の水準となります共済限度額の問題であります。
これは、今回の限度額率あるいは魚価修正というふうな形である程度修正がなされておるわけでありますが、本制度の目的を達成し、あわせて加入の増大に結びつくような方途を考えるためには、今回の改正にとどまらずに、やはり共済限度額は漁業実態の推移に即応して漁業者の要望にこたえるように算定する考え方を今後も継続して持たなければならぬだろう、こういうふうに思っておるわけでありますが、この点についてまずお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/159
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160・倉石忠雄
○倉石国務大臣 共済限度額は、共済事故を判定いたしまして支払い共済金の額を決定する基準となるものでありますから、この水準が当該契約にかかる漁業の実態に即して適正に定められることが必要でございます。したがって、今回漁獲共済の共済限度額の算定方式を改正いたしまして、過去三年の漁獲金額の単純平均値に、漁獲種類別に一律に定められ、かつ魚価の上昇等に見合う金額修正係数を乗じたものを基準漁獲金額として、これに漁業種類別にその実態に応じて九〇%から七〇%の範囲内で定める限度額率を乗じたものを共済限度額とするということにいたしました。今後漁業の実態あるいは漁業を取り巻く経済諸情勢に変化があれば、当然共済限度額につきまして検討を加え、漁業の実態を反映し得るようにいたしたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/160
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161・角屋堅次郎
○角屋委員 今度漁獲共済について、第一号漁業、第二号漁業、第三号漁業、これらの漁業につきまして義務加入制の導入が改正案として出されておるわけでありますが、漁船漁業の場合は、二十トン未満の漁船と定置漁業ということで第三号漁業に該当しますが、そういう形になっておりまして、これから二十トン以上の漁船漁業及び新たにノリ養殖業についても義務加入制を適用していくような考え方を検討をすべきではないかということを、これは同僚委員からも議論のあった点でありますが、この点についてもお伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/161
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162・内村良英
○内村(良)政府委員 将来の大きな検討事項として検討いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/162
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163・角屋堅次郎
○角屋委員 今度の場合に、ノリ養殖共済につきまして御承知のように収穫保険方式による試験実施をやろうとしておるわけであります。これは五年以内ということをめどにしてやろうとしておるわけでありますが、なるべく早い機会に試験実施を終わって本格実施に切りかえていくということも、考え方としてやはり持っていかなければならぬだろうと思います。関係団体の中にも、三年をめどにして試験実施から本格実施への切りかえということを念頭に置きながら試験実施をやっていくことを考えてはどうかという意見もあるわけでありますが、そういったノリ養殖業に対する特定養殖共済の試験実施の関係の問題と、さらにノリ養殖業以外の養殖業について、今後特定養殖共済を実施する考え方があるかどうか。
またそういうことについて、ノリ養殖以外から要望が出てきた場合に、どうこれを受けとめて対応していくのかという点についてもあわせお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/163
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164・内村良英
○内村(良)政府委員 ノリの収穫共済の実験の期間の問題でありますが、私どもといたしましては、いずれにしても共済保険でありますから、料率の資料を得なければならぬ。その意味で三年はちょっと短いのではないかということで一応五年と考えておりますけれども、なお実施の状況によって極力早く結果を見て、実施に移すかどうするかということを検討するようにいたしたいと思っております。
次に、ノリ以外のものについてなぜ実験をしないのかということでございますが、ノリ以外の養殖業につきましては、ノリのように、ノリは冷凍の網あるいは浮き流し方式というようなことで非常な技術革新がございまして様相が変わっております。特に収穫量等も、ここ四、五年非常に伸びているというような状況になっておりまして、ノリ養殖制度ができたときと非常に状況が変わっておりますので、収穫保険の希望が非常に強く出ております。それに比べて他の養殖業の場合には、それほどの技術革新がない。さらに共販体制というものを見ました場合にも、ノリほど整備されていないという問題がございますので、現在収穫保険の実施をする段階にはまだないのではないかと思っております。しかしながら他の養殖業につきましてもノリと同じような要望が高まってまいりまして、さらに技術的にそれが可能であるという段階に至れば、そうしたものについても実験をしなければならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/164
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165・角屋堅次郎
○角屋委員 純共済掛金に対する国の補助をさらに拡充するという問題にも関連するわけでありますけれども、従来団体側でもあるいは漁業者の間でも問題にしております補助限度率の撤廃問題が御承知のようにございます。これは漁業災害補償法の政令第二十三条関係に別表でその内容があらわされておりまして、四七%から六〇%ということで一つの制限がとられるわけであります。これを四七%から六五%に若干改善しようという考え方で改正を考えておるわけでありますが、しかしこれは基本的に加入者の掛け金負担の軽減あるいは契約割合の引き上げ、優良加入者の契約の促進等、こういった総合的な見地からやはり補助限度率を撤廃をする、また純共済掛金等に対する国の補助をさらに拡充をするということが必要であるというふうに思うのでありまして、これらの問題については、自民党が漁業災害補償法の改正を考えた場合の自民党の考え方の案の中にも、補助限度率を撤廃するということを強く打ち出しておったわけでありまして、われわれもかねてからこの撤廃を望んでおるわけでありますが、そういった問題に対する考え方についてお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/165
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166・倉石忠雄
○倉石国務大臣 漁業共済の共済掛金に対する国の補助対象の制限としては、漁業の規模や契約方式等による制限のほかに、契約割合による制限がございまして、その上限値を国庫補助限度率として設定いたしておるわけであります。
