1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年三月十三日(水曜日)
午後六時十八分開議
出席委員
委員長 稻葉 修君
理事 坂田 道太君 理事 塩崎 潤君
理事 西岡 武夫君 理事 松永 光君
理事 森 喜朗君 理事 木島喜兵衞君
理事 小林 信一君 理事 山原健二郎君
有田 喜一君 上田 茂行君
大石 千八君 河野 洋平君
床次 徳二君 楢橋 進君
羽生田 進君 深谷 隆司君
三塚 博君 嶋崎 譲君
長谷川正三君 栗田 翠君
有島 重武君 高橋 繁君
安里積千代君
出席国務大臣
文 部 大 臣 奥野 誠亮君
出席政府委員
文部大臣官房長 井内慶次郎君
文部省大学学術
局長 木田 宏君
委員外の出席者
文部省大学学術
局大学課長 大崎 仁君
文教委員会調査
室長 石田 幸男君
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委員の異動
三月十一日
辞任 補欠選任
受田 新吉君 安里積千代君
同月十三日
辞任 補欠選任
山崎 拓君 大石 千八君
同日
辞任 補欠選任
大石 千八君 山崎 拓君
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本日の会議に付した案件
国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第二三号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/0
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001・稻葉修
○稻葉委員長 これより会議を開きます。
国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。嶋崎譲君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/1
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002・嶋崎譲
○嶋崎委員 きょうは国立学校設置法に関連をして三つの点について質疑をさしていただきたいと思います。
最初に、私学助成問題ですけれども、これは見解だけをお聞きしたいと思います。二番目は、国立大学設置法改正に関連しまして、北海道大学、広島大学の大学改革の問題と同時に三つの医科大学のあり方の問題、それらに関連して、筑波大学の今日のあり方とつながりを持ち関係があるように思いますので、その後の筑波と今度の国立大学設置法の改正とのかかわり合いについて、これが第三番目の柱でございます。
それで、最初に私学助成問題についての見解をお聞きしたいのですが、三月五日の参議院の内閣委員会で大臣は、私学の最近の水増し入学の件について問題にされた際に、四十九年度から私立学校法などの規定を発動させて規制を加える措置をとりたい、こういう趣旨の御発言をなさったそうでありますが、その三月五日の参議院内閣委員会での発言の趣旨をもう一度確認したい。と同時に、三月七日の衆議院予算委員会の分科会で国の経常費助成のあり方について、私学規制の方向を強化しようというような発言があったやに伺っておりますが、三月五日と三月七日のそれぞれの委員会での大臣の発言の趣旨をあらためてお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/2
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003・奥野誠亮
○奥野国務大臣 国会が始まりましてから、私立大学のあり方につきまして多くの方々からかなり手きびしい御批判を受けてまいりました。同時にまた、政府としてどう対処するのかということについても多くの御議論を伺ってまいったわけでございます。そういう過程で、昭和四十五年でございますか、私学振興財団を設立する、同時に私学の経常費助成を始める、そういう際に、私立学校法を改正して、五十九条であったかと思いますが数項を加えられまして、若干の監督的な規定が設けられたわけでございます。現状では、認可する場合と解散を命ずる場合と、この二つの権限しかない、それを政府が、補助を受ける学校につきましては、規定に違ったことをした場合には変更を私立学校審議会にはかって命ずることができるという規定ができたわけでございます。これが、私学助成が始まったばかりだし、やはり若干の推移を見た上でという経過もあったようでございます。そうしますと、経常費助成、五年計画で始められて、四十九年度で一応その五年目に達した。同時にまた政府にはそれだけの責任が負わされている。負わされているにもかかわらずそれを発動しない、政令を公布しないということはいかがなものだろうかというようなことをだんだん考えてまいりまして、とにかくあの監督規定を発動させていただくようにして、そして、いろいろな問題を提起されているそれにどう対処していくかということを考えていきたい、考える根拠を一つ持ちたいな、こんなところから、四十九年度からあの規定を動かすことにしたらいかがなものだろうと考えておりますと、こう申し上げたわけでございます。また、そういうことで考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/3
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004・嶋崎譲
○嶋崎委員 三月七日の衆議院予算委員会の分科会で助成の配分の問題について発言なすった趣旨はどんなことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/4
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005・奥野誠亮
○奥野国務大臣 ちょっと正確に覚えておりませんが、傾斜配分とかいう表現を使ったときのことでしょうか。(嶋崎委員「そうです」と呼ぶ)それは、四十九年度におきましても、設立後間もない大学に対しましては経常費助成をしないことにしているわけでございます。しかし、私立の歯学、医学はばく大な金がかかるわけでございますので、七年目から助成するということじゃなしに、やはり初年度から助成をさしていただきたい、こういう方針をとらしていただいておるわけでございます。そういうことで今後私学助成をもっと充実させたいと考えておりますので、こうなりますと、やはり必要度の高いところへよけい配分するというくふうはしなければならないのじゃないだろうか、いままでのように形式的、画一的な配分では許されなくなるのじゃないかな、こういう考え方に立って傾斜配分を考えなければいけないのじゃないかと思っているのですと、こう申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/5
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006・嶋崎譲
○嶋崎委員 昭和四十五年に、私立学校法並びに日本私学振興財団法の改正にあたりまして、政令で定める日まではこの監督権の適用はしないということの申し合わせをしておりますね。
ここにいらっしゃる河野洋平さんが、参議院に行かれまして、当時の衆議院における修正案の説明をされておられます。その内容によりますと、全部を読みませんが、おもだったところだけを指摘しますと、この日本私学振興財団法の「附則第十四条に次の一項を加える。」として、「改正後の私立学校法第五十九条第十項及び第十一項の規定は、政令で定める日までの間は、適用しない。」このことに関連して、その修正の趣旨を次のように説明されているのです。
前段は省きますが、「しかしながら、衆議院文教委員会における日本私学振興財団法案の審査の過程において、私立学校の自主性を尊重し、これをみだりにそこなわないよう、所轄庁の権限行使については、十分慎重な態度で臨むべきだとの意見があり、私立学校関係団体からはこの規定を削除してほしい旨の要望がありました。以上の経緯から、私立学校の今後の状況を見守るため、本法案附則第十三条によって新たに設けられる私立学校法第五十九条(助成)第十項及び第十一項の学校法人に対する所轄庁の権限に関する規定は、これを政令で定める日までの間は適用しないこととした次第であります。」こういう修正案の趣旨説明が行なわれております。
いまのこの前段の部分ですが、文教委員会の当時の議事録を読んでみますと、結局私立大学の大学の自主性というものをそこなわない、ことばをかえていけば、大学自治、学問の自由、そういう憲法や何かで要請されている大学のあり方というものをそこなわない限りにおいて文部省の権限行使を考えなければならないということが議論されているわけであります。
ところが、いまの議事録がまだ手に入らないものですから、内閣委員会や予算分科会での大臣の発言がまだ正確につかめないのですけれども、その大臣の発言が大体すべての新聞、毎日、朝日、おもだった新聞は全部、かつて四十五年の四月にこの修正をするにあたった趣旨にかんがみて、今日の段階で水増しをやって入学させている大学を規制していくという形で、監督官庁の文部省が権限を発動するというようなことが積極的にうたわれ、同時にその具体的な措置が文部省ですでに進められつつあるというふうなことが書かれてありますが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/6
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007・奥野誠亮
○奥野国務大臣 いま水増し入学の例をおあげになったわけでございます。認可を受けたときの定員と現実に入学を認めている員数との間に大きな開きがある、学校がそういう姿であっていいものだろうかという疑問を持っておるわけでございます。そうしますと、ある程度入学定員も改める、しゃくし定木なことを言わないで、大学の現実にある程度歩み寄った考え方もできるのじゃないだろうか。同時にまた、大学も無責任な教育をやる意思もないのでしょうから、もし過大であれば入学人員を減さすということもあり得るだろう。相互に実情に即した考え方で、何か法秩序を頭から無視してかかったような現実、これは避けなければいけないのじゃないかなという判断を一ついたしております。
同時にまた、私学の自主性、これは守っていかなければならないと私も考えておるわけでございます。私立学校法の政府の監督規定を動かす場合には、私立学校審議会の議を経るようになっていると思います。私立学校審議会は、たしか四分の三以上の方々が私立学校の関係者で構成されるようにしているわけでございます。そうしますと、そう御心配になるようなことはないのじゃないだろうか、こうも考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、国会で幾多の御論議をいただいておるわけでございますので、何かやはり政府も私学の自主性をそこなわないで責任を果たせる道を考えていかなければならないのじゃないだろうか。そうしますと、あの規定を四十九年度から発動させることが一つの具体的な方法ではなかろうかな、かように考えておるわけでございまして、またこのことを通じましていろいろ是非の御批判をいただいてけっこうじゃないだろうか。まだ四十九年度になっておりませんので、その上に立って最終的な決断をしたい、私としてはやはり発動させるべきではなかろうかな、こういう気持ちを抱いてきておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/7
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008・嶋崎譲
○嶋崎委員 きょうはこれで議論しようとは思いませんので、文部省が監督の権限を発動するということを積極的に考えていらっしゃるということをまずここで確認さしていただけたと思います。
それと、この私立学校振興方策について、大臣の諮問機関であるように新聞には書いてありますが、私立学校振興方策懇談会というものがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/8
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009・奥野誠亮
