1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十八年十二月十日(月曜日)
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昭和四十八年十二月十日
午後二時 本会議
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○本日の会議に付した案件
昭和四十八年度一般会計補正予算(第1号)
昭和四十八年度特別会計補正予算(特第1号)
昭和四十八年度政府関係機関補正予算(機第1
号)
郵便貯金法の一部を改正する法律案(内閣提
出)
午後七時十四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/0
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001・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) これより会議を開きます。
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昭和四十八年度一般会計補正予算(第1号)
昭和四十八年度特別会計補正予算(特第1号)
昭和四十八年度政府関係機関補正予算(機第
1号)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/1
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002・森喜朗
○森喜朗君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、昭和四十八年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十八年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十八年度政府関係機関補正予算(機第1号)、右三件を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/2
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003・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 森喜朗君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/3
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004・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。
昭和四十八年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十八年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十八年度政府関係機関補正予算(機第1号)、右三件を一括して議題といたします。
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005・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 委員長の報告を求めます。予算委員長荒松清十郎君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔荒舩清十郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/5
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006・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 ただいま議題となりました昭和四十八年度一般会計補正予算(第1号)外二案につき、予算委員会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。
この補正予算三案は、去る十二月一日に予算委員会に付託され、五日に提案理由の説明があり、六日より十日まで質疑を行ない、本日、質疑終了後、討論、採決をいたしたものであります。
まず、補正予算の概要を簡単に申し上げます。
一般会計は、歳入歳出ともそれぞれ九千八百八十五億円を追加するものでありまして、歳入におきましては、租税の自然増収等、総額一兆五千百八十五億円を追加するとともに、公債金五千三百億円を減額することといたしております。
歳出におきましては、公務員給与の改善、食糧管理特別会計への繰り入れ等の経費及び地方交付税交付金等、総額一兆二千十七億円を追加するとともに、予備費を含む既定経費を二千百三十一億円減額することといたしております。
また、特別会計におきましては、公務員給与改善のため、国立学校特別会計外十四の特別会計について、所要の補正を行なうことといたしており、政府関係機関においては、日本国有鉄道に対し、財政基盤の強化のための出資金等千百九十四億円を追加することといたしております。
次に、質疑について申し上げます。
質疑は、現下の経済危機に対処し、いかにして国民の生活を守るかという点を中心に、終始熱心かつ活発に行なわれたのでありますが、特にインフレと物価の問題について、「政府と国民の間に認識の大きなズレがあり、政府は現状をインフレと認めようとしないが、単に物価高と認める場合とインフレであると認める場合では、政策に相違が出るはずである。現状がインフレであることを率直に認めた上で対策を講ずべきではないか。政策の転換としては、列島改造構想による高度成長政策を改め、国総法案も撤回し、さらに経済社会基本計画をも見直すべきではないか。また、石油危機以後、日用品、食料品の一部に価格の引き上げ、消費者の買い急ぎ現象等のあるのは憂慮すべきであり、至急対策を講ずべきではないか」との趣旨の質疑がありました。