そこで、この率につきましては今回漁業者の要望もあり、また採貝・採藻業、二十トン未満の漁船漁業及び小型定置網漁業につきましては六〇%から六五%に引き上げる改正を行なうことといたしております。
なお、国庫補助限度率の撤廃につきましては、今後さらに契約の推移を十分考慮いたしながら、類似制度であります漁船保険や家畜共済の動向ともにらみ合わせまして検討を続けてまいる考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/166
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167・角屋堅次郎
○角屋委員 新しく赤潮特約が養殖共済において実施される改正が出てきておるわけでありますが、これは同僚議員からも議論がありましたように、これの助成につきましては特約部分の共済掛金について国が三分の二助成をする、これは明定される問題であります。あと地方公共団体の三分の一助成というのは、地方公共団体に要請し協力を求める。問題はその場合に、やはり共済加入者には迷惑をかけない、そういう意味の負担をかけないということがはっきりすればいいわけでありまして、国にしたって地方公共団体にしたって公的機関でありまして、それをはっきり、そういうことで実施をするというふうに明言をしておいてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/167
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168・内村良英
○内村(良)政府委員 ただいま関係県ともいろいろ話し合いをしておりますが、漁業者に掛け金負担をかけない形で実施に移すようにいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/168
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169・角屋堅次郎
○角屋委員 最後に、漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法関係の問題について数点お伺いをしておきたいと思います。
この漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法につきましても相当な項目にわたって改正がなされているわけでありまして、これを一々改正点について論議しておりますと時間に限りがないわけであります。そこで、すでに同僚議員からも相当な議論がなされておるわけでありますので、数点にしぼってお伺いをしておきたいと思います。
まず第一は、漁業近代化資金の貸し付け対象者の範囲を拡大することによりまして、同資金の貸し付けにあたって零細漁業者を圧迫することにならないかという問題であります。漁業近代化資金の貸し付け対象者の範囲の拡大問題の内容は、具体的には触れる必要がない、御承知のとおりでありまして、このことを通じて零細漁業者の融資に支障がくることがあってはならないわけでありまして、その点はどういうふうに運営をしていくのかという点をお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/169
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170・倉石忠雄
○倉石国務大臣 漁業近代化資金の貸し付け限度額は、大体平均的な漁業規模を基準といたしまして制定されておりますし、大規模漁業者を特に優遇することにはならないのでありますが、実際の貸し付けにあたりましても、漁協における組合員の最高貸し付け限度額は総会の議決事項となっておりますし、貸し付けが特定の漁業者に片寄ることのないようにされておることは御存じのとおりであります。また、大口の資金需要で貸し付けが漁協で対応できない場合は、上部機関であります信漁連、農林中金等からの直貸しの道も開かれておりますので、貸し付け対象者の範囲を拡大することといたしましても零細漁業者を圧迫することにはならないのではないか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/170
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171・角屋堅次郎
○角屋委員 今回の改正で漁業信用基金協会に対する従来やっております県の出資のうちで、漁業近代化資金にかかわる出資についての国庫助成がなされる法改正が今回出ておるわけであります。これに国庫助成することは、農業との見合いにおいても当然やらなければならぬ問題であったわけでありますが、これをさらに一般資金についても同様に出資助成を行なうべきではないのかということも含めてお答えを願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/171
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172・倉石忠雄
○倉石国務大臣 漁業信用基金の制度は、発足当時から県の出資を待って一般資金の保証を行ない、昭和四十四年からは漁業近代化資金制度の創設に伴いまして、一般資金とあわせて近代化資金の保証を行なってまいりました。しかし、漁業近代化資金の融資ワクは年々増大いたしまして、漁業金融に占める同資金の比重も次第に高まってきておりますので、漁業者等の資本装備の高度化と経営の近代化を推進するという近代化資金の政策目的に照らしまして、これを受信力の低い小漁業者等にも円滑に融資するためには、従来よりも一そう漁業信用基金協会の保証能力の拡大をはかるとともに、被保証者たる漁業者の負担を軽減することが必要であると考えております。そこで、このために農業信用保証制度に見られますように、漁業近代化資金にかかる都道府県の出資についても国庫助成を行なうことによりまして、同資金の融資の一そうの円滑化をはかることといたしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/172
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173・角屋堅次郎
○角屋委員 今回、漁業信用基金協会の会員資格を金融機関に与える、こういうふうに法改正で出ておるわけでありますが、こういう金融機関に会員資格を与えるということによって、制度の運営というものに支障を来たすおそれがあるのかないのか。金融機関というのは、やはりある程度力を持っておるわけでありますが、漁業信用基金協会の運営あるいは本法の運堂上、金融機関を会員に入れるという理由はどこにあったのか、あるいは今後の運営において、どういう点に注意をして支障の起こらないようにしようとしておるのか、この点をお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/173
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174・内村良英
○内村(良)政府委員 今回の制度改正の一つの柱は、基金協会の基盤の強化と保証能力の増大をはかることでございます。このため、基金協会への県の出資に対する国庫助成、中央漁業信用基金からの低利融資制度の創設等の措置を講ずることとしておるわけでございまして、これによって基金協会の基盤の強化がはかられるわけでございますが、さらにこれらの措置の一環として、本制度の受益者たる金融機関に対し、基金協会の会員資格を付与することによりまして、基金協会への出資を通じて本制度に対する応分の協力を得ることにし、これによってさらに制度の充実、拡充をはかるということにしているわけでございます。