○奥野国務大臣 私立学校振興方策懇談会、ございます。もう一歩前進した私学助成の道を見出していきたいというようなことなどがこの懇談会を設置したゆえんでございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/9
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010・嶋崎譲
○嶋崎委員 その私立学校振興方策懇談会の構成メンバー、それについての資料をいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/10
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011・木田宏
○木田政府委員 できるだけ早い機会にお届けするようにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/11
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012・嶋崎譲
○嶋崎委員 今日の私学の現状というのは、ちょうちょうするまでもなく、たいへんな学生をかかえて、日本の大学教育の圧倒的な部分をやっているというのが実情でございます。そういうわけで今後わが文教施策の中で国立学校というものをどう考えるのか、私立大学をどう考えるか。明治以来の日本の大学の伝統を考えてみても、昔の、明治の場合には、日本の将来有為な指導者を養成するというので国立大学が重要な意味を持ったと思いますけれども、今日ぐらいに大学というものが進学率が高くなって、大衆性を持ってくるようになったら、伝統的な国立大学のあり方、それから今日の私立大学のあり方はどうあるべきかという根本的な議論が実は必要になっているのじゃないかと思います。ここの委員会はなかなかそういう落ちついた議論のできぬ場所でありまして、そういうことを実は議論したいのですけれども、国費でもって援助するのだから、私学に対して文部省が一定の監督権を発動していくというような運用にしたいというのが一方におありと同時に、他方で、私学助成というものについての基本的な考え方についての大臣の意見をお伺いしてあとに進みたいと思いますので、基本的な考え方を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/12
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013・奥野誠亮
○奥野国務大臣 私は、大学に要する経費は、その大学の果たしている社会的な役割り、それに応じて国民全体がその経費を分担すべきだろう、残りのものは設置者が負担すべきだ、かように考えておるわけでございます。国立大学の場合には、設置者が負担すべきものも学生に負担させないで、大学自身が、結局国庫からの支出で負担をしているという面が相当ある、こう考えておるわけでございます。私立大学の場合には、社会に果たしている役割り、そこから国民全体で出し合っていくのだ、税負担でまかなわれるのだ、残りは設置者の負担だ、その設置者の負担があるいは寄付金、基金からあがる収入というようなものでまかなわれる部分もございましょうし、授業料でまかなわれる部分もある、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/13
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014・嶋崎譲
○嶋崎委員 もうちょっと突っ込んで議論したいのですけれども、もう時間がありませんから、これはそのぐらいにしておきます。
さて、国立大学設置法に関連して、最初に北海道大学の法学部と、それから広島大学の総合科学部、どうやら教養部の改革ですね、それの要点を簡潔に御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/14
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015・木田宏
○木田政府委員 広島大学の総合科学部の構想は、従来の固定的な学科制という考え方をとらないで、教育上の配慮に基づきます四つのコースを、地域文化、社会文化、情報行動科学、環境科学というふうに構成をいたしまして、学生の志望に応じたカリキュラムの編成を行なう。そうして、私どもいわゆる大講座制という表現を最近使っておるわけでございますが、大きい講座制によります弾力的な研究体制のもとで、学際領域の研究が行なえるようにしたいという考え方をしておるわけでございます。またこの総合科学部が、他の学部との協力によりまして、広島大学全体の学生に対する幅の広い一般教育の実施体制を整えることにいたしてございますが、同時に全学部が最初からそれぞれその学生に対する教育の責任体制を明確にしていく、教養部だけに最初の一年あるいは二年をまかせてしまうということにしない、こういうこともあわせて進めたいということに主眼があるわけでございます。
それから北海道大学の法学部におきます内部の再組織でございますが、これは法学におきます研究の組織を大きな四つのくくりにしたい。法哲学、法史学、法社会学といったような基本の研究の組織と、それから学生の教育に対するシステムを、それとは別に、民事法でありますとか、刑事法でありますとか、あるいは政治学の領域であるとか、七つの大きな教育の領域を考えておるわけでございますが、教育のシステムを別々に構成をいたしまして、必要な教官あるいは関係助手等も含めた教官の配置を、研究の体制、教育の体制別に構成をしてみたい、こういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/15
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016・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうしますと、こういうふうに理解していいのですね。
広島大学の総合科学部の場合は、教養部が四年制になって、そうして総合科学部というものができて、そうして四つの大講座制を中心にした四年制コースかできる。いわばアンダーグラデュエートみたいなものをつくるという考え方ですね。そうして他方で今度は、各学部の学生は、いままで教養部に二年間いたわけですけれども、最初入ってくるときから今度は政経だとかそれから理学部だとかいう志望で入ってくるわけですね。そうして四年の間に教養の関連科目をとれる考え方にして、そうして学部の専門的な教育とそれから教養課程的な教育を同時にやっていけるようなコースをつくりたい、こういう考え方として理解してよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/16
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017・木田宏
○木田政府委員 基本的にそのお考えでよろしいかと思います。
ただ、ことばづかいで恐縮でございますが、最初の、大きい四つの講座というふうにおっしゃいましたのですけれども、講座ではございませんで、四つのコースとして考えたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/17
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018・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうしますと、今度は北海道大学へいきますけれども、私の理解では、北海道大学の場合には、いま言った大講座制みたいなものですね。それで大学院を中心にした研究のコース、研究者集団と、それから教育者の集団というものを置いて、そうして研究と教育を——私はいつか筑波で局長と議論したときにも申し上げましたように、教師が、ライフサイクルを考えまして、ある一定の期間は研究者として専念をし、ある期間は今度は教育者として専念していくということが交互にできるようにしていくために、研究と教育を分離していくという考え方をとっているというふうに理解すればよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/18
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019・木田宏
○木田政府委員 概略のところそのように考えていただいてよろしいかと思いますが、ただ、いま御説明の中で、ある期間というふうにおっしゃったのでございますが、たとえば北大の法学部が四つの新研究部門を構成いたします場合に、この研究部門に属する人は全然教育の講義に関与しないということではなくて、研究の体制をとるときの新しい部門の構成と、それから学生に対する教育のチームを組むときに、六つの新しい大きい講座を教育では——失礼しました。先ほど七つと申し上げましたが、六つでございます。六つの新しい講座をかまえるということでございますが、ある期間完全に研究だけということではなくて、そういう方もありますけれども、研究の仕組みと教育の仕組みをそれぞれ別々に考えてみた、こういうふうに御理解を賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/19
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020・嶋崎譲
○嶋崎委員 法学部の教授会が大学内部で発表したものですね、それには私の言ったように書いてあるのです。ですから、これからかなり柔軟な考え方で運用されるということだと思うのですが、基本的な考え方は大体研究と教育の分離ということだと思うのです。そうなりますと、ただ申し上げたいのは、この広大の場合でも北海道大学の場合でも、これは筑波大学の管理運営等々とは違いますから、いわゆる筑波方式ではございませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/20
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021・木田宏
○木田政府委員 大学におきます教育と研究の仕組みをそれぞれに適したように考えてみたいという意味では筑波大学で考えておりますことと同じことだというふうに思います。もちろん、どこまで同じかということになりますれば、筑波大学は全学について考えており、北大の場合には法学部の中の問題としてその考え方を取り入れておるということでございますから、そのことから来る現実の違いというのは幾つかございます。しかし、ものの考え方というのは、教育と研究というものをどこまでも一つのユニットで動かすということではなくて、教育に適したユニット、研究に適したユニットというものを考えてみようという考え方がそこにある、そこからいろいろと出てきている考え方であるという意味では通ずるものがある、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/21
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022・嶋崎譲
○嶋崎委員 では、そういう趣旨で、この大学の創設の来年度の予算をきめる際に、各新聞が北海道大学やそれから広島大学の教養部が総合科学部に変わるというのは筑波大学の方式の導入だという趣旨で理解ができるように発表されたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/22
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023・木田宏
○木田政府委員 私どもが新聞関係者に説明をいたしましたときには、そのそれぞれの大学の考えておるところを御説明をしたわけでございます。私がいまお答えをしたような趣旨で御説明をしたかと考えております。筑波方式の導入というヘディングがつきましたかどうかちょっと記憶しておりませんけれども、これは私どもがそういう意味で発表したわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/23
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024・嶋崎譲