これに対し、田中内閣総理大臣より、「最近の物価動向を見ると、依然根強い上昇を見せており、憂慮すべきものと考える。政府は全力をあげて抑制につとめる」との決意の表明があり、また、「この事態をインフレであると言うならば、あえてそれに異議を差しはさむものではないが、政府みずからがインフレであると認めるならば、所得政策なども考えざるを得なくなる。ただし、現在ではこれに対する国民の合意がないので、所得政策を導入する考えはない」との見解の表明があり、国総法案の撤回など、政策転換については、政府より、「国総法は国土の均衡開発と地価抑制のために必要である。経済社会基本計画にいう成長率九・四%という数字は、昨今の経済情勢からいうと高い数字だが、計画は計画として、現実には、四十九年度予算編成などにおいて適切なる施策を講じていけばよいと思う。また、最近における一部の品不足や価格の急騰については、実情は品不足ではないのだが、消費者が流言飛語に踊らされた疑いもあり、その実態等について現在きびしく調査中である。いずれにしろ、これらの価格抑制に対して、政府が責任を持ち得るためにも、新しい法案をぜひ通してほしい」との趣旨の答弁がありました。
次に、今次の内閣改造に関連して、憲法第六十六条二項の文民の解釈について問題が提起され、これに対し、政府から見解が表明されましたが、野党各党においてこれを検討したが、にわかに賛成することができないとのことでありました。
次に、過般の日ソ共同声明における日本語とロシア語の正文の食い違いに対する政府の責任が追及されましたが、これに対し、大平外務大臣より「本件はまことに遺憾なことであったが、国益を害するものではなく、今後かかることのないよう万全を期します」との弁明がありました。
質疑は、以上のほか、明年度予算編成上の諸問題、財形貯蓄のあり方、石油、LPガスの確保対策、地方財政の超過負担、中近東外交、その他、国政の各般にわたってきわめて熱心に行なわれましたが、詳細は会議録によりごらんを願いたいと存じます。
本日、質疑終了後、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の四党共同提案による補正予算三案を撤回のうえ編成替えを求める動議が提出され、松浦利尚君より趣旨説明がありました後、補正予算三案及び四党共同の動議を一括して討論に付しましたところ、自由民主党井原岸高君は政府原案に賛成、四党共同提案の動議に反対、日本社会党阿部昭吾君、日本共産党・革新共同中川利三郎君、公明党岡本富夫君及び民社党安里積千代君は四党共同提案の動議に賛成、政府原案に反対の討論を行ない、採決の結果、四党共同提案の動議は否決され、補正予算は多数をもって政府原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/6
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007・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 三件につき討論の通告があります。順次これを許します。細谷治嘉君。
〔細谷治嘉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/7
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008・細谷治嘉
○細谷治嘉君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題とされております昭和四十八年度補正予算(第1号)、(特第1号)及び(機第1号)につき反対の討論を行なうものであります。(拍手)
まず最初に申し上げなければならないのは、今回の補正予算は、単に通常の補正予算のように、年度途中に起こったやむを得ない事由に基づく予算の補正を自然増収の範囲内で行なうといったものとは明らかに異なる性格のものでなければなりません。その一つは、政府の経済政策の失敗をきびしく反省し、インフレ促進型の予算からの脱却を目ざすものであること、いま一つは、激化するインフレ、物価高によって、その被害に苦しんでいる勤労大衆、なかんずく老人、母子世帯など、低所得層の生活の緊急な救済を行なうことを重点とするものでなければならないのであります。しかるに、政府補正予算は、こうした姿勢を全く欠落させた場当たり補正であり、かえって矛盾を増幅する結果となることが明らかであるといわなければならないのであります。(拍手)
今日の異常なインフレの元凶は、言うまでもなく、日本列島改造計画による土地、株、商品の投機をはじめ、田中内閣がみずから指導したインフレ投機経済にあります。田中内閣は国際通貨対策を誤り、円再切り上げに追い込まれた責任を回避し、昨年上期、景気はすでに回復に向かっていたにもかかわらず、調整インフレ的景気刺激政策をとり、預金金利及び公定歩合の引き下げをはじめ、金融の異常な緩和を行ない、さらには、四十七年度大型補正予算に続いて、四十八年度超積極インフレ予算を編成いたしたのであります。しかも、列島改造計画にあおられた投機のあらしを野放しにし、かえって不況カルテルで値上げを下ざさえし、一方では国鉄運賃など公共料金の値上げをはじめ、政府主導による値上げ政策を進めてまいったのであります。