なお、金融機関の加入は、制度上はあくまでも基金協会の自主的な判断にゆだねられておりまして、また議決権の基礎となる出資金についても、地方公共団体の出資がほとんどの基金協会において四分の一をこえていること、さらに、国の出資助成によりさらに県の出資が促進されること等にもなりますので、金融機関の加入によりまして、特に金融機関の発言が強くなって基金協会の運営に困るというようなことはまずないというふうに確信しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/174
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175・角屋堅次郎
○角屋委員 最後に農林大臣にお伺いをして質問を終わりたいと思うのでありますが、約二時間にわたりましてわが国の水産業の直面しておる国際的、国内的諸問題、さらにはいわゆる水産三法の法案の重点的事項というものについて、締めくくり的、総括的な質問を展開してまいりましたが、各同僚議員からも水産三法の審議を通じて真剣に論議が展開されましたように、国連の第三次海洋法会議のこれからの結果いかんを待つまでもなく、石油危機の問題であるとか公害の顕在化の問題であるとか、そういった各般の問題を含めて、わが国の水産業はきわめてきびしい条件に直面をしておるわけであります。当面日ソ漁業交渉の問題があり、日中の政府間協定の問題があり、あるいはまた六月のベネズエラのカラカスの第三回の国連海洋法会議の問題があり、水産の問題は、国際的にも国内的にもずいぶん山積みでありますけれども、わが国の動物性たん白資源の約半数というものは魚から得ておるというふうな重要な産業であるということに思いをいたしまして、これからのわが国の水産業の振興に異常な決意を持って対処してもらわなければならない、こう思うわけであります。
最後に、わが国の水産業の振興に対する大臣の決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/175
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176・倉石忠雄
○倉石国務大臣 お説のように、ただいま水産界はなかなかきびしい状況のもとにあるわけであります。こういうところに対処いたしまして、政府といたしましても、各位の御協力を得まして国民大多数の期待に沿い得るような万全の措置を講じて、最善の努力をいたしてまいりたい、こういう決意でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/176
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177・仮谷忠男
○仮谷委員長 これにて各案に対する質疑は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/177
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178・仮谷忠男
○仮谷委員長 ただいま議題となっております三案中、漁業災害補償法の一部を改正する法律案、及び漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案について議事を進めます。
これより両案について討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もございませんので、順次採決いたします。
まず、漁業災害補償法の一部を改正する法律案について採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/178
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179・仮谷忠男
○仮谷委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決されました。
次に、漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/179
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180・仮谷忠男
○仮谷委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/180
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181・仮谷忠男
○仮谷委員長 次に、沿岸漁場整備開発法案について議事を進めます。
この際、角屋堅次郎君外四名から、本案に対し修正案が提出されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/181
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182・仮谷忠男
○仮谷委員長 提出者より趣旨の説明を求めます。角屋堅次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/182
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183・角屋堅次郎
○角屋委員 私は、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党の五党を代表して、沿岸漁場整備開発法案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。
修正案はお手元に配付いたしましたとおりであります。
案文の朗読を省略して、以下修正の趣旨を簡単に申し上げます。
第一点は、第三条第三項中「利用の方向」の下に「及び水産動植物の種前の生産施設の整備、生産技術の開発等栽培漁業の振興を図るための条件の整備の動向」を加えることにいたしておりますのは、第十六条の栽培漁業と長期計画との関連というものをやはり位置づける必要があるという趣旨からでございます。
次に、第六条第四項を同条第五項とし、同条第三項の次に次の一項を加えるということで、第四項といたしまして、「国は、都道府県の求めに応じ、特定水産動物育成基本方針の作成に関し必要な助言又は指導を行うことができる。」といたしましたのは、第六条では、都道府県は都道府県海区漁業調整委員会の意見を聞いて、都道府県プロパーで基本方針をきめる趣旨になっておるわけでありますが、その精神を踏まえながら、都道府県の求めに応じまして国がこの基本方針の作成に関して必要な助言、指導を行なうということは、水産業全般の振興の立場から必要であろうというふうに考えまして、この条文についても所要の修正をいたすことといたしたわけであります。
以上のとおりの趣旨でございまして、何とぞ全員の御賛同を賜わりますようお願い申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/183
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184・仮谷忠男