○嶋崎委員 去年の九月三日前後の新聞は、どの新聞も全部、広島大学と北海道大学の法学部の大学改革は筑波方式の導入だという形で報道されております。当時こっちの委員会はなかったものですから質問できなかったのですけれども、つまり各社がそう受け取るような趣旨の御発言だったから、いま局長がおっしゃったようなことに近い御発言だったから筑波方式ということばが出たのじゃないかというふうに思うのですが、そういうふうに了解しておいていいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/24
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025・木田宏
○木田政府委員 教育と研究の考え方につきまして似たような趣旨の改革案である、こういう説明から御理解を賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/25
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026・嶋崎譲
○嶋崎委員 筑波大学は筑波大学でここでも長い議論をしましたけれども、筑波大学の特徴というのは、研究と教育を分離させるということに関連して、そういう時代の要請に研究や教育の体制は変わらなければならないということは、筑波大学に限らず、全国のすべての大学の研究者集団が今日問題にしていることだと思います。ですからそれが筑波大学の発想の類似点だというふうに言えないというふうに私は判断するのです。と申しますのは、筑波大学の場合には、国立大学設置法を改正して、そしてその法改正の中で教授会にかわる別の組織というものを置くことができるというふうに法律できめて、その上で教授会にかわるたとえば筑波の場合人事の問題で人事委員会とか、それから参与会という筑波大学特有の大学の組織というものを法律で規定した。そして他方では、学校教育法や教育公務員特例法等々の改正を通じて大学の管理のあり方というものを変えていったところに特徴があると思います。ですから筑波大学の方式の特徴というのは三点ありまして、その一つは、研究と教育の分離という時代の要請する大学のあり方を受けながら、大学管理のあり方がいままでの既存の大学の大学自治のあり方と違うという点に特徴があるという点が第一点だと思います。第二番目は、学外者、ないしは大学が開かれた大学としてオープンに大学の問題を外の良識ある人たちの意見もいれながら考えていくという意味で副学長、参与会という制度を設けた、これが第二番目の特徴ではないかと思います。第三番目には、大学の管理機構というものを考えたときに、いままでの既存の大学自治が学部セクトや講座制セクトがあるために大学の管理運営がうまくいかないから、そこでもっと効率的な、ないしはトップマネージメントを使った大学の管理運営の合理性ないしは効率というものを考えてコミッティーシステムというものを採用しているところに特徴があると思います。いろんな委員会の制度でもって処理している。したがって、これは評議会、教授会という既存の大学のあり方とは違った新しい側面というものを機能的に備えているという点だと私は思うのです。この点は議論しましたからいまさら繰り返しませんが、北海道大学の場合でも広島大学の場合でも、既存の教授会は教授会として存在していて、そして人事権は依然として教授会を中心にして考えられ、そしてまた同時に学部の予算なんかにしましても教授会で審議していくわけでありますから、既存の教授会、評議会を中心にした大学そのもののいままでの管理機関のあり方について何ら変わることがないわけであります。ですから、研究と教育の側面で大学の内部で機能的な分化をやったからといって、それを筑波方式というふうにすりかえていくことは、全国のこれからの大学で大学が自主的に改革をやっていくものを全部筑波方式筑波方式という名で一般化して、そしてその筑波の持っている特殊性——いいか悪いかは今後歴史的に見なければなりません。私が賛成ではないことはるる議論しました。ですから、その筑波大学というものの特徴を今後押えていくときには、その一般性というものと特殊性というものを区別して整理しておかなければならぬというふうに私は考えるわけです。ですから、北海道大学と広島大学を筑波方式の導入というふうに理解する理解のしかたは、おそらく広島大学も法学部も、大学のスタッフに電話を入れて連絡しましたところ、筑波方式ではありませんということを教授会で議論しております。ですから、そういう意味で、研究と教育を分離するというような機能的な一つの側面ですね、その側面だけでこれを筑波方式というふうに規定していくいき方は、やはり文部省の側が各大学に対して、筑波方式というものを導入したいということを意思表示しているというふうに私は考えますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/26
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027・木田宏
○木田政府委員 研究と教育というものを機能的に考えてみようということは、今日の大学の基本的に一番大きな課題だと思います。それが筑波大学の場合には全学的な規模において行なわれ、そのことのために筑波の新しい管理運営の組織というものも構想された。いま、広島大学の総合科学部、あるいは北大の法学部のあり方は、それを大学内の一学部の中において考えようとしておるわけでございます。しかし、考え方の方向というのはかなり共通しておると思っております。それが学部の中でございますから、学部を越えた動きという形で筑波のような取り扱いになっていないということは御意見のとおりかと思います。しかし、筑波方式ということばで呼ぶことが実は中身がよくわからないのでございまして、筑波方式であるとかないとかというようなことを説明をしていくということは、決して当を得たものではないと思っております。北大の法学部の中におきましても、研究部門と教育部門とをいろいろと運営上、教育、研究のシステムを考えていきます場合に、教授会のあり方もおのずからまた動きが出てくるということもあり得ることかと思うのでございます。広島の総合科学部につきましても、学部の学生の教育問題と全学的な一般教育の扱いとはおのずからまたいろいろと違いも出てくるかもしれません。ですから、機能的な動きというものが今後あり得るであろうというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/27
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028・嶋崎譲
○嶋崎委員 広島大学の教養部が総合科学部に改革していった教官集団のねらいは、一口に言えば、教養部が人事権に対していままで自主性を持っていないということなんです。ところが総合科学部にすると、学部としての教授会の機能の一番重要な人事権について、今度は自主的に自分たちで専門家を集めたりそういうことができる、そういう情勢ができるという特徴を兼ね備えていると思うのです。つまり、いままでの既存の大学では教養部は講座制をとっていないために、講座制がいいかどうかは別として、学科制であるために、人事の問題についてなかなか自主的な判断でふやしていくことができにくい構造を持っていたのです。そういういわば側面があるという点を一点押えなければならぬと私は思うのです。ですから、研究と教育という側面から、広島の場合には総合科学部という四年制のいわばカレッジを構想したというところに新しい特徴があるのだと思いますけれども、それは筑波でいえば第一群に相当するような、筑波大学に似たカレッジだと思います。ですから、そういう観点での共通性はあるけれども、基本的に違っているところは、総合科学部の教授会というものが存在しているということですね。片一方、筑波の場合は、教官の会議はありますね。しかし、いままでの学校教育法でいわれるような教授会ではない。そういう違いが明確にあると私は思います。ですから、そういう意味で、みだりに筑波方式というようなことばを使わずに、文部省のほうは正確に報道関係に御説明を願いたいと思うのです。ここでもう一度議論すれば何ぼでもできますけれども、筑波大学のいわば基本的な特徴を何で押えて、筑波大学の特徴は何かという点さえ整理すれば、その一つの要素ないしは一つのファンクションだけをとらえて、それと共通しているから筑波方式だというふうにジャーナリズムの人が理解するような形で発表されていきますと、大学のあり方みたいなものについて世論が正しい理解ができないのではないかということを私はおそれるからであります。そういう意味で慎重な発言をお願いしたいと思うのです。私は、筑波方式とは違う、こう考えておりますし、北大の法学部教授会も、総合科学部の広大の教授会も、筑波方式ではないということを議論しております。
そこでお聞きしますが、今度四十九年度予算で、広島大学の総合科学部の予算をつけるにあたっての予算の単価の基準はどういうふうにおきめになりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/28
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029・大崎仁
○大崎説明員 これまでの博士課程を有する学部の教科当たり積算校費というものを基準にいたしまして、それを教官一人当たりの経費に換算をいたしまして積算をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/29
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030・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうしますと、広島大学の総合科学部の場合は省令講座の単価を基準にして予算を組んでおることになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/30
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031・大崎仁
○大崎説明員 省令講座という御指摘の趣旨が十分理解できませんが、要するに、現在、講座学科目省令というものがございまして、これまでの博士講座として省令に記載されておりますものが受け取っております経費というものを、講座当たりではなくて教官一人当たりということに換算をいたしまして積算をした、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/31
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032・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうしますと、広島大学の総合科学部の予算は、いままでのドクターコースを持っている大学の講座中心の予算の積算基準を基礎にして組んでいるということになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/32
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033・大崎仁
○大崎説明員 おっしゃるとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/33
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034・嶋崎譲
○嶋崎委員 全国にそういう大学はありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/34
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035・大崎仁
○大崎説明員 筑波大学では、学系に所属をいたします教官につきましては、その教官が一般教育を分担するか専門教育を分担するかということにかかわらず、同様の積算で措置をいたしております。なお、広島大学についてそのような積算方法をとりましたことにつきましては、広島大学全般の改革構想というのが現在進められておりまして、その中で大学院の構想というものが重点を置かれております。したがいまして、その構想の方向を勘案いたしますと、総合科学部自体が学部の上に博士課程を持つということは必ずしも予想されませんけれども、総合科学部のスタッフが大学院の教育に参加していくであろう、しかも博士課程の教育も含めて参加していくであろうということが想定をされますので、そのような積算方法をとった、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/35