これらの政策の誤りが、福祉、物価、円のトリレンマの解消どころか、インフレを増進させ、格差と不公平を拡大するに至ったことは明らかであります。(拍手)このことは四十八年度当初予算の審議においてわが党が鋭く指摘し、野党四党が組みかえ動議を提出して、予算案の撤回と再編成を要求いたしたところであります。しかるに、田中内閣は、こうした国民的な要求を無視し、しゃにむに列島改造路線を突き進んできたのであります。
いまや、インフレによる生活難によって、国民のがまんも限度にきております。しかも、石油輸入は制限され、この点だけを見ても、列島改造論による高度成長政策は完全に破綻し、おそらく来年は不況下の物価高、いわゆるスタグフレーションにおちいるであろうことを否定し得ない状況となってきております。しかるに、田中総理は、予算委員会におけるわが党の追及に対して、いまなお、インフレとは認めないと繰り返し、かえって所得政策の導入すらにおわせてどうかつするに至っては、まさに常軌を逸した態度と申さなければならないのであります。(拍手)
私は、田中内閣に対し、日本列島改造計画とそれを裏づける国総法案を撤回し、激化するインフレ、物価高を押え、国民生活を守るために、四十八年度予算の総洗いによる組みかえをする決意で補正予算の再編成を求めるものであります。
公共事業費については、政府は八%の繰り延べを行なったのでありますが、これでは不十分であります。財政投融資を含め、大企業、産業基盤関係の公共投資を全面的に繰り延べ、削減すべきであります。新幹線、高速道路などの大型プロジェクトはこれを凍結し、再検討すべきであります。同時に、三千六百五十八億円に及ぶ防衛費のうちの兵器装備を削減し、その他不要不急の経費を大胆に減額すべきであります。
私は、政府が、これまでの高度成長政策の誤りをすなおに反省し、インフレ、投機経済を転換して、国民生活優先の安定した経済に転換しない限り道はないことを強く主張するものであります。(拍手)
反対の第二の理由は、いま国民生活に重大な影響を及ぼしている異常な物価高騰に対し、緊急に救済措置をとらなければならないにもかかわらず、その適切な対応を怠っているばかりか、かえって消費者米価を四月から九・八%、麦はすでに十二月から三五%の値上げを強行し、一方では、石油危機を逆用して国民に耐乏生活を押しつけ、みずからの責任を回避しようとはかっていることであります。
生活保護基準の引き上げは五%にすぎず、失対事業や老人、児童等保護費も、これに準じた手直しにすぎないのであります。現在の消費者物価の値上がりは、生活の実態面では政府発表指数の二倍、三倍にものぼっているのであり、インフレ救済どころか、給付の実質的な切り下げがいやおうなしに進められるのであります。たばこ年金と酷評された老齢福祉年金も、わずか五千円のまま据え置かれ、インフレ調整すら行なわれていないのであります。
児童保護施設や老人ホームは、建築資材の暴騰によって、建築はもとより修繕もできない状況であります。加えて、石油危機による灯油の値上がりは暖房費を圧迫し、この寒さの中で、暖房時間の短縮をするという悲惨な現実が浮き彫りにされているのであります。
しかも、インフレのあらしは、生活、社会のあらゆる分野に及び、地方自治体は学校建築あるいは厚生福祉施設等の建築資材の値上がりや、単価アップによって、膨大な超過負担を余儀なくされ、建築の見通しすら立たないという状態に追い込まれております。
中小企業者は年末を控え、資材難、資金難、人手不足の中で苦しんでいるのであります。
これらに対する緊急な諸施策を積極的かつ大幅に講ずることなしに、インフレ被害の救済と国民生活を防衛することは不可能であります。低福祉の谷間に対する緊急な施策と、福祉の第一線部門である地方財政の超過負担解消を目ざし、単に単価是正にとどまらず、制度的にも大改正を行なうことが必要であることは、もはや論をまたないところだと思うのであります。(拍手)
第三の理由は、勤労者に対する年内減税がついに見送られてしまっていることであります。
インフレのもとで、勤労者の実質賃金は切り下げられ、春闘によるベースアップもすでに吹き飛んでしまっているばかりか、名目賃金の上昇による実質増税が押しつけられているのであります。政府は二兆円減税を宣伝し、来年度一兆六千億円減税を考えているといっているのでありますが、来年度の減税を待つような余裕を勤労者は持ってはおりません。他方、土地投機やインフレに便乗した大企業の過当利得はふくれ上がる一方であります。ところが、税金は安い。税の不公平は拡大するばかりであります。
勤労者のインフレによる賃金の切り下げと実質増税という二重の打撃を救済するため、所得税は、四人家族年収百五十万円まで無税とすることを軸にして、年内減税を行ない、税の取り過ぎ分は返すべきであります。
予算委員会において、四党共同の組みかえ動議が提出され、頭割り三万円の税額控除による物価調整緊急減税が提案されたのは、このような観点からであります。同時に、インフレ利得を一人占めしている大企業に対しては、臨時法人利得税を課し、負担能力に応じた適正な課税を実施することによって過剰流動性を吸収し、あわせて、負担の公平化をはかるべきが当然であります。
以上、私は、政府の補正予算は、今日の緊急な時点に対処する重要な視点が欠落しており、とうてい国民の期待にこたえることができない内容であり、全面的な再編成を行なわない限り、とうてい容認できないものであります。このような補正予算を編成して恥じない政府の無責任さをきびしく指摘いたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/8
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009・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 中島武敏君。
〔中島武敏君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/9