○仮谷委員長 修正案に対して別段御発言もないようでありますので、原案並びに修正案を一括して討論に入りたいと思いますが、別に討論の申し出もありませんので、これより採決に入ります。
まず、角屋堅次郎君外四名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/184
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185・仮谷忠男
○仮谷委員長 起立総員。よって、角屋堅次郎君外四名提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/185
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186・仮谷忠男
○仮谷委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/186
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187・仮谷忠男
○仮谷委員長 ただいま議決をいたしました三法案に対し、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党を代表して、角屋堅次郎君外四名より、それぞれ附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
この際、提出者より趣旨の説明を求めます。角屋堅次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/187
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188・角屋堅次郎
○角屋委員 私は、ただいま議題となりました漁業災害補償法の一部を改正する法律案、漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案、及び沿岸漁場整備開発法案に対する附帯決議につき、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党の五党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文はお手元に配付したとおりでありますので、その朗読は省略いたします。
まず、漁業災害補償法関係について申し上げます。
今回の法改正は、過去二カ年に及ぶ漁業共済制度検討協議会において行なわれた検討結果をまとめた答申に盛られた全項目にわたり、これを取り入れ制度改正の実現をはかるためのものでありまして、長年漁民をはじめ関係者の強い要望のものばかりであります。
本委員会の六日間にわたる質疑によりまして、本改正案に対するさらに改善を要すべき問題点が明確になってまいったのであります。
以下それぞれの項目について御説明いたします。
その一は、漁獲共済における共済限度額と養殖共済及び漁具共済における共済価額の定め方についてであります。
現行制度におきましては、共済対象漁業を契約者ごとに漁獲金額の変動の態様に応じ、安定型、一般型、変動型、上昇型に分類し、この限度額率をそれぞれ九〇%、八〇%、七〇%、九〇%と定めておりましたものを、今回の改正案におきましては、漁業種類別に一律に定める金額修正係数を乗じたものを基準漁獲金額として九〇%、八五%、八〇%、七五%、七〇%と定めることといたしたのであります。これによりまして契約者ごとに限度額率を算定するという煩瑣な従来の事務処理が相当合理化、単純化されるものとなるのでありますが、最近の物価の暴騰が漁業用燃料油をはじめ諸資材価格に重大な影響を与え漁業経費を圧迫している実情にかんがみまして、共済限度額及び共済価額もこの物価変動に応じ適正な水準に維持されるようにしなければならないと思うのであります。
その二は、今回漁獲共済のうち二十トン以上の漁船漁業を除く漁業につきましては、義務加入制を導入しているのであります。
二十トン以下の漁船漁業は、そのほとんどが漁業協同組合の所属漁業者の所有漁船であります関係上、今回は二十トン未満の漁船漁業を義務加入の対象としているのであります。しかしながら、二十トン以上の漁船漁業につきましても義務加入制を認め共済事業の発展と漁船漁業の経営の安定をはかるべきであり、また養殖業につきましても集団契約方式及び連合契約方式を採用している現状にかんがみ、義務加入制の導入を検討すべき段階にきていると思うのであります。
その三は、純共済掛け金に対する国の補助の拡充と補助限度率の撤廃であります。
純共済掛け金に対する国の補助率は、全数加入の場合でも、今回の改正で六五%から三〇%となっており、半数以上の加入においては、最高三〇%から一五%ときわめて低率の補助となっているのであります。これに加えて補助限度率で補助率をさらに低く圧縮しているのであります。補助限度率は最高六五%から四七%となっておりまして、この率をこえて加入しても、そのこえる部分は全額自己負担となるため加入金額が必然的に押えられる結果となり加入の阻害となっているのが実情であります。純掛け金率が低率であることからして補助限度率を早急に撤廃し、加入者の契約金額を引き上げるような措置を講ずべきであると思うのであります。
その四は、養殖共済においては今回赤潮による被害についても共済金を支払うという特約制度を採用しているのであります。異常な赤潮は、その発生の態様、被害の大きさ等から見て、いわゆる異常災害に属すべきものでありまして、漁業者の相互救済の範囲を越えるものであります関係上、本来の共済事業に取り入れて取り扱うべきものではないと考えられるのであります。したがいまして、その掛け金につきましても漁業者の負担に帰すべきものではない性格のものでありますので、今回の改正法案にあっても、国がその三分の二、地方公共団体がその三分の一を補助することとしているのでありますが、地方公共団体すなわち都道府県または市町村がどのように補助するか一律に定めがたい点もありまして、地方公共団体が「純掛け金に相当する部分で特約にかかわるものについて財政上の援助につとめるものとする。」と規定したのであります。したがって、全額補助するという確約がないことになっているのであります。このような異常災害に対する共済事業については純共済掛け金は加入者の負担とすべきでないと思うのであります。
その五は、漁業者を対象とする各種共済保険制度の統合についてであります。
現在、漁業者を対象として共済または保険の事業を行なう制度としては漁獲共済、養殖共済及び漁具共済を共済事業とする漁業災害補償制度、漁船保険を保険事業とする漁船損害補償制度並びに厚生共済及び火災共済を共済事業とする任意共済制度の三つの制度があり、おのおの別団体によって運用されているのであります。この三制度は、漁協段階にあっては、おおむねその契約、支払い等については窓口が一本化されているのでありますが、都道府県段階にありましては、漁業共済と任意共済は窓口が一本化されており事務の合理化がはかられているのでありますが漁業共済と漁船保険の双方には依然窓口の一本化がはかられていないのが現状であります。この二つの制度には大型漁船所有者が漁協組合員でないこと等もあり、その一体化にはなお検討すべき点はあるにいたしましても、都道府県段階の事務の一体化すなわち窓口の一本化は漁業者のために早急に行なうべきであると思われるのであります。また、中央各団体においても漁業者のためのおのおのの事業であるという同一の目的を持つ制度であることにかんがみまして、三者が統合して、総合的な運営を行なうべきであると思うのであります。