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036・嶋崎譲
○嶋崎委員 たいへんな優遇ですね。いままでの全国の大学で、新しい大学——教養部が総合科学部といっていまから新しく構想していく大学ができたのに対して、広島大学というのはドクターコースを持っている学部もありますけれども、まだマスターしかない学部の大学、そういう大学の教養部が四年制の大学のコースをつくったからといって、大学改革案によって、全国にいまだかつてない、ドクターコースを持っている旧制大学の講座当たりの単価で予算を組んでおるということになりますが、たとえば埼玉大学の教養部が四年制になって、いまのような広島大学の教養部と同じような改革を行なったというようなときに、そういう優遇措置はしていないはずだと思います。ですから、広島大学のこの予算のつけ方については、非常に異例な基準に基づいてやったと私は判断しますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/36
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037・木田宏
○木田政府委員 今回広島大学につきましては、総合科学部という新しい学部の御審議をいただいておるわけでございますが、このことに関連いたしまして、広島大学は、大学全体の将来計画というものを進めていきたいという構想がございまして、西条地区への移転の整備を、これも予算で、昨年来着手させていただいておるわけでございます。その西条地区への広島大学の全学的な移転、その将来のあり方ということの中に、私どもも広島大学の各領域にわたります大学院の整備ということもあわせて構想の中に含めておるつもりでございます。そうした大学側の背景もございまして、その第一着手であります総合科学部につきまして、いま課長から御説明申し上げましたような新たな体制をとらしていただきました。
先ほど、これを筑波方式と言うか言わぬかというのは、私は、筑波方式ということばの意味がそれぞれにとられますから、あまりそういう用語で呼ぶことは適切でないと思いまするけれども、教育と研究の体制というものを別に考えながら、いま御指摘かありましたような筑波の第一学群に相当するような考え方を打ち出し、そして大学院というものに将来かなりのウエートを置いた大学というものを構想していきたい、こういう考え方から出たものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/37
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038・嶋崎譲
○嶋崎委員 時間もありませんから、こまかな議論はしませんけれども、この広島大学の教養学部が総合科学部なる構想を持ったことは非常にいいと私は思っているのです。また北海道大学が、法学部の中でああいう新しい構想を打ち出してきたということもいい。しかし、ちっとも新しくありません、私の大学でも、あれと同じ構想はデッサンとしてありましたから。だからちっとも新しくはないけれども、そういう改革が具体的に進んできたということはたいへん私はけっこうだと思うのです。
ただ、そういう新しい大学改革が行なわれていく際に、広島大学の教養学部の予算のつけ方は、それは広島大学長期の大学改革の展望とおっしゃるけれども、まだ海のものとも山のものともはっきりしないわけですよ。しかもその総合科学部がその上に大学院を持つということはないのです。アンダーグラジュエートの特徴としてのこのカレッジを考えたのですから、ドクターコースなんかその上にできっこないわけですよ。
そうしますと、その総合科学部というものを考えた発想そのものが、今日の学生の急増と、それから最初から専門的なことだけじゃなくて、そういう広い学生層の教育要求といいますか、そういうものに対して、専門的ないままでのやり方じゃなくて、もっと視野の広い、グレンツゲビートを広げた、そういう単位のとり方ができるような大学というものを考えたわけでしょう。そういう意味では、筑波の第一群に相当するような性質のものなんですから、この大学改革はけっこうだけれども、それにつける予算を考えるときには、そういうすでに文部省令でいっておるドクターコースを持っている講座の、その積算基準を基礎にして予算をつけるというようなつけ方は、文部省が、筑波方式的な大学の改革があれば思い切って予算を出しますよ、そういうかっこうに大学改革をしなさいという、金で大学改革を迫っていくという考え方を示しているということになると思うのです、客観的に。総合科学部の予算の単価のきめ方はきまっているのですか。大学はいま、どこだって予算は少ないのですから、多いのに越したことはないと思うのです。しかし全国に国立大学は一ぱいあって、同じように教養部というのは、たとえば教養学部にした場合であっても、埼玉大学や東大の場合をとっても、まあ東大の場合は別格でしょうかれども、そういう形で四年制の教養の大学をつくっていく際に、筑波方式的な大学改革がえさになっているような、そういう印象を与えるような予算のつけ方なのではないかという点について、私はただしておきたいと思うのです。
というのは、広島大学のおっしゃるように、将来の大学改革の構想はちっともまだはっきりしていない。はっきりしているのは教養部だけです。そしてはっきりしていることは、学部に今度は、新入生から学部採用でとるということ、そして単位のとり方が四年制の総合科学部の中でとれるという、そういう方式をとったということ、そして、その教養の単位のとり方と学部の専門的な教育がパラレルに行なわれるようになったということ、それだけが新しいことなんです。ですから、今後広島大学はどんなふうに大学改革が行なわれ、大学院構想が出てくるのか、そういうことについてはっきりしないのに、教養部で博士課程も持たない、それは将来はっきり言える、持てない、そういう大学改革案に対して、予算のつけ方だけは非常によその大学と差別をしているような予算のつけ方をしていくということは、非常に今後の大学のあり方にとって私は重大だと思います。
それに関連して、あとでまた質問することがありますが、これは新聞ですから、どこまで正確かわかりませんけれども、昨年筑波大学に反対した学部と筑波大学に反対してない学部について、一つの大学の中で、たとえば岩手大学とか、それから新潟大学とか、それからもう一カ所新聞では問題になっていましたけれども、そういう同じ大学の中で、筑波大学に反対した学部についてはいままで来ていた予算がとまっているという場合がある。ところが他方で、筑波大学に反対してなかった学部については概算要求どおりがついているというのは、これは憶測かもしれません。けれども、そういう世論が問題になって大新聞が書くということ、そういう書かれるというような文部行政のあり方ですよ、問題は。だから、文部行政のそういうふうに書かれるあり方が一方にあるとすれば、筑波大学に賛成ならば予算はつけますよ、筑波方式の大学改革ならば予算をつけますよ、しかし既存の伝統的な大学の中で大学改革というものをやろうとしているのに対しては非常に冷たいという印象やそういう世論操作が行なわれるような行政のあり方、そういう批判が出るような行政のあり方です、事実はどうかは、これは一々正確に確かめることは私はできません。局長の答えに、ああそうですかと言う以外ありません。ただ重大なことは、広島大学や北大が出たときに、これが筑波方式と新聞に書かれ、他方で広島大学は、よその大学にない改革であるかもしれないが、予算のつけ方だけは、ドクターコースもないのにドクターコース並みの予算が特別につく。明らかに優遇であります。そういうことが片一方であって、他方で、筑波大学に賛成反対によって学部で予算が消えたり消えなかったりという世論が新聞で書かれる、こういう文部行政のあり方と国立大学の今日のあり方というものを大いに反省していただかなければならぬのじゃないかと私は思うんです。ですから、新聞が悪いのなら悪いとおっしゃってください。文部省のほうでは、そういうことがあれば反省される意図がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/38
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039・木田宏
○木田政府委員 筑波のときにもお答え申し上げたかと思いますが、大学の改革は一律には進みません。個別にそれぞれいいものを育てていくという努力をしたい。筑波は筑波、広島は広島だと考えております、考え方の基本に、教育と研究というものの考え方について共通のものがあるということは、先ほど来申し上げたとおりでございますが、嶋崎委員もお話しになりましたように、嶋崎委員の目から見れば広島のそれは筑波方式でないというような御意見がございます。違うところは違っておるのでございますが、しかしそれぞれに改革努力があって、意義のあるものにつきまして文部省としてはできるだけの御協力をしていく、こういう姿勢で個別に進めていきたい。そうしませんと、大学というそれぞれ個性のあるものを一律にあまり扱うということはいかがかと考えるのでございます。ただ、そのことがことさらにえこひいきをするというようなことになることは、これまた慎まなければいかぬことは当然でございましょう。しかし私どもは、それぞれを育てていくという気持ちで広島大学にも取り組んでみたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/39
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040・嶋崎譲
○嶋崎委員 私の質問したのは、いまそういうことを聞いたのじゃないんですよ。権威ある大新聞が、ある幾つかの大学の例をあげて、ある大学では、ある学部は筑波に反対し、ある学部は賛成だったということについて、ことしの予算のつけ方に差別があったという印象を国民の前に明らかにしているわけですよ。他方では、さっき言ったように、私の判断では、国立大学の広島の予算のつけ方にはいままでの基準とは違う基準の立て方、非常に異例な基準の立て方であると思います。ですから、そういうのを総合してみますと、いまの文部行政のあり方について、各大学の教官や学生の筑波大学方式云々が、そういう方式に持ってくれば予算をあげますよというような印象を与えるような記事が書かれているということですよ。そのことについて、新聞が悪いのか、そういう印象を受けるような文部省のあり方を反省するのか、どっちですかと聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/40
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041・木田宏
○木田政府委員 私にはいま御指摘がありましたような新聞記事の記憶がないものでございますから、ちょっと何ともお答えを申し上げかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/41
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042・嶋崎譲
○嶋崎委員 では、申し上げましょう、そういう答えならば。そういういまの局長の回答というのは、私非常に乱暴な回答だと思うのですよ。国立大学の予算や何かについて非常に大きな権限や、そういうものについての配分の力を持っているその皆さん方が、かりに新聞に書かれていることを、私は記憶ありませんから、調べたことないですから、そんなのは一方的でしょうというような回答ではぼくはいかぬと思うのですよ。事実がそうでないならば、そうでないという事実をおっしゃるか、そういう大学の予算のあり方というものについて国民の批判というものがあれば、それに対して反省しなければならぬとか、ぼくは反省していいと思うのですよ。正しいことをおやりなら、新聞の書き方が正確でなかったんだから、そういう誤解のないように今後はすると言えばいいじゃないですか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/42