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010・中島武敏
○中島武敏君 私は日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の昭和四十八年度補正予算三案に対し、反対の討論を行なうものであります。(拍手)
今日、深刻な経済情勢のもとで、国民は大きな不安と強い憤りを感じております。刻一刻と物価は急騰し、インフレは高進しています。しかも、大企業や商社による買い占めや売り惜しみによって、生活必需品も手に入らないという異常な事態を生じております。石油危機はこの深刻な事態を一そう激化させています。
このような事態に国民をおとしいれた原因は、歴代自民党政府の対米従属のもとでの大資本本位の高度成長政策にあることは明白であり、政府の責任はきわめて重大であります。世論調査にあらわれた田中内閣の支持率が実に一八%と、この一年余の間に急速な低落を見せたことは、国民が田中内閣に対して強い批判を持つと同時に、これまでの大企業優先の政治を国民生活優先へと根本的に転換することを切実に求めていることを、最も端的に示すものであります。(拍手)
四十八年度当初予算の編成に際して、わが党は、一月十三日の党首会談においても、野坂議長、不破書記局長が、最重要の問題として物価安定策を総理に申し入れ、日本共産党・革新共同など野党四党の動議の中でもこのことを強調しました。
しかるに、政府はわが党の主張を無視して、超大型インフレ予算を押し通したのであります。しかし、この誤りは予算成立後一月で、公共事業の繰り延べを政府みずからきめざるを得なかったことによって、疑問の余地なく証明されたのであります。(拍手)したがって、補正予算の編成にあたってはインフレ刺激要因を押え、国民のこうむっているインフレ被害の救済をはかることを重点としたものにすることこそ重要なのであります。
私が本補正予算案に反対する第一の理由は、インフレ、物価高を促進させるものであるという点であります。
政府は各種公共料金の引き上げに加えて、当初予算においては二兆三千四百億円もの赤字公債を予定して、大企業のための産業基盤整備事業を推進し、資材の不足と値上げを引き起こしながら、土地や諸物資の買い占め、売り惜しみを放置した上に、不当な価格のつり上げを何ら規制してきませんでした。国民の生活が危機と不安にさらされている一方で、大企業が巨大な利益をあげていることを見ても、政府の施策がいかに反国民的なものであったかは明らかであります。(拍手)
本補正予算案においては、高速道路、新幹線鉄道、港湾など大企業のための産業基盤整備費、防衛費などの大幅削減を行ない、予算規模を圧縮し、インフレを押えるべきであります。(拍手)
第二の反対理由は、インフレのもとで苦しい生活をしいられている国民の生活を救済するものではないということであります。
この一年間に消費者物価は一四%の大幅上昇となり、社会保障制度審議会の建議にも明らかなように、そのしわ寄せは、勤労者はもとより、特に社会的に弱い立場にある生活保護者、障害者、老人、失対就労者などに集中しています。生活保護基準のわずか五%ばかりの引き上げなどで、どうしてこれらの人たちの生活を守ることができるでしょうか。(拍手)たとえば七十一億円の支出を行なえば、生活保護基準二〇%の引き上げは可能であります。せめてこれくらいは直ちに実行すべきであります。(拍手)
さらに、公務員に対するインフレ手当の支給や中小企業に対する資金対策を拡充し、その営業と生活を守ることも為政者として当然の責務であります。また、勤労者に対する大幅な年内減税を断行し、インフレ、物価高に苦しむ国民に対するせめてもの償いとすべきであります。にもかかわらず、政府がとろうとしている施策は、みずからの失政に何らの反省を示さず、その犠牲を国民に転嫁しようとする許しがたいものであります。
第三の反対理由は、危機におちいっている地方財政を改善するどころか、一そう困難をもたらすものであるという点であります。
資材の不足と高騰によって、地方自治体の公共事業は行き詰まり、社会福祉施設、学校、住宅の建設や生活環境の整備はこれ以上放置できない状態であり、単価の改定、超過負担の解消、地方交付税の増加配分などのため、十分な補正が特別に組まれるべきであります。しかるに、政府は、地方交付税の借入金を繰り上げ償還することによって、当然地方自治体に配分されるべき地方交付税の総額を減額さえしようとしているのであります。地方自主財源の減額はやめるべきであります。借金財政への依存がますます強まっている地方財政の危機に対して、総需要抑制の名のもとに、きびしい拍車をかける今回の措置は、地方自治体とその住民に対する新たな挑戦といわなければなりません。(拍手)
第四の反対理由は、国民生活防衛には背を向けながら、アメリカや大企業のためには新たな支出をさえ準備している点であります。
田中・ニクソン会談できめた日本研究促進特別支出金や、自由化対策を名目とした大企業本位の電子計算機産業振興対策費などは、この際、新規分を含めて全額削除するべきであります。(拍手)
最後に、田中総理は、事あるごとに財源がないと言われますが、この際、不当利得をあげている大企業に対して、臨時の課税を行ない、その財源を確保すべきであります。これは、非常事態ともいえる物価高騰から国民生活を守るためにも、手元資金をふやして投機に向かおうとする大企業の手を押えるためにも、またインフレ対策としても、必要にして不可欠なものであります。国民生活優先を基本として、異常な物価高、インフレや大企業の横暴を押えることこそ、いま国民が緊急に求めているものであり、この国民の求めにこたえることこそ、政府に許されたただ一つの贖罪の道であります。(拍手)
以上、私は、政府提出の昭和四十八年度補正予算三案に断固として反対し、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/10