以上が漁業災害補償制度についてであります。
次に、漁業近代化資金助成法関係について申し上げます。
漁業近代化資金の利率は、年七分以内と法定されており、具体的には政令で六分と七分の二種類とされているのであります。本制度資金の利率は前述のとおりでありますが、融資機関が受ける実質的な利率すなわち基準金利は九分とされ、その差額を国及び都道府県が助成しているのであります。しかしながら、基準金利を九分とすることについては問題の存するところであります。特に漁協系統金融機関は、農協系統のそれに比較して規模等の関係からコスト高となること等特殊事情を考慮して、漁業近代化資金にかかわる国及び都道府県の利子助成額の増大をはかり、適正な水準に基準金利を設定することにつとめて漁協系統金融機関の経営の安定をはかることが不可決であると考えられるところであります。
次に、中小漁業融資保証法関係について申し上げます。
今回の改正案により、新たに融資保険及び低利融資を行なうため中央漁業信用基金を設置することとしているのでありますが、この場合、保証保険を行なう中小漁業融資保証保険特別会計は従来どおり存続されることとしているのであります。
しかしながら、同種の制度である農業信用保証保険制度の仕組み等を考慮する場合、中央基金の仕組みについて特別会計との関連を含めて検討する必要があると考える次第であります。
また、中央基金の資金の充実についてであります。
四十九年度予算におきましては、国は、七億九千七百万円を計上し中共基金へ出資するとともに、農林中央金庫、漁業信用基金協会が出資することとしているのでありますが、これらの出資の確保につとめるとともに、次年度以降においても中央基金の業務の拡充実施に必要な基金造成をはかるため、政府の出資を継続実施する必要が痛感されておるところであります。
さらに、新設される中央基金は、改正案附則第九条によって、いわゆる農林年金制度の対象から除外することとしているのでありますが、農林水産業における同種の団体の取り扱いと関連して検討する必要があることはもとよりであります。
次に、沿岸漁場整備開発法関係について申し上げます。
本法案に対しましては、すでに二点について修正議決したところでありまして、修正事項との関連等をも考慮して、次の三点につきまして附帯決議を行なおうとするものであります。
その第一は、閣議決定に基づく五年を一期とする沿岸漁場整備開発計画が、今後におけるわが国沿岸漁業に対する国民の期待とその将来の発展を約束する重要性にかんがみ、特に必要な事業量が十分確保されなければならないことは申すまでもないところであります。
その第二は、沿岸漁場整備開発事業の実施主体についてであります。当面政府は、政令で都道府県、市町村等を定めることとしているようでありますが、当然国が事業の実施主体となり、規模の大きい、また技術的に必要なもの等につきましては事業を実施して沿岸漁業者の期待にこたえるべきものであり、その実施体制、事業内容等について今後検討する必要があることであります。
さらに、本事業を積極的に推進するための指導及び財政的な援助につとめることが肝要と考えられる次第であります。
その三は、水産動植物の種苗の生産施設の整備についてであります。
本案による漁場づくりとともに人工種苗を大量的に生産する施設を整備することが、今後における沿岸漁業振興のための重要な柱であることは申すまでもないところであります。
そこですみやかに計画的に全国的な普及をはかるとともに、適正な規模を確保することはもとより、技術開発、施設の運営に対して国が積極的な指導助成につとめることが重要課題であると考えられる次第であります。
以上が、三法案に対する附帯決議の趣旨であります。
何とぞ委員各位の御賛同を賜わりますようお願いいたします。
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漁業災害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たりすみやかに左記事項の実現に努めるべきである。
記
一 漁獲共済における共済限度額並びに養殖共済及び漁具共済における共済価額については、漁業実態の推移に即応して適切な措置を講ずること。
二 義務加入制については、二十トン以上の漁船漁業及び養殖業についてもこれを適用対象に加えることについて検討すること。
三 純共済掛金に対する国の補助を更に拡充するよう努力するとともに補助限度率を撤廃すること。
四 養殖共済における赤潮等特約事業の実施に当たつては、共済加入者に一切の負担をかけないよう措置すること。
五 漁業災害補償制度、漁船損害補償制度及び任意共済制度を統合し、一元化を図ることについて検討すること。
右決議する。
…………………………………
漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たりすみやかに左記事項の実現に努めるべきである。
記
一 漁業近代化資金に係る基準金利については、金融情勢の変化に即応して適正な水準に設定するとともに、本制度資金の融通を円滑にするため、都道府県の行う利子補給に係る政府の助成等の増大を図る等その在り方を検討し、漁協系統金融機関の経営の安定を図ること。
二 中央漁業信用基金の仕組みについて、中小漁業融資保証保険特別会計との関連を含めて検討するとともに、中央基金の出資金の充実を図るため、次年度以降においても政府の出資を継続実施すること。
三 中央漁業信用基金を農林漁業団体職員共済組合法に基づく共済組合の構成団体とすることについて、農林水産業における同種の団体の取扱いと関連して検討すること。
右決議する。
…………………………………
沿岸漁場整備開発法案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たりすみやかに左記事項の実現に努めるべきである。
記
一 沿岸漁場整備開発計画の策定に当たつては、本計画が我が国沿岸漁業の振興に果たすべき役割りの重要性にかんがみ、本法の目的達成に必要な事業量の確保等に万遺憾なきを期すること。
二 沿岸漁場の整備及び開発事業を実施する者については、都道府県、市町村等に限定することなく、当然国が実施する途を開くべきであり、その実施体制、事業内容等について検討を進めるとともに、本事業の積極的な推進を図るため指導助成に努めること。
三 水産動植物の種苗の生産施設の整備については、計画的に全国的な普及を図るとともに、規模の拡充、技術開発、運営等に対する指導助成に努めること。
右決議する。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/188
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189・仮谷忠男
○仮谷委員長 以上で趣旨説明は終わりました。
おはかりいたします。
各案に対し、動議のごとくそれぞれの附帯決議を付するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/189
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190・仮谷忠男
○仮谷委員長 起立総員。よって一各案に対してそれぞれの附帯決議を付することに決しました。