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043・木田宏
○木田政府委員 大学の改革につきまして個別にいろいろな試みを考えてみたいという気持ちがあるものでございますから、何も広島大学に限りませんが、従来にこういう措置をしたことがないというような予算上の取り扱い、新しい構想も小さい段階でそれぞれに行なっておることもございます。それをどのように評価されるか、これは御批判をされる方々のお立場でございましょう。決してえこひいきをするというようなことで進めておるわけではございません。それぞれに意味のある改革なり意味のある大学の内容の充実というものを進めていきたいという考え方で取り組んでおる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/43
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044・嶋崎譲
○嶋崎委員 その問題は議事録にとめておいていただいて、今後とも予算のそういう問題について、よその大学改革との関連や何かを私は追及していきたいと思います。
そこで、今度の国立学校設置法の中で問題になりました三つの医学部に関連しての第三番目の問題に入ります。
最初に大臣にお聞きしますが、この浜松や宮崎等々の国立の医科大学の設置を単科大学という形で進められた根拠、これをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/44
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045・奥野誠亮
○奥野国務大臣 それぞれ医学教育の特色を十分発揮させたい、そう考えました場合には、単科大学のほうが他の学部にわずらわされないでその実をあげることができるのじゃなかろうか、こう考えたわけでございます。ことに六年一貫教育をとりたいという考え方もあるわけでございますし、多少人文系の学部と医学部とは研究、教育の面におきましてかなり違ったものがあるようでございます。そういうこともございまして、せっかくつくる大学でございますので、医学教育、今日までいろいろの問題を起こしてきたところでもございますだけに、改革の実をあげて十分効果を発揮させてもらうためには、足を引っ張られないむしろ単科大学のほうがよろしいのではないか、かように考えたわけでございます。もとより、一律的にこういう考え方をすべてに推し進めていく考えは持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/45
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046・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうしますとお尋ねしますが、十二日の朝の閣議のあとに総理大臣と文部大臣がお話し合いになった上で、田中総理は、「大学人からいろいろ聞くと、総合大学は大規模すぎて管理運営が教官の手に負えない」したがって、今後の新しい大学を新設するには「学生数が二万人の総合大学より、五千人の単科大学四校をつくった方がいい」という趣旨の発言があったと報道されてますが、事実ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/46
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047・奥野誠亮
○奥野国務大臣 総理に会いましてあと、記者会見で若干申し上げました。申し上げましたが、多少総理の話を十分に私としては伝えなかったなという感じを持っております。総理がいろいろな大学の教授から話を聞いているようでございました。自分なりに持っているメモを一つ一つめくりながら私にその話を伝えてくれたわけでございます。その際に、医学とか工学という部門はたいへん金もかかるし、他の人文系のところとは教育、研究の面においても相当違ったものがあるようだな、こういうことを言っておりました。したがいまして そういうものはできる限り単科大学をつくってあげたほうが研究、教育の実をあげていくのに好ましいようだ、金はかかるけれども、金はかかってもそうしてあげたほうがよいようだなという式の話がございました。そういうところから、だんだん大きな大学になってくると管理面も苦労があるようだというようなことで、いま御指摘になったような話に移ってきたわけでございます。基本は、管理から始まったわけじゃございませんで、学部によって教育、研究の内容、実態がかなり違うのだ、違った面に即して大学の設置を考えていかなければならないというようなところから始まったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/47
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048・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうしますと、朝日のこの書き方は間違っていますね。朝日の書き方はかぎカッコで引用しているわけですから、いま言ったのは総理の考え方で、それを受けて「私も同意見だ。文相の個人的な諮問機関である新学園建設等調査会でもこの問題について検討してもらっている」とおっしゃっています。
ここでちょっとわきにそれますが、新学園建設等調査会というのは大臣の諮問機関ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/48
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049・奥野誠亮
○奥野国務大臣 朝日の記事も私がしゃべったとおり書いてくれていると思います。ちょっと急いでおったものですから前段をしゃべらなかったものですから、話の起点が明らかでありませんと、簡単に管理だけでものを考えているのかというような誤解を生むと思います。しかし、その記事そのものは、私がいま御説明しましたように何も間違っていない。ただ、起点を書いてないと、若干話の発展のしかたが違ってくるということになるのかもしれません。
新学園建設調査会といいましたか、正確な名前は忘れましたが、私の諮問機関でございます。新学園建設にあたって、どういうような構想を立てていくのが一番適当かというようなことでいろいろ見当をつけていただいているわけでございます。その際にも、私としては、やはりいまの大学は特色が失われてきているのではないかという心配を持っておりまして、そういう意味においては、何万人というような大きな総合大学をつくるよりも、幾つかの大学をつくる、そうして共用できる施設は共用していくシステム、それが一つの考え方じゃないだろうかなというようなことを考えてもいますし、新学園建設の懇談会ですか調査会でも御議論いただいているところでございます。管理というよりもむしろ教育の効果をあげていくにはどちらが好ましいか、自然また管理という問題になるかもしれません。しかし、基本はそういうところから議論になっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/49
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050・嶋崎譲
○嶋崎委員 私の聞いているのはそうじゃないのですが、この新学園建設等調査会という会のメンバー、それからどういう機関なのか、それの資料を提出願えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/50
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051・木田宏
○木田政府委員 早い機会にお届けするようにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/51
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052・嶋崎譲
○嶋崎委員 大臣は本人ここにいらっしゃるから、ここに書いてあるとおりの発言です、こうおっしゃるのですが、総理の発言は、やはり大学というものを考えていくときに、大学の管理運営という観点から見ると、大学の教官たちは管理運営能力がない。よく筑波の議論のときに皆さん方はそうおっしゃった。だから、大学というものを考えるときには管理運営というものがちゃんとできることが前提だ。それは抽象的、一般的には当然のことなんです。ところが、管理運営というものを重点にして大学をつくっていくと、研究、教育という観点から、本来憲法二十三条の考え方も、大学における学問の自由、大学自治、そういう前提の上に立って、大学自治のあり方、そこで管理機関というものが構想されていく。それはそれぞれの大学の自主的な慣行があったりいろいろでつくり出されていく、長い努力の中でつくり出されていくものだと思うのです。ですから、最初に管理があって、そしてそれに合わせて大学というものを考えるというような考え方であってはならない、こんなふうに思うのです。これについては、そうじゃないといま大臣おっしゃっていますから、もう質問はしません。
そこで、この新設三医大で問題になった参与会と剛学長、これについてお聞きしますけれども、新設三医大で参与会という制度をとられたならば、それを省令で追認するといいましょうか、そういうふうに報道されていますが、こめ三医大の参与会というものの中身、それからその考え方はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/52
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053・木田宏
○木田政府委員 新設の医科大学に地域の関係者の意見が反映できるような、たとえば参与といった方々の参画ができるようなことを考えております、こう申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/53
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054・嶋崎譲
○嶋崎委員 それは筑波大学の参与会とは違うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/54
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055・木田宏
○木田政府委員 筑波大学の参与会は、筑波大学全体の管理機関の一つとして法律で御審議をいただいたとおりでございます。今回の場合に、参与会という形で固めたものを考えておるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/55
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056・嶋崎譲
○嶋崎委員 どういうものなんですか。大学の学外の意見や世論を聞くような人をたとえば参与として、これは当然数人の人でしょう。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/56
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057・木田宏
○木田政府委員 人数等適宜に考えていただいたらどうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/57
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058・嶋崎譲
○嶋崎委員 しかし参与という名前をとって、そして大学が開かれた大学として学外の意見を聞くという意味の性質のものであるとすれば、筑波の参与会と性質は同じじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/58
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059・木田宏