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011・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 山田太郎君。
〔山田太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/11
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012・山田太郎
○山田太郎君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和四十八年度補正予算三案に対し、反対の討論を行なうものであります。(拍手)
言うまでもなく、日本経済の直面した石油危機とインフレの高進というきわめてきびしい現実の中で、国民生活は、物不足と異常な物価高騰にかつてない困難と不安とを覚えているのであります。この異常な事態が、政府・自民党のとり続けてきた大企業、大資本優先の高度経済成長政策と対米追随の閉鎖的な外交によってもたらされた結果であることは、明らかな事実であります。われわれは幾たびかその政策転換を強く迫ってまいりました。にもかかわらず、政府は、特に田中内閣誕生以来、公定歩合の引き下げなどによって異常な金融緩和を行ない、さらに、前年度比二四・六%増の超大型の四十八年度予算を編成して、高度成長と列島改造を推進し、景気過熱からインフレ促進、そして現在のような異常な事態を招いたのであります。
そういう意味で、今回の補正予算編成は、これまでの政策の失敗を深刻に反省し、同時に、現在のインフレ、高物価を克服し、安定成長、福祉優先を確立するきっかけともなる大事な試金石であったのであります。しかるに、政府補正予算案には、ますます深刻化する国民生活と国民の不安に対する認識を欠き、従来の体質を改める積極的姿勢が何ら見られなかったことは、きわめて遺憾であります。
以下、政府補正予算案に反対するおもな理由を申し上げます。
第一に、このインフレ、物価高で最も被害をこうむる老人、母子家庭、生活保護世帯、福祉施設利用者及び身体障害者などに対する配慮が何らなされていないことであります。
総理の諮問機関である社会保障制度審議会が、インフレ下の社会保障の危機回避のための建議として、インフレによる貨幣価値の低下に伴い、生活保護の各種の扶助、各種の年金等の現金給付及び社会福祉施設入所者の生活費等について、その実質価値を維持し、予定された生活水準を確保する措置が最低限度必要である云々と核心をつく提言をしているにもかかわらず、これすら考慮されていないのであります。イギリスやイタリアでは、物価調整手当、家族手当を含め、年金一カ月分に相当するいわゆるインフレ特別給付金を支出して、インフレの被害防止に力を注いでいるのであります。現実にインフレ、高物価の中で苦悩する国民生活の実態から、インフレによって減価する生活扶助、各種年金等に対処することは、政府の責任であります。ましてや、政府の失政による今日の国民生活の窮状に対し、政府が責任をもって対処しなければならないことはきわめて当然なのであります。生活扶助を一日一人二十円程度引き上げて妥当だと強弁する田中内閣の政治感覚、国民生活の実態を無視した姿勢は、きわめて遺憾であり、許されるものではありません。
第二に、年内減税についてであります。
国民は、インフレ、高物価による支出増と税金の取られ過ぎによるダブルパンチに苦しめられているのであります。政府は減税が景気を刺激するからといっておりますが、今日のインフレを招いた責任は、ひとえに政府にあるはずであります。そのインフレによって生活水準の実質的低下が生じておるからこそ減税が必要なのであります。政府が国民生活を守るというならば、せめて物価調整のための減税は実現すべきであったはずであります。自然増収の中で所得税が約五千五百億円増収となっており、この際、その増収分を減税という形で、インフレ、高物価の直撃を受けている所得層の国民に返すのは当然であります。年内減税が国民の切なる要求となっている現在、政府は直ちにその実現をはかるべきであります。
第三には、国民生活に密着した地方自治体の財政の窮状に対し、きわめて冷淡であるということであります。
現在地方自治体は、インフレの高進による資材の値上がりで超過負担をさらに重くしいられ、病院、学校、保育所等、住民生活に必要不可欠の施設までも工事の延期を余儀なくされているのが実情であります。超過負担の解消は急務といわなければならないのであります。さらに納得できないのは、本補正予算案におきまして、地方自治体の交付税特別会計からの借り入れ分を繰り上げ償還をする措置をとっていることであります。これは四十九年度以降に償還すべきものであり、超過負担で悩む自治体財政をさらに圧迫する措置であると断ぜざるを得ないのであります。第四には、景気の引き締めやインフレ、物不足によって経営を圧迫され続けている中小企業に対し、何らの補正措置をとっていないことであります。
中小企業の倒産件数はウナギ登りに上昇しており、本年末から来年にかけてさらに激化することが予想されております、財政投融資の拡大は当然のこととし、これに加えて、一般会計からの利子補給による金利の引き下げ、信用補完制度の充実によって、民間金融機関からの融資を円滑化するほか、中小企業減税、中小企業の指導、育成の充実をしなければならないのであります。中小企業者は、いま、不安と動揺の中で、当面する危機をどう乗り切ろうかと必死であります。これらの人々にあたたかい手を差し伸べない政府の姿勢は、全く理解できないのであります。(拍手)
第五には、政府は、インフレ、物価高を押えるためには総需要抑制が必要だとし、金利の引き上げや財形制度などによって、消費支出の抑制に懸命になっていながら、政府みずからの行なう高速道路、鉄道新幹線、空港などの大企業、産業基盤整備の事業費を十分に削減していないことであります。また、防衛費、さらには官庁営繕費等の節減も不十分きわまりないのであります。