この際、ただいまのそれぞれの附帯決議について政府の所信を求めます。倉石農林大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/190
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191・倉石忠雄
○倉石国務大臣 ただいまの決議につきましては、御趣旨を尊重して、今後検討してまいりたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/191
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192・仮谷忠男
○仮谷委員長 ただいま議決いたしました各案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/192
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193・仮谷忠男
○仮谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/193
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194・仮谷忠男
○仮谷委員長 農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。
この際、角屋堅次郎君外三名から自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党を代表して、水産業の振興に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。
この際、提出者から趣旨の説明を求めます。角屋堅次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/194
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195・角屋堅次郎
○角屋委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党の四党を代表して、水産業の振興に関する件に関する決議案の趣旨を御説明申し上げます。
案文は委員各位のお手元に配付してあるとおりであります。
わが国の漁業の総生産量は、昭和三十五年から四十年までの間は年間六百万トン台であったものが、四十一年には七百万トン台、四十三年には八百万トン台、四十五年には九百万トン台、四十七年には一千万トン台となり、近年においては二年ごとに百万トンずつ増大するという著しい伸展を続けてきているところであります。
このように、わが国漁業は、年間一千万トンの水産動植物、特に動物性たん白質の過半を国民に供給する重要な食料産業として貢献しているところであります。
しかるに、最近、わが国漁業をめぐる環境は、次のとおり急激に変化しつつあります。
その一つは、国連における第三次海洋法会議の行くえであります。
来たる六月二十日からベネズエラの首都カラカスで、新しい海の秩序の確立を目ざして会議が開催される次第でありますが、これよりさき、昭和四十六年から昭和四十八年までの間、六回にわたって行なわれた準備会議の結果は、二百海里に及ぶ水域について排他的経済水域または漁業水域の設定の主張を南米諸国、アジア、アフリカ等の発展途上国が行ない、会議の大勢を占めており、また、サケ・マス等の遡河性魚種については、アメリカ、カナダ、ソ連等から産卵河川所有国が独占的または優先的に漁獲を行ない、あるいは公海漁業は禁止すべきであるとの主張が行なわれる等、わが国漁業にとっては非常にきびしいものとなっているのであります。
その二は、漁業用燃油及び資材価格の著しい高騰の問題であります。
石油製品の価格引き上げに伴い、漁業用A重油及び漁網綱の価格は、四十七年ごろに比較して約三倍に上昇し、また、年間約七百万キロリットルを必要とする燃料油の確保いかんは、漁業経営の死活を制する重大問題となっているところであります。
その三は、沿岸漁場における公害問題であります。
わが国経済の進展に伴い、人口の都市集中、工業化等による自然環境の悪化は、沿岸漁場環境を急速に悪化させており、年々その範囲を拡大し、その態様も複雑多岐にわたってきているところであります。
以上のとおり、わが国漁業をめぐる環境は内外ともに急激に変化しつつあり、わが国漁業はかつて経験したことのない危機に直面しているところであります。
そこで、わが国水産業が国民経済の発展と国民生活の安定に果たしている役割りの重要性と当面するきびしい環境の変化に対処して、これら諸種の困難な事態を克服して、将来にわたってわが国水産業の発展と振興を期するため、遠洋・沖合い漁業対策、沿岸漁業対策、漁業用燃油等の対策、水産金融対策、その他について十四項目にわたって決議を行ない、その実現をはかるべきことを強く政府に要請するため本決議案を提案いたす次第であります。
何とぞ委員各位の御賛同を賜わりますようお願い申し上げます。
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水産業の振興に関する件(案)
我が国の漁業は、沿岸・沖合・遠洋漁業等を含め年間一千万トンの生産量を確保し、国民食料特に動物性たん白質を供給する重要な食料産業であり、その中で沿岸漁業は、大多数の漁業者の生計を維持するとともに、国民の好みに合つた魚介類等の生産の担い手として重要な役割を果たしている。
しかるに、最近、これら漁業をめぐる環境は、国連における第三次海洋法会議を控えての国際的動向、石油製品の価格上昇に伴う漁業用燃油及び資材価格の著しい高騰、公害問題の顕在等内外ともに急激に変化しつつあり、わが国漁業はかつて経験したことのない危機に直面しているところである。
よつて、政府は、漁業をはじめ水産業が国民経済の発展と国民生活の安定等に果たしている役割を重視し、かつ、当面するきびしい環境の変化に対処し、これら諸々の困難な事態を克服して、将来にわたつてわが国水産業の発展とその振興を期するため、左記事項の実現を図るべきである。
記
(遠洋・沖合漁業対策)
一 第三次国連海洋法会議に対しては、来る六月二十日会議開催に至るまでの間、巾広い強力な外交交渉を展開するとともに、関係漁業諸団体等の理解と協力をえて、引続き国民が納得できる新しい海の秩序を確立するため全力を尽すこと。
二 関係国との協調に努めてわが国漁業の実績と海外漁場の確保を図るため、海外漁業協力財団等を活用し、積極的に海外漁業協力事業を推進すること。
三 深海漁場の開発、南氷洋の沖あみの利用等未利用あるいは低利用海洋水産資源の開発を大規模に実施すること。
(沿岸漁業対策)
一 沿岸漁場の生産力の増進を図るため、国の積極的な援助の下に総合的かつ計画的な生産基盤の整備開発を推進すること。
二 重要な水産動植物の種苗を人工的に大量生産するいわゆる栽培漁業を全国的に推進し、採る漁業から作る漁業への転換を促進するとともに、技術者の養成に努めること。
三 公害等により生産力が低下している漁場の復旧を図るため、しゆんせつ、耕うん、浮遊廃棄物の除去等漁場環境維持保全対策事業を強力に実施するための方策を樹立すること。
四 沿岸漁業の振興対策と国民のリクリエーシヨンとしての健全な遊魚の育成問題との調整を図るため、所要の施策を講ずること。
五 沿岸漁業をめぐる厳しい諸情勢にかんがみ、この際、長期的かつ総合的な観点に立つて、沿岸漁業等振興法、漁業法等現行の沿岸漁業関係諸法令全般にわたつて速やかに検討を行うこと。