○木田政府委員 大学も関係者の意見に耳をかそうという考え方は同じかと思います。しかし、その組織としての構成等は違ったものだ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/59
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060・嶋崎譲
○嶋崎委員 局長の発言というのは、時には違え、時には一緒になる。北海道大学の研究と教育の分離というファンクショナルな面をとらえて、これは筑波大学の一つの側面の継承だ、考え方としてはそうだと片一方では言うんですね。そして今度は、こっちの参与になってきますと、いや、片一方は、筑波大学は参与会という形で法律できめたものだけれども、こっちのほうは、考え方としては一緒だけれども、形態は違う。今度は組織が違うということを強調されるのですね。これは論理矛盾ですよ。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/60
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061・木田宏
○木田政府委員 参与会を置くと考えておるわけじゃございません。この意見の聞き方その他いろいろの方式を大学側の考えるところとよく相談をして取り進めたい。筑波の場合には、教育大学が筑波大学の構想を練りましたときから、非常に重要な役割りのものとして理事会、参与会という構想がございました。それを参与会として評議員会その他と一緒に法律で御審議をいただいた次第でございます。しかし、その際、大学が地域の関係者の意見そのものに耳を傾ける、そして連携をとれるものならば密にしていくという考え方を取り込む、そういう方式を大学側にくふうしてみてもらいたい、こういう意味で医科大学の場合に考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/61
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062・嶋崎譲
○嶋崎委員 筑波大学の場合は、ここで長い議論をしましたけれども、教育大学の中で大学改革の構想があって、その中で人事委員会ができ、参与会が大学で構想されたのを受けて文部省はそれを法律改正をした、こう説明されてきました、私の何回かの質問に。今度の単科大学の参与というのは、参与会ではないけれども、参与というのは、まだ大学ができてないのですからね。その参与を置こうという主体はどこにありますか。だれが計画しておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/62
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063・木田宏
○木田政府委員 大学ができ上がりました場合に大学が主体的に置くことになると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/63
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064・嶋崎譲
○嶋崎委員 文部省がいまのところ指導している段階ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/64
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065・木田宏
○木田政府委員 この三大学は文部省が主体的につくろうとしておる大学でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/65
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066・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうしますと、筑波大学の場合の参与会は、教育大学の大学改革の中で、長い討議の中で生まれてきたもの、それで参与会という形で大学側のそういう要請があったから法律改正をしてつくったのですね。今度のは参与と称して、実体は一つも明らかになっていませんね。まだ大学がないのですから。大学設置基準がやっと通って、そしてこれから大学をつくるわけでしょう。大学の管理機関もなければ教官スタッフの教授会もなければ何もまだないわけですね。あれだけ筑波の議論のときに、新しい大学の管理機関というのは文部省が上から押しつけたりしているのじゃなくて、それぞれの大学の自主的な改革の中から出てきたものだから、文部省はそれを確認せざるを得ないし、そういう方式で大学改革を進めると言われてきた。ところが、この三医大については、まだそういう意味での大学改革的なものはない。単科大学をつくるといっても、おそらく教授会はあるでしょう。おそらくそうだと私は思います。副学長があっても人事委員会はないでしょう。そんなものはないでしょう。いままで筑波大学の中で出てきたような、積極的に法律でうたったような、大学の組織というものをつくるということはないでしょう。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/66
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067・木田宏
○木田政府委員 筑波大学で御審議をいただきました人事委員会は、この医科大学の場合に人事委員会として考えておるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/67
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068・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうしますと、人事委員会だとか参与会といわれるような、筑波大学のような性質のもの、法律でわざわざ特質を、明確にその組織をうたったそれと違うわけですね、単科大学の三つの場合は。だから法律でうたわないのでしょう。それで省令で追認するわけですね、あとで大学側から申し出があれば。ところが大学の中では、どういう単科大学のあり方が将来医学部の大学のあり方としていいかについては、まだ大学内部で討議も何もないのですよ。そうですね。設立準備会みたいなものはありましょうよ。それはまだ大学管理機関でもない。これから大学のあり方というのは、伝統的な大学というものをつくっていかなければならないのですね。教官のスタッフや何かも名前はきまっておるでしょう。そうしますと、今度の三つの医科大学につくる参与というのは、参与会でない参与というのは、どんな内容で、どのような権限を持ち、どういう役割りを果たすものかについてはばくとしたものであるのに、文部省のほうでは、外の意見を聞くために参与というものを設けたらいかがでしょうかという指導が行なわれているということになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/68
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069・木田宏
○木田政府委員 三医科大学を、いま法律の御審議も得ながら具体的につくろうとしておるわけでございます。その過程の中で、これまで持っておりましたいろいろな医学教育の教育上あるいは大学のあり方として改善くふうをすべき点については御相談を進めていきたい、少しでもよくなることはよくしていきたいというふうに考えております。
いずれにいたしましても、これからできる大学のことでございますから、筑波の場合のように過去のある大学ではございません。新たに法律での御審議を得ながら、御賛同を得ました場合に、これからの課題としてすべて関係者ととり進めていく、こういうことになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/69
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070・嶋崎譲
○嶋崎委員 それならば参与は、三つの単科大学の中で、つくろうという大学の申し出があっただけつくればいいので、それぞれの大学に参与をつくる、三つの大学にそれぞれ参与、副学長を設けるというようなことを文部省のほうから大学に向かって言うのはいかがでしょう。問題がありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/70
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071・木田宏
○木田政府委員 大学の組織、運営、構成等につきまして、いろいろと文部省側からも考えて提示をしてまいらなければなりません。副学長二名をそれぞれの大学に予定をしております。これもそういうものとして、設立の準備に当たっております関係者と相談をし、また創設後もそうした扱いについての進め方をしていきたいというふうに考えております。これらはやはり大学をつくってまいります場合に、そのような心組みでおるということは明らかにして、大学側の準備を進めていく必要があろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/71
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072・嶋崎譲
○嶋崎委員 副学長は、いまの法律や何か改正しなくとも、現実に大学の中で副学長を持っているところは一ぱいあるわけですよ。だから、たとえば単科大学の場合ならば、病院ですから、学長のほかに病院長がいるでしょう。それが副学長になっていいのですよ。それから学生部長というのが現にあるのですから、そういうのが副学長的な厚生、補導の仕事をやっていいでしょう。何もそんなものは新しくない。それはそれぞれの大学において必要とあれば、副学長の制度を設けたってかまいませんよ。しかし参与という問題は、大学の外からの意見を聞くという意味で、どういう程度の選考でどういう人を選ぶかということについては、
これは筑波大学のときにずいぶん議論された中身の問題ですね。だから副学長を置くのと性質が違うと思うのです、参与の場合は。ですから、ぼくは邪推すれば、既存の大学に医学部をつくれば経費は安いわけよ、教養課程の先生方が一ぱいいらっしゃるのですから。ですけれども、大学改革という観点からすれば、単科大学をつくって、独自のスタッフをつくって、医学の基礎教育をやっていくということをやれば、それが将来医学にとってはいいだろうということはわかります。だから金がかかってもいい大学をつくろうというねらいであることは、その側面は私は一つも否定しません。しかし、将来すべての大学をつくるときに、首相が発言しているように、大学というのはこれからみんな単科大学ですよと言いながら、いつも一方で副学長、参与会という指導をやりながらやっていくとすれば、かつて筑波大学の討議のときに大臣も局長も私にはっきり言ったことは、法律の上で、国立学校設置法という法律を改正して、筑波大学には人事委員会、参与会を置いたのは、よその大学に一般化するという考え方ではなくて、これは東京教育大学が自主的に判断した結果だから、そういう大学改革を追認するという意味で法改正をやりますという答弁を何べんでも繰り返してこられた。ところが、今度のこれからできる医科系の単科大学のときには、筑波大学とは違うと言いながら、考え方は——考え方です、ぼくも今度逆に言いますよ、考え方は似ている、学外の意見を聞くという意味での。そういういわば制度、組織を単科大学に持ってくるわけでしょう。そのことを文部省が、三つつくる大学についてそれぞれつくるという御指導を現実になさっているのです。そうしますと、かつて筑波大学のときにおっしゃった大学改革の一環として出てきた人事委員会や参与会というようなものを認められた考え方と、今度指導している考え方との間に、この前答弁された中身と今日やっていることの間には、明らかに矛盾はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/72
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073・木田宏