当面する事態が、民間の設備投資、それに政府の資本支出の急激な膨張によってもたらされた事実から見ても、最優先してこれらの事業の削減が取り上げられてしかるべきなのであります。政府みずからがきびしい姿勢があってこそ、初めて国民に対し協力を仰ぐことができると思うのであります。(拍手)
以上、おもな反対理由を述べてまいりましたが、私たちは、この政府の補正予算案に対し、四野党共同して、以上の国民の要求を盛り込んだ組み替え動議を予算委員会に提出いたしましたが、否決されたことはまことに残念であります。政府が、真に国民生活を守るための熱意があるならば、当然これに応ずるべきだと思うのであります。
以上、反対の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/12
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013・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 安里積千代君。
〔安里積千代君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/13
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014・安里積千代
○安里積千代君 私は、民社党を代表いたしまして、昭和四十八年度三補正予算案に対しまして、反対の討論を行ないます。(拍手)
今日、わが国経済最大のエネルギー源でありまする石油の供給が、アラブ諸国によって削減されるという、かつて経験したことのない異常事態を迎えております。石油削減に伴う物不足経済到来の懸念や、かかる困難時を利用して、買い占め、売り惜しみ、系列化を促進して利益を追求する悪徳業者の横行などから、国民の生活は根本から脅かされ、国民は極度の不安の状況におとしいれられております。また、心身障害者、老人、生活保護世帯、勤勉な労働者及び中小企業者など、このような異常な事態に対処する力を持たない人々は、救済のないままに犠牲をしいられている現状であります。したがって、事態をこのまま放置すれば、国民はますます不安におののき、社会暴動さえ起きかねないでありましょう。
このような状況の中で、政治が対処すべき最も重要な事項は、石油ショックに伴う社会的混乱を収拾し、異常な物価高を押えるため、確固たる方針を国民に明示して、国民生活の安定を保障し、その不安を除去することであります。したがって、今回の補正予算案は、激化するインフレ、物価高に対処し、国民生活を守ることを基本として編成することが絶対的な要請であります。
しかるに、政府補正予算案は、以下に述べます理由から、この認識に欠け、従来の高度経済成長政策に根本的なメスを加えることを忘れているといっても過言ではありません。
その第一の理由は、当初予算編成の方針に沿うたものであり、特に公共事業費の大幅な縮減を中心として、政府みずからが総需要の抑制に対する明確な姿勢を欠いていることであります。
少なくともこの際は、委員会におきまして野党四党が要求いたしました、補正予算の規模は三五%削減し、内容におきましては、福祉対策費の大幅増加、地方公共団体の超過負担の解消、年内所得税の減税を断行し、歳入においては、かつて見ない利益を計上している資本金十億円以上の大企業に対しては臨時法人利得税を課するなど、国民生活、国民経済の現状に照らして補正予算案を編成すべきであります。
第二の反対理由は、異常な物価高、悪性インフレの中で、一方的に犠牲をしいられておる生活保護世帯、老人、心身障害者、中小企業者等に対する救済対策がきわめて貧弱であるということであります。
社会的に弱い立場に立たされているこれらの人々をインフレから救済することこそ、政府が果たすべき重大使命であることにかんがみ、生活保護基準の二〇%引き上げ、これに準じた失対事業、老人、児童等保護費等の充実、また、老齢福祉年金と老齢特別給付金を月額一万円に引き上げ、障害年金、母子年金などもこれに準じて引き上げる、このように補正予算を組みかえるべきであったと考えます。
第三の反対理由は、公共事業費の中で、高速道路、鉄道新幹線、港湾、空港整備費など、大型な財政支出を削減すべきであるにもかかわらず、政府案ではそれをわずかに八百七十一億円にとどめておることであります。
この政府案の背景にありますものは、破綻した高度成長政策を財政主導型に切りかえ、その継続を主眼としているといわなければなりません。
言うまでもなく、資源を持たないわが国が、狭い国土で多量の資源を消費し、高度成長を続けることは、もともと無理な問題であり、現に公害、自然環境の破壊など、国民の生活と生命を脅かしていることが事実として展開されているのみならず、今回の石油供給削減措置は、世界的にも重要な基礎資源の不均衡配分の是正を求めていると受け取るべきであります。このことからいたしましても、わが国の経済構造を高度成長から福祉向上型に転換せしめることこそ急務といわなければなりません。
この際私は、政府に猛省を促しつつ、本案に対しまする反対の討論を終わりたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/14
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015・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) これにて討論は終局いたしました。
三件を一括して採決いたします。
三件の委員長の報告はいずれも可決であります。三件を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/15