(漁業用燃油等の対策)
一 国民生活安定緊急措置法の運用等によつて、漁業用燃油及び漁網綱の価格の安定、必要量の確保等早期にこれが対策の徹底を期すること。
二 当面の緊急措置として、国の助成による低利融資の措置を講じ、また、既融資については融資条件の緩和を図る等金融対策を積極的に講ずること。
(水産金融対策)
水産業の国際的、国内的動向に即応して、その経営の安定的発展を図るため、農林漁業金融公庫融資等政策的金融の融資条件を改善するとともに、融資枠の拡大等を図ること。
(その他)
一 水産教育を充実し、漁業労働環境及び労働条件の改善を推進するとともに、漁業者年金制度の創設についての検討を含め、漁業者の社会保障制度の整備充実を図り、後継者の育成に努めること。
二 水産物の貯蔵施設の設備充実、流通の近代化、加工対策の拡充等により水産物価格の安定を図ること。
三 当面、まぐろ等の輸入について調整措置を講ずる等輸入水産物の取扱いについて適切な対策を樹立すること。
右決議する。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/195
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196・仮谷忠男
○仮谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
別に発言もないようでございますので、直ちに採決いたします。
角屋堅次郎君外三名提出の水産業の振興に関する件の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/196
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197・仮谷忠男
○仮谷委員長 起立総員。よって、本件は委員会の決議とすることに決しました。
この際、本決議に対し、政府より所信を求めます。倉石農林大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/197
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198・倉石忠雄
○倉石国務大臣 ただいまの御決議の趣旨につきましては、御趣旨を尊重いたしまして、今後検討してまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/198
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199・仮谷忠男
○仮谷委員長 ただいまの決議について、議長に対する報告及び関係当局への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/199
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200・仮谷忠男
○仮谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう取り計らいます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/200
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201・仮谷忠男
○仮谷委員長 保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案、農業者年金基金法の一部を改正する法律案、及び農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案の各案を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。倉石農林大臣。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/201
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202・倉石忠雄
○倉石国務大臣 保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
現行保安林整備臨時措置法は、昭和二十八年の大災害を契機として山地災害の防止を主目的に、昭和二十九年に制定されたものでありますが、その後、国民経済の発展に伴う水需要の増大に対処して、水源涵養保安林の配備の促進を主たる目的としてその効力が延長され、今日に至っております。この間、土砂の流出防備及び崩壊防備、水源の涵養等を目的とする保安林の配備は、ほぼ当初の目標を達成する等相当の成果をおさめたのであります。
しかしながら、最近における都市化の進展に伴い森林の保健休養機能に対する国民的要請が急速に高まっているほか、国土の開発の進展等に伴って一部地域では集中豪雨等による山地災害の発生や水不足の事態が起きるなど、保安林をめぐる情勢はかなり変化しており、これに対応して適切な保安林の配備を進めるとともに、保安林の機能を十分発揮させるため適正な施業を行なうことが緊要となっております。
このため、保安林の量的質的な整備を計画的に進めるとともに、保安林の整備の一環として、国による保安林の買い入れ措置を継続して実施する必要があり、保安林整備臨時措置法の有効期間を十年延長することとしたのであります。
以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。
次に農業者年金基金法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
農業者年金制度は、御承知のとおり、農業者の経営移譲及び老齢について必要な年金の給付等を行なうことによって、農業経営の近代化及び農地保有の合理化に寄与するとともに、農業者の老後の生活の安定及び福祉の向上に資することを目的として、昭和四十六年一月に発足したものであります。
このように発足以来すでに三年余を経過し、昭和五十一年一月からは経営移譲年金の給付が開始されようとしているところでありますが、昨年厚生年金保険をはじめとする公的年金各制度の改善が行なわれたこともあり、本制度につきましても、年金給付の水準の引き上げ等が必要となっているほか、本制度の実施過程において改善を要すべき問題も出てまいっておりますので、これらを踏まえて本制度の改正を行なうこととし、この法律案を提出いたしまた次第であります。
次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
まず第一は、年金額の引き上げであります。経営移譲年金及び農業者老齢年金の年金額につきましては、農業所得の推移と公的年金各制度、特に厚生年金保険における給付水準の改善の状況を総合的に勘案して、現行の二・二倍に引き上げることとし、これにより農業者年金制度がそのねらいとする政策的効果をあげ得るようにいたしております。
第二に、年金給付の額の実質価値の維持をはかるため、厚生年金保険や国民年金の場合と同様に、物価の変動に応ずる自動的な改定措置を新たに導入することといたしております。
第三に、農業者が出かせぎ等に出て被用者年金に加入いたしますと農業者年金を脱退することとなり、このため、農業者年金の年金給付を受けられない者が出てまいりますので、これらの者について、年金受給ができるようにする等所要の改善措置を講ずることといたしております。