○木田政府委員 筑波の例を他の大学に及ぼす、そのまま及ぼしていく考え方はないということは、御答弁を申し上げたかと思います。しかし、それは、これから文部省がいろいろと新しいくふうを考えますときに、いま三つの医科大学は文部省の私どもが法案の御審議を得ながらつくっていかなければならないのでございまして、既設のものに対して筑波と同じようなことを強要するとかなんとかということで考えておるわけではございません。これからつくっていく責任を私どもも負わされて、そしてどのようにしたらよりいいものになるかというくふうを私どもがしておるわけであります。その際に副学長も置くか置かぬかということは、置いたほうがいいと考えて構想を練っておって、いろいろな人の意見を聞く道があったほうがいいであろうということで私どもが構想を考えておるわけでございまして、他の大学に強要するというようなことをいたしておるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/73
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074・嶋崎譲
○嶋崎委員 しかし、そうじゃないですか。筑波大学のときは、教育大学の中で構想されてきたものを、大学の自治と大学のそういう主体的な改革構想があったから追認されたわけでしょう。法律改正をなさったという答弁、してきたでしょう。今度の場合には、まだ大学には主体がないわけですよ。設立準備会はあるかもしれません。そして大学設置基準に合わせて出すような資料をつくったでしょう。しかし大学自身はまだ主体的条件を持って動き出してないわけよ。だから、今後どのような大学の管理のあり方が医科大学にとっていいのかについては、筑波は筑波の一つのタイプがあります、現に法律できめたのですから、われわれ賛成ではなかったけれども。ですから、今後、単科大学についてはどのようなことがいいかについては、それぞれの大学の自主的な判断できめていくべきことであって、文部省がいまから、外の意見を聞くという意味で参与というような組織をおつくりになったらいいんじゃないでしょうかとか、副学長を二人置いたらいいんじゃないでしょうか、数名置いたらいいんじゃないでしょうかというようなことを言うとすれば、初めから、大学をつくるときには、大学の新しい管理について文部省の管理方式的なサゼスチョンを受け入れる、そういう大学として発足するということになるじゃありませんか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/74
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075・木田宏
○木田政府委員 筑波の場合には、教育大学という伝統を有する学校がございまして、これが実質的に筑波に転化するということでございました。今度医科大学を三つつくろうとしておる場合は、既存のものがあってこれが医科大学に分離するとか独立するとかということではございません。全く新たに文部省の責任でいまつくろうとしておるわけでございます。そういう大学について、いろいろと、このように考えておくほうがいいではないかという用意と心準備をして、だれかに強要しているというわけではなくて、文部省自身がいまつくろうという努力をしておるのでございます。しかし、その大学が設けます参与といったものは、その具体的なあり方は、でき上がった大学が、人員とか、任期とか、選考方法、意見の求め方等をきめることになるわけでございまして、大学自体が現実にできたときに事を処理していく、こういうことになろうかと思います。私どもは、そういうことが処理できるような大学として新たに大学を考えてみたい、こう申しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/75
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076・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうしますと、いままでの大学のつくり方と発想が全然違いますね。発想が違うですよ。いままでの国立大学をつくるときには、既存の法体系を前提にして、もう筑波大学の場合は特殊なタイプでしたから非常に議論になりましたが、しかし、それ以外の場合には、名称と、大学の場所と、そういうものをつくるということをきめて、あとは大学内部で自主的に、大学の管理組織のあり方やそういうものは大学内部で判断してつくっていくというのがいままでの文部省の大学をつくっていく場合のつくり方だったと思いますよ。ところが、今回の場合には、副学長とか参与というような問題を少なくとも新しい大学の管理のあり方としてサゼスチョンしてつくるのですから、いままでの大学のつくり方と違うじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/76
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077・木田宏
○木田政府委員 新しいものをつくろうといたしておりますので、いろいろと新しいこともあり得るかと思います。たとえば、これはちょっと前のことでございますけれども、人間科学部というような新しい医学部を阪大につくらしていただきました。そういう場合にも、学部の構成その他新しいことが入ってくるわけでございます。それは、新しいものをつくるという場合に、何かそれぞれの新しい要素があり得る。まして今回のように文部省が責任を負ってつくらなければならない場合、私どもがこういうふうな大学が望ましいと考えておりますことが実現できるように御審議をいただいておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/77
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078・嶋崎譲
○嶋崎委員 それならば、これからは医科大学やなんかつくるときには、ここの三つの大学だけじゃなくて、これからの大学に全部、新設される医科大学については参与という性質のもの、参与会、筑波大学にいう参与会じゃないにしても、そういうものをつくる、ないしは副学長というものを置くということをいつも文部省では指導しながらつくるというふうに確認してよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/78
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079・木田宏
○木田政府委員 医科大学が地域との関係の非常に緊密なものでありますことを考えまして、私どももそういうことが望ましい、そういうふうに進んでいってどうであろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/79
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080・嶋崎譲
○嶋崎委員 それならお聞きしますが、筑波大学で参与が選ばれましたね。その初めにちょっとお聞きしますけれども、筑波大学は大学設置審議会はいつ通りましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/80
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081・木田宏
○木田政府委員 筑波大学は国立大学でございますから、大学設置審議会に諮問をするということではございません。意見を聞きながら、その意見によって私どもが措置を進めていくということでございまして、いま、医学、第一学群、体育学群等について、こういうふうにつくりたいという私どもの意見を設置審議会に説明し、一応の御了解をちょうだいしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/81
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082・嶋崎譲
○嶋崎委員 普通の大学の学部増設の場合でも、それから新設の国立大学をつくっていく場合でも、大体その大学設置基準に合わせて教官数、そのスタッフ、講座の内容、そういうものを事前にちゃんと届け出てやっていくというのが慣行になっていますね。そういう意味での筑波大学の第一群、体育学群等々について、三つの開議された群について、大学設置の基準に合わせてみて、よろしいというふうに判断をした資料はありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/82
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083・木田宏
○木田政府委員 筑波大学は、医学を除きまして第一学群、体育専門学群はそれぞれ東京教育大学の実体を移しかえるという内容のものでございます。したがいまして、私どもも筑波大学設置の際の御審議ですでにお答えをさしていただきましたけれども、東京教育大学の実質的な移転と発展という内容を持っておりますから、東京教育大学に対してあらためて審査をするという考え方はとらないでお願いをしております。少なくとも体育の学部というものが存在し、それが実質になって筑波の体育学群ができる。その意味では、全く新設の大学の設置審査と同じような手続でなくて御了承をちょうだいしております。第一学群についても同様でございます。医学につきましては、新たな学群という形式をとって、実体もございませんことでございますから、医学につきましては所定の教官名簿その他をそろえまして設置審議会の御意見を聞き、御了承を得ながら進めておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/83
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084・嶋崎譲
○嶋崎委員 四月二十五日に筑波大学の入学式があるわけでしょう。そうすれば、入ってくる学生は、第一学群についてはどういう教官、どんな科目で、どういう単位をとるかということがいまの時期にきまっていないはずはありませんね、常識的に考えてみて。教育大学という前提はあるにせよ、今日の段階でまだそんなことがきまっていないはずはありませんね。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/84
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085・木田宏
○木田政府委員 御指摘のように、初年度の教科科目その他は一応内定ができておりまして、それで学生教育に取り組む、こういう姿勢でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/85
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086・嶋崎譲
○嶋崎委員 そこで聞いているのは、第一学群なら第一学群、体育学群なら体育学群について、大学設置基準に合わせて筑波大学の場合に、どのようなスタッフが、どのような科目を、どの程度担当するかについて、もう内容がきまっているでしょうから、その資料をいただきたいという意味の資料要求です。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/86
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087・木田宏
○木田政府委員 科目の輪郭等につきまして、私どものほうで大学設置、予算その他との関連で用意しております点は御説明するようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/87
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088・嶋崎譲
○嶋崎委員 抽象的なことではなくて具体的に、もう四月に学生が入ってくるのですから、その単位の取得の範囲とか、教官の配置、そういうことについて大学設置基準で話し合いをしているのには一定の資料がありましょうから、その資料、それをいただけるということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/88
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089・木田宏