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016・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 起立多数。よって、三件とも委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
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郵便貯金法の一部を改正する法律案(内閣提
出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/16
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017・森喜朗
○森喜朗君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、内閣提出、郵便貯金法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/17
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018・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 森喜朗君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/18
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019・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。
郵便貯金法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/19
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020・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 委員長の報告を求めます。逓信委員長廣瀬正雄君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔廣瀬正雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/20
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021・廣瀬正雄
○廣瀬正雄君 ただいま議題となりました郵便貯金法の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本案は、郵便貯金の貯金総額の制限額を三百万円に引き上げようとするものであります。
現在の郵便貯金の預金者一人当たりの貯金総額の制限額は百五十万円であり、この額は昭和四十七年に百万円から引き上げられて今日に至っておるものでありますが、現下の経済情勢並びに最近における国民所得や貯蓄保有額の伸びの状況などにかんがみ、これを三百万円に引き上げ、郵便貯金の預金者の利益を増進し、あわせて貯蓄の増強に資しようとするものであります。
なお、この法律の施行期日は、公布の日となっております。
逓信委員会におきましては、去る十二月四日本案の付託を受けまして、同月六日原田郵政大臣より提案理由を聴取し、慎重に審査したのでありますが、十二月十日質疑を終了し、討論もなく、採決をいたしました結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/21
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022・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/22
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023・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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024・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後八時八分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 田中 角榮君
法 務 大 臣 中村 梅吉君
外 務 大 臣 大平 正芳君
大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
文 部 大 臣 奧野 誠亮君
厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君
農 林 大 臣 倉石 忠雄君
通商産業大臣 中曽根康弘君
運 輸 大 臣 徳永 正利君
郵 政 大 臣 原田 憲君
労 働 大 臣 長谷川 峻君
建 設 大 臣 亀岡 高夫君
自 治 大 臣 町村 金五君
国 務 大 臣 内田 常雄君
国 務 大 臣 小坂徳三郎君
国 務 大 臣 二階堂 進君
国 務 大 臣 保利 茂君
国 務 大 臣 森山 欽司君
国 務 大 臣 山中 貞則君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X00419731210/24
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