第四は、昭和五十年における保険料の額でありまして、年金額の引き上げに伴い保険料も相当の引き上げを必要とするのでありますが、農家の負担能力等を勘案いたしまして、昭和五十年は、年金給付の水準と同様に二・二倍に引き上げて、一月につき千六百五十円といたしております。
第五は、国庫助成の強化でありまして、被保険者期間が二十年未満で支給される経過的な経営移譲年金のうち加算部分の給付費用につきまして、新たにその四分の一を国庫負担することといたしております。これにより、加算部分につきましては、従来の国庫負担とあわせて、その二分の一を国庫が負担することとなります。
なお、保険料の納付時に、国庫が、農業者年金基金に対し、納付保険料の額の七分の三に相当する額を当分の間補助することといたしております。
以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
次に、農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
農林漁業団体職員共済組合制度は、農林漁業団体職員の福利厚生の向上をはかり、農林漁業団体の事業の円滑な運営に資するための制度として実施され、その給付内容も逐年改善を見てまいりました。
今回の改正は、その給付に関しまして、国家公務員共済組合制度その他の共済組合制度の改善に準じて、主として次の五点につき改善をはかるため、これらに関係する農林漁業団体職員共済組合法等について所要の改正を行なおうとするものであります。
改正の第一点は、掛け金及び給付の額の算定の基礎となる標準給与の月額の下限及び上限の引き上げであります。
改正の第二点は、平均標準給与の算定方法の改善であります。これは、給付の額の算定の基礎となる平均標準給与につきまして、退職等の給付事由発生時前一年間の標準給与を基礎として算定しようとするものであります。
改正の第三点は、低額の年金についての改善であります。これは、退職年金等の算定にあたっては、従来の算定方式に加えて、通算退職の額の算定方式に準ずる新たな算定方式を導入しようとするものであります。
改定の第四点は、既裁定年金の額の引き上げであります。これは、既裁定年金の額の算定の基礎となった平均標準給与を、二三・八%を限度として引き上げることにより、年金額の引き上げを行ないますとともに、通算退職金についても、退職年金に準じてその額を引き上げようとするものであります。
改正の第五点は、いわゆる絶対保障額の引き上げであります。これは、退職年金、障害年金及び遺族年金について、その最低保障額を引き上げようとするものであります。
その他、遺族年金についての扶養加算制度の創設、老齢者等の退職年金等の年金額の計算の特例等の改善措置を講じようとするものであります。
以上がこの法律案の提案理由及び主要な内容であります。
何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決いただきますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/202
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203・仮谷忠男
○仮谷委員長 以上で各案の趣旨説明は終わりました。
次に、各案について順次補足説明を聴取いたします。福田林野庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/203
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204・福田省一
○福田(省)政府委員 保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして提案理由を補足して御説明申し上げます。
本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。
現行保安林整備臨時措置法が昭和二十九年に制定されて以来、保安林の整備は、十年ごとの二期にわたり保安林整備計画に基づき実施されてきたのであります。
この間、保安林の面積は、昭和二十八年度末の二百五十二万ヘクタールから、昭和四十七年度末の六百九十四万ヘクタールヘと大幅に拡充され、また、保安林整備計画は、第一期、第二期ともに目標を上回った実績をあげる等相当の成果をあげていると考えております。
しかしながら、最近における保安林をめぐる情勢の変化は著しいものがあるのであります。
その第一は、森林の環境保全機能等に対する国民的要請の高まりであります。近年の都市化の進展の中で、緑の確保が強く叫ばれ、森林の有する生活環境の保全、レクリエーションの場の提供等の機能に対する国民の期待は非常に強いものがあり、これに対応して都市周辺部を中心として保健保安林等の積極的な配備が必要となっております。
第二は、水需給の逼迫の問題であります。すなわち、過去二十年にわたる水源涵養保安林の配備は、全体としての水需給の緩和に大きく寄与したものと考えますが、今後の水需要の動向を考えますと、人口、産業の集中化等に伴い、なお地域によっては水不足を来たすことが見込まれ、これに緊急に対処する必要があります。
第三に、災害防止の問題があります最近の災害傾向として、集中豪雨等による被害が多く見られますが、最近の国土開発の進展等に伴い、今後この種の災害は一そう広範に及び、また深刻化することが懸念されるのであります。
以上申し上げました量の面での保安林整備の要請に加え、保安林の質的向上もまた緊急を要するのであります。
すなわち、保安林につきましては、その指定施業要件を定めて施業の合理化をはかることとしておりますが、最近における国土開発の進展等に伴い、保安林の保全対象が大きく変化していること、森林の有する環境保全機能に対する国民の要請が強まっていること等を考慮に入れ、この指定施業要件の適正化をはかり、緊急に保安林の内容を向上させる必要があるのであります。
また、保安林整備の一環として実施する国による保安林の買い入れにつきましては、保安林整備計画の一部である買い入れ計画を再検討した上で、国土保全と国民生活の安定の要請にこたえるべく、さらにこれを継続してまいりたい考えでおります。
これらの目的を達成するため、本年五月一日々もって失効することとなっております現行法律の有効期間を、さらに十年廷長ずるのが、この法律案の内容であります。
以上をもちまして、保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/204
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205・仮谷忠男
○仮谷委員長 以上で保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案の補足説明は終わりました。
質疑は、後日に譲ることといたします。
次回は、明四日木曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後五時二十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205007X02819740403/205
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