○木田政府委員 設置審議会に、これは国公私通じてでございますが、御提示しております資料そのものを外部に公表しておることはございません。しかし、お尋ねの線に沿いまして御説明できるだけの資料をつくってみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/89
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090・嶋崎譲
○嶋崎委員 そこで、もとに返りますが、参与の問題です。筑波大学で参与をきめられた場合の大学内部の手続はどんな手続か、お教え願いとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/90
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091・木田宏
○木田政府委員 参与は学長の申し出によって文部大臣が任命するということになっております。その参与は一般の教官ではございませんから、教育公務員特例法等にその参与の発令についての学内の特別の定めはございません。常識的に評議会等にはかりましてそうした決定が行なわれたものというふうに承知をいたしておりますが、学内の手続が別に法令できまっているわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/91
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092・嶋崎譲
○嶋崎委員 名前をあげませんけれども、筑波大学の参与会のあり方については、ここでも議論しましたように、大学が開かれた大学として外からの世論というものを十分に取り入れるような性質のものとして参与会を位置づけよう、開かれた大学という性質として入れよう、こういう趣旨でございましたね。そこで選ばれました参与を見まして、何が外からの世論を入れるという基準に基づいているのか、たいへん私は疑問に思うのです。その参与というものは、教育大学で構想されたにしても、ある財界ですけれども、財界の代表といわれる人が参与に選ばれるという場合に、それが国民のいわば開かれた大学ということをシンボライズする、そういうものになっているのか、なり得るかどうか。どう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/92
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093・木田宏
○木田政府委員 筑波大学の参与十名は、二月一日に学長の申し出を受けて発令をいたしました。その内訳は、地域社会の関係者として、一々のワク取りがあるわけじゃございませんが、地元の知事であります岩上二郎氏並びに学園都市の研究機関の責任者でございます島秀雄氏、これは宇宙開発事業団の理事長でございますが、あの地区にあります大事な研究機関の一つでございますから、そういう方に入っていただいておりますし、卒業生の代表、高等学校の関係者あるいは学術団体の関係者、そのほか、学会その他学識経験として五名ほど名前があがっておる次第でございまして、それぞれのお立場から御意見があるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/93
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094・嶋崎譲
○嶋崎委員 私の調査では、最近の筑波大学のそういう参与を選ぶ過程、それからまた人事委員会が動いているその機能ですね、どういう人事の選び方をしているかということについて、私がここで議論をした懸念が現実にあると私は判断しております。きょうは、その後の筑波大学をこまかに議論をする意思はありませんけれども、文部省のほうで、大学の中にこまかに干渉することはできませんけれども、あれだけ指導、助言をやり、密接につながりを持ってきた文部省ですから、筑波大学で参与を選ぶ過程でだれが参画したかということを考えてみると、まず筑波大学の評議会は全然関係ありませんね。結果としてきめられたのを追認しているのかもしれません。しかし、選考は非常に少数の人で行なわれております。
それからまた、もう時間がありませんから、いずれまた資料に関連して一般質問か何かでやらしていただきますけれども、一つだけ問題の焦点をはっきりさせておくためにお聞きしておきますが、東京教育大学と筑波大学は二つの大学ですか、一つの大学ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/94
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095・木田宏
○木田政府委員 別々の大学でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/95
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096・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうしますと、筑波大学という新しい大学と、古いいままでの伝統的な教育大学と、二つあるわけですね。そして筑波大学は、いまの教育大学のスタッフがいよいよ向こうに移っていくということを通じて、新しい大学が内容が豊かに充実していくわけですね。二つの大学があって、そして、その移行していく過程で関連づけていくための組織は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/96
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097・木田宏
○木田政府委員 両大学の関係者の間で協議会が持たれておりまして、緊密な御相談があるというふうに承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/97
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098・嶋崎譲
○嶋崎委員 それを文部省のほうでも一度お調べ願いたい。私はもう調査してありますけれども、時間がありませんから、きょうは省いて、いずれ一般質問でさしていただきます。
文部省からいただきました広報筑波の第一号です。これには確かに、教育大学と筑波大学は二つの大学だから、その相互の問題を調整するために連絡会というものができております。その連絡会の構成は、筑波大学の側は学長、副学長、学群長、それから東京教育大学が学長、部局長となっておるわけですね。したがって、二つの大学ですから、教育大学の中の部局長と筑波大学の人たちとが相互に共通の連絡会を持ちながら、筑波大学でない教育大学の先生方を筑波大学に割愛してもらいたいという手続をとりながら人事の問題は検討しなければならないし、同時に、筑波大学の入学試験、それから今後の研修のあり方、そういうものについては、筑波大学のあり方と、それに関係を将来持つであろう教育大学の先生方がどのようなつながりを持つかということが追求されていなければなりませんね。そういう点から見ますと、ぜひ文部省のほうで、現状の筑波大学のあり方が私が心配したとおりの実態ですから、その内容を——こまかに内部に干渉はできないでしょうけれども、たとえば現在どういう事態があるかというと、理学部を例にとりますと、理学部から筑波大学のほうに先生方がどんどん割愛されていきますね。そうしますと、昨年の九月以降必修科目で開議されてない科目が幾つかあるわけであります。スタッフがいないのです。休講になっているのです。その単位は、来年卒業する学生が今年度単位をとっておかなかったら、卒業できないのです。そんな事態が理学部の場合にも二、三あります。教育学部にもあります。文学部に至っては、これはたいへんです。これはいままでの文学部で、ここで長い議論をしてきましたから、いまあらためて議論はいたしませんけれども、たとえば東洋史学をとっても、史学をとっても、国語をとっても、英文学をとっても、とにかくたいへんな欠員の中で大学が動かされているわけであります。私は文学部の人たちを防衛する意味で言っているのではなくて、教育大学にいま二年、三年、四年の学生がいるわけです。この学生は、同じ国立大学の学生として教育大学を選んで卒業していくには、よその大学の学生と同じように、やはり最後まで伝統ある大学の卒業生にふさわしい勉学の条件が、国で、文部省や大学として、準備されなければならぬと思うのです。ところが筑波大学が片方に先行しまして、二つの大学であるはずの教育大学の内部の教授会のスタッフをこっちに持っていくのに、教授会の承認も得ないまま、きまってから事後通達です。きまってからですよ。そんな事態が無数にあります。例をあげれば、具体的な例を全部あげられます。そういうことが行なわれているために、たとえば今度は、いま二年生の学生諸君の教育、三年生の学生諸君の教育をやるのに、圧倒的に非常勤講師ばかりになってしまうのです。しかも、助教授で当然教授になれる人が、かつて申し上げましたように、いまだに、業績や何かでははるかにすぐれた日本一の学者がいます。ローマの研究をやっている学者なんというのは、日本最高水準の学者です。そういう人が助教授で、教授になれないのです。そしてスタッフが埋まらぬままです。これは埋めることはできないでしょう、いずれ移行するのですから。しかし、それにしても、現在、かつて筑波大学に移行するかどうかという評議会の基準というものがあったために、文学部とのいろいろな問題があった。ところが、文学部の教授会は昨年の十月十七日から方針転換をしています。新しい法律が通った、筑波大学という大学ができるのだから、その大学との関連において、教育大学の研究、教育はどうなければならぬか、筑波大学に協力していくスタッフの割愛についてはどういうふうに協力するかについて、いままでとは違った教授会の態度をきめております。にもかかわらず、文学部教授会の代表である評議員や学部長が参画しないまま今日まで連絡会が開かれています。そして人事は、文学部のほうの人事を、教授会なしに引き抜いていって、事後通達みたいな形のことが一ぱい行なわれています。こういう現状は、二つの大学だと局長がおっしゃるならば、その二つの大学にふさわしい大学相互間の紳士的な、ないしは大学人らしい慣習に基づいて行なわれるように筑波大学のほうの運営をやっていただきたい。これに関連して、大学院の試験の制度だっておかしいのですよ。法律では五十三年に大学廃校になっています。そうすると、学生は五十二年で入った学生で卒業するのです。しかし、大学院の試験をやるときには、留年する学生の中から大学院を受ける人があり得るわけです。ですから大学院の試験をやる場合でも、一年前にもう学生がいなくなるという前提に立って、マスターの試験をやったりドクターの試験をやるというふうに型をきめていいかどうか。これもたいへん大学院のあり方として問題があると思う。そういうふうに、東京教育大学にいるいまの学生諸君が、普通の国立大学の学生諸君と同じように、伝統ある大学の研究、教育を受けて出れるような条件を、いまの二つの大学という名のもとに、たいへん阻害されているという実情がある。教官の実情もそうだし、それから学生の実情もそうです。ですから、その点について筑波大学で行なわれていることが教育大学の別の大学であるはずのよその大学の大学自治を侵害していくような傾向を持ちながら事が進められている。そういう実情について文部省のほうでも何とか打開をはかって、教育大学の学生諸君がやはり教育大学を卒業してよかったといわれる条件をつくるように御努力を願いたい。またいずれこまかな問題については再度一般質問のところでやらしていただきます。
これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/98
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099・稻葉修
○稻葉委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後八時散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205077X01419740313/99